# File Name: Holy-Bible---Japanese---New-Japanese-New-Testament---Standard-Edition.noia # File Size: 1511949 # File Date: 03/27/2024 23:05:00 # File Purpose: Supporting resource for the Aionian Bible project # File Location: https://resources.AionianBible.org # File Copyright: Creative Commons Attribution No Derivative Works 4.0, 2018-2024 # File Generator: ABCMS (alpha) # File Accuracy: Contact publisher with corrections to file format or content # Publisher Name: Nainoia Inc # Publisher Contact: https://www.AionianBible.org/Publisher # Publisher Mission: https://www.AionianBible.org/Preface # Publisher Website: https://NAINOIA-INC.signedon.net # Publisher Facebook: https://www.Facebook.com/AionianBible # Bible Name: 新改訳新約聖書 # Bible Name English: Japanese New Testament 1965 # Bible Language: 日本語 # Bible Language English: Japanese # Bible Copyright Format: CC Attribution NoDerivatives 4.0, 2018-2024 # Bible Copyright Text: Public Domain # Bible Source: Shinkaiyaku Seisho Kankokai # Bible Source Version: 2/21/2024 # Bible Source Link: https://ebible.org/details.php?id=jpn1965 # Bible Source Year: 1963, 1965 # Bible Format: Standard formatting without annotation # INDEX BOOK CHAPTER VERSE TEXT # # BOOK 040 MAT Matthew マタイの福音書 040 MAT 001 001 アブラハムの子孫、ダビデの子孫、イエス・キリストの系図。 040 MAT 001 002 アブラハムにイサクが生まれ、イサクにヤコブが生まれ、ヤコブにユダとその兄弟たちが生まれ、 040 MAT 001 003 ユダに、タマルによってパレスとザラが生まれ、パレスにエスロンが生まれ、エスロンにアラムが生まれ、 040 MAT 001 004 アラムにアミナダブが生まれ、アミナダブにナアソンが生まれ、ナアソンにサルモンが生まれ、 040 MAT 001 005 サルモンに、ラハブによってボアズが生まれ、ボアズに、ルツによってオベデが生まれ、オベデにエッサイが生まれ、 040 MAT 001 006 エッサイにダビデ王が生まれた。 ダビデに、ウリヤの妻によってソロモンが生まれ、 040 MAT 001 007 ソロモンにレハベアムが生まれ、レハベアムにアビヤが生まれ、アビヤにアサが生まれ、 040 MAT 001 008 アサにヨサパテが生まれ、ヨサパテにヨラムが生まれ、ヨラムにウジヤが生まれ、 040 MAT 001 009 ウジヤにヨタムが生まれ、ヨタムにアハズが生まれ、アハズにヒゼキヤが生まれ、 040 MAT 001 010 ヒゼキヤにマナセが生まれ、マナセにアモンが生まれ、アモンにヨシヤが生まれ、 040 MAT 001 011 ヨシヤに、バビロン移住のころエコニヤとその兄弟たちが生まれた。 040 MAT 001 012 バビロン移住の後、エコニヤにサラテルが生まれ、サラテルにゾロバベルが生まれ、 040 MAT 001 013 ゾロバベルにアビウデが生まれ、アビウデにエリヤキムが生まれ、エリヤキムにアゾルが生まれ、 040 MAT 001 014 アゾルにサドクが生まれ、サドクにアキムが生まれ、アキムにエリウデが生まれ、 040 MAT 001 015 エリウデにエレアザルが生まれ、エレアザルにマタンが生まれ、マタンにヤコブが生まれ、 040 MAT 001 016 ヤコブにマリヤの夫ヨセフが生まれた。キリストと呼ばれるイエスはこのマリヤからお生まれになった。 040 MAT 001 017 それで、アブラハムからダビデまでの代が全部で十四代、ダビデからバビロン移住までが十四代、バビロン移住からキリストまでが十四代になる。 040 MAT 001 018 イエス・キリストの誕生は次のようであった。その母マリヤはヨセフの妻と決まっていたが、ふたりがまだいっしょにならないうちに、聖霊によって身重になったことがわかった。 040 MAT 001 019 夫のヨセフは正しい人であって、彼女をさらし者にはしたくなかったので、内密に去らせようと決めた。 040 MAT 001 020 彼がこのことを思い巡らしていたとき、主の使いが夢に現われて言った。「ダビデの子ヨセフ。恐れないであなたの妻マリヤを迎えなさい。その胎に宿っているものは聖霊によるのです。 040 MAT 001 021 マリヤは男の子を産みます。その名をイエスとつけなさい。この方こそ、ご自分の民をその罪から救ってくださる方です。」 040 MAT 001 022 このすべての出来事は、主が預言者を通して言われた事が成就するためであった。 040 MAT 001 023 「見よ、処女がみごもっている。そして男の子を産む。その名はインマヌエルと呼ばれる。」(訳すと、神は私たちとともにおられる、という意味である。) 040 MAT 001 024 ヨセフは眠りからさめ、主の使いに命じられたとおりにして、その妻を迎え入れ、 040 MAT 001 025 そして、子どもが生まれるまで彼女を知ることがなく、その子どもの名をイエスとつけた。 040 MAT 002 001 イエスが、ヘロデ王の時代に、ユダヤのベツレヘムでお生まれになったとき、見よ、東方の博士たちがエルサレムにやって来て、こう言った。 040 MAT 002 002 「ユダヤ人の王としてお生まれになった方はどこにおいでになりますか。私たちは、東のほうでその方の星を見たので、拝みにまいりました。」 040 MAT 002 003 それを聞いて、ヘロデ王は恐れ惑った。エルサレム中の人も王と同様であった。 040 MAT 002 004 そこで、王は、民の祭司長たち、学者たちをみな集めて、キリストはどこで生まれるのかと問いただした。 040 MAT 002 005 彼らは王に言った。「ユダヤのベツレヘムです。預言者によってこう書かれているからです。 040 MAT 002 006 『ユダの地、ベツレヘム。 あなたはユダを治める者たちの中で、 決して一番小さくはない。 わたしの民イスラエルを治める支配者が、 あなたから出るのだから。』」 040 MAT 002 007 そこで、ヘロデはひそかに博士たちを呼んで、彼らから星の出現の時間を突き止めた。 040 MAT 002 008 そして、こう言って彼らをベツレヘムに送った。「行って幼子のことを詳しく調べ、わかったら知らせてもらいたい。私も行って拝むから。」 040 MAT 002 009 彼らは王の言ったことを聞いて出かけた。すると、見よ、東方で見た星が彼らを先導し、ついに幼子のおられる所まで進んで行き、その上にとどまった。 040 MAT 002 010 その星を見て、彼らはこの上もなく喜んだ。 040 MAT 002 011 そしてその家にはいって、母マリヤとともにおられる幼子を見、ひれ伏して拝んだ。そして、宝の箱をあけて、黄金、乳香、没薬を贈り物としてささげた。 040 MAT 002 012 それから、夢でヘロデのところへ戻るなという戒めを受けたので、別の道から自分の国へ帰って行った。 040 MAT 002 013 彼らが帰って行ったとき、見よ、主の使いが夢でヨセフに現われて言った。「立って、幼子とその母を連れ、エジプトへ逃げなさい。そして、私が知らせるまで、そこにいなさい。ヘロデがこの幼子を捜し出して殺そうとしています。」 040 MAT 002 014 そこで、ヨセフは立って、夜のうちに幼子とその母を連れてエジプトに立ちのき、 040 MAT 002 015 ヘロデが死ぬまでそこにいた。これは、主が預言者を通して、「わたしはエジプトから、わたしの子を呼び出した。」と言われた事が成就するためであった。 040 MAT 002 016 その後、ヘロデは、博士たちにだまされたことがわかると、非常におこって、人をやって、ベツレヘムとその近辺の二歳以下の男の子をひとり残らず殺させた。その年令は博士たちから突き止めておいた時間から割り出したのである。 040 MAT 002 017 そのとき、預言者エレミヤを通して言われた事が成就した。 040 MAT 002 018 「ラマで声がする。 泣き、そして嘆き叫ぶ声。 ラケルがその子らのために泣いている。 ラケルは慰められることを拒んだ。 子らがもういないからだ。」 040 MAT 002 019 ヘロデが死ぬと、見よ、主の使いが、夢でエジプトにいるヨセフに現われて、言った。 040 MAT 002 020 「立って、幼子とその母を連れて、イスラエルの地に行きなさい。幼子のいのちをつけねらっていた人たちは死にました。」 040 MAT 002 021 そこで、彼は立って、幼子とその母を連れて、イスラエルの地にはいった。 040 MAT 002 022 しかし、アケラオが父ヘロデに代わってユダヤを治めていると聞いたので、そこに行ってとどまることを恐れた。そして、夢で戒めを受けたので、ガリラヤ地方に立ちのいた。 040 MAT 002 023 そして、ナザレという町に行って住んだ。これは預言者たちを通して「この方はナザレ人と呼ばれる。」と言われた事が成就するためであった。 040 MAT 003 001 そのころ、バプテスマのヨハネが現われ、ユダヤの荒野で教えを宣べて、言った。 040 MAT 003 002 「悔い改めなさい。天の御国が近づいたから。」 040 MAT 003 003 この人は預言者イザヤによって、 「荒野で叫ぶ者の声がする。『主の道を用意し、主の通られる道をまっすぐにせよ。』」 と言われたその人である。 040 MAT 003 004 このヨハネは、らくだの毛の着物を着、腰には皮の帯を締め、その食べ物はいなごと野蜜であった。 040 MAT 003 005 さて、エルサレム、ユダヤ全土、ヨルダン川沿いの全地域の人々がヨハネのところへ出て行き、 040 MAT 003 006 自分の罪を告白して、ヨルダン川で彼からバプテスマを受けた。 040 MAT 003 007 しかし、パリサイ人やサドカイ人が大ぜいバプテスマを受けに来るのを見たとき、ヨハネは彼らに言った。「まむしのすえたち。だれが必ず来る御怒りをのがれるように教えたのか。 040 MAT 003 008 それなら、悔い改めにふさわしい実を結びなさい。 040 MAT 003 009 『われわれの先祖はアブラハムだ。』と心の中で言うような考えではいけません。あなたがたに言っておくが、神は、この石ころからでも、アブラハムの子孫を起こすことがおできになるのです。 040 MAT 003 010 斧もすでに木の根元に置かれています。だから、良い実を結ばない木は、みな切り倒されて、火に投げ込まれます。 040 MAT 003 011 私は、あなたがたが悔い改めるために、水のバプテスマを授けていますが、私のあとから来られる方は、私よりもさらに力のある方です。私はその方のはきものを脱がせてあげる値うちもありません。その方は、あなたがたに聖霊と火とのバプテスマをお授けになります。 040 MAT 003 012 手に箕を持っておられ、ご自分の脱穀場をすみずみまできよめられます。麦を倉に納め、殻を消えない火で焼き尽くされます。」 040 MAT 003 013 さて、イエスは、ヨハネからバプテスマを受けるために、ガリラヤからヨルダンにお着きになり、ヨハネのところに来られた。 040 MAT 003 014 しかし、ヨハネはイエスにそうさせまいとして、言った。「私こそ、あなたからバプテスマを受けるはずですのに、あなたが、私のところにおいでになるのですか。」 040 MAT 003 015 ところが、イエスは答えて言われた。「今はそうさせてもらいたい。このようにして、すべての正しいことを実行するのは、わたしたちにふさわしいのです。」そこで、ヨハネは承知した。 040 MAT 003 016 こうして、イエスはバプテスマを受けて、すぐに水から上がられた。すると、天が開け、神の御霊が鳩のように下って、自分の上に来られるのをご覧になった。 040 MAT 003 017 また、天からこう告げる声が聞こえた。「これは、わたしの愛する子、わたしはこれを喜ぶ。」 040 MAT 004 001 さて、イエスは、悪魔の試みを受けるため、御霊に導かれて荒野に上って行かれた。 040 MAT 004 002 そして、四十日四十夜断食したあとで、空腹を覚えられた。 040 MAT 004 003 すると、試みる者が近づいて来て言った。「あなたが神の子なら、この石がパンになるように、命じなさい。」 040 MAT 004 004 イエスは答えて言われた。「『人はパンだけで生きるのではなく、神の口から出る一つ一つのことばによる。』と書いてある。」 040 MAT 004 005 すると、悪魔はイエスを聖なる都に連れて行き、神殿の頂に立たせて、 040 MAT 004 006 言った。「あなたが神の子なら、下に身を投げてみなさい。『神は御使いたちに命じて、その手にあなたをささえさせ、あなたの足が石に打ち当たることのないようにされる。』と書いてありますから。」 040 MAT 004 007 イエスは言われた。「『あなたの神である主を試みてはならない。』とも書いてある。」 040 MAT 004 008 今度は悪魔は、イエスを非常に高い山に連れて行き、この世のすべての国々とその栄華を見せて、 040 MAT 004 009 言った。「もしひれ伏して私を拝むなら、これを全部あなたに差し上げましょう。」 040 MAT 004 010 イエスは言われた。「引き下がれ、サタン。『あなたの神である主を拝み、主にだけ仕えよ。』と書いてある。」 040 MAT 004 011 すると悪魔はイエスを離れて行き、見よ、御使いたちが近づいて来て仕えた。 040 MAT 004 012 ヨハネが捕えられたと聞いてイエスは、ガリラヤへ立ちのかれた。 040 MAT 004 013 そしてナザレを去って、カペナウムに来て住まわれた。ゼブルンとナフタリとの境にある、湖のほとりの町である。 040 MAT 004 014 これは、預言者イザヤを通して言われた事が、成就するためであった。すなわち、 040 MAT 004 015 「ゼブルンの地とナフタリの地、湖に向かう道、 ヨルダンの向こう岸、異邦人のガリラヤ。 040 MAT 004 016 暗やみの中にすわっていた民は偉大な光を見、 死の地と死の陰にすわっていた人々に、 光が上った。」 040 MAT 004 017 この時から、イエスは宣教を開始して、言われた。「悔い改めなさい。天の御国が近づいたから。」 040 MAT 004 018 イエスがガリラヤ湖のほとりを歩いておられたとき、ふたりの兄弟、ペテロと呼ばれるシモンとその兄弟アンデレをご覧になった。彼らは湖で網を打っていた。漁師だったからである。 040 MAT 004 019 イエスは彼らに言われた。「わたしについて来なさい。あなたがたを、人間をとる漁師にしてあげよう。」 040 MAT 004 020 彼らはすぐに網を捨てて従った。 040 MAT 004 021 そこからなお行かれると、イエスは、別のふたりの兄弟、ゼベダイの子ヤコブとその兄弟ヨハネが、父ゼベダイといっしょに舟の中で網を繕っているのをご覧になり、ふたりをお呼びになった。 040 MAT 004 022 彼らはすぐに舟も父も残してイエスに従った。 040 MAT 004 023 イエスはガリラヤ全土を巡って、会堂で教え、御国の福音を宣べ伝え、民の中のあらゆる病気、あらゆるわずらいを直された。 040 MAT 004 024 イエスのうわさはシリヤ全体に広まった。それで、人々は、さまざまの病気と痛みに苦しむ病人、悪霊につかれた人、てんかん持ちや、中風の者などをみな、みもとに連れて来た。イエスは彼らをお直しになった。 040 MAT 004 025 こうしてガリラヤ、デカポリス、エルサレム、ユダヤおよびヨルダンの向こう岸から大ぜいの群衆がイエスにつき従った。 040 MAT 005 001 この群衆を見て、イエスは山に登り、おすわりになると、弟子たちがみもとに来た。 040 MAT 005 002 そこで、イエスは口を開き、彼らに教えて、言われた。 040 MAT 005 003 「心の貧しい者は幸いです。天の御国はその人のものだからです。 040 MAT 005 004 悲しむ者は幸いです。その人は慰められるからです。 040 MAT 005 005 柔和な者は幸いです。その人は地を相続するからです。 040 MAT 005 006 義に飢え渇いている者は幸いです。その人は満ち足りるからです。 040 MAT 005 007 あわれみ深い者は幸いです。その人はあわれみを受けるからです。 040 MAT 005 008 心のきよい者は幸いです。その人は神を見るからです。 040 MAT 005 009 平和をつくる者は幸いです。その人は神の子どもと呼ばれるからです。 040 MAT 005 010 義のために迫害されている者は幸いです。天の御国はその人のものだからです。 040 MAT 005 011 わたしのために、ののしられたり、迫害されたり、また、ありもしないことで悪口雑言を言われたりするとき、あなたがたは幸いです。 040 MAT 005 012 喜びなさい。喜びおどりなさい。天においてあなたがたの報いは大きいのだから。あなたがたより前に来た預言者たちも、そのように迫害されました。 040 MAT 005 013 あなたがたは、地の塩です。もし塩が塩けをなくしたら、何によって塩けをつけるのでしょう。もう何の役にも立たず、外に捨てられて、人々に踏みつけられるだけです。 040 MAT 005 014 あなたがたは、世界の光です。山の上にある町は隠れる事ができません。 040 MAT 005 015 また、あかりをつけて、それを枡の下に置く者はありません。燭台の上に置きます。そうすれば、家にいる人々全部を照らします。 040 MAT 005 016 このように、あなたがたの光を人々の前で輝かせ、人々があなたがたの良い行ないを見て、天におられるあなたがたの父をあがめるようにしなさい。 040 MAT 005 017 わたしが来たのは律法や預言者を廃棄するためだと思ってはなりません。廃棄するためにではなく、成就するために来たのです。 040 MAT 005 018 まことに、あなたがたに告げます。天地が滅びうせない限り、律法の中の一点一画でも決してすたれることはありません。全部が成就されます。 040 MAT 005 019 だから、戒めのうち最も小さいものの一つでも、これを破ったり、また破るように人に教えたりする者は、天の御国で、最も小さい者と呼ばれます。しかし、それを守り、また守るように教える者は、天の御国で、偉大な者と呼ばれます。 040 MAT 005 020 まことに、あなたがたに告げます。もしあなたがたの義が、律法学者やパリサイ人の義にまさるものでないなら、あなたがたは決して天の御国に、はいれません。 040 MAT 005 021 昔の人々に、『人を殺してはならない。人を殺す者はさばきを受けなければならない。』と言われたのを、あなたがたは聞いています。 040 MAT 005 022 しかし、わたしはあなたがたに言います。兄弟に向かって腹を立てる者は、だれでもさばきを受けなければなりません。兄弟に向かって『能なし。』と言うような者は、最高議会に引き渡されます。また、『ばか者。』と言うような者は燃えるゲヘナに投げ込まれます。 040 MAT 005 023 だから、祭壇の上に供え物をささげようとしているとき、もし兄弟に恨まれていることをそこで思い出したなら、 040 MAT 005 024 供え物はそこに、祭壇の前に置いたままにして、出て行って、まずあなたの兄弟と仲直りをしなさい。それから、来て、その供え物をささげなさい。 040 MAT 005 025 あなたを告訴する者とは、あなたが彼といっしょに途中にある間に早く仲良くなりなさい。そうでないと、告訴する者は、あなたを裁判官に引き渡し、裁判官は下役に引き渡して、あなたはついに牢に入れられることになります。 040 MAT 005 026 まことに、あなたに告げます。あなたは最後の一コドラントを支払うまでは、そこから出ては来られません。 040 MAT 005 027 『姦淫してはならない。』と言われたのを、あなたがたは聞いています。 040 MAT 005 028 しかし、わたしはあなたがたに言います。だれでも情欲をいだいて女を見る者は、すでに心の中で姦淫を犯したのです。 040 MAT 005 029 もし、右の目が、あなたをつまずかせるなら、えぐり出して、捨ててしまいなさい。からだの一部を失っても、からだ全体ゲヘナに投げ込まれるよりは、よいからです。 040 MAT 005 030 もし、右の手があなたをつまずかせるなら、切って、捨ててしまいなさい。からだの一部を失っても、からだ全体ゲヘナに落ちるよりは、よいからです。 040 MAT 005 031 また『だれでも、妻を離別する者は、妻に離婚状を与えよ。』と言われています。 040 MAT 005 032 しかし、わたしはあなたがたに言います。だれであっても、不貞以外の理由で妻を離別する者は、妻に姦淫を犯させるのです。また、だれでも、離別された女と結婚すれば、姦淫を犯すのです。 040 MAT 005 033 さらにまた、昔の人々に、『偽りの誓いを立ててはならない。あなたの誓ったことを主に果たせ。』と言われていたのを、あなたがたは聞いています。 040 MAT 005 034 しかし、わたしはあなたがたに言います。決して誓ってはいけません。すなわち、天をさして誓ってはいけません。そこは神の御座だからです。 040 MAT 005 035 地をさして誓ってもいけません。そこは神の足台だからです。エルサレムをさして誓ってもいけません。そこは偉大な王の都だからです。 040 MAT 005 036 あなたの頭をさして誓ってもいけません。あなたは、一本の髪の毛すら、白くも黒くもできないからです。 040 MAT 005 037 だから、あなたがたは、『はい。』は『はい。』、『いいえ。』は『いいえ。』とだけ言いなさい。それ以上のことは悪いことです。 040 MAT 005 038 『目には目で、歯には歯で。』と言われたのを、あなたがたは聞いています。 040 MAT 005 039 しかし、わたしはあなたがたに言います。悪い者に手向かってはいけません。あなたの右の頬を打つような者には、左の頬も向けなさい。 040 MAT 005 040 あなたを告訴して下着を取ろうとする者には、上着もやりなさい。 040 MAT 005 041 あなたに一ミリオン行けと強いるような者とは、いっしょに二ミリオン行きなさい。 040 MAT 005 042 求める者には与え、借りようとする者は断わらないようにしなさい。 040 MAT 005 043 『自分の隣人を愛し、自分の敵を憎め。』と言われたのを、あなたがたは聞いています。 040 MAT 005 044 しかし、わたしはあなたがたに言います。自分の敵を愛し、迫害する者のために祈りなさい。 040 MAT 005 045 それでこそ、天におられるあなたがたの父の子どもになれるのです。天の父は、悪い人にも良い人にも太陽を上らせ、正しい人にも正しくない人にも雨を降らせてくださるからです。 040 MAT 005 046 自分を愛してくれる者を愛したからといって、何の報いが受けられるでしょう。取税人でも、同じことをしているではありませんか。 040 MAT 005 047 また、自分の兄弟にだけあいさつしたからといって、どれだけまさったことをしたのでしょう。異邦人でも同じことをするではありませんか。 040 MAT 005 048 だから、あなたがたは、天の父が完全なように、完全でありなさい。 040 MAT 006 001 人に見せるために人前で善行をしないように気をつけなさい。そうでないと、天におられるあなたがたの父から、報いが受けられません。 040 MAT 006 002 だから、施しをするときには、人にほめられたくて会堂や通りで施しをする偽善者たちのように、自分の前でラッパを吹いてはいけません。まことに、あなたがたに告げます。彼らはすでに自分の報いを受け取っているのです。 040 MAT 006 003 あなたは、施しをするとき、右の手のしていることを左の手に知られないようにしなさい。 040 MAT 006 004 あなたの施しが隠れているためです。そうすれば、隠れた所で見ておられるあなたの父が、あなたに報いてくださいます。 040 MAT 006 005 また、祈るときには、偽善者たちのようであってはいけません。彼らは、人に見られたくて会堂や通りの四つ角に立って祈るのが好きだからです。まことに、あなたがたに告げます。彼らはすでに自分の報いを受け取っているのです。 040 MAT 006 006 あなたは、祈るときには自分の奥まった部屋にはいりなさい。そして、戸をしめて、隠れた所におられるあなたの父に祈りなさい。そうすれば、隠れた所で見ておられるあなたの父が、あなたに報いてくださいます。 040 MAT 006 007 また、祈るとき、異邦人のように同じことばを、ただくり返してはいけません。彼らはことば数が多ければ聞かれると思っているのです。 040 MAT 006 008 だから、彼らのまねをしてはいけません。あなたがたの父なる神は、あなたがたがお願いする先に、あなたがたに必要なものを知っておられるからです。 040 MAT 006 009 だから、こう祈りなさい。 『天にいます私たちの父よ。 御名があがめられますように。 040 MAT 006 010 御国が来ますように。 みこころが天で行なわれるように地でも行なわれますように。 040 MAT 006 011 私たちの日ごとの糧をきょうもお与えください。 040 MAT 006 012 私たちの負いめをお赦しください。 私たちも、私たちに負いめのある人たちを赦しました。 040 MAT 006 013 私たちを試みに会わせないで、悪からお救いください。』[国と力と栄えは、とこしえにあなたのものだからです。アーメン。] 040 MAT 006 014 もし人の罪を赦すなら、あなたがたの天の父もあなたがたを赦してくださいます。 040 MAT 006 015 しかし、人を赦さないなら、あなたがたの父もあなたがたの罪をお赦しになりません。 040 MAT 006 016 断食するときには、偽善者たちのようにやつれた顔つきをしてはいけません。彼らは、断食していることが人に見えるようにと、その顔をやつすのです。まことに、あなたがたに告げます。彼らはすでに自分の報いを受け取っているのです。 040 MAT 006 017 しかし、あなたが断食するときには、自分の頭に油を塗り、顔を洗いなさい。 040 MAT 006 018 それは、断食していることが、人には見られないで、隠れた所におられるあなたの父に見られるためです。そうすれば、隠れた所で見ておられるあなたの父が報いてくださいます。 040 MAT 006 019 自分の宝を地上にたくわえるのはやめなさい。そこでは虫とさびで、きず物になり、また盗人が穴をあけて盗みます。 040 MAT 006 020 自分の宝は、天にたくわえなさい。そこでは、虫もさびもつかず、盗人が穴をあけて盗むこともありません。 040 MAT 006 021 あなたの宝のあるところに、あなたの心もあるからです。 040 MAT 006 022 からだのあかりは目です。それで、もしあなたの目が健全なら、あなたの全身が明るいが、 040 MAT 006 023 もし、目が悪ければ、あなたの全身が暗いでしょう。それなら、もしあなたのうちの光が暗ければ、その暗さはどんなでしょう。 040 MAT 006 024 だれも、ふたりの主人に仕えることはできません。一方を憎んで他方を愛したり、一方を重んじて他方を軽んじたりするからです。あなたがたは、神にも仕え、また富にも仕えるということはできません。 040 MAT 006 025 だから、わたしはあなたがたに言います。自分のいのちのことで、何を食べようか、何を飲もうかと心配したり、また、からだのことで、何を着ようかと心配したりしてはいけません。いのちは食べ物よりたいせつなもの、からだは着物よりたいせつなものではありませんか。 040 MAT 006 026 空の鳥を見なさい。種蒔きもせず、刈り入れもせず、倉に納めることもしません。けれども、あなたがたの天の父がこれを養っていてくださるのです。あなたがたは、鳥よりも、もっとすぐれたものではありませんか。 040 MAT 006 027 あなたがたのうちだれが、心配したからといって、自分のいのちを少しでも延ばすことができますか。 040 MAT 006 028 なぜ着物のことで心配するのですか。野のゆりがどうして育つのか、よくわきまえなさい。働きもせず、紡ぎもしません。 040 MAT 006 029 しかし、わたしはあなたがたに言います。栄華を窮めたソロモンでさえ、このような花の一つほどにも着飾ってはいませんでした。 040 MAT 006 030 きょうあっても、あすは炉に投げ込まれる野の草さえ、神はこれほどに装ってくださるのだから、ましてあなたがたに、よくしてくださらないわけがありましょうか。信仰の薄い人たち。 040 MAT 006 031 そういうわけだから、何を食べるか、何を飲むか、何を着るか、などと言って心配するのはやめなさい。 040 MAT 006 032 こういうものはみな、異邦人が切に求めているものなのです。しかし、あなたがたの天の父は、それがみなあなたがたに必要であることを知っておられます。 040 MAT 006 033 だから、神の国とその義とをまず第一に求めなさい。そうすれば、それに加えて、これらのものはすべて与えられます。 040 MAT 006 034 だから、あすのための心配は無用です。あすのことはあすが心配します。労苦はその日その日に、十分あります。 040 MAT 007 001 さばいてはいけません。さばかれないためです。 040 MAT 007 002 あなたがたがさばくとおりに、あなたがたもさばかれ、あなたがたが量るとおりに、あなたがたも量られるからです。 040 MAT 007 003 また、なぜあなたは、兄弟の目の中のちりに目をつけるが、自分の目の中の梁には気がつかないのですか。 040 MAT 007 004 兄弟に向かって、『あなたの目のちりを取らせてください。』などとどうして言うのですか。見なさい、自分の目には梁があるではありませんか。 040 MAT 007 005 偽善者たち。まず自分の目から梁を取りのけなさい。そうすれば、はっきり見えて、兄弟の目からも、ちりを取り除くことができます。 040 MAT 007 006 聖なるものを犬に与えてはいけません。また豚の前に、真珠を投げてはなりません。それを足で踏みにじり、向き直ってあなたがたを引き裂くでしょうから。 040 MAT 007 007 求めなさい。そうすれば与えられます。捜しなさい。そうすれば見つかります。たたきなさい。そうすれば開かれます。 040 MAT 007 008 だれであれ、求める者は受け、捜す者は見つけ出し、たたく者には開かれます。 040 MAT 007 009 あなたがたも、自分の子がパンを下さいと言うときに、だれが石を与えるでしょう。 040 MAT 007 010 また、子が魚を下さいと言うのに、だれが蛇を与えるでしょう。 040 MAT 007 011 してみると、あなたがたは、悪い者ではあっても、自分の子どもには良い物を与えることを知っているのです。とすれば、なおのこと、天におられるあなたがたの父が、どうして、求める者たちに良いものを下さらないことがありましょう。 040 MAT 007 012 それで、何事でも、自分にしてもらいたいことは、ほかの人にもそのようにしなさい。これが律法であり預言者です。 040 MAT 007 013 狭い門からはいりなさい。滅びに至る門は大きく、その道は広いからです。そして、そこからはいって行く者が多いのです。 040 MAT 007 014 いのちに至る門は小さく、その道は狭く、それを見いだす者はまれです。 040 MAT 007 015 にせ預言者たちに気をつけなさい。彼らは羊のなりをしてやって来るが、うちは貪欲な狼です。 040 MAT 007 016 あなたがたは、実によって彼らを見分けることができます。ぶどうは、いばらからは取れないし、いちじくは、あざみから取れるわけがないでしょう。 040 MAT 007 017 同様に、良い木はみな良い実を結ぶが、悪い木は悪い実を結びます。 040 MAT 007 018 良い木が悪い実をならせることはできないし、また、悪い木が良い実をならせることもできません。 040 MAT 007 019 良い実を結ばない木は、みな切り倒されて、火に投げ込まれます。 040 MAT 007 020 こういうわけで、あなたがたは、実によって彼らを見分けることができるのです。 040 MAT 007 021 わたしに向かって、『主よ、主よ。』と言う者がみな天の御国にはいるのではなく、天におられるわたしの父のみこころを行なう者がはいるのです。 040 MAT 007 022 その日には、大ぜいの者がわたしに言うでしょう。『主よ、主よ。私たちはあなたの名によって預言をし、あなたの名によって悪霊を追い出し、あなたの名によって奇蹟をたくさん行なったではありませんか。』 040 MAT 007 023 しかし、その時、わたしは彼らにこう宣告します。『わたしはあなたがたを全然知らない。不法をなす者ども。わたしから離れて行け。』 040 MAT 007 024 だから、わたしのこれらのことばを聞いてそれを行なう者はみな、岩の上に自分の家を建てた賢い人に比べることができます。 040 MAT 007 025 雨が降って洪水が押し寄せ、風が吹いてその家に打ちつけたが、それでも倒れませんでした。岩の上に建てられていたからです。 040 MAT 007 026 また、わたしのこれらのことばを聞いてそれを行なわない者はみな、砂の上に自分の家を建てた愚かな人に比べることができます。 040 MAT 007 027 雨が降って洪水が押し寄せ、風が吹いてその家に打ちつけると、倒れてしまいました。しかもそれはひどい倒れ方でした。」 040 MAT 007 028 イエスがこれらのことばを語り終えられると、群衆はその教えに驚いた。 040 MAT 007 029 というのは、イエスが、律法学者たちのようにではなく、権威ある者のように教えられたからである。 040 MAT 008 001 イエスが山から降りて来られると、多くの群衆がイエスに従った。 040 MAT 008 002 すると、ひとりのらい病人がみもとに来て、ひれ伏して言った。「主よ。お心一つで、私をきよめることがおできになります。」 040 MAT 008 003 イエスは手を伸ばして、彼にさわり、「わたしの心だ。きよくなれ。」と言われた。すると、すぐに彼のらい病はきよめられた。 040 MAT 008 004 イエスは彼に言われた。「気をつけて、だれにも話さないようにしなさい。ただ、人々へのあかしのために、行って、自分を祭司に見せなさい。そして、モーセの命じた供え物をささげなさい。」 040 MAT 008 005 イエスがカペナウムにはいられると、ひとりの百人隊長がみもとに来て、懇願して、 040 MAT 008 006 言った。「主よ。私のしもべが中風やみで、家に寝ていて、ひどく苦しんでおります。」 040 MAT 008 007 イエスは彼に言われた。「行って、直してあげよう。」 040 MAT 008 008 しかし、百人隊長は答えて言った。「主よ。あなたを私の屋根の下にお入れする資格は、私にはありません。ただ、おことばをいただかせてください。そうすれば、私のしもべは直りますから。 040 MAT 008 009 と申しますのは、私も権威の下にある者ですが、私自身の下にも兵士たちがいまして、そのひとりに『行け。』と言えば行きますし、別の者に『来い。』と言えば来ます。また、しもべに『これをせよ。』と言えば、そのとおりにいたします。」 040 MAT 008 010 イエスは、これを聞いて驚かれ、ついて来た人たちにこう言われた。「まことに、あなたがたに告げます。わたしはイスラエルのうちのだれにも、このような信仰を見たことがありません。 040 MAT 008 011 あなたがたに言いますが、たくさんの人が東からも西からも来て、天の御国で、アブラハム、イサク、ヤコブといっしょに食卓に着きます。 040 MAT 008 012 しかし、御国の子らは外の暗やみに放り出され、そこで泣いて歯ぎしりするのです。」 040 MAT 008 013 それから、イエスは百人隊長に言われた。「さあ行きなさい。あなたの信じたとおりになるように。」すると、ちょうどその時、そのしもべはいやされた。 040 MAT 008 014 それから、イエスは、ペテロの家に来られて、ペテロのしゅうとめが熱病で床に着いているのをご覧になった。 040 MAT 008 015 イエスが手にさわられると、熱がひき、彼女は起きてイエスをもてなした。 040 MAT 008 016 夕方になると、人々は悪霊につかれた者を大ぜい、みもとに連れて来た。そこで、イエスはみことばをもって霊どもを追い出し、また病気の人々をみなお直しになった。 040 MAT 008 017 これは、預言者イザヤを通して言われた事が成就するためであった。「彼が私たちのわずらいを身に引き受け、私たちの病を背負った。」 040 MAT 008 018 さて、イエスは群衆が自分の回りにいるのをご覧になると、向こう岸に行くための用意をお命じになった。 040 MAT 008 019 そこに、ひとりの律法学者が来てこう言った。「先生。私はあなたのおいでになる所なら、どこにでもついてまいります。」 040 MAT 008 020 すると、イエスは彼に言われた。「狐には穴があり、空の鳥には巣があるが、人の子には枕する所もありません。」 040 MAT 008 021 また、別のひとりの弟子がイエスにこう言った。「主よ。まず行って、私の父を葬ることを許してください。」 040 MAT 008 022 ところが、イエスは彼に言われた。「わたしについて来なさい。死人たちに彼らの中の死人たちを葬らせなさい。」 040 MAT 008 023 イエスが舟にお乗りになると、弟子たちも従った。 040 MAT 008 024 すると、見よ、湖に大暴風が起こって、舟は大波をかぶった。ところが、イエスは眠っておられた。 040 MAT 008 025 弟子たちはイエスのみもとに来て、イエスを起こして言った。「主よ。助けてください。私たちはおぼれそうです。」 040 MAT 008 026 イエスは言われた。「なぜこわがるのか、信仰の薄い者たちだ。」それから、起き上がって、風と湖をしかりつけられると、大なぎになった。 040 MAT 008 027 人々は驚いてこう言った。「風や湖までが言うことをきくとは、いったいこの方はどういう方なのだろう。」 040 MAT 008 028 それから、向こう岸のガダラ人の地にお着きになると、悪霊につかれた人がふたり墓から出て来て、イエスに出会った。彼らはひどく狂暴で、だれもその道を通れないほどであった。 040 MAT 008 029 すると、見よ、彼らはわめいて言った。「神の子よ。いったい私たちに何をしようというのです。まだその時ではないのに、もう私たちを苦しめに来られたのですか。」 040 MAT 008 030 ところで、そこからずっと離れた所に、たくさんの豚の群れが飼ってあった。 040 MAT 008 031 それで、悪霊どもはイエスに願ってこう言った。「もし私たちを追い出そうとされるのでしたら、どうか豚の群れの中にやってください。」 040 MAT 008 032 イエスは彼らに「行け。」と言われた。すると、彼らは出て行って豚にはいった。すると、見よ、その群れ全体がどっとがけから湖へ駆け降りて行って、水におぼれて死んだ。 040 MAT 008 033 飼っていた者たちは逃げ出して町に行き、悪霊につかれた人たちのことなどを残らず知らせた。 040 MAT 008 034 すると、見よ、町中の者がイエスに会いに出て来た。そして、イエスに会うと、どうかこの地方を立ち去ってくださいと願った。 040 MAT 009 001 イエスは舟に乗って湖を渡り、自分の町に帰られた。 040 MAT 009 002 すると、人々が中風の人を床に寝かせたままで、みもとに運んで来た。イエスは彼らの信仰を見て、中風の人に、「子よ。しっかりしなさい。あなたの罪は赦された。」と言われた。 040 MAT 009 003 すると、律法学者たちは、心の中で、「この人は神をけがしている。」と言った。 040 MAT 009 004 イエスは彼らの心の思いを知って言われた。「なぜ、心の中で悪いことを考えているのか。 040 MAT 009 005 『あなたの罪は赦された。』と言うのと、『起きて歩け。』と言うのと、どちらがやさしいか。 040 MAT 009 006 人の子が地上で罪を赦す権威を持っていることを、あなたがたに知らせるために。」こう言って、それから中風の人に、「起きなさい。寝床をたたんで、家に帰りなさい。」と言われた。 040 MAT 009 007 すると、彼は起きて家に帰った。 040 MAT 009 008 群衆はそれを見て恐ろしくなり、こんな権威を人にお与えになった神をあがめた。 040 MAT 009 009 イエスは、そこを去って道を通りながら、収税所にすわっているマタイという人をご覧になって、「わたしについて来なさい。」と言われた。すると彼は立ち上がって、イエスに従った。 040 MAT 009 010 イエスが家で食事の席に着いておられるとき、見よ、取税人や罪人が大ぜい来て、イエスやその弟子たちといっしょに食卓に着いていた。 040 MAT 009 011 すると、これを見たパリサイ人たちが、イエスの弟子たちに言った。「なぜ、あなたがたの先生は、取税人や罪人といっしょに食事をするのですか。」 040 MAT 009 012 イエスはこれを聞いて言われた。「医者を必要とするのは丈夫な者ではなく、病人です。 040 MAT 009 013 『わたしはあわれみは好むが、いけにえは好まない。』とはどういう意味か、行って学んで来なさい。わたしは正しい人を招くためではなく、罪人を招くために来たのです。」 040 MAT 009 014 するとまた、ヨハネの弟子たちが、イエスのところに来てこう言った。「私たちとパリサイ人は断食するのに、なぜ、あなたの弟子たちは断食しないのですか。」 040 MAT 009 015 イエスは彼らに言われた。「花婿につき添う友だちは、花婿がいっしょにいる間は、どうして悲しんだりできましょう。しかし、花婿が取り去られる時が来ます。そのときには断食します。 040 MAT 009 016 だれも、真新しい布切れで古い着物の継ぎをするようなことはしません。そんな継ぎ切れは着物を引き破って、破れがもっとひどくなるからです。 040 MAT 009 017 また、人は新しいぶどう酒を古い皮袋に入れるようなことはしません。そんなことをすれば、皮袋は裂けて、ぶどう酒が流れ出てしまい、皮袋もだめになってしまいます。新しいぶどう酒を新しい皮袋に入れれば、両方とも保ちます。」 040 MAT 009 018 イエスがこれらのことを話しておられると、見よ、ひとりの会堂管理者が来て、ひれ伏して言った。「私の娘がいま死にました。でも、おいでくださって、娘の上に御手を置いてやってください。そうすれば娘は生き返ります。」 040 MAT 009 019 イエスが立って彼について行かれると、弟子たちもついて行った。 040 MAT 009 020 すると、見よ。十二年の間長血をわずらっている女が、イエスのうしろに来て、その着物のふさにさわった。 040 MAT 009 021 「お着物にさわることでもできれば、きっと直る。」と心のうちで考えていたからである。 040 MAT 009 022 イエスは、振り向いて彼女を見て言われた。「娘よ。しっかりしなさい。あなたの信仰があなたを直したのです。」すると、女はその時から全く直った。 040 MAT 009 023 イエスはその管理者の家に来られて、笛吹く者たちや騒いでいる群衆を見て、 040 MAT 009 024 言われた。「あちらに行きなさい。その子は死んだのではない。眠っているのです。」すると、彼らはイエスをあざ笑った。 040 MAT 009 025 イエスは群衆を外に出してから、うちにおはいりになり、少女の手を取られた。すると少女は起き上がった。 040 MAT 009 026 このうわさはその地方全体に広まった。 040 MAT 009 027 イエスがそこを出て、道を通って行かれると、ふたりの盲人が大声で、「ダビデの子よ。私たちをあわれんでください。」と叫びながらついて来た。 040 MAT 009 028 家にはいられると、その盲人たちはみもとにやって来た。イエスが「わたしにそんなことができると信じるのか。」と言われると、彼らは「そうです。主よ。」と言った。 040 MAT 009 029 そこで、イエスは彼らの目にさわって、「あなたがたの信仰のとおりになれ。」と言われた。 040 MAT 009 030 すると、彼らの目があいた。イエスは彼らをきびしく戒めて、「決してだれにも知られないように気をつけなさい。」と言われた。 040 MAT 009 031 ところが、彼らは出て行って、イエスのことをその地方全体に言いふらした。 040 MAT 009 032 この人たちが出て行くと、見よ、悪霊につかれたおしが、みもとに連れて来られた。 040 MAT 009 033 悪霊が追い出されると、そのおしはものを言った。群衆は驚いて、「こんなことは、イスラエルでいまだかつて見たことがない。」と言った。 040 MAT 009 034 しかし、パリサイ人たちは、「彼は悪霊どものかしらを使って、悪霊どもを追い出しているのだ。」と言った。 040 MAT 009 035 それから、イエスは、すべての町や村を巡って、会堂で教え、御国の福音を宣べ伝え、あらゆる病気、あらゆるわずらいを直された。 040 MAT 009 036 また、群衆を見て、羊飼いのない羊のように弱り果てて倒れている彼らをかわいそうに思われた。 040 MAT 009 037 そのとき、弟子たちに言われた。「収穫は多いが、働き手が少ない。 040 MAT 009 038 だから、収穫の主に、収穫のために働き手を送ってくださるように祈りなさい。」 040 MAT 010 001 イエスは十二弟子を呼び寄せて、汚れた霊どもを制する権威をお授けになった。霊どもを追い出し、あらゆる病気、あらゆるわずらいを直すためであった。 040 MAT 010 002 さて、十二使徒の名は次のとおりである。まず、ペテロと呼ばれるシモンとその兄弟アンデレ、ゼベダイの子ヤコブとその兄弟ヨハネ、 040 MAT 010 003 ピリポとバルトロマイ、トマスと取税人マタイ、アルパヨの子ヤコブとタダイ、 040 MAT 010 004 熱心党員シモンとイエスを裏切ったイスカリオテ・ユダである。 040 MAT 010 005 イエスは、この十二人を遣わし、そのとき彼らにこう命じられた。「異邦人の道に行ってはいけません。サマリヤ人の町にはいってはいけません。 040 MAT 010 006 イスラエルの家の滅びた羊のところに行きなさい。 040 MAT 010 007 行って、『天の御国が近づいた。』と宣べ伝えなさい。 040 MAT 010 008 病人を直し、死人を生き返らせ、らい病人をきよめ、悪霊を追い出しなさい。あなたがたは、ただで受けたのだから、ただで与えなさい。 040 MAT 010 009 胴巻に金貨や銀貨や銅貨を入れてはいけません。 040 MAT 010 010 旅行用の袋も、二枚目の下着も、くつも、杖も持たずに行きなさい。働く者が食べ物を与えられるのは当然だからです。 040 MAT 010 011 どんな町や村にはいっても、そこでだれが適当な人かを調べて、そこを立ち去るまで、その人のところにとどまりなさい。 040 MAT 010 012 その家にはいるときには、平安を祈るあいさつをしなさい。 040 MAT 010 013 その家がそれにふさわしい家なら、その平安はきっとその家に来るし、もし、ふさわしい家でないなら、その平安はあなたがたのところに返って来ます。 040 MAT 010 014 もしだれも、あなたがたを受け入れず、あなたがたのことばに耳を傾けないなら、その家またはその町を出て行くときに、あなたがたの足のちりを払い落としなさい。 040 MAT 010 015 まことに、あなたがたに告げます。さばきの日には、ソドムとゴモラの地でも、その町よりはまだ罰が軽いのです。 040 MAT 010 016 いいですか。わたしが、あなたがたを遣わすのは、狼の中に羊を送り出すようなものです。ですから、蛇のようにさとく、鳩のようにすなおでありなさい。 040 MAT 010 017 人々には用心しなさい。彼らはあなたがたを議会に引き渡し、会堂でむち打ちますから。 040 MAT 010 018 また、あなたがたは、わたしのゆえに、総督たちや王たちの前に連れて行かれます。それは、彼らと異邦人たちにあかしをするためです。 040 MAT 010 019 人々があなたがたを引き渡したとき、どのように話そうか、何を話そうかと心配するには及びません。話すべきことは、そのとき示されるからです。 040 MAT 010 020 というのは、話すのはあなたがたではなく、あなたがたのうちにあって話されるあなたがたの父の御霊だからです。 040 MAT 010 021 兄弟は兄弟を死に渡し、父は子を死に渡し、子どもたちは両親に立ち逆らって、彼らを死なせます。 040 MAT 010 022 また、わたしの名のために、あなたがたはすべての人々に憎まれます。しかし、最後まで耐え忍ぶ者は救われます。 040 MAT 010 023 彼らがこの町であなたがたを迫害するなら、次の町にのがれなさい。というわけは、確かなことをあなたがたに告げるのですが、人の子が来るときまでに、あなたがたは決してイスラエルの町々を巡り尽くせないからです。 040 MAT 010 024 弟子はその師にまさらず、しもべはその主人にまさりません。 040 MAT 010 025 弟子がその師のようになれたら十分だし、しもべがその主人のようになれたら十分です。彼らは家長をベルゼブルと呼ぶぐらいですから、ましてその家族の者のことは、何と呼ぶでしょう。 040 MAT 010 026 だから、彼らを恐れてはいけません。おおわれているもので、現わされないものはなく、隠されているもので知られずに済むものはありません。 040 MAT 010 027 わたしが暗やみであなたがたに話すことを明るみで言いなさい。また、あなたがたが耳もとで聞くことを屋上で言い広めなさい。 040 MAT 010 028 からだを殺しても、たましいを殺せない人たちなどを恐れてはなりません。そんなものより、たましいもからだも、ともにゲヘナで滅ぼすことのできる方を恐れなさい。 040 MAT 010 029 二羽の雀は一アサリオンで売っているでしょう。しかし、そんな雀の一羽でも、あなたがたの父のお許しなしには地に落ちることはありません。 040 MAT 010 030 また、あなたがたの頭の毛さえも、みな数えられています。 040 MAT 010 031 だから恐れることはありません。あなたがたは、たくさんの雀よりもすぐれた者です。 040 MAT 010 032 ですから、わたしを人の前で認める者はみな、わたしも、天におられるわたしの父の前でその人を認めます。 040 MAT 010 033 しかし、人の前でわたしを知らないと言うような者なら、わたしも天におられるわたしの父の前で、そんな者は知らないと言います。 040 MAT 010 034 わたしが来たのは地に平和をもたらすためだと思ってはなりません。わたしは、平和をもたらすために来たのではなく、剣をもたらすために来たのです。 040 MAT 010 035 なぜなら、わたしは人をその父に、娘をその母に、嫁をそのしゅうとめに逆らわせるために来たからです。 040 MAT 010 036 さらに、家族の者がその人の敵となります。 040 MAT 010 037 わたしよりも父や母を愛する者は、わたしにふさわしい者ではありません。また、わたしよりも息子や娘を愛する者は、わたしにふさわしい者ではありません。 040 MAT 010 038 自分の十字架を負ってわたしについて来ない者は、わたしにふさわしい者ではありません。 040 MAT 010 039 自分のいのちを自分のものとした者はそれを失い、わたしのために自分のいのちを失った者は、それを自分のものとします。 040 MAT 010 040 あなたがたを受け入れる者は、わたしを受け入れるのです。また、わたしを受け入れる者は、わたしを遣わした方を受け入れるのです。 040 MAT 010 041 預言者を預言者だというので受け入れる者は、預言者の受ける報いを受けます。また、義人を義人だということで受け入れる者は、義人の受ける報いを受けます。 040 MAT 010 042 わたしの弟子だというので、この小さい者たちのひとりに、水一杯でも飲ませるなら、まことに、あなたがたに告げます。その人は決して報いに漏れることはありません。」 040 MAT 011 001 イエスはこのように十二弟子に注意を与え、それを終えられると、彼らの町々で教えたり宣べ伝えたりするため、そこを立ち去られた。 040 MAT 011 002 さて、獄中でキリストのみわざについて聞いたヨハネは、その弟子たちに託して、 040 MAT 011 003 イエスにこう言い送った。「おいでになるはずの方は、あなたですか。それとも、私たちは別の方を待つべきでしょうか。」 040 MAT 011 004 イエスは答えて、彼らに言われた。「あなたがたは行って、自分たちの聞いたり見たりしていることをヨハネに報告しなさい。 040 MAT 011 005 盲人が見、足なえが歩き、らい病人がきよめられ、つんぼの人が聞こえ、死人が生き返り、貧しい者には福音が宣べ伝えられているのです。 040 MAT 011 006 だれでも、わたしにつまずかない者は幸いです。」 040 MAT 011 007 この人たちが行ってしまうと、イエスは、ヨハネについて群衆に話しだされた。「あなたがたは、何を見に荒野に出て行ったのですか。風に揺れる葦ですか。 040 MAT 011 008 でなかったら、何を見に行ったのですか。柔らかい着物を着た人ですか。柔らかい着物を着た人なら王の宮殿にいます。 040 MAT 011 009 でなかったら、なぜ行ったのですか。預言者を見るためですか。そのとおり。だが、わたしが言いましょう。預言者よりもすぐれた者をです。 040 MAT 011 010 この人こそ、 『見よ、わたしは使いをあなたの前に遣わし、 あなたの道を、あなたの前に備えさせよう。』 と書かれているその人です。 040 MAT 011 011 まことに、あなたがたに告げます。女から生まれた者の中で、バプテスマのヨハネよりすぐれた人は出ませんでした。しかも、天の御国の一番小さい者でも、彼より偉大です。 040 MAT 011 012 バプテスマのヨハネの日以来今日まで、天の御国は激しく攻められています。そして、激しく攻める者たちがそれを奪い取っています。 040 MAT 011 013 ヨハネに至るまで、すべての預言者たちと律法とが預言をしたのです。 040 MAT 011 014 あなたがたが進んで受け入れるなら、実はこの人こそ、きたるべきエリヤなのです。 040 MAT 011 015 耳のある者は聞きなさい。 040 MAT 011 016 この時代は何にたとえたらよいでしょう。市場にすわっている子どもたちのようです。彼らは、ほかの子どもたちに呼びかけて、 040 MAT 011 017 こう言うのです。 『笛を吹いてやっても、君たちは踊らなかった。 弔いの歌を歌ってやっても、悲しまなかった。』 040 MAT 011 018 ヨハネが来て、食べも飲みもしないと、人々は『あれは悪霊につかれているのだ。』と言い、 040 MAT 011 019 人の子が来て食べたり飲んだりしていると、『あれ見よ。食いしんぼうの大酒飲み、取税人や罪人の仲間だ。』と言います。でも、知恵の正しいことは、その行ないが証明します。」 040 MAT 011 020 それから、イエスは、数々の力あるわざの行なわれた町々が悔い改めなかったので、責め始められた。 040 MAT 011 021 「ああコラジン。ああベツサイダ。おまえたちのうちで行なわれた力あるわざが、もしもツロとシドンで行なわれたのだったら、彼らはとうの昔に荒布をまとい、灰をかぶって悔い改めていたことだろう。 040 MAT 011 022 しかし、そのツロとシドンのほうが、おまえたちに言うが、さばきの日には、まだおまえたちよりは罰が軽いのだ。 040 MAT 011 023 カペナウム。どうしておまえが天に上げられることがありえよう。ハデスに落とされるのだ。おまえの中でなされた力あるわざが、もしもソドムでなされたのだったら、ソドムはきょうまで残っていたことだろう。 040 MAT 011 024 しかし、そのソドムの地のほうが、おまえたちに言うが、さばきの日には、まだおまえよりは罰が軽いのだ。」 040 MAT 011 025 そのとき、イエスはこう言われた。「天地の主であられる父よ。あなたをほめたたえます。これらのことを、賢い者や知恵のある者には隠して、幼子たちに現わしてくださいました。 040 MAT 011 026 そうです、父よ。これがみこころにかなったことでした。 040 MAT 011 027 すべてのものが、わたしの父から、わたしに渡されています。それで、父のほかには、子を知る者がなく、子と、子が父を知らせようと心に定めた人のほかは、だれも父を知る者がありません。 040 MAT 011 028 すべて、疲れた人、重荷を負っている人は、わたしのところに来なさい。わたしがあなたがたを休ませてあげます。 040 MAT 011 029 わたしは心優しく、へりくだっているから、あなたがたもわたしのくびきを負って、わたしから学びなさい。そうすればたましいに安らぎが来ます。 040 MAT 011 030 わたしのくびきは負いやすく、わたしの荷は軽いからです。」 040 MAT 012 001 そのころ、イエスは、安息日に麦畑を通られた。弟子たちはひもじくなったので、穂を摘んで食べ始めた。 040 MAT 012 002 すると、パリサイ人たちがそれを見つけて、イエスに言った。「ご覧なさい。あなたの弟子たちが、安息日にしてはならないことをしています。」 040 MAT 012 003 しかし、イエスは言われた。「ダビデとその連れの者たちが、ひもじかったときに、ダビデが何をしたか、読まなかったのですか。 040 MAT 012 004 神の家にはいって、祭司のほかは自分も供の者たちも食べてはならない供えのパンを食べました。 040 MAT 012 005 また、安息日に宮にいる祭司たちは安息日の神聖を冒しても罪にならないということを、律法で読んだことはないのですか。 040 MAT 012 006 あなたがたに言いますが、ここに宮より大きな者がいるのです。 040 MAT 012 007 『わたしはあわれみは好むが、いけにえは好まない。』ということがどういう意味かを知っていたら、あなたがたは、罪のない者たちを罪に定めはしなかったでしょう。 040 MAT 012 008 人の子は安息日の主です。」 040 MAT 012 009 イエスはそこを去って、会堂にはいられた。 040 MAT 012 010 そこに片手のなえた人がいた。そこで、彼らはイエスに質問して、「安息日にいやすことは正しいことでしょうか。」と言った。これはイエスを訴えるためであった。 040 MAT 012 011 イエスは彼らに言われた。「あなたがたのうち、だれかが一匹の羊を持っていて、もしその羊が安息日に穴に落ちたら、それを引き上げてやらないでしょうか。 040 MAT 012 012 人間は羊より、はるかに値うちのあるものでしょう。それなら、安息日に良いことをすることは、正しいのです。」 040 MAT 012 013 それから、イエスはその人に、「手を伸ばしなさい。」と言われた。彼が手を伸ばすと、手は直って、もう一方の手と同じようになった。 040 MAT 012 014 パリサイ人は出て行って、どのようにしてイエスを滅ぼそうかと相談した。 040 MAT 012 015 イエスはそれを知って、そこを立ち去られた。すると多くの人がついて来たので、彼らをみないやし、 040 MAT 012 016 そして、ご自分のことを人々に知らせないようにと、彼らを戒められた。 040 MAT 012 017 これは、預言者イザヤを通して言われた事が成就するためであった。 040 MAT 012 018 「これぞ、わたしの選んだわたしのしもべ、 わたしの心の喜ぶわたしの愛する者。 わたしは彼の上にわたしの霊を置き、 彼は異邦人にさばきを宣べる。 040 MAT 012 019 争うこともなく、叫ぶこともせず、 大路でその声を聞く者もない。 040 MAT 012 020 彼はいたんだ葦を折ることもなく、 くすぶる燈心を消すこともない、 正義を勝利に導くまでは。 040 MAT 012 021 異邦人は彼の名に望みをかける。」 040 MAT 012 022 そのとき、悪霊につかれた、目も見えず、口もきけない人が連れて来られた。イエスが彼をいやされたので、そのおしはものを言い、目も見えるようになった。 040 MAT 012 023 群衆はみな驚いて言った。「この人は、ダビデの子なのだろうか。」 040 MAT 012 024 これを聞いたパリサイ人は言った。「この人は、ただ悪霊どものかしらベルゼブルの力で、悪霊どもを追い出しているだけだ。」 040 MAT 012 025 イエスは彼らの思いを知ってこう言われた。「どんな国でも、内輪もめして争えば荒れすたれ、どんな町でも家でも、内輪もめして争えば立ち行きません。 040 MAT 012 026 もし、サタンがサタンを追い出していて仲間割れしたのだったら、どうしてその国は立ち行くでしょう。 040 MAT 012 027 また、もしわたしがベルゼブルによって悪霊どもを追い出しているのなら、あなたがたの子らはだれによって追い出すのですか。だから、あなたがたの子らが、あなたがたをさばく人となるのです。 040 MAT 012 028 しかし、わたしが神の御霊によって悪霊どもを追い出しているのなら、もう神の国はあなたがたのところに来ているのです。 040 MAT 012 029 強い人の家にはいって家財を奪い取ろうとするなら、まずその人を縛ってしまわないで、どうしてそのようなことができましょうか。そのようにして初めて、その家を略奪することもできるのです。 040 MAT 012 030 わたしの味方でない者はわたしに逆らう者であり、わたしとともに集めない者は散らす者です。 040 MAT 012 031 だから、わたしはあなたがたに言います。人はどんな罪も冒涜も赦していただけます。しかし、聖霊に逆らう冒涜は赦されません。 040 MAT 012 032 また、人の子に逆らうことばを口にする者でも、赦されます。しかし、聖霊に逆らうことを言う者は、だれであっても、この世であろうと次に来る世であろうと、赦されません。 040 MAT 012 033 木が良ければ、その実も良いとし、木が悪ければその実も悪いとしなさい。木のよしあしはその実によって知られるからです。 040 MAT 012 034 まむしのすえたち。おまえたち悪い者に、どうして良いことが言えましょう。心に満ちていることを口が話すのです。 040 MAT 012 035 良い人は、良い倉から良い物を取り出し、悪い人は、悪い倉から悪い物を取り出すものです。 040 MAT 012 036 わたしはあなたがたに、こう言いましょう。人はその口にするあらゆるむだなことばについて、さばきの日には言い開きをしなければなりません。 040 MAT 012 037 あなたが正しいとされるのは、あなたのことばによるのであり、罪に定められるのも、あなたのことばによるのです。」 040 MAT 012 038 そのとき、律法学者、パリサイ人たちのうちのある者がイエスに答えて言った。「先生。私たちは、あなたからしるしを見せていただきたいのです。」 040 MAT 012 039 しかし、イエスは答えて言われた。「悪い、姦淫の時代はしるしを求めています。だが預言者ヨナのしるしのほかには、しるしは与えられません。 040 MAT 012 040 ヨナは三日三晩大魚の腹の中にいましたが、同様に、人の子も三日三晩、地の中にいるからです。 040 MAT 012 041 ニネベの人々が、さばきのときに、今の時代の人々とともに立って、この人々を罪に定めます。なぜなら、ニネベの人々はヨナの説教で悔い改めたからです。しかし、見なさい。ここにヨナよりもまさった者がいるのです。 040 MAT 012 042 南の女王が、さばきのときに、今の時代の人々とともに立って、この人々を罪に定めます。なぜなら、彼女はソロモンの知恵を聞くために地の果てから来たからです。しかし、見なさい。ここにソロモンよりもまさった者がいるのです。 040 MAT 012 043 汚れた霊が人から出て行って、水のない地をさまよいながら休み場を捜しますが、見つかりません。 040 MAT 012 044 そこで、『出て来た自分の家に帰ろう。』と言って、帰って見ると、家はあいていて、掃除してきちんとかたづいていました。 040 MAT 012 045 そこで、出かけて行って、自分よりも悪いほかの霊を七つ連れて来て、みなはいり込んでそこに住みつくのです。そうなると、その人の後の状態は、初めよりもさらに悪くなります。邪悪なこの時代もまた、そういうことになるのです。」 040 MAT 012 046 イエスがまだ群衆に話しておられるときに、イエスの母と兄弟たちが、イエスに何か話そうとして、外に立っていた。 040 MAT 012 047 すると、だれかが言った。「ご覧なさい。あなたのおかあさんと兄弟たちが、あなたに話そうとして外に立っています。」 040 MAT 012 048 しかし、イエスはそう言っている人に答えて言われた。「わたしの母とはだれですか。また、わたしの兄弟たちとはだれですか。」 040 MAT 012 049 それから、イエスは手を弟子たちのほうに差し伸べて言われた。「見なさい。わたしの母、わたしの兄弟たちです。 040 MAT 012 050 天におられるわたしの父のみこころを行なう者はだれでも、わたしの兄弟、姉妹、また母なのです。」 040 MAT 013 001 その日、イエスは家を出て、湖のほとりにすわっておられた。 040 MAT 013 002 すると、大ぜいの群衆がみもとに集まったので、イエスは舟に移って腰をおろされた。それで群衆はみな浜に立っていた。 040 MAT 013 003 イエスは多くのことを、彼らにたとえで話して聞かされた。 「種を蒔く人が種蒔きに出かけた。 040 MAT 013 004 蒔いているとき、道ばたに落ちた種があった。すると鳥が来て食べてしまった。 040 MAT 013 005 また、別の種が土の薄い岩地に落ちた。土が深くなかったので、すぐに芽を出した。 040 MAT 013 006 しかし、日が上ると、焼けて、根がないために枯れてしまった。 040 MAT 013 007 また、別の種はいばらの中に落ちたが、いばらが伸びて、ふさいでしまった。 040 MAT 013 008 別の種は良い地に落ちて、あるものは百倍、あるものは六十倍、あるものは三十倍の実を結んだ。 040 MAT 013 009 耳のある者は聞きなさい。」 040 MAT 013 010 すると、弟子たちが近寄って来て、イエスに言った。「なぜ、彼らにたとえでお話しになったのですか。」 040 MAT 013 011 イエスは答えて言われた。「あなたがたには、天の御国の奥義を知ることが許されているが、彼らには許されていません。 040 MAT 013 012 というのは、持っている者はさらに与えられて豊かになり、持たない者は持っているものまでも取り上げられてしまうからです。 040 MAT 013 013 わたしが彼らにたとえで話すのは、彼らは見てはいるが見ず、聞いてはいるが聞かず、また、悟ることもしないからです。 040 MAT 013 014 こうしてイザヤの告げた預言が彼らの上に実現したのです。 『あなたがたは確かに聞きはするが、 決して悟らない。 確かに見てはいるが、決してわからない。 040 MAT 013 015 この民の心は鈍くなり、 その耳は遠く、 目はつぶっているからである。 それは、彼らがその目で見、その耳で聞き、 その心で悟って立ち返り、 わたしにいやされることのないためである。』 040 MAT 013 016 しかし、あなたがたの目は見ているから幸いです。また、あなたがたの耳は聞いているから幸いです。 040 MAT 013 017 まことに、あなたがたに告げます。多くの預言者や義人たちが、あなたがたの見ているものを見たいと、切に願ったのに見られず、あなたがたの聞いていることを聞きたいと、切に願ったのに聞けなかったのです。 040 MAT 013 018 ですから、種蒔きのたとえを聞きなさい。 040 MAT 013 019 御国のことばを聞いても悟らないと、悪い者が来て、その人の心に蒔かれたものを奪って行きます。道ばたに蒔かれるとは、このような人のことです。 040 MAT 013 020 また岩地に蒔かれるとは、みことばを聞くと、すぐに喜んで受け入れる人のことです。 040 MAT 013 021 しかし、自分のうちに根がないため、しばらくの間そうするだけで、みことばのために困難や迫害が起こると、すぐにつまずいてしまいます。 040 MAT 013 022 また、いばらの中に蒔かれるとは、みことばを聞くが、この世の心づかいと富の惑わしとがみことばをふさぐため、実を結ばない人のことです。 040 MAT 013 023 ところが、良い地に蒔かれるとは、みことばを聞いてそれを悟る人のことで、その人はほんとうに実を結び、あるものは百倍、あるものは六十倍、あるものは三十倍の実を結びます。」 040 MAT 013 024 イエスは、また別のたとえを彼らに示して言われた。 「天の御国は、こういう人にたとえることができます。ある人が自分の畑に良い種を蒔いた。 040 MAT 013 025 ところが、人々の眠っている間に、彼の敵が来て麦の中に毒麦を蒔いて行った。 040 MAT 013 026 麦が芽ばえ、やがて実ったとき、毒麦も現われた。 040 MAT 013 027 それで、その家の主人のしもべたちが来て言った。『ご主人。畑には良い麦を蒔かれたのではありませんか。どうして毒麦が出たのでしょう。』 040 MAT 013 028 主人は言った。『敵のやったことです。』すると、しもべたちは言った。『では、私たちが行ってそれを抜き集めましょうか。』 040 MAT 013 029 だが、主人は言った。『いやいや。毒麦を抜き集めるうちに、麦もいっしょに抜き取るかもしれない。 040 MAT 013 030 だから、収穫まで、両方とも育つままにしておきなさい。収穫の時期になったら、私は刈る人たちに、まず、毒麦を集め、焼くために束にしなさい。麦のほうは、集めて私の倉に納めなさい、と言いましょう。』」 040 MAT 013 031 イエスは、また別のたとえを彼らに示して言われた。「天の御国は、からし種のようなものです。それを取って、畑に蒔くと、 040 MAT 013 032 どんな種よりも小さいのですが、生長すると、どの野菜よりも大きくなり、空の鳥が来て、その枝に巣を作るほどの木になります。」 040 MAT 013 033 イエスは、また別のたとえを話された。「天の御国は、パン種のようなものです。女が、パン種を取って、三サトンの粉の中に入れると、全体がふくらんで来ます。」 040 MAT 013 034 イエスは、これらのことをみな、たとえで群衆に話され、たとえを使わずには何もお話しにならなかった。 040 MAT 013 035 それは、預言者を通して言われた事が成就するためであった。 「わたしはたとえ話をもって口を開き、 世の初めから隠されていることどもを物語ろう。」 040 MAT 013 036 それから、イエスは群衆と別れて家にはいられた。すると、弟子たちがみもとに来て、「畑の毒麦のたとえを説明してください。」と言った。 040 MAT 013 037 イエスは答えてこう言われた。「良い種を蒔く者は人の子です。 040 MAT 013 038 畑はこの世界のことで、良い種とは御国の子どもたち、毒麦とは悪い者の子どもたちのことです。 040 MAT 013 039 毒麦を蒔いた敵は悪魔であり、収穫とはこの世の終わりのことです。そして、刈り手とは御使いたちのことです。 040 MAT 013 040 ですから、毒麦が集められて火で焼かれるように、この世の終わりにもそのようになります。 040 MAT 013 041 人の子はその御使いたちを遣わします。彼らは、つまずきを与える者や不法を行なう者たちをみな、御国から取り集めて、 040 MAT 013 042 火の燃える炉に投げ込みます。彼らはそこで泣いて歯ぎしりするのです。 040 MAT 013 043 そのとき、正しい者たちは、天の父の御国で太陽のように輝きます。耳のある者は聞きなさい。 040 MAT 013 044 天の御国は、畑に隠された宝のようなものです。人はその宝を見つけると、それを隠しておいて、大喜びで帰り、持ち物を全部売り払ってその畑を買います。 040 MAT 013 045 また、天の御国は、良い真珠を捜している商人のようなものです。 040 MAT 013 046 すばらしい値うちの真珠を一つ見つけた者は、行って持ち物を全部売り払ってそれを買ってしまいます。 040 MAT 013 047 また、天の御国は、海におろしてあらゆる種類の魚を集める地引き網のようなものです。 040 MAT 013 048 網がいっぱいになると岸に引き上げ、すわり込んで、良いものは器に入れ、悪いものは捨てるのです。 040 MAT 013 049 この世の終わりにもそのようになります。御使いたちが来て、正しい者の中から悪い者をえり分け、 040 MAT 013 050 火の燃える炉に投げ込みます。彼らはそこで泣いて歯ぎしりするのです。 040 MAT 013 051 あなたがたは、これらのことがみなわかりましたか。」彼らは「はい。」とイエスに言った。 040 MAT 013 052 そこで、イエスは言われた。「だから、天の御国の弟子となった学者はみな、自分の倉から新しい物でも古い物でも取り出す一家の主人のようなものです。」 040 MAT 013 053 これらのたとえを話し終えると、イエスはそこを去られた。 040 MAT 013 054 それから、ご自分の郷里に行って、会堂で人々を教え始められた。すると、彼らは驚いて言った。「この人は、こんな知恵と不思議な力をどこで得たのでしょう。 040 MAT 013 055 この人は大工の息子ではありませんか。彼の母親はマリヤで、彼の兄弟は、ヤコブ、ヨセフ、シモン、ユダではありませんか。 040 MAT 013 056 妹たちもみな私たちといっしょにいるではありませんか。とすると、いったいこの人は、これらのものをどこから得たのでしょう。」 040 MAT 013 057 こうして、彼らはイエスにつまずいた。しかし、イエスは彼らに言われた。「預言者が尊敬されないのは、自分の郷里、家族の間だけです。」 040 MAT 013 058 そして、イエスは、彼らの不信仰のゆえに、そこでは多くの奇蹟をなさらなかった。 040 MAT 014 001 そのころ、国主ヘロデは、イエスのうわさを聞いて、 040 MAT 014 002 侍従たちに言った。「あれはバプテスマのヨハネだ。ヨハネが死人の中からよみがえったのだ。だから、あんな力が彼のうちに働いているのだ。」 040 MAT 014 003 実は、このヘロデは、自分の兄弟ピリポの妻ヘロデヤのことで、ヨハネを捕えて縛り、牢に入れたのであった。 040 MAT 014 004 それは、ヨハネが彼に、「あなたが彼女をめとるのは不法です。」と言い張ったからである。 040 MAT 014 005 ヘロデはヨハネを殺したかったが、群衆を恐れた。というのは、彼らはヨハネを預言者と認めていたからである。 040 MAT 014 006 たまたまヘロデの誕生祝いがあって、ヘロデヤの娘がみなの前で踊りを踊ってヘロデを喜ばせた。 040 MAT 014 007 それで、彼は、その娘に、願う物は何でも必ず上げると、誓って堅い約束をした。 040 MAT 014 008 ところが、娘は母親にそそのかされて、こう言った。「今ここに、バプテスマのヨハネの首を盆に載せて私に下さい。」 040 MAT 014 009 王は心を痛めたが、自分の誓いもあり、また列席の人々の手前もあって、与えるように命令した。 040 MAT 014 010 彼は人をやって、牢の中でヨハネの首をはねさせた。 040 MAT 014 011 そして、その首は盆に載せて運ばれ、少女に与えられたので、少女はそれを母親のところに持って行った。 040 MAT 014 012 それから、ヨハネの弟子たちがやって来て、死体を引き取って葬った。そして、イエスのところに行って報告した。 040 MAT 014 013 イエスはこのことを聞かれると、舟でそこを去り、自分だけで寂しい所に行かれた。すると、群衆がそれと聞いて、町々から、歩いてイエスのあとを追った。 040 MAT 014 014 イエスは舟から上がられると、多くの群衆を見られ、彼らを深くあわれんで、彼らの病気を直された。 040 MAT 014 015 夕方になったので、弟子たちはイエスのところに来て言った。「ここは寂しい所ですし、時刻ももう回っています。ですから群衆を解散させてください。そして村に行ってめいめいで食物を買うようにさせてください。」 040 MAT 014 016 しかし、イエスは言われた。「彼らが出かけて行く必要はありません。あなたがたで、あの人たちに何か食べる物を上げなさい。」 040 MAT 014 017 しかし、弟子たちはイエスに言った。「ここには、パンが五つと魚が二匹よりほかありません。」 040 MAT 014 018 すると、イエスは言われた。「それを、ここに持って来なさい。」 040 MAT 014 019 そしてイエスは、群衆に命じて草の上にすわらせ、五つのパンと二匹の魚を取り、天を見上げて、それらを祝福し、パンを裂いてそれを弟子たちに与えられたので、弟子たちは群衆に配った。 040 MAT 014 020 人々はみな、食べて満腹した。そして、パン切れの余りを取り集めると、十二のかごにいっぱいあった。 040 MAT 014 021 食べた者は、女と子どもを除いて、男五千人ほどであった。 040 MAT 014 022 それからすぐ、イエスは弟子たちを強いて舟に乗り込ませて、自分より先に向こう岸へ行かせ、その間に群衆を帰してしまわれた。 040 MAT 014 023 群衆を帰したあとで、祈るために、ひとりで山に登られた。夕方になったが、まだそこに、ひとりでおられた。 040 MAT 014 024 しかし、舟は、陸からもう何キロメートルも離れていたが、風が向かい風なので、波に悩まされていた。 040 MAT 014 025 すると、夜中の三時ごろ、イエスは湖の上を歩いて、彼らのところに行かれた。 040 MAT 014 026 弟子たちは、イエスが湖の上を歩いておられるのを見て、「あれは幽霊だ。」と言って、おびえてしまい、恐ろしさのあまり、叫び声を上げた。 040 MAT 014 027 しかし、イエスはすぐに彼らに話しかけ、「しっかりしなさい。わたしだ。恐れることはない。」と言われた。 040 MAT 014 028 すると、ペテロが答えて言った。「主よ。もし、あなたでしたら、私に、水の上を歩いてここまで来い、とお命じになってください。」 040 MAT 014 029 イエスは「来なさい。」と言われた。そこで、ペテロは舟から出て、水の上を歩いてイエスのほうに行った。 040 MAT 014 030 ところが、風を見て、こわくなり、沈みかけたので叫び出し、「主よ。助けてください。」と言った。 040 MAT 014 031 そこで、イエスはすぐに手を伸ばして、彼をつかんで言われた。「信仰の薄い人だな。なぜ疑うのか。」 040 MAT 014 032 そして、ふたりが舟に乗り移ると、風がやんだ。 040 MAT 014 033 そこで、舟の中にいた者たちは、イエスを拝んで、「確かにあなたは神の子です。」と言った。 040 MAT 014 034 彼らは湖を渡ってゲネサレの地に着いた。 040 MAT 014 035 すると、その地の人々は、イエスと気がついて、付近の地域にくまなく知らせ、病人という病人をみな、みもとに連れて来た。 040 MAT 014 036 そして、せめて彼らに、着物のふさにでもさわらせてやってくださいと、イエスにお願いした。そして、さわった人々はみな、いやされた。 040 MAT 015 001 そのころ、パリサイ人や律法学者たちが、エルサレムからイエスのところに来て、言った。 040 MAT 015 002 「あなたの弟子たちは、なぜ昔の先祖たちの言い伝えを犯すのですか。パンを食べるときに手を洗っていないではありませんか。」 040 MAT 015 003 そこで、イエスは彼らに答えて言われた。「なぜ、あなたがたも、自分たちの言い伝えのために神の戒めを犯すのですか。 040 MAT 015 004 神は『あなたの父と母を敬え。』また『父や母をののしる者は、死刑に処せられる。』と言われたのです。 040 MAT 015 005 それなのに、あなたがたは、『だれでも、父や母に向かって、私からあなたのために差し上げられる物は、供え物になりましたと言う者は、 040 MAT 015 006 その物をもって父や母を尊んではならない。』と言っています。こうしてあなたがたは、自分たちの言い伝えのために、神のことばを無にしてしまいました。 040 MAT 015 007 偽善者たち。イザヤはあなたがたについて預言しているが、まさにそのとおりです。 040 MAT 015 008 『この民は、口先ではわたしを敬うが、 その心は、わたしから遠く離れている。 040 MAT 015 009 彼らが、わたしを拝んでも、むだなことである。 人間の教えを、教えとして教えるだけだから。』」 040 MAT 015 010 イエスは群衆を呼び寄せて言われた。「聞いて悟りなさい。 040 MAT 015 011 口にはいる物は人を汚しません。しかし、口から出るもの、これが人を汚します。」 040 MAT 015 012 そのとき、弟子たちが、近寄って来て、イエスに言った。「パリサイ人が、みことばを聞いて、腹を立てたのをご存じですか。」 040 MAT 015 013 しかし、イエスは答えて言われた。「わたしの天の父がお植えにならなかった木は、みな根こそぎにされます。 040 MAT 015 014 彼らのことは放っておきなさい。彼らは盲人を手引きする盲人です。もし、盲人が盲人を手引きするなら、ふたりとも穴に落ち込むのです。」 040 MAT 015 015 そこで、ペテロは、イエスに答えて言った。「私たちに、そのたとえを説明してください。」 040 MAT 015 016 イエスは言われた。「あなたがたも、まだわからないのですか。 040 MAT 015 017 口にはいる物はみな、腹にはいり、かわやに捨てられることを知らないのですか。 040 MAT 015 018 しかし、口から出るものは、心から出て来ます。それは人を汚します。 040 MAT 015 019 悪い考え、殺人、姦淫、不品行、盗み、偽証、ののしりは心から出て来るからです。 040 MAT 015 020 これらは、人を汚すものです。しかし、洗わない手で食べることは人を汚しません。」 040 MAT 015 021 それから、イエスはそこを去って、ツロとシドンの地方に立ちのかれた。 040 MAT 015 022 すると、その地方のカナン人の女が出て来て、叫び声をあげて言った。「主よ。ダビデの子よ。私をあわれんでください。娘が、ひどく悪霊に取りつかれているのです。」 040 MAT 015 023 しかし、イエスは彼女に一言もお答えにならなかった。そこで、弟子たちはみもとに来て、「あの女を帰してやってください。叫びながらあとについて来るのです。」と言ってイエスに願った。 040 MAT 015 024 しかし、イエスは答えて、「わたしは、イスラエルの家の滅びた羊以外のところには遣わされていません。」と言われた。 040 MAT 015 025 しかし、その女は来て、イエスの前にひれ伏して、「主よ。私をお助けください。」と言った。 040 MAT 015 026 すると、イエスは答えて、「子どもたちのパンを取り上げて、小犬に投げてやるのはよくないことです。」と言われた。 040 MAT 015 027 しかし、女は言った。「主よ。そのとおりです。ただ、小犬でも主人の食卓から落ちるパンくずはいただきます。」 040 MAT 015 028 そのとき、イエスは彼女に答えて言われた。「ああ、あなたの信仰はりっぱです。その願いどおりになるように。」すると、彼女の娘はその時から直った。 040 MAT 015 029 それから、イエスはそこを去って、ガリラヤ湖の岸を行き、山に登って、そこにすわっておられた。 040 MAT 015 030 すると、大ぜいの人の群れが、足なえ、不具者、盲人、おしの人、そのほかたくさんの人をみもとに連れて来た。そして、彼らをイエスの足もとに置いたので、イエスは彼らをおいやしになった。 040 MAT 015 031 それで、群衆は、おしがものを言い、不具者が直り、足なえが歩き、盲人が見えるようになったのを見て、驚いた。そして、彼らはイスラエルの神をあがめた。 040 MAT 015 032 イエスは弟子たちを呼び寄せて言われた。「かわいそうに、この群衆はもう三日間もわたしといっしょにいて、食べる物を持っていないのです。彼らを空腹のままで帰らせたくありません。途中で動けなくなるといけないから。」 040 MAT 015 033 そこで弟子たちは言った。「このへんぴな所で、こんなに大ぜいの人に、十分食べさせるほどたくさんのパンが、どこから手にはいるでしょう。」 040 MAT 015 034 すると、イエスは彼らに言われた。「どれぐらいパンがありますか。」彼らは言った。「七つです。それに、小さい魚が少しあります。」 040 MAT 015 035 すると、イエスは群衆に、地面にすわるように命じられた。 040 MAT 015 036 それから、七つのパンと魚とを取り、感謝をささげてからそれを裂き、弟子たちに与えられた。そして、弟子たちは群衆に配った。 040 MAT 015 037 人々はみな、食べて満腹した。そして、パン切れの余りを取り集めると、七つのかごにいっぱいあった。 040 MAT 015 038 食べた者は、女と子どもを除いて、男四千人であった。 040 MAT 015 039 それから、イエスは群衆を解散させて舟に乗り、マガダン地方に行かれた。 040 MAT 016 001 パリサイ人やサドカイ人たちがみそばに寄って来て、イエスをためそうとして、天からのしるしを見せてくださいと頼んだ。 040 MAT 016 002 しかし、イエスは彼らに答えて言われた。「あなたがたは、夕方には、『夕焼けだから晴れる。』と言うし、 040 MAT 016 003 朝には、『朝焼けでどんよりしているから、きょうは荒れ模様だ。』と言う。そんなによく、空模様の見分け方を知っていながら、なぜ時のしるしを見分けることができないのですか。 040 MAT 016 004 悪い、姦淫の時代はしるしを求めています。しかし、ヨナのしるしのほかには、しるしは与えられません。」そう言って、イエスは彼らを残して去って行かれた。 040 MAT 016 005 弟子たちは向こう岸に行ったが、パンを持って来るのを忘れた。 040 MAT 016 006 イエスは彼らに言われた。「パリサイ人やサドカイ人たちのパン種には注意して気をつけなさい。」 040 MAT 016 007 すると、彼らは、「これは私たちがパンを持って来なかったからだ。」と言って、議論を始めた。 040 MAT 016 008 イエスはそれに気づいて言われた。「あなたがた、信仰の薄い人たち。パンがないからだなどと、なぜ論じ合っているのですか。 040 MAT 016 009 まだわからないのですか、覚えていないのですか。五つのパンを五千人に分けてあげて、なお幾かご集めましたか。 040 MAT 016 010 また、七つのパンを四千人に分けてあげて、なお幾かご集めましたか。 040 MAT 016 011 わたしの言ったのは、パンのことなどではないことが、どうしてあなたがたには、わからないのですか。ただ、パリサイ人やサドカイ人たちのパン種に気をつけることです。」 040 MAT 016 012 彼らはようやく、イエスが気をつけよと言われたのは、パン種のことではなくて、パリサイ人やサドカイ人たちの教えのことであることを悟った。 040 MAT 016 013 さて、ピリポ・カイザリヤの地方に行かれたとき、イエスは弟子たちに尋ねて言われた。「人々は人の子をだれだと言っていますか。」 040 MAT 016 014 彼らは言った。「バプテスマのヨハネだと言う人もあり、エリヤだと言う人もあります。またほかの人たちはエレミヤだとか、また預言者のひとりだとも言っています。」 040 MAT 016 015 イエスは彼らに言われた。「あなたがたは、わたしをだれだと言いますか。」 040 MAT 016 016 シモン・ペテロが答えて言った。「あなたは、生ける神の御子キリストです。」 040 MAT 016 017 するとイエスは、彼に答えて言われた。「バルヨナ・シモン。あなたは幸いです。このことをあなたに明らかに示したのは人間ではなく、天にいますわたしの父です。 040 MAT 016 018 ではわたしもあなたに言います。あなたはペテロです。わたしはこの岩の上にわたしの教会を建てます。ハデスの門もそれには打ち勝てません。 040 MAT 016 019 わたしは、あなたに天の御国のかぎを上げます。何でもあなたが地上でつなぐなら、それは天においてもつながれており、あなたが地上で解くなら、それは天においても解かれています。」 040 MAT 016 020 そのとき、イエスは、ご自分がキリストであることをだれにも言ってはならない、と弟子たちを戒められた。 040 MAT 016 021 その時から、イエス・キリストは、ご自分がエルサレムに行って、長老、祭司長、律法学者たちから多くの苦しみを受け、殺され、そして三日目によみがえらなければならないことを弟子たちに示し始められた。 040 MAT 016 022 するとペテロは、イエスを引き寄せて、いさめ始めた。「主よ。神の御恵みがありますように。そんなことが、あなたに起こるはずはありません。」 040 MAT 016 023 しかし、イエスは振り向いて、ペテロに言われた。「下がれ。サタン。あなたはわたしの邪魔をするものだ。あなたは神のことを思わないで、人のことを思っている。」 040 MAT 016 024 それから、イエスは弟子たちに言われた。「だれでもわたしについて来たいと思うなら、自分を捨て、自分の十字架を負い、そしてわたしについて来なさい。 040 MAT 016 025 いのちを救おうと思う者はそれを失い、わたしのためにいのちを失う者は、それを見いだすのです。 040 MAT 016 026 人は、たとい全世界を手に入れても、まことのいのちを損じたら、何の得がありましょう。そのいのちを買い戻すのには、人はいったい何を差し出せばよいでしょう。 040 MAT 016 027 人の子は父の栄光を帯びて、御使いたちとともに、やがて来ようとしているのです。その時には、おのおのその行ないに応じて報いをします。 040 MAT 016 028 まことに、あなたがたに告げます。ここに立っている人々の中には、人の子が御国とともに来るのを見るまでは、決して死を味わわない人々がいます。」 040 MAT 017 001 それから六日たって、イエスは、ペテロとヤコブとその兄弟ヨハネだけを連れて、高い山に導いて行かれた。 040 MAT 017 002 そして彼らの目の前で、御姿が変わり、御顔は太陽のように輝き、御衣は光のように白くなった。 040 MAT 017 003 しかも、モーセとエリヤが現われてイエスと話し合っているではないか。 040 MAT 017 004 すると、ペテロが口出ししてイエスに言った。「先生。私たちがここにいることは、すばらしいことです。もし、およろしければ、私が、ここに三つの幕屋を造ります。あなたのために一つ、モーセのために一つ、エリヤのために一つ。」 040 MAT 017 005 彼がまだ話している間に、見よ、光り輝く雲がその人々を包み、そして、雲の中から、「これは、わたしの愛する子、わたしはこれを喜ぶ。彼の言うことを聞きなさい。」という声がした。 040 MAT 017 006 弟子たちは、この声を聞くと、ひれ伏して非常にこわがった。 040 MAT 017 007 すると、イエスが来られて、彼らに手を触れ、「起きなさい。こわがることはない。」と言われた。 040 MAT 017 008 それで、彼らが目を上げて見ると、だれもいなくて、ただイエスおひとりだけであった。 040 MAT 017 009 彼らが山を降りるとき、イエスは彼らに、「人の子が死人の中からよみがえるときまでは、いま見た幻をだれにも話してはならない。」と命じられた。 040 MAT 017 010 そこで、弟子たちは、イエスに尋ねて言った。「すると、律法学者たちが、まずエリヤが来るはずだと言っているのは、どうしてでしょうか。」 040 MAT 017 011 イエスは答えて言われた。「エリヤが来て、すべてのことを立て直すのです。 040 MAT 017 012 しかし、わたしは言います。エリヤはもうすでに来たのです。ところが彼らはエリヤを認めようとせず、彼に対して好き勝手なことをしたのです。人の子もまた、彼らから同じように苦しめられようとしています。」 040 MAT 017 013 そのとき、弟子たちは、イエスがバプテスマのヨハネのことを言われたのだと気づいた。 040 MAT 017 014 彼らが群衆のところに来たとき、ひとりの人がイエスのそば近くに来て、御前にひざまずいて言った。 040 MAT 017 015 「主よ。私の息子をあわれんでください。てんかんで、たいへん苦しんでおります。何度も何度も火の中に落ちたり、水の中に落ちたりいたします。 040 MAT 017 016 そこで、その子をお弟子たちのところに連れて来たのですが、直すことができませんでした。」 040 MAT 017 017 イエスは答えて言われた。「ああ、不信仰な、曲がった今の世だ。いつまであなたがたといっしょにいなければならないのでしょう。いつまであなたがたにがまんしていなければならないのでしょう。その子をわたしのところに連れて来なさい。」 040 MAT 017 018 そして、イエスがその子をおしかりになると、悪霊は彼から出て行き、その子はその時から直った。 040 MAT 017 019 そのとき、弟子たちはそっとイエスのもとに来て、言った。「なぜ、私たちには悪霊を追い出せなかったのですか。」 040 MAT 017 020 イエスは言われた。「あなたがたの信仰が薄いからです。まことに、あなたがたに告げます。もし、からし種ほどの信仰があったら、この山に、『ここからあそこに移れ。』と言えば移るのです。どんなことでも、あなたがたにできないことはありません。 040 MAT 017 021 [ただし、この種のものは、祈りと断食によらなければ出て行きません。]」 040 MAT 017 022 彼らがガリラヤに集まっていたとき、イエスは彼らに言われた。「人の子は、いまに人々の手に渡されます。 040 MAT 017 023 そして彼らに殺されるが、三日目によみがえります。」すると、彼らは非常に悲しんだ。 040 MAT 017 024 また、彼らがカペナウムに来たとき、宮の納入金を集める人たちが、ペテロのところに来て言った。「あなたがたの先生は、宮の納入金を納めないのですか。」 040 MAT 017 025 彼は「納めます。」と言って、家にはいると、先にイエスのほうからこう言い出された。「シモン。どう思いますか。世の王たちはだれから税や貢を取り立てますか。自分の子どもたちからですか、それともほかの人たちからですか。」 040 MAT 017 026 ペテロが「ほかの人たちからです。」と言うと、イエスは言われた。「では、子どもたちにはその義務がないのです。 040 MAT 017 027 しかし、彼らにつまずきを与えないために、湖に行って釣りをして、最初に釣れた魚を取りなさい。その口をあけるとスタテル一枚が見つかるから、それを取って、わたしとあなたとの分として納めなさい。」 040 MAT 018 001 そのとき、弟子たちがイエスのところに来て言った。「それでは、天の御国では、だれが一番偉いのでしょうか。」 040 MAT 018 002 そこで、イエスは小さい子どもを呼び寄せ、彼らの真中に立たせて、 040 MAT 018 003 言われた。「まことに、あなたがたに告げます。あなたがたも悔い改めて子どもたちのようにならない限り、決して天の御国には、はいれません。 040 MAT 018 004 だから、この子どものように、自分を低くする者が、天の御国で一番偉い人です。 040 MAT 018 005 また、だれでも、このような子どものひとりを、わたしの名のゆえに受け入れる者は、わたしを受け入れるのです。 040 MAT 018 006 しかし、わたしを信じるこの小さい者たちのひとりにでもつまずきを与えるような者は、大きい石臼を首にかけられて、湖の深みでおぼれ死んだほうがましです。 040 MAT 018 007 つまずきを与えるこの世は忌まわしいものです。つまずきが起こることは避けられないが、つまずきをもたらす者は忌まわしいものです。 040 MAT 018 008 もし、あなたの手か足の一つがあなたをつまずかせるなら、それを切って捨てなさい。片手片足でいのちにはいるほうが、両手両足そろっていて永遠の火に投げ入れられるよりは、あなたにとってよいことです。 040 MAT 018 009 また、もし、あなたの一方の目が、あなたをつまずかせるなら、それをえぐり出して捨てなさい。片目でいのちにはいるほうが、両目そろっていて燃えるゲヘナに投げ入れられるよりは、あなたにとってよいことです。 040 MAT 018 010 あなたがたは、この小さい者たちを、ひとりでも見下げたりしないように気をつけなさい。まことに、あなたがたに告げます。彼らの天の御使いたちは、天におられるわたしの父の御顔をいつも見ているからです。 040 MAT 018 011 [人の子は、滅んでいる者を救うために来たのです。] 040 MAT 018 012 あなたがたはどう思いますか。もし、だれかが百匹の羊を持っていて、そのうちの一匹が迷い出たとしたら、その人は九十九匹を山に残して、迷った一匹を捜しに出かけないでしょうか。 040 MAT 018 013 そして、もし、いたとなれば、まことに、あなたがたに告げます。その人は迷わなかった九十九匹の羊以上にこの一匹を喜ぶのです。 040 MAT 018 014 このように、この小さい者たちのひとりが滅びることは、天にいますあなたがたの父のみこころではありません。 040 MAT 018 015 また、もし、あなたの兄弟が罪を犯したなら、行って、ふたりだけのところで責めなさい。もし聞き入れたら、あなたは兄弟を得たのです。 040 MAT 018 016 もし聞き入れないなら、ほかにひとりかふたりをいっしょに連れて行きなさい。ふたりか三人の証人の口によって、すべての事実が確認されるためです。 040 MAT 018 017 それでもなお、言うことを聞き入れようとしないなら、教会に告げなさい。教会の言うことさえも聞こうとしないなら、彼を異邦人か取税人のように扱いなさい。 040 MAT 018 018 まことに、あなたがたに告げます。何でもあなたがたが地上でつなぐなら、それは天においてもつながれており、あなたがたが地上で解くなら、それは天においても解かれているのです。 040 MAT 018 019 まことに、あなたがたにもう一度、告げます。もし、あなたがたのうちふたりが、どんな事でも、地上で心を一つにして祈るなら、天におられるわたしの父は、それをかなえてくださいます。 040 MAT 018 020 ふたりでも三人でも、わたしの名において集まる所には、わたしもその中にいるからです。」 040 MAT 018 021 そのとき、ペテロがみもとに来て言った。「主よ。兄弟が私に対して罪を犯したばあい、何度まで赦すべきでしょうか。七度まででしょうか。」 040 MAT 018 022 イエスは言われた。「七度まで、などとはわたしは言いません。七度を七十倍するまでと言います。 040 MAT 018 023 このことから、天の御国は、地上の王にたとえることができます。 王はそのしもべたちと清算をしたいと思った。 040 MAT 018 024 清算が始まると、まず一万タラントの借りのあるしもべが、王のところに連れて来られた。 040 MAT 018 025 しかし、彼は返済することができなかったので、その主人は彼に、自分も妻子も持ち物全部も売って返済するように命じた。 040 MAT 018 026 それで、このしもべは、主人の前にひれ伏して、『どうかご猶予ください。そうすれば全部お払いいたします。』と言った。 040 MAT 018 027 しもべの主人は、かわいそうに思って、彼を赦し、借金を免除してやった。 040 MAT 018 028 ところが、そのしもべは、出て行くと、同じしもべ仲間で、彼から百デナリの借りのある者に出会った。彼はその人をつかまえ、首を絞めて、『借金を返せ。』と言った。 040 MAT 018 029 彼の仲間は、ひれ伏して、『もう少し待ってくれ。そうしたら返すから。』と言って頼んだ。 040 MAT 018 030 しかし彼は承知せず、連れて行って、借金を返すまで牢に投げ入れた。 040 MAT 018 031 彼の仲間たちは事の成り行きを見て、非常に悲しみ、行って、その一部始終を主人に話した。 040 MAT 018 032 そこで、主人は彼を呼びつけて言った。『悪いやつだ。おまえがあんなに頼んだからこそ借金全部を赦してやったのだ。 040 MAT 018 033 私がおまえをあわれんでやったように、おまえも仲間をあわれんでやるべきではないか。』 040 MAT 018 034 こうして、主人は怒って、借金を全部返すまで、彼を獄吏に引き渡した。 040 MAT 018 035 あなたがたもそれぞれ、心から兄弟を赦さないなら、天のわたしの父も、あなたがたに、このようになさるのです。」 040 MAT 019 001 イエスはこの話を終えると、ガリラヤを去って、ヨルダンの向こうにあるユダヤ地方に行かれた。 040 MAT 019 002 すると、大ぜいの群衆がついて来たので、そこで彼らをおいやしになった。 040 MAT 019 003 パリサイ人たちがみもとにやって来て、イエスを試みて、こう言った。「何か理由があれば、妻を離別することは律法にかなっているでしょうか。」 040 MAT 019 004 イエスは答えて言われた。「創造者は、初めから人を男と女に造って、 040 MAT 019 005 『それゆえ、人はその父と母を離れて、その妻と結ばれ、ふたりの者が一心同体になるのだ。』と言われたのです。それを、あなたがたは読んだことがないのですか。 040 MAT 019 006 それで、もはやふたりではなく、ひとりなのです。こういうわけで、人は、神が結び合わせたものを引き離してはなりません。」 040 MAT 019 007 彼らはイエスに言った。「では、モーセはなぜ、離婚状を渡して妻を離別せよ、と命じたのですか。」 040 MAT 019 008 イエスは彼らに言われた。「モーセは、あなたがたの心がかたくななので、その妻を離別することをあなたがたに許したのです。しかし、初めからそうだったのではありません。 040 MAT 019 009 まことに、あなたがたに告げます。だれでも、不貞のためでなくて、その妻を離別し、別の女を妻にする者は姦淫を犯すのです。」 040 MAT 019 010 弟子たちはイエスに言った。「もし妻に対する夫の立場がそんなものなら、結婚しないほうがましです。」 040 MAT 019 011 しかし、イエスは言われた。「そのことばは、だれでも受け入れることができるわけではありません。ただ、それが許されている者だけができるのです。 040 MAT 019 012 というのは、母の胎内から、そのように生まれついた独身者がいます。また、人から独身者にさせられた者もいます。また、天の御国のために、自分から独身者になった者もいるからです。それができる者はそれを受け入れなさい。」 040 MAT 019 013 そのとき、イエスに手を置いて祈っていただくために、子どもたちが連れて来られた。ところが、弟子たちは彼らをしかった。 040 MAT 019 014 しかし、イエスは言われた。「子どもたちを許してやりなさい。邪魔をしないでわたしのところに来させなさい。天の御国はこのような者たちの国なのです。」 040 MAT 019 015 そして、手を彼らの上に置いてから、そこを去って行かれた。 040 MAT 019 016 すると、ひとりの人がイエスのもとに来て言った。「先生。永遠のいのちを得るためには、どんな良いことをしたらよいのでしょうか。」 040 MAT 019 017 イエスは彼に言われた。「なぜ、良いことについて、わたしに尋ねるのですか。良い方は、ひとりだけです。もし、いのちにはいりたいと思うなら、戒めを守りなさい。」 040 MAT 019 018 彼は「どの戒めですか。」と言った。そこで、イエスは言われた。「殺してはならない。姦淫してはならない。盗んではならない。偽証をしてはならない。 040 MAT 019 019 父と母を敬え。あなたの隣人をあなた自身のように愛せよ。」 040 MAT 019 020 この青年はイエスに言った。「そのようなことはみな、守っております。何がまだ欠けているのでしょうか。」 040 MAT 019 021 イエスは、彼に言われた。「もし、あなたが完全になりたいなら、帰って、あなたの持ち物を売り払って貧しい人たちに与えなさい。そうすれば、あなたは天に宝を積むことになります。そのうえで、わたしについて来なさい。」 040 MAT 019 022 ところが、青年はこのことばを聞くと、悲しんで去って行った。この人は多くの財産を持っていたからである。 040 MAT 019 023 それから、イエスは弟子たちに言われた。「まことに、あなたがたに告げます。金持ちが天の御国にはいるのはむずかしいことです。 040 MAT 019 024 まことに、あなたがたにもう一度、告げます。金持ちが神の国にはいるよりは、らくだが針の穴を通るほうがもっとやさしい。」 040 MAT 019 025 弟子たちは、これを聞くと、たいへん驚いて言った。「それでは、だれが救われることができるのでしょう。」 040 MAT 019 026 イエスは彼らをじっと見て言われた。「それは人にはできないことです。しかし、神にはどんなことでもできます。」 040 MAT 019 027 そのとき、ペテロはイエスに答えて言った。「ご覧ください。私たちは、何もかも捨てて、あなたに従ってまいりました。私たちは何がいただけるでしょうか。」 040 MAT 019 028 そこで、イエスは彼らに言われた。「まことに、あなたがたに告げます。世が改まって人の子がその栄光の座に着く時、わたしに従って来たあなたがたも十二の座に着いて、イスラエルの十二の部族をさばくのです。 040 MAT 019 029 また、わたしの名のために、家、兄弟、姉妹、父、母、子、あるいは畑を捨てた者はすべて、その幾倍もを受け、また永遠のいのちを受け継ぎます。 040 MAT 019 030 ただ、先の者があとになり、あとの者が先になることが多いのです。 040 MAT 020 001 天の御国は、自分のぶどう園で働く労務者を雇いに朝早く出かけた主人のようなものです。 040 MAT 020 002 彼は、労務者たちと一日一デナリの約束ができると、彼らをぶどう園にやった。 040 MAT 020 003 それから、九時ごろに出かけてみると、別の人たちが市場に立っており、何もしないでいた。 040 MAT 020 004 そこで、彼はその人たちに言った。『あなたがたも、ぶどう園に行きなさい。相当のものを上げるから。』 040 MAT 020 005 彼らは出て行った。それからまた、十二時ごろと三時ごろに出かけて行って、同じようにした。 040 MAT 020 006 また、五時ごろ出かけてみると、別の人たちが立っていたので、彼らに言った。『なぜ、一日中仕事もしないでここにいるのですか。』 040 MAT 020 007 彼らは言った。『だれも雇ってくれないからです。』彼は言った。『あなたがたも、ぶどう園に行きなさい。』 040 MAT 020 008 こうして、夕方になったので、ぶどう園の主人は、監督に言った。『労務者たちを呼んで、最後に来た者たちから順に、最初に来た者たちにまで、賃金を払ってやりなさい。』 040 MAT 020 009 そこで、五時ごろに雇われた者たちが来て、それぞれ一デナリずつもらった。 040 MAT 020 010 最初の者たちがもらいに来て、もっと多くもらえるだろうと思ったが、彼らもやはりひとり一デナリずつであった。 040 MAT 020 011 そこで、彼らはそれを受け取ると、主人に文句をつけて、 040 MAT 020 012 言った。『この最後の連中は一時間しか働かなかったのに、あなたは私たちと同じにしました。私たちは一日中、労苦と焼けるような暑さを辛抱したのです。』 040 MAT 020 013 しかし、彼はそのひとりに答えて言った。『私はあなたに何も不当なことはしていない。あなたは私と一デナリの約束をしたではありませんか。 040 MAT 020 014 自分の分を取って帰りなさい。ただ私としては、この最後の人にも、あなたと同じだけ上げたいのです。 040 MAT 020 015 自分のものを自分の思うようにしてはいけないという法がありますか。それとも、私が気前がいいので、あなたの目にはねたましく思われるのですか。』 040 MAT 020 016 このように、あとの者が先になり、先の者があとになるものです。」 040 MAT 020 017 さて、イエスは、エルサレムに上ろうとしておられたが、十二弟子だけを呼んで、道々彼らに話された。 040 MAT 020 018 「さあ、これから、わたしたちはエルサレムに向かって行きます。人の子は、祭司長、律法学者たちに引き渡されるのです。彼らは人の子を死刑に定めます。 040 MAT 020 019 そして、あざけり、むち打ち、十字架につけるため、異邦人に引き渡します。しかし、人の子は三日目によみがえります。」 040 MAT 020 020 そのとき、ゼベダイの子たちの母が、子どもたちといっしょにイエスのもとに来て、ひれ伏して、お願いがありますと言った。 040 MAT 020 021 イエスが彼女に、「どんな願いですか。」と言われると、彼女は言った。「私のこのふたりの息子が、あなたの御国で、ひとりはあなたの右に、ひとりは左にすわれるようにおことばを下さい。」 040 MAT 020 022 けれども、イエスは答えて言われた。「あなたがたは自分が何を求めているのか、わかっていないのです。わたしが飲もうとしている杯を飲むことができますか。」彼らは「できます。」と言った。 040 MAT 020 023 イエスは言われた。「あなたがたはわたしの杯を飲みはします。しかし、わたしの右と左にすわることは、このわたしの許すことではなく、わたしの父によってそれに備えられた人々があるのです。」 040 MAT 020 024 このことを聞いたほかの十人は、このふたりの兄弟のことで腹を立てた。 040 MAT 020 025 そこで、イエスは彼らを呼び寄せて、言われた。「あなたがたも知っているとおり、異邦人の支配者たちは彼らを支配し、偉い人たちは彼らの上に権力をふるいます。 040 MAT 020 026 あなたがたの間では、そうではありません。あなたがたの間で偉くなりたいと思う者は、みなに仕える者になりなさい。 040 MAT 020 027 あなたがたの間で人の先に立ちたいと思う者は、あなたがたのしもべになりなさい。 040 MAT 020 028 人の子が来たのが、仕えられるためではなく、かえって仕えるためであり、また、多くの人のための、贖いの代価として、自分のいのちを与えるためであるのと同じです。」 040 MAT 020 029 彼らがエリコを出て行くと、大ぜいの群衆がイエスについて行った。 040 MAT 020 030 すると、道ばたにすわっていたふたりの盲人が、イエスが通られると聞いて、叫んで言った。「主よ。私たちをあわれんでください。ダビデの子よ。」 040 MAT 020 031 そこで、群衆は彼らを黙らせようとして、たしなめたが、彼らはますます、「主よ。私たちをあわれんでください。ダビデの子よ。」と叫び立てた。 040 MAT 020 032 すると、イエスは立ち止まって、彼らを呼んで言われた。「わたしに何をしてほしいのか。」 040 MAT 020 033 彼らはイエスに言った。「主よ。この目をあけていただきたいのです。」 040 MAT 020 034 イエスはかわいそうに思って、彼らの目にさわられた。すると、すぐさま彼らは見えるようになり、イエスについて行った。 040 MAT 021 001 それから、彼らはエルサレムに近づき、オリーブ山のふもとのベテパゲまで来た。そのとき、イエスは、弟子をふたり使いに出して、 040 MAT 021 002 言われた。「向こうの村へ行きなさい。そうするとすぐに、ろばがつながれていて、いっしょにろばの子がいるのに気がつくでしょう。それをほどいて、わたしのところに連れて来なさい。 040 MAT 021 003 もしだれかが何か言ったら、『主がお入用なのです。』と言いなさい。そうすれば、すぐに渡してくれます。」 040 MAT 021 004 これは、預言者を通して言われた事が成就するために起こったのである。 040 MAT 021 005 「シオンの娘に伝えなさい。 『見よ。あなたの王が、 あなたのところにお見えになる。 柔和で、ろばの背に乗って、 それも、荷物を運ぶろばの子に乗って。』」 040 MAT 021 006 そこで、弟子たちは行って、イエスが命じられたとおりにした。 040 MAT 021 007 そして、ろばと、ろばの子とを連れて来て、自分たちの上着をその上に掛けた。イエスはそれに乗られた。 040 MAT 021 008 すると、群衆のうち大ぜいの者が、自分たちの上着を道に敷き、また、ほかの人々は、木の枝を切って来て、道に敷いた。 040 MAT 021 009 そして、群衆は、イエスの前を行く者も、あとに従う者も、こう言って叫んでいた。 「ダビデの子にホサナ。 祝福あれ。主の御名によって来られる方に。 ホサナ。いと高き所に。」 040 MAT 021 010 こうして、イエスがエルサレムにはいられると、都中がこぞって騒ぎ立ち、「この方は、どういう方なのか。」と言った。 040 MAT 021 011 群衆は、「この方は、ガリラヤのナザレの、預言者イエスだ。」と言った。 040 MAT 021 012 それから、イエスは宮にはいって、宮の中で売り買いする者たちをみな追い出し、両替人の台や、鳩を売る者たちの腰掛けを倒された。 040 MAT 021 013 そして彼らに言われた。「『わたしの家は祈りの家と呼ばれる。』と書いてある。それなのに、あなたがたはそれを強盗の巣にしている。」 040 MAT 021 014 また、宮の中で、盲人や足なえがみもとに来たので、イエスは彼らをいやされた。 040 MAT 021 015 ところが、祭司長、律法学者たちは、イエスのなさった驚くべきいろいろのことを見、また宮の中で子どもたちが「ダビデの子にホサナ。」と言って叫んでいるのを見て腹を立てた。 040 MAT 021 016 そしてイエスに言った。「あなたは、子どもたちが何と言っているか、お聞きですか。」イエスは言われた。「聞いています。『あなたは幼子と乳飲み子たちの口に賛美を用意された。』とあるのを、あなたがたは読まなかったのですか。」 040 MAT 021 017 イエスは彼らをあとに残し、都を出てベタニヤに行き、そこに泊まられた。 040 MAT 021 018 翌朝、イエスは都に帰る途中、空腹を覚えられた。 040 MAT 021 019 道ばたにいちじくの木が見えたので、近づいて行かれたが、葉のほかは何もないのに気づかれた。それで、イエスはその木に「おまえの実は、もういつまでも、ならないように。」と言われた。すると、たちまちいちじくの木は枯れた。 040 MAT 021 020 弟子たちは、これを見て、驚いて言った。「どうして、こうすぐにいちじくの木が枯れたのでしょうか。」 040 MAT 021 021 イエスは答えて言われた。「まことに、あなたがたに告げます。もし、あなたがたが、信仰を持ち、疑うことがなければ、いちじくの木になされたようなことができるだけでなく、たとい、この山に向かって、『動いて、海にはいれ。』と言っても、そのとおりになります。 040 MAT 021 022 あなたがたが信じて祈り求めるものなら、何でも与えられます。」 040 MAT 021 023 それから、イエスが宮にはいって、教えておられると、祭司長、民の長老たちが、みもとに来て言った。「何の権威によって、これらのことをしておられるのですか。だれが、あなたにその権威を授けたのですか。」 040 MAT 021 024 イエスは答えて、こう言われた。「わたしも一言あなたがたに尋ねましょう。もし、あなたがたが答えるなら、わたしも何の権威によって、これらのことをしているかを話しましょう。 040 MAT 021 025 ヨハネのバプテスマは、どこから来たものですか。天からですか。それとも人からですか。」すると、彼らはこう言いながら、互いに論じ合った。「もし、天から、と言えば、それならなぜ、彼を信じなかったか、と言うだろう。 040 MAT 021 026 しかし、もし、人から、と言えば、群衆がこわい。彼らはみな、ヨハネを預言者と認めているのだから。」 040 MAT 021 027 そこで、彼らはイエスに答えて、「わかりません。」と言った。イエスもまた彼らにこう言われた。「わたしも、何の権威によってこれらのことをするのか、あなたがたに話すまい。 040 MAT 021 028 ところで、あなたがたは、どう思いますか。ある人にふたりの息子がいた。その人は兄のところに来て、『きょう、ぶどう園に行って働いてくれ。』と言った。 040 MAT 021 029 兄は答えて『行きます。おとうさん。』と言ったが、行かなかった。 040 MAT 021 030 それから、弟のところに来て、同じように言った。ところが、弟は答えて『行きたくありません。』と言ったが、あとから悪かったと思って出かけて行った。 040 MAT 021 031 ふたりのうちどちらが、父の願ったとおりにしたのでしょう。」彼らは言った。「あとの者です。」イエスは彼らに言われた。「まことに、あなたがたに告げます。取税人や遊女たちのほうが、あなたがたより先に神の国にはいっているのです。 040 MAT 021 032 というのは、あなたがたは、ヨハネが義の道を持って来たのに、彼を信じなかった。しかし、取税人や遊女たちは彼を信じたからです。しかもあなたがたは、それを見ながら、あとになって悔いることもせず、彼を信じなかったのです。 040 MAT 021 033 もう一つのたとえを聞きなさい。 ひとりの、家の主人がいた。彼はぶどう園を造って、垣を巡らし、その中に酒ぶねを掘り、やぐらを建て、それを農夫たちに貸して、旅に出かけた。 040 MAT 021 034 さて、収穫の時が近づいたので、主人は自分の分を受け取ろうとして、農夫たちのところへしもべたちを遣わした。 040 MAT 021 035 すると、農夫たちは、そのしもべたちをつかまえて、ひとりは袋だたきにし、もうひとりは殺し、もうひとりは石で打った。 040 MAT 021 036 そこでもう一度、前よりももっと多くの別のしもべたちを遣わしたが、やはり同じような扱いをした。 040 MAT 021 037 しかし、そのあと、その主人は、『私の息子なら、敬ってくれるだろう。』と言って、息子を遣わした。 040 MAT 021 038 すると、農夫たちは、その子を見て、こう話し合った。『あれはあと取りだ。さあ、あれを殺して、あれのものになるはずの財産を手に入れようではないか。』 040 MAT 021 039 そして、彼をつかまえて、ぶどう園の外に追い出して殺してしまった。 040 MAT 021 040 このばあい、ぶどう園の主人が帰って来たら、その農夫たちをどうするでしょう。」 040 MAT 021 041 彼らはイエスに言った。「その悪党どもを情け容赦なく殺して、そのぶどう園を、季節にはきちんと収穫を納める別の農夫たちに貸すに違いありません。」 040 MAT 021 042 イエスは彼らに言われた。「あなたがたは、次の聖書のことばを読んだことがないのですか。 『家を建てる者たちの見捨てた石。 それが礎の石になった。 これは主のなさったことだ。 私たちの目には、 不思議なことである。』 040 MAT 021 043 だから、わたしはあなたがたに言います。神の国はあなたがたから取り去られ、神の国の実を結ぶ国民に与えられます。 040 MAT 021 044 また、この石の上に落ちる者は、粉々に砕かれ、この石が人の上に落ちれば、その人を粉みじんに飛ばしてしまいます。」 040 MAT 021 045 祭司長たちとパリサイ人たちは、イエスのこれらのたとえを聞いたとき、自分たちをさして話しておられることに気づいた。 040 MAT 021 046 それでイエスを捕えようとしたが、群衆を恐れた。群衆はイエスを預言者と認めていたからである。 040 MAT 022 001 イエスはもう一度たとえをもって彼らに話された。 040 MAT 022 002 「天の御国は、王子のために結婚の披露宴を設けた王にたとえることができます。 040 MAT 022 003 王は、招待しておいたお客を呼びに、しもべたちを遣わしたが、彼らは来たがらなかった。 040 MAT 022 004 それで、もう一度、次のように言いつけて、別のしもべたちを遣わした。『お客に招いておいた人たちにこう言いなさい。「さあ、食事の用意ができました。雄牛も太った家畜もほふって、何もかも整いました。どうぞ宴会にお出かけください。」』 040 MAT 022 005 ところが、彼らは気にもかけず、ある者は畑に、別の者は商売に出て行き、 040 MAT 022 006 そのほかの者たちは、王のしもべたちをつかまえて恥をかかせ、そして殺してしまった。 040 MAT 022 007 王は怒って、兵隊を出して、その人殺しどもを滅ぼし、彼らの町を焼き払った。 040 MAT 022 008 そのとき、王はしもべたちに言った。『宴会の用意はできているが、招待しておいた人たちは、それにふさわしくなかった。 040 MAT 022 009 だから、大通りに行って、出会った者をみな宴会に招きなさい。』 040 MAT 022 010 それで、しもべたちは、通りに出て行って、良い人でも悪い人でも出会った者をみな集めたので、宴会場は客でいっぱいになった。 040 MAT 022 011 ところで、王が客を見ようとしてはいって来ると、そこに婚礼の礼服を着ていない者がひとりいた。 040 MAT 022 012 そこで、王は言った。『あなたは、どうして礼服を着ないで、ここにはいって来たのですか。』しかし、彼は黙っていた。 040 MAT 022 013 そこで、王はしもべたちに、『あれの手足を縛って、外の暗やみに放り出せ。そこで泣いて歯ぎしりするのだ。』と言った。 040 MAT 022 014 招待される者は多いが、選ばれる者は少ないのです。」 040 MAT 022 015 そのころ、パリサイ人たちは出て来て、どのようにイエスをことばのわなにかけようかと相談した。 040 MAT 022 016 彼らはその弟子たちを、ヘロデ党の者たちといっしょにイエスのもとにやって、こう言わせた。「先生。私たちは、あなたが真実な方で、真理に基づいて神の道を教え、だれをもはばからない方だと存じています。あなたは、人の顔色を見られないからです。 040 MAT 022 017 それで、どう思われるのか言ってください。税金をカイザルに納めることは、律法にかなっていることでしょうか。かなっていないことでしょうか。」 040 MAT 022 018 イエスは彼らの悪意を知って言われた。「偽善者たち。なぜ、わたしをためすのか。 040 MAT 022 019 納め金にするお金をわたしに見せなさい。」そこで彼らは、デナリを一枚イエスのもとに持って来た。 040 MAT 022 020 そこで彼らに言われた。「これは、だれの肖像ですか。だれの銘ですか。」 040 MAT 022 021 彼らは、「カイザルのです。」と言った。そこで、イエスは言われた。「それなら、カイザルのものはカイザルに返しなさい。そして神のものは神に返しなさい。」 040 MAT 022 022 彼らは、これを聞いて驚嘆し、イエスを残して立ち去った。 040 MAT 022 023 その日、復活はないと言っているサドカイ人たちが、イエスのところに来て、質問して、 040 MAT 022 024 言った。「先生。モーセは『もし、ある人が子のないままで死んだなら、その弟は兄の妻をめとって、兄のための子をもうけねばならない。』と言いました。 040 MAT 022 025 ところで、私たちの間に七人兄弟がありました。長男は結婚しましたが、死んで、子がなかったので、その妻を弟に残しました。 040 MAT 022 026 次男も三男も、七人とも同じようになりました。 040 MAT 022 027 そして、最後に、その女も死にました。 040 MAT 022 028 すると復活の際には、その女は七人のうちだれの妻なのでしょうか。彼らはみな、その女を妻にしたのです。」 040 MAT 022 029 しかし、イエスは彼らに答えて言われた。「そんな思い違いをしているのは、聖書も神の力も知らないからです。 040 MAT 022 030 復活の時には、人はめとることも、とつぐこともなく、天の御使いたちのようです。 040 MAT 022 031 それに、死人の復活については、神があなたがたに語られた事を、あなたがたは読んだことがないのですか。 040 MAT 022 032 『わたしは、アブラハムの神、イサクの神、ヤコブの神である。』とあります。神は死んだ者の神ではありません。生きている者の神です。」 040 MAT 022 033 群衆はこれを聞いて、イエスの教えに驚いた。 040 MAT 022 034 しかし、パリサイ人たちは、イエスがサドカイ人たちを黙らせたと聞いて、いっしょに集まった。 040 MAT 022 035 そして、彼らのうちのひとりの律法の専門家が、イエスをためそうとして、尋ねた。 040 MAT 022 036 「先生。律法の中で、たいせつな戒めはどれですか。」 040 MAT 022 037 そこで、イエスは彼に言われた。「『心を尽くし、思いを尽くし、知力を尽くして、あなたの神である主を愛せよ。』 040 MAT 022 038 これがたいせつな第一の戒めです。 040 MAT 022 039 『あなたの隣人をあなた自身のように愛せよ。』という第二の戒めも、それと同じようにたいせつです。 040 MAT 022 040 律法全体と預言者とが、この二つの戒めにかかっているのです。」 040 MAT 022 041 パリサイ人たちが集まっているときに、イエスは彼らに尋ねて言われた。 040 MAT 022 042 「あなたがたは、キリストについて、どう思いますか。彼はだれの子ですか。」彼らはイエスに言った。「ダビデの子です。」 040 MAT 022 043 イエスは彼らに言われた。「それでは、どうしてダビデは、御霊によって、彼を主と呼び、 040 MAT 022 044 『主は私の主に言われた。 「わたしがあなたの敵を あなたの足の下に従わせるまでは、 わたしの右の座に着いていなさい。」』 と言っているのですか。 040 MAT 022 045 ダビデがキリストを主と呼んでいるのなら、どうして彼はダビデの子なのでしょう。」 040 MAT 022 046 それで、だれもイエスに一言も答えることができなかった。また、その日以来、もはやだれも、イエスにあえて質問をする者はなかった。 040 MAT 023 001 そのとき、イエスは群衆と弟子たちに話をして、 040 MAT 023 002 こう言われた。「律法学者、パリサイ人たちは、モーセの座を占めています。 040 MAT 023 003 ですから、彼らがあなたがたに言うことはみな、行ない、守りなさい。けれども、彼らの行ないをまねてはいけません。彼らは言うことは言うが、実行しないからです。 040 MAT 023 004 また、彼らは重い荷をくくって、人の肩に載せ、自分はそれに指一本さわろうとはしません。 040 MAT 023 005 彼らのしていることはみな、人に見せるためです。経札の幅を広くしたり、衣のふさを長くしたりするのもそうです。 040 MAT 023 006 また、宴会の上座や会堂の上席が大好きで、 040 MAT 023 007 広場であいさつされたり、人から先生と呼ばれたりすることが好きです。 040 MAT 023 008 しかし、あなたがたは先生と呼ばれてはいけません。あなたがたの教師はただひとりしかなく、あなたがたはみな兄弟だからです。 040 MAT 023 009 あなたがたは地上のだれかを、われらの父と呼んではいけません。あなたがたの父はただひとり、すなわち天にいます父だけだからです。 040 MAT 023 010 また、師と呼ばれてはいけません。あなたがたの師はただひとり、キリストだからです。 040 MAT 023 011 あなたがたのうちの一番偉大な者は、あなたがたに仕える人でなければなりません。 040 MAT 023 012 だれでも、自分を高くする者は低くされ、自分を低くする者は高くされます。 040 MAT 023 013 しかし、わざわいが来ますぞ。偽善の律法学者、パリサイ人たち。あなたがたは、人々から天の御国をさえぎっているのです。自分もはいらず、はいろうとしている人々をもはいらせないのです。 040 MAT 023 014 [わざわいが来ますぞ。偽善の律法学者、パリサイ人たち。あなたがたは、やもめたちの家を食いつぶしていながら、見えのために長い祈りをするからです。ですから、あなたがたは、人一倍ひどい罰を受けます。] 040 MAT 023 015 わざわいが来ますぞ。偽善の律法学者、パリサイ人たち。改宗者をひとりつくるのに、海と陸とを飛び回り、改宗者ができると、その人を自分より倍も悪いゲヘナの子にするからです。 040 MAT 023 016 わざわいが来ますぞ。目の見えぬ手引きども。あなたがたはこう言う。『だれでも、神殿をさして誓ったのなら、何でもない。しかし、神殿の黄金をさして誓ったら、その誓いを果たさなければならない。』 040 MAT 023 017 愚かで、目の見えぬ人たち。黄金と、黄金を神聖なものにする神殿と、どちらがたいせつなのか。 040 MAT 023 018 また、こう言う。『だれでも、祭壇をさして誓ったのなら、何でもない。しかし、祭壇の上の供え物をさして誓ったら、その誓いを果たさなければならない。』 040 MAT 023 019 目の見えぬ人たち。供え物と、その供え物を神聖なものにする祭壇と、どちらがたいせつなのか。 040 MAT 023 020 ですから、祭壇をさして誓う者は、祭壇をも、その上のすべての物をもさして誓っているのです。 040 MAT 023 021 また、神殿をさして誓う者は、神殿をも、その中に住まわれる方をもさして誓っているのです。 040 MAT 023 022 天をさして誓う者は、神の御座とそこに座しておられる方をさして誓うのです。 040 MAT 023 023 わざわいが来ますぞ。偽善の律法学者、パリサイ人たち。あなたがたは、はっか、いのんど、クミンなどの十分の一を納めているが、律法の中ではるかに重要なもの、すなわち正義もあわれみも誠実もおろそかにしているのです。これこそしなければならないことです。ただし、他のほうもおろそかにしてはいけません。 040 MAT 023 024 目の見えぬ手引きども。あなたがたは、ぶよは、こして除くが、らくだはのみこんでいます。 040 MAT 023 025 わざわいが来ますぞ。偽善の律法学者、パリサイ人たち。あなたがたは、杯や皿の外側はきよめるが、その中は強奪と放縦でいっぱいです。 040 MAT 023 026 目の見えぬパリサイ人たち。まず、杯の内側をきよめなさい。そうすれば、外側もきよくなります。 040 MAT 023 027 わざわいが来ますぞ。偽善の律法学者、パリサイ人たち。あなたがたは白く塗った墓のようなものです。墓はその外側は美しく見えても、内側は、死人の骨や、あらゆる汚れたものがいっぱいなように、 040 MAT 023 028 あなたがたも、外側は人に正しいと見えても、内側は偽善と不法でいっぱいです。 040 MAT 023 029 わざわいが来ますぞ。偽善の律法学者、パリサイ人たち。あなたがたは預言者の墓を建て、義人の記念碑を飾って、 040 MAT 023 030 『私たちが、先祖の時代に生きていたら、預言者たちの血を流すような仲間にはならなかっただろう。』と言います。 040 MAT 023 031 こうして、預言者を殺した者たちの子孫だと、自分で証言しています。 040 MAT 023 032 あなたがたも先祖の罪の目盛りの不足分を満たしなさい。 040 MAT 023 033 おまえたち蛇ども、まむしのすえども。おまえたちは、ゲヘナの刑罰をどうしてのがれることができよう。 040 MAT 023 034 だから、わたしが預言者、知者、律法学者たちを遣わすと、おまえたちはそのうちのある者を殺し、十字架につけ、またある者を会堂でむち打ち、町から町へと迫害して行くのです。 040 MAT 023 035 それは、義人アベルの血からこのかた、神殿と祭壇との間で殺されたバラキヤの子ザカリヤの血に至るまで、地上で流されるすべての正しい血の報復があなたがたの上に来るためです。 040 MAT 023 036 まことに、あなたがたに告げます。これらの報いはみな、この時代の上に来ます。 040 MAT 023 037 ああ、エルサレム、エルサレム。預言者たちを殺し、自分に遣わされた人たちを石で打つ者。わたしは、めんどりがひなを翼の下に集めるように、あなたの子らを幾たび集めようとしたことか。それなのに、あなたがたはそれを好まなかった。 040 MAT 023 038 見なさい。あなたがたの家は荒れ果てたままに残される。 040 MAT 023 039 あなたがたに告げます。『祝福あれ。主の御名によって来られる方に。』とあなたがたが言うときまで、あなたがたは今後決してわたしを見ることはありません。」 040 MAT 024 001 イエスが宮を出て行かれるとき、弟子たちが近寄って来て、イエスに宮の建物をさし示した。 040 MAT 024 002 そこで、イエスは彼らに答えて言われた。「このすべての物に目をみはっているのでしょう。まことに、あなたがたに告げます。ここでは、石がくずされずに、積まれたまま残ることは決してありません。」 040 MAT 024 003 イエスがオリーブ山ですわっておられると、弟子たちが、ひそかにみもとに来て言った。「お話しください。いつ、そのようなことが起こるのでしょう。あなたの来られる時や世の終わりには、どんな前兆があるのでしょう。」 040 MAT 024 004 そこで、イエスは彼らに答えて言われた。「人に惑わされないように気をつけなさい。 040 MAT 024 005 わたしの名を名のる者が大ぜい現われ、『私こそキリストだ。』と言って、多くの人を惑わすでしょう。 040 MAT 024 006 また、戦争のことや、戦争のうわさを聞くでしょうが、気をつけて、あわてないようにしなさい。これらは必ず起こることです。しかし、終わりが来たのではありません。 040 MAT 024 007 民族は民族に、国は国に敵対して立ち上がり、方々にききんと地震が起こります。 040 MAT 024 008 しかし、そのようなことはみな、産みの苦しみの初めなのです。 040 MAT 024 009 そのとき、人々は、あなたがたを苦しいめに会わせ、殺します。また、わたしの名のために、あなたがたはすべての国の人々に憎まれます。 040 MAT 024 010 また、そのときは、人々が大ぜいつまずき、互いに裏切り、憎み合います。 040 MAT 024 011 また、にせ預言者が多く起こって、多くの人々を惑わします。 040 MAT 024 012 不法がはびこるので、多くの人たちの愛は冷たくなります。 040 MAT 024 013 しかし、最後まで耐え忍ぶ者は救われます。 040 MAT 024 014 この御国の福音は全世界に宣べ伝えられて、すべての国民にあかしされ、それから、終わりの日が来ます。 040 MAT 024 015 それゆえ、預言者ダニエルによって語られたあの『荒らす憎むべき者』が、聖なる所に立つのを見たならば、(読者はよく読み取るように。) 040 MAT 024 016 そのときは、ユダヤにいる人々は山へ逃げなさい。 040 MAT 024 017 屋上にいる者は家の中の物を持ち出そうと下に降りてはいけません。 040 MAT 024 018 畑にいる者は着物を取りに戻ってはいけません。 040 MAT 024 019 だが、その日、悲惨なのは身重の女と乳飲み子を持つ女です。 040 MAT 024 020 ただ、あなたがたの逃げるのが、冬や安息日にならぬよう祈りなさい。 040 MAT 024 021 そのときには、世の初めから、今に至るまで、いまだかつてなかったような、またこれからもないような、ひどい苦難があるからです。 040 MAT 024 022 もし、その日数が少なくされなかったら、ひとりとして救われる者はないでしょう。しかし、選ばれた者のために、その日数は少なくされます。 040 MAT 024 023 そのとき、『そら、キリストがここにいる。』とか、『そこにいる。』とか言う者があっても、信じてはいけません。 040 MAT 024 024 にせキリスト、にせ預言者たちが現われて、できれば選民をも惑わそうとして、大きなしるしや不思議なことをして見せます。 040 MAT 024 025 さあ、わたしは、あなたがたに前もって話しました。 040 MAT 024 026 だから、たとい、『そら、荒野にいらっしゃる。』と言っても、飛び出して行ってはいけません。『そら、へやにいらっしゃる。』と聞いても、信じてはいけません。 040 MAT 024 027 人の子の来るのは、いなずまが東から出て、西にひらめくように、ちょうどそのように来るのです。 040 MAT 024 028 死体のある所には、はげたかが集まります。 040 MAT 024 029 だが、これらの日の苦難に続いてすぐに、太陽は暗くなり、月は光を放たず、星は天から落ち、天の万象は揺り動かされます。 040 MAT 024 030 そのとき、人の子のしるしが天に現われます。すると、地上のあらゆる種族は、悲しみながら、人の子が大能と輝かしい栄光を帯びて天の雲に乗って来るのを見るのです。 040 MAT 024 031 人の子は大きなラッパの響きとともに、御使いたちを遣わします。すると御使いたちは、天の果てから果てまで、四方からその選びの民を集めます。 040 MAT 024 032 いちじくの木から、たとえを学びなさい。枝が柔らかになって、葉が出て来ると、夏の近いことがわかります。 040 MAT 024 033 そのように、これらのことのすべてを見たら、あなたがたは、人の子が戸口まで近づいていると知りなさい。 040 MAT 024 034 まことに、あなたがたに告げます。これらのことが全部起こってしまうまでは、この時代は過ぎ去りません。 040 MAT 024 035 この天地は滅び去ります。しかし、わたしのことばは決して滅びることがありません。 040 MAT 024 036 ただし、その日、その時がいつであるかは、だれも知りません。天の御使いたちも子も知りません。ただ父だけが知っておられます。 040 MAT 024 037 人の子が来るのは、ちょうど、ノアの日のようだからです。 040 MAT 024 038 洪水前の日々は、ノアが箱舟にはいるその日まで、人々は、飲んだり、食べたり、めとったり、とついだりしていました。 040 MAT 024 039 そして、洪水が来てすべての物をさらってしまうまで、彼らはわからなかったのです。人の子が来るのも、そのとおりです。 040 MAT 024 040 そのとき、畑にふたりいると、ひとりは取られ、ひとりは残されます。 040 MAT 024 041 ふたりの女が臼をひいていると、ひとりは取られ、ひとりは残されます。 040 MAT 024 042 だから、目をさましていなさい。あなたがたは、自分の主がいつ来られるか、知らないからです。 040 MAT 024 043 しかし、このことは知っておきなさい。家の主人は、どろぼうが夜の何時に来ると知っていたら、目を見張っていたでしょうし、また、おめおめと自分の家に押し入られはしなかったでしょう。 040 MAT 024 044 だから、あなたがたも用心していなさい。なぜなら、人の子は、思いがけない時に来るのですから。 040 MAT 024 045 主人から、その家のしもべたちを任されて、食事時には彼らに食事をきちんと与えるような忠実な思慮深いしもべとは、いったいだれでしょうか。 040 MAT 024 046 主人が帰って来たときに、そのようにしているのを見られるしもべは幸いです。 040 MAT 024 047 まことに、あなたがたに告げます。その主人は彼に自分の全財産を任せるようになります。 040 MAT 024 048 ところが、それが悪いしもべで、『主人はまだまだ帰るまい。』と心の中で思い、 040 MAT 024 049 その仲間を打ちたたき、酒飲みたちと飲んだり食べたりし始めていると、 040 MAT 024 050 そのしもべの主人は、思いがけない日の思わぬ時間に帰って来ます。 040 MAT 024 051 そして、彼をきびしく罰して、その報いを偽善者たちと同じにするに違いありません。しもべはそこで泣いて歯ぎしりするのです。 040 MAT 025 001 そこで、天の御国は、たとえて言えば、それぞれがともしびを持って、花婿を出迎える十人の娘のようです。 040 MAT 025 002 そのうち五人は愚かで、五人は賢かった。 040 MAT 025 003 愚かな娘たちは、ともしびは持っていたが、油を用意しておかなかった。 040 MAT 025 004 賢い娘たちは、自分のともしびといっしょに、入れ物に油を入れて持っていた。 040 MAT 025 005 花婿が来るのが遅れたので、みな、うとうとして眠り始めた。 040 MAT 025 006 ところが、夜中になって、『そら、花婿だ。迎えに出よ。』と叫ぶ声がした。 040 MAT 025 007 娘たちは、みな起きて、自分のともしびを整えた。 040 MAT 025 008 ところが愚かな娘たちは、賢い娘たちに言った。『油を少し私たちに分けてください。私たちのともしびは消えそうです。』 040 MAT 025 009 しかし、賢い娘たちは答えて言った。『いいえ、あなたがたに分けてあげるにはとうてい足りません。それよりも店に行って、自分のをお買いなさい。』 040 MAT 025 010 そこで、買いに行くと、その間に花婿が来た。用意のできていた娘たちは、彼といっしょに婚礼の祝宴に行き、戸がしめられた。 040 MAT 025 011 そのあとで、ほかの娘たちも来て、『ご主人さま、ご主人さま。あけてください。』と言った。 040 MAT 025 012 しかし、彼は答えて、『確かなところ、私はあなたがたを知りません。』と言った。 040 MAT 025 013 だから、目をさましていなさい。あなたがたは、その日、その時を知らないからです。 040 MAT 025 014 天の御国は、しもべたちを呼んで、自分の財産を預け、旅に出て行く人のようです。 040 MAT 025 015 彼は、おのおのその能力に応じて、ひとりには五タラント、ひとりには二タラント、もうひとりには一タラントを渡し、それから旅に出かけた。 040 MAT 025 016 五タラント預かった者は、すぐに行って、それで商売をして、さらに五タラントもうけた。 040 MAT 025 017 同様に、二タラント預かった者も、さらに二タラントもうけた。 040 MAT 025 018 ところが、一タラント預かった者は、出て行くと、地を掘って、その主人の金を隠した。 040 MAT 025 019 さて、よほどたってから、しもべたちの主人が帰って来て、彼らと清算をした。 040 MAT 025 020 すると、五タラント預かった者が来て、もう五タラント差し出して言った。『ご主人さま。私に五タラント預けてくださいましたが、ご覧ください。私はさらに五タラントもうけました。』 040 MAT 025 021 その主人は彼に言った。『よくやった。良い忠実なしもべだ。あなたは、わずかな物に忠実だったから、私はあなたにたくさんの物を任せよう。主人の喜びをともに喜んでくれ。』 040 MAT 025 022 二タラントの者も来て言った。『ご主人さま。私は二タラント預かりましたが、ご覧ください。さらに二タラントもうけました。』 040 MAT 025 023 その主人は彼に言った。『よくやった。良い忠実なしもべだ。あなたは、わずかな物に忠実だったから、私はあなたにたくさんの物を任せよう。主人の喜びをともに喜んでくれ。』 040 MAT 025 024 ところが、一タラント預かっていた者も来て、言った。『ご主人さま。あなたは、蒔かない所から刈り取り、散らさない所から集めるひどい方だとわかっていました。 040 MAT 025 025 私はこわくなり、出て行って、あなたの一タラントを地の中に隠しておきました。さあどうぞ、これがあなたの物です。』 040 MAT 025 026 ところが、主人は彼に答えて言った。『悪いなまけ者のしもべだ。私が蒔かない所から刈り取り、散らさない所から集めることを知っていたというのか。 040 MAT 025 027 だったら、おまえはその私の金を、銀行に預けておくべきだった。そうすれば私は帰って来たときに、利息がついて返してもらえたのだ。 040 MAT 025 028 だから、そのタラントを彼から取り上げて、それを十タラント持っている者にやりなさい。』 040 MAT 025 029 だれでも持っている者は、与えられて豊かになり、持たない者は、持っているものまでも取り上げられるのです。 040 MAT 025 030 役に立たぬしもべは、外の暗やみに追い出しなさい。そこで泣いて歯ぎしりするのです。 040 MAT 025 031 人の子が、その栄光を帯びて、すべての御使いたちを伴って来るとき、人の子はその栄光の位に着きます。 040 MAT 025 032 そして、すべての国々の民が、その御前に集められます。彼は、羊飼いが羊と山羊とを分けるように、彼らをより分け、 040 MAT 025 033 羊を自分の右に、山羊を左に置きます。 040 MAT 025 034 そうして、王は、その右にいる者たちに言います。『さあ、わたしの父に祝福された人たち。世の初めから、あなたがたのために備えられた御国を継ぎなさい。 040 MAT 025 035 あなたがたは、わたしが空腹であったとき、わたしに食べる物を与え、わたしが渇いていたとき、わたしに飲ませ、わたしが旅人であったとき、わたしに宿を貸し、 040 MAT 025 036 わたしが裸のとき、わたしに着る物を与え、わたしが病気をしたとき、わたしを見舞い、わたしが牢にいたとき、わたしをたずねてくれたからです。』 040 MAT 025 037 すると、その正しい人たちは、答えて言います。『主よ。いつ、私たちは、あなたが空腹なのを見て、食べる物を差し上げ、渇いておられるのを見て、飲ませてあげましたか。 040 MAT 025 038 いつ、あなたが旅をしておられるときに、泊まらせてあげ、裸なのを見て、着る物を差し上げましたか。 040 MAT 025 039 また、いつ、私たちは、あなたのご病気やあなたが牢におられるのを見て、おたずねしましたか。』 040 MAT 025 040 すると、王は彼らに答えて言います。『まことに、あなたがたに告げます。あなたがたが、これらのわたしの兄弟たち、しかも最も小さい者たちのひとりにしたのは、わたしにしたのです。』 040 MAT 025 041 それから、王はまた、その左にいる者たちに言います。『のろわれた者ども。わたしから離れて、悪魔とその使いたちのために用意された永遠の火にはいれ。 040 MAT 025 042 おまえたちは、わたしが空腹であったとき、食べる物をくれず、渇いていたときにも飲ませず、 040 MAT 025 043 わたしが旅人であったときにも泊まらせず、裸であったときにも着る物をくれず、病気のときや牢にいたときにもたずねてくれなかった。』 040 MAT 025 044 そのとき、彼らも答えて言います。『主よ。いつ、私たちは、あなたが空腹であり、渇き、旅をし、裸であり、病気をし、牢におられるのを見て、お世話をしなかったのでしょうか。』 040 MAT 025 045 すると、王は彼らに答えて言います。『まことに、おまえたちに告げます。おまえたちが、この最も小さい者たちのひとりにしなかったのは、わたしにしなかったのです。』 040 MAT 025 046 こうして、この人たちは永遠の刑罰にはいり、正しい人たちは永遠のいのちにはいるのです。」 040 MAT 026 001 イエスは、これらの話をすべて終えると、弟子たちに言われた。 040 MAT 026 002 「あなたがたの知っているとおり、二日たつと過越の祭りになります。人の子は十字架につけられるために引き渡されます。」 040 MAT 026 003 そのころ、祭司長、民の長老たちは、カヤパという大祭司の家の庭に集まり、 040 MAT 026 004 イエスをだまして捕え、殺そうと相談した。 040 MAT 026 005 しかし、彼らは、「祭りの間はいけない。民衆の騒ぎが起こるといけないから。」と話していた。 040 MAT 026 006 さて、イエスがベタニヤで、らい病人シモンの家におられると、 040 MAT 026 007 ひとりの女がたいへん高価な香油のはいった石膏のつぼを持ってみもとに来て、食卓に着いておられたイエスの頭に香油を注いだ。 040 MAT 026 008 弟子たちはこれを見て、憤慨して言った。「何のために、こんなむだなことをするのか。 040 MAT 026 009 この香油なら、高く売れて、貧乏な人たちに施しができたのに。」 040 MAT 026 010 するとイエスはこれを知って、彼らに言われた。「なぜ、この女を困らせるのです。わたしに対してりっぱなことをしてくれたのです。 040 MAT 026 011 貧しい人たちは、いつもあなたがたといっしょにいます。しかし、わたしは、いつもあなたがたといっしょにいるわけではありません。 040 MAT 026 012 この女が、この香油をわたしのからだに注いだのは、わたしの埋葬の用意をしてくれたのです。 040 MAT 026 013 まことに、あなたがたに告げます。世界中のどこででも、この福音が宣べ伝えられる所なら、この人のした事も語られて、この人の記念となるでしょう。」 040 MAT 026 014 そのとき、十二弟子のひとりで、イスカリオテ・ユダという者が、祭司長たちのところへ行って、 040 MAT 026 015 こう言った。「彼をあなたがたに売るとしたら、いったいいくらくれますか。」すると、彼らは銀貨三十枚を彼に支払った。 040 MAT 026 016 そのときから、彼はイエスを引き渡す機会をねらっていた。 040 MAT 026 017 さて、種なしパンの祝いの第一日に、弟子たちがイエスのところに来て言った。「過越の食事をなさるのに、私たちはどこで用意をしましょうか。」 040 MAT 026 018 イエスは言われた。「都にはいって、これこれの人のところに行って、『先生が「わたしの時が近づいた。わたしの弟子たちといっしょに、あなたのところで過越を守ろう。」と言っておられる。』と言いなさい。」 040 MAT 026 019 そこで、弟子たちはイエスに言いつけられたとおりにして、過越の食事の用意をした。 040 MAT 026 020 さて、夕方になって、イエスは十二弟子といっしょに食卓に着かれた。 040 MAT 026 021 みなが食事をしているとき、イエスは言われた。「まことに、あなたがたに告げます。あなたがたのうちひとりが、わたしを裏切ります。」 040 MAT 026 022 すると、弟子たちは非常に悲しんで、「主よ。まさか私のことではないでしょう。」とかわるがわるイエスに言った。 040 MAT 026 023 イエスは答えて言われた。「わたしといっしょに鉢に手を浸した者が、わたしを裏切るのです。 040 MAT 026 024 確かに、人の子は、自分について書いてあるとおりに、去って行きます。しかし、人の子を裏切るような人間はのろわれます。そういう人は生まれなかったほうがよかったのです。」 040 MAT 026 025 すると、イエスを裏切ろうとしていたユダが答えて言った。「先生。まさか私のことではないでしょう。」イエスは彼に、「いや、そうだ。」と言われた。 040 MAT 026 026 また、彼らが食事をしているとき、イエスはパンを取り、祝福して後、これを裂き、弟子たちに与えて言われた。「取って食べなさい。これはわたしのからだです。」 040 MAT 026 027 また杯を取り、感謝をささげて後、こう言って彼らにお与えになった。「みな、この杯から飲みなさい。 040 MAT 026 028 これは、わたしの契約の血です。罪を赦すために多くの人のために流されるものです。 040 MAT 026 029 ただ、言っておきます。わたしの父の御国で、あなたがたと新しく飲むその日までは、わたしはもはや、ぶどうの実で造った物を飲むことはありません。」 040 MAT 026 030 そして、賛美の歌を歌ってから、みなオリーブ山へ出かけて行った。 040 MAT 026 031 そのとき、イエスは弟子たちに言われた。「あなたがたはみな、今夜、わたしのゆえにつまずきます。『わたしが羊飼いを打つ。すると、羊の群れは散り散りになる。』と書いてあるからです。 040 MAT 026 032 しかしわたしは、よみがえってから、あなたがたより先に、ガリラヤへ行きます。」 040 MAT 026 033 すると、ペテロがイエスに答えて言った。「たとい全部の者があなたのゆえにつまずいても、私は決してつまずきません。」 040 MAT 026 034 イエスは彼に言われた。「まことに、あなたに告げます。今夜、鶏が鳴く前に、あなたは三度、わたしを知らないと言います。」 040 MAT 026 035 ペテロは言った。「たとい、ごいっしょに死ななければならないとしても、私は、あなたを知らないなどとは決して申しません。」弟子たちはみなそう言った。 040 MAT 026 036 それからイエスは弟子たちといっしょにゲツセマネという所に来て、彼らに言われた。「わたしがあそこに行って祈っている間、ここにすわっていなさい。」 040 MAT 026 037 それから、ペテロとゼベダイの子ふたりとをいっしょに連れて行かれたが、イエスは悲しみもだえ始められた。 040 MAT 026 038 そのとき、イエスは彼らに言われた。「わたしは悲しみのあまり死ぬほどです。ここを離れないで、わたしといっしょに目をさましていなさい。」 040 MAT 026 039 それから、イエスは少し進んで行って、ひれ伏して祈って言われた。「わが父よ。できますならば、この杯をわたしから過ぎ去らせてください。しかし、わたしの願うようにではなく、あなたのみこころのように、なさってください。」 040 MAT 026 040 それから、イエスは弟子たちのところに戻って来て、彼らの眠っているのを見つけ、ペテロに言われた。「あなたがたは、そんなに、一時間でも、わたしといっしょに目をさましていることができなかったのか。 040 MAT 026 041 誘惑に陥らないように、目をさまして、祈っていなさい。心は燃えていても、肉体は弱いのです。」 040 MAT 026 042 イエスは二度目に離れて行き、祈って言われた。「わが父よ。どうしても飲まずには済まされぬ杯でしたら、どうぞみこころのとおりをなさってください。」 040 MAT 026 043 イエスが戻って来て、ご覧になると、彼らはまたも眠っていた。目をあけていることができなかったのである。 040 MAT 026 044 イエスは、またも彼らを置いて行かれ、もう一度同じことをくり返して三度目の祈りをされた。 040 MAT 026 045 それから、イエスは弟子たちのところに来て言われた。「まだ眠って休んでいるのですか。見なさい。時が来ました。人の子は罪人たちの手に渡されるのです。 040 MAT 026 046 立ちなさい。さあ、行くのです。見なさい。わたしを裏切る者が近づきました。」 040 MAT 026 047 イエスがまだ話しておられるうちに、見よ、十二弟子のひとりであるユダがやって来た。剣や棒を手にした大ぜいの群衆もいっしょであった。群衆はみな、祭司長、民の長老たちから差し向けられたものであった。 040 MAT 026 048 イエスを裏切る者は、彼らと合図を決めて、「私が口づけをするのが、その人だ。その人をつかまえるのだ。」と言っておいた。 040 MAT 026 049 それで、彼はすぐにイエスに近づき、「先生。お元気で。」と言って、口づけした。 040 MAT 026 050 イエスは彼に、「友よ。何のために来たのですか。」と言われた。そのとき、群衆が来て、イエスに手をかけて捕えた。 040 MAT 026 051 すると、イエスといっしょにいた者のひとりが、手を伸ばして剣を抜き、大祭司のしもべに撃ってかかり、その耳を切り落とした。 040 MAT 026 052 そのとき、イエスは彼に言われた。「剣をもとに納めなさい。剣を取る者はみな剣で滅びます。 040 MAT 026 053 それとも、わたしが父にお願いして、十二軍団よりも多くの御使いを、今わたしの配下に置いていただくことができないとでも思うのですか。 040 MAT 026 054 だが、そのようなことをすれば、こうならなければならないと書いてある聖書が、どうして実現されましょう。」 040 MAT 026 055 そのとき、イエスは群衆に言われた。「まるで強盗にでも向かうように、剣や棒を持ってわたしをつかまえに来たのですか。わたしは毎日、宮ですわって教えていたのに、あなたがたは、わたしを捕えなかったのです。 040 MAT 026 056 しかし、すべてこうなったのは、預言者たちの書が実現するためです。」そのとき、弟子たちはみな、イエスを見捨てて、逃げてしまった。 040 MAT 026 057 イエスをつかまえた人たちは、イエスを大祭司カヤパのところへ連れて行った。そこには、律法学者、長老たちが集まっていた。 040 MAT 026 058 しかし、ペテロも遠くからイエスのあとをつけながら、大祭司の中庭まではいって行き、成り行きを見ようと役人たちといっしょにすわった。 040 MAT 026 059 さて、祭司長たちと全議会は、イエスを死刑にするために、イエスを訴える偽証を求めていた。 040 MAT 026 060 偽証者がたくさん出て来たが、証拠はつかめなかった。しかし、最後にふたりの者が進み出て、 040 MAT 026 061 言った。「この人は、『わたしは神の神殿をこわして、それを三日のうちに建て直せる。』と言いました。」 040 MAT 026 062 そこで、大祭司は立ち上がってイエスに言った。「何も答えないのですか。この人たちが、あなたに不利な証言をしていますが、これはどうなのですか。」 040 MAT 026 063 しかし、イエスは黙っておられた。それで、大祭司はイエスに言った。「私は、生ける神によって、あなたに命じます。あなたは神の子キリストなのか、どうか。その答えを言いなさい。」 040 MAT 026 064 イエスは彼に言われた。「あなたの言うとおりです。なお、あなたがたに言っておきますが、今からのち、人の子が、力ある方の右の座に着き、天の雲に乗って来るのを、あなたがたは見ることになります。」 040 MAT 026 065 すると、大祭司は、自分の衣を引き裂いて言った。「神への冒涜だ。これでもまだ、証人が必要でしょうか。あなたがたは、今、神をけがすことばを聞いたのです。 040 MAT 026 066 どう考えますか。」彼らは答えて、「彼は死刑に当たる。」と言った。 040 MAT 026 067 そうして、彼らはイエスの顔につばきをかけ、こぶしでなぐりつけ、また、他の者たちは、イエスを平手で打って、 040 MAT 026 068 こう言った。「当ててみろ。キリスト。あなたを打ったのはだれか。」 040 MAT 026 069 ペテロが外の中庭にすわっていると、女中のひとりが来て言った。「あなたも、ガリラヤ人イエスといっしょにいましたね。」 040 MAT 026 070 しかし、ペテロはみなの前でそれを打ち消して、「何を言っているのか、私にはわからない。」と言った。 040 MAT 026 071 そして、ペテロが入口まで出て行くと、ほかの女中が、彼を見て、そこにいる人々に言った。「この人はナザレ人イエスといっしょでした。」 040 MAT 026 072 それで、ペテロは、またもそれを打ち消し、誓って、「そんな人は知らない。」と言った。 040 MAT 026 073 しばらくすると、そのあたりに立っている人々がペテロに近寄って来て、「確かに、あなたもあの仲間だ。ことばのなまりではっきりわかる。」と言った。 040 MAT 026 074 すると彼は、「そんな人は知らない。」と言って、のろいをかけて誓い始めた。するとすぐに、鶏が鳴いた。 040 MAT 026 075 そこでペテロは、「鶏が鳴く前に三度、あなたは、わたしを知らないと言います。」とイエスの言われたあのことばを思い出した。そうして、彼は出て行って、激しく泣いた。 040 MAT 027 001 さて、夜が明けると、祭司長、民の長老たち全員は、イエスを死刑にするために協議した。 040 MAT 027 002 それから、イエスを縛って連れ出し、総督ピラトに引き渡した。 040 MAT 027 003 そのとき、イエスを売ったユダは、イエスが罪に定められたのを知って後悔し、銀貨三十枚を、祭司長、長老たちに返して、 040 MAT 027 004 「私は罪を犯した。罪のない人の血を売ったりして。」と言った。しかし、彼らは、「私たちの知ったことか。自分で始末することだ。」と言った。 040 MAT 027 005 それで、彼は銀貨を神殿に投げ込んで立ち去った。そして、外に出て行って、首をつった。 040 MAT 027 006 祭司長たちは銀貨を取って、「これを神殿の金庫に入れるのはよくない。血の代価だから。」と言った。 040 MAT 027 007 彼らは相談して、その金で陶器師の畑を買い、旅人たちの墓地にした。 040 MAT 027 008 それで、その畑は、今でも血の畑と呼ばれている。 040 MAT 027 009 そのとき、預言者エレミヤを通して言われた事が成就した。「彼らは銀貨三十枚を取った。イスラエルの人々に値積もりされた人の値段である。 040 MAT 027 010 彼らは、主が私にお命じになったように、その金を払って、陶器師の畑を買った。」 040 MAT 027 011 さて、イエスは総督の前に立たれた。すると、総督はイエスに「あなたは、ユダヤ人の王ですか。」と尋ねた。イエスは彼に「そのとおりです。」と言われた。 040 MAT 027 012 しかし、祭司長、長老たちから訴えがなされたときは、何もお答えにならなかった。 040 MAT 027 013 そのとき、ピラトはイエスに言った。「あんなにいろいろとあなたに不利な証言をしているのに、聞こえないのですか。」 040 MAT 027 014 それでも、イエスは、どんな訴えに対しても一言もお答えにならなかった。それには総督も非常に驚いた。 040 MAT 027 015 ところで総督は、その祭りには、群衆のために、いつも望みの囚人をひとりだけ赦免してやっていた。 040 MAT 027 016 そのころ、バラバという名の知れた囚人が捕えられていた。 040 MAT 027 017 それで、彼らが集まったとき、ピラトが言った。「あなたがたは、だれを釈放してほしいのか。バラバか、それともキリストと呼ばれているイエスか。」 040 MAT 027 018 ピラトは、彼らがねたみからイエスを引き渡したことに気づいていたのである。 040 MAT 027 019 また、ピラトが裁判の席に着いていたとき、彼の妻が彼のもとに人をやって言わせた。「あの正しい人にはかかわり合わないでください。ゆうべ、私は夢で、あの人のことで苦しいめに会いましたから。」 040 MAT 027 020 しかし、祭司長、長老たちは、バラバのほうを願うよう、そして、イエスを死刑にするよう、群衆を説きつけた。 040 MAT 027 021 しかし、総督は彼らに答えて言った。「あなたがたは、ふたりのうちどちらを釈放してほしいのか。」彼らは言った。「バラバだ。」 040 MAT 027 022 ピラトは彼らに言った。「では、キリストと言われているイエスを私はどのようにしようか。」彼らはいっせいに言った。「十字架につけろ。」 040 MAT 027 023 だが、ピラトは言った。「あの人がどんな悪い事をしたというのか。」しかし、彼らはますます激しく「十字架につけろ。」と叫び続けた。 040 MAT 027 024 そこでピラトは、自分では手の下しようがなく、かえって暴動になりそうなのを見て、群衆の目の前で水を取り寄せ、手を洗って、言った。「この人の血について、私には責任がない。自分たちで始末するがよい。」 040 MAT 027 025 すると、民衆はみな答えて言った。「その人の血は、私たちや子どもたちの上にかかってもいい。」 040 MAT 027 026 そこで、ピラトは彼らのためにバラバを釈放し、イエスをむち打ってから、十字架につけるために引き渡した。 040 MAT 027 027 それから、総督の兵士たちは、イエスを官邸の中に連れて行って、イエスの回りに全部隊を集めた。 040 MAT 027 028 そして、イエスの着物を脱がせて、緋色の上着を着せた。 040 MAT 027 029 それから、いばらで冠を編み、頭にかぶらせ、右手に葦を持たせた。そして、彼らはイエスの前にひざまずいて、からかって言った。「ユダヤ人の王さま。ばんざい。」 040 MAT 027 030 また彼らはイエスにつばきをかけ、葦を取り上げてイエスの頭をたたいた。 040 MAT 027 031 こんなふうに、イエスをからかったあげく、その着物を脱がせて、もとの着物を着せ、十字架につけるために連れ出した。 040 MAT 027 032 そして、彼らが出て行くと、シモンというクレネ人を見つけたので、彼らは、この人にイエスの十字架を、むりやりに背負わせた。 040 MAT 027 033 ゴルゴタという所(「どくろ」と言われている場所)に来てから、 040 MAT 027 034 彼らはイエスに、苦みを混ぜたぶどう酒を飲ませようとした。イエスはそれをなめただけで、飲もうとはされなかった。 040 MAT 027 035 こうして、イエスを十字架につけてから、彼らはくじを引いて、イエスの着物を分け、 040 MAT 027 036 そこにすわって、イエスの見張りをした。 040 MAT 027 037 また、イエスの頭の上には、「これはユダヤ人の王イエスである。」と書いた罪状書きを掲げた。 040 MAT 027 038 そのとき、イエスといっしょに、ふたりの強盗が、ひとりは右に、ひとりは左に、十字架につけられた。 