## Aionian Bible
## File Name: Holy-Bible---Japanese---Japanese-Meiji-yaku---Source-Edition.SWORD.txt
## File Usage: Holy-Bible---Japanese---Japanese-Meiji-yaku
## File Created: 08/29/2022 08:19:01
## File Purpose: Supporting resource for the Aionian Bible project
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## Publisher Name: Nainoia Inc
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## Publisher Mission: https://www.AionianBible.org/Preface
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## Source Date: 08/18/2017 12:09:45
## Source Text: unaltered below
##
Genesis 0:0
創世記
Genesis 1:1 元始に神天地を創造たまへり
Genesis 1:2 地は定形なく曠空くして黒暗淵の面にあり神の靈水の面を覆たりき
Genesis 1:3 神光あれと言たまひければ光ありき
Genesis 1:4 神光を善と觀たまへり神光と暗を分ちたまへり
Genesis 1:5 神光を晝と名け暗を夜と名けたまへり夕あり朝ありき是首の日なり
Genesis 1:6 神言たまひけるは水の中に穹蒼ありて水と水とを分つべし
Genesis 1:7 神穹蒼を作りて穹蒼の下の水と穹蒼の上の水とを判ちたまへり即ち斯なりぬ
Genesis 1:8 神穹蒼を天と名けたまへり夕あり朝ありき是二日なり
Genesis 1:9 神言たまひけるは天の下の水は一處に集りて乾ける土顯べしと即ち斯なりぬ
Genesis 1:10 神乾ける土を地と名け水の集合るを海と名けたまへり神之を善と觀たまへり
Genesis 1:11 神言たまひけるは地は青草と實蓏を生ずる草蔬と其類に從ひ果を結びみづから核をもつ所の果を結ぶ樹を地に發出すべしと即ち斯なりぬ
Genesis 1:12 地青草と其類に從ひ實蓏を生ずる草蔬と其類に從ひ果を結てみづから核をもつ所の樹を發出せり神これを善と觀たまへり
Genesis 1:13 夕あり朝ありき是三日なり
Genesis 1:14 神言たまひけるは天の穹蒼に光明ありて晝と夜とを分ち又天象のため時節のため日のため年のために成べし
Genesis 1:15 又天の穹蒼にありて地を照す光となるべしと即ち斯なりぬ
Genesis 1:16 神二の巨なる光を造り大なる光に晝を司どらしめ小き光に夜を司どらしめたまふまた星を造りたまへり
Genesis 1:17 神これを天の穹蒼に置て地を照さしめ
Genesis 1:18 晝と夜を司どらしめ光と暗を分たしめたまふ神これを善と觀たまへり
Genesis 1:19 夕あり朝ありき是四日なり
Genesis 1:20 神云ひたまひけるは水には生物饒に生じ鳥は天の穹蒼の面に地の上に飛べしと
Genesis 1:21 神巨なる魚と水に饒に生じて動く諸の生物を其類に從ひて創造り又羽翼ある諸の鳥を其類に從ひて創造りたまへり神之を善と觀たまへり
Genesis 1:22 神之を祝して曰く生よ繁息よ海の水に充牣よ又禽鳥は地に蕃息よと
Genesis 1:23 夕あり朝ありき是五日なり
Genesis 1:24 神言給ひけるは地は生物を其類に從て出し家畜と昆蟲と地の獸を其類に從て出すべしと即ち斯なりぬ
Genesis 1:25 神地の獸を其類に從て造り家畜を其類に從て造り地の諸の昆蟲を其類に從て造り給へり神之を善と觀給へり
Genesis 1:26 神言給けるは我儕に象りて我儕の像の如くに我儕人を造り之に海の魚と天空の鳥と家畜と全地と地に匍ふ所の諸の昆蟲を治めんと
Genesis 1:27 神其像の如くに人を創造たまへり即ち神の像の如くに之を創造之を男と女に創造たまへり
Genesis 1:28 神彼等を祝し神彼等に言たまひけるは生よ蕃殖よ地に滿盈よ之を服從せよ又海の魚と天空の鳥と地に動く所の諸の生物を治めよ
Genesis 1:29 神言たまひけるは視よ我全地の面にある實蓏のなる諸の草蔬と核ある木果の結る諸の樹とを汝等に與ふこれは汝らの糧となるべし
Genesis 1:30 又地の諸の獸と天空の諸の鳥および地に匍ふ諸の物等凡そ生命ある者には我食物として諸の青き草を與ふと即ち斯なりぬ
Genesis 1:31 神其造りたる諸の物を視たまひけるに甚だ善りき夕あり朝ありき是六日なり
Genesis 2:1 斯天地および其衆群悉く成ぬ
Genesis 2:2 第七日に神其造りたる工を竣たまへり即ち其造りたる工を竣て七日に安息たまへり
Genesis 2:3 神七日を祝して之を神聖めたまへり其は神其創造爲たまへる工を盡く竣て是日に安息みたまひたればなり
Genesis 2:4 ヱホバ神地と天を造りたまへる日に天地の創造られたる其由來は是なり
Genesis 2:5 野の諸の灌木は未だ地にあらず野の諸の草蔬は未生ぜざりき其はヱホバ神雨を地に降せたまはず亦土地を耕す人なかりければなり
Genesis 2:6 霧地より上りて土地の面を遍く潤したり
Genesis 2:7 ヱホバ神土の塵を以て人を造り生氣を其鼻に嘘入たまへり人即ち生靈となりぬ
Genesis 2:8 ヱホバ神エデンの東の方に園を設て其造りし人を其處に置たまへり
Genesis 2:9 ヱホバ神觀に美麗く食ふに善き各種の樹を土地より生ぜしめ又園の中に生命の樹および善惡を知の樹を生ぜしめ給へり
Genesis 2:10 河エデンより出て園を潤し彼處より分れて四の源となれり
Genesis 2:11 其第一の名はピソンといふ是は金あるハビラの全地を繞る者なり
Genesis 2:12 其地の金は善し又ブドラクと碧玉彼處にあり
Genesis 2:13 第二の河の名はギホンといふ是はクシの全地を繞る者なり
Genesis 2:14 第三の河の名はヒデケルといふ是はアッスリヤの東に流るるものなり第四の河はユフラテなり
Genesis 2:15 ヱホバ神其人を挈て彼をエデンの園に置き之を埋め之を守らしめ給へり
Genesis 2:16 ヱホバ神其人に命じて言たまひけるは園の各種の樹の果は汝意のままに食ふことを得
Genesis 2:17 然ど善惡を知の樹は汝その果を食ふべからず汝之を食ふ日には必ず死べければなり
Genesis 2:18 ヱホバ神言たまひけるは人獨なるは善らず我彼に適ふ助者を彼のために造らんと
Genesis 2:19 ヱホバ神土を以て野の諸の獸と天空の諸の鳥を造りたまひてアダムの之を何と名るかを見んとて之を彼の所に率ゐいたりたまへりアダムが生物に名けたる所は皆其名となりぬ
Genesis 2:20 アダム諸の家畜と天空の鳥と野の諸の獸に名を與へたり然どアダムには之に適ふ助者みえざりき
Genesis 2:21 是に於てヱホバ神アダムを熟く睡らしめ睡りし時其肋骨の一を取り肉をもて其處を填塞たまへり
Genesis 2:22 ヱホバ神アダムより取たる肋骨を以て女を成り之をアダムの所に携きたりたまへり
Genesis 2:23 アダム言けるは此こそわが骨の骨わが肉の肉なれ此は男より取たる者なれば之を女と名くべしと
Genesis 2:24 是故に人は其父母を離れて其妻に好合ひ二人一體となるべし
Genesis 2:25 アダムと其妻は二人倶に裸體にして愧ざりき
Genesis 3:1 ヱホバ神の造りたまひし野の生物の中に蛇最も狡猾し蛇婦に言ひけるは神眞に汝等園の諸の樹の果は食ふべからずと言たまひしや
Genesis 3:2 婦蛇に言けるは我等園の樹の果を食ふことを得
Genesis 3:3 然ど園の中央に在樹の果實をば神汝等之を食ふべからず又之に捫るべからず恐は汝等死んと言給へり
Genesis 3:4 蛇婦に言けるは汝等必らず死る事あらじ
Genesis 3:5 神汝等が之を食ふ日には汝等の目開け汝等神の如くなりて善惡を知に至るを知りたまふなりと
Genesis 3:6 婦樹を見ば食ふに善く目に美麗しく且智慧からんが爲に慕はしき樹なるによりて遂に其果實を取て食ひ亦之を己と偕なる夫に與へければ彼食へり
Genesis 3:7 是において彼等の目倶に開て彼等其裸體なるを知り乃ち無花果樹の葉を綴て裳を作れり
Genesis 3:8 彼等園の中に日の清涼き時分歩みたまふヱホバ神の聲を聞しかばアダムと其妻即ちヱホバ神の面を避て園の樹の間に身を匿せり
Genesis 3:9 ヱホバ神アダムを召て之に言たまひけるは汝は何處にをるや
Genesis 3:10 彼いひけるは我園の中に汝の聲を聞き裸體なるにより懼れて身を匿せりと
Genesis 3:11 ヱホバ言たまひけるは誰が汝の裸なるを汝に告しや汝は我が汝に食ふなかれと命じたる樹の果を食ひたりしや
Genesis 3:12 アダム言けるは汝が與へて我と偕ならしめたまひし婦彼其樹の果實を我にあたへたれば我食へりと
Genesis 3:13 ヱホバ神婦に言たまひけるは汝がなしたる此事は何ぞや婦言けるは蛇我を誘惑して我食へりと
Genesis 3:14 ヱホバ神蛇に言たまひけるは汝是を爲たるに因て汝は諸の家畜と野の諸の獸よりも勝りて詛はる汝は腹行て一生の間塵を食ふべし
Genesis 3:15 又我汝と婦の間および汝の苗裔と婦の苗裔の間に怨恨を置ん彼は汝の頭を碎き汝は彼の踵を碎かん
Genesis 3:16 又婦に言たまひけるは我大に汝の懷姙の劬勞を増すべし汝は苦みて子を産ん又汝は夫をしたひ彼は汝を治めん
Genesis 3:17 又アダムに言たまひけるは汝その妻の言を聽て我が汝に命じて食ふべからずと言たる樹の果を食ひしに縁て土は汝のために詛はる汝は一生のあひだ勞苦て其より食を得ん
Genesis 3:18 土は荊棘と薊とを汝のために生ずべしまた汝は野の草蔬を食ふべし
Genesis 3:19 汝は面に汗して食物を食ひ終に土に歸らん其は其中より汝は取れたればなり汝は塵なれば塵に皈るべきなりと
Genesis 3:20 アダム其妻の名をヱバと名けたり其は彼は群の生物の母なればなり
Genesis 3:21 ヱホバ神アダムと其妻のために皮衣を作りて彼等に衣せたまへり
Genesis 3:22 ヱホバ神曰たまひけるは視よ夫人我等の一の如くなりて善惡を知る然ば恐くは彼其手を舒べ生命の樹の果實をも取りて食ひ限無生んと
Genesis 3:23 ヱホバ神彼をエデンの園よりいだし其取て造られたるところの土を耕さしめたまへり
Genesis 3:24 斯神其人を逐出しエデンの園の東にケルビムと自から旋轉る焔の劍を置て生命の樹の途を保守りたまふ
Genesis 4:1 アダム其妻エバを知る彼孕みてカインを生みて言けるは我ヱホバによりて一個の人を得たりと
Genesis 4:2 彼また其弟アベルを生りアベルは羊を牧ふ者カインは土を耕す者なりき
Genesis 4:3 日を經て後カイン土より出る果を携來りてヱホバに供物となせり
Genesis 4:4 アベルもまた其羊の初生と其肥たる者を携來れりヱホバ、アベルと其供物を眷顧みたまひしかども
Genesis 4:5 カインと其供物をば眷み給はざりしかばカイン甚だ怒り且其面をふせたり
Genesis 4:6 ヱホバ、カインに言たまひけるは汝何ぞ怒るや何ぞ面をふするや
Genesis 4:7 汝若善を行はば擧ることをえざらんや若善を行はずば罪門戸に伏す彼は汝を慕ひ汝は彼を治めん
Genesis 4:8 カイン其弟アベルに語りぬ彼等野にをりける時カイン其弟アベルに起かかりて之を殺せり
Genesis 4:9 ヱホバ、カインに言たまひけるは汝の弟アベルは何處にをるや彼言ふ我しらず我あに我弟の守者ならんやと
Genesis 4:10 ヱホバ言たまひけるは汝何をなしたるや汝の弟の血の聲地より我に叫べり
Genesis 4:11 されば汝は詛れて此地を離るべし此地其口を啓きて汝の弟の血を汝の手より受たればなり
Genesis 4:12 汝地を耕すとも地は再其力を汝に效さじ汝は地に吟行ふ流離子となるべしと
Genesis 4:13 カイン、ヱホバに言けるは我が罪は大にして負ふこと能はず
Genesis 4:14 視よ汝今日斯地の面より我を逐出したまふ我汝の面を觀ることなきにいたらん我地に吟行ふ流離子とならん凡そ我に遇ふ者我を殺さん
Genesis 4:15 ヱホバ彼に言たまひけるは然らず凡そカインを殺す者は七倍の罰を受んとヱホバ、カインに遇ふ者の彼を撃ざるため印誌を彼に與へたまへり
Genesis 4:16 カイン、ヱホバの前を離て出でエデンの東なるノドの地に住り
Genesis 4:17 カイン其妻を知る彼孕みエノクを生りカイン邑を建て其邑の名を其子の名に循ひてエノクと名けたり
Genesis 4:18 エノクにイラデ生れたりイラデ、メホヤエルを生みメホヤエル、メトサエルを生みメトサエル、レメクを生り
Genesis 4:19 レメク二人の妻を娶れり一の名はアダと曰ひ一の名はチラと曰り
Genesis 4:20 アダ、ヤバルを生めり彼は天幕に住て家畜を牧ふ所の者の先祖なり
Genesis 4:21 其弟の名はユバルと云ふ彼は琴と笛とをとる凡ての者の先祖なり
Genesis 4:22 又チラ、トバルカインを生り彼は銅と鐡の諸の刃物を鍛ふ者なりトバルカインの妹をナアマといふ
Genesis 4:23 レメク其妻等に言けるはアダとチラよ我聲を聽けレメクの妻等よわが言を容よ我わが創傷のために人を殺すわが痍のために少年を殺す
Genesis 4:24 カインのために七倍の罰あればレメクのためには七十七倍の罰あらん
Genesis 4:25 アダム復其妻を知て彼男子を生み其名をセツと名けたり其は彼神我にカインの殺したるアベルのかはりに他の子を與へたまへりといひたればなり
Genesis 4:26 セツにもまた男子生れたりかれ其名をエノスと名けたり此時人々ヱホバの名を呼ことをはじめたり
Genesis 5:1 アダムの傳の書は是なり神人を創造りたまひし日に神に象りて之を造りたまひ
Genesis 5:2 彼等を男女に造りたまへり彼等の創造られし日に神彼等を祝してかれらの名をアダムと名けたまへり
Genesis 5:3 アダム百三十歳に及びて其像に循ひ己に象りて子を生み其名をセツと名けたり
Genesis 5:4 アダムのセツを生し後の齡は八百歳にして男子女子を生り
Genesis 5:5 アダムの生存へたる齡は都合九百三十歳なりき而して死り
Genesis 5:6 セツ百五歳に及びてエノスを生り
Genesis 5:7 セツ、エノスを生し後八百七年生存へて男子女子を生り
Genesis 5:8 セツの齡は都合九百十二歳なりき而して死り
Genesis 5:9 エノス九十歳におよびてカイナンを生り
Genesis 5:10 エノス、カイナンを生し後八百十五年生存へて男子女子を生り
Genesis 5:11 エノスの齡は都合九百五歳なりき而して死り
Genesis 5:12 カイナン七十歳におよびてマハラレルを生り
Genesis 5:13 カイナン、マハラレルを生し後八百四十年生存へて男子女子を生り
Genesis 5:14 カイナンの齡は都合九百十歳なりきしかして死り
Genesis 5:15 マハラレル六十五歳に及びてヤレドを生り
Genesis 5:16 マハラレル、ヤレドを生し後八百三十年生存へて男子女子を生り
Genesis 5:17 マハラレルの齡は都合八百九十五歳なりき而して死り
Genesis 5:18 ヤレド百六十二歳に及びてエノクを生り
Genesis 5:19 ヤレド、エノクを生し後八百年生存へて男子女子を生り
Genesis 5:20 ヤレドの齡は都合九百六十二歳なりき而して死り
Genesis 5:21 エノク六十五歳に及びてメトセラを生り
Genesis 5:22 エノク、メトセラを生し後三百年神とともに歩み男子女子を生り
Genesis 5:23 エノクの齡は都合三百六十五歳なりき
Genesis 5:24 エノク神と偕に歩みしが神かれを取りたまひければをらずなりき
Genesis 5:25 メトセラ百八十七歳に及びてレメクを生り
Genesis 5:26 メトセラ、レメクを生しのち七百八十二年生存へて男子女子を生り
Genesis 5:27 メトセラの齡は都合九百六十九歳なりき而して死り
Genesis 5:28 レメク百八十二歳に及びて男子を生み
Genesis 5:29 其名をノアと名けて言けるは此子はヱホバの詛ひたまひし地に由れる我操作と我勞苦とに就て我らを慰めん
Genesis 5:30 レメク、ノアを生し後五百九十五年生存へて男子女子を生り
Genesis 5:31 レメクの齡は都合七百七十七歳なりき而して死り
Genesis 5:32 ノア五百歳なりきノア、セム、ハム、ヤペテを生り
Genesis 6:1 人地の面に繁衍はじまりて女子之に生るるに及べる時
Genesis 6:2 神の子等人の女子の美しきを見て其好む所の者を取て妻となせり
Genesis 6:3 ヱホバいひたまひけるは我靈永く人と爭はじ其は彼も肉なればなり然ど彼の日は百二十年なるべし
Genesis 6:4 當時地にネピリムありき亦其後神の子輩人の女の所に入りて子女を生しめたりしが其等も勇士にして古昔の名聲ある人なりき
Genesis 6:5 ヱホバ人の惡の地に大なると其心の思念の都て圖維る所の恒に惟惡きのみなるを見たまへり
Genesis 6:6 是に於てヱホバ地の上に人を造りしことを悔いて心に憂へたまへり
Genesis 6:7 ヱホバ言たまひけるは我が創造りし人を我地の面より拭去ん人より獸昆蟲天空の鳥にいたるまでほろぼさん其は我之を造りしことを悔ればなりと
Genesis 6:8 されどノアはヱホバの目のまへに恩を得たり
Genesis 6:9 ノアの傳は是なりノアは義人にして其世の完全き者なりきノア神と偕に歩めり
Genesis 6:10 ノアはセム、ハム、ヤペテの三人の子を生り
Genesis 6:11 時に世神のまへに亂れて暴虐世に滿盈ちたりき
Genesis 6:12 神世を視たまひけるに視よ亂れたり其は世の人皆其道をみだしたればなり
Genesis 6:13 神ノアに言たまひけるは諸の人の末期わが前に近づけり其は彼等のために暴虐世にみつればなり視よ我彼等を世とともに剪滅さん
Genesis 6:14 汝松木をもて汝のために方舟を造り方舟の中に房を作り瀝青をもて其内外を塗るべし
Genesis 6:15 汝かく之を作るべし即ち其方舟の長は三百キユビト其濶は五十キユビト其高は三十キユビト
Genesis 6:16 又方舟に導光牖を作り上一キユビトに之を作り終べし又方舟の戸は其傍に設くべし下牀と二階と三階とに之を作るべし
Genesis 6:17 視よ我洪水を地に起して凡て生命の氣息ある肉なる者を天下より剪滅し絶ん地にをる者は皆死ぬべし
Genesis 6:18 然ど汝とは我わが契約をたてん汝は汝の子等と汝の妻および汝の子等の妻とともに其方舟に入るべし
Genesis 6:19 又諸の生物總て肉なる者をば汝各其二を方舟に挈へいりて汝とともに其生命を保たしむべし其等は牝牡なるべし
Genesis 6:20 鳥其類に從ひ獸其類に從ひ地の諸の昆蟲其類に從ひて各二汝の所に至りて其生命を保つべし
Genesis 6:21 汝食はるる諸の食品を汝の許に取て之を汝の所に集むべし是即ち汝と是等の物の食品となるべし
Genesis 6:22 ノア是爲し都て神の己に命じたまひしごとく然爲せり
Genesis 7:1 ヱホバ、ノアに言たまひけるは汝と汝の家皆方舟に入べし我汝がこの世の人の中にてわが前に義を視たればなり
Genesis 7:2 諸の潔き獸を牝牡七宛汝の許に取り潔らぬ獸を牝牡二
Genesis 7:3 亦天空の鳥を雌雄七宛取て種を全地の面に生のこらしむべし
Genesis 7:4 今七日ありて我四十日四十夜地に雨ふらしめ我造りたる萬有を地の面より拭去ん
Genesis 7:5 ノア、ヱホバの凡て己に命じたまひし如くなせり
Genesis 7:6 地に洪水ありける時にノア六百歳なりき
Genesis 7:7 ノア其子等と其妻および其子等の妻と倶に洪水を避て方舟にいりぬ
Genesis 7:8 潔き獸と潔らざる獸と鳥および地に匍ふ諸の物
Genesis 7:9 牝牡二宛ノアに來りて方舟にいりぬ神のノアに命じたまへるが如し
Genesis 7:10 かくて七日の後洪水地に臨めり
Genesis 7:11 ノアの齡の六百歳の二月即ち其月の十七日に當り此日に大淵の源皆潰れ天の戸開けて
Genesis 7:12 雨四十日四十夜地に注げり
Genesis 7:13 此日にノアとノアの子セム、ハム、ヤペテおよびノアの妻と其子等の三人の妻諸倶に方舟にいりぬ
Genesis 7:14 彼等および諸の獸其類に從ひ諸の家畜其類に從ひ都て地に匍ふ昆蟲其類に從ひ諸の禽即ち各樣の類の鳥皆其類に從ひて入りぬ
Genesis 7:15 即ち生命の氣息ある諸の肉なる者二宛ノアに來りて方舟にいりぬ
Genesis 7:16 入たる者は諸の肉なる者の牝牡にして皆いりぬ神の彼に命じたまへるが如しヱホバ乃ち彼を閉置たまへり
Genesis 7:17 洪水四十日地にありき是において水増し方舟を浮めて方舟地の上に高くあがれり
Genesis 7:18 而して水瀰漫りて大に地に増しぬ方舟は水の面に漂へり
Genesis 7:19 水甚大に地に瀰漫りければ天下の高山皆おほはれたり
Genesis 7:20 水はびこりて十五キユビトに上りければ山々おほはれたり
Genesis 7:21 凡そ地に動く肉なる者鳥家畜獸地に匍ふ諸の昆蟲および人皆死り
Genesis 7:22 即ち凡そ其鼻に生命の氣息のかよふ者都て乾地にある者は死り
Genesis 7:23 斯地の表面にある萬有を人より家畜昆蟲天空の鳥にいたるまで盡く拭去たまへり是等は地より拭去れたり唯ノアおよび彼とともに方舟にありし者のみ存れり
Genesis 7:24 水百五十日のあひだ地にはびこりぬ
Genesis 8:1 神ノアおよび彼とともに方舟にある諸の生物と諸の家畜を眷念ひたまひて神乃ち風を地の上に吹しめたまひければ水減りたり
Genesis 8:2 亦淵の源と天の戸閉塞りて天よりの雨止ぬ
Genesis 8:3 是に於て水次第に地より退き百五十日を經てのち水減り
Genesis 8:4 方舟は七月に至り其月の十七日にアララテの山に止りぬ
Genesis 8:5 水次第に減て十月に至りしが十月の月朔に山々の嶺現れたり
Genesis 8:6 四十日を經てのちノア其方舟に作りし窓を啓て
Genesis 8:7 鴉を放出ちけるが水の地に涸るまで往來しをれり
Genesis 8:8 彼地の面より水の減少しかを見んとて亦鴿を放出いだしけるが
Genesis 8:9 鴿其足の跖を止べき處を得ずして彼に還りて方舟に至れり其は水全地の面にありたればなり彼乃ち其手を舒て之を執へ方舟の中におのれの所に接入たり
Genesis 8:10 尚又七日待て再び鴿を方舟より放出ちけるが
Genesis 8:11 鴿暮におよびて彼に還れり視よ其口に橄欖の若葉ありき是に於てノア地より水の減少しをしれり
Genesis 8:12 尚又七日まちて鴿を放出ちけるが再び彼の所に歸らざりき
Genesis 8:13 六百一年の一月の月朔に水地に涸たりノア乃ち方舟の蓋を撤きて視しに視よ土の面は燥てありぬ
Genesis 8:14 二月の二十七日に至りて地乾きたり
Genesis 8:15 爰に神ノアに語りて言給はく
Genesis 8:16 汝および汝の妻と汝の子等と汝の子等の妻ともに方舟を出べし
Genesis 8:17 汝とともにある諸の肉なる諸の生物諸の肉なる者即ち鳥家畜および地に匍ふ諸の昆蟲を率いでよ此等は地に饒く生育地の上に生且殖増すべし
Genesis 8:18 ノアと其子等と其妻および其子等の妻ともに出たり
Genesis 8:19 諸の獸諸の昆蟲および諸の鳥等凡そ地に動く者種類に從ひて方舟より出たり
Genesis 8:20 ノア、ヱホバのために壇を築き諸の潔き獸と諸の潔き鳥を取て燔祭を壇の上に獻げたり
Genesis 8:21 ヱホバ其馨き香を聞ぎたまひてヱホバ其意に謂たまひけるは我再び人の故に因て地を詛ふことをせじ其は人の心の圖維るところ其幼少時よりして惡かればなり又我曾て爲たる如く再び諸の生る物を撃ち滅さじ
Genesis 8:22 地のあらん限りは播種時、收穫時、寒熱夏冬および日と夜息ことあらじ
Genesis 9:1 神ノアと其子等を祝して之に曰たまひけるは生よ増殖よ地に滿よ
Genesis 9:2 地の諸の獸畜天空の諸の鳥地に匍ふ諸の物海の諸の魚汝等を畏れ汝等に懾かん是等は汝等の手に與へらる
Genesis 9:3 凡そ生る動物は汝等の食となるべし菜蔬のごとく我之を皆汝等に與う
Genesis 9:4 然ど肉を其生命なる其血のままに食ふべからず
Genesis 9:5 汝等の生命の血を流すをば我必ず討さん獸之をなすも人をこれを爲すも我討さん凡そ人の兄弟人の生命を取ば我討すべし
Genesis 9:6 凡そ人の血を流す者は人其血を流さん其は神の像のごとくに人を造りたまひたればなり
Genesis 9:7 汝等生よ増殖よ地に饒くなりて其中に増殖よ
Genesis 9:8 神ノアおよび彼と偕にある其子等に告て言たまひけるは
Genesis 9:9 見よ我汝等と汝等の後の子孫
Genesis 9:10 および汝等と偕なる諸の生物即ち汝等とともなる鳥家畜および地の諸の獸と契約を立ん都て方舟より出たる者より地の諸の獸にまで至らん
Genesis 9:11 我汝等と契約を立ん總て肉なる者は再び洪水に絶るる事あらじ又地を滅す洪水再びあらざるべし
Genesis 9:12 神言たまひけるは我が我と汝等および汝等と偕なる諸の生物の間に世々限りなく爲す所の契約の徴は是なり
Genesis 9:13 我わが虹を雲の中に起さん是我と世との間の契約の徴なるべし
Genesis 9:14 即ち我雲を地の上に起す時虹雲の中に現るべし
Genesis 9:15 我乃ち我と汝等および總て肉なる諸の生物の間のわが契約を記念はん水再び諸の肉なる者を滅す洪水とならじ
Genesis 9:16 虹雲の中にあらん我之を觀て神と地にある都て肉なる諸の生物との間なる永遠の契約を記念えん
Genesis 9:17 神ノアに言たまひけるは是は我が我と地にある諸の肉なる者との間に立たる契約の徴なり
Genesis 9:18 ノアの子等の方舟より出たる者はセム、ハム、ヤペテなりきハムはカナンの父なり
Genesis 9:19 是等はノアの三人の子なり全地の民は是等より出て蔓延れり
Genesis 9:20 爰にノアの農夫となりて葡萄園を植ることを始しが
Genesis 9:21 葡萄酒を飮て醉天幕の中にありて裸になれり
Genesis 9:22 カナンの父ハム其父のかくし所を見て外にありし二人の兄弟に告たり
Genesis 9:23 セムとヤペテ乃ち衣を取て倶に其肩に負け後向に歩みゆきて其父の裸體を覆へり彼等面を背にして其父の裸體を見ざりき
Genesis 9:24 ノア酒さめて其若き子の己に爲たる事を知れり
Genesis 9:25 是に於て彼言けるはカナン詛はれよ彼は僕輩の僕となりて其兄弟に事へん
Genesis 9:26 又いひけるはセムの神ヱホバは讚べきかなカナン彼の僕となるべし
Genesis 9:27 神ヤペテを大ならしめたまはん彼はセムの天幕に居住はんカナン其僕となるべし
Genesis 9:28 ノア洪水の後三百五十年生存へたりノアの齡は都て九百五十年なりき而して死り
Genesis 10:1 ノアの子セム、ハム、ヤペテの傳は是なり洪水の後彼等に子等生れたり
Genesis 10:2 ヤペテの子はゴメル、マゴグ、マデア、ヤワン、トバル、メセク、テラスなり
Genesis 10:3 ゴメルの子はアシケナズ、リパテ、トガルマなり
Genesis 10:4 ヤワンの子はエリシヤ、タルシシ、キツテムおよびドダニムなり
Genesis 10:5 是等より諸國の洲島の民は派分れ出て各其方言と其宗族と其邦國とに循ひて其地に住り
Genesis 10:6 ハムの子はクシ、ミツライム、フテおよびカナンなり
Genesis 10:7 クシの子はセバ、ハビラ、サブタ、ラアマ、サブテカなりラアマの子はシバおよびデダンなり
Genesis 10:8 クシ、ニムロデを生り彼始めて世の權力ある者となれり
Genesis 10:9 彼はヱホバの前にありて權力ある獵夫なりき是故にヱホバの前にある夫權力ある獵夫ニムロデの如しといふ諺あり
Genesis 10:10 彼の國の起初はシナルの地のバベル、エレク、アツカデ、及びカルネなりき
Genesis 10:11 其地より彼アツスリヤに出でニネベ、レホポテイリ、カラ
Genesis 10:12 およびニネベとカラの間なるレセンを建たり是は大なる城邑なり
Genesis 10:13 ミツライム、ルデ族アナミ族レハビ族ナフト族
Genesis 10:14 バテロス族カスル族およびカフトリ族を生りカスル族よりペリシテ族出たり
Genesis 10:15 カナン其冢子シドンおよびヘテ
Genesis 10:16 エブス族アモリ族ギルガシ族
Genesis 10:17 ヒビ族アルキ族セニ族
Genesis 10:18 アルワデ族ゼマリ族ハマテ族を生り後に至りてカナン人の宗族蔓延りぬ
Genesis 10:19 カナン人の境はシドンよりゲラルを經てガザに至りソドム、ゴモラ、アデマ、ゼボイムに沿てレシヤにまで及べり
Genesis 10:20 是等はハムの子孫にして其宗族と其方言と其土地と其邦國に隨ひて居りぬ
Genesis 10:21 セムはヱベルの全の子孫の先祖にしてヤペテの兄なり彼にも子女生れたり
Genesis 10:22 セムの子はエラム、アシユル、アルパクサデルデ、アラムなり
Genesis 10:23 アラムの子はウヅ、ホル、ゲテル、マシなり
Genesis 10:24 アルパクサデ、シラを生みシラ、エベルを生り
Genesis 10:25 エベルに二人の子生れたり一人の名をペレグ(分れ)といふ其は彼の代に邦國分れたればなり其弟の名をヨクタンと曰ふ
Genesis 10:26 ヨクタン、アルモダデ、シヤレフ、ハザルマウテ、ヱラ
Genesis 10:27 ハドラム、ウザル、デクラ
Genesis 10:28 オバル、アビマエル、シバ
Genesis 10:29 オフル、ハビラおよびヨバブを生り是等は皆ヨクタンの子なり
Genesis 10:30 彼等の居住所はメシヤよりして東方の山セバルにまで至れり
Genesis 10:31 是等はセムの子孫にして其宗族と其方言と其土地と其邦國とに隨ひて居りぬ
Genesis 10:32 是等はノアの子の宗族にして其血統と其邦國に隨ひて居りぬ洪水の後是等より地の邦國の民は派分れ出たり
Genesis 11:1 全地は一の言語一の音のみなりき
Genesis 11:2 茲に人衆東に移りてシナルの地に平野を得て其處に居住り
Genesis 11:3 彼等互に言けるは去來甎石を作り之を善く爇んと遂に石の代に甎石を獲灰沙の代に石漆を獲たり
Genesis 11:4 又曰けるは去來邑と塔とを建て其塔の頂を天にいたらしめん斯して我等名を揚て全地の表面に散ることを免れんと
Genesis 11:5 ヱホバ降臨りて彼人衆の建る邑と塔とを觀たまへり
Genesis 11:6 ヱホバ言たまひけるは視よ民は一にして皆一の言語を用ふ今既に此を爲し始めたり然ば凡て其爲んと圖維る事は禁止め得られざるべし
Genesis 11:7 去來我等降り彼處にて彼等の言語を淆し互に言語を通ずることを得ざらしめんと
Genesis 11:8 ヱホバ遂に彼等を彼處より全地の表面に散したまひければ彼等邑を建ることを罷たり
Genesis 11:9 是故に其名はバベル(淆亂)と呼ばる是はヱホバ彼處に全地の言語を淆したまひしに由てなり彼處よりヱホバ彼等を全地の表に散したまへり
Genesis 11:10 セムの傳は是なりセム百歳にして洪水の後の二年にアルパクサデを生り
Genesis 11:11 セム、アルパクサデを生し後五百年生存へて男子女子を生り
Genesis 11:12 アルパクサデ三十五歳に及びてシラを生り
Genesis 11:13 アルパクサデ、シラを生し後四百三年生存へて男子女子を生り
Genesis 11:14 シラ三十歳におよびてエベルを生り
Genesis 11:15 シラ、エベルを生し後四百三年生存へて男子女子を生り
Genesis 11:16 エベル三十四歳におよびてペレグを生り
Genesis 11:17 エベル、ペレグを生し後四百三十年生存へて男子女子を生り
Genesis 11:18 ペレグ三十歳におよびてリウを生り
Genesis 11:19 ペレグ、リウを生し後二百九年生存へて男子女子を生り
Genesis 11:20 リウ三十二歳におよびてセルグを生り
Genesis 11:21 リウ、セルグを生し後二百七年生存へて男子女子を生り
Genesis 11:22 セルグ三十年におよびてナホルを生り
Genesis 11:23 セルグ、ナホルを生しのち二百年生存へて男子女子を生り
Genesis 11:24 ナホル二十九歳に及びてテラを生り
Genesis 11:25 ナホル、テラを生し後百十九年生存へて男子女子を生り
Genesis 11:26 テラ七十歳に及びてアブラム、ナホルおよびハランを生り
Genesis 11:27 テラの傳は是なりテラ、アブラム、ナホルおよびハランを生ハラン、ロトを生り
Genesis 11:28 ハランは其父テラに先ちて其生處なるカルデアのウルにて死たり
Genesis 11:29 アブラムとナホルと妻を娶れりアブラムの妻の名をサライと云ナホルの妻の名をミルカと云てハランの女なりハランはミルカの父にして亦イスカの父なりき
Genesis 11:30 サライは石女にして子なかりき
Genesis 11:31 テラ、カナンの地に往とて其子アブラムとハランの子なる其孫ロト及其子アブラムの妻なる其媳サライをひき挈て倶にカルデアのウルを出たりしがハランに至て其處に住り
Genesis 11:32 テラの齡は二百五歳なりきテラはハランにて死り
Genesis 12:1 爰にヱホバ、アブラムに言たまひけるは汝の國を出で汝の親族に別れ汝の父の家を離れて我が汝に示さん其地に至れ
Genesis 12:2 我汝を大なる國民と成し汝を祝み汝の名を大ならしめん汝は祉福の基となるべし
Genesis 12:3 我は汝を祝する者を祝し汝を詛ふ者を詛はん天下の諸の宗族汝によりて福禔を獲と
Genesis 12:4 アブラム乃ちヱホバの自己に言たまひし言に從て出たりロト彼と共に行りアブラムはハランを出たる時七十五歳なりき
Genesis 12:5 アブラム其妻サライと其弟の子ロトおよび其集めたる總の所有とハランにて獲たる人衆を携へてカナンの地に往んとて出で遂にカナンの地に至れり
Genesis 12:6 アブラム其地を經過てシケムの處に及びモレの橡樹に至れり其時にカナン人其地に住り
Genesis 12:7 茲にヱホバ、アブラムに顯現れて我汝の苗裔に此地に與へんといひたまへり彼處にて彼己に顯現れたまひしヱホバに壇を築けり
Genesis 12:8 彼其處よりベテルの東の山に移りて其天幕を張り西にベテル東にアイありき彼處にて彼ヱホバに壇を築きヱホバの名を龥り
Genesis 12:9 アブラム尚進て南に遷れり
Genesis 12:10 茲に饑饉其地にありければアブラム、エジプトに寄寓らんとて彼處に下れり其は饑饉其地に甚しかりければなり
Genesis 12:11 彼近く來りてエジプトに入んとする時其妻サライに言けるは視よ我汝を觀て美麗き婦人なるを知る
Genesis 12:12 是故にエジプト人汝を見る時是は彼の妻なりと言て我を殺さん然ど汝をば生存かん
Genesis 12:13 請ふ汝わが妹なりと言へ然ば我汝の故によりて安にしてわが命汝のために生存ん
Genesis 12:14 アブラム、エジプトに至りし時エジプト人此婦を見て甚だ美麗となせり
Genesis 12:15 またパロの大臣等彼を視て彼をパロの前に譽めければ婦遂にパロの家に召入れられたり
Genesis 12:16 是に於てパロ彼のために厚くアブラムを待ひてアブラム遂に羊牛僕婢牝牡の驢馬および駱駝を多く獲るに至れり
Genesis 12:17 時にヱホバ、アブラムの妻サライの故によりて大なる災を以てパロと其家を惱したまへり
Genesis 12:18 パロ、アブラムを召て言けるは汝が我になしたる此事は何ぞや汝何故に彼が汝の妻なるを我に告ざりしや
Genesis 12:19 汝何故に彼はわが妹なりといひしや我幾彼をわが妻にめとらんとせり然ば汝の妻は此にあり挈去るべしと
Genesis 12:20 パロ即ち彼の事を人々に命じければ彼と其妻および其有る諸の物を送りさらしめたり
Genesis 13:1 アブラム其妻および其有る諸の物と偕にエジプトを出て南の地に上れりロト彼と共にありき
Genesis 13:2 アブラム甚家畜と金銀に富り
Genesis 13:3 彼南の地より其旅路に進てベテルに至りベテルとアイの間なる其以前に天幕を張たる處に至れり
Genesis 13:4 即ち彼が初に其處に築きたる壇のある處なり彼處にアブラム、ヱホバの名を龥り
Genesis 13:5 アブラムと偕に行しロトも羊牛および天幕を有り
Genesis 13:6 其地は彼等を載て倶に居しむること能はざりき彼等は其所有多かりしに縁て倶に居ることを得ざりしなり
Genesis 13:7 斯有かばアブラムの家畜の牧者とロトの家畜の牧者の間に競爭ありきカナン人とペリジ人此時其地に居住り
Genesis 13:8 アブラム、ロトに言けるは我等は兄弟の人なれば請ふ我と汝の間およびわが牧者と汝の牧者の間に競爭あらしむる勿れ
Genesis 13:9 地は皆爾の前にあるにあらずや請ふ我を離れよ爾若左にゆかば我右にゆかん又爾右にゆかば我左にゆかんと
Genesis 13:10 是に於てロト目を擧てヨルダンの凡ての低地を瞻望みけるにヱホバ、ソドムとゴモラとを滅し給はざりし前なりければゾアルに至るまであまねく善く潤澤ひてヱホバの園の如くエジプトの地の如くなりき
Genesis 13:11 ロト乃ちヨルダンの低地を盡く撰とりて東に徙れり斯彼等彼此に別たり
Genesis 13:12 アブラムはカナンの地に住り又ロトは低地の諸邑に住み其天幕を遷してソドムに至れり
Genesis 13:13 ソドムの人は惡くしてヱホバの前に大なる罪人なりき
Genesis 13:14 ロトのアブラムに別れし後ヱホバ、アブラムに言たまひけるは爾の目を擧て爾の居る處より西東北南を瞻望め
Genesis 13:15 凡そ汝が觀る所の地は我之を永く爾と爾の裔に與べし
Genesis 13:16 我爾の後裔を地の塵沙の如くなさん若人地の塵沙を數ふることを得ば爾の後裔も數へらるべし
Genesis 13:17 爾起て縱横に其地を行き巡るべし我之を爾に與へんと
Genesis 13:18 アブラム遂に天幕を遷して來りヘブロンのマムレの橡林に住み彼處にてヱホバに壇を築けり
Genesis 14:1 當時シナルの王アムラペル、エラサルの王アリオク、エラムの王ケダラオメルおよびゴイムの王テダル等
Genesis 14:2 ソドムの王ベラ、ゴモルの王ビルシア、アデマの王シナブ、ゼボイムの王セメベルおよびベラ(即ち今のゾアル)の王と戰ひをなせり
Genesis 14:3 是等の五人の王皆結合てシデムの谷に至れり其處は今の鹽海なり
Genesis 14:4 彼等は十二年ケダラオメルに事へ第十三年に叛けり
Genesis 14:5 第十四年にケダラオメルおよび彼と偕なる王等來りてアシタロテカルナイムのレパイム人、ハムのズジ人、シヤベキリアタイムのエミ人
Genesis 14:6 およびセイル山のホリ人を撃て曠野の傍なるエルパランに至り
Genesis 14:7 彼等歸りてエンミシパテ(即ち今のカデシ)に至りアマレク人の國を盡く撃又ハザゾンタマルに住るアモリ人を撃り
Genesis 14:8 爰にソドムの王ゴモラの王アデマの王ゼボイムの王およびベラ(即ち今のゾアル)の王出てシデムの谷にて彼等と戰ひを接たり
Genesis 14:9 即ち彼五人の王等エラムの王ケダラオメル、ゴイムの王テダル、シナルの王アムラペル、エラサルの王アリオクの四人と戰へり
Genesis 14:10 シデムの谷には地瀝青の坑多かりしがソドムとゴモラの王等遁て其處に陷りぬ其餘の者は山に遁逃たり
Genesis 14:11 是に於て彼等ソドムとゴモラの諸の物と其諸の食料を取て去れり
Genesis 14:12 彼等アブラムの姪ロトと其物を取て去り其は彼ソドムに住たればなり
Genesis 14:13 茲に遁逃者來りてヘブル人アブラムに之を告たり時にアブラムはアモリ人マムレの橡林に住りマムレはエシコルの兄弟又アネルの兄弟なり是等はアブラムと契約を結べる者なりき
Genesis 14:14 アブラム其兄弟の擄にせられしを聞しかば其熟練したる家の子三百十八人を率ゐてダンまで追いたり
Genesis 14:15 其家臣を分ちて夜に乗じて彼等を攻め彼等を撃破りてダマスコの左なるホバまで彼等を追ゆけり
Genesis 14:16 アブラム斯諸の物を奪回し亦其兄弟ロトと其物および婦人と人民を取回せり
Genesis 14:17 アブラム、ケダラオメルおよび彼と偕なる王等を撃破りて歸れる時ソドムの王シヤベの谷(即ち今の王の谷)にて彼を迎へたり
Genesis 14:18 時にサレムの王メルキゼデク、パンと酒を携出せり彼は至高き神の祭司なりき
Genesis 14:19 彼アブラムを祝して言けるは願くは天地の主なる至高神アブラムを祝福みたまへ
Genesis 14:20 願くは汝の敵を汝の手に付したまひし至高神に稱譽あれとアブラム乃ち彼に其諸の物の什分の一を餽れり
Genesis 14:21 茲にソドムの王アブラムに言けるは人を我に與へ物を汝に取れと
Genesis 14:22 アブラム、ソドムの王に言けるは我天地の主なる至高き神ヱホバを指て言ふ
Genesis 14:23 一本の絲にても鞋帶にても凡て汝の所屬は我取ざるべし恐くは汝我アブラムを富しめたりと言ん
Genesis 14:24 但少者の既に食ひたる物および我と偕に行し人アネル、エシコルおよびマムレの分を除くべし彼等には彼等の分を取しめよ
Genesis 15:1 是等の事の後ヱホバの言異象の中にアブラムに臨て曰くアブラムよ懼るなかれ我は汝の干櫓なり汝の賚は甚大なるべし
Genesis 15:2 アブラム言けるは主ヱホバよ何を我に與んとしたまふや我は子なくして居り此ダマスコのエリエゼル我が家の相續人なり
Genesis 15:3 アブラム又言けるは視よ爾子を我にたまはず我の家の子わが嗣子とならんとすと
Genesis 15:4 ヱホバの言彼にのぞみて曰く此者は爾の嗣子となるべからず汝の身より出る者爾の嗣子となるべしと
Genesis 15:5 斯てヱホバ彼を外に携へ出して言たまひけるは天を望みて星を數へ得るかを見よと又彼に言たまひけるは汝の子孫は是のごとくなるべしと
Genesis 15:6 アブラム、ヱホバを信ずヱホバこれを彼の義となしたまへり
Genesis 15:7 又彼に言たまひけるは我は此地を汝に與へて之を有たしめんとて汝をカルデアのウルより導き出せるヱホバなり
Genesis 15:8 彼言けるは主ヱホバよ我いかにして我之を有つことを知るべきや
Genesis 15:9 ヱホバ彼に言たまひけるは三歳の牝牛と三歳の牝山羊と三歳の牡羊と山鳩および雛き鴿を我ために取れと
Genesis 15:10 彼乃ち是等を皆取て之を中より剖き其剖たる者を各相對はしめて置り但鳥は剖ざりき
Genesis 15:11 鷙鳥其死體の上に下る時はアブラム之を驅はらへり
Genesis 15:12 斯て日の沒る頃アブラム酣く睡りしが其大に暗きを覺えて懼れたり
Genesis 15:13 時にヱホバ、アブラムに言たまひけるは爾確に知るべし爾の子孫他人の國に旅人となりて其人々に服事へん彼等四百年のあひだ之を惱さん
Genesis 15:14 又其服事たる國民は我之を鞫かん其後彼等は大なる財貨を携へて出ん
Genesis 15:15 爾は安然に爾の父祖の所にゆかん爾は遐齡に逹りて葬らるべし
Genesis 15:16 四代に及びて彼等此に返りきたらん其はアモリ人の惡未だ貫盈ざれば也と
Genesis 15:17 斯て日の沒て黒暗となりし時烟と火焔の出る爐其切剖たる物の中を通過り
Genesis 15:18 是日にヱホバ、アブラムと契約をなして言たまひけるは我此地をエジプトの河より彼大河即ちユフラテ河まで爾の子孫に與ふ
Genesis 15:19 即ちケニ人ケナズ人カデモニ人
Genesis 15:20 ヘテ人ペリジ人レパイム人
Genesis 15:21 アモリ人カナン人ヱブス人の地是なり
Genesis 16:1 アブラムの妻サライ子女を生ざりき彼に一人の侍女ありしがエジプト人にして其名をハガルと曰り
Genesis 16:2 サライ、アブラムに言けるは視よヱホバわが子を生むことを禁めたまひければ請ふ我が侍女の所に入れ我彼よりして子女を得ることあらんとアブラム、サライの言を聽いれたり
Genesis 16:3 アブラムの妻サライ其侍女なるエジプト人ハガルを取て之を其夫アブラムに與へて妻となさしめたり是はアブラムがカナンの地に十年住みたる後なりき
Genesis 16:4 是においてアブラム、ハガルの所に入るハガル遂に孕みければ己の孕めるを見て其女主を藐視たり
Genesis 16:5 サライ、アブラムに言けるはわが蒙れる害は汝に歸すべし我わが侍女を汝の懷に與へたるに彼己の孕るを見て我を藐視ぐ願はヱホバ我と汝の間の事を鞫きたまへ
Genesis 16:6 アブラム、サライに言けるは視よ汝の侍女は汝の手の中にあり汝の目に善と見ゆる所を彼に爲すべしサライ乃ち彼を苦めければ彼サライの面を避て逃たり
Genesis 16:7 ヱホバの使者曠野の泉の旁即ちシユルの路にある泉の旁にて彼に遭ひて
Genesis 16:8 言けるはサライの侍女ハガルよ汝何處より來れるや又何處に往や彼言けるは我は女主サライの面をさけて逃るなり
Genesis 16:9 ヱホバの使者彼に言けるは汝の女主の許に返り身を其手に任すべし
Genesis 16:10 ヱホバの使者又彼に言ひけるは我大に汝の子孫を増し其數を衆多して數ふることあたはざらしめん
Genesis 16:11 ヱホバの使者又彼に言けるは汝孕めり男子を生まん其名をイシマエル(神聽知)と名くべしヱホバ汝の艱難を聽知したまへばなり
Genesis 16:12 彼は野驢馬の如き人とならん其手は諸の人に敵し諸の人の手はこれに敵すべし彼は其諸の兄弟の東に住んと
Genesis 16:13 ハガル己に諭したまへるヱホバの名をアタエルロイ(汝は見たまふ神なり)とよべり彼いふ我視たる後尚生るやと
Genesis 16:14 是をもて其井はベエルラハイロイ(我を見る活る者の井)と呼ばる是はカデシとベレデの間にあり
Genesis 16:15 ハガル、アブラムの男子を生めりアブラム、ハガルの生める其子の名をイシマエルと名づけたり
Genesis 16:16 ハガル、イシマエルをアブラムに生める時アブラムは八十六歳なりき
Genesis 17:1 アブラム九十九歳の時ヱホバ、アブラムに顯れて之に言たまひけるは我は全能の神なり汝我前に行みて完全かれよ
Genesis 17:2 我わが契約を我と汝の間に立て大に汝の子孫を増ん
Genesis 17:3 アブラム乃ち俯伏たり神又彼に告て言たまひけるは
Genesis 17:4 我汝とわが契約を立つ汝は衆多の國民の父となるべし
Genesis 17:5 汝の名を此後アブラムと呼ぶべからず汝の名をアブラハム(衆多の人の父)とよぶべし其は我汝を衆多の國民の父と爲ばなり
Genesis 17:6 我汝をして衆多の子孫を得せしめ國々の民を汝より起さん王等汝より出べし
Genesis 17:7 我わが契約を我と汝および汝の後の世々の子孫との間に立て永久の契約となし汝および汝の後の子孫の神となるべし
Genesis 17:8 我汝と汝の後の子孫に此汝が寄寓る地即ちカナンの全地を與へて永久の産業となさん而して我彼等の神となるべし
Genesis 17:9 神またアブラハムに言たまひけるは然ば汝と汝の後の世々の子孫わが契約を守るべし
Genesis 17:10 汝等の中の男子は咸割禮を受べし是は我と汝等および汝の後の子孫の間の我が契約にして汝等の守るべき者なり
Genesis 17:11 汝等其陽の皮を割べし是我と汝等の間の契約の徴なり
Genesis 17:12 汝等の代々の男子は家に生れたる者も異邦人より金にて買たる汝の子孫ならざる者も皆生れて八日に至らば割禮を受べし
Genesis 17:13 汝の家に生れたる者も汝の金にて買たる者も割禮を受ざるべからず斯我契約汝等の身にありて永久の契約となるべし
Genesis 17:14 割禮を受ざる男兒即ち其陽の皮を割ざる者は我契約を破るによりて其人其民の中より絶るべし
Genesis 17:15 神又アブラハムの言たまひけるは汝の妻サライは其名をサライと稱ぶべからず其名をサラと爲べし
Genesis 17:16 我彼を祝み彼よりして亦汝に一人の男子を授けん我彼を祝み彼をして諸邦の民の母とならしむべし諸の民の王等彼より出べし
Genesis 17:17 アブラハム俯伏て哂ひ其心に謂けるは百歳の人に豈で子の生るることあらんや又サラは九十歳なれば豈で産ことをなさんやと
Genesis 17:18 アブラハム遂に神にむかひて願くはイシマエルの汝のまへに生存へんことをと曰ふ
Genesis 17:19 神言たまひけるは汝の妻サラ必ず子を生ん汝其名をイサクと名くべし我彼および其後の子孫と契約を立て永久の契約となさん
Genesis 17:20 又イシマエルの事に關ては我汝の願を聽たり視よ我彼を祝みて多衆の子孫を得さしめ大に彼の子孫を増すべし彼十二の君王を生ん我彼を大なる國民となすべし
Genesis 17:21 然どわが契約は我翌年の今頃サラが汝に生ん所のイサクと之を立べし
Genesis 17:22 神アブラハムと言ことを竟へ彼を離れて昇り給へり
Genesis 17:23 是に於てアブラハム神の己に言たまへる如く此日其子イシマエルと凡て其家に生れたる者および凡て其金にて買たる者即ちアブラハムの家の人の中なる諸の男を將きたりて其陽の皮を割たり
Genesis 17:24 アブラハムは其陽の皮を割れたる時九十九歳
Genesis 17:25 其子イシマエルは其陽の皮を割れたる時十三歳なりき
Genesis 17:26 是日アブラハムと其子イシマエル割禮を受たり
Genesis 17:27 又其家の人家に生れたる者も金にて異邦人より買たる者も皆彼とともに割禮を受たり
Genesis 18:1 ヱホバ、マムレの橡林にてアブラハムに顯現たまへり彼は日の熱き時刻天幕の入口に坐しゐたりしが
Genesis 18:2 目を擧て見たるに視よ三人の人其前に立り彼見て天幕の入口より趨り行て之を迎へ
Genesis 18:3 身を地に鞠めて言けるは我が主よ我若汝の目のまへに恩を得たるならば請ふ僕を通り過すなかれ
Genesis 18:4 請ふ少許の水を取きたらしめ汝等の足を濯ひて樹の下に休憇たまへ
Genesis 18:5 我一口のパンを取來らん汝等心を慰めて然る後過ゆくべし汝等僕の所に來ればなり彼等言ふ汝が言るごとく爲せ
Genesis 18:6 是においてアブラハム天幕に急ぎいりてサラの許に至りて言けるは速に細麺三セヤを取り捏てパンを作るべしと
Genesis 18:7 而してアブラハム牛の群に趨ゆき犢の柔にして善き者を取りきたりて少者に付しければ急ぎて之を調理ふ
Genesis 18:8 かくてアブラハム牛酪と牛乳および其調理へたる犢を取て彼等のまへに供へ樹の下にて其側に立り彼等乃ち食へり
Genesis 18:9 彼等アブラハムに言けるは爾の妻サラは何處にあるや彼言ふ天幕にあり
Genesis 18:10 其一人言ふ明年の今頃我必ず爾に返るべし爾の妻サラに男子あらんサラ其後なる天幕の入口にありて聞ゐたり
Genesis 18:11 抑アブラハムとサラは年邁み老いたる者にしてサラには婦人の常の經已に息たり
Genesis 18:12 是故にサラ心に哂ひて言けるは我は老衰へ吾が主も亦老たる後なれば我に樂あるべけんや
Genesis 18:13 ヱホバ、アブラハムに言たまひけるは何故にサラは哂ひて我老たれば果して子を生ことあらんと言ふや
Genesis 18:14 ヱホバに豈爲し難き事あらんや時至らば我定めたる期に爾に歸るべしサラに男子あらんと
Genesis 18:15 サラ懼れたれば承ずして我哂はずと言へりヱホバ言たまひけるは否汝哂へるなり
Genesis 18:16 斯て其人々彼處より起てソドムの方を望みければアブラハム彼等を送らんとて倶に行り
Genesis 18:17 ヱホバ言ひ給けるは我爲んとする事をアブラハムに隱すべけんや
Genesis 18:18 アブラハムは必ず大なる強き國民となりて天下の民皆彼に由て福を獲に至るべきに在ずや
Genesis 18:19 其は我彼をして其後の兒孫と家族とに命じヱホバの道を守りて公儀と公道を行しめん爲に彼をしれり是ヱホバ、アブラハムに其曾て彼に就て言し事を行はん爲なり
Genesis 18:20 ヱホバ又言給ふソドムとゴモラの號呼大なるに因り又其罪甚だ重に因て
Genesis 18:21 我今下りて其號呼の我に逹れる如くかれら全く行ひたりしやを見んとす若しからずば我知るに至らんと
Genesis 18:22 其人々其處より身を旋してソドムに赴むけりアブラハムは尚ほヱホバのまへに立り
Genesis 18:23 アブラハム近よりて言けるは爾は義者をも惡者と倶に滅ぼしたまふや
Genesis 18:24 若邑の中に五十人の義者あるも汝尚ほ其處を滅ぼし其中の五十人の義者のためにこれを恕したまはざるや
Genesis 18:25 なんぢ斯の如く爲て義者と惡者と倶に殺すが如きは是あるまじき事なり又義者と惡者を均等するが如きもあるまじき事なり天下を鞫く者は公儀を行ふ可にあらずや
Genesis 18:26 ヱホバ言たまひけるは我若ソドムに於て邑の中に五十人の義者を看ば其人々のために其處を盡く恕さん
Genesis 18:27 アブラハム應へていひけるは我は塵と灰なれども敢て我主に言上す
Genesis 18:28 若五十人の義者の中五人缺たらんに爾五人の缺たるために邑を盡く滅ぼしたまふやヱホバ言たまひけるは我若彼處に四十五人を看ば滅さざるべし
Genesis 18:29 アブラハム又重ねてヱホバに言上して曰けるは若彼處に四十人看えなば如何ヱホバ言たまふ我四十人のために之をなさじ
Genesis 18:30 アブラハム曰ひけるは請ふわが主よ怒らずして言しめたまへ若彼處に三十人看えなば如何ヱホバいひたまふ我三十人を彼處に看ば之を爲じ
Genesis 18:31 アブラハム言ふ我あへてわが主に言上す若彼處に二十人看えなば如何ヱホバ言たまふ我二十人のためにほろぼさじ
Genesis 18:32 アブラハム言ふ請ふわが主怒らずして今一度言しめたまへ若かしこに十人看えなば如何ヱホバ言たまふ我十人のためにほろぼさじ
Genesis 18:33 ヱホバ、アブラハムと言ふことを終てゆきたまへりアブラハムおのれの所にかへりぬ
Genesis 19:1 其二個の天使黄昏にソドムに至るロト時にソドムの門に坐し居たりしがこれを視起て迎へ首を地にさげて
Genesis 19:2 言けるは我主よ請ふ僕の家に臨み足を濯ひて宿りつとに起きて途に遄征たまへ彼等言ふ否我等は街衢に宿らんと
Genesis 19:3 然ど固く強ければ遂に彼の所に臨みて其家に入るロト乃ち彼等のために筵を設け酵いれぬパンを炊て食はしめたり
Genesis 19:4 斯て未だ寢ざる前に邑の人々即ちソドムの人老たるも若きも諸共に四方八方より來たれる民皆其家を環み
Genesis 19:5 ロトを呼て之に言けるは今夕爾に就たる人は何處にをるや彼等を我等の所に携へ出せ我等之を知らん
Genesis 19:6 ロト入口に出て其後の戸を閉ぢ彼等の所に至りて
Genesis 19:7 言けるは請ふ兄弟よ惡き事を爲すなかれ
Genesis 19:8 我に未だ男知ぬ二人の女あり請ふ我之を携へ出ん爾等の目に善と見ゆる如く之になせよ唯此人等は既に我家の蔭に入たれば何をも之になすなかれ
Genesis 19:9 彼等曰ふ爾退け又言けるは此人は來り寓れる身なるに恒に士師とならんとす然ば我等彼等に加ふるよりも多くの害を爾に加へんと遂に彼等酷しく其人ロトに逼り前よりて其戸を破んとせしに
Genesis 19:10 彼二人其手を舒しロトを家の内に援いれて其戸を閉ぢ
Genesis 19:11 家の入口にをる人衆をして大なるも小も倶に目を眩しめければ彼等遂に入口を索ぬるに困憊たり
Genesis 19:12 斯て二人ロトに言けるは外に爾に屬する者ありや汝の婿子女および凡て邑にをりて爾に屬する者を此所より携へ出べし
Genesis 19:13 此處の號呼ヱホバの前に大になりたるに因て我等之を滅さんとすヱホバ我等を遣はして之を滅さしめたまふ
Genesis 19:14 ロト出て其女を娶る婿等に告て言けるはヱホバが邑を滅したまふべければ爾等起て此處を出よと然ど婿等は之を戲言と視爲り
Genesis 19:15 曉に及て天使ロトを促して言けるは起て此なる爾の妻と二人の女を携へよ恐くは爾邑の惡とともに滅されん
Genesis 19:16 然るに彼遲延ひしかば二人其手と其妻の手と其二人の女の手を執て之を導き出し邑の外に置りヱホバ斯彼に仁慈を加へたまふ
Genesis 19:17 既に之を導き出して其一人曰けるは逃遁て汝の生命を救へ後を回顧るなかれ低地の中に止るなかれ山に遁れよ否ずば爾滅されん
Genesis 19:18 ロト彼等に言けるはわが主よ請ふ斯したまふなかれ
Genesis 19:19 視よ僕爾の目のまへに恩を得たり爾大なる仁慈を吾に施してわが生命を救たまふ吾山に遁る能はず恐くは災害身に及びて死るにいたらん
Genesis 19:20 視よ此邑は遁ゆくに近くして且小し我をして彼處に遁れしめよしからば吾生命全からん是は小き邑なるにあらずや
Genesis 19:21 天使之にいひけるは視よ我此事に關ても亦爾の願を容たれば爾が言ふところの邑を滅さじ
Genesis 19:22 急ぎて彼處に遁れよ爾が彼處に至るまでは我何事をも爲を得ずと是に因て其邑の名はゾアル(小し)と稱る
Genesis 19:23 ロト、ゾアルに至れる時日地の上に昇れり
Genesis 19:24 ヱホバ硫黄と火をヱホバの所より即ち天よりソドムとゴモラに雨しめ
Genesis 19:25 其邑と低地と其邑の居民および地に生るところの物を盡く滅したまへり
Genesis 19:26 ロトの妻は後を回顧たれば鹽の柱となりぬ
Genesis 19:27 アブラハム其朝夙に起て其嘗てヱホバの前に立たる處に至り
Genesis 19:28 ソドム、ゴモラおよび低地の全面を望み見るに其地の烟燄窰の烟のごとくに騰上れり
Genesis 19:29 神低地の邑を滅したまふ時即ちロトの住る邑を滅したまふ時に當り神アブラハムを眷念て斯其滅亡の中よりロトを出したまへり
Genesis 19:30 斯てロト、ゾアルに居ることを懼れたれば其二人の女と偕にゾアルを出て上りて山に居り其二人の女子とともに巖穴に住り
Genesis 19:31 茲に長女季女にいひけるは我等の父は老いたり又此地には我等に偶て世の道を成す人あらず
Genesis 19:32 然ば我等父に酒を飮せて與に寢ね父に由て子を得んと
Genesis 19:33 遂に其夜父に酒を飮せ長女入て其父と與に寢たり然るにロトは女の起臥を知ざりき
Genesis 19:34 翌日長女季女に言けるは我昨夜わが父と寢たり我等此夜又父に酒をのません爾入て與に寢よわれらの父に由て子を得ることをえんと
Genesis 19:35 乃ち其夜も亦父に酒をのませ季女起て父と與に寢たりロトまた女の起臥を知ざりき
Genesis 19:36 斯ロトの二人の女其父によりて孕みたり
Genesis 19:37 長女子を生み其名をモアブと名く即ち今のモアブ人の先祖なり
Genesis 19:38 季女も亦子を生み其名をベニアンミと名く即ち今のアンモニ人の先祖なり
Genesis 20:1 アブラハム彼處より徒りて南の地に至りカデシとシユルの間に居りゲラルに寄留り
Genesis 20:2 アブラハム其妻サラを我妹なりと言しかばゲラルの王アビメレク人を遣してサラを召入たり
Genesis 20:3 然るに神夜の夢にアビメレクに臨みて之に言たまひけるは汝は其召入たる婦人のために死るなるべし彼は夫ある者なればなり
Genesis 20:4 アビメレク未だ彼に近づかざりしかば言ふ主よ汝は義き民をも殺したまふや
Genesis 20:5 彼は我に是はわが妹なりと言しにあらずや又婦も自彼はわが兄なりと言たり我全き心と潔き手をもて此をなせり
Genesis 20:6 神又夢に之に言たまひけるは然り我汝が全き心をもて之をなせるを知りたれば我も汝を阻めて罪を我に犯さしめざりき彼に觸るを容ざりしは是がためなり
Genesis 20:7 然ば彼の妻を歸せ彼は預言者なれば汝のために祈り汝をして生命を保しめん汝若歸さずば汝と汝に屬する者皆必死るべきを知るべし
Genesis 20:8 是に於てアビメレク其朝夙に起て臣僕を悉く召し此事を皆語り聞せければ人々甚く懼れたり
Genesis 20:9 斯てアビメレク、アブラハムを召て之に言けるは爾我等に何を爲すや我何の惡き事を爾になしたれば爾大なる罪を我とわが國に蒙らしめんとせしか爾爲すべからざる所爲を我に爲したり
Genesis 20:10 アビメレク又アブラハムに言けるは爾何を見て此事を爲たるや
Genesis 20:11 アブラハム言けるは我此處はかならず神を畏れざるべければ吾妻のために人我を殺さんと思ひたるなり
Genesis 20:12 又我は誠にわが妹なり彼はわが父の子にしてわが母の子にあらざるが遂に我妻となりたるなり
Genesis 20:13 神我をして吾父の家を離れて周遊しめたまへる時に當りて我彼に爾我等が至る處にて我を爾の兄なりと言へ是は爾が我に施す恩なりと言たり
Genesis 20:14 アビメレク乃ち羊牛僕婢を將てアブラハムに與へ其妻サラ之に歸せり
Genesis 20:15 而してアビメレク言けるは視よ我地は爾のまへにあり爾の好むところに住め
Genesis 20:16 又サラに言けるは視よ我爾の兄に銀千枚を與へたり是は爾および諸の人にありし事等につきて爾の目を蔽ふ者なり斯爾償贖を得たり
Genesis 20:17 是に於てアブラハム神に祈りければ神アビメレクと其妻および婢を醫したまひて彼等子を産むにいたる
Genesis 20:18 ヱホバさきにはアブラハムの妻サラの故をもてアビメレクの家の者の胎をことごとく閉たまへり
Genesis 21:1 ヱホバ其言し如くサラを眷顧みたまふ即ちヱホバ其語しごとくサラに行ひたまひしかば
Genesis 21:2 サラ遂に孕み神のアブラハムに語たまひし期日に及びて年老たるアブラハムに男子を生り
Genesis 21:3 アブラハム其生れたる子即ちサラが己に生る子の名をイサクと名けたり
Genesis 21:4 アブラハム神の命じたまひし如く八日に其子イサクに割禮を行へり
Genesis 21:5 アブラハムは其子イサクの生れたる時百歳なりき
Genesis 21:6 サラ言けるは神我を笑はしめたまふ聞く者皆我とともに笑はん
Genesis 21:7 又曰けるは誰かアブラハムにサラ子女に乳を飮しむるにいたらんと言しものあらん然に彼が年老るに及びて男子を生たりと
Genesis 21:8 偖其子長育ちて遂に乳を離るイサクの乳を離るる日にアブラハム大なる饗宴を設けたり
Genesis 21:9 時にサラ、エジプト人ハガルがアブラハムに生たる子の笑ふを見て
Genesis 21:10 アブラハムに言けるは此婢と其子を遂出せ此婢の子は吾子イサクと共に嗣子となるべからざるなりと
Genesis 21:11 アブラハム其子のために甚く此事を憂たり
Genesis 21:12 神アブラハムに言たまひけるは童兒のため又汝の婢のために之を憂るなかれサラが汝に言ところの言は悉く之を聽け其はイサクより出る者汝の裔と稱らるべければなり
Genesis 21:13 又婢の子も汝の胤なれば我之を一の國となさん
Genesis 21:14 アブラハム朝夙に起てパンと水の革嚢とを取りハガルに與へて之を其肩に負せ其子を携へて去しめければ彼往てベエルシバの曠野に躑躅しが
Genesis 21:15 革嚢の水遂に罄たれば子を灌木の下に置き
Genesis 21:16 我子の死るを見るに忍ずといひて遙かに行き箭逹を隔てて之に對ひ坐しぬ斯相嚮ひて坐し聲をあげて泣く
Genesis 21:17 神其童兒の聲を聞たまふ神の使即ち天よりハガルを呼て之に言けるはハガルよ何事ぞや懼るるなかれ神彼處にをる童兒の聲を聞たまへり
Genesis 21:18 起て童兒を起し之を汝の手に抱くべし我之を大なる國となさんと
Genesis 21:19 神ハガルの目を開きたまひければ水の井あるを見ゆきて革嚢に水を充し童兒に飮しめたり
Genesis 21:20 神童兒と偕に在す彼遂に成長り曠野に居りて射者となり
Genesis 21:21 パランの曠野に住り其母彼のためにエジプトの國より妻を迎へたり
Genesis 21:22 當時アビメレクと其軍勢の長ピコル、アブラハムに語て言けるは汝何事を爲にも神汝とともに在す
Genesis 21:23 然ば汝が我とわが子とわが孫に僞をなさざらんことを今此に神をさして我に誓へ我が厚情をもて汝をあつかふごとく汝我と此汝が寄留る地とに爲べし
Genesis 21:24 アブラハム言ふ我誓はん
Genesis 21:25 アブラハム、アビメレクの臣僕等が水の井を奪ひたる事につきてアビメレクを責ければ
Genesis 21:26 アビメレク言ふ我誰が此事を爲しを知ず汝我に告しこと无く又我今日まで聞しことなし
Genesis 21:27 アブラハム乃ち羊と牛を取て之をアビメレクに與ふ斯て二人契約を結べり
Genesis 21:28 アブラハム牝の羔七を分ち置ければ
Genesis 21:29 アビメレク、アブラハムに言ふ汝此七の牝の羔を分ちおくは何のためなるや
Genesis 21:30 アブラハム言けるは汝わが手より此七の牝の羔を取りて我が此井を掘たる證據とならしめよと彼等二人彼處に誓ひしによりて
Genesis 21:31 其處をベエルシバ(盟約の井)と名けたり
Genesis 21:32 斯彼等ベエルシバにて契約を結びアビメレクと其軍勢の長ピコルは起てペリシテ人の國に歸りぬ
Genesis 21:33 アブラハム、ベエルシバに柳を植ゑ永遠に在す神ヱホバの名を彼處に龥り
Genesis 21:34 斯してアブラハム久くペリシテ人の地に留寄りぬ
Genesis 22:1 是等の事の後神アブラハムを試みんとて之をアブラハムよと呼たまふ彼言ふ我此にあり
Genesis 22:2 ヱホバ言給ひけるは爾の子爾の愛する獨子即ちイサクを携てモリアの地に到りわが爾に示さんとする彼所の山に於て彼を燔祭として獻ぐべし
Genesis 22:3 アブラハム朝夙に起て其驢馬に鞍おき二人の少者と其子イサクを携へ且燔祭の柴薪を劈りて起て神の己に示したまへる處におもむきけるが
Genesis 22:4 三日におよびてアブラハム目を擧て遙に其處を見たり
Genesis 22:5 是に於てアブラハム其少者に言けるは爾等は驢馬とともに此に止れ我と童子は彼處にゆきて崇拜を爲し復爾等に歸ん
Genesis 22:6 アブラハム乃ち燔祭の柴薪を取て其子イサクに負せ手に火と刀を執て二人ともに往り
Genesis 22:7 イサク父アブラハムに語て父よと曰ふ彼答て子よ我此にありといひければイサク即ち言ふ火と柴薪は有り然ど燔祭の羔は何處にあるや
Genesis 22:8 アブラハム言けるは子よ神自ら燔祭の羔を備へたまはんと二人偕に進みゆきて
Genesis 22:9 遂に神の彼に示したまへる處に到れり是においてアブラハム彼處に壇を築き柴薪を臚列べ其子イサクを縛りて之を壇の柴薪の上に置せたり
Genesis 22:10 斯してアブラハム手を舒べ刀を執りて其子を宰んとす
Genesis 22:11 時にヱホバの使者天より彼を呼てアブラハムよアブラハムよと言へり彼言ふ我此にあり
Genesis 22:12 使者言けるは汝の手を童子に按るなかれ亦何をも彼に爲べからず汝の子即ち汝の獨子をも我ために惜まざれば我今汝が神を畏るを知ると
Genesis 22:13 茲にアブラハム目を擧て視れば後に牡綿羊ありて其角林叢に繋りたりアブラハム即ち往て其牡綿羊を執へ之を其子の代に燔祭として獻げたり
Genesis 22:14 アブラハム其處をエホバエレ(エホバ預備たまはん)と名く是に縁て今日もなほ人々山にヱホバ預備たまはんといふ
Genesis 22:15 ヱホバの使者再天よりアブラハムを呼て
Genesis 22:16 言けるはヱホバ諭したまふ我己を指て誓ふ汝是事を爲し汝の子即ち汝の獨子を惜まざりしに因て
Genesis 22:17 我大に汝を祝み又大に汝の子孫を増して天の星の如く濱の沙の如くならしむべし汝の子孫は其敵の門を獲ん
Genesis 22:18 又汝の子孫によりて天下の民皆福祉を得べし汝わが言に遵ひたるによりてなりと
Genesis 22:19 斯てアブラハム其少者の所に歸り皆たちて偕にベエルシバにいたれりアブラハムはベエルシバに住り
Genesis 22:20 是等の事の後アブラハムに告る者ありて言ふミルカ亦汝の兄弟ナホルにしたがひて子を生り
Genesis 22:21 長子はウヅ其弟はブヅ其次はケムエル是はアラムの父なり
Genesis 22:22 其次はケセデ、ハゾ、ピルダシ、ヱデラフ、ベトエル
Genesis 22:23 ベトエルはリベカを生り是八人はミルカがアブラハムの兄弟ナホルに生たる者なり
Genesis 22:24 ナホルの妾名はルマといふ者も亦テバ、ガハム、タハシおよびマアカを生り
Genesis 23:1 サラ百二十七歳なりき是即ちサラの齡の年なり
Genesis 23:2 サラ、キリアテアルバにて死り是はカナンの地のヘブロンなりアブラハム至りてサラのために哀み且哭り
Genesis 23:3 斯てアブラハム死人の前より起ち出てヘテの子孫に語りて言けるは
Genesis 23:4 我は汝等の中の賓旅なり寄居者なり請ふ汝等の中にて我は墓地を與へて吾が所有となし我をして吾が死人を出し葬ることを得せしめよ
Genesis 23:5 ヘテの子孫アブラハムに應て之に言ふ
Genesis 23:6 我主よ我等に聽たまへ我等の中にありて汝は神の如き君なり我等の墓地の佳者を擇みて汝の死人を葬れ我等の中一人も其墓地を汝にをしみて汝をしてその死人を葬らしめざる者なかるべし
Genesis 23:7 是に於てアブラハム起ち其地の民ヘテの子孫に對て躬を鞠む
Genesis 23:8 而して彼等と語ひて言けるは若我をしてわが死人を出し葬るを得せしむる事汝等の意ならば請ふ我に聽て吾ためにゾハルの子エフロンに求め
Genesis 23:9 彼をして其野の極端に有るマクペラの洞穴を我に與へしめよ彼其十分の値を取て之を我に與へ汝等の中にてわが所有なる墓地となさば善し
Genesis 23:10 時にエフロン、ヘテの子孫の中に坐しゐたりヘテ人エフロン、ヘテの子孫即ち凡て其邑の門に入る者の聽る前にてアブラハムに應へて言けるは
Genesis 23:11 吾主よ我に聽たまへ其野は我汝に輿ふ又其中の洞穴も我之を汝に輿ふ我わが民なる衆人の前にて之を汝あたふ汝の死人を葬れ
Genesis 23:12 是に於てアブラハム其地の民の前に躬を鞠たり
Genesis 23:13 而して彼其地の民に聽る前にてエフロンに語りて言けるは汝若之を肯はば請ふ吾に聽け我其野の値を汝に償はん汝之を吾より取れ我わが死人を彼處に葬らん
Genesis 23:14 エフロン、アブラハムに答て曰けるは
Genesis 23:15 わが主よ我に聽たまへ彼地は銀四百シケルに當る是は我と汝の間に豈道に足んや然ば汝の死人を葬れ
Genesis 23:16 アブラハ、ムエフロンの言に從ひエフロンがヘテの子孫の聽る前にて言たる所の銀を秤り商買の中の通用銀四百シケルを之に輿へたり
Genesis 23:17 マムレの前なるマクペラに在るエフロンの野は野も其中の洞穴も野の中と其四周の堺にある樹も皆
Genesis 23:18 ヘテの子孫の前即ち凡て其邑に入る者の前にてアブラハムの所有と定りぬ
Genesis 23:19 厥後アブラハム其妻サラをマムレの前なるマクペラの野の洞穴に葬れり是即ちカナンの地のヘブロンなり
Genesis 23:20 斯く其野と其中の洞穴はヘテの子孫之をアブラハムの所有なる墓地と定めたり
Genesis 24:1 アブラハム年邁て老たりヱホバ萬の事に於てアブラハムを祝みたまへり
Genesis 24:2 茲にアブラハム其凡の所有を宰る其家の年邁なる僕に言けるは請ふ爾の手を吾髀の下に置よ
Genesis 24:3 我爾をして天の神地の神ヱホバを指て誓はしめん即ち汝わが偕に居むカナン人の女の中より吾子に妻を娶るなかれ
Genesis 24:4 汝わが故國に往き吾親族に到りて吾子イサクのために妻を娶れ
Genesis 24:5 僕彼に言けるは倘女我に從ひて此地に來ることを好まざる事あらん時は我爾の子を彼汝が出來りし地に導き歸るべきか
Genesis 24:6 アブラハム彼に曰けるは汝愼みて吾子を彼處に携かへるなかれ
Genesis 24:7 天の神ヱホバ我を導きて吾父の家とわが親族の地を離れしめ我に語り我に誓ひて汝の子孫に此地を與へんと言たまひし者其使を遣して汝に先たしめたまはん汝彼處より我子に妻を娶るべし
Genesis 24:8 若女汝に從ひ來る事を好ざる時は汝吾此誓を解るべし唯我子を彼處に携へかへるなかれ
Genesis 24:9 是に於て僕手を其主人アブラハムの髀の下に置て此事について彼に誓へり
Genesis 24:10 斯て僕其主人の駱駝の中より十頭の駱駝を取りて出たてり即ち其主人の諸の佳物を手にとりて起てメソポタミアに往きナホルの邑に至り
Genesis 24:11 其駱駝を邑の外にて井の傍に跪伏しめたり其時は黄昏にて婦女等の水汲にいづる時なりき
Genesis 24:12 斯して彼言けるは吾主人アブラハムの神ヱホバよ願くは今日我にその者を逢しめわが主人アブラハムに恩惠を施し給へ
Genesis 24:13 我この水井の傍に立ち邑の人の女等水を汲に出づ
Genesis 24:14 我童女に向ひて請ふ汝の瓶をかたむけて我に飮しめよと言んに彼答へて飮め我また汝の駱駝にも飮しめんと言ば彼は汝が僕イサクの爲に定め給ひし者なるべし然れば我汝の吾主人に恩惠を施し給ふを知らん
Genesis 24:15 彼語ふことを終るまへに視よリベカ瓶を肩にのせて出きたる彼はアブラハムの兄弟ナホルの妻ミルカの子ベトエルに生れたる者なり
Genesis 24:16 其童女は觀るに甚だ美しく且處女にして未だ人に適しことあらず彼井に下り其瓶に水を盈て上りしかば
Genesis 24:17 僕はせゆきて之にあひ請ふ我をして汝の瓶より少許の水を飮しめよといひけるに
Genesis 24:18 彼主よ飮たまへといひて乃ち急ぎ其瓶を手におろして之にのましめたりしが
Genesis 24:19 飮せをはりて言ふ汝の駱駝のためにも其飮をはるまで水を汲て飽しめん
Genesis 24:20 急ぎて其瓶を水鉢にあけ又汲んとて井にはせゆき其諸の駱駝のために汲みたり
Genesis 24:21 其人之を見つめヱホバが其途に幸福をくだしたまふや否やをしらんとして默し居たり
Genesis 24:22 茲に駱駝飮をはりしかば其人重半シケルの金の鼻環一箇と重十シケルの金の手釧二箇をとりて
Genesis 24:23 言けるは汝は誰の女なるや請ふ我に告よ汝の父の家に我等が宿る隙地ありや
Genesis 24:24 女彼に曰けるは我はミルカがナホルに生みたる子ベトエルの女なり
Genesis 24:25 又彼にいひけるは家には藁も飼草も多くあり且宿る隙地もあり
Genesis 24:26 是に於て其人伏てヱホバを拜み
Genesis 24:27 言けるは吾主人アブラハムの神ヱホバは讃美べきかなわが主人に慈惠と眞實とを缺きたまはず我途にありしにヱホバ我を吾主人の兄弟の家にみちびきたまへり
Genesis 24:28 茲に童女走行て其母の家に此等の事を告たり
Genesis 24:29 リベカに一人の兄あり其名をラバンといふラバンはせいで井にゆきて其人の許につく
Genesis 24:30 すなはち彼鼻環および其妹の手の手釧を見又其妹リベカが其人斯我に語りといふを聞て其人の所に到り見るに井の側にて駱駝の傍にたちゐたれば
Genesis 24:31 之に言けるは汝ヱホバに祝るる者よ請ふ入れ奚ぞ外にたつや我家を備へ且駱駝のために所をそなへたり
Genesis 24:32 是に於て其人家にいりぬラバン乃ち其駱駝の負を釋き藁と飼草を駱駝にあたへ又水をあたへて其人の足と其從者の足をあらはしめ
Genesis 24:33 斯して彼の前に食をそなへたるに彼言ふ我はわが事をのぶるまでは食はじとラバン語れといひければ
Genesis 24:34 彼言ふわれはアブラハムの僕なり
Genesis 24:35 ヱホバ大にわが主人をめぐみたまひて大なる者とならしめ又羊牛金銀僕婢駱駝驢馬をこれにたまへり
Genesis 24:36 わが主人の妻サラ年老てのちわが主人に男子をうみければ主人其所有を悉く之に輿ふ
Genesis 24:37 わが主人我を誓せて言ふ吾すめるカナンの地の人の女子の中よりわが子に妻を娶るなかれ
Genesis 24:38 汝わが父の家にゆきわが親族にいたりわが子のために妻をめとれと
Genesis 24:39 我わが主人にいひけるは倘女我にしたがひて來ずば如何
Genesis 24:40 彼我にいひけるは吾事ふるところのヱホバ其使者を汝とともに遣はして汝の途に幸福を降したまはん爾わが親族わが父の家より吾子に妻をめとるべし
Genesis 24:41 汝わが親族に至れる時はわが誓を解さるべし若彼等汝にあたへずば汝はわが誓をゆるさるべしと
Genesis 24:42 我今日井に至りて謂けらくわが主人アブラハムの神ヱホバねがはくはわがゆく途に幸福を降したまへ
Genesis 24:43 我はこの井水の傍に立つ水を汲にいづる處女あらん時我彼にむかひて請ふ汝の瓶より少許の水を我にのましめよと言んに
Genesis 24:44 若我に答へて汝飮め我亦汝の駱駝のためにも汲んと言ば是ヱホバがわが主人の子のために定たまひし女なるべし
Genesis 24:45 我心の中に語ふことを終るまへにリベカ其瓶を肩にのせて出來り井にくだりて水を汲みたるにより我彼に請ふ我にのましめよと言ければ
Genesis 24:46 彼急ぎ其瓶を肩よりおろしていひけるは飮めまた汝の駱駝にものましめんと是に於て我飮しが彼また駱駝にものましめたり
Genesis 24:47 我彼に問て汝は誰の女なるやといひければミルカがナホルに生たる子ベトエルの女なりといふ是に於て我其鼻に環をつけ其手に手釧をつけたり
Genesis 24:48 而して我伏てヱホバを拜み吾主人アブラハムの神ヱホバを頌美たりヱホバ我を正き途に導きてわが主人の兄弟の女を其子のために娶しめんとしたまへばなり
Genesis 24:49 されば汝等若わが主人にむかひて慈恵と眞誠をもて事をなさんと思はば我に告よ然ざるも亦我に告よ然ば我右か左におもむくをえん
Genesis 24:50 ラバンとベトエル答て言けるは此事はヱホバより出す我等汝に善惡を言ふあたはず
Genesis 24:51 視よリベカ汝の前にをる携へてゆき彼をしてヱホバの言たまひし如く汝の主人の子の妻とならしめよ
Genesis 24:52 アブラハムの僕彼等の言を聞て地に伏てヱホバを拜めり
Genesis 24:53 是に於て僕銀の飾品金の飾品および衣服をとりいだしてリベカに輿へ亦其兄と母に寶物をあたへたり
Genesis 24:54 是に於て彼および其從者等食飮して宿りしが朝起たる時彼言我をして吾主人に還らしめよ
Genesis 24:55 リベカの兄と母言けるは童女を數日の間少くも十日我等と偕にをらしめよしかるのち彼ゆくべし
Genesis 24:56 彼人之に言ヱホバ吾途に福祉をくだしたまひたるなれば我を阻むるなかれ我を歸してわが主人に往しめよ
Genesis 24:57 彼等いひけるは童女をよびて其言を問んと
Genesis 24:58 即ちリベカを呼て之に言けるは汝此人と共に往や彼言ふ往ん
Genesis 24:59 是に於て彼等妹リベカと其乳媼およびアブラハムの僕と其從者を遣り去しめたり
Genesis 24:60 即ち彼等リベカを祝して之にいひけるはわれらの妹よ汝千萬の人の母となれ汝の子孫をして其仇の門を獲しめよ
Genesis 24:61 是に於てリベカ起て其童女等とともに駱駝にのりて其人にしたがひ往く僕乃ちリベカを導きてさりぬ
Genesis 24:62 茲にイサク、ラハイロイの井の路より來れり南の國に住居たればなり
Genesis 24:63 しかしてイサク黄昏に野に出て默想をなしたりしが目を擧て見しに駱駝の來るあり
Genesis 24:64 リベカ目をあげてイサクを見駱駝をおりて
Genesis 24:65 僕にいひけるは野をあゆみて我等にむかひ來る者は何人なるぞ僕わが主人なりといひければリベカ覆衣をとりて身をおほへり
Genesis 24:66 茲に僕其凡てなしたる事をイサクに告ぐ
Genesis 24:67 イサク、リベカを其母サラの天幕に携至りリベカを娶りて其妻となしてこれを愛したりイサクは母にわかれて後茲に慰籍を得たり
Genesis 25:1 アブラハム再妻を娶る其名をケトラといふ
Genesis 25:2 彼ジムラン、ヨクシヤン、メダン、ミデアン、イシバク、シユワを生り
Genesis 25:3 ヨクシヤン、シバとデダンを生むデダンの子はアッシユリ族レトシ族リウミ族なり
Genesis 25:4 ミデアンの子はエパ、エペル、ヘノク、アビダ、エルダアなり是等は皆ケトラの子孫なり
Genesis 25:5 アブラハム其所有を盡くイサクに與へたり
Genesis 25:6 アブラハムの妾等の子にはアブラハム其生る間の物をあたへて之をして其子イサクを離れて東にさりて東の國に至らしむ
Genesis 25:7 アブラハムの生存へたる齡の日は即ち百七十五年なりき
Genesis 25:8 アブラハム遐齡に及び老人となり年滿て氣たえ死て其民に加る
Genesis 25:9 其子イサクとイシマエル之をヘテ人ゾハルの子エフロンの野なるマクペラの洞穴に葬れり是はマムレの前にあり
Genesis 25:10 即ちアブラハムがヘテの子孫より買たる野なり彼處にアブラハムと其妻サラ葬らる
Genesis 25:11 アブラハムの死たる後神其子イサクを祝みたまふイサクはベエルラハイロイの邊に住り
Genesis 25:12 サラの侍婢なるエジプト人ハガルがアブラハムに生たる子イシマエルの傳は左のごとし
Genesis 25:13 イシマエルの子の名は其名氏と其世代に循ひて言ば是のごとしイシマエルの長子はネバヨテなり其次はケダル、アデビエル、ミブサム
Genesis 25:14 ミシマ、ドマ、マツサ
Genesis 25:15 ハダデ、テマ、ヱトル、ネフシ、ケデマ
Genesis 25:16 是等はイシマエルの子なり是等は其郷黨を其營にしたがひて言る者にして其國に循ひていへば十二の牧伯なり
Genesis 25:17 イシマエルの齡は百三十七歳なりき彼いきたえ死て其民にくははる
Genesis 25:18 イシマエルの子等はハビラよりエジプトの前なるシユルまでの間に居住てアッスリヤまでにおよべりイシマエルは其すべての兄弟等のまへにすめり
Genesis 25:19 アブラハムの子イサクの傳は左のごとしアブラハム、イサクを生り
Genesis 25:20 イサク四十歳にしてリベカを妻に娶れりリベカはパダンアラムのスリア人ベトエルの女にしてスリア人ラバンの妹なり
Genesis 25:21 イサク其妻の子なきに因て之がためにヱホバに祈願をたてければヱホバ其ねがひを聽たまへり遂に其妻リベカ孕みしが
Genesis 25:22 其子胎の内に爭そひければ然らば我いかで斯てあるべきと言て往てヱホバに問に
Genesis 25:23 ヱホバ彼に言たまひけるは二の國民汝の胎にあり二の民汝の腹より出て別れん一の民は一の民よりも強かるべし大は小に亊へんと
Genesis 25:24 かくて臨月みちて見しに胎には孿ありき
Genesis 25:25 先に出たる者は赤くして躰中裘の如し其名をエサウと名けたり
Genesis 25:26 其後に弟出たるが其手にエサウの踵を持り其名をヤコブとなづけたりリベカが彼等を生し時イサクは六十歳なりき
Genesis 25:27 茲に童子人となりしがエサウは巧なる獵人にして野の人となりヤコブは質樸なる人にして天幕に居ものとなれり
Genesis 25:28 イサクは麆を嗜によりてエサウを愛したりしがリベカはヤコブを愛したり
Genesis 25:29 茲にヤコブ羹を煮たり時にエサウ野より來りて憊れ居り
Genesis 25:30 エサウ、ヤコブにむかひ我憊れたれば請ふ其紅羹其處にある紅羹を我にのませよといふ是をもて彼の名はエドム(紅)と稱らる
Genesis 25:31 ヤコブ言けるは今日汝の家督の權を我に鬻れ
Genesis 25:32 エサウいふ我は死んとして居る此家督の權我に何の益をなさんや
Genesis 25:33 ヤコブまた言けるは今日我に誓へと彼すなはち誓て其家督の權をヤコブに鬻ぬ
Genesis 25:34 是に於てヤコブ、パンと扁豆の羹とをエサウに與へければ食且飮て起て去り斯エサウ家督の權を藐視じたり
Genesis 26:1 アブラハムの時にありし最初の饑饉の外に又其國に饑饉ありければイサク、ゲラルに往てペリシテ人の王アビメレクの許にいたれり
Genesis 26:2 時にヱホバ彼にあらはれて言たまひけるはエジプトに下るなかれ吾汝に示すところの地にをれ
Genesis 26:3 汝此地にとどまれ我汝と共にありて汝を祝まん我是等の國を盡く汝および汝の子孫に與へ汝の父アブラハムに誓ひたる誓言を行ふべし
Genesis 26:4 われ汝の子孫を増て天の星のごとくなし汝の子孫に凡て是等の國を與へん汝の子孫によりて天下の國民皆福祉を獲べし
Genesis 26:5 是はアブラハムわが言に順ひわが職守とわが誡命とわが憲法とわが律法を守りしに因てなり
Genesis 26:6 イサク乃ちゲラルに居しが
Genesis 26:7 處の人其妻の事をとへば我妹なりと言ふリベカは觀に美麗かりければ其處の人リベカの故をもて我を殺さんと謂て彼をわが妻と言をおそれたるなり
Genesis 26:8 イサク久しく彼處にをりし後一日ペリシテ人の王アビメレク\牖より望みてイサクが其妻リベカと嬉戲るを見たり
Genesis 26:9 是に於てアビメレク、イサクを召て言けるは彼は必ず汝の妻なり汝なんぞ吾妹といひしやイサク彼に言けるは恐くは我彼のために死るならんと思たればなり
Genesis 26:10 アビメレクいひけるは汝なんぞ此事を我等になすや民の一人もし輕々しく汝の妻と寢ることあらんその時は汝罪を我等に蒙らしめんと
Genesis 26:11 アビメレク乃ちすべて民に皆命じて此人と其妻にさはるものは必ず死すべしと言り
Genesis 26:12 イサク彼地に種播て其年に百倍を獲たりヱホバ彼を祝みたまふ
Genesis 26:13 其人大になりゆきて進て盛になり遂に甚だ大なる者となれり
Genesis 26:14 即ち羊と牛と僕從を多く有しかばペリシテ人彼を嫉みたり
Genesis 26:15 其父アブラハムの世に其父の僕從が掘たる諸の井はペリシテ人之をふさぎて土を之にみてたり
Genesis 26:16 茲にアビメレク、イサクに言けるは汝は大に我等よりも強大ければ我等をはなれて去れと
Genesis 26:17 イサク乃ち彼處をさりてゲラルの谷に天幕を張て其處に住り
Genesis 26:18 其父アブラハムの世に掘たる水井をイサク茲に復び鑿り其はアブラハムの死たる後ペリシテ人之を塞ぎたればなり斯してイサク其父が之に名けたる名をもて其名となせり
Genesis 26:19 イサクの僕谷に掘て其處に泉の湧出る井を得たり
Genesis 26:20 ゲラルの牧者此水は我儕の所屬なりといひてイサクの僕と爭ひければイサク其井の名をエセク(競爭)と名けたり彼等が己と之を競爭たるによりてなり
Genesis 26:21 是に於て又他の井を鑿しが彼等是をも爭ひければ其名をシテナ(敵)となづけたり
Genesis 26:22 イサク乃ち彼處より遷りて他の井を鑿けるが彼等之をあらそはざりければ其名をレホボテ(廣塲)と名けて言けるは今ヱホバ我等の處所を廣くしたまへり我等此地を繁衍ん
Genesis 26:23 斯て彼其處よりベエルシバにのぼりしが
Genesis 26:24 其夜ヱホバ彼にあらはれて言たまひけるは我は汝の父アブラハムの神なり懼るるなかれ我汝と偕にありて汝を祝み我僕アブラハムのために汝の子孫を増んと
Genesis 26:25 是に於て彼處に壇を築きてヱホバの名を龥び天幕を彼處に張り彼處にてイサクの僕井を鑿り
Genesis 26:26 茲にアビメレク其友アホザテ及び其軍勢の長ピコルと共にゲラルよりイサクの許に來りければ
Genesis 26:27 イサク彼等に言ふ汝等は我を惡み我をして汝等をはなれて去らしめたるなるに何ぞ我許に來るや
Genesis 26:28 彼等いひけるは我等確然にヱホバが汝と偕にあるを見たれば我等の間即ち我等と汝の間に誓詞を立て汝と契約を結ばんと謂へり
Genesis 26:29 汝我等に惡事をなすなかれ其は我等は汝を害せず只善事のみを汝になし且汝を安然に去しめたればなり汝はヱホバの祝みたまふ者なり
Genesis 26:30 イサク乃ち彼等のために酒宴を設けたれば彼等食ひ且飮り
Genesis 26:31 斯て朝夙に起て互に相誓へり而してイサク彼等を去しめたれば彼等イサクをはなれて安然にかへりぬ
Genesis 26:32 其日イサクの僕來りて其ほりたる井につきて之に告て我等水を得たりといへり
Genesis 26:33 即ち之をシバとなづく此故に其邑の名は今日までベエルシバ(誓詞の井)といふ
Genesis 26:34 エサウ四十歳の時ヘテ人の女ユデテとヘテ人エロンの女バスマテを妻に娶り
Genesis 26:35 彼等はイサクとリベカの心の愁煩となれり
Genesis 27:1 イサク老て目くもりて見るあたはざるに及びて其長子エサウを召て之に吾子よといひければ答へて我此にありといふ
Genesis 27:2 イサクいひけるは視よ我は今老て何時死るやを知ず
Genesis 27:3 然ば請ふ汝の器汝の弓矢を執て野に出でわがために麆を獵て
Genesis 27:4 わが好む美味を作り我にもちきたりて食はしめよ我死るまへに心に汝を祝せん
Genesis 27:5 イサクが其子エサウに語る時にリベカ聞ゐたりエサウは麆を獵て携きたらんとて野に往り
Genesis 27:6 是に於てリベカ其子ヤコブに語りていひけるは我聞ゐたるに汝の父汝の兄エサウに語りて言けらく
Genesis 27:7 吾ために麆をとりきたり美味を製りて我にくはせよ死るまへに我ヱホバの前にて汝を祝せんと
Genesis 27:8 然ば吾子よ吾言にしたがひわが汝に命ずるごとくせよ
Genesis 27:9 汝群畜の所にゆきて彼處より山羊の二箇の善き羔を我にとりきたれ我之をもて汝の父のために其好む美味を製らん
Genesis 27:10 汝之を父にもちゆきて食しめ其死る前に汝を祝せしめよ
Genesis 27:11 ヤコブ其母リベカに言けるは兄エサウは毛深き人にして我は滑澤なる人なり
Genesis 27:12 恐くは父我に捫ることあらん然らば我は欺く者と父に見えんされば祝をえずして返て呪詛をまねかん
Genesis 27:13 其母彼にいひけるは我子よ汝の詛はるる所は我に歸せん只わが言にしたがひ往て取來れと
Genesis 27:14 是において彼往て取り母の所にもちきたりければ母すなはち父の好むところの美味を製れり
Genesis 27:15 而してリベカ家の中に己の所にある長子エサウの美服をとりて之を季子ヤコブに衣せ
Genesis 27:16 又山羊の羔の皮をもて其手と其頸の滑澤なる處とを掩ひ
Genesis 27:17 其製りたる美味とパンを子ヤコブの手にわたせり
Genesis 27:18 彼乃ち父の許にいたりて我父よといひければ我此にありわが子よ汝は誰なると曰ふ
Genesis 27:19 ヤコブ父にいひけるは我は汝の長子エサウなり我汝が我に命じたるごとくなせり請ふ起て坐しわが麆の肉をくらひて汝の心に我を祝せよ
Genesis 27:20 イサク其子に言けるは吾子よ汝いかにして斯速に獲たるや彼言ふ汝の神ヱホバ之を我にあはせたまひしが故なり
Genesis 27:21 イサク、ヤコブにいひけるはわが子よ請ふ近くよれ我汝に捫りて汝がまことに吾子エサウなるや否やをしらん
Genesis 27:22 ヤコブ父イサクに近よりければイサク之にさはりていひけるは聲はヤコブの聲なれども手はエサウの手なりと
Genesis 27:23 彼の手其兄エサウの手のごとく毛深かりしに因て之を辨別へずして遂に之を祝したり
Genesis 27:24 即ちイサクいひけるは汝はまことに吾子エサウなるや彼然りといひければ
Genesis 27:25 イサクいひけるは我に持きたれ吾子の麆を食ひてわが心に汝を祝せんと是に於てヤコブ彼の許にもちきたりければ食へり又酒をもちきたりければ飮り
Genesis 27:26 かくて父イサク彼にいひけるは吾子よ近くよりて我に接吻せよと
Genesis 27:27 彼すなはち近よりて之に接吻しければ其衣の馨香をかぎて彼を祝していひけるは嗚呼吾子の香はヱホバの祝たまへる野の馨香のごとし
Genesis 27:28 ねがはくは神天の露と地の腴および饒多の殼と酒を汝にたまへ
Genesis 27:29 諸の民汝につかへ諸の邦汝に躬を鞠ん汝兄弟等の主となり汝の母の子等汝に身をかがめん汝を詛ふ者はのろはれ汝を祝す者は祝せらるべし
Genesis 27:30 イサク、ヤコブを祝することを終てヤコブ父イサクの前より出さりし時にあたりて兄エサウ獵より歸り來り
Genesis 27:31 己も亦美味をつくりて之を其父の許にもちゆき父にいひけるは父よ起て其子の麆を食ひて心に我を祝せよ
Genesis 27:32 父イサク彼にいひけるは汝は誰なるや彼いふ我は汝の子汝の長子エサウなり
Genesis 27:33 イサク甚大に戰兢ていひけるは然ば彼麆を獵て之を我にもちきたりし者は誰ぞや我汝がきたるまへに諸の物を食ひて彼を祝したれば彼まことに祝福をうべし
Genesis 27:34 エサウ父の言を聞て大に哭き痛く泣て父にいひけるは父よ我を祝せよ我をも祝せよ
Genesis 27:35 イサク言けるは汝の弟僞りて來り汝の祝を奪ひたり
Genesis 27:36 エサウいひけるは彼をヤコブ(推除者)となづくるは宜ならずや彼が我をおしのくる事此にて二次なり昔にはわが家督の權を奪ひ今はわが祝を奪ひたり又言ふ汝は祝をわがために殘しおかざりしや
Genesis 27:37 イサク對てエサウにいひけるは我彼を汝の主となし其兄弟を悉く僕として彼にあたへたり又殼と酒とを彼に授けたり然ば吾子よ我何を汝になすをえん
Genesis 27:38 エサウ父に言けるは父よ父の祝唯一ならんや父よ我を祝せよ我をも祝せよと聲をあげて哭ぬ
Genesis 27:39 父イサク答て彼にいひけるは汝の住所は地の膏腴にはなれ上よりの天の露にはなるべし
Genesis 27:40 汝は劍をもて世をわたり汝の弟に事ん然ど汝繋を離るる時は其軛を汝の頸より振ひおとすを得ん
Genesis 27:41 エサウ父のヤコブを祝したる其祝の爲にヤコブを惡めり即ちエサウ心に謂けるは父の喪の日近ければ其時我弟ヤコブを殺さんと
Genesis 27:42 長子エサウの此言リベカに聞えければ季子ヤコブを呼よせて之に言けるは汝の兄エサウ汝を殺さんとおもひて自ら慰む
Genesis 27:43 されば吾子よ我言にしたがひ起てハランにゆきわが兄ラバンの許にのがれ
Genesis 27:44 汝の兄の怒の釋るまで暫く彼とともに居れ
Genesis 27:45 汝の兄の鬱憤釋けて汝をはなれ汝彼になしたる事を忘るるにいたらば我人をやりて汝を彼處よりむかへん我何ぞ一日のうちに汝等二人を喪ふべけんや
Genesis 27:46 リベカ、イサクに言けるは我はヘテの女等のために世を厭ふにいたるヤコブ若此地の彼女等の如きヘテの女の中より妻を娶らば我身生るも何の利益あらんや
Genesis 28:1 イサク、ヤコブを呼て之を祝し之に命じて言けるは汝カナンの女の中より妻を娶るなかれ
Genesis 28:2 起てパダンアラムに往き汝の母の父ベトエルの家にいたり彼處にて汝の母の兄ラバンの女の中より妻を娶れ
Genesis 28:3 願くは全能の神汝を祝み汝をして子女を多く得せしめ且汝の子孫を増て汝をして多衆の民とならしめ
Genesis 28:4 又アブラハムに賜んと約束せし祝を汝および汝と共に汝の子孫に賜ひ汝をして神がアブラハムにあたへ給ひし此汝が寄寓る地を持たしめたまはんことをと
Genesis 28:5 斯てイサク、ヤコブを遣しければパダンアラムにゆきてラバンの所にいたれりラバンはスリア人ベトエルの子にしてヤコブとエサウの母なるリベカの兄なり
Genesis 28:6 エサウはイサクがヤコブを祝して之をパダンアラムにつかはし彼處より妻を娶しめんとしたるを見又之を祝し汝はカナンの女の中より妻をめとるなかれといひて之に命じたることを見
Genesis 28:7 又ヤコブが其父母の言に順ひてパダンアラムに往しを見たり
Genesis 28:8 エサウまたカナンの女の其父イサクの心にかなはぬを見たり
Genesis 28:9 是においてエサウ、イシマエルの所にゆきて其有る妻の外に又アブラハムの子イシマエルの女ネバヨテの妹マハラテを妻にめとれり
Genesis 28:10 茲にヤコブ、ベエルシバより出たちてハランの方におもむきけるが
Genesis 28:11 一處にいたれる時日暮たれば即ち其處に宿り其處の石をとり枕となして其處に臥て寢たり
Genesis 28:12 時に彼夢て梯の地にたちゐて其巓の天に逹れるを見又神の使者の其にのぼりくだりするを見たり
Genesis 28:13 ヱホバ其上に立て言たまはく我は汝の祖父アブラハムの神イサクの神ヱホバなり汝が偃臥ところの地は我之を汝と汝の子孫に與へん
Genesis 28:14 汝の子孫は地の塵沙のごとくなりて西東北南に蔓るべし又天下の諸の族汝と汝の子孫によりて福祉をえん
Genesis 28:15 また我汝とともにありて凡て汝が往ところにて汝をまもり汝を此地に率返るべし我はわが汝にかたりし事を行ふまで汝をはなれざるなり
Genesis 28:16 ヤコブ目をさまして言けるは誠にヱホバ此處にいますに我しらざりきと
Genesis 28:17 乃ち惶懼ていひけるは畏るべき哉此處是即ち神の殿の外ならず是天の門なり
Genesis 28:18 かくてヤコブ朝夙に起き其枕となしたる石を取り之を立て柱となし膏を其上に沃ぎ
Genesis 28:19 其處を名をベテル(神殿)と名けたり其邑の名は初はルズといへり
Genesis 28:20 ヤコブ乃ち誓をたてていひけるは若神我とともにいまし此わがゆく途にて我をまもり食ふパンと衣る衣を我にあたへ
Genesis 28:21 我をしてわが父の家に安然に歸ることを得せしめたまはばヱホバをわが神となさん
Genesis 28:22 又わが柱にたてたる此石を神の家となさん又汝がわれにたまふ者は皆必ず其十分の一を汝にささげん
Genesis 29:1 斯てヤコブ其途にすすみて東の民の地にいたりて
Genesis 29:2 見るに野に井ありて羊の群三其傍に臥ゐたり此井より群に飮へばなり大なる石井の口にあり
Genesis 29:3 羊の群皆其處に集る時に井の口より石をまろばして羊に水飼ひ復故のごとく井の口に石をのせおくなり
Genesis 29:4 ヤコブ人々に言けるは兄弟よ奚よりきたれるや彼等いふ我等はハランより來る
Genesis 29:5 ヤコブ彼等にいひけるは汝等ナホルの子ラバンをしるや彼等識といふ
Genesis 29:6 ヤコブ又かれらにいひけるは彼は安きや彼等いふ安し視よ彼の女ラケル羊と偕に來ると
Genesis 29:7 ヤコブ言ふ視よ日尚高し家畜を聚むべき時にあらず羊に飮ひて往て牧せよ
Genesis 29:8 彼等いふ我等しかする能はず群の皆聚るに及て井の口より石をまろばして羊に飮ふべきなり
Genesis 29:9 ヤコブ尚彼等と語れる時にラケル父の羊とともに來る其は之を牧居たればなり
Genesis 29:10 ヤコブ其母の兄ラバンの女ラケルおよび其母の兄ラバンの羊を見しかばヤコブ進みよりて井の口より石をまろばし母の兄ラバンの羊に飮ひたり
Genesis 29:11 而してヤコブ、ラケルに接吻して聲をあげて啼哭ぬ
Genesis 29:12 即ちヤコブ、ラケルに己はその父の兄弟にしてリベカの子なることを告ければ彼はしりゆきて父に告たり
Genesis 29:13 ラバン其妹の子ヤコブの事を聞しかば趨ゆきて之を迎へ之を抱きて接吻し之を家に導きいたれりヤコブすなはち此等の事を悉くラバンに述たり
Genesis 29:14 ラバン彼にいひけるは汝は誠にわが骨肉なりとヤコブ一月の間彼とともに居る
Genesis 29:15 茲にラバン、ヤコブにいひけるは汝はわが兄弟なればとて空く我に役事べけんや何の報酬を望むや我に告よ
Genesis 29:16 ラバン二人の女子を有り姉の名はレアといひ妹の名はラケルといふ
Genesis 29:17 レアは目弱かりしがラケルは美しくして姝し
Genesis 29:18 ヤコブ、ラケルを愛したれば言ふ我汝の季女ラケルのために七年汝に亊ん
Genesis 29:19 ラバンいひけるは彼を他の人にあたふるよりも汝にあたふるは善し我と偕に居れ
Genesis 29:20 ヤコブ七年の間ラケルのために勤たりしが彼を愛するが爲に此を數日の如く見做り
Genesis 29:21 茲にヤコブ、ラバンに言けるはわが期滿たればわが妻をあたへて我をしてかれの處にいることを得せしめよ
Genesis 29:22 是に於てラバン處の人を盡く集めて酒宴を設けたりしが
Genesis 29:23 晩に及びて其女レアを携へて此をヤコブにつれ來れりヤコブ即ち彼の處にいりぬ
Genesis 29:24 ラバンまた其侍婢ジルパを娘レアに與へて侍婢となさしめたり
Genesis 29:25 朝にいたりて見るにレアなりしかばヤコブ、ラバンに言けるは汝なんぞ此事を我になしたるや我ラケルのために汝に役事しにあらずや汝なんぞ我を欺くや
Genesis 29:26 ラバンいひけるは姉より先に妹を嫁しむる事は我國にて爲ざるところなり
Genesis 29:27 其七日を過せ我等是をも汝に與へん然ば汝是がために尚七年我に事へて勤むべし
Genesis 29:28 ヤコブ即ち斯なして其七日をすごせしかばラバン其女ラケルをも之にあたへて妻となさしむ
Genesis 29:29 またラバン其侍婢ビルハを女ラケルにあたへて侍婢となさしむ
Genesis 29:30 ヤコブまたラケルの所にいりぬ彼レアよりもラケルを愛し尚七年ラバンに事たり
Genesis 29:31 ヱホバ、レアの嫌はるるを見て其胎をひらきたまへり然どラケルは姙なきものなりき
Genesis 29:32 レア孕みて子を生み其名をルベンと名けていひけるはヱホバ誠にわが艱苦を顧みたまへりされば今夫我を愛せんと
Genesis 29:33 彼ふたたび孕みて子を産みヱホバわが嫌はるるを聞たまひしによりて我に是をもたまへりと言て其名をシメオンと名けたり
Genesis 29:34 彼また孕みて子を生み我三人の子を生たれば夫今より我に膠漆んといへり是によりてレビと名けたり
Genesis 29:35 彼復姙みて子を生み我今ヱホバを讚美んといへり是によりて其名をユダと名けたり是にいたりて産ことやみぬ
Genesis 30:1 ラケル己がヤコブに子を生ざるを見て其姉を夢みヤコブに言けるは我に子を與へよ然らずば我死んと
Genesis 30:2 ヤコブ、ラケルにむかひて怒を發して言ふ汝の胎に子をやどらしめざる者は神なり我神に代るをえんや
Genesis 30:3 ラケルいふ吾婢ビルハを視よ彼の處に入れ彼子を生てわが膝に置ん然ば我もまた彼によりて子をうるにいたらんと
Genesis 30:4 其仕女ビルハを彼にあたへて妻となさしめたりヤコブ即ち彼の處にいる
Genesis 30:5 ビルハ遂にはらみてヤコブに子を生ければ
Genesis 30:6 ラケルいひけるは神我を監み亦わが聲を聽いれて吾に子をたまへりと是によりて其名をダンと名けたり
Genesis 30:7 ラケルの仕女ビルハ再び姙みて次の子をヤコブに生ければ
Genesis 30:8 ラケル我神の爭をもて姉と爭ひて勝ぬといひて其名をナフタリと名けたり
Genesis 30:9 茲にレア産ことの止たるを見しかば其仕女ジルパをとりて之をヤコブにあたへて妻となさしむ
Genesis 30:10 レアの仕女ジルパ、ヤコブに子を産ければ
Genesis 30:11 レア福來れりといひて其名をガドと名けたり
Genesis 30:12 レアの仕女ジルパ次子をヤコブに生ければ
Genesis 30:13 レアいふ我は幸なり女等我を幸なる者となさんと其名をアセルとなづけたり
Genesis 30:14 茲に麥苅の日にルベン出ゆきて野にて戀茄を獲これを母レアの許にもちきたりければラケル、レアにいひけるは請ふ我に汝の子の戀茄をあたへよ
Genesis 30:15 レア彼にいひけるは汝のわが夫を奪しは微き事ならんや然るに汝またわが子の戀茄をも奪んとするやラケルいふ然ば汝の子の戀茄のために夫是夜汝と寢べし
Genesis 30:16 晩におよびてヤコブ野より來りければレア之をいでむかへて言けるは我誠にわが子の戀茄をもて汝を雇ひたれば汝我の所にいらざるべからずヤコブ即ち夜彼といねたり
Genesis 30:17 神レアに聽たまひければ彼妊みて第五の子をヤコブに生り
Genesis 30:18 レアいひけるは我わが仕女を夫に與へたれば神我に其値をたまへりと其名をイツサカルと名けたり
Genesis 30:19 レア復妊みて第六の子をヤコブに生り
Genesis 30:20 レアいひけるは神我に嘉賚を貺ふ我六人の男子を生たれば夫今より我と偕にすまんと其名をゼブルンとなづけたり
Genesis 30:21 其後彼女子を生み其名をデナと名けたり
Genesis 30:22 茲に神ラケルを念ひ神彼に聽て其胎を開きたまひければ
Genesis 30:23 彼妊みて男子を生て曰ふ神わが恥辱を洒ぎたまへりと
Genesis 30:24 乃ち其名をヨセフと名けて言ふヱホバ又他の子を我に加へたまはん
Genesis 30:25 茲にラケルのヨセフを生むに及びてヤコブ、ラバンに言けるは我を歸して故郷に我國に往しめよ
Genesis 30:26 わが汝に事て得たる所の妻子を我に與へて我を去しめよわが汝になしたる役事は汝之を知るなり
Genesis 30:27 ラバン彼にいひけるは若なんぢの意にかなはばねがはくは留れ我ヱホバが汝のために我を祝みしを卜ひ得たり
Genesis 30:28 又言ふ汝の望む値をのべよ我之を與ふべし
Genesis 30:29 ヤコブ彼にいひけるは汝は如何にわが汝に事へしか如何に汝の家畜を牧しかを知る
Genesis 30:30 わが來れる前に汝の有たる者は鮮少なりしが増て遂に群をなすに至る吾來りてよりヱホバ汝を祝みたまへり然ども我は何時吾家を成にいたらんや
Genesis 30:31 彼言ふ我何を汝に與へんかヤコブいひけるは汝何者をも我に與ふるに及ばず汝もし此事を我になさば我復汝の群を牧守らん
Genesis 30:32 即ち我今日徧く汝の群をゆきめぐりて其中より凡て斑なる者點なる者を移し綿羊の中の凡て黒き者を移し山羊の中の點なる者と斑なる者を移さん是わが値なるべし
Genesis 30:33 後に汝來りてわが傭値をしらぶる時わが義我にかはりて應をなすべし若わが所に山羊の斑ならざる者點ならざる者あり綿羊の黒からざる者あらば皆盜る者となすべし
Genesis 30:34 ラバンいふ汝の言の如くなさんことを願ふ
Genesis 30:35 是に於て彼其日牡山羊の斑入なる者斑點なる者を移し凡て牝山羊の斑駮なる者斑點なる者都て身に白色ある者を移し又綿羊の中の凡て黒き者を移して其子等の手に付せり
Genesis 30:36 而して彼己とヤコブの間に三日程の隔をたてたりヤコブはラバンの餘の群を牧ふ
Genesis 30:37 茲にヤコブ楊柳と楓と桑の青枝を執り皮を剥て白紋理を成り枝の白き所をあらはし
Genesis 30:38 其皮をはぎたる枝を群の來りて飮むところの水槽と水鉢に立て群に向はしめ群をして水のみの來る時に孕ましむ
Genesis 30:39 群すなはち枝の前に孕みて斑入の者斑駮なる者斑點なる者を産しかば
Genesis 30:40 ヤコブ其羔羊を區分ちラバンの群の面を其群の斑入なる者と黒き者に對はしめたりしが己の群をば一所に置てラバンの群の中にいれざりき
Genesis 30:41 又家畜の壯健き者孕みたる時はヤコブ水槽の中にて其家畜の目の前に彼枝を置き枝の傍において孕ましむ
Genesis 30:42 然ど家畜の羸弱かる時は之を置ず是に因て羸弱者はラバンのとなり壯健者はヤコブのとなれり
Genesis 30:43 是に於て其人大に富饒になりて多の家畜と婢僕および駱駝驢馬を有にいたれり
Genesis 31:1 茲にヤコブ、ラバンの子等がヤコブわが父の所有を盡く奪ひ吾父の所有によりて此凡の榮光を獲たりといふを聞り
Genesis 31:2 亦ヤコブ、ラバンの面を見るに己に對すること疇昔の如くならず
Genesis 31:3 時にヱホバ、ヤコブに言たまへるは汝の父の國にかへり汝の親族に至れ我汝と偕にをらんと
Genesis 31:4 是に於てヤコブ人をやりてラケルとレアを野に招きて群の所に至らしめ
Genesis 31:5 之にいひけるは我汝等の父の面を見るに其我に對すること疇昔の如くならず然どわが父の神は我と偕にいますなり
Genesis 31:6 汝等がしるごとく我力を竭して汝らの父に事へたるに
Genesis 31:7 汝等の父我を欺きて十次もわが値を易たり然ども神彼の我を害するを容したまはず
Genesis 31:8 彼斑駮なる者は汝の傭値なるべしといへば群の生ところ皆斑駮なり斑入の者は汝の値なるべしといへば群の生ところ皆斑入なり
Genesis 31:9 斯神汝らの父の家畜を奪て我に輿へたまへり
Genesis 31:10 群の孕む時に當りて我夢に目をあげて見しに群の上に乗る牡羊は皆斑入の者斑駮なる者白點なる者なりき
Genesis 31:11 時に神の使者夢の中に我に言ふヤコブよと我此にありと對へければ
Genesis 31:12 乃ち言ふ汝の目をあげて見よ群の上に乗る牡羊は皆斑入の者斑駮なる者白點なる者なり我ラバンが凡て汝に爲すところを鑒みる
Genesis 31:13 我はベテルの神なり汝彼處にて柱に膏を沃ぎ彼處にて我に誓を立たり今起て斯地を出で汝の親族の國に歸れと
Genesis 31:14 ラケルとレア對て彼にいひけるは我等の父の家に尚われらの分あらんや我等の産業あらんや
Genesis 31:15 我等は父に他人のごとくせらるるにあらずや其は父我等を賣り亦我等の金を蝕减したればなり
Genesis 31:16 神がわが父より取たまひし財寶は我等とわれらの子女の所屬なり然ば都て神の汝に言たまひし事を爲せ
Genesis 31:17 是に於てヤコブ起て子等と妻等を駱駝に乗せ
Genesis 31:18 其獲たる凡の家畜と凡の所有即ちパダンアラムにてみづから獲たるところの家畜を携へ去てカナンの地に居る所の其父イサクの所におもむけり
Genesis 31:19 時にラバンは羊の毛を剪んとて往てありラケル其父のテラピムを竊めり
Genesis 31:20 ヤコブは其去ことをスリア人ラバンに告ずして潛に忍びいでたり
Genesis 31:21 即ち彼その凡の所有を挈へて逃去り起て河を渡りギレアデの山にむかふ
Genesis 31:22 ヤコブの逃去しこと三日におよびてラバンに聞えければ
Genesis 31:23 彼兄弟を率てその後を追ひしが七日路をへてギレアデの山にて之に追及ぬ
Genesis 31:24 神夜の夢にスリア人ラバンに臨みて汝愼みて善も惡もヤコブに道なかれと之に告たまへり
Genesis 31:25 ラバン遂にヤコブに追及しがヤコブは山に天幕を張ゐたればラバンもその兄弟と共にギレアデの山に天幕をはれり
Genesis 31:26 而してラバン、ヤコブに言けるは汝我に知しめずして忍びいで吾女等を劍をもて執たる者のごとくにひき往り何ぞかかる事をなすや
Genesis 31:27 何故に汝潛に逃さり我をはなれて忍いで我につげざりしや我歡喜と歌謠と鼗と琴をもて汝を送りしならんを
Genesis 31:28 何ぞ我をしてわが孫と女に接吻するを得ざらしめしや汝愚妄なる事をなせり
Genesis 31:29 汝等に害をくはふるの能わが手にあり然ど汝等の父の神昨夜我に告て汝つつしみて善も惡もヤコブに語べからずといへり
Genesis 31:30 汝今父の家を甚く戀て歸んと願ふは善れども何ぞわが神を竊みたるや
Genesis 31:31 ヤコブ答へてラバンにいひけるは恐くは汝強て女を我より奪ならんと思ひて懼れたればなり
Genesis 31:32 汝の神を持る者を見ば之を生しおくなかれ我等の兄弟等の前にて汝の何物我の許にあるかをみわけて之を汝に取れと其はヤコブ、ラケルが之を竊しを知ざればなり
Genesis 31:33 是に於てラバン、ヤコブの天幕に入りレアの天幕に入りまた二人の婢の天幕にいりしが視いださざればレアの天幕を出てラケルの天幕にいる
Genesis 31:34 ラケル已にテラピムを執て之を駱駝の鞍の下にいれて其上に坐しければラバン遍く天幕の中をさぐりたれども見いださざりき
Genesis 31:35 時にラケル父にいひけるは婦女の經の習例の事わが身にあれば父の前に起あたはず願くは主之を怒り給ふなかれと是をもて彼さがしたれども遂にテラピムを見いださざりき
Genesis 31:36 是に於てヤコブ怒てラバンを謫即ちヤコブ應へてラバンに言けるは我何の愆あり何の罪ありてか汝火急く我をおふや
Genesis 31:37 汝わが物を盡く索たるが汝の家の何物を見いだしたるや此にわが兄弟と汝の兄弟の前に其を置て我等二人の間をさばかしめよ
Genesis 31:38 我この二十年汝とともにありしが汝の牝綿羊と牝山羊其胎を殰ねしことなし又汝の群の雄綿羊は我食はざりき
Genesis 31:39 又噛裂れたる者は我これを汝の所に持きたらずして自ら之を補へり又晝竊るるも夜竊るるも汝わが手より之を要めたり
Genesis 31:40 我は是ありつ晝は暑に夜は寒に犯されて目も寐るの遑なく
Genesis 31:41 此二十年汝の家にありたり汝の二人の女の爲に十四年汝の群のために六年汝に事たり然に汝は十次もわが値を易たり
Genesis 31:42 若わが父の神アブラハムの神イサクのの畏む者我とともにいますにあらざれば汝今必ず我を空手にて去しめしならん神わが苦難とわが手の勞苦をかへりみて昨夜汝を責たまへるなり
Genesis 31:43 ラバン應てヤコブに言けるは女等はわが女子等はわが子群はわが群汝が見る者は皆わが所屬なり我今日此わが女等とその生たる子等に何をなすをえんや
Genesis 31:44 然ば來れ我と汝二人契約をむすび之を我と汝の間の證憑となすべし
Genesis 31:45 是に於てヤコブ石を執りこれを建て柱となせり
Genesis 31:46 ヤコブ又その兄弟等に石をあつめよといひければ即ち石をとりて垤を成れり斯て彼等彼處にて垤の上に食す
Genesis 31:47 ラバン之をエガルサハドタ(證憑の垤)と名けヤコブ之をギレアデ(證憑の垤)と名けたり
Genesis 31:48 ラバン此垤今日われとなんぢの間の證憑たりといひしによりて其名はギレアデとと稱らる
Genesis 31:49 又ミヅパ(觀望樓)と稱らる其は彼我等が互にわかるるに及べる時ねがはくはヱホバ我と汝の間を監みたまへといひたればなり
Genesis 31:50 彼又いふ汝もしわが女をなやまし或はわが女のほかに妻をめとらば人の我らと偕なる者なきも神と汝のあひだにいまして證をなしたまふ
Genesis 31:51 ラバン又ヤコブにいふ我われとなんぢの間にたてたる此垤を視よ柱をみよ
Genesis 31:52 此垤證とならん柱證とならん我この垤を越て汝を害せじ汝この垤この柱を越て我を害せざれ
Genesis 31:53 アブラハムの神ナホルの神彼等の父の神われらの間を鞫きたまへとヤコブ乃ちその父イサクの畏む者をさして誓へり
Genesis 31:54 斯てヤコブ山にて犧牲をささげその兄弟を招きてパンを食はしむ彼等パンを食ひて山に宿れり
Genesis 31:55 ラバン朝夙に起き其孫と女に接吻して之を祝せりしかしてラバンゆきて其所にかへりぬ
Genesis 32:1 茲にヤコブその途に進みしが神の使者これにあふ
Genesis 32:2 ヤコブこれを見て是は神の陣營なりといひてその處の名をマハナイム(二營)となづけたり
Genesis 32:3 かくてヤコブ己より前に使者をつかはしてセイルの地エドムの野にをる其兄エサウの所にいたらしむ
Genesis 32:4 即ち之に命じて言ふ汝等かくわが主エサウにいふべし汝の僕ヤコブ斯いふ我ラバンの所に寄寓て今までとどまれり
Genesis 32:5 我牛驢馬羊僕婢あり人をつかはしてわが主に告ぐ汝の前に恩をえんことを願ふなりと
Genesis 32:6 使者ヤコブにかへりて言けるは我等汝の兄エサウの許に至れり彼四百人をしたがへて汝をむかへんとて來ると
Genesis 32:7 是によりヤコブ大におそれ且くるしみ己とともにある人衆および羊と牛と駱駝を二隊にわかちて
Genesis 32:8 言けるはエサウもし一の隊に來りて之をうたば遺れるところの一隊逃るべし
Genesis 32:9 ヤコブまた言けるはわが父アブラハムの神わが父イサクの神ヱホバよ汝嘗て我につげて汝の國にかへり汝の親族に到れ我なんぢを善せんといひたまへり
Genesis 32:10 我はなんぢが僕にほどこしたまひし恩恵と眞實を一も受るにたらざるなり我わが杖のみを持てこのヨルダンを濟りしが今は二隊とも成にいたれり
Genesis 32:11 願くはわが兄の手よりエサウの手より我をすくひいだしたまへ我彼をおそる恐くは彼きたりて我をうち母と子とに及ばん
Genesis 32:12 汝は嘗て我かならず汝を惠み汝の子孫を濱の沙の多して數ふべからざるが如くなさんといひたまへりと
Genesis 32:13 彼その夜彼處に宿りその手にいりし物の中より兄エサウへの禮物をえらべり
Genesis 32:14 即ち牝山羊二百牡山羊二十牝羊二百牡羊二十
Genesis 32:15 乳駱駝と其子三十牝牛四十牡牛十牝の驢馬二十驢馬の子十
Genesis 32:16 而して其群と群とをわかちて之を僕の手に授し僕にいひけるは吾に先ちて進み群と群との間を隔ておくべし
Genesis 32:17 又その前者に命じて言けるはわが兄エサウ汝にあひ汝に問て汝は誰の人にして何處にゆくや是汝のまへなる者は誰の所有なるやといはば
Genesis 32:18 汝の僕ヤコブの所有にしてわが主エサウにたてまつる禮物なり視よ彼もわれらの後にをるといふべしと
Genesis 32:19 彼かく第二の者第三の者および凡て群々にしたがひゆく者に命じていふ汝等エサウにあふ時はかくの如く之にいふべし
Genesis 32:20 且汝等いへ視よなんぢの僕ヤコブわれらの後にをるとヤコブおもへらく我わが前におくる禮物をもて彼を和めて然るのち其面を觀ん然ば彼われを接遇ることあらんと
Genesis 32:21 是によりて禮物かれに先ちて行く彼は其夜陣營の中に宿りしが
Genesis 32:22 其夜おきいでて二人の妻と二人の仕女および十一人の子を導きてヤボクの渡をわたれり
Genesis 32:23 即ち彼等をみちびきて川を渉らしめ又その有る物を渡せり
Genesis 32:24 而してヤコブ一人遺りしが人ありて夜の明るまで之と角力す
Genesis 32:25 其人己のヤコブに勝ざるを見てヤコブの髀の樞骨に觸しかばヤコブの髀の樞骨其人と角力する時挫離たり
Genesis 32:26 其人夜明んとすれば我をさらしめよといひければヤコブいふ汝われを祝せずばさらしめずと
Genesis 32:27 是に於て其人かれにいふ汝の名は何なるや彼いふヤコブなり
Genesis 32:28 其人いひけるは汝の名は重てヤコブととなふべからずイスラエルととなふべし其は汝神と人とに力をあらそひて勝たればなりと
Genesis 32:29 ヤコブ問て請ふ汝の名を告よといひければ其人何故にわが名をとふやといひて乃ち其處にて之を祝せり
Genesis 32:30 是を以てヤコブその處の名をベニエル(神の面)となづけて曰ふ我面と面をあはせて神とあひ見てわが生命なほ存るなりと
Genesis 32:31 斯て彼日のいづる時にベニエルを過たりしが其髀のために歩行はかどらざりき
Genesis 32:32 是故にイスラエルの子孫は今日にいたるまで髀の樞の巨筋を食はず是彼人がヤコブの髀の巨筋に觸たるによりてなり
Genesis 33:1 爰にヤコブ目をあげて視にエサウ四百人をひきゐて來りしかば則ち子等を分ちてレアとラケルと二人の仕女とに付し
Genesis 33:2 仕女とその子等を前におきレアとその子等を次におきラケルとヨセフを後におきて
Genesis 33:3 自彼等の前に進み七度身を地にかがめて遂に兄に近づきけるに
Genesis 33:4 エサウ趨てこれを迎へ抱きてその頸をかかへて之に接吻すしかして二人ともに啼泣り
Genesis 33:5 エサウ目をあげて婦人と子等を見ていひけるは是等の汝とともなる者は誰なるやヤコブいひけるは神が僕に授けたまひし子なりと
Genesis 33:6 時に仕女等その子とともに近よりて拜し
Genesis 33:7 レアも亦その子とともに近よりて拜す其後にヨセフとラケルちかよりて拜す
Genesis 33:8 エサウ又いひけるは我あへる此諸の群は何のためなるやヤコブいふ主の目の前に恩を獲んがためなり
Genesis 33:9 エサウいひけるは弟よわが有ところの者は足り汝の所有は汝自ら之を有てよ
Genesis 33:10 ヤコブいひけるは否我もし汝の目の前に恩をえたらんには請ふわが手よりこの禮物を受よ我汝の面をみるに神の面をみるがごとくなり汝また我をよろこぶ
Genesis 33:11 神我をめぐみたまひて我が有ところの者足りされば請ふわが汝にたてまつる禮物を受よと彼に強ければ終に受たり
Genesis 33:12 エサウいひけるは我等いでたちてゆかん我汝にさきだつべし
Genesis 33:13 ヤコブ彼にいひけるは主のしりたまふごとく子等は幼弱し又子を持る羊と牛と我にしたがふ若一日これを驅すごさば群みな死ん
Genesis 33:14 請ふわが主僕にさきだちて進みたまへ我はわが前にゆくところの家畜と子女に足にまかせて徐に導きすすみセイルにてわが主に詣らん
Genesis 33:15 エサウいひけるは然ば我わがひきゐる人數人を汝の所にのこさんヤコブいひけるは何ぞ此を須んや我をして主の目の前に恩を得せしめよ
Genesis 33:16 是に於てエサウは此日その途にしたがひてセイルに還りぬ
Genesis 33:17 斯てヤコブ、スコテに進みて己のために家を建て又家畜のために廬を作れり是によりて其處の名をスコテ(廬)といふ
Genesis 33:18 ヤコブ、パダンアラムより來りて恙なくカナンの地にあるシケムの邑に至り邑の前にその天幕を張り
Genesis 33:19 遂にその天幕をはりしところの野をシケムの父ハモルの子等の手により金百枚にて購とり
Genesis 33:20 彼處に壇をきづきて之をエル、エロヘ、イスラエル(イスラエルの神なる神)となづけたり
Genesis 34:1 レアのヤコブに生たる女デナその國の婦女を見んとていでゆきしが
Genesis 34:2 その國の君主なるヒビ人ハモルの子シケムこれを見て之をひきいれこれと寢てこれを辱しむ
Genesis 34:3 而してその心ふかくヤコブの女デナを戀ひて彼此女を愛しこの女の心をいひなだむ
Genesis 34:4 斯てシケムその父ハモルに語り此少き女をわが妻に獲よといへり
Genesis 34:5 ヤコブ彼がその女子デナを汚したることを聞しかどもその子等家畜を牧て野にをりしによりて其かへるまでヤコブ默しゐたり
Genesis 34:6 シケムの父ハモル、ヤコブの許にいできたりて之と語らふ
Genesis 34:7 茲にヤコブの子等野より來りしが之を聞しかば其人々憂へかつ甚く怒れり是はシケムがヤコブの女と寢てイスラエルに愚なる事をなしたるに因り是のごとき事はなすべからざる者なればなり
Genesis 34:8 ハモル彼等に語りていひけるはわが子シケム心になんぢの女を戀ふねがはくは彼をシケムにあたへて妻となさしめよ
Genesis 34:9 汝ら我らと婚姻をなし汝らの女を我らにあたへ我らの女汝らに娶れ
Genesis 34:10 かくして汝等われらとともに居るべし地は汝等の前にあり此に住て貿易をなし此にて産業を獲よ
Genesis 34:11 シケム又デナの父と兄弟等にいひけるは我をして汝等の目のまへに恩を獲せしめよ汝らが我にいふところの者は我あたへん
Genesis 34:12 いかに大なる聘物と禮物を要るも汝らがわれに言ふごとくあたへん唯この女を我にあたへて妻となさしめよ
Genesis 34:13 ヤコブの子等シケムとその父ハモルに詭りて答へたり即ちシケムがその妹デナを汚したるによりて
Genesis 34:14 彼等これに語りていひけるは我等この事を爲あたはず割禮をうけざる者にわれらの妹をあたふるあたはず是われらの恥辱なればなり
Genesis 34:15 然ど斯せば我等汝らに允さん若し汝らの中の男子みな割禮をうけてわれらの如くならば
Genesis 34:16 我等の女子を汝等にあたへ汝らの女子をわれらに娶り汝らと偕にをりて一の民とならん
Genesis 34:17 汝等もし我等に聽ずして割禮をうけずば我等女子をとりて去べしと
Genesis 34:18 彼等の言ハモルとハモルの子シケムの心にかなへり
Genesis 34:19 此若き人ヤコブの女を愛するによりて其事をなすを遲せざりき彼はその父の家の中にて最も貴れたる者なり
Genesis 34:20 ハモルとその子シケム乃ちその邑の門にいたり邑の人々に語りていひけるは
Genesis 34:21 是人々は我等と睦し彼等をして此地に住て此に貿易をなさしめよ地は廣くして彼らを容るにたるなり我ら彼らの女を妻にめとり我らの女をかれらに與へん
Genesis 34:22 若唯われらの中の男子みな彼らが割礼をうくるごとく割禮を受なば此人々われらに聽て我等と偕にをり一の民となるべし
Genesis 34:23 然ばかれらの家畜と財産と其諸の畜は我等が所有となるにあらずや只かれらに聽んしからば彼らわれらとともにをるべしと
Genesis 34:24 邑の門に出入する者みなハモルとその子シケムに聽したがひ邑の門に出入する男子皆割禮を受たり
Genesis 34:25 斯て三日におよび彼等その痛をおぼゆる時ヤコブの子二人即ちデナの兄弟なるシメオンとレビ各劍をとり往て思よらざる時に邑を襲ひ男子を悉く殺し
Genesis 34:26 利刄をもてハモルとその子シケムをころしシケムの家よりデナを携へいでたり
Genesis 34:27 而してヤコブの子等ゆきて其殺されし者を剥ぎ其邑をかすめたり是彼等がその妹を汚したるによりてなり
Genesis 34:28 またその羊と牛と驢馬およびその邑にある者と野にある者
Genesis 34:29 並にその諸の貨財を奪ひその子女と妻等を悉く擄にし家の中なる物を悉く掠めたり
Genesis 34:30 ヤコブ、シメオンとレビに言けるは汝等我を累はし我をして此國の人即ちカナン人とベリジ人の中に避嫌れしむ我は數すくなければ彼ら集りて我をせめ我をころさん然ば我とわが家滅さるべし
Genesis 34:31 彼らいふ彼豈われらの妹を娼妓のごとくしてよからんや
Genesis 35:1 茲に神ヤコブに言たまひけるは起てベテルにのぼりて彼處に居り汝が昔に兄エサウの面をさけて逃る時に汝にあらはれし神に彼處にて壇をきづけと
Genesis 35:2 ヤコブ乃ちその家人および凡て己とともなる者にいふ汝等の中にある異神を棄て身を清めて衣服を易よ
Genesis 35:3 我等起てベテルにのぼらん彼處にて我わが苦患の日に我に應へわが往ところの途にて我とともに在せし神に壇をきづくべし
Genesis 35:4 是に於て彼等その手にある異神およびその耳にある耳環を盡くヤコブに與へしかばヤコブこれをシケムの邊なる橡樹の下に埋たり
Genesis 35:5 斯て彼等いでたちしが神其四周の邑々をして懼れしめたまひければヤコブの子の後を追ふ者なかりき
Genesis 35:6 ヤコブ及び之と共なる諸の人遂にカナンの地にあるルズに至る是即ちベテルなり
Genesis 35:7 彼かしこに壇をきづき其處をエルベテルと名けたり是は兄の面をさけて逃る時に神此にて己にあらはれ給しによりてなり
Genesis 35:8 時にリベカの乳媼デボラ死たれば之をベテルの下にて橡樹の下に葬れり是によりてその樹の名をアロンバクテ(哀哭の橡)といふ
Genesis 35:9 ヤコブ、パダンアラムより歸りし時神復これにあらはれて之を祝したまふ
Genesis 35:10 神かれに言たまはく汝の名はヤコブといふ汝の名は重てヤコブとよぶべからずイスラエルを汝の名となすべしとその名をイスラエルと稱たまふ
Genesis 35:11 神また彼にいひたまふ我は全能の神なり生よ殖よ國民および多の國民汝よりいで又王等なんぢの腰よりいでん
Genesis 35:12 わがアブラハムおよびイサクに與し地は我これを汝にあたへん我なんぢの後の子孫にその地をあたふべしと
Genesis 35:13 神かれと言たまひし處より彼をはなれて昇りたまふ
Genesis 35:14 是に於てヤコブ神の己と言いひたまひし處に柱すなはち石の柱を立て其上に酒を灌ぎまた其上に膏を沃げり
Genesis 35:15 而してヤコブ神の己にものいひたまひし處の名をベテルとなづけたり
Genesis 35:16 かくてヤコブ等ベテルよりいでたちしがエフラタに至るまでは尚路の隔ある處にてラケル産にのぞみその産おもかりき
Genesis 35:17 彼難産にのぞめる時産婆之にいひけるは懼るなかれ汝また此男の子を得たり
Genesis 35:18 彼死にのぞみてその魂さらんとする時その子の名をベノニ(吾苦痛の子)と呼たり然ど其父これをベニヤミン(右手の子)となづけたり
Genesis 35:19 ラケル死てエフラタの途に葬らる是即ちベテレヘムなり
Genesis 35:20 ヤコブその墓に柱を立たり是はラケルの墓の柱といひて今日まで在り
Genesis 35:21 イスラエル復いでたちてエダルの塔の外にその天幕を張り
Genesis 35:22 イスラエルかの地に住る時にルベン往て父の妾ビルハと寢たりイスラエルこれを聞く夫ヤコブの子は十二人なり
Genesis 35:23 即ちレアの子はヤコブの長子ルベンおよびシメオン、レビ、ユダ、イッサカル、ゼブルンなり
Genesis 35:24 ラケルの子はヨセフとベニヤミンなり
Genesis 35:25 ラケルの仕女ビルハの子はダンとナフタリなり
Genesis 35:26 レアの仕女ジルパの子はガドとアセルなり是等はヤコブの子にしてパダンアラムにて彼に生れたる者なり
Genesis 35:27 ヤコブ、キリアテアルバのマムレにゆきてその父イサクに至れり是すなはちヘブロンなり彼處はアブラハムとイサクの寄寓しところなり
Genesis 35:28 イサクの齡は百八十歳なりき
Genesis 35:29 イサク老て年滿ち氣息たえ死にて其民にくははれりその子エサウとヤコブ之をはうむる
Genesis 36:1 エサウの傳はかくのごとしエサウはすなはちエドムなり
Genesis 36:2 エサウ、カナンの女の中より妻をめとれり即ちヘテ人エロンの女アダおよびヒビ人ヂベオンの女なるアナの女アホリバマ是なり
Genesis 36:3 又イシマエルの女ネバヨテの妹バスマテをめとれり
Genesis 36:4 アダはエリパズをエサウに生みバスマテはリウエルを生み
Genesis 36:5 アホリバマはヱウシ、ヤラムおよびコラを生り是等はエサウの子にしてカナンの地に於て彼に生れたる者なり
Genesis 36:6 エサウその妻と子女およびその家の諸の人並に家畜と諸の畜類およびそのカナンの地にて獲たる諸の物を挈へて弟ヤコブをはなれて他の地にゆけり
Genesis 36:7 其は二人の富有多くして倶にをるあたはざればなり彼らが寄寓しところの地はかれらの家畜のためにかれらを容るをえざりき
Genesis 36:8 是に於てエサウ、セイル山に住りエサウはすなはちエドムなり
Genesis 36:9 セイル山にをりしエドミ人の先祖エサウの傳はかくのごとし