040 MAT 027 039 道を行く人々は、頭を振りながらイエスをののしって、 040 MAT 027 040 言った。「神殿を打ちこわして三日で建てる人よ。もし、神の子なら、自分を救ってみろ。十字架から降りて来い。」 040 MAT 027 041 同じように、祭司長たちも律法学者、長老たちといっしょになって、イエスをあざけって言った。 040 MAT 027 042 「彼は他人を救ったが、自分は救えない。イスラエルの王さまなら、今、十字架から降りてもらおうか。そうしたら、われわれは信じるから。 040 MAT 027 043 彼は神により頼んでいる。もし神のお気に入りなら、いま救っていただくがいい。『わたしは神の子だ。』と言っているのだから。」 040 MAT 027 044 イエスといっしょに十字架につけられた強盗どもも、同じようにイエスをののしった。 040 MAT 027 045 さて、十二時から、全地が暗くなって、三時まで続いた。 040 MAT 027 046 三時ごろ、イエスは大声で、「エリ、エリ、レマ、サバクタニ。」と叫ばれた。これは、「わが神、わが神。どうしてわたしをお見捨てになったのですか。」という意味である。 040 MAT 027 047 すると、それを聞いて、そこに立っていた人々のうち、ある人たちは、「この人はエリヤを呼んでいる。」と言った。 040 MAT 027 048 また、彼らのひとりがすぐ走って行って、海綿を取り、それに酸いぶどう酒を含ませて、葦の棒につけ、イエスに飲ませようとした。 040 MAT 027 049 ほかの者たちは、「私たちはエリヤが助けに来るかどうか見ることとしよう。」と言った。 040 MAT 027 050 そのとき、イエスはもう一度大声で叫んで、息を引き取られた。 040 MAT 027 051 すると、見よ。神殿の幕が上から下まで真二つに裂けた。そして、地が揺れ動き、岩が裂けた。 040 MAT 027 052 また、墓が開いて、眠っていた多くの聖徒たちのからだが生き返った。 040 MAT 027 053 そして、イエスの復活の後に墓から出て来て、聖都にはいって多くの人に現われた。 040 MAT 027 054 百人隊長および彼といっしょにイエスの見張りをしていた人々は、地震やいろいろの出来事を見て、非常な恐れを感じ、「この方はまことに神の子であった。」と言った。 040 MAT 027 055 そこには、遠くからながめている女たちがたくさんいた。イエスに仕えてガリラヤからついて来た女たちであった。 040 MAT 027 056 その中に、マグダラのマリヤ、ヤコブとヨセフとの母マリヤ、ゼベダイの子らの母がいた。 040 MAT 027 057 夕方になって、アリマタヤの金持ちでヨセフという人が来た。彼もイエスの弟子になっていた。 040 MAT 027 058 この人はピラトのところに行って、イエスのからだの下げ渡しを願った。そこで、ピラトは、渡すように命じた。 040 MAT 027 059 ヨセフはそれを取り降ろして、きれいな亜麻布に包み、 040 MAT 027 060 岩を掘って造った自分の新しい墓に納めた。墓の入口には大きな石をころがしかけて帰った。 040 MAT 027 061 そこにはマグダラのマリヤとほかのマリヤとが墓のほうを向いてすわっていた。 040 MAT 027 062 さて、次の日、すなわち備えの日の翌日、祭司長、パリサイ人たちはピラトのところに集まって、 040 MAT 027 063 こう言った。「閣下。あの、人をだます男がまだ生きていたとき、『自分は三日の後によみがえる。』と言っていたのを思い出しました。 040 MAT 027 064 ですから、三日目まで墓の番をするように命じてください。そうでないと、弟子たちが来て、彼を盗み出して、『死人の中からよみがえった。』と民衆に言うかもしれません。そうなると、この惑わしのほうが、前のばあいより、もっとひどいことになります。」 040 MAT 027 065 ピラトは「番兵を出してやるから、行ってできるだけの番をさせるがよい。」と彼らに言った。 040 MAT 027 066 そこで、彼らは行って、石に封印をし、番兵が墓の番をした。 040 MAT 028 001 さて、安息日が終わって、週の初めの日の明け方、マグダラのマリヤと、ほかのマリヤが墓を見に来た。 040 MAT 028 002 すると、大きな地震が起こった。それは、主の使いが天から降りて来て、石をわきへころがして、その上にすわったからである。 040 MAT 028 003 その顔は、いなずまのように輝き、その衣は雪のように白かった。 040 MAT 028 004 番兵たちは、御使いを見て恐ろしさのあまり震え上がり、死人のようになった。 040 MAT 028 005 すると、御使いは女たちに言った。「恐れてはいけません。あなたがたが十字架につけられたイエスを捜しているのを、私は知っています。 040 MAT 028 006 ここにはおられません。前から言っておられたように、よみがえられたからです。来て、納めてあった場所を見てごらんなさい。 040 MAT 028 007 ですから急いで行って、お弟子たちにこのことを知らせなさい。イエスが死人の中からよみがえられたこと、そして、あなたがたより先にガリラヤに行かれ、あなたがたは、そこで、お会いできるということです。では、これだけはお伝えしました。」 040 MAT 028 008 そこで、彼女たちは、恐ろしくはあったが大喜びで、急いで墓を離れ、弟子たちに知らせに走って行った。 040 MAT 028 009 すると、イエスが彼女たちに出会って、「おはよう。」と言われた。彼女たちは近寄って御足を抱いてイエスを拝んだ。 040 MAT 028 010 すると、イエスは言われた。「恐れてはいけません。行って、わたしの兄弟たちに、ガリラヤに行くように言いなさい。そこでわたしに会えるのです。」 040 MAT 028 011 女たちが行き着かないうちに、もう、数人の番兵が都に来て、起こった事を全部、祭司長たちに報告した。 040 MAT 028 012 そこで、祭司長たちは民の長老たちとともに集まって協議し、兵士たちに多額の金を与えて、 040 MAT 028 013 こう言った。「『夜、私たちが眠っている間に、弟子たちがやって来て、イエスを盗んで行った。』と言うのだ。 040 MAT 028 014 もし、このことが総督の耳にはいっても、私たちがうまく説得して、あなたがたには心配をかけないようにするから。」 040 MAT 028 015 そこで、彼らは金をもらって、指図されたとおりにした。それで、この話が広くユダヤ人の間に広まって今日に及んでいる。 040 MAT 028 016 しかし、十一人の弟子たちは、ガリラヤに行って、イエスの指示された山に登った。 040 MAT 028 017 そして、イエスにお会いしたとき、彼らは礼拝した。しかし、ある者は疑った。 040 MAT 028 018 イエスは近づいて来て、彼らにこう言われた。「わたしには天においても、地においても、いっさいの権威が与えられています。 040 MAT 028 019 それゆえ、あなたがたは行って、あらゆる国の人々を弟子としなさい。そして、父、子、聖霊の御名によってバプテスマを授け、 040 MAT 028 020 また、わたしがあなたがたに命じておいたすべてのことを守るように、彼らを教えなさい。見よ。わたしは、世の終わりまで、いつも、あなたがたとともにいます。」 # # BOOK 041 MAR Mark マルコの福音書 041 MAR 001 001 神の子イエス・キリストの福音のはじめ。 041 MAR 001 002 預言者イザヤの書にこう書いてある。 「見よ。わたしは使いをあなたの前に遣わし、 あなたの道を整えさせよう。 041 MAR 001 003 荒野で叫ぶ者の声がする。 『主の道を用意し、主の通られる道をまっすぐにせよ。』」 そのとおりに、 041 MAR 001 004 バプテスマのヨハネが荒野に現われて、罪が赦されるための悔い改めのバプテスマを説いた。 041 MAR 001 005 そこでユダヤ全国の人々とエルサレムの全住民が彼のところへ行き、自分の罪を告白して、ヨルダン川で彼からバプテスマを受けていた。 041 MAR 001 006 ヨハネは、らくだの毛で織った物を着て、腰に皮の帯を締め、いなごと野蜜を食べていた。 041 MAR 001 007 彼は宣べ伝えて言った。「私よりもさらに力のある方が、あとからおいでになります。私には、かがんでその方のくつのひもを解く値うちもありません。 041 MAR 001 008 私はあなたがたに水でバプテスマを授けましたが、その方は、あなたがたに聖霊のバプテスマをお授けになります。」 041 MAR 001 009 そのころ、イエスはガリラヤのナザレから来られ、ヨルダン川で、ヨハネからバプテスマをお受けになった。 041 MAR 001 010 そして、水の中から上がられると、すぐそのとき、天が裂けて御霊が鳩のように自分の上に下られるのを、ご覧になった。 041 MAR 001 011 そして天から声がした。「あなたは、わたしの愛する子、わたしはあなたを喜ぶ。」 041 MAR 001 012 そしてすぐ、御霊はイエスを荒野に追いやられた。 041 MAR 001 013 イエスは四十日間荒野にいて、サタンの誘惑を受けられた。野の獣とともにおられたが、御使いたちがイエスに仕えていた。 041 MAR 001 014 ヨハネが捕えられて後、イエスはガリラヤに行き、神の福音を宣べて言われた。 041 MAR 001 015 「時が満ち、神の国は近くなった。悔い改めて福音を信じなさい。」 041 MAR 001 016 ガリラヤ湖のほとりを通られると、シモンとシモンの兄弟アンデレが湖で網を打っているのをご覧になった。彼らは漁師であった。 041 MAR 001 017 イエスは彼らに言われた。「わたしについて来なさい。人間をとる漁師にしてあげよう。」 041 MAR 001 018 すると、すぐに、彼らは網を捨て置いて従った。 041 MAR 001 019 また少し行かれると、ゼベダイの子ヤコブとその兄弟ヨハネをご覧になった。彼らも舟の中で網を繕っていた。 041 MAR 001 020 すぐに、イエスがお呼びになった。すると彼らは父ゼベダイを雇い人たちといっしょに舟に残して、イエスについて行った。 041 MAR 001 021 それから、一行はカペナウムにはいった。そしてすぐに、イエスは安息日に会堂にはいって教えられた。 041 MAR 001 022 人々は、その教えに驚いた。それはイエスが、律法学者たちのようにではなく、権威ある者のように教えられたからである。 041 MAR 001 023 すると、すぐにまた、その会堂に汚れた霊につかれた人がいて、大声でわめいて言った。 041 MAR 001 024 「ナザレの人イエス。いったい私たちに何をしようというのです。あなたは私たちを滅ぼしに来たのでしょう。私はあなたがどなたか知っています。神の聖者です。」 041 MAR 001 025 イエスは彼をしかって、「黙れ。この人から出て行け。」と言われた。 041 MAR 001 026 すると、その汚れた霊はその人をひきつけさせ、大声をあげて、その人から出て行った。 041 MAR 001 027 人々はみな驚いて、互いに論じ合って言った。「これはどうだ。権威のある、新しい教えではないか。汚れた霊をさえ戒められる。すると従うのだ。」 041 MAR 001 028 こうして、イエスの評判は、すぐに、ガリラヤ全地の至る所に広まった。 041 MAR 001 029 イエスは会堂を出るとすぐに、ヤコブとヨハネを連れて、シモンとアンデレの家にはいられた。 041 MAR 001 030 ところが、シモンのしゅうとめが熱病で床に着いていたので、人々はさっそく彼女のことをイエスに知らせた。 041 MAR 001 031 イエスは、彼女に近寄り、その手を取って起こされた。すると熱がひき、彼女は彼らをもてなした。 041 MAR 001 032 夕方になった。日が沈むと、人々は病人や悪霊につかれた者をみな、イエスのもとに連れて来た。 041 MAR 001 033 こうして町中の者が戸口に集まって来た。 041 MAR 001 034 イエスは、さまざまの病気にかかっている多くの人をお直しになり、また多くの悪霊を追い出された。そして悪霊どもがものを言うのをお許しにならなかった。彼らがイエスをよく知っていたからである。 041 MAR 001 035 さて、イエスは、朝早くまだ暗いうちに起きて、寂しい所へ出て行き、そこで祈っておられた。 041 MAR 001 036 シモンとその仲間は、イエスを追って来て、 041 MAR 001 037 彼を見つけ、「みんながあなたを捜しております。」と言った。 041 MAR 001 038 イエスは彼らに言われた。「さあ、近くの別の村里へ行こう。そこにも福音を知らせよう。わたしは、そのために出て来たのだから。」 041 MAR 001 039 こうしてイエスは、ガリラヤ全地にわたり、その会堂に行って、福音を告げ知らせ、悪霊を追い出された。 041 MAR 001 040 さて、ひとりのらい病人が、イエスのみもとにお願いに来て、ひざまずいて言った。「お心一つで、私はきよくしていただけます。」 041 MAR 001 041 イエスは深くあわれみ、手を伸ばして、彼にさわって言われた。「わたしの心だ。きよくなれ。」 041 MAR 001 042 すると、すぐに、そのらい病が消えて、その人はきよくなった。 041 MAR 001 043 そこでイエスは、彼をきびしく戒めて、すぐに彼を立ち去らせた。 041 MAR 001 044 そのとき彼にこう言われた。「気をつけて、だれにも何も言わないようにしなさい。ただ行って、自分を祭司に見せなさい。そして、人々へのあかしのために、モーセが命じた物をもって、あなたのきよめの供え物をしなさい。」 041 MAR 001 045 ところが、彼は出て行って、この出来事をふれ回り、言い広め始めた。そのためイエスは表立って町の中にはいることができず、町はずれの寂しい所におられた。しかし、人々は、あらゆる所からイエスのもとにやって来た。 041 MAR 002 001 数日たって、イエスがカペナウムにまた来られると、家におられることが知れ渡った。 041 MAR 002 002 それで多くの人が集まったため、戸口のところまですきまもないほどになった。この人たちに、イエスはみことばを話しておられた。 041 MAR 002 003 そのとき、ひとりの中風の人が四人の人にかつがれて、みもとに連れて来られた。 041 MAR 002 004 群衆のためにイエスに近づくことができなかったので、その人々はイエスのおられるあたりの屋根をはがし、穴をあけて、中風の人を寝かせたままその床をつり降ろした。 041 MAR 002 005 イエスは彼らの信仰を見て、中風の人に、「子よ。あなたの罪は赦されました。」と言われた。 041 MAR 002 006 ところが、その場に律法学者が数人すわっていて、心の中で理屈を言った。 041 MAR 002 007 「この人は、なぜ、あんなことを言うのか。神をけがしているのだ。神おひとりのほか、だれが罪を赦すことができよう。」 041 MAR 002 008 彼らが心の中でこのように理屈を言っているのを、イエスはすぐにご自分の霊で見抜いて、こう言われた。「なぜ、あなたがたは心の中でそんな理屈を言っているのか。 041 MAR 002 009 中風の人に、『あなたの罪は赦された。』と言うのと、『起きて、寝床をたたんで歩け。』と言うのと、どちらがやさしいか。 041 MAR 002 010 人の子が地上で罪を赦す権威を持っていることを、あなたがたに知らせるために。」こう言ってから、中風の人に、 041 MAR 002 011 「あなたに言う。起きなさい。寝床をたたんで、家に帰りなさい。」と言われた。 041 MAR 002 012 すると彼は起き上がり、すぐに床を取り上げて、みなの見ている前を出て行った。それでみなの者がすっかり驚いて、「こういうことは、かつて見たことがない。」と言って神をあがめた。 041 MAR 002 013 イエスはまた湖のほとりに出て行かれた。すると群衆がみな、みもとにやって来たので、彼らに教えられた。 041 MAR 002 014 イエスは、道を通りながら、アルパヨの子レビが収税所にすわっているのをご覧になって、「わたしについて来なさい。」と言われた。すると彼は立ち上がって従った。 041 MAR 002 015 それから、イエスは、彼の家で食卓に着かれた。取税人や罪人たちも大ぜい、イエスや弟子たちといっしょに食卓に着いていた。こういう人たちが大ぜいいて、イエスに従っていたのである。 041 MAR 002 016 パリサイ派の律法学者たちは、イエスが罪人や取税人たちといっしょに食事をしておられるのを見て、イエスの弟子たちにこう言った。「なぜ、あの人は取税人や罪人たちといっしょに食事をするのですか。」 041 MAR 002 017 イエスはこれを聞いて、彼らにこう言われた。「医者を必要とするのは丈夫な者ではなく、病人です。わたしは正しい人を招くためではなく、罪人を招くために来たのです。」 041 MAR 002 018 ヨハネの弟子たちとパリサイ人たちは断食をしていた。そして、イエスのもとに来て言った。「ヨハネの弟子たちやパリサイ人の弟子たちは断食するのに、あなたの弟子たちはなぜ断食しないのですか。」 041 MAR 002 019 イエスは彼らに言われた。「花婿が自分たちといっしょにいる間、花婿につき添う友だちが断食できるでしょうか。花婿といっしょにいる時は、断食できないのです。 041 MAR 002 020 しかし、花婿が彼らから取り去られる時が来ます。その日には断食します。 041 MAR 002 021 だれも、真新しい布切れで古い着物の継ぎをするようなことはしません。そんなことをすれば、新しい継ぎ切れは古い着物を引き裂き、破れはもっとひどくなります。 041 MAR 002 022 また、だれも新しいぶどう酒を古い皮袋に入れるようなことはしません。そんなことをすれば、ぶどう酒は皮袋を張り裂き、ぶどう酒も皮袋もだめになってしまいます。新しいぶどう酒は新しい皮袋に入れるのです。」 041 MAR 002 023 ある安息日のこと、イエスは麦畑の中を通って行かれた。すると、弟子たちが道々穂を摘み始めた。 041 MAR 002 024 すると、パリサイ人たちがイエスに言った。「ご覧なさい。なぜ彼らは、安息日なのに、してはならないことをするのですか。」 041 MAR 002 025 イエスは彼らに言われた。「ダビデとその連れの者たちが、食物がなくてひもじかったとき、ダビデが何をしたか、読まなかったのですか。 041 MAR 002 026 アビヤタルが大祭司のころ、ダビデは神の家にはいって、祭司以外の者が食べてはならない供えのパンを、自分も食べ、またともにいた者たちにも与えたではありませんか。」 041 MAR 002 027 また言われた。「安息日は人間のために設けられたのです。人間が安息日のために造られたのではありません。 041 MAR 002 028 人の子は安息日にも主です。」 041 MAR 003 001 イエスはまた会堂にはいられた。そこに片手のなえた人がいた。 041 MAR 003 002 彼らは、イエスが安息日にその人を直すかどうか、じっと見ていた。イエスを訴えるためであった。 041 MAR 003 003 イエスは手のなえたその人に、「立って、真中に出なさい。」と言われた。 041 MAR 003 004 それから彼らに、「安息日にしてよいのは、善を行なうことなのか、それとも悪を行なうことなのか。いのちを救うことなのか、それとも殺すことなのか。」と言われた。彼らは黙っていた。 041 MAR 003 005 イエスは怒って彼らを見回し、その心のかたくななのを嘆きながら、その人に、「手を伸ばしなさい。」と言われた。彼は手を伸ばした。するとその手が元どおりになった。 041 MAR 003 006 そこでパリサイ人たちは出て行って、すぐにヘロデ党の者たちといっしょになって、イエスをどうして葬り去ろうかと相談を始めた。 041 MAR 003 007 それから、イエスは弟子たちとともに湖のほうに退かれた。すると、ガリラヤから出て来た大ぜいの人々がついて行った。またユダヤから、 041 MAR 003 008 エルサレムから、イドマヤから、ヨルダンの川向こうやツロ、シドンあたりから、大ぜいの人々が、イエスの行なっておられることを聞いて、みもとにやって来た。 041 MAR 003 009 イエスは、大ぜいの人なので、押し寄せて来ないよう、ご自分のために小舟を用意しておくように弟子たちに言いつけられた。 041 MAR 003 010 それは、多くの人をいやされたので、病気に悩む人たちがみな、イエスにさわろうとして、みもとに押しかけて来たからである。 041 MAR 003 011 また、汚れた霊どもが、イエスを見ると、みもとにひれ伏し、「あなたこそ神の子です。」と叫ぶのであった。 041 MAR 003 012 イエスは、ご自身のことを知らせないようにと、きびしく彼らを戒められた。 041 MAR 003 013 さて、イエスは山に登り、ご自身のお望みになる者たちを呼び寄せられたので、彼らはみもとに来た。 041 MAR 003 014 そこでイエスは十二弟子を任命された。それは、彼らを身近に置き、また彼らを遣わして福音を宣べさせ、 041 MAR 003 015 悪霊を追い出す権威を持たせるためであった。 041 MAR 003 016 こうして、イエスは十二弟子を任命された。そして、シモンにはペテロという名をつけ、 041 MAR 003 017 ゼベダイの子ヤコブとヤコブの兄弟ヨハネ、このふたりにはボアネルゲ、すなわち、雷の子という名をつけられた。 041 MAR 003 018 次に、アンデレ、ピリポ、バルトロマイ、マタイ、トマス、アルパヨの子ヤコブ、タダイ、熱心党員シモン、 041 MAR 003 019 イスカリオテ・ユダ。このユダが、イエスを裏切ったのである。 041 MAR 003 020 イエスが家に戻られると、また大ぜいの人が集まって来たので、みなは食事する暇もなかった。 041 MAR 003 021 イエスの身内の者たちが聞いて、イエスを連れ戻しに出て来た。「気が狂ったのだ。」と言う人たちがいたからである。 041 MAR 003 022 また、エルサレムから下って来た律法学者たちも、「彼は、ベルゼブルに取りつかれている。」と言い、「悪霊どものかしらによって、悪霊どもを追い出しているのだ。」とも言った。 041 MAR 003 023 そこでイエスは彼らをそばに呼んで、たとえによって話された。「サタンがどうしてサタンを追い出せましょう。 041 MAR 003 024 もし国が内部で分裂したら、その国は立ち行きません。 041 MAR 003 025 また、家が内輪もめをしたら、家は立ち行きません。 041 MAR 003 026 サタンも、もし内輪の争いが起こって分裂していれば、立ち行くことができないで滅びます。 041 MAR 003 027 確かに、強い人の家に押し入って家財を略奪するには、まずその強い人を縛り上げなければなりません。そのあとでその家を略奪できるのです。 041 MAR 003 028 まことに、あなたがたに告げます。人はその犯すどんな罪も赦していただけます。また、神をけがすことを言っても、それはみな赦していただけます。 041 MAR 003 029 しかし、聖霊をけがす者はだれでも、永遠に赦されず、とこしえの罪に定められます。」 041 MAR 003 030 このように言われたのは、彼らが、「イエスは、汚れた霊につかれている。」と言っていたからである。 041 MAR 003 031 さて、イエスの母と兄弟たちが来て、外に立っていて、人をやり、イエスを呼ばせた。 041 MAR 003 032 大ぜいの人がイエスを囲んですわっていたが、「ご覧なさい。あなたのおかあさんと兄弟たちが、外であなたをたずねています。」と言った。 041 MAR 003 033 すると、イエスは彼らに答えて言われた。「わたしの母とはだれのことですか。また、兄弟たちとはだれのことですか。」 041 MAR 003 034 そして、自分の回りにすわっている人たちを見回して言われた。「ご覧なさい。わたしの母、わたしの兄弟たちです。 041 MAR 003 035 神のみこころを行なう人はだれでも、わたしの兄弟、姉妹、また母なのです。」 041 MAR 004 001 イエスはまた湖のほとりで教え始められた。おびただしい数の群衆がみもとに集まった。それでイエスは湖の上の舟に乗り、そこに腰をおろされ、群衆はみな岸べの陸地にいた。 041 MAR 004 002 イエスはたとえによって多くのことを教えられた。その教えの中でこう言われた。 041 MAR 004 003 「よく聞きなさい。種を蒔く人が種蒔きに出かけた。 041 MAR 004 004 蒔いているとき、種が道ばたに落ちた。すると、鳥が来て食べてしまった。 041 MAR 004 005 また、別の種が土の薄い岩地に落ちた。土が深くなかったので、すぐに芽を出した。 041 MAR 004 006 しかし日が上ると、焼けて、根がないために枯れてしまった。 041 MAR 004 007 また、別の種がいばらの中に落ちた。ところが、いばらが伸びて、それをふさいでしまったので、実を結ばなかった。 041 MAR 004 008 また、別の種が良い地に落ちた。すると芽ばえ、育って、実を結び、三十倍、六十倍、百倍になった。」 041 MAR 004 009 そしてイエスは言われた。「聞く耳のある者は聞きなさい。」 041 MAR 004 010 さて、イエスだけになったとき、いつもつき従っている人たちが、十二弟子とともに、これらのたとえのことを尋ねた。 041 MAR 004 011 そこで、イエスは言われた。「あなたがたには、神の国の奥義が知らされているが、ほかの人たちには、すべてがたとえで言われるのです。 041 MAR 004 012 それは、『彼らは確かに見るには見るがわからず、聞くには聞くが悟らず、悔い改めて赦されることのないため。』です。」 041 MAR 004 013 そして彼らにこう言われた。「このたとえがわからないのですか。そんなことで、いったいどうしてたとえの理解ができましょう。 041 MAR 004 014 種蒔く人は、みことばを蒔くのです。 041 MAR 004 015 みことばが道ばたに蒔かれるとは、こういう人たちのことです――みことばを聞くと、すぐサタンが来て、彼らに蒔かれたみことばを持ち去ってしまうのです。 041 MAR 004 016 同じように、岩地に蒔かれるとは、こういう人たちのことです――みことばを聞くと、すぐに喜んで受けるが、 041 MAR 004 017 根を張らないで、ただしばらく続くだけです。それで、みことばのために困難や迫害が起こると、すぐにつまずいてしまいます。 041 MAR 004 018 もう一つの、いばらの中に種を蒔かれるとは、こういう人たちのことです――みことばを聞いてはいるが、 041 MAR 004 019 世の心づかいや、富の惑わし、その他いろいろな欲望がはいり込んで、みことばをふさぐので、実を結びません。 041 MAR 004 020 良い地に蒔かれるとは、みことばを聞いて受け入れ、三十倍、六十倍、百倍の実を結ぶ人たちです。」 041 MAR 004 021 また言われた。「あかりを持って来るのは枡の下や寝台の下に置くためでしょうか。燭台の上に置くためではありませんか。 041 MAR 004 022 隠れているのは、必ず現われるためであり、おおい隠されているのは、明らかにされるためです。 041 MAR 004 023 聞く耳のある者は聞きなさい。」 041 MAR 004 024 また彼らに言われた。「聞いていることによく注意しなさい。あなたがたは、人に量ってあげるその量りで、自分にも量り与えられ、さらにその上に増し加えられます。 041 MAR 004 025 持っている人は、さらに与えられ、持たない人は、持っているものまでも取り上げられてしまいます。」 041 MAR 004 026 また言われた。「神の国は、人が地に種を蒔くようなもので、 041 MAR 004 027 夜は寝て、朝は起き、そうこうしているうちに、種は芽を出して育ちます。どのようにしてか、人は知りません。 041 MAR 004 028 地は人手によらず実をならせるもので、初めに苗、次に穂、次に穂の中に実がはいります。 041 MAR 004 029 実が熟すると、人はすぐにかまを入れます。収穫の時が来たからです。」 041 MAR 004 030 また言われた。「神の国は、どのようなものと言えばよいでしょう。何にたとえたらよいでしょう。 041 MAR 004 031 それはからし種のようなものです。地に蒔かれるときには、地に蒔かれる種の中で、一番小さいのですが、 041 MAR 004 032 それが蒔かれると、生長してどんな野菜よりも大きくなり、大きな枝を張り、その陰に空の鳥が巣を作れるほどになります。」 041 MAR 004 033 イエスは、このように多くのたとえで、彼らの聞く力に応じて、みことばを話された。 041 MAR 004 034 たとえによらないで話されることはなかった。ただ、ご自分の弟子たちにだけは、すべてのことを解き明かされた。 041 MAR 004 035 さて、その日のこと、夕方になって、イエスは弟子たちに、「さあ、向こう岸へ渡ろう。」と言われた。 041 MAR 004 036 そこで弟子たちは、群衆をあとに残し、舟に乗っておられるままで、イエスをお連れした。他の舟もイエスについて行った。 041 MAR 004 037 すると、激しい突風が起こり、舟は波をかぶって水でいっぱいになった。 041 MAR 004 038 ところがイエスだけは、とものほうで、枕をして眠っておられた。弟子たちはイエスを起こして言った。「先生。私たちがおぼれて死にそうでも、何とも思われないのですか。」 041 MAR 004 039 イエスは起き上がって、風をしかりつけ、湖に「黙れ、静まれ。」と言われた。すると風はやみ、大なぎになった。 041 MAR 004 040 イエスは彼らに言われた。「どうしてそんなにこわがるのです。信仰がないのは、どうしたことです。」 041 MAR 004 041 彼らは大きな恐怖に包まれて、互いに言った。「風や湖までが言うことをきくとは、いったいこの方はどういう方なのだろう。」 041 MAR 005 001 こうして彼らは湖の向こう岸、ゲラサ人の地に着いた。 041 MAR 005 002 イエスが舟から上がられると、すぐに、汚れた霊につかれた人が墓場から出て来て、イエスを迎えた。 041 MAR 005 003 この人は墓場に住みついており、もはやだれも、鎖をもってしても、彼をつないでおくことができなかった。 041 MAR 005 004 彼はたびたび足かせや鎖でつながれたが、鎖を引きちぎり、足かせも砕いてしまったからで、だれにも彼を押えるだけの力がなかったのである。 041 MAR 005 005 それで彼は、夜昼となく、墓場や山で叫び続け、石で自分のからだを傷つけていた。 041 MAR 005 006 彼はイエスを遠くから見つけ、駆け寄って来てイエスを拝し、 041 MAR 005 007 大声で叫んで言った。「いと高き神の子、イエスさま。いったい私に何をしようというのですか。神の御名によってお願いします。どうか私を苦しめないでください。」 041 MAR 005 008 それは、イエスが、「汚れた霊よ。この人から出て行け。」と言われたからである。 041 MAR 005 009 それで、「おまえの名は何か。」とお尋ねになると、「私の名はレギオンです。私たちは大ぜいですから。」と言った。 041 MAR 005 010 そして、自分たちをこの地方から追い出さないでくださいと懇願した。 041 MAR 005 011 ところで、そこの山腹に、豚の大群が飼ってあった。 041 MAR 005 012 彼らはイエスに願って言った。「私たちを豚の中に送って、彼らに乗り移らせてください。」 041 MAR 005 013 イエスがそれを許されたので、汚れた霊どもは出て行って、豚に乗り移った。すると、二千匹ほどの豚の群れが、険しいがけを駆け降り、湖へなだれ落ちて、湖におぼれてしまった。 041 MAR 005 014 豚を飼っていた者たちは逃げ出して、町や村々でこの事を告げ知らせた。人々は何事が起こったのかと見にやって来た。 041 MAR 005 015 そして、イエスのところに来て、悪霊につかれていた人、すなわちレギオンを宿していた人が、着物を着て、正気に返ってすわっているのを見て、恐ろしくなった。 041 MAR 005 016 見ていた人たちが、悪霊につかれていた人に起こったことや、豚のことを、つぶさに彼らに話して聞かせた。 041 MAR 005 017 すると、彼らはイエスに、この地方から離れてくださるよう願った。 041 MAR 005 018 それでイエスが舟に乗ろうとされると、悪霊につかれていた人が、お供をしたいとイエスに願った。 041 MAR 005 019 しかし、お許しにならないで、彼にこう言われた。「あなたの家、あなたの家族のところに帰り、主があなたに、どんなに大きなことをしてくださったか、どんなにあわれんでくださったかを、知らせなさい。」 041 MAR 005 020 そこで、彼は立ち去り、イエスが自分にどんなに大きなことをしてくださったかを、デカポリスの地方で言い広め始めた。人々はみな驚いた。 041 MAR 005 021 イエスが舟でまた向こう岸へ渡られると、大ぜいの人の群れがみもとに集まった。イエスは岸べにとどまっておられた。 041 MAR 005 022 すると、会堂管理者のひとりでヤイロという者が来て、イエスを見て、その足もとにひれ伏し、 041 MAR 005 023 いっしょうけんめい願ってこう言った。「私の小さい娘が死にかけています。どうか、おいでくださって、娘の上に御手を置いてやってください。娘が直って、助かるようにしてください。」 041 MAR 005 024 そこで、イエスは彼といっしょに出かけられたが、多くの群衆がイエスについて来て、イエスに押し迫った。 041 MAR 005 025 ところで、十二年の間長血をわずらっている女がいた。 041 MAR 005 026 この女は多くの医者からひどいめに会わされて、自分の持ち物をみな使い果たしてしまったが、何のかいもなく、かえって悪くなる一方であった。 041 MAR 005 027 彼女は、イエスのことを耳にして、群衆の中に紛れ込み、うしろから、イエスの着物にさわった。 041 MAR 005 028 「お着物にさわることでもできれば、きっと直る。」と考えていたからである。 041 MAR 005 029 すると、すぐに、血の源がかれて、ひどい痛みが直ったことを、からだに感じた。 041 MAR 005 030 イエスも、すぐに、自分のうちから力が外に出て行ったことに気づいて、群衆の中を振り向いて、「だれがわたしの着物にさわったのですか。」と言われた。 041 MAR 005 031 そこで弟子たちはイエスに言った。「群衆があなたに押し迫っているのをご覧になっていて、それでも『だれがわたしにさわったのか。』とおっしゃるのですか。」 041 MAR 005 032 イエスは、それをした人を知ろうとして、見回しておられた。 041 MAR 005 033 女は恐れおののき、自分の身に起こった事を知り、イエスの前に出てひれ伏し、イエスに真実を余すところなく打ち明けた。 041 MAR 005 034 そこで、イエスは彼女にこう言われた。「娘よ。あなたの信仰があなたを直したのです。安心して帰りなさい。病気にかからず、すこやかでいなさい。」 041 MAR 005 035 イエスが、まだ話しておられるときに、会堂管理者の家から人がやって来て言った。「あなたのお嬢さんはなくなりました。なぜ、このうえ先生を煩わすことがありましょう。」 041 MAR 005 036 イエスは、その話のことばをそばで聞いて、会堂管理者に言われた。「恐れないで、ただ信じていなさい。」 041 MAR 005 037 そして、ペテロとヤコブとヤコブの兄弟ヨハネのほかは、だれも自分といっしょに行くのをお許しにならなかった。 041 MAR 005 038 彼らはその会堂管理者の家に着いた。イエスは、人々が、取り乱し、大声で泣いたり、わめいたりしているのをご覧になり、 041 MAR 005 039 中にはいって、彼らにこう言われた。「なぜ取り乱して、泣くのですか。子どもは死んだのではない。眠っているのです。」 041 MAR 005 040 人々はイエスをあざ笑った。しかし、イエスはみんなを外に出し、ただその子どもの父と母、それにご自分の供の者たちだけを伴って、子どものいる所へはいって行かれた。 041 MAR 005 041 そして、その子どもの手を取って、「タリタ、クミ。」と言われた。(訳して言えば、「少女よ。あなたに言う。起きなさい。」という意味である。) 041 MAR 005 042 すると、少女はすぐさま起き上がり、歩き始めた。十二歳にもなっていたからである。彼らはたちまち非常な驚きに包まれた。 041 MAR 005 043 イエスは、このことをだれにも知らせないようにと、きびしくお命じになり、さらに、少女に食事をさせるように言われた。 041 MAR 006 001 イエスはそこを去って、郷里に行かれた。弟子たちもついて行った。 041 MAR 006 002 安息日になったとき、会堂で教え始められた。それを聞いた多くの人々は驚いて言った。「この人は、こういうことをどこから得たのでしょう。この人に与えられた知恵や、この人の手で行なわれるこのような力あるわざは、いったい何でしょう。 041 MAR 006 003 この人は大工ではありませんか。マリヤの子で、ヤコブ、ヨセ、ユダ、シモンの兄弟ではありませんか。その妹たちも、私たちとここに住んでいるではありませんか。」こうして彼らはイエスにつまずいた。 041 MAR 006 004 イエスは彼らに言われた。「預言者が尊敬されないのは、自分の郷里、親族、家族の間だけです。」 041 MAR 006 005 それで、そこでは何一つ力あるわざを行なうことができず、少数の病人に手を置いていやされただけであった。 041 MAR 006 006 イエスは彼らの不信仰に驚かれた。それからイエスは、近くの村々を教えて回られた。 041 MAR 006 007 また、十二弟子を呼び、ふたりずつ遣わし始め、彼らに汚れた霊を追い出す権威をお与えになった。 041 MAR 006 008 また、彼らにこう命じられた。「旅のためには、杖一本のほかは、何も持って行ってはいけません。パンも、袋も、胴巻きに金も持って行ってはいけません。 041 MAR 006 009 くつは、はきなさい。しかし二枚の下着を着てはいけません。」 041 MAR 006 010 また、彼らに言われた。「どこででも一軒の家にはいったら、そこの土地から出て行くまでは、その家にとどまっていなさい。 041 MAR 006 011 もし、あなたがたを受け入れない場所、また、あなたがたに聞こうとしない人々なら、そこから出て行くときに、そこの人々に対する証言として、足の裏のちりを払い落としなさい。」 041 MAR 006 012 こうして十二人が出て行き、悔い改めを説き広め、 041 MAR 006 013 悪霊を多く追い出し、大ぜいの病人に油を塗っていやした。 041 MAR 006 014 イエスの名が知れ渡ったので、ヘロデ王の耳にもはいった。人々は、「バプテスマのヨハネが死人の中からよみがえったのだ。だから、あんな力が、彼のうちに働いているのだ。」と言っていた。 041 MAR 006 015 別の人々は、「彼はエリヤだ。」と言い、さらに別の人々は、「昔の預言者の中のひとりのような預言者だ。」と言っていた。 041 MAR 006 016 しかし、ヘロデはうわさを聞いて、「私が首をはねたあのヨハネが生き返ったのだ。」と言っていた。 041 MAR 006 017 実は、このヘロデが、自分の兄弟ピリポの妻ヘロデヤのことで、――ヘロデはこの女を妻としていた。――人をやってヨハネを捕え、牢につないだのであった。 041 MAR 006 018 これは、ヨハネがヘロデに、「あなたが兄弟の妻を自分のものとしていることは不法です。」と言い張ったからである。 041 MAR 006 019 ところが、ヘロデヤはヨハネを恨み、彼を殺したいと思いながら、果たせないでいた。 041 MAR 006 020 それはヘロデが、ヨハネを正しい聖なる人と知って、彼を恐れ、保護を加えていたからである。また、ヘロデはヨハネの教えを聞くとき、非常に当惑しながらも、喜んで耳を傾けていた。 041 MAR 006 021 ところが、良い機会が訪れた。ヘロデがその誕生日に、重臣や、千人隊長や、ガリラヤのおもだった人などを招いて、祝宴を設けたとき、 041 MAR 006 022 ヘロデヤの娘がはいって来て、踊りを踊ったので、ヘロデも列席の人々も喜んだ。そこで王は、この少女に、「何でもほしい物を言いなさい。与えよう。」と言った。 041 MAR 006 023 また、「おまえの望む物なら、私の国の半分でも、与えよう。」と言って、誓った。 041 MAR 006 024 そこで少女は出て行って、「何を願いましょうか。」とその母親に言った。すると母親は、「バプテスマのヨハネの首。」と言った。 041 MAR 006 025 そこで少女はすぐに、大急ぎで王の前に行き、こう言って頼んだ。「今すぐに、バプテスマのヨハネの首を盆に載せていただきとうございます。」 041 MAR 006 026 王は非常に心を痛めたが、自分の誓いもあり、列席の人々の手前もあって、少女の願いを退けることを好まなかった。 041 MAR 006 027 そこで王は、すぐに護衛兵をやって、ヨハネの首を持って来るように命令した。護衛兵は行って、牢の中でヨハネの首をはね、 041 MAR 006 028 その首を盆に載せて持って来て、少女に渡した。少女は、それを母親に渡した。 041 MAR 006 029 ヨハネの弟子たちは、このことを聞いたので、やって来て、遺体を引き取り、墓に納めたのであった。 041 MAR 006 030 さて、使徒たちは、イエスのもとに集まって来て、自分たちのしたこと、教えたことを残らずイエスに報告した。 041 MAR 006 031 そこでイエスは彼らに、「さあ、あなたがただけで、寂しい所へ行って、しばらく休みなさい。」と言われた。人々の出入りが多くて、ゆっくり食事する時間さえなかったからである。 041 MAR 006 032 そこで彼らは、舟に乗って、自分たちだけで寂しい所へ行った。 041 MAR 006 033 ところが、多くの人々が、彼らの出て行くのを見、それと気づいて、方々の町々からそこへ徒歩で駆けつけ、彼らよりも先に着いてしまった。 041 MAR 006 034 イエスは、舟から上がられると、多くの群衆をご覧になった。そして彼らが羊飼いのいない羊のようであるのを深くあわれみ、いろいろと教え始められた。 041 MAR 006 035 そのうち、もう時刻もおそくなったので、弟子たちはイエスのところに来て言った。「ここはへんぴな所で、もう時刻もおそくなりました。 041 MAR 006 036 みんなを解散させてください。そして、近くの部落や村に行って何か食べる物をめいめいで買うようにさせてください。」 041 MAR 006 037 すると、彼らに答えて言われた。「あなたがたで、あの人たちに何か食べる物を上げなさい。」そこで弟子たちは言った。「私たちが出かけて行って、二百デナリものパンを買ってあの人たちに食べさせるように、ということでしょうか。」 041 MAR 006 038 するとイエスは彼らに言われた。「パンはどれぐらいありますか。行って見て来なさい。」彼らは確かめて言った。「五つです。それと魚が二匹です。」 041 MAR 006 039 イエスは、みなを、それぞれ組にして青草の上にすわらせるよう、弟子たちにお命じになった。 041 MAR 006 040 そこで人々は、百人、五十人と固まって席に着いた。 041 MAR 006 041 するとイエスは、五つのパンと二匹の魚を取り、天を見上げて祝福を求め、パンを裂き、人々に配るように弟子たちに与えられた。また、二匹の魚もみなに分けられた。 041 MAR 006 042 人々はみな、食べて満腹した。 041 MAR 006 043 そして、パン切れを十二のかごにいっぱい取り集め、魚の残りも取り集めた。 041 MAR 006 044 パンを食べたのは、男が五千人であった。 041 MAR 006 045 それからすぐに、イエスは弟子たちを強いて舟に乗り込ませ、先に向こう岸のベツサイダに行かせ、ご自分は、その間に群衆を解散させておられた。 041 MAR 006 046 それから、群衆に別れ、祈るために、そこを去って山のほうに向かわれた。 041 MAR 006 047 夕方になったころ、舟は湖の真中に出ており、イエスだけが陸地におられた。 041 MAR 006 048 イエスは、弟子たちが、向かい風のために漕ぎあぐねているのをご覧になり、夜中の三時ごろ、湖の上を歩いて、彼らに近づいて行かれたが、そのままそばを通り過ぎようとのおつもりであった。 041 MAR 006 049 しかし、弟子たちは、イエスが湖の上を歩いておられるのを見て、幽霊だと思い、叫び声をあげた。 041 MAR 006 050 というのは、みなイエスを見ておびえてしまったからである。しかし、イエスはすぐに彼らに話しかけ、「しっかりしなさい。わたしだ。恐れることはない。」と言われた。 041 MAR 006 051 そして舟に乗り込まれると、風がやんだ。彼らの心中の驚きは非常なものであった。 041 MAR 006 052 というのは、彼らはまだパンのことから悟るところがなく、その心は堅く閉じていたからである。 041 MAR 006 053 彼らは湖を渡って、ゲネサレの地に着き、舟をつないだ。 041 MAR 006 054 そして、彼らが舟から上がると、人々はすぐにイエスだと気がついて、 041 MAR 006 055 そのあたりをくまなく走り回り、イエスがおられると聞いた場所へ、病人を床に載せて運んで来た。 041 MAR 006 056 イエスがはいって行かれると、村でも町でも部落でも、人々は病人たちを広場に寝かせ、そして、せめて、イエスの着物の端にでもさわらせてくださるようにと願った。そして、さわった人々はみな、いやされた。 041 MAR 007 001 さて、パリサイ人たちと幾人かの律法学者がエルサレムから来ていて、イエスの回りに集まった。 041 MAR 007 002 イエスの弟子のうちに、汚れた手で、すなわち洗わない手でパンを食べている者があるのを見て、 041 MAR 007 003 ――パリサイ人をはじめユダヤ人はみな、昔の人たちの言い伝えを堅く守って、手をよく洗わないでは食事をせず、 041 MAR 007 004 また、市場から帰ったときには、からだをきよめてからでないと食事をしない。まだこのほかにも、杯、水差し、銅器を洗うことなど、堅く守るように伝えられた、しきたりがたくさんある。―― 041 MAR 007 005 パリサイ人と律法学者たちは、イエスに尋ねた。「なぜ、あなたの弟子たちは、昔の人たちの言い伝えに従って歩まないで、汚れた手でパンを食べるのですか。」 041 MAR 007 006 イエスは彼らに言われた。「イザヤはあなたがた偽善者について預言をして、こう書いているが、まさにそのとおりです。 『この民は、口先ではわたしを敬うが、 その心は、わたしから遠く離れている。 041 MAR 007 007 彼らが、わたしを拝んでも、むだなことである。 人間の教えを、教えとして教えるだけだから。』 041 MAR 007 008 あなたがたは、神の戒めを捨てて、人間の言い伝えを堅く守っている。」 041 MAR 007 009 また言われた。「あなたがたは、自分たちの言い伝えを守るために、よくも神の戒めをないがしろにしたものです。 041 MAR 007 010 モーセは、『あなたの父と母を敬え。』また『父や母をののしる者は、死刑に処せられる。』と言っています。 041 MAR 007 011 それなのに、あなたがたは、もし人が父や母に向かって、私からあなたのために上げられる物は、コルバン(すなわち、ささげ物)になりました、と言えば、 041 MAR 007 012 その人には、父や母のために、もはや何もさせないようにしています。 041 MAR 007 013 こうしてあなたがたは、自分たちが受け継いだ言い伝えによって、神のことばを空文にしています。そして、これと同じようなことを、たくさんしているのです。」 041 MAR 007 014 イエスは再び群衆を呼び寄せて言われた。「みな、わたしの言うことを聞いて、悟るようになりなさい。 041 MAR 007 015 外側から人にはいって、人を汚すことのできる物は何もありません。人から出て来るものが、人を汚すものなのです。 041 MAR 007 016 イエスが群衆を離れて、家にはいられると、弟子たちは、このたとえについて尋ねた。 041 MAR 007 018 イエスは言われた。「あなたがたまで、そんなにわからないのですか。外側から人にはいって来る物は人を汚すことができない、ということがわからないのですか。 041 MAR 007 019 そのような物は、人の心には、はいらないで、腹にはいり、そして、かわやに出されてしまうのです。」イエスは、このように、すべての食物をきよいとされた。 041 MAR 007 020 また言われた。「人から出るもの、これが、人を汚すのです。 041 MAR 007 021 内側から、すなわち、人の心から出て来るものは、悪い考え、不品行、盗み、殺人、 041 MAR 007 022 姦淫、貪欲、よこしま、欺き、好色、ねたみ、そしり、高ぶり、愚かさであり、 041 MAR 007 023 これらの悪はみな、内側から出て、人を汚すのです。」 041 MAR 007 024 イエスは、そこを出てツロの地方へ行かれた。家にはいられたとき、だれにも知られたくないと思われたが、隠れていることはできなかった。 041 MAR 007 025 汚れた霊につかれた小さい娘のいる女が、イエスのことを聞きつけてすぐにやって来て、その足もとにひれ伏した。 041 MAR 007 026 この女はギリシヤ人で、スロ・フェニキヤの生まれであった。そして、自分の娘から悪霊を追い出してくださるようにイエスに願い続けた。 041 MAR 007 027 するとイエスは言われた。「まず子どもたちに満腹させなければなりません。子どもたちのパンを取り上げて、小犬に投げてやるのはよくないことです。」 041 MAR 007 028 しかし、女は答えて言った。「主よ。そのとおりです。でも、食卓の下の小犬でも、子どもたちのパンくずをいただきます。」 041 MAR 007 029 そこでイエスは言われた。「そうまで言うのですか。それなら家にお帰りなさい。悪霊はあなたの娘から出て行きました。」 041 MAR 007 030 女が家に帰ってみると、その子は床の上に伏せっており、悪霊はもう出ていた。 041 MAR 007 031 それから、イエスはツロの地方を去り、シドンを通って、もう一度、デカポリス地方のあたりのガリラヤ湖に来られた。 041 MAR 007 032 人々は、耳が聞こえず、口のきけない人を連れて来て、彼の上に手を置いてくださるように願った。 041 MAR 007 033 そこで、イエスは、その人だけを群衆の中から連れ出し、その両耳に指を差し入れ、それからつばきをして、その人の舌にさわられた。 041 MAR 007 034 そして、天を見上げ、深く嘆息して、その人に「エパタ。」すなわち、「開け。」と言われた。 041 MAR 007 035 すると彼の耳が開き、舌のもつれもすぐに解け、はっきりと話せるようになった。 041 MAR 007 036 イエスは、このことをだれにも言ってはならない、と命じられたが、彼らは口止めされればされるほど、かえって言いふらした。 041 MAR 007 037 人々は非常に驚いて言った。「この方のなさったことは、みなすばらしい。つんぼを聞こえるようにし、おしを話せるようにしてくださった。」 041 MAR 008 001 そのころ、また大ぜいの人の群れが集まっていたが、食べる物がなかったので、イエスは弟子たちを呼んで言われた。 041 MAR 008 002 「かわいそうに、この群衆はもう三日間もわたしといっしょにいて、食べる物を持っていないのです。 041 MAR 008 003 空腹のまま家に帰らせたら、途中で動けなくなるでしょう。それに遠くから来ている人もいます。」 041 MAR 008 004 弟子たちは答えた。「こんなへんぴな所で、どこからパンを手に入れて、この人たちに十分食べさせることができましょう。」 041 MAR 008 005 すると、イエスは尋ねられた。「パンはどれぐらいありますか。」弟子たちは、「七つです。」と答えた。 041 MAR 008 006 すると、イエスは群衆に、地面にすわるようにおっしゃった。それから、七つのパンを取り、感謝をささげてからそれを裂き、人々に配るように弟子たちに与えられたので、弟子たちは群衆に配った。 041 MAR 008 007 また、魚が少しばかりあったので、そのために感謝をささげてから、これも配るように言われた。 041 MAR 008 008 人々は食べて満腹した。そして余りのパン切れを七つのかごに取り集めた。 041 MAR 008 009 人々はおよそ四千人であった。それからイエスは、彼らを解散させられた。 041 MAR 008 010 そしてすぐに弟子たちとともに舟に乗り、ダルマヌタ地方へ行かれた。 041 MAR 008 011 パリサイ人たちがやって来て、イエスに議論をしかけ、天からのしるしを求めた。イエスをためそうとしたのである。 041 MAR 008 012 イエスは、心の中で深く嘆息して、こう言われた。「なぜ、今の時代はしるしを求めるのか。まことに、あなたがたに告げます。今の時代には、しるしは絶対に与えられません。」 041 MAR 008 013 イエスは彼らを離れて、また舟に乗って向こう岸へ行かれた。 041 MAR 008 014 弟子たちは、パンを持って来るのを忘れ、舟の中には、パンがただ一つしかなかった。 041 MAR 008 015 そのとき、イエスは彼らに命じて言われた。「パリサイ人のパン種とヘロデのパン種とに十分気をつけなさい。」 041 MAR 008 016 そこで弟子たちは、パンを持っていないということで、互いに議論し始めた。 041 MAR 008 017 それに気づいてイエスは言われた。「なぜ、パンがないといって議論しているのですか。まだわからないのですか、悟らないのですか。心が堅く閉じているのですか。 041 MAR 008 018 目がありながら見えないのですか。耳がありながら聞こえないのですか。あなたがたは、覚えていないのですか。 041 MAR 008 019 わたしが五千人に五つのパンを裂いて上げたとき、パン切れを取り集めて、幾つのかごがいっぱいになりましたか。」彼らは答えた。「十二です。」 041 MAR 008 020 「四千人に七つのパンを裂いて上げたときは、パン切れを取り集めて幾つのかごがいっぱいになりましたか。」彼らは答えた。「七つです。」 041 MAR 008 021 イエスは言われた。「まだ悟らないのですか。」 041 MAR 008 022 彼らはベツサイダに着いた。すると人々が、盲人を連れて来て、さわってやってくださるようにイエスに願った。 041 MAR 008 023 イエスは盲人の手を取って村の外に連れて行かれた。そしてその両眼につばきをつけ、両手を彼に当ててやって、「何か見えるか。」と聞かれた。 041 MAR 008 024 すると彼は、見えるようになって、「人が見えます。木のようですが、歩いているのが見えます。」と言った。 041 MAR 008 025 それから、イエスはもう一度彼の両眼に両手を当てられた。そして、彼が見つめていると、すっかり直り、すべてのものがはっきり見えるようになった。 041 MAR 008 026 そこでイエスは、彼を家に帰し、「村にはいって行かないように。」と言われた。 041 MAR 008 027 それから、イエスは弟子たちとピリポ・カイザリヤの村々へ出かけられた。その途中、イエスは弟子たちに尋ねて言われた。「人々はわたしをだれだと言っていますか。」 041 MAR 008 028 彼らは答えて言った。「バプテスマのヨハネだと言っています。エリヤだと言う人も、また預言者のひとりだと言う人もいます。」 041 MAR 008 029 するとイエスは、彼らに尋ねられた。「では、あなたがたは、わたしをだれだと言いますか。」ペテロが答えてイエスに言った。「あなたは、キリストです。」 041 MAR 008 030 するとイエスは、自分のことをだれにも言わないようにと、彼らを戒められた。 041 MAR 008 031 それから、人の子は必ず多くの苦しみを受け、長老、祭司長、律法学者たちに捨てられ、殺され、三日の後によみがえらなければならないと、弟子たちに教え始められた。 041 MAR 008 032 しかも、はっきりとこの事がらを話された。するとペテロは、イエスをわきにお連れして、いさめ始めた。 041 MAR 008 033 しかし、イエスは振り向いて、弟子たちを見ながら、ペテロをしかって言われた。「下がれ。サタン。あなたは神のことを思わないで、人のことを思っている。」 041 MAR 008 034 それから、イエスは群衆を弟子たちといっしょに呼び寄せて、彼らに言われた。「だれでもわたしについて来たいと思うなら、自分を捨て、自分の十字架を負い、そしてわたしについて来なさい。 041 MAR 008 035 いのちを救おうと思う者はそれを失い、わたしと福音とのためにいのちを失う者はそれを救うのです。 041 MAR 008 036 人は、たとい全世界を得ても、いのちを損じたら、何の得がありましょう。 041 MAR 008 037 自分のいのちを買い戻すために、人はいったい何を差し出すことができるでしょう。 041 MAR 008 038 このような姦淫と罪の時代にあって、わたしとわたしのことばを恥じるような者なら、人の子も、父の栄光を帯びて聖なる御使いたちとともに来るときには、そのような人のことを恥じます。」 041 MAR 009 001 イエスは彼らに言われた。「まことに、あなたがたに告げます。ここに立っている人々の中には、神の国が力をもって到来しているのを見るまでは、決して死を味わわない者がいます。」 041 MAR 009 002 それから六日たって、イエスは、ペテロとヤコブとヨハネだけを連れて、高い山に導いて行かれた。そして彼らの目の前で御姿が変わった。 041 MAR 009 003 その御衣は、非常に白く光り、世のさらし屋では、とてもできないほどの白さであった。 041 MAR 009 004 また、エリヤが、モーセとともに現われ、彼らはイエスと語り合っていた。 041 MAR 009 005 すると、ペテロが口出ししてイエスに言った。「先生。私たちがここにいることは、すばらしいことです。私たちが、幕屋を三つ造ります。あなたのために一つ、モーセのために一つ、エリヤのために一つ。」 041 MAR 009 006 実のところ、ペテロは言うべきことがわからなかったのである。彼らは恐怖に打たれたのであった。 041 MAR 009 007 そのとき雲がわき起こってその人々をおおい、雲の中から、「これは、わたしの愛する子である。彼の言うことを聞きなさい。」という声がした。 041 MAR 009 008 彼らが急いであたりを見回すと、自分たちといっしょにいるのはイエスだけで、そこにはもはやだれも見えなかった。 041 MAR 009 009 さて、山を降りながら、イエスは彼らに、人の子が死人の中からよみがえるときまでは、いま見たことをだれにも話してはならない、と特に命じられた。 041 MAR 009 010 そこで彼らは、そのおことばを心に堅く留め、死人の中からよみがえると言われたことはどういう意味かを論じ合った。 041 MAR 009 011 彼らはイエスに尋ねて言った。「律法学者たちは、まずエリヤが来るはずだと言っていますが、それはなぜでしょうか。」 041 MAR 009 012 イエスは言われた。「エリヤがまず来て、すべてのことを立て直します。では、人の子について、多くの苦しみを受け、さげすまれると書いてあるのは、どうしてなのですか。 041 MAR 009 013 しかし、あなたがたに告げます。エリヤはもう来たのです。そして人々は、彼について書いてあるとおりに、好き勝手なことを彼にしたのです。」 041 MAR 009 014 さて、彼らが、弟子たちのところに帰って来て、見ると、その回りに大ぜいの人の群れがおり、また、律法学者たちが弟子たちと論じ合っていた。 041 MAR 009 015 そしてすぐ、群衆はみな、イエスを見ると驚き、走り寄って来て、あいさつをした。 041 MAR 009 016 イエスは彼らに、「あなたがたは弟子たちと何を議論しているのですか。」と聞かれた。 041 MAR 009 017 すると群衆のひとりが、イエスに答えて言った。「先生。おしの霊につかれた私の息子を、先生のところに連れてまいりました。 041 MAR 009 018 その霊が息子に取りつきますと、所かまわず彼を押し倒します。そして彼はあわを吹き、歯ぎしりして、からだをこわばらせてしまいます。それでお弟子たちに、霊を追い出してくださるようにお願いしたのですが、お弟子たちにはできませんでした。」 041 MAR 009 019 イエスは答えて言われた。「ああ、不信仰な世だ。いつまであなたがたといっしょにいなければならないのでしょう。いつまであなたがたにがまんしていなければならないのでしょう。その子をわたしのところに連れて来なさい。」 041 MAR 009 020 そこで、人々はイエスのところにその子を連れて来た。その子がイエスを見ると、霊はすぐに彼をひきつけさせたので、彼は地面に倒れ、あわを吹きながら、ころげ回った。 041 MAR 009 021 イエスはその子の父親に尋ねられた。「この子がこんなになってから、どのくらいになりますか。」父親は言った。「幼い時からです。 041 MAR 009 022 この霊は、彼を滅ぼそうとして、何度も火の中や水の中に投げ込みました。ただ、もし、おできになるものなら、私たちをあわれんで、お助けください。」 041 MAR 009 023 するとイエスは言われた。「できるものなら、と言うのか。信じる者には、どんなことでもできるのです。」 041 MAR 009 024 するとすぐに、その子の父は叫んで言った。「信じます。不信仰な私をお助けください。」 041 MAR 009 025 イエスは、群衆が駆けつけるのをご覧になると、汚れた霊をしかって言われた。「おしとつんぼの霊。わたしが、おまえに命じる。この子から出て行きなさい。二度と、はいってはいけない。」 041 MAR 009 026 するとその霊は、叫び声をあげ、その子を激しくひきつけさせて、出て行った。するとその子が死人のようになったので、多くの人々は、「この子は死んでしまった。」と言った。 041 MAR 009 027 しかし、イエスは、彼の手を取って起こされた。するとその子は立ち上がった。 041 MAR 009 028 イエスが家にはいられると、弟子たちがそっとイエスに尋ねた。「どうしてでしょう。私たちには追い出せなかったのですが。」 041 MAR 009 029 すると、イエスは言われた。「この種のものは、祈りによらなければ、何によっても追い出せるものではありません。」 041 MAR 009 030 さて、一行はそこを去って、ガリラヤを通って行った。イエスは、人に知られたくないと思われた。 041 MAR 009 031 それは、イエスは弟子たちを教えて、「人の子は人々の手に引き渡され、彼らはこれを殺す。しかし、殺されて、三日の後に、人の子はよみがえる。」と話しておられたからである。 041 MAR 009 032 しかし、弟子たちは、このみことばが理解できなかった。また、イエスに尋ねるのを恐れていた。 041 MAR 009 033 カペナウムに着いた。イエスは、家にはいった後、弟子たちに質問された。「道で何を論じ合っていたのですか。」 041 MAR 009 034 彼らは黙っていた。道々、だれが一番偉いかと論じ合っていたからである。 041 MAR 009 035 イエスはおすわりになり、十二弟子を呼んで、言われた。「だれでも人の先に立ちたいと思うなら、みなのしんがりとなり、みなに仕える者となりなさい。」 041 MAR 009 036 それから、イエスは、ひとりの子どもを連れて来て、彼らの真中に立たせ、腕に抱き寄せて、彼らに言われた。 041 MAR 009 037 「だれでも、このような幼子たちのひとりを、わたしの名のゆえに受け入れるならば、わたしを受け入れるのです。また、だれでも、わたしを受け入れるならば、わたしを受け入れるのではなく、わたしを遣わされた方を受け入れるのです。」 041 MAR 009 038 ヨハネがイエスに言った。「先生。先生の名を唱えて悪霊を追い出している者を見ましたが、私たちの仲間ではないので、やめさせました。」 041 MAR 009 039 しかし、イエスは言われた。「やめさせることはありません。わたしの名を唱えて、力あるわざを行ないながら、すぐあとで、わたしを悪く言える者はないのです。 041 MAR 009 040 わたしたちに反対しない者は、わたしたちの味方です。 041 MAR 009 041 あなたがたがキリストの弟子だからというので、あなたがたに水一杯でも飲ませてくれる人は、決して報いを失うことはありません。これは確かなことです。 041 MAR 009 042 また、わたしを信じるこの小さい者たちのひとりにでもつまずきを与えるような者は、むしろ大きい石臼を首にゆわえつけられて、海に投げ込まれたほうがましです。 041 MAR 009 043 もし、あなたの手があなたのつまずきとなるなら、それを切り捨てなさい。不具の身でいのちにはいるほうが、両手そろっていてゲヘナの消えぬ火の中に落ち込むよりは、あなたにとってよいことです。 041 MAR 009 045 もし、あなたの足があなたのつまずきとなるなら、それを切り捨てなさい。片足でいのちにはいるほうが、両足そろっていてゲヘナに投げ入れられるよりは、あなたにとってよいことです。 041 MAR 009 047 もし、あなたの目があなたのつまずきを引き起こすのなら、それをえぐり出しなさい。片目で神の国にはいるほうが、両目そろっていてゲヘナに投げ入れられるよりは、あなたにとってよいことです。 041 MAR 009 048 そこでは、彼らを食ううじは、尽きることがなく、火は消えることがありません。 041 MAR 009 049 すべては、火によって、塩けをつけられるのです。 041 MAR 009 050 塩は、ききめのあるものです。しかし、もし塩に塩けがなくなったら、何によって塩けを取り戻せましょう。あなたがたは、自分自身のうちに塩けを保ちなさい。そして、互いに和合して暮らしなさい。」 041 MAR 010 001 イエスは、そこを立って、ユダヤ地方とヨルダンの向こうに行かれた。すると、群衆がまたもみもとに集まって来たので、またいつものように彼らを教えられた。 041 MAR 010 002 すると、パリサイ人たちがみもとにやって来て、夫が妻を離別することは許されるかどうかと質問した。イエスをためそうとしたのである。 041 MAR 010 003 イエスは答えて言われた。「モーセはあなたがたに、何と命じていますか。」 041 MAR 010 004 彼らは言った。「モーセは、離婚状を書いて妻を離別することを許しました。」 041 MAR 010 005 イエスは言われた。「モーセは、あなたがたの心がかたくななので、この命令をあなたがたに書いたのです。 041 MAR 010 006 しかし、創造の初めから、神は、人を男と女に造られたのです。 041 MAR 010 007 それゆえ、人はその父と母を離れて、 041 MAR 010 008 ふたりの者が一心同体になるのです。それで、もはやふたりではなく、ひとりなのです。 041 MAR 010 009 こういうわけで、人は、神が結び合わせたものを引き離してはなりません。」 041 MAR 010 010 家に戻った弟子たちが、この問題についてイエスに尋ねた。 041 MAR 010 011 そこで、イエスは彼らに言われた。「だれでも、妻を離別して別の女を妻にするなら、前の妻に対して姦淫を犯すのです。 041 MAR 010 012 妻も、夫を離別して別の男にとつぐなら、姦淫を犯しているのです。」 041 MAR 010 013 さて、イエスにさわっていただこうとして、人々が子どもたちを、みもとに連れて来た。ところが、弟子たちは彼らをしかった。 041 MAR 010 014 イエスはそれをご覧になり、憤って、彼らに言われた。「子どもたちを、わたしのところに来させなさい。止めてはいけません。神の国は、このような者たちのものです。 041 MAR 010 015 まことに、あなたがたに告げます。子どものように神の国を受け入れる者でなければ、決してそこに、はいることはできません。」 041 MAR 010 016 そしてイエスは子どもたちを抱き、彼らの上に手を置いて祝福された。 041 MAR 010 017 イエスが道に出て行かれると、ひとりの人が走り寄って、御前にひざまずいて、尋ねた。「尊い先生。永遠のいのちを自分のものとして受けるためには、私は何をしたらよいでしょうか。」 041 MAR 010 018 イエスは彼に言われた。「なぜ、わたしを『尊い』と言うのですか。尊い方は、神おひとりのほかには、だれもありません。 041 MAR 010 019 戒めはあなたもよく知っているはずです。『殺してはならない。姦淫してはならない。盗んではならない。偽証を立ててはならない。欺き取ってはならない。父と母を敬え。』」 041 MAR 010 020 すると、その人はイエスに言った。「先生。私はそのようなことをみな、小さい時から守っております。」 041 MAR 010 021 イエスは彼を見つめ、その人をいつくしんで言われた。「あなたには、欠けたことが一つあります。帰って、あなたの持ち物をみな売り払い、貧しい人たちに与えなさい。そうすれば、あなたは天に宝を積むことになります。そのうえで、わたしについて来なさい。」 041 MAR 010 022 すると彼は、このことばに顔を曇らせ、悲しみながら立ち去った。なぜなら、この人は多くの財産を持っていたからである。 041 MAR 010 023 イエスは、見回して、弟子たちに言われた。「裕福な者が神の国にはいることは、何とむずかしいことでしょう。」 041 MAR 010 024 弟子たちは、イエスのことばに驚いた。しかし、イエスは重ねて、彼らに答えて言われた。「子たちよ。神の国にはいることは、何とむずかしいことでしょう。 041 MAR 010 025 金持ちが神の国にはいるよりは、らくだが針の穴を通るほうがもっとやさしい。」 041 MAR 010 026 弟子たちは、ますます驚いて互いに言った。「それでは、だれが救われることができるのだろうか。」 041 MAR 010 027 イエスは、彼らをじっと見て言われた。「それは人にはできないことですが、神は、そうではありません。どんなことでも、神にはできるのです。」 041 MAR 010 028 ペテロがイエスにこう言い始めた。「ご覧ください。私たちは、何もかも捨てて、あなたに従ってまいりました。」 041 MAR 010 029 イエスは言われた。「まことに、あなたがたに告げます。わたしのために、また福音のために、家、兄弟、姉妹、母、父、子、畑を捨てた者で、 041 MAR 010 030 その百倍を受けない者はありません。今のこの時代には、家、兄弟、姉妹、母、子、畑を迫害の中で受け、後の世では永遠のいのちを受けます。 041 MAR 010 031 しかし、先の者があとになり、あとの者が先になることが多いのです。」 041 MAR 010 032 さて、一行は、エルサレムに上る途中にあった。イエスは先頭に立って歩いて行かれた。弟子たちは驚き、また、あとについて行く者たちは恐れを覚えた。すると、イエスは再び十二弟子をそばに呼んで、ご自分に起ころうとしていることを、話し始められた。 041 MAR 010 033 「さあ、これから、わたしたちはエルサレムに向かって行きます。人の子は、祭司長、律法学者たちに引き渡されるのです。彼らは、人の子を死刑に定め、そして、異邦人に引き渡します。 041 MAR 010 034 すると彼らはあざけり、つばきをかけ、むち打ち、ついに殺します。しかし、人の子は三日の後に、よみがえります。」 041 MAR 010 035 さて、ゼベダイのふたりの子、ヤコブとヨハネが、イエスのところに来て言った。「先生。私たちの頼み事をかなえていただきたいと思います。」 041 MAR 010 036 イエスは彼らに言われた。「何をしてほしいのですか。」 041 MAR 010 037 彼らは言った。「あなたの栄光の座で、ひとりを先生の右に、ひとりを左にすわらせてください。」 041 MAR 010 038 しかし、イエスは彼らに言われた。「あなたがたは自分が何を求めているのか、わかっていないのです。あなたがたは、わたしの飲もうとする杯を飲み、わたしの受けようとするバプテスマを受けることができますか。」 041 MAR 010 039 彼らは「できます。」と言った。イエスは言われた。「なるほどあなたがたは、わたしの飲む杯を飲み、わたしの受けるべきバプテスマを受けはします。 041 MAR 010 040 しかし、わたしの右と左にすわることは、わたしが許すことではありません。それに備えられた人々があるのです。」 041 MAR 010 041 十人の者がこのことを聞くと、ヤコブとヨハネのことで腹を立てた。 041 MAR 010 042 そこで、イエスは彼らを呼び寄せて、言われた。「あなたがたも知っているとおり、異邦人の支配者と認められた者たちは彼らを支配し、また、偉い人たちは彼らの上に権力をふるいます。 041 MAR 010 043 しかし、あなたがたの間では、そうでありません。あなたがたの間で偉くなりたいと思う者は、みなに仕える者になりなさい。 041 MAR 010 044 あなたがたの間で人の先に立ちたいと思う者は、みなのしもべになりなさい。 041 MAR 010 045 人の子が来たのも、仕えられるためではなく、かえって仕えるためであり、また、多くの人のための、贖いの代価として、自分のいのちを与えるためなのです。」 041 MAR 010 046 彼らはエリコに来た。イエスが、弟子たちや多くの群衆といっしょにエリコを出られると、テマイの子のバルテマイという盲人のこじきが、道ばたにすわっていた。 041 MAR 010 047 ところが、ナザレのイエスだと聞くと、「ダビデの子のイエスさま。私をあわれんでください。」と叫び始めた。 041 MAR 010 048 そこで、彼を黙らせようと、大ぜいでたしなめたが、彼はますます、「ダビデの子よ。私をあわれんでください。」と叫び立てた。 041 MAR 010 049 すると、イエスは立ち止まって、「あの人を呼んで来なさい。」と言われた。そこで、彼らはその盲人を呼び、「心配しないでよい。さあ、立ちなさい。あなたをお呼びになっている。」と言った。 041 MAR 010 050 すると、盲人は上着を脱ぎ捨て、すぐ立ち上がって、イエスのところに来た。 041 MAR 010 051 そこでイエスは、さらにこう言われた。「わたしに何をしてほしいのか。」すると、盲人は言った。「先生。目が見えるようになることです。」 041 MAR 010 052 するとイエスは、彼に言われた。「さあ、行きなさい。あなたの信仰があなたを救ったのです。」すると、すぐさま彼は見えるようになり、イエスの行かれる所について行った。 041 MAR 011 001 さて、彼らがエルサレムの近くに来て、オリーブ山のふもとのベテパゲとベタニヤに近づいたとき、イエスはふたりの弟子を使いに出して、 041 MAR 011 002 言われた。「向こうの村へ行きなさい。村にはいるとすぐ、まだだれも乗ったことのない、ろばの子が、つないであるのに気がつくでしょう。それをほどいて、引いて来なさい。 041 MAR 011 003 もし、『なぜそんなことをするのか。』と言う人があったら、『主がお入用なのです。すぐに、またここに送り返されます。』と言いなさい。」 041 MAR 011 004 そこで、出かけて見ると、表通りにある家の戸口に、ろばの子が一匹つないであったので、それをほどいた。 041 MAR 011 005 すると、そこに立っていた何人かが言った。「ろばの子をほどいたりして、どうするのですか。」 041 MAR 011 006 弟子たちが、イエスの言われたとおりを話すと、彼らは許してくれた。 041 MAR 011 007 そこで、ろばの子をイエスのところへ引いて行って、自分たちの上着をその上に掛けた。イエスはそれに乗られた。 041 MAR 011 008 すると、多くの人が、自分たちの上着を道に敷き、またほかの人々は、木の葉を枝ごと野原から切って来て、道に敷いた。 041 MAR 011 009 そして、前を行く者も、あとに従う者も、叫んでいた。 「ホサナ。 祝福あれ。主の御名によって来られる方に。 041 MAR 011 010 祝福あれ。いま来た、われらの父ダビデの国に。 ホサナ。いと高き所に。」 041 MAR 011 011 こうして、イエスはエルサレムに着き、宮にはいられた。そして、すべてを見て回った後、時間ももうおそかったので、十二弟子といっしょにベタニヤに出て行かれた。 041 MAR 011 012 翌日、彼らがベタニヤを出たとき、イエスは空腹を覚えられた。 041 MAR 011 013 葉の茂ったいちじくの木が遠くに見えたので、それに何かありはしないかと見に行かれたが、そこに来ると、葉のほかは何もないのに気づかれた。いちじくのなる季節ではなかったからである。 041 MAR 011 014 イエスは、その木に向かって言われた。「今後、いつまでも、だれもおまえの実を食べることのないように。」弟子たちはこれを聞いていた。 041 MAR 011 015 それから、彼らはエルサレムに着いた。イエスは宮にはいり、宮の中で売り買いしている人々を追い出し始め、両替人の台や、鳩を売る者たちの腰掛けを倒し、 041 MAR 011 016 また宮を通り抜けて器具を運ぶことをだれにもお許しにならなかった。 041 MAR 011 017 そして、彼らに教えて言われた。「『わたしの家は、すべての民の祈りの家と呼ばれる。』と書いてあるではありませんか。それなのに、あなたがたはそれを強盗の巣にしたのです。」 041 MAR 011 018 祭司長、律法学者たちは聞いて、どのようにしてイエスを殺そうかと相談した。イエスを恐れたからであった。なぜなら、群衆がみなイエスの教えに驚嘆していたからである。 041 MAR 011 019 夕方になると、イエスとその弟子たちは、いつも都から外に出た。 041 MAR 011 020 朝早く、通りがかりに見ると、いちじくの木が根まで枯れていた。 041 MAR 011 021 ペテロは思い出して、イエスに言った。「先生。ご覧なさい。あなたののろわれたいちじくの木が枯れました。」 041 MAR 011 022 イエスは答えて言われた。「神を信じなさい。 041 MAR 011 023 まことに、あなたがたに告げます。だれでも、この山に向かって、『動いて、海にはいれ。』と言って、心の中で疑わず、ただ、自分の言ったとおりになると信じるなら、そのとおりになります。 041 MAR 011 024 だからあなたがたに言うのです。祈って求めるものは何でも、すでに受けたと信じなさい。そうすれば、そのとおりになります。 041 MAR 011 025 また立って祈っているとき、だれかに対して恨み事があったら、赦してやりなさい。そうすれば、天におられるあなたがたの父も、あなたがたの罪を赦してくださいます。 041 MAR 011 026 彼らはまたエルサレムに来た。イエスが宮の中を歩いておられると、祭司長、律法学者、長老たちが、イエスのところにやって来た。 041 MAR 011 028 そして、イエスに言った。「何の権威によって、これらのことをしておられるのですか。だれが、あなたにこれらのことをする権威を授けたのですか。」 041 MAR 011 029 そこでイエスは彼らに言われた。「一言尋ねますから、それに答えなさい。そうすれば、わたしも、何の権威によってこれらのことをしているかを、話しましょう。 041 MAR 011 030 ヨハネのバプテスマは、天から来たのですか、人から出たのですか。答えなさい。」 041 MAR 011 031 すると、彼らは、こう言いながら、互いに論じ合った。「もし、天から、と言えば、それならなぜ、彼を信じなかったかと言うだろう。 041 MAR 011 032 だからといって、人から、と言ってよいだろうか。」――彼らは群衆を恐れていたのである。というのは、人々がみな、ヨハネは確かに預言者だと思っていたからである。 041 MAR 011 033 そこで彼らは、イエスに答えて、「わかりません。」と言った。そこでイエスは彼らに、「わたしも、何の権威によってこれらのことをするのか、あなたがたに話すまい。」と言われた。 041 MAR 012 001 それからイエスは、たとえを用いて彼らに話し始められた。 「ある人がぶどう園を造って、垣を巡らし、酒ぶねを掘り、やぐらを建て、それを農夫たちに貸して、旅に出かけた。 041 MAR 012 002 季節になると、ぶどう園の収穫の分けまえを受け取りに、しもべを農夫たちのところへ遣わした。 041 MAR 012 003 ところが、彼らは、そのしもべをつかまえて袋だたきにし、何も持たせないで送り帰した。 041 MAR 012 004 そこで、もう一度別のしもべを遣わしたが、彼らは、頭をなぐり、はずかしめた。 041 MAR 012 005 また別のしもべを遣わしたところが、彼らは、これも殺してしまった。続いて、多くのしもべをやったけれども、彼らは袋だたきにしたり、殺したりした。 041 MAR 012 006 その人には、なおもうひとりの者がいた。それは愛する息子であった。彼は、『私の息子なら、敬ってくれるだろう。』と言って、最後にその息子を遣わした。 041 MAR 012 007 すると、その農夫たちはこう話し合った。『あれはあと取りだ。さあ、あれを殺そうではないか。そうすれば、財産はこちらのものだ。』 041 MAR 012 008 そして、彼をつかまえて殺してしまい、ぶどう園の外に投げ捨てた。 041 MAR 012 009 ところで、ぶどう園の主人は、どうするでしょう。彼は戻って来て、農夫どもを打ち滅ぼし、ぶどう園をほかの人たちに与えてしまいます。 041 MAR 012 010 あなたがたは、次の聖書のことばを読んだことがないのですか。 『家を建てる者たちの見捨てた石、 それが礎の石になった。 041 MAR 012 011 これは主のなさったことだ。 私たちの目には、 不思議なことである。』」 041 MAR 012 012 彼らは、このたとえ話が、自分たちをさして語られたことに気づいたので、イエスを捕えようとしたが、やはり群衆を恐れた。それで、イエスを残して、立ち去った。 041 MAR 012 013 さて、彼らは、イエスに何か言わせて、わなに陥れようとして、パリサイ人とヘロデ党の者数人をイエスのところへ送った。 041 MAR 012 014 彼らはイエスのところに来て、言った。「先生。私たちは、あなたが真実な方で、だれをもはばからない方だと存じています。あなたは人の顔色を見ず、真理に基づいて神の道を教えておられるからです。ところで、カイザルに税金を納めることは律法にかなっていることでしょうか、かなっていないことでしょうか。納めるべきでしょうか、納めるべきでないのでしょうか。」 041 MAR 012 015 イエスは彼らの擬装を見抜いて言われた。「なぜ、わたしをためすのか。デナリ銀貨を持って来て見せなさい。」 041 MAR 012 016 彼らは持って来た。そこでイエスは彼らに言われた。「これはだれの肖像ですか。だれの銘ですか。」彼らは、「カイザルのです。」と言った。 041 MAR 012 017 するとイエスは言われた。「カイザルのものはカイザルに返しなさい。そして神のものは神に返しなさい。」彼らはイエスに驚嘆した。 041 MAR 012 018 また、復活はないと主張していたサドカイ人たちが、イエスのところに来て、質問した。 041 MAR 012 019 「先生。モーセは私たちのためにこう書いています。『もし、兄が死んで妻をあとに残し、しかも子がないばあいには、その弟はその女を妻にして、兄のための子をもうけなければならない。』 041 MAR 012 020 さて、七人の兄弟がいました。長男が妻をめとりましたが、子を残さないで死にました。 041 MAR 012 021 そこで次男がその女を妻にしたところ、やはり子を残さずに死にました。三男も同様でした。 041 MAR 012 022 こうして、七人とも子を残しませんでした。最後に、女も死にました。 041 MAR 012 023 復活の際、彼らがよみがえるとき、その女はだれの妻なのでしょうか。七人ともその女を妻にしたのですが。」 041 MAR 012 024 イエスは彼らに言われた。「そんな思い違いをしているのは、聖書も神の力も知らないからではありませんか。 041 MAR 012 025 人が死人の中からよみがえるときには、めとることも、とつぐこともなく、天の御使いたちのようです。 041 MAR 012 026 それに、死人がよみがえることについては、モーセの書にある柴の個所で、神がモーセにどう語られたか、あなたがたは読んだことがないのですか。『わたしは、アブラハムの神、イサクの神、ヤコブの神である。』とあります。 041 MAR 012 027 神は死んだ者の神ではありません。生きている者の神です。あなたがたはたいへんな思い違いをしています。」 041 MAR 012 028 律法学者がひとり来て、その議論を聞いていたが、イエスがみごとに答えられたのを知って、イエスに尋ねた。「すべての命令の中で、どれが一番たいせつですか。」 041 MAR 012 029 イエスは答えられた。「一番たいせつなのはこれです。『イスラエルよ。聞け。われらの神である主は、唯一の主である。 041 MAR 012 030 心を尽くし、思いを尽くし、知性を尽くし、力を尽くして、あなたの神である主を愛せよ。』 041 MAR 012 031 次にはこれです。『あなたの隣人をあなた自身のように愛せよ。』この二つより大事な命令は、ほかにありません。」 041 MAR 012 032 そこで、この律法学者は、イエスに言った。「先生。そのとおりです。『主は唯一であって、そのほかに、主はない。』と言われたのは、まさにそのとおりです。 041 MAR 012 033 また『心を尽くし、知恵を尽くし、力を尽くして主を愛し、また隣人をあなた自身のように愛する。』ことは、どんな全焼のいけにえや供え物よりも、ずっとすぐれています。」 041 MAR 012 034 イエスは、彼が賢い返事をしたのを見て、言われた。「あなたは神の国から遠くない。」それから後は、だれもイエスにあえて尋ねる者がなかった。 041 MAR 012 035 イエスが宮で教えておられたとき、こう言われた。「律法学者たちは、どうしてキリストをダビデの子と言うのですか。 041 MAR 012 036 ダビデ自身、聖霊によって、こう言っています。 『主は私の主に言われた。 「わたしがあなたの敵を あなたの足の下に従わせるまでは、 わたしの右の座に着いていなさい。」』 041 MAR 012 037 ダビデ自身がキリストを主と呼んでいるのに、どういうわけでキリストがダビデの子なのでしょう。」大ぜいの群衆は、イエスの言われることを喜んで聞いていた。 041 MAR 012 038 イエスはその教えの中でこう言われた。「律法学者たちには気をつけなさい。彼らは、長い衣をまとって歩き回ったり、広場であいさつされたりすることが大好きで、 041 MAR 012 039 また会堂の上席や、宴会の上座が大好きです。 041 MAR 012 040 また、やもめの家を食いつぶし、見えを飾るために長い祈りをします。こういう人たちは人一倍きびしい罰を受けるのです。」 041 MAR 012 041 それから、イエスは献金箱に向かってすわり、人々が献金箱へ金を投げ入れる様子を見ておられた。多くの金持ちが大金を投げ入れていた。 041 MAR 012 042 そこへひとりの貧しいやもめが来て、レプタ銅貨を二つ投げ入れた。それは一コドラントに当たる。 041 MAR 012 043 すると、イエスは弟子たちを呼び寄せて、こう言われた。「まことに、あなたがたに告げます。この貧しいやもめは、献金箱に投げ入れていたどの人よりもたくさん投げ入れました。 041 MAR 012 044 みなは、あり余る中から投げ入れたのに、この女は、乏しい中から、あるだけを全部、生活費の全部を投げ入れたからです。」 041 MAR 013 001 イエスが、宮から出て行かれるとき、弟子のひとりがイエスに言った。「先生。これはまあ、何とみごとな石でしょう。何とすばらしい建物でしょう。」 041 MAR 013 002 すると、イエスは彼に言われた。「この大きな建物を見ているのですか。石がくずされずに、積まれたまま残ることは決してありません。」 041 MAR 013 003 イエスがオリーブ山で宮に向かってすわっておられると、ペテロ、ヤコブ、ヨハネ、アンデレが、ひそかにイエスに質問した。 041 MAR 013 004 「お話しください。いつ、そういうことが起こるのでしょう。また、それがみな実現するようなときには、どんな前兆があるのでしょう。」 041 MAR 013 005 そこで、イエスは彼らに話し始められた。「人に惑わされないように気をつけなさい。 041 MAR 013 006 わたしの名を名のる者が大ぜい現われ、『私こそそれだ。』と言って、多くの人を惑わすでしょう。 041 MAR 013 007 また、戦争のことや戦争のうわさを聞いても、あわててはいけません。それは必ず起こることです。しかし、終わりが来たのではありません。 041 MAR 013 008 民族は民族に、国は国に敵対して立ち上がり、方々に地震があり、ききんも起こるはずだからです。これらのことは、産みの苦しみの初めです。 041 MAR 013 009 だが、あなたがたは、気をつけていなさい。人々は、あなたがたを議会に引き渡し、また、あなたがたは会堂でむち打たれ、また、わたしのゆえに、総督や王たちの前に立たされます。それは彼らに対してあかしをするためです。 041 MAR 013 010 こうして、福音がまずあらゆる民族に宣べ伝えられなければなりません。 041 MAR 013 011 彼らに捕えられ、引き渡されたとき、何と言おうかなどと案じるには及びません。ただ、そのとき自分に示されることを、話しなさい。話すのはあなたがたではなく、聖霊です。 041 MAR 013 012 また兄弟は兄弟を死に渡し、父は子を死に渡し、子は両親に逆らって立ち、彼らを死に至らせます。 041 MAR 013 013 また、わたしの名のために、あなたがたはみなの者に憎まれます。しかし、最後まで耐え忍ぶ人は救われます。 041 MAR 013 014 『荒らす憎むべきもの』が、自分の立ってはならない所に立っているのを見たならば(読者はよく読み取るように。)ユダヤにいる人々は山へ逃げなさい。 041 MAR 013 015 屋上にいる者は降りてはいけません。家から何かを取り出そうとして中にはいってはいけません。 041 MAR 013 016 畑にいる者は着物を取りに戻ってはいけません。 041 MAR 013 017 だが、その日、悲惨なのは身重の女と乳飲み子を持つ女です。 041 MAR 013 018 ただ、このことが冬に起こらないように祈りなさい。 041 MAR 013 019 その日は、神が天地を創造された初めから、今に至るまで、いまだかつてなかったような、またこれからもないような苦難の日だからです。 041 MAR 013 020 そして、もし主がその日数を少なくしてくださらないなら、ひとりとして救われる者はないでしょう。しかし、主は、ご自分で選んだ選びの民のために、その日数を少なくしてくださったのです。 041 MAR 013 021 そのとき、あなたがたに、『そら、キリストがここにいる。』とか、『ほら、あそこにいる。』とか言う者があっても、信じてはいけません。 041 MAR 013 022 にせキリスト、にせ預言者たちが現われて、できれば選民を惑わそうとして、しるしや不思議なことをして見せます。 041 MAR 013 023 だから、気をつけていなさい。わたしは、何もかも前もって話しました。 041 MAR 013 024 だが、その日には、その苦難に続いて、太陽は暗くなり、月は光を放たず、 041 MAR 013 025 星は天から落ち、天の万象は揺り動かされます。 041 MAR 013 026 そのとき、人々は、人の子が偉大な力と栄光を帯びて雲に乗って来るのを見るのです。 041 MAR 013 027 そのとき、人の子は、御使いたちを送り、地の果てから天の果てまで、四方からその選びの民を集めます。 041 MAR 013 028 いちじくの木から、たとえを学びなさい。枝が柔らかになって、葉が出て来ると、夏の近いことがわかります。 041 MAR 013 029 そのように、これらのことが起こるのを見たら、人の子が戸口まで近づいていると知りなさい。 041 MAR 013 030 まことに、あなたがたに告げます。これらのことが全部起こってしまうまでは、この時代は過ぎ去りません。 041 MAR 013 031 この天地は滅びます。しかし、わたしのことばは決して滅びることがありません。 041 MAR 013 032 ただし、その日、その時がいつであるかは、だれも知りません。天の御使いたちも子も知りません。ただ父だけが知っておられます。 041 MAR 013 033 気をつけなさい。目をさまし、注意していなさい。その定めの時がいつだか、あなたがたは知らないからです。 041 MAR 013 034 それはちょうど、旅に立つ人が、出がけに、しもべたちにはそれぞれ仕事を割り当てて責任を持たせ、門番には目をさましているように言いつけるようなものです。 041 MAR 013 035 だから、目をさましていなさい。家の主人がいつ帰って来るか、夕方か、夜中か、鶏の鳴くころか、明け方か、わからないからです。 041 MAR 013 036 主人が不意に帰って来たとき眠っているのを見られないようにしなさい。 041 MAR 013 037 わたしがあなたがたに話していることは、すべての人に言っているのです。目をさましていなさい。」 041 MAR 014 001 さて、過越の祭りと種なしパンの祝いが二日後に迫っていたので、祭司長、律法学者たちは、どうしたらイエスをだまして捕え、殺すことができるだろうか、とけんめいであった。 041 MAR 014 002 彼らは、「祭りの間はいけない。民衆の騒ぎが起こるといけないから。」と話していた。 041 MAR 014 003 イエスがベタニヤで、らい病人シモンの家におられたとき、食卓に着いておられると、ひとりの女が、純粋で、非常に高価なナルド油のはいった石膏のつぼを持って来て、そのつぼを割り、イエスの頭に注いだ。 041 MAR 014 004 すると、何人かの者が憤慨して互いに言った。「何のために、香油をこんなにむだにしたのか。 041 MAR 014 005 この香油なら、三百デナリ以上に売れて、貧乏な人たちに施しができたのに。」そうして、その女をきびしく責めた。 041 MAR 014 006 すると、イエスは言われた。「そのままにしておきなさい。なぜこの人を困らせるのですか。わたしのために、りっぱなことをしてくれたのです。 041 MAR 014 007 貧しい人たちは、いつもあなたがたといっしょにいます。それで、あなたがたがしたいときは、いつでも彼らに良いことをしてやれます。しかし、わたしは、いつもあなたがたといっしょにいるわけではありません。 041 MAR 014 008 この女は、自分にできることをしたのです。埋葬の用意にと、わたしのからだに、前もって油を塗ってくれたのです。 041 MAR 014 009 まことに、あなたがたに告げます。世界中のどこででも、福音が宣べ伝えられる所なら、この人のした事も語られて、この人の記念となるでしょう。」 041 MAR 014 010 ところで、イスカリオテ・ユダは、十二弟子のひとりであるが、イエスを売ろうとして祭司長たちのところへ出向いて行った。 041 MAR 014 011 彼らはこれを聞いて喜んで、金をやろうと約束した。そこでユダは、どうしたら、うまいぐあいにイエスを引き渡せるかと、ねらっていた。 041 MAR 014 012 種なしパンの祝いの第一日、すなわち、過越の小羊をほふる日に、弟子たちはイエスに言った。「過越の食事をなさるのに、私たちは、どこへ行って用意をしましょうか。」 041 MAR 014 013 そこで、イエスは、弟子のうちふたりを送って、こう言われた。「都にはいりなさい。そうすれば、水がめを運んでいる男に会うから、その人について行きなさい。 041 MAR 014 014 そして、その人がはいって行く家の主人に、『弟子たちといっしょに過越の食事をする、わたしの客間はどこか、と先生が言っておられる。』と言いなさい。 041 MAR 014 015 するとその主人が自分で、席が整って用意のできた二階の広間を見せてくれます。そこでわたしたちのために用意をしなさい。」 041 MAR 014 016 弟子たちが出かけて行って、都にはいると、まさしくイエスの言われたとおりであった。それで、彼らはそこで過越の食事の用意をした。 041 MAR 014 017 夕方になって、イエスは十二弟子といっしょにそこに来られた。 041 MAR 014 018 そして、みなが席に着いて、食事をしているとき、イエスは言われた。「まことに、あなたがたに告げます。あなたがたのうちのひとりで、わたしといっしょに食事をしている者が、わたしを裏切ります。」 041 MAR 014 019 弟子たちは悲しくなって、「まさか私ではないでしょう。」とかわるがわるイエスに言いだした。 041 MAR 014 020 イエスは言われた。「この十二人の中のひとりで、わたしといっしょに、同じ鉢にパンを浸している者です。 041 MAR 014 021 確かに、人の子は、自分について書いてあるとおりに、去って行きます。しかし、人の子を裏切るような人間はのろわれます。そういう人は生まれなかったほうがよかったのです。」 041 MAR 014 022 それから、みなが食事をしているとき、イエスはパンを取り、祝福して後、これを裂き、彼らに与えて言われた。「取りなさい。これはわたしのからだです。」 041 MAR 014 023 また、杯を取り、感謝をささげて後、彼らに与えられた。彼らはみなその杯から飲んだ。 041 MAR 014 024 イエスは彼らに言われた。「これはわたしの契約の血です。多くの人のために流されるものです。 041 MAR 014 025 まことに、あなたがたに告げます。神の国で新しく飲むその日までは、わたしはもはや、ぶどうの実で造った物を飲むことはありません。」 041 MAR 014 026 そして、賛美の歌を歌ってから、みなでオリーブ山へ出かけて行った。 041 MAR 014 027 イエスは、弟子たちに言われた。「あなたがたはみな、つまずきます。『わたしが羊飼いを打つ。すると、羊は散り散りになる。』と書いてありますから。 041 MAR 014 028 しかしわたしは、よみがえってから、あなたがたより先に、ガリラヤへ行きます。」 041 MAR 014 029 すると、ペテロがイエスに言った。「たとい全部の者がつまずいても、私はつまずきません。」 041 MAR 014 030 イエスは彼に言われた。「まことに、あなたに告げます。あなたは、きょう、今夜、鶏が二度鳴く前に、わたしを知らないと三度言います。」 041 MAR 014 031 ペテロは力を込めて言い張った。「たとい、ごいっしょに死ななければならないとしても、私は、あなたを知らないなどとは決して申しません。」みなの者もそう言った。 041 MAR 014 032 ゲツセマネという所に来て、イエスは弟子たちに言われた。「わたしが祈る間、ここにすわっていなさい。」 041 MAR 014 033 そして、ペテロ、ヤコブ、ヨハネをいっしょに連れて行かれた。イエスは深く恐れもだえ始められた。 041 MAR 014 034 そして彼らに言われた。「わたしは悲しみのあまり死ぬほどです。ここを離れないで、目をさましていなさい。」 041 MAR 014 035 それから、イエスは少し進んで行って、地面にひれ伏し、もしできることなら、この時が自分から過ぎ去るようにと祈り、 041 MAR 014 036 またこう言われた。「アバ、父よ。あなたにおできにならないことはありません。どうぞ、この杯をわたしから取りのけてください。しかし、わたしの願うことではなく、あなたのみこころのままを、なさってください。」 041 MAR 014 037 それから、イエスは戻って来て、彼らの眠っているのを見つけ、ペテロに言われた。「シモン。眠っているのか。一時間でも目をさましていることができなかったのか。 041 MAR 014 038 誘惑に陥らないように、目をさまして、祈り続けなさい。心は燃えていても、肉体は弱いのです。」 041 MAR 014 039 イエスは再び離れて行き、前と同じことばで祈られた。 041 MAR 014 040 そして、また戻って来て、ご覧になると、彼らは眠っていた。ひどく眠けがさしていたのである。彼らは、イエスにどう言ってよいか、わからなかった。 041 MAR 014 041 イエスは三度目に来て、彼らに言われた。「まだ眠って休んでいるのですか。もう十分です。時が来ました。見なさい。人の子は罪人たちの手に渡されます。 041 MAR 014 042 立ちなさい。さあ、行くのです。見なさい。わたしを裏切る者が近づきました。」 041 MAR 014 043 そしてすぐ、イエスがまだ話しておられるうちに、十二弟子のひとりのユダが現われた。剣や棒を手にした群衆もいっしょであった。群衆はみな、祭司長、律法学者、長老たちから差し向けられたものであった。 041 MAR 014 044 イエスを裏切る者は、彼らと前もって次のような合図を決めておいた。「私が口づけをするのが、その人だ。その人をつかまえて、しっかりと引いて行くのだ。」 041 MAR 014 045 それで、彼はやって来るとすぐに、イエスに近寄って、「先生。」と言って、口づけした。 041 MAR 014 046 すると人々は、イエスに手をかけて捕えた。 041 MAR 014 047 そのとき、イエスのそばに立っていたひとりが、剣を抜いて大祭司のしもべに撃ちかかり、その耳を切り落とした。 041 MAR 014 048 イエスは彼らに向かって言われた。「まるで強盗にでも向かうように、剣や棒を持ってわたしを捕えに来たのですか。 041 MAR 014 049 わたしは毎日、宮であなたがたといっしょにいて、教えていたのに、あなたがたは、わたしを捕えなかったのです。しかし、こうなったのは聖書のことばが実現するためです。」 041 MAR 014 050 すると、みながイエスを見捨てて、逃げてしまった。 041 MAR 014 051 ある青年が、素はだに亜麻布を一枚まとったままで、イエスについて行ったところ、人々は彼を捕えようとした。 041 MAR 014 052 すると、彼は亜麻布を脱ぎ捨てて、はだかで逃げた。 041 MAR 014 053 彼らがイエスを大祭司のところに連れて行くと、祭司長、長老、律法学者たちがみな、集まって来た。 041 MAR 014 054 ペテロは、遠くからイエスのあとをつけながら、大祭司の庭の中まではいって行った。そして、役人たちといっしょにすわって、火にあたっていた。 041 MAR 014 055 さて、祭司長たちと全議会は、イエスを死刑にするために、イエスを訴える証拠をつかもうと努めたが、何も見つからなかった。 041 MAR 014 056 イエスに対する偽証をした者は多かったが、一致しなかったのである。 041 MAR 014 057 すると、数人が立ち上がって、イエスに対する偽証をして、次のように言った。 041 MAR 014 058 「私たちは、この人が『わたしは手で造られたこの神殿をこわして、三日のうちに、手で造られない別の神殿を造ってみせる。』と言うのを聞きました。」 041 MAR 014 059 しかし、この点でも証言は一致しなかった。 041 MAR 014 060 そこで大祭司が立ち上がり、真中に進み出てイエスに尋ねて言った。「何も答えないのですか。この人たちが、あなたに不利な証言をしていますが、これはどうなのですか。」 041 MAR 014 061 しかし、イエスは黙ったままで、何もお答えにならなかった。大祭司は、さらにイエスに尋ねて言った。「あなたは、ほむべき方の子、キリストですか。」 041 MAR 014 062 そこでイエスは言われた。「わたしは、それです。人の子が、力ある方の右の座に着き、天の雲に乗って来るのを、あなたがたは見るはずです。」 041 MAR 014 063 すると、大祭司は、自分の衣を引き裂いて言った。「これでもまだ、証人が必要でしょうか。 041 MAR 014 064 あなたがたは、神をけがすこのことばを聞いたのです。どう考えますか。」すると、彼らは全員で、イエスには死刑に当たる罪があると決めた。 041 MAR 014 065 そうして、ある人々は、イエスにつばきをかけ、御顔をおおい、こぶしでなぐりつけ、「言い当ててみろ。」などと言ったりし始めた。また、役人たちは、イエスを受け取って、平手で打った。 041 MAR 014 066 ペテロが下の庭にいると、大祭司の女中のひとりが来て、 041 MAR 014 067 ペテロが火にあたっているのを見かけ、彼をじっと見つめて、言った。「あなたも、あのナザレ人、あのイエスといっしょにいましたね。」 041 MAR 014 068 しかし、ペテロはそれを打ち消して、「何を言っているのか、わからない。見当もつかない。」と言って、出口のほうへと出て行った。 041 MAR 014 069 すると女中は、ペテロを見て、そばに立っていた人たちに、また、「この人はあの仲間です。」と言いだした。 041 MAR 014 070 しかし、ペテロは再び打ち消した。しばらくすると、そばに立っていたその人たちが、またペテロに言った。「確かに、あなたはあの仲間だ。ガリラヤ人なのだから。」 041 MAR 014 071 しかし、彼はのろいをかけて誓い始め、「私は、あなたがたの話しているその人を知りません。」と言った。 041 MAR 014 072 するとすぐに、鶏が、二度目に鳴いた。そこでペテロは、「鶏が二度鳴く前に、あなたは、わたしを知らないと三度言います。」というイエスのおことばを思い出した。それに思い当たったとき、彼は泣き出した。 041 MAR 015 001 夜が明けるとすぐに、祭司長たちをはじめ、長老、律法学者たちと、全議会とは協議をこらしたすえ、イエスを縛って連れ出し、ピラトに引き渡した。 041 MAR 015 002 ピラトはイエスに尋ねた。「あなたは、ユダヤ人の王ですか。」イエスは答えて言われた。「そのとおりです。」 041 MAR 015 003 そこで、祭司長たちはイエスをきびしく訴えた。 041 MAR 015 004 ピラトはもう一度イエスに尋ねて言った。「何も答えないのですか。見なさい。彼らはあんなにまであなたを訴えているのです。」 041 MAR 015 005 それでも、イエスは何もお答えにならなかった。それにはピラトも驚いた。 041 MAR 015 006 ところでピラトは、その祭りには、人々の願う囚人をひとりだけ赦免するのを例としていた。 041 MAR 015 007 たまたま、バラバという者がいて、暴動のとき人殺しをした暴徒たちといっしょに牢にはいっていた。 041 MAR 015 008 それで、群衆は進んで行って、いつものようにしてもらうことを、ピラトに要求し始めた。 041 MAR 015 009 そこでピラトは、彼らに答えて、「このユダヤ人の王を釈放してくれというのか。」と言った。 041 MAR 015 010 ピラトは、祭司長たちが、ねたみからイエスを引き渡したことに、気づいていたからである。 041 MAR 015 011 しかし、祭司長たちは群衆を扇動して、むしろバラバを釈放してもらいたいと言わせた。 041 MAR 015 012 そこで、ピラトはもう一度答えて、「ではいったい、あなたがたがユダヤ人の王と呼んでいるあの人を、私にどうせよというのか。」と言った。 041 MAR 015 013 すると彼らはまたも「十字架につけろ。」と叫んだ。 041 MAR 015 014 だが、ピラトは彼らに、「あの人がどんな悪い事をしたというのか。」と言った。しかし、彼らはますます激しく「十字架につけろ。」と叫んだ。 041 MAR 015 015 それで、ピラトは群衆のきげんをとろうと思い、バラバを釈放した。そして、イエスをむち打って後、十字架につけるようにと引き渡した。 041 MAR 015 016 兵士たちはイエスを、邸宅、すなわち総督官邸の中に連れて行き、全部隊を呼び集めた。 041 MAR 015 017 そしてイエスに紫の衣を着せ、いばらの冠を編んでかぶらせ、 041 MAR 015 018 それから、「ユダヤ人の王さま。ばんざい。」と叫んであいさつをし始めた。 041 MAR 015 019 また、葦の棒でイエスの頭をたたいたり、つばきをかけたり、ひざまずいて拝んだりしていた。 041 MAR 015 020 彼らはイエスを嘲弄したあげく、その紫の衣を脱がせて、もとの着物をイエスに着せた。それから、イエスを十字架につけるために連れ出した。 041 MAR 015 021 そこへ、アレキサンデルとルポスとの父で、シモンというクレネ人が、いなかから出て来て通りかかったので、彼らはイエスの十字架を、むりやりに彼に背負わせた。 041 MAR 015 022 そして、彼らはイエスをゴルゴタの場所(訳すと、「どくろ」の場所)へ連れて行った。 041 MAR 015 023 そして彼らは、没薬を混ぜたぶどう酒をイエスに与えようとしたが、イエスはお飲みにならなかった。 041 MAR 015 024 それから、彼らは、イエスを十字架につけた。そして、だれが何を取るかをくじ引きで決めたうえで、イエスの着物を分けた。 041 MAR 015 025 彼らがイエスを十字架につけたのは、午前九時であった。 041 MAR 015 026 イエスの罪状書きには、「ユダヤ人の王。」と書いてあった。 041 MAR 015 027 また彼らは、イエスとともにふたりの強盗を、ひとりは右に、ひとりは左に、十字架につけた。 041 MAR 015 028 道を行く人々は、頭を振りながらイエスをののしって言った。「おお、神殿を打ちこわして三日で建てる人よ。 041 MAR 015 030 十字架から降りて来て、自分を救ってみろ。」 041 MAR 015 031 また、祭司長たちも同じように、律法学者たちといっしょになって、イエスをあざけって言った。「他人は救ったが、自分は救えない。 041 MAR 015 032 キリスト、イスラエルの王さま。たった今、十字架から降りてもらおうか。われわれは、それを見たら信じるから。」また、イエスといっしょに十字架につけられた者たちもイエスをののしった。 041 MAR 015 033 さて、十二時になったとき、全地が暗くなって、午後三時まで続いた。 041 MAR 015 034 そして、三時に、イエスは大声で、「エロイ、エロイ、ラマ、サバクタニ。」と叫ばれた。それは訳すと「わが神、わが神。どうしてわたしをお見捨てになったのですか。」という意味である。 041 MAR 015 035 そばに立っていた幾人かが、これを聞いて、「そら、エリヤを呼んでいる。」と言った。 041 MAR 015 036 すると、ひとりが走って行って、海綿に酸いぶどう酒を含ませ、それを葦の棒につけて、イエスに飲ませようとしながら言った。「エリヤがやって来て、彼を降ろすかどうか、私たちは見ることにしよう。」 041 MAR 015 037 それから、イエスは大声をあげて息を引き取られた。 041 MAR 015 038 神殿の幕が上から下まで真二つに裂けた。 041 MAR 015 039 イエスの正面に立っていた百人隊長は、イエスがこのように息を引き取られたのを見て、「この方はまことに神の子であった。」と言った。 041 MAR 015 040 また、遠くのほうから見ていた女たちもいた。その中にマグダラのマリヤと、小ヤコブとヨセの母マリヤと、またサロメもいた。 041 MAR 015 041 イエスがガリラヤにおられたとき、いつもつき従って仕えていた女たちである。このほかにも、イエスといっしょにエルサレムに上って来た女たちがたくさんいた。 041 MAR 015 042 すっかり夕方になった。その日は備えの日、すなわち安息日の前日であったので、 041 MAR 015 043 アリマタヤのヨセフは、思い切ってピラトのところに行き、イエスのからだの下げ渡しを願った。ヨセフは有力な議員であり、みずからも神の国を待ち望んでいた人であった。 041 MAR 015 044 ピラトは、イエスがもう死んだのかと驚いて、百人隊長を呼び出し、イエスがすでに死んでしまったかどうかを問いただした。 041 MAR 015 045 そして、百人隊長からそうと確かめてから、イエスのからだをヨセフに与えた。 041 MAR 015 046 そこで、ヨセフは亜麻布を買い、イエスを取り降ろしてその亜麻布に包み、岩を掘って造った墓に納めた。墓の入口には石をころがしかけておいた。 041 MAR 015 047 マグダラのマリヤとヨセの母マリヤとは、イエスの納められる所をよく見ていた。 041 MAR 016 001 さて、安息日が終わったので、マグダラのマリヤとヤコブの母マリヤとサロメとは、イエスに油を塗りに行こうと思い、香料を買った。 041 MAR 016 002 そして、週の初めの日の早朝、日が上ったとき、墓に着いた。 041 MAR 016 003 彼女たちは、「墓の入口からあの石をころがしてくれる人が、だれかいるでしょうか。」とみなで話し合っていた。 041 MAR 016 004 ところが、目を上げて見ると、あれほど大きな石だったのに、その石がすでにころがしてあった。 041 MAR 016 005 それで、墓の中にはいったところ、真白な長い衣をまとった青年が右側にすわっているのが見えた。彼女たちは驚いた。 041 MAR 016 006 青年は言った。「驚いてはいけません。あなたがたは、十字架につけられたナザレ人イエスを捜しているのでしょう。あの方はよみがえられました。ここにはおられません。ご覧なさい。ここがあの方の納められた所です。 041 MAR 016 007 ですから行って、お弟子たちとペテロに、『イエスは、あなたがたより先にガリラヤへ行かれます。前に言われたとおり、そこでお会いできます。』とそう言いなさい。」 041 MAR 016 008 女たちは、墓を出て、そこから逃げ去った。すっかり震え上がって、気も転倒していたからである。そしてだれにも何も言わなかった。恐ろしかったからである。 041 MAR 016 009 (note: The most reliable and earliest manuscripts do not include Mark 16:9-20.) [さて、週の初めの日の朝早くによみがえったイエスは、まずマグダラのマリヤにご自分を現わされた。イエスは、以前に、この女から七つの悪霊を追い出されたのであった。 041 MAR 016 010 マリヤはイエスといっしょにいた人たちが嘆き悲しんで泣いているところに行き、そのことを知らせた。 041 MAR 016 011 ところが、彼らは、イエスが生きておられ、お姿をよく見た、と聞いても、それを信じようとはしなかった。 041 MAR 016 012 その後、彼らのうちのふたりがいなかのほうへ歩いていたおりに、イエスは別の姿でご自分を現わされた。 041 MAR 016 013 そこでこのふたりも、残りの人たちのところへ行ってこれを知らせたが、彼らはふたりの話も信じなかった。 041 MAR 016 014 しかしそれから後になって、イエスは、その十一人が食卓に着いているところに現われて、彼らの不信仰とかたくなな心をお責めになった。それは、彼らが、よみがえられたイエスを見た人たちの言うところを信じなかったからである。 041 MAR 016 015 それから、イエスは彼らにこう言われた。「全世界に出て行き、すべての造られた者に、福音を宣べ伝えなさい。 041 MAR 016 016 信じてバプテスマを受ける者は、救われます。しかし、信じない者は罪に定められます。 041 MAR 016 017 信じる人々には次のようなしるしが伴います。すなわち、わたしの名によって悪霊を追い出し、新しいことばを語り、 041 MAR 016 018 蛇をもつかみ、たとい毒を飲んでも決して害を受けず、また、病人に手を置けば病人はいやされます。」 041 MAR 016 019 主イエスは、彼らにこう話されて後、天に上げられて神の右の座に着かれた。 041 MAR 016 020 そこで、彼らは出て行って、至る所で福音を宣べ伝えた。主は彼らとともに働き、みことばに伴うしるしをもって、みことばを確かなものとされた。] 別の追加文 [さて、女たちは、命じられたすべてのことを、ペテロとその仲間の人々にさっそく知らせた。その後、イエスご自身、彼らによって、きよく、朽ちることのない、永遠の救いのおとずれを、東の果てから、西の果てまで送り届けられた。] # # BOOK 042 LUK Luke ルカの福音書 042 LUK 001 001 私たちの間ですでに確信されている出来事については、初めからの目撃者で、みことばに仕える者となった人々が、私たちに伝えたそのとおりを、多くの人が記事にまとめて書き上げようと、すでに試みておりますので、 042 LUK 001 003 私も、すべてのことを初めから綿密に調べておりますから、あなたのために、順序を立てて書いて差し上げるのがよいと思います。尊敬するテオピロ殿。 042 LUK 001 004 それによって、すでに教えを受けられた事がらが正確な事実であることを、よくわかっていただきたいと存じます。 042 LUK 001 005 ユダヤの王ヘロデの時に、アビヤの組の者でザカリヤという祭司がいた。彼の妻はアロンの子孫で、名をエリサベツといった。 042 LUK 001 006 ふたりとも、神の御前に正しく、主のすべての戒めと定めを落度なく踏み行なっていた。 042 LUK 001 007 エリサベツは不妊の女だったので、彼らには子がなく、ふたりとももう年をとっていた。 042 LUK 001 008 さて、ザカリヤは、自分の組が当番で、神の御前に祭司の務めをしていたが、 042 LUK 001 009 祭司職の習慣によって、くじを引いたところ、主の神殿にはいって香をたくことになった。 042 LUK 001 010 彼が香をたく間、大ぜいの民はみな、外で祈っていた。 042 LUK 001 011 ところが、主の使いが彼に現われて、香壇の右に立った。 042 LUK 001 012 これを見たザカリヤは不安を覚え、恐怖に襲われたが、 042 LUK 001 013 御使いは彼に言った。「こわがることはない。ザカリヤ。あなたの願いが聞かれたのです。あなたの妻エリサベツは男の子を産みます。名をヨハネとつけなさい。 042 LUK 001 014 その子はあなたにとって喜びとなり楽しみとなり、多くの人もその誕生を喜びます。 042 LUK 001 015 彼は主の御前にすぐれた者となるからです。彼は、ぶどう酒も強い酒も飲まず、まだ母の胎内にあるときから聖霊に満たされ、 042 LUK 001 016 そしてイスラエルの多くの子らを、彼らの神である主に立ち返らせます。 042 LUK 001 017 彼こそ、エリヤの霊と力で主の前ぶれをし、父たちの心を子どもたちに向けさせ、逆らう者を義人の心に立ち戻らせ、こうして、整えられた民を主のために用意するのです。」 042 LUK 001 018 そこで、ザカリヤは御使いに言った。「私は何によってそれを知ることができましょうか。私ももう年寄りですし、妻も年をとっております。」 042 LUK 001 019 御使いは答えて言った。「私は神の御前に立つガブリエルです。あなたに話をし、この喜びのおとずれを伝えるように遣わされているのです。 042 LUK 001 020 ですから、見なさい。これらのことが起こる日までは、あなたは、おしになって、ものが言えなくなります。私のことばを信じなかったからです。私のことばは、その時が来れば実現します。」 042 LUK 001 021 人々はザカリヤを待っていたが、神殿であまり暇取るので不思議に思った。 042 LUK 001 022 やがて彼は出て来たが、人々に話をすることができなかった。それで、彼は神殿で幻を見たのだとわかった。ザカリヤは、彼らに合図を続けるだけで、おしのままであった。 042 LUK 001 023 やがて、務めの期間が終わったので、彼は自分の家に帰った。 042 LUK 001 024 その後、妻エリサベツはみごもり、五か月の間引きこもって、こう言った。 042 LUK 001 025 「主は、人中で私の恥を取り除こうと心にかけられ、今、私をこのようにしてくださいました。」 042 LUK 001 026 ところで、その六か月目に、御使いガブリエルが、神から遣わされてガリラヤのナザレという町のひとりの処女のところに来た。 042 LUK 001 027 この処女は、ダビデの家系のヨセフという人のいいなずけで、名をマリヤといった。 042 LUK 001 028 御使いは、はいって来ると、マリヤに言った。「おめでとう、恵まれた方。主があなたとともにおられます。」 042 LUK 001 029 しかし、マリヤはこのことばに、ひどくとまどって、これはいったい何のあいさつかと考え込んだ。 042 LUK 001 030 すると御使いが言った。「こわがることはない。マリヤ。あなたは神から恵みを受けたのです。 042 LUK 001 031 ご覧なさい。あなたはみごもって、男の子を産みます。名をイエスとつけなさい。 042 LUK 001 032 その子はすぐれた者となり、いと高き方の子と呼ばれます。また、神である主は彼にその父ダビデの王位をお与えになります。 042 LUK 001 033 彼はとこしえにヤコブの家を治め、その国は終わることがありません。」 042 LUK 001 034 そこで、マリヤは御使いに言った。「どうしてそのようなことになりえましょう。私はまだ男の人を知りませんのに。」 042 LUK 001 035 御使いは答えて言った。「聖霊があなたの上に臨み、いと高き方の力があなたをおおいます。それゆえ、生まれる者は、聖なる者、神の子と呼ばれます。 042 LUK 001 036 ご覧なさい。あなたの親類のエリサベツも、あの年になって男の子を宿しています。不妊の女といわれていた人なのに、今はもう六か月です。 042 LUK 001 037 神にとって不可能なことは一つもありません。」 042 LUK 001 038 マリヤは言った。「ほんとうに、私は主のはしためです。どうぞ、あなたのおことばどおりこの身になりますように。」こうして御使いは彼女から去って行った。 042 LUK 001 039 そのころ、マリヤは立って、山地にあるユダの町に急いだ。 042 LUK 001 040 そしてザカリヤの家に行って、エリサベツにあいさつした。 042 LUK 001 041 エリサベツがマリヤのあいさつを聞いたとき、子が胎内でおどり、エリサベツは聖霊に満たされた。 042 LUK 001 042 そして大声をあげて言った。「あなたは女の中の祝福された方。あなたの胎の実も祝福されています。 042 LUK 001 043 私の主の母が私のところに来られるとは、何ということでしょう。 042 LUK 001 044 ほんとうに、あなたのあいさつの声が私の耳にはいったとき、私の胎内で子どもが喜んでおどりました。 042 LUK 001 045 主によって語られたことは必ず実現すると信じきった人は、何と幸いなことでしょう。」 042 LUK 001 046 マリヤは言った。 「わがたましいは主をあがめ、 042 LUK 001 047 わが霊は、わが救い主なる神を喜びたたえます。 042 LUK 001 048 主はこの卑しいはしために 目を留めてくださったからです。 ほんとうに、これから後、どの時代の人々も、 私をしあわせ者と思うでしょう。 042 LUK 001 049 力ある方が、 私に大きなことをしてくださいました。 その御名はきよく、 042 LUK 001 050 そのあわれみは、主を恐れかしこむ者に、 代々にわたって及びます。 042 LUK 001 051 主は、御腕をもって力強いわざをなし、 心の思いの高ぶっている者を追い散らし、 042 LUK 001 052 権力ある者を王位から引き降ろされます。 低い者を高く引き上げ、 042 LUK 001 053 飢えた者を良いもので満ち足らせ、 富む者を何も持たせないで追い返されました。 042 LUK 001 054 主はそのあわれみをいつまでも忘れないで、 そのしもべイスラエルをお助けになりました。 042 LUK 001 055 私たちの先祖たち、アブラハムとその子孫に 語られたとおりです。」 042 LUK 001 056 マリヤは三か月ほどエリサベツと暮らして、家に帰った。 042 LUK 001 057 さて月が満ちて、エリサベツは男の子を産んだ。 042 LUK 001 058 近所の人々や親族は、主がエリサベツに大きなあわれみをおかけになったと聞いて、彼女とともに喜んだ。 042 LUK 001 059 さて八日目に、人々は幼子に割礼するためにやって来て、幼子を父の名にちなんでザカリヤと名づけようとしたが、 042 LUK 001 060 母は答えて、「いいえ、そうではなくて、ヨハネという名にしなければなりません。」と言った。 042 LUK 001 061 彼らは彼女に、「あなたの親族にはそのような名の人はひとりもいません。」と言った。 042 LUK 001 062 そして、身振りで父親に合図して、幼子に何という名をつけるつもりかと尋ねた。 042 LUK 001 063 すると、彼は書き板を持って来させて、「彼の名はヨハネ。」と書いたので、人々はみな驚いた。 042 LUK 001 064 すると、たちどころに、彼の口が開け、舌は解け、ものが言えるようになって神をほめたたえた。 042 LUK 001 065 そして、近所の人々はみな恐れた。さらにこれらのことの一部始終が、ユダヤの山地全体にも語り伝えられて行った。 042 LUK 001 066 聞いた人々はみな、それを心にとどめて、「いったいこの子は何になるのでしょう。」と言った。主の御手が彼とともにあったからである。 042 LUK 001 067 さて父ザカリヤは、聖霊に満たされて、預言して言った。 042 LUK 001 068 「ほめたたえよ。イスラエルの神である主を。 主はその民を顧みて、贖いをなし、 042 LUK 001 069 救いの角を、われらのために、 しもべダビデの家に立てられた。 042 LUK 001 070 古くから、その聖なる預言者たちの口を通して、 主が話してくださったとおりに。 042 LUK 001 071 この救いはわれらの敵からの、 すべてわれらを憎む者の手からの救いである。 042 LUK 001 072 主はわれらの父祖たちにあわれみを施し、 その聖なる契約を、 042 LUK 001 073 われらの父アブラハムに誓われた誓いを覚えて、 042 LUK 001 074 われらを敵の手から救い出し、 われらの生涯のすべての日に、 きよく、正しく、 恐れなく、主の御前に仕えることを許される。 042 LUK 001 076 幼子よ。あなたもまた、 いと高き方の預言者と呼ばれよう。 主の御前に先立って行き、その道を備え、 042 LUK 001 077 神の民に、罪の赦しによる 救いの知識を与えるためである。 042 LUK 001 078 これはわれらの神の深いあわれみによる。 そのあわれみにより、 日の出がいと高き所からわれらを訪れ、 042 LUK 001 079 暗黒と死の陰にすわる者たちを照らし、 われらの足を平和の道に導く。」 042 LUK 001 080 さて、幼子は成長し、その霊は強くなり、イスラエルの民の前に公に出現する日まで荒野にいた。 042 LUK 002 001 そのころ、全世界の住民登録をせよという勅令が、皇帝アウグストから出た。 042 LUK 002 002 これは、クレニオがシリヤの総督であったときの最初の住民登録であった。 042 LUK 002 003 それで、人々はみな、登録のために、それぞれ自分の町に向かって行った。 042 LUK 002 004 ヨセフもガリラヤの町ナザレから、ユダヤのベツレヘムというダビデの町へ上って行った。彼は、ダビデの家系であり血筋でもあったので、 042 LUK 002 005 身重になっているいいなずけの妻マリヤもいっしょに登録するためであった。 042 LUK 002 006 ところが、彼らがそこにいる間に、マリヤは月が満ちて、 042 LUK 002 007 男子の初子を産んだ。それで、布にくるんで、飼葉おけに寝かせた。宿屋には彼らのいる場所がなかったからである。 042 LUK 002 008 さて、この土地に、羊飼いたちが、野宿で夜番をしながら羊の群れを見守っていた。 042 LUK 002 009 すると、主の使いが彼らのところに来て、主の栄光が回りを照らしたので、彼らはひどく恐れた。 042 LUK 002 010 御使いは彼らに言った。「恐れることはありません。今、私はこの民全体のためのすばらしい喜びを知らせに来たのです。 042 LUK 002 011 きょうダビデの町で、あなたがたのために、救い主がお生まれになりました。この方こそ主キリストです。 042 LUK 002 012 あなたがたは、布にくるまって飼葉おけに寝ておられるみどりごを見つけます。これが、あなたがたのためのしるしです。」 042 LUK 002 013 すると、たちまち、その御使いといっしょに、多くの天の軍勢が現われて、神を賛美して言った。 042 LUK 002 014 「いと高き所に、栄光が、神にあるように。 地の上に、平和が、 御心にかなう人々にあるように。」 042 LUK 002 015 御使いたちが彼らを離れて天に帰ったとき、羊飼いたちは互いに話し合った。「さあ、ベツレヘムに行って、主が私たちに知らせてくださったこの出来事を見て来よう。」 042 LUK 002 016 そして急いで行って、マリヤとヨセフと、飼葉おけに寝ておられるみどりごとを捜し当てた。 042 LUK 002 017 それを見たとき、羊飼いたちは、この幼子について告げられたことを知らせた。 042 LUK 002 018 それを聞いた人たちはみな、羊飼いの話したことに驚いた。 042 LUK 002 019 しかしマリヤは、これらのことをすべて心に納めて、思いを巡らしていた。 042 LUK 002 020 羊飼いたちは、見聞きしたことが、全部御使いの話のとおりだったので、神をあがめ、賛美しながら帰って行った。 042 LUK 002 021 八日が満ちて幼子に割礼を施す日となり、幼子はイエスという名で呼ばれることになった。胎内に宿る前に御使いがつけた名である。 042 LUK 002 022 さて、モーセの律法による彼らのきよめの期間が満ちたとき、両親は幼子を主にささげるために、エルサレムへ連れて行った。 042 LUK 002 023 ――それは、主の律法に「母の胎を開く男子の初子は、すべて、主に聖別された者、と呼ばれなければならない。」と書いてあるとおりであった。―― 042 LUK 002 024 また、主の律法に「山ばと一つがい、または、家ばとのひな二羽。」と定められたところに従って犠牲をささげるためであった。 042 LUK 002 025 そのとき、エルサレムにシメオンという人がいた。この人は正しい、敬虔な人で、イスラエルの慰められることを待ち望んでいた。聖霊が彼の上にとどまっておられた。 042 LUK 002 026 また、主のキリストを見るまでは、決して死なないと、聖霊のお告げを受けていた。 042 LUK 002 027 彼が御霊に感じて宮にはいると、幼子イエスを連れた両親が、その子のために律法の慣習を守るために、はいって来た。 042 LUK 002 028 すると、シメオンは幼子を腕に抱き、神をほめたたえて言った。 042 LUK 002 029 「主よ。今こそあなたは、あなたのしもべを、 みことばどおり、安らかに去らせてくださいます。 042 LUK 002 030 私の目があなたの御救いを見たからです。 042 LUK 002 031 御救いはあなたが 万民の前に備えられたもので、 042 LUK 002 032 異邦人を照らす啓示の光、 御民イスラエルの光栄です。」 042 LUK 002 033 父と母は、幼子についていろいろ語られる事に驚いた。 042 LUK 002 034 また、シメオンは両親を祝福し、母マリヤに言った。「ご覧なさい。この子は、イスラエルの多くの人が倒れ、また、立ち上がるために定められ、また、反対を受けるしるしとして定められています。 042 LUK 002 035 剣があなたの心さえも刺し貫くでしょう。それは多くの人の心の思いが現われるためです。」 042 LUK 002 036 また、アセル族のパヌエルの娘で女預言者のアンナという人がいた。この人は非常に年をとっていた。処女の時代のあと七年間、夫とともに住み、 042 LUK 002 037 その後やもめになり、八十四歳になっていた。そして宮を離れず、夜も昼も、断食と祈りをもって神に仕えていた。 042 LUK 002 038 ちょうどこのとき、彼女もそこにいて、神に感謝をささげ、そして、エルサレムの贖いを待ち望んでいるすべての人々に、この幼子のことを語った。 042 LUK 002 039 さて、彼らは主の律法による定めをすべて果たしたので、ガリラヤの自分たちの町ナザレに帰った。 042 LUK 002 040 幼子は成長し、強くなり、知恵に満ちて行った。神の恵みがその上にあった。 042 LUK 002 041 さて、イエスの両親は、過越の祭りには毎年エルサレムに行った。 042 LUK 002 042 イエスが十二歳になられたときも、両親は祭りの慣習に従って都へ上り、 042 LUK 002 043 祭りの期間を過ごしてから、帰路についたが、少年イエスはエルサレムにとどまっておられた。両親はそれに気づかなかった。 042 LUK 002 044 イエスが一行の中にいるものと思って、一日の道のりを行った。それから、親族や知人の中を捜し回ったが、 042 LUK 002 045 見つからなかったので、イエスを捜しながら、エルサレムまで引き返した。 042 LUK 002 046 そしてようやく三日の後に、イエスが宮で教師たちの真中にすわって、話を聞いたり質問したりしておられるのを見つけた。 042 LUK 002 047 聞いていた人々はみな、イエスの知恵と答えに驚いていた。 042 LUK 002 048 両親は彼を見て驚き、母は言った。「まあ、あなたはなぜ私たちにこんなことをしたのです。見なさい。父上も私も、心配してあなたを捜し回っていたのです。」 042 LUK 002 049 するとイエスは両親に言われた。「どうしてわたしをお捜しになったのですか。わたしが必ず自分の父の家にいることを、ご存じなかったのですか。」 042 LUK 002 050 しかし両親には、イエスの話されたことばの意味がわからなかった。 042 LUK 002 051 それからイエスは、いっしょに下って行かれ、ナザレに帰って、両親に仕えられた。母はこれらのことをみな、心に留めておいた。 042 LUK 002 052 イエスはますます知恵が進み、背たけも大きくなり、神と人とに愛された。 042 LUK 003 001 皇帝テベリオの治世の第十五年、ポンテオ・ピラトがユダヤの総督、ヘロデがガリラヤの国主、その兄弟ピリポがイツリヤとテラコニテ地方の国主、ルサニヤがアビレネの国主であり、 042 LUK 003 002 アンナスとカヤパが大祭司であったころ、神のことばが、荒野でザカリヤの子ヨハネに下った。 042 LUK 003 003 そこでヨハネは、ヨルダン川のほとりのすべての地方に行って、罪が赦されるための悔い改めに基づくバプテスマを説いた。 042 LUK 003 004 そのことは預言者イザヤのことばの書に書いてあるとおりである。 「荒野で叫ぶ者の声がする。 『主の道を用意し、 主の通られる道をまっすぐにせよ。 042 LUK 003 005 すべての谷はうずめられ、 すべての山と丘とは低くされ、 曲がった所はまっすぐになり、 でこぼこ道は平らになる。 042 LUK 003 006 こうして、あらゆる人が、 神の救いを見るようになる。』」 042 LUK 003 007 それで、ヨハネは、彼からバプテスマを受けようとして出て来た群衆に言った。「まむしのすえたち。だれが必ず来る御怒りをのがれるように教えたのか。 042 LUK 003 008 それならそれで、悔い改めにふさわしい実を結びなさい。『われわれの先祖はアブラハムだ。』などと心の中で言い始めてはいけません。よく言っておくが、神は、こんな石ころからでも、アブラハムの子孫を起こすことがおできになるのです。 042 LUK 003 009 斧もすでに木の根元に置かれています。だから、良い実を結ばない木は、みな切り倒されて、火に投げ込まれます。」 042 LUK 003 010 群衆はヨハネに尋ねた。「それでは、私たちはどうすればよいのでしょう。」 042 LUK 003 011 彼は答えて言った。「下着を二枚持っている者は、一つも持たない者に分けなさい。食べ物を持っている者も、そうしなさい。」 042 LUK 003 012 取税人たちも、バプテスマを受けに出て来て、言った。「先生。私たちはどうすればよいのでしょう。」 042 LUK 003 013 ヨハネは彼らに言った。「決められたもの以上には、何も取り立ててはいけません。」 042 LUK 003 014 兵士たちも、彼に尋ねて言った。「私たちはどうすればよいのでしょうか。」ヨハネは言った。「だれからも、力ずくで金をゆすったり、無実の者を責めたりしてはいけません。自分の給料で満足しなさい。」 042 LUK 003 015 民衆は救い主を待ち望んでおり、みな心の中で、ヨハネについて、もしかするとこの方がキリストではあるまいか、と考えていたので、 042 LUK 003 016 ヨハネはみなに答えて言った。「私は水であなたがたにバプテスマを授けています。しかし、私よりもさらに力のある方がおいでになります。私などは、その方のくつのひもを解く値うちもありません。その方は、あなたがたに聖霊と火とのバプテスマをお授けになります。 042 LUK 003 017 また手に箕を持って脱穀場をことごとくきよめ、麦を倉に納め、殻を消えない火で焼き尽くされます。」 042 LUK 003 018 ヨハネは、そのほかにも多くのことを教えて、民衆に福音を知らせた。 042 LUK 003 019 さて国主ヘロデは、その兄弟の妻ヘロデヤのことについて、また、自分の行なった悪事のすべてを、ヨハネに責められたので、 042 LUK 003 020 ヨハネを牢に閉じ込め、すべての悪事にもう一つこの悪事を加えた。 042 LUK 003 021 さて、民衆がみなバプテスマを受けていたころ、イエスもバプテスマをお受けになり、そして祈っておられると、天が開け、 042 LUK 003 022 聖霊が、鳩のような形をして、自分の上に下られるのをご覧になった。また、天から声がした。「あなたは、わたしの愛する子、わたしはあなたを喜ぶ。」 042 LUK 003 023 教えを始められたとき、イエスはおよそ三十歳で、人々からヨセフの子と思われていた。このヨセフは、ヘリの子、順次さかのぼって、 042 LUK 003 024 マタテの子、レビの子、メルキの子、ヤンナイの子、ヨセフの子、 042 LUK 003 025 マタテヤの子、アモスの子、ナホムの子、エスリの子、ナンガイの子、 042 LUK 003 026 マハテの子、マタテヤの子、シメイの子、ヨセクの子、ヨダの子、 042 LUK 003 027 ヨハナンの子、レサの子、ゾロバベルの子、サラテルの子、ネリの子、 042 LUK 003 028 メルキの子、アデイの子、コサムの子、エルマダムの子、エルの子、 042 LUK 003 029 ヨシュアの子、エリエゼルの子、ヨリムの子、マタテの子、レビの子、 042 LUK 003 030 シメオンの子、ユダの子、ヨセフの子、ヨナムの子、エリヤキムの子、 042 LUK 003 031 メレヤの子、メナの子、マタタの子、ナタンの子、ダビデの子、 042 LUK 003 032 エッサイの子、オベデの子、ボアズの子、サラの子、ナアソンの子、 042 LUK 003 033 アミナダブの子、アデミンの子、アルニの子、エスロンの子、パレスの子、ユダの子、 042 LUK 003 034 ヤコブの子、イサクの子、アブラハムの子、テラの子、ナホルの子、 042 LUK 003 035 セルグの子、レウの子、ペレグの子、エベルの子、サラの子、 042 LUK 003 036 カイナンの子、アルパクサデの子、セムの子、ノアの子、ラメクの子、 042 LUK 003 037 メトセラの子、エノクの子、ヤレデの子、マハラレルの子、カイナンの子、 042 LUK 003 038 エノスの子、セツの子、アダムの子、このアダムは神の子である。 042 LUK 004 001 さて、聖霊に満ちたイエスは、ヨルダンから帰られた。そして御霊に導かれて荒野におり、 042 LUK 004 002 四十日間、悪魔の試みに会われた。その間何も食べず、その時が終わると、空腹を覚えられた。 042 LUK 004 003 そこで、悪魔はイエスに言った。「あなたが神の子なら、この石に、パンになれと言いつけなさい。」 042 LUK 004 004 イエスは答えられた。「『人はパンだけで生きるのではない。』と書いてある。」 042 LUK 004 005 また、悪魔はイエスを連れて行き、またたくまに世界の国々を全部見せて、 042 LUK 004 006 こう言った。「この、国々のいっさいの権力と栄光とをあなたに差し上げましょう。それは私に任されているので、私がこれと思う人に差し上げるのです。 042 LUK 004 007 ですから、もしあなたが私を拝むなら、すべてをあなたのものとしましょう。」 042 LUK 004 008 イエスは答えて言われた。「『あなたの神である主を拝み、主にだけ仕えなさい。』と書いてある。」 042 LUK 004 009 また、悪魔はイエスをエルサレムに連れて行き、神殿の頂に立たせて、こう言った。「あなたが神の子なら、ここから飛び降りなさい。 042 LUK 004 010 『神は、御使いたちに命じてあなたを守らせる。』とも、 042 LUK 004 011 『あなたの足が石に打ち当たることのないように、彼らの手で、あなたをささえさせる。』とも書いてあるからです。」 042 LUK 004 012 するとイエスは答えて言われた。「『あなたの神である主を試みてはならない。』と言われている。」 042 LUK 004 013 誘惑の手を尽くしたあとで、悪魔はしばらくの間イエスから離れた。 042 LUK 004 014 イエスは御霊の力を帯びてガリラヤに帰られた。すると、その評判が回り一帯に、くまなく広まった。 042 LUK 004 015 イエスは、彼らの会堂で教え、みなの人にあがめられた。 042 LUK 004 016 それから、イエスはご自分の育ったナザレに行き、いつものとおり安息日に会堂にはいり、朗読しようとして立たれた。 042 LUK 004 017 すると、預言者イザヤの書が手渡されたので、その書を開いて、こう書いてある所を見つけられた。 042 LUK 004 018 「わたしの上に主の御霊がおられる。 主が、貧しい人々に福音を伝えるようにと、 わたしに油を注がれたのだから。 主はわたしを遣わされた。 捕われ人には赦免を、 盲人には目の開かれることを告げるために。 しいたげられている人々を自由にし、 042 LUK 004 019 主の恵みの年を告げ知らせるために。」 042 LUK 004 020 イエスは書を巻き、係りの者に渡してすわられた。会堂にいるみなの目がイエスに注がれた。 042 LUK 004 021 イエスは人々にこう言って話し始められた。「きょう、聖書のこのみことばが、あなたがたが聞いたとおり実現しました。」 042 LUK 004 022 みなイエスをほめ、その口から出て来る恵みのことばに驚いた。そしてまた、「この人は、ヨセフの子ではないか。」と彼らは言った。 042 LUK 004 023 イエスは言われた。「きっとあなたがたは、『医者よ。自分を直せ。』というたとえを引いて、カペナウムで行なわれたと聞いていることを、あなたの郷里のここでもしてくれ、と言うでしょう。」 042 LUK 004 024 また、こう言われた。「まことに、あなたがたに告げます。預言者はだれでも、自分の郷里では歓迎されません。 042 LUK 004 025 わたしが言うのは真実のことです。エリヤの時代に、三年六か月の間天が閉じて、全国に大ききんが起こったとき、イスラエルにもやもめは多くいたが、 042 LUK 004 026 エリヤはだれのところにも遣わされず、シドンのサレプタにいたやもめ女にだけ遣わされたのです。 042 LUK 004 027 また、預言者エリシャのときに、イスラエルには、らい病人がたくさんいたが、そのうちのだれもきよめられないで、シリヤ人ナアマンだけがきよめられました。」 042 LUK 004 028 これらのことを聞くと、会堂にいた人たちはみな、ひどく怒り、 042 LUK 004 029 立ち上がってイエスを町の外に追い出し、町が立っていた丘のがけのふちまで連れて行き、そこから投げ落とそうとした。 042 LUK 004 030 しかしイエスは、彼らの真中を通り抜けて、行ってしまわれた。 042 LUK 004 031 それからイエスは、ガリラヤの町カペナウムに下られた。そして、安息日ごとに、人々を教えられた。 042 LUK 004 032 人々は、その教えに驚いた。そのことばに権威があったからである。 042 LUK 004 033 また、会堂に、汚れた悪霊につかれた人がいて、大声でわめいた。 042 LUK 004 034 「ああ、ナザレ人のイエス。いったい私たちに何をしようというのです。あなたは私たちを滅ぼしに来たのでしょう。私はあなたがどなたか知っています。神の聖者です。」 042 LUK 004 035 イエスは彼をしかって、「黙れ。その人から出て行け。」と言われた。するとその悪霊は人々の真中で、その人を投げ倒して出て行ったが、その人は別に何の害も受けなかった。 042 LUK 004 036 人々はみな驚いて、互いに話し合った。「今のおことばはどうだ。権威と力とでお命じになったので、汚れた霊でも出て行ったのだ。」 042 LUK 004 037 こうしてイエスのうわさは、回りの地方の至る所に広まった。 042 LUK 004 038 イエスは立ち上がって会堂を出て、シモンの家にはいられた。すると、シモンのしゅうとめが、ひどい熱で苦しんでいた。人々は彼女のためにイエスにお願いした。 042 LUK 004 039 イエスがその枕もとに来て、熱をしかりつけられると、熱がひき、彼女はすぐに立ち上がって彼らをもてなし始めた。 042 LUK 004 040 日が暮れると、いろいろな病気で弱っている者をかかえた人たちがみな、その病人をみもとに連れて来た。イエスは、ひとりひとりに手を置いて、いやされた。 042 LUK 004 041 また、悪霊どもも、「あなたこそ神の子です。」と大声で叫びながら、多くの人から出て行った。イエスは、悪霊どもをしかって、ものを言うのをお許しにならなかった。彼らはイエスがキリストであることを知っていたからである。 042 LUK 004 042 朝になって、イエスは寂しい所に出て行かれた。群衆は、イエスを捜し回って、みもとに来ると、イエスが自分たちから離れて行かないよう引き止めておこうとした。 042 LUK 004 043 しかしイエスは、彼らにこう言われた。「ほかの町々にも、どうしても神の国の福音を宣べ伝えなければなりません。わたしは、そのために遣わされたのですから。」 042 LUK 004 044 そしてユダヤの諸会堂で、福音を告げ知らせておられた。 042 LUK 005 001 群衆がイエスに押し迫るようにして神のことばを聞いたとき、イエスはゲネサレ湖の岸べに立っておられたが、 042 LUK 005 002 岸べに小舟が二そうあるのをご覧になった。漁師たちは、その舟から降りて網を洗っていた。 042 LUK 005 003 イエスは、そのうちの一つの、シモンの持ち舟に乗り、陸から少し漕ぎ出すように頼まれた。そしてイエスはすわって、舟から群衆を教えられた。 042 LUK 005 004 話が終わると、シモンに、「深みに漕ぎ出して、網をおろして魚をとりなさい。」と言われた。 042 LUK 005 005 するとシモンが答えて言った。「先生。私たちは、夜通し働きましたが、何一つとれませんでした。でもおことばどおり、網をおろしてみましょう。」 042 LUK 005 006 そして、そのとおりにすると、たくさんの魚がはいり、網は破れそうになった。 042 LUK 005 007 そこで別の舟にいた仲間の者たちに合図をして、助けに来てくれるように頼んだ。彼らがやって来て、そして魚を両方の舟いっぱいに上げたところ、二そうとも沈みそうになった。 042 LUK 005 008 これを見たシモン・ペテロは、イエスの足もとにひれ伏して、「主よ。私のような者から離れてください。私は、罪深い人間ですから。」と言った。 042 LUK 005 009 それは、大漁のため、彼もいっしょにいたみなの者も、ひどく驚いたからである。 042 LUK 005 010 シモンの仲間であったゼベダイの子ヤコブやヨハネも同じであった。イエスはシモンにこう言われた。「こわがらなくてもよい。これから後、あなたは人間をとるようになるのです。」 042 LUK 005 011 彼らは、舟を陸に着けると、何もかも捨てて、イエスに従った。 042 LUK 005 012 さて、イエスがある町におられたとき、全身らい病の人がいた。イエスを見ると、ひれ伏してお願いした。「主よ。お心一つで、私はきよくしていただけます。」 042 LUK 005 013 イエスは手を伸ばして、彼にさわり、「わたしの心だ。きよくなれ。」と言われた。すると、すぐに、そのらい病が消えた。 042 LUK 005 014 イエスは、彼にこう命じられた。「だれにも話してはいけない。ただ祭司のところに行って、自分を見せなさい。そして人々へのあかしのため、モーセが命じたように、あなたのきよめの供え物をしなさい。」 042 LUK 005 015 しかし、イエスのうわさは、ますます広まり、多くの人の群れが、話を聞きに、また、病気を直してもらいに集まって来た。 042 LUK 005 016 しかし、イエスご自身は、よく荒野に退いて祈っておられた。 042 LUK 005 017 ある日のこと、イエスが教えておられると、パリサイ人と律法の教師たちも、そこにすわっていた。彼らは、ガリラヤとユダヤとのすべての村々や、エルサレムから来ていた。イエスは、主の御力をもって、病気を直しておられた。 042 LUK 005 018 するとそこに、男たちが、中風をわずらっている人を、床のままで運んで来た。そして、何とかして家の中に運び込み、イエスの前に置こうとしていた。 042 LUK 005 019 しかし、大ぜい人がいて、どうにも病人を運び込む方法が見つからないので、屋上に上って屋根の瓦をはがし、そこから彼の寝床を、ちょうど人々の真中のイエスの前に、つり降ろした。 042 LUK 005 020 彼らの信仰を見て、イエスは「友よ。あなたの罪は赦されました。」と言われた。 042 LUK 005 021 ところが、律法学者、パリサイ人たちは、理屈を言い始めた。「神をけがすことを言うこの人は、いったい何者だ。神のほかに、だれが罪を赦すことができよう。」 042 LUK 005 022 その理屈を見抜いておられたイエスは、彼らに言われた。「なぜ、心の中でそんな理屈を言っているのか。 042 LUK 005 023 『あなたの罪は赦された。』と言うのと、『起きて歩け。』と言うのと、どちらがやさしいか。 042 LUK 005 024 人の子が地上で罪を赦す権威を持っていることを、あなたがたに悟らせるために。」と言って、中風の人に、「あなたに命じる。起きなさい。寝床をたたんで、家に帰りなさい。」と言われた。 042 LUK 005 025 すると彼は、たちどころに人々の前で立ち上がり、寝ていた床をたたんで、神をあがめながら自分の家に帰った。 042 LUK 005 026 人々はみな、ひどく驚き、神をあがめ、恐れに満たされて、「私たちは、きょう、驚くべきことを見た。」と言った。 042 LUK 005 027 この後、イエスは出て行き、収税所にすわっているレビという取税人に目を留めて、「わたしについて来なさい。」と言われた。 042 LUK 005 028 するとレビは、何もかも捨て、立ち上がってイエスに従った。 042 LUK 005 029 そこでレビは、自分の家でイエスのために大ぶるまいをしたが、取税人たちや、ほかに大ぜいの人たちが食卓に着いていた。 042 LUK 005 030 すると、パリサイ人やその派の律法学者たちが、イエスの弟子たちに向かって、つぶやいて言った。「なぜ、あなたがたは、取税人や罪人どもといっしょに飲み食いするのですか。」 042 LUK 005 031 そこで、イエスは答えて言われた。「医者を必要とするのは丈夫な者ではなく、病人です。 042 LUK 005 032 わたしは正しい人を招くためではなく、罪人を招いて、悔い改めさせるために来たのです。」 042 LUK 005 033 彼らはイエスに言った。「ヨハネの弟子たちは、よく断食をしており、祈りもしています。また、パリサイ人の弟子たちも同じなのに、あなたの弟子たちは食べたり飲んだりしています。」 042 LUK 005 034 イエスは彼らに言われた。「花婿がいっしょにいるのに、花婿につき添う友だちに断食させることが、あなたがたにできますか。 042 LUK 005 035 しかし、やがてその時が来て、花婿が取り去られたら、その日には彼らは断食します。」 042 LUK 005 036 イエスはまた一つのたとえを彼らに話された。「だれも、新しい着物から布切れを引き裂いて、古い着物に継ぎをするようなことはしません。そんなことをすれば、その新しい着物を裂くことになるし、また新しいのを引き裂いた継ぎ切れも、古い物には合わないのです。 042 LUK 005 037 また、だれも新しいぶどう酒を古い皮袋に入れるようなことはしません。そんなことをすれば、新しいぶどう酒は皮袋を張り裂き、ぶどう酒は流れ出て、皮袋もだめになってしまいます。 042 LUK 005 038 新しいぶどう酒は新しい皮袋に入れなければなりません。 042 LUK 005 039 また、だれでも古いぶどう酒を飲んでから、新しい物を望みはしません。『古い物は良い。』と言うのです。」 042 LUK 006 001 ある安息日に、イエスが麦畑を通っておられたとき、弟子たちは麦の穂を摘んで、手でもみ出しては食べていた。 042 LUK 006 002 すると、あるパリサイ人たちが言った。「なぜ、あなたがたは、安息日にしてはならないことをするのですか。」 042 LUK 006 003 イエスは彼らに答えて言われた。「あなたがたは、ダビデが連れの者といっしょにいて、ひもじかったときにしたことを読まなかったのですか。 042 LUK 006 004 ダビデは神の家にはいって、祭司以外の者はだれも食べてはならない供えのパンを取って、自分も食べたし、供の者にも与えたではありませんか。」 042 LUK 006 005 そして、彼らに言われた。「人の子は、安息日の主です。」 042 LUK 006 006 別の安息日に、イエスは会堂にはいって教えておられた。そこに右手のなえた人がいた。 042 LUK 006 007 そこで律法学者、パリサイ人たちは、イエスが安息日に人を直すかどうか、じっと見ていた。彼を訴える口実を見つけるためであった。 042 LUK 006 008 イエスは彼らの考えをよく知っておられた。それで、手のなえた人に、「立って、真中に出なさい。」と言われた。その人は、起き上がって、そこに立った。 042 LUK 006 009 イエスは人々に言われた。「あなたがたに聞きますが、安息日にしてよいのは、善を行なうことなのか、それとも悪を行なうことなのか。いのちを救うことなのか、それとも失うことなのか、どうですか。」 042 LUK 006 010 そして、みなの者を見回してから、その人に、「手を伸ばしなさい。」と言われた。そのとおりにすると、彼の手は元どおりになった。 042 LUK 006 011 すると彼らはすっかり分別を失ってしまって、イエスをどうしてやろうかと話し合った。 042 LUK 006 012 このころ、イエスは祈るために山に行き、神に祈りながら夜を明かされた。 042 LUK 006 013 夜明けになって、弟子たちを呼び寄せ、その中から十二人を選び、彼らに使徒という名をつけられた。 042 LUK 006 014 すなわち、ペテロという名をいただいたシモンとその兄弟アンデレ、ヤコブとヨハネ、ピリポとバルトロマイ、 042 LUK 006 015 マタイとトマス、アルパヨの子ヤコブと熱心党員と呼ばれるシモン、 042 LUK 006 016 ヤコブの子ユダとイエスを裏切ったイスカリオテ・ユダである。 042 LUK 006 017 それから、イエスは、彼らとともに山を下り、平らな所にお立ちになったが、多くの弟子たちの群れや、ユダヤ全土、エルサレム、さてはツロやシドンの海べから来た大ぜいの民衆がそこにいた。 042 LUK 006 018 イエスの教えを聞き、また病気を直していただくために来た人々である。また、汚れた霊に悩まされていた人たちもいやされた。 042 LUK 006 019 群衆のだれもが何とかしてイエスにさわろうとしていた。大きな力がイエスから出て、すべての人をいやしたからである。 042 LUK 006 020 イエスは目を上げて弟子たちを見つめながら、話しだされた。「貧しい者は幸いです。神の国はあなたがたのものですから。 042 LUK 006 021 いま飢えている者は幸いです。あなたがたは、やがて飽くことができますから。 いま泣いている者は幸いです。あなたがたは、いまに笑うようになりますから。 042 LUK 006 022 人の子のために、人々があなたがたを憎むとき、また、あなたがたを除名し、はずかしめ、あなたがたの名をあしざまにけなすとき、あなたがたは幸いです。 042 LUK 006 023 その日には、喜びなさい。おどり上がって喜びなさい。天ではあなたがたの報いは大きいからです。彼らの先祖も、預言者たちをそのように扱ったのです。 042 LUK 006 024 しかし、富んでいるあなたがたは、哀れな者です。慰めを、すでに受けているからです。 042 LUK 006 025 いま食べ飽きているあなたがたは、哀れな者です。やがて、飢えるようになるからです。いま笑っているあなたがたは、哀れな者です。やがて悲しみ泣くようになるからです。 042 LUK 006 026 みなの人にほめられるときは、あなたがたは哀れな者です。彼らの先祖は、にせ預言者たちをそのように扱ったからです。 042 LUK 006 027 しかし、いま聞いているあなたがたに、わたしはこう言います。あなたの敵を愛しなさい。あなたを憎む者に善を行ないなさい。 042 LUK 006 028 あなたをのろう者を祝福しなさい。あなたを侮辱する者のために祈りなさい。 042 LUK 006 029 あなたの片方の頬を打つ者には、ほかの頬をも向けなさい。上着を奪い取る者には、下着も拒んではいけません。 042 LUK 006 030 すべて求める者には与えなさい。奪い取る者からは取り戻してはいけません。 042 LUK 006 031 自分にしてもらいたいと望むとおり、人にもそのようにしなさい。 042 LUK 006 032 自分を愛する者を愛したからといって、あなたがたに何の良いところがあるでしょう。罪人たちでさえ、自分を愛する者を愛しています。 042 LUK 006 033 自分に良いことをしてくれる者に良いことをしたからといって、あなたがたに何の良いところがあるでしょう。罪人たちでさえ、同じことをしています。 042 LUK 006 034 返してもらうつもりで人に貸してやったからといって、あなたがたに何の良いところがあるでしょう。貸した分を取り返すつもりなら、罪人たちでさえ、罪人たちに貸しています。 042 LUK 006 035 ただ、自分の敵を愛しなさい。彼らによくしてやり、返してもらうことを考えずに貸しなさい。そうすれば、あなたがたの受ける報いはすばらしく、あなたがたは、いと高き方の子どもになれます。なぜなら、いと高き方は、恩知らずの悪人にも、あわれみ深いからです。 042 LUK 006 036 あなたがたの天の父があわれみ深いように、あなたがたも、あわれみ深くしなさい。 042 LUK 006 037 さばいてはいけません。そうすれば、自分もさばかれません。人を罪に定めてはいけません。そうすれば、自分も罪に定められません。赦しなさい。そうすれば、自分も赦されます。 042 LUK 006 038 与えなさい。そうすれば、自分も与えられます。人々は量りをよくして、押しつけ、揺すり入れ、あふれるまでにして、ふところに入れてくれるでしょう。あなたがたは、人を量る量りで、自分も量り返してもらうからです。」 042 LUK 006 039 イエスはまた一つのたとえを話された。「いったい、盲人に盲人の手引きができるでしょうか。ふたりとも穴に落ち込まないでしょうか。 042 LUK 006 040 弟子は師以上には出られません。しかし十分訓練を受けた者はみな、自分の師ぐらいにはなるのです。 042 LUK 006 041 あなたは、兄弟の目にあるちりが見えながら、どうして自分の目にある梁には気がつかないのですか。 042 LUK 006 042 自分の目にある梁が見えずに、どうして兄弟に、『兄弟。あなたの目のちりを取らせてください。』と言えますか。偽善者たち。まず自分の目から梁を取りのけなさい。そうしてこそ、兄弟の目のちりがはっきり見えて、取りのけることができるのです。 042 LUK 006 043 悪い実を結ぶ良い木はないし、良い実を結ぶ悪い木もありません。 042 LUK 006 044 木はどれでも、その実によってわかるものです。いばらからいちじくは取れず、野ばらからぶどうを集めることはできません。 042 LUK 006 045 良い人は、その心の良い倉から良い物を出し、悪い人は、悪い倉から悪い物を出します。なぜなら人の口は、心に満ちているものを話すからです。 042 LUK 006 046 なぜ、わたしを『主よ、主よ。』と呼びながら、わたしの言うことを行なわないのですか。 042 LUK 006 047 わたしのもとに来て、わたしのことばを聞き、それを行なう人たちがどんな人に似ているか、あなたがたに示しましょう。 042 LUK 006 048 その人は、地面を深く掘り下げ、岩の上に土台を据えて、それから家を建てた人に似ています。洪水になり、川の水がその家に押し寄せたときも、しっかり建てられていたから、びくともしませんでした。 042 LUK 006 049 聞いても実行しない人は、土台なしで地面に家を建てた人に似ています。川の水が押し寄せると、家は一ぺんに倒れてしまい、そのこわれ方はひどいものとなりました。」 042 LUK 007 001 イエスは、耳を傾けている民衆にこれらのことばをみな話し終えられると、カペナウムにはいられた。 042 LUK 007 002 ところが、ある百人隊長に重んじられているひとりのしもべが、病気で死にかけていた。 042 LUK 007 003 百人隊長は、イエスのことを聞き、みもとにユダヤ人の長老たちを送って、しもべを助けに来てくださるようお願いした。 042 LUK 007 004 イエスのもとに来たその人たちは、熱心にお願いして言った。「この人は、あなたにそうしていただく資格のある人です。 042 LUK 007 005 この人は、私たちの国民を愛し、私たちのために会堂を建ててくれた人です。」 042 LUK 007 006 イエスは、彼らといっしょに行かれた。そして、百人隊長の家からあまり遠くない所に来られたとき、百人隊長は友人たちを使いに出して、イエスに伝えた。「主よ。わざわざおいでくださいませんように。あなたを私の屋根の下にお入れする資格は、私にはありません。 042 LUK 007 007 ですから、私のほうから伺うことさえ失礼と存じました。ただ、おことばをいただかせてください。そうすれば、私のしもべは必ずいやされます。 042 LUK 007 008 と申しますのは、私も権威の下にある者ですが、私の下にも兵士たちがいまして、そのひとりに『行け。』と言えば行きますし、別の者に『来い。』と言えば来ます。また、しもべに『これをせよ。』と言えば、そのとおりにいたします。」 042 LUK 007 009 これを聞いて、イエスは驚かれ、ついて来ていた群衆のほうに向いて言われた。「あなたがたに言いますが、このようなりっぱな信仰は、イスラエルの中にも見たことがありません。」 042 LUK 007 010 使いに来た人たちが家に帰ってみると、しもべはよくなっていた。 042 LUK 007 011 それから間もなく、イエスはナインという町に行かれた。弟子たちと大ぜいの人の群れがいっしょに行った。 042 LUK 007 012 イエスが町の門に近づかれると、やもめとなった母親のひとり息子が、死んでかつぎ出されたところであった。町の人たちが大ぜいその母親につき添っていた。 042 LUK 007 013 主はその母親を見てかわいそうに思い、「泣かなくてもよい。」と言われた。 042 LUK 007 014 そして近寄って棺に手をかけられると、かついでいた人たちが立ち止まったので、「青年よ。あなたに言う、起きなさい。」と言われた。 042 LUK 007 015 すると、その死人が起き上がって、ものを言い始めたので、イエスは彼を母親に返された。 042 LUK 007 016 人々は恐れを抱き、「大預言者が私たちのうちに現われた。」とか、「神がその民を顧みてくださった。」などと言って、神をあがめた。 042 LUK 007 017 イエスについてこの話がユダヤ全土と回りの地方一帯に広まった。 042 LUK 007 018 さて、ヨハネの弟子たちは、これらのことをすべてヨハネに報告した。 042 LUK 007 019 すると、ヨハネは、弟子の中からふたりを呼び寄せて、主のもとに送り、「おいでになるはずの方は、あなたですか。それとも、私たちはほかの方を待つべきでしょうか。」と言わせた。 042 LUK 007 020 ふたりはみもとに来て言った。「バプテスマのヨハネから遣わされてまいりました。『おいでになるはずの方は、あなたですか。それとも私たちはなおほかの方を待つべきでしょうか。』とヨハネが申しております。」 042 LUK 007 021 ちょうどそのころ、イエスは、多くの人々を病気と苦しみと悪霊からいやし、また多くの盲人を見えるようにされた。 042 LUK 007 022 そして、答えてこう言われた。「あなたがたは行って、自分たちの見たり聞いたりしたことをヨハネに報告しなさい。盲人が見えるようになり、足なえが歩き、らい病人がきよめられ、つんぼの人が聞こえ、死人が生き返り、貧しい者に福音が宣べ伝えられています。 042 LUK 007 023 だれでも、わたしにつまずかない者は幸いです。」 042 LUK 007 024 ヨハネの使いが帰ってから、イエスは群衆に、ヨハネについて話しだされた。「あなたがたは、何を見に荒野に出て行ったのですか。風に揺れる葦ですか。 042 LUK 007 025 でなかったら、何を見に行ったのですか。柔らかい着物を着た人ですか。きらびやかな着物を着て、ぜいたくに暮らしている人たちなら宮殿にいます。 042 LUK 007 026 でなかったら、何を見に行ったのですか。預言者ですか。そのとおり。だが、わたしが言いましょう。預言者よりもすぐれた者をです。 042 LUK 007 027 その人こそ、 『見よ、わたしは使いをあなたの前に遣わし、 あなたの道を、あなたの前に備えさせよう。』 