Genesis 36:10 エサウの子の名は左のごとしエサウの妻アダの子はエリパズ、エサウの妻バスマテの子はリウエル
Genesis 36:11 エリパズの子はテマン、オマル、ゼポ、ガタムおよびケナズなり
Genesis 36:12 テムナはエサウの子エリパズの妾にしてアマレクをエリパズに生り是等はエサウの妻アダの子なり
Genesis 36:13 リウエルの子は左の如しナハテ、ゼラ、シヤンマおよびミザ是等はエサウの妻バスマテの子なり
Genesis 36:14 ヂベオンの女なるアナの女にしてエサウの妻なるアホリバマの子は左のごとし彼ヱウシ、ヤラムおよびコラをエサウに生り
Genesis 36:15 エサウの子孫の侯たる者は左のごとしエサウの冢子エリパスの子にはテマン侯オマル侯ゼボ侯ケナズ侯
Genesis 36:16 コラ侯ガタム侯アマレク侯是等はエリパズよりいでたる侯にしてエドムの地にありき是等はアダの子なり
Genesis 36:17 エサウの子リウエルの子は左のごとしナハテ侯ゼラ侯シヤンマ侯ミザ侯是等はリウエルよりいでたる侯にしてエドムの地にありき是等はエサウの妻バスマテの子なり
Genesis 36:18 エサウの妻アホリバマの子は左のごとしヱウシ侯ヤラム侯コラ侯是等はアナの女にしてエサウの妻なるアホリバマよりいでたる侯なり
Genesis 36:19 是等はエサウすなはちエドムの子孫にしてその侯たる者なり
Genesis 36:20 素より此地に住しホリ人セイルの子は左のごとしロタン、シヨバル 、ヂベオン、アナ
Genesis 36:21 デシヨン、エゼル、デシヤン是等はセイルの子ホリ人の中の侯にしてエドムの地にあり
Genesis 36:22 ロタンの子はホリ、ヘマムなりロタンの妹はテムナ
Genesis 36:23 シヨバルの子は左のごとしアルワン、マナハテ、エバル、シボ、オナム
Genesis 36:24 ヂベオンの子は左のごとし即ちアヤとアナ此アナその父ヂベオンの驢馬を牧をりし時曠野にて温泉を發見り
Genesis 36:25 アナの子は左のごとしデシヨンおよびアホリバマ、アホリバマはアナの女なり
Genesis 36:26 デシヨンの子は左のごとしヘムダン、エシバン、イテラン、ケラン
Genesis 36:27 エゼルの子は左のごとしビルハン、ザワン、ヤカン
Genesis 36:28 デシヤンの子は左のごとしウズ、アラン
Genesis 36:29 ホリ人の侯たる者は左のごとしロタン侯シヨバル侯ヂベオン侯アナ侯
Genesis 36:30 デシヨン侯エゼル侯デシヤン侯是等はホリ人の侯にしてその所領にしたがひてセイルの地にあり
Genesis 36:31 イスラエルの子孫を治むる王いまだあらざる前にエドムの地を治めたる王は左のごとし
Genesis 36:32 ベオルの子ベラ、エドムに王たりその都の名はデナバといふ
Genesis 36:33 ベラ薨てボヅラのゼラの子ヨバブ之にかはりて王となる
Genesis 36:34 ヨバブ薨てテマン人の地のホシヤムこれにかはりて王となる
Genesis 36:35 ホシヤム薨てベダデの子ハダデの子ハダこれに代て王となる彼モアブの野にてミデアン人を撃しことあり其邑の名はアビテといふ
Genesis 36:36 ハダデ薨てマスレカのサムラこれにかはりて王となる
Genesis 36:37 サラム薨て河の旁なるレホボテのサウル之にかはりて王となる
Genesis 36:38 サウル薨てアクボルの子バアルハナンこれに代りて王となる
Genesis 36:39 アクボルの子バアルハナン薨てハダル之にかはりて王となる其都の名はパウといふその妻の名はメヘタベルといひてマテレデの女なりマテレデはメザハブの女なり
Genesis 36:40 エサウよりいでたる侯の名はその宗族と居處と名に循ひていへば左のごとしテムナ侯アルワ侯エテテ侯
Genesis 36:41 アホリバマ侯エラ侯ピノン侯
Genesis 36:42 ケナズ侯テマン侯ミブザル侯
Genesis 36:43 マグデエル侯イラム侯是等はエドムの侯にして其領地の居處によりて言る者なりエドミ人の先祖はエサウ是なり
Genesis 37:1 ヤコブはカナンの地に住り即ちその父が寄寓し地なり
Genesis 37:2 ヤコブの傳は左のごとしヨセフ十七歳にしてその兄弟と偕に羊を牧ふヨセフは童子にしてその父の妻ビルハの子およびジルパの子と侶たりしが彼等の惡き事を父につぐ
Genesis 37:3 ヨセフは老年子なるが故にイスラエルその諸の兄弟よりも深くこれを愛しこれがために綵る衣を製れり
Genesis 37:4 その兄弟等父がその諸の兄弟よりも深く彼を愛するを見て彼を惡み穩和に彼にものいふことを得せざりき
Genesis 37:5 茲にヨセフ夢をみてその兄弟に告ければ彼等愈これを惡めり
Genesis 37:6 ヨセフ彼等にいひけるは請ふわが夢たる此夢を聽け
Genesis 37:7 我等田の中に禾束をむすび居たるにわが禾束おき且立り而して汝等の禾束環りたちてわが禾束を拜せり
Genesis 37:8 その兄弟等之にいひけるは汝眞にわれらの君となるや眞に我等ををさむるにいたるやとその夢とその言のために益これを惡めり
Genesis 37:9 ヨセフ又一の夢をみて之をその兄弟に述ていひけるは我まら夢をみたるに日と月と十一の星われを拜せりと
Genesis 37:10 則ちこれをその父と兄弟に述ければ父かれを戒めて彼にいふ汝が夢しこの夢は何ぞや我と汝の母となんぢの兄弟と實にゆきて地に鞠て汝を拜するにいたらんやと
Genesis 37:11 斯しかばその兄弟かれを嫉めり然どその父はこの言をおぼえたり
Genesis 37:12 茲にその兄弟等シケムにゆきて父の羊を牧ゐたりしかば
Genesis 37:13 イスラエル、ヨセフにいひけるは汝の兄弟はシケムにて羊を牧をるにあらずや來れ汝を彼等につかはさんヨセフ父にいふ我ここにあり
Genesis 37:14 父かれにいひけるは請ふ往て汝の兄弟と群の恙なきや否を見てかへりて我につげよと彼をヘブロンの谷より遣はしければ遂にシケムに至る。
Genesis 37:15 或人かれに遇ふに彼野にさまよひをりしかば其人かれに問て汝何をたづぬるやといひければ
Genesis 37:16 彼いふ我はわが兄弟等をたづぬ請ふかれらが羊をかひをる所をわれに告よ
Genesis 37:17 その人いひけるは彼等は此をされり我かれらがドタンにゆかんといふを聞たりと是に於てヨセフその兄弟の後をおひゆきドタンにて之に遇ふ
Genesis 37:18 ヨセフの彼等に近かざる前に彼ら之を遙に見てこれを殺さんと謀り
Genesis 37:19 互にいひけるは視よ作夢者きたり
Genesis 37:20 去來彼をころして阱に投いれ或惡き獸これを食たりと言ん而して彼の夢の如何になるかを觀るべし
Genesis 37:21 ルベン聞てヨセフを彼等の手より拯ひださんとして言けるは我等これを殺すべからず
Genesis 37:22 ルベンまた彼らにいひけるは血をながすなかれ之を曠野の此阱に投いれて手をこれにつくるなかれと是は之を彼等の手よりすくひだして父に歸んとてなりき
Genesis 37:23 茲にヨセフ兄弟の許に到りければ彼等ヨセフの衣即ちその着たる綵る衣を褫ぎ
Genesis 37:24 彼を執て阱に投いれたり阱は空にしてその中に水あらざりき
Genesis 37:25 斯して彼等坐りてパンを食ひ目をあげて見しに一群のイシマエル人駱駝に香物と乳香と沒藥をおはせてエジプトにくだりゆかんとてギレアデより來る
Genesis 37:26 ユダその兄弟にいひけるは我儕弟をころしてその血を匿すも何の益かあらん
Genesis 37:27 去來彼をイシマエル人に賣ん彼は我等の兄弟われらの肉なればわれらの手をかれにつくべからずと兄弟等これを善とす
Genesis 37:28 時にミデアンの商旅經過ければヨセフを阱よりひきあげ銀二十枚にてヨセフをイシマエル人に賣り彼等すなはちヨセフをエジプトにたづさへゆきぬ
Genesis 37:29 茲にルベンかへりて阱にいたり見しにヨセフ阱にをらざりしかばその衣を裂き
Genesis 37:30 兄弟の許にかへりて言ふ童子はをらず嗚呼我何處にゆくべきや
Genesis 37:31 斯て彼等ヨセフの衣をとり牡山羊の羔をころしてその衣を血に濡し
Genesis 37:32 その綵る衣を父におくり遣していひけるは我等これを得たりなんぢの子の衣なるや否を知れと
Genesis 37:33 父これを知りていふわが子の衣なり惡き獸彼をくらへりヨセフはかならずさかれしならんと
Genesis 37:34 ヤコブその衣を裂き麻布を腰にまとひ久しくその子のためになげけり
Genesis 37:35 その子女みな起てかれを慰むれどもその慰謝をうけずして我は哀きつつ陰府にくだりて我子のもとにゆかんといふ斯その父かれのために哭ぬ
Genesis 37:36 偖ミデアン人はエジプトにてパロの侍衞の長ポテパルにヨセフを賣り
Genesis 38:1 當時ユダ兄弟をはなれて下りアドラム人名はヒラといふ者の近邊に天幕をはりしが
Genesis 38:2 ユダかしこにてカナン人名はシュアといふ者の女子を見これを娶りてその所にいる
Genesis 38:3 彼はらみて男子を生みければユダその名をエルとなづく
Genesis 38:4 彼ふたたび孕みて男子を生みその名をオナンとなづけ
Genesis 38:5 またかさねて孕みて男子を生みてその名をシラとなづく此子をうみける時ユダはクジブにありき
Genesis 38:6 ユダその長子エルのために妻をむかふその名をタマルといふ
Genesis 38:7 ユダの長子エル、ヱホバの前に惡をなしたればヱホバこれを死しめたまふ
Genesis 38:8 茲にユダ、オナンにいひけるは汝の兄の妻の所にいりて之をめとり汝の兄をして子をえせしめよ
Genesis 38:9 オナンその子の己のものとならざるを知たれば兄の妻の所にいりし時兄に子をえせしめざらんために地に洩したり
Genesis 38:10 斯なせし事ヱホバの目に惡かりければヱホバ彼をも死しめたまふ
Genesis 38:11 ユダその媳タマルにいひけるは嫠婦となりて汝の父の家にをりわが子シラの人となるを待てと恐らくはシラも亦その兄弟のごとく死るならんとおもひたればなりタマルすなはち往てその父の家にをる
Genesis 38:12 日かさなりて後シュアの女ユダの妻死たりユダ慰をいれてその友アドラム人ヒラとともにテムナにのぼりその羊毛を剪る者の所にいたる
Genesis 38:13 茲にタマルにつげて視よなんぢの舅はその羊の毛を剪んとてテムナにのぼるといふ者ありしかば
Genesis 38:14 彼その嫠の服を脱すて被衣をもて身をおほひつつみテムナの途の側にあるエナイムの入口に坐す其はシラ人となりたれども己これが妻にせられざるを見たればなり
Genesis 38:15 彼その面を蔽ひゐたりしかばユダこれを見て娼妓ならんとおもひ
Genesis 38:16 途の側にて彼に就き請ふ來りて我をして汝の所にいらしめよといふ其はその子の妻なるをしらざればなり彼いひけるは汝何を我にあたへてわが所にいらんとするや
Genesis 38:17 ユダいひけるは我群より山羊の羔をおくらん彼いふ汝其をおくるまで質をあたへんか
Genesis 38:18 ユダ何の質をなんぢに與ふべきやといふに彼汝の印と綬と汝の手の杖をといひければ即ちこれを與へて彼の所にいりぬ彼ユダに由て姙めり
Genesis 38:19 彼起て去りその被衣をぬぎすて嫠婦の服をまとふ
Genesis 38:20 かくてユダ婦の手より質をとらんとてその友アドラム人の手に托して山羊の羔をおくりけるが彼婦を見ざれば
Genesis 38:21 その處の人に問て途の側なるエナイムの娼妓は何處にをるやといふに此には娼妓なしといひければ
Genesis 38:22 ユダの許にかへりていふ我彼を見いださず亦その處の人此には娼妓なしといへりと
Genesis 38:23 ユダいひけるは彼にとらせおけ恐くはわれら笑抦とならん我この山羊の羔をおくりたるに汝かれを見ざるなりと
Genesis 38:24 三月ばかりありて後ユダに告る者ありていふ汝の媳タマル姦淫をなせり亦その姦淫によりて妊めりユダいひけるは彼を曵いだして焚べし
Genesis 38:25 彼ひきいだされし時その舅にいひつかはしけるは是をもてる人によりて我は妊りと彼すなはち請ふこの印と綬と杖は誰の所屬なるかを辨別よといふ
Genesis 38:26 ユダこれを見識ていひけるは彼は我よりも正しわれ彼をわが子わがシラにあたへざりしによりてなりと再びこれを知らざりき
Genesis 38:27 かくて産の時にいたりて見るにその胎に孿あり
Genesis 38:28 その産時手出しかば産婆是首にいづといひて絳き線をとりてその手にしばりしが
Genesis 38:29 手を引こむるにあたりて兄弟いでたれば汝なんぞ圻いづるやその圻汝に歸せんといへり故にその名はペレヅ(圻)と稱る
Genesis 38:30 その兄弟手に絳線のある者後にいづその名はゼラとよばる
Genesis 39:1 ヨセフ挈へられてエジプトにくだりしがエジプト人ポテパル、パロの臣侍衞の長なる者彼を其處にたづさへくだれるイシマエル人の手よりこれを買ふ
Genesis 39:2 ヱホバ、ヨセフとともに在す彼享通者となりてその主人なるエジプト人の家にをる
Genesis 39:3 その主人ヱホバの彼とともにいますを見またヱホバがかれの手の凡てなすところを享通しめたまふを見たり
Genesis 39:4 是によりてヨセフ彼の心にかなひて其近侍となる彼ヨセフにその家を宰どらしめその所有を盡くその手に委たり
Genesis 39:5 彼ヨセフにその家とその有る凡の物をつかさどらせし時よりしてヱホバ、ヨセフのために其エジプト人の家を祝みたまふ即ちヱホバの祝福かれが家と田に有る凡の物におよぶ
Genesis 39:6 彼その有る物をことごとくヨセフの手にゆだねその食ふパンの外は何もかへりみざりき夫ヨセフは容貌麗しくして顏美しかりき
Genesis 39:7 これらの事の後その主人の妻ヨセフに目をつけて我と寢よといふ
Genesis 39:8 ヨセフ拒みて主人の妻にいひけるは視よわが主人の家の中の物をかへりみずその有るものことごとくわが手に委ぬ
Genesis 39:9 この家には我より大なるものなし又主人何をも我に禁ぜず只汝を除くのみ汝はその妻なればなり然ば我いかで此おほいなる惡をなして神に罪ををかすをえんや
Genesis 39:10 彼日々にヨセフに言よりたれどもヨセフきかずして之といねず亦與にをらざりき
Genesis 39:11 當時ヨセフその職をなさんとて家にいりしが家の人一箇もその内にをらざりき
Genesis 39:12 時に彼婦その衣を執て我といねよといひければヨセフ衣を彼の手に棄おきて外に遁いでたり
Genesis 39:13 彼ヨセフがその衣を己の手に棄おきて遁いでしを見て
Genesis 39:14 その家の人々を呼てこれにいふ視よヘブル人を我等の所につれ來りて我等にたはむれしむ彼我といねんとて我の所にいり來りしかば我大聲によばはれり
Genesis 39:15 彼わが聲をあげて呼はるを聞しかばその衣をわが許にすておきて外に遁いでたりと
Genesis 39:16 其衣を傍に置て主人の家に歸るを待つ
Genesis 39:17 かくて彼是言のごとく主人につげていふ汝が我らに携へきたりしヘブルの僕われにたはむれんとて我許にいりきたりしが
Genesis 39:18 我聲をあげてよばはりしかばその衣を我許にすておきて遁いでたり
Genesis 39:19 主人その妻が己につげて汝の僕斯のごとく我になせりといふ言を聞て怒を發せり
Genesis 39:20 是に於てヨセフの主人彼を執へて獄にいる其獄は王の囚徒を繋ぐ所なりヨセフ彼處にて獄にをりしが
Genesis 39:21 ヱホバ、ヨセフとともに在して之に仁慈を加へ典獄の恩顧をこれにえさせたまひければ
Genesis 39:22 典獄獄にある囚人をことごとくヨセフの手に付せたり其處になす所の事は皆ヨセフこれをなすなり
Genesis 39:23 典獄そのまかせたる所の事は何をもかへりみざりき其はヱホバ、ヨセフとともにいませばなりヱホバかれのなすところをさかえしめたまふ
Genesis 40:1 これらの事の後エジプト王の酒人と膳夫その主エジプト王に罪ををかす
Genesis 40:2 パロその二人の臣すなはち酒人の長と膳夫の長を怒りて
Genesis 40:3 之を侍衞の長の家の中なる獄に幽囚ふヨセフが繋れをる所なり
Genesis 40:4 侍衞の長ヨセフをして彼等の側に侍しめたればヨセフ之につかふ彼等幽囚れて日を經たり
Genesis 40:5 茲に獄に繋れたるエジプト王の酒人と膳夫の二人ともに一夜の中に各夢を見たりその夢はおのおんおのその解明にかなふ
Genesis 40:6 ヨセフ朝に及びて彼等の所に入て視るに彼等物憂に見ゆ
Genesis 40:7 是に於てヨセフその主人の家に己とともに幽囚をるパロの臣に問て汝等なにゆゑに今日は顏色あやしきやといふに
Genesis 40:8 彼等これにいふ我等夢を見たれど之を解く者なしとヨセフ彼等にいひけるは解く事は神によるにあらずや請ふ我に述よ
Genesis 40:9 酒人の長その夢をヨセフに述て之にいふ我夢の中に見しにわが前に一の葡萄樹あり
Genesis 40:10 その樹に三の枝あり芽いで花ひらきて葡萄なり球をなして熟たるがごとくなりき
Genesis 40:11 時にパロの爵わが手にあり我葡萄を摘てこれをパロの爵に搾りその爵をパロの手に奉たり
Genesis 40:12 ヨセフ彼にいひけるはその解明は是のごとし三の枝は三日なり
Genesis 40:13 今より三日の中にパロなんぢの首を擧げ汝を故の所にかへさん汝は曩に酒人たりし時になせし如くパロの爵をその手に奉ぐるにいたらん
Genesis 40:14 然ば請ふ汝善ならん時に我をおもひて我に恩惠をほどこし吾事をパロにのべてこの家よりわれを出せ
Genesis 40:15 我はまことにヘブル人の地より掠れ來しものなればなりまた此にても我は牢にいれらるるがごとき事はなさざりしなり
Genesis 40:16 茲に膳夫の長その解明の善りしを見てヨセフにいふ我も夢を得て見たるに白きパン三筐わが首にありて
Genesis 40:17 その上の筐には膳夫がパロのために作りたる各種の饌ありしが鳥わが首の筐の中より之をくらへり
Genesis 40:18 ヨセフこたへていひけるはその解明はかくのごとし三の筐は三日なり
Genesis 40:19 今より三日の中にパロ汝の首を擧はなして汝を木に懸んしかして鳥汝の肉をくらひとるべしと
Genesis 40:20 第三日はパロの誕辰なればパロその諸の臣僕に筵席をなし酒人の長と膳夫の長をして首をその臣僕の中に擧しむ
Genesis 40:21 即ちパロ酒人の長をその職にかへしければ彼爵をパロの手に奉たり
Genesis 40:22 されど膳夫の長は木に懸らるヨセフの彼等に解明せるがごとし
Genesis 40:23 然るに酒人の長ヨセフをおぼえずして之を忘れたり
Genesis 41:1 二年の後パロ夢ることあり即ち河の濱にたちて
Genesis 41:2 視るに七の美しき肥たる牝牛河よりのぼりて葦を食ふ
Genesis 41:3 その後また七の醜き痩たる牛河よりのぼり河の畔にて彼牛の側にたちしが
Genesis 41:4 その醜き痩たる牛かの美しき肥たる七の牛を食ひつくせりパロ是にいたりて寤む
Genesis 41:5 彼また寢て再び夢るに一の莖に七の肥たる佳き穗いできたる
Genesis 41:6 其のちに又しなびて東風に燒たる七の穗いできたりしが
Genesis 41:7 その七のしなびたる穗かの七の肥實りたる穗を呑盡せりパロ寤て見に夢なりき
Genesis 41:8 パロ朝におよびてその心安からず人をつかはしてエジプトの法術士とその博士を皆ことごとく召し之にその夢を述たり然ど之をパロに解うる者なかりき
Genesis 41:9 時に酒人の長パロに告ていふ我今日わが過をおもひいづ
Genesis 41:10 嘗てパロその僕を怒て我と膳夫の長を侍衞の長の家に幽囚へたまひし時
Genesis 41:11 我と彼ともに一夜のうちに夢み各その解明にかなふ夢をみたりしが
Genesis 41:12 彼處に侍衞の長の僕なる若きヘブル人我らと偕にあり我等これにのべたれば彼われらの夢を解その夢にしたがひて各人に解明をなせり
Genesis 41:13 しかして其事かれが解たるごとくなりて我はわが職にかへり彼は木に懸らる
Genesis 41:14 是に於てパロ人をやりてヨセフを召しければ急ぎてこれを獄より出せりヨセフすなはち髭を薙り衣をかへてパロの許にいり來る
Genesis 41:15 パロ、ヨセフにいひけるは我夢をみたれど之をとく者なし聞に汝は夢をききて之を解くことをうると云ふ
Genesis 41:16 ヨセフ、パロにこたへていひけるは我によるにあらず神パロの平安を告たまはん
Genesis 41:17 パロ、ヨセフにいふ我夢に河の岸にたちて見るに
Genesis 41:18 河より七の肥たる美しき牝牛のぼりて葦を食ふ
Genesis 41:19 後また弱く甚だ醜き瘠たる七の牝牛のぼりきたる其惡き事エジプト全國にわが未だ見ざるほどなり
Genesis 41:20 その瘠たる醜き牛初の七の肥たる牛を食ひつくしたりしが
Genesis 41:21 已に腹にいりても其腹にいりし事しれず尚前のごとく醜かりき我是にいたりて寤めたり
Genesis 41:22 我また夢に見るに七の實たる佳き穗一の莖にいできたる
Genesis 41:23 その後にまたいぢけ萎びて東風にやけたる七の穗生じたりしが
Genesis 41:24 そのしなびたる穗かの七の佳穗を呑つくせり我これを法術士に告たれどもわれにこれをしめすものなし
Genesis 41:25 ヨセフ、パロにいひけるはパロの夢は一なり神その爲んとする所をパロに示したまへるなり
Genesis 41:26 七の美牝牛は七年七の佳穗も七年にして夢は一なり
Genesis 41:27 其後にのぼりし七の瘠たる醜き牛は七年にしてその東風にやけたる七の空穗は七年の饑饉なり
Genesis 41:28 是はわがパロに申すところなり神そのなさんとするところをパロにしめしたまふ
Genesis 41:29 エジプトの全地に七年の大なる豐年あるべし
Genesis 41:30 その後に七年の凶年おこらん而してエジプトの地にありし豐作を皆忘るにいたるべし饑饉國を滅さん
Genesis 41:31 後にいたるその饑饉はなはだはげしきにより前の豐作國の中に知れざるにいたらん
Genesis 41:32 パロのふたたび夢をかさね見たまひしは神がこの事をさだめて速かに之をなさんとしたまふなり
Genesis 41:33 さればパロ慧く賢き人をえらみて之にエジプトの國を治めしめたまふべし
Genesis 41:34 パロこれをなし國中に官吏を置てその七年の豐年の中にエジプトの國の五分の一を取たまふべし
Genesis 41:35 而して其官吏をして來らんとするその善き年の諸の糧食を斂めてその穀物をパロの手に蓄へしめ糧食を邑々にかこはしめたまふべし
Genesis 41:36 その糧食を國のために畜藏へおきてエジプトの國にのぞむ七年の饑饉に備へ國をして饑饉のために滅ざらしむべし
Genesis 41:37 パロとその諸の臣僕此事を善とす
Genesis 41:38 是に於てパロその臣僕にいふ我等神の靈のやどれる是のごとき人を看いだすをえんやと
Genesis 41:39 しかしてパロ、ヨセフにいひけるは神是を盡く汝にしめしたまひたれば汝のごとく慧く賢き者なかるべし
Genesis 41:40 汝わが家を宰るべしわが民みな汝の口にしたがはん唯位においてのみ我は汝より大なるべし
Genesis 41:41 パロ、ヨセフにいひけるは視よ我汝をエジプト全國の冢宰となすと
Genesis 41:42 パロすなはち指環をその手より脱して之をヨセフの手にはめ之を白布を衣せ金の索をその項にかけ
Genesis 41:43 之をして己のもてる次の輅に乗らしめ下にゐよと其前に呼しむ是彼をエジプト全國の冢宰となせり
Genesis 41:44 パロ、ヨセフにいひけるは我はパロなりエジプト全國に汝の允准をえずして手足をあぐる者なかるべしと
Genesis 41:45 パロ、ヨセフの名をザフナテパネアと名けまたオンの祭司ポテパルの女アセナテを之にあたへて妻となさしむヨセフいでてエジプトの地をめぐる
Genesis 41:46 ヨセフはエジプトの王パロのまへに立し時三十歳なりきヨセフ、パロのまへを出て遍くエジプトの地を巡れり
Genesis 41:47 七年の豐年の中に地山なして物を生ず
Genesis 41:48 ヨセフすなはちエジプトの地にありしその七年の糧食を斂めてその糧食を邑々に藏む即ち邑の周圍の田圃の糧食を其邑の中に藏む
Genesis 41:49 ヨセフ海隅の沙のごとく甚だ多く穀物を儲へ遂に數ふることをやむるに至る其は數かぎり無ればなり
Genesis 41:50 饑饉の歳のいたらざる前にヨセフに二人の子うまる是はオンの祭司ポテパルの女アセナテの生たる者なり
Genesis 41:51 ヨセフその冢子の名をマナセ(忘)となづけて言ふ神我をしてわが諸の苦難とわが父の家の凡の事をわすれしめたまふと
Genesis 41:52 又次の子の名をエフライム(多く生る)となづけていふ神われをしてわが艱難の地にて多くの子をえせしめたまふと
Genesis 41:53 爰にエジプトの國の七年の豐年をはり
Genesis 41:54 ヨセフの言しごとく七年の凶年きたりはじむその饑饉は諸の國にあり然どエジプト全國には食物ありき
Genesis 41:55 エジプト全國饑ゑし時民さけびてパロに食物を乞ふパロ、エジプトの諸の人にいひけるはヨセフに往け彼が汝等にいふところをなせと
Genesis 41:56 饑饉全地の面にありヨセフすなはち諸の倉廩をひらきてエジプト人に賣わたせり饑饉ますますエジプトの國にはげしくなる
Genesis 41:57 饑饉諸の國にはげしくなりしかば諸國の人エジプトにきたりヨセフにいたりて穀物を買ふ
Genesis 42:1 ヤコブ、エジプトに穀物あるを見しかばその子等にいひけるは汝等なんぞたがひに面を見あはするや
Genesis 42:2 ヤコブまたいふ我エジプトに穀物ありと聞り彼處にくだりて彼處より我等のために買きたれ然らばわれら生るを得て死をまぬかれんと
Genesis 42:3 ヨセフの十人の兄弟エジプトにて穀物をかはんとて下りゆけり
Genesis 42:4 されどヨセフの弟ベニヤミンはヤコブこれをその兄弟とともに遣さざりきおそらくは災難かれの身にのぞむことあらんと思たればなり
Genesis 42:5 イスラエルの子等穀物を買んとて來る者とともに來る其はカナンの地に饑饉ありたればなり
Genesis 42:6 時にヨセフは國の總督にして國の凡の人に賣ことをなせりヨセフの兄弟等來りてその前に地に伏て拜す
Genesis 42:7 ヨセフその兄弟を見てこれを知たれども知ざる者のごとくして荒々しく之にものいふ即ち彼等に汝等は何處より來れるやといへば彼等いふ糧食を買んためにカナンの地より來れりと
Genesis 42:8 ヨセフはその兄弟をしりたれども彼等はヨセフをしらざりき
Genesis 42:9 ヨセフその昔に彼等の事を夢たる夢をを憶いだし彼等に言けるは汝等は間者にして此國の隙を窺はんとて來れるなり
Genesis 42:10 彼等之にいひけるはわが主よ然らず唯糧食をかはんとて僕等は來れるなり
Genesis 42:11 我等はみな一箇の人の子にして篤實なる者なり僕等は間者にあらず
Genesis 42:12 ヨセフ彼等にいひけるは否汝等は此地の隙を窺はんとて來れるなり
Genesis 42:13 彼等いひけるは僕等は十二人の兄弟にしてカナンの地の一箇の人の子なり季子は今日父とともにをる又一人はをらずなりぬ
Genesis 42:14 ヨセフかれらにいひけるはわが汝等につげて汝等は間者なりといひしはこの事なり
Genesis 42:15 汝等斯してその眞實をあかすべしパロの生命をさして誓ふ汝等の末弟ここに來るにあらざれば汝等は此をいづるをえじ
Genesis 42:16 汝等の一人をやりて汝等の弟をつれきたらしめよ汝等をば繋ぎおきて汝等の言をためし汝らの中に眞實あるや否をみんパロの生命をさして誓ふ汝等はかならず間者なりと
Genesis 42:17 彼等を皆ともに三日のあひだ幽囚おけり
Genesis 42:18 三日におよびてヨセフ彼等にいひけるは我神を畏る汝等是なして生命をえよ
Genesis 42:19 汝等もし篤實なる者ならば汝らの兄弟の一人をしてこの獄に繋がれしめ汝等は穀物をたづさへゆきてなんぢらの家々の饑をすくへ
Genesis 42:20 但し汝らの末弟を我につれきたるべしさすればなんぢらの言の眞實あらはれて汝等死をまぬかるべし彼等すなはち斯なせり
Genesis 42:21 茲に彼らたがひに言けるは我等は弟の事によりて信に罪あり彼等は彼が我らに只管にねがひし時にその心の苦を見ながら之を聽ざりき故にこの苦われらにのぞめるなり
Genesis 42:22 ルベンかれらに對ていひけるは我なんぢらにいひて童子に罪ををかすなかれといひしにあらずや然るに汝等きかざりき是故に視よ亦彼の血をながせし罪をたださると
Genesis 42:23 彼等はヨセフが之を解するをしらざりき其は互に通辨をもちひたればなり
Genesis 42:24 ヨセフ彼等を離れゆきて哭き復かれらにかへりて之とかたり遂にシメオンを彼らの中より取りその目のまへにて之を縛れり
Genesis 42:25 而してヨセフ命じてその器に穀物をみたしめ其人々の金を嚢に返さしめ又途の食を之にあたへしむヨセフ斯かれらになせり
Genesis 42:26 彼等すなはち穀物を驢馬におはせて其處をさりしが
Genesis 42:27 其一人旅邸にて驢馬に糧を與んとて嚢をひらき其金を見たり其は嚢の口にありければなり
Genesis 42:28 彼その兄弟にいひけるは吾金は返してあり視よ嚢の中にありと是において彼等膽を消し懼れてたがひに神の我らになしたまふ此事は何ぞやといへり
Genesis 42:29 かくて彼等カナンの地にかへりて父ヤコブの所にいたり其身にありし事等を悉く之につげていひけるは
Genesis 42:30 彼國の主荒々しく我等にものいひ我らをもて國を偵ふ者となせり
Genesis 42:31 我ら彼にいふ我等は篤實なる者なり間者にあらず
Genesis 42:32 我らは十二人の兄弟にして同じ父の子なり一人はをらずなり季のは今日父とともにカナンの地にありと
Genesis 42:33 國の主なるその人われらにいひけるは我かくして汝等の篤實なるをしらん汝等の兄弟の一人を吾もとにのこし糧食をたづさへゆきて汝らの家々の饑をすくへ
Genesis 42:34 しかして汝らの季の弟をわが許につれきたれ然れば我なんぢらが間者にあらずして篤實なる者たるをしらん我なんぢらの兄弟を汝等に返し汝等をしてこの國にて交易をなさしむべしと
Genesis 42:35 茲に彼等その嚢を傾たるに視よ各人の金包その嚢のなかにあり彼等とその父金包を見ておそれたり
Genesis 42:36 その父ヤコブ彼等にいひけるは汝等は我をして子を喪はしむヨセフはをらずなりシメオンもをらずなりたるにまたベニヤミンを取んとす是みなわが身にかかるなり
Genesis 42:37 ルベン父に告ていふ我もし彼を汝につれかへらずば吾ふたりの子を殺せ彼をわが手にわたせ我之をなんぢにつれかへらん
Genesis 42:38 ヤコブいひけるはわが子はなんぢらとともに下るべからず彼の兄は死て彼ひとり遺たればなり若なんぢらが行ところの途にて災難かれの身におよばば汝等はわが白髮をして悲みて墓にくだらしむるにいたらん
Genesis 43:1 饑饉その地にはげしかりき
Genesis 43:2 茲に彼等エジプトよりもちきたりし穀物を食つくせし時父かられらに再びゆきて少許の糧食を買きたれといひければ
Genesis 43:3 ユダ父にかたりていひけるは彼人かたく我等をいましめていふ汝らの弟汝らとともにあるにあらざれば汝らはわが面をみるべからずと
Genesis 43:4 汝もし弟をわれらとともに遣さば我等下て汝のために糧食を買ふべし
Genesis 43:5 されど汝もし彼をつかはさずば我等くだらざるべし其はかの人われらにむかひ汝等の弟なんぢらとともにあるにあらざれば汝ら吾面をみるべからずといひたればなりと
Genesis 43:6 イスラエルいひけるは汝等なにゆゑに汝等に尚弟のあることを彼人につげて我を惡くなすや
Genesis 43:7 彼等いふ其人われらの模樣とわれらの親族を問ただして汝らの父は尚生存へをるや汝等は弟をもつやといひしにより其言の條々にしたがひて彼につげたるなり我等いかでか彼が汝等の弟をつれくだれといふならんとしるをえん
Genesis 43:8 ユダ父イスラエルにいひけるは童子をわれとともに遣はせ我等たちて往ん然らば我儕と汝およびわれらの子女生ることを得て死をまぬかるべし
Genesis 43:9 我彼の身を保はん汝わが手にかれを問へ我もし彼を汝につれかへりて汝のまへに置ずば我永遠に罪をおはん
Genesis 43:10 我儕もし濡滯ことなかりしならば必ずすでにゆきて再びかへりしならん
Genesis 43:11 父イスラエル彼等にいひけるは然ば斯なせ汝等國の名物を器にいれ携へくだりて彼人に禮物とせよ乳香少許、蜜少許、香物、沒藥、胡桃および巴旦杏
Genesis 43:12 又手に一倍の金を取りゆけ汝等の嚢の口に返してありし彼金を再び手にたづさへ行べし恐くは差謬にてありしならん
Genesis 43:13 且また汝らの弟を挈へ起てふたたたび其人の所にゆけ
Genesis 43:14 ねがはくは全能の神その人のまへにて汝等を矜恤みその人をして汝等の他の兄弟とベニヤミンを放ちかへさしめたまはんことを若われ子に別るべくあらば別れんと
Genesis 43:15 是に於てかの人々その禮物を執り一倍の金を手に執りベニヤミンを携へて起てエジプトにくだりヨセフの前に立つ
Genesis 43:16 ヨセフ、ベニヤミンの彼らと偕なるを見てその家宰にいひけるはこの人々を家に導き畜を屠りて備へよこの人々卓午に我とともに食をなすべければなり
Genesis 43:17 其人ヨセフのいひしごとくなし其人この人々をヨセフの家に導けり
Genesis 43:18 人々ヨセフの家に導かれたるによりて懼れいひけるは初めにわれらの嚢にかへりてありし金の事のために我等はひきいれらる是われらを抑留へて我等にせまり執へて奴隸となし且われらの驢馬を取んとするなりと
Genesis 43:19 彼等すなはちヨセフの家宰に進みよりて家の入口にて之にかたりて
Genesis 43:20 いひけるは主よ我等實に最初くだりて糧食を買たり
Genesis 43:21 しかるに我等旅邸に至りて嚢を啓き見るに各人の金その嚢の口にありて其金の量全かりし然ば我等これを手にもちかへれり
Genesis 43:22 又糧食を買ふ他の金をも手にもちくだる我等の金を嚢にいれたる者は誰なるかわれらは知ざるなり
Genesis 43:23 彼いひけるは汝ら安ぜよ懼るなかれ汝らの神汝らの父の神財寶を汝等の嚢におきて汝らに賜ひしなり汝らの金は我にとどけりと遂にシメオンを彼等の所にたづさへいだせり
Genesis 43:24 かくて其人この人々をヨセフの家に導き水をあたへてその足を濯はしめ又その驢馬に飼草をあたふ
Genesis 43:25 彼等其處にて食をなすなりと聞しかば禮物を調へてヨセフの日午に來るをまつ
Genesis 43:26 茲にヨセフ家にかへりしかば彼等その手の禮物を家にもちきたりてヨセフの許にいたり地に伏てこれを拜す
Genesis 43:27 ヨセフかれらの安否をとふていふ汝等の父汝らが初にかたりしその老人は恙なきや尚いきながらへをるや
Genesis 43:28 彼等こたへてわれらの父汝の僕は恙なくしてなほ生ながらへをるといひ身をかがめ禮をなす
Genesis 43:29 ヨセフ目をあげてその母の子なる己の弟ベニヤミンを見ていひけるは是は汝らが初に我にかたりし汝らの若き兄弟なるや又いふわが子よ願はくは神汝をめぐみたまはんことをと
Genesis 43:30 ヨセフその弟のために心焚るがごとくなりしかば急ぎてその泣べきところを尋ね室にいりて其處に泣り
Genesis 43:31 而して面をあらひて出で自から抑へて食をそなへよといふ
Genesis 43:32 すなはちヨセフはヨセフ彼等は彼等陪食するエジプト人はエジプト人と別々に之を供ふ是はエジプト人ヘブル人と共に食することをえざるによる其事エジプト人の穢はしとするところなればなり
Genesis 43:33 かくて彼等ヨセフの前に坐るに長子をばその長たるにしたがひて坐らせ若き者をばその幼少にしたがひてすわらせければその人々駭きあへり
Genesis 43:34 ヨセフ己の前より皿を彼等に供ふベニヤミンの皿は他の人のよりも五倍おほかりきかれら飮てヨセフとともに樂めり
Genesis 44:1 茲にヨセフその家宰に命じていふこの人々の嚢にその負うるほど糧食を充せ各人の金をその嚢の口に置れ
Genesis 44:2 またわが杯すなはち銀の杯を彼の少き者の嚢の口に置てその穀物の金子とともにあらしめよと彼がヨセフがいひし言のごとくなせり
Genesis 44:3 かくて夜のあくるにおよびてその人々と驢馬をかへしけるが
Genesis 44:4 かれら城邑をいでてなほ程とほからぬにヨセフ家宰にいひけるは起てかの人々の後を追ひおひつきし時之にいふべし汝らなんぞ惡をもて善にむくゆるや
Genesis 44:5 其はわが主がもちひて飮み又用ひて常に卜ふ者にあらずや汝らかくなすは惡しと
Genesis 44:6 是に於て家宰かれらにおひつきてこの言をかれらにいひければ
Genesis 44:7 かれら之にいふ主なにゆゑに是事をいひたまふや僕等きはめてこの事をなさず
Genesis 44:8 視よ我らの嚢の口にありし金はカナンの地より汝の所にもちかへれり然ば我等いかで汝の主の家より金銀をぬすまんや
Genesis 44:9 僕等の中誰の手に見あたるも其者は死べし我等またわが主の奴隸となるべし
Genesis 44:10 彼いひけるはさらば汝らの言のごとくせん其の見あたりし者はわが奴隸となるべし汝等は咎なしと
Genesis 44:11 是において彼等急ぎて各その嚢を地におろし各その嚢をひらきしかば
Genesis 44:12 彼すなはち索し長者よりはじめて少者にをはるに杯はベニヤミンの嚢にありき
Genesis 44:13 斯有しかば彼等その衣を裂きおのおのその驢馬に荷を負せて邑にかへる
Genesis 44:14 しかしてユダとその兄弟等ヨセフの家にいたるにヨセフなほ其處にをりしかばその前に地に伏す
Genesis 44:15 ヨセフかれらにいひけるは汝等がなしたるこの事は何ぞや我のごとき人は善く卜ひうる者なるをしらざるや
Genesis 44:16 ユダいひけるは我等主に何をいはんや何をのべんや如何にしてわれらの正直をあらはさんや神僕等の罪を摘發したまへり然ば我等およびこの杯の見あたりし者倶に主の奴隸となるべし
Genesis 44:17 ヨセフいひけるはきはめて然せじ杯の手に見あたりし人はわが奴隸となるべし汝等は安然に父にかへりのぼるべし
Genesis 44:18 時にユダかれに近よりていひけるはわが主よ請ふ僕をして主の耳に一言いふをえせしめよ僕にむかひて怒を發したまふなかれ汝はパロのごとくにいますなり
Genesis 44:19 昔にわが主僕等に問て汝等は父あるや弟あるやといひたまひしかば
Genesis 44:20 我等主にいへり我等にわが父あり老人なり又その老年子なる少者ありその兄は死てその母の遺せるは只是のみ故に父これを愛すと
Genesis 44:21 汝また僕等にいひたまはく彼を我許につれくだり我をして之に目をつくることをえせしめよと
Genesis 44:22 われら主にいへり童子父を離るをえず若父をはなるるならば父死べしと
Genesis 44:23 汝また僕等にいひたまはく汝らの季の弟汝等とともに下るにあらざれば汝等ふたたたびわが面を見るべからずと
Genesis 44:24 我等すなはちなんぢの僕わが父の所にかへりのぼりて主の言をこれに告たり
Genesis 44:25 我らの父再びゆきて少許の糧食を買きたれといひければ
Genesis 44:26 我らいふ我らくだりゆくことをえずわれらの季の弟われらと共にあらば下りゆくべし其は季の弟われらと共にあるにあらざれば彼人の面をみるをえざればなりと
Genesis 44:27 なんぢの僕わが父われらにいふ汝らのしるごとく吾妻われに二人を生しが
Genesis 44:28 その一人出てわれをはなれたれば必ず裂ころされしならんと思へり我今にいたるまで彼を見ず
Genesis 44:29 なんぢら是をも我側より取ゆかんに若災害是の身におよぶあらば遂にわが白髮をして悲みて墓にくだらしむるにいたらんと
Genesis 44:30 抑父の生命と童子の生命とは相結びてあれば我なんぢの僕わが父に歸りいたらん時に童子もしわれらと共に在ずば如何ぞや
Genesis 44:31 父童子の在ざるを見ば死るにいたらん然れば僕等なんぢの僕われらの父の白髮をして悲みて墓にくだらしむるなり
Genesis 44:32 僕わが父に童子の事を保ひて我もし是を汝につれかへらずば永久に罪を父に負んといへり
Genesis 44:33 されば請ふ僕をして童子にかはりをりて主の奴隸とならしめ童子をしてその兄弟とともに歸りのぼらしめたまへ
Genesis 44:34 我いかでか童子を伴はずして父の許に上りゆくべけん恐くは災害の父におよぶを見ん
Genesis 45:1 茲にヨセフその側にたてる人々のまへに自ら禁ぶあたはざるに至りければ人皆われを離ていでよと呼はれり是をもてヨセフが己を兄弟にあかしたる時一人も之とともにたつものなかりき
Genesis 45:2 ヨセフ聲をあげて泣りエジプト人これを聞きパロの家またこれを聞く
Genesis 45:3 ヨセフすなはちその兄弟にいひけるは我はヨセフなりわが父はなほ生ながらへをるやと兄弟等その前に愕き懼れて之にこたふるをえざりき
Genesis 45:4 ヨセフ兄弟にいひけるは請ふ我にちかよれとかれらすなはち近よりければ言ふ我はなんぢらの弟ヨセフなんぢらがエジプトにうりたる者なり
Genesis 45:5 されど汝等我をここに賣しをもて憂ふるなかれ身を恨るなかれ神生命をすくはしめんとて我を汝等の前につかはしたまへるなり
Genesis 45:6 この二年のあひだ饑饉國の中にありしが尚五年の間耕すことも穫こともなかるべし
Genesis 45:7 神汝等の後を地につたへんため又大なる救をもて汝らの生命を救はんために我を汝等の前に遣したまへり
Genesis 45:8 然ば我を此につかはしたる者は汝等にはあらず神なり神われをもてパロの父となしその全家の主となしエジプト全國の宰となしたまへり
Genesis 45:9 汝等いそぎ父の許にのぼりゆきて之にいへ汝の子ヨセフかく言ふ神われをエジプト全國の主となしたまへりわが所にくだれ遲疑なかれ
Genesis 45:10 汝ゴセンの地に住べし斯汝と汝の子と汝の子の子およびなんぢの羊と牛並に汝のすべて有ところの者われの近方にあるべし
Genesis 45:11 なほ五年の饑饉あるにより我其處にてなんぢを養はん恐くは汝となんぢの家族およびなんぢの凡て有ところの者匱乏ならん
Genesis 45:12 汝等の目とわが弟ベニヤミンの目の視るごとく汝等にこれをいふ者はわが口なり
Genesis 45:13 汝等わがエジプトにて亨る顯榮となんぢらが見たる所とを皆悉く父につげよ汝ら急ぎて父を此にみちびき下るべし
Genesis 45:14 而してヨセフその弟ベニヤミンの頸を抱へて哭にベニヤミンもヨセフの頸をかかへて哭く
Genesis 45:15 ヨセフ亦その諸の兄弟に接吻し之をいだきて哭く是のち兄弟等ヨセフと言ふ
Genesis 45:16 茲にヨセフの兄弟等きたれりといふ聲パロの家にきこえければパロとその臣僕これを悦ぶ
Genesis 45:17 パロすなはちヨセフにいひけるは汝の兄弟に言べし汝等かく爲せ汝等の畜に物を負せ往てカナンの地に至り
Genesis 45:18 なんぢらの父となんぢらの家族を携へて我にきたれ我なんぢらにエジプトの地の嘉物をあたへん汝等國の膏腴を食ふことをうべしと
Genesis 45:19 今汝命をうく汝等かく爲せ汝等エジプトの地より車を取ゆきてなんぢらの子女と妻等を載せ汝等の父を導きて來れ
Genesis 45:20 また汝等の器を惜み視るなかれエジプト全國の嘉物は汝らの所屬なればなり
Genesis 45:21 イスラエルの子等すなはち斯なせりヨセフ、パロの命にしたがひて彼等に車をあたへかつ途の餱糧をかれらにあたへたり
Genesis 45:22 又かれらに皆おのおの衣一襲を與へたりしがベニヤミンには銀三百と衣五襲をあたへたり
Genesis 45:23 彼また斯のごとく父に餽れり即ち驢馬十疋にエジプトの嘉物をおはせ牝の驢馬十疋に父の途の用に供ふる穀物と糧と肉をおはせて餽れり
Genesis 45:24 斯して兄弟をかへして去しめ之にいふ汝等途にて相あらそふなかれと
Genesis 45:25 かれらエジプトより上りてカナンの地にゆきその父ヤコブにいたり
Genesis 45:26 之につげてヨセフは尚いきてをりエジプト全國の宰となりをるといふしかるにヤコブの心なほ寒冷なりき其はこれを信ぜざればなり
Genesis 45:27 彼等またヨセフの己にいひたる言をことごとく之につげたりその父ヤコブ、ヨセフがおのれを載んとておくりし車をみるにおよびて其氣おのれにかへれり
Genesis 45:28 イスラエルすなはちいふ足りわが子ヨセフなほ生をるわれ死ざるまへに往て之を視ん
Genesis 46:1 イスラエルその己につける諸の者とともに出たちベエルシバにいたりてその父イサクの神に犧牲をささぐ
Genesis 46:2 神夜の異象にイスラエルにかたりてヤコブよヤコブよといひたまふ
Genesis 46:3 ヤコブわれ此にありといひければ神いひたまふ我は神なり汝の父の神なりエジプトにくだることを懼るなかれわれ彼處にて汝を大なる國民となさん
Genesis 46:4 我汝と共にエジプトに下るべし亦かならず汝を導のぼるべしヨセフ手をなんぢの目の上におかんと
Genesis 46:5 かくてヤコブ、ベエルシバをたちいでたりイスラエルの子等すなはちパロの載んとておくりたる車に父ヤコブと己の子女と妻等を載せ
Genesis 46:6 その家畜とカナンの地にてえたる貨財をたづさへ斯してヤコブとその子孫皆ともにエジプトにいたれり
Genesis 46:7 ヤコブかくその子と子の子およびその女と子の女すなはちその子孫を皆ともなひてエジプトににつれゆけり
Genesis 46:8 イスラエルの子のエジプトにくだれる者の名は左のごとしヤコブとその子等ヤコブの長子はルベン
Genesis 46:9 ルベンの子はヘノク、パル、ヘヅロン、カルミ
Genesis 46:10 シメオンの子はヱムエル、ヤミン、オハデ、ヤキン、ゾハルおよびカナンの婦のうめる子シヤウル
Genesis 46:11 レビの子はゲルシヨン、コハテ、メラリ
Genesis 46:12 ユダの子エル、オナン、シラ、ペレヅ、ゼラ但しエルとオナンはカナンの地に死たりペレヅの子はヘヅロンおよびハムルなり
Genesis 46:13 イツサカルの子はトラ、プワ、ヨブ、シムロン
Genesis 46:14 ゼブルンの子はセレデ、エロン、ヤリエルなり
Genesis 46:15 是等および女子デナはレアがパダンアラムにてヤコブにうみたる者なりその男子女子あはせて三十三人なりき
Genesis 46:16 ガドの子はゼボン、ハギ、シユニ、エヅポン、エリ、アロデ、アレリ
Genesis 46:17 アセルの子はヱムナ、イシワ、イスイ、ベリアおよびその妹サラ並にベリアの子ヘベルとマルキエルなり
Genesis 46:18 是等はラバンがその女レアにあたへたるジルパの子なり彼是等をヤコブにうめり都合十六人
Genesis 46:19 ヤコブの妻ラケルの子はヨセフとベニヤミンなり
Genesis 46:20 エジプトの國にてヨセフにマナセとエフライムうまれたり是はオンの祭司ポテパルの女アセナテが生たる者なり
Genesis 46:21 ベニヤミンの子はベラ、ベケル、アシベル、ゲラ、ナアマン、エヒ、ロシ、ムツピム、ホパム、アルデ
Genesis 46:22 是等はラケルの子にしてヤコブにうまれたる者なり都合十四人
Genesis 46:23 ダンの子はホシム
Genesis 46:24 ナフタリの子はヤジエル、グニ、ヱゼル、シレム
Genesis 46:25 是等はラバンがその女ラケルにあたへたるビルハの子なり彼これらをヤコブにうめり都合七人
Genesis 46:26 ヤコブとともにエジプトにいたりし者はヤコブの子の妻をのぞきて六十六人なりき是皆ヤコブの身よりいでたる者なり
Genesis 46:27 エジプトにてヨセフにうまれたる子二人ありヤコブの家の人のエジプトにいたりし者はあはせて七十人なりき
Genesis 46:28 ヤコブ預じめユダをヨセフにつかはしおのれをゴセンにみちびかしむ而して皆ゴセンの地にいたる
Genesis 46:29 ヨセフその車を整へゴセンにのぼりて父イスラエルを迓へ之にまみえてその頸を抱き頸をかかへて久く啼く
Genesis 46:30 イスラエル、ヨセフにいふ汝なほ生てをり我汝の面を見ることをえたれば今は死るも可しと
Genesis 46:31 ヨセフその兄弟等と父の家族とにいひけるは我のぼりてパロにつげて之にいふべしわが兄弟等とわが父の家族カナンの地にをりし者我のところに來れり
Genesis 46:32 その人々は牧者にして牧畜の人なり彼等その羊と牛およびその有る諸の物をたづさへ來れりと
Genesis 46:33 パロもし汝等を召て汝等の業は何なるやと問ことあらば
Genesis 46:34 僕等は幼少より今に至るまで牧畜の人なり我儕も先祖等もともにしかりといへしからばなんぢらゴセンの地にすむことをえん牧者は皆エジプト人の穢はしとするものなればなり
Genesis 47:1 茲にヨセフゆきてパロにつげていひけるはわが父と兄弟およびその羊と牛と諸の所有物カナンの地よりいたれり彼らはゴセンの地にをると
Genesis 47:2 その兄弟の中より五人をとりてこれをパロにまみえしむ
Genesis 47:3 パロ、ヨセフの兄弟等にいひけるは汝らの業は何なるか彼等パロにいふ僕等は牧者なりわれらも先祖等もともにしかりと
Genesis 47:4 かれら又パロにいひけるは此國に寓らんとて我等はきたる其はカナンの地に饑饉はげしくして僕等の群をやしなふ牧場なければなりされば請ふ僕等をしてゴセンの地にすましめたまへ
Genesis 47:5 パロ、ヨセフにかたりていふ汝の父と兄弟汝の所にきたれり
Genesis 47:6 エジプトの地はなんぢの前にあり地の善き處に汝の父と兄弟をすましめよすなはちゴセンの地にかれらをすましめよ汝もし彼等の中に才能ある者あるをしらば其人々をしてわが家畜をつかさどらしめよ
Genesis 47:7 ヨセフまた父ヤコブを引ていりパロの前にたたしむヤコブ、パロを祝す
Genesis 47:8 パロ、ヤコブにいふ汝の齡の日は幾何なるか
Genesis 47:9 ヤコブ、パロにいひけるはわが旅路の年月は百三十年にいたる我が齡の日は僅少にして且惡かり未だわが先祖等の齡の日と旅路の日にはおよばざるなり
Genesis 47:10 ヤコブ、パロを祝しパロのまへよりいでさりぬ
Genesis 47:11 ヨセフ、パロの命ぜしごとくその父と兄弟に居所を與へエジプトの國の中の善き地即ちラメセスの地をかれらにあたへて所有となさしむ
Genesis 47:12 ヨセフその父と兄弟と父の全家にその子の數にしたがひて食物をあたへて養へり
Genesis 47:13 却説饑饉ははなはだはげしくして全國に食物なくエジプトの國とカナンの國饑饉のために弱れり
Genesis 47:14 ヨセフ穀物を賣あたへてエジプトの地とカナンの地にありし金をことごとく斂む而してヨセフその金をパロの家にもちきたる
Genesis 47:15 エジプトの國とカナンの國に金つきたればエジプト人みなヨセフにいたりていふ我等に食物をあたへよ如何ぞなんぢの前に死べけんや金すでにたえたり
Genesis 47:16 ヨセフいひけるは汝等の家畜をいだせ金もしたえたらば我なんぢらの家畜にかへて與ふべしと
Genesis 47:17 かれら乃ちその家畜をヨセフにひききたりければヨセフその馬と羊の群と牛の群および驢馬にかへて食物をかれらにあたへそのすべての家畜のために其年のあひだ食物をあたへてこれをやしなふ
Genesis 47:18 かくてその年暮けるが明年にいたりて人衆またヨセフにきたりて之にいふ我等主に隱すところなしわれらの金は竭たりまたわれらの畜の群は主に皈す主のまへにいだすべき者は何ものこりをらず唯われらの身體と田地あるのみ
Genesis 47:19 われらいかんぞわれらの田地とともに汝の目のまへに死亡ぶべけんや我等とわれらの田地を食物に易て買とれ我等田地とともにパロの僕とならんまた我等に種をあたへよ然らばわれら生るをえて死るにいたらず田地も荒蕪にいたらじ
Genesis 47:20 是に於てヨセフ、エジプトの田地をことごとく購とりてパロに納る其はエジプト人饑饉にせまりて各人その田圃を賣たればなり是によりて地はパロの所有となれり
Genesis 47:21 また民はエジプトのこの境の極よりかの堺の極の者までヨセフこれを邑々にうつせり
Genesis 47:22 但祭司の田地は購とらざりき祭司はパロより祿をたまはりをればパロの與る祿を食たるによりてその田地を賣ざればなり
Genesis 47:23 茲にヨセフ民にいひけるは視よ我今日汝等となんぢらの田地をかひてパロに納る視よこの種子を汝らに與ふ地に播べし
Genesis 47:24 しかして收穫の五分の一をパロに輸し四分をなんぢらに取て田圃の種としなんぢらの食としなんぢらの家族と子女の食とせよ
Genesis 47:25 人衆いひけるは汝われらの生命を拯ひたまへりわれら主のまへに恩をえんことをねがふ我等パロの僕となるべしと
Genesis 47:26 ヨセフ、エジプトの田地に法をたてその五分の一をパロにをさめしむその事今日にいたる唯祭司の田地のみパロの有とならざりき
Genesis 47:27 イスラエル、エジプトの國に於てゴセンの地にすみ彼處に産業を獲その數増して大に殖たり
Genesis 47:28 ヤコブ、エジプトの國に十七年いきながらへたりヤコブの年齒の日は合て百四十七年なりき
Genesis 47:29 イスラエル死る日ちかよりければその子ヨセフをよびて之にいひけるは我もし汝のまへに恩を得るならば請ふなんぢの手をわが髀の下にいれ懇に眞實をもて我をあつかへ我をエジプトに葬るなかれ
Genesis 47:30 我は先祖等とともに偃んことをねがふ汝われをエジプトよ舁いだして先祖等の墓場にはうむれヨセフいふ我なんぢが言るごとくなすべしと
Genesis 47:31 ヤコブまた我に誓へといひければすなはち誓へりイスラエル床の頭にて拜をなせり
Genesis 48:1 是等の事の後汝の父病にかかるとヨセフに告る者ありければヨセフ二人の子マナセとエフライムをともなひて至る
Genesis 48:2 人ヤコブに告て汝の子ヨセフなんぢの許にきたるといひければイスラエル強て床に坐す
Genesis 48:3 しかしてヤコブ、ヨセフにいひけるは昔に全能の神カナンの地のルズにて我にあらはれて我を祝し
Genesis 48:4 我にいひたまひけらく我なんぢをして多く子をえせしめ汝をふやし汝を衆多の民となさん我この地を汝の後の子孫にあたへて永久の所有となさしめんと
Genesis 48:5 わがエジプトにきたりて汝に就まへにエジプトにて汝に生れたる二人の子エフライムとマナセ是等はわが子となるべしルベンとシメオンのごとく是等はわが子とならん
Genesis 48:6 是等の後になんぢが得たる子は汝のものとすべし又その産業はその兄弟の名をもて稱らるべし
Genesis 48:7 我事をいはんに我昔パダンより來れる時ラケル我にしたがひをりて途にてカナンの地に死り其處はエフラタまで尚途の隔あるところなりわれ彼處にて彼をエフラタの途にはうむれり(エフラタはすなはちベテレヘムなり)
Genesis 48:8 斯てイスラエル、ヨセフの子等を見て是等は誰なるやといひければ
Genesis 48:9 ヨセフ父にいふ是は神の此にて我にたまひし子等なりと父すなはちいふ請ふ彼らを我所につれきたれ我これを祝せんと
Genesis 48:10 イスラエルの目は年壽のために眯て見るをえざりしがヨセフかれらをその許につれきたりければ之に接吻してこれを抱けり
Genesis 48:11 しかしてイスラエル、ヨセフにいひけるは我なんぢの面を見るあらんとは思はざりしに視よ神なんぢの子をもわれにしめしたまふと
Genesis 48:12 ヨセフかれらをその膝の間よりいだし地に俯て拜せり
Genesis 48:13 しかしてヨセフ、エフライムを右の手に執てヤコブに左の手にむかはしめマナセを左の手に執てヤコブの右の手にむかはしめ二人をみちびきてかれに就ければ
Genesis 48:14 イスラエル右の手をのべて季子エフライムの頭に按き左の手をのべてマナセの頭におけりマナセは長子なれども故にかくその手をおけるなり
Genesis 48:15 斯してヨセフを祝していふわが父アブラハム、イサクの事へし神わが生れてより今日まで我をやしなひたまひし神
Genesis 48:16 我をして諸の災禍を贖はしめたまひし天使ねがはくは是童子等を祝たまへねがはくは是等の者わが名とわが父アブラハム、イサクの名をもて稱られんことをねがはくは是等地の中に繁殖がるにいたれ
Genesis 48:17 ヨセフ父が右の手をエフライムの頭に按るを見てよろこばず父の手をあげて之をエフライムの頭よりマナセの頭にうつさんとす
Genesis 48:18 ヨセフすなはち父にいひけるは然にあらず父よ是長子なれば右の手をその頭に按たまへ
Genesis 48:19 父こばみていひけるは我知るわが子よわれしる彼も一の民となり彼も大なる者とならん然れどもその弟は彼よりも大なる者となりてその子孫は多衆の國民となるべしと
Genesis 48:20 此日彼等を祝していふイスラエル汝を指て人を祝し願くは神汝をしてエフライムのごとくマナセのごとくならしめたまへといふにいたらんとすなはちエフライムをマナセの先にたてたり
Genesis 48:21 イスラエルまたヨセフにいひけるは視よわれは死んされど神なんぢらとともにいまして汝等を先祖等の國にみちびきかへりたまふべし
Genesis 48:22 且われ一の分をなんぢの兄弟よりもおほく汝にあたふ是わが刀と弓を以てアモリ人の手より取たる者なり
Genesis 49:1 ヤコブその子等を呼ていひけるは汝らあつまれ我後の日に汝らが遇んところの事を汝等につげん
Genesis 49:2 汝等つどひて聽けヤコブの子等よ汝らの父イスラエルに聽け
Genesis 49:3 ルベン汝はわが冢子わが勢わが力の始威光の卓越たる者權威の卓越たる者なり
Genesis 49:4 汝は水の沸あがるがごとき者なれば卓越を得ざるべし汝父の床にのぼりて浼したればなり嗚呼彼はわが寢牀にのぼれり
Genesis 49:5 シメオン、レビは兄弟なりその劍は暴逆の器なり
Genesis 49:6 我魂よかれらの席にのぞむなかれ我寶よかれらの集會につらなるなかれ其は彼等その怒にまかせて人をころしその意にまかせて牛を筋截たればなり
Genesis 49:7 その怒は烈しかれば詛ふべしその憤は暴あれば詛ふべし我彼らをヤコブの中に分ちイスラエルの中に散さん
Genesis 49:8 ユダよ汝は兄弟の讚る者なり汝の手はなんぢの敵の頸を抑へんなんぢの父の子等なんぢの前に鞠ん
Genesis 49:9 ユダは獅子の子の如しわが子よ汝は所掠物をさきてかへりのぼる彼は牡獅子のごとく伏し牝獅のごとく蹲まる誰か之をおこすことをせん
Genesis 49:10 杖ユダを離れず法を立る者その足の間をはなるることなくしてシロの來る時にまでおよばん彼に諸の民したがふべし
Genesis 49:11 彼その驢馬を葡萄の樹に繋ぎその牝驢馬の子を葡萄の蔓に繋がん又その衣を酒にあらひ其服を葡萄の汁にあらふべし
Genesis 49:12 その目は酒によりて紅くその齒は乳によりて白し
Genesis 49:13 ゼブルンは海邊にすみ舟の泊る海邊に住はんその界はシドンにおよぶべし
Genesis 49:14 イッサカルは羊の牢の間に伏す健き驢馬の如し
Genesis 49:15 彼みて安泰を善としその國を樂とし肩をさげて負ひ租税をいだして僕となるべし
Genesis 49:16 ダンはイスラエルの他の支派の如く其民を鞫かん
Genesis 49:17 ダンは路の旁の蛇のごとく途邊にある蝮のごとし馬の踵を噛てその騎者をして後に落しむ
Genesis 49:18 ヱホバよわれ汝の拯救を待り
Genesis 49:19 ガドは軍勢これにせまらんされど彼返てその後にせまらん
Genesis 49:20 アセルよりいづる食物は美るべし彼王の食ふ美味をいださん
Genesis 49:21 ナフタリは釋れたる麀のごとし彼美言をいだすなり
Genesis 49:22 ヨセフは實を結ぶ樹の芽のごとし即ち泉の傍にある實をむすぶ樹の芽のごとしその枝つひに垣を踰ゆ
Genesis 49:23 射者彼をなやまし彼を射かれを惡めり
Genesis 49:24 然どかれの弓はなほ勁くあり彼の手の臂は力あり是ヤコブの全能者の手によりてなり其よりイスラエルの磐なる牧者いづ
Genesis 49:25 汝の父の神による彼なんぢを助けん全能者による彼なんぢを祝まん上なる天の福、下によこたはる淵の福、乳哺の福、胎の福、汝にきたるべし
Genesis 49:26 父の汝を祝することはわが父祖の祝したる所に勝て恒久の山の限極にまでおよばん是等の祝福はヨセフの首に歸しその兄弟と別になりたる者の頭頂に歸すべし
Genesis 49:27 ベニヤミンは物を噛む狼なり朝にその所掠物を啖ひ夕にその所攫物をわかたん
Genesis 49:28 是等はイスラエルの十二の支派なり斯その父彼らに語り彼等を祝せりすなはちその祝すべき所にしたがひて彼等諸人を祝せり
Genesis 49:29 ヤコブまた彼等に命じて之にいひけるは我はわが民にくははらんとすヘテ人エフロンの田にある洞穴にわが先祖等とともに我をはうむれ
Genesis 49:30 その洞穴はカナンの地にてマムレのまへなるマクペラの田にあり是はアブラハムがヘテ人エフロンより田とともに購て所有の墓所となせし者なり
Genesis 49:31 アブラハムとその妻サラ彼處にはうむられイサクとその妻リベカ彼處に葬られたり我またかしこにレアを葬れり
Genesis 49:32 彼田とその中の洞穴はヘテの子孫より購たる者なり
Genesis 49:33 ヤコブその子に命ずることを終し時足を床に斂めて氣たえてその民にくははる
Genesis 50:1 ヨセフ父の面に俯し之をいだきて哭き之に接吻す
Genesis 50:2 而してヨセフその僕なる醫者に命じてその父に釁らしむ醫者イスラエルに釁れり
Genesis 50:3 すなはち之がために四十日を用ふ其は尸に釁るにはこの日數を用ふべければなりエジプト人七十日の間之がために哭けり
Genesis 50:4 哀哭の日すぎし時ヨセフ、パロの家にかたりていひけるは我もし汝等の前に恩惠を得るならば請ふパロの耳にまうして言へ
Genesis 50:5 わが父我死ばカナンの地にわが掘おきたる墓に我をはうむれといひて我を誓はしめたり然ば請ふわれをして上りて父を葬らしめたまへまた歸りきたらんと
Genesis 50:6 パロいひけるは汝の父汝をちかはせしごとくのぼりて之を葬るべし
Genesis 50:7 是に於てヨセフ父を葬らんとて上るパロの諸の臣パロの家の長老等エジプトの地の長老等
Genesis 50:8 およびヨセフの全家とその兄弟等およびその父の家之とともに上る只その子女と羊と牛はゴセンの地にのこせり
Genesis 50:9 また車と騎兵ヨセフにしたがひてのぼり其隊ははなはだ大なりき
Genesis 50:10 彼等つひにヨルダンの外なるアタデの禾場に到り彼にて大に泣き痛く哀しむヨセフすなはち七日父のために哭きぬ
Genesis 50:11 その國の居人なるカナン人等アタデの禾場の哀哭を見て是はエジプト人の痛くなげくなりといへり是によりて其處の名をアベルミツライム(エジプト人の哀哭)と稱ふヨルダンの外にあり
Genesis 50:12 ヤコブの子等その命ぜられたるごとく之になせり
Genesis 50:13 すなはちヤコブの子等彼をカナンの地に舁ゆきて之をマクペラの田の洞穴にはうむれり是はアブラハムがヘテ人エフロンより田とともに購とりて所有の墓所となせし者にてマムレの前にあり
Genesis 50:14 ヨセフ父を葬りてのち其兄弟および凡て己とともにのぼりて父をはうむれる者とともにエジプトにかへりぬ
Genesis 50:15 ヨセフの兄弟等その父の死たるを見ていひけるはヨセフあるいはわれらを恨むることあらん又かならずわれらが彼になしたる諸の惡にむくゆるならんと
Genesis 50:16 すなはちヨセフにいひおくりけるはなんぢの父死るまへに命じて言けらく
Genesis 50:17 汝ら斯ヨセフにいふべし汝の兄弟汝に惡をなしたれども冀はくはその罪咎をゆるせと然ば請ふ汝の父の神の僕等の咎をゆるせとヨセフその言を聞て啼泣り
Genesis 50:18 兄弟等もまた自らきたりヨセフの面の前に俯し我儕は汝の僕とならんといふ
Genesis 50:19 ヨセフかれらに曰けるは懼るなかれ我あに神にかはらんや
Genesis 50:20 汝等は我を害せんとおもひたれども神はそれを善にかはらせ今日のごとく多の民の生命を救ふにいたらしめんとおもひたまへり
Genesis 50:21 故に汝らおそるるなかれ我なんぢらと汝らの子女をやしなはんと彼等をなぐさめ懇に之にかたれり
Genesis 50:22 ヨセフ父の家族とともにエジプトにすめりヨセフは百十歳いきながらへたり
Genesis 50:23 ヨセフ、エフライムの三世の子女をみるにいたれりマナセの子マキルの子マキルの子女もうまれてヨセフの膝にありき
Genesis 50:24 ヨセフその兄弟等にいひけるは我死ん神かならず汝等を眷顧みなんぢらを此地よりいだしてそのアブラハム、イサク、ヤコブに誓ひし地にいたらしめたまはんと
Genesis 50:25 ヨセフ神かならず汝等をかへりみたまはん汝らわが骨をここよりたづさへのぼるべしといひてイスラエルの子孫を誓はしむ
Genesis 50:26 ヨセフ百十歳にして死たれば之に釁りて櫃にをさめてエジプトにおけり
Judges 0:0 士師記
Judges 1:1 ヨシユアの死にたるのちイスラエルの子孫ヱホバに問ひていひけるはわれらの中孰か先に攻め登りてカナン人と戰ふべきや
Judges 1:2 ヱホバいひたまひけるはユダ上るべし視よ我此國を其の手に付すと
Judges 1:3 ユダその兄弟シメオンに言けるは我と共にわが領地にのぼりてカナン人と戰へわれもまた偕に汝の領地に往べしとここにおいてシメオンかれとともにゆけり
Judges 1:4 ユダすなはち上りゆきけるにヱホバその手にカナン人とペリジ人とを付したまひたればベゼクにて彼ら一萬人を殺し
Judges 1:5 またベゼクにおいてアドニベゼクにゆき逢ひこれと戰ひてカナン人とペリジ人を殺せり
Judges 1:6 しかるにアドニベゼク逃れ去りしかばそのあとを追ひてこれを執へその手足の巨擘を斫りはなちたれば
Judges 1:7 アドニベゼクいひけるは七十人の王たちかつてその手足の巨擘を斫られて我が食几のしたに屑を拾へり神わが曾て行ひしところをもてわれに報いたまへるなりと衆之を曳てエルサレムに至りしが其處にしねり
Judges 1:8 ユダの子孫エルサレムを攻めてこれを取り刃をもてこれを撃ち邑に火をかけたり
Judges 1:9 かくてのちユダの子孫山と南方の方および平地に住めるカナン人と戰はんとて下りしが
Judges 1:10 ユダまづヘブロンに住るカナン人を攻めてセシヤイ、アヒマンおよびタルマイを殺せり〔ヘブロンの舊の名はキリアテアルバなり〕
Judges 1:11 またそこより進みてデビルに住るものを攻む〔デビルの舊の名はキリアテセペルなり〕
Judges 1:12 時にカレブいひけるはキリアテセペルをうちてこれを取るものにはわが女アクサをあたへて妻となさんと
Judges 1:13 カレブの舍弟ケナズの子オテニエルこれを取ければすなはちその女アクサをこれが妻にあたふ
Judges 1:14 アクサ往くときおのれの父に田圃を求めんことを夫にすすめたりしがつひにアクサ驢馬より下りければカレブこれは何事ぞやといふに
Judges 1:15 答へけるはわれに惠賜をあたへよなんぢ南の地をわれにあたへたればねがはくは源泉をもわれにあたへよとここにおいてカレブ上の源泉と下の源泉とをこれにあたふ
Judges 1:16 モーセの外舅ケニの子孫ユダの子孫と偕に棕櫚の邑よりアラドの南なるユダの野にのぼり來りて民のうちに住居せり
Judges 1:17 茲にユダその兄弟シメオンとともに往きてゼバテに住るカナン人を撃ちて盡くこれを滅ぼせり是をもてその邑の名をホルマと呼ぶ
Judges 1:18 ユダまたガザと其の境アシケロンとその境およびエクロンとその境を取り
Judges 1:19 ヱホバ、ユダとともに在したればかれつひに山地を手に入れたりしが谷に住る民は鐵の戰車をもちたるが故にこれを遂出すこと能はざりき
Judges 1:20 衆モーセのかつていひし如くヘブロンをカレブに與ふカレブそのところよりアナクの三人の子をおひ出せり
Judges 1:21 ベニヤミンの子孫はエルサレムに住るエブス人を追出さざりしりかばエブス人は今日に至るまでベニヤミンの子孫とともにエルサレムに住ふ
Judges 1:22 茲にヨセフの族またベテルをさして攻め上るヱホバこれと偕に在しき
Judges 1:23 ヨセフの族すなはちベテルを窺察しむ〔此邑の舊の名はルズなり〕
Judges 1:24 その間者邑より人の出來るを見てこれにいひけるは請ふわれらに邑の入口を示せさらば汝に恩慈を施さんと
Judges 1:25 彼邑の入口を示したればすなはち刃をもて邑を撃てり然ど彼の人と其家族をばみな縱ち遣りぬ
Judges 1:26 その人ヘテ人の地にゆき邑を建てルズと名けたり今日にいたるまでこれを其名となす
Judges 1:27 マナセはベテシヤンとその村里の民タアナクとその村里の民ドルとその村里の民イプレアムとその村里の民メギドンとその村里の民を逐ひ出さざりきカナン人はなほその地に住ひ居る
Judges 1:28 イスラエルはその強なりしときカナン人をして貢を納れしめたりしが之を全く追ひいだすことは爲さざりき
Judges 1:29 エフライムはゲゼルに住るカナン人を遂ひいださざりきカナン人はゲゼルにおいてかれらのうちに住み居たり
Judges 1:30 ゼブルンはまたキテロンの民およびナハラルの民を遂ひいださざりきカナン人かれらのうちに住て貢ををさむるものとなりぬ
Judges 1:31 アセルはアツコの民およびシドン、アヘラブ、アクジブ、ヘルバ、アピク、レホブの民を遂ひ出さざりき
Judges 1:32 アセル人は其地の民なるカナン人のうちに住み居たりそはこれを遂ひ出さざりしゆゑなり
Judges 1:33 ナフタリはベテシメシの民およびベテアナテの民を遂ひ出さずその地の民なるカナン人のうちに住み居たりベテシメシとベテアナテの民はつひにかれらに貢を納むるものとなりぬ
Judges 1:34 アモリ人ダンの子孫を山におひこみ谷に下ることを得させざりき
Judges 1:35 アモリ人はなほヘレス山アヤロン、シヤラビムに住ひ居りしがヨセフの家の手力勝りたれば終に貢を納むるものとなりぬ
Judges 1:36 アモリ人の界はアクラビムの阪よりセラを經て上に至れり
Judges 2:1 ヱホバの使者ギルガルよりボキムに上りていひけるは我汝等をエジプトより上らしめわが汝らの先祖に誓ひたる地に携へ來れりまた我いひけらくわれ汝らと締べる契約を絶てやぶることあらじ
Judges 2:2 汝らはこの國の民と契約を締ぶべからずかれらの祭壇を毀つべしとしかるに汝らはわが聲に從はざりき汝ら如何なれば斯ることをなせしや
Judges 2:3 我またいひけらくわれ汝らの前より彼らを追ふべからずかれら反て汝等の肋を刺す荊棘とならんまた彼らの神々は汝等の罟となるべし
Judges 2:4 ヱホバの使これらの言をイスラエルのすべての子孫に語しかば民聲をあげて哭ぬ
Judges 2:5 故に其所の名をボキム(哭者)と呼ぶかれら彼所にてヱホバに祭物を獻げたり
Judges 2:6 ヨシユア民を去しめたればイスラエルの子孫おのおのその領地におもむきて地を獲たり
Judges 2:7 ヨシユアの世にありし間またヨシユアより後に生きのこりたる長老等の世にありしあひだ民はヱホバに事へたりこの長老等はヱホバのかつてイスラエルのために成したまひし諸の大なる行爲を見しものなり
Judges 2:8 ヱホバの僕ヌンの子ヨシユア百十歳にて死り
Judges 2:9 衆人エフライムの山のテムナテヘレスにあるかれらの産業の地においてガアシ山の北にこれを葬れり
Judges 2:10 かくてまたその時代のものことごとくその先祖のもとにあつめられその後に至りて他の時代おこりしが是はヱホバを識ずまたそのイスラエルのために爲したまひし行爲をも識ざりき
Judges 2:11 イスラエルの子孫ヱホバのまへに惡きことを作してバアリムにつかへ
Judges 2:12 かつてエジプトの地よりかれらを出したまひしその先祖の神ヱホバを棄てて他の神すなはちその四周なる國民の神にしたがひ之に跪づきてヱホバの怒を惹起せり
Judges 2:13 即ちかれらヱホバをすててバアルとアシタロテに事へたれば
Judges 2:14 ヱホバはげしくイスラエルを怒りたまひ掠むるものの手にわたして之を掠めしめかつ四周なるもろもろの敵の手にこれを賣りたまひしかばかれらふたたびその敵の前に立つことを得ざりき
Judges 2:15 かれらいづこに往くもヱホバの手これに災をなしぬ是はヱホバのいひたまひしごとくヱホバのこれに誓ひたまひしごとしここにおいてかれら惱むこと甚だしかりしが
Judges 2:16 ヱホバ士師を立てたまひたればかれらこれを掠むるものの手よりすくひ出したり
Judges 2:17 然るにかれらその士師にもしたがはず反りて他の神を慕て之と淫をおこなひ之に跪き先祖がヱホバの命令に從がひて歩みたることろの道を頓に離れ去りてその如くには行はざりき
Judges 2:18 かれらのためにヱホバ士師を立てたまひし時に方りてはヱホバつねにその士師とともに在しその士師の世に在る間はヱホバかれらを敵の手よりすくひ出したまへり此はかれらおのれを虐げくるしむるものありしを呻きかなしめるによりてヱホバ之を哀れみたまひたればなり
Judges 2:19 されどその士師の死しのちまた戻きて先祖よりも甚だしく邪曲を行ひ他の神にしたがひてこれに事へ之に跪きておのれの行爲を息めずその頑固なる路を離れざりき
Judges 2:20 是をもてヱホバはげしくイスラエルをいかりていひたまはく此民はわがかつてその列祖に命じたる契約を犯し吾聲に從がはざるがゆゑに
Judges 2:21 我もまたいまよりはヨシユアがその死しときに存しおけるいづれの國民をもかれらのまへより遂ひはらはざるべし
Judges 2:22 此は我イスラエルがその先祖の守りしごとくヱホバの道を守りてこれに歩むやいなやを試みんがためなりと
Judges 2:23 ヱホバはこれらの國民を遂はらふことを速にせずして之を遺しおきてヨシユアの手に付したまはざりしなり
Judges 3:1 ヱホバが凡てカナンの諸の戰爭を知ざるイスラエルの者どもをこころみんとて遺しおきたまへる國民は左のごとし
Judges 3:2 (こはただイスラエルの代々の子孫特にいまだ戰爭を知ざるものにこれををしへ知らしめんがためなり)
Judges 3:3 即ちペリシテ人の五人の伯すべてのカナン人シドン人およびレバノン山に住みてバアルヘルモンの山よりハマテに入るところまでを占めたるヒビ人是なり
Judges 3:4 これらをもてイスラエルをこころみかれらがヱホバのモーセによりてその先祖に命じたまひし命令に遵ふや否やを可知りしなり
Judges 3:5 イスラエルの子孫はカナン人ヘテ人アモリ人
Judges 3:6 ペリジ人ヒビ人エブス人のうちに住みかれらの女を妻に娶りまたおのれの女をかれらの子に與へかつかれらの神に事へたり
Judges 3:7 斯くイスラエルの子孫ヱホバのまへに惡をおこなひ己れの神なるヱホバをわすれてバアリムおよびアシラに事へたり
Judges 3:8 是においてヱホバはげしくイスラエルを怒りてこれをメソポタミヤの王クシヤンリシヤタイムの手に賣り付したまひしかばイスラエルの子孫はおよそ八年のあひだクシヤンリシヤタイムにつかへたり
Judges 3:9 茲にイスラエルの子孫ヱホバによばはりしかばヱホバはイスラエルの子孫の爲にひとりの救者を起して之を救はしめ給ふすなはちカレブの舍弟ケナズの子オテニエル是なり
Judges 3:10 ヱホバの靈オテニエルにのぞみたれば彼イスラエルを治め戰に出づヱホバ、メソポタミヤの王クシヤンリシヤタイムをその手に付したまひたればオテニエルの手クシヤンリシヤタイムに勝ことを得たり
Judges 3:11 かくて國は四十年のあひだ太平なりきケナズの子オテニエルつひに死り
Judges 3:12 イスラエルの子孫復ヱホバの眼のまへに惡をおこなふヱホバかれらがヱホバのまへに惡をおこなふによりてモアブの王エグロンをつよくなしてイスラエルに敵せしめたまへり
Judges 3:13 エグロンすなはちアンモンおよびアマレクの子孫を招き聚め往きてイスラエルを撃ち棕櫚の邑を取り
Judges 3:14 ここにおいてイスラエルの子孫は十八年のあひだモアブの王エグロンに事へたりしが
Judges 3:15 イスラエルの子孫ヱホバに呼はりけるときヱホバかれらの爲に一個の救者を起したまふすなはちベニヤミン人ゲラの子なる左手利捷のエホデ是なりイスラエルの子孫かれを以てモアブの王エグロンに餽物せり
Judges 3:16 エホデ長一キユビトなる兩刃の劍を作らせこれを衣のしたに右の股のあたりにおび
Judges 3:17 餽物を齎してモアブの王エグロンのもとに詣るエグロンは甚だ肥たる人なりき
Judges 3:18 さて餽物を獻ぐることをはりしかば彼餽物を負ひ來りしものをかへし去らしめ
Judges 3:19 自らはギルガルの傍なる石像の在る所より引き回していひけるは王よ我爾に告ぐべき密事ありと王人拂を命じたればその旁に立つものみな出で去りぬ
Judges 3:20 エホデすなはち王のところに入來れり時に王はひとり上なる涼殿に坐し居たりしがエホデ我神の命に由りて爾に傳ふべきことありといひければ王すなはち座より起に
Judges 3:21 エホデ左の手を出し右の股より劍を取りてその腹を刺せり
Judges 3:22 抦もまた刃とともに入りたりしが脂肉刃を塞ぎて之を腹より拔き出すことあたはずその鋒鋩うしろに出づ
Judges 3:23 エホデすなはち廊をとほりてその後に樓の戸を閉てこれを鎖せり
Judges 3:24 その出でしのち王の僕來りて樓の戸の鎖したるを見いひけるは王はかならず涼殿の間に足を蔽ひ居るならんと
Judges 3:25 僕ども耻るまでに俟居たれど王樓の戸をひらかざれば鑰をとりて之を開き見るにその君は地に仆れて死をる
Judges 3:26 エホデは彼等の猶豫ふ間に逃れて石像の在るところを過りセイラテに遁げゆけり
Judges 3:27 かれ既に至りエフライムの山に箛を吹きければイスラエルの子孫これとともに山より下るエホデこれを導けり
Judges 3:28 かれ人衆にいひけるは我に續て來れヱホバ汝等の敵モアブ人を汝等の手に付したまふなりここにおいて彼らエホデにしたがひて下りモアブにおもむくところのヨルダンの津を取りて一人も渡ることを允さざりき
Judges 3:29 そのとき彼らモアブ人およそ一萬人を殺せり是皆肥太たる勇士なりそのうち一人も脱れたるものなし
Judges 3:30 モアブはその日イスラエルの手に服せり而して國は八十年の間太平なりき
Judges 3:31 エホデの後にアナテの子シヤムガルといふものあり牛の策をもてペリシテ人六百人を殺せり此人もまたイスラエルを救へり
Judges 4:1 エホデの死たるのちイスラエルの子孫復ヱホバの目前に惡を行しかば
Judges 4:2 ヱホバ、ハゾルにて世を治むるカナンの王ヤビンの手に之を賣たまふヤビンの軍勢の長はシセラといふ彼異邦人のハロセテに住居り
Judges 4:3 鐵の戰車九百輌を有居て二十年の間イスラエルの子孫を甚だしく虐げしかばイスラエルの子孫ヱホバに呼はれり
Judges 4:4 當時ラピドテの妻なる預言者デボラ、イスラエルの士師なりき
Judges 4:5 彼エフライムの山のラマとベテルの間に在るデボラの棕櫚の樹の下に坐せりイスラエルの子孫はその許に上りて審判を受く
Judges 4:6 デボラ人をつかはしてケデシ、ナフタリよりアビノアムの子バラクを招きこれにいひけるはイスラエルの神ヱホバ汝に斯く命じたまふにあらずやいはく汝ナフタリの子孫とゼブルンの子孫とを一萬人ひきゐゆきてタボル山におもむけ
Judges 4:7 我ヤビンの軍勢の長シセラおよびその戰車とその群衆とをキシオン河に引き寄せて汝のもとに至らせ之を汝の手に付すべし
Judges 4:8 バラク之にいひけるは汝もし我とともにゆかば我往べし然ど汝もし我とともに行ずば我行ざるべし
Judges 4:9 デボラいひけるは我かならず汝とともに往くべし然ど汝は今往くところの途にては榮譽を得ることなからんヱホバ婦人の手にシセラを賣りたまふべければなりとデボラすなはち起ちてバラクと共にケデシに往けり
Judges 4:10 バラク、ゼブルンとナフタリをケデシに招き一萬人を從へて上るデボラもまた之とともに上れり
Judges 4:11 ここにケニ人ヘベルといふ者あり彼はモーセの外舅ホバブの裔なるがケニを離れてケデシの邊なるザアナイムの橡の樹のかたはらにその天幕を張り居たり
Judges 4:12 衆アビノアムの子バラクがタボル山に上れるよしをシセラに告げたりければ
Judges 4:13 シセラそのすべての戰車すなはち鐵の戰車九百輌およびおのれとともに在るすべての民を異邦人のハロセテよりキシオン河に招き集へたり
Judges 4:14 デボラ、バラクにいひけるは起よ是ヱホバがシセラを汝の手に付したまふ日なりヱホバ汝に先き立ちて出でたまひしにあらずやとバラクすなはち一萬人をしたがへてタボル山より下る
Judges 4:15 ヱホバ刃をもてシセラとその諸の戰車およびその全軍をバラクの前に打敗りたまひたればシセラ戰車より飛び下り徒歩になりて遁れ走れり
Judges 4:16 バラク戰車と軍勢とを追ひ撃て異邦人のハロセテに至れりシセラの軍勢は悉く刃にたふれて殘れるもの一人もなかりしが
Judges 4:17 シセラは徒歩にて奔りケニ人ヘベルの妻ヤエルの天幕に來れり是はハゾルの王ヤビンとケニ人ヘベルの家とは互ひに睦じかりしゆゑなり
Judges 4:18 ヤエル出來りてシセラを迎へ之にいひけるは來れわが主よ入り來れ怖るるなかれとシセラその天幕に入たればヤエル被をもてこれを覆へり
Judges 4:19 シセラ之にいひけるはねがはくは少しの水をわれに飮ませよ我渇けりとヤエルすなはち乳嚢を啓きて之に飮ませまた之を覆へり
Judges 4:20 シセラまた之にいひけるは天幕の門邊に立て居れもし人來り汝にとふて誰かここに居るやといはば否と答ふべしと
Judges 4:21 彼疲れて熟睡せしかばヘベルの妻ヤエル天幕の釘子を取り手に鎚を携へてそのかたはらに忍び寄り鬢のあたりに釘子をうちこみて地に刺し通したればシセラすなはち死たり
Judges 4:22 バラク、シセラを追ひ來りしときヤエル之を出でむかへていひけるは來れ我汝の索るところの人を示さんとかれそのところに入て見にシセラ鬢のあたりに釘子うたれて死たふれをる
Judges 4:23 その日に神カナンの王ヤビンをイスラエルの子孫のまへに打敗りたまへり
Judges 4:24 かくてイスラエルの子孫の手ますます強くなりてカナンの王ヤビンに勝ちつひにカナンの王ヤビンを亡ぼすに至れり
Judges 5:1 その日デボラとアビノアムの子バラク謳ひていはく
Judges 5:2 イスラエルの首長みちびきをなし民また好んで出でたればヱホバを頌美よ
Judges 5:3 もろもろの王よ聽けもろもろの伯よ耳をかたぶけよ我はそのヱホバに謳はん我はイスラエルの神ヱホバを讚へん
Judges 5:4 ああヱホバよ汝セイルより出でエドムの野より進みたまひしとき地震ひ天また滴りて雲水を滴らせたり
Judges 5:5 もろもろの山はヱホバのまへに撼動ぎ彼のシナイもイスラエルの神ヱホバのまへに撼動げり
Judges 5:6 アナテの子シヤムガルのときまたヤエルの時には大路は通行る者なく途行く人は徑を歩み
Judges 5:7 イスラエルの村莊には住者なく住む者あらずなりけるがつひに我デボラ起れり我起りてイスラエルに母となる
Judges 5:8 人々新しき神を選みければ戰鬪門におよべりイスラエルの四萬人のうちに盾或は鎗の見しことあらんや
Judges 5:9 吾が心は民のうちに好んでいでたるイスラエルの有司等に傾けり汝らヱホバを頌美よ
Judges 5:10 しろき驢馬に乗るもの毛氈に坐するものおよび路歩む人よ汝ら謳ふべし
Judges 5:11 矢叫の聲に遠かり水汲むところにおいてヱホバの義しき所爲をとなへそのイスラエルを治理めたまふ義しき所爲を唱へよその時ヱホバの民は門に下れり
Judges 5:12 興よ起よデボラ興よ起よ歌を謳ふべし起てよバラク汝の俘虜を擄へきたれアビノアムの子よ
Judges 5:13 其時民の首長等の殘餘者くだり來るヱホバ勇士の中にいまして我にくだりたまふ
Judges 5:14 エフライムより出る者ありその根アマレクにありベニヤミン汝のあとにつきて汝の民の中にありマキルよりは牧伯下りゼブルンよりは采配を執るものいたる
Judges 5:15 イッサカルの伯たちはデボラとともに居るイッサカルはバラクとおなじく足の進みて平地に至るルベンの河邊にて大に心にはかる事あり
Judges 5:16 何故に汝は圈のうちに止まりて羊の群に笛吹くを聽くやルベンの河邊にて大に心に考ふることあり
Judges 5:17 ギレアデはヨルダンの彼方に臥し居る何故にダンは舟のかたはらに止まりしやアセルは濱邊に坐してその港に臥し居る
Judges 5:18 ゼブルンは生命を捐て死を冐せる民なり野の高きところに居るナフタリまた是の如し
Judges 5:19 もろもろの王來りて戰へる時にカナンのもろもろの王メギドンの水の邊においてタアナクに戰へり彼ら一片の貨幣をも獲ざりき
Judges 5:20 天よりこれを攻るものありもろもろの星其の道を離れてシセラを攻む
Judges 5:21 キシオンの河之を押し流しぬ是彼の古への河キシオンの河なりわが靈魂よ汝ますます勇みて進め
Judges 5:22 その時馬の蹄は強きももの馳に馳るに由りて地を踏鳴せり
Judges 5:23 ヱホバの使いひけるはメロズを詛ふべし汝ら重ね重ねその民を詛ふべきなり彼等來りてヱホバを助けずヱホバを助けて猛者を攻めざればなり
Judges 5:24 ケニ人ヘベルの妻ヤエルは婦女のうちの最も頌むべき者なり彼は天幕に居る婦女のうち最も頌むべきものなり
Judges 5:25 シセラ水を乞ふにヤエル乳を與ふ即ち貴き盤に乳の油を盛てささぐ
Judges 5:26 ヤエル釘子に手をかけ右の手に重き椎をとりてシセラを打ちその頭を碎きその鬢のあたりをうちて貫ぬく
Judges 5:27 シセラ、ヤエルの足の間に屈みて仆れ偃しその足のあはひに屈みて仆れその屈みたる所にて仆れ亡ぬ
Judges 5:28 シセラの母窓より望み格子のうちより叫びて言ふ彼が車のきたること何て遲きや彼が馬の歩何てはかどらざるやと
Judges 5:29 その賢き侍女こたへをなす(母また獨語して斯いへり)
Judges 5:30 かれら獲ものしてこれを分たざらんや人ごとに一人二人の女子を獲んシセラの獲るものは彩る衣ならんその獲る者は彩る衣にして文繍を施せる者ならん即ち彩りて兩面に文繍をほどこせる衣をえてその頸にまとはんと
Judges 5:31 ヱホバよ汝の敵みな是のごとくに亡びよかしまたヱホバを愛するものは日の眞盛に昇るが如くなれよかしとかくて後國は四十年のあひだ太平なりき
Judges 6:1 イスラエルの子孫またヱホバの目のまへに惡を行ひたればヱホバ七年の間之をミデアン人の手に付したまふ
Judges 6:2 ミデアン人の手イスラエルにかてりイスラエルの子孫はミデアン人の故をもて山にある窟と洞穴と要害とをおのれのために造れり
Judges 6:3 イスラエル人蒔種してありける時しもミデアン人アマレキ人及び東方の民上り來りて押寄せ
Judges 6:4 イスラエル人に向ひて陣を取り地の産物を荒してガザにまで至りイスラエルのうちに生命を維ぐべき物を遺さず羊も驢馬も遺ざりき
Judges 6:5 夫この衆人は家畜と天幕を携へ上り蝗蟲の如くに數多く來れりその人と駱駝は數ふるに勝ず彼ら國を荒さんとて入きたる
Judges 6:6 かかりしかばイスラエルはミデアン人のために大いに衰へイスラエルの子孫ヱホバに呼れり
Judges 6:7 イスラエルの子孫ミデアン人の故をもてヱホバに呼はりしかば
Judges 6:8 ヱホバひとりの預言者をイスラエルの子孫に遣りて言はしめたまひけるはイスラエルの神ヱホバ斯くいひたまふ我かつて汝らをエジプトより上らせ汝らを奴隸たるの家より出し
Judges 6:9 エジプト人の手およびすべて汝らを虐ぐるものの手より汝らを拯ひいだし汝らの前より彼らを追ひはらひてその邦土を汝らに與へたり
Judges 6:10 我また汝らに言り我は汝らの神ヱホバなり汝らが住ひ居るアモリ人の國の神を懼るるなかれとしかるに汝らは我が聲に從はざりき
Judges 6:11 茲にヱホバの使者來りてアビエゼル人ヨアシの所有なるオフラの橡の樹のしたに坐す時にヨアシの子ギデオン、ミデアン人に奪はれざらんために酒榨のなかに麥を打ち居たりしが
Judges 6:12 ヱホバの使之に現れて剛勇丈夫よヱホバ汝とともに在すといひたれば
Judges 6:13 ギデオン之にいひけるはああ吾が主よヱホバ我らと偕にいまさばなどてこれらのことわれらの上に及びたるやわれらの先祖がヱホバは我らをエジプトより上らしめたまひしにあらずやといひて我らに告たりしその諸の不思議なる行爲は何處にあるや今はヱホバわれらを棄てミデアン人の手に付したまへり
Judges 6:14 ヱホバ之を顧みていひたまひけるは汝此汝の力をもて行きミデアン人の手よりイスラエルを拯ひいだすべし我汝を遣すにあらずや
Judges 6:15 ギデオン之にいひけるはああ主よ我何をもてかイスラエルを拯ふべき視よわが家はマナセのうちの最も弱きもの我はまた父の家の最も卑賤きものなり
Judges 6:16 ヱホバ之にいひたまひけるは我かならず汝とともに在ん汝は一人を撃がごとくにミデアン人を撃つことを得ん
Judges 6:17 ギデオン之にいひけるは我もし汝のまへに恩を蒙るならば請ふ我と語る者の汝なる證據を見せたまへ
Judges 6:18 ねがはくは我復び汝に來りわが祭物をたづさへて之を汝のまへに供ふるまでここを去たまふなかれ彼いひたまひけるは我汝の還るまで待つべし
Judges 6:19 ギデオンすなはち往て山羊の羔を調へ粉一エパをもて無酵パンをつくり肉を筺にいれ羹を壺に盛り橡樹の下にもち出て之を供へたれば
Judges 6:20 神の使之にいひたまひけるは肉と無酵パンをとりて此巖のうへに置き之に羹を斟げとすなはちそのごとくに行ふ
Judges 6:21 ヱホバの使手にもてる杖の末端を出して肉と無酵パンに觸れたりしかば巖より火燃えあがり肉と無酵パンを燒き盡せりかくてヱホバの使去てその目に見ずなりぬ
Judges 6:22 ギデオン是において彼がヱホバの使者なりしを覺りギデオンいひけるはああ神ヱホバよ我面を合せてヱホバの使者を見たれば將如何せん
Judges 6:23 ヱホバ之にいひたまひけるは心安かれ怖るる勿れ汝死ぬることあらじ
Judges 6:24 ここにおいてギデオン彼所にヱホバのために祭壇を築き之をヱホバシヤロムと名けたり是は今日に至るまでアビエゼル人のオフラに存る
Judges 6:25 其夜ヱホバ、ギデオンにいひ給ひけるは汝の父の少き牡牛および七歳なる第二の牛を取り汝の父のもてるバアルの祭壇を毀ち其上なるアシラの像を斫り仆し
Judges 6:26 汝の神ヱホバのためにこの堡砦の頂において次序をただしくし祭壇を築き第二の牛を取りて汝が斫り倒せるアシラの木をもて燔祭を供ぐべし
Judges 6:27 ギデオンすなはちその僕十人を携へてヱホバのいひたまひしごとく行へりされど父の家のものどもおよび邑の人を怖れたれば晝之をなすことを得ず夜に入りて之を爲り
Judges 6:28 邑の衆朝興出て視にバアルの祭壇は摧け其の上なるアシラの像は斫仆されて居り新に築る祭壇に第二の牛の供へてありしかば
Judges 6:29 たがひに此は誰が所爲ぞやと言ひつつ尋ね問ひけるに此はヨアシの子ギデオンの所爲なりといふものありたれば
Judges 6:30 邑の人々ヨアシにむかひ汝の子を曳き出して死なしめよそは彼バアルの祭壇を摧き其上に在しアシラの像を斫仆したればなりといふ
Judges 6:31 ヨアシおのれの周圍に立るすべてのものにいひけるは汝らはバアルの爲に爭論ふや汝らは之を救はんとするや之が爲に爭論ふ者は朝の中に死べしバアルもし神ならば人其祭壇を摧きたれば自ら爭論ふ可なりと
Judges 6:32 是をもて人衆ギデオンその祭壇を摧きたればバアル自ら之といひあらそはんといひて此日かれをヱルバアル(バアルいひあらそはん)と呼なせり
Judges 6:33 茲にミデアン人アマレク人および東方の民相集まりて河を濟りヱズレルの谷に陣を取しが
Judges 6:34 ヱホバの靈ギデオンに臨みてギデオン箛を吹たればアビエゼル人集りて之に從ふ
Judges 6:35 ギデオン徧くマナセに使者を遣りしかばマナセ人また集りて之に從ふ彼またアセル、ゼブルン及びナフタリに使者を遣りしにその人々も上りて之を迎ふ
Judges 6:36 ギデオン神にいひけるは汝かつていひたまひしごとくわが手をもてイスラエルを救はんとしたまはば
Judges 6:37 視よ我一箇の羊の毛を禾塲におかん露もし羊毛にのみおきて地はすべて燥きをらば我之れによりて汝がかつて言たまひし如く吾が手をもてイスラエルを救ひたまふを知んと
Judges 6:38 すなはち斯ありぬ彼明る朝早く興きいで羊毛をかき寄てその毛より露を搾りしに鉢に滿つるほどの水いできたる
Judges 6:39 ギデオン神にいひけるは我にむかひて怒を發したまふなかれ我をしていま一回いはしめたまへねがはくは我をして羊の毛をもていま一回試さしめたまへねがはくは羊毛のみを燥して地には悉く露あらしめたまへと
Judges 6:40 その夜神かくの如くに爲したまふすなはち羊毛のみ燥きて地には凡て露ありき
Judges 7:1 斯てヱルバアルと呼るるギデオンおよび之とともにあるすべての民朝夙に興きいでてハロデの井のほとりに陣を取るミデアン人の陣はかれらの北の方にあたりモレの山に沿ひ谷のうちにありき
Judges 7:2 ヱホバ、ギデオンにいひたまひけるは汝とともに在る民は餘りに多ければ我その手にミデアン人を付さじおそらくはイスラエル我に向ひ自ら誇りていはん我わが手をもて己を救へりと
Judges 7:3 されば民の耳に告示していふべし誰にても懼れ慄くものはギレアデ山より歸り去るべしとここにおいて民のかへりしもの二萬二千人あり殘しものは一萬人なりき
Judges 7:4 ヱホバまたギデオンにいひたまひけるは民なほ多し之を導きて水際に下れ我かしこにて汝のために彼らを試みんおほよそ我が汝に告て此人は汝とともに行くべしといはんものはすなはち汝とともに行くべしまたおほよそ我汝に告て此人は汝とともに行くべからずといはんものはすなはち行くべからざるなり
Judges 7:5 ギデオン民をみちびきて水際に下りしにヱホバ之にいひたまひけるはおほよそ犬の餂るがごとくその舌をもて水を餂るものは汝之を別けおくべしまたおほよそ其の膝を折り屈みて水を飮むものをも然すべしと
Judges 7:6 手を口にあてて水を餂しものの數は三百人なり餘の民は盡くその膝を折り屈みて水を飮り
Judges 7:7 ヱホバ、ギデオンにいひたまひけるは我水を餂たる三百人の者をもて汝らを救ひミデアン人を汝の手に付さん餘の民はおのおの其所に歸るべしと
Judges 7:8 ここにおいて彼ら民の兵粮とその箛を手にうけとれりギデオンすなはちすべてのイスラエル人を各自その天幕に歸らせ彼の三百人を留めおけり時にミデアン人の陣はその下の谷のなかにありき
Judges 7:9 その夜ヱホバ、ギデオンにいひたまはく起よ下りて敵陣に入るべし我之を汝の手に付すなり
Judges 7:10 されど汝もし下ることを怖れなば汝の僕フラを伴ひ陣所に下りて
Judges 7:11 彼らのいふ所を聞べし然せば汝の手強くなりて汝敵陣にくだることを得んとギデオンすなはち僕フラとともに下りて陣中にある隊伍のほとりに至るに
Judges 7:12 ミデアン人アマレク人およびすべて東方の民は蝗蟲のごとくに數衆く谷のうちに堰しをりその駱駝は濱の砂の多きがごとくにして數ふるに勝ず
Judges 7:13 ギデオン其處に至りしに或人その伴侶に夢を語りて居りすなはちいふ我夢を見たりしが夢に大麥のパンひとつミデアンの陣中に轉びいりて天幕に至り之をうち仆し覆したれば天幕倒れ臥せり
Judges 7:14 其の伴侶答へていふ是イスラエルの人ヨアシの子ギデオンの劍に外ならず神ミデアンとすべての陣營を之が手に付したまふなりと
Judges 7:15 ギデオン夢の説話とその解釋を聞しかば拜をなしてイスラエルの陣所にかへりいひけるは起よヱホバ汝らの手にミデアンの陣をわたしたまふと
Judges 7:16 かくて三百人を三隊にわかち手に手に箛および空瓶を取せその瓶のなかに燈火をおかしめ
Judges 7:17 これにいひけるは我を視てわが爲すところにならへ我が敵陣の邊に至らんときに爲すごとく汝らも爲すべし
Judges 7:18 我およびわれとともに在るものすべて箛を吹ば汝らもまたすべて陣營の四方にて箛を吹き此ヱホバのためなりギデオンのためなりといへと
Judges 7:19 而してギデオンおよび之とともなる百人中更の初に陣營の邊に至るにをりしも番兵を更代たるときなりければ箛を吹き手に携へたる瓶をうちくだけり
Judges 7:20 即ち三隊の兵隊箛を吹き瓶をうちくだき左の手には燈火を執り右の手には箛をもちて之を吹きヱホバの劍ギデオンの劍なるぞと叫べり
Judges 7:21 かくておのおのその持塲に立ち陣營を取り圍みたれば敵軍みな走り叫びてにげゆけり
Judges 7:22 三百人のもの箛を吹くにあたりヱホバ敵軍をしてみなたがひに同士撃せしめたまひければ敵軍にげはしりてゼレラのベテシツダ、アベルメホラの境およびタバテに至る
Judges 7:23 イスラエルの人々すなはちナフタリ、アセルおよびマナセ中より集ひ來りてミデアン人を追撃り
Judges 7:24 ギデオン使者をあまねくエフライムの山に遣していはせけるは下りてミデアン人を攻めベタバラにいたる渡口およびヨルダンを遮斷るべしと是においてエフライムの人盡く集ひ來りてベタバラにいたる渡口およびヨルダンを取り
Judges 7:25 ミデアン人の君主オレブとゼエブの二人を俘へてオレブをばオレブ砦の上に殺しゼエブをばゼエブの酒搾のほとりに殺しまたミデアン人を追撃ちオレブとゼエブの首を携へてヨルダンの彼方よりギデオンの許にいたる
Judges 8:1 エフライムの人々ギデオンにむかひ汝ミデアン人と戰はんとて往る時われらを召ざりしが斯ることを我らになすは何故ぞといひていたく之を詰りたり
Judges 8:2 ギデオン之にいひけるは今吾が成るところは汝らのなせる所に比ぶべけんやエフライムの拾ひ得し遺餘の葡萄はアビエゼルの收穫し葡萄にも勝れるならずや
Judges 8:3 神はミデアンの群伯オレブとゼエブを汝等の手に付したまへりわが成えたるところは汝らの成る所に比ぶべけんやとギデオン此の語をのべしかば彼らの憤解たり
Judges 8:4 ギデオン自己に從がへる三百人とともにヨルダンに至りて之を濟り疲れながらも仍追撃しけるが
Judges 8:5 遂にスコテの人々に言けるは願くは我にしたがへる民に食を與へよ彼等疲れをるに我ミデアンの王ゼバとザルムンナを追行なりと
Judges 8:6 スコテの群伯等いひけるはゼバとザルムンナの手すでに汝の手のうちに在るや我らなんぞ汝の軍勢に食を與ふべけんや
Judges 8:7 ギデオンいひけるは然らばヱホバの吾が手にゼバをザルムンナを付したまふときに我野の荊と棘とをもて汝の肉を打つべしと
Judges 8:8 かくて其所よりペヌエルにのぼりおなじことを彼らにのべたるにペヌエルの人もスコテの人の答へしごとくに答へしかば
Judges 8:9 またペヌエルの人につげていひけるは我平康に歸るときに此の城樓を毀つべしと
Judges 8:10 偖ゼバとザルムンナはその軍勢おほよそ一萬五千人をひきゐてカルコルに居る是皆東方の人の全軍の中の生殘れるものなり戰死せし者は劍を拔ところのもの十二萬人ありき
Judges 8:11 ギデオンすなはちノバとヨグベバの東にて天幕にすめるものの路より上りて敵軍の慮りなく居るを撃り
Judges 8:12 ここにおいてゼバとザルムンナにげ走りたればギデオン之を追撃ちミデアンの二人の王ゼバとザルムンナを生捕て悉くその軍勢を敗れり
Judges 8:13 斯てヨアシの子ギデオン、ヘレシの阪よりして戰陣よりかへり
Judges 8:14 スコテの人の少壯者一人を執へて之に尋ねたれば即ちスコテの群伯およびその長老等七十七人をこれがために書き録せり
Judges 8:15 ギデオン、スコテの人の所に詣りていひけるは汝らが曾て我を罵りゼバとザルムンナの手すでに汝の手のうちにあるや我ら何ぞ汝の疲れたる人に食をあたふべけんやと言たりしそのゼバとザルムンナを見よと
Judges 8:16 すなはちその邑の長老等を執へ野の荊と棘を取り之をもちてスコテの人を懲し
Judges 8:17 またペヌヘルの城樓を毀ちて邑の人を殺せり
Judges 8:18 かくてギデオン、ゼバとザルムンナにいひけるは汝らがタボルにて殺せしものは如何なるものなりしや答へていふ彼らは汝に似てみな王子の如くに見えたり
Judges 8:19 ギデオンいひけるは彼らは我が兄弟我が母の子なりヱホバは活く汝らもし彼らを生し置たらば我汝らを殺すまじきをと
Judges 8:20 すなはちその長子ヱテルに起て彼らを殺せといひたりしが彼の少者は年尚わかかりしかば懼れて劍を拔ざりき
Judges 8:21 ここにおいてゼバとザルムンナいひけるは汝みづから起て我らを撃よ人の如何によりてその力量異る者なりとギデオンすなはち起てゼバとザルムンナを殺しその駱駝の頸にかけたる半月の飾を取り
Judges 8:22 茲にイスラエルの衆ギデオンにいひけるは汝ミデアンの手より我らを救ひたれば汝と汝の子及び汝の孫我らを治めよ
Judges 8:23 ギデオン之にいひけるは我汝らを治むることをせじまた我が子も汝らを治むべからずヱホバ汝らを治めたまふべし
Judges 8:24 ギデオンまた之にいひけるは我汝らにひとつの願ふべきことあり汝らおのおの掠取の環を我にあたへよと是は彼らイシマエル人なるをもて金の環を着けたるに由る
Judges 8:25 衆答へけるは我ら悦んで之を與へんとて衣を布きおのおの掠取の環を其うちに投げいれたり
Judges 8:26 ギデオンが求め得たる金の環の重量は金一千七百シケルなり外に半月の飾および耳環とミデアンの王たちの着たる紫のころもおよび駱駝の頸にかけたる鏈などもありき
Judges 8:27 ギデオン之をもて一箇のエポデを造り之をおのれの郷里オフラに藏むイスラエルみなこれを慕ひてこれと淫をおこなふこの物ギデオンと其家を陷るる罟となりぬ
Judges 8:28 ミデアン人は是の如くイスラエルの子孫に攻ふせられてふたたびその頭を擡ることを得ざりきかくて國はギデオンの世にある中四十年の間平穩にてありき
Judges 8:29 ヨアシの子ヱルバアル往ておのれの家に住り
Judges 8:30 ギデオンは妻を多く有ちたれば其身より出たる子七十人ありき
Judges 8:31 シケムに居しその妾またひとりの子を産たれば之をアビメレクと名けたり
Judges 8:32 ヨアシの子ギデオン妙齡に邁みて死にアビエゼル人のオフラに在るその父ヨアシの墓に葬られたり
Judges 8:33 ギデオンの死るに及びてイスラエルの子孫復ひるがへりてバアルを慕ひて之と淫をおこなひバアルベリテをおのれの神と爲り
Judges 8:34 イスラエルの子孫その四周のもろもろの敵の手よりおのれを救ひ出したまひし神ヱホバを記憶えず
Judges 8:35 またヱルバアルといふギデオンがイスラエルになせし諸の善行にしたがひて彼の家を厚く待ふことをせざりき
Judges 9:1 ヱルバアルの子アビメレク、シケムに往きその母の兄弟のもとに至りて彼らおよびすべて其母の父の家の一族に語りて云ひけるは
Judges 9:2 ねがはくはシケムのすべての民の耳に斯く告よヱルバアルのすべての子七十人して汝らを治むると一人して汝らを治むると孰れか汝らのためによきやまた我は汝らの骨肉なるを記えよと
Judges 9:3 その母の兄弟アビメレクのことにつきて此等の言をことごとくシケムの人々の耳に語りしに是はわれらの兄弟なりといひて心をアビメレクに傾むけ
Judges 9:4 バアルベリテの社より銀七十をとりて之に與ふアビメレクこれをもて遊蕩にして輕躁なる者等を傭ひておのれに從はせ
Judges 9:5 オフラに在る父の家に往きてヱルバアルの子なるその兄弟七十人を一つの石の上に殺せり但しヱルバアルの季の子ヨタムは身を潜めしに由て遺されたり
Judges 9:6 ここにおいてシケムのすべての民およびミロの諸の人集り往てシケムの碑の旁なる橡樹の邊にてアビメレクを立て王となしけるが
Judges 9:7 ヨタムにかくと告るものありければ往てゲリジム山の巓に立ち聲を揚て號びかれらにいひけるはシケムの民よ我に聽よ神また汝らに聽たまはん
Judges 9:8 樹木出ておのれのうへに王を立んとし橄欖の樹に汝われらの王となれよといひけるに
Judges 9:9 橄欖の樹之にいふ我いかで人の我に取て神と人とを崇むるところのそのわが油を棄て往て樹木の上に戰ぐべけんやと
Judges 9:10 樹木また無花果樹に汝來りて我らの王となれといひけるに
Judges 9:11 無花果樹之にいひけらく我いかでわが甜美とわが善き果を棄て往きて樹木の上に戰ぐべけんやと
Judges 9:12 樹木また葡萄の樹に汝來りて我らの王となれよといふに
Judges 9:13 葡萄の樹之にいひけるは我いかで神と人を悦こばしむるわが葡萄酒を棄て往て樹木の上に戰ぐべけんやと
Judges 9:14 ここにおいてすべての樹木荊に汝來りて我らの王となれよといひければ
Judges 9:15 荊樹木にいふ汝らまことに我を立て汝らの王と爲さば來りて我が庇蔭に托れ然せずば荊より火出てレバノンの香柏を燒き殫すべしと
Judges 9:16 抑汝らがアビメレクを立て王となせしは眞實と誠意をもて爲しことなるや汝等はヱルバアルと其家を善く待ひかれの手のなせし所に循ひて之にむくいしや
Judges 9:17 夫わが父は汝らのため戰ひ生命を惜まずして汝らをミデアンの手より救ひ出したるに
Judges 9:18 汝ら今日おこりてわが父の家を攻めその子七十人を一つの石の上に殺しその侍妾の子アビメレクは汝らの兄弟なるをもて之を立てシケムの民の王となせり
Judges 9:19 汝らが今日ヱルバアルとその家になせしこと眞實と誠意をもてなせし者ならば汝らアビメレクのために悦べ彼も汝らのために悦ぶべし
Judges 9:20 若し然らずばアビメレクより火いでてシケムの民とミロの家を燬つくさんまたシケムの民とミロの家よりも火いでてアビメレクを燬つくすべしと
Judges 9:21 かくてヨタム走り遁れてベエルに往きその兄弟アビメレクの面を避て彼所に住めり
Judges 9:22 アビメレク三年の間イスラエルを治めたりしが
Judges 9:23 神アビメレクとシケムの民のあひだに惡鬼をおくりたまひたればシケムの民アビメレクを欺くにいたる
Judges 9:24 是ヱルバアルの七十人の子が受たる殘忍と彼らの血のこれを殺せしその兄弟アビメレクおよび彼の手に力をそへてその兄弟を殺さしめたるシケムの人々に報い來るなり
Judges 9:25 シケムの人伏兵を山の巓に置て彼を窺はしめ其途を經て傍を過る者を凡て褫しめたり或人之をアビメレクに告ぐ
Judges 9:26 ここにエベデの子ガアル其の兄弟とともにシケムに越ゆきたりしかばシケムの民かれを恃めり
Judges 9:27 民田野に出て葡萄を收穫れこれを踐み絞りて祭禮をなしその神の社に入り食ひかつ飮みてアビメレクを詛ふ
Judges 9:28 エベデの子ガアルいひけるはアビメレクは如何なるものシケムは如何なるものなればか我ら彼に從ふべき彼はヱルバアルの子に非ずやゼブルその輔佐なるにあらずやむしろシケムの父ハモルの一族に事ふべし我らなんぞ彼に事ふべけんや
Judges 9:29 嗚呼此の民を吾が手に屬しむるものもがな然ば我アビメレクを除かんと而してガアル、アビメレクに汝の軍勢を益て出きたれよと言り
Judges 9:30 邑の宰ゼブル、エベデの子ガアルの言をききて怒を發し
Judges 9:31 私かに使者をアビメレクに遣りていひけるはエベデの子ガアル及びその兄弟シケムに來り邑をさわがして汝に敵せしめんとす
Judges 9:32 然ば汝及び汝と共なる民夜の中に興て野に身を伏よ
Judges 9:33 而て朝に至り日の昇る時汝夙く興出て邑に攻かかれガアル及び之とともなる民出て汝に當らん汝機を見てこれに事をなすべし
Judges 9:34 アビメレクおよび之とともなるすべての民夜の中に興出て四隊に分れ身を伏てシケムを伺ふ
Judges 9:35 エベデの子ガアル出て邑の門の口に立るにアビメレク及び之とともなる民その伏たるところより起りしかば
Judges 9:36 ガアル民を見てゼブルにいひけるは視よ民山の峰々より下るとゼブル之に答へて汝山の影を見て人と做すのみといふ
Judges 9:37 ガアルふたたび語りていひけるは視よ民地の高處より下りまた一隊は法術士の橡樹の途より來ると
Judges 9:38 ゼブル之にいひけるは汝がかつてアビメレクは何者なればか我ら之に事ふべきといひしその汝の口今いづこに在るや是汝が侮りたる民にあらずや今乞ふ出て之と戰へよと
Judges 9:39 ここにおいてガアル、シケム人を率ゐ往てアビメレクと戰ひしが
Judges 9:40 アビメレク之を追くづしたればガアル其まへより逃走れりかくて殺されて斃るるもの多くして邑の門の口までに及ぶ
Judges 9:41 かくてアビメレクはアルマに居しがゼブルはガアルおよびその兄弟等を遂いだしてシケムに居ることを得ざらしむ
Judges 9:42 あくる日民田畑に出しに人之をアビメレクに告げしかば
Judges 9:43 アビメレクおのれの民を率ゐてこれを三隊に分ち野に埋伏して伺ふに民邑より出來りたればすなはち起りて之を撃り
Judges 9:44 アビメレクおよび之とともに在る隊の者は襲ひゆきて邑の門の入口に立ち餘の二隊は野に在るすべてのものをおそふて之を殺せり
Judges 9:45 アビメレク其日終日邑を攻めつひに邑を取りてそのうちの民を殺し邑を破却ちて鹽を撒布ぬ
Judges 9:46 シケムの櫓の人みな之を聞てベリテ神の廟の塔に入たりしが
Judges 9:47 シケムの櫓の人のことごとく集れるよしアビメレクに聞えければ
Judges 9:48 アビメレク己とともなる民をことごとく率ゐてザルモン山に上りアビメレク手に斧を取り木の枝を斫落し之をおのれの肩に載せ偕に居る民にむかひて汝ら吾が爲ところを見る急ぎてわがごとく爲せよといひしかば
Judges 9:49 民もまた皆おのおのその枝を斫りおとしアビメレクに從ひて枝を塔に倚せかけ塔に火をかけて彼等を攻むここにおいてシケムの櫓の人もまた悉く死り男女およそ一千人なりき
Judges 9:50 茲にアビメレク、テベツに赴きテベツに對て陣を張て之を取しが
Judges 9:51 邑のなかに一の堅固なる櫓ありてすべての男女および邑の民みな其所に遁れ往き後を鎖して櫓の頂に上りたれば
Judges 9:52 アビメレクすなはち櫓のもとに押寄て之を攻め櫓の口に近きて火をもて之を焚んとせしに
Judges 9:53 一人の婦アビメレクの頭に磨石の上層石を投げてその腦骨を碎けり
Judges 9:54 アビメレクおのれの武器を執る少者を急ぎ召て之にいひけるは汝の劍を拔て我を殺せおそらくは人吾をさして婦に殺されたりといはんと其少者之を刺し通したればすなはち死り
Judges 9:55 イスラエルの人々はアビメレクの死たるを見ておのおのおのれの處に歸り去りぬ
Judges 9:56 神はアビメレクがその七十人の兄弟を殺しておのれの父になしたる惡に斯く報いたまへり
Judges 9:57 またシケムの民のすべての惡き事をも神は彼等の頭に報いたまへりすなはちヱルバアルの子ヨタムの詛彼らの上に及べるなり
Judges 10:1 アビメレクの後イッサカルの人にてドドの子なるプワの子トラ起りてイスラエルを救ふ彼エフライムの山のシヤミルに住み
Judges 10:2 二十三年の間イスラエルを審判しがつひに死てシヤミルに葬らる
Judges 10:3 彼の後にギレアデ人ヤイル起りて二十二年の間イスラエルを審判たり
Judges 10:4 彼に子三十人ありて三十の驢馬に乗る彼等三十の邑を有りギレアデの地において今日までヤイルの村ととなふるものすなはち是なり
Judges 10:5 ヤイル死てカモンに葬らる
Judges 10:6 イスラエルの子孫ふたたびヱホバの目のまへに惡を爲しバアルとアシタロテ及びスリヤの神シドンの神モアブの神アンモンの子孫の神ペリシテ人の神に事へヱホバを棄て之に事へざりき
Judges 10:7 ヱホバ烈しくイスラエルを怒りて之をペリシテ人及びアンモンの子孫の手に賣付したまへり
Judges 10:8 其年に彼らイスラエルの子孫を虐げ難せりヨルダンの彼方においてギレアデにあるところのアモリ人の地に居るイスラエルの子孫十八年の間斯せられたりき
Judges 10:9 アンモンの子孫またユダとベニヤミンとエフライムの族とを攻んとてヨルダンを渡りしかばイスラエル太く苦めり
Judges 10:10 ここにおいてイスラエルの子孫ヱホバに呼りていひけるは我らおのれの神を棄てバアルに事へて汝に罪を犯したりと
Judges 10:11 ヱホバ、イスラエルの子孫にいひたまひけるは我かつてエジプト人アモリ人アンモンの子孫ペリシテ人より汝らを救ひ出せしにあらずや
Judges 10:12 又シドン人アマレク人及びマオン人の汝らを困しめしとき汝ら我に呼りしかば我汝らを彼らの手より救ひ出せり
Judges 10:13 然るに汝ら我を棄て他の神に事ふれば我かさねて汝らを救はざるべし
Judges 10:14 汝らが擇める神々に往て呼れ汝らの艱難のときに之をして汝らを救はしめよ
Judges 10:15 イスラエルの子孫ヱホバに言けるは我ら罪を犯せりすべて汝の目に善と見るところを我らになしたまへねがはくは唯今日我らを救ひたまへと
Judges 10:16 而して民おのれの中より異なる神々を取除きてヱホバに事へたりヱホバの心イスラエルの艱難を見るに忍びずなりぬ
Judges 10:17 茲にアンモンの子孫集てギレアデに陣を取りしがイスラエルの子孫は聚りてミヅパに陣を取り
Judges 10:18 時に民ギレアデの群伯たがひにいひけるは誰かアンモンの子孫に打ちむかひて戰を始むべき人ぞ其人をギレアデのすべての民の首となすべしと
Judges 11:1 ギレアデ人ヱフタはたけき勇士にして妓婦の子なりギレアデ、ヱフタをうましめしなり
Judges 11:2 ギレアデの妻子等をうみしが妻の子等成長におよびてヱフタをおひいだしてこれにいひけるは汝は他の婦の子なればわれらが父の家を嗣べきにあらずと
Judges 11:3 ヱフタ其の兄弟の許より逃さりてトブの地に住けるに遊蕩者ヱフタのもとに集ひ來りて之とともに出ることをなせり
Judges 11:4 程經てのちアンモンの子孫イスラエルとたたかふに至りしが
Judges 11:5 アンモンの子孫のイスラエルとたたかへるときにギレアデの長老等ゆきてヱフタをトブの地より携來らんとし
Judges 11:6 ヱフタにいひけるは汝來りて吾らの大將となれ我らアンモンの子孫とたたかはん
Judges 11:7 ヱフタ、ギレアデの長老等にいひけるは汝らは我を惡みてわが父の家より遂いだしたるにあらずやしかるに今汝らが艱める時に至りて何ぞ我に來るや
Judges 11:8 ギレアデの長老等ヱフタにこたへけるは其がために我ら今汝にかへる汝われらとともにゆきてアンモンの子孫とたたかはばすべて我等ギレアデにすめるものの首領となすべしと
Judges 11:9 ヱフタ、ギレアデの長老等にいひけるは汝らもし我をたづさへかへりてアンモンの子孫とたたかはしめんにヱホバ之を我に付したまはば我は汝らの首となるべし
Judges 11:10 ギレアデの長老等ヱフタにいひけるはヱホバ汝と我との間の證者たり我ら誓つて汝の言のごとくになすべし
Judges 11:11 是に於てヱフタ、ギレアデの長老等とともに往くに民之を立ておのれの首領となし大將となせりヱフタ即ちミヅパにおいてヱホバのまへにこの言をことごとく陳たり
Judges 11:12 かくてヱフタ、アンモンの子孫の王に使者をつかはしていひけるは汝と我の間に何事ありてか汝われに攻めきたりてわが地に戰はんとする
Judges 11:13 アンモンの子孫の王ヱフタの使者に答へけるはむかしイスラエル、エジプトより上りきたりし時にアルノンよりヤボクにいたりヨルダンに至るまで吾が土地を奪ひしが故なり然ば今穩便に之を復すべし
Judges 11:14 ヱフタまた使者をアンモンの子孫の王に遣りて之にいはせけるは
Judges 11:15 ヱフタ斯いへりイスラエルはモアブの地を取ずまたアンモンの子孫の地をも取ざりしなり
Judges 11:16 夫イスラエルはエジプトより上りきたれる時に曠野を經て紅海に到りカデシに來れり
Judges 11:17 而してイスラエル使者をエドムの王に遣して言けるはねがはくは我をして汝の土地を經過しめよと然るにエドムの王之をうけがはずまたおなじく人をモアブの王に遣したれども是もうべなはざりしかばイスラエルはカデシに留まりしが
Judges 11:18 遂にイスラエル曠野を經てエドムの地およびモアブの地を繞りモアブの地の東の方に出てアルノンの彼方に陣を取り然どモアブの界には入らざりきアルノンはモアブの界なればなり
Judges 11:19 かくてイスラエル、ヘシボンに王たりしアモリ人の王シホンに使者を遣せりすなはちイスラエル之にいひけらくねがはくは我らをして汝の土地を經過てわがところにいたらしめよと
Judges 11:20 然るにシホン、イスラエルを信ぜずしてその界をとほらしめずかへつてそのすべての民を集めてヤハヅに陣しイスラエルとたたかひしが
Judges 11:21 イスラエルの神ヱホバ、シホンとそのすべての民をイスラエルの手に付したまひたればイスラエル之を撃敗りてその土地にすめるアモリ人の地を悉く手に入れ
Judges 11:22 アルノンよりヤボクに至るまでまた曠野よりヨルダンに至るまですべてアモリ人の土地を手に入たり
Judges 11:23 斯のごとくイスラエルの神ヱホバは其の民イスラエルのまへよりアモリ人を遂しりぞけたまひしに汝なほ之を取んとする乎
Judges 11:24 汝は汝の神ケモシが汝に取しむるものを取ざらんやわれらは我らの神ヱホバが我らに取しむる物を取ん
Judges 11:25 汝は誠にモアブの王チツポルの子バラクにまされる處ありとするかバラク曾てイスラエルとあらそひしことありや曾て之とたたかひしことありや
Judges 11:26 イスラエルがヘシボンとその村里アロエルとその村里およびアルノンの岸に沿ひたるすべての邑々に住ること三百年なりしに汝などてかその間に之を回復さざりしや
Judges 11:27 我は汝に罪を犯せしことなきに汝はわれとたたかひて我に害をくはへんとす願くは審判をなしたまふヱホバ今日イスラエルの子孫とアンモンの子孫との間を鞫きたまへと
Judges 11:28 しかれどもアンモンの子孫の王はヱフタのいひつかはせる言を聴いれざりき
Judges 11:29 ここにヱホバの靈ヱフタに臨みしかばヱフタすなはちギレアデおよびマナセを經過りギレアデのミヅパにいたりギレアデのミヅパよりすすみてアンモンの子孫に向ふ
Judges 11:30 ヱフタ、ヱホバに誓願を立ていひけるは汝誠にアンモンの子孫をわが手に付したまはば
Judges 11:31 我がアンモンの子孫の所より安然かに歸らんときに我家の戸より出きたりて我を迎ふるもの必ずヱホバの所有となるべし我之を燔祭となしてささげんと
Judges 11:32 ヱフタすなはちアンモンの子孫の所に進みゆきて之と戰ひしにヱホバかれらをその手に付したまひしかば
Judges 11:33 アロエルよりミンニテにまで至りこれが二十の邑を打敗りてアベルケラミムにいたり甚だ多の人をころせりかくアンモンの子孫はイスラエルの子孫に攻伏られたり
Judges 11:34 かくてヱフタ、ミヅパに來りておのが家にいたるに其女鼓を執り舞ひ踊りて之を出で迎ふ是彼が獨子にて其のほかには男子もなくまた女子も有ざりき
Judges 11:35 ヱフタ之を視てその衣を裂ていひけるはああ吾が女よ汝實に我を傷しむ汝は我を惱すものなり其は我ヱホバにむかひて口を開きしによりて改むることあたはざればなり
Judges 11:36 女之にいひけるはわが父よ汝ヱホバにむかひて口をひらきたれば汝の口より言出せしごとく我になせよ其はヱホバ汝のために汝の敵なるアンモンの子孫に仇を復したまひたればなり
Judges 11:37 女またその父にいひけるはねがはくは此事をわれに允せすなはち二月の間我をゆるし我をしてわが友等とともに往て山にくだりてわが處女たることを歎かしめよと
Judges 11:38 ヱフタすなはち往けといひて之を二月のあひだ出し遣ぬ女その友等とともに往き山の上にておのれの處女たるを歎きしが
Judges 11:39 二月滿てその父に歸り來りたれば父その誓ひし誓願のごとくに之に行へり女は終に男を知ことなかりき
Judges 11:40 是よりして年々にイスラエルの女子等往て年に四日ほどギレアデ人ヱフタの女のために哀哭ことをなす是イスラエルの規矩となれり
Judges 12:1 エフライムの人々つどひて北にゆきヱフタにいひけるは汝何故に往きてアンモンの子孫と戰ひながらわれらをまねきて汝とともに行せざりしや我ら火をもて汝の家を汝とともに焚くべしと
Judges 12:2 ヱフタ之にいひけるは我とわが民の曾てアンモンの子孫と大に爭ひしときに我汝らをよびしに汝らかれらの手より我を救ふことをせざりき
Judges 12:3 我汝らが我を救はざるを見たればわが命をかけてアンモンの子孫の所に攻ゆきしにヱホバかれらを我が手に付したまへり然ば汝らなんぞ今日我が許に上り來りて我とたたかはんとするやと
Judges 12:4 ヱフタここにおいてギレアデの人をことごとくつどへてエフライムとたたかひしがギレアデの人々エフライムを撃破れり是はエフライム汝らギレアデ人はエフライムの逃亡者にしてエフライムとマナセの中にをるなりと言しに由る
Judges 12:5 而してギレアデ人エフライムにおもむくところのヨルダンの津をとりきりしがエフライム人の逃れ來る者ありて我を渡らせよといへばギレアデの人之に汝はエフライム人なるかと問ひ彼もし然らずと言ときは
Judges 12:6 また之に請ふシボレテといへといふに彼その音を正しくいひ得ずしてセボレテと言ばすなはち之を引捕へてヨルダンの津に屠せりその時にエフライム人のたふれし者四萬二千人なりき
Judges 12:7 ヱフタ六年のあひだイスラエルを審きたりギレアデ人ヱフタつひに死てギレアデのある邑に葬むらる
Judges 12:8 彼の後にベテレヘムのイブザン、イスラエルを審きたり
Judges 12:9 彼に三十人の男子ありまた三十人の女子ありしがこれをば外に嫁がしめてその子息等のために三十人の女を外より娶れり彼七年のあひだイスラエルを審きたり
Judges 12:10 イブザンつひに死てベテレヘムに葬むらる
Judges 12:11 彼の後にゼブルン人エロン、イスラエルを審きたりゼブルン人エロン十年のあひだイスラエルを審きたり
Judges 12:12 ゼブルン人エロンつひに死てゼブルンの地のアヤロンに葬むらる
Judges 12:13 彼の後にピラトン人ヒレルの子アブドン、イスラエルを審きたり
Judges 12:14 彼に四十人の男子および三十人の孫ありて七十の驢馬に乗る彼八年のあひだイスラエルを審けり
Judges 12:15 ピラトン人ヒレルの子アブドンつひに死てエフライムの地のピラトンに葬むらる是はアマレク人の山にあり
Judges 13:1 イスラエルの子孫またヱホバのまへにて惡を行ひしかばヱホバこれを四十年の間ペリシテ人の手にわたしたまへり
Judges 13:2 ここにダン人の族にて名をマノアとよべるゾラ人あり其の妻は石婦にして子を生みしことなし
Judges 13:3 ヱホバの使その女に現れて之にいひけるは汝は石婦にして子を生しことあらず然ど汝孕みて子をうまん
Judges 13:4 されば汝つつしみて葡萄酒および濃き酒を飮むことなかれまたすべて穢たるものを食ふなかれ
Judges 13:5 視よ汝孕みて子を産ん其の頭には剃刀をあつべからずその兒は胎を出るよりして神のナザレ人[神に身を獻げし者]たるべし彼ペリシテ人の手よりイスラエルを拯ひ始めんと
Judges 13:6 その婦人來りて夫に告て曰けるは神の人我にのぞめりその容貌は神の使の容貌のごとくにして甚おそろしかりしが我其のいづれより來れるやを問ず彼また其の名を我に告ざりき
Judges 13:7 彼我にいひけるは視よ汝孕みて子を産まん然ば葡萄酒および濃き酒を飮むなかれまたすべてけがれたるものを食ふなかれその兒は胎を出るより其の死る日まで神のナザレ人たるべしと
Judges 13:8 マノア、ヱホバにこひ求めていひけるはああわが主よ汝がさきに遣はしたまひし神の人をふたたび我らにのぞませ之をして我らがその産るる兒になすべき事を教へしめたまへ
Judges 13:9 神マノアの聲をききいれたまひて神の使者婦人の田野に坐しをる時に復之にのぞめり時に夫マノアは共にをらざりき
Judges 13:10 是において婦いそぎ走りて夫の告て之にいひけるは先頃我にのぞみし人また我に現はれたりと
Judges 13:11 マノアすなはち起て妻のあとに付て行き其人のもとに至りて之に汝はかつて此婦に語言し人なるかといふに然りとこたふ
Judges 13:12 マノアいひけるは汝の言のごとく成ん時は其兒の養育方および之になすべき事は如何
Judges 13:13 ヱホバの使者マノアにいひけるはわがさきに婦に言しところのことどもは婦之をつつしむべきなり
Judges 13:14 すなはち葡萄樹よりいづる者は凡て食ふべからず葡萄酒と濃き酒を飮ずまたすべて穢たるものを食ふべからずすべてわが彼に命じたることどもを彼守るべきなり
Judges 13:15 マノア、ヱホバの使者にいひけるは請我らをして汝を款留しめ汝のまへに山羊羔を備へしめよ
Judges 13:16 ヱホバの使者マノアにいひける汝我を款留るも我は汝の食物をくらはじまた汝燔祭をそなへんとならばヱホバにこれをそなふべしとマノアは彼がヱホバの使者なるを知ざりしなり
Judges 13:17 マノア、ヱホバの使者にいひけるは汝の名はなにぞ汝の言の効驗あらんときは我ら汝を崇ん
Judges 13:18 ヱホバの使者之にいひけるは我が名は不思議なり汝何故に之をたづぬるやと
Judges 13:19 マノア山羊羔と素祭物とをとり磐のうへにて之をヱホバにささぐ使者すなはち不思議なる事をなせりマノアとその妻之を視る
Judges 13:20 すなはち火燄壇より天にあがれるときヱホバの使者壇の火燄のうちにありて昇れりマノアと其の妻これを視をりて地にひれふせり
Judges 13:21 ヱホバの使者そののち重ねてマノアと其の妻に現はれざりきマノアつひに彼がヱホバの使者たりしを暁れり
Judges 13:22 茲にマノアその妻にむかひ我ら神を視たれば必ず死ぬるならんといふに
Judges 13:23 其の妻之にいひけるはヱホバもし我らを殺さんとおもひたまはばわれらの手より燔祭及び素祭をうけたまはざりしならんまたこれらの諸のことを我らに示すことをなしこたびのごとく我らに斯ることを告たまはざりしなるべしと
Judges 13:24 かくて婦子を産てその名をサムソンと呼べりその子育ち行くヱホバこれを惠みたまふ
Judges 13:25 ヱホバの靈ゾラとエシタオルのあひだなるマハネダンにて始て感動す
Judges 14:1 サムソン、テムナテに下り、ペリシテ人の女にてテムナテに住る一人の婦を見
Judges 14:2 歸り上りておのが父母に語ていひけるは我ペリシテ人の女にてテムナテに住るひとりの婦を見たりされば今之をめとりてわが妻とせよと
Judges 14:3 その父母之にいひけるは汝ゆきて割禮を受けざるペリシテ人のうちより妻を迎んとするは汝が兄弟等の女のうちもしくはわがすべての民のうちに婦女無が故なるかとしかるにサムソン父にむかひ彼婦わがこころに適へば之をわがために娶れと言り
Judges 14:4 その父母はこの事のヱホバより出しなるを知ざりきサムソンはペリシテ人を攻んと釁をうかがひしなりそは其のころペリシテ人イスラエルを轄め居たればなり
Judges 14:5 サムソン父母とともにテムナテに下りてテムナテの葡萄園にいたるに稚き獅子咆吼りて彼に向ひしが
Judges 14:6 ヱホバの靈彼にのぞみたれば山羊羔を裂がごとくに之を裂たりしが手には何の武器も持ざりきされどサムソンはその爲せしことを父にも母にも告ずしてありぬ
Judges 14:7 サムソンつひに下りて婦とうちかたらひしが婦その心にかなへり
Judges 14:8 かくて日を經て後サムソンかれを娶らんとて立かへりしが身を轉して彼の獅子の屍を見るに獅子の體に蜂の群と蜜とありければ
Judges 14:9 すなはちその蜜を手にとりて歩みつつ食ひ父母の許にいたりて之を與へけるに彼ら之を食へりされど獅子の體よりその蜜を取來れることをば彼らにかたらざりき
Judges 14:10 斯て其の父下りて婦のもとに至りしかばサムソン少年の習例にしたがひてそこに饗宴をまうけたるに
Judges 14:11 サムソンを見て三十人の者をつれ來りて之が伴侶とならしむ
Judges 14:12 サムソンかれらにいひけるは我汝らにひとつの隱語をかけん汝ら七日の筵宴の内に之を解てあきらかに之を我に告なば我汝らに裏衣三十と衣三十襲をあたふべし
Judges 14:13 然どもし之をわれに告得ずば汝ら我に裏衣三十と衣三十襲を與ふべしと彼等之にいひけるは汝の隱語をかけて我らに聽しめよ
Judges 14:14 サムソン之にいひけるは食ふ者より食物出で強き者より甘き物出でたりと彼ら三日の中に之を解ことあたはざりしかば
Judges 14:15 第七日にいたりてサムソンの妻にいひけるは汝の夫を説すすめて隱語を我らに明さしめよ然せずば火をもて汝と汝の父の家を焚ん汝らはわれらの物をとらんとてわれらを招けるなるか然るにあらずやと
Judges 14:16 是においてサムソンの妻サムソンのまへに泣ていひけるは汝はわれを惡む而巳われを愛せざるなり汝わが民の子孫に隱語をかけて之をわれに説あかさずとサムソン之にいふ我これをわが父や母にも説あかさざればいかで汝に説あかすべけんやと
Judges 14:17 婦七日の筵宴のあひだ彼のまへに泣き居りしが第七日に至りてサムソンつひに之を彼に説あかせり其は太く強たればなり婦すなはち隱語をおのが民の子孫に明せり
Judges 14:18 是において第七日に及びて日の沒るまへに邑の人々サムソンにいひけるは何ものか蜜よりあまからん何ものか獅子より強からんとサムソン之にいひけるは汝らわが牝犢をもて耕さざりしならばわが隱語を解得ざるなりと
Judges 14:19 茲にヱホバの靈サムソンに臨みしかばサムソン、アシケロンに下りてかしこの者三十人を殺しその物を奪ひ彼の隱語を解し者等にその衣服を與へはげしく怒りて其父の家にかへり上れり
Judges 14:20 サムソンの妻はサムソンの友となり居たるその伴侶の妻となりぬ
Judges 15:1 日を經てのち麥秋の時にサムソン山羊羔をたづさへて妻のもとを訪ていひけるは我室に入てわが妻に會んと然るに妻の父其の入ことをゆるさず
Judges 15:2 其父すなはちいひけるはわれまことに汝は彼の婦を嫌ひたりと意ひしがゆゑに彼を汝の伴侶たりし者に與へたり彼が妹は彼よりも善にあらずやねがはくは彼に代て之を汝のものとせよ
Judges 15:3 サムソン彼らにいひけるは今回はわれペリシテ人に害を加ふるとも彼らに對して罪なかるべしと