と書かれているその人です。 042 LUK 007 028 あなたがたに言いますが、女から生まれた者の中で、ヨハネよりもすぐれた人は、ひとりもいません。しかし、神の国で一番小さい者でも、彼よりすぐれています。 042 LUK 007 029 ヨハネの教えを聞いたすべての民は、取税人たちさえ、ヨハネのバプテスマを受けて、神の正しいことを認めたのです。 042 LUK 007 030 これに反して、パリサイ人、律法の専門家たちは、彼からバプテスマを受けないで、神の自分たちに対するみこころを拒みました。 042 LUK 007 031 では、この時代の人々は、何にたとえたらよいでしょう。何に似ているでしょう。 042 LUK 007 032 市場にすわって、互いに呼びかけながら、こう言っている子どもたちに似ています。 『笛を吹いてやっても、君たちは踊らなかった。 弔いの歌を歌ってやっても、泣かなかった。』 042 LUK 007 033 というわけは、バプテスマのヨハネが来て、パンも食べず、ぶどう酒も飲まずにいると、『あれは悪霊につかれている。』とあなたがたは言うし、 042 LUK 007 034 人の子が来て、食べもし、飲みもすると、『あれ見よ。食いしんぼうの大酒飲み、取税人や罪人の仲間だ。』と言うのです。 042 LUK 007 035 だが、知恵の正しいことは、そのすべての子どもたちが証明します。」 042 LUK 007 036 さて、あるパリサイ人が、いっしょに食事をしたい、とイエスを招いたので、そのパリサイ人の家にはいって食卓に着かれた。 042 LUK 007 037 すると、その町にひとりの罪深い女がいて、イエスがパリサイ人の家で食卓に着いておられることを知り、香油のはいった石膏のつぼを持って来て、 042 LUK 007 038 泣きながら、イエスのうしろで御足のそばに立ち、涙で御足をぬらし始め、髪の毛でぬぐい、御足に口づけして、香油を塗った。 042 LUK 007 039 イエスを招いたパリサイ人は、これを見て、「この方がもし預言者なら、自分にさわっている女がだれで、どんな女であるか知っておられるはずだ。この女は罪深い者なのだから。」と心ひそかに思っていた。 042 LUK 007 040 するとイエスは、彼に向かって、「シモン。あなたに言いたいことがあります。」と言われた。シモンは、「先生。お話しください。」と言った。 042 LUK 007 041 「ある金貸しから、ふたりの者が金を借りていた。ひとりは五百デナリ、ほかのひとりは五十デナリ借りていた。 042 LUK 007 042 彼らは返すことができなかったので、金貸しはふたりとも赦してやった。 では、ふたりのうちどちらがよけいに金貸しを愛するようになるでしょうか。」 042 LUK 007 043 シモンが、「よけいに赦してもらったほうだと思います。」と答えると、イエスは、「あなたの判断は当たっています。」と言われた。 042 LUK 007 044 そしてその女のほうを向いて、シモンに言われた。「この女を見ましたか。わたしがこの家にはいって来たとき、あなたは足を洗う水をくれなかったが、この女は、涙でわたしの足をぬらし、髪の毛でぬぐってくれました。 042 LUK 007 045 あなたは、口づけしてくれなかったが、この女は、わたしがはいって来たときから足に口づけしてやめませんでした。 042 LUK 007 046 あなたは、わたしの頭に油を塗ってくれなかったが、この女は、わたしの足に香油を塗ってくれました。 042 LUK 007 047 だから、わたしは言うのです。『この女の多くの罪は赦されています。というのは、彼女はよけい愛したからです。しかし少ししか赦されない者は、少ししか愛しません。』」 042 LUK 007 048 そして女に、「あなたの罪は赦されています。」と言われた。 042 LUK 007 049 すると、いっしょに食卓にいた人たちは、心の中でこう言い始めた。「罪を赦したりするこの人は、いったいだれだろう。」 042 LUK 007 050 しかし、イエスは女に言われた。「あなたの信仰が、あなたを救ったのです。安心して行きなさい。」 042 LUK 008 001 その後、イエスは、神の国を説き、その福音を宣べ伝えながら、町や村を次から次に旅をしておられた。十二弟子もお供をした。 042 LUK 008 002 また、悪霊や病気を直していただいた女たち、すなわち、七つの悪霊を追い出していただいたマグダラの女と呼ばれるマリヤ、 042 LUK 008 003 ヘロデの執事クーザの妻ヨハンナ、スザンナ、そのほか自分の財産をもって彼らに仕えている大ぜいの女たちもいっしょであった。 042 LUK 008 004 さて、大ぜいの人の群れが集まり、また方々の町からも人々がみもとにやって来たので、イエスはたとえを用いて話された。 042 LUK 008 005 「種を蒔く人が種蒔きに出かけた。蒔いているとき、道ばたに落ちた種があった。すると、人に踏みつけられ、空の鳥がそれを食べてしまった。 042 LUK 008 006 また、別の種は岩の上に落ち、生え出たが、水分がなかったので、枯れてしまった。 042 LUK 008 007 また、別の種はいばらの真中に落ちた。ところが、いばらもいっしょに生え出て、それを押しふさいでしまった。 042 LUK 008 008 また、別の種は良い地に落ち、生え出て、百倍の実を結んだ。」 イエスは、これらのことを話しながら「聞く耳のある者は聞きなさい。」と叫ばれた。 042 LUK 008 009 さて、弟子たちは、このたとえがどんな意味かをイエスに尋ねた。 042 LUK 008 010 そこでイエスは言われた。「あなたがたに、神の国の奥義を知ることが許されているが、ほかの者には、たとえで話します。彼らが見ていても見えず、聞いていても悟らないためです。 042 LUK 008 011 このたとえの意味はこうです。種は神のことばです。 042 LUK 008 012 道ばたに落ちるとは、こういう人たちのことです。みことばを聞いたが、あとから悪魔が来て、彼らが信じて救われることのないように、その人たちの心から、みことばを持ち去ってしまうのです。 042 LUK 008 013 岩の上に落ちるとは、こういう人たちのことです。聞いたときには喜んでみことばを受け入れるが、根がないので、しばらくは信じていても、試練のときになると、身を引いてしまうのです。 042 LUK 008 014 いばらの中に落ちるとは、こういう人たちのことです。みことばを聞きはしたが、とかくしているうちに、この世の心づかいや、富や、快楽によってふさがれて、実が熟するまでにならないのです。 042 LUK 008 015 しかし、良い地に落ちるとは、こういう人たちのことです。正しい、良い心でみことばを聞くと、それをしっかりと守り、よく耐えて、実を結ばせるのです。 042 LUK 008 016 あかりをつけてから、それを器で隠したり、寝台の下に置いたりする者はありません。燭台の上に置きます。はいって来る人々に、その光が見えるためです。 042 LUK 008 017 隠れているもので、あらわにならぬものはなく、秘密にされているもので、知られず、また現われないものはありません。 042 LUK 008 018 だから、聞き方に注意しなさい。というのは、持っている人は、さらに与えられ、持たない人は、持っていると思っているものまでも取り上げられるからです。」 042 LUK 008 019 イエスのところに母と兄弟たちが来たが、群衆のためにそばへ近寄れなかった。 042 LUK 008 020 それでイエスに、「あなたのおかあさんと兄弟たちが、あなたに会おうとして、外に立っています。」という知らせがあった。 042 LUK 008 021 ところが、イエスは人々にこう答えられた。「わたしの母、わたしの兄弟たちとは、神のことばを聞いて行なう人たちです。」 042 LUK 008 022 そのころのある日のこと、イエスは弟子たちといっしょに舟に乗り、「さあ、湖の向こう岸へ渡ろう。」と言われた。それで弟子たちは舟を出した。 042 LUK 008 023 舟で渡っている間にイエスはぐっすり眠ってしまわれた。ところが突風が湖に吹きおろして来たので、弟子たちは水をかぶって危険になった。 042 LUK 008 024 そこで、彼らは近寄って行ってイエスを起こし、「先生、先生。私たちはおぼれて死にそうです。」と言った。イエスは、起き上がって、風と荒波とをしかりつけられた。すると風も波も治まり、なぎになった。 042 LUK 008 025 イエスは彼らに、「あなたがたの信仰はどこにあるのです。」と言われた。弟子たちは驚き恐れて互いに言った。「風も水も、お命じになれば従うとは、いったいこの方はどういう方なのだろう。」 042 LUK 008 026 こうして彼らは、ガリラヤの向こう側のゲラサ人の地方に着いた。 042 LUK 008 027 イエスが陸に上がられると、この町の者で悪霊につかれている男がイエスに出会った。彼は、長い間着物も着けず、家には住まないで、墓場に住んでいた。 042 LUK 008 028 彼はイエスを見ると、叫び声をあげ、御前にひれ伏して大声で言った。「いと高き神の子、イエスさま。いったい私に何をしようというのです。お願いです。どうか私を苦しめないでください。」 042 LUK 008 029 それは、イエスが、汚れた霊に、この人から出て行け、と命じられたからである。汚れた霊が何回となくこの人を捕えたので、彼は鎖や足かせでつながれて看視されていたが、それでもそれらを断ち切っては悪霊によって荒野に追いやられていたのである。 042 LUK 008 030 イエスが、「何という名か。」とお尋ねになると、「レギオンです。」と答えた。悪霊が大ぜい彼にはいっていたからである。 042 LUK 008 031 悪霊どもはイエスに、底知れぬ所に行け、とはお命じになりませんようにと願った。 042 LUK 008 032 ちょうど、山のそのあたりに、おびただしい豚の群れが飼ってあったので、悪霊どもは、その豚にはいることを許してくださいと願った。イエスはそれを許された。 042 LUK 008 033 悪霊どもは、その人から出て、豚にはいった。すると、豚の群れはいきなりがけを駆け下って湖にはいり、おぼれ死んだ。 042 LUK 008 034 飼っていた者たちは、この出来事を見て逃げ出し、町や村々でこの事を告げ知らせた。 042 LUK 008 035 人々が、この出来事を見に来て、イエスのそばに来たところ、イエスの足もとに、悪霊の去った男が着物を着て、正気に返って、すわっていた。人々は恐ろしくなった。 042 LUK 008 036 目撃者たちは、悪霊につかれていた人の救われた次第を、その人々に知らせた。 042 LUK 008 037 ゲラサ地方の民衆はみな、すっかりおびえてしまい、イエスに自分たちのところから離れていただきたいと願った。そこで、イエスは舟に乗って帰られた。 042 LUK 008 038 そのとき、悪霊を追い出された人が、お供をしたいとしきりに願ったが、イエスはこう言って彼を帰された。 042 LUK 008 039 「家に帰って、神があなたにどんなに大きなことをしてくださったかを、話して聞かせなさい。」そこで彼は出て行って、イエスが自分にどんなに大きなことをしてくださったかを、町中に言い広めた。 042 LUK 008 040 さて、イエスが帰られると、群衆は喜んで迎えた。みなイエスを待ちわびていたからである。 042 LUK 008 041 するとそこに、ヤイロという人が来た。この人は会堂管理者であった。彼はイエスの足もとにひれ伏して自分の家に来ていただきたいと願った。 042 LUK 008 042 彼には十二歳ぐらいのひとり娘がいて、死にかけていたのである。イエスがお出かけになると、群衆がみもとに押し迫って来た。 042 LUK 008 043 ときに、十二年の間長血をわずらった女がいた。だれにも直してもらえなかったこの女は、 042 LUK 008 044 イエスのうしろに近寄って、イエスの着物のふさにさわった。すると、たちどころに出血が止まった。 042 LUK 008 045 イエスは、「わたしにさわったのは、だれですか。」と言われた。みな自分ではないと言ったので、ペテロは、「先生。この大ぜいの人が、ひしめき合って押しているのです。」と言った。 042 LUK 008 046 しかし、イエスは、「だれかが、わたしにさわったのです。わたしから力が出て行くのを感じたのだから。」と言われた。 042 LUK 008 047 女は、隠しきれないと知って、震えながら進み出て、御前にひれ伏し、すべての民の前で、イエスにさわったわけと、たちどころにいやされた次第とを話した。 042 LUK 008 048 そこで、イエスは彼女に言われた。「娘よ。あなたの信仰があなたを直したのです。安心して行きなさい。」 042 LUK 008 049 イエスがまだ話しておられるときに、会堂管理者の家から人が来て言った。「あなたのお嬢さんはなくなりました。もう、先生を煩わすことはありません。」 042 LUK 008 050 これを聞いて、イエスは答えられた。「恐れないで、ただ信じなさい。そうすれば、娘は直ります。」 042 LUK 008 051 イエスは家にはいられたが、ペテロとヨハネとヤコブ、それに子どもの父と母のほかは、だれもいっしょにはいることをお許しにならなかった。 042 LUK 008 052 人々はみな、娘のために泣き悲しんでいた。しかし、イエスは言われた。「泣かなくてもよい。死んだのではない。眠っているのです。」 042 LUK 008 053 人々は、娘が死んだことを知っていたので、イエスをあざ笑っていた。 042 LUK 008 054 しかしイエスは、娘の手を取って、叫んで言われた。「子どもよ。起きなさい。」 042 LUK 008 055 すると、娘の霊が戻って、娘はただちに起き上がった。それでイエスは、娘に食事をさせるように言いつけられた。 042 LUK 008 056 両親がひどく驚いていると、イエスは、この出来事をだれにも話さないように命じられた。 042 LUK 009 001 イエスは、十二人を呼び集めて、彼らに、すべての悪霊を追い出し、病気を直すための、力と権威とをお授けになった。 042 LUK 009 002 それから、神の国を宣べ伝え、病気を直すために、彼らを遣わされた。 042 LUK 009 003 イエスは、こう言われた。「旅のために何も持って行かないようにしなさい。杖も、袋も、パンも、金も。また下着も、二枚は、いりません。 042 LUK 009 004 どんな家にはいっても、そこにとどまり、そこから次の旅に出かけなさい。 042 LUK 009 005 人々があなたがたを受け入れないばあいは、その町を出て行くときに、彼らに対する証言として、足のちりを払い落としなさい。」 042 LUK 009 006 十二人は出かけて行って、村から村へと回りながら、至る所で福音を宣べ伝え、病気を直した。 042 LUK 009 007 さて、国主ヘロデは、このすべての出来事を聞いて、ひどく当惑していた。それは、ある人々が、「ヨハネが死人の中からよみがえったのだ。」と言い、 042 LUK 009 008 ほかの人々は、「エリヤが現われたのだ。」と言い、さらに別の人々は、「昔の預言者のひとりがよみがえったのだ。」と言っていたからである。 042 LUK 009 009 ヘロデは言った。「ヨハネなら、私が首をはねたのだ。そうしたことがうわさされているこの人は、いったいだれなのだろう。」ヘロデはイエスに会ってみようとした。 042 LUK 009 010 さて、使徒たちは帰って来て、自分たちのして来たことを報告した。それからイエスは彼らを連れてベツサイダという町へひそかに退かれた。 042 LUK 009 011 ところが、多くの群衆がこれを知って、ついて来た。それで、イエスは喜んで彼らを迎え、神の国のことを話し、また、いやしの必要な人たちをおいやしになった。 042 LUK 009 012 そのうち、日も暮れ始めたので、十二人はみもとに来て、「この群衆を解散させてください。そして回りの村や部落にやって、宿をとらせ、何か食べることができるようにさせてください。私たちは、こんな人里離れた所にいるのですから。」と言った。 042 LUK 009 013 しかしイエスは、彼らに言われた。「あなたがたで、何か食べる物を上げなさい。」彼らは言った。「私たちには五つのパンと二匹の魚のほか何もありません。私たちが出かけて行って、この民全体のために食物を買うのでしょうか。」 042 LUK 009 014 それは、男だけでおよそ五千人もいたからである。しかしイエスは、弟子たちに言われた。「人々を、五十人ぐらいずつ組にしてすわらせなさい。」 042 LUK 009 015 弟子たちは、そのようにして、全部をすわらせた。 042 LUK 009 016 するとイエスは、五つのパンと二匹の魚を取り、天を見上げて、それらを祝福して裂き、群衆に配るように弟子たちに与えられた。 042 LUK 009 017 人々はみな、食べて満腹した。そして、余ったパン切れを取り集めると、十二かごあった。 042 LUK 009 018 さて、イエスがひとりで祈っておられたとき、弟子たちがいっしょにいた。イエスは彼らに尋ねて言われた。「群衆はわたしのことをだれだと言っていますか。」 042 LUK 009 019 彼らは、答えて言った。「バプテスマのヨハネだと言っています。ある者はエリヤだと言い、またほかの人々は、昔の預言者のひとりが生き返ったのだとも言っています。」 042 LUK 009 020 イエスは、彼らに言われた。「では、あなたがたは、わたしをだれだと言いますか。」ペテロが答えて言った。「神のキリストです。」 042 LUK 009 021 するとイエスは、このことをだれにも話さないようにと、彼らを戒めて命じられた。 042 LUK 009 022 そして言われた。「人の子は、必ず多くの苦しみを受け、長老、祭司長、律法学者たちに捨てられ、殺され、そして三日目によみがえらねばならないのです。」 042 LUK 009 023 イエスは、みなの者に言われた。「だれでもわたしについて来たいと思うなら、自分を捨て、日々自分の十字架を負い、そしてわたしについて来なさい。 042 LUK 009 024 自分のいのちを救おうと思う者は、それを失い、わたしのために自分のいのちを失う者は、それを救うのです。 042 LUK 009 025 人は、たとい全世界を手に入れても、自分自身を失い、損じたら、何の得がありましょう。 042 LUK 009 026 もしだれでも、わたしとわたしのことばとを恥と思うなら、人の子も、自分と父と聖なる御使いとの栄光を帯びて来るときには、そのような人のことを恥とします。 042 LUK 009 027 しかし、わたしは真実をあなたがたに告げます。ここに立っている人々の中には、神の国を見るまでは、決して死を味わわない者たちがいます。」 042 LUK 009 028 これらの教えがあってから八日ほどして、イエスは、ペテロとヨハネとヤコブとを連れて、祈るために、山に登られた。 042 LUK 009 029 祈っておられると、御顔の様子が変わり、御衣は白く光り輝いた。 042 LUK 009 030 しかも、ふたりの人がイエスと話し合っているではないか。それはモーセとエリヤであって、 042 LUK 009 031 栄光のうちに現われて、イエスがエルサレムで遂げようとしておられるご最期についていっしょに話していたのである。 042 LUK 009 032 ペテロと仲間たちは、眠くてたまらなかったが、はっきり目がさめると、イエスの栄光と、イエスといっしょに立っているふたりの人を見た。 042 LUK 009 033 それから、ふたりがイエスと別れようとしたとき、ペテロがイエスに言った。「先生。ここにいることは、すばらしいことです。私たちが三つの幕屋を造ります。あなたのために一つ、モーセのために一つ、エリヤのために一つ。」ペテロは何を言うべきかを知らなかったのである。 042 LUK 009 034 彼がこう言っているうちに、雲がわき起こってその人々をおおった。彼らが雲に包まれると、弟子たちは恐ろしくなった。 042 LUK 009 035 すると雲の中から、「これは、わたしの愛する子、わたしの選んだ者である。彼の言うことを聞きなさい。」と言う声がした。 042 LUK 009 036 この声がしたとき、そこに見えたのはイエスだけであった。彼らは沈黙を守り、その当時は、自分たちの見たこのことをいっさい、だれにも話さなかった。 042 LUK 009 037 次の日、一行が山から降りて来ると、大ぜいの人の群れがイエスを迎えた。 042 LUK 009 038 すると、群衆の中から、ひとりの人が叫んで言った。「先生。お願いです。息子を見てやってください。ひとり息子です。 042 LUK 009 039 ご覧ください。霊がこの子に取りつきますと、突然叫び出すのです。そしてひきつけさせてあわを吹かせ、かき裂いて、なかなか離れようとしません。 042 LUK 009 040 お弟子たちに、この霊を追い出してくださるようお願いしたのですが、お弟子たちにはできませんでした。」 042 LUK 009 041 イエスは答えて言われた。「ああ、不信仰な、曲がった今の世だ。いつまで、あなたがたといっしょにいて、あなたがたにがまんしていなければならないのでしょう。あなたの子をここに連れて来なさい。」 042 LUK 009 042 その子が近づいて来る間にも、悪霊は彼を打ち倒して、激しくひきつけさせてしまった。それで、イエスは汚れた霊をしかって、その子をいやし、父親に渡された。 042 LUK 009 043 人々はみな、神のご威光に驚嘆した。 イエスのなさったすべてのことに、人々がみな驚いていると、イエスは弟子たちにこう言われた。 042 LUK 009 044 「このことばを、しっかりと耳に入れておきなさい。人の子は、いまに人々の手に渡されます。」 042 LUK 009 045 しかし、弟子たちは、このみことばが理解できなかった。このみことばの意味は、わからないように、彼らから隠されていたのである。また彼らは、このみことばについてイエスに尋ねるのを恐れた。 042 LUK 009 046 さて、弟子たちの間に、自分たちの中で、だれが一番偉いかという議論が持ち上がった。 042 LUK 009 047 しかしイエスは、彼らの心の中の考えを知っておられて、ひとりの子どもの手を取り、自分のそばに立たせ、 042 LUK 009 048 彼らに言われた。「だれでも、このような子どもを、わたしの名のゆえに受け入れる者は、わたしを受け入れる者です。また、わたしを受け入れる者は、わたしを遣わされた方を受け入れる者です。あなたがたすべての中で一番小さい者が一番偉いのです。」 042 LUK 009 049 ヨハネが答えて言った。「先生。私たちは、先生の名を唱えて悪霊を追い出している者を見ましたが、やめさせました。私たちの仲間ではないので、やめさせたのです。」 042 LUK 009 050 しかしイエスは、彼に言われた。「やめさせることはありません。あなたがたに反対しない者は、あなたがたの味方です。」 042 LUK 009 051 さて、天に上げられる日が近づいて来たころ、イエスは、エルサレムに行こうとして御顔をまっすぐ向けられ、 042 LUK 009 052 ご自分の前に使いを出された。彼らは行って、サマリヤ人の町にはいり、イエスのために準備した。 042 LUK 009 053 しかし、イエスは御顔をエルサレムに向けて進んでおられたので、サマリヤ人はイエスを受け入れなかった。 042 LUK 009 054 弟子のヤコブとヨハネが、これを見て言った。「主よ。私たちが天から火を呼び下して、彼らを焼き滅ぼしましょうか。」 042 LUK 009 055 しかし、イエスは振り向いて、彼らを戒められた。 042 LUK 009 056 そして一行は別の村に行った。 042 LUK 009 057 さて、彼らが道を進んで行くと、ある人がイエスに言った。「私はあなたのおいでになる所なら、どこにでもついて行きます。」 042 LUK 009 058 すると、イエスは彼に言われた。「狐には穴があり、空の鳥には巣があるが、人の子には枕する所もありません。」 042 LUK 009 059 イエスは別の人に、こう言われた。「わたしについて来なさい。」しかしその人は言った。「まず行って、私の父を葬ることを許してください。」 042 LUK 009 060 すると彼に言われた。「死人たちに彼らの中の死人たちを葬らせなさい。あなたは出て行って、神の国を言い広めなさい。」 042 LUK 009 061 別の人はこう言った。「主よ。あなたに従います。ただその前に、家の者にいとまごいに帰らせてください。」 042 LUK 009 062 するとイエスは彼に言われた。「だれでも、手を鋤につけてから、うしろを見る者は、神の国にふさわしくありません。」 042 LUK 010 001 その後、主は、別に七十人を定め、ご自分が行くつもりのすべての町や村へ、ふたりずつ先にお遣わしになった。 042 LUK 010 002 そして、彼らに言われた。「実りは多いが、働き手が少ない。だから、収穫の主に、収穫のために働き手を送ってくださるように祈りなさい。 042 LUK 010 003 さあ、行きなさい。いいですか。わたしがあなたがたを遣わすのは、狼の中に小羊を送り出すようなものです。 042 LUK 010 004 財布も旅行袋も持たず、くつもはかずに行きなさい。だれにも、道であいさつしてはいけません。 042 LUK 010 005 どんな家にはいっても、まず、『この家に平安があるように。』と言いなさい。 042 LUK 010 006 もしそこに平安の子がいたら、あなたがたの祈った平安は、その人の上にとどまります。だが、もしいないなら、その平安はあなたがたに返って来ます。 042 LUK 010 007 その家に泊まっていて、出してくれる物を飲み食いしなさい。働く者が報酬を受けるのは、当然だからです。家から家へと渡り歩いてはいけません。 042 LUK 010 008 どの町にはいっても、あなたがたを受け入れてくれたら、出される物を食べなさい。 042 LUK 010 009 そして、その町の病人を直し、彼らに、『神の国が、あなたがたに近づいた。』と言いなさい。 042 LUK 010 010 しかし、町にはいっても、人々があなたがたを受け入れないならば、大通りに出て、こう言いなさい。 042 LUK 010 011 『私たちは足についたこの町のちりも、あなたがたにぬぐい捨てて行きます。しかし、神の国が近づいたことは承知していなさい。』 042 LUK 010 012 あなたがたに言うが、その日には、その町よりもソドムのほうがまだ罰が軽いのです。 042 LUK 010 013 ああコラジン。ああベツサイダ。おまえたちの間に起こった力あるわざが、もしもツロとシドンでなされたのだったら、彼らはとうの昔に荒布をまとい、灰の中にすわって、悔い改めていただろう。 042 LUK 010 014 しかし、さばきの日には、そのツロとシドンのほうが、まだおまえたちより罰が軽いのだ。 042 LUK 010 015 カペナウム。どうしておまえが天に上げられることがありえよう。ハデスにまで落とされるのだ。 042 LUK 010 016 あなたがたに耳を傾ける者は、わたしに耳を傾ける者であり、あなたがたを拒む者は、わたしを拒む者です。わたしを拒む者は、わたしを遣わされた方を拒む者です。」 042 LUK 010 017 さて、七十人が喜んで帰って来て、こう言った。「主よ。あなたの御名を使うと、悪霊どもでさえ、私たちに服従します。」 042 LUK 010 018 イエスは言われた。「わたしが見ていると、サタンが、いなずまのように天から落ちました。 042 LUK 010 019 確かに、わたしは、あなたがたに、蛇やさそりを踏みつけ、敵のあらゆる力に打ち勝つ権威を授けたのです。だから、あなたがたに害を加えるものは何一つありません。 042 LUK 010 020 だがしかし、悪霊どもがあなたがたに服従するからといって、喜んではなりません。ただあなたがたの名が天に書きしるされていることを喜びなさい。」 042 LUK 010 021 ちょうどこのとき、イエスは、聖霊によって喜びにあふれて言われた。「天地の主であられる父よ。あなたをほめたたえます。これらのことを、賢い者や知恵のある者には隠して、幼子たちに現わしてくださいました。そうです、父よ。これがみこころにかなったことでした。 042 LUK 010 022 すべてのものが、わたしの父から、わたしに渡されています。それで、子がだれであるかは、父のほかには知る者がありません。また父がだれであるかは、子と、子が父を知らせようと心に定めた人たちのほかは、だれも知る者がありません。」 042 LUK 010 023 それからイエスは、弟子たちのほうに向いて、ひそかに言われた。「あなたがたの見ていることを見る目は幸いです。 042 LUK 010 024 あなたがたに言いますが、多くの預言者や王たちがあなたがたの見ていることを見たいと願ったのに、見られなかったのです。また、あなたがたの聞いていることを聞きたいと願ったのに、聞けなかったのです。」 042 LUK 010 025 すると、ある律法の専門家が立ち上がり、イエスをためそうとして言った。「先生。何をしたら永遠のいのちを自分のものとして受けることができるでしょうか。」 042 LUK 010 026 イエスは言われた。「律法には、何と書いてありますか。あなたはどう読んでいますか。」 042 LUK 010 027 すると彼は答えて言った。「『心を尽くし、思いを尽くし、力を尽くし、知性を尽くして、あなたの神である主を愛せよ。』また『あなたの隣人をあなた自身のように愛せよ。』とあります。」 042 LUK 010 028 イエスは言われた。「そのとおりです。それを実行しなさい。そうすれば、いのちを得ます。」 042 LUK 010 029 しかし彼は、自分の正しさを示そうとしてイエスに言った。「では、私の隣人とは、だれのことですか。」 042 LUK 010 030 イエスは答えて言われた。 「ある人が、エルサレムからエリコへ下る道で、強盗に襲われた。強盗どもは、その人の着物をはぎ取り、なぐりつけ、半殺しにして逃げて行った。 042 LUK 010 031 たまたま、祭司がひとり、その道を下って来たが、彼を見ると、反対側を通り過ぎて行った。 042 LUK 010 032 同じようにレビ人も、その場所に来て彼を見ると、反対側を通り過ぎて行った。 042 LUK 010 033 ところが、あるサマリヤ人が、旅の途中、そこに来合わせ、彼を見てかわいそうに思い、 042 LUK 010 034 近寄って傷にオリーブ油とぶどう酒を注いで、ほうたいをし、自分の家畜に乗せて宿屋に連れて行き、介抱してやった。 042 LUK 010 035 次の日、彼はデナリ二つを取り出し、宿屋の主人に渡して言った。『介抱してあげてください。もっと費用がかかったら、私が帰りに払います。』 042 LUK 010 036 この三人の中でだれが、強盗に襲われた者の隣人になったと思いますか。」 042 LUK 010 037 彼は言った。「その人にあわれみをかけてやった人です。」するとイエスは言われた。「あなたも行って同じようにしなさい。」 042 LUK 010 038 さて、彼らが旅を続けているうち、イエスがある村にはいられると、マルタという女が喜んで家にお迎えした。 042 LUK 010 039 彼女にマリヤという妹がいたが、主の足もとにすわって、みことばに聞き入っていた。 042 LUK 010 040 ところが、マルタは、いろいろともてなしのために気が落ち着かず、みもとに来て言った。「主よ。妹が私だけにおもてなしをさせているのを、何ともお思いにならないのでしょうか。私の手伝いをするように、妹におっしゃってください。」 042 LUK 010 041 主は答えて言われた。「マルタ、マルタ。あなたは、いろいろなことを心配して、気を使っています。 042 LUK 010 042 しかし、どうしても必要なことはわずかです。いや、一つだけです。マリヤはその良いほうを選んだのです。彼女からそれを取り上げてはいけません。」 042 LUK 011 001 さて、イエスはある所で祈っておられた。その祈りが終わると、弟子のひとりが、イエスに言った。「主よ。ヨハネが弟子たちに教えたように、私たちにも祈りを教えてください。」 042 LUK 011 002 そこでイエスは、彼らに言われた。「祈るときには、こう言いなさい。 『父よ。御名があがめられますように。 御国が来ますように。 042 LUK 011 003 私たちの日ごとの糧を毎日お与えください。 042 LUK 011 004 私たちの罪をお赦しください。私たちも私たちに負いめのある者をみな赦します。 私たちを試みに会わせないでください。』」 042 LUK 011 005 また、イエスはこう言われた。「あなたがたのうち、だれかに友だちがいるとして、真夜中にその人のところに行き、『君。パンを三つ貸してくれ。 042 LUK 011 006 友人が旅の途中、私のうちへ来たのだが、出してやるものがないのだ。』と言ったとします。 042 LUK 011 007 すると、彼は家の中からこう答えます。『めんどうをかけないでくれ。もう戸締まりもしてしまったし、子どもたちも私も寝ている。起きて、何かをやることはできない。』 042 LUK 011 008 あなたがたに言いますが、彼は友だちだからということで起きて何かを与えることはしないにしても、あくまで頼み続けるなら、そのためには起き上がって、必要な物を与えるでしょう。 042 LUK 011 009 わたしは、あなたがたに言います。求めなさい。そうすれば与えられます。捜しなさい。そうすれば見つかります。たたきなさい。そうすれば開かれます。 042 LUK 011 010 だれであっても、求める者は受け、捜す者は見つけ出し、たたく者には開かれます。 042 LUK 011 011 あなたがたの中で、子どもが魚を下さいと言うときに、魚の代わりに蛇を与えるような父親が、いったいいるでしょうか。 042 LUK 011 012 卵を下さいと言うのに、だれが、さそりを与えるでしょう。 042 LUK 011 013 してみると、あなたがたも、悪い者ではあっても、自分の子どもには良い物を与えることを知っているのです。とすれば、なおのこと、天の父が、求める人たちに、どうして聖霊を下さらないことがありましょう。」 042 LUK 011 014 イエスは悪霊、それもおしの悪霊を追い出しておられた。悪霊が出て行くと、おしがものを言い始めたので、群衆は驚いた。 042 LUK 011 015 しかし、彼らのうちには、「悪霊どものかしらベルゼブルによって、悪霊どもを追い出しているのだ。」と言う者もいた。 042 LUK 011 016 また、イエスをためそうとして、彼に天からのしるしを求める者もいた。 042 LUK 011 017 しかし、イエスは、彼らの心を見抜いて言われた。「どんな国でも、内輪もめしたら荒れすたれ、家にしても、内輪で争えばつぶれます。 042 LUK 011 018 サタンも、もし仲間割れしたのだったら、どうしてサタンの国が立ち行くことができましょう。それなのにあなたがたは、わたしがベルゼブルによって悪霊どもを追い出していると言います。 042 LUK 011 019 もしもわたしが、ベルゼブルによって悪霊どもを追い出しているのなら、あなたがたの仲間は、だれによって追い出すのですか。だから、あなたがたの仲間が、あなたがたをさばく人となるのです。 042 LUK 011 020 しかし、わたしが、神の指によって悪霊どもを追い出しているのなら、神の国はあなたがたに来ているのです。 042 LUK 011 021 強い人が十分に武装して自分の家を守っているときには、その持ち物は安全です。 042 LUK 011 022 しかし、もっと強い者が襲って来て彼に打ち勝つと、彼の頼みにしていた武具を奪い、分捕り品を分けます。 042 LUK 011 023 わたしの味方でない者はわたしに逆らう者であり、わたしとともに集めない者は散らす者です。 042 LUK 011 024 汚れた霊が人から出て行って、水のない所をさまよいながら、休み場を捜します。一つも見つからないので、『出て来た自分の家に帰ろう。』と言います。 042 LUK 011 025 帰って見ると、家は、掃除をしてきちんとかたづいていました。 042 LUK 011 026 そこで、出かけて行って、自分よりも悪いほかの霊を七つ連れて来て、みなはいり込んでそこに住みつくのです。そうなると、その人の後の状態は、初めよりもさらに悪くなります。」 042 LUK 011 027 イエスが、これらのことを話しておられると、群衆の中から、ひとりの女が声を張り上げてイエスに言った。「あなたを産んだ腹、あなたが吸った乳房は幸いです。」 042 LUK 011 028 しかし、イエスは言われた。「いや、幸いなのは、神のことばを聞いてそれを守る人たちです。」 042 LUK 011 029 さて、群衆の数がふえて来ると、イエスは話し始められた。「この時代は悪い時代です。しるしを求めているが、ヨナのしるしのほかには、しるしは与えられません。 042 LUK 011 030 というのは、ヨナがニネベの人々のために、しるしとなったように、人の子がこの時代のために、しるしとなるからです。 042 LUK 011 031 南の女王が、さばきのときに、この時代の人々とともに立って、彼らを罪に定めます。なぜなら、彼女はソロモンの知恵を聞くために地の果てから来たからです。しかし、見なさい。ここにソロモンよりもまさった者がいるのです。 042 LUK 011 032 ニネベの人々が、さばきのときに、この時代の人々とともに立って、この人々を罪に定めます。なぜなら、ニネベの人々はヨナの説教で悔い改めたからです。しかし、見なさい。ここにヨナよりもまさった者がいるのです。 042 LUK 011 033 だれも、あかりをつけてから、それを穴倉や、枡の下に置く者はいません。燭台の上に置きます。はいって来る人々に、その光が見えるためです。 042 LUK 011 034 からだのあかりは、あなたの目です。目が健全なら、あなたの全身も明るいが、しかし、目が悪いと、からだも暗くなります。 042 LUK 011 035 だから、あなたのうちの光が、暗やみにならないように、気をつけなさい。 042 LUK 011 036 もし、あなたの全身が明るくて何の暗い部分もないなら、その全身はちょうどあかりが輝いて、あなたを照らすときのように明るく輝きます。」 042 LUK 011 037 イエスが話し終えられると、ひとりのパリサイ人が、食事をいっしょにしてください、とお願いした。そこでイエスは家にはいって、食卓に着かれた。 042 LUK 011 038 そのパリサイ人は、イエスが食事の前に、まずきよめの洗いをなさらないのを見て、驚いた。 042 LUK 011 039 すると、主は言われた。「なるほど、あなたがたパリサイ人は、杯や大皿の外側はきよめるが、その内側は、強奪と邪悪とでいっぱいです。 042 LUK 011 040 愚かな人たち。外側を造られた方は、内側も造られたのではありませんか。 042 LUK 011 041 とにかく、うちのものを施しに用いなさい。そうすれば、いっさいが、あなたがたにとってきよいものとなります。 042 LUK 011 042 だが、忌まわしいものだ。パリサイ人。あなたがたは、はっか、うん香、あらゆる野菜などの十分の一を納めているが、公義と神への愛とはなおざりにしています。これこそ、実行しなければならない事がらです。ただし他のほうも、なおざりにしてはいけません。 042 LUK 011 043 忌まわしいものだ。パリサイ人。あなたがたは、会堂の上席や、市場であいさつされることが好きです。 042 LUK 011 044 忌まわしいことだ。あなたがたは、人目につかぬ墓のようで、その上を歩く人々も気がつかない。」 042 LUK 011 045 すると、ある律法の専門家が、答えて言った。「先生。そのようなことを言われることは、私たちをも侮辱することです。」 042 LUK 011 046 しかし、イエスは言われた。「あなたがた律法の専門家たちも忌まわしいものだ。あなたがたは、人々には負いきれない荷物を負わせるが、自分は、その荷物に指一本もさわろうとはしない。 042 LUK 011 047 忌まわしいことだ。あなたがたは、預言者たちの墓を建てている。しかし、あなたがたの先祖は預言者たちを殺したのです。 042 LUK 011 048 そのようにして、あなたがたは、自分の先祖のしたことの証人となり、それを認めています。なぜなら、あなたがたの先祖が預言者たちを殺し、あなたがたがその墓を建てているからです。 042 LUK 011 049 だから、神の知恵もこう言いました。『わたしは預言者たちや使徒たちを彼らに遣わすが、彼らは、そのうちのある者を殺し、ある者を迫害する。 042 LUK 011 050 それは、アベルの血から、祭壇と神の家との間で殺されたザカリヤの血に至るまでの、世の初めから流されたすべての預言者の血の責任を、この時代が問われるためである。そうだ。わたしは言う。この時代はその責任を問われる。』 042 LUK 011 051 忌まわしいものだ。律法の専門家たち。あなたがたは、知識のかぎを持ち去り、自分もはいらず、はいろうとする人々をも妨げたのです。」 042 LUK 011 053 イエスがそこを出て行かれると、律法学者、パリサイ人たちのイエスに対する激しい敵対と、いろいろのことについてのしつこい質問攻めとが始まった。 042 LUK 011 054 彼らは、イエスの口から出ることに、言いがかりをつけようと、ひそかに計った。 042 LUK 012 001 そうこうしている間に、おびただしい数の群衆が集まって来て、互いに足を踏み合うほどになった。イエスはまず弟子たちに対して、話しだされた。「パリサイ人のパン種に気をつけなさい。それは彼らの偽善のことです。 042 LUK 012 002 おおいかぶされているもので、現わされないものはなく、隠されているもので、知られずに済むものはありません。 042 LUK 012 003 ですから、あなたがたが暗やみで言ったことが、明るみで聞かれ、家の中でささやいたことが、屋上で言い広められます。 042 LUK 012 004 そこで、わたしの友であるあなたがたに言います。からだを殺しても、あとはそれ以上何もできない人間たちを恐れてはいけません。 042 LUK 012 005 恐れなければならない方を、あなたがたに教えてあげましょう。殺したあとで、ゲヘナに投げ込む権威を持っておられる方を恐れなさい。そうです。あなたがたに言います。この方を恐れなさい。 042 LUK 012 006 五羽の雀は二アサリオンで売っているでしょう。そんな雀の一羽でも、神の御前には忘れられてはいません。 042 LUK 012 007 それどころか、あなたがたの頭の毛さえも、みな数えられています。恐れることはありません。あなたがたは、たくさんの雀よりもすぐれた者です。 042 LUK 012 008 そこで、あなたがたに言います。だれでも、わたしを人の前で認める者は、人の子もまた、その人を神の御使いたちの前で認めます。 042 LUK 012 009 しかし、わたしを人の前で知らないと言う者は、神の御使いたちの前で知らないと言われます。 042 LUK 012 010 たとい、人の子をそしることばを使う者があっても、赦されます。しかし、聖霊をけがす者は赦されません。 042 LUK 012 011 また、人々があなたがたを、会堂や役人や権力者などのところに連れて行ったとき、何をどう弁明しようか、何を言おうかと心配するには及びません。 042 LUK 012 012 言うべきことは、そのときに聖霊が教えてくださるからです。」 042 LUK 012 013 群衆の中のひとりが、「先生。私と遺産を分けるように私の兄弟に話してください。」と言った。 042 LUK 012 014 すると彼に言われた。「いったいだれが、わたしをあなたがたの裁判官や調停者に任命したのですか。」 042 LUK 012 015 そして人々に言われた。「どんな貪欲にも注意して、よく警戒しなさい。なぜなら、いくら豊かな人でも、その人のいのちは財産にあるのではないからです。」 042 LUK 012 016 それから人々にたとえを話された。 「ある金持ちの畑が豊作であった。 042 LUK 012 017 そこで彼は、心の中でこう言いながら考えた。『どうしよう。作物をたくわえておく場所がない。』 042 LUK 012 018 そして言った。『こうしよう。あの倉を取りこわして、もっと大きいのを建て、穀物や財産はみなそこにしまっておこう。 042 LUK 012 019 そして、自分のたましいにこう言おう。「たましいよ。これから先何年分もいっぱい物がためられた。さあ、安心して、食べて、飲んで、楽しめ。」』 042 LUK 012 020 しかし神は彼に言われた。『愚か者。おまえのたましいは、今夜おまえから取り去られる。そうしたら、おまえが用意した物は、いったいだれのものになるのか。』 042 LUK 012 021 自分のためにたくわえても、神の前に富まない者はこのとおりです。」 042 LUK 012 022 それから弟子たちに言われた。「だから、わたしはあなたがたに言います。いのちのことで何を食べようかと心配したり、からだのことで何を着ようかと心配したりするのはやめなさい。 042 LUK 012 023 いのちは食べ物よりたいせつであり、からだは着物よりたいせつだからです。 042 LUK 012 024 烏のことを考えてみなさい。蒔きもせず、刈り入れもせず、納屋も倉もありません。けれども、神が彼らを養っていてくださいます。あなたがたは、鳥よりも、はるかにすぐれたものです。 042 LUK 012 025 あなたがたのうちのだれが、心配したからといって、自分のいのちを少しでも延ばすことができますか。 042 LUK 012 026 こんな小さなことさえできないで、なぜほかのことまで心配するのですか。 042 LUK 012 027 ゆりの花のことを考えてみなさい。どうして育つのか。紡ぎもせず、織りもしないのです。しかし、わたしはあなたがたに言います。栄華を窮めたソロモンでさえ、このような花の一つほどにも着飾ってはいませんでした。 042 LUK 012 028 しかし、きょうは野にあって、あすは炉に投げ込まれる草をさえ、神はこのように装ってくださるのです。ましてあなたがたには、どんなによくしてくださることでしょう。ああ、信仰の薄い人たち。 042 LUK 012 029 何を食べたらよいか、何を飲んだらよいか、と捜し求めることをやめ、気をもむことをやめなさい。 042 LUK 012 030 これらはみな、この世の異邦人たちが切に求めているものです。しかし、あなたがたの父は、それがあなたがたにも必要であることを知っておられます。 042 LUK 012 031 何はともあれ、あなたがたは、神の国を求めなさい。そうすれば、これらの物は、それに加えて与えられます。 042 LUK 012 032 小さな群れよ。恐れることはありません。あなたがたの父である神は、喜んであなたがたに御国をお与えになるからです。 042 LUK 012 033 持ち物を売って、施しをしなさい。自分のために、古くならない財布を作り、朽ちることのない宝を天に積み上げなさい。そこには、盗人も近寄らず、しみもいためることがありません。 042 LUK 012 034 あなたがたの宝のあるところに、あなたがたの心もあるからです。 042 LUK 012 035 腰に帯を締め、あかりをともしていなさい。 042 LUK 012 036 主人が婚礼から帰って来て戸をたたいたら、すぐに戸をあけようと、その帰りを待ち受けている人たちのようでありなさい。 042 LUK 012 037 帰って来た主人に、目をさましているところを見られるしもべたちは幸いです。まことに、あなたがたに告げます。主人のほうが帯を締め、そのしもべたちを食卓に着かせ、そばにいて給仕をしてくれます。 042 LUK 012 038 主人が真夜中に帰っても、夜明けに帰っても、いつでもそのようであることを見られるなら、そのしもべたちは幸いです。 042 LUK 012 039 このことを知っておきなさい。もしも家の主人が、どろぼうの来る時間を知っていたなら、おめおめと自分の家に押し入られはしなかったでしょう。 042 LUK 012 040 あなたがたも用心していなさい。人の子は、思いがけない時に来るのですから。」 042 LUK 012 041 そこで、ペテロが言った。「主よ。このたとえは私たちのために話してくださるのですか。それともみなのためなのですか。」 042 LUK 012 042 主は言われた。「では、主人から、その家のしもべたちを任されて、食事時には彼らに食べ物を与える忠実な思慮深い管理人とは、いったいだれでしょう。 042 LUK 012 043 主人が帰って来たときに、そのようにしているのを見られるしもべは幸いです。 042 LUK 012 044 わたしは真実をあなたがたに告げます。主人は彼に自分の全財産を任せるようになります。 042 LUK 012 045 ところが、もし、そのしもべが、『主人の帰りはまだだ。』と心の中で思い、下男や下女を打ちたたき、食べたり飲んだり、酒に酔ったりし始めると、 042 LUK 012 046 しもべの主人は、思いがけない日の思わぬ時間に帰って来ます。そして、彼をきびしく罰して、不忠実な者どもと同じめに会わせるに違いありません。 042 LUK 012 047 主人の心を知りながら、その思いどおりに用意もせず、働きもしなかったしもべは、ひどくむち打たれます。 042 LUK 012 048 しかし、知らずにいたために、むち打たれるようなことをしたしもべは、打たれても、少しで済みます。すべて、多く与えられた者は多く求められ、多く任された者は多く要求されます。 042 LUK 012 049 わたしが来たのは、地に火を投げ込むためです。だから、その火が燃えていたらと、どんなに願っていることでしょう。 042 LUK 012 050 しかし、わたしには受けるバプテスマがあります。それが成し遂げられるまでは、どんなに苦しむことでしょう。 042 LUK 012 051 あなたがたは、地に平和を与えるためにわたしが来たと思っているのですか。そうではありません。あなたがたに言いますが、むしろ、分裂です。 042 LUK 012 052 今から、一家五人は、三人がふたりに、ふたりが三人に対抗して分かれるようになります。 042 LUK 012 053 父は息子に、息子は父に対抗し、母は娘に、娘は母に対抗し、しゅうとめは嫁に、嫁はしゅうとめに対抗して分かれるようになります。」 042 LUK 012 054 群衆にもこう言われた。「あなたがたは、西に雲が起こるのを見るとすぐに、『にわか雨が来るぞ。』と言い、事実そのとおりになります。 042 LUK 012 055 また南風が吹きだすと、『暑い日になるぞ。』と言い、事実そのとおりになります。 042 LUK 012 056 偽善者たち。あなたがたは地や空の現象を見分けることを知りながら、どうして今のこの時代を見分けることができないのですか。 042 LUK 012 057 また、なぜ自分から進んで、何が正しいかを判断しないのですか。 042 LUK 012 058 あなたを告訴する者といっしょに役人の前に行くときは、途中でも、熱心に彼と和解するよう努めなさい。そうでないと、その人はあなたを裁判官のもとにひっぱって行きます。裁判官は執行人に引き渡し、執行人は牢に投げ込んでしまいます。 042 LUK 012 059 あなたに言います。最後の一レプタを支払うまでは、そこから決して出られないのです。」 042 LUK 013 001 ちょうどそのとき、ある人たちがやって来て、イエスに報告した。ピラトがガリラヤ人たちの血をガリラヤ人たちのささげるいけにえに混ぜたというのである。 042 LUK 013 002 イエスは彼らに答えて言われた。「そのガリラヤ人たちがそのような災難を受けたから、ほかのどのガリラヤ人よりも罪深い人たちだったとでも思うのですか。 042 LUK 013 003 そうではない。わたしはあなたがたに言います。あなたがたも悔い改めないなら、みな同じように滅びます。 042 LUK 013 004 また、シロアムの塔が倒れ落ちて死んだあの十八人は、エルサレムに住んでいるだれよりも罪深い人たちだったとでも思うのですか。 042 LUK 013 005 そうではない。わたしはあなたがたに言います。あなたがたも悔い改めないなら、みな同じように滅びます。」 042 LUK 013 006 イエスはこのようなたとえを話された。 「ある人が、ぶどう園にいちじくの木を植えておいた。実を取りに来たが、何も見つからなかった。 042 LUK 013 007 そこで、ぶどう園の番人に言った。『見なさい。三年もの間、やって来ては、このいちじくの実のなるのを待っているのに、なっていたためしがない。これを切り倒してしまいなさい。何のために土地をふさいでいるのですか。』 042 LUK 013 008 番人は答えて言った。『ご主人。どうか、ことし一年そのままにしてやってください。木の回りを掘って、肥やしをやってみますから。 042 LUK 013 009 もしそれで来年、実を結べばよし、それでもだめなら、切り倒してください。』」 042 LUK 013 010 イエスは安息日に、ある会堂で教えておられた。 042 LUK 013 011 すると、そこに十八年も病の霊につかれ、腰が曲がって、全然伸ばすことのできない女がいた。 042 LUK 013 012 イエスは、その女を見て、呼び寄せ、「あなたの病気はいやされました。」と言って、 042 LUK 013 013 手を置かれると、女はたちどころに腰が伸びて、神をあがめた。 042 LUK 013 014 すると、それを見た会堂管理者は、イエスが安息日にいやされたのを憤って、群衆に言った。「働いてよい日は六日です。その間に来て直してもらうがよい。安息日には、いけないのです。」 042 LUK 013 015 しかし、主は彼に答えて言われた。「偽善者たち。あなたがたは、安息日に、牛やろばを小屋からほどき、水を飲ませに連れて行くではありませんか。 042 LUK 013 016 この女はアブラハムの娘なのです。それを十八年もの間サタンが縛っていたのです。安息日だからといってこの束縛を解いてやってはいけないのですか。」 042 LUK 013 017 こう話されると、反対していた者たちはみな、恥じ入り、群衆はみな、イエスのなさったすべての輝かしいみわざを喜んだ。 042 LUK 013 018 そこで、イエスはこう言われた。「神の国は、何に似ているでしょう。何に比べたらよいでしょう。 042 LUK 013 019 それは、からし種のようなものです。それを取って庭に蒔いたところ、生長して木になり、空の鳥が枝に巣を作りました。」 042 LUK 013 020 またこう言われた。「神の国を何に比べましょう。 042 LUK 013 021 パン種のようなものです。女がパン種を取って、三サトンの粉に混ぜたところ、全体がふくれました。」 042 LUK 013 022 イエスは、町々村々を次々に教えながら通り、エルサレムへの旅を続けられた。 042 LUK 013 023 すると、「主よ。救われる者は少ないのですか。」と言う人があった。イエスは、人々に言われた。 042 LUK 013 024 「努力して狭い門からはいりなさい。なぜなら、あなたがたに言いますが、はいろうとしても、はいれなくなる人が多いのですから。 042 LUK 013 025 家の主人が、立ち上がって、戸をしめてしまってからでは、外に立って、『ご主人さま。あけてください。』と言って、戸をいくらたたいても、もう主人は、『あなたがたがどこの者か、私は知らない。』と答えるでしょう。 042 LUK 013 026 すると、あなたがたは、こう言い始めるでしょう。『私たちは、ごいっしょに、食べたり飲んだりいたしましたし、私たちの大通りで教えていただきました。』 042 LUK 013 027 だが、主人はこう言うでしょう。『私はあなたがたがどこの者だか知りません。不正を行なう者たち。みな出て行きなさい。』 042 LUK 013 028 神の国にアブラハムやイサクやヤコブや、すべての預言者たちがはいっているのに、あなたがたは外に投げ出されることになったとき、そこで泣き叫んだり、歯ぎしりしたりするのです。 042 LUK 013 029 人々は、東からも西からも、また南からも北からも来て、神の国で食卓に着きます。 042 LUK 013 030 いいですか、今しんがりの者があとで先頭になり、いま先頭の者がしんがりになるのです。」 042 LUK 013 031 ちょうどそのとき、何人かのパリサイ人が近寄って来て、イエスに言った。「ここから出てほかの所へ行きなさい。ヘロデがあなたを殺そうと思っています。」 042 LUK 013 032 イエスは言われた。「行って、あの狐にこう言いなさい。『よく見なさい。わたしは、きょうと、あすとは、悪霊どもを追い出し、病人を直し、三日目に全うされます。 042 LUK 013 033 だが、わたしは、きょうもあすも次の日も進んで行かなければなりません。なぜなら、預言者がエルサレム以外の所で死ぬことはありえないからです。』 042 LUK 013 034 ああ、エルサレム、エルサレム。預言者たちを殺し、自分に遣わされた人たちを石で打つ者、わたしは、めんどりがひなを翼の下にかばうように、あなたの子らを幾たび集めようとしたことか。それなのに、あなたがたはそれを好まなかった。 042 LUK 013 035 見なさい。あなたがたの家は荒れ果てたままに残される。わたしはあなたがたに言います。『祝福あれ。主の御名によって来られる方に。』とあなたがたの言うときが来るまでは、あなたがたは決してわたしを見ることができません。」 042 LUK 014 001 ある安息日に、食事をしようとして、パリサイ派のある指導者の家にはいられたとき、みんながじっとイエスを見つめていた。 042 LUK 014 002 そこには、イエスの真正面に、水腫をわずらっている人がいた。 042 LUK 014 003 イエスは、律法の専門家、パリサイ人たちに、「安息日に病気を直すことは正しいことですか、それともよくないことですか。」と言われた。 042 LUK 014 004 しかし、彼らは黙っていた。それで、イエスはその人を抱いて直してやり、そしてお帰しになった。 042 LUK 014 005 それから、彼らに言われた。「自分の息子や牛が井戸に落ちたのに、安息日だからといって、すぐに引き上げてやらない者があなたがたのうちにいるでしょうか。」 042 LUK 014 006 彼らは答えることができなかった。 042 LUK 014 007 招かれた人々が上座を選んでいる様子に気づいておられたイエスは、彼らにたとえを話された。 042 LUK 014 008 「婚礼の披露宴に招かれたときには、上座にすわってはいけません。あなたより身分の高い人が、招かれているかもしれないし、 042 LUK 014 009 あなたやその人を招いた人が来て、『この人に席を譲ってください。』とあなたに言うなら、そのときあなたは恥をかいて、末席に着かなければならないでしょう。 042 LUK 014 010 招かれるようなことがあって、行ったなら、末席に着きなさい。そうしたら、あなたを招いた人が来て、『どうぞもっと上席にお進みください。』と言うでしょう。そのときは、満座の中で面目を施すことになります。 042 LUK 014 011 なぜなら、だれでも自分を高くする者は低くされ、自分を低くする者は高くされるからです。」 042 LUK 014 012 また、イエスは、自分を招いてくれた人にも、こう話された。「昼食や夕食のふるまいをするなら、友人、兄弟、親族、近所の金持ちなどを呼んではいけません。でないと、今度は彼らがあなたを招いて、お返しすることになるからです。 042 LUK 014 013 祝宴を催すばあいには、むしろ、貧しい人、不具の人、足なえ、盲人たちを招きなさい。 042 LUK 014 014 その人たちはお返しができないので、あなたは幸いです。義人の復活のときお返しを受けるからです。」 042 LUK 014 015 イエスといっしょに食卓に着いていた客のひとりはこれを聞いて、イエスに、「神の国で食事する人は、何と幸いなことでしょう。」と言った。 042 LUK 014 016 するとイエスはこう言われた。 「ある人が盛大な宴会を催し、大ぜいの人を招いた。 042 LUK 014 017 宴会の時刻になったのでしもべをやり、招いておいた人々に、『さあ、おいでください。もうすっかり、用意ができましたから。』と言わせた。 042 LUK 014 018 ところが、みな同じように断わり始めた。最初の人はこう言った。『畑を買ったので、どうしても見に出かけなければなりません。すみませんが、お断わりさせていただきます。』 042 LUK 014 019 もうひとりはこう言った。『五くびきの牛を買ったので、それをためしに行くところです。すみませんが、お断わりさせていただきます。』 042 LUK 014 020 また、別の人はこう言った。『結婚したので、行くことができません。』 042 LUK 014 021 しもべは帰って、このことを主人に報告した。すると、おこった主人は、そのしもべに言った。『急いで町の大通りや路地に出て行って、貧しい人や、不具の人や、盲人や、足なえをここに連れて来なさい。』 042 LUK 014 022 しもべは言った。『ご主人さま。仰せのとおりにいたしました。でも、まだ席があります。』 042 LUK 014 023 主人は言った。『街道や垣根のところに出かけて行って、この家がいっぱいになるように、無理にでも人々を連れて来なさい。 042 LUK 014 024 言っておくが、あの招待されていた人たちの中で、私の食事を味わう者は、ひとりもいないのです。』」 042 LUK 014 025 さて、大ぜいの群衆が、イエスといっしょに歩いていたが、イエスは彼らのほうに向いて言われた。 042 LUK 014 026 「わたしのもとに来て、自分の父、母、妻、子、兄弟、姉妹、そのうえ自分のいのちまでも憎まない者は、わたしの弟子になることができません。 042 LUK 014 027 自分の十字架を負ってわたしについて来ない者は、わたしの弟子になることはできません。 042 LUK 014 028 塔を築こうとするとき、まずすわって、完成に十分な金があるかどうか、その費用を計算しない者が、あなたがたのうちにひとりでもあるでしょうか。 042 LUK 014 029 基礎を築いただけで完成できなかったら、見ていた人はみな彼をあざ笑って、 042 LUK 014 030 『この人は、建て始めはしたものの、完成できなかった。』と言うでしょう。 042 LUK 014 031 また、どんな王でも、ほかの王と戦いを交えようとするときは、二万人を引き連れて向かって来る敵を、一万人で迎え撃つことができるかどうかを、まずすわって、考えずにいられましょうか。 042 LUK 014 032 もし見込みがなければ、敵がまだ遠くに離れている間に、使者を送って講和を求めるでしょう。 042 LUK 014 033 そういうわけで、あなたがたはだれでも、自分の財産全部を捨てないでは、わたしの弟子になることはできません。 042 LUK 014 034 ですから、塩は良いものですが、もしその塩が塩けをなくしたら、何によってそれに味をつけるのでしょうか。 042 LUK 014 035 土地にも肥やしにも役立たず、外に投げ捨てられてしまいます。聞く耳のある人は聞きなさい。」 042 LUK 015 001 さて、取税人、罪人たちがみな、イエスの話を聞こうとして、みもとに近寄って来た。 042 LUK 015 002 すると、パリサイ人、律法学者たちは、つぶやいてこう言った。「この人は、罪人たちを受け入れて、食事までいっしょにする。」 042 LUK 015 003 そこでイエスは、彼らにこのようなたとえを話された。 042 LUK 015 004 「あなたがたのうちに羊を百匹持っている人がいて、そのうちの一匹をなくしたら、その人は九十九匹を野原に残して、いなくなった一匹を見つけるまで捜し歩かないでしょうか。 042 LUK 015 005 見つけたら、大喜びでその羊をかついで、 042 LUK 015 006 帰って来て、友だちや近所の人たちを呼び集め、『いなくなった羊を見つけましたから、いっしょに喜んでください。』と言うでしょう。 042 LUK 015 007 あなたがたに言いますが、それと同じように、ひとりの罪人が悔い改めるなら、悔い改める必要のない九十九人の正しい人にまさる喜びが天にあるのです。 042 LUK 015 008 また、女の人が銀貨を十枚持っていて、もしその一枚をなくしたら、あかりをつけ、家を掃いて、見つけるまで念入りに捜さないでしょうか。 042 LUK 015 009 見つけたら、友だちや近所の女たちを呼び集めて、『なくした銀貨を見つけましたから、いっしょに喜んでください。』と言うでしょう。 042 LUK 015 010 あなたがたに言いますが、それと同じように、ひとりの罪人が悔い改めるなら、神の御使いたちに喜びがわき起こるのです。」 042 LUK 015 011 またこう話された。 「ある人に息子がふたりあった。 042 LUK 015 012 弟が父に、『おとうさん。私に財産の分け前を下さい。』と言った。それで父は、身代をふたりに分けてやった。 042 LUK 015 013 それから、幾日もたたぬうちに、弟は、何もかもまとめて遠い国に旅立った。そして、そこで放蕩して湯水のように財産を使ってしまった。 042 LUK 015 014 何もかも使い果たしたあとで、その国に大ききんが起こり、彼は食べるにも困り始めた。 042 LUK 015 015 それで、その国のある人のもとに身を寄せたところ、その人は彼を畑にやって、豚の世話をさせた。 042 LUK 015 016 彼は豚の食べるいなご豆で腹を満たしたいほどであったが、だれひとり彼に与えようとはしなかった。 042 LUK 015 017 しかし、我に返ったとき彼は、こう言った。『父のところには、パンのあり余っている雇い人が大ぜいいるではないか。それなのに、私はここで、飢え死にしそうだ。 042 LUK 015 018 立って、父のところに行って、こう言おう。「おとうさん。私は天に対して罪を犯し、またあなたの前に罪を犯しました。 042 LUK 015 019 もう私は、あなたの子と呼ばれる資格はありません。雇い人のひとりにしてください。」』 042 LUK 015 020 こうして彼は立ち上がって、自分の父のもとに行った。ところが、まだ家までは遠かったのに、父親は彼を見つけ、かわいそうに思い、走り寄って彼を抱き、口づけした。 042 LUK 015 021 息子は言った。『おとうさん。私は天に対して罪を犯し、またあなたの前に罪を犯しました。もう私は、あなたの子と呼ばれる資格はありません。』 042 LUK 015 022 ところが父親は、しもべたちに言った。『急いで一番良い着物を持って来て、この子に着せなさい。それから、手に指輪をはめさせ、足にくつをはかせなさい。 042 LUK 015 023 そして肥えた子牛を引いて来てほふりなさい。食べて祝おうではないか。 042 LUK 015 024 この息子は、死んでいたのが生き返り、いなくなっていたのが見つかったのだから。』そして彼らは祝宴を始めた。 042 LUK 015 025 ところで、兄息子は畑にいたが、帰って来て家に近づくと、音楽や踊りの音が聞こえて来た。それで、 042 LUK 015 026 しもべのひとりを呼んで、これはいったい何事かと尋ねると、 042 LUK 015 027 しもべは言った。『弟さんがお帰りになったのです。無事な姿をお迎えしたというので、おとうさんが、肥えた子牛をほふらせなさったのです。』 042 LUK 015 028 すると、兄はおこって、家にはいろうともしなかった。それで、父が出て来て、いろいろなだめてみた。 042 LUK 015 029 しかし兄は父にこう言った。『ご覧なさい。長年の間、私はおとうさんに仕え、戒めを破ったことは一度もありません。その私には、友だちと楽しめと言って、子山羊一匹下さったことがありません。 042 LUK 015 030 それなのに、遊女におぼれてあなたの身代を食いつぶして帰って来たこのあなたの息子のためには、肥えた子牛をほふらせなさったのですか。』 042 LUK 015 031 父は彼に言った。『おまえはいつも私といっしょにいる。私のものは、全部おまえのものだ。 042 LUK 015 032 だがおまえの弟は、死んでいたのが生き返って来たのだ。いなくなっていたのが見つかったのだから、楽しんで喜ぶのは当然ではないか。』」 042 LUK 016 001 イエスは、弟子たちにも、こういう話をされた。 「ある金持ちにひとりの管理人がいた。この管理人が主人の財産を乱費している、という訴えが出された。 042 LUK 016 002 主人は、彼を呼んで言った。『おまえについてこんなことを聞いたが、何ということをしてくれたのだ。もう管理を任せておくことはできないから、会計の報告を出しなさい。』 042 LUK 016 003 管理人は心の中で言った。『主人にこの管理の仕事を取り上げられるが、さてどうしよう。土を掘るには力がないし、こじきをするのは恥ずかしいし。 042 LUK 016 004 ああ、わかった。こうしよう。こうしておけば、いつ管理の仕事をやめさせられても、人がその家に私を迎えてくれるだろう。』 042 LUK 016 005 そこで彼は、主人の債務者たちをひとりひとり呼んで、まず最初の者に、『私の主人に、いくら借りがありますか。』と言うと、 042 LUK 016 006 その人は、『油百バテ。』と言った。すると彼は、『さあ、あなたの証文だ。すぐにすわって五十と書きなさい。』と言った。 042 LUK 016 007 それから、別の人に、『さて、あなたは、いくら借りがありますか。』と言うと、『小麦百コル。』と言った。彼は、『さあ、あなたの証文だ。八十と書きなさい。』と言った。 042 LUK 016 008 この世の子らは、自分たちの世のことについては、光の子らよりも抜けめがないものなので、主人は、不正な管理人がこうも抜けめなくやったのをほめた。 042 LUK 016 009 そこで、わたしはあなたがたに言いますが、不正の富で、自分のために友をつくりなさい。そうしておけば、富がなくなったとき、彼らはあなたがたを、永遠の住まいに迎えるのです。 042 LUK 016 010 小さい事に忠実な人は、大きい事にも忠実であり、小さい事に不忠実な人は、大きい事にも不忠実です。 042 LUK 016 011 ですから、あなたがたが不正の富に忠実でなかったら、だれがあなたがたに、まことの富を任せるでしょう。 042 LUK 016 012 また、あなたがたが他人のものに忠実でなかったら、だれがあなたがたに、あなたがたのものを持たせるでしょう。 042 LUK 016 013 しもべは、ふたりの主人に仕えることはできません。一方を憎んで他方を愛したり、または一方を重んじて他方を軽んじたりするからです。あなたがたは、神にも仕え、また富にも仕えるということはできません。」 042 LUK 016 014 さて、金の好きなパリサイ人たちが、一部始終を聞いて、イエスをあざ笑っていた。 042 LUK 016 015 イエスは彼らに言われた。「あなたがたは、人の前で自分を正しいとする者です。しかし神は、あなたがたの心をご存じです。人間の間であがめられる者は、神の前で憎まれ、きらわれます。 042 LUK 016 016 律法と預言者はヨハネまでです。それ以来、神の国の福音は宣べ伝えられ、だれもかれも、無理にでも、これにはいろうとしています。 042 LUK 016 017 しかし律法の一画が落ちるよりも、天地の滅びるほうがやさしいのです。 042 LUK 016 018 だれでも妻を離別してほかの女と結婚する者は、姦淫を犯す者であり、また、夫から離別された女と結婚する者も、姦淫を犯す者です。 042 LUK 016 019 ある金持ちがいた。いつも紫の衣や細布を着て、毎日ぜいたくに遊び暮らしていた。 042 LUK 016 020 ところが、その門前にラザロという全身おできの貧乏人が寝ていて、 042 LUK 016 021 金持ちの食卓から落ちる物で腹を満たしたいと思っていた。犬もやって来ては、彼のおできをなめていた。 042 LUK 016 022 さて、この貧乏人は死んで、御使いたちによってアブラハムのふところに連れて行かれた。金持ちも死んで葬られた。 042 LUK 016 023 その金持ちは、ハデスで苦しみながら目を上げると、アブラハムが、はるかかなたに見えた。しかも、そのふところにラザロが見えた。 042 LUK 016 024 彼は叫んで言った。『父アブラハムさま。私をあわれんでください。ラザロが指先を水に浸して私の舌を冷やすように、ラザロをよこしてください。私はこの炎の中で、苦しくてたまりません。』 042 LUK 016 025 アブラハムは言った。『子よ。思い出してみなさい。おまえは生きている間、良い物を受け、ラザロは生きている間、悪い物を受けていました。しかし、今ここで彼は慰められ、おまえは苦しみもだえているのです。 042 LUK 016 026 そればかりでなく、私たちとおまえたちの間には、大きな淵があります。ここからそちらへ渡ろうとしても、渡れないし、そこからこちらへ越えて来ることもできないのです。』 042 LUK 016 027 彼は言った。『父よ。ではお願いです。ラザロを私の父の家に送ってください。 042 LUK 016 028 私には兄弟が五人ありますが、彼らまでこんな苦しみの場所に来ることのないように、よく言い聞かせてください。』 042 LUK 016 029 しかしアブラハムは言った。『彼らには、モーセと預言者があります。その言うことを聞くべきです。』 042 LUK 016 030 彼は言った。『いいえ、父アブラハム。もし、だれかが死んだ者の中から彼らのところに行ってやったら、彼らは悔い改めるに違いありません。』 042 LUK 016 031 アブラハムは彼に言った。『もしモーセと預言者との教えに耳を傾けないのなら、たといだれかが死人の中から生き返っても、彼らは聞き入れはしない。』」 042 LUK 017 001 イエスは弟子たちにこう言われた。「つまずきが起こるのは避けられない。だが、つまずきを起こさせる者は、忌まわしいものです。 042 LUK 017 002 この小さい者たちのひとりに、つまずきを与えるようであったら、そんな者は石臼を首にゆわえつけられて、海に投げ込まれたほうがましです。 042 LUK 017 003 気をつけていなさい。もし兄弟が罪を犯したなら、彼を戒めなさい。そして悔い改めれば、赦しなさい。 042 LUK 017 004 かりに、あなたに対して一日に七度罪を犯しても、『悔い改めます。』と言って七度あなたのところに来るなら、赦してやりなさい。」 042 LUK 017 005 使徒たちは主に言った。「私たちの信仰を増してください。」 042 LUK 017 006 しかし主は言われた。「もしあなたがたに、からし種ほどの信仰があったなら、この桑の木に、『根こそぎ海の中に植われ。』と言えば、言いつけどおりになるのです。 042 LUK 017 007 ところで、あなたがたのだれかに、耕作か羊飼いをするしもべがいるとして、そのしもべが野らから帰って来たとき、『さあ、さあ、ここに来て、食事をしなさい。』としもべに言うでしょうか。 042 LUK 017 008 かえって、『私の食事の用意をし、帯を締めて私の食事が済むまで給仕しなさい。あとで、自分の食事をしなさい。』と言わないでしょうか。 042 LUK 017 009 しもべが言いつけられたことをしたからといって、そのしもべに感謝するでしょうか。 042 LUK 017 010 あなたがたもそのとおりです。自分に言いつけられたことをみな、してしまったら、『私たちは役に立たないしもべです。なすべきことをしただけです。』と言いなさい。」 042 LUK 017 011 そのころイエスはエルサレムに上られる途中、サマリヤとガリラヤの境を通られた。 042 LUK 017 012 ある村にはいると、十人のらい病人がイエスに出会った。彼らは遠く離れた所に立って、 042 LUK 017 013 声を張り上げて、「イエスさま、先生。どうぞあわれんでください。」と言った。 042 LUK 017 014 イエスはこれを見て、言われた。「行きなさい。そして自分を祭司に見せなさい。」彼らは行く途中でいやされた。 042 LUK 017 015 そのうちのひとりは、自分のいやされたことがわかると、大声で神をほめたたえながら引き返して来て、 042 LUK 017 016 イエスの足もとにひれ伏して感謝した。彼はサマリヤ人であった。 042 LUK 017 017 そこでイエスは言われた。「十人いやされたのではないか。九人はどこにいるのか。 042 LUK 017 018 神をあがめるために戻って来た者は、この外国人のほかには、だれもいないのか。」 042 LUK 017 019 それからその人に言われた。「立ち上がって、行きなさい。あなたの信仰が、あなたを直したのです。」 042 LUK 017 020 さて、神の国はいつ来るのか、とパリサイ人たちに尋ねられたとき、イエスは答えて言われた。「神の国は、人の目で認められるようにして来るものではありません。 042 LUK 017 021 『そら、ここにある。』とか、『あそこにある。』とか言えるようなものではありません。いいですか。神の国は、あなたがたのただ中にあるのです。」 042 LUK 017 022 イエスは弟子たちに言われた。「人の子の日を一日でも見たいと願っても、見られない時が来ます。 042 LUK 017 023 人々が『こちらだ。』とか、『あちらだ。』とか言っても行ってはなりません。あとを追いかけてはなりません。 042 LUK 017 024 いなずまが、ひらめいて、天の端から天の端へと輝くように、人の子は、人の子の日には、ちょうどそのようであるからです。 042 LUK 017 025 しかし、人の子はまず、多くの苦しみを受け、この時代に捨てられなければなりません。 042 LUK 017 026 人の子の日に起こることは、ちょうど、ノアの日に起こったことと同様です。 042 LUK 017 027 ノアが箱舟にはいるその日まで、人々は、食べたり、飲んだり、めとったり、とついだりしていたが、洪水が来て、すべての人を滅ぼしてしまいました。 042 LUK 017 028 また、ロトの時代にあったことと同様です。人々は食べたり、飲んだり、売ったり、買ったり、植えたり、建てたりしていたが、 042 LUK 017 029 ロトがソドムから出て行くと、その日に、火と硫黄が天から降って、すべての人を滅ぼしてしまいました。 042 LUK 017 030 人の子の現われる日にも、全くそのとおりです。 042 LUK 017 031 その日には、屋上にいる者は家に家財があっても、取り出しに降りてはいけません。同じように、畑にいる者も家に帰ってはいけません。 042 LUK 017 032 ロトの妻を思い出しなさい。 042 LUK 017 033 自分のいのちを救おうと努める者はそれを失い、それを失う者はいのちを保ちます。 042 LUK 017 034 あなたがたに言いますが、その夜、同じ寝台で男がふたり寝ていると、ひとりは取られ、他のひとりは残されます。 042 LUK 017 035 女がふたりいっしょに臼をひいていると、ひとりは取られ、他のひとりは残されます。」 042 LUK 017 036 弟子たちは答えて言った。「主よ。どこでですか。」主は言われた。「死体のある所、そこに、はげたかも集まります。」 042 LUK 018 001 いつでも祈るべきであり、失望してはならないことを教えるために、イエスは彼らにたとえを話された。 042 LUK 018 002 「ある町に、神を恐れず、人を人とも思わない裁判官がいた。 042 LUK 018 003 その町に、ひとりのやもめがいたが、彼のところにやって来ては、『私の相手をさばいて、私を守ってください。』と言っていた。 042 LUK 018 004 彼は、しばらくは取り合わないでいたが、後には心ひそかに『私は神を恐れず人を人とも思わないが、 042 LUK 018 005 どうも、このやもめは、うるさくてしかたがないから、この女のために裁判をしてやることにしよう。でないと、ひっきりなしにやって来てうるさくてしかたがない。』と言った。」 042 LUK 018 006 主は言われた。「不正な裁判官の言っていることを聞きなさい。 042 LUK 018 007 まして神は、夜昼神を呼び求めている選民のためにさばきをつけないで、いつまでもそのことを放っておかれることがあるでしょうか。 042 LUK 018 008 あなたがたに言いますが、神は、すみやかに彼らのために正しいさばきをしてくださいます。しかし、人の子が来たとき、はたして地上に信仰が見られるでしょうか。」 042 LUK 018 009 自分を義人だと自任し、他の人々を見下している者たちに対しては、イエスはこのようなたとえを話された。 042 LUK 018 010 「ふたりの人が、祈るために宮に上った。ひとりはパリサイ人で、もうひとりは取税人であった。 042 LUK 018 011 パリサイ人は、立って、心の中でこんな祈りをした。『神よ。私はほかの人々のようにゆする者、不正な者、姦淫する者ではなく、ことにこの取税人のようではないことを、感謝します。 042 LUK 018 012 私は週に二度断食し、自分の受けるものはみな、その十分の一をささげております。』 042 LUK 018 013 ところが、取税人は遠く離れて立ち、目を天に向けようともせず、自分の胸をたたいて言った。『神さま。こんな罪人の私をあわれんでください。』 042 LUK 018 014 あなたがたに言うが、この人のほうが、前の人よりも、義と認められ、家に帰って行きました。なぜなら、だれでも自分を高くする者は低くされ、自分を低くする者は高くされるからです。」 042 LUK 018 015 イエスにさわっていただこうとして、人々がその幼子たちを、みもとに連れて来た。ところが、弟子たちがそれを見てしかった。 042 LUK 018 016 しかしイエスは、幼子たちを呼び寄せて、こう言われた。「子どもたちをわたしのところに来させなさい。止めてはいけません。神の国は、このような者たちのものです。 042 LUK 018 017 まことに、あなたがたに告げます。子どものように神の国を受け入れる者でなければ、決してそこに、はいることはできません。」 042 LUK 018 018 またある役人が、イエスに質問して言った。「尊い先生。私は何をしたら、永遠のいのちを自分のものとして受けることができるでしょうか。」 042 LUK 018 019 イエスは彼に言われた。「なぜ、わたしを『尊い』と言うのですか。尊い方は、神おひとりのほかにはだれもありません。 042 LUK 018 020 戒めはあなたもよく知っているはずです。『姦淫してはならない。殺してはならない。盗んではならない。偽証を立ててはならない。父と母を敬え。』」 042 LUK 018 021 すると彼は言った。「そのようなことはみな、小さい時から守っております。」 042 LUK 018 022 イエスはこれを聞いて、その人に言われた。「あなたには、まだ一つだけ欠けたものがあります。あなたの持ち物を全部売り払い、貧しい人々に分けてやりなさい。そうすれば、あなたは天に宝を積むことになります。そのうえで、わたしについて来なさい。」 042 LUK 018 023 すると彼は、これを聞いて、非常に悲しんだ。たいへんな金持ちだったからである。 042 LUK 018 024 イエスは彼を見てこう言われた。「裕福な者が神の国にはいることは、何とむずかしいことでしょう。 042 LUK 018 025 金持ちが神の国にはいるよりは、らくだが針の穴を通るほうがもっとやさしい。」 042 LUK 018 026 これを聞いた人々が言った。「それでは、だれが救われることができるでしょう。」 042 LUK 018 027 イエスは言われた。「人にはできないことが、神にはできるのです。」 042 LUK 018 028 すると、ペテロが言った。「ご覧ください。私たちは自分の家を捨てて従ってまいりました。」 042 LUK 018 029 イエスは彼らに言われた。「まことに、あなたがたに告げます。神の国のために、家、妻、兄弟、両親、子どもを捨てた者で、だれひとりとして、 042 LUK 018 030 この世にあってその幾倍かを受けない者はなく、後の世で永遠のいのちを受けない者はありません。」 042 LUK 018 031 さてイエスは、十二弟子をそばに呼んで、彼らに話された。「さあ、これから、わたしたちはエルサレムに向かって行きます。人の子について預言者たちが書いているすべてのことが実現されるのです。 042 LUK 018 032 人の子は異邦人に引き渡され、そして彼らにあざけられ、はずかしめられ、つばきをかけられます。 042 LUK 018 033 彼らは人の子をむちで打ってから殺します。しかし、人の子は三日目によみがえります。」 042 LUK 018 034 しかし弟子たちには、これらのことが何一つわからなかった。彼らには、このことばは隠されていて、話された事が理解できなかった。 042 LUK 018 035 イエスがエリコに近づかれたころ、ある盲人が、道ばたにすわり、物ごいをしていた。 042 LUK 018 036 群衆が通って行くのを耳にして、これはいったい何事ですか、と尋ねた。 042 LUK 018 037 ナザレのイエスがお通りになるのだ、と知らせると、 042 LUK 018 038 彼は大声で、「ダビデの子のイエスさま。私をあわれんでください。」と言った。 042 LUK 018 039 彼を黙らせようとして、先頭にいた人々がたしなめたが、盲人は、ますます「ダビデの子よ。私をあわれんでください。」と叫び立てた。 042 LUK 018 040 イエスは立ち止まって、彼をそばに連れて来るように言いつけられた。 042 LUK 018 041 彼が近寄って来たので、「わたしに何をしてほしいのか。」と尋ねられると、彼は、「主よ。目が見えるようになることです。」と言った。 042 LUK 018 042 イエスが彼に、「見えるようになれ。あなたの信仰があなたを直したのです。」と言われると、 042 LUK 018 043 彼はたちどころに目が見えるようになり、神をあがめながらイエスについて行った。これを見て民はみな神を賛美した。 042 LUK 019 001 それからイエスは、エリコにはいって、町をお通りになった。 042 LUK 019 002 ここには、ザアカイという人がいたが、彼は取税人のかしらで、金持ちであった。 042 LUK 019 003 彼は、イエスがどんな方か見ようとしたが、背が低かったので、群衆のために見ることができなかった。 042 LUK 019 004 それで、イエスを見るために、前方に走り出て、いちじく桑の木に登った。ちょうどイエスがそこを通り過ぎようとしておられたからである。 042 LUK 019 005 イエスは、ちょうどそこに来られて、上を見上げて彼に言われた。「ザアカイ。急いで降りて来なさい。きょうは、あなたの家に泊まることにしてあるから。」 042 LUK 019 006 ザアカイは、急いで降りて来て、そして大喜びでイエスを迎えた。 042 LUK 019 007 これを見て、みなは、「あの方は罪人のところに行って客となられた。」と言ってつぶやいた。 042 LUK 019 008 ところがザアカイは立って、主に言った。「主よ。ご覧ください。私の財産の半分を貧しい人たちに施します。また、だれからでも、私がだまし取った物は、四倍にして返します。」 042 LUK 019 009 イエスは、彼に言われた。「きょう、救いがこの家に来ました。この人もアブラハムの子なのですから。 042 LUK 019 010 人の子は、失われた人を捜して救うために来たのです。」 042 LUK 019 011 人々がこれらのことに耳を傾けているとき、イエスは、続けて一つのたとえを話された。それは、イエスがエルサレムに近づいておられ、そのため人々は神の国がすぐにでも現われるように思っていたからである。 042 LUK 019 012 それで、イエスはこう言われた。 「ある身分の高い人が、遠い国に行った。王位を受けて帰るためであった。 042 LUK 019 013 彼は自分の十人のしもべを呼んで、十ミナを与え、彼らに言った。『私が帰るまで、これで商売しなさい。』 042 LUK 019 014 しかし、その国民たちは、彼を憎んでいたので、あとから使いをやり、『この人に、私たちの王にはなってもらいたくありません。』と言った。 042 LUK 019 015 さて、彼が王位を受けて帰って来たとき、金を与えておいたしもべたちがどんな商売をしたかを知ろうと思い、彼らを呼び出すように言いつけた。 042 LUK 019 016 さて、最初の者が現われて言った。『ご主人さま。あなたの一ミナで、十ミナをもうけました。』 042 LUK 019 017 主人は彼に言った。『よくやった。良いしもべだ。あなたはほんの小さな事にも忠実だったから、十の町を支配する者になりなさい。』 042 LUK 019 018 二番目の者が来て言った。『ご主人さま。あなたの一ミナで、五ミナをもうけました。』 042 LUK 019 019 主人はこの者にも言った。『あなたも五つの町を治めなさい。』 042 LUK 019 020 もうひとりが来て言った。『ご主人さま。さあ、ここにあなたの一ミナがございます。私はふろしきに包んでしまっておきました。 042 LUK 019 021 あなたは計算の細かい、きびしい方ですから、恐ろしゅうございました。あなたはお預けにならなかったものをも取り立て、お蒔きにならなかったものをも刈り取る方ですから。』 042 LUK 019 022 主人はそのしもべに言った。『悪いしもべだ。私はあなたのことばによって、あなたをさばこう。あなたは、私が預けなかったものを取り立て、蒔かなかったものを刈り取るきびしい人間だと知っていた、というのか。 042 LUK 019 023 だったら、なぜ私の金を銀行に預けておかなかったのか。そうすれば私は帰って来たときに、それを利息といっしょに受け取れたはずだ。』 042 LUK 019 024 そして、そばに立っていた者たちに言った。『その一ミナを彼から取り上げて、十ミナ持っている人にやりなさい。』 042 LUK 019 025 すると彼らは、『ご主人さま。その人は十ミナも持っています。』と言った。 042 LUK 019 026 彼は言った。『あなたがたに言うが、だれでも持っている者は、さらに与えられ、持たない者からは、持っている物までも取り上げられるのです。 042 LUK 019 027 ただ、私が王になるのを望まなかったこの敵どもは、みなここに連れて来て、私の目の前で殺してしまえ。』」 042 LUK 019 028 これらのことを話して後、イエスは、さらに進んで、エルサレムへと上って行かれた。 042 LUK 019 029 オリーブという山のふもとのベテパゲとベタニヤに近づかれたとき、イエスはふたりの弟子を使いに出して、 042 LUK 019 030 言われた。「向こうの村に行きなさい。そこにはいると、まだだれも乗ったことのない、ろばの子がつないであるのに気がつくでしょう。それをほどいて連れて来なさい。 042 LUK 019 031 もし、『なぜ、ほどくのか。』と尋ねる人があったら、こう言いなさい。『主がお入用なのです。』」 042 LUK 019 032 使いに出されたふたりが行って見ると、イエスが話されたとおりであった。 042 LUK 019 033 彼らがろばの子をほどいていると、その持ち主が、「なぜ、このろばの子をほどくのか。」と彼らに言った。 042 LUK 019 034 弟子たちは、「主がお入用なのです。」と言った。 042 LUK 019 035 そしてふたりは、それをイエスのもとに連れて来た。そして、そのろばの子の上に自分たちの上着を敷いて、イエスをお乗せした。 042 LUK 019 036 イエスが進んで行かれると、人々は道に自分たちの上着を敷いた。 042 LUK 019 037 イエスがすでにオリーブ山のふもとに近づかれたとき、弟子たちの群れはみな、自分たちの見たすべての力あるわざのことで、喜んで大声に神を賛美し始め、 042 LUK 019 038 こう言った。 「祝福あれ。 主の御名によって来られる王に。 天には平和。 栄光は、いと高き所に。」 042 LUK 019 039 するとパリサイ人のうちのある者たちが、群衆の中から、イエスに向かって、「先生。お弟子たちをしかってください。」と言った。 042 LUK 019 040 イエスは答えて言われた。「わたしは、あなたがたに言います。もしこの人たちが黙れば、石が叫びます。」 042 LUK 019 041 エルサレムに近くなったころ、都を見られたイエスは、その都のために泣いて、 042 LUK 019 042 言われた。「おまえも、もし、この日のうちに、平和のことを知っていたのなら。しかし今は、そのことがおまえの目から隠されている。 042 LUK 019 043 やがておまえの敵が、おまえに対して塁を築き、回りを取り巻き、四方から攻め寄せ、 042 LUK 019 044 そしておまえとその中の子どもたちを地にたたきつけ、おまえの中で、一つの石もほかの石の上に積まれたままでは残されない日が、やって来る。それはおまえが、神の訪れの時を知らなかったからだ。」 042 LUK 019 045 宮にはいられたイエスは、商売人たちを追い出し始め、 042 LUK 019 046 こう言われた。「『わたしの家は、祈りの家でなければならない。』と書いてある。それなのに、あなたがたはそれを強盗の巣にした。」 042 LUK 019 047 イエスは毎日、宮で教えておられた。祭司長、律法学者、民のおもだった者たちは、イエスを殺そうとねらっていたが、 042 LUK 019 048 どうしてよいかわからなかった。民衆がみな、熱心にイエスの話に耳を傾けていたからである。 042 LUK 020 001 イエスは宮で民衆を教え、福音を宣べ伝えておられたが、ある日、祭司長、律法学者たちが、長老たちといっしょにイエスに立ち向かって、 042 LUK 020 002 イエスに言った。「何の権威によって、これらのことをしておられるのですか。あなたにその権威を授けたのはだれですか。それを言ってください。」 042 LUK 020 003 そこで答えて言われた。「わたしも一言尋ねますから、それに答えなさい。 042 LUK 020 004 ヨハネのバプテスマは、天から来たのですか、人から出たのですか。」 042 LUK 020 005 すると彼らは、こう言って、互いに論じ合った。「もし、天から、と言えば、それならなぜ、彼を信じなかったか、と言うだろう。 042 LUK 020 006 しかし、もし、人から、と言えば、民衆がみなで私たちを石で打ち殺すだろう。ヨハネを預言者と信じているのだから。」 042 LUK 020 007 そこで、「どこからか知りません。」と答えた。 042 LUK 020 008 するとイエスは、「わたしも、何の権威によってこれらのことをするのか、あなたがたに話すまい。」と言われた。 042 LUK 020 009 また、イエスは、民衆にこのようなたとえを話された。 「ある人がぶどう園を造り、それを農夫たちに貸して、長い旅に出た。 042 LUK 020 010 そして季節になったので、ぶどう園の収穫の分けまえをもらうために、農夫たちのところへひとりのしもべを遣わした。ところが、農夫たちは、そのしもべを袋だたきにし、何も持たせないで送り帰した。 042 LUK 020 011 そこで、別のしもべを遣わしたが、彼らは、そのしもべも袋だたきにし、はずかしめたうえで、何も持たせないで送り帰した。 042 LUK 020 012 彼はさらに三人目のしもべをやったが、彼らは、このしもべにも傷を負わせて追い出した。 042 LUK 020 013 ぶどう園の主人は言った。『どうしたものか。よし、愛する息子を送ろう。彼らも、この子はたぶん敬ってくれるだろう。』 042 LUK 020 014 ところが、農夫たちはその息子を見て、議論しながら言った。『あれはあと取りだ。あれを殺そうではないか。そうすれば、財産はこちらのものだ。』 042 LUK 020 015 そして、彼をぶどう園の外に追い出して、殺してしまった。 こうなると、ぶどう園の主人は、どうするでしょう。 042 LUK 020 016 彼は戻って来て、この農夫どもを打ち滅ぼし、ぶどう園をほかの人たちに与えてしまいます。」これを聞いた民衆は、「そんなことがあってはなりません。」と言った。 042 LUK 020 017 イエスは、彼らを見つめて言われた。「では、 『家を建てる者たちの見捨てた石、 それが礎の石となった。』 と書いてあるのは、何のことでしょう。 042 LUK 020 018 この石の上に落ちれば、だれでも粉々に砕け、またこの石が人の上に落ちれば、その人を粉みじんに飛び散らしてしまうのです。」 042 LUK 020 019 律法学者、祭司長たちは、イエスが自分たちをさしてこのたとえを話されたと気づいたので、この際イエスに手をかけて捕えようとしたが、やはり民衆を恐れた。 042 LUK 020 020 さて、機会をねらっていた彼らは、義人を装った間者を送り、イエスのことばを取り上げて、総督の支配と権威にイエスを引き渡そう、と計った。 042 LUK 020 021 その間者たちは、イエスに質問して言った。「先生。私たちは、あなたがお話しになり、お教えになることは正しく、またあなたは分け隔てなどせず、真理に基づいて神の道を教えておられることを知っています。 042 LUK 020 022 ところで、私たちが、カイザルに税金を納めることは、律法にかなっていることでしょうか。かなっていないことでしょうか。」 042 LUK 020 023 イエスはそのたくらみを見抜いて彼らに言われた。 042 LUK 020 024 「デナリ銀貨をわたしに見せなさい。これはだれの肖像ですか。だれの銘ですか。」彼らは、「カイザルのです。」と言った。 042 LUK 020 025 すると彼らに言われた。「では、カイザルのものはカイザルに返しなさい。そして神のものは神に返しなさい。」 042 LUK 020 026 彼らは、民衆の前でイエスのことばじりをつかむことができず、お答えに驚嘆して黙ってしまった。 042 LUK 020 027 ところが、復活があることを否定するサドカイ人のある者たちが、イエスのところに来て、質問して、 042 LUK 020 028 こう言った。「先生。モーセは私たちのためにこう書いています。『もし、ある人の兄が妻をめとって死に、しかも子がなかったばあいは、その弟はその女を妻にして、兄のための子をもうけなければならない。』 042 LUK 020 029 ところで、七人の兄弟がいました。長男は妻をめとりましたが、子どもがなくて死にました。 042 LUK 020 030 次男も、 042 LUK 020 031 三男もその女をめとり、七人とも同じようにして、子どもを残さずに死にました。 042 LUK 020 032 あとで、その女も死にました。 042 LUK 020 033 すると復活の際、その女はだれの妻になるでしょうか。七人ともその女を妻としたのですが。」 042 LUK 020 034 イエスは彼らに言われた。「この世の子らは、めとったり、とついだりするが、 042 LUK 020 035 次の世にはいるのにふさわしく、死人の中から復活するのにふさわしい、と認められる人たちは、めとることも、とつぐこともありません。 042 LUK 020 036 彼らはもう死ぬことができないからです。彼らは御使いのようであり、また、復活の子として神の子どもだからです。 042 LUK 020 037 それに、死人がよみがえることについては、モーセも柴の個所で、主を、『アブラハムの神、イサクの神、ヤコブの神。』と呼んで、このことを示しました。 042 LUK 020 038 神は死んだ者の神ではありません。生きている者の神です。というのは、神に対しては、みなが生きているからです。」 042 LUK 020 039 律法学者のうちのある者たちが答えて、「先生。りっぱなお答えです。」と言った。 042 LUK 020 040 彼らはもうそれ以上何も質問する勇気がなかった。 042 LUK 020 041 すると、イエスが彼らに言われた。「どうして人々は、キリストをダビデの子と言うのですか。 042 LUK 020 042 ダビデ自身が詩篇の中でこう言っています。 『主は私の主に言われた。 042 LUK 020 043 「わたしが、あなたの敵を あなたの足台とする時まで、 わたしの右の座に着いていなさい。」』 042 LUK 020 044 こういうわけで、ダビデがキリストを主と呼んでいるのに、どうしてキリストがダビデの子でしょう。」 042 LUK 020 045 また、民衆がみな耳を傾けているときに、イエスは弟子たちにこう言われた。 042 LUK 020 046 「律法学者たちには気をつけなさい。彼らは、長い衣をまとって歩き回ったり、広場であいさつされたりすることが好きで、また会堂の上席や宴会の上座が好きです。 042 LUK 020 047 また、やもめの家を食いつぶし、見えを飾るために長い祈りをします。こういう人たちは人一倍きびしい罰を受けるのです。」 042 LUK 021 001 さてイエスが、目を上げてご覧になると、金持ちたちが献金箱に献金を投げ入れていた。 042 LUK 021 002 また、ある貧しいやもめが、そこにレプタ銅貨二つを投げ入れているのをご覧になった。 042 LUK 021 003 それでイエスは言われた。「わたしは真実をあなたがたに告げます。この貧しいやもめは、どの人よりもたくさん投げ入れました。 042 LUK 021 004 みなは、あり余る中から献金を投げ入れたのに、この女は、乏しい中から、持っていた生活費の全部を投げ入れたからです。」 042 LUK 021 005 宮がすばらしい石や奉納物で飾ってあると話していた人々があった。するとイエスはこう言われた。 042 LUK 021 006 「あなたがたの見ているこれらの物について言えば、石がくずされずに積まれたまま残ることのない日がやって来ます。」 042 LUK 021 007 彼らは、イエスに質問して言った。「先生。それでは、これらのことは、いつ起こるのでしょう。これらのことが起こるときは、どんな前兆があるのでしょう。」 042 LUK 021 008 イエスは言われた。「惑わされないように気をつけなさい。わたしの名を名のる者が大ぜい現われ、『私がそれだ。』とか『時は近づいた。』とか言います。そんな人々のあとについて行ってはなりません。 042 LUK 021 009 戦争や暴動のことを聞いても、こわがってはいけません。それは、初めに必ず起こることです。だが、終わりは、すぐには来ません。」 042 LUK 021 010 それから、イエスは彼らに言われた。「民族は民族に、国は国に敵対して立ち上がり、 042 LUK 021 011 大地震があり、方々に疫病やききんが起こり、恐ろしいことや天からのすさまじい前兆が現われます。 042 LUK 021 012 しかし、これらのすべてのことの前に、人々はあなたがたを捕えて迫害し、会堂や牢に引き渡し、わたしの名のために、あなたがたを王たちや総督たちの前に引き出すでしょう。 042 LUK 021 013 それはあなたがたのあかしをする機会となります。 042 LUK 021 014 それで、どう弁明するかは、あらかじめ考えないことに、心を定めておきなさい。 042 LUK 021 015 どんな反対者も、反論もできず、反証もできないようなことばと知恵を、わたしがあなたがたに与えます。 042 LUK 021 016 しかしあなたがたは、両親、兄弟、親族、友人たちにまで裏切られます。中には殺される者もあり、 042 LUK 021 017 わたしの名のために、みなの者に憎まれます。 042 LUK 021 018 しかし、あなたがたの髪の毛一筋も失われることはありません。 042 LUK 021 019 あなたがたは、忍耐によって、自分のいのちを勝ち取ることができます。 042 LUK 021 020 しかし、エルサレムが軍隊に囲まれるのを見たら、そのときには、その滅亡が近づいたことを悟りなさい。 042 LUK 021 021 そのとき、ユダヤにいる人々は山へ逃げなさい。都の中にいる人々は、そこから立ちのきなさい。いなかにいる者たちは、都にはいってはいけません。 042 LUK 021 022 これは、書かれているすべてのことが成就する報復の日だからです。 042 LUK 021 023 その日、悲惨なのは身重の女と乳飲み子を持つ女です。この地に大きな苦難が臨み、この民に御怒りが臨むからです。 042 LUK 021 024 人々は、剣の刃に倒れ、捕虜となってあらゆる国に連れて行かれ、異邦人の時の終わるまで、エルサレムは異邦人に踏み荒らされます。 042 LUK 021 025 そして、日と月と星には、前兆が現われ、地上では、諸国の民が、海と波が荒れどよめくために不安に陥って悩み、 042 LUK 021 026 人々は、その住むすべての所を襲おうとしていることを予想して、恐ろしさのあまり気を失います。天の万象が揺り動かされるからです。 042 LUK 021 027 そのとき、人々は、人の子が力と輝かしい栄光を帯びて雲に乗って来るのを見るのです。 042 LUK 021 028 これらのことが起こり始めたなら、からだをまっすぐにし、頭を上に上げなさい。贖いが近づいたのです。」 042 LUK 021 029 それからイエスは、人々にたとえを話された。「いちじくの木や、すべての木を見なさい。 042 LUK 021 030 木の芽が出ると、それを見て夏の近いことがわかります。 042 LUK 021 031 そのように、これらのことが起こるのを見たら、神の国は近いと知りなさい。 042 LUK 021 032 まことに、あなたがたに告げます。すべてのことが起こってしまうまでは、この時代は過ぎ去りません。 042 LUK 021 033 この天地は滅びます。しかし、わたしのことばは決して滅びることがありません。 042 LUK 021 034 あなたがたの心が、放蕩や深酒やこの世の煩いのために沈み込んでいるところに、その日がわなのように、突然あなたがたに臨むことのないように、よく気をつけていなさい。 042 LUK 021 035 その日は、全地の表に住むすべての人に臨むからです。 042 LUK 021 036 しかし、あなたがたは、やがて起ころうとしているこれらすべてのことからのがれ、人の子の前に立つことができるように、いつも油断せずに祈っていなさい。」 042 LUK 021 037 さてイエスは、昼は宮で教え、夜はいつも外に出てオリーブという山で過ごされた。 042 LUK 021 038 民衆はみな朝早く起きて、教えを聞こうとして、宮におられるイエスのもとに集まって来た。 042 LUK 022 001 さて、過越の祭りといわれる、種なしパンの祝いが近づいていた。 042 LUK 022 002 祭司長、律法学者たちは、イエスを殺すための良い方法を捜していた。というのは、彼らは民衆を恐れていたからである。 042 LUK 022 003 さて、十二弟子のひとりで、イスカリオテと呼ばれるユダに、サタンがはいった。 042 LUK 022 004 ユダは出かけて行って、祭司長たちや宮の守衛長たちと、どのようにしてイエスを彼らに引き渡そうかと相談した。 042 LUK 022 005 彼らは喜んで、ユダに金をやる約束をした。 042 LUK 022 006 ユダは承知した。そして群衆のいないときにイエスを彼らに引き渡そうと機会をねらっていた。 042 LUK 022 007 さて、過越の小羊のほふられる、種なしパンの日が来た。 042 LUK 022 008 イエスは、こう言ってペテロとヨハネを遣わされた。「わたしたちの過越の食事ができるように、準備をしに行きなさい。」 042 LUK 022 009 彼らはイエスに言った。「どこに準備しましょうか。」 042 LUK 022 010 イエスは言われた。「町にはいると、水がめを運んでいる男に会うから、その人がはいる家にまでついて行きなさい。 042 LUK 022 011 そして、その家の主人に、『弟子たちといっしょに過越の食事をする客間はどこか、と先生があなたに言っておられる。』と言いなさい。 042 LUK 022 012 すると主人は、席が整っている二階の大広間を見せてくれます。そこで準備をしなさい。」 042 LUK 022 013 彼らが出かけて見ると、イエスの言われたとおりであった。それで、彼らは過越の食事の用意をした。 042 LUK 022 014 さて時間になって、イエスは食卓に着かれ、使徒たちもイエスといっしょに席に着いた。 042 LUK 022 015 イエスは言われた。「わたしは、苦しみを受ける前に、あなたがたといっしょに、この過越の食事をすることをどんなに望んでいたことか。 042 LUK 022 016 あなたがたに言いますが、過越が神の国において成就するまでは、わたしはもはや二度と過越の食事をすることはありません。」 042 LUK 022 017 そしてイエスは、杯を取り、感謝をささげて後、言われた。「これを取って、互いに分けて飲みなさい。 042 LUK 022 018 あなたがたに言いますが、今から、神の国が来る時までは、わたしはもはや、ぶどうの実で造った物を飲むことはありません。」 042 LUK 022 019 それから、パンを取り、感謝をささげてから、裂いて、弟子たちに与えて言われた。「これは、あなたがたのために与える、わたしのからだです。わたしを覚えてこれを行ないなさい。」 042 LUK 022 020 食事の後、杯も同じようにして言われた。「この杯は、あなたがたのために流されるわたしの血による新しい契約です。 042 LUK 022 021 しかし、見なさい。わたしを裏切る者の手が、わたしとともに食卓にあります。 042 LUK 022 022 人の子は、定められたとおりに去って行きます。しかし、人の子を裏切るような人間はのろわれます。」 042 LUK 022 023 そこで弟子たちは、そんなことをしようとしている者は、いったいこの中のだれなのかと、互いに議論をし始めた。 042 LUK 022 024 また、彼らの間には、この中でだれが一番偉いだろうかという論議も起こった。 042 LUK 022 025 すると、イエスは彼らに言われた。「異邦人の王たちは人々を支配し、また人々の上に権威を持つ者は守護者と呼ばれています。 042 LUK 022 026 だが、あなたがたは、それではいけません。あなたがたの間で一番偉い人は一番年の若い者のようになりなさい。また、治める人は仕える人のようでありなさい。 042 LUK 022 027 食卓に着く人と給仕する者と、どちらが偉いでしょう。むろん、食卓に着く人でしょう。しかしわたしは、あなたがたのうちにあって給仕する者のようにしています。 042 LUK 022 028 けれども、あなたがたこそ、わたしのさまざまの試練の時にも、わたしについて来てくれた人たちです。 042 LUK 022 029 わたしの父がわたしに王権を与えてくださったように、わたしもあなたがたに王権を与えます。 042 LUK 022 030 それであなたがたは、わたしの国でわたしの食卓に着いて食事をし、王座に着いて、イスラエルの十二の部族をさばくのです。 042 LUK 022 031 シモン、シモン。見なさい。サタンが、あなたがたを麦のようにふるいにかけることを願って聞き届けられました。 042 LUK 022 032 しかし、わたしは、あなたの信仰がなくならないように、あなたのために祈りました。だからあなたは、立ち直ったら、兄弟たちを力づけてやりなさい。」 042 LUK 022 033 シモンはイエスに言った。「主よ。ごいっしょになら、牢であろうと、死であろうと、覚悟はできております。」 042 LUK 022 034 しかし、イエスは言われた。「ペテロ。あなたに言いますが、きょう鶏が鳴くまでに、あなたは三度、わたしを知らないと言います。」 042 LUK 022 035 それから、弟子たちに言われた。「わたしがあなたがたを、財布も旅行袋もくつも持たせずに旅に出したとき、何か足りない物がありましたか。」彼らは言った。「いいえ。何もありませんでした。」 042 LUK 022 036 そこで言われた。「しかし、今は、財布のある者は財布を持ち、同じく袋を持ち、剣のない者は着物を売って剣を買いなさい。 042 LUK 022 037 あなたがたに言いますが、『彼は罪人たちの中に数えられた。』と書いてあるこのことが、わたしに必ず実現するのです。わたしにかかわることは実現します。」 042 LUK 022 038 彼らは言った。「主よ。このとおり、ここに剣が二振りあります。」イエスは彼らに、「それで十分。」と言われた。 042 LUK 022 039 それからイエスは出て、いつものようにオリーブ山に行かれ、弟子たちも従った。 042 LUK 022 040 いつもの場所に着いたとき、イエスは彼らに、「誘惑に陥らないように祈っていなさい。」と言われた。 042 LUK 022 041 そしてご自分は、弟子たちから石を投げて届くほどの所に離れて、ひざまずいて、こう祈られた。 042 LUK 022 042 「父よ。みこころならば、この杯をわたしから取りのけてください。しかし、わたしの願いではなく、みこころのとおりにしてください。」 042 LUK 022 043 すると、御使いが天からイエスに現われて、イエスを力づけた。 042 LUK 022 044 イエスは、苦しみもだえて、いよいよ切に祈られた。汗が血のしずくのように地に落ちた。 042 LUK 022 045 イエスは祈り終わって立ち上がり、弟子たちのところに来て見ると、彼らは悲しみの果てに、眠り込んでしまっていた。 042 LUK 022 046 それで、彼らに言われた。「なぜ、眠っているのか。起きて、誘惑に陥らないように祈っていなさい。」 042 LUK 022 047 イエスがまだ話をしておられるとき、群衆がやって来た。十二弟子のひとりで、ユダという者が、先頭に立っていた。ユダはイエスに口づけしようとして、みもとに近づいた。 042 LUK 022 048 だが、イエスは彼に、「ユダ。口づけで、人の子を裏切ろうとするのか。」と言われた。 042 LUK 022 049 イエスの回りにいた者たちは、事の成り行きを見て、「主よ。剣で撃ちましょうか。」と言った。 042 LUK 022 050 そしてそのうちのある者が、大祭司のしもべに撃ってかかり、その右の耳を切り落とした。 042 LUK 022 051 するとイエスは、「やめなさい。それまで。」と言われた。そして、耳にさわって彼を直してやられた。 042 LUK 022 052 そして押しかけて来た祭司長、宮の守衛長、長老たちに言われた。「まるで強盗にでも向かうように、剣や棒を持ってやって来たのですか。 042 LUK 022 053 あなたがたは、わたしが毎日宮でいっしょにいる間は、わたしに手出しもしなかった。しかし、今はあなたがたの時です。暗やみの力です。」 042 LUK 022 054 彼らはイエスを捕え、引いて行って、大祭司の家に連れて来た。ペテロは、遠く離れてついて行った。 042 LUK 022 055 彼らは中庭の真中に火をたいて、みなすわり込んだので、ペテロも中に混じって腰をおろした。 042 LUK 022 056 すると、女中が、火あかりの中にペテロのすわっているのを見つけ、まじまじと見て言った。「この人も、イエスといっしょにいました。」 042 LUK 022 057 ところが、ペテロはそれを打ち消して、「いいえ、私はあの人を知りません。」と言った。 042 LUK 022 058 しばらくして、ほかの男が彼を見て、「あなたも、彼らの仲間だ。」と言った。しかし、ペテロは、「いや、違います。」と言った。 042 LUK 022 059 それから一時間ほどたつと、また別の男が、「確かにこの人も彼といっしょだった。この人もガリラヤ人だから。」と言い張った。 042 LUK 022 060 しかしペテロは、「あなたの言うことは私にはわかりません。」と言った。それといっしょに、彼がまだ言い終えないうちに、鶏が鳴いた。 042 LUK 022 061 主が振り向いてペテロを見つめられた。ペテロは、「きょう、鶏が鳴くまでに、あなたは、三度わたしを知らないと言う。」と言われた主のおことばを思い出した。 042 LUK 022 062 彼は、外に出て、激しく泣いた。 042 LUK 022 063 さて、イエスの監視人どもは、イエスをからかい、むちでたたいた。 042 LUK 022 064 そして目隠しをして、「言い当ててみろ。今たたいたのはだれか。」と聞いたりした。 042 LUK 022 065 また、そのほかさまざまな悪口をイエスに浴びせた。 042 LUK 022 066 夜が明けると、民の長老会、それに祭司長、律法学者たちが、集まった。彼らはイエスを議会に連れ出し、 042 LUK 022 067 こう言った。「あなたがキリストなら、そうだと言いなさい。」しかしイエスは言われた。「わたしが言っても、あなたがたは決して信じないでしょうし、 042 LUK 022 068 わたしが尋ねても、あなたがたは決して答えないでしょう。 042 LUK 022 069 しかし今から後、人の子は、神の大能の右の座に着きます。」 042 LUK 022 070 彼らはみなで言った。「ではあなたは神の子ですか。」すると、イエスは彼らに「あなたがたの言うとおり、わたしはそれです。」と言われた。 042 LUK 022 071 すると彼らは「これでもまだ証人が必要でしょうか。私たち自身が彼の口から直接それを聞いたのだから。」と言った。 042 LUK 023 001 そこで、彼らは全員が立ち上がり、イエスをピラトのもとに連れて行った。 042 LUK 023 002 そしてイエスについて訴え始めた。彼らは言った。「この人はわが国民を惑わし、カイザルに税金を納めることを禁じ、自分は王キリストだと言っていることがわかりました。」 042 LUK 023 003 するとピラトはイエスに、「あなたは、ユダヤ人の王ですか。」と尋ねた。イエスは答えて、「そのとおりです。」と言われた。 042 LUK 023 004 ピラトは祭司長たちや群衆に、「この人には何の罪も見つからない。」と言った。 042 LUK 023 005 しかし彼らはあくまで言い張って、「この人は、ガリラヤからここまで、ユダヤ全土で教えながら、この民を扇動しているのです。」と言った。 042 LUK 023 006 それを聞いたピラトは、この人はガリラヤ人かと尋ねて、 042 LUK 023 007 ヘロデの支配下にあるとわかると、イエスをヘロデのところに送った。ヘロデもそのころエルサレムにいたからである。 042 LUK 023 008 ヘロデはイエスを見ると非常に喜んだ。ずっと前からイエスのことを聞いていたので、イエスに会いたいと思っていたし、イエスの行なう何かの奇蹟を見たいと考えていたからである。 042 LUK 023 009 それで、いろいろと質問したが、イエスは彼に何もお答えにならなかった。 042 LUK 023 010 祭司長たちと律法学者たちは立って、イエスを激しく訴えていた。 042 LUK 023 011 ヘロデは、自分の兵士たちといっしょにイエスを侮辱したり嘲弄したりしたあげく、はでな衣を着せて、ピラトに送り返した。 042 LUK 023 012 この日、ヘロデとピラトは仲よくなった。それまでは互いに敵対していたのである。 042 LUK 023 013 ピラトは祭司長たちと指導者たちと民衆とを呼び集め、 042 LUK 023 014 こう言った。「あなたがたは、この人を、民衆を惑わす者として、私のところに連れて来たけれども、私があなたがたの前で取り調べたところ、あなたがたが訴えているような罪は別に何も見つかりません。 042 LUK 023 015 ヘロデとても同じです。彼は私たちにこの人を送り返しました。見なさい。この人は、死罪に当たることは、何一つしていません。 042 LUK 023 016 だから私は、懲らしめたうえで、釈放します。」 042 LUK 023 017 しかし彼らは、声をそろえて叫んだ。「この人を除け。バラバを釈放しろ。」 042 LUK 023 019 バラバとは、都に起こった暴動と人殺しのかどで、牢にはいっていた者である。 042 LUK 023 020 ピラトは、イエスを釈放しようと思って、彼らに、もう一度呼びかけた。 042 LUK 023 021 しかし、彼らは叫び続けて、「十字架だ。十字架につけろ。」と言った。 042 LUK 023 022 しかしピラトは三度目に彼らにこう言った。「あの人がどんな悪いことをしたというのか。あの人には、死に当たる罪は、何も見つかりません。だから私は、懲らしめたうえで、釈放します。」 042 LUK 023 023 ところが、彼らはあくまで主張し続け、十字架につけるよう大声で要求した。そしてついにその声が勝った。 042 LUK 023 024 ピラトは、彼らの要求どおりにすることを宣告した。 042 LUK 023 025 すなわち、暴動と人殺しのかどで牢にはいっていた男を願いどおりに釈放し、イエスを彼らに引き渡して好きなようにさせた。 042 LUK 023 026 彼らは、イエスを引いて行く途中、いなかから出て来たシモンというクレネ人をつかまえ、この人に十字架を負わせてイエスのうしろから運ばせた。 042 LUK 023 027 大ぜいの民衆やイエスのことを嘆き悲しむ女たちの群れが、イエスのあとについて行った。 042 LUK 023 028 しかしイエスは、女たちのほうに向いて、こう言われた。「エルサレムの娘たち。わたしのことで泣いてはいけない。むしろ自分自身と、自分の子どもたちのことのために泣きなさい。 042 LUK 023 029 なぜなら人々が、『不妊の女、子を産んだことのない胎、飲ませたことのない乳房は、幸いだ。』と言う日が来るのですから。 042 LUK 023 030 そのとき、人々は山に向かって、『われわれの上に倒れかかってくれ。』と言い、丘に向かって、『われわれをおおってくれ。』と言い始めます。 042 LUK 023 031 彼らが生木にこのようなことをするのなら、枯れ木には、いったい、何が起こるでしょう。」 042 LUK 023 032 ほかにもふたりの犯罪人が、イエスとともに死刑にされるために、引かれて行った。 042 LUK 023 033 「どくろ」と呼ばれている所に来ると、そこで彼らは、イエスと犯罪人とを十字架につけた。犯罪人のひとりは右に、ひとりは左に。 042 LUK 023 034 そのとき、イエスはこう言われた。「父よ。彼らをお赦しください。彼らは、何をしているのか自分でわからないのです。」彼らは、くじを引いて、イエスの着物を分けた。 042 LUK 023 035 民衆はそばに立ってながめていた。指導者たちもあざ笑って言った。「あれは他人を救った。もし、神のキリストで、選ばれた者なら、自分を救ってみろ。」 042 LUK 023 036 兵士たちもイエスをあざけり、そばに寄って来て、酸いぶどう酒を差し出し、 042 LUK 023 037 「ユダヤ人の王なら、自分を救え。」と言った。 042 LUK 023 038 「これはユダヤ人の王。」と書いた札もイエスの頭上に掲げてあった。 042 LUK 023 039 十字架にかけられていた犯罪人のひとりはイエスに悪口を言い、「あなたはキリストではないか。自分と私たちを救え。」と言った。 042 LUK 023 040 ところが、もうひとりのほうが答えて、彼をたしなめて言った。「おまえは神をも恐れないのか。おまえも同じ刑罰を受けているではないか。 042 LUK 023 041 われわれは、自分のしたことの報いを受けているのだからあたりまえだ。だがこの方は、悪いことは何もしなかったのだ。」 042 LUK 023 042 そして言った。「イエスさま。あなたの御国の位にお着きになるときには、私を思い出してください。」 042 LUK 023 043 イエスは、彼に言われた。「まことに、あなたに告げます。あなたはきょう、わたしとともにパラダイスにいます。」 042 LUK 023 044 そのときすでに十二時ごろになっていたが、全地が暗くなって、三時まで続いた。 042 LUK 023 045 太陽は光を失っていた。また、神殿の幕は真二つに裂けた。 042 LUK 023 046 イエスは大声で叫んで、言われた。「父よ。わが霊を御手にゆだねます。」こう言って、息を引き取られた。 042 LUK 023 047 この出来事を見た百人隊長は、神をほめたたえ、「ほんとうに、この人は正しい方であった。」と言った。 042 LUK 023 048 また、この光景を見に集まっていた群衆もみな、こういういろいろの出来事を見たので、胸をたたいて悲しみながら帰った。 042 LUK 023 049 しかし、イエスの知人たちと、ガリラヤからイエスについて来ていた女たちとはみな、遠く離れて立ち、これらのことを見ていた。 042 LUK 023 050 さてここに、ヨセフという、議員のひとりで、りっぱな、正しい人がいた。 042 LUK 023 051 この人は議員たちの計画や行動には同意しなかった。彼は、アリマタヤというユダヤ人の町の人で、神の国を待ち望んでいた。 042 LUK 023 052 この人が、ピラトのところに行って、イエスのからだの下げ渡しを願った。 042 LUK 023 053 それから、イエスを取り降ろして、亜麻布で包み、そして、まだだれをも葬ったことのない、岩に掘られた墓にイエスを納めた。 042 LUK 023 054 この日は準備の日で、もう安息日が始まろうとしていた。 042 LUK 023 055 ガリラヤからイエスといっしょに出て来た女たちは、ヨセフについて行って、墓と、イエスのからだの納められる様子を見届けた。 042 LUK 023 056 そして、戻って来て、香料と香油を用意した。 安息日には、戒めに従って、休んだが、 042 LUK 024 001 週の初めの日の明け方早く、女たちは、準備しておいた香料を持って墓に着いた。 042 LUK 024 002 見ると、石が墓からわきにころがしてあった。 042 LUK 024 003 はいって見ると、主イエスのからだはなかった。 042 LUK 024 004 そのため女たちが途方にくれていると、見よ、まばゆいばかりの衣を着たふたりの人が、女たちの近くに来た。 042 LUK 024 005 恐ろしくなって、地面に顔を伏せていると、その人たちはこう言った。「あなたがたは、なぜ生きている方を死人の中で捜すのですか。 042 LUK 024 006 ここにはおられません。よみがえられたのです。まだガリラヤにおられたころ、お話しになったことを思い出しなさい。 042 LUK 024 007 人の子は必ず罪人らの手に引き渡され、十字架につけられ、三日目によみがえらなければならない、と言われたでしょう。」 042 LUK 024 008 女たちはイエスのみことばを思い出した。 042 LUK 024 009 そして、墓から戻って、十一弟子とそのほかの人たち全部に、一部始終を報告した。 042 LUK 024 010 この女たちは、マグダラのマリヤとヨハンナとヤコブの母マリヤとであった。彼女たちといっしょにいたほかの女たちも、このことを使徒たちに話した。 042 LUK 024 011 ところが使徒たちにはこの話はたわごとと思われたので、彼らは女たちを信用しなかった。 042 LUK 024 012 [しかしペテロは、立ち上がると走って墓へ行き、かがんでのぞき込んだところ、亜麻布だけがあった。それで、この出来事に驚いて家に帰った。] 042 LUK 024 013 ちょうどこの日、ふたりの弟子が、エルサレムから十一キロメートル余り離れたエマオという村に行く途中であった。 042 LUK 024 014 そして、ふたりでこのいっさいの出来事について話し合っていた。 042 LUK 024 015 話し合ったり、論じ合ったりしているうちに、イエスご自身が近づいて、彼らとともに道を歩いておられた。 042 LUK 024 016 しかしふたりの目はさえぎられていて、イエスだとはわからなかった。 042 LUK 024 017 イエスは彼らに言われた。「歩きながらふたりで話し合っているその話は、何のことですか。」すると、ふたりは暗い顔つきになって、立ち止まった。 042 LUK 024 018 クレオパというほうが答えて言った。「エルサレムにいながら、近ごろそこで起こった事を、あなただけが知らなかったのですか。」 042 LUK 024 019 イエスが、「どんな事ですか。」と聞かれると、ふたりは答えた。「ナザレ人イエスのことです。この方は、神とすべての民の前で、行ないにもことばにも力のある預言者でした。 042 LUK 024 020 それなのに、私たちの祭司長や指導者たちは、この方を引き渡して、死刑に定め、十字架につけたのです。 042 LUK 024 021 しかし私たちは、この方こそイスラエルを贖ってくださるはずだ、と望みをかけていました。事実、そればかりでなく、その事があってから三日目になりますが、 042 LUK 024 022 また仲間の女たちが私たちを驚かせました。その女たちは朝早く墓に行ってみましたが、 042 LUK 024 023 イエスのからだが見当たらないので、戻って来ました。そして御使いたちの幻を見たが、御使いたちがイエスは生きておられると告げた、と言うのです。 042 LUK 024 024 それで、仲間の何人かが墓に行ってみたのですが、はたして女たちの言ったとおりで、イエスさまは見当たらなかった、というのです。」 042 LUK 024 025 するとイエスは言われた。「ああ、愚かな人たち。預言者たちの言ったすべてを信じない、心の鈍い人たち。 042 LUK 024 026 キリストは、必ず、そのような苦しみを受けて、それから、彼の栄光にはいるはずではなかったのですか。」 042 LUK 024 027 それから、イエスは、モーセおよびすべての預言者から始めて、聖書全体の中で、ご自分について書いてある事がらを彼らに説き明かされた。 042 LUK 024 028 彼らは目的の村に近づいたが、イエスはまだ先へ行きそうなご様子であった。 042 LUK 024 029 それで、彼らが、「いっしょにお泊まりください。そろそろ夕刻になりますし、日もおおかた傾きましたから。」と言って無理に願ったので、イエスは彼らといっしょに泊まるために中にはいられた。 042 LUK 024 030 彼らとともに食卓に着かれると、イエスはパンを取って祝福し、裂いて彼らに渡された。 042 LUK 024 031 それで、彼らの目が開かれ、イエスだとわかった。するとイエスは、彼らには見えなくなった。 042 LUK 024 032 そこでふたりは話し合った。「道々お話しになっている間も、聖書を説明してくださった間も、私たちの心はうちに燃えていたではないか。」 042 LUK 024 033 すぐさまふたりは立って、エルサレムに戻ってみると、十一使徒とその仲間が集まって、 042 LUK 024 034 「ほんとうに主はよみがえって、シモンにお姿を現わされた。」と言っていた。 042 LUK 024 035 彼らも、道であったいろいろなことや、パンを裂かれたときにイエスだとわかった次第を話した。 042 LUK 024 036 これらのことを話している間に、イエスご自身が彼らの真中に立たれた。 042 LUK 024 037 彼らは驚き恐れて、霊を見ているのだと思った。 042 LUK 024 038 すると、イエスは言われた。「なぜ取り乱しているのですか。どうして心に疑いを起こすのですか。 042 LUK 024 039 わたしの手やわたしの足を見なさい。まさしくわたしです。わたしにさわって、よく見なさい。霊ならこんな肉や骨はありません。わたしは持っています。」 042 LUK 024 040 それでも、彼らは、うれしさのあまりまだ信じられず、不思議がっているので、イエスは、「ここに何か食べ物がありますか。」と言われた。 042 LUK 024 042 それで、焼いた魚を一切れ差し上げると、 042 LUK 024 043 イエスは、彼らの前で、それを取って召し上がった。 042 LUK 024 044 さて、そこでイエスは言われた。「わたしがまだあなたがたといっしょにいたころ、あなたがたに話したことばはこうです。わたしについてモーセの律法と預言者と詩篇とに書いてあることは、必ず全部成就するということでした。」 042 LUK 024 045 そこで、イエスは、聖書を悟らせるために彼らの心を開いて、 042 LUK 024 046 こう言われた。「次のように書いてあります。キリストは苦しみを受け、三日目に死人の中からよみがえり、 042 LUK 024 047 その名によって、罪の赦しを得させる悔い改めが、エルサレムから始まってあらゆる国の人々に宣べ伝えられる。 042 LUK 024 048 あなたがたは、これらのことの証人です。 042 LUK 024 049 さあ、わたしは、わたしの父の約束してくださったものをあなたがたに送ります。あなたがたは、いと高き所から力を着せられるまでは、都にとどまっていなさい。」 042 LUK 024 050 それから、イエスは、彼らをベタニヤまで連れて行き、手を上げて祝福された。 042 LUK 024 051 そして祝福しながら、彼らから離れて行かれた。 042 LUK 024 052 彼らは、非常な喜びを抱いてエルサレムに帰り、 042 LUK 024 053 いつも宮にいて神をほめたたえていた。 # # BOOK 043 JOH John ヨハネの福音書 043 JOH 001 001 初めに、ことばがあった。ことばは神とともにあった。ことばは神であった。 043 JOH 001 002 この方は、初めに神とともにおられた。 043 JOH 001 003 すべてのものは、この方によって造られた。造られたもので、この方によらずにできたものは一つもない。 043 JOH 001 004 この方にいのちがあった。このいのちは人の光であった。 043 JOH 001 005 光はやみの中に輝いている。やみはこれに打ち勝たなかった。 043 JOH 001 006 神から遣わされたヨハネという人が現われた。 043 JOH 001 007 この人はあかしのために来た。光についてあかしするためであり、すべての人が彼によって信じるためである。 043 JOH 001 008 彼は光ではなかった。ただ光についてあかしするために来たのである。 043 JOH 001 009 すべての人を照らすそのまことの光が世に来ようとしていた。 043 JOH 001 010 この方はもとから世におられ、世はこの方によって造られたのに、世はこの方を知らなかった。 043 JOH 001 011 この方はご自分のくにに来られたのに、ご自分の民は受け入れなかった。 043 JOH 001 012 しかし、この方を受け入れた人々、すなわち、その名を信じた人々には、神の子どもとされる特権をお与えになった。 043 JOH 001 013 この人々は、血によってではなく、肉の欲求や人の意欲によってでもなく、ただ、神によって生まれたのである。 043 JOH 001 014 ことばは人となって、私たちの間に住まわれた。私たちはこの方の栄光を見た。父のみもとから来られたひとり子としての栄光である。この方は恵みとまことに満ちておられた。 043 JOH 001 015 ヨハネはこの方について証言し、叫んで言った。「『私のあとから来る方は、私にまさる方である。私より先におられたからである。』と私が言ったのは、この方のことです。」 043 JOH 001 016 私たちはみな、この方の満ち満ちた豊かさの中から、恵みの上にさらに恵みを受けたのである。 043 JOH 001 017 というのは、律法はモーセによって与えられ、恵みとまことはイエス・キリストによって実現したからである。 043 JOH 001 018 いまだかつて神を見た者はいない。父のふところにおられるひとり子の神が、神を説き明かされたのである。 043 JOH 001 019 ヨハネの証言は、こうである。ユダヤ人たちが祭司とレビ人をエルサレムからヨハネのもとに遣わして、「あなたはどなたですか。」と尋ねさせた。 043 JOH 001 020 彼は告白して否まず、「私はキリストではありません。」と言明した。 043 JOH 001 021 また、彼らは聞いた。「では、いったい何ですか。あなたはエリヤですか。」彼は言った。「そうではありません。」「あなたはあの預言者ですか。」彼は答えた。「違います。」 043 JOH 001 022 そこで、彼らは言った。「あなたはだれですか。私たちを遣わした人々に返事をしたいのですが、あなたは自分を何だと言われるのですか。」 043 JOH 001 023 彼は言った。「私は、預言者イザヤが言ったように『主の道をまっすぐにせよ。』と荒野で叫んでいる者の声です。」 043 JOH 001 024 彼らは、パリサイ人の中から遣わされたのであった。 043 JOH 001 025 彼らはまた尋ねて言った。「キリストでもなく、エリヤでもなく、またあの預言者でもないなら、なぜ、あなたはバプテスマを授けているのですか。」 043 JOH 001 026 ヨハネは答えて言った。「私は水でバプテスマを授けているが、あなたがたの中に、あなたがたの知らない方が立っておられます。 043 JOH 001 027 その方は私のあとから来られる方で、私はその方のくつのひもを解く値うちもありません。」 043 JOH 001 028 この事があったのは、ヨルダンの向こう岸のベタニヤであって、ヨハネはそこでバプテスマを授けていた。 043 JOH 001 029 その翌日、ヨハネは自分のほうにイエスが来られるのを見て言った。「見よ、世の罪を取り除く神の小羊。 043 JOH 001 030 私が『私のあとから来る人がある。その方は私にまさる方である。私より先におられたからだ。』と言ったのは、この方のことです。 043 JOH 001 031 私もこの方を知りませんでした。しかし、この方がイスラエルに明らかにされるために、私は来て、水でバプテスマを授けているのです。」 043 JOH 001 032 またヨハネは証言して言った。「御霊が鳩のように天から下って、この方の上にとどまられるのを私は見ました。 043 JOH 001 033 私もこの方を知りませんでした。しかし、水でバプテスマを授けさせるために私を遣わされた方が、私に言われました。『聖霊がある方の上に下って、その上にとどまられるのがあなたに見えたなら、その方こそ、聖霊によってバプテスマを授ける方である。』 043 JOH 001 034 私はそれを見たのです。それで、この方が神の子であると証言しているのです。」 043 JOH 001 035 その翌日、またヨハネは、ふたりの弟子とともに立っていたが、 043 JOH 001 036 イエスが歩いて行かれるのを見て、「見よ、神の小羊。」と言った。 043 JOH 001 037 ふたりの弟子は、彼がそう言うのを聞いて、イエスについて行った。 043 JOH 001 038 イエスは振り向いて、彼らがついて来るのを見て、言われた。「あなたがたは何を求めているのですか。」彼らは言った。「ラビ(訳して言えば、先生)。今どこにお泊まりですか。」 043 JOH 001 039 イエスは彼らに言われた。「来なさい。そうすればわかります。」そこで、彼らはついて行って、イエスの泊まっておられる所を知った。そして、その日彼らはイエスといっしょにいた。時は十時ごろであった。 043 JOH 001 040 ヨハネから聞いて、イエスについて行ったふたりのうちのひとりは、シモン・ペテロの兄弟アンデレであった。 043 JOH 001 041 彼はまず自分の兄弟シモンを見つけて、「私たちはメシヤ(訳して言えば、キリスト)に会った。」と言った。 043 JOH 001 042 彼はシモンをイエスのもとに連れて来た。イエスはシモンに目を留めて言われた。「あなたはヨハネの子シモンです。あなたをケパ(訳すとペテロ)と呼ぶことにします。」 043 JOH 001 043 その翌日、イエスはガリラヤに行こうとされた。そして、ピリポを見つけて「わたしに従って来なさい。」と言われた。 043 JOH 001 044 ピリポは、ベツサイダの人で、アンデレやペテロと同じ町の出身であった。 043 JOH 001 045 彼はナタナエルを見つけて言った。「私たちは、モーセが律法の中に書き、預言者たちも書いている方に会いました。ナザレの人で、ヨセフの子イエスです。」 043 JOH 001 046 ナタナエルは彼に言った。「ナザレから何の良いものが出るだろう。」ピリポは言った。「来て、そして、見なさい。」 043 JOH 001 047 イエスはナタナエルが自分のほうに来るのを見て、彼について言われた。「これこそ、ほんとうのイスラエル人だ。彼のうちには偽りがない。」 043 JOH 001 048 ナタナエルはイエスに言った。「どうして私をご存じなのですか。」イエスは言われた。「わたしは、ピリポがあなたを呼ぶ前に、あなたがいちじくの木の下にいるのを見たのです。」 043 JOH 001 049 ナタナエルは答えた。「先生。あなたは神の子です。あなたはイスラエルの王です。」 043 JOH 001 050 イエスは答えて言われた。「あなたがいちじくの木の下にいるのを見た、とわたしが言ったので、あなたは信じるのですか。あなたは、それよりもさらに大きなことを見ることになります。」 043 JOH 001 051 そして言われた。「まことに、まことに、あなたがたに告げます。天が開けて、神の御使いたちが人の子の上を上り下りするのを、あなたがたはいまに見ます。」 043 JOH 002 001 それから三日目に、ガリラヤのカナで婚礼があって、そこにイエスの母がいた。 043 JOH 002 002 イエスも、また弟子たちも、その婚礼に招かれた。 043 JOH 002 003 ぶどう酒がなくなったとき、母がイエスに向かって「ぶどう酒がありません。」と言った。 043 JOH 002 004 すると、イエスは母に言われた。「あなたはわたしと何の関係があるのでしょう。女の方。わたしの時はまだ来ていません。」 043 JOH 002 005 母は手伝いの人たちに言った。「あの方が言われることを、何でもしてあげてください。」 043 JOH 002 006 さて、そこには、ユダヤ人のきよめのしきたりによって、それぞれ八十リットルから百二十リットル入りの石の水がめが六つ置いてあった。 043 JOH 002 007 イエスは彼らに言われた。「水がめに水を満たしなさい。」彼らは水がめを縁までいっぱいにした。 043 JOH 002 008 イエスは彼らに言われた。「さあ、今くみなさい。そして宴会の世話役のところに持って行きなさい。」彼らは持って行った。 043 JOH 002 009 宴会の世話役はぶどう酒になったその水を味わってみた。それがどこから来たのか、知らなかったので、――しかし、水をくんだ手伝いの者たちは知っていた。――彼は、花婿を呼んで、 043 JOH 002 010 言った。「だれでも初めに良いぶどう酒を出し、人々が十分飲んだころになると、悪いのを出すものだが、あなたは良いぶどう酒をよくも今まで取っておきました。」 043 JOH 002 011 イエスはこのことを最初のしるしとしてガリラヤのカナで行ない、ご自分の栄光を現わされた。それで、弟子たちはイエスを信じた。 043 JOH 002 012 その後、イエスは母や兄弟たちや弟子たちといっしょに、カペナウムに下って行き、長い日数ではなかったが、そこに滞在された。 043 JOH 002 013 ユダヤ人の過越の祭りが近づき、イエスはエルサレムに上られた。 043 JOH 002 014 そして、宮の中に、牛や羊や鳩を売る者たちと両替人たちがすわっているのをご覧になり、 043 JOH 002 015 細なわでむちを作って、羊も牛もみな、宮から追い出し、両替人の金を散らし、その台を倒し、 043 JOH 002 016 また、鳩を売る者に言われた。「それをここから持って行け。わたしの父の家を商売の家としてはならない。」 043 JOH 002 017 弟子たちは、「あなたの家を思う熱心がわたしを食い尽くす。」と書いてあるのを思い起こした。 043 JOH 002 018 そこで、ユダヤ人たちが答えて言った。「あなたがこのようなことをするからには、どんなしるしを私たちに見せてくれるのですか。」 043 JOH 002 019 イエスは彼らに答えて言われた。「この神殿をこわしてみなさい。わたしは、三日でそれを建てよう。」 043 JOH 002 020 そこで、ユダヤ人たちは言った。「この神殿は建てるのに四十六年かかりました。あなたはそれを、三日で建てるのですか。」 043 JOH 002 021 しかし、イエスはご自分のからだの神殿のことを言われたのである。 043 JOH 002 022 それで、イエスが死人の中からよみがえられたとき、弟子たちは、イエスがこのように言われたことを思い起こして、聖書とイエスが言われたことばとを信じた。 043 JOH 002 023 イエスが、過越の祭りの祝いの間、エルサレムにおられたとき、多くの人々が、イエスの行なわれたしるしを見て、御名を信じた。 043 JOH 002 024 しかし、イエスは、ご自身を彼らにお任せにならなかった。なぜなら、イエスはすべての人を知っておられたからであり、 043 JOH 002 025 また、イエスはご自身で、人のうちにあるものを知っておられたので、人についてだれの証言も必要とされなかったからである。 043 JOH 003 001 さて、パリサイ人の中にニコデモという人がいた。ユダヤ人の指導者であった。 043 JOH 003 002 この人が、夜、イエスのもとに来て言った。「先生。私たちは、あなたが神のもとから来られた教師であることを知っています。神がともにおられるのでなければ、あなたがなさるこのようなしるしは、だれも行なうことができません。」 043 JOH 003 003 イエスは答えて言われた。「まことに、まことに、あなたに告げます。人は、新しく生まれなければ、神の国を見ることはできません。」 043 JOH 003 004 ニコデモは言った。「人は、老年になっていて、どのようにして生まれることができるのですか。もう一度、母の胎にはいって生まれることができましょうか。」 043 JOH 003 005 イエスは答えられた。「まことに、まことに、あなたに告げます。人は、水と御霊によって生まれなければ、神の国にはいることができません。 043 JOH 003 006 肉によって生まれた者は肉です。御霊によって生まれた者は霊です。 043 JOH 003 007 あなたがたは新しく生まれなければならない、とわたしが言ったことを不思議に思ってはなりません。 043 JOH 003 008 風はその思いのままに吹き、あなたはその音を聞くが、それがどこから来てどこへ行くかを知らない。御霊によって生まれる者もみな、そのとおりです。」 043 JOH 003 009 ニコデモは答えて言った。「どうして、そのようなことがありうるのでしょう。」 043 JOH 003 010 イエスは答えて言われた。「あなたはイスラエルの教師でありながら、こういうことがわからないのですか。 043 JOH 003 011 まことに、まことに、あなたに告げます。わたしたちは、知っていることを話し、見たことをあかししているのに、あなたがたは、わたしたちのあかしを受け入れません。 043 JOH 003 012 あなたがたは、わたしが地上のことを話したとき、信じないくらいなら、天上のことを話したとて、どうして信じるでしょう。 043 JOH 003 013 だれも天に上った者はいません。しかし天から下った者はいます。すなわち人の子です。 043 JOH 003 014 モーセが荒野で蛇を上げたように、人の子もまた上げられなければなりません。 043 JOH 003 015 それは、信じる者がみな、人の子にあって永遠のいのちを持つためです。」 043 JOH 003 016 神は、実に、そのひとり子をお与えになったほどに、世を愛された。それは御子を信じる者が、ひとりとして滅びることなく、永遠のいのちを持つためである。 043 JOH 003 017 神が御子を世に遣わされたのは、世をさばくためではなく、御子によって世が救われるためである。 043 JOH 003 018 御子を信じる者はさばかれない。信じない者は神のひとり子の御名を信じなかったので、すでにさばかれている。 043 JOH 003 019 そのさばきというのは、こうである。光が世に来ているのに、人々は光よりもやみを愛した。その行ないが悪かったからである。 043 JOH 003 020 悪いことをする者は光を憎み、その行ないが明るみに出されることを恐れて、光のほうに来ない。 043 JOH 003 021 しかし、真理を行なう者は、光のほうに来る。その行ないが神にあってなされたことが明らかにされるためである。 043 JOH 003 022 その後、イエスは弟子たちと、ユダヤの地に行き、彼らとともにそこに滞在して、バプテスマを授けておられた。 043 JOH 003 023 一方ヨハネもサリムに近いアイノンでバプテスマを授けていた。そこには水が多かったからである。人々は次々にやって来て、バプテスマを受けていた。 043 JOH 003 024 ――ヨハネは、まだ投獄されていなかったからである。―― 043 JOH 003 025 それで、ヨハネの弟子たちが、あるユダヤ人ときよめについて論議した。 043 JOH 003 026 彼らはヨハネのところに来て言った。「先生。見てください。ヨルダンの向こう岸であなたといっしょにいて、あなたが証言なさったあの方が、バプテスマを授けておられます。そして、みなあの方のほうへ行きます。」 043 JOH 003 027 ヨハネは答えて言った。「人は、天から与えられるのでなければ、何も受けることはできません。 043 JOH 003 028 あなたがたこそ、『私はキリストではなく、その前に遣わされた者である。』と私が言ったことの証人です。 043 JOH 003 029 花嫁を迎える者は花婿です。そこにいて、花婿のことばに耳を傾けているその友人は、花婿の声を聞いて大いに喜びます。それで、私もその喜びで満たされているのです。 043 JOH 003 030 あの方は盛んになり私は衰えなければなりません。」 043 JOH 003 031 上から来る方は、すべてのものの上におられ、地から出る者は地に属し、地のことばを話す。天から来る方は、すべてのものの上におられる。 043 JOH 003 032 この方は見たこと、また聞いたことをあかしされるが、だれもそのあかしを受け入れない。 043 JOH 003 033 そのあかしを受け入れた者は、神は真実であるということに確認の印を押したのである。 043 JOH 003 034 神がお遣わしになった方は、神のことばを話される。神が御霊を無限に与えられるからである。 043 JOH 003 035 父は御子を愛しておられ、万物を御子の手にお渡しになった。 043 JOH 003 036 御子を信じる者は永遠のいのちを持つが、御子に聞き従わない者は、いのちを見ることがなく、神の怒りがその上にとどまる。 043 JOH 004 001 イエスがヨハネよりも弟子を多くつくって、バプテスマを授けていることがパリサイ人の耳にはいった。それを主が知られたとき、 043 JOH 004 002 ――イエスご自身はバプテスマを授けておられたのではなく、弟子たちであったが、―― 043 JOH 004 003 主はユダヤを去って、またガリラヤへ行かれた。 043 JOH 004 004 しかし、サマリヤを通って行かなければならなかった。 043 JOH 004 005 それで主は、ヤコブがその子ヨセフに与えた地所に近いスカルというサマリヤの町に来られた。 043 JOH 004 006 そこにはヤコブの井戸があった。イエスは旅の疲れで、井戸のかたわらに腰をおろしておられた。時は六時ごろであった。 043 JOH 004 007 ひとりのサマリヤの女が水をくみに来た。イエスは「わたしに水を飲ませてください。」と言われた。 043 JOH 004 008 弟子たちは食物を買いに、町へ出かけていた。 043 JOH 004 009 そこで、そのサマリヤの女は言った。「あなたはユダヤ人なのに、どうしてサマリヤの女の私に、飲み水をお求めになるのですか。」――ユダヤ人はサマリヤ人とつきあいをしなかったからである。―― 043 JOH 004 010 イエスは答えて言われた。「もしあなたが神の賜物を知り、また、あなたに水を飲ませてくれと言う者がだれであるかを知っていたなら、あなたのほうでその人に求めたことでしょう。そしてその人はあなたに生ける水を与えたことでしょう。」 043 JOH 004 011 彼女は言った。「先生。あなたはくむ物を持っておいでにならず、この井戸は深いのです。その生ける水をどこから手にお入れになるのですか。 043 JOH 004 012 あなたは、私たちの先祖ヤコブよりも偉いのでしょうか。ヤコブは私たちにこの井戸を与え、彼自身も、彼の子たちも家畜も、この井戸から飲んだのです。」 043 JOH 004 013 イエスは答えて言われた。「この水を飲む者はだれでも、また渇きます。 043 JOH 004 014 しかし、わたしが与える水を飲む者はだれでも、決して渇くことがありません。わたしが与える水は、その人のうちで泉となり、永遠のいのちへの水がわき出ます。」 043 JOH 004 015 女はイエスに言った。「先生。私が渇くことがなく、もうここまでくみに来なくてもよいように、その水を私に下さい。」 043 JOH 004 016 イエスは彼女に言われた。「行って、あなたの夫をここに呼んで来なさい。」 043 JOH 004 017 女は答えて言った。「私には夫はありません。」イエスは言われた。「私には夫がないというのは、もっともです。 043 JOH 004 018 あなたには夫が五人あったが、今あなたといっしょにいるのは、あなたの夫ではないからです。あなたが言ったことはほんとうです。」 043 JOH 004 019 女は言った。「先生。あなたは預言者だと思います。 043 JOH 004 020 私たちの先祖は、この山で礼拝しましたが、あなたがたは、礼拝すべき場所はエルサレムだと言われます。」 043 JOH 004 021 イエスは彼女に言われた。「わたしの言うことを信じなさい。あなたがたが父を礼拝するのは、この山でもなく、エルサレムでもない、そういう時が来ます。 043 JOH 004 022 救いはユダヤ人から出るのですから、わたしたちは知って礼拝していますが、あなたがたは知らないで礼拝しています。 043 JOH 004 023 しかし、真の礼拝者たちが霊とまことによって父を礼拝する時が来ます。今がその時です。父はこのような人々を礼拝者として求めておられるからです。 043 JOH 004 024 神は霊ですから、神を礼拝する者は、霊とまことによって礼拝しなければなりません。」 043 JOH 004 025 女はイエスに言った。「私は、キリストと呼ばれるメシヤの来られることを知っています。その方が来られるときには、いっさいのことを私たちに知らせてくださるでしょう。」 043 JOH 004 026 イエスは言われた。「あなたと話しているこのわたしがそれです。」 043 JOH 004 027 このとき、弟子たちが帰って来て、イエスが女の人と話しておられるのを不思議に思った。しかし、だれも、「何を求めておられるのですか。」とも、「なぜ彼女と話しておられるのですか。」とも言わなかった。 043 JOH 004 028 女は、自分の水がめを置いて町へ行き、人々に言った。 043 JOH 004 029 「来て、見てください。私のしたこと全部を私に言った人がいるのです。この方がキリストなのでしょうか。」 043 JOH 004 030 そこで、彼らは町を出て、イエスのほうへやって来た。 043 JOH 004 031 そのころ、弟子たちはイエスに、「先生。召し上がってください。」とお願いした。 043 JOH 004 032 しかし、イエスは彼らに言われた。「わたしには、あなたがたの知らない食物があります。」 043 JOH 004 033 そこで、弟子たちは互いに言った。「だれか食べる物を持って来たのだろうか。」 043 JOH 004 034 イエスは彼らに言われた。「わたしを遣わした方のみこころを行ない、そのみわざを成し遂げることが、わたしの食物です。 043 JOH 004 035 あなたがたは、『刈り入れ時が来るまでに、まだ四か月ある。』と言ってはいませんか。さあ、わたしの言うことを聞きなさい。目を上げて畑を見なさい。色づいて、刈り入れるばかりになっています。 043 JOH 004 036 すでに、刈る者は報酬を受け、永遠のいのちに入れられる実を集めています。それは蒔く者と刈る者がともに喜ぶためです。 043 JOH 004 037 こういうわけで、『ひとりが種を蒔き、ほかの者が刈り取る。』ということわざは、ほんとうなのです。 043 JOH 004 038 わたしは、あなたがたに自分で労苦しなかったものを刈り取らせるために、あなたがたを遣わしました。ほかの人々が労苦して、あなたがたはその労苦の実を得ているのです。」 043 JOH 004 039 さて、その町のサマリヤ人のうち多くの者が、「あの方は、私がしたこと全部を私に言った。」と証言したその女のことばによってイエスを信じた。 043 JOH 004 040 そこで、サマリヤ人たちはイエスのところに来たとき、自分たちのところに滞在してくださるように願った。そこでイエスは二日間そこに滞在された。 043 JOH 004 041 そして、さらに多くの人々が、イエスのことばによって信じた。 043 JOH 004 042 そして彼らはその女に言った。「もう私たちは、あなたが話したことによって信じているのではありません。自分で聞いて、この方がほんとうに世の救い主だと知っているのです。」 043 JOH 004 043 さて、二日の後、イエスはここを去って、ガリラヤへ行かれた。 043 JOH 004 044 イエスご自身が、「預言者は自分の故郷では尊ばれない。」と証言しておられたからである。 043 JOH 004 045 そういうわけで、イエスがガリラヤに行かれたとき、ガリラヤ人はイエスを歓迎した。彼らも祭りに行っていたので、イエスが祭りの間にエルサレムでなさったすべてのことを見ていたからである。 043 JOH 004 046 イエスは再びガリラヤのカナに行かれた。そこは、かつて水をぶどう酒にされた所である。さて、カペナウムに病気の息子がいる王室の役人がいた。 043 JOH 004 047 この人は、イエスがユダヤからガリラヤに来られたと聞いて、イエスのところへ行き、下って来て息子をいやしてくださるように願った。息子が死にかかっていたからである。 043 JOH 004 048 そこで、イエスは彼に言われた。「あなたがたは、しるしと不思議を見ないかぎり、決して信じない。」 043 JOH 004 049 その王室の役人はイエスに言った。「主よ。どうか私の子どもが死なないうちに下って来てください。」 043 JOH 004 050 イエスは彼に言われた。「帰って行きなさい。あなたの息子は直っています。」その人はイエスが言われたことばを信じて、帰途についた。 043 JOH 004 051 彼が下って行く途中、そのしもべたちが彼に出会って、彼の息子が直ったことを告げた。 043 JOH 004 052 そこで子どもがよくなった時刻を彼らに尋ねると、「きのう、七時に熱がひきました。」と言った。 043 JOH 004 053 それで父親は、イエスが「あなたの息子は直っている。」と言われた時刻と同じであることを知った。そして彼自身と彼の家の者がみな信じた。 043 JOH 004 054 イエスはユダヤを去ってガリラヤにはいられてから、またこのことを第二のしるしとして行なわれたのである。 043 JOH 005 001 その後、ユダヤ人の祭りがあって、イエスはエルサレムに上られた。 043 JOH 005 002 さて、エルサレムには、羊の門の近くに、ヘブル語でベテスダと呼ばれる池があって、五つの回廊がついていた。 043 JOH 005 003 その中に大ぜいの病人、盲人、足なえ、やせ衰えた者が伏せっていた。 043 JOH 005 004 そこに、三十八年もの間、病気にかかっている人がいた。 043 JOH 005 006 イエスは彼が伏せっているのを見、それがもう長い間のことなのを知って、彼に言われた。「よくなりたいか。」 043 JOH 005 007 病人は答えた。「主よ。私には、水がかき回されたとき、池の中に私を入れてくれる人がいません。行きかけると、もうほかの人が先に降りて行くのです。」 043 JOH 005 008 イエスは彼に言われた。「起きて、床を取り上げて歩きなさい。」 043 JOH 005 009 すると、その人はすぐに直って、床を取り上げて歩き出した。 ところが、その日は安息日であった。 043 JOH 005 010 そこでユダヤ人たちは、そのいやされた人に言った。「きょうは安息日だ。床を取り上げてはいけない。」 043 JOH 005 011 しかし、その人は彼らに答えた。「私を直してくださった方が、『床を取り上げて歩け。』と言われたのです。」 043 JOH 005 012 彼らは尋ねた。「『取り上げて歩け。』と言った人はだれだ。」 043 JOH 005 013 しかし、いやされた人は、それがだれであるか知らなかった。人が大ぜいそこにいる間に、イエスは立ち去られたからである。 043 JOH 005 014 その後、イエスは宮の中で彼を見つけて言われた。「見なさい。あなたはよくなった。もう罪を犯してはなりません。そうでないともっと悪い事があなたの身に起こるから。」 043 JOH 005 015 その人は行って、ユダヤ人たちに、自分を直してくれた方はイエスだと告げた。 043 JOH 005 016 このためユダヤ人たちは、イエスを迫害した。イエスが安息日にこのようなことをしておられたからである。 043 JOH 005 017 イエスは彼らに答えられた。「わたしの父は今に至るまで働いておられます。ですからわたしも働いているのです。」 043 JOH 005 018 このためユダヤ人たちは、ますますイエスを殺そうとするようになった。イエスが安息日を破っておられただけでなく、ご自身を神と等しくして、神を自分の父と呼んでおられたからである。 043 JOH 005 019 そこで、イエスは彼らに答えて言われた。「まことに、まことに、あなたがたに告げます。子は、父がしておられることを見て行なう以外には、自分からは何事も行なうことができません。父がなさることは何でも、子も同様に行なうのです。 043 JOH 005 020 それは、父が子を愛して、ご自分のなさることをみな、子にお示しになるからです。また、これよりもさらに大きなわざを子に示されます。それは、あなたがたが驚き怪しむためです。 043 JOH 005 021 父が死人を生かし、いのちをお与えになるように、子もまた、与えたいと思う者にいのちを与えます。 043 JOH 005 022 また、父はだれをもさばかず、すべてのさばきを子にゆだねられました。 043 JOH 005 023 それは、すべての者が、父を敬うように子を敬うためです。子を敬わない者は、子を遣わした父をも敬いません。 043 JOH 005 024 まことに、まことに、あなたがたに告げます。わたしのことばを聞いて、わたしを遣わした方を信じる者は、永遠のいのちを持ち、さばきに会うことがなく、死からいのちに移っているのです。 043 JOH 005 025 まことに、まことに、あなたがたに告げます。死人が神の子の声を聞く時が来ます。今がその時です。そして、聞く者は生きるのです。 043 JOH 005 026 それは、父がご自分のうちにいのちを持っておられるように、子にも、自分のうちにいのちを持つようにしてくださったからです。 043 JOH 005 027 また、父はさばきを行なう権を子に与えられました。子は人の子だからです。 043 JOH 005 028 このことに驚いてはなりません。墓の中にいる者がみな、子の声を聞いて出て来る時が来ます。 043 JOH 005 029 善を行なった者は、よみがえっていのちを受け、悪を行なった者は、よみがえってさばきを受けるのです。 043 JOH 005 030 わたしは、自分からは何事も行なうことができません。ただ聞くとおりにさばくのです。そして、わたしのさばきは正しいのです。わたし自身の望むことを求めず、わたしを遣わした方のみこころを求めるからです。 043 JOH 005 031 もしわたしだけが自分のことを証言するのなら、わたしの証言は真実ではありません。 043 JOH 005 032 わたしについて証言する方がほかにあるのです。その方のわたしについて証言される証言が真実であることは、わたしが知っています。 043 JOH 005 033 あなたがたは、ヨハネのところに人をやりましたが、彼は真理について証言しました。 043 JOH 005 034 といっても、わたしは人の証言を受けるのではありません。わたしは、あなたがたが救われるために、そのことを言うのです。 043 JOH 005 035 彼は燃えて輝くともしびであり、あなたがたはしばらくの間、その光の中で楽しむことを願ったのです。 043 JOH 005 036 しかし、わたしにはヨハネの証言よりもすぐれた証言があります。父がわたしに成し遂げさせようとしてお与えになったわざ、すなわちわたしが行なっているわざそのものが、わたしについて、父がわたしを遣わしたことを証言しているのです。 043 JOH 005 037 また、わたしを遣わした父ご自身がわたしについて証言しておられます。あなたがたは、まだ一度もその御声を聞いたこともなく、御姿を見たこともありません。 043 JOH 005 038 また、そのみことばをあなたがたのうちにとどめてもいません。父が遣わした者をあなたがたが信じないからです。 043 JOH 005 039 あなたがたは、聖書の中に永遠のいのちがあると思うので、聖書を調べています。その聖書が、わたしについて証言しているのです。 043 JOH 005 040 それなのに、あなたがたは、いのちを得るためにわたしのもとに来ようとはしません。 043 JOH 005 041 わたしは人からの栄誉は受けません。 043 JOH 005 042 ただ、わたしはあなたがたを知っています。あなたがたのうちには、神の愛がありません。 043 JOH 005 043 わたしはわたしの父の名によって来ましたが、あなたがたはわたしを受け入れません。ほかの人がその人自身の名において来れば、あなたがたはその人を受け入れるのです。 043 JOH 005 044 互いの栄誉は受けても、唯一の神からの栄誉を求めないあなたがたは、どうして信じることができますか。 043 JOH 005 045 わたしが、父の前にあなたがたを訴えようとしていると思ってはなりません。あなたがたを訴える者は、あなたがたが望みをおいているモーセです。 043 JOH 005 046 もしあなたがたがモーセを信じているのなら、わたしを信じたはずです。モーセが書いたのはわたしのことだからです。 043 JOH 005 047 しかし、あなたがたがモーセの書を信じないのであれば、どうしてわたしのことばを信じるでしょう。」 043 JOH 006 001 その後、イエスはガリラヤの湖、すなわち、テベリヤの湖の向こう岸へ行かれた。 043 JOH 006 002 大ぜいの人の群れがイエスにつき従っていた。それはイエスが病人たちになさっていたしるしを見たからである。 043 JOH 006 003 イエスは山に登り、弟子たちとともにそこにすわられた。 043 JOH 006 004 さて、ユダヤ人の祭りである過越が間近になっていた。 043 JOH 006 005 イエスは目を上げて、大ぜいの人の群れがご自分のほうに来るのを見て、ピリポに言われた。「どこからパンを買って来て、この人々に食べさせようか。」 043 JOH 006 006 もっとも、イエスは、ピリポをためしてこう言われたのであった。イエスは、ご自分では、しようとしていることを知っておられたからである。 043 JOH 006 007 ピリポはイエスに答えた。「めいめいが少しずつ取るにしても、二百デナリのパンでは足りません。」 043 JOH 006 008 弟子のひとりシモン・ペテロの兄弟アンデレがイエスに言った。 043 JOH 006 009 「ここに少年が大麦のパンを五つと小さい魚を二匹持っています。