Judges 15:4 サムソンすなはち往て山犬三百をとらへ火炬をとり尾と尾をあはせてその二つの尾の間に一つの火炬を結ひつけ
Judges 15:5 火炬に火をつけてペリシテ人のいまだ刈ざる麥のなかにこれを放ち入れその束ね積たるものといまだ刈ざるものを焚き橄欖の園にまで及ぼせり
Judges 15:6 ペリシテ人いひけるは是は誰の行爲なるやこたへて言ふテムナテ人の婿サムソンなりそは彼サムソンの妻をとりて其伴侶なりし者に與へたればなりとここにおいてペリシテ人上りきたりて彼の婦とその父とを火にて燒きうしなへり
Judges 15:7 サムソンかれらに言ふ汝ら斯おこなへば我汝らに仇をむくはでは止じと
Judges 15:8 すなはち脛に腿に彼らを撃て大いに之を殺せりかくてサムソンは下りてエタムの巖間に居る
Judges 15:9 ここにおいてペリシテ人上り來りてユダに陣を取りレヒに布き備へたれば
Judges 15:10 ユダの人々いひけるは汝ら何の故にわれらに攻めのぼりたるやとかれらこたへけるはサムソンをしばりて彼がわれらに爲しごとくかれに爲んとてのぼれるなりと
Judges 15:11 是をもてユダの人三千人エタムの巖間にくだりてサムソンにいふ汝ペリシテ人はわれらを轄るものなるを知らざるや汝などてかわれらに斯る事をなせしやサムソンかれらにいひけるは我は彼らが我に爲しごとく彼らに爲しなりと
Judges 15:12 かれらまたサムソンにいひけるは我らは汝をしばりてペリシテ人の手にわたさんとて下りきたれりサムソンかれらにいひけるは汝らの自われを害すまじきことを我に誓へ
Judges 15:13 彼ら之にかたりていふいなわれらはただ汝を縛りいましめてペリシテ人の手にわたさんのみわれらは必らず汝を殺さざるべしとすなはち二條の新しき索をもてかれをいましめて巖より之を携かへれり
Judges 15:14 サムソン、レヒにいたれるときペリシテ人聲を揚てかれに近づきしが時しもヱホバの靈彼にのぞみたればその腕にかかれる索は火に焚たる麻のごとくになりて手のいましめ解はなれたり
Judges 15:15 サムソンすなはち驢馬のあたらしき腮骨ひとつを見出し手をのべて之を取り其をもて一千人を殺し
Judges 15:16 而して言ふ驢馬の腮骨をもて山をきづき山をつくる驢馬の腮骨をもて我一千人を撃殺せりと
Judges 15:17 かく言終りてその手より腮骨をうちすて其處をラマテレヒと名けたり
Judges 15:18 時に彼渇をおぼゆること甚だしかりしかばヱホバによばはりていふ汝のしもべの手をもて汝この大なる拯をほどこしたまへるにわれ今渇きて死に割禮を受けざるものの手におちいらんとすと
Judges 15:19 ここにおいて神レヒに在るくぼめる所を裂きたまひしかば水そこより流れいでしがサムソン之を飮たれば精神舊に返りてふたたび爽になりぬ故に其名をエンハッコレ(呼はれるものの泉)と呼ぶ是今日にいたるまでレヒに在り
Judges 15:20 サムソンはペリシテ人の治世の時に二十年イスラエルをさばけり
Judges 16:1 サムソン、ガザに往きかしこにて一人の妓を見てそれの處に入りしに
Judges 16:2 サムソンここに來れりとガザ人につぐるものありければすなはち之を取り圍みよもすがら邑の門に埋伏し詰朝におよび夜の明たる時に之をころすべしといひてよもすがら靜まりかへりて居る
Judges 16:3 サムソン夜半までいね夜半にいたりて興き邑の門の扉とふたつの柱に手をかけて楗もろともに之をひきぬき肩に載てヘブロンの向ひなる山の巓に負のぼれり
Judges 16:4 こののちサムソン、ソレクの谷に居る名はデリラと言ふ婦人を愛す
Judges 16:5 ペリシテ人の群伯その婦のもとに上り來て之にいひけるは汝サムソンを説すすめてその大いなる力は何に在るかまたわれら如何にせば之に勝て之を縛りくるしむるを得べきかを見出せ然すればわれらおのおの銀千百枚づつをなんぢに與ふべし
Judges 16:6 ここにおいてデリラ、サムソンにいひけるは汝の大なる力は何にあるかまた如何せば汝を縛りて苦むることを得るや請ふ之をわれにつげよ
Judges 16:7 サムソン之にいひけるは人もし乾きしことなき七條の新しき繩をもてわれを縛るときはわれ弱くなりて別の人のごとくならんと
Judges 16:8 ここに於てペリシテ人の群伯乾きしことなき七條の新しき繩を婦にもち來りければ婦之を以てサムソンをしばりしが
Judges 16:9 かねて室のうちに人しのび居て己とともにありたれば斯してサムソンにむかひサムソンよペリシテ人汝に及ぶと言にサムソンすなはちその索を絶りあたかも麻絲の火にあひて斷るるがごとし斯其の力の原由知れざりき
Judges 16:10 デリラ、サムソンにいひけるは視よ汝われを欺きてわれに謊を告たり請ふ何をもてせば汝を縛ることをうるや今我に告よ
Judges 16:11 彼之にいひけるはもし人用ひたることなき新しき索をもてわれを縛りいましめなばわれ弱くなりて別の人のごとくならんと
Judges 16:12 是をもてデリラあたらしき索をとり其をもて彼を縛りしかして彼にいふサムソンよペリシテ人汝におよぶと時に室のうちに人しのび居たりしがサムソン絲の如くにその索を腕より絶おとせり
Judges 16:13 デリラ、サムソンにいひけるに今までは汝われを欺きて我に謊をつげたるが何をもてせば汝をしばることをうるやわれに告よと彼之にいひけるは汝もしわが髮毛七繚を機の緯線とともに織ばすなはち可しと
Judges 16:14 婦すなはち釘をもて之をとめおきて彼にいひけるはサムソンよペリシテ人汝におよぶとサムソンすなはちその寢をさまし織機の釘と緯線とを曳拔り
Judges 16:15 婦ここにおいてサムソンにいひけるは汝の心われに居ざるに汝いかでわれを愛すといふや汝すでに三次われをあざむきて汝が大なる力の何にあるかをわれに告ずと
Judges 16:16 日々にその言をもて之にせまりうながして彼の心を死るばかりに苦ませたれば
Judges 16:17 彼つひにその心をことごとく打明して之にいひけるはわが頭にはいまだかつて剃刀を當しことあらずそはわれ母の胎を出るよりして神のナザレ人たればなりもしわれ髮をそりおとされなばわが力われをはなれわれは弱くなりて別の人のごとくならんと
Judges 16:18 デリラ、サムソンがことごとく其のこころを明したるを見人をつかはしてペリシテ人の群伯を召ていひけるはサムソンことごとくその心をわれに明したれば今ひとたび上り來るべしとここにおいてペリシテ人の群伯かの銀を携へて婦のもとにいたる
Judges 16:19 婦おのが膝のうへにサムソンをねむらせ人をよびてその頭髮七繚をきりおとさしめ之を苦めはじめたるにその力すでにうせさりてあり
Judges 16:20 婦ここにおいてサムソンよペリシテ人汝におよぶといひければ彼睡眠をさましていひけるはわれ毎のごとく出て身を振はさんと彼はヱホバのおのれをはなれたまひしを覺らざりき
Judges 16:21 ペリシテ人すなはち彼を執へ眼を抉りて之をガザにひき下り銅の鏈をもて之を繋げりかくてサムソンは囚獄のうちに磨を挽居たりしが
Judges 16:22 その髮の毛剃りおとされてのち復長はじめたり
Judges 16:23 茲にペリシテ人の群伯共にあつまりてその神ダゴンに大なる祭物をささげて祝をなさんとしすなはち言ふわれらの神はわれらの敵サムソンをわれらの手に付したりと
Judges 16:24 民サムソンを見ておのれの神をほめたたへて言ふわれらの神はわれらの敵たる者われらの地を荒せしものわれらを數多殺せしものをわれらの手に付したりと
Judges 16:25 その心に喜びていひけるはサムソンを召てわれらのために戲技をなさしめよとて囚獄よりサムソンを召いだせしかばサムソン之がために戲技をなせり彼等サムソンを柱の間に立しめしに
Judges 16:26 サムソンおのが手をひきをる少者にいひけるはわれをはなして此家の倚て立ところの柱をさぐりて之に倚しめよと
Judges 16:27 その家には男女充ちペリシテ人の群伯もまたみな其處に居る又屋蓋のうへには三千ばかりの男女をりてサムソンの戲技をなすを觀てありき
Judges 16:28 時にサムソン、ヱホバに呼はりいひけるはああ主ヱホバよねがはくは我を記念えたまへ嗚呼神よ願くは唯今一度われを強くしてわがふたつの眼のひとつのためにだにもペリシテ人に仇をむくいしめたまへと
Judges 16:29 サムソンすなはちその家の倚てたつところの兩箇の中柱のひとつを右の手ひとつを左の手にかかへて身をこれによせたりしが
Judges 16:30 サムソン我はペリシテ人とともに死なんといひて力をきはめて身をかがめたれば家はそのなかに居る群伯とすべての民のうへに倒れたりかくサムソンが死るときに殺せしものは生けるときに殺せし者よりもおほかりき
Judges 16:31 こののちサムソンの兄弟およびその父の家族ことごとく下りて之を取り携へのぼりてゾラとエシタオルのあひだなる其の父マノアの墓にはうむれりサムソンがイスラエルをさばきしは二十年なりき
Judges 17:1 ここにエフライムの山の人にて名をミカとよべるものありしが
Judges 17:2 その母に言けるは汝かつてその千百枚の銀を取れしことを吾が聞ところにて詛ひて語りしが視よその銀はわが手に在り我之を取るなりと母すなはちわが子よねがはくはヱホバ汝に祝福をたまへと言り
Judges 17:3 彼千百枚の銀をその母にかへせしかば母いひけらくわれわが子のためにひとつの像を雕みひとつの像を鑄んためにその銀をわが手よりヱホバに納む然ばわれ今之を汝にかへすべしと
Judges 17:4 ミカその銀を母にかへせしかば母その銀二百枚をとりて之を鑄物師にあたへてひとつの像をきざませひとつの像を鑄させたり其像はミカの家に在り
Judges 17:5 このミカといふ人神の殿をもちをりエポデおよびテラピムを造りひとりの子を立ておのが祭司となせり
Judges 17:6 此ときにはイスラエルに王なかりければ人々おのれの目に是とみゆることをおこなへり
Judges 17:7 ここにひとりの少者ありてベテレヘムユダに於てユダの族の中にをる彼はレビ人にしてかしこに寓居るなり
Judges 17:8 この人居べきところをたづねてその邑ベテレヘムユダを去しが遂に旅してエフライムの山にゆきてミカの家にいたりしに
Judges 17:9 ミカ之にいひけるは汝いづこよ來れるやと彼之にいふ我はベテレヘムユダのレビ人なるが居べきところをたづねに往くものなり
Judges 17:10 ミカ之に言けるは汝われと偕に居りわがために父とも祭司ともなれよ然ばわれ年に銀十枚および衣服食物を汝にあたへんとレビ人すなはち入しが
Judges 17:11 レビ人つひにその人と偕に居んことを肯ふ是においてその少者はかれの子の一人のごとくなりぬ
Judges 17:12 ミカ、レビ人なるこの少者をたてて祭司となしたればすなはちミカの家に居る
Judges 17:13 ミカここにおいて言ふ今われ知るヱホバわれに恩惠をたまはんそはこのレビ人われの祭司となればなり
Judges 18:1 當時イスラエルには王なかりしがダン人の支派其頃住むべき地を求めたり是は彼らイスラエルの支派の中にありて其日まで未だ産業の地を得ざりしが故なり
Judges 18:2 ダンの子孫すなはちゾラとエシタオルよりして自己の族の勇者五人を遣はしその境を出て土地を窺ひ探らしむ即ち彼等に言ふ往て土地を探れと彼等エフライムの山にいたりミカの家につきて其處に宿れり
Judges 18:3 かれらミカの家の傍にある時レビ人なる少者の聲を聞認たれば身をめぐらして其處にいりて之に言ふ誰が汝を此に携きたりしや汝此處にて何をなすや此に何の用あるや
Judges 18:4 其人かれらに言けるはミカ斯々我を待ひ我を雇ひて我その祭司となれりと
Judges 18:5 彼等これに言ふ請ふ神に問ひ我等が往くところの途に利逹あるや否を我等にしらしめよ
Judges 18:6 その祭司かれらに言けるは安んじて往よ汝らが往ところの途はヱホバの前にあるなりと
Judges 18:7 是に於て五人の者往てライシに至り其處に住る人民を視るに顧慮なく住ひをり其安穩にして安固なることシドン人のごとし此國には政權を握りて人を煩はす者絶てあらず其シドン人と隔たること遠くまた他の人民と交ることなし
Judges 18:8 斯て彼等ゾラとエシタオルに返りてその兄弟等にいたるに兄弟等如何なりしやと彼等に問ければ
Judges 18:9 答て言ふ起よ彼等の所に攻のぼらん我等その地を見るに甚だ善し汝等は安んじをるなり進みいたりてその地を取ることを怠るなかれ
Judges 18:10 汝等往ば安固なる人民の所に至らんその地は堅横ともに廣し神これを汝らの手に與へたまふなり此處には世にある物一箇も缺ることあらず
Judges 18:11 是に於てダン人の族の者六百人武器を帶てゾラとエシタオルより出ゆき
Judges 18:12 上りてユダのキリヤテヤリムに陣を張り是をもてその處をマハネダンと名けしがその名今日に存る是はキリヤテヤリムの後にあり
Judges 18:13 彼等其處よりエフライム山に進みミカの家に至りけるに
Judges 18:14 夫のライシの國を窺ひに往たりし五人の者その兄弟等に告て言けるは是等の家にはエポデ、テラピムおよび雕める像と鑄たる像あるを汝等知や然ば汝ら今その爲べきことを考へよと
Judges 18:15 乃ち其方に身をめぐらして夫のレビ人の少者の家なるミカの家に至りてその安否を問けるが
Judges 18:16 武器を帶たる六百人のダンの子孫は門の入口に立り
Judges 18:17 夫の土地を窺ひに往たりし五人の者上りて其處にいりその雕める像とエポデとテラピムおよび鑄たる像を取けるが祭司は武器を帶たる六百人の者とともに門の入口に立ゐたり
Judges 18:18 此人々ミカの家にいりて其雕める像とエポデとテラピムと鑄たる像とを取しかば祭司かれらに汝ら何をなすやと言ふに
Judges 18:19 彼等これに言けるは汝默せよ汝手を口にあてて我らとともに來り我らの父とも祭司ともなれよかし一人の家の祭司たるとイスラエルの一の支派一の族の祭司たるとは何か好や
Judges 18:20 祭司すなはち心に悦びてエポデとテラピムと雕める像とを取て民の中に入る
Judges 18:21 斯てかれら身をめぐらしその子女と家畜と財寳を前にたてて進みしが
Judges 18:22 ミカの家を遙かに離れし時ミカの家に近きところの家の人々呼はり集てダンの子孫に追ひつき
Judges 18:23 ダンの子孫を呼たれば彼等回顧てミカに言ふ汝何事ありて集りしや
Judges 18:24 かれら言けるは汝らはわが造れる神々および祭司を奪ひさりたれば我尚何かあらん然るに汝等何ぞ我にむかひて何事ぞやと言や
Judges 18:25 ダンの子孫かれに言けるは汝の聲を我らの中に聞えしむるなかれ恐くは心の荒き人々汝に撃かかるありて汝おのれの生命と家族の生命とを失ふにいたらんと
Judges 18:26 而してダンの子孫進みゆきけるがミカは彼らが己よりも強きを見て身をめぐらして家に返れり
Judges 18:27 彼等ミカが造りし者とその有し祭司をとりてライシにおもむき平穩にして安樂なる民の所にいたり刃をもて之を撃ち火をもてその邑を燬たりしが
Judges 18:28 其シドンと隔たること遠きが上に他の人民と交際ざりしによりて之を救ふ者なかりきその邑はベテレホブの邊の谷にあり彼ら邑を建なほして其處に住み
Judges 18:29 イスラエルの生たるその先祖ダンの名にしたがひて其邑の名をダンと名けたりその邑の名は本はライシなりき
Judges 18:30 斯てダンの子孫その雕める像を安置りモーセの子なるゲルシヨムの子ヨナタンとその子孫ダンの支派の祭司となりて國の奪はるる時にまでおよべり
Judges 18:31 神の家のシロにありし間恒に彼等はミカが造りしかの雕める像を安置おきぬ
Judges 19:1 其頃イスラエルに王なかりし時にあたりてエフライムの山の奧に一人のレビ人寄寓をりベテレヘムユダより一人の婦人をとりて妾となしたるに
Judges 19:2 その妾彼に背きて姦淫を爲し去てベテレヘムユダなるその父の家にかへり其所に四月といふ日をおくれり
Judges 19:3 是に於てその夫彼をなだめて携かへらんとてその僕と二頭の驢馬をしたがへ起てかれの後をしたひゆきければその父の家に之を導きいたりしに女の父これを見て之に遇ことを悦こべり
Judges 19:4 而してその女の父なる外舅彼をひきとめたれば則ち三日これと共に居り皆食飮して其所に宿りしが
Judges 19:5 四日におよびて朝早く起あがり彼たちて去んとしければ女の父その婿に言ふ少許の食物をもて汝の心を強くして然る後に去れよと
Judges 19:6 二人すなはち坐りて共に食飮しけるが女の父その人にいひけるは請ふ幸に今一夜を明し汝の心を樂ましめよと
Judges 19:7 其人起て去んとしけるに外舅これを強たれば遂に復其所に宿り
Judges 19:8 五日におよびて朝はやく起いでて去んとしたるに女の父これに言けるは請ふ汝の心を強くせよと是をもて日の昃るまでとどまりて共に食をなしけるが
Judges 19:9 其人つひに妾および僕とともに去んとて起あがりければ女の父彼に言ふ視よ今は日暮なんとす請ふ今一夜を明されよ視よ日昃たり汝此にやどりて汝の心をたのしませ明日蚤く起て出たち汝の家にいたれよと
Judges 19:10 然るに其人止宿ることを肯はずして起て去りヱブスの對面に至れり是はエルサレムなり鞍おける二の驢馬彼とともにあり妾も彼とともなりき
Judges 19:11 彼らヱブスの近傍にをる時日はや沒んとしければ僕その主人にいひけるは請ふ來れ我等身をめぐらしてヱブス人の此邑にいりて其所に宿らんと
Judges 19:12 その主人これに言けるは我等は彼所に身をめぐらしてイスラエルの子孫の邑ならざる外國の人の邑にいるべからずギベアに進みゆかんと
Judges 19:13 すなはちその僕にいひけるは來れ我らギベアかラマか是等の處の一に就て止宿んと
Judges 19:14 皆すすみ往きけるがベニヤミンのギベアの近邊にて日暮たれば
Judges 19:15 ギベアにゆきて宿らんとて其所に身をめぐらし入て邑の衢に坐しけるに誰も彼を家に接て宿らしむる者なかりき
Judges 19:16 時に一人の老人日暮に田野の働作をやめて歸りきたる此人はエフライム山の者にしてギベアに寄寓れるなり但し此處の人はベニヤミン人なり
Judges 19:17 彼目をあげて旅人の邑の衢にをるを見たり老人すなはちいひけるは汝は何所にゆくなるや何所より來れるやと
Judges 19:18 その人これにいひけるは我らはベテレヘムユダよりエフライム山の奧におもむく者なり我は彼所の者にて既にベテレヘムユダにゆき今ヱホバの室に詣らんとするなるが誰もわれを家に接ものあらず
Judges 19:19 然ど驢馬の藁も飼蒭もあり又我と汝の婢および僕等とともなる少者の用ふべき食物も酒も在て何も事缺るところなし
Judges 19:20 老人いひけるは願くは汝安かれ汝が需むる者は我そなへん唯衢に宿るなかれと
Judges 19:21 かれをその家に携れ驢馬に飼ふ彼らすなはち足をあらひて食飮せしが
Judges 19:22 その心を樂ませをる時にあたりて邑の人々の邪なる者その家をとりかこみ戸を打たたきて家の主人なる老人に言ふ汝の家にきたれる人をひき出せ我らこれを犯さんと
Judges 19:23 是に於て家の主人なる人かれらの所にいでゆきてこれに言けるは否わが兄弟よ惡をなす勿れ此人すでにわが家にいりたればこの愚なる事をなすなかれ
Judges 19:24 我が處女なる女と此人の妾とあるにより我これを今つれいだすべければ汝らかれらを辱しめ汝等の好むところをこれに爲せ唯この人には斯る愚なる事を爲すなかれと
Judges 19:25 然るにその人々これを聽いれざるにより其人その妾をとりてこれを彼らの所にいだしやりければすなはちこれを犯して朝にいたるまで終夜これを辱しめ日のいづる頃にいたりて釋てり
Judges 19:26 是をもて婦黎明にきたりてその夫のをる彼人の家の門に仆れ夜のあくるまで其處に臥をる
Judges 19:27 その主朝におよびておきいで家の戸をひらきて出去んとせしがその妾の婦の家の門にたふれをりて手を閾の上におくを見ければ
Judges 19:28 これにむかひ起よ我ら出往んと言たれども何の答もあらざりき是によりてその人これを驢馬にのせたちて己の所におもむきしが
Judges 19:29 家にいたるにおよびて刀をとり其妾を執へて骨ぐるみこれを十二分にたちわりて之をイスラエルの四方の境におくりければ
Judges 19:30 之を見る者皆いふイスラエルの子孫がエジプトの地より出のぼりし日より今日にいたるまで斯のごとき事は行はれしことなく見えしことなし思をめぐらし相議りて言ふことをせよ
Judges 20:1 是に於てイスラエルの子孫ダンよりベエルシバにいたりギレアデの地にいたるまで皆出きたり其會衆一人のごとくにしてミヅパに於てヱホバの前に集り
Judges 20:2 衆民の長たる者すなはちイスラエルの諸の支派の長等みづから神の民の集會に出づ劍をぬくところの歩兵四十萬人ありき
Judges 20:3 ベニヤミンの子孫はイスラエルの子孫がミヅパにのぼれることを聞り斯てイスラエルの子孫此惡事の樣を語れと言ければ
Judges 20:4 彼殺されし婦の夫なるレビの人こたへていふ我わが妾とともにベニヤミンのギベアに宿らんとて往たるに
Judges 20:5 ギベアの人起りたちて我をせめ夜の間に我がをる家をとりかこみて我を殺さんと企て遂にわが妾を辱しめてこれを死しめたれば
Judges 20:6 我わが妾をとらへてこれをたちわり是をイスラエルの産業なる全地に遣れり是は彼らイスラエルにおいて淫事をなし愚なる事をなしたればなり
Judges 20:7 汝等は皆イスラエルの子孫なり今汝らの意見と思考をのべよ
Judges 20:8 民みな一人のごとくに起ていひけるは我らは誰もおのれの天幕にゆかずまた誰もおのれの家におもむかじ
Judges 20:9 我らがギベアになさんところの事は是なりすなはち鬮にしたがひて之を攻ん
Judges 20:10 我らイスラエルの諸の支派の中に於て百人より十人千人より百人萬人より千人を取りて民の糧食を執せ之をしてベニヤミンのギベアにいたり彼らがイスラエルにおこなひたるその愚なる事にしたがひて事をなさしむべしと
Judges 20:11 斯イスラエルの人々皆あつまりて此邑を攻んとせしが其相結べること一人のごとくなりき
Judges 20:12 イスラエルの諸の支派遍く人をベニヤミンの支派の中に遣して言しめけるは汝らの中に此惡事のおこなはれしは何事ぞや
Judges 20:13 然ばギベアにをるかの邪なる人々をわたせ我らこれを誅して惡をイスラエルに絶べしと然るにベニヤミンの子孫はその兄弟なるイスラエルの子孫の言を聽いれざりき
Judges 20:14 却てベニヤミンの子孫は邑々よりギベアにあつまりて出てイスラエルの子孫と戰はんとす
Judges 20:15 その時邑々より出たるベニヤミンの子孫を數ふるに劍をぬく所の人二萬六千あり外にまたギベアの居民ありて之をかぞふるに精兵七百人ありき
Judges 20:16 この諸の民の中に左手利の精兵七百人あり皆能く投石器をもて石を投るに毫末もたがふことなし
Judges 20:17 イスラエルの人を數ふるにベニヤミンを除きて劍をぬくところの者四十萬人ありき是みな軍人なり
Judges 20:18 爰にイスラエルの子孫起あがりてベテルにのぼり神に問て我等の中孰か最初にのぼりてベニヤミンの子孫と戰ふべきやと言ふにヱホバ、ユダ最初にと言たまふ
Judges 20:19 イスラエルの子孫すなはち朝おきてギベアにむかひて陣をとりけるが
Judges 20:20 イスラエルの人々ベニヤミンと戰はんとて出でゆきイスラエルの人々行伍をたててギベアにて彼らと戰はんとしければ
Judges 20:21 ベニヤミンの子孫ギベアより進みいで其日イスラエル人二萬二千を地に撃仆せり
Judges 20:22 然るにイスラエルの民の人々みづから奮ひその初の日に行伍をたてし所にまた行伍をたてたり
Judges 20:23 而してイスラエルの子孫上りゆきてヱホバの前に夕暮まで哭きヱホバに問て言ふ我復進みよりて吾兄弟なるベニヤミンの子孫とたたかふべきやとヱホバ彼に攻のぼれと言たまへり
Judges 20:24 是に於てイスラエルの子孫次の日またベニヤミンの子孫の所に攻よするに
Judges 20:25 ベニヤミンまた次の日ギベアより進みて之にいであい再びイスラエルの子孫一萬八千人を地に撃仆せり是みな劍をぬくところの者なりき
Judges 20:26 斯在しかばイスラエルの子孫と民みな上りてベテルにいたりて哭き其處にてヱホバの前に坐りその日の夕暮まで食を斷ち燔祭と酬恩祭をヱホバの前に獻げ
Judges 20:27 而してイスラエルの子孫ヱホバにとへり(その頃は神の契約の櫃彼處にありて
Judges 20:28 アロンの子エレアザルの子なるピネハス當時これに事へたり)即ち言けるは我またも出てわが兄弟なるベニヤミンの子孫とたたかふべきや或は息べきやヱホバ言たまふ上れよ明日はわれ汝の手にかれらを付すべしと
Judges 20:29 イスラエル是に於てギベアの周圍に伏兵を置き
Judges 20:30 而してイスラエルの子孫三日目にまたベニヤミンの子孫の所に攻のぼり前のごとくにギベアにむかひて行伍をたてたれば
Judges 20:31 ベニヤミンの子孫民に出あひしが遂に邑より誘出されたり彼等始は民を撃ち大路にて前のごとくイスラエルの人三千人許を殺せりその大路は一筋はベテルにいたり一筋は野のギベアに至る
Judges 20:32 ベニヤミンの子孫すなはち言ふ彼らは初のごとく我らに撃破らると然るにイスラエルの人は云ふ我等逃て彼らを邑より大路に誘き出さんと
Judges 20:33 イスラエルの人々みなその所を起て去りバアルタマルに行伍をたてたり而して伏兵その處より即ちギベアの野原より起れり
Judges 20:34 イスラエルの全軍の中より選拔たる兵一萬來りてギベアを襲ひ其戰鬪はげしかりしがベニヤミン人は葘害の己にのぞむを知ざりき
Judges 20:35 ヱホバ、イスラエルのまへにベニヤミンを撃敗りたまひしかばイスラエルの子孫その日ベニヤミン人二萬五千一百人を殺せり是みな劍をぬくところの者なり
Judges 20:36 ベニヤミンの子孫すなはち己の撃敗らるるを見たり偖イスラエルの人々そのギベアにむかひて設けたる所の伏兵を恃てベニヤミン人を避て退きけるが
Judges 20:37 伏兵急ぎてギベアに突いり伏兵進みて刃をもて邑を盡く撃り
Judges 20:38 イスラエルの人々とその伏兵との間に定めたる合圖は邑より大なる黒烟をあげんとの事なりき
Judges 20:39 イスラエルの人々戰陣より引き退ぞくベニヤミン初が程はイスラエルの人々を撃ちて三千人許を殺し乃ち言ふ彼等はまことに最初の戰のごとく我等に撃やぶらると
Judges 20:40 然るに火焔烟の柱なして邑より上りはじめしかばベニヤミン人後を見かへりしに邑は皆烟となりて空にのぼる
Judges 20:41 時にイスラエルの人々ふりかへりしかばベニヤミンの人々葘害のおのれに迫るを見て狼狽へ
Judges 20:42 イスラエルの人々の前より身をめぐらして野の途におもむきけるが戰鬪これに追せまりて遂にその邑々よりいでたる者どもその中に戰死す
Judges 20:43 イスラエルの人すなはちベニヤミン人をとりまきて之を追うち容易くこれを踏たふして東の方ギベアの對面にまでおよべり
Judges 20:44 ベニヤミンの仆るる者一萬八千人是みな勇士なり
Judges 20:45 茲に彼等身をめぐらして野の方ににげリンモンの磐にいたれりイスラエルの人大路にて彼等五千人を伐とり尚もこれを追うちてギドムにいたりその二千人を殺せり
Judges 20:46 是をもて其日ベニヤミンの仆れし者は劍をぬくところの人あはせて二萬五千なりき是みな勇士なり
Judges 20:47 但六百人の者身をめぐらして野の方にのがれリンモンの磐にいたりて四月があひだリンモンの磐にをる
Judges 20:48 是に於てイスラエルの人々また身をかへしてベニヤミンの子孫をせめ刃をもて邑の人より畜にいたるまで凡て目にあたる者を撃ち亦その至るところの邑々に火をかけたり
Judges 21:1 イスラエルの人々曾てミヅパにて誓ひ曰ひけるは我等の中一人もその女をベニヤミンの妻にあたふる者あるべからずと
Judges 21:2 茲に民ベテルに至り彼處にて夕暮まで神の前に坐り聲を放ちて痛く哭き
Judges 21:3 言けるはイスラエルの神ヱホバよなんぞイスラエルに斯ること起り今日イスラエルに一の支派の缺るにいたりしやと
Judges 21:4 而して翌日民蚤に起て其處に壇を築き燔祭と酬恩祭をささげたり
Judges 21:5 茲にイスラエルの子孫いひけるはイスラエルの支派の中に誰か會衆とともに上りてヱホバにいたらざる者あらんと其は彼らミヅパに來りてヱホバにいたらざる者の事につきて大なる誓をたてて其人をばかならず死しむべしと言たればなり
Judges 21:6 イスラエルの子孫すなはち其兄弟ベニヤミンの事を憫然におもひて言ふ今日イスラエルに一の支派絶ゆ
Judges 21:7 我等ヱホバをさして我らの女をかれらの妻にあたへじと誓ひたれば彼の遺る者等に妻をめとらしめんには如何にすべきや
Judges 21:8 又言ふイスラエルの支派の中孰の者かミヅパにのぼりてヱホバにいたらざると而して視るにヤベシギレアデよりは一人も陣營にきたり集會に臨める者なし
Judges 21:9 即ち民をかぞふるにヤベシギレアデの居民は一人も其處にをらざりき
Judges 21:10 是に於て會衆勇士一萬二千を彼處に遣し之に命じて言ふ往て刃をもてヤベシギレアデの居民を撃て婦女兒女をも餘すなかれ
Judges 21:11 汝ら斯おこなふべし即ち汝等男人および男と寢たる婦人をば悉く滅し盡すべしと
Judges 21:12 彼等ヤベシギレアデの居民の中にて四百人の若き處女を獲たり是は未だ男と寢て男しりしことあらざる者なり彼らすなはち之をシロの陣營に曳きたる是はカナンの地にあり
Judges 21:13 斯て全會衆人をやりてリンモンの磐にをるベニヤミン人と語はしめ和睦をこれに宣べしめたれば
Judges 21:14 ベニヤミンすなはち其時に歸りきたれり是において彼らヤベシギレアデの婦人の中より生しおきたるところの女子を之にあたへけるが尚足ざりき
Judges 21:15 ヱホバ、イスラエルの支派の中に缺を生ぜしめ給ひしに因て民ベニヤミンの事を憫然におもへり
Judges 21:16 會衆の長老等いひけるはベニヤミンの婦女絶たれば彼の遺れる者等に妻をめとらせんには如何すべきや
Judges 21:17 又言けるはベニヤミンの中の逃れたる者等に産業あらしめん然らばイスラエルに一の支派の消ることなかるべし
Judges 21:18 然ながら我等は我等の女子を彼らの妻にあたふべからず其はイスラエルの子孫誓をなしベニヤミンに妻を與ふる者は詛はれんと言たればなりと
Judges 21:19 而して言ふ歳々シロにヱホバの祭ありと其處はベテルの北にあたりてベテルよりシケムにのぼるところの大路の東レバナの南にあり
Judges 21:20 是に於てかれらベニヤミンの子孫に命じて言ふ汝らゆきて葡萄園に伏して窺ひ
Judges 21:21 若シロの女等舞をどらんと出きたらば葡萄園より出でシロの女の中より各人妻を執てベニヤミンの地に往け
Judges 21:22 若その父あるひは兄弟來りて我らに愬へなば我らこれに言ふべし請ふ幸に彼らを我らに取せよ我等戰爭の時に皆ことごとくその妻をとりしにあらざればなり汝等今かれらに與へしにあらざれば汝等は罪なしと
Judges 21:23 ベニヤミンの子孫すなはちかく行なひその踊れる者等を執へてその中より己の數にしたがひて妻を取り往てその地にかへり邑々を建なほして其處に住り
Judges 21:24 斯てイスラエルの子孫その時に其處を去て各人その支派に往きその族にいたれり即ち其處より出て各人その地にいたりぬ
Judges 21:25 當時はイスラエルに王なかりしかば各人その目に善と見るところを爲り
Ruth 0:0 ルツ記
Ruth 1:1 士師の世ををさむる時にあたりて國に饑饉ありければ一箇の人その妻と二人の男子をひきつれてベテレヘムユダを去りモアブの地にゆきて寄寓る
Ruth 1:2 その人の名はエリメレクその妻の名はナオミその二人の男子の名はマロンおよびキリオンといふベテレヘムユダのエフラテ人なり 彼等モアブの地にいたりて其處にをりしが
Ruth 1:3 ナオミの夫エリメレク死てナオミとその二人の男子のこさる
Ruth 1:4 彼等おのおのモアブの婦人を妻にめとる その一人の名はオルパといひ一人の名はルツといふ 彼處にすむこと十年許にして
Ruth 1:5 マロンとキリオンの二人もまた死り 斯ナオミは二人の男子と夫に後れしが
Ruth 1:6 モアブの地にて彼ヱホバその民を眷みて食物を之にたまふと聞ければその媳とともに起ちてモアブの地より歸らんとし
Ruth 1:7 その在ところを出たりその 二人の媳これとともにあり 彼等ユダの地にかへらんと途にすすむ
Ruth 1:8 爰にナオミその二人の媳にいひけるは汝らはゆきておのおの母の家にかへれ 汝らがかの死たる者と我とを善く待ひしごとくにねがはくはヱホバまたなんぢらを善くあつかひたまへ
Ruth 1:9 ねがはくはヱホバなんぢらをして各その夫の家にて安身處をえせしめたまへと 乃ちかれらに接吻しければ彼等聲をあげて哭き
Ruth 1:10 之にいひけるは我ら汝とともに汝の民にかへらんと
Ruth 1:11 ナオミいひけるは女子よ返れ 汝らなんぞ我と共に往くべけんや 汝らの夫となるべき子猶わが胎にあらんや
Ruth 1:12 女子よかへりゆけ 我は老たれば夫をもつをえざるなり 假設われ指望ありといふとも今夜夫を有つとも而してまた子を生むとも
Ruth 1:13 汝等これがために其子の生長までまちをるべけんや 之がために夫をもたずしてひきこもりをるべけんや 女子よ然すべきにあらず 我はヱホバの手ののぞみてわれを攻しことを汝らのために痛くうれふるなり
Ruth 1:14 彼等また聲をあげて哭く 而してオルパはその姑に接吻せしがルツは之を離れず
Ruth 1:15 是によりてナオミまたいひけるは視よ汝の妯娌はその民とその神にかへり往く 汝も妯娌にしたがひてかへるべし
Ruth 1:16 ルツいひけるは汝を棄て汝をはなれて歸ることを我に催すなかれ我は汝のゆくところに往き汝の宿るところにやどらん 汝の民はわが民汝の神はわが神なり
Ruth 1:17 汝の死る所に我は死にて其處に葬らるべし 若死別にあらずして我なんぢとわかれなばヱホバわれにかくなし又かさねてかくなしたまへ
Ruth 1:18 彼 媳が固く心をさだめて己とともに來らんとするを見しかば之に言ふことを止たり
Ruth 1:19 かくて彼等二人ゆきて終にベテレヘムにいたりしがベテレヘムにいたれる時 邑こぞりて之がためにさわぎたち婦女等是はナオミなるやといふ
Ruth 1:20 ナオミかれらにいひけるは我をナオミ(樂し)と呼なかれ マラ(苦し)とよぶべし 全能者痛く我を苦しめ給ひたればなり
Ruth 1:21 我 盈足て出でたるにヱホバ我をして空くなりて歸しめたまふ ヱホバ我を攻め全能者われをなやましたまふに汝等なんぞ我をナオミと呼や
Ruth 1:22 斯ナオミそのモアブの地より歸れる 媳モアブの女ルツとともに歸り來れり 即ち彼ら大麥刈の初にベテレヘムにいたる
Ruth 2:1 ナオミにその夫の知己あり 即ちエリメレクの族にして大なる力の人なり その名をボアズといふ
Ruth 2:2 茲にモアブの女ルツ、ナオミにいひけるは請ふわれをして田にゆかしめよ 我何人かの目のまへに恩をうることあらばその人の後にしたがひて穗を拾はんと ナオミ彼に女子よ往べしといひければ
Ruth 2:3 乃ち往き遂に至りて刈者の後にしたがひ田にて穗を拾ふ 彼 意はずもエリメレクの族なるボアズの田の中にいたれり
Ruth 2:4 時にボアズ、ベテレヘムより來り その刈者等刈者等に言ふ ねがはくはヱホバ汝等とともに在せと 彼等すなはち答てねがはくはヱホバ汝を祝たまへといふ
Ruth 2:5 ボアズその刈者を督る僕にいひけるは此は誰の女なるや
Ruth 2:6 刈者を督る人こたへて言ふ是はモアブの女にしてモアブの地よりナオミとともに還りし者なるが
Ruth 2:7 いふ請ふ我をして刈者の後にしたがひて禾束の間に穗をひろひあつめしめよと 而して來りて朝より今にいたるまで此にあり 其家にやすみし間は暫時のみ
Ruth 2:8 ボアズ、ルツにいひけるは女子よ聽け 他の田に穗をひろひにゆくなかれ 又此よりいづるなかれわが婢等に離ずして此にをるべし
Ruth 2:9 人々の刈ところの田に目をとめてその後にしたがひゆけ 我 少者等に汝にさはるなかれと命ぜしにあらずや 汝渇く時は器の所にゆきて少者の汲るを飮めと
Ruth 2:10 彼すなはち伏して地に拜し之にいひけるは我 如何して汝の目の前に恩惠を得たるか なんぢ異邦人なる我を顧みると
Ruth 2:11 ボアズこたへて彼にいひけるは汝が夫の死にたるより巳來姑に盡したる事汝がその父母および生れたる國を離れて見ず識ずの民に來りし事皆われに聞えたり
Ruth 2:12 ねがはくはヱホバ汝の行爲に報いたまへ ねがはくはイスラエルの神ヱホバ即ち汝がその翼の下に身を寄んとて來れる者汝に十分の報施をたまはんことを
Ruth 2:13 彼いひけるは主よ我をして汝の目の前に恩をえせしめたまへ 我は汝の仕女の一人にも及ざるに汝かく我を慰め斯 仕女に懇切に語りたまふ
Ruth 2:14 ボアズかれにいひけるは食事の時は此にきたりてこのパンを食ひ且汝の食物をこの醋に濡せよと 彼すなはち刈者の傍に坐しければボアズ烘麥をかれに與ふ 彼くらひて飽き其 餘を懷む
Ruth 2:15 かくて彼また穗をひろはんとて起あがりければボアズその少者に命じていふ 彼をして禾束の間にても穗をひろはしめよ かれを羞しむるなかれ
Ruth 2:16 且手の穗を故に彼がために抽落しおきて彼に拾はしめよ 叱るなかれ
Ruth 2:17 彼かく薄暮まで田に穗を拾ひてその拾ひし者を撲しに大麥一斗許ありき
Ruth 2:18 彼すなはち之を携へて邑にいり姑にその拾ひし者を看せ且その飽きたる後に懷めおきたる者を取出して之にあたふ
Ruth 2:19 姑かれにいひけるは汝今日何處にて穗をひろひしや 何の處にて工作しや 願くは汝を眷顧たる者に福祉あれ 彼すなはち姑にその誰の所に工作しかを告げていふ 今日われに工作をなさしめたる人の名はボアズといふ
Ruth 2:20 ナオミ媳にいひけるは願はヱホバの恩かれに至れ 彼は生ける者と死る者とを棄ずして恩をほどこす ナオミまた彼にいひけるは其人は我等に縁ある者にして我等の贖業者の一人なり
Ruth 2:21 モアブの女ルツいひけるは彼また我にかたりて汝わが穫刈の盡く終るまでわが少者の傍をはなるるなかれといへりと
Ruth 2:22 ナオミその媳ルツにいひけるは女子よ汝かれの婢等とともに出るは善し 然れば他の田にて人に見らるることを免かれん
Ruth 2:23 是によりて彼ボアズの婢等の傍を離れずして穗をひろひ大麥刈と小麥刈の終にまでおよぶ 彼その姑とともにをる
Ruth 3:1 爰に姑ナオミ彼にいひけるは女子よ我汝の安身所を求めて汝を幸ならしむべきにあらずや
Ruth 3:2 夫汝が偕にありし婢等を有る彼ボアズは我等の知己なるにあらずや 視よ彼は今夜 禾塲にて大麥を簸る
Ruth 3:3 然ば汝の身を洗て膏をぬり衣服をまとひて禾塲に下り汝をその人にしらせずしてその食飮を終るを待て
Ruth 3:4 而て彼が臥す時に汝その臥す所を見とめおき入てその脚を掀開りて其處に臥せよ 彼なんぢの爲べきことを汝につげんと
Ruth 3:5 ルツ姑にいひけるは汝が我に言ところは我皆なすべしと
Ruth 3:6 即ち禾塲に下り凡てその姑の命ぜし如くなせり
Ruth 3:7 偖ボアズは食飮をなしてその心をたのしませ往て麥を積る所の傍に臥す 是に於て彼 潜にゆきその足を掀開て其處に臥す
Ruth 3:8 夜半に及びて其人 畏懼をおこし起かへりて見るに一人の婦その足の方に臥ゐたれば
Ruth 3:9 汝は誰なるやといふに婦こたへて我は汝の婢ルツなり 汝の裾をもて婢を覆ひたまへ 汝は贖業者なればなり
Ruth 3:10 ボアズいひけるは女子よ願くはヱホバの恩典なんぢにいたれ 汝の後の誠實は前のよりも勝る 其は汝貧きと富とを論ず少き人に從ふことをせざればなり
Ruth 3:11 されば女子よ懼る勿れ 汝が言ふところの事は皆われ汝のためになすべし 其はわが邑の人皆なんぢの賢き女なるをしればなり
Ruth 3:12 我はまことに贖業者なりと雖も我よりも近き贖業者あり
Ruth 3:13 今夜は此に住宿れ 朝におよびて彼もし汝のために贖ふならば善し彼に贖はしめよ 然ど彼もし汝のために贖ふことを好まずばヱホバは活く我汝のために贖はん 朝まで此に臥せよと
Ruth 3:14 ルツ朝までその足の方に臥て誰彼の辨がたき頃に起あがる ボアズ此女の禾塲に來りしことを人にしらしむべからずといへり
Ruth 3:15 而していひけるは汝の著る袿衣を將きたりて其を開げよと 即ち開げければ大麥六升を量りて之に負せたり 斯して彼 邑にいたりぬ
Ruth 3:16 爰にルツその姑の許に至るに姑いふ 女子よ如何ありしやと 彼すなはち其人の己になしたる事をことごとく之につげて
Ruth 3:17 而していひけるは彼 空手にて汝の姑の許に往くなかれといひて此六升の大麥を我にあたへたり
Ruth 3:18 姑いひけるは女子よ坐して待ち事の如何になりゆくかを見よ 彼人今日その事を爲終ずば安んぜざるべければなり
Ruth 4:1 爰にボアズ門の所にのぼり往て其處に坐しけるに前にボアズの言たる贖業者過りければ之に言ふ 某よ來りて此に坐せよと 即ち來りて坐す
Ruth 4:2 ボアズまた邑の長老十人を招き汝等此に坐せよといひければ則ち坐す
Ruth 4:3 時に彼その贖業人にいひけるはモアブの地より還りしナオミ我等の兄弟エリメレクの地を賣る
Ruth 4:4 我汝につげしらせて此に坐する人々の前わが民の長老の前にて之を買へと言んと想へり 汝もし之を贖はんと思はば贖ふべし 然どもし之を贖はずば吾に告げてしらしめよ 汝の外に贖ふ者なければなり 我はなんぢの次なりと彼我これを贖はんといひければ
Ruth 4:5 ボアズいふ 汝ナオミの手よりその地を買ふ日には死る者の妻なりし モアブの女ルツをも買て死る者の名をその産業に存すべきなり
Ruth 4:6 贖業人いひけるは我はみづから贖ふあたはず 恐くはわが産業を壞はん 汝みづから我にかはりてあがなへ 我あがなふことあたはざればなりと
Ruth 4:7 昔イスラエルにて物を贖ひ或は交易んとする事につきて萬事を定めたる慣例は斯のごとし 即ち此人鞋を脱ぎて彼人にわたせり 是イスラエルの中の證なりき
Ruth 4:8 是によりてその贖業人ボアズにむかひ汝みづから買ふべしといひて其鞋を脱たり
Ruth 4:9 ボアズ長老および諸の民にいひけるは汝等今日 見證をなす 我エリメレクの凡の所有及びキリオンとマロンの凡の所有をナオミの手より買たり
Ruth 4:10 我またマロンの妻なりしモアブの女ルツを買て妻となし彼死る者の名をその産業に存すべし 是かの死る者の名を其兄弟の中とその處の門に絶ざらしめんためなり 汝等今日 證をなす
Ruth 4:11 門にをる人々および長老等いひけるはわれら證をなす 願くはヱホバ汝の家にいるところの婦人をして彼イスラエルの家を造りなしたるラケルとレアの二人のごとくならしめたまはんことを 願くは汝エフラタにて能を得ベテレヘムにて名をあげよ
Ruth 4:12 ねがはくはヱホバが此 若き婦よりして汝にたまはんところの子に由て汝の家かのタマルがユダに生たるペレズの家のごとくなるにいたれ
Ruth 4:13 斯てボアズ、ルツを娶りて妻となし彼の所にいりければヱホバ彼を孕ましめたまひて彼 男子を生り
Ruth 4:14 婦女等ナオミにいひけるはヱホバは讚べきかな 汝を遺ずして今日汝に贖業人あらしめたまふ その名イスラエルに揚れ
Ruth 4:15 彼は汝の心をなぐさむる者 汝の老を養ふ者とならん 汝を愛する汝の媳即ち七人の子よりも汝に善もの之をうみたり
Ruth 4:16 ナオミその子をとりて之を懷に置き之が養育者となる
Ruth 4:17 その隣人なる婦女等これに名をつけて云ふ ナオミに男子うまれたりと その名をオベデと稱り 彼はダビデの父なるヱサイの父なり
Ruth 4:18 偖ペレヅの系圖は左のごとし ペレヅ、ヘヅロンを生み
Ruth 4:19 ヘヅロン、ラムを生み ラム、アミナダブを生み
Ruth 4:20 アミナダブ、ナシヨンを生み ナシヨン、サルモンを生み
Ruth 4:21 サルモン、ボアズを生み ボアズ、オベデを生み
Ruth 4:22 オベデ、ヱサイを生み ヱサイ、ダビデを生り
Ezra 0:0 エズラ書
Ezra 1:1 ペルシヤ王クロスの元年に當りヱホバ曩にエレミヤの口によりて傳へたまひしその聖言を成んとてペルシヤ王クロスの心を感動したまひければ王すなはち宣命をつたへ詔書を出して徧く國中に告示して云く
Ezra 1:2 ペルシヤ王クロスかく言ふ 天の神ヱホバ地上の諸國を我に賜へり その家をユダのヱルサレムに建ることを我に命ず
Ezra 1:3 凡そ汝らの中もしその民たる者あらばその神の助を得てユダのヱルサレムに上りゆきヱルサレムなるイスラエルの神ヱホバの室を建ることをせよ 彼は神にましませり
Ezra 1:4 その民にして生存れる者等の寓りをる處の人々は之に金銀貨財家畜を予へて助くべし その外にまたヱルサレムなる神の室のために物を誠意よりささぐべしと
Ezra 1:5 是にユダとベニヤミンの宗家の長祭司レビ人など凡て神にその心を感動せられし者等ヱルサレムなるヱホバの室を建んとて起おこれり
Ezra 1:6 その周圍の人々みな銀の器黄金貨財家畜および寳物を予へて之に力をそへこの外にまた各種の物を誠意より獻げたり
Ezra 1:7 クロス王またネブカデネザルが前にヱルサレムより携へ出して己の神の室に納めたりしヱホバの室の器皿を取いだせり
Ezra 1:8 即ちペルシヤ王クロス庫官ミテレダテの手をもて之を取いだしてユダの牧伯セシバザルに數へ交付せり
Ezra 1:9 その數は是のごとし 金の盤三十 銀の盤一千 小刀二十九
Ezra 1:10 金の大斝三十、二等の銀の大斝四百十 その他の器具一千
Ezra 1:11 金銀の器皿は合せて五千四百ありしがセシバザル俘擄人等をバビロンよりヱルサレムに將て上りし時に之をことごとく携へ上れり
Ezra 2:1 往昔バビロンの王ネブカデネザルに擄へられバビロンに遷されたる者のうち俘囚をゆるされてヱルサレムおよびユダに上りおのおの己の邑に歸りし此州の者は左の如し
Ezra 2:2 是皆ゼルバベル、ヱシュア、ネヘミヤ、セラヤ、レエラヤ、モルデカイ、ビルシヤン、ミスパル、ビグワイ、レホム、バアナ等に隨ひ來れり 其イスラエルの民の人數は是のごとし
Ezra 2:3 パロシの子孫二千百七十二人
Ezra 2:4 シパテヤの子孫三百七十二人
Ezra 2:5 アラの子孫七百七十五人
Ezra 2:6 ヱシュアとヨアブの族たるパハテモアブの子孫二千八百十二人
Ezra 2:7 エラムの子孫千二百五十四人
Ezra 2:8 ザットの子孫九百四十五人
Ezra 2:9 ザッカイの子孫七百六十人
Ezra 2:10 バニの子孫六百四十二人
Ezra 2:11 ベバイの子孫六百二十三人
Ezra 2:12 アズガデの子孫千二百二十二人
Ezra 2:13 アドニカムの子孫六百六十六人
Ezra 2:14 ビグワイの子孫二千五十六人
Ezra 2:15 アデンの子孫四百五十四人
Ezra 2:16 ヒゼキヤの家のアテルの子孫九十八人
Ezra 2:17 ベザイの子孫三百二十三人
Ezra 2:18 ヨラの子孫百十二人
Ezra 2:19 ハシユムの子孫二百二十三人
Ezra 2:20 ギバルの子孫九十五人
Ezra 2:21 ベテレヘムの子孫百二十三人
Ezra 2:22 ネトパの人五十六人
Ezra 2:23 アナトテの人百二十八人
Ezra 2:24 アズマウテの民四十二人
Ezra 2:25 キリアテヤリム、ケピラおよびベエロテの民七百四十三人
Ezra 2:26 ラマおよびゲバの民六百二十一人
Ezra 2:27 ミクマシの人百二十二人
Ezra 2:28 ベテルおよびアイの人二百二十三人
Ezra 2:29 ネボの民五十二人
Ezra 2:30 マグビシの民百五十六人
Ezra 2:31 他のエラムの民千二百五十四人
Ezra 2:32 ハリムの民三百二十人
Ezra 2:33 ロド、ハデデおよびオノの民七百二十五人
Ezra 2:34 ヱリコの民三百四十五人
Ezra 2:35 セナアの民三千六百三十人
Ezra 2:36 祭司はヱシュアの家のヱダヤの子孫九百七十三人
Ezra 2:37 インメルの子孫千五十二人
Ezra 2:38 パシュルの子孫千二百四十七人
Ezra 2:39 ハリムの子孫千十七人
Ezra 2:40 レビ人はホダヤの子等ヱシュアとカデミエルの子孫七十四人
Ezra 2:41 謳歌者はアサフの子孫百二十八人
Ezra 2:42 門を守る者の子孫はシヤルムの子孫アテルの子孫タルモンの子孫アックブの子孫ハテタの子孫シヨバイの子孫合せて百三十九人
Ezra 2:43 ネテニ人はヂハの子孫ハスパの子孫タバオテの子孫
Ezra 2:44 ケロスの子孫シアハの子孫パドンの子孫
Ezra 2:45 レバナの子孫ハガバの子孫アックブの子孫
Ezra 2:46 ハガブの子孫シヤルマイの子孫ハナンの子孫
Ezra 2:47 ギデルの子孫ガハルの子孫レアヤの子孫
Ezra 2:48 レヂンの子孫ネコダの子孫ガザムの子孫
Ezra 2:49 ウザの子孫パセアの子孫ベサイの子孫
Ezra 2:50 アスナの子孫メウニムの子孫ネフシムの子孫
Ezra 2:51 バクブクの子孫ハクパの子孫ハルホルの子孫
Ezra 2:52 バヅリテの子孫メヒダの子孫ハルシヤの子孫
Ezra 2:53 バルコスの子孫シセラの子孫テマの子孫
Ezra 2:54 ネヂアの子孫ハテパの子孫等なり
Ezra 2:55 ソロモンの僕たりし者等の子孫すなはちソタイの子孫ハッソペレテの子孫ペリダの子孫
Ezra 2:56 ヤアラの子孫ダルコンの子孫ギデルの子孫
Ezra 2:57 シパテヤの子孫ハッテルの子孫ポケレテハツゼバイムの子孫アミの子孫
Ezra 2:58 ネテニ人とソロモンの僕たりし者等の子孫とは合せて三百九十二人
Ezra 2:59 またテルメラ、テルハレサ、ケルブ、アダンおよびインメルより上り來れる者ありしがその宗家の長とその血統とを示してイスラエルの者なるを明かにすることを得ざりき
Ezra 2:60 是すなはちデラヤの子孫トビヤの子孫ネコダの子孫にして合せて六百五十二人
Ezra 2:61 祭司の子孫たる者の中にハバヤの子孫ハッコヅの子孫バルジライの子孫あり バルジライはギレアデ人バルジライの女を妻に娶りてその名を名りしなり
Ezra 2:62 是等の者譜系に載たる者等の中におのが名を尋ねたれども在ざりき 是の故に汚れたる者として祭司の中より除かれたり
Ezra 2:63 テルシヤタは之に告てウリムとトンミムを帶る祭司の興るまでは至聖物を食ふべからずと言り
Ezra 2:64 會衆あはせて四萬二千三百六十人
Ezra 2:65 この外にその僕婢七千三百三十七人 謳歌男女二百人あり
Ezra 2:66 その馬七百三十六匹 その騾二百四十五匹
Ezra 2:67 その駱駝四百三十五匹 驢馬六千七百二十匹
Ezra 2:68 宗家の長數人ヱルサレムなるヱホバの室にいたるにおよびてヱホバの室をその本の處に建んとて物を誠意より獻げたり
Ezra 2:69 即ちその力にしたがひて工事のために庫を納めし者は金六萬一千ダリク銀五千斤祭司の衣服百襲なりき
Ezra 2:70 祭司レビ人民等謳歌者門を守る者およびネテニ人等その邑々に住み一切のイスラエル人その邑々に住り
Ezra 3:1 イスラエルの子孫かくその邑々に住居しが七月に至りて民一人のごとくにヱルサレムに集まれり
Ezra 3:2 是に於てヨザダクの子ヱシュアとその兄弟なる祭司等およびシャルテルの子ゼルバベルとその兄弟等立おこりてイスラエルの神の壇を築けり 是神の人モーセの律法に記されたる所に循ひてその上に燔祭を獻げんとてなりき
Ezra 3:3 彼等は壇をその本の處に設けたり 是國々の民を懼れしが故なり 而してその上にて燔祭をヱホバに獻げ朝夕にこれを獻ぐ
Ezra 3:4 またその録されたる所に循ひて結茅節を行ひ毎日の分を按へて例に照し數のごとくに日々の燔祭を獻げたり
Ezra 3:5 是より後は常の燔祭および月朔とヱホバの一切のきよき節會とに用ゐる供物ならびに人の誠意よりヱホバにたてまつる供物を獻ぐることをす
Ezra 3:6 即ち七月の一日よりして燔祭をヱホバに獻ぐることを始めけるがヱホバの殿の基礎は未だ置ざりき
Ezra 3:7 是において石工と木工に金を交付しまたシドンとツロの者に食物飮物および油を與へてペルシヤの王クロスの允准にしたがひてレバノンよりヨッパの海に香柏を運ばしめたり
Ezra 3:8 斯てヱルサレムより神の室に歸りたる次の年の二月にシャルテルの子ゼルバベル、ヨザダクの子ヱシュアおよびその兄弟たる他の祭司レビ人など凡て俘囚をゆるされてヱルサレムに歸りし者等を始め二十歳以上のレビ人を立てヱホバの室の工事を監督せしむ
Ezra 3:9 是に於てユダの子等なるヱシュアとその子等および兄弟カデミエルとその子等齊しく立て神の家の工人を監督せり ヘナダデの子等およびその子等と兄弟等のレビ人も然り
Ezra 3:10 かくて建築者ヱホバの殿の基礎を置る時祭司等禮服を衣て喇叭を執りアサフの子孫たるレビ人鐃鈸を執りイスラエルの王ダビデの例に循ひてヱホバを讃美す
Ezra 3:11 彼等班列にしたがひて諸共に歌を謠ひてヱホバを讃めかつ頌へヱホバは恩ふかく其矜恤は永遠にたゆることなければなりと言り そのヱホバを讃美する時に民みな大聲をあげて呼はれり ヱホバの室の基礎を据ればなり
Ezra 3:12 されど祭司レビ人宗家の長の中に以前の室を見たりし老人ありけるが今この室の基礎をその目の前に置るを見て多く聲を放ちて泣り また喜悦のために聲をあげて呼はる者も多かりき
Ezra 3:13 是をもて人衆民の歡こびて呼はる聲と民の泣く聲とを聞きわくることを得ざりき そは民大聲に呼はり叫びければその聲遠くまで聞えわたりたればなり
Ezra 4:1 茲にユダとベニヤミンの敵たる者等夫俘囚より歸り來りし人々イスラエルの神ヱホバのために殿を建ると聞き
Ezra 4:2 乃ちゼルバベルと宗家の長等の許に至りて之に言けるは我儕をして汝等と共に之を建てしめよ 我らは汝らと同じく汝らの神を求む アッスリヤの王エサルハドンが我儕を此に携へのぼりし日より以來我らはこれに犠牲を獻ぐるなりと
Ezra 4:3 然るにゼルバベル、ヱシュアおよびその餘のイスラエルの宗家の長等これに言ふ 汝らは我らの神に室を建ることに與るべからず 我儕獨りみづからイスラエルの神ヱホバのために建ることを爲べし 是ペルシヤの王クロス王の我らに命ぜし所なりと
Ezra 4:4 是に於てその地の民ユダの民の手を弱らせてその建築を妨げ
Ezra 4:5 之が計る所を敗らんために議官に賄賂して之に敵せしむペルシヤ王クロスの世にある日よりペルシヤ王ダリヨスの治世まで常に然り
Ezra 4:6 アハシユエロスの治世すなはち其治世の初に彼ら表を上りてユダとヱルサレムの民を誣訟へたり
Ezra 4:7 またアルタシヤスタの世にビシラム、ミテレダテ、タビエルおよびその餘の同僚同じく表をペルシヤの王アルタシヤスタに上つれり その書の文はスリヤの文字にて書きスリヤ語にて陳述たる者なりき
Ezra 4:8 方伯レホム書記官シムシヤイ書をアルタシヤスタ王に書おくりてヱルサレムを誣ゆ左のごとし
Ezra 4:9 即ち方伯レホム書記官シムシヤイおよびその餘の同僚デナ人アパルサテカイ人タルペライ人アパルサイ人アルケロイ人バビロン人シユシヤン人デハウ人エラマイ人
Ezra 4:10 ならびに其他の民すなはち大臣オスナパルが移してサマリアの邑および河外ふのその他の地に置し者等云々
Ezra 4:11 其アルタシヤスタ王に上りし書の稿は是なく云く河外ふの汝の僕等云々
Ezra 4:12 王知たまへ汝の所より上り來りしユダヤ人ヱルサレムに到りてわれらの中にいりかの背き悖る惡き邑を建なほし石垣を築きあげその基礎を固うせり
Ezra 4:13 然ば王いま知りたまへ 若この邑を建て石垣を築きあげなば彼ら必ず貢賦租税税金などを納じ 然すれば終に王等の不利とならん
Ezra 4:14 そもそも我らは王の鹽を食む者なれば王の輕んぜらるるを見るに忍びず 茲に人を遣はし王に奏聞す
Ezra 4:15 列祖の記録の書を稽へたまへ必ずその記録の書の中において此邑は背き悖る邑にして諸王と諸州とに害を加へし者なるを見その中に古來叛逆の事ありしを知たまふべし此邑の滅ぼされしは此故に縁るなり
Ezra 4:16 我ら王に奏聞す 若この邑を建て石垣を築きあげなばなんぢは之がために河外ふの領分をうしなふなるべしと
Ezra 4:17 王すなはち方伯レホム書記官シムシヤイこの餘サマリアおよび河外ふのほかの處に住る同僚に答書をおくりて云く平安あれ云々
Ezra 4:18 汝らが我儕におくりし書をば我前に讀解しめたり
Ezra 4:19 我やがて詔書を下して稽考しめしに此邑の古來起りて諸王に背きし事その中に反乱謀叛のありし事など詳悉なり
Ezra 4:20 またヱルサレムには在昔大なる王等ありて河外ふをことごとく治め貢賦租税税金などを己に納しめたる事あり
Ezra 4:21 然ば汝ら詔言を傳へて其人々を止め我が詔言を下すまで此邑を建ること無らしめよ
Ezra 4:22 汝ら愼め 之を爲ことを忽にする勿れ 何ぞ損害を増て王に害を及ぼすべけんやと
Ezra 4:23 アルタシヤスタ王の書の稿をレホム及び書記官シムシヤイとその同僚の前に讀あげければ彼等すなはちヱルサレムに奔ゆきてユダヤ人に就き腕力と權威とをもて之を止めたり
Ezra 4:24 此をもてヱルサレムなる神の室の工事止みぬ 即ちペルシヤ王ダリヨスの治世の二年まで止みたりき
Ezra 5:1 爰に預言者ハガイおよびイドの子ゼカリヤの二人の預言者ユダとヱルサレムに居るユダヤ人に向ひてイスラエルの神の名をもて預言する所ありければ
Ezra 5:2 シヤルテルの子ゼルバベルおよびヨザダクの子ヱシュア起あがりてヱルサレムなる神の室を建ることを始む 神の預言者等これと共に在て之を助く
Ezra 5:3 その時に河外の總督タテナイといふ者セタルボズナイおよびその同僚とともにその所に來り誰が汝らに此室を建て此石垣を築きあぐることを命ぜしやと斯言ひ
Ezra 5:4 また此建物を建る人々の名は何といふやと斯これに問り
Ezra 5:5 然るにユダヤ人の長老等の上にはその神の目そそぎゐたれば彼等これを止むること能はずして遂にその事をダリヨスに奏してその返答の來るを待り
Ezra 5:6 河外ふの總督タテナイおよびセタルボズナイとその同僚なる河外ふのアパルサカイ人がダリヨス王に上まつりし書の稿は左のごとし
Ezra 5:7 即ち其上まつりし書の中に書しるしたる所は是のごとし 云く願くはダリヨス王に大なる平安あれ
Ezra 5:8 王知りたまへ我儕ユダヤ州に往てかの大神の室に至り視しに巨石をもて之を建て材木を組て壁を作り居り其工事おほいに捗りてその手を下すところ成ざる無し
Ezra 5:9 是に於て我儕その長老等に問てこれに斯いへり 誰が汝らに此室を建てこの石垣を築きあぐることを命ぜしやと
Ezra 5:10 我儕またその首長たる人々の名を書しるして汝に奏聞せんがためにその名を問り
Ezra 5:11 時に彼等かく我らに答へて言り 我儕は天地の神の僕にして年久しき昔に建おかれし殿を再び建るなり 是は素イスラエルの大なる王 某の建築きたる者なしりが
Ezra 5:12 我らの父等天の神の震怒を惹起せしに縁てつひに之をカルデヤ人バビロンの王ネブカデネザルの手に付したまひければ彼この殿を毀ち民をバビロンに擄へゆけり
Ezra 5:13 然るにバビロンの王クロスの元年にクロス王神のこの室を建べしとの詔言を下したまへり
Ezra 5:14 然のみならず ヱルサレムの殿よりネブカデネザルが取いだしてバビロンの殿に携へいれし神の室の金銀の器皿もクロス王これをバビロンの殿より取いだし其立たる總督セシバザルと名くる者に之を付し
Ezra 5:15 而して彼に言けらく是等の器皿を取り往て之をヱルサレムの殿に携へいれ神の室をその本の處に建よと
Ezra 5:16 是において其セシバザル來りてヱルサレムなる神の室の石礎を置たりき 其時よりして今に至るまで之を建つつありしが猶いまだ竣らざるなりと
Ezra 5:17 然ば今王もし善となされなば請ふ御膝下バビロンにある所の王の寳蔵を査べたまひて神のこの室を建べしとの詔言のクロス王より出しや否を稽へ而して王此事につきて御旨を我らに諭したまえ
Ezra 6:1 是に於てダリヨス王詔言を出しバビロンにて寳物を蔵むる所の文庫に就て査べ稽しめしに
Ezra 6:2 メデア州の都城アクメタにて一の卷物を得たり その内に書しるせる記録は是のごとし
Ezra 6:3 クロス王の元年にクロス王 詔言を出せり 云くヱルサレムなる神の室の事につきて諭す その犠牲を獻ぐる所なる殿を建てその石礎を堅く置ゑ其室の高を六十キュビトにし其濶を六十キュビトにし
Ezra 6:4 巨石三行新木一行を以せよ 其費用は王の家より授くべし
Ezra 6:5 またネブカデネザルがヱルサレムの殿より取いだしてバビロンに携へきたりし神の室の金銀の器皿は之を還してヱルサレムの殿に持ゆかしめ神の室に置てその故の所にあらしむべしと
Ezra 6:6 然ば河外ふの總督タテナイおよびセタルボズナイとその同僚なる河外ふのアパルサカイ人汝等これに遠ざかるべし
Ezra 6:7 神のその室の工事を妨ぐる勿れ ユダヤ人の牧伯とユダヤ人の長老等に神のその家を故の處に建しめよ
Ezra 6:8 我また詔言を出し其神の家を建ることにつきて汝らが此ユダヤ人の長老等に爲べきことを示す 王の財寳の中すなはち河外ふの租税の中より迅速に費用をその人々に與へよその工事を滯ほらしむる勿れ
Ezra 6:9 又その需むる物即ち天の神にたてまつる燔祭の小牛牡羊および羔羊ならびに麥鹽酒油など凡てヱルサレムにをる祭司の定むる所に循ひて日々に怠慢なく彼等に與へ
Ezra 6:10 彼らをして馨しき香の犠牲を天の神に獻ぐることを得せしめ王とその子女の生命のために祈ることを得せしめよ
Ezra 6:11 かつ我詔言を出す誰にもせよ此言を易る者あらば其家の梁を抜きとり彼を擧て之に釘ん その家はまた之がために厠にせらるべし
Ezra 6:12 凡そ之を易へまたヱルサレムなるその神の室を毀たんとて手を出す王あるひは民は彼處にその名を留め給ふ神ねがはくはこれを倒したまへ 我ダリヨス詔言を出せり 迅速に之を行なへ
Ezra 6:13 ダリヨス王かく諭しければ河外ふの總督タテナイおよびセタルボズナイとその同僚迅速に之を行なへり
Ezra 6:14 ユダヤ人の長老等すなはち之を建て預言者ハガイおよびイドの子ゼカリヤの預言に由て之を成就たり 彼等イスラエルの神の命に循ひクロス、ダリヨスおよびペルシヤ王アルタシヤスタの詔言に依て之を建竣ぬ
Ezra 6:15 ダリヨス王の治世の六年アダルの月の三日にこの室成り
Ezra 6:16 是に於てイスラエルの子孫祭司レビ人およびその餘の俘擄人よろこびて神のこの室の落成禮を行なへり
Ezra 6:17 即ち神のこの室の落成禮において牡牛一百 牡羊二百 羔羊四百を獻げまたイスラエルの支派の數にしたがひて牡山羊十二を獻げてイスラエル全體のために罪祭となし
Ezra 6:18 祭司をその分別にしたがひて立て レビ人をその班列にしたがひて立て ヱルサレムに於て神に事へしむ 凡てモーセの書に書しるしたるが如し
Ezra 6:19 斯て俘囚より歸り來りし人々正月の十四日に逾越節を行へり
Ezra 6:20 即ち祭司レビ人共に身を潔めて皆潔くなり一切俘囚より歸り來りし人々のため其兄弟たる祭司等のため又自己のために逾越の物を宰れり
Ezra 6:21 擄はれゆきて歸り來しイスラエルの子孫および其國の異邦人の汚穢を棄て是等に附てイスラエルの神ヱホバを求むる者等すべて之を食ひ
Ezra 6:22 喜びて七日の間酵いれぬパンの節を行へり 是はヱホバかれらを喜ばせアッスリヤの王の心を彼らに向はせ彼をしてイスラエルの神にまします神の家の工事を助けさせたまひしが故なり
Ezra 7:1 是等の事の後ペルシヤ王アルタシヤスタの治世にエズラといふ者あり エズラはセラヤの子セラヤはアザリヤの子アザリヤはヒルキヤの子
Ezra 7:2 ヒルキヤはシヤルムの子シヤルムはザドクの子ザドクはアヒトブの子
Ezra 7:3 アヒトブはアマリヤの子アマリヤはアザリヤの子アザリヤはメラヨテの子
Ezra 7:4 メラヨテはゼラヒヤの子ゼラヒヤはウジの子ウジはブッキの子
Ezra 7:5 ブッキはアビシュアの子アビシュアはピネハスの子ピネハスはエレアザルの子エレアザルは祭司の長アロンの子なり
Ezra 7:6 此エズラ、バビロンより上り來れり 彼はイスラエルの神ヱホバの授けたまひしモーセの律法に精しき學士なりき 其神ヱホバの手これが上にありしに因てその求むる所を王ことごとく許せり
Ezra 7:7 アルタシヤスタ王の七年にイスラエルの子孫および祭司レビ人謳歌者門を守る者ネテニ人など多くヱルサレムに上れり
Ezra 7:8 王の七年の五月にエズラ、ヱルサレムに到れり
Ezra 7:9 即ち正月の一日にバビロンを出たちて五月の一日にヱルサレムに至る 其神のよき手これが上にありしに因てなり
Ezra 7:10 エズラは心をこめてヱホバの律法を求め之を行ひてイスラエルの中に法度と例規とを教へたりき
Ezra 7:11 ヱホバの誡命の言に精しく且つイスラエルに賜ひし法度に明かなる學士にて祭司たるエズラにアルタシヤスタ王の與へし書の言は是のごとし
Ezra 7:12 諸王の王アルタシヤスタ天の神の律法の學士なる祭司エズラに諭す 願くは全云々
Ezra 7:13 我詔言を出す 我國の内にをるイスラエルの民およびその祭司レビ人の中凡てヱルサレムに往んと志す者は皆なんぢと偕に往べし
Ezra 7:14 汝はおのが手にある汝の神の律法に照してユダとヱルサレムの模樣とを察せんために王および七人の議官に遣はされて往くなり
Ezra 7:15 且汝は王とその議官がヱルサレムに宮居するところのイスラエルの神のために誠意よりささぐる金銀を携へ
Ezra 7:16 またバビロン全州にて汝が獲る一切の金銀および民と祭司とがヱルサレムなる其神の室のために誠意よりする禮物を携さふ
Ezra 7:17 然ば汝その金をもて牡牛牡羊羔羊およびその素祭と灌祭の品を速に買ひヱルサレムにある汝らの神の室の壇の上にこれを獻ぐべし
Ezra 7:18 また汝と汝の兄弟等その餘れる金銀をもて爲んと欲する所あらば汝らの神の旨にしたがひて之を爲せ
Ezra 7:19 また汝の神の室の奉事のために汝が賜はりし器皿は汝これをヱルサレムの神の前に納めよ
Ezra 7:20 その外汝の神の室のために需むる所あらば汝の用ひんとする所の者をことごとく王の府庫より取て用ふべし
Ezra 7:21 我や我アルタシヤスタ王 河外ふの一切の庫官に詔言を下して云ふ 天の神の律法の學士祭司エズラが汝らに需むる所は凡てこれを迅速に爲べし
Ezra 7:22 即ち銀は百タラント小麥は百石酒は百バテ油は百バテ鹽は量なかるべし
Ezra 7:23 天の神の室のために天の神の命ずる所は凡て謹んで之を行なへ しからずば王とその子等との國に恐くは震怒のぞまん
Ezra 7:24 かつ我儕なんぢらに諭す 祭司レビ人謳歌者門を守る者ネテニ人および神のその室の役者などには貢賦租税税金などを課すべからず
Ezra 7:25 汝エズラ汝の手にある汝の神の智慧にしたがひて有司および裁判人を立て河外ふの一切の民すなはち汝の神の律法を知る者等を盡く裁判しめよ 汝らまた之を知ざる者を教へよ
Ezra 7:26 凡そ汝の神の律法および王の律法を行はざる者をば迅速にその罪を定めて或は殺し或は追放ち或はその貨財を沒収し或は獄に繋ぐべし
Ezra 7:27 我らの先祖の神ヱホバは讃べき哉 斯王の心にヱルサレムなるヱホバの室を飾る意を起させ
Ezra 7:28 また王の前とその議官の前と王の大臣の前にて我に矜恤を得させたまへり 我神ヱホバの手わが上にありしに因て我は力を得 イスラエルの中より首領たる人々を集めて我とともに上らしむ
Ezra 8:1 アルタシヤスタ王の治世に我とともにバビロンより上り來りし者等の宗家の長およびその系譜は左のごとし
Ezra 8:2 ピネハスの子孫の中にてはゲルシヨム、イタマルの子孫の中にてはダニエル、ダビデの子孫の中にてはハットシ
Ezra 8:3 シカニヤの子孫の中パロシの子孫の中にてはゼカリヤ彼と偕にありて名簿に載られたる男子百五十人
Ezra 8:4 パハテモアブの子孫の中にてはゼラヒヤの子エリヨエナイ彼と偕なる男二百人
Ezra 8:5 シカニヤの子孫の中にてはヤハジエルの子 彼と偕なる男三百人
Ezra 8:6 アデンの子孫の中にてはヨナタンの子エベデ彼とともなる男五十人
Ezra 8:7 エラムの子孫の中にてはアタリヤの子ヱサヤ彼と偕なる男七十人
Ezra 8:8 シパテヤの子孫の中にてはミカエルの子ゼバデヤ彼とともなる男八十人
Ezra 8:9 ヨハブの子孫の中にてはヱヒエルの子オバデヤ彼とともなる男二百十八人
Ezra 8:10 シロミテの子孫の中にてはヨシピアの子 彼とともなる男百六十人
Ezra 8:11 ベバイの子孫の中にてはベバイの子ゼカリヤ彼と偕なる男二十八人
Ezra 8:12 アズガデの子孫の中にてはハッカタンの子ヨハナン彼とともなる男百十人
Ezra 8:13 アドニカムの子孫の中の後なる者等あり 其名をエリペレテ、ユエル、シマヤといふ彼らと偕なる男六十人
Ezra 8:14 ビグワイの子孫の中にてはウタイおよびザブデ彼等とともなる男七十人
Ezra 8:15 我かれらをアハワに流るる所の河の邊に集めて三日が間かしこに天幕を張居たりしが我民と祭司とを閲せしにレビの子孫一人も其處に居ざりければ
Ezra 8:16 すなはち人を遣てエリエゼル、アリエル、シマヤ、エルナタン、ヤリブ、エルナタン、ナタン、ゼカリヤ、メシユラムなどいふ長たる人々を招きまた教晦を施こす所のヨヤリブおよびエルナタンを招けり
Ezra 8:17 而して我カシピアといふ處の長イドの許に彼らを出し遣せり 即ち我カシピアといふ處にをるイドとその兄弟なるネテニ人に告ぐべき詞を之が口に授け我等の神の室のために役者を我儕に携へ來れと言けるが
Ezra 8:18 我らの神よく我儕を助けたまひて彼等つひにイスラエルの子レビの子マヘリの子孫イシケセルを我らに携さへ來り又セレビヤといふ者およびその子等と兄弟十八人
Ezra 8:19 ハシヤビヤならびにメラリの子孫のヱサヤおよびその兄弟とその子等二十人を携へ
Ezra 8:20 またネテニ人すなはちダビデとその牧伯等がレビ人に事へしむるために設けたりしネテニ人二百二十人を携へ來れり 此等の者は皆その名を掲げられたり
Ezra 8:21 斯て我かしこなるアハワの河の邊にて斷食を宣傳へ我儕の神の前にて我儕身を卑し我らと我らの小き者と我らの諸の所有のために正しき途を示されんことを之に求む
Ezra 8:22 其は我儕さきに王に告て我らの神は己を求むる者を凡て善く助けまた己を棄る者にはその權能と震怒とをあらはしたまふと言しに因て我道路の敵を防ぎて我儕を護るべき歩兵と騎兵とを王に請ふを羞ぢたればなり
Ezra 8:23 かくてこのことを我ら斷食して我儕の神に求めけるに其祈禱を容れたまへり
Ezra 8:24 時に我祭司の長十二人即ちセレビヤ、ハシヤビヤおよびその兄弟十人を之とともに擇び
Ezra 8:25 金銀および器皿すなはち王とその議官とその牧伯と彼處の一切のイスラエル人とが我らの神の室のために獻げたる奉納物を量りて彼らに付せり
Ezra 8:26 その量りて彼らの手に付せし者は銀六百五十タラント銀の器百タラント金百タラントなりき
Ezra 8:27 また金の大斝二十あり一千ダリクに當るまた光り輝く精銅の器二箇あり その貴きこと金のごとし
Ezra 8:28 而して我かれらに言り汝等はヱホバの聖者なり 此器皿もまた聖し又この金銀は汝らの先祖の神ヱホバに奉まつりし誠意よりの禮物なり
Ezra 8:29 汝等ヱルサレムに至りてヱホバの家の室に於て祭司レビ人の長等およびイスラエルの宗家の首等の前に量るまで之を伺ひ守るべしと
Ezra 8:30 是に於て祭司およびレビ人その金銀および器皿をヱルサレムなる我らの神の室に携へゆかんとて其重にしたがひて之を受取れり
Ezra 8:31 我ら正月の十二日にアハワの河邊を出たちてヱルサレム赴きけるが我らの神その手を我らの上におき我らを救ひて敵の手また路に伏て窺ふ者の手に陷らしめたまはざりき
Ezra 8:32 我儕すなはちヱルサレムに至りて三日かしこに居しが
Ezra 8:33 四日にいたりて我らの神の室においてその金銀および器皿をウリヤの子祭司メレモテの手に量り付せり ピネハスの子エレアザル彼に副ふ又ヱシュアの子ヨザバデおよびビンヌイの子ノアデヤの二人のレビ人かれらに副ふ
Ezra 8:34 即ちその一々の重と數を査べ其重をことごとく其時かきとめたり
Ezra 8:35 俘囚の人々のその俘囚をゆるされて歸り來し者イスラエルの神に燔祭を獻げたり 即ちイスラエル全體にあたる牡牛十二を獻げまた牡羊九十六羔羊七十七罪祭の牡山羊十二を獻げたり 是みなヱホバにたてまつりし燔祭なり
Ezra 8:36 彼等王の勅諭を王の代官と河外ふの總督等に示しければその人々民を助けて神の室を建しむ
Ezra 9:1 是等の事の成し後牧伯等我許にきたりて言ふ イスラエルの民祭司およびレビ人は諸國の民とはなれずしてカナン人ヘテ人ペリジ人エビス人アンモニ人モアブ人エジプト人アモリ人などの中なる憎むべき事を行へり
Ezra 9:2 即ち彼等の女子を自ら娶りまたその男子に娶れば聖種諸國の民と相雜れり牧伯たる者 長たる者さきだちてこの愆を犯せりと
Ezra 9:3 我この事を聞て我衣と袍を裂き頭髪と鬚を抜き驚き呆れて坐せり
Ezra 9:4 イスラエルの神の言を戰慄おそるる者はみな俘囚より歸り來し者等の愆の故をもて我許に集まりしが我は晩の供物の時まで驚きつつ茫然として坐しぬ
Ezra 9:5 晩の供物の時にいたり我その苦行より起て衣と袍とを裂たるまま膝を屈めてわが神ヱホバにむかひ手を舒て
Ezra 9:6 言けるは我神よ我はわが神に向ひて面を擧るを羞て赧らむ 其は我らの罪積りて頭の上に出で我らの愆重りて天に達すればなり
Ezra 9:7 我らの先祖の日より今日にいたるまで我らは大なる愆を身に負り 我らの罪の故によりて我儕と我らの王等および祭司たちは國々の王等の手に付され劍にかけられ擄へゆかれ掠められ面に恥をかうぶれり 今日のごとし
Ezra 9:8 然るに今われらの神ヱホバ暫く恩典を施こして逃れ存すべき者を我らの中に殘し我らをしてその聖所にうちし釘のごとくならしめ斯して我らの神われらの目を明にし我らをして奴隷の中にありて少く生る心地せしめたまへり
Ezra 9:9 そもそも我らは奴隷の身なるがその奴隷たる時にも我らの神われらを忘れず反てペルシヤの王等の目の前にて我らに憐憫を施こして我らに活る心地せしめ我らの神の室を建しめ其破壞を修理はしめユダとヱルサレムにて我らに石垣をたまふ
Ezra 9:10 我らの神よ已に是のごとくなれば我ら今何と言のべんや 我儕はやくも汝の命令を棄たればなり
Ezra 9:11 汝かつて汝の僕なる預言者等によりて命じて宣へり 云く汝らが往て獲んとする地はその各地の民の汚穢により其憎むべき事によりて汚れたる地にして此極より彼極までその汚穢盈わたるなり
Ezra 9:12 然ば汝らの女子を彼らの男子に與ふる勿れ 彼らの女子をなんぢらの男子に娶る勿れ 又何時までもかれらの爲に平安をも福祿をも求むべからず 然すれば汝ら旺盛にしてその地の佳物を食ふことを得 永くこれを汝らの子孫に傳へて産業となさしむることを得んと
Ezra 9:13 我らの惡き行により我らの大なる愆によりて此事すべて我儕に臨みたりしが汝我らの神はわれらの罪よりも輕く我らを罰して我らの中に是のごとく人を遺したまひたれば
Ezra 9:14 我儕再び汝の命令を破りて是等の憎むべき行ある民と縁を結ぶべけんや 汝我らを怒りて終に滅ぼし盡し遺る者も逃るる者も無にいたらしめたまはざらんや
Ezra 9:15 イスラエルの神ヱホバよ汝は義し 即ち我ら逃れて遺ること今日のごとし 今我ら罪にまとはれて汝の前にあり 是がために一人として汝の前に立ことを得る者なきなり
Ezra 10:1 エズラ神の室の前に泣伏して禱りかつ懺悔しをる時に男女および兒女はなはだし多くイスラエルの中より集ひて彼の許に聚り來れり すべての民はいたく泣かなしめり
Ezra 10:2 時にエラムの子ヱヒエルの子シカニヤ答へてエズラに言ふ 我らはわれらの神に對ひて罪を犯し此地の民なる異邦人の婦女を娶れり 然ながら此事につきてはイスラエルに今なほ望あり
Ezra 10:3 然ば我儕わが主の教晦にしたがひ又我らの神の命令に戰慄く人々の教晦にしたがひて斯る妻をことごとく出し之が産たる者を去んといふ契約を今われらの神に立てん 而して律法にしたがひて之を爲べし
Ezra 10:4 起よ是事は汝の主どる所なり 我ら汝を助くべし心を強くして之を爲せと
Ezra 10:5 エズラやがて起あがり祭司の長等レビ人およびイスラエルの人衆をして此言のごとく爲んと誓はしめたり 彼ら乃ち誓へり
Ezra 10:6 かくてエズラ神の家の前より起いでてエリアシブの子ヨハナンの室に入しが彼處に至りてもパンを食ず水を飮ざりき 是は俘囚より歸り來りし者の愆を憂へたればなり
Ezra 10:7 斯てユダおよびヱルサレムに遍ねく宣て俘囚の人々に盡く示して云ふ 汝ら皆ヱルサレムに集まるべし
Ezra 10:8 凡そ牧伯等と長老等の諭言にしたがひて三日の内に來らざる者は皆その一切の所有を取あげられ俘擄人の會より黜けらるべしと
Ezra 10:9 是においてユダとベニヤミンの人々みな三日の内にヱルサレムに集まれり 是は九月にして恰もその月の廿日なりき 民みな神の室の前なる廣塲に坐して此事のためまた大雨のために震ひ慄けり
Ezra 10:10 時に祭司エズラ起て之に言けるは汝らは罪を犯し異邦の婦人を娶りてイスラエルの愆を増り
Ezra 10:11 然ば今なんぢらのの先祖の神ヱホバに懺悔してその御旨を行へ 即ち汝等この地の民等および異邦の婦人とはなるべしと
Ezra 10:12 會衆みな聲をあげて答へて言ふ 汝が我らに諭せるごとく我儕かならず爲べし
Ezra 10:13 然ど民は衆し 又今は大雨の候なれば我儕外に立こと能はず 且これは一日二日の事業にあらず 其は我らこの事について大に罪を犯したればなり
Ezra 10:14 然ば我らの牧伯等この全會衆のために立れよ 凡そ我儕の邑の内にもし異邦の婦人を娶りし者あらば皆定むる時に來るべし 又その各々の邑の長老および裁判人これに伴ふべし 斯して此事を成ば我らの神の烈しき怒つひに我らを離るるあらんと
Ezra 10:15 その時立てこれに逆ひし者はアサヘルの子ヨナタンおよびテクワの子ヤハジア而已メシユラムおよびレビ人シヤベタイこれを贊く
Ezra 10:16 俘囚より歸り來りし者つひに然なし 祭司エズラおよび宗家の長數人その宗家にしたがひて名指して撰ばれ十月の一日より共に坐してこの事を査べ
Ezra 10:17 正月の一日に至りてやうやく異邦の婦人を娶りし人々を盡く査べ畢れり
Ezra 10:18 祭司の徒の中にて異邦の婦人を娶りし者は即ちヨザダクの子ヱシュアの子等およびその兄弟マアセヤ、エリエゼル、ヤリブ、ゲダリヤ
Ezra 10:19 彼らはその妻を出さんといふ誓をなし已に愆を獲たればとて牡羊一匹をその愆のために獻げたり
Ezra 10:20 インメルの子孫ハナニおよびゼバデヤ
Ezra 10:21 ハリムの子孫マアセヤ、エリヤ、シマヤ、ヱヒエル、ウジヤ
Ezra 10:22 パシユルの子孫エリオエナイ、マアセヤ、イシマエル、ネタンエル、ヨザバデ、エラサ
Ezra 10:23 レビ人の中にてはヨザバデ、シメイ、ケラヤ(即ちケリタ)ペタヒヤ、ユダ、エリエゼル
Ezra 10:24 謳歌者の中にてはエリアシブ 門を守る者の中にてはシヤルム、テレムおよびウリ
Ezra 10:25 イスラエルの中にてはパロシの子孫ラミヤ、エジア、マルキヤ、ミヤミン、エレアザル、マルキヤ、ベナヤ
Ezra 10:26 エラムの子孫マッタニヤ、ゼカリヤ、ヱヒエル、アブデ、ヱレモテ、エリヤ
Ezra 10:27 ザットの子孫エリオエナイ、エリアシブ、マッタニヤ、ヱレモテ、ザバデ、アジザ
Ezra 10:28 ベバイの子孫ヨハナン、ハナニヤ、ザバイ、アテライ
Ezra 10:29 バニの子孫メシユラム、マルク、アダヤ、ヤシュブ、シヤル、ヱレモテ
Ezra 10:30 パハテモアブの子孫アデナ、ケラル、ベナヤ、マアセヤ、マッタニヤ、ベザレル、ビンヌイ、マナセ
Ezra 10:31 ハリムの子孫エリエゼル、ヱシヤ、マルキヤ、シマヤ、シメオン
Ezra 10:32 ベニヤミン、マルク、シマリヤ
Ezra 10:33 ハシュムの子孫マッテナイ、マツタタ、ザバデ、エリパレテ、ヱレマイ、マナセ、シメイ
Ezra 10:34 バニの子孫マアダイ、アムラム、ウエル
Ezra 10:35 ベナヤ、ベデヤ、ケルヒ
Ezra 10:36 ワニヤ、メレモテ、エリアシブ
Ezra 10:37 マッタニヤ、マッテナイ、ヤアス
Ezra 10:38 バニ、ビンヌイ、シメイ
Ezra 10:39 シレミヤ、ナタン、アダヤ
Ezra 10:40 マクナデバイ、シヤシヤイ、シヤライ
Ezra 10:41 アザリエル、シレミヤ、シマリヤ
Ezra 10:42 シヤルム、アマリヤ、ヨセフ
Ezra 10:43 ネボの子孫ヱイエル、マッタテヤ、ザバデ、ゼビナ、イド、ヨエル、ベナヤ
Ezra 10:44 是みな異邦の婦人を娶りし者なり その婦人の中には子女を産し者もありき
Nehemiah 0:0 ネヘミヤ記
Nehemiah 1:1 カリヤの子ネヘミヤの言詞 第二十年キスレウの月我シユシヤンの都にありける時
Nehemiah 1:2 わが兄弟の一人なるハナニ數人の者とともにユダより來りしかば我俘虜人の遺餘なる夫の逃れかへりしユダヤ人の事およびヱルサレムり事を問たづねしに
Nehemiah 1:3 彼ら我に言けるは俘虜人の遺餘なる夫の州内の民は大なる患難に遭ひ凌辱に遭ふ又ヱルサレムの石垣は打崩され其門は火に焚たりと
Nehemiah 1:4 我この言を聞坐りて泣き數日の間哀しみ断食し天の神に祈りて言ふ
Nehemiah 1:5 天の神ヱホバ大なる畏るべき神己を愛し己の誡命を守る者にむかひて契約を保ち恩恵を施こしたまふ者よ
Nehemiah 1:6 ねがはくは耳を傾むけ目を開きて僕の祈祷を聴いれたまへ我いま汝の僕なるイスラエルの子孫のために日夜なんぢの前に祈り我儕イスラエルの子孫が汝にむかひて犯せし罪を懺悔す誠に我も我父の家も罪を犯せり
Nehemiah 1:7 我らは汝にむかひて大に惡き事を行ひ汝の僕モーセに汝の命じたまひし誡命をも法度をも例規をも守らざりき
Nehemiah 1:8 請ふ汝の僕モーセに命じたまひし言を憶ひたまへ其言に云く汝ら若罪を犯さば我汝らを國々に散さん
Nehemiah 1:9 然れども汝らもし我にたちかへり我誡命を守りてこれを行なはば暇令逐れゆきて天の涯にをるとも我そこより汝等をあつめ我名を住はせんとて撰びし處にきたらしめんと
Nehemiah 1:10 そもそも是等の者は汝が大なる能力と強き手をもて贖ひたまひし汝の僕なんぢの民なり
Nehemiah 1:11 主よ請ふ僕の祈祷および汝の名を畏むことを悦こぶ汝の僕等の祈祷に耳を傾けたまへ願くは今日僕を助けて此人の目の前に隣憫を得させたまへこの時我は王の洒人なりき
Nehemiah 2:1 茲にアルタシヤスタ王の二十年ニサンの月王の前に酒のいでし時我酒をつぎて王にたてまつれり我は今まで王の前にて憂色を帯しこと有ざりき
Nehemiah 2:2 王われに言けるは汝は疾病も有ざるに何とて面に憂色を帯るや是他ならず心に憂ふる所あるなりと是において我甚だ大に懼れたりしが
Nehemiah 2:3 遂に王に奏して曰ふ願くは王長壽かれ我が先胆の墓の地たるその邑は荒蕪その門は火にて焚たれば我いかで顔に憂色を帯ざるを得んやと
Nehemiah 2:4 王われに向ひて然らば汝何をなさんと願ふやと言ければ我すなはち天の神に祈りて
Nehemiah 2:5 王に言けるは王もし之を善としたまひ我もし汝の前に恩を得たる者なりせば願くはユダにあるわが先祖の墓の邑に我を遣はして我にこれを建起さしめたまへと
Nehemiah 2:6 時に后妃も傍に坐しをりしが王われに言けるは汝が往てをる間は何程なるべきや何時頃歸りきたるやと王かく我を遣はすことを善としければ我期を定めて奏せり
Nehemiah 2:7 而して我また王に言けるは王もし善としたまはば請ふ河外ふの総督等に與ふる書を我に賜ひ彼らをして我をユダまで通さしめたまへ
Nehemiah 2:8 また王の山林を守るアサフに與ふる書をも賜ひ彼をして殿に属する城の門を作り邑の石垣および我が入べき家に用ふる材木を我に授けしめたまへと我神善く我を助けたまひしに因て王これを我に允せり
Nehemiah 2:9 是に於て我河外ふの総督等に詣りて王の書をこれに付せり王は軍長數人に騎兵をそへて我に件なはせたり
Nehemiah 2:10 時にホロニ人サンバラテおよびアンモニ人奴隷トビヤこれを聞きイスラエルの子孫の安寧を求むる人來れりとて大に憂ふ
Nehemiah 2:11 我ついにヱルサレムに到りて彼處に三日居りける後
Nehemiah 2:12 夜中に起いでたり數人の者われに伴なふ我はわが神がヱルサレムのために爲せんとて我心に入たまひし所の事を何人にも告しらせず亦我が乗る一匹の畜の外には畜を引つれざりき
Nehemiah 2:13 我すなはち夜中に立いで谷の門を通り龍井の對面を経糞門に至りてヱルサレムの石垣を閲せしにその石垣は頽れをりその門は已に火に焚てありき
Nehemiah 2:14 かくて又前みて泉の門にゆき王の池にいたりしに我が乗る畜の通るべき處なかりき
Nehemiah 2:15 我亦その夜の中に渓川に沿て進みのぼりて石垣を観めぐり頓て身を反して谷の門より歸りいりぬ
Nehemiah 2:16 然るに牧伯等は我が何處に往しか何を爲しかを知ざりき我また未だこれをユダヤ人にも祭司にも貴き人にも方伯等にも其他の役人にも告しらせざりしが
Nehemiah 2:17 遂に披らに言けるは汝らの見るごとく我儕の境遇は惡くヱルサレムは荒はてその門は火に焚たり來れ我儕ヱルサレムの石垣を築きあげて再び世の凌辱をうくることなからんと
Nehemiah 2:18 而して我わが神の善われを助けたまひし事を彼らに告げまた王の我に語りし言詞をも告しらせけれぱ去來起て築かんと言ひ皆奮ひてこの美事を認んとす
Nehemiah 2:19 時にホロニ人サンバラテ、アンモニ人奴隷トビヤおよびアラビヤ人ガシムこれを聞て我らを嘲けり我儕を悔りて言ふ汝ら何事をなすや王に叛かんとするなるかと
Nehemiah 2:20 我すなはち答へて彼らに言ふ天の神われらをして志を得させたまはん故に其僕たる我儕起て築くべし然ど汝らはヱルサレムに何の分もなく權理もなく記念もなしと
Nehemiah 3:1 茲に祭司の長ヱリアシブその兄弟の祭司等とともに起て羊の門を建て之を聖別てその扉を設け尚も之を聖別てハンメアの戌樓に及ぼし又ハナネルの戌樓に及ぼせり
Nehemiah 3:2 その次にはヱリコの人々を築き建て其次にはイムリの子ザツクル築き建たり
Nehemiah 3:3 魚の門はハツセナアの子等これを建構へその扉を設けて之に鎖と閂を施こせり
Nehemiah 3:4 その次にはハツコヅの子ウリヤの子メレモタ修繕をなし其次にはメシザベルの子ベレキヤの子メシユラム修繕をなしその次にはバアナの子ザドク修繕をなし
Nehemiah 3:5 その次にはテコア人等修繕をなせり但しその貴き族はその主の工事に服せざりき
Nehemiah 3:6 古門はパセアの子ヨイアダおよびベソデヤの子メシユラムこれを修繕ひ構へその扉を設けて之に鎖と閂を施せり
Nehemiah 3:7 その次にはギベオン人メラテヤ、メロノテ人ヤドン河外ふの総督の管轄に属するギベオンとミヅパの人々等修繕をなせり
Nehemiah 3:8 その次にはハルハヤの子ウジエルなどの金工修繕をなし其次には製香者ハナニヤなど修繕をなしヱルサレムを堅うして石垣の廣き處にまで及べり
Nehemiah 3:9 その次にはエルサレムの郡の半の知事ホルの子レパヤ修繕をなせり
Nehemiah 3:10 その次にはハルマフの子ヱダヤ己の家と相對ふ處を修繕りその次にはハシヤブニヤの子ハツトシ修繕をなせり
Nehemiah 3:11 ハリムの子マルキヤおよびバハテモアブの子ハシユブも一方を修繕ひまた爐戍樓を修繕へり
Nehemiah 3:12 その次にはヱルサレムの郡の半の知事ハロヘシの子シヤルムその女子等とともに修繕をなせり
Nehemiah 3:13 谷の門はハヌン、ザノアの民と偕に之を修繕ひ之を建なほしてその扉を設け之に鎖と閂を施しまた糞の門までの石垣一千キユビトを修繕り
Nehemiah 3:14 糞の門はベテハケレムの郡の半の知事レカブの子マルキヤこれを修繕ひ之を建なほしてその扉を設け之に鎖と閂を施こせり
Nehemiah 3:15 泉の門はミヅパの郡の知事コロホゼの子シヤルンこれを修繕ひ之を建なほして覆ひその扉を設け之に鎖と閂を施こしまた王の園の辺なるシラの池に沿る石垣を修繕てダビデの邑より下るところの階級にまで及ぼせり
Nehemiah 3:16 その後にはベテズルの郡の半の知事アズブクの子ネヘミヤ修繕をなしてダビデの墓に對ふ處にまで及ぼし堀池に至り勇士宅に至れり
Nehemiah 3:17 その後にはバニの子レホムなどのレビ人修繕をなし其次にはケイラの郡の半の知事ハシヤビヤその郡の爲に修繕をなせり
Nehemiah 3:18 その後にはケイラの郡の半の知事ヘナダデの子バワイなどいふ其兄弟修繕をなし
Nehemiah 3:19 その次にはヱシユアの子ミヅパの知事エゼル石垣の彎にある武器庫に上る所に對へる部分を修繕ひ
Nehemiah 3:20 その後にはザバイの子バルク力を竭して石垣の彎より祭司の長エリアシブの家の門までの部分を修繕ひ
Nehemiah 3:21 その次にはハツコヅの子ウリヤの子メレモテ、エリアシブの家の門よりエジアシブの家の極までの部分を修繕ひ
Nehemiah 3:22 その次には窪地の人なる祭司等修繕をなし
Nehemiah 3:23 その次にはベニヤミンおよびハシユブ己の家と相対ふ處を修繕ひ其次にはアナニヤの子マアセヤの子アザリヤ己の家に近き處を修繕ひ
Nehemiah 3:24 その次にはヘナダデの子ビンヌイ、アザリヤの家より石垣の彎角までの部分を修繕へり
Nehemiah 3:25 ウザイの子パラルは石垣の彎に對ふ處および王の上の家より聳え出たる戍樓に對ふ處を修繕り是は侍衛の廳に近し其次にはパロシの子ペダヤ修繕をなせり
Nehemiah 3:26 時にネテニ人オペルに住をりて東の方水の門に對ふ處および聳え出たる戍樓に對ふ處まで及べり
Nehemiah 3:27 その次にはテコア人聳出たる大戍樓に對ふところの部分を修繕てオペルの石垣に及ぼせり
Nehemiah 3:28 馬の門より上は祭司等おのおのその己の家と相對ふ處を修繕り
Nehemiah 3:29 その次にはインメルの子ザドク己の家と相對ふ處を修繕ひ其次にはシカニヤの子シマヤといふ東の門を守る者修繕をなし
Nehemiah 3:30 その次にはシレミヤの子ハナニヤおよびザラフの第六の子ハヌン一方を修繕ひその後にはベレキヤの子メシユラム己の室と相對ふ處を修繕へり
Nehemiah 3:31 その次には金工の一人マルキヤといふ者ハンミフカデの門と相對ふ處を修繕ひて隅の昇ロに至りネテニ人および商人の家に及ぼせり
Nehemiah 3:32 また隅の昇口と羊の門の間は金工および商人等これを修繕へり
Nehemiah 4:1 茲にサンバラテわれらが石垣を築くを聞て怒り大に憤ほりてユダヤ人を罵れり
Nehemiah 4:2 即ち彼その兄弟等およびサマリアの軍兵の前に語りて言ふ此軟弱しきユダヤ人何を爲や自ら強くせんとするか獻祭をなさんとするか一日に事を終んとするか塵堆の中の石は既に燬たるに之を取出して活さんとするかと
Nehemiah 4:3 時にアンモニ人トビヤその傍にありてまた言ふ彼らの築く石垣は狐上るも圮るべしと
Nehemiah 4:4 我らの神よ聴たまへ我らは侮らる願くは彼らの出す凌辱をその身の首に歸し彼らを他國に擄はれしめ掠られしめたまへ
Nehemiah 4:5 彼らの愆を蔽ひたまふ勿れ彼らの罪を汝の前より消去しめたまはざれ其は彼ら築建者の前にて汝の怒を惹おこしたればなり
Nehemiah 4:6 斯われら石垣を築きけるが石垣はみな已に相連なりてその高さの半にまで及べり其は民心をこめて操作たればなり
Nehemiah 4:7 然るにサンバラテ、トビヤ、アラビヤ人アンモニ人アシドド人等ヱルサレムの石垣改修れ其破壊も次第に塞がると聞て大に怒り
Nehemiah 4:8 皆ともに相結びてヱルサレムに攻來らんとしその中に擾亂をおこさんとせり
Nehemiah 4:9 是において我ら神に祈祷をなしかれらのために日夜守望者を置て之に備ふ
Nehemiah 4:10 ユダ人は言り荷を負ふ者の力衰へしが上に灰土おびただしくして我ら石垣を築くこと能はずと
Nehemiah 4:11 我らの敵は言り彼等が知ずまた見ざる間に我ら其中に入り之を殺してその工事を止めんと
Nehemiah 4:12 又彼らの辺に住るユダヤ人來る時は我らに告て言ふ汝ら我らの所に歸らざるべからずと其事十次にも及べり
Nehemiah 4:13 是に因て我石垣の後の顕露なる低き處に民を置き劍鎗または弓を持せてその宗族にしたがひて之をそなふ
Nehemiah 4:14 我観めぐり起て貴き人々および牧伯等ならびにその餘の民に告て云ふ汝ら彼等のために懼るる勿れ主の大にして畏るべきを憶ひ汝らの兄弟のため男子女子のため妻および家のために戦かへよと
Nehemiah 4:15 我らの敵おのが事の我らに知れたるをききておのが謀計を神に破られたるを聞しによりて我ら皆石垣に歸り各々その工事をなせり
Nehemiah 4:16 其時より後わが僕半は工事に操作き半は鎗楯弓などを持て鎧を着たり牧伯等はユダの全家の後にありき
Nehemiah 4:17 石垣を築く者および荷を負ひはこぶ者は各々片手もて工事を爲し片手に武器を執り
Nehemiah 4:18 築建者はおのおのその腰に劍を帯て築き建つ又喇叭を吹く者は我傍あり
Nehemiah 4:19 我貴き人々および牧伯等ならびにその餘の民に告て云ふ此工事は大にして廣ければ我儕石垣にありて彼此に相離ること遠し
Nehemiah 4:20 何處にもあれ汝ら喇叭の音のきこゆるを聞ば其處に奔あつまりて我らに就け我らの神われらのために戦ひたまふべしと
Nehemiah 4:21 我ら斯して工事をなしけるが半の者は東雲の出るより星の現はるるまで鎗を持をれり
Nehemiah 4:22 當時われ亦民に言らく皆おのおのその僕とともにヱルサレムの中に宿り夜は我らの防守となり昼は工事をつとむべしと
Nehemiah 4:23 而して我もわが兄弟等もわが僕も我に從がふ防守の人々もその衣服を脱す水を汲に出るにも皆武器を執れり
Nehemiah 5:1 茲に民その妻とともにその兄弟なるユダヤ人にむかひて大に叫べり
Nehemiah 5:2 或人言ふ我儕および我らの男子女子は多し我ら穀物を得食ふて生ざるべからず
Nehemiah 5:3 或人は言ふ我らは我らの田畑葡萄園および家をも質となすなり既に飢に迫れば我らに穀物を獲させよ
Nehemiah 5:4 或は言ふ我らは我らの田畝および葡萄園をもて金を貸て王の租税を納む
Nehemiah 5:5 然ど我らの肉も我らの兄弟の肉と同じく我らの子女も彼らの子女と同じ視よ我らは男子女子を人に伏從はせて奴隷となす我らの女子の中すでに人に伏從せし者もあり如何とも爲ん方法なし其は我らの田畝および葡萄園は別の人の有となりたればなりと
Nehemiah 5:6 我は彼らの叫および是等の言を聞て大に怒れり
Nehemiah 5:7 是において我心に思ひ計り貴き人々および牧伯等を責てこれに言けるは汝らは各々その兄弟より利息を取るなりと而して我かれらの事につきて大會を開き
Nehemiah 5:8 彼らに言けるは我らは異邦人の手に売れたる我らの兄弟ユダヤ人を我らの力にしたがひて贖へり然るにまた汝等は己の兄弟を売んとするやいかで之をわれらの手に売るべけんやと彼らは黙して言なかりき
Nehemiah 5:9 我また言けるは汝らの爲すところ善らず汝らは我らの敵たる異邦人の誹膀をおもひて我儕の神を畏れつつ事をなすべきに非ずや
Nehemiah 5:10 我もわが兄弟および僕等も同じく金と穀物とを貸て利息を取ことをなす願くは我らこの利息を廃ん
Nehemiah 5:11 請ふ汝ら今日にも彼らの田畝葡萄園橄欖園および家を彼らに還しまた彼らに貸あたへて金穀物および酒油などの百分の一を取ることを廃よと
Nehemiah 5:12 彼ら即ち言けるは我ら之を還すべし彼らに何をも要めざらん汝の言るごとく我ら然なすべしと是に於て我祭司を呼び彼らをして此言のごとく行なふといふ誓を立しめたり
Nehemiah 5:13 而して我わが胸懐を打拂ひて言ふ是言を行はざる者をば臨くは神是のごとく凡て打拂ひてその家およびその業を離れさせたまへ即ちその人は斯打拂はれて空しくなれかしと時に會衆みなアーメンと言てヱホバを讃美せり而して民はこの言のごとくに行へり
Nehemiah 5:14 且また我がユダの地の総督に任ぜられし時より即ちアルタシヤユタ王の二十年より三十二年まで十二年の間は我もわが兄弟も総督の受べき禄を食ざりき
Nehemiah 5:15 わが以前にありし旧の総督等は民に重荷を負せてパンと酒とを是より取り其外にまた銀四十シケルを取れり然のみならずその僕等も亦民を圧せり然ども我は神を畏るるに因て然せざりき
Nehemiah 5:16 我は反てこの石垣の工事に身を委ね我儕は何の田地をも買しこと無し我僕は皆かしこに集りて工事をなせり
Nehemiah 5:17 且また我席にはユダヤ人および牧伯等百五十人あり其外にまた我らの周圍の異邦人の中より我らに來れる者等もありき
Nehemiah 5:18 是をもて一日に牛一匹肥たる羊六匹を備へ亦鶏をも許多備へ十日に一回種々の酒を多く備へたり是ありしかどもこの民の役おもきに因て我は総督の受くべき禄を要めざりき
Nehemiah 5:19 わが神よ我が此民のために爲る一切の事を憶ひ仁慈をもて我をあしらひ給へ
Nehemiah 6:1 サンバラテ、トビヤおよびアラビヤ人ガシムならびにその餘の我らの敵我が石垣を築き終りて一の破壊も遺らずと聞り(然どその時は未だ門に扉を設けざりしなり)
Nehemiah 6:2 是においてサンバラテとガシム我に言つかはしけるは來れ我らオノの平野なる某の村にて相會せんとその實は我を害せんと思ひしなり
Nehemiah 6:3 我すなはち使者を彼らに遣はして言らく我は大なる工事をなし居れば下りゆくことを得ずなんぞ工事を離れ汝らの所に下りゆきてその間工事を休ますべけんやと
Nehemiah 6:4 彼ら四次まで是のごとく我に言遣はしけるが我は何時もかくのごとく之に答へたり
Nehemiah 6:5 是においてサンバラテまた五次目にその僕を前のごとく我に遣はせり其手には封ぜざる書を携さふ
Nehemiah 6:6 その文に云く國々にて言博ふガシムもまた然いふ汝はユダヤ人とともに叛かんとして之がために石垣を築けり而して汝はその王とならんとすとその言ところ是のごとし
Nehemiah 6:7 また汝は預言者を設けて汝の事をヱルサレムに宣しめユダに王ありと言しむといひ傳ふ恐くはその事この言のごとく王に聞えん然ば汝いま來れ我ら共に相議らんと
Nehemiah 6:8 我すなはち彼に言つかはしけるは汝が言るごとき事を爲し事なし惟なんぢ之を己の心より作りいだせるなりと
Nehemiah 6:9 彼らは皆われらを懼れしめんとせり彼ら謂らく斯なさば彼ら手弱りて工事を息べければ工事成ざるべしと今ねがはくは我手を強くしたまへ
Nehemiah 6:10 かくて後我メヘタベルの子デラヤの子シマヤの家に往しに彼閉こもり居て言らく我ら神の室に到りて神殿の内に相會し神殿の戸を閉おかん彼ら汝を殺さんとて來るべければなり必ず夜のうちに汝を殺さんとて來るべしと
Nehemiah 6:11 我言けるは我ごとき人いかで逃べけんや我ごとき身にして誰か神殿に入て生命を全うすることを爲んや我は入じと
Nehemiah 6:12 我暁れるに神かれを遣はしたまひしに非ず彼が我にむかひて此預言を説しはトビヤとサンバラテ彼に賄賂したればなり
Nehemiah 6:13 彼に賄賂せしは此事のためなり即ち我をして懼れて然なして罪を犯さしめ惡き名を我に負する種を得て我を辱しめんとてなりき
Nehemiah 6:14 わが神よトビヤ、サンバラテおよび女預言者ノアデヤならびにその他の預言者など凡て我を懼れしめんとする者等を憶えてその行爲に報をなしたまへ
Nehemiah 6:15 石垣は五十二日を歴てエルルの月の二十五日に成就せり
Nehemiah 6:16 我らの敵皆これを聞ければ我らの周圍の異邦人は凡て怖れ大に面目をうしなへり其は彼等この工事は我らの神の爲たまひし者なりと暁りたればなり
Nehemiah 6:17 其頃ユダの貴き人々しばしば書をトビヤにおくれりトビヤの書もまた彼らに來れり
Nehemiah 6:18 トビヤはアラの子シカニヤの婿なるをもてユダの中に彼と盟を結べる者多かりしが故なりトビヤの子ヨハナンも亦ベレキヤの子メシユラムの女子を妻に娶りたり
Nehemiah 6:19 彼らはトビヤの善行を我前に語りまた我言を彼に通ぜりトビヤは常に書をおくりて我を懼れしめんとせり
Nehemiah 7:1 石垣を築き扉を設け門を守る者謳歌者およびレビ人を立るにおよびて
Nehemiah 7:2 我わが兄弟ハナニおよび城の宰ハナニヤをしてヱルサレムを治めしむ彼は忠信なる人にして衆多の者に超りて神を畏るる者なり
Nehemiah 7:3 我かれらに言ふ日の熱くなるまではヱルサレムの門を啓くべからず人々の立て守りをる間に門を閉させて汝らこれを堅うせよ汝らヱルサレムの民を番兵に立て各々にその所を守らしめ各々にその家と相對ふ處を守らしめよと
Nehemiah 7:4 邑は廣くして大なりしかどもその内の民は寡くして家は未だ建ざりき
Nehemiah 7:5 我神はわが心に貴き人々牧伯等および民を集めてその名簿をしらぶる思念を起さしめたまへり我最先に上り來りし者等の系図の書を得て見にその中に書しるして曰く
Nehemiah 7:6 往昔バビロンの王ネブカデネザルに擄へられバビロンに遷されたる者のうち俘囚をゆるされてヱルサレムおよびユダに上りおのおの己の邑に歸りし此州の者は左の如し 是皆ゼルバベル、ヱシユア、ネヘミヤ、アザリヤ、ラアミヤ、ナハマニ、モルデカイ、ビルシヤン、ミスペレテ、ビグワイ、ネホム、バアナ等に隨ひ來れり
Nehemiah 7:7 そのイスラエルの民の人數は是のごとし
Nehemiah 7:8 パロシの子孫二千百七十二人
Nehemiah 7:9 シパテヤの子孫三百七十二人
Nehemiah 7:10 アラの子孫六百五十二人
Nehemiah 7:11 ヱシユアとヨアブの族たるパハテモアブの子孫二千八百十八人
Nehemiah 7:12 エラムの子孫千二百五十四人
Nehemiah 7:13 ザツトの子孫八百四十五人
Nehemiah 7:14 ザツカイの子孫七百六十人
Nehemiah 7:15 ビンヌイの子孫六百四十八人
Nehemiah 7:16 ベバイの子孫六百二十八人
Nehemiah 7:17 アズガデの子孫二千三百二十二人
Nehemiah 7:18 アドニカムの子孫六百六十七人
Nehemiah 7:19 ビグワイの子孫二千六十七人
Nehemiah 7:20 アデンの子孫六百五十五人
Nehemiah 7:21 ヒゼキヤの家のアテルの子孫九十八人
Nehemiah 7:22 ハシユムの子孫三百二十八人
Nehemiah 7:23 ベザイの子孫三百二十四人
Nehemiah 7:24 ハリフの子孫百十二人
Nehemiah 7:25 ギベオンの子孫九十五人
Nehemiah 7:26 ベテレヘムおよびネトパの人百八十八人
Nehemiah 7:27 アナトテの人百二十八人
Nehemiah 7:28 ベテアズマウテの人四十二人
Nehemiah 7:29 キリアテヤリム、ケピラおよびベエロテの人七百四十三人
Nehemiah 7:30 ラマおよびゲバの人六百二十一人
Nehemiah 7:31 ミクマシの人百二十二人
Nehemiah 7:32 ベテルおよびアイの人百二十三人
Nehemiah 7:33 他のネボの人五十二人
Nehemiah 7:34 他のエラムの民千二一百五十四人
Nehemiah 7:35 ハリムの民三百二十人
Nehemiah 7:36 ヱリコの民三百四十五人
Nehemiah 7:37 ロド、ハデデおよびオノの民七百二十一人
Nehemiah 7:38 セナアの子孫三千九百三十人
Nehemiah 7:39 祭司はヱシユアの家のヱダヤの子孫九百七十三人
Nehemiah 7:40 インメルの子孫千五十二人
Nehemiah 7:41 パシユルの子孫一千二百四十七人
Nehemiah 7:42 ハリムの子孫一千十七人
Nehemiah 7:43 レビ人はホデワの子等ヱシユアとカデミエルの子孫七十四人
Nehemiah 7:44 謳歌者はアサフの子孫百四十八人
Nehemiah 7:45 門を守る者はシヤルムの子孫アテルの子孫タルモンの子孫アツクブの子孫ハテタの子孫シヨバイの子孫百三十八人
Nehemiah 7:46 ネテニ人はジハの子孫ハスパの子孫タバオテの子孫
Nehemiah 7:47 ケロスの子孫シアの子孫パドンの子孫
Nehemiah 7:48 レバナの子孫ハガバの子孫サルマイの子孫
Nehemiah 7:49 ハナンの子孫ギデルの子孫ガハルの子孫
Nehemiah 7:50 レアヤの子孫レヂンの子孫ネコダの子孫
Nehemiah 7:51 ガザムの子孫ウザの子孫パセアの子孫
Nehemiah 7:52 ベサイの子孫メウニムの子孫ネフセシムの子孫
Nehemiah 7:53 バクブクの子孫ハクパの子孫ハルホルの子孫
Nehemiah 7:54 バヅリテの子孫メヒダの子孫ハルシヤの子孫
Nehemiah 7:55 バルコスの子孫シセラの子孫テマの子孫
Nehemiah 7:56 ネヂアの子孫ハテパの子孫等なり
Nehemiah 7:57 ソロモンの僕たりし者等の子孫は即ちソタイの子孫ソペレテの子孫ペリダの子孫
Nehemiah 7:58 ヤアラの子孫ダルコンの子孫ギデルの子孫
Nehemiah 7:59 シパテヤの子孫ハツテルの子孫ポケレテハツゼバイムの子孫アモンの子孫
Nehemiah 7:60 ネテニ人とソロモンの僕たりし者等の子孫とは合せて三百九十二人
Nehemiah 7:61 またテルメラ、テルハレサ、ケルブ、アドンおよびインメルより上り來れる者ありしがその宗家とその血統とを示してイスラエルの者なるを明かにすることを得ざりき
Nehemiah 7:62 是すなはちデラヤの子孫トビヤの子孫ネコダの子孫にして合せて六百四十二人
Nehemiah 7:63 祭司の中にホバヤの子孫ハツコヅの子孫バルジライの子孫ありバルジライはギレアデ人バルジライの女を妻に娶りてその名を名りしなり
Nehemiah 7:64 是等の者系圖に載る者等の中にその籍を尋ねたれども在ざりき是故に汚れたる者として祭司の中より除かれたり
Nehemiah 7:65 テルシヤタ即ち之に告てウリムとトンミムを帯る祭司の興るまでは至聖物を食ふべからずと言り
Nehemiah 7:66 會衆あはせて四萬二千三百六十人
Nehemiah 7:67 この外にその僕婢七千三百三十七人謳歌男女二百四十五人あり
Nehemiah 7:68 その馬七百三十六匹その騾二百四十五匹
Nehemiah 7:69 駱駝四百三十五匹驢馬六千七百二十匹
Nehemiah 7:70 宗家の長の中工事のためにを納めし人々ありテルシヤタは光一千ダリク鉢五十祭司の衣服五百三十襲を施して庫に納む
Nehemiah 7:71 また宗家の長數人は金二萬ダリク銀二千二百斤を工事のために庫に納む
Nehemiah 7:72 その餘の民の納めし者は金二萬ダリク銀二千斤祭司の衣服六十七襲なりき
Nehemiah 7:73 かくて祭司レビ人門を守る者謳歌者民等ネテニ人およびイスラエル人すべてその邑々に住り イスラエルの子孫かくてその邑々に住みをりて七月にいたりぬ
Nehemiah 8:1 茲に民みな一人のごとくになりて水の門の前なる廣場に集り學士エズラに請てヱホバのイスラエルに命じたまひしモーセの律法の書を携へきたらんことを求めたり
Nehemiah 8:2 この日すなはち七月一日祭司エズラ律法を携へ來りてその集りをる男女および凡て聴て了ることを得るところの人々の前に至り
Nehemiah 8:3 水の門の前なる廣場にて曙より日中まで男女および了り得る者等の前にこれを誦めり民みな律法の書に耳を傾く
Nehemiah 8:4 學士エズラこの事のために預て設けたる木の台の上に立たりしがその傍には右の方にマツタテヤ、シマ、アナヤ、ウリヤ、ヒルキヤおよびマアセヤ立をり左の方にペダヤ、ミサエル、マルキヤ、ハシユム、ハシバダナ、ゼカリヤおよびメシユラム立をる
Nehemiah 8:5 エズラ一切の民の目の前にその書を開けり(彼一切の民より高きところに立たり)かれが開きたる時に民みな起あがれり
Nehemiah 8:6 エズラすなはち大神ヱホバを祝しければ民みなその手を挙て應へてアーメン、アーメンと言ひ首を下げ地に俯伏てヱホバを拝めり
Nehemiah 8:7 ヱシユア、バニ、セレビヤ、ヤミン、アツクブ、シヤベタイ、ホデヤ、マアセヤ、ケリタ、アザリヤ、ヨザバテ、ハナン、ペラヤおよびレビ人等民に律法を了らしめたり民はその所に立をる
Nehemiah 8:8 彼等その書に就て神の律法を朗かに誦み且その意を解あかしてその誦ところを之に了らしむ
Nehemiah 8:9 時にテルシヤタたるネヘミヤ祭司たる學士エズラおよび民を教ふるレビ人等一切の民にむかひて此日は汝らの神ヱホバの聖日なり哭くなかれ泣なかれと言り其は民みな律法の言を聴て泣たればなり
Nehemiah 8:10 而して彼らに言けるは汝ら去て肥たる者を食ひ甘き者を飮め而してその備をなし得ざる者に之を分ちおくれ此日は我らの主の聖日なり汝ら憂ふることをせざれヱホバを喜ぶ事は汝らの力なるぞかしと
Nehemiah 8:11 レビ人も亦一切の民を静めて言ふ汝ら黙せよ此日は聖きぞかし憂ふる勿れと
Nehemiah 8:12 一切の民すなはち去りて食ひかつ飮み又人に分ちおくりて大なる喜悦をなせり是はその誦きかされし言を了りしが故なり
Nehemiah 8:13 その翌日一切の民の族長等祭司およびレビ人等律法の語を學ばんとて學士エズラの許に集り來り
Nehemiah 8:14 律法を視るにヱホバのモーセによりて命じたまひし所を録して云く七月の節會にはイスラエルの子孫茅廬に居るべしと
Nehemiah 8:15 又云く一切の邑々及びヱルサレムに布傅へて言べし汝ら山に出ゆき橄欖の枝油木の枝烏拈の枝棕櫚の枝および茂れる木の枝を取きたりて録されたるごとくに茅廬を造れと
Nehemiah 8:16 是において民出ゆきて之を取きたり各々その家の屋背の上あるひはその庭あるひは神の室の庭あるひは水の門の廣場あるひはエフライムの門の廣場に茅廬を造れり
Nehemiah 8:17 擄はれゆきて歸り來りし會衆みな斯茅廬を造りて茅廬に居りヌンの子ヨシユアの日より彼日までにイスラエルの子孫斯おこなひし事なし是をもてその喜悦はなはだ大なりき
Nehemiah 8:18 初の日より終の日までエズラ日々に神の律法の書を誦り人衆七日の間節筵をおこなひ第八日にいたり例にしたがひて聖會を開けり
Nehemiah 9:1 その月の二十四日にイスラエルの子孫あつまりて断食し麻布を纒ひ土を蒙れり
Nehemiah 9:2 イスラエルの裔たる者一切の異邦人とはなれ而して立て己の罪と先組の愆とを殲悔し
Nehemiah 9:3 皆おのおのがその處に立てこの日の四分の一をもてその神ヱホバの律法の書を誦み他の四分の一をもて懺悔をなしその神ヱホバを拝めり
Nehemiah 9:4 時にヱシユア、バニ、カデミエル、シバニヤ、ブンニ、セレビヤ、バニ、ケナニ等レビ人の台に立ち大聲を挙てその神ヱホバに呼はれり
Nehemiah 9:5 斯てまたヱシユア、カデミエル、バニ、ハシヤブニヤ、セレビヤ、ホデヤ、セバニヤ、ペタヒヤなどのレビ人言けらく汝ら起あがり永遠より永遠にわたりて在す汝らの神ヱホバを讃よ汝の尊き御名は讃べきかな是は一切の讃にも崇にも遠く超るなり
Nehemiah 9:6 汝は唯なんぢのみヱホバにまします汝は天と諸天の天およびその萬象地とその上の一切の物ならびに海とその中の一切の物を造り之をことごとく保存せたまふなり天軍なんぢを拝す
Nehemiah 9:7 汝はヱホバ神にまします汝は在昔アブラムを撰みてカルデヤのウルより之を導きいだしアブラハムといふ名をこれにつけ
Nehemiah 9:8 その心の汝の前に忠信なるを観そなはし之に契約を立てカナン人ヘテ人アモリ人ペリジ人ヱブス人およびギルガシ人の地をこれに與へその子孫に授けんと宣まひて終に汝の言を成たまへり汝は實に義し
Nehemiah 9:9 汝は我らの先祖がエジプトにて艱難を受るを鑒みその紅海の邊にて呼はり叫ぶを聴いれ
Nehemiah 9:10 異兆と奇蹟とをあらはしてパロとその諸臣とその國の庶民とを攻たまへりそはかれらは傲りて我らの先祖等を攻しことを知たまへばなり而して汝の名を揚たまへること尚今日のごとし
Nehemiah 9:11 汝はまた彼らの前にあたりて海を分ち彼らをして旱ける地を踏て海の中を通らしめ彼らを追ふ者をば石を大水に投いるるごとくに淵に投いれたまひ
Nehemiah 9:12 また昼は雲の柱をもて彼らを導き夜は火の柱をもて其往べき路を照したまひき
Nehemiah 9:13 汝はまたシナイ山の上に降り天より彼らと語ひ正しき例規および眞の律法善き法度および誡命を之に授け
Nehemiah 9:14 汝の聖安息日を之に示し汝の僕モーセの手によりて誡命と法度と律法を之に命じ
Nehemiah 9:15 天より食物を之に與へてその餓をとどめ磐より水を之がために出してその渇を濕し且この國をなんぢらに與へんと手を挙て誓ひ給ひしその國に入これを獲べきことをかれらに命じたまへり
Nehemiah 9:16 然るに彼等すなはち我らの先祖みづから傲りその項を強くして汝の賊命に聴したがはず
Nehemiah 9:17 聴從ふことを拒み亦なんぢが其中にて行ひたまひし奇蹟を憶はず還てその項を強くし悖りて自ら一人の首領を立てその奴隷たりし處に歸らんとせり然りと雖も汝は罪を赦す神にして恩恵あり憐憫あり怒ること遅く慈悲厚くましまして彼らを棄たまはざりき
Nehemiah 9:18 また彼ら自ら一箇の犢を鋳造りて是は汝をエジプトより導き上りし汝の神なりと言て大に震怒をひきおこす事を行ひし時にすら
Nehemiah 9:19 汝は重々も憐憫を垂て彼らを荒野に棄たまはず昼は雲の柱その上を離れずして之を途に導き夜は火の柱離れずして之を照しその行べき路を示したりき
Nehemiah 9:20 汝はまた汝の善霊を賜ひて彼らを訓へ汝のマナを常に彼らの口にあたへまた水を彼らに與へてその渇をとどめ
Nehemiah 9:21 四十年の間かれらを荒野に養ひたまたれば彼らは何の缺る所もなくその衣服も古びずその足も腫ざりき
Nehemiah 9:22 而して汝諸國諸民を彼らにあたへて之を各々に分ち取しめ給へりかれらはシホンの地ヘシボンの王の地およびバシヤンの王オグの地を獲たり
Nehemiah 9:23 斯てまた汝は彼らの子孫を増て空の星のごなくならしめ前にその先祖等に入て獲よと宣まひたる地に之を導きいりたまひしかば
Nehemiah 9:24 則ちその子孫入てこの地を獲たり期て汝この地にすめるカナン人をかれらの前に打伏せその王等およびその國の民をかれらの手に付して意のままに之を待はしめたまひき
Nehemiah 9:25 斯りしかば彼ら堅固なる邑々および膏腴なる地を取り各種の美物の充る家鑿井葡萄園橄欖園および許多の菓の樹を獲乃はち食ひて飽き肥太り汝の大なる恩恵に沾ひて樂みたりしが
Nehemiah 9:26 尚も悖りて汝に叛き汝の律法を後に抛擲ち己を戒しめて汝に歸らせんとしたる預言者等を殺し大に震怒を惹おこす事を行なへり
Nehemiah 9:27 是に因て汝かれらをその敵の手に付して窘しめさせたまひしが彼らその艱難の時に汝に呼はりければ汝天より之を聴て重々も憐憫を加へ彼らに救ふ者を多く與へて彼らをその敵の手より救はせたまへり
Nehemiah 9:28 然るに彼らは安を獲の後復も汝の前に惡き事を行ひしかば汝かれらをその敵の手に棄おきて敵にこれを治めしめたまひけるが彼ら復立歸りて汝に呼はりたれば汝天よりこれを聴き憐憫を加へてしばしば彼らを助け
Nehemiah 9:29 彼らを汝の律法に引もどさんとして戒しめたまへり然りと雖も彼らは自ら傲りて汝の誡命に聴したがはず汝の例規(人のこれを行はば之によりて生べしといふ者)を犯し肩を聳かし項を強くして聴ことをせざりき
Nehemiah 9:30 斯りしかど汝は年ひさしく彼らを容しおき汝の預言者等に由て汝の霊をもて彼らを戒めたまひしが彼等つひに耳を傾けざりしに因て彼らを國々の民等の手に付したまへり
Nehemiah 9:31 されど汝は憐憫おほくして彼らを全くは絶さず亦彼らを棄たまふことをも爲たまはざりき汝は恩恵あり憐憫ある神にましませばなり
Nehemiah 9:32 然ば我らの神大にして力強く且畏るべくして契約を保ち恩恵を施こしたまふ御神ねがはくはアツスリヤの王等の日より今日にいたるまで我儕の王等牧伯等祭司預言者我らの先祖汝の一切の民等に臨みし諸の苦難を小き事と観たまはざれ
Nehemiah 9:33 我らに臨みし諸の事につきては汝義く在せり汝の爲たまひし所は誠實にして我らの爲しところは惡かりしなり
Nehemiah 9:34 我らの王等牧伯等祭司父祖等は汝の律法を行はず汝が用ひて彼らを戒しめたまひしその誡命と證詞に聴從はざりき
Nehemiah 9:35 即ち彼らは己の國に居り汝の賜ふ大なる恩恵に沾ひ汝が與へてその前に置たまひし廣き膏腴なる地にありける時に汝に事ふることを爲ず又ひるがへりて自己の惡き業をやむる事もせざりしなり
Nehemiah 9:36 鳴呼われらは今日奴隷たり汝が我らの先祖に與へてその中の産出物およびその中の佳物を食はせんとしたまひし地にて我らは奴隷となりをるこそはかなけれ
Nehemiah 9:37 この地は汝が我らの罪の故によりて我らの上に立たまひし王等のために衆多の産物を出すなり且また彼らは我らの身をも我らの家畜をも意のままに左右することを得れば我らは大難の中にあるなり 此もろもろの事のために我ら今堅き契約を立てこれを書しるし我らの牧伯等我らのレビ人我らの祭司これに印す
Nehemiah 10:1 印を捺る者はハカリヤの子テルシヤタ、ネヘミヤおよびゼデキヤ
Nehemiah 10:2 セラヤ、アザリヤ、ヱレミヤ
Nehemiah 10:3 パシユル、アマリヤ、マルキヤ、
Nehemiah 10:4 ハツトシ、シバニヤ、マルク
Nehemiah 10:5 ハリム、メレモテ、オバデヤ
Nehemiah 10:6 ダニエル、ギンネトン、バルク
Nehemiah 10:7 メシユラム、アビヤ、ミヤミン
Nehemiah 10:8 マアジア、ビルガ、シマヤ是等は祭司たり
Nehemiah 10:9 レビ人は即ちアザニヤの子ヱシユア 、ヘナダデの子ビンヌイ、カデミエル
Nehemiah 10:10 ならびに其兄弟シバ二ヤ、ホデヤ、ケリタ、ペラヤ、ハナン
Nehemiah 10:11 ミカ、レホブ、ハシヤビヤ
Nehemiah 10:12 ザツクル、セレビヤ、シバ二ヤ
Nehemiah 10:13 ホデヤ、バニ、ベニヌ
Nehemiah 10:14 民の長たる者はパロシ、パハテモアブ、エラム、ザツト、バニ
Nehemiah 10:15 ブンニ、アズカデ、ベバイ
Nehemiah 10:16 アドニヤ、ビグワイ、アデン
Nehemiah 10:17 アテル、ヒゼキヤ、アズル
Nehemiah 10:18 ホデヤ、ハシユム、ベザイ
Nehemiah 10:19 ハリフ、アナトテ、ノバイ
Nehemiah 10:20 マグピアシ、メシユラム、ヘジル
Nehemiah 10:21 メシザベル、ザドク、ヤドア
Nehemiah 10:22 ペラテヤ、ハナン、アナニヤ
Nehemiah 10:23 ホセア、ハナニヤ、ハシユブ
Nehemiah 10:24 ハロヘシ、ピルハ、シヨベク
Nehemiah 10:25 レホム、ハシヤブナ、マアセヤ
Nehemiah 10:26 アヒヤ、ハナン、アナン
Nehemiah 10:27 マルク、ハリム、バアナ
Nehemiah 10:28 その餘の民祭司レビ人門をまもる者謳歌者ネテニ人ならびに都て國々の民等と離れて神の律法に附る者およびその妻その男子女子など凡そ事を知り辨まふる者は
Nehemiah 10:29 皆その兄弟たる貴き人々に附したがひ呪胆に加はり誓を立て云く我ら神の僕モーセによりて傳はりし神の律法に歩み我らの主ヱホバの一切の誡命およびその例規と法度を守り行はん
Nehemiah 10:30 我らは此地の民等に我らの女子を與へじ亦われらの男子のために彼らの女子を娶らじ
Nehemiah 10:31 比地の民等たとひ貨物あるひは食物を安息日に携へ來りて売んとするとも安息日または聖日には我儕これを取じ又七年ごとに耕作を廃め一切の負債を免さんと
Nehemiah 10:32 我らまた自ら例を設けて年々にシケルの三分の一を出して我らの神の室の用となし
Nehemiah 10:33 供物のパン常素祭常燔祭のため安息日月朔および節会の祭物のため聖物のためイスラエルの贖をなす罪祭および我らの神の家の諸の工のために之を用ゐることを定む
Nehemiah 10:34 また我ら祭司レビ人および民籤を掣き律法に記されたるごとく我らの神ヱホバの壇の上に焚べき薪水の禮物を年々定まれる時にわれらの宗家にしたがひて我らの神の室に納むる者を定め
Nehemiah 10:35 かつ誓ひて云ふ我らの産物の初および各種の樹の果の初を年々ヱホバの室に携へきたらん
Nehemiah 10:36 また我らの子等および我らの獣畜の首出および我らの牛羊の首出を律法に記されたるごとく我らの神の室に携へ來りて我らの神の室に事ふる祭司に交し
Nehemiah 10:37 我らの麥粉の初われらの挙祭の物各種の樹の果および洒油を祭司の許に携へ到りて我らの神の家の室に納め我らの産物の什一をレビ人に與へんレビ人は我らの一切の農作の邑においてその什一を受べき者なればなり
Nehemiah 10:38 レビ人什一を受る時にはアロンの子孫たる祭司一人そのレビ人と偕にあるべし而してまたレビ人はその什一の十分の一を我らの神の家に携へ上りて府庫の諸室に納むべし
Nehemiah 10:39 即ちイスラエルの子孫およびレビの子孫は穀物および酒油の挙祭を携さへいたり聖所の器皿および奉事をする祭司門を守る者謳歌者などが在るところの室に之を納むべし我らは我らの神の家を棄じ
Nehemiah 11:1 民の牧伯等はヱルサレムに住りその餘の民もまた籤を掣き十人の中よりして一人宛を聖邑ヱルサレムに來りて住しめその九人を他の邑々に住しめたり
Nehemiah 11:2 又すべて自ら進でヱルサレムに住んと言ふ人々は民これを祝せり
Nehemiah 11:3 イスラエル祭司レビ人ネテニ人およびソロモンの臣僕たりし者等の子孫すべてユダの邑々にありておのおのその邑々なる自己の所有地に住をれり此州の貴き人々のヱルサレムに住をりし者は左のごとし
Nehemiah 11:4 即ちユダの子孫およびベニヤミンの子孫のヱルサレムに住る者は是なりユダの子孫はウジヤの子アタヤ、ウジヤはゼカリヤの子ゼカリヤはアマリヤの子アマリヤはシパテヤの子シパテヤはマハラレルの子是はペレズの子孫なり
Nehemiah 11:5 又バルクの子マアセヤといふ者ありバルクはコロホゼの子コロホゼはハザヤの子ハザヤはアダヤの子アダヤはヨヤリブの子ヨヤリプはゼカリヤの子ゼカリヤはシロニ人の子なり
Nehemiah 11:6 ペレズの子孫のヱルサレムに住る者は合せて四百六十八人にして皆勇士なり
Nehemiah 11:7 ベニヤミンの子孫は左のごとしメシユラムの子サル、メシユラムはヨエデの子ヨエデはペダヤの子ペダヤはコラヤの子コラヤはマアセヤの子マアセヤはイテエルの子イテエルはヱサヤの子なり
Nehemiah 11:8 その次はガバイおよびサライなどにして合せて九百二十八人
Nehemiah 11:9 ジクリの子ヨエルかれらの監督たりハツセヌアの子ユダこれに副ふて邑を治む
Nehemiah 11:10 祭司はヨヤリブの子ヱダヤ、ヤキン
Nehemiah 11:11 および神の室の宰セラヤ、セラヤはヒルヤキの子ヒルキヤはメシユラムの子メシユラムはザドクの子ザドクはメラヨテの子メラヨテはアヒトブの子なり
Nehemiah 11:12 殿の職事をするその兄弟八百二十二人あり又アダヤといふ者ありアダヤはヱロハムの子ヱロハムはペラリヤの子ペラリヤはアムジの子アムジはゼカリヤの子ゼカリヤはパシホルの子パシホルはマルキヤの子なり
Nehemiah 11:13 アダヤの兄弟たる宗家の長二百四十二人あり又アマシサイといふ者ありアマシサイはアザリエルの子アザリエルはアハザイの子アハザイはメシレモテの子メシレモテはイシメルの子なり
Nehemiah 11:14 その兄弟たる勇士百二十八人ありハツゲドリムの子ザブデエル彼らの監督たり
Nehemiah 11:15 レビ人はハシユブの子シマヤ、ハシユブはアズリカムの子アズリカムはハシヤビヤの子ハシヤビヤはブンニの子なり
Nehemiah 11:16 またシヤベタイおよびヨザバデあり是等はレビ人の長にして神の室の外の事を掌どれり
Nehemiah 11:17 またマツタニヤといふ者ありマツタニヤはミカの子ミカはザブデの子ザブデはアサフの子なりマツタニヤは祈祷の時に感謝の詞を唱へはじむる者なり彼の兄弟の中にてバクブキヤといふ者かれに次り又アブダといふ者ありアブダはシヤンマの子シヤンマはガラルの子ガラルはヱドトンの子なり
Nehemiah 11:18 聖邑にあるレビ人は合せて二百八十四人
Nehemiah 11:19 門を守る者アツクブ、タルモンおよびその兄弟等合せて百七十二人あり皆門々にありて伺守ることをせり
Nehemiah 11:20 その餘のイスラエル人祭司およびレビ人は皆ユダの一切の邑々にありて各々おのれの産業に居り
Nehemiah 11:21 但しネテニ人はオぺルに居りヂハ及びギシパ、ネタニ人を統ぶ
Nehemiah 11:22 ヱルサレムにをるレビ人の監督はウジといふ者なりウジはバニの子バニはハシヤビヤの子ハシヤビヤはマツタニヤの子マツタニヤはミカの子なり是は謳歌者なるアサフの子孫なりその職務は神の室の事にかかはる
Nehemiah 11:23 王より命令ありて是らの事を定め謳歌者に日々の定まれる分を與へしむ
Nehemiah 11:24 ユダの子ゼラの子孫メシザベルの子ぺタヒヤといふ者王の手に属して民に関る一切の事を取あつかへり
Nehemiah 11:25 又村荘とその田圃につきてはユダの子孫の者キリアテアルバとその郷里デボンとその郷里およびヱカブジエルとその村荘に住み
Nehemiah 11:26 ヱシユア、モラダおよびベテぺレテに住み
Nehemiah 11:27 ハザルシユアルおよびベエルシバとその郷里に住み
Nehemiah 11:28 ヂクラグおよびメコナとその郷里に住み
Nehemiah 11:29 エンリンモン、ザレア、ヤルムテに住み
Nehemiah 11:30 ザノア、アドラムおよび其等の村荘ラキシとその田野およびアゼカとその郷里に住り斯かれらはベエルシバよりヒンノムの谷までに天幕を張り
Nehemiah 11:31 ベニヤミンの子孫はまたゲバよりしてミクマシ、アヤおよびベテルとその郷里に住み
Nehemiah 11:32 アナトテ、ノブ、アナニヤ
Nehemiah 11:33 ハゾル、ラマ、ギツタイム
Nehemiah 11:34 ハデデ、ゼボイム、ネバラテ
Nehemiah 11:35 ロド、オノ工匠谷に住り
Nehemiah 11:36 レビ人の班列のユダにある者の中ベニヤミンに合せし者もありき
Nehemiah 12:1 シヤルテルの子ゼルバベルおよびヱシユアと偕に上りきたりし祭司とレビ人は左のごとしセラヤ、ヱレミヤ、エズラ
Nehemiah 12:2 アマリヤ、マルク、ハツトシ
Nehemiah 12:3 シカニヤ、レホム、メレモテ
Nehemiah 12:4 イド、ギンネトイ、アビヤ
Nehemiah 12:5 ミヤミン、マアデヤ、ビルガ
Nehemiah 12:6 シマヤ、ヨヤリブ、ヱダヤ
Nehemiah 12:7 サライ、アモク、ヒルキヤ、ヱダヤ是等の者はヱシユアの世に祭司およびその兄弟等の長たりき
Nehemiah 12:8 またレビ人はヱシユア、ビンヌイ、カデミエル、セレビヤ、ユダ、マツタニヤ、マツタニヤはその兄弟とともに感謝の事を掌どれり
Nehemiah 12:9 またその兄弟バクブキヤおよびウンノ之と相對ひて職務をなせり
Nehemiah 12:10 ヱシユア、ヨアキムを生みヨアキム、エリアシブを生みエリアシブ、ヨイアダを生み
Nehemiah 12:11 ヨイアダ、ヨナタンを生みヨナタン、ヤドアを生り
Nehemiah 12:12 ヨアキムの日に祭司等の宗家の長たりし者はセラヤの族にてはメラヤ、ヱレミヤの族にてはハナニヤ
Nehemiah 12:13 エズラの族にてはメシユラム、アマリヤの族にてはヨハナン
Nehemiah 12:14 マルキの族にてはヨナタンシ、シバニヤの族にてはヨセフ
Nehemiah 12:15 ハリムの族にてはアデナ、メラヨテの族にてはヘルカイ
Nehemiah 12:16 イドの族にではゼカリヤ、ギンネトン膳良にてはメシユラム
Nehemiah 12:17 アビヤの族にてはジクリ、ミニヤミンの族モアデヤの族にてはピルタイ
Nehemiah 12:18 ビルガの族にてはシヤンマ、シマヤの族にてはヨナタン
Nehemiah 12:19 ヨヤリブの族にてはマツテナイ、ヱダヤの族にてはウジ
Nehemiah 12:20 サライの族にてはカライ、アモクの族にてはエベル
Nehemiah 12:21 ヒルキヤの族にてはハシヤビヤ、ヱダヤの族にてはネタンエル
Nehemiah 12:22 エリアシブ、ヨイアダ、ヨハナンおよびヤドアの日にレビ人の宗家の長等冊に録さる亦ペルシヤ王ダリヨスの治世に祭司等も然せらる
Nehemiah 12:23 宗家の長たるレビ人はエリアシブの子ヨハナンの日まで凡て歴代志の書に記さる
Nehemiah 12:24 レビ人の長はハシヤビヤ、セレビヤおよびカデミエルの子ヱシユアなりその兄弟等これと相對ひて居る即ち彼らは班列と班列とあひむかひ居り神の人ダビデの命令に本づきて讃美と感謝とをつとむ
Nehemiah 12:25 マツタニヤ、バクブキヤ、オバデヤ、メシユラム、タルモン、アツクブは門を守る者にして門の内の府庫を伺ひ守れり
Nehemiah 12:26 是等はヨザダクの子ヱシユアの子ヨアキムの日に在り総督ネヘミヤおよび學士たる祭司エズラの日に在りし者なり
Nehemiah 12:27 ヱルサレムの石垣の落成せし節會に当りてレビ人をその一切の處より招きてヱルサレムに來らせ感附と歌と鐃鈸と瑟と琴とをもて歓喜を盡してその落成の節會を行はんとす
Nehemiah 12:28 是において謳歌ふ徒輩ヱルサレムの周圍の窪地およびネトパ人の村々より集り來り
Nehemiah 12:29 またベテギルガルおよびゲバとアズマウテとの野より集り來れりこの謳歌者等はヱルサレムの周圍に己の村々を建たりき
Nehemiah 12:30 茲に祭司およびレビ人身を潔めまた民および諸の門と石垣とを潔めければ
Nehemiah 12:31 我すなはちユダの牧伯等をして石垣の上に上らしめ又二の大なる隊を作り設けて之に感謝の詞を唱へて並進ましむ即ちその一は糞の門を指て石垣の上を右に進めり
Nehemiah 12:32 その後につきて進める者はホシヤヤおよびユダの牧伯の半
Nehemiah 12:33 ならびにアザリヤ、エズラ、メシユラム
Nehemiah 12:34 ユダ、ベニヤミン、シマヤ、ヱレミヤなりき
Nehemiah 12:35 又祭司の徒數人喇叭を吹て伴ふあり即ちヨナタンの子ゼカリヤ、ヨナタンはシマヤの子シマヤはマツタニヤの子マツタニヤはミカヤの子ミカヤはザツクルの子ザツクルはアサフの子なり
Nehemiah 12:36 またゼカリヤの兄弟シマヤ、アザリエル、ミラライ、ギラライ、マアイ、ネタンエル、ユダ、ハナニ等ありて神の人ダビデの樂器を執り學士エズラこれに先だつ
Nehemiah 12:37 而して彼ら泉の門を経ただちに進みて石垣の上口に於てダビデの城の段階より登りダビデの家の土を過て東の方水の門に至れり
Nehemiah 12:38 また今一隊の感謝する者は彼らに対ひて進み我は民の半とともにその後に從がへり而して皆石垣の上を行き爐戌樓の上を過て石垣の廣き處にいたり
Nehemiah 12:39 エフライムの門の上を通り舊門を過ぎ魚の門およびハナニエルの戌樓とハンメアの戌樓を過て羊の門に至り牢の門に立どまれり
Nehemiah 12:40 かくて二隊の感謝する者神の室にいりて立り我もそこにたち牧伯等の半われと偕にありき
Nehemiah 12:41 また祭司エリアキム、マアセヤ、ミニヤミン、ミカヤ、エリヨエナイ、ゼカリヤ、ハナニヤ等喇叭を執て居り
Nehemiah 12:42 マアセヤ、シマヤ、エレアザル、ウジ、ヨナハン、マルキヤ、エラム、エゼル之と偕にあり謳歌ふ者聲高くうたへりヱズラヒヤはその監督なりき
Nehemiah 12:43 斯してその日みな大なる犠牲を献げて喜悦を盡せり其は神かれらをして大に喜こび樂ませたまひたればなり婦女小兒までも喜悦り是をもてヱルサレムの喜悦の聲とほくまで聞えわたりぬ
Nehemiah 12:44 その日府庫のすべての室を掌どるべき人々を撰びて挙祭の品初物および什一など律法に定むるところの祭司とレビ人との分を邑々の田圃に准ひて取あつめてすべての室にいるることを掌どらしむ是は祭司およびレビ人の立て奉ふるをユダ人喜こびたればなり
Nehemiah 12:45 彼らは神の職守および潔齋の職守を勤む謳歌者および門を守る者も然り皆ダビデとその子ソロモンの命令に依る
Nehemiah 12:46 在昔ダビデおよびアサフの日には謳歌者の長一人ありて神に讃美感謝をたてまつる事ありき
Nehemiah 12:47 またゼルバベルの日およびネヘミヤの日にはイスラエル人みな謳歌者と門を守る者に日々の分を與へまたレビ人に物を聖別て與ヘレビ人またこれを聖別てアロンの子孫に與ふ
Nehemiah 13:1 その日モーセの書を読て民に聴しめけるに其中に録して云ふアンモニ人およびモアブ人は何時までも神の會に入べからず
Nehemiah 13:2 是は彼らパンと水とをもてイスラエルの子孫を迎へずして還て之を詛はせんとてバラムを傭ひたりしが故なり斯りしかども我らの神はその呪詛を變て祝福となしたまへりと
Nehemiah 13:3 衆人この律法を聞てのち雑りたる民を盡くイスラエルより分ち離てり
Nehemiah 13:4 是より先我らの神の家の室を掌れる祭司エリアシブといふ者トビヤと近くなりたれば
Nehemiah 13:5 彼のために大なる室を備ふ其室は元來素祭の物乳香器皿および例によりてレビ人謳歌者門を守る者等に與ふる穀物酒油の什一ならびに祭司に與る挙祭の物を置し處なり
Nehemiah 13:6 常時は我ヱルサレムに居ざりき我はバビロンの王アルタシヤスタの三十二年に王の所に往たりしが數日の後王に暇を乞て
Nehemiah 13:7 エルサレムに來りエリアシブがトビヤのために爲たる惡事すなはちかれがために神の家の庭に一の室を備へし事を詳悉にせり
Nehemiah 13:8 我はなはだこれを憂ひてトビヤの家の器皿をことごとくその室より投いだし
Nehemiah 13:9 頓て命じてすべての室を潔めさせ而して神の家の器皿および素祭乳香などを再び其處に携へいれたり
Nehemiah 13:10 我また査べ観しにレビ人そのうくべき分を與へられざりきこの故に其職務をなす所のレビ人および謳歌者等各々おのれの田に奔り歸りぬ
Nehemiah 13:11 是において我何故に神の室を棄させしやと言て牧伯等を詰り頓てまたレビ人を招き集めてその故の所に立しめたり
Nehemiah 13:12 斯りしかばユダ人みな穀物酒油の什一を府庫に携へ來れり
Nehemiah 13:13 その時我祭司シレミヤ學士ザドクおよびレビ人ペダヤを府庫の有司とし之にマツタニヤの子ザツクルの子ハナンを副て庫をつかさどらしむ彼らは忠信なる者と思はれたればなり其職は兄弟等に分配るの事なりき
Nehemiah 13:14 わが神よ此事のために我を記念たまへ我神の室とその職事のために我が行ひし善事を拭ひ去たまはざれ
Nehemiah 13:15 當時われ観しにユダの中にて安息日に酒榨を踏む者あり麥束を持きたりて驢馬に負するあり亦酒葡萄無花果および各種の荷を安息日にヱルサレムに携へいるるあり我かれらが食物を鬻ぎをる日に彼らを戒しめたり
Nehemiah 13:16 彼處にまたツロの人々も住をりしが魚および各種の貨物を携へいりて安息日にユダの人々に之を鬻ぎかつヱルサレムにて商賣せり
Nehemiah 13:17 是において我ユダの貴き人々を詰りて之に言ふ汝ら何ぞ此惡き事をなして安息日を涜すや
Nehemiah 13:18 汝らの先祖等も斯おこなはざりしや我らの神これが爲にこの一切の災禍を我らとこの邑とに降したまひしにあらずや然るに汝らは安息日を涜して更に大なる震怒をイスラエルに招くなりと
Nehemiah 13:19 而して安息日の前の日ヱルサレムの門々暗くならんとする頃ほひに我命じてその扉を閉させ安息日の過さるまで之を開くべからずと命じ我僕數人を門々に置て安息日に荷を携へいるる事なからしめたり
Nehemiah 13:20 斯りしかば商賣および各種の品を賣る者等一二回ヱルサレムの外に宿れり
Nehemiah 13:21 我これを戒めてこれに言ふ汝ら石垣の前に宿るは何ぞや汝等もし重ねて然なさば我なんぢらに手をかけんと其時より後は彼ら安息日には來らざりき
Nehemiah 13:22 我またレビ人に命じてその身を潔めさせ來りて門を守らしめて安息日を聖くす我神よ我ために此事を記念し汝の大なる仁慈をもて我を憫みたまへ
Nehemiah 13:23 富時われアシドド、アンモン、モアブなどの婦女を娶りしユダヤ人を見しに
Nehemiah 13:24 その子女はアシドドの言語を半雑へて言ひユダヤの言語を言ことあたはず各國の言語を雑へ用ふ
Nehemiah 13:25 我彼等を詰りまた詬りその中の數人を撻ちその毛を抜き神を指て誓はしめて言ふ汝らは彼らの男子におのが女子を與ふべからず又なんぢらの男子あるひはおのれ自身のために彼らの女子を娶るべからず
Nehemiah 13:26 是らの事についてイスラエルの王ソロモンは罪を獲たるに非ずや彼がごとき王は衆多の國民の中にもあらずして神に愛せられし者なり神かれをイスラエル全國の王となしたまへり然るに尚ほ異邦の婦女等はこれに罪を犯さしめたり
Nehemiah 13:27 然ば汝らが異邦の婦女を娶りこの一切の大惡をなして我らの神に罪を犯すを我儕聴し置べけんや
Nehemiah 13:28 祭司の長エリアシブの子ヨイアダの一人の子はホロニ人サンバラテの婿なりけれぱ我これを逐出して我を離れしむ
Nehemiah 13:29 わが神よ彼らは祭司の職を汚し祭司およびレビ人の契約に背きたり彼らのことを忘れたまふ勿れ
Nehemiah 13:30 我かく人衆を潔めて異邦の物を盡く棄しめ祭司およびいビ人の班列を立て各々その職務に服せしめ
Nehemiah 13:31 また人衆をして薪柴の禮物をその定まる期に献げしめかつ初物を奉つらしむ我神よ我を憶ひ仁慈をもて我を待ひたまへ
Esther 0:0 エステル書
Esther 1:1 アハシユエロスすなはち印度よりエテオピヤまで百二十七州を治めたるアハシユエロスの世
Esther 1:2 アハシユエロス王シユシヤンの城にてその國の祚に坐しをりける当時
Esther 1:3 その治世の第三年にその牧伯等および臣僕等のために酒宴を設けたり ペルシヤとメデアの武士および貴族と讃州の牧伯等その前にありき
Esther 1:4 時に王その盛なる國の富有とその大なる威の榮を示して衆多の日をわたり百八十日に及びぬ
Esther 1:5 これらの日のをはりし時 王また王の宮の園の庭にてシユシヤンに居る大小のすべての民のために七日の間酒宴を設けたり
Esther 1:6 白緑青の帳幔ありて細布と紫色の紐にて銀の環および蝋石の柱に繋がるまた牀榻は金銀にして赤白黄黒の蝋石の上に居らる
Esther 1:7 金の酒盃にて酒を賜ふその酒盃は此と彼おのおの異なり王の用ゐる酒をたまふこと夥だし王の富有に適へり
Esther 1:8 その飮むことは法にかなひて誰も強ることを爲ず 其は王人として各々おのれの好むごとく爲しむべしとその宮内のすべての有司に命じたればなり
Esther 1:9 后ワシテもまたアハシユエロス王に属する王宮の内にて婦女のために酒宴をまうけたり
Esther 1:10 第七日にアハシユエロス王酒のために心樂み王の前に事ふる七人の侍從メホマン、ビスタ、ハルボナ、ビグタ、アバグタ、セタルおよびカルカスに命じ
Esther 1:11 后ワシテをして后の冠冕をかぶりて王の前に來らしめよと言り 是は彼観に美しければその美麗を民等と牧伯等に見さんとてなりき
Esther 1:12 しかるに后ワシテ侍從が傅へし王の命に從ひて來ることを肯はざりしかば王おほいに憤ほりて震怒その衷に燃ゆ
Esther 1:13 是において王時を知る智者にむかひて言ふ(王はすべて法律と審理に明かなる者にむかひて是の如くするを常とせり
Esther 1:14 時に彼の次になりし者はペルシヤおよびメデアの七人の牧伯カルシナ、セタル、アデマタ、タルシシ、メレス、マルセナ、メムカンなりき 是みな王の面を見る者にして國の第一に位せり)
Esther 1:15 后ワシテ、アハシユエロス王が侍從をもて傅へし命を爲されば法律にしたがひて如何に彼になすべきや
Esther 1:16 メムカン王と牧伯たちの前に答へて曰ふ 后ワシテは唯王にむかひて惡き事をなしたる而已ならず一切の牧伯たちおよびアハシユエロス王の各州のもろもろの民にむかひてもまた之を爲るなり
Esther 1:17 后のこの事あまねく一切の婦女に聞えて彼らつひにその夫を藐め観て言ん アハシユエロス王后ワシテに已のまへに來れと命じたりしに來らざりしと
Esther 1:18 而して后の此所行を聞るペルシヤとメデアの諸夫人もまた今日王のすべての牧伯等に是のごとく言ん然すれば必らず藐視と忿怒多く起るべし
Esther 1:19 王もし之を善としたまはばワシテは此後ふたたびアハシユエロス王の前に來るべからずといふ王命を下し之をペルシヤとメデアの律法の中に書いれて更ること無らしめ而してその后の位を彼に勝れる他の者に與へたまへ
Esther 1:20 王の下したまはん御詔この大なる御國に徧ねく聞えわたる時は妻たる者ことごとくその夫を大小となく共に敬まふべしと
Esther 1:21 王と牧伯等この言を善としければ王メムカンの言のごとく爲たり
Esther 1:22 かくて王の諸州に徧ねく書をおくりもろもろの州にその文字にしたがひて書おくりもろもろの民にその言語にしたがひて書おくり凡て男子たる者はその家の主となるべくまたおのれの民の言を用ひてものいふべしと諭しぬ
Esther 2:1 これらの事の後アハシユエロス王忿怒とけてワシテおよび彼が爲たる所またその彼にむかひて議定めしところの事を憶ひおこせり
Esther 2:2 ここに王の前に事ふる僕等いひけるは請ふ美しき少き處女等を王のために尋もとめん
Esther 2:3 願はくは王御國の各州において官吏を択び之をして美はしき處女をことごとくシユシヤンの城に集めしめ婦人を管理る王の侍從ヘガイの手にわたして婦人の局に入らしめ而して潔浄の物をこれに與へたまへ
Esther 2:4 斯して王の御意に適ふ女子を取りワシテに代りて后とならしめたまへと王この事を善として然なしぬ
Esther 2:5 茲にシユシヤンの城に一人のユダヤ人ありその名をモルデカイと日ひキシの曾孫シメイの孫ヤイルの子にしてベニヤミン人なり
Esther 2:6 かれはバビロンの王ネブカデネザルが擄へゆきしユダのヱコニヤとともに擄はれ往る俘囚の中にありてヱサレムより移されたる者なり
Esther 2:7 かれその叔父の女ハダツサすなはちエステルを養ひ育てたり 是は父も母もなかりければなり この女子顔貌勝れてうるはしかりしがその父母の死たる後モルデカイこれを取ておのれの女となせるなり
Esther 2:8 王の命令と詔言の聞え伝はり衆多の女子シユシヤンの城にあつめられてヘガイの手にわたさにし時エステルも亦王の家に携へられてゆき婦人を管理るヘガイの手に交されしが
Esther 2:9 この女子ヘガイの意にかなひて之が恵を受たり即はちヘガイすみやかに之に潔浄の物およびその分を與へまた王の家の中より七人の侍女を挙てこれに附そはしめ彼とその侍女等を婦人の局の中なる最も佳き處に移しぬ
Esther 2:10 エステルはおのれの民をもおのれの宗族をも顧はさざりき其はモルデカイこれを顕はすなかれと彼に言ふくめたればなり
Esther 2:11 またモルデカイはエステルの模様およびその如何になれるかを知んため日々に婦人の局の庭の前をあゆめり
Esther 2:12 女子はおのおの婦人の則にしたがひて十二ケ月を経しかる後順番にいりてアハシユエロス王にいたる是その潔浄の日を終るはかくのごとくなるが故なり 既ち没薬の油を用ふること六ヶ月また各種の薫物および婦人の潔浄ごとにあつる物等を用ふること六ヶ月
Esther 2:13 女子の王にいたるは是のごとしその婦人の局より出て王の家にゆく時には凡てその望む物をことごとく與へらる
Esther 2:14 而して夕に往き朝におよびて婦人の第二の局に還り妃嬪をつかさどる王の侍從シヤシガスの手に属す王これを喜こびて名をさして召すにあらざれぼ重ねて王にいたることなし
Esther 2:15 ここにモルデカイの叔父アビハイルの女すなはちモルデカイが取ておのれの女となしたるエステル入て王にいたるべき順番にあたりけるが彼は婦人をつかさどる王の侍從ヘガイが言きかせたる事の外には何をももとめざりき エステルは凡て彼を見る者によろこばれたり
Esther 2:16 かくエステルは王の家に召いれられてアハシユエロス王にいたれり是その治世の第七年十月即ちテベテの月なり
Esther 2:17 王一切の婦人に超てエステルを愛しければエステルはすべての處女にまさりて王の前に恩寵と厚情を得たり 王つひに后の冕をかれの首に戴かせ彼をしてワシテにかはりて后とならしむ
Esther 2:18 ここにおいて王おほいなる酒宴を設けてそのもろもろの牧伯と臣僕を饗す これをエステルの酒宴と稱ふまた諸州に租税をゆるし王の富有にかなひて物を賜ふ
Esther 2:19 再度處女の集められし時モルデカイは王の門に坐しをりぬ
Esther 2:20 エステルはモルデカイがかれに言ふくめたる如くして未だおのれの宗族をもおのれの民をも顕はさざりき エステタはモルデカイの言語にしたがふことその彼に養なひ育てられし時と異ならざりき
Esther 2:21 常時モルデカイ王の門に坐し居ける時王の侍從にて戸を守る者の中ビグタンおよびテレシの二人怨むる事ありてアハシユエロス王を弑せんともとめたりしが
Esther 2:22 その事モルデカイに知れければモルデカイこれを后エステルに告げエステルまたモルデカイの名をもてこれを王に告げたり
Esther 2:23 ここにおいて此事をしらべさせしにその然ること顕はれければ彼ら二人は木にかけられその事は王の前なる日誌の書にかきしるさる
Esther 3:1 これらの事の後アハシユエロス王アガグ人ハンメダタの子ハマンを貴びこれを高くして己とともにある一切の牧伯の上にその席を定めしむ
Esther 3:2 王の門にある主の諸臣みな跪づきてハマンを拝せり 是は王斯かれになすことを命じたれぱなり 然れどもモルデカイは跪づかず又これを拝せざりき
Esther 3:3 ここをもて王の門にある王の諧臣モデカイにむかひて言ふ 汝いかなれば王の命に背くやと
Esther 3:4 かれらモデカイに日々かく言ふといへども聴ざりければその事の爲をふさるべきか否を見んとてハマンにこれを告たり 其はモルデカイおのれのユダヤ人なることを語りたればなり
Esther 3:5 ハマン、モルデカイの跪づかずまた己を拝せざるを見たれば ハマン忿怒にたへざりしが
Esther 3:6 ただモルデカイ一人を殺すは事小さしと思へり彼らモルデカイの属する民をハマンに顕はしければハマンはアハシユエロスの國の中にある一切のユダヤ人すなはちモルデカイの属する民をことごとく殺さんと謀れり
Esther 3:7 アハシユエロス王の十二年正月即ちニサンの月にハマンの前にて十二月すなはちアダルの月まで一日一日のため一月一月のためにプルを投しむプルは即ち籤なり
Esther 3:8 ハマンかくてアハシユエロス王に言けるは御國の各州にある諸民の中に散されて別れ別れになりをる一の民ありその律法は一切の民と異り また王の法律を守らずこの故にこれを容しおくは王の益にあらず
Esther 3:9 王もしこれを善としたまはば願くは彼らを滅ぼせと書くだしたまへ さらば我王の事をつかさどる者等の手に銀一萬タラントを秤り交して王の府庫に人しめん
Esther 3:10 王すなはち指環をその手より取はづしアガグ人ハンメダタの子ハマンすなはちユダヤ人の敵たる者に交し
Esther 3:11 しかしてハマンに言けるはその銀はなんぢに與ふ その民もまた汝にあたふれば汝に善と見ゆるごとく爲よ
Esther 3:12 ここにおいて正月の十三日に王の書記官を召あつめ王に属する州牧各州の方伯およびもろもろの民の牧伯にハマンが命ぜんとする所をことごとく書しるさしむ 即ちもろもろの州におくるものは其文字をもちひ もろもろの民におくるものはその言語をもちひ おのおのアハシユエロス王の名をもてこれを書き王の指環をもてこれに印したり
Esther 3:13 しかして驛卒をもて書を王の諸州におくり十二月すなはちアダルの月の十三日において一日の内に一切のユダヤ人を若き者老たる者小児婦人の差別なくことごとく滅ぼし殺し絶しかつその所有物を奪ふべしと諭しぬ
Esther 3:14 この詔旨を諸州に傅へてかの日のために準備をなさしめんとてその書る物の寫本を一切の民に開きて示せり
Esther 3:15 驛卒王の命によりて急ぎて出ゆきぬ この詔書はシユシヤンの城に於て出されたり かくて王とハマンは坐して酒飮ゐたりしがシユシヤンの邑は惑ひわづらへり
Esther 4:1 モルデカイ凡てこの爲れたる事を知しかばモルデカイ衣服を裂き麻布を纒ひ灰をかぷり邑の中に行て大に哭き痛く號び
Esther 4:2 王の門の前までも斯して來れり 其は麻布をまとふては王の門の内に入ること能はざればなり
Esther 4:3 すべて王の命とその詔書と到れる諸州にてはユダヤ人の中におほいなる哀みあり断食哭泣號呼おこれり また麻布をまとふて灰の上に坐する者おほかりき
Esther 4:4 ここにエステルの侍女およびその侍從等きたりてこれを告ければ后はなはだしく憂ひ衣服をおくり之をモルデカイにきせてその麻布を脱しめんとしたりしがうけざりき
Esther 4:5 ここをもてエステルは王の侍從の一人すなはち王の命じて己に侍らしむるハタクといふ者を召しモルデカイの許に往きてその何事なるか何故なるかを知きたれと命ぜり
Esther 4:6 ハタクいでて王の門の前なる邑の廣場にをるモルデカイにいたりしに
Esther 4:7 モルデカイおのれの遇たるところを具にこれに語りかつハマンがユダヤ人を滅ぼす事のために王の府庫に秤りいれんと約したる銀の額を告げ
Esther 4:8 またその彼等をほろぼさしむるためにシユシヤンにおいて書て與へられし詔書の写を彼にわたし之をエステルに見せかつ解あかし また彼に王の許にゆきてその民のためにこれに衿恤を請ひその前に順ふことを爲べしと言つたへよと言り
Esther 4:9 ハタクかへり來りてモルデカイの言詞をエステルに告ければ
Esther 4:10 エステル、ハタクに命じモルデカイに言をつたへしむ云く
Esther 4:11 王の諸臣がよび王の諸州の民みな知る男にもあれ女にもあれ凡て召れずして内庭に入て王にいたる者は必ず殺さるべき一の法律あり されど王これに金圭を伸れば生るを得べし かくて我此三十日は王にいたるべき召をかうむらざるなり
Esther 4:12 エステルの言をモルデカイに告げけるに
Esther 4:13 モルデカイ命じてエステルに答へしめて曰く 汝王の家にあれば一切のユダヤ人の如くならずして免かるべしと思ふなかれ
Esther 4:14 なんぢ若この時にあたりて黙して言ずば他の處よりして助援と拯救ユダヤ人に興らんされど汝どなんぢの父の家は亡ぶべし 汝が后の位を得たるは此のごとき時のためなりしやも知るべからず
Esther 4:15 エステルまたモルデカイに答へしめて曰く
Esther 4:16 なんぢ往きシユシヤンにをるユダヤ人をことごとく集めてわがために断食せよ 三日の間夜昼とも食ふことも飮むこともするなかれ 我とわが侍女等もおなじく断食せん しかして我法律にそむく事なれども王にいたらん 我もし死べくば死べし
Esther 4:17 ここにおいてモルデカイ往てエステルが凡ておのれに命じたるごとく行なへり
Esther 5:1 第三日にエステル后の服を着王の家の内庭にいり王の家にむかひて立つ王は王宮玉座に坐して王宮の戸口にむかひをりしが
Esther 5:2 王后エステルが庭にたちをるを見てこれに恩をくはへ其手にある金圭をエステルの方に伸しければエステルすすみよりてその圭の頭にさはれり
Esther 5:3 王かれに言けるは后エステルなんぢ何をもとむるやなんぢの願意は何なるや國の半分にいたるとも汝にあたふべし
Esther 5:4 エステルいひけるは王もし善としたまはば願くは今日わが王のために設けたる酒宴に王とハマンと臨みたまへ
Esther 5:5 ここに於て王ハマンを急がしめてエステルの言るごとくならしめよと命じ王とハマンやがてエステルが設けたる酒宴に臨めり
Esther 5:6 酒宴の時王またエステルに言けるは汝の所求は何なるやかならずゆるさるべし なんぢの願意は何なるや固の半分にいたるとも成就らるべし
Esther 5:7 エステル言けるは我が所求わが願意は是なり
Esther 5:8 われもし王の目の前に恩を得 王もしわが所求をゆるしわが願意を成就しむることを善としたまはば願くは玉とハマンまたわが設けんとする酒宴に臨みたまへ われ明日王の宜まへる言にしたがはん
Esther 5:9 かくてハマンはその日よろこび心たのしみて出きたりけるがハマン、モルデカイが王の門に居て己にむかひて起もあがらず身動もせざるを見しかば 痛くモルデカイを怒れり
Esther 5:10 されどもハマン耐忍びて家にかへりその朋友等および妻ゼレシをまねき來らしめ
Esther 5:11 而してハマンその富の榮耀とその子の衆多ことと凡て王の己を貴とびし事また己をたかくして王の牧伯および臣僕の上にあらしむることを之に語れり
Esther 5:12 しかしてハマンまた言けらく后エステル酒宴を設けたりしが我のほかは何人をも王とともに之に臨ましめず明日もまた我は玉とともに后に招かれをるなり
Esther 5:13 然れどユダヤ人モルデカイが王の門に坐しをるを見る間は是らの事も快樂からず
Esther 5:14 時にその妻ゼレシとその一切の朋友かれに言けるは請ふ高五十キユビトの木を立しめ明日の朝モルデカイをその上に懸んことを王に奏せ而して王とともに樂しみてその酒宴におもむけとハマンこの事を善としてその木を立しめたり
Esther 6:1 その夜王ねむること能はざりければ命じて日々の事を記せる記録の書を持きたらしめ王の前にこれを読しめけるに
Esther 6:2 モルデカイ曾て王の侍從の二人戸を守る者なるビグタンとテレシがアハシユエロス王を殺さんと謀れるを告たりと記せるに遇ふ
Esther 6:3 王すなはち言けるは之がために何の榮誉と爵位をモルデカイにあたへしや 王に事ふる臣僕等こたへて何をも彼にあたへしこと無しといへり
Esther 6:4 ここにおいて王誰ぞ庭にあるやと問ふ この時ハマンは己がモルデカイのために設けたる木にモルデカイを懸ることを王に奏せんとして已に王の家の外庭に來りて居る
Esther 6:5 王の臣僕等王につげてハマン庭に立をると言ければ王かれをして入來らしめよと言ふ
Esther 6:6 ハマンやがて入きたりしに王かれにいひけるは王の尊とばんと欲する人には如何になさば善らんかとマン心におもひけるは王の尊ばんとずる者は我にあらずして誰ぞやと
Esther 6:7 ハマンすなはち王にいひけるは王の尊ばんと欲する人のためには
Esther 6:8 王の着たまへる衣服を携さへ來らしめかつ王の乗たまへる馬即ちその頭に王の冠冕を戴ける馬をひき來らしめ
Esther 6:9 これを王の最も貴とき一人の牧伯の手にわたし王の尊ばんとする人に其衣服を衣せしめこれを馬にのせて邑の街衢をみちびき通り 王の尊とばんと欲する人には是のごとくなすべしと呼はらしむべし
Esther 6:10 王ハマンに言けるは急ぎなんぢが言しごとくその衣服と馬とを取り王の門に坐するユダヤ人モルデカイに斯なせよ なんぢが言しところを一も欠こと無らしめよ
Esther 6:11 ここにおいてハマン衣服と馬とを取りモルデカイにその衣服を着せ彼をして邑の街衢を乗とほらしめその前に呼はりて云ふ王の尊ばんと欲する人には是のごとくなすべしと
Esther 6:12 かくてモルデカイは王の門にかへりたりしがハマンは愁へなやみ首をおほふておのれの家にはしりゆき
Esther 6:13 しかしてハマンおのが邁る事をことごとくその妻ゼレシとその朋友等に告げるにその智者等およびその妻ゼレシかれに言けるは 彼のモルデカイすなはちなんぢがその前に敗れはじめたる者もしユダヤ人ならば汝これに勝ことを得じ必らずその前にやぶれんと
Esther 6:14 かれら尚ハマンとものいひをる間に王の侍從きたりてハマンをうながしエステルが設けたる酒宴にのぞましむ
Esther 7:1 王またハマンとともに后エステルと酒宴せんとて來れり
Esther 7:2 この第二の酒宴の日に王またエステルに言けるは后エステルよなんぢのもとめは何なるや かならず許さるべし 汝のねがひは何なるや國の半分にいたるとも成就らるべし
Esther 7:3 后エステルこたへて言けるは王よ我もし王の御目の前に恩を得王もし善と見たまはばわがもとめにしたがりこわが生命をわれに賜へ またわが願にしたがひてわが民を我に賜へ
Esther 7:4 我とわが民は売れて滅ぼされ殺され絶されんとす 我らもし奴婢に売れたるならんには我黙してはべらん 敵人は王の損害を償なふ事能はざるなり
Esther 7:5 アハシユエロス王后エステルにこたへて言けるは之をなさんと心にたくめる者は誰また何處にをるや
Esther 7:6 エステルいひけるはその敵その仇人は即ちこの惡きハマンなりと 是によりてハマンは王と后の前にありて懼れたり
Esther 7:7 王怒り酒宴の席をたちて宮殿の園に往きければハマンたちあがりて后エステルに生命を乞り 其はかれ王のおのれに禍災をなさんと決めしを見たればなり
Esther 7:8 王宮殿の園より歸りて酒宴の場にいたりしにエステルのをる牀榻の上にハマン俯伏ゐたれば王いひけるは彼はまた家の内にてわが前に后を辱しめんとするかと此ことば王の口より出るや人々ハマンの面をおほへり
Esther 7:9 時に王の前にある一人の侍從ハルボナいひけるは王の爲に善き事を言たりしかのモルデカイを懸んとてハマンが作りたる五十キユビトのり木ハマンの家に立をるなりと王いひけるは彼をその上に懸よ
Esther 7:10 人々ハマンを其モルデカイをかけんとて設けし本の上に懸たり 王の震怒つひに解く
Esther 8:1 その日アハシユエロス王ユダヤ人の敵ハマン一家を后エステルに賜ふ モダカイもまた王の前に來れり 是はエステル彼が己と何なる係りなるかを告たればなり
Esther 8:2 王ハマンより取かへせし己の指環をはづしてモルデカイに與ふ 而してエステル、モルデカイをしてハマンの家をつかさどらしむ
Esther 8:3 エステルふたたび王の前に奏してその足下にひれふしアガグ人ハマンがユダヤ人を害せんと謀りしその謀計を除かんことを涙ながらに乞求めたり
Esther 8:4 王エステルにむかひて金圭を伸ければステル起て王の前に立ち
Esther 8:5 言けるは王もし之を善としたまひ我もし王の前に恩を得この事もし王に正と見え我もし御目にかなひたらば アガグ人ハンメダタの子ハマンが王の諸州にあるユダヤ人をほろぼさんと謀りて書おくりたる書をとりけすべき旨を書くだしたまへ
Esther 8:6 われ豈わが民に臨まんとずる禍害を見るに忍びんや 豈わが宗族のほろぶるを見るにしのびんや
Esther 8:7 アハシユエロス王后エステルとユダヤ人モルデカイにいひけるはハマン、ユダヤ人を殺さんとしたれば我すでにハマンの家をエステルに與へまたハマンを木にかけたり
Esther 8:8 なんぢらも亦おのれの好むごとく王の名をもて書をつくり王の指環をもてこれに印してユダヤ人につたへよ王の名をもて書き王の指環をもて印したる答は誰もとりけすこと能はざればなり
Esther 8:9 ここをもてその時また王の書記官を召あつむ是三月すなはちシワンの月の二十三日なりきしかして印度よりエテオピアまでの百二十七州のユダヤ人州牧諸州の方伯牧伯等にモルデカイが命ぜんとするところを盡く書しるさしむ 即ちもろもろの州におくるものはその文字をもちひ諸の民におくるものはその言語をもちひひ書おくりユダヤ人におくるものはその文字と言語をもちふ
Esther 8:10 かれアハシユエロス王の名をもてこれをかき王の指環をもてこれに印し驛卒をして御厩にてそだてたる逸足の御用馬にのりてその書をおくりつたへしむ
Esther 8:11 その中に云ふ王すべての邑にあるユダヤ人に許す彼らあひ集まり立ておのれの生命を保護しおのれを襲ふ諸國諸州の一切の兵民をその妻子もろともにほろぼし殺し絶し且その所有物を奪ふべし
Esther 8:12 アハシユエロス王の諸州におて十二月すなはちアダルの月の十三日一日の内かくのごとくするを許さる
Esther 8:13 この詔旨を諸州につたへんがためまたユダヤ人をしてかの日のために準備してその敵に仇をかへさしめんがためにその書る物の写本を一切の民に開きて示せり
Esther 8:14 驛卒逸足の御用馬にのり王の命によりて急がせられせきたてられて出ゆけりこの詔書はシユシヤンの城において出されたり
Esther 8:15 かくてモルデカイは藍と白の朝服を着大なる金の冠を戴き紫色の細布の外衣をまとひて王の前よりいできたれり シユシヤンの邑中聲をあげて喜びぬ
Esther 8:16 ユダヤ人には光輝あり喜悦あり快樂あり尊榮ありき
Esther 8:17 いづれの州にても何の邑にても凡て王の命令と詔書のいたるところにてはユダヤ人よろこぴ樂しみ酒宴をひらきて此日を吉日となせりしかして國の民おほくユダヤ人となれり是はユダヤ人を畏るる心おこりたればなり
Esther 9:1 十二月すなはちアダルの月の十三日王の命令と詔書のおこなはるべき時いよいよ近づける時すなはちユダヤ人の敵ユダヤ人を打伏んとまちかまへたりしに却てユダヤ人おのれを惡む者を打ふする事となりける其日に
Esther 9:2 ユダヤ人アハシユエロス王の各州にある己の邑々に相あつまりおのれを害せんとする者どもを殺さんとせり誰も彼らに敵ることを得る者なかりき 其は一切の民ユダヤ人を畏れたればなり
Esther 9:3 諸州の牧伯州牧方伯など凡て王の事を辨理ふ者は皆ユダヤ人をたすけたり 是モルデカイを畏るるによりてたり
Esther 9:4 モルデカイは王の家にて大なる者となりその名各州にきこえわたれり斯その人モルデカイはますます大になりゆきぬ
Esther 9:5 ユダヤ人すなはち刀刃をもてその一切の敵を撃て殺し減ぼしおのれを惡む者を意のままに爲したり
Esther 9:6 ユダヤ人またシユシヤンの城においても五百人を殺しほろぼせり
Esther 9:7 パルシヤンダタ、ダルポン、アスパタ
Esther 9:8 ポラタ、アダリヤ、アリダタ
Esther 9:9 パルマシタ、アリサイ、アリダイ、ワエザタ
Esther 9:10 これらの者すなはちハンメダタの子ユダヤ入の敵たるハマンの十人の子をも彼ら殺せりされどその所有物には手をかけざりき
Esther 9:11 シユシヤンの城の内にて殺されし者の數をその日王にまうしあげければ
Esther 9:12 王きさきエステルにいひけるはユダヤ人シユシヤンの城の内にて五百人を殺しまたハマンの十人の子をころせり王のその余の諸州においては幾何なりしぞや 汝また何か求むるところあるやかならず許さるべし尚何かねがふところあるや必らず成就らるべし
Esther 9:13 エステルいひけるは王もし之を善としたまはば願くはシユシヤンにあるユダヤ人に允して明日も今日の詔旨のごとくなさしめ且ハマンの十人の子を木に懸しめたまへ
Esther 9:14 王かく爲せと命じシユシヤンにおいて詔旨を出せりマンの十人の子は木に懸らる
Esther 9:15 アダルの月の十四日にシユシヤンのユダヤ人また集まりシユシヤンの内にて三百人をころせり然れどもその所有物には手をかけざりき
Esther 9:16 王の諸州にあるその余のユダヤ人もまた相あつまり立ておのれの生命を保護しその敵に勝て安んじおのれを惡む者七萬五千人をころせり然れどもその所有には手をかけざりき
Esther 9:17 アダルの月の十三日にこの事をおこなひ十四日にやすみてその日に酒宴をなして喜こべり
Esther 9:18 されどシユシヤンにをるユダヤ人はその十三日と十四日とにあひ集まり十五日にやすみてその日に酒宴をなして喜こべり
Esther 9:19 これによりて村々のユダヤ人すなはち石垣なき邑々にすめる者はアダルの月の十四日をもて喜樂の日酒宴の日吉日となして互に物をやりとりす
Esther 9:20 モルデカイこれらの事を書しるしてアハシユエロス王の諸州にをるユダヤ人に遠きにも近きにも書をおくり
Esther 9:21 アダルの月の十四日と十五日を年々にいはふことを命じ
Esther 9:22 この兩の日にユダヤ人その敵に勝て休みこの月は彼のために憂愁より喜樂にかはり悲哀より吉日にかはりたれば是らの日に酒宴をなして喜びたがひに物をやりとりし貧しき者に施與をなすべしと諭しぬ
Esther 9:23 ここをもてユダヤ人はその已にはじめたるごとくモルデカイがかれらに書おくりしごとく行なひつづけたり
Esther 9:24 アガグ人ハンメダタの子ハマンすなはちすべてのユダヤ人の敵たる者ユダヤ人を滅ぼさんと謀りプルすなはち籤を投てこれを滅ぼし絶さんとしたりしが
Esther 9:25 その事王の前に明かになりし時王書をおくりて命じハマンがユダヤ人を害せんとはかりしその惡き謀計をしてハマンのかうべに歸らしめ彼とその子等を木に懸しめたり
Esther 9:26 このゆゑに此兩の日をそのプルの名にしたがひてプリムとなづけたり斯りしかばこの書のすべての詞によりこの事につきて見たるところ己の遇たるところに依て
Esther 9:27 ユダヤ人あひ定め年々その書るところにしたがひその定めたる時にしたがひてこの兩の日をまもり己とおのれの子孫および凡て已につらなる者これを行ひつづけて廃すること無く
Esther 9:28 この兩の日をもて代々家々州々邑々において必ず記念てまもるべき者となしこれらのプリムの日をしてユダヤ人の中に廃せらるること無らしめまたこの記念をしてその子孫の中に絶ること無らしむ
Esther 9:29 かくてアビハイルの女なる后エステルとユダヤ人モルデカイおほいなる力をもてプリムの第二の書を書おくりてこれを堅うす
Esther 9:30 すなはちモルデカイ、アハシユエロスの國の百二十七州にある一切のユダヤ人に平和と眞實の言語をもて書をおくり
Esther 9:31 断食と悲哀のことにつきてプリムのこれらの日を堅うしてその定めたる時を守らしむすなはちユダヤ人モルデカイと后エステルが曾てかれらに命じたるごとくまたユダヤ人等が曾てみづから己のためおよびおのれの子孫のために定めたるがごとし
Esther 9:32 エステルの語プリムにかかはる是等の事をかたうせり是は書にしるされたり
Esther 10:1 アハシユエロス王國土および海の島々に貢をたてまつらしむ
Esther 10:2 アハシユエロス王が權勢と能力をもて爲たる一切の事業および彼がモルデカイを高くして大いなる者とならしめたる事の委き話はメデアとぺルシヤの列王の日誌の書に記さるるにあらずや
Esther 10:3 ユダヤ人モルデカイはアハシユエロス王に次ぐ者となりユダヤ人の中にありて大なる者にしてその衆多の兄弟によろこばれたり彼はその民の福祉をもとめその一切の宗族に平和の言をのべたりき
Job 0:0 ヨブ記
Job 1:1 ウヅの地にヨブと名くる人あり 其人と爲完全かつ正しくして神を畏れ惡に遠ざかる
Job 1:2 その生る者は男の子七人女の子三人
Job 1:3 その所有物は羊七千 駱駝三千 牛五百軛 牝驢馬五百 僕も夥多しくあり 此人は東の人の中にて最も大なる者なり
Job 1:4 その子等おのおの己の家にて己の日に宴筵を設くる事を爲し その三人の姉妹をも招きて與に食飮せしむ
Job 1:5 その宴筵の日はつる毎にヨブかならず彼らを召よせて潔む 即ち朝はやく興き彼ら一切の數にしたがひて燔祭を獻ぐ 是はヨブ我子ら罪を犯し心を神を忘れたらんも知べからずと謂てなり ヨブの爲ところ常に是のごとし
Job 1:6 或日神の子等きたりてヱホバの前に立つ サタンも來りてその中にあり
Job 1:7 ヱホバ、サタンに言たまひけるは汝何處より來りしや サタン、ヱホバに應へて言けるは地を行めぐり此彼經あるきて來れり
Job 1:8 ヱホバ、サタンに言たまひけるは汝心をもちひてわが僕ヨブを觀しや 彼のごとく完全かつ正くして神を畏れ惡に遠ざかる人世にあらざるなり
Job 1:9 サタン、ヱホバに應へて言けるはヨブあにもとむることなくして神を畏れんや
Job 1:10 汝彼とその家およびその一切の所有物の周圍に藩屏を設けたまふにあらずや 汝かれが手に爲ところを盡く成就せしむるがゆゑにその所有物地に遍ねし
Job 1:11 然ど汝の手を伸て彼の一切の所有物を撃たまへ 然ば必ず汝の面にむかひて汝を詛はん
Job 1:12 ヱホバ、サタンに言たまひけるは視よ彼の一切の所有物を汝の手に任す 唯かれの身に汝の手をつくる勿れ サタンすなはちヱホバの前よりいでゆけり
Job 1:13 或日ヨブの子女等その第一の兄の家にて物食ひ酒飮ゐたる時
Job 1:14 使者ヨブの許に來りて言ふ 牛耕しをり牝驢馬その傍に草食をりしに
Job 1:15 シバ人襲ひて之を奪ひ刄をもて少者を打殺せり 我ただ一人のがれて汝に告んとて來れりと
Job 1:16 彼なほ語ひをる中に又一人きたりて言ふ 神の火天より降りて羊および少者を焚きて滅せり 我ただ一人のがれて汝に告んとて來れりと
Job 1:17 彼なほ語ひをる中に又一人きたりて言ふ カルデヤ人三隊に分れ來て駱駝を襲ひてこれを奪ひ刄をもて少者を打殺せり我ただ一人のがれて汝に告んとて來れりと
Job 1:18 彼なほ語ひをる中に又一人來りて言ふ汝の子女等その第一の兄の家にて物食ひ酒飮みをりしに
Job 1:19 荒野の方より大風ふき來て家の四隅を撃ければ夫の若き人々の上に潰れおちて皆しねり 我これを汝に告んとて只一人のがれ來れりと
Job 1:20 是においてヨブ起あがり外衣を裂き髮を斬り地に伏して拜し
Job 1:21 言ふ我裸にて母の胎を出たり 又裸にて彼處に歸らん ヱホバ與へヱホバ取りたまふなり ヱホバの御名は讚べきかな
Job 1:22 この事においてヨブは全く罪を犯さず神にむかひて愚なることを言ざりき
Job 2:1 或日神の子等きたりてヱホバの前に立つ サタンも來りその中にありてヱホバの前に立つ
Job 2:2 ヱホバ、サタンに言たまひけるは汝何處より來りしや サタン、ヱホバに應へて言けるは地を行めぐり此彼經あるきて來れり
Job 2:3 ヱホバ、サタンに言たまひけるは汝心をもちひて我僕ヨブを見しや 彼のごとく完全かつ正くして神を畏れ惡に遠ざかる人世にあらざるなり 汝われを勸めて故なきに彼を打惱さしめしかど彼なほ己を完うして自ら堅くす
Job 2:4 サタン、ヱホバに應へて言けるは皮をもて皮に換るなれば人はその一切の所有物をもて己の生命に換ふべし
Job 2:5 然ど今なんぢの手を伸て彼の骨と肉とを撃たまへ 然ば必らず汝の面にむかひて汝を詛はん
Job 2:6 ヱホバ、サタンに言たまひけるは彼を汝の手に任す 只かれの生命を害ふ勿れと
Job 2:7 サタンやがてヱホバの前よりいでゆきヨブを撃てその足の跖より頂までに惡き腫物を生ぜしむ
Job 2:8 ヨブ土瓦の碎片を取り其をもて身を掻き灰の中に坐りぬ
Job 2:9 時にその妻かれに言けるは汝は尚も己を完うして自ら堅くするや 神を詛ひて死るに如ずと
Job 2:10 然るに彼はこれに言ふ汝の言ところは愚なる婦の言ところに似たり 我ら神より福祉を受るなれば災禍をも亦受ざるを得んやと 此事においてはヨブまつたくその唇をもて罪を犯さざりき
Job 2:11 時にヨブの三人の友この一切の災禍の彼に臨めるを聞き各おのれの處よりして來れり 即ちテマン人エリパズ、シュヒ人ビルダデおよびマアナ人ゾパル是なり 彼らヨブを弔りかつ慰めんとて互に約してきたりしが
Job 2:12 目を擧て遙に觀しに其ヨブなるを見識がたき程なりければ齊く聲を擧て泣き 各おのれの外衣を裂き天にむかひて塵を撒て己の頭の上にちらし
Job 2:13 乃ち七日七夜かれと偕に地に坐しゐて 一言も彼に言かくる者なかりき 彼が苦惱の甚だ大なるを見たればなり
Job 3:1 斯て後ヨブ口を啓きて自己の日を詛へり
Job 3:2 ヨブすなはち言詞を出して云く
Job 3:3 我が生れし日亡びうせよ 男子胎にやどれりと言し夜も亦然あれ
Job 3:4 その日は暗くなれ 神上よりこれを顧みたまはざれ 光これを照す勿れ
Job 3:5 暗闇および死蔭これを取りもどせ 雲これが上をおほえ 日を暗くする者これを懼しめよ
Job 3:6 その夜は黒暗の執ふる所となれ 年の日の中に加はらざれ 月の數に入ざれ
Job 3:7 その夜は孕むこと有ざれ 歡喜の聲その中に興らざれ
Job 3:8 日を詛ふ者レビヤタンを激發すに巧なる者これを詛へ
Job 3:9 その夜の晨星は暗かれ その夜には光明を望むも得ざらしめ 又東雲の眼蓋を見ざらしめよ
Job 3:10 是は我母の胎の戸を闔ずまた我目に憂を見ること無らしめざりしによる
Job 3:11 何とて我は胎より死て出ざりしや 何とて胎より出し時に氣息たえざりしや
Job 3:12 如何なれば膝ありてわれを接しや 如何なれば乳房ありてわれを養ひしや
Job 3:13 否らずば今は我偃して安んじかつ眠らん 然ばこの身やすらひをり
Job 3:14 かの荒墟を自己のために築きたりし世の君等臣等と偕にあり
Job 3:15 かの黄金を有ち白銀を家に充したりし牧伯等と偕にあらん
Job 3:16 又人しれず墮る胎兒のごとくにして世を出ず また光を見ざる赤子のごとくならん
Job 3:17 彼處にては惡き者 虐遇を息め倦憊たる者安息を得
Job 3:18 彼處にては俘囚人みな共に安然に居りて驅使者の聲を聞ず
Job 3:19 小き者も大なる者も同じく彼處にあり僕も主の手を離る
Job 3:20 如何なれば艱難にをる者に光を賜ひ 心苦しむ者に生命をたまひしや
Job 3:21 斯る者は死を望むなれどもきたらず これをもとむるは藏れたる寳を掘るよりも甚だし
Job 3:22 もし墳墓を尋ねて獲ば大に喜こび樂しむなり
Job 3:23 その道かくれ神に取籠られをる人に如何なれば光明を賜ふや
Job 3:24 わが歎息はわが食物に代り我呻吟は水の流れそそぐに似たり
Job 3:25 我が戰慄き懼れし者我に臨み我が怖懼れたる者この身に及べり
Job 3:26 我は安然ならず穩ならず安息を得ず唯艱難のみきたる
Job 4:1 時にテマン人エリパズ答へて曰く
Job 4:2 人もし汝にむかひて言詞を出さば汝これを厭ふや 然ながら誰か言で忍ぶことを得んや
Job 4:3 さきに汝は衆多の人を誨へ諭せり 手の埀たる者をばこれを強くし
Job 4:4 つまづく者をば言をもて扶けおこし 膝の弱りたる者を強くせり
Job 4:5 然るに今この事汝に臨めば汝悶え この事なんぢに加はれば汝おぢまどふ
Job 4:6 汝は神を畏こめり 是なんぢの依頼む所ならずや 汝はその道を全うせり 是なんぢの望ならずや
Job 4:7 請ふ想ひ見よ 誰か罪なくして亡びし者あらん 義者の絶れし事いづくに在や
Job 4:8 我の觀る所によれば不義を耕へし惡を播く者はその穫る所も亦 是のごとし
Job 4:9 みな神の氣吹によりて滅びその鼻の息によりて消うす
Job 4:10 獅子の吼 猛き獅子の聲ともに息み 少き獅子の牙折れ
Job 4:11 大獅子獲物なくして亡び小獅子散失す
Job 4:12 前に言の密に我に臨めるありて我その細聲を耳に聞得たり
Job 4:13 即ち人の熟睡する頃我夜の異象によりて想ひ煩ひをりける時
Job 4:14 身に恐懼をもよほして戰慄き 骨節ことごとく振ふ
Job 4:15 時に靈ありて我面の前を過ければ我は身の毛よだちたり
Job 4:16 その物立とまりしが我はその状を見わかつことえざりき 唯一の物の象わが目の前にあり 時に我しづかなる聲を聞けり云く
Job 4:17 人いかで神より正義からんや 人いかでその造主より潔からんや
Job 4:18 彼はその僕をさへに恃みたまはず 其使者をも足ぬ者と見做たまふ
Job 4:19 況んや土の家に住をりて塵を基とし蜉蝣のごとく亡ぶる者をや
Job 4:20 是は朝より夕までの間に亡びかへりみる者もなくして永く失逝る
Job 4:21 その魂の緒あに絶ざらんや皆悟ること無くして死うす
Job 5:1 請ふなんぢ龥びて看よ 誰か汝に應ふる者ありや 聖者の中にて誰に汝むかはんとするや
Job 5:2 夫愚なる者は憤恨のために身を殺し 癡き者は嫉媢のために己を死しむ
Job 5:3 我みづから愚なる者のその根を張るを見たりしがすみやかにその家を詛へり
Job 5:4 その子等は助援を獲ることなく 門にて惱まさる 之を救ふ者なし
Job 5:5 その穡とれる物は飢たる人これを食ひ 荊棘の籬の中にありてもなほ之を奪ひいだし 羂をその所有物にむかひて口を張る
Job 5:6 災禍は塵より起らず 艱難は土より出ず
Job 5:7 人の生れて艱難をうくるは火の子の上に飛がごとし
Job 5:8 もし我ならんには我は必らず神に告求め 我事を神に任せん
Job 5:9 神は大にして測りがたき事を行ひたまふ 其不思議なる事を爲たまふこと數しれず
Job 5:10 雨を地の上に降し 水を野に遣り
Job 5:11 卑き者を高く擧げ 憂ふる者を引興して幸福ならしめたまふ
Job 5:12 神は狡しき者の謀計を敗り 之をして何事をもその手に成就ること能はざらしめ
Job 5:13 慧き者をその自分の詭計によりて執へ 邪なる者の謀計をして敗れしむ
Job 5:14 彼らは晝も暗黒に遇ひ 卓午にも夜の如くに摸り惑はん
Job 5:15 神は惱める者を救ひてかれらが口の劍を免かれしめ 強き者の手を免かれしめたまふ
Job 5:16 是をもて弱き者望あり 惡き者口を閉づ
Job 5:17 神の懲したまふ人は幸福なり 然ば汝全能者の儆責を輕んずる勿れ
Job 5:18 神は傷け又裹み 撃ていため又その手をもて善醫したまふ
Job 5:19 彼はなんぢを六の艱難の中にて救ひたまふ 七の中にても災禍なんぢにのぞまじ
Job 5:20 饑饉の時にはなんぢを救ひて死を免れしめ 戰爭の時には劍の手を免れしめたまふ
Job 5:21 汝は舌にて鞭たるる時にも隱るることを得 壞滅の來る時にも懼るること有じ
Job 5:22 汝は壞滅と饑饉を笑ひ地の獸をも懼るること無るべし
Job 5:23 田野の石なんぢと相結び野の獸なんぢと和がん
Job 5:24 汝はおのが幕屋の安然なるを知ん 汝の住處を見まはるに缺たる者なからん
Job 5:25 汝また汝の子等の多くなり 汝の裔の地の草の如くになるを知ん
Job 5:26 汝は遐齡におよびて墓にいらん 宛然麥束を時にいたりて運びあぐるごとくなるべし
Job 5:27 視よ我らが尋ね明めし所かくのごとし 汝これを聽て自ら知れよ
Job 6:1 ヨブ應へて曰く
Job 6:2 願はくは我憤恨の善く權られ 我懊惱の之とむかひて天秤に懸られんことを
Job 6:3 然すれば是は海の沙よりも重からん 斯ればこそ我言躁妄なりけれ
Job 6:4 それ全能者の箭わが身にいりわが魂神その毒を飮り 神の畏怖我を襲ひ攻む
Job 6:5 野驢馬あに青草あるに鳴んや 牛あに食物あるに吽らんや
Job 6:6 淡き物あに鹽なくして食はれんや 蛋の白あに味あらんや
Job 6:7 わが心の觸るることを嫌ふ物是は我が厭ふ所の食物のごとし
Job 6:8 願はくは我求むる所を得んことを 願はくは神わが希ふ所の物を我に賜はらんことを
Job 6:9 願はくは神われを滅ぼすを善とし 御手を伸て我を絶たまはんことを
Job 6:10 然るとも我は尚みづから慰むる所あり 烈しき苦痛の中にありて喜ばん 是は我聖者の言に悖りしことなければなり
Job 6:11 我何の氣力ありてか尚俟ん 我の終いかなれば我なほ耐へ忍ばんや
Job 6:12 わが氣力あに石の氣力のごとくならんや 我肉あに銅のごとくならんや
Job 6:13 わが助われの中に無にあらずや 救拯我より逐はなされしにあらずや
Job 6:14 憂患にしづむ者はその友これを憐れむべし 然らずは全能者を畏るることを廢ん
Job 6:15 わが兄弟はわが望を充さざること溪川のごとく 溪川の流のごとくに過さる
Job 6:16 是は氷のために黒くなり 雪その中に藏るれども
Job 6:17 温暖になる時は消ゆき熱くなるに及てはその處に絶はつ
Job 6:18 隊旅客身をめぐらして去り空曠處にいたりて亡ぶ
Job 6:19 テマの隊旅客これを望みシバの旅客これを慕ふ
Job 6:20 彼等これを望みしによりて愧恥を取り 彼處に至りてその面を赧くす
Job 6:21 かく汝等も今は虚しき者なり 汝らは怖ろしき事を見れば則ち懼る
Job 6:22 我あに汝等我に予へよと言しこと有んや 汝らの所有物の中より物を取て我ために饋れと言しこと有んや
Job 6:23 また敵人の手より我を救ひ出せと言しことあらんや 虐ぐる者の手より我を贖へと言しことあらんや
Job 6:24 我を教へよ 然らば我默せん 請ふ我の過てる所を知せよ
Job 6:25 正しき言は如何に力あるものぞ 然ながら汝らの規諫る所は何の規諫とならんや
Job 6:26 汝らは言を規正んと想ふや 望の絶たる者の語る所は風のごときなり
Job 6:27 汝らは孤子のために籤を掣き 汝らの友をも商貨にするならん
Job 6:28 今ねがはくは我に向へ 我は汝らの面の前に僞はらず
Job 6:29 請ふ再びせよ 不義あらしむる勿れ 請ふ再びせよ 此事においては我正義し
Job 6:30 我舌に不義あらんや 我口惡き物を辨へざらんや
Job 7:1 それ人の世にあるは戰鬪にあるがごとくならずや 又其日は傭人の日のごとくなるにあらずや
Job 7:2 奴僕の暮を冀がふが如く傭人のその價を望むがごとく
Job 7:3 我は苦しき月を得させられ 憂はしき夜をあたへらる
Job 7:4 我臥ば乃はち言ふ 何時夜あけて我おきいでんかと 曙まで頻に輾轉ぶ
Job 7:5 わが肉は蟲と土塊とを衣服となし 我皮は愈てまた腐る
Job 7:6 わが日は機の梭よりも迅速なり 我望む所なくし之を送る
Job 7:7 想ひ見よ わが生命が氣息なる而已 我目は再び福祉を見ること有じ
Job 7:8 我を見し者の眼かさねて我を見ざらん 汝目を我にむくるも我は已に在ざるべし
Job 7:9 雲の消て逝がごとく陰府に下れる者は重ねて上りきたらじ
Job 7:10 彼は再びその家に歸らず 彼の郷里も最早かれを認めじ
Job 7:11 然ば我はわが口を禁めず 我心の痛によりて語ひ わが神魂の苦しきによりて歎かん
Job 7:12 我あに海ならんや鰐ならんや 汝なにとて我を守らせおきたまふぞ
Job 7:13 わが牀われを慰め わが寢床わが愁を解んと思ひをる時に
Job 7:14 汝夢をもて我を驚かし 異象をもて我を懼れしめたまふ
Job 7:15 是をもて我心は氣息の閉んことを願ひ 我この骨よりも死を冀がふ
Job 7:16 われ生命を厭ふ 我は永く生るをことを願はず 我を捨おきたまへ 我日は氣のごときなり
Job 7:17 人を如何なる者として汝これを大にし 之を心に留
Job 7:18 朝ごとに之を看そなはし 時わかず之を試みたまふや
Job 7:19 何時まで汝われに目を離さず 我が津を咽む間も我を捨おきたまはざるや
Job 7:20 人を鑒みたまふ者よ我罪を犯したりとて汝に何をか爲ん 何ぞ我を汝の的となして我にこの身を厭はしめたまふや
Job 7:21 汝なんぞ我の愆を赦さず我罪を除きたまはざるや 我いま土の中に睡らん 汝我を尋ねたまふとも我は在ざるべし
Job 8:1 時にシュヒ人ビルダデ答へて曰く
Job 8:2 何時まで汝かかる事を言や 何時まで汝の口の言語を大風のごとくにするや
Job 8:3 神あに審判を曲たまはんや 全能者あに公義を曲たまはんや
Job 8:4 汝の子等かれに罪を獲たるにや之をその愆の手に付したまへり
Job 8:5 汝もし神に求め 全能者に祈り
Job 8:6 清くかつ正しうしてあらば必ず今汝を顧み汝の義き家を榮えしめたまはん
Job 8:7 然らば汝の始は微小くあるとも汝の終は甚だ大ならん
Job 8:8 請ふ汝過にし代の人に問へ 彼らの父祖の尋究めしところの事を學べ
Job 8:9 (我らは昨日より有しのみにて何をも知ず 我らが世にある日は影のごとし)
Job 8:10 彼等なんぢを教へ汝を諭し 言をその心より出さざらんや
Job 8:11 葦あに泥なくして長んや 萩あに水なくしてそだたんや
Job 8:12 是はその青くして未だ刈ざる時にも他の一切の草よりは早く槁る
Job 8:13 神を忘るる者の道は凡て是のごとく 悖る者の望は空しくなる
Job 8:14 その恃む所は絶れ その倚ところは蜘蛛網のごとし
Job 8:15 その家に倚かからんとすれば家立ず 之に堅くとりすがるも保たじ
Job 8:16 彼日の前に青緑を呈はし その枝を園に蔓延らせ
Job 8:17 その根を石堆に盤みて石の屋を眺むれども
Job 8:18 若その處より取のぞかれなばその處これを認めずして我は汝を見たる事なしと言ん
Job 8:19 視よその道の喜樂是のごとし 而してまた他の者地より生いでん
Job 8:20 それ神は完全人を棄たまはず また惡き者の手を執りたまはず
Job 8:21 遂に哂笑をもて汝の口に充し歡喜を汝の唇に置たまはん
Job 8:22 汝を惡む者は羞恥を着せられ 惡き者の住所は無なるべし
Job 9:1 ヨブこたへて言けるは
Job 9:2 我まことに其事の然るを知り 人いかでか神の前に義かるべけん
Job 9:3 よし人は神と辨爭はんとするとも千の一も答ふること能はざるべし
Job 9:4 神は心慧く力強くましますなり 誰か神に逆ひてその身安からんや
Job 9:5 彼山を移したまふに山しらず 彼震怒をもて之を飜倒したまふ
Job 9:6 彼地を震ひてその所を離れしめたまへばその柱ゆるぐ
Job 9:7 日に命じたまへば日いでず 又星辰を封じたまふ
Job 9:8 唯かれ獨天を張り海の濤を覆たまふ
Job 9:9 また北斗參宿昴宿および南方の密室を造りたまふ
Job 9:10 大なる事を行ひたまふこと測られず奇しき業を爲たまふこと數しれず
Job 9:11 視よ彼わが前を過たまふ 然るに我これを見ず彼すすみゆき賜ふ然るに我之を曉ず
Job 9:12 彼奪ひ去賜ふ 誰か能之を沮まん 誰か之に汝何を爲やと言ことを得爲ん
Job 9:13 神其震怒を息賜はず ラハブを助る者等之が下に屈む
Job 9:14 然ば我爭か彼に回答を爲ことを得ん 爭われ言を選びて彼と論ふ事をえんや
Job 9:15 假令われ義かるとも彼に回答をせじ 彼は我を審判く者なれば我彼に哀き求ん
Job 9:16 假令我彼を呼て彼われに答へたまふともわが言を聽いれ賜ひしとは我信ぜざるなり
Job 9:17 彼は大風をもて我を撃碎き 故なくして我に衆多の傷を負せ
Job 9:18 我に息をつかさしめず 苦き事をもて我身に充せ賜ふ
Job 9:19 強き者の力量を言んか 視よ此にあり 審判の事ならんか 誰か我を喚出すことを得爲ん
Job 9:20 假令われ義かるとも我口われを惡しと爲ん 假令われ完全かるとも尚われを罪ありとせん
Job 9:21 我は全し 然ども我はわが心を知ず 我生命を賤む
Job 9:22 皆同一なり 故に我は言ふ神は完全者と惡者とを等しく滅ぼしたまふと
Job 9:23 災禍の俄然に人を誅す如き事あれば彼は辜なき者の苦痛を笑ひ見たまふ
Job 9:24 世は惡き者の手に交されてあり 彼またその裁判人の面を蔽ひたまふ 若彼ならずば是誰の行爲なるや
Job 9:25 わが日は驛使よりも迅く 徒に過さりて福祉を見ず
Job 9:26 其はしること葦舟のごとく 物を攫まんとて飛かける鷲のごとし
Job 9:27 たとひ我わが愁を忘れ面色を改めて笑ひをらんと思ふとも
Job 9:28 尚この諸の苦痛のために戰慄くなり 我思ふに汝われを釋し放ちたまはざらん
Job 9:29 我は罪ありとせらるるなれば何ぞ徒然に勞すべけんや
Job 9:30 われ雪水をもて身を洗ひ 灰汁をもて手を潔むるとも
Job 9:31 汝われを汚はしき穴の中に陷いれたまはん 而して我衣も我を厭ふにいたらん
Job 9:32 神は我のごとく人にあらざれば我かれに答ふべからず 我ら二箇して共に裁判に臨むべからず
Job 9:33 また我らの間には我ら二箇の上に手を置べき仲保あらず
Job 9:34 願くは彼その杖を我より取はなし その震怒をもて我を懼れしめたまはざれ
Job 9:35 然らば我 言語て彼を畏れざらん 其は我みづから斯る者と思はざればなり
Job 10:1 わが心生命と厭ふ 然ば我わが憂愁を包まず言あらはし わが魂神の苦きによりて語はん
Job 10:2 われ神に申さん 我を罪ありしとしたまふ勿れ 何故に我とあらそふかを我に示したまへ
Job 10:3 なんぢ虐遇を爲し 汝の手の作を打棄て惡き者の謀計を照すことを善としたまふや
Job 10:4 汝は肉眼を有たまふや 汝の觀たまふ所は人の觀るがごとくなるや
Job 10:5 なんぢの日は人間の日のごとく 汝の年は人の日のごとくなるや
Job 10:6 何とて汝わが愆を尋ねわが罪をしらべたまふや
Job 10:7 されども汝はすでに我の罪なきを知たまふ また汝の手より救ひいだし得る者なし
Job 10:8 汝の手われをいとなみ我をことごとく作れり 然るに汝今われを滅ぼしたまふなり
Job 10:9 請ふ記念たまへ 汝は土塊をもてすてるがごとくに我を作りたまへり 然るに復われを塵に歸さんとしたまふや
Job 10:10 汝は我を乳のごとく斟ぎ牛酪のごとくに凝しめたまひしに非ずや
Job 10:11 汝は皮と肉とを我に着せ骨と筋とをもて我を編み
Job 10:12 生命と恩惠とをわれに授け我を眷顧てわが魂神を守りたまへり
Job 10:13 然はあれど汝これらの事を御心に藏しおきたまへり 我この事汝の心にあるを知る
Job 10:14 我もし罪を犯さば汝われをみとめてわが罪を赦したまはじ
Job 10:15 我もし行状あしからば禍あらん 假令われ義かるとも我頭を擧じ 其は我は衷に羞耻充ち 眼にわが患難を見ればなり
Job 10:16 もし頭を擧なば獅子のごとくに汝われを追打ち 我身の上に復なんぢの奇しき能力をあらはしたまはん
Job 10:17 汝はしばしば證する者を入かへて我を攻め 我にむかひて汝の震怒を増し新手に新手を加へて我を攻めたまふ
Job 10:18 何とて汝われを胎より出したまひしや 然らずば我は息絶え目に見らるること無く
Job 10:19 曾て有ざりし如くならん 即ち我は胎より墓に持ゆかれん
Job 10:20 わが日は幾時も无きに非ずや 願くは彼姑らく息て我を離れ我をして少しく安んぜしめんことを
Job 10:21 我が往て復返ることなきその先に斯あらしめよ 我は暗き地 死の蔭の地に往ん
Job 10:22 この地は暗くして晦冥に等しく死の蔭にして區分なし 彼處にては光明も黒暗のごとし
Job 11:1 是においてナアマ人ゾパル答へて言けるは
Job 11:2 言語多からば豈答へざるを得んや 口おほき人あに義とせられんや
Job 11:3 汝も空しき言あに人をして口を閉しめんや 汝嘲らば人なんぢをして羞しめざらんや
Job 11:4 汝は言ふ 我教は正し 我は汝の目の前に潔しと
Job 11:5 願くは神言を出し 汝にむかひて口を開き
Job 11:6 智慧の祕密をなんぢに示してその知識の相倍するを顯したまはんことを 汝しれ神はなんぢの罪よりも輕くなんぢを處置したまふなり
Job 11:7 なんぢ神の深事を窮むるを得んや 全能者を全く窮むることを得んや
Job 11:8 その高きことは天のごとし 汝なにを爲し得んや 其深きことは陰府のごとし 汝なにを知えんや
Job 11:9 その量は地よりも長く海よりも濶し
Job 11:10 彼もし行めぐりて人を執へて召集めたまふ時は誰か能くこれを阻まんや
Job 11:11 彼は僞る人を善く知りたまふ 又惡事は顧みること無して見知たまふなり
Job 11:12 虚しき人は悟性なし その生るるよりして野驢馬の駒のごとし
Job 11:13 汝もし彼にむかひて汝の心を定め 汝の手を舒べ
Job 11:14 手に罪のあらんには之を遠く去れ 惡をなんぢの幕屋に留むる勿れ
Job 11:15 然すれば汝 面を擧て玷なかるべく 堅く立て懼るる事なかるべし
Job 11:16 すなはち汝憂愁を忘れん 汝のこれを憶ゆることは流れ去し水のごとくならん
Job 11:17 なんぢの生存らふる日は眞晝よりも輝かん 假令暗き事あるとも是は平旦のごとくならん
Job 11:18 なんぢは望あるに因て安んじ 汝の周圍を見めぐりて安然に寐るにいたらん
Job 11:19 なんぢは何にも懼れさせらるること無して偃やまん 必ず衆多の者なんぢを悦こばせんと務むべし
Job 11:20 然ど惡き者は目曚み逃遁處を失なはん 其望は氣の斷ると等しかるべし
Job 12:1 ヨブこたへて言ふ
Job 12:2 なんぢら而已まことに人なり 智慧は汝らと共に死ん
Job 12:3 我もなんぢらと同じく心あり 我はなんぢらの下に立ず 誰か汝らの言し如き事を知ざらんや
Job 12:4 我は神に龥はりて聽るる者なるに今その友に嘲らるる者となれり 嗚呼正しくかつ完たき人あざけらる
Job 12:5 安逸なる者は思ふ 輕侮は不幸なる者に附そひ足のよろめく者を俟と
Job 12:6 掠奪ふ者の天幕は繁榮え 神を怒らせ自己の手に神を携ふる者は安泰なり
Job 12:7 今請ふ獸に問へ然ば汝に教へん 天空の鳥に問へ然ばなんぢに語らん
Job 12:8 地に言へ然ばなんぢに教へん 海の魚もまた汝に述べし
Job 12:9 誰かこの一切の者に依てヱホバの手のこれを作りしなるを知ざらんや
Job 12:10 一切の生物の生氣および一切の人の靈魂ともに彼の手の中にあり
Job 12:11 耳は説話を辨へざらんや その状あたかも口の食物を味ふがごとし
Job 12:12 老たる者の中には智慧あり 壽長者の中には穎悟あり
Job 12:13 智慧と權能は神に在り 智謀と穎悟も彼に屬す
Job 12:14 視よ彼毀てば再び建ること能はず 彼人を閉こむれば開き出すことを得ず
Job 12:15 視よ彼水を止むれば則ち涸れ 水を出せば則ち地を滅ぼす
Job 12:16 權能と穎悟は彼に在り 惑はさるる者も惑はす者も共に彼に屬す
Job 12:17 彼は議士を裸體にして擄へゆき 審判人をして愚なる者とならしめ
Job 12:18 王等の權威を解て反て之が腰に繩をかけ
Job 12:19 祭司等を裸體にして擄へゆき 權力ある者を滅ぼし
Job 12:20 言爽なる者の言語を取除き 老たる者の了知を奪ひ
Job 12:21 侯伯たる者等に恥辱を蒙らせ 強き者の帶を解き
Job 12:22 暗中より隱れたる事等を顯し 死の蔭を光明に出し
Job 12:23 國々を大にしまた之を滅ぼし 國々を廣くしまた之を舊に歸し
Job 12:24 地の民の長たる者等の了知を奪ひ これを路なき荒野に吟行はしむ
Job 12:25 彼らは光明なき暗にたどる 彼また彼らを醉る人のごとくによろめかしむ
Job 13:1 視よわが目これを盡く觀 わが耳これを聞て通逹れり
Job 13:2 汝らが知るところは我もこれを知る 我は汝らに劣らず
Job 13:3 然りと雖ども我は全能者に物言ん 我は神と論ぜんことをのぞむ
Job 13:4 汝らは只謊言を造り設くる者 汝らは皆無用の醫師なり
Job 13:5 願くは汝ら全く默せよ 然するは汝らの智慧なるべし
Job 13:6 請ふわが論ずる所を聽き 我が唇にて辨爭そふ所を善く聽け
Job 13:7 神のために汝ら惡き事を言や 又かれのために虚僞を述るや
Job 13:8 汝ら神の爲に偏るや またかれのために爭はんとするや
Job 13:9 神もし汝らを鑒察たまはば豈善らんや 汝等人を欺むくごとくに彼を欺むき得んや
Job 13:10 汝等もし密に私しするあらば彼かならず汝らを責ん
Job 13:11 その威光なんぢらを懼れしめざらんや 彼を懼るる畏懼なんぢらに臨まざらんや
Job 13:12 なんぢらの諭言は灰に譬ふべし なんぢらの城は土の城となる
Job 13:13 默して我にかかはらざれ 我言語んとす 何事にもあれ我に來らば來れ
Job 13:14 我なんぞ我肉をわが齒の間に置き わが生命をわが手に置かんや
Job 13:15 彼われを殺すとも我は彼に依頼まん 唯われは吾道を彼の前に明かにせんとす
Job 13:16 彼また終に我救拯とならん 邪曲なる者は彼の前にいたること能はざればなり
Job 13:17 なんぢら聽よ 我言を聽け我が述る所をなんぢらの耳に入しめよ
Job 13:18 視よ我すでに吾事を言竝べたり 必ず義しとせられんと自ら知る
Job 13:19 誰か能くわれと辨論ふ者あらん 若あらば我は口を緘て死ん
Job 13:20 惟われに二の事を爲たまはざれ 然ば我なんぢの面をさけて隱れじ
Job 13:21 なんぢの手を我より離したまへ 汝の威嚴をもて我を懼れしめたまはざれ
Job 13:22 而して汝われを召したまへ 我こたへん 又われにも言はしめて汝われに答へたまへ
Job 13:23 我の愆われの罪いくばくなるや 我の背反と罪とを我に知しめたまへ
Job 13:24 何とて御顏を隱し我をもて汝の敵となしたまふや
Job 13:25 なんぢは吹廻さるる木の葉を威し 干あがりたる籾殼を追ひたまふや
Job 13:26 汝は我につきて苦き事等を書しるし 我をして我が幼稚時の罪を身に負しめ
Job 13:27 わが足を足械にはめ 我すべての道を伺ひ我足の周圍に限界をつけたまふ
Job 13:28 我は腐れたる者のごとくに朽ゆき 蠹に食るる衣服に等し
Job 14:1 婦の産む人はその日少なくして艱難多し
Job 14:2 その來ること花のごとくにして散り 其馳ること影のごとくにして止まらず
Job 14:3 なんぢ是のごとき者に汝の目を啓きたまふや 汝われを汝の前にひきて審判したまふや
Job 14:4 誰か清き物を汚れたる物の中より出し得る物あらん 一人も無し
Job 14:5 その日既に定まり その月の數なんぢに由り 汝これが區域を立て越ざらしめたまふなれば
Job 14:6 是に目を離して安息を得させ 之をして傭人のその日を樂しむがごとくならしめたまへ
Job 14:7 それ木には望あり 假令砍るるとも復芽を出してその枝絶ず
Job 14:8 たとひ其根地の中に老い 幹土に枯るとも
Job 14:9 水の潤霑にあへば即ち芽をふき枝を出して若樹に異ならず
Job 14:10 然ど人は死れば消うす 人氣絶えなば安に在んや
Job 14:11 水は海に竭き河は涸てかわく
Job 14:12 是のごとく人も寢臥てまた興ず 天の盡るまで目覺ず睡眠を醒さざるなり
Job 14:13 願はくは汝われを陰府に藏し 汝の震怒の息むまで我を掩ひ 我ために期を定め而して我を念ひたまへ
Job 14:14 人もし死ばまた生んや 我はわが征戰の諸日の間望みをりて我が變更の來るを待ん
Job 14:15 なんぢ我を呼びたまはん 而して我こたへん 汝かならず汝の手の作を顧みたまはん
Job 14:16 今なんぢは我に歩履を數へたまふ 我罪を汝うかがひたまはざらんや
Job 14:17 わが愆は凡て嚢の中に封じてあり汝わが罪を縫こめたまふ
Job 14:18 それ山も倒れて終に崩れ巖石も移りてその處を離る
Job 14:19 水は石を鑿ち 浪は地の塵を押流す 汝は人の望を斷たまふ
Job 14:20 なんぢは彼を永く攻なやまして去ゆかしめ 彼の面容の變らせて逐やりたまふ
Job 14:21 その子尊貴なるも彼は之を知ず 卑賤なるもまた之を曉らざるなり
Job 14:22 只己みづからその肉に痛苦を覺え己みづからその心に哀く而已
Job 15:1 テマン人エリパズ答へて曰く
Job 15:2 智者あに虚しき智識をもて答へんや豈東風をその腹に充さんや
Job 15:3 あに裨なき談益なき詞をもて辨論はんや
Job 15:4 まことに汝は神を畏るる事を棄て その前に祷ることを止む
Job 15:5 なんぢの罪なんぢの口を教ふ 汝はみづから擇びて狡猾人の舌を用ふ
Job 15:6 なんぢの口みづから汝の罪を定む 我には非ず汝の唇なんぢの惡きを證す
Job 15:7 汝あに最初に世に生れたる人ならんや 山よりも前に出來しならんや
Job 15:8 神の御謀議を聞しならんや 智慧を獨にて藏めをらんや
Job 15:9 なんぢが知る所は我らも知ざらんや 汝が曉るところは我らの心にも在ざらんや
Job 15:10 我らの中には白髮の人および老たる人ありて汝の父よりも年高し
Job 15:11 神の慰藉および夫の柔かき言詞を汝小しとするや
Job 15:12 なんぢ何ぞかく心狂ふや 何ぞかく目をしばたたくや
Job 15:13 なんぢ是のごとく神に對ひて氣をいらだて 斯る言詞をなんぢの口よりいだすは如何ぞや
Job 15:14 人は如何なる者ぞ 如何してか潔からん 婦の産し者は如何なる者ぞ 如何してか義からん
Job 15:15 それ神はその聖者にすら信を置たまはず 諸の天もその目の前には潔からざるなり
Job 15:16 況んや罪を取ること水を飮が如くする憎むべき穢れたる人をや
Job 15:17 我なんぢに語る所あらん 聽よ我見たる所を述ん
Job 15:18 是すなはち智者等が父祖より受て隱すところなく傳へ來し者なり
Job 15:19 彼らに而已この地は授けられて外國人は彼等の中に往來せしこと無りき
Job 15:20 惡き人はその生る日の間つねに悶へ苦しむ 強暴人の年は數へて定めおかる
Job 15:21 その耳には常に懼怖しき音きこえ平安の時にも滅ぼす者これに臨む
Job 15:22 彼は幽暗を出得るとは信ぜず 目ざされて劒に付さる
Job 15:23 彼食物は何處にありやと言つつ尋ねありき 黒暗日の備へられて己の側にあるを知る
Job 15:24 患難と苦痛とはかれを懼れしめ 戰鬪の準備をなせる王のごとくして彼に打勝ん
Job 15:25 彼は手を伸て神に敵し 傲りて全能者に悖り
Job 15:26 頸を強くし 厚き楯の面を向て之に馳かかり
Job 15:27 面に肉を滿せ 腰に脂を凝し
Job 15:28 荒されたる邑々に住居を設けて人の住べからざる家 石堆となるべき所に居る
Job 15:29 是故に彼は富ず その貨物は永く保たず その所有物は地に蔓延ず
Job 15:30 また自己は黒暗を出づるに至らず 火燄その枝葉を枯さん 而してその身は神の口の氣吹によりて亡ゆかん
Job 15:31 彼は虚妄を恃みて自ら欺くべからず 其報は虚妄なるべければなり
Job 15:32 彼の日の來らざる先に其事成べし 彼の枝は緑ならじ
Job 15:33 彼は葡萄の樹のその熟せざる果を振落すがごとく 橄欖の樹のその花を落すがごとくなるべし
Job 15:34 邪曲なる者の宗族は零落れ 賄賂の家は火に焚ん
Job 15:35 彼等は惡念を孕み 虚妄を生み その胎にて詭計を調ふ
Job 16:1 ヨブ答へて曰く
Job 16:2 斯る事は我おほく聞り 汝らはみな人を慰めんとして却つて人を煩はす者なり
Job 16:3 虚しき言語あに終極あらんや 汝なにに勵まされて應答をなすや
Job 16:4 我もまた汝らの如くに言ことを得 もし汝らの身わが身と處を換なば我は言語を練て汝らを攻め 汝らにむかひて首を搖ことを得
Job 16:5 また口をもて汝らを強くし 唇の慰藉をもて汝らの憂愁を解ことを得るなり
Job 16:6 たとひ我言を出すとも我憂愁は解ず 默するとても何ぞ我身の安くなること有んや
Job 16:7 彼いま已に我を疲らしむ 汝わが宗族をことごとく荒せり
Job 16:8 なんぢ我をして皺らしめたり 是われに向ひて見證をなすなり 又わが痩おとろへたる状貌わが面の前に現はれ立て我を攻む
Job 16:9 かれ怒りてわれを撕裂きかつ窘しめ 我にむかひて齒を噛鳴し我敵となり目を鋭して我を看る
Job 16:10 彼ら我にむかひて口を張り 我を賤しめてわが頬を打ち 相集まりて我を攻む
Job 16:11 神われを邪曲なる者に交し 惡き者の手に擲ちたまへり
Job 16:12 我は安穩なる身なりしに彼いたく我を打惱まし 頸を執へて我をうちくだき遂に我を立て鵠となしたまひ
Job 16:13 その射手われを遶り圍めり やがて情もなく我腰を射透し わが膽を地に流れ出しめたまふ
Job 16:14 彼はわれを打敗りて破壞に破壞を加へ 勇士のごとく我に奔かかりたまふ
Job 16:15 われ麻布をわが肌に縫つけ 我角を塵にて汚せり
Job 16:16 我面は泣て頳くなり 我目縁には死の蔭あり
Job 16:17 然れども我手には不義あること無く わが祈祷は清し
Job 16:18 地よ我血を掩ふなかれ 我號呼は休む處を得ざれ
Job 16:19 視よ今にても我證となる者天にあり わが眞實を表明す者高き處にあり
Job 16:20 わが朋友は我を嘲けれども我目は神にむかひて涙を注ぐ
Job 16:21 願くは彼 人のために神と論辨し 人の子のためにこれが朋友と論辨せんことを
Job 16:22 數年すぎさらば我は還らぬ旅路に往べし
Job 17:1 わが氣息は已にくさり 我日すでに盡なんとし墳墓われを待つ
Job 17:2 まことに嘲弄者等わが傍に在り 我目は彼らの辨爭ふを常に見ざるを得ず
Job 17:3 願くは質を賜ふて汝みづから我の保證となりたまへ 誰か他にわが手をうつ者あらんや
Job 17:4 汝彼らの心を閉て悟るところ無らしめたまへり 必ず彼らをして愈らしめたまはじ
Job 17:5 朋友を交付して掠奪に遭しむる者は其子等の目潰るべし
Job 17:6 彼われを世の民の笑柄とならしめたまふ 我は面に唾せらるべき者となれり
Job 17:7 かつまた我目は憂愁によりて昏み 肢體は凡て影のごとし
Job 17:8 義しき者は之に驚き 無辜者は邪曲なる者を見て憤ほる
Job 17:9 然ながら義しき者はその道を堅く持ち 手に潔淨き者はますます力を得るなり
Job 17:10 請ふ汝ら皆ふたたび來れ 我は汝らの中に一人も智き者あるを見ざるなり
Job 17:11 わが日は已に過ぎ わが計る所わが心に冀ふ所は已に敗れたり
Job 17:12 彼ら夜を晝に變ふ 黒暗の前に光明ちかづく
Job 17:13 我もし俟つところ有ば是わが家たるべき陰府なるのみ 我は黒暗にわが牀を展ぶ
Job 17:14 われ朽腐に向ひては汝はわが父なりと言ひ 蛆に向ひては汝は我母わが姉妹なりと言ふ
Job 17:15 然ばわが望はいづくにかある 我望は誰かこれを見る者あらん
Job 17:16 是は下りて陰府の關に到らん 之と齊しく我身は塵の中に臥靜まるべし
Job 18:1 シユヒ人ビルダデこたへて曰く
Job 18:2 汝等いつまで言語を獵求むることをするや 汝ら先曉るべし 然る後われら辨論はん
Job 18:3 われら何ぞ獸畜とおもはるべけんや 何ぞ汝らの目に汚穢たる者と見らるべけんや
Job 18:4 なんぢ怒りて身を裂く者よ 汝のためとて地あに棄られんや 磐あに其處より移されんや
Job 18:5 惡き者の光明は滅され 其火の焔は照じ
Job 18:6 その天幕の内なる光明は暗くなり其が上の燈火は滅さるべし
Job 18:7 またその強き歩履は狹まり 其計るところは自分を陷いる
Job 18:8 すなはち其足に逐れて網に到り また陷阱の上を歩むに
Job 18:9 索はその踵に纒り 羂これを執ふ
Job 18:10 索かれを執ふるために地に隱しあり 羂かれを陷しいるるために路に設けあり
Job 18:11 怖ろしき事四方において彼を懼れしめ 其足にしたがひて彼をおふ
Job 18:12 その力は餓ゑ 其傍には災禍そなはり
Job 18:13 その膚の肢は蝕壞らる 即ち死の初子これが肢を蝕壞るなり
Job 18:14 やがて彼はその恃める天幕より曳離されて懼怖の王の許に驅やられん
Job 18:15 彼に屬せざる者かれの天幕に住み 硫礦かれの家の上に降ん
Job 18:16 下にてはその根枯れ 上にてはその枝砍る
Job 18:17 彼の跡は地に絶え 彼の名は街衢に傳はらじ
Job 18:18 彼は光明の中より黒暗に逐やられ 世の中より驅出されん
Job 18:19 彼は其民の中に子も無く孫も有じ また彼の住所には一人も遺る者なからん
Job 18:20 之が日を見るにおいて後に來る者は駭き 先に出し者は怖おそれん
Job 18:21 かならず惡き人の住所は是のごとく 神を知ざる者の所は是のごとくなるべし
Job 19:1 ヨブこたへて曰く
Job 19:2 汝ら我心をなやまし 言語をもて我を打くだくこと何時までぞや
Job 19:3 なんぢら已に十次も我を辱しめ我を惡く待ひてなほ愧るところ無し
Job 19:4 假令われ眞に過ちたらんもその過は我の身に止れり
Job 19:5 なんぢら眞に我に向ひて誇り我身に羞べき行爲ありと證するならば
Job 19:6 神われを虐げその網羅をもて我と包みたまへりと知るべし
Job 19:7 我虐げらるると叫べども答なく 呼はり求むれども審理なし
Job 19:8 彼わが路の周圍に垣を結めぐらして逾る能はざらしめ 我が行く途に黒暗を蒙むらしめ
Job 19:9 わが光榮を褫ぎわが冠冕を首より奪ひ
Job 19:10 四方より我を毀ちて失しめ 我望を樹のごとくに根より拔き
Job 19:11 我にむかひて震怒を燃し 我を敵の一人と見たまへり
Job 19:12 その軍旅ひとしく進み途を高くして我に攻寄せ わが天幕の周圍に陣を張り
Job 19:13 彼わが兄弟等をして遠くわれを離れしめたまへり 我を知る人々は全く我に疎くなりぬ
Job 19:14 わが親戚は往來を休め わが朋友はわれを忘れ
Job 19:15 わが家に寄寓る者およびわが婢等は我を見て外人のごとくす 我かれらの前にては異國人のごとし
Job 19:16 われわが僕を喚べどもこたへず 我口をもて彼に請はざるを得ざるなり
Job 19:17 わが氣息はわが妻に厭はれ わが臭氣はわが同胎の子等に嫌はる
Job 19:18 童子等さへも我を侮どり 我起あがれば則ち我を嘲ける
Job 19:19 わが親しき友われを惡みわが愛したる人々ひるがへりてわが敵となれり
Job 19:20 わが骨はわが皮と肉とに貼り 我は僅に齒の皮を全うして逃れしのみ
Job 19:21 わが友よ汝等われを恤れめ 神の手われを撃り
Job 19:22 汝らなにとて神のごとくして我を攻め わが肉に饜ことなきや
Job 19:23 望むらくは我言の書留られんことを 望むらくは我言書に記されんことを
Job 19:24 望むらくは鐡の筆と鉛とをもて之を永く磐石に鐫つけおかんことを
Job 19:25 われ知る我を贖ふ者は活く 後の日に彼かならず地の上に立ん
Job 19:26 わがこの皮この身の朽はてん後われ肉を離れて神を見ん
Job 19:27 我みづから彼を見たてまつらん 我目かれを見んに識らぬ者のごとくならじ 我が心これを望みて焦る
Job 19:28 なんぢら若われら如何に彼を攻めんかと言ひ また事の根われに在りと言ば
Job 19:29 劍を懼れよ 忿怒は劍の罰をきたらす 斯なんぢら遂に審判のあるを知ん
Job 20:1 ナアマ人ゾパルこたへて曰く
Job 20:2 これに因てわれ答をなすの思念を起し心しきりに之がために急る
Job 20:3 我を辱しむる警語を我聞ざるを得ず 然しながらわが了知の性われをして答ふることを得せしむ
Job 20:4 なんぢ知らずや古昔より地に人の置れしより以來
Job 20:5 惡き人の勝誇は暫時にして邪曲なる者の歡樂は時の間のみ
Job 20:6 その高天に逹しその首雲に及ぶとも
Job 20:7 終には己の糞のごとくに永く亡絶べし 彼を見識る者は言ん彼は何處にありやと
Job 20:8 彼は夢の如く過さりて復見るべからず 夜の幻のごとく追はらはれん
Job 20:9 彼を見たる目かさねてかれを見ることあらず 彼の住たる處も再びかれを見ること無らん
Job 20:10 その子等は貧しき者に寛待を求めん 彼もまたその取し貨財を手づから償さん
Job 20:11 その骨に少壯氣勢充り 然れどもその氣勢もまた塵の中に彼とおなじく臥ん
Job 20:12 かれ惡を口に甘しとして舌の底に藏め
Job 20:13 愛みて捨ず 之を口の中に含みをる
Job 20:14 然どその食物膓の中にて變り 腹の内にて蝮の毒とならん
Job 20:15 かれ貨財を呑たれども復之を吐いださん 神これを彼の腹より推いだしたまふべし
Job 20:16 かれは蝮の毒を吸ひ 虺の舌に殺されん
Job 20:17 かれは蜂蜜と牛酪の湧て流るる河川を視ざらん
Job 20:18 その勞苦て獲たる物は之を償して自ら食はず 又それを求めたる所有よりは快樂を得じ
Job 20:19 是は彼貧しき者を虐遇げて之を棄たればなり 假令家を奪ひとるとも之を改め作ることを得ざらん
Job 20:20 かれはその腹に飽ことを知ざるが故に自己の深く喜ぶ物をも保つこと能はじ
Job 20:21 かれが遺して食はざる物とては一も無し 是によりてその福祉は永く保たじ
Job 20:22 その繁榮の眞盛において彼は艱難に迫られ 乏しき者すべて手をこれが上に置ん
Job 20:23 かれ腹を充さんとすれば神烈しき震怒をその上に下し その食する時にこれをその上に降したまふ
Job 20:24 かれ鐡の器を避れば銅の弓これを射透す
Job 20:25 是に於て之をその身より拔ば閃く鏃その膽より出きたりて畏懼これに臨む
Job 20:26 各種の黒暗これが寳物ををほろぼすために蓄へらる 又人の吹おこせしに非る火かれを焚き その天幕に遺りをる者をも焚ん
Job 20:27 天かれの罪を顯はし 地興りて彼を攻ん
Job 20:28 その家の儲蓄は亡て神の震怒の日に流れ去ん
Job 20:29 是すなはち惡き人が神より受る分 神のこれに定めたまへる數なり
Job 21:1 ヨブこたへて曰く
Job 21:2 請ふ汝等わが言を謹んで聽き 之をもて汝らの慰藉に代よ
Job 21:3 先われに容して言しめよ 我が言る後なんぢ嘲るも可し
Job 21:4 わが怨言は世の人の上につきて起れる者ならんや 我なんぞ氣をいらだつ可らざらんや
Job 21:5 なんぢら我を視て驚き 手を口にあてよ
Job 21:6 われ思ひまはせば畏しくなりて身體しきりに戰慄く
Job 21:7 惡き人何とて生ながらへ 老かつ勢力強くなるや
Job 21:8 その子等はその周圍にありてその前に堅く立ち その子孫もその目の前に堅く立べし
Job 21:9 またその家は平安にして畏懼なく 神の杖その上に臨まじ
Job 21:10 その牡牛は種を與へて過らず その牝牛は子を産てそこなふ事なし
Job 21:11 彼等はその少き者等を外に出すこと群のごとし その子等は舞をどる
Job 21:12 彼等は鼓と琴とをもて歌ひ 笛の音に由て樂み
Job 21:13 その日を幸福に暮し まばたくまに陰府にくだる
Job 21:14 然はあれども彼等は神に言らく我らを離れ賜へ 我らは汝の道をしることを好まず
Job 21:15 全能者は何者なれば我らこれに事ふべき 我儕これに祈るとも何の益を得んやと
Job 21:16 視よ彼らの福祿は彼らの力に由にあらざるなり 惡人の希圖は我に與する所にあらず
Job 21:17 惡人のその燈火を滅るる事幾度ありしか その滅亡のこれに臨む事 神の怒りて之に艱苦を蒙らせたまふ事幾度有しか
Job 21:18 かれら風の前に藁の如く 暴風に吹さらるる籾殼の如くなること幾度有しか
Job 21:19 神かれの愆を積たくはへてその子孫に報いたまふか 之を彼自己の身に報い知しむるに如ず
Job 21:20 かれをして自らその滅亡を目に視させ かつ全能者の震怒を飮しめよ
Job 21:21 その月の數すでに盡るに於ては何ぞその後の家に關はる所あらん
Job 21:22 神は天にある者等をさへ審判きたまふなれば誰か能これに知識を教へんや
Job 21:23 或人は繁榮を極め全く平穩にかつ安康にして死に
Job 21:24 その器に乳充ち その骨の髓は潤ほへり
Job 21:25 また或人は心を苦しめて死し 終に福祉をあぢはふる事なし
Job 21:26 是等は倶に齊しく塵に臥して蛆におほはる
Job 21:27 我まことに汝らの思念を知り 汝らが我を攻撃んとするの計略を知る
Job 21:28 なんぢらは言ふ王侯の家は何に在る 惡人の住所は何にあると
Job 21:29 汝らは路往く人々に詢ざりしや 彼等の證據を曉らざるや
Job 21:30 すなはち滅亡の日に惡人遺され 烈しき怒の日に惡人たづさへ出さる
Job 21:31 誰か能かれに打向ひて彼の行爲を指示さんや 誰か能彼の爲たる所を彼に報ゆることを爲ん
Job 21:32 彼は舁れて墓に到り 塚の上にて守護ることを爲す
Job 21:33 谷の土塊も彼には快し 一切の人その後に從ふ 其前に行る者も數へがたし
Job 21:34 既に是の如くなるに汝等なんぞ徒に我を慰さめんとするや 汝らの答ふる所はただ虚僞のみ
Job 22:1 是においてテマン人エリパズこたへて曰く
Job 22:2 人 神を益する事をえんや 智人も唯みづから益する而已なるぞかし
Job 22:3 なんぢ義かるとも全能者に何の歡喜かあらん なんぢ行爲を全たふするとも彼に何の利益かあらん
Job 22:4 彼汝の畏懼の故によりて汝を責め汝を鞫きたまはんや
Job 22:5 なんぢの惡大なるにあらずや 汝の罪はきはまり無し
Job 22:6 即ち汝は故なくその兄弟の物を抑へて質となし 裸なる者の衣服を剥て取り
Job 22:7 渇く者に水を與へて飮しめず 饑る者に食物を施こさず
Job 22:8 力ある者土地を得 貴き者その中に住む
Job 22:9 なんぢは寡婦に手を空しうして去しむ 孤子の腕は折る
Job 22:10 是をもて網羅なんぢを環り 畏懼にはかに汝を擾す
Job 22:11 なんぢ黒暗を見ずや 洪水のなんぢを覆ふを見ずや
Job 22:12 神は天の高に在すならずや 星辰の巓ああ如何に高きぞや
Job 22:13 是によりて汝は言ふ 神なにをか知しめさん 豈よく黒雲の中より審判するを得たまはんや
Job 22:14 濃雲かれを蔽へば彼は見たまふ所なし 唯天の蒼穹を歩みたまふ
Job 22:15 なんぢ古昔の世の道を行なはんとするや 是あしき人の踐たりし者ならずや
Job 22:16 彼等は時いまだ至らざるに打絶れ その根基は大水に押流されたり
Job 22:17 彼ら神に言けらく我儕を離れたまへ 全能者われらのために何を爲ことを得んと
Job 22:18 しかるに彼は却つて佳物を彼らの家に盈したまへり 但し惡人の計畫は我に與する所にあらず
Job 22:19 義しき者は之を見て喜び 無辜者は彼らを笑ふ
Job 22:20 曰く我らの仇は誠に滅ぼされ 其盈餘れる物は火にて焚つくさる
Job 22:21 請ふ汝神と和らぎて平安を得よ 然らば福祿なんぢに來らん
Job 22:22 請ふかれの口より教晦を受け その言語をなんぢの心に藏めよ
Job 22:23 なんぢもし全能者に歸向り且なんぢの家より惡を除き去ば汝の身再び興されん
Job 22:24 なんぢの寳を土の上に置き オフルの黄金を谿河の石の中に置け
Job 22:25 然れば全能者なんぢの寳となり汝のために白銀となりたまふべし
Job 22:26 而してなんぢは又全能者を喜び且神にむかひて面をあげん
Job 22:27 なんぢ彼に祈らば彼なんぢに聽きたまはん 而して汝その誓願をつくのひ果さん
Job 22:28 なんぢ事を爲んと定めなばその事なんぢに成ん 汝の道には光照ん
Job 22:29 其卑く降る時は汝いふ昇る哉と 彼は謙遜者を拯ひたまふべし
Job 22:30 かれは罪なきに非ざる者をも拯ひたまはん 汝の手の潔淨によりて斯る者も拯はるべし
Job 23:1 ヨブこたへて曰く
Job 23:2 我は今日にても尚つぶやきて服せず わが禍災はわが嘆息よりも重し
Job 23:3 ねがはくは神をたづねて何處にか遇まつるを知り其御座に參いたらんことを
Job 23:4 我この愁訴をその御前に陳べ口を極めて辨論はん
Job 23:5 我その我に答へ給ふ言を知り また其われに言たまふ所を了らん
Job 23:6 かれ大なる能をもて我と爭ひたまはんや 然らじ反つて我を眷みたまふべし
Job 23:7 彼處にては正義人かれと辨爭ふことを得 斯せば我を鞫く者の手を永く免かるべし
Job 23:8 しかるに我東に往くも彼いまさず 西に往くも亦見たてまつらず
Job 23:9 北に工作きたまへども遇まつらず 南に隱れ居たまへば望むべからず
Job 23:10 わが平生の道は彼知りたまふ 彼われを試みたまはば我は金のごとくして出きたらん
Job 23:11 わが足は彼の歩履に堅く隨へり 我はかれの道を守りて離れざりき
Job 23:12 我はかれの唇の命令に違はず 我が法よりも彼の口の言語を重ぜり
Job 23:13 かれは一に居る者にまします 誰か能かれをして意を變しめん 彼はその心に慾する所をかならず爲たまふ
Job 23:14 然ば我に向ひて定めし事を必らず成就たまはん 是のごとき事を多く彼は爲たまふなり
Job 23:15 是故に我かれの前に慄ふ 我考ふれば彼を懼る
Job 23:16 神わが心を弱くならしめ 全能者われをして懼れしめたまふ
Job 23:17 かく我は暗の來らぬ先わが面を黒暗の覆ふ前に打絶れざりき
Job 24:1 なにゆゑに全能者時期を定めおきたまはざるや 何故に彼を知る者その日を見ざるや
Job 24:2 人ありて地界を侵し群畜を奪ひて牧ひ
Job 24:3 孤子の驢馬を驅去り 寡婦の牛を取て質となし
Job 24:4 貧しき者を路より推退け 世の受難者をして盡く身を匿さしむ
Job 24:5 視よ彼らは荒野にをる野驢馬のごとく出て業を爲て食を求め 野原よりその子等のために食物を得
Job 24:6 圃にて惡き者の麥を刈り またその葡萄の遺餘を摘む
Job 24:7 かれらは衣服なく裸にして夜を明し 覆ふて寒氣を禦ぐべき物なし
Job 24:8 山の暴風に濡れ 庇はるるところ無して岩を抱く
Job 24:9 孤子を母の懷より奪ふ者あり 貧しき者の身につける物を取て質となす者あり
Job 24:10 貧き者衣服なく裸にて歩き 飢つつ麥束を擔ふ
Job 24:11 人の垣の内にて油を搾め また渇きつつ酒醡を踐む
Job 24:12 邑の中より人々の呻吟たちのぼり 傷つけられたる者の叫喚おこる 然れども神はその怪事を省みたまはず
Job 24:13 また光明に背く者あり 光の道を知らず 光の路に止らず
Job 24:14 人を殺す者昧爽に興いで 受難者や貧しき者を殺し 夜は盜賊のごとくす
Job 24:15 姦淫する者は我を見る目はなからんと言てその目に昏暮をうかがひ待ち而してその面に覆ふ物を當つ
Job 24:16 また夜分家を穿つ者あり 彼等は晝は閉こもり居て光明を知らず
Job 24:17 彼らには晨は死の蔭のごとし 是死の蔭の怖ろしきを知ばなり
Job 24:18 彼は水の面に疾ながるる物の如し その産業は世の中に詛はる その身重ねて葡萄圃の路に向はず
Job 24:19 亢旱および炎熱は雪水を直に乾涸す 陰府が罪を犯せし者におけるも亦かくのごとし
Job 24:20 これを宿せし腹これを忘れ 蛆これを好みて食ふ 彼は最早世におぼえらるること無く その惡は樹を折るるが如くに折る
Job 24:21 是すなはち孕まず産ざりし婦人をなやまし 寡婦を憐れまざる者なり
Job 24:22 神はその權能をもて強き人々を保存へさせたまふ 彼らは生命あらじと思ふ時にも復興る
Job 24:23 神かれらに安泰を賜へば彼らは安らかなり 而してその目をもて彼らの道を見そなはしたまふ
Job 24:24 かれらは旺盛になり暫時が間に無なり卑くなりて一切の人のごとくに沒し麥の穗のごとくに斷る
Job 24:25 すでに是のごとくなれば誰か我の謬まれるを示してわが言語を空しくすることを得ん
Job 25:1 時にシユヒ人ビルダデこたへて曰く
Job 25:2 神は大權を握りたまふ者 畏るべき者にましまし 高き處に平和を施したまふ
Job 25:3 その軍旅數ふることを得んや 其光明なに物をか照さざらん
Job 25:4 然ば誰か神の前に正義かるべき 婦人の産し者いかでか清かるべき
Job 25:5 視よ月も輝かず 星も其目には清明ならず
Job 25:6 いはんや蛆のごとき人 蟲のごとき人の子をや
Job 26:1 ヨブこたへて曰く
Job 26:2 なんぢ能力なき者を如何に助けしや 氣力なきものを如何に救ひしや
Job 26:3 智慧なき者を如何に誨へしや 穎悟の道を如何に多く示ししや
Job 26:4 なんぢ誰にむかひて言語を出ししや なんぢより出しは誰が靈なるや
Job 26:5 陰靈水またその中に居る者の下に慄ふ
Job 26:6 かれの御前には陰府も顯露なり 滅亡の坑も蔽ひ匿す所なし
Job 26:7 彼は北の天を虚空に張り 地を物なき所に懸けたまふ
Job 26:8 水を濃雲の中に包みたまふてその下の雲裂ず
Job 26:9 御寳座の面を隱して雲をその上に展べ
Job 26:10 水の面に界を設けて光と暗とに限を立たまふ
Job 26:11 かれ叱咤たまへば天の柱震ひかつ怖る
Job 26:12 その權能をもて海を靜めその智慧をもてラハブを撃碎き
Job 26:13 その氣嘘をもて天を輝かせ 其手をもて逃る蛇を衝とほしたまふ
Job 26:14 視よ是等はただその御工作の端なるのみ 我らが聞く所の者は如何にも微細なる耳語ならずや 然どその權能の雷轟に至りては誰かこれを曉らんや
Job 27:1 ヨブまた語を繼ていはく
Job 27:2 われに義しき審判を施したまはざる神 わが心魂をなやまし給ふ全能者 此神は活く
Job 27:3 (わが生命なほ全くわれの衷にあり 神の氣息なほわが鼻にあり)
Job 27:4 わが口は惡を言ず わが舌は謊言を語らじ
Job 27:5 我決めて汝等を是とせじ 我に死るまで我が罪なきを言ことを息じ
Job 27:6 われ堅くわが正義を持ちて之を棄じ 我は今まで一日も心に責られし事なし
Job 27:7 我に敵する者は惡き者と成り我を攻る者は義からざる者と成るべし
Job 27:8 邪曲なる者もし神に絶れその魂神を脱とらるるに於ては何の望かあらん
Job 27:9 かれ艱難に罹る時に神その呼號を聽いれたまはんや
Job 27:10 かれ全能者を喜こばんや 常に神を龥んや
Job 27:11 われ神の御手を汝等に教へん 全能者の道を汝等に隱さじ
Job 27:12 視よ汝等もみな自らこれを觀たり 然るに何ぞ斯愚蒙をきはむるや
Job 27:13 惡き人の神に得る分 強暴の人の全能者より受る業は是なり
Job 27:14 その子等蕃れば劍に殺さる その子孫は食物に飽ず
Job 27:15 その遺れる者は疫病に斃れて埋められ その妻等は哀哭をなさず
Job 27:16 かれ銀を積むこと塵のごとく衣服を備ふること土のごとくなるとも
Job 27:17 その備ふる者は義き人これを着ん またその銀は無辜者これを分ち取ん
Job 27:18 その建る家は蟲の巣のごとく また番人の造る茅家のごとし
Job 27:19 彼は富る身にて寢臥し重ねて興ること無し また目を開けば即ちその身きえ亡す
Job 27:20 懼ろしき事大水のごとく彼に追及き 夜の暴風かれを奪ひ去る
Job 27:21 東風かれを颺げて去り 彼をその處より吹はらふ
Job 27:22 神かれを射て恤まず 彼その手より逃れんともがく
Job 27:23 人かれに對ひて手を鳴し嘲りわらひてその處をいでゆかしむ
Job 28:1 白銀掘いだす坑あり 煉るところの黄金は出處あり
Job 28:2 鐡は土より取り 銅は石より鎔して獲るなり
Job 28:3 人すなはち黒暗を破り極より極まで尋ね窮めて黒暗および死蔭の石を求む
Job 28:4 その穴を穿つこと深くして上に住む人と遠く相離れ その上を歩む者まつたく之を覺えず 是のごとく身を縋下げ 遙に人と隔たりて空に懸る
Job 28:5 地その上は食物を出し 其下は火に覆へさるるがごとく覆へる
Job 28:6 その石の中には碧の玉のある處あり 黄金の沙またその内にあり
Job 28:7 その逕は鷙鳥もこれを知ず 鷹の目もこれを看ず
Job 28:8 鷙き獸も未だこれを踐ず 猛き獅子も未だこれを通らず
Job 28:9 人堅き磐に手を加へまた山を根より倒し
Job 28:10 岩に河を掘り各種の貴き物を目に見とめ
Job 28:11 水路を塞ぎて漏ざらしめ隱れたる寳物を光明に取いだすなり
Job 28:12 然ながら智慧は何處よりか覓め得ん 明哲の在る所は何處ぞや
Job 28:13 人その價を知ず人のすめる地に獲べからず
Job 28:14 淵は言ふ我の内に在ずと 海は言ふ我と偕ならずと
Job 28:15 精金も之に換るに足ず銀も秤りてその價となすを得ず
Job 28:16 オフルの金にてもその價を量るべからず 貴き青玉も碧玉もまた然り
Job 28:17 黄金も玻璃もこれに並ぶ能はず 精金の器皿も之に換るに足ず
Job 28:18 珊瑚も水晶も論にたらず 智慧を得るは眞珠を得るに勝る
Job 28:19 エテオビアより出る黄玉もこれに並ぶあたはず 純金をもてするともその價を量るべからず
Job 28:20 然ば智慧は何處より來るや 明哲の在る所は何處ぞや
Job 28:21 是は一切の生物の目に隱れ 天空の鳥にも見えず
Job 28:22 滅亡も死も言ふ我等はその風聲を耳に聞し而已
Job 28:23 神その道を曉り給ふ 彼その所を知りたまふ
Job 28:24 そは彼は地の極までも觀そなはし天が下を看きはめたまへばなり
Job 28:25 風にその重量を與へ 水を度りてその量を定めたまひし時
Job 28:26 雨のために法を立て 雷霆の光のために途を設けたまひし時
Job 28:27 智慧を見て之を顯はし之を立て試みたまへり
Job 28:28 また人に言たまはく視よ主を畏るるは是智慧なり 惡を離るるは明哲なり
Job 29:1 ヨブまた語をつぎて曰く
Job 29:2 嗚呼過にし年月のごとくならまほし 神の我を護りたまへる日のごとくならまほし
Job 29:3 かの時には彼の燈火わが首の上に輝やき彼の光明によりて我黒暗を歩めり
Job 29:4 わが壯なりし日のごとくならまほし 彼時には神の恩惠わが幕屋の上にありき
Job 29:5 かの時には全能者なほ我とともに在し わが子女われの周圍にありき
Job 29:6 乳ながれてわが足跡を洗ひ 我が傍なる磐油を灌ぎいだせり
Job 29:7 かの時には我いでて邑の門に上りゆき わが座を街衢に設けたり
Job 29:8 少き者は我を見て隱れ 老たる者は起あがりて立ち
Job 29:9 牧伯たる者も言談ずしてその口に手を當て
Job 29:10 貴き者も聲ををさめてその舌を上顎に貼たりき
Job 29:11 我事を耳に聞る者は我を幸福なりと呼び 我を目に見たる者はわがために證據をなしぬ
Job 29:12 是は我助力を求むる貧しき者を拯ひ 孤子および助くる人なき者を拯ひたればなり
Job 29:13 亡びんとせし者われを祝せり 我また寡婦の心をして喜び歌はしめたり
Job 29:14 われ正義を衣また正義の衣る所となれり 我が公義は袍のごとく冠冕のごとし
Job 29:15 われは盲目の目となり跛者の足となり
Job 29:16 貧き者の父となり知ざる者の訴訟の由を究め
Job 29:17 惡き者の牙を折り その齒の間より獲物を取いだせり
Job 29:18 我すなはち言けらく 我はわが巣に死ん 我が日は砂の如く多からん
Job 29:19 わが根は水の邊に蔓り 露わが枝に終夜おかん
Job 29:20 わが榮光はわが身に新なるべくわが弓はわが手に何時も強からんと
Job 29:21 人々われに聽き默して我が教を俟ち
Job 29:22 わが言し後は彼等言を出さず 我説ところは彼等に甘露のごとく
Job 29:23 かれらは我を望み待つこと雨のごとく 口を開きて仰ぐこと春の雨のごとくなりき
Job 29:24 われ彼等にむかひて笑ふとも彼等は敢て眞實とおもはず我面の光を彼等は除くことをせざりき
Job 29:25 われは彼等のために道を擇び その首として座を占め 軍中の王のごとくして居り また哀哭者を慰さむる人のごとくなりき
Job 30:1 然るに今は我よりも年少き者等われを笑ふ 彼等の父は我が賤しめて群の犬と並べ置くことをもせざりし者なり
Job 30:2 またかれらの手の力もわれに何の用をかなさん 彼らは其氣力すでに衰へたる者なり
Job 30:3 かれらは缺乏と饑とによりて痩おとろへ 荒かつ廢れたる暗き野にて乾ける地を咬む
Job 30:4 すなはち灌木の中にて藜を摘み苕の根を食物となす
Job 30:5 彼らは人の中より逐いださる 盜賊を追ふがごとくに人かれらを追ふて呼はる
Job 30:6 彼等は懼ろしき谷に住み 土坑および磐穴に居り
Job 30:7 灌木の中に嘶なき 荊棘の下に偃す
Job 30:8 彼らは愚蠢なる者の子 卑むべき者の子にして國より撃いださる
Job 30:9 しかるに今は我かれらの歌謠に成り 彼らの嘲哢となれり
Job 30:10 かれら我を厭ふて遠く我を離れ またわが面に唾することを辭まず
Job 30:11 神わが綱を解て我をなやましたまへば彼等もわが前にその韁を縱せり
Job 30:12 この輩わが右に起あがり わが足を推のけ我にむかひて滅亡の路を築く
Job 30:13 彼らは自ら便なき者なれども尚わが逕を毀ち わが滅亡を促す
Job 30:14 かれらは石垣の大なる崩口より入がごとくに進み來り 破壞の中にてわが上に乗かかり
Job 30:15 懼ろしき事わが身に臨み 風のごとくに我が尊榮を吹はらふ わが福祿は雲のごとくに消失す
Job 30:16 今はわが心われの衷に鎔て流れ 患難の日かたく我を執ふ
Job 30:17 夜にいれば我骨刺れて身を離る わが身を噬む者つひに休むこと無し
Job 30:18 わが疾病の大なる能によりてわが衣服は醜き樣に變り 裏衣の襟の如くに我身に固く附く
Job 30:19 神われを泥の中に投こみたまひて我は塵灰に等しくなれり
Job 30:20 われ汝にむかひて呼はるに汝答へたまはず 我立をるに 汝只われをながめ居たまふ
Job 30:21 なんぢは我にむかひて無情なりたまひ 御手の能力をもて我を攻撃たまふ
Job 30:22 なんぢ我を擧げ風の上に乗て負去しめ 大風の音とともに消亡しめたまふ
Job 30:23 われ知る汝はわれを死に歸らしめ一切の生物の終に集る家に歸らしめたまはん
Job 30:24 かれは必ず荒垤にむかひて手を舒たまふこと有じ 假令人滅亡に陷るとも是等の事のために號呼ぶことをせん
Job 30:25 苦みて日を送る者のために我哭ざりしや 貧しき者のために我心うれへざりしや
Job 30:26 われ吉事を望みしに凶事きたり 光明を待しに黒暗きたれり
Job 30:27 わが膓沸かへりて安からず 患難の日我に追及ぬ
Job 30:28 われは日の光を蒙らずして哀しみつつ歩き 公會の中に立て助を呼もとむ
Job 30:29 われは山犬の兄弟となり 駝鳥の友となれり
Job 30:30 わが皮は黒くなりて剥落ち わが骨は熱によりて焚け
Job 30:31 わが琴は哀の音となり わが笛は哭の聲となれり
Job 31:1 我わが目と約を立たり 何ぞ小艾を慕はんや
Job 31:2 然せば上より神の降し給ふ分は如何なるべきぞ 高處より全能者の與へ給ふ業は如何なるべきぞ
Job 31:3 惡き人には滅亡きたらざらんや 善らぬ事を爲す者には常ならぬ災禍あらざらんや
Job 31:4 彼わが道を見そなはし わが歩履をことごとく數へたまはざらんや
Job 31:5 我虚誕とつれだちて歩みし事ありや わが足虚僞に奔從がひし事ありや
Job 31:6 請ふ公平き權衡をもて我を稱れ 然ば神われの正しきを知たまはん
Job 31:7 わが歩履もし道を離れ わが心もしわが目に隨がひて歩み わが手にもし汚のつきてあらば
Job 31:8 我が播たるを人食ふも善し わが産物を根より拔るるも善し
Job 31:9 われもし婦人のために心まよへる事あるか 又は我もしわが隣の門にありて伺ひし事あらば
Job 31:10 わが妻ほかの人のために臼磨き ほかの人々かれの上に寢るも善し
Job 31:11 其は是は重き罪にして裁判人に罰せらるべき惡事なればなり
Job 31:12 是はすなはち滅亡にまでも燬いたる火にしてわが一切の産をことごとく絶さん
Job 31:13 わが僕あるひは婢の我と辯爭ひし時に我もし之が權理を輕んぜし事あらば
Job 31:14 神の起あがりたまふ時には如何せんや 神の臨みたまふ時には何と答へまつらんや
Job 31:15 われを胎内に造りし者また彼をも造りたまひしならずや われらを腹の内に形造りたまひし者は唯一の者ならずや
Job 31:16 我もし貧き者にその願ふところを獲しめず 寡婦をしてその目おとろへしめし事あるか
Job 31:17 または我獨みづから食物を啖ひて孤子にこれを啖はしめざりしこと有るか
Job 31:18 (却つて彼らは我が若き時より我に育てられしこと父におけるが如し 我は胎内を出てより以來寡を導びく事をせり)
Job 31:19 われ衣服なくして死んとする者あるひは身を覆ふ物なくして居る人を見し時に
Job 31:20 その腰もし我を祝せず また彼もしわが羊の毛にて温まらざりし事あるか
Job 31:21 われを助くる者の門にをるを見て我みなしごに向ひて手を上し事あるか
Job 31:22 然ありしならば肩骨よりしてわが肩おち骨とはなれてわが腕折よ
Job 31:23 神より出る災禍は我これを懼る その威光の前には我 能力なし
Job 31:24 我もし金をわが望となし 精金にむかひて汝わが所頼なりと言しこと有か
Job 31:25 我もしわが富の大なるとわが手に物を多く獲たることを喜びしことあるか
Job 31:26 われ日の輝くを見または月の輝わたりて歩むを見し時
Job 31:27 心竊にまよひて手を口に接しことあるか
Job 31:28 是もまた裁判人に罪せらるべき惡事なり 我もし斯なせし事あらば上なる神に背しなり
Job 31:29 我もし我を惡む者の滅亡るを喜び 又は其災禍に罹るによりて自ら誇りし事あるか
Job 31:30 (我は之が生命を呪ひ索めて我口に罪を犯さしめし如き事あらず)
Job 31:31 わが天幕の人は言ずや彼の肉に飽ざる者いづこにか在んと
Job 31:32 旅人は外に宿らず わが門を我は街衢にむけて啓けり
Job 31:33 我もしアダムのごとくわが罪を蔽ひ わが惡事を胸に隱せしことあるか
Job 31:34 すなはち大衆を懼れ宗族の輕蔑に怖ぢて口を閉ぢ門を出ざりしごとき事あるか
Job 31:35 嗚呼われの言ところを聽わくる者あらまほし(我が花押ここに在り 願くは全能者われに答へたまへ)我を訴ふる者みづから訴訟状を書け
Job 31:36 われ必らず之を肩に負ひ冠冕のごとくこれを首に結ばん
Job 31:37 我わが歩履の數を彼に述ん 君王たる者のごとくして彼に近づかん
Job 31:38 わが田圃號呼りて我を攻め その阡陌ことごとく泣さけぶあるか
Job 31:39 若われ金を出さずしてその産物を食ひ またはその所有主をして生命を失はしめし事あらば
Job 31:40 小麥の代に蒺藜生いで 大麥のかはりに雜草おひ出るとも善し ヨブの詞をはりぬ
Job 32:1 ヨブみづから見て己の正義とするに因て此三人の者之に答ふる事を止む
Job 32:2 時にラムの族ブジ人バラケルの子エリフ怒を發せり ヨブ神よりも己を正しとするに因て彼ヨブにむかひて怒を發せり
Job 32:3 またヨブの三人の友答ふるに詞なくして猶ヨブを罪ありとせしによりて彼らにむかひて怒を發せり
Job 32:4 エリフはヨブに言ふことをひかへて俟をりぬ 是は自己よりも彼等年老たればなり
Job 32:5 茲にエリフこの三人の口に答ふる詞の有ざるを見て怒を發せり
Job 32:6 ブジ人バラケルの子エリフすなはち答へて曰く 我は年少く汝等は年老たり是をもて我はばかりて我意見をなんぢらに陳ることを敢てせざりき
Job 32:7 我意へらく日を重ねたる者宜しく言を出すべし 年を積たる者宜しく智慧を教ふべしと
Job 32:8 但し人の衷には靈あり 全能者の氣息人に聰明を與ふ
Job 32:9 大なる人すべて智慧あるに非ず 老たる者すべて道理に明白なるに非ず
Job 32:10 然ば我言ふ 我に聽け 我もわが意見を陳べん
Job 32:11 視よ我は汝らの言語を俟ち なんぢらの辯論を聽き なんぢらが言ふべき言語を尋ね盡すと待り
Job 32:12 われ細に汝らに聽しが汝らの中にヨブを駁折る者一人も無く また彼の言詞に答ふる者も無し
Job 32:13 おそらくは汝等いはん 我ら智慧を見得たり 彼に勝つ者は唯神のみ 人は能はずと
Job 32:14 彼はその言語を我に向て發さざりき 我はまた汝らの言ふ所をもて彼に答へじ
Job 32:15 彼らは愕きて復答ふる所なく 言語かれらの衷に浮ばず
Job 32:16 彼等ものいはず立とどまりて重ねて答へざればとて我あに俟をるべけんや
Job 32:17 我も自らわが分を答へわが意見を吐露さん
Job 32:18 我には言滿ち わが衷の心しきりに迫る
Job 32:19 わが腹は口を啓かざる酒のごとし 新しき皮嚢のごとく今にも裂んとす
Job 32:20 われ説いだして胸を安んぜんとす われ口を啓きて答へん
Job 32:21 かならず我は人に偏らず 人に諂はじ
Job 32:22 我は諂ふことを知ず もし諂はば我の造化主ただちに我を絶たまふべし
Job 33:1 然ばヨブよ請ふ我が言ふ事を聽け わが一切の言語に耳を傾むけよ
Job 33:2 視よ我口を啓き 舌を口の中に動かす
Job 33:3 わが言ふ所は正義き心より出づ わが唇あきらかにその智識を陳ん
Job 33:4 神の靈われを造り 全能者の氣息われを活しむ
Job 33:5 汝もし能せば我に答へよ わが前に言をいひつらねて立て
Job 33:6 我も汝とおなじく神の者なり 我もまた土より取てつくられしなり
Job 33:7 わが威嚴はなんぢを懼れしめず わが勢はなんぢを壓せず
Job 33:8 汝わが聽くところにて言談り 我なんぢの言語の聲を聞けり云く
Job 33:9 われは潔淨くして愆なし 我は辜なく惡き事わが身にあらず
Job 33:10 視よ彼らわれを攻る釁隙を尋ね われを己の敵と算へ
Job 33:11 わが脚を桎に夾めわが一切の擧動に目を着たまふと
Job 33:12 視よ我なんぢに答へん なんぢ此事において正義からず 神は人よりも大なる者にいませり
Job 33:13 彼その凡て行なふところの理由を示したまはずとて汝かれにむかひて辯爭そふは何ぞや
Job 33:14 まことに神は一度二度と告示したまふなれど人これを曉らざるなり
Job 33:15 人熟睡する時または床に睡る時に夢あるひは夜の間の異象の中にて
Job 33:16 かれ人の耳をひらき その教ふる所を印して堅うし
Job 33:17 斯して人にその惡き業を離れしめ 傲慢を人の中より除き
Job 33:18 人の魂靈を護りて墓に至らしめず 人の生命を護りて劍にほろびざらしめたまふ
Job 33:19 人床にありて疼痛に攻られ その骨の中に絶ず戰鬪のあるあり
Job 33:20 その氣食物を厭ひ その魂靈うまき物をも嫌ふ
Job 33:21 その肉は痩おちて見えず その骨は見えざりし者までも顯露になり
Job 33:22 その魂靈は墓に近より その生命は滅ぼす者に近づく
Job 33:23 しかる時にもし彼とともに一箇の使者あり 千の中の一箇にして中保となり 正しき道を人に示さば
Job 33:24 神かれを憫れみて言給はん彼を救ひて墓にくだること無らしめよ 我すでに收贖の物を得たりと
Job 33:25 その肉は小兒の肉よりも瑞々しくなり その若き時の形状に歸らん
Job 33:26 かれ若し神に祷らば神かれを顧りみ 彼をしてその御面を喜こび見ることを得せしめたまはん 神は人の正義に報をなしたまふべし
Job 33:27 かれ人の前に歌ひて言ふ 我は罪を犯し正しきを抂たり 然ど報を蒙らず
Job 33:28 神わが魂靈を贖ひて墓に下らしめず わが生命光明を見ん
Job 33:29 そもそも神は是等のもろもろの事をしばしば人におこなひ
Job 33:30 その魂靈を墓より牽かへし生命の光明をもて彼を照したまふ
Job 33:31 ヨブよ耳を傾むけて我に聽け 請ふ默せよ 我かたらん
Job 33:32 なんぢもし言ふべきことあらば我にこたへよ 請ふ語れ 我なんぢを義とせんと慾すればなり
Job 33:33 もし無ば我に聽け 請ふ默せよ 我なんぢに智慧を教へん
Job 34:1 エリフまた答へて曰く
Job 34:2 なんぢら智慧ある者よ我言を聽け 智識ある者よ我に耳を傾むけよ
Job 34:3 口の食物を味はふごとく耳は言詞を辨まふ
Job 34:4 われら自ら是非を究め われらもとともに善惡を明らかにせん
Job 34:5 それヨブは言ふ我は義し 神われに正しき審判を施こしたまはず
Job 34:6 われは義しかれども僞る者とせらる 我は愆なけれどもわが身の矢創愈がたしと
Job 34:7 何人かヨブのごとくならん彼は罵言を水のごとくに飮み
Job 34:8 惡き事を爲す者等と交はり 惡人とともに歩むなり
Job 34:9 すなはち彼いへらく 人は神と親しむとも身に益なしと
Job 34:10 然ばなんぢら心ある人々よ我に聽け 神は惡を爲すことを決めて無く 全能者は不義を行ふこと決めて無し
Job 34:11 却つて人の所爲をその身に報い 人をしてその行爲にしたがひて獲るところあらしめたまふ
Job 34:12 かならず神は惡き事をなしたまはず全能者は審判を抂たまはざるなり
Job 34:13 たれかこの地を彼に委ねし者あらん 誰か全世界を定めし者あらん
Job 34:14 神もしその心を己にのみ用ひ その靈と氣息とを己に收回したまはば
Job 34:15 もろもろの血肉ことごとく亡び人も亦塵にかへるべし
Job 34:16 なんぢもし曉ることを得ば請ふ我に聽けわが言詞の聲に耳を側だてよ
Job 34:17 公義を惡む者あに世ををさむるを得んや なんぢあに至義き者を惡しとすべけんや
Job 34:18 王たる者にむかひて汝は邪曲なりと言ひ 牧伯たる者にむかひて汝らは惡しといふべけんや
Job 34:19 まして君王たる者をも偏視ず貧しき者に超て富る者をかへりみるごとき事をせざる者にむかひてをや 斯爲たまふは彼等みな同じくその御手の作るところなればなり
Job 34:20 彼らは瞬く時間に死に 民は夜の間に滅びて消失せ 力ある者も人手によらずして除かる
Job 34:21 それ神の目は人の道の上にあり 神は人の一切の歩履を見そなはす
Job 34:22 惡を行なふ者の身を匿すべき黒暗も無く死蔭も无し
Job 34:23 神は人をして審判を受けしむるまでに長くその人を窺がふに及ばず
Job 34:24 權勢ある者をも査ぶることを須ひずして打ほろぼし他の人々を立て之に替たまふ
Job 34:25 かくの如く彼らの所爲を知り 夜の間に彼らを覆がへしたまへば彼らは乃て滅ぶ
Job 34:26 人の觀るところにて彼等を惡人のごとく撃たまふ
Job 34:27 是は彼ら背きて之に從はずその道を全たく顧みざるに因る
Job 34:28 かれら是のごとくして遂に貧しき者の號呼を彼の許に逹らしめ患難者の號呼を彼に聽しむ
Job 34:29 かれ平安を賜ふ時には誰か惡しと言ふことをえんや 彼面をかくしたまふ時には誰かこれを見るを得んや 一國におけるも一人におけるも凡て同じ
Job 34:30 かくのごとく邪曲なる者をして世を治むること無らしめ 民の機檻となることなからしむ
Job 34:31 人は宜しく神に申すべし 我は已に懲しめられたり再度惡き事を爲じ
Job 34:32 わが見ざる所は請ふ我にをしへたまへ 我もし惡き事を爲たるならば重ねて之をなさじと
Job 34:33 かれ豈なんぢの好むごとくに應報をなしたまはんや 然るに汝はこれを咎む 然ばなんぢ自ら之を選ぶべし 我は爲じ 汝の知るところを言へ
Job 34:34 心ある人々は我に言ん 我に聽ところの智慧ある人々は言ん
Job 34:35 ヨブの言ふ所は辨知なし その言詞は明哲からずと
Job 34:36 ねがはくはヨブ終まで試みられんことを其は惡き人のごとくに應答をなせばなり
Job 34:37 まことに彼は自己の罪に愆を加へわれらの中間にありて手を拍ちかつ言詞を繁くして神に逆らふ
Job 35:1 エリフまた答へて曰く
Job 35:2 なんぢは言ふ 我が義しきは神に愈れりと なんぢ之を正しとおもふや
Job 35:3 すなはち汝いへらく 是は我に何の益あらんや 罪を犯すに較ぶれば何の愈るところか有んと
Job 35:4 われ言詞をもて汝およびなんぢにそへる汝の友等に答へん
Job 35:5 天を仰ぎて見よ 汝の上なる高き空を望め
Job 35:6 なんぢ罪を犯すとも神に何の害か有ん 愆を熾んにするとも神に何を爲えんや
Job 35:7 汝正義かるとも神に何を與るを得んや 神なんぢの手より何をか受たまはん
Job 35:8 なんぢの惡は只なんぢに同じき人を損ぜん而已 なんぢの善は只人の子を益せんのみ
Job 35:9 暴虐の甚だしきに因て叫び 權勢ある者の腕に壓れて呼はる人々あり
Job 35:10 然れども一人として我を造れる神は何處にいますやといふ者なし 彼は人をして夜の中に歌を歌ふに至らしめ
Job 35:11 地の獸畜よりも善くわれらを教へ 空の鳥よりも我らを智からしめたまふ者なり
Job 35:12 惡き者等の驕傲ぶるに因て斯のごとく人々叫べども應ふる者あらず
Job 35:13 虚しき語を神かならず之を聽たまはず 全能者これを顧みたまはじ
Job 35:14 汝は我かれを見たてまつらずと言といへども審判は神の前にあり この故に汝彼を待べきなり
Job 35:15 今かれ震怒をもて罰することを爲ず 罪愆を深く心に留たまはざる(が如くなる)に因て
Job 35:16 ヨブ口を啓きて虚しき事を述べ無知の言語を繁くす
Job 36:1 エリフまた言詞を繼て曰く
Job 36:2 暫らく我に容せ我なんぢに示すこと有ん 尚神のために言ふべき事あればなり
Job 36:3 われ廣くわが知識を取り我の造化主に正義を歸せんとす
Job 36:4 わが言語は眞實に虚僞ならず 知識の完全き者なんぢの前にあり
Job 36:5 視よ神は權能ある者にましませども何をも藐視めたまはず その了知の能力は大なり
Job 36:6 惡しき者を生し存ず 艱難者のために審判を行ひたまふ
Job 36:7 義しき者に目を離さず 位にある王等とともに永遠に坐せしめて之を貴くしたまふ
Job 36:8 もし彼ら鏈索に繋がれ 艱難の繩にかかる時は
Job 36:9 彼らの所行と愆尤とを示してその驕れるを知せ
Job 36:10 彼らの耳を開きて教を容れしめ かつ惡を離れて歸れよと彼らに命じたまふ
Job 36:11 もし彼ら聽したがひて之に事へなば繁昌てその日を送り 樂しくその年を渉らん
Job 36:12 若かれら聽したがはずば刀劍にて亡び 知識を得ずして死なん
Job 36:13 しかれども心の邪曲なる者等は忿怒を蓄はへ 神に縛しめらるるとも祈ることを爲ず
Job 36:14 かれらは年わかくして死亡せ 男娼とその生命をひとしうせん
Job 36:15 神は艱難者を艱難によりて救ひ 之が耳を虐遇によりて開きたまふ
Job 36:16 然ば神また汝を狹きところより出して狹からぬ廣き所に移したまふあらん 而して汝の席に陳ぬる物は凡て肥たる物ならん
Job 36:17 今は惡人の鞫罰なんぢの身に充り 審判と公義となんぢを執ふ
Job 36:18 なんぢ忿怒に誘はれて嘲笑に陷いらざるやう愼しめよ 收贖の大なるが爲に自ら誤るなかれ
Job 36:19 なんぢの號叫なんぢを艱難の中より出さんや 如何に力を盡すとも所益あらじ
Job 36:20 世の人のその處より絶る其夜を慕ふなかれ
Job 36:21 愼しみて惡に傾くなかれ 汝は艱難よりも寧ろ之を取んとせり
Job 36:22 それ神はその權能をもて大いなる事を爲したまふ 誰か能く彼のごとくに教晦を埀んや
Job 36:23 たれか彼のためにその道を定めし者あらんや 誰かなんぢは惡き事をなせりと言ふことを得ん
Job 36:24 なんぢ神の御所爲を讚歎ふることを忘れざれ これ世の人の歌ひ崇むる所なり
Job 36:25 人みな之を仰ぎ觀る 遠き方より人これを視たてまつるなり
Job 36:26 神は大なる者にいまして我儕かれを知たてまつらず その御年の數は計り知るべからず
Job 36:27 かれ水を細にして引あげたまへば霧の中に滴り出て雨となるに
Job 36:28 雲これを降せて人々の上に沛然に灌ぐなり
Job 36:29 たれか能く雲の舒展る所以またその幕屋の響く所以を了知んや
Job 36:30 視よ彼その光明を自己の周圍に繞らし また海の底をも蔽ひたまひ
Job 36:31 これらをもて民を鞫きまた是等をもて食物を豐饒に賜ひ
Job 36:32 電光をもてその兩手を包みその電光に命じて敵を撃しめたまふ
Job 36:33 その鳴聲かれを顯はし 家畜すらも彼の來ますを知らすなり
Job 37:1 之がためにわが心わななき その處を動き離る
Job 37:2 神の聲の響およびその口より出る轟聲を善く聽け
Job 37:3 これを天が下に放ち またその電光を地の極にまで至らせたまふ
Job 37:4 その後聲ありて打響き 彼威光の聲を放ちて鳴わたりたまふ その御聲聞えしむるに當りては電光を押へおきたまはず
Job 37:5 神奇しくも御聲を放ちて鳴わたり 我儕の知ざる大なる事を行ひたまふ
Job 37:6 かれ雪にむかひて地に降れと命じたまふ 雨すなはちその權能の大雨にも亦しかり
Job 37:7 斯かれ一切の人の手を封じたまふ 是すべての人にその御工作を知しめんがためなり
Job 37:8 また獸は穴にいりてその洞に居る
Job 37:9 南方の密室より暴風きたり 北より寒氣きたる
Job 37:10 神の氣吹によりて氷いできたり 水の寛狹くせらる
Job 37:11 かれ水をもて雲に搭載せまた電光の雲を遠く散したまふ
Job 37:12 是は神の導引によりて週る 是は彼の命ずるところを盡く世界の表面に爲んがためなり
Job 37:13 その之を來らせたまふは或は懲罰のため あるひはその地のため 或は恩惠のためなり
Job 37:14 ヨブよ是を聽け 立ちて神の奇妙き工作を考へよ
Job 37:15 神いかに是等に命を傳へその雲の光明をして輝かせたまふか汝これを知るや
Job 37:16 なんぢ雲の平衡知識の全たき者の奇妙き工作を知るや
Job 37:17 南風によりて地の穩かになる時なんぢの衣服は熱くなるなり
Job 37:18 なんぢ彼とともに彼の堅くして鑄たる鏡のごとくなる蒼穹を張ることを能せんや
Job 37:19 われらが彼に言ふべき事を我らに教へよ 我らは暗昧して言詞を列ぬること能はざるなり
Job 37:20 われ語ることありと彼に告ぐべけんや 人あに滅ぼさるることを望まんや
Job 37:21 人いまは雲霄に輝やく光明を見ること能はず 然れど風きたりて之を吹清む
Job 37:22 北より黄金いできたる 神には畏るべき威光あり
Job 37:23 全能者はわれら測りきはむることを得ず 彼は能おほいなる者にいまし審判をも公義をも抂たまはざるなり
Job 37:24 この故に人々かれを畏る 彼はみづから心に有智とする者をかへりみたまはざるなり
Job 38:1 茲にヱホバ大風の中よりヨブに答へて宣まはく
Job 38:2 無智の言詞をもて道を暗からしむる此者は誰ぞや
Job 38:3 なんぢ腰ひきからげて丈夫のごとくせよ 我なんぢに問ん 汝われに答へよ
Job 38:4 地の基を我が置たりし時なんぢは何處にありしや 汝もし穎悟あらば言へ
Job 38:5 なんぢ若知んには誰が度量を定めたりしや 誰が準繩を地の上に張りたりしや
Job 38:6 その基は何の上に奠れたりしや その隅石は誰が置たりしや
Job 38:7 かの時には晨星あひともに歌ひ 神の子等みな歡びて呼はりぬ
Job 38:8 海の水ながれ出で 胎内より涌いでし時誰が戸をもて之を閉こめたりしや
Job 38:9 かの時我雲をもて之が衣服となし 黒暗をもて之が襁褓となし
Job 38:10 これに我法度を定め關および門を設けて
Job 38:11 曰く此までは來るべし此を越べからず 汝の高浪ここに止まるべしと
Job 38:12 なんぢ生れし日より以來朝にむかひて命を下せし事ありや また黎明にその所を知しめ
Job 38:13 これをして地の縁を取へて惡き者をその上より振落さしめたりしや
Job 38:14 地は變りて土に印したるごとくに成り 諸の物は美はしき衣服のごとくに顯る
Job 38:15 また惡人はその光明を奪はれ 高く擧たる手は折らる
Job 38:16 なんぢ海の泉源にいたりしことありや 淵の底を歩みしことありや
Job 38:17 死の門なんぢのために開けたりしや 汝死蔭の門を見たりしや
Job 38:18 なんぢ地の廣を看きはめしや 若これを盡く知ば言へ
Job 38:19 光明の在る所に往く路は孰ぞや 黒暗の在る所は何處ぞや
Job 38:20 なんぢ之をその境に導びき得るや その家の路を知をるや
Job 38:21 なんぢ之を知ならん汝はかの時すでに生れをり また汝の經たる日の數も多ければなり
Job 38:22 なんぢ雪の庫にいりしや 雹の庫を見しや
Job 38:23 これ我が艱難の時にために蓄はへ 戰爭および戰鬪の日のために蓄はへ置くものなり
Job 38:24 光明の發散る道 東風の地に吹わたる所の路は何處ぞや
Job 38:25 誰が大雨を灌ぐ水路を開き雷電の光の過る道を開き
Job 38:26 人なき地にも人なき荒野にも雨を降し
Job 38:27 荒かつ廢れたる處々を潤ほし かつ若菜蔬を生出しむるや
Job 38:28 雨に父ありや 露の珠は誰が生る者なるや
Job 38:29 氷は誰が胎より出るや 空の霜は誰が産むところなるや
Job 38:30 水かたまりて石のごとくに成り 淵の面こほる
Job 38:31 なんぢ昴宿の鏈索を結びうるや 參宿の繋繩を解うるや
Job 38:32 なんぢ十二宮をその時にしたがひて引いだし得るや また北斗とその子星を導びき得るや
Job 38:33 なんぢ天の常經を知るや 天をして其權力を地に施こさしむるや
Job 38:34 なんぢ聲を雲に擧げ滂沛の水をして汝を掩はしむるを得るや
Job 38:35 なんぢ閃電を遣はして往しめ なんぢに答へて我儕は此にありと言しめ得るや
Job 38:36 胸の中の智慧は誰が與へし者ぞ 心の内の聰明は誰が授けし者ぞ
Job 38:37 たれか能く智慧をもて雲を數へんや たれか能く天の瓶を傾むけ
Job 38:38 塵をして一塊に流れあはしめ土塊をしてあひかたまらしめんや
Job 38:39 なんぢ牝獅子のために食物を獵や また小獅子の食氣を滿すや
Job 38:40 その洞穴に伏し 森の中に隱れ伺がふ時なんぢこの事を爲うるや
Job 38:41 また鴉の子 神にむかひて呼はり 食物なくして徘徊る時 鴉に餌を與ふる者は誰ぞや
Job 39:1 なんぢ岩間の山羊が子を産む時をしるや また麀鹿の産に臨むを見しや
Job 39:2 なんぢ是等の在胎の月を數へうるや また是等が産む時を知るや
Job 39:3 これらは身を鞠めて子を産みその痛苦を出す
Job 39:4 またその子は強くなりて野に育ち 出ゆきて再たびその親にかへらず
Job 39:5 誰が野驢馬を放ちて自由にせしや 誰が野驢馬の繋繩を解しや
Job 39:6 われ野をその家となし 荒野をその住所となせり
Job 39:7 是は邑の喧閙を賤しめ 馭者の號呼を聽いれず
Job 39:8 山を走まはりて草を食ひ 各種の青き物を尋ぬ
Job 39:9 兕肯て汝に事へ なんぢの飼草槽の傍にとどまらんや
Job 39:10 なんぢ兕に綱附て阡陌をあるかせ得んや 是あに汝にしたがひて谷に馬鈀を牽んや
Job 39:11 その力おほいなればとて汝これに恃まんや またなんぢの工事をこれに任せんや
Job 39:12 なんぢこれにたよりて己が穀物を運びかへらせ之を打禾塲にあつめしめんや
Job 39:13 駝鳥は歡然にその翼を皷ふ 然どもその羽と毛とはあに鶴にしかんや
Job 39:14 是はその卵を土の中に棄おき これを砂の中にて暖たまらしめ
Job 39:15 足にてその潰さるべきと 野の獸のこれを踐むべきとを思はず
Job 39:16 これはその子に情なくして宛然おのれの子ならざるが如くし その劬勞の空しくなるも繋念ところ無し
Job 39:17 是は神これに智慧を授けず穎悟を與へざるが故なり
Job 39:18 その身をおこして走るにおいては馬をもその騎手をも嘲るべし
Job 39:19 なんぢ馬に力を與へしや その頸に勇ましき鬣を粧ひしや
Job 39:20 なんぢ之を蝗蟲のごとく飛しむるや その嘶なく聲の響は畏るべし
Job 39:21 谷を踋爬て力に誇り 自ら進みて兵士に向ふ
Job 39:22 懼るることを笑ひて驚ろくところ無く 劍にむかふとも退ぞかず
Job 39:23 矢筒その上に鳴り 鎗に矛あひきらめく
Job 39:24 猛りつ狂ひつ地を一呑にし 喇叭の聲鳴わたるも立どまる事なし
Job 39:25 喇叭の鳴ごとにハーハーと言ひ遠方より戰鬪を嗅つけ 將帥の大聲および吶喊聲を聞しる
Job 39:26 鷹の飛かけり その羽翼を舒て南に向ふは豈なんぢの智慧によるならんや
Job 39:27 鷲の翔のぼり 高き處に巣を營なむは豈なんぢの命令に依んや
Job 39:28 これは岩の上に住所を構へ 岩の尖所または峻險き所に居り
Job 39:29 其處よりして攫むべき物をうかがふ その目のおよぶところ遠し
Job 39:30 その子等もまた血を吸ふ 凡そ殺されし者のあるところには是そこに在り
Job 40:1 ヱホバまたヨブに對へて言たまはく
Job 40:2 非難する者ヱホバと爭はんとするや 神と論ずる者これに答ふべし
Job 40:3 ヨブ是においてヱホバに答へて曰く
Job 40:4 嗚呼われは賤しき者なり 何となんぢに答へまつらんや 唯手をわが口に當んのみ
Job 40:5 われ已に一度言たり 復いはじ 已に再度せり 重ねて述じ
Job 40:6 是に於てヱホバまた大風の中よりヨブに應へて言たまはく
Job 40:7 なんぢ腰ひきからげて丈夫のごとくせよ 我なんぢに問ん なんぢ我にこたへよ
Job 40:8 なんぢ我審判を廢んとするや 我を非として自身を是とせんとするや
Job 40:9 なんぢ神のごとき腕ありや 神のごとき聲をもて轟きわたらんや
Job 40:10 さればなんぢ威光と尊貴とをもて自ら飾り 榮光と華美とをもて身に纒へ
Job 40:11 なんぢの溢るる震怒を洩し 高ぶる者を視とめて之をことごとく卑くせよ
Job 40:12 すなはち高ぶる者を見てこれを盡く鞠ませ また惡人を立所に踐つけ
Job 40:13 これを塵の中に埋め これが面を隱れたる處に閉こめよ
Job 40:14 さらば我もなんぢを讚てなんぢの右の手なんぢを救ひ得ると爲ん
Job 40:15 今なんぢ我がなんぢとともに造りたりし河馬を視よ 是は牛のごとく草を食ふ
Job 40:16 觀よその力は腰にあり その勢力は腹の筋にあり
Job 40:17 その尾の搖く樣は香柏のごとく その腿の筋は彼此に盤互ふ
Job 40:18 その骨は銅の管ごとくその肋骨は鐡の棒のごとし
Job 40:19 これは神の工の第一なる者にして之を造りし者これに劍を賦けたり
Job 40:20 山もこれがために食物を産出し もろもろの野獸そこに遊ぶ
Job 40:21 これは蓮の樹の下に臥し葦蘆の中または沼の裏に隱れをる
Job 40:22 蓮の樹その蔭をもてこれを覆ひ また河の柳これを環りかこむ
Job 40:23 たとひ河荒くなるとも驚ろかず ヨルダンその口に注ぎかかるも惶てず
Job 40:24 その目の前にて誰か之を執ふるを得ん 誰か羂をその鼻に貫くを得ん
Job 41:1 なんぢ鈎をもて鱷を釣いだすことを得んや その舌を糸にひきかくることを得んや
Job 41:2 なんぢ葦の繩をその鼻に通し また鈎をその齶に衝とほし得んや
Job 41:3 是あに頻になんぢに願ふことをせんや 柔かになんぢに言談んや
Job 41:4 あに汝と契約を爲んや なんぢこれを執て永く僕と爲しおくを得んや
Job 41:5 なんぢ鳥と戲むるる如くこれとたはむれ また汝の婦人等のために之を繋ぎおくを得んや