しかし、こんなに大ぜいの人々では、それが何になりましょう。」 043 JOH 006 010 イエスは言われた。「人々をすわらせなさい。」その場所には草が多かった。そこで男たちはすわった。その数はおよそ五千人であった。 043 JOH 006 011 そこで、イエスはパンを取り、感謝をささげてから、すわっている人々に分けてやられた。また、小さい魚も同じようにして、彼らにほしいだけ分けられた。 043 JOH 006 012 そして、彼らが十分食べたとき、弟子たちに言われた。「余ったパン切れを、一つもむだに捨てないように集めなさい。」 043 JOH 006 013 彼らは集めてみた。すると、大麦のパン五つから出て来たパン切れを、人々が食べたうえ、なお余ったもので十二のかごがいっぱいになった。 043 JOH 006 014 人々は、イエスのなさったしるしを見て、「まことに、この方こそ、世に来られるはずの預言者だ。」と言った。 043 JOH 006 015 そこで、イエスは、人々が自分を王とするために、むりやりに連れて行こうとしているのを知って、ただひとり、また山に退かれた。 043 JOH 006 016 夕方になって、弟子たちは湖畔に降りて行った。 043 JOH 006 017 そして、舟に乗り込み、カペナウムのほうへ湖を渡っていた。すでに暗くなっていたが、イエスはまだ彼らのところに来ておられなかった。 043 JOH 006 018 湖は吹きまくる強風に荒れ始めた。 043 JOH 006 019 こうして、四、五千メートルほどこぎ出したころ、彼らは、イエスが湖の上を歩いて舟に近づいて来られるのを見て、恐れた。 043 JOH 006 020 しかし、イエスは彼らに言われた。「わたしだ。恐れることはない。」 043 JOH 006 021 それで彼らは、イエスを喜んで舟に迎えた。舟はほどなく目的の地に着いた。 043 JOH 006 022 その翌日、湖の向こう岸にいた群衆は、そこには小舟が一隻あっただけで、ほかにはなかったこと、また、その舟にイエスは弟子たちといっしょに乗られないで、弟子たちだけが行ったということに気づいた。 043 JOH 006 023 しかし、主が感謝をささげられてから、人々がパンを食べた場所の近くに、テベリヤから数隻の小舟が来た。 043 JOH 006 024 群衆は、イエスがそこにおられず、弟子たちもいないことを知ると、自分たちもその小舟に乗り込んで、イエスを捜してカペナウムに来た。 043 JOH 006 025 そして湖の向こう側でイエスを見つけたとき、彼らはイエスに言った。「先生。いつここにおいでになりましたか。」 043 JOH 006 026 イエスは答えて言われた。「まことに、まことに、あなたがたに告げます。あなたがたがわたしを捜しているのは、しるしを見たからではなく、パンを食べて満腹したからです。 043 JOH 006 027 なくなる食物のためではなく、いつまでも保ち、永遠のいのちに至る食物のために働きなさい。それこそ、人の子があなたがたに与えるものです。この人の子を父すなわち神が認証されたからです。」 043 JOH 006 028 すると彼らはイエスに言った。「私たちは、神のわざを行なうために、何をすべきでしょうか。」 043 JOH 006 029 イエスは答えて言われた。「あなたがたが、神が遣わした者を信じること、それが神のわざです。」 043 JOH 006 030 そこで彼らはイエスに言った。「それでは、私たちが見てあなたを信じるために、しるしとして何をしてくださいますか。どのようなことをなさいますか。 043 JOH 006 031 私たちの先祖は、荒野でマナを食べました。『彼は彼らに天からパンを与えて食べさせた。』と書いてあるとおりです。」 043 JOH 006 032 イエスは彼らに言われた。「まことに、まことに、あなたがたに告げます。モーセはあなたがたに天からのパンを与えたのではありません。しかし、わたしの父は、あなたがたに天からまことのパンをお与えになります。 043 JOH 006 033 というのは、神のパンは、天から下って来て、世にいのちを与えるものだからです。」 043 JOH 006 034 そこで彼らはイエスに言った。「主よ。いつもそのパンを私たちにお与えください。」 043 JOH 006 035 イエスは言われた。「わたしがいのちのパンです。わたしに来る者は決して飢えることがなく、わたしを信じる者はどんなときにも、決して渇くことがありません。 043 JOH 006 036 しかし、あなたがたはわたしを見ながら信じようとしないと、わたしはあなたがたに言いました。 043 JOH 006 037 父がわたしにお与えになる者はみな、わたしのところに来ます。そしてわたしのところに来る者を、わたしは決して捨てません。 043 JOH 006 038 わたしが天から下って来たのは、自分のこころを行なうためではなく、わたしを遣わした方のみこころを行なうためです。 043 JOH 006 039 わたしを遣わした方のみこころは、わたしに与えてくださったすべての者を、わたしがひとりも失うことなく、ひとりひとりを終わりの日によみがえらせることです。 043 JOH 006 040 事実、わたしの父のみこころは、子を見て信じる者がみな永遠のいのちを持つことです。わたしはその人たちをひとりひとり終わりの日によみがえらせます。」 043 JOH 006 041 ユダヤ人たちは、イエスが「わたしは天から下って来たパンである。」と言われたので、イエスについてつぶやいた。 043 JOH 006 042 彼らは言った。「あれはヨセフの子で、われわれはその父も母も知っている、そのイエスではないか。どうしていま彼は『わたしは天から下って来た。』と言うのか。」 043 JOH 006 043 イエスは彼らに答えて言われた。「互いにつぶやくのはやめなさい。 043 JOH 006 044 わたしを遣わした父が引き寄せられないかぎり、だれもわたしのところに来ることはできません。わたしは終わりの日にその人をよみがえらせます。 043 JOH 006 045 預言者の書に、『そして、彼らはみな神によって教えられる。』と書かれていますが、父から聞いて学んだ者はみな、わたしのところに来ます。 043 JOH 006 046 だれも神を見た者はありません。ただ神から出た者、すなわち、この者だけが、父を見たのです。 043 JOH 006 047 まことに、まことに、あなたがたに告げます。信じる者は永遠のいのちを持ちます。 043 JOH 006 048 わたしはいのちのパンです。 043 JOH 006 049 あなたがたの先祖は荒野でマナを食べたが、死にました。 043 JOH 006 050 しかし、これは天から下って来たパンで、それを食べると死ぬことがないのです。 043 JOH 006 051 わたしは、天から下って来た生けるパンです。だれでもこのパンを食べるなら、永遠に生きます。またわたしが与えようとするパンは、世のいのちのための、わたしの肉です。」 043 JOH 006 052 すると、ユダヤ人たちは、「この人は、どのようにしてその肉を私たちに与えて食べさせることができるのか。」と言って互いに議論し合った。 043 JOH 006 053 イエスは彼らに言われた。「まことに、まことに、あなたがたに告げます。人の子の肉を食べ、またその血を飲まなければ、あなたがたのうちに、いのちはありません。 043 JOH 006 054 わたしの肉を食べ、わたしの血を飲む者は、永遠のいのちを持っています。わたしは終わりの日にその人をよみがえらせます。 043 JOH 006 055 わたしの肉はまことの食物、わたしの血はまことの飲み物だからです。 043 JOH 006 056 わたしの肉を食べ、わたしの血を飲む者は、わたしのうちにとどまり、わたしも彼のうちにとどまります。 043 JOH 006 057 生ける父がわたしを遣わし、わたしが父によって生きているように、わたしを食べる者も、わたしによって生きるのです。 043 JOH 006 058 これは、天から下って来たパンです。あなたがたの先祖が食べて死んだようなものではありません。このパンを食べる者は永遠に生きます。」 043 JOH 006 059 これは、イエスがカペナウムで教えられたとき、会堂で話されたことである。 043 JOH 006 060 そこで、弟子たちのうちの多くの者が、これを聞いて言った。「これはひどいことばだ。そんなことをだれが聞いておられようか。」 043 JOH 006 061 しかし、イエスは、弟子たちがこうつぶやいているのを、知っておられ、彼らに言われた。「このことであなたがたはつまずくのか。 043 JOH 006 062 それでは、もし人の子がもといた所に上るのを見たら、どうなるのか。 043 JOH 006 063 いのちを与えるのは御霊です。肉は何の益ももたらしません。わたしがあなたがたに話したことばは、霊であり、またいのちです。 043 JOH 006 064 しかし、あなたがたのうちには信じない者がいます。」――イエスは初めから、信じない者がだれであるか、裏切る者がだれであるかを、知っておられたのである。―― 043 JOH 006 065 そしてイエスは言われた。「それだから、わたしはあなたがたに、『父のみこころによるのでないかぎり、だれもわたしのところに来ることはできない。』と言ったのです。」 043 JOH 006 066 こういうわけで、弟子たちのうちの多くの者が離れ去って行き、もはやイエスとともに歩かなかった。 043 JOH 006 067 そこで、イエスは十二弟子に言われた。「まさか、あなたがたも離れたいと思うのではないでしょう。」 043 JOH 006 068 すると、シモン・ペテロが答えた。「主よ。私たちがだれのところに行きましょう。あなたは、永遠のいのちのことばを持っておられます。 043 JOH 006 069 私たちは、あなたが神の聖者であることを信じ、また知っています。」 043 JOH 006 070 イエスは彼らに答えられた。「わたしがあなたがた十二人を選んだのではありませんか。しかしそのうちのひとりは悪魔です。」 043 JOH 006 071 イエスはイスカリオテ・シモンの子ユダのことを言われたのであった。このユダは十二弟子のひとりであったが、イエスを売ろうとしていた。 043 JOH 007 001 その後、イエスはガリラヤを巡っておられた。それは、ユダヤ人たちがイエスを殺そうとしていたので、ユダヤを巡りたいとは思われなかったからである。 043 JOH 007 002 さて、仮庵の祭りというユダヤ人の祝いが近づいていた。 043 JOH 007 003 そこで、イエスの兄弟たちはイエスに向かって言った。「あなたの弟子たちもあなたがしているわざを見ることができるように、ここを去ってユダヤに行きなさい。 043 JOH 007 004 自分から公の場に出たいと思いながら、隠れた所で事を行なう者はありません。あなたがこれらの事を行なうのなら、自分を世に現わしなさい。」 043 JOH 007 005 兄弟たちもイエスを信じていなかったのである。 043 JOH 007 006 そこでイエスは彼らに言われた。「わたしの時はまだ来ていません。しかし、あなたがたの時はいつでも来ているのです。 043 JOH 007 007 世はあなたがたを憎むことはできません。しかしわたしを憎んでいます。わたしが、世について、その行ないが悪いことをあかしするからです。 043 JOH 007 008 あなたがたは祭りに上って行きなさい。わたしはこの祭りには行きません。わたしの時がまだ満ちていないからです。」 043 JOH 007 009 こう言って、イエスはガリラヤにとどまられた。 043 JOH 007 010 しかし、兄弟たちが祭りに上ったとき、イエスご自身も、公にではなく、いわば内密に上って行かれた。 043 JOH 007 011 ユダヤ人たちは、祭りのとき、「あの方はどこにおられるのか。」と言って、イエスを捜していた。 043 JOH 007 012 そして群衆の間には、イエスについて、いろいろとひそひそ話がされていた。「良い人だ。」と言う者もあり、「違う。群衆を惑わしているのだ。」と言う者もいた。 043 JOH 007 013 しかし、ユダヤ人たちを恐れたため、イエスについて公然と語る者はひとりもいなかった。 043 JOH 007 014 しかし、祭りもすでに中ごろになったとき、イエスは宮に上って教え始められた。 043 JOH 007 015 ユダヤ人たちは驚いて言った。「この人は正規に学んだことがないのに、どうして学問があるのか。」 043 JOH 007 016 そこでイエスは彼らに答えて言われた。「わたしの教えは、わたしのものではなく、わたしを遣わした方のものです。 043 JOH 007 017 だれでも神のみこころを行なおうと願うなら、その人には、この教えが神から出たものか、わたしが自分から語っているのかがわかります。 043 JOH 007 018 自分から語る者は、自分の栄光を求めます。しかし自分を遣わした方の栄光を求める者は真実であり、その人には不正がありません。 043 JOH 007 019 モーセがあなたがたに律法を与えたではありませんか。それなのに、あなたがたはだれも、律法を守っていません。あなたがたは、なぜわたしを殺そうとするのですか。」 043 JOH 007 020 群衆は答えた。「あなたは悪霊につかれています。だれがあなたを殺そうとしているのですか。」 043 JOH 007 021 イエスは彼らに答えて言われた。「わたしは一つのわざをしました。それであなたがたはみな驚いています。 043 JOH 007 022 モーセはこのためにあなたがたに割礼を与えました。――ただし、それはモーセから始まったのではなく、先祖たちからです。――それで、あなたがたは安息日にも人に割礼を施しています。 043 JOH 007 023 もし、人がモーセの律法が破られないようにと、安息日にも割礼を受けるのなら、わたしが安息日に人の全身をすこやかにしたからといって、何でわたしに腹を立てるのですか。 043 JOH 007 024 うわべによって人をさばかないで、正しいさばきをしなさい。」 043 JOH 007 025 そこで、エルサレムのある人たちが言った。「この人は、彼らが殺そうとしている人ではないか。 043 JOH 007 026 見なさい。この人は公然と語っているのに、彼らはこの人に何も言わない。議員たちは、この人がキリストであることを、ほんとうに知ったのだろうか。 043 JOH 007 027 けれども、私たちはこの人がどこから来たのか知っている。しかし、キリストが来られるとき、それが、どこからか知っている者はだれもいないのだ。」 043 JOH 007 028 イエスは、宮で教えておられるとき、大声をあげて言われた。「あなたがたはわたしを知っており、また、わたしがどこから来たかも知っています。しかし、わたしは自分で来たのではありません。わたしを遣わした方は真実です。あなたがたは、その方を知らないのです。 043 JOH 007 029 わたしはその方を知っています。なぜなら、わたしはその方から出たのであり、その方がわたしを遣わしたからです。」 043 JOH 007 030 そこで人々はイエスを捕えようとしたが、しかし、だれもイエスに手をかけた者はなかった。イエスの時が、まだ来ていなかったからである。 043 JOH 007 031 群衆のうちの多くの者がイエスを信じて言った。「キリストが来られても、この方がしているよりも多くのしるしを行なわれるだろうか。」 043 JOH 007 032 パリサイ人は、群衆がイエスについてこのようなことをひそひそと話しているのを耳にした。それで祭司長、パリサイ人たちは、イエスを捕えようとして、役人たちを遣わした。 043 JOH 007 033 そこでイエスは言われた。「まだしばらくの間、わたしはあなたがたといっしょにいて、それから、わたしを遣わした方のもとに行きます。 043 JOH 007 034 あなたがたはわたしを捜しますが、見いだすことはありません。また、わたしがいる所に、あなたがたは来ることができません。」 043 JOH 007 035 そこで、ユダヤ人たちは互いに言った。「私たちには、見つからないという。それならあの人はどこへ行こうとしているのか。まさかギリシヤ人の中に離散している人々のところへ行って、ギリシヤ人を教えるつもりではあるまい。 043 JOH 007 036 『あなたがたはわたしを捜すが、見いだすことはない。』また『わたしのいる所にあなたがたは来ることができない。』とあの人が言ったこのことばは、どういう意味だろうか。」 043 JOH 007 037 さて、祭りの終わりの大いなる日に、イエスは立って、大声で言われた。「だれでも渇いているなら、わたしのもとに来て飲みなさい。 043 JOH 007 038 わたしを信じる者は、聖書が言っているとおりに、その人の心の奥底から、生ける水の川が流れ出るようになる。」 043 JOH 007 039 これは、イエスを信じる者が後になってから受ける御霊のことを言われたのである。イエスはまだ栄光を受けておられなかったので、御霊はまだ注がれていなかったからである。 043 JOH 007 040 このことばを聞いて、群衆のうちのある者は、「あの方は、確かにあの預言者なのだ。」と言い、 043 JOH 007 041 またある者は、「この方はキリストだ。」と言った。またある者は言った。「まさか、キリストはガリラヤからは出ないだろう。 043 JOH 007 042 キリストはダビデの子孫から、またダビデがいたベツレヘムの村から出る、と聖書が言っているではないか。」 043 JOH 007 043 そこで、群衆の間にイエスのことで分裂が起こった。 043 JOH 007 044 その中にはイエスを捕えたいと思った者もいたが、イエスに手をかけた者はなかった。 043 JOH 007 045 それから役人たちは祭司長、パリサイ人たちのもとに帰って来た。彼らは役人たちに言った。「なぜあの人を連れて来なかったのか。」 043 JOH 007 046 役人たちは答えた。「あの人が話すように話した人は、いまだかつてありません。」 043 JOH 007 047 すると、パリサイ人が答えた。「おまえたちも惑わされているのか。 043 JOH 007 048 議員とかパリサイ人のうちで、だれかイエスを信じた者があったか。 043 JOH 007 049 だが、律法を知らないこの群衆は、のろわれている。」 043 JOH 007 050 彼らのうちのひとりで、イエスのもとに来たことのあるニコデモが彼らに言った。 043 JOH 007 051 「私たちの律法では、まずその人から直接聞き、その人が何をしているのか知ったうえでなければ、判決を下さないのではないか。」 043 JOH 007 052 彼らは答えて言った。「あなたもガリラヤの出身なのか。調べてみなさい。ガリラヤから預言者は起こらない。」 043 JOH 007 053 [そして人々はそれぞれ家に帰った。 043 JOH 008 001 イエスはオリーブ山に行かれた。 043 JOH 008 002 そして、朝早く、イエスはもう一度宮にはいられた。民衆はみな、みもとに寄って来た。イエスはすわって、彼らに教え始められた。 043 JOH 008 003 すると、律法学者とパリサイ人が、姦淫の場で捕えられたひとりの女を連れて来て、真中に置いてから、 043 JOH 008 004 イエスに言った。「先生。この女は姦淫の現場でつかまえられたのです。 043 JOH 008 005 モーセは律法の中で、こういう女を石打ちにするように命じています。ところで、あなたは何と言われますか。」 043 JOH 008 006 彼らはイエスをためしてこう言ったのである。それは、イエスを告発する理由を得るためであった。しかし、イエスは身をかがめて、指で地面に書いておられた。 043 JOH 008 007 けれども、彼らが問い続けてやめなかったので、イエスは身を起こして言われた。「あなたがたのうちで罪のない者が、最初に彼女に石を投げなさい。」 043 JOH 008 008 そしてイエスは、もう一度身をかがめて、地面に書かれた。 043 JOH 008 009 彼らはそれを聞くと、年長者たちから始めて、ひとりひとり出て行き、イエスがひとり残された。女はそのままそこにいた。 043 JOH 008 010 イエスは身を起こして、その女に言われた。「婦人よ。あの人たちは今どこにいますか。あなたを罪に定める者はなかったのですか。」 043 JOH 008 011 彼女は言った。「だれもいません。」そこで、イエスは言われた。「わたしもあなたを罪に定めない。行きなさい。今からは決して罪を犯してはなりません。」] 043 JOH 008 012 イエスはまた彼らに語って言われた。「わたしは、世の光です。わたしに従う者は、決してやみの中を歩むことがなく、いのちの光を持つのです。」 043 JOH 008 013 そこでパリサイ人はイエスに言った。「あなたは自分のことを自分で証言しています。だから、あなたの証言は真実ではありません。」 043 JOH 008 014 イエスは答えて、彼らに言われた。「もしこのわたしが自分のことを証言するなら、その証言は真実です。わたしは、わたしがどこから来たか、また、どこへ行くかを知っているからです。しかしあなたがたは、わたしがどこから来たのか、またどこへ行くのか知りません。 043 JOH 008 015 あなたがたは肉によってさばきます。わたしはだれをもさばきません。 043 JOH 008 016 しかし、もしわたしがさばくなら、そのさばきは正しいのです。なぜなら、わたしひとりではなく、わたしとわたしを遣わした方とがさばくのだからです。 043 JOH 008 017 あなたがたの律法にも、ふたりの証言は真実であると書かれています。 043 JOH 008 018 わたしが自分の証人であり、また、わたしを遣わした父が、わたしについてあかしされます。」 043 JOH 008 019 すると、彼らはイエスに言った。「あなたの父はどこにいるのですか。」イエスは答えられた。「あなたがたは、わたしをも、わたしの父をも知りません。もし、あなたがたがわたしを知っていたなら、わたしの父をも知っていたでしょう。」 043 JOH 008 020 イエスは宮で教えられたとき、献金箱のある所でこのことを話された。しかし、だれもイエスを捕えなかった。イエスの時がまだ来ていなかったからである。 043 JOH 008 021 イエスはまた彼らに言われた。「わたしは去って行きます。あなたがたはわたしを捜すけれども、自分の罪の中で死にます。わたしが行く所に、あなたがたは来ることができません。」 043 JOH 008 022 そこで、ユダヤ人たちは言った。「あの人は『わたしが行く所に、あなたがたは来ることができない。』と言うが、自殺するつもりなのか。」 043 JOH 008 023 それでイエスは彼らに言われた。「あなたがたが来たのは下からであり、わたしが来たのは上からです。あなたがたはこの世の者であり、わたしはこの世の者ではありません。 043 JOH 008 024 それでわたしは、あなたがたが自分の罪の中で死ぬと、あなたがたに言ったのです。もしあなたがたが、わたしのことを信じなければ、あなたがたは自分の罪の中で死ぬのです。」 043 JOH 008 025 そこで、彼らはイエスに言った。「あなたはだれですか。」イエスは言われた。「初めからわたしがあなたがたに話して来たことは何でしたか。 043 JOH 008 026 あなたがたについて言うべきこと、さばくべきことがたくさんあります。しかし、わたしを遣わした方は真実であって、わたしはその方から聞いたことをそのまま世に告げるのです。」 043 JOH 008 027 彼らは、イエスが父のことを語っておられたことを悟らなかった。 043 JOH 008 028 イエスは言われた。「あなたがたが人の子を上げてしまうと、その時、あなたがたは、わたしが何であるか、また、わたしがわたし自身からは何事もせず、ただ父がわたしに教えられたとおりに、これらのことを話していることを、知るようになります。 043 JOH 008 029 わたしを遣わした方はわたしとともにおられます。わたしをひとり残されることはありません。わたしがいつも、そのみこころにかなうことを行なうからです。」 043 JOH 008 030 イエスがこれらのことを話しておられると、多くの者がイエスを信じた。 043 JOH 008 031 そこでイエスは、その信じたユダヤ人たちに言われた。「もしあなたがたが、わたしのことばにとどまるなら、あなたがたはほんとうにわたしの弟子です。 043 JOH 008 032 そして、あなたがたは真理を知り、真理はあなたがたを自由にします。」 043 JOH 008 033 彼らはイエスに答えた。「私たちはアブラハムの子孫であって、決してだれの奴隷になったこともありません。あなたはどうして、『あなたがたは自由になる。』と言われるのですか。」 043 JOH 008 034 イエスは彼らに答えられた。「まことに、まことに、あなたがたに告げます。罪を行なっている者はみな、罪の奴隷です。 043 JOH 008 035 奴隷はいつまでも家にいるのではありません。しかし、息子はいつまでもいます。 043 JOH 008 036 ですから、もし子があなたがたを自由にするなら、あなたがたはほんとうに自由なのです。 043 JOH 008 037 わたしは、あなたがたがアブラハムの子孫であることを知っています。しかしあなたがたはわたしを殺そうとしています。わたしのことばが、あなたがたのうちにはいっていないからです。 043 JOH 008 038 わたしは父のもとで見たことを話しています。ところが、あなたがたは、あなたがたの父から示されたことを行なうのです。」 043 JOH 008 039 彼らは答えて言った。「私たちの父はアブラハムです。」イエスは彼らに言われた。「あなたがたがアブラハムの子どもなら、アブラハムのわざを行ないなさい。 043 JOH 008 040 ところが今あなたがたは、神から聞いた真理をあなたがたに話しているこのわたしを、殺そうとしています。アブラハムはそのようなことはしなかったのです。 043 JOH 008 041 あなたがたは、あなたがたの父のわざを行なっています。」彼らは言った。「私たちは不品行によって生まれた者ではありません。私たちにはひとりの父、神があります。」 043 JOH 008 042 イエスは言われた。「神がもしあなたがたの父であるなら、あなたがたはわたしを愛するはずです。なぜなら、わたしは神から出て来てここにいるからです。わたしは自分で来たのではなく、神がわたしを遣わしたのです。 043 JOH 008 043 あなたがたは、なぜわたしの話していることがわからないのでしょう。それは、あなたがたがわたしのことばに耳を傾けることができないからです。 043 JOH 008 044 あなたがたは、あなたがたの父である悪魔から出た者であって、あなたがたの父の欲望を成し遂げたいと願っているのです。悪魔は初めから人殺しであり、真理に立ってはいません。彼のうちには真理がないからです。彼が偽りを言うときは、自分にふさわしい話し方をしているのです。なぜなら彼は偽り者であり、また偽りの父であるからです。 043 JOH 008 045 しかし、このわたしは真理を話しているために、あなたがたはわたしを信じません。 043 JOH 008 046 あなたがたのうちだれか、わたしに罪があると責める者がいますか。わたしが真理を話しているなら、なぜわたしを信じないのですか。 043 JOH 008 047 神から出た者は、神のことばに聞き従います。ですから、あなたがたが聞き従わないのは、あなたがたが神から出た者でないからです。」 043 JOH 008 048 ユダヤ人たちは答えて、イエスに言った。「私たちが、あなたはサマリヤ人で、悪霊につかれていると言うのは当然ではありませんか。」 043 JOH 008 049 イエスは答えられた。「わたしは悪霊につかれてはいません。わたしは父を敬っています。しかしあなたがたは、わたしを卑しめています。 043 JOH 008 050 しかし、わたしはわたしの栄誉を求めません。それをお求めになり、さばきをなさる方がおられます。 043 JOH 008 051 まことに、まことに、あなたがたに告げます。だれでもわたしのことばを守るならば、その人は決して死を見ることがありません。」 043 JOH 008 052 ユダヤ人たちはイエスに言った。「あなたが悪霊につかれていることが、今こそわかりました。アブラハムは死に、預言者たちも死にました。しかし、あなたは、『だれでもわたしのことばを守るならば、その人は決して死を味わうことがない。』と言うのです。 043 JOH 008 053 あなたは、私たちの父アブラハムよりも偉大なのですか。そのアブラハムは死んだのです。預言者たちもまた死にました。あなたは、自分自身をだれだと言うのですか。」 043 JOH 008 054 イエスは答えられた。「わたしがもし自分自身に栄光を帰するなら、わたしの栄光はむなしいものです。わたしに栄光を与える方は、わたしの父です。この方のことを、あなたがたは『私たちの神である。』と言っています。 043 JOH 008 055 けれどもあなたがたはこの方を知ってはいません。しかし、わたしは知っています。もしわたしがこの方を知らないと言うなら、わたしはあなたがたと同様に偽り者となるでしょう。しかし、わたしはこの方を知っており、そのみことばを守っています。 043 JOH 008 056 あなたがたの父アブラハムは、わたしの日を見ることを思って大いに喜びました。彼はそれを見て、喜んだのです。」 043 JOH 008 057 そこで、ユダヤ人たちはイエスに向かって言った。「あなたはまだ五十歳になっていないのにアブラハムを見たのですか。」 043 JOH 008 058 イエスは彼らに言われた。「まことに、まことに、あなたがたに告げます。アブラハムが生まれる前から、わたしはいるのです。」 043 JOH 008 059 すると彼らは石を取ってイエスに投げつけようとした。しかし、イエスは身を隠して、宮から出て行かれた。 043 JOH 009 001 またイエスは道の途中で、生まれつきの盲人を見られた。 043 JOH 009 002 弟子たちは彼についてイエスに質問して言った。「先生。彼が盲目に生まれついたのは、だれが罪を犯したからですか。この人ですか。その両親ですか。」 043 JOH 009 003 イエスは答えられた。「この人が罪を犯したのでもなく、両親でもありません。神のわざがこの人に現われるためです。 043 JOH 009 004 わたしたちは、わたしを遣わした方のわざを、昼の間に行なわなければなりません。だれも働くことのできない夜が来ます。 043 JOH 009 005 わたしが世にいる間、わたしは世の光です。」 043 JOH 009 006 イエスは、こう言ってから、地面につばきをして、そのつばきで泥を作られた。そしてその泥を盲人の目に塗って言われた。 043 JOH 009 007 「行って、シロアム(訳して言えば、遣わされた者)の池で洗いなさい。」そこで、彼は行って、洗った。すると、見えるようになって、帰って行った。 043 JOH 009 008 近所の人たちや、前に彼がこじきをしていたのを見ていた人たちが言った。「これはすわって物ごいをしていた人ではないか。」 043 JOH 009 009 ほかの人は、「これはその人だ。」と言い、またほかの人は、「そうではない。ただその人に似ているだけだ。」と言った。当人は、「私がその人です。」と言った。 043 JOH 009 010 そこで、彼らは言った。「それでは、あなたの目はどのようにしてあいたのですか。」 043 JOH 009 011 彼は答えた。「イエスという方が、泥を作って、私の目に塗り、『シロアムの池に行って洗いなさい。』と私に言われました。それで、行って洗うと、見えるようになりました。」 043 JOH 009 012 また彼らは彼に言った。「その人はどこにいるのですか。」彼は「私は知りません。」と言った。 043 JOH 009 013 彼らは、前に盲目であったその人を、パリサイ人たちのところに連れて行った。 043 JOH 009 014 ところで、イエスが泥を作って彼の目をあけられたのは、安息日であった。 043 JOH 009 015 こういうわけでもう一度、パリサイ人も彼に、どのようにして見えるようになったかを尋ねた。彼は言った。「あの方が私の目に泥を塗ってくださって、私が洗いました。私はいま見えるのです。」 043 JOH 009 016 すると、パリサイ人の中のある人々が、「その人は神から出たのではない。安息日を守らないからだ。」と言った。しかし、ほかの者は言った。「罪人である者に、どうしてこのようなしるしを行なうことができよう。」そして、彼らの間に、分裂が起こった。 043 JOH 009 017 そこで彼らはもう一度、盲人に言った。「あの人が目をあけてくれたことで、あの人を何だと思っているのか。」彼は言った。「あの方は預言者です。」 043 JOH 009 018 しかしユダヤ人たちは、目が見えるようになったこの人について、彼が盲目であったが見えるようになったということを信ぜず、ついにその両親を呼び出して、 043 JOH 009 019 尋ねて言った。「この人はあなたがたの息子で、生まれつき盲目だったとあなたがたが言っている人ですか。それでは、どうしていま見えるのですか。」 043 JOH 009 020 そこで両親は答えた。「私たちは、これが私たちの息子で、生まれつき盲目だったことを知っています。 043 JOH 009 021 しかし、どのようにしていま見えるのかは知りません。また、だれがあれの目をあけたのか知りません。あれに聞いてください。あれはもうおとなです。自分のことは自分で話すでしょう。」 043 JOH 009 022 彼の両親がこう言ったのは、ユダヤ人たちを恐れたからであった。すでにユダヤ人たちは、イエスをキリストであると告白する者があれば、その者を会堂から追放すると決めていたからである。 043 JOH 009 023 そのために彼の両親は、「あれはもうおとなです。あれに聞いてください。」と言ったのである。 043 JOH 009 024 そこで彼らは、盲目であった人をもう一度呼び出して言った。「神に栄光を帰しなさい。私たちはあの人が罪人であることを知っているのだ。」 043 JOH 009 025 彼は答えた。「あの方が罪人かどうか、私は知りません。ただ一つのことだけ知っています。私は盲目であったのに、今は見えるということです。」 043 JOH 009 026 そこで彼らは言った。「あの人はおまえに何をしたのか。どのようにしてその目をあけたのか。」 043 JOH 009 027 彼は答えた。「もうお話ししたのですが、あなたがたは聞いてくれませんでした。なぜもう一度聞こうとするのです。あなたがたも、あの方の弟子になりたいのですか。」 043 JOH 009 028 彼らは彼をののしって言った。「おまえもあの者の弟子だ。しかし私たちはモーセの弟子だ。 043 JOH 009 029 私たちは、神がモーセにお話しになったことは知っている。しかし、あの者については、どこから来たのか知らないのだ。」 043 JOH 009 030 彼は答えて言った。「これは、驚きました。あなたがたは、あの方がどこから来られたのか、ご存じないと言う。しかし、あの方は私の目をおあけになったのです。 043 JOH 009 031 神は、罪人の言うことはお聞きになりません。しかし、だれでも神を敬い、そのみこころを行なうなら、神はその人の言うことを聞いてくださると、私たちは知っています。 043 JOH 009 032 盲目に生まれついた者の目をあけた者があるなどとは、昔から聞いたこともありません。 043 JOH 009 033 もしあの方が神から出ておられるのでなかったら、何もできないはずです。」 043 JOH 009 034 彼らは答えて言った。「おまえは全く罪の中に生まれていながら、私たちを教えるのか。」そして、彼を外に追い出した。 043 JOH 009 035 イエスは、彼らが彼を追放したことを聞き、彼を見つけ出して言われた。「あなたは人の子を信じますか。」 043 JOH 009 036 その人は答えた。「主よ。その方はどなたでしょうか。私がその方を信じることができますように。」 043 JOH 009 037 イエスは彼に言われた。「あなたはその方を見たのです。あなたと話しているのがそれです。」 043 JOH 009 038 彼は言った。「主よ。私は信じます。」そして彼はイエスを拝した。 043 JOH 009 039 そこで、イエスは言われた。「わたしはさばきのためにこの世に来ました。それは、目の見えない者が見えるようになり、見える者が盲目となるためです。」 043 JOH 009 040 パリサイ人の中でイエスとともにいた人々が、このことを聞いて、イエスに言った。「私たちも盲目なのですか。」 043 JOH 009 041 イエスは彼らに言われた。「もしあなたがたが盲目であったなら、あなたがたに罪はなかったでしょう。しかし、あなたがたは今、『私たちは目が見える。』と言っています。あなたがたの罪は残るのです。」 043 JOH 010 001 「まことに、まことに、あなたがたに告げます。羊の囲いに門からはいらないで、ほかの所を乗り越えて来る者は、盗人で強盗です。 043 JOH 010 002 しかし、門からはいる者は、その羊の牧者です。 043 JOH 010 003 門番は彼のために開き、羊はその声を聞き分けます。彼は自分の羊をその名で呼んで連れ出します。 043 JOH 010 004 彼は、自分の羊をみな引き出すと、その先頭に立って行きます。すると羊は、彼の声を知っているので、彼について行きます。 043 JOH 010 005 しかし、ほかの人には決してついて行きません。かえって、その人から逃げ出します。その人たちの声を知らないからです。」 043 JOH 010 006 イエスはこのたとえを彼らにお話しになったが、彼らは、イエスの話されたことが何のことかよくわからなかった。 043 JOH 010 007 そこで、イエスはまた言われた。「まことに、まことに、あなたがたに告げます。わたしは羊の門です。 043 JOH 010 008 わたしの前に来た者はみな、盗人で強盗です。羊は彼らの言うことを聞かなかったのです。 043 JOH 010 009 わたしは門です。だれでも、わたしを通ってはいるなら、救われます。また安らかに出入りし、牧草を見つけます。 043 JOH 010 010 盗人が来るのは、ただ盗んだり、殺したり、滅ぼしたりするだけのためです。わたしが来たのは、羊がいのちを得、またそれを豊かに持つためです。 043 JOH 010 011 わたしは、良い牧者です。良い牧者は羊のためにいのちを捨てます。 043 JOH 010 012 牧者でなく、また、羊の所有者でない雇い人は、狼が来るのを見ると、羊を置き去りにして、逃げて行きます。それで、狼は羊を奪い、また散らすのです。 043 JOH 010 013 それは、彼が雇い人であって、羊のことを心にかけていないからです。 043 JOH 010 014 わたしは良い牧者です。わたしはわたしのものを知っています。また、わたしのものは、わたしを知っています。 043 JOH 010 015 それは、父がわたしを知っておられ、わたしが父を知っているのと同様です。また、わたしは羊のためにわたしのいのちを捨てます。 043 JOH 010 016 わたしにはまた、この囲いに属さないほかの羊があります。わたしはそれをも導かなければなりません。彼らはわたしの声に聞き従い、一つの群れ、ひとりの牧者となるのです。 043 JOH 010 017 わたしが自分のいのちを再び得るために自分のいのちを捨てるからこそ、父はわたしを愛してくださいます。 043 JOH 010 018 だれも、わたしからいのちを取った者はいません。わたしが自分からいのちを捨てるのです。わたしには、それを捨てる権威があり、それをもう一度得る権威があります。わたしはこの命令をわたしの父から受けたのです。」 043 JOH 010 019 このみことばを聞いて、ユダヤ人たちの間にまた分裂が起こった。 043 JOH 010 020 彼らのうちの多くの者が言った。「あれは悪霊につかれて気が狂っている。どうしてあなたがたは、あの人の言うことに耳を貸すのか。」 043 JOH 010 021 ほかの者は言った。「これは悪霊につかれた者のことばではない。悪霊がどうして盲人の目をあけることができようか。」 043 JOH 010 022 そのころ、エルサレムで、宮きよめの祭りがあった。 043 JOH 010 023 時は冬であった。イエスは、宮の中で、ソロモンの廊を歩いておられた。 043 JOH 010 024 それでユダヤ人たちは、イエスを取り囲んで言った。「あなたは、いつまで私たちに気をもませるのですか。もしあなたがキリストなら、はっきりとそう言ってください。」 043 JOH 010 025 イエスは彼らに答えられた。「わたしは話しました。しかし、あなたがたは信じないのです。わたしが父の御名によって行なうわざが、わたしについて証言しています。 043 JOH 010 026 しかし、あなたがたは信じません。それは、あなたがたがわたしの羊に属していないからです。 043 JOH 010 027 わたしの羊はわたしの声を聞き分けます。またわたしは彼らを知っています。そして彼らはわたしについて来ます。 043 JOH 010 028 わたしは彼らに永遠のいのちを与えます。彼らは決して滅びることがなく、また、だれもわたしの手から彼らを奪い去るようなことはありません。 043 JOH 010 029 わたしに彼らをお与えになった父は、すべてにまさって偉大です。だれもわたしの父の御手から彼らを奪い去ることはできません。 043 JOH 010 030 わたしと父とは一つです。」 043 JOH 010 031 ユダヤ人たちは、イエスを石打ちにしようとして、また石を取り上げた。 043 JOH 010 032 イエスは彼らに答えられた。「わたしは、父から出た多くの良いわざを、あなたがたに示しました。そのうちのどのわざのために、わたしを石打ちにしようとするのですか。」 043 JOH 010 033 ユダヤ人たちはイエスに答えた。「良いわざのためにあなたを石打ちにするのではありません。冒涜のためです。あなたは人間でありながら、自分を神とするからです。」 043 JOH 010 034 イエスは彼らに答えられた。「あなたがたの律法に、『わたしは言った、あなたがたは神である。』と書いてはありませんか。 043 JOH 010 035 もし、神のことばを受けた人々を、神と呼んだとすれば、聖書は廃棄されるものではないから、 043 JOH 010 036 『わたしは神の子である。』とわたしが言ったからといって、どうしてあなたがたは、父が、聖別して世に遣わした者について、『神を冒涜している。』と言うのですか。 043 JOH 010 037 もしわたしが、わたしの父のみわざを行なっていないのなら、わたしを信じないでいなさい。 043 JOH 010 038 しかし、もし行なっているなら、たといわたしの言うことが信じられなくても、わざを信用しなさい。それは、父がわたしにおられ、わたしが父にいることを、あなたがたが悟り、また知るためです。」 043 JOH 010 039 そこで、彼らはまたイエスを捕えようとした。しかし、イエスは彼らの手からのがれられた。 043 JOH 010 040 そして、イエスはまたヨルダンを渡って、ヨハネが初めにバプテスマを授けていた所に行かれ、そこに滞在された。 043 JOH 010 041 多くの人々がイエスのところに来た。彼らは、「ヨハネは何一つしるしを行なわなかったけれども、彼がこの方について話したことはみな真実であった。」と言った。 043 JOH 010 042 そして、その地方で多くの人々がイエスを信じた。 043 JOH 011 001 さて、ある人が病気にかかっていた。ラザロといって、マリヤとその姉妹マルタとの村の出で、ベタニヤの人であった。 043 JOH 011 002 このマリヤは、主に香油を塗り、髪の毛でその足をぬぐったマリヤであって、彼女の兄弟ラザロが病んでいたのである。 043 JOH 011 003 そこで姉妹たちは、イエスのところに使いを送って、言った。「主よ。ご覧ください。あなたが愛しておられる者が病気です。」 043 JOH 011 004 イエスはこれを聞いて、言われた。「この病気は死で終わるだけのものではなく、神の栄光のためのものです。神の子がそれによって栄光を受けるためです。」 043 JOH 011 005 イエスはマルタとその姉妹とラザロとを愛しておられた。 043 JOH 011 006 そのようなわけで、イエスは、ラザロが病んでいることを聞かれたときも、そのおられた所になお二日とどまられた。 043 JOH 011 007 その後、イエスは、「もう一度ユダヤに行こう。」と弟子たちに言われた。 043 JOH 011 008 弟子たちはイエスに言った。「先生。たった今ユダヤ人たちが、あなたを石打ちにしようとしていたのに、またそこにおいでになるのですか。」 043 JOH 011 009 イエスは答えられた。「昼間は十二時間あるでしょう。だれでも、昼間歩けば、つまずくことはありません。この世の光を見ているからです。 043 JOH 011 010 しかし、夜歩けばつまずきます。光がその人のうちにないからです。」 043 JOH 011 011 イエスは、このように話され、それから、弟子たちに言われた。「わたしたちの友ラザロは眠っています。しかし、わたしは彼を眠りからさましに行くのです。」 043 JOH 011 012 そこで弟子たちはイエスに言った。「主よ。眠っているのなら、彼は助かるでしょう。」 043 JOH 011 013 しかし、イエスは、ラザロの死のことを言われたのである。だが、彼らは眠った状態のことを言われたものと思った。 043 JOH 011 014 そこで、イエスはそのとき、はっきりと彼らに言われた。「ラザロは死んだのです。 043 JOH 011 015 わたしは、あなたがたのため、すなわちあなたがたが信じるためには、わたしがその場に居合わせなかったことを喜んでいます。さあ、彼のところへ行きましょう。」 043 JOH 011 016 そこで、デドモと呼ばれるトマスが、弟子の仲間に言った。「私たちも行って、主といっしょに死のうではないか。」 043 JOH 011 017 それで、イエスがおいでになってみると、ラザロは墓の中に入れられて四日もたっていた。 043 JOH 011 018 ベタニヤはエルサレムに近く、三千メートルほど離れた所にあった。 043 JOH 011 019 大ぜいのユダヤ人がマルタとマリヤのところに来ていた。その兄弟のことについて慰めるためであった。 043 JOH 011 020 マルタは、イエスが来られたと聞いて迎えに行った。マリヤは家ですわっていた。 043 JOH 011 021 マルタはイエスに向かって言った。「主よ。もしここにいてくださったなら、私の兄弟は死ななかったでしょうに。 043 JOH 011 022 今でも私は知っております。あなたが神にお求めになることは何でも、神はあなたにお与えになります。」 043 JOH 011 023 イエスは彼女に言われた。「あなたの兄弟はよみがえります。」 043 JOH 011 024 マルタはイエスに言った。「私は、終わりの日のよみがえりの時に、彼がよみがえることを知っております。」 043 JOH 011 025 イエスは言われた。「わたしは、よみがえりです。いのちです。わたしを信じる者は、死んでも生きるのです。 043 JOH 011 026 また、生きていてわたしを信じる者は、決して死ぬことがありません。このことを信じますか。」 043 JOH 011 027 彼女はイエスに言った。「はい。主よ。私は、あなたが世に来られる神の子キリストである、と信じております。」 043 JOH 011 028 こう言ってから、帰って行って、姉妹マリヤを呼び、「先生が見えています。あなたを呼んでおられます。」とそっと言った。 043 JOH 011 029 マリヤはそれを聞くと、すぐ立ち上がって、イエスのところに行った。 043 JOH 011 030 さてイエスは、まだ村にはいらないで、マルタが出迎えた場所におられた。 043 JOH 011 031 マリヤとともに家にいて、彼女を慰めていたユダヤ人たちは、マリヤが急いで立ち上がって出て行くのを見て、マリヤが墓に泣きに行くのだろうと思い、彼女について行った。 043 JOH 011 032 マリヤは、イエスのおられた所に来て、お目にかかると、その足もとにひれ伏して言った。「主よ。もしここにいてくださったなら、私の兄弟は死ななかったでしょうに。」 043 JOH 011 033 そこでイエスは、彼女が泣き、彼女といっしょに来たユダヤ人たちも泣いているのをご覧になると、霊の憤りを覚え、心の動揺を感じて、 043 JOH 011 034 言われた。「彼をどこに置きましたか。」彼らはイエスに言った。「主よ。来てご覧ください。」 043 JOH 011 035 イエスは涙を流された。 043 JOH 011 036 そこで、ユダヤ人たちは言った。「ご覧なさい。主はどんなに彼を愛しておられたことか。」 043 JOH 011 037 しかし、「盲人の目をあけたこの方が、あの人を死なせないでおくことはできなかったのか。」と言う者もいた。 043 JOH 011 038 そこでイエスは、またも心のうちに憤りを覚えながら、墓に来られた。墓はほら穴であって、石がそこに立てかけてあった。 043 JOH 011 039 イエスは言われた。「その石を取りのけなさい。」死んだ人の姉妹マルタは言った。「主よ。もう臭くなっておりましょう。四日になりますから。」 043 JOH 011 040 イエスは彼女に言われた。「もしあなたが信じるなら、あなたは神の栄光を見る、とわたしは言ったではありませんか。」 043 JOH 011 041 そこで、彼らは石を取りのけた。イエスは目を上げて、言われた。「父よ。わたしの願いを聞いてくださったことを感謝いたします。 043 JOH 011 042 わたしは、あなたがいつもわたしの願いを聞いてくださることを知っておりました。しかしわたしは、回りにいる群衆のために、この人々が、あなたがわたしをお遣わしになったことを信じるようになるために、こう申したのです。」 043 JOH 011 043 そして、イエスはそう言われると、大声で叫ばれた。「ラザロよ。出て来なさい。」 043 JOH 011 044 すると、死んでいた人が、手と足を長い布で巻かれたままで出て来た。彼の顔は布切れで包まれていた。イエスは彼らに言われた。「ほどいてやって、帰らせなさい。」 043 JOH 011 045 そこで、マリヤのところに来ていて、イエスがなさったことを見た多くのユダヤ人が、イエスを信じた。 043 JOH 011 046 しかし、そのうちの幾人かは、パリサイ人たちのところへ行って、イエスのなさったことを告げた。 043 JOH 011 047 そこで、祭司長とパリサイ人たちは議会を召集して言った。「われわれは何をしているのか。あの人が多くのしるしを行なっているというのに。 043 JOH 011 048 もしあの人をこのまま放っておくなら、すべての人があの人を信じるようになる。そうなると、ローマ人がやって来て、われわれの土地も国民も奪い取ることになる。」 043 JOH 011 049 しかし、彼らのうちのひとりで、その年の大祭司であったカヤパが、彼らに言った。「あなたがたは全然何もわかっていない。 043 JOH 011 050 ひとりの人が民の代わりに死んで、国民全体が滅びないほうが、あなたがたにとって得策だということも、考えに入れていない。」 043 JOH 011 051 ところで、このことは彼が自分から言ったのではなくて、その年の大祭司であったので、イエスが国民のために死のうとしておられること、 043 JOH 011 052 また、ただ国民のためだけでなく、散らされている神の子たちを一つに集めるためにも死のうとしておられることを、預言したのである。 043 JOH 011 053 そこで彼らは、その日から、イエスを殺すための計画を立てた。 043 JOH 011 054 そのために、イエスはもはやユダヤ人たちの間を公然と歩くことをしないで、そこから荒野に近い地方に去り、エフライムという町にはいり、弟子たちとともにそこに滞在された。 043 JOH 011 055 さて、ユダヤ人の過越の祭りが間近であった。多くの人々が、身を清めるために、過越の祭りの前にいなかからエルサレムに上って来た。 043 JOH 011 056 彼らはイエスを捜し、宮の中に立って、互いに言った。「あなたがたはどう思いますか。あの方は祭りに来られることはないでしょうか。」 043 JOH 011 057 さて、祭司長、パリサイ人たちはイエスを捕えるために、イエスがどこにいるかを知っている者は届け出なければならないという命令を出していた。 043 JOH 012 001 イエスは過越の祭りの六日前にベタニヤに来られた。そこには、イエスが死人の中からよみがえらせたラザロがいた。 043 JOH 012 002 人々はイエスのために、そこに晩餐を用意した。そしてマルタは給仕していた。ラザロは、イエスとともに食卓に着いている人々の中に混じっていた。 043 JOH 012 003 マリヤは、非常に高価な、純粋なナルドの香油三百グラムを取って、イエスの足に塗り、彼女の髪の毛でイエスの足をぬぐった。家は香油のかおりでいっぱいになった。 043 JOH 012 004 ところが、弟子のひとりで、イエスを裏切ろうとしているイスカリオテ・ユダが言った。 043 JOH 012 005 「なぜ、この香油を三百デナリに売って、貧しい人々に施さなかったのか。」 043 JOH 012 006 しかしこう言ったのは、彼が貧しい人々のことを心にかけていたからではなく、彼は盗人であって、金入れを預かっていたが、その中に収められたものを、いつも盗んでいたからである。 043 JOH 012 007 イエスは言われた。「そのままにしておきなさい。マリヤはわたしの葬りの日のために、それを取っておこうとしていたのです。 043 JOH 012 008 あなたがたは、貧しい人々とはいつもいっしょにいるが、わたしとはいつもいっしょにいるわけではないからです。」 043 JOH 012 009 大ぜいのユダヤ人の群れが、イエスがそこにおられることを聞いて、やって来た。それはただイエスのためだけではなく、イエスによって死人の中からよみがえったラザロを見るためでもあった。 043 JOH 012 010 祭司長たちはラザロも殺そうと相談した。 043 JOH 012 011 それは、彼のために多くのユダヤ人が去って行き、イエスを信じるようになったからである。 043 JOH 012 012 その翌日、祭りに来ていた大ぜいの人の群れは、イエスがエルサレムに来ようとしておられると聞いて、 043 JOH 012 013 しゅろの木の枝を取って、出迎えのために出て行った。そして大声で叫んだ。 「ホサナ。 祝福あれ。 主の御名によって来られる方に。 イスラエルの王に。」 043 JOH 012 014 イエスは、ろばの子を見つけて、それに乗られた。それは次のように書かれているとおりであった。 043 JOH 012 015 「恐れるな。シオンの娘。 見よ。あなたの王が来られる。 ろばの子に乗って。」 043 JOH 012 016 初め、弟子たちにはこれらのことがわからなかった。しかし、イエスが栄光を受けられてから、これらのことがイエスについて書かれたことであって、人々がそのとおりにイエスに対して行なったことを、彼らは思い出した。 043 JOH 012 017 イエスがラザロを墓から呼び出し、死人の中からよみがえらせたときにイエスといっしょにいた大ぜいの人々は、そのことのあかしをした。 043 JOH 012 018 そのために群衆もイエスを出迎えた。イエスがこれらのしるしを行なわれたことを聞いたからである。 043 JOH 012 019 そこで、パリサイ人たちは互いに言った。「どうしたのだ。何一つうまくいっていない。見なさい。世はあげてあの人のあとについて行ってしまった。」 043 JOH 012 020 さて、祭りのとき礼拝のために上って来た人々の中に、ギリシヤ人が幾人かいた。 043 JOH 012 021 この人たちがガリラヤのベツサイダの人であるピリポのところに来て、「先生。イエスにお目にかかりたいのですが。」と言って頼んだ。 043 JOH 012 022 ピリポは行ってアンデレに話し、アンデレとピリポとは行って、イエスに話した。 043 JOH 012 023 すると、イエスは彼らに答えて言われた。「人の子が栄光を受けるその時が来ました。 043 JOH 012 024 まことに、まことに、あなたがたに告げます。一粒の麦がもし地に落ちて死ななければ、それは一つのままです。しかし、もし死ねば、豊かな実を結びます。 043 JOH 012 025 自分のいのちを愛する者はそれを失い、この世でそのいのちを憎む者はそれを保って永遠のいのちに至るのです。 043 JOH 012 026 わたしに仕えるというのなら、その人はわたしについて来なさい。わたしがいる所に、わたしに仕える者もいるべきです。もしわたしに仕えるなら、父はその人に報いてくださいます。 043 JOH 012 027 今わたしの心は騒いでいる。何と言おうか。『父よ。この時からわたしをお救いください。』と言おうか。いや。このためにこそ、わたしはこの時に至ったのです。 043 JOH 012 028 父よ。御名の栄光を現わしてください。」そのとき、天から声が聞こえた。「わたしは栄光をすでに現わしたし、またもう一度栄光を現わそう。」 043 JOH 012 029 そばに立っていてそれを聞いた群衆は、雷が鳴ったのだと言った。ほかの人々は、「御使いがあの方に話したのだ。」と言った。 043 JOH 012 030 イエスは答えて言われた。「この声が聞こえたのは、わたしのためにではなくて、あなたがたのためにです。 043 JOH 012 031 今がこの世のさばきです。今、この世を支配する者は追い出されるのです。 043 JOH 012 032 わたしが地上から上げられるなら、わたしはすべての人を自分のところに引き寄せます。」 043 JOH 012 033 イエスは自分がどのような死に方で死ぬかを示して、このことを言われたのである。 043 JOH 012 034 そこで、群衆はイエスに答えた。「私たちは、律法で、キリストはいつまでも生きておられると聞きましたが、どうしてあなたは、人の子は上げられなければならない、と言われるのですか。その人の子とはだれですか。」 043 JOH 012 035 イエスは彼らに言われた。「まだしばらくの間、光はあなたがたの間にあります。やみがあなたがたを襲うことのないように、あなたがたは、光がある間に歩きなさい。やみの中を歩く者は、自分がどこに行くのかわかりません。 043 JOH 012 036 あなたがたに光がある間に、光の子どもとなるために、光を信じなさい。」 イエスは、これらのことをお話しになると、立ち去って、彼らから身を隠された。 043 JOH 012 037 イエスが彼らの目の前でこのように多くのしるしを行なわれたのに、彼らはイエスを信じなかった。 043 JOH 012 038 それは、「主よ。だれが私たちの知らせを信じましたか。また主の御腕はだれに現わされましたか。」と言った預言者イザヤのことばが成就するためであった。 043 JOH 012 039 彼らが信じることができなかったのは、イザヤがまた次のように言ったからである。 043 JOH 012 040 「主は彼らの目を盲目にされた。また、彼らの心をかたくなにされた。それは、彼らが目で見、心で理解し、回心し、そしてわたしが彼らをいやす、ということがないためである。」 043 JOH 012 041 イザヤがこう言ったのは、イザヤがイエスの栄光を見たからで、イエスをさして言ったのである。 043 JOH 012 042 しかし、それにもかかわらず、指導者たちの中にもイエスを信じる者がたくさんいた。ただ、パリサイ人たちをはばかって、告白はしなかった。会堂から追放されないためであった。 043 JOH 012 043 彼らは、神からの栄誉よりも、人の栄誉を愛したからである。 043 JOH 012 044 また、イエスは大声で言われた。「わたしを信じる者は、わたしではなく、わたしを遣わした方を信じるのです。 043 JOH 012 045 また、わたしを見る者は、わたしを遣わした方を見るのです。 043 JOH 012 046 わたしは光として世に来ました。わたしを信じる者が、だれもやみの中にとどまることのないためです。 043 JOH 012 047 だれかが、わたしの言うことを聞いてそれを守らなくても、わたしはその人をさばきません。わたしは世をさばくために来たのではなく、世を救うために来たからです。 043 JOH 012 048 わたしを拒み、わたしの言うことを受け入れない者には、その人をさばくものがあります。わたしが話したことばが、終わりの日にその人をさばくのです。 043 JOH 012 049 わたしは、自分から話したのではありません。わたしを遣わした父ご自身が、わたしが何を言い、何を話すべきかをお命じになりました。 043 JOH 012 050 わたしは、父の命令が永遠のいのちであることを知っています。それゆえ、わたしが話していることは、父がわたしに言われたとおりを、そのままに話しているのです。」 043 JOH 013 001 さて、過越の祭りの前に、この世を去って父のみもとに行くべき自分の時が来たことを知られたので、世にいる自分のものを愛されたイエスは、その愛を残るところなく示された。 043 JOH 013 002 夕食の間のことであった。悪魔はすでにシモンの子イスカリオテ・ユダの心に、イエスを売ろうとする思いを入れていたが、 043 JOH 013 003 イエスは、父が万物を自分の手に渡されたことと、ご自分が父から来て父に行くことを知られ、 043 JOH 013 004 夕食の席から立ち上がって、上着を脱ぎ、手ぬぐいを取って腰にまとわれた。 043 JOH 013 005 それから、たらいに水を入れ、弟子たちの足を洗って、腰にまとっておられる手ぬぐいで、ふき始められた。 043 JOH 013 006 こうして、イエスはシモン・ペテロのところに来られた。ペテロはイエスに言った。「主よ。あなたが、私の足を洗ってくださるのですか。」 043 JOH 013 007 イエスは答えて言われた。「わたしがしていることは、今はあなたにはわからないが、あとでわかるようになります。」 043 JOH 013 008 ペテロはイエスに言った。「決して私の足をお洗いにならないでください。」イエスは答えられた。「もしわたしが洗わなければ、あなたはわたしと何の関係もありません。」 043 JOH 013 009 シモン・ペテロは言った。「主よ。私の足だけでなく、手も頭も洗ってください。」 043 JOH 013 010 イエスは彼に言われた。「水浴した者は、足以外は洗う必要がありません。全身きよいのです。あなたがたはきよいのですが、みながそうではありません。」 043 JOH 013 011 イエスはご自分を裏切る者を知っておられた。それで、「みながきよいのではない。」と言われたのである。 043 JOH 013 012 イエスは、彼らの足を洗い終わり、上着を着けて、再び席に着いて、彼らに言われた。「わたしがあなたがたに何をしたか、わかりますか。 043 JOH 013 013 あなたがたはわたしを先生とも主とも呼んでいます。あなたがたがそう言うのはよい。わたしはそのような者だからです。 043 JOH 013 014 それで、主であり師であるこのわたしが、あなたがたの足を洗ったのですから、あなたがたもまた互いに足を洗い合うべきです。 043 JOH 013 015 わたしがあなたがたにしたとおりに、あなたがたもするように、わたしはあなたがたに模範を示したのです。 043 JOH 013 016 まことに、まことに、あなたがたに告げます。しもべはその主人にまさらず、遣わされた者は遣わした者にまさるものではありません。 043 JOH 013 017 あなたがたがこれらのことを知っているのなら、それを行なうときに、あなたがたは祝福されるのです。 043 JOH 013 018 わたしは、あなたがた全部の者について言っているのではありません。わたしは、わたしが選んだ者を知っています。しかし聖書に『わたしのパンを食べている者が、わたしに向かってかかとを上げた。』と書いてあることは成就するのです。 043 JOH 013 019 わたしは、そのことが起こる前に、今あなたがたに話しておきます。そのことが起こったときに、わたしがその人であることをあなたがたが信じるためです。 043 JOH 013 020 まことに、まことに、あなたがたに告げます。わたしの遣わす者を受け入れる者は、わたしを受け入れるのです。わたしを受け入れる者は、わたしを遣わした方を受け入れるのです。」 043 JOH 013 021 イエスは、これらのことを話されたとき、霊の激動を感じ、あかしして言われた。「まことに、まことに、あなたがたに告げます。あなたがたのうちのひとりが、わたしを裏切ります。」 043 JOH 013 022 弟子たちは、だれのことを言われたのか、わからずに当惑して、互いに顔を見合わせていた。 043 JOH 013 023 弟子のひとりで、イエスが愛しておられた者が、イエスの右側で席に着いていた。 043 JOH 013 024 そこで、シモン・ペテロが彼に合図をして言った。「だれのことを言っておられるのか、知らせなさい。」 043 JOH 013 025 その弟子は、イエスの右側で席に着いたまま、イエスに言った。「主よ。それはだれですか。」 043 JOH 013 026 イエスは答えられた。「それはわたしがパン切れを浸して与える者です。」それからイエスは、パン切れを浸し、取って、イスカリオテ・シモンの子ユダにお与えになった。 043 JOH 013 027 彼がパン切れを受けると、そのとき、サタンが彼にはいった。そこで、イエスは彼に言われた。「あなたがしようとしていることを、今すぐしなさい。」 043 JOH 013 028 席に着いている者で、イエスが何のためにユダにそう言われたのか知っている者は、だれもなかった。 043 JOH 013 029 ユダが金入れを持っていたので、イエスが彼に、「祭りのために入用の物を買え。」と言われたのだとか、または、貧しい人々に何か施しをするように言われたのだとか思った者も中にはいた。 043 JOH 013 030 ユダは、パン切れを受けるとすぐ、外に出て行った。すでに夜であった。 043 JOH 013 031 ユダが出て行ったとき、イエスは言われた。「今こそ人の子は栄光を受けました。また、神は人の子によって栄光をお受けになりました。 043 JOH 013 032 神が、人の子によって栄光をお受けになったのであれば、神も、ご自身によって人の子に栄光をお与えになります。しかも、ただちにお与えになります。 043 JOH 013 033 子どもたちよ。わたしはいましばらくの間、あなたがたといっしょにいます。あなたがたはわたしを捜すでしょう。そして、『わたしが行く所へは、あなたがたは来ることができない。』とわたしがユダヤ人たちに言ったように、今はあなたがたにも言うのです。 043 JOH 013 034 あなたがたに新しい戒めを与えましょう。あなたがたは互いに愛し合いなさい。わたしがあなたがたを愛したように、そのように、あなたがたも互いに愛し合いなさい。 043 JOH 013 035 もしあなたがたの互いの間に愛があるなら、それによって、あなたがたがわたしの弟子であることを、すべての人が認めるのです。」 043 JOH 013 036 シモン・ペテロがイエスに言った。「主よ。どこにおいでになるのですか。」イエスは答えられた。「わたしが行く所に、あなたは今はついて来ることができません。しかし後にはついて来ます。」 043 JOH 013 037 ペテロはイエスに言った。「主よ。なぜ今はあなたについて行くことができないのですか。あなたのためにはいのちも捨てます。」 043 JOH 013 038 イエスは答えられた。「わたしのためにはいのちも捨てる、と言うのですか。まことに、まことに、あなたに告げます。鶏が鳴くまでに、あなたは三度わたしを知らないと言います。」 043 JOH 014 001 「あなたがたは心を騒がしてはなりません。神を信じ、またわたしを信じなさい。 043 JOH 014 002 わたしの父の家には、住まいがたくさんあります。もしなかったら、あなたがたに言っておいたでしょう。あなたがたのために、わたしは場所を備えに行くのです。 043 JOH 014 003 わたしが行って、あなたがたに場所を備えたら、また来て、あなたがたをわたしのもとに迎えます。わたしのいる所に、あなたがたをもおらせるためです。 043 JOH 014 004 わたしの行く道はあなたがたも知っています。」 043 JOH 014 005 トマスはイエスに言った。「主よ。どこへいらっしゃるのか、私たちにはわかりません。どうして、その道が私たちにわかりましょう。」 043 JOH 014 006 イエスは彼に言われた。「わたしが道であり、真理であり、いのちなのです。わたしを通してでなければ、だれひとり父のみもとに来ることはありません。 043 JOH 014 007 あなたがたは、もしわたしを知っていたなら、父をも知っていたはずです。しかし、今や、あなたがたは父を知っており、また、すでに父を見たのです。」 043 JOH 014 008 ピリポはイエスに言った。「主よ。私たちに父を見せてください。そうすれば満足します。」 043 JOH 014 009 イエスは彼に言われた。「ピリポ。こんなに長い間あなたがたといっしょにいるのに、あなたはわたしを知らなかったのですか。わたしを見た者は、父を見たのです。どうしてあなたは、『私たちに父を見せてください。』と言うのですか。 043 JOH 014 010 わたしが父におり、父がわたしにおられることを、あなたは信じないのですか。わたしがあなたがたに言うことばは、わたしが自分から話しているのではありません。わたしのうちにおられる父が、ご自分のわざをしておられるのです。 043 JOH 014 011 わたしが父におり、父がわたしにおられるとわたしが言うのを信じなさい。さもなければ、わざによって信じなさい。 043 JOH 014 012 まことに、まことに、あなたがたに告げます。わたしを信じる者は、わたしの行なうわざを行ない、またそれよりもさらに大きなわざを行ないます。わたしが父のもとに行くからです。 043 JOH 014 013 またわたしは、あなたがたがわたしの名によって求めることは何でも、それをしましょう。父が子によって栄光をお受けになるためです。 043 JOH 014 014 あなたがたが、わたしの名によって何かをわたしに求めるなら、わたしはそれをしましょう。 043 JOH 014 015 もしあなたがたがわたしを愛するなら、あなたがたはわたしの戒めを守るはずです。 043 JOH 014 016 わたしは父にお願いします。そうすれば、父はもうひとりの助け主をあなたがたにお与えになります。その助け主がいつまでもあなたがたと、ともにおられるためにです。 043 JOH 014 017 その方は、真理の御霊です。世はその方を受け入れることができません。世はその方を見もせず、知りもしないからです。しかし、あなたがたはその方を知っています。その方はあなたがたとともに住み、あなたがたのうちにおられるからです。 043 JOH 014 018 わたしは、あなたがたを捨てて孤児にはしません。わたしは、あなたがたのところに戻って来るのです。 043 JOH 014 019 いましばらくで世はもうわたしを見なくなります。しかし、あなたがたはわたしを見ます。わたしが生きるので、あなたがたも生きるからです。 043 JOH 014 020 その日には、わたしが父におり、あなたがたがわたしにおり、わたしがあなたがたにおることが、あなたがたにわかります。 043 JOH 014 021 わたしの戒めを保ち、それを守る人は、わたしを愛する人です。わたしを愛する人はわたしの父に愛され、わたしもその人を愛し、わたし自身を彼に現わします。」 043 JOH 014 022 イスカリオテでないユダがイエスに言った。「主よ。あなたは、私たちにはご自分を現わそうとしながら、世には現わそうとなさらないのは、どういうわけですか。」 043 JOH 014 023 イエスは彼に答えられた。「だれでもわたしを愛する人は、わたしのことばを守ります。そうすれば、わたしの父はその人を愛し、わたしたちはその人のところに来て、その人とともに住みます。 043 JOH 014 024 わたしを愛さない人は、わたしのことばを守りません。あなたがたが聞いていることばは、わたしのものではなく、わたしを遣わした父のことばなのです。 043 JOH 014 025 このことをわたしは、あなたがたといっしょにいる間に、あなたがたに話しました。 043 JOH 014 026 しかし、助け主、すなわち、父がわたしの名によってお遣わしになる聖霊は、あなたがたにすべてのことを教え、また、わたしがあなたがたに話したすべてのことを思い起こさせてくださいます。 043 JOH 014 027 わたしは、あなたがたに平安を残します。わたしは、あなたがたにわたしの平安を与えます。わたしがあなたがたに与えるのは、世が与えるのとは違います。あなたがたは心を騒がしてはなりません。恐れてはなりません。 043 JOH 014 028 『わたしは去って行き、また、あなたがたのところに来る。』とわたしが言ったのを、あなたがたは聞きました。あなたがたは、もしわたしを愛しているなら、わたしが父のもとに行くことを喜ぶはずです。父はわたしよりも偉大な方だからです。 043 JOH 014 029 そして今わたしは、そのことの起こる前にあなたがたに話しました。それが起こったときに、あなたがたが信じるためです。 043 JOH 014 030 わたしは、もう、あなたがたに多くは話すまい。この世を支配する者が来るからです。彼はわたしに対して何もすることはできません。 043 JOH 014 031 しかしそのことは、わたしが父を愛しており、父の命じられたとおりに行なっていることを世が知るためです。立ちなさい。さあ、ここから行くのです。 043 JOH 015 001 わたしはまことのぶどうの木であり、わたしの父は農夫です。 043 JOH 015 002 わたしの枝で実を結ばないものはみな、父がそれを取り除き、実を結ぶものはみな、もっと多く実を結ぶために、刈り込みをなさいます。 043 JOH 015 003 あなたがたは、わたしがあなたがたに話したことばによって、もう刈り込みが済むんだのです。 043 JOH 015 004 わたしにとどまりなさい。わたしも、あなたがたの中にとどまります。枝がぶどうの木についていなければ、枝だけでは実を結ぶことができません。同様にあなたがたも、わたしにとどまっていなければ、実を結ぶことはできません。 043 JOH 015 005 わたしはぶどうの木で、あなたがたは枝です。人がわたしにとどまり、わたしもその人の中にとどまっているなら、そういう人は多くの実を結びます。わたしを離れては、あなたがたは何もすることができないからです。 043 JOH 015 006 だれでも、もしわたしにとどまっていなければ、枝のように投げ捨てられて、枯れます。人々はそれを寄せ集めて火に投げ込むので、それは燃えてしまいます。 043 JOH 015 007 あなたがたがわたしにとどまり、わたしのことばがあなたがたにとどまるなら、何でもあなたがたのほしいものを求めなさい。そうすれば、あなたがたのためにそれがかなえられます。 043 JOH 015 008 あなたがたが多くの実を結び、わたしの弟子となることによって、わたしの父は栄光をお受けになるのです。 043 JOH 015 009 父がわたしを愛されたように、わたしもあなたがたを愛しました。わたしの愛の中にとどまりなさい。 043 JOH 015 010 もし、あなたがたがわたしの戒めを守るなら、あなたがたはわたしの愛にとどまるのです。それは、わたしがわたしの父の戒めを守って、わたしの父の愛の中にとどまっているのと同じです。 043 JOH 015 011 わたしがこれらのことをあなたがたに話したのは、わたしの喜びがあなたがたのうちにあり、あなたがたの喜びが満たされるためです。 043 JOH 015 012 わたしがあなたがたを愛したように、あなたがたも互いに愛し合うこと、これがわたしの戒めです。 043 JOH 015 013 人がその友のためにいのちを捨てるという、これよりも大きな愛はだれも持っていません。 043 JOH 015 014 わたしがあなたがたに命じることをあなたがたが行なうなら、あなたがたはわたしの友です。 043 JOH 015 015 わたしはもはや、あなたがたをしもべとは呼びません。しもべは主人のすることを知らないからです。わたしはあなたがたを友と呼びました。なぜなら父から聞いたことをみな、あなたがたに知らせたからです。 043 JOH 015 016 あなたがたがわたしを選んだのではありません。わたしがあなたがたを選び、あなたがたを任命したのです。それは、あなたがたが行って実を結び、そのあなたがたの実が残るためであり、また、あなたがたがわたしの名によって父に求めるものは何でも、父があなたがたにお与えになるためです。 043 JOH 015 017 あなたがたが互いに愛し合うこと、これが、わたしのあなたがたに与える戒めです。 043 JOH 015 018 もし世があなたがたを憎むなら、世はあなたがたよりもわたしを先に憎んだことを知っておきなさい。 043 JOH 015 019 もしあなたがたがこの世のものであったなら、世は自分のものを愛したでしょう。しかし、あなたがたは世のものではなく、かえってわたしが世からあなたがたを選び出したのです。それで世はあなたがたを憎むのです。 043 JOH 015 020 しもべはその主人にまさるものではない、とわたしがあなたがたに言ったことばを覚えておきなさい。もし人々がわたしを迫害したなら、あなたがたをも迫害します。もし彼らがわたしのことばを守ったなら、あなたがたのことばをも守ります。 043 JOH 015 021 しかし彼らは、わたしの名のゆえに、あなたがたに対してそれらのことをみな行ないます。それは彼らがわたしを遣わした方を知らないからです。 043 JOH 015 022 もしわたしが来て彼らに話さなかったら、彼らに罪はなかったでしょう。しかし今では、その罪について弁解の余地はありません。 043 JOH 015 023 わたしを憎んでいる者は、わたしの父をも憎んでいるのです。 043 JOH 015 024 もしわたしが、ほかのだれも行なったことのないわざを、彼らの間で行なわなかったのなら、彼らには罪がなかったでしょう。しかし今、彼らはわたしをも、わたしの父をも見て、そのうえで憎んだのです。 043 JOH 015 025 これは、『彼らは理由なしにわたしを憎んだ。』と彼らの律法に書かれていることばが成就するためです。 043 JOH 015 026 わたしが父のもとから遣わす助け主、すなわち父から出る真理の御霊が来るとき、その御霊がわたしについてあかしします。 043 JOH 015 027 あなたがたもあかしするのです。初めからわたしといっしょにいたからです。 043 JOH 016 001 これらのことをあなたがたに話したのは、あなたがたがつまずくことのないためです。 043 JOH 016 002 人々はあなたがたを会堂から追放するでしょう。事実、あなたがたを殺す者がみな、そうすることで自分は神に奉仕しているのだと思う時が来ます。 043 JOH 016 003 彼らがこういうことを行なうのは、父をもわたしをも知らないからです。 043 JOH 016 004 しかし、わたしがこれらのことをあなたがたに話したのは、その時が来れば、わたしがそれについて話したことを、あなたがたが思い出すためです。わたしが初めからこれらのことをあなたがたに話さなかったのは、わたしがあなたがたといっしょにいたからです。 043 JOH 016 005 しかし今わたしは、わたしを遣わした方のもとに行こうとしています。しかし、あなたがたのうちには、ひとりとして、どこに行くのですかと尋ねる者がありません。 043 JOH 016 006 かえって、わたしがこれらのことをあなたがたに話したために、あなたがたの心は悲しみでいっぱいになっています。 043 JOH 016 007 しかし、わたしは真実を言います。わたしが去って行くことは、あなたがたにとって益なのです。それは、もしわたしが去って行かなければ、助け主があなたがたのところに来ないからです。しかし、もし行けば、わたしは助け主をあなたがたのところに遣わします。 043 JOH 016 008 その方が来ると、罪について、義について、さばきについて、世にその誤りを認めさせます。 043 JOH 016 009 罪についてというのは、彼らがわたしを信じないからです。 043 JOH 016 010 また、義についてとは、わたしが父のもとに行き、あなたがたがもはやわたしを見なくなるからです。 043 JOH 016 011 さばきについてとは、この世を支配する者がさばかれたからです。 043 JOH 016 012 わたしには、あなたがたに話すことがまだたくさんありますが、今あなたがたはそれに耐える力がありません。 043 JOH 016 013 しかし、その方、すなわち真理の御霊が来ると、あなたがたをすべての真理に導き入れます。御霊は自分から語るのではなく、聞くままを話し、また、やがて起ころうとしていることをあなたがたに示すからです。 043 JOH 016 014 御霊はわたしの栄光を現わします。わたしのものを受けて、あなたがたに知らせるからです。 043 JOH 016 015 父が持っておられるものはみな、わたしのものです。ですからわたしは、御霊がわたしのものを受けて、あなたがたに知らせると言ったのです。 043 JOH 016 016 しばらくするとあなたがたは、もはやわたしを見なくなります。しかし、またしばらくするとわたしを見ます。」 043 JOH 016 017 そこで、弟子たちのうちのある者は互いに言った。「『しばらくするとあなたがたは、わたしを見なくなる。しかし、またしばらくするとわたしを見る。』また『わたしは父のもとに行くからだ。』と主が言われるのは、どういうことなのだろう。」 043 JOH 016 018 そこで、彼らは「しばらくすると、と主が言われるのは何のことだろうか。私たちには主の言われることがわからない。」と言った。 043 JOH 016 019 イエスは、彼らが質問したがっていることを知って、彼らに言われた。「『しばらくするとあなたがたは、わたしを見なくなる。しかし、またしばらくするとわたしを見る。』とわたしが言ったことについて、互いに論じ合っているのですか。 043 JOH 016 020 まことに、まことに、あなたがたに告げます。あなたがたは泣き、嘆き悲しむが、世は喜ぶのです。あなたがたは悲しむが、しかし、あなたがたの悲しみは喜びに変わります。 043 JOH 016 021 女が子を産むときには、その時が来たので苦しみます。しかし、子を産んでしまうと、ひとりの人が世に生まれた喜びのために、もはやその激しい苦痛を忘れてしまいます。 043 JOH 016 022 あなたがたにも、今は悲しみがあるが、わたしはもう一度あなたがたに会います。そうすれば、あなたがたの心は喜びに満たされます。そして、その喜びをあなたがたから奪い去る者はありません。 043 JOH 016 023 その日には、あなたがたはもはや、わたしに何も尋ねません。まことに、まことに、あなたがたに告げます。あなたがたが父に求めることは何でも、父は、わたしの名によってそれをあなたがたにお与えになります。 043 JOH 016 024 あなたがたは今まで、何もわたしの名によって求めたことはありません。求めなさい。そうすれば受けるのです。それはあなたがたの喜びが満ち満ちたものとなるためです。 043 JOH 016 025 これらのことを、わたしはあなたがたにたとえで話しました。もはやたとえでは話さないで、父についてはっきりと告げる時が来ます。 043 JOH 016 026 その日には、あなたがたはわたしの名によって求めるのです。わたしはあなたがたに代わって父に願ってあげようとは言いません。 043 JOH 016 027 それはあなたがたがわたしを愛し、また、わたしを神から出て来た者と信じたので、父ご自身があなたがたを愛しておられるからです。 043 JOH 016 028 わたしは父から出て、世に来ました。もう一度、わたしは世を去って父のみもとに行きます。」 043 JOH 016 029 弟子たちは言った。「ああ、今あなたははっきりとお話しになって、何一つたとえ話はなさいません。 043 JOH 016 030 いま私たちは、あなたがいっさいのことをご存じで、だれもあなたにお尋ねする必要がないことがわかりました。これで、私たちはあなたが神から来られたことを信じます。」 043 JOH 016 031 イエスは彼らに答えられた。「あなたがたは今、信じているのですか。 043 JOH 016 032 見なさい。あなたがたが散らされて、それぞれ自分の家に帰り、わたしをひとり残す時が来ます。いや、すでに来ています。しかし、わたしはひとりではありません。父がわたしといっしょにおられるからです。 043 JOH 016 033 わたしがこれらのことをあなたがたに話したのは、あなたがたがわたしにあって平安を持つためです。あなたがたは、世にあっては患難があります。しかし、勇敢でありなさい。わたしはすでに世に勝ったのです。」 043 JOH 017 001 イエスはこれらのことを話してから、目を天に向けて、言われた。「父よ。時が来ました。あなたの子があなたの栄光を現わすために、子の栄光を現わしてください。 043 JOH 017 002 それは子が、あなたからいただいたすべての者に、永遠のいのちを与えるため、あなたは、すべての人を支配する権威を子にお与えになったからです。 043 JOH 017 003 その永遠のいのちとは、彼らが唯一のまことの神であるあなたと、あなたの遣わされたイエス・キリストとを知ることです。 043 JOH 017 004 あなたがわたしに行なわせるためにお与えになったわざを、わたしは成し遂げて、地上であなたの栄光を現わしました。 043 JOH 017 005 今は、父よ、みそばで、わたしを栄光で輝かせてください。世界が存在する前に、ごいっしょにいて持っていましたあの栄光で輝かせてください。 043 JOH 017 006 わたしは、あなたが世から取り出してわたしに下さった人々に、あなたの御名を明らかにしました。彼らはあなたのものであって、あなたは彼らをわたしに下さいました。彼らはあなたのみことばを守りました。 043 JOH 017 007 いま彼らは、あなたがわたしに下さったものはみな、あなたから出ていることを知っています。 043 JOH 017 008 それは、あなたがわたしに下さったみことばを、わたしが彼らに与えたからです。彼らはそれを受け入れ、わたしがあなたから出て来たことを確かに知り、また、あなたがわたしを遣わされたことを信じました。 043 JOH 017 009 わたしは彼らのためにお願いします。世のためにではなく、あなたがわたしに下さった者たちのためにです。なぜなら彼らはあなたのものだからです。 043 JOH 017 010 わたしのものはみなあなたのもの、あなたのものはわたしのものです。そして、わたしは彼らによって栄光を受けました。 043 JOH 017 011 わたしはもう世にいなくなります。彼らは世におりますが、わたしはあなたのみもとにまいります。聖なる父。あなたがわたしに下さっているあなたの御名の中に、彼らを保ってください。それはわたしたちと同様に、彼らが一つとなるためです。 043 JOH 017 012 わたしは彼らといっしょにいたとき、あなたがわたしに下さっている御名の中に彼らを保ち、また守りました。彼らのうちだれも滅びた者はなく、ただ滅びの子が滅びました。それは、聖書が成就するためです。 043 JOH 017 013 わたしは今みもとにまいります。わたしは彼らの中でわたしの喜びが全うされるために、世にあってこれらのことを話しているのです。 043 JOH 017 014 わたしは彼らにあなたのみことばを与えました。しかし、世は彼らを憎みました。わたしがこの世のものでないように、彼らもこの世のものでないからです。 043 JOH 017 015 彼らをこの世から取り去ってくださるようにというのではなく、悪い者から守ってくださるようにお願いします。 043 JOH 017 016 わたしがこの世のものでないように、彼らもこの世のものではありません。 043 JOH 017 017 真理によって彼らを聖別してください。あなたのみことばは真理です。 043 JOH 017 018 あなたがわたしを世に遣わされたように、わたしも彼らを世に遣わしました。 043 JOH 017 019 わたしは、彼らのため、わたし自身を聖別します。彼ら自身も真理によって聖別されるためです。 043 JOH 017 020 わたしは、ただこの人々のためだけでなく、彼らのことばによってわたしを信じる人々のためにもお願いします。 043 JOH 017 021 それは、父よ、あなたがわたしにおられ、わたしがあなたにいるように、彼らがみな一つとなるためです。また、彼らもわたしたちにおるようになるためです。そのことによって、あなたがわたしを遣わされたことを、世が信じるためなのです。 043 JOH 017 022 またわたしは、あなたがわたしに下さった栄光を、彼らに与えました。それは、わたしたちが一つであるように、彼らも一つであるためです。 043 JOH 017 023 わたしは彼らにおり、あなたはわたしにおられます。それは、彼らが全うされて一つとなるためです。それは、あなたがわたしを遣わされたことと、あなたがわたしを愛されたように彼らをも愛されたこととを、この世が知るためです。 043 JOH 017 024 父よ。お願いします。あなたがわたしに下さったものをわたしのいる所にわたしといっしょにおらせてください。あなたがわたしを世の始まる前から愛しておられたためにわたしに下さったわたしの栄光を、彼らが見るようになるためです。 043 JOH 017 025 正しい父よ。この世はあなたを知りません。しかし、わたしはあなたを知っています。また、この人々は、あなたがわたしを遣わされたことを知りました。 043 JOH 017 026 そして、わたしは彼らにあなたの御名を知らせました。また、これからも知らせます。それは、あなたがわたしを愛してくださったその愛が彼らの中にあり、またわたしが彼らの中にいるためです。」 043 JOH 018 001 イエスはこれらのことを話し終えられると、弟子たちとともに、ケデロンの川筋の向こう側に出て行かれた。そこに園があって、イエスは弟子たちといっしょに、そこにはいられた。 043 JOH 018 002 ところで、イエスを裏切ろうとしていたユダもその場所を知っていた。イエスがたびたび弟子たちとそこで会合されたからである。 043 JOH 018 003 そこで、ユダは一隊の兵士と、祭司長、パリサイ人たちから送られた役人たちを引き連れて、ともしびとたいまつと武器を持って、そこに来た。 043 JOH 018 004 イエスは自分の身に起ころうとするすべてのことを知っておられたので、出て来て、「だれを捜すのか。」と彼らに言われた。 043 JOH 018 005 彼らは、「ナザレ人イエスを。」と答えた。イエスは彼らに「それはわたしです。」と言われた。イエスを裏切ろうとしていたユダも彼らといっしょに立っていた。 043 JOH 018 006 イエスが彼らに、「それはわたしです。」と言われたとき、彼らはあとずさりし、そして地に倒れた。 043 JOH 018 007 そこで、イエスがもう一度、「だれを捜すのか。」と問われると、彼らは「ナザレ人イエスを。」と言った。 043 JOH 018 008 イエスは答えられた。「それはわたしだと、あなたがたに言ったでしょう。もしわたしを捜しているのなら、この人たちはこのままで去らせなさい。」 043 JOH 018 009 それは、「あなたがわたしに下さった者のうち、ただのひとりをも失いませんでした。」とイエスが言われたことばが実現するためであった。 043 JOH 018 010 シモン・ペテロは、剣を持っていたが、それを抜き、大祭司のしもべを撃ち、右の耳を切り落とした。そのしもべの名はマルコスであった。 043 JOH 018 011 そこで、イエスはペテロに言われた。「剣をさやに収めなさい。父がわたしに下さった杯を、どうして飲まずにいられよう。」 043 JOH 018 012 そこで、一隊の兵士と千人隊長、それにユダヤ人から送られた役人たちは、イエスを捕えて縛り、 043 JOH 018 013 まずアンナスのところに連れて行った。彼がその年の大祭司カヤパのしゅうとだったからである。 043 JOH 018 014 カヤパは、ひとりの人が民に代わって死ぬことが得策である、とユダヤ人に助言した人である。 043 JOH 018 015 シモン・ペテロともうひとりの弟子は、イエスについて行った。この弟子は大祭司の知り合いで、イエスといっしょに大祭司の中庭にはいった。 043 JOH 018 016 しかし、ペテロは外で門のところに立っていた。それで、大祭司の知り合いである、もうひとりの弟子が出て来て、門番の女に話して、ペテロを連れてはいった。 043 JOH 018 017 すると、門番のはしためがペテロに、「あなたもあの人の弟子ではないでしょうね。」と言った。ペテロは、「そんな者ではない。」と言った。 043 JOH 018 018 寒かったので、しもべたちや役人たちは、炭火をおこし、そこに立って暖まっていた。ペテロも彼らといっしょに、立って暖まっていた。 043 JOH 018 019 そこで、大祭司はイエスに、弟子たちのこと、また、教えのことについて尋問した。 043 JOH 018 020 イエスは彼に答えられた。「わたしは世に向かって公然と話しました。わたしはユダヤ人がみな集まって来る会堂や宮で、いつも教えたのです。隠れて話したことは何もありません。 043 JOH 018 021 なぜ、あなたはわたしに尋ねるのですか。わたしが人々に何を話したかは、わたしから聞いた人たちに尋ねなさい。彼らならわたしが話した事がらを知っています。」 043 JOH 018 022 イエスがこう言われたとき、そばに立っていた役人のひとりが、「大祭司にそのような答え方をするのか。」と言って、平手でイエスを打った。 043 JOH 018 023 イエスは彼に答えられた。「もしわたしの言ったことが悪いなら、その悪い証拠を示しなさい。しかし、もし正しいなら、なぜ、わたしを打つのか。」 043 JOH 018 024 アンナスはイエスを、縛ったままで大祭司カヤパのところに送った。 043 JOH 018 025 一方、シモン・ペテロは立って、暖まっていた。すると、人々は彼に言った。「あなたもあの人の弟子ではないでしょうね。」ペテロは否定して、「そんな者ではない。」と言った。 043 JOH 018 026 大祭司のしもべのひとりで、ペテロに耳を切り落とされた人の親類に当たる者が言った。「私が見なかったとでもいうのですか。あなたは園であの人といっしょにいました。」 043 JOH 018 027 それで、ペテロはもう一度否定した。するとすぐ鶏が鳴いた。 043 JOH 018 028 さて、彼らはイエスを、カヤパのところから総督官邸に連れて行った。時は明け方であった。彼らは、過越の食事が食べられなくなることのないように、汚れを受けまいとして、官邸にはいらなかった。 043 JOH 018 029 そこで、ピラトは彼らのところに出て来て言った。「あなたがたは、この人に対して何を告発するのですか。」 043 JOH 018 030 彼らはピラトに答えた。「もしこの人が悪いことをしていなかったら、私たちはこの人をあなたに引き渡しはしなかったでしょう。」 043 JOH 018 031 そこでピラトは彼らに言った。「あなたがたがこの人を引き取り、自分たちの律法に従ってさばきなさい。」ユダヤ人たちは彼に言った。「私たちには、だれを死刑にすることも許されてはいません。」 043 JOH 018 032 これは、ご自分がどのような死に方をされるのかを示して話されたイエスのことばが成就するためであった。 043 JOH 018 033 そこで、ピラトはもう一度官邸にはいって、イエスを呼んで言った。「あなたは、ユダヤ人の王ですか。」 043 JOH 018 034 イエスは答えられた。「あなたは、自分でそのことを言っているのですか。それともほかの人が、あなたにわたしのことを話したのですか。」 043 JOH 018 035 ピラトは答えた。「私はユダヤ人ではないでしょう。あなたの同国人と祭司長たちが、あなたを私に引き渡したのです。あなたは何をしたのですか。」 043 JOH 018 036 イエスは答えられた。「わたしの国はこの世のものではありません。もしこの世のものであったなら、わたしのしもべたちが、わたしをユダヤ人に渡さないように、戦ったことでしょう。しかし、事実、わたしの国はこの世のものではありません。」 043 JOH 018 037 そこでピラトはイエスに言った。「それでは、あなたは王なのですか。」イエスは答えられた。「わたしが王であることは、あなたが言うとおりです。わたしは、真理のあかしをするために生まれ、このことのために世に来たのです。真理に属する者はみな、わたしの声に聞き従います。」 043 JOH 018 038 ピラトはイエスに言った。「真理とは何ですか。」 彼はこう言ってから、またユダヤ人たちのところに出て行って、彼らに言った。「私は、あの人には罪を認めません。 043 JOH 018 039 しかし、過越の祭りに、私があなたがたのためにひとりの者を釈放するのがならわしになっています。それで、あなたがたのために、ユダヤ人の王を釈放することにしましょうか。」 043 JOH 018 040 すると彼らはみな、また大声をあげて、「この人ではない。バラバだ。」と言った。このバラバは強盗であった。 043 JOH 019 001 そこで、ピラトはイエスを捕えて、むち打ちにした。 043 JOH 019 002 また、兵士たちは、いばらで冠を編んで、イエスの頭にかぶらせ、紫色の着物を着せた。 043 JOH 019 003 彼らは、イエスに近寄っては、「ユダヤ人の王さま。ばんざい。」と言い、またイエスの顔を平手で打った。 043 JOH 019 004 ピラトは、もう一度外に出て来て、彼らに言った。「よく聞きなさい。あなたがたのところにあの人を連れ出して来ます。あの人に何の罪も見られないということを、あなたがたに知らせるためです。」 043 JOH 019 005 それでイエスは、いばらの冠と紫色の着物を着けて、出て来られた。するとピラトは彼らに「さあ、この人です。」と言った。 043 JOH 019 006 祭司長たちや役人たちはイエスを見ると、激しく叫んで、「十字架につけろ。十字架につけろ。」と言った。ピラトは彼らに言った。「あなたがたがこの人を引き取り、十字架につけなさい。私はこの人には罪を認めません。」 043 JOH 019 007 ユダヤ人たちは彼に答えた。「私たちには律法があります。この人は自分を神の子としたのですから、律法によれば、死に当たります。」 043 JOH 019 008 ピラトは、このことばを聞くと、ますます恐れた。 043 JOH 019 009 そして、また官邸にはいって、イエスに言った。「あなたはどこの人ですか。」しかし、イエスは彼に何の答えもされなかった。 043 JOH 019 010 そこで、ピラトはイエスに言った。「あなたは私に話さないのですか。私にはあなたを釈放する権威があり、また十字架につける権威があることを、知らないのですか。」 043 JOH 019 011 イエスは答えられた。「もしそれが上から与えられているのでなかったら、あなたにはわたしに対して何の権威もありません。ですから、わたしをあなたに渡した者に、もっと大きい罪があるのです。」 043 JOH 019 012 こういうわけで、ピラトはイエスを釈放しようと努力した。しかし、ユダヤ人たちは激しく叫んで言った。「もしこの人を釈放するなら、あなたはカイザルの味方ではありません。自分を王だとする者はすべて、カイザルにそむくのです。」 043 JOH 019 013 そこでピラトは、これらのことばを聞いたとき、イエスを外に引き出し、敷石(ヘブル語ではガバタ)と呼ばれる場所で、裁判の席に着いた。 043 JOH 019 014 その日は過越の備え日で、時は六時ごろであった。ピラトはユダヤ人たちに言った。「さあ、あなたがたの王です。」 043 JOH 019 015 彼らは激しく叫んだ。「除け。除け。十字架につけろ。」ピラトは彼らに言った。「あなたがたの王を私が十字架につけるのですか。」祭司長たちは答えた。「カイザルのほかには、私たちに王はありません。」 043 JOH 019 016 そこでピラトは、そのとき、イエスを、十字架につけるため彼らに引き渡した。 043 JOH 019 017 彼らはイエスを受け取った。そして、イエスはご自分で十字架を負って、「どくろの地」という場所(ヘブル語でゴルゴタと言われる)に出て行かれた。 043 JOH 019 018 彼らはそこでイエスを十字架につけた。イエスといっしょに、ほかのふたりの者をそれぞれ両側に、イエスを真中にしてであった。 043 JOH 019 019 ピラトは罪状書きも書いて、十字架の上に掲げた。それには「ユダヤ人の王ナザレ人イエス。」と書いてあった。 043 JOH 019 020 それで、大ぜいのユダヤ人がこの罪状書きを読んだ。イエスが十字架につけられた場所は都に近かったからである。またそれはヘブル語、ラテン語、ギリシヤ語で書いてあった。 043 JOH 019 021 そこで、ユダヤ人の祭司長たちがピラトに、「ユダヤ人の王、と書かないで、彼はユダヤ人の王と自称した、と書いてください。」と言った。 043 JOH 019 022 ピラトは答えた。「私の書いたことは私が書いたのです。」 043 JOH 019 023 さて、兵士たちは、イエスを十字架につけると、イエスの着物を取り、ひとりの兵士に一つずつあたるよう四分した。また下着をも取ったが、それは上から全部一つに織った、縫い目なしのものであった。 043 JOH 019 024 そこで彼らは互いに言った。「それは裂かないで、だれの物になるか、くじを引こう。」それは、「彼らはわたしの着物を分け合い、わたしの下着のためにくじを引いた。」という聖書が成就するためであった。 043 JOH 019 025 兵士たちはこのようなことをしたが、イエスの十字架のそばには、イエスの母と母の姉妹と、クロパの妻のマリヤとマグダラのマリヤが立っていた。 043 JOH 019 026 イエスは、母と、そばに立っている愛する弟子とを見て、母に「女の方。そこに、あなたの息子がいます。」と言われた。 043 JOH 019 027 それからその弟子に「そこに、あなたの母がいます。」と言われた。その時から、この弟子は彼女を自分の家に引き取った。 043 JOH 019 028 この後、イエスは、すべてのことが完了したのを知って、聖書が成就するために、「わたしは渇く。」と言われた。 043 JOH 019 029 そこには酸いぶどう酒のいっぱいはいった入れ物が置いてあった。そこで彼らは、酸いぶどう酒を含んだ海綿をヒソプの枝につけて、それをイエスの口もとに差し出した。 043 JOH 019 030 イエスは、酸いぶどう酒を受けられると、「完了した。」と言われた。そして、頭をたれて、霊をお渡しになった。 043 JOH 019 031 その日は備え日であったため、ユダヤ人たちは安息日に(その安息日は大いなる日であったので)、死体を十字架の上に残しておかないように、すねを折ってそれを取りのける処置をピラトに願った。 043 JOH 019 032 それで、兵士たちが来て、イエスといっしょに十字架につけられた第一の者と、もうひとりの者とのすねを折った。 043 JOH 019 033 しかし、イエスのところに来ると、イエスがすでに死んでおられるのを認めたので、そのすねを折らなかった。 043 JOH 019 034 しかし、兵士のうちのひとりがイエスのわき腹を槍で突き刺した。すると、ただちに血と水が出て来た。 043 JOH 019 035 それを目撃した者があかしをしているのである。そのあかしは真実である。その人が、あなたがたにも信じさせるために、真実を話すということをよく知っているのである。 043 JOH 019 036 この事が起こったのは、「彼の骨は一つも砕かれない。」という聖書のことばが成就するためであった。 043 JOH 019 037 また聖書の別のところには、「彼らは自分たちが突き刺した方を見る。」と言われているからである。 043 JOH 019 038 そのあとで、イエスの弟子ではあったがユダヤ人を恐れてそのことを隠していたアリマタヤのヨセフが、イエスのからだを取りかたづけたいとピラトに願った。それで、ピラトは許可を与えた。そこで彼は来て、イエスのからだを取り降ろした。 043 JOH 019 039 前に、夜イエスのところに来たニコデモも、没薬とアロエを混ぜ合わせたものをおよそ三十キログラムばかり持って、やって来た。 043 JOH 019 040 そこで、彼らはイエスのからだを取り、ユダヤ人の埋葬の習慣に従って、それを香料といっしょに亜麻布で巻いた。 043 JOH 019 041 イエスが十字架につけられた場所に園があって、そこには、まだだれも葬られたことのない新しい墓があった。 043 JOH 019 042 その日がユダヤ人の備え日であったため、墓が近かったので、彼らはイエスをそこに納めた。 043 JOH 020 001 さて、週の初めの日に、マグダラのマリヤは、朝早くまだ暗いうちに墓に来た。そして、墓から石が取りのけてあるのを見た。 043 JOH 020 002 それで、走って、シモン・ペテロと、イエスが愛された、もうひとりの弟子とのところに来て、言った。「だれかが墓から主を取って行きました。主をどこに置いたのか、私たちにはわかりません。」 043 JOH 020 003 そこでペテロともうひとりの弟子は外に出て来て、墓のほうへ行った。 043 JOH 020 004 ふたりはいっしょに走ったが、もうひとりの弟子がペテロよりも速かったので、先に墓に着いた。 043 JOH 020 005 そして、からだをかがめてのぞき込み、亜麻布が置いてあるのを見たが、中にはいらなかった。 043 JOH 020 006 シモン・ペテロも彼に続いて来て、墓にはいり、亜麻布が置いてあって、 043 JOH 020 007 イエスの頭に巻かれていた布切れは、亜麻布といっしょにはなく、離れた所に巻かれたままになっているのを見た。 043 JOH 020 008 そのとき、先に墓に着いたもうひとりの弟子もはいって来た。そして、見て、信じた。 043 JOH 020 009 彼らは、イエスが死人の中からよみがえらなければならないという聖書を、まだ理解していなかったのである。 043 JOH 020 010 それで、弟子たちはまた自分のところに帰って行った。 043 JOH 020 011 しかし、マリヤは外で墓のところにたたずんで泣いていた。そして、泣きながら、からだをかがめて墓の中をのぞき込んだ。 043 JOH 020 012 すると、ふたりの御使いが、イエスのからだが置かれていた場所に、ひとりは頭のところに、ひとりは足のところに、白い衣をまとってすわっているのが見えた。 043 JOH 020 013 彼らは彼女に言った。「なぜ泣いているのですか。」彼女は言った。「だれかが私の主を取って行きました。どこに置いたのか、私にはわからないのです。」 043 JOH 020 014 彼女はこう言ってから、うしろを振り向いた。すると、イエスが立っておられるのを見た。しかし、彼女にはイエスであることがわからなかった。 043 JOH 020 015 イエスは彼女に言われた。「なぜ泣いているのですか。だれを捜しているのですか。」彼女は、それを園の管理人だと思って言った。「あなたが、あの方を運んだのでしたら、どこに置いたのか言ってください。そうすれば私が引き取ります。」 043 JOH 020 016 イエスは彼女に言われた。「マリヤ。」彼女は振り向いて、ヘブル語で、「ラボニ(すなわち、先生)。」とイエスに言った。 043 JOH 020 017 イエスは彼女に言われた。「わたしにすがりついていてはいけません。わたしはまだ父のもとに上っていないからです。わたしの兄弟たちのところに行って、彼らに『わたしは、わたしの父またあなたがたの父、わたしの神またあなたがたの神のもとに上る。』と告げなさい。」 043 JOH 020 018 マグダラのマリヤは、行って、「私は主にお目にかかりました。」と言い、また、主が彼女にこれらのことを話されたと弟子たちに告げた。 043 JOH 020 019 その日、すなわち週の初めの日の夕方のことであった。弟子たちがいた所では、ユダヤ人を恐れて戸がしめてあったが、イエスが来られ、彼らの中に立って言われた。「平安があなたがたにあるように。」 043 JOH 020 020 こう言ってイエスは、その手とわき腹を彼らに示された。弟子たちは、主を見て喜んだ。 043 JOH 020 021 イエスはもう一度、彼らに言われた。「平安があなたがたにあるように。父がわたしを遣わしたように、わたしもあなたがたを遣わします。」 043 JOH 020 022 そして、こう言われると、彼らに息を吹きかけて言われた。「聖霊を受けなさい。 043 JOH 020 023 あなたがたがだれかの罪を赦すなら、その人の罪は赦され、あなたがたがだれかの罪をそのまま残すなら、それはそのまま残ります。」 043 JOH 020 024 十二弟子のひとりで、デドモと呼ばれるトマスは、イエスが来られたときに、彼らといっしょにいなかった。 043 JOH 020 025 それで、ほかの弟子たちが彼に「私たちは主を見た。」と言った。しかし、トマスは彼らに「私は、その手に釘の跡を見、私の指を釘のところに差し入れ、また私の手をそのわきに差し入れてみなければ、決して信じません。」と言った。 043 JOH 020 026 八日後に、弟子たちはまた室内におり、トマスも彼らといっしょにいた。戸が閉じられていたが、イエスが来て、彼らの中に立って「平安があなたがたにあるように。」と言われた。 043 JOH 020 027 それからトマスに言われた。「あなたの指をここにつけて、わたしの手を見なさい。手を伸ばして、わたしのわきに差し入れなさい。信じない者にならないで、信じる者になりなさい。」 043 JOH 020 028 トマスは答えてイエスに言った。「私の主。私の神。」 043 JOH 020 029 イエスは彼に言われた。「あなたはわたしを見たから信じたのですか。見ずに信じる者は幸いです。」 043 JOH 020 030 この書には書かれていないが、まだほかの多くのしるしをも、イエスは弟子たちの前で行なわれた。 043 JOH 020 031 しかし、これらのことが書かれたのは、イエスが神の子キリストであることを、あなたがたが信じるため、また、あなたがたが信じて、イエスの御名によっていのちを得るためである。 043 JOH 021 001 この後、イエスはテベリヤの湖畔で、もう一度ご自分を弟子たちに現わされた。その現わされた次第はこうであった。 043 JOH 021 002 シモン・ペテロ、デドモと呼ばれるトマス、ガリラヤのカナのナタナエル、ゼベダイの子たち、ほかにふたりの弟子がいっしょにいた。 043 JOH 021 003 シモン・ペテロが彼らに言った。「私は漁に行く。」彼らは言った。「私たちもいっしょに行きましょう。」彼らは出かけて、小舟に乗り込んだ。しかし、その夜は何もとれなかった。 043 JOH 021 004 夜が明けそめたとき、イエスは岸べに立たれた。けれども弟子たちには、それがイエスであることがわからなかった。 043 JOH 021 005 イエスは彼らに言われた。「子どもたちよ。食べる物がありませんね。」彼らは答えた。「はい。ありません。」 043 JOH 021 006 イエスは彼らに言われた。「舟の右側に網をおろしなさい。そうすれば、とれます。」そこで、彼らは網をおろした。すると、おびただしい魚のために、網を引き上げることができなかった。 043 JOH 021 007 そこで、イエスの愛されたあの弟子がペテロに言った。「主です。」すると、シモン・ペテロは、主であると聞いて、裸だったので、上着をまとって、湖に飛び込んだ。 043 JOH 021 008 しかし、ほかの弟子たちは、魚の満ちたその網を引いて、小舟でやって来た。陸地から遠くなく、百メートル足らずの距離だったからである。 043 JOH 021 009 こうして彼らが陸地に上がったとき、そこに炭火とその上に載せた魚と、パンがあるのを見た。 043 JOH 021 010 イエスは彼らに言われた。「あなたがたの今とった魚を幾匹か持って来なさい。」 043 JOH 021 011 シモン・ペテロは舟に上がって、網を陸地に引き上げた。それは百五十三匹の大きな魚でいっぱいであった。それほど多かったけれども、網は破れなかった。 043 JOH 021 012 イエスは彼らに言われた。「さあ来て、朝の食事をしなさい。」弟子たちは主であることを知っていたので、だれも「あなたはどなたですか。」とあえて尋ねる者はいなかった。 043 JOH 021 013 イエスは来て、パンを取り、彼らにお与えになった。また、魚も同じようにされた。 043 JOH 021 014 イエスが、死人の中からよみがえってから、弟子たちにご自分を現わされたのは、すでにこれで三度目である。 043 JOH 021 015 彼らが食事を済ませたとき、イエスはシモン・ペテロに言われた。「ヨハネの子シモン。あなたは、この人たち以上に、わたしを愛しますか。」ペテロはイエスに言った。「はい。主よ。私があなたを愛することは、あなたがご存じです。」イエスは彼に言われた。「わたしの小羊を飼いなさい。」 043 JOH 021 016 イエスは再び彼に言われた。「ヨハネの子シモン。あなたはわたしを愛しますか。」ペテロはイエスに言った。「はい。主よ。私があなたを愛することは、あなたがご存じです。」イエスは彼に言われた。「わたしの羊を牧しなさい。」 043 JOH 021 017 イエスは三度ペテロに言われた。「ヨハネの子シモン。あなたはわたしを愛しますか。」ペテロは、イエスが三度「あなたはわたしを愛しますか。」と言われたので、心を痛めてイエスに言った。「主よ。あなたはいっさいのことをご存じです。あなたは、私があなたを愛することを知っておいでになります。」イエスは彼に言われた。「わたしの羊を飼いなさい。 043 JOH 021 018 まことに、まことに、あなたに告げます。あなたは若かった時には、自分で帯を締めて、自分の歩きたい所を歩きました。しかし年をとると、あなたは自分の手を伸ばし、ほかの人があなたに帯をさせて、あなたの行きたくない所に連れて行きます。」 043 JOH 021 019 これは、ペテロがどのような死に方をして、神の栄光を現わすかを示して、言われたことであった。こうお話しになってから、ペテロに言われた。「わたしに従いなさい。」 043 JOH 021 020 ペテロは振り向いて、イエスが愛された弟子があとについて来るのを見た。この弟子はあの晩餐のとき、イエスの右側にいて、「主よ。あなたを裏切る者はだれですか。」と言った者である。 043 JOH 021 021 ペテロは彼を見て、イエスに言った。「主よ。この人はどうですか。」 043 JOH 021 022 イエスはペテロに言われた。「わたしの来るまで彼が生きながらえるのをわたしが望むとしても、それがあなたに何のかかわりがありますか。あなたは、わたしに従いなさい。」 043 JOH 021 023 そこで、その弟子は死なないという話が兄弟たちの間に行き渡った。しかし、イエスはペテロに、その弟子が死なないと言われたのでなく、「わたしの来るまで彼が生きながらえるのをわたしが望むとしても、それがあなたに何のかかわりがありますか。」と言われたのである。 043 JOH 021 024 これらのことについてあかしした者、またこれらのことを書いた者は、その弟子である。そして、私たちは、彼のあかしが真実であることを、知っている。 043 JOH 021 025 イエスが行なわれたことは、ほかにもたくさんあるが、もしそれらをいちいち書きしるすなら、世界も、書かれた書物を入れることができまい、と私は思う。 # # BOOK 044 ACT Acts 使徒の働き 044 ACT 001 001 テオピロよ。私は前の書で、イエスが行ない始め、教え始められたすべてのことについて書き、 044 ACT 001 002 お選びになった使徒たちに聖霊によって命じてから、天に上げられた日のことにまで及びました。 044 ACT 001 003 イエスは苦しみを受けた後、四十日の間、彼らに現われて、神の国のことを語り、数多くの確かな証拠をもって、ご自分が生きていることを使徒たちに示された。 044 ACT 001 004 彼らといっしょにいるとき、イエスは彼らにこう命じられた。「エルサレムを離れないで、わたしから聞いた父の約束を待ちなさい。 044 ACT 001 005 ヨハネは水でバプテスマを授けたが、もう間もなく、あなたがたは聖霊のバプテスマを受けるからです。」 044 ACT 001 006 そこで、彼らは、いっしょに集まったとき、イエスにこう尋ねた。「主よ。今こそ、イスラエルのために国を再興してくださるのですか。」 044 ACT 001 007 イエスは言われた。「いつとか、どんなときとかいうことは、あなたがたは知らなくてもよいのです。それは、父がご自分の権威をもってお定めになっています。 044 ACT 001 008 しかし、聖霊があなたがたの上に臨まれるとき、あなたがたは力を受けます。そして、エルサレム、ユダヤとサマリヤの全土、および地の果てにまで、わたしの証人となります。」 044 ACT 001 009 こう言ってから、イエスは彼らが見ている間に上げられ、雲に包まれて、見えなくなられた。 044 ACT 001 010 イエスが上って行かれるとき、弟子たちは天を見つめていた。すると、見よ、白い衣を着た人がふたり、彼らのそばに立っていた。 044 ACT 001 011 そして、こう言った。「ガリラヤの人たち。なぜ天を見上げて立っているのですか。あなたがたを離れて天に上げられたこのイエスは、天に上って行かれるのをあなたがたが見たときと同じ有様で、またおいでになります。」 044 ACT 001 012 そこで、彼らはオリーブという山からエルサレムに帰った。この山はエルサレムの近くにあって、安息日の道のりほどの距離であった。 044 ACT 001 013 彼らは町にはいると、泊まっている屋上の間に上がった。この人々は、ペテロとヨハネとヤコブとアンデレ、ピリポとトマス、バルトロマイとマタイ、アルパヨの子ヤコブと熱心党員シモンとヤコブの子ユダであった。 044 ACT 001 014 この人たちは、婦人たちやイエスの母マリヤ、およびイエスの兄弟たちとともに、みな心を合わせ、祈りに専念していた。 044 ACT 001 015 そのころ、百二十名ほどの兄弟たちが集まっていたが、ペテロはその中に立ってこう言った。 044 ACT 001 016 「兄弟たち。イエスを捕えた者どもの手引きをしたユダについて、聖霊がダビデの口を通して預言された聖書のことばは、成就しなければならなかったのです。 044 ACT 001 017 ユダは私たちの仲間として数えられており、この務めを受けていました。 044 ACT 001 018 (ところがこの男は、不正なことをして得た報酬で地所を手に入れたが、まっさかさまに落ち、からだは真二つに裂け、はらわたが全部飛び出してしまった。 044 ACT 001 019 このことが、エルサレムの住民全部に知れて、その地所は彼らの国語でアケルダマ、すなわち『血の地所』と呼ばれるようになった。) 044 ACT 001 020 実は詩篇には、こう書いてあるのです。『彼の住まいは荒れ果てよ、そこには住む者がいなくなれ。』また、『その職は、ほかの人に取らせよ。』 044 ACT 001 021 ですから、主イエスが私たちといっしょに生活された間、 044 ACT 001 022 すなわち、ヨハネのバプテスマから始まって、私たちを離れて天に上げられた日までの間、いつも私たちと行動をともにした者の中から、だれかひとりが、私たちとともにイエスの復活の証人とならなければなりません。」 044 ACT 001 023 そこで、彼らは、バルサバと呼ばれ別名をユストというヨセフと、マッテヤとのふたりを立てた。 044 ACT 001 024 そして、こう祈った。「すべての人の心を知っておられる主よ。 044 ACT 001 025 この務めと使徒職の地位を継がせるために、このふたりのうちのどちらをお選びになるか、お示しください。ユダは自分のところへ行くために脱落して行きましたから。」 044 ACT 001 026 そしてふたりのためにくじを引くと、くじはマッテヤに当たったので、彼は十一人の使徒たちに加えられた。 044 ACT 002 001 五旬節の日になって、みなが一つ所に集まっていた。 044 ACT 002 002 すると突然、天から、激しい風が吹いて来るような響きが起こり、彼らのいた家全体に響き渡った。 044 ACT 002 003 また、炎のような分かれた舌が現われて、ひとりひとりの上にとどまった。 044 ACT 002 004 すると、みなが聖霊に満たされ、御霊が話させてくださるとおりに、他国のことばで話しだした。 044 ACT 002 005 さて、エルサレムには、敬虔なユダヤ人たちが、天下のあらゆる国から来て住んでいたが、 044 ACT 002 006 この物音が起こると、大ぜいの人々が集まって来た。彼らは、それぞれ自分の国のことばで弟子たちが話すのを聞いて、驚きあきれてしまった。 044 ACT 002 007 彼らは驚き怪しんで言った。「どうでしょう。いま話しているこの人たちは、みなガリラヤの人ではありませんか。 044 ACT 002 008 それなのに、私たちめいめいの国の国語で話すのを聞くとは、いったいどうしたことでしょう。 044 ACT 002 009 私たちは、パルテヤ人、メジヤ人、エラム人、またメソポタミヤ、ユダヤ、カパドキヤ、ポントとアジヤ、 044 ACT 002 010 フルギヤとパンフリヤ、エジプトとクレネに近いリビヤ地方などに住む者たち、また滞在中のローマ人たちで、 044 ACT 002 011 ユダヤ人もいれば改宗者もいる。またクレテ人とアラビヤ人なのに、あの人たちが、私たちのいろいろな国ことばで神の大きなみわざを語るのを聞こうとは。」 044 ACT 002 012 人々はみな、驚き惑って、互いに「いったいこれはどうしたことか。」と言った。 044 ACT 002 013 しかし、ほかに「彼らは甘いぶどう酒に酔っているのだ。」と言ってあざける者たちもいた。 044 ACT 002 014 そこで、ペテロは十一人とともに立って、声を張り上げ、人々にはっきりとこう言った。「ユダヤの人々、ならびにエルサレムに住むすべての人々。あなたがたに知っていただきたいことがあります。どうか、私のことばに耳を貸してください。 044 ACT 002 015 今は朝の九時ですから、あなたがたの思っているようにこの人たちは酔っているのではありません。 044 ACT 002 016 これは、預言者ヨエルによって語られた事です。 044 ACT 002 017 『神は言われる。 終わりの日に、わたしの霊をすべての人に注ぐ。 すると、あなたがたの息子や娘は預言し、 青年は幻を見、 老人は夢を見る。 044 ACT 002 018 その日、わたしのしもべにも、はしためにも、 わたしの霊を注ぐ。 すると、彼らは預言する。 044 ACT 002 019 また、わたしは、上は天に不思議なわざを示し、 下は地にしるしを示す。 それは、血と火と立ち上る煙である。 044 ACT 002 020 主の大いなる輝かしい日が来る前に、 太陽はやみとなり、月は血に変わる。 044 ACT 002 021 しかし、主の名を呼ぶ者は、みな救われる。』 044 ACT 002 022 イスラエルの人たち。このことばを聞いてください。神はナザレ人イエスによって、あなたがたの間で力あるわざと、不思議なわざと、あかしの奇蹟を行なわれました。それらのことによって、神はあなたがたに、この方のあかしをされたのです。これは、あなたがた自身がご承知のように、 044 ACT 002 023 神の定めた計画と神の予知とによって引き渡されたこの方を、あなたがたは不法な者の手によって十字架につけて殺しました。 044 ACT 002 024 しかし神は、この方を死の苦しみから解き放って、よみがえらせました。この方が死につながれていることなど、ありえないからです。 044 ACT 002 025 ダビデはこの方について、こう言っています。 『私はいつも、自分の目の前に主を見ていた。 主は、私が動かされないように、 私の右におられるからである。 044 ACT 002 026 それゆえ、私の心は楽しみ、 私の舌は大いに喜んだ。 さらに私の肉体も望みの中に安らう。 044 ACT 002 027 あなたは私のたましいをハデスに捨てて置かず、 あなたの聖者が朽ち果てるのを お許しにならないからである。 044 ACT 002 028 あなたは、私にいのちの道を知らせ、 御顔を示して、私を喜びで満たしてくださる。』 044 ACT 002 029 兄弟たち。先祖ダビデについては、私はあなたがたに、確信をもって言うことができます。彼は死んで葬られ、その墓は今日まで私たちのところにあります。 044 ACT 002 030 彼は預言者でしたから、神が彼の子孫のひとりを彼の王位に着かせると誓って言われたことを知っていたのです。 044 ACT 002 031 それで後のことを予見して、キリストの復活について、『彼はハデスに捨てて置かれず、その肉体は朽ち果てない。』と語ったのです。 044 ACT 002 032 神はこのイエスをよみがえらせました。私たちはみな、そのことの証人です。 044 ACT 002 033 ですから、神の右に上げられたイエスが、御父から約束された聖霊を受けて、今あなたがたが見聞きしているこの聖霊をお注ぎになったのです。 044 ACT 002 034 ダビデは天に上ったわけではありません。彼は自分でこう言っています。 『主は私の主に言われた。 044 ACT 002 035 わたしがあなたの敵をあなたの足台とするまでは わたしの右の座に着いていなさい。』 044 ACT 002 036 ですから、イスラエルのすべての人々は、このことをはっきりと知らなければなりません。すなわち、神が、今や主ともキリストともされたこのイエスを、あなたがたは十字架につけたのです。」 044 ACT 002 037 人々はこれを聞いて心を刺され、ペテロとほかの使徒たちに、「兄弟たち。私たちはどうしたらよいでしょうか。」と言った。 044 ACT 002 038 そこでペテロは彼らに答えた。「悔い改めなさい。そして、それぞれ罪を赦していただくために、イエス・キリストの名によってバプテスマを受けなさい。そうすれば、賜物として聖霊を受けるでしょう。 044 ACT 002 039 なぜなら、この約束は、あなたがたと、その子どもたち、ならびにすべての遠くにいる人々、すなわち、私たちの神である主がお召しになる人々に与えられているからです。」 044 ACT 002 040 ペテロは、このほかにも多くのことばをもって、あかしをし、「この曲がった時代から救われなさい。」と言って彼らに勧めた。 044 ACT 002 041 そこで、彼のことばを受け入れた者は、バプテスマを受けた。その日、三千人ほどが弟子に加えられた。 044 ACT 002 042 そして、彼らは使徒たちの教えを堅く守り、交わりをし、パンを裂き、祈りをしていた。 044 ACT 002 043 そして、一同の心に恐れが生じ、使徒たちによって、多くの不思議なわざとあかしの奇蹟が行なわれた。 044 ACT 002 044 信者となった者たちはみないっしょにいて、いっさいの物を共有にしていた。 044 ACT 002 045 そして、資産や持ち物を売っては、それぞれの必要に応じて、みなに分配していた。 044 ACT 002 046 そして毎日、心を一つにして宮に集まり、家でパンを裂き、喜びと真心をもって食事をともにし、 044 ACT 002 047 神を賛美し、すべての民に好意を持たれた。主も毎日救われる人々を仲間に加えてくださった。 044 ACT 003 001 ペテロとヨハネは午後三時の祈りの時間に宮に上って行った。 044 ACT 003 002 すると、生まれつき足のきかない男が運ばれて来た。この男は、宮にはいる人たちから施しを求めるために、毎日「美しの門」という名の宮の門に置いてもらっていた。 044 ACT 003 003 彼は、ペテロとヨハネが宮にはいろうとするのを見て、施しを求めた。 044 ACT 003 004 ペテロは、ヨハネとともに、その男を見つめて、「私たちを見なさい。」と言った。 044 ACT 003 005 男は何かもらえると思って、ふたりに目を注いだ。 044 ACT 003 006 すると、ペテロは、「金銀は私にはない。しかし、私にあるものを上げよう。ナザレのイエス・キリストの名によって、歩きなさい。」と言って、 044 ACT 003 007 彼の右手を取って立たせた。するとたちまち、彼の足とくるぶしが強くなり、 044 ACT 003 008 おどり上がってまっすぐに立ち、歩きだした。そして歩いたり、はねたりしながら、神を賛美しつつ、ふたりといっしょに宮にはいって行った。 044 ACT 003 009 人々はみな、彼が歩きながら、神を賛美しているのを見た。 044 ACT 003 010 そして、これが、施しを求めるために宮の「美しの門」にすわっていた男だとわかると、この人の身に起こったことに驚き、あきれた。 044 ACT 003 011 この人が、ペテロとヨハネにつきまとっている間に、非常に驚いた人々がみないっせいに、ソロモンの廊という回廊にいる彼らのところに、やって来た。 044 ACT 003 012 ペテロはこれを見て、人々に向かってこう言った。「イスラエル人たち。なぜこのことに驚いているのですか。なぜ、私たちが自分の力とか信仰深さとかによって彼を歩かせたかのように、私たちを見つめるのですか。 044 ACT 003 013 アブラハム、イサク、ヤコブの神、すなわち、私たちの先祖の神は、そのしもべイエスに栄光をお与えになりました。あなたがたは、この方を引き渡し、ピラトが釈放すると決めたのに、その面前でこの方を拒みました。 044 ACT 003 014 そのうえ、このきよい、正しい方を拒んで、人殺しの男を赦免するように要求し、 044 ACT 003 015 いのちの君を殺しました。しかし、神はこのイエスを死者の中からよみがえらせました。私たちはそのことの証人です。 044 ACT 003 016 そして、このイエスの御名が、その御名を信じる信仰のゆえに、あなたがたがいま見ており知っているこの人を強くしたのです。イエスによって与えられる信仰が、この人を皆さんの目の前で完全なからだにしたのです。 044 ACT 003 017 ですから、兄弟たち。私は知っています。あなたがたは、自分たちの指導者たちと同様に、無知のためにあのような行ないをしたのです。 044 ACT 003 018 しかし、神は、すべての預言者たちの口を通して、キリストの受難をあらかじめ語っておられたことを、このように実現されました。 044 ACT 003 019 そういうわけですから、あなたがたの罪をぬぐい去っていただくために、悔い改めて、神に立ち返りなさい。 044 ACT 003 020 それは、主の御前から回復の時が来て、あなたがたのためにメシヤと定められたイエスを、主が遣わしてくださるためなのです。 044 ACT 003 021 このイエスは、神が昔から、聖なる預言者たちの口を通してたびたび語られた、あの万物の改まる時まで、天にとどまっていなければなりません。 044 ACT 003 022 モーセはこう言いました。『神である主は、あなたがたのために、私のようなひとりの預言者を、あなたがたの兄弟たちの中からお立てになる。この方があなたがたに語ることはみな聞きなさい。 044 ACT 003 023 その預言者に聞き従わない者はだれでも、民の中から滅ぼし絶やされる。』 044 ACT 003 024 また、サムエルをはじめとして、彼に続いて語ったすべての預言者たちも、今の時について宣べました。 044 ACT 003 025 あなたがたは預言者たちの子孫です。また、神がアブラハムに、『あなたの子孫によって、地の諸民族はみな祝福を受ける。』と言って、あなたがたの先祖と結ばれたあの契約の子孫です。 044 ACT 003 026 神は、まずそのしもべを立てて、あなたがたにお遣わしになりました。それは、この方があなたがたを祝福して、ひとりひとりをその邪悪な生活から立ち返らせてくださるためなのです。」 044 ACT 004 001 彼らが民に話していると、祭司たち、宮の守衛長、またサドカイ人たちがやって来たが、 044 ACT 004 002 この人たちは、ペテロとヨハネが民を教え、イエスのことを例にあげて死者の復活を宣べ伝えているのに、困り果て、 044 ACT 004 003 彼らに手をかけて捕えた。そして翌日まで留置することにした。すでに夕方だったからである。 044 ACT 004 004 しかし、みことばを聞いた人々が大ぜい信じ、男の数が五千人ほどになった。 044 ACT 004 005 翌日、民の指導者、長老、学者たちは、エルサレムに集まった。 044 ACT 004 006 大祭司アンナス、カヤパ、ヨハネ、アレキサンデル、そのほか大祭司の一族もみな出席した。 044 ACT 004 007 彼らは使徒たちを真中に立たせて、「あなたがたは何の権威によって、また、だれの名によってこんなことをしたのか。」と尋問しだした。 044 ACT 004 008 そのとき、ペテロは聖霊に満たされて、彼らに言った。「民の指導者たち、ならびに長老の方々。 044 ACT 004 009 私たちがきょう取り調べられているのが、病人に行なった良いわざについてであり、その人が何によっていやされたか、ということのためであるなら、 044 ACT 004 010 皆さんも、またイスラエルのすべての人々も、よく知ってください。この人が直って、あなたがたの前に立っているのは、あなたがたが十字架につけ、神が死者の中からよみがえらせたナザレ人イエス・キリストの御名によるのです。 044 ACT 004 011 『あなたがた家を建てる者たちに捨てられた石が、礎の石となった。』というのはこの方のことです。 044 ACT 004 012 この方以外には、だれによっても救いはありません。世界中でこの御名のほかには、私たちが救われるべき名としては、どのような名も、人間に与えられていないからです。」 044 ACT 004 013 彼らはペテロとヨハネとの大胆さを見、またふたりが無学な、普通の人であるのを知って驚いたが、ふたりがイエスとともにいたのだ、ということがわかって来た。 044 ACT 004 014 そればかりでなく、いやされた人がふたりといっしょに立っているのを見ては、返すことばもなかった。 044 ACT 004 015 彼らはふたりに議会から退場するように命じ、そして互いに協議した。 044 ACT 004 016 彼らは言った。「あの人たちをどうしよう。あの人たちによって著しいしるしが行なわれたことは、エルサレムの住民全部に知れ渡っているから、われわれはそれを否定できない。 044 ACT 004 017 しかし、これ以上民の間に広がらないために、今後だれにもこの名によって語ってはならないと、彼らをきびしく戒めよう。」 044 ACT 004 018 そこで彼らを呼んで、いっさいイエスの名によって語ったり教えたりしてはならない、と命じた。 044 ACT 004 019 ペテロとヨハネは彼らに答えて言った。「神に聞き従うより、あなたがたに聞き従うほうが、神の前に正しいかどうか、判断してください。 044 ACT 004 020 私たちは、自分の見たこと、また聞いたことを、話さないわけにはいきません。」 044 ACT 004 021 そこで、彼らはふたりをさらにおどしたうえで、釈放した。それはみなの者が、この出来事のゆえに神をあがめていたので、人々の手前、ふたりを罰するすべがなかったからである。 044 ACT 004 022 この奇蹟によっていやされた男は四十歳余りであった。 044 ACT 004 023 釈放されたふたりは、仲間のところへ行き、祭司長たちや長老たちが彼らに言ったことを残らず報告した。 044 ACT 004 024 これを聞いた人々はみな、心を一つにして、神に向かい、声を上げて言った。「主よ。あなたは天と地と海とその中のすべてのものを造られた方です。 044 ACT 004 025 あなたは、聖霊によって、あなたのしもべであり私たちの先祖であるダビデの口を通して、こう言われました。 『なぜ異邦人たちは騒ぎ立ち、 もろもろの民はむなしいことを計るのか。 044 ACT 004 026 地の王たちは立ち上がり、 指導者たちは、主とキリストに反抗して、 一つに組んだ。』 044 ACT 004 027 事実、ヘロデとポンテオ・ピラトは、異邦人やイスラエルの民といっしょに、あなたが油を注がれた、あなたの聖なるしもべイエスに逆らってこの都に集まり、 044 ACT 004 028 あなたの御手とみこころによって、あらかじめお定めになったことを行ないました。 044 ACT 004 029 主よ。いま彼らの脅かしをご覧になり、あなたのしもべたちにみことばを大胆に語らせてください。 044 ACT 004 030 御手を伸ばしていやしを行なわせ、あなたの聖なるしもべイエスの御名によって、しるしと不思議なわざを行なわせてください。」 044 ACT 004 031 彼らがこう祈ると、その集まっていた場所が震い動き、一同は聖霊に満たされ、神のことばを大胆に語りだした。 044 ACT 004 032 信じた者の群れは、心と思いを一つにして、だれひとりその持ち物を自分のものと言わず、すべてを共有にしていた。 044 ACT 004 033 使徒たちは、主イエスの復活を非常に力強くあかしし、大きな恵みがそのすべての者の上にあった。 044 ACT 004 034 彼らの中には、ひとりも乏しい者がなかった。地所や家を持っている者は、それを売り、代金を携えて来て、 044 ACT 004 035 使徒たちの足もとに置き、その金は必要に従っておのおのに分け与えられたからである。 044 ACT 004 036 キプロス生まれのレビ人で、使徒たちによってバルナバ(訳すと、慰めの子)と呼ばれていたヨセフも、 044 ACT 004 037 畑を持っていたので、それを売り、その代金を持って来て、使徒たちの足もとに置いた。 044 ACT 005 001 ところが、アナニヤという人は、妻のサッピラとともにその持ち物を売り、 044 ACT 005 002 妻も承知のうえで、その代金の一部を残しておき、ある部分を持って来て、使徒たちの足もとに置いた。 044 ACT 005 003 そこで、ペテロがこう言った。「アナニヤ。どうしてあなたはサタンに心を奪われ、聖霊を欺いて、地所の代金の一部を自分のために残しておいたのか。 044 ACT 005 004 それはもともとあなたのものであり、売ってからもあなたの自由になったのではないか。なぜこのようなことをたくらんだのか。あなたは人を欺いたのではなく、神を欺いたのだ。」 044 ACT 005 005 アナニヤはこのことばを聞くと、倒れて息が絶えた。そして、これを聞いたすべての人に、非常な恐れが生じた。 044 ACT 005 006 青年たちは立って、彼を包み、運び出して葬った。 044 ACT 005 007 三時間ほどたって、彼の妻はこの出来事を知らずにはいって来た。 044 ACT 005 008 ペテロは彼女にこう言った。「あなたがたは地所をこの値段で売ったのですか。私に言いなさい。」彼女は「はい。その値段です。」と言った。 044 ACT 005 009 そこで、ペテロは彼女に言った。「どうしてあなたがたは心を合わせて、主の御霊を試みたのですか。見なさい、あなたの夫を葬った者たちが、戸口に来ていて、あなたをも運び出します。」 044 ACT 005 010 すると彼女は、たちまちペテロの足もとに倒れ、息が絶えた。はいって来た青年たちは、彼女が死んだのを見て、運び出し、夫のそばに葬った。 044 ACT 005 011 そして、教会全体と、このことを聞いたすべての人たちとに、非常な恐れが生じた。 044 ACT 005 012 また、使徒たちの手によって、多くのしるしと不思議なわざが人々の間で行なわれた。みなは一つ心になってソロモンの廊にいた。 044 ACT 005 013 ほかの人々は、ひとりもこの交わりに加わろうとしなかったが、その人々は彼らを尊敬していた。 044 ACT 005 014 そればかりか、主を信じる者は男も女もますますふえていった。 044 ACT 005 015 ついに、人々は病人を大通りへ運び出し、寝台や寝床の上に寝かせ、ペテロが通りかかるときには、せめてその影でも、だれかにかかるようにするほどになった。 044 ACT 005 016 また、エルサレムの付近の町々から、大ぜいの人が、病人や、汚れた霊に苦しめられている人などを連れて集まって来たが、その全部がいやされた。 044 ACT 005 017 そこで、大祭司とその仲間たち全部、すなわちサドカイ派の者はみな、ねたみに燃えて立ち上がり、 044 ACT 005 018 使徒たちを捕え、留置場に入れた。 044 ACT 005 019 ところが、夜、主の使いが牢の戸を開き、彼らを連れ出し、 044 ACT 005 020 「行って宮の中に立ち、人々にこのいのちのことばを、ことごとく語りなさい。」と言った。 044 ACT 005 021 彼らはこれを聞くと、夜明けごろ宮にはいって教え始めた。一方、大祭司とその仲間たちは集まって来て、議会とイスラエル人のすべての長老を召集し、使徒たちを引き出して来させるために、人を獄舎にやった。 044 ACT 005 022 ところが役人たちが行ってみると、牢の中には彼らがいなかったので、引き返してこう報告した。 044 ACT 005 023 「獄舎は完全にしまっており、番人たちが戸口に立っていましたが、あけてみると、中にはだれもおりませんでした。」 044 ACT 005 024 宮の守衛長や祭司長たちは、このことばを聞いて、いったいこれはどうなって行くのかと、使徒たちのことで当惑した。 044 ACT 005 025 そこへ、ある人がやって来て、「大変です。あなたがたが牢に入れた人たちが、宮の中に立って、人々を教えています。」と告げた。 044 ACT 005 026 そこで、宮の守衛長は役人たちといっしょに出て行き、使徒たちを連れて来た。しかし、手荒なことはしなかった。人々に石で打ち殺されるのを恐れたからである。 044 ACT 005 027 彼らが使徒たちを連れて来て議会の中に立たせると、大祭司は使徒たちを問いただして、 044 ACT 005 028 言った。「あの名によって教えてはならないときびしく命じておいたのに、何ということだ。エルサレム中にあなたがたの教えを広めてしまい、そのうえ、あの人の血の責任をわれわれに負わせようとしているではないか。」 044 ACT 005 029 ペテロをはじめ使徒たちは答えて言った。「人に従うより、神に従うべきです。 044 ACT 005 030 私たちの先祖の神は、あなたがたが十字架にかけて殺したイエスを、よみがえらせたのです。 044 ACT 005 031 そして神は、イスラエルに悔い改めと罪の赦しを与えるために、このイエスを君とし、救い主として、ご自分の右に上げられました。 044 ACT 005 032 私たちはそのことの証人です。神がご自分に従う者たちにお与えになった聖霊もそのことの証人です。」 044 ACT 005 033 彼らはこれを聞いて怒り狂い、使徒たちを殺そうと計った。 044 ACT 005 034 ところが、すべての人に尊敬されている律法学者で、ガマリエルというパリサイ人が議会の中に立ち、使徒たちをしばらく外に出させるように命じた。 044 ACT 005 035 それから、議員たちに向かってこう言った。「イスラエルの皆さん。この人々をどう扱うか、よく気をつけてください。 044 ACT 005 036 というのは、先ごろチゥダが立ち上がって、自分を何か偉い者のように言い、彼に従った男の数が四百人ほどありましたが、結局、彼は殺され、従った者はみな散らされて、あとかたもなくなりました。 044 ACT 005 037 その後、人口調査のとき、ガリラヤ人ユダが立ち上がり、民衆をそそのかして反乱を起こしましたが、自分は滅び、従った者たちもみな散らされてしまいました。 044 ACT 005 038 そこで今、あなたがたに申したいのです。あの人たちから手を引き、放っておきなさい。もし、その計画や行動が人から出たものならば、自滅してしまうでしょう。 044 ACT 005 039 しかし、もし神から出たものならば、あなたがたには彼らを滅ぼすことはできないでしょう。もしかすれば、あなたがたは神に敵対する者になってしまいます。」彼らは彼に説得され、 044 ACT 005 040 使徒たちを呼んで、彼らをむちで打ち、イエスの名によって語ってはならないと言い渡したうえで釈放した。 044 ACT 005 041 そこで、使徒たちは、御名のためにはずかしめられるに値する者とされたことを喜びながら、議会から出て行った。 044 ACT 005 042 そして、毎日、宮や家々で教え、イエスがキリストであることを宣べ伝え続けた。 044 ACT 006 001 そのころ、弟子たちがふえるにつれて、ギリシヤ語を使うユダヤ人たちが、ヘブル語を使うユダヤ人たちに対して苦情を申し立てた。彼らのうちのやもめたちが、毎日の配給でなおざりにされていたからである。 044 ACT 006 002 そこで、十二使徒は弟子たち全員を呼び集めてこう言った。「私たちが神のことばをあと回しにして、食卓のことに仕えるのはよくありません。 044 ACT 006 003 そこで、兄弟たち。あなたがたの中から、御霊と知恵とに満ちた、評判の良い人たち七人を選びなさい。私たちはその人たちをこの仕事に当たらせることにします。 044 ACT 006 004 そして、私たちは、もっぱら祈りとみことばの奉仕に励むことにします。」 044 ACT 006 005 この提案は全員の承認するところとなり、彼らは、信仰と聖霊とに満ちた人ステパノ、およびピリポ、プロコロ、ニカノル、テモン、パルメナ、アンテオケの改宗者ニコラオを選び、 044 ACT 006 006 この人たちを使徒たちの前に立たせた。そこで使徒たちは祈って、手を彼らの上に置いた。 044 ACT 006 007 こうして神のことばは、ますます広まって行き、エルサレムで、弟子の数が非常にふえて行った。そして、多くの祭司たちが次々に信仰にはいった。 044 ACT 006 008 さて、ステパノは恵みと力とに満ち、人々の間で、すばらしい不思議なわざとしるしを行なっていた。 044 ACT 006 009 ところが、いわゆるリベルテンの会堂に属する人々で、クレネ人、アレキサンドリヤ人、キリキヤやアジヤから来た人々などが立ち上がって、ステパノと議論した。 044 ACT 006 010 しかし、彼が知恵と御霊によって語っていたので、それに対抗することができなかった。 044 ACT 006 011 そこで、彼らはある人々をそそのかし、「私たちは彼がモーセと神とをけがすことばを語るのを聞いた。」と言わせた。 044 ACT 006 012 また、民衆と長老たちと律法学者たちを扇動し、彼を襲って捕え、議会にひっぱって行った。 044 ACT 006 013 そして、偽りの証人たちを立てて、こう言わせた。「この人は、この聖なる所と律法とに逆らうことばを語るのをやめません。 044 ACT 006 014 『あのナザレ人イエスはこの聖なる所をこわし、モーセが私たちに伝えた慣例を変えてしまう。』と彼が言うのを、私たちは聞きました。」 044 ACT 006 015 議会で席に着いていた人々はみな、ステパノに目を注いだ。すると彼の顔は御使いの顔のように見えた。 044 ACT 007 001 大祭司は、「そのとおりか。」と尋ねた。 044 ACT 007 002 そこでステパノは言った。「兄弟たち、父たちよ。聞いてください。私たちの父祖アブラハムが、カランに住む以前まだメソポタミヤにいたとき、栄光の神が彼に現われて、 044 ACT 007 003 『あなたの土地とあなたの親族を離れ、わたしがあなたに示す地に行け。』と言われました。 044 ACT 007 004 そこで、アブラハムはカルデヤ人の地を出て、カランに住みました。そして、父の死後、神は彼をそこから今あなたがたの住んでいるこの地にお移しになりましたが、 044 ACT 007 005 ここでは、足の踏み場となるだけのものさえも、相続財産として彼にお与えになりませんでした。それでも、子どももなかった彼に対して、この地を彼とその子孫に財産として与えることを約束されたのです。 044 ACT 007 006 また神は次のようなことを話されました。『彼の子孫は外国に移り住み、四百年間、奴隷にされ、虐待される。』 044 ACT 007 007 そして、こう言われました。『彼らを奴隷にする国民は、わたしがさばく。その後、彼らはのがれ出て、この所で、わたしを礼拝する。』 044 ACT 007 008 また神は、アブラハムに割礼の契約をお与えになりました。こうして、彼にイサクが生まれました。彼は八日目にイサクに割礼を施しました。それから、イサクにヤコブが生まれ、ヤコブに十二人の族長が生まれました。 044 ACT 007 009 族長たちはヨセフをねたんで、彼をエジプトに売りとばしました。しかし、神は彼とともにおられ、 044 ACT 007 010 あらゆる患難から彼を救い出し、エジプト王パロの前で、恵みと知恵をお与えになったので、パロは彼をエジプトと王の家全体を治める大臣に任じました。 044 ACT 007 011 ところが、エジプトとカナンとの全地にききんが起こり、大きな災難が襲って来たので、私たちの先祖たちには、食物がなくなりました。 044 ACT 007 012 しかし、ヤコブはエジプトに穀物があると聞いて、初めに私たちの先祖たちを遣わしました。 044 ACT 007 013 二回目のとき、ヨセフは兄弟たちに、自分のことを打ち明け、ヨセフの家族のことがパロに明らかになりました。 044 ACT 007 014 そこで、ヨセフは人をやって、父ヤコブと七十五人の全親族を呼び寄せました。 044 ACT 007 015 ヤコブはエジプトに下り、そこで彼も私たちの先祖たちも死にました。 044 ACT 007 016 そしてシケムに運ばれ、かねてアブラハムがいくらかの金でシケムのハモルの子から買っておいた墓に葬られました。 044 ACT 007 017 神がアブラハムにお立てになった約束の時が近づくにしたがって、民はエジプトの中にふえ広がり、 044 ACT 007 018 ヨセフのことを知らない別の王がエジプトの王位につくときまで続きました。 044 ACT 007 019 この王は、私たちの同胞に対して策略を巡らし、私たちの先祖を苦しめて、幼子を捨てさせ、生かしておけないようにしました。 044 ACT 007 020 このようなときに、モーセが生まれたのです。彼は神の目にかなった、かわいらしい子で、三か月の間、父の家で育てられましたが、 044 ACT 007 021 ついに捨てられたのをパロの娘が拾い上げ、自分の子として育てたのです。 044 ACT 007 022 モーセはエジプト人のあらゆる学問を教え込まれ、ことばにもわざにも力がありました。 044 ACT 007 023 四十歳になったころ、モーセはその兄弟であるイスラエル人を、顧みる心を起こしました。 044 ACT 007 024 そして、同胞のひとりが虐待されているのを見て、その人をかばい、エジプト人を打ち倒して、乱暴されているその人の仕返しをしました。 044 ACT 007 025 彼は、自分の手によって神が兄弟たちに救いを与えようとしておられることを、みなが理解してくれるものと思っていましたが、彼らは理解しませんでした。 044 ACT 007 026 翌日彼は、兄弟たちが争っているところに現われ、和解させようとして、『あなたがたは、兄弟なのだ。それなのにどうしてお互いに傷つけ合っているのか。』と言いました。 044 ACT 007 027 すると、隣人を傷つけていた者が、モーセを押しのけてこう言いました。『だれがあなたを、私たちの支配者や裁判官にしたのか。 044 ACT 007 028 きのうエジプト人を殺したように、私も殺す気か。』 044 ACT 007 029 このことばを聞いたモーセは、逃げてミデアンの地に身を寄せ、そこで男の子ふたりをもうけました。 044 ACT 007 030 四十年たったとき、御使いが、モーセに、シナイ山の荒野で柴の燃える炎の中に現われました。 044 ACT 007 031 その光景を見たモーセは驚いて、それをよく見ようとして近寄ったとき、主の御声が聞こえました。 044 ACT 007 032 『わたしはあなたの先祖の神、アブラハム、イサク、ヤコブの神である。』そこで、モーセは震え上がり、見定める勇気もなくなりました。 044 ACT 007 033 すると、主は彼にこう言われたのです。『あなたの足のくつを脱ぎなさい。あなたの立っている所は聖なる地である。 044 ACT 007 034 わたしは、確かにエジプトにいるわたしの民の苦難を見、そのうめき声を聞いたので、彼らを救い出すために下って来た。さあ、行きなさい。わたしはあなたをエジプトに遣わそう。』 044 ACT 007 035 『だれがあなたを支配者や裁判官にしたのか。』と言って人々が拒んだこのモーセを、神は柴の中で彼に現われた御使いの手によって、支配者また解放者としてお遣わしになったのです。 044 ACT 007 036 この人が、彼らを導き出し、エジプトの地で、紅海で、また四十年間荒野で、不思議なわざとしるしを行ないました。 044 ACT 007 037 このモーセが、イスラエルの人々に、『神はあなたがたのために、私のようなひとりの預言者を、あなたがたの兄弟たちの中からお立てになる。』と言ったのです。 044 ACT 007 038 また、この人が、シナイ山で彼に語った御使いや私たちの先祖たちとともに、荒野の集会において、生けるみことばを授かり、あなたがたに与えたのです。 044 ACT 007 039 ところが、私たちの先祖たちは彼に従うことを好まず、かえって彼を退け、エジプトをなつかしく思って、 044 ACT 007 040 『私たちに、先立って行く神々を作ってください。私たちをエジプトの地から導き出したモーセは、どうなったのかわかりませんから。』とアロンに言いました。 044 ACT 007 041 そのころ彼らは子牛を作り、この偶像に供え物をささげ、彼らの手で作った物を楽しんでいました。 044 ACT 007 042 そこで、神は彼らに背を向け、彼らが天の星に仕えるままにされました。預言者たちの書に書いてあるとおりです。 『イスラエルの家よ。あなたがたは 荒野にいた四十年の間に、 ほふられた獣と供え物とを、 わたしにささげたことがあったか。 044 ACT 007 043 あなたがたは、モロクの幕屋と ロンパの神の星をかついでいた。 それらは、あなたがたが拝むために 作った偶像ではないか。 それゆえ、わたしは、あなたがたを バビロンのかなたへ移す。』 044 ACT 007 044 私たちの先祖のためには、荒野にあかしの幕屋がありました。それは、見たとおりの形に造れとモーセに言われた方の命令どおりに、造られていました。 044 ACT 007 045 私たちの先祖は、この幕屋を次々に受け継いで、神が先祖たちの前から異邦人を追い払い、その領土を取らせてくださったときには、ヨシュアとともにそれを運び入れ、ついにダビデの時代となりました。 044 ACT 007 046 ダビデは神の前に恵みをいただき、ヤコブの神のために御住まいを得たいと願い求めました。 044 ACT 007 047 けれども、神のために家を建てたのはソロモンでした。 044 ACT 007 048 しかし、いと高き方は、手で造った家にはお住みになりません。預言者が語っているとおりです。 044 ACT 007 049 『主は言われる。 天はわたしの王座、 地はわたしの足の足台である。 あなたがたは、どのような家を わたしのために建てようとするのか。 わたしの休む所とは、どこか。 044 ACT 007 050 わたしの手が、これらのものを みな、造ったのではないか。』 044 ACT 007 051 かたくなで、心と耳とに割礼を受けていない人たち。あなたがたは、先祖たちと同様に、いつも聖霊に逆らっているのです。 044 ACT 007 052 あなたがたの先祖が迫害しなかった預言者がだれかあったでしょうか。彼らは、正しい方が来られることを前もって宣べた人たちを殺したが、今はあなたがたが、この正しい方を裏切る者、殺す者となりました。 044 ACT 007 053 あなたがたは、御使いたちによって定められた律法を受けたが、それを守ったことはありません。」 044 ACT 007 054 人々はこれを聞いて、はらわたが煮え返る思いで、ステパノに向かって歯ぎしりした。 044 ACT 007 055 しかし、聖霊に満たされていたステパノは、天を見つめ、神の栄光と、神の右に立っておられるイエスとを見て、 044 ACT 007 056 こう言った。「見なさい。天が開けて、人の子が神の右に立っておられるのが見えます。」 044 ACT 007 057 人々は大声で叫びながら、耳をおおい、いっせいにステパノに殺到した。 044 ACT 007 058 そして彼を町の外に追い出して、石で打ち殺した。証人たちは、自分たちの着物をサウロという青年の足もとに置いた。 044 ACT 007 059 こうして彼らがステパノに石を投げつけていると、ステパノは主を呼んで、こう言った。「主イエスよ。私の霊をお受けください。」 044 ACT 007 060 そして、ひざまずいて、大声でこう叫んだ。「主よ。この罪を彼らに負わせないでください。」こう言って、眠りについた。 044 ACT 008 001 サウロは、ステパノを殺すことに賛成していた。その日、エルサレムの教会に対する激しい迫害が起こり、使徒たち以外の者はみな、ユダヤとサマリヤの諸地方に散らされた。 044 ACT 008 002 敬虔な人たちはステパノを葬り、彼のために非常に悲しんだ。 044 ACT 008 003 サウロは教会を荒らし、家々にはいって、男も女も引きずり出し、次々に牢に入れた。 044 ACT 008 004 他方、散らされた人たちは、みことばを宣べながら、巡り歩いた。 044 ACT 008 005 ピリポはサマリヤの町に下って行き、人々にキリストを宣べ伝えた。 044 ACT 008 006 群衆はピリポの話を聞き、その行なっていたしるしを見て、みなそろって、彼の語ることに耳を傾けた。 044 ACT 008 007 汚れた霊につかれた多くの人たちからは、その霊が大声で叫んで出て行くし、大ぜいの中風の者や足のきかない者は直ったからである。 044 ACT 008 008 それでその町に大きな喜びが起こった。 044 ACT 008 009 ところが、この町にシモンという人がいた。彼は以前からこの町で魔術を行なって、サマリヤの人々を驚かし、自分は偉大な者だと話していた。 044 ACT 008 010 小さな者から大きな者に至るまで、あらゆる人々が彼に関心を抱き、「この人こそ、大能と呼ばれる、神の力だ。」と言っていた。 044 ACT 008 011 人々が彼に関心を抱いたのは、長い間、その魔術に驚かされていたからである。 044 ACT 008 012 しかし、ピリポが神の国とイエス・キリストの御名について宣べるのを信じた彼らは、男も女もバプテスマを受けた。 044 ACT 008 013 シモン自身も信じて、バプテスマを受け、いつもピリポについていた。そして、しるしとすばらしい奇蹟が行なわれるのを見て、驚いていた。 044 ACT 008 014 さて、エルサレムにいる使徒たちは、サマリヤの人々が神のことばを受け入れたと聞いて、ペテロとヨハネを彼らのところへ遣わした。 044 ACT 008 015 ふたりは下って行って、人々が聖霊を受けるように祈った。 044 ACT 008 016 彼らは主イエスの御名によってバプテスマを受けていただけで、聖霊がまだだれにも下っておられなかったからである。 044 ACT 008 017 ふたりが彼らの上に手を置くと、彼らは聖霊を受けた。 044 ACT 008 018 使徒たちが手を置くと聖霊が与えられるのを見たシモンは、使徒たちのところに金を持って来て、 044 ACT 008 019 「私が手を置いた者がだれでも聖霊を受けられるように、この権威を私にも下さい。」と言った。 044 ACT 008 020 ペテロは彼に向かって言った。「あなたの金は、あなたとともに滅びるがよい。あなたは金で神の賜物を手に入れようと思っているからです。 044 ACT 008 021 あなたは、このことについては何の関係もないし、それにあずかることもできません。あなたの心が神の前に正しくないからです。 044 ACT 008 022 だから、この悪事を悔い改めて、主に祈りなさい。あるいは、心に抱いた思いが赦されるかもしれません。 044 ACT 008 023 あなたはまだ苦い胆汁と不義のきずなの中にいることが、私にはよくわかっています。」 044 ACT 008 024 シモンは答えて言った。「あなたがたの言われた事が何も私に起こらないように、私のために主に祈ってください。」 044 ACT 008 025 このようにして、使徒たちはおごそかにあかしをし、また主のことばを語って後、エルサレムへの帰途につき、サマリヤ人の多くの村でも福音を宣べ伝えた。 044 ACT 008 026 ところが、主の使いがピリポに向かってこう言った。「立って南へ行き、エルサレムからガザに下る道に出なさい。」(このガザは今、荒れ果てている。) 044 ACT 008 027 そこで、彼は立って出かけた。すると、そこに、エチオピヤ人の女王カンダケの高官で、女王の財産全部を管理していた宦官のエチオピヤ人がいた。彼は礼拝のためエルサレムに上り、 044 ACT 008 028 いま帰る途中であった。彼は馬車に乗って、預言者イザヤの書を読んでいた。 044 ACT 008 029 御霊がピリポに「近寄って、あの馬車といっしょに行きなさい。」と言われた。 044 ACT 008 030 そこでピリポが走って行くと、預言者イザヤの書を読んでいるのが聞こえたので、「あなたは、読んでいることが、わかりますか。」と言った。 044 ACT 008 031 すると、その人は、「導く人がなければ、どうしてわかりましょう。」と言った。そして馬車に乗っていっしょにすわるように、ピリポに頼んだ。 044 ACT 008 032 彼が読んでいた聖書の個所には、こう書いてあった。 「ほふり場に連れて行かれる羊のように、 また、黙々として 毛を刈る者の前に立つ小羊のように、 彼は口を開かなかった。 044 ACT 008 033 彼は、卑しめられ、そのさばきも取り上げられた。 彼の時代のことを、だれが話すことができようか。 彼のいのちは地上から取り去られたのである。」 044 ACT 008 034 宦官はピリポに向かって言った。「預言者はだれについて、こう言っているのですか。どうか教えてください。自分についてですか。それとも、だれかほかの人についてですか。」 044 ACT 008 035 ピリポは口を開き、この聖句から始めて、イエスのことを彼に宣べ伝えた。 044 ACT 008 036 道を進んで行くうちに、水のある所に来たので、宦官は言った。「ご覧なさい。水があります。私がバプテスマを受けるのに、何かさしつかえがあるでしょうか。」 044 ACT 008 037 そして馬車を止めさせ、ピリポも宦官も水の中へ降りて行き、ピリポは宦官にバプテスマを授けた。 044 ACT 008 039 水から上がって来たとき、主の霊がピリポを連れ去られたので、宦官はそれから後彼を見なかったが、喜びながら帰って行った。 044 ACT 008 040 それからピリポはアゾトに現われ、すべての町々を通って福音を宣べ伝え、カイザリヤに行った。 044 ACT 009 001 さてサウロは、なおも主の弟子たちに対する脅かしと殺害の意に燃えて、大祭司のところに行き、 044 ACT 009 002 ダマスコの諸会堂あての手紙を書いてくれるよう頼んだ。それは、この道の者であれば男でも女でも、見つけ次第縛り上げてエルサレムに引いて来るためであった。 044 ACT 009 003 ところが、道を進んで行って、ダマスコの近くまで来たとき、突然、天からの光が彼を巡り照らした。 044 ACT 009 004 彼は地に倒れて、「サウロ、サウロ。なぜわたしを迫害するのか。」という声を聞いた。 044 ACT 009 005 彼が、「主よ。あなたはどなたですか。」と言うと、お答えがあった。「わたしは、あなたが迫害しているイエスである。 044 ACT 009 006 立ち上がって、町にはいりなさい。そうすれば、あなたのしなければならないことが告げられるはずです。」 044 ACT 009 007 同行していた人たちは、声は聞こえても、だれも見えないので、ものも言えずに立っていた。 044 ACT 009 008 サウロは地面から立ち上がったが、目は開いていても何も見えなかった。そこで人々は彼の手を引いて、ダマスコへ連れて行った。 044 ACT 009 009 彼は三日の間、目が見えず、また飲み食いもしなかった。 044 ACT 009 010 さて、ダマスコにアナニヤという弟子がいた。主が彼に幻の中で、「アナニヤよ。」と言われたので、「主よ。ここにおります。」と答えた。 044 ACT 009 011 すると主はこう言われた。「立って、『まっすぐ』という街路に行き、サウロというタルソ人をユダの家に尋ねなさい。そこで、彼は祈っています。 044 ACT 009 012 彼は、アナニヤという者がはいって来て、自分の上に手を置くと、目が再び見えるようになるのを、幻で見たのです。」 044 ACT 009 013 しかし、アナニヤはこう答えた。「主よ。私は多くの人々から、この人がエルサレムで、あなたの聖徒たちにどんなにひどいことをしたかを聞きました。 044 ACT 009 014 彼はここでも、あなたの御名を呼ぶ者たちをみな捕縛する権限を、祭司長たちから授けられているのです。」 044 ACT 009 015 しかし、主はこう言われた。「行きなさい。あの人はわたしの名を、異邦人、王たち、イスラエルの子孫の前に運ぶ、わたしの選びの器です。 044 ACT 009 016 彼がわたしの名のために、どんなに苦しまなければならないかを、わたしは彼に示すつもりです。」 044 ACT 009 017 そこでアナニヤは出かけて行って、その家にはいり、サウロの上に手を置いてこう言った。「兄弟サウロ。あなたが来る途中でお現われになった主イエスが、私を遣わされました。あなたが再び見えるようになり、聖霊に満たされるためです。」 044 ACT 009 018 するとただちに、サウロの目からうろこのような物が落ちて、目が見えるようになった。彼は立ち上がって、バプテスマを受け、 044 ACT 009 019 食事をして元気づいた。 サウロは数日の間、ダマスコの弟子たちとともにいた。 044 ACT 009 020 そしてただちに、諸会堂で、イエスは神の子であると宣べ伝え始めた。 044 ACT 009 021 これを聞いた人々はみな、驚いてこう言った。「この人はエルサレムで、この御名を呼ぶ者たちを滅ぼした者ではありませんか。ここへやって来たのも、彼らを縛って、祭司長たちのところへ引いて行くためではないのですか。」 044 ACT 009 022 しかしサウロはますます力を増し、イエスがキリストであることを証明して、ダマスコに住むユダヤ人たちをうろたえさせた。 044 ACT 009 023 多くの日数がたって後、ユダヤ人たちはサウロを殺す相談をしたが、 044 ACT 009 024 その陰謀はサウロに知られてしまった。彼らはサウロを殺してしまおうと、昼も夜も町の門を全部見張っていた。 044 ACT 009 025 そこで、彼の弟子たちは、夜中に彼をかごに乗せ、町の城壁伝いにつり降ろした。 