Job 41:6 また漁夫の社會これを商貨と爲して商賣人の中間に分たんや
Job 41:7 なんぢ漁叉をもてその皮に滿し 魚矛をもてその頭を衝とほし得んや
Job 41:8 手をこれに下し見よ 然ばその戰鬪をおぼえて再び之を爲ざるべし
Job 41:9 視よその望は虚し 之を見てすら倒るるに非ずや
Job 41:10 何人も之に激する勇氣あるなし 然ば誰かわが前に立うる者あらんや
Job 41:11 誰か先に我に與へしところありて我をして之に酬いしめんとする者あらん 普天の下にある者はことごとく我有なり
Job 41:12 我また彼者の肢體とその著るしき力とその美はしき身の構造とを言では措じ
Job 41:13 誰かその外甲を剥ん 誰かその雙齶の間に入ん
Job 41:14 誰かその面の戸を開きえんや その周圍の齒は畏るべし
Job 41:15 その並列る鱗甲は之が誇るところ その相闔たる樣は堅く封じたるがごとく
Job 41:16 此と彼とあひ接きて風もその中間にいるべからず
Job 41:17 一々あひ連なり堅く膠て離すことを得ず
Job 41:18 嚔すれば即はち光發す その目は曙光の眼瞼(を開く)に似たり
Job 41:19 その口よりは炬火いで火花發し
Job 41:20 その鼻の孔よりは煙いできたりて宛然葦を焚く釜のごとし
Job 41:21 その氣息は炭火を爇し 火燄その口より出づ
Job 41:22 力氣その頸に宿る 懼るる者その前に彷徨まよふ
Job 41:23 その肉の片は密に相連なり 堅く身に着て動かす可らず
Job 41:24 その心の堅硬こと石のごとく その堅硬こと下磨のごとし
Job 41:25 その身を興す時は勇士も戰慄き 恐怖によりて狼狽まどふ
Job 41:26 劍をもて之を撃とも利ず 鎗も矢も漁叉も用ふるところ無し
Job 41:27 是は鐡を見ること稿のごとくし銅を見ること朽木のごとくす
Job 41:28 弓箭もこれを逃しむること能はず 投石機の石も稿屑と見做る
Job 41:29 棒も是には稿屑と見ゆ 鎗の閃めくを是は笑ふ
Job 41:30 その下腹には瓦礫の碎片を連ね 泥の上に麥打車を引く
Job 41:31 淵をして鼎のごとく沸かへらしめ 海をして香油の釜のごとくならしめ
Job 41:32 己が後に光る道を遺せば淵は白髮をいただけるかと疑はる
Job 41:33 地の上には是と並ぶ者なし 是は恐怖なき身に造られたり
Job 41:34 是は一切の高大なる者を輕視ず 誠に諸の誇り高ぶる者の王たるなり
Job 42:1 ヨブ是に於てヱホバに答へて曰く
Job 42:2 我知る汝は一切の事をなすを得たまふ また如何なる意志にても成すあたはざる無し
Job 42:3 無知をもて道を蔽ふ者は誰ぞや 斯われは自ら了解らざる事を言ひ 自ら知ざる測り難き事を述たり
Job 42:4 請ふ聽たまへ 我言ふところあらん 我なんぢに問まつらん 我に答へたまへ
Job 42:5 われ汝の事を耳にて聞ゐたりしが今は目をもて汝を見たてまつる
Job 42:6 是をもて我みづから恨み 塵灰の中にて悔ゆ
Job 42:7 ヱホバ是等の言語をヨブに語りたまひて後エホバ、テマン人エリパズに言たまひけるは我なんぢと汝の二人の友を怒る 其はなんぢらが我に關て言述べたるところはわが僕ヨブの言たることのごとく正當からざればなり
Job 42:8 然ば汝ら牡牛七頭 牡羊七頭を取てわが僕ヨブに至り汝らの身のために燔祭を獻げよ わが僕ヨブなんぢらのために祈らん われかれを嘉納べければ之によりて汝らの愚を罰せざらん 汝らの我について言述たるところは我僕ヨブの言たることのごとく正當からざればなり
Job 42:9 是においてテマン人エリパズ、シユヒ人ビルダデ、ナアマ人ゾパル往てヱホバの自己に宣まひしごとく爲ければヱホバすなはちヨブを嘉納たまへり
Job 42:10 ヨブその友のために祈れる時 ヱホバ、ヨブの艱難をときて舊に復ししかしてヱホバつひにヨブの所有物を二倍に増たまへり
Job 42:11 是において彼の諸の兄弟諸の姉妹およびその舊相識れる者等ことごとく來りて彼とともにその家にて飮食を爲しかつヱホバの彼に降したまひし一切の災難につきて彼をいたはり慰さめ また各金一ケセタと金の環一箇を之に贈れり
Job 42:12 ヱホバかくのごとくヨブをめぐみてその終を初よりも善したまへり 即ち彼は綿羊一萬四千匹 駱駝六千匹 牛一千軛 牝驢馬一千匹を有り
Job 42:13 また男子七人 女子三人ありき
Job 42:14 かれその第一の女をエミマと名け第二をケジアと名け 第三をケレンハツプクと名けたり
Job 42:15 全國の中にてヨブの女子等ほど美しき婦人は見えざりき その父之にその兄弟等とおなじく産業をあたへたり
Job 42:16 この後ヨブは百四十年いきながらへてその子その孫と四代までを見たり
Job 42:17 かくヨブは年老い日滿て死たりき
Psalms 0:0 詩篇
Psalms 1:1 惡きものの謀略にあゆまず つみびとの途にたたず 嘲るものの座にすわらぬ者はさいはひなり
Psalms 1:2 かかる人はヱホバの法をよろこびて日も夜もこれをおもふ
Psalms 1:3 かかる人は水流のほとりにうゑし樹の期にいたりて實をむすび 葉もまた凋まざるごとく その作ところ皆さかえん
Psalms 1:4 あしき人はしからず 風のふきさる粃糠のごとし
Psalms 1:5 然ばあしきものは審判にたへず罪人は義きものの會にたつことを得ざるなり
Psalms 1:6 そはヱホバはただしきものの途をしりたまふ されど惡きものの途はほろびん
Psalms 2:1 何なればもろもろの國人はさわぎたち諸民はむなしきことを謀るや
Psalms 2:2 地のもろもろの王はたちかまへ群伯はともに議り ヱホバとその受膏者とにさからひていふ
Psalms 2:3 われらその械をこぼち その繩をすてんと
Psalms 2:4 天に坐ずるもの笑ひたまはん 主かれらを嘲りたまふべし
Psalms 2:5 かくて主は忿恚をもてものいひ大なる怒をもてかれらを怖まどはしめて宣給ふ
Psalms 2:6 しかれども我わが王をわがきよきシオンの山にたてたりと
Psalms 2:7 われ詔命をのべんヱホバわれに宜まへり なんぢはわが子なり今日われなんぢを生り
Psalms 2:8 われに求めよ さらば汝にもろもろの國を嗣業としてあたへ他の極をなんぢの有としてあたへん
Psalms 2:9 汝くろがねの杖をもて彼等をうちやぶり陶工のうつはもののごとくに打砕かんと
Psalms 2:10 されば汝等もろもろの王よ さとかれ地の審士輩をしへをうけよ
Psalms 2:11 畏をもてヱホバにつかへ戦慄をもてよろこべ
Psalms 2:12 子にくちつけせよ おそらくはかれ怒をはなちなんぢら途にほろびんその忿恚はすみやかに燃べければなり すべてかれに依頼むものは福ひなり
Psalms 3:1 ダビデその子アブサロムを避しときのうた ヱホバよ我にあたする者のいかに蔓延れるや 我にさからびて起りたつもの多し
Psalms 3:2 わが霊魂をあげつらひて かれは神にすくはるることなしといふ者ぞおほき セラ
Psalms 3:3 されどヱホバよ なんぢは我をかこめる盾わが榮わが首をもたげ給ふものなり
Psalms 3:4 われ聲をあげてヱホバによばはればその聖山より我にこたへたまふ セラ
Psalms 3:5 われ臥していね また目さめたり ヱホバわれを支へたまへばなり
Psalms 3:6 われをかこみて立かまへたる干萬の人をも我はおそれじ
Psalms 3:7 ヱホバよねがはくは起たまへ わが神よわれを救ひたまへ なんぢ曩にわがすべての仇の頬骨をうち惡きものの歯ををりたまへり
Psalms 3:8 救はヱホバにあり ねがはくは恩恵なんぢの民のうへに在んことを セラ
Psalms 4:1 琴にあはせて伶長にうたはしめたるダビデの歌 わが義をまもりたまふ神よ ねがはくはわが呼るときに答へたまへ わがなやみたる時なんぢ我をくつろがせたまへり ねがはくは我をあはれみ わが祈をききたまへ
Psalms 4:2 人の子よなんぢらわが榮をはぢしめて幾何時をへんとするか なんぢらむなしき事をこのみ虚偽をしたひていくそのときを経んとするか セラ
Psalms 4:3 然どなんぢら知れ ヱホバは神をうやまふ人をわかちて己につかしめたまひしことを われヱホバによばはらば聴たまはん
Psalms 4:4 なんぢら愼みをののきて罪ををかすなかれ 臥床にておのが心にかたりて黙せ セラ
Psalms 4:5 なんぢら義のそなへものを献てヱホバに依頼め
Psalms 4:6 おほくの人はいふたれか嘉事をわれらに見するものあらんやと ヱホバよねがはくは聖顔の光をわれらの上にのぼらせたまへ
Psalms 4:7 なんぢのわが心にあたへたまひし歓喜はかれらの穀物と洒との豊かなる時にまさりき
Psalms 4:8 われ安然にして臥またねぶらんヱホバよわれを獨にて坦然にをらしむるものは汝なり
Psalms 5:1 簫にあはせて伶長にうたはしめたるダビデのうた ヱホバよねがはくは我がことばに耳をかたむけ わが思にみこころを注たまへ
Psalms 5:2 わが王よわが神よ わが號呼のこゑをききたまへ われ汝にいのればなり
Psalms 5:3 ヱホバよ朝になんぢわが聲をききたまはん 我あしたになんぢの爲にそなへして俟望むべし
Psalms 5:4 なんぢは惡きことをよろこびたまふ神にあらず 惡人はなんぢの賓客たるを得ざるなり
Psalms 5:5 たかぶる者はなんぢの目前にたつをえず なんぢはずべて邪曲をおこなものを憎みたまふ
Psalms 5:6 なんぢは虚偽をいふ者をほろぼしたまふ 血をながすものと詭計をなすものとは ヱホバ憎みたまふなり
Psalms 5:7 然どわれは豊かなる仁慈によりてなんぢの家にいらん われ汝をおそれつつ聖宮にむかひて拝まん
Psalms 5:8 ヱホバよ願くはわが仇のゆゑになんぢの義をもて我をみちびき なんぢの途をわが前になほくしたまへ
Psalms 5:9 かれらの口には眞實なく その衷はよこしま その喉はあばける墓 その舌はへつらひをいへばなり
Psalms 5:10 神よねがはくはかれらを刑なひ その謀略によりてみづから仆れしめ その愆のおほきによりて之をおひいだしたまへ かれらは汝にそむきたればなり
Psalms 5:11 されど凡てなんぢに依頼む者をよろこばせ永遠によろこびよばはらぜたまへ なんぢ斯る人をまもりたまふなり 名をいつくしむ者にもなんぢによりて歓をえしめたまへ
Psalms 5:12 ヱホバよなんぢに義者にさいはひし盾のごとく恩恵をもて之をかこみたまはん
Psalms 6:1 八音ある琴にあはせて伶長にうたはしめたるダビデのうた ヱホバよねがはくは忿恚をもて我をせめ烈しき怒をもて我をこらしめたまふなかれ
Psalms 6:2 ヱホバよわれを憐みたまへ われ萎みおとろふなり ヱホバよ我を醫したまへ わが骨わななきふるふ
Psalms 6:3 わが霊魂さへも甚くふるひわななく ヱホバよかくて幾何時をへたまふや
Psalms 6:4 ヱホバよ歸りたまへ わがたましひを救ひたまへ なんぢの仁慈の故をもて我をたすけたまへ
Psalms 6:5 そは死にありては汝をおもひいづることなし 陰府にありては誰かなんぢに感謝せん
Psalms 6:6 われ歎息にてつかれたり 我よなよな床をただよはせ涙をもてわが衾をひたせり
Psalms 6:7 わが日うれへによりておとろへ もろもろの仇ゆゑに老ぬ
Psalms 6:8 なんぢら邪曲をおこなふ者ことごとく我をはなれよ ヱホバはわが泣こゑをききたまひたり
Psalms 6:9 ヱホバわが懇求をききたまへり ヱホバわが祈をうけたまはん
Psalms 6:10 わがもろもろの仇ははぢて大におぢまどひ あわただしく恥てしりぞきぬ
Psalms 7:1 ベニヤミンの人クシの言につきダビデ、ヱホバに對ひてうたへるシガヨンの歌 わが神ヱホバよわれ汝によりたのむ 願くはすべての逐せまるものより我をすくひ我をたすけたまへ
Psalms 7:2 おそらくはかれ獅の如くわが霊魂をかきやぶり援るものなき間にさきてずたずたに爲ん
Psalms 7:3 わが神ヱホバよ もしわれ此事をなししならんには わが手によこしまの纏りをらんには
Psalms 7:4 故なく仇ずるものをさへ助けしに禍害をもてわが友にむくいしならんには
Psalms 7:5 よし仇人わがたましひを逐とらへ わが生命をつちにふみにじりわが榮を塵におくとも その作にまかせよ セラ
Psalms 7:6 ヱホバよなんぢの怒をもて起わが仇のいきどほりにむかひて立たまへ わがために目をさましたまへ なんぢは審判をおほせ出したまへり
Psalms 7:7 もろもろの人の會がなんぢのまはりに集はしめ 其上なる高座にかへりたまヘ
Psalms 7:8 ヱホバはもろもろの民にさばきを行ひたまふ ヱホバよわが正義とわが衷なる完全とにしたがひて我をさばきたまへ
Psalms 7:9 ねがはくは惡きものの曲事をたちて義しきものを堅くしたまへ ただしき神は人のこころと腎とをさぐり知たまふ
Psalms 7:10 わが盾をとるものは心のなほきものをすくふ神なり
Psalms 7:11 神はただしき審士ひごとに忿恚をおこしたまふ神なり
Psalms 7:12 人もしかへらずば神はその劍をとぎ その弓をはりてかまヘ
Psalms 7:13 これに死の器をそなへ その矢に火をそへたまはん
Psalms 7:14 視よその人はよこしまを産んとしてくるしむ 残害をはらみ虚偽をうむなり
Psalms 7:15 また坑をほりてふかくし己がつくれるその溝におちいれり
Psalms 7:16 その残害はおのが首にかへり その強暴はおのが頭上にくだらん
Psalms 7:17 われその義によりてヱホバに感謝し いとたかきヱホバの名をほめうたはん
Psalms 8:1 ギデトの琴にあはせて伶長にうたはしめたるダビデの歌 われらの主ヱホバよなんぢの名は地にあまねくして尊きかな その榮光を天におきたまへり
Psalms 8:2 なんぢは嬰児ちのみごの口により力の基をおきて敵にそなへたまへり こは仇人とうらみを報るものを鎭静めんがためなり
Psalms 8:3 我なんぢの指のわざなる天を観なんぢの設けたまへる月と星とをみるに
Psalms 8:4 世人はいかなるものなればこれを聖念にとめたまふや 人の子はいかなるものなればこれを顧みたまふや
Psalms 8:5 只すこしく人を神よりも卑つくりて祭と尊貴とをかうぶらせ
Psalms 8:6 またこれに手のわざを治めしめ萬物をその足下におきたまへり
Psalms 8:7 すべての羊うしまた野の獣
Psalms 8:8 そらの鳥うみの魚もろもろの海路をかよふものをまで皆しかなせり
Psalms 8:9 われらの主ヱホバよなんぢの名は地にあまねくして尊きかな
Psalms 9:1 ムツラベン(調子の名)にあはせて伶長にうたはしめたるダビデのうた われ心をつくしてヱホバに感謝し そのもろもろの奇しき事迹をのべつたへん
Psalms 9:2 われ汝によりてたのしみ且よろこばん 至上者よなんぢの名をほめうたはん
Psalms 9:3 わが仇しりぞくとき躓きたふれて御前にほろぶ
Psalms 9:4 なんぢわが義とわが訟とをまもりたまへばなり なんぢはだしき審判をしつつ寳座にすわりたまへり
Psalms 9:5 またもろもろの國をせめ惡きものをほろぼし 世々かぎりなくかれらが名をけしたまへり
Psalms 9:6 仇はたえはてて世々あれすたれたり 汝のくつがへしたまへるもろもろの邑はうせてその跡だにもなし
Psalms 9:7 ヱホバはとこしへに聖位にすわりたまふ 審判のためにその寳座をまうけたまひたり
Psalms 9:8 ヱホバは公義をもて世をさばき 直をもてもろもろの民に審判をおこなひたまはん
Psalms 9:9 ヱホバは虐げらるるものの城また難みのときの城なり
Psalms 9:10 聖名をしるものはなんぢに依頼ん そはヱホバよなんぢを尋るものの棄られしこと断てなければなり
Psalms 9:11 シオンに住たまふヱホバに対ひてほめうたへ その事迹をもろもろの民のなかにのべつたへよ
Psalms 9:12 血を問糺したまふものは苦しむものを心にとめてその號呼をわすれたまはず
Psalms 9:13 ヱホバよ我をあはれみたまへ われを死の門よりすくひいだしたまへる者よ ねがはくは仇人のわれを難むるを視たまへ
Psalms 9:14 さらば我なんぢのすべての頌美をのぶるを得またシオンのむすめの門にてなんぢの救をよろこばん
Psalms 9:15 もろもろの國民はおのがつくれる阱におちいり そのかくしまうけたる網におのが足をとらへらる
Psalms 9:16 ヱホバは己をしらしめ審判をおこなひたまへり あしき人はおのが手のわざなる羂にかかれり ヒガイオン セラ
Psalms 9:17 あしき人は陰府にかへるべし 神をわするるもろもろの國民もまたしからん
Psalms 9:18 貧者はつねに忘らるるにあらず苦しむものの望はとこしへに滅ぶるにあらず
Psalms 9:19 ヱホバよ起たまへ ねがはくは勝を人にえしめたまふなかれ御前にてもろもろのくにびとに審判をうけしめたまヘ
Psalms 9:20 ヱホバよ願くはかれらに懼をおこさしめたまへ もろもろの國民におのれただ人なることを知しめたまヘ セラ
Psalms 10:1 ああヱホバよ何ぞはるかに立たまふや なんぞ患難のときに匿れたまふや
Psalms 10:2 惡しき人はたかぶりて苦しむものを甚だしくせむ かれらをそのくはだての謀略にとらはれしめたまヘ
Psalms 10:3 あしきひとは己がこころの欲望をほこり貪るものを祝してヱホバをかろしむ
Psalms 10:4 あしき人はほこりかにいふ 神はさぐりもとむることをせざるなりと 凡てそのおもひに神なしとせり
Psalms 10:5 かれの途はつねに堅く なんぢの審判はその眼よりはなれてたかし 彼はそのもろもろの敵をくちさきらにて吹く
Psalms 10:6 かくて已がこころの中にいふ 我うごかさるることなく世々われに禍害なかるべしと
Psalms 10:7 その口にはのろひと虚偽としへたげとみち その舌のしたには残害とよこしまとあり
Psalms 10:8 かれは村里のかくれたる處にをり隠やかなるところにて罪なきものをころす その眼はひそかに倚仗なきものをうかがひ
Psalms 10:9 窟にをる獅のごとく潜みまち苦しむものをとらへんために伏ねらひ 貧しきものをその網にひきいれてとらふ
Psalms 10:10 また身をかがめて蹲まるその強勁によりて依仗なきものは仆る
Psalms 10:11 かれ心のうちにいふ 神はわすれたり神はその面をかくせり神はみることなかるべしと
Psalms 10:12 ヱホバよ起たまへ 神よ手をあげたまへ 苦しむものを忘れたまふなかれ
Psalms 10:13 いかなれば惡きもの神をいやしめて心中になんぢ探求むることをせじといふや
Psalms 10:14 なんぢは鍳たまへりその残害と怨恨とを見てこれに手をくだしたまへり 倚仗なきものは身をなんぢに委ぬ なんぢは昔しより孤子をたすけたまふ者なり
Psalms 10:15 ねがはくは惡きものの臂ををりたまへあしきものの惡事を一つだにのこらぬまでに探究したまヘ
Psalms 10:16 ヱホバはいやとほながに王なり もろもろの國民はほろびて神の固より跡をたちたり
Psalms 10:17 ヱホバよ汝はくるしむものの懇求をききたまへり その心をかたくしたまはん なんぢは耳をかたぶけてきき
Psalms 10:18 孤子と虐げらる者とのために審判をなし地につける人にふたたび恐嚇をもちひざらしめ給はん
Psalms 11:1 うたのかみに謳はしめたるダビデのうた われヱホバに依頼めり なんぢら何ぞわが霊魂にむかひて鳥のごとくなんぢの山にのがれよといふや
Psalms 11:2 視よあしきものは暗處にかくれ心なほきものを射んとて弓をはり絃に矢をつがふ
Psalms 11:3 基みなやぶれたらんには義者なにをなさんや
Psalms 11:4 ヱホバはその聖宮にいます ヱホバの寳座は天にありその目はひとのこを鑒 その眼瞼はかれらをこころみたまふ
Psalms 11:5 ヱホバは義者をこころむ そのみこころは惡きものと強暴をこのむ者とをにくみ
Psalms 11:6 羂をあしきもののうへに降したまはん火と硫黄ともゆる風とはかれらの酒杯にうくべきものなり
Psalms 11:7 ヱホバはただしき者にして義きことを愛したまへばなり 直きものはその聖顔をあふぎみん
Psalms 12:1 八音にあはせて伶長にうたはしめたるダビデのうた ああヱホバよ助けたまへ そは紳をうやまふ人はたえ誠あるものは人の子のなかより消失るなり
Psalms 12:2 人はみな虚偽をもてその隣とあひかたり滑かなるくちびると貳心とをもてものいふ
Psalms 12:3 ヱホバはすべての滑かなるくちびると大なる言をかたる舌とをほろぼし給はん
Psalms 12:4 かれらはいふ われら舌をもて勝をえん この口唇はわがものなり誰かわれらに主たらんやと
Psalms 12:5 ヱホバのたまはく 苦しむもの掠められ貧しきもの歎くがゆゑに我いま起てこれをその慕ひもとむる平安におかん
Psalms 12:6 ヱホバの言はきよきことばなり 地にまうけたる炉にてねり七次きよめたる白銀のごとし
Psalms 12:7 ヱホバよ汝はかれらをまもり之をたすけてとこしへにこの類より免れしめたまはん
Psalms 12:8 人の子のなかに穢しきことの崇めらるるときは惡者ここやかしこにあるくなり
Psalms 13:1 伶長にうたはしめたるダビデのうた ああヱホバよ かくて幾何時をへたまふや 汝とこしへに我をかすれたまふや 聖顔をかくしていくそのときを歴たまふや
Psalms 13:2 われ心のうちに終日かなしみをいだき籌書をたましひに用ひて幾何時をふべきか わが仇はわがうへに崇められて幾何時をふべきか
Psalms 13:3 わが神ヱホバよ我をかへりみて答をなしたまへ わが目をあきらかにしたまへ 恐らくはわれ死の睡につかん
Psalms 13:4 おそらくはわが仇いはん 我かれに勝りと おそらくはわが敵わがうごかさるるによりて喜ばん
Psalms 13:5 されど我はなんぢの憐憫によりたのみ わが心はなんぢの救によりてよろこばん
Psalms 13:6 ヱホバはゆたかに我をあしらひたまひたれば われヱホバに對ひてうたはん
Psalms 14:1 うたのかみに謳はしめたるダビデのうた 愚なるものは心のうちに神なしといへり かれらは腐れたり かれらは憎むべき事をなせり 善をおこなふ者なし
Psalms 14:2 ヱホバ天より人の子をのぞみみて悟るもの神をたづぬる者ありやと見たまひしに
Psalms 14:3 みな逆きいでてことごとく腐れたり 善をなすものなし一人だになし
Psalms 14:4 不義をおこなふ者はみな智覚なきか かれらは物くふごとくわが民をくらひ またヱホバをよぶことをせざるなり
Psalms 14:5 視よかかる時かれらは大におそれたり 神はただしきものの類のなかに在せばなり
Psalms 14:6 なんぢらは苦しめるものの謀略をあなどり辱かしむ されどヱホバはその避所なり
Psalms 14:7 ねがはくはシオンよりイスラエルの救のいでんことを ヱホバその民のとらはれたるを返したまふときヤコブはよろこびイスラエルは樂まん
Psalms 15:1 ダビデのうた ヱホバよなんぢの帷幄のうちにやどらん者はたれぞ なんぢの聖山にすまはんものは誰ぞ
Psalms 15:2 直くあゆみ義をおこなひ そのこころに眞實をいふものぞその人なる
Psalms 15:3 かかる人は舌をもてそしらず その友をそこなはず またその隣をはぢしむ言をあげもちひず
Psalms 15:4 惡にしづめるものを見ていとひかろしめ ヱホバをおそるるものをたふとび 誓ひしことはおのれに禍害となるも変ることなし
Psalms 15:5 貨をかして過たる利をむさぼらず 賄賂をいれて無辜をそこなはざるなり 斯ることどもを行ふものは永遠にうごかさるることなかるべし
Psalms 16:1 ダビデがミクタムの歌 ヱホバよねがはくは我を護りたまへ 我なんぢに依頼む
Psalms 16:2 われヱホにいへらくなんぢはわが主なり なんぢのほかにわが福祉はなしと
Psalms 16:3 地にある聖徒はわが極めてよろこぶ勝れしものなり
Psalms 16:4 ヱホバにかへて他神をとるものの悲哀はいやまさん 我かれらがささぐる血の御酒をそそがず その名を口にとなふることをせじ
Psalms 16:5 ヱホバはわが嗣業またわが酒杯にうくべき有なり なんぢはわが所領をまもりたまはん
Psalms 16:6 準繩はわがために樂しき地におちたり 宜われよき嗣業をえたるかな
Psalms 16:7 われは訓諭をさづけたまふヱホバをほめまつらん 夜はわが心われををしふ
Psalms 16:8 われ常にヱホバをわが前におけり ヱホバわが右にいませばわれ動かさるることなかるべし
Psalms 16:9 このゆゑにわが心はたのしみ わが榮はよろこぶ わが身もまた平安にをらん
Psalms 16:10 そは汝わがたましひを陰府にすておきたまはず なんぢの聖者を墓のなかに朽しめたまはざる可ればなり
Psalms 16:11 なんぢ生命の道をわれに示したまはん なんぢの前には充足るよろこびあり なんぢの右にはもろもろの快樂とこしへにあり
Psalms 17:1 ダビデの祈祷 ああヱホバよ公義をききたまへ わが哭聲にみこころをとめたまへ いつはりなき口唇よりいづる我がいのりに耳をかたぶけたまへ
Psalms 17:2 ねがはくはわが宣告みまへよりいでてなんぢの目公平をみたまはんことを
Psalms 17:3 なんぢわが心をこころみ また夜われにのぞみたまへり 斯てわれを糺したまへど我になにの惡念あるをも見出たまはざりき わが口はつみを犯すことなからん
Psalms 17:4 人の行爲のことをいはば我なんぢのくちびるの言によりて暴るものの途をさけたり
Psalms 17:5 わが歩はかたくなんぢの途にたちわが足はよるめくことなかりき
Psalms 17:6 神よなんぢ我にこたへたまふ 我なんぢをよべり ねがはくは汝の耳をかたぶけてわが陳るところをききたまへ
Psalms 17:7 なんぢに依頼むものを右手をもて仇するものより授ひたまふ者よ ねがはくはなんぢの妙なる仁慈をあらはしたまへ
Psalms 17:8 願くはわれを瞳のごとくにまもり汝のつばさの蔭にかくし
Psalms 17:9 我をなやむるあしき者また我をかこみてわが命をそこなはんとする仇よりのがれしめ給へ
Psalms 17:10 かれらはおのが心をふさぎ その口をもて誇かにものいへり
Psalms 17:11 いづこにまれ往ところにてわれらを打囲み われらを地にたふさんと目をとむ
Psalms 17:12 かれは抓裂んといらだつ獅のごとく隠やかなるところに潜みまつ壮獅のごとし
Psalms 17:13 ヱホバよ起たまへ ねがはくはかれに立對ひてこれをたふし御劍をもて惡きものよりわが霊魂をすくひたまヘ
Psalms 17:14 ヱホバよ手をもて人より我をたすけいだしたまへ おのがうくべき有をこの世にてうけ 汝のたからにてその腹をみたさるる世人より我をたすけいだし給へ かれらはおほくの子にあきたり その富ををさなごに遺す
Psalms 17:15 されどわれは義にありて聖顔をみ目さむるとき容光をもて飽足ることをえん
Psalms 18:1 伶長にうたはしめたるヱホバの僕ダビデの歌、このうたの詞はもろもろの仇およびサウルの手より救れしときヱホバに對ひてうたへるなり 云く ヱホバわれの力よ われ切になんぢを愛しむ
Psalms 18:2 ヱホバはわが巌 わが城 われをすくふ者 わがよりたのむ神 わが堅固なるいはほ わが盾 わがすくひの角 わがたかき櫓なり
Psalms 18:3 われ讃稱ふべきヱホバをよびて仇人よりすくはるることをえん
Psalms 18:4 死のつな我をめぐり惡のみなぎる流われをおそれしめたり
Psalms 18:5 陰間のなは我をかこみ死のわな我にたちむかへり
Psalms 18:6 われ窮苦のうちにありてヱホバをよび又わが紳にさけびたり ヱホバはその官よりわが聲をききたまふ その前にてわがよびし聲はその耳にいれり
Psalms 18:7 このときヱホバ怒りたまひたれば地はふるひうごき山の基はゆるぎうごきたり
Psalms 18:8 烟その鼻よりたち火その口よりいでてやきつくし炭はこれがために燃あがれり
Psalms 18:9 ヱホバは天をたれて臨りたまふ その足の下はくらきこと甚だし
Psalms 18:10 かくてケルブに乗りてとび風のつばさにて翔り
Psalms 18:11 闇をおほひとなし水のくらきとそらの密雲とをそのまはりの幕となしたまへり
Psalms 18:12 そのみまへの光輝よりくろくもをへて雹ともえたる炭とふりきたれり
Psalms 18:13 ヱホバは天に雷鳴をとどろかせたまへり 至上者のこゑいでて雹ともえたる炭とふりきたり
Psalms 18:14 ヱホバ矢をとばせてかれらを打ちらし數しげき電光をはなちてかれらをうち敗りたまへり
Psalms 18:15 ヱホバよ斯るときになんぢの叱咤となんぢの鼻のいぶきとによりて水の底みえ地の基あらはれいでたり
Psalms 18:16 ヱホバはたかきより手をのべ我をとりて大水よりひきあげ
Psalms 18:17 わがつよき仇とわれを憎むものとより我をたすけいだしたまへり かれらは我にまさりて最強かりき
Psalms 18:18 かれらはわが災害の日にせまりきたれり 然どヱホバはわが支柱となりたまひき
Psalms 18:19 ヱホバはわれを悦びたまふがゆゑにわれをたづさへ廣處にだして助けたまへり
Psalms 18:20 ヱホバはわが正義にしたがひて恩賜をたまひ わが手のきよきにしたがひて報賞をたれたまへり
Psalms 18:21 われヱホバの道をまもり惡をなしてわが神よりはなれしことなければなり
Psalms 18:22 そのすべての審判はわがまへにありて われその律法をすてしことなければなり
Psalms 18:23 われ神にむかひて缺るところなく己をまもりて不義をはなれたり
Psalms 18:24 この故にヱホバはわがただしきとその目前にわが手のきよきとにしたがひて我にむくいをなし給へり
Psalms 18:25 なんぢ憐憫あるものには憐みあるものとなり完全ものには全きものとなり
Psalms 18:26 きよきものには潔きものとなり僻むものにはひがむ者となりたまふ
Psalms 18:27 そは汝くるしめる民をすくひたまへど高ぶる目をひくくしたまふ可ればなり
Psalms 18:28 なんぢわが燈火をともし給ふべければなり わが神ヱホバわが暗をてらしたまはん
Psalms 18:29 我なんぢによりて軍の中をはせとほり わが神によりて垣ををどりこゆ
Psalms 18:30 神はしもその途またくヱホバの言はきよし ヱホバはずべて依頼むものの盾なり
Psalms 18:31 そはヱホバのほかに紳はたれぞや われらの紳のほかに巌はたれぞや
Psalms 18:32 神はちからをわれに帯しめ わが途を全きものとなしたまふ
Psalms 18:33 神はわが足を唐のあしのごとくし我をわが高處にたたせたまふ
Psalms 18:34 神はわが手をたたかひにならはせてわが臂に銅弓をひくことを得しめたまふ
Psalms 18:35 又なんぢの救の盾をわれにあたへたまへり なんぢの右手われをささへなんぢの謙卑われを大ならしめたまへり
Psalms 18:36 なんぢわが歩むところを寛濶ならしめたまひたれば わが足ふるはざりき
Psalms 18:37 われ仇をおひてこれに追及かれらのほろぶるまでは歸ることをせじ
Psalms 18:38 われかれらを撃てたつことを得ざらしめん かれらはわが足の下にたふるべし
Psalms 18:39 そはなんぢ戦争のために力をわれに帯しめ われにさからひておこりたつ者をわが下にかがませたまひたればなり
Psalms 18:40 我をにくむ者をわが滅しえんがために汝またわが仇の背をわれにむけしめ給へり
Psalms 18:41 かれら叫びたれども救ふものなく ヱホバに對ひてさけびたれども答へたまはざりき
Psalms 18:42 我かれらを風のまへの塵のごとくに搗砕き ちまたの坭のごとくに打棄たり
Psalms 18:43 なんぢわれを民のあらそひより助けいだし我をたててもろもろの國の長となしたまへり わがしらざる民われにつかへん
Psalms 18:44 かれらわが事をききて立刻われにしたがひ異邦人はきたりて佞りつかへん
Psalms 18:45 ことくにびとは衰へてその城よりをののきいでん
Psalms 18:46 ヱホバは活ていませり わが磐はほむべきかな わがすくひの神はあがむべきかな
Psalms 18:47 わがために讎をむくい異邦人をわれに服はせたまふはこの神なり
Psalms 18:48 神はわれを仇よりすくひたまふ實になんぢは我にさからひて起りたつ者のうへに我をあげ あらぶる人より我をたすけいだし給ふ
Psalms 18:49 この故にヱホバよ われもろもろの國人のなかにてなんぢに感謝し なんぢの名をほめうたはん
Psalms 18:50 ヱホバはおほいなる救をその王にあたへ その受膏者ダビデとその裔とに世々かぎりなく憐憫をたれたまふ
Psalms 19:1 うたのかみに謳はしめたるダビデのうた もろもろの天は神のえいくわうをあらはし 穹蒼はその手みてのわざをしめす
Psalms 19:2 この日ことばをかの日につたへこのよ知識をかの夜におくる
Psalms 19:3 語らずいはずその聲きこえざるに
Psalms 19:4 そのひびきは全地にあまねく そのことばは地のはてにまでおよぶ 神はかしこに帷幄を日のためにまうけたまへり
Psalms 19:5 日は新婿がいはひの殿をいづるごとく勇士がきそひはしるをよろこぶに似たり
Psalms 19:6 そのいでたつや天の涯よりし その運りゆくや天のはてにいたる 物としてその和喣をかうぶらざるはなし
Psalms 19:7 ヱホバの法はまたくして霊魂をいきかへらしめ ヱホバの證詞はかたくして愚なるものを智からしむ
Psalms 19:8 ヱホバの訓諭はなほくして心をよろこばしめ ヱホバの誡命はきよくして眼をあきらかならしむ
Psalms 19:9 ヱホバを惶かしもみおそるる道はきよくして世々にたゆることなく ヱホバのさばきは眞實にしてことごとく正し
Psalms 19:10 これを黄金にくらぶるもおほくの純精金にくらぶるも 彌増りてしたふべく これを蜜にくらぶるも蜂のすの滴瀝にくらぶるもいやまさりて甘し
Psalms 19:11 なんぢのしもべはこれらによりて儆戒をうく これらをまもらばおおいなる報償あらん
Psalms 19:12 たれかおのれの過失あやまちをしりえんや ねがはくは我をかくれたる愆より解放ちたまへ
Psalms 19:13 願はくはなんぢの僕をひきとめて故意なる罪ををかさしめず それをわが主たらしめ給ふなかれ さればわれ玷なきものとなりて大なる愆とがをまぬかるるをえん
Psalms 19:14 ヱホバわが磐わが贖主よ わがくちの言わがこころの思念なんぢのまへに悦ばるることを得しめたまへ
Psalms 20:1 伶長にうたはしめたるダビデのうた ねがはくはヱホバなやみの日になんぢにこたヘヤユブのかみの名なんぢを高にあげ
Psalms 20:2 聖所より援助をなんぢにおくりシオンより能力をなんぢにあたへ
Psalms 20:3 汝のもろもろの献物をみこころにとめ なんぢの燔祭をうけたまはんことを セラ
Psalms 20:4 ねがはくはなんちがこころの願望をゆるし なんぢの謀略をことごとく遂しめたまはんことを
Psalms 20:5 我儕なんぢの救によりて歓びうたひ われらの神の名によりて旗をたてん ねがはくはヱホバ汝のもろもろの求をとげしめたまはんことを
Psalms 20:6 われ今ヱホバその受膏者をすくひたまふを知る ヱホバそのきよき天より右の手なるすくひの力にてかれに應へたまはん
Psalms 20:7 あるひは車をたのみあるひは馬をたのみとする者あり されどわれらはわが神ヱホバの名をとなへん
Psalms 20:8 かれらは屈みまた仆るわれらは起てかたくたてり
Psalms 20:9 ヱホバよ王をすくひたまへ われらがよぶとき應へたまへ
Psalms 21:1 伶長にうたはしめたるダビデのうた ヱホバよ王はなんぢの力によりてたのしみ汝のすくひによりて奈何におほいなる歓喜をなさん
Psalms 21:2 なんぢ彼がこころの願望をゆるし そのくちびるの求をいなみ給はざりき セラ
Psalms 21:3 そはよきたまものの恵をもてかれを迎へ まじりなきこがねの冕弁をもてかれの首にいただかせ給ひたり
Psalms 21:4 かれ生命をもとめしに汝これをあたへてその齢の日を世々かぎりなからしめ給へり
Psalms 21:5 なんぢの救によりてその榮光おほいなり なんぢは尊貴と稜威とをかれに衣せたまふ
Psalms 21:6 そは之をとこしへに福ひなるものとなし聖顔のまへの歓喜をもて樂しませたまへばなり
Psalms 21:7 王はヱホバに依頼み いとたかき者のいつくしみを蒙るがゆゑに動かさるることなからん
Psalms 21:8 なんぢの手はそのもろもろの仇をたづねいだし 汝のみぎの手はおのれを憎むものを探ねいだすべし
Psalms 21:9 なんぢ怒るときは彼等をもゆる爐のごとくにせんヱホバはげしき怒によりてかれらを呑たまはん 火はかれらを食つくさん
Psalms 21:10 汝かれらの裔を地よりほろぼし かれらの種を人の子のなかよりほろぼさん
Psalms 21:11 かれらは汝にむかひて惡事をくはだて遂がたき謀略をおもひまはせばなり
Psalms 21:12 汝かれらをして背をむけしめ その面にむかひて弓絃をひかん
Psalms 21:13 ヱホバよ能力をあらはしてみづからを高くしたまへ 我儕はなんぢの稜威をうたひ且ほめたたへん
Psalms 22:1 あけぼのの鹿の調にあはせて伶長にうたはしめたるダビデの歌 わが神わが神なんぞ我をすてたまふや 何なれば遠くはなれて我をすくはず わが歎きのこゑをきき給はざるか
Psalms 22:2 ああわが神われ昼よばはれども汝こたへたまはず 夜よばはれどもわれ平安をえず
Psalms 22:3 然はあれイスラエルの讃美のなかに住たまふものよ汝はきよし
Psalms 22:4 われらの列祖はなんぢに依頼めり かれら依頼みたればこれを助けたまへり
Psalms 22:5 かれら汝をよびて援をえ汝によりたのみて恥をおへることなかりき
Psalms 22:6 然はあれどわれは蟲にして人にあらず 世にそしられ民にいやしめらる
Psalms 22:7 すべてわれを見るものはわれをあざみわらひ 口唇をそらし首をふりていふ
Psalms 22:8 かれはヱホバによりたのめりヱホバ助くべし ヱホバかれを悦びたまふが故にたすくべしと
Psalms 22:9 されど汝はわれを胎内よりいだし絵へるものなり わが母のふところにありしとき既になんぢに依頼ましめたまへり
Psalms 22:10 我うまれいでしより汝にゆだねられたり わが母われを生しときより汝はわが神なり
Psalms 22:11 われに遠ざかりたまふなかれ 患難ちかづき又すくふものなければなり
Psalms 22:12 おほくの牡牛われをめぐりバサンの力つよき牡牛われをかこめり
Psalms 22:13 かれらは口をあけて我にむかひ物をかきさき吼うだく獅のごとし
Psalms 22:14 われ水のごとくそそぎいだされ わがもろもろの骨ははづれ わが心は蝋のごとくなりて腹のうちに鎔たり
Psalms 22:15 わが力はかわきて陶器のくだけのごとく わが舌は齶にひたつけり なんぢわれを死の塵にふさせたまへり
Psalms 22:16 そは犬われをめぐり惡きものの群われをかこみてわが手およびわが足をさしつらぬけり
Psalms 22:17 わが骨はことごとく數ふるばかりになりぬ 惡きものの目をとめて我をみる
Psalms 22:18 かれらたがひにわが衣をわかち我がしたぎを鬮にす
Psalms 22:19 ヱホバよ遠くはなれ居たまふなかれ わが力よねがはくは速きたりてわれを授けたまへ
Psalms 22:20 わがたましひを劍より助けいだし わが生命を犬のたけきいきほひより脱れしめたまへ
Psalms 22:21 われを獅の口また野牛のつのより救ひいだしたまへ なんぢ我にこたへたまへり
Psalms 22:22 われなんぢの名をわが兄弟にのべつたへ なんぢを會のなかにて讃たたへん
Psalms 22:23 ヱホバを懼るるものよヱホバをほめたたへよ ヤコブのもろもろの裔よヱホバをあがめよ イスラエルのもろもろのすゑよヱホバを畏め
Psalms 22:24 ヱホバはなやむものの辛苦をかろしめ棄たまはず これに聖顔をおほふことなくしてその叫ぶときにききたまへばなり
Psalms 22:25 大なる會のなかにてわが汝をほめたたふるは汝よりいづるなり わが誓ひしことはヱホバをおそるる者のまへにてことごとく償はん
Psalms 22:26 謙遜者はくらひて飽ことをえ ヱホバをたづねもとむるものはヱホバをほめたたへん 願くはなんぢらの心とこしへに生んことを
Psalms 22:27 地のはては皆おもひいだしてヱホバに歸りもろもろの國の族はみな前にふしをがむべし
Psalms 22:28 國はヱホバのものなればなり ヱホバはもろもろの國人をすべをさめたまふ
Psalms 22:29 地のこえたるものは皆くらひてヱホバををがみ塵にくたるものと己がたましひを存ふること能はざるものと皆そのみまへに拝脆かん
Psalms 22:30 たみの裔のうちにヱホバにつかる者あらん 主のことは代々にかたりつたへらるべし
Psalms 22:31 かれら來りて此はヱホバの行爲なりとてその義を後にうまるる民にのべつたへん
Psalms 23:1 ダビデのうた ヱホバは我が牧者なり われ乏しきことあらじ
Psalms 23:2 ヱホバは我をみどりの野にふさせ いこひの水濱にともなひたまふ
Psalms 23:3 ヱホバはわが霊魂をいかし名のゆゑをもて我をただしき路にみちびき給ふ
Psalms 23:4 たとひわれ死のかげの谷をあゆむとも禍害をおそれじ なんぢ我とともに在せばなり なんぢの笞なんぢの杖われを慰む
Psalms 23:5 なんぢわが仇のまへに我がために筳をまうけ わが首にあぶらをそそぎたまふ わが酒杯はあふるるなり
Psalms 23:6 わが世にあらん限りはかならず恩恵と憐憫とわれにそひきたらん 我はとこしへにヱホバの宮にすまん
Psalms 24:1 ダビデのうた 地とそれに充るもの世界とその中にすむものとは皆ヱホバのものなり
Psalms 24:2 ヱホバはそのもとゐを大海のうへに置これを大川のうへに定めたまへり
Psalms 24:3 ヱホバの山にのぼるべきものは誰ぞ その聖所にたつべき者はたれぞ
Psalms 24:4 手きよく心いさぎよき者そのたましひ虚きことを仰ぎのぞまず偽りの誓をせざるものぞ その人なる
Psalms 24:5 かかる人はヱホバより福祉をうけ そのすくひの神より義をうけん
Psalms 24:6 斯のごとき者は神をしたふものの族類なり ヤコブの神よなんぢの聖顔をもとむる者なり セラ
Psalms 24:7 門よなんぢらの首をあげよ とこしへの戸よあがれ 榮光の王いりたまはん
Psalms 24:8 えいくわうの王はたれなるか ちからをもちたまふ猛きヱホバなり 戦闘にたけきヱホバなり
Psalms 24:9 門よなんぢらの首をあげよ とこしへの戸よあがれ 榮光の王いりたまはん
Psalms 24:10 この榮光の王はたれなるか 萬軍のヱホバ是ぞえいくわうの王なる セラ
Psalms 25:1 ダビデのうた ああヱホバよ わがたましひは汝をあふぎ望む
Psalms 25:2 わが神よわれなんぢに依頼めり ねがはくはわれに愧をおはしめたまふなかれ わが仇のわれに勝誇ることなからしめたまへ
Psalms 25:3 實になんぢを侯望むものははぢしめられず 故なくして信をうしなふものは愧をうけん
Psalms 25:4 ヱホバよなんぢの大路をわれにしめし なんぢの徑をわれにをしへたまへ
Psalms 25:5 我をなんぢの眞理にみちびき我ををしへたまへ 汝はわがすくひの神なり われ終日なんぢを侯望む
Psalms 25:6 なんぢのあはれみと仁慈とはいにしへより絶ずあり ヱホバよこれを思ひいだしたまへ
Psalms 25:7 わがわかきときの罪とわが愆とはおもひいでたまふなかれ ヱホバよ汝のめぐみの故になんぢの仁慈にしたがひて我をおもひいでたまヘ
Psalms 25:8 ヱホバはめぐみ深くして直くましませり 斯るがゆゑに道をつみびとにをしへ
Psalms 25:9 謙だるものを正義にみちびきたまはん その道をへりくだる者にしめしたまはん
Psalms 25:10 ヱホバのもろもろの道はそのけいやくと證詞とをまもるものには仁慈なり眞理なり
Psalms 25:11 わが不義はおほいなり ヱホバよ名のために之をゆるしたまヘ
Psalms 25:12 ヱホバをおそるる者はたれなるか 之にそのえらぶべき道をしめしたまはん
Psalms 25:13 かかる人のたましひは平安にすまひ その裔はくにをつぐべし
Psalms 25:14 ヱホバの親愛はヱホバをおそるる者とともにあり ヱホバはその契約をかれらに示したまはん
Psalms 25:15 わが目はつねにヱホバにむかふ ヱホバわがあしを網よりとりいだしたまふ可ればなり
Psalms 25:16 ねがはくは歸りきたりて我をあはれみたまへ われ獨わびしくまた苦しみをるなり
Psalms 25:17 願くはわが心のうれへをゆるめ我をわざはひより脱かれしめたまへ
Psalms 25:18 わが患難わが辛苦をかへりみ わがすべての罪をゆるしたまへ
Psalms 25:19 わが仇をみたまへ かれらの數はおほし情なき憾をもてわれをにくめり
Psalms 25:20 わがたましひをまもり我をたすけたまへ われに愧をおはしめたまふなかれ 我なんぢに依頼めばなり
Psalms 25:21 われなんぢを挨望むねがはくは完全と正直とわれをまもれかし 神よすべての憂よりイスラエルを贖ひいだしたまへ
Psalms 26:1 ダビデの歌 ヱホバよねがはくはわれを鞫きたまへわれわが完全によりてあゆみたり 然のみならず我たゆたはずヱホバに依頼めり
Psalms 26:2 ヱホバよわれを糺しまた試みたまへ わが腎とこころとを錬きよめたまへ
Psalms 26:3 そは汝のいつくしみわが眼前にあり 我はなんぢの眞理によりてあゆめり
Psalms 26:4 われは虚しき人とともに座らざりき 惡をいつはりかざる者とともにはゆかじ
Psalms 26:5 惡をなすものの會をにくみ惡者とともにすわることをせじ
Psalms 26:6 われ手をあらひて罪なきをあらはす ヱホバよ斯てなんぢの祭壇をめぐり
Psalms 26:7 感謝のこゑを聞えしめ すべてなんぢの奇しき事をのべつたへん
Psalms 26:8 ヱホバよ我なんぢのまします家となんぢが榮光のとどまる處とをいつくしむ
Psalms 26:9 願くはわがたましひを罪人とともに わが生命を血をながす者とともに取收めたまふなかれ
Psalms 26:10 かかる人の手にはあしきくはだてあり その右の手は賄賂にてみつ
Psalms 26:11 されどわれはわが完全によりてあゆまん願くはわれをあがなひ我をあはれみたまへ
Psalms 26:12 わがあしは平坦なるところにたつ われもろもろの會のなかにてヱホバを讃まつらん
Psalms 27:1 ダビデの歌 ヱホバはわが光わが救なり われ誰をかおそれん ヱホバはわが生命のちからなり わが懼るべきものはたれぞや
Psalms 27:2 われの敵われの仇なるあしきもの襲ひきたりてわが肉をくらはんとせしが蹶きかつ仆れたり
Psalms 27:3 縦ひいくさびと営をつらねて我をせむるともわが心おそれじ たとひ戦ひおこりて我をせむるとも我になほ恃あり
Psalms 27:4 われ一事をヱホバにこへり我これをもとむ われヱホバの美しきを仰ぎその宮をみんがためにわが世にあらん限りはヱホバの家にすまんとこそ願ふなれ
Psalms 27:5 ヱホバはなやみの日にその行宮のうちに我をひそませその幕屋のおくにわれをかくし巌のうへに我をたかく置たまふべければなり
Psalms 27:6 今わが首はわれをめぐれる仇のうへに高くあげらるべし この故にわれヱホバのまくやにて歓喜のそなへものを献ん われうたひてヱホバをほめたたへん
Psalms 27:7 わが聲をあげてさけぶときヱホバよきき給へ また憐みてわれに應へたまへ
Psalms 27:8 なんぢらわが面をたづねもとめよと(斯る聖言のありしとき)わが心なんぢにむかひてヱホバよ我なんぢの聖顔をたづねんといへり
Psalms 27:9 ねがはくは御顔をかくしたまふなかれ 怒りてなんぢの僕をとほざけたまふなかれ汝はわれの助なり 噫わがすくひの神よ われをおひいだし我をすてたまふなかれ
Psalms 27:10 わが父母われをすつるともヱホバわれを迎へたまはん
Psalms 27:11 ヱホバよなんぢの途をわれにをしへ わが仇のゆゑに我をたひらかなる途にみちびきたまへ
Psalms 27:12 いつはりの證をなすもの暴厲を吐もの我にさからひて起りたてり 願くはわれを仇にわたしてその心のままに爲しめたまふなかれ
Psalms 27:13 われもしヱホバの恩寵をいけるものの地にて見るの侍なからましかば奈何ぞや
Psalms 27:14 ヱホバを俟望ぞめ雄々しかれ汝のこころを堅うせよ 必ずやヱホバをまちのぞめ
Psalms 28:1 ダビデの歌 ああヱホバよわれ汝をよばん わが磐よねがはくは我にむかひて暗唖となりたまふなかれ なんぢ黙したまはば恐らくはわれ墓にいるものとひとしからん
Psalms 28:2 われ汝にむかひてさけび聖断の奥にむかひて手をあぐるときわが懇求のこゑをききたまへ
Psalms 28:3 あしき人また邪曲をおこなふ者とともに我をとらへてひきゆき給ふなかれ かれらはその隣にやはらぎをかたれども心には残害をいだけり
Psalms 28:4 その事にしたがひそのなす惡にしたがひて彼等にあたへ その手の行爲にしたがひて與ヘこれにその受べきものを報いたまへ
Psalms 28:5 かれらはヱホバのもろもろの事とその手のなしわざとをかへりみず この故にヱホバかれらを毀ちて建たまふことなからん
Psalms 28:6 ヱホバは讃べきかな わが祈のこゑをきいたまひたり
Psalms 28:7 ヱホバはわが力わが盾なり わがこころこれに依頼みたれば我たすけをえたり 然るゆゑにわが心いたくよろこぶ われ歌をもてほめまつらん
Psalms 28:8 ヱホバはその民のちからなり その受膏者のすくひの城なり
Psalms 28:9 なんぢの民をすくひなんぢの嗣業をさきはひ且これをやしなひ之をとこしなへに懐きたすけたまへ
Psalms 29:1 ダビデの歌 なんぢら神の子らよ ヱホバに獻げまつれ榮と能とをヱホバにささげまつれ
Psalms 29:2 その名にふさはしき榮光をヱホバにささげ奉れ きよき衣をつけてヱホバを拝みまつれ
Psalms 29:3 ヱホバのみこゑは水のうへにあり えいくわうの神は雷をとどろかせたまふ ヱホバは大水のうへにいませり
Psalms 29:4 ヱホバの聲はちからあり ヱホバのみこゑは稜威あり
Psalms 29:5 ヱホバのみこゑは香柏ををりくだく ヱホバ、レバノンのかうはくを折くだきたまふ
Psalms 29:6 これを犢のごとくをどらせレバノンとシリオンとをわかき野牛のごとくをどらせたまふ
Psalms 29:7 ヱホバのみこゑは火焔をわかつ
Psalms 29:8 ヱホバのみこゑは野をふるはせヱホバはカデシの野をふるはせたまふ
Psalms 29:9 ヱホバのみこゑは鹿に子をうませ また林木をはだかにす その宮にあるすべてのもの呼はりて榮光なるかなといふ
Psalms 29:11 ヱホバは洪水のうへに坐したまへり ヱホバは寳座にざして永遠に王なり ヱホバはその民にちからをあたへたまふ 平安をもてその民をさきはひたまはん
Psalms 30:1 殿をささぐるときに謳へるダビデのうた ヱホバよわれ汝をあがめん なんぢ我をおこしてわが仇のわがことによりて喜ぶをゆるし給はざればなり
Psalms 30:2 わが神ヱホバよわれ汝によばはれば汝我をいやしたまへり
Psalms 30:3 ヱホバよ汝わがたましひを陰府よりあげ我をながらへしめて墓にくだらせたまはざりき
Psalms 30:4 ヱホバの聖徒よ ヱホバをほめうたへ奉れ きよき名に感謝せよ
Psalms 30:5 その怒はただしばしにてその恵はいのちとともにながし 夜はよもすがら泣かなしむとも朝にはよろこびうたはん
Psalms 30:6 われ安けかりしときに謂く とこしへに動かさるることなからんと
Psalms 30:7 ヱホバよなんぢ恵をもてわが山をかたく立せたまひき 然はあれどなんぢ面をかくしたまひたれば我おぢまどひたり
Psalms 30:8 ヱホバよわれ汝によばはれり 我ひたすらヱホバにねがへり
Psalms 30:9 われ墓にくだらばわが血なにの益あらん 塵はなんぢを讃たたへんや なんぢの眞理をのべつたへんや
Psalms 30:10 ヱホバよ聴たまへ われを憐みたまヘ ヱホバよ願くはわが助となりたまへ
Psalms 30:11 なんぢ踴躍をもてわが哀哭にかへわが麁服をとき歓喜をもてわが帯としたまへり
Psalms 30:12 われ榮をもてほめうたひつつ黙すことなからんためなり わが神ヱホバよわれ永遠になんぢに感謝せん
Psalms 31:1 伶長にうたはしめたるダビデのうた ヱホバよわれ汝によりたのむ 願くはいづれの日までも愧をおはしめたまふなかれ なんぢの義をもてわれを助けたまへ
Psalms 31:2 なんぢの耳をかたぶけて速かにわれをすくひたまへ 願くはわがためにかたき磐となり我をすくふ保障の家となりたまへ
Psalms 31:3 なんぢはわが磐わが城なり されば名のゆゑをもてわれを引われを導きたまへ
Psalms 31:4 なんぢ我をかれらが密かにまうけたる網よりひきいだしたまへ なんぢはわが保砦なり
Psalms 31:5 われ霊魂をなんぢの手にゆだぬ ヱホバまことの神よなんぢはわれを贖ひたまへり
Psalms 31:6 われはいつはりの虚きことに心をよする者をにくむ われは獨ヱホバによりたのむなり
Psalms 31:7 我はなんぢの憐憫をよろこびたのしまん なんぢわが艱難をかへりみ わがたましひの禍害をしり
Psalms 31:8 われを仇の手にとぢこめしめたまはず わが足をひろきところに立たまへばなり
Psalms 31:9 われ迫りくるしめり ヱホバよ我をあはれみたまへ わが目はうれひによりておとろふ 霊魂も身もまた衰へぬ
Psalms 31:10 わが生命はかなしみによりて消えゆき わが年華はなげきによりて消ゆけばなり わが力はわが不義によりておとろへ わが骨はかれはてたり
Psalms 31:11 われもろもろの仇ゆゑにそしらる わが隣にはわけて甚だし相識ものには忌憚られ衢にてわれを見るもの避てのがる
Psalms 31:12 われは死たるもののごとく忘られて人のこころに置れず われはやぶれたる器もののごとくなれり
Psalms 31:13 そは我おほくの人のそしりをきい到るところに懼あり かれら我にさからひて互にはかりしが わが生命をさへとらんと企てたり
Psalms 31:14 されどヱホバよわれ汝によりたのめり また汝はわが神なりといへり
Psalms 31:15 わが時はすべてなんぢの手にあり ねがはくはわれを仇の手よりたすけ われに追迫るものより助けいだしたまへ
Psalms 31:16 なんぢの僕のうへに聖顔をかがやかせ なんぢの仁慈をもて我をすくひたまヘ
Psalms 31:17 ヱホバよわれに愧をおはしめ給ふなかれ そは我なんぢをよべばなり 願くはあしきものに恥をうけしめ陰府にありて口をつぐましめ給へ
Psalms 31:18 傲慢と軽侮とをもて義きものにむかひ妄りにののしるいつはりの口唇をつぐましめたまへ
Psalms 31:19 汝をおそるる者のためにたくはへ なんぢに依頼むもののために人の子のまへにてほどこしたまへる汝のいつくしみは大なるかな
Psalms 31:20 汝かれらを御前なるひそかなる所にかくして人の謀略よりまぬかれしめ また行宮のうちにひそませて舌のあらそひをさけしめたまはん
Psalms 31:21 讃べきかなヱホバは堅固なる城のなかにて奇しまるるばかりの仁慈をわれに顕したまへり
Psalms 31:22 われ驚きあわてていへらく なんぢの目のまへより絶れたりと 然どわれ汝によびもとめしとき汝わがねがひの聲をききたまへり
Psalms 31:23 なんぢらもろもろの聖徒よヱホバをいつくしめ ヱホバは眞實あるものをまもり傲慢者におもく報をほどこしたまふ
Psalms 31:24 すべてヱホバを侯望むものよ雄々しかれ なんぢら心をかたうせよ
Psalms 32:1 ダビデの訓諭のうた その愆をゆるされその罪をおほはれしものは福ひなり
Psalms 32:2 不義をヱホバに負せられざるもの心にいつはりなき者はさいはひなり
Psalms 32:3 我いひあらはさざりしときは終日かなしみさけびたるが故にわが骨ふるびおとろへたり
Psalms 32:4 なんぢの手はよるも昼もわがうへにありて重し わが身の潤澤はかはりて夏の旱のごとくなれり セラ
Psalms 32:5 斯てわれなんぢの前にわが罪をあらはしわが不義をおほはざりき 我いへらくわが愆をヱホバにいひあらはさんと 斯るときしも汝わがつみの邪曲をゆるしたまへり セラ
Psalms 32:6 されば神をうやまふ者はなんぢに遇ことをうべき間になんぢに祈らん 大水あふれ流るるともかならずその身におよばじ
Psalms 32:7 汝はわがかくるべき所なり なんぢ患難をふせぎて我をまもり救のうたをもて我をかこみたまはん セラ
Psalms 32:8 われ汝ををしへ汝をあゆむべき途にみちびき わが目をなんぢに注てさとさん
Psalms 32:9 汝等わきまへなき馬のごとく驢馬のごとくなるなかれ かれらは鑣たづなのごとき具をもてひきとめずば近づききたることなし
Psalms 32:10 惡者はかなしみ多かれどヱホバに依頼むものは憐憫にてかこまれん
Psalms 32:11 ただしき者よヱホバを喜びだのしめ 凡てこころの直きものよ喜びよばふべし
Psalms 33:1 ただしき者よヱホバによりてよろこべ 讃美はなほきものに適はしきなり
Psalms 33:2 琴をもてヱホバに感謝せよ 十絃のことをもてヱホバをほめうたへ
Psalms 33:3 あたらしき歌をヱホバにむかひてうたひ歓喜の聲をあげてたくみに琴をかきならせ
Psalms 33:4 ヱホバのことばは直く そのすべて行ひたまふところ眞實なればなり
Psalms 33:5 ヱホバは義と公平とをこのみたまふ その仁慈はあまねく地にみつ
Psalms 33:6 もろもろの天はヱホバのみことばによりて成り てんの萬軍はヱホバの口の氣によりてつくられたり
Psalms 33:7 ヱホバはうみの水をあつめてうづだかくし深淵を庫にをさめたまふ
Psalms 33:8 全地はヱホバをおそれ世にすめるもろもろの人はヱホバをおぢかしこむべし
Psalms 33:9 そはヱホバ言たまへば成り おほせたまへば立るがゆゑなり
Psalms 33:10 ヱホバはもろもろの國のはかりごとを虚くし もろもろの民のおもひを徒労にしたまふ
Psalms 33:11 ヱホバの謀略はとこしへに立ち そのみこころのおもひは世々にたつ
Psalms 33:12 ヱホバをおのが神とするはさいはひなり ヱホバ嗣業にせんとて撰びたまへるその民はさいはひなり
Psalms 33:13 ヱホバ天よりうかがひてすべての人の子を見
Psalms 33:14 その在すところより地にすむもろもろの人をみたまふ
Psalms 33:15 ヱホバはすべてかれらの心をつくり その作ところをことごとく鑒みたまふ
Psalms 33:16 王者いくさびと多をもて救をえず勇士ちから大なるをもて助をえざるなり
Psalms 33:17 馬はすくひに益なく その大なるちからも人をたすくることなからん
Psalms 33:18 視よヱホバの目はヱホバをおそるるもの並その憐憫をのぞむもののうへにあり
Psalms 33:19 此はかれらのたましひを死よりすくひ饑饉たるときにも世にながらへしめんがためなり
Psalms 33:20 われらのたましひはヱホバを侯望めり ヱホバはわれらの援われらの盾なり
Psalms 33:21 われらはきよき名にりたのめり 斯てぞわれらの心はヱホバにありてよろこばん
Psalms 33:22 ヱホバよわれら汝をまちのぞめり これに循ひて憐憫をわれらのうへに垂たまへ
Psalms 34:1 ダビデ、アビメレクのまへにて狂へる状をなし逐れていでさりしときに作れるうた われつねにヱホバを祝ひまつらんその頌詞はわが口にたえじ
Psalms 34:2 わがたましひはヱホバによりて誇らん 謙だるものは之をききてよろこばん
Psalms 34:3 われとともにヱホバを崇めよ われらともにその名をあげたたへん
Psalms 34:4 われヱホバを尋ねたればヱホバわれにこたへ我をもろもろの畏懼よりたすけいだしたまへり
Psalms 34:5 かれらヱホバを仰ぎのぞみて光をかうぶれり かれらの面ははぢあからむことなし
Psalms 34:6 この苦しむもの叫びたればヱホバこれをきき そのすべての患難よりすくひいだしたまへり
Psalms 34:7 ヱホバの使者はヱホバをおそるる者のまはりに営をつらねてこれを援く
Psalms 34:8 なんぢらヱホバの恩恵ふかきを嘗ひしれ ヱホバによりたのむ者はさいはひなり
Psalms 34:9 ヱホバの聖徒よヱホバを畏れよヱホバをおそるるものには乏しきことなければなり
Psalms 34:10 わかき獅はともしくして饑ることあり されどヱホバをたづぬるものは嘉物にかくることあらじ
Psalms 34:11 子よきたりて我にきけ われヱホバを畏るべきことを汝等にをしへん
Psalms 34:12 福祉をみんがために生命をしたひ存へんことをこのむ者はたれぞや
Psalms 34:13 なんぢの舌をおさへて惡につかしめず なんぢの口唇をおさへて虚偽をいはざらしめよ
Psalms 34:14 惡をはなれて善をおこなひ和睦をもとめて切にこのことを勉めよ
Psalms 34:15 ヱホバの目はただしきものをかへりみ その耳はかれらの号呼にかたぶく
Psalms 34:16 ヱホバの聖顔はあくをなす者にむかひてその跡を地より断滅したまふ
Psalms 34:17 義者さけびたれぱヱホバ之をききてそのすべての患難よりたすけいだしたまへり
Psalms 34:18 ヱホバは心のいたみかなしめる者にちかく在してたましひの悔頽れたるものをすくひたまふ
Psalms 34:19 ただしきものは患難おほし されどヱホバはみなその中よりたすけいだしたまふ
Psalms 34:20 ヱホバはかれがすべての骨をまもりたまふ その一つだに折らるることなし
Psalms 34:21 惡はあしきものをころさん 義人をにくむものは刑なはるべし
Psalms 34:22 ヱホバはその僕等のたましひを贖ひたまふ ヱホバに依頼むものは一人だにつみなはるることなからん
Psalms 35:1 ダビデのうた ヱホバよねがはくは我にあらそふ者とあらそひ我とたたかふものと戦ひたまへ
Psalms 35:2 干と大盾とをとりてわが援にたちいでたまへ
Psalms 35:3 戟をぬきいだしたまひて我におひせまるものの途をふさぎ且わが霊魂にわれはなんぢの救なりといひたまへ
Psalms 35:4 願くはわが霊魂をたづぬるものの恥をえていやしめられ 我をそこなはんと謀るものの退けられて惶てためかんことを
Psalms 35:5 ねがはくはかれらが風のまへなる粃糠のごとくなりヱホバの使者におひやられんことを
Psalms 35:6 願くはかれらの途をくらくし滑らかにしヱホバの使者にかれらを追ゆかしめたまはんことを
Psalms 35:7 かれらは故なく我をとらへんとて網をあなにふせ 故なくわが霊魂をそこなはんとて阱をうがちたればなり
Psalms 35:8 願くはかれらが思ひよらぬ間にほろびきたり己がふせたる網にとらへられ自らその滅におちいらんことを
Psalms 35:9 然ときわが霊魂はヱホバによりてよろこび その救をもて樂しまん
Psalms 35:10 わがすべての骨はいはん ヱホバよ汝はくるしむものを之にまさりて力つよきものより並くるしむもの貧しきものを掠めうばふ者よりたすけいだし給ふ 誰かなんぢに比ふべき者あらんと
Psalms 35:11 こころあしき證人おこりてわが知ざることを詰りとふ
Psalms 35:12 かれらは惡をもてわが善にむくい我がたましひを依仗なきものとせり
Psalms 35:13 然どわれかれらが病しときには麁服をつけ糧をたちてわが霊魂をくるしめたり わが祈はふところにかへれり
Psalms 35:14 わがかれに作ることはわが友わが兄弟にことならず母の喪にありて痛哭がごとく哀しみうなたれたり
Psalms 35:15 然どかれらはわが倒れんとせしとき喜びつどひわが知ざりしとき匪類あつまりきたりて我をせめ われを裂てやめざりき
Psalms 35:16 かれらは洒宴にて穢きことをのぶる嘲笑者のごとく我にむかひて歯をかみならせり
Psalms 35:17 主よいたづらに見るのみにして幾何時をへたまふや 願くはわがたましひの彼等にほろぼさるるを脱れしめ わが生命をわかき獅よりまぬかれしめたまへ
Psalms 35:18 われ大なる會にありてなんぢに感謝し おほくの民のなかにて汝をほめたたへん
Psalms 35:19 虚偽をもてわれに仇するもののわが故によろこぶことを容したまなかれ 故なくして我をにくむ者のたがひに眴せすることなからしめたまへ
Psalms 35:20 かれらは平安をかたらず あざむきの言をつくりまうけて國内におだやかにすまふ者をそこなはんと謀る
Psalms 35:21 然のみならず我にむかひて口をあけひろげ ああ視よや視よやわれらの眼これをみたりといへり
Psalms 35:22 ヱホバよ汝すでにこれを視たまへり ねがはくは黙したまふなかれ主よわれに遠ざかりたまふなかれ
Psalms 35:23 わが神よわが主よ おきたまへ醒たまへ ねがはくはわがために審判をなしわが訟ををさめたまへ
Psalms 35:24 わが神ヱホバよなんぢの義にしたがひて我をさばきたまへ わが事によりてかれらに歓喜をえしめたまふなかれ
Psalms 35:25 かれらにその心裡にて ああここちよきかな観よこれわが願ひしところなりといはしめたまふなかれ 又われらかれを呑つくせりといはしめたまふなかれ
Psalms 35:26 願くはわが害なはるるを喜ぶもの皆はぢて惶てふためき 我にむかひてはこりかに高ぶるものの愧とはづかしめとを衣んことを
Psalms 35:27 わが義をよみする者をばよろこび謳はしめ大なるかなヱホバその僕のさいはひを悦びたまふと恒にいはしめたまへ
Psalms 35:28 わが舌は終日なんぢの義となんぢの誉とをかたらん
Psalms 36:1 伶長にうたはしめたるヱホバの僕ダビデのうた あしきものの愆はわが心のうちにかたりて その目のまへに神をおそるるの畏あることなしといふ
Psalms 36:2 かれはおのが邪曲のあらはるることなく憎まるることなからんとて自からその目にて謟る
Psalms 36:3 その口のことばは邪曲と虚偽となり智をこばみ善をおこなふことを息たり
Psalms 36:4 かつその寝床にてよこしまなる事をはかり よからぬ途にたちとまりて惡をきらはず
Psalms 36:5 ヱホバよなんぢの仁慈は天にあり なんぢの眞實は雲にまでおよぶ
Psalms 36:6 汝のただしきは神の山のごとく なんぢの審判はおほいなる淵なり ヱホバよなんぢは人とけものとを護りたまふ
Psalms 36:7 神よなんぢの仁慈はたふときかな 人の子はなんぢの翼の蔭にさけどころを得
Psalms 36:8 なんぢの屋のゆたかなるによりてことごとく飽ことをえん なんぢはその歓樂のかはの水をかれらに飮しめたまはん
Psalms 36:9 そはいのちの泉はなんぢに在り われらはなんぢの光によりて光をみん
Psalms 36:10 ねがはくはなんぢを知るものにたえず憐憫をほどこし心なほき者にたえず正義をほどこしたまへ
Psalms 36:11 たかぶるものの足われをふみ惡きものの今われを逐去ふをゆるし給ふなかれ
Psalms 36:12 邪曲をおこなふ者はかしこに仆れたり かれら打伏られてまた起ことあたはざるべし
Psalms 37:1 ダビデのうた 惡をなすものの故をもて心をなやめ 不義をおこなふ者にむかひて嫉をおこすなかれ
Psalms 37:2 かれらはやがて草のごとくかりとられ青菜のごとく打萎るべければなり
Psalms 37:3 ヱホバによりたのみて善をおこなへ この國にとどまり眞實をもて糧とせよ
Psalms 37:4 ヱホバによりて歓喜をなせ ヱホバはなんぢが心のねがひを汝にあたへたまはん
Psalms 37:5 なんぢの途をヱホバにゆだねよ 彼によりたのまば之をなしとげ
Psalms 37:6 光のごとくなんぢの義をあきらかにし午日のごとくなんぢの訟をあきらかにしたまはん
Psalms 37:7 なんぢヱホバのまへに口をつぐみ忍びてこれを埃望め おのが途をあゆみて榮るものの故をもて あしき謀略をとぐる人の故をもて心をなやむるなかれ
Psalms 37:8 怒をやめ忿恚をすてよ 心をなやむるなかれ これ惡をおこなふ方にうつらん
Psalms 37:9 そは惡をおこなふものは断滅され ヱホバを埃望むものは國をつぐべければなり
Psalms 37:10 あしきものは久しからずしてうせん なんぢ細密にその處をおもひみるともあることなからん
Psalms 37:11 されど謙だるものは國をつぎ また平安のゆたかなるを樂まん
Psalms 37:12 惡きものは義きものにさからはんとて謀略をめぐらし之にむかひて切歯す
Psalms 37:13 主はあしきものを笑ひたまはん かれが日のきたるを見たまへばなり
Psalms 37:14 あしきものは釧をぬき弓をはりて苦しむものと貧しきものとをたふし行びなほきものを殺さんとせり
Psalms 37:15 されどその劍はおのが胸をさしその弓はをらるべし
Psalms 37:16 義人のもてるもののすくなきは多くの惡きものの豊かなるにまされり
Psalms 37:17 そは惡きものの臂はをらるれどヱホバは義きものを扶持たまへばなり
Psalms 37:18 ヱホバは完全もののもろもろの日をしりたまふ かれらの嗣業はかぎりなく久しからん
Psalms 37:19 かれらは禍害にあふとき愧をおはず饑饉の日にもあくことを得ん
Psalms 37:20 あしき者ははろびヱホバのあたは牧場のさかえの枯るがごとくうせ烟のごとく消ゆかん
Psalms 37:21 あしき者はものかりて償はず 義きものは恵ありて施しあたふ
Psalms 37:22 神のことほぎたまふ人は國をつぎ 神ののろひたまふ人は断滅さるべし
Psalms 37:23 人のあゆみはヱホバによりて定めらる そのゆく途をヱホバよろこびたまへり
Psalms 37:24 縦ひその人たふるることありとも全くうちふせらるることなし ヱホバかれが手をたすけ支へたまへぱなり
Psalms 37:25 われむかし年わかくして今おいたれど 義者のすてられ或はその裔の糧こひありくを見しことなし
Psalms 37:26 ただしきものは終日めぐみありて貸あたふ その裔はさいはひなり
Psalms 37:27 惡をはなれて善をなせ 然ばなんぢの住居とこしへならん
Psalms 37:28 ヱホバは公平をこのみ その聖徒をすてたまはざればなり かれらは永遠にまもりたすけらるれど惡きもののすゑは断滅さるべし
Psalms 37:29 ただしきものは國をつぎ その中にすまひてとこしへに及ばん
Psalms 37:30 ただしきものの口は智慧をかたり その舌は公平をのぶ
Psalms 37:31 かれが神の法はそのこころにあり そのあゆみは一歩だにすべることあらじ
Psalms 37:32 あしきものは義者をひそみうかがひて之をころさんとはかる
Psalms 37:33 ヱホバは義者をあしきものの手にのこしおきたまはず 審判のときに罰ひたまふことなし
Psalms 37:34 ヱホバを俟望みてその途をまもれ さらば汝をあげて國をつがせたまはん なんぢ惡者のたちほろぼさるる時にこれをみん
Psalms 37:35 我あしきものの猛くしてはびこれるを見るに生立たる地にさかえしげれる樹のごとし
Psalms 37:36 然れどもかれは逝ゆけり 視よたちまちに無なりぬ われ之をたづねしかど邁ことをえざりき
Psalms 37:37 完人に目をそそぎ直人をみよ 和平なる人には後あれど
Psalms 37:38 罪ををかすものらは共にほろぼされ惡きものの後はかならず断るべければなり
Psalms 37:39 ただしきものの救はヱホバよりいづ ヱホバはかれらが辛苦のときの保砦なり
Psalms 37:40 ヱホバはかれらを助け かれらを解脱ちたまふ ヱホバはかれらを惡者よりときはなちて救ひたまふ かれらはヱホバをその避所とすればなり
Psalms 38:1 記念のためにつくれるダビデのうた ヱホバよねがはくは忿恚をもて我をせめ はげしき怒をもて我をこらしめ給なかれ
Psalms 38:2 なんぢの矢われにあたり なんぢの手わがうへを壓へたり
Psalms 38:3 なんぢの怒によりてわが肉には全きところなく わが罪によりてわが骨には健かなるところなし
Psalms 38:4 わが不義は首をすぎてたかく重荷のごとく負がたけれぱなり
Psalms 38:5 われ愚なるによりてわが傷あしき臭をはなちて腐れただれたり
Psalms 38:6 われ折屈みていたくなげきうなたれたり われ終日かなしみありく
Psalms 38:7 わが腰はことごとく焼るがごとく肉に全きところなければなり
Psalms 38:8 我おとろへはて甚くきずつけられわが心のやずからざるによりて欷歔さけべり
Psalms 38:9 ああ主よわがすべての願望はなんぢの前にあり わが嘆息はなんぢに隠るることなし
Psalms 38:10 わが胸をどりわが力おとろへ わが限のひかりも亦われをはなれたり
Psalms 38:11 わが女わが親めるものはわが痍をみて遥にたち わが隣もまた遠かりてたてり
Psalms 38:12 わが生命をたづぬるものは羂をまうけ我をそこなはんとするものは惡言をいひ また終目たばかりを謀る
Psalms 38:13 然はあれどわれは聾者のごとくきかず われは口をひらかぬ唖者のごとし
Psalms 38:14 如此われはきかざる人のごとく口にことあげせぬ人のごときなり
Psalms 38:15 ヱホバよ我なんぢを俟望めり 主わが神よなんぢかならず答へたまふべければなり
Psalms 38:16 われ曩にいふ おそらくはかれらわが事によりて喜び わが足のすべらんとき我にむかひて誇りかにたかぶらんと
Psalms 38:17 われ仆るるばかりになりぬ わが悲哀はたえずわが前にあり
Psalms 38:18 そは我みづから不義をいひあらはし わが罪のためにかなしめばなり
Psalms 38:19 わが仇はいきはたらきてたけく故なくして我をうらむるものおほし
Psalms 38:20 惡をもて善にむくゆるものはわれ善事にしたがふが故にわが仇となれり
Psalms 38:21 ヱホバよねがはくは我をはなれたたまふなかれ わが神よわれに遠かりたまふなかれ
Psalms 38:22 主わがすくひよ速きたりて我をたすけたまへ
Psalms 39:1 伶長エドトンにうたはしめたるダビデのうた われ曩にいへり われ舌をもて罪ををかさざらんために我すべての途をつつしみ惡者のわがまへに在るあひだはわが口に衝をかけんと
Psalms 39:2 われ黙して唖となり善言すらことばにいださず わが憂なほおこれり
Psalms 39:3 わが心わがうちに熱し おもひつづくるほどに火もえぬればわれ舌をもていへらく
Psalms 39:4 ヱホバよ願くはわが終とわが日の數のいくばくなるとを知しめたまへ わが無常をしらしめたまへ
Psalms 39:5 観よなんぢわがすべての日を一掌にすぎさらしめたまふ わがかいのち主前にてはなきにことならず 實にすべての人は皆その盛時だにもむなしからざるはなし セラ
Psalms 39:6 人の世にあるは影にことならず その思ひなやむことはむなしからざるなし その積蓄るものはたが手にをさまるをしらず
Psalms 39:7 主よわれ今なにをかまたん わが望はなんぢにあり
Psalms 39:8 ねがはくは我ぞすべて愆より助けいだしたまへ 愚なるものに誹らるることなからしめたまへ
Psalms 39:9 われは黙して口をひらかず 此はなんぢの成したまふ者なれぱなり
Psalms 39:10 願くはなんぢの責をわれよりはなちたまへ 我なんぢの手にうちこらさるるによりて亡ぶるばかりになりぬ
Psalms 39:11 なんぢ罪をせめて人をこらし その慕ひよろこぶところのものを蠧のくらふがごとく消うせしめたまふ 實にもろもろの人はむなしからざるなし セラ
Psalms 39:12 ああヱホバよねがはくはわが祈をきき わが號呼に耳をかたぶけたまへ わが涙をみて黙したまふなかれ われはなんぢに寄る旅客すべてわが列組のごとく宿れるものなり
Psalms 39:13 我ここを去てうせざる先になんぢ面をそむけてわれを爽快ならしめたまへ
Psalms 40:1 伶長にうたはしめたるダビデのうた 我たへしのびてヱホバを俟望みたり ヱホバ我にむかひてわが號呼をききたまへり
Psalms 40:2 また我をほろびの阱より泥のなかよりとりいだしてわが足を磐のうへにおきわが歩をかたくしたまへり
Psalms 40:3 ヱホバはあたらしき歌をわが口にいれたまへり此はわれらの神にささぐる讃美なり 多くの人はこれを見ておそれ かつヱホバによりたのまん
Psalms 40:4 ヱホバをおのが頼となし高るものによらず虚偽にかたぶく者によらざる人はさいはひなり
Psalms 40:5 わが神ヱホバよなんぢの作たまへる奇しき迹と われらにむかふ念とは甚おほくして汝のみまへにつらねいふことあたはず 我これをいひのべんとすれどその數かぞふることあたはず
Psalms 40:6 なんぢ犠牲と祭物とをよろこびたまはず汝わが耳をひらきたたまへり なんぢ燔祭と罪祭とをもとめたまはず
Psalms 40:7 そのとき我いへらく 観よわれきたらんわがことを書の巻にしるしたり
Psalms 40:8 わが神よわれは聖意にしたがふことを樂む なんぢの法はわが心のうちにありと
Psalms 40:9 われ大なる會にて義をつげしめせり 視よわれ口唇をとぢず ヱホバよなんぢ之をしりたまふ
Psalms 40:10 われなんぢの義をわが心のうちにひめおかず なんぢの眞理となんぢの拯救とをのべつたへたり 我なんぢの仁慈となんぢの眞理とをおほいなる會にかくさざりき
Psalms 40:11 ヱホバよなんぢ憐憫をわれにをしみたまふなかれ 仁慈と眞理とをもて恒にわれをまもりたまへ
Psalms 40:12 そはかぞへがたき禍害われをかこみ わが不義われに追及てあふぎみること能はぬまでになりぬ その多きことわが首の髪にもまさり わが心きえうするばかりなればなり
Psalms 40:13 ヱホバよ願くはわれをすくひたまヘ ヱホバよ急ぎきたりて我をたすけたまへ
Psalms 40:14 願くはわが霊魂をたづねほろぼさんとするものの皆はぢあわてんことを わが害はるるをよろこぶもののみな後にしりぞきて恥をおはんことを
Psalms 40:15 われにむかひてああ視よや視よやといふ者おのが恥によりておどろきおそれんことを
Psalms 40:16 願くはなんぢを尋求むるものの皆なんぢによりて樂みよろこばんことを なんぢの救をしたふものの恒にヱホバは大なるかなととなへんことを
Psalms 40:17 われはくるしみ且ともし 主われをねんごろに念ひたまふ なんぢはわが助なり われをすくひたまふ者なり ああわが神よねがはくはためらひたまふなかれ
Psalms 41:1 うたのかみに謳はしめたるダビデのうた よわき人をかへりみる者はさいはひなり ヱホバ斯るものを禍ひの日にたすけたまはん
Psalms 41:2 ヱホバ之をまもり之をながらへしめたまはん かれはこの地にありて福祉をえん なんぢ彼をその仇ののぞみにまかせて付したまふなかれ
Psalms 41:3 ヱホバは彼がわづらひの床にあるをたすけ給はん なんぢかれが病るときその衾裯をしきかへたまはん
Psalms 41:4 我いへらくヱホバよわれを憐みわがたましひを醫したまへ われ汝にむかひて罪ををかしたりと
Psalms 41:5 わが仇われをそしりていへり 彼いづれのときに死いづれのときにその名ほろびんと
Psalms 41:6 かれ又われを見んとてきたるときは虚偽をかたり邪曲をその心にあつめ 外にいでてはこれを述ぶ
Psalms 41:7 すべてわれをにくむもの互ひにささやき我をそこなはんとて相謀る
Psalms 41:8 かつ云 かれに一のわざはひつきまとひたれば仆れふしてふたたび起ることなからんと
Psalms 41:9 わが侍みしところ わが糧をくらひしところのわが親しき友さへも我にそむきてその踵をあげたり
Psalms 41:10 然はあれどヱホバよ汝ねがはくは我をあはれみ我をたすけて起したまへ されば我かれらに報ることをえん
Psalms 41:11 わが仇われに打勝てよろこぶこと能はざるをもて汝がわれを愛いつくしみたまふを我しりぬ
Psalms 41:12 わが事をいはば なんぢ我をわが完全うちにてたもち我をとこしへに面のまへに置たまふ
Psalms 41:13 イスラエルの神ヱホバはとこしへより永遠までほむべきかな アーメンアーメン
Psalms 42:1 伶長にうたはしめたるコラの子のをしへの歌 ああ神よしかの渓水をしたひ喘ぐがごとく わが霊魂もなんぢをしたひあえぐなり
Psalms 42:2 わがたましひは渇けるごとくに神をしたふ 活神をぞしたふ 何れのときにか我ゆきて神のみまへにいでん
Psalms 42:3 かれらが終日われにむかひて なんぢの神はいづくにありやとののしる間はただわが涙のみ昼夜そそぎてわが糧なりき
Psalms 42:4 われむかし群をなして祭日をまもる衆人とともにゆき歓喜と讃美のこゑをあげてかれらを神の家にともなへり 今これらのことを追想してわが衷よりたましひを注ぎいだすなり
Psalms 42:5 ああわが霊魂よ なんぢ何ぞうなたるるや なんぞわが衷におもひみだるるや なんぢ神をまちのぞめ われに聖顔のたすけありて我なほわが神をめたたふべければなり
Psalms 42:6 わが神よわがたましひはわが衷にうなたる 然ばわれヨルダンの地よりヘルモンよりミザルの山より汝をおもひいづ
Psalms 42:7 なんぢの大瀑のひびきによりて淵々よびこたへ なんぢの波なんぢの猛浪ことごとくわが上をこえゆけり
Psalms 42:8 然はあれど昼はヱホバその憐憫をほどこしたまふ 夜はその歌われとともにあり 此うたはわがいのちの神にささぐる祈なり
Psalms 42:9 われわが磐なる神にいはん なんぞわれを忘れたまひしや なんぞわれは仇のしへたげによりて悲しみありくや
Psalms 42:10 わが骨もくだくるぼかりにわがてきはひねもす我にむかひて なんぢの神はいづくに心りやといひののしりつつ我をそしれり
Psalms 42:11 ああわがたましひよ 汝なんぞうなたるるや 何ぞわがうちに思ひみだるるや なんぢ神をまちのぞめ われ尚わがかほの助なるわが神をほめたたふべければなり
Psalms 43:1 神よねがはくは我をさばき 情しらぬ民にむかひてわが訟をあげつらひ詭詐おほきよこしまなる人より我をたすけいだし給へ
Psalms 43:2 なんぢはわが力の神なり なんぞ我をすてたまひしや 何ぞわれは仇の暴虐によりてかなしみありくや
Psalms 43:3 願くはなんぢの光となんぢの眞理とをはなち我をみちびきてその聖山とその帷幄とにゆかしめたまへ
Psalms 43:4 さらばわれ神の祭壇にゆき又わがよろこびよろこぶ神にゆかん ああ神よわが神よわれ琴をもてなんぢを讃たたへん
Psalms 43:5 ああわが霊魂よなんぢなんぞうなたるるや なんぞわが衷におもひみだるるや なんぢ神によりて望をいだけ 我なほわが面のたすけなるわが神をほめたたふべければなり
Psalms 44:1 伶長にうたはしめたるコラの子のをしへの歌 ああ神よむかしわれらの列組の日になんぢがなしたまひし事迹をわれら耳にきけり 列組われらに語れり
Psalms 44:2 なんぢ手をもてもろもろの國人をおひしりぞけ われらの列組をうゑ並もろもろの民をなやましてわれらの列組をはびこらせたまひき
Psalms 44:3 かれらはおのが劍によりて國をえしにあらず おのが臂によりて勝をえしにあらず 只なんぢの右の手なんぢの臂なんぢの面のひかりによれり 汝かれらを恵みたまひたればなり
Psalms 44:4 神よなんぢはわが王なり ねがはくはヤコブのために救をほどこしたまへ
Psalms 44:5 われらは汝によりて敵をたふし また我儕にさからひて起りたつものをなんぢの名によりて踐壓ふべし
Psalms 44:6 そはわれわが弓によりたのまず わが劍もまた我をすくふことあたはざれぱなり
Psalms 44:7 なんぢわれらを敵よりすくひ またわれらを惡むものを辱かしめたまへり
Psalms 44:8 われらはひねもす神によりてほこり われらは永遠になんぢの名に感謝せん セラ
Psalms 44:9 しかるに今はわれらをすてて恥をおはせたまへり われらの軍人とともに出ゆきたまはず
Psalms 44:10 われらを敵のまへより退かしめたまへり われらを惡むものその任意にわれらを掠めうばへり
Psalms 44:11 なんぢわれらを食にそなへらるる羊のごとくにあたへ斯てわれらをもろもろの國人のなかにちらし
Psalms 44:12 得るところなくしてなんぢの民をうり その價によりてなんぢの富をましたまはざりき
Psalms 44:13 汝われらを隣人にそしらしめ われらを環るものにあなどらしめ 嘲けらしめたまへり
Psalms 44:14 又もろもろの國のなかにわれらを談柄となし もろもろの民のなかにわれらを頭ふらるる者となしたまへり
Psalms 44:15 わが凌辱ひねもす我がまへにあり わがかほの恥われをおほへり
Psalms 44:16 こは我をそしり我をののしるものの聲により我にあだし我にうらみを報るものの故によるなり
Psalms 44:17 これらのこと皆われらに臨みきつれどわれらなほ汝をわすれず なんぢの契約をいつはりまもらざりき
Psalms 44:18 われらの心しりぞかずわれらの歩履なんぢの道をはなれず
Psalms 44:19 然どなんぢは野犬のすみかにてわれらをきずつけ死蔭をもてわれらをおほひ給へり
Psalms 44:20 われらもしおのれの神の名をわすれ或はわれらの手を異神にのべしことあらんには
Psalms 44:21 神はこれを糺したまはざらんや 神はこころの隠れたることをも知たまふ
Psalms 44:22 われらは終日なんぢのために死にわたされ屠られんとする羊の如くせられたり
Psalms 44:23 主よさめたまへ何なればねぶりたまふや起たまへ われらをとこしへに棄たまふなかれ
Psalms 44:24 いかなれば聖顔をかくしてわれらがうくる苦難と虐待とをわすれたまふや
Psalms 44:25 われらのたましひはかがみて塵にふし われらの腹は土につきたり
Psalms 44:26 ねがはくは起てわれらをたすけたまへ なんぢの仁慈のゆゑをもてわれらを贖ひたまへ
Psalms 45:1 百合花のしらべにあはせて伶長にうたはしめたるコラの子のをしへのうた 愛のうた わが心はうるはしき事にてあふる われは王のために詠たるものをいひいでん わが舌はすみやけく寫字人の筆なり
Psalms 45:2 なんぢは人の子輩にまさりて美しく文雅そのくちびるにそそがる このゆゑに神はとこしへに汝をさいはひしたまへり
Psalms 45:3 英雄よなんぢその劍その榮その威をこしに佩べし
Psalms 45:4 なんぢ眞理と柔和とただしきとのために威をたくましくし勝をえて乗すすめ なんぢの右手なんぢに畏るべきことををしへん
Psalms 45:5 なんぢの矢は鋭して王のあたの胸をつらぬき もろもろの民はなんぢの下にたふる
Psalms 45:6 神よなんぢの寳座はいやとほ永くなんぢの國のつゑは公平のつゑなり
Psalms 45:7 なんぢは義をいつくしみ惡をにくむ このゆゑに神なんぢの神はよろこびの膏をなんぢの侶よりまさりて汝にそそぎたまへり
Psalms 45:8 なんぢの衣はみな没薬蘆薈肉桂のかをりあり 琴瑟の昔ざうげの諸殿よりいでて汝をよろこぱしめたり
Psalms 45:9 なんぢがたふとき婦のなかにはもろもろの王のむすめあり 皇后はオフルの金をかざりてなんぢの右にたつ
Psalms 45:10 女よきけ目をそそげ なんぢの耳をかたぶけよ なんぢの民となんぢが父の家とをわすれよ
Psalms 45:11 さらば王はなんぢの美麗をしたはん 王はなんぢの主なりこれを伏拝め
Psalms 45:12 ツロの女は贈物をもてきたり民間のとめるものも亦なんぢの恵をこひもとめん
Psalms 45:13 王のむすめは殿のうちにていとど榮えかがやき そのころもは金をもて織なせり
Psalms 45:14 かれは鍼繍せる衣をきて王のもとにいざなはる 之にともなへる處女もそのあとにしたがひて汝のもとにみちびかれゆかん
Psalms 45:15 かれらは歓喜と快樂とをもていざなはれ斯して王の殿にいらん
Psalms 45:16 なんぢの子らは列組にかはりてたち なんぢはこれを全地に君となさん
Psalms 45:17 我なんぢの名をよろづ代にしらしめん この故にもろもろの民はいやとほ永くなんぢに感謝すべし
Psalms 46:1 女音のしらべにしたがひて伶長にうたはしめたるコラの子のうた 神はわれらの避所また力なりなやめるときの最ちかき助なり
Psalms 46:2 さればたとひ地はかはり山はうみの中央にうつるとも我儕はおそれじ
Psalms 46:3 よしその水はなりとどろきてさわぐともその溢れきたるによりて山はゆるぐとも何かあらん セラ
Psalms 46:4 河ありそのながれは神のみやこをよろこばしめ至上者のすみたまふ聖所をよろこばしむ
Psalms 46:5 神そのなかにいませば都はうごかじ 神は朝つとにこれを助けたまはん
Psalms 46:6 もろもろの民はさわぎたち もろもろの國はうごきたり 神その馨をいだしたまへば地はやがてとけぬ
Psalms 46:7 萬軍のヱホバはわれらとともなり ヤコブの神はわれらのたかき櫓なり セラ
Psalms 46:8 きたりてヱホバの事跡をみよ ヱホバはおほくの懼るべきことを地になしたまへり
Psalms 46:9 ヱホバは他のはてまでも戦闘をやめしめ弓ををり戈をたち戦車を火にてやきたまふ
Psalms 46:10 汝等しづまりて我の神たるをしれ われはもろもろの國のうちに崇められ全地にあがめらるべし
Psalms 46:11 萬軍のヱホバはわれらと偕なり ヤコブの神はわれらの高きやぐらなり セラ
Psalms 47:1 伶長にうたはしめたるコラの子のうた もろもろのたみよ手をうち歓喜のこゑをあげ神にむかひてさけべ
Psalms 47:2 いとたかきヱホバはおそるべく また地をあまねく治しめず大なる王にてましませばなり
Psalms 47:3 ヱホバはもろもろの民をわれらに服はせ もろもろの國をわれらの足下にまつろはせたまふ
Psalms 47:4 又そのいつくしみたまふヤコブが譽とする嗣業をわれらのために選びたまはん セラ
Psalms 47:5 神はよろこびさけぶ聲とともにのぼり ヱホバはラッパの聲とともにのぼりたまへり
Psalms 47:6 ほめうたへ神をほめうたへ 頌歌へわれらの王をほめうたへ
Psalms 47:7 かみは地にあまねく王なればなり 教訓のうたをうたひてほめよ
Psalms 47:8 神はもろもろの國をすべをさめたまふ 神はそのきよき寳座にすわりたまふ
Psalms 47:9 もろもろのたみの諸侯はつどひきたりてアブラハムの神の民となれり 他のもろもろの盾は神のものなり神はいとたふとし
Psalms 48:1 コラの子のうたなり讃美なり ヱホバは大なり われらの神の都そのきよき山のうへにて甚くほめたたへられたまふべし
Psalms 48:2 シオンの山はきたの端たかくしてうるはしく喜悦を地にあまねくあたふ ここは大なる王のみやこなり
Psalms 48:3 そのもろもろの殿のうちに神はおのれをたかき櫓としてあらはしたまへり
Psalms 48:4 みよ王等はつどひあつまりて偕にすぎゆきぬ
Psalms 48:5 かれらは都をみてあやしみ且おそれて忽ちのがれされり
Psalms 48:6 戦慄はかれらにのぞみ その苦痛は子をうまんとする婦のごとし
Psalms 48:7 なんぢは東風をおこしてタルシシの舟をやぶりたまふ
Psalms 48:8 曩にわれらが聞しごとく今われらは萬車のヱホバの都われらの神のみやこにて之をみることをえたり 神はこの都をとこしへまで固くしたまはん セラ
Psalms 48:9 神よ我らはなんぢの宮のうちにて仁慈をおもへり
Psalms 48:10 神よなんぢの譽はその名のごとく地の極にまでおよべり なんぢの右手はただしきにて充り
Psalms 48:11 なんぢのもろもろの審判によりてシオンの山はよろこびユダの女輩はたのしむべし
Psalms 48:13 シオンの周圍をありき徧くめぐりてその櫓をかぞへよ その石垣に目をとめよ そのもろもろの殿をみよ なんぢらこれを後代にかたりつたへんが爲なり
Psalms 48:14 そはこの神はいや遠長にわれらの神にましましてわれらを死るまでみちびきたまはん
Psalms 49:1 伶長にうたはしめたるコラの子のうた
Psalms 49:2 もろもろの民よきけ賤きも貴きも富るも貧きもすべて地にすめる者よ なんぢらともに耳をそばだてよ
Psalms 49:3 わが口はかしこきことをかたり わが心はさときことを思はん
Psalms 49:4 われ耳を喩言にかたぶけ琴をならしてわが幽玄なる語をときあらはさん
Psalms 49:5 わが踵にちかかる不義のわれを打圍むわざはひの口もいかで懼るることあらんや
Psalms 49:6 おのが富をたのみ財おほきを誇るもの
Psalms 49:7 たれ一人おのが兄弟をあがなふことあたはず之がために贖價を神にささげ
Psalms 49:9 之をとこしへに生存へしめて朽ざらしむることあたはず(霊魂をあがなふには費いとおほくして此事をとこしへに捨置ざるを得ざればなり)
Psalms 49:10 そは智きものも死 おろかものも獣心者もひとしくほろびてその富を他人にのこすことは常にみるところなり
Psalms 49:11 かれら竊におもふ わが家はとこしへに存りわがすまひは世々にいたらんと かれらはその地におのが名をおはせたり
Psalms 49:12 されど人は譽のなかに永くとどまらず亡びうする獣のごとし
Psalms 49:13 斯のごときは愚かなるものの途なり 然はあれど後人はその言をよしとせん セラ
Psalms 49:14 かれらは羊のむれのごとくに陰府のものと定めらる 死これが牧者とならん直きもの朝にかれらををさめん その美容は陰府にほろぼされて宿るところなかるべし されど神われを接たまふべければわが霊魂をあがなひて陰府のちからより脱かれしめたまはん セラ
Psalms 49:15 人のとみてその家のさかえくははらんとき汝おそるるなかれ
Psalms 49:16 かれの死るときは何一つたづさへゆくことあたはず その榮はこれにしたがひて下ることをせざればなり
Psalms 49:17 かかる人はいきながらふるほどに己がたましひを祝するとも みづからを厚うするがゆゑに人々なんぢをほむるとも
Psalms 49:18 なんぢ列組の世にゆかん かれらはたえて光をみざるべし
Psalms 49:19 尊貴なかにありて暁らざる人はほろびうする獣のごとし
Psalms 50:1 アサフのうた ぜんのうの神ヱホバ詔命して日のいづるところより日のいるところまであまねく地をよびたまへり
Psalms 50:2 かみは美麗の極なるシオンより光をはなちたまへり
Psalms 50:3 われらの神はきたりて黙したまはじ火その前にものをやきつくし暴風その四周にふきあれん
Psalms 50:4 神はその民をさばかんとて上なる天および地をよびたまへり
Psalms 50:5 いはく祭物をもて我とけいやくをたてしわが聖徒をわがもとに集めよと
Psalms 50:6 もろもろの天は神の義をあらはせり 神はみづから審士たればなり セラ
Psalms 50:7 わが民よきけ我ものいはんイスラエルよきけ我なんぢにむかひて證をなさん われは神なんぢの神なり
Psalms 50:8 わがなんぢを責るは祭物のゆゑにあらず なんぢの燔祭はつねにわが前にあり
Psalms 50:9 我はなんぢの家より牡牛をとらず なんぢの牢より牡山羊をとらず
Psalms 50:10 林のもろもろのけもの山のうへの千々の牲畜はみなわが有なり
Psalms 50:11 われは山のすべての鳥をしる 野のたけき獣はみなわがものなり
Psalms 50:12 世界とそのなかに充るものとはわが有なれば縦ひわれ飢るともなんぢに告じ
Psalms 50:13 われいかで牡牛の肉をくらひ牡山羊の血をのまんや
Psalms 50:14 感謝のそなへものを神にささげよ なんぢのちかひを至上者につくのへ
Psalms 50:15 なやみの日にわれをよべ我なんぢを援けん而してなんぢ我をあがむべし
Psalms 50:17 然はあれど神あしきものに言給く なんぢは教をにくみ わが言をその後にすつるものなるに何のかかはりありてわが律法をのべ わがけいやくを口にとりしや
Psalms 50:18 なんぢ盗人をみれば之をよしとし姦淫をおこなふものの伴侶となれり
Psalms 50:19 なんぢその口を惡にわたす なんぢの舌は脆計をくみなせり
Psalms 50:20 なんぢ坐りて兄弟をそしり己がははの子を誣ののしれり
Psalms 50:21 汝これらの事をなししをわれ黙しぬれば なんぢ我をおのれに恰にたるものとおもへり されど我なんぢを責めてその罪をなんぢの目前につらぬべし
Psalms 50:22 神をわするるものよ今このことを念へ おそらくは我なんぢを抓さかんとき助るものあらじ
Psalms 50:23 感謝のそなへものを献るものは我をあがむ おのれの行爲をつつしむ者にはわれ神の救をあらはさん
Psalms 51:1 ダビデがバテセバにかよひしのち預言者ナタンの來れるときよみて伶長にうたはしめたる歌 ああ神よねがはくはなんぢの仁慈によりて我をあはれみ なんぢの憐憫のおほきによりてわがもろもろの愆をけしたまへ
Psalms 51:2 わが不義をことごとくあらひさり我をわが罪よりきよめたまへ
Psalms 51:3 われはわが愆をしる わが罪はつねにわが前にあり
Psalms 51:4 我はなんぢにむかひて獨なんぢに罪ををかし聖前にあしきことを行へり されば汝ものいふときは義とせられ なんぢ鞫くときは咎めなしとせられ給ふ
Psalms 51:5 視よわれ邪曲のなかにうまれ罪ありてわが母われをはらみたりき
Psalms 51:6 なんぢ眞実をこころの衷にまでのぞみ わが隠れたるところに智慧をしらしめ給はん
Psalms 51:7 なんぢヒソブをもて我をきよめたまへ さらばわれ浄まらん 我をあらひたまへ さらばわれ雪よりも白からん
Psalms 51:8 なんぢ我によろこびと快樂とをきかせ なんぢが砕きし骨をよろこばせたまへ
Psalms 51:9 ねがはくは聖顔をわがすべての罪よりそむけ わがすべての不義をけしたまへ
Psalms 51:10 ああ神よわがために清心をつくり わが衷になほき霊をあらたにおこしたまへ
Psalms 51:11 われを聖前より棄たまふなかれ 汝のきよき霊をわれより取りたまふなかれ
Psalms 51:12 なんぢの救のよろこびを我にかへし自由の霊をあたへて我をたもちたまへ
Psalms 51:13 さらばわれ愆ををかせる者になんぢの途ををしへん罪人はなんぢに婦りきたるべし
Psalms 51:14 神よわが救のかみよ血をながしし罪より我をたすけいだしたまへ わが舌は聲たからかになんぢの義をうたはん
Psalms 51:15 主よわが口唇をひらきたまへ 然ばわが口なんぢの頌美をあらはさん
Psalms 51:16 なんぢは祭物をこのみたまはず もし然らずば我これをささげん なんぢまた燔祭をも悦びたまはず
Psalms 51:17 神のもとめたまふ祭物はくだけたる霊魂なり 神よなんぢは砕けたる悔しこころを藐しめたまふまじ
Psalms 51:18 ねがはくは聖意にしたがひてシオンにさいはひし ヱルサレムの石垣をきづきたまへ
Psalms 51:19 その時なんぢ義のそなへものと燔祭と全きはんさいとを悦びたまはん かくて人汝なんぢの祭壇に牡牛をささぐべし
Psalms 52:1 エドム人ドエグ、サウルにきたりてダビデはアビメレクの家にきぬと告しときダビデがよみて伶長にうたはしめたる教訓のうた 猛者よなんぢ何なればあしき企圖をもて自らほこるや神のあはれみは恒にたえざるなり
Psalms 52:2 なんぢの舌はあしきことをはかり利き剃刀のごとくいつはりをおこなふ
Psalms 52:3 なんぢは善よりも惡をこのみ正義をいふよりも虚偽をいふをこのむ セラ
Psalms 52:4 たばかりの舌よなんぢはすべての物をくひほろぼす言をこのむ
Psalms 52:5 されば神とこしへまでも汝をくだき また汝をとらへてその幕屋よりぬきいだし生るものの地よりなんぢの根をたやしたまはん セラ
Psalms 52:6 義者はこれを見ておそれ彼をわらひていはん
Psalms 52:7 神をおのが力となさず その富のゆたかなるをたのみ その惡をもて己をかたくせんとする人をみよと
Psalms 52:8 然はあれどわれは神の家にあるあをき橄欖の樹のごとし 我はいやとほながに神のあはれみに依頼まん
Psalms 52:9 なんぢこの事をおこなひ給ひしによりて我とこしへになんぢに感謝し なんぢの聖徒のまへにて聖名をまちのぞまん こは宜しきことなれぱなり
Psalms 53:1 マハラツ(樂器の名、あるひはいふ調べの名)にあはせて伶長にうたはしめたるダビデの教訓のうた 愚かなるものは心のうちに神なしといへり かれらは腐れたりかれらは憎むべき不義をおこなへり善をおこなふ者なし
Psalms 53:2 神は天より人の子をのぞみて悟るものと神をたづぬる者とありやなしやを見たまひしに
Psalms 53:3 みな退ぞきてことごとく汚れたり善をなすものなし一人だになし
Psalms 53:4 不義をおこなふものは知見なきか かれらは物くふごとくわが民をくらひ また神をよばふことをせざるなり
Psalms 53:5 かれらは懼るべきことのなきときに大におそれたり 神はなんぢにむかひて営をつらぬるものの骨をちらしたまへばなり 神かれらを棄たまひしによりて汝かれらを辱かしめたり
Psalms 53:6 願くはシオンよりイスラエルの救のいでんことを 神その民のとらはれたるを返したまふときヤコブはよろこびイスラエルは樂まん
Psalms 54:1 ジフ人のサウルにきたりてダビデはわれらの處にかくれをるにあらずやといひたりしとき ダビデうたのかみに琴にてうたはしめたる教訓のうた 神よねがはくは汝の名によりて我をすくひ なんぢの力をもて我をさばきたまへ
Psalms 54:2 神よわ祈をききたまへ わが口のことばに耳をかたぶけたまへ
Psalms 54:3 そは外人はわれにさからひて起りたち強暴人はわがたましひを索むるなり かれらは神をおのが前におかざりき セラ
Psalms 54:4 みよ神はわれをたすくるものなり 主はわがたましひを保つものとともに在せり
Psalms 54:5 主はわが仇にそのあしきことの報をなしたまはん 願くはなんぢの眞實によりて彼等をほろぼしたまへ
Psalms 54:6 我よろこびて祭物をなんぢに献ん ヱホバよ我なんぢの名にむかひて感謝せん こは宜しきことなればなり
Psalms 54:7 そはヱホバはすべての患難より我をすくひたまへり わが目はわが仇につきての願望をみたり
Psalms 55:1 ダビデうたのかみに琴にてうたはしめたる教訓のうた 神よねがはくは耳をわが祈にかたぶけたまへ わが懇求をさけて身をかくしたまふなかれ
Psalms 55:2 われに聖意をとめ 我にこたへたまへ われ歎息によりてやすからず悲みうめくなり
Psalms 55:3 これ仇のこゑと惡きものの暴虐とのゆゑなり そはかれら不義をわれに負せ いきどほりて我におひせまるなり
Psalms 55:4 わが心わがうちに憂ひいたみ死のもろもろの恐懼わがうへにおちたり
Psalms 55:5 おそれと戦慄とわれにのぞみ甚だしき恐懼われをおほへり
Psalms 55:6 われ云ねがはくは鴿のごとく羽翼のあらんことを さらば我とびさりて平安をえん
Psalms 55:7 みよ我はるかにのがれさりて野にすまん セラ
Psalms 55:8 われ速かにのがれて暴風と狂風とをはなれん
Psalms 55:9 われ都のうちに強暴とあらそひとをみたり 主よねがはくは彼等をほろぼしたまへ かれらの舌をわかれしめたまへ
Psalms 55:10 彼等はひるもよるも石垣のうへをあるきて邑をめぐる 邑のうちには邪曲とあしき企圖とあり
Psalms 55:11 また惡きこと邑のうちにあり しへたげと欺詐とはその街衢をはなるることなし
Psalms 55:12 われを謗れるものは仇たりしものにあらず もし然りしならば尚しのばれしなるべし 我にむかひて己をたかくせし者はわれを恨みたりしものにあらず若しかりしならば身をかくして彼をさけしなるべし
Psalms 55:13 されどこれ汝なり われとおなじきもの わが友われと親しきものなり
Psalms 55:14 われら互にしたしき語らひをなし また會衆のなかに在てともに神の家にのぼりたりき
Psalms 55:15 死は忽然かれらにのぞみ その生るままにて陰府にくだらんことを そは惡事その往處にありその中にあればなり
Psalms 55:16 されど我はただ神をよばんヱホバわれを救ひたまふべし
Psalms 55:17 夕にあしたに昼にわれなげき且かなしみうめかん ヱホバわが聲をききたまふべし
Psalms 55:18 ヱホバは我をせむる戦闘よりわが霊魂をあがなひいだして平安をえしめたまへり そはわれを攻るもの多かりければなり
Psalms 55:19 太古よりいます者なる神はわが聲をききてかれらを惱めたまべし セラ かれらには変ることなく神をおそるることなし
Psalms 55:20 かの人はおのれと睦みをりしものに手をのべてその契約をけがしたり
Psalms 55:21 その口はなめらかにして乳酥のごとくなれどもその心はたたかひなり その言はあぶらに勝りてやはらかなれどもぬきたる劍にことならず
Psalms 55:22 なんぢの荷をヱホバにゆだねよさらば汝をささへたまはん ただしき人のうごかさるることを常にゆるしたまふまじ
Psalms 55:23 かくて神よなんぢはかれらを亡の坑におとしいれたまはん血をながすものと詭計おほきものとは生ておのが日の半にもいたらざるべし 然はあれどわれは汝によりたのまん
Psalms 56:1 ダビデがガテにてペリシテ人にとらへられしとき詠て「遠きところにをる音をたてぬ鴿」のしらべにあはせて伶長にうたはしめたるミクタムの歌 ああ神よねがはくは我をあはれみたまへ 人いきまきて我をのまんとし終日たたかひて我をしへたぐ
Psalms 56:2 わが仇ひねもす急喘てわれをのまんとす誇りたかぶりて我とたたかふものおほし
Psalms 56:3 われおそるるときは汝によりたのまん
Psalms 56:4 われ神によりてその聖言をほめまつらん われ神に依頼みたればおそるることあらじ肉體われになにをなし得んや
Psalms 56:5 かれらは終日わがことばを曲るなり その思念はことごとくわれにわざはひをなす
Psalms 56:6 かれらは群つどひて身をひそめ わが歩に目をとめてわが霊魂をうかがひもとむ
Psalms 56:7 かれらは不義をもてのがれんとおもへり 神よねがはくは憤ほりてもろもろの民をたふしたまへ
Psalms 56:8 汝わがあまた土の流離をかぞへたまへり なんぢの革曩にわが涙をたくはへたまへ こは皆なんぢの冊にしるしあるにあらずや
Psalms 56:9 わがよびもとむる日にはわが仇しりぞかん われ神のわれを守りたまふことを知る
Psalms 56:10 われ神によりてその聖言をはめまつらん 我ヱホバによりてそのみことばを讃まつらん
Psalms 56:11 われ神によりたのみたれば懼るることあらじ 人はわれに何をなしえんや
Psalms 56:12 神よわがなんぢにたてし誓はわれをまとへり われ感謝のささげものを汝にささげん
Psalms 56:13 汝わがたましひを死よりすくひたまへばなり なんぢ我をたふさじとわが足をまもり生命の光のうちにて神のまへに我をあゆませ給ひしにあらずや
Psalms 57:1 ダビデが洞にいりてサウルの手をのがれしとき詠て「ほろぼすなかれ」にといふ調にあはせて伶長にうたはしめたるミクタムのうた 我をあはれみたまへ神よわれをあはれみたまへ わが霊魂はなんぢを避所とす われ禍害のすぎさるまではなんぢの翼のかげを避所とせん
Psalms 57:2 我はいとたかき神によばはん わがために百事をなしをへたまふ神によばはん
Psalms 57:3 神はたすけを天よりおくりて我をのまんとする者のそしるときに我を救ひたまはん セラ 神はその憐憫その眞實をおくりたまはん
Psalms 57:4 わがたましひは群ゐる獅のなかにあり 火のごとくもゆる者 その歯は戈のごとく矢のごとくその舌はとき劍のごとき人の子のなかに我ふしぬ
Psalms 57:5 神よねがはくはみづからを天よりも高くしみさかえを全地のうへに挙たまへ
Psalms 57:6 かれらはわが足をとらへんとて網をまうく わが霊魂はうなたる かれらはわがまへに阱をほりたり而してみづからその中におちいれり セラ
Psalms 57:7 わが心さだまれり神よわがこころ定まれり われ謳ひまつらん頌まつらん
Psalms 57:8 わが榮よさめよ 筝よ琴よさめよ われ黎明をよびさまさん
Psalms 57:9 主よわれもろもろの民のなかにてなんぢに感謝し もろもろの國のなかにて汝をほめうたはん
Psalms 57:10 そは汝のあはれみは大にして天にまでいたり なんぢの眞實は雲にまでいたる
Psalms 57:11 神よねがはくは自からを天よりも高くし光榮をあまねく地のうへに挙たまへ
Psalms 58:1 ダビデがよみて「ほろぼすなかれ」といふ調にあはせて伶長にうたはしめたるミクタムのうた なんぢら黙しゐて義をのべうるか 人の子よなんぢらなほき審判をおこなふや
Psalms 58:2 否なんぢらは心のうちに惡事をおこなひ その手の強暴をこの地にはかりいだすなり
Psalms 58:3 あしきものは胎をはなるるより背きとほざかり生れいづるより迷ひていつはりをいふ
Psalms 58:5 かれらの毒は蛇のどくのごとし かれらは蠱術をおこなふものの甚たくみにまじなふその聲をだにきかざる耳ふさぐ聾ひの蝮のごとし
Psalms 58:6 神よかれらの口の歯ををりたまヘ ヱホバよ壮獅の牙をぬきくだきたまへ
Psalms 58:7 願くはかれらを流れゆく水のごとくに消失しめ その矢をはなつときは折れたるごとくなし給はんことを
Psalms 58:8 また融てきえゆく蝸牛のごとく婦のときならず産たる目をみぬ嬰のごとくならしめ給へ
Psalms 58:9 なんぢらの釜いまだ荊蕀の火をうけざるさきに青をも燃たるをもともに狂風にて吹さりたまはん
Psalms 58:10 義者はかれらが讎かへさるるを見てよろこび その足をあしきものの血のなかにてあらはん
Psalms 58:11 かくて人はいふべし實にただしきものに報賞あり實にさばきをほどこしたまふ神はましますなりと
Psalms 59:1 サウル、ダビデを殺さんとし人をおくりてその家をうかがはしめし時ダビデがよみて「ほろぼすなかれ」といふ調にあはせて伶長にうたはしめたるミクタムの歌 わが神よねがはくは我をわが仇よりたすけいだし われを高處におきて我にさからひ起立つものより脱かれしめたまへ
Psalms 59:2 邪曲をおこなふものより我をたすけいだし血をながす人より我をすくひたまへ
Psalms 59:3 視よかれらは潜みかくれてわが霊魂をうかがひ猛者むれつどひて我をせむ ヱホバよ此はわれに愆あるにあらず われに罪あるにあらず
Psalms 59:4 かれら趨りまはりて過失なきに我をそこなはんとて備をなす ねがはくは我をたすくるために目をさまして見たまへ
Psalms 59:5 なんぢヱホバ萬軍の神イスラエルの神よ ねがはくは目をさましてもろもろの國にのぞみたまへ あしき罪人にあはれみを加へたまふなかれ セラ
Psalms 59:6 かれらは夕にかへりきたり犬のごとくほえて邑をへありく
Psalms 59:7 視よかれらは口より惡をはく そのくちびるに劍あり かれらおもへらく誰ありてこの言をきかんやと
Psalms 59:8 されどヱホバよ汝はかれらをわらひ もろもろの國をあざわらひたまはん
Psalms 59:9 わが力よわれ汝をまちのぞまん 神はわがたかき櫓なり
Psalms 59:10 憐憫をたまふ神はわれを迎へたまはん 神はわが仇につきての願望をわれに見させたまはん
Psalms 59:11 願くはかれらを殺したまふなかれ わが民つひに忘れやはせん 主われらの盾よ 大能をもてかれらを散し また卑したまへ
Psalms 59:12 かれらがくちびるの言はその口のつみなり かれらは詛と虚偽とをいひいづるによりてその傲慢のためにとらへられしめたまへ
Psalms 59:13 忿恚をもてかれらをほろぼしたまへ 再びながらふることなきまでに彼等をほろぼしたまヘ ヤコブのなかに神いまして統治めたまふことをかれらに知しめて地の極にまでおよぼしたまヘ セラ
Psalms 59:14 かれらは夕にかへりきたり犬のごとくほえて邑をへありくべし
Psalms 59:15 かれらはゆききして食物をあさり もし飽ことなくば終夜とどまれり
Psalms 59:16 されど我はなんぢの大能をうたひ清晨にこゑをあげてなんぢの憐憫をうたひまつらん なんぢわが迫りくるしみたる日にたかき櫓となり わが避所となりたまひたればなり
Psalms 59:17 わがちからよ我なんぢにむかひて頌辞をうたひまつらん 神はわがたかき櫓われにあはれみをたまふ神なればなり
Psalms 60:1 ダビデ、ナハライムのアラムおよびゾバのアラムとたたかひをりしがヨアブかへりゆき塩谷にてエドム人一萬二千をころししとき教訓をなさんとてダビデがよみて「證詞の百合花」といふ調にあはせて伶長にうたはしめたるミクタムの歌 神よなんぢわれらを棄われらをちらし給へり なんぢは憤ほりたまへり ねがはくは再びわれらを歸したまへ
Psalms 60:2 なんぢ國をふるはせてこれを裂たまへり ねがはくはその多くの隙をおぎなひたまへ そは國ゆりうごくなり
Psalms 60:3 なんぢはその民にたへがたきことをしめし 人をよろめかする酒をわれらに飮しめ給へり
Psalms 60:4 なんぢ眞理のために挙しめんとて汝をおそるるものに一つの旗をあたへたまへり セラ
Psalms 60:5 ねがはくは右の手をもて救をほどこし われらに答をなして愛しみたまふものに助をえしめたまへ
Psalms 60:6 神はその聖をもていひたまへり われ甚くよろこばん われシケムをわかちスコテの谷をはからん
Psalms 60:7 ギレアデはわがもの マナセはわが有なり エフライムも亦わが首のまもりなり ユダはわが杖
Psalms 60:8 モアブはわが足盥なり エドムにはわが履をなげん ベリシテよわが故によりて聲をあげよと
Psalms 60:9 たれかわれを堅固なる邑にすすましめんや 誰かわれをみちびきてエドムにゆきたるか
Psalms 60:10 神よなんぢはわれらを棄たまひしにあらずや 神よなんぢはわれらの軍とともにいでゆきたまはず
Psalms 60:11 ねがはくは助をわれにあたへて敵にむかはしめたまへ 人のたすけは空しければなり
Psalms 60:12 われらは神によりて勇しくはたらかん われらの敵をみたまふものは神なればなり
Psalms 61:1 琴にあはせて伶長にうたはしめたるダビデのうた ああ神よねがはくはわが哭聲をききたまへ わが祈にみこころをとめたまへ
Psalms 61:2 わが心くづほるるとき地のはてより汝をよばん なんぢ我をみちびきてわが及びがたきほどの高き磐にのぼらせたまへ
Psalms 61:3 なんぢはわが避所われを仇よりのがれしむる堅固なる櫓なればなり
Psalms 61:4 われ永遠になんぢの帷幄にすまはん我なんぢの翼の下にのがれん セラ
Psalms 61:5 神よなんぢはわがもろもろの誓をきき名をおそるるものにたまふ嗣業をわれにあたへたまへり
Psalms 61:6 なんぢは王の生命をのばし その年を幾代にもいたらせたまはん
Psalms 61:7 王はとこしへに神のみまへにとどまらん ねがはくは仁慈と眞實とをそなへて彼をまもりたまへ
Psalms 61:8 さらば我とこしへに名をほめうたひて日ごとにわがもろもろの誓をつくのひ果さん
Psalms 62:1 エドトンの體にしたがひて伶長にうたはしめたるダビデのうた わがたましひは黙してただ神をまつ わがすくひは神よりいづるなり
Psalms 62:2 神こそはわが磐わがすくひなれ またわが高き櫓にしあれば我いたくは動かされじ
Psalms 62:3 なんぢらは何のときまで人におしせまるや なんぢら相共にかたぶける石垣のごとく揺ぎうごける籬のごとくに人をたふさんとするか
Psalms 62:4 かれらは人をたふとき位よりおとさんとのみ謀り いつはりをよろこびまたその口にてはいはひその心にてはのろふ セラ
Psalms 62:5 わがたましひよ黙してただ神をまて そはわがのぞみは神よりいづ
Psalms 62:6 神こそはわが磐わがすくひなれ 又わがたかき櫓にしあれば我はうごかされじ
Psalms 62:7 わが救とわが榮とは神にあり わがちからの磐わがさけどころは神にあり
Psalms 62:8 民よいかなる時にも神によりたのめ その前になんぢらの心をそそぎいだせ 神はわれらの避所なり セラ
Psalms 62:9 實にひくき人はむなしくたかき人はいつはりなり すべてかれらを權衡におかば上にあがりて虚しきものよりも軽きなり
Psalms 62:10 暴虐をもて恃とするなかれ 掠奪ふをもてほこるなかれ 富のましくははる時はこれに心をかくるなかれ
Psalms 62:11 ちからは神にあり神ひとたび之をのたまへり われ二次これをきけり
Psalms 62:12 ああ主よあはれみも亦なんぢにあり なんぢは人おのおのの作にしたがひて報をなしたまへばなり
Psalms 63:1 ユダの野にありしときに詠るダビデのうた ああ神よなんぢはわが神なり われ切になんぢをたづねもとむ 水なき燥きおとろへたる地にあるごとくわが霊魂はかわきて汝をのぞみ わが肉體はなんぢを戀したふ
Psalms 63:2 曩にも我かくのごとく大權と榮光とをみんことをねがひ聖所にありて目をなんぢより離れしめざりき
Psalms 63:3 なんぢの仁慈はいのちにも勝れるゆゑにわが口唇はなんぢを讃まつらん
Psalms 63:4 斯われはわが生るあひだ汝をいはひ名によりてわが手をあげん
Psalms 63:6 われ床にありて汝をおもひいで夜の更るままになんぢを深くおもはん時 わがたましひは髄と脂とにて饗さるるごとく飽ことをえ わが口はよろこびの口唇をもてなんぢを讃たたへん
Psalms 63:7 そはなんぢわが助となりたまひたれば 我なんぢの翼のかげに入てよろこびたのしまん
Psalms 63:8 わがたましひはなんぢを慕追ふ みぎの手はわれを支ふるなり
Psalms 63:9 然どわがたましひを滅さんとて尋ねもとむるものは地のふかきところにゆき
Psalms 63:10 又つるぎの刃にわたされ野犬の獲るところとなるべし
Psalms 63:11 しかれども王は神をよろこばん 神によりて誓をたつるものはみな誇ることをえん 虚偽をいふものの口はふさがるべければなり
Psalms 64:1 伶長にうたはしめたるダビデのうた 神よわがなげくときわが聲をききたまへ わが生命をまもりて仇のおそれより脱かれしめたまへ
Psalms 64:2 ねがはくは汝われをかくして惡をなすものの陰かなる謀略よりまぬかれしめ不義をおこなふものの喧嘩よりまぬかれしめ給へ
Psalms 64:3 かれらは劍のごとくおのが舌をとぎ その弓をはり矢をつがへるごとく苦言をはなち隠れたるところにて全者を射んとす俄かにこれを射ておそるることなし
Psalms 64:4 また彼此にあしき企圖をはげまし共にはかりてひそかに羂をまうく 斯ていふ誰かわれらを見んと
Psalms 64:5 かれらはさまざまの不義をたづねいだして云われらは懇ろにたづね終れりと おのおのの衷のおもひと心とはふかし
Psalms 64:7 然はあれど神は矢にてかれらを射たまふべし かれらは俄かに傷をうけん
Psalms 64:8 斯てかれらの舌は其身にさからふがゆゑに遂にかれらは蹟かん これを見るものみな逃れさるべし
Psalms 64:9 もろもろの人はおそれん而して神のみわざをのべつたへ その作たまへることを考ふべし
Psalms 64:10 義者はヱホバをよろこびて之によりたのまん すべて心のなほきものは皆ほこることを得ん
Psalms 65:1 伶長にうたはしめたる歌ダビデの讃美なり ああ神よさんびはシオンにて汝をまつ 人はみまへにて誓をはたさん
Psalms 65:2 祈をききたまふものよ諸人こぞりて汝にきたらん
Psalms 65:3 不義のことば我にかてり なんぢ我儕のもろもろの愆をきよめたまはん
Psalms 65:4 汝にえらぱれ汝にちかづけられて大庭にすまふ者はさいはひなり われらはなんぢの家なんぢの宮のきよき處のめぐみにて飽ことをえん
Psalms 65:5 われらが救のかみよ 地と海とのもろもろの極なるきはめて遠ものの恃とするなんぢは公義によりて畏るべきことをもて我儕にこたへたまはん
Psalms 65:6 かみは大能をおび その權力によりてもろもろの山をかたくたたしめ
Psalms 65:7 海のひびき狂瀾のひびき もろもろの民のかしがましきを鎮めたまへり
Psalms 65:8 されば極遠にすめる人々もなんぢのくさぐさの豫兆をみておそる なんぢ朝夕のいづる處をよろこび謳はしめたまふ
Psalms 65:9 なんぢ地にのぞみて漑そぎおほいに之をゆたかにしたまへり 神のかはに水みちたり なんぢ如此そなへをなして穀物をかれらにあたへたまへり
Psalms 65:10 なんぢ畎をおほいにうるほし畝をたひらにし白雨にてこれをやはらかにし その萌芽るを祝し
Psalms 65:11 また恩恵をもて年の冕弁としたまへり なんぢの途には膏したたれり
Psalms 65:12 その恩滴は野の牧場をうるほし小山はみな歎びにかこまる
Psalms 65:13 牧場はみな羊のむれを衣もろもろの谷は穀物におほはれたり かれらは皆よろこびてよばはりまた謳ふ
Psalms 66:1 伶長にうたはしめたる讃美なり 歌なり 全地よ神にむかひて歓びよばはれ
Psalms 66:2 その名の榮光をうたへその頌美をさかえしめよ
Psalms 66:3 かみに告まつれ 汝のもろもろの功用はおそるべきかな大なる力によりてなんぢの仇はなんぢに畏れしたがひ
Psalms 66:4 全地はなんぢを拝みてうたひ名をほめうたはんと セラ
Psalms 66:5 來りて神のみわざをみよ 人の子輩にむかひて作たまふことはおそるべきかな
Psalms 66:6 神はうみをかへて乾ける地となしたまへり ひとびと歩行にて河をわたりき その處にてわれらは神をよろこべり
Psalms 66:7 神はその大能をもてとこしへに統治め その目は諸國をみたまふ そむく者みづからを崇むべからず セラ
Psalms 66:8 もろもろの民よ われらの神をほめまつれ神をほめたたふる聲をきこえしめよ
Psalms 66:9 神はわれらの霊魂をながらへしめ われらの足のうごかさるることをゆるしたまはず
Psalms 66:10 神よなんぢはわれらを試みて白銀をねるごとくにわれらを錬たまひたればなり
Psalms 66:11 汝われらを網にひきいれ われらの腰におもき荷をおき
Psalms 66:12 人々をわれらの首のうへに騎こえしめたまひき われらは火のなか水のなかをすぎゆけり されど汝その中よりわれらをひきいたし豊盛なる處にいたらしめたまへり
Psalms 66:14 われ燔祭をもてなんぢの家にゆかん 迫りくるしみたるときにわが口唇のいひいでわが口ののべし誓をなんぢに償はん
Psalms 66:15 われ肥たるものを燔祭とし牡羊を馨香として汝にささげ牡牛と牡山羊とをそなへまつらん セラ
Psalms 66:16 神をおそるる人よ みな來りてきけ われ神のわがたましひのために作たまへることをのべん
Psalms 66:17 われわが口をもて神によばはり また舌をもてあがむ
Psalms 66:18 然るにわが心にしれる不義あらば主はわれにききたまふまじ
Psalms 66:19 されどまことに神はききたまへり聖意をわがいのりの聲にとめたまへり
Psalms 66:20 神はほむべきかな わが祈をしりぞけず その憐憫をわれよりとりのぞきたまはざりき
Psalms 67:1 琴にあはせて伶長にうたはしめたる歌なり 讃美なり ねがはくは神われらをあはれみ われらをさきはひてその聖顔をわれらのうへに照したまはんことを セラ
Psalms 67:2 此はなんぢの途のあまねく地にしられ なんぢの救のもろもろの國のうちに知れんがためなり
Psalms 67:3 かみよ庶民はなんぢに感謝し もろもろの民はみな汝をほめたたへん
Psalms 67:4 もろもろの國はたのしみ又よろこびうたふべし なんぢ直をもて庶民をさばき地のうへなる萬の國ををさめたまべければなり セラ
Psalms 67:5 神よたみらはなんぢに感謝し もろもろの民はみな汝をほめたたへん
Psalms 67:6 地は産物をいだせり 神わが神はわれらを福ひたまはん
Psalms 67:7 神われらをさきはひたまふべし かくて地のもろもろの極ことごとく神をおそれん
Psalms 68:1 伶長にうたはしめたるダビデのうたなり 讃美なり ねがはくは神おきたまへ その仇はことごとくちり 神をにくむものは前よりにげさらんことを
Psalms 68:2 烟のおひやらるるごとくかれらを駆逐たまへ 惡きものは火のまへに蝋のとくるごとく 神のみまへにてほろぶべし
Psalms 68:3 されど義きものには歓喜あり かれら神の前にてよろこびをどらん實にたのしみて喜ぱん
Psalms 68:4 神のみまへにうたへ その名をほめたたへよ 乗て野をすぐる者のために大道をきづけ かれの名をヤハとよぶ その前によろこびをどれ
Psalms 68:5 きよき住居にまします神はみなしごの父やもめの審士なり
Psalms 68:6 神はよるべなきものを家族の中にをらしめ囚人をとき福祉にみちびきたまふ されど悖逆者はうるほひなき地にすめり
Psalms 68:7 神よなんぢは民にさきだちいでて野をすすみゆきたまひき セラ
Psalms 68:8 そのとき地ふるひ天かみのみまへに漏る シナイの山すら神イスラエルの神の前にふるひうごけり
Psalms 68:9 神よなんぢの嗣業の地のつかれおとろへたるとき豊かなる雨をふらせて之をかたくしたまへり
Psalms 68:10 襄になんぢの公會はその中にとどまれり 神よなんぢは恵をもて貧きもののために預備をなしたまひき
Psalms 68:11 主みことばを賜ふ その佳音をのぶる婦女はおほくして群をなせり
Psalms 68:12 もろもろの軍旅の王たちはにげさる 逃去りたれば家なる婦女はその掠物をわかつ
Psalms 68:13 なんぢら羊の牢のうちにふすときは鴿のつばさの白銀におほはれその毛の黄金におほはるるがごとし
Psalms 68:14 全能者かしこにて列王をちらし給へるときはサルモンの山に雪ふりたるがごとくなりき
Psalms 68:15 バシャンのやまは神の山なりバシャンのやまは峰かさなれる山なり
Psalms 68:16 峰かさなれるもろもろの山よ なんぢら何なれば神の住所にえらびたまへる山をねたみ見るや 然れヱホバは永遠にこの山にすみたまはん
Psalms 68:17 神の戦車はよろづに萬をかさね千にちぢをくはふ 主その中にいませり 聖所にいますがごとくシナイの山にいまししがごとし
Psalms 68:18 なんぢ高處にのぼり虜者をとりこにしてひきゐ礼物を人のなかよりも叛逆者のなかよりも受たまへり ヤハの神ここに住たまはんが爲なり
Psalms 68:19 日々にわれらの荷をおひたまふ主われらのすくひの神はほむべきかな セラ
Psalms 68:20 神はしばしばわれらを助けたまへる神なり 死よりのがれうるは主ヱホバに由る
Psalms 68:21 神はその仇のかうべを撃やぶりたまはん 愆のなかにとどまるものの髪おほき顱頂をうちやぶりたまはん
Psalms 68:22 主いへらく我バシャンよりかれらを携へかへり海のふかき所よりたづさへ歸らん
Psalms 68:23 斯てなんぢの足をそのあたの血にひたし之をなんぢの犬の舌になめしめん
Psalms 68:24 神よすべての人はなんぢの進行きたまふをみたり わが神わが王の聖所にすすみゆきたまふを見たり
Psalms 68:25 鼗うつ童女のなかにありて謳ふものは前にゆき琴ひくものは後にしたがへり
Psalms 68:26 なんぢらすべての會にて神をほめよイスラエルのみなもとより出るなんぢらよ 主をほめまつれ
Psalms 68:27 彼處にかれらを統るとしわかきベニヤミンあり ユダの諸侯とその群衆とありまたゼブルンのきみたちナフタリの諸侯あり
Psalms 68:28 なんぢの神はなんぢの力をたてたまへり 神よなんぢ我儕のためになしたまひし事をかたくしたまヘ
Psalms 68:29 ヱルサレムなるなんぢの宮のために列王なんぢに礼物をささげん
Psalms 68:30 ねがはくは葦間の獣むらがれる牯犢のごときもろもろの民をいましめてかれらに白銀をたづさへきたり みづから服ことを爲しめたまへ 神はたたかひを好むもろもろの民をちらしたまへり
Psalms 68:31 諸侯はエジプトよりきたり エテオピアはあわただしく神にむかひて手をのべん
Psalms 68:32 地のもろもろのくによ神のまへにうたへ主をほめうたヘ セラ
Psalms 68:33 上古よりの天の天にのりたま者にむかひてうたへ みよ主はみこゑを発したまふ勢力ある聲をいだしたまふ
Psalms 68:34 なんぢらちからを神に歸せよその稜威はイスラエルの上にとどまり その大能は雲のなかにあり
Psalms 68:35 神のおそるべき状はきよき所よりあらはる イスラエルの神はその民にちからと勢カとをあたへたまふ 神はほむべきかな
Psalms 69:1 百合花にあはせて伶長にうたはしめたるダビデのうた 神よねがはくは我をすくひたまへ 大水ながれきたりて我がたましひにまでおよべり
Psalms 69:2 われ立止なきふかき泥の中にしづめり われ深水におちいるおほみづわが上をあふれすぐ
Psalms 69:3 われ歎息によりてつかれたり わが喉はかわき わが目はわが神をまちわびておとろへぬ
Psalms 69:4 故なくしてわれをにくむ者わがかしらの髪よりもおほく謂なくしてわが仇となり我をほろぼさんとするものの勢力つよし われ掠めざりしものをも價はせらる
Psalms 69:5 神よなんぢはわが愚なるをしりたまふ わがもろもろの罪はなんぢにかくれざるなり
Psalms 69:6 萬軍のヱホバ主よ ねがはくは汝をまちのぞむ者をわが故によりて辱かしめらるることなからしめたまヘ イスラエルの神よねがはくはなんぢを求むる者をわが故によりて恥をおはしめらるることなからしめたまへ
Psalms 69:7 我はなんぢのために謗をおひ恥はわが面をおほひたればなり
Psalms 69:8 われわが兄弟には旅人のごとく わが母の子には外人のごとくなれり
Psalms 69:9 そはなんぢの家をおもふ熱心われをくらひ汝をそしるものの謗われにおよべり
Psalms 69:10 われ涙をながして食をたち わが霊魂をなげかすれば反てこれによりて謗をうく
Psalms 69:11 われ麁布をころもとなししにかれらが諺語となりぬ
Psalms 69:12 門にすわる者はわがうへをかたる われは酔狂たるものに謳ひはやされたり
Psalms 69:13 然はあれどヱホバよわれは恵のときに汝にいのる ねがはくは神よなんぢの憐憫のおほきによりて汝のすくひの眞實をもて我にこたへたまへ
Psalms 69:14 ねがはくは泥のなかより我をたすけいだして沈まざらしめたまへ 我をにくむものより深水よりたすけいだしたまへ
Psalms 69:15 大水われを淹ふことなく淵われをのむことなく坑その口をわがうへに閉ることなからしめたまヘ