044 ACT 009 026 サウロはエルサレムに着いて、弟子たちの仲間にはいろうと試みたが、みなは彼を弟子だとは信じないで、恐れていた。 044 ACT 009 027 ところが、バルナバは彼を引き受けて、使徒たちのところへ連れて行き、彼がダマスコへ行く途中で主を見た様子や、主が彼に向かって語られたこと、また彼がダマスコでイエスの御名を大胆に宣べた様子などを彼らに説明した。 044 ACT 009 028 それからサウロは、エルサレムで弟子たちとともにいて自由に出はいりし、主の御名によって大胆に語った。 044 ACT 009 029 そして、ギリシヤ語を使うユダヤ人たちと語ったり、論じたりしていた。しかし、彼らはサウロを殺そうとねらっていた。 044 ACT 009 030 兄弟たちはそれと知って、彼をカイザリヤに連れて下り、タルソへ送り出した。 044 ACT 009 031 こうして教会は、ユダヤ、ガリラヤ、サマリヤの全地にわたり築き上げられて平安を保ち、主を恐れかしこみ、聖霊に励まされて前進し続けたので、信者の数がふえて行った。 044 ACT 009 032 さて、ペテロはあらゆる所を巡回したが、ルダに住む聖徒たちのところへも下って行った。 044 ACT 009 033 彼はそこで、八年の間も床に着いているアイネヤという人に出会った。彼は中風であった。 044 ACT 009 034 ペテロは彼にこう言った。「アイネヤ。イエス・キリストがあなたをいやしてくださるのです。立ち上がりなさい。そして自分で床を整えなさい。」すると彼はただちに立ち上がった。 044 ACT 009 035 ルダとサロンに住む人々はみな、アイネヤを見て、主に立ち返った。 044 ACT 009 036 ヨッパにタビタ(ギリシヤ語に訳せば、ドルカス)という女の弟子がいた。この女は、多くの良いわざと施しをしていた。 044 ACT 009 037 ところが、そのころ彼女は病気になって死に、人々はその遺体を洗って、屋上の間に置いた。 044 ACT 009 038 ルダはヨッパに近かったので、弟子たちは、ペテロがそこにいると聞いて、人をふたり彼のところへ送って、「すぐに来てください。」と頼んだ。 044 ACT 009 039 そこでペテロは立って、いっしょに出かけた。ペテロが到着すると、彼らは屋上の間に案内した。やもめたちはみな泣きながら、彼のそばに来て、ドルカスがいっしょにいたころ作ってくれた下着や上着の数々を見せるのであった。 044 ACT 009 040 ペテロはみなの者を外に出し、ひざまずいて祈った。そしてその遺体のほうを向いて、「タビタ。起きなさい。」と言った。すると彼女は目をあけ、ペテロを見て起き上がった。 044 ACT 009 041 そこで、ペテロは手を貸して彼女を立たせた。そして聖徒たちとやもめたちとを呼んで、生きている彼女を見せた。 044 ACT 009 042 このことがヨッパ中に知れ渡り、多くの人々が主を信じた。 044 ACT 009 043 そして、ペテロはしばらくの間、ヨッパで、皮なめしのシモンという人の家に泊まっていた。 044 ACT 010 001 さて、カイザリヤにコルネリオという人がいて、イタリヤ隊という部隊の百人隊長であった。 044 ACT 010 002 彼は敬虔な人で、全家族とともに神を恐れかしこみ、ユダヤの人々に多くの施しをなし、いつも神に祈りをしていたが、 044 ACT 010 003 ある日の午後三時ごろ、幻の中で、はっきりと神の御使いを見た。御使いは彼のところに来て、「コルネリオ。」と呼んだ。 044 ACT 010 004 彼は、御使いを見つめていると、恐ろしくなって、「主よ。何でしょうか。」と答えた。すると御使いはこう言った。「あなたの祈りと施しは神の前に立ち上って、覚えられています。 044 ACT 010 005 さあ今、ヨッパに人をやって、シモンという人を招きなさい。彼の名はペテロとも呼ばれています。 044 ACT 010 006 この人は皮なめしのシモンという人の家に泊まっていますが、その家は海べにあります。」 044 ACT 010 007 御使いが彼にこう語って立ち去ると、コルネリオはそのしもべたちの中のふたりと、側近の部下の中の敬虔な兵士ひとりとを呼び寄せ、 044 ACT 010 008 全部のことを説明してから、彼らをヨッパへ遣わした。 044 ACT 010 009 その翌日、この人たちが旅を続けて、町の近くまで来たころ、ペテロは祈りをするために屋上に上った。昼の十二時ごろであった。 044 ACT 010 010 すると彼は非常に空腹を覚え、食事をしたくなった。ところが、食事の用意がされている間に、彼はうっとりと夢ごこちになった。 044 ACT 010 011 見ると、天が開けており、大きな敷布のような入れ物が、四隅をつるされて地上に降りて来た。 044 ACT 010 012 その中には、地上のあらゆる種類の四つ足の動物や、はうもの、また、空の鳥などがいた。 044 ACT 010 013 そして、彼に、「ペテロ。さあ、ほふって食べなさい。」という声が聞こえた。 044 ACT 010 014 しかしペテロは言った。「主よ。それはできません。私はまだ一度も、きよくない物や汚れた物を食べたことがありません。」 044 ACT 010 015 すると、再び声があって、彼にこう言った。「神がきよめた物を、きよくないと言ってはならない。」 044 ACT 010 016 こんなことが三回あって後、その入れ物はすぐ天に引き上げられた。 044 ACT 010 017 ペテロが、いま見た幻はいったいどういうことだろう、と思い惑っていると、ちょうどそのとき、コルネリオから遣わされた人たちが、シモンの家をたずね当てて、その門口に立っていた。 044 ACT 010 018 そして、声をかけて、ペテロと呼ばれるシモンという人がここに泊まっているだろうかと尋ねていた。 044 ACT 010 019 ペテロが幻について思い巡らしているとき、御霊が彼にこう言われた。「見なさい。三人の人があなたをたずねて来ています。 044 ACT 010 020 さあ、下に降りて行って、ためらわずに、彼らといっしょに行きなさい。彼らを遣わしたのはわたしです。」 044 ACT 010 021 そこでペテロは、その人たちのところへ降りて行って、こう言った。「あなたがたのたずねているペテロは、私です。どんなご用でおいでになったのですか。」 044 ACT 010 022 すると彼らはこう言った。「百人隊長コルネリオという正しい人で、神を恐れかしこみ、ユダヤの全国民に評判の良い人が、あなたを自分の家にお招きして、あなたからお話を聞くように、聖なる御使いによって示されました。」 044 ACT 010 023 それで、ペテロは、彼らを中に入れて泊まらせた。 明くる日、ペテロは、立って彼らといっしょに出かけた。ヨッパの兄弟たちも数人同行した。 044 ACT 010 024 その翌日、彼らはカイザリヤに着いた。コルネリオは、親族や親しい友人たちを呼び集め、彼らを待っていた。 044 ACT 010 025 ペテロが着くと、コルネリオは出迎えて、彼の足もとにひれ伏して拝んだ。 044 ACT 010 026 するとペテロは彼を起こして、「お立ちなさい。私もひとりの人間です。」と言った。 044 ACT 010 027 それから、コルネリオとことばをかわしながら家にはいり、多くの人が集まっているのを見て、 044 ACT 010 028 彼らにこう言った。「ご承知のとおり、ユダヤ人が外国人の仲間にはいったり、訪問したりするのは、律法にかなわないことです。ところが、神は私に、どんな人のことでも、きよくないとか、汚れているとか言ってはならないことを示してくださいました。 044 ACT 010 029 それで、お迎えを受けたとき、ためらわずに来たのです。そこで、お尋ねしますが、あなたがたは、いったいどういうわけで私をお招きになったのですか。」 044 ACT 010 030 するとコルネリオがこう言った。「四日前のこの時刻に、私が家で午後三時の祈りをしていますと、どうでしょう、輝いた衣を着た人が、私の前に立って、 044 ACT 010 031 こう言いました。『コルネリオ。あなたの祈りは聞き入れられ、あなたの施しは神の前に覚えられている。 044 ACT 010 032 それで、ヨッパに人をやってシモンを招きなさい。彼の名はペテロとも呼ばれている。この人は海べにある、皮なめしのシモンの家に泊まっている。』 044 ACT 010 033 それで、私はすぐあなたのところへ人を送ったのですが、よくおいでくださいました。いま私たちは、主があなたにお命じになったすべてのことを伺おうとして、みな神の御前に出ております。」 044 ACT 010 034 そこでペテロは、口を開いてこう言った。 「これで私は、はっきりわかりました。神はかたよったことをなさらず、 044 ACT 010 035 どの国の人であっても、神を恐れかしこみ、正義を行なう人なら、神に受け入れられるのです。 044 ACT 010 036 神はイエス・キリストによって、平和を宣べ伝え、イスラエルの子孫にみことばをお送りになりました。このイエス・キリストはすべての人の主です。 044 ACT 010 037 あなたがたは、ヨハネが宣べ伝えたバプテスマの後、ガリラヤから始まって、ユダヤ全土に起こった事がらを、よくご存じです。 044 ACT 010 038 それは、ナザレのイエスのことです。神はこの方に聖霊と力を注がれました。このイエスは、神がともにおられたので、巡り歩いて良いわざをなし、また悪魔に制せられているすべての者をいやされました。 044 ACT 010 039 私たちは、イエスがユダヤ人の地とエルサレムとで行なわれたすべてのことの証人です。人々はこの方を木にかけて殺しました。 044 ACT 010 040 しかし、神はこのイエスを三日目によみがえらせ、現われさせてくださいました。 044 ACT 010 041 しかし、それはすべての人々にではなく、神によって前もって選ばれた証人である私たちにです。私たちは、イエスが死者の中からよみがえられて後、ごいっしょに食事をしました。 044 ACT 010 042 イエスは私たちに命じて、このイエスこそ生きている者と死んだ者とのさばき主として、神によって定められた方であることを人々に宣べ伝え、そのあかしをするように、言われたのです。 044 ACT 010 043 イエスについては、預言者たちもみな、この方を信じる者はだれでも、その名によって罪の赦しが受けられる、とあかししています。」 044 ACT 010 044 ペテロがなおもこれらのことばを話し続けているとき、みことばに耳を傾けていたすべての人々に、聖霊がお下りになった。 044 ACT 010 045 割礼を受けている信者で、ペテロといっしょに来た人たちは、異邦人にも聖霊の賜物が注がれたので驚いた。 044 ACT 010 046 彼らが異言を話し、神を賛美するのを聞いたからである。そこでペテロはこう言った。 044 ACT 010 047 「この人たちは、私たちと同じように、聖霊を受けたのですから、いったいだれが、水をさし止めて、この人たちにバプテスマを受けさせないようにすることができましょうか。」 044 ACT 010 048 そして、イエス・キリストの御名によってバプテスマを受けるように彼らに命じた。彼らは、ペテロに数日間滞在するように願った。 044 ACT 011 001 さて、使徒たちやユダヤにいる兄弟たちは、異邦人たちも神のみことばを受け入れた、ということを耳にした。 044 ACT 011 002 そこで、ペテロがエルサレムに上ったとき、割礼を受けた者たちは、彼を非難して、 044 ACT 011 003 「あなたは割礼のない人々のところに行って、彼らといっしょに食事をした。」と言った。 044 ACT 011 004 そこでペテロは口を開いて、事の次第を順序正しく説明して言った。 044 ACT 011 005 「私がヨッパの町で祈っていると、うっとりと夢ごこちになり、幻を見ました。四隅をつり下げられた大きな敷布のような入れ物が天から降りて来て、私のところに届いたのです。 044 ACT 011 006 その中をよく見ると、地の四つ足の獣、野獣、はうもの、空の鳥などが見えました。 044 ACT 011 007 そして、『ペテロ。さあ、ほふって食べなさい。』と言う声を聞きました。 044 ACT 011 008 しかし私は、『主よ。それはできません。私はまだ一度も、きよくない物や汚れた物を食べたことがありません。』と言いました。 044 ACT 011 009 すると、もう一度天から声がして、『神がきよめた物を、きよくないと言ってはならない。』というお答えがありました。 044 ACT 011 010 こんなことが三回あって後、全部の物がまた天へ引き上げられました。 044 ACT 011 011 すると、どうでしょう。ちょうどそのとき、カイザリヤから私のところへ遣わされた三人の人が、私たちのいた家の前に来ていました。 044 ACT 011 012 そして御霊は私に、ためらわずにその人たちといっしょに行くように、と言われました。そこで、この六人の兄弟たちも私に同行して、私たちはその人の家にはいって行きました。 044 ACT 011 013 その人が私たちに告げたところによると、彼は御使いを見ましたが、御使いは彼の家の中に立って、『ヨッパに使いをやって、ペテロと呼ばれるシモンを招きなさい。 044 ACT 011 014 その人があなたとあなたの家にいるすべての人を救うことばを話してくれます。』と言ったというのです。 044 ACT 011 015 そこで私が話し始めていると、聖霊が、あの最初のとき私たちにお下りになったと同じように、彼らの上にもお下りになったのです。 044 ACT 011 016 私はそのとき、主が、『ヨハネは水でバプテスマを授けたが、あなたがたは、聖霊によってバプテスマを授けられる。』と言われたみことばを思い起こしました。 044 ACT 011 017 こういうわけですから、私たちが主イエス・キリストを信じたとき、神が私たちに下さったのと同じ賜物を、彼らにもお授けになったのなら、どうして私などが神のなさることを妨げることができましょう。」 044 ACT 011 018 人々はこれを聞いて沈黙し、「それでは、神は、いのちに至る悔い改めを異邦人にもお与えになったのだ。」と言って、神をほめたたえた。 044 ACT 011 019 さて、ステパノのことから起こった迫害によって散らされた人々は、フェニキヤ、キプロス、アンテオケまでも進んで行ったが、ユダヤ人以外の者にはだれにも、みことばを語らなかった。 044 ACT 011 020 ところが、その中にキプロス人とクレネ人が幾人かいて、アンテオケに来てからはギリシヤ人にも語りかけ、主イエスのことを宣べ伝えた。 044 ACT 011 021 そして、主の御手が彼らとともにあったので、大ぜいの人が信じて主に立ち返った。 044 ACT 011 022 この知らせが、エルサレムにある教会に聞こえたので、彼らはバルナバをアンテオケに派遣した。 044 ACT 011 023 彼はそこに到着したとき、神の恵みを見て喜び、みなが心を堅く保って、常に主にとどまっているようにと励ました。 044 ACT 011 024 彼はりっぱな人物で、聖霊と信仰に満ちている人であった。こうして、大ぜいの人が主に導かれた。 044 ACT 011 025 バルナバはサウロを捜しにタルソへ行き、 044 ACT 011 026 彼に会って、アンテオケに連れて来た。そして、まる一年の間、彼らは教会に集まり、大ぜいの人たちを教えた。弟子たちは、アンテオケで初めて、キリスト者と呼ばれるようになった。 044 ACT 011 027 そのころ、預言者たちがエルサレムからアンテオケに下って来た。 044 ACT 011 028 その中のひとりでアガボという人が立って、世界中に大ききんが起こると御霊によって預言したが、はたしてそれがクラウデオの治世に起こった。 044 ACT 011 029 そこで、弟子たちは、それぞれの力に応じて、ユダヤに住んでいる兄弟たちに救援の物を送ることに決めた。 044 ACT 011 030 彼らはそれを実行して、バルナバとサウロの手によって長老たちに送った。 044 ACT 012 001 そのころ、ヘロデ王は、教会の中のある人々を苦しめようとして、その手を伸ばし、 044 ACT 012 002 ヨハネの兄弟ヤコブを剣で殺した。 044 ACT 012 003 それがユダヤ人の気に入ったのを見て、次にはペテロをも捕えにかかった。それは、種なしパンの祝いの時期であった。 044 ACT 012 004 ヘロデはペテロを捕えて牢に入れ、四人一組の兵士四組に引き渡して監視させた。それは、過越の祭りの後に、民の前に引き出す考えであったからである。 044 ACT 012 005 こうしてペテロは牢に閉じ込められていた。教会は彼のために、神に熱心に祈り続けていた。 044 ACT 012 006 ところでヘロデが彼を引き出そうとしていた日の前夜、ペテロは二本の鎖につながれてふたりの兵士の間で寝ており、戸口には番兵たちが牢を監視していた。 044 ACT 012 007 すると突然、主の御使いが現われ、光が牢を照らした。御使いはペテロのわき腹をたたいて彼を起こし、「急いで立ち上がりなさい。」と言った。すると、鎖が彼の手から落ちた。 044 ACT 012 008 そして御使いが、「帯を締めて、くつをはきなさい。」と言うので、彼はそのとおりにした。すると、「上着を着て、私について来なさい。」と言った。 044 ACT 012 009 そこで、外に出て、御使いについて行った。彼には御使いのしている事が現実の事だとはわからず、幻を見ているのだと思われた。 044 ACT 012 010 彼らが、第一、第二の衛所を通り、町に通じる鉄の門まで来ると、門がひとりでに開いた。そこで、彼らは外に出て、ある通りを進んで行くと、御使いは、たちまち彼を離れた。 044 ACT 012 011 そのとき、ペテロは我に返って言った。「今、確かにわかった。主は御使いを遣わして、ヘロデの手から、また、ユダヤ人たちが待ち構えていたすべての災いから、私を救い出してくださったのだ。」 044 ACT 012 012 こうとわかったので、ペテロは、マルコと呼ばれているヨハネの母マリヤの家へ行った。そこには大ぜいの人が集まって、祈っていた。 044 ACT 012 013 彼が入口の戸をたたくと、ロダという女中が応対に出て来た。 044 ACT 012 014 ところが、ペテロの声だとわかると、喜びのあまり門をあけもしないで、奥へ駆け込み、ペテロが門の外に立っていることをみなに知らせた。 044 ACT 012 015 彼らは、「あなたは気が狂っているのだ。」と言ったが、彼女はほんとうだと言い張った。そこで彼らは、「それは彼の御使いだ。」と言っていた。 044 ACT 012 016 しかし、ペテロはたたき続けていた。彼らが門をあけると、そこにペテロがいたので、非常に驚いた。 044 ACT 012 017 しかし彼は、手ぶりで彼らを静かにさせ、主がどのようにして牢から救い出してくださったかを、彼らに話して聞かせた。それから、「このことをヤコブと兄弟たちに知らせてください。」と言って、ほかの所へ出て行った。 044 ACT 012 018 さて、朝になると、ペテロはどうなったのかと、兵士たちの間に大騒ぎが起こった。 044 ACT 012 019 ヘロデは彼を捜したが見つけることができないので、番兵たちを取り調べ、彼らを処刑するように命じ、そして、ユダヤからカイザリヤに下って行って、そこに滞在した。 044 ACT 012 020 さて、ヘロデはツロとシドンの人々に対して強い敵意を抱いていた。そこで彼らはみなでそろって彼をたずね、王の侍従ブラストに取り入って和解を求めた。その地方は王の国から食糧を得ていたからである。 044 ACT 012 021 定められた日に、ヘロデは王服を着けて、王座に着き、彼らに向かって演説を始めた。 044 ACT 012 022 そこで民衆は、「神の声だ。人間の声ではない。」と叫び続けた。 044 ACT 012 023 するとたちまち、主の使いがヘロデを打った。ヘロデが神に栄光を帰さなかったからである。彼は虫にかまれて息が絶えた。 044 ACT 012 024 主のみことばは、ますます盛んになり、広まって行った。 044 ACT 012 025 任務を果たしたバルナバとサウロは、マルコと呼ばれるヨハネを連れて、エルサレムから帰って来た。 044 ACT 013 001 さて、アンテオケには、そこにある教会に、バルナバ、ニゲルと呼ばれるシメオン、クレネ人ルキオ、国主ヘロデの乳兄弟マナエン、サウロなどという預言者や教師がいた。 044 ACT 013 002 彼らが主を礼拝し、断食をしていると、聖霊が、「バルナバとサウロをわたしのために聖別して、わたしが召した任務につかせなさい。」と言われた。 044 ACT 013 003 そこで彼らは、断食と祈りをして、ふたりの上に手を置いてから、送り出した。 044 ACT 013 004 ふたりは聖霊に遣わされて、セルキヤに下り、そこから船でキプロスに渡った。 044 ACT 013 005 サラミスに着くと、ユダヤ人の諸会堂で神のことばを宣べ始めた。彼らはヨハネを助手として連れていた。 044 ACT 013 006 島全体を巡回して、パポスまで行ったところ、にせ預言者で、名をバルイエスというユダヤ人の魔術師に出会った。 044 ACT 013 007 この男は地方総督セルギオ・パウロのもとにいた。この総督は賢明な人であって、バルナバとサウロを招いて、神のことばを聞きたいと思っていた。 044 ACT 013 008 ところが、魔術師エルマ(エルマという名を訳すと魔術師)は、ふたりに反対して、総督を信仰の道から遠ざけようとした。 044 ACT 013 009 しかし、サウロ、別名でパウロは、聖霊に満たされ、彼をにらみつけて、 044 ACT 013 010 言った。「ああ、あらゆる偽りとよこしまに満ちた者、悪魔の子、すべての正義の敵。おまえは、主のまっすぐな道を曲げることをやめないのか。 044 ACT 013 011 見よ。主の御手が今、おまえの上にある。おまえは盲になって、しばらくの間、日の光を見ることができなくなる。」と言った。するとたちまち、かすみとやみが彼をおおったので、彼は手を引いてくれる人を捜し回った。 044 ACT 013 012 この出来事を見た総督は、主の教えに驚嘆して信仰にはいった。 044 ACT 013 013 パウロの一行は、パポスから船出して、パンフリヤのペルガに渡った。ここでヨハネは一行から離れて、エルサレムに帰った。 044 ACT 013 014 しかし彼らは、ペルガから進んでピシデヤのアンテオケに行き、安息日に会堂にはいって席に着いた。 044 ACT 013 015 律法と預言者の朗読があって後、会堂の管理者たちが、彼らのところに人をやってこう言わせた。「兄弟たち。あなたがたのうちどなたか、この人たちのために奨励のことばがあったら、どうぞお話しください。」 044 ACT 013 016 そこでパウロが立ち上がり、手を振りながら言った。「イスラエルの人たち、ならびに神を恐れかしこむ方々。よく聞いてください。 044 ACT 013 017 この民イスラエルの神は、私たちの先祖たちを選び、民がエジプトの地に滞在していた間にこれを強大にし、御腕を高く上げて、彼らをその地から導き出してくださいました。 044 ACT 013 018 そして約四十年間、荒野で彼らを養われました。 044 ACT 013 019 それからカナンの地で、七つの民を滅ぼし、その地を相続財産として分配されました。これが、約四百五十年間のことです。 044 ACT 013 020 その後、預言者サムエルの時代までは、さばき人たちをお遣わしになりました。 044 ACT 013 021 それから彼らが王をほしがったので、神はベニヤミン族の人、キスの子サウロを四十年間お与えになりました。 044 ACT 013 022 それから、彼を退けて、ダビデを立てて王とされましたが、このダビデについてあかしして、こう言われました。『わたしはエッサイの子ダビデを見いだした。彼はわたしの心にかなった者で、わたしのこころを余すところなく実行する。』 044 ACT 013 023 神は、このダビデの子孫から、約束に従って、イスラエルに救い主イエスをお送りになりました。 044 ACT 013 024 この方がおいでになる前に、ヨハネがイスラエルのすべての民に、前もって悔い改めのバプテスマを宣べ伝えていました。 044 ACT 013 025 ヨハネは、その一生を終えようとするころ、こう言いました。『あなたがたは、私をだれと思うのですか。私はその方ではありません。ご覧なさい。その方は私のあとからおいでになります。私は、その方のくつのひもを解く値うちもありません。』 044 ACT 013 026 兄弟の方々、アブラハムの子孫の方々、ならびに皆さんの中で神を恐れかしこむ方々。この救いのことばは、私たちに送られているのです。 044 ACT 013 027 エルサレムに住む人々とその指導者たちは、このイエスを認めず、また安息日ごとに読まれる預言者のことばを理解せず、イエスを罪に定めて、その預言を成就させてしまいました。 044 ACT 013 028 そして、死罪に当たる何の理由も見いだせなかったのに、イエスを殺すことをピラトに強要したのです。 044 ACT 013 029 こうして、イエスについて書いてあることを全部成し終えて後、イエスを十字架から取り降ろして墓の中に納めました。 044 ACT 013 030 しかし、神はこの方を死者の中からよみがえらせたのです。 044 ACT 013 031 イエスは、ご自分といっしょにガリラヤからエルサレムに上った人たちに、幾日もお現われになりました。きょう、その人たちがこの民に対してイエスの証人となっています。 044 ACT 013 032 私たちは、神が先祖たちに対してなされた約束について、あなたがたに良い知らせをしているのです。 044 ACT 013 033 神は、イエスをよみがえらせ、それによって、私たち子孫にその約束を果たされました。詩篇の第二篇に、『あなたは、わたしの子。きょう、わたしがあなたを生んだ。』と書いてあるとおりです。 044 ACT 013 034 神がイエスを死者の中からよみがえらせて、もはや朽ちることのない方とされたことについては、『わたしはダビデに約束した聖なる確かな祝福を、あなたがたに与える。』というように言われていました。 044 ACT 013 035 ですから、ほかの所でこう言っておられます。『あなたは、あなたの聖者を朽ち果てるままにはしておかれない。』 044 ACT 013 036 ダビデは、その生きていた時代において神のみこころに仕えて後、死んで先祖の仲間に加えられ、ついに朽ち果てました。 044 ACT 013 037 しかし、神がよみがえらせた方は、朽ちることがありませんでした。 044 ACT 013 038 ですから、兄弟たち。あなたがたに罪の赦しが宣べられているのはこの方によるということを、よく知っておいてください。 044 ACT 013 039 モーセの律法によっては解放されることのできなかったすべての点について、信じる者はみな、この方によって、解放されるのです。 044 ACT 013 040 ですから、預言者に言われているような事が、あなたがたの上に起こらないように気をつけなさい。 044 ACT 013 041 『見よ。あざける者たち。驚け。そして滅びよ。 わたしはおまえたちの時代に一つのことをする。 それは、おまえたちに、どんなに説明しても、 とうてい信じられないほどのことである。』」 044 ACT 013 042 ふたりが会堂を出るとき、人々は、次の安息日にも同じことについて話してくれるように頼んだ。 044 ACT 013 043 会堂の集会が終わってからも、多くのユダヤ人と神を敬う改宗者たちが、パウロとバルナバについて来たので、ふたりは彼らと話し合って、いつまでも神の恵みにとどまっているように勧めた。 044 ACT 013 044 次の安息日には、ほとんど町中の人が、神のことばを聞きに集まって来た。 044 ACT 013 045 しかし、この群衆を見たユダヤ人たちは、ねたみに燃え、パウロの話に反対して、口ぎたなくののしった。 044 ACT 013 046 そこでパウロとバルナバは、はっきりとこう宣言した。「神のことばは、まずあなたがたに語られなければならなかったのです。しかし、あなたがたはそれを拒んで、自分自身を永遠のいのちにふさわしくない者と決めたのです。見なさい。私たちは、これからは異邦人のほうへ向かいます。 044 ACT 013 047 なぜなら、主は私たちに、こう命じておられるからです。 『わたしはあなたを立てて、異邦人の光とした。 あなたが地の果てまでも救いをもたらすためである。』」 044 ACT 013 048 異邦人たちは、それを聞いて喜び、主のみことばを賛美した。そして、永遠のいのちに定められていた人たちは、みな、信仰にはいった。 044 ACT 013 049 こうして、主のみことばは、この地方全体に広まった。 044 ACT 013 050 ところが、ユダヤ人たちは、神を敬う貴婦人たちや町の有力者たちを扇動して、パウロとバルナバを迫害させ、ふたりをその地方から追い出した。 044 ACT 013 051 ふたりは、彼らに対して足のちりを払い落として、イコニオムへ行った。 044 ACT 013 052 弟子たちは喜びと聖霊に満たされていた。 044 ACT 014 001 イコニオムでも、ふたりは連れ立ってユダヤ人の会堂にはいり、話をすると、ユダヤ人もギリシヤ人も大ぜいの人々が信仰にはいった。 044 ACT 014 002 しかし、信じようとしないユダヤ人たちは、異邦人たちをそそのかして、兄弟たちに対し悪意を抱かせた。 044 ACT 014 003 それでも、ふたりは長らく滞在し、主によって大胆に語った。主は、彼らの手にしるしと不思議なわざを行なわせ、御恵みのことばの証明をされた。 044 ACT 014 004 ところが、町の人々は二派に分かれ、ある者はユダヤ人の側につき、ある者は使徒たちの側についた。 044 ACT 014 005 異邦人とユダヤ人が彼らの指導者たちといっしょになって、使徒たちをはずかしめて、石打ちにしようと企てたとき、 044 ACT 014 006 ふたりはそれを知って、ルカオニヤの町であるルステラとデルベ、およびその付近の地方に難を避け、 044 ACT 014 007 そこで福音の宣教を続けた。 044 ACT 014 008 ルステラでのことであるが、ある足のきかない人がすわっていた。彼は生まれながらの足なえで、歩いたことがなかった。 044 ACT 014 009 この人がパウロの話すことに耳を傾けていた。パウロは彼に目を留め、いやされる信仰があるのを見て、 044 ACT 014 010 大声で、「自分の足で、まっすぐに立ちなさい。」と言った。すると彼は飛び上がって、歩き出した。 044 ACT 014 011 パウロのしたことを見た群衆は、声を張り上げ、ルカオニヤ語で、「神々が人間の姿をとって、私たちのところにお下りになったのだ。」と言った。 044 ACT 014 012 そして、バルナバをゼウスと呼び、パウロがおもに話す人であったので、パウロをヘルメスと呼んだ。 044 ACT 014 013 すると、町の門の前にあるゼウス神殿の祭司は、雄牛数頭と花飾りを門の前に携えて来て、群衆といっしょに、いけにえをささげようとした。 044 ACT 014 014 これを聞いた使徒たち、バルナバとパウロは、衣を裂いて、群衆の中に駆け込み、叫びながら、 044 ACT 014 015 言った。「皆さん。どうしてこんなことをするのですか。私たちも皆さんと同じ人間です。そして、あなたがたがこのようなむなしいことを捨てて、天と地と海とその中にあるすべてのものをお造りになった生ける神に立ち返るように、福音を宣べ伝えている者たちです。 044 ACT 014 016 過ぎ去った時代には、神はあらゆる国の人々がそれぞれ自分の道を歩むことを許しておられました。 044 ACT 014 017 とはいえ、ご自身のことをあかししないでおられたのではありません。すなわち、恵みをもって、天から雨を降らせ、実りの季節を与え、食物と喜びとで、あなたがたの心を満たしてくださったのです。」 044 ACT 014 018 こう言って、ようやくのことで、群衆が彼らにいけにえをささげるのをやめさせた。 044 ACT 014 019 ところが、アンテオケとイコニオムからユダヤ人たちが来て、群衆を抱き込み、パウロを石打ちにし、死んだものと思って、町の外に引きずり出した。 044 ACT 014 020 しかし、弟子たちがパウロを取り囲んでいると、彼は立ち上がって町にはいって行った。その翌日、彼はバルナバとともにデルベに向かった。 044 ACT 014 021 彼らはその町で福音を宣べ、多くの人を弟子としてから、ルステラとイコニオムとアンテオケとに引き返して、 044 ACT 014 022 弟子たちの心を強め、この信仰にしっかりとどまるように勧め、「私たちが神の国にはいるには、多くの苦しみを経なければならない。」と言った。 044 ACT 014 023 また、彼らのために教会ごとに長老たちを選び、断食をして祈って後、彼らをその信じていた主にゆだねた。 044 ACT 014 024 ふたりはピシデヤを通ってパンフリヤに着き、 044 ACT 014 025 ペルガでみことばを語ってから、アタリヤに下り、 044 ACT 014 026 そこから船でアンテオケに帰った。そこは、彼らがいま成し遂げた働きのために、以前神の恵みにゆだねられて送り出された所であった。 044 ACT 014 027 そこに着くと、教会の人々を集め、神が彼らとともにいて行なわれたすべてのことと、異邦人に信仰の門を開いてくださったこととを報告した。 044 ACT 014 028 そして、彼らはかなり長い期間を弟子たちとともに過ごした。 044 ACT 015 001 さて、ある人々がユダヤから下って来て、兄弟たちに、「モーセの慣習に従って割礼を受けなければ、あなたがたは救われない。」と教えていた。 044 ACT 015 002 そしてパウロやバルナバと彼らとの間に激しい対立と論争が生じたので、パウロとバルナバと、その仲間のうちの幾人かが、この問題について使徒たちや長老たちと話し合うために、エルサレムに上ることになった。 044 ACT 015 003 彼らは教会の人々に見送られ、フェニキヤとサマリヤを通る道々で、異邦人の改宗のことを詳しく話したので、すべての兄弟たちに大きな喜びをもたらした。 044 ACT 015 004 エルサレムに着くと、彼らは教会と使徒たちと長老たちに迎えられ、神が彼らとともにいて行なわれたことを、みなに報告した。 044 ACT 015 005 しかし、パリサイ派の者で信者になった人々が立ち上がり、「異邦人にも割礼を受けさせ、また、モーセの律法を守ることを命じるべきである。」と言った。 044 ACT 015 006 そこで使徒たちと長老たちは、この問題を検討するために集まった。 044 ACT 015 007 激しい論争があって後、ペテロが立ち上がって言った。「兄弟たち。ご存じのとおり、神は初めのころ、あなたがたの間で事をお決めになり、異邦人が私の口から福音のことばを聞いて信じるようにされたのです。 044 ACT 015 008 そして、人の心の中を知っておられる神は、私たちに与えられたと同じように異邦人にも聖霊を与えて、彼らのためにあかしをし、 044 ACT 015 009 私たちと彼らとに何の差別もつけず、彼らの心を信仰によってきよめてくださったのです。 044 ACT 015 010 それなのに、なぜ、今あなたがたは、私たちの先祖も私たちも負いきれなかったくびきを、あの弟子たちの首に掛けて、神を試みようとするのです。 044 ACT 015 011 私たちが主イエスの恵みによって救われたことを私たちは信じますが、あの人たちもそうなのです。」 044 ACT 015 012 すると、全会衆は沈黙してしまった。そして、バルナバとパウロが、彼らを通して神が異邦人の間で行なわれたしるしと不思議なわざについて話すのに、耳を傾けた。 044 ACT 015 013 ふたりが話し終えると、ヤコブがこう言った。「兄弟たち。私の言うことを聞いてください。 044 ACT 015 014 神が初めに、どのように異邦人を顧みて、その中から御名をもって呼ばれる民をお召しになったかは、シメオンが説明したとおりです。 044 ACT 015 015 預言者たちのことばもこれと一致しており、それにはこう書いてあります。 044 ACT 015 016 『この後、わたしは帰って来て、 倒れたダビデの幕屋を建て直す。 すなわち、廃墟と化した幕屋を建て直し、 それを元どおりにする。 044 ACT 015 017 それは、残った人々、すなわち、 わたしの名で呼ばれる異邦人がみな、 主を求めるようになるためである。 044 ACT 015 018 大昔からこれらのことを知らせておられる主が、 こう言われる。』 044 ACT 015 019 そこで、私の判断では、神に立ち返る異邦人を悩ませてはいけません。 044 ACT 015 020 ただ、偶像に供えて汚れた物と不品行と絞め殺した物と血とを避けるように書き送るべきだと思います。 044 ACT 015 021 昔から、町ごとにモーセの律法を宣べる者がいて、それが安息日ごとに諸会堂で読まれているからです。」 044 ACT 015 022 そこで使徒たちと長老たち、また、全教会もともに、彼らの中から人を選んで、パウロやバルナバといっしょにアンテオケへ送ることを決議した。選ばれたのは兄弟たちの中の指導者たちで、バルサバと呼ばれるユダおよびシラスであった。 044 ACT 015 023 彼らはこの人たちに託して、こう書き送った。「使徒および長老たちは、アンテオケ、シリヤ、キリキヤにいる異邦人の兄弟たちに、あいさつをいたします。 044 ACT 015 024 私たちの中のある者たちが、私たちからは何も指示を受けていないのに、いろいろなことを言ってあなたがたを動揺させ、あなたがたの心を乱したことを聞きました。 044 ACT 015 025 そこで、私たちは人々を選び、私たちの愛するバルナバおよびパウロといっしょに、あなたがたのところへ送ることに衆議一決しました。 044 ACT 015 026 このバルナバとパウロは、私たちの主イエス・キリストの御名のために、いのちを投げ出した人たちです。 044 ACT 015 027 こういうわけで、私たちはユダとシラスを送りました。彼らは口頭で同じ趣旨のことを伝えるはずです。 044 ACT 015 028 聖霊と私たちは、次のぜひ必要な事のほかは、あなたがたにその上、どんな重荷も負わせないことを決めました。 044 ACT 015 029 すなわち、偶像に供えた物と、血と、絞め殺した物と、不品行とを避けることです。これらのことを注意深く避けていれば、それで結構です。以上。」 044 ACT 015 030 さて、一行は送り出されて、アンテオケに下り、教会の人々を集めて、手紙を手渡した。 044 ACT 015 031 それを読んだ人々は、その励ましによって喜んだ。 044 ACT 015 032 ユダもシラスも預言者であったので、多くのことばをもって兄弟たちを励まし、また力づけた。 044 ACT 015 033 彼らは、しばらく滞在して後、兄弟たちの平安のあいさつに送られて、彼らを送り出した人々のところへ帰って行った。 044 ACT 015 034 パウロとバルナバはアンテオケにとどまって、ほかの多くの人々とともに、主のみことばを教え、宣べ伝えた。 044 ACT 015 036 幾日かたって後、パウロはバルナバにこう言った。「先に主のことばを伝えたすべての町々の兄弟たちのところに、またたずねて行って、どうしているか見て来ようではありませんか。」 044 ACT 015 037 ところが、バルナバは、マルコとも呼ばれるヨハネもいっしょに連れて行くつもりであった。 044 ACT 015 038 しかしパウロは、パンフリヤで一行から離れてしまい、仕事のために同行しなかったような者はいっしょに連れて行かないほうがよいと考えた。 044 ACT 015 039 そして激しい反目となり、その結果、互いに別行動をとることになって、バルナバはマルコを連れて、船でキプロスに渡って行った。 044 ACT 015 040 パウロはシラスを選び、兄弟たちから主の恵みにゆだねられて出発した。 044 ACT 015 041 そして、シリヤおよびキリキヤを通り、諸教会を力づけた。 044 ACT 016 001 それからパウロはデルベに、次いでルステラに行った。そこにテモテという弟子がいた。信者であるユダヤ婦人の子で、ギリシヤ人を父としていたが、 044 ACT 016 002 ルステラとイコニオムとの兄弟たちの間で評判の良い人であった。 044 ACT 016 003 パウロは、このテモテを連れて行きたかったので、その地方にいるユダヤ人の手前、彼に割礼を受けさせた。彼の父がギリシヤ人であることを、みなが知っていたからである。 044 ACT 016 004 さて、彼らは町々を巡回して、エルサレムの使徒たちと長老たちが決めた規定を守らせようと、人々にそれを伝えた。 044 ACT 016 005 こうして諸教会は、その信仰を強められ、日ごとに人数を増して行った。 044 ACT 016 006 それから彼らは、アジヤでみことばを語ることを聖霊によって禁じられたので、フルギヤ・ガラテヤの地方を通った。 044 ACT 016 007 こうしてムシヤに面した所に来たとき、ビテニヤのほうに行こうとしたが、イエスの御霊がそれをお許しにならなかった。 044 ACT 016 008 それでムシヤを通って、トロアスに下った。 044 ACT 016 009 ある夜、パウロは幻を見た。ひとりのマケドニヤ人が彼の前に立って、「マケドニヤに渡って来て、私たちを助けてください。」と懇願するのであった。 044 ACT 016 010 パウロがこの幻を見たとき、私たちはただちにマケドニヤへ出かけることにした。神が私たちを招いて、彼らに福音を宣べさせるのだ、と確信したからである。 044 ACT 016 011 そこで、私たちはトロアスから船に乗り、サモトラケに直航して、翌日ネアポリスに着いた。 044 ACT 016 012 それからピリピに行ったが、ここはマケドニヤのこの地方第一の町で、植民都市であった。私たちはこの町に幾日か滞在した。 044 ACT 016 013 安息日に、私たちは町の門を出て、祈り場があると思われた川岸に行き、そこに腰をおろして、集まった女たちに話した。 044 ACT 016 014 テアテラ市の紫布の商人で、神を敬う、ルデヤという女が聞いていたが、主は彼女の心を開いて、パウロの語る事に心を留めるようにされた。 044 ACT 016 015 そして、彼女も、またその家族もバプテスマを受けたとき、彼女は、「私を主に忠実な者とお思いでしたら、どうか、私の家に来てお泊まりください。」と言って頼み、強いてそうさせた。 044 ACT 016 016 私たちが祈り場に行く途中、占いの霊につかれた若い女奴隷に出会った。この女は占いをして、主人たちに多くの利益を得させている者であった。 044 ACT 016 017 彼女はパウロと私たちのあとについて来て、「この人たちは、いと高き神のしもべたちで、救いの道をあなたがたに宣べ伝えている人たちです。」と叫び続けた。 044 ACT 016 018 幾日もこんなことをするので、困り果てたパウロは、振り返ってその霊に、「イエス・キリストの御名によって命じる。この女から出て行け。」と言った。すると即座に、霊は出て行った。 044 ACT 016 019 彼女の主人たちは、もうける望みがなくなったのを見て、パウロとシラスを捕え、役人たちに訴えるため広場へ引き立てて行った。 044 ACT 016 020 そして、ふたりを長官たちの前に引き出してこう言った。「この者たちはユダヤ人でありまして、私たちの町をかき乱し、 044 ACT 016 021 ローマ人である私たちが、採用も実行もしてはならない風習を宣伝しております。」 044 ACT 016 022 群衆もふたりに反対して立ったので、長官たちは、ふたりの着物をはいでむちで打つように命じ、 044 ACT 016 023 何度もむちで打たせてから、ふたりを牢に入れて、看守には厳重に番をするように命じた。 044 ACT 016 024 この命令を受けた看守は、ふたりを奥の牢に入れ、足に足かせを掛けた。 044 ACT 016 025 真夜中ごろ、パウロとシラスが神に祈りつつ賛美の歌を歌っていると、ほかの囚人たちも聞き入っていた。 044 ACT 016 026 ところが突然、大地震が起こって、獄舎の土台が揺れ動き、たちまちとびらが全部あいて、みなの鎖が解けてしまった。 044 ACT 016 027 目をさました看守は、見ると、牢のとびらがあいているので、囚人たちが逃げてしまったものと思い、剣を抜いて自殺しようとした。 044 ACT 016 028 そこでパウロは大声で、「自害してはいけない。私たちはみなここにいる。」と叫んだ。 044 ACT 016 029 看守はあかりを取り、駆け込んで来て、パウロとシラスとの前に震えながらひれ伏した。 044 ACT 016 030 そして、ふたりを外に連れ出して「先生がた。救われるためには、何をしなければなりませんか。」と言った。 044 ACT 016 031 ふたりは、「主イエスを信じなさい。そうすれば、あなたもあなたの家族も救われます。」と言った。 044 ACT 016 032 そして、彼とその家の者全部に主のことばを語った。 044 ACT 016 033 看守は、その夜、時を移さず、ふたりを引き取り、その打ち傷を洗った。そして、そのあとですぐ、彼とその家の者全部がバプテスマを受けた。 044 ACT 016 034 それから、ふたりをその家に案内して、食事のもてなしをし、全家族そろって神を信じたことを心から喜んだ。 044 ACT 016 035 夜が明けると、長官たちは警吏たちを送って、「あの人たちを釈放せよ。」と言わせた。 044 ACT 016 036 そこで看守は、この命令をパウロに伝えて、「長官たちが、あなたがたを釈放するようにと、使いをよこしました。どうぞ、ここを出て、ご無事に行ってください。」と言った。 044 ACT 016 037 ところが、パウロは、警吏たちにこう言った。「彼らは、ローマ人である私たちを、取り調べもせずに公衆の前でむち打ち、牢に入れてしまいました。それなのに今になって、ひそかに私たちを送り出そうとするのですか。とんでもない。彼ら自身で出向いて来て、私たちを連れ出すべきです。」 044 ACT 016 038 警吏たちは、このことばを長官たちに報告した。すると長官たちは、ふたりがローマ人であると聞いて恐れ、 044 ACT 016 039 自分で出向いて来て、わびを言い、ふたりを外に出して、町から立ち去ってくれるように頼んだ。 044 ACT 016 040 牢を出たふたりは、ルデヤの家に行った。そして兄弟たちに会い、彼らを励ましてから出て行った。 044 ACT 017 001 彼らはアムピポリスとアポロニヤを通って、テサロニケへ行った。そこには、ユダヤ人の会堂があった。 044 ACT 017 002 パウロはいつもしているように、会堂にはいって行って、三つの安息日にわたり、聖書に基づいて彼らと論じた。 044 ACT 017 003 そして、キリストは苦しみを受け、死者の中からよみがえらなければならないことを説明し、また論証して、「私があなたがたに伝えているこのイエスこそ、キリストなのです。」と言った。 044 ACT 017 004 彼らのうちの幾人かはよくわかって、パウロとシラスに従った。またほかに、神を敬うギリシヤ人が大ぜいおり、貴婦人たちも少なくなかった。 044 ACT 017 005 ところが、ねたみにかられたユダヤ人は、町のならず者をかり集め、暴動を起こして町を騒がせ、またヤソンの家を襲い、ふたりを人々の前に引き出そうとして捜した。 044 ACT 017 006 しかし、見つからないので、ヤソンと兄弟たちの幾人かを、町の役人たちのところへひっぱって行き、大声でこう言った。「世界中を騒がせて来た者たちが、ここにもはいり込んでいます。 044 ACT 017 007 それをヤソンが家に迎え入れたのです。彼らはみな、イエスという別の王がいると言って、カイザルの詔勅にそむく行ないをしているのです。」 044 ACT 017 008 こうして、それを聞いた群衆と町の役人たちとを不安に陥れた。 044 ACT 017 009 彼らは、ヤソンとそのほかの者たちから保証金を取ったうえで釈放した。 044 ACT 017 010 兄弟たちは、すぐさま、夜のうちにパウロとシラスをベレヤへ送り出した。ふたりはそこに着くと、ユダヤ人の会堂にはいって行った。 044 ACT 017 011 ここのユダヤ人は、テサロニケにいる者たちよりも良い人たちで、非常に熱心にみことばを聞き、はたしてそのとおりかどうかと毎日聖書を調べた。 044 ACT 017 012 そのため、彼らのうちの多くの者が信仰にはいった。その中にはギリシヤの貴婦人や男子も少なくなかった。 044 ACT 017 013 ところが、テサロニケのユダヤ人たちは、パウロがベレヤでも神のことばを伝えていることを知り、ここにもやって来て、群衆を扇動して騒ぎを起こした。 044 ACT 017 014 そこで兄弟たちは、ただちにパウロを送り出して海べまで行かせたが、シラスとテモテはベレヤに踏みとどまった。 044 ACT 017 015 パウロを案内した人たちは、彼をアテネまで連れて行った。そしてシラスとテモテに一刻も早く来るように、という命令を受けて、帰って行った。 044 ACT 017 016 さて、アテネでふたりを待っていたパウロは、町が偶像でいっぱいなのを見て、心に憤りを感じた。 044 ACT 017 017 そこでパウロは、会堂ではユダヤ人や神を敬う人たちと論じ、広場では毎日そこに居合わせた人たちと論じた。 044 ACT 017 018 エピクロス派とストア派の哲学者たちも幾人かいて、パウロと論じ合っていたが、その中のある者たちは、「このおしゃべりは、何を言うつもりなのか。」と言い、ほかの者たちは、「彼は外国の神々を伝えているらしい。」と言った。パウロがイエスと復活とを宣べ伝えたからである。 044 ACT 017 019 そこで彼らは、パウロをアレオパゴスに連れて行ってこう言った。「あなたの語っているその新しい教えがどんなものであるか、知らせていただけませんか。 044 ACT 017 020 私たちにとっては珍しいことを聞かせてくださるので、それがいったいどんなものか、私たちは知りたいのです。」 044 ACT 017 021 アテネ人も、そこに住む外国人もみな、何か耳新しいことを話したり、聞いたりすることだけで、日を過ごしていた。 044 ACT 017 022 そこでパウロは、アレオパゴスの真中に立って言った。「アテネの人たち。あらゆる点から見て、私はあなたがたを宗教心にあつい方々だと見ております。 044 ACT 017 023 私が道を通りながら、あなたがたの拝むものをよく見ているうちに、『知られない神に。』と刻まれた祭壇があるのを見つけました。そこで、あなたがたが知らずに拝んでいるものを、教えましょう。 044 ACT 017 024 この世界とその中にあるすべてのものをお造りになった神は、天地の主ですから、手でこしらえた宮などにはお住みになりません。 044 ACT 017 025 また、何かに不自由なことでもあるかのように、人の手によって仕えられる必要はありません。神は、すべての人に、いのちと息と万物とをお与えになった方だからです。 044 ACT 017 026 神は、ひとりの人からすべての国の人々を造り出して、地の全面に住まわせ、それぞれに決められた時代と、その住まいの境界とをお定めになりました。 044 ACT 017 027 これは、神を求めさせるためであって、もし探り求めることでもあるなら、神を見いだすこともあるのです。確かに、神は、私たちひとりひとりから遠く離れてはおられません。 044 ACT 017 028 私たちは、神の中に生き、動き、また存在しているのです。あなたがたのある詩人たちも、『私たちもまたその子孫である。』と言ったとおりです。 044 ACT 017 029 そのように私たちは神の子孫ですから、神を、人間の技術や工夫で造った金や銀や石などの像と同じものと考えてはいけません。 044 ACT 017 030 神は、そのような無知の時代を見過ごしておられましたが、今は、どこででもすべての人に悔い改めを命じておられます。 044 ACT 017 031 なぜなら、神は、お立てになったひとりの人により義をもってこの世界をさばくため、日を決めておられるからです。そして、その方を死者の中からよみがえらせることによって、このことの確証をすべての人にお与えになったのです。」 044 ACT 017 032 死者の復活のことを聞くと、ある者たちはあざ笑い、ほかの者たちは、「このことについては、またいつか聞くことにしよう。」と言った。 044 ACT 017 033 こうして、パウロは彼らの中から出て行った。 044 ACT 017 034 しかし、彼につき従って信仰にはいった人たちもいた。それは、アレオパゴスの裁判官デオヌシオ、ダマリスという女、その他の人々であった。 044 ACT 018 001 その後、パウロはアテネを去って、コリントへ行った。 044 ACT 018 002 ここで、アクラというポント生まれのユダヤ人およびその妻プリスキラに出会った。クラウデオ帝が、すべてのユダヤ人をローマから退去させるように命令したため、近ごろイタリヤから来ていたのである。パウロはふたりのところに行き、 044 ACT 018 003 自分も同業者であったので、その家に住んでいっしょに仕事をした。彼らの職業は天幕作りであった。 044 ACT 018 004 パウロは安息日ごとに会堂で論じ、ユダヤ人とギリシヤ人を承服させようとした。 044 ACT 018 005 そして、シラスとテモテがマケドニヤから下って来ると、パウロはみことばを教えることに専念し、イエスがキリストであることを、ユダヤ人たちにはっきりと宣言した。 044 ACT 018 006 しかし、彼らが反抗して暴言を吐いたので、パウロは着物を振り払って、「あなたがたの血は、あなたがたの頭上にふりかかれ。私には責任がない。今から私は異邦人のほうに行く。」と言った。 044 ACT 018 007 そして、そこを去って、神を敬うテテオ・ユストという人の家に行った。その家は会堂の隣であった。 044 ACT 018 008 会堂管理者クリスポは、一家をあげて主を信じた。また、多くのコリント人も聞いて信じ、バプテスマを受けた。 044 ACT 018 009 ある夜、主は幻によってパウロに、「恐れないで、語り続けなさい。黙ってはいけない。 044 ACT 018 010 わたしがあなたとともにいるのだ。だれもあなたを襲って、危害を加える者はない。この町には、わたしの民がたくさんいるから。」と言われた。 044 ACT 018 011 そこでパウロは、一年半ここに腰を据えて、彼らの間で神のことばを教え続けた。 044 ACT 018 012 ところが、ガリオがアカヤの地方総督であったとき、ユダヤ人たちはこぞってパウロに反抗し、彼を法廷に引いて行って、 044 ACT 018 013 「この人は、律法にそむいて神を拝むことを、人々に説き勧めています。」と訴えた。 044 ACT 018 014 パウロが口を開こうとすると、ガリオはユダヤ人に向かってこう言った。「ユダヤ人の諸君。不正事件や悪質な犯罪のことであれば、私は当然、あなたがたの訴えを取り上げもしようが、 044 ACT 018 015 あなたがたの、ことばや名称や律法に関する問題であるなら、自分たちで始末をつけるのがよかろう。私はそのようなことの裁判官にはなりたくない。」 044 ACT 018 016 こうして、彼らを法廷から追い出した。 044 ACT 018 017 そこで、みなの者は、会堂管理者ソステネを捕え、法廷の前で打ちたたいた。ガリオは、そのようなことは少しも気にしなかった。 044 ACT 018 018 パウロは、なお長らく滞在してから、兄弟たちに別れを告げて、シリヤへ向けて出帆した。プリスキラとアクラも同行した。パウロは一つの誓願を立てていたので、ケンクレヤで髪をそった。 044 ACT 018 019 彼らがエペソに着くと、パウロはふたりをそこに残し、自分だけ会堂にはいって、ユダヤ人たちと論じた。 044 ACT 018 020 人々は、もっと長くとどまるように頼んだが、彼は聞き入れないで、 044 ACT 018 021 「神のみこころなら、またあなたがたのところに帰って来ます。」と言って別れを告げ、エペソから船出した。 044 ACT 018 022 それからカイザリヤに上陸してエルサレムに上り、教会にあいさつしてからアンテオケに下って行った。 044 ACT 018 023 そこにしばらくいてから、彼はまた出発し、ガラテヤの地方およびフルギヤを次々に巡って、すべての弟子たちを力づけた。 044 ACT 018 024 さて、アレキサンドリヤの生まれで、雄弁なアポロというユダヤ人がエペソに来た。彼は聖書に通じていた。 044 ACT 018 025 この人は、主の道の教えを受け、霊に燃えて、イエスのことを正確に語り、また教えていたが、ただヨハネのバプテスマしか知らなかった。 044 ACT 018 026 彼は会堂で大胆に話し始めた。それを聞いていたプリスキラとアクラは、彼を招き入れて、神の道をもっと正確に彼に説明した。 044 ACT 018 027 そして、アポロがアカヤへ渡りたいと思っていたので、兄弟たちは彼を励まし、そこの弟子たちに、彼を歓迎してくれるようにと手紙を書いた。彼はそこに着くと、すでに恵みによって信者になっていた人たちを大いに助けた。 044 ACT 018 028 彼は聖書によって、イエスがキリストであることを証明して、力強く、公然とユダヤ人たちを論破したからである。 044 ACT 019 001 アポロがコリントにいた間に、パウロは奥地を通ってエペソに来た。そして幾人かの弟子に出会って、 044 ACT 019 002 「信じたとき、聖霊を受けましたか。」と尋ねると、彼らは、「いいえ、聖霊の与えられることは、聞きもしませんでした。」と答えた。 044 ACT 019 003 「では、どんなバプテスマを受けたのですか。」と言うと、「ヨハネのバプテスマです。」と答えた。 044 ACT 019 004 そこで、パウロは、「ヨハネは、自分のあとに来られるイエスを信じるように人々に告げて、悔い改めのバプテスマを授けたのです。」と言った。 044 ACT 019 005 これを聞いたその人々は、主イエスの御名によってバプテスマを受けた。 044 ACT 019 006 パウロが彼らの上に手を置いたとき、聖霊が彼らに臨まれ、彼らは異言を語ったり、預言をしたりした。 044 ACT 019 007 その人々は、みなで十二人ほどであった。 044 ACT 019 008 それから、パウロは会堂にはいって、三か月の間大胆に語り、神の国について論じて、彼らを説得しようと努めた。 044 ACT 019 009 しかし、ある者たちが心をかたくなにして聞き入れず、会衆の前で、この道をののしったので、パウロは彼らから身を引き、弟子たちをも退かせて、毎日ツラノの講堂で論じた。 044 ACT 019 010 これが二年の間続いたので、アジヤに住む者はみな、ユダヤ人もギリシヤ人も主のことばを聞いた。 044 ACT 019 011 神はパウロの手によって驚くべき奇蹟を行なわれた。 044 ACT 019 012 パウロの身に着けている手ぬぐいや前掛けをはずして病人に当てると、その病気は去り、悪霊は出て行った。 044 ACT 019 013 ところが、諸国を巡回しているユダヤ人の魔よけ祈祷師の中のある者たちも、ためしに、悪霊につかれている者に向かって主イエスの御名をとなえ、「パウロの宣べ伝えているイエスによって、おまえたちに命じる。」と言ってみた。 044 ACT 019 014 そういうことをしたのは、ユダヤの祭司長スケワという人の七人の息子たちであった。 044 ACT 019 015 すると悪霊が答えて、「自分はイエスを知っているし、パウロもよく知っている。けれどおまえたちは何者だ。」と言った。 044 ACT 019 016 そして悪霊につかれている人は、彼らに飛びかかり、ふたりの者を押えつけて、みなを打ち負かしたので、彼らは裸にされ、傷を負ってその家を逃げ出した。 044 ACT 019 017 このことがエペソに住むユダヤ人とギリシヤ人の全部に知れ渡ったので、みな恐れを感じて、主イエスの御名をあがめるようになった。 044 ACT 019 018 そして、信仰にはいった人たちの中から多くの者がやって来て、自分たちのしていることをさらけ出して告白した。 044 ACT 019 019 また魔術を行なっていた多くの者が、その書物をかかえて来て、みなの前で焼き捨てた。その値段を合計してみると、銀貨五万枚になった。 044 ACT 019 020 こうして、主のことばは驚くほど広まり、ますます力強くなって行った。 044 ACT 019 021 これらのことが一段落すると、パウロは御霊の示しにより、マケドニヤとアカヤを通ったあとでエルサレムに行くことにした。そして、「私はそこに行ってから、ローマも見なければならない。」と言った。 044 ACT 019 022 そこで、自分に仕えている者の中からテモテとエラストのふたりをマケドニヤに送り出したが、パウロ自身は、なおしばらくアジヤにとどまっていた。 044 ACT 019 023 そのころ、この道のことから、ただならぬ騒動が持ち上がった。 044 ACT 019 024 それというのは、デメテリオという銀細工人がいて、銀でアルテミス神殿の模型を作り、職人たちにかなりの収入を得させていたが、 044 ACT 019 025 彼が、その職人たちや、同業の者たちをも集めて、こう言ったからである。「皆さん。ご承知のように、私たちが繁盛しているのは、この仕事のおかげです。 044 ACT 019 026 ところが、皆さんが見てもいるし聞いてもいるように、あのパウロが、手で作った物など神ではないと言って、エペソばかりか、ほとんどアジヤ全体にわたって、大ぜいの人々を説き伏せ、迷わせているのです。 044 ACT 019 027 これでは、私たちのこの仕事も信用を失う危険があるばかりか、大女神アルテミスの神殿も顧みられなくなり、全アジヤ、全世界の拝むこの大女神のご威光も地に落ちてしまいそうです。」 044 ACT 019 028 そう聞いて、彼らは大いに怒り、「偉大なのはエペソ人のアルテミスだ。」と叫び始めた。 044 ACT 019 029 そして、町中が大騒ぎになり、人々はパウロの同行者であるマケドニヤ人ガイオとアリスタルコを捕え、一団となって劇場へなだれ込んだ。 044 ACT 019 030 パウロは、その集団の中にはいって行こうとしたが、弟子たちがそうさせなかった。 044 ACT 019 031 アジヤ州の高官で、パウロの友人である人たちも、彼に使いを送って、劇場にはいらないように頼んだ。 044 ACT 019 032 ところで、集会は混乱状態に陥り、大多数の者は、なぜ集まったのかさえ知らなかったので、ある者はこのことを叫び、ほかの者は別のことを叫んでいた。 044 ACT 019 033 ユダヤ人たちがアレキサンデルという者を前に押し出したので、群衆の中のある人たちが彼を促すと、彼は手を振って、会衆に弁明しようとした。 044 ACT 019 034 しかし、彼がユダヤ人だとわかると、みなの者がいっせいに声をあげ、「偉大なのはエペソ人のアルテミスだ。」と二時間ばかりも叫び続けた。 044 ACT 019 035 町の書記役は、群衆を押し静めてこう言った。「エペソの皆さん。エペソの町が、大女神アルテミスと天から下ったそのご神体との守護者であることを知らない者が、いったいいるでしょうか。 044 ACT 019 036 これは否定できない事実ですから、皆さんは静かにして、軽はずみなことをしないようにしなければいけません。 044 ACT 019 037 皆さんがここに引き連れて来たこの人たちは、宮を汚した者でもなく、私たちの女神をそしった者でもないのです。 044 ACT 019 038 それで、もしデメテリオとその仲間の職人たちが、だれかに文句があるのなら、裁判の日があるし、地方総督たちもいることですから、互いに訴え出たらよいのです。 044 ACT 019 039 もしあなたがたに、これ以上何か要求することがあるなら、正式の議会で決めてもらわなければいけません。 044 ACT 019 040 きょうの事件については、正当な理由がないのですから、騒擾罪に問われる恐れがあります。その点に関しては、私たちはこの騒動の弁護はできません。」 044 ACT 019 041 こう言って、その集まりを解散させた。 044 ACT 020 001 騒ぎが治まると、パウロは弟子たちを呼び集めて励まし、別れを告げて、マケドニヤへ向かって出発した。 044 ACT 020 002 そして、その地方を通り、多くの勧めをして兄弟たちを励ましてから、ギリシヤに来た。 044 ACT 020 003 パウロはここで三か月を過ごしたが、そこからシリヤに向けて船出しようというときに、彼に対するユダヤ人の陰謀があったため、彼はマケドニヤを経て帰ることにした。 044 ACT 020 004 プロの子であるベレヤ人ソパテロ、テサロニケ人アリスタルコとセクンド、デルベ人ガイオ、テモテ、アジヤ人テキコとトロピモは、パウロに同行していたが、 044 ACT 020 005 彼らは先発して、トロアスで私たちを待っていた。 044 ACT 020 006 種なしパンの祝いが過ぎてから、私たちはピリピから船出し、五日かかってトロアスで彼らと落ち合い、そこに七日間滞在した。 044 ACT 020 007 週の初めの日に、私たちはパンを裂くために集まった。そのときパウロは、翌日出発することにしていたので、人々と語り合い、夜中まで語り続けた。 044 ACT 020 008 私たちが集まっていた屋上の間には、ともしびがたくさんともしてあった。 044 ACT 020 009 ユテコというひとりの青年が窓のところに腰を掛けていたが、ひどく眠けがさし、パウロの話が長く続くので、とうとう眠り込んでしまって、三階から下に落ちた。抱き起こしてみると、もう死んでいた。 044 ACT 020 010 パウロは降りて来て、彼の上に身をかがめ、彼を抱きかかえて、「心配することはない。まだいのちがあります。」と言った。 044 ACT 020 011 そして、また上がって行き、パンを裂いて食べてから、明け方まで長く話し合って、それから出発した。 044 ACT 020 012 人々は生き返った青年を家に連れて行き、ひとかたならず慰められた。 044 ACT 020 013 さて、私たちは先に船に乗り込んで、アソスに向けて出帆した。そしてアソスでパウロを船に乗せることにしていた。パウロが、自分は陸路をとるつもりで、そう決めておいたからである。 044 ACT 020 014 こうして、パウロはアソスで私たちと落ち合い、私たちは彼を船に乗せてミテレネに着いた。 044 ACT 020 015 そこから出帆して、翌日キヨスの沖に達し、次の日サモスに立ち寄り、その翌日ミレトに着いた。 044 ACT 020 016 それはパウロが、アジヤで時間を取られないようにと、エペソには寄港しないで行くことに決めていたからである。彼は、できれば五旬節の日にはエルサレムに着いていたい、と旅路を急いでいたのである。 044 ACT 020 017 パウロは、ミレトからエペソに使いを送って、教会の長老たちを呼んだ。 044 ACT 020 018 彼らが集まって来たとき、パウロはこう言った。 「皆さんは、私がアジヤに足を踏み入れた最初の日から、私がいつもどんなふうにあなたがたと過ごして来たか、よくご存じです。 044 ACT 020 019 私は謙遜の限りを尽くし、涙をもって、またユダヤ人の陰謀によりわが身にふりかかる数々の試練の中で、主に仕えました。 044 ACT 020 020 益になることは、少しもためらわず、あなたがたに知らせました。人々の前でも、家々でも、あなたがたを教え、 044 ACT 020 021 ユダヤ人にもギリシヤ人にも、神に対する悔い改めと、私たちの主イエスに対する信仰とをはっきりと主張したのです。 044 ACT 020 022 いま私は、心を縛られて、エルサレムに上る途中です。そこで私にどんなことが起こるのかわかりません。 044 ACT 020 023 ただわかっているのは、聖霊がどの町でも私にはっきりとあかしされて、なわめと苦しみが私を待っていると言われることです。 044 ACT 020 024 けれども、私が自分の走るべき行程を走り尽くし、主イエスから受けた、神の恵みの福音をあかしする任務を果たし終えることができるなら、私のいのちは少しも惜しいとは思いません。 044 ACT 020 025 皆さん。御国を宣べ伝えてあなたがたの中を巡回した私の顔を、あなたがたはもう二度と見ることがないことを、いま私は知っています。 044 ACT 020 026 ですから、私はきょうここで、あなたがたに宣言します。私は、すべての人たちが受けるさばきについて責任がありません。 044 ACT 020 027 私は、神のご計画の全体を、余すところなくあなたがたに知らせておいたからです。 044 ACT 020 028 あなたがたは自分自身と群れの全体とに気を配りなさい。聖霊は、神がご自身の血をもって買い取られた神の教会を牧させるために、あなたがたを群れの監督にお立てになったのです。 044 ACT 020 029 私が出発したあと、狂暴な狼があなたがたの中にはいり込んで来て、群れを荒らし回ることを、私は知っています。 044 ACT 020 030 あなたがた自身の中からも、いろいろな曲がったことを語って、弟子たちを自分のほうに引き込もうとする者たちが起こるでしょう。 044 ACT 020 031 ですから、目をさましていなさい。私が三年の間、夜も昼も、涙とともにあなたがたひとりひとりを訓戒し続けて来たことを、思い出してください。 044 ACT 020 032 いま私は、あなたがたを神とその恵みのみことばとにゆだねます。みことばは、あなたがたを育成し、すべての聖別された人々の中にあって御国を継がせることができるのです。 044 ACT 020 033 私は、人の金銀や衣服をむさぼったことはありません。 044 ACT 020 034 あなたがた自身が知っているとおり、この両手は、私の必要のためにも、私とともにいる人たちのためにも、働いて来ました。 044 ACT 020 035 このように労苦して弱い者を助けなければならないこと、また、主イエスご自身が、『受けるよりも与えるほうが幸いである。』と言われたみことばを思い出すべきことを、私は、万事につけ、あなたがたに示して来たのです。」 044 ACT 020 036 こう言い終わって、パウロはひざまずき、みなの者とともに祈った。 044 ACT 020 037 みなは声をあげて泣き、パウロの首を抱いて幾度も口づけし、 044 ACT 020 038 彼が、「もう二度と私の顔を見ることがないでしょう。」と言ったことばによって、特に心を痛めた。それから、彼らはパウロを船まで見送った。 044 ACT 021 001 私たちは彼らと別れて出帆し、コスに直航し、翌日ロドスに着き、そこからパタラに渡った。 044 ACT 021 002 そこにはフェニキヤ行きの船があったので、それに乗って出帆した。 044 ACT 021 003 やがてキプロスが見えて来たが、それを左にして、シリヤに向かって航海を続け、ツロに上陸した。ここで船荷を降ろすことになっていたからである。 044 ACT 021 004 私たちは弟子たちを見つけ出して、そこに七日間滞在した。彼らは、御霊に示されて、エルサレムに上らぬようにと、しきりにパウロに忠告した。 044 ACT 021 005 しかし、滞在の日数が尽きると、私たちはそこを出て、旅を続けることにした。彼らはみな、妻や子どももいっしょに、町はずれまで私たちを送って来た。そして、ともに海岸にひざまずいて祈ってから、私たちは互いに別れを告げた。 044 ACT 021 006 それから私たちは船に乗り込み、彼らは家へ帰って行った。 044 ACT 021 007 私たちはツロからの航海を終えて、トレマイに着いた。そこの兄弟たちにあいさつをして、彼らのところに一日滞在した。 044 ACT 021 008 翌日そこを立って、カイザリヤに着き、あの七人のひとりである伝道者ピリポの家にはいって、そこに滞在した。 044 ACT 021 009 この人には、預言する四人の未婚の娘がいた。 044 ACT 021 010 幾日かそこに滞在していると、アガボという預言者がユダヤから下って来た。 044 ACT 021 011 彼は私たちのところに来て、パウロの帯を取り、自分の両手と両足を縛って、「『この帯の持ち主は、エルサレムでユダヤ人に、こんなふうに縛られ、異邦人の手に渡される。』と聖霊がお告げになっています。」と言った。 044 ACT 021 012 私たちはこれを聞いて、土地の人たちといっしょになって、パウロに、エルサレムには上らないよう頼んだ。 044 ACT 021 013 するとパウロは、「あなたがたは、泣いたり、私の心をくじいたりして、いったい何をしているのですか。私は、主イエスの御名のためなら、エルサレムで縛られることばかりでなく、死ぬことさえも覚悟しています。」と答えた。 044 ACT 021 014 彼が聞き入れようとしないので、私たちは、「主のみこころのままに。」と言って、黙ってしまった。 044 ACT 021 015 こうして数日たつと、私たちは旅仕度をして、エルサレムに上った。 044 ACT 021 016 カイザリヤの弟子たちも幾人か私たちと同行して、古くからの弟子であるキプロス人マナソンのところに案内してくれた。私たちはそこに泊まることになっていたのである。 044 ACT 021 017 エルサレムに着くと、兄弟たちは喜んで私たちを迎えてくれた。 044 ACT 021 018 次の日、パウロは私たちを連れて、ヤコブを訪問した。そこには長老たちがみな集まっていた。 044 ACT 021 019 彼らにあいさつしてから、パウロは彼の奉仕を通して神が異邦人の間でなさったことを、一つ一つ話しだした。 044 ACT 021 020 彼らはそれを聞いて神をほめたたえ、パウロにこう言った。「兄弟よ。ご承知のように、ユダヤ人の中で信仰にはいっている者は幾万となくありますが、みな律法に熱心な人たちです。 044 ACT 021 021 ところで、彼らが聞かされていることは、あなたは異邦人の中にいるすべてのユダヤ人に、子どもに割礼を施すな、慣習に従って歩むな、と言って、モーセにそむくように教えているということなのです。 044 ACT 021 022 それで、どうしましょうか。あなたが来たことは、必ず彼らの耳にはいるでしょう。 044 ACT 021 023 ですから、私たちの言うとおりにしてください。私たちの中に誓願を立てている者が四人います。 044 ACT 021 024 この人たちを連れて、あなたも彼らといっしょに身を清め、彼らが頭をそる費用を出してやりなさい。そうすれば、あなたについて聞かされていることは根も葉もないことで、あなたも律法を守って正しく歩んでいることが、みなにわかるでしょう。 044 ACT 021 025 信仰にはいった異邦人に関しては、偶像の神に供えた肉と、血と、絞め殺した物と、不品行とを避けるべきであると決定しましたので、私たちはすでに手紙を書きました。」 044 ACT 021 026 そこで、パウロはその人たちを引き連れ、翌日、ともに身を清めて宮にはいり、清めの期間が終わって、ひとりひとりのために供え物をささげる日時を告げた。 044 ACT 021 027 ところが、その七日がほとんど終わろうとしていたころ、アジヤから来たユダヤ人たちは、パウロが宮にいるのを見ると、全群衆をあおりたて、彼に手をかけて、 044 ACT 021 028 こう叫んだ。「イスラエルの人々。手を貸してください。この男は、この民と、律法と、この場所に逆らうことを、至る所ですべての人に教えている者です。そのうえ、ギリシヤ人を宮の中に連れ込んで、この神聖な場所をけがしています。」 044 ACT 021 029 彼らは前にエペソ人トロピモが町でパウロといっしょにいるのを見かけたので、パウロが彼を宮に連れ込んだのだと思ったのである。 044 ACT 021 030 そこで町中が大騒ぎになり、人々は殺到してパウロを捕え、宮の外へ引きずり出した。そして、ただちに宮の門が閉じられた。 044 ACT 021 031 彼らがパウロを殺そうとしていたとき、エルサレム中が混乱状態に陥っているという報告が、ローマ軍の千人隊長に届いた。 044 ACT 021 032 彼はただちに、兵士たちと百人隊長たちとを率いて、彼らのところに駆けつけた。人々は千人隊長と兵士たちを見て、パウロを打つのをやめた。 044 ACT 021 033 千人隊長は近づいてパウロを捕え、二つの鎖につなぐように命じたうえ、パウロが何者なのか、何をしたのか、と尋ねた。 044 ACT 021 034 しかし、群衆がめいめい勝手なことを叫び続けたので、その騒がしさのために確かなことがわからなかった。そこで千人隊長は、パウロを兵営に連れて行くように命令した。 044 ACT 021 035 パウロが階段にさしかかったときには、群衆の暴行を避けるために、兵士たちが彼をかつぎ上げなければならなかった。 044 ACT 021 036 大ぜいの群衆が「彼を除け。」と叫びながら、ついて来たからである。 044 ACT 021 037 兵営の中に連れ込まれようとしたとき、パウロが千人隊長に、「一言お話ししてもよいでしょうか。」と尋ねると、千人隊長は、「あなたはギリシヤ語を知っているのか。 044 ACT 021 038 するとあなたは、以前暴動を起こして、四千人の刺客を荒野に引き連れて逃げた、あのエジプト人ではないのか。」と言った。 044 ACT 021 039 パウロは答えた。「私はキリキヤのタルソ出身のユダヤ人で、れっきとした町の市民です。お願いです。この人々に話をさせてください。」 044 ACT 021 040 千人隊長がそれを許したので、パウロは階段の上に立ち、民衆に向かって手を振った。そして、すっかり静かになったとき、彼はヘブル語で次のように話した。 044 ACT 022 001 「兄弟たち、父たちよ。いま私が皆さんにしようとする弁明を聞いてください。」 044 ACT 022 002 パウロがヘブル語で語りかけるのを聞いて、人々はますます静粛になった。そこでパウロは話し続けた。 044 ACT 022 003 「私はキリキヤのタルソで生まれたユダヤ人ですが、この町で育てられ、ガマリエルのもとで私たちの先祖の律法について厳格な教育を受け、今日の皆さんと同じように、神に対して熱心な者でした。 044 ACT 022 004 私はこの道を迫害し、男も女も縛って牢に投じ、死にまでも至らせたのです。 044 ACT 022 005 このことは、大祭司も、長老たちの全議会も証言してくれます。この人たちから、私は兄弟たちへあてた手紙までも受け取り、ダマスコへ向かって出発しました。そこにいる者たちを縛り上げ、エルサレムに連れて来て処罰するためでした。 044 ACT 022 006 ところが、旅を続けて、真昼ごろダマスコに近づいたとき、突然、天からまばゆい光が私の回りを照らしたのです。 044 ACT 022 007 私は地に倒れ、『サウロ、サウロ。なぜわたしを迫害するのか。』という声を聞きました。 044 ACT 022 008 そこで私が答えて、『主よ。あなたはどなたですか。』と言うと、その方は、『わたしは、あなたが迫害しているナザレのイエスだ。』と言われました。 044 ACT 022 009 私といっしょにいた者たちは、その光は見たのですが、私に語っている方の声は聞き分けられませんでした。 044 ACT 022 010 私が、『主よ。私はどうしたらよいのでしょうか。』と尋ねると、主は私に、『起きて、ダマスコに行きなさい。あなたがするように決められていることはみな、そこで告げられる。』と言われました。 044 ACT 022 011 ところが、その光の輝きのために、私の目は何も見えなかったので、いっしょにいた者たちに手を引かれてダマスコにはいりました。 044 ACT 022 012 すると、律法を重んじる敬虔な人で、そこに住むユダヤ人全体の間で評判の良いアナニヤという人が、 044 ACT 022 013 私のところに来て、そばに立ち、『兄弟サウロ。見えるようになりなさい。』と言いました。すると、そのとき、私はその人が見えるようになりました。 044 ACT 022 014 彼はこう言いました。『私たちの先祖の神は、あなたにみこころを知らせ、義なる方を見させ、その方の口から御声を聞かせようとお定めになったのです。 044 ACT 022 015 あなたはその方のために、すべての人に対して、あなたの見たこと、聞いたことの証人とされるのですから。 044 ACT 022 016 さあ、なぜためらっているのですか。立ちなさい。その御名を呼んでバプテスマを受け、自分の罪を洗い流しなさい。』 044 ACT 022 017 こうして私がエルサレムに帰り、宮で祈っていますと、夢ごこちになり、 044 ACT 022 018 主を見たのです。主は言われました。『急いで、早くエルサレムを離れなさい。人々がわたしについてのあなたのあかしを受け入れないからです。』 044 ACT 022 019 そこで私は答えました。『主よ。私がどの会堂ででも、あなたの信者を牢に入れたり、むち打ったりしていたことを、彼らはよく知っています。 044 ACT 022 020 また、あなたの証人ステパノの血が流されたとき、私もその場にいて、それに賛成し、彼を殺した者たちの着物の番をしていたのです。』 044 ACT 022 021 すると、主は私に、『行きなさい。わたしはあなたを遠く、異邦人に遣わす。』と言われました。」 044 ACT 022 022 人々は、彼の話をここまで聞いていたが、このとき声を張り上げて、「こんな男は、地上から除いてしまえ。生かしておくべきではない。」と言った。 044 ACT 022 023 そして、人々がわめき立て、着物を放り投げ、ちりを空中にまき散らすので、 044 ACT 022 024 千人隊長はパウロを兵営の中に引き入れるように命じ、人々がなぜこのようにパウロに向かって叫ぶのかを知ろうとして、彼をむち打って取り調べるようにと言った。 044 ACT 022 025 彼らがむちを当てるためにパウロを縛ったとき、パウロはそばに立っている百人隊長に言った。「ローマ市民である者を、裁判にもかけずに、むち打ってよいのですか。」 044 ACT 022 026 これを聞いた百人隊長は、千人隊長のところに行って報告し、「どうなさいますか。あの人はローマ人です。」と言った。 044 ACT 022 027 千人隊長はパウロのところに来て、「あなたはローマ市民なのか、私に言ってくれ。」と言った。パウロは「そうです。」と言った。 044 ACT 022 028 すると、千人隊長は、「私はたくさんの金を出して、この市民権を買ったのだ。」と言った。そこでパウロは、「私は生まれながらの市民です。」と言った。 044 ACT 022 029 このため、パウロを取り調べようとしていた者たちは、すぐにパウロから身を引いた。また千人隊長も、パウロがローマ市民だとわかると、彼を鎖につないでいたので、恐れた。 044 ACT 022 030 その翌日、千人隊長は、パウロがなぜユダヤ人に告訴されたのかを確かめたいと思って、パウロの鎖を解いてやり、祭司長たちと全議会の召集を命じ、パウロを連れて行って、彼らの前に立たせた。 044 ACT 023 001 パウロは議会を見つめて、こう言った。「兄弟たちよ。私は今日まで、全くきよい良心をもって、神の前に生活して来ました。」 044 ACT 023 002 すると大祭司アナニヤは、パウロのそばに立っている者たちに、彼の口を打てと命じた。 044 ACT 023 003 そのとき、パウロはアナニヤに向かってこう言った。「ああ、白く塗った壁。神があなたを打たれる。あなたは、律法に従って私をさばく座に着きながら、律法にそむいて、私を打てと命じるのですか。」 044 ACT 023 004 するとそばに立っている者たちが、「あなたは神の大祭司をののしるのか。」と言ったので、 044 ACT 023 005 パウロが言った。「兄弟たち。私は彼が大祭司だとは知らなかった。確かに、『あなたの民の指導者を悪く言ってはいけない。』と書いてあります。」 044 ACT 023 006 しかし、パウロは、彼らの一部がサドカイ人で、一部がパリサイ人であるのを見て取って、議会の中でこう叫んだ。「兄弟たち。私はパリサイ人であり、パリサイ人の子です。私は死者の復活という望みのことで、さばきを受けているのです。」 044 ACT 023 007 彼がこう言うと、パリサイ人とサドカイ人との間に意見の衝突が起こり、議会は二つに割れた。 044 ACT 023 008 サドカイ人は、復活はなく、御使いも霊もないと言い、パリサイ人は、どちらもあると言っていたからである。 044 ACT 023 009 騒ぎがいよいよ大きくなり、パリサイ派のある律法学者たちが立ち上がって激しく論じて、「私たちは、この人に何の悪い点も見いださない。もしかしたら、霊か御使いかが、彼に語りかけたのかもしれない。」と言った。 044 ACT 023 010 論争がますます激しくなったので、千人隊長は、パウロが彼らに引き裂かれてしまうのではないかと心配し、兵隊に、下に降りて行って、パウロを彼らの中から力ずくで引き出し、兵営に連れて来るように命じた。 044 ACT 023 011 その夜、主がパウロのそばに立って、「勇気を出しなさい。あなたは、エルサレムでわたしのことをあかししたように、ローマでもあかしをしなければならない。」と言われた。 044 ACT 023 012 夜が明けると、ユダヤ人たちは徒党を組み、パウロを殺してしまうまでは飲み食いしないと誓い合った。 044 ACT 023 013 この陰謀に加わった者は、四十人以上であった。 044 ACT 023 014 彼らは、祭司長たち、長老たちのところに行って、こう言った。「私たちは、パウロを殺すまでは何も食べない、と堅く誓い合いました。 044 ACT 023 015 そこで、今あなたがたは議会と組んで、パウロのことをもっと詳しく調べるふりをして、彼をあなたがたのところに連れて来るように千人隊長に願い出てください。私たちのほうでは、彼がそこに近づく前に殺す手はずにしています。」 044 ACT 023 016 ところが、パウロの姉妹の子が、この待ち伏せのことを耳にし、兵営にはいってパウロにそれを知らせた。 044 ACT 023 017 そこでパウロは、百人隊長のひとりを呼んで、「この青年を千人隊長のところに連れて行ってください。お伝えすることがありますから。」と言った。 044 ACT 023 018 百人隊長は、彼を連れて千人隊長のもとに行き、「囚人のパウロが私を呼んで、この青年があなたにお話しすることがあるので、あなたのところに連れて行くようにと頼みました。」と言った。 044 ACT 023 019 千人隊長は彼の手を取り、だれもいない所に連れて行って、「私に伝えたいことというのは何か。」と尋ねた。 044 ACT 023 020 すると彼はこう言った。「ユダヤ人たちは、パウロについてもっと詳しく調べようとしているかに見せかけて、あす、議会にパウロを連れて来てくださるように、あなたにお願いすることを申し合わせました。 044 ACT 023 021 どうか、彼らの願いを聞き入れないでください。四十人以上の者が、パウロを殺すまでは飲み食いしない、と誓い合って、彼を待ち伏せしているのです。今、彼らは手はずを整えて、あなたの承諾を待っています。」 044 ACT 023 022 そこで千人隊長は、「このことを私に知らせたことは、だれにも漏らすな。」と命じて、その青年を帰らせた。 044 ACT 023 023 そしてふたりの百人隊長を呼び、「今夜九時、カイザリヤに向けて出発できるように、歩兵二百人、騎兵七十人、槍兵二百人を整えよ。」と言いつけた。 044 ACT 023 024 また、パウロを乗せて無事に総督ペリクスのもとに送り届けるように、馬の用意もさせた。 044 ACT 023 025 そして、次のような文面の手紙を書いた。 044 ACT 023 026 「クラウデオ・ルシヤ、つつしんで総督ペリクス閣下にごあいさつ申し上げます。 044 ACT 023 027 この者が、ユダヤ人に捕えられ、まさに殺されようとしていたとき、彼がローマ市民であることを知りましたので、私は兵隊を率いて行って、彼を助け出しました。 044 ACT 023 028 それから、どんな理由で彼が訴えられたかを知ろうと思い、彼をユダヤ人の議会に出頭させました。 044 ACT 023 029 その結果、彼が訴えられているのは、ユダヤ人の律法に関する問題のためで、死刑や投獄に当たる罪はないことがわかりました。 044 ACT 023 030 しかし、この者に対する陰謀があるという情報を得ましたので、私はただちに彼を閣下のもとにお送りし、訴える者たちには、閣下の前で彼のことを訴えるようにと言い渡しておきました。」 044 ACT 023 031 そこで兵士たちは、命じられたとおりにパウロを引き取り、夜中にアンテパトリスまで連れて行き、 044 ACT 023 032 翌日、騎兵たちにパウロの護送を任せて、兵営に帰った。 044 ACT 023 033 騎兵たちは、カイザリヤに着き、総督に手紙を手渡して、パウロを引き合わせた。 044 ACT 023 034 総督は手紙を読んでから、パウロに、どの州の者かと尋ね、キリキヤの出であることを知って、 044 ACT 023 035 「あなたを訴える者が来てから、よく聞くことにしよう。」と言った。そして、ヘロデの官邸に彼を守っておくように命じた。 044 ACT 024 001 五日の後、大祭司アナニヤは、数人の長老およびテルトロという弁護士といっしょに下って来て、パウロを総督に訴えた。 044 ACT 024 002 パウロが呼び出されると、テルトロが訴えを始めてこう言った。 「ペリクス閣下。閣下のおかげで、私たちはすばらしい平和を与えられ、また、閣下のご配慮で、この国の改革が進行しておりますが、 044 ACT 024 003 その事実をあらゆる面において、また至る所で認めて、私たちは心から感謝しております。 044 ACT 024 004 さて、あまりご迷惑をおかけしないように、ごく手短に申し上げますから、ご寛容をもってお聞きくださるようお願いいたします。 044 ACT 024 005 この男は、まるでペストのような存在で、世界中のユダヤ人の間に騒ぎを起こしている者であり、ナザレ人という一派の首領でございます。 044 ACT 024 006 この男は宮さえもけがそうとしましたので、私たちは彼を捕えました。 044 ACT 024 007 閣下ご自身で、これらすべてのことについて彼をお調べくださいますなら、私たちが彼を訴えております事がらを、おわかりになっていただけるはずです。」 044 ACT 024 009 ユダヤ人たちも、この訴えに同調し、全くそのとおりだと言った。 044 ACT 024 010 そのとき、総督がパウロに、話すようにと合図したので、パウロはこう答えた。 「閣下が多年に渡り、この民の裁判をつかさどる方であることを存じておりますので、私は喜んで弁明いたします。 044 ACT 024 011 お調べになればわかることですが、私が礼拝のためにエルサレムに上って来てから、まだ十二日しかたっておりません。 044 ACT 024 012 そして、宮でも会堂でも、また市内でも、私がだれかと論争したり、群衆を騒がせたりするのを見た者はありません。 044 ACT 024 013 いま私を訴えていることについて、彼らは証拠をあげることができないはずです。 044 ACT 024 014 しかし、私は、彼らが異端と呼んでいるこの道に従って、私たちの先祖の神に仕えていることを、閣下の前で承認いたします。私は、律法にかなうことと、預言者たちが書いていることとを全部信じています。 044 ACT 024 015 また、義人も悪人も必ず復活するという、この人たち自身も抱いている望みを、神にあって抱いております。 044 ACT 024 016 そのために、私はいつも、神の前にも人の前にも責められることのない良心を保つように、と最善を尽くしています。 044 ACT 024 017 さて私は、同胞に対して施しをし、また供え物をささげるために、幾年ぶりかで帰って来ました。 044 ACT 024 018 その供え物のことで私は清めを受けて宮の中にいたのを彼らに見られたのですが、別に群衆もおらず、騒ぎもありませんでした。ただアジヤから来た幾人かのユダヤ人がおりました。 044 ACT 024 019 もし彼らに、私について何か非難したいことがあるなら、自分で閣下の前に来て訴えるべきです。 044 ACT 024 020 でなければ、今ここにいる人々に、議会の前に立っていたときの私にどんな不正を見つけたかを言わせてください。 044 ACT 024 021 彼らの中に立っていたとき、私はただ一言、『死者の復活のことで、私はきょう、あなたがたの前でさばかれているのです。』と叫んだにすぎません。」 044 ACT 024 022 しかしペリクスは、この道について相当詳しい知識を持っていたので、「千人隊長ルシヤが下って来るとき、あなたがたの事件を解決することにしよう。」と言って、裁判を延期した。 044 ACT 024 023 そして百人隊長に、パウロを監禁するように命じたが、ある程度の自由を与え、友人たちが世話をすることを許した。 044 ACT 024 024 数日後、ペリクスはユダヤ人である妻ドルシラを連れて来て、パウロを呼び出し、キリスト・イエスを信じる信仰について話を聞いた。 044 ACT 024 025 しかし、パウロが正義と節制とやがて来る審判とを論じたので、ペリクスは恐れを感じ、「今は帰ってよい。おりを見て、また呼び出そう。」と言った。 044 ACT 024 026 それとともに、彼はパウロから金をもらいたい下心があったので、幾度もパウロを呼び出して話し合った。 044 ACT 024 027 二年たって後、ポルキオ・フェストがペリクスの後任になったが、ペリクスはユダヤ人に恩を売ろうとして、パウロを牢につないだままにしておいた。 044 ACT 025 001 フェストは州総督として着任すると、三日後にカイザリヤからエルサレムに上った。 044 ACT 025 002 すると、祭司長たちとユダヤ人のおもだった者たちが、パウロのことを訴え出て、 044 ACT 025 003 パウロを取り調べる件について自分たちに好意を持ってくれるように頼み、パウロをエルサレムに呼び寄せていただきたいと彼に懇願した。彼らはパウロを途中で殺害するために待ち伏せをさせていた。 044 ACT 025 004 ところが、フェストは、パウロはカイザリヤに拘置されているし、自分はまもなく出発の予定であると答え、 044 ACT 025 005 「だから、その男に何か不都合なことがあるなら、あなたがたのうちの有力な人たちが、私といっしょに下って行って、彼を告訴しなさい。」と言った。 044 ACT 025 006 フェストは、彼らのところに八日あるいは十日ばかり滞在しただけで、カイザリヤへ下って行き、翌日、裁判の席に着いて、パウロの出廷を命じた。 044 ACT 025 007 パウロが出て来ると、エルサレムから下って来たユダヤ人たちは、彼を取り囲んで立ち、多くの重い罪状を申し立てたが、それを証拠立てることはできなかった。 044 ACT 025 008 しかしパウロは弁明して、「私は、ユダヤ人の律法に対しても、宮に対しても、またカイザルに対しても、何の罪も犯してはおりません。」と言った。 044 ACT 025 009 ところが、ユダヤ人の歓心を買おうとしたフェストは、パウロに向かって、「あなたはエルサレムに上り、この事件について、私の前で裁判を受けることを願うか。」と尋ねた。 044 ACT 025 010 すると、パウロはこう言った。「私はカイザルの法廷に立っているのですから、ここで裁判を受けるのが当然です。あなたもよくご存じのとおり、私はユダヤ人にどんな悪いこともしませんでした。 044 ACT 025 011 もし私が悪いことをして、死罪に当たることをしたのでしたら、私は死をのがれようとはしません。しかし、この人たちが私を訴えていることに一つも根拠がないとすれば、だれも私を彼らに引き渡すことはできません。私はカイザルに上訴します。」 044 ACT 025 012 そのとき、フェストは陪席の者たちと協議したうえで、こう答えた。「あなたはカイザルに上訴したのだから、カイザルのもとへ行きなさい。」 044 ACT 025 013 数日たってから、アグリッパ王とベルニケが、フェストに敬意を表するためにカイザリヤに来た。 044 ACT 025 014 ふたりがそこに長く滞在していたので、フェストはパウロの一件を王に持ち出してこう言った。「ペリクスが囚人として残して行ったひとりの男がおります。 044 ACT 025 015 私がエルサレムに行ったとき、祭司たちとユダヤ人の長老たちとが、その男のことを私に訴え出て、罪に定めるように要求しました。 044 ACT 025 016 そのとき私は、『被告が、彼を訴えた者の面前で訴えに対して弁明する機会を与えられないで、そのまま引き渡されるということはローマの慣例ではない。』と答えておきました。 044 ACT 025 017 そういうわけで、訴える者たちがここに集まったとき、私は時を移さず、その翌日、裁判の席に着いて、その男を出廷させました。 044 ACT 025 018 訴えた者たちは立ち上がりましたが、私が予期していたような犯罪についての訴えは何一つ申し立てませんでした。 044 ACT 025 019 ただ、彼と言い争っている点は、彼ら自身の宗教に関することであり、また、死んでしまったイエスという者のことで、そのイエスが生きているとパウロは主張しているのでした。 044 ACT 025 020 このような問題をどう取り調べたらよいか、私には見当がつかないので、彼に『エルサレムに上り、そこで、この事件について裁判を受けたいのか。』と尋ねたところが、 044 ACT 025 021 パウロは、皇帝の判決を受けるまで保護してほしいと願い出たので、彼をカイザルのもとに送る時まで守っておくように、命じておきました。」 044 ACT 025 022 すると、アグリッパがフェストに、「私も、その男の話を聞きたいものです。」と言ったので、フェストは、「では、明日お聞きください。」と言った。 044 ACT 025 023 こういうわけで、翌日、アグリッパとベルニケは、大いに威儀を整えて到着し、千人隊長たちや市の首脳者たちにつき添われて講堂にはいった。そのとき、フェストの命令によってパウロが連れて来られた。 044 ACT 025 024 そこで、フェストはこう言った。「アグリッパ王、ならびに、ここに同席の方々。ご覧ください。ユダヤ人がこぞって、一刻も生かしてはおけないと呼ばわり、エルサレムでも、ここでも、私に訴えて来たのは、この人のことです。 044 ACT 025 025 私としては、彼は死に当たることは何一つしていないと思います。しかし、彼自身が皇帝に上訴しましたので、彼をそちらに送ることに決めました。 044 ACT 025 026 ところが、彼について、わが君に書き送るべき確かな事がらが一つもないのです。それで皆さんの前に、わけてもアグリッパ王よ、あなたの前に、彼を連れてまいりました。取り調べをしてみたら、何か書き送るべきことが得られましょう。 044 ACT 025 027 囚人を送るのに、その訴えの個条を示さないのは、理に合わないと思うのです。」 044 ACT 026 001 すると、アグリッパがパウロに、「あなたは、自分の言い分を申し述べてよろしい。」と言った。そこでパウロは、手を差し伸べて弁明し始めた。 044 ACT 026 002 「アグリッパ王。私がユダヤ人に訴えられているすべてのことについて、きょう、あなたの前で弁明できることを、幸いに存じます。 044 ACT 026 003 特に、あなたがユダヤ人の慣習や問題に精通しておられるからです。どうか、私の申し上げることを、忍耐をもってお聞きくださるよう、お願いいたします。 044 ACT 026 004 では申し述べますが、私が最初から私の国民の中で、またエルサレムにおいて過ごした若い時からの生活ぶりは、すべてのユダヤ人の知っているところです。 044 ACT 026 005 彼らは以前から私を知っていますので、証言するつもりならできることですが、私は、私たちの宗教の最も厳格な派に従って、パリサイ人として生活してまいりました。 044 ACT 026 006 そして今、神が私たちの先祖に約束されたものを待ち望んでいることで、私は裁判を受けているのです。 044 ACT 026 007 私たちの十二部族は、夜も昼も熱心に神に仕えながら、その約束のものを得たいと望んでおります。王よ。私は、この希望のためにユダヤ人から訴えられているのです。 044 ACT 026 008 神が死者をよみがえらせるということを、あなたがたは、なぜ信じがたいこととされるのでしょうか。 044 ACT 026 009 以前は、私自身も、ナザレ人イエスの名に強硬に敵対すべきだと考えていました。 044 ACT 026 010 そして、それをエルサレムで実行しました。祭司長たちから権限を授けられた私は、多くの聖徒たちを牢に入れ、彼らが殺されるときには、それに賛成の票を投じました。 044 ACT 026 011 また、すべての会堂で、しばしば彼らを罰しては、強いて御名をけがすことばを言わせようとし、彼らに対する激しい怒りに燃えて、ついには国外の町々にまで彼らを追跡して行きました。 044 ACT 026 012 このようにして、私は祭司長たちから権限と委任を受けて、ダマスコへ出かけて行きますと、 044 ACT 026 013 その途中、正午ごろ、王よ、私は天からの光を見ました。それは太陽よりも明るく輝いて、私と同行者たちとの回りを照らしたのです。 044 ACT 026 014 私たちはみな地に倒れましたが、そのとき声があって、ヘブル語で私にこう言うのが聞こえました。『サウロ、サウロ。なぜわたしを迫害するのか。とげのついた棒をけるのは、あなたにとって痛いことだ。』 044 ACT 026 015 私が『主よ。あなたはどなたですか。』と言いますと、主がこう言われました。『わたしは、あなたが迫害しているイエスである。 044 ACT 026 016 起き上がって、自分の足で立ちなさい。わたしがあなたに現われたのは、あなたが見たこと、また、これから後わたしがあなたに現われて示そうとすることについて、あなたを奉仕者、また証人に任命するためである。 044 ACT 026 017 わたしは、この民と異邦人との中からあなたを救い出し、彼らのところに遣わす。 044 ACT 026 018 それは彼らの目を開いて、暗やみから光に、サタンの支配から神に立ち返らせ、わたしを信じる信仰によって、彼らに罪の赦しを得させ、聖別された人々の中にあって御国を受け継がせるためである。』 044 ACT 026 019 こういうわけで、アグリッパ王よ、私は、この天からの啓示にそむかず、 044 ACT 026 020 ダマスコにいる人々をはじめエルサレムにいる人々に、またユダヤの全地方に、さらに異邦人にまで、悔い改めて神に立ち返り、悔い改めにふさわしい行ないをするようにと宣べ伝えて来たのです。 044 ACT 026 021 そのために、ユダヤ人たちは私を宮の中で捕え、殺そうとしたのです。 044 ACT 026 022 こうして、私はこの日に至るまで神の助けを受け、堅く立って、小さい者にも大きい者にもあかしをしているのです。そして、預言者たちやモーセが、後に起こるはずだと語ったこと以外は何も話しませんでした。 044 ACT 026 023 すなわち、キリストは苦しみを受けること、また、死者の中からの復活によって、この民と異邦人とに最初に光を宣べ伝える、ということです。」 044 ACT 026 024 パウロがこのように弁明していると、フェストが大声で、「気が狂っているぞ。パウロ。博学があなたの気を狂わせている。」と言った。 044 ACT 026 025 するとパウロは次のように言った。「フェスト閣下。気は狂っておりません。私は、まじめな真理のことばを話しています。 044 ACT 026 026 王はこれらのことをよく知っておられるので、王に対して私は率直に申し上げているのです。これらのことは片隅で起こった出来事ではありませんから、そのうちの一つでも王の目に留まらなかったものはないと信じます。 044 ACT 026 027 アグリッパ王。あなたは預言者を信じておられますか。もちろん信じておられると思います。」 044 ACT 026 028 するとアグリッパはパウロに、「あなたは、わずかなことばで、私をキリスト者にしようとしている。」と言った。 044 ACT 026 029 パウロはこう答えた。「ことばが少なかろうと、多かろうと、私が神に願うことは、あなたばかりでなく、きょう私の話を聞いている人がみな、この鎖は別として、私のようになってくださることです。」 044 ACT 026 030 ここで王と総督とベルニケ、および同席の人々が立ち上がった。 044 ACT 026 031 彼らは退場してから、互いに話し合って言った。「あの人は、死や投獄に相当することは何もしていない。」 044 ACT 026 032 またアグリッパはフェストに、「この人は、もしカイザルに上訴しなかったら、釈放されたであろうに。」と言った。 044 ACT 027 001 さて、私たちが船でイタリヤへ行くことが決まったとき、パウロと、ほかの数人の囚人は、ユリアスという親衛隊の百人隊長に引き渡された。 044 ACT 027 002 私たちは、アジヤの沿岸の各地に寄港して行くアドラミテオの船に乗り込んで出帆した。テサロニケのマケドニヤ人アリスタルコも同行した。 044 ACT 027 003 翌日、シドンに入港した。ユリアスはパウロを親切に取り扱い、友人たちのところへ行って、もてなしを受けることを許した。 044 ACT 027 004 そこから出帆したが、向かい風なので、キプロスの島陰を航行した。 044 ACT 027 005 そしてキリキヤとパンフリヤの沖を航行して、ルキヤのミラに入港した。 044 ACT 027 006 そこに、イタリヤへ行くアレキサンドリヤの船があったので、百人隊長は私たちをそれに乗り込ませた。 044 ACT 027 007 幾日かの間、船の進みはおそく、ようやくのことでクニドの沖に着いたが、風のためにそれ以上進むことができず、サルモネ沖のクレテの島陰を航行し、 044 ACT 027 008 その岸に沿って進みながら、ようやく、良い港と呼ばれる所に着いた。その近くにラサヤの町があった。 044 ACT 027 009 かなりの日数が経過しており、断食の季節もすでに過ぎていたため、もう航海は危険であったので、パウロは人々に注意して、 044 ACT 027 010 「皆さん。この航海では、きっと、積荷や船体だけではなく、私たちの生命にも、危害と大きな損失が及ぶと、私は考えます。」と言った。 044 ACT 027 011 しかし百人隊長は、パウロのことばよりも、航海士や船長のほうを信用した。 044 ACT 027 012 また、この港が冬を過ごすのに適していなかったので、大多数の者の意見は、ここを出帆して、できれば何とかして、南西と北西とに面しているクレテの港ピニクスまで行って、そこで冬を過ごしたいということになった。 044 ACT 027 013 おりから、穏やかな南風が吹いて来ると、人々はこの時とばかり錨を上げて、クレテの海岸に沿って航行した。 044 ACT 027 014 ところが、まもなくユーラクロンという暴風が陸から吹きおろして来て、 044 ACT 027 015 船はそれに巻き込まれ、風に逆らって進むことができないので、しかたなく吹き流されるままにした。 044 ACT 027 016 しかしクラウダという小さな島の陰にはいったので、ようやくのことで小舟を処置することができた。 044 ACT 027 017 小舟を船に引き上げ、備え綱で船体を巻いた。また、スルテスの浅瀬に乗り上げるのを恐れて、船具をはずして流れるに任せた。 044 ACT 027 018 私たちは暴風に激しく翻弄されていたので、翌日、人々は積荷を捨て始め、 044 ACT 027 019 三日目には、自分の手で船具までも投げ捨てた。 044 ACT 027 020 太陽も星も見えない日が幾日も続き、激しい暴風が吹きまくるので、私たちが助かる最後の望みも今や絶たれようとしていた。 044 ACT 027 021 だれも長いこと食事をとらなかったが、そのときパウロが彼らの中に立って、こう言った。「皆さん。あなたがたは私の忠告を聞き入れて、クレテを出帆しなかったら、こんな危害や損失をこうむらなくて済んだのです。 044 ACT 027 022 しかし、今、お勧めします。元気を出しなさい。あなたがたのうち、いのちを失う者はひとりもありません。失われるのは船だけです。 044 ACT 027 023 昨夜、私の主で、私の仕えている神の御使いが、私の前に立って、 044 ACT 027 024 こう言いました。『恐れてはいけません。パウロ。あなたは必ずカイザルの前に立ちます。そして、神はあなたと同船している人々をみな、あなたにお与えになったのです。』 044 ACT 027 025 ですから、皆さん。元気を出しなさい。すべて私に告げられたとおりになると、私は神によって信じています。 044 ACT 027 026 私たちは必ず、どこかの島に打ち上げられます。」 044 ACT 027 027 十四日目の夜になって、私たちがアドリヤ海を漂っていると、真夜中ごろ、水夫たちは、どこかの陸地に近づいたように感じた。 044 ACT 027 028 水の深さを測ってみると、四十メートルほどであることがわかった。少し進んでまた測ると、三十メートルほどであった。 044 ACT 027 029 どこかで暗礁に乗り上げはしないかと心配して、ともから四つの錨を投げおろし、夜の明けるのを待った。 044 ACT 027 030 ところが、水夫たちは船から逃げ出そうとして、へさきから錨を降ろすように見せかけて、小舟を海に降ろしていたので、 044 ACT 027 031 パウロは百人隊長や兵士たちに、「あの人たちが船にとどまっていなければ、あなたがたも助かりません。」と言った。 044 ACT 027 032 そこで兵士たちは、小舟の綱を断ち切って、そのまま流れ去るのに任せた。 044 ACT 027 033 ついに夜の明けかけたころ、パウロは、一同に食事をとることを勧めて、こう言った。「あなたがたは待ちに待って、きょうまで何も食べずに過ごして、十四日になります。 044 ACT 027 034 ですから、私はあなたがたに、食事をとることを勧めます。これであなたがたは助かることになるのです。あなたがたの頭から髪一筋も失われることはありません。」 044 ACT 027 035 こう言って、彼はパンを取り、一同の前で神に感謝をささげてから、それを裂いて食べ始めた。 044 ACT 027 036 そこで一同も元気づけられ、みなが食事をとった。 044 ACT 027 037 船にいた私たちは全部で二百七十六人であった。 044 ACT 027 038 十分食べてから、彼らは麦を海に投げ捨てて、船を軽くした。 044 ACT 027 039 夜が明けると、どこの陸地かわからないが、砂浜のある入江が目に留まったので、できれば、そこに船を乗り入れようということになった。 044 ACT 027 040 錨を切って海に捨て、同時にかじ綱を解き、風に前の帆を上げて、砂浜に向かって進んで行った。 044 ACT 027 041 ところが、潮流の流れ合う浅瀬に乗り上げて、船を座礁させてしまった。へさきはめり込んで動かなくなり、ともは激しい波に打たれて破れ始めた。 044 ACT 027 042 兵士たちは、囚人たちがだれも泳いで逃げないように、殺してしまおうと相談した。 044 ACT 027 043 しかし百人隊長は、パウロをあくまでも助けようと思って、その計画を押え、泳げる者がまず海に飛び込んで陸に上がるように、 044 ACT 027 044 それから残りの者は、板切れや、その他の、船にある物につかまって行くように命じた。こうして、彼らはみな、無事に陸に上がった。 044 ACT 028 001 こうして救われてから、私たちは、ここがマルタと呼ばれる島であることを知った。 044 ACT 028 002 島の人々は私たちに非常に親切にしてくれた。おりから雨が降りだして寒かったので、彼らは火をたいて私たちみなをもてなしてくれた。 044 ACT 028 003 パウロがひとかかえの柴をたばねて火にくべると、熱気のために、一匹のまむしがはい出して来て、彼の手に取りついた。 044 ACT 028 004 島の人々は、この生き物がパウロの手から下がっているのを見て、「この人はきっと人殺しだ。海からはのがれたが、正義の女神はこの人を生かしてはおかないのだ。」と互いに話し合った。 044 ACT 028 005 しかし、パウロは、その生き物を火の中に振り落として、何の害も受けなかった。 044 ACT 028 006 島の人々は、彼が今にも、はれ上がって来るか、または、倒れて急死するだろうと待っていた。しかし、いくら待っても、彼に少しも変わった様子が見えないので、彼らは考えを変えて、「この人は神さまだ。」と言いだした。 044 ACT 028 007 さて、その場所の近くに、島の首長でポプリオという人の領地があった。彼はそこに私たちを招待して、三日間手厚くもてなしてくれた。 044 ACT 028 008 たまたまポプリオの父が、熱病と下痢とで床に着いていた。そこでパウロは、その人のもとに行き、祈ってから、彼の上に手を置いて直してやった。 044 ACT 028 009 このことがあってから、島のほかの病人たちも来て、直してもらった。 044 ACT 028 010 それで彼らは、私たちを非常に尊敬し、私たちが出帆するときには、私たちに必要な品々を用意してくれた。 044 ACT 028 011 三か月後に、私たちは、この島で冬を過ごしていた、船首にデオスクロイの飾りのある、アレキサンドリヤの船で出帆した。 044 ACT 028 012 シラクサに寄港して、三日間とどまり、 044 ACT 028 013 そこから回って、レギオンに着いた。一日たつと、南風が吹き始めたので、二日目にはポテオリに入港した。 044 ACT 028 014 ここで、私たちは兄弟たちに会い、勧められるままに彼らのところに七日間滞在した。こうして、私たちはローマに到着した。 044 ACT 028 015 私たちのことを聞いた兄弟たちは、ローマからアピオ・ポロとトレス・タベルネまで出迎えに来てくれた。パウロは彼らに会って、神に感謝し、勇気づけられた。 044 ACT 028 016 私たちがローマにはいると、パウロは番兵付きで自分だけの家に住むことが許された。 044 ACT 028 017 三日の後、パウロはユダヤ人のおもだった人たちを呼び集め、彼らが集まったときに、こう言った。「兄弟たち。私は、私の国民に対しても、先祖の慣習に対しても、何一つそむくことはしていないのに、エルサレムで囚人としてローマ人の手に渡されました。 044 ACT 028 018 ローマ人は私を取り調べましたが、私を死刑にする理由が何もなかったので、私を釈放しようと思ったのです。 044 ACT 028 019 ところが、ユダヤ人たちが反対したため、私はやむなくカイザルに上訴しました。それは、私の同胞を訴えようとしたのではありません。 044 ACT 028 020 このようなわけで、私は、あなたがたに会ってお話ししようと思い、お招きしました。私はイスラエルの望みのためにこの鎖につながれているのです。」 044 ACT 028 021 すると、彼らはこう言った。「私たちは、あなたのことについて、ユダヤから何の知らせも受けておりません。また、当地に来た兄弟たちの中で、あなたについて悪いことを告げたり、話したりした者はおりません。 044 ACT 028 022 私たちは、あなたが考えておられることを、直接あなたから聞くのがよいと思っています。この宗派については、至る所で非難があることを私たちは知っているからです。」 044 ACT 028 023 そこで、彼らは日を定めて、さらに大ぜいでパウロの宿にやって来た。彼は朝から晩まで語り続けた。神の国のことをあかしし、また、モーセの律法と預言者たちの書によって、イエスのことについて彼らを説得しようとした。 044 ACT 028 024 ある人々は彼の語る事を信じたが、ある人々は信じようとしなかった。 044 ACT 028 025 こうして、彼らは、お互いの意見が一致せずに帰りかけたので、パウロは一言、次のように言った。「聖霊が預言者イザヤを通してあなたがたの先祖に語られたことは、まさにそのとおりでした。 044 ACT 028 026 『この民のところに行って、告げよ。 あなたがたは確かに聞きはするが、 決して悟らない。 確かに見てはいるが、決してわからない。 044 ACT 028 027 この民の心は鈍くなり、 その耳は遠く、 その目はつぶっているからである。 それは、彼らがその目で見、 その耳で聞き、 その心で悟って、立ち返り、 わたしにいやされることのないためである。』 044 ACT 028 028 ですから、承知しておいてください。神のこの救いは、異邦人に送られました。彼らは、耳を傾けるでしょう。」 044 ACT 028 029 こうしてパウロは満二年の間、自費で借りた家に住み、たずねて来る人たちをみな迎えて、 044 ACT 028 031 大胆に、少しも妨げられることなく、神の国を宣べ伝え、主イエス・キリストのことを教えた。 # # BOOK 045 ROM Romans ローマ人への手紙 045 ROM 001 001 神の福音のために選び分けられ、使徒として召されたキリスト・イエスのしもべパウロ、 045 ROM 001 002 ――この福音は、神がその預言者たちを通して、聖書において前から約束されたもので、 045 ROM 001 003 御子に関することです。御子は、肉によればダビデの子孫として生まれ、 045 ROM 001 004 きよい御霊によれば、死者の中からの復活により、大能によって公に神の御子として示された方、私たちの主イエス・キリストです。 045 ROM 001 005 このキリストによって、私たちは恵みと使徒の務めを受けました。それは、御名のためにあらゆる国の人々の中に信仰の従順をもたらすためなのです。 045 ROM 001 006 あなたがたも、それらの人々の中にあって、イエス・キリストによって召された人々です。――このパウロから、 045 ROM 001 007 ローマにいるすべての、神に愛されている人々、召された聖徒たちへ。 私たちの父なる神と主イエス・キリストから恵みと平安があなたがたの上にありますように。 045 ROM 001 008 まず第一に、あなたがたすべてのために、私はイエス・キリストによって私の神に感謝します。それは、あなたがたの信仰が全世界に言い伝えられているからです。 045 ROM 001 009 私が御子の福音を宣べ伝えつつ霊をもって仕えている神があかししてくださることですが、私はあなたがたのことを思わぬ時はなく、 045 ROM 001 010 いつも祈りのたびごとに、神のみこころによって、何とかして、今度はついに道が開かれて、あなたがたのところに行けるようにと願っています。 045 ROM 001 011 私があなたがたに会いたいと切に望むのは、御霊の賜物をいくらかでもあなたがたに分けて、あなたがたを強くしたいからです。 045 ROM 001 012 というよりも、あなたがたの間にいて、あなたがたと私との互いの信仰によって、ともに励ましを受けたいのです。 045 ROM 001 013 兄弟たち。ぜひ知っておいていただきたい。私はあなたがたの中でも、ほかの国の人々の中で得たと同じように、いくらかの実を得ようと思って、何度もあなたがたのところに行こうとしたのですが、今なお妨げられているのです。 045 ROM 001 014 私は、ギリシヤ人にも未開人にも、知識のある人にも知識のない人にも、返さなければならない負債を負っています。 045 ROM 001 015 ですから、私としては、ローマにいるあなたがたにも、ぜひ福音を伝えたいのです。 045 ROM 001 016 私は福音を恥とは思いません。福音は、ユダヤ人をはじめギリシヤ人にも、信じるすべての人にとって、救いを得させる神の力です。 045 ROM 001 017 なぜなら、福音のうちには神の義が啓示されていて、その義は、信仰に始まり信仰に進ませるからです。「義人は信仰によって生きる。」と書いてあるとおりです。 045 ROM 001 018 というのは、不義をもって真理をはばんでいる人々のあらゆる不敬虔と不正に対して、神の怒りが天から啓示されているからです。 045 ROM 001 019 なぜなら、神について知りうることは、彼らに明らかであるからです。それは神が明らかにされたのです。 045 ROM 001 020 神の、目に見えない本性、すなわち神の永遠の力と神性は、世界の創造された時からこのかた、被造物によって知られ、はっきりと認められるのであって、彼らに弁解の余地はないのです。 045 ROM 001 021 というのは、彼らは、神を知っていながら、その神を神としてあがめず、感謝もせず、かえってその思いはむなしくなり、その無知な心は暗くなったからです。 045 ROM 001 022 彼らは、自分では知者であると言いながら、愚かな者となり、 045 ROM 001 023 不滅の神の御栄えを、滅ぶべき人間や、鳥、獣、はうもののかたちに似た物と代えてしまいました。 045 ROM 001 024 それゆえ、神は、彼らをその心の欲望のままに汚れに引き渡され、そのために彼らは、互いにそのからだをはずかしめるようになりました。 045 ROM 001 025 それは、彼らが神の真理を偽りと取り代え、造り主の代わりに造られた物を拝み、これに仕えたからです。造り主こそ、とこしえにほめたたえられる方です。アーメン。 045 ROM 001 026 こういうわけで、神は彼らを恥ずべき情欲に引き渡されました。すなわち、女は自然の用を不自然なものに代え、 045 ROM 001 027 同じように、男も、女の自然な用を捨てて男どうしで情欲に燃え、男が男と恥ずべきことを行なうようになり、こうしてその誤りに対する当然の報いを自分の身に受けているのです。 045 ROM 001 028 また、彼らが神を知ろうとしたがらないので、神は彼らを良くない思いに引き渡され、そのため彼らは、してはならないことをするようになりました。 045 ROM 001 029 彼らは、あらゆる不義と悪とむさぼりと悪意とに満ちた者、ねたみと殺意と争いと欺きと悪だくみとでいっぱいになった者、陰口を言う者、 045 ROM 001 030 そしる者、神を憎む者、人を人と思わぬ者、高ぶる者、大言壮語する者、悪事をたくらむ者、親に逆らう者、 045 ROM 001 031 わきまえのない者、約束を破る者、情け知らずの者、慈愛のない者です。 045 ROM 001 032 彼らは、そのようなことを行なえば、死罪に当たるという神の定めを知っていながら、それを行なっているだけでなく、それを行なう者に心から同意しているのです。 045 ROM 002 001 ですから、すべて他人をさばく人よ。あなたに弁解の余地はありません。あなたは、他人をさばくことによって、自分自身を罪に定めています。さばくあなたが、それと同じことを行なっているからです。 045 ROM 002 002 私たちは、そのようなことを行なっている人々に下る神のさばきが正しいことを知っています。 045 ROM 002 003 そのようなことをしている人々をさばきながら、自分で同じことをしている人よ。あなたは、自分は神のさばきを免れるのだとでも思っているのですか。 045 ROM 002 004 それとも、神の慈愛があなたを悔い改めに導くことも知らないで、その豊かな慈愛と忍耐と寛容とを軽んじているのですか。 045 ROM 002 005 ところが、あなたは、かたくなさと悔い改めのない心のゆえに、御怒りの日、すなわち、神の正しいさばきの現われる日の御怒りを自分のために積み上げているのです。 045 ROM 002 006 神は、ひとりひとりに、その人の行ないに従って報いをお与えになります。 045 ROM 002 007 忍耐をもって善を行ない、栄光と誉れと不滅のものとを求める者には、永遠のいのちを与え、 045 ROM 002 008 党派心を持ち、真理に従わないで不義に従う者には、怒りと憤りを下されるのです。 045 ROM 002 009 患難と苦悩とは、ユダヤ人をはじめギリシヤ人にも、悪を行なうすべての者の上に下り、 045 ROM 002 010 栄光と誉れと平和は、ユダヤ人をはじめギリシヤ人にも、善を行なうすべての者の上にあります。 045 ROM 002 011 神にはえこひいきなどはないからです。 045 ROM 002 012 律法なしに罪を犯した者はすべて、律法なしに滅び、律法の下にあって罪を犯した者はすべて、律法によってさばかれます。 045 ROM 002 013 それは、律法を聞く者が神の前に正しいのではなく、律法を行なう者が正しいと認められるからです。 045 ROM 002 014 ――律法を持たない異邦人が、生まれつきのままで律法の命じる行ないをするばあいは、律法を持たなくても、自分自身が自分に対する律法なのです。 045 ROM 002 015 彼らはこのようにして、律法の命じる行ないが彼らの心に書かれていることを示しています。彼らの良心もいっしょになってあかしし、また、彼らの思いは互いに責め合ったり、また、弁明し合ったりしています。―― 045 ROM 002 016 私の福音によれば、神のさばきは、神がキリスト・イエスによって人々の隠れたことをさばかれる日に、行なわれるのです。 045 ROM 002 017 もし、あなたが自分をユダヤ人ととなえ、律法を持つことに安んじ、神を誇り、 045 ROM 002 018 みこころを知り、なすべきことが何であるかを律法に教えられてわきまえ、 045 ROM 002 019 また、知識と真理の具体的な形として律法を持っているため、盲人の案内人、やみの中にいる者の光、愚かな者の導き手、幼子の教師だと自任しているのなら、 045 ROM 002 021 どうして、人を教えながら、自分自身を教えないのですか。盗むなと説きながら、自分は盗むのですか。 045 ROM 002 022 姦淫するなと言いながら、自分は姦淫するのですか。偶像を忌みきらいながら、自分は神殿の物をかすめるのですか。 045 ROM 002 023 律法を誇りとしているあなたが、どうして律法に違反して、神を侮るのですか。 045 ROM 002 024 これは、「神の名は、あなたがたのゆえに、異邦人の中でけがされている。」と書いてあるとおりです。 045 ROM 002 025 もし律法を守るなら、割礼には価値があります。しかし、もしあなたが律法にそむいているなら、あなたの割礼は、無割礼になったのです。 045 ROM 002 026 もし割礼を受けていない人が律法の規定を守るなら、割礼を受けていなくても、割礼を受けている者とみなされないでしょうか。 045 ROM 002 027 また、からだに割礼を受けていないで律法を守る者が、律法の文字と割礼がありながら律法にそむいているあなたを、さばくことにならないでしょうか。 045 ROM 002 028 外見上のユダヤ人がユダヤ人なのではなく、外見上のからだの割礼が割礼なのではありません。 045 ROM 002 029 かえって人目に隠れたユダヤ人がユダヤ人であり、文字ではなく、御霊による、心の割礼こそ割礼です。その誉れは、人からではなく、神から来るものです。 045 ROM 003 001 では、ユダヤ人のすぐれたところは、いったい何ですか。割礼にどんな益があるのですか。 045 ROM 003 002 それは、あらゆる点から見て、大いにあります。第一に、彼らは神のいろいろなおことばをゆだねられています。 045 ROM 003 003 では、いったいどうなのですか。彼らのうちに不真実な者があったら、その不真実によって、神の真実が無に帰することになるでしょうか。 045 ROM 003 004 絶対にそんなことはありません。たとい、すべての人を偽り者としても、神は真実な方であるとすべきです。それは、 「あなたが、そのみことばによって正しいとされ、さばかれるときには勝利を得られるため。」 と書いてあるとおりです。 045 ROM 003 005 しかし、もし私たちの不義が神の義を明らかにするとしたら、どうなるでしょうか。人間的な言い方をしますが、怒りを下す神は不正なのでしょうか。 045 ROM 003 006 絶対にそんなことはありません。もしそうだとしたら、神はいったいどのように世をさばかれるのでしょう。 045 ROM 003 007 でも、私の偽りによって、神の真理がますます明らかにされて神の栄光となるのであれば、なぜ私がなお罪人としてさばかれるのでしょうか。 045 ROM 003 008 「善を現わすために、悪をしようではないか。」と言ってはいけないのでしょうか。――私たちはこの点でそしられるのです。ある人たちは、それが私たちのことばだと言っていますが、――もちろんこのように論じる者どもは当然罪に定められるのです。 045 ROM 003 009 では、どうなのでしょう。私たちは他の者にまさっているのでしょうか。決してそうではありません。私たちは前に、ユダヤ人もギリシヤ人も、すべての人が罪の下にあると責めたのです。 045 ROM 003 010 それは、次のように書いてあるとおりです。 「義人はいない。ひとりもいない。 045 ROM 003 011 悟りのある人はいない。神を求める人はいない。 045 ROM 003 012 すべての人が迷い出て、 みな、ともに無益な者となった。 善を行なう人はいない。ひとりもいない。」 045 ROM 003 013 「彼らののどは、開いた墓であり、 彼らはその舌で欺く。」 「彼らのくちびるの下には、まむしの毒があり、」 045 ROM 003 014 「彼らの口は、のろいと苦さで満ちている。」 045 ROM 003 015 「彼らの足は血を流すのに速く、 045 ROM 003 016 彼らの道には破壊と悲惨がある。 045 ROM 003 017 また、彼らは平和の道を知らない。」 045 ROM 003 018 「彼らの目の前には、神に対する恐れがない。」 045 ROM 003 019 さて、私たちは、律法の言うことはみな、律法の下にある人々に対して言われていることを知っています。それは、すべての口がふさがれて、全世界が神のさばきに服するためです。 045 ROM 003 020 なぜなら、律法を行なうことによっては、だれひとり神の前に義と認められないからです。律法によっては、かえって罪の意識が生じるのです。 045 ROM 003 021 しかし、今は、律法とは別に、しかも律法と預言者によってあかしされて、神の義が示されました。 045 ROM 003 022 すなわち、イエス・キリストを信じる信仰による神の義であって、それはすべての信じる人に与えられ、何の差別もありません。 045 ROM 003 023 すべての人は、罪を犯したので、神からの栄誉を受けることができず、 045 ROM 003 024 ただ、神の恵みにより、キリスト・イエスによる贖いのゆえに、価なしに義と認められるのです。 045 ROM 003 025 神は、キリスト・イエスを、その血による、また信仰による、なだめの供え物として、公にお示しになりました。それは、ご自身の義を現わすためです。というのは、今までに犯されて来た罪を神の忍耐をもって見のがして来られたからです。 045 ROM 003 026 それは、今の時にご自身の義を現わすためであり、こうして神ご自身が義であり、また、イエスを信じる者を義とお認めになるためなのです。 045 ROM 003 027 それでは、私たちの誇りはどこにあるのでしょうか。それはすでに取り除かれました。どういう原理によってでしょうか。行ないの原理によってでしょうか。そうではなく、信仰の原理によってです。 045 ROM 003 028 人が義と認められるのは、律法の行ないによるのではなく、信仰によるというのが、私たちの考えです。 045 ROM 003 029 それとも、神はユダヤ人だけの神でしょうか。異邦人にとっても神ではないのでしょうか。確かに神は、異邦人にとっても、神です。 045 ROM 003 030 神が唯一ならばそうです。この神は、割礼のある者を信仰によって義と認めてくださるとともに、割礼のない者をも、信仰によって義と認めてくださるのです。 045 ROM 003 031 それでは、私たちは信仰によって律法を無効にすることになるのでしょうか。絶対にそんなことはありません。かえって、律法を確立することになるのです。 045 ROM 004 001 それでは、肉による私たちの先祖アブラハムのばあいは、どうでしょうか。 045 ROM 004 002 もしアブラハムが行ないによって義と認められたのなら、彼は誇ることができます。しかし、神の御前では、そうではありません。 045 ROM 004 003 聖書は何と言っていますか。「それでアブラハムは神を信じた。それが彼の義とみなされた。」とあります。 045 ROM 004 004 働く者のばあいに、その報酬は恵みでなくて、当然支払うべきものとみなされます。 045 ROM 004 005 何の働きもない者が、不敬虔な者を義と認めてくださる方を信じるなら、その信仰が義とみなされるのです。 045 ROM 004 006 ダビデもまた、行ないとは別の道で神によって義と認められる人の幸いを、こう言っています。 045 ROM 004 007 「不法を赦され、罪をおおわれた人たちは、 幸いである。 045 ROM 004 008 主が罪を認めない人は幸いである。」 045 ROM 004 009 それでは、この幸いは、割礼のある者にだけ与えられるのでしょうか。それとも、割礼のない者にも与えられるのでしょうか。私たちは、「アブラハムには、その信仰が義とみなされた。」と言っていますが、 045 ROM 004 010 どのようにして、その信仰が義とみなされたのでしょうか。割礼を受けてからでしょうか。まだ割礼を受けていないときにでしょうか。割礼を受けてからではなく、割礼を受けていないときにです。 045 ROM 004 011 彼は、割礼を受けていないとき信仰によって義と認められたことの証印として、割礼というしるしを受けたのです。それは、彼が、割礼を受けないままで信じて義と認められるすべての人の父となり、 045 ROM 004 012 また割礼のある者の父となるためです。すなわち、割礼を受けているだけではなく、私たちの父アブラハムが無割礼のときに持った信仰の足跡に従って歩む者の父となるためです。 045 ROM 004 013 というのは、世界の相続人となるという約束が、アブラハムに、あるいはまた、その子孫に与えられたのは、律法によってではなく、信仰の義によったからです。 045 ROM 004 014 もし律法による者が相続人であるとするなら、信仰はむなしくなり、約束は無効になってしまいます。 045 ROM 004 015 律法は怒りを招くものであり、律法のないところには違反もありません。 045 ROM 004 016 そのようなわけで、世界の相続人となることは、信仰によるのです。それは、恵みによるためであり、こうして約束がすべての子孫に、すなわち、律法を持っている人々にだけでなく、アブラハムの信仰にならう人々にも保証されるためなのです。「わたしは、あなたをあらゆる国の人々の父とした。」と書いてあるとおりに、アブラハムは私たちすべての者の父なのです。 045 ROM 004 017 このことは、彼が信じた神、すなわち死者を生かし、無いものを有るもののようにお呼びになる方の御前で、そうなのです。 045 ROM 004 018 彼は望みえないときに望みを抱いて信じました。それは、「あなたの子孫はこのようになる。」と言われていたとおりに、彼があらゆる国の人々の父となるためでした。 045 ROM 004 019 アブラハムは、およそ百歳になって、自分のからだが死んだも同然であることと、サラの胎の死んでいることとを認めても、その信仰は弱りませんでした。 045 ROM 004 020 彼は、不信仰によって神の約束を疑うようなことをせず、反対に、信仰がますます強くなって、神に栄光を帰し、 045 ROM 004 021 神には約束されたことを成就する力があることを堅く信じました。 045 ROM 004 022 だからこそ、それが彼の義とみなされたのです。 045 ROM 004 023 しかし、「彼の義とみなされた。」と書いてあるのは、ただ彼のためだけでなく、 045 ROM 004 024 また私たちのためです。すなわち、私たちの主イエスを死者の中からよみがえらせた方を信じる私たちも、その信仰を義とみなされるのです。 045 ROM 004 025 主イエスは、私たちの罪のために死に渡され、私たちが義と認められるために、よみがえられたからです。 045 ROM 005 001 ですから、信仰によって義と認められた私たちは、私たちの主イエス・キリストによって、神との平和を持っています。 045 ROM 005 002 またキリストによって、いま私たちの立っているこの恵みに信仰によって導き入れられた私たちは、神の栄光を望んで大いに喜んでいます。 045 ROM 005 003 そればかりではなく、患難さえも喜んでいます。それは、患難が忍耐を生み出し、 045 ROM 005 004 忍耐が練られた品性を生み出し、練られた品性が希望を生み出すと知っているからです。 045 ROM 005 005 この希望は失望に終わることがありません。なぜなら、私たちに与えられた聖霊によって、神の愛が私たちの心に注がれているからです。 045 ROM 005 006 私たちがまだ弱かったとき、キリストは定められた時に、不敬虔な者のために死んでくださいました。 045 ROM 005 007 正しい人のためにでも死ぬ人はほとんどありません。情け深い人のためには、進んで死ぬ人があるいはいるでしょう。 045 ROM 005 008 しかし私たちがまだ罪人であったとき、キリストが私たちのために死んでくださったことにより、神は私たちに対するご自身の愛を明らかにしておられます。 045 ROM 005 009 ですから、今すでにキリストの血によって義と認められた私たちが、彼によって神の怒りから救われるのは、なおさらのことです。 045 ROM 005 010 もし敵であった私たちが、御子の死によって神と和解させられたのなら、和解させられた私たちが、彼のいのちによって救いにあずかるのは、なおさらのことです。 045 ROM 005 011 そればかりでなく、私たちのために今や和解を成り立たせてくださった私たちの主イエス・キリストによって、私たちは神を大いに喜んでいるのです。 045 ROM 005 012 そういうわけで、ちょうどひとりの人によって罪が世界にはいり、罪によって死がはいり、こうして死が全人類に広がったのと同様に、――それというのも全人類が罪を犯したからです。 045 ROM 005 013 というのは、律法が与えられるまでの時期にも罪は世にあったからです。しかし罪は、何かの律法がなければ、認められないものです。 045 ROM 005 014 ところが死は、アダムからモーセまでの間も、アダムの違反と同じようには罪を犯さなかった人々をさえ支配しました。アダムはきたるべき方のひな型です。 045 ROM 005 015 ただし、恵みには違反のばあいとは違う点があります。もしひとりの違反によって多くの人が死んだとすれば、それにもまして、神の恵みとひとりの人イエス・キリストの恵みによる賜物とは、多くの人々に満ちあふれるのです。 045 ROM 005 016 また、賜物には、罪を犯したひとりによるばあいと違った点があります。さばきのばあいは、一つの違反のために罪に定められたのですが、恵みのばあいは、多くの違反が義と認められるからです。 045 ROM 005 017 もしひとりの人の違反により、ひとりによって死が支配するようになったとすれば、なおさらのこと、恵みと義の賜物とを豊かに受けている人々は、ひとりの人イエス・キリストにより、いのちにあって支配するのです。 045 ROM 005 018 こういうわけで、ちょうど一つの違反によってすべての人が罪に定められたのと同様に、一つの義の行為によってすべての人が義と認められて、いのちを与えられるのです。 045 ROM 005 019 すなわち、ちょうどひとりの人の不従順によって多くの人が罪人とされたのと同様に、ひとりの従順によって多くの人が義人とされるのです。 045 ROM 005 020 律法がはいって来たのは、違反が増し加わるためです。しかし、罪の増し加わるところには、恵みも満ちあふれました。 045 ROM 005 021 それは、罪が死によって支配したように、恵みが、私たちの主イエス・キリストにより、義の賜物によって支配し、永遠のいのちを得させるためなのです。 045 ROM 006 001 それでは、どういうことになりますか。恵みが増し加わるために、私たちは罪の中にとどまるべきでしょうか。 045 ROM 006 002 絶対にそんなことはありません。罪に対して死んだ私たちが、どうして、なおもその中に生きていられるでしょう。 045 ROM 006 003 それとも、あなたがたは知らないのですか。キリスト・イエスにつくバプテスマを受けた私たちはみな、その死にあずかるバプテスマを受けたのではありませんか。 045 ROM 006 004 私たちは、キリストの死にあずかるバプテスマによって、キリストとともに葬られたのです。それは、キリストが御父の栄光によって死者の中からよみがえられたように、私たちも、いのちにあって新しい歩みをするためです。 045 ROM 006 005 もし私たちが、キリストにつぎ合わされて、キリストの死と同じようになっているのなら、必ずキリストの復活とも同じようになるからです。 045 ROM 006 006 私たちの古い人がキリストとともに十字架につけられたのは、罪のからだが滅びて、私たちがもはやこれからは罪の奴隷でなくなるためであることを、私たちは知っています。 045 ROM 006 007 死んでしまった者は、罪から解放されているのです。 045 ROM 006 008 もし私たちがキリストとともに死んだのであれば、キリストとともに生きることにもなる、と信じます。 045 ROM 006 009 キリストは死者の中からよみがえって、もはや死ぬことはなく、死はもはやキリストを支配しないことを、私たちは知っています。 045 ROM 006 010 なぜなら、キリストが死なれたのは、ただ一度罪に対して死なれたのであり、キリストが生きておられるのは、神に対して生きておられるのだからです。 045 ROM 006 011 このように、あなたがたも、自分は罪に対しては死んだ者であり、神に対してはキリスト・イエスにあって生きた者だと、思いなさい。 045 ROM 006 012 ですから、あなたがたの死ぬべきからだを罪の支配にゆだねて、その情欲に従ってはいけません。 045 ROM 006 013 また、あなたがたの手足を不義の器として罪にささげてはいけません。むしろ、死者の中から生かされた者として、あなたがた自身とその手足を義の器として神にささげなさい。 045 ROM 006 014 というのは、罪はあなたがたを支配することがないからです。なぜなら、あなたがたは律法の下にはなく、恵みの下にあるからです。 045 ROM 006 015 それではどうなのでしょう。私たちは、律法の下にではなく、恵みの下にあるのだから罪を犯そう、ということになるのでしょうか。絶対にそんなことはありません。 045 ROM 006 016 あなたがたはこのことを知らないのですか。あなたがたが自分の身をささげて奴隷として服従すれば、その服従する相手の奴隷であって、あるいは罪の奴隷となって死に至り、あるいは従順の奴隷となって義に至るのです。 045 ROM 006 017 神に感謝すべきことには、あなたがたは、もとは罪の奴隷でしたが、伝えられた教えの規準に心から服従し、 045 ROM 006 018 罪から解放されて、義の奴隷となったのです。 045 ROM 006 019 あなたがたにある肉の弱さのために、私は人間的な言い方をしています。あなたがたは、以前は自分の手足を汚れと不法の奴隷としてささげて、不法に進みましたが、今は、その手足を義の奴隷としてささげて、聖潔に進みなさい。 045 ROM 006 020 罪の奴隷であった時は、あなたがたは義については、自由にふるまっていました。 045 ROM 006 021 その当時、今ではあなたがたが恥じているそのようなものから、何か良い実を得たでしょうか。それらのものの行き着く所は死です。 045 ROM 006 022 しかし今は、罪から解放されて神の奴隷となり、聖潔に至る実を得たのです。その行き着く所は永遠のいのちです。 045 ROM 006 023 罪から来る報酬は死です。しかし、神の下さる賜物は、私たちの主キリスト・イエスにある永遠のいのちです。 045 ROM 007 001 それとも、兄弟たち。あなたがたは、律法が人に対して権限を持つのは、その人の生きている期間だけだ、ということを知らないのですか。――私は律法を知っている人々に言っているのです。―― 045 ROM 007 002 夫のある女は、夫が生きている間は、律法によって夫に結ばれています。しかし、夫が死ねば、夫に関する律法から解放されます。 045 ROM 007 003 ですから、夫が生きている間に他の男に行けば、姦淫の女と呼ばれるのですが、夫が死ねば、律法から解放されており、たとい他の男に行っても、姦淫の女ではありません。 045 ROM 007 004 私の兄弟たちよ。それと同じように、あなたがたも、キリストのからだによって、律法に対しては死んでいるのです。それは、あなたがたが他の人、すなわち死者の中からよみがえった方と結ばれて、神のために実を結ぶようになるためです。 045 ROM 007 005 私たちが肉にあったときは、律法による数々の罪の欲情が私たちのからだの中に働いていて、死のために実を結びました。 045 ROM 007 006 しかし、今は、私たちは自分を捕えていた律法に対して死んだので、それから解放され、その結果、古い文字にはよらず、新しい御霊によって仕えているのです。 045 ROM 007 007 それでは、どういうことになりますか。律法は罪なのでしょうか。絶対にそんなことはありません。ただ、律法によらないでは、私は罪を知ることがなかったでしょう。律法が、「むさぼってはならない。」と言わなかったら、私はむさぼりを知らなかったでしょう。 045 ROM 007 008 しかし、罪はこの戒めによって機会を捕え、私のうちにあらゆるむさぼりを引き起こしました。律法がなければ、罪は死んだものです。 045 ROM 007 009 私はかつて律法なしに生きていましたが、戒めが来たときに、罪が生き、私は死にました。 045 ROM 007 010 それで私には、いのちに導くはずのこの戒めが、かえって死に導くものであることが、わかりました。 045 ROM 007 011 それは、戒めによって機会を捕えた罪が私を欺き、戒めによって私を殺したからです。 045 ROM 007 012 ですから、律法は聖なるものであり、戒めも聖であり、正しく、また良いものなのです。 045 ROM 007 013 では、この良いものが、私に死をもたらしたのでしょうか。絶対にそんなことはありません。それはむしろ、罪なのです。罪は、この良いもので私に死をもたらすことによって、罪として明らかにされ、戒めによって、極度に罪深いものとなりました。 045 ROM 007 014 私たちは、律法が霊的なものであることを知っています。しかし、私は罪ある人間であり、売られて罪の下にある者です。 045 ROM 007 015 私には、自分のしていることがわかりません。私は自分がしたいと思うことをしているのではなく、自分が憎むことを行なっているからです。 045 ROM 007 016 もし自分のしたくないことをしているとすれば、律法は良いものであることを認めているわけです。 045 ROM 007 017 ですから、それを行なっているのは、もはや私ではなく、私のうちに住みついている罪なのです。 045 ROM 007 018 私は、私のうち、すなわち、私の肉のうちに善が住んでいないのを知っています。私には善をしたいという願いがいつもあるのに、それを実行することがないからです。 045 ROM 007 019 私は、自分でしたいと思う善を行なわないで、かえって、したくない悪を行なっています。 045 ROM 007 020 もし私が自分でしたくないことをしているのであれば、それを行なっているのは、もはや私ではなくて、私のうちに住む罪です。 045 ROM 007 021 そういうわけで、私は、善をしたいと願っているのですが、その私に悪が宿っているという原理を見いだすのです。 045 ROM 007 022 すなわち、私は、内なる人としては、神の律法を喜んでいるのに、 045 ROM 007 023 私のからだの中には異なった律法があって、それが私の心の律法に対して戦いをいどみ、私を、からだの中にある罪の律法のとりこにしているのを見いだすのです。 045 ROM 007 024 私は、ほんとうにみじめな人間です。だれがこの死の、からだから、私を救い出してくれるのでしょうか。 045 ROM 007 025 私たちの主イエス・キリストのゆえに、ただ神に感謝します。ですから、この私は、心では神の律法に仕え、肉では罪の律法に仕えているのです。 045 ROM 008 001 こういうわけで、今は、キリスト・イエスにある者が罪に定められることは決してありません。 045 ROM 008 002 なぜなら、キリスト・イエスにある、いのちの御霊の原理が、罪と死の原理から、あなたを解放したからです。 045 ROM 008 003 肉によって無力になったため、律法にはできなくなっていることを、神はしてくださいました。神はご自分の御子を、罪のために、罪深い肉と同じような形でお遣わしになり、肉において罪を処罰されたのです。 045 ROM 008 004 それは、肉に従って歩まず、御霊に従って歩む私たちの中に、律法の要求が全うされるためなのです。 045 ROM 008 005 肉に従う者は肉的なことをもっぱら考えますが、御霊に従う者は御霊に属することをひたすら考えます。 045 ROM 008 006 肉の思いは死であり、御霊による思いは、いのちと平安です。 045 ROM 008 007 というのは、肉の思いは神に対して反抗するものだからです。それは神の律法に服従しません。いや、服従できないのです。 045 ROM 008 008 肉にある者は神を喜ばせることができません。 045 ROM 008 009 けれども、もし神の御霊があなたがたのうちに住んでおられるなら、あなたがたは肉の中にではなく、御霊の中にいるのです。キリストの御霊を持たない人は、キリストのものではありません。 045 ROM 008 010 もしキリストがあなたがたのうちにおられるなら、からだは罪のゆえに死んでいても、霊が、義のゆえに生きています。 045 ROM 008 011 もしイエスを死者の中からよみがえらせた方の御霊が、あなたがたのうちに住んでおられるなら、キリスト・イエスを死者の中からよみがえらせた方は、あなたがたのうちに住んでおられる御霊によって、あなたがたの死ぬべきからだをも生かしてくださるのです。 045 ROM 008 012 ですから、兄弟たち。私たちは、肉に従って歩む責任を、肉に対して負ってはいません。 045 ROM 008 013 もし肉に従って生きるなら、あなたがたは死ぬのです。しかし、もし御霊によって、からだの行ないを殺すなら、あなたがたは生きるのです。 045 ROM 008 014 神の御霊に導かれる人は、だれでも神の子どもです。 045 ROM 008 015 あなたがたは、人を再び恐怖に陥れるような、奴隷の霊を受けたのではなく、子としてくださる御霊を受けたのです。私たちは御霊によって、「アバ、父。」と呼びます。 045 ROM 008 016 私たちが神の子どもであることは、御霊ご自身が、私たちの霊とともに、あかししてくださいます。 045 ROM 008 017 もし子どもであるなら、相続人でもあります。私たちがキリストと、栄光をともに受けるために苦難をともにしているなら、私たちは神の相続人であり、キリストとの共同相続人であります。 045 ROM 008 018 今の時のいろいろの苦しみは、将来私たちに啓示されようとしている栄光に比べれば、取るに足りないものと私は考えます。 045 ROM 008 019 被造物も、切実な思いで神の子どもたちの現われを待ち望んでいるのです。 045 ROM 008 020 それは、被造物が虚無に服したのが自分の意志ではなく、服従させた方によるのであって、望みがあるからです。 045 ROM 008 021 被造物自体も、滅びの束縛から解放され、神の子どもたちの栄光の自由の中に入れられます。 045 ROM 008 022 私たちは、被造物全体が今に至るまで、ともにうめきともに産みの苦しみをしていることを知っています。 045 ROM 008 023 そればかりでなく、御霊の初穂をいただいている私たち自身も、心の中でうめきながら、子にしていただくこと、すなわち、私たちのからだの贖われることを待ち望んでいます。 045 ROM 008 024 私たちは、この望みによって救われているのです。目に見える望みは、望みではありません。だれでも目で見ていることを、どうしてさらに望むでしょう。 045 ROM 008 025 もしまだ見ていないものを望んでいるのなら、私たちは、忍耐をもって熱心に待ちます。 045 ROM 008 026 御霊も同じようにして、弱い私たちを助けてくださいます。私たちは、どのように祈ったらよいかわからないのですが、御霊ご自身が、言いようもない深いうめきによって、私たちのためにとりなしてくださいます。 045 ROM 008 027 人間の心を探り窮める方は、御霊の思いが何かをよく知っておられます。なぜなら、御霊は、神のみこころに従って、聖徒のためにとりなしをしてくださるからです。 045 ROM 008 028 神を愛する人々、すなわち、神のご計画に従って召された人々のためには、神がすべてのことを働かせて益としてくださることを、私たちは知っています。 045 ROM 008 029 なぜなら、神は、あらかじめ知っておられる人々を、御子のかたちと同じ姿にあらかじめ定められたからです。それは、御子が多くの兄弟たちの中で長子となられるためです。 045 ROM 008 030 神はあらかじめ定めた人々をさらに召し、召した人々をさらに義と認め、義と認めた人々にはさらに栄光をお与えになりました。 045 ROM 008 031 では、これらのことからどう言えるでしょう。神が私たちの味方であるなら、だれが私たちに敵対できるでしょう。 045 ROM 008 032 私たちすべてのために、ご自分の御子をさえ惜しまずに死に渡された方が、どうして、御子といっしょにすべてのものを、私たちに恵んでくださらないことがありましょう。 045 ROM 008 033 神に選ばれた人々を訴えるのはだれですか。神が義と認めてくださるのです。 045 ROM 008 034 罪に定めようとするのはだれですか。死んでくださった方、いや、よみがえられた方であるキリスト・イエスが、神の右の座に着き、私たちのためにとりなしていてくださるのです。 045 ROM 008 035 私たちをキリストの愛から引き離すのはだれですか。患難ですか、苦しみですか、迫害ですか、飢えですか、裸ですか、危険ですか、剣ですか。 045 ROM 008 036 「あなたのために、私たちは一日中、 死に定められている。 私たちは、ほふられる羊とみなされた。」 と書いてあるとおりです。 045 ROM 008 037 しかし、私たちは、私たちを愛してくださった方によって、これらすべてのことの中にあっても、圧倒的な勝利者となるのです。 045 ROM 008 038 私はこう確信しています。死も、いのちも、御使いも、権威ある者も、今あるものも、後に来るものも、力ある者も、 045 ROM 008 039 高さも、深さも、そのほかのどんな被造物も、私たちの主キリスト・イエスにある神の愛から、私たちを引き離すことはできません。 045 ROM 009 001 私はキリストにあって真実を言い、偽りを言いません。次のことは、私の良心も、聖霊によってあかししています。 045 ROM 009 002 私には大きな悲しみがあり、私の心には絶えず痛みがあります。 045 ROM 009 003 もしできることなら、私の同胞、肉による同国人のために、この私がキリストから引き離されて、のろわれた者となることさえ願いたいのです。 045 ROM 009 004 彼らはイスラエル人です。子とされることも、栄光も、契約も、律法を与えられることも、礼拝も、約束も彼らのものです。 045 ROM 009 005 先祖たちも彼らのものです。またキリストも、人としては彼らから出られたのです。このキリストは万物の上にあり、とこしえにほめたたえられる神です。アーメン。 045 ROM 009 006 しかし、神のみことばが無効になったわけではありません。なぜなら、イスラエルから出る者がみな、イスラエルなのではなく、 045 ROM 009 007 アブラハムから出たからといって、すべてが子どもなのではなく、「イサクから出る者があなたの子孫と呼ばれる。」のだからです。 045 ROM 009 008 すなわち、肉の子どもがそのまま神の子どもではなく、約束の子どもが子孫とみなされるのです。 045 ROM 009 009 約束のみことばはこうです。「私は来年の今ごろ来ます。そして、サラは男の子を産みます。」 045 ROM 009 010 このことだけでなく、私たちの先祖イサクひとりによってみごもったリベカのこともあります。 045 ROM 009 011 その子どもたちは、まだ生まれてもおらず、善も悪も行なわないうちに、神の選びの計画の確かさが、行ないにはよらず、召してくださる方によるようにと、 045 ROM 009 012 「兄は弟に仕える。」と彼女に告げられたのです。 045 ROM 009 013 「わたしはヤコブを愛し、エサウを憎んだ。」と書いてあるとおりです。 045 ROM 009 014 それでは、どういうことになりますか。神に不正があるのですか。絶対にそんなことはありません。 045 ROM 009 015 神はモーセに、「わたしは自分のあわれむ者をあわれみ、自分のいつくしむ者をいつくしむ。」と言われました。 045 ROM 009 016 したがって、事は人間の願いや努力によるのではなく、あわれんでくださる神によるのです。 045 ROM 009 017 聖書はパロに、「わたしがあなたを立てたのは、あなたにおいてわたしの力を示し、わたしの名を全世界に告げ知らせるためである。」と言っています。 045 ROM 009 018 こういうわけで、神は、人をみこころのままにあわれみ、またみこころのままにかたくなにされるのです。 045 ROM 009 019 すると、あなたはこう言うでしょう。「それなのになぜ、神は人を責められるのですか。だれが神のご計画に逆らうことができましょう。」 045 ROM 009 020 しかし、人よ。神に言い逆らうあなたは、いったい何ですか。形造られた者が形造った者に対して、「あなたはなぜ、私をこのようなものにしたのですか。」と言えるでしょうか。 045 ROM 009 021 陶器を作る者は、同じ土のかたまりから、尊いことに用いる器でも、また、つまらないことに用いる器でも作る権利を持っていないのでしょうか。 045 ROM 009 022 ですが、もし神が、怒りを示してご自分の力を知らせようと望んでおられるのに、その滅ぼされるべき怒りの器を、豊かな寛容をもって忍耐してくださったとしたら、どうでしょうか。 045 ROM 009 023 それも、神が栄光のためにあらかじめ用意しておられたあわれみの器に対して、その豊かな栄光を知らせてくださるためになのです。 045 ROM 009 024 神は、このあわれみの器として、私たちを、ユダヤ人の中からだけでなく、異邦人の中からも召してくださったのです。 045 ROM 009 025 それは、ホセアの書でも言っておられるとおりです。 「わたしは、わが民でない者をわが民と呼び、 愛さなかった者を愛する者と呼ぶ。 045 ROM 009 026 『あなたがたは、わたしの民ではない。』と、 わたしが言ったその場所で、彼らは、 生ける神の子どもと呼ばれる。」 045 ROM 009 027 また、イスラエルについては、イザヤがこう叫んでいます。 「たといイスラエルの子どもたちの数は、 海べの砂のようであっても、 救われるのは、残された者である。 045 ROM 009 028 主は、みことばを完全に、しかも敏速に、 地上に成し遂げられる。」 045 ROM 009 029 また、イザヤがこう預言したとおりです。 「もし万軍の主が、私たちに 子孫を残されなかったら、 私たちはソドムのようになり、 ゴモラと同じものとされたであろう。」 045 ROM 009 030 では、どういうことになりますか。義を追い求めなかった異邦人は義を得ました。すなわち、信仰による義です。 045 ROM 009 031 しかし、イスラエルは、義の律法を追い求めながら、その律法に到達しませんでした。 045 ROM 009 032 なぜでしょうか。信仰によって追い求めることをしないで、行ないによるかのように追い求めたからです。彼らは、つまずきの石につまずいたのです。 045 ROM 009 033 それは、こう書かれているとおりです。 「見よ。わたしは、 シオンに、つまずきの石、妨げの岩を置く。 彼に信頼する者は、 失望させられることがない。」 045 ROM 010 001 兄弟たち。私が心の望みとし、また彼らのために神に願い求めているのは、彼らの救われることです。 045 ROM 010 002 私は、彼らが神に対して熱心であることをあかしします。しかし、その熱心は知識に基づくものではありません。 045 ROM 010 003 というのは、彼らは神の義を知らず、自分自身の義を立てようとして、神の義に従わなかったからです。 045 ROM 010 004 キリストが律法を終わらせられたので、信じる人はみな義と認められるのです。 045 ROM 010 005 モーセは、律法による義を行なう人は、その義によって生きる、と書いています。 045 ROM 010 006 しかし、信仰による義はこう言います。「あなたは心の中で、だれが天に上るだろうか、と言ってはいけない。」それはキリストを引き降ろすことです。 045 ROM 010 007 また、「だれが地の奥底に下るだろうか、と言ってはいけない。」それはキリストを死者の中から引き上げることです。 045 ROM 010 008 では、どう言っていますか。「みことばはあなたの近くにある。あなたの口にあり、あなたの心にある。」これは私たちの宣べ伝えている信仰のことばのことです。 045 ROM 010 009 なぜなら、もしあなたの口でイエスを主と告白し、あなたの心で神はイエスを死者の中からよみがえらせてくださったと信じるなら、あなたは救われるからです。 045 ROM 010 010 人は心に信じて義と認められ、口で告白して救われるのです。 045 ROM 010 011 聖書はこう言っています。「彼に信頼する者は、失望させられることがない。」 045 ROM 010 012 ユダヤ人とギリシヤ人との区別はありません。同じ主が、すべての人の主であり、主を呼び求めるすべての人に対して恵み深くあられるからです。 045 ROM 010 013 「主の御名を呼び求める者は、だれでも救われる。」のです。 045 ROM 010 014 しかし、信じたことのない方を、どうして呼び求めることができるでしょう。聞いたことのない方を、どうして信じることができるでしょう。宣べ伝える人がなくて、どうして聞くことができるでしょう。 045 ROM 010 015 遣わされなくては、どうして宣べ伝えることができるでしょう。次のように書かれているとおりです。「良いことの知らせを伝える人々の足は、なんとりっぱでしょう。」 045 ROM 010 016 しかし、すべての人が福音に従ったのではありません。「主よ。だれが私たちの知らせを信じましたか。」とイザヤは言っています。 045 ROM 010 017 そのように、信仰は聞くことから始まり、聞くことは、キリストについてのみことばによるのです。 045 ROM 010 018 でも、こう尋ねましょう。「はたして彼らは聞こえなかったのでしょうか。」むろん、そうではありません。 「その声は全地に響き渡り、 そのことばは地の果てまで届いた。」 045 ROM 010 019 でも、私はこう言いましょう。「はたしてイスラエルは知らなかったのでしょうか。」まず、モーセがこう言っています。 「わたしは、民でない者のことで、 あなたがたのねたみを起こさせ、 無知な国民のことで、あなたがたを怒らせる。」 045 ROM 010 020 またイザヤは大胆にこう言っています。 「わたしは、わたしを求めない者に見いだされ、 わたしをたずねない者に自分を現わした。」 045 ROM 010 021 またイスラエルについては、こう言っています。 「不従順で反抗する民に対して、 わたしは一日中、手を差し伸べた。」 045 ROM 011 001 すると、神はご自分の民を退けてしまわれたのですか。絶対にそんなことはありません。この私もイスラエル人で、アブラハムの子孫に属し、ベニヤミン族の出身です。 045 ROM 011 002 神は、あらかじめ知っておられたご自分の民を退けてしまわれたのではありません。それともあなたがたは、聖書がエリヤに関する個所で言っていることを、知らないのですか。彼はイスラエルを神に訴えてこう言いました。 045 ROM 011 003 「主よ。彼らはあなたの預言者たちを殺し、あなたの祭壇をこわし、私だけが残されました。彼らはいま私のいのちを取ろうとしています。」 045 ROM 011 004 ところが彼に対して何とお答えになりましたか。「バアルにひざをかがめていない男子七千人が、わたしのために残してある。」 045 ROM 011 005 それと同じように、今も、恵みの選びによって残された者がいます。 045 ROM 011 006 もし恵みによるのであれば、もはや行ないによるのではありません。もしそうでなかったら、恵みが恵みでなくなります。 045 ROM 011 007 では、どうなるのでしょう。イスラエルは追い求めていたものを獲得できませんでした。選ばれた者は獲得しましたが、他の者は、かたくなにされたのです。 045 ROM 011 008 こう書かれているとおりです。 「神は、彼らに鈍い心と 見えない目と聞こえない耳を与えられた。 今日に至るまで。」 045 ROM 011 009 ダビデもこう言います。 「彼らの食卓は、彼らにとって わなとなり、網となり、 つまずきとなり、報いとなれ。 045 ROM 011 010 その目はくらんで見えなくなり、 その背はいつまでもかがんでおれ。」 045 ROM 011 011 では、尋ねましょう。彼らがつまずいたのは倒れるためなのでしょうか。絶対にそんなことはありません。かえって、彼らの違反によって、救いが異邦人に及んだのです。それは、イスラエルにねたみを起こさせるためです。 045 ROM 011 012 もし彼らの違反が世界の富となり、彼らの失敗が異邦人の富となるのなら、彼らの完成は、それ以上の、どんなにかすばらしいものを、もたらすことでしょう。 045 ROM 011 013 そこで、異邦人の方々に言いますが、私は異邦人の使徒ですから、自分の務めを重んじています。 045 ROM 011 014 そして、それによって何とか私の同国人にねたみを引き起こさせて、その中の幾人でも救おうと願っているのです。 045 ROM 011 015 もし彼らの捨てられることが世界の和解であるとしたら、彼らの受け入れられることは、死者の中から生き返ることでなくて何でしょう。 045 ROM 011 016 初物がきよければ、粉の全部がきよいのです。根がきよければ、枝もきよいのです。 045 ROM 011 017 もしも、枝の中のあるものが折られて、野生種のオリーブであるあなたがその枝に混じってつがれ、そしてオリーブの根の豊かな養分をともに受けているのだとしたら、 045 ROM 011 018 あなたはその枝に対して誇ってはいけません。