Psalms 69:16 ヱホバよねがはくは我にこたへたまへ なんぢの仁慈うるはしければなり なんぢの憐憫はおほしわれに歸りきたりたまへ
Psalms 69:17 面をなんぢの僕にかくしたまふなかれ われ迫りくるしめり ねがはくは速かに我にこたへたまへ
Psalms 69:18 わがたましひに近くよりて之をあがなひわが仇のゆゑに我をすくひたまへ
Psalms 69:19 汝はわがうくる謗とはぢと侮辱とをしりたまへり わが敵はみな汝のみまへにあり
Psalms 69:20 譭謗わが心をくだきぬれば我いたくわづらへり
Psalms 69:21 われ憐憫をあたふる者をまちたれど一人だになく慰むるものを俟たれど一人をもみざりき かれら苦草をわがくひものにあたへ わが渇けるときに醋をのませたり
Psalms 69:22 ねがはくは彼等のまへなる筳は網となり そのたのむ安逸はつひに羂となれ
Psalms 69:23 その目をくらくして見しめず その腰をつねにふるはしめたまへ
Psalms 69:24 願くはなんぢの忿恚をかれらのうへにそそぎ汝のいかりの猛烈をかれらに追及せたまへ
Psalms 69:25 かれらの屋をむなしくせよ その幕屋に人をすまはするなかれ
Psalms 69:26 かれらはなんぢが撃たまひたる者をせめ なんぢが傷けたまひたるものの痛をかたりふるればなり
Psalms 69:27 ねがはくはれらの不義に不義をくはへてなんぢの義にあづからせ給ふなかれ
Psalms 69:28 かれらを生命の册よりけして義きものとともに記さるることなからしめたまへ
Psalms 69:29 斯てわれはくるしみ且うれひあり 神よねがはくはなんぢの救われを高處におかんことを
Psalms 69:30 われ歌をもて神の名をほめたたへ 感謝をもて神をあがめまつらん
Psalms 69:31 此はをうしまたは角と蹄とある力つよき牡牛にまさりてヱホバよろこびたまはん
Psalms 69:32 謙遜者はこれを見てよろこべり 神をしたふ者よなんぢらの心はいくべし
Psalms 69:33 ヱホバは乏しきものの聲をきき その俘囚をかろしめたまはざればなり
Psalms 69:34 天地はヱホバをほめ蒼海とその中にうごくあらゆるものとはヱホバを讃まつるべし
Psalms 69:35 神はシオンをすくひユダのもろもろの邑を建たまふべけれぱなり かれらは其處にすみ且これをおのが有とせん
Psalms 69:36 その僕のすゑも亦これを嗣その名をいつくしむ者その中にすまん
Psalms 70:1 伶長にうたはしめたるダビデが記念のうた 神よねがはくは我をすくひたまヘ ヱホバよ速きたりて我をたすけたまへ
Psalms 70:2 わが霊魂をたづぬるものの恥あわてんことを わが害はるるをよろこぶものの後にしりぞきて恥をおはんことを
Psalms 70:3 ああ視よや視よやといふもののおのが恥によりて後にしりぞかんことを
Psalms 70:4 すべて汝をたづねもとむる者のなんぢによりて樂みよろこばんことを なんぢの救をしたふもののつねに神は大なるかなととなへんことを
Psalms 70:5 われは苦しみ且ともし神よいそぎて我にきたりたまへ 汝はわが助われを救ふものなり ヱホバよねがはくは猶豫たまふなかれ
Psalms 71:1 ヱホバよ我なんぢに依頼む ねがはくは何の日までも恥うくることなからしめ給へ
Psalms 71:2 なんぢの義をもて我をたすけ我をまぬかれしめたまへ なんぢの耳をわれに傾けて我をすくひたまへ
Psalms 71:3 ねがはくは汝わがすまひの磐となりたまへ われ恒にそのところに往ことを得ん なんぢ我をすくはんとて勅命をいだしたまへり そは汝はわが磐わが城なり
Psalms 71:4 わが神よあしきものの手より不義残忍なる人のてより 我をまぬかれしめたまへ
Psalms 71:5 主ヱホバよなんぢはわが望なり わが幼少よりの恃なり
Psalms 71:6 われ胎をはなるるより汝にまもられ母の腹にありしときより汝にめぐまれたり 我つねに汝をほめたたへん
Psalms 71:7 我おほくの人にあやしまるるごとき者となれり 然どなんぢはわが堅固なる避所なり
Psalms 71:8 なんぢの頌辭となんぢの頌美とは終日わが口にみちん
Psalms 71:9 わが年老ぬるとき我をすてたまふなかれ わが力おとろふるとき我をはなれたまなかれ
Psalms 71:10 わが仇はわがことを論ら ひわが霊魂をうかがふ者はたがひに議ていふ
Psalms 71:11 神かれを離れたり彼をたすくる者なし かれを追てとらへよと
Psalms 71:12 神よわれに遠ざかりたまふなかれ わが神よとく來りて我をたすけたまへ
Psalms 71:13 わがたましひの敵ははぢ且おとろへ我をそこなはんとするものは謗と辱とにおほはれよ
Psalms 71:14 されど我はたえず望をいだきていやますます汝をほめたたへん
Psalms 71:15 わが口はひねらす汝の義となんぢの救とをかたらん われその數をしらざればなり
Psalms 71:16 われは主ヱホバの大能の事跡をたづさへゆかん われは只なんぢの義のみをかたらん
Psalms 71:17 神よなんぢわれを幼少より教へたまへり われ今にいたるまで汝のくすしき事跡をのべつたへたり
Psalms 71:18 神よねがはくはわれ老て頭髪しろくなるとも我がなんぢの力を次代にのべつたへ なんぢの大能を世にうまれいづる凡のものに宜傅ふるまで我をはなれ給ふなかれ
Psalms 71:19 神よなんぢの義もまた甚たかし なんぢは大なることをなしたまへり 神よたれか汝にひとしき者あらんや
Psalms 71:20 汝われらを多のおもき苦難にあはせたまへり なんぢ再びわれらを活しわれらを地の深所よりあげたまはん
Psalms 71:21 ねがはくは我をいよいよ大ならしめ歸りきたりて我をなぐさめ給へ
Psalms 71:22 わが神よさらばわれ筝をもて汝をほめ なんぢの眞實をほめたたへん イスラエルの聖者よわれ琴をもてなんぢを讃うたはん
Psalms 71:23 われ聖前にうたときわが口唇よろこびなんぢの贖ひたまへるわが霊魂おほいに喜ばん
Psalms 71:24 わが舌もまた終日なんぢの義をかたらん われを害はんとするもの愧惶つればなり
Psalms 72:1 ソロモンのうた 神よねがはくは汝のもろもろの審判を王にあたへ なんぢの義をわうの子にあたへたまへ
Psalms 72:2 かれは義をもてなんぢの民をさばき公平をもて苦しむものを鞫かん
Psalms 72:3 義によりて山と岡とは民に平康をあたふべし
Psalms 72:4 かれは民のくるしむ者のために審判をなし乏しきものの子輩をすくひ虐ぐるものを壊きたまはん
Psalms 72:5 かれらは日と月とのあらんかぎり世々おしなべて汝をおそるべし
Psalms 72:6 かれは苅とれる牧にふる雨のごとく地をうるほす白雨のごとくのぞまん
Psalms 72:7 かれの世にただしき者はさかえ平和は月のうするまで豊かならん
Psalms 72:8 またその政治は海より海にいたり河より地のはてにおよぶべし
Psalms 72:9 野にをる者はそのまへに屈み そり仇は塵をなめん
Psalms 72:10 タルシシおよび島々の王たちは貢ををさめ之シバとセバの王たちは礼物をささげん
Psalms 72:11 もろもろの王はそのまへに俯伏し もろもろの國はかれにつかへん
Psalms 72:12 かれは乏しき者をその叫ぶときにすくひ 助けなき苦しむ者をたすけ
Psalms 72:13 弱きものと乏しき者とをあはれみ乏しきものの霊魂をすくひ
Psalms 72:14 かれらのたましひを暴虐と強暴とよりあがなひたまふ その血はみまへに貴かるべし
Psalms 72:15 かれらは有ふべし 人はシバの黄金をささげてかれのために恒にいのり終日かれをいははん
Psalms 72:16 國のうち五穀ゆたかにしてその實はレバノンのごとく山のいただきにそよぎ 邑の人々は地の草のごとく榮ゆべし
Psalms 72:17 かれの名はつねにたえず かれの名は日の久しきごとくに絶ることなし 人はかれによりて福祉をえん もろもろの國はかれをさいはひなる者ととなへん
Psalms 72:18 ただイスラエルの神のみ奇しき事跡をなしたまへり 神ヱホバはほむべきかな
Psalms 72:19 その榮光の名はよよにほむべきかな全地はその榮光にて満べしアーメン アーメン
Psalms 72:20 ヱッサイの子ダビデの祈はをはりぬ
Psalms 73:1 アサフのうた 神はイスラエルにむかひ心のきよきものに對ひてまことに恵あり
Psalms 73:2 然はあれどわれはわが足つまづくばかりわが歩すべるばかりにてありき
Psalms 73:3 こはわれ惡きものの榮ゆるを見てその誇れる者をねたみしによる
Psalms 73:4 かれらは死るに苦しみなくそのちからは反てかたし
Psalms 73:5 かれらは人のごとく憂にをらず人のごとく患難にあふことなし
Psalms 73:6 このゆゑに倣慢は妝飾のごとくその頚をめぐり強暴はころものごとく彼等をおほへり
Psalms 73:7 かれら肥ふとりてその目とびいで心の欲にまさりて物をうるなり
Psalms 73:8 また嘲笑をなし惡をもて暴虐のことばをいだし高ぶりてものいふ
Psalms 73:9 その口を天におきその舌を地にあまねく往しむ
Psalms 73:10 このゆゑにかれの民はここにかへり水のみちたる杯をしぼりいだして
Psalms 73:11 いへらく神いかで知たまはんや至上者に知識あらんやと
Psalms 73:12 観よかれらは惡きものなるに常にやすらかにしてその富ましくははれり
Psalms 73:13 誠に我はいたづらに心をきよめ罪ををかさずして手をあらひたり
Psalms 73:14 そはわれ終日なやみにあひ朝ごとに責をうけしなり
Psalms 73:15 われもし斯ることを述んといひしならば我なんぢが子輩の代をあやまらせしならん
Psalms 73:16 われこれらの道理をしらんとして思ひめぐらししにわが眼いたく痛たり
Psalms 73:17 われ神の聖所にゆきてかれらの結局をふかく思へるまでは然りき
Psalms 73:18 誠になんぢはかれらを滑かなるところにおきかれらを滅亡におとしいれ給ふ
Psalms 73:19 かれらは瞬間にやぶれたるかな彼等は恐怖をもてことごとく滅びたり
Psalms 73:20 主よなんぢ目をさましてかれらが像をかろしめたまはんときは夢みし人の目さめたるがごとし
Psalms 73:21 わが心はうれへわが腎はさされたり
Psalms 73:22 われおろかにして知覺なし聖前にありて獣にひとしかりき
Psalms 73:23 されど我つねになんぢとともにあり汝わが右手をたもちたまへり
Psalms 73:24 なんぢその訓諭をもて我をみちびき後またわれをうけて榮光のうちに入たまはん
Psalms 73:25 汝のほかに我たれをか天にもたん地にはなんぢの他にわが慕ふものなし
Psalms 73:26 わが身とわが心とはおとろふされど神はわがこころの磐わがとこしへの嗣業なり
Psalms 73:27 観よなんぢに遠きものは滅びん汝をはなれて姦淫をおこなふ者はみななんぢ之をほろぼしたまひたり
Psalms 73:28 神にちかづき奉るは我によきことなり われは主ヱホバを避所としてそのもろもろの事跡をのべつたへん
Psalms 74:1 アサフの教訓のうた 神よいかなれば汝われらをかぎりなく棄たまひしや 奈何ばなんぢの草苑の羊にみかいかりの煙あがれるや
Psalms 74:2 ねがはくは往昔なんぢが買求めたまへる公會ゆづりの支派となさんとて贖ひたまへるものを思ひいでたまへ又なんぢが住たまふシオンの山をおもひいで給へ
Psalms 74:3 とこしへの滅亡の跡にみあしを向たまへ仇は聖所にてもろもろの惡きわざをおこなへり
Psalms 74:4 なんぢの敵はなんぢの集のなかに吼たけびおのが旗をたてて誌とせり
Psalms 74:5 かれらは林のしげみにて斧をあぐる人の状にみゆ
Psalms 74:6 いま鉞と鎚とをもて聖所のなかなる彫刻めるものをことごとく毀ちおとせり
Psalms 74:7 かれらはなんぢの聖所に火をかけ名の居所をけがして地におとしたり
Psalms 74:8 かれら心のうちにいふ われらことごとく之をこぼちあらさんと かくて國内なる神のもろもろの會堂をやきつくせり
Psalms 74:9 われらの誌はみえず預言者も今はなし 斯ていくその時をかふべき われらのうちに知るものなし
Psalms 74:10 神よ敵はいくその時をふるまでそしるや 仇はなんぢの名をとこしへに汚すならんか
Psalms 74:11 いかなれば汝その手みぎの手をひきたまふや ねがはくは手をふところよりいだしてかれらを滅したまへ
Psalms 74:12 神はいにしへよりわが王なり すくひを世の中におこなひたまへり
Psalms 74:13 なんぢその力をもて海をわかち水のなかなる龍の首をくだき
Psalms 74:14 鰐のかうべをうちくだき野にすめる民にあたへて食となしたまへり
Psalms 74:15 なんぢは泉と水流とをひらき又もろもろの大河をからしたまへり
Psalms 74:16 晝はなんぢのもの夜も又汝のものなり なんぢは光と日とをそなへ
Psalms 74:17 あまねく地のもろもろの界をたて夏と冬とをつくりたまへり
Psalms 74:18 エホバよ仇はなんぢをそしり愚なる民はなんぢの名をけがせり この事をおもひいでたまへ
Psalms 74:19 願くはなんぢの鴿のたましひを野のあらき獣にわたしたまふなかれ 苦しむものに命をとこしへに忘れたまふなかれ
Psalms 74:20 契約をかへりみたまへ地のくらきところは強暴の宅にて充たればなり
Psalms 74:21 ねがはくは虐げらるるものを慚退かしめ給ふなかれ 惱るものと苦しむものとに聖名をほめたたへしめたまへ
Psalms 74:22 神よおきてなんぢの訟をあげつらひ愚かなるものの終日なんぢを謗れるをみこころに記たまへ
Psalms 74:23 なんぢの敵の聲をわすれたまふなかれ 汝にさからひて起りたつ者のかしがましき聲はたえずあがれり
Psalms 75:1 「滅すなかれ」といふ調にあはせて伶長にうたはしめたるアサフの歌なり讃美なり 神よわれら汝にかんしやすわれら感謝すなんぢの名はちかく坐せばなり もろもろの人はなんぢの奇しき事跡をかたりあへり
Psalms 75:2 定りたる時いたらば我なほき審判をなさん
Psalms 75:3 地とすべての之にすむものと消去しとき我そのもろもろの柱をたてたり セラ
Psalms 75:4 われ誇れるものに誇りかにおこなふなかれといひ 惡きものに角をあぐるなかれといへり
Psalms 75:5 なんぢらの角をたかく挙るなかれ頚をかたくして高りいふなかれ
Psalms 75:6 挙ることは東よりにあらず西よりにあらずまた南よりにもあらざるなり
Psalms 75:7 ただ神のみ審士にましませば此をさげ彼をあげたまふ
Psalms 75:8 ヱホバの手にさかづきありて酒あわだてり その中にものまじりてみつ 神これをそそぎいだせり 誠にその滓は地のすべてのあしき者しぼりて飮むべし
Psalms 75:9 されど我はヤコブの神をのべつたへん とこしへに讃うたはん
Psalms 75:10 われ惡きもののすべての角をきりはなたん 義きものの角はあげらるべし
Psalms 76:1 琴にあはせて伶長にうたはしめたるアサフの歌なり讃美なり 神はユダにしられたまへり その名はイスラエルに大なり
Psalms 76:2 またサレムの中にその幕屋あり その居所はシオンにあり
Psalms 76:3 彼所にてかれは弓の火矢ををり盾と劍と戦陣とをやぶりたまひき セラ
Psalms 76:4 なんぢ榮光あり掠めうばふ山よりもたふとし
Psalms 76:5 心のつよきものは掠めらる かれらは睡にしづみ勇ましきものは皆その手を見うしなへり
Psalms 76:6 ヤコブの神よなんぢの叱咤によりて戦車と馬とともに深睡につけり
Psalms 76:7 神よなんぢこそ懼るべきものなれ 一たび怒りたまふときは誰かみまへに立えんや
Psalms 76:9 なんぢ天より宣告をのりたまへり 地のへりくだる者をみなすくはんとて神のさばきに立たまへるとき地はおそれて黙したり セラ
Psalms 76:10 實に人のいかりは汝をほむべし 怒のあまりは汝おのれの帯としたまはん
Psalms 76:11 なんぢの神ヱホバにちかひをたてて償へ そのまはりなるすべての者はおそるべきエホバに礼物をささぐべし
Psalms 76:12 ヱホバはもろもろの諸侯のたましひを絶たまはん ヱホバは地の王たちのおそるべき者なり
Psalms 77:1 エドトンの體にしたがひて伶長にうたはしめたるアサフのうた 我わがこゑをあげて神によばはん われ聲を神にあげなばその耳をわれにかたぶけたまはん
Psalms 77:2 わがなやみの日にわれ主をたづねまつれり 夜わが手をのべてゆるむることなかりき わがたましひは慰めらるるをいなみたり
Psalms 77:3 われ神をおもひいでて打なやむ われ思ひなげきてわが霊魂おとろへぬ セラ
Psalms 77:4 なんぢはわが眼をささへて閉がしめたまはず 我はものいふこと能はぬほどに惱みたり
Psalms 77:5 われむかしの日いにしへの年をおもへり
Psalms 77:6 われ夜わが歌をむもひいづ 我わが心にてふかくおもひわが霊魂はねもころに尋ねもとむ
Psalms 77:7 主はとこしへに棄たまふや 再びめぐみを垂たまはざるや
Psalms 77:8 その憐憫はのこりなく永遠にさり そのちかひは世々ながく廃れたるや
Psalms 77:9 神は恩をほどこすことを忘れたまふや 怒をもてそのあはれみを絨たまふや セラ
Psalms 77:10 斯るときに我いへらく此はただわが弱きがゆゑのみいで至上者のみぎの手のもろもろの年をおもひいでん
Psalms 77:11 われヤハの作爲をのべとなへん われ往古よりありし汝がくすしきみわざを思ひいたさん
Psalms 77:12 また我なんぢのすべての作爲をおもひいで汝のなしたまへることを深くおもはん
Psalms 77:13 紳よなんぢの途はいときよし 神のごとく大なる神はたれぞや
Psalms 77:14 なんぢは奇きみわざをなしたまへる神なり もろもろの民のあひだにその大能をしめし
Psalms 77:15 その臂をもてヤコブ、ヨセフの子輩なんぢの民をあがなひたまへり セラ
Psalms 77:16 かみよ大水なんぢを見たり おほみづ汝をみてをののき淵もまたふるへり
Psalms 77:17 雲はみづをそそぎいだし空はひびきをいだし なんぢの矢ははしりいでたり
Psalms 77:18 なんぢの雷鳴のこゑは暴風のうちにありき 電光は世をてらし地はふるひうごけり
Psalms 77:19 なんぢの太道は海のなかにあり なんぢの徑はおほみづの中にあり なんぢの蹤跡はたづねがたかりき
Psalms 77:20 なんぢその民をモーセとアロンとの手によりて羊の群のごとくみちびきたまへり
Psalms 78:1 アサフの教訓のうた わが民よわが教訓をきき、わが口のことばになんぢらの耳をかたぶけよ
Psalms 78:2 われ口をひらきて譬喩をまうけ いにしへの玄幽なる語をかたりいでん
Psalms 78:3 是われらが曩にききしところ知しところ又われらが列祖のかたりつたへし所なり
Psalms 78:4 われら之をその子孫にかくさずヱホバのもろもろの頌美と能力とそのなしたまへる奇しき事跡とをきたらんとする世につげん
Psalms 78:5 そはヱホバ證詞をヤコブのうちにたて律法をイスラエルのうちに定めてその子孫にしらすべきことをわれらの列祖におほせたまひたればなり
Psalms 78:6 これ來らんとする代のちに生るる子孫がこれを知みづから起りてそのまた子孫につたへ
Psalms 78:7 かれらをして神によりたのみ神のみわざを忘れずその誡命をまもらしめん爲なり
Psalms 78:8 またその列祖のごとく頑固にしてそむくものの類となり そのこころ修まらず そのたましひ神に忠ならざる類とならざらん爲なり
Psalms 78:9 エフライムのこらは武具ととのへ弓をたづさへしに戦ひの日にうしろをそむけたり
Psalms 78:10 かれら神のちかひをまもらず そのおきてを履ことをいなみ
Psalms 78:11 ヱホバのなしたまへることとかれらに示したまへる奇しき事跡とをわすれたり
Psalms 78:12 神はエジプトの國にてゾアンの野にて妙なる事をかれらの列祖のまへになしたまへり
Psalms 78:13 すなはち海をさきてかれらを過ぎしめ水をつみて堆かくしたまへり
Psalms 78:14 ひるは雲をもてかれらをみちびき夜はよもすがら火の光をもてこれを導きたまへり
Psalms 78:15 神はあれのにて磐をさき大なる淵より汲がごとくにかれらに飮しめ
Psalms 78:16 また磐より流をひきて河のごとくに水をながれしめたまへり
Psalms 78:17 然るにかれら尚たえまなく罪ををかして神にさからひ荒野にて至上者にそむき
Psalms 78:18 またおのが慾のために食をもとめてその心のうちに神をこころみたり
Psalms 78:19 然のみならずかれらは神にさからひていへり 神は荒野にて筵をまうけたまふを得んや
Psalms 78:20 みよ神いはを撃たまへば水ほどばしりいで流あぶれたり 糧をもあたへたまふを得んや神はその民のために肉をそなへたまはんやと
Psalms 78:21 この故にヱホバこれを聞ていきどほりたまひき 火はヤコブにむかひてもえあがり怒はイスラエルにむかひて立騰れり
Psalms 78:22 こはかれら神を信ぜずその救にたのまざりし故なり
Psalms 78:23 されどなほ神はうへなる雲に命じて天の戸をひらき
Psalms 78:25 人みな勇士の糧をくらへり 神はかれらに食物をおくりて飽足らしめたまふ
Psalms 78:26 神は天に東風をふかせ大能もて南の風をみちびきたまへり
Psalms 78:27 神はかれらのうへに塵のごとく肉をふらせ海の沙のごとく翼ある鳥をふらせて
Psalms 78:28 その營のなかその住所のまはりに落したまへり
Psalms 78:29 斯てかれらは食ひて飽たりぬ神はこれにその欲みしものを與へたまへり
Psalms 78:30 かれらが未だその慾をはなれず食物のなほ口のうちにあるほどに
Psalms 78:31 神のいかり既かれらに對ひてたちのぼり彼等のうちにて最もこえたる者をころしイスラエルのわかき男をうちたふしたまへり
Psalms 78:32 これらの事ありしかど彼等はなほ罪ををかしてその奇しきみわざを信ぜざりしかば
Psalms 78:33 神はかれらの日を空しくすぐさせ その年をおそれつつ過させたまへり
Psalms 78:34 彼等のうへにマナをふらせて食はしめ天の穀物をあたへたまへり 神かれらを殺したまへる時かれら神をたづね歸りきたりて懇ろに神をもとめたり
Psalms 78:35 かくて神はおのれの磐いとたかき神はおのれの贖主なることをおもひいでたり
Psalms 78:36 然はあれど彼等はただその口をもて神にへつらひその舌をもて神にいつはりをいひたりしのみ
Psalms 78:37 そはかれらのこころは神にむかひて堅からず その契約をまもるに忠信ならざりき
Psalms 78:38 されど神はあはれみに充たまへばかれらの不義をゆるして亡したまはず屡ばそのみいかりを轉してことごとくは忿恚をふりおこし給はざりき
Psalms 78:39 又かれがただ肉にして過去ばふたたび歸りこぬ風なるをおもひいで給へり
Psalms 78:40 かれらは野にて神にそむき荒野にて神をうれへしめしこと幾次ぞや
Psalms 78:41 かれらかへすがへす神をこころみイスラエルの聖者をはづかしめたり
Psalms 78:42 かれらは神の手をも敵より贖ひたまひし日をもおもひいでざりき
Psalms 78:43 神はそのもろもろの豫兆をエジプトにあらはしその奇しき事をゾアンの野にあらはし
Psalms 78:44 かれらの河を血にかはらせてその流を飮あたはざらしめ
Psalms 78:45 また蝿の群をおくりてかれらをくはしめ蛙をおくりてかれらを亡させたまへり
Psalms 78:46 神はかれらの田産を蟊賊にわたし かれらの勤労を蝗にあたへたまへり
Psalms 78:47 神は雹をもてかれらの葡萄の樹をからし霜をもてかれらの桑の樹をからし
Psalms 78:48 その家畜をへうにわたしその群をもゆる閃電にわたし
Psalms 78:49 かれらの上にはげしき怒といきどほりと怨恨となやみと禍害のつかひの群とをなげいだし給へり
Psalms 78:50 神はその怒をもらす道をまうけ かれらのたましひを死よりまぬかれしめず そのいのちを疫病にわたし
Psalms 78:51 エジプトにてすべての初子をうちハムの幕屋にてかれらの力の始をうちたまへり
Psalms 78:52 されどおのれの民を羊のごとくに引いだし かれらを曠野にてけだものの群のごとくにみちびき
Psalms 78:53 かれらをともなひておそれなく安けからしめ給へり されど海はかれらの仇をおほへり
Psalms 78:54 神はその聖所のさかひ その右の手にて購たまへるこの山に彼らを携へたまへり
Psalms 78:55 又かれらの前にてもろもろの國人をおもひいだし準縄をもちゐ その地をわかちて嗣業となし イスラエルの族をかれらの幕屋にすまはせたまへり
Psalms 78:56 然はあれど彼等はいとたかき神をこころみ之にそむきてそのもろもろの證詞をまもらず
Psalms 78:57 叛きしりぞきてその列祖の如く眞實をうしなひ くるへる弓のごとくひるがへりて逸ゆけり
Psalms 78:58 高處をまうけて神のいきどほりをひき刻める像にて神の嫉妬をおこしたり
Psalms 78:59 神ききたまひて甚だしくいかり大にイスラエルを憎みたまひしかば
Psalms 78:60 人々の間におきたまひし幕屋なるシロのあげばりを棄さり
Psalms 78:61 その力をとりことならしめ その榮光を敵の手にわたし
Psalms 78:62 その民を劍にあたへ その嗣業にむかひて甚だしく怒りたまへり
Psalms 78:63 火はかれらのわかき男をやきつくし かれらの處女はその婚姻の歌によりて譽らるることなく
Psalms 78:64 かれらの祭司はつるぎにて仆れ かれらの寡婦は喪のなげきだにせざりき
Psalms 78:65 斯るときに主はねぶりし者のさめしごとく勇士の洒によりてさけぶがごとく目さめたまひて
Psalms 78:66 その敵をうちしりぞけ とこしへの辱をかれらに負せたまへり
Psalms 78:67 またヨセフの幕屋をいなみエフライムの族をえらばず
Psalms 78:68 ユダの族そのいつくしみたまふシオンの山をえらびたまへり
Psalms 78:69 その聖所を山のごとく永遠にさだめたまへる地のごとくに立たまへり
Psalms 78:70 またその僕ダビデをえらびて羊の牢のなかよりとり
Psalms 78:71 乳をあたふる牝羊にしたがひゆく勤のうちより携へきたりてその民ヤコブその嗣業イスラエルを牧はせたまへり
Psalms 78:72 斯てダビデはそのこころの完全にしたがひてかれらを牧ひ その手のたくみをもて之をみちびけり
Psalms 79:1 アサフのうた ああ神よもろもろの異邦人はなんぢの嗣業の地ををかし なんぢの聖宮をけがしヱルサレムをこぼちて礫堆となし
Psalms 79:2 なんぢの僕のしかばねをそらの鳥に與へて餌となし なんぢの聖徒の肉を地のけものにあたへ
Psalms 79:3 その血をヱルサレムのめぐりに水のごとく流したりされど之をはうむる人なし
Psalms 79:4 われらは隣人にそしられ四周のひとびとに侮られ嘲けらるるものとなれり
Psalms 79:5 ヱホバよ斯て幾何時をへたまふや 汝とこしへに怒たまふや なんぢのねたみは火のごとく燃るか
Psalms 79:6 願くはなんぢを識ざることくにびと聖名をよばざるもろもろの國のうへに烈怒をそそぎたまへ
Psalms 79:7 かれらはヤコブを呑その住處をあらしたればなり
Psalms 79:8 われらにむかひて先祖のよこしまなるわざを記念したまふなかれ願くはなんぢの憐憫をもて速かにわれらを迎へたまへ われらは貶されて甚だしく卑くなりたればなり
Psalms 79:9 われらのすくひの神よ名のえいくわうのために我儕をたすけ名のためにわれらを救ひわれらの罪をのぞきたまへ
Psalms 79:10 いかなれば異邦人はいふ かれらの神はいづくにありやと 願くはなんぢの僕等がながされし血の報をわれらの目前になして異邦人にしらしめたまへ
Psalms 79:11 ねがはくは汝のみまへにとらはれびとの嘆息のとどかんことを なんぢの大なる能力により死にさだめられし者をまもりて存へしめたまへ
Psalms 79:12 主よわれらの隣人のなんぢをそしりたる謗を七倍ましてその懐にむくいかへしたまへ
Psalms 79:13 然ばわれらなんぢの民なんぢの草苑のひつじは永遠になんぢに感謝しその頌辭を世々あらはさん
Psalms 80:1 證詞の百合花といへる調にあはせて伶長にうたはしめたるアサフの歌 イスラエルの牧者よひつじの群のごとくヨセフを導きたまものよ 耳をかたぶけたまヘ ケルビムのうへに坐したまふものよ 光をはなちたまヘ
Psalms 80:2 エフライム、ベニヤミン、マナセの前になんぢの力をふりおこし來りてわれらを救ひたまへ
Psalms 80:3 神よふたたびわれらを復し なんぢの聖顔のひかりをてらしたまへ 然ばわれら救をえん
Psalms 80:4 ばんぐんの神ヱホバよなんぢその民の祈にむかひて何のときまで怒りたまふや
Psalms 80:5 汝かれらになみだの糧をくらはせ涙を量器にみちみつるほどあたへて飮しめ給へり
Psalms 80:6 汝われらを隣人のあひあらそふ種料となしたまふ われらの仇はたがひにあざわらへり
Psalms 80:7 萬軍の神よふたたびわれらを復したまへ 汝のみかほの光をてらしたまへ さらばわれら救をえん
Psalms 80:8 なんぢ葡萄の樹をエジプトより携へいだしもろもろの國人をむひしりぞけて之をうゑたまへり
Psalms 80:9 汝そのまへに地をまうけたまひしかば深く根して國にはびこれり
Psalms 80:10 その影はもろもろの山をおほひ そのえだは神の香柏のごとくにてありき
Psalms 80:11 その樹はえだを海にまでのべ その若枝を河にまでのべたり
Psalms 80:12 汝いかなればその垣をくづして路ゆくすべての人に嫡取ら亡たまふやまや
Psalms 80:13 はやしの猪はこれをあらし野のあらき獣はこれをくらふ
Psalms 80:14 ああ萬軍の神よねがはくは歸りたまへ 天より俯視てこの葡萄の樹をかへりみ
Psalms 80:15 なんぢが右の手にてうゑたまへるもの自己のために強くなしたまへる枝をまもりたまへ
Psalms 80:16 その樹は火にて焼れまた斫たふさる かれらは聖顔のいかりにて亡ぶ
Psalms 80:17 ねがはくはなんぢの手をその右の手の人のうへにおき自己のためにつよくなしたまへる人の子のうへにおきたまへ
Psalms 80:18 さらばわれら汝をしりぞき離るることなからん 願くはわれらを活したまへ われら名をよばん
Psalms 80:19 ああ萬軍の神ヱホバよふたたび我儕をかへしたまへ なんぢの聖顔のひかりを照したまへ 然ばわれら救をえん
Psalms 81:1 ギテトの琴にあはせて伶長にうたはしめたるアサフのうた われらの力なる神にむかひて高らかにうたひヤコブの神にむかひてよろこびの聲をあげよ
Psalms 81:2 歌をうたひ鼓とよき音のことと筝とをもちきたれ
Psalms 81:3 新月と満月とわれらの節会の日とにラッパをふきならせ
Psalms 81:4 これイスラエルの律法ヤコブのかみの格なり
Psalms 81:5 神さきにエジプトを攻たまひしときヨセフのなかに之をたてて證となしたまへり 我かしこにて未だしらざりし方言をきけり
Psalms 81:6 われかれの肩より重荷をのぞき かれの手を籃よりまぬかれしめたり
Psalms 81:7 汝光やめるとき呼しかば我なんぢをすくへり われ雷鳴のかくれたるところにて汝にこたヘメリバの水のほとりにて汝をこころみたり セラ
Psalms 81:8 わが民よきけ我なんぢに證せん イスラエルよ汝がわれに從はんことをもとむ
Psalms 81:9 汝のうちに他神あるべからず なんぢ他神ををがむべからず
Psalms 81:10 われはエジプトの國よりなんぢを携へいでたる汝の神ヱホバなり なんぢの口をひろくあけよ われ物をみたしめん
Psalms 81:11 されどわが民はわか聲にしたがはず イスラエルは我をこのまず
Psalms 81:12 このゆゑに我かれらが心のかたくななるにまかせ彼等がその任意にゆくにまかせたり
Psalms 81:13 われはわが民のわれに從ひイスフルのわが道にあゆまんことを求む
Psalms 81:14 さらば我すみやかにかれらの仇をしたがへ わが手をかれらの敵にむけん
Psalms 81:15 斯てヱホバをにくみし者もかれらに從ひ かれらの時はとこしへにつづかん
Psalms 81:16 神はむぎの最嘉をもてかれらをやしなひ 磐よりいでたる蜜をもて汝をあかしむべし
Psalms 82:1 アテフのうた かみは神のつどひの中にたちたまふ 神はもろもろの神のなかに審判をなしたまふ
Psalms 82:2 なんぢらは正からざる審判をなし あしきものの身をかたよりみて幾何時をへんとするや セラ
Psalms 82:3 よわきものと孤児とのためにさばき苦しむものと乏しきものとのために公平をほどこせ
Psalms 82:4 弱きものと貧しきものとをすくひ彼等をあしきものの手よりたすけいだせ
Psalms 82:5 かれらは知ることなく悟ることなくして暗中をゆきめぐりぬ 地のもろもろの基はうごきたり
Psalms 82:6 我いへらく なんぢらは神なりなんぢらはみな至上者の子なりと
Psalms 82:7 然どなんぢらは人のごとくにもろもろの侯のなかの一人のごとく仆れん
Psalms 82:8 神よおきて全地をさばきたまへ 汝もろもろの國を嗣たまふべければなり
Psalms 83:1 アサフの歌なり讃美なり 神よもたしたまふなかれ神よものいはで寂静たまふなかれ視よなんぢの仇はかしがきしき
Psalms 125:1 みやこ詣のうた ヱホバに依頼むものはシオンの山のうごかさるることなくして永遠にあるがごとし
Psalms 125:2 ヱルサレムを山のかこめるごとくヱホバも今よりとこしへにその民をかこみたまはん
Psalms 125:3 惡の杖はただしきものの所領にとどまることなかるべし斯てただしきものはその手を不義にのぶることあらじ
Psalms 125:4 ヱホバよねがはくは善人とこころ直きものとに福祉をほどこしたまへ
Psalms 125:5 されどヱホバは轉へりておのが曲れる道にいるものを惡きわざをなすものとともに去しめたまはん 平安はイスラエルのうへにあれ
Psalms 126:1 京まうでの歌 ヱホバ、シオンの俘囚をかへしたまひし時 われらは夢みるもののごとくなりき
Psalms 126:2 そのとき笑はわれらの口にみち歌はわれらの舌にみてり ヱホバかれらのために大なることを作たまへりといへる者もろもろの國のなかにありき
Psalms 126:3 ヱホバわれらのために大なることをなしたまひたれば我儕はたのしめり
Psalms 126:4 ヱホバよ願くはわれらの俘囚をみなみの川のごとくに歸したまへ
Psalms 126:5 涙とともに播くものは歡喜とともに穫らん
Psalms 126:6 その人は種をたづさへ涙をながしていでゆけど禾束をたづさへ喜びてかへりきたらん
Psalms 127:1 ソロモンがよめる京まうでのうた ヱホバ家をたてたまふにあらずば 建るものの勤労はむなしく ヱホバ城をまもりたまふにあらずば衛士のさめをるは徒労なり
Psalms 127:2 なんぢら早くおき遅くいねて辛苦の糧をくらふはむなしきなり 斯てヱホバその愛しみたまふものに寝をあたへたまふ
Psalms 127:3 みよ子輩はヱホバのあたへたまふ嗣業にして 胎の實はその報のたまものなり
Psalms 127:4 年壮きころほひの子はますらをの手にある矢のごとし
Psalms 127:5 矢のみちたる箙をもつ人はさいはひなり かれら門にありて仇とものいふとき恥ることあらじ
Psalms 128:1 京まうでの歌 ヱホバをおそれその道をあゆむものは皆さいはひなり
Psalms 128:2 そはなんぢおのが手の勤労をくらふべければなり なんぢは福祉をえまた安處にをるべし
Psalms 128:3 なんぢの妻はいへの奥にをりておほくの實をむすぶ葡萄の樹のごとく汝の子輩はなんぢの筵に円居してかんらんの若樹のごとし
Psalms 128:4 見よヱホバをおそるる者はかく福祉をえん
Psalms 128:5 ヱホバはシオンより恵をなんぢに賜はん なんぢ世にあらんかぎりヱルサレムの福祉をみん
Psalms 128:6 なんぢおのが子輩の子をみるべし 平安はイスラエルの上にあり
Psalms 129:1 京まうでのうた 今イスラエルはいふべし彼等はしばしば我をわかきときより惱めたり
Psalms 129:2 かれらはしばしば我をわかきときより惱めたり されどわれに勝ことを得ざりき
Psalms 129:3 耕すものはわが背をたがへしてその畎をながくせり
Psalms 129:4 ヱホバは義し あしきものの繩をたちたまへり
Psalms 129:5 シオンをにくむ者はみな恥をおびてしりぞかせらるべし
Psalms 129:6 かれらは長たざるさきにかるる屋上の草のごとし
Psalms 129:7 これを刈るものはその手にみたず 之をつかぬるものはその束ふところに盈ざるなり
Psalms 129:8 かたはらを過るものはヱホバの恵なんぢの上にあれといはず われらヱホバの名によりてなんぢらを祝すといはず
Psalms 130:1 京まうでの歌 ああヱホバよわれふかき淵より汝をよべり
Psalms 130:2 主よねがはくはわが聲をきい汝のみみをわが懇求のこゑにかたぶけたまヘ
Psalms 130:3 ヤハよ主よなんぢ若もろもろの不義ふぎに目をとめたまはば誰たれかよく立たつことをえんや
Psalms 130:4 されどなんぢに赦あれば人におそれかしこまれ給ふべし
Psalms 130:5 我ヱホバを俟望む わが霊魂はまちのぞむ われはその聖言によりて望をいだく
Psalms 130:6 わがたましひは衛士があしたを待にまさり 誠にゑじが旦をまつにまさりて主をまてり
Psalms 130:7 イスラエルよヱホバによりて望をいだけ そはヱホバにあはれみあり またゆたかなる救贖あり
Psalms 130:8 ヱホバはイスラエルをそのもろもろの邪曲よりあがなひたまはん
Psalms 131:1 ダビデのよめる京まうでのうた ヱホバよわが心おごらずわが目たかぶらず われは大なることと我におよばぬ奇しき事とをつとめざりき
Psalms 131:2 われはわが霊魂をもださしめまた安からしめたり 乳をたちし嬰児のその母にたよるごとく 我がたましひは乳をたちし嬰児のごとくわれに恃れり
Psalms 131:3 イスラエルよ今よりとこしへにヱホバにたよりて望をいだけ
Psalms 132:1 京まうでの歌 ヱホバよねがはくはダビデの爲にそのもろもろの憂をこころに記たまヘ
Psalms 132:2 ダビデ、ヱホバにちかひヤコブの全能者にうけひていふ
Psalms 132:5 われヱホバのために處をたづねいだし ヤコブの全能者のために居所をもとめうるまでは 我家の幕屋にいらず わが臥床にのぼらず わが目をねぶらしめず わが眼瞼をとぢしめざるべしと
Psalms 132:6 われらエフラタにて之をききヤアルの野にて見とめたり
Psalms 132:7 われらはその居所にゆきて その承足のまへに俯伏さん
Psalms 132:8 ヱホバよねがはくは起きて なんぢの稜威の櫃とともになんぢの安居所にいりたまへ
Psalms 132:9 なんぢの祭司たちは義を衣 なんぢの聖徒はみな歓びよばふべし
Psalms 132:10 なんぢの僕ダビデのためになんぢの受膏者の面をしりぞけたまふなかれ
Psalms 132:11 ヱホバ眞實をもてダビデに誓ひたまひたれば之にたがふことあらじ 曰くわれなんぢの身よりいでし者をなんぢの座位にざせしめん
Psalms 132:12 なんぢの子輩もしわがをしふる契約と證詞とをまもらばかれらの子輩もまた永遠になんぢの座位にざすべしと
Psalms 132:13 ヱホバはシオンを擇びておのが居所にせんとのぞみたまへり
Psalms 132:14 曰くこれは永遠にわが安居處なり われここに住ん そはわれ之をのぞみたればなり
Psalms 132:15 われシオンの糧をゆたかに祝し くひものをもてその貧者をあかしめん
Psalms 132:16 われ救をもてその祭司たちに衣せん その聖徒はみな聲たからかによろこびよばふべし
Psalms 132:17 われダビデのためにかしこに一つの角をはえしめん わが受膏者のために燈火をそなへたり
Psalms 132:18 われかれの仇にはぢを衣せん されどかれはその冠弁さかゆべし
Psalms 133:1 ダビデがよめる京まうでの歌 観よはらから相睦てともにをるはいかに善いかに樂きかな
Psalms 133:2 首にそそがれたる貴きあぶら鬚にながれ アロンの鬚にながれ その衣のすそにまで流れしたたるるがごとく
Psalms 133:3 またヘルモンの露くだりてシオンの山にながるるがごとし そはヱホバかしこに福祉をくだし窮なき生命をさへあたへたまへり
Psalms 134:1 京まうでの歌 夜間ヱホバの家にたちヱホバに事ふるもろもろの僕よ ヱホバをほめまつれ
Psalms 134:2 なんぢら聖所にむかひ手をあげてヱホバをほめまつれ
Psalms 134:3 ねがはくはヱホバ天地をつくりたまへるもの シオンより汝をめぐみたまはんことを
Psalms 135:1 なんぢらヱホバを讃稱へよ ヱホバの名をほめたたへよ ヱホバの僕等ほめたたへよ
Psalms 135:2 ヱホバの家われらの神のいへの大庭にたつものよ讃稱へよ
Psalms 135:3 ヱホバは恵ふかし なんぢらヱホバをほめたたへよ その聖名はうるはし讃うたへ
Psalms 135:4 そはヤハおのがためにヤコブをえらみイスラエルをえらみてその珍寳となしたまへり
Psalms 135:5 われヱホバの大なるとわれらの主のもろもろの神にまされるとをしれり
Psalms 135:6 ヱホバその聖旨にかなふことを天にも地にも海にも淵にもみなことごとく行ひ給ふなり
Psalms 135:7 ヱホバは地のはてより霧をのぼらせ 雨のために電光をつくりその庫より風をいだしたまふ
Psalms 135:8 ヱホバは人より畜類にいたるまでエジプトの首出をうちたまへり
Psalms 135:9 エジプトよヱホバはなんぢの中にしるしと奇しき事跡とをおくりて パロとその僕とに臨ませ給へり
Psalms 135:10 ヱホバはおほくの國々をうち 又いきほひある王等をころし給へり
Psalms 135:11 アモリ人のわうシホン、バシヤンの王オグならびにカナンの國々なり
Psalms 135:12 かれらの地をゆづりとしその民イスフルの嗣業としてあたへ給へり
Psalms 135:13 ヱホバよなんぢの名はとこしへに絶ることなし ヱホバよなんぢの記念はよろづ世におよばん
Psalms 135:14 ヱホバはその民のために審判をなしその僕等にかかはれる聖意をかへたまふ可ればなり
Psalms 135:15 もろもろのくにの偶像はしろかねと金にして人の手のわざなり
Psalms 135:16 そのぐうざうは口あれどいはず目あれど見ず
Psalms 135:17 耳あれどきかず またその口に氣息あることなし
Psalms 135:18 これを造るものと之によりたのむものとは皆これにひとしからん
Psalms 135:19 イスラエルの家よヱホバをほめまつれ アロンのいへよヱホバをほめまつれ
Psalms 135:20 レビの家よヱホバをほめまつれ ヱホバを畏るるものよヱホバをはめまつれ
Psalms 135:21 ヱルサレムにすみたまふヱホバはシオンにて讃まつるべきかな ヱホバをほめたたへよ
Psalms 136:1 ヱホバに感謝せよヱホバはめぐみふかし その憐憫はとこしへに絶ることなければなり
Psalms 136:2 もろもろの神の神にかんしやせよ その憐憫はとこしへにたゆることなければなり
Psalms 136:3 もろもろの主の主にかんしやせよ その憐憫はとこしへにたゆることなければなり
Psalms 136:4 ただ獨りおほいなる奇跡なしたまふものに感謝せよ その憐憫はとこしへにたゆることなければなり
Psalms 136:5 智慧をもてもろもろの天をつくりたまへるものに感謝せよ そのあはれみはとこしへにたゆることなければなり
Psalms 136:6 地を水のうへに布たまへるものに感謝せよ そのあはれみは永遠にたゆることなければなり
Psalms 136:7 巨大なる光をつくりたまへる者にかんしやせよ その憐憫はとこしへに絶ることなければなり
Psalms 136:8 晝をつかさどらするために日をつくりたまへる者にかんしやせよ その憐憫はとこしへにたゆることなければなり
Psalms 136:9 夜をつかさどらするために月ともろもろの星とをつくりたまへる者にかんしやせよ その隣憫はとこしへにたゆることなければなり
Psalms 136:10 もろもろの首出をうちてエジプトを責たまへるものに感謝せよ そのあはれみは永遠にたゆることなければなり
Psalms 136:11 イスラエルを率てエジプト人のなかより出したまへる者にかんしやせよ そのあはれみはとこしへに絶ることなければなり
Psalms 136:12 臂をのばしつよき手をもて之をひきいだしたまへる者にかんしやせよ その憐憫はとこしへにたゆることなければなり
Psalms 136:13 紅海をふたつに分たまへる者にかんしやせよ その憐憫はとこしへにたゆることなければなり
Psalms 136:14 イスラエルをしてその中をわたらしめ給へるものに感謝せよ そのあはれみは永遠にたゆることなければなり
Psalms 136:15 パロとその軍兵とを紅海のうちに仆したまへるものに感謝せよ そのあはれみは永遠にたゆることなければなり
Psalms 136:16 その民をみちびきて野をすぎしめたまへる者にかんしやせよ その憐憫はとこしへにたゆることなければなり
Psalms 136:17 大なる王たちを撃たまへるものに感謝せよ そのあはれみは永遠にたゆることなければなり
Psalms 136:18 名ある王等をころしたまへる者にかんしやせよ その憐憫はとこしへに絶ることなければなり
Psalms 136:19 アモリ人のわうシホンをころしたまへる者にかんしやせよ その憐憫はとこしへにたゆることなければなり
Psalms 136:20 バシヤンのわうオグを誅したまへるものに感謝せよ そのあはれみは永遠にたゆることなければなり
Psalms 136:21 かれらの地を嗣業としてあたへたまへる者にかんしやせよ その憐憫はとこしへにたゆることなければなり
Psalms 136:22 その僕イスラエルにゆづりとして之をあたへたまへるものに感謝せよ そのあはれみは永遠にたゆることなければなり
Psalms 136:23 われらが微賤かりしときに記念したまへる者にかんしやせよ その憐憫はとこしへに絶ることなければなり
Psalms 136:24 わが敵よりわれらを助けいだしたまへる者にかんしやせよ その憐憫はとこしへに絶ることなければなり
Psalms 136:25 すべての生るものに食物をあたへたまふものに感謝せよ そのあはれみはとこしへに絶ることなければなり
Psalms 136:26 天の神にかんしやせよ その憐憫はとこしへに絶ることなければなり
Psalms 137:1 われらバビロンの河のほとりにすわり シオンをおもひいでて涙をながしぬ
Psalms 137:2 われらそのあたりの柳にわが琴をかけたり
Psalms 137:3 そはわれらを虜にせしものわれらに歌をもとめたり 我儕をくるしむる者われらにおのれを歓ばせんとて シオンのうた一つうたへといへり
Psalms 137:4 われら外邦にありていかでヱホバの歌をうたはんや
Psalms 137:5 エルサレムよもし我なんぢをわすれなばわが右の手にその巧をわすれしめたまへ
Psalms 137:6 もしわれ汝を思ひいでず もしわれヱルサレムをわがすべての歓喜の極となさずばわが舌をわが腭につかしめたまヘ
Psalms 137:7 ヱホバよねがはくはヱルサレムの日にエドムの子輩がこれを掃除けその基までもはらひのぞけといへるを聖意にとめたまへ
Psalms 137:8 ほろぼさるべきバビロンの女よ なんぢがわれらに作しごとく汝にむくゆる人はさいはひなるべし
Psalms 137:9 なんぢの嬰児をとりて岩のうへになげうつものは福ひなるべし
Psalms 138:1 ダビデのうた われはわが心をつくしてなんぢに感謝し もろもろの神のまへにて汝をほめうたはん
Psalms 138:2 我なんぢのきよき宮にむかひて伏拝み なんぢの仁慈とまこととの故によりて聖名にかんしやせん そは汝そのみことばをもろもろの聖名にまさりて高くしたまひたればなり
Psalms 138:3 汝わがよばはりし日にわれにこたへ わが霊魂にちからをあたへて雄々しからしめたまへり
Psalms 138:4 ヱホバよ地のすべての王はなんぢに感謝せん かれらはなんぢの口のもろもろの言をききたればなり
Psalms 138:5 かれらはヱホバのもろもろの途についてうたはん ヱホバの榮光おほいなればなり
Psalms 138:6 ヱホバは高くましませども卑きものを顧みたまふ されど亦おごれるものを遠よりしりたまへり
Psalms 138:7 縦ひわれ患難のなかを歩むとも汝われをふたたび活し その手をのばしてわが仇のいかりをふせぎ その右の手われをすくひたまふべし
Psalms 138:8 ヱホバはわれに係れることを全うしたまはん ヱホバよなんぢの憐憫はとこしへにたゆることなし願くはなんぢの手のもろもろの事跡をすてたまふなかれ
Psalms 139:1 伶長にうたはしめたるダビデの歌 ヱホバよなんぢは我をさぐり我をしりたまへり
Psalms 139:2 なんぢはわが坐るをも立をもしり 又とほくよりわが念をわきまへたまふ
Psalms 139:3 なんぢはわが歩むをもわが臥をもさぐりいだし わがもろもろの途をことごとく知たまへり
Psalms 139:4 そはわが舌に一言ありとも観よヱホバよなんぢことごとく知たまふ
Psalms 139:5 なんぢは前より後よりわれをかこみ わが上にその手をおき給へり
Psalms 139:6 かかる知識はいとくすしくして我にすぐ また高くして及ぶことあたはず
Psalms 139:7 我いづこにゆきてなんぢの聖霊をはなれんや われいづこに往てなんぢの前をのがれんや
Psalms 139:8 われ天にのぼるとも汝かしこにいまし われわが榻を陰府にまうくるとも 観よなんぢ彼處にいます
Psalms 139:9 我あけぼのの翼をかりて海のはてにすむとも
Psalms 139:10 かしこにて尚なんぢの手われをみちびき汝のみぎの手われをたもちたまはん
Psalms 139:11 暗はかならす我をおほひ 我をかこめる光は夜とならんと我いふとも
Psalms 139:12 汝のみまへには暗ものをかくすことなく 夜もひるのごとくに輝けり なんぢにはくらきも光もことなることなし
Psalms 139:13 汝はわがはらわたをつくり 又わがははの胎にわれを組成たまひたり
Psalms 139:14 われなんぢに感謝す われは畏るべく奇しくつくられたり なんぢの事跡はことごとくくすし わが霊魂はいとつばらに之をしれり
Psalms 139:15 われ隠れたるところにてつくられ地の底所にて妙につづりあはされしとき わが骨なんぢにかくるることなかりき
Psalms 139:16 わが體いまだ全からざるに なんぢの目ははやくより之をみ 日々かたちづくられしわが百體の一だにあらざりし時に ことごとくなんぢの冊にしるされたり
Psalms 139:17 神よなんぢりもろもろの思念はわれに寶きこといかばかりぞや そのみおもひの総計はいかに多きかな
Psalms 139:18 我これを算へんとすれどもそのかずは沙よりもおほし われ眼さむるときも尚なんぢとともにをる
Psalms 139:19 神よなんぢはかならず惡者をころし給はん されば血をながすものよ我をはなれされ
Psalms 139:20 かれらはあしき企圖をもて汝にさからひて言ふ なんぢの仇はみだりに聖名をとなふるなり
Psalms 139:21 ヱホバよわれは汝をにくむ者をにくむにあらずや なんぢに逆ひておこりたつものを厭ふにあらずや
Psalms 139:22 われ甚くかれらをにくみてわが仇とす
Psalms 139:23 神よねがはくは我をさぐりてわが心をしり 我をこころみてわがもろもろの思念をしりたまへ
Psalms 139:24 ねがはくは我によこしまなる途のありやなしやを見て われを永遠のみちに導きたまへ
Psalms 140:1 伶長にうたはしめたるダビデのうた ヱホバよねがはくは惡人よりわれを助けいだし 我をまもりて強暴人よりのがれしめたまへ
Psalms 140:2 かれらは心のうちに残害をくはだて たえず戦闘をおこす
Psalms 140:3 かれらは蛇のごとくおのが舌を利す そのくちびるのうちに蝮の毒あり セラ
Psalms 140:4 ヱホバよ願くはわれを保ちてあしきひとの手よりのがれしめ 我をまもりてわが足をつまづかせんと謀るあらぶる人よりのがれしめ給へ
Psalms 140:5 高ぶるものはわがために羂と索とをふせ 路のほとりに網をはり かつ機をまうけたり セラ
Psalms 140:6 われヱホバにいへらく汝はわが神なり ヱホバよねがはくはわが祈のこゑをきき給へ
Psalms 140:7 わが救のちからなる主の神よ なんぢはたたかひの日にわが首をおほひたまへり
Psalms 140:8 ヱホバよあしきひとの欲のままにすることをゆるしたまふなかれ そのあしき企図をとげしめたまふなかれ おそらくは彼等みづから誇らん セラ
Psalms 140:9 われを圍むものの首はおのれのくちびるの残害におほはるべし
Psalms 140:10 もえたる炭はかれらのうへにおち かれらは火になげいれられ ふかき穴になげいれられて再びおきいづることあたはざるべし
Psalms 140:11 惡言をいふものは世にたてられず 暴ぶるものはわざはひに追及れてたふさるべし
Psalms 140:12 われは苦しむものの訴とまづしきものの義とをヱホバの守りたまふを知る
Psalms 140:13 義者はかならず聖名にかんしやし直者はみまへに住ん
Psalms 141:1 ダビデのうた ヱホバよ我なんぢを呼ふ ねがはくは速かにわれにきたりたまへ われ汝をよばふときわが聲に耳をかたぶけたまへ
Psalms 141:2 われは薫物のごとくにわが祈をみまへにささげ 夕のそなへものの如くにわが手をあげて聖前にささげんことをねがふ
Psalms 141:3 ヱホバよねがはくはわが口に門守をおきて わがくちびるの戸をまもりたまへ
Psalms 141:4 惡事にわがこころを傾かしめて邪曲をおこなふ者とともに惡きわざにあづからしめ給ふなかれ 又かれらの珍饈をくらはしめたまふなかれ
Psalms 141:5 義者われをうつとも我はこれを愛しみとしその我をせむるを頭のあぶらとせん わが頭はこれを辭まず かれらが禍害にあふときもわが祈はたえじ
Psalms 141:6 その審士ははほの崕になげられん かれらわがことばの甘美によりて聴ことをすべし
Psalms 141:7 人つちを耕しうがつがごとく我儕のほねははかの口にちらさる
Psalms 141:8 されど主ヱホバよわが目はなほ汝にむかふ 我なんぢに依頼めり ねがはくはわが霊魂をともしきままに捨おきたまなかれ
Psalms 141:9 我をまもりてかれらがわがためにまうくる羂とよこしまを行ふものの機とをまぬかれしめたまへ
Psalms 141:10 われは全くのがれん あしきものをおのれの網におちいらしめたまへ
Psalms 142:1 ダビデが洞にありしときよみたる教へのうたなり祈なり われ聲をいだしてヱホバによばはり 聲をいだしてヱホバにこひもとむ
Psalms 142:2 われはその聖前にわが歎息をそそぎいだし そのみまへにわが患難をあらはす
Psalms 142:3 わが霊魂わがうちにきえうせんとするときも汝わがみちを識たまへり 人われをとらへんとてわがゆくみちに羂をかくせり
Psalms 142:4 願くはわがみぎの手に目をそそぎて見たまへ 一人だに我をしるものなし われには避所なくまたわが霊魂をかへりみる人なし
Psalms 142:5 ヱホバよわれ汝をよばふ 我いへらく汝はわがさけどころ有生の地にてわがうべき分なりと
Psalms 142:6 ねがはくはわが号呼にみこころをとめたまへ われいたく卑くせられたればなり 我をせむる者より助けいだしたまへ 彼等はわれにまさりて強ければなり
Psalms 142:7 願くはわがたましひを囹圄よりいだし われに聖名を感謝せしめたまへ なんぢ豊にわれを待ひたまふべければ 義者われをめぐらん
Psalms 143:1 ダビデのうた ヱホバよねがはくはわが祈をきき わが懇求にみみをかたぶけたまへ なんぢの眞実なんぢの公義をもて我にこたへたまへ
Psalms 143:2 汝のしもべの審判にかかつらひたまふなかれ そはいけるもの一人だにみまへに義とせらるるはなし
Psalms 143:3 仇はわがたましひを迫めわが生命を地にうちすて 死てひさしく世を經たるもののごとく我をくらき所にすまはせたり
Psalms 143:4 又わがたましひはわが衷にきえうせんとし わが心はわがうちに曠さびれたり
Psalms 143:5 われはいにしへの日をおもひいで 汝のおこなひたまひし一切のことを考へ なんぢの手のみわざをおもふ
Psalms 143:6 われ汝にむかひてわが手をのべ わがたましひは燥きおとろへたる地のごとく汝をしたへり セラ
Psalms 143:7 ヱホバよ速かにわれにこたへたまへ わが霊魂はおとろふ われに聖顔をかくしたまふなかれ おそらくはわれ穴にくだるもののごとくならん
Psalms 143:8 朝になんぢの仁慈をきかしめたまへ われ汝によりたのめばなり わが歩むべき途をしらせたまへ われわが霊魂をなんぢに挙ればなり
Psalms 143:9 ヱホバよねがはくは我をわが仇よりたすけ出したまへ われ匿れんとして汝にはしりゆく
Psalms 143:10 汝はわが神なり われに聖旨をおこなふことををしへたまへ 恵ふかき聖霊をもて我をたひらかなる國にみちびきたまヘ
Psalms 143:11 ヱホバよねがはくは聖名のために我をいかし なんぢの義によりてわがたましひを患難よりいだしたまへ
Psalms 143:12 又なんぢの仁慈によりてわが仇をたち 霊魂をくるしむる者をことごとく滅したまへ そは我なんぢの僕なり
Psalms 144:1 ダビデのうた 戦することをわが手にをしへ 闘ふことをわが指にをしへたまふ わが磐ヱホバはほむべきかな
Psalms 144:2 ヱホバはわが仁慈わが城なり わがたかき櫓われをすくひたまふ者なり わが盾わが依頼むものなり ヱホバはわが民をわれにしたがはせたまふ
Psalms 144:3 ヱホバよ人はいかなる者なれば之をしり 人の子はいかなる者なれば之をみこころに記たまふや
Psalms 144:4 人は氣息にことならず その存らふる日はすぎゆく影にひとし
Psalms 144:5 ヱホバよねがはくはなんぢの天をたれてくだり 手を山につけて煙をたたしめたまへ
Psalms 144:6 電光をうちいだして彼等をちらし なんぢの矢をはなちてかれらを敗りたまへ
Psalms 144:7 上より手をのべ我をすくひて 大水より外人の手よりたすけいだしたまへ
Psalms 144:8 かれらの口はむなしき言をいひ その右の手はいつはりのみぎの手なり
Psalms 144:9 神よわれ汝にむかひて新らしき歌をうたひ 十絃の琴にあはせて汝をほめうたはん
Psalms 144:10 なんぢは王たちに救をあたへ 僕ダビデをわざはひの劍よりすくひたまふ神なり
Psalms 144:11 ねがはくは我をすくひて外人の手よりたすけいだしたまへ かれらの口はむなしき言をいひ その右の手はいつはりのみぎの手なり
Psalms 144:12 われらの男子はとしわかきとき育ちたる草木のごとくわれらの女子は宮のふりにならひて刻みいだしし隅の石のごとくならん
Psalms 144:13 われらの倉はみちたらひてさまざまのものをそなへ われらの羊は野にて千萬の子をうみ
Psalms 144:14 われらの牡牛はよく物をおひ われらの衢にはせめいることなく亦おしいづることなく叫ぶこともなからん
Psalms 144:15 かかる状の民はさいはひなり ヱホバをおのが神とする民はさいはひなり
Psalms 145:1 ダビデの讃美のうた わがかみ王よわれ汝をあがめ 世かぎりなく聖名をほめまつらん
Psalms 145:2 われ日ごとに汝をほめ世々かぎりなく聖名をはめたたへん
Psalms 145:3 ヱホバは大にましませば最もほむべきかな その大なることは尋ねしることかたし
Psalms 145:4 この代はかの代にむかひてなんぢの事跡をほめたたへ なんぢの大能のはたらきを宣つたへん
Psalms 145:5 われ汝のほまれの榮光ある稜威となんぢの奇しきみわざとを深くおもはん
Psalms 145:6 人はなんぢのおそるべき動作のいきほひをかたり 我はなんぢの大なることを宣つたへん
Psalms 145:7 かれらはなんぢの大なる恵の跡をいひいで なんぢの義をほめうたはん
Psalms 145:8 ヱホバは恵ふかく憐憫みち また怒りたまふことおそく憐憫おほいなり
Psalms 145:9 ヱホバはよろづの者にめぐみあり そのふかき憐憫はみわざの上にあまねし
Psalms 145:10 ヱホバよ汝のすべての事跡はなんぢに感謝し なんぢの聖徒はなんぢをほめん
Psalms 145:11 かれらは御國のえいくわうをかたり汝のみちからを宣つたへて
Psalms 145:12 その大能のはたらきとそのみくにの榮光あるみいづとを人の子輩にしらすべし
Psalms 145:13 なんぢの國はとこしへの國なり なんぢの政治はよろづ代にたゆることなし
Psalms 145:14 ヱホバはすべて倒れんとする者をささへ かがじものを直くたたしめたまふ
Psalms 145:15 よろづのものの目はなんぢを待 なんぢは時にしたがひてかれらに糧をあたへ給ふ
Psalms 145:16 なんぢ手をひらきてもろもろの生るものの願望をあかしめたまふ
Psalms 145:17 ヱホバはそのすべての途にただしく そのすべての作爲にめぐみふかし
Psalms 145:18 すべてヱホバをよぶもの 誠をもて之をよぶものに ヱホバは近くましますなり
Psalms 145:19 ヱホバは已をおそるるものの願望をみちたらしめ その号呼をききて之をすくひたまふ
Psalms 145:20 ヱホバはおのれを愛しむものをすべて守りたまへど 惡者をことごとく滅したまはん
Psalms 145:21 わが口はヱホバの頌美をかたり よろづの民は世々かぎりなくそのきよき名をほめまつるべし
Psalms 146:1 ヱホバを讃稱へよ わがたましひよヱホバをほめたたへよ
Psalms 146:2 われ生るかぎりはヱホバをほめたたへ わがながらふるほどはわが神をほめうたはん
Psalms 146:3 もろもろの君によりたのむことなく 人の子によりたのむなかれ かれらに助あることなし
Psalms 146:4 その氣息いでゆけばかれ土にかへる その日かれがもろもろの企図はほろびん
Psalms 146:5 ヤコブの神をおのが助としその望をおのが神ヱホバにおくものは福ひなり
Psalms 146:6 此はあめつちと海とそのなかなるあらゆるものを造り とこしへに眞實をまもり
Psalms 146:7 虐げらるるもののために審判をおこなひ 飢ゑたるものに食物をあたへたまふ神なり ヱホバはとらはれたる人をときはなちたまふ
Psalms 146:8 ヱホバはめしひの目をひらき ヱホバは屈者をなほくたたせ ヱホバは義しきものを愛しみたまふ
Psalms 146:9 ヱホバは他邦人をまもり 孤子と寡婦とをささへたまふ されど惡きものの徑はくつがへしたまふなり
Psalms 146:10 ヱホバはとこしへに統御めたまはん シオンよなんぢの神はよろづ代まで統御めたまはん ヱホバをほめたたへよ
Psalms 147:1 ヱホバをほめたたへよ われらの神をほめうたふは善ことなり樂しきことなり 稱へまつるはよろしきに適へり
Psalms 147:2 ヱホバはヱルサレムをきづきイスラエルのさすらへる者をあつめたまふ
Psalms 147:3 ヱホバは心のくだけたるものを醫しその傷をつつみたまふ
Psalms 147:4 ヱホバはもろもろの星の數をかぞへてすべてこれに名をあたへたまふ
Psalms 147:5 われらの主はおほいなりその能力もまた大なりその智慧はきはまりなし
Psalms 147:6 ヱホバは柔和なるものをささへ屈きものを地にひきおとし給ふ
Psalms 147:7 ヱホバに感謝してうたへ琴にあはせてわれらの神をほめうたヘ
Psalms 147:8 ヱホバは雲をもて天をおほひ地のために雨をそなへ もろもろの山に草をはえしめ
Psalms 147:9 くひものを獣にあたへ並なく小鴉にあたへたまふ
Psalms 147:10 ヱホバは馬のちからを喜びたまはず 人の足をよみしたまはず
Psalms 147:11 ヱホバはおのれを畏るるものと おのれの憐憫をのぞむものとを好したまふ
Psalms 147:12 ヱルサレムよヱホバをほめたたへよ シオンよなんぢの神をほめたたへよ
Psalms 147:13 ヱホバはなんぢの門の関木をかたうし 汝のうちなる子輩をさきはひ給ひたればなり
Psalms 147:14 ヱホバは汝のすべての境にやはらぎをあたへ いと嘉麥をもて汝をあかしめたまふ
Psalms 147:15 ヱホバはそのいましめを地にくだしたまふ その聖言はいとずみやかにはしる
Psalms 147:16 ヱホバは雪をひつじの毛のごとくふらせ霜を灰のごとくにまきたまふ
Psalms 147:17 ヱホバは氷をつちくれのごとくに擲ちたまふ たれかその寒冷にたふることをえんや
Psalms 147:18 ヱホバ聖言をくだしてこれを消し その風をふかしめたまへばもろもろの水はながる
Psalms 147:19 ヱホバはそのみことばをヤコブに示し そのもろもろの律法とその審判とをイスラエルにしめしたまふ
Psalms 147:20 ヱホバはいづれの國をも如此あしらひたまひしにあらず ヱホバのもろもろの審判をかれらはしらざるなり ヱホバをほめたたへよ
Psalms 148:1 ヱホバをほめたたへよ もろもろの天よりヱホバをほめたたへよ もろもろの高所にてヱホバをほめたたへよ
Psalms 148:2 その天使よみなヱホバをほめたたへよ その萬軍よみなヱホバをほめたたへよ
Psalms 148:3 日よ月よヱホバをほめたたへよ ひかりの星よみなヱホバをほめたたへよ
Psalms 148:4 もろもろの天のてんよ 天のうへなる水よ ヱホバをほめたたへよ
Psalms 148:5 これらはみなヱホバの聖名をほめたたふべし そはヱホバ命じたまひたればかれらは造られたり
Psalms 148:6 ヱホバまた此等をいやとほながに立たまひたり 又すぎうすまじき詔命をくだしたまへり
Psalms 148:7 龍よ すべての淵よ地よりヱホバをほめたたへよ
Psalms 148:8 火よ霰よ雪よ霧よみことばにしたがふ狂風よ
Psalms 148:9 もろもろの山もろもろのをか實をむすぶ樹すべての香柏よ
Psalms 148:10 獣もろもろの牲畜はふもの翼ある鳥よ
Psalms 148:11 地の王たち もろもろのたみ 地の諸侯よ 地のもろもろの審士よ
Psalms 148:12 少きをのこ 若きをみな 老たる人 をさなきものよ
Psalms 148:13 みなヱホバの聖名をほめたたふべし その聖名はたかくして類なく そのえいくわうは地よりも天よりもうへにあればなり
Psalms 148:14 ヱホバはその民のために一つの角をあげたまへり こはそもろもろの聖徒のほまれ ヱホバにちかき民なるイスラエルの子輩のほまれなり ヱホバを讃稱へよ
Psalms 149:1 ヱホバをほめたたへよ ヱホバに對ひてあたらしき歌をうたへ 聖徒のつどひにてヱホバの頌美をうたヘ
Psalms 149:2 イスラエルはおのれを造りたまひしものをよろこび シオンの子輩は已が王のゆゑによりて樂しむべし
Psalms 149:3 かれらをどりつつその聖名をほめたたへ 琴鼓にてヱホバをほめうたべし
Psalms 149:4 ヱホバはおのが民をよろこび 救にて柔和なるものを美しくしたまへばなり
Psalms 149:5 聖徒はえいくわうの故によりてよろこび その寝牀にてよろこびうたふべし
Psalms 149:6 その口に神をほむるうたあり その手にもろはの劍あり
Psalms 149:7 こはもろもろの國に仇をかへし もろもろの民をつみなひ
Psalms 149:8 かれらの王たちを鏈にてかれらの貴人をくろかねの械にていましめ
Psalms 149:9 録したる審判をかれらに行ふべきためなり 斯るほまれはそのもろもろの聖徒にあり ヱホバをほめたたへよ
Psalms 150:1 ヱホバをほめたたへよ その聖所にて神をほめたたへよ その能力のあらはるる穹蒼にて神をほめたたへよ
Psalms 150:2 その大能のはたらきのゆゑをもて神をほめたたへよ その秀ておほいなることの故によりてヱホバをほめたたへよ
Psalms 150:3 ラッパの聲をもて神をほめたたへよ 筝と琴とをもて神をほめたたへよ
Psalms 150:4 つづみと蹈舞とをもて神をほめたたへよ 絃籘をもて神をほめたたへよ
Psalms 150:5 音のたかき鐃鈸をもて神をほめたたへよ なりひびく鐃鈸をもて神をほめたたへよ
Psalms 150:6 氣息あるものは皆ヤハをほめたたふべし なんぢらヱホバをほめたたへよ
Proverbs 0:0 箴言
Proverbs 1:1 ダビデの子イスラエルの王ソロモンの箴言
Proverbs 1:2 こは人に智慧と訓誨とをしらしめ哲言を暁らせ
Proverbs 1:3 さとき訓と公義と公平と正直とをえしめ
Proverbs 1:4 拙者にさとりを與へ少者に知識と謹愼とを得させん爲なり
Proverbs 1:5 智慧ある者は之を聞て學にすすみ 哲者は智略をうべし
Proverbs 1:6 人これによりて箴言と譬喩と智慧ある者の言とその隠語とを悟らん
Proverbs 1:7 ヱホバを畏るるは知識の本なり 愚なる者は智慧と訓誨とを軽んず
Proverbs 1:8 我が子よ汝の父の教をきけ 汝の母の法を棄ることなかれ
Proverbs 1:9 これ汝の首の美しき冠となり 汝の項の妝飾とならん
Proverbs 1:10 わが子よ惡者なんぢ誘ふとも從ふことなかれ
Proverbs 1:11 彼等なんぢにむかひて請ふ われらと偕にきたれ 我儕まちぶせして人の血を流し 無辜ものを故なきに伏てねらひ
Proverbs 1:12 陰府のごとく彼等を活たるままにて呑み 壮健なる者を墳に下る者のごとくになさん
Proverbs 1:13 われら各様のたふとき財貨をえ 奪ひ取たる物をもて我儕の家に盈さん
Proverbs 1:14 汝われらと偕に籤をひけ 我儕とともに一の金嚢を持べしと云とも
Proverbs 1:15 我が子よ彼等とともに途を歩むことなかれ 汝の足を禁めてその路にゆくこと勿れ
Proverbs 1:16 そは彼らの足は惡に趨り 血を流さんとて急げばなり
Proverbs 1:17 (すべて鳥の目の前にて羅を張は徒労なり)
Proverbs 1:18 彼等はおのれの血のために埋伏し おのれの命をふしてねらふ
Proverbs 1:19 凡て利を貧る者の途はかくの如し 是その持主をして生命をうしなはしむるなり
Proverbs 1:20 智慧外に呼はり衝に其聲をあげ
Proverbs 1:21 熱閙しき所にさけび 城市の門の口邑の中にその言をのぺていふ
Proverbs 1:22 なんぢら拙者のつたなきを愛し 嘲笑者のあざけりを樂しみ 愚なる者の知識を惡むは何時までぞや
Proverbs 1:23 わが督斥にしたがひて心を改めよ 視よわれ我が霊を汝らにそそぎ 我が言をなんぢらに示さん
Proverbs 1:24 われ呼たれども汝らこたへず 手を伸たれども顧る者なく
Proverbs 1:25 かへつて我がすべての勧告をすて我が督斥を受ざりしに由り
Proverbs 1:26 われ汝らが禍災にあふとき之を笑ひ 汝らの恐懼きたらんとき嘲るべし
Proverbs 1:27 これは汝らのおそれ颶風の如くきたり 汝らのほろび颺風の如くきたり 艱難とかなしみと汝らにきたらん時なり
Proverbs 1:28 そのとき彼等われを呼ばん 然れどわれ應へじ 只管に我を求めん されど我に遇じ
Proverbs 1:29 かれら知識を憎み又ヱホバを畏るることを悦ばず
Proverbs 1:30 わが勤に從はず凡て我督斥をいやしめたるによりて
Proverbs 1:31 己の途の果を食ひおのれの策略に飽べし
Proverbs 1:32 拙者の違逆はおのれを殺し 愚なる者の幸福はおのれを滅さん
Proverbs 1:33 されど我に聞ものは平穏に住ひかつ禍害にあふ恐怖なくして安然ならん
Proverbs 2:1 我が子よ汝もし我が言をうけ 我誡命を汝のこころに蔵め
Proverbs 2:2 斯て汝の耳を智慧に傾け汝の心をさとりにむけ
Proverbs 2:3 もし知識を呼求め聡明をえんと汝の聲をあげ
Proverbs 2:4 銀の如くこれを探り 秘れたる寳の如くこれを尋ねば
Proverbs 2:5 汝ヱホバを畏るることを暁り 神を知ることを得べし
Proverbs 2:6 そはヱホバは智慧をあたへ 知識と聡明とそのロより出づればなり
Proverbs 2:7 かれは義人のために聡明をたくはへ 直く行む者の盾となる
Proverbs 2:8 そは公平の途をたもち その聖徒の途すぢを守りたまへばなり
Proverbs 2:9 斯て汝はつひに公義と公平と正直と一切の善道を暁らん
Proverbs 2:10 すなはち智慧なんぢの心にいり 知識なんぢの霊魂に樂しからん
Proverbs 2:11 謹愼なんぢを守り 聡明なんぢをたもちて
Proverbs 2:12 惡き途よりずくひ虚偽をかたる者より救はん
Proverbs 2:13 彼等は直き途をはなれて幽暗き路に行み
Proverbs 2:14 惡を行ふを樂しみ 惡者のいつはりを悦び
Proverbs 2:15 その途はまがり その行爲は邪曲なり
Proverbs 2:16 聡明はまた汝を妓女より救ひ 言をもて諂ふ婦より救はん
Proverbs 2:17 彼はわかき時の侶をすて その神に契約せしことを忘るるなり
Proverbs 2:18 その家は死に下り その途は陰府に赴く
Proverbs 2:19 凡てかれにゆく者は歸らず また生命の途に達らざるなり
Proverbs 2:20 聡明汝をたもちてよき途に行ませ 義人の途を守らしめん
Proverbs 2:21 そは義人は地にながらへをり 完全者は地に止らん
Proverbs 2:22 されど惡者は地より亡され悸逆者は地より抜さらるべし
Proverbs 3:1 我が子よわが法を忘るるなかれ 汝の心にわが誡命をまもれ
Proverbs 3:2 さらば此事は汝の日をながくし生命の年を延べ平康をなんぢに加ふべし
Proverbs 3:3 仁慈と眞實とを汝より離すことなかれ 之を汝の項にむすび これを汝の心の碑にしるせ
Proverbs 3:4 さらばなんぢ神と人との前に恩寵と好名とを得べし
Proverbs 3:5 汝こころを盡してヱホバに倚頼め おのれの聡明に倚ることなかれ
Proverbs 3:6 汝すべての途にてヱホバをみとめよ さらばなんぢの途を直くしたまふべし
Proverbs 3:7 自から看て聡明とする勿れ ヱホバを畏れて惡を離れよ
Proverbs 3:8 これ汝の身に良薬となり汝ら骨に滋潤とならん
Proverbs 3:9 汝の貨財と汝がすべての産物の初生をもてヱホバをあがめよ
Proverbs 3:10 さらば汝の倉庫はみちて余り 汝の酒醡は新しき酒にて溢れん
Proverbs 3:11 我子よ汝ヱホバの懲治をかろんずる勿れ その譴責を受くるを厭ふこと勿れ
Proverbs 3:12 それヱホバはその愛する者をいましめたまふ あたかも父のその愛する子を譴むるが如し
Proverbs 3:13 智慧を求め得る人および聡明をうる人は福なり
Proverbs 3:14 そは智慧を獲るは銀を獲るに愈りその利は精金よりも善ければなり
Proverbs 3:15 智慧は眞珠よりも尊し 汝の凡ての財貨も之と比ぶるに足らず
Proverbs 3:16 其右の手には長壽あり その左の手には富と尊貴とあり
Proverbs 3:17 その途は樂しき途なり その徑すぢは悉く平康し
Proverbs 3:18 これは執る者には生命の樹なり これ持ものは福なり
Proverbs 3:19 ヱホバ智慧をもて地をさだめ 聡明をもて天を置たまへり
Proverbs 3:20 その知識によりて海洋はわきいで 雲は露をそそぐなり
Proverbs 3:21 我が子よこれらを汝の眼より離す勿れ 聡明と謹愼とを守れ
Proverbs 3:22 然ばこれは汝り霊魂の生命となり汝の項の牧飾とならん
Proverbs 3:23 かくて汝やすらかに汝の途をゆかん 又なんぢの足つまづかじ
Proverbs 3:24 なんぢ臥とき怖るるところあらず 臥ときは酣く睡らん
Proverbs 3:25 なんぢ猝然なる恐懼をおそれず 惡者の滅亡きたる時も之を怖るまじ
Proverbs 3:26 そはヱホバは汝の倚頼むものにして汝の足を守りてとらはれしめたまはざるべければなり
Proverbs 3:27 汝の手善をなす力あらば之を爲すべき者に爲さざること勿れ
Proverbs 3:28 もし汝に物あらば汝の鄰に向ひ 去て復來れ明日われ汝に予へんといふなかれ
Proverbs 3:29 汝の鄰なんぢの傍に安らかに居らば之にむかひて惡を謀ること勿れ
Proverbs 3:30 人もし汝に惡を爲さすば故なく之と争ふこと勿れ
Proverbs 3:31 暴虐人を羨むことなく そのすべての途を好とすることなかれ
Proverbs 3:32 そは邪曲なる者はヱホバに惡まるればなり されど義者はその親き者とせらるべし
Proverbs 3:33 ヱホバの呪詛は惡者の家にあり されど義者の室はかれにめぐまる
Proverbs 3:34 彼は嘲笑者をあざけり 謙る者に恩恵をあたへたまふ
Proverbs 3:35 智者は尊榮をえ 愚なる者は羞辱之をとりさるべし
Proverbs 4:1 小子等よ父の訓をきけ 聡明を知んために耳をかたむけよ
Proverbs 4:2 われ善教を汝らにさづく わが律を棄つることなかれ
Proverbs 4:3 われも我が父には子にして 我が母の目には獨の愛子なりき
Proverbs 4:4 父われを教へていへらく我が言を汝の心にとどめ わが誡命をまもれ 然らば生べし
Proverbs 4:5 智慧をえ聡明をえよ これを忘るるなかれ また我が口の言に身をそむくるなかれ
Proverbs 4:6 智慧をすつることなかれ彼なんぢを守らん 彼を愛せよ彼なんぢを保たん
Proverbs 4:7 智慧は第一なるものなり 智慧をえよ 凡て汝の得たる物をもて聡明をえよ
Proverbs 4:8 彼を尊べ さらば彼なんぢを高く挙げん もし彼を懐かば彼汝を尊榮からしめん
Proverbs 4:9 かれ美しき飾を汝の首に置き 榮の冠弁を汝に予へん
Proverbs 4:10 我が子よきけ 我が言を納れよ さらば汝の生命の年おほからん
Proverbs 4:11 われ智慧の道を汝に教へ義しき徑筋に汝を導けり
Proverbs 4:12 歩くとき汝の歩は艱まず 趨るときも躓かじ
Proverbs 4:13 堅く訓誨を執りて離すこと勿れ これを守れ これは汝の生命なり
Proverbs 4:14 邪曲なる者の途に入ることなかれ 惡者の路をあやむこと勿れ
Proverbs 4:15 これを避よ 過ること勿れ 離れて去れ
Proverbs 4:16 そは彼等は惡を爲さざれば睡らず 人を躓かせざればいねず
Proverbs 4:17 不義のパンを食ひ暴虐の洒を飮めばなり
Proverbs 4:18 義者の途は旭光のごとし いよいよ光輝をまして昼の正午にいたる
Proverbs 4:19 惡者の途は幽冥のごとし 彼らはその蹟くもののなになるを知ざるなり
Proverbs 4:20 わが子よ我が言をきけ 我が語るところに汝の耳を傾けよ
Proverbs 4:21 之を汝の目より離すこと勿れ 汝の心のうちに守れ
Proverbs 4:22 是は之を得るものの生命にしてまたその全體の良薬なり
Proverbs 4:23 すべての操守べき物よりもまさりて汝の心を守れ そは生命の流これより出ればなり
Proverbs 4:24 虚偽の口を汝より棄さり 惡き口唇を汝より遠くはなせ
Proverbs 4:25 汝の目は正く視 汝の眼瞼は汝の前を眞直に視るべし
Proverbs 4:26 汝の足の徑をかんがへはかり 汝のすべての道を直くせよ
Proverbs 4:27 右にも左にも偏ること勿れ汝の足を惡より離れしめよ
Proverbs 5:1 我が子よわが智慧をきけ 汝の耳をわが聡明に傾け
Proverbs 5:2 しかしてなんぢ謹愼を守り汝の口唇に知識を保つべし
Proverbs 5:3 娼妓の口唇は蜜を滴らし 其口は脂よりも滑なり
Proverbs 5:4 されど其終は茵蔯の如くに苦く兩刃の劍の如くに利し
Proverbs 5:5 その足は死に下り その歩は陰府に趣く
Proverbs 5:6 彼は生命の途に入らず 其徑はさだかならねども自ら之を知ざるなり
Proverbs 5:7 小子等よいま我にきけ 我が口の言を棄つる勿れ
Proverbs 5:8 汝の途を彼より遠く離れしめよ 其家の門に近づくことなかれ
Proverbs 5:9 恐くは汝の榮を他人にわたし 汝の年を憐憫なき者にわたすにいたらん
Proverbs 5:10 恐くは他人なんぢの資財によりて盈され 汝の労苦は他人の家にあらん
Proverbs 5:11 終にいたりて汝のなんぢの體亡ぶる時なんぢ泣悲みていはん
Proverbs 5:12 われ教をいとひ 心に譴責をかろんじ
Proverbs 5:13 物が師の聲をきかず 我を教る者に耳を傾けず
Proverbs 5:14 あつまりの中会衆のうちにてほとんど諸の惡に陥れりと
Proverbs 5:15 汝おのれの水溜より水を飮み おのれの泉より流るる水をのめ
Proverbs 5:16 汝の流をほかに溢れしめ 汝の河の水を衢に流れしむべけんや
Proverbs 5:17 これを自己に歸せしめ 他人をして汝と偕にこに與らしむること勿れ
Proverbs 5:18 汝の泉に福祉を受しめ 汝の少き時の妻を樂しめ
Proverbs 5:19 彼は愛しき麀のごとく美しき鹿の如し その乳房をもて常にたれりとし その愛をもて常によろこべ
Proverbs 5:20 我子よ何なればあそびめをたのしみ 淫婦の胸を懐くや
Proverbs 5:21 それ人の途はヱホバの目の前にあり 彼はすべて其行爲を量りたまふ
Proverbs 5:22 惡者はおのれの愆にとらへられ その罪の縄に繋る
Proverbs 5:23 彼は訓誨なきによりて死 その多くの愚なることに由りて亡ぶべし
Proverbs 6:1 我子よ汝もし朋友のために保證をなし 他人のために汝の手を拍ば
Proverbs 6:2 汝その口の言によりてわなにかかり その口の言によりてとらへらるるなり
Proverbs 6:3 我子よ汝友の手に陥りしならば斯して自ら救へ すなはち往て自ら謙たり只管なんぢの友に求め
Proverbs 6:4 汝の目をして睡らしむることなく 汝の眼瞼をして閉しむること勿れ
Proverbs 6:5 かりうどの手より鹿ののがるるごとく 鳥とる者の手より鳥ののがるる如くして みづからを救へ
Proverbs 6:6 惰者よ蟻にゆき其爲すところを観て智慧をえよ
Proverbs 6:7 蟻は首領なく有司なく君主なけれども
Proverbs 6:8 夏のうちに食をそなへ 収穫のときに糧を斂む
Proverbs 6:9 惰者よ汝いづれの時まで臥息むや いづれの時まで睡りて起ざるや
Proverbs 6:10 しぼらく臥ししばらく睡り 手を叉きてまた片時やすむさらば
Proverbs 6:11 汝の貧窮は盗人の如くきたり汝の欠乏は兵士の如くきたるべし
Proverbs 6:12 邪曲なる人あしき人は虚偽の言をもて事を行ふ
Proverbs 6:13 彼は眼をもて眴せし 脚をもてしらせ 指をもて示す
Proverbs 6:14 その心に虚偽をたもち 常に惡をはかり 争端を起す
Proverbs 6:15 この故にその禍害にはかに來り 援助なくして立刻に敗らるべし
Proverbs 6:16 ヱホバの憎みたまふもの六あり 否その心に嫌ひたまふもの七あり
Proverbs 6:17 即ち驕る目いつはりをいふ舌 つみなき人の血を流す手
Proverbs 6:18 惡き謀計をめぐらす心 すみやかに惡に趨る足
Proverbs 6:19 詐偽をのぶる證人 および兄弟のうちに争端をおこす者なり
Proverbs 6:20 我子よ汝の父の誠命を守り 汝の母の法を棄る勿れ
Proverbs 6:21 常にこれを汝の心にむす び之をなんぢの頚に佩よ
Proverbs 6:22 これは汝のゆくとき汝をみちびき 汝の寝るとき汝をまもり 汝の寤るとき汝とかたらん
Proverbs 6:23 それ誡命は燈火なり 法は光なり 教訓の懲治は生命の道なり
Proverbs 6:24 これは汝をまもりて惡き婦よりまぬかれしめ 汝をたもちて淫婦の舌の諂媚にまどはされざらしめん
Proverbs 6:25 その艶美を心に戀ふことなかれ その眼瞼に捕へらるること勿れ
Proverbs 6:26 それ娼妓のために人はただ僅に一撮の糧をのこすのみにいたる 又淫婦は人の尊き生命を求むるなり
Proverbs 6:27 人は火を懐に抱きてその衣を焚れざらんや
Proverbs 6:28 人は熱火を踏て其足を焚れざらんや
Proverbs 6:29 その隣の妻と姦淫をおこなふ者もかくあるべし 凡て之に捫る者は罪なしとせられず
Proverbs 6:30 竊む者もし飢しときに其飢を充さん爲にぬすめるならば人これを藐ぜじ
Proverbs 6:31 もし捕へられなばその七倍を償ひ其家の所有をことごとく出さざるべからず
Proverbs 6:32 婦と姦淫をおこなふ者は智慧なきなり 之を行ふ者はおのれの霊魂を亡し
Proverbs 6:33 傷と陵辱とをうけて其恥を雪ぐこと能はず
Proverbs 6:34 妒忌その夫をして忿怒をもやさしむればその怨を報ゆるときかならず寛さじ
Proverbs 6:35 いかなる贖物をも顧みず 衆多の饋物をなすともやはらがざるべし
Proverbs 7:1 我子よわが言をまもり我が誡命を汝の心にたくはへよ
Proverbs 7:2 我が誠命をまもりで生命をえよ 我法を守ること汝の眸子を守るが如くせよ
Proverbs 7:3 これを汝の指にむすび これを汝の心の碑に銘せ
Proverbs 7:4 なんぢ智慧にむかひて汝はわが姉妹なりといひ 明理にむかひて汝はわが友なりといへ
Proverbs 7:5 さらば汝をまもりて淫婦にまよはざらしめ 言をもて媚る娼妓にとほざからしめん
Proverbs 7:6 われ我室の牖により檑子よりのぞきて
Proverbs 7:7 拙き者のうち幼弱者のうちに一人の智慧なき者あるを観たり
Proverbs 7:8 彼衢をすぎ婦の門にちかづき其家の路にゆき
Proverbs 7:9 黄昏に半宵に夜半に黒暗の中にあるけり
Proverbs 7:10 時に娼妓の衣を着たる狡らなる婦かれにあふ
Proverbs 7:11 この婦は譁しくしてつつしみなく 其足は家に止らず
Proverbs 7:12 あるときは衢にあり 或時はひろばにあり すみずみにたちて人をうかがふ
Proverbs 7:13 この婦かれをひきて接吻し恥しらぬ面をもていひけるは
Proverbs 7:14 われ酬恩祭を献げ今日すでにわが誓願を償せり
Proverbs 7:15 これによりて我なんぢを迎へんとていで 汝の面をたづねて汝に逢へり
Proverbs 7:16 わが榻には美しき褥およびエジプトの文枲をしき
Proverbs 7:17 沒薬蘆薈桂皮をもて我が榻にそそげり
Proverbs 7:18 來れわれら詰朝まで情をつくし愛をかよはして相なぐさめん
Proverbs 7:19 そは夫は家にあらず遠く旅立して
Proverbs 7:20 手に金嚢をとれり 望月ならでは家に歸らじと
Proverbs 7:21 多の婉言をもて惑し口唇の諂媚をもて誘へ
Proverbs 7:22 わかき人ただちにこれに隨へり あたかも牛の宰地にゆくが如く 愚なる者の桎梏をかけらるる爲にゆくが如し
Proverbs 7:23 遂には矢その肝を刺さん 烏の速かに羅にいりてその生命を喪ふに至るを知ざるがごとし
Proverbs 7:24 小子等よいま我にきけ 我が口の言に耳を傾けよ
Proverbs 7:25 なんぢの心を淫婦の道にかたむくること勿れ またこれが徑に迷ふこと勿れ
Proverbs 7:26 そは彼は多の人を傷つけて仆せり 彼に殺されたる者ぞ多かる
Proverbs 7:27 その家は陰府の途にして死の室に下りゆく
Proverbs 8:1 智慧は呼はらざるか 聡明は聲を出さざるか
Proverbs 8:2 彼は路のほとりの高處また街衝のなかに立ち
Proverbs 8:3 邑のもろもろの門 邑の口および門々の入口にて呼はりいふ
Proverbs 8:4 人々よわれ汝をよび 我が聲をもて人の子等をよぶ
Proverbs 8:5 拙き者よなんぢら聡明に明かなれ 愚なる者よ汝ら明かなる心を得よ
Proverbs 8:6 汝きけ われ善事をかたらん わが口唇をひらきて疋事をいださん
Proverbs 8:7 我が口は眞実を述べわが口唇はあしき事を憎むなり
Proverbs 8:8 わが口の言はみな義し そのうちに虚偽と奸邪とあることなし
Proverbs 8:9 是みな智煮の明かにするところ 知識をうる者の正とするところなり
Proverbs 8:10 なんぢら銀をうくるよりは我が教をうけよ 精金よりもむしろ知識をえよ
Proverbs 8:11 それ智慧は眞珠に愈れり 凡の寳も之に比ぶるに足らず
Proverbs 8:12 われ智慧は聡明をすみかとし 知識と謹愼にいたる
Proverbs 8:13 ヱホバを畏るるとは惡を憎むことなり 我は傲慢と驕奢 惡道と虚偽の口とを憎む
Proverbs 8:14 謀略と聡明は我にあり 我は了知なり 我は能力あり
Proverbs 8:15 我に由て王者は政をなし 君たる者は義しき律をたて
Proverbs 8:16 我によりて主たる者および牧伯たちなど瓦て地の審判人は世ををさむ
Proverbs 8:17 われを愛する者は我これを愛す 我を切に求むるものは我に遇ん
Proverbs 8:18 富と榮とは我にあり 貴き寳と公義とも亦然り
Proverbs 8:19 わが果は金よりも精舎よりも愈り わが利は精銀よりもよし
Proverbs 8:20 我は義しき道にあゆみ 公平なる路徑のなかを行む
Proverbs 8:21 これ我を愛する者に貨財をえさせ 又その庫を充しめん爲なり
Proverbs 8:22 ヱホバいにしへ其御わざをなしそめたまへる前に その道の始として我をつくりたまひき
Proverbs 8:23 永遠より元始より地の有ざりし前より我は立られ
Proverbs 8:24 いまだ海洋あらず いまだ大なるみづの泉あらざりしとき我すでに生れ
Proverbs 8:25 山いまださだめられず 陵いまだ有ざりし荊に我すずでに生れたり
Proverbs 8:26 即ち神いまだ地をも野をも地の塵の根元を石造り給はざりし時なり
Proverbs 8:27 かれ天をつくり海の面に穹蒼を張たまひしとき我かしこに在りき
Proverbs 8:28 彼うへに雲氣をかたく定め 淵の泉をつよくならしめ
Proverbs 8:29 海にその限界をたて 水をしてその岸を踰えざらしめ また地の基を定めたまへるとき
Proverbs 8:30 我はその傍にありて創造者となり 日々に欣び恒にその前に樂み
Proverbs 8:31 その地にて樂み又世の人を喜べり
Proverbs 8:32 されば小子等よ いま我にきけ わが道をまもる者は福ひなり
Proverbs 8:33 教をききて智慧をえよ 之を棄ることなかれ
Proverbs 8:34 凡そ我にきき 日々わが門の傍にまち わが戸口の柱のわきにたつ人は福ひなり
Proverbs 8:35 そは我を得る者は生命をえ ヱホバより恩寵を獲ればなり
Proverbs 8:36 我を失ふものは自己の生命を害ふ すべて我を惡むものは死を愛するなり
Proverbs 9:1 智慧はその家を建て その七の柱を砍成し
Proverbs 9:2 その畜を宰り その酒を混和せ その筵をそなへ
Proverbs 9:3 その婢女をつかはして邑の高處に呼はりいはしむ
Proverbs 9:4 拙者よここに來れと また智慧なき者にいふ
Proverbs 9:5 汝等きたりて我が糧を食ひ わがまぜあはせたる洒をのみ
Proverbs 9:6 拙劣をすてて生命をえ 聡明のみちを行め
Proverbs 9:7 嘲笑者をいましむる者は恥を己にえ 惡人を責むる者は疵を己にえん
Proverbs 9:8 嘲笑者を責むることなかれ 恐くは彼なんぢを惡まん 智慧ある者をせめよ 彼なんぢを愛せん
Proverbs 9:9 智慧ある者に授けよ 彼はますます智慧をえん 義者を教へよ 彼は知識に監まん
Proverbs 9:10 ヱホバを畏るることは智慧の根本なり 聖者を知るは聡明なり
Proverbs 9:11 我により汝の日は多くせられ 汝のいのちの年は増べし
Proverbs 9:12 汝もし智慧あらば自己のために智慧あるなり 汝もし嘲らば汝ひとり之を負ん
Proverbs 9:13 愚なる婦は嘩しく且つたなくして何事をも知らず
Proverbs 9:14 その家の門に坐し邑のたかき處にある座にすわり
Proverbs 9:15 道をますぐに過る往來の人を招きていふ
Proverbs 9:16 拙者よここに來れと また智慧な在りき人にむかひては之にいふ
Proverbs 9:17 竊みたる水は甘く密かに食ふ糧は美味ありと
Proverbs 9:18 彼處にある者は死し者その客は陰府のふかき處にあることを是等の人は知らざるなり
Proverbs 10:1 ソロモンの箴言 智慧ある子は父を欣ばす 愚なる子は母の憂なり
Proverbs 10:2 不義の財は益なし されど正義は救ひて死を脱かれしむ
Proverbs 10:3 ヱホバは義者の霊魂を餓ゑしめず 惡者にその欲するところを得ざらしむ
Proverbs 10:4 手をものうくして動くものは貧くなり 勤めはたらく者の手は富を得
Proverbs 10:5 夏のうちに斂むる者は智き子なり 収穫の時にねむる者は辱をきたす子なり
Proverbs 10:6 義者の首には福祉きたり 惡者の口は強暴を掩ふ
Proverbs 10:7 義者の名はた讃られ惡者の名は腐る
Proverbs 10:8 心の智き者は誡命を受く されど口の頑愚なる者は滅さる
Proverbs 10:9 直くあゆむ者はそのあゆむこと安し されどその途を曲ぐる者は知らるべし
Proverbs 10:10 眼をもて眴せする者は憂をおこし 口の頑愚なる者は亡さる
Proverbs 10:11 義者の口は生命の泉なり 惡者の口は強暴を掩ふ
Proverbs 10:12 怨恨は争端をおこし 愛はすべての愆を掩ふ
Proverbs 10:13 哲者のくちびるには智慧あり 智慧なき者の背のためには鞭あり
Proverbs 10:14 智慧ある者は知識をたくはふ 愚かなる者の口はいまにも滅亡をきたらす
Proverbs 10:15 富者の資財はその堅き城なり 貧者のともしきはそのほろびなり
Proverbs 10:16 義者が動作は生命にいたり 惡者の利得は罪にいたる
Proverbs 10:17 教をまもる者は生命の道にあり懲戒をすつる者はあやまりにおちいる
Proverbs 10:18 怨をかくす者には虚偽のくちびるあり 誹膀をいだす者は愚かなる者なり
Proverbs 10:19 言おほけれぼ罪なきことあたはず その口唇を禁むるものは智慧あり
Proverbs 10:20 義者の舌は精銀のごとし 惡者の心は値すくなし
Proverbs 10:21 義者の口唇はおほくの人をやしなひ 愚なる者は智慧なきに由て死ぬ
Proverbs 10:22 ヱホバの祝福は人を富す 人の労苦はこれに加ふるところなし
Proverbs 10:23 愚かなる者は惡をなすを戯れごとのごとくす 智慧のさとかる人にとりても是のごとし
Proverbs 10:24 惡者の怖るるところは自己にきたり 義者のねがふところはあたへらる
Proverbs 10:25 狂風のすぐるとき惡者は無に婦せん 義者は窮なくたもつ基のごとし
Proverbs 10:26 惰る者のこれを遣すものに於るは酢の歯に於るが如く煙の目に於るが如し
Proverbs 10:27 ヱホバを畏るることは人の日を多くす されど惡者の年はちぢめらる
Proverbs 10:28 義者の望は喜悦にいたり惡者の望は絶べし
Proverbs 10:29 ヱホバの途は直者の城となり 惡を行ふものの滅亡となる
Proverbs 10:30 義者は何時までも動かされず 惡者は地に住むことを得じ
Proverbs 10:31 義者の口は智慧をいだすなり 虚偽の舌は抜るべし
Proverbs 10:32 義者のくちびるは喜ばるべきことをわきまへ 惡者の口はいつはりを語る
Proverbs 11:1 いつはりの權衝はヱホバに惡まれ 義しき分銅は彼に欣ばる
Proverbs 11:2 驕傲きたれば辱も亦きたる謙だる者には智慧あり
Proverbs 11:3 直者の端荘は己を導き悖逆者の邪曲は己を亡す
Proverbs 11:4 寳は震怒の日に益なし されど正義は救ふて死をまぬかれしむ
Proverbs 11:5 完全者はその正義によりてその途を直くせられ 惡者はその惡によりて跌るべし
Proverbs 11:6 直者はその正義によりて救はれ 悸逆者は自己の惡によりて執へらる
Proverbs 11:7 惡人は死るときにその望たえ 不義なる者の望もまた絶べし
Proverbs 11:8 義者は艱難より救はれ 惡者はこれに代る
Proverbs 11:9 邪曲なる者は口をもてその鄰を亡す されど義しき者はその知識によりて救はる
Proverbs 11:10 義しきもの幸福を受ればその城邑に歓喜あり 惡きもの亡さるれば歓喜の聲おこる
Proverbs 11:11 城邑は直者の祝ふに倚て高く挙られ 惡者の口によりて亡さる
Proverbs 11:12 その鄰を侮る者は智慧なし 聡明人はその口を噤む
Proverbs 11:13 往て人の是非をいふ者は密事を洩し 心の忠信なる者は事を隠す
Proverbs 11:14 はかりごとなければ民たふれ 議士多ければ平安なり
Proverbs 11:15 他人のために保證をなす者は苦難をうけ 保證を嫌ふ者は平安なり
Proverbs 11:16 柔順なる婦は榮誉をえ 強き男子は資財を得
Proverbs 11:17 慈悲ある者は己の霊魂に益をくはへ 残忍者はおのれの身を擾はす
Proverbs 11:18 惡者の獲る報はぴなしく 義を播くものの得る報賞は確し
Proverbs 11:19 堅く義をたもつ者は生命にいたり 惡を追もとむる者はおのれの死をまねく
Proverbs 11:20 心の戻れる者はヱホバに憎まれ 直く道を歩む者は彼に悦ばる
Proverbs 11:21 手に手をあはするとも惡人は罪をまぬかれず 義人の苗裔は救を得
Proverbs 11:22 美しき婦のつつしみなきは金の環の豕の鼻にあるが如し
Proverbs 11:23 義人のねがふところは凡て福祉にいたり 惡人ののぞむところは震怒にいたる
Proverbs 11:24 ほどこし散して反りて増ものあり 與ふべきを吝みてかへりて貧しきにいたる者あり
Proverbs 11:25 施與を好むものは肥え 人を潤ほす者はまた利潤をうく
Proverbs 11:26 穀物を蔵めて糶ざる者は民に阻はる 然れど售る者の首には祝福あり
Proverbs 11:27 善をもとむる者は恩恵をえん 惡をもとむる者には惡き事きたらん
Proverbs 11:28 おのれの富を恃むものは仆れん されど義者は樹の青葉のごとくさかえん
Proverbs 11:29 おのれの家をくるしむるものは風をえて所有とせん 愚なる者は心の智きものの僕とならん
Proverbs 11:30 義人の果は生命の樹なり 智慧ある者は人を捕ふ
Proverbs 11:31 みよ義人すらも世にありて報をうくべし況て惡人と罪人とをや
Proverbs 12:1 訓誨を愛する者は知識を愛す 懲戒を惡むものは畜のごとし
Proverbs 12:2 善人はヱホバの恩寵をうけ 惡き謀略を設くる人はヱホバに罰せちる
Proverbs 12:3 人は惡をもて堅く立ことあたはず 義人の根は動くことなし
Proverbs 12:4 賢き婦はその夫の冠弁なり 辱をきたらする婦は夫をしてその骨に腐あるが如くならしむ
Proverbs 12:5 義人のおもひは直し 惡者の計るところは虚偽なり
Proverbs 12:6 惡者の言は人の血を流さんとて伺ふ されど直者の口は人を救ふなり
Proverbs 12:7 惡者はたふされて無ものとならん されど義者の家は立べし
Proverbs 12:8 人はその聡明にしたがひて誉られ 心の悖れる者は藐めらる
Proverbs 12:9 卑賤してしもべある者は自らたかぶりて食に乏き者に愈る
Proverbs 12:10 義者はその畜の生命を顧みる されど惡者は残忍をもてその憐憫とす
Proverbs 12:11 おのれの田地を耕すものは食にあく 放蕩なる人にしたがふ者は智慧なし
Proverbs 12:12 惡者はあしき人の獲たる物をうらやみ 義者の根は芽をいだす
Proverbs 12:13 惡者はくちびるの愆によりて罟に陥る されど義者は患難の中よりまぬかれいでん
Proverbs 12:14 人はその口の徳によりて福祉に飽ん 人の手の行爲はその人の身にかへるべし
Proverbs 12:15 愚なる者はみづからその道を見て正しとす されど智慧ある者はすすめを容る
Proverbs 12:16 愚なる者はただちに怒をあらはし 智きものは恥をつつむ
Proverbs 12:17 眞實をいふものは正義を述べ いつはりの證人は虚偽をいふ
Proverbs 12:18 妄りに言をいだし劍をもて刺がごとくする者あり されど智慧ある者の舌は人をいやす
Proverbs 12:19 眞理をいふ口唇は何時までも存つ されど虚偽をいふ舌はただ瞬息のあひだのみなり
Proverbs 12:20 惡事をはかる者の心には欺詐あり 和平を謀る者には歓喜あり
Proverbs 12:21 義者には何の禍害も來らず 惡者はわざはひをもて充さる
Proverbs 12:22 いつはりの口唇はヱホバに憎まれ 眞實をおこなふ者は彼に悦ばる
Proverbs 12:23 賢人は知識をかくす されど愚たる者のこころは愚なる事を述ぶ
Proverbs 12:24 勤めはたらく者の手は人ををさむるにいたり惰者は人に服ふるにいたる
Proverbs 12:25 うれひ人の心にあれば之を屈ます されど善言はこれを樂します
Proverbs 12:26 義者はその友に道を示す されど惡者は自ら途にまよふ
Proverbs 12:27 惰者はおのれの猟獲たる物をも燔ず 勉めはたらくことは人の貴とき寳なり
Proverbs 12:28 義しき道には生命ありその道すぢには死なし
Proverbs 13:1 智慧ある子は父の教訓をきき 戯謔者は懲治をきかず
Proverbs 13:2 人はその口の徳によりて福祉をくらひ悖逆者の霊魂は強暴をくらふ
Proverbs 13:3 その口を守る者はその生命を守る その口唇を大きくひらく者には滅亡きたる
Proverbs 13:4 惰る者はこころに慕へども得ることなし 勤めはたらく者の心は豊饒なり
Proverbs 13:5 義者は虚偽の言をにくみ 惡者ははぢをかうむらせ面を赤くせしむ
Proverbs 13:6 義は道を直くあゆむ者をまもり 惡は罪人を倒す
Proverbs 13:7 自ら富めりといひあらはして些少の所有もなき者あり 自ら貧しと稱へて資財おほき者ありi
Proverbs 13:8 人の資財はその生命を贖ふものとなるあり 然ど貧者は威嚇をきくことあらず
Proverbs 13:9 義者の光は輝き惡者の燈火はけさる
Proverbs 13:10 驕傲はただ争端を生ず 勧告をきく者は智慧あり
Proverbs 13:11 詭詐をもて得たる資財は減る されど手をもて聚めたくはふる者はこれを増すことを得
Proverbs 13:12 望を得ること遅きときは心を疾しめ 願ふ所既にとぐるときは生命の樹を得たるがごとし
Proverbs 13:13 御言をかろんずる者は亡され 誡命をおそるる者は報賞を得
Proverbs 13:14 智慧ある人の教訓はいのちの泉なり 能く人をして死の罟を脱れしむ
Proverbs 13:15 善にして哲きものは恩を蒙る されど悸逆者の途は艱難なり
Proverbs 13:16 凡そ賢者は知識に由りて事をおこなひ 愚なる者はおのれの痴を顕す
Proverbs 13:17 惡き使者は災禍に陥る されど忠信なる使者は良薬の如し
Proverbs 13:18 貧乏と恥辱とは教訓をすつる者にきたる されど譴責を守る者は尊まる
Proverbs 13:19 望を得れば心に甘し 愚なる者は惡を棄つることを嫌ふ
Proverbs 13:20 智慧ある者と偕にあゆむものは智慧をえ 愚なる者の友となる者はあしくなる
Proverbs 13:21 わざはひは罪人を追ひ 義者は善報をうく
Proverbs 13:22 善人はその産業を子孫に遺す されど罪人の資材は義者のために蓄へらる
Proverbs 13:23 貧しき者の新田にはおほくの糧あり されど不義によりて亡る者あり
Proverbs 13:24 鞭をくはへざる者はその子を憎むなり 子を愛する者はしきりに之をいましむ
Proverbs 13:25 義しき者は食をえて胞く されど惡者の腹は空し
Proverbs 14:1 智慧ある婦はその家をたて 愚なる婦はおのれの手をもて之を毀つ
Proverbs 14:2 直くあゆむ者はヱホバを畏れ 曲りてあゆむ者はこれを侮る
Proverbs 14:3 愚なる者の口にはその傲のために鞭笞あり 智者の口唇はおのれを守る
Proverbs 14:4 牛なければ飼蒭倉むなし牛の力によりて生産る物おほし
Proverbs 14:5 忠信の證人はいつはらず 虚偽のあかしびとは謊言を吐く
Proverbs 14:6 嘲笑者は智慧を求むれどもえず 哲者は知識を得ること容易し
Proverbs 14:7 汝おろかなる者の前を離れされ つひに知識の彼にあるを見ざるべし
Proverbs 14:8 賢者の智慧はおのれの道を暁るにあり 愚なる者の痴は欺くにあり
Proverbs 14:9 おろろかなる者は罪をかろんず されど義者の中には恩恵あり
Proverbs 14:10 心の苦みは心みづから知る其よろこびには他人あづからず
Proverbs 14:11 惡者の家は亡され 正直き者の幕屋はさかゆ
Proverbs 14:12 人のみづから見て正しとする途にしてその終はつひに死にいたる途となるものあり
Proverbs 14:13 笑ふ時にも心に悲あり 歎樂の終に憂あり
Proverbs 14:14 心の悖れる者はおのれの途に飽かん 善人もまた自己に飽かん
Proverbs 14:15 拙者はすべての言を信ず 賢者はその行を愼む
Proverbs 14:16 智慧ある者は怖れて惡をはなれ 愚なる者はたかぶりて怖れず
Proverbs 14:17 怒り易き者は愚なることを行ひ 惡き謀計を設くる者は惡まる
Proverbs 14:18 批者は愚なる事を得て所有となし 賢者は知識をもて冠弁となす
Proverbs 14:19 惡者は善者の前に俯伏し 罪ある者は義者の門に俯伏す
Proverbs 14:20 貧者はその鄰にさへも惡まる されど富者を愛ずる者はおほし
Proverbs 14:21 その鄰を藐むる者は罪あり 困苦者を憐むものは幸福あり
Proverbs 14:22 惡を謀る者は自己をあやまるにあらずや 善を謀る者には憐憫と眞實とあり
Proverbs 14:23 すべての勤労には利益あり されど口唇のことばは貧乏をきたらするのみなり
Proverbs 14:24 智慧ある者の財寳はその冠弁となる 愚なる者のおろかはただ痴なり
Proverbs 14:25 眞實の證人は人のいのちを救ふ 謊言を吐く者は偽人なり
Proverbs 14:26 ヱホバを畏るることは堅き依頼なり その児輩は逃避場をうべし
Proverbs 14:27 ヱホバを畏るることは生命の泉なり 人を死の罟より脱れしむ
Proverbs 14:28 王の榮は民の多きにあり 牧泊の衰敗は民を失ふにあり
Proverbs 14:29 怒を遅くする者は大なる知識あり 氣の短き者は愚なることを顕す
Proverbs 14:30 心の安穏なるは身のいのちなり 娼嫉は誉の腐なり
Proverbs 14:31 貧者を虐ぐる者はその造主を侮るなり 彼をうやまふ者は貧者をあはれむ
Proverbs 14:32 惡者はその惡のうちにて亡され義者はその死ぬる時にも望あり
Proverbs 14:33 智慧は哲者の心にとどまり 愚なる者の衷にある事はあらはる
Proverbs 14:34 義は國を高くし罪は民を辱しむ
Proverbs 14:35 さとき僕は王の恩を蒙ぶり 辱をきたらす者はその震怒にあふ
Proverbs 15:1 柔和なる答は憤恨をとどめ厲しき言は怒を激す
Proverbs 15:2 智慧ある者の舌は知識を善きものとおもはしめ 愚なる者の口はおろかをはく
Proverbs 15:3 ヱホバの目は何處にもありて惡人と善人とを鑒みる
Proverbs 15:4 温柔き舌は生命の樹なり 悸れる舌は霊塊を傷ましむ
Proverbs 15:5 愚なる者はその父の訓をかろんず 誡命をまもる者は賢者なり
Proverbs 15:6 義者の家には多くの資財あり 惡者の利潤には擾累あり
Proverbs 15:7 智者のくちびるは知識をひろむ 愚なる者の心は定りなし
Proverbs 15:8 惡者の祭物はヱホバに憎まれ 直き人の祈は彼に悦ばる
Proverbs 15:9 惡者の道はヱホバに憎まれ 正義をもとむる者は彼に愛せらる
Proverbs 15:10 道をはなるる者には厳しき懲治あり 譴責を惡む者は死ぬべし
Proverbs 15:11 陰府と況淪とはヱホバの目の前にあり 況て人の心をや
Proverbs 15:12 嘲笑昔は誡めらるることを好まず また智慧ある者に近づかず
Proverbs 15:13 心に喜樂あれば顔色よろこばし 心に憂苦あれば氣ふさぐ
Proverbs 15:14 哲者のこころは知識をたづね 愚なる者の口は愚をくらふ
Proverbs 15:15 艱難者の日はことごとく惡く 心の懽べる者は恒に酒宴にあり
Proverbs 15:16 すこしの物を有てヱホバを畏るるは多の寳をもちて擾煩あるに愈る
Proverbs 15:17 蔬菜をくらひて互に愛するは肥たる牛を食ひて互に恨むるに愈る
Proverbs 15:18 憤ほり易きものは争端をおこし 怒をおそくする者は争端をとどむ
Proverbs 15:19 惰者の道は棘の底に似たり 直者の途は平坦なり
Proverbs 15:20 智慧ある子は父をよろこばせ 愚なる人はその母をかろんず
Proverbs 15:21 無知なる者は愚なる事をよろこび 哲者はその途を直くす
Proverbs 15:22 相議ることあらざれば謀計やぶる 議者おほければ謀計かならず成る
Proverbs 15:23 人はその口の答によりて喜樂をう 言語を出して時に適ふはいかに善らずや
Proverbs 15:24 哲人の途は生命の路にして上へ昇りゆく これ下にあるところの陰府を離れんが爲なり
Proverbs 15:25 ヱホバはたかぶる者の家をほろぼし 寡婦の地界をさだめたまふ
Proverbs 15:26 あしき謀計はヱホバに憎まれ 温柔き言は潔白し
Proverbs 15:27 不義の利をむさぼる者はその家をわづらはせ 賄賂をにくむ者は活ながらふべし
Proverbs 15:28 義者の心は答ふべきことを考へ 惡者の口は惡を吐く
Proverbs 15:29 ヱホバは惡者に遠ざかり 義者の祈祷をききたまふ
Proverbs 15:30 目の光は心をよろこばせ 好音信は骨をうるほす
Proverbs 15:31 生命の誡命をきくところの耳は智慧ある者の中間に駐まる
Proverbs 15:32 教をすつる者は自己の生命をかろんずるなり 懲治をきく者は聡明を得
Proverbs 15:33 ヱホバを畏るることは智慧の訓なり 謙遜は尊貴に先だつ
Proverbs 16:1 心に謀るところは人にあり 舌の答はヱホバより出づ
Proverbs 16:2 人の途はおのれの目にことごとく潔しと見ゆ 惟ヱホバ霊魂をはかりたまふ
Proverbs 16:3 なんぢの作爲をヱホバに託せよ さらば汝の謀るところ必ず成るべし
Proverbs 16:4 ヱホバはすべての物をおのおのその用のために造り 惡人をも惡き日のために造りたまへり
Proverbs 16:5 すべて心たかぶる者はヱホバに惡まれ 手に手をあはするとも罪をまぬかれじ
Proverbs 16:6 憐憫と眞實とによりて愆は贖はる ヱホバを畏るることによりて人惡を離る
Proverbs 16:7 ヱホバもし人の途を喜ばば その人の敵をも之と和がしむべし
Proverbs 16:8 義によりて得たるところの僅少なる物は不義によりて得たる多の資財にまさる
Proverbs 16:9 人は心におのれの途を考へはかる されどその歩履を導くものはヱホバなり
Proverbs 16:10 王のくちびるには神のさばきあり 審判するときその口あやまる可らず
Proverbs 16:11 公平の權衡と天秤とはヱホバのものなり 嚢にある分銅もことごとく彼の造りしものなり
Proverbs 16:12 惡をおこなふことは王の憎むところなり 是その位は公義によりて堅く立ばなり
Proverbs 16:13 義しき口唇は王によろこばる 彼等は正直をいふものを愛す
Proverbs 16:14 王の怒は死の使者のごとし 智慧ある人はこれをなだむ
Proverbs 16:15 王の面の光には生命あり その恩寵は春雨の雲のごとし
Proverbs 16:16 智慧を得るは金をうるよりも更に善らずや 聡明をうるは銀を得るよりも望まし
Proverbs 16:17 惡を離るるは直き人の路なり おのれの道を守るは霊魂を守るなり
Proverbs 16:18 驕傲は滅亡にさきだち誇る心は傾跌にさきだつ
Proverbs 16:19 卑き者に交りて謙たるは驕ぶる者と偕にありて贈物をわかつに愈る
Proverbs 16:20 愼みて御言をおこなふ者は益をうべし ヱホバに倚頼むものは福なり
Proverbs 16:21 心に智慧あれば哲者と稱へらる くちびる甘ければ人の知識をます
Proverbs 16:22 明哲はこれを持つものに生命の泉となる 愚なる者をいましむる者はおのれの痴是なり
Proverbs 16:23 智慧ある者の心はおのれの口ををしへ 又おのれの口唇に知識をます
Proverbs 16:24 こころよき言は蜂蜜のごとくにして 霊魂に甘く骨に良薬となる
Proverbs 16:25 人の自から見て正しとする途にして その終はつひに死にいたる途となるものあり
Proverbs 16:26 労をるものは飮食のために骨をる 是その口おのれに迫ればなり
Proverbs 16:27 邪曲なる人は惡を掘る その口唇には烈しき火のごときものあり
Proverbs 16:28 いつはる者はあらそひを起し つけぐちする者は朋友を離れしむ
Proverbs 16:29 強暴人は沃の鄰をいざなひ 之を善らざる途にみちびく
Proverbs 16:30 その目を閉て惡を謀り その口唇を蹙めて惡事を成遂ぐ
Proverbs 16:31 白髪は榮の冠弁なり 義しき途にてこれを見ん
Proverbs 16:32 怒を遅くする者は勇士に愈り おのれの心を治むる者は城を攻取る者に愈る
Proverbs 16:33 人は籤をひく されど事をさだむるは全くヱホバにあり
Proverbs 17:1 睦じうして一塊の乾けるパンあるは あらそひありて宰れる畜の盈たる家に愈る
Proverbs 17:2 かしこき僕は恥をきたらする子ををさめ 且その子の兄弟の中にありて産業を分ち取る
Proverbs 17:3 銀を試むる者は坩堝 金を試むる者は鑢 人の心を試むる者はヱホバなり
Proverbs 17:4 惡を行ふものは虚偽のくちびるにきき 虚偽をいふ者はあしき舌に耳を傾ぶく
Proverbs 17:5 貧人を嘲るものはその造主をあなどるなり 人の災禍を喜ぶものは罪をまぬかれず
Proverbs 17:6 孫は老人の冠弁なり 父は子の榮なり
Proverbs 17:7 勝れたる事をいふは愚なる人に適はず 況て虚偽をいふ口唇は君たる者に適はんや
Proverbs 17:8 贈物はこれを受る者の目には貴き珠のごとし その向ふところにて凡て幸福を買ふ
Proverbs 17:9 愛を追求むる者は人の過失をおほふ 人の事を言ひふるる者は朋友をあひ離れしむ
Proverbs 17:10 一句の誡命の智人に徹るは百囘扑つことの愚なる人に徹るよりも深し
Proverbs 17:11 叛きもとる者はただ惡きことのみをもとむ 比故に彼にむかひて残忍なる使者遣はさる
Proverbs 17:12 愚なる者の愚妄をなすにあはんよりは寧ろ子をとられたる牝熊にあへ
Proverbs 17:13 惡をもて善に報ゆる者は惡その家を離れじ
Proverbs 17:14 争端の起源は堤より水をもらすに似たり この故にあらそひの起らざる先にこれを止むべし
Proverbs 17:15 惡者を義とし義者を惡しとするこの二の者はヱホバに憎まる
Proverbs 17:16 愚なる者はすでに心なし何ぞ智慧をかはんとて手にその價の金をもつや
Proverbs 17:17 朋友はいづれの時にも愛す 兄弟は危難の時のために生る
Proverbs 17:18 智慧なき人は手を拍てその友の前にて保證をなす
Proverbs 17:19 争端をこのむ者は罪を好み その門を高くする者は敗壊を求む
Proverbs 17:20 邪曲なる心ある者はさいはひを得ず その舌をみだりにする者はわざはひに陥る
Proverbs 17:21 愚なる者を産むものは自己の憂を生じ 愚なる者の父は喜樂を得ず
Proverbs 17:22 心のたのしみは良薬なり 霊魂のうれひは骨を枯す
Proverbs 17:23 惡者は人の懐より賄賂をうけて審判の道をまぐ
Proverbs 17:24 智慧は哲者の面のまへにあり されど愚なる者は目を地の極にそそぐ
Proverbs 17:25 愚なる子は其父の憂となり 亦これを生る母の煩労となる
Proverbs 17:26 義者を罰するは善らず 貴き者をその義ががために扑は善らず
Proverbs 17:27 言を寡くする者は知識あり 心の静なる者は哲人なり
Proverbs 17:28 愚なる者も黙するときは智慧ある者と思はれ その口唇を閉るときは哲者とおもはるべし
Proverbs 18:1 自己を人と異にする者はおのれの欲ずるところのみを求めてすべての善き考察にもとる
Proverbs 18:2 愚なる者は明哲を喜ばず 惟おのれの心意を顕すことを喜ぶ
Proverbs 18:3 惡者きたれば藐視したがひてきたり 恥きたれば凌辱もともに來る
Proverbs 18:4 人の口の言は深水の如し 湧てながるる川 智慧の泉なり
Proverbs 18:5 惡者を偏視るは善らず 審判をなして義者を惡しとするも亦善らず
Proverbs 18:6 愚なる者の口唇はあらそひを起し その口は打るることを招く
Proverbs 18:7 愚なる者の口はおのれの敗壊となり その口唇はおのれの霊魂の罟となる
Proverbs 18:8 人の是非をいふものの言はたはぶれのごとしといへども反つて腹の奥にいる
Proverbs 18:9 その行爲をおこたる者は滅すものの兄弟なり
Proverbs 18:10 ヱホバの各はかたき櫓のごとし 義者は之に走りいりて救を得
Proverbs 18:11 富者の資財はその堅き城なり これを高き石垣の如くに思ふ
Proverbs 18:12 人の心のたかぶりは滅亡に先だち 謙遜はたふとまるる事にさきだつ
Proverbs 18:13 いまだ事をきかざるさきに應ふる者は愚にして辱をかうぶる
Proverbs 18:14 人の心は尚其疾を忍ぶべし されど心の傷める時は誰かこれに耐んや
Proverbs 18:15 哲者の心は知識をえ 智慧ある者の耳は知識を求む
Proverbs 18:16 人の贈物はその人のために道をひらき かつ貴きものの前にこれを導く
Proverbs 18:17 先に訴訟の理由をのぶるものは正義に似たれども その鄰人きたり詰問ひてその事を明かにす
Proverbs 18:18 籤は争端をとどめ且つよきものの間にへだてとなる
Proverbs 18:19 怒れる兄弟はかたき城にもまさりて説き伏せがたし 兄弟のあらそひは檜の貫木のごとし
Proverbs 18:20 人は口の徳によりて腹をあかし その口唇の徳によりて自ら飽べし
Proverbs 18:21 死生は舌の權能にあり これを愛する者はその果を食はん
Proverbs 18:22 妻を得るものは美物を得るなり 且ヱホバより恩寵をあたへらる
Proverbs 18:23 貧者は哀なる言をもて乞ひ 富人は厲しき答をなす
Proverbs 18:24 多の友をまうくる人は遂にその身を亡す 但し兄弟よりもたのもしき知己もまたあり
Proverbs 19:1 ただしく歩むまづしき者は くちびるの悖れる愚なる者に愈る
Proverbs 19:2 心に思慮なければ善らず 足にて急ぐものは道にまよふ
Proverbs 19:3 人はおのれの痴によりて道につまづき 反て心にヱホバを怨む
Proverbs 19:4 資財はおほくの友をあつむ されど貧者はその友に疎まる
Proverbs 19:5 虚偽の證人は罰をまぬかれず 謊言をはくものは避るることをえず
Proverbs 19:6 君に媚る者はおほし 凡そ人は贈物を與ふる者の友となるなり
Proverbs 19:7 貧者はその兄弟すらも皆これをにくむ 況てその友これに遠ざからざらんや 言をはなちてこれを呼とも去てかへらざるなり
Proverbs 19:8 智慧を得る者はおのれの霊魂を愛す 聡明をたもつ者は善福を得ん
Proverbs 19:9 虚偽の證人は罰をまぬかれず 謊言をはく者はほろぶべし
Proverbs 19:10 愚なる者の驕奢に居るは適当からず 況て僕にして上に在る者を治むることをや
Proverbs 19:11 聡明は人に怒をしのばしむ 過失を宥すは人の榮誉なり
Proverbs 19:12 王の怒は獅の吼るが如く その恩典は草の上におく露のごとし
Proverbs 19:13 愚なる子はその父の災禍なり 妻の相争そふは雨漏のたえぬにひとし
Proverbs 19:14 家と資財とは先組より承嗣ぐもの 賢き妻はヱホバより賜ふものなり
Proverbs 19:15 懶惰は人を酣寐せしむ 懈怠人は飢べし
Proverbs 19:16 誠命を守るものは自己の霊魂を守るなり その道をかろむるものは死ぬべし
Proverbs 19:17 貧者をあはれむ者はヱホバに貸すなり その施濟はヱホバ償ひたまはん
Proverbs 19:18 望ある間に汝の子を打て これを殺すこころを起すなかれ
Proverbs 19:19 然ることの烈しき者は罰をうく 汝もしこれを救ふともしばしば然せざるを得じ
Proverbs 19:20 なんぢ勧をきき訓をうけよ 然ばなんぢの終に智慧あらん
Proverbs 19:21 人の心には多くの計畫あり されど惟ヱホバの旨のみ立べし
Proverbs 19:22 人のよろこびは施濟をするにあり 貧者は謊人に愈る
Proverbs 19:23 ヱホバを畏るることは人をして生命にいたらしめ かつ恒に飽足りて災禍に遇ざらしむ
Proverbs 19:24 惰者はその手を盤にいるるも之をその口に挙ることをだにせず
Proverbs 19:25 嘲笑者を打て さらば拙者も愼まん 哲者を譴めよ さらばかれ知識を得ん
Proverbs 19:26 父を煩はし母を逐ふは羞赧をきたらし凌辱をまねく子なり
Proverbs 19:27 わが子よ哲者を離れしむる教を聴くことを息めよ
Proverbs 19:28 惡き證人は審判を嘲り 惡者の口は惡を呑む
Proverbs 19:29 審判は嘲笑者のために備へられ 鞭は愚なる者の背のために備へらる
Proverbs 20:1 酒は人をして嘲らせ 濃酒は人をして騒がしむ 之に迷はさるる者は無智なり
Proverbs 20:2 王の震怒は獅の吼るがごとし 彼を怒らする者は自己のいのちを害ふ
Proverbs 20:3 穏かに居りて争はざるは人の榮誉なりすべて愚なる者は怒り争ふ
Proverbs 20:4 惰者は寒ければとて耕さず この故に収穫のときにおよびて求るとも得るところなし
Proverbs 20:5 人の心にある謀計は深き井の水のごとし 然れど哲人はこれを汲出す
Proverbs 20:6 凡そ人は各自おのれの善を誇る されど誰か忠信なる者に遇しぞ
Proverbs 20:7 身を正しくして歩履む義人はその後の子孫に福祉あるべし
Proverbs 20:8 審判の位に坐する王はその目をもてすべての惡を散す
Proverbs 20:9 たれか我わが心をきよめ わが罪を潔められたりといひ得るや
Proverbs 20:10 二種の權衡二種の斗量は等しくヱホバに憎まる
Proverbs 20:11 幼子といへどもその動作によりておのれの根性の清きか或は正しきかをあらはす
Proverbs 20:12 聴くところの耳と視るところの眼とはともにヱホバの造り給へるものなり
Proverbs 20:13 なんぢ睡眠を愛すること勿れ 恐くは貧窮にいたらん 汝の眼をひらけ 然らば糧に飽べし
Proverbs 20:14 買者はいふ惡し惡しと 然れど去りて後はみづから誇る
Proverbs 20:15 金もあり眞珠も多くあれど貴き器は知識のくちびるなり
Proverbs 20:16 人の保證をなす者よりは先その衣をとれ 他人の保證をなす者をばかたくとらへよ
Proverbs 20:17 欺きとりし糧は人に甜し されど後にはその口に沙を充されん
Proverbs 20:18 謀計は相議るによりて成る 戦はんとせば先よく議るべし
Proverbs 20:19 あるきめぐりて人の是非をいふ者は密事をもらす 口唇をひらきてあるくものと交ること勿れ
Proverbs 20:20 おのれの父母を罵るものはその燈火くらやみの中に消ゆべし
Proverbs 20:21 初に俄に得たる産業はその終さいはひならず
Proverbs 20:22 われ惡に報いんと言ふこと勿れ ヱホバを待て 彼なんぢを救はん
Proverbs 20:23 二種の分銅はヱホバに憎まる 虚偽の權衡は善らず
Proverbs 20:24 人の歩履はヱホバによる 人いかで自らその道を明かにせんや
Proverbs 20:25 漫に誓願をたつることは其人の罟となる誓願をたててのちに考ふることも亦然り
Proverbs 20:26 賢き王は箕をもて簸るごとく惡人を散し 車輪をもて碾すごとく之を罰す
Proverbs 20:27 人の霊魂はヱホバの燈火にして人の心の奥を窺ふ
Proverbs 20:28 王は仁慈と眞実をもて自らたもつ その位もまた恩恵のおこなひによりて堅くなる
Proverbs 20:29 少者の榮はその力 おいたる者の美しきは白髪なり
Proverbs 20:30 傷つくまでに打たば惡きところきよまり 打てる鞭は腹の底までもとほる
Proverbs 21:1 王の心はヱホバの手の中にありて恰かも水の流れのごとし 彼その聖旨のままに之を導きたまふ
Proverbs 21:2 人の道はおのれの目に正しとみゆ されどヱホバは人の心をはかりたまふ
Proverbs 21:3 正義と公平を行ふは犠牲よりも愈りてヱホバに悦ばる
Proverbs 21:4 高ぶる目と驕る心とは惡人の光にしてただ罪のみ
Proverbs 21:5 勤めはたらく者の圖るところは遂にその身を豊裕ならしめ 凡てさわがしく急ぐ者は貧乏をいたす
Proverbs 21:6 虚偽の舌をもて財を得るは吹はらはるる雲烟のごとし 之を求むる者は死を求むるなり
Proverbs 21:7 惡者の残虐は自己を亡す これ義しきを行ふことを好まさればなり
Proverbs 21:8 罪人の道は曲り 潔者の行爲は直し
Proverbs 21:9 相争ふ婦と偕に室に居らんよりは屋蓋の隅にをるはよし
Proverbs 21:10 惡者の霊魂は惡をねがふ その鄰も彼にあはれみ見られず
Proverbs 21:11 あざけるもの罰をうくれば拙者は智慧を得 ちゑあるもの教をうくれば知識を得
Proverbs 21:12 義しき神は惡者の家をみとめて惡者を滅亡に投いれたまふ
Proverbs 21:13 耳を掩ひて貧者の呼ぶ聲をきかざる者は おのれ自ら呼ぶときもまた聴れざるべし
Proverbs 21:14 潜なる饋物は忿恨をなだめ 懐中の賄賂は烈しき瞋恚をやはらぐ
Proverbs 21:15 公義を行ふことは義者の喜樂にして 惡を行ふものの敗壊なり
Proverbs 21:16 さとりの道を離るる人は死し者の集会の中にをらん
Proverbs 21:17 宴樂を好むものは貧人となり 酒と膏とを好むものは富をいたさじ
Proverbs 21:18 惡者は義者のあがなひとなり 悸れる者は直き者に代る
Proverbs 21:19 争ひ怒る婦と偕にをらんよりは荒野に居るはよし
Proverbs 21:20 智慧ある者の家には貴き寳と膏とあり 愚なる人は之を呑つくす
Proverbs 21:21 正義と憐憫と追求むる者は生命と正義と尊貴とを得べし
Proverbs 21:22 智慧ある者は強者の城にのぼりて その堅く頼むところを倒す
Proverbs 21:23 口と舌とを守る者はその霊魂を守りて患難に遇せじ
Proverbs 21:24 高ぶり驕る者を嘲笑者となづく これ驕者を逞しくして行ふものなり
Proverbs 21:25 惰者の情慾はおのれの身を殺す 是はその手を肯て働かせざればなり
Proverbs 21:26 人は終日しきりに慾を図る されど義者は與へて吝まず
Proverbs 21:27 惡者の献物は憎まる 況て惡き事のために献ぐる者をや
Proverbs 21:28 虚偽の證人は滅さる 然れど聴く人は恒にいふべし
Proverbs 21:29 惡人はその面を厚くし 義者はその道を謹む
Proverbs 21:30 ヱホバにむかひては智慧も明哲も謀賂もなすところなし
Proverbs 21:31 戦闘の日のために馬を備ふ されど勝利はヱホバによる
Proverbs 22:1 嘉名は大なる富にまさり恩寵は銀また金よりも佳し
Proverbs 22:2 富者と貧者と偕に世にをる凡て之をる造りし者はヱホバなり
Proverbs 22:3 賢者は災禍を見てみづから避け 拙者はすすみて罰をうく
Proverbs 22:4 謙遜とヱホバを畏るる事との報は富と尊貴と生命となり
Proverbs 22:5 悸れる者の途には荊棘と罟とあり 霊魂を守る者は遠くこれを離れん
Proverbs 22:6 子をその道に從ひて教へよ 然ばその老たる時も之を離れじ
Proverbs 22:7 富者は貧者を治め借者は貸人の僕となる
Proverbs 22:8 惡を播くものは禍害を穡り その怒の杖は廃るべし
Proverbs 22:9 人を見て恵む者はまた恵まる 此はその糧を貧者に與ふればなり
Proverbs 22:10 嘲笑者を逐へば争論も亦さり 且闘諍も恥辱もやむ
Proverbs 22:11 心の潔きを愛する者はその口唇に憐憫をもてり 王その友とならん