誇ったとしても、あなたが根をささえているのではなく、根があなたをささえているのです。 045 ROM 011 019 枝が折られたのは、私がつぎ合わされるためだ、とあなたは言うでしょう。 045 ROM 011 020 そのとおりです。彼らは不信仰によって折られ、あなたは信仰によって立っています。高ぶらないで、かえって恐れなさい。 045 ROM 011 021 もし神が台木の枝を惜しまれなかったとすれば、あなたをも惜しまれないでしょう。 045 ROM 011 022 見てごらんなさい。神のいつくしみときびしさを。倒れた者の上にあるのは、きびしさです。あなたの上にあるのは、神のいつくしみです。ただし、あなたがそのいつくしみの中にとどまっていればであって、そうでなければ、あなたも切り落とされるのです。 045 ROM 011 023 彼らであっても、もし不信仰を続けなければ、つぎ合わされるのです。神は、彼らを再びつぎ合わすことができるのです。 045 ROM 011 024 もしあなたが、野生種であるオリーブの木から切り取られ、もとの性質に反して、栽培されたオリーブの木につがれたのであれば、これらの栽培種のものは、もっとたやすく自分の台木につがれるはずです。 045 ROM 011 025 兄弟たち。私はあなたがたに、ぜひこの奥義を知っていていただきたい。それは、あなたがたが自分で自分を賢いと思うことがないようにするためです。その奥義とは、イスラエル人の一部がかたくなになったのは異邦人の完成のなる時までであり、 045 ROM 011 026 こうして、イスラエルはみな救われる、ということです。こう書かれているとおりです。 「救う者がシオンから出て、 ヤコブから不敬虔を取り払う。 045 ROM 011 027 これこそ、彼らに与えたわたしの契約である。 それは、わたしが彼らの罪を取り除く時である。」 045 ROM 011 028 彼らは、福音によれば、あなたがたのゆえに、神に敵対している者ですが、選びによれば、先祖たちのゆえに、愛されている者なのです。 045 ROM 011 029 神の賜物と召命とは変わることがありません。 045 ROM 011 030 ちょうどあなたがたが、かつては神に不従順であったが、今は、彼らの不従順のゆえに、あわれみを受けているのと同様に、 045 ROM 011 031 彼らも、今は不従順になっていますが、それは、あなたがたの受けたあわれみによって、今や、彼ら自身もあわれみを受けるためなのです。 045 ROM 011 032 なぜなら、神は、すべての人をあわれもうとして、すべての人を不従順のうちに閉じ込められたからです。 045 ROM 011 033 ああ、神の知恵と知識との富は、何と底知れず深いことでしょう。そのさばきは、何と知り尽くしがたく、その道は、何と測り知りがたいことでしょう。 045 ROM 011 034 なぜなら、だれが主のみこころを知ったのですか。また、だれが主のご計画にあずかったのですか。 045 ROM 011 035 また、だれが、まず主に与えて報いを受けるのですか。 045 ROM 011 036 というのは、すべてのことが、神から発し、神によって成り、神に至るからです。どうか、この神に、栄光がとこしえにありますように。アーメン。 045 ROM 012 001 そういうわけですから、兄弟たち。私は、神のあわれみのゆえに、あなたがたにお願いします。あなたがたのからだを、神に受け入れられる、きよい、生きた供え物としてささげなさい。それこそ、あなたがたの霊的な礼拝です。 045 ROM 012 002 この世と調子を合わせてはいけません。いや、むしろ、神のみこころは何か、すなわち、何が良いことで、神に受け入れられ、完全であるのかをわきまえ知るために、心の一新によって自分を変えなさい。 045 ROM 012 003 私は、自分に与えられた恵みによって、あなたがたひとりひとりに言います。だれでも、思うべき限度を越えて思い上がってはいけません。いや、むしろ、神がおのおのに分け与えてくださった信仰の量りに応じて、慎み深い考え方をしなさい。 045 ROM 012 004 一つのからだには多くの器官があって、すべての器官が同じ働きはしないのと同じように、 045 ROM 012 005 大ぜいいる私たちも、キリストにあって一つのからだであり、ひとりひとり互いに器官なのです。 045 ROM 012 006 私たちは、与えられた恵みに従って、異なった賜物を持っているので、もしそれが預言であれば、その信仰に応じて預言しなさい。 045 ROM 012 007 奉仕であれば奉仕し、教える人であれば教えなさい。 045 ROM 012 008 勧めをする人であれば勧め、分け与える人は惜しまずに分け与え、指導する人は熱心に指導し、慈善を行なう人は喜んでそれをしなさい。 045 ROM 012 009 愛には偽りがあってはなりません。悪を憎み、善に親しみなさい。 045 ROM 012 010 兄弟愛をもって心から互いに愛し合い、尊敬をもって互いに人を自分よりまさっていると思いなさい。 045 ROM 012 011 勤勉で怠らず、霊に燃え、主に仕えなさい。 045 ROM 012 012 望みを抱いて喜び、患難に耐え、絶えず祈りに励みなさい。 045 ROM 012 013 聖徒の入用に協力し、旅人をもてなしなさい。 045 ROM 012 014 あなたがたを迫害する者を祝福しなさい。祝福すべきであって、のろってはいけません。 045 ROM 012 015 喜ぶ者といっしょに喜び、泣く者といっしょに泣きなさい。 045 ROM 012 016 互いに一つ心になり、高ぶった思いを持たず、かえって身分の低い者に順応しなさい。自分こそ知者だなどと思ってはいけません。 045 ROM 012 017 だれに対してでも、悪に悪を報いることをせず、すべての人が良いと思うことを図りなさい。 045 ROM 012 018 あなたがたは、自分に関する限り、すべての人と平和を保ちなさい。 045 ROM 012 019 愛する人たち。自分で復讐してはいけません。神の怒りに任せなさい。それは、こう書いてあるからです。「復讐はわたしのすることである。わたしが報いをする、と主は言われる。」 045 ROM 012 020 もしあなたの敵が飢えたなら、彼に食べさせなさい。渇いたなら、飲ませなさい。そうすることによって、あなたは彼の頭に燃える炭火を積むことになるのです。 045 ROM 012 021 悪に負けてはいけません。かえって、善をもって悪に打ち勝ちなさい。 045 ROM 013 001 人はみな、上に立つ権威に従うべきです。神によらない権威はなく、存在している権威はすべて、神によって立てられたものです。 045 ROM 013 002 したがって、権威に逆らっている人は、神の定めにそむいているのです。そむいた人は自分の身にさばきを招きます。 045 ROM 013 003 支配者を恐ろしいと思うのは、良い行ないをするときではなく、悪を行なうときです。権威を恐れたくないと思うなら、善を行ないなさい。そうすれば、支配者からほめられます。 045 ROM 013 004 それは、彼があなたに益を与えるための、神のしもべだからです。しかし、もしあなたが悪を行なうなら、恐れなければなりません。彼は無意味に剣を帯びてはいないからです。彼は神のしもべであって、悪を行なう人には怒りをもって報います。 045 ROM 013 005 ですから、ただ怒りが恐ろしいからだけでなく、良心のためにも、従うべきです。 045 ROM 013 006 同じ理由で、あなたがたは、みつぎを納めるのです。彼らは、いつもその務めに励んでいる神のしもべなのです。 045 ROM 013 007 あなたがたは、だれにでも義務を果たしなさい。みつぎを納めなければならない人にはみつぎを納め、税を納めなければならない人には税を納め、恐れなければならない人を恐れ、敬わなければならない人を敬いなさい。 045 ROM 013 008 だれに対しても、何の借りもあってはいけません。ただし、互いに愛し合うことについては別です。他の人を愛する者は、律法を完全に守っているのです。 045 ROM 013 009 「姦淫するな、殺すな、盗むな、むさぼるな。」という戒め、またほかにどんな戒めがあっても、それらは、「あなたの隣人をあなた自身のように愛せよ。」ということばの中に要約されているからです。 045 ROM 013 010 愛は隣人に対して害を与えません。それゆえ、愛は律法を全うします。 045 ROM 013 011 あなたがたは、今がどのような時か知っているのですから、このように行ないなさい。あなたがたが眠りからさめるべき時刻がもう来ています。というのは、私たちが信じたころよりも、今は救いが私たちにもっと近づいているからです。 045 ROM 013 012 夜はふけて、昼が近づきました。ですから、私たちは、やみのわざを打ち捨てて、光の武具を着けようではありませんか。 045 ROM 013 013 遊興、酩酊、淫乱、好色、争い、ねたみの生活ではなく、昼間らしい、正しい生き方をしようではありませんか。 045 ROM 013 014 主イエス・キリストを着なさい。肉の欲のために心を用いてはいけません。 045 ROM 014 001 あなたがたは信仰の弱い人を受け入れなさい。その意見をさばいてはいけません。 045 ROM 014 002 何でも食べてよいと信じている人もいますが、弱い人は野菜よりほかには食べません。 045 ROM 014 003 食べる人は食べない人を侮ってはいけないし、食べない人も食べる人をさばいてはいけません。神がその人を受け入れてくださったからです。 045 ROM 014 004 あなたはいったいだれなので、他人のしもべをさばくのですか。しもべが立つのも倒れるのも、その主人の心次第です。このしもべは立つのです。なぜなら、主には、彼を立たせることができるからです。 045 ROM 014 005 ある日を、他の日に比べて、大事だと考える人もいますが、どの日も同じだと考える人もいます。それぞれ自分の心の中で確信を持ちなさい。 045 ROM 014 006 日を守る人は、主のために守っています。食べる人は、主のために食べています。なぜなら、神に感謝しているからです。食べない人も、主のために食べないのであって、神に感謝しているのです。 045 ROM 014 007 私たちの中でだれひとりとして、自分のために生きている者はなく、また自分のために死ぬ者もありません。 045 ROM 014 008 もし生きるなら、主のために生き、もし死ぬなら、主のために死ぬのです。ですから、生きるにしても、死ぬにしても、私たちは主のものです。 045 ROM 014 009 キリストは、死んだ人にとっても、生きている人にとっても、その主となるために、死んで、また生きられたのです。 045 ROM 014 010 それなのに、なぜ、あなたは自分の兄弟をさばくのですか。また、自分の兄弟を侮るのですか。私たちはみな、神のさばきの座に立つようになるのです。 045 ROM 014 011 次のように書かれているからです。 「主は言われる。わたしは生きている。 すべてのひざは、わたしの前にひざまずき、 すべての舌は、神をほめたたえる。」 045 ROM 014 012 こういうわけですから、私たちは、おのおの自分のことを神の御前に申し開きすることになります。 045 ROM 014 013 ですから、私たちは、もはや互いにさばき合うことのないようにしましょう。いや、それ以上に、兄弟にとって妨げになるもの、つまずきになるものを置かないように決心しなさい。 045 ROM 014 014 主イエスにあって、私が知り、また確信していることは、それ自体で汚れているものは何一つないということです。ただ、これは汚れていると認める人にとっては、それは汚れたものなのです。 045 ROM 014 015 もし、食べ物のことで、あなたの兄弟が心を痛めているのなら、あなたはもはや愛によって行動しているのではありません。キリストが代わりに死んでくださったほどの人を、あなたの食べ物のことで、滅ぼさないでください。 045 ROM 014 016 ですから、あなたがたが良いとしている事がらによって、そしられないようにしなさい。 045 ROM 014 017 なぜなら、神の国は飲み食いのことではなく、義と平和と聖霊による喜びだからです。 045 ROM 014 018 このようにキリストに仕える人は、神に喜ばれ、また人々にも認められるのです。 045 ROM 014 019 そういうわけですから、私たちは、平和に役立つことと、お互いの霊的成長に役立つこととを追い求めましょう。 045 ROM 014 020 食べ物のことで神のみわざを破壊してはいけません。すべての物はきよいのです。しかし、それを食べて人につまずきを与えるような人のばあいは、悪いのです。 045 ROM 014 021 肉を食べず、ぶどう酒を飲まず、そのほか兄弟のつまずきになることをしないのは良いことなのです。 045 ROM 014 022 あなたの持っている信仰は、神の御前でそれを自分の信仰として保ちなさい。自分が、良いと認めていることによって、さばかれない人は幸福です。 045 ROM 014 023 しかし、疑いを感じる人が食べるなら、罪に定められます。なぜなら、それが信仰から出ていないからです。信仰から出ていないことは、みな罪です。 045 ROM 015 001 私たち力のある者は、力のない人たちの弱さをになうべきです。自分を喜ばせるべきではありません。 045 ROM 015 002 私たちはひとりひとり、隣人を喜ばせ、その徳を高め、その人の益となるようにすべきです。 045 ROM 015 003 キリストでさえ、ご自身を喜ばせることはなさらなかったのです。むしろ、「あなたをそしる人々のそしりは、わたしの上にふりかかった。」と書いてあるとおりです。 045 ROM 015 004 昔書かれたものは、すべて私たちを教えるために書かれたのです。それは、聖書の与える忍耐と励ましによって、希望を持たせるためなのです。 045 ROM 015 005 どうか、忍耐と励ましの神が、あなたがたを、キリスト・イエスにふさわしく、互いに同じ思いを持つようにしてくださいますように。 045 ROM 015 006 それは、あなたがたが、心を一つにし、声を合わせて、私たちの主イエス・キリストの父なる神をほめたたえるためです。 045 ROM 015 007 こういうわけですから、キリストが神の栄光のために、私たちを受け入れてくださったように、あなたがたも互いに受け入れなさい。 045 ROM 015 008 私は言います。キリストは、神の真理を現わすために、割礼のある者のしもべとなられました。それは先祖たちに与えられた約束を保証するためであり、 045 ROM 015 009 また異邦人も、あわれみのゆえに、神をあがめるようになるためです。こう書かれているとおりです。 「それゆえ、私は異邦人の中で、 あなたをほめたたえ、 あなたの御名をほめ歌おう。」 045 ROM 015 010 また、こうも言われています。 「異邦人よ。主の民とともに喜べ。」 045 ROM 015 011 さらにまた、 「すべての異邦人よ。主をほめよ。 もろもろの国民よ。主をたたえよ。」 045 ROM 015 012 さらにまた、イザヤがこう言っています。 「エッサイの根が起こる。 異邦人を治めるために立ち上がる方である。 異邦人はこの方に望みをかける。」 045 ROM 015 013 どうか、望みの神が、あなたがたを信仰によるすべての喜びと平和をもって満たし、聖霊の力によって望みにあふれさせてくださいますように。 045 ROM 015 014 私の兄弟たちよ。あなたがた自身が善意にあふれ、すべての知恵に満たされ、また互いに訓戒し合うことができることを、この私は確信しています。 045 ROM 015 015 ただ私が所々、かなり大胆に書いたのは、あなたがたにもう一度思い起こしてもらうためでした。 045 ROM 015 016 それも私が、異邦人のためにキリスト・イエスの仕え人となるために、神から恵みをいただいているからです。私は神の福音をもって、祭司の務めを果たしています。それは異邦人を、聖霊によってきよめられた、神に受け入れられる供え物とするためです。 045 ROM 015 017 それで、神に仕えることに関して、私はキリスト・イエスにあって誇りを持っているのです。 045 ROM 015 018 私は、キリストが異邦人を従順にならせるため、この私を用いて成し遂げてくださったこと以外に、何かを話そうなどとはしません。キリストは、ことばと行ないにより、 045 ROM 015 019 また、しるしと不思議をなす力により、さらにまた、御霊の力によって、それを成し遂げてくださいました。その結果、私はエルサレムから始めて、ずっと回ってイルリコに至るまで、キリストの福音をくまなく伝えました。 045 ROM 015 020 このように、私は、他人の土台の上に建てないように、キリストの御名がまだ語られていない所に福音を宣べ伝えることを切に求めたのです。 045 ROM 015 021 それは、こう書いてあるとおりです。 「彼のことを伝えられなかった人々が 見るようになり、 聞いたことのなかった人々が 悟るようになる。」 045 ROM 015 022 そういうわけで、私は、あなたがたのところに行くのを幾度も妨げられましたが、 045 ROM 015 023 今は、もうこの地方には私の働くべき所がなくなりましたし、また、イスパニヤに行くばあいは、あなたがたのところに立ち寄ることを多年希望していましたので、 045 ROM 015 024 ――というのは、途中あなたがたに会い、まず、しばらくの間あなたがたとともにいて心を満たされてから、あなたがたに送られ、そこへ行きたいと望んでいるからです。―― 045 ROM 015 025 ですが、今は、聖徒たちに奉仕するためにエルサレムへ行こうとしています。 045 ROM 015 026 それは、マケドニヤとアカヤでは、喜んでエルサレムの聖徒たちの中の貧しい人たちのために醵金することにしたからです。 045 ROM 015 027 彼らは確かに喜んでそれをしたのですが、同時にまた、その人々に対してはその義務があるのです。異邦人は霊的なことでは、その人々からもらいものをしたのですから、物質的な物をもって彼らに奉仕すべきです。 045 ROM 015 028 それで、私はこのことを済ませ、彼らにこの実を確かに渡してから、あなたがたのところを通ってイスパニヤに行くことにします。 045 ROM 015 029 あなたがたのところに行くときは、キリストの満ちあふれる祝福をもって行くことと信じています。 045 ROM 015 030 兄弟たち。私たちの主イエス・キリストによって、また、御霊の愛によって切にお願いします。私のために、私とともに力を尽くして神に祈ってください。 045 ROM 015 031 私がユダヤにいる不信仰な人々から救い出され、またエルサレムに対する私の奉仕が聖徒たちに受け入れられるものとなりますように。 045 ROM 015 032 その結果として、神のみこころにより、喜びをもってあなたがたのところへ行き、あなたがたの中で、ともにいこいを得ることができますように。 045 ROM 015 033 どうか、平和の神が、あなたがたすべてとともにいてくださいますように。アーメン。 045 ROM 016 001 ケンクレヤにある教会の執事で、私たちの姉妹であるフィベを、あなたがたに推薦します。 045 ROM 016 002 どうぞ、聖徒にふさわしいしかたで、主にあってこの人を歓迎し、あなたがたの助けを必要とすることは、どんなことでも助けてあげてください。この人は、多くの人を助け、また私自身をも助けてくれた人です。 045 ROM 016 003 キリスト・イエスにあって私の同労者であるプリスカとアクラによろしく伝えてください。 045 ROM 016 004 この人たちは、自分のいのちの危険を冒して私のいのちを守ってくれたのです。この人たちには、私だけでなく、異邦人のすべての教会も感謝しています。 045 ROM 016 005 またその家の教会によろしく伝えてください。私の愛するエパネトによろしく。この人はアジヤでキリストを信じた最初の人です。 045 ROM 016 006 あなたがたのために非常に労苦したマリヤによろしく。 045 ROM 016 007 私の同国人で私といっしょに投獄されたことのある、アンドロニコとユニアスにもよろしく。この人々は使徒たちの間によく知られている人々で、また私より先にキリストにある者となったのです。 045 ROM 016 008 主にあって私の愛するアムプリアトによろしく。 045 ROM 016 009 キリストにあって私たちの同労者であるウルバノと、私の愛するスタキスとによろしく。 045 ROM 016 010 キリストにあって練達したアペレによろしく。アリストブロの家の人たちによろしく。 045 ROM 016 011 私の同国人ヘロデオンによろしく。ナルキソの家の主にある人たちによろしく。 045 ROM 016 012 主にあって労している、ツルパナとツルポサによろしく。主にあって非常に労苦した愛するペルシスによろしく。 045 ROM 016 013 主にあって選ばれた人ルポスによろしく。また彼と私との母によろしく。 045 ROM 016 014 アスンクリト、フレゴン、ヘルメス、パトロバ、ヘルマスおよびその人たちといっしょにいる兄弟たちによろしく。 045 ROM 016 015 フィロロゴとユリヤ、ネレオとその姉妹、オルンパおよびその人たちといっしょにいるすべての聖徒たちによろしく。 045 ROM 016 016 あなたがたはきよい口づけをもって互いのあいさつをかわしなさい。キリストの教会はみな、あなたがたによろしくと言っています。 045 ROM 016 017 兄弟たち。私はあなたがたに願います。あなたがたの学んだ教えにそむいて、分裂とつまずきを引き起こす人たちを警戒してください。彼らから遠ざかりなさい。 045 ROM 016 018 そういう人たちは、私たちの主キリストに仕えないで、自分の欲に仕えているのです。彼らは、なめらかなことば、へつらいのことばをもって純朴な人たちの心をだましているのです。 045 ROM 016 019 あなたがたの従順はすべての人に知られているので、私はあなたがたのことを喜んでいます。しかし、私は、あなたがたが善にはさとく、悪にはうとくあってほしい、と望んでいます。 045 ROM 016 020 平和の神は、すみやかに、あなたがたの足でサタンを踏み砕いてくださいます。 どうか、私たちの主イエスの恵みが、あなたがたとともにありますように。 045 ROM 016 021 私の同労者テモテが、あなたがたによろしくと言っています。また私の同国人ルキオとヤソンとソシパテロがよろしくと言っています。 045 ROM 016 022 この手紙を筆記した私、テルテオも、主にあってあなたがたにごあいさつ申し上げます。 045 ROM 016 023 私と全教会との家主であるガイオも、あなたがたによろしくと言っています。市の収入役であるエラストと兄弟クワルトもよろしくと言っています。 045 ROM 016 025 私の福音とイエス・キリストの宣教によって、すなわち、世々にわたって長い間隠されていたが、 045 ROM 016 026 今や現わされて、永遠の神の命令に従い、預言者たちの書によって、信仰の従順に導くためにあらゆる国の人々に知らされた奥義の啓示によって、あなたがたを堅く立たせることができる方、 045 ROM 016 027 知恵に富む唯一の神に、イエス・キリストによって、御栄えがとこしえまでありますように。アーメン。 # # BOOK 046 1CO 1 Corinthians コリント人への手紙第一 046 1CO 001 001 神のみこころによってキリスト・イエスの使徒として召されたパウロと、兄弟ソステネから、 046 1CO 001 002 コリントにある神の教会へ。すなわち、私たちの主イエス・キリストの御名を、至る所で呼び求めているすべての人々とともに、聖徒として召され、キリスト・イエスにあってきよめられた方々へ。主は私たちの主であるとともに、そのすべての人々の主です。 046 1CO 001 003 私たちの父なる神と主イエス・キリストから、恵みと平安があなたがたの上にありますように。 046 1CO 001 004 私は、キリスト・イエスによってあなたがたに与えられた神の恵みのゆえに、あなたがたのことをいつも神に感謝しています。 046 1CO 001 005 というのは、あなたがたは、ことばといい、知識といい、すべてにおいて、キリストにあって豊かな者とされたからです。 046 1CO 001 006 それは、キリストについてのあかしが、あなたがたの中で確かになったからで、 046 1CO 001 007 その結果、あなたがたはどんな賜物にも欠けるところがなく、また、熱心に私たちの主イエス・キリストの現われを待っています。 046 1CO 001 008 主も、あなたがたを、私たちの主イエス・キリストの日に責められるところのない者として、最後まで堅く保ってくださいます。 046 1CO 001 009 神は真実であり、その方のお召しによって、あなたがたは神の御子、私たちの主イエス・キリストとの交わりに入れられました。 046 1CO 001 010 さて、兄弟たち。私は、私たちの主イエス・キリストの御名によって、あなたがたにお願いします。どうか、みなが一致して、仲間割れすることなく、同じ心、同じ判断を完全に保ってください。 046 1CO 001 011 実はあなたがたのことをクロエの家の者から知らされました。兄弟たち。あなたがたの間には争いがあるそうで、 046 1CO 001 012 あなたがたはめいめいに、「私はパウロにつく。」「私はアポロに。」「私はケパに。」「私はキリストにつく。」と言っているということです。 046 1CO 001 013 キリストが分割されたのですか。あなたがたのために十字架につけられたのはパウロでしょうか。あなたがたがバプテスマを受けたのはパウロの名によるのでしょうか。 046 1CO 001 014 私は、クリスポとガイオのほか、あなたがたのだれにもバプテスマを授けたことがないことを感謝しています。 046 1CO 001 015 それは、あなたがたが私の名によってバプテスマを受けたと言われないようにするためでした。 046 1CO 001 016 私はステパナの家族にもバプテスマを授けましたが、そのほかはだれにも授けた覚えはありません。 046 1CO 001 017 キリストが私をお遣わしになったのは、バプテスマを授けさせるためではなく、福音を宣べ伝えさせるためです。それも、キリストの十字架がむなしくならないために、ことばの知恵によってはならないのです。 046 1CO 001 018 十字架のことばは、滅びに至る人々には愚かであっても、救いを受ける私たちには、神の力です。 046 1CO 001 019 それは、こう書いてあるからです。 「わたしは知恵ある者の知恵を滅ぼし、 賢い者の賢さをむなしくする。」 046 1CO 001 020 知者はどこにいるのですか。学者はどこにいるのですか。この世の議論家はどこにいるのですか。神は、この世の知恵を愚かなものにされたではありませんか。 046 1CO 001 021 事実、この世が自分の知恵によって神を知ることがないのは、神の知恵によるのです。それゆえ、神はみこころによって、宣教のことばの愚かさを通して、信じる者を救おうと定められたのです。 046 1CO 001 022 ユダヤ人はしるしを要求し、ギリシヤ人は知恵を追求します。 046 1CO 001 023 しかし、私たちは十字架につけられたキリストを宣べ伝えるのです。ユダヤ人にとってはつまずき、異邦人にとっては愚かでしょうが、 046 1CO 001 024 しかし、ユダヤ人であってもギリシヤ人であっても、召された者にとっては、キリストは神の力、神の知恵なのです。 046 1CO 001 025 なぜなら、神の愚かさは人よりも賢く、神の弱さは人よりも強いからです。 046 1CO 001 026 兄弟たち、あなたがたの召しのことを考えてごらんなさい。この世の知者は多くはなく、権力者も多くはなく、身分の高い者も多くはありません。 046 1CO 001 027 しかし神は、知恵ある者をはずかしめるために、この世の愚かな者を選び、強い者をはずかしめるために、この世の弱い者を選ばれたのです。 046 1CO 001 028 また、この世の取るに足りない者や見下されている者を、神は選ばれました。すなわち、有るものをない者のようにするため、無に等しいものを選ばれたのです。 046 1CO 001 029 これは、神の御前でだれをも誇らせないためです。 046 1CO 001 030 しかしあなたがたは、神によってキリスト・イエスのうちにあるのです。キリストは、私たちにとって、神の知恵となり、また、義ときよめと、贖いとになられました。 046 1CO 001 031 まさしく、「誇る者は主にあって誇れ。」と書かれているとおりになるためです。 046 1CO 002 001 さて兄弟たち。私があなたがたのところへ行ったとき、私は、すぐれたことば、すぐれた知恵を用いて、神のあかしを宣べ伝えることはしませんでした。 046 1CO 002 002 なぜなら私は、あなたがたの間で、イエス・キリスト、すなわち十字架につけられた方のほかは、何も知らないことに決心したからです。 046 1CO 002 003 あなたがたといっしょにいたときの私は、弱く、恐れおののいていました。 046 1CO 002 004 そして、私のことばと私の宣教とは、説得力のある知恵のことばによって行なわれたものではなく、御霊と御力の現われでした。 046 1CO 002 005 それは、あなたがたの持つ信仰が、人間の知恵にささえられず、神の力にささえられるためでした。 046 1CO 002 006 しかし私たちは、成人の間で、知恵を語ります。この知恵は、この世の知恵でもなく、この世の過ぎ去って行く支配者たちの知恵でもありません。 046 1CO 002 007 私たちの語るのは、隠された奥義としての神の知恵であって、それは、神が、私たちの栄光のために、世界の始まる前から、あらかじめ定められたものです。 046 1CO 002 008 この知恵を、この世の支配者たちは、だれひとりとして悟りませんでした。もし悟っていたら、栄光の主を十字架につけはしなかったでしょう。 046 1CO 002 009 まさしく、聖書に書いてあるとおりです。 「目が見たことのないもの、 耳が聞いたことのないもの、 そして、人の心に思い浮かんだことのないもの。 神を愛する者のために、 神の備えてくださったものは、みなそうである。」 046 1CO 002 010 神はこれを、御霊によって私たちに啓示されたのです。御霊はすべてのことを探り、神の深みにまで及ばれるからです。 046 1CO 002 011 いったい、人の心のことは、その人のうちにある霊のほかに、だれが知っているでしょう。同じように、神のみこころのことは、神の御霊のほかにはだれも知りません。 046 1CO 002 012 ところで、私たちは、この世の霊を受けたのではなく、神の御霊を受けました。それは、恵みによって神から私たちに賜わったものを、私たちが知るためです。 046 1CO 002 013 この賜物について話すには、人の知恵に教えられたことばを用いず、御霊に教えられたことばを用います。その御霊のことばをもって御霊のことを解くのです。 046 1CO 002 014 生まれながらの人間は、神の御霊に属することを受け入れません。それらは彼には愚かなことだからです。また、それを悟ることができません。なぜなら、御霊のことは御霊によってわきまえるものだからです。 046 1CO 002 015 御霊を受けている人は、すべてのことをわきまえますが、自分はだれによってもわきまえられません。 046 1CO 002 016 いったい、「だれが主のみこころを知り、主を導くことができたか。」ところが、私たちには、キリストの心があるのです。 046 1CO 003 001 さて、兄弟たちよ。私は、あなたがたに向かって、御霊に属する人に対するようには話すことができないで、肉に属する人、キリストにある幼子に対するように話しました。 046 1CO 003 002 私はあなたがたには乳を与えて、堅い食物を与えませんでした。あなたがたには、まだ無理だったからです。実は、今でもまだ無理なのです。 046 1CO 003 003 あなたがたは、まだ肉に属しているからです。あなたがたの間にねたみや争いがあることからすれば、あなたがたは肉に属しているのではありませんか。そして、ただの人のように歩んでいるのではありませんか。 046 1CO 003 004 ある人が、「私はパウロにつく。」と言えば、別の人は、「私はアポロに。」と言う。そういうことでは、あなたがたは、ただの人たちではありませんか。 046 1CO 003 005 アポロとは何でしょう。パウロとは何でしょう。あなたがたが信仰にはいるために用いられたしもべであって、主がおのおのに授けられたとおりのことをしたのです。 046 1CO 003 006 私が植えて、アポロが水を注ぎました。しかし、成長させたのは神です。 046 1CO 003 007 それで、たいせつなのは、植える者でも水を注ぐ者でもありません。成長させてくださる神なのです。 046 1CO 003 008 植える者と水を注ぐ者は、一つですが、それぞれ自分自身の働きに従って自分自身の報酬を受けるのです。 046 1CO 003 009 私たちは神の協力者であり、あなたがたは神の畑、神の建物です。 046 1CO 003 010 与えられた神の恵みによって、私は賢い建築家のように、土台を据えました。そして、ほかの人がその上に家を建てています。しかし、どのように建てるかについてはそれぞれが注意しなければなりません。 046 1CO 003 011 というのは、だれも、すでに据えられている土台のほかに、ほかの物を据えることはできないからです。その土台とはイエス・キリストです。 046 1CO 003 012 もし、だれかがこの土台の上に、金、銀、宝石、木、草、わらなどで建てるなら、 046 1CO 003 013 各人の働きは明瞭になります。その日がそれを明らかにするのです。というのは、その日は火とともに現われ、この火がその力で各人の働きの真価をためすからです。 046 1CO 003 014 もしだれかの建てた建物が残れば、その人は報いを受けます。 046 1CO 003 015 もしだれかの建てた建物が焼ければ、その人は損害を受けますが、自分自身は、火の中をくぐるようにして助かります。 046 1CO 003 016 あなたがたは神の神殿であり、神の御霊があなたがたに宿っておられることを知らないのですか。 046 1CO 003 017 もし、だれかが神の神殿をこわすなら、神がその人を滅ぼされます。神の神殿は聖なるものだからです。あなたがたがその神殿です。 046 1CO 003 018 だれも自分を欺いてはいけません。もしあなたがたの中で、自分は今の世の知者だと思う者がいたら、知者になるためには愚かになりなさい。 046 1CO 003 019 なぜなら、この世の知恵は、神の御前では愚かだからです。こう書いてあります。「神は、知者どもを彼らの悪賢さの中で捕える。」 046 1CO 003 020 また、次のようにも書いてあります。「主は、知者の論議を無益だと知っておられる。」 046 1CO 003 021 ですから、だれも人間を誇ってはいけません。すべては、あなたがたのものです。 046 1CO 003 022 パウロであれ、アポロであれ、ケパであれ、また世界であれ、いのちであれ、死であれ、また現在のものであれ、未来のものであれ、すべてあなたがたのものです。 046 1CO 003 023 そして、あなたがたはキリストのものであり、キリストは神のものです。 046 1CO 004 001 こういうわけで、私たちを、キリストのしもべ、また神の奥義の管理者だと考えなさい。 046 1CO 004 002 このばあい、管理者には、忠実であることが要求されます。 046 1CO 004 003 しかし、私にとっては、あなたがたによる判定、あるいは、およそ人間による判決を受けることは、非常に小さなことです。事実、私は自分で自分をさばくことさえしません。 046 1CO 004 004 私にはやましいことは少しもありませんが、だからといって、それで無罪とされるのではありません。私をさばく方は主です。 046 1CO 004 005 ですから、あなたがたは、主が来られるまでは、何についても、先走ったさばきをしてはいけません。主は、やみの中に隠れた事も明るみに出し、心の中のはかりごとも明らかにされます。そのとき、神から各人に対する称賛が届くのです。 046 1CO 004 006 さて、兄弟たち。以上、私は、私自身とアポロに当てはめて、あなたがたのために言って来ました。それは、あなたがたが、私たちの例によって、「書かれていることを越えない。」ことを学ぶため、そして、一方にくみし、他方に反対して高慢にならないためです。 046 1CO 004 007 いったいだれが、あなたをすぐれた者と認めるのですか。あなたには、何か、もらったものでないものがあるのですか。もしもらったのなら、なぜ、もらっていないかのように誇るのですか。 046 1CO 004 008 あなたがたは、もう満ち足りています。もう豊かになっています。私たち抜きで、王さまになっています。いっそのこと、あなたがたがほんとうに王さまになっていたらよかったのです。そうすれば、私たちも、あなたがたといっしょに王になれたでしょうに。 046 1CO 004 009 私は、こう思います。神は私たち使徒を、死罪に決まった者のように、行列のしんがりとして引き出されました。こうして私たちは、御使いにも人々にも、この世の見せ物になったのです。 046 1CO 004 010 私たちはキリストのために愚かな者ですが、あなたがたはキリストにあって賢い者です。私たちは弱いが、あなたがたは強いのです。あなたがたは栄誉を持っているが、私たちは卑しめられています。 046 1CO 004 011 今に至るまで、私たちは飢え、渇き、着る物もなく、虐待され、落ち着く先もありません。 046 1CO 004 012 また、私たちは苦労して自分の手で働いています。はずかしめられるときにも祝福し、迫害されるときにも耐え忍び、 046 1CO 004 013 ののしられるときには、慰めのことばをかけます。今でも、私たちはこの世のちり、あらゆるもののかすです。 046 1CO 004 014 私がこう書くのは、あなたがたをはずかしめるためではなく、愛する私の子どもとして、さとすためです。 046 1CO 004 015 たといあなたがたに、キリストにある養育係が一万人あろうとも、父は多くあるはずがありません。この私が福音によって、キリスト・イエスにあって、あなたがたを生んだのです。 046 1CO 004 016 ですから、私はあなたがたに勧めます。どうか、私にならう者となってください。 046 1CO 004 017 そのために、私はあなたがたのところへテモテを送りました。テモテは主にあって私の愛する、忠実な子です。彼は、私が至る所のすべての教会で教えているとおりに、キリスト・イエスにある私の生き方を、あなたがたに思い起こさせてくれるでしょう。 046 1CO 004 018 私があなたがたのところへ行くことはあるまいと、思い上がっている人たちがいます。 046 1CO 004 019 しかし、主のみこころであれば、すぐにもあなたがたのところへ行きます。そして、思い上がっている人たちの、ことばではなく、力を見せてもらいましょう。 046 1CO 004 020 神の国はことばにはなく、力にあるのです。 046 1CO 004 021 あなたがたはどちらを望むのですか。私はあなたがたのところへむちを持って行きましょうか。それとも、愛と優しい心で行きましょうか。 046 1CO 005 001 あなたがたの間に不品行があるということが言われています。しかもそれは、異邦人の中にもないほどの不品行で、父の妻を妻にしている者がいるとのことです。 046 1CO 005 002 それなのに、あなたがたは誇り高ぶっています。そればかりか、そのような行ないをしている者をあなたがたの中から取り除こうとして悲しむこともなかったのです。 046 1CO 005 003 私のほうでは、からだはそこにいなくても心はそこにおり、現にそこにいるのと同じように、そのような行ないをした者を主イエスの御名によってすでにさばきました。 046 1CO 005 004 あなたがたが集まったときに、私も、霊においてともにおり、私たちの主イエスの権能をもって、 046 1CO 005 005 このような者をサタンに引き渡したのです。それは彼の肉が滅ぼされるためですが、それによって彼の霊が主の日に救われるためです。 046 1CO 005 006 あなたがたの高慢は、よくないことです。あなたがたは、ほんのわずかのパン種が、粉のかたまり全体をふくらませることを知らないのですか。 046 1CO 005 007 新しい粉のかたまりのままでいるために、古いパン種を取り除きなさい。あなたがたはパン種のないものだからです。私たちの過越の小羊キリストが、すでにほふられたからです。 046 1CO 005 008 ですから、私たちは、古いパン種を用いたり、悪意と不正のパン種を用いたりしないで、パン種のはいらない、純粋で真実なパンで、祭りをしようではありませんか。 046 1CO 005 009 私は前にあなたがたに送った手紙で、不品行な者たちと交際しないようにと書きました。 046 1CO 005 010 それは、世の中の不品行な者、貪欲な者、略奪する者、偶像を礼拝する者と全然交際しないようにという意味ではありません。もしそうだとしたら、この世界から出て行かなければならないでしょう。 046 1CO 005 011 私が書いたことのほんとうの意味は、もし、兄弟と呼ばれる者で、しかも不品行な者、貪欲な者、偶像を礼拝する者、人をそしる者、酒に酔う者、略奪する者がいたなら、そのような者とはつきあってはいけない、いっしょに食事をしてもいけない、ということです。 046 1CO 005 012 外部の人たちをさばくことは、私のすべきことでしょうか。あなたがたがさばくべき者は、内部の人たちではありませんか。 046 1CO 005 013 外部の人たちは、神がおさばきになります。その悪い人をあなたがたの中から除きなさい。 046 1CO 006 001 あなたがたの中には、仲間の者と争いを起こしたとき、それを聖徒たちに訴えないで、あえて、正しくない人たちに訴え出るような人がいるのでしょうか。 046 1CO 006 002 あなたがたは、聖徒が世界をさばくようになることを知らないのですか。世界があなたがたによってさばかれるはずなのに、あなたがたは、ごく小さな事件さえもさばく力がないのですか。 046 1CO 006 003 私たちは御使いをもさばくべき者だ、ということを、知らないのですか。それならこの世のことは、言うまでもないではありませんか。 046 1CO 006 004 それなのに、この世のことで争いが起こると、教会のうちでは無視される人たちを裁判官に選ぶのですか。 046 1CO 006 005 私はあなたがたをはずかしめるためにこう言っているのです。いったい、あなたがたの中には、兄弟の間の争いを仲裁することのできるような賢い者が、ひとりもいないのですか。 046 1CO 006 006 それで、兄弟は兄弟を告訴し、しかもそれを不信者の前でするのですか。 046 1CO 006 007 そもそも、互いに訴え合うことが、すでにあなたがたの敗北です。なぜ、むしろ不正をも甘んじて受けないのですか。なぜ、むしろだまされていないのですか。 046 1CO 006 008 ところが、それどころか、あなたがたは、不正を行なう、だまし取る、しかもそのようなことを兄弟に対してしているのです。 046 1CO 006 009 あなたがたは、正しくない者は神の国を相続できないことを、知らないのですか。だまされてはいけません。不品行な者、偶像を礼拝する者、姦淫をする者、男娼となる者、男色をする者、 046 1CO 006 010 盗む者、貪欲な者、酒に酔う者、そしる者、略奪する者はみな、神の国を相続することができません。 046 1CO 006 011 あなたがたの中のある人たちは以前はそのような者でした。しかし、主イエス・キリストの御名と私たちの神の御霊によって、あなたがたは洗われ、きよい者とされ、義と認められたのです。 046 1CO 006 012 すべてのことが私には許されたことです。しかし、すべてが益になるわけではありません。私にはすべてのことが許されています。しかし、私はどんなことにも支配されはしません。 046 1CO 006 013 食物は腹のためにあり、腹は食物のためにあります。ところが神は、そのどちらをも滅ぼされます。からだは不品行のためにあるのではなく、主のためであり、主はからだのためです。 046 1CO 006 014 神は主をよみがえらせましたが、その御力によって私たちをもよみがえらせてくださいます。 046 1CO 006 015 あなたがたのからだはキリストのからだの一部であることを、知らないのですか。キリストのからだを取って遊女のからだとするのですか。そんなことは絶対に許されません。 046 1CO 006 016 遊女と交われば、一つからだになることを知らないのですか。「ふたりの者は一心同体となる。」と言われているからです。 046 1CO 006 017 しかし、主と交われば、一つ霊となるのです。 046 1CO 006 018 不品行を避けなさい。人が犯す罪はすべて、からだの外のものです。しかし、不品行を行なう者は、自分のからだに対して罪を犯すのです。 046 1CO 006 019 あなたがたのからだは、あなたがたのうちに住まれる、神から受けた聖霊の宮であり、あなたがたは、もはや自分自身のものではないことを、知らないのですか。 046 1CO 006 020 あなたがたは、代価を払って買い取られたのです。ですから自分のからだをもって、神の栄光を現わしなさい。 046 1CO 007 001 さて、あなたがたの手紙に書いてあったことについてですが、男が女に触れないのは良いことです。 046 1CO 007 002 しかし、不品行を避けるため、男はそれぞれ自分の妻を持ち、女もそれぞれ自分の夫を持ちなさい。 046 1CO 007 003 夫は自分の妻に対して義務を果たし、同様に妻も自分の夫に対して義務を果たしなさい。 046 1CO 007 004 妻は自分のからだに関する権利を持ってはおらず、それは夫のものです。同様に夫も自分のからだについての権利を持ってはおらず、それは妻のものです。 046 1CO 007 005 互いの権利を奪い取ってはいけません。ただし、祈りに専心するために、合意の上でしばらく離れていて、また再びいっしょになるというのならかまいません。あなたがたが自制力を欠くとき、サタンの誘惑にかからないためです。 046 1CO 007 006 以上、私の言うところは、容認であって、命令ではありません。 046 1CO 007 007 私の願うところは、すべての人が私のようであることです。しかし、ひとりひとり神から与えられたそれぞれの賜物を持っているので、人それぞれに行き方があります。 046 1CO 007 008 次に、結婚していない男とやもめの女に言いますが、私のようにしていられるなら、それがよいのです。 046 1CO 007 009 しかし、もし自制することができなければ、結婚しなさい。情の燃えるよりは、結婚するほうがよいからです。 046 1CO 007 010 次に、すでに結婚した人々に命じます。命じるのは、私ではなく主です。妻は夫と別れてはいけません。 046 1CO 007 011 ――もし別れたのだったら、結婚せずにいるか、それとも夫と和解するか、どちらかにしなさい。――また夫は妻を離別してはいけません。 046 1CO 007 012 次に、そのほかの人々に言いますが、これを言うのは主ではなく、私です。信者の男子に信者でない妻があり、その妻がいっしょにいることを承知しているばあいは、離婚してはいけません。 046 1CO 007 013 また、信者でない夫を持つ女は、夫がいっしょにいることを承知しているばあいは、離婚してはいけません。 046 1CO 007 014 なぜなら、信者でない夫は妻によってきよめられており、また、信者でない妻も信者の夫によってきよめられているからです。そうでなかったら、あなたがたの子どもは汚れているわけです。ところが、現にきよいのです。 046 1CO 007 015 しかし、もし信者でないほうの者が離れて行くのであれば、離れて行かせなさい。そのようなばあいには、信者である夫あるいは妻は、縛られることはありません。神は、平和を得させようとしてあなたがたを召されたのです。 046 1CO 007 016 なぜなら、妻よ。あなたが夫を救えるかどうかが、どうしてわかりますか。また、夫よ。あなたが妻を救えるかどうかが、どうしてわかりますか。 046 1CO 007 017 ただ、おのおのが、主からいただいた分に応じ、また神がおのおのをお召しになったときのままの状態で歩むべきです。私は、すべての教会で、このように指導しています。 046 1CO 007 018 召されたとき割礼を受けていたのなら、その跡をなくしてはいけません。また、召されたとき割礼を受けていなかったのなら、割礼を受けてはいけません。 046 1CO 007 019 割礼は取るに足らぬこと、無割礼も取るに足らぬことです。重要なのは神の命令を守ることです。 046 1CO 007 020 おのおの自分が召されたときの状態にとどまっていなさい。 046 1CO 007 021 奴隷の状態で召されたのなら、それを気にしてはいけません。しかし、もし自由の身になれるなら、むしろ自由になりなさい。 046 1CO 007 022 奴隷も、主にあって召された者は、主に属する自由人であり、同じように、自由人も、召された者はキリストに属する奴隷だからです。 046 1CO 007 023 あなたがたは、代価をもって買われたのです。人間の奴隷となってはいけません。 046 1CO 007 024 兄弟たち。おのおの召されたときのままの状態で、神の御前にいなさい。 046 1CO 007 025 処女のことについて、私は主の命令を受けてはいませんが、主のあわれみによって信頼できる者として、意見を述べます。 046 1CO 007 026 現在の危急のときには、男はそのままの状態にとどまるのがよいと思います。 046 1CO 007 027 あなたが妻に結ばれているなら、解かれたいと考えてはいけません。妻に結ばれていないのなら、妻を得たいと思ってはいけません。 046 1CO 007 028 しかし、たといあなたが結婚したからといって、罪を犯すのではありません。たとい処女が結婚したからといって、罪を犯すのではありません。ただ、それらの人々は、その身に苦難を招くでしょう。私はあなたがたを、そのようなめに会わせたくないのです。 046 1CO 007 029 兄弟たちよ。私は次のことを言いたいのです。時は縮まっています。今からは、妻のある者は、妻のない者のようにしていなさい。 046 1CO 007 030 泣く者は泣かない者のように、喜ぶ者は喜ばない者のように、買う者は所有しない者のようにしていなさい。 046 1CO 007 031 世の富を用いる者は用いすぎないようにしなさい。この世の有様は過ぎ去るからです。 046 1CO 007 032 あなたがたが思い煩わないことを私は望んでいます。独身の男は、どうしたら主に喜ばれるかと、主のことに心を配ります。 046 1CO 007 033 しかし、結婚した男は、どうしたら妻に喜ばれるかと世のことに心を配り、 046 1CO 007 034 心が分かれるのです。独身の女や処女は、身もたましいもきよくなるため、主のことに心を配りますが、結婚した女は、どうしたら夫に喜ばれるかと、世のことに心を配ります。 046 1CO 007 035 ですが、私がこう言っているのは、あなたがた自身の益のためであって、あなたがたを束縛しようとしているのではありません。むしろあなたがたが秩序ある生活を送って、ひたすら主に奉仕できるためなのです。 046 1CO 007 036 もし、処女である自分の娘の婚期も過ぎようとしていて、そのままでは、娘に対しての扱い方が正しくないと思い、またやむをえないことがあるならば、その人は、その心のままにしなさい。罪を犯すわけではありません。彼らに結婚させなさい。 046 1CO 007 037 しかし、もし心のうちに堅く決意しており、ほかに強いられる事情もなく、また自分の思うとおりに行なうことのできる人が、処女である自分の娘をそのままにしておくのなら、そのことはりっぱです。 046 1CO 007 038 ですから、処女である自分の娘を結婚させる人は良いことをしているのであり、また結婚させない人は、もっと良いことをしているのです。 046 1CO 007 039 妻は夫が生きている間は夫に縛られています。しかし、もし夫が死んだなら、自分の願う人と結婚する自由があります。ただ主にあってのみ、そうなのです。 046 1CO 007 040 私の意見では、もしそのままにしていられたら、そのほうがもっと幸いです。私も、神の御霊をいただいていると思います。 046 1CO 008 001 次に、偶像にささげた肉についてですが、私たちはみな知識を持っているということなら、わかっています。しかし、知識は人を高ぶらせ、愛は人の徳を建てます。 046 1CO 008 002 人がもし、何かを知っていると思ったら、その人はまだ知らなければならないほどのことも知ってはいないのです。 046 1CO 008 003 しかし、人が神を愛するなら、その人は神に知られているのです。 046 1CO 008 004 そういうわけで、偶像にささげた肉を食べることについてですが、私たちは、世の偶像の神は実際にはないものであること、また、唯一の神以外には神は存在しないことを知っています。 046 1CO 008 005 なるほど、多くの神や、多くの主があるので、神々と呼ばれるものならば、天にも地にもありますが、 046 1CO 008 006 私たちには、父なる唯一の神がおられるだけで、すべてのものはこの神から出ており、私たちもこの神のために存在しているのです。また、唯一の主なるイエス・キリストがおられるだけで、すべてのものはこの主によって存在し、私たちもこの主によって存在するのです。 046 1CO 008 007 しかし、すべての人にこの知識があるのではありません。ある人たちは、今まで偶像になじんで来たため偶像にささげた肉として食べ、それで彼らのそのように弱い良心が汚れるのです。 046 1CO 008 008 しかし、私たちを神に近づけるのは食物ではありません。食べなくても損にはならないし、食べても益にはなりません。 046 1CO 008 009 ただ、あなたがたのこの権利が、弱い人たちのつまずきとならないように、気をつけなさい。 046 1CO 008 010 知識のあるあなたが偶像の宮で食事をしているのをだれかが見たら、それによって力を得て、その人の良心は弱いのに、偶像の神にささげた肉を食べるようなことにならないでしょうか。 046 1CO 008 011 その弱い人は、あなたの知識によって、滅びることになるのです。キリストはその兄弟のためにも死んでくださったのです。 046 1CO 008 012 あなたがたはこのように兄弟たちに対して罪を犯し、彼らの弱い良心を踏みにじるとき、キリストに対して罪を犯しているのです。 046 1CO 008 013 ですから、もし食物が私の兄弟をつまずかせるなら、私は今後いっさい肉を食べません。それは、私の兄弟につまずきを与えないためです。 046 1CO 009 001 私には自由がないでしょうか。私は使徒ではないのでしょうか。私は私たちの主イエスを見たのではないでしょうか。あなたがたは、主にあって私の働きの実ではありませんか。 046 1CO 009 002 たとい私がほかの人々に対しては使徒でなくても、少なくともあなたがたに対しては使徒です。あなたがたは、主にあって、私が使徒であることの証印です。 046 1CO 009 003 私をさばく人たちに対して、私は次のように弁明します。 046 1CO 009 004 いったい私たちには飲み食いする権利がないのでしょうか。 046 1CO 009 005 私たちには、ほかの使徒、主の兄弟たち、ケパなどと違って、信者である妻を連れて歩く権利がないのでしょうか。 046 1CO 009 006 それともまた、私とバルナバだけには、生活のための働きをやめる権利がないのでしょうか。 046 1CO 009 007 いったい自分の費用で兵士になる者がいるでしょうか。自分でぶどう園を造りながら、その実を食べない者がいるでしょうか。羊の群れを飼いながら、その乳を飲まない者がいるでしょうか。 046 1CO 009 008 私がこんなことを言うのは、人間の考えによって言っているのでしょうか。律法も同じことを言っているではありませんか。 046 1CO 009 009 モーセの律法には、「穀物をこなしている牛に、くつこを掛けてはいけない。」と書いてあります。いったい神は、牛のことを気にかけておられるのでしょうか。 046 1CO 009 010 それとも、もっぱら私たちのために、こう言っておられるのでしょうか。むろん、私たちのためにこう書いてあるのです。なぜなら、耕す者が望みを持って耕し、脱穀する者が分配を受ける望みを持って仕事をするのは当然だからです。 046 1CO 009 011 もし私たちが、あなたがたに御霊のものを蒔いたのであれば、あなたがたから物質的なものを刈り取ることは行き過ぎでしょうか。 046 1CO 009 012 もし、ほかの人々が、あなたがたに対する権利にあずかっているのなら、私たちはなおさらその権利を用いてよいはずではありませんか。それなのに、私たちはこの権利を用いませんでした。かえって、すべてのことについて耐え忍んでいます。それは、キリストの福音に少しの妨げも与えまいとしてなのです。 046 1CO 009 013 あなたがたは、宮に奉仕している者が宮の物を食べ、祭壇に仕える者が祭壇の物にあずかることを知らないのですか。 046 1CO 009 014 同じように、主も、福音を宣べ伝える者が、福音の働きから生活のささえを得るように定めておられます。 046 1CO 009 015 しかし、私はこれらの権利を一つも用いませんでした。また、私は自分がそうされたくてこのように書いているのでもありません。私は自分の誇りをだれかに奪われるよりは、死んだほうがましだからです。 046 1CO 009 016 というのは、私が福音を宣べ伝えても、それは私の誇りにはなりません。そのことは、私がどうしても、しなければならないことだからです。もし福音を宣べ伝えなかったら、私はわざわいに会います。 046 1CO 009 017 もし私がこれを自発的にしているのなら、報いがありましょう。しかし、強いられたにしても、私には務めがゆだねられているのです。 046 1CO 009 018 では、私にどんな報いがあるのでしょう。それは、福音を宣べ伝えるときに報酬を求めないで与え、福音の働きによって持つ自分の権利を十分に用いないことなのです。 046 1CO 009 019 私はだれに対しても自由ですが、より多くの人を獲得するために、すべての人の奴隷となりました。 046 1CO 009 020 ユダヤ人にはユダヤ人のようになりました。それはユダヤ人を獲得するためです。律法の下にある人々には、私自身は律法の下にはいませんが、律法の下にある者のようになりました。それは律法の下にある人々を獲得するためです。 046 1CO 009 021 律法を持たない人々に対しては、――私は神の律法の外にある者ではなく、キリストの律法を守る者ですが、――律法を持たない者のようになりました。それは律法を持たない人々を獲得するためです。 046 1CO 009 022 弱い人々には、弱い者になりました。弱い人々を獲得するためです。すべての人に、すべてのものとなりました。それは、何とかして、幾人かでも救うためです。 046 1CO 009 023 私はすべてのことを、福音のためにしています。それは、私も福音の恵みをともに受ける者となるためなのです。 046 1CO 009 024 競技場で走る人たちは、みな走っても、賞を受けるのはただひとりだ、ということを知っているでしょう。ですから、あなたがたも、賞を受けられるように走りなさい。 046 1CO 009 025 また闘技をする者は、あらゆることについて自制します。彼らは朽ちる冠を受けるためにそうするのですが、私たちは朽ちない冠を受けるためにそうするのです。 046 1CO 009 026 ですから、私は決勝点がどこかわからないような走り方はしていません。空を打つような拳闘もしてはいません。 046 1CO 009 027 私は自分のからだを打ちたたいて従わせます。それは、私がほかの人に宣べ伝えておきながら、自分自身が失格者になるようなことのないためです。 046 1CO 010 001 そこで、兄弟たち。私はあなたがたにぜひ次のことを知ってもらいたいのです。私たちの先祖はみな、雲の下におり、みな海を通って行きました。 046 1CO 010 002 そしてみな、雲と海とで、モーセにつくバプテスマを受け、 046 1CO 010 003 みな同じ御霊の食べ物を食べ、 046 1CO 010 004 みな同じ御霊の飲み物を飲みました。というのは、彼らについて来た御霊の岩から飲んだからです。その岩とはキリストです。 046 1CO 010 005 にもかかわらず、彼らの大部分は神のみこころにかなわず、荒野で滅ぼされました。 046 1CO 010 006 これらのことが起こったのは、私たちへの戒めのためです。それは、彼らがむさぼったように私たちが悪をむさぼることのないためです。 046 1CO 010 007 あなたがたは、彼らの中のある人たちにならって、偶像崇拝者となってはいけません。聖書には、「民が、すわっては飲み食いし、立っては踊った。」と書いてあります。 046 1CO 010 008 また、私たちは、彼らのある人たちが姦淫をしたのにならって姦淫をすることはないようにしましょう。彼らは姦淫のゆえに一日に二万三千人死にました。 046 1CO 010 009 私たちは、さらに、彼らの中のある人たちが主を試みたのにならって主を試みることはないようにしましょう。彼らは蛇に滅ぼされました。 046 1CO 010 010 また、彼らの中のある人たちがつぶやいたのにならってつぶやいてはいけません。彼らは滅ぼす者に滅ぼされました。 046 1CO 010 011 これらのことが彼らに起こったのは、戒めのためであり、それが書かれたのは、世の終わりに臨んでいる私たちへの教訓とするためです。 046 1CO 010 012 ですから、立っていると思う者は、倒れないように気をつけなさい。 046 1CO 010 013 あなたがたの会った試練はみな人の知らないようなものではありません。神は真実な方ですから、あなたがたを耐えることのできないような試練に会わせるようなことはなさいません。むしろ、耐えることのできるように、試練とともに、脱出の道も備えてくださいます。 046 1CO 010 014 ですから、私の愛する者たちよ。偶像礼拝を避けなさい。 046 1CO 010 015 私は賢い人たちに話すように話します。ですから私の言うことを判断してください。 046 1CO 010 016 私たちが祝福する祝福の杯は、キリストの血にあずかることではありませんか。私たちの裂くパンは、キリストのからだにあずかることではありませんか。 046 1CO 010 017 パンは一つですから、私たちは、多数であっても、一つのからだです。それは、みなの者がともに一つのパンを食べるからです。 046 1CO 010 018 肉によるイスラエルのことを考えてみなさい。供え物を食べる者は、祭壇にあずかるではありませんか。 046 1CO 010 019 私は何を言おうとしているのでしょう。偶像の神にささげた肉に、何か意味があるとか、偶像の神に真実な意味があるとか、言おうとしているのでしょうか。 046 1CO 010 020 いや、彼らのささげる物は、神にではなくて悪霊にささげられている、と言っているのです。私は、あなたがたに悪霊と交わる者になってもらいたくありません。 046 1CO 010 021 あなたがたが主の杯を飲んだうえ、さらに悪霊の杯を飲むことは、できないことです。主の食卓にあずかったうえ、さらに悪霊の食卓にあずかることはできないことです。 046 1CO 010 022 それとも、私たちは主のねたみを引き起こそうとするのですか。まさか、私たちが主よりも強いことはないでしょう。 046 1CO 010 023 すべてのことは、してもよいのです。しかし、すべてのことが有益とはかぎりません。すべてのことは、してもよいのです。しかし、すべてのことが徳を高めるとはかぎりません。 046 1CO 010 024 だれでも、自分の利益を求めないで、他人の利益を心がけなさい。 046 1CO 010 025 市場に売っている肉は、良心の問題として調べ上げることはしないで、どれでも食べなさい。 046 1CO 010 026 地とそれに満ちているものは、主のものだからです。 046 1CO 010 027 もし、あなたがたが信仰のない者に招待されて、行きたいと思うときは、良心の問題として調べ上げることはしないで、自分の前に置かれる物はどれでも食べなさい。 046 1CO 010 028 しかし、もしだれかが、「これは偶像にささげた肉です。」とあなたがたに言うなら、そう知らせた人のために、また良心のために、食べてはいけません。 046 1CO 010 029 私が良心と言うのは、あなたの良心ではなく、ほかの人の良心です。私の自由が、他の人の良心によってさばかれるわけがあるでしょうか。 046 1CO 010 030 もし、私が神に感謝をささげて食べるなら、私が感謝する物のために、そしられるわけがあるでしょうか。 046 1CO 010 031 こういうわけで、あなたがたは、食べるにも、飲むにも、何をするにも、ただ神の栄光を現わすためにしなさい。 046 1CO 010 032 ユダヤ人にも、ギリシヤ人にも、神の教会にも、つまずきを与えないようにしなさい。 046 1CO 010 033 私も、人々が救われるために、自分の利益を求めず、多くの人の利益を求め、どんなことでも、みなの人を喜ばせているのですから。 046 1CO 011 001 私がキリストを見ならっているように、あなたがたも私を見ならってください。 046 1CO 011 002 さて、あなたがたは、何かにつけて私を覚え、また、私があなたがたに伝えたものを、伝えられたとおりに堅く守っているので、私はあなたがたをほめたいと思います。 046 1CO 011 003 しかし、あなたがたに次のことを知っていただきたいのです。すべての男のかしらはキリストであり、女のかしらは男であり、キリストのかしらは神です。 046 1CO 011 004 男が、祈りや預言をするとき、頭にかぶり物を着けていたら、自分の頭をはずかしめることになります。 046 1CO 011 005 しかし、女が、祈りや預言をするとき、頭にかぶり物を着けていなかったら、自分の頭をはずかしめることになります。それは髪をそっているのと全く同じことだからです。 046 1CO 011 006 女がかぶり物を着けないのなら、髪も切ってしまいなさい。髪を切り、頭をそることが女として恥ずかしいことなら、かぶり物を着けなさい。 046 1CO 011 007 男はかぶり物を着けるべきではありません。男は神の似姿であり、神の栄光の現われだからです。女は男の栄光の現われです。 046 1CO 011 008 なぜなら、男は女をもとにして造られたのではなくて、女が男をもとにして造られたのであり、 046 1CO 011 009 また、男は女のために造られたのではなく、女が男のために造られたのだからです。 046 1CO 011 010 ですから、女は頭に権威のしるしをかぶるべきです。それも御使いたちのためにです。 046 1CO 011 011 とはいえ、主にあっては、女は男を離れてあるものではなく、男も女を離れてあるものではありません。 046 1CO 011 012 女が男をもとにして造られたように、同様に、男も女によって生まれるのだからです。しかし、すべては神から発しています。 046 1CO 011 013 あなたがたは自分自身で判断しなさい。女が頭に何もかぶらないで神に祈るのは、ふさわしいことでしょうか。 046 1CO 011 014 自然自体が、あなたがたにこう教えていないでしょうか。男が長い髪をしていたら、それは男として恥ずかしいことであり、 046 1CO 011 015 女が長い髪をしていたら、それは女の光栄であるということです。なぜなら、髪はかぶり物として女に与えられているからです。 046 1CO 011 016 たとい、このことに異議を唱えたがる人がいても、私たちにはそのような習慣はないし、神の諸教会にもありません。 046 1CO 011 017 ところで、聞いていただくことがあります。私はあなたがたをほめません。あなたがたの集まりが益にならないで、かえって害になっているからです。 046 1CO 011 018 まず第一に、あなたがたが教会の集まりをするとき、あなたがたの間には分裂があると聞いています。ある程度は、それを信じます。 046 1CO 011 019 というのは、あなたがたの中でほんとうの信者が明らかにされるためには、分派が起こるのもやむをえないからです。 046 1CO 011 020 しかし、そういうわけで、あなたがたはいっしょに集まっても、それは主の晩餐を食べるためではありません。 046 1CO 011 021 食事のとき、めいめい我先にと自分の食事を済ませるので、空腹な者もおれば、酔っている者もいるというしまつです。 046 1CO 011 022 飲食のためなら、自分の家があるでしょう。それとも、あなたがたは、神の教会を軽んじ、貧しい人たちをはずかしめたいのですか。私はあなたがたに何と言ったらよいでしょう。ほめるべきでしょうか。このことに関しては、ほめるわけにはいきません。 046 1CO 011 023 私は主から受けたことを、あなたがたに伝えたのです。すなわち、主イエスは、渡される夜、パンを取り、 046 1CO 011 024 感謝をささげて後、それを裂き、こう言われました。「これはあなたがたのための、わたしのからだです。わたしを覚えるために、このようにしなさい。」 046 1CO 011 025 夕食の後、杯をも同じようにして言われました。「この杯は、わたしの血による新しい契約です。これを飲むたびに、わたしを覚えるために、このようにしなさい。」 046 1CO 011 026 ですから、あなたがたは、このパンを食べ、この杯を飲むたびに、主が来られるまで、主の死を告げ知らせるのです。 046 1CO 011 027 したがって、もし、ふさわしくないままでパンを食べ、主の杯を飲む者があれば、主のからだと血に対して罪を犯すことになります。 046 1CO 011 028 ですから、ひとりひとりが自分を吟味して、そのうえでパンを食べ、杯を飲みなさい。 046 1CO 011 029 みからだをわきまえないで、飲み食いするならば、その飲み食いが自分をさばくことになります。 046 1CO 011 030 そのために、あなたがたの中に、弱い者や病人が多くなり、死んだ者が大ぜいいます。 046 1CO 011 031 しかし、もし私たちが自分をさばくなら、さばかれることはありません。 046 1CO 011 032 しかし、私たちがさばかれるのは、主によって懲らしめられるのであって、それは、私たちが、この世とともに罪に定められることのないためです。 046 1CO 011 033 ですから、兄弟たち。食事に集まるときは、互いに待ち合わせなさい。 046 1CO 011 034 空腹な人は家で食べなさい。それは、あなたがたが集まることによって、さばきを受けることにならないためです。その他のことについては、私が行ったときに決めましょう。 046 1CO 012 001 さて、兄弟たち。御霊の賜物についてですが、私はあなたがたに、ぜひ次のことを知っていていただきたいのです。 046 1CO 012 002 ご承知のように、あなたがたが異教徒であったときには、どう導かれたとしても、引かれて行った所は、ものを言わない偶像の所でした。 046 1CO 012 003 ですから、私は、あなたがたに次のことを教えておきます。神の御霊によって語る者はだれも、「イエスはのろわれよ。」と言わず、また、聖霊によるのでなければ、だれも、「イエスは主です。」と言うことはできません。 046 1CO 012 004 さて、御霊の賜物にはいろいろの種類がありますが、御霊は同じ御霊です。 046 1CO 012 005 奉仕にはいろいろの種類がありますが、主は同じ主です。 046 1CO 012 006 働きにはいろいろの種類がありますが、神はすべての人の中ですべての働きをなさる同じ神です。 046 1CO 012 007 しかし、みなの益となるために、おのおのに御霊の現われが与えられているのです。 046 1CO 012 008 ある人には御霊によって知恵のことばが与えられ、ほかの人には同じ御霊にかなう知識のことばが与えられ、 046 1CO 012 009 またある人には同じ御霊による信仰が与えられ、ある人には同一の御霊によって、いやしの賜物が与えられ、 046 1CO 012 010 ある人には奇蹟を行なう力、ある人には預言、ある人には霊を見分ける力、ある人には異言、ある人には異言を解き明かす力が与えられています。 046 1CO 012 011 しかし、同一の御霊がこれらすべてのことをなさるのであって、みこころのままに、おのおのにそれぞれの賜物を分け与えてくださるのです。 046 1CO 012 012 ですから、ちょうど、からだが一つでも、それに多くの部分があり、からだの部分はたとい多くあっても、その全部が一つのからだであるように、キリストもそれと同様です。 046 1CO 012 013 なぜなら、私たちはみな、ユダヤ人もギリシヤ人も、奴隷も自由人も、一つのからだとなるように、一つの御霊によってバプテスマを受け、そしてすべての者が一つの御霊を飲む者とされたからです。 046 1CO 012 014 確かに、からだはただ一つの器官ではなく、多くの器官から成っています。 046 1CO 012 015 たとい、足が、「私は手ではないから、からだに属さない。」と言ったところで、そんなことでからだに属さなくなるわけではありません。 046 1CO 012 016 たとい、耳が、「私は目ではないから、からだに属さない。」と言ったところで、そんなことでからだに属さなくなるわけではありません。 046 1CO 012 017 もし、からだ全体が目であったら、どこで聞くのでしょう。もし、からだ全体が聞くところであったら、どこでかぐのでしょう。 046 1CO 012 018 しかしこのとおり、神はみこころに従って、からだの中にそれぞれの器官を備えてくださったのです。 046 1CO 012 019 もし、全部がただ一つの器官であったら、からだはいったいどこにあるのでしょう。 046 1CO 012 020 しかしこういうわけで、器官は多くありますが、からだは一つなのです。 046 1CO 012 021 そこで、目が手に向かって、「私はあなたを必要としない。」と言うことはできないし、頭が足に向かって、「私はあなたを必要としない。」と言うこともできません。 046 1CO 012 022 それどころか、からだの中で比較的に弱いと見られる器官が、かえってなくてはならないものなのです。 046 1CO 012 023 また、私たちは、からだの中で比較的に尊くないとみなす器官を、ことさらに尊びます。こうして、私たちの見ばえのしない器官は、ことさらに良いかっこうになりますが、 046 1CO 012 024 かっこうの良い器官にはその必要がありません。しかし神は、劣ったところをことさらに尊んで、からだをこのように調和させてくださったのです。 046 1CO 012 025 それは、からだの中に分裂がなく、各部分が互いにいたわり合うためです。 046 1CO 012 026 もし一つの部分が苦しめば、すべての部分がともに苦しみ、もし一つの部分が尊ばれれば、すべての部分がともに喜ぶのです。 046 1CO 012 027 あなたがたはキリストのからだであって、ひとりひとりは各器官なのです。 046 1CO 012 028 そして、神は教会の中で人々を次のように任命されました。すなわち、第一に使徒、次に預言者、次に教師、それから奇蹟を行なう者、それからいやしの賜物を持つ者、助ける者、治める者、異言を語る者などです。 046 1CO 012 029 みなが使徒でしょうか。みなが預言者でしょうか。みなが教師でしょうか。みなが奇蹟を行なう者でしょうか。 046 1CO 012 030 みながいやしの賜物を持っているでしょうか。みなが異言を語るでしょうか。みなが解き明かしをするでしょうか。 046 1CO 012 031 あなたがたは、よりすぐれた賜物を熱心に求めなさい。 また私は、さらにまさる道を示してあげましょう。 046 1CO 013 001 たとい、私が人の異言や、御使いの異言で話しても、愛がないなら、やかましいどらや、うるさいシンバルと同じです。 046 1CO 013 002 また、たとい私が預言の賜物を持っており、またあらゆる奥義とあらゆる知識とに通じ、また、山を動かすほどの完全な信仰を持っていても、愛がないなら、何の値うちもありません。 046 1CO 013 003 また、たとい私が持っている物の全部を貧しい人たちに分け与え、また私のからだを焼かれるために渡しても、愛がなければ、何の役にも立ちません。 046 1CO 013 004 愛は寛容であり、愛は親切です。また人をねたみません。愛は自慢せず、高慢になりません。 046 1CO 013 005 礼儀に反することをせず、自分の利益を求めず、怒らず、人のした悪を思わず、 046 1CO 013 006 不正を喜ばずに真理を喜びます。 046 1CO 013 007 すべてをがまんし、すべてを信じ、すべてを期待し、すべてを耐え忍びます。 046 1CO 013 008 愛は決して絶えることがありません。預言の賜物ならばすたれます。異言ならばやみます。知識ならばすたれます。 046 1CO 013 009 というのは、私たちの知っているところは一部分であり、預言することも一部分だからです。 046 1CO 013 010 完全なものが現われたら、不完全なものはすたれます。 046 1CO 013 011 私が子どもであったときには、子どもとして話し、子どもとして考え、子どもとして論じましたが、おとなになったときには、子どものことをやめました。 046 1CO 013 012 今、私たちは鏡にぼんやり映るものを見ていますが、その時には顔と顔とを合わせて見ることになります。今、私は一部分しか知りませんが、その時には、私が完全に知られているのと同じように、私も完全に知ることになります。 046 1CO 013 013 こういうわけで、いつまでも残るものは信仰と希望と愛です。その中で一番すぐれているのは愛です。 046 1CO 014 001 愛を追い求めなさい。また、御霊の賜物、特に預言することを熱心に求めなさい。 046 1CO 014 002 異言を話す者は、人に話すのではなく、神に話すのです。というのは、だれも聞いていないのに、自分の霊で奥義を話すからです。 046 1CO 014 003 ところが預言する者は、徳を高め、勧めをなし、慰めを与えるために、人に向かって話します。 046 1CO 014 004 異言を話す者は自分の徳を高めますが、預言する者は教会の徳を高めます。 046 1CO 014 005 私はあなたがたがみな異言を話すことを望んでいますが、それよりも、あなたがたが預言することを望みます。もし異言を話す者がその解き明かしをして教会の徳を高めるのでないなら、異言を語る者よりも、預言する者のほうがまさっています。 046 1CO 014 006 ですから、兄弟たち。私があなたがたのところへ行って異言を話すとしても、黙示や知識や預言や教えなどによって話さないなら、あなたがたに何の益となるでしょう。 046 1CO 014 007 笛や琴などいのちのない楽器でも、はっきりした音を出さなければ、何を吹いているのか、何をひいているのか、どうしてわかりましょう。 046 1CO 014 008 また、ラッパがもし、はっきりしない音を出したら、だれが戦闘の準備をするでしょう。 046 1CO 014 009 それと同じように、あなたがたも、舌で明瞭なことばを語るのでなければ、言っている事をどうして知ってもらえるでしょう。それは空気に向かって話しているのです。 046 1CO 014 010 世界にはおそらく非常に多くの種類のことばがあるでしょうが、意味のないことばなど一つもありません。 046 1CO 014 011 それで、もし私がそのことばの意味を知らないなら、私はそれを話す人にとって異国人であり、それを話す人も私にとって異国人です。 046 1CO 014 012 あなたがたのばあいも同様です。あなたがたは御霊の賜物を熱心に求めているのですから、教会の徳を高めるために、それが豊かに与えられるよう、熱心に求めなさい。 046 1CO 014 013 こういうわけですから、異言を語る者は、それを解き明かすことができるように祈りなさい。 046 1CO 014 014 もし私が異言で祈るなら、私の霊は祈るが、私の知性は実を結ばないのです。 046 1CO 014 015 ではどうすればよいのでしょう。私は霊において祈り、また知性においても祈りましょう。霊において賛美し、また知性においても賛美しましょう。 046 1CO 014 016 そうでないと、あなたが霊において祝福しても、異言を知らない人々の座席に着いている人は、あなたの言っていることがわからないのですから、あなたの感謝について、どうしてアーメンと言えるでしょう。 046 1CO 014 017 あなたの感謝は結構ですが、他の人の徳を高めることはできません。 046 1CO 014 018 私は、あなたがたのだれよりも多くの異言を話すことを神に感謝していますが、 046 1CO 014 019 教会では、異言で一万語話すよりは、ほかの人を教えるために、私の知性を用いて五つのことばを話したいのです。 046 1CO 014 020 兄弟たち。物の考え方において子どもであってはなりません。悪事においては幼子でありなさい。しかし考え方においてはおとなになりなさい。 046 1CO 014 021 律法にこう書いてあります。「『わたしは、異なった舌により、異国の人のくちびるによってこの民に語るが、彼らはなおわたしの言うことを聞き入れない。』と主は言われる。」 046 1CO 014 022 それで、異言は信者のためのしるしではなく、不信者のためのしるしです。けれども、預言は不信者でなく、信者のためのしるしです。 046 1CO 014 023 ですから、もし教会全体が一か所に集まって、みなが異言を話すとしたら、初心の者とか信者でない者とかがはいって来たとき、彼らは、あなたがたを気違いだと言わないでしょうか。 046 1CO 014 024 しかし、もしみなが預言をするなら、信者でない者や初心の者がはいって来たとき、その人はみなの者によって罪を示されます。みなにさばかれ、 046 1CO 014 025 心の秘密があらわにされます。そうして、神が確かにあなたがたの中におられると言って、ひれ伏して神を拝むでしょう。 046 1CO 014 026 兄弟たち。では、どうすればよいのでしょう。あなたがたが集まるときには、それぞれの人が賛美したり、教えたり、黙示を話したり、異言を話したり、解き明かしたりします。そのすべてのことを、徳を高めるためにしなさい。 046 1CO 014 027 もし異言を話すのならば、ふたりか、多くても三人で順番に話すべきで、ひとりは解き明かしをしなさい。 046 1CO 014 028 もし解き明かす者がだれもいなければ、教会では黙っていなさい。自分だけで、神に向かって話しなさい。 046 1CO 014 029 預言する者も、ふたりか三人が話し、ほかの者はそれを吟味しなさい。 046 1CO 014 030 もしも座席に着いている別の人に黙示が与えられたら、先の人は黙りなさい。 046 1CO 014 031 あなたがたは、みながかわるがわる預言できるのであって、すべての人が学ぶことができ、すべての人が勧めを受けることができるのです。 046 1CO 014 032 預言者たちの霊は預言者たちに服従するものなのです。 046 1CO 014 033 それは、神が混乱の神ではなく、平和の神だからです。聖徒たちのすべての教会で行なわれているように、 046 1CO 014 034 教会では、妻たちは黙っていなさい。彼らは語ることを許されていません。律法も言うように、服従しなさい。 046 1CO 014 035 もし何かを学びたければ、家で自分の夫に尋ねなさい。教会で語ることは、妻にとってはふさわしくないことです。 046 1CO 014 036 神のことばは、あなたがたのところから出たのでしょうか。あるいはまた、あなたがたにだけ伝わったのでしょうか。 046 1CO 014 037 自分を預言者、あるいは、御霊の人と思う者は、私があなたがたに書くことが主の命令であることを認めなさい。 046 1CO 014 038 もしそれを認めないなら、その人は認められません。 046 1CO 014 039 それゆえ、私の兄弟たち。預言することを熱心に求めなさい。異言を話すことも禁じてはいけません。 046 1CO 014 040 ただ、すべてのことを適切に、秩序をもって行ないなさい。 046 1CO 015 001 兄弟たち。私は今、あなたがたに福音を知らせましょう。これは、私があなたがたに宣べ伝えたもので、あなたがたが受け入れ、また、それによって立っている福音です。 046 1CO 015 002 また、もしあなたがたがよく考えもしないで信じたのでないなら、私の宣べ伝えたこの福音のことばをしっかりと保っていれば、この福音によって救われるのです。 046 1CO 015 003 私があなたがたに最もたいせつなこととして伝えたのは、私も受けたことであって、次のことです。キリストは、聖書の示すとおりに、私たちの罪のために死なれたこと、 046 1CO 015 004 また、葬られたこと、また、聖書に従って三日目によみがえられたこと、 046 1CO 015 005 また、ケパに現われ、それから十二弟子に現われたことです。 046 1CO 015 006 その後、キリストは五百人以上の兄弟たちに同時に現われました。その中の大多数の者は今なお生き残っていますが、すでに眠った者もいくらかいます。 046 1CO 015 007 その後、キリストはヤコブに現われ、それから使徒たち全部に現われました。 046 1CO 015 008 そして、最後に、月足らずで生まれた者と同様な私にも、現われてくださいました。 046 1CO 015 009 私は使徒の中では最も小さい者であって、使徒と呼ばれる価値のない者です。なぜなら、私は神の教会を迫害したからです。 046 1CO 015 010 ところが、神の恵みによって、私は今の私になりました。そして、私に対するこの神の恵みは、むだにはならず、私はほかのすべての使徒たちよりも多く働きました。しかし、それは私ではなく、私にある神の恵みです。 046 1CO 015 011 そういうわけですから、私にせよ、ほかの人たちにせよ、私たちはこのように宣べ伝えているのであり、あなたがたはこのように信じたのです。 046 1CO 015 012 ところで、キリストは死者の中から復活された、と宣べ伝えられているのなら、どうして、あなたがたの中に、死者の復活はない、と言っている人がいるのですか。 046 1CO 015 013 もし、死者の復活がないのなら、キリストも復活されなかったでしょう。 046 1CO 015 014 そして、キリストが復活されなかったのなら、私たちの宣教は実質のないものになり、あなたがたの信仰も実質のないものになるのです。 046 1CO 015 015 それどころか、私たちは神について偽証をした者ということになります。なぜなら、もしもかりに、死者の復活はないとしたら、神はキリストをよみがえらせなかったはずですが、私たちは神がキリストをよみがえらせた、と言って神に逆らう証言をしたからです。 046 1CO 015 016 もし、死者がよみがえらないのなら、キリストもよみがえらなかったでしょう。 046 1CO 015 017 そして、もしキリストがよみがえらなかったのなら、あなたがたの信仰はむなしく、あなたがたは今もなお、自分の罪の中にいるのです。 046 1CO 015 018 そうだったら、キリストにあって眠った者たちは、滅んでしまったのです。 046 1CO 015 019 もし、私たちがこの世にあってキリストに単なる希望を置いているだけなら、私たちは、すべての人の中で一番哀れな者です。 046 1CO 015 020 しかし、今やキリストは、眠った者の初穂として死者の中からよみがえられました。 046 1CO 015 021 というのは、死がひとりの人を通して来たように、死者の復活もひとりの人を通して来たからです。 046 1CO 015 022 すなわち、アダムにあってすべての人が死んでいるように、キリストによってすべての人が生かされるからです。 046 1CO 015 023 しかし、おのおのにその順番があります。まず初穂であるキリスト、次にキリストの再臨のときキリストに属している者です。 046 1CO 015 024 それから終わりが来ます。そのとき、キリストはあらゆる支配と、あらゆる権威、権力を滅ぼし、国を父なる神にお渡しになります。 046 1CO 015 025 キリストの支配は、すべての敵をその足の下に置くまで、と定められているからです。 046 1CO 015 026 最後の敵である死も滅ぼされます。 046 1CO 015 027 「彼は万物をその足の下に従わせた。」からです。ところで、万物が従わせられた、と言うとき、万物を従わせたその方がそれに含められていないことは明らかです。 046 1CO 015 028 しかし、万物が御子に従うとき、御子自身も、ご自分に万物を従わせた方に従われます。これは、神が、すべてにおいてすべてとなられるためです。 046 1CO 015 029 もしこうでなかったら、死者のゆえにバプテスマを受ける人たちは、何のためにそうするのですか。もし、死者は決してよみがえらないのなら、なぜその人たちは、死者のゆえにバプテスマを受けるのですか。 046 1CO 015 030 また、なぜ私たちもいつも危険にさらされているのでしょうか。 046 1CO 015 031 兄弟たち。私にとって、毎日が死の連続です。これは、私たちの主キリスト・イエスにあってあなたがたを誇る私の誇りにかけて、誓って言えることです。 046 1CO 015 032 もし、私が人間的な動機から、エペソで獣と戦ったのなら、何の益があるでしょう。もし、死者の復活がないのなら、「あすは死ぬのだ。さあ、飲み食いしようではないか。」ということになるのです。 046 1CO 015 033 思い違いをしてはいけません。友だちが悪ければ、良い習慣がそこなわれます。 046 1CO 015 034 目をさまして、正しい生活を送り、罪をやめなさい。神についての正しい知識を持っていない人たちがいます。私はあなたがたをはずかしめるために、こう言っているのです。 046 1CO 015 035 ところが、ある人はこう言うでしょう。「死者は、どのようにしてよみがえるのか。どのようなからだで来るのか。」 046 1CO 015 036 愚かな人だ。あなたの蒔く物は、死ななければ、生かされません。 046 1CO 015 037 あなたが蒔く物は、後にできるからだではなく、麦やそのほかの穀物の種粒です。 046 1CO 015 038 しかし神は、みこころに従って、それにからだを与え、おのおのの種にそれぞれのからだをお与えになります。 046 1CO 015 039 すべての肉が同じではなく、人間の肉もあり、獣の肉もあり、鳥の肉もあり、魚の肉もあります。 046 1CO 015 040 また、天上のからだもあり、地上のからだもあり、天上のからだの栄光と地上のからだの栄光とは異なっており、 046 1CO 015 041 太陽の栄光もあり、月の栄光もあり、星の栄光もあります。個々の星によって栄光が違います。 046 1CO 015 042 死者の復活もこれと同じです。朽ちるもので蒔かれ、朽ちないものによみがえらされ、 046 1CO 015 043 卑しいもので蒔かれ、栄光あるものによみがえらされ、弱いもので蒔かれ、強いものによみがえらされ、 046 1CO 015 044 血肉のからだで蒔かれ、御霊に属するからだによみがえらされるのです。血肉のからだがあるのですから、御霊のからだもあるのです。 046 1CO 015 045 聖書に「最初の人アダムは生きた者となった。」と書いてありますが、最後のアダムは、生かす御霊となりました。 046 1CO 015 046 最初にあったのは血肉のものであり、御霊のものではありません。御霊のものはあとに来るのです。 046 1CO 015 047 第一の人は地から出て、土で造られた者ですが、第二の人は天から出た者です。 046 1CO 015 048 土で造られた者はみな、この土で造られた者に似ており、天からの者はみな、この天から出た者に似ているのです。 046 1CO 015 049 私たちは土で造られた者のかたちを持っていたように、天上のかたちをも持つのです。 046 1CO 015 050 兄弟たちよ。私はこのことを言っておきます。血肉のからだは神の国を相続できません。朽ちるものは、朽ちないものを相続できません。 046 1CO 015 051 聞きなさい。私はあなたがたに奥義を告げましょう。私たちはみなが眠ってしまうのではなく、みな変えられるのです。 046 1CO 015 052 終わりのラッパとともに、たちまち、一瞬のうちにです。ラッパが鳴ると、死者は朽ちないものによみがえり、私たちは変えられるのです。 046 1CO 015 053 朽ちるものは、必ず朽ちないものを着なければならず、死ぬものは、必ず不死を着なければならないからです。 046 1CO 015 054 しかし、朽ちるものが朽ちないものを着、死ぬものが不死を着るとき、「死は勝利にのまれた。」としるされている、みことばが実現します。 046 1CO 015 055 「死よ。おまえの勝利はどこにあるのか。死よ。おまえのとげはどこにあるのか。」 046 1CO 015 056 死のとげは罪であり、罪の力は律法です。 046 1CO 015 057 しかし、神に感謝すべきです。神は、私たちの主イエス・キリストによって、私たちに勝利を与えてくださいました。 046 1CO 015 058 ですから、私の愛する兄弟たちよ。堅く立って、動かされることなく、いつも主のわざに励みなさい。あなたがたは自分たちの労苦が、主にあってむだでないことを知っているのですから。 046 1CO 016 001 さて、聖徒たちのための献金については、ガラテヤの諸教会に命じたように、あなたがたにもこう命じます。 046 1CO 016 002 私がそちらに行ってから献金を集めるようなことがないように、あなたがたはおのおの、いつも週の初めの日に、収入に応じて、手もとにそれをたくわえておきなさい。 046 1CO 016 003 私がそちらに行ったとき、あなたがたの承認を得た人々に手紙を持たせて派遣し、あなたがたの献金をエルサレムに届けさせましょう。 046 1CO 016 004 しかし、もし私も行くほうがよければ、彼らは、私といっしょに行くことになるでしょう。 046 1CO 016 005 私は、マケドニヤを通って後、あなたがたのところへ行きます。マケドニヤを通るつもりでいますから。 046 1CO 016 006 そして、たぶんあなたがたのところに滞在するでしょう。冬を越すことになるかもしれません。それは、どこに行くとしても、あなたがたに送っていただこうと思うからです。 046 1CO 016 007 私は、いま旅の途中に、あなたがたの顔を見たいと思っているのではありません。主がお許しになるなら、あなたがたのところにしばらく滞在したいと願っています。 046 1CO 016 008 しかし、五旬節まではエペソに滞在するつもりです。 046 1CO 016 009 というのは、働きのための広い門が私のために開かれており、反対者も大ぜいいるからです。 046 1CO 016 010 テモテがそちらへ行ったら、あなたがたのところで心配なく過ごせるよう心を配ってください。彼も、私と同じように、主のみわざに励んでいるからです。 046 1CO 016 011 だれも彼を軽んじてはいけません。彼を平安のうちに送り出して、私のところに来させてください。私は、彼が兄弟たちとともに来るのを待ち望んでいます。 046 1CO 016 012 兄弟アポロのことですが、兄弟たちといっしょにあなたがたのところへ行くように、私は強く彼に勧めました。しかし、彼は今、そちらへ行こうとは全然思っていません。しかし、機会があれば行くでしょう。 046 1CO 016 013 目を覚ましていなさい。堅く信仰に立ちなさい。男らしく、強くありなさい。 046 1CO 016 014 いっさいのことを愛をもって行ないなさい。 046 1CO 016 015 兄弟たちよ。あなたがたに勧めます。ご承知のように、ステパナの家族は、アカヤの初穂であって、聖徒たちのために熱心に奉仕してくれました。 046 1CO 016 016 あなたがたは、このような人たちに、また、ともに働き、労しているすべての人たちに服従しなさい。 046 1CO 016 017 ステパナとポルトナトとアカイコが来たので、私は喜んでいます。なぜなら、彼らは、あなたがたの足りない分を補ってくれたからです。 046 1CO 016 018 彼らは、私の心をも、あなたがたの心をも安心させてくれました。このような人々の労をねぎらいなさい。 046 1CO 016 019 アジヤの諸教会がよろしくと言っています。アクラとプリスカ、また彼らの家の教会が主にあって心から、あなたがたによろしくと言っています。 046 1CO 016 020 すべての兄弟たちが、あなたがたによろしくと言っています。きよい口づけをもって、互いにあいさつをかわしなさい。 046 1CO 016 021 パウロが、自分の手であいさつを書きます。 046 1CO 016 022 主を愛さない者はだれでも、のろわれよ。主よ、来てください。 046 1CO 016 023 主イエスの恵みが、あなたがたとともにありますように。 046 1CO 016 024 私の愛は、キリスト・イエスにあって、あなたがたすべての者とともにあります。アーメン。 # # BOOK 047 2CO 2 Corinthians コリント人への手紙第二 047 2CO 001 001 神のみこころによるキリスト・イエスの使徒パウロ、および兄弟テモテから、コリントにある神の教会、ならびにアカヤ全土にいるすべての聖徒たちへ。 047 2CO 001 002 私たちの父なる神と主イエス・キリストから、恵みと平安があなたがたの上にありますように。 047 2CO 001 003 私たちの主イエス・キリストの父なる神、慈愛の父、すべての慰めの神がほめたたえられますように。 047 2CO 001 004 神は、どのような苦しみのときにも、私たちを慰めてくださいます。こうして、私たちも、自分自身が神から受ける慰めによって、どのような苦しみの中にいる人をも慰めることができるのです。 047 2CO 001 005 それは、私たちにキリストの苦難があふれているように、慰めもまたキリストによってあふれているからです。 047 2CO 001 006 もし私たちが苦しみに会うなら、それはあなたがたの慰めと救いのためです。もし私たちが慰めを受けるなら、それもあなたがたの慰めのためで、その慰めは、私たちが受けている苦難と同じ苦難に耐え抜く力をあなたがたに与えるのです。 047 2CO 001 007 私たちがあなたがたについて抱いている望みは、動くことがありません。なぜなら、あなたがたが私たちと苦しみをともにしているように、慰めをもともにしていることを、私たちは知っているからです。 047 2CO 001 008 兄弟たちよ。私たちがアジヤで会った苦しみについて、ぜひ知っておいてください。私たちは、非常に激しい、耐えられないほどの圧迫を受け、ついにいのちさえも危くなり、 047 2CO 001 009 ほんとうに、自分の心の中で死を覚悟しました。これは、もはや自分自身を頼まず、死者をよみがえらせてくださる神により頼む者となるためでした。 047 2CO 001 010 ところが神は、これほどの大きな死の危険から、私たちを救い出してくださいました。また将来も救い出してくださいます。なおも救い出してくださるという望みを、私たちはこの神に置いているのです。 047 2CO 001 011 あなたがたも祈りによって、私たちを助けて協力してくださるでしょう。それは、多くの人々の祈りにより私たちに与えられた恵みについて、多くの人々が感謝をささげるようになるためです。 047 2CO 001 012 私たちがこの世の中で、特にあなたがたに対して、きよさと神から来る誠実さとをもって、人間的な知恵によらず、神の恵みによって行動していることは、私たちの良心のあかしするところであって、これこそ私たちの誇りです。 047 2CO 001 013 私たちは、あなたがたへの手紙で、あなたがたが読んで理解できること以外は何も書いていません。そして私は、あなたがたが十分に理解してくれることを望みます。 047 2CO 001 014 あなたがたは、ある程度は、私たちを理解しているのですから、私たちの主イエスの日には、あなたがたが私たちの誇りであるように、私たちもあなたがたの誇りであるということを、さらに十分に理解してくださるよう望むのです。 047 2CO 001 015 この確信をもって、私は次のような計画を立てました。まず初めにあなたがたのところへ行くことによって、あなたがたが恵みを二度受けられるようにしようとしたのです。 047 2CO 001 016 すなわち、あなたがたのところを通ってマケドニヤに行き、そしてマケドニヤから再びあなたがたのところに帰り、あなたがたに送られてユダヤに行きたいと思ったのです。 047 2CO 001 017 そういうわけですから、この計画を立てた私が、どうして軽率でありえたでしょう。それとも、私の計画は人間的な計画であって、私にとっては、「しかり、しかり。」は同時に、「否、否。」なのでしょうか。 047 2CO 001 018 しかし、神の真実にかけて言いますが、あなたがたに対する私たちのことばは、「しかり。」と言って、同時に「否。」と言うようなものではありません。 047 2CO 001 019 私たち、すなわち、私とシルワノとテモテとが、あなたがたに宣べ伝えた神の子キリスト・イエスは、「しかり。」と同時に「否。」であるような方ではありません。この方には「しかり。」だけがあるのです。 047 2CO 001 020 神の約束はことごとく、この方において「しかり。」となりました。それで私たちは、この方によって「アーメン。」と言い、神に栄光を帰するのです。 047 2CO 001 021 私たちをあなたがたといっしょにキリストのうちに堅く保ち、私たちに油を注がれた方は神です。 047 2CO 001 022 神はまた、確認の印を私たちに押し、保証として、御霊を私たちの心に与えてくださいました。 047 2CO 001 023 私はこのいのちにかけ、神を証人にお呼びして言います。私がまだコリントへ行かないでいるのは、あなたがたに対する思いやりのためです。 047 2CO 001 024 私たちは、あなたがたの信仰を支配しようとする者ではなく、あなたがたの喜びのために働く協力者です。あなたがたは、信仰に堅く立っているからです。 047 2CO 002 001 そこで私は、あなたがたを悲しませることになるような訪問は二度とくり返すまいと決心したのです。 047 2CO 002 002 もし私があなたがたを悲しませているのなら、私が悲しませているその人以外に、だれが私を喜ばせてくれるでしょうか。 047 2CO 002 003 あのような手紙を書いたのは、私が行くときには、私に喜びを与えてくれるはずの人たちから悲しみを与えられたくないからでした。それは、私の喜びがあなたがたすべての喜びであることを、あなたがたすべてについて確信しているからです。 047 2CO 002 004 私は大きな苦しみと心の嘆きから、涙ながらに、あなたがたに手紙を書きました。それは、あなたがたを悲しませるためではなく、私があなたがたに対して抱いている、あふれるばかりの愛を知っていただきたいからでした。 047 2CO 002 005 もしある人が悲しみのもとになったとすれば、その人は、私を悲しませたというよりも、ある程度――というのは言い過ぎにならないためですが、――あなたがた全部を悲しませたのです。 047 2CO 002 006 その人にとっては、すでに多数の人から受けたあの処罰で十分ですから、 047 2CO 002 007 あなたがたは、むしろ、その人を赦し、慰めてあげなさい。そうしないと、その人はあまりにも深い悲しみに押しつぶされてしまうかもしれません。 047 2CO 002 008 そこで私は、その人に対する愛を確認することを、あなたがたに勧めます。 047 2CO 002 009 私が手紙を書いたのは、あなたがたがすべてのことにおいて従順であるかどうかをためすためであったのです。 047 2CO 002 010 もしあなたがたが人を赦すなら、私もその人を赦します。私が何かを赦したのなら、私の赦したことは、あなたがたのために、キリストの御前で赦したのです。 047 2CO 002 011 これは、私たちがサタンに欺かれないためです。私たちはサタンの策略を知らないわけではありません。 047 2CO 002 012 私が、キリストの福音のためにトロアスに行ったとき、主は私のために門を開いてくださいましたが、 047 2CO 002 013 兄弟テトスに会えなかったので、心に安らぎがなく、そこの人々に別れを告げて、マケドニヤへ向かいました。 047 2CO 002 014 しかし、神に感謝します。神はいつでも、私たちを導いてキリストによる勝利の行列に加え、至る所で私たちを通して、キリストを知る知識のかおりを放ってくださいます。 047 2CO 002 015 私たちは、救われる人々の中でも、滅びる人々の中でも、神の前にかぐわしいキリストのかおりなのです。 047 2CO 002 016 ある人たちにとっては、死から出て死に至らせるかおりであり、ある人たちにとっては、いのちから出ていのちに至らせるかおりです。このような務めにふさわしい者は、いったいだれでしょう。 047 2CO 002 017 私たちは、多くの人のように、神のことばに混ぜ物をして売るようなことはせず、真心から、また神によって、神の御前でキリストにあって語るのです。 047 2CO 003 001 私たちはまたもや自分を推薦しようとしているのでしょうか。それとも、ある人々のように、あなたがたにあてた推薦状とか、あなたがたの推薦状とかが、私たちに必要なのでしょうか。 047 2CO 003 002 私たちの推薦状はあなたがたです。それは私たちの心にしるされていて、すべての人に知られ、また読まれているのです。 047 2CO 003 003 あなたがたが私たちの奉仕によるキリストの手紙であり、墨によってではなく、生ける神の御霊によって書かれ、石の板にではなく、人の心の板に書かれたものであることが明らかだからです。 047 2CO 003 004 私たちはキリストによって、神の御前でこういう確信を持っています。 047 2CO 003 005 何事かを自分のしたことと考える資格が私たち自身にあるというのではありません。私たちの資格は神からのものです。 047 2CO 003 006 神は私たちに、新しい契約に仕える者となる資格を下さいました。文字に仕える者ではなく、御霊に仕える者です。文字は殺し、御霊は生かすからです。 047 2CO 003 007 もし石に刻まれた文字による、死の務めにも栄光があって、モーセの顔の、やがて消え去る栄光のゆえにさえ、イスラエルの人々がモーセの顔を見つめることができなかったほどだとすれば、 047 2CO 003 008 まして、御霊の務めには、どれほどの栄光があることでしょう。 047 2CO 003 009 罪に定める務めに栄光があるのなら、義とする務めには、なおさら、栄光があふれるのです。 047 2CO 003 010 そして、かつて栄光を受けたものは、このばあい、さらにすぐれた栄光のゆえに、栄光のないものになっているからです。 047 2CO 003 011 もし消え去るべきものにも栄光があったのなら、永続するものには、なおさら栄光があるはずです。 047 2CO 003 012 このような望みを持っているので、私たちはきわめて大胆に語ります。 047 2CO 003 013 そして、モーセが、消えうせるものの最後をイスラエルの人々に見せないように、顔におおいを掛けたようなことはしません。 047 2CO 003 014 しかし、イスラエルの人々の思いは鈍くなったのです。というのは、今日に至るまで、古い契約が朗読されるときに、同じおおいが掛けられたままで、取りのけられてはいません。なぜなら、それはキリストによって取り除かれるものだからです。 047 2CO 003 015 かえって、今日まで、モーセの書が朗読されるときはいつでも、彼らの心にはおおいが掛かっているのです。 047 2CO 003 016 しかし、人が主に向くなら、そのおおいは取り除かれるのです。 047 2CO 003 017 主は御霊です。そして、主の御霊のあるところには自由があります。 047 2CO 003 018 私たちはみな、顔のおおいを取りのけられて、鏡のように主の栄光を反映させながら、栄光から栄光へと、主と同じかたちに姿を変えられて行きます。これはまさに、御霊なる主の働きによるのです。 047 2CO 004 001 こういうわけで、私たちは、あわれみを受けてこの務めに任じられているのですから、勇気を失うことなく、 047 2CO 004 002 恥ずべき隠された事を捨て、悪巧みに歩まず、神のことばを曲げず、真理を明らかにし、神の御前で自分自身をすべての人の良心に推薦しています。 047 2CO 004 003 それでもなお私たちの福音におおいが掛かっているとしたら、それは、滅びる人々のばあいに、おおいが掛かっているのです。 047 2CO 004 004 そのばあい、この世の神が不信者の思いをくらませて、神のかたちであるキリストの栄光にかかわる福音の光を輝かせないようにしているのです。 047 2CO 004 005 私たちは自分自身を宣べ伝えるのではなく、主なるキリスト・イエスを宣べ伝えます。私たち自身は、イエスのために、あなたがたに仕えるしもべなのです。 047 2CO 004 006 「光が、やみの中から輝き出よ。」と言われた神は、私たちの心を照らし、キリストの御顔にある神の栄光を知る知識を輝かせてくださったのです。 047 2CO 004 007 私たちは、この宝を、土の器の中に入れているのです。それは、この測り知れない力が神のものであって、私たちから出たものでないことが明らかにされるためです。 047 2CO 004 008 私たちは、四方八方から苦しめられますが、窮することはありません。途方にくれていますが、行きづまることはありません。 047 2CO 004 009 迫害されていますが、見捨てられることはありません。倒されますが、滅びません。 047 2CO 004 010 いつでもイエスの死をこの身に帯びていますが、それは、イエスのいのちが私たちの身において明らかに示されるためです。 047 2CO 004 011 私たち生きている者は、イエスのために絶えず死に渡されていますが、それは、イエスのいのちが私たちの死ぬべき肉体において明らかに示されるためなのです。 047 2CO 004 012 こうして、死は私たちのうちに働き、いのちはあなたがたのうちに働くのです。 047 2CO 004 013 「私は信じた。それゆえに語った。」と書いてあるとおり、それと同じ信仰の霊を持っている私たちも、信じているゆえに語るのです。 047 2CO 004 014 それは、主イエスをよみがえらせた方が、私たちをもイエスとともによみがえらせ、あなたがたといっしょに御前に立たせてくださることを知っているからです。 047 2CO 004 015 すべてのことはあなたがたのためであり、それは、恵みがますます多くの人々に及んで感謝が満ちあふれ、神の栄光が現われるようになるためです。 047 2CO 004 016 ですから、私たちは勇気を失いません。たとい私たちの外なる人は衰えても、内なる人は日々新たにされています。 047 2CO 004 017 今の時の軽い患難は、私たちのうちに働いて、測り知れない、重い永遠の栄光をもたらすからです。 047 2CO 004 018 私たちは、見えるものにではなく、見えないものにこそ目を留めます。見えるものは一時的であり、見えないものはいつまでも続くからです。 047 2CO 005 001 私たちの住まいである地上の幕屋がこわれても、神の下さる建物があることを、私たちは知っています。それは、人の手によらない、天にある永遠の家です。 047 2CO 005 002 私たちはこの幕屋にあってうめき、この天から与えられる住まいを着たいと望んでいます。 047 2CO 005 003 それを着たなら、私たちは裸の状態になることはないからです。 047 2CO 005 004 確かにこの幕屋の中にいる間は、私たちは重荷を負って、うめいています。それは、この幕屋を脱ぎたいと思うからでなく、かえって天からの住まいを着たいからです。そのことによって、死ぬべきものがいのちにのまれてしまうためにです。 047 2CO 005 005 私たちをこのことにかなう者としてくださった方は神です。神は、その保証として御霊を下さいました。 047 2CO 005 006 そういうわけで、私たちはいつも心強いのです。ただし、私たちが肉体にいる間は、主から離れているということも知っています。 047 2CO 005 007 確かに、私たちは見るところによってではなく、信仰によって歩んでいます。 047 2CO 005 008 私たちはいつも心強いのです。そして、むしろ肉体を離れて、主のみもとにいるほうがよいと思っています。 047 2CO 005 009 そういうわけで、肉体の中にあろうと、肉体を離れていようと、私たちの念願とするところは、主に喜ばれることです。 047 2CO 005 010 なぜなら、私たちはみな、キリストのさばきの座に現われて、善であれ悪であれ、各自その肉体にあってした行為に応じて報いを受けることになるからです。 047 2CO 005 011 こういうわけで、私たちは、主を恐れることを知っているので、人々を説得しようとするのです。私たちのことは、神の御前に明らかです。しかし、あなたがたの良心にも明らかになることが、私の望みです。 047 2CO 005 012 私たちはまたも自分自身をあなたがたに推薦しようとするのではありません。ただ、私たちのことを誇る機会をあなたがたに与えて、心においてではなく、うわべのことで誇る人たちに答えることができるようにさせたいのです。 047 2CO 005 013 もし私たちが気が狂っているとすれば、それはただ神のためであり、もし正気であるとすれば、それはただあなたがたのためです。 047 2CO 005 014 というのは、キリストの愛が私たちを取り囲んでいるからです。私たちはこう考えました。ひとりの人がすべての人のために死んだ以上、すべての人が死んだのです。 047 2CO 005 015 また、キリストがすべての人のために死なれたのは、生きている人々が、もはや自分のためにではなく、自分のために死んでよみがえった方のために生きるためなのです。 047 2CO 005 016 ですから、私たちは今後、人間的な標準で人を知ろうとはしません。かつては人間的な標準でキリストを知っていたとしても、今はもうそのような知り方はしません。 047 2CO 005 017 だれでもキリストのうちにあるなら、その人は新しく造られた者です。古いものは過ぎ去って、見よ、すべてが新しくなりました。 047 2CO 005 018 これらのことはすべて、神から出ているのです。神は、キリストによって、私たちをご自分と和解させ、また和解の務めを私たちに与えてくださいました。 047 2CO 005 019 すなわち、神は、キリストにあって、この世をご自分と和解させ、違反行為の責めを人々に負わせないで、和解のことばを私たちにゆだねられたのです。 047 2CO 005 020 こういうわけで、私たちはキリストの使節なのです。ちょうど神が私たちを通して懇願しておられるようです。私たちは、キリストに代わって、あなたがたに願います。神の和解を受け入れなさい。 047 2CO 005 021 神は、罪を知らない方を、私たちの代わりに罪とされました。それは、私たちが、この方にあって、神の義となるためです。 047 2CO 006 001 私たちは神とともに働く者として、あなたがたに懇願します。神の恵みをむだに受けないようにしてください。 047 2CO 006 002 神は言われます。 「わたしは、恵みの時にあなたに答え、 救いの日にあなたを助けた。」 確かに、今は恵みの時、今は救いの日です。 047 2CO 006 003 私たちは、この務めがそしられないために、どんなことにも人につまずきを与えないようにと、 047 2CO 006 004 あらゆることにおいて、自分を神のしもべとして推薦しているのです。すなわち非常な忍耐と、悩みと、苦しみと、嘆きの中で、 047 2CO 006 005 また、むち打たれるときにも、入獄にも、暴動にも、労役にも、徹夜にも、断食にも、 047 2CO 006 006 また、純潔と知識と、寛容と親切と、聖霊と偽りのない愛と、 047 2CO 006 007 真理のことばと神の力とにより、また、左右の手に持っている義の武器により、 047 2CO 006 008 また、ほめられたり、そしられたり、悪評を受けたり、好評を博したりすることによって、自分を神のしもべとして推薦しているのです。私たちは人をだます者のように見えても、真実であり、 047 2CO 006 009 人に知られないようでも、よく知られ、死にそうでも、見よ、生きており、罰せられているようであっても、殺されず、 047 2CO 006 010 悲しんでいるようでも、いつも喜んでおり、貧しいようでも、多くの人を富ませ、何も持たないようでも、すべてのものを持っています。 047 2CO 006 011 コリントの人たち。私たちはあなたがたに包み隠すことなく話しました。私たちの心は広く開かれています。 047 2CO 006 012 あなたがたは、私たちの中で制約を受けているのではなく、自分の心で自分を窮屈にしているのです。 047 2CO 006 013 私は自分の子どもに対するように言います。それに報いて、あなたがたのほうでも心を広くしてください。 047 2CO 006 014 不信者と、つり合わぬくびきをいっしょにつけてはいけません。正義と不法とに、どんなつながりがあるでしょう。光と暗やみとに、どんな交わりがあるでしょう。 047 2CO 006 015 キリストとベリアルとに、何の調和があるでしょう。信者と不信者とに、何のかかわりがあるでしょう。 047 2CO 006 016 神の宮と偶像とに、何の一致があるでしょう。私たちは生ける神の宮なのです。神はこう言われました。 「わたしは彼らの間に住み、また歩む。 わたしは彼らの神となり、 彼らはわたしの民となる。 047 2CO 006 017 それゆえ、彼らの中から出て行き、 彼らと分離せよ、と主は言われる。 汚れたものに触れないようにせよ。 そうすれば、わたしはあなたがたを受け入れ、 047 2CO 006 018 わたしはあなたがたの父となり、 あなたがたはわたしの息子、娘となる、 と全能の主が言われる。」 047 2CO 007 001 愛する者たち。私たちはこのような約束を与えられているのですから、いっさいの霊肉の汚れから自分をきよめ、神を恐れかしこんできよきを全うしようではありませんか。 047 2CO 007 002 私たちに対して心を開いてください。私たちは、だれにも不正をしたことがなく、だれをもそこなったことがなく、だれからも利をむさぼったことがありません。 047 2CO 007 003 責めるためにこう言うのではありません。前にも言ったように、あなたがたは、私たちとともに死に、ともに生きるために、私たちの心のうちにあるのです。 047 2CO 007 004 私のあなたがたに対する信頼は大きいのであって、私はあなたがたを大いに誇りとしています。私は慰めに満たされ、どんな苦しみの中にあっても喜びに満ちあふれています。 047 2CO 007 005 マケドニヤに着いたとき、私たちの身には少しの安らぎもなく、さまざまの苦しみに会って、外には戦い、うちには恐れがありました。 047 2CO 007 006 しかし、気落ちした者を慰めてくださる神は、テトスが来たことによって、私たちを慰めてくださいました。 047 2CO 007 007 ただテトスが来たことばかりでなく、彼があなたがたから受けた慰めによっても、私たちは慰められたのです。あなたがたが私を慕っていること、嘆き悲しんでいること、また私に対して熱意を持っていてくれることを知らされて、私はますます喜びにあふれました。 047 2CO 007 008 あの手紙によってあなたがたを悲しませたけれども、私はそれを悔いていません。あの手紙がしばらくの間であったにしろあなたがたを悲しませたのを見て、悔いたけれども、 047 2CO 007 009 今は喜んでいます。あなたがたが悲しんだからではなく、あなたがたが悲しんで悔い改めたからです。あなたがたは神のみこころに添って悲しんだので、私たちのために何の害も受けなかったのです。 047 2CO 007 010 神のみこころに添った悲しみは、悔いのない、救いに至る悔い改めを生じさせますが、世の悲しみは死をもたらします。 047 2CO 007 011 ご覧なさい。神のみこころに添ったその悲しみが、あなたがたのうちに、どれほどの熱心を起こさせたことでしょう。また、弁明、憤り、恐れ、慕う心、熱意を起こさせ、処罰を断行させたことでしょう。あの問題について、あなたがたは、自分たちがすべての点で潔白であることを証明したのです。 047 2CO 007 012 ですから、私はあなたがたに手紙を書きましたが、それは悪を行なった人のためでもなく、その被害者のためでもなくて、私たちに対するあなたがたの熱心が、神の御前に明らかにされるためであったのです。 047 2CO 007 013 こういうわけですから、私たちは慰めを受けました。 この慰めの上にテトスの喜びが加わって、私たちはなおいっそう喜びました。テトスの心が、あなたがたすべてによって安らぎを与えられたからです。 047 2CO 007 014 私はテトスに、あなたがたのことを少しばかり誇りましたが、そのことで恥をかかずに済みました。というのは、私たちがあなたがたに語ったことがすべて真実であったように、テトスに対して誇ったことも真実となったからです。 047 2CO 007 015 彼は、あなたがたがみなよく言うことを聞き、恐れおののいて、自分を迎えてくれたことを思い出して、あなたがたへの愛情をますます深めています。 047 2CO 007 016 私は、あなたがたに全幅の信頼を寄せることができるのを喜んでいます。 047 2CO 008 001 さて、兄弟たち。私たちは、マケドニヤの諸教会に与えられた神の恵みを、あなたがたに知らせようと思います。 047 2CO 008 002 苦しみゆえの激しい試練の中にあっても、彼らの満ちあふれる喜びは、その極度の貧しさにもかかわらず、あふれ出て、その惜しみなく施す富となったのです。 047 2CO 008 003 私はあかしします。彼らは自ら進んで、力に応じ、いや力以上にささげ、 047 2CO 008 004 聖徒たちをささえる交わりの恵みにあずかりたいと、熱心に私たちに願ったのです。 047 2CO 008 005 そして、私たちの期待以上に、神のみこころに従って、まず自分自身を主にささげ、また、私たちにもゆだねてくれました。 047 2CO 008 006 それで私たちは、テトスがすでにこの恵みのわざをあなたがたの間で始めていたのですから、それを完了させるよう彼に勧めたのです。 047 2CO 008 007 あなたがたは、すべてのことに、すなわち、信仰にも、ことばにも、知識にも、あらゆる熱心にも、私たちから出てあなたがたの間にある愛にも富んでいるように、この恵みのわざにも富むようになってください。 047 2CO 008 008 こうは言っても、私は命令するのではありません。ただ、他の人々の熱心さをもって、あなたがた自身の愛の真実を確かめたいのです。 047 2CO 008 009 あなたがたは、私たちの主イエス・キリストの恵みを知っています。すなわち、主は富んでおられたのに、あなたがたのために貧しくなられました。それは、あなたがたが、キリストの貧しさによって富む者となるためです。 047 2CO 008 010 この献金のことについて、私の意見を述べましょう。それはあなたがたの益になることだからです。あなたがたは、このことを昨年から、他に先んじて行なっただけでなく、このことを他に先んじて願った人たちです。 047 2CO 008 011 ですから、今、それをし遂げなさい。喜んでしようと思ったのですから、持っている物で、それをし遂げることができるはずです。 047 2CO 008 012 もし熱意があるならば、持たない物によってではなく、持っている程度に応じて、それは受納されるのです。 047 2CO 008 013 私はこのことによって、他の人々には楽をさせ、あなたがたには苦労をさせようとしているのではなく、平等を図っているのです。 047 2CO 008 014 今あなたがたの余裕が彼らの欠乏を補うなら、彼らの余裕もまた、あなたがたの欠乏を補うことになるのです。こうして、平等になるのです。 047 2CO 008 015 「多く集めた者も余るところがなく、少し集めた者も足りないところがなかった。」と書いてあるとおりです。 047 2CO 008 016 私があなたがたのことを思うのと同じ熱心を、テトスの心にも与えてくださった神に感謝します。 047 2CO 008 017 彼は私の勧めを受け入れ、非常な熱意をもって、自分から進んであなたがたのところに行こうとしています。 047 2CO 008 018 また私たちは、テトスといっしょに、ひとりの兄弟を送ります。この人は、福音の働きによって、すべての教会で称賛されていますが、 047 2CO 008 019 そればかりでなく、彼は、この恵みのわざに携わっている私たちに同伴するよう諸教会の任命を受けたのです。私たちがこの働きをしているのは、主ご自身の栄光のため、また、私たちの誠意を示すためにほかなりません。 047 2CO 008 020 私たちは、この献金の取り扱いについて、だれからも非難されることがないように心がけています。 047 2CO 008 021 それは、主の御前ばかりでなく、人の前でも公明正大なことを示そうと考えているからです。 047 2CO 008 022 また、彼らといっしょに、もうひとりの兄弟を送ります。私たちはこの兄弟が多くのことについて熱心であることを、しばしば認めることができました。彼は今、あなたがたに深い信頼を寄せ、ますます熱心になっています。 047 2CO 008 023 テトスについて言えば、彼は私の仲間で、あなたがたの間での私の同労者です。兄弟たちについて言えば、彼らは諸教会の使者、キリストの栄光です。 047 2CO 008 024 ですから、あなたがたの愛と、私たちがあなたがたを誇りとしている証拠とを、諸教会の前で、彼らに示してほしいのです。 047 2CO 009 001 聖徒たちのためのこの奉仕については、いまさら、あなたがたに書き送る必要はないでしょう。 047 2CO 009 002 私はあなたがたの熱意を知り、それについて、あなたがたのことをマケドニヤの人々に誇って、アカヤでは昨年から準備が進められていると言ったのです。こうして、あなたがたの熱心は、多くの人を奮起させました。 047 2CO 009 003 私が兄弟たちを送ることにしたのは、このばあい、私たちがあなたがたについて誇ったことがむだにならず、私が言っていたとおりに準備していてもらうためです。 047 2CO 009 004 そうでないと、もしマケドニヤの人が私といっしょに行って、準備ができていないのを見たら、あなたがたはもちろんですが、私たちも、このことを確信していただけに、恥をかくことになるでしょう。 047 2CO 009 005 そこで私は、兄弟たちに勧めて、先にそちらに行かせ、前に約束したあなたがたの贈り物を前もって用意していただくことが必要だと思いました。どうか、この献金を、惜しみながらするのではなく、好意に満ちた贈り物として用意しておいてください。 047 2CO 009 006 私はこう考えます。少しだけ蒔く者は、少しだけ刈り取り、豊かに蒔く者は、豊かに刈り取ります。 047 2CO 009 007 ひとりひとり、いやいやながらでなく、強いられてでもなく、心で決めたとおりにしなさい。神は喜んで与える人を愛してくださいます。 047 2CO 009 008 神は、あなたがたを、常にすべてのことに満ち足りて、すべての良いわざにあふれる者とするために、あらゆる恵みをあふれるばかり与えることのできる方です。 047 2CO 009 009 「この人は散らして、貧しい人々に与えた。 その義は永遠にとどまる。」 と書いてあるとおりです。 047 2CO 009 010 蒔く人に種と食べるパンを備えてくださる方は、あなたがたにも蒔く種を備え、それをふやし、あなたがたの義の実を増し加えてくださいます。 047 2CO 009 011 あなたがたは、あらゆる点で豊かになって、惜しみなく与えるようになり、それが私たちを通して、神への感謝を生み出すのです。 047 2CO 009 012 なぜなら、この奉仕のわざは、聖徒たちの必要を十分に満たすばかりでなく、神への多くの感謝を通して、満ちあふれるようになるからです。 047 2CO 009 013 このわざを証拠として、彼らは、あなたがたがキリストの福音の告白に対して従順であり、彼らに、またすべての人々に惜しみなく与えていることを知って、神をあがめることでしょう。 047 2CO 009 014 また彼らは、あなたがたのために祈るとき、あなたがたに与えられた絶大な神の恵みのゆえに、あなたがたを慕うようになるのです。 047 2CO 009 015 ことばに表わせないほどの賜物のゆえに、神に感謝します。 047 2CO 010 001 さて、私パウロは、キリストの柔和と寛容をもって、あなたがたにお勧めします。私は、あなたがたの間にいて、面と向かっているときはおとなしく、離れているあなたがたに対しては強気な者です。 047 2CO 010 002 しかし、私は、あなたがたのところに行くときには、私たちを肉に従って歩んでいるかのように考える人々に対して勇敢にふるまおうと思っているその確信によって、強気にふるまうことがなくて済むように願っています。 047 2CO 010 003 私たちは肉にあって歩んではいても、肉に従って戦ってはいません。 047 2CO 010 004 私たちの戦いの武器は、肉の物ではなく、神の御前で、要塞をも破るほどに力のあるものです。 047 2CO 010 005 私たちは、さまざまの思弁と、神の知識に逆らって立つあらゆる高ぶりを打ち砕き、すべてのはかりごとをとりこにしてキリストに服従させ、 047 2CO 010 006 また、あなたがたの従順が完全になるとき、あらゆる不従順を罰する用意ができているのです。 047 2CO 010 007 あなたがたは、うわべのことだけを見ています。もし自分はキリストに属する者だと確信している人がいるなら、その人は、自分がキリストに属しているように、私たちもまたキリストに属しているということを、もう一度、自分でよく考えなさい。 047 2CO 010 008 あなたがたを倒すためにではなく、立てるために主が私たちに授けられた権威については、たとい私が多少誇りすぎることがあっても、恥とはならないでしょう。 047 2CO 010 009 私は手紙であなたがたをおどしているかのように見られたくありません。 047 2CO 010 010 彼らは言います。「パウロの手紙は重みがあって力強いが、実際に会ったばあいの彼は弱々しく、その話しぶりは、なっていない。」 047 2CO 010 011 そういう人はよく承知しておきなさい。離れているときに書く手紙のことばがそうなら、いっしょにいるときの行動もそのとおりです。 047 2CO 010 012 私たちは、自己推薦をしているような人たちの中のだれかと自分を同列に置いたり、比較したりしようなどとは思いません。しかし、彼らが自分たちの間で自分を量ったり、比較したりしているのは、知恵のないことなのです。 047 2CO 010 013 私たちは、限度を越えて誇りはしません。私たちがあなたがたのところまで行くのも、神が私たちに量って割り当ててくださった限度内で行くのです。 047 2CO 010 014 私たちは、あなたがたのところまでは行かないのに無理に手を伸ばしているのではありません。事実、私たちは、キリストの福音を携えてあなたがたのところにまで行ったのです。 047 2CO 010 015 私たちは、自分の限度を越えてほかの人の働きを誇ることはしません。ただ、あなたがたの信仰が成長し、あなたがたによって、私たちの領域内で私たちの働きが広げられることを望んでいます。 047 2CO 010 016 それは、私たちがあなたがたの向こうの地域にまで福音を宣べ伝えるためであって、決して他の人の領域でなされた働きを誇るためではないのです。 047 2CO 010 017 誇る者は、主にあって誇りなさい。 047 2CO 010 018 自分で自分を推薦する人でなく、主に推薦される人こそ、受け入れられる人です。 047 2CO 011 001 私の少しばかりの愚かさをこらえていただきたいと思います。いや、あなたがたはこらえているのです。 047 2CO 011 002 というのも、私は神の熱心をもって、熱心にあなたがたのことを思っているからです。私はあなたがたを、清純な処女として、ひとりの人の花嫁に定め、キリストにささげることにしたからです。 047 2CO 011 003 しかし、蛇が悪巧みによってエバを欺いたように、万一にもあなたがたの思いが汚されて、キリストに対する真実と貞潔を失うことがあってはと、私は心配しています。 047 2CO 011 004 というわけは、ある人が来て、私たちの宣べ伝えなかった別のイエスを宣べ伝えたり、あるいはあなたがたが、前に受けたことのない異なった霊を受けたり、受け入れたことのない異なった福音を受けたりするときも、あなたがたはみごとにこらえているからです。 047 2CO 011 005 私は自分をあの大使徒たちに少しでも劣っているとは思いません。 047 2CO 011 006 たとい、話は巧みでないにしても、知識についてはそうではありません。私たちは、すべての点で、いろいろなばあいに、そのことをあなたがたに示して来ました。 047 2CO 011 007 それとも、あなたがたを高めるために、自分を低くして報酬を受けずに神の福音をあなたがたに宣べ伝えたことが、私の罪だったのでしょうか。 047 2CO 011 008 私は他の諸教会から奪い取って、あなたがたに仕えるための給料を得たのです。 047 2CO 011 009 あなたがたのところにいて困窮していたときも、私はだれにも負担をかけませんでした。マケドニヤから来た兄弟たちが、私の欠乏を十分に補ってくれたのです。私は、万事につけあなたがたの重荷にならないようにしましたし、今後もそうするつもりです。 047 2CO 011 010 私にあるキリストの真実にかけて言います。アカヤ地方で私のこの誇りが封じられることは決してありません。 047 2CO 011 011 なぜでしょう。私があなたがたを愛していないからでしょうか。神はご存じです。 047 2CO 011 012 しかし、私は、今していることを今後も、し続けるつもりです。それは、私たちと同じように誇るところがあるとみなされる機会をねらっている者たちから、その機会を断ち切ってしまうためです。 047 2CO 011 013 こういう者たちは、にせ使徒であり、人を欺く働き人であって、キリストの使徒に変装しているのです。 047 2CO 011 014 しかし、驚くには及びません。サタンさえ光の御使いに変装するのです。 047 2CO 011 015 ですから、サタンの手下どもが義のしもべに変装したとしても、格別なことはありません。彼らの最後はそのしわざにふさわしいものとなります。 047 2CO 011 016 くり返して言いますが、だれも、私を愚かと思ってはなりません。しかし、もしそう思うなら、私を愚か者扱いにしなさい。私も少し誇ってみせます。 047 2CO 011 017 これから話すことは、主によって話すのではなく、愚か者としてする思い切った自慢話です。 047 2CO 011 018 多くの人が肉によって誇っているので、私も誇ることにします。 047 2CO 011 019 あなたがたは賢いのに、よくも喜んで愚か者たちをこらえています。 047 2CO 011 020 事実、あなたがたは、だれかに奴隷にされても、食い尽くされても、だまされても、いばられても、顔をたたかれても、こらえているではありませんか。 047 2CO 011 021 言うのも恥ずかしいことですが、言わなければなりません。私たちは弱かったのです。しかし、人があえて誇ろうとすることなら、――私は愚かになって言いますが、――私もあえて誇りましょう。 047 2CO 011 022 彼らはヘブル人ですか。私もそうです。彼らはイスラエル人ですか。私もそうです。彼らはアブラハムの子孫ですか。私もそうです。 047 2CO 011 023 彼らはキリストのしもべですか。私は狂気したように言いますが、私は彼ら以上にそうなのです。私の労苦は彼らよりも多く、牢に入れられたことも多く、また、むち打たれたことは数えきれず、死に直面したこともしばしばでした。 047 2CO 011 024 ユダヤ人から三十九のむちを受けたことが五度、 047 2CO 011 025 むちで打たれたことが三度、石で打たれたことが一度、難船したことが三度あり、一昼夜、海上を漂ったこともあります。 047 2CO 011 026 幾度も旅をし、川の難、盗賊の難、同国民から受ける難、異邦人から受ける難、都市の難、荒野の難、海上の難、にせ兄弟の難に会い、 047 2CO 011 027 労し苦しみ、たびたび眠られぬ夜を過ごし、飢え渇き、しばしば食べ物もなく、寒さに凍え、裸でいたこともありました。 047 2CO 011 028 このような外から来ることのほかに、日々私に押しかかるすべての教会への心づかいがあります。 047 2CO 011 029 だれかが弱くて、私が弱くない、ということがあるでしょうか。だれかがつまずいていて、私の心が激しく痛まないでおられましょうか。 047 2CO 011 030 もしどうしても誇る必要があるなら、私は自分の弱さを誇ります。 047 2CO 011 031 主イエス・キリストの父なる神、永遠にほめたたえられる方は、私が偽りを言っていないのをご存じです。 047 2CO 011 032 ダマスコではアレタ王の代官が、私を捕えようとしてダマスコの町を監視しました。 047 2CO 011 033 そのとき私は、城壁の窓からかごでつり降ろされ、彼の手をのがれました。 047 2CO 012 001 無益なことですが、誇るのもやむをえないことです。私は主の幻と啓示のことを話しましょう。 047 2CO 012 002 私はキリストにあるひとりの人を知っています。この人は十四年前に――肉体のままであったか、私は知りません。肉体を離れてであったか、それも知りません。神はご存じです。――第三の天にまで引き上げられました。 047 2CO 012 003 私はこの人が、――それが肉体のままであったか、肉体を離れてであったかは知りません。神はご存じです。―― 047 2CO 012 004 パラダイスに引き上げられて、人間には語ることを許されていない、口に出すことのできないことばを聞いたことを知っています。 047 2CO 012 005 このような人について私は誇るのです。しかし、私自身については、自分の弱さ以外には誇りません。 047 2CO 012 006 たとい私が誇りたいと思ったとしても、愚か者にはなりません。真実のことを話すのだからです。しかし、誇ることは控えましょう。私について見ること、私から聞くこと以上に、人が私を過大に評価するといけないからです。 047 2CO 012 007 また、その啓示があまりにもすばらしいからです。そのために私は、高ぶることのないようにと、肉体に一つのとげを与えられました。それは私が高ぶることのないように、私を打つための、サタンの使いです。 047 2CO 012 008 このことについては、これを私から去らせてくださるようにと、三度も主に願いました。 047 2CO 012 009 しかし、主は、「わたしの恵みは、あなたに十分である。というのは、わたしの力は、弱さのうちに完全に現われるからである。」と言われたのです。ですから、私は、キリストの力が私をおおうために、むしろ大いに喜んで私の弱さを誇りましょう。 047 2CO 012 010 ですから、私は、キリストのために、弱さ、侮辱、苦痛、迫害、困難に甘んじています。なぜなら、私が弱いときにこそ、私は強いからです。 047 2CO 012 011 私は愚か者になりました。あなたがたが無理に私をそうしたのです。私は当然あなたがたの推薦を受けてよかったはずです。たとい私は取るに足りない者であっても、私はあの大使徒たちにどのような点でも劣るところはありませんでした。 047 2CO 012 012 使徒としてのしるしは、忍耐を尽くしてあなたがたの間でなされた、あの奇蹟と不思議と力あるわざです。 047 2CO 012 013 あなたがたが他の諸教会より劣っている点は何でしょうか。それは、私のほうであなたがたには負担をかけなかったことだけです。この不正については、どうか、赦してください。 047 2CO 012 014 今、私はあなたがたのところに行こうとして、三度目の用意ができています。しかし、あなたがたに負担はかけません。私が求めているのは、あなたがたの持ち物ではなく、あなたがた自身だからです。子は親のためにたくわえる必要はなく、親が子のためにたくわえるべきです。 047 2CO 012 015 ですから、私はあなたがたのたましいのためには、大いに喜んで財を費やし、また私自身をさえ使い尽くしましょう。私があなたがたを愛すれば愛するほど、私はいよいよ愛されなくなるのでしょうか。 047 2CO 012 016 あなたがたに重荷は負わせなかったにしても、私は、悪賢くて、あなたがたからだまし取ったのだと言われます。 047 2CO 012 017 あなたがたのところに遣わした人たちのうちのだれによって、私があなたがたを欺くようなことがあったでしょうか。 047 2CO 012 018 私はテトスにそちらに行くように勧め、また、あの兄弟を同行させました。テトスはあなたがたを欺くようなことをしたでしょうか。私たちは同じ心で、同じ歩調で歩いたのではありませんか。 047 2CO 012 019 あなたがたは、前から、私たちがあなたがたに対して自己弁護をしているのだと思っていたことでしょう。しかし、私たちは神の御前で、キリストにあって語っているのです。愛する人たち。すべては、あなたがたを築き上げるためなのです。 047 2CO 012 020 私の恐れていることがあります。私が行ってみると、あなたがたは私の期待しているような者でなく、私もあなたがたの期待しているような者でないことになるのではないでしょうか。また、争い、ねたみ、憤り、党派心、そしり、陰口、高ぶり、騒動があるのではないでしょうか。 047 2CO 012 021 私がもう一度行くとき、またも私の神が、あなたがたの面前で、私をはずかしめることはないでしょうか。そして私は、前から罪を犯していて、その行なった汚れと不品行と好色を悔い改めない多くの人たちのために、嘆くようなことにはならないでしょうか。 047 2CO 013 001 私があなたがたのところへ行くのは、これで三度目です。すべての事実は、ふたりか三人の証人の口によって確認されるのです。 047 2CO 013 002 私は二度目の滞在のときに前もって言っておいたのですが、こうして離れている今も、前から罪を犯している人たちとほかのすべての人たちに、あらかじめ言っておきます。今度そちらに行ったときには、容赦はしません。 047 2CO 013 003 こう言うのは、あなたがたはキリストが私によって語っておられるという証拠を求めているからです。キリストはあなたがたに対して弱くはなく、あなたがたの間にあって強い方です。 047 2CO 013 004 確かに、弱さのゆえに十字架につけられましたが、神の力のゆえに生きておられます。私たちもキリストにあって弱い者ですが、あなたがたに対する神の力のゆえに、キリストとともに生きているのです。 047 2CO 013 005 あなたがたは、信仰に立っているかどうか、自分自身をためし、また吟味しなさい。それとも、あなたがたのうちにはイエス・キリストがおられることを、自分で認めないのですか。――あなたがたがそれに不適格であれば別です。―― 047 2CO 013 006 しかし、私たちは不適格でないことを、あなたがたが悟るように私は望んでいます。 047 2CO 013 007 私たちは、あなたがたがどんな悪をも行なわないように神に祈っています。それによって、私たち自身の適格であることが明らかになるというのではなく、たとい私たちは不適格のように見えても、あなたがたに正しい行ないをしてもらいたいためです。 047 2CO 013 008 私たちは、真理に逆らっては何をすることもできず、真理のためなら、何でもできるのです。 047 2CO 013 009 私たちは、自分は弱くてもあなたがたが強ければ、喜ぶのです。私たちはあなたがたが完全な者になることを祈っています。 047 2CO 013 010 そういうわけで、離れていてこれらのことを書いているのは、私が行ったとき、主が私に授けてくださった権威を用いて、きびしい処置をとることのないようにするためです。この権威が与えられたのは築き上げるためであって、倒すためではないのです。 047 2CO 013 011 終わりに、兄弟たち。喜びなさい。完全な者になりなさい。慰めを受けなさい。一つ心になりなさい。平和を保ちなさい。そうすれば、愛と平和の神はあなたがたとともにいてくださいます。 047 2CO 013 012 きよい口づけをもって、互いにあいさつをかわしなさい。すべての聖徒たちが、あなたがたによろしくと言っています。 047 2CO 013 013 主イエス・キリストの恵み、神の愛、聖霊の交わりが、あなたがたすべてとともにありますように。 # # BOOK 048 GAL Galatians ガラテヤ人への手紙 048 GAL 001 001 使徒となったパウロ――私が使徒となったのは、人間から出たことでなく、また人間の手を通したことでもなく、イエス・キリストと、キリストを死者の中からよみがえらせた父なる神によったのです。―― 048 GAL 001 002 および私とともにいるすべての兄弟たちから、ガラテヤの諸教会へ。 048 GAL 001 003 どうか、私たちの父なる神と主イエス・キリストから、恵みと平安があなたがたの上にありますように。 048 GAL 001 004 キリストは、今の悪の世界から私たちを救い出そうとして、私たちの罪のためにご自身をお捨てになりました。私たちの神であり父である方のみこころによったのです。 048 GAL 001 005 どうか、この神に栄光がとこしえにありますように。アーメン。 048 GAL 001 006 私は、キリストの恵みをもってあなたがたを召してくださったその方を、あなたがたがそんなにも急に見捨てて、ほかの福音に移って行くのに驚いています。 048 GAL 001 007 ほかの福音といっても、もう一つ別に福音があるのではありません。あなたがたをかき乱す者たちがいて、キリストの福音を変えてしまおうとしているだけです。 048 GAL 001 008 しかし、私たちであろうと、天の御使いであろうと、もし私たちが宣べ伝えた福音に反することをあなたがたに宣べ伝えるなら、その者はのろわれるべきです。 048 GAL 001 009 私たちが前に言ったように、今もう一度私は言います。もしだれかが、あなたがたの受けた福音に反することを、あなたがたに宣べ伝えているなら、その者はのろわれるべきです。 048 GAL 001 010 いま私は人に取り入ろうとしているのでしょうか。いや。神に、でしょう。あるいはまた、人の歓心を買おうと努めているのでしょうか。もし私がいまなお人の歓心を買おうとするようなら、私はキリストのしもべとは言えません。 048 GAL 001 011 兄弟たちよ。私はあなたがたに知らせましょう。私が宣べ伝えた福音は、人間によるものではありません。 048 GAL 001 012 私はそれを人間からは受けなかったし、また教えられもしませんでした。ただイエス・キリストの啓示によって受けたのです。 048 GAL 001 013 以前ユダヤ教徒であったころの私の行動は、あなたがたがすでに聞いているところです。私は激しく神の教会を迫害し、これを滅ぼそうとしました。 048 GAL 001 014 また私は、自分と同族で同年輩の多くの者たちに比べ、はるかにユダヤ教に進んでおり、先祖からの伝承に人一倍熱心でした。 048 GAL 001 015 けれども、生まれたときから私を選び分け、恵みをもって召してくださった方が、 048 GAL 001 016 異邦人の間に御子を宣べ伝えさせるために、御子を私のうちに啓示することをよしとされたとき、私はすぐに、人には相談せず、 048 GAL 001 017 先輩の使徒たちに会うためにエルサレムにも上らず、アラビヤに出て行き、またダマスコに戻りました。 048 GAL 001 018 それから三年後に、私はケパをたずねてエルサレムに上り、彼のもとに十五日間滞在しました。 048 GAL 001 019 しかし、主の兄弟ヤコブは別として、ほかの使徒にはだれにも会いませんでした。 048 GAL 001 020 私があなたがたに書いていることには、神の御前で申しますが、偽りはありません。 048 GAL 001 021 それから、私はシリヤおよびキリキヤの地方に行きました。 048 GAL 001 022 しかし、キリストにあるユダヤの諸教会には顔を知られていませんでした。 048 GAL 001 023 けれども、「以前私たちを迫害した者が、そのとき滅ぼそうとした信仰を今は宣べ伝えている。」と聞いてだけはいたので、 048 GAL 001 024 彼らは私のことで神をあがめていました。 048 GAL 002 001 それから十四年たって、私は、バルナバといっしょに、テトスも連れて、再びエルサレムに上りました。 048 GAL 002 002 それは啓示によって上ったのです。そして、異邦人の間で私の宣べている福音を、人々の前に示し、おもだった人たちには個人的にそうしました。それは、私が力を尽くしていま走っていること、またすでに走ったことが、むだにならないためでした。 048 GAL 002 003 しかし、私といっしょにいたテトスでさえ、ギリシヤ人であったのに、割礼を強いられませんでした。 048 GAL 002 004 実は、忍び込んだにせ兄弟たちがいたので、強いられる恐れがあったのです。彼らは私たちを奴隷に引き落とそうとして、キリスト・イエスにあって私たちの持つ自由をうかがうために忍び込んでいたのです。 048 GAL 002 005 私たちは彼らに一時も譲歩しませんでした。それは福音の真理があなたがたの間で常に保たれるためです。 048 GAL 002 006 そして、おもだった者と見られていた人たちからは、――彼らがどれほどの人たちであるにしても、私には問題ではありません。神は人を分け隔てなさいません。――そのおもだった人たちは、私に対して、何もつけ加えることをしませんでした。 048 GAL 002 007 それどころか、ペテロが割礼を受けた者への福音をゆだねられているように、私が割礼を受けない者への福音をゆだねられていることを理解してくれました。 048 GAL 002 008 ペテロにみわざをなして、割礼を受けた者への使徒となさった方が、私にもみわざをなして、異邦人への使徒としてくださったのです。 048 GAL 002 009 そして、私に与えられたこの恵みを認め、柱として重んじられているヤコブとケパとヨハネが、私とバルナバに、交わりのしるしとして右手を差し伸べました。それは、私たちが異邦人のところへ行き、彼らが割礼を受けた人々のところへ行くためです。 048 GAL 002 010 ただ私たちが貧しい人たちをいつも顧みるようにとのことでしたが、そのことなら私も大いに努めて来たところです。 048 GAL 002 011 ところが、ケパがアンテオケに来たとき、彼に非難すべきことがあったので、私は面と向かって抗議しました。 048 GAL 002 012 なぜなら、彼は、ある人々がヤコブのところから来る前は異邦人といっしょに食事をしていたのに、その人々が来ると、割礼派の人々を恐れて、だんだんと異邦人から身を引き、離れて行ったからです。 048 GAL 002 013 そして、ほかのユダヤ人たちも、彼といっしょに本心を偽った行動をとり、バルナバまでもその偽りの行動に引き込まれてしまいました。 048 GAL 002 014 しかし、彼らが福音の真理についてまっすぐに歩んでいないのを見て、私はみなの面前でケパにこう言いました。「あなたは、自分がユダヤ人でありながらユダヤ人のようには生活せず、異邦人のように生活していたのに、どうして異邦人に対して、ユダヤ人の生活を強いるのですか。 048 GAL 002 015 私たちは、生まれながらのユダヤ人であって、異邦人のような罪人ではありません。 048 GAL 002 016 しかし、人は律法の行ないによっては義と認められず、ただキリスト・イエスを信じる信仰によって義と認められる、ということを知ったからこそ、私たちもキリスト・イエスを信じたのです。これは、律法の行ないによってではなく、キリストを信じる信仰によって義と認められるためです。なぜなら、律法の行ないによって義と認められる者は、ひとりもいないからです。 048 GAL 002 017 しかし、もし私たちが、キリストにあって義と認められようとすることによって、罪人となってしまうのなら、キリストは罪の助成者なのでしょうか。そんなことは絶対にありえないことです。 048 GAL 002 018 けれども、もし私が前に打ちこわしたものをもう一度建てるなら、私は自分自身を違反者にしてしまうのです。 048 GAL 002 019 しかし私は、神に生きるために、律法によって律法に死にました。 048 GAL 002 020 私はキリストとともに十字架につけられました。もはや私が生きているのではなく、キリストが私のうちに生きておられるのです。いま私が、この世に生きているのは、私を愛し私のためにご自身をお捨てになった神の御子を信じる信仰によっているのです。 048 GAL 002 021 私は神の恵みを無にはしません。もし義が律法によって得られるとしたら、それこそキリストの死は無意味です。」 048 GAL 003 001 ああ愚かなガラテヤ人。十字架につけられたイエス・キリストが、あなたがたの目の前に、あんなにはっきり示されたのに、だれがあなたがたを迷わせたのですか。 048 GAL 003 002 ただこれだけをあなたがたから聞いておきたい。あなたがたが御霊を受けたのは、律法を行なったからですか。それとも信仰をもって聞いたからですか。 048 GAL 003 003 あなたがたはどこまで道理がわからないのですか。御霊で始まったあなたがたが、いま肉によって完成されるというのですか。 048 GAL 003 004 あなたがたがあれほどのことを経験したのは、むだだったのでしょうか。万が一にもそんなことはないでしょうが。 048 GAL 003 005 とすれば、あなたがたに御霊を与え、あなたがたの間で奇蹟を行なわれた方は、あなたがたが律法を行なったから、そうなさったのですか。それともあなたがたが信仰をもって聞いたからですか。 048 GAL 003 006 アブラハムは神を信じ、それが彼の義とみなされました。それと同じことです。 048 GAL 003 007 ですから、信仰による人々こそアブラハムの子孫だと知りなさい。 048 GAL 003 008 聖書は、神が異邦人をその信仰によって義と認めてくださることを、前から知っていたので、アブラハムに対し、「あなたによってすべての国民が祝福される。」と前もって福音を告げたのです。 048 GAL 003 009 そういうわけで、信仰による人々が、信仰の人アブラハムとともに、祝福を受けるのです。 048 GAL 003 010 というのは、律法の行ないによる人々はすべて、のろいのもとにあるからです。こう書いてあります。「律法の書に書いてある、すべてのことを堅く守って実行しなければ、だれでもみな、のろわれる。」 048 GAL 003 011 ところが、律法によって神の前に義と認められる者が、だれもいないということは明らかです。「義人は信仰によって生きる。」のだからです。 048 GAL 003 012 しかし律法は、「信仰による。」のではありません。「律法を行なう者はこの律法によって生きる。」のです。 048 GAL 003 013 キリストは、私たちのためにのろわれたものとなって、私たちを律法ののろいから贖い出してくださいました。なぜなら、「木にかけられる者はすべてのろわれたものである。」と書いてあるからです。 048 GAL 003 014 このことは、アブラハムへの祝福が、キリスト・イエスによって異邦人に及ぶためであり、その結果、私たちが信仰によって約束の御霊を受けるためなのです。 048 GAL 003 015 兄弟たち。人間のばあいにたとえてみましょう。人間の契約でも、いったん結ばれたら、だれもそれを無効にしたり、それにつけ加えたりはしません。 048 GAL 003 016 ところで、約束は、アブラハムとそのひとりの子孫に告げられました。神は「子孫たちに」と言って、多数をさすことはせず、ひとりをさして、「あなたの子孫に」と言っておられます。その方はキリストです。 048 GAL 003 017 私の言おうとすることはこうです。先に神によって結ばれた契約は、その後四百三十年たってできた律法によって取り消されたり、その約束が無効とされたりすることがないということです。 048 GAL 003 018 なぜなら、相続がもし律法によるのなら、もはや約束によるのではないからです。ところが、神は約束を通してアブラハムに相続の恵みを下さったのです。 048 GAL 003 019 では、律法とは何でしょうか。それは約束をお受けになった、この子孫が来られるときまで、違反を示すためにつけ加えられたもので、御使いたちを通して仲介者の手で定められたのです。 048 GAL 003 020 仲介者は一方だけに属するものではありません。しかし約束を賜わる神は唯一者です。 048 GAL 003 021 とすると、律法は神の約束に反するのでしょうか。絶対にそんなことはありません。もしも、与えられた律法がいのちを与えることのできるものであったなら、義は確かに律法によるものだったでしょう。 048 GAL 003 022 しかし聖書は、逆に、すべての人を罪の下に閉じ込めました。それは約束が、イエス・キリストに対する信仰によって、信じる人々に与えられるためです。 048 GAL 003 023 信仰が現われる以前には、私たちは律法の監督の下に置かれ、閉じ込められていましたが、それは、やがて示される信仰が得られるためでした。 048 GAL 003 024 こうして、律法は私たちをキリストへ導くための私たちの養育係となりました。私たちが信仰によって義と認められるためなのです。 048 GAL 003 025 しかし、信仰が現われた以上、私たちはもはや養育係の下にはいません。 048 GAL 003 026 あなたがたはみな、キリスト・イエスに対する信仰によって、神の子どもです。 048 GAL 003 027 バプテスマを受けてキリストにつく者とされたあなたがたはみな、キリストをその身に着たのです。 048 GAL 003 028 ユダヤ人もギリシヤ人もなく、奴隷も自由人もなく、男子も女子もありません。なぜなら、あなたがたはみな、キリスト・イエスにあって、一つだからです。 048 GAL 003 029 もしあなたがたがキリストのものであれば、それによってアブラハムの子孫であり、約束による相続人なのです。 048 GAL 004 001 ところが、相続人というものは、全財産の持ち主なのに、子どものうちは、奴隷と少しも違わず、 048 GAL 004 002 父の定めた日までは、後見人や管理者の下にあります。 048 GAL 004 003 私たちもそれと同じで、まだ小さかった時には、この世の幼稚な教えの下に奴隷となっていました。 048 GAL 004 004 しかし定めの時が来たので、神はご自分の御子を遣わし、この方を、女から生まれた者、また律法の下にある者となさいました。 048 GAL 004 005 これは律法の下にある者を贖い出すためで、その結果、私たちが子としての身分を受けるようになるためです。 048 GAL 004 006 そして、あなたがたは子であるゆえに、神は「アバ、父。」と呼ぶ、御子の御霊を、私たちの心に遣わしてくださいました。 048 GAL 004 007 ですから、あなたがたはもはや奴隷ではなく、子です。子ならば、神による相続人です。 048 GAL 004 008 しかし、神を知らなかった当時、あなたがたは本来は神でない神々の奴隷でした。 048 GAL 004 009 ところが、今では神を知っているのに、いや、むしろ神に知られているのに、どうしてあの無力、無価値の幼稚な教えに逆戻りして、再び新たにその奴隷になろうとするのですか。 048 GAL 004 010 あなたがたは、各種の日と月と季節と年とを守っています。 048 GAL 004 011 あなたがたのために私の労したことは、むだだったのではないか、と私はあなたがたのことを案じています。 048 GAL 004 012 お願いです。兄弟たち。私のようになってください。私もあなたがたのようになったのですから。あなたがたは私に何一つ悪いことをしていません。 048 GAL 004 013 ご承知のとおり、私が最初あなたがたに福音を伝えたのは、私の肉体が弱かったためでした。 048 GAL 004 014 そして私の肉体には、あなたがたにとって試練となるものがあったのに、あなたがたは軽蔑したり、きらったりしないで、かえって神の御使いのように、またキリスト・イエスご自身であるかのように、私を迎えてくれました。 048 GAL 004 015 それなのに、あなたがたのあの喜びは、今どこにあるのですか。私はあなたがたのためにあかししますが、あなたがたは、もしできれば自分の目をえぐり出して私に与えたいとさえ思ったではありませんか。 048 GAL 004 016 それでは、私は、あなたがたに真理を語ったために、あなたがたの敵になったのでしょうか。 048 GAL 004 017 あなたがたに対するあの人々の熱心は正しいものではありません。彼らはあなたがたを自分たちに熱心にならせようとして、あなたがたを福音の恵みから締め出そうとしているのです。 048 GAL 004 018 良いことで熱心に慕われるのは、いつであっても良いものです。それは私があなたがたといっしょにいるときだけではありません。 048 GAL 004 019 私の子どもたちよ。あなたがたのうちにキリストが形造られるまで、私は再びあなたがたのために産みの苦しみをしています。 048 GAL 004 020 それで、今あなたがたといっしょにいることができたら、そしてこんな語調でなく話せたらと思います。あなたがたのことをどうしたらよいかと困っているのです。 048 GAL 004 021 律法の下にいたいと思う人たちは、私に答えてください。あなたがたは律法の言うことを聞かないのですか。 048 GAL 004 022 そこには、アブラハムにふたりの子があって、ひとりは女奴隷から、ひとりは自由の女から生まれた、と書かれています。 048 GAL 004 023 女奴隷の子は肉によって生まれ、自由の女の子は約束によって生まれたのです。 048 GAL 004 024 このことには比喩があります。この女たちは二つの契約です。一つはシナイ山から出ており、奴隷となる子を産みます。その女はハガルです。 048 GAL 004 025 このハガルは、アラビヤにあるシナイ山のことで、今のエルサレムに当たります。なぜなら、彼女はその子どもたちとともに奴隷だからです。 048 GAL 004 026 しかし、上にあるエルサレムは自由であり、私たちの母です。 048 GAL 004 027 すなわち、こう書いてあります。 「喜べ。子を産まない不妊の女よ。 声をあげて呼ばわれ。 産みの苦しみを知らない女よ。 夫に捨てられた女の産む子どもは、 夫のある女の産む子どもよりも多い。」 048 GAL 004 028 兄弟たちよ。あなたがたはイサクのように約束の子どもです。 048 GAL 004 029 しかし、かつて肉によって生まれた者が、御霊によって生まれた者を迫害したように、今もそのとおりです。 048 GAL 004 030 しかし、聖書は何と言っていますか。「奴隷の女とその子どもを追い出せ。奴隷の女の子どもは決して自由の女の子どもとともに相続人になってはならない。」 048 GAL 004 031 こういうわけで、兄弟たちよ。私たちは奴隷の女の子どもではなく、自由の女の子どもです。 048 GAL 005 001 キリストは、自由を得させるために、私たちを解放してくださいました。ですから、あなたがたは、しっかり立って、またと奴隷のくびきを負わせられないようにしなさい。 048 GAL 005 002 よく聞いてください。このパウロがあなたがたに言います。もし、あなたがたが割礼を受けるなら、キリストは、あなたがたにとって、何の益もないのです。 048 GAL 005 003 割礼を受けるすべての人に、私は再びあかしします。その人は律法の全体を行なう義務があります。 048 GAL 005 004 律法によって義と認められようとしているあなたがたは、キリストから離れ、恵みから落ちてしまったのです。 048 GAL 005 005 私たちは、信仰により、御霊によって、義をいただく望みを熱心に抱いているのです。 048 GAL 005 006 キリスト・イエスにあっては、割礼を受ける受けないは大事なことではなく、愛によって働く信仰だけが大事なのです。 048 GAL 005 007 あなたがたはよく走っていたのに、だれがあなたがたを妨げて、真理に従わなくさせたのですか。 048 GAL 005 008 そのような勧めは、あなたがたを召してくださった方から出たものではありません。 048 GAL 005 009 わずかのパン種が、こねた粉の全体を発酵させるのです。 048 GAL 005 010 私は主にあって、あなたがたが少しも違った考えを持っていないと確信しています。しかし、あなたがたをかき乱す者は、だれであろうと、さばきを受けるのです。 048 GAL 005 011 兄弟たち。もし私が今でも割礼を宣べ伝えているなら、どうして今なお迫害を受けることがありましょう。それなら、十字架のつまずきは取り除かれているはずです。 048 GAL 005 012 あなたがたをかき乱す者どもは、いっそのこと不具になってしまうほうがよいのです。 048 GAL 005 013 兄弟たち。あなたがたは、自由を与えられるために召されたのです。ただ、その自由を肉の働く機会としないで、愛をもって互いに仕えなさい。 048 GAL 005 014 律法の全体は、「あなたの隣人をあなた自身のように愛せよ。」という一語をもって全うされるのです。 048 GAL 005 015 もし互いにかみ合ったり、食い合ったりしているなら、お互いの間で滅ぼされてしまいます。気をつけなさい。 048 GAL 005 016 私は言います。御霊によって歩みなさい。そうすれば、決して肉の欲望を満足させるようなことはありません。 048 GAL 005 017 なぜなら、肉の願うことは御霊に逆らい、御霊は肉に逆らうからです。この二つは互いに対立していて、そのためあなたがたは、自分のしたいと思うことをすることができないのです。 048 GAL 005 018 しかし、御霊によって導かれるなら、あなたがたは律法の下にはいません。 048 GAL 005 019 肉の行ないは明白であって、次のようなものです。不品行、汚れ、好色、 048 GAL 005 020 偶像礼拝、魔術、敵意、争い、そねみ、憤り、党派心、分裂、分派、 048 GAL 005 021 ねたみ、酩酊、遊興、そういった類のものです。前にもあらかじめ言ったように、私は今もあなたがたにあらかじめ言っておきます。こんなことをしている者たちが神の国を相続することはありません。 048 GAL 005 022 しかし、御霊の実は、愛、喜び、平安、寛容、親切、善意、誠実、 048 GAL 005 023 柔和、自制です。このようなものを禁ずる律法はありません。 048 GAL 005 024 キリスト・イエスにつく者は、自分の肉を、さまざまの情欲や欲望とともに、十字架につけてしまったのです。 048 GAL 005 025 もし私たちが御霊によって生きるのなら、御霊に導かれて、進もうではありませんか。 048 GAL 005 026 互いにいどみ合ったり、そねみ合ったりして、虚栄に走ることのないようにしましょう。 048 GAL 006 001 兄弟たちよ。もしだれかがあやまちに陥ったなら、御霊の人であるあなたがたは、柔和な心でその人を正してあげなさい。また、自分自身も誘惑に陥らないように気をつけなさい。 048 GAL 006 002 互いの重荷を負い合い、そのようにしてキリストの律法を全うしなさい。 048 GAL 006 003 だれでも、りっぱでもない自分を何かりっぱでもあるかのように思うなら、自分を欺いているのです。 048 GAL 006 004 おのおの自分の行ないをよく調べてみなさい。そうすれば、誇れると思ったことも、ただ自分だけの誇りで、ほかの人に対して誇れることではないでしょう。 048 GAL 006 005 人にはおのおの、負うべき自分自身の重荷があるのです。 048 GAL 006 006 みことばを教えられる人は、教える人とすべての良いものを分け合いなさい。 048 GAL 006 007 思い違いをしてはいけません。神は侮られるような方ではありません。人は種を蒔けば、その刈り取りもすることになります。 048 GAL 006 008 自分の肉のために蒔く者は、肉から滅びを刈り取り、御霊のために蒔く者は、御霊から永遠のいのちを刈り取るのです。 048 GAL 006 009 善を行なうのに飽いてはいけません。失望せずにいれば、時期が来て、刈り取ることになります。 048 GAL 006 010 ですから、私たちは、機会のあるたびに、すべての人に対して、特に信仰の家族の人たちに善を行ないましょう。 048 GAL 006 011 ご覧のとおり、私は今こんなに大きな字で、自分のこの手であなたがたに書いています。 048 GAL 006 012 あなたがたに割礼を強制する人たちは、肉において外見を良くしたい人たちです。彼らはただ、キリストの十字架のために迫害を受けたくないだけなのです。 048 GAL 006 013 なぜなら、割礼を受けた人たちは、自分自身が律法を守っていません。それなのに彼らがあなたがたに割礼を受けさせようとするのは、あなたがたの肉を誇りたいためなのです。 048 GAL 006 014 しかし私には、私たちの主イエス・キリストの十字架以外に誇りとするものが決してあってはなりません。この十字架によって、世界は私に対して十字架につけられ、私も世界に対して十字架につけられたのです。 048 GAL 006 015 割礼を受けているか受けていないかは、大事なことではありません。大事なのは新しい創造です。 048 GAL 006 016 どうか、この基準に従って進む人々、すなわち神のイスラエルの上に、平安とあわれみがありますように。 048 GAL 006 017 これからは、だれも私を煩わさないようにしてください。私は、この身に、イエスの焼き印を帯びているのですから。 048 GAL 006 018 どうか、私たちの主イエス・キリストの恵みが、兄弟たちよ、あなたがたの霊とともにありますように。アーメン。 # # BOOK 049 EPH Ephesians エペソ人への手紙 049 EPH 001 001 神のみこころによるキリスト・イエスの使徒パウロから、キリスト・イエスにある忠実なエペソの聖徒たちへ。 049 EPH 001 002 私たちの父なる神と主イエス・キリストから、恵みと平安があなたがたの上にありますように。 049 EPH 001 003 私たちの主イエス・キリストの父なる神がほめたたえられますように。神はキリストにおいて、天にあるすべての霊的祝福をもって私たちを祝福してくださいました。 049 EPH 001 004 すなわち、神は私たちを世界の基の置かれる前からキリストのうちに選び、御前できよく、傷のない者にしようとされました。 049 EPH 001 005 神は、ただみこころのままに、私たちをイエス・キリストによってご自分の子にしようと、愛をもってあらかじめ定めておられたのです。 049 EPH 001 006 それは、神がその愛する方によって私たちに与えてくださった恵みの栄光が、ほめたたえられるためです。 049 EPH 001 007 私たちは、この御子のうちにあって、御子の血による贖い、すなわち罪の赦しを受けているのです。これは神の豊かな恵みによることです。 049 EPH 001 008 神はこの恵みを私たちの上にあふれさせ、あらゆる知恵と思慮深さをもって、 049 EPH 001 009 みこころの奥義を私たちに知らせてくださいました。それは、神が御子においてあらかじめお立てになったご計画によることであって、 049 EPH 001 010 時がついに満ちて、この時のためのみこころが実行に移され、天にあるものも地にあるものも、いっさいのものが、キリストにあって一つに集められることなのです。このキリストにあって、 049 EPH 001 011 私たちは彼にあって御国を受け継ぐ者ともなったのです。私たちは、みこころによりご計画のままをみな実現される方の目的に従って、このようにあらかじめ定められていたのです。 049 EPH 001 012 それは、前からキリストに望みを置いていた私たちが、神の栄光をほめたたえる者となるためです。 049 EPH 001 013 またあなたがたも、キリストにあって、真理のことば、すなわちあなたがたの救いの福音を聞き、またそれを信じたことによって、約束の聖霊をもって証印を押されました。 049 EPH 001 014 聖霊は私たちが御国を受け継ぐことの保証であられます。これは神の民の贖いのためであり、神の栄光がほめたたえられるためです。 049 EPH 001 015 こういうわけで、私は主イエスに対するあなたがたの信仰と、すべての聖徒に対する愛とを聞いて、 049 EPH 001 016 あなたがたのために絶えず感謝をささげ、あなたがたのことを覚えて祈っています。 049 EPH 001 017 どうか、私たちの主イエス・キリストの神、すなわち栄光の父が、神を知るための知恵と啓示の御霊を、あなたがたに与えてくださいますように。 049 EPH 001 018 また、あなたがたの心の目がはっきり見えるようになって、神の召しによって与えられる望みがどのようなものか、聖徒の受け継ぐものがどのように栄光に富んだものか、 049 EPH 001 019 また、神の全能の力の働きによって私たち信じる者に働く神のすぐれた力がどのように偉大なものであるかを、あなたがたが知ることができますように。 049 EPH 001 020 神は、その全能の力をキリストのうちに働かせて、キリストを死者の中からよみがえらせ、天上においてご自分の右の座に着かせて、 049 EPH 001 021 すべての支配、権威、権力、主権の上に、また、今の世ばかりでなく、次に来る世においてもとなえられる、すべての名の上に高く置かれました。 049 EPH 001 022 また、神は、いっさいのものをキリストの足の下に従わせ、いっさいのものの上に立つかしらであるキリストを、教会にお与えになりました。 049 EPH 001 023 教会はキリストのからだであり、いっさいのものをいっさいのものによって満たす方の満ちておられるところです。 049 EPH 002 001 あなたがたは自分の罪過と罪との中に死んでいた者であって、 049 EPH 002 002 そのころは、それらの罪の中にあってこの世の流れに従い、空中の権威を持つ支配者として今も不従順の子らの中に働いている霊に従って、歩んでいました。 049 EPH 002 003 私たちもみな、かつては不従順の子らの中にあって、自分の肉の欲の中に生き、肉と心の望むままを行ない、ほかの人たちと同じように、生まれながら御怒りを受けるべき子らでした。 049 EPH 002 004 しかし、あわれみ豊かな神は、私たちを愛してくださったその大きな愛のゆえに、 049 EPH 002 005 罪過の中に死んでいたこの私たちをキリストとともに生かし、――あなたがたが救われたのは、ただ恵みによるのです。―― 049 EPH 002 006 キリスト・イエスにおいて、ともによみがえらせ、ともに天の所にすわらせてくださいました。 049 EPH 002 007 それは、あとに来る世々において、このすぐれて豊かな御恵みを、キリスト・イエスにおいて私たちに賜わる慈愛によって明らかにお示しになるためでした。 049 EPH 002 008 あなたがたは、恵みのゆえに、信仰によって救われたのです。それは、自分自身から出たことではなく、神からの賜物です。 049 EPH 002 009 行ないによるのではありません。だれも誇ることのないためです。 049 EPH 002 010 私たちは神の作品であって、良い行ないをするためにキリスト・イエスにあって造られたのです。神は、私たちが良い行ないに歩むように、その良い行ないをもあらかじめ備えてくださったのです。 049 EPH 002 011 ですから、思い出してください。あなたがたは、以前は肉において異邦人でした。すなわち、肉において人の手による、いわゆる割礼を持つ人々からは、無割礼の人々と呼ばれる者であって、 049 EPH 002 012 そのころのあなたがたは、キリストから離れ、イスラエルの国から除外され、約束の契約については他国人であり、この世にあって望みもなく、神もない人たちでした。 049 EPH 002 013 しかし、以前は遠く離れていたあなたがたも、今ではキリスト・イエスの中にあることにより、キリストの血によって近い者とされたのです。 049 EPH 002 014 キリストこそ私たちの平和であり、二つのものを一つにし、隔ての壁を打ちこわし、 049 EPH 002 015 ご自分の肉において、敵意を廃棄された方です。敵意とは、さまざまの規定から成り立っている戒めの律法なのです。このことは、二つのものをご自身において新しいひとりの人に造り上げて、平和を実現するためであり、 049 EPH 002 016 また、両者を一つのからだとして、十字架によって神と和解させるためなのです。敵意は十字架によって葬り去られました。 049 EPH 002 017 それからキリストは来られて、遠くにいたあなたがたに平和を宣べ、近くにいた人たちにも平和を宣べられました。 049 EPH 002 018 私たちは、このキリストによって、両者ともに一つの御霊において、父のみもとに近づくことができるのです。 049 EPH 002 019 こういうわけで、あなたがたは、もはや他国人でも寄留者でもなく、今は聖徒たちと同じ国民であり、神の家族なのです。 049 EPH 002 020 あなたがたは使徒と預言者という土台の上に建てられており、キリスト・イエスご自身がその礎石です。 049 EPH 002 021 この方にあって、組み合わされた建物の全体が成長し、主にある聖なる宮となるのであり、 049 EPH 002 022 このキリストにあって、あなたがたもともに建てられ、御霊によって神の御住まいとなるのです。 049 EPH 003 001 こういうわけで、あなたがた異邦人のためにキリスト・イエスの囚人となった私パウロが言います。 049 EPH 003 002 あなたがたのためにと私がいただいた、神の恵みによる私の務めについて、あなたがたはすでに聞いたことでしょう。 049 EPH 003 003 先に簡単に書いたとおり、この奥義は、啓示によって私に知らされたのです。 049 EPH 003 004 それを読めば、私がキリストの奥義をどう理解しているかがよくわかるはずです。 049 EPH 003 005 この奥義は、今は、御霊によって、キリストの聖なる使徒たちと預言者たちに啓示されていますが、前の時代には、今と同じようには人々に知らされていませんでした。 049 EPH 003 006 その奥義とは、福音により、キリスト・イエスにあって、異邦人もまた共同の相続者となり、ともに一つのからだに連なり、ともに約束にあずかる者となるということです。 049 EPH 003 007 私は、神の力の働きにより、自分に与えられた神の恵みの賜物によって、この福音に仕える者とされました。 049 EPH 003 008 すべての聖徒たちのうちで一番小さな私に、この恵みが与えられたのは、私がキリストの測りがたい富を異邦人に宣べ伝え、 049 EPH 003 009 また、万物を創造された神の中に世々隠されていた奥義を実行に移す務めが何であるかを明らかにするためにほかなりません。 049 EPH 003 010 これは、今、天にある支配と権威とに対して、教会を通して、神の豊かな知恵が示されるためであって、 049 EPH 003 011 私たちの主キリスト・イエスにおいて実現された神の永遠のご計画に沿ったことです。 049 EPH 003 012 私たちはこのキリストにあり、キリストを信じる信仰によって大胆に確信をもって神に近づくことができるのです。 049 EPH 003 013 ですから、私があなたがたのために受けている苦難のゆえに落胆することのないようお願いします。私の受けている苦しみは、そのまま、あなたがたの光栄なのです。 049 EPH 003 014 こういうわけで、私はひざをかがめて、 049 EPH 003 015 天上と地上で家族と呼ばれるすべてのものの名の元である父の前に祈ります。 049 EPH 003 016 どうか父が、その栄光の豊かさに従い、御霊により、力をもって、あなたがたの内なる人を強くしてくださいますように。 049 EPH 003 017 こうしてキリストが、あなたがたの信仰によって、あなたがたの心のうちに住んでいてくださいますように。また、愛に根ざし、愛に基礎を置いているあなたがたが、 049 EPH 003 018 すべての聖徒とともに、その広さ、長さ、高さ、深さがどれほどであるかを理解する力を持つようになり、 049 EPH 003 019 人知をはるかに越えたキリストの愛を知ることができますように。こうして、神ご自身の満ち満ちたさまにまで、あなたがたが満たされますように。 049 EPH 003 020 どうか、私たちのうちに働く力によって、私たちの願うところ、思うところのすべてを越えて豊かに施すことのできる方に、 049 EPH 003 021 教会により、またキリスト・イエスにより、栄光が、世々にわたって、とこしえまでありますように。アーメン。 049 EPH 004 001 さて、主の囚人である私はあなたがたに勧めます。召されたあなたがたは、その召しにふさわしく歩みなさい。 049 EPH 004 002 謙遜と柔和の限りを尽くし、寛容を示し、愛をもって互いに忍び合い、 049 EPH 004 003 平和のきずなで結ばれて御霊の一致を熱心に保ちなさい。 049 EPH 004 004 からだは一つ、御霊は一つです。あなたがたが召されたとき、召しのもたらした望みが一つであったのと同じです。 049 EPH 004 005 主は一つ、信仰は一つ、バプテスマは一つです。 049 EPH 004 006 すべてのものの上にあり、すべてのものを貫き、すべてのもののうちにおられる、すべてのものの父なる神は一つです。 049 EPH 004 007 しかし、私たちはひとりひとり、キリストの賜物の量りに従って恵みを与えられました。 049 EPH 004 008 そこで、こう言われています。 「高い所に上られたとき、 彼は多くの捕虜を引き連れ、 人々に賜物を分け与えられた。」 049 EPH 004 009 ――この「上られた。」ということばは、彼がまず地の低い所に下られた、ということでなくて何でしょう。 049 EPH 004 010 この下られた方自身が、すべてのものを満たすために、もろもろの天よりも高く上られた方なのです。―― 049 EPH 004 011 こうして、キリストご自身が、ある人を使徒、ある人を預言者、ある人を伝道者、ある人を牧師また教師として、お立てになったのです。 049 EPH 004 012 それは、聖徒たちを整えて奉仕の働きをさせ、キリストのからだを建て上げるためであり、 049 EPH 004 013 ついに、私たちがみな、信仰の一致と神の御子に関する知識の一致とに達し、完全におとなになって、キリストの満ち満ちた身たけにまで達するためです。 049 EPH 004 014 それは、私たちがもはや、子どもではなくて、人の悪巧みや、人を欺く悪賢い策略により、教えの風に吹き回されたり、波にもてあそばれたりすることがなく、 049 EPH 004 015 むしろ、愛をもって真理を語り、あらゆる点において成長し、かしらなるキリストに達することができるためなのです。 049 EPH 004 016 キリストによって、からだ全体は、一つ一つの部分がその力量にふさわしく働く力により、また、備えられたあらゆる結び目によって、しっかりと組み合わされ、結び合わされ、成長して、愛のうちに建てられるのです。 049 EPH 004 017 そこで私は、主にあって言明し、おごそかに勧めます。もはや、異邦人がむなしい心で歩んでいるように歩んではなりません。 049 EPH 004 018 彼らは、その知性において暗くなり、彼らのうちにある無知と、かたくなな心とのゆえに、神のいのちから遠く離れています。 049 EPH 004 019 道徳的に無感覚となった彼らは、好色に身をゆだねて、あらゆる不潔な行ないをむさぼるようになっています。 049 EPH 004 020 しかし、あなたがたはキリストのことを、このようには学びませんでした。 049 EPH 004 021 ただし、ほんとうにあなたがたがキリストに聞き、キリストにあって教えられているのならばです。まさしく真理はイエスにあるのですから。 049 EPH 004 022 その教えとは、あなたがたの以前の生活について言うならば、人を欺く情欲によって滅びて行く古い人を脱ぎ捨てるべきこと、 049 EPH 004 023 またあなたがたが心の霊において新しくされ、 049 EPH 004 024 真理に基づく義と聖をもって神にかたどり造り出された、新しい人を身に着るべきことでした。 049 EPH 004 025 ですから、あなたがたは偽りを捨て、おのおの隣人に対して真実を語りなさい。私たちはからだの一部分として互いにそれぞれのものだからです。 049 EPH 004 026 怒っても、罪を犯してはなりません。日が暮れるまで憤ったままでいてはいけません。 049 EPH 004 027 悪魔に機会を与えないようにしなさい。 049 EPH 004 028 盗みをしている者は、もう盗んではいけません。かえって、困っている人に施しをするため、自分の手をもって正しい仕事をし、ほねおって働きなさい。 049 EPH 004 029 悪いことばを、いっさい口から出してはいけません。ただ、必要なとき、人の徳を養うのに役立つことばを話し、聞く人に恵みを与えなさい。 049 EPH 004 030 神の聖霊を悲しませてはいけません。あなたがたは、贖いの日のために、聖霊によって証印を押されているのです。 049 EPH 004 031 無慈悲、憤り、怒り、叫び、そしりなどを、いっさいの悪意とともに、みな捨て去りなさい。 049 EPH 004 032 お互いに親切にし、心の優しい人となり、神がキリストにおいてあなたがたを赦してくださったように、互いに赦し合いなさい。 049 EPH 005 001 ですから、愛されている子どもらしく、神にならう者となりなさい。 049 EPH 005 002 また、愛のうちに歩みなさい。キリストもあなたがたを愛して、私たちのために、ご自身を神へのささげ物、また供え物とし、香ばしいかおりをおささげになりました。 049 EPH 005 003 あなたがたの間では、聖徒にふさわしく、不品行も、どんな汚れも、またむさぼりも、口にすることさえいけません。 049 EPH 005 004 また、みだらなことや、愚かな話や、下品な冗談を避けなさい。そのようなことは良くないことです。むしろ、感謝しなさい。 049 EPH 005 005 あなたがたがよく見て知っているとおり、不品行な者や、汚れた者や、むさぼる者――これが偶像礼拝者です。――こういう人はだれも、キリストと神との御国を相続することができません。 049 EPH 005 006 むなしいことばに、だまされてはいけません。こういう行ないのゆえに、神の怒りは不従順な子らに下るのです。 049 EPH 005 007 ですから、彼らの仲間になってはいけません。 049 EPH 005 008 あなたがたは、以前は暗やみでしたが、今は、主にあって、光となりました。光の子どもらしく歩みなさい。 049 EPH 005 009 ――光の結ぶ実は、あらゆる善意と正義と真実なのです。―― 049 EPH 005 010 そのためには、主に喜ばれることが何であるかを見分けなさい。 049 EPH 005 011 実を結ばない暗やみのわざに仲間入りしないで、むしろ、それを明るみに出しなさい。 049 EPH 005 012 なぜなら、彼らがひそかに行なっていることは、口にするのも恥ずかしいことだからです。 049 EPH 005 013 けれども、明るみに引き出されるものは、みな、光によって明らかにされます。 049 EPH 005 014 明らかにされたものはみな、光だからです。それで、こう言われています。 「眠っている人よ。目をさませ。 死者の中から起き上がれ。 そうすれば、キリストが、あなたを照らされる。」 049 EPH 005 015 そういうわけですから、賢くない人のようにではなく、賢い人のように歩んでいるかどうか、よくよく注意し、 049 EPH 005 016 機会を十分に生かして用いなさい。悪い時代だからです。 049 EPH 005 017 ですから、愚かにならないで、主のみこころは何であるかを、よく悟りなさい。 049 EPH 005 018 また、酒に酔ってはいけません。そこには放蕩があるからです。御霊に満たされなさい。 049 EPH 005 019 詩と賛美と霊の歌とをもって、互いに語り、主に向かって、心から歌い、また賛美しなさい。 049 EPH 005 020 いつでも、すべてのことについて、私たちの主イエス・キリストの名によって父なる神に感謝しなさい。 049 EPH 005 021 キリストを恐れ尊んで、互いに従いなさい。 049 EPH 005 022 妻たちよ。あなたがたは、主に従うように、自分の夫に従いなさい。 049 EPH 005 023 なぜなら、キリストは教会のかしらであって、ご自身がそのからだの救い主であられるように、夫は妻のかしらであるからです。 049 EPH 005 024 教会がキリストに従うように、妻も、すべてのことにおいて、夫に従うべきです。 049 EPH 005 025 夫たちよ。キリストが教会を愛し、教会のためにご自身をささげられたように、あなたがたも、自分の妻を愛しなさい。 049 EPH 005 026 キリストがそうされたのは、みことばにより、水の洗いをもって、教会をきよめて聖なるものとするためであり、 049 EPH 005 027 ご自身で、しみや、しわや、そのようなものの何一つない、きよく傷のないものとなった栄光の教会を、ご自分の前に立たせるためです。 049 EPH 005 028 そのように、夫も自分の妻を自分のからだのように愛さなければなりません。自分の妻を愛する者は自分を愛しているのです。 049 EPH 005 029 だれも自分の身を憎んだ者はいません。かえって、これを養い育てます。それはキリストが教会をそうされたのと同じです。 049 EPH 005 030 私たちはキリストのからだの部分だからです。 049 EPH 005 031 「それゆえ、人はその父と母を離れ、妻と結ばれ、ふたりは一心同体となる。」 049 EPH 005 032 この奥義は偉大です。私は、キリストと教会とをさして言っているのです。 049 EPH 005 033 それはそうとして、あなたがたも、おのおの自分の妻を自分と同様に愛しなさい。妻もまた自分の夫を敬いなさい。 049 EPH 006 001 子どもたちよ。主にあって両親に従いなさい。これは正しいことだからです。 049 EPH 006 002 「あなたの父と母を敬え。」これは第一の戒めであり、約束を伴ったものです。すなわち、 049 EPH 006 003 「そうしたら、あなたはしあわせになり、地上で長生きする。」という約束です。 049 EPH 006 004 父たちよ。あなたがたも、子どもをおこらせてはいけません。かえって、主の教育と訓戒によって育てなさい。 049 EPH 006 005 奴隷たちよ。あなたがたは、キリストに従うように、恐れおののいて真心から地上の主人に従いなさい。 049 EPH 006 006 人のごきげんとりのような、うわべだけの仕え方でなく、キリストのしもべとして、心から神のみこころを行ない、 049 EPH 006 007 人にではなく、主に仕えるように、善意をもって仕えなさい。 049 EPH 006 008 良いことを行なえば、奴隷であっても自由人であっても、それぞれその報いを主から受けることをあなたがたは知っています。 049 EPH 006 009 主人たちよ。あなたがたも、奴隷に対して同じようにふるまいなさい。おどすことはやめなさい。あなたがたは、彼らとあなたがたとの主が天におられ、主は人を差別されることがないことを知っているのですから。 049 EPH 006 010 終わりに言います。主にあって、その大能の力によって強められなさい。 049 EPH 006 011 悪魔の策略に対して立ち向かうことができるために、神のすべての武具を身に着けなさい。 049 EPH 006 012 私たちの格闘は血肉に対するものではなく、主権、力、この暗やみの世界の支配者たち、また、天にいるもろもろの悪霊に対するものです。 049 EPH 006 013 ですから、邪悪な日に際して対抗できるように、また、いっさいを成し遂げて、堅く立つことができるように、神のすべての武具をとりなさい。 049 EPH 006 014 では、しっかりと立ちなさい。腰には真理の帯を締め、胸には正義の胸当てを着け、 049 EPH 006 015 足には平和の福音の備えをはきなさい。 049 EPH 006 016 これらすべてのものの上に、信仰の大盾を取りなさい。それによって、悪い者が放つ火矢を、みな消すことができます。 049 EPH 006 017 救いのかぶとをかぶり、また御霊の与える剣である、神のことばを受け取りなさい。 049 EPH 006 018 すべての祈りと願いを用いて、どんなときにも御霊によって祈りなさい。そのためには絶えず目をさましていて、すべての聖徒のために、忍耐の限りを尽くし、また祈りなさい。 049 EPH 006 019 また、私が口を開くとき、語るべきことばが与えられ、福音の奥義を大胆に知らせることができるように私のためにも祈ってください。 049 EPH 006 020 私は鎖につながれて、福音のために大使の役を果たしています。鎖につながれていても、語るべきことを大胆に語れるように、祈ってください。 049 EPH 006 021 あなたがたにも私の様子や、私が何をしているかなどを知っていただくために、主にあって愛する兄弟であり、忠実な奉仕者であるテキコが、一部始終を知らせるでしょう。 049 EPH 006 022 テキコをあなたがたのもとに遣わしたのは、ほかでもなく、あなたがたが私たちの様子を知り、また彼によって心に励ましを受けるためです。 049 EPH 006 023 どうか、父なる神と主イエス・キリストから、平安と信仰に伴う愛とが兄弟たちの上にありますように。 049 EPH 006 024 私たちの主イエス・キリストを朽ちぬ愛をもって愛するすべての人の上に、恵みがありますように。 # # BOOK 050 PHI Philippians ピリピ人への手紙 050 PHI 001 001 キリスト・イエスのしもべであるパウロとテモテから、ピリピにいるキリスト・イエスにあるすべての聖徒たち、また監督と執事たちへ。 050 PHI 001 002 どうか、私たちの父なる神と主イエス・キリストから、恵みと平安があなたがたの上にありますように。 050 PHI 001 003 私は、あなたがたのことを思うごとに私の神に感謝し、 050 PHI 001 004 あなたがたすべてのために祈るごとに、いつも喜びをもって祈り、 050 PHI 001 005 あなたがたが、最初の日から今日まで、福音を広めることにあずかって来たことを感謝しています。 050 PHI 001 006 あなたがたのうちに良い働きを始められた方は、キリスト・イエスの日が来るまでにそれを完成させてくださることを私は堅く信じているのです。 050 PHI 001 007 私があなたがたすべてについてこのように考えるのは正しいのです。あなたがたはみな、私が投獄されているときも、福音を弁明し立証しているときも、私とともに恵みにあずかった人々であり、私は、そのようなあなたがたを、心に覚えているからです。 050 PHI 001 008 私が、キリスト・イエスの愛の心をもって、どんなにあなたがたすべてを慕っているか、そのあかしをしてくださるのは神です。 050 PHI 001 009 私は祈っています。あなたがたの愛が真の知識とあらゆる識別力によって、いよいよ豊かになり、 050 PHI 001 010 あなたがたが、真にすぐれたものを見分けることができるようになりますように。またあなたがたが、キリストの日には純真で非難されるところがなく、 050 PHI 001 011 イエス・キリストによって与えられる義の実に満たされている者となり、神の御栄えと誉れが現わされますように。 050 PHI 001 012 さて、兄弟たち。私の身に起こったことが、かえって福音を前進させることになったのを知ってもらいたいと思います。 050 PHI 001 013 私がキリストのゆえに投獄されている、ということは、親衛隊の全員と、そのほかのすべての人にも明らかになり、 050 PHI 001 014 また兄弟たちの大多数は、私が投獄されたことにより、主にあって確信を与えられ、恐れることなく、ますます大胆に神のことばを語るようになりました。 050 PHI 001 015 人々の中にはねたみや争いをもってキリストを宣べ伝える者もいますが、善意をもってする者もいます。 050 PHI 001 016 一方の人たちは愛をもってキリストを伝え、私が福音を弁証するために立てられていることを認めていますが、 050 PHI 001 017 他の人たちは純真な動機からではなく、党派心をもって、キリストを宣べ伝えており、投獄されている私をさらに苦しめるつもりなのです。 050 PHI 001 018 すると、どういうことになりますか。つまり、見せかけであろうとも、真実であろうとも、あらゆるしかたで、キリストが宣べ伝えられているのであって、このことを私は喜んでいます。そうです、今からも喜ぶことでしょう。 050 PHI 001 019 というわけは、あなたがたの祈りとイエス・キリストの御霊の助けによって、このことが私の救いとなることを私は知っているからです。 050 PHI 001 020 それは、私がどういうばあいにも恥じることなく、いつものように今も大胆に語って、生きるにしても、死ぬにしても、私の身によって、キリストのすばらしさが現わされることを求める私の切なる願いと望みにかなっているのです。 050 PHI 001 021 私にとっては、生きることはキリスト、死ぬこともまた益です。 050 PHI 001 022 しかし、もしこの肉体のいのちが続くとしたら、私の働きが豊かな実を結ぶことになるので、どちらを選んだらよいのか、私にはわかりません。 050 PHI 001 023 私は、その二つのものの間に板ばさみとなっています。私の願いは、世を去ってキリストとともにいることです。実はそのほうが、はるかにまさっています。 050 PHI 001 024 しかし、この肉体にとどまることが、あなたがたのためには、もっと必要です。 050 PHI 001 025 私はこのことを確信していますから、あなたがたの信仰の進歩と喜びとのために、私が生きながらえて、あなたがたすべてといっしょにいるようになることを知っています。 050 PHI 001 026 そうなれば、私はもう一度あなたがたのところに行けるので、私のことに関するあなたがたの誇りは、キリスト・イエスにあって増し加わるでしょう。 050 PHI 001 027 ただ、キリストの福音にふさわしく生活しなさい。そうすれば、私が行ってあなたがたに会うにしても、また離れているにしても、私はあなたがたについて、こう聞くことができるでしょう。あなたがたは霊を一つにしてしっかりと立ち、心を一つにして福音の信仰のために、ともに奮闘しており、 050 PHI 001 028 また、どんなことがあっても、反対者たちに驚かされることはないと。それは、彼らにとっては滅びのしるしであり、あなたがたにとっては救いのしるしです。これは神から出たことです。 050 PHI 001 029 あなたがたは、キリストのために、キリストを信じる信仰だけでなく、キリストのための苦しみをも賜わったのです。 050 PHI 001 030 あなたがたは、私について先に見たこと、また、私についていま聞いているのと同じ戦いを経験しているのです。 050 PHI 002 001 こういうわけですから、もしキリストにあって励ましがあり、愛の慰めがあり、御霊の交わりがあり、愛情とあわれみがあるなら、 050 PHI 002 002 私の喜びが満たされるように、あなたがたは一致を保ち、同じ愛の心を持ち、心を合わせ、志を一つにしてください。 050 PHI 002 003 何事でも自己中心や虚栄からすることなく、へりくだって、互いに人を自分よりもすぐれた者と思いなさい。 050 PHI 002 004 自分のことだけではなく、他の人のことも顧みなさい。 050 PHI 002 005 あなたがたの間では、そのような心構えでいなさい。それはキリスト・イエスのうちにも見られるものです。 050 PHI 002 006 キリストは、神の御姿であられる方なのに、神のあり方を捨てることができないとは考えないで、 050 PHI 002 007 ご自分を無にして、仕える者の姿をとり、人間と同じようになられたのです。 050 PHI 002 008 キリストは人間と同じようなかたちになり、自分を卑しくし、死にまで従い、実に十字架の死にまでも従われたのです。 050 PHI 002 009 それゆえ、神は、キリストを高く上げて、すべての名にまさる名をお与えになりました。 050 PHI 002 010 それは、イエスの御名によって、天にあるもの、地にあるもの、地の下にあるもののすべてが、ひざをかがめ、 050 PHI 002 011 すべての口が、「イエス・キリストは主である。」と告白して、父なる神がほめたたえられるためです。 050 PHI 002 012 そういうわけですから、愛する人たち、いつも従順であったように、私がいるときだけでなく、私のいない今はなおさら、恐れおののいて自分の救いを達成してください。 050 PHI 002 013 神は、みこころのままに、あなたがたのうちに働いて志を立てさせ、事を行なわせてくださるのです。 050 PHI 002 014 すべてのことを、つぶやかず、疑わずに行ないなさい。 050 PHI 002 015 それは、あなたがたが、非難されるところのない純真な者となり、また、曲がった邪悪な世代の中にあって傷のない神の子どもとなり、 050 PHI 002 016 いのちのことばをしっかり握って、彼らの間で世の光として輝くためです。そうすれば、私は、自分の努力したことがむだではなく、苦労したこともむだでなかったことを、キリストの日に誇ることができます。 050 PHI 002 017 たとい私が、あなたがたの信仰の供え物と礼拝とともに、注ぎの供え物となっても、私は喜びます。あなたがたすべてとともに喜びます。 050 PHI 002 018 あなたがたも同じように喜んでください。私といっしょに喜んでください。 050 PHI 002 019 しかし、私もあなたがたのことを知って励ましを受けたいので、早くテモテをあなたがたのところに送りたいと、主イエスにあって望んでいます。 050 PHI 002 020 テモテのように私と同じ心になって、真実にあなたがたのことを心配している者は、ほかにだれもいないからです。 050 PHI 002 021 だれもみな自分自身のことを求めるだけで、キリスト・イエスのことを求めてはいません。 050 PHI 002 022 しかし、テモテのりっぱな働きぶりは、あなたがたの知っているところです。子が父に仕えるようにして、彼は私といっしょに福音に奉仕して来ました。 050 PHI 002 023 ですから、私のことがどうなるかがわかりしだい、彼を遣わしたいと望んでいます。 050 PHI 002 024 しかし私自身も近いうちに行けることと、主にあって確信しています。 050 PHI 002 025 しかし、私の兄弟、同労者、戦友、またあなたがたの使者として私の窮乏のときに仕えてくれた人エパフロデトは、あなたがたのところに送らねばならないと思っています。 050 PHI 002 026 彼は、あなたがたすべてを慕い求めており、また、自分の病気のことがあなたがたに伝わったことを気にしているからです。 050 PHI 002 027 ほんとうに、彼は死ぬほどの病気にかかりましたが、神は彼をあわれんでくださいました。彼ばかりでなく私をもあわれんで、私にとって悲しみに悲しみが重なることのないようにしてくださいました。 050 PHI 002 028 そこで、私は大急ぎで彼を送ります。あなたがたが彼に再び会って喜び、私も心配が少なくなるためです。 050 PHI 002 029 ですから、喜びにあふれて、主にあって、彼を迎えてください。また、彼のような人々には尊敬を払いなさい。 050 PHI 002 030 なぜなら、彼は、キリストの仕事のために、いのちの危険を冒して死ぬばかりになったからです。彼は私に対して、あなたがたが私に仕えることのできなかった分を果たそうとしたのです。 050 PHI 003 001 最後に、私の兄弟たち。主にあって喜びなさい。前と同じことを書きますが、これは、私には煩わしいことではなく、あなたがたの安全のためにもなることです。 050 PHI 003 002 どうか犬に気をつけてください。悪い働き人に気をつけてください。肉体だけの割礼の者に気をつけてください。 050 PHI 003 003 神の御霊によって礼拝をし、キリスト・イエスを誇り、人間的なものを頼みにしない私たちのほうこそ、割礼の者なのです。 050 PHI 003 004 ただし、私は、人間的なものにおいても頼むところがあります。もし、ほかの人が人間的なものに頼むところがあると思うなら、私は、それ以上です。 050 PHI 003 005 私は八日目の割礼を受け、イスラエル民族に属し、ベニヤミンの分かれの者です。きっすいのヘブル人で、律法についてはパリサイ人、 050 PHI 003 006 その熱心は教会を迫害したほどで、律法による義についてならば非難されるところのない者です。 050 PHI 003 007 しかし、私にとって得であったこのようなものをみな、私はキリストのゆえに、損と思うようになりました。 050 PHI 003 008 それどころか、私の主であるキリスト・イエスを知っていることのすばらしさのゆえに、いっさいのことを損と思っています。私はキリストのためにすべてのものを捨てて、それらをちりあくたと思っています。それは、私には、キリストを得、また、 050 PHI 003 009 キリストの中にある者と認められ、律法による自分の義ではなくて、キリストを信じる信仰による義、すなわち、信仰に基づいて、神から与えられる義を持つことができる、という望みがあるからです。 050 PHI 003 010 私は、キリストとその復活の力を知り、またキリストの苦しみにあずかることも知って、キリストの死と同じ状態になり、 050 PHI 003 011 どうにかして、死者の中からの復活に達したいのです。 050 PHI 003 012 私は、すでに得たのでもなく、すでに完全にされているのでもありません。ただ捕えようとして、追求しているのです。そして、それを得るようにとキリスト・イエスが私を捕えてくださったのです。 050 PHI 003 013 兄弟たちよ。私は、自分はすでに捕えたなどと考えてはいません。ただ、この一事に励んでいます。すなわち、うしろのものを忘れ、ひたむきに前のものに向かって進み、 050 PHI 003 014 キリスト・イエスにおいて上に召してくださる神の栄冠を得るために、目標を目ざして一心に走っているのです。 050 PHI 003 015 ですから、成人である者はみな、このような考え方をしましょう。もし、あなたがたがどこかでこれと違った考え方をしているなら、神はそのこともあなたがたに明らかにしてくださいます。 050 PHI 003 016 それはそれとして、私たちはすでに達しているところを基準として、進むべきです。 050 PHI 003 017 兄弟たち。私を見ならう者になってください。また、あなたがたと同じように私たちを手本として歩んでいる人たちに、目を留めてください。 050 PHI 003 018 というのは、私はしばしばあなたがたに言って来たし、今も涙をもって言うのですが、多くの人々がキリストの十字架の敵として歩んでいるからです。 050 PHI 003 019 彼らの最後は滅びです。彼らの神は彼らの欲望であり、彼らの栄光は彼ら自身の恥なのです。彼らの思いは地上のことだけです。 050 PHI 003 020 けれども、私たちの国籍は天にあります。そこから主イエス・キリストが救い主としておいでになるのを、私たちは待ち望んでいます。 050 PHI 003 021 キリストは、万物をご自身に従わせることのできる御力によって、私たちの卑しいからだを、ご自身の栄光のからだと同じ姿に変えてくださるのです。 050 PHI 004 001 そういうわけですから、私の愛し慕う兄弟たち、私の喜び、冠よ。どうか、このように主にあってしっかりと立ってください。私の愛する人たち。 050 PHI 004 002 ユウオデヤに勧め、スントケに勧めます。あなたがたは、主にあって一致してください。 050 PHI 004 003 ほんとうに、真の協力者よ。あなたにも頼みます。彼女たちを助けてやってください。この人たちは、いのちの書に名のしるされているクレメンスや、そのほかの私の同労者たちとともに、福音を広めることで私に協力して戦ったのです。 050 PHI 004 004 いつも主にあって喜びなさい。もう一度言います。喜びなさい。 050 PHI 004 005 あなたがたの寛容な心を、すべての人に知らせなさい。主は近いのです。 050 PHI 004 006 何も思い煩わないで、あらゆるばあいに、感謝をもってささげる祈りと願いによって、あなたがたの願い事を神に知っていただきなさい。 050 PHI 004 007 そうすれば、人のすべての考えにまさる神の平安が、あなたがたの心と思いをキリスト・イエスにあって守ってくれます。 050 PHI 004 008 最後に、兄弟たち。すべての真実なこと、すべての誉れあること、すべての正しいこと、すべてのきよいこと、すべての愛すべきこと、すべての評判の良いこと、そのほか徳と言われること、称賛に値することがあるならば、そのようなことに心を留めなさい。 050 PHI 004 009 あなたがたが私から学び、受け、聞き、また見たことを実行しなさい。そうすれば、平和の神があなたがたとともにいてくださいます。 050 PHI 004 010 私のことを心配してくれるあなたがたの心が、今ついによみがえって来たことを、私は主にあって非常に喜んでいます。あなたがたは心にかけてはいたのですが、機会がなかったのです。 050 PHI 004 011 乏しいからこう言うのではありません。私は、どんな境遇にあっても満ち足りることを学びました。 050 PHI 004 012 私は、貧しさの中にいる道も知っており、豊かさの中にいる道も知っています。また、飽くことにも飢えることにも、富むことにも乏しいことにも、あらゆる境遇に対処する秘訣を心得ています。 050 PHI 004 013 私は、私を強くしてくださる方によって、どんなことでもできるのです。 050 PHI 004 014 それにしても、あなたがたは、よく私と困難を分け合ってくれました。 050 PHI 004 015 ピリピの人たち。あなたがたも知っているとおり、私が福音を宣べ伝え始めたころ、マケドニヤを離れて行ったときには、私の働きのために、物をやり取りしてくれた教会は、あなたがたのほかには一つもありませんでした。 050 PHI 004 016 テサロニケにいたときでさえ、あなたがたは一度ならず二度までも物を送って、私の乏しさを補ってくれました。 050 PHI 004 017 私は贈り物を求めているのではありません。私のほしいのは、あなたがたの収支を償わせて余りある霊的祝福なのです。 050 PHI 004 018 私は、すべての物を受けて、満ちあふれています。エパフロデトからあなたがたの贈り物を受けたので、満ち足りています。それは香ばしいかおりであって、神が喜んで受けてくださる供え物です。 050 PHI 004 019 また、私の神は、キリスト・イエスにあるご自身の栄光の富をもって、あなたがたの必要をすべて満たしてくださいます。 050 PHI 004 020 どうか、私たちの父なる神に御栄えがとこしえにありますように。アーメン。 050 PHI 004 021 キリスト・イエスにある聖徒のひとりひとりに、よろしく伝えてください。私といっしょにいる兄弟たちが、あなたがたによろしくと言っています。 050 PHI 004 022 聖徒たち全員が、そして特に、カイザルの家に属する人々が、よろしくと言っています。 050 PHI 004 023 どうか、主イエス・キリストの恵みが、あなたがたの霊とともにありますように。 # # BOOK 051 COL Colossians コロサイ人への手紙 051 COL 001 001 神のみこころによる、キリスト・イエスの使徒パウロ、および兄弟テモテから、 051 COL 001 002 コロサイにいる聖徒たちで、キリストにある忠実な兄弟たちへ。どうか、私たちの父なる神から、恵みと平安があなたがたの上にありますように。 051 COL 001 003 私たちは、いつもあなたがたのために祈り、私たちの主イエス・キリストの父なる神に感謝しています。 051 COL 001 004 それは、キリスト・イエスに対するあなたがたの信仰と、すべての聖徒に対してあなたがたが抱いている愛のことを聞いたからです。 051 COL 001 005 それらは、あなたがたのために天にたくわえられてある望みに基づくものです。あなたがたは、すでにこの望みのことを、福音の真理のことばの中で聞きました。 051 COL 001 006 この福音は、あなたがたが神の恵みを聞き、それをほんとうに理解したとき以来、あなたがたの間でも見られるとおりの勢いをもって、世界中で、実を結び広がり続けています。福音はそのようにしてあなたがたに届いたのです。 051 COL 001 007 これはあなたがたが私たちと同じしもべである愛するエパフラスから学んだとおりのものです。彼は私たちに代わって仕えている忠実な、キリストの仕え人であって、 051 COL 001 008 私たちに、御霊によるあなたがたの愛を知らせてくれました。 051 COL 001 009 こういうわけで、私たちはそのことを聞いた日から、絶えずあなたがたのために祈り求めています。どうか、あなたがたがあらゆる霊的な知恵と理解力によって、神のみこころに関する真の知識に満たされますように。 051 COL 001 010 また、主にかなった歩みをして、あらゆる点で主に喜ばれ、あらゆる善行のうちに実を結び、神を知る知識を増し加えられますように。 051 COL 001 011 また、神の栄光ある権能に従い、あらゆる力をもって強くされて、忍耐と寛容を尽くし、 051 COL 001 012 また、光の中にある、聖徒の相続分にあずかる資格を私たちに与えてくださった父なる神に、喜びをもって感謝をささげることができますように。 051 COL 001 013 神は、私たちを暗やみの圧制から救い出して、愛する御子のご支配の中に移してくださいました。 051 COL 001 014 この御子のうちにあって、私たちは、贖い、すなわち罪の赦しを得ています。 051 COL 001 015 御子は、見えない神のかたちであり、造られたすべてのものより先に生まれた方です。 051 COL 001 016 なぜなら、万物は御子にあって造られたからです。天にあるもの、地にあるもの、見えるもの、また見えないもの、王座も主権も支配も権威も、すべて御子によって造られたのです。万物は、御子によって造られ、御子のために造られたのです。 051 COL 001 017 御子は、万物よりも先に存在し、万物は御子にあって成り立っています。 051 COL 001 018 また、御子はそのからだである教会のかしらです。御子は初めであり、死者の中から最初に生まれた方です。こうして、ご自身がすべてのことにおいて、第一のものとなられたのです。 051 COL 001 019 なぜなら、神はみこころによって、満ち満ちた神の本質を御子のうちに宿らせ、 051 COL 001 020 その十字架の血によって平和をつくり、御子によって万物を、ご自分と和解させてくださったからです。地にあるものも天にあるものも、ただ御子によって和解させてくださったのです。 051 COL 001 021 あなたがたも、かつては神を離れ、心において敵となって、悪い行ないの中にあったのですが、 051 COL 001 022 今は神は、御子の肉のからだにおいて、しかもその死によって、あなたがたをご自分と和解させてくださいました。それはあなたがたを、きよく、傷なく、非難されるところのない者として御前に立たせてくださるためでした。 051 COL 001 023 ただし、あなたがたは、しっかりとした土台の上に堅く立って、すでに聞いた福音の望みからはずれることなく、信仰に踏みとどまらなければなりません。この福音は、天の下のすべての造られたものに宣べ伝えられているのであって、このパウロはそれに仕える者となったのです。 051 COL 001 024 ですから、私は、あなたがたのために受ける苦しみを喜びとしています。そして、キリストのからだのために、私の身をもって、キリストの苦しみの欠けたところを満たしているのです。キリストのからだとは、教会のことです。 051 COL 001 025 私は、あなたがたのために神からゆだねられた務めに従って、教会に仕える者となりました。神のことばを余すところなく伝えるためです。 051 COL 001 026 これは、多くの世代にわたって隠されていて、いま神の聖徒たちに現わされた奥義なのです。 051 COL 001 027 神は聖徒たちに、この奥義が異邦人の間にあってどのように栄光に富んだものであるかを、知らせたいと思われたのです。この奥義とは、あなたがたの中におられるキリスト、栄光の望みのことです。 051 COL 001 028 私たちは、このキリストを宣べ伝え、知恵を尽くして、あらゆる人を戒め、あらゆる人を教えています。それは、すべての人を、キリストにある成人として立たせるためです。 051 COL 001 029 このために、私もまた、自分のうちに力強く働くキリストの力によって、労苦しながら奮闘しています。 051 COL 002 001 あなたがたとラオデキヤの人たちと、そのほか直接私の顔を見たことのない人たちのためにも、私がどんなに苦闘しているか、知ってほしいと思います。 051 COL 002 002 それは、この人たちが心に励ましを受け、愛によって結び合わされ、理解をもって豊かな全き確信に達し、神の奥義であるキリストを真に知るようになるためです。 051 COL 002 003 このキリストのうちに、知恵と知識との宝がすべて隠されているのです。 051 COL 002 004 私がこう言うのは、だれもまことしやかな議論によって、あなたがたをあやまちに導くことのないためです。 051 COL 002 005 私は、肉体においては離れていても、霊においてはあなたがたといっしょにいて、あなたがたの秩序とキリストに対する堅い信仰とを見て喜んでいます。 051 COL 002 006 あなたがたは、このように主キリスト・イエスを受け入れたのですから、彼にあって歩みなさい。 051 COL 002 007 キリストの中に根ざし、また建てられ、また、教えられたとおり信仰を堅くし、あふれるばかり感謝しなさい。 051 COL 002 008 あのむなしい、だましごとの哲学によってだれのとりこにもならぬよう、注意しなさい。そのようなものは、人の言い伝えによるものであり、この世に属する幼稚な教えによるものであって、キリストに基づくものではありません。 051 COL 002 009 キリストのうちにこそ、神の満ち満ちたご性質が形をとって宿っています。 051 COL 002 010 そしてあなたがたは、キリストにあって、満ち満ちているのです。キリストはすべての支配と権威のかしらです。 051 COL 002 011 キリストにあって、あなたがたは人の手によらない割礼を受けました。肉のからだを脱ぎ捨て、キリストの割礼を受けたのです。 051 COL 002 012 あなたがたは、バプテスマによってキリストとともに葬られ、また、キリストを死者の中からよみがえらせた神の力を信じる信仰によって、キリストとともによみがえらされたのです。 051 COL 002 013 あなたがたは罪によって、また肉の割礼がなくて死んだ者であったのに、神は、そのようなあなたがたを、キリストとともに生かしてくださいました。それは、私たちのすべての罪を赦し、 051 COL 002 014 いろいろな定めのために私たちに不利な、いや、私たちを責め立てている債務証書を無効にされたからです。神はこの証書を取りのけ、十字架に釘づけにされました。 051 COL 002 015 神は、キリストにおいて、すべての支配と権威の武装を解除してさらしものとし、彼らを捕虜として凱旋の行列に加えられました。 051 COL 002 016 こういうわけですから、食べ物と飲み物について、あるいは、祭りや新月や安息日のことについて、だれにもあなたがたを批評させてはなりません。 051 COL 002 017 これらは、次に来るものの影であって、本体はキリストにあるのです。 051 COL 002 018 あなたがたは、ことさらに自己卑下をしようとしたり、御使い礼拝をしようとする者に、ほうびをだまし取られてはなりません。彼らは幻を見たことに安住して、肉の思いによっていたずらに誇り、 051 COL 002 019 かしらに堅く結びつくことをしません。このかしらがもとになり、からだ全体は、関節と筋によって養われ、結び合わされて、神によって成長させられるのです。 051 COL 002 020 もしあなたがたが、キリストとともに死んで、この世の幼稚な教えから離れたのなら、どうして、まだこの世の生き方をしているかのように、 051 COL 002 021 「すがるな。味わうな。さわるな。」というような定めに縛られるのですか。 051 COL 002 022 そのようなものはすべて、用いれば滅びるものについてであって、人間の戒めと教えによるものです。 051 COL 002 023 そのようなものは、人間の好き勝手な礼拝とか、謙遜とか、または、肉体の苦行などのゆえに賢いもののように見えますが、肉のほしいままな欲望に対しては、何のききめもないのです。 051 COL 003 001 こういうわけで、もしあなたがたが、キリストとともによみがえらされたのなら、上にあるものを求めなさい。そこにはキリストが、神の右に座を占めておられます。 051 COL 003 002 あなたがたは、地上のものを思わず、天にあるものを思いなさい。 051 COL 003 003 あなたがたはすでに死んでおり、あなたがたのいのちは、キリストとともに、神のうちに隠されてあるからです。 051 COL 003 004 私たちのいのちであるキリストが現われると、そのときあなたがたも、キリストとともに、栄光のうちに現われます。 051 COL 003 005 ですから、地上のからだの諸部分、すなわち、不品行、汚れ、情欲、悪い欲、そしてむさぼりを殺してしまいなさい。このむさぼりが、そのまま偶像礼拝なのです。 051 COL 003 006 このようなことのために、神の怒りが下るのです。 051 COL 003 007 あなたがたも、以前、そのようなものの中に生きていたときは、そのような歩み方をしていました。 051 COL 003 008 しかし今は、あなたがたも、すべてこれらのこと、すなわち、怒り、憤り、悪意、そしり、あなたがたの口から出る恥ずべきことばを、捨ててしまいなさい。 051 COL 003 009 互いに偽りを言ってはいけません。あなたがたは、古い人をその行ないといっしょに脱ぎ捨てて、 051 COL 003 010 新しい人を着たのです。新しい人は、造り主のかたちに似せられてますます新しくされ、真の知識に至るのです。 051 COL 003 011 そこには、ギリシヤ人とユダヤ人、割礼の有無、未開人、スクテヤ人、奴隷と自由人というような区別はありません。キリストがすべてであり、すべてのうちにおられるのです。 051 COL 003 012 それゆえ、神に選ばれた者、きよい、愛されている者として、あなたがたは深い同情心、慈愛、謙遜、柔和、寛容を身に着けなさい。 051 COL 003 013 互いに忍び合い、だれかがほかの人に不満を抱くことがあっても、互いに赦し合いなさい。主があなたがたを赦してくださったように、あなたがたもそうしなさい。 051 COL 003 014 そして、これらすべての上に、愛を着けなさい。愛は結びの帯として完全なものです。 051 COL 003 015 キリストの平和が、あなたがたの心を支配するようにしなさい。そのためにこそあなたがたも召されて一体となったのです。また、感謝の心を持つ人になりなさい。 051 COL 003 016 キリストのことばを、あなたがたのうちに豊かに住まわせ、知恵を尽くして互いに教え、互いに戒め、詩と賛美と霊の歌とにより、感謝にあふれて心から神に向かって歌いなさい。 051 COL 003 017 あなたがたのすることは、ことばによると行ないによるとを問わず、すべて主イエスの名によってなし、主によって父なる神に感謝しなさい。 051 COL 003 018 妻たちよ。主にある者にふさわしく、夫に従いなさい。 051 COL 003 019 夫たちよ。妻を愛しなさい。つらく当たってはいけません。 051 COL 003 020 子どもたちよ。すべてのことについて、両親に従いなさい。それは主に喜ばれることだからです。 051 COL 003 021 父たちよ。子どもをおこらせてはいけません。彼らを気落ちさせないためです。 051 COL 003 022 奴隷たちよ。すべてのことについて、地上の主人に従いなさい。人のごきげんとりのような、うわべだけの仕え方ではなく、主を恐れかしこみつつ、真心から従いなさい。 051 COL 003 023 何をするにも、人に対してではなく、主に対してするように、心からしなさい。 051 COL 003 024 あなたがたは、主から報いとして、御国を相続させていただくことを知っています。あなたがたは主キリストに仕えているのです。 051 COL 003 025 不正を行なう者は、自分が行なった不正の報いを受けます。それには不公平な扱いはありません。 051 COL 004 001 主人たちよ。あなたがたは、自分たちの主も天におられることを知っているのですから、奴隷に対して正義と公平を示しなさい。 051 COL 004 002 目をさまして、感謝をもって、たゆみなく祈りなさい。 051 COL 004 003 同時に、私たちのためにも、神がみことばのために門を開いてくださって、私たちがキリストの奥義を語れるように、祈ってください。この奥義のために、私は牢に入れられています。 051 COL 004 004 また、私がこの奥義を、当然語るべき語り方で、はっきり語れるように、祈ってください。 051 COL 004 005 外部の人に対して賢明にふるまい、機会を十分に生かして用いなさい。 051 COL 004 006 あなたがたのことばが、いつも親切で、塩味のきいたものであるようにしなさい。そうすれば、ひとりひとりに対する答え方がわかります。 051 COL 004 007 私の様子については、主にあって愛する兄弟、忠実な奉仕者、同労のしもべであるテキコが、あなたがたに一部始終を知らせるでしょう。 051 COL 004 008 私がテキコをあなたがたのもとに送るのは、あなたがたが私たちの様子を知り、彼によって心に励ましを受けるためにほかなりません。 051 COL 004 009 また彼は、あなたがたの仲間のひとりで、忠実な愛する兄弟オネシモといっしょに行きます。このふたりが、こちらの様子をみな知らせてくれるでしょう。 051 COL 004 010 私といっしょに囚人となっているアリスタルコが、あなたがたによろしくと言っています。バルナバのいとこであるマルコも同じです。――この人については、もし彼があなたがたのところに行ったなら、歓迎するようにという指示をあなたがたは受けています。―― 051 COL 004 011 ユストと呼ばれるイエスもよろしくと言っています。割礼を受けた人では、この人たちだけが、神の国のために働く私の同労者です。また、彼らは私を激励する者となってくれました。 051 COL 004 012 あなたがたの仲間のひとり、キリスト・イエスのしもべエパフラスが、あなたがたによろしくと言っています。彼はいつも、あなたがたが完全な人となり、また神のすべてのみこころを十分に確信して立つことができるよう、あなたがたのために祈りに励んでいます。 051 COL 004 013 私はあかしします。彼はあなたがたのために、またラオデキヤとヒエラポリスにいる人々のために、非常に苦労しています。 051 COL 004 014 愛する医者ルカ、それにデマスが、あなたがたによろしくと言っています。 051 COL 004 015 どうか、ラオデキヤの兄弟たちに、またヌンパとその家にある教会に、よろしく言ってください。 051 COL 004 016 この手紙があなたがたのところで読まれたなら、ラオデキヤ人の教会でも読まれるようにしてください。あなたがたのほうも、ラオデキヤから回って来る手紙を読んでください。 051 COL 004 017 アルキポに、「主にあって受けた務めを、注意してよく果たすように。」と言ってください。 051 COL 004 018 パウロが自筆であいさつを送ります。私が牢につながれていることを覚えていてください。どうか、恵みがあなたがたとともにありますように。 # # BOOK 052 1TH 1 Thessalonians テサロニケ人への手紙第一 052 1TH 001 001 パウロ、シルワノ、テモテから、父なる神および主イエス・キリストにあるテサロニケ人の教会へ。恵みと平安があなたがたの上にありますように。 052 1TH 001 002 私たちは、いつもあなたがたすべてのために神に感謝し、祈りのときにあなたがたを覚え、 052 1TH 001 003 絶えず、私たちの父なる神の御前に、あなたがたの信仰の働き、愛の労苦、主イエス・キリストへの望みの忍耐を思い起こしています。 052 1TH 001 004 神に愛されている兄弟たち。あなたがたが神に選ばれた者であることは私たちが知っています。 052 1TH 001 005 なぜなら、私たちの福音があなたがたに伝えられたのは、ことばだけによったのではなく、力と聖霊と強い確信とによったからです。また、私たちがあなたがたのところで、あなたがたのために、どのようにふるまったかは、あなたがたが知っています。 052 1TH 001 006 あなたがたも、多くの苦難の中で、聖霊による喜びをもってみことばを受け入れ、私たちと主とにならう者になりました。 052 1TH 001 007 こうして、あなたがたは、マケドニヤとアカヤとのすべての信者の模範になったのです。 052 1TH 001 008 主のことばが、あなたがたのところから出てマケドニヤとアカヤに響き渡っただけでなく、神に対するあなたがたの信仰はあらゆる所に伝わっているので、私たちは何も言わなくてよいほどです。 052 1TH 001 009 私たちがどのようにあなたがたに受け入れられたか、また、あなたがたがどのように偶像から神に立ち返って、生けるまことの神に仕えるようになり、 052 1TH 001 010 また、神が死者の中からよみがえらせなさった御子、すなわち、やがて来る御怒りから私たちを救い出してくださるイエスが天から来られるのを待ち望むようになったか、それらのことは他の人々が言い広めているのです。 052 1TH 002 001 兄弟たち。あなたがたが知っているとおり、私たちがあなたがたのところに行ったことは、むだではありませんでした。 052 1TH 002 002 ご承知のように、私たちはまずピリピで苦しみに会い、はずかしめを受けたのですが、私たちの神によって、激しい苦闘の中でも大胆に神の福音をあなたがたに語りました。 052 1TH 002 003 私たちの勧めは、迷いや不純な心から出ているものではなく、だましごとでもありません。 052 1TH 002 004 私たちは神に認められて福音をゆだねられた者ですから、それにふさわしく、人を喜ばせようとしてではなく、私たちの心をお調べになる神を喜ばせようとして語るのです。 052 1TH 002 005 ご存じのとおり、私たちは今まで、へつらいのことばを用いたり、むさぼりの口実を設けたりしたことはありません。神がそのことの証人です。 052 1TH 002 006 また、キリストの使徒たちとして権威を主張することもできたのですが、私たちは、あなたがたからも、ほかの人々からも、人からの名誉を受けようとはしませんでした。 052 1TH 002 007 それどころか、あなたがたの間で、母がその子どもたちを養い育てるように、優しくふるまいました。 052 1TH 002 008 このようにあなたがたを思う心から、ただ神の福音だけではなく、私たち自身のいのちまでも、喜んであなたがたに与えたいと思ったのです。なぜなら、あなたがたは私たちの愛する者となったからです。 052 1TH 002 009 兄弟たち。あなたがたは、私たちの労苦と苦闘を覚えているでしょう。私たちはあなたがたのだれにも負担をかけまいとして、昼も夜も働きながら、神の福音をあなたがたに宣べ伝えました。 052 1TH 002 010 また、信者であるあなたがたに対して、私たちが敬虔に、正しく、また責められるところがないようにふるまったことは、あなたがたがあかしし、神もあかししてくださることです。 052 1TH 002 011 また、ご承知のとおり、私たちは父がその子どもに対してするように、あなたがたひとりひとりに、 052 1TH 002 012 ご自身の御国と栄光とに召してくださる神にふさわしく歩むように勧めをし、慰めを与え、おごそかに命じました。 052 1TH 002 013 こういうわけで、私たちとしてもまた、絶えず神に感謝しています。あなたがたは、私たちから神の使信のことばを受けたとき、それを人間のことばとしてではなく、事実どおりに神のことばとして受け入れてくれたからです。この神のことばは、信じているあなたがたのうちに働いているのです。 052 1TH 002 014 兄弟たち。あなたがたはユダヤの、キリスト・イエスにある神の諸教会にならう者となったのです。彼らがユダヤ人に苦しめられたのと同じように、あなたがたも自分の国の人に苦しめられたのです。 052 1TH 002 015 ユダヤ人は、主であられるイエスをも、預言者たちをも殺し、また私たちをも追い出し、神に喜ばれず、すべての人の敵となっています。 052 1TH 002 016 彼らは、私たちが異邦人の救いのために語るのを妨げ、このようにして、いつも自分の罪を満たしています。しかし、御怒りは彼らの上に臨んで窮みに達しました。 052 1TH 002 017 兄弟たちよ。私たちは、しばらくの間あなたがたから引き離されたので、――といっても、顔を見ないだけで、心においてではありませんが、――なおさらのこと、あなたがたの顔を見たいと切に願っていました。 052 1TH 002 018 それで私たちは、あなたがたのところに行こうとしました。このパウロは一度ならず二度までも心を決めたのです。しかし、サタンが私たちを妨げました。 052 1TH 002 019 私たちの主イエスが再び来られるとき、御前で私たちの望み、喜び、誇りの冠となるのはだれでしょう。あなたがたではありませんか。 052 1TH 002 020 あなたがたこそ私たちの誉れであり、また喜びなのです。 052 1TH 003 001 そこで、私たちはもはやがまんできなくなり、私たちだけがアテネにとどまることにして、 052 1TH 003 002 私たちの兄弟であり、キリストの福音において神の同労者であるテモテを遣わしたのです。それは、あなたがたの信仰についてあなたがたを強め励まし、 052 1TH 003 003 このような苦難の中にあっても、動揺する者がひとりもないようにするためでした。あなたがた自身が知っているとおり、私たちはこのような苦難に会うように定められているのです。 052 1TH 003 004 あなたがたのところにいたとき、私たちは苦難に会うようになる、と前もって言っておいたのですが、それが、ご承知のとおり、はたして事実となったのです。 052 1TH 003 005 そういうわけで、私も、あれ以上はがまんができず、また誘惑者があなたがたを誘惑して、私たちの労苦がむだになるようなことがあってはいけないと思って、あなたがたの信仰を知るために、彼を遣わしたのです。 052 1TH 003 006 ところが、今テモテがあなたがたのところから私たちのもとに帰って来て、あなたがたの信仰と愛について良い知らせをもたらしてくれました。また、あなたがたが、いつも私たちのことを親切に考えていて、私たちがあなたがたに会いたいと思うように、あなたがたも、しきりに私たちに会いたがっていることを、知らせてくれました。 052 1TH 003 007 このようなわけで、兄弟たち。私たちはあらゆる苦しみと患難のうちにも、あなたがたのことでは、その信仰によって、慰めを受けました。 052 1TH 003 008 あなたがたが主にあって堅く立っていてくれるなら、私たちは今、生きがいがあります。 052 1TH 003 009 私たちの神の御前にあって、あなたがたのことで喜んでいる私たちのこのすべての喜びのために、神にどんな感謝をささげたらよいでしょう。 052 1TH 003 010 私たちは、あなたがたの顔を見たい、信仰の不足を補いたいと、昼も夜も熱心に祈っています。 052 1TH 003 011 どうか、私たちの父なる神であり、また私たちの主イエスである方ご自身が、私たちの道を開いて、あなたがたのところに行かせてくださいますように。 052 1TH 003 012 また、私たちがあなたがたを愛しているように、あなたがたの互いの間の愛を、またすべての人に対する愛を増させ、満ちあふれさせてくださいますように。 052 1TH 003 013 また、あなたがたの心を強め、私たちの主イエスがご自分のすべての聖徒とともに再び来られるとき、私たちの父なる神の御前で、きよく、責められるところのない者としてくださいますように。 052 1TH 004 001 終わりに、兄弟たちよ。主イエスにあって、お願いし、また勧告します。あなたがたはどのように歩んで神を喜ばすべきかを私たちから学んだように、また、事実いまあなたがたが歩んでいるように、ますますそのように歩んでください。 052 1TH 004 002 私たちが、主イエスによって、どんな命令をあなたがたに授けたかを、あなたがたは知っています。 052 1TH 004 003 神のみこころは、あなたがたがきよくなることです。あなたがたが不品行を避け、 052 1TH 004 004 各自わきまえて、自分のからだを、きよく、また尊く保ち、 052 1TH 004 005 神を知らない異邦人のように情欲におぼれず、 052 1TH 004 006 また、このようなことで、兄弟を踏みつけたり、欺いたりしないことです。なぜなら、主はこれらすべてのことについて正しくさばかれるからです。これは、私たちが前もってあなたがたに話し、きびしく警告しておいたところです。 052 1TH 004 007 神が私たちを召されたのは、汚れを行なわせるためではなく、聖潔を得させるためです。 052 1TH 004 008 ですから、このことを拒む者は、人を拒むのではなく、あなたがたに聖霊をお与えになる神を拒むのです。 052 1TH 004 009 兄弟愛については、何も書き送る必要がありません。あなたがたこそ、互いに愛し合うことを神から教えられた人たちだからです。 052 1TH 004 010 実にマケドニヤ全土のすべての兄弟たちに対して、あなたがたはそれを実行しています。しかし、兄弟たち。あなたがたにお勧めします。どうか、さらにますますそうであってください。 052 1TH 004 011 また、私たちが命じたように、落ち着いた生活をすることを志し、自分の仕事に身を入れ、自分の手で働きなさい。 052 1TH 004 012 外の人々に対してもりっぱにふるまうことができ、また乏しいことがないようにするためです。 052 1TH 004 013 眠った人々のことについては、兄弟たち、あなたがたに知らないでいてもらいたくありません。あなたがたが他の望みのない人々のように悲しみに沈むことのないためです。 052 1TH 004 014 私たちはイエスが死んで復活されたことを信じています。それならば、神はまたそのように、イエスにあって眠った人々をイエスといっしょに連れて来られるはずです。 052 1TH 004 015 私たちは主のみことばのとおりに言いますが、主が再び来られるときまで生き残っている私たちが、死んでいる人々に優先するようなことは決してありません。 052 1TH 004 016 主は、号令と、御使いのかしらの声と、神のラッパの響きのうちに、ご自身天から下って来られます。それからキリストにある死者が、まず初めによみがえり、 052 1TH 004 017 次に、生き残っている私たちが、たちまち彼らといっしょに雲の中に一挙に引き上げられ、空中で主と会うのです。このようにして、私たちは、いつまでも主とともにいることになります。 052 1TH 004 018 こういうわけですから、このことばをもって互いに慰め合いなさい。 052 1TH 005 001 兄弟たち。それらがいつなのか、またどういう時かについては、あなたがたは私たちに書いてもらう必要がありません。 052 1TH 005 002 主の日が夜中の盗人のように来るということは、あなたがた自身がよく承知しているからです。 052 1TH 005 003 人々が「平和だ。安全だ。」と言っているそのようなときに、突如として滅びが彼らに襲いかかります。ちょうど妊婦に産みの苦しみが臨むようなもので、それをのがれることは決してできません。 052 1TH 005 004 しかし、兄弟たち。あなたがたは暗やみの中にはいないのですから、その日が、盗人のようにあなたがたを襲うことはありません。 052 1TH 005 005 あなたがたはみな、光の子ども、昼の子どもだからです。私たちは、夜や暗やみの者ではありません。 052 1TH 005 006 ですから、ほかの人々のように眠っていないで、目をさまして、慎み深くしていましょう。 052 1TH 005 007 眠る者は夜眠り、酔う者は夜酔うからです。 052 1TH 005 008 しかし、私たちは昼の者なので、信仰と愛を胸当てとして着け、救いの望みをかぶととしてかぶって、慎み深くしていましょう。 052 1TH 005 009 神は、私たちが御怒りに会うようにお定めになったのではなく、主イエス・キリストにあって救いを得るようにお定めになったからです。 052 1TH 005 010 主が私たちのために死んでくださったのは、私たちが、目ざめていても、眠っていても、主とともに生きるためです。 052 1TH 005 011 ですから、あなたがたは、今しているとおり、互いに励まし合い、互いに徳を高め合いなさい。 052 1TH 005 012 兄弟たちよ。あなたがたにお願いします。あなたがたの間で労苦し、主にあってあなたがたを指導し、訓戒している人々を認めなさい。 052 1TH 005 013 その務めのゆえに、愛をもって深い尊敬を払いなさい。お互いの間に平和を保ちなさい。 052 1TH 005 014 兄弟たち。あなたがたに勧告します。気ままな者を戒め、小心な者を励まし、弱い者を助け、すべての人に対して寛容でありなさい。 052 1TH 005 015 だれも悪をもって悪に報いないように気をつけ、お互いの間で、またすべての人に対して、いつも善を行なうよう務めなさい。 052 1TH 005 016 いつも喜んでいなさい。 052 1TH 005 017 絶えず祈りなさい。 052 1TH 005 018 すべての事について、感謝しなさい。これが、キリスト・イエスにあって神があなたがたに望んでおられることです。 052 1TH 005 019 御霊を消してはなりません。 052 1TH 005 020 預言をないがしろにしてはいけません。 052 1TH 005 021 すべてのことを見分けて、ほんとうに良いものを堅く守りなさい。 052 1TH 005 022 悪はどんな悪でも避けなさい。 052 1TH 005 023 平和の神ご自身が、あなたがたを全くきよめてくださいますように。主イエス・キリストの来臨のとき、責められるところのないように、あなたがたの霊、たましい、からだが完全に守られますように。 052 1TH 005 024 あなたがたを召された方は真実ですから、きっとそのことをしてくださいます。 052 1TH 005 025 兄弟たち。私たちのためにも祈ってください。 052 1TH 005 026 すべての兄弟たちに、きよい口づけをもってあいさつをなさい。 052 1TH 005 027 この手紙がすべての兄弟たちに読まれるように、主によって命じます。 052 1TH 005 028 私たちの主イエス・キリストの恵みが、あなたがたとともにありますように。 # # BOOK 053 2TH 2 Thessalonians テサロニケ人への手紙第二 053 2TH 001 001 パウロ、シルワノ、テモテから、私たちの父なる神および主イエス・キリストにあるテサロニケ人の教会へ。 053 2TH 001 002 父なる神と主イエス・キリストから、恵みと平安があなたがたの上にありますように。 053 2TH 001 003 兄弟たち。あなたがたのことについて、私たちはいつも神に感謝しなければなりません。そうするのが当然なのです。なぜならあなたがたの信仰が目に見えて成長し、あなたがたすべての間で、ひとりひとりに相互の愛が増し加わっているからです。 053 2TH 001 004 それゆえ私たちは、神の諸教会の間で、あなたがたがすべての迫害と患難とに耐えながらその従順と信仰とを保っていることを、誇りとしています。 053 2TH 001 005 このことは、あなたがたを神の国にふさわしい者とするため、神の正しいさばきを示すしるしであって、あなたがたが苦しみを受けているのは、この神の国のためです。 053 2TH 001 006 つまり、あなたがたを苦しめる者には、報いとして苦しみを与え、 053 2TH 001 007 苦しめられているあなたがたには、私たちとともに、報いとして安息を与えてくださることは、神にとって正しいことなのです。そのことは、主イエスが、炎の中に、力ある御使いたちを従えて天から現われるときに起こります。 053 2TH 001 008 そのとき主は、神を知らない人々や、私たちの主イエスの福音に従わない人々に報復されます。 053 2TH 001 009 そのような人々は、主の御顔の前とその御力の栄光から退けられて、永遠の滅びの刑罰を受けるのです。 053 2TH 001 010 その日に、主イエスは来られて、ご自分の聖徒たちによって栄光を受け、信じたすべての者の――そうです。あなたがたに対する私たちの証言は、信じられたのです。――感嘆の的となられます。 053 2TH 001 011 そのためにも、私たちはいつも、あなたがたのために祈っています。どうか、私たちの神が、あなたがたをお召しにふさわしい者にし、また御力によって、善を慕うあらゆる願いと信仰の働きとを全うしてくださいますように。 053 2TH 001 012 それは、私たちの神であり主であるイエス・キリストの恵みによって、主イエスの御名があなたがたの間であがめられ、あなたがたも主にあって栄光を受けるためです。 053 2TH 002 001 さて兄弟たちよ。私たちの主イエス・キリストが再び来られることと、私たちが主のみもとに集められることに関して、あなたがたにお願いすることがあります。 053 2TH 002 002 霊によってでも、あるいはことばによってでも、あるいは私たちから出たかのような手紙によってでも、主の日がすでに来たかのように言われるのを聞いて、すぐに落ち着きを失ったり、心を騒がせたりしないでください。 053 2TH 002 003 だれにも、どのようにも、だまされないようにしなさい。なぜなら、まず背教が起こり、不法の人、すなわち滅びの子が現われなければ、主の日は来ないからです。 053 2TH 002 004 彼は、すべて神と呼ばれるもの、また礼拝されるものに反抗し、その上に自分を高く上げ、神の宮の中に座を設け、自分こそ神であると宣言します。 053 2TH 002 005 私がまだあなたがたのところにいたとき、これらのことをよく話しておいたのを思い出しませんか。 053 2TH 002 006 あなたがたが知っているとおり、彼がその定められた時に現われるようにと、いま引き止めているものがあるのです。 053 2TH 002 007 不法の秘密はすでに働いています。しかし今は引き止める者があって、自分が取り除かれる時まで引き止めているのです。 053 2TH 002 008 その時になると、不法の人が現われますが、主は御口の息をもって彼を殺し、来臨の輝きをもって滅ぼしてしまわれます。 053 2TH 002 009 不法の人の到来は、サタンの働きによるのであって、あらゆる偽りの力、しるし、不思議がそれに伴い、 053 2TH 002 010 また、滅びる人たちに対するあらゆる悪の欺きが行なわれます。なぜなら、彼らは救われるために真理への愛を受け入れなかったからです。 053 2TH 002 011 それゆえ神は、彼らが偽りを信じるように、惑わす力を送り込まれます。 053 2TH 002 012 それは、真理を信じないで、悪を喜んでいたすべての者が、さばかれるためです。 053 2TH 002 013 しかし、あなたがたのことについては、私たちはいつでも神に感謝しなければなりません。主に愛されている兄弟たち。神は、御霊によるきよめと、真理による信仰によって、あなたがたを、初めから救いにお選びになったからです。 053 2TH 002 014 ですから神は、私たちの福音によってあなたがたを召し、私たちの主イエス・キリストの栄光を得させてくださったのです。 053 2TH 002 015 そこで、兄弟たち。堅く立って、私たちのことば、または手紙によって教えられた言い伝えを守りなさい。 053 2TH 002 016 どうか、私たちの主イエス・キリストであり、私たちの父なる神である方、すなわち、私たちを愛し、恵みによって永遠の慰めとすばらしい望みとを与えてくださった方ご自身が、 053 2TH 002 017 あらゆる良いわざとことばとに進むよう、あなたがたの心を慰め、強めてくださいますように。 053 2TH 003 001 終わりに、兄弟たちよ。私たちのために祈ってください。主のみことばが、あなたがたのところでと同じように早く広まり、またあがめられますように。 053 2TH 003 002 また、私たちが、ひねくれた悪人どもの手から救い出されますように。すべての人が信仰を持っているのではないからです。 053 2TH 003 003 しかし、主は真実な方ですから、あなたがたを強くし、悪い者から守ってくださいます。 053 2TH 003 004 私たちが命じることを、あなたがたが現に実行しており、これからも実行してくれることを私たちは主にあって確信しています。 053 2TH 003 005 どうか、主があなたがたの心を導いて、神の愛とキリストの忍耐とを持たせてくださいますように。 053 2TH 003 006 兄弟たちよ。主イエス・キリストの御名によって命じます。締まりのない歩み方をして私たちから受けた言い伝えに従わないでいる、すべての兄弟たちから離れていなさい。 053 2TH 003 007 どのように私たちを見ならうべきかは、あなたがた自身が知っているのです。あなたがたのところで、私たちは締まりのないことはしなかったし、 053 2TH 003 008 人のパンをただで食べることもしませんでした。かえって、あなたがたのだれにも負担をかけまいとして、昼も夜も労苦しながら働き続けました。 053 2TH 003 009 それは、私たちに権利がなかったからではなく、ただ私たちを見ならうようにと、身をもってあなたがたに模範を示すためでした。 053 2TH 003 010 私たちは、あなたがたのところにいたときにも、働きたくない者は食べるなと命じました。 053 2TH 003 011 ところが、あなたがたの中には、何も仕事をせず、おせっかいばかりして、締まりのない歩み方をしている人たちがあると聞いています。 053 2TH 003 012 こういう人たちには、主イエス・キリストによって、命じ、また勧めます。静かに仕事をし、自分で得たパンを食べなさい。 053 2TH 003 013 しかしあなたがたは、たゆむことなく善を行ないなさい。兄弟たちよ。 053 2TH 003 014 もし、この手紙に書いた私たちの指示に従わない者があれば、そのような人には、特に注意を払い、交際しないようにしなさい。彼が恥じ入るようになるためです。 053 2TH 003 015 しかし、その人を敵とはみなさず、兄弟として戒めなさい。 053 2TH 003 016 どうか、平和の主ご自身が、どんなばあいにも、いつも、あなたがたに平和を与えてくださいますように。どうか、主があなたがたすべてと、ともにおられますように。 053 2TH 003 017 パウロが自分の手であいさつを書きます。これは私のどの手紙にもあるしるしです。これが私の手紙の書き方です。 053 2TH 003 018 どうか、私たちの主イエス・キリストの恵みが、あなたがたすべてとともにありますように。 # # BOOK 054 1TI 1 Timothy テモテへの手紙第一 054 1TI 001 001 私たちの救い主なる神と私たちの望みなるキリスト・イエスとの命令による、キリスト・イエスの使徒パウロから、 054 1TI 001 002 信仰による真実のわが子テモテへ。父なる神と私たちの主なるキリスト・イエスから、恵みとあわれみと平安とがありますように。 054 1TI 001 003 私がマケドニヤに出発するとき、あなたにお願いしたように、あなたは、エペソにずっととどまっていて、ある人たちが違った教えを説いたり、 054 1TI 001 004 果てしのない空想話と系図とに心を奪われたりしないように命じてください。そのようなものは、論議を引き起こすだけで、信仰による神の救いのご計画の実現をもたらすものではありません。 054 1TI 001 005 この命令は、きよい心と正しい良心と偽りのない信仰とから出て来る愛を、目標としています。 054 1TI 001 006 ある人たちはこの目当てを見失い、わき道にそれて無益な議論に走り、 054 1TI 001 007 律法の教師でありたいと望みながら、自分の言っていることも、また強く主張していることについても理解していません。 054 1TI 001 008 しかし私たちは知っています。律法は、もし次のことを知っていて正しく用いるならば、良いものです。 054 1TI 001 009 すなわち、律法は、正しい人のためにあるのではなく、律法を無視する不従順な者、不敬虔な罪人、汚らわしい俗物、父や母を殺す者、人を殺す者、 054 1TI 001 010 不品行な者、男色をする者、人を誘拐する者、うそをつく者、偽証をする者などのため、またそのほか健全な教えにそむく事のためにあるのです。 054 1TI 001 011 祝福に満ちた神の、栄光の福音によれば、こうなのであって、私はその福音をゆだねられたのです。 054 1TI 001 012 私は、私を強くしてくださる私たちの主キリスト・イエスに感謝をささげています。なぜなら、キリストは、私をこの務めに任命して、私を忠実な者と認めてくださったからです。 054 1TI 001 013 私は以前は、神をけがす者、迫害する者、暴力をふるう者でした。それでも、信じていないときに知らないでしたことなので、あわれみを受けたのです。 054 1TI 001 014 私たちの主の、この恵みは、キリスト・イエスにある信仰と愛とともに、ますます満ちあふれるようになりました。 054 1TI 001 015 「キリスト・イエスは、罪人を救うためにこの世に来られた。」ということばは、まことであり、そのまま受け入れるに値するものです。私はその罪人のかしらです。 054 1TI 001 016 しかし、そのような私があわれみを受けたのは、イエス・キリストが、今後彼を信じて永遠のいのちを得ようとしている人々の見本にしようと、まず私に対してこの上ない寛容を示してくださったからです。 054 1TI 001 017 どうか、世々の王、すなわち、滅びることなく、目に見えない唯一の神に、誉れと栄えとが世々限りなくありますように。アーメン。 054 1TI 001 018 私の子テモテよ。以前あなたについてなされた預言に従って、私はあなたにこの命令をゆだねます。それは、あなたがあの預言によって、信仰と正しい良心を保ち、勇敢に戦い抜くためです。 054 1TI 001 019 ある人たちは、正しい良心を捨てて、信仰の破船に会いました。 054 1TI 001 020 その中には、ヒメナオとアレキサンデルがいます。私は、彼らをサタンに引き渡しました。それは、神をけがしてはならないことを、彼らに学ばせるためです。 054 1TI 002 001 そこで、まず初めに、このことを勧めます。すべての人のために、また王とすべての高い地位にある人たちのために願い、祈り、とりなし、感謝がささげられるようにしなさい。 054 1TI 002 002 それは、私たちが敬虔に、また、威厳をもって、平安で静かな一生を過ごすためです。 054 1TI 002 003 そうすることは、私たちの救い主である神の御前において良いことであり、喜ばれることなのです。 054 1TI 002 004 神は、すべての人が救われて、真理を知るようになるのを望んでおられます。 054 1TI 002 005 神は唯一です。また、神と人との間の仲介者も唯一であって、それは人としてのキリスト・イエスです。 054 1TI 002 006 キリストは、すべての人の贖いの代価として、ご自身をお与えになりました。これが時至ってなされたあかしなのです。 054 1TI 002 007 そのあかしのために、私は宣伝者また使徒に任じられ――私は真実を言っており、うそは言いません。――信仰と真理を異邦人に教える教師とされました。 054 1TI 002 008 ですから、私は願うのです。男は、怒ったり言い争ったりすることなく、どこででもきよい手を上げて祈るようにしなさい。 054 1TI 002 009 同じように女も、つつましい身なりで、控えめに慎み深く身を飾り、はでな髪の形とか、金や真珠や高価な衣服によってではなく、 054 1TI 002 010 むしろ、神を敬うと言っている女にふさわしく、良い行ないを自分の飾りとしなさい。 054 1TI 002 011 女は、静かにして、よく従う心をもって教えを受けなさい。 054 1TI 002 012 私は、女が教えたり男を支配したりすることを許しません。ただ、黙っていなさい。 054 1TI 002 013 アダムが初めに造られ、次にエバが造られたからです。 054 1TI 002 014 また、アダムは惑わされなかったが、女は惑わされてしまい、あやまちを犯しました。 054 1TI 002 015 しかし、女が慎みをもって、信仰と愛ときよさとを保つなら、子を産むことによって救われます。 054 1TI 003 001 「人がもし監督の職につきたいと思うなら、それはすばらしい仕事を求めることである。」ということばは真実です。 054 1TI 003 002 ですから、監督はこういう人でなければなりません。すなわち、非難されるところがなく、ひとりの妻の夫であり、自分を制し、慎み深く、品位があり、よくもてなし、教える能力があり、 054 1TI 003 003 酒飲みでなく、暴力をふるわず、温和で、争わず、金銭に無欲で、 054 1TI 003 004 自分の家庭をよく治め、十分な威厳をもって子どもを従わせている人です。 054 1TI 003 005 ――自分自身の家庭を治めることを知らない人が、どうして神の教会の世話をすることができるでしょう。―― 054 1TI 003 006 また、信者になったばかりの人であってはいけません。高慢になって、悪魔と同じさばきを受けることにならないためです。 054 1TI 003 007 また、教会外の人々にも評判の良い人でなければいけません。そしりを受け、悪魔のわなに陥らないためです。 054 1TI 003 008 執事もまたこういう人でなければなりません。謹厳で、二枚舌を使わず、大酒飲みでなく、不正な利をむさぼらず、 054 1TI 003 009 きよい良心をもって信仰の奥義を保っている人です。 054 1TI 003 010 まず審査を受けさせなさい。そして、非難される点がなければ、執事の職につかせなさい。 054 1TI 003 011 婦人執事も、威厳があり、悪口を言わず、自分を制し、すべてに忠実な人でなければなりません。 054 1TI 003 012 執事は、ひとりの妻の夫であって、子どもと家庭をよく治める人でなければなりません。 054 1TI 003 013 というのは、執事の務めをりっぱに果たした人は、良い地歩を占め、また、キリスト・イエスを信じる信仰について強い確信を持つことができるからです。 054 1TI 003 014 私は、近いうちにあなたのところに行きたいと思いながらも、この手紙を書いています。 054 1TI 003 015 それは、たとい私がおそくなったばあいでも、神の家でどのように行動すべきかを、あなたが知っておくためです。神の家とは生ける神の教会のことであり、その教会は、真理の柱また土台です。 054 1TI 003 016 確かに偉大なのはこの敬虔の奥義です。 「キリストは肉において現われ、 霊において義と宣言され、 御使いたちに見られ、 諸国民の間に宣べ伝えられ、 世界中で信じられ、 栄光のうちに上げられた。」 054 1TI 004 001 しかし、御霊が明らかに言われるように、後の時代になると、ある人たちは惑わす霊と悪霊の教えとに心を奪われ、信仰から離れるようになります。 054 1TI 004 002 それは、うそつきどもの偽善によるものです。彼らは良心が麻痺しており、 054 1TI 004 003 結婚することを禁じたり、食物を断つことを命じたりします。しかし食物は、信仰があり、真理を知っている人が感謝して受けるようにと、神が造られた物です。 054 1TI 004 004 神が造られた物はみな良い物で、感謝して受けるとき、捨てるべき物は何一つありません。 054 1TI 004 005 神のことばと祈りとによって、きよめられるからです。 054 1TI 004 006 これらのことを兄弟たちに教えるなら、あなたはキリスト・イエスのりっぱな奉仕者になります。信仰のことばと、あなたが従って来た良い教えのことばとによって養われているからです。 054 1TI 004 007 俗悪な、年寄り女がするような空想話を避けなさい。むしろ、敬虔のために自分を鍛練しなさい。 054 1TI 004 008 肉体の鍛練もいくらかは有益ですが、今のいのちと未来のいのちが約束されている敬虔は、すべてに有益です。 054 1TI 004 009 このことばは、真実であり、そのまま受け入れるに値することばです。 054 1TI 004 010 私たちはそのために労し、また苦心しているのです。それは、すべての人々、ことに信じる人々の救い主である、生ける神に望みを置いているからです。 054 1TI 004 011 これらのことを命じ、また教えなさい。 054 1TI 004 012 年が若いからといって、だれにも軽く見られないようにしなさい。かえって、ことばにも、態度にも、愛にも、信仰にも、純潔にも信者の模範になりなさい。 054 1TI 004 013 私が行くまで、聖書の朗読と勧めと教えとに専念しなさい。 054 1TI 004 014 長老たちによる按手を受けたとき、預言によって与えられた、あなたのうちにある聖霊の賜物を軽んじてはいけません。 054 1TI 004 015 これらの務めに心を砕き、しっかりやりなさい。そうすれば、あなたの進歩はすべての人に明らかになるでしょう。 054 1TI 004 016 自分自身にも、教える事にも、よく気をつけなさい。あくまでそれを続けなさい。そうすれば、自分自身をも、またあなたの教えを聞く人たちをも救うことになります。 054 1TI 005 001 年寄りをしかってはいけません。むしろ、父親に対するように勧めなさい。若い人たちには兄弟に対するように、 054 1TI 005 002 年とった婦人たちには母親に対するように、若い女たちには真に混じりけのない心で姉妹に対するように勧めなさい。 054 1TI 005 003 やもめの中でもほんとうのやもめを敬いなさい。 054 1TI 005 004 しかし、もし、やもめに子どもか孫かがいるなら、まずこれらの者に、自分の家の者に敬愛を示し、親の恩に報いる習慣をつけさせなさい。それが神に喜ばれることです。 054 1TI 005 005 ほんとうのやもめで、身寄りのない人は、望みを神に置いて、昼も夜も、絶えず神に願いと祈りをささげていますが、 054 1TI 005 006 自堕落な生活をしているやもめは、生きてはいても、もう死んだ者なのです。 054 1TI 005 007 彼女たちがそしりを受けることのないように、これらのことを命じなさい。 054 1TI 005 008 もしも親族、ことに自分の家族を顧みない人がいるなら、その人は信仰を捨てているのであって、不信者よりも悪いのです。 054 1TI 005 009 やもめとして名簿に載せるのは、六十歳未満の人でなく、ひとりの夫の妻であった人で、 054 1TI 005 010 良い行ないによって認められている人、すなわち、子どもを育て、旅人をもてなし、聖徒の足を洗い、困っている人を助け、すべての良いわざに務め励んだ人としなさい。 054 1TI 005 011 若いやもめは断わりなさい。というのは、彼女たちは、キリストにそむいて情欲に引かれると、結婚したがり、 054 1TI 005 012 初めの誓いを捨てたという非難を受けることになるからです。 054 1TI 005 013 そのうえ、怠けて、家々を遊び歩くことを覚え、ただ怠けるだけでなく、うわさ話やおせっかいをして、話してはいけないことまで話します。 054 1TI 005 014 ですから、私が願うのは、若いやもめは結婚し、子どもを産み、家庭を治め、反対者にそしる機会を与えないことです。 054 1TI 005 015 というのは、すでに、道を踏みはずし、サタンのあとについて行った者があるからです。 054 1TI 005 016 もし信者である婦人の身内にやもめがいたら、その人がそのやもめを助け、教会には負担をかけないようにしなさい。そうすれば、教会はほんとうのやもめを助けることができます。 054 1TI 005 017 よく指導の任に当たっている長老は、二重に尊敬を受けるにふさわしいとしなさい。みことばと教えのためにほねおっている長老は特にそうです。 054 1TI 005 018 聖書に「穀物をこなしている牛に、くつこを掛けてはいけない。」また、「働き手が報酬を受けることは当然である。」と言われているからです。 054 1TI 005 019 長老に対する訴えは、ふたりか三人の証人がなければ、受理してはいけません。 054 1TI 005 020 罪を犯している者をすべての人の前で責めなさい。ほかの人をも恐れさせるためです。 054 1TI 005 021 私は、神とキリスト・イエスと選ばれた御使いたちとの前で、あなたにおごそかに命じます。これらのことを偏見なしに守り、何事もかたよらないで行ないなさい。 054 1TI 005 022 また、だれにでも軽々しく按手をしてはいけません。また、他人の罪にかかわりを持ってはいけません。自分をきよく保ちなさい。 054 1TI 005 023 これからは水ばかり飲まないで、胃のために、また、たびたび起こる病気のためにも、少量のぶどう酒を用いなさい。 054 1TI 005 024 ある人たちの罪は、それがさばきを受ける前から、だれの目にも明らかですが、ある人たちの罪は、あとで明らかになります。 054 1TI 005 025 同じように、良い行ないは、だれの目にも明らかですが、そうでないばあいでも、いつまでも隠れたままでいることはありません。 054 1TI 006 001 くびきの下にある奴隷は、自分の主人を十分に尊敬すべき人だと考えなさい。それは神の御名と教えとがそしられないためです。 054 1TI 006 002 信者である主人を持つ人は、主人が兄弟だからといって軽く見ず、むしろ、ますますよく仕えなさい。なぜなら、その良い奉仕から益を受けるのは信者であり、愛されている人だからです。あなたは、これらのことを教え、また勧めなさい。 054 1TI 006 003 違ったことを教え、私たちの主イエス・キリストの健全なことばと敬虔にかなう教えとに同意しない人がいるなら、 054 1TI 006 004 その人は高慢になっており、何一つ悟らず、疑いをかけたり、ことばの争いをしたりする病気にかかっているのです。そこから、ねたみ、争い、そしり、悪意の疑りが生じ、 054 1TI 006 005 また、知性が腐ってしまって真理を失った人々、すなわち敬虔を利得の手段と考えている人たちの間には、絶え間のない紛争が生じるのです。 054 1TI 006 006 しかし、満ち足りる心を伴う敬虔こそ、大きな利益を受ける道です。 054 1TI 006 007 私たちは何一つこの世に持って来なかったし、また何一つ持って出ることもできません。 054 1TI 006 008 衣食があれば、それで満足すべきです。 054 1TI 006 009 金持ちになりたがる人たちは、誘惑とわなと、また人を滅びと破滅に投げ入れる、愚かで、有害な多くの欲とに陥ります。 054 1TI 006 010 金銭を愛することが、あらゆる悪の根だからです。ある人たちは、金を追い求めたために、信仰から迷い出て、非常な苦痛をもって自分を刺し通しました。 054 1TI 006 011 しかし、神の人よ。あなたは、これらのことを避け、正しさ、敬虔、信仰、愛、忍耐、柔和を熱心に求めなさい。 054 1TI 006 012 信仰の戦いを勇敢に戦い、永遠のいのちを獲得しなさい。あなたはこのために召され、また、多くの証人たちの前でりっぱな告白をしました。 054 1TI 006 013 私は、すべてのものにいのちを与える神と、ポンテオ・ピラトに対してすばらしい告白をもってあかしされたキリスト・イエスとの御前で、あなたに命じます。 054 1TI 006 014 私たちの主イエス・キリストの現われの時まで、あなたは命令を守り、傷のない、非難されるところのない者でありなさい。 054 1TI 006 015 その現われを、神はご自分の良しとする時に示してくださいます。神は祝福に満ちた唯一の主権者、王の王、主の主、 054 1TI 006 016 ただひとり死のない方であり、近づくこともできない光の中に住まわれ、人間がだれひとり見たことのない、また見ることのできない方です。誉れと、とこしえの主権は神のものです。アーメン。 054 1TI 006 017 この世で富んでいる人たちに命じなさい。高ぶらないように。また、たよりにならない富に望みを置かないように。むしろ、私たちにすべての物を豊かに与えて楽しませてくださる神に望みを置くように。 054 1TI 006 018 また、人の益を計り、良い行ないに富み、惜しまずに施し、喜んで分け与えるように。 054 1TI 006 019 また、まことのいのちを得るために、未来に備えて良い基礎を自分自身のために築き上げるように。 054 1TI 006 020 テモテよ。ゆだねられたものを守りなさい。そして、俗悪なむだ話、また、まちがって「霊知」と呼ばれる反対論を避けなさい。 054 1TI 006 021 これを公然と主張したある人たちは、信仰からはずれてしまいました。 恵みが、あなたがたとともにありますように。 # # BOOK 055 2TI 2 Timothy テモテへの手紙第二 055 2TI 001 001 神のみこころにより、キリスト・イエスにあるいのちの約束によって、キリスト・イエスの使徒となったパウロから、 055 2TI 001 002 愛する子テモテへ。父なる神および私たちの主キリスト・イエスから、恵みとあわれみと平安がありますように。 055 2TI 001 003 私は、夜昼、祈りの中であなたのことを絶えず思い起こしては、先祖以来きよい良心をもって仕えている神に感謝しています。 055 2TI 001 004 私は、あなたの涙を覚えているので、あなたに会って、喜びに満たされたいと願っています。 055 2TI 001 005 私はあなたの純粋な信仰を思い起こしています。そのような信仰は、最初あなたの祖母ロイスと、あなたの母ユニケのうちに宿ったものですが、それがあなたのうちにも宿っていることを、私は確信しています。 055 2TI 001 006 それですから、私はあなたに注意したいのです。私の按手をもってあなたのうちに与えられた神の賜物を、再び燃え立たせてください。 055 2TI 001 007 神が私たちに与えてくださったものは、おくびょうの霊ではなく、力と愛と慎みとの霊です。 055 2TI 001 008 ですから、あなたは、私たちの主をあかしすることや、私が主の囚人であることを恥じてはいけません。むしろ、神の力によって、福音のために私と苦しみをともにしてください。 055 2TI 001 009 神は私たちを救い、また、聖なる招きをもって召してくださいましたが、それは私たちの働きによるのではなく、ご自身の計画と恵みとによるのです。この恵みは、キリスト・イエスにおいて、私たちに永遠の昔に与えられたものであって、 055 2TI 001 010 それが今、私たちの救い主キリスト・イエスの現われによって明らかにされたのです。キリストは死を滅ぼし、福音によって、いのちと不滅を明らかに示されました。 055 2TI 001 011 私は、この福音のために、宣教者、使徒、また教師として任命されたのです。 055 2TI 001 012 そのために、私はこのような苦しみにも会っています。しかし、私はそれを恥とは思っていません。というのは、私は、自分の信じて来た方をよく知っており、また、その方は私のお任せしたものを、かの日のために守ってくださることができると確信しているからです。 055 2TI 001 013 あなたは、キリスト・イエスにある信仰と愛をもって、私から聞いた健全なことばを手本にしなさい。 055 2TI 001 014 そして、あなたにゆだねられた良いものを、私たちのうちに宿る聖霊によって、守りなさい。 055 2TI 001 015 あなたの知っているとおり、アジヤにいる人々はみな、私を離れて行きました。その中には、フゲロとヘルモゲネがいます。 055 2TI 001 016 オネシポロの家族を主があわれんでくださるように。彼はたびたび私を元気づけてくれ、また私が鎖につながれていることを恥とも思わず、 055 2TI 001 017 ローマに着いたときには、熱心に私を捜して見つけ出してくれたのです。 055 2TI 001 018 ――かの日には、主があわれみを彼に示してくださいますように。――彼がエペソで、どれほど私に仕えてくれたかは、あなたが一番よく知っています。 055 2TI 002 001 そこで、わが子よ。キリスト・イエスにある恵みによって強くなりなさい。 055 2TI 002 002 多くの証人の前で私から聞いたことを、他の人にも教える力のある忠実な人たちにゆだねなさい。 055 2TI 002 003 キリスト・イエスのりっぱな兵士として、私と苦しみをともにしてください。 055 2TI 002 004 兵役についていながら、日常生活のことに掛かり合っている者はだれもありません。それは徴募した者を喜ばせるためです。 055 2TI 002 005 また、競技をするときも、規定に従って競技をしなければ栄冠を得ることはできません。 055 2TI 002 006 労苦した農夫こそ、まず第一に収穫の分け前にあずかるべきです。 055 2TI 002 007 私が言っていることをよく考えなさい。主はすべてのことについて、理解する力をあなたに必ず与えてくださいます。 055 2TI 002 008 私の福音に言うとおり、ダビデの子孫として生まれ、死者の中からよみがえったイエス・キリストを、いつも思っていなさい。 055 2TI 002 009 私は、福音のために、苦しみを受け、犯罪者のようにつながれています。しかし、神のことばは、つながれてはいません。 055 2TI 002 010 ですから、私は選ばれた人たちのために、すべてのことを耐え忍びます。それは、彼らもまたキリスト・イエスにある救いと、それとともに、とこしえの栄光を受けるようになるためです。 055 2TI 002 011 次のことばは信頼すべきことばです。「もし私たちが、彼とともに死んだのなら、彼とともに生きるようになる。 055 2TI 002 012 もし耐え忍んでいるなら、彼とともに治めるようになる。もし彼を否んだなら、彼もまた私たちを否まれる。 055 2TI 002 013 私たちは真実でなくても、彼は常に真実である。彼にはご自身を否むことができないからである。」 055 2TI 002 014 これらのことを人々に思い出させなさい。そして何の益にもならず、聞いている人々を滅ぼすことになるような、ことばについての論争などしないように、神の御前できびしく命じなさい。 055 2TI 002 015 あなたは熟練した者、すなわち、真理のみことばをまっすぐに説き明かす、恥じることのない働き人として、自分を神にささげるよう、努め励みなさい。 055 2TI 002 016 俗悪なむだ話を避けなさい。人々はそれによってますます不敬虔に深入りし、 055 2TI 002 017 彼らの話は癌のように広がるのです。ヒメナオとピレトはその仲間です。 055 2TI 002 018 彼らは真理からはずれてしまい、復活がすでに起こったと言って、ある人々の信仰をくつがえしているのです。 055 2TI 002 019 それにもかかわらず、神の不動の礎は堅く置かれていて、それに次のような銘が刻まれています。「主はご自分に属する者を知っておられる。」また、「主の御名を呼ぶ者は、だれでも不義を離れよ。」 055 2TI 002 020 大きな家には、金や銀の器だけでなく、木や土の器もあります。また、ある物は尊いことに、ある物は卑しいことに用います。 055 2TI 002 021 ですから、だれでも自分自身をきよめて、これらのことを離れるなら、その人は尊いことに使われる器となります。すなわち、きよめられたもの、主人にとって有益なもの、あらゆる良いわざに間に合うものとなるのです。 055 2TI 002 022 それで、あなたは、若い時の情欲を避け、きよい心で主を呼び求める人たちとともに、義と信仰と愛と平和を追い求めなさい。 055 2TI 002 023 愚かで、無知な思弁を避けなさい。それが争いのもとであることは、あなたが知っているとおりです。 055 2TI 002 024 主のしもべが争ってはいけません。むしろ、すべての人に優しくし、よく教え、よく忍び、 055 2TI 002 025 反対する人たちを柔和な心で訓戒しなさい。もしかすると、神は彼らに悔い改めの心を与えて真理を悟らせ、 055 2TI 002 026 一時は悪魔に捕えられて思うままになっていた人々でも、目ざめてそのわなをのがれることもあるでしょう。 055 2TI 003 001 終わりの日には困難な時代がやって来ることをよく承知しておきなさい。 055 2TI 003 002 そのときに人々は、自分を愛する者、金を愛する者、大言壮語する者、不遜な者、神をけがす者、両親に従わない者、感謝することを知らない者、汚れた者になり、 055 2TI 003 003 情け知らずの者、和解しない者、そしる者、節制のない者、粗暴な者、善を好まない者になり、 055 2TI 003 004 裏切る者、向こう見ずな者、慢心する者、神よりも快楽を愛する者になり、 055 2TI 003 005 敬虔のかたちをしていても、その実を否定する者になるからです。こういう人々を避けなさい。 055 2TI 003 006 こういう人々の中には、家々にはいり込み、愚かな女たちをたぶらかしている者がいます。その女たちは、さまざまの情欲に引き回されて罪に罪を重ね、 055 2TI 003 007 いつも学んではいるが、いつになっても真理を知ることのできない者たちです。 055 2TI 003 008 また、こういう人々は、ちょうどヤンネとヤンブレがモーセに逆らったように、真理に逆らうのです。彼らは知性の腐った、信仰の失格者です。 055 2TI 003 009 でも、彼らはもうこれ以上に進むことはできません。彼らの愚かさは、あのふたりのばあいのように、すべての人にはっきりわかるからです。 055 2TI 003 010 しかし、あなたは、私の教え、行動、計画、信仰、寛容、愛、忍耐に、 055 2TI 003 011 またアンテオケ、イコニオム、ルステラで私にふりかかった迫害や苦難にも、よくついて来てくれました。何というひどい迫害に私は耐えて来たことでしょう。しかし、主はいっさいのことから私を救い出してくださいました。 055 2TI 003 012 確かに、キリスト・イエスにあって敬虔に生きようと願う者はみな、迫害を受けます。 055 2TI 003 013 しかし、悪人や詐欺師たちは、だましたりだまされたりしながら、ますます悪に落ちて行くのです。 055 2TI 003 014 けれどもあなたは、学んで確信したところにとどまっていなさい。あなたは自分が、どの人たちからそれを学んだかを知っており、 055 2TI 003 015 また、幼いころから聖書に親しんで来たことを知っているからです。聖書はあなたに知恵を与えてキリスト・イエスに対する信仰による救いを受けさせることができるのです。 055 2TI 003 016 聖書はすべて、神の霊感によるもので、教えと戒めと矯正と義の訓練とのために有益です。 055 2TI 003 017 それは、神の人が、すべての良い働きのためにふさわしい十分に整えられた者となるためです。 055 2TI 004 001 神の御前で、また、生きている人と死んだ人とをさばかれるキリスト・イエスの御前で、その現われとその御国を思って、私はおごそかに命じます。 055 2TI 004 002 みことばを宣べ伝えなさい。時が良くても悪くてもしっかりやりなさい。寛容を尽くし、絶えず教えながら、責め、戒め、また勧めなさい。 055 2TI 004 003 というのは、人々が健全な教えに耳を貸そうとせず、自分につごうの良いことを言ってもらうために、気ままな願いをもって、次々に教師たちを自分たちのために寄せ集め、 055 2TI 004 004 真理から耳をそむけ、空想話にそれて行くような時代になるからです。 055 2TI 004 005 しかし、あなたは、どのようなばあいにも慎み、困難に耐え、伝道者として働き、自分の務めを十分に果たしなさい。 055 2TI 004 006 私は今や注ぎの供え物となります。私が世を去る時はすでに来ました。 055 2TI 004 007 私は勇敢に戦い、走るべき道のりを走り終え、信仰を守り通しました。 055 2TI 004 008 今からは、義の栄冠が私のために用意されているだけです。かの日には、正しい審判者である主が、それを私に授けてくださるのです。私だけでなく、主の現われを慕っている者には、だれにでも授けてくださるのです。 055 2TI 004 009 あなたは、何とかして、早く私のところに来てください。 055 2TI 004 010 デマスは今の世を愛し、私を捨ててテサロニケに行ってしまい、また、クレスケンスはガラテヤに、テトスはダルマテヤに行ったからです。 055 2TI 004 011 ルカだけは私とともにおります。マルコを伴って、いっしょに来てください。彼は私の務めのために役に立つからです。 055 2TI 004 012 私はテキコをエペソに遣わしました。 055 2TI 004 013 あなたが来るときは、トロアスでカルポのところに残しておいた上着を持って来てください。また、書物を、特に羊皮紙の物を持って来てください。 055 2TI 004 014 銅細工人のアレキサンデルが私をひどく苦しめました。そのしわざに応じて主が彼に報いられます。 055 2TI 004 015 あなたも彼を警戒しなさい。彼は私たちのことばに激しく逆らったからです。 055 2TI 004 016 私の最初の弁明の際には、私を支持する者はだれもなく、みな私を見捨ててしまいました。どうか、彼らがそのためにさばかれることのありませんように。 055 2TI 004 017 しかし、主は、私とともに立ち、私に力を与えてくださいました。それは、私を通してみことばが余すところなく宣べ伝えられ、すべての国の人々がみことばを聞くようになるためでした。私はししの口から助け出されました。 055 2TI 004 018 主は私を、すべての悪のわざから助け出し、天の御国に救い入れてくださいます。主に、御栄えがとこしえにありますように。アーメン。 055 2TI 004 019 プリスカとアクラによろしく。また、オネシポロの家族によろしく。 055 2TI 004 020 エラストはコリントにとどまり、トロピモは病気のためにミレトに残して来ました。 055 2TI 004 021 何とかして、冬になる前に来てください。ユブロ、プデス、リノス、クラウデヤ、またすべての兄弟たちが、あなたによろしくと言っています。 055 2TI 004 022 主があなたの霊とともにおられますように。恵みが、あなたがたとともにありますように。 # # BOOK 056 TIT Titus テトスへの手紙 056 TIT 001 001 神のしもべ、また、イエス・キリストの使徒パウロ――私は、神に選ばれた人々の信仰と、敬虔にふさわしい真理の知識とのために使徒とされたのです。 056 TIT 001 002 それは、偽ることのない神が、永遠の昔から約束してくださった永遠のいのちの望みに基づくことです。 056 TIT 001 003 神は、ご自分の定められた時に、このみことばを宣教によって明らかにされました。私は、この宣教を私たちの救い主なる神の命令によって、ゆだねられたのです。――このパウロから、 056 TIT 001 004 同じ信仰による真実のわが子テトスへ。父なる神および私たちの救い主なるキリスト・イエスから、恵みと平安がありますように。 056 TIT 001 005 私があなたをクレテに残したのは、あなたが残っている仕事の整理をし、また、私が指図したように、町ごとに長老たちを任命するためでした。 056 TIT 001 006 それには、その人が、非難されるところがなく、ひとりの妻の夫であり、その子どもは不品行を責められたり、反抗的であったりしない信者であることが条件です。 056 TIT 001 007 監督は神の家の管理者として、非難されるところのない者であるべきです。わがままでなく、短気でなく、酒飲みでなく、けんか好きでなく、不正な利を求めず、 056 TIT 001 008 かえって、旅人をよくもてなし、善を愛し、慎み深く、正しく、敬虔で、自制心があり、 056 TIT 001 009 教えにかなった信頼すべきみことばを、しっかりと守っていなければなりません。それは健全な教えをもって励ましたり、反対する人たちを正したりすることができるためです。 056 TIT 001 010 実は、反抗的な者、空論に走る者、人を惑わす者が多くいます。特に、割礼を受けた人々がそうです。 056 TIT 001 011 彼らの口を封じなければいけません。彼らは、不正な利を得るために、教えてはいけないことを教え、家々を破壊しています。 056 TIT 001 012 彼らと同国人であるひとりの預言者がこう言いました。 「クレテ人は昔からのうそつき、 悪いけだもの、 なまけ者の食いしんぼう。」 056 TIT 001 013 この証言はほんとうなのです。ですから、きびしく戒めて、人々の信仰を健全にし、 056 TIT 001 014 ユダヤ人の空想話や、真理から離れた人々の戒めには心を寄せないようにさせなさい。 056 TIT 001 015 きよい人々には、すべてのものがきよいのです。しかし、汚れた、不信仰な人々には、何一つきよいものはありません。それどころか、その知性と良心までも汚れています。 056 TIT 001 016 彼らは、神を知っていると口では言いますが、行ないでは否定しています。実に忌まわしく、不従順で、どんな良いわざにも不適格です。 056 TIT 002 001 しかし、あなたは健全な教えにふさわしいことを話しなさい。 056 TIT 002 002 老人たちには、自制し、謹厳で、慎み深くし、信仰と愛と忍耐とにおいて健全であるように。 056 TIT 002 003 同じように、年をとった婦人たちには、神に仕えている者らしく敬虔にふるまい、悪口を言わず、大酒のとりこにならず、良いことを教える者であるように。 056 TIT 002 004 そうすれば、彼女たちは、若い婦人たちに向かって、夫を愛し、子どもを愛し、 056 TIT 002 005 慎み深く、貞潔で、家事に励み、優しく、自分の夫に従順であるようにと、さとすことができるのです。それは、神のことばがそしられるようなことのないためです。 056 TIT 002 006 同じように、若い人々には、思慮深くあるように勧めなさい。 056 TIT 002 007 また、すべての点で自分自身が良いわざの模範となり、教えにおいては純正で、威厳を保ち、 056 TIT 002 008 非難すべきところのない、健全なことばを用いなさい。そうすれば、敵対する者も、私たちについて、何も悪いことが言えなくなって、恥じ入ることになるでしょう。 056 TIT 002 009 奴隷には、すべての点で自分の主人に従って、満足を与え、口答えせず、 056 TIT 002 010 盗みをせず、努めて真実を表わすように勧めなさい。それは、彼らがあらゆることで、私たちの救い主である神の教えを飾るようになるためです。 056 TIT 002 011 というのは、すべての人を救う神の恵みが現われ、 056 TIT 002 012 私たちに、不敬虔とこの世の欲とを捨て、この時代にあって、慎み深く、正しく、敬虔に生活し、 056 TIT 002 013 祝福された望み、すなわち、大いなる神であり私たちの救い主であるキリスト・イエスの栄光ある現われを待ち望むようにと教えさとしたからです。 056 TIT 002 014 キリストが私たちのためにご自身をささげられたのは、私たちをすべての不法から贖い出し、良いわざに熱心なご自分の民を、ご自分のためにきよめるためでした。 056 TIT 002 015 あなたは、これらのことを十分な権威をもって話し、勧め、また、責めなさい。だれにも軽んじられてはいけません。 056 TIT 003 001 あなたは彼らに注意を与えて、支配者たちと権威者たちに服従し、従順で、すべての良いわざを進んでする者とならせなさい。 056 TIT 003 002 また、だれをもそしらず、争わず、柔和で、すべての人に優しい態度を示す者とならせなさい。 056 TIT 003 003 私たちも以前は、愚かな者であり、不従順で、迷った者であり、いろいろな欲情と快楽の奴隷になり、悪意とねたみの中に生活し、憎まれ者であり、互いに憎み合う者でした。 056 TIT 003 004 しかし、私たちの救い主なる神のいつくしみと人への愛とが現われたとき、 056 TIT 003 005 神は、私たちが行なった義のわざによってではなく、ご自分のあわれみのゆえに、聖霊による、新生と更新との洗いをもって私たちを救ってくださいました。 056 TIT 003 006 神は、この聖霊を、私たちの救い主なるイエス・キリストによって、私たちに豊かに注いでくださったのです。 056 TIT 003 007 それは、私たちがキリストの恵みによって義と認められ、永遠のいのちの望みによって、相続人となるためです。 056 TIT 003 008 これは信頼できることばですから、私は、あなたがこれらのことについて、確信をもって話すように願っています。それは、神を信じている人々が、良いわざに励むことを心がけるようになるためです。これらのことは良いことであって、人々に有益なことです。 056 TIT 003 009 しかし、愚かな議論、系図、口論、律法についての論争などを避けなさい。それらは無益で、むだなものです。 056 TIT 003 010 分派を起こす者は、一、二度戒めてから、除名しなさい。 056 TIT 003 011 このような人は、あなたも知っているとおり、堕落しており、自分で悪いと知りながら罪を犯しているのです。 056 TIT 003 012 私がアルテマスかテキコをあなたのもとに送ったら、あなたは、何としてでも、ニコポリにいる私のところに来てください。私はそこで冬を過ごすことに決めています。 056 TIT 003 013 ぜひとも、律法学者ゼナスとアポロとが旅に出られるようにし、彼らが不自由しないように世話をしてあげなさい。 056 TIT 003 014 私たち一同も、なくてならないもののために、正しい仕事に励むように教えられなければなりません。それは、実を結ばない者にならないためです。 056 TIT 003 015 私といっしょにいる者たち一同が、あなたによろしくと言っています。私たちの信仰の友である人々に、よろしく言ってください。恵みが、あなたがたすべてとともにありますように。 # # BOOK 057 PHM Philemon ピレモンへの手紙 057 PHM 001 001 キリスト・イエスの囚人であるパウロ、および兄弟テモテから、私たちの愛する同労者ピレモンへ。また、 057 PHM 001 002 姉妹アピヤ、私たちの戦友アルキポ、ならびにあなたの家にある教会へ。 057 PHM 001 003 私たちの父なる神と主イエス・キリストから、恵みと平安があなたがたの上にありますように。 057 PHM 001 004 私は、祈りのうちにあなたのことを覚え、いつも私の神に感謝しています。 057 PHM 001 005 それは、主イエスに対してあなたが抱いている信仰と、すべての聖徒に対するあなたの愛とについて聞いているからです。 057 PHM 001 006 私たちの間でキリストのためになされているすべての良い行ないをよく知ることによって、あなたの信仰の交わりが生きて働くものとなりますように。 057 PHM 001 007 私はあなたの愛から多くの喜びと慰めとを受けました。それは、聖徒たちの心が、兄弟よ、あなたによって力づけられたからです。 057 PHM 001 008 私は、あなたのなすべきことを、キリストにあって少しもはばからず命じることができるのですが、こういうわけですから、 057 PHM 001 009 むしろ愛によって、あなたにお願いしたいと思います。年老いて、今はまたキリスト・イエスの囚人となっている私パウロが、 057 PHM 001 010 獄中で生んだわが子オネシモのことを、あなたにお願いしたいのです。 057 PHM 001 011 彼は、前にはあなたにとって役に立たない者でしたが、今は、あなたにとっても私にとっても、役に立つ者となっています。 057 PHM 001 012 そのオネシモを、あなたのもとに送り返します。彼は私の心そのものです。 057 PHM 001 013 私は、彼を私のところにとどめておき、福音のために獄中にいる間、あなたに代わって私のために仕えてもらいたいとも考えましたが、 057 PHM 001 014 あなたの同意なしには何一つすまいと思いました。それは、あなたがしてくれる親切は強制されてではなく、自発的でなければいけないからです。 057 PHM 001 015 彼がしばらくの間あなたから離されたのは、たぶん、あなたが彼を永久に取り戻すためであったのでしょう。 057 PHM 001 016 もはや奴隷としてではなく、奴隷以上の者、すなわち、愛する兄弟としてです。特に私にとってそうですが、あなたにとってはなおさらのこと、肉においても主にあっても、そうではありませんか。 057 PHM 001 017 ですから、もしあなたが私を親しい友と思うなら、私を迎えるように彼を迎えてやってください。 057 PHM 001 018 もし彼があなたに対して損害をかけたか、負債を負っているのでしたら、その請求は私にしてください。 057 PHM 001 019 この手紙は私の自筆です。私がそれを支払います。――あなたが今のようになれたのもまた、私によるのですが、そのことについては何も言いません。―― 057 PHM 001 020 そうです。兄弟よ。私は、主にあって、あなたから益を受けたいのです。私の心をキリストにあって、元気づけてください。 057 PHM 001 021 私はあなたの従順を確信して、あなたにこの手紙を書きました。私の言う以上のことをしてくださるあなたであると、知っているからです。 057 PHM 001 022 それにまた、私の宿の用意もしておいてください。あなたがたの祈りによって、私もあなたがたのところに行けることと思っています。 057 PHM 001 023 キリスト・イエスにあって私とともに囚人となっているエパフラスが、あなたによろしくと言っています。 057 PHM 001 024 私の同労者たちであるマルコ、アリスタルコ、デマス、ルカからもよろしくと言っています。 057 PHM 001 025 主イエス・キリストの恵みが、あなたがたの霊とともにありますように。 # # BOOK 058 HEB Hebrews ヘブル人への手紙 058 HEB 001 001 神は、むかし先祖たちに、預言者たちを通して、多くの部分に分け、また、いろいろな方法で語られましたが、 058 HEB 001 002 この終わりの時には、御子によって、私たちに語られました。神は、御子を万物の相続者とし、また御子によって世界を造られました。 058 HEB 001 003 御子は神の栄光の輝き、また神の本質の完全な現われであり、その力あるみことばによって万物を保っておられます。また、罪のきよめを成し遂げて、すぐれて高い所の大能者の右の座に着かれました。 058 HEB 001 004 御子は、御使いたちよりもさらにすぐれた御名を相続されたように、それだけ御使いよりもまさるものとなられました。 058 HEB 001 005 神は、かつてどの御使いに向かって、こう言われたでしょう。 「あなたは、わたしの子。 きょう、わたしがあなたを生んだ。」 またさらに、 「わたしは彼の父となり、 彼はわたしの子となる。」 058 HEB 001 006 さらに、長子をこの世界にお送りになるとき、こう言われました。 「神の御使いはみな、彼を拝め。」 058 HEB 001 007 また御使いについては、 「神は、御使いたちを風とし、 仕える者たちを炎とされる。」 と言われましたが、 058 HEB 001 008 御子については、こう言われます。 「神よ。あなたの御座は世々限りなく、 あなたの御国の杖こそ、まっすぐな杖です。 058 HEB 001 009 あなたは義を愛し、不正を憎まれます。 それゆえ、神よ。あなたの神は、 あふれるばかりの喜びの油を、 あなたとともに立つ者にまして、 あなたに注ぎなさいました。」 058 HEB 001 010 またこう言われます。 「主よ。あなたは、初めに 地の基を据えられました。 天も、あなたの御手のわざです。 058 HEB 001 011 これらのものは滅びます。 しかし、あなたはいつまでもながらえられます。 すべてのものは着物のように古びます。 058 HEB 001 012 あなたはこれらを、外套のように巻かれます。 これらを、着物のように取り替えられます。 しかし、あなたは変わることがなく、 あなたの年は尽きることがありません。」 058 HEB 001 013 神は、かつてどの御使いに向かって、こう言われたでしょう。 「わたしがあなたの敵を あなたの足台とするまでは、 わたしの右の座に着いていなさい。」 058 HEB 001 014 御使いはみな、仕える霊であって、救いの相続者となる人々に仕えるため遣わされたのではありませんか。 058 HEB 002 001 ですから、私たちは聞いたことを、ますますしっかり心に留めて、押し流されないようにしなければなりません。 058 HEB 002 002 もし、御使いたちを通して語られたみことばでさえ、堅く立てられて動くことがなく、すべての違反と不従順が当然の処罰を受けたとすれば、 058 HEB 002 003 私たちがこんなにすばらしい救いをないがしろにしたばあい、どうしてのがれることができましょう。この救いは最初主によって語られ、それを聞いた人たちが、確かなものとしてこれを私たちに示し、 058 HEB 002 004 そのうえ神も、しるしと不思議とさまざまの力あるわざにより、また、みこころに従って聖霊が分け与えてくださる賜物によってあかしされました。 058 HEB 002 005 神は、私たちがいま話している後の世を、御使いたちに従わせることはなさらなかったのです。 058 HEB 002 006 むしろ、ある個所で、ある人がこうあかししています。 「人間が何者だというので、 これをみこころに留められるのでしょう。 人の子が何者だというので、 これを顧みられるのでしょう。 058 HEB 002 007 あなたは、彼を、 御使いよりも、しばらくの間、低いものとし、 彼に栄光と誉れの冠を与え、 058 HEB 002 008 万物をその足の下に従わせられました。」 万物を彼に従わせたとき、神は、彼に従わないものを何一つ残されなかったのです。それなのに、今でもなお、私たちはすべてのものが人間に従わせられているのを見てはいません。 058 HEB 002 009 ただ、御使いよりも、しばらくの間、低くされた方であるイエスのことは見ています。イエスは、死の苦しみのゆえに、栄光と誉れの冠をお受けになりました。その死は、神の恵みによって、すべての人のために味わわれたものです。 058 HEB 002 010 神が多くの子たちを栄光に導くのに、彼らの救いの創始者を、多くの苦しみを通して全うされたということは、万物の存在の目的であり、また原因でもある方として、ふさわしいことであったのです。 058 HEB 002 011 きよめる方も、きよめられる者たちも、すべて元は一つです。それで、主は彼らを兄弟と呼ぶことを恥としないで、こう言われます。 058 HEB 002 012 「わたしは御名を、わたしの兄弟たちに告げよう。 教会の中で、わたしはあなたを賛美しよう。」 058 HEB 002 013 またさらに、 「わたしは彼に信頼する。」 またさらに、 「見よ、わたしと、神がわたしに賜わった子たちは。」 と言われます。 058 HEB 002 014 そこで、子たちはみな血と肉とを持っているので、主もまた同じように、これらのものをお持ちになりました。これは、その死によって、悪魔という、死の力を持つ者を滅ぼし、 058 HEB 002 015 一生涯死の恐怖につながれて奴隷となっていた人々を解放してくださるためでした。 058 HEB 002 016 主は御使いたちを助けるのではなく、確かに、アブラハムの子孫を助けてくださるのです。 058 HEB 002 017 そういうわけで、神のことについて、あわれみ深い、忠実な大祭司となるため、主はすべての点で兄弟たちと同じようにならなければなりませんでした。それは民の罪のために、なだめがなされるためなのです。 058 HEB 002 018 主は、ご自身が試みを受けて苦しまれたので、試みられている者たちを助けることがおできになるのです。 058 HEB 003 001 そういうわけですから、天の召しにあずかっている聖なる兄弟たち。私たちの告白する信仰の使徒であり、大祭司であるイエスのことを考えなさい。 058 HEB 003 002 モーセが神の家全体のために忠実であったのと同様に、イエスはご自分を立てた方に対して忠実なのです。 058 HEB 003 003 家よりも、家を建てる者が大きな栄誉を持つのと同様に、イエスはモーセよりも大きな栄光を受けるのにふさわしいとされました。 058 HEB 003 004 家はそれぞれ、だれかが建てるのですが、すべてのものを造られた方は、神です。 058 HEB 003 005 モーセは、しもべとして神の家全体のために忠実でした。それは、後に語られる事をあかしするためでした。 058 HEB 003 006 しかし、キリストは御子として神の家を忠実に治められるのです。もし私たちが、確信と、希望による誇りとを、終わりまでしっかりと持ち続けるならば、私たちが神の家なのです。 058 HEB 003 007 ですから、聖霊が言われるとおりです。 「きょう、もし御声を聞くならば、 058 HEB 003 008 荒野での試みの日に 御怒りを引き起こしたときのように、 心をかたくなにしてはならない。 058 HEB 003 009 あなたがたの先祖たちは、 そこでわたしを試みて証拠を求め、 四十年の間、わたしのわざを見た。 058 HEB 003 010 だから、わたしはその時代を憤って言った。 彼らは常に心が迷い、 わたしの道を悟らなかった。 058 HEB 003 011 わたしは、怒りをもって誓ったように、 決して彼らをわたしの安息にはいらせない。」 058 HEB 003 012 兄弟たち。あなたがたの中では、だれも悪い不信仰の心になって生ける神から離れる者がないように気をつけなさい。 058 HEB 003 013 「きょう。」と言われている間に、日々互いに励まし合って、だれも罪に惑わされてかたくなにならないようにしなさい。 058 HEB 003 014 もし最初の確信を終わりまでしっかり保ちさえすれば、私たちは、キリストにあずかる者となるのです。 058 HEB 003 015 「きょう、もし御声を聞くならば、 御怒りを引き起こしたときのように、 心をかたくなにしてはならない。」 と言われているからです。 058 HEB 003 016 聞いていながら、御怒りを引き起こしたのはだれでしたか。モーセに率いられてエジプトを出た人々の全部ではありませんか。 058 HEB 003 017 神は四十年の間だれを怒っておられたのですか。罪を犯した人々、しかばねを荒野にさらした、あの人たちをではありませんか。 058 HEB 003 018 また、わたしの安息にはいらせないと神が誓われたのは、ほかでもない、従おうとしなかった人たちのことではありませんか。 058 HEB 003 019 それゆえ、彼らが安息にはいれなかったのは、不信仰のためであったことがわかります。 058 HEB 004 001 こういうわけで、神の安息にはいるための約束はまだ残っているのですから、あなたがたのうちのひとりでも、万が一にもこれにはいれないようなことのないように、私たちは恐れる心を持とうではありませんか。 058 HEB 004 002 福音を説き聞かされていることは、私たちも彼らと同じなのです。ところが、その聞いたみことばも、彼らには益になりませんでした。みことばが、それを聞いた人たちに、信仰によって、結びつけられなかったからです。 058 HEB 004 003 信じた私たちは安息にはいるのです。 「わたしは、怒りをもって誓ったように、 決して彼らをわたしの安息にはいらせない。」 と神が言われたとおりです。みわざは創世の初めから、もう終わっているのです。 058 HEB 004 004 というのは、神は七日目について、ある個所で、「そして、神は、すべてのみわざを終えて七日目に休まれた。」と言われました。 058 HEB 004 005 そして、ここでは、「決して彼らをわたしの安息にはいらせない。」と言われたのです。 058 HEB 004 006 こういうわけで、その安息にはいる人々がまだ残っており、前に福音を説き聞かされた人々は、不従順のゆえにはいれなかったのですから、 058 HEB 004 007 神は再びある日を「きょう。」と定めて、長い年月の後に、前に言われたと同じように、ダビデを通して、 「きょう、もし御声を聞くならば、 あなたがたの心をかたくなにしてはならない。」 と語られたのです。 058 HEB 004 008 もしヨシュアが彼らに安息を与えたのであったら、神はそのあとで別の日のことを話されることはなかったでしょう。 058 HEB 004 009 したがって、安息日の休みは、神の民のためにまだ残っているのです。 058 HEB 004 010 神の安息にはいった者ならば、神がご自分のわざを終えて休まれたように、自分のわざを終えて休んだはずです。 058 HEB 004 011 ですから、私たちは、この安息にはいるよう力を尽くして努め、あの不従順の例にならって落後する者が、ひとりもいないようにしようではありませんか。 058 HEB 004 012 神のことばは生きていて、力があり、両刃の剣よりも鋭く、たましいと霊、関節と骨髄の分かれ目さえも刺し通し、心のいろいろな考えやはかりごとを判別することができます。 058 HEB 004 013 造られたもので、神の前で隠れおおせるものは何一つなく、神の目には、すべてが裸であり、さらけ出されています。私たちはこの神に対して弁明をするのです。 058 HEB 004 014 さて、私たちのためには、もろもろの天を通られた偉大な大祭司である神の子イエスがおられるのですから、私たちの信仰の告白を堅く保とうではありませんか。 058 HEB 004 015 私たちの大祭司は、私たちの弱さに同情できない方ではありません。罪は犯されませんでしたが、すべての点で、私たちと同じように、試みに会われたのです。 058 HEB 004 016 ですから、私たちは、あわれみを受け、また恵みをいただいて、おりにかなった助けを受けるために、大胆に恵みの御座に近づこうではありませんか。 058 HEB 005 001 大祭司はみな、人々の中から選ばれ、神に仕える事がらについて人々に代わる者として、任命を受けたのです。それは、罪のために、ささげ物といけにえとをささげるためです。 058 HEB 005 002 彼は、自分自身も弱さを身にまとっているので、無知な迷っている人々を思いやることができるのです。 058 HEB 005 003 そしてまた、その弱さのゆえに、民のためだけでなく、自分のためにも、罪のためのささげ物をしなければなりません。 058 HEB 005 004 まただれでも、この名誉は自分で得るのではなく、アロンのように神に召されて受けるのです。 058 HEB 005 005 同様に、キリストも大祭司となる栄誉を自分で得られたのではなく、彼に、 「あなたは、わたしの子。 きょう、わたしがあなたを生んだ。」 と言われた方が、それをお与えになったのです。 058 HEB 005 006 別の個所で、こうも言われます。 「あなたは、とこしえに、 メルキゼデクの位に等しい祭司である。」 058 HEB 005 007 キリストは、人としてこの世におられたとき、自分を死から救うことのできる方に向かって、大きな叫び声と涙とをもって祈りと願いをささげ、そしてその敬虔のゆえに聞き入れられました。 058 HEB 005 008 キリストは御子であられるのに、お受けになった多くの苦しみによって従順を学び、 058 HEB 005 009 完全な者とされ、彼に従うすべての人々に対して、とこしえの救いを与える者となり、 058 HEB 005 010 神によって、メルキゼデクの位に等しい大祭司ととなえられたのです。 058 HEB 005 011 この方について、私たちは話すべきことをたくさん持っていますが、あなたがたの耳が鈍くなっているため、説き明かすことが困難です。 058 HEB 005 012 あなたがたは年数からすれば教師になっていなければならないにもかかわらず、神のことばの初歩をもう一度だれかに教えてもらう必要があるのです。あなたがたは堅い食物ではなく、乳を必要とするようになっています。 058 HEB 005 013 まだ乳ばかり飲んでいるような者はみな、義の教えに通じてはいません。幼子なのです。 058 HEB 005 014 しかし、堅い食物はおとなの物であって、経験によって良い物と悪い物とを見分ける感覚を訓練された人たちの物です。 058 HEB 006 001 ですから、私たちは、キリストについての初歩の教えをあとにして、成熟を目ざして進もうではありませんか。死んだ行ないからの回心、神に対する信仰、 058 HEB 006 002 きよめの洗いについての教え、手を置く儀式、死者の復活、とこしえのさばきなど基礎的なことを再びやり直したりしないようにしましょう。 058 HEB 006 003 神がお許しになるならば、私たちはそうすべきです。 058 HEB 006 004 一度光を受けて天からの賜物の味を知り、聖霊にあずかる者となり、 058 HEB 006 005 神のすばらしいみことばと、後にやがて来る世の力とを味わったうえで、 058 HEB 006 006 しかも堕落してしまうならば、そういう人々をもう一度悔い改めに立ち返らせることはできません。彼らは、自分で神の子をもう一度十字架にかけて、恥辱を与える人たちだからです。 058 HEB 006 007 土地は、その上にしばしば降る雨を吸い込んで、これを耕す人たちのために有用な作物を生じるなら、神の祝福にあずかります。 058 HEB 006 008 しかし、いばらやあざみなどを生えさせるなら、無用なものであって、やがてのろいを受け、ついには焼かれてしまいます。 058 HEB 006 009 だが、愛する人たち。私たちはこのように言いますが、あなたがたについては、もっと良いことを確信しています。それは救いにつながることです。 058 HEB 006 010 神は正しい方であって、あなたがたの行ないを忘れず、あなたがたがこれまで聖徒たちに仕え、また今も仕えて神の御名のために示したあの愛をお忘れにならないのです。 058 HEB 006 011 そこで、私たちは、あなたがたひとりひとりが、同じ熱心さを示して、最後まで、私たちの希望について十分な確信を持ち続けてくれるように切望します。 058 HEB 006 012 それは、あなたがたがなまけずに、信仰と忍耐によって約束のものを相続するあの人たちに、ならう者となるためです。 058 HEB 006 013 神は、アブラハムに約束されるとき、ご自分よりすぐれたものをさして誓うことがありえないため、ご自分をさして誓い、 058 HEB 006 014 こう言われました。「わたしは必ずあなたを祝福し、あなたを大いにふやす。」 058 HEB 006 015 こうして、アブラハムは、忍耐の末に、約束のものを得ました。 058 HEB 006 016 確かに、人間は自分よりすぐれた者をさして誓います。そして、確証のための誓いというものは、人間のすべての反論をやめさせます。 058 HEB 006 017 そこで、神は約束の相続者たちに、ご計画の変わらないことをさらにはっきり示そうと思い、誓いをもって保証されたのです。 058 HEB 006 018 それは、変えることのできない二つの事がらによって、――神は、これらの事がらのゆえに、偽ることができません。――前に置かれている望みを捕えるためにのがれて来た私たちが、力強い励ましを受けるためです。 058 HEB 006 019 この望みは、私たちのたましいのために、安全で確かな錨の役を果たし、またこの望みは幕の内側にはいるのです。 058 HEB 006 020 イエスは私たちの先駆けとしてそこにはいり、永遠にメルキゼデクの位に等しい大祭司となられました。 058 HEB 007 001 このメルキゼデクは、サレムの王で、すぐれて高い神の祭司でしたが、アブラハムが王たちを打ち破って帰るのを出迎えて祝福しました。 058 HEB 007 002 またアブラハムは彼に、すべての戦利品の十分の一を分けました。まず彼は、その名を訳すと義の王であり、次に、サレムの王、すなわち平和の王です。 058 HEB 007 003 父もなく、母もなく、系図もなく、その生涯の初めもなく、いのちの終わりもなく、神の子に似た者とされ、いつまでも祭司としてとどまっているのです。 058 HEB 007 004 その人がどんなに偉大であるかを、よく考えてごらんなさい。族長であるアブラハムでさえ、彼に一番良い戦利品の十分の一を与えたのです。 058 HEB 007 005 レビの子らの中で祭司職を受ける者たちは、自分もアブラハムの子孫でありながら、民から、すなわち彼らの兄弟たちから、十分の一を徴集するようにと、律法の中で命じられています。 058 HEB 007 006 ところが、レビ族の系図にない者が、アブラハムから十分の一を取って、約束を受けた人を祝福したのです。 058 HEB 007 007 いうまでもなく、下位の者が上位の者から祝福されるのです。 058 HEB 007 008 一方では、死ぬべき人間が十分の一を受けていますが、他のばあいは、彼は生きているとあかしされている者が受けるのです。 058 HEB 007 009 また、いうならば、十分の一を受け取るレビでさえアブラハムを通して十分の一を納めているのです。 058 HEB 007 010 というのは、メルキゼデクがアブラハムを出迎えたときには、レビはまだ父の腰の中にいたからです。 058 HEB 007 011 さて、もしレビ系の祭司職によって完全に到達できたのだったら、――民はそれを基礎として律法を与えられたのです。――それ以上何の必要があって、アロンの位でなく、メルキゼデクの位に等しいと呼ばれる他の祭司が立てられたのでしょうか。 058 HEB 007 012 祭司職が変われば、律法も必ず変わらなければなりませんが、 058 HEB 007 013 私たちが今まで論じて来たその方は、祭壇に仕える者を出したことのない別の部族に属しておられるのです。 058 HEB 007 014 私たちの主が、ユダ族から出られたことは明らかですが、モーセは、この部族については、祭司に関することを何も述べていません。 058 HEB 007 015 もしメルキゼデクに等しい、別の祭司が立てられるのなら、以上のことは、いよいよ明らかになります。 058 HEB 007 016 その祭司は、肉についての戒めである律法にはよらないで、朽ちることのない、いのちの力によって祭司となったのです。 058 HEB 007 017 この方については、こうあかしされています。 「あなたは、とこしえに、 メルキゼデクの位に等しい祭司である。」 058 HEB 007 018 一方で、前の戒めは、弱く無益なために、廃止されましたが、 058 HEB 007 019 ――律法は何事も全うしなかったのです。――他方で、さらにすぐれた希望が導き入れられました。私たちはこれによって神に近づくのです。 058 HEB 007 020 また、そのためには、はっきりと誓いがなされています。 058 HEB 007 021 ――彼らのばあいは、誓いなしに祭司となるのですが、主のばあいには、主に対して次のように言われた方の誓いがあります。 「主は誓ってこう言われ、 みこころを変えられることはない。 『あなたはとこしえに祭司である。』」―― 058 HEB 007 022 そのようにして、イエスは、さらにすぐれた契約の保証となられたのです。 058 HEB 007 023 また、彼らのばあいは、死ということがあるため、務めにいつまでもとどまることができず、大ぜいの者が祭司となりました。 058 HEB 007 024 しかし、キリストは永遠に存在されるのであって、変わることのない祭司の務めを持っておられます。 058 HEB 007 025 したがって、ご自分によって神に近づく人々を、完全に救うことがおできになります。キリストはいつも生きていて、彼らのために、とりなしをしておられるからです。 058 HEB 007 026 また、このようにきよく、悪も汚れもなく、罪人から離れ、また、天よりも高くされた大祭司こそ、私たちにとってまさに必要な方です。 058 HEB 007 027 ほかの大祭司たちとは違い、キリストには、まず自分の罪のために、その次に、民の罪のために毎日いけにえをささげる必要はありません。というのは、キリストは自分自身をささげ、ただ一度でこのことを成し遂げられたからです。 058 HEB 007 028 律法は弱さを持つ人間を大祭司に立てますが、律法のあとから来た誓いのみことばは、永遠に全うされた御子を立てるのです。 058 HEB 008 001 以上述べたことの要点はこうです。すなわち、私たちの大祭司は天におられる大能者の御座の右に着座された方であり、 058 HEB 008 002 人間が設けたのではなくて、主が設けられた真実の幕屋である聖所で仕えておられる方です。 058 HEB 008 003 すべて、大祭司は、ささげ物といけにえとをささげるために立てられます。したがって、この大祭司も何かささげる物を持っていなければなりません。 058 HEB 008 004 もしキリストが地上におられるのであったら、決して祭司とはなられないでしょう。律法に従ってささげ物をする人たちがいるからです。 058 HEB 008 005 その人たちは、天にあるものの写しと影とに仕えているのであって、それらはモーセが幕屋を建てようとしたとき、神から御告げを受けたとおりのものです。神はこう言われたのです。「よく注意しなさい。山であなたに示された型に従って、すべてのものを作りなさい。」 058 HEB 008 006 しかし今、キリストはさらにすぐれた務めを得られました。それは彼が、さらにすぐれた約束に基づいて制定された、さらにすぐれた契約の仲介者であるからです。 058 HEB 008 007 もしあの初めの契約が欠けのないものであったなら、後のものが必要になる余地はなかったでしょう。 058 HEB 008 008 しかし、神は、それに欠けがあるとして、こう言われたのです。 「主が、言われる。 見よ。日が来る。 わたしが、イスラエルの家やユダの家と 新しい契約を結ぶ日が。 058 HEB 008 009 それは、わたしが彼らの先祖たちの手を引いて、 彼らをエジプトの地から導き出した日に 彼らと結んだ契約のようなものではない。 彼らがわたしの契約を守り通さないので、 わたしも、彼らを顧みなかったと、 主は言われる。 058 HEB 008 010 それらの日の後、わたしが、 イスラエルの家と結ぶ契約は、これであると、 主が言われる。 わたしは、わたしの律法を彼らの思いの中に入れ、 彼らの心に書きつける。 わたしは彼らの神となり、 彼らはわたしの民となる。 058 HEB 008 011 また彼らが、おのおのその町の者に、 また、おのおのその兄弟に教えて、 『主を知れ。』と言うことは決してない。 小さい者から大きい者に至るまで、 彼らはみな、わたしを知るようになるからである。 058 HEB 008 012 なぜなら、わたしは彼らの不義にあわれみをかけ、 もはや、彼らの罪を思い出さないからである。」 058 HEB 008 013 神が新しい契約と言われたときには、初めのものを古いとされたのです。年を経て古びたものは、すぐに消えて行きます。 058 HEB 009 001 初めの契約にも礼拝の規定と地上の聖所とがありました。 058 HEB 009 002 幕屋が設けられ、その前部の所には、燭台と机と供えのパンがありました。聖所と呼ばれる所です。 058 HEB 009 003 また、第二の垂れ幕のうしろには、至聖所と呼ばれる幕屋が設けられ、 058 HEB 009 004 そこには金の香壇と、全面を金でおおわれた契約の箱があり、箱の中には、マナのはいった金のつぼ、芽を出したアロンの杖、契約の二つの板がありました。 058 HEB 009 005 また、箱の上には、贖罪蓋を翼でおおっている栄光のケルビムがありました。しかしこれらについては、今いちいち述べることができません。 058 HEB 009 006 さて、これらの物が以上のように整えられた上で、前の幕屋には、祭司たちがいつもはいって礼拝を行なうのですが、 058 HEB 009 007 第二の幕屋には、大祭司だけが年に一度だけはいります。そのとき、血を携えずにはいるようなことはありません。その血は、自分のために、また、民が知らずに犯した罪のためにささげるものです。 058 HEB 009 008 これによって聖霊は次のことを示しておられます。すなわち、前の幕屋が存続しているかぎり、まことの聖所への道は、まだ明らかにされていないということです。 058 HEB 009 009 この幕屋はその当時のための比喩です。それに従って、ささげ物といけにえとがささげられますが、それらは礼拝する者の良心を完全にすることはできません。 058 HEB 009 010 それらは、ただ食物と飲み物と種々の洗いに関するもので、新しい秩序の立てられる時まで課せられた、からだに関する規定にすぎないからです。 058 HEB 009 011 しかしキリストは、すでに成就したすばらしい事がらの大祭司として来られ、手で造った物でない、言い替えれば、この造られた物とは違った、さらに偉大な、さらに完全な幕屋を通り、 058 HEB 009 012 また、やぎと子牛との血によってではなく、ご自分の血によって、ただ一度、まことの聖所にはいり、永遠の贖いを成し遂げられたのです。 058 HEB 009 013 もし、やぎと雄牛の血、また雌牛の灰を汚れた人々に注ぎかけると、それがきよめの働きをして肉体をきよいものにするとすれば、 058 HEB 009 014 まして、キリストが傷のないご自身を、とこしえの御霊によって神におささげになったその血は、どんなにか私たちの良心をきよめて死んだ行ないから離れさせ、生ける神に仕える者とすることでしょう。 058 HEB 009 015 こういうわけで、キリストは新しい契約の仲介者です。それは、初めの契約のときの違反を贖うための死が実現したので、召された者たちが永遠の資産の約束を受けることができるためなのです。 058 HEB 009 016 遺言には、遺言者の死亡証明が必要です。 058 HEB 009 017 遺言は、人が死んだとき初めて有効になるのであって、遺言者が生きている間は、決して効力はありません。 058 HEB 009 018 したがって、初めの契約も血なしに成立したのではありません。 058 HEB 009 019 モーセは、律法に従ってすべての戒めを民全体に語って後、水と赤い色の羊の毛とヒソプとのほかに、子牛とやぎの血を取って、契約の書自体にも民の全体にも注ぎかけ、 058 HEB 009 020 「これは神があなたがたに対して立てられた契約の血である。」と言いました。 058 HEB 009 021 また彼は、幕屋と礼拝のすべての器具にも同様に血を注ぎかけました。 058 HEB 009 022 それで、律法によれば、すべてのものは血によってきよめられる、と言ってよいでしょう。また、血を注ぎ出すことがなければ、罪の赦しはないのです。 058 HEB 009 023 ですから、天にあるものにかたどったものは、これらのものによってきよめられる必要がありました。しかし天にあるもの自体は、これよりもさらにすぐれたいけにえで、きよめられなければなりません。 058 HEB 009 024 キリストは、本物の模型にすぎない、手で造った聖所にはいられたのではなく、天そのものにはいられたのです。そして、今、私たちのために神の御前に現われてくださるのです。 058 HEB 009 025 それも、年ごとに自分の血でない血を携えて聖所にはいる大祭司とは違って、キリストは、ご自分を幾度もささげることはなさいません。 058 HEB 009 026 もしそうでなかったら、世の初めから幾度も苦難を受けなければならなかったでしょう。しかしキリストは、ただ一度、今の世の終わりに、ご自身をいけにえとして罪を取り除くために、来られたのです。 058 HEB 009 027 そして、人間には、一度死ぬことと死後にさばきを受けることが定まっているように、 058 HEB 009 028 キリストも、多くの人の罪を負うために一度、ご自身をささげられましたが、二度目は、罪を負うためではなく、彼を待ち望んでいる人々の救いのために来られるのです。 058 HEB 010 001 律法には、後に来るすばらしいものの影はあっても、その実物はないのですから、律法は、年ごとに絶えずささげられる同じいけにえによって神に近づいて来る人々を、完全にすることができないのです。 058 HEB 010 002 もしそれができたのであったら、礼拝する人々は、一度きよめられた者として、もはや罪を意識しなかったはずであり、したがって、ささげ物をすることは、やんだはずです。 058 HEB 010 003 ところがかえって、これらのささげ物によって、罪が年ごとに思い出されるのです。 058 HEB 010 004 雄牛とやぎの血は、罪を除くことができません。 058 HEB 010 005 ですから、キリストは、この世界に来て、こう言われるのです。 「あなたは、いけにえやささげ物を望まないで、 わたしのために、からだを造ってくださいました。 058 HEB 010 006 あなたは全焼のいけにえと 罪のためのいけにえとで 満足されませんでした。 058 HEB 010 007 そこでわたしは言いました。 『さあ、わたしは来ました。 聖書のある巻に、 わたしについてしるされているとおり、 神よ、あなたのみこころを行なうために。』」 058 HEB 010 008 すなわち、初めには、「あなたは、いけにえとささげ物、全焼のいけにえと罪のためのいけにえ(すなわち、律法に従ってささげられる、いろいろの物)を望まず、またそれらで満足されませんでした。」と言い、 058 HEB 010 009 また、「さあ、わたしはあなたのみこころを行なうために来ました。」と言われたのです。後者が立てられるために、前者が廃止されるのです。 058 HEB 010 010 このみこころに従って、イエス・キリストのからだが、ただ一度だけささげられたことにより、私たちはきよめられたものとされているのです。 058 HEB 010 011 また、すべて祭司は毎日立って礼拝の務めをなし、同じいけにえをくり返しささげますが、それらは決して罪を除き去ることができません。 058 HEB 010 012 しかし、キリストは、罪のために一つの永遠のいけにえをささげて後、神の右の座に着き、 058 HEB 010 013 それからは、その敵がご自分の足台となるのを待っておられるのです。 058 HEB 010 014 キリストはきよめられる人々を、一つのささげ物によって、永遠に全うされたのです。 058 HEB 010 015 聖霊も私たちに次のように言って、あかしされます。 058 HEB 010 016 「それらの日の後、わたしが、 彼らと結ぼうとしている契約は、これであると、 主は言われる。 わたしは、わたしの律法を彼らの心に置き、 彼らの思いに書きつける。」 またこう言われます。 058 HEB 010 017 「わたしは、もはや決して彼らの罪と不法とを思い出すことはしない。」 058 HEB 010 018 これらのことが赦されるところでは、罪のためのささげ物はもはや無用です。 058 HEB 010 019 こういうわけですから、兄弟たち。私たちは、イエスの血によって、大胆にまことの聖所にはいることができるのです。 058 HEB 010 020 イエスはご自分の肉体という垂れ幕を通して、私たちのためにこの新しい生ける道を設けてくださったのです。 058 HEB 010 021 また、私たちには、神の家をつかさどる、この偉大な祭司があります。 058 HEB 010 022 そのようなわけで、私たちは、心に血の注ぎを受けて邪悪な良心をきよめられ、からだをきよい水で洗われたのですから、全き信仰をもって、真心から神に近づこうではありませんか。 058 HEB 010 023 約束された方は真実な方ですから、私たちは動揺しないで、しっかりと希望を告白しようではありませんか。 058 HEB 010 024 また、互いに勧め合って、愛と善行を促すように注意し合おうではありませんか。 058 HEB 010 025 ある人々のように、いっしょに集まることをやめたりしないで、かえって励まし合い、かの日が近づいているのを見て、ますますそうしようではありませんか。 058 HEB 010 026 もし私たちが、真理の知識を受けて後、ことさらに罪を犯し続けるならば、罪のためのいけにえは、もはや残されていません。 058 HEB 010 027 ただ、さばきと、逆らう人たちを焼き尽くす激しい火とを、恐れながら待つよりほかはないのです。 058 HEB 010 028 だれでもモーセの律法を無視する者は、二、三の証人のことばに基づいて、あわれみを受けることなく死刑に処せられます。 058 HEB 010 029 まして、神の御子を踏みつけ、自分をきよめた契約の血を汚れたものとみなし、恵みの御霊を侮る者は、どんなに重い処罰に値するか、考えてみなさい。 058 HEB 010 030 私たちは、「復讐はわたしのすることである。わたしが報いをする。」、また、「主がその民をさばかれる。」と言われる方を知っています。 058 HEB 010 031 生ける神の手の中に陥ることは恐ろしいことです。 058 HEB 010 032 あなたがたは、光に照らされて後、苦難に会いながら激しい戦いに耐えた初めのころを、思い起こしなさい。 058 HEB 010 033 人々の目の前で、そしりと苦しみとを受けた者もあれば、このようなめに会った人々の仲間になった者もありました。 058 HEB 010 034 あなたがたは、捕えられている人々を思いやり、また、もっとすぐれた、いつまでも残る財産を持っていることを知っていたので、自分の財産が奪われても、喜んで忍びました。 058 HEB 010 035 ですから、あなたがたの確信を投げ捨ててはなりません。それは大きな報いをもたらすものなのです。 058 HEB 010 036 あなたがたが神のみこころを行なって、約束のものを手に入れるために必要なのは忍耐です。 058 HEB 010 037 「もうしばらくすれば、 来るべき方が来られる。おそくなることはない。 058 HEB 010 038 わたしの義人は信仰によって生きる。 もし、恐れ退くなら、 わたしのこころは彼を喜ばない。」 058 HEB 010 039 私たちは、恐れ退いて滅びる者ではなく、信じていのちを保つ者です。 058 HEB 011 001 信仰は望んでいる事がらを保証し、目に見えないものを確信させるものです。 058 HEB 011 002 昔の人々はこの信仰によって称賛されました。 058 HEB 011 003 信仰によって、私たちは、この世界が神のことばで造られたことを悟り、したがって、見えるものが目に見えるものからできたのではないことを悟るのです。 