Proverbs 22:12 ヱホバの目は知識ある者を守る 彼は悸れる者の言を敗りたまふ
Proverbs 22:13 惰者はいふ獅そとにあり われ衢にて殺されんと
Proverbs 22:14 妓婦の口は深き坑なり ヱホバに憎まるる者これに陥らん
Proverbs 22:15 痴なること子の心の中に繋がる 懲治の鞭これを逐いだす
Proverbs 22:16 貧者を虐げて自らを富さんとする者と富者に與ふる者とは遂にかならず貧しくなる
Proverbs 22:17 汝の耳を傾ぶけて智慧ある者の言をきき且なんぢの心をわが知識に用ゐよ
Proverbs 22:18 之を汝の腹にたもちて 盡くなんぢの口唇にそなはらしめば樂しかるべし
Proverbs 22:19 汝をしてヱホバに倚頓ましめんが爲にわれ今日これを汝に教ふ
Proverbs 22:20 われ勧言と知識とをふくみたる勝れし言を汝の爲に録ししにあらずや
Proverbs 22:21 これ汝をして眞の言の確實なることを暁らしめ 且なんぢを遣しし者に其の言を持歸らしめん爲なり
Proverbs 22:22 弱き者を弱きがために掠むることなかれ 艱難者を門にて壓つくること勿れ
Proverbs 22:23 そはヱホバその訴を糺し且かれらを害ふものの生命をそこなはん
Proverbs 22:24 怒る者と交ること勿れ 憤ほる人とともに往ことなかれ
Proverbs 22:25 恐くは汝その道に效ひてみづから罟に陥らん
Proverbs 22:26 なんぢ人と手をうつ者となることなかれ 人の負債の保證をなすこと勿れ
Proverbs 22:27 汝もし償ふべきものあらずば人なんぢの下なる臥牀までも奪ひ取ん 是壹よからんや
Proverbs 22:28 なんぢの先祖がたてし古き地界を移すこと勿れ
Proverbs 22:29 汝その業に巧なる人を見るか 斯る人は王の前に立ん かならず賤者の前にたたじ
Proverbs 23:1 なんぢ侯たる者とともに坐して食ふときは 愼みて汝の前にある者の誰なるかを思へ
Proverbs 23:2 汝もし食を嗜む者ならば汝の喉に刀をあてよ
Proverbs 23:3 その珍饈を貪り食ふこと勿れ これ迷惑の食物なればなり
Proverbs 23:4 富を得んと思煩らふこと勿れ 自己の明哲を恃むこと勿れ
Proverbs 23:5 なんぢ虚しきに歸すべき者に目をとむるか 富はかならず自ら翅を生じて鷲のごとく天に飛さらん
Proverbs 23:6 惡目をする者の糧をくらふことなく その珍饈をむさぼりねがふことなかれ
Proverbs 23:7 そはその心に思ふごとくその人となりも亦しかればなり 彼なんぢに食へ飮めといふこといへどもその心は汝に眞実ならず
Proverbs 23:8 汝つひにその食へる物を吐出すにいたり 且その出し懇懃の言もむなしくならん
Proverbs 23:9 愚なる者の耳に語ること勿れ 彼なんぢが言の示す明哲を藐めん
Proverbs 23:10 古き地界を移すことなかれ 孤子の畑を侵すことなかれ
Proverbs 23:11 そはかれが贖者は強し 必ず汝に對らひて之が訴をのべん
Proverbs 23:12 汝の心を教に用ゐ 汝の耳を知識の言に傾けよ
Proverbs 23:13 子を懲すことを爲ざるなかれ 鞭をもて彼を打とも死ることあらじ
Proverbs 23:14 もし鞭をもて彼をうたばその霊魂を陰府より救ふことをえん
Proverbs 23:15 わが子よもし汝のこころ智からば我が心もまた歓び
Proverbs 23:16 もし汝の口唇ただしき事をいはば我が腎腸も喜ぶべし
Proverbs 23:17 なんぢ心に罪人をうらやむ勿れ ただ終日ヱホバを畏れよ
Proverbs 23:18 そは必ず應報ありて汝の望は廃らざればなり
Proverbs 23:19 わが子よ汝ききて智慧をえ かつ汝の心を道にかたぶけよ
Proverbs 23:20 酒にふけり肉をたしむものと交ること勿れ
Proverbs 23:21 それ酒にふける者と肉を嗜む者とは貧しくなり 睡眠を貪る者は敞れたる衣をきるにいたらん
Proverbs 23:22 汝を生る父にきけ 汝の老たる母を軽んずる勿れ
Proverbs 23:23 眞理を買へ これを售るなかれ 智慧と誡命と知識とまた然あれ
Proverbs 23:24 義き者の父は大によろこび 智慧ある子を生る者はこれがために樂しまん
Proverbs 23:25 汝の父母を樂しませ 汝を生る者を喜ばせよ
Proverbs 23:26 わが子よ汝の心を我にあたへ 汝の目にわが途を樂しめ
Proverbs 23:27 それ妓婦は深き抗のごとく 淫婦は狭き井のごとし
Proverbs 23:28 彼は盗賊のごとく人を窺ひ かつ世の人の中に悖れる者を増なり
Proverbs 23:29 禍害ある者は誰ぞ 憂愁ある者は誰ぞ 争端をなす者は誰ぞ 煩慮ある者は誰ぞ 故なくして傷をうくる者は誰ぞ 赤目ある者は誰ぞ
Proverbs 23:30 是すなはち酒に夜をふかすもの 往て混和せたる酒を味ふる者なり
Proverbs 23:31 洒はあかく盃の中に泡だち滑かにくだる 汝これを見るなかれ
Proverbs 23:32 是は終に蛇のごとく噬み蝮の如く刺すべし
Proverbs 23:33 また汝の目は怪しきものを見 なんぢの心は諕言をいはん
Proverbs 23:34 汝は海のなかに偃すもののごとく帆桅の上に偃すもののごとし
Proverbs 23:35 汝いはん人われを撃ども我いたまず 我を拷けども我おぼえず 我さめなばまた酒を求めんと
Proverbs 24:1 なんぢ惡き人を羨むことなかれ 又これと偕に居らんことを願ふなかれ
Proverbs 24:2 そはその心に暴虐をはかり その口唇に人を害ふことをいへばなり
Proverbs 24:3 家は智慧によりて建られ 明哲によりて堅くせられ
Proverbs 24:4 また室は知識によりて各種の貴く美しき寳にて充されん
Proverbs 24:5 智慧ある者は強し 知識ある人は力をます
Proverbs 24:6 汝よき謀計をもて戦闘をなせ 勝利は議者の多きによる
Proverbs 24:7 智慧は高くして愚なる者の及ぶところにあらず 愚なる者は門にて口を啓くことをえず
Proverbs 24:8 惡をなさんと謀る者を邪曲なる者と稱ふ
Proverbs 24:9 愚なる者の謀るところは罪なり 嘲笑者は人に憎まる
Proverbs 24:10 汝もし患難の日に氣を挫かば汝の力は弱し
Proverbs 24:11 なんぢ死地に曳れゆく者を拯へ 滅亡によろめきゆく者をすくはざる勿れ
Proverbs 24:12 汝われら之を知らずといふとも心をはかる者これを暁らざらんや 汝の霊魂をまもる者これを知ざらんや 彼は聲のおのおのの行爲によりて人に報ゆべし
Proverbs 24:13 わが子よ蜜を食へ 是は美ものなり また蜂のすの滴瀝を食へ 是はなんぢの口に甘し
Proverbs 24:14 智慧の汝の霊魂におけるも是の如しと知れ これを得ばかならず報いありて汝の望すたれじ
Proverbs 24:15 惡者よ義者の家を窺ふことなかれ その安居所を攻ること勿れ
Proverbs 24:16 そは義者は七次たふるるともまた起く されど惡者は禍災によりて亡ぶ
Proverbs 24:17 汝の仇たふるるとき樂しむこと勿れ 彼の亡ぶるときこころに喜ぶことなかれ
Proverbs 24:18 恐くはヱホバこれを見て惡しとし その震怒を彼より離れしめたまはん
Proverbs 24:19 なんぢ惡者を怒ることなかれ 邪曲なる者を羨むなかれ
Proverbs 24:20 それ惡者には後の善賚なし 邪曲なる爲の燈火は滅されん
Proverbs 24:21 わが子よヱホバと王とを畏れよ 叛逆者に交ること勿れ
Proverbs 24:22 斯るものらの災渦は速におこる この兩者の滅亡はたれか知えんや
Proverbs 24:23 是等もまた智慧ある者の箴言なり 偏り鞫するは善らず
Proverbs 24:24 罪人に告て汝は義しといふものをは衆人これを詛ひ諸民これを惡まん
Proverbs 24:25 これを譴る者は恩をえん また福祉これにきたるべし
Proverbs 24:26 ほどよき應答をなす者は口唇に接吻するなり
Proverbs 24:27 外にて汝の工をととのへ田圃にてこれを自己のためにそなへ 然るのち汝の家を建よ
Proverbs 24:28 故なく汝の鄰に敵して證することなかれ 汝なんぞ口唇をもて欺くべけんや
Proverbs 24:29 彼の我に爲しし如く我も亦かれになすべし われ人の爲ししところに循ひてこれに報いんといふこと勿れ
Proverbs 24:30 われ曾て惰人の田圃と智慧なき人の葡萄園とをすぎて見しに
Proverbs 24:31 荊棘あまねく生え薊その地面を掩ひ その石垣くづれゐたり
Proverbs 24:32 我これをみて心をとどめこれを観て教をえたり
Proverbs 24:33 しばらく臥し 暫らく睡り 手を叉きて又しばらく休む
Proverbs 24:34 さらば汝の貧窮は盗人のごとく汝の欠乏は兵士の如くきたるべし
Proverbs 25:1 此等もまたソロモンの箴言なり ユダの王ヒゼキヤに属せる人々これを輯めたり
Proverbs 25:2 事を隠すは神の榮誉なり 事を窮むるは王の榮誉なり
Proverbs 25:3 天の高さと地の深さと 王たる者の心とは測るべからず
Proverbs 25:4 銀より渣滓を除け さらば銀工の用ふべき器いでん
Proverbs 25:5 王の前より惡者をのぞけ 然ばその位義によりて堅く立ん
Proverbs 25:6 王の前に自ら高ぶることなかれ 貴人の場に立つことなかれ
Proverbs 25:7 なんぢが目に見る王の前にて下にさげらるるよりは ここに上れといはるること愈れり
Proverbs 25:8 汝かろがろしく出でて争ふことなかれ 恐くは終にいたりて汝の鄰に辱しめられん その時なんぢ如何になさんとするか
Proverbs 25:9 なんぢ鄰と争ふことあらば只これと争へ 人の密事を洩すなかれ
Proverbs 25:10 恐くは聞者なんぢを卑しめん 汝そしられて止ざらん
Proverbs 25:11 機にかなひて語る言は銀の彫刻物に金の林檎を嵌たるが如し
Proverbs 25:12 智慧をもて譴むる者の之をきく者の耳におけることは 金の耳環と精金の飾のごとし
Proverbs 25:13 忠信なる使者は之を遣す者におけること穡收の日に冷かなる雪あるがごとし 能その主の心を喜ばしむ
Proverbs 25:14 おくりものすと偽りて誇る人は雨なき雲風の如し
Proverbs 25:15 怒を緩くすれば君も言を容る 柔かなる舌は骨を折く
Proverbs 25:16 なんぢ蜜を得るか 惟これを足る程に食へ 恐くは食ひ過して之を吐出さん
Proverbs 25:17 なんぢの足を鄰の家にしげくするなかれ 恐くは彼なんぢを厭ひ惡まん
Proverbs 25:18 その鄰に敵して虚偽の證をたつる人は斧刃または利き箭のごとし
Proverbs 25:19 艱難に遇ふとき忠実ならぬ者を頼むは惡しき歯または跛たる足を恃むがごとし
Proverbs 25:20 心の傷める人の前に歌をうたふは寒き日に衣をぬぐが如く 曹達のうへに酢を注ぐが如し
Proverbs 25:21 なんぢの仇もし飢ゑなば之に糧をくらはせ もし渇かば之に水を飮ませよ
Proverbs 25:22 なんぢ斯するは火をこれが首に積むなり ヱホバなんぢに報いたまふべし
Proverbs 25:23 北風は雨をおこし かげごとをいふ舌は人の顔をいからす
Proverbs 25:24 争ふ婦と偕に室に居らんより屋蓋の隅にをるは宜し
Proverbs 25:25 遠き國よりきたる好き消息は渇きたる人における冷かなる水のごとし
Proverbs 25:26 義者の惡者の前に服するは井の濁れるがごとく泉の汚れたるがごとし
Proverbs 25:27 蜜をおほく食ふは善らず 人おのれの榮誉をもとむるは榮誉にあらず
Proverbs 25:28 おのれの心を制へざる人は石垣なき壊れたる城のごとし
Proverbs 26:1 榮誉の愚なる者に適はざるは夏の時に雪ふり 穡收の時に雨ふるがごとし
Proverbs 26:2 故なき詛は雀の翔り燕の飛ぶが如くにきたるものにあらず
Proverbs 26:3 馬の爲には策あり 驢馬の爲には銜ありり 愚なる者の背のために杖あり
Proverbs 26:4 愚なる者の痴にしたがひて答ふること勿れ 恐くはおのれも是と同じからん
Proverbs 26:5 愚なる者の痴にしたがひて之に答へよ 恐くは彼おのれの目に自らを智者と見ん
Proverbs 26:6 愚なる者に托して事を言おくる者はおのれの足をきり身に害をうく
Proverbs 26:7 跛者の足は用なし 愚なる者の口の箴もかくのごとし
Proverbs 26:8 榮誉を愚なるに具ふる者に與ふるは石を投石索に繋ぐが如し
Proverbs 26:9 愚なる者の口にたもつ箴言は酔へるものの莉ある杖を手にて挙ぐるがごとし
Proverbs 26:10 愚なる者を傭ひ流浪者を傭ふ者は すべての人を傷くる射手の如し
Proverbs 26:11 狗のかへり來りてその吐たる物を食ふがごとく 愚なる者は重ねてその痴なる事をおこなふ
Proverbs 26:12 汝おのれの目に自らを智慧ある者とする人を見るか 彼よりも却て愚なる人に望あり
Proverbs 26:13 惰者は途に獅あり 衢に獅ありといふ
Proverbs 26:14 戸の蝶鉸によりて轉るごとく惰者はその牀に輾轉す
Proverbs 26:15 惰者はその手を盤にいるるも之をその口に挙ることを厭ふ
Proverbs 26:16 惰者はおのれの目に自らを善く答ふる七人の者よりも習慧ありとなす
Proverbs 26:17 路をよぎり自己に関りなき争擾にたづさはる者は狗の耳をとらふる者のごとし
Proverbs 26:19 既にその鄰を欺くことをなして我はただ戯れしのみといふ者は 火箭または鎗または死を擲つ狂人のごとし
Proverbs 26:20 薪なければ火はきえ 人の是非をいふ者なければ争端はやむ
Proverbs 26:21 煨火に炭をつぎ火に薪をくぶるがごとく争論を好む人は争論を起す
Proverbs 26:22 人の是非をいふものの言はたはぶれのごとしと雍もかへつて腹の奥に入る
Proverbs 26:23 温かき口唇をもちて惡き心あるは銀の滓をきせたる瓦片のごとし
Proverbs 26:24 恨むる者は口唇をもて自ら飾れども 心の衷には虚偽をいだく
Proverbs 26:25 彼その聲を和らかにするとも之を信ずるなかれ その心に七の憎むべき者あればなり
Proverbs 26:26 たとひ虚偽をもてその恨をかくすとも その惡は会衆の中に顕はる
Proverbs 26:27 坑を掘るものは自ら之に陥らん 石を轉ばしあぐる者の上にはその石まろびかへらん
Proverbs 26:28 虚偽の舌はおのれの害す者を憎み 諂ふ口は滅亡をきたらす
Proverbs 27:1 なんぢ明日のことを誇るなかれ そは一日の生ずるところの如何なるを知ざればなり
Proverbs 27:2 汝おのれの口をもて自ら讃むることなく人をして己を讃めしめよ 自己の口唇をもてせず 他人をして己をほめしめよ
Proverbs 27:3 石は重く沙は軽からず 然ど愚なる者の怒はこの二よりも重し
Proverbs 27:4 忿怒は猛く憤恨は烈し されど嫉妬の前には誰か立ことをを得ん
Proverbs 27:5 明白に譴むるに秘に愛するに愈る
Proverbs 27:6 愛する者の傷つくるは眞実よりし 敵の接吻するは偽詐よりするなり
Proverbs 27:7 飽るものは蜂の蜜をも踐つく されど飢たる者には苦き物さへもすべて甘し
Proverbs 27:8 その家を離れてさまよふ人は その巣を離れてさまよふ鳥のごとし
Proverbs 27:9 膏と香とは人の心をよろこばすなり 心よりして勧言を與ふる友の美しきもまた斯のごとし
Proverbs 27:10 なんぢの友と汝の父の友とを棄るなかれ なんぢ患難にあふ日に兄弟の家にいることなかれ 親しき隣は疏き兄弟に愈れり
Proverbs 27:11 わが子よ智慧を得てわが心を悦ばせよ 然ば我をそしる者に我こたふることを得ん
Proverbs 27:12 賢者は禍害を見てみづから避け 拙者はすすみて罰をうく
Proverbs 27:13 人の保證をなす者よりは先その衣をとれ 他人の保證をなす者をば固くとらへよ
Proverbs 27:14 晨はやく起て大聲にその隣を祝すれば却て呪詛と見なされん
Proverbs 27:15 相争ふ婦は雨ふる日に絶ずある雨漏のごとし
Proverbs 27:16 これを制ふるものは風をおさふるがごとく 右の手に膏をつかむがごとし
Proverbs 27:17 鉄は鉄をとぐ 斯のごとくその友の面を研なり
Proverbs 27:18 無花果の樹をまもる者はその果をくらふ 主を貴ぶものは響を得
Proverbs 27:19 水に照せば面と面と相肖るがごとく 人の心は人の心に似たり
Proverbs 27:20 陰府と沈淪とは飽ことなく 人の目もまた飽ことなし
Proverbs 27:21 坩堝によりて銀をためし鑢によりて金をためし その讃らるる所によりて人をためす
Proverbs 27:22 なんぢ愚なる者を臼にいれ杵をもて麥と偕にこれを搗ともその愚は去らざるなり
Proverbs 27:23 なんぢの羊の状況をよく知り なんぢの群に心を留めよ
Proverbs 27:24 富は永く保つものにあらず いかで位は世々にたもたん
Proverbs 27:25 艸枯れ苗いで山の蔬菜あつめらる
Proverbs 27:26 羔羊はなんぢの衣服を出し 牝羊は田圃を買ふ價となり
Proverbs 27:27 牝羊の乳はおほくして汝となんぢの家人の糧となり汝の女をやしなふにたる
Proverbs 28:1 惡者は逐ふ者なけれども逃げ 義者は獅子のごとくに勇まし
Proverbs 28:2 國の罪によりて侯伯多くなり 智くして知識ある人によりて國は長く保つ
Proverbs 28:3 弱者を虐ぐる貧人は糧をのこさざる暴しき雨のごとし
Proverbs 28:4 律法を棄るものは惡者をほめ 律法を守る者はこれに敵す
Proverbs 28:5 惡人は義きことを覚らず ヱホバを求むる者は凡の事をさとる
Proverbs 28:6 義しくあゆむ貧者は曲れる路をあゆむ富者に愈る
Proverbs 28:7 律法を守る者は智子なり 放蕩なる者に交るものは父を辱かしむ
Proverbs 28:8 利息と高利とをもてその財産を増すものは貧人をめぐむ者のために之をたくはふるなり
Proverbs 28:9 耳をそむけて律法を聞ざる者はその祈すらも憎まる
Proverbs 28:10 義者を惡き這に惑す者はみづから自己の阱に陥らん されど質直なる者は福祉をつぐべし
Proverbs 28:11 富者はおのれの目に自らを智恵ある者となす されど聡明ある貧者は彼をはかり知る
Proverbs 28:12 義者の喜ぶときは大なる榮あり 惡者の起るときは民身を匿す
Proverbs 28:13 その罪を隠すものは榮ゆることなし 然ど認らはして之を離るる者は憐憫をうけん
Proverbs 28:14 恒に畏るる人は幸福なり その心を剛愎にする者は災禍に陥るべし
Proverbs 28:15 貧しき民を治むるあしき侯伯は吼る獅子あるひは飢たる熊のごとし
Proverbs 28:16 智からざる君はおほく暴虐をおこなふ 不義の利を惡む者は遐齢をうべし
Proverbs 28:17 人を殺してその血を心に負ふ者は墓に奔るなり 人これを阻むること勿れ
Proverbs 28:18 義く行む者は救をえ 曲れる路に行む者は直に跌れん
Proverbs 28:19 おのれの田地を耕す者は糧にあき 放蕩なる者に從ふものは貧乏に飽く
Proverbs 28:20 忠信なる人は多くの幸幅をえ 速かに富を得んとずる者は罪を免れず
Proverbs 28:21 人を偏視るはよからず 人はただ一片のパンのために愆を犯すなり
Proverbs 28:22 惡目をもつ者は財をえんとて急がはしく 却て貧窮のおのれに來るを知らず
Proverbs 28:23 人を譴むる者は舌をもて諮ふ者よりも大なる感謝をうく
Proverbs 28:24 父母の物を竊みて非ならずといふ者は滅す者の友なり
Proverbs 28:25 心に貪る者は争端を起し ヱホバに倚頼むものは豊饒になるべし
Proverbs 28:26 おのれの心を恃む者は愚なり 智慧をもて行む者は救をえん
Proverbs 28:27 貧者に賙すものは乏しからず その目を掩ふ者は詛を受ること多し
Proverbs 28:28 惡者の起るときは人匿れ その滅るときは義者ます
Proverbs 29:1 しばしば責られてもなほ強項なる者は救はるることなくして猝然に滅されん
Proverbs 29:2 義者ませば民よろこび 惡きもの權を掌らば民かなしむ
Proverbs 29:3 智慧を愛する人はその父を悦ばせ 妓婦に交る者はその財産を費す
Proverbs 29:4 王は公義をもて國を堅うす されど租税を征取る者はこれを滅す
Proverbs 29:5 その隣に諮者はかれの脚の前に羅を張
Proverbs 29:6 惡人の罪の中には罟あり 然ど義者は歓び樂しむ
Proverbs 29:7 義きものは貧きものの訟をかへりみる 然ど惡人は之を知ることを願はず
Proverbs 29:8 嘲笑人は城邑を擾し 智慧ある者は怒をしづむ
Proverbs 29:9 智慧ある人おろかかる人と争へば或は怒り或は笑ひて休むことなし
Proverbs 29:10 血をながす人は直き人を惡む されど義き者はその生命を救はんことを求む
Proverbs 29:11 愚なる者はその怒をことごとく露はし 智慧ある者は之を心に蔵む
Proverbs 29:12 君王もし虚偽の言を聴かばその臣みな惡し
Proverbs 29:13 貧者と苛酷者と偕に世にをる ヱホバは彼等の目に光をあたへ給ふ
Proverbs 29:14 眞實をもて弱者を審判する王はその位つねに堅く立つべし
Proverbs 29:15 鞭と譴責とは智慧をあたふ 任意になしおかれたる子はその母を辱しむ
Proverbs 29:16 惡きもの多ければ罪も亦おほし 義者は彼等の傾覆をみん
Proverbs 29:17 なんぢの子を懲せ さらば彼なんぢを安からしめ 又なんぢの心に喜樂を與へん
Proverbs 29:18 黙示なければ民は放肆にす 律法を守るものは福ひなり
Proverbs 29:19 僕は言をもて譴むるとも改めず 彼は知れども從はざればなり
Proverbs 29:20 なんぢ言を謹まざる人を見しや 彼よりは却て愚なる者に望あり
Proverbs 29:21 僕をその幼なき時より柔かに育てなば終には子の如くならしめん
Proverbs 29:22 怒る人は争端を起し憤る人は罪おほし
Proverbs 29:23 人の傲慢はおのれを卑くし 心に謙だる者は榮誉を得
Proverbs 29:24 盗人に党する者はおのれの霊魂を惡むなり 彼は誓を聴けども説述べず
Proverbs 29:25 人を畏るれば罟におちいる ヱホバをたのむ者は護られん
Proverbs 29:26 君の慈悲を求むる者はおほし 然れど人の事を定むるはヱホバによる
Proverbs 29:27 不義をなす人は義者の惡むところ 義くあゆむ人は惡者の惡むところなり
Proverbs 30:1 ヤケの子アグルの語なる箴言 かれイテエルにむかひて之をいへり 即ちイテエルとクカルとにいへる所のものなり
Proverbs 30:2 我は人よりも愚なり 我には人の聡明あらず
Proverbs 30:3 我いまた智慧をならひ得ず またいまだ至聖きものを暁ることをえず
Proverbs 30:4 天に昇りまた降りし者は誰か 風をその掌中に聚めし者は誰か 水を衣につつみし者は誰か 他のすべての限界を定めし者は誰か その名は何ぞ その子の名は何ぞ 汝これを知るや
Proverbs 30:5 神の言はみな潔よし 神は彼を頼むものの盾なり
Proverbs 30:6 汝その言に加ふること勿れ 恐くは彼なんぢをせめ 又なんぢを謊る者となしたまはん
Proverbs 30:7 われ二の事をなんぢに求めたり 我が死ざる先にこれをたまへ
Proverbs 30:8 即ち虚假と謊言とを我より離れしめ 我をして貧からしめずまた富しめず 惟なくてならぬ糧をあたへ給へ
Proverbs 30:9 そは我あきて神を知ずといひヱホバは誰なりやといはんことを恐れ また貧くして窃盗をなし我が紳の名を汚さんことを恐るればなり
Proverbs 30:10 なんぢ僕をその主に讒ることなかれ 恐くは彼なんぢを詛ひてなんぢ罪せられん
Proverbs 30:11 その父を詛ひその母を祝せざる世類あり
Proverbs 30:12 おのれの目に自らを潔者となして尚その汚穢を滌はれざる世類あり
Proverbs 30:13 また一の世類あり 嗚呼その眼はいかに高きぞや その瞼は昂れり
Proverbs 30:14 その歯は劍のごとく その牙は刃のごとき世類あり 彼等は貧き者を地より呑み 窮乏者を人の中より食ふ
Proverbs 30:15 蛭に二人の女あり 與ヘよ與へよと呼はる 飽ことを知ざるもの三あり 否な四あり皆たれりといはず
Proverbs 30:16 即ち陰府姙まざる胎水に満されざる地 足りといはざる火これたり
Proverbs 30:17 おのれの父を嘲り母に從ふことをいやしとする眼は 谷の鴉これを抜いだし鷲の雛これを食はん
Proverbs 30:18 わが奇とするもの三あり否な四あり共にわが識ざる者なり
Proverbs 30:19 即ち空にとぷ鷲の路 磐の上にはふ蛇の路 淘にはしる舟の路 男の女にあふの路これなり
Proverbs 30:20 淫婦の途も亦しかり 彼は食ひてその口を拭ひ われ惡きことを爲ざりきといふ
Proverbs 30:21 地は三の者によりて震ふ否な四の者によりて耐ることあたはざるなり
Proverbs 30:22 即ち僕たるもの王となるに因り愚なるもの糧に飽るにより
Proverbs 30:23 厭忌はれたる婦の嫁ぐにより婢女その生母に績に囚りてなり
Proverbs 30:24 地に四の物あり微小といへども最智し
Proverbs 30:25 蟻は力なき者なれどもその糧を夏のうちに備ふ
Proverbs 30:26 山鼠ば強からざれどもその室を磐につくる
Proverbs 30:27 蝗は王なけれどもみな隊を立ていづ
Proverbs 30:28 守宮は手をもてつかまり王の宮にをる
Proverbs 30:29 善あゆむもの三あり否な四あり皆よく歩く
Proverbs 30:30 獣の中にて最も強くもろもろのものの前より退かざる獅子
Proverbs 30:31 肚帯せし戦馬 牡野羊 および當ること能はざる王これなり
Proverbs 30:32 汝もし愚にして自から高ぶり或は惡きことを計らば汝の手を口に當つべし
Proverbs 30:33 それ乳を搾れば乾酪いで鼻を搾れば血いで 怒を激れば争端おこる
Proverbs 31:1 レムエル王のことば即ちその母の彼に教へし箴言なり
Proverbs 31:2 わが子よ何を言んか わが胎の子よ何をいはんか 我が願ひて得たる子よ何をいはんか
Proverbs 31:3 なんぢの力を女につひやすなかれ 王を滅すものに汝の途をまかする勿れ
Proverbs 31:4 レムエルよ酒を飮は王の爲べき事に非ず 王の爲べき事にあらず 醇醪を求むるは牧伯の爲すべき事にあらず
Proverbs 31:5 恐くは洒を飮て律法をわすれ 且すべて惱まさるる者の審判を枉げん
Proverbs 31:6 醇醪を亡びんとする者にあたへ 酒を心の傷める者にあたへよ
Proverbs 31:7 かれ飮てその貧窮をわすれ復その苦楚を憶はざるべし
Proverbs 31:8 なんぢ瘖者のため又すべての孤者の訟のために口をひらけ
Proverbs 31:9 なんぢ口をひらきて義しき審判をなし貧者と窮乏者の訟を糺せ
Proverbs 31:10 誰か賢き女を見出すことを得ん その價は眞珠よりも貴とし
Proverbs 31:11 その夫の心は彼を恃み その産業は乏しくならじ
Proverbs 31:12 彼が存命ふる間はその夫に善事をなして惡き事をなさず
Proverbs 31:13 彼は羊の毛と麻とを求め喜びて手から操き
Proverbs 31:14 商賈の舟のごとく遠き國よりその糧を運び
Proverbs 31:15 夜のあけぬ先に起てその家人に糧をあたへ その婢女に日用の分をあたふ
Proverbs 31:16 田畝をはかりて之を買ひ その手の操作をもて葡萄園を植ゑ
Proverbs 31:17 力をもて腰に帯し その手を強くす
Proverbs 31:18 彼はその利潤の益あるを知る その燈火は終夜きえず
Proverbs 31:19 かれ手を紡線車にのべ その指に紡錘をとり
Proverbs 31:20 手を貧者にのべ 手を困苦者に舒ぶ
Proverbs 31:21 彼は家人の爲に雪をおそれず 蓋その家人みな蕃紅の衣をきればなり
Proverbs 31:22 彼はおのれの爲に美しき褥子をつくり 細布と紫とをもてその衣とせり
Proverbs 31:23 その夫はその地の長老とともに邑の門に坐するによりて人に知らるるなり
Proverbs 31:24 彼は細布の衣を製りてこれをうり 帯をつくりて商賈にあたふ
Proverbs 31:25 彼は筋力と尊貴とを衣とし且のちの日を笑ふ
Proverbs 31:26 彼は口を啓きて智慧をのぶ 仁愛の教誨その舌にあり
Proverbs 31:27 かれはその家の事を鑒み 怠惰の糧を食はず
Proverbs 31:28 その衆子は起て彼を祝す その夫も彼を讃ていふ
Proverbs 31:29 賢く事をなす女子は多けれども 汝はすべての女子に愈れり
Proverbs 31:30 艶麗はいつはりなり 美色は呼吸のごとし 惟ヱホバを畏るる女は誉られん
Proverbs 31:31 その手の操作の果をこれにあたへ その行爲によりてこれを邑の門にほめよ
Ecclesiastes 0:0 傅道之書
Ecclesiastes 1:1 ダビデの子 ヱルサレムの王 傅道者の言
Ecclesiastes 1:2 傅道者言く 空の空 空の空なる哉 都て空なり
Ecclesiastes 1:3 日の下に人の労して爲ところの諸の動作はその身に何の益かあらん
Ecclesiastes 1:4 世は去り世は來る 地は永久に長存なり
Ecclesiastes 1:5 日は出で日は入り またその出し處に喘ぎゆくなり
Ecclesiastes 1:6 風は南に行き又轉りて北にむかひ 旋轉に旋りて行き 風復その旋轉る處にかへる。
Ecclesiastes 1:7 河はみな海に流れ入る 海は盈ること無し 河はその出きたれる處に復還りゆくなり
Ecclesiastes 1:8 萬の物は労苦す 人これを言つくすことあたはず 目は見に飽ことなく耳は聞に充ること無し
Ecclesiastes 1:9 曩に有りし者はまた後にあるべし 曩に成し事はまた後に成べし 日の下には新しき者あらざるなり
Ecclesiastes 1:10 見よ是は新しき者なりと指て言べき物あるや 其は我等の前にありし世々に既に久しくありたる者なり
Ecclesiastes 1:11 己前のものの事はこれを記憶ることなし 以後のものの事もまた後に出る者これをおぼゆることあらじ
Ecclesiastes 1:12 われ傅道者はヱルサレムにありてイスラエルの王たりき
Ecclesiastes 1:13 我心を盡し智慧をもちひて天が下に行はるる諸の事を尋ねかつ考覈たり此苦しき事件は神が世の人にさづけて之に身を労せしめたまふ者なり
Ecclesiastes 1:14 我日の下に作ところの諸の行爲を見たり 嗚呼皆空にして風を捕ふるがごとし
Ecclesiastes 1:15 曲れる者は直からしむるあたはす欠たる者は散をあはするあたはず
Ecclesiastes 1:16 我心の中に語りて言ふ 嗚呼我は大なる者となれり 我より先にヱルサレムにをりしすべての者よりも我は多くの智慧を得たり 我心は智慧と知識を多く得たり
Ecclesiastes 1:17 我心を盡して智慧を知んとし狂妄と愚癡を知んとしたりしが 是も亦風を捕ふるがごとくなるを暁れり
Ecclesiastes 1:18 夫智慧多ければ憤激多し 知識を増す者は憂患を増す
Ecclesiastes 2:1 我わが心に言けらく 來れ我試みに汝をよろこばせんとす 汝逸樂をきはめよと 嗚呼是もまた空なりき
Ecclesiastes 2:2 我笑を論ふ是は狂なり 快樂を論ふ是何の爲ところあらんやと
Ecclesiastes 2:3 我心に智慧を懐きて居つつ洒をもて肉身を肥さんと試みたり 又世の人は天が下におて生涯如何なる事をなさぼ善らんかを知んために我は愚なる事を行ふことをせり
Ecclesiastes 2:4 我は大なる事業をなせり 我はわが爲に家を建て葡萄園を設け
Ecclesiastes 2:5 園をつくり囿をつくり 又菓のなる諸の樹を其處に植ゑ
Ecclesiastes 2:6 また水の塘池をつくりて樹木の生茂れる林に其より水を灌がしめたり
Ecclesiastes 2:7 我は僕婢を買得たり また家の子あり 我はまた凡て我より前にヱルサレムにをりし者よりも衆多の牛羊を有り
Ecclesiastes 2:8 我は金銀を積み 王等と國々の財寶を積あげたり また歌詠之男女を得 世の人の樂なる妻妾を多くえたり
Ecclesiastes 2:9 斯我は大なる者となり 我より前にヱルサレムにをりし諸の人よりも大になりぬ 吾智慧もまたわが身を離れざりき
Ecclesiastes 2:10 凡そわが目の好む者は我これを禁ぜす 凡そわが心の悦ぶ者は我これを禁ぜざりき 即ち我はわが諸の労苦によりて快樂を得たり 是は我が諸の労苦によりて得たるところの分なり
Ecclesiastes 2:11 我わが手にて爲たる諸の事業および我が労して事を爲たる労苦を顧みるに 皆空にして風を捕ふるが如くなりき 日の下には益となる者あらざるなり
Ecclesiastes 2:12 我また身を轉らして智慧と狂妄と愚癡とを観たり 抑王に嗣ぐところの人は如何なる事を爲うるや その既になせしところの事に過ざるべし
Ecclesiastes 2:13 光明の黒暗にまさるがごとく智匙は愚癡に勝るなり 我これを暁れり
Ecclesiastes 2:14 智者の目はその頭にあり愚者は黒暗に歩む 然ど我しる具みな遇ふところの事は同一なり
Ecclesiastes 2:15 我心に謂けらく 愚者の遇ふところの事に我もまた遇ふべければ 我なんぞ智慧のまさる所あらんや 我また心に謂り是も亦空なるのみと
Ecclesiastes 2:16 夫智者も愚者と均しく永く世に記念らるることなし 來らん世にいたれば皆早く既に忘らるるなり 嗚呼智者の愚者とおなじく死るは是如何なる事ぞや
Ecclesiastes 2:17 是に於て我世にながらふることを厭へり 凡そ日の下に爲ところの事は我に惡く見ればなり 即ち皆空にして風を捕ふるがごとし
Ecclesiastes 2:18 我は日の下にわが労して諸の動作をなしたるを恨む其は我の後を嗣ぐ人にこれを遺さざるを得ざればなり
Ecclesiastes 2:19 其人の智愚は誰かこれを飢らん然るにその人は日の下に我が労して爲し智慧をこめて爲たる諸の工作を管理るにいたらん是また空なり
Ecclesiastes 2:20 我身をめぐらし日の下にわが労して爲たる諸の動作のために望を失へり
Ecclesiastes 2:21 今茲に人あり 智慧と知識と才能をもて労して事をなさんに終には之がために労せざる人に一切を遺してその所有となさしめざるを得ざるなり 是また空にして大に惡し
Ecclesiastes 2:22 夫人はその日の下に労して爲ところの諸の動作とその心労によりて何の得ところ有るや
Ecclesiastes 2:23 その世にある日には常に憂患あり その労苦は苦し その心は夜の間も安んずることあらず 是また空なり
Ecclesiastes 2:24 人の食飮をなしその労苦によりて心を樂しましむるは幸福なる事にあらず 是もまた神の手より出るなり 我これを見る
Ecclesiastes 2:25 誰かその食ふところその歓樂を極むるところに於て我にまさる者あらん
Ecclesiastes 2:26 神はその心に適ふ人には智慧と知識と喜樂を賜ふ 然れども罪を犯す人には労苦を賜ひて斂めかつ積ことを爲さしむ 是は其を神の心に適ふ人に與へたまはんためなり 是もまた空にして風を捕るがごとし
Ecclesiastes 3:1 天が下の萬の事には期あり 萬の事務には時あり
Ecclesiastes 3:2 生るるに時あり死るに時あり 植るに時あり植たる者を抜に時あり
Ecclesiastes 3:3 殺すに時あり醫すに時あり 毀つに時あり建るに時あり
Ecclesiastes 3:4 泣に時あり笑ふに時あり 悲むに時あり躍るに時あり
Ecclesiastes 3:5 石を擲つに時あり石を斂むるに時あり 懐くに時あり懐くことをせざるに時あり
Ecclesiastes 3:6 得に時あり失ふに時あり 保つに時あり棄るに時あり
Ecclesiastes 3:7 裂に時あり縫に時あり 黙すに時あり語るに時あり
Ecclesiastes 3:8 愛しむに時あり惡むに時あり 戦ふに時あり和ぐに時あり
Ecclesiastes 3:9 働く者はその労して爲ところよりして何の益を得んや
Ecclesiastes 3:10 我神が世の人にさづけて身をこれに労せしめたまふところの事作を視たり
Ecclesiastes 3:11 神の爲したまふところは皆その時に適ひて美麗しかり 神はまた人の心に永遠をおもふの思念を授けたまへり 然れば人は神のなしたまふ作爲を始より終まで知明むることを得ざるなり
Ecclesiastes 3:12 我知る人の中にはその世にある時に快樂をなし善をおこなふより外に善事はあらず
Ecclesiastes 3:13 また人はみな食飮をなしその労苦によりて逸樂を得べきなり 是すなはち神の賜物たり
Ecclesiastes 3:14 我知る凡て神のなしたまふ事は限なく存せん 是は加ふべき所なく是は減すべきところ無し 神の之をなしたまふは人をしてその前に畏れしめんがためなり
Ecclesiastes 3:15 昔ありたる者は今もあり 後にあらん者は既にありし者なり 神はその遂やられし者を索めたまふ
Ecclesiastes 3:16 我また日の下を見るに審判をおこなふ所に邪曲なる事あり 公義を行ふところに邪曲なる事あり
Ecclesiastes 3:17 我すなはち心に謂けらく神は義者と惡者とを鞫きたまはん 彼處において萬の事と萬の所爲に時あるなり
Ecclesiastes 3:18 我また心に謂けらく是事あるは是世の人のためなり 即ち神は斯世の人を検して之にその獣のごとくなることを自ら暁らしめ給ふなり
Ecclesiastes 3:19 世の人に臨むところの事はまた獣にも臨む この二者に臨むところの事は同一にして是も死ば彼も死るなり 皆同一の呼吸に依れり 人は獣にまさる所なし皆空なり
Ecclesiastes 3:20 皆一の所に往く 皆塵より出で皆塵にかへるなり
Ecclesiastes 3:21 誰か人の魂の上に昇り獣の魂の地にくだることを知ん
Ecclesiastes 3:22 然ば人はその動作によりて逸樂をなすに如はなし 是その分なればなり 我これを見る その身の後の事は誰かこれを携へゆきて見さしむる者あらんや
Ecclesiastes 4:1 茲に我身を轉して日の下に行はるる諸の虐遇を視たり 嗚呼虐げらる者の涙ながる 之を慰むる者あらざるなり また虐ぐる者の手には權力あり 彼等はこれを慰むる者あらざるなり
Ecclesiastes 4:2 我は猶生る生者よりも既に死たる死者をもて幸なりとす
Ecclesiastes 4:3 またこの二者よりも幸なるは未だ世にあらずして日の下におこなはるる惡事を見ざる者なり
Ecclesiastes 4:4 我また諸の労苦と諸の工事の精巧とを観るに 是は人のたがひに嫉みあひて成せる者たるなり 是も空にして風を捕ふるが如し
Ecclesiastes 4:5 愚なる者は手を束ねてその身の肉を食ふ
Ecclesiastes 4:6 片手に物を盈て平穏にあるは 兩手に物を盈て労苦て風を捕ふるに愈れり
Ecclesiastes 4:7 我また身をめぐらし日の下に空なる事のあるを見たり
Ecclesiastes 4:8 茲に人あり只獨にして伴侶もなく子もなく兄弟もなし 然るにその労苦は都て窮なくの目は富に飽ことなし 彼また言ず嗚呼我は誰がために労するや何とて我は心を樂ませざるやと 是もまた空にして労力の苦き者なり
Ecclesiastes 4:9 二人は一人に愈る其はその労苦のために善報を得ればなり
Ecclesiastes 4:10 即ちその跌倒る時には一箇の人その伴侶を扶けおこすべし 然ど孤身にして跌倒る者は憐なるかな之を扶けおこす者なきなり
Ecclesiastes 4:11 又二人ともに寝れば温暖なり一人ならぼ爭で混暖ならんや
Ecclesiastes 4:12 人もしその一人を攻撃ば二人してこれに當るべし 三根の繩は容易く断ざるなり
Ecclesiastes 4:13 貧くして賢き童子は 老て愚にして諌を納れざる王に愈る
Ecclesiastes 4:14 彼は牢獄より出て王となれり 然どその國に生れし時は貧かりき
Ecclesiastes 4:15 我日の下にあゆむところの群生が彼王に続てこれに代りて立ところの童子とともにあるを観たり
Ecclesiastes 4:16 民はすべて際限なし その前にありし者みな然り 後にきたる者また彼を悦ばず 是も空にして風を捕ふるがごとし
Ecclesiastes 5:1 汝ヱホバの室にいたる時にはその足を愼め 進みよりて聴聞は愚なる者の犠牲にまさる 彼等はその惡をおこなひをることを知ざるなり
Ecclesiastes 5:2 汝神の前にありては軽々し口を開くなかれ 心を攝めて妄に言をいだすなかれ 其は神は天にいまし汝は地にをればなり 然ば汝言詞を少からしめよ
Ecclesiastes 5:3 夫夢は事の繁多によりて生じ 愚なる者の聲は言の衆多によりて識るなり
Ecclesiastes 5:4 汝神に誓願をかけなば之を還すことを怠るなかれ 神は愚なる者を悦びたまはざるなり 汝はそのかけし誓願を還すべし
Ecclesiastes 5:5 誓願をかけてこれを還さざるよりは寧ろ誓願をかけざるは汝に善し
Ecclesiastes 5:6 汝の口をもて汝の身に罪を犯さしむるたかれ 亦使者の前に其は過誤なりといふべからず 恐くは神汝の言を怒り汝の手の所爲を滅したまはん
Ecclesiastes 5:7 夫夢多ければ空たる事多し 言詞の多きもまた然り 汝ヱホバを畏め
Ecclesiastes 5:8 汝國の中に貧き者を虐遇る事および公道と公義を枉ることあるを見るもその事あるを怪むなかれ 其はその位高き人よりも高き者ありてその人を伺へばなり又其等よりも高き者あるなり
Ecclesiastes 5:9 國の利益は全く是にあり 即ち王者が農事に勤むるにあるなり
Ecclesiastes 5:10 銀を好む者は銀に飽こと無し 豊富ならんことを好む者は得るところ有らず 是また空なり
Ecclesiastes 5:11 貨財増せばこれを食む者も増すなり その所有主は唯日にこれを看るのみ その外に何の益かあらん
Ecclesiastes 5:12 労する者はその食ふところは多きも少きも快く睡るなり 然れども富者はその貨財の多きがために睡ることを得せず
Ecclesiastes 5:13 我また日の下に患の大なる者あるを見たり すなはち財寶のこれを蓄ふる者の身に害をおよぼすことある是なり
Ecclesiastes 5:14 その財寶はまた災難によりて失落ことあり 然ばその人子を挙ることあらんもその手には何物もあることなし
Ecclesiastes 5:15 人は母の胎より出て釆りしごとくにまた裸體にして皈りゆくべし その労苦によりて得たる者を毫厘も手にとりて携へゆくことを得ざるなり
Ecclesiastes 5:16 人は全くその來りしごとくにまた去ゆかざるを得ず 是また患の大なる者なり 抑風を追て労する者何の益をうること有んや
Ecclesiastes 5:17 人は生命の涯黒暗の中に食ふことを爲す また憂愁多かり 疾病身にあり 憤怒あり
Ecclesiastes 5:18 視よ我は斯観たり 人の身にとりて善かつ美なる者は 神にたまはるその生命の極食飮をなし 且その日の下に労して働ける労苦によりて得るところの福禄を身に享るの事なり是その分なればなり
Ecclesiastes 5:19 何人によらず神がこれに富と財を與へてそれに食ことを得せしめ またその分を取りその労苦によりて快樂を得ることをせさせたまふあれば その事は神の賜物たるなり
Ecclesiastes 5:20 かかる人はその年齢の日を憶ゆること深からず 其は神これが心の喜ぶところにしたがひて應ることを爲したまへばなり
Ecclesiastes 6:1 我観るに日の下に一件の患あり是は人の間に恒なる者なり
Ecclesiastes 6:2 すなはち神富と財と貴を人にあたへて その心に慕ふ者を一件もこれに欠ることなからしめたまひながらも 神またその人に之を食ふことを得せしめたまはずして 他人のこれを食ことあり 是空なり惡き疾なり
Ecclesiastes 6:3 仮令人百人の子を挙けまた長壽してその年齢の日多からんも 若その心景福に満足せざるか又は葬らるることを得ざるあれば 我言ふ流産の子はその人にまさるたり
Ecclesiastes 6:4 夫流産の子はその來ること空しくして黒暗の中に去ゆきその名は黒暗の中にかくるるなり
Ecclesiastes 6:5 又是は日を見ることなく物を知ることなければ彼よりも安泰なり
Ecclesiastes 6:6 人の壽命千年に倍するとも福祉を蒙れるにはあらず 皆一所に往くにあらずや
Ecclesiastes 6:7 人の労苦は皆その口のためなり その心はなほも飽ざるところ有り
Ecclesiastes 6:8 賢者なんぞ愚者に勝るところあらんや また世人の前に歩行ことを知ところの貧者も何の勝るところ有んや
Ecclesiastes 6:9 目に観る事物は心のさまよひ歩くに愈るなり 是また空にして風を捕ふるがごとし
Ecclesiastes 6:10 嘗て在し者は久しき前にすでにその名を命られたり 即ち是は人なりと知る 然ば是はかの自己よりも力強き者と争ふことを得ざるなり
Ecclesiastes 6:11 衆多の言論ありて虚浮き事を増す然ど人に何の益あらんや
Ecclesiastes 6:12 人はその虚空き生命の日を影のごとくに送るなり 誰かこの世において如何なる事か人のために善き者なるやを知ん 誰かその身の後に日の下にあらんところの事を人に告うる者あらんや
Ecclesiastes 7:1 名は美膏に愈り 死る日は生るる日に愈る
Ecclesiastes 7:2 哀傷の家に入は宴樂の家に入に愈る 其は一切の人の終かくのごとくなればなり 生る者またこれをその心にとむるあらん
Ecclesiastes 7:3 悲哀は嬉笑に愈る 其は面に憂色を帯るなれば心も善にむかへばなり
Ecclesiastes 7:4 賢き者の心は哀傷の家にあり 愚なる者の心は喜樂の家にあり
Ecclesiastes 7:5 賢き者の勤責を聴は愚なる者の歌詠を聴に愈るなり
Ecclesiastes 7:6 愚なる者の笑は釜の下に焚る荊剌の聲のごとし是また空なり
Ecclesiastes 7:7 賢き人も虐待る事によりて狂するに至るあり賄賂は人の心を壊なふ
Ecclesiastes 7:8 事の終はその始よりも善し 容忍心ある者は傲慢心ある者に勝る
Ecclesiastes 7:9 汝氣を急くして怒るなかれ 怒は愚なる者の胸にやどるなり
Ecclesiastes 7:10 昔の今にまさるは伺故ぞやと汝言なかれ 汝の斯る問をなすは是智慧よりいづる者にあらざるなり
Ecclesiastes 7:11 智慧の上に財産をかぬれば善し 然れば日を見る者等に利益おほかるべし
Ecclesiastes 7:12 智慧も身の護庇となり銀子も身の護庇となる 然ど智恵はまたこれを有る者に生命を保しむ 是知識の殊勝たるところなり
Ecclesiastes 7:13 汝神の作爲を考ふべし 神の曲たまひし者は誰かこれを直くすることを得ん
Ecclesiastes 7:14 幸福ある日には樂め 禍患ある日には考へよ 神はこの二者をあひ交錯て降したまふ 是は人をしてその後の事を知ることなからしめんためなり
Ecclesiastes 7:15 我この空の世にありて各様の事を見たり 義人の義をおこなひて亡ぶるあり 惡人の惡をおこなひて長壽あり
Ecclesiastes 7:16 汝義に過るなかれまた賢に過るなかれ 汝なんぞ身を減ずべけんや
Ecclesiastes 7:17 汝惡に過るなかれまた愚なる勿れ 汝なんぞ時いたらざるに死べけんや
Ecclesiastes 7:18 汝此を執は善しまた彼にも手を放すなかれ 神を畏む者はこの一切の者の中より逃れ出るなり
Ecclesiastes 7:19 智恵の智者を幇くることは邑の豪雄者十人にまさるなり
Ecclesiastes 7:20 正義して善をおこなひ罪を犯すことなき人は世にあることなし
Ecclesiastes 7:21 人の言出ず言詞には凡て心をとむる勿れ 恐くは汝の僕の汝を詛ふを聞こともあらん
Ecclesiastes 7:22 汝も屡人を詛ふことあるは汝の心に知ところなり
Ecclesiastes 7:23 我智慧をもてこの一切の事を試み役は智者とならんと謂たりしが遠くおよばざるなり
Ecclesiastes 7:24 事物の理は遠くして甚だ深し 誰かこれを究むることを得ん
Ecclesiastes 7:25 我は身をめぐらし心をもちひて物を知り事を探り 智慧と道理を崇めんとし 又惡の愚たると愚癡の狂妄たるを知んとせり
Ecclesiastes 7:26 我了れり 婦人のその心羅と網のごとくその手縲絏のごとくなる者は是死よりも苦き者なり 神の悦びたまふ者は之を避ることを得ん罪人は之に執らるべし
Ecclesiastes 7:27 傅道者言ふ 視よ我その數を知んとして一々に算へてつびに此事を了る
Ecclesiastes 7:28 我なほ尋ねて得ざる者は是なり 我千人の中には一箇の男子を得たれども その數の中には一箇の女子をも得ざるなり
Ecclesiastes 7:29 我了れるところは唯是のみ 即ち神は人を正直者に造りたまひしに人衆多の計略を案出せしなり
Ecclesiastes 8:1 誰か智者に如ん誰か事物の理を解ことを得ん 人の智慧はその人の面に光輝あらしむ 又その粗暴面も変改べし
Ecclesiastes 8:2 我言ふ王の命を守るべし既に神をさして誓ひしことあれ然るべきなり
Ecclesiastes 8:3 早まりて王の前を去ることなかれ 惡き事につのること勿れ 其は彼は凡てその好むところを爲ばなり
Ecclesiastes 8:4 王の言語には權力あり 然ば誰か之に汝何をなすやといふことを得ん
Ecclesiastes 8:5 命令を守る者は禍患を受るに至らず 智者の心は時期と判断を知なり
Ecclesiastes 8:6 萬の事務には時あり判断あり是をもて人大なる禍患をうくるに至るあり
Ecclesiastes 8:7 人は後にあらんところの事を知ず また誰か如何なる事のあらんかを之に告る者あらん
Ecclesiastes 8:8 霊魂を掌管て霊魂を留めうる人あらず 人はその死る日には權力あること旡し 此戦争には釈放たるる者あらず 又罪惡はこれを行ふ者を救ふことを得せざるなり
Ecclesiastes 8:9 我この一切の事を見また日の下におこなはるる諸の事に心を用ひたり時としては此人彼人を治めてこれに害を蒙らしむることあり
Ecclesiastes 8:10 我見しに惡人の葬られて安息にいるあり また善をおこなふ者の聖所を離れてその邑に忘らるるに至るあり是また空なり
Ecclesiastes 8:11 惡き事の報速にきたらざるが故に世人心を専にして惡をおこなふ
Ecclesiastes 8:12 罪を犯す者百次惡をなして猶長命あれども 我知る神を畏みてその前に畏怖をいだく者には幸福あるべし
Ecclesiastes 8:13 但し惡人には幸福あらず またその生命も長からずして影のごとし 其は神の前に畏怖をいだくことなければなり
Ecclesiastes 8:14 我日の下に空なる事のおこなはるるを見たり 即ち義人にして惡人の遭べき所に遭ふ者あり 惡人にして義人の遭べきところに遭ふ者あり 我謂り是もまた空なり
Ecclesiastes 8:15 是に於て我喜樂を讃む 其は食飮して樂むよりも好き事は日の下にあらざればなり 人の労して得る物の中是こそはその日の下にて神にたまはる生命の日の間その身に離れざる者なれ
Ecclesiastes 8:16 茲に我心をつくして智慧を知らんとし世に爲ところの事を究めんとしたり 人は夜も昼もその目をとぢて眠ることをせざるなり
Ecclesiastes 8:17 我神の諸の作爲を見しが人は日の下におこなはるるところの事を究むるあたはざるなり 人これを究めんと労するもこれを究むることを得ず 且又智者ありてこれを知ると思ふもこれを究むることあたはざるなり
Ecclesiastes 9:1 我はこの一切の事に心を用ひてこの一切の事を明めんとせり 即ち義き者と賢き者およびかれらの爲ところは神の手にあるなるを明めんとせり 愛むや惡むやは人これを知ることなし一切の事はその前にあるなり
Ecclesiastes 9:2 諸の人に臨む所は皆同じ 義き者にも惡き者にも善者にも 浄者にも穢れたる者にも 犠牲を献ぐる者にも犠牲を献げぬ者にもその臨むところの事は同一なり 善人も罪人に異ならず 誓をなす者も誓をなすことを畏るる者に異ならず
Ecclesiastes 9:3 諸の人に臨むところの事の同一なるは是日の下におこなはるる事の中の惡き者たり 抑人の心には惡き事充をり その生る間は心に狂妄を懐くあり 後には死者の中に往くなり
Ecclesiastes 9:4 凡活る者の中に列る者は望あり 其は生る犬は死る獅子に愈ればなり
Ecclesiastes 9:5 生者はその死んことを知る 然ど死る者は何事をも知ずまた應報をうくることも重てあらず その記憶らるる事も遂に忘れらるるに至る
Ecclesiastes 9:6 またその愛も惡も嫉も既に消うせて彼等は日の下におこなはるる事に最早何時までも関係ことあらざるなり
Ecclesiastes 9:7 汝往て喜悦をもて汝のパンを食ひ樂き心をも汝の酒を飮め 其は神久しく汝の行爲を嘉納たまへばなり
Ecclesiastes 9:8 汝の衣服を常に白からしめよ 汝の頭に膏を絶しむるなかれ
Ecclesiastes 9:9 日の下に汝が賜はるこの汝の空なる生命の日の間汝その愛する妻とともに喜びて度生せ 汝の空なる生命の日の間しかせよ 是は汝が世にありて受る分汝が日の下に働ける労苦によりて得る者なり
Ecclesiastes 9:10 凡て汝の手に堪ることは力をつくしてこれを爲せ 其は汝の往んところの陰府には工作も計謀も知識も智慧もあることなければなり
Ecclesiastes 9:11 我また身をめぐらして日の下を観るに 迅速者走ることに勝にあらず強者戦争に勝にあらず 智慧者食物を獲にあらず 明哲人財貨を得にあらず 知識人恩顧を得にあらず 凡て人に臨むところの事は時ある者偶然なる者なり
Ecclesiastes 9:12 人はまたその時を知ず 魚の禍の網にかかり烏の烏羅にかかるが如くに世の人もまた禍患の時の計らざるに臨むに及びてその禍患にかかるなり
Ecclesiastes 9:13 我日の下に是事を観て智慧となし大なる事となせり
Ecclesiastes 9:14 すなはち茲に一箇の小き邑ありて その中の人は鮮かりしが大なる王これに攻きたりてこれを囲みこれに向ひて大なる雲梯を建たり
Ecclesiastes 9:15 時に邑の中に一人の智慧ある貧しき人ありてその智慧をもて邑を救へり 然るに誰ありてその貧しき人を記念もの無りし
Ecclesiastes 9:16 是において我言り智慧は勇力に愈る者なりと 但しかの貧しき人の智慧は藐視られその言詞は聴れざりしなり
Ecclesiastes 9:17 静に聴る智者の言は愚者の君長たる者の號呼に愈る
Ecclesiastes 9:18 智慧は軍の器に勝れり一人の惡人は許多の善事を壊ふなり
Ecclesiastes 10:1 死し蝿は和香者の膏を臭くしこれを腐らす 少許の愚癡は智能と尊榮よりも重し
Ecclesiastes 10:2 智者の心はその右に愚者の心はその左に行くなり
Ecclesiastes 10:3 愚者は出て途を行にあたりてその心たらず自己の愚なることを一切の人に告ぐ
Ecclesiastes 10:4 君長たる者汝にむかひて腹たつとも汝の本處を離るる勿れ温順は大なる愆を生ぜしめざるなり
Ecclesiastes 10:5 我日の下に一の患事あるを見たり是は君長たる者よりいづる過誤に似たり
Ecclesiastes 10:6 すなはち愚なる者高き位に置かれ貴き者卑き處に坐る
Ecclesiastes 10:7 我また僕たる者が馬に乗り王侯たる者が僕のごとく地の上に歩むを観たり
Ecclesiastes 10:8 坑を据る者はみづから之におちいり石垣を毀つ者は蛇に咬れん
Ecclesiastes 10:9 石を打くだく者はそれがために傷を受け木を割る者はそれがために危難に遭ん
Ecclesiastes 10:10 鐵の鈍くなれるあらんにその刃を磨ざれば力を多く之にもちひざるを得ず 智慧は功を成に益あるなり
Ecclesiastes 10:11 蛇もし呪術を聴ずして咬ば呪術師は用なし
Ecclesiastes 10:12 智者の口の言語は恩徳あり 愚者の唇はその身を呑ほろぼす
Ecclesiastes 10:13 愚者の口の言は始は愚なり またその言は終は狂妄にして惡し
Ecclesiastes 10:14 愚者は言詞を衆くす 人は後に有ん事を知ず 誰かその身の後にあらんところの事を述るを得ん
Ecclesiastes 10:15 愚者の労苦はその身を疲らす彼は邑にいることをも知ざるなり
Ecclesiastes 10:16 その王は童子にしてその侯伯は朝に食をなず國よ 汝は禍なるかな
Ecclesiastes 10:17 その王は貴族の子またその侯伯は酔樂むためならず力を補ふために適宜き時に食をなす國よ 汝は福なるかな
Ecclesiastes 10:18 懶惰ところよりして屋背は落ち 手を垂をるところよりして家屋は漏る
Ecclesiastes 10:19 食事をもて笑ひ喜ぶの物となし洒をもて決樂を取れり 銀子は何事にも應ずるなり
Ecclesiastes 10:20 汝心の中にても王たる者を詛ふなかれ また寝室にても富者を詛なかれ 天空の鳥その聲を傳へ羽翼ある者その事を布べければなり
Ecclesiastes 11:1 汝の糧食を水の上に投げよ 多くの日の後に汝ふたたび之を得ん
Ecclesiastes 11:2 汝一箇の分を七また八にわかて 其は汝如何なる災害の地にあらんかを知ざればなり
Ecclesiastes 11:3 雲もし雨の充るあれば地に注ぐ また樹もし南か北に倒るるあればその樹は倒れたる處にあるべし
Ecclesiastes 11:4 風を伺ふ者は種播ことを得ず 雲を望む者は刈ことを得ず
Ecclesiastes 11:5 汝は風の道の如何なるを知ず また孕める婦の胎にて骨の如何に生長つを知ず 斯汝は萬事を爲たまふ神の作爲を知ことなし
Ecclesiastes 11:6 汝朝に種を播け 夕にも手を歇るなかれ 其はその實る者は此なるか彼なるか又は二者ともに美なるや汝これを知ざればなり
Ecclesiastes 11:7 夫光明は快き者なり 目に日を見るは樂し
Ecclesiastes 11:8 人多くの年生ながらへてその中凡て幸福なるもなほ幽暗の日を憶ふべきなり 其はその數も多かるべければなり 凡て來らんところの事は皆空なり
Ecclesiastes 11:9 少者よ汝の少き時に快樂をなせ 汝の少き日に汝の心を悦ばしめ汝の心の道に歩み汝の目に見るところを爲せよ 但しその諸の行爲のために神汝を鞫きたまはんと知べし
Ecclesiastes 11:10 然ば汝の心より憂を去り 汝の身より惡き者を除け 少き時と壮なる時はともに空なればなり
Ecclesiastes 12:1 故に少き日に汝の造主を記えよ 即ち惡き日の來り年のよりて我は早何も樂むところ無しと言にいたらざる先
Ecclesiastes 12:2 また日や光明や月や星の暗くならざる先 雨の後に雲の返らざる中に汝然せよ
Ecclesiastes 12:3 その日いたる時は家を守る者は慄ひ 力ある人は屈み 磨碎者は寡きによりて息み 窓より窺ふ者は目昏むなり
Ecclesiastes 12:4 磨こなす聲低くなれば衢の門は閉づ その人は鳥の聲に起あがり 歌の女子はみな身を卑くす
Ecclesiastes 12:5 かかる人は高き者を恐る畏しき者多く途にあり 巴旦杏は花咲くまた蝗もその身に重くその嗜欲は廃る 人永遠の家にいたらんとすれば哭婦衢にゆきかふ
Ecclesiastes 12:6 然る時には銀の紐は解け金の盞は砕け吊瓶は泉の側に壊れ轆轤は井の傍に破ん
Ecclesiastes 12:7 而して塵は本の如くに土に皈り 霊魂はこれを賦けし神にかへるべし
Ecclesiastes 12:8 傳道者云ふ空の空なるかな皆空なり
Ecclesiastes 12:9 また傅道者は智慧あるが故に恒に知識を民に教へたり 彼は心をもちひて尋ね究め許多の箴言を作れり
Ecclesiastes 12:10 傳道者は務めて佳美き言詞を求めたり その書しるしたる者は正直して眞實の言語なり
Ecclesiastes 12:11 智者の言語は刺鞭のごとく 會衆の師の釘たる釘のごとくにして 一人の牧者より出し者なり
Ecclesiastes 12:12 わが子よ是等より訓誡をうけよ 多く書をつくれば竟なし 多く学べば體疲る
Ecclesiastes 12:13 事の全體の皈する所を聴べし 云く 神を畏れその誡命を守れ 是は諸の人の本分たり 神は一切の行爲ならびに一切の隠れたる事を善惡ともに審判たまふなり
Song of Solomon 0:0 雅歌
Song of Solomon 1:1 これはソロモンの雅歌なり
Song of Solomon 1:2 ねがはしきは彼その口の接吻をもて我にくちつけせんことなり 汝の愛は酒よりもまさりぬ
Song of Solomon 1:3 なんぢの香膏は其香味たへに馨しくなんぢの名はそそがれたる香膏のごとし 是をもて女子等なんぢを愛す
Song of Solomon 1:4 われを引き給へ われら汝にしたがひて走らん 王われをたづさへてその後宮にいれたまへり 我らは汝によりて歡び樂しみ酒よりも勝りてなんぢの愛をほめたたふ 彼らは直きこころをもて汝を愛す
Song of Solomon 1:5 エルサレムの女子等よ われは黒けれどもなほ美はし ケダルの天幕のごとく またソロモンの帷帳に似たり
Song of Solomon 1:6 われ色くろきが故に日のわれを焼たるが故に我を視るなかれ わが母の子等われを怒りて我に葡萄園をまもらしめたり 我はおのが葡萄園をまもらざりき
Song of Solomon 1:7 わが心の愛する者よなんぢは何處にてなんぢの群を牧ひ 午時いづこにて之を息まするや請ふわれに告げよ なんぞ面を覆へる者の如くしてなんぢが伴侶の群のかたはらにをるべけんや
Song of Solomon 1:8 婦女の最も美はしき者よ なんぢ若しらずば群の足跡にしたがひて出ゆき 牧羊者の天幕のかたはらにて汝の羔山羊を牧へ
Song of Solomon 1:9 わが佳耦よ 我なんぢをパロの車の馬に譬ふ
Song of Solomon 1:10 なんぢの臉には鏈索を垂れ なんぢの頸には珠玉を陳ねて至も美はし われら白銀の星をつけたる黄金の鏈索をなんぢのために造らん
Song of Solomon 1:12 王其席につきたまふ時 わがナルダ其香味をいだせり
Song of Solomon 1:13 わが愛する者は我にとりてはわが胸のあひだにおきたる沒藥の袋のごとし
Song of Solomon 1:14 わが愛する者はわれにとりてはエンゲデの園にあるコペルの英華のごとし
Song of Solomon 1:15 ああ美はしきかな わが佳耦よ ああうるはしきかな なんぢの目は鴿のごとし
Song of Solomon 1:16 わが愛する者よ ああなんぢは美はしくまた樂しきかな われらの牀は青緑なり
Song of Solomon 1:17 われらの家の棟梁は香柏 その垂木は松の木なり
Song of Solomon 2:1 われはシャロンの野花 谷の百合なり
Song of Solomon 2:2 女子等の中にわが佳耦のあるは荊棘の中に百合花のあるがごとし
Song of Solomon 2:3 わが愛する者の男子等の中にあるは林の樹の中に林檎のあるがごとし 我ふかく喜びてその蔭にすわれり その實はわが口に甘かりき
Song of Solomon 2:4 彼われをたづさへて酒宴の室にいれたまへり その我上にひるがへしたる旗は愛なりき
Song of Solomon 2:5 請ふ なんぢら乾葡萄をもてわが力をおぎなへ 林檎をもて我に力をつけよ 我は愛によりて疾わづらふ
Song of Solomon 2:6 彼が左の手はわが頭の下にあり その右の手をもて我を抱く
Song of Solomon 2:7 エルサレムの女子等よ我なんぢらに獐と野の鹿とをさし誓ひて請ふ 愛のおのづから起るときまでは殊更に喚起し且つ醒すなかれ
Song of Solomon 2:8 わが愛する者の聲きこゆ 視よ 山をとび 岡を躍りこえて來る
Song of Solomon 2:9 わが愛する者は獐のごとくまた小鹿のごとし 視よ彼われらの壁のうしろに立ち 窓より覗き 格子より窺ふ
Song of Solomon 2:10 わが愛する者われに語りて言ふ わが佳耦よ わが美しき者よ 起ていできたれ 視よ 冬すでに過ぎ 雨もやみてはやさりぬ
Song of Solomon 2:12 もろもろの花は地にあらはれ 鳥のさへづる時すでに至り 班鳩の聲われらの地にきこゆ
Song of Solomon 2:13 無花果樹はその青き果を赤らめ 葡萄の樹は花さきてその馨しき香氣をはなつ わが佳耦よ わが美しき者よ 起て出きたれ
Song of Solomon 2:14 磐間にをり 斷崖の匿處にをるわが鴿よ われに汝の面を見させよ なんぢの聲をきかしめよ なんぢの聲は愛らしく なんぢの面はうるはし
Song of Solomon 2:15 われらのために狐をとらへよ 彼の葡萄園をそこなふ小狐をとらへよ 我等の葡萄園は花盛なればなり
Song of Solomon 2:16 わが愛する者は我につき我はかれにつく 彼は百合花の中にて其群を牧ふ
Song of Solomon 2:17 わが愛する者よ 日の涼しくなるまで 影の消るまで身をかへして出ゆき 荒き山々の上にありて獐のごとく 小鹿のごとくせよ
Song of Solomon 3:1 夜われ床にありて我心の愛する者をたづねしが尋ねたれども得ず
Song of Solomon 3:2 我おもへらく今おきて邑をまはりありき わが心の愛する者を街衢あるひは大路にてたづねんと 乃ちこれを尋ねたれども得ざりき
Song of Solomon 3:3 邑をまはりありく夜巡者らわれに遇ひければ 汝らわが心の愛する者を見しやと問ひ
Song of Solomon 3:4 これに別れて過ゆき間もなくわが心の愛する者の遇たれば 之をひきとめて放さず 遂にわが母の家にともなひゆき 我を産し者の室にいりぬ
Song of Solomon 3:5 エルサレムの女子等よ 我なんぢらに獐と野の鹿とをさし誓ひて請ふ 愛のおのづから起る時まで殊更に喚起し且つ醒すなかれ
Song of Solomon 3:6 この沒藥乳香など商人のもろもろの薫物をもて身をかをらせ 煙の柱のごとくして荒野より來る者は誰ぞや
Song of Solomon 3:7 視よ こはソロモンの乗輿にして 勇士六十人その周圍にあり イスラエルの勇士なり
Song of Solomon 3:8 みな刀劍を執り 戰鬪を善す 各人腰に刀劍を帶て夜の警誡に備ふ
Song of Solomon 3:9 ソロモン王レバノンの木をもて己のために輿をつくれり
Song of Solomon 3:10 その柱は白銀 その欄杆は黄金 その座は紫色にて作り その内部にはイスラエルの女子等が愛をもて繍たる物を張つく シオンの女子等よ 出きたりてソロモン王を見よ かれは婚姻の日 心の喜べる日にその母の己にかうぶらしし冠冕を戴けり
Song of Solomon 4:1 ああなんぢ美しきかな わが佳耦よ ああなんぢうるはしきかな なんぢの目は面帕のうしろにありて鴿のごとし なんぢの髪はギレアデ山の腰に臥たる山羊の群に似たり
Song of Solomon 4:2 なんぢの齒は毛を剪たる牝羊の浴塲より出たるがごとし おのおの雙子をうみてひとつも子なきものはなし
Song of Solomon 4:3 なんぢの唇は紅色の線維のごとく その口は美はし なんぢの頬は面帕のうしろにありて柘榴の半片に似たり
Song of Solomon 4:4 なんぢの頸項は武器庫にとて建たるダビデの戍樓のごとし その上には一千の盾を懸け列ぬ みな勇士の大楯なり
Song of Solomon 4:5 なんぢの兩乳房は牝獐の雙子なる二箇の小鹿が百合花の中に草はみをるに似たり
Song of Solomon 4:6 日の涼しくなるまで 影の消るまでわれ沒藥の山また乳香の岡に行べし
Song of Solomon 4:7 わが佳耦よ なんぢはことごとくうるはしくしてすこしのきずもなし
Song of Solomon 4:8 新婦よ レバノンより我にともなへ レバノンより我とともに來れ アマナの巓セニルまたヘルモンの巓より望み 獅子の穴また豹の山より望め
Song of Solomon 4:9 わが妹わが新婦よ なんぢはわが心を奪へり なんぢは只一目をもてまた頸玉の一をもてわが心をうばへり
Song of Solomon 4:10 わが妹わが新婦よ なんぢの愛は樂しきかな なんぢの愛は酒よりも遙にすぐれ なんぢの香膏の馨は一切の香物よりもすぐれたり 新婦よ なんぢの唇は蜜を滴らす なんぢの舌の底には蜜と乳とあり なんぢの衣裳の香氣はレバノンの香氣のごとし
Song of Solomon 4:12 わが妹わがはなよめよ なんぢは閉たる園 閉ぢたる水源 封じたる泉水のごとし
Song of Solomon 4:13 なんぢの園の中に生いづる者は石榴及びもろもろの佳果またコペル及びナルダの草
Song of Solomon 4:14 ナルダ 番紅花 菖蒲 桂枝さまざまの乳香の木および沒藥 蘆薈一切の貴とき香物なり
Song of Solomon 4:15 なんぢは園の泉水 活る水の井 レバノンよりいづる流水なり
Song of Solomon 4:16 北風よ起れ 南風よ來れ 我園を吹てその香氣を揚よ ねがはくはわが愛する者のおのが園にいりきたりてその佳き果を食はんことを
Song of Solomon 5:1 わが妹わがはなよめよ 我はわが園にいり わが沒藥と薫物とを採り わが蜜房と蜜とを食ひ わが酒とわが乳とを飮り わが伴侶等よ 請ふ食へ わが愛する人々よ 請ふ飮あけよ
Song of Solomon 5:2 われは睡りたれどもわが心は醒ゐたり 時にわが愛する者の聲あり 即はち門をたたきていふ わが妹わが佳耦 わが鴿 わが完きものよ われのために開け わが首には露滿ち わが髪の毛には夜の點滴みてりと
Song of Solomon 5:3 われすでにわが衣服を脱げり いかでまた着るべき 已にわが足を洗へり いかでまた汚すべき
Song of Solomon 5:4 わが愛する者戸の穴より手をさしいれしかば わが心かれのためにうごきたり
Song of Solomon 5:5 やがて起いでてわが愛する者の爲に開かんとせしとき 沒藥わが手より沒藥の汁わが指よりながれて關木の把柄のうへにしたたれり
Song of Solomon 5:6 我わが愛する者の爲に開きしに わが愛する者は已に退き去りぬ さきにその物いひし時はわが心さわぎたり 我かれをたづねたれども遇ず 呼たれども答應なかりき
Song of Solomon 5:7 邑をまはりありく夜巡者等われを見てうちて傷つけ 石垣をまもる者らはわが上衣をはぎとれり
Song of Solomon 5:8 エルサレムの女子等よ 我なんぢらにかたく請ふ もしわが愛する者にあはば汝ら何とこれにつぐべきや 我愛によりて疾わづらふと告げよ
Song of Solomon 5:9 なんぢの愛する者は別の人の愛する者に何の勝れるところありや 婦女の中のいと美はしき者よ なんぢが愛する者は別の人の愛する者に何の勝れるところありて斯われらに固く請ふや
Song of Solomon 5:10 わが愛する者は白くかつ紅にして萬人の上に越ゆ その頭は純金のごとく その髪はふさやかにして黒きこと烏のごとし
Song of Solomon 5:12 その目は谷川の水のほとりにをる鴿のごとく 乳にて洗はれて美はしく嵌れり
Song of Solomon 5:13 その頬は馨しき花の床のごとく 香草の壇のごとし その唇は百合花のごとくにして沒藥の汁をしたたらす
Song of Solomon 5:14 その手はきばみたる碧玉を嵌し黄金の釧のごとく 其躰は青玉をもておほひたる象牙の彫刻物のごとし
Song of Solomon 5:15 その脛は蝋石の柱を黄金の臺にてたてたるがごとく その相貌はレバノンのごとく その優れたるさまは香柏のごとし
Song of Solomon 5:16 その口ははなはだ甘く誠に彼には一つだにうつくしからぬ所なし エルサレムの女子等よ これぞわが愛する者 これぞわが伴侶なる
Song of Solomon 6:1 婦女のいと美はしきものよ 汝の愛する者は何處へゆきしや なんぢの愛する者はいづこへおもむきしや われら汝とともにたづねん
Song of Solomon 6:2 わが愛するものは己の園にくだり 香しき花の床にゆき 園の中にて群を牧ひ また百合花を採る
Song of Solomon 6:3 我はわが愛する者につき わが愛する者はわれにつく 彼は百合花の中にてその群を牧ふ
Song of Solomon 6:4 わが佳耦よ なんぢは美はしきことテルザのごとく 華やかなることエルサレムのごとく 畏るべきこと旗をあげたる軍旅のごとし
Song of Solomon 6:5 なんぢの目は我をおそれしむ 請ふ我よりはなれしめよ なんぢの髪はギレアデ山の腰に臥たる山羊の群に似たり
Song of Solomon 6:6 なんぢの齒は毛を剪たる牝羊の浴塲より出たるがごとし おのおの雙子をうみてひとつも子なきものはなし
Song of Solomon 6:7 なんぢの頬は面帕の後にありて石榴の半片に似たり
Song of Solomon 6:8 后六十人 妃嬪八十人 數しられぬ處女あり
Song of Solomon 6:9 わが鴿わが完き者はただ一人のみ 彼はその母の獨子にして産たる者の喜ぶところの者なり 女子等は彼を見て幸福なる者ととなへ 后等妃嬪等は彼を見て讃む
Song of Solomon 6:10 この晨光のごとくに見えわたり 月のごとくに美はしく 日のごとくに輝やき 畏るべきこと旗をあげたる軍旅のごとき者は誰ぞや われ胡桃の園にくだりゆき 谷の青き草木を見 葡萄や芽しし石榴の花や咲しと見回しをりしに
Song of Solomon 6:12 意はず知ず我が心われをしてわが貴とき民の車の中間にあらしむ
Song of Solomon 6:13 歸れ歸れシユラミの婦よ 歸れ歸れ われら汝を觀んことをねがふ なんぢら何とてマハナイムの跳舞を觀るごとくにシユラミの婦を觀んとねがふや
Song of Solomon 7:1 君の女よ なんぢの足は鞋の中にありて如何に美はしきかな 汝の腿はまろらかにして玉のごとく 巧匠の手にて作りたるがごとし
Song of Solomon 7:2 なんぢの臍は美酒の缺ることあらざる圓き杯盤のごとく なんぢの腹は積かさねたる麥のまはりを百合花もてかこめるが如し
Song of Solomon 7:3 なんぢの兩乳房は牝鹿の雙子なる二の小鹿のごとし
Song of Solomon 7:4 なんぢの頸は象牙の戍樓の如く 汝の目はヘシボンにてバテラビムの門のほとりにある池のごとく なんぢの鼻はダマスコに對へるレバノンの戍樓のごとし
Song of Solomon 7:5 なんぢの頭はカルメルのごとく なんぢの頭の髪は紫花のごとし 王その垂たる髪につながれたり
Song of Solomon 7:6 ああ愛よ もろもろの快樂の中にありてなんぢは如何に美はしく如何に悦ばしき者なるかな
Song of Solomon 7:7 なんぢの身の長は棕櫚の樹に等しく なんぢの乳房は葡萄のふさのごとし
Song of Solomon 7:8 われ謂ふこの棕櫚の樹にのぼり その枝に執つかんと なんぢの乳房は葡萄のふさのごとく なんぢの鼻の氣息は林檎のごとく匂はん
Song of Solomon 7:9 なんぢの口は美酒のごとし わが愛する者のために滑かに流れくだり 睡れる者の口をして動かしむ
Song of Solomon 7:10 われはわが愛する者につき 彼はわれを戀したふ わが愛する者よ われら田舍にくだり 村里に宿らん
Song of Solomon 7:12 われら夙におきて葡萄や芽しし莟やいでし石榴の花やさきしいざ葡萄園にゆきて見ん かしこにて我わが愛をなんぢにあたへん
Song of Solomon 7:13 戀茄かぐはしき香氣を發ち もろもろの佳き果物古き新らしき共にわが戸の上にあり わが愛する者よ我これをなんぢのためにたくはへたり
Song of Solomon 8:1 ねがはくは汝わが母の乳をのみしわが兄弟のごとくならんことを われ戸外にてなんぢに遇ふとき接吻せん 然するとも誰ありてわれをいやしむるものあらじ
Song of Solomon 8:2 われ汝をひきてわが母の家にいたり 汝より教晦をうけん 我かぐはしき酒 石榴のあまき汁をなんぢに飮しめん
Song of Solomon 8:3 かれが左の手はわが頭の下にあり その右の手をもて我を抱く
Song of Solomon 8:4 エルサレムの女子等よ 我なんぢ等に誓ひて請ふ 愛のおのづから起る時まで殊更に喚起し且つ醒すなかれ
Song of Solomon 8:5 おのれの愛する者に倚かかりて荒野より上りきたる者は誰ぞや 林檎の樹の下にてわれなんぢを喚さませり なんぢの母かしこにて汝のために劬勞をなし なんぢを産し者かしこにて劬勞をなしぬ
Song of Solomon 8:6 われを汝の心におきて印のごとくし なんぢの腕におきて印のごとくせよ 其の愛は強くして死のごとく 嫉妬は堅くして陰府にひとし その熖は火のほのほのごとし いともはげしき熖なり
Song of Solomon 8:7 愛は大水も消ことあたはず 洪水も溺らすことあたはず 人その家の一切の物をことごとく與へて愛に換んとするとも尚いやしめらるべし
Song of Solomon 8:8 われら小さき妹子あり 未だ乳房あらず われらの妹子の問聘をうくる日には之に何をなしてあたへんや
Song of Solomon 8:9 かれもし石垣ならんには我ら白銀の城をその上にたてん 彼もし戸ならんには香柏の板をもてこれを圍まん
Song of Solomon 8:10 われは石垣わが乳房は戍樓のごとし 是をもてわれは情をかうむれる者のごとく彼の目の前にありき バアルハモンにソロモンの葡萄園をもてり これをその守る者等にあづけおき 彼等をしておのおの銀一千をその果のために納めしむ
Song of Solomon 8:12 われ自らの有なる葡萄園われの手にあり ソロモンなんぢは一千を獲よ その果をまもる者も二百を獲べし
Song of Solomon 8:13 なんぢ園の中に住む者よ 伴侶等なんぢの聲に耳をかたむく 請ふ我にこれを聽しめよ
Song of Solomon 8:14 わが愛する者よ 請ふ急ぎはしれ 香はしき山々の上にありて獐のごとく 小鹿のごとくあれ
Isaiah 0:0 イザヤ書
Isaiah 1:1 アモツの子イザヤがユダの王ウジヤ、ヨタム、アハズ、ヒゼキヤのときに示されたるユダとヱルサレムとに係る異象
Isaiah 1:2 天よきけ地よ耳をかたぶけよ ヱホバの語りたまふ言あり 曰く われ子をやしなひ育てしにかれらは我にそむけり
Isaiah 1:3 牛はその主をしり驢馬はそのあるじの廐をしる 然どイスラエルは識ず わが民はさとらず
Isaiah 1:4 ああ罪ををかせる國人よこしまを負ふたみ 惡をなす者のすゑ壞りそこなふ種族 かれらはヱホバをすてイスラエルの聖者をあなどり之をうとみて退きたり
Isaiah 1:5 なんぢら何ぞかさねがさね悖りて猶撻れんとするか その頭はやまざる所なくその心はつかれはてたり
Isaiah 1:6 足のうらより頭にいたるまで全きところなくただ創痍と打傷と腫物とのみなり 而してこれを合すものなく包むものなく亦あぶらにて軟らぐる者もなし
Isaiah 1:7 なんぢらの國はあれすたれなんぢらの諸邑は火にてやかれなんぢらの田畑はその前にて外人にのまれ既にあだし人にくつがへされて荒廢れたり
Isaiah 1:8 シオンの女はぶだうぞのの廬のごとく瓜田の假舎のごとくまた圍をうけたる城のごとく唯ひとり遺れり
Isaiah 1:9 萬軍のヱホバわれらに少しの遺をとどめ給ふことなくば我儕はソドムのごとく又ゴモラに同じかりしならん
Isaiah 1:10 なんぢらソドムの有司よヱホバの言をきけ なんぢらゴモラの民よわれらの神の律法に耳をかたぶけよ
Isaiah 1:11 ヱホバ言たまはくなんぢらが獻ぐるおほくの犠牲はわれに何の益あらんや我はをひつじの燔祭とこえたるけものの膏とにあけり われは牡牛あるひは小羊あるひは牡山羊の血をよろこばず
Isaiah 1:12 なんぢらは我に見えんとてきたる このことを誰がなんぢらに要めしや 徒らにわが庭をふむのみなり
Isaiah 1:13 むなしき祭物をふたたび携ふることなかれ 燻物はわがにくむところ 新月および安息日また會衆をよびあつむることも我がにくむところなり なんぢらは聖會に惡を兼ぬ われ容すにたへず
Isaiah 1:14 わが心はなんぢらの新月と節會とをきらふ 是わが重荷なりわれ負にうみたり
Isaiah 1:15 我なんぢらが手をのぶるとき目をおほひ 汝等がおほくの祈祷をなすときも聞ことをせじ なんぢらの手には血みちたり
Isaiah 1:16 なんぢら己をあらひ己をきょくしわが眼前よりその惡業をさり惡をおこなふことを止め
Isaiah 1:17 善をおこなふことをならひ 公平をもとめ虐げらるる者をたすけ 孤児に公平をおこなひ寡婦の訟をあげつらへ
Isaiah 1:18 ヱホバいひたまはく 率われらともに論らはん なんぢらの罪は緋のごとくなるも雪のごとく白くなり紅のごとく赤くとも羊の毛のごとくにならん
Isaiah 1:19 若なんぢら肯ひしたがはば地の美産をくらふことを得べし
Isaiah 1:20 もし汝等こばみそむかば劍にのまるべし 此はヱホバその御口よりかたりたまヘるなり
Isaiah 1:21 忠信なりし邑いかにして妓女とはなれる 昔しは公平にてみち正義その中にやどりしに今は人をころす者ばかりとなりぬ
Isaiah 1:22 なんぢの白銀は滓となり なんぢ葡萄酒は水をまじへ
Isaiah 1:23 なんぢの長輩はそむきて盗人の伴侶となり おのおの賄賂をよろこび贈財をおひもとめ 孤児に公平をおこなはず寡婦の訟はかれらの前にいづるとと能はず
Isaiah 1:24 このゆゑに主萬軍のヱホバ、イスラエルの全能者のたまはく 唆われ敵にむかひて念をはらし仇にむかひて報をすべし
Isaiah 1:25 我また手をなんぢの上にそへ なんぢの滓をことごとく淨くし なんぢの鉛をすべて取去り
Isaiah 1:26 なんぢの審士を舊のごとく なんぢの議官を始のごとくに復すべし 然るのちなんぢは正義の邑忠信の邑ととなへられん
Isaiah 1:27 シオンは公平をもてあがなはれ 歸來るものも正義をもて贖はるべし
Isaiah 1:28 されど愆ををかすものと罪人とはともに敗れ ヱホバをすつる者もまた亡びうせん
Isaiah 1:29 なんぢらはその喜びたる橿樹によりて恥をいだき そのえらびたる園によりて慙赧むべし
Isaiah 1:30 なんぢらは葉のかるる橿樹のごとく水なき園のごとくならん
Isaiah 1:31 權勢あるものは麻のごとくその工は火花のごとく 二つのもの一同もえてこれを撲滅すものなし
Isaiah 2:1 アモツの子イザヤが示されたるユダとヱルサレムとにかかる言
Isaiah 2:2 すゑの日にヱホバの家の山はもろもろの山のいただきに堅立ち もろもろの嶺よりもたかく擧り すべての國は流のごとく之につかん
Isaiah 2:3 おほくの民ゆきて相語いはん 率われらヱホバの山にのぼりヤコブの神の家にゆかん神われらにその道ををしヘ給はん われらその路をあゆむべしと そは律法はシオンよりいでヱホバの言はヱルサレムより出べければなり
Isaiah 2:4 ヱホバはもろもろの國のあひだを鞫き おほくの民をせめたまはん 斯てかれらはその劒をうちかへて鋤となし その鎗をうちかへて鎌となし 國は國にむかひて劒をあげず戰鬪のことを再びまなばざるべし
Isaiah 2:5 ヤコブの家よきたれ 我儕ヱホバの光にあゆまん
Isaiah 2:6 主よなんぢはその民ヤコブの家をすてたまへり 此はかれらのなかに東のかたの風俗みち 皆ぺリシテ人のごとく陰陽師となり 異邦人のともがらと手をうちて盟をたてしが故なり
Isaiah 2:7 かれらの國には黄金白銀みちて財寶の數かぎりなし かれらの國には馬みちて戰車のかず限りなし
Isaiah 2:8 かれらの國には偶像みち皆おのが手の工その指のつくれる者ををがめり
Isaiah 2:9 賤しきものは屈められ尊きものは卑せらる かれらを容したまふなかれ
Isaiah 2:10 なんぢ岩間にいりまた土にかくれてヱホバの畏るべき容貌とその稜威の光輝とをさくべし
Isaiah 2:11 この日には目をあげて高ぶるもの卑せられ 驕る人かがめられ唯ヱホバのみ高くあげられ給はん
Isaiah 2:12 そは萬軍のヱホバの一の日あり すべて高ぶる者おごる者みづからを崇るものの上にのぞみて之をひくくし
Isaiah 2:13 またレバノンのたかく聳たるすべての香柏バシャンのすべての橿樹
Isaiah 2:14 もろもろの高山もろもろの聳えたる嶺
Isaiah 2:15 すべてのたかき櫓すべての堅固なる石垣
Isaiah 2:16 およびタルシシのすべての舟すべての慕ふべき美はしきものに臨むべし
Isaiah 2:17 この日には高ぶる者はかがめられ 驕る人はひくくせられ 唯ヱホバのみ高くあげられ給はん
Isaiah 2:18 かくて偶像はことごとく亡びうすべし
Isaiah 2:19 ヱホバたちて地を震動したまふとき人々そのおそるべき容貌とその稜威の光輝とをさけて巌の洞と地の穴とにいらん
Isaiah 2:20 その日人々おのが拝せんとて造れる白銀ぐうざうと黄金のぐうざうとを鼹鼠のあな蝙蝠の穴になげすて
Isaiah 2:21 岩々の隙けはしき山峽にいりヱホバの起て地をふるひうごかしたまふその畏るべき容貌と稜威のかがやきとを避ん
Isaiah 2:22 なんぢら鼻より息のいでいりする人に倚ることをやめよ斯るものは何ぞかぞふるに足らん
Isaiah 3:1 みよ主ばんぐんのヱホバ、ヱルサレムおよびユダの頼むところ倚ところなる凡てその頼むところの糧すべてその頼むところの水
Isaiah 3:2 勇士 戰士 審士 預言者 卜筮者 長老
Isaiah 3:3 五十人の首 貴顯者 議官 藝に長たる者および言語たくみなるものを除去りたまはん
Isaiah 3:4 われ童子をもてかれらの君とし 嬰兒にかれらを治めしめん
Isaiah 3:5 民たがひに相虐げ 人おのおのその隣をしヘたげ 童子は老たる者にむかひて高ぶり 賤しきものは貴きものに對ひてたかぶらん
Isaiah 3:6 そのとき人ちちの家にて兄弟にすがりていはん 汝なほ衣ありわれらの有司となりてこの荒敗をその手にてをさめよと
Isaiah 3:7 その日かれ聲をあげていはん 我なんぢらを愈すものとなるを得じ わが家に糧なくまた衣なし 我をたてて民の有司とすることなかれと
Isaiah 3:8 是かれらの舌と行爲とはみなヱホバにそむきてその榮光の目ををかししが故に ヱルサレムは敗れユダは仆れたればなり
Isaiah 3:9 かれらの面色はその惡きことの證をなし ソドムのごとくその罪をあらはして隱すことをせざるなり かれらの靈魂はわざはひなるかな自らその惡の報をとれり
Isaiah 3:10 なんぢら義人にいへ かならず福祉をうけんと 彼等はそのおこなひの實をくらふべければなり
Isaiah 3:11 惡者はわざはひなる哉かならず災禍をうけん その手の報きたるべければなり
Isaiah 3:12 わが民はをさなごに虐げられ婦女にをさめらる 唉わが民よなんぢを導くものは反てなんぢを迷はせ汝のゆくべき途を絶つ
Isaiah 3:13 ヱホバ立いでて公理をのべ起てもろもろの民を審判し給ふ
Isaiah 3:14 ヱホバ來りておのが民の長老ともろもろの君とをさばきて言給はん なんぢらは葡萄園をくひあらせり貧きものより掠めとりたる物はなんぢらの家にあり
Isaiah 3:15 いかなれば汝等わが民をふみにじり貧きものの面をすりくだくやと これ主萬軍のヱホバのみことばなり
Isaiah 3:16 ヱホバまた言給はくシォンの女輩はおごり項をのばしてあるき眼にて媚をおくり徐々としてあゆみゆくその足にはりんりんと音あり
Isaiah 3:17 このゆゑに主シオンのむすめらの頭をかぶろにしヱホバ彼らの醜所をあらはし給はん
Isaiah 3:18 その日主かれらが足にかざれる美はしき釧をとり 瓔珞 半月飾
Isaiah 3:19 耳環 手釧 面帕
Isaiah 3:20 華冠 脛飾 紳 香盒 符嚢
Isaiah 3:21 指環 鼻環
Isaiah 3:22 公服 上衣 外帔 金嚢
Isaiah 3:23 鏡 細布の衣 首帕 被衣などを取除きたまはん
Isaiah 3:24 而して馨はしき香はかはりて臭穣となり 紳はかはりて繩となり 美はしく編たる髪はかぶろとなり華かなる衣はかはりて麁布のころもとなり 麗顔はかはりて烙鐵せられたる痕とならん
Isaiah 3:25 なんぢの男はつるぎにたふれ なんぢの勇士はたたかひに仆るべし
Isaiah 3:26 その門はなげきかなしみシオンは荒廢れて地にすわらん
Isaiah 4:1 その日七人のをんな一人の男にすがりていはん 我儕おのれの糧をくらひ己のころもを着るべし ただ我儕になんぢの名をとなふることを許してわれらの恥をとりのぞけと
Isaiah 4:2 その日ヱホバの枝はさかえて輝かん 地よりなりいづるものの實はすぐれ並うるはしくして逃れのこれるイスラエルの益となるべし
Isaiah 4:3 而してシオンに遣れるもの ヱルサレムにとどまれる者 すべて此等のヱルサレムに存ふる者のなかに録されたるものは聖ととなへられん
Isaiah 4:4 そは主さばきするみたまと焼つくす靈とをもてシオンのむすめらの汚をあらひ ヱルサレムの血をその中よりのぞきたまふ期きたるべければなり
Isaiah 4:5 爰にヱホバはシォンの山のすべての住所ともろもろの聚會とのうへに 晝は雲と煙とをつくり夜はほのほの光をつくり給はん あまねく榮のうへに覆庇あるべし
Isaiah 4:6 また一つの假廬ありて晝はあつさをふせぐ陰となり暴風と雨とをさけてかくるる所となるべし
Isaiah 5:1 われわが愛する者のために歌をつくり 我があいするものの葡萄園のことをうたはん わが愛するものは土肥たる山にひとつの葡萄園をもてり
Isaiah 5:2 彼その園をすきかへし石をのぞきて嘉ぶだうをうゑ そのなかに望樓をたて酒榨をほりて嘉葡萄のむすぶを望みまてり 然るに結びたるものは野葡萄なりき
Isaiah 5:3 さればヱルサレムに住るものとユダの人よ 請なんぢら我とわがぶだうぞのとの間をさばけ
Isaiah 5:4 わが葡萄園にわれの作たるほか何のなすべき事ありや 我はよきぶだうの結ぶをのぞみまちしに 何なれば野葡萄をむすびしや
Isaiah 5:5 然ばわれわが葡萄園になさんとすることを汝等につげん 我はぶだうぞのの籬芭をとりさりてその食あらさるるにまかせ その垣をこぼちてその踐あらさるるにまかせん
Isaiah 5:6 我これを荒してふたたび剪ことをせず耕すことをせず棘と荊とをはえいでしめん また雲に命せてそのうヘに雨ふることなからしめん
Isaiah 5:7 それ萬軍のヱホバの葡萄園はイスラエルの家なり その喜びたまふところの植物はユダの人なり これに公平をのぞみたまひしに反りて血をながし これに正義をのぞみ給ひしにかへりて號呼あり
Isaiah 5:8 禍ひなるかな彼らは家に家をたてつらね田圃に田圃をましくはへて餘地をあまさず己ひとり國のうちに住んとす
Isaiah 5:9 萬軍のヱホバ我耳につげて宣はく 實におほくの家はあれすたれ大にして美しき家は人のすむことなきにいたらん
Isaiah 5:10 十段のぶだうぞの僅かに一バテをみのり一ホメルの穀種はわづかに一エパを實るべし
Isaiah 5:11 禍ひなるかなかれらは朝つとにおきて濃酒をおひもとめ 夜のふくるまで止まりてのみ 酒にその身をやかるるなり
Isaiah 5:12 かれらの酒宴には琴あり瑟あり鼓あり笛あり葡萄酒あり されどヱホバの作爲をかへりみずその手のなしたまふところに目をとめず
Isaiah 5:13 斯るが故にわが民は無知にして虜にせられ その貴顯者はうゑ そのもろもろの民は渇によりて疲れはてん
Isaiah 5:14 また陰府はその欲望をひろくしその度られざる口をはる かれらの榮華かれらの群衆かれらの饒富および喜びたのしめる入みなその中におつべし
Isaiah 5:15 賤しき者はかがめられ 貴きものは卑くせられ 目をあげて高ぶる者はひくくせらるべし
Isaiah 5:16 されど萬軍のヱホバは公平によりてあがめられ 聖なる神は正義によりて聖とせられ給ふべし
Isaiah 5:17 而して小羊おのが牧場にあるごとくに草をはみ 豐かなるものの田はあれて旅客にくらはれん
Isaiah 5:18 禍ひなるかな彼等はいつはりを繩となして惡をひき 索にて車をひくごとく罪をひけり
Isaiah 5:19 かれらは云 その成んとする事をいそぎて速かになせ 我儕これを見ん イスラエルの聖者のさだむることを逼來らせよ われらこれを知んと
Isaiah 5:20 禍ひなるかな かれらは惡をよびて善とし善をよびて惡とし暗をもて光とし光をもて暗とし苦をもて甘とし甘をもて苦とする者なり
Isaiah 5:21 わざはひなる哉 かれらは己をみて智しとし自らかへりみて聰とする者なり
Isaiah 5:22 禍ひなるかな かれらは葡萄酒をのむに丈夫なり 濃酒を和するに勇者なり
Isaiah 5:23 かれらは賄賂によりて惡きものを義となし義人よりその義をうばふ
Isaiah 5:24 此によりて火舌の刈株をくらふがごとくまた枯草の火焔のなかにおつるがごとくその根はくちはてその花は塵のごとくに飛さらん かれらは萬軍のヱホバの律法をすててイスラエルの聖者のことばを蔑したればなり
Isaiah 5:25 この故にヱホバその民にむかひて怒をはなち手をのべてかれらを撃たまヘり 山はふるひうごきかれらの屍は衢のなかにて糞土のごとくなれり 然はあれどヱホバの怒やまずして尚その手を伸したまふ
Isaiah 5:26 かくて旗をたててとほき國々をまねき彼等をよびて地の極より來らしめたまはん 視よかれら趨りて速かにきたるべし
Isaiah 5:27 その中には疲れたふるるものなく眠りまたは寢るものなし その腰の帯はとけずその履の紐はきれず
Isaiah 5:28 その矢は鋭その弓はことごとく張りその馬のひづめは石のごとくその車の輪は疾風のごとしと稱へられん
Isaiah 5:29 その嘷ること獅のごとく また小獅のごとく嘷うなりつつ獲物をつかみて掠去れども之をすくふ者なし
Isaiah 5:30 その日かれらが嘯響めくこと海のなりどよめくがごとしもし地をのぞまば暗と難とありて光は黒雲のなかにくらくなりたるを見ん
Isaiah 6:1 ウジヤ王のしにたる年われ高くあがれる御座にヱホバの坐し給ふを見しにその衣裾は殿にみちたり
Isaiah 6:2 セラピムその上にたつ おのおの六の翼ありその二をもて面をおほひその二をもて足をおほひ其二をもて飛翔り
Isaiah 6:3 たがひに呼いひけるは聖なるかな聖なるかな聖なるかな萬軍のヱホバその榮光は全地にみつ
Isaiah 6:4 斯よばはる者の聲によりて閾のもとゐ揺うごき家のうちに煙みちたり
Isaiah 6:5 このとき我いへり禍ひなるかな我ほろびなん我はけがれたる唇の民のなかにすみて穢たるくちびるの者なるにわが眼ばんぐんのヱホバにまします王を見まつればなりと
Isaiah 6:6 爰にかのセラピムのひとり鉗をもて壇の上よりとりたる熱炭を手にたづさへて我にとびきたり
Isaiah 6:7 わが口に觸ていひけるは視よこの火なんぢの唇にふれたれば既になんぢの惡はのぞかれなんぢの罪はきよめられたりと
Isaiah 6:8 我またヱホバの聲をきく曰くわれ誰をつかはさん誰かわれらのために往べきかとそのとき我いひけるはわれ此にあり我をつかはしたまヘ
Isaiah 6:9 ヱホバいひたまはく往てこの民にかくのごとく告よなんぢら聞てきけよ然どさとらざるべし見てみよ然どしらざるべしと
Isaiah 6:10 なんぢこの民のこころを鈍くしその耳をものうくしその眼をおほヘ 恐らくは彼らその眼にて見その耳にてききその心にてさとり翻ヘりて醫さるることあらん
Isaiah 6:11 ここに我いひけるは主よいつまで如此あらんか 主こたヘたまはく邑はあれすたれて住むものなく家に人なく邦ことごとく荒土となり
Isaiah 6:12 人々ヱホバに遠方までうつされ廢りたるところ國中におほくならん時まで如此あるべし
Isaiah 6:13 そのなかに十分の一のこる者あれども此もまた呑つくされん されど聖裔のこりてこの地の根となるべし彼のテレビントまたは橿樹がきらるることありともその根ののこるがごとし
Isaiah 7:1 ウジャの子ヨタムその子ユダヤ王アハズのときアラムの王レヂンとレマリヤの子イスラエル王ペカと上りきたりてヱルサレムを攻しがつひに勝ことあたはざりき
Isaiah 7:2 ここにアラムとエフライムと結合なりたりとダビデの家につぐる者ありければ王のこころと民の心とは林木の風にうごかさるるが如くに動けり
Isaiah 7:3 その時ヱホバ、イザヤに言たまひけるは今なんぢと汝の子シヤルヤシユブと共にいでて布をさらす野の大路のかたはらなる上池の樋口にゆきてアハズを迎へ
Isaiah 7:4 これに告べしなんぢ謹みて静かなれ アラムのレヂン及びレマリャの子はげしく怒るとも二の燼餘りたる煙れる片柴のごとし懼るるなかれ心をよわくするなかれ
Isaiah 7:5 アラム、エフライム及びレマリヤの子なんぢにむかひて惡き謀ごとを企てていふ
Isaiah 7:6 われらユダに攻上りて之をおびやかし我儕のためにこれを破りとりタビエルの子をその中にたてて王とせんと
Isaiah 7:7 されど主ヱホバいひたまはくこの事おこなはれずまた成ことなし
Isaiah 7:8 アラムの首はダマスコ、ダマスコの首はレヂンなり エフライムは六十五年のうちに敗れて國をなさざるべし
Isaiah 7:9 またエフライムの首はサマリヤ、サマリヤの首はレマリヤの子なり 若なんぢら信ぜずばかならず立ことを得じと
Isaiah 7:10 ヱホバ再びアハズに告ていひたまはく
Isaiah 7:11 なんぢの神ヱホバに一の豫兆をもとめよ或はふかき處あるひは上のたかき處にもとめよ
Isaiah 7:12 アハズいひけるは我これを求めじ 我はヱホバを試むることをせざるべし
Isaiah 7:13 イザヤいひけるはダビデのいへよ請なんぢら聞 なんぢら人をわづらはしこれを小事として亦わが神をも煩はさんとするか
Isaiah 7:14 この故に主みづから一の豫兆をなんぢらに賜ふべし 視よをとめ孕みて子をうまんその名をインマヌエルと稱ふべし
Isaiah 7:15 かれ惡をすて善をえらぶことを知 ころほひにいたりて乳酥と蜂蜜とをくらはん
Isaiah 7:16 そはこの子いまだ惡をすて善をえらぶことを知ざるさきになんぢが忌きらふ兩の王の地はすてらるべし
Isaiah 7:17 ヱホバはエフライムがユダを離れし時よりこのかた臨みしことなき日を汝となんぢの民となんぢの父の家とにのぞませ給はん是アツスリヤの王なり
Isaiah 7:18 其日ヱホバ、エジプトなる河々のほとりの蠅をまねきアツスリヤの地の蜂をよびたまはん
Isaiah 7:19 皆きたりて荒たるたに岩穴すべての荊棘すべての牧場のうヘに止まるべし
Isaiah 7:20 その日主はかはの外ふより雇へるアツスリヤの王を剃刀として首と足の毛とを剃たまはんまた髯をも除きたまふべし
Isaiah 7:21 その日人わかき牝犢ひとつと羊ふたつとを飼をらん
Isaiah 7:22 その出すところの乳おほきによりて乳酥をくらふことを得んすべて國のうちに遺れるものは乳酥と蜂蜜とをくらふべし
Isaiah 7:23 その日千株に銀一千の價をえたる葡萄ありし處もことごとく荊と棘はえいづべし
Isaiah 7:24 荊とおどろと地にあまねきがゆゑに人々矢と弓とをもて彼處にゆくなり
Isaiah 7:25 鋤をもて掘たがへしたる山々もいばらと棘のために人おそれてその中にゆくことを得じ その地はただ牛をはなち羊にふましむる處とならん
Isaiah 8:1 ヱホバ我にいひたまひけるは一の大なる牌をとりそのうへに平常の文字にてマヘル シャラル ハシ バズと録せ
Isaiah 8:2 われ信實の證者なる祭司ウリヤおよびエベレキヤの子ゼカリヤをもてその證をなさしむ
Isaiah 8:3 われ預言者の妻にちかづきしとき彼はらみて子をうみければ ヱホバ我にいひたまはく その名をマヘル シャラル ハシ バズと稱へよ
Isaiah 8:4 そはこの子いまだ我が父わが母とよぶことを知らざるうちにダマスコの富とサマリヤの財寳はうばはれてアツスリヤ王のまへに到るべければなり
Isaiah 8:5 ヱホバまた重て我につげたまへり云く
Isaiah 8:6 この民はゆるやかに流るるシロアの水をすててレヂンとレマリヤの子とをよろこぶ
Isaiah 8:7 此によりて主はいきほひ猛くみなぎりわたる大河の水をかれらのうヘに堰入たまはん 是はアツスリヤ王とそのもろもろの威勢とにして 百の支流にはびこりもろもろの岸をこえ
Isaiah 8:8 ユダにながれいり溢れひろごりてその項にまで及ばん インマヌエルよそののぶる翼はあまねくなんぢの地にみちわたらん
Isaiah 8:9 もろもろの民よさばめき騒げなんぢら摧かるべし 遠きくにぐにの者よきけ腰におびせよ汝等くだかるべし 腰に帯せよなんぢら摧かるべし
Isaiah 8:10 なんぢら互にはかれつひに徒勞ならん なんぢら言をいだせ遂におこなはれじ そは神われらとともに在せばなり
Isaiah 8:11 ヱホバつよき手をもて此如われに示しこの民の路にあゆまざらんことを我にさとして言給はく
Isaiah 8:12 此民のすべて叛逆ととなふるところの者をなんぢら叛逆ととなふるなかれ 彼等のおそるるところを汝等おそるるなかれ慴くなかれ
Isaiah 8:13 なんぢらはただ萬軍のヱホバを聖としてこれを畏みこれを恐るべし
Isaiah 8:14 然らばヱホバはきよき避所となりたまはん 然どイスラエルの兩の家には躓く石となり妨ぐる磐とならん ヱルサレムの民には網罟となり機濫とならん
Isaiah 8:15 おほくの人々これによりて蹶きかつ仆れやぶれ網せられまた捕へらるべし
Isaiah 8:16 證詞をつかね律法をわが弟子のうちに封べし
Isaiah 8:17 いま面をおほひてヤコブの家をかへりみ給はずといヘども我そのヱホバを待そのヱホバを望みまつらん
Isaiah 8:18 視よわれとヱホバが我にたまひたる子輩とはイスラエルのうちの豫兆なり奇しき標なり此はシオンの山にいます萬軍のヱホバの與へたまふ所なり
Isaiah 8:19 もし人なんぢらにつげて巫女および魔術者のさえづるがごとく細語がごとき者にもとめよといはば民はおのれの神にもとむべきにあらずやいかで活者のために死者にもとむることを爲んといへ
Isaiah 8:20 ただ律法と證詞とを求むべし彼等のいふところ此言にかなはずば晨光あらじ
Isaiah 8:21 かれら國をヘあるきて苦みうゑん その飢るとき怒をはなち己が王おのが神をさして誼ひかつその面をうへに向ん
Isaiah 8:22 また地をみれば艱難と幽暗とくるしみの闇とあり かれらは昏黒におひやられん
Isaiah 9:1 今くるしみを受れども後には闇なかるべし 昔しはゼブルンの地ナフタリの地をあなどられしめ給ひしかど後には海にそひたる地ヨルダンの外の地ことくに人のガリラヤに榮をうけしめ給へり
Isaiah 9:2 幽暗をあゆめる民は大なる光をみ死蔭の地にすめる者のうへに光てらせり
Isaiah 9:3 なんぢ民をましその歡喜を大にしたまひければかれらは收穫時によろこぶがごとく掠物をわかつときに樂むがごとく汝の前によろこべり
Isaiah 9:4 そは汝かれらがおへる軌とその肩の笞と虐ぐるものの杖とを折りこれを折りてミデアンの日のごとくなし給ひたればなり
Isaiah 9:5 すべて亂れたたかふ兵士のよろひと血にまみれたる衣とはみな火のもえくさとなりて焚るべし
Isaiah 9:6 ひとりの嬰兒われらのために生れたり我儕はひとりの子をあたヘられたり政事はその肩にありその名は奇妙また議士また大能の神とこしへのちち平和の君ととなヘられん
Isaiah 9:7 その政事と平和とはましくははりて窮りなし且ダビデの位にすわりてその國ををさめ今よりのちとこしへに公平と正義とをもてとれを立これを保ちたまはん 萬軍のヱホバの熱心これを成たまふべし
Isaiah 9:8 主一言をヤコブにおくり之をイスラエルの上にのぞませ給へり
Isaiah 9:9 すべてのこの民エフライムとサマリヤに居るものとは知ならん かれらは高ぶり誇る心をもていふ
Isaiah 9:10 瓦くづるるともわれら研石をもて建 くはの木きらるるともわれら香柏をもて之にかヘんと
Isaiah 9:11 この故にヱホバ、レヂンの敵をあげもちゐてイスラエルを攻しめその仇をたけび勇しめたまはん
Isaiah 9:12 前にアラム人あり後にペシリテ人あり口をはりてイスラエルを呑んとす 然はあれどヱホバの怒やまずして尚その手をのばしたまふ
Isaiah 9:13 然どこの民はおのれをうつものに歸らず萬軍のヱホバを求めず
Isaiah 9:14 斯るゆゑにヱホバ一日のうちに首と尾と椶櫚のえだと葦とをイスラエルより斷切たまはん
Isaiah 9:15 その首とは老たるもの尊きものその尾とは謊言をのぶる預言者をいふなり
Isaiah 9:16 この民をみちびく者はこれを迷はせその引導をうくる者はほろぶるなり
Isaiah 9:17 このゆゑに主はその少壯者をよろこびたまはずその孤兒と寡婦とを憐みたまはざるべし 是その民はことごとく邪まなり惡をおこなふ者なり おのおのの口は愚かなる言をかたればなり 然はあれどヱホバの怒やまずして尚その手をのばしたまふ
Isaiah 9:18 惡は火のごとくもえ棘と荊とを食つくし茂りあふ林をやくべければみな煙となりむらがりて上騰らん
Isaiah 9:19 萬軍のヱホバの怒によりて地はくろく焼 その民は火のもえくさとなり人々たがひに相憐むことなし
Isaiah 9:20 人みぎに攫めどもなほ飢ひだりに食へども尚あかず おのおのその腕の肉をくらふべし
Isaiah 9:21 マナセはエフライムをエフライムはマナセをくらひ又かれら相合てユダをを攻めん 然はあれどヱホバの怒やまずして尚その手をのばしたまふ
Isaiah 10:1 不義のおきてをさだめ暴虐のことばを録すものは禍ひなるかな
Isaiah 10:2 かれらは乏きものの訴をうけず わが民のなかの貧しきものの權利をはぎ寡婦の資産をうばひ孤兒のものを掠む
Isaiah 10:3 なんぢら懲しめらるる日きたらば何をなさんとするか 敗壞とほきより來らんとき何をなさんとするか なんぢら逃れゆきて誰にすくひを求めんとするか また何處になんぢらの榮をのこさんとするか
Isaiah 10:4 ただ縛められたるものの下にかがみ 殺されたるもののしたに伏仆れんのみ 然はあれどヱホバのいかり止ずして尚ほその手をのばしたまふ
Isaiah 10:5 咄アツスリヤ人なんぢはわが怒の杖なり その手の苔はわが忿恚なり
Isaiah 10:6 われ彼をつかはして邪曲なる國をせめ我かれに命じて我がいかれる民をせめてその所有をかすめその財寶をうばはしめかれらを街の泥のごとくに蹂躪らしめん
Isaiah 10:7 されどアツスリヤ人のこころざしは斯のごとくならずその心の念もまた斯のごとくならずそのこころは敗壞をこのみあまたの國をほろぼし絶ん
Isaiah 10:8 かれ云わが諸侯はみな王にあらずや
Isaiah 10:9 カルノはカルケミシの如くハマテはアルパデの如くサマリヤはダマスコの如きにあらずや
Isaiah 10:10 わが手は偶像につかふる國々を得たり その彫たる像はヱルサレムおよびサマリヤのものに勝れたり
Isaiah 10:11 われ既にサマリヤとその偶像とに行へるごとく亦ヱルサレムとその偶像とにおこなはざる可んやと
Isaiah 10:12 このゆゑに主いひたまふ我シォンの山とヱルサレムとに爲んとする事をことごとく遂をはらんとき我アツスリヤ王のおごれる心の實とその高ぶり仰ぎたる眼とを罰すべし
Isaiah 10:13 そは彼いヘらくわれ手の力と智慧とによりて之をなせり我はかしこし國々の境をのぞきその獲たるものをうばひ又われは丈夫にしてかの位に坐するものを下したり
Isaiah 10:14 わが手もろもろの民のたからを得たりしは巣をとるが如くまた天が下を取收めたりしは遺しすてたる卵をとりあつむるが如くなりき あるひは翼をうごかしあるひは口をひらきあるひは喃々する者もなかりしなりと
Isaiah 10:15 斧はこれをもちゐて伐ものにむかひて己みづから誇ることをせんや鋸はこれを動かす者にむかひて己みづから高ぶることをせんや此はあだかも笞がおのれを擧るものを動かし杖みづから木にあらざるものを擧んとするにひとし
Isaiah 10:16 このゆゑに主萬軍のヱホバは肥たるものを瘠しめ且その榮光のしたに火のもゆるが如き火焰をおこし給はん
Isaiah 10:17 イスラエルの光は火のごとくその聖者はほのほの如くならん斯て一日のうちに荊とおどろとを焼ほろぼし
Isaiah 10:18 又かの林と土肥たる田圃の榮をうせしめ靈魂をも身をもうせしめて病るものの衰へたるが如くなさん
Isaiah 10:19 かつ林のうちに殘れる木わづかにして童子も算へうるが如くになるべし
Isaiah 10:20 その日イスラエルの遺れる者とヤコブの家ののがれたる者とは再びおのれを撃し者にたよらず誠意をもてイスラエルの聖者ヱホバにたよらん
Isaiah 10:21 その遺れるものヤコブの遣れるものは大能の神にかヘるべし
Isaiah 10:22 ああイスラエルよなんぢの民は海の沙のごとしといへども遺りて歸りきたる者はただ僅少ならんそは敗壞すでにさだまり義にて溢るべければなり
Isaiah 10:23 主萬軍のヱホバの定めたまヘる敗壞はこれを徧く國内におこなひ給ふべし
Isaiah 10:24 このゆゑに主萬軍のヱホバいひたまはくシオンに住るわが民よアツスリヤ人エジプトの例にならひ苔をもて汝をうち杖をあげて汝をせむるとも懼るるなかれ
Isaiah 10:25 ただ頃刻にして忿恚はやまん我がいかりは彼等をほろぼして息ん
Isaiah 10:26 萬軍のヱホバむかしミデアン人をオレブの巖のあたりにて撃たまひしごとくに禍害をおこして之をせめ又その杖を海のうへに伸しエジプトの例にしたがひてこれを擧たまはん
Isaiah 10:27 その日かれの重荷はなんぢの肩より下かれの軌はなんぢの頸よりはなれその軛はあぶらの故をもて壞れん
Isaiah 10:28 かれアイにきたりミグロンを過ミクマシにてその輜重をとどめ
Isaiah 10:29 渡口をすぎてゲバに宿るここに於てラマはをののきサウルギべア人は逃れはしれり
Isaiah 10:30 ガリムの女よなんぢ聲をあげて叫べライシよ耳をかたぶけて聽けアナトテよなんぢも聲をあげよ
Isaiah 10:31 マデメナはさすらひゲビムの民はのがれ走れり
Isaiah 10:32 この日かれノブに立とどまりシオンのむすめの山ヱルサレムの岡にむかひて手をふりたり
Isaiah 10:33 主ばんぐんのヱホバは雄々しくたけびてその枝を斷たまはん丈高きものは伐おとされ聳えたる者はひくくせらるべし
Isaiah 10:34 また銕をもて茂りあふ林をきり給はんレバノンは能力あるものに倒さるべし
Isaiah 11:1 ヱツサイの株より一つの芽いでその根より一つの枝はえて實をむすばん
Isaiah 11:2 その上にヱホバの靈とどまらんこれ智慧聰明の靈謀略才能の靈知識の靈ヱホバをおそるるの靈なり
Isaiah 11:3 かれはヱホバを畏るるをもて歡樂としまた目みるところによりて審判をなさず耳きくところによりて断定をなさず
Isaiah 11:4 正義をもて貧しき者をさばき公平をもて國のうちの卑しき者のために斷定をなしその口の杖をもて國をうちその口唇の氣息をもて惡人をころすべし
Isaiah 11:5 正義はその腰の帯となり忠信はその身のおびとならん
Isaiah 11:6 おほかみは小羊とともにやどり豹は小山羊とともにふし犢をじし肥たる家畜ともに居てちひさき童子にみちびかれ
Isaiah 11:7 牝牛と熊とはくひものを同にし熊の子と牛の子とともにふし獅はうしのごとく藁をくらひ
Isaiah 11:8 乳兒は毒蛇のほらにたはふれ乳ばなれの兒は手をまむしの穴にいれん
Isaiah 11:9 斯てわが聖山のいづこにても害ふことなく傷ることなからんそは水の海をおほへるごとくヱホバをしるの知識地にみつべければなり
Isaiah 11:10 その日ヱツサイの根たちてもろもろの民の旂となりもろもろの邦人はこれに服ひきたり榮光はそのとどまる所にあらん
Isaiah 11:11 その日主はまたふたたび手をのべてその民ののこれる僅かのものをアツスリヤ、エジプト、パテロス、エテオピア、エラム、シナル、ハマテおよび海のしまじまより贖ひたまふべし
Isaiah 11:12 ヱホバは國々の爲に旂をたててイスラエルの逐やられたる者をあつめ地の四極よりユダの散失たるものを集へたまはん
Isaiah 11:13 またエフライムの猜はうせユダを惱ますものは斷れエフライムはユダをそねまずユダはエフライムを惱ますことなかるべし
Isaiah 11:14 かれらは西なるペリシテ人の境にとびゆき相共にひがしの子輩をかすめその手をエドムおよびモアブにのべアンモンの子孫をおのれに服はしめん
Isaiah 11:15 ヱホバ、エジプトの海汊をからし河のうへに手をふりて熱風をふかせその河をうちて七の小流となし履をはきて渉らしめたまはん
Isaiah 11:16 斯てその民ののこれる僅かのものの爲にアツスリヤより來るべき叫つの大路あり昔しイスラエルがエジプトの地よりいでし時のごとくなるべし
Isaiah 12:1 その日なんぢ言んヱホバよ我なんぢに感謝すべし汝さきに我をいかり給ひしかどその怒はやみて我をなぐさめたまへり
Isaiah 12:2 視よ神はわが救なりわれ依頼ておそるるところなし主ヱホバはわが力わが歌なりエホバは亦わが救となりたまへりと
Isaiah 12:3 此故になんぢら欣喜をもて救の井より水をくむべし
Isaiah 12:4 その日なんぢらいはんヱホバに感謝せよその名をよべその行爲をもろもろの民の中につたヘよその名のあがむべきことを語りつげよと
Isaiah 12:5 ヱホバを頌うたヘそのみわざは高くすぐれたればなりこれを全地につたヘよ
Isaiah 12:6 シオンに住るものよ聲をあげてよばはれイスラエルの聖者はなんぢの中にて大なればなり
Isaiah 13:1 アモツの子イザヤが示されたるバビロンにかかる重負の預言
Isaiah 13:2 なんぢらかぶろの山に旂をたて聲をあげ手をふり彼等をまねきて貴族の門にいらしめよ
Isaiah 13:3 われ既にきよめ別ちたるものに命じわが丈夫ほこりかにいさめる者をよびてわが怒をもらさしむ
Isaiah 13:4 山におほくの人の聲きこゆ大なる民あるがごとし もろもろの國民のよりつどひて喧めく聲きこゆ これ萬軍のヱホバたたかひの軍兵を召したまふなり
Isaiah 13:5 かれらはとほき國より天の極よりきたる これヱホバとその忿恚をもらす器とともに全國をほろぼさんとて來るなり
Isaiah 13:6 なんぢら泣號ぶべしヱホバの日ちかづき全能者よりいづる敗亡きたるべければなり
Isaiah 13:7 この故にすべての手はたれ凡の人のこころは消ゆかん
Isaiah 13:8 かれら慴きおそれ艱難と憂とにせまられ子をうまんとする婦のごとく苦しみ互におどろき相みあひてその面は燄のごとくならん
Isaiah 13:9 視よヱホバの日苛くして忿恚とはげしき怒とをもて來り この國をあらしその中よりつみびとを絶滅さん
Isaiah 13:10 天のもろもろの星とほしの宿は光をはなたず 日はいでてくらく月はその光をかがやかさざるべし
Isaiah 13:11 われ惡ことのために世をつみし不義のために惡きものをばつし驕れるものの誇をとどめ暴ぶるものの傲慢をひくくせん
Isaiah 13:12 われ人をして精金よりもすくなくオフルの黄金よりも少なからしめん
Isaiah 13:13 かくて亦われ萬軍のヱホバの忿恚のとき烈しき怒りの日に天をふるはせ地をうごかしてその處をうしなはしむべし
Isaiah 13:14 かれらは逐るる鹿のごとく集むるものなき羊のごとくなりて各自おのれの民にかへりおのれの國にのがれゆかん
Isaiah 13:15 すべて其處にあるもの見出さるれば刺れ拘留らるるものは劍にたふされ
Isaiah 13:16 彼等の嬰兒はその目前にてなげくだかれその家財はかすめうばはれその妻はけがさるべし
Isaiah 13:17 視よわれ白銀をもかへりみず黄金をもよろこばざるメデア人をおこして之にむかはしめん
Isaiah 13:18 かれらは弓をもて若きものを射くだき腹の實をあはれむことなく小子をみてをしむことなし
Isaiah 13:19 すべての國の中にてうるはしくカルデヤ人がほこり飾となせるバビロンはむかし神にほろぼされたるソドム、ゴモラのごとくならん
Isaiah 13:20 ここに住むもの永くたえ世々にいたるまで居ものなくアラビヤ人もかしこに幕屋をはらず牧人もまたかしこにはその群をふさすることなく
Isaiah 13:21 ただ猛獸かしこにふし吼るものその家にみち鴕鳥かしこにすみ牡山羊かしこに躍らん
Isaiah 13:22 豺狼その城のなかになき野犬えいぐわの宮にさけばんその時のいたるは近きにありその日は延ることなかるべし
Isaiah 14:1 ヱホバ、ヤコブを憐みイスラエルをふたたび撰びて之をおのれの地におきたまはん異邦人これに加りてヤコブの家にむすびつらなるべし
Isaiah 14:2 もろもろの民はかれらをその處にたづさへいたらん而してイスラエルの家はヱホバの地にてこれを奴婢となし曩におのれを虜にしたるものを虜にしおのれを虐げたるものを治めん
Isaiah 14:3 ヱホバなんぢの憂と艱難とをのぞき亦なんぢが勤むるからき役をのぞきて安息をたまふの日
Isaiah 14:4 なんぢこの歌をとなヘバビロン王をせめていはん虐ぐる者いかにして息みしや金をはたる者いかにして息みしやと
Isaiah 14:5 ヱホバあしきものの笞ともろもろの有司の杖とををりたまへり
Isaiah 14:6 かれらは怒をもてもろもろの民をたえず撃てはうち忿恚をもてもろもろの國ををさむれどその暴虐をとどむる者なかりき
Isaiah 14:7 今は全地やすみを得おだやかを得ことごとく聲をあげてうたふ
Isaiah 14:8 實にまつの樹およびレバノンの香柏さへもなんぢの故により歡びていふ汝すでに仆たれば樵夫のぼりきたりてわれらを攻ることなしと
Isaiah 14:9 下の陰府はなんぢの故により動きて汝のきたるをむかへ世のもろもろの英雄の亡靈をおこし國々のもろもろの王をその位より起おこらしむ
Isaiah 14:10 かれらは皆なんぢに告ていはん汝もわれらのごとく弱くなりしや汝もわれらと同じくなりしやと
Isaiah 14:11 なんぢの榮華となんぢの琴の音はすでに陰府におちたり蛆なんぢの下にしかれ蚯蚓なんぢをおほふ
Isaiah 14:12 あしたの子明星よいかにして天より隕しやもろもろの國をたふしし者よいかにして斫れて地にたふれしや
Isaiah 14:13 汝さきに心中におもへらくわれ天にのぼり我くらゐを神の星のうへにあげ北の極なる集會の山にざし
Isaiah 14:14 たかき雲漢にのぼり至上者のごとくなるべしと
Isaiah 14:15 然どなんぢは陰府におとされ坑の最下にいれられん
Isaiah 14:16 なんぢを見るものは熟々なんぢを視なんぢに目をとめていはんこの人は地をふるはせ列國をうごかし
Isaiah 14:17 世を荒野のごとくしもろもろの邑をこぼち捕へたるものをその家にときかへさざりしものなるかと
Isaiah 14:18 もろもろの國の王たちはことごとく皆たふとき状にておのおのその家にねぶる
Isaiah 14:19 然どなんぢは忌きらふべき枝のごとくおのが墓のそとにすてられその周圍には劍にて刺ころされ坑におろされ石におほはれたる者ありて踐つけらるる屍にことならず
Isaiah 14:20 汝おのれの國をほろぼしおのれの民をころししが故にかれらとおなじく葬らるることあたはずそれ惡をおこなふものの裔はとこしへに名をよばるることなかるべし
Isaiah 14:21 先祖のよこしまの故をもてその子孫のために戮場をそなへ彼等をしてたちて地をとり世界のおもてに邑をみたすことなからしめよ
Isaiah 14:22 萬軍のヱホバのたまはく我立てかれらを攻めバビロンよりその名と遺りたるものとを絶滅しその子その孫をたちほろぼさんとこれヱホバの聖言なり
Isaiah 14:23 われバビロンを刺蝟のすみかとし沼とし且ほろびの箒をもてこれを掃除かんとこれ萬軍のヱホバのみことばなり
Isaiah 14:24 萬軍のヱホバ誓をたてて言給はくわがおもひし事はかならず成わがさだめし事はかならず立ん
Isaiah 14:25 われアツスリヤ人をわが地にてうちやぶりわが山々にてふみにじらんここにおいて彼がおきし軛はイスラエル人よりはなれ彼がおはせし重負はイスラエル人の肩よりはなるべし
Isaiah 14:26 これは全地のことにつきて定めたる謀略なり是はもろもろの國のうへに伸したる手なり
Isaiah 14:27 萬軍のヱホバさだめたまへり誰かこれを破ることを得んやその手をのばしたまへり誰かこれを押返すことを得んや
Isaiah 14:28 アハズ王の死たる年おもにの預言ありき
Isaiah 14:29 曰くペリシテの全地よなんぢをうちし杖をれたればとて喜ぶなかれ蛇の根より蝮いでその果はとびかける巨蛇となるべければなり
Isaiah 14:30 いと貧しきものはものくひ乏しきものは安然にふさんわれ飢饉をもてなんぢの根をしなせ汝がのこれる者をころすべし
Isaiah 14:31 門よなげけ邑よさけべペリシテよなんぢの全地きえうせたりそはけぶり北よりいできたりその軍兵の列におくるるものなし
Isaiah 14:32 その國の使者たちに何とこたふべきや答ヘていはんヱホバ、シオンの基をおきたまへりその民のなかの苦しむものは避所をこの中にえん
Isaiah 15:1 モアブにかかる重負のよげん曰く モアブのアルは一夜の間にあらされて亡びうせモアブのキルは一夜のまに荒されてほろびうせん
Isaiah 15:2 かれバイテおよびデボンの高所にのぼりて哭きモアブはネボ及びメデバの上にてなげきさけぶおのおのその頭を禿にしその鬚をことごとく剃たり
Isaiah 15:3 かれら麁服をきてその衢にあり屋蓋または廣きところにて皆なきさけび悲しむこと甚だし
Isaiah 15:4 ヘシボンとエレアレと叫びてその聲ヤハズにまで聞ゆこの故にモアブの軍兵こゑをあげその靈魂うちに在てをののけり
Isaiah 15:5 わが心モアブのために叫びよばはれりその貴族はゾアルおよびヱグラテシリシヤにのがれ哭つつルヒテの坂をのぼりホロナイムの途にて敗亡の聲をあぐ
Isaiah 15:6 ニムリムの水はかわき草はかれ苗はつきて緑蔬あらず
Isaiah 15:7 このゆゑに彼等はその獲たる富とその藏めたる物をたづさへて柳の河をわたらん
Isaiah 15:8 その泣號のこゑはモアブの境をめぐり悲歎のこゑはエグライムにいたりなげきの聲はべエルエリムにいたる
Isaiah 15:9 デモンの水は血にて充われデモンの上にひとしほ禍害をくはへモアブの遁れたる者とこの地の遺りたるものとに獅をおくらん
Isaiah 16:1 なんぢら荒野のセラより羔羊をシオンの女の山におくりて國の首にをさむべし
Isaiah 16:2 モアブの女輩はアルノンの津にありてさまよふ鳥のごとく巣をおはれたる雛のごとくなるべし
Isaiah 16:3 相謀りて審判をおこなひ亭午にもなんぢの蔭を夜のごとくならしめ驅逐人をかくし遁れきたるものを顯はすなかれ
Isaiah 16:4 わが驅逐人をなんぢとともに居しめ汝モアブの避所となりて之をそこなふ者のまへより脱れしめよ勒索者はうせ害ふものはたえ暴虐者は地より絶れん
Isaiah 16:5 ひとつの位あはれみをもて堅くたち眞實をおこなふ者そのうヘに坐せん彼ダビデの幕屋にをりて審判をなし公平をもとめて義をおこなふに速し
Isaiah 16:6 われらモアブの傲慢をきけりその高ぶること甚だしわれらその誇とたかぶりと忿恚とをきけりその大言はむなし
Isaiah 16:7 この故にモアブはモアブの爲になきさけび民みな哭さけぶべしなんぢら必らず甚だしく心をいためてキルハレステの乾葡萄のためになげくべし
Isaiah 16:8 そはヘシボンの畑とシブマのぶだうの樹とは凋みおとろヘたりその枝さきにはヤゼルにまでいたりて荒野にはびこりのびて海をわたりしが國々のもろもろの主その美はしき枝ををりたり
Isaiah 16:9 この故にわれヤゼルの哭とひとしくシブマの葡萄の樹のためになかんヘシボンよエレアレよわが涙なんぢをひたさんそは鬨聲なんぢが果物なんぢが收穫の實のうへにおちきたればなり
Isaiah 16:10 欣喜とたのしみとは土肥たる畑より取さられ葡萄園には謳ふことなく歡呼ばふことなく酒榨にはふみて酒をしぼるものなし我そのよろこびたつる聲をやめしめたり
Isaiah 16:11 このゆゑにわが心腸はモアブの故をもて琴のごとく鳴ひびきキルハレスの故をもてわが衷もまた然り
Isaiah 16:12 モアブは高處にいでて倦つかれその聖所にきたりて祈るべけれど驗あらじ
Isaiah 16:13 こはヱホバが曩にモアブに就てかたりたまへる聖言なり
Isaiah 16:14 されど今ヱホバかたりて言たまはくモアブの榮はその大なる群衆とともに傭人の期にひとしく三年のうちに恥かしめをうけ遺れる者はなはだ少なくして力なからん
Isaiah 17:1 ダマスコにかかはる重負の預言いはく 視よダマスコは邑のすがたをうしなひて荒墟となるべし
Isaiah 17:2 アロエルの諸邑はすてられん獸畜のむれそこにすみてその伏やすめるをおびやかす者もなからん
Isaiah 17:3 エフライムの城はすたりダマスコの政治はやみスリアの遺れる者はイスラエルの子輩のさかえのごとく消うせん是は萬軍のヱホバの聖言なり
Isaiah 17:4 その日ヤコブの榮はおとろへその肥たる肉はやせて
Isaiah 17:5 あだかも收穫人の麥をかりあつめ腕をもて穂をかりたる後のごとくレパイムの谷に穂をひろひたるあとの如くならん
Isaiah 17:6 されど橄欖樹をうつとき二つ三の核を杪にのこしあるひは四つ五をみのりおほき樹の外面のえだに遺せるが如く採のこさるるものあるべし是イスラエルの神ヱホバの聖言なり
Isaiah 17:7 その日人おのれを造れるものを仰ぎのぞみイスラエルの聖者に目をとめん
Isaiah 17:8 斯ておのれの手の工なる祭壇をあふぎ望まずおのれの指のつくりたるアシラの像と日の像とに目をとめじ
Isaiah 17:9 その日かれが堅固なるまちまちは昔イスラエルの子輩をさけてすてさりたる森のなか嶺のうへに今のこれる荒跡のごとく荒地となるべし
Isaiah 17:10 そは汝おのがすくひの神をわすれ己がちからとなるべき磐を心にとめざりしによるこのゆゑになんぢ美くしき植物をうゑ異やうの枝をさし
Isaiah 17:11 かつ植たる日に籬をまはし朝に芽をいださしむれども患難の日といたましき憂の日ときたりて收穫の果はとびさらん
Isaiah 17:12 唉おほくの民はなりどよめけり海のなりどよめく如くかれらも鳴動めけりもろもろの國はなりひびけり、戸じ大水のなりひびくが如くかれらも鳴響けり
Isaiah 17:13 もろもろの國はおほくの水のなりひびくがごとく鳴響かんされど神かれらを攻たまふべしかれら遠くのがれて風にふきさらるる山のうヘの粃糠のごとくまた旋風にふきさらるる塵のごとくならん
Isaiah 17:14 視よゆふぐれに恐怖ありいまだ黎明にいたらずして彼等は亡たり これ我儕をかすむる者のうくべき報われらを奪ふもののひくべき鬮なり
Isaiah 18:1 唉エテオピアの河の彼方なるさやさやと羽音のきこゆる地
Isaiah 18:2 この地蒹のふねを水にうかべ海路より使者をつかはさんとてその使者にいへらく疾走る使よなんぢら河々の流のわかるる國にゆけ丈たかく肌なめらかなる始めより今にいたるまで懼るべく繩もてはかり人を踐にじる民にゆけ
Isaiah 18:3 すべて世にをるもの地にすむものよ山のうへに旗のたつとき汝等これを見ラッパの鳴響くときなんぢら之をきけ
Isaiah 18:4 そはヱホバわれに如此いひ給へりいはく空はれわたり日てり收穫の熱むしてつゆけき雲のたるる間われわが居所にしづかに居てながめん
Isaiah 18:5 收穫のまへにその芽またく生その花ぶだうとなりて熟せんとするときかれ鎌をもて蔓をかり枝をきり去ん
Isaiah 18:6 斯てみな山のたけきとりと地の獸とになげあたへらるべし猛鳥そのうヘにて夏をすごし地のけものその上にて冬をわたらん
Isaiah 18:7 そのとき河々の流のわかるる國の丈たかく肌なめらかなる始めより今にいたるまで懼るべく繩もてはかり人をふみにじる民より萬軍のヱホバにささぐる禮物をたづさへて萬軍のヱホバの聖名のところシオンの山にきたるべし
Isaiah 19:1 エジプトにかかる重負のよげんいはく ヱホバははやき雲にのりてエジプトに來りたまふエジプトのもろもろの偶像はその前にふるひをののきエジプト人のこころはその衷にて消ゆかん
Isaiah 19:2 我エジプト人をたけび勇ましめてエジプト人を攻しめん斯てかれら各自その兄弟をせめおのおのその鄰をせめ邑は邑をせめ國はくにを攻べし
Isaiah 19:3 エジプト人の靈魂うせてその中むなしくならんわれその謀略をほろぼすべしかれらは偶像および呪文をとなふるもの巫女魔術者にもとむることを爲ん
Isaiah 19:4 われエジプト人を苛酷なる主人の手にわたさんあらあらしき王かれらを治むべし是主萬軍のヱホバの聖言なり
Isaiah 19:5 海の水はつき河もまた涸てかわかん
Isaiah 19:6 また河々はくさき臭をはなちエジプトの堭はみな漸次にへりてかわき葦と蘆とかれはてん
Isaiah 19:7 ナイルのほとりの草原ナイルの岸にほどちかき所すべてナイルの最寄にまきたる者はことごとく枯てちりうせん
Isaiah 19:8 漁者もまた歎きすべてナイルに釣をたるる者はかなしみ網を水のうへに施ものはおとろふべし
Isaiah 19:9 練たる麻にて物つくるもの白布を織ものは恥あわて
Isaiah 19:10 その柱はくだけ一切のやとはれたる者のこころ憂ひかなしまん
Isaiah 19:11 誠やゾアンの諸侯は愚なりパロの最もかしこき議官のはかりごとは癡鈍べし然ばなんぢら何でパロに
Lamentations 0:0 エレミヤの哀歌
Lamentations 1:1 ああ哀しいかな古昔は人のみちみちたりし此都邑 いまは凄しき様にて坐し 寡婦のごとくになれり 嗟もろもろの民の中にて大いなりし者 もろもろの州の中に女王たりし者 いまはかへつて貢をいるる者となりぬ
Lamentations 1:2 彼よもすがら痛く泣きかなしみて涙面にながる その戀人の中にはこれを慰むる者ひとりだに無く その朋これに背きてその仇となれり
Lamentations 1:3 ユダは艱難の故によりまた大いなる苦役のゆゑによりて擄はれゆき もろもろの國に住ひて安息を得ず これを追ふものみな狭隘にてこれに追しきぬ
Lamentations 1:4 シオンの道路は節會の上り來る者なきがために哀しみ その門はことごとく荒れ その祭司は歎き その處女は憂へ シオンもまた自から苦しむ
Lamentations 1:5 その仇は首となり その敵は享ゆ その愆の多きによりてヱホバこれをなやませたまへるなり そのわかき子等は擄はれて仇の前にゆけり
Lamentations 1:6 シオンの女よりはその榮華ことごとく離れされり またその牧伯等は草を得ざる鹿のごとくに成り おのれを追ふものの前に力つかれて歩みゆけり
Lamentations 1:7 ヱルサレムはその艱難と窘迫の時むかしの代にありしもろもろの樂しき物を思ひ出づ その民仇の手におちいり誰もこれを助くるものなき時 仇人これを見てその荒はてたるを笑ふ
Lamentations 1:8 ヱルサレムははなはだしく罪ををかしたれば汚穢たる者のごとくになれり 前にこれを尊とびたる者もその裸體を見しによりて皆これをいやしむ 是もまたみづから嗟き身をそむけて退けり
Lamentations 1:9 その汚穢これが裾にあり 彼その終局をおもはざりき 此故に驚ろくまでに零落たり 一人の慰むる者だに無し ヱホバよわが艱難をかへりみたまへ 敵は勝ほこれり
Lamentations 1:10 敵すでに手を伸てその財寳をことごとく奪ひたり 汝さきに異邦人等はなんぢの公會にいるべからずと命じおきたまひしに 彼らが聖所を侵しいるをシオンは見たり
Lamentations 1:11 その民はみな哀きて食物をもとめ その生命を支へんがために財寳を出して食にかへたり ヱホバよ見そなはし我のいやしめらるるを顧みたまへ
Lamentations 1:12 すべて行路人よ なんぢら何ともおもはざるか ヱホバその烈しき震怒の日に我をなやましてわれに降したまへるこの憂苦にひとしき憂苦また世にあるべきや考がへ見よ
Lamentations 1:13 ヱホバ上より火をくだしわが骨にいれて之を克服せしめ 網を張りわが足をとらへて我を後にむかしめ 我をして終日心さびしくかつ疾わづらはしめたまふ
Lamentations 1:14 わが愆尤の軛は主の御手にて結ばれ諸の愆あひ纒はりてわが項にのれり 是はわが力をしておとろへしむ 主われを敵たりがたき者の手にわたしたまへり
Lamentations 1:15 主われの中なる勇士をことごとく除き 節會をもよほして我を攻め わが少き人を打ほろぼしたまへり 主酒榨をふむがごとくにユダの處女をふみたまへり
Lamentations 1:16 これがために我なげく わが目やわが目には水ながる わがたましひを活すべき慰さむるものわれに遠ければなり わが子等は敵の勝るによりて滅びうせにき
Lamentations 1:17 シオンは手をのぶれども誰もこれを慰むる者なし ヤコブにつきてはヱホバ命をくだしてその周圍の民をこれが敵とならしめたまふ ヱルサレムは彼らの中にありて汚れたる者のごとくなりぬ
Lamentations 1:18 ヱホバは正し 我その命令にそむきたるなり 一切の民よわれに聽け わが憂苦をかへりみよ わが處女もわかき男も俘囚て往り
Lamentations 1:19 われわが戀人を呼たれども彼らはわれを欺むけり わが祭司およびわが長老は生命を繋がんとて食物を求むる間に都邑の中にて氣息たえたり
Lamentations 1:20 ヱホバよかへりみたまへ 我はなやみてをり わが膓わきかへり わが心わが衷に顛倒す 我甚しく悖りたればなり 外には劍ありてわが子を殺し 内には死のごとき者あり
Lamentations 1:21 かれらはわが嗟歎をきけり 我をなぐさむるもの一人だに无し わが敵みなわが艱難をききおよび 汝のこれを爲たまひしを喜こべり 汝はさきに告しらせしその日を來らせたまはん 而して彼らもつひに我ごとくに成るべし
Lamentations 1:22 ねがはくは彼等が與へし艱難をことごとくなんぢの御前にあらはし 前にわがもろもろの罪愆のために我におこなひし如く彼らにも行ひたまへ わが嗟歎は多くわが心はうれひかなしむなり
Lamentations 2:1 ああヱホバ震怒をおこし 黒雲をもてシオンの女を蔽ひたまひ イスラエルの榮光を天より地におとし その震怒の日に己の足凳を心にとめたまはざりき
Lamentations 2:2 主ヤコブのすべての住居を呑つくしてあはれまず 震怒によりてユダの女の保砦を毀ち これを地にたふし その國とその牧伯等を辱かしめ
Lamentations 2:3 烈しき震怒をもてイスラエルのすべての角を絶ち 敵の前にて己の右の手をひきちぢめ 四面を焚きつくす燃る火のごとくヤコブを焚き
Lamentations 2:4 敵のごとく弓を張り 仇のごとく右の手を挺て立ち 凡て目に喜こばしきものを滅し シオンの女の幕屋に火のごとくその怒をそそぎたまへり
Lamentations 2:5 主敵のごとくに成たまひてイスラエルを呑ほろぼし その諸の殿を呑ほろぼし そのもろもろの保砦をこぼち ユダの女の上に憂愁と悲哀を増くはへ
Lamentations 2:6 園のごとく己の幕屋を荒し その集會の所をほろぼしたまへり ヱホバ節會と安息日とをシオンに忘れしめ 烈しき怒によりて王と祭司とをいやしめ棄たまへり
Lamentations 2:7 主その祭壇を忌棄て その聖所を嫌ひ憎みて その諸の殿の石垣を敵の手にわたしたまへり 彼らは節會の日のごとくヱホバの室にて聲をたつ
Lamentations 2:8 ヱホバ、シオンの女の石垣を毀たんと思ひさだめ 繩を張り こぼち進みてその手をひかず 壕と石垣とをして哀しましめたまふ 是らは共に憂ふ
Lamentations 2:9 その門は地に埋もれヱホバその關木をこぼちくだき その王ともろもろの牧伯は律法なき國人の中にあり その預言者はヱホバより異象を蒙らず
Lamentations 2:10 シオンの女の長老等は地に坐りて黙し 首に灰をかむり 身に麻をまとふ ヱルサレムの處女は首を地に低る
Lamentations 2:11 わが目は涙の爲に潰れんとし わが膓は沸かへり わが肝は地に塗る わが民の女ほろぼされ 幼少ものや乳哺子は疲れはてて邑の街衢に氣息たえなんとすればなり
Lamentations 2:12 かれらは疵を負る者の如く邑のちまたにて氣息たえなんとし 母の懐にその靈魂をそそがんとし 母にむかひて言ふ 穀物と酒とはいづくにあるやと
Lamentations 2:13 ヱルサレムの女よ 我なにをもて汝にあかしし 何をもて汝にならべんや シオンの處女よ われ何をもて汝になぞらへて汝をなぐさめんや 汝のやぶれは海のごとく大なり 嗟たれか能く汝を醫さんや
Lamentations 2:14 なんぢの預言者は虚しき事と愚なることとなんぢに預言し かつて汝の不義をあらはしてその俘囚をまぬかれしめんとはせざりき その預言するところは唯むなしき重荷および追放たるる根本となるべき事のみ
Lamentations 2:15 すべて往來の人なんぢにむかひて手を拍ち ヱルサレムの女にむかひて嘲りわらひ かつ頭をふりて言ふ 美麗の極全地の欣喜ととなへたりし邑は是なるかと
Lamentations 2:16 なんぢのもろもろの敵はなんぢに對ひて口を開け あざけり笑ひて切齒をなす 斯て言ふわれら之を呑つくしたり 是われらが望みたりし日なり 我ら已に之にあへり 我らすでに之を見たりと
Lamentations 2:17 ヱホバはその定めたまへることを成し いにしへより其命じたまひし言を果したまへり ヱホバはほろぼして憐れまず 敵をして汝にかちほこらしめ汝の仇の角をたかくしたまへり
Lamentations 2:18 かれらの心は主にむかひて呼はれり シオンの女の墻垣よ なんぢ夜も晝も河の如く涙をながせ みづから安んずることをせず 汝の瞳子を休むることなかれ
Lamentations 2:19 なんぢ夜の初更に起いでて呼さけべ 主の御前に汝の心を水のごとく灌げ 街衢のほとりに饑たふるるなんぢの幼兒の生命のために主にむかひて兩手をあげよ
Lamentations 2:20 ヱホバよ視たまへ 汝これを誰におこなひしか 願はくは顧みたまへ 婦人おのが實なるその懷き育てし孩兒を食ふべけんや 祭司預言者等主の聖所において殺さるべけんや
Lamentations 2:21 をさなきも老たるも街衢にて地に臥し わが處女も若き男も刄にかかりて斃れたり なんぢはその震怒の日にこれを殺し これを屠りて恤れみたまはざりき
Lamentations 2:22 なんぢ節會の日のごとくわが懼るるところの者を四方より呼あつめたまへり ヱホバの震怒の日には遁れたる者なく又のこりたる者なかりき わが懷き育てし者はみなわが敵のためにほろぼされたり
Lamentations 3:1 我はかれの震怒の笞によりて艱難に遭たる人なり
Lamentations 3:2 かれは我をひきて黒暗をあゆませ光明にゆかしめたまはず
Lamentations 3:3 まことに屢々その手をむけて終日われを攻なやまし
Lamentations 3:4 わが肉と肌膚をおとろへしめ わが骨を摧き
Lamentations 3:5 われにむかひて患苦と艱難を築きこれをもて我を圍み
Lamentations 3:6 われをして長久に死し者のごとく暗き處に住しめ
Lamentations 3:7 我をかこみて出ること能はざらしめわが鏈索を重くしたまへり
Lamentations 3:8 我さけびて助をもとめしとき彼わが祈禱をふせぎ
Lamentations 3:9 斫たる石をもてわが道を塞ぎわが途をまげたまへり
Lamentations 3:10 その我に對することは伏て伺がふ熊のごとく潜みかくるる獅子のごとし
Lamentations 3:11 われに路を離れしめ 我をひきさきて獨くるしましめ
Lamentations 3:12 弓を張りてわれを矢先の的となし
Lamentations 3:13 矢筒の矢をもてわが腰を射ぬきたまへり
Lamentations 3:14 われはわがすべての民のあざけりとなり 終日うたひそしらる
Lamentations 3:15 かれ我をして苦き物に飽しめ茵蔯を飮しめ
Lamentations 3:16 小石をもてわが齒を摧き灰をもて我を蒙ひたまへり
Lamentations 3:17 なんぢわが靈魂をして平和を遠くはなれしめたまへば我は福祉をわすれたり
Lamentations 3:18 是において我みづから言り わが氣力うせゆきぬ ヱホバより何を望むべきところ無しと
Lamentations 3:19 ねがはくは我が艱難と苦楚茵蔯と膽汁とを心に記たまへ
Lamentations 3:20 わがたましひは今なほ是らの事を想ひてわが衷に鬱ぐ
Lamentations 3:21 われこの事を心におもひ起せり この故に望をいだくなり
Lamentations 3:22 われらの尚ほろびざるはヱホバの仁愛によりその憐憫の盡ざるに因る
Lamentations 3:23 これは朝ごとに新なり なんぢの誠實はおほいなるかな
Lamentations 3:24 わが靈魂は言ふ ヱホバはわが分なり このゆゑに我彼を待ち望まん
Lamentations 3:25 ヱホバはおのれを待ち望む者とおのれを尋ねもとむる人に恩惠をほどこしたまふ
Lamentations 3:26 ヱホバの救拯をのぞみて靜にこれを待は善し
Lamentations 3:27 人わかき時に軛を負は善し
Lamentations 3:28 ヱホバこれを負せたまふなれば獨坐して黙すべし
Lamentations 3:29 口を塵につけよ あるひは望あらん
Lamentations 3:30 おのれを撃つ者に頬をむけ 充足れるまでに恥辱をうけよ
Lamentations 3:31 そは主は永久に棄ることを爲したまはざるべければなり
Lamentations 3:32 かれは患難を與へ給ふといへどもその慈悲おほいなればまた憐憫を加へたまふなり
Lamentations 3:33 心より世の人をなやましかつ苦しめ給ふにはあらざるなり
Lamentations 3:34 世のもろもろの俘囚人を脚の下にふみにじり
Lamentations 3:35 至高者の面の前にて人の理を抂げ
Lamentations 3:36 人の詞訟を屈むることは主のよろこび給はざるところなり
Lamentations 3:37 主の命じたまふにあらずば誰か事を述んにその事即ち成んや
Lamentations 3:38 禍も福もともに至高者の口より出るにあらずや
Lamentations 3:39 活る人なんぞ怨言べけんや 人おのれの罪の罰せらるるをつぶやくべけんや
Lamentations 3:40 我等みづからの行をしらべかつ省みてヱホバに歸るべし
Lamentations 3:41 我ら天にいます神にむかひて手とともに心をも擧べし
Lamentations 3:42 われらは罪ををかし我らは叛きたり なんぢこれを赦したまはざりき
Lamentations 3:43 なんぢ震怒をもてみづから蔽ひ 我らを追攻め殺してあはれまず
Lamentations 3:44 雲をもてみづから蔽ひ 祈禱をして通ぜざらしめ
Lamentations 3:45 もろもろの民の中にわれらを塵埃となしたまへり
Lamentations 3:46 敵は皆われらにむかひて口を張れり
Lamentations 3:47 恐懼と陷阱また暴行と滅亡我らに來れり
Lamentations 3:48 わが民の女の滅亡によりてわが眼には涙の河ながる
Lamentations 3:49 わが目は斷ず涙をそそぎて止ず
Lamentations 3:50 天よりヱホバの臨み見て顧みたまふ時にまで至らん
Lamentations 3:51 わが邑の一切の女等の故によりてわが眼はわが心をいたましむ
Lamentations 3:52 故なくして我に敵する者ども鳥を追ごとくにいたく我をおひ
Lamentations 3:53 わが生命を坑の中にほろぼし わが上に石を投かけ
Lamentations 3:54 また水わが頭の上に溢る 我みづから言り滅びうせぬと
Lamentations 3:55 ヱホバよ われ深き坑の底より汝の名を呼り
Lamentations 3:56 なんぢ我が聲を聽きたまへり わが哀歎と祈求に耳をおほひたまふなかれ
Lamentations 3:57 わが汝を龥たりし時なんぢは近よりたまひて恐るるなかれと宣へり
Lamentations 3:58 主よなんぢはわが靈魂の訴を助け伸べ わが生命を贖ひ給へり
Lamentations 3:59 ヱホバよ なんぢは我がかうむりたる不義を見たまへり 願はくは我に正しき審判を與へたまへ
Lamentations 3:60 なんぢは彼らが我を怨み われを害せんとはかるを凡て見たまへり
Lamentations 3:61 ヱホバよなんぢは彼らが我を詈り 我を害せんとはかるを凡て聞きたまへり
Lamentations 3:62 かの立て我に逆らふ者等の言語およびその終日われを攻んとて運らす謀計もまた汝これを聞たまへり
Lamentations 3:63 ねがはくは彼らの起居をかんがみたまへ 我はかれらに歌ひそしらる
Lamentations 3:64 ヱホバよ なんぢは彼らが手に爲すところに循がひて報をなし
Lamentations 3:65 かれらをして心くらからしめたまはん なんぢの呪詛かれらに歸せよ
Lamentations 3:66 なんぢは震怒をもてかれらを追ひ ヱホバの天の下よりかれらをほろぼし絶ちたまはん
Lamentations 4:1 ああ黄金は光をうしなひ純金は色を變じ 聖所の石はもろもろの街衢の口に投すてられたり
Lamentations 4:2 ああ精金にも比ぶべきシオンの愛子等は陶噐師の手の作なる土の器のごとくに見做る
Lamentations 4:3 山犬さへも乳房をたれてその子に乳を哺す 然るにわが民の女は殘忍荒野の鴕鳥のごとくなれり
Lamentations 4:4 乳哺兒の舌は渇きて上顎にひたと貼き 幼兒はパンをもとむるも擘てあたふる者なし
Lamentations 4:5 肥甘物をくらひ居りし者はおちぶれて街衢にあり 紅の衣服にて育てられし者も今は塵堆を抱く
Lamentations 4:6 今我民の女のうくる愆の罰はソドムの罪の罰よりもおほいなり ソドムは古昔人に手を加へらるることなくして瞬く間にほろぼされしなり
Lamentations 4:7 わが民の中なる貴き人は從前には雪よりも咬潔に乳よりも白く 珊瑚よりも躰紅色にしてその形貌のうるはしきこと藍玉のごとくなりしが
Lamentations 4:8 いまはその面くろきが上に黒く 街衢にあるとも人にしられず その皮は骨にひたと貼き 乾きて枯木のごとくなれり
Lamentations 4:9 劍にて死る者は饑て死る者よりもさいはひなり そは斯る者は田圃の産物の罄るによりて漸々におとろへゆき刺れし者のごとくに成ばなり
Lamentations 4:10 わが民の女のほろぶる時には情愛ふかき婦人等さへも手づから己の子等を煮て食となせり
Lamentations 4:11 ヱホバその憤恨をことごとく洩し 烈しき怒をそそぎ給ひ シオンに火をもやしてその基礎までも焼しめ給へり
Lamentations 4:12 地の諸王も世のもろもろの民もすべてヱルサレムの門に仇や敵の打いらんとは信ぜざりき
Lamentations 4:13 斯なりしはその預言者の罪によりその祭司の愆によれり かれらは即はち正しき者の血をその邑の中にながしたりき
Lamentations 4:14 今かれらは盲人のごとく街衢にさまよひ 身は血にて汚れをれば人その衣服にふるるあたはず
Lamentations 4:15 人かれらに向ひて呼はり言ふ 去れよ穢らはし 去れ去れ觸るなかれと 彼らはしり去りて流離ば異邦人の中間にても人々また言ふ 彼らは此に寓るべからずと
Lamentations 4:16 ヱホバ怒れる面をもてこれを散し給へり 再びこれを顧みたまはじ 人々祭司の面をも尊ばず長老をもあはれまざりき
Lamentations 4:17 われらは頼まれぬ救援を望みて目つかれおとろふ 我らは俟ゐたりしが救拯をなすこと能はざる國人を待をりぬ
Lamentations 4:18 敵われらの脚をうかがへば我らはおのれの街衢をも歩くことあたはず 我らの終ちかづけり 我らの日つきたり 即ち我らの終きたりぬ
Lamentations 4:19 我らを追ふものは天空ゆく鷲よりも迅し 山にて我らを追ひ 野に伏てわれらを伺ふ
Lamentations 4:20 かの我らが鼻の氣息たる者ヱホバに膏そそがれたるものは陷阱にて執へられにき 是はわれらが異邦にありてもこの蔭に住んとおもひたりし者なり
Lamentations 4:21 ウズの地に住むエドムの女よ悦び樂しめ 汝にもまたつひに杯めぐりゆかん なんぢも醉て裸になるべし
Lamentations 4:22 シオンの女よ なんぢが愆の罰はをはれり 重ねてなんぢを擄へゆきたまはじ エドムの女よ なんぢの愆を罰したまはん 汝の罪を露はしたまはん
Lamentations 5:1 ヱホバよ我らにありし所の事をおもひたまへ 我らの恥辱をかへりみ觀たまへ
Lamentations 5:2 われらの産業は外國人に歸し われらの家屋は他國人の有となれり
Lamentations 5:3 われらは孤子となりて父あらず われらの母は寡婦にひとし
Lamentations 5:4 われらは金を出して自己の水を飮み おのれの薪を得るにも價をはらふ
Lamentations 5:5 われらを追ふ者われらの頸に迫る 我らは疲れて休むことを得ず
Lamentations 5:6 食物を得て饑を凌がんとてエジプト人およびアッスリヤ人に手を與へたり
Lamentations 5:7 われらの父は罪ををかして已に世にあらず 我らその罪を負ふなり
Lamentations 5:8 奴僕等われらを制するに誰ありて我らを之が手よりすくひ出すものなし
Lamentations 5:9 荒野の刀兵の故によりて我ら死を冒して食物を得
Lamentations 5:10 饑饉の烈しき熱氣によりてわれらの皮膚は爐のごとく熱し
Lamentations 5:11 シオンにて婦人等をかされユダの邑々にて處女等けがさる
Lamentations 5:12 侯伯たる者も敵の手にて吊され 老たる者の面も尊とばれず
Lamentations 5:13 少き者は石磨を擔はせられ 童子は薪を負ふてよろめき
Lamentations 5:14 長老は門にあつまることを止め 少き者はその音樂を廢せり
Lamentations 5:15 我らが心の快樂はすでに罷み われらの跳舞はかはりて悲哀となり
Lamentations 5:16 われらの冠冕は首より落たり われら罪ををかしたれば禍なるかな
Lamentations 5:17 これが爲に我らの心うれへ これらのために我らが目くらくなれり
Lamentations 5:18 シオンの山は荒はて 山犬はその上を歩くなり
Lamentations 5:19 ヱホバよなんぢは永遠に在す なんぢの御位は世々かぎりなし
Lamentations 5:20 何とて我らを永く忘れ われらを斯ひさしく棄おきたまふや
Lamentations 5:21 ヱホバよねがはくは我らをして汝に歸らしめたまへ われら歸るべし 我らの日を新にして昔日の日のごとくならしめたまへ
Lamentations 5:22 さりとも汝まつたく我らを棄たまひしや 痛くわれらを怒りゐたまふや
Daniel 0:0 ダニエル書
Daniel 1:1 ユダの王エホヤキムの治世の第三年にバビロンの王ネブカデネザル、ヱルサレムにきたりて之を攻圍みしに
Daniel 1:2 主ユダの王ヱホヤキムと神の家の器具幾何とをかれの手にわたしたまひければ則ちこれをシナルの地に携へゆきて己の神の家にいたりその器具を己の神の庫に蔵めたり
Daniel 1:3 茲に王寺人の長アシベナズに命じてイスラエルの子孫の中より王の血統の者と貴族たる者幾何を召寄しむ
Daniel 1:4 即ち身に疵なく容貌美しくして一切の智慧の道に頴く知識ありて思慮深く王の宮に侍るに足る能幹ある少き者を召寄しめこれにカルデヤ人の文學土と言語とを學ばせんとす
Daniel 1:5 是をもて王は命を下して日々に王の用ゐる饌と王の飮む酒とを彼らに與へしめ三年の間かく彼らを養ひ育てしめんとす是その後に彼らをして王の前に立ことを得せしめんとてなり
Daniel 1:6 是等の中にユダの人ダニエル、ハナニヤ、ミシヤエル、アザリヤありしが
Daniel 1:7 寺人の長かれらに名をあたへてダニエルをベルテシヤザルと名けハナニヤをシヤデラクと名けミシヤエルをメシヤクと名けアザリヤをアベデネゴと名く
Daniel 1:8 然るにダニエルは王の用ゐる饌と王の飮む酒とをもて己の身を汚すまじと心に思ひさだめたれば己の身を汚さざらしめんことを寺人の長に求む
Daniel 1:9 以前よりヱホバ、ダニエルをして寺人の長の慈悲と寵愛とを蒙らしめたまふ
Daniel 1:10 是において寺人の長ダニエルに言けるは吾主なる王すでに命をくだして汝らの食物と汝らの飮物とを頒たしめたまへば我かれを畏る恐くは彼なんぢらの面の其同輩の少者等と異にして憂色あるを見ん然る時は汝らのために我首王の前に危からん
Daniel 1:11 寺人の長はメルザル官をしてダニエル、ハナニヤ、ミシヤエル及びアザリヤを監督らせ置たればダニエル之に言けるは
Daniel 1:12 請十日の間僕等を験したまへ即ち我らには菜蔬を與へて食せ水を與ヘて飮せよ
Daniel 1:13 而して我らの面と王の饌を食ふ少者どもの面とを較べ見汝の視るところにしたがひて僕等を待ひたまへと
Daniel 1:14 是において彼この事を聴いれ十日のあひだ彼らを験しけるが
Daniel 1:15 十日の後にいたりて見るに王の饌を食へる諸の少者よりも彼らの面は美しくまた肥え膩つきてありければ
Daniel 1:16 メルザル官すなはち彼らの分なる饌と彼らの飮べき洒とを撤きさりて菜蔬をこれに與へたり
Daniel 1:17 この四人の少者には神知識を得させ諸の文學と智慧に頴からしめたまへりダニエはまた能く各諸の異象と夢兆を暁る
Daniel 1:18 王かねて命をくだし少者どもを召いるる迄に經べき日を定めおきしがその日數も過たるに因て寺人の長かれらを引てネブカデザルの前にいたりければ
Daniel 1:19 王かれらと言談へり彼ら一切の中にはダニエル、ハナニヤ、ミシヤエル、アザリヤに比ぶ者あらざりければこの四人は王の前に侍れり
Daniel 1:20 王かれらに諸の事を詢たづね見に彼らは智慧の學においてその全國の博士と法術士に愈ること十倍なり
Daniel 1:21 ダニエルはクロス王の元年までありき
Daniel 2:1 ネブカデネザルの治世の二年にネブカデネザル夢を見それがために心に思ひなやみて復睡ること能はざりき
Daniel 2:2 是をもて王は命を下し王のためにその夢を解せんとて博士と法術士と魔術士とカルデヤ人とを召しめたれぼ彼ら來りて王の前に立つ
Daniel 2:3 王すなはち彼らにむかひ我夢を見その夢の義を知んと心に思ひなやむと言ければ
Daniel 2:4 カルデヤ人等スリア語をもて王に申しけるは願くは王長壽かれ請ふ僕等にその夢を語りたまへ我らその解明を進めたてまつらんと
Daniel 2:5 王こたへてカルデヤ人に言けるは我すでに命を出せり汝等もしその夢とこれが解明とを我に示さざるにおいては汝らの身は切裂れ汝らの家は厠にせられん
Daniel 2:6 又汝らもしその夢とこれが解明を示さば贐物と賞賚と大なる尊榮とを我より獲ん然ばその夢と之が解明を我に示せ
Daniel 2:7 彼らまた對へて言けるは願くは王僕どもにその夢を語りたまへ然ば我らその解明を奏すべしと
Daniel 2:8 王こたへて言けるは我あきらかに知る汝らは吾命の下りしを見るが故に時を延さんことを望むなり
Daniel 2:9 汝らもしその夢を我に示さずば汝らを處置するの法は只一のみ汝らは相語らひて虚言と妄誕なる詞を我前にのべて時の變るを待んとするなり汝ら今先その夢を我に示せ然すれば汝らがその解明をも我にしめし得ることを我しらんと
Daniel 2:10 カルデヤ人等こたへて王の前に申しけるは世の中には王のその事を示し得る人一箇もなし是をもて王たる者主たる者君たる者等の中に斯る事を博士または法術士またはカルデヤ人に問たづねし者絶てあらざるなり
Daniel 2:11 王の問たまふその事は甚だ難し肉身なる者と共に居ざる神々を除きては王の前にこれを示すことを得る者無るべしと
Daniel 2:12 斯りしかば王怒を發し大に憤りバビロンの智者をことごとく殺せと命じたり
Daniel 2:13 即ち此命くだりければ智者等は殺されんとせり又ダニエルとその同僚をも殺さんともとめたり
Daniel 2:14 茲に王の侍衛の長アリオク、バビロンの智者等を殺さんとて出きたりければダニエル遠慮と智慧とをもて之に應答せり
Daniel 2:15 すなはち王の高官アリオクに對へて言けるは王なにとて斯すみやかにこの命を下したまひしやとアリオクその事をダニエルに告しらせたれば
Daniel 2:16 ダニエルいりて王に乞求めて言ふ暫くの時日を賜へ然ばその解明を王に奏せんと
Daniel 2:17 斯てダニエルその家にかへりその同僚ハナニヤ、ミシヤエルおよびアザリヤにこの事を告しらせ
Daniel 2:18 共にこの秘密につき天の神の憐憫を乞ひダニエルとその同僚等をしてその他のバビロンの智者とともに滅びさらしめんことを求めたりしが
Daniel 2:19 ダニエルつひに夜の異象の中にこの秘密を示されければダニエル天の神を賞賛ふ
Daniel 2:20 即ちダニエル應へて言けるは永遠より永遠にいたるまでこの神の御名は讃まつるべきなり智慧と權能はこれが有なればなり
Daniel 2:21 彼は時と期とを變じ王を廃し王を立て智者に智慧を與へ賢者に知識を賜ふ
Daniel 2:22 彼は深妙秘密の事を顕し幽暗にあるところの者を知たまふまた光明彼の裏にあり
Daniel 2:23 わが先祖等の神よ汝は我に智慧と權能を賜ひ今われらが汝に乞求めたるところの事を我にしめし給へば我感謝して汝を賞賛ふ即ち汝は王のかの事を我らに示したまへり
Daniel 2:24 是においてダニエルは王がバビロンの智者等を殺すことを命じおけるアリオクの許にいたり即ちいりてこれに言けるはバビロンの智者等を殺す勿れ我を王の前に引いたれよ我その解明を王に奏上ぐべしと
Daniel 2:25 アリオクすなはちダニエルを引て急ぎ王の前にいたり王にまうしけるは我ユダの俘囚人の中に一箇の人を得たり是者その解明を王にまうしあげん
Daniel 2:26 王こたへてベルテシヤザルと名くるダニエルに言けるは汝は我が見たる夢とその解明とを我に知らすることを得るやと
Daniel 2:27 ダニエルすなはち應へて王の前に言けるは王の問たまふ秘密は智者法術士博士卜筮師など之を王に奏上ぐることを得ず
Daniel 2:28 然ど天に一の神ありて秘密をあらはし給ふ彼後の日に起らんところの事の如何なるかをネブカデネザル王にしらせたまふなり汝の夢汝が牀にありて想見たまひし汝の脳中の異象は是なり
Daniel 2:29 王よ汝牀にいりし時将來の事の如何を想ひまはしたまひしが秘密を顕す者将來の事の如何を汝にしめし給へり
Daniel 2:30 我がこの示現を蒙れるは凡の生る者にまさりて我に智慧あるに由にあらず唯その解明を王に知しむる事ありて王のつひにその心に想ひたまひし事を知にいたり給はんがためなり
Daniel 2:31 王よ汝は一箇の巨なる像の汝の前に立るを見たまへり其像は大くしてその光輝は常ならずその形は畏ろしくあり
Daniel 2:32 其像は頭は純金 胸と兩腕とは銀 腹と腿とは銅
Daniel 2:33 脛は鉄 脚は一分は鉄一分は泥土なり
Daniel 2:34 汝見て居たまひしに遂に一箇の石人手によらずして鑿れて出でその像の鉄と泥土との脚を撃てこれを碎けり
Daniel 2:35 斯りしかばその鉄と泥土と銅と銀と金とは皆ともに碎けて夏の禾場の糠のごとくに成り風に吹はらはれて止るところ無りき而してその像を撃たる石は大なる山となりて全地に充り
Daniel 2:36 是その夢なり我らその解明を王の前に陳ん
Daniel 2:37 王よ汝は諸王の王にいませり即ち天の神汝に國と權威と能力と尊貴とを賜へり
Daniel 2:38 また人の子等等の獣畜かよび天空の鳥は何處にをる者にもあれ皆これを汝の手に與へて汝にこれをことごとく治めしめたまふ汝はすなはち此金の頭なり
Daniel 2:39 汝の後に汝に劣る一の國おこらんまた第三に銅の國おこりて全世界を治めん
Daniel 2:40 第四の國は堅きこと鉄のごとくならん鉄は能く萬の物を毀ち碎くなり 鉄の是等をことごとく打碎くがごとく其國は毀ちかつ碎くことをせん
Daniel 2:41 汝その足と足の趾を見たまひしに一分は陶人の泥土一分は鉄なりければその國は分裂たる者ならん又汝鉄と粘土との混和たるを見たまひたればその國は鉄のごとく強からん
Daniel 2:42 その足の趾の一分は鉄一分は泥土なりしごとくその國は強きところもあり脆きところも有ん
Daniel 2:43 汝が鉄と粘土との混りたるを見たまひしごとく其等は人草の種子と混らん然ど鉄と泥土との相合せざるごとく彼と此と相合すること有じ
Daniel 2:44 この王等の日に天の神一の國を建たまはん是は何時までも滅ぶること無らん此國は他の民に歸せず却てこの諸の國を打破りてこれを滅せん是は立ちて永遠にいたらん
Daniel 2:45 かの石の人手によらずして山より鑿れて出で鉄と銅と泥土と銀と金とを打碎きしを汝が見たまひしは即ちこの事なり大御神この後に起らんところの事を王にしらせたまへるなりその夢は眞にしてこの解明は確なり
Daniel 2:46 是においてネブカデネザル王は俯伏てダニエルを拝し礼物と香をこれに献ぐることを命じたり
Daniel 2:47 而して王こたへてダニエルに言けるは汝がこの秘密を明かに示すことを得たるを見れば誠に汝らの神は神等の神王等の主にして能く秘密を示す者なりと
Daniel 2:48 かくて王はダこエルに高位を授け種々の大なる賜物を與へてこれをバビロン全州の総督となしまたバビロンの智者等を統る者の首長となせり
Daniel 2:49 王またダニエルの願によりてシヤデラクとメシヤクとアベデネゴを挙てバビロン州の事務をつかさどらしめたりダニエルは王の宮にをる
Daniel 3:1 茲にネブカデネザル王 一箇の金の像を造れりその高は六十キユビトその横の廣は六キユビトなりき即ちこれをバビロン州のドラの平野に立たり
Daniel 3:2 而してネブカデネザル王は州牧将軍方伯刑官庫官法官士師および州郡の諸有司を召集めそのネブカデネザル王の立たる像の告成礼に臨ましめんとせり
Daniel 3:3 是においてその州牧将軍方伯刑官庫官法官土師および州郡の諸有司等はネブカデネザル王の立たる像の告成礼に臨みそのネブカデネザル王の立たる像の前に立り
Daniel 3:4 時に傳令者大聲に呼はりて言ふ諸民諸族諸音よ汝らは斯命ぜらる
Daniel 3:5 汝ら喇叭笙琵琶琴瑟篳篥などの諸の樂器の音を聞く時は俯伏しネブカデネザル王の立たまへる金像を拝すべし
Daniel 3:6 凡て俯伏て拝せざる者は即時に火の燃る爐の中に投こまるべしと
Daniel 3:7 是をもて諸民等喇叭笙琵琶琴瑟などの諸の樂器の音を聞くや直に諸民諸族諸音みな俯伏しネブカデネザル王の立たる金像を拝したり
Daniel 3:8 そわ寺成カ冲デヤ人等巡みきたりてユダヤ人を讒奏せり
Daniel 3:9 即ち彼らネブカデネザル王に奏聞して言ふ願くは王長壽かれ
Daniel 3:10 王よ汝は命を出して宜へり凡て喇叭笙琵琶琴瑟篳篥などの諸の樂器の音を聞く者はみな俯伏しこの像を拝すべし
Daniel 3:11 凡て俯伏し拝せざる者はみな火の燃る鍾の巾に投こまるべしと
Daniel 3:12 此に汝が立てバビロン州の事務を司どらせ給へるユダヤ人シヤデラク、メシヤクおよびアベデネゴあり王よ此人々は汝を尊ばず汝の神々にも事へず汝の立たまへる金像をも拝せざるなりと
Daniel 3:13 是においてネブカデネザル怒りかつ憤りてシヤデラク、メシヤクおよびアベデネゴを召寄よと命じければ即ちこの人々を王の前に引きたりしに
Daniel 3:14 ネブカデネザルかれらに問て言けるはジヤデラク、メシヤク、アベデネゴよ汝ら我神に事へずまた我が立たる金像を拝せざるは是故意にするなるか
Daniel 3:15 汝らもし何の時にもあれ喇叭笙琵琶琴瑟篳篥などの諸の樂器の音を聞く時に俯伏し我が造れる像を拝することを爲ば可し然ど汝らもし拝することをせずば即時に火の燃る爐の中に投こまるべし何の神か能く汝らをわが手より就ひいだすことをせん
Daniel 3:16 シヤデラク、メシヤクおよびアベデネゴ對へて王に言けるはネブカデネザルよこの事においては我ら汝に答ふるに及ばず
Daniel 3:17 もし善らんには王よ我らの事ふる我らの神我らを救ふの能あり彼その火の燃る爐の中と汝の手の中より我らを救ひいださん
Daniel 3:18 仮令しからざるも王よ知たまへ我らは汝の神々に事へずまた汝の立たる金像を拝せじ
Daniel 3:19 是に沿いてネブカデネザル怒氣を充しシヤデラク、メシヤクおよびアベデネゴにむかひてその面の容を變へ即ち爐を常に熱くするよりも七倍熱くせよと命じ
Daniel 3:20 またその軍勢の中の力強き人身を喚てシヤデラク、メシヤクおよびアベデネゴを縛りてこれを火の燃る爐の中に投こめと命じたり
Daniel 3:21 是をもて此人心はその褲子羽織外套およびその他の服装を着たるままにて縛られて大の燃る爐の中に投こまれたりしが
Daniel 3:22 王の命はなはだ急にして爐は甚だしく熱しゐたれば彼のシヤデラク、メシヤクおよびアベデネゴを引抱へゆける者等はその火焔に焼ころされたり
Daniel 3:23 また此シヤデラク、メシヤク、デベデネゴの三人は縛られたるままにて燃る爐の中に落いりぬ
Daniel 3:24 時にネブカデネザル王驚きて急忙しくたちあがり大臣等に言ふ我らは三人を縛りて火の中に役いれざりしや彼ら王にこたへて言ふ王よ然りと
Daniel 3:25 王また應へて言ふ我見るに四人の者縲絏解て火の中に歩みをり凡て何の害をも受ずまたその第四の者の容は神の子のごとしと
Daniel 3:26 ネブカデネザルすなはちその火の燃る爐の口に進みよりて呼て言ふ至高神の僕シヤデラク、メシヤク、アベデネゴよ汝ら出きたれと是においてシヤデラク、メシヤクおよびアベデネゴその火の中より出きたりしかば
Daniel 3:27 州牧将軍方伯および王の大臣等集まりて比人々を見たり此人々の身は火もこれを害する力なかりきまたその頭の髪は焼けずその衣裳は傷ねず火の臭氣もこれに付ざりき
Daniel 3:28 ネブカデネザルすなはち宣て曰くシヤデラク、メシヤク、アベデネゴの神は讃べき哉彼その使者を遣りて己を頼む僕を救へりまた彼らは自己の神の外には何の神にも事へずまた拝せざらんとて王の命をも用ひず自己の身をも捨んとせり
Daniel 3:29 然ば我今命を下す諸民諸族諸音の中凡てシヤデラク、メシヤクおよびアベダネゴの神を詈る者あらばその身は切裂れその家は厠にせられん其は是のごとくに救を施す神他にあらざればなりと
Daniel 3:30 かくて王またシヤデラク、メシヤクおよびアベデネゴの位をすすめてバビロン州にをらしむ
Daniel 4:1 ネブカデネザル王全世界に住める諸民諸族諸音に諭す願くは大なる平安汝らにあれ
Daniel 4:2 至高神我にむかひて徴證と奇蹟を行へり我これを知しむることを善と思ふ
Daniel 4:3 嗚呼大なるかなその徴證嗚呼盛なるかなその奇蹟その國は永遠の國その權は世々限なし
Daniel 4:4 我ネブカデネザルわが家に安然に居りわが宮に榮え居れり
Daniel 4:5 我一の夢を見て之がために懼れ即ち床にありてその事を想ひめぐらしその我脳中の異象のために心をなやませり
Daniel 4:6 是に於て我命を下しバビロンの智者をことごとく我前に召よせしめてその夢の解明を我にしめさせんと爲たれば
Daniel 4:7 すなはち博士法術士カルデヤ人卜筮師等きたりしに囚て我その夢を彼らに語りけるに彼らはその解明を我にしめすことを得ざりき
Daniel 4:8 かくて後ダニエルわが前に來れり彼の名は吾神の名にしたがひてベルテシヤザルと稱へられその裏には聖神の霊やどれり我その夢を彼の前に語りて曰けらく
Daniel 4:9 博士の長ベルテシヤザルよ我しる汝の裏には聖神の霊やどれば如何なる秘密も汝には難き事なし我が夢に見たるところの事等を聞きその解明を我に告げよ
Daniel 4:10 我が床にありて見たる吾脳中の異象は是のごとし我観しに地の當中に一の樹ありてその丈高かりしが
Daniel 4:11 その樹長じて強固なり天に達するほどの高となりて地の極までも見えわたり
Daniel 4:12 その葉は美しくその菓は饒にして一切の者その中より食を得また野の獣その蔭に臥し空の鳥その枝に棲み凡て血氣ある者みな是によりて身を畳ふ
Daniel 4:13 我床にありて得たる脳中の異象の中に一箇の警寤者一箇の聖者の天より下るを見たりしが
Daniel 4:14 彼聲高く呼はりて斯いへり此樹を伐たふしその枝を斫はなしその葉を揺おとしその果を打散し獣をしてその下より逃はしらせ鳥をしてその枝を飛さらしめよ
Daniel 4:15 但しその根の上の斬株を地に遺しおき鉄と銅の索をかけて之を野の草の中にあらしめよ是は天よりくだる露に濕れまた地の草の中にて獣とその分を同じうせん
Daniel 4:16 又その心は變りて人間の心のごとくならず獣の心を稟て七の時を經ん
Daniel 4:17 この事は警寤者等の命によりこの事は聖者等の言による是至高者人間の國を治めて自己の意のままにこれを人に與ヘまた人の中の最も賤き者をその上に立たまふといふ事を一切の者に知しめんがためなり
Daniel 4:18 我ネブカデネザル王この夢を見たりベルテシヤザルよ汝その解明を我に述よ我國の智者は執も皆その解明を我に示すことを得ざりしが汝は之を能せん其は汝の裏には聖神の霊やどればなりと
Daniel 4:19 その時ダニエル又の名はベルタシヤザルとい者暫時の間驚き居り心に深く懼れたれば王これに告て言りベルテシヤザルよ汝この夢とその解明のために懼るるにおよばずとベルテシヤザルすなはち答へて言けらく我主よ願くはこの夢汝を惡む者の上にかからん事を願くは此解明汝の敵にのぞまんことを
Daniel 4:20 汝が見たまひし樹すなはちその長じて強くなり天に達するほどの高となりて地の極までも見えわたり
Daniel 4:21 その葉は美しくその果は饒にして一切の者その中より食を得またその下に野の獣臥しその枝に空の鳥棲たる者
Daniel 4:22 王よ是はすなはち汝なり汝は長じて強くなり汝の勢ひは盛にして天におよび汝の權は地の極にまでおよべり
Daniel 4:23 王また一箇の警寤者一箇の聖者の天より下りて斯言ふを見たまへり云くこの樹を伐たふして之をそこなへ但し其根の上の斬株を地に遺しおき鉄と銅の索をかけて之を野の草の中にあらしめよ是は天より下る露に濡れ野の獣とその分を同じうして七の時を經ん
Daniel 4:24 王よその解明は是の如し是即ち至高者の命にして王我主に臨まんとする者なり
Daniel 4:25 即ち汝は逐れて世の人と離れ野の獣とともに居り牛のごとくに草を食ひ天よりくだる露に濡れん是の如くにして七の時を經て汝つひに知ん至高者人間の國を治めて自己の意のままに之を人に與へ給ふと
Daniel 4:26 又彼らその樹の根の上の斬株を遺しおけと言たれば汝の國は汝が天は主たりと知にいたる時まで汝を離れん
Daniel 4:27 然ば王よ吾諌を容れ義をおこなひて罪を離れ貧者を憐みて惡を離れよ然らば汝の平安あるひは長く続かんと
Daniel 4:28 この事みなネブカデネザル王に臨めり
Daniel 4:29 十二箇月を經て後王バビロンの王宮の上に歩みをり
Daniel 4:30 王すなはち語りて言ふ此大なるバビロンは我が大なる力をもて建て京城となし之をもてわが威光を耀かす者ならずや
Daniel 4:31 その言なほ王の口にある中に天より聲降りて言ふネブカデネザル王よ汝に告ぐ汝は國の位を失はん
Daniel 4:32 汝は逐れて世の人と離れ野の獣と共に居り牛のごとくに草を食はん斯の如くにして七の時を經て汝つひに知ん至高者人間の國を治めて己れの意のままにこれを人に與へたまふと
Daniel 4:33 その時直にこの事ネブカデネザルに臨み彼は逐れて世の人に離れ牛のごとくに草を食ひてその身は天よりくだる露に濡れ終にその髪毛は鷲の羽のごとくになりその爪は鳥の爪のごとくになりぬ
Daniel 4:34 斯てその日の満たる後我ネブカデネザル目をあげて天を望みしにわが分別性我に婦りたれば我至高者に感謝しその永遠に生る者を讃かつ崇めたり彼の御宇は永遠の御宇彼の國は世々かぎり無し
Daniel 4:35 地上の居民は凡て無き者のごとし天の衆群にも地の居民にも彼はその意のままに事をなしたまふ誰も彼の手をおさへて汝なんぞ然するやと言ことを程る者なし
Daniel 4:36 この時わが分別性かく我に歸りたりしがわが國の榮光につきてはまた我の尊厳と光耀我にかへれり且また大臣牧伯等我に請求めて我たたび國の祚を践み前よりも著しく威光を増たり
Daniel 4:37 是において我ネブカデネザル今は天の王を讃頌へかつ崇む彼の作爲は凡て眞実彼の道は正義自ら高ぶる者は彼能くこれを卑くしたまふ
Daniel 5:2 酒の進むにいたりてベルシヤザルはその父ネブカデネザルがヱルサレムの宮より取きたりし金銀の器を携へいたれと命ぜり是王とその大臣および王の妻妾等みな之をもて酒を飮んとてなりき
Daniel 5:3 是をもてそのヱルサレムなる神の官の内院より取たりし金の器を携へいたりければ王とその大臣および王の妻妾等これをもて飮めり
Daniel 5:4 すなはち彼らは酒をのみて金銀銅鉄木石などの神を讃たたへたりしが
Daniel 5:5 その時に人の手の指あらはれて燭台と相對する王の宮の粉壁に物書り王その物書る手の末を見たり
Daniel 5:6 是において王の愉快なる顔色は變りその心は思ひなやみて安からず腿の関節はゆるみ膝はあひ撃り
Daniel 5:7 王すなはち大聲に呼はりて法術士カルデヤ人卜筮師等を召きたらしめ而して王バビロンの智者等に告て言ふこの文字を読みその解明を我に示す者には紫の衣を衣せ頚に金の鏈をかけさせて之を國の第三の牧伯となさんと
Daniel 5:8 王の智者等は皆きたりしかどもその文字を読こと能はずまたその解明を王にしめすこと能はざりければ
Daniel 5:9 ベルシヤザル王おほいに思ひなやみてその顔色を失へりその大臣等もまた驚き懼れたり
Daniel 5:10 時に大后王と大臣等の言を聞てその酒宴の室にいりきたり大后すなはち陳て言ふ願くは王長壽かれ汝心に思ひなやむ勿れまた顔色を失ふにおよばず
Daniel 5:11 汝の國に聖神の霊のやどれる一箇の人あり汝の父の代に彼聡明了知および神の智慧のごとき智慧あることを顕せり汝の父ネブカデネザル王すなはち汝の父の王彼を立てて博士法術士カルデヤ人卜筮師等の長となせり
Daniel 5:12 彼はダニエルといへる者なるが王これにベルテシヤザルといふ名を與ヘたり彼は心の殊勝たる者にて了知あり知識ありて能く夢を解き隠語を解き難問を解くなり然ばダニエルを召されよ彼その解明をしめさんと
Daniel 5:13 是においてダニエル召れて王の前に至りければ王ダニエルに語りて言ふ汝は吾父の王がユダより曳きたりしユダの俘囚人なるそのダニエルなるか
Daniel 5:14 我聞になんぢの裏には神の霊やどりをりて汝は聡明了知および非凡の智慧ありと云ふ
Daniel 5:15 我智者法術士等を吾前に召よせてこの文字を読しめその解明を我にしめさせんと爲たれども彼らはこの事の解明を我にしめすことを得ず
Daniel 5:16 我聞に汝は能く物事の解明をなしかつ難問を解くと云ふ然ば汝もし能くこの文字を読みその解明を我に示さば汝に紫の衣を衣せ金の索を汝の頚にかけさせて汝をこの國の第三の牧伯となさんと
Daniel 5:17 ダニエルこたへて王に言けるは汝の賜物は汝みづからこれを取り汝の饒物はこれを他の人に與へたまへ然ながら我は王のためにその文字を読みその解明をこれに知せたてまつらん
Daniel 5:18 王よ至高神汝の父ネブカデネザルに國と權勢と榮光と尊貴を賜へり
Daniel 5:19 彼に權勢を賜ひしによりて諸民諸族諸音みな彼の前に慄き畏れたり彼はその欲する者を殺しその欲する者を活しその欲する者を上げその欲する者を下ししなり
Daniel 5:20 而して彼心に高ぶり氣を剛愎にして驕りしかばその國の位をすべりてその尊貴を失ひ
Daniel 5:21 逐れて世の人と離れその心は獣のごとくに成りその住所は野馬の中にあり牛のごとくに草を食ひてその身は天よりの露に濡たり是のごとくにして終に彼は至高神の人間の國を治めてその意のままに人を立たまふといふことをしるにいたれり
Daniel 5:22 ベルシヤザルよ汝は彼の子にして此事を盡く知るといへども猶その心を卑くせず
Daniel 5:23 却って天の主にむかひて自ら高ぶりその家の器皿を汝の前に持きたらしめて汝と汝の大臣と汝の妻妾等それをもて酒を飮み而して汝は見ことも聞ことも知こともあらぬ金銀銅鉄木石の神を讃頌ふることを爲し汝の生命をその手に握り汝の一切の道を主どりたまふ神を崇むることをせず
Daniel 5:24 是をもて彼の前よりこの手の末いできたりてこの文字を書るなり
Daniel 5:25 その書る文字は是のごとしメネ、メネ、テケル、ウバルシン
Daniel 5:26 その言の解明は是のごとしメネ(數へたり)は神汝の治世を數へてこれをその終に至らせしを謂なり
Daniel 5:27 テケル(秤れり)は汝が權衡にて秤られて汝の重の足らざることの顕れたるを謂なり
Daniel 5:28 ベレス(分たれたり)は汝の國の分たれてメデアとペルシヤに與ヘらるるを謂なり
Daniel 5:29 是においてベルシヤザル命を降してダニエルに紫の衣を荊せしめ金の鏈をこれが頚にかけさせて彼は國の第三の牧伯なりと布告せり
Daniel 5:30 カルデヤ人の王ベルシヤザルはその夜の中に殺され
Daniel 5:31 メデア人ダリヨスその國を得たり此時ダリヨスは六十二歳なりき
Daniel 6:1 ダリヨスはその國に百二十人の牧伯を立ることを善とし即ちこれを立て全國を治理しめ
Daniel 6:2 また彼らの上に監督三人を立たりダニエルはその一人なりき是その州牧をして此三人の前にその職を述しめて王に損失の及ぶこと無らしめんためなりき
Daniel 6:3 ダニエルは心の殊勝たる者にしてその他の監督および州牧等に勝りたれば王かれを立て全國を治めしめんとせり
Daniel 6:4 是においてその監督と州牧等國事につきてダエルを訟ふる隙を得んとしたりしが何の隙をも何の咎をも見いだすことを得ざりき其は彼は忠義なる者にてその身に何の咎もなく何の過失もなかりければなり
Daniel 6:5 是においてその人々言けるはこのダニエルはその神の例典について之が隙を獲にあらざればついにこれを訟るに由なしと
Daniel 6:6 すなはちその監督と州牧等王の許に集り來りて斯王に言りダリヨス王よ願くは長壽かれ
Daniel 6:7 國の監督将軍州牧牧伯方伯等みな相議りて王に一の律法を立て一の禁令を定めたまはんことを求めんとす王よその事は是の如し即ち今より三十日の内は唯汝にのみ願事をなさしめ若汝をおきて神または人にこれをなす者あらば凡て獅子の穴に投いれんといふ是なり
Daniel 6:8 然ば王よねがはくはその禁令を立てその詔書を認めメデアとペルシヤの廃ることなき律法のごとくに之をして變らざらしめたまへと
Daniel 6:9 王すなはち詔書をしたためてその禁令を出せり
Daniel 6:10 茲にダニエルはその詔書を認めたることを知りて家にかへりけるがその二階の窓のヱルサレムにむかひて開ける處にて一日に三度づつ膝をかがめて祷りその神に向て感謝せり是その時の前よりして斯なし居たればなり
Daniel 6:11 斯りしかばその人々馳よりてダニエルがその神にむかひて祷りかつ求めをるを見あらはせり
Daniel 6:12 而して彼ら進みきたり王の禁令の事につきて王に奏上して言けるは王よ汝は禁令をしたため出し今より三十日の内には只なんぢにのみ願事をなさしめ若し汝をおきて神または人にこれをなす者あらば凡てその者を獅子の穴に投いれんと定めたまへるならずやと王こたへて言ふ其事は眞実にしてメデアとペルシヤの作法のごとく廃べかちずる者なり
Daniel 6:13 彼らまた對へて王の前に言けるは王よユダの俘擄人なるダニエルは汝をも汝の認め出し給ひし禁令をも顧みずして一日に三度づつ祈祷をなすなりと
Daniel 6:14 王この事を聞てこれがために大に愁ひダニエルを就はんと心を用ひ即ちこれを拯けんと力をつくして日の入る頃におよびければ
Daniel 6:15 その人汝また王の許に集ひきたりて王に言けるは王よ知りたまヘメデアとペルシヤの律法によれば王の立たる禁令または法度は變べからざる者なりと
Daniel 6:16 是において王命を下しければダニエルを曳きたりて獅子の穴に投いれたり王ダニエルに語りて言ふ願くは汝が恒に事ふる神汝を救はんことをと
Daniel 6:17 時に石を持きたりてその穴の口を塞ぎければ王おのれの印と大臣等の印をもてこれに封印をなせり是ダニエルの處置をして變ることなからしめんためなりき
Daniel 6:18 斯て後王はその宮にかへりけるがその夜は食をなさずまた嬪等を召よせずして全く寝ることをせざりき
Daniel 6:19 而して王は朝まだきに起いでてその獅子の穴に急ぎいたりしが
Daniel 6:20 穴にいたりける時哀しげなる聲をあげてダニエルを呼りすなはち王ダニエルに言けるは活神の僕ダニエルよ汝が恒に事ふる神汝を救ふて獅子の害を免れしむることを得しや
Daniel 6:21 ダニエル王にいひけるは願くは王長壽かれ
Daniel 6:22 吾神その使をおくりて獅子の口を閉させたまひたれば獅子は我を害せざりき其は我の辜なき事かれの前に明かなればなり王よ我は汝にも惡しき事をなさざりしなりと
Daniel 6:23 是において王おほいに喜びダニエルを穴の中より出せと命じければダニルは穴の中より出されけるがその身に何の害をも受をらざりき是は彼おのれの神を頼みたるによりてなり
Daniel 6:24 かくて王また命を下しかのダニエルを讒奏せし者等を曳きたらせて之をその妻子とともに獅子の穴に投いれしめたるにその穴の底につかざる内に獅子はやくも彼らを攫みてその骨までもことごとく咬碎けり
Daniel 6:25 是においてダリヨス王全世界に住る諸民諸族諸音に詔書を頒てり云く願くは大なる平安なんぢらにあれ
Daniel 6:26 今我詔命を出す我國の各州の人みなダニエルの神を畏れ敬ふべし是は活神にして永遠に立つ者またその國は亡びずその權は終極まで続くなり
Daniel 6:27 是は救を施し拯をなし天においても地においても休徴をほどこし奇蹟をおこなふ者にてすなはちダニエルを救ひて獅子の力を免れしめたりと
Daniel 6:28 このダニエルはダリヨスの世とペルシヤ人クロスの世においてその身榮えたり
Daniel 7:1 バビロンの王ベルシヤザルの元年にダニエルその牀にありて夢を見 腦中に異象を得たりしが即ちその夢を記してその事の大意を述ぶ
Daniel 7:2 ダニエル述て曰く我夜の異象の中に見てありしに四方の天風大海にむかひて烈しく吹きたり
Daniel 7:3 四箇の大なる獣海より上りきたれりその形はおのおの異なり
Daniel 7:4 第一のは獅子の如くにして鷲の翼ありけるが我見てをりしに是はその翼を抜とられまた地より起され人のごとく足にて立せられ且人の心を賜はれり
Daniel 7:5 第二の獣は熊のごとくなりき是はその體の一方を挙げその口の歯の間に三の脇骨を啣へ居けるが之にむかひて言る者あり曰く起あがりて許多の肉を食へと
Daniel 7:6 その後に我見しに豹のごとき獣いでたりしがその背には鳥の翼四ありこの獣はまた四の頭ありて統轄權をたまはれり
Daniel 7:7 我夜の異象の中に見しにその後第四の獣いでたりしが是は畏しく猛く大に強くして大なる鉄の歯あり食ひかつ咬碎きてその残餘をば足にて踏つけたり是はその前に出たる諸の獣とは異なりてまた十の角ありき
Daniel 7:8 我その角を考へ観つつありけるにその中にまた一箇の小き角出きたりしがこの小き角のために先の角三箇その根より抜おちたりこの小き角には人の目のごとき目ありまた大なる事を言口あり
Daniel 7:9 我観つつありしに遂に賓座を置列ぶるありて日の老たる者座を占めたりしがその衣は雪のごとくに白くその髪毛は漂潔めたる羊の毛のごとし又その賓座は火の熖にしてその車輪は燃る火なり
Daniel 7:10 而して彼の前より一道の火の流わきいづ彼に仕ふる者は千々彼の前に侍る者は萬々審判すなはち始りて書を開けり
Daniel 7:11 その角の大なる事を言ふ聲によりて我観つつありけるが我が見る間にその獣は終に殺され體を壊はれて燃る火に投いれられたり
Daniel 7:12 またその餘の獣はその權威を奪はれたりしがその生命は時と期の至るまで延されたり
Daniel 7:13 我また夜の異象の中に観てありけるに人の子のごとき者雲に乗て來り日の老たる者の許に到りたればすなはちその前に導きけるに
Daniel 7:14 之に權と榮と國とを賜ひて諸民諸族諸音をしてこれに事へしむその權は永遠の權にして移りさらず又その國は亡ぶることなし
Daniel 7:15 是において我ダニエルその體の内の魂を憂へしめわが脳中の異象のために思ひなやみたれば
Daniel 7:16 すなはち其處にたてる者の一箇に就てこの一切の事の眞意を問けるに其者われにこの事の解明を告しらせて云く
Daniel 7:17 この四の大なる獣は地に興らんとする四人の王なり
Daniel 7:18 然ど終には至高者の聖徒國を受け長久にその國を保ちて世々限りなからんと
Daniel 7:19 是において我またその第四の獣の眞意を知んと欲せり此獣は他の獣と異なりて至畏ろしくその歯は鉄その爪は銅にして食ひかつ咬碎きてその残餘を足にて踏つけたり
Daniel 7:20 此獣の頭には十の角ありしが其他にまた一の角いできたりしかば之がために三の角抜おちたり此角には目ありまた大なる事を言ふ口ありてその状はその同類よりも強く見えたり我またこの事を知んと欲せり
Daniel 7:21 我観つつありけるに此角聖徒と戦ひてこれに勝たりしが
Daniel 7:22 終に日の老たる者來りて至高者の聖徒のために公義をおこなへり而してその時いたりて聖徒國を捉たり
Daniel 7:23 彼かく言り第四の獣は地上の第四の國なり是は一切の國と異なり全世界を并呑しこれを踏つけかつ打破らん
Daniel 7:24 その十の角はこの國に興らんところの十人の王なり之が後にまた一人興るべし是は先の者と異なり且その王三人を倒すべし
Daniel 7:25 かれ至高者に敵して言を出しかつ至高者の聖徒を惱まさん彼また時と法とを變んことを望まん聖徒は一時と二時と半時を經るまで彼の手に付されてあらん
Daniel 7:26 斯て後審判はじまり彼はその權を奪はれて終極まで滅び亡ん
Daniel 7:27 而して國と權と天下の國々の勢力とはみな至高者の聖徒たる民に歸せん至高者の國は永遠の國なり諸國の者みな彼に事へかつ順はんと
Daniel 7:28 その事此にて終れり我ダニエルこれを思ひまはして大に憂へ顔色も變りぬ我この事を心に蔵む
Daniel 8:1 我ダニエル前に異象を得たりしが後またベルシヤザルの第三年にいたりて異象を得たり
Daniel 8:2 我異象を見たり我これを見たる時に吾身はエラム州なるシユシヤンの城にあり我が異象を見たるはウライ河の邊においてなりき
Daniel 8:3 我目を挙て観しに何の上に一匹の牡羊立をり之に二の角ありてその角共に長かりしが一の角はその他の角よりも長かりきその長き者は後に長たるなり
Daniel 8:4 我観しにその牡羊西北南にむかひて牴觸りけるが之に敵ることを得る獣一匹も無くまたその手より救ひいだすことを得る者絶てあらざりき是はその意にまかせて事をなしその勢威はなはだ盛なりき
Daniel 8:5 我これを考へ見つつありけるにて一匹の牡山羊全地の上を飛わたりて西より來りしがその足は土を履ざりきこの牡山羊は目の間に著明しき一の角ありき
Daniel 8:6 此者さきに我が何の上に立るを見たる彼の二の角ある牡羊に向ひ來り熾盛なる力をもて之の所に跑いたりけるが
Daniel 8:7 我観てあるに牡羊に近づくに至りて之にむかひて怒を發し牡羊を撃てその二の角を碎きたるに牡羊には之に敵る力なかりければこれを地に打倒して蹈つけたり然るにその牡羊をこれが手より救ひ得る者あらざりき
Daniel 8:8 而してその牡山羊甚だ大きくなりけるがその盛なる時にあたりてかの大なる角折れその代に四の著明しき角生じて天の四方に對へり
Daniel 8:9 またその角の一よりして一の小き角いできたり南にむかひ東にむかひ美地にむかひて甚だ大きくなり
Daniel 8:10 天軍におよぶまでに高くなりその軍と星數箇を地に投くだしてこれを蹈つけ
Daniel 8:11 また自ら高ぶりてその軍の主に敵しその常供の物を取のぞきかつその聖所を毀てり
Daniel 8:12 一軍罪の故によりて常供の物とともに棄られたり彼者はまた眞理を地に擲ち事をなしてその意志を得たり
Daniel 8:13 かくて我聞に一箇の聖者語ひをりしが又一箇の聖者ありてその語ひをる聖者にむかひて言ふ常供の物と荒廃を來らする罪とにつきて異象にあらはれたるところの事聖所とその軍との棄られて蹈つけらるる事は何時まで斯てあるべきかと
Daniel 8:14 彼すなはち我に言けるは二千三百の朝夕をかさぬるまで斯てあらん而して聖所は潔めらるべし
Daniel 8:15 我ダニエルこの異象を見てその意義を知んと求めをりける時人のごとく見ゆる者わが前に立り
Daniel 8:16 時に我聞にウライ河の兩岸の間より人の聲出て呼はりて言ふガブリエルよこの異象をその人に暁らしめよと
Daniel 8:17 彼すなはち我の立る所にきたりしがその到れる時に我おそれて仆れ伏たるに彼われに言けるは人の子よ暁れ此異象は終の時にかかはる者なりと
Daniel 8:18 彼の我に語ひける時我は氣を喪へる状にて地に俯伏をりしが彼我に手をつけて我を立せ言けるは
Daniel 8:19 視よ我忿怒の終に起らんところの事を汝に知せん此事は終末の期におよびてあらん
Daniel 8:20 汝が見たるかの二の角ある牡羊はメデアとペルシャの王なり
Daniel 8:21 またかの牡山羊はギリシヤの王その目の間の大なる角はその第一の王なり
Daniel 8:22 またその角をれてその代に四の角生じたればその民よりして四の國おこらん然ど第一の者の權勢には及ばざるなり
Daniel 8:23 彼らの國の末にいたり罪人の罪貫盈におよびて一人の王おこらんその顔は猛惡にして巧に詭譎を言ひ
Daniel 8:24 その權勢は熾盛ならん但し自己の能力をもて之を致すに非ずその毀滅ことを爲は常ならず意志を得て事を爲し權能ある者等と聖民とを滅さん
Daniel 8:25 彼は機巧をもて詭譎をその手に行ひ遂げ心にみづから高ぶり平和の時に衆多の人を打滅しまた君の君たる者に敵せん然ど終には人手によらずして滅されん
Daniel 8:26 前に告たる朝夕の異象は眞実なり汝その異象の事を秘しおけ是は衆多の日の後に有べき事なり
Daniel 8:27 是において我ダニエル疲れはてて數日の間病わづらひて後興いでて王の事務をおこなへり我はこの異象の事を案ひて駭けり人もまたこれを暁ることを得ざりき
Daniel 9:1 メデア人アハシユエロスの子ダリヨスがカルデヤ人の王とせられしその元年
Daniel 9:2 すなはちその世の元年に我ダニエル、ヱホバの言の預言者ヱレミヤにのぞみて告たるその年の數を書によりて暁れり即ちその言にヱルサレムは荒て七十年を經んとあり
Daniel 9:3 是にかいて我面を主ヱホバに向け断食をなし麻の衣を着灰を蒙り祈りかつ願ひて求むることをせり
Daniel 9:4 即ち我わが神ヱホバに祷り懺悔して言り嗚呼大にして畏るべき神なる主自己を愛し自己の誠命を守る者のために契約を保ち之に恩恵を施したまふ者よ
Daniel 9:5 我等は罪を犯し悖れる事を爲し惡を行ひ叛逆を爲して汝の誠命と律法を離れたり
Daniel 9:6 我等はまた汝の僕なる預言者等が汝の名をもて我らの王等君等先祖等および全國の民に告たる所に聴したがはざりしなり
Daniel 9:7 主よ公義は汝に歸し羞辱は我らに歸せりその状今日のごとし即ちユダの人々ヱルサレムの居民およびイスラエルの全家の者は近き者も遠き者も皆汝の逐やりたまひし諸の國々にて羞辱を蒙れり是は彼らが汝に背きて獲たる罪によりて然るなり
Daniel 9:8 主よ羞辱は我儕に歸し我らの王等君等および先祖等に歸す是は我儕なんぢに向ひて罪を犯したればなり
Daniel 9:9 憐憫と赦宥は主たる我らの神の裏にあり其は我らこれに叛きたればなり
Daniel 9:10 我らはまた我らの神ヱホバの言に遵はずヱホバがその僕なる預言者等によりて我らの前に設けたまひし律法を行はざりしなり
Daniel 9:11 抑イスラエルの人は皆汝の律法を犯し離れさりて汝の言に遵はざりき是をもて神の僕モーセの律法に記したる呪詛と誓詞我らの上に斟ぎかかれり是は我らこれに罪を獲たればなり
Daniel 9:12 即ち神は大なる災害を我らに蒙らせたまひてその前に我らと我らを鞫ける士師とにむかひて宣ひし言を行ひとげたまへりかのエルサレムに臨みたる事の如きは普天の下に未だ曾て有ざりしなり
Daniel 9:13 モーセの律法に記したる如くにこの災害すべて我らに臨みしかども我らはその神ヱホバの面を和めんとも爲ずその惡を離れて汝の眞理を暁らんとも爲ざりき
Daniel 9:14 是をもてヱホバ心にかけて災害を我らに降したまへり我らの神ヱホバは何事をなしたまふも凡て公義いますなり然るに我らはその言に遵はざりき
Daniel 9:15 主たる我らの神よ汝は強き手をもて汝の民をエジプトの地より導き出して今日のごとく汝の名を揚たまふ我らは罪を犯し惡き事を行へり
Daniel 9:16 主よ順くは汝が是まで公義き御行爲を爲たまひし如く汝の邑ヱルサレム汝の聖山より汝の忿怒と憤恨を取離し給へ其は我らの罪と我らの先祖の惡のためにヱルサレムと汝の民は我らの周圍の者の笑柄となりたればなり
Daniel 9:17 然ば我らの神よ僕の祷と願を聴たまへ汝は主にいませばかの荒をる汝の聖所に汝の面を耀かせたまへ
Daniel 9:18 我神よ耳を傾けて聴たまへ目を啓きて我らの荒蕪たる状を観汝の名をもて稱へらるる邑を観たまへ我らが汝の前に祈祷をたてまつるは自己の公義によるに非ず唯なんぢの大なる憐憫によるなり
Daniel 9:19 主よ聴いれたまへ主よ赦したまへ主よ聴いれて行ひたまへこの事を遅くしたまふなかれわが神よ汝みづからのために之をなしたまへ其は汝の邑と汝の民は汝の名をもて稱へらるればなり
Daniel 9:20 我かく言て祈りかつわが罪とわが民イスラエルの罪を懺悔し我神の聖山の事につきてわが神ヱホバのまへに願をたてまつりをる時
Daniel 9:21 即ち我祈祷の言をのべをる時我が初に異象の中に見たるかの人ガブリエル迅速に飛て晩の祭物を献ぐる頃我許に達し
Daniel 9:22 我に告げ我に語りて言けるはダニエルよ今我なんぢを教へて了解を得せしめんとて出きたれり
Daniel 9:23 汝が祈祷を始むるに方りて我言を受たれば之を汝に示さんとて來れり汝は大に愛せらるる者なり此言を了りその現れたる事の義を暁れ
Daniel 9:24 汝の民と汝の聖邑のために七十週を定めおかる而して惡を抑へ罪を封じ愆を贖ひ永遠の義を携へ入り異象と預言を封じ至る聖者に膏を潅がん
Daniel 9:25 汝暁り知べしヱルサレムを建なほせといふ命令の出づるよりメッシヤたる君の起るまでに七週と六十二週ありその街と石垣とは擾乱の間に建なほされん
Daniel 9:26 その六十二週の後にメッシャ絶れん但し是は自己のために非ざるなりまた一人の君の民きたりて邑と聖所とを毀たんその終は洪水に由れる如くなるべし戦争の終るまでに荒蕪すでに極る
Daniel 9:27 彼一週の間衆多の者と固く契約を結ばん而して彼その週の半に犠牲と供物を廃せんまた残暴可惡者羽翼の上に立たん斯てつひにその定まれる災害残暴るる者の上に斟ぎくだらん
Daniel 10:1 ペルシャの王クロスの三年にベルテシヤザルといふダニエル一の事の黙旨を得たるがその事は眞實にしてその戦争は大なり彼その事を暁りその示現の義を暁れり
Daniel 10:2 常時我ダニエル三七日の間哀めり 即ち三七日の全く満るまでは旨き物を食ず肉と酒とを口にいれずまた身に膏油を抹ざりき
Daniel 10:4 正月の二十四日に我ヒデケルといふ大河の邊に在り
Daniel 10:5 目を挙て望観しに一箇の人ありて布の衣を衣ウバズの金の帯を腰にしめをり
Daniel 10:6 その體は黄金色の玉のごとくその面は電光の如くその目は火の熖のごとくその手とその足の色は磨ける銅のごとくその言ふ聲は群衆の聲の如し
Daniel 10:7 この示現は唯我ダニエル一人これを観たり我と偕なる人々はこの示現を見ざりしが何となくその身大に慄きて逃かくれたり
Daniel 10:8 故に我ひとり遺りたるがこの大なる示現を観るにおよびて力ぬけさり顔色まつたく變りて毫も力なかりき
Daniel 10:9 我その語ふ聲を聞けるがその語ふ聲を聞る時我は氣を喪へる状にて俯伏し面を土につけゐたりしに
Daniel 10:10 一の手ありて我に捫りければ我戦ひながら跪づきて手をつきたるに
Daniel 10:11 彼われに言けるは愛せらるる人ダニエルよ我が汝に告る言を暁れよ汝まづ起あがれ我は今汝の許に遣されたるなりと彼がこの言を我に告る時に我は戦ひて立り
Daniel 10:12 彼すなはち我に言けるはダニエルよ懼るる勿れ汝が心をこめて悟らんとし汝の神の前に身をなやませるその初の日よりして汝の言はすでに聴れたれば我汝の言によりて來れり
Daniel 10:13 然るにペルシャの國の君二十一日の間わが前に立塞がりけるが長たる君の一なるミカエル來りて我を肋けたれば我勝留りてペルシャの王等の傍にをる
Daniel 10:14 我は末の日に汝の民に臨まんとするところの事を汝に暁らせんとて米れりまた後の日に関はる所の異象ありと
Daniel 10:15 かれ是等の言を我に宣たる時に我は面を土につけて居り辭を措ところ無りしが
Daniel 10:16 人の子のごとき者わが唇に捫りければ我すなはち口を開きわが前に立る者に陳て言り我主よこの示現によりて我は畏怖にたへず全く力を失へり
Daniel 10:17 此わが主の僕いかでか此わが主と語ふことを得んとその時は我まつたく力を失ひて氣息も止らんばかりなりしが
Daniel 10:18 人の形のごとき者ふたたび我に捫り我に力をつけて
Daniel 10:19 言けるは愛せらるる人よ懼るる勿れ安んぜよ心強かれ心強かれと斯われに言ければ我力づきて曰り我主よ語りたまへ汝われに力をつけたまへりと
Daniel 10:20 彼われに言けるは汝は我が何のために汝に臨めるかを知るや我今また歸りゆきてペルシャの君と戦はんとす我が出行ん後にギリシャの君きたらん
Daniel 10:21 但し我まづ眞実の書に記されたる所を汝に示すべし我を助けて彼らに敵る者は汝らの君ミカエルのみ
Daniel 11:1 我はまたメデア人ダリヨスの元年にかれを助け彼に力をそへたる事ありしなり
Daniel 11:2 我いま眞実を汝に示さん視よ此後ペルシャに三人の王興らんその第四の者は富ること一切の者に勝りその富強の大なるを恃みて一切を激發してギリシヤの國を攻ん
Daniel 11:3 また一箇の強き王おこり大なる威權を振ふて世を治めその意のままに事を爲ん
Daniel 11:4 但し彼の正に旺盛なる時にその國は破裂して天の四方に分れん其は彼の兒孫に歸せず又かれの振ひしほどの威權あらず即ち彼の國は抜とられて是等の外なる者等に歸せん
Daniel 11:5 南の王は強からん然どその大臣の一人これに逾て強くなり威權を振はんその威權は大だる威朧なるべし
Daniel 11:6 年を經て後彼等相結ばん即ち南の王の女子北の王に適て和好を圖らん然どその腕には力なしまたその王およびその腕は立ことを得じこの女とこれを導ける者とこれを生せたる者とこれに力をつけたる者はみな時におよびて付されん
Daniel 11:7 期て後この女の根より出たる芽興りて之に代り北の王の軍勢にむかひて來りこれが城に打いりて之を攻て勝を得
Daniel 11:8 之が神々鑄像および金銀の貴き器具をエジプトに携へさらん彼は北の王の上に立て年を重ねん
Daniel 11:9 彼南の王の國に打入ことあらん然ど自己の國に退くべし
Daniel 11:10 その子等また憤激して許多の大軍を聚め進みきたり溢れて往來しその城まで攻寄せん
Daniel 11:11 是において南の王大に怒り出きたりて北の王と戦ふべし彼大軍を興してこれに當らん然れどもその軍兵はこれが手に付されん
Daniel 11:12 大軍すなはち興りて彼心に高ぶり數萬人を仆さん然れどもその勢力はこれがために増さじ
Daniel 11:13 また北の王は退きて初よりも大なる軍兵を興し或時すなはち或年數を經て後かならず大兵を率ゐ莫大の輜重を備へて攻來らん
Daniel 11:14 是時にあたりて衆多の者興りて南の王に敵せん又なんぢの民の中の奸惡人等みづから高ぶりて事を爲しつひに預言をして應ぜしめん即ち彼らは自ら仆るべし
Daniel 11:15 茲に北の王襲ひきたり塁を築きて堅城を攻おとさん南の王の腕はこれに當ることを得じ又その撰抜の民もこれに當る力なかるべし
Daniel 11:16 之に攻きたる者はその意に任せて事をなさんその前に立ことを得る者なかるべし彼は美しき地に到らんその地はこれがために荒さるべし
Daniel 11:17 彼その全國の力を盡して打入んとその面をこれに向べけれどまたこれと和好をなして婦人の女子を之に與へん然るにその婦人の女子は之がために身を滅すに至り何事をも成あたはす毫も彼のために益する所なかるべし
Daniel 11:18 彼またその面を島々にむけて之を多く取らん茲に一人の大将ありて彼が與へたる恥辱を雪ぎその恥辱をかれの身に與へかへさん
Daniel 11:19 かくて彼その面を自己の國の城々に向ん而して終に躓き仆れて亡ん
Daniel 11:20 彼に代りて興る者は榮光の國に人を出して租税を征斂しめん但し彼は忿怒にも戦門にもよらずして數日の内に滅亡せん
Daniel 11:21 また之にかはりて起る者は賤まるる者にして國の尊榮これに歸せざらん然れども彼不意に來り巧言をもて國を獲ん
Daniel 11:22 洪水のごとき軍勢かれのために押流されて敗れん契約の君たる者も然らん
Daniel 11:23 彼は之に契約をむすびて後詭詐を行ひ上りきたりて僅少の民をもて勢を得ん
Daniel 11:24 彼すなはち不意にきたりてその國の膏腴なる處に攻いりその父もその父の父も爲ざりしところの事を行はん彼はその奪ひたる物掠めたる物および財寳を衆人の中に散すべし彼は謀略をめぐらして堅固なる城々を攻取べし時の至るまで斯のごとくならん
Daniel 11:25 彼はその勢力を奮ひ心を勵まし大軍を率ゐて南の王に攻よせん南の王もまた自ら奮ひ甚だ大なる強き軍勢をもて迎へ戦はん然ど謀略をめぐらして攻るが故にこれに當ることを得ざるべし
Daniel 11:26 すなはち彼の珍膳に與り食ふ者彼を倒さんその軍兵溢れん打死する者衆かるべし
Daniel 11:27 此二人の王は害をなさんと心にはかり同席に共に食して詭詐を言ん然どもその志ならざるべし定まれる時のいたる迄は其事終らじ
Daniel 11:28 彼は莫大の財寳をもちて自己の國に歸らん彼は聖約に敵する心を懐きて事をなし而してその國にかへらん
Daniel 11:29 定まれる時にいたりて彼また進みて南に到らん然ど後の模様は先の模様のごとくならざらん
Daniel 11:30 即ちキツテムの船かれに到るべければ彼力をおとして還り聖約にむかひて忿怒をもらして事をなさん而して彼歸りゆき聖約を棄る者と相謀らん
Daniel 11:31 彼より腕おこりて聖所すなはち堅城を汚し常供の物を撤除かせかつ残暴可惡者を立ん
Daniel 11:32 彼はまた契約に関て罪を獲る者等を巧言をもて引誘して背かせん然どその神を知る人々は力ありて事をなさん
Daniel 11:33 民の中の頴悟者ども衆多の人を教ふるあらん然ながら彼らは暫時の間刃にかかり火にやかれ擄はれ掠められ等して仆れん
Daniel 11:34 その仆るる時にあたりて彼らは少しく扶助を獲ん又衆多の人詐りて彼らに合せん
Daniel 11:35 また穎悟者等の中にも仆るる者あらん斯のごとく彼らの中に試むる事浄むる事潔よくする事おこなはれて終の時にいたらん即ち定まれる時まで然るべし
Daniel 11:36 此王その意のままに事をおこなひ萬の神に逾て自己を高くし自己を大にし神々の神たる者にむかひて大言を吐き等して忿怒の息む時までその志を得ん其はその定まれるところの事成ざるべからざればなり
Daniel 11:37 彼はその先祖の神々を顧みず婦女の愉快を思はずまた何の神をも顧みざらん其は彼一切に逾て自己を大にすればなり
Daniel 11:38 彼は之の代に軍神を崇め金銀珠玉および寳物をもてその先祖等の識ざりし神を崇めん
Daniel 11:39 彼はこの異邦の神に由り要害の城々にむかひて事を爲ん凡て彼を尊ぶ者には彼加ふるに榮を以てし之をして衆多の人を治めしめ土地をこれに分ち與へて賞賜とせん
Daniel 11:40 終の時にいたりて南の王彼と戦はん北の王は車と馬と衆多の船をもて大風のごとく之に攻寄せ國に打いりて潮のごとく溢れ渉らん
Daniel 11:42 彼はまた美しき國に進み入ん彼のために亡ぶる者多かるべし然どエドム、モアブ、
Daniel 11:43 アンモン人の中の第一なる者などは彼の手を免かれん
Daniel 11:44 彼國々にその手を伸さんエジプトの地も免かれがたし
Daniel 11:45 彼は遂にエジプトの金銀財寳を手に入れんリブア人とエテオピア人は彼の後に從はん 彼東と北より報知を得て周章ふためき許多の人を滅し絶んと大に忿りて出ゆかん 彼は海の間において美しき聖山に天幕の宮殿をしつらはん然ど彼つひにその終にいたらん之を助くる者なかるべし
Daniel 12:1 その時汝の民の人々のために立ところの大なる君ミカエル起あがらん是艱難の時なり國ありてより以來その時にいたるまで期る艱難ありし事なかるべしその時汝の民は救はれん即ち書にしるされたる者はみな救はれん
Daniel 12:2 また地の下に睡りをる者の中衆多の者目を醒さんその中永生を得る者ありまた恥辱を蒙りて限なく羞る者あるべし
Daniel 12:3 穎悟者は空の光輝のごとくに耀かんまた衆多の人を義に導ける者は星のごとくなりて永遠にいたらん
Daniel 12:4 ダニエルよ終末の時まで此言を秘し此書を封じおけ衆多の者跋渉らん而して知識増べしと
Daniel 12:5 茲に我ダニエル観に別にまた二箇の者ありて一箇は河の此旁の岸にあり一箇は河の彼旁の岸にありけるが
Daniel 12:6 その一箇の者かの布の衣を衣て河の水の上に立る人にむかひて言り此奇跡は何の時にいたりて終るべきやと
Daniel 12:7 我聞にかの布の衣を衣て河の水の上に立る人天にむかひてその右の手と左の手を挙げ永久に生る者を指て誓ひて言りその間は一時と二時と半時なり聖民の手の碎くること終らん時に是等の事みな終るべしと
Daniel 12:8 我聞たれども暁ることを得ざりき我また言りわが主よ是等の事の終は何ぞやと
Daniel 12:9 彼いひけるはダニエルよ往け此言は終極の時まで秘しかつ封じ置るべし
Daniel 12:10 衆多の者浄められ潔よくせられ試みられん然ど惡き者は惡き事を行はん惡き者は人も暁ること無るべし然ど頴悟者は暁るべし
Daniel 12:11 常供の者を除き残暴可惡者を立ん時よりして一千二百九十日あらん
Daniel 12:12 待をりて一千三百三十五日に至る者は幸福なり
Daniel 12:13 汝終りに進み行け汝は安息に入り日の終りに至り起て汝の分を享ん
Hosea 0:0 ホセア書
Hosea 1:1 これユダの王ウジヤ、ヨタム、アハズ、ヒゼキヤの世イスラエルの王ヨアシの子ヤラベアムの世にベエリの子ホセアに臨めるヱホバの言なり
Hosea 1:2 ヱホバはじめホセアによりて語りたまへる時ヱホバ、ホセアに宣はく汝ゆきて淫行の婦人を娶り淫行の子等を取れ この國ヱホバに遠ざかりてはなはだしき淫行をなせばなり
Hosea 1:3 是において彼ゆきてデブライムの女子ゴメルを妻に娶りけるがその婦はらみて男子を産り
Hosea 1:4 ヱホバまた彼にいひ給ひけるは汝その名をヱズレルと名くべし 暫時ありて我ヱズレルの血をヱヒウの家に報いイスラエルの家の國をほろぼすべければなり
Hosea 1:5 その目われヱズレルの谷にてイスラエルの弓を折べしと
Hosea 1:6 ゴメルまた孕みて女子を産ければヱホバ、ホセアに言たまひけるは汝その名をロルマハ(憐まれぬ者)と名くべしそは我もはやイスラエルの家をあはれみて赦すが如きことを爲ざるべければなり
Hosea 1:7 然どわれユダの家をあはれまん その神ヱホバによりて之をすくはん 我は弓劍戦争馬騎兵などによりてすくふことをせじ
Hosea 1:8 ロルハマ乳をやめゴメルまた孕みて男子を産けるに
Hosea 1:9 ヱホバ言たまひけるはその子の名をロアンミ(吾民に非ざる者)と名くべし 其は汝らは吾民にあらず我は汝らの神に非ざればなり
Hosea 1:10 然どイスラエルの子孫の數は濱の沙石のごとくに成ゆきて量ることも數ふる事も爲しがたく前になんぢらわが民にあらずと言れしその處にて汝らは活神の子なりと言れんとす
Hosea 1:11 斯てユダの子孫とイスラエルの子孫は共に集り一人の首をたててその地より上り來らん ヱズレルの日は大なるべし
Hosea 2:1 汝らの兄弟に向ひてはアンミ(わが民)と言ひ汝らの姉財にむかひてはルハマ(憐まるる者)と言へ
Hosea 2:2 なんぢらの母とあげつらへ論辨ふことをせよ彼はわが妻にあらず我はかれの夫にあらざるなりなんぢら斯してかれにその面より淫行を除かせその乳房の間より姦淫をのぞかしめよ
Hosea 2:3 然らざれば我かれを剥て赤體にしその生れいでたる日のごとくにしまた荒野のごとくならしめ潤ひなき地のごとくならしめ渇によりて死しめん
Hosea 2:4 我その子等を憐まじ淫行の子等なればなり
Hosea 2:5 かれらの母は淫行をなせりかれらを生る者は恥べき事をおこなへり蓋かれいへる言あり我はわが戀人等につきしたがはん彼らはわがパンわが水わが羊毛わが麻わが油わが飮物などを我に與ふるなりと
Hosea 2:6 この故にわれ荊棘をもてなんぢの路をふさぎ垣をたてて彼にその徑をえざらしむべし
Hosea 2:7 彼はその戀人たちの後をしたひゆけども追及ことなく之をたづぬれども遇ことなし是において彼いはん我ゆきてわが前の夫にかへるべしかのときのわが状態は今にまさりて善りきと
Hosea 2:8 彼が得る穀物と酒と油はわが與ふるところ彼がバアルのために用ゐたる金銀はわが彼に増あたへたるところなるを彼はしらざるなり
Hosea 2:9 これによりて我わが穀物をその時におよびて奪ひわが酒をその季にいたりてうばひ又かれの裸體をおほふに用ゆべきわが羊毛およびわが麻をとらん
Hosea 2:10 今われかれの恥るところをその戀人等の目のまへに露すべし彼をわが手より救ふものあらじ
Hosea 2:11 我かれがすべての喜樂すなはち祝筵新月のいはひ安息日およびこの節會をして息しめん
Hosea 2:12 また彼の葡萄の樹と無花果樹をそこなはん彼さきに此等をさしてわが戀人の我にあたへし賞賜なりと言しがわれこれを林となし野の厭をしてくらはしめん
Hosea 2:13 われかれが耳環頚玉などを掛てその戀人らをしたひゆき我をわすれ香をたきて事へしもろもろのバアルの日のゆゑをもてその罪を罰せんヱホバかく言たまふ
Hosea 2:14 斯るがゆゑに我かれを誘ひて荒野にみちびきいり終にかれの心をなぐさめ
Hosea 2:15 かしこを出るや直ちにわれかれにその葡萄園を與へアコル(艱難)の谷を望の門となしてあたへん彼はわかかりし時のごとくエジプトの國より上りきたりし時のごとくかしこにて歌うたはん
Hosea 2:16 ヱホバ言たまふその日にはなんぢ我をふたたびバアリとよばずしてイシ(吾夫)とよばん
Hosea 2:17 我もろもろのバアルの名をかれが口よりとりのぞき重ねてその名を世に記憶せらるること無らしめん
Hosea 2:18 その日には我かれら(我民)のために野の獣そらの鳥および地の昆蟲と誓約をむすびまた弓箭ををり戦争を全世界よりのぞき彼らをして安らかに居しむべし
Hosea 2:19 われ汝をめとりて永遠にいたらん公義と公平と寵愛と憐憫とをもてなんぢを娶り
Hosea 2:20 かはることなき眞実をもて汝をめとるべし汝ヱホバをしらん
Hosea 2:21 ヱホバいひ給ふその日われ應へん我は天にこたへ天は地にこたへ
Hosea 2:22 地は穀物と洒と油とに應へまた是等のものはヱズレルに應へん
Hosea 2:23 我わがためにかれを地にまき憐まれざりし者をあはれみわが民ならざりし者にむかて汝はわが民なりといはんかれらは我にむかひて汝はわが神なりといはん
Hosea 3:1 ヱホバわれに言給ひけるは汝ふたたび往てヱホバに愛せらるれども轉りてほかのもろもろの神にむかひ葡萄の菓子を愛するイスラエルの子孫のごとく そのつれそふものに愛せらるれども姦淫をおこなふ婦人をあいせよ
Hosea 3:2 われ銀十五枚おほむぎ一ホメル半をもてわが爲にその婦人をえたり
Hosea 3:3 我これにいひけるは汝おほくの日わがためにとどまりて淫行をなすことなく他の人にゆくことなかれ 我もまた汝にむかひて然せん
Hosea 3:4 イスラエルの子輩は多くの日王なく君なく犠牲なく表柱なくエボデなくテラビムなくして居らん
Hosea 3:5 その後イスラエルの子輩はかへりてその神ヱホバとその王ダビデをたづねもとめ末日にをののきてヱホバとその恩恵とにむかひてゆかん
Hosea 4:1 イスラエルの子輩よヱホバの言を聴けヱホバこの地に住る者と争辨たまふ其は此地には誠實なく愛情なく神を知る事なければなり
Hosea 4:2 ただ詛偽凶殺盗姦淫のみにして互に相襲ひ血血につづき流る
Hosea 4:3 このゆゑにその地うれひにしづみ之にすむものはみな野のけもの空のとりとともにおとろへ海の魚もまた絶はてん
Hosea 4:4 されど何人もあらそふべからずいましむ可らず汝の民は祭司と争ふ者の如くなれり
Hosea 4:5 汝は昼つまづき汝と偕なる預言者は夜つまづかん我なんぢの母を亡すべし
Hosea 4:6 わが民は知識なきによりて亡さるなんぢ知識を棄つるによりて我もまた汝を棄ててわが祭司たらしめじ汝おのが神の作法を忘るるによりて我もなんぢの子等を忘れん
Hosea 4:7 彼らは大なるにしたがひてますます我に罪を犯せば我かれらの榮を辱に変ん
Hosea 4:8 彼らはわが民の罪をくらひ心をかたむけてその罪ををかすを願へり
Hosea 4:9 このゆゑに民の遇ところは祭司もまた同じわれその途をかれらにきたらせその行爲をもて之にむくゆべし
Hosea 4:10 かれらは食へども飽ず淫行をなせどもその數まさずその心をヱホバにとむることを止ればなり
Hosea 4:11 淫行と酒と新しき洒はその人の心をうばふ
Hosea 4:12 わが民木にむかひて事をとふその杖かれらに事をしめす是かれら淫行の霊にまよはされその神の下を離れて淫行を爲すなり
Hosea 4:13 彼らは山々の巓にて犠牲を献げ岡の上にて香を焚き橡樹 楊樹 栗樹の下にてこの事をおこなふ此はその樹蔭の美しきによりてなりここをもてなんぢらの女子は淫行をなしなんぢらの兒婦は姦淫をおこなふ
Hosea 4:14 我なんぢらのむすめ淫行をなせども罰せずなんぢらの兒婦かんいんをおこなへども刑せじ其はなんぢらもみづから離れゆきて妓女とともに居り淫婦とともに献物をそなふればなり悟らざる民はほろぶべし
Hosea 4:15 イスラエルよ汝淫行をなすともユダに罪を犯さする勿れギルガルに往なかれベテアベンに上るなかれヱホバは活くと曰て誓ふなかれ
Hosea 4:16 イスラエルは頑強なる牛のごとくに頑強なり今ヱホバ恙羊をひろき野にはなてるが如くして之を牧はん
Hosea 4:17 エフライムは偶像にむすびつらなれりその爲にまかせよ
Hosea 4:18 かれらの酒はくされかれらの淫行はやまずかれらの楯となるべき者等は恥を愛しいたく之を愛せり
Hosea 4:19 かれは風の翼につつまれかれらはその礼物によりて恥辱をかうむらん
Hosea 5:1 祭司等よこれを聴けイスラエルの家よ耳をかたむけよ 王のいへよ之にこころを注よ さばきは汝等にのぞまん そは我らはミズパに設くる羂タボルに張れる網のごとくなればなり
Hosea 5:2 悖逆者はふかく罪にしづみたり我かれらをことごとく懲しめん
Hosea 5:3 我はエフライムを知る イスラエルはわれに隠るるところ無し エフライムよなんぢ今すでに淫行をなせりイスラエルはすでに汚れたり
Hosea 5:4 かれらの行爲かれらをしてその神に歸ること能はざらしむ そは淫行の霊その衷にありてヱホバを知ることなければなり
Hosea 5:5 イスラエルの驕傲はその面にむかひて證をなしその罪によりてイスラエルとエフライムは仆れユダもまた之とともにたふれん
Hosea 5:6 かれらは羊のむれ牛の群をたづさへ往てヱホバを尋ね求めん然どあふことあらじヱホバ既にかれらより離れ給ひたればなり
Hosea 5:7 かれらヱホバにむかひ貞操を守らずして他人の子を産り新月かれらとその産業とをともに滅さん
Hosea 5:8 なんぢらギベアにて角をふきラマにてラッパを吹ならしベテアベンにて呼はりて言へベニヤミンよなんぢの後にありと
Hosea 5:9 罰せらるるの日にエフライムは荒廃れん我イスラエルの支派の中にかならず有るべきことを示せり
Hosea 5:10 ユダの牧伯等は境界をうつすもののごとくなれり我わが震怒を水のごとくに彼らのうへに斟がん
Hosea 5:11 エフライムは甘んじて人のさだめたるところに從ひあゆむがゆゑに鞫をうけて虐げられ圧られん
Hosea 5:12 われエフライムには蠧のごとくユダの家には腐朽のごとし
Hosea 5:13 エフライムおのれに病あるを見ユダおのれに傷あるをみたり斯てエフライムはアツスリヤに往きヤレブ王に人をつかはしたれど彼はなんぢらを醫すことをえず又なんぢらの傷をのぞきさることを得ざるべし
Hosea 5:14 われエフライムには獅子のごとくユダの家にはわかき獅子のごとし我しも我は抓劈てさり掠めゆけども救ふ者なかるべし
Hosea 5:15 我ふたたびわが處にかへりゆき彼らがその罪をくいてひたずらわが面をたづね求むるまで其處にをらん彼らは艱難によりて我をたづねもとむることをせん
Hosea 6:1 來れわれらヱホバにかへるべし ヱホバわれらを抓劈たまひたれどもまた醫すことをなし我儕をうち給ひたれどもまたその傷をつつむことを爲したまふ可ればなり
Hosea 6:2 ヱホバは二日ののちわれらむ活かへし三日にわれらを起せたまはん 我らその前にて生ん
Hosea 6:3 この故にわれらヱホバをしるべし切にヱホバを知ことを求むべしヱホバは晨光のごとく必ずあらはれいで雨のごとくわれらにのぞみ後の雨のごとく地をうるほし給ふ
Hosea 6:4 エフライムよ我なんぢに何をなさんやユダよ我なんぢに何をなさんやなんぢの愛情はあしたの雲のごとくまたただちにきゆる露のごとし
Hosea 6:5 このゆゑにわれ預言者等をもてかれらを撃ちわが口の言をもてかれらえを殺せりわが審判はあらはれいづる光明のごとし
Hosea 6:6 われは愛憎をよろこびて犠牲をよろこばず神をしるを悦ぶこと燔祭にまされり
Hosea 6:7 然るに彼らはアダムのごとく誓をやぶりかしこにて不義をわれにおこなへり
Hosea 6:8 ギレアデは惡をおこなふものの邑にして血の足跡そのなかに徧し
Hosea 6:9 祭司のともがらは山賊の群のごとく伏伺して人をそこなひシケムに往く大路にて人をころす彼等はかくのごとき惡きことをおこなへり
Hosea 6:10 われイスラエルのいへに憎むべきことあるを見たりかの處にてエフライムは淫をおこなふイスフルは汚れたり
Hosea 6:11 ユダよ我わが民の俘囚をかへさんときまた汝のためにも穫刈をそなへん
Hosea 7:1 われイスラエルを醫さんときエフライムの愆とサマリヤのあしきわざと露るかれらは詐詭をおこなひ内には偸盗いるあり外には山賊のむれ掠めさるあり かれら心にわがその一切の惡をしたためたることを思はず今その行爲はかれらを囲みふさぎて皆わが目前にあり
Hosea 7:3 かれらはその惡をもて王を悦ばせその詐詭をもてもろもろの牧伯を悦ばせり
Hosea 7:4 かれらはみな姦淫をおこなふ者にしてパンを作るものに焼るる爐のごとし揑粉をこねてその発酵ときまでしばらく火をおこすことをせざるのみなり
Hosea 7:5 われらの王の目にもろもろの牧伯は洒の熱によりて疾し王は嘲るものとともに手を伸ぶ
Hosea 7:6 かれら伏伺するほどに心を爐のごとくして備をなすそのパンを焼くものは終夜ねむりにつき朝におよべばまた焔のごとく燃ゆ
Hosea 7:7 かれらはみな爐のごとくに熱してその審士をやくそのもろもろの王はみな仆るかれらの中には我をよぶもの一人だになし
Hosea 7:8 エフライムは異邦人にいりまじるエフライムはかへさざる餹餅となれり
Hosea 7:9 かれは他邦人らにその力をのまるれども之をしらず白髪その身に雑り生れどもこれをさとらず
Hosea 7:10 イスラエルの驕傲はその面にむかひて證をなすかれらは此もろもろの事あれどもその神ヱホバに歸ることをせず又もとむることをせざるなり
Hosea 7:11 エフライムは智慧なくして愚なる鴿のごとし彼等はエジプトにむかひて呼求めまたアツスリヤに往く
Hosea 7:12 我かれらの往ときわが網をその上にはりて天空の鳥のごとくに引堕し前にその公会に告しごとくかれらを懲しめん
Hosea 7:13 禍なるかなかれらは我をはなれて迷ひいでたり敗壊かれらにきたらんかれらは我にむかひて罪ををかしたり我かれらを贖はんとおもへどもかれら我にさからひて謊言をいへり
Hosea 7:14 かれら誠心をもて我をよばず唯牀にありて哀號べりかれらは穀物とあたらしき酒のゆゑをもて相集りかつわれに逆らふ
Hosea 7:15 我かれらを教へその腕をつよくせしかども披らはわれにもとりて惡きことを謀る
Hosea 7:16 かれらは歸るされども至高者にかへらず彼らはたのみがたき弓のごとし彼らのもろもろの牧伯はその舌のあらき言によりて劍にたふれん彼らは之がためにエジプトの國にて嘲笑をうくべし
Hosea 8:1 ラッパをなんぢの口にあてよ敵は鷲のごとくヱホバの家にのぞめりこの民わが契約をやぶりわが律法を犯ししによる
Hosea 8:2 かれら我にむかひてわが神よわれらイスラエルはなんぢを知れりと叫ばん
Hosea 8:3 イスラエルは善をいみきらへり敵これを追ん
Hosea 8:4 かれら王をたてたり然れども我により立しにあらずかれら牧伯をたてたり然れども我がしらざるところなり彼らまたその金銀をもて己がために偶像をつくれりその造れるは毀ちすてられんが爲にせしにことならず
Hosea 8:5 サマリヤよなんぢの犢は忌きらふべきものなりわが怒かれらにむかひて燃ゆかれら何れの時にか罪なきにいたらん
Hosea 8:6 この犢はイスラエルより出づ匠人のつくれる者にして神にあらずサマリヤの犢はくだけて粉とならん
Hosea 8:7 かれらは風をまきて狂風をかりとらん種ところは生長る穀物なくその穂はみのらざるべしたとひ實るとも他邦人これを呑ん
Hosea 8:8 イスラエルは既に呑れたり彼等いま列國の中において悦ばれざる器のごとく視做るるなり
Hosea 8:9 彼らは獨ゐし野の驢馬のごとくアツスリヤにゆけりエフライムは物を餽りて戀人を得たり
Hosea 8:10 かれら列國の民に物を餽りたりと雖も今われ彼等をつどへ集む彼らは諸侯伯の王に負せらるる重擔のために衰へ始めん
Hosea 8:11 エフライムは多くの祭壇を造りて罪を犯すこの祭壇はかれらが罪に陥る階とはなれり
Hosea 8:12 我かれらのために律法をしるして數件の箇條を示したれど彼らは反て之を異物とおもへり
Hosea 8:13 かれらは我に献ふべき物を献ふれども只肉をそなへて己みづから之を食ふヱホバは之を納たまはず今かれらの愆を記え彼らの罪を罰したまはん彼らはエジプトに歸るべし
Hosea 8:14 イスラエルは己が造主を忘れてもろもろの社廟を建てユダは塀をとりまはせる邑を多く増し加へたり然どわれ火をその邑々におくりて諸の城を焼亡さん
Hosea 9:1 イスラエルよ異邦人のごとく喜びすさむ勿れなんぢ淫行をなして汝の神を離る汝すべての麥の打塲にて賜はる淫行の賞賜を愛せり
Hosea 9:2 打場と酒榨とはかれらを養はじ亦あたらしき酒もむなしくならん
Hosea 9:3 かれらはヱホバの地にとどまらずエフライムはエジプトに歸りアツスリヤにて汚穢たる物を食はん
Hosea 9:4 彼等はヱホバにむかひて酒を灌ぐべき者にあらずその祭物はヱホバの悦びたまふ所にあらずかれらの犠牲は喪に居もののパンのごとし凡てこれを食ふものは汚るべし彼等のパンは只おのが食ふためにのみ用ゐべくしてヱホバの家に入るべきにあらず
Hosea 9:5 なんぢら集會の日とヱホバの節會の日に何をなさんとするや
Hosea 9:6 視よかれら滅亡の故によりて去ゆきぬエジプトかれらをあつめメンピスかれらを葬らん蒺藜かれらが銀の寳物を獲いばら彼らの天幕に蔓らん
Hosea 9:7 刑罰の日きたり應報の日きたれりイスラエルこれを知ん預言者は愚なるもの霊に感じたるものは狂へるものなりこれ汝の惡おほく汝の怨恨おほいなるに因る
Hosea 9:8 エフライムは我が神にならべて他の神をも佇望めり預言者の一切の途は鳥を捕ふる者の網のごとく且その神の室の中にて怨恨を懐けり
Hosea 9:9 かれらはギベアの日のごとく甚だしく惡き事を行へりヱホバはその惡をこころに記てその罪を罰したまはん
Hosea 9:10 在昔われイスラエルを見ること荒野の葡萄のごとく汝らの先組等を看ること無花果樹の始にむすべる最先の果の如くなししに彼等はバアルペオルにゆきて身を恥辱にゆたねその愛する物とともに憎むべき者とはなれり
Hosea 9:11 エフライムの榮光は鳥のごとく飛さらん即ち産ことも孕むことも妊娠こともなかるべし
Hosea 9:12 仮令かれら子等を育つるとも我その子を喪ひて遺る人なきにいたらしめん我が離るる時かれらの禍大なる哉
Hosea 9:13 われエフライムを美地に植てツロのごとくなししかどもエフライムはその子等を携へいだして人を殺すに付さんとす
Hosea 9:14 ヱホバよ彼らに與ヘたまへ汝なにを與ヘんとしたまふや孕まざる胎と乳なき乳房とを與へたまへ
Hosea 9:15 かれらが凡のはギルガルにあり此故に我かしこにて之を惡めりその行爲あしければ我が家より逐いたし重て愛することをせじその牧伯等はみな悼れる者なり
Hosea 9:16 エフライムは撃れその根はかれて果を結ぶまじ若し産ことあらば我その胎なる愛しむ實を殺さん
Hosea 9:17 かれら聴從はざるによりて我が神これを棄たまふべしかれらは列國民のうちに流離人とならん
Hosea 10:1 イスラエルは果をむすびて茂り榮る葡萄の樹その果の多くなるがままに祭壇をましその地の饒かなるがままに偶像を美しくせり
Hosea 10:2 かれらは二心をいだけり今かれら罪せらるべし神はその祭壇を打毀ちその偶像を折棄てたまはん
Hosea 10:3 かれら今いふべし我儕神を畏れざりしに因て我らに王なしこの王はわれらのために何をかなさんと
Hosea 10:4 かれらは虚しき言をいだし偽の誓をなして約をたつ審判は畑の畝にもえいづる茵蔯のごとし
Hosea 10:5 サマリヤの居民はベテアベンの犢の故によりて戦慄かんその民とこれを悦ぶ祭司等はその榮のうせたるが爲になげかん
Hosea 10:6 犢はアツスリヤに携へられ礼物としてヤレブ王に献げらるべしエフライムは羞をかうむりイスラエルはおのが計議を恥ぢん
Hosea 10:7 サマリヤはぼろびその王は水のうへの木片のごとし
Hosea 10:8 イスラエルの罪なるアベンの崇邱は荒はてて荊棘と蒺藜その壇のうへにはえ茂らんその時かれら山にむかひて我儕をおほへ陵にむかひて我儕のうへに倒れよといはん
Hosea 10:9 イスラエルよ汝はギベアの日より罪ををかせり彼等はそこに立り邪惡のひとびとを攻たりし戦争はギベアにてかれらに及ばざりき
Hosea 10:10 我思ふままに彼等をいましめん彼等その二の罪につながれん時もろもろの民あつまりて之をせめん
Hosea 10:11 エフライムは馴されたる牝牛のごとくにして穀をふむことを好むされどわれその美しき頸に物を負しむべし我エフライムに軛をかけんユダは耕しヤコブは土塊をくだかん
Hosea 10:12 なんぢら義を生ずるために種をまき憐憫にしたがひてかりとり又新地をひらけ今はヱホバを求むべき時なり終にはヱホバきたりて義を雨のごとく汝等のうへに降せたまはん
Hosea 10:13 なんぢらは惡をたがへし不義を穫をさめ虚偽の果をくらへりこは汝おのれの途をたのみ己が勇士の數衆きをたのめるに縁る
Hosea 10:14 この故になんぢらの民のなかに騒乱おこりて汝らの城はことごとく打破られんシャルマンが戦門の日にベテアルベルを打破りしにことならず母その子とともに砕かれたり
Hosea 10:15 なんぢらの大なる惡のゆゑによりてべテル如此なんぢらに行へるなりイスラエルの王はあしたに滅びん
Hosea 11:1 イスラエルの幼かりしとき我これを愛しぬ我わが子をエジプトより呼いだしたり
Hosea 11:2 かれらは呼るるに隨ひていよいよその呼者に遠ざかり且もろもろのバアルに犠牲をささげ雕たる偶像に香を焚り
Hosea 11:3 われエフライムに歩むことををしへ彼等をわが腕にのせて抱けり然どかれらは我にいやされたるを知ず
Hosea 11:4 われ人にもちゐる索すなはち愛のつなをもて彼等をひけり我がかれらを待ふは軛をその腮より挙のくるもののごとくにして彼等に食物をあたへたり
Hosea 11:5 かれらはエジプトの地にかへらじ然どかれらがヱホバに歸らざるによりてアツスリヤ人その王とならん
Hosea 11:6 劍かれらの諸邑にまはりゆきてその関門をこぼち彼らをその謀計の故によりて滅さん
Hosea 11:7 わが民はともすれば我にはなれんとする心あり人これを招きて上に在るものに属しめんとすれども身をおこすもの一人だになし
Hosea 11:8 エフライムよ我いかで汝をすてんやイスラエルよ我いかで汝をわたさんや我いかで汝をアデマのごとくせんや争でなんぢをゼボイムのごとく爲んやわが心わが衷にかはりて我の愛憐ことごとく燃おこれり
Hosea 11:9 我わが烈しき震怒をほどこすことをせじ我かさねてエフライムを滅すことをせじ我は人にあらず神なればなり我は汝のうちにいます聖者なりいかりをもて臨まじ
Hosea 11:10 かれらは獅子の吼るごとくに聲を出したまふヱホバに隨ひて歩まんヱホバ聲を出したまへば子等は西より急ぎ來らん
Hosea 11:11 かれらエジプトより鳥のごとくアツスリヤより鴿のごとくに急ぎ來らん我かれらをその家々に住はしむべし是エホバの聖言なり
Hosea 11:12 エフライムは謊言をもてイスラエルの家は詐偽をもて我を囲めりユダは神と信ある聖者とに属きみつかずみ漂蕩をれり
Hosea 12:1 エフライムは風をくらひ東風をおひ日々に詐偽と暴逆とを増くはへアツスリヤと契約を結び油をエジプトに餽れり
Hosea 12:2 ヱホバはユダと争辨をなしたまふヤコブをその途にしたがひて罰しその行爲にしたがひて報いたまふ
Hosea 12:3 ヤコブは胎にゐし時その兄弟の踵をとらへまた己が力をもて神と角力あらそへり
Hosea 12:4 かれは天の使と角力あらそひて勝ちなきて之に恩をもとめたり彼はベテルにて神にあへり其處にて神われらに語ひたまへり
Hosea 12:5 これは萬軍の神ヱホバなりヱホバは其記念の名なり
Hosea 12:6 然ばなんぢの神にかへり衿恤と公義とをまもり恒になんぢの神を仰ぐべし
Hosea 12:7 彼はカナン人(商賈)なりその手に脆詐の權衡をもち好であざむき取ことをなす
Hosea 12:8 エフライムはいふ誠にわれは富る者となれり我は身に財寳をえたり凡てわが労したることの中に罪をうべき不義を見いだす者なかるべし
Hosea 12:9 我ヱホバはエジプトの國をいでしより以來なんぢらの神なり我いまも尚なんぢを幕屋にすまはせて節会の日のごとくならしめん
Hosea 12:10 我もろもろの預言者にかたり又これに益々おほく異象をしめしたり我もろもろの預言者に托して譬喩をまうく
Hosea 12:11 ギレアデは不義なる者ならずや彼らは全く虚しかれらはギルガルにて牛を犠牲に献ぐかれらの祭壇は圃の畝につみたる石の如し
Hosea 12:12 ヤコブはアラムの野ににげゆけりイスラエルは妻を得んために人に事へ妻を得んために羊を牧へり
Hosea 12:13 ヱホバ一人の預言者をもてイスラエルをエジプトより導きいだし一人の預言者をもて之を護りたまへり
Hosea 12:14 エフライムは怒を激ふること極てはなはだしその主かれが流しし血をかれが上にとどめその恥辱をかれに歸らせたまはん
Hosea 13:1 エフライム言を出せば人をののけり彼はイスラエルのなかに己をたかうしバアルにより罪を犯して死たりしが
Hosea 13:2 今も尚ますます罪を犯しその銀をもて己のために像を鋳その機巧にしたがひて偶像を作る是みな工人の作なるなり彼らは之につきていふ犠牲を献ぐる者はこの犢に吻を接べしと
Hosea 13:3 是によりて彼らは朝の雲のごとく速にきえうする露のごとく打場より大風に吹散さるる穀殻のごとく窓より出ゆく煙のごとくならん
Hosea 13:4 されど我はエジプトの國をいでてより來なんぢの神ヱホバなり爾われの外に神を知ことなし我のほかに救者なし
Hosea 13:5 我さきに荒野にて水なき地にて爾を顧みたり
Hosea 13:6 かれらは秣場によりて食に飽き飽くによりてその心たかぶり是によりて我を忘れたり
Hosea 13:7 斯るがゆゑに我かれらに對ひて獅子の如くなり途の傍にひそみうかがふ豹のごとくならん
Hosea 13:8 われ子をうしなへる熊のごとく彼らに向ひてその心膜を裂き獅子の如くこれを食はん野の獣これを攫断るべし
Hosea 13:9 イスラエルよ汝の滅ぶるは我に背き汝を助くる者に背くが故なり
Hosea 13:10 汝のもろもろの邑に汝を助くべき汝の王は今いづくにかあるなんぢらがその王と牧伯等とを我に與へよと言たりし士師等は今いづくにかある
Hosea 13:11 われ忿怒をもて汝に王を與へ憤恨をもて之をうばひたり
Hosea 13:12 エフライムの不義は包まれてありその罪はをさめたくはへられたり
Hosea 13:13 劬労にかかれる婦のかなしみ之に臨まん彼は愚なる子なり時に臨みてもなほ産門に入らず
Hosea 13:14 我かれらを陰府の手より贖はん我かれらを死より贖はん死よなんぢの疫は何處にあるか陰府よなんぢの災は何處にあるか悔改はかくれて我が目にみえず
Hosea 13:15 彼は兄弟のなかにて果を結ぶこと多けれども東風吹きたりヱホバの息荒野より吹おこらん之がためにその泉は乾その源は涸れんその積蓄へたるもろもろの賓貴器皿は掠め奪はるべし
Hosea 13:16 サマリヤはその神にそむきたれば刑せられ劍に斃れんその嬰兒はなげくだかれその孕たる婦は剖れん
Hosea 14:1 イスラエルよ汝の神ヱホバに歸れよ汝は不義のために仆れたり
Hosea 14:2 汝ら言詞をたづさへ來りヱホバに歸りていへ諸の不義は赦して善ところを受納れたまへ斯て我らは唇をもて牛のごとくに汝に献げん
Hosea 14:3 アツスリヤはわれらを授けじ我らは馬に騎らじまたふたたび我儕みづからの手にて作れる者にむかひわが神なりと言じ孤児は爾によりて憐憫を得べければなりと
Hosea 14:4 我かれらの反逆を醫し悦びて之を愛せん我が怒はかれを離れ去たり
Hosea 14:5 我イスラエルに対しては露のごとくならん彼は百合花のごとく花さきレバノンのごとく根をはらん
Hosea 14:6 その枝は茂りひろがり其美麗は橄欖の樹のごとくその芬芳はレバノンのごとくならん
Hosea 14:7 その蔭に往む者かへり來らんかれらは穀物の如く活かへり葡萄樹のごとく花さきその馨香はレバノンの酒のごとくなるべし
Hosea 14:8 エフライムはいふ我また偶像と何のあづかる所あらんやと我これに應へたり我かれを顧みん我は蒼翠の松のごとし汝われより果を得ん
Hosea 14:9 誰か智慧ある者ぞその人はこの事を暁らん誰か頴悟ある者ぞその人は之を知んヱホバの道は凡て直し義者は之をむ然ど罪人は之に躓かん
Joel 0:0 ヨエル書
Joel 1:1 ペトエルの子ヨエルに臨めるヱホバの言
Joel 1:2 老たる人よ汝ら是を聽け すべて此地に住む者汝ら耳を傾けよ 汝らの世あるは汝らの先祖の世にも是のごとき事ありしや
Joel 1:3 汝ら之を子に語り子はまた之をその子に語りその子之を後の代に語りつたへよ
Joel 1:4 噬くらふ蝗虫の遺せる者は群ゐる蝗虫のくらふ所となりその遺せる者はなめつくすおほねむしのくらふ所となりその遺せる者は喫ほろぼす蝗虫の食ふ所となれり
Joel 1:5 醉る者よ汝ら目を醒して泣け すべて酒をのむ者よ哭きさけべ あたらしき酒なんぢらの口に絶えたればなり
Joel 1:6 そはことなる民わが國に攻よすればなり その勢ひ強くその數はかられずその齒は獅子の齒のごとくその牙は牝獅子の牙のごとし
Joel 1:7 彼等わが葡萄の樹を荒しわが無花果の樹を折りその皮をはぎはだかにして之を棄つ その枝白くなれり
Joel 1:8 汝ら哀哭かなしめ 貞女その若かりしときの夫のゆゑに麻布を腰にまとひて哀哭かなしむがごとくせよ
Joel 1:9 素祭灌祭ともにヱホバの家に絶えヱホバに事ふる祭司等哀傷をなす
Joel 1:10 田は荒れ地は哀傷む 是穀物荒はて新しき酒つき油たえんとすればなり
Joel 1:11 こむぎ大麥の故をもて農夫羞ぢよ 葡萄をつくり哭けよ 田の禾稼うせはてたればなり
Joel 1:12 葡萄樹は枯れ無花果樹は萎れ石榴 椰子 林檎および野の諸の樹は凋みたり 是をもて世の人の喜樂かれうせぬ
Joel 1:13 祭司よ汝ら麻布を腰にまとひてなきかなしめ 祭壇に事ふる者よ汝らなきさけべ 神に事ふる者よなんぢら來り麻布をまとひて夜をすごせ 其は素祭も灌祭も汝らの神の家に入ことあらざればなり
Joel 1:14 汝ら斷食を定め集會を設け長老等を集め國の居民をことごとく汝らの神ヱホバの家に集めヱホバにむかひて號呼れよ
Joel 1:15 ああその日は禍なるかな ヱホバの日近く暴風のごとくに全能者より來らん
Joel 1:16 我らがまのあたりに食物絶えしにあらずや 我らの神の家に歡喜と快樂絶えしにあらずや
Joel 1:17 種は土の下に朽ち倉は壞れ廩は圯る そは穀物ほろぼされたればなり
Joel 1:18 いかに畜獸は哀み鳴くや 牛の群は亂れ迷ふ 草なければなり 羊の群もまた死喪ん
Joel 1:19 ヱホバよ我なんぢに向ひて呼はらん 荒野の諸の草は火にて焼け野の諸の樹は火熖にてやけつくればなり
Joel 1:20 野の獸もまた汝にむかひて呼はらん 其は水の流涸はて荒野の草火にてやけつくればなり
Joel 2:1 汝らシオンにて喇叭を吹け 我聖山にて音たかく之を吹鳴せ 國の民みな慄ひわななかん そはヱホバの日きたらんとすればなり すでに近づけり
Joel 2:2 この日は黒くをぐらき日雲むらがるまぐらき日にしてしののめの山々にたなびくが如し 數おほく勢さかんなる民むれいたらん かかる者はいにしへよりありしことなく後の代々の年にもあることなかるべし
Joel 2:3 火彼らの前を焚き火熖かれらの後にもゆ その過さる前は地エデンのごとくその過ぎしのちは荒はてたる野の如し 此をのがれうるもの一としてあることなし
Joel 2:4 彼らの状は馬のかたちのごとく其馳ありくことは軍馬のごとし
Joel 2:5 その山の嶺にとびをどる音は車の轟聲がごとし また火の稗株をやくおとの如くしてその様強き民の行伍をたてて戰陣にのぞむに似たり
Joel 2:6 そのむかふところ諸民戰慄きその面みな色を失ふ
Joel 2:7 彼らは勇士の如くに趨あるき軍人のごとくに石垣に攀のぼる 彼ら各おのが道を進みゆきてその列を亂さず
Joel 2:8 彼ら互に推あはず各その道にしたがひて進み行く 彼らは刄に觸るとも身を害はず
Joel 2:9 彼らは邑をかけめぐり石垣の上に奔り家に攀登り盗賊のごとくに窓より入る
Joel 2:10 そのむかふところ地ゆるぎ天震ひ日も月も暗くなり星その光明を失ふ
Joel 2:11 ヱホバその軍勢の前にて聲をあげたまふ 其軍旅はなはだ大なればなり 其言を爲とぐる者は強し ヱホバの日は大にして甚だ畏るべきが故に誰かこれに耐ふることを得んや
Joel 2:12 然どヱホバ言たまふ 今にても汝ら斷食と哭泣と悲哀とをなし心をつくして我に歸れ
Joel 2:13 汝ら衣を裂かずして心を裂き汝等の神ヱホバに歸るべし 彼は恩惠あり憐憫ありかつ怒ることゆるく愛憐大にして災害をなすを悔いたまふなり
Joel 2:14 誰か彼のあるひは立歸り悔て祝福をその後にとめのこし汝らをして素祭と灌祭とをなんぢらの神ヱホバにささげしめ給はじと知んや
Joel 2:15 汝らシオンにて喇叭を吹きならし斷食を定め公會をよびつどへ
Joel 2:16 民を集めその會を潔くし老たる人をあつめ孩童と乳哺子を集め新郎をその室より呼いだし新婦をその密室より呼いだせ
Joel 2:17 而してヱホバに事ふる祭司等は廊と祭壇の間にて泣て言へ ヱホバよ汝の民を赦したまへ 汝の産業を恥辱しめらるるに任せ之を異邦人に治めさする勿れ 何ぞ異邦人をして彼らの神は何處にあると言しむべけんや
Joel 2:18 然せばヱホバ己の地にために嫉妬を起しその民を憐みたまはん
Joel 2:19 ヱホバ應へてその民に言たまはん 視よ我穀物とあたらしき酒と油を汝におくる 汝ら之に飽ん 我なんぢらをして重ねて異邦人の中に恥辱を蒙らしめじ
Joel 2:20 我北よりきたる軍を遠く汝らより離れしめうるほひなき荒地に逐やらん 其前軍を東の海にその後軍を西の海に入れん その臭味立ちその惡臭騰らん 是大なる事を爲たるに因る
Joel 2:21 地よ懼るる勿れ 喜び樂しめ ヱホバ大なる事を行ひたまふなり
Joel 2:22 野の獸よ懼るる勿れ あれ野の牧草はもえいで樹は果を結び無花果樹葡萄樹はその力をめざすなり
Joel 2:23 シオンの子等よ 汝らの神ヱホバによりて樂め喜べ ヱホバは秋の雨を適當なんぢらに賜ひまた前のごとく秋の雨と春の雨とを汝らの上に降せたまふ
Joel 2:24 打塲には穀物盈ち甕にはあたらしき酒と油溢れん
Joel 2:25 我が汝らに遣しし大軍すなはち群ゐる蝗なめつくす蝗喫ほろぼす蝗噬くらふ蝗の触あらせる年を我汝らに賠はん
Joel 2:26 汝らは食ひ食ひて飽き よのつねならずなんぢらを待ひたまひし汝らの神ヱホバの名をほめ頌へん 我民はとこしへに辱しめらるることなかるべし
Joel 2:27 かくて汝らはイスラエルの中に我が居るを知り汝らの神ヱホバは我のみにて外に無きことを知らん 我民は永遠に辱かしめらるることなかるべし
Joel 2:28 その後われ吾靈を一切の人に注がん 汝らの男子女子は預言せん 汝らの老たる人は夢を見 汝らの少き人は異象を見ん
Joel 2:29 その日我またわが靈を僕婢に注がん
Joel 2:30 また天と地に徴證を顯さん 即ち血あり火あり煙の柱あるべし
Joel 2:31 ヱホバの大なる畏るべき日の來らん前に日は暗く月は血に變らん
Joel 2:32 凡てヱホバの名を龥ぶ者は救はるべし そはヱホバの宣ひし如くシオンの山とヱルサレムとに救はれし者あるべければなり 其遺れる者の中にヱホバの召し給へるものあらん
Joel 3:1 觀よ我ユダとヱルサレムの俘囚人を歸さん その日その時
Joel 3:2 萬國の民を集め之を携へてヨシヤパテの谷にくだりかしこにて我民我ゆづりの産なるイスラエルのために彼らをさばかん 彼らこれを國々に散してその地を分ち取りたればなり
Joel 3:3 彼らは籤をひきて我民を取り童子を娼妓に換へ童女を賣り酒に換て飮めり
Joel 3:4 ツロ、シドンよベリシテのすべての國よ 汝ら我と何のかかはりあらんや 汝ら我がなししことに返をなさんとするや 若し我に返報をなさんとならば我忽ち迅速に汝らがなししことをもてその首に歸らしめん
Joel 3:5 是は汝らは我の金銀を取り我のしたふべき寶を汝らの宮にたづさへゆき
Joel 3:6 またユダの人とヱルサレムの人をギリシヤ人に賣りてその本國より遠く離らせたればなり
Joel 3:7 視よ我かられを起して汝らが賣たる處より出し汝らがなししことをもてその首にかへらしめん
Joel 3:8 我はなんぢらの男子女子をユダの人の手に賣り彼らは之を遠き民なるシバ人に賣らん ヱホバこれを言ふ
Joel 3:9 もろもろの國に宣つたへよ 戰爭の準備を爲し勇士をはげまし軍人をことごとくちかより來らしめよ
Joel 3:10 汝等の鋤を劍に打かへ汝らの鎌を鎗に打かへよ 弱き者も我は強しと言へ
Joel 3:11 四周の國々の民よ汝ら急ぎ上りて集れ ヱホバよ汝の勇士をかしこに降したまへ
Joel 3:12 國々の民よ起て上りヨシヤパテの谷に至れ 彼處に我座をしめて四周の國々の民をことごとく鞫かん
Joel 3:13 鎌をいれよ 穀物は熟せり 來り踏めよ酒榨は盈ち甕は溢る 彼らの惡 大なればなりと
Joel 3:14 かまびすしきかな無數の民 審判の谷にありてかまびすし ヱホバの日 審判の谷に近づくが故なり
Joel 3:15 日も月も暗くなり星その光明を失ふ
Joel 3:16 ヱホバ、シオンよりよびとどろかしヱルサレムより聲をはなち天地を震ひうごかしたまふ 然れどヱホバはその民の避所イスラエルの子孫の城となりたまはん
Joel 3:17 かくて汝ら我はヱホバ汝等の神にして我聖山シオンに住むことをしるべし ヱルサレムは聖き所となり他國の人は重ねてその中をかよふまじ
Joel 3:18 その日山にあたらしき酒滴り岡に乳流れユダのもろもろの河に水流れヱホバの家より泉水流れいでてシッテムの谷に灌がん
Joel 3:19 エジプトは荒すたれエドムは荒野とならん 是はかれらユダの子孫を虐げ辜なき者の血をその國に流したればなり
Joel 3:20 されどユダは永久にすまひヱルサレムは世々に保たん
Joel 3:21 我さきにはかれらが流しし血の罪を報いざりしが今はこれをむくいん ヱホバ、シオンに住みたまはん
Amos 0:0 アモス書
Amos 1:1 テコアの牧者の中なるアモスの言 是はユダの王ウジヤの世 イスラエルの王ヨアシの子ヤラベアムの世 地震の二年前に彼が見されたる者にてイスラエルの事を論るなり 其言に云く
Amos 1:2 ヱホバ、シオンより呼號りエルサレムより聲を出したまふ 牧者の牧塲は哀きカルメルの巓は枯る
Amos 1:3 ヱホバかく言たまふ ダマスコは三の罪あり 四の罪あれば我かならず之を罰して赦さじ 即ち彼らは鐵の打禾車をもてギレアデを打り
Amos 1:4 我ハザエルの家に火を遣りベネハダデの宮殿を焚ん
Amos 1:5 我ダマスコの關を碎きアベンの谷の中よりその居民を絶のぞきベテエデンの中より王の杖を執る者を絶のぞかん スリアの民は擄へられてキルにゆかん ヱホバこれを言ふ
Amos 1:6 ヱホバかく言たまふ ガザは三の罪あり 四の罪あれば我かならず之を罰して赦さじ 即ち彼らは俘囚をことごとく曳ゆきてこれをエドムに付せり
Amos 1:7 我ガザの石垣の内に火を遣り一切の殿を焚ん
Amos 1:8 我アシドドの中よりその居民を絶のぞきアシケロンの中より王の杖を執る者を絶除かん 我また手を反してエクロンを撃ん ペリシテ人の遺れる者亡ぶべし 主ヱホバこれを言ふ
Amos 1:9 ヱホバかく言たまふ ツロは三の罪あり 四の罪あれば我かならず之を罰して赦さじ 即ち彼らは俘囚をことごとくエドムに付しまた兄弟の契約を忘れたり
Amos 1:10 我ツロの石垣の内に火を遣り一切の殿を焚ん
Amos 1:11 ヱホバかく言たまふ エドムは三の罪あり 四の罪あれば我かならず之を罰して赦さじ 即ち彼は劍をもてその兄弟を追ひ全く憐憫の情を斷ち恒に怒りて人を害し永くその憤恨をたくはへたり
Amos 1:12 我テマンに火を遣りポヅラの一切の殿を焚ん
Amos 1:13 ヱホバかく言たまふ アンモンの人々は三の罪あり 四の罪あれば我かならず之を罰して赦さじ 即ち彼らはその國境を廣めんとてギレアデの孕める婦を剖たり
Amos 1:14 我ラバの石垣の内に火を放ちその一切の殿を焚ん 是は戰鬪の日に吶喊の聲をもて爲され暴風の日に旋風をもて爲されん
Amos 1:15 彼らの王はその牧伯等と諸共に擄へられて往かん ヱホバこれを言ふ
Amos 2:1 ヱホバかく言たまふ モアブは三の罪あり 四の罪あれば我かならず之を罰して赦さじ 即ち彼はエドムの王の骨を焼て灰となせり
Amos 2:2 我モアブに火を遣りケリオテの一切の殿を焚ん モアブは噪擾と吶喊の聲と喇叭の音の中に死ん
Amos 2:3 我その中より審判長を絶除きその諸の牧伯を之とともに殺さん ヱホバはこれを言ふ
Amos 2:4 ヱホバかく言たまふ ユダは三の罪あり 四の罪あれば我かならず之を罰して赦さじ 即ち彼らはヱホバの律法を輕んじその法度を守らずその先祖等が從ひし僞の物に惑はさる
Amos 2:5 我ユダに火を遣りエルサレムの諸の殿を焚ん
Amos 2:6 ヱホバかく言たまふ イスラエルは三の罪あり 四の罪あれば我かならず之を罰して赦さじ 即ち彼らは義者を金のために賣り貧者を鞋一足のために賣る
Amos 2:7 彼らは弱き者の頭に地の塵のあらんことを喘ぎて求め柔かき者の道を曲げ又父子共に一人の女子に行て我聖名を汚す
Amos 2:8 彼らは質に取れる衣服を一切の壇の傍に敷きてその上に偃し罰金をもて得たる酒をその神の家に飮む
Amos 2:9 嚮に我はアモリ人を彼らの前に絶たり アモリ人はその高きこと香柏のごとくその強きこと橡の樹のごとくなりしが我その上の果と下の根とをほろぼしたり
Amos 2:10 我は汝らをエジプトの地より携へのぼり四十年のあひだ荒野において汝らを導き終にアモリ人の地を汝らに獲させたり
Amos 2:11 我は汝らの子等の中より預言者を興し汝らの少者の中よりナザレ人を興したり イスラエルの子孫よ然るにあらずや ヱホバこれを言ふ
Amos 2:12 然るに汝らはナザレ人に酒を飮ませ預言者に命じて預言するなかれと言り
Amos 2:13 視よ我麥束を積滿せる車の物を壓するがごとく汝らを壓せん
Amos 2:14 その時は疾走者も逃るに暇あらず 強き者もその力を施すを得ず 勇士も己の生命を救ふこと能はず
Amos 2:15 弓を執る者も立ことを得ず 足駛の者も自ら救ふ能はず 馬に騎れる者も己の生命を救ふこと能はず
Amos 2:16 勇士の中の心剛き者もその日には裸にて逃ん ヱホバこれを言ふ
Amos 3:1 イスラエルの子孫よヱホバが汝らにむかひて言ところ我がエジプトの地より導き上りし全家にむかひて言ところの此言を聽け
Amos 3:2 地の諸の族の中にて我ただ汝ら而已を知れり 此故に我なんぢらの諸の罪のために汝らを罰せん
Amos 3:3 二人もし相會せずば爭で共に歩かんや
Amos 3:4 獅子もし獲物あらずば豈林の中に吼んや 猛獅子もし物を攫まずば豈その穴より聲を出さんや
Amos 3:5 もし羂の設なくば鳥あに地に張れる網にかからんや 網もし何の得るところも無くば豈地よりあがらんや
Amos 3:6 邑にて喇叭を吹かば民おどらかざらんや 邑に災禍のおこるはヱホバのこれを降し給ふならずや
Amos 3:7 夫主ヱホバはその隱れたる事をその僕なる預言者に傳へずしては何事をも爲たまはざるなり
Amos 3:8 獅子吼ゆ 誰か懼れざらんや 主ヱホバ言語たまふ 誰か預言せざらんや
Amos 3:9 アシドドの一切の殿に傳へエジプトの地の一切の殿に宣て言へ 汝等サマリヤの山々に集りその中にある大なる紛亂を觀その中間におこなはるる虐遇を觀よ
Amos 3:10 ヱホバいひたまふ 彼らは正義をおこなふことを知ず 虐げ取し物と奪ひたる物とをその宮殿に積蓄ふ
Amos 3:11 是故に主ヱホバかく言たまふ 敵ありて此國を攻かこみ汝の權力を汝より取下さん 汝の一切の殿は掠めらるべし
Amos 3:12 ヱホバかく言たまふ 牧羊者は獅子の口より羊の兩足あるひは片耳を取かへし得るのみ サマリヤに於て床の隅またはダマスコ錦の榻に坐するイスラエルの子孫もその救はるること是のごとくならん
Amos 3:13 萬軍の神 主ヱホバかく言たまふ 汝ら聽てヤコブの家に證せよ
Amos 3:14 我イスラエルの諸の罪を罰する日にはベテルの壇を罰せん 其壇の角は折て地に落べし
Amos 3:15 我また冬の家および夏の家をうたん 象牙の家ほろび大きなる家失ん ヱホバこれを言ふ
Amos 4:1 バシヤンの牝牛等よ汝ら此言を聽け 汝らはサマリヤの山に居り弱者を虐げ貧者を壓し又その主にむかひて此に持きたりて我らに飮せよと言ふ
Amos 4:2 主ヱホバ己の聖を指し誓ひて云ふ 視よ日汝らの上に臨む その日には人汝らを鈎にかけ汝等の遺餘者を釣魚鈎にかけて曳いださん
Amos 4:3 汝らは各々その前なる石垣の破壞たる處より奔出てハルモンに逃往ん ヱホバこれを言ふ
Amos 4:4 汝らベテルに往て罪を犯しギルガルに往て益々おほく罪を犯せ 朝ごとに汝らの犠牲を携へゆけ 三日ごとに汝らの什一を携へゆけ
Amos 4:5 酵いれたる者を感謝祭に獻げ願意よりする禮物を召てこれを告示せ イスラエルの子孫よ 汝らは斯するを好むなりと主ヱホバ言たまふ
Amos 4:6 また我汝らの一切の邑に於て汝らの齒を清からしめ汝らの一切の處において汝らの食を乏しからしめたり 然るに汝らは我に歸らずとヱホバ言給ふ
Amos 4:7 また我収穫までには尚 三月あるに雨をとどめて汝らに下さず かの邑には雨を降しこの邑には雨をふらさざりき 此田圃は雨を得 彼田圃は雨を得ずして枯れたり
Amos 4:8 二三の邑別の一の邑に躚めきゆきて水を飮ども飽ことあたはず 然るに汝らは我に歸らずとヱホバ言たまふ
Amos 4:9 我枯死殻と朽腐穗とをもて汝等を撃なやませり また汝らの衆多の園と葡萄園と無花果樹と橄欖樹とは蝗これを食へり 然るに汝らは我に歸らずとヱホバ言たまふ
Amos 4:10 我なんぢらの中にエジプトに爲し如く疫病をおこし劍をもて汝らの少き人を殺し又汝らの馬を奪さり汝らの營の臭氣をして騰りて汝らの鼻を撲しめたり 然るも汝らは我に歸らずとヱホバいひたまふ
Amos 4:11 我なんぢらの中の邑を滅すことソドム、ゴモラを神の滅したまひし如くしたれば汝らは熖の中より取いだしたる燃柴のごとくなれり 然るも汝らは我に歸らずとヱホバ言たまふ
Amos 4:12 イスラエルよ然ば我かく汝に行はん 我是を汝に行ふべければイスラエルよ汝の神に會ふ準備をせよ
Amos 4:13 彼は即ち山を作りなし風を作り出し人の思想の如何なるをその人に示しまた晨光をかへて黒暗となし地の高處を踏む者なり その名を萬軍の神ヱホバといふ
Amos 5:1 イスラエルの家よ我が汝らに對ひて宣る此言を聽け 是は哀歎の歌なり
Amos 5:2 處女イスラエルは仆れて復起あがらず彼は己の地に扑倒さる 之を扶け起す者なし
Amos 5:3 主ヱホバかく言たまふ イスラエルの家においては前に千人出たる邑は只百人のみのこり前に百人出たる邑は只十人のみのこらん
Amos 5:4 ヱホバかくイスラエルの家に言たまふ 汝ら我を求めよ さらば生べし
Amos 5:5 ベテルを求むるなかれ ギルガルに往なかれ ベエルシバに赴く勿れ ギルガルは必ず擄へられゆきベテルは無に歸せん
Amos 5:6 汝らヱホバを求めよ 然ば生べし 恐くはヱホバ火のごとくにヨセフの家に落くだりたまひてその火これを焼ん ベテルのためにこれを熄す者一人もあらじ
Amos 5:7 汝ら公道を茵蔯に變じ正義を地に擲つる者よ
Amos 5:8 昴宿および參宿を造り死の蔭を變じて朝となし晝を暗くして夜となし海の水を呼て地の面に溢れさする者を求めよ 其名はヱホバといふ
Amos 5:9 彼は滅亡を忽然強者に臨ましむ 滅亡つひに城に臨む
Amos 5:10 彼らは門にありて勸戒る者を惡み正直を言ふ者を忌嫌ふ
Amos 5:11 汝らは貧しき者を踐つけ麥の贐物を之より取る この故に汝らは鑿石の家を建しと雖どもその中に住ことあらじ 美しき葡萄園を作りしと雖どもその酒を飮ことあらじ
Amos 5:12 我知る汝らの愆は多く汝らの罪は大なり 汝らは義き者を虐げ賄賂を取り門において貧き者を推抂ぐ
Amos 5:13 是故に今の時は賢き者黙す 是惡き時なればなり
Amos 5:14 汝ら善を求めよ 惡を求めざれ 然らば汝ら生べし また汝らが言ごとく萬軍の神ヱホバ汝らと偕に在さん
Amos 5:15 汝ら惡を惡み善を愛し門にて公義を立よ 萬軍の神ヱホバあるひはヨセフの遺れる者を憐れみたまはん
Amos 5:16 是故に主たる萬軍の神ヱホバかく言たまふ 諸の街衢にて啼ことあらん 諸の大路にて人哀哉哀哉と呼ん 又農夫を呼きたりて哀哭しめ啼女を招きて啼しめん
Amos 5:17 また諸の葡萄園にも啼こと有べし 其は我汝らの中を通るべければなり ヱホバこれを言たまふ
Amos 5:18 ヱホバの日を望む者は禍なるかな 汝ら何とてヱホバの日を望むや 是は昏くして光なし
Amos 5:19 人 獅子の前を逃れて熊に遇ひ又家にいりてその手を壁に附て蛇に咬るるに宛も似たり
Amos 5:20 ヱホバの日は昏くして光なく暗にして耀なきに非ずや
Amos 5:21 我は汝らの節筵を惡みかつ藐視む また汝らの集會を悦ばじ
Amos 5:22 汝ら我に燔祭または素祭を獻ぐるとも我之を受納れじ 汝らの肥たる犢の感謝祭は我これを顧みじ
Amos 5:23 汝らの歌の聲を我前に絶て汝らの琴の音は我これを聽じ
Amos 5:24 公道を水のごとくに正義をつきざる河のごとくに流れしめよ
Amos 5:25 イスラエルの家よ汝らは四十年荒野に居し間 犠牲と供物を我に獻げたりしや
Amos 5:26 かへつて汝らは汝らの王シクテを負ひ汝らの偶像キウンを負へり 是即ち汝らの神とする星にして汝らの自ら造り設けし者なり
Amos 5:27 然ば我汝らをダマスコの外に移さん 萬軍の神ととなふるヱホバこれを言たまふ
Amos 6:1 身を安くしてシオンに居る者思ひわづらはずしてサマリヤの山に居る者 諸の國にて勝れたる國の中なる聞高くしてイスラエルの家に就きしたがはるる者は禍なるかな
Amos 6:2 カルネに渉りゆき彼處より大ハマテに至りまたペリシテ人のガテに下りて視よ其等は此二國に愈るや 彼らの土地は汝らの土地よりも大なるや
Amos 6:3 汝等は災禍の日をもて尚遠しと爲し強暴の座を近づけ
Amos 6:4 自ら象牙の牀に臥し寢臺の上に身を伸し群の中より羔羊を取り圏の中より犢牛を取て食ひ
Amos 6:5 琴の音にあはせて唄ひ噪ぎダビデのごとくに樂器を製り出し
Amos 6:6 大斝をもて酒を飮み最も貴とき膏を身に抹りヨセフの艱難を憂へざるなり
Amos 6:7 是故に今彼等は擄はれて俘囚人の眞先に立て往んかの身を伸したる者等の嘈の聲止べし
Amos 6:8 萬軍の神ヱホバ言たまふ 主ヱホバ己を指て誓へり 我ヤコブが誇る所の物を忌嫌ひその宮殿を惡む 我この邑とその中に充る者とを付すべし
Amos 6:9 一の家に十人遺りをるとも皆死ん
Amos 6:10 而してその親戚すなはち之を焚く者その死骸を家より運びいださんとて之を取あげまたその家の奥に潛み居る者に向ひて他になほ汝とともに居る者あるやと言ふとき對へて一人も無しと言ん 此時かの人また言べし 黙せよヱホバの名を口に擧ること有べからずと
Amos 6:11 視よヱホバ命を下し大なる家を撃て墟址とならしめ小き家を撃て微塵とならしめたまふ
Amos 6:12 馬あに能く岩の上を走らんや 人あに牛をもて岩を耕へすことを得んや 然るに汝らは公道を毒に變じ正義の果を茵蔯に變じたり
Amos 6:13 汝らは無物を喜び我儕は自分の力をもて角を得しにあらずやと言ふ
Amos 6:14 是をもて萬軍の神ヱホバ言たまふ イスラエルの家よ我一の國を起して汝らに敵せしめん 是はハマテの入口よりアラバの川までも汝らをなやまさん
Amos 7:1 主ヱホバの我に示したまへるところ是のごとし 即ち草の再び生ずる時にあたりて彼蝗を造りたまふ その草は王の刈たる後に生じたるものなり
Amos 7:2 その蝗地の青物を食盡しし後我言り 主ヱホバよ願くは赦したまへ ヤコブは小し 爭でか立ことを得んと
Amos 7:3 ヱホバその行へる事につきて悔をなし我これを爲じと言たまふ
Amos 7:4 主ヱホバの我に示したまへる所是のごとし 即ち主ヱホバ火をもて罰せんとて火を呼たまひければ火大淵を焚きまた産業の地を焚かんとす
Amos 7:5 時に我言り 主ヱホバよ願くは止みたまへ ヤコブは小し爭でか立ことを得んと
Amos 7:6 ヱホバその行へる事につきて悔をなし我これをなさじと主ヱホバ言たまふ
Amos 7:7 また我に示したまへるところ是のごとし 即ち準縄をもて築ける石垣の上にヱホバ立ちその手に準縄を執たまふ
Amos 7:8 而してヱホバ我にむかひアモス汝何を見るやと言たまひければ準縄を見ると我答へしに主また言たまはく我準縄を我民イスラエルの中に設く 我再び彼らを見過しにせじ
Amos 7:9 イサクの崇邱は荒されイスラエルの聖所は毀たれん 我劍をもちてヤラベアムの家に起むかはん
Amos 7:10 時にベテルの祭司アマジヤ、イスラエルの王ヤラベアムに言遣しけるはイスラエルの家の眞中にてアモス汝に叛けり 彼の諸の言には此地も堪るあたはざるなり
Amos 7:11 即ちアモスかく言り ヤラベアムは劍によりて死ん イスラエルは必ず擄へられてゆきてその國を離れんと
Amos 7:12 而してアマジヤ、アモスに言けるは先見者よ 汝往きてユダの地に逃れ彼處にて預言して汝の食物を得よ
Amos 7:13 然どベテルにては重ねて預言すべからず 是は王の聖所王の宮なればなり
Amos 7:14 アモス對へてアマジヤに言けるは我は預言者にあらず また預言者の子にも非ず 我は牧者なり 桑の樹を作る者なりと
Amos 7:15 然るにヱホバ羊に從ふ所より我を取り往て我民イスラエルに預言せよとヱホバわれに宣へり
Amos 7:16 今ヱホバの言を聽け 汝は言ふイスラエルにむかひて預言する勿れ イサクの家にむかひて言を出すなかれと
Amos 7:17 是故にヱホバかく言たまふ 汝の妻は邑の中にて妓婦となり汝の男子女子は劍に斃れ汝の地は繩をもて分たれん 而して汝は穢れたる地に死にイスラエルは擄られゆきてその國を離れん
Amos 8:1 主ヱホバの我に示したまへるところ是のごとし 即ち熟したる果物一筐あり
Amos 8:2 ヱホバわれにむかひてアモス汝何を見るやと言たまひければ熟したる果物一筐を見ると答へしにヱホバ我に言たまはく我民イスラエルの終いたれり 我ふたたび彼らを見過しにせじ
Amos 8:3 主ヱホバ言たまふ 其日には