058 HEB 011 004 信仰によって、アベルはカインよりもすぐれたいけにえを神にささげ、そのいけにえによって彼が義人であることの証明を得ました。神が、彼のささげ物を良いささげ物だとあかししてくださったからです。彼は死にましたが、その信仰によって、今もなお語っています。 058 HEB 011 005 信仰によって、エノクは死を見ることのないように移されました。神に移されて、見えなくなりました。移される前に、彼は神に喜ばれていることが、あかしされていました。 058 HEB 011 006 信仰がなくては、神に喜ばれることはできません。神に近づく者は、神がおられることと、神を求める者には報いてくださる方であることとを、信じなければならないのです。 058 HEB 011 007 信仰によって、ノアは、まだ見ていない事がらについて神から警告を受けたとき、恐れかしこんで、その家族の救いのために箱舟を造り、その箱舟によって、世の罪を定め、信仰による義を相続する者となりました。 058 HEB 011 008 信仰によって、アブラハムは、相続財産として受け取るべき地に出て行けとの召しを受けたとき、これに従い、どこに行くのかを知らないで、出て行きました。 058 HEB 011 009 信仰によって、彼は約束された地に他国人のようにして住み、同じ約束をともに相続するイサクやヤコブとともに天幕生活をしました。 058 HEB 011 010 彼は、堅い基礎の上に建てられた都を待ち望んでいたからです。その都を設計し建設されたのは神です。 058 HEB 011 011 信仰によって、サラも、すでにその年を過ぎた身であるのに、子を宿す力を与えられました。彼女は約束してくださった方を真実な方と考えたからです。 058 HEB 011 012 そこで、ひとりの、しかも死んだも同様のアブラハムから、天の星のように、また海べの数えきれない砂のように数多い子孫が生まれたのです。 058 HEB 011 013 これらの人々はみな、信仰の人々として死にました。約束のものを手に入れることはありませんでしたが、はるかにそれを見て喜び迎え、地上では旅人であり寄留者であることを告白していたのです。 058 HEB 011 014 彼らはこのように言うことによって、自分の故郷を求めていることを示しています。 058 HEB 011 015 もし、出て来た故郷のことを思っていたのであれば、帰る機会はあったでしょう。 058 HEB 011 016 しかし、事実、彼らは、さらにすぐれた故郷、すなわち天の故郷にあこがれていたのです。それゆえ、神は彼らの神と呼ばれることを恥となさいませんでした。事実、神は彼らのために都を用意しておられました。 058 HEB 011 017 信仰によって、アブラハムは、試みられたときイサクをささげました。彼は約束を与えられていましたが、自分のただひとりの子をささげたのです。 058 HEB 011 018 神はアブラハムに対して、「イサクから出る者があなたの子孫と呼ばれる。」と言われたのですが、 058 HEB 011 019 彼は、神には人を死者の中からよみがえらせることもできる、と考えました。それで彼は、死者の中からイサクを取り戻したのです。これは型です。 058 HEB 011 020 信仰によって、イサクは未来のことについて、ヤコブとエサウを祝福しました。 058 HEB 011 021 信仰によって、ヤコブは死ぬとき、ヨセフの子どもたちをひとりひとり祝福し、また自分の杖のかしらに寄りかかって礼拝しました。 058 HEB 011 022 信仰によって、ヨセフは臨終のとき、イスラエルの子孫の脱出を語り、自分の骨について指図しました。 058 HEB 011 023 信仰によって、モーセは生まれてから、両親によって三か月の間隠されていました。彼らはその子の美しいのを見たからです。彼らは王の命令をも恐れませんでした。 058 HEB 011 024 信仰によって、モーセは成人したとき、パロの娘の子と呼ばれることを拒み、 058 HEB 011 025 はかない罪の楽しみを受けるよりは、むしろ神の民とともに苦しむことを選び取りました。 058 HEB 011 026 彼は、キリストのゆえに受けるそしりを、エジプトの宝にまさる大きな富と思いました。彼は報いとして与えられるものから目を離さなかったのです。 058 HEB 011 027 信仰によって、彼は、王の怒りを恐れないで、エジプトを立ち去りました。目に見えない方を見るようにして、忍び通したからです。 058 HEB 011 028 信仰によって、初子を滅ぼす者が彼らに触れることのないように、彼は過越と血の注ぎとを行ないました。 058 HEB 011 029 信仰によって、彼らは、かわいた陸地を行くのと同様に紅海を渡りました。エジプト人は、同じようにしようとしましたが、のみこまれてしまいました。 058 HEB 011 030 信仰によって、人々が七日の間エリコの城の周囲を回ると、その城壁はくずれ落ちました。 058 HEB 011 031 信仰によって、遊女ラハブは、偵察に来た人たちを穏やかに受け入れたので、不従順な人たちといっしょに滅びることを免れました。 058 HEB 011 032 これ以上、何を言いましょうか。もし、ギデオン、バラク、サムソン、エフタ、またダビデ、サムエル、預言者たちについても話すならば、時が足りないでしょう。 058 HEB 011 033 彼らは、信仰によって、国々を征服し、正しいことを行ない、約束のものを得、ししの口をふさぎ、 058 HEB 011 034 火の勢いを消し、剣の刃をのがれ、弱い者なのに強くされ、戦いの勇士となり、他国の陣営を陥れました。 058 HEB 011 035 女たちは、死んだ者をよみがえらせていただきました。またほかの人たちは、さらにすぐれたよみがえりを得るために、釈放されることを願わないで拷問を受けました。 058 HEB 011 036 また、ほかの人たちは、あざけられ、むちで打たれ、さらに鎖につながれ、牢に入れられるめに会い、 058 HEB 011 037 また、石で打たれ、試みを受け、のこぎりで引かれ、剣で切り殺され、羊ややぎの皮を着て歩き回り、乏しくなり、悩まされ、苦しめられ、 058 HEB 011 038 ――この世は彼らにふさわしい所ではありませんでした。――荒野と山とほら穴と地の穴とをさまよいました。 058 HEB 011 039 この人々はみな、その信仰によってあかしされましたが、約束されたものは得ませんでした。 058 HEB 011 040 神は私たちのために、さらにすぐれたものをあらかじめ用意しておられたので、彼らが私たちと別に全うされるということはなかったのです。 058 HEB 012 001 こういうわけで、このように多くの証人たちが、雲のように私たちを取り巻いているのですから、私たちも、いっさいの重荷とまつわりつく罪とを捨てて、私たちの前に置かれている競走を忍耐をもって走り続けようではありませんか。 058 HEB 012 002 信仰の創始者であり、完成者であるイエスから目を離さないでいなさい。イエスは、ご自分の前に置かれた喜びのゆえに、はずかしめをものともせずに十字架を忍び、神の御座の右に着座されました。 058 HEB 012 003 あなたがたは、罪人たちのこのような反抗を忍ばれた方のことを考えなさい。それは、あなたがたの心が元気を失い、疲れ果ててしまわないためです。 058 HEB 012 004 あなたがたはまだ、罪と戦って、血を流すまで抵抗したことがありません。 058 HEB 012 005 そして、あなたがたに向かって子どもに対するように語られたこの勧めを忘れています。 「わが子よ。 主の懲らしめを軽んじてはならない。 主に責められて弱り果ててはならない。 058 HEB 012 006 主はその愛する者を懲らしめ、 受け入れるすべての子に、 むちを加えられるからである。」 058 HEB 012 007 訓練と思って耐え忍びなさい。神はあなたがたを子として扱っておられるのです。父が懲らしめることをしない子がいるでしょうか。 058 HEB 012 008 もしあなたがたが、だれでも受ける懲らしめを受けていないとすれば、私生子であって、ほんとうの子ではないのです。 058 HEB 012 009 さらにまた、私たちには肉の父がいて、私たちを懲らしめたのですが、しかも私たちは彼らを敬ったのであれば、なおさらのこと、私たちはすべての霊の父に服従して生きるべきではないでしょうか。 058 HEB 012 010 なぜなら、肉の父親は、短い期間、自分が良いと思うままに私たちを懲らしめるのですが、霊の父は、私たちの益のため、私たちをご自分のきよさにあずからせようとして、懲らしめるのです。 058 HEB 012 011 すべての懲らしめは、そのときは喜ばしいものではなく、かえって悲しく思われるものですが、後になると、これによって訓練された人々に平安な義の実を結ばせます。 058 HEB 012 012 ですから、弱った手と衰えたひざとを、まっすぐにしなさい。 058 HEB 012 013 また、あなたがたの足のためには、まっすぐな道を作りなさい。足なえの人も関節をはずすことのないため、いやむしろ、いやされるためです。 058 HEB 012 014 すべての人との平和を追い求め、また、きよめられることを追い求めなさい。きよくなければ、だれも主を見ることができません。 058 HEB 012 015 そのためには、あなたがたはよく監督して、だれも神の恵みから落ちる者がないように、また、苦い根が芽を出して悩ましたり、これによって多くの人が汚されたりすることのないように、 058 HEB 012 016 また、不品行の者や、一杯の食物と引き替えに自分のものであった長子の権利を売ったエサウのような俗悪な者がないようにしなさい。 058 HEB 012 017 あなたがたが知っているとおり、彼は後になって祝福を相続したいと思ったが、退けられました。涙を流して求めても、彼には心を変えてもらう余地がありませんでした。 058 HEB 012 018 あなたがたは、手でさわれる山、燃える火、黒雲、暗やみ、あらし、 058 HEB 012 019 ラッパの響き、ことばのとどろきに近づいているのではありません。このとどろきは、これを聞いた者たちが、それ以上一言も加えてもらいたくないと願ったものです。 058 HEB 012 020 彼らは、「たとい、獣でも、山に触れるものは石で打ち殺されなければならない。」というその命令に耐えることができなかったのです。 058 HEB 012 021 また、その光景があまり恐ろしかったので、モーセは、「私は恐れて、震える。」と言いました。 058 HEB 012 022 しかし、あなたがたは、シオンの山、生ける神の都、天にあるエルサレム、無数の御使いたちの大祝会に近づいているのです。 058 HEB 012 023 また、天に登録されている長子たちの教会、万民の審判者である神、全うされた義人たちの霊、 058 HEB 012 024 さらに、新しい契約の仲介者イエス、それに、アベルの血よりもすぐれたことを語る注ぎかけの血に近づいています。 058 HEB 012 025 語っておられる方を拒まないように注意しなさい。なぜなら、地上においても、警告を与えた方を拒んだ彼らが処罰を免れることができなかったとすれば、まして天から語っておられる方に背を向ける私たちが、処罰を免れることができないのは当然ではありませんか。 058 HEB 012 026 あのときは、その声が地を揺り動かしましたが、このたびは約束をもって、こう言われます。「わたしは、もう一度、地だけではなく、天も揺り動かす。」 058 HEB 012 027 この「もう一度」ということばは、決して揺り動かされることのないものが残るために、すべての造られた、揺り動かされるものが取り除かれることを示しています。 058 HEB 012 028 こういうわけで、私たちは揺り動かされない御国を受けているのですから、感謝しようではありませんか。こうして私たちは、慎みと恐れとをもって、神に喜ばれるように奉仕をすることができるのです。 058 HEB 012 029 私たちの神は焼き尽くす火です。 058 HEB 013 001 兄弟愛をいつも持っていなさい。 058 HEB 013 002 旅人をもてなすことを忘れてはいけません。こうして、ある人々は御使いたちを、それとは知らずにもてなしました。 058 HEB 013 003 牢につながれている人々を、自分も牢にいる気持ちで思いやり、また、自分も肉体を持っているのですから、苦しめられている人々を思いやりなさい。 058 HEB 013 004 結婚がすべての人に尊ばれるようにしなさい。寝床を汚してはいけません。なぜなら、神は不品行な者と姦淫を行なう者とをさばかれるからです。 058 HEB 013 005 金銭を愛する生活をしてはいけません。いま持っているもので満足しなさい。主ご自身がこう言われるのです。「わたしは決してあなたを離れず、また、あなたを捨てない。」 058 HEB 013 006 そこで、私たちは確信に満ちてこう言います。 「主は私の助け手です。私は恐れません。 人間が、私に対して何ができましょう。」 058 HEB 013 007 神のみことばをあなたがたに話した指導者たちのことを、思い出しなさい。彼らの生活の結末をよく見て、その信仰にならいなさい。 058 HEB 013 008 イエス・キリストは、きのうもきょうも、いつまでも、同じです。 058 HEB 013 009 さまざまの異なった教えによって迷わされてはなりません。食物によってではなく、恵みによって心を強めるのは良いことです。食物に気を取られた者は益を得ませんでした。 058 HEB 013 010 私たちには一つの祭壇があります。幕屋で仕える者たちには、この祭壇から食べる権利がありません。 058 HEB 013 011 動物の血は、罪のための供え物として、大祭司によって聖所の中まで持って行かれますが、からだは宿営の外で焼かれるからです。 058 HEB 013 012 ですから、イエスも、ご自分の血によって民をきよめるために、門の外で苦しみを受けられました。 058 HEB 013 013 ですから、私たちは、キリストのはずかしめを身に負って、宿営の外に出て、みもとに行こうではありませんか。 058 HEB 013 014 私たちは、この地上に永遠の都を持っているのではなく、むしろ後に来ようとしている都を求めているのです。 058 HEB 013 015 ですから、私たちはキリストを通して、賛美のいけにえ、すなわち御名をたたえるくちびるの果実を、神に絶えずささげようではありませんか。 058 HEB 013 016 善を行なうことと、持ち物を人に分けることとを怠ってはいけません。神はこのようないけにえを喜ばれるからです。 058 HEB 013 017 あなたがたの指導者たちの言うことを聞き、また服従しなさい。この人々は神に弁明する者であって、あなたがたのたましいのために見張りをしているのです。ですから、この人たちが喜んでそのことをし、嘆いてすることにならないようにしなさい。そうでないと、あなたがたの益にならないからです。 058 HEB 013 018 私たちのために祈ってください。私たちは、正しい良心を持っていると確信しており、何事についても正しく行動しようと願っているからです。 058 HEB 013 019 また、もっと祈ってくださるよう特にお願いします。それだけ、私があなたがたのところに早く帰れるようになるからです。 058 HEB 013 020 永遠の契約の血による羊の大牧者、私たちの主イエスを死者の中から導き出された平和の神が、 058 HEB 013 021 イエス・キリストにより、御前でみこころにかなうことを私たちのうちに行ない、あなたがたがみこころを行なうことができるために、すべての良いことについて、あなたがたを完全な者としてくださいますように。どうか、キリストに栄光が世々限りなくありますように。アーメン。 058 HEB 013 022 兄弟たち。このような勧めのことばを受けてください。私はただ手短に書きました。 058 HEB 013 023 私たちの兄弟テモテが釈放されたことをお知らせします。もし彼が早く来れば、私は彼といっしょにあなたがたに会えるでしょう。 058 HEB 013 024 すべてのあなたがたの指導者たち、また、すべての聖徒たちによろしく言ってください。イタリヤから来た人たちが、あなたがたによろしくと言っています。 058 HEB 013 025 恵みが、あなたがたすべてとともにありますように。 # # BOOK 059 JAM James ヤコブの手紙 059 JAM 001 001 神と主イエス・キリストのしもべヤコブが、国外に散っている十二の部族へあいさつを送ります。 059 JAM 001 002 私の兄弟たち。さまざまな試練に会うときは、それをこの上もない喜びと思いなさい。 059 JAM 001 003 信仰がためされると忍耐が生じるということを、あなたがたは知っているからです。 059 JAM 001 004 その忍耐を完全に働かせなさい。そうすれば、あなたがたは、何一つ欠けたところのない、成長を遂げた、完全な者となります。 059 JAM 001 005 あなたがたの中に知恵の欠けた人がいるなら、その人は、だれにでも惜しげなく、とがめることなくお与えになる神に願いなさい。そうすればきっと与えられます。 059 JAM 001 006 ただし、少しも疑わずに、信じて願いなさい。疑う人は、風に吹かれて揺れ動く、海の大波のようです。 059 JAM 001 007 そういう人は、主から何かをいただけると思ってはなりません。 059 JAM 001 008 そういうのは、二心のある人で、その歩む道のすべてに安定を欠いた人です。 059 JAM 001 009 貧しい境遇にある兄弟は、自分の高い身分を誇りとしなさい。 059 JAM 001 010 富んでいる人は、自分が低くされることに誇りを持ちなさい。なぜなら、富んでいる人は、草の花のように過ぎ去って行くからです。 059 JAM 001 011 太陽が熱風を伴って上って来ると、草を枯らしてしまいます。すると、その花は落ち、美しい姿は滅びます。同じように、富んでいる人も、働きの最中に消えて行くのです。 059 JAM 001 012 試練に耐える人は幸いです。耐え抜いて良しと認められた人は、神を愛する者に約束された、いのちの冠を受けるからです。 059 JAM 001 013 だれでも誘惑に会ったとき、神によって誘惑された、と言ってはいけません。神は悪に誘惑されることのない方であり、ご自分でだれを誘惑なさることもありません。 059 JAM 001 014 人はそれぞれ自分の欲に引かれ、おびき寄せられて、誘惑されるのです。 059 JAM 001 015 欲がはらむと罪を生み、罪が熟すると死を生みます。 059 JAM 001 016 愛する兄弟たち。だまされないようにしなさい。 059 JAM 001 017 すべての良い贈り物、また、すべての完全な賜物は上から来るのであって、光を造られた父から下るのです。父には移り変わりや、移り行く影はありません。 059 JAM 001 018 父はみこころのままに、真理のことばをもって私たちをお生みになりました。私たちを、いわば被造物の初穂にするためなのです。 059 JAM 001 019 愛する兄弟たち。あなたがたはそのことを知っているのです。しかし、だれでも、聞くには早く、語るにはおそく、怒るにはおそいようにしなさい。 059 JAM 001 020 人の怒りは、神の義を実現するものではありません。 059 JAM 001 021 ですから、すべての汚れやあふれる悪を捨て去り、心に植えつけられたみことばを、すなおに受け入れなさい。みことばは、あなたがたのたましいを救うことができます。 059 JAM 001 022 また、みことばを実行する人になりなさい。自分を欺いて、ただ聞くだけの者であってはいけません。 059 JAM 001 023 みことばを聞いても行なわない人がいるなら、その人は自分の生まれつきの顔を鏡で見る人のようです。 059 JAM 001 024 自分をながめてから立ち去ると、すぐにそれがどのようであったかを忘れてしまいます。 059 JAM 001 025 ところが、完全な律法、すなわち自由の律法を一心に見つめて離れない人は、すぐに忘れる聞き手にはならないで、事を実行する人になります。こういう人は、その行ないによって祝福されます。 059 JAM 001 026 自分は宗教に熱心であると思っても、自分の舌にくつわをかけず、自分の心を欺いているなら、そのような人の宗教はむなしいものです。 059 JAM 001 027 父なる神の御前できよく汚れのない宗教は、孤児や、やもめたちが困っているときに世話をし、この世から自分をきよく守ることです。 059 JAM 002 001 私の兄弟たち。あなたがたは私たちの栄光の主イエス・キリストを信じる信仰を持っているのですから、人をえこひいきしてはいけません。 059 JAM 002 002 あなたがたの会堂に、金の指輪をはめ、りっぱな服装をした人がはいって来、またみすぼらしい服装をした貧しい人もはいって来たとします。 059 JAM 002 003 あなたがたが、りっぱな服装をした人に目を留めて、「あなたは、こちらの良い席におすわりなさい。」と言い、貧しい人には、「あなたは、そこで立っていなさい。でなければ、私の足もとにすわりなさい。」と言うとすれば、 059 JAM 002 004 あなたがたは、自分たちの間で差別を設け、悪い考え方で人をさばく者になったのではありませんか。 059 JAM 002 005 よく聞きなさい。愛する兄弟たち。神は、この世の貧しい人たちを選んで信仰に富む者とし、神を愛する者に約束されている御国を相続する者とされたではありませんか。 059 JAM 002 006 それなのに、あなたがたは貧しい人を軽蔑したのです。あなたがたをしいたげるのは富んだ人たちではありませんか。また、あなたがたを裁判所に引いて行くのも彼らではありませんか。 059 JAM 002 007 あなたがたがその名で呼ばれている尊い御名をけがすのも彼らではありませんか。 059 JAM 002 008 もし、ほんとうにあなたがたが、聖書に従って、「あなたの隣人をあなた自身のように愛せよ。」という最高の律法を守るなら、あなたがたの行ないはりっぱです。 059 JAM 002 009 しかし、もし人をえこひいきするなら、あなたがたは罪を犯しており、律法によって違反者として責められます。 059 JAM 002 010 律法全体を守っても、一つの点でつまずくなら、その人はすべてを犯した者となったのです。 059 JAM 002 011 なぜなら、「姦淫してはならない。」と言われた方は、「殺してはならない。」とも言われたからです。そこで、姦淫しなくても人殺しをすれば、あなたは律法の違反者となったのです。 059 JAM 002 012 自由の律法によってさばかれる者らしく語り、またそのように行ないなさい。 059 JAM 002 013 あわれみを示したことのない者に対するさばきは、あわれみのないさばきです。あわれみは、さばきに向かって勝ち誇るのです。 059 JAM 002 014 私の兄弟たち。だれかが自分には信仰があると言っても、その人に行ないがないなら、何の役に立ちましょう。そのような信仰がその人を救うことができるでしょうか。 059 JAM 002 015 もし、兄弟また姉妹のだれかが、着る物がなく、また、毎日の食べ物にもこと欠いているようなときに、 059 JAM 002 016 あなたがたのうちだれかが、その人たちに、「安心して行きなさい。暖かになり、十分に食べなさい。」と言っても、もしからだに必要な物を与えないなら、何の役に立つでしょう。 059 JAM 002 017 それと同じように、信仰も、もし行ないがなかったなら、それだけでは、死んだものです。 059 JAM 002 018 さらに、こう言う人もあるでしょう。「あなたは信仰を持っているが、私は行ないを持っています。行ないのないあなたの信仰を、私に見せてください。私は、行ないによって、私の信仰をあなたに見せてあげます。」 059 JAM 002 019 あなたは、神はおひとりだと信じています。りっぱなことです。ですが、悪霊どももそう信じて、身震いしています。 059 JAM 002 020 ああ愚かな人よ。あなたは行ないのない信仰がむなしいことを知りたいと思いますか。 059 JAM 002 021 私たちの父アブラハムは、その子イサクを祭壇にささげたとき、行ないによって義と認められたではありませんか。 059 JAM 002 022 あなたの見ているとおり、彼の信仰は彼の行ないとともに働いたのであり、信仰は行ないによって全うされ、 059 JAM 002 023 そして、「アブラハムは神を信じ、その信仰が彼の義とみなされた。」という聖書のことばが実現し、彼は神の友と呼ばれたのです。 059 JAM 002 024 人は行ないによって義と認められるのであって、信仰だけによるのではないことがわかるでしょう。 059 JAM 002 025 同様に、遊女ラハブも、使者たちを招き入れ、別の道から送り出したため、その行ないによって義と認められたではありませんか。 059 JAM 002 026 たましいを離れたからだが、死んだものであるのと同様に、行ないのない信仰は、死んでいるのです。 059 JAM 003 001 私の兄弟たち。多くの者が教師になってはいけません。ご承知のように、私たち教師は、格別きびしいさばきを受けるのです。 059 JAM 003 002 私たちはみな、多くの点で失敗をするものです。もし、ことばで失敗をしない人がいたら、その人は、からだ全体もりっぱに制御できる完全な人です。 059 JAM 003 003 馬を御するために、くつわをその口にかけると、馬のからだ全体を引き回すことができます。 059 JAM 003 004 また、船を見なさい。あのように大きな物が、強い風に押されているときでも、ごく小さなかじによって、かじを取る人の思いどおりの所へ持って行かれるのです。 059 JAM 003 005 同様に、舌も小さな器官ですが、大きなことを言って誇るのです。ご覧なさい。あのように小さい火があのような大きい森を燃やします。 059 JAM 003 006 舌は火であり、不義の世界です。舌は私たちの器官の一つですが、からだ全体を汚し、人生の車輪を焼き、そしてゲヘナの火によって焼かれます。 059 JAM 003 007 どのような種類の獣も鳥も、はうものも海の生き物も、人類によって制せられるし、すでに制せられています。 059 JAM 003 008 しかし、舌を制御することは、だれにもできません。それは少しもじっとしていない悪であり、死の毒に満ちています。 059 JAM 003 009 私たちは、舌をもって、主であり父である方をほめたたえ、同じ舌をもって、神にかたどって造られた人をのろいます。 059 JAM 003 010 賛美とのろいが同じ口から出て来るのです。私の兄弟たち。このようなことは、あってはなりません。 059 JAM 003 011 泉が甘い水と苦い水を同じ穴からわき上がらせるというようなことがあるでしょうか。 059 JAM 003 012 私の兄弟たち。いちじくの木がオリーブの実をならせたり、ぶどうの木がいちじくの実をならせたりするようなことは、できることでしょうか。塩水が甘い水を出すこともできないことです。 059 JAM 003 013 あなたがたのうちで、知恵のある、賢い人はだれでしょうか。その人は、その知恵にふさわしい柔和な行ないを、良い生き方によって示しなさい。 059 JAM 003 014 しかし、もしあなたがたの心の中に、苦いねたみと敵対心があるならば、誇ってはいけません。真理に逆らって偽ることになります。 059 JAM 003 015 そのような知恵は、上から来たものではなく、地に属し、肉に属し、悪霊に属するものです。 059 JAM 003 016 ねたみや敵対心のあるところには、秩序の乱れや、あらゆる邪悪な行ないがあるからです。 059 JAM 003 017 しかし、上からの知恵は、第一に純真であり、次に平和、寛容、温順であり、また、あわれみと良い実とに満ち、えこひいきがなく、見せかけのないものです。 059 JAM 003 018 義の実を結ばせる種は、平和をつくる人によって平和のうちに蒔かれます。 059 JAM 004 001 何が原因で、あなたがたの間に戦いや争いがあるのでしょう。あなたがたのからだの中で戦う欲望が原因ではありませんか。 059 JAM 004 002 あなたがたは、ほしがっても自分のものにならないと、人殺しをするのです。うらやんでも手に入れることができないと、争ったり、戦ったりするのです。あなたがたのものにならないのは、あなたがたが願わないからです。 059 JAM 004 003 願っても受けられないのは、自分の快楽のために使おうとして、悪い動機で願うからです。 059 JAM 004 004 貞操のない人たち。世を愛することは神に敵することであることがわからないのですか。世の友となりたいと思ったら、その人は自分を神の敵としているのです。 059 JAM 004 005 それとも、「神は、私たちのうちに住まわせた御霊を、ねたむほどに慕っておられる。」という聖書のことばが、無意味だと思うのですか。 059 JAM 004 006 しかし、神は、さらに豊かな恵みを与えてくださいます。ですから、こう言われています。「神は、高ぶる者を退け、へりくだる者に恵みをお授けになる。」 059 JAM 004 007 ですから、神に従いなさい。そして、悪魔に立ち向かいなさい。そうすれば、悪魔はあなたがたから逃げ去ります。 059 JAM 004 008 神に近づきなさい。そうすれば、神はあなたがたに近づいてくださいます。罪ある人たち。手を洗いきよめなさい。二心の人たち。心をきよくしなさい。 059 JAM 004 009 あなたがたは、苦しみなさい。悲しみなさい。泣きなさい。あなたがたの笑いを悲しみに、喜びを憂いに変えなさい。 059 JAM 004 010 主の御前でへりくだりなさい。そうすれば、主があなたがたを高くしてくださいます。 059 JAM 004 011 兄弟たち。互いに悪口を言い合ってはいけません。自分の兄弟の悪口を言い、自分の兄弟をさばく者は、律法の悪口を言い、律法をさばいているのです。あなたが、もし律法をさばくなら、律法を守る者ではなくて、さばく者です。 059 JAM 004 012 律法を定め、さばきを行なう方は、ただひとりであり、その方は救うことも滅ぼすこともできます。隣人をさばくあなたは、いったい何者ですか。 059 JAM 004 013 聞きなさい。「きょうか、あす、これこれの町に行き、そこに一年いて、商売をして、もうけよう。」と言う人たち。 059 JAM 004 014 あなたがたには、あすのことはわからないのです。あなたがたのいのちは、いったいどのようなものですか。あなたがたは、しばらくの間現われて、それから消えてしまう霧にすぎません。 059 JAM 004 015 むしろ、あなたがたはこう言うべきです。「主のみこころなら、私たちは生きていて、このことを、または、あのことをしよう。」 059 JAM 004 016 ところがこのとおり、あなたがたはむなしい誇りをもって高ぶっています。そのような高ぶりは、すべて悪いことです。 059 JAM 004 017 こういうわけで、なすべき正しいことを知っていながら行なわないなら、それはその人の罪です。 059 JAM 005 001 聞きなさい。金持ちたち。あなたがたの上に迫って来る悲惨を思って泣き叫びなさい。 059 JAM 005 002 あなたがたの富は腐っており、あなたがたの着物は虫に食われており、 059 JAM 005 003 あなたがたの金銀にはさびが来て、そのさびが、あなたがたを責める証言となり、あなたがたの肉を火のように食い尽くします。あなたがたは、終わりの日に財宝をたくわえました。 059 JAM 005 004 見なさい。あなたがたの畑の刈り入れをした労働者への未払い賃金が、叫び声をあげています。そして、取り入れをした人たちの叫び声は、万軍の主の耳に届いています。 059 JAM 005 005 あなたがたは、地上でぜいたくに暮らし、快楽にふけり、殺される日にあたって自分の心を太らせました。 059 JAM 005 006 あなたがたは、正しい人を罪に定めて、殺しました。彼はあなたがたに抵抗しません。 059 JAM 005 007 こういうわけですから、兄弟たち。主が来られる時まで耐え忍びなさい。見なさい。農夫は、大地の貴重な実りを、秋の雨や春の雨が降るまで、耐え忍んで待っています。 059 JAM 005 008 あなたがたも耐え忍びなさい。心を強くしなさい。主の来られるのが近いからです。 059 JAM 005 009 兄弟たち。互いにつぶやき合ってはいけません。さばかれないためです。見なさい。さばきの主が、戸口のところに立っておられます。 059 JAM 005 010 苦難と忍耐については、兄弟たち、主の御名によって語った預言者たちを模範にしなさい。 059 JAM 005 011 見なさい。耐え忍んだ人たちは幸いであると、私たちは考えます。あなたがたは、ヨブの忍耐のことを聞いています。また、主が彼になさったことの結末を見たのです。主は慈愛に富み、あわれみに満ちておられる方だということです。 059 JAM 005 012 私の兄弟たちよ。何よりもまず、誓わないようにしなさい。天をさしても地をさしても、そのほかの何をさしてもです。ただ、「はい。」を「はい。」、「いいえ。」を「いいえ。」としなさい。それは、あなたがたが、さばきに会わないためです。 059 JAM 005 013 あなたがたのうちに苦しんでいる人がいますか。その人は祈りなさい。喜んでいる人がいますか。その人は賛美しなさい。 059 JAM 005 014 あなたがたのうちに病気の人がいますか。その人は教会の長老たちを招き、主の御名によって、オリーブ油を塗って祈ってもらいなさい。 059 JAM 005 015 信仰による祈りは、病む人を回復させます。主はその人を立たせてくださいます。また、もしその人が罪を犯していたなら、その罪は赦されます。 059 JAM 005 016 ですから、あなたがたは、互いに罪を言い表わし、互いのために祈りなさい。いやされるためです。義人の祈りは働くと、大きな力があります。 059 JAM 005 017 エリヤは、私たちと同じような人でしたが、雨が降らないように祈ると、三年六か月の間、地に雨が降りませんでした。 059 JAM 005 018 そして、再び祈ると、天は雨を降らせ、地はその実を実らせました。 059 JAM 005 019 私の兄弟たち。あなたがたのうちに、真理から迷い出た者がいて、だれかがその人を連れ戻すようなことがあれば、 059 JAM 005 020 罪人を迷いの道から引き戻す者は、罪人のたましいを死から救い出し、また、多くの罪をおおうのだということを、あなたがたは知っていなさい。 # # BOOK 060 1PE 1 Peter ペテロの手紙第一 060 1PE 001 001 イエス・キリストの使徒ペテロから、ポント、ガラテヤ、カパドキヤ、アジヤ、ビテニヤに散って寄留している、選ばれた人々、すなわち、 060 1PE 001 002 父なる神の予知に従い、御霊のきよめによって、イエス・キリストに従うように、またその血の注ぎかけを受けるように選ばれた人々へ。どうか、恵みと平安が、あなたがたの上にますます豊かにされますように。 060 1PE 001 003 私たちの主イエス・キリストの父なる神がほめたたえられますように。神は、ご自分の大きなあわれみのゆえに、イエス・キリストが死者の中からよみがえられたことによって、私たちを新しく生まれさせて、生ける望みを持つようにしてくださいました。 060 1PE 001 004 また、朽ちることも汚れることも、消えて行くこともない資産を受け継ぐようにしてくださいました。これはあなたがたのために、天にたくわえられているのです。 060 1PE 001 005 あなたがたは、信仰により、神の御力によって守られており、終わりのときに現わされるように用意されている救いをいただくのです。 060 1PE 001 006 そういうわけで、あなたがたは大いに喜んでいます。ただ、いましばらくの間は、やむをえず、さまざまの試練のために、悩まされていますが、 060 1PE 001 007 信仰の試練は、火を通して精練されてもなお朽ちて行く金よりも尊いのであって、イエス・キリストの現われのときに称賛と光栄と栄誉に至るものであることがわかります。 060 1PE 001 008 あなたがたはイエス・キリストを見たことはないけれども愛しており、いま見てはいないけれども信じており、ことばに尽くすことのできない、栄えに満ちた喜びにおどっています。 060 1PE 001 009 これは、信仰の結果である、たましいの救いを得ているからです。 060 1PE 001 010 この救いについては、あなたがたに対する恵みについて預言した預言者たちも、熱心に尋ね、細かく調べました。 060 1PE 001 011 彼らは、自分たちのうちにおられるキリストの御霊が、キリストの苦難とそれに続く栄光を前もってあかしされたとき、だれを、また、どのような時をさして言われたのかを調べたのです。 060 1PE 001 012 彼らは、それらのことが、自分たちのためではなく、あなたがたのための奉仕であるとの啓示を受けました。そして今や、それらのことは、天から送られた聖霊によってあなたがたに福音を語った人々を通して、あなたがたに告げ知らされたのです。それは御使いたちもはっきり見たいと願っていることなのです。 060 1PE 001 013 ですから、あなたがたは、心を引き締め、身を慎み、イエス・キリストの現われのときあなたがたにもたらされる恵みを、ひたすら待ち望みなさい。 060 1PE 001 014 従順な子どもとなり、以前あなたがたが無知であったときのさまざまな欲望に従わず、 060 1PE 001 015 あなたがたを召してくださった聖なる方にならって、あなたがた自身も、あらゆる行ないにおいてきよくなりなさい。 060 1PE 001 016 それは、「わたしが聖であるから、あなたがたも、聖でなければならない。」と書いてあるからです。 060 1PE 001 017 また、人をそれぞれのわざに従って公平にさばかれる方を父と呼んでいるのなら、あなたがたが地上にしばらくとどまっている間の時を、恐れかしこんで過ごしなさい。 060 1PE 001 018 ご承知のように、あなたがたが先祖から伝わったむなしい生き方から贖い出されたのは、銀や金のような朽ちる物にはよらず、 060 1PE 001 019 傷もなく汚れもない小羊のようなキリストの、尊い血によったのです。 060 1PE 001 020 キリストは、世の始まる前から知られていましたが、この終わりの時に、あなたがたのために、現われてくださいました。 060 1PE 001 021 あなたがたは、死者の中からこのキリストをよみがえらせて彼に栄光を与えられた神を、キリストによって信じる人々です。このようにして、あなたがたの信仰と希望は神にかかっているのです。 060 1PE 001 022 あなたがたは、真理に従うことによって、たましいをきよめ、偽りのない兄弟愛を抱くようになったのですから、互いに心から熱く愛し合いなさい。 060 1PE 001 023 あなたがたが新しく生まれたのは、朽ちる種からではなく、朽ちない種からであり、生ける、いつまでも変わることのない、神のことばによるのです。 060 1PE 001 024 「人はみな草のようで、 その栄えは、みな草の花のようだ。 草はしおれ、 花は散る。 060 1PE 001 025 しかし、主のことばは、 とこしえに変わることがない。」 とあるからです。あなたがたに宣べ伝えられた福音のことばがこれです。 060 1PE 002 001 ですから、あなたがたは、すべての悪意、すべてのごまかし、いろいろな偽善やねたみ、すべての悪口を捨てて、 060 1PE 002 002 生まれたばかりの乳飲み子のように、純粋な、みことばの乳を慕い求めなさい。それによって成長し、救いを得るためです。 060 1PE 002 003 あなたがたはすでに、主がいつくしみ深い方であることを味わっているのです。 060 1PE 002 004 主のもとに来なさい。主は、人には捨てられたが、神の目には、選ばれた、尊い、生ける石です。 060 1PE 002 005 あなたがたも生ける石として、霊の家に築き上げられなさい。そして、きよい祭司として、イエス・キリストを通して、神に喜ばれる霊のいけにえをささげなさい。 060 1PE 002 006 なぜなら、聖書にこうあるからです。 「見よ。わたしはシオンに、選ばれた石、 尊い礎石を置く。 彼に信頼する者は、 決して失望させられることがない。」 060 1PE 002 007 したがって、より頼んでいるあなたがたには尊いものですが、より頼んでいない人々にとっては、「家を建てる者たちが捨てた石、それが礎の石となった。」のであって、 060 1PE 002 008 「つまずきの石、妨げの岩。」なのです。彼らがつまずくのは、みことばに従わないからですが、またそうなるように定められていたのです。 060 1PE 002 009 しかし、あなたがたは、選ばれた種族、王である祭司、きよい国民、神の所有とされた民です。それは、あなたがたを、やみの中から、ご自分の驚くべき光の中に招いてくださった方のすばらしいみわざを、あなたがたが宣べ伝えるためなのです。 060 1PE 002 010 あなたがたは、以前は神の民ではなかったのに、今は神の民であり、以前はあわれみを受けない者であったのに、今はあわれみを受けた者です。 060 1PE 002 011 愛する者たちよ。あなたがたにお勧めします。旅人であり寄留者であるあなたがたは、たましいに戦いをいどむ肉の欲を遠ざけなさい。 060 1PE 002 012 異邦人の中にあって、りっぱにふるまいなさい。そうすれば、彼らは、何かのことであなたがたを悪人呼ばわりしていても、あなたがたのそのりっぱな行ないを見て、おとずれの日に神をほめたたえるようになります。 060 1PE 002 013 人の立てたすべての制度に、主のゆえに従いなさい。それが主権者である王であっても、 060 1PE 002 014 また、悪を行なう者を罰し、善を行なう者をほめるように王から遣わされた総督であっても、そうしなさい。 060 1PE 002 015 というのは、善を行なって、愚かな人々の無知の口を封じることは、神のみこころだからです。 060 1PE 002 016 あなたがたは自由人として行動しなさい。その自由を、悪の口実に用いないで、神の奴隷として用いなさい。 060 1PE 002 017 すべての人を敬いなさい。兄弟たちを愛し、神を恐れ、王を尊びなさい。 060 1PE 002 018 しもべたちよ。尊敬の心を込めて主人に服従しなさい。善良で優しい主人に対してだけでなく、横暴な主人に対しても従いなさい。 060 1PE 002 019 人がもし、不当な苦しみを受けながらも、神の前における良心のゆえに、悲しみをこらえるなら、それは喜ばれることです。 060 1PE 002 020 罪を犯したために打ちたたかれて、それを耐え忍んだからといって、何の誉れになるでしょう。けれども、善を行なっていて苦しみを受け、それを耐え忍ぶとしたら、それは、神に喜ばれることです。 060 1PE 002 021 あなたがたが召されたのは、実にそのためです。キリストも、あなたがたのために苦しみを受け、その足跡に従うようにと、あなたがたに模範を残されました。 060 1PE 002 022 キリストは罪を犯したことがなく、その口に何の偽りも見いだされませんでした。 060 1PE 002 023 ののしられても、ののしり返さず、苦しめられても、おどすことをせず、正しくさばかれる方にお任せになりました。 060 1PE 002 024 そして自分から十字架の上で、私たちの罪をその身に負われました。それは、私たちが罪を離れ、義のために生きるためです。キリストの打ち傷のゆえに、あなたがたは、いやされたのです。 060 1PE 002 025 あなたがたは、羊のようにさまよっていましたが、今は、自分のたましいの牧者であり監督者である方のもとに帰ったのです。 060 1PE 003 001 同じように、妻たちよ。自分の夫に服従しなさい。たとい、みことばに従わない夫であっても、妻の無言のふるまいによって、神のものとされるようになるためです。 060 1PE 003 002 それは、あなたがたの、神を恐れかしこむ清い生き方を彼らが見るからです。 060 1PE 003 003 あなたがたは、髪を編んだり、金の飾りをつけたり、着物を着飾るような外面的なものでなく、 060 1PE 003 004 むしろ、柔和で穏やかな霊という朽ちることのないものを持つ、心の中の隠れた人がらを飾りにしなさい。これこそ、神の御前に価値あるものです。 060 1PE 003 005 むかし神に望みを置いた敬虔な婦人たちも、このように自分を飾って、夫に従ったのです。 060 1PE 003 006 たとえばサラも、アブラハムを主と呼んで彼に従いました。あなたがたも、どんなことをも恐れないで善を行なえば、サラの子となるのです。 060 1PE 003 007 同じように、夫たちよ。妻が女性であって、自分よりも弱い器だということをわきまえて妻とともに生活し、いのちの恵みをともに受け継ぐ者として尊敬しなさい。それは、あなたがたの祈りが妨げられないためです。 060 1PE 003 008 最後に申します。あなたがたはみな、心を一つにし、同情し合い、兄弟愛を示し、あわれみ深く、謙遜でありなさい。 060 1PE 003 009 悪をもって悪に報いず、侮辱をもって侮辱に報いず、かえって祝福を与えなさい。あなたがたは祝福を受け継ぐために召されたのだからです。 060 1PE 003 010 「いのちを愛し、 幸いな日々を過ごしたいと思う者は、 舌を押えて悪を言わず、 くちびるを閉ざして偽りを語らず、 060 1PE 003 011 悪から遠ざかって善を行ない、 平和を求めてこれを追い求めよ。 060 1PE 003 012 主の目は義人の上に注がれ、 主の耳は彼らの祈りに傾けられる。 しかし主の顔は、 悪を行なう者に立ち向かう。」 060 1PE 003 013 もし、あなたがたが善に熱心であるなら、だれがあなたがたに害を加えるでしょう。 060 1PE 003 014 いや、たとい義のために苦しむことがあるにしても、それは幸いなことです。彼らの脅かしを恐れたり、それによって心を動揺させたりしてはいけません。 060 1PE 003 015 むしろ、心の中でキリストを主としてあがめなさい。そして、あなたがたのうちにある希望について説明を求める人には、だれにでもいつでも弁明できる用意をしていなさい。 060 1PE 003 016 ただし、優しく、慎み恐れて、また、正しい良心をもって弁明しなさい。そうすれば、キリストにあるあなたがたの正しい生き方をののしる人たちが、あなたがたをそしったことで恥じ入るでしょう。 060 1PE 003 017 もし、神のみこころなら、善を行なって苦しみを受けるのが、悪を行なって苦しみを受けるよりよいのです。 060 1PE 003 018 キリストも一度罪のために死なれました。正しい方が悪い人々の身代わりとなったのです。それは、肉においては死に渡され、霊においては生かされて、私たちを神のみもとに導くためでした。 060 1PE 003 019 その霊において、キリストは捕われの霊たちのところに行ってみことばを宣べられたのです。 060 1PE 003 020 昔、ノアの時代に、箱舟が造られていた間、神が忍耐して待っておられたときに、従わなかった霊たちのことです。わずか八人の人々が、この箱舟の中で、水を通って救われたのです。 060 1PE 003 021 そのことは、今あなたがたを救うバプテスマをあらかじめ示した型なのです。バプテスマは肉体の汚れを取り除くものではなく、正しい良心の神への誓いであり、イエス・キリストの復活によるものです。 060 1PE 003 022 キリストは天に上り、御使いたち、および、もろもろの権威と権力を従えて、神の右の座におられます。 060 1PE 004 001 このように、キリストは肉体において苦しみを受けられたのですから、あなたがたも同じ心構えで自分自身を武装しなさい。肉体において苦しみを受けた人は、罪とのかかわりを断ちました。 060 1PE 004 002 こうしてあなたがたは、地上の残された時を、もはや人間の欲望のためではなく、神のみこころのために過ごすようになるのです。 060 1PE 004 003 あなたがたは、異邦人たちがしたいと思っていることを行ない、好色、情欲、酔酒、遊興、宴会騒ぎ、忌むべき偶像礼拝などにふけったものですが、それは過ぎ去った時で、もう十分です。 060 1PE 004 004 彼らは、あなたがたが自分たちといっしょに度を過ごした放蕩に走らないので不思議に思い、また悪口を言います。 060 1PE 004 005 彼らは、生きている人々をも死んだ人々をも、すぐにもさばこうとしている方に対し、申し開きをしなければなりません。 060 1PE 004 006 というのは、死んだ人々にも福音が宣べ伝えられていたのですが、それはその人々が肉体においては人間としてさばきを受けるが、霊においては神によって生きるためでした。 060 1PE 004 007 万物の終わりが近づきました。ですから、祈りのために、心を整え身を慎みなさい。 060 1PE 004 008 何よりもまず、互いに熱心に愛し合いなさい。愛は多くの罪をおおうからです。 060 1PE 004 009 つぶやかないで、互いに親切にもてなし合いなさい。 060 1PE 004 010 それぞれが賜物を受けているのですから、神のさまざまな恵みの良い管理者として、その賜物を用いて、互いに仕え合いなさい。 060 1PE 004 011 語る人があれば、神のことばにふさわしく語り、奉仕する人があれば、神が豊かに備えてくださる力によって、それにふさわしく奉仕しなさい。それは、すべてのことにおいて、イエス・キリストを通して神があがめられるためです。栄光と支配が世々限りなくキリストにありますように。アーメン。 060 1PE 004 012 愛する者たち。あなたがたを試みるためにあなたがたの間に燃えさかる火の試練を、何か思いがけないことが起こったかのように驚き怪しむことなく、 060 1PE 004 013 むしろ、キリストの苦しみにあずかれるのですから、喜んでいなさい。それは、キリストの栄光が現われるときにも、喜びおどる者となるためです。 060 1PE 004 014 もしキリストの名のために非難を受けるなら、あなたがたは幸いです。なぜなら、栄光の御霊、すなわち神の御霊が、あなたがたの上にとどまってくださるからです。 060 1PE 004 015 あなたがたのうちのだれも、人殺し、盗人、悪を行なう者、みだりに他人に干渉する者として苦しみを受けるようなことがあってはなりません。 060 1PE 004 016 しかし、キリスト者として苦しみを受けるのなら、恥じることはありません。かえって、この名のゆえに神をあがめなさい。 060 1PE 004 017 なぜなら、さばきが神の家から始まる時が来ているからです。さばきが、まず私たちから始まるのだとしたら、神の福音に従わない人たちの終わりは、どうなることでしょう。 060 1PE 004 018 義人がかろうじて救われるのだとしたら、神を敬わない者や罪人たちは、いったいどうなるのでしょう。 060 1PE 004 019 ですから、神のみこころに従ってなお苦しみに会っている人々は、善を行なうにあたって、真実であられる創造者に自分のたましいをお任せしなさい。 060 1PE 005 001 そこで、私は、あなたがたのうちの長老たちに、同じく長老のひとり、キリストの苦難の証人、また、やがて現われる栄光にあずかる者として、お勧めします。 060 1PE 005 002 あなたがたのうちにいる、神の羊の群れを、牧しなさい。強制されてするのではなく、神に従って、自分から進んでそれをなし、卑しい利得を求める心からではなく、心を込めてそれをしなさい。 060 1PE 005 003 あなたがたは、その割り当てられている人たちを支配するのではなく、むしろ群れの模範となりなさい。 060 1PE 005 004 そうすれば、大牧者が現われるときに、あなたがたは、しぼむことのない栄光の冠を受けるのです。 060 1PE 005 005 同じように、若い人たちよ。長老たちに従いなさい。みな互いに謙遜を身に着けなさい。神は高ぶる者に敵対し、へりくだる者に恵みを与えられるからです。 060 1PE 005 006 ですから、あなたがたは、神の力強い御手の下にへりくだりなさい。神が、ちょうど良い時に、あなたがたを高くしてくださるためです。 060 1PE 005 007 あなたがたの思い煩いを、いっさい神にゆだねなさい。神があなたがたのことを心配してくださるからです。 060 1PE 005 008 身を慎み、目をさましていなさい。あなたがたの敵である悪魔が、ほえたけるししのように、食い尽くすべきものを捜し求めながら、歩き回っています。 060 1PE 005 009 堅く信仰に立って、この悪魔に立ち向かいなさい。ご承知のように、世にあるあなたがたの兄弟である人々は同じ苦しみを通って来たのです。 060 1PE 005 010 あらゆる恵みに満ちた神、すなわち、あなたがたをキリストにあってその永遠の栄光の中に招き入れてくださった神ご自身が、あなたがたをしばらくの苦しみのあとで完全にし、堅く立たせ、強くし、不動の者としてくださいます。 060 1PE 005 011 どうか、神のご支配が世々限りなくありますように。アーメン。 060 1PE 005 012 私の認めている忠実な兄弟シルワノによって、私はここに簡潔に書き送り、勧めをし、これが神の真の恵みであることをあかししました。この恵みの中に、しっかりと立っていなさい。 060 1PE 005 013 バビロンにいる、あなたがたとともに選ばれた婦人がよろしくと言っています。また私の子マルコもよろしくと言っています。 060 1PE 005 014 愛の口づけをもって互いにあいさつをかわしなさい。 キリストにあるあなたがたすべての者に、平安がありますように。 # # BOOK 061 2PE 2 Peter ペテロの手紙第二 061 2PE 001 001 イエス・キリストのしもべであり使徒であるシモン・ペテロから、私たちの神であり救い主であるイエス・キリストの義によって私たちと同じ尊い信仰を受けた方々へ。 061 2PE 001 002 神と私たちの主イエスを知ることによって、恵みと平安が、あなたがたの上にますます豊かにされますように。 061 2PE 001 003 というのは、私たちをご自身の栄光と徳によってお召しになった方を私たちが知ったことによって、主イエスの、神としての御力は、いのちと敬虔に関するすべてのことを私たちに与えるからです。 061 2PE 001 004 その栄光と徳によって、尊い、すばらしい約束が私たちに与えられました。それは、あなたがたが、その約束のゆえに、世にある欲のもたらす滅びを免れ、神のご性質にあずかる者となるためです。 061 2PE 001 005 こういうわけですから、あなたがたは、あらゆる努力をして、信仰には徳を、徳には知識を、 061 2PE 001 006 知識には自制を、自制には忍耐を、忍耐には敬虔を、 061 2PE 001 007 敬虔には兄弟愛を、兄弟愛には愛を加えなさい。 061 2PE 001 008 これらがあなたがたに備わり、ますます豊かになるなら、あなたがたは、私たちの主イエス・キリストを知る点で、役に立たない者とか、実を結ばない者になることはありません。 061 2PE 001 009 これらを備えていない者は、近視眼であり、盲目であって、自分の以前の罪がきよめられたことを忘れてしまったのです。 061 2PE 001 010 ですから、兄弟たちよ。ますます熱心に、あなたがたの召されたことと選ばれたこととを確かなものとしなさい。これらのことを行なっていれば、つまずくことなど決してありません。 061 2PE 001 011 このようにあなたがたは、私たちの主であり救い主であるイエス・キリストの永遠の御国にはいる恵みを豊かに加えられるのです。 061 2PE 001 012 ですから、すでにこれらのことを知っており、現に持っている真理に堅く立っているあなたがたであるとはいえ、私はいつもこれらのことを、あなたがたに思い起こさせようとするのです。 061 2PE 001 013 私が地上の幕屋にいる間は、これらのことを思い起こさせることによって、あなたがたを奮い立たせることを、私のなすべきことと思っています。 061 2PE 001 014 それは、私たちの主イエス・キリストも、私にはっきりお示しになったとおり、私がこの幕屋を脱ぎ捨てるのが間近に迫っているのを知っているからです。 061 2PE 001 015 また、私の去った後に、あなたがたがいつでもこれらのことを思い起こせるよう、私は努めたいのです。 061 2PE 001 016 私たちは、あなたがたに、私たちの主イエス・キリストの力と来臨とを知らせましたが、それは、うまく考え出した作り話に従ったのではありません。この私たちは、キリストの威光の目撃者なのです。 061 2PE 001 017 キリストが父なる神から誉れと栄光をお受けになったとき、おごそかな、栄光の神から、こういう御声がかかりました。「これはわたしの愛する子、わたしの喜ぶ者である。」 061 2PE 001 018 私たちは聖なる山で主イエスとともにいたので、天からかかったこの御声を、自分自身で聞いたのです。 061 2PE 001 019 また、私たちは、さらに確かな預言のみことばを持っています。夜明けとなって、明けの明星があなたがたの心の中に上るまでは、暗い所を照らすともしびとして、それに目を留めているとよいのです。 061 2PE 001 020 それには何よりも次のことを知っていなければいけません。すなわち、聖書の預言はみな、人の私的解釈を施してはならない、ということです。 061 2PE 001 021 なぜなら、預言は決して人間の意志によってもたらされたのではなく、聖霊に動かされた人たちが、神からのことばを語ったのだからです。 061 2PE 002 001 しかし、イスラエルの中には、にせ預言者も出ました。同じように、あなたがたの中にも、にせ教師が現われるようになります。彼らは、滅びをもたらす異端をひそかに持ち込み、自分たちを買い取ってくださった主を否定するようなことさえして、自分たちの身にすみやかな滅びを招いています。 061 2PE 002 002 そして、多くの者が彼らの好色にならい、そのために真理の道がそしりを受けるのです。 061 2PE 002 003 また彼らは、貪欲なので、作り事のことばをもってあなたがたを食い物にします。彼らに対するさばきは、昔から怠りなく行なわれており、彼らが滅ぼされないままでいることはありません。 061 2PE 002 004 神は、罪を犯した御使いたちを、容赦せず、地獄に引き渡し、さばきの時まで暗やみの穴の中に閉じ込めてしまわれました。 061 2PE 002 005 また、昔の世界を赦さず、義を宣べ伝えたノアたち八人の者を保護し、不敬虔な世界に洪水を起こされました。 061 2PE 002 006 また、ソドムとゴモラの町を破滅に定めて灰にし、以後の不敬虔な者へのみせしめとされました。 061 2PE 002 007 また、無節操な者たちの好色なふるまいによって悩まされていた義人ロトを救い出されました。 061 2PE 002 008 というのは、この義人は、彼らの間に住んでいましたが、不法な行ないを見聞きして、日々その正しい心を痛めていたからです。 061 2PE 002 009 これらのことでわかるように、主は、敬虔な者たちを誘惑から救い出し、不義な者どもを、さばきの日まで、懲罰のもとに置くことを心得ておられるのです。 061 2PE 002 010 汚れた情欲を燃やし、肉に従って歩み、権威を侮る者たちに対しては、特にそうなのです。彼らは、大胆不敵な、尊大な者たちで、栄誉ある人たちをそしって、恐れるところがありません。 061 2PE 002 011 それに比べると、御使いたちは、勢いにも力にもまさっているにもかかわらず、主の御前に彼らをそしって訴えることはしません。 061 2PE 002 012 ところがこの者どもは、捕えられ殺されるために自然に生まれついた、理性のない動物と同じで、自分が知りもしないことをそしるのです。それで動物が滅ぼされるように、彼らも滅ぼされてしまうのです。 061 2PE 002 013 彼らは不義の報いとして損害を受けるのです。彼らは昼のうちから飲み騒ぐことを楽しみと考えています。彼らは、しみや傷のようなもので、あなたがたといっしょに宴席に連なるときに自分たちのだましごとを楽しんでいるのです。 061 2PE 002 014 その目は淫行に満ちており、罪に関しては飽くことを知らず、心の定まらない者たちを誘惑し、その心は欲に目がありません。彼らはのろいの子です。 061 2PE 002 015 彼らは正しい道を捨ててさまよっています。不義の報酬を愛したベオルの子バラムの道に従ったのです。 061 2PE 002 016 しかし、バラムは自分の罪をとがめられました。ものを言うことのないろばが、人間の声でものを言い、この預言者の気違いざたをはばんだのです。 061 2PE 002 017 この人たちは、水のない泉、突風に吹き払われる霧です。彼らに用意されているものは、まっ暗なやみです。 061 2PE 002 018 彼らは、むなしい大言壮語を吐いており、誤った生き方をしていて、ようやくそれをのがれようとしている人々を肉欲と好色によって誘惑し、 061 2PE 002 019 その人たちに自由を約束しながら、自分自身が滅びの奴隷なのです。人はだれかに征服されれば、その征服者の奴隷となったのです。 061 2PE 002 020 主であり救い主であるイエス・キリストを知ることによって世の汚れからのがれ、その後再びそれに巻き込まれて征服されるなら、そのような人たちの終わりの状態は、初めの状態よりももっと悪いものとなります。 061 2PE 002 021 義の道を知っていながら、自分に伝えられたそのきよい命令にそむくよりは、それを知らなかったほうが、彼らにとってよかったのです。 061 2PE 002 022 彼らに起こったことは、「犬は自分の吐いた物に戻る。」とか、「豚は身を洗って、またどろの中にころがる。」とかいう、ことわざどおりです。 061 2PE 003 001 愛する人たち。いま私がこの第二の手紙をあなたがたに書き送るのは、これらの手紙により、記憶を呼びさまさせて、あなたがたの純真な心を奮い立たせるためなのです。 061 2PE 003 002 それは、聖なる預言者たちによって前もって語られたみことばと、あなたがたの使徒たちが語った、主であり救い主である方の命令とを思い起こさせるためなのです。 061 2PE 003 003 まず第一に、次のことを知っておきなさい。終わりの日に、あざける者どもがやって来てあざけり、自分たちの欲望に従って生活し、 061 2PE 003 004 次のように言うでしょう。「キリストの来臨の約束はどこにあるのか。先祖たちが眠った時からこのかた、何事も創造の初めからのままではないか。」 061 2PE 003 005 こう言い張る彼らは、次のことを見落としています。すなわち、天は古い昔からあり、地は神のことばによって水から出て、水によって成ったのであって、 061 2PE 003 006 当時の世界は、その水により、洪水におおわれて滅びました。 061 2PE 003 007 しかし、今の天と地は、同じみことばによって、火に焼かれるためにとっておかれ、不敬虔な者どものさばきと滅びとの日まで、保たれているのです。 061 2PE 003 008 しかし、愛する人たち。あなたがたは、この一事を見落としてはいけません。すなわち、主の御前では、一日は千年のようであり、千年は一日のようです。 061 2PE 003 009 主は、ある人たちがおそいと思っているように、その約束のことを遅らせておられるのではありません。かえって、あなたがたに対して忍耐深くあられるのであって、ひとりでも滅びることを望まず、すべての人が悔い改めに進むことを望んでおられるのです。 061 2PE 003 010 しかし、主の日は、盗人のようにやって来ます。その日には、天は大きな響きをたてて消えうせ、天の万象は焼けてくずれ去り、地と地のいろいろなわざは焼き尽くされます。 061 2PE 003 011 このように、これらのものはみな、くずれ落ちるものだとすれば、あなたがたは、どれほどきよい生き方をする敬虔な人でなければならないことでしょう。 061 2PE 003 012 そのようにして、神の日の来るのを待ち望み、その日の来るのを早めなければなりません。その日が来れば、そのために、天は燃えてくずれ、天の万象は焼け溶けてしまいます。 061 2PE 003 013 しかし、私たちは、神の約束に従って、正義の住む新しい天と新しい地を待ち望んでいます。 061 2PE 003 014 そういうわけで、愛する人たち。このようなことを待ち望んでいるあなたがたですから、しみも傷もない者として、平安をもって御前に出られるように、励みなさい。 061 2PE 003 015 また、私たちの主の忍耐は救いであると考えなさい。それは、私たちの愛する兄弟パウロも、その与えられた知恵に従って、あなたがたに書き送ったとおりです。 061 2PE 003 016 その中で、ほかのすべての手紙でもそうなのですが、このことについて語っています。その手紙の中には理解しにくいところもあります。無知な、心の定まらない人たちは、聖書の他の個所のばあいもそうするのですが、それらの手紙を曲解し、自分自身に滅びを招いています。 061 2PE 003 017 愛する人たち。そういうわけですから、このことをあらかじめ知っておいて、よく気をつけ、無節操な者たちの迷いに誘い込まれて自分自身の堅実さを失うことにならないようにしなさい。 061 2PE 003 018 私たちの主であり救い主であるイエス・キリストの恵みと知識において成長しなさい。このキリストに、栄光が、今も永遠の日に至るまでもありますように。アーメン。 # # BOOK 062 1JO 1 John ヨハネの手紙第一 062 1JO 001 001 初めからあったもの、私たちが聞いたもの、目で見たもの、じっと見、また手でさわったもの、すなわち、いのちのことばについて、 062 1JO 001 002 ――このいのちが現われ、私たちはそれを見たので、そのあかしをし、あなたがたにこの永遠のいのちを伝えます。すなわち、御父とともにあって、私たちに現わされた永遠のいのちです。―― 062 1JO 001 003 私たちの見たこと、聞いたことを、あなたがたにも伝えるのは、あなたがたも私たちと交わりを持つようになるためです。私たちの交わりとは、御父および御子イエス・キリストとの交わりです。 062 1JO 001 004 私たちがこれらのことを書き送るのは、私たちの喜びが全きものとなるためです。 062 1JO 001 005 神は光であって、神のうちには暗いところが少しもない。これが、私たちがキリストから聞いて、あなたがたに伝える知らせです。 062 1JO 001 006 もし私たちが、神と交わりがあると言っていながら、しかもやみの中を歩んでいるなら、私たちは偽りを言っているのであって、真理を行なってはいません。 062 1JO 001 007 しかし、もし神が光の中におられるように、私たちも光の中を歩んでいるなら、私たちは互いに交わりを保ち、御子イエスの血はすべての罪から私たちをきよめます。 062 1JO 001 008 もし、罪はないと言うなら、私たちは自分を欺いており、真理は私たちのうちにありません。 062 1JO 001 009 もし、私たちが自分の罪を言い表わすなら、神は真実で正しい方ですから、その罪を赦し、すべての悪から私たちをきよめてくださいます。 062 1JO 001 010 もし、罪を犯してはいないと言うなら、私たちは神を偽り者とするのです。神のみことばは私たちのうちにありません。 062 1JO 002 001 私の子どもたち。私がこれらのことを書き送るのは、あなたがたが罪を犯さないようになるためです。もしだれかが罪を犯したなら、私たちには、御父の御前で弁護してくださる方があります。それは、義なるイエス・キリストです。 062 1JO 002 002 この方こそ、私たちの罪のための、――私たちの罪だけでなく全世界のための、――なだめの供え物なのです。 062 1JO 002 003 もし、私たちが神の命令を守るなら、それによって、私たちは神を知っていることがわかります。 062 1JO 002 004 神を知っていると言いながら、その命令を守らない者は、偽り者であり、真理はその人のうちにありません。 062 1JO 002 005 しかし、みことばを守っている者なら、その人のうちには、確かに神の愛が全うされているのです。それによって、私たちが神のうちにいることがわかります。 062 1JO 002 006 神のうちにとどまっていると言う者は、自分でもキリストが歩まれたように歩まなければなりません。 062 1JO 002 007 愛する者たち。私はあなたがたに新しい命令を書いているのではありません。むしろ、これはあなたがたが初めから持っていた古い命令です。その古い命令とは、あなたがたがすでに聞いている、みことばのことです。 062 1JO 002 008 しかし、私は新しい命令としてあなたがたに書き送ります。これはキリストにおいて真理であり、あなたがたにとっても真理です。なぜなら、やみが消え去り、まことの光がすでに輝いているからです。 062 1JO 002 009 光の中にいると言いながら、兄弟を憎んでいる者は、今もなお、やみの中にいるのです。 062 1JO 002 010 兄弟を愛する者は、光の中にとどまり、つまずくことがありません。 062 1JO 002 011 兄弟を憎む者は、やみの中におり、やみの中を歩んでいるのであって、自分がどこへ行くのか知らないのです。やみが彼の目を見えなくしたからです。 062 1JO 002 012 子どもたちよ。私があなたがたに書き送るのは、主の御名によって、あなたがたの罪が赦されたからです。 062 1JO 002 013 父たちよ。私があなたがたに書き送るのは、あなたがたが、初めからおられる方を、知ったからです。若い者たちよ。私があなたがたに書き送るのは、あなたがたが悪い者に打ち勝ったからです。 062 1JO 002 014 小さい者たちよ。私があなたがたに書いて来たのは、あなたがたが御父を知ったからです。父たちよ。私があなたがたに書いて来たのは、あなたがたが、初めからおられる方を、知ったからです。若い者たちよ。私があなたがたに書いて来たのは、あなたがたが強い者であり、神のみことばが、あなたがたのうちにとどまり、そして、あなたがたが悪い者に打ち勝ったからです。 062 1JO 002 015 世をも、世にあるものをも、愛してはなりません。もしだれでも世を愛しているなら、その人のうちに御父を愛する愛はありません。 062 1JO 002 016 すべての世にあるもの、すなわち、肉の欲、目の欲、暮らし向きの自慢などは、御父から出たものではなく、この世から出たものだからです。 062 1JO 002 017 世と世の欲は滅び去ります。しかし、神のみこころを行なう者は、いつまでもながらえます。 062 1JO 002 018 小さい者たちよ。今は終わりの時です。あなたがたが反キリストの来ることを聞いていたとおり、今や多くの反キリストが現われています。それによって、今が終わりの時であることがわかります。 062 1JO 002 019 彼らは私たちの中から出て行きましたが、もともと私たちの仲間ではなかったのです。もし私たちの仲間であったのなら、私たちといっしょにとどまっていたことでしょう。しかし、そうなったのは、彼らがみな私たちの仲間でなかったことが明らかにされるためなのです。 062 1JO 002 020 あなたがたには聖なる方からの注ぎの油があるので、だれでも知識を持っています。 062 1JO 002 021 このように書いて来たのは、あなたがたが真理を知らないからではなく、真理を知っているからであり、また、偽りはすべて真理から出てはいないからです。 062 1JO 002 022 偽り者とは、イエスがキリストであることを否定する者でなくてだれでしょう。御父と御子を否認する者、それが反キリストです。 062 1JO 002 023 だれでも御子を否認する者は、御父を持たず、御子を告白する者は、御父をも持っているのです。 062 1JO 002 024 あなたがたは、初めから聞いたことを、自分たちのうちにとどまらせなさい。もし初めから聞いたことがとどまっているなら、あなたがたも御子および御父のうちにとどまるのです。 062 1JO 002 025 それがキリストご自身の私たちにお与えになった約束であって、永遠のいのちです。 062 1JO 002 026 私は、あなたがたを惑わそうとする人たちについて以上のことを書いて来ました。 062 1JO 002 027 あなたがたのばあいは、キリストから受けた油注ぎをいつも自分たちのうちに持っているので、だれからも教えを受ける必要がありません。その油がすべてのことについてあなたがたを教えるように、――その教えは真理であって偽りではありません。――また、その油があなたがたに教えたとおりに、あなたがたはキリストのうちにとどまるのです。 062 1JO 002 028 そこで、子どもたちよ。キリストのうちにとどまっていなさい。それは、キリストが現われるとき、私たちが信頼を持ち、その来臨のときに、御前で恥じ入るということのないためです。 062 1JO 002 029 もしあなたがたが、神は正しい方であると知っているなら、義を行なう者がみな神から生まれたこともわかるはずです。 062 1JO 003 001 私たちが神の子どもと呼ばれるために、――事実、いま私たちは神の子どもです。――御父はどんなにすばらしい愛を与えてくださったことでしょう。世が私たちを知らないのは、御父を知らないからです。 062 1JO 003 002 愛する者たち。私たちは、今すでに神の子どもです。後の状態はまだ明らかにされていません。しかし、キリストが現われたなら、私たちはキリストに似た者となることがわかっています。なぜならそのとき、私たちはキリストのありのままの姿を見るからです。 062 1JO 003 003 キリストに対するこの望みをいだく者はみな、キリストがきよくあられるように、自分をきよくします。 062 1JO 003 004 罪を犯している者はみな、不法を行なっているのです。罪とは律法に逆らうことなのです。 062 1JO 003 005 キリストが現われたのは罪を取り除くためであったことを、あなたがたは知っています。キリストには何の罪もありません。 062 1JO 003 006 だれでもキリストのうちにとどまる者は、罪のうちを歩みません。罪のうちを歩む者はだれも、キリストを見てもいないし、知ってもいないのです。 062 1JO 003 007 子どもたちよ。だれにも惑わされてはいけません。義を行なう者は、キリストが正しくあられるのと同じように正しいのです。 062 1JO 003 008 罪のうちを歩む者は、悪魔から出た者です。悪魔は初めから罪を犯しているからです。神の子が現われたのは、悪魔のしわざを打ちこわすためです。 062 1JO 003 009 だれでも神から生まれた者は、罪のうちを歩みません。なぜなら、神の種がその人のうちにとどまっているからです。その人は神から生まれたので、罪のうちを歩むことができないのです。 062 1JO 003 010 そのことによって、神の子どもと悪魔の子どもとの区別がはっきりします。義を行なわない者はだれも、神から出た者ではありません。兄弟を愛さない者もそうです。 062 1JO 003 011 互いに愛し合うべきであるということは、あなたがたが初めから聞いている教えです。 062 1JO 003 012 カインのようであってはいけません。彼は悪い者から出た者で、兄弟を殺しました。なぜ兄弟を殺したのでしょう。自分の行ないは悪く、兄弟の行ないは正しかったからです。 062 1JO 003 013 兄弟たち。世があなたがたを憎んでも、驚いてはいけません。 062 1JO 003 014 私たちは、自分が死からいのちに移ったことを知っています。それは、兄弟を愛しているからです。愛さない者は、死のうちにとどまっているのです。 062 1JO 003 015 兄弟を憎む者はみな、人殺しです。いうまでもなく、だれでも人を殺す者のうちに、永遠のいのちがとどまっていることはないのです。 062 1JO 003 016 キリストは、私たちのために、ご自分のいのちをお捨てになりました。それによって私たちに愛がわかったのです。ですから私たちは、兄弟のために、いのちを捨てるべきです。 062 1JO 003 017 世の富を持ちながら、兄弟が困っているのを見ても、あわれみの心を閉ざすような者に、どうして神の愛がとどまっているでしょう。 062 1JO 003 018 子どもたちよ。私たちは、ことばや口先だけで愛することをせず、行ないと真実をもって愛そうではありませんか。 062 1JO 003 019 それによって、私たちは、自分が真理に属するものであることを知り、そして、神の御前に心を安らかにされるのです。 062 1JO 003 020 たとい自分の心が責めてもです。なぜなら、神は私たちの心よりも大きく、そして何もかもご存じだからです。 062 1JO 003 021 愛する者たち。もし自分の心に責められなければ、大胆に神の御前に出ることができ、 062 1JO 003 022 また求めるものは何でも神からいただくことができます。なぜなら、私たちが神の命令を守り、神に喜ばれることを行なっているからです。 062 1JO 003 023 神の命令とは、私たちが御子イエス・キリストの御名を信じ、キリストが命じられたとおりに、私たちが互いに愛し合うことです。 062 1JO 003 024 神の命令を守る者は神のうちにおり、神もまたその人のうちにおられます。神が私たちのうちにおられるということは、神が私たちに与えてくださった御霊によって知るのです。 062 1JO 004 001 愛する者たち。霊だからといって、みな信じてはいけません。それらの霊が神からのものかどうかを、ためしなさい。なぜなら、にせ預言者がたくさん世に出て来たからです。 062 1JO 004 002 人となって来たイエス・キリストを告白する霊はみな、神からのものです。それによって神からの霊を知りなさい。 062 1JO 004 003 イエスを告白しない霊はどれ一つとして神から出たものではありません。それは反キリストの霊です。あなたがたはそれが来ることを聞いていたのですが、今それが世に来ているのです。 062 1JO 004 004 子どもたちよ。あなたがたは神から出た者です。そして彼らに勝ったのです。あなたがたのうちにおられる方が、この世のうちにいる、あの者よりも力があるからです。 062 1JO 004 005 彼らはこの世の者です。ですから、この世のことばを語り、この世もまた彼らの言うことに耳を傾けます。 062 1JO 004 006 私たちは神から出た者です。神を知っている者は、私たちの言うことに耳を傾け、神から出ていない者は、私たちの言うことに耳を貸しません。私たちはこれで真理の霊と偽りの霊とを見分けます。 062 1JO 004 007 愛する者たち。私たちは、互いに愛し合いましょう。愛は神から出ているのです。愛のある者はみな神から生まれ、神を知っています。 062 1JO 004 008 愛のない者に、神はわかりません。なぜなら神は愛だからです。 062 1JO 004 009 神はそのひとり子を世に遣わし、その方によって私たちに、いのちを得させてくださいました。ここに、神の愛が私たちに示されたのです。 062 1JO 004 010 私たちが神を愛したのではなく、神が私たちを愛し、私たちの罪のために、なだめの供え物としての御子を遣わされました。ここに愛があるのです。 062 1JO 004 011 愛する者たち。神がこれほどまでに私たちを愛してくださったのなら、私たちもまた互いに愛し合うべきです。 062 1JO 004 012 いまだかつて、だれも神を見た者はありません。もし私たちが互いに愛し合うなら、神は私たちのうちにおられ、神の愛が私たちのうちに全うされるのです。 062 1JO 004 013 神は私たちに御霊を与えてくださいました。それによって、私たちが神のうちにおり、神も私たちのうちにおられることがわかります。 062 1JO 004 014 私たちは、御父が御子を世の救い主として遣わされたのを見て、今そのあかしをしています。 062 1JO 004 015 だれでも、イエスを神の御子と告白するなら、神はその人のうちにおられ、その人も神のうちにいます。 062 1JO 004 016 私たちは、私たちに対する神の愛を知り、また信じています。神は愛です。愛のうちにいる者は神のうちにおり、神もその人のうちにおられます。 062 1JO 004 017 このことによって、愛が私たちにおいても完全なものとなりました。それは私たちが、さばきの日にも大胆さを持つことができるためです。なぜなら、私たちもこの世にあってキリストと同じような者であるからです。 062 1JO 004 018 愛には恐れがありません。全き愛は恐れを締め出します。なぜなら恐れには刑罰が伴っているからです。恐れる者の愛は、全きものとなっていないのです。 062 1JO 004 019 私たちは愛しています。神がまず私たちを愛してくださったからです。 062 1JO 004 020 神を愛すると言いながら兄弟を憎んでいるなら、その人は偽り者です。目に見える兄弟を愛していない者に、目に見えない神を愛することはできません。 062 1JO 004 021 神を愛する者は、兄弟をも愛すべきです。私たちはこの命令をキリストから受けています。 062 1JO 005 001 イエスがキリストであると信じる者はだれでも、神によって生まれたのです。生んでくださった方を愛する者はだれでも、その方によって生まれた者をも愛します。 062 1JO 005 002 私たちが神を愛してその命令を守るなら、そのことによって、私たちが神の子どもたちを愛していることがわかります。 062 1JO 005 003 神を愛するとは、神の命令を守ることです。その命令は重荷とはなりません。 062 1JO 005 004 なぜなら、神によって生まれた者はみな、世に勝つからです。私たちの信仰、これこそ、世に打ち勝った勝利です。 062 1JO 005 005 世に勝つ者とはだれでしょう。イエスを神の御子と信じる者ではありませんか。 062 1JO 005 006 このイエス・キリストは、水と血とによって来られた方です。ただ水によってだけでなく、水と血とによって来られたのです。そして、あかしをする方は御霊です。御霊は真理だからです。 062 1JO 005 007 あかしするものが三つあります。 062 1JO 005 008 御霊と水と血です。この三つが一つとなるのです。 062 1JO 005 009 もし、私たちが人間のあかしを受け入れるなら、神のあかしはそれにまさるものです。御子についてあかしされたことが神のあかしだからです。 062 1JO 005 010 神の御子を信じる者は、このあかしを自分の心の中に持っています。神を信じない者は、神を偽り者とするのです。神が御子についてあかしされたことを信じないからです。 062 1JO 005 011 そのあかしとは、神が私たちに永遠のいのちを与えられたということ、そしてこのいのちが御子のうちにあるということです。 062 1JO 005 012 御子を持つ者はいのちを持っており、神の御子を持たない者はいのちを持っていません。 062 1JO 005 013 私が神の御子の名を信じているあなたがたに対してこれらのことを書いたのは、あなたがたが永遠のいのちを持っていることを、あなたがたによくわからせるためです。 062 1JO 005 014 何事でも神のみこころにかなう願いをするなら、神はその願いを聞いてくださるということ、これこそ神に対する私たちの確信です。 062 1JO 005 015 私たちの願う事を神が聞いてくださると知れば、神に願ったその事は、すでにかなえられたと知るのです。 062 1JO 005 016 だれでも兄弟が死に至らない罪を犯しているのを見たなら、神に求めなさい。そうすれば神はその人のために、死に至らない罪を犯している人々に、いのちをお与えになります。死に至る罪があります。この罪については、願うようにとは言いません。 062 1JO 005 017 不正はみな罪ですが、死に至らない罪があります。 062 1JO 005 018 神によって生まれた者はだれも罪の中に生きないことを、私たちは知っています。神から生まれた方が彼を守っていてくださるので、悪い者は彼に触れることができないのです。 062 1JO 005 019 私たちは神からの者であり、全世界は悪い者の支配下にあることを知っています。 062 1JO 005 020 しかし、神の御子が来て、真実な方を知る理解力を私たちに与えてくださったことを知っています。それで私たちは、真実な方のうちに、すなわち御子イエス・キリストのうちにいるのです。この方こそ、まことの神、永遠のいのちです。 062 1JO 005 021 子どもたちよ。偶像を警戒しなさい。 # # BOOK 063 2JO 2 John ヨハネの手紙第二 063 2JO 001 001 長老から、選ばれた夫人とその子どもたちへ。私はあなたがたをほんとうに愛しています。私だけでなく、真理を知っている人々がみな、そうです。 063 2JO 001 002 このことは、私たちのうちに宿る真理によることです。そして真理はいつまでも私たちとともにあります。 063 2JO 001 003 真理と愛のうちに、御父と御父の御子イエス・キリストから来る恵みとあわれみと平安は、私たちとともにあります。 063 2JO 001 004 あなたの子どもたちの中に、御父から私たちが受けた命令のとおりに真理のうちを歩んでいる人たちがあるのを知って、私は非常に喜んでいます。 063 2JO 001 005 そこで夫人よ。お願いしたいことがあります。それは私が新しい命令を書くのではなく、初めから私たちが持っていたものなのですが、私たちが互いに愛し合うということです。 063 2JO 001 006 愛とは、御父の命令に従って歩むことであり、命令とは、あなたがたが初めから聞いているとおり、愛のうちを歩むことです。 063 2JO 001 007 なぜお願いするかと言えば、人を惑わす者、すなわち、イエス・キリストが人として来られたことを告白しない者が大ぜい世に出て行ったからです。こういう者は惑わす者であり、反キリストです。 063 2JO 001 008 よく気をつけて、私たちの労苦の実をだいなしにすることなく、豊かな報いを受けるようになりなさい。 063 2JO 001 009 だれでも行き過ぎをして、キリストの教えのうちにとどまらない者は、神を持っていません。その教えのうちにとどまっている者は、御父をも御子をも持っています。 063 2JO 001 010 あなたがたのところに来る人で、この教えを持って来ない者は、家に受け入れてはいけません。その人にあいさつのことばをかけてもいけません。 063 2JO 001 011 そういう人にあいさつすれば、その悪い行ないをともにすることになります。 063 2JO 001 012 あなたがたに書くべきことがたくさんありますが、紙と墨でしたくはありません。あなたがたのところに行って、顔を合わせて語りたいと思います。私たちの喜びが全きものとなるためにです。 063 2JO 001 013 選ばれたあなたの姉妹の子どもたちが、あなたによろしくと言っています。 # # BOOK 064 3JO 3 John ヨハネの手紙第三 064 3JO 001 001 長老から、愛するガイオへ。私はあなたをほんとうに愛しています。 064 3JO 001 002 愛する者よ。あなたが、たましいに幸いを得ているようにすべての点でも幸いを得、また健康であるように祈ります。 064 3JO 001 003 兄弟たちがやって来ては、あなたが真理に歩んでいるその真実を証言してくれるので、私は非常に喜んでいます。 064 3JO 001 004 私の子どもたちが真理に歩んでいることを聞くことほど、私にとって大きな喜びはありません。 064 3JO 001 005 愛する者よ。あなたが、旅をしているあの兄弟たちのために行なっているいろいろなことは、真実な行ないです。 064 3JO 001 006 彼らは教会の集まりであなたの愛についてあかししました。あなたが神にふさわしいしかたで彼らを次の旅に送り出してくれるなら、それはりっぱなことです。 064 3JO 001 007 彼らは御名のために出て行きました。異邦人からは何も受けていません。 064 3JO 001 008 ですから、私たちはこのような人々をもてなすべきです。そうすれば、私たちは真理のために彼らの同労者となれるのです。 064 3JO 001 009 私は教会に対して少しばかり書き送ったのですが、彼らの中でかしらになりたがっているデオテレペスが、私たちの言うことを聞き入れません。 064 3JO 001 010 それで、私が行ったら、彼のしている行為を取り上げるつもりです。彼は意地悪いことばで私たちをののしり、それでもあきたらずに、自分が兄弟たちを受け入れないばかりか、受け入れたいと思う人々の邪魔をし、教会から追い出しているのです。 064 3JO 001 011 愛する者よ。悪を見ならわないで、善を見ならいなさい。善を行なう者は神から出た者であり、悪を行なう者は神を見たことのない者です。 064 3JO 001 012 デメテリオはみなの人からも、また真理そのものからも証言されています。私たちも証言します。私たちの証言が真実であることは、あなたも知っているところです。 064 3JO 001 013 あなたに書き送りたいことがたくさんありましたが、筆と墨でしたくはありません。 064 3JO 001 014 間もなくあなたに会いたいと思います。そして顔を合わせて話し合いましょう。 平安があなたにありますように。友人たちが、あなたによろしくと言っています。そちらの友人たちひとりひとりによろしくと言ってください。 # # BOOK 065 JUD Jude ユダの手紙 065 JUD 001 001 イエス・キリストのしもべであり、ヤコブの兄弟であるユダから、父なる神にあって愛され、イエス・キリストのために守られている、召された方々へ。 065 JUD 001 002 どうか、あわれみと平安と愛が、あなたがたの上に、ますます豊かにされますように。 065 JUD 001 003 愛する人々。私はあなたがたに、私たちがともに受けている救いについて手紙を書こうとして、あらゆる努力をしていましたが、聖徒にひとたび伝えられた信仰のために戦うよう、あなたがたに勧める手紙を書く必要が生じました。 065 JUD 001 004 というのは、ある人々が、ひそかに忍び込んで来たからです。彼らは、このようなさばきに会うと昔から前もってしるされている人々で、不敬虔な者であり、私たちの神の恵みを放縦に変えて、私たちの唯一の支配者であり主であるイエス・キリストを否定する人たちです。 065 JUD 001 005 あなたがたは、すべてのことをすっかり知っているにしても、私はあなたがたに思い出させたいことがあるのです。それは主が、民をエジプトの地から救い出し、次に、信じない人々を滅ぼされたということです。 065 JUD 001 006 また、主は、自分の領域を守らず、自分のおるべき所を捨てた御使いたちを、大いなる日のさばきのために、永遠の束縛をもって、暗やみの下に閉じ込められました。 065 JUD 001 007 また、ソドム、ゴモラおよび周囲の町々も彼らと同じように、好色にふけり、不自然な肉欲を追い求めたので、永遠の火の刑罰を受けて、みせしめにされています。 065 JUD 001 008 それなのに、この人たちもまた同じように、夢見る者であり、肉体を汚し、権威ある者を軽んじ、栄えある者をそしっています。 065 JUD 001 009 御使いのかしらミカエルは、モーセのからだについて、悪魔と論じ、言い争ったとき、あえて相手をののしり、さばくようなことはせず、「主があなたを戒めてくださるように。」と言いました。 065 JUD 001 010 しかし、この人たちは、自分には理解もできないことをそしり、わきまえのない動物のように、本能によって知るような事がらの中で滅びるのです。 065 JUD 001 011 忌まわしいことです。彼らは、カインの道を行き、利益のためにバラムの迷いに陥り、コラのようにそむいて滅びました。 065 JUD 001 012 彼らは、あなたがたの愛餐のしみです。恐れげもなくともに宴を張りますが、自分だけを養っている者であり、風に吹き飛ばされる、水のない雲、実を結ばない、枯れに枯れて、根こそぎにされた秋の木、 065 JUD 001 013 自分の恥のあわをわき立たせる海の荒波、さまよう星です。まっ暗なやみが、彼らのために永遠に用意されています。 065 JUD 001 014 アダムから七代目のエノクも、彼らについて預言してこう言っています。「見よ。主は千万の聖徒を引き連れて来られる。 065 JUD 001 015 すべての者にさばきを行ない、不敬虔な者たちの、神を恐れずに犯した行為のいっさいと、また神を恐れない罪人どもが主に言い逆らった無礼のいっさいとについて、彼らを罪に定めるためである。」 065 JUD 001 016 彼らはぶつぶつ言う者、不平を鳴らす者で、自分の欲望のままに歩んでいます。その口は大きなことを言い、利益のためにへつらって人をほめるのです。 065 JUD 001 017 愛する人々よ。私たちの主イエス・キリストの使徒たちが、前もって語ったことばを思い起こしてください。 065 JUD 001 018 彼らはあなたがたにこう言いました。「終わりの時には、自分の不敬虔な欲望のままにふるまう、あざける者どもが現われる。」 065 JUD 001 019 この人たちは、御霊を持たず、分裂を起こし、生まれつきのままの人間です。 065 JUD 001 020 しかし、愛する人々よ。あなたがたは、自分の持っている最もきよい信仰の上に自分自身を築き上げ、聖霊によって祈り、 065 JUD 001 021 神の愛のうちに自分自身を保ち、永遠のいのちに至らせる、私たちの主イエス・キリストのあわれみを待ち望みなさい。 065 JUD 001 022 疑いを抱く人々をあわれみ、 065 JUD 001 023 火の中からつかみ出して救い、またある人々を、恐れを感じながらあわれみ、肉によって汚されたその下着さえも忌みきらいなさい。 065 JUD 001 024 あなたがたを、つまずかないように守ることができ、傷のない者として、大きな喜びをもって栄光の御前に立たせることのできる方に、 065 JUD 001 025 すなわち、私たちの救い主である唯一の神に、栄光、尊厳、支配、権威が、私たちの主イエス・キリストを通して、永遠の先にも、今も、また世々限りなくありますように。アーメン。 # # BOOK 066 REV Revelation ヨハネの黙示録 066 REV 001 001 イエス・キリストの黙示。これは、すぐに起こるはずの事をそのしもべたちに示すため、神がキリストにお与えになったものである。そしてキリストは、その御使いを遣わして、これをしもべヨハネにお告げになった。 066 REV 001 002 ヨハネは、神のことばとイエス・キリストのあかし、すなわち、彼の見たすべての事をあかしした。 066 REV 001 003 この預言のことばを朗読する者と、それを聞いて、そこに書かれていることを心に留める人々は幸いである。時が近づいているからである。 066 REV 001 004 ヨハネから、アジヤにある七つの教会へ。常にいまし、昔いまし、後に来られる方から、また、その御座の前におられる七つの御霊から、 066 REV 001 005 また、忠実な証人、死者の中から最初によみがえられた方、地上の王たちの支配者であるイエス・キリストから、恵みと平安が、あなたがたにあるように。イエス・キリストは私たちを愛して、その血によって私たちを罪から解き放ち、 066 REV 001 006 また、私たちを王国とし、ご自分の父である神のために祭司としてくださった方である。キリストに栄光と力とが、とこしえにあるように。アーメン。 066 REV 001 007 見よ、彼が、雲に乗って来られる。すべての目、ことに彼を突き刺した者たちが、彼を見る。地上の諸族はみな、彼のゆえに嘆く。しかり。アーメン。 066 REV 001 008 神である主、常にいまし、昔いまし、後に来られる方、万物の支配者がこう言われる。「わたしはアルファであり、オメガである。」 066 REV 001 009 私ヨハネは、あなたがたの兄弟であり、あなたがたとともにイエスにある苦難と御国と忍耐とにあずかっている者であって、神のことばとイエスのあかしとのゆえに、パトモスという島にいた。 066 REV 001 010 私は、主の日に御霊に感じ、私のうしろにラッパの音のような大きな声を聞いた。 066 REV 001 011 その声はこう言った。「あなたの見ることを巻き物にしるして、七つの教会、すなわち、エペソ、スミルナ、ペルガモ、テアテラ、サルデス、フィラデルフィヤ、ラオデキヤに送りなさい。」 066 REV 001 012 そこで私は、私に語りかける声を見ようとして振り向いた。振り向くと、七つの金の燭台が見えた。 066 REV 001 013 それらの燭台の真中には、足までたれた衣を着て、胸に金の帯を締めた、人の子のような方が見えた。 066 REV 001 014 その頭と髪の毛は、白い羊毛のように、また雪のように白く、その目は、燃える炎のようであった。 066 REV 001 015 その足は、炉で精練されて光り輝くしんちゅうのようであり、その声は大水の音のようであった。 066 REV 001 016 また、右手に七つの星を持ち、口からは鋭い両刃の剣が出ており、顔は強く照り輝く太陽のようであった。 066 REV 001 017 それで私は、この方を見たとき、その足もとに倒れて死者のようになった。しかし彼は右手を私の上に置いてこう言われた。「恐れるな。わたしは、最初であり、最後であり、 066 REV 001 018 生きている者である。わたしは死んだが、見よ、いつまでも生きている。また、死とハデスとのかぎを持っている。 066 REV 001 019 そこで、あなたの見た事、今ある事、この後に起こる事を書きしるせ。 066 REV 001 020 わたしの右の手の中に見えた七つの星と、七つの金の燭台について、その秘められた意味を言えば、七つの星は七つの教会の御使いたち、七つの燭台は七つの教会である。 066 REV 002 001 エペソにある教会の御使いに書き送れ。『右手に七つの星を持つ方、七つの金の燭台の間を歩く方が言われる。 066 REV 002 002 「わたしは、あなたの行ないとあなたの労苦と忍耐を知っている。また、あなたが、悪い者たちをがまんすることができず、使徒と自称しているが実はそうでない者たちをためして、その偽りを見抜いたことも知っている。 066 REV 002 003 あなたはよく忍耐して、わたしの名のために耐え忍び、疲れたことがなかった。 066 REV 002 004 しかし、あなたには非難すべきことがある。あなたは初めの愛から離れてしまった。 066 REV 002 005 それで、あなたは、どこから落ちたかを思い出し、悔い改めて、初めの行ないをしなさい。もしそうでなく、悔い改めることをしないならば、わたしは、あなたのところに行って、あなたの燭台をその置かれた所から取りはずしてしまおう。 066 REV 002 006 しかし、あなたにはこのことがある。あなたはニコライ派の人々の行ないを憎んでいる。わたしもそれを憎んでいる。 066 REV 002 007 耳のある者は御霊が諸教会に言われることを聞きなさい。勝利を得る者に、わたしは神のパラダイスにあるいのちの木の実を食べさせよう。」』 066 REV 002 008 また、スミルナにある教会の御使いに書き送れ。『初めであり、終わりである方、死んで、また生きた方が言われる。 066 REV 002 009 「わたしは、あなたの苦しみと貧しさとを知っている。――しかしあなたは実際は富んでいる。――またユダヤ人だと自称しているが、実はそうでなく、かえってサタンの会衆である人たちから、ののしられていることも知っている。 066 REV 002 010 あなたが受けようとしている苦しみを恐れてはいけない。見よ。悪魔はあなたがたをためすために、あなたがたのうちのある人たちを牢に投げ入れようとしている。あなたがたは十日の間苦しみを受ける。死に至るまで忠実でありなさい。そうすれば、わたしはあなたにいのちの冠を与えよう。 066 REV 002 011 耳のある者は御霊が諸教会に言われることを聞きなさい。勝利を得る者は、決して第二の死によってそこなわれることはない。」』 066 REV 002 012 また、ペルガモにある教会の御使いに書き送れ。『鋭い、両刃の剣を持つ方がこう言われる。 066 REV 002 013 「わたしは、あなたの住んでいる所を知っている。そこにはサタンの王座がある。しかしあなたは、わたしの名を堅く保って、わたしの忠実な証人アンテパスがサタンの住むあなたがたのところで殺されたときでも、わたしに対する信仰を捨てなかった。 066 REV 002 014 しかし、あなたには少しばかり非難すべきことがある。あなたのうちに、バラムの教えを奉じている人々がいる。バラムはバラクに教えて、イスラエルの人々の前に、つまずきの石を置き、偶像の神にささげた物を食べさせ、また不品行を行なわせた。 066 REV 002 015 それと同じように、あなたのところにもニコライ派の教えを奉じている人々がいる。 066 REV 002 016 だから、悔い改めなさい。もしそうしないなら、わたしは、すぐにあなたのところに行き、わたしの口の剣をもって彼らと戦おう。 066 REV 002 017 耳のある者は御霊が諸教会に言われることを聞きなさい。わたしは勝利を得る者に隠れたマナを与える。また、彼に白い石を与える。その石には、それを受ける者のほかはだれも知らない、新しい名が書かれている。」』 066 REV 002 018 また、テアテラにある教会の御使いに書き送れ。『燃える炎のような目を持ち、その足は光り輝くしんちゅうのような、神の子が言われる。 066 REV 002 019 「わたしは、あなたの行ないとあなたの愛と信仰と奉仕と忍耐を知っており、また、あなたの近ごろの行ないが初めの行ないにまさっていることも知っている。 066 REV 002 020 しかし、あなたには非難すべきことがある。あなたは、イゼベルという女をなすがままにさせている。この女は、預言者だと自称しているが、わたしのしもべたちを教えて誤りに導き、不品行を行なわせ、偶像の神にささげた物を食べさせている。 066 REV 002 021 わたしは悔い改める機会を与えたが、この女は不品行を悔い改めようとしない。 066 REV 002 022 見よ。わたしは、この女を病の床に投げ込もう。また、この女と姦淫を行なう者たちも、この女の行ないを離れて悔い改めなければ、大きな患難の中に投げ込もう。 066 REV 002 023 また、わたしは、この女の子どもたちをも死病によって殺す。こうして全教会は、わたしが人の思いと心を探る者であることを知るようになる。また、わたしは、あなたがたの行ないに応じてひとりひとりに報いよう。 066 REV 002 024 しかし、テアテラにいる人たちの中で、この教えを受け入れておらず、彼らの言うサタンの深いところをまだ知っていないあなたがたに言う。わたしはあなたがたに、ほかの重荷を負わせない。 066 REV 002 025 ただ、あなたがたの持っているものを、わたしが行くまで、しっかりと持っていなさい。 066 REV 002 026 勝利を得る者、また最後までわたしのわざを守る者には、諸国の民を支配する権威を与えよう。 066 REV 002 027 彼は、鉄の杖をもって土の器を打ち砕くようにして彼らを治める。わたし自身が父から支配の権威を受けているのと同じである。 066 REV 002 028 また、彼に明けの明星を与えよう。 066 REV 002 029 耳のある者は御霊が諸教会に言われることを聞きなさい。」』 066 REV 003 001 また、サルデスにある教会の御使いに書き送れ。『神の七つの御霊、および七つの星を持つ方がこう言われる。「わたしは、あなたの行ないを知っている。あなたは、生きているとされているが、実は死んでいる。 066 REV 003 002 目をさましなさい。そして死にかけているほかの人たちを力づけなさい。わたしは、あなたの行ないが、わたしの神の御前に全うされたとは見ていない。 066 REV 003 003 だから、あなたがどのように受け、また聞いたのかを思い出しなさい。それを堅く守り、また悔い改めなさい。もし、目をさまさなければ、わたしは盗人のように来る。あなたには、わたしがいつあなたのところに来るか、決してわからない。 066 REV 003 004 しかし、サルデスには、その衣を汚さなかった者が幾人かいる。彼らは白い衣を着て、わたしとともに歩む。彼らはそれにふさわしい者だからである。 066 REV 003 005 勝利を得る者は、このように白い衣を着せられる。そして、わたしは、彼の名をいのちの書から消すようなことは決してしない。わたしは彼の名をわたしの父の御前と御使いたちの前で言い表わす。 066 REV 003 006 耳のある者は御霊が諸教会に言われることを聞きなさい。」』 066 REV 003 007 また、フィラデルフィヤにある教会の御使いに書き送れ。 『聖なる方、真実な方、ダビデのかぎを持っている方、彼が開くとだれも閉じる者がなく、彼が閉じるとだれも開く者がない、その方がこう言われる。 066 REV 003 008 「わたしは、あなたの行ないを知っている。見よ。わたしは、だれも閉じることのできない門を、あなたの前に開いておいた。なぜなら、あなたには少しばかりの力があって、わたしのことばを守り、わたしの名を否まなかったからである。 066 REV 003 009 見よ。サタンの会衆に属する者、すなわち、ユダヤ人だと自称しながら実はそうでなくて、うそを言っている者たちに、わたしはこうする。見よ。彼らをあなたの足もとに来てひれ伏させ、わたしがあなたを愛していることを知らせる。 066 REV 003 010 あなたが、わたしの忍耐について言ったことばを守ったから、わたしも、地上に住む者たちを試みるために、全世界に来ようとしている試練の時には、あなたを守ろう。 066 REV 003 011 わたしは、すぐに来る。あなたの冠をだれにも奪われないように、あなたの持っているものをしっかりと持っていなさい。 066 REV 003 012 勝利を得る者を、わたしの神の聖所の柱としよう。彼はもはや決して外に出て行くことはない。わたしは彼の上にわたしの神の御名と、わたしの神の都、すなわち、わたしの神のもとを出て天から下って来る新しいエルサレムの名と、わたしの新しい名とを書きしるす。 066 REV 003 013 耳のある者は御霊が諸教会に言われることを聞きなさい。」』 066 REV 003 014 また、ラオデキヤにある教会の御使いに書き送れ。『アーメンである方、忠実で、真実な証人、神に造られたものの根源である方がこう言われる。 066 REV 003 015 「わたしは、あなたの行ないを知っている。あなたは、冷たくもなく、熱くもない。わたしはむしろ、あなたが冷たいか、熱いかであってほしい。 066 REV 003 016 このように、あなたはなまぬるく、熱くも冷たくもないので、わたしの口からあなたを吐き出そう。 066 REV 003 017 あなたは、自分は富んでいる、豊かになった、乏しいものは何もないと言って、実は自分がみじめで、哀れで、貧しくて、盲目で、裸の者であることを知らない。 066 REV 003 018 わたしはあなたに忠告する。豊かな者となるために、火で精練された金をわたしから買いなさい。また、あなたの裸の恥を現わさないために着る白い衣を買いなさい。また、目が見えるようになるため、目に塗る目薬を買いなさい。 066 REV 003 019 わたしは、愛する者をしかったり、懲らしめたりする。だから、熱心になって、悔い改めなさい。 066 REV 003 020 見よ。わたしは、戸の外に立ってたたく。だれでも、わたしの声を聞いて戸をあけるなら、わたしは、彼のところにはいって、彼とともに食事をし、彼もわたしとともに食事をする。 066 REV 003 021 勝利を得る者を、わたしとともにわたしの座に着かせよう。それは、わたしが勝利を得て、わたしの父とともに父の御座に着いたのと同じである。 066 REV 003 022 耳のある者は御霊が諸教会に言われることを聞きなさい。」』」 066 REV 004 001 その後、私は見た。見よ。天に一つの開いた門があった。また、先にラッパのような声で私に呼びかけるのが聞こえたあの初めの声が言った。「ここに上れ。この後、必ず起こる事をあなたに示そう。」 066 REV 004 002 たちまち私は御霊に感じた。すると見よ。天に一つの御座があり、その御座に着いている方があり、 066 REV 004 003 その方は、碧玉や赤めのうのように見え、その御座の回りには、緑玉のように見える虹があった。 066 REV 004 004 また、御座の回りに二十四の座があった。これらの座には、白い衣を着て、金の冠を頭にかぶった二十四人の長老たちがすわっていた。 066 REV 004 005 御座からいなずまと声と雷鳴が起こった。七つのともしびが御座の前で燃えていた。神の七つの御霊である。 066 REV 004 006 御座の前は、水晶に似たガラスの海のようであった。御座の中央と御座の回りに、前もうしろも目で満ちた四つの生き物がいた。 066 REV 004 007 第一の生き物は、ししのようであり、第二の生き物は雄牛のようであり、第三の生き物は人間のような顔を持ち、第四の生き物は空飛ぶわしのようであった。 066 REV 004 008 この四つの生き物には、それぞれ六つの翼があり、その回りも内側も目で満ちていた。彼らは、昼も夜も絶え間なく叫び続けた。 「聖なるかな、聖なるかな、聖なるかな。神であられる主、万物の支配者、昔いまし、常にいまし、後に来られる方。」 066 REV 004 009 また、これらの生き物が、永遠に生きておられる、御座に着いている方に、栄光、誉れ、感謝をささげるとき、 066 REV 004 010 二十四人の長老は御座に着いている方の御前にひれ伏して、永遠に生きておられる方を拝み、自分の冠を御座の前に投げ出して言った。 066 REV 004 011 「主よ。われらの神よ。あなたは、栄光と誉れと力とを受けるにふさわしい方です。あなたは万物を創造し、あなたのみこころゆえに、万物は存在し、また創造されたのですから。」 066 REV 005 001 また、私は、御座にすわっておられる方の右の手に巻き物があるのを見た。それは内側にも外側にも文字が書きしるされ、七つの封印で封じられていた。 066 REV 005 002 また私は、ひとりの強い御使いが、大声でふれ広めて、「巻き物を開いて、封印を解くのにふさわしい者はだれか。」と言っているのを見た。 066 REV 005 003 しかし、天にも、地にも、地の下にも、だれひとりその巻き物を開くことのできる者はなく、見ることのできる者もいなかった。 066 REV 005 004 巻き物を開くのにも、見るのにも、ふさわしい者がだれも見つからなかったので、私は激しく泣いていた。 066 REV 005 005 すると、長老のひとりが、私に言った。「泣いてはいけない。見なさい。ユダ族から出たしし、ダビデの根が勝利を得たので、その巻き物を開いて、七つの封印を解くことができます。」 066 REV 005 006 さらに私は、御座――そこには、四つの生き物がいる。――と、長老たちとの間に、ほふられたと見える小羊が立っているのを見た。これに七つの角と七つの目があった。その目は、全世界に遣わされた神の七つの御霊である。 066 REV 005 007 小羊は近づいて、御座にすわる方の右の手から、巻き物を受け取った。 066 REV 005 008 彼が巻き物を受け取ったとき、四つの生き物と二十四人の長老は、おのおの、立琴と、香のいっぱいはいった金の鉢とを持って、小羊の前にひれ伏した。この香は聖徒たちの祈りである。 066 REV 005 009 彼らは、新しい歌を歌って言った。 「あなたは、巻き物を受け取って、その封印を解くのにふさわしい方です。あなたは、ほふられて、その血により、あらゆる部族、国語、民族、国民の中から、神のために人々を贖い、 066 REV 005 010 私たちの神のために、この人々を王とし、祭司とされました。彼らは地上を治めるのです。」 066 REV 005 011 また私は見た。私は、御座と生き物と長老たちとの回りに、多くの御使いたちの声を聞いた。その数は万の幾万倍、千の幾千倍であった。 066 REV 005 012 彼らは大声で言った。 「ほふられた小羊は、力と、富と、知恵と、勢いと、誉れと、栄光と、賛美を受けるにふさわしい方です。」 066 REV 005 013 また私は、天と地と、地の下と、海の上のあらゆる造られたもの、およびその中にある生き物がこう言うのを聞いた。 「御座にすわる方と、小羊とに、賛美と誉れと栄光と力が永遠にあるように。」 066 REV 005 014 また、四つの生き物はアーメンと言い、長老たちはひれ伏して拝んだ。 066 REV 006 001 また、私は見た。小羊が七つの封印の一つを解いたとき、四つの生き物の一つが、雷のような声で「来なさい。」と言うのを私は聞いた。 066 REV 006 002 私は見た。見よ。白い馬であった。それに乗っている者は弓を持っていた。彼は冠を与えられ、勝利の上にさらに勝利を得ようとして出て行った。 066 REV 006 003 小羊が第二の封印を解いたとき、私は、第二の生き物が、「来なさい。」と言うのを聞いた。 066 REV 006 004 すると、別の、火のように赤い馬が出て来た。これに乗っている者は、地上から平和を奪い取ることが許された。人々が、互いに殺し合うようになるためであった。また、彼に大きな剣が与えられた。 066 REV 006 005 小羊が第三の封印を解いたとき、私は、第三の生き物が、「来なさい。」と言うのを聞いた。私は見た。見よ。黒い馬であった。これに乗っている者は量りを手に持っていた。 066 REV 006 006 すると私は、一つの声のようなものが、四つの生き物の間で、こう言うのを聞いた。「小麦一枡は一デナリ。大麦三枡も一デナリ。オリーブ油とぶどう酒に害を与えてはいけない。」 066 REV 006 007 小羊が第四の封印を解いたとき、私は、第四の生き物の声が、「来なさい。」と言うのを聞いた。 066 REV 006 008 私は見た。見よ。青ざめた馬であった。これに乗っている者の名は死といい、そのあとにはハデスがつき従った。彼らに地上の四分の一を剣とききんと死病と地上の獣によって殺す権威が与えられた。 066 REV 006 009 小羊が第五の封印を解いたとき、私は、神のことばと、自分たちが立てたあかしとのために殺された人々のたましいが祭壇の下にいるのを見た。 066 REV 006 010 彼らは大声で叫んで言った。「聖なる、真実な主よ。いつまでさばきを行なわず、地に住む者に私たちの血の復讐をなさらないのですか。」 066 REV 006 011 すると、彼らのひとりひとりに白い衣が与えられた。そして彼らは、「あなたがたと同じしもべ、また兄弟たちで、あなたがたと同じように殺されるはずの人々の数が満ちるまで、もうしばらくの間、休んでいなさい。」と言い渡された。 066 REV 006 012 私は見た。小羊が第六の封印を解いたとき、大きな地震が起こった。そして、太陽は毛の荒布のように黒くなり、月の全面が血のようになった。 066 REV 006 013 そして天の星が地上に落ちた。それは、いちじくが、大風に揺られて、青い実を振り落とすようであった。 066 REV 006 014 天は、巻き物が巻かれるように消えてなくなり、すべての山や島がその場所から移された。 066 REV 006 015 地上の王、高官、千人隊長、金持ち、勇者、あらゆる奴隷と自由人が、ほら穴と山の岩間に隠れ、 066 REV 006 016 山や岩に向かってこう言った。「私たちの上に倒れかかって、御座にある方の御顔と小羊の怒りとから、私たちをかくまってくれ。 066 REV 006 017 御怒りの大いなる日が来たのだ。だれがそれに耐えられよう。」 066 REV 007 001 この後、私は見た。四人の御使いが地の四隅に立って、地の四方の風を堅く押え、地にも海にもどんな木にも、吹きつけないようにしていた。 066 REV 007 002 また私は見た。もうひとりの御使いが、生ける神の印を持って、日の出るほうから上って来た。彼は、地をも海をもそこなう権威を与えられた四人の御使いたちに、大声で叫んで言った。 066 REV 007 003 「私たちが神のしもべたちの額に印を押してしまうまで、地にも海にも木にも害を与えてはいけない。」 066 REV 007 004 それから私が、印を押された人々の数を聞くと、イスラエルの子孫のあらゆる部族の者が印を押されていて、十四万四千人であった。 066 REV 007 005 ユダの部族で印を押された者が一万二千人、ルベンの部族で一万二千人、ガドの部族で一万二千人、 066 REV 007 006 アセルの部族で一万二千人、ナフタリの部族で一万二千人、マナセの部族で一万二千人、 066 REV 007 007 シメオンの部族で一万二千人、レビの部族で一万二千人、イッサカルの部族で一万二千人、 066 REV 007 008 ゼブルンの部族で一万二千人、ヨセフの部族で一万二千人、ベニヤミンの部族で一万二千人、印を押された者がいた。 066 REV 007 009 その後、私は見た。見よ。あらゆる国民、部族、民族、国語のうちから、だれにも数えきれぬほどの大ぜいの群衆が、白い衣を着、しゅろの枝を手に持って、御座と小羊との前に立っていた。 066 REV 007 010 彼らは、大声で叫んで言った。 「救いは、御座にある私たちの神にあり、小羊にある。」 066 REV 007 011 御使いたちはみな、御座と長老たちと四つの生き物との回りに立っていたが、彼らも御座の前にひれ伏し、神を拝して、 066 REV 007 012 言った。 「アーメン。賛美と栄光と知恵と感謝と誉れと力と勢いが、永遠に私たちの神にあるように。アーメン。」 066 REV 007 013 長老のひとりが私に話しかけて、「白い衣を着ているこの人たちは、いったいだれですか。どこから来たのですか。」と言った。 066 REV 007 014 そこで、私は、「主よ。あなたこそ、ご存じです。」と言った。すると、彼は私にこう言った。「彼らは、大きな患難から抜け出て来た者たちで、その衣を小羊の血で洗って、白くしたのです。 066 REV 007 015 だから彼らは神の御座の前にいて、聖所で昼も夜も、神に仕えているのです。そして、御座に着いておられる方も、彼らの上に幕屋を張られるのです。 066 REV 007 016 彼らはもはや、飢えることもなく、渇くこともなく、太陽もどんな炎熱も彼らを打つことはありません。 066 REV 007 017 なぜなら、御座の正面におられる小羊が、彼らの牧者となり、いのちの水の泉に導いてくださるからです。また、神は彼らの目の涙をすっかりぬぐい取ってくださるのです。」 066 REV 008 001 小羊が第七の封印を解いたとき、天に半時間ばかり静けさがあった。 066 REV 008 002 それから私は、神の御前に立つ七人の御使いを見た。彼らに七つのラッパが与えられた。 066 REV 008 003 また、もうひとりの御使いが出て来て、金の香炉を持って祭壇のところに立った。彼にたくさんの香が与えられた。すべての聖徒の祈りとともに、御座の前にある金の祭壇の上にささげるためであった。 066 REV 008 004 香の煙は、聖徒たちの祈りとともに、御使いの手から神の御前に立ち上った。 066 REV 008 005 それから、御使いは、その香炉を取り、祭壇の火でそれを満たしてから、地に投げつけた。すると、雷鳴と声といなずまと地震が起こった。 066 REV 008 006 すると、七つのラッパを持っていた七人の御使いはラッパを吹く用意をした。 066 REV 008 007 第一の御使いがラッパを吹き鳴らした。すると、血の混じった雹と火とが現われ、地上に投げられた。そして地上の三分の一が焼け、木の三分の一も焼け、青草が全部焼けてしまった。 066 REV 008 008 第二の御使いがラッパを吹き鳴らした。すると、火の燃えている大きな山のようなものが、海に投げ込まれた。そして海の三分の一が血となった。 066 REV 008 009 すると、海の中にいた、いのちのあるものの三分の一が死に、舟の三分の一も打ちこわされた。 066 REV 008 010 第三の御使いがラッパを吹き鳴らした。すると、たいまつのように燃えている大きな星が天から落ちて来て、川々の三分の一とその水源に落ちた。 066 REV 008 011 この星の名は苦よもぎと呼ばれ、川の水の三分の一は苦よもぎのようになった。水が苦くなったので、その水のために多くの人が死んだ。 066 REV 008 012 第四の御使いがラッパを吹き鳴らした。すると、太陽の三分の一と、月の三分の一と、星の三分の一とが打たれたので、三分の一は暗くなり、昼の三分の一は光を失い、また夜も同様であった。 066 REV 008 013 また私は見た。一羽のわしが中天を飛びながら、大声で言うのを聞いた。「わざわいが来る。わざわいが、わざわいが来る。地に住む人々に。あと三人の御使いがラッパを吹き鳴らそうとしている。」 066 REV 009 001 第五の御使いがラッパを吹き鳴らした。すると、私は一つの星が天から地上に落ちるのを見た。その星には底知れぬ穴を開くかぎが与えられた。 066 REV 009 002 その星が、底知れぬ穴を開くと、穴から大きな炉の煙のような煙が立ち上り、太陽も空も、この穴の煙によって暗くなった。 066 REV 009 003 その煙の中から、いなごが地上に出て来た。彼らには、地のさそりの持つような力が与えられた。 066 REV 009 004 そして彼らは、地の草やすべての青草や、すべての木には害を加えないで、ただ、額に神の印を押されていない人間にだけ害を加えるように言い渡された。 066 REV 009 005 しかし、人間を殺すことは許されず、ただ五か月の間苦しめることだけが許された。その与えた苦痛は、さそりが人を刺したときのような苦痛であった。 066 REV 009 006 その期間には、人々は死を求めるが、どうしても見いだせず、死を願うが、死が彼らから逃げて行くのである。 066 REV 009 007 そのいなごの形は、出陣の用意の整った馬に似ていた。頭に金の冠のようなものを着け、顔は人間の顔のようであった。 066 REV 009 008 また女の髪のような毛があり、歯は、ししの歯のようであった。 066 REV 009 009 また、鉄の胸当てのような胸当てを着け、その翼の音は、多くの馬に引かれた戦車が、戦いに馳せつけるときの響きのようであった。 066 REV 009 010 そのうえ彼らは、さそりのような尾と針とを持っており、尾には、五か月間人間に害を加える力があった。 066 REV 009 011 彼らは、底知れぬ所の御使いを王にいただいている。彼の名はヘブル語でアバドンといい、ギリシヤ語でアポリュオンという。 066 REV 009 012 第一のわざわいは過ぎ去った。見よ。この後なお二つのわざわいが来る。 066 REV 009 013 第六の御使いがラッパを吹き鳴らした。すると、私は神の御前にある金の祭壇の四隅から出る声を聞いた。 066 REV 009 014 その声がラッパを持っている第六の御使いに言った。「大川ユーフラテスのほとりにつながれている四人の御使いを解き放せ。」 066 REV 009 015 すると、定められた時、日、月、年のために用意されていた四人の御使いが、人類の三分の一を殺すために解き放された。 066 REV 009 016 騎兵の軍勢の数は二億であった。私はその数を聞いた。 066 REV 009 017 私が幻の中で見た馬とそれに乗る人たちの様子はこうであった。騎兵は、火のような赤、くすぶった青、燃える硫黄の色の胸当てを着けており、馬の頭は、ししの頭のようで、口からは火と煙と硫黄とが出ていた。 066 REV 009 018 これらの三つの災害、すなわち、彼らの口から出ている火と煙と硫黄とのために、人類の三分の一は殺された。 066 REV 009 019 馬の力はその口とその尾とにあって、その尾は蛇のようであり、それに頭があって、その頭で害を加えるのである。 066 REV 009 020 これらの災害によって殺されずに残った人々は、その手のわざを悔い改めないで、悪霊どもや、金、銀、銅、石、木で造られた、見ることも聞くことも歩くこともできない偶像を拝み続け、 066 REV 009 021 その殺人や、魔術や、不品行や、盗みを悔い改めなかった。 066 REV 010 001 また私は、もうひとりの強い御使いが、雲に包まれて、天から降りて来るのを見た。その頭上には虹があって、その顔は太陽のようであり、その足は火の柱のようであった。 066 REV 010 002 その手には開かれた小さな巻き物を持ち、右足は海の上に、左足は地の上に置き、 066 REV 010 003 ししがほえるときのように大声で叫んだ。彼が叫んだとき、七つの雷がおのおの声を出した。 066 REV 010 004 七つの雷が語ったとき、私は書き留めようとした。すると、天から声があって、「七つの雷が言ったことは封じて、書きしるすな。」と言うのを聞いた。 066 REV 010 005 それから、私の見た海と地との上に立つ御使いは、右手を天に上げて、 066 REV 010 006 永遠に生き、天とその中にあるもの、地とその中にあるもの、海とその中にあるものを創造された方をさして、誓った。「もはや時が延ばされることはない。 066 REV 010 007 第七の御使いが吹き鳴らそうとしているラッパの音が響くその日には、神の奥義は、神がご自身のしもべである預言者たちに告げられたとおりに成就する。」 066 REV 010 008 それから、前に私が天から聞いた声が、また私に話しかけて言った。「さあ行って、海と地との上に立っている御使いの手にある、開かれた巻き物を受け取りなさい。」 066 REV 010 009 それで、私は御使いのところに行って、「その小さな巻き物を下さい。」と言った。すると、彼は言った。「それを取って食べなさい。それはあなたの腹には苦いが、あなたの口には蜜のように甘い。」 066 REV 010 010 そこで、私は御使いの手からその小さな巻き物を取って食べた。すると、それは口には蜜のように甘かった。それを食べてしまうと、私の腹は苦くなった。 066 REV 010 011 そのとき、彼らは私に言った。「あなたは、もう一度、もろもろの民族、国民、国語、王たちについて預言しなければならない。」 066 REV 011 001 それから、私に杖のような測りざおが与えられた。すると、こう言う者があった。「立って、神の聖所と祭壇と、また、そこで礼拝している人を測れ。 066 REV 011 002 聖所の外の庭は、異邦人に与えられているゆえ、そのままに差し置きなさい。測ってはいけない。彼らは聖なる都を四十二か月の間踏みにじる。 066 REV 011 003 それから、わたしがわたしのふたりの証人に許すと、彼らは荒布を着て千二百六十日の間預言する。」 066 REV 011 004 彼らは全地の主の御前にある二本のオリーブの木、また二つの燭台である。 066 REV 011 005 彼らに害を加えようとする者があれば、火が彼らの口から出て、敵を滅ぼし尽くす。彼らに害を加えようとする者があれば、必ずこのように殺される。 066 REV 011 006 この人たちは、預言をしている期間は雨が降らないように天を閉じる力を持っており、また、水を血に変え、そのうえ、思うままに、何度でも、あらゆる災害をもって地を打つ力を持っている。 066 REV 011 007 そして彼らがあかしを終えると、底知れぬ所から上って来る獣が、彼らと戦って勝ち、彼らを殺す。 066 REV 011 008 彼らの死体は、霊的な理解ではソドムやエジプトと呼ばれる大きな都の大通りにさらされる。彼らの主もその都で十字架につけられたのである。 066 REV 011 009 もろもろの民族、部族、国語、国民に属する人々が、三日半の間、彼らの死体をながめていて、その死体を墓に納めることを許さない。 066 REV 011 010 また地に住む人々は、彼らのことで喜び祝って、互いに贈り物を贈り合う。それは、このふたりの預言者が、地に住む人々を苦しめたからである。 066 REV 011 011 しかし、三日半の後、神から出たいのちの息が、彼らにはいり、彼らが足で立ち上がったので、それを見ていた人々は非常な恐怖に襲われた。 066 REV 011 012 そのときふたりは、天から大きな声がして、「ここに上れ。」と言うのを聞いた。そこで、彼らは雲に乗って天に上った。彼らの敵はそれを見た。 066 REV 011 013 そのとき、大地震が起こって、都の十分の一が倒れた。この地震のため七千人が死に、生き残った人々は、恐怖に満たされ、天の神をあがめた。 066 REV 011 014 第二のわざわいは過ぎ去った。見よ。第三のわざわいがすぐに来る。 066 REV 011 015 第七の御使いがラッパを吹き鳴らした。すると、天に大きな声々が起こって言った。 「この世の国は私たちの主およびそのキリストのものとなった。主は永遠に支配される。」 066 REV 011 016 それから、神の御前で自分たちの座に着いている二十四人の長老たちも、地にひれ伏し、神を礼拝して、 066 REV 011 017 言った。 「万物の支配者、常にいまし、昔います神である主。あなたが、その偉大な力を働かせて、王となられたことを感謝します。 066 REV 011 018 諸国の民は怒りました。しかし、あなたの御怒りの日が来ました。死者のさばかれる時、あなたのしもべである預言者たち、聖徒たち、また小さい者も大きい者もすべてあなたの御名を恐れかしこむ者たちに報いの与えられる時、地を滅ぼす者どもの滅ぼされる時です。」 066 REV 011 019 それから、天にある、神の神殿が開かれた。神殿の中に、契約の箱が見えた。また、いなずま、声、雷鳴、地震が起こり、大きな雹が降った。 066 REV 012 001 また、巨大なしるしが天に現われた。ひとりの女が太陽を着て、月を足の下に踏み、頭には十二の星の冠をかぶっていた。 066 REV 012 002 この女は、みごもっていたが、産みの苦しみと痛みのために、叫び声をあげた。 066 REV 012 003 また、別のしるしが天に現われた。見よ。大きな赤い竜である。七つの頭と十本の角とを持ち、その頭には七つの冠をかぶっていた。 066 REV 012 004 その尾は、天の星の三分の一を引き寄せると、それらを地上に投げた。また、竜は子を産もうとしている女の前に立っていた。彼女が子を産んだとき、その子を食い尽くすためであった。 066 REV 012 005 女は男の子を産んだ。この子は、鉄の杖をもって、すべての国々の民を牧するはずである。その子は神のみもと、その御座に引き上げられた。 066 REV 012 006 女は荒野に逃げた。そこには、千二百六十日の間彼女を養うために、神によって備えられた場所があった。 066 REV 012 007 さて、天に戦いが起こって、ミカエルと彼の使いたちは、竜と戦った。それで、竜とその使いたちは応戦したが、 066 REV 012 008 勝つことができず、天にはもはや彼らのいる場所がなくなった。 066 REV 012 009 こうして、この巨大な竜、すなわち、悪魔とか、サタンとか呼ばれて、全世界を惑わす、あの古い蛇は投げ落とされた。彼は地上に投げ落とされ、彼の使いどもも彼とともに投げ落とされた。 066 REV 012 010 そのとき私は、天で大きな声が、こう言うのを聞いた。 「今や、私たちの神の救いと力と国と、また、神のキリストの権威が現われた。私たちの兄弟たちの告発者、日夜彼らを私たちの神の御前で訴えている者が投げ落とされたからである。 066 REV 012 011 兄弟たちは、小羊の血と、自分たちのあかしのことばのゆえに彼に打ち勝った。彼らは死に至るまでもいのちを惜しまなかった。 066 REV 012 012 それゆえ、天とその中に住む者たち。喜びなさい。しかし、地と海とには、わざわいが来る。悪魔が自分の時の短いことを知り、激しく怒って、そこに下ったからである。」 066 REV 012 013 自分が地上に投げ落とされたのを知った竜は、男の子を産んだ女を追いかけた。 066 REV 012 014 しかし、女は大わしの翼を二つ与えられた。自分の場所である荒野に飛んで行って、そこで一時と二時と半時の間、蛇の前をのがれて養われるためであった。 066 REV 012 015 ところが、蛇はその口から水を川のように女のうしろへ吐き出し、彼女を大水で押し流そうとした。 066 REV 012 016 しかし、地は女を助け、その口を開いて、竜が口から吐き出した川を飲み干した。 066 REV 012 017 すると、竜は女に対して激しく怒り、女の子孫の残りの者、すなわち、神の戒めを守り、イエスのあかしを保っている者たちと戦おうとして出て行った。 066 REV 013 001 そして、彼は海べの砂の上に立った。 また私は見た。海から一匹の獣が上って来た。これには十本の角と七つの頭とがあった。その角には十の冠があり、その頭には神をけがす名があった。 066 REV 013 002 私の見たその獣は、ひょうに似ており、足は熊の足のようで、口はししの口のようであった。竜はこの獣に、自分の力と位と大きな権威とを与えた。 066 REV 013 003 その頭のうちの一つは打ち殺されたかと思われたが、その致命的な傷も直ってしまった。そこで、全地は驚いて、その獣に従い、 066 REV 013 004 そして、竜を拝んだ。獣に権威を与えたのが竜だからである。また彼らは獣をも拝んで、「だれがこの獣に比べられよう。だれがこれと戦うことができよう。」と言った。 066 REV 013 005 この獣は、傲慢なことを言い、けがしごとを言う口を与えられ、四十二か月間活動する権威を与えられた。 066 REV 013 006 そこで、彼はその口を開いて、神に対するけがしごとを言い始めた。すなわち、神の御名と、その幕屋、すなわち、天に住む者たちをののしった。 066 REV 013 007 彼はまた聖徒たちに戦いをいどんで打ち勝つことが許され、また、あらゆる部族、民族、国語、国民を支配する権威を与えられた。 066 REV 013 008 地に住む者で、ほふられた小羊のいのちの書に、世の初めからその名の書きしるされていない者はみな、彼を拝むようになる。 066 REV 013 009 耳のある者は聞きなさい。 066 REV 013 010 とりこになるべき者は、とりこにされて行く。剣で殺す者は、自分も剣で殺されなければならない。ここに聖徒の忍耐と信仰がある。 066 REV 013 011 また、私は見た。もう一匹の獣が地から上って来た。それには小羊のような二本の角があり、竜のようにものを言った。 066 REV 013 012 この獣は、最初の獣が持っているすべての権威をその獣の前で働かせた。また、地と地に住む人々に、致命的な傷の直った最初の獣を拝ませた。 066 REV 013 013 また、人々の前で、火を天から地に降らせるような大きなしるしを行なった。 066 REV 013 014 また、あの獣の前で行なうことを許されたしるしをもって地上に住む人々を惑わし、剣の傷を受けながらもなお生き返ったあの獣の像を造るように、地上に住む人々に命じた。 066 REV 013 015 それから、その獣の像に息を吹き込んで、獣の像がもの言うことさえもできるようにし、また、その獣の像を拝まない者をみな殺させた。 066 REV 013 016 また、小さい者にも、大きい者にも、富んでいる者にも、貧しい者にも、自由人にも、奴隷にも、すべての人々にその右の手かその額かに、刻印を受けさせた。 066 REV 013 017 また、その刻印、すなわち、あの獣の名、またはその名の数字を持っている者以外は、だれも、買うことも、売ることもできないようにした。 066 REV 013 018 ここに知恵がある。思慮ある者はその獣の数字を数えなさい。その数字は人間をさしているからである。その数字は六百六十六である。 066 REV 014 001 また私は見た。見よ。小羊がシオンの山の上に立っていた。また小羊とともに十四万四千人の人たちがいて、その額には小羊の名と、小羊の父の名とがしるしてあった。 066 REV 014 002 私は天からの声を聞いた。大水の音のようで、また、激しい雷鳴のようであった。また、私の聞いたその声は、立琴をひく人々が立琴をかき鳴らしている音のようでもあった。 066 REV 014 003 彼らは、御座の前と、四つの生き物および長老たちの前とで、新しい歌を歌った。しかし地上から贖われた十四万四千人のほかには、だれもこの歌を学ぶことができなかった。 066 REV 014 004 彼らは女によって汚されたことのない人々である。彼らは童貞なのである。彼らは、小羊が行く所には、どこにでもついて行く。彼らは、神および小羊にささげられる初穂として、人々の中から贖われたのである。 066 REV 014 005 彼らの口には偽りがなかった。彼らは傷のない者である。 066 REV 014 006 また私は、もうひとりの御使いが中天を飛ぶのを見た。彼は、地上に住む人々、すなわち、あらゆる国民、部族、国語、民族に宣べ伝えるために、永遠の福音を携えていた。 066 REV 014 007 彼は大声で言った。「神を恐れ、神をあがめよ。神のさばきの時が来たからである。天と地と海と水の源を創造した方を拝め。」 066 REV 014 008 また、第二の、別の御使いが続いてやって来て、言った。「大バビロンは倒れた。倒れた。激しい御怒りを引き起こすその不品行のぶどう酒を、すべての国々の民に飲ませた者。」 066 REV 014 009 また、第三の、別の御使いも、彼らに続いてやって来て、大声で言った。「もし、だれでも、獣とその像を拝み、自分の額か手かに刻印を受けるなら、 066 REV 014 010 そのような者は、神の怒りの杯に混ぜ物なしに注がれた神の怒りのぶどう酒を飲む。また、聖なる御使いたちと小羊との前で、火と硫黄とで苦しめられる。 066 REV 014 011 そして、彼らの苦しみの煙は、永遠にまでも立ち上る。獣とその像とを拝む者、まただれでも獣の名の刻印を受ける者は、昼も夜も休みを得ない。 066 REV 014 012 神の戒めを守り、イエスに対する信仰を持ち続ける聖徒たちの忍耐はここにある。」 066 REV 014 013 また私は、天からこう言っている声を聞いた。「書きしるせ。『今から後、主にあって死ぬ死者は幸いである。』」御霊も言われる。「しかり。彼らはその労苦から解き放されて休むことができる。彼らの行ないは彼らについて行くからである。」 066 REV 014 014 また、私は見た。見よ。白い雲が起こり、その雲に人の子のような方が乗っておられた。頭には金の冠をかぶり、手には鋭いかまを持っておられた。 066 REV 014 015 すると、もうひとりの御使いが聖所から出て来て、雲に乗っておられる方に向かって大声で叫んだ。「かまを入れて刈り取ってください。地の穀物は実ったので、取り入れる時が来ましたから。」 066 REV 014 016 そこで、雲に乗っておられる方が、地にかまを入れると地は刈り取られた。 066 REV 014 017 また、もうひとりの御使いが、天の聖所から出て来たが、この御使いも、鋭いかまを持っていた。 066 REV 014 018 すると、火を支配する権威を持ったもうひとりの御使いが、祭壇から出て来て、鋭いかまを持つ御使いに大声で叫んで言った。「その鋭いかまを入れ、地のぶどうのふさを刈り集めよ。ぶどうはすでに熟しているのだから。」 066 REV 014 019 そこで御使いは地にかまを入れ、地のぶどうを刈り集めて、神の激しい怒りの大きな酒ぶねに投げ入れた。 066 REV 014 020 その酒ぶねは都の外で踏まれたが、血は、その酒ぶねから流れ出て、馬のくつわに届くほどになり、千六百スタディオンに広がった。 066 REV 015 001 また私は、天にもう一つの巨大な驚くべきしるしを見た。七人の御使いが、最後の七つの災害を携えていた。神の激しい怒りはここに窮まるのである。 066 REV 015 002 私は、火の混じった、ガラスの海のようなものを見た。獣と、その像と、その名を示す数字とに打ち勝った人々が、神の立琴を手にして、このガラスの海のほとりに立っていた。 066 REV 015 003 彼らは、神のしもべモーセの歌と小羊の歌とを歌って言った。 「あなたのみわざは偉大であり、驚くべきものです。主よ。万物の支配者である神よ。あなたの道は正しく、真実です。もろもろの民の王よ。 066 REV 015 004 主よ。だれかあなたを恐れず、御名をほめたたえない者があるでしょうか。ただあなただけが、聖なる方です。すべての国々の民は来て、あなたの御前にひれ伏します。あなたの正しいさばきが、明らかにされたからです。」 066 REV 015 005 その後、また私は見た。天にある、あかしの幕屋の聖所が開いた。 066 REV 015 006 そしてその聖所から、七つの災害を携えた七人の御使いが出て来た。彼らは、きよい光り輝く亜麻布を着て、胸には金の帯を締めていた。 066 REV 015 007 また、四つの生き物の一つが、永遠に生きておられる神の御怒りの満ちた七つの金の鉢を、七人の御使いに渡した。 066 REV 015 008 聖所は神の栄光と神の大能から立ち上る煙で満たされ、七人の御使いたちの七つの災害が終わるまでは、だれもその聖所に、はいることができなかった。 066 REV 016 001 また、私は、大きな声が聖所から出て、七人の御使いに言うのを聞いた。「行って、神の激しい怒りの七つの鉢を、地に向けてぶちまけよ。」 066 REV 016 002 そこで、第一の御使いが出て行き、鉢を地に向けてぶちまけた。すると、獣の刻印を受けている人々と、獣の像を拝む人々に、ひどい悪性のはれものができた。 066 REV 016 003 第二の御使いが鉢を海にぶちまけた。すると、海は死者の血のような血になった。海の中のいのちのあるものは、みな死んだ。 066 REV 016 004 第三の御使いが鉢を川と水の源とにぶちまけた。すると、それらは血になった。 066 REV 016 005 また私は、水をつかさどる御使いがこう言うのを聞いた。「常にいまし、昔います聖なる方。あなたは正しい方です。なぜならあなたは、このようなさばきをなさったからです。 066 REV 016 006 彼らは聖徒たちや預言者たちの血を流しましたが、あなたは、その血を彼らに飲ませました。彼らは、そうされるにふさわしい者たちです。」 066 REV 016 007 また私は、祭壇がこう言うのを聞いた。「しかり。主よ。万物の支配者である神よ。あなたのさばきは真実な、正しいさばきです。」 066 REV 016 008 第四の御使いが鉢を太陽に向けてぶちまけた。すると、太陽は火で人々を焼くことを許された。 066 REV 016 009 こうして、人々は激しい炎熱によって焼かれた。しかも、彼らは、これらの災害を支配する権威を持つ神の御名に対してけがしごとを言い、悔い改めて神をあがめることをしなかった。 066 REV 016 010 第五の御使いが鉢を獣の座にぶちまけた。すると、獣の国は暗くなり、人々は苦しみのあまり舌をかんだ。 066 REV 016 011 そして、その苦しみと、はれものとのゆえに、天の神に対してけがしごとを言い、自分の行ないを悔い改めようとしなかった。 066 REV 016 012 第六の御使いが鉢を大ユーフラテス川にぶちまけた。すると、水は、日の出るほうから来る王たちに道を備えるために、かれてしまった。 066 REV 016 013 また、私は竜の口と、獣の口と、にせ預言者の口とから、かえるのような汚れた霊どもが三つ出て来るのを見た。 066 REV 016 014 彼らはしるしを行なう悪霊どもの霊である。彼らは全世界の王たちのところに出て行く。万物の支配者である神の大いなる日の戦いに備えて、彼らを集めるためである。 066 REV 016 015 ――見よ。わたしは盗人のように来る。目をさまして、身に着物を着け、裸で歩く恥を人に見られないようにする者は幸いである。―― 066 REV 016 016 こうして彼らは、ヘブル語でハルマゲドンと呼ばれる所に王たちを集めた。 066 REV 016 017 第七の御使いが鉢を空中にぶちまけた。すると、大きな声が御座を出て、聖所の中から出て来て、「事は成就した。」と言った。 066 REV 016 018 すると、いなずまと声と雷鳴があり、大きな地震があった。この地震は人間が地上に住んで以来、かつてなかったほどのもので、それほどに大きな、強い地震であった。 066 REV 016 019 また、あの大きな都は三つに裂かれ、諸国の民の町々は倒れた。そして、大バビロンは、神の前に覚えられて、神の激しい怒りのぶどう酒の杯を与えられた。 066 REV 016 020 島はすべて逃げ去り、山々は見えなくなった。 066 REV 016 021 また、一タラントほどの大きな雹が、人々の上に天から降って来た。人々は、この雹の災害のため、神にけがしごとを言った。その災害が非常に激しかったからである。 066 REV 017 001 また、七つの鉢を持つ七人の御使いのひとりが来て、私に話して、こう言った。「ここに来なさい。大水の上にすわっている大淫婦へのさばきを見せましょう。 066 REV 017 002 地の王たちは、この女と不品行を行ない、地に住む人々も、この女の不品行のぶどう酒に酔ったのです。」 066 REV 017 003 それから、御使いは、御霊に感じた私を荒野に連れて行った。すると私は、ひとりの女が緋色の獣に乗っているのを見た。その獣は神をけがす名で満ちており、七つの頭と十本の角を持っていた。 066 REV 017 004 この女は紫と緋の衣を着ていて、金と宝石と真珠とで身を飾り、憎むべきものや自分の不品行の汚れでいっぱいになった金の杯を手に持っていた。 066 REV 017 005 その額には、意味の秘められた名が書かれていた。すなわち、「すべての淫婦と地の憎むべきものとの母、大バビロン。」という名であった。 066 REV 017 006 そして、私はこの女が、聖徒たちの血とイエスの証人たちの血に酔っているのを見た。私はこの女を見たとき、非常に驚いた。 066 REV 017 007 すると、御使いは私にこう言った。「なぜ驚くのですか。私は、あなたに、この女の秘義と、この女を乗せた、七つの頭と十本の角とを持つ獣の秘義とを話してあげましょう。 066 REV 017 008 あなたの見た獣は、昔いたが、今はいません。しかし、やがて底知れぬ所から上って来ます。そして彼は、ついには滅びます。地上に住む者たちで、世の初めからいのちの書に名を書きしるされていない者は、その獣が、昔はいたが、今はおらず、やがて現われるのを見て驚きます。 066 REV 017 009 ここに知恵の心があります。七つの頭とは、この女がすわっている七つの山で、七人の王たちのことです。 066 REV 017 010 五人はすでに倒れたが、ひとりは今おり、ほかのひとりは、まだ来ていません。しかし彼が来れば、しばらくの間とどまるはずです。 066 REV 017 011 また、昔いたが今はいない獣について言えば、彼は八番目でもありますが、先の七人のうちのひとりです。そして彼はついには滅びます。 066 REV 017 012 あなたが見た十本の角は、十人の王たちで、彼らは、まだ国を受けてはいませんが、獣とともに、一時だけ王の権威を受けます。 066 REV 017 013 この者どもは心を一つにしており、自分たちの力と権威とをその獣に与えます。 066 REV 017 014 この者どもは小羊と戦いますが、小羊は彼らに打ち勝ちます。なぜならば、小羊は主の主、王の王だからです。また彼とともにいる者たちは、召された者、選ばれた者、忠実な者だからです。」 066 REV 017 015 御使いはまた私に言った。「あなたが見た水、すなわち淫婦がすわっている所は、もろもろの民族、群衆、国民、国語です。 066 REV 017 016 あなたが見た十本の角と、あの獣とは、その淫婦を憎み、彼女を荒廃させ、裸にし、その肉を食い、彼女を火で焼き尽くすようになります。 066 REV 017 017 それは、神が、みことばの成就するときまで、神のみこころを行なう思いを彼らの心に起こさせ、彼らが心を一つにして、その支配権を獣に与えるようにされたからです。 066 REV 017 018 あなたが見たあの女は、地上の王たちを支配する大きな都のことです。」 066 REV 018 001 この後、私は、もうひとりの御使いが、大きな権威を帯びて、天から下って来るのを見た。地はその栄光のために明るくなった。 066 REV 018 002 彼は力強い声で叫んで言った。「倒れた。大バビロンが倒れた。そして、悪霊の住まい、あらゆる汚れた霊どもの巣くつ、あらゆる汚れた、憎むべき鳥どもの巣くつとなった。 066 REV 018 003 それは、すべての国々の民が、彼女の不品行に対する激しい御怒りのぶどう酒を飲み、地上の王たちは、彼女と不品行を行ない、地上の商人たちは、彼女の極度の好色によって富を得たからである。」 066 REV 018 004 それから、私は、天からのもう一つの声がこう言うのを聞いた。「わが民よ。この女から離れなさい。その罪にあずからないため、また、その災害を受けないためです。 066 REV 018 005 なぜなら、彼女の罪は積み重なって天にまで届き、神は彼女の不正を覚えておられるからです。 066 REV 018 006 あなたがたは、彼女が支払ったものをそのまま彼女に返し、彼女の行ないに応じて二倍にして戻しなさい。彼女が混ぜ合わせた杯の中には、彼女のために二倍の量を混ぜ合わせなさい。 066 REV 018 007 彼女が自分を誇り、好色にふけったと同じだけの苦しみと悲しみとを、彼女に与えなさい。彼女は心の中で『私は女王の座に着いている者であり、やもめではないから、悲しみを知らない。』と言うからです。 066 REV 018 008 それゆえ一日のうちに、さまざまの災害、すなわち死病、悲しみ、飢えが彼女を襲い、彼女は火で焼き尽くされます。彼女をさばく神である主は力の強い方だからです。 066 REV 018 009 彼女と不品行を行ない、好色にふけった地上の王たちは、彼女が火で焼かれる煙を見ると、彼女のことで泣き、悲しみます。 066 REV 018 010 彼らは、彼女の苦しみを恐れたために、遠く離れて立っていて、こう言います。『わざわいが来た。わざわいが来た。大きな都よ。力強い都、バビロンよ。あなたのさばきは、一瞬のうちに来た。』 066 REV 018 011 また、地上の商人たちは彼女のことで泣き悲しみます。もはや彼らの商品を買う者がだれもいないからです。 066 REV 018 012 商品とは、金、銀、宝石、真珠、麻布、紫布、絹、緋布、香木、さまざまの象牙細工、高価な木や銅や鉄や大理石で造ったあらゆる種類の器具、 066 REV 018 013 また、肉桂、香料、香、香油、乳香、ぶどう酒、オリーブ油、麦粉、麦、牛、羊、それに馬、車、奴隷、また人のいのちです。 066 REV 018 014 また、あなたの心の望みである熟したくだものは、あなたから遠ざかってしまい、あらゆるはでな物、はなやかな物は消えうせて、もはや、決してそれらの物を見いだすことができません。 066 REV 018 015 これらの物を商って彼女から富を得ていた商人たちは、彼女の苦しみを恐れたために、遠く離れて立っていて、泣き悲しんで、 066 REV 018 016 言います。『わざわいが来た。わざわいが来た。麻布、紫布、緋布を着て、金、宝石、真珠を飾りにしていた大きな都よ。 066 REV 018 017 あれほどの富が、一瞬のうちに荒れすたれてしまった。』また、すべての船長、すべての船客、水夫、海で働く者たちも、遠く離れて立っていて、 066 REV 018 018 彼女が焼かれる煙を見て、叫んで言いました。『このすばらしい都のような所がほかにあろうか。』 066 REV 018 019 それから、彼らは、頭にちりをかぶって、泣き悲しみ、叫んで言いました。『わざわいが来た。わざわいが来た。大きな都よ。海に舟を持つ者はみな、この都のおごりによって富を得ていたのに、それが一瞬のうちに荒れすたれるとは。』 066 REV 018 020 おお、天よ、聖徒たちよ、使徒たちよ、預言者たちよ。この都のことで喜びなさい。神は、あなたがたのために、この都にさばきを宣告されたからです。」 066 REV 018 021 また、ひとりの強い御使いが、大きい、ひき臼のような石を取り上げ、海に投げ入れて言った。「大きな都バビロンは、このように激しく打ち倒されて、もはやなくなって消えうせてしまう。 066 REV 018 022 立琴をひく者、歌を歌う者、笛を吹く者、ラッパを鳴らす者の声は、もうおまえのうちに聞かれなくなる。あらゆる技術を持った職人たちも、もうおまえのうちに見られなくなる。ひき臼の音も、もうおまえのうちに聞かれなくなる。 066 REV 018 023 ともしびの光は、もうおまえのうちに輝かなくなる。花婿、花嫁の声も、もうおまえのうちに聞かれなくなる。なぜなら、おまえの商人たちは地上の力ある者どもで、すべての国々の民がおまえの魔術にだまされていたからだ。 066 REV 018 024 また、預言者や聖徒たちの血、および地上で殺されたすべての人々の血が、この都の中に見いだされたからだ。」 066 REV 019 001 この後、私は、天に大群衆の大きい声のようなものが、こう言うのを聞いた。 「ハレルヤ。救い、栄光、力は、われらの神のもの。 066 REV 019 002 神のさばきは真実で、正しいからである。神は不品行によって地を汚した大淫婦をさばき、ご自分のしもべたちの血の報復を彼女にされたからである。」 066 REV 019 003 彼らは再び言った。「ハレルヤ。彼女の煙は永遠に立ち上る。」 066 REV 019 004 すると、二十四人の長老と四つの生き物はひれ伏し、御座についておられる神を拝んで、「アーメン。ハレルヤ。」と言った。 066 REV 019 005 また、御座から声が出て言った。 「すべての、神のしもべたち。小さい者も大きい者も、神を恐れかしこむ者たちよ。われらの神を賛美せよ。」 066 REV 019 006 また、私は大群衆の声、大水の音、激しい雷鳴のようなものが、こう言うのを聞いた。 「ハレルヤ。万物の支配者である、われらの神である主は王となられた。 066 REV 019 007 私たちは喜び楽しみ、神をほめたたえよう。小羊の婚姻の時が来て、花嫁はその用意ができたのだから。 066 REV 019 008 花嫁は、光り輝く、きよい麻布の衣を着ることを許された。その麻布とは、聖徒たちの正しい行ないである。」 066 REV 019 009 御使いは私に「小羊の婚宴に招かれた者は幸いだ、と書きなさい。」と言い、また、「これは神の真実のことばです。」と言った。 066 REV 019 010 そこで、私は彼を拝もうとして、その足もとにひれ伏した。すると、彼は私に言った。「いけません。私は、あなたや、イエスのあかしを堅く保っているあなたの兄弟たちと同じしもべです。神を拝みなさい。イエスのあかしは預言の霊です。」 066 REV 019 011 また、私は開かれた天を見た。見よ。白い馬がいる。それに乗った方は、「忠実また真実。」と呼ばれる方であり、義をもってさばきをし、戦いをされる。 066 REV 019 012 その目は燃える炎であり、その頭には多くの王冠があって、ご自身のほかだれも知らない名が書かれていた。 066 REV 019 013 その方は血に染まった衣を着ていて、その名は「神のことば」と呼ばれた。 066 REV 019 014 天にある軍勢はまっ白な、きよい麻布を着て、白い馬に乗って彼につき従った。 066 REV 019 015 この方の口からは諸国の民を打つために、鋭い剣が出ていた。この方は、鉄の杖をもって彼らを牧される。この方はまた、万物の支配者である神の激しい怒りの酒ぶねを踏まれる。 066 REV 019 016 その着物にも、ももにも、「王の王、主の主。」という名が書かれていた。 066 REV 019 017 また私は、太陽の中にひとりの御使いが立っているのを見た。彼は大声で叫び、中天を飛ぶすべての鳥に言った。「さあ、神の大宴会に集まり、 066 REV 019 018 王の肉、千人隊長の肉、勇者の肉、馬とそれに乗る者の肉、すべての自由人と奴隷、小さい者と大きい者の肉を食べよ。」 066 REV 019 019 また私は、獣と地上の王たちとその軍勢が集まり、馬に乗った方とその軍勢と戦いを交えるのを見た。 066 REV 019 020 すると、獣は捕えられた。また、獣の前でしるしを行ない、それによって獣の刻印を受けた人々と獣の像を拝む人々とを惑わしたあのにせ預言者も、彼といっしょに捕えられた。そして、このふたりは、硫黄の燃えている火の池に、生きたままで投げ込まれた。 066 REV 019 021 残りの者たちも、馬に乗った方の口から出る剣によって殺され、すべての鳥が、彼らの肉を飽きるほどに食べた。 066 REV 020 001 また私は、御使いが底知れぬ所のかぎと大きな鎖とを手に持って、天から下って来るのを見た。 066 REV 020 002 彼は、悪魔でありサタンである竜、あの古い蛇を捕え、これを千年の間縛って、 066 REV 020 003 底知れぬ所に投げ込んで、そこを閉じ、その上に封印して、千年の終わるまでは、それが諸国の民を惑わすことのないようにした。サタンは、そのあとでしばらくの間、解き放されなければならない。 066 REV 020 004 また私は、多くの座を見た。彼らはその上にすわった。そしてさばきを行なう権威が彼らに与えられた。また私は、イエスのあかしと神のことばとのゆえに首をはねられた人たちのたましいと、獣やその像を拝まず、その額や手に獣の刻印を押されなかった人たちを見た。彼らは生き返って、キリストとともに、千年の間王となった。 066 REV 020 005 そのほかの死者は、千年の終わるまでは、生き返らなかった。これが第一の復活である。 066 REV 020 006 この第一の復活にあずかる者は幸いな者、聖なる者である。この人々に対しては、第二の死は、なんの力も持っていない。彼らは神とキリストとの祭司となり、キリストとともに、千年の間王となる。 066 REV 020 007 しかし千年の終わりに、サタンはその牢から解き放され、 066 REV 020 008 地の四方にある諸国の民、すなわち、ゴグとマゴグを惑わすために出て行き、戦いのために彼らを召集する。彼らの数は海べの砂のようである。 066 REV 020 009 彼らは、地上の広い平地に上って来て、聖徒たちの陣営と愛された都とを取り囲んだ。すると、天から火が降って来て、彼らを焼き尽くした。 066 REV 020 010 そして、彼らを惑わした悪魔は火と硫黄との池に投げ込まれた。そこは獣も、にせ預言者もいる所で、彼らは永遠に昼も夜も苦しみを受ける。 066 REV 020 011 また私は、大きな白い御座と、そこに着座しておられる方を見た。地も天もその御前から逃げ去って、あとかたもなくなった。 066 REV 020 012 また私は、死んだ人々が、大きい者も、小さい者も御座の前に立っているのを見た。そして、数々の書物が開かれた。また、別の一つの書物も開かれたが、それは、いのちの書であった。死んだ人々は、これらの書物に書きしるされているところに従って、自分の行ないに応じてさばかれた。 066 REV 020 013 海はその中にいる死者を出し、死もハデスも、その中にいる死者を出した。そして人々はおのおの自分の行ないに応じてさばかれた。 066 REV 020 014 それから、死とハデスとは、火の池に投げ込まれた。これが第二の死である。 066 REV 020 015 いのちの書に名のしるされていない者はみな、この火の池に投げ込まれた。 066 REV 021 001 また私は、新しい天と新しい地とを見た。以前の天と、以前の地は過ぎ去り、もはや海もない。 066 REV 021 002 私はまた、聖なる都、新しいエルサレムが、夫のために飾られた花嫁のように整えられて、神のみもとを出て、天から下って来るのを見た。 066 REV 021 003 そのとき私は、御座から出る大きな声がこう言うのを聞いた。「見よ。神の幕屋が人とともにある。神は彼らとともに住み、彼らはその民となる。また、神ご自身が彼らとともにおられて、 066 REV 021 004 彼らの目の涙をすっかりぬぐい取ってくださる。もはや死もなく、悲しみ、叫び、苦しみもない。なぜなら、以前のものが、もはや過ぎ去ったからである。」 066 REV 021 005 すると、御座に着いておられる方が言われた。「見よ。わたしは、すべてを新しくする。」また言われた。「書きしるせ。これらのことばは、信ずべきものであり、真実である。」 066 REV 021 006 また言われた。「事は成就した。わたしはアルファであり、オメガである。最初であり、最後である。わたしは、渇く者には、いのちの水の泉から、価なしに飲ませる。 066 REV 021 007 勝利を得る者は、これらのものを相続する。わたしは彼の神となり、彼はわたしの子となる。 066 REV 021 008 しかし、おくびょう者、不信仰の者、憎むべき者、人を殺す者、不品行の者、魔術を行なう者、偶像を拝む者、すべて偽りを言う者どもの受ける分は、火と硫黄との燃える池の中にある。これが第二の死である。」 066 REV 021 009 また、最後の七つの災害の満ちているあの七つの鉢を持っていた七人の御使いのひとりが来た。彼は私に話して、こう言った。「ここに来なさい。私はあなたに、小羊の妻である花嫁を見せましょう。」 066 REV 021 010 そして、御使いは御霊によって私を大きな高い山に連れて行って、聖なる都エルサレムが神のみもとを出て、天から下って来るのを見せた。 066 REV 021 011 都には神の栄光があった。その輝きは高価な宝石に似ており、透き通った碧玉のようであった。 066 REV 021 012 都には大きな高い城壁と十二の門があって、それらの門には十二人の御使いがおり、イスラエルの子らの十二部族の名が書いてあった。 066 REV 021 013 東に三つの門、北に三つの門、南に三つの門、西に三つの門があった。 066 REV 021 014 また、都の城壁には十二の土台石があり、それには、小羊の十二使徒の十二の名が書いてあった。 066 REV 021 015 また、私と話していた者は都とその門とその城壁とを測る金の測りざおを持っていた。 066 REV 021 016 都は四角で、その長さと幅は同じである。彼がそのさおで都を測ると、一万二千スタディオンあった。長さも幅も高さも同じである。 066 REV 021 017 また、彼がその城壁を測ると、人間の尺度で百四十四ペーキュスあった。これが御使いの尺度でもあった。 066 REV 021 018 その城壁は碧玉で造られ、都は混じりけのないガラスに似た純金でできていた。 066 REV 021 019 都の城壁の土台石はあらゆる宝石で飾られていた。第一の土台石は碧玉、第二はサファイヤ、第三は玉髄、第四は緑玉、 066 REV 021 020 第五は赤縞めのう、第六は赤めのう、第七は貴かんらん石、第八は緑柱石、第九は黄玉、第十は緑玉髄、第十一は青玉、第十二は紫水晶であった。 066 REV 021 021 また、十二の門は十二の真珠であった。どの門もそれぞれ一つの真珠からできていた。都の大通りは、透き通ったガラスのような純金であった。 066 REV 021 022 私は、この都の中に神殿を見なかった。それは、万物の支配者である、神であられる主と、小羊とが都の神殿だからである。 066 REV 021 023 都には、これを照らす太陽も月もいらない。というのは、神の栄光が都を照らし、小羊が都のあかりだからである。 066 REV 021 024 諸国の民が、都の光によって歩み、地の王たちはその栄光を携えて都に来る。 066 REV 021 025 都の門は一日中決して閉じることがない。そこには夜がないからである。 066 REV 021 026 こうして、人々は諸国の民の栄光と誉れとを、そこに携えて来る。 066 REV 021 027 しかし、すべて汚れた者や、憎むべきことと偽りとを行なう者は、決して都にはいれない。小羊のいのちの書に名が書いてある者だけが、はいることができる。 066 REV 022 001 御使いはまた、私に水晶のように光るいのちの水の川を見せた。それは神と小羊との御座から出て、 066 REV 022 002 都の大通りの中央を流れていた。川の両岸には、いのちの木があって、十二種の実がなり、毎月、実ができた。また、その木の葉は諸国の民をいやした。 066 REV 022 003 もはや、のろわれるものは何もない。神と小羊との御座が都の中にあって、そのしもべたちは神に仕え、 066 REV 022 004 神の御顔を仰ぎ見る。また、彼らの額には神の名がついている。 066 REV 022 005 もはや夜がない。神である主が彼らを照らされるので、彼らにはともしびの光も太陽の光もいらない。彼らは永遠に王である。 066 REV 022 006 御使いはまた私に、「これらのことばは、信ずべきものであり、真実なのです。」と言った。預言者たちのたましいの神である主は、その御使いを遣わし、すぐに起こるべき事を、そのしもべたちに示そうとされたのである。 066 REV 022 007 「見よ。わたしはすぐに来る。この書の預言のことばを堅く守る者は、幸いである。」 066 REV 022 008 これらのことを聞き、また見たのは私ヨハネである。私が聞き、また見たとき、それらのことを示してくれた御使いの足もとに、ひれ伏して拝もうとした。 066 REV 022 009 すると、彼は私に言った。「やめなさい。私は、あなたや、あなたの兄弟である預言者たちや、この書のことばを堅く守る人々と同じしもべです。神を拝みなさい。」 066 REV 022 010 また、彼は私に言った。「この書の預言のことばを封じてはいけない。時が近づいているからである。 066 REV 022 011 不正を行なう者はますます不正を行ない、汚れた者はますます汚れを行ないなさい。正しい者はいよいよ正しいことを行ない、きよい者はいよいよきよきことを行ないなさい。」 066 REV 022 012 「見よ。わたしはすぐに来る。わたしはそれぞれのしわざに応じて報いるために、わたしの報いを携えて来る。 066 REV 022 013 わたしはアルファであり、オメガである。最初であり、最後である。初めであり、終わりである。」 066 REV 022 014 自分の着物を洗って、いのちの木の実を食べる権利を与えられ、門を通って都にはいれるようになる者は、幸いである。 066 REV 022 015 犬ども、魔術を行なう者、不品行の者、人殺し、偶像を拝む者、好んで偽りを行なう者はみな、外に出される。 066 REV 022 016 「わたし、イエスは御使いを遣わして、諸教会について、これらのことをあなたがたにあかしした。わたしはダビデの根、また子孫、輝く明けの明星である。」 066 REV 022 017 御霊も花嫁も言う。「来てください。」これを聞く者は、「来てください。」と言いなさい。渇く者は来なさい。いのちの水がほしい者は、それをただで受けなさい。 066 REV 022 018 私は、この書の預言のことばを聞くすべての者にあかしする。もし、これにつけ加える者があれば、神はこの書に書いてある災害をその人に加えられる。 066 REV 022 019 また、この預言の書のことばを少しでも取り除く者があれば、神は、この書に書いてあるいのちの木と聖なる都から、その人の受ける分を取り除かれる。 066 REV 022 020 これらのことをあかしする方がこう言われる。「しかり。わたしはすぐに来る。」アーメン。主イエスよ、来てください。 066 REV 022 021 主イエスの恵みがすべての者とともにあるように。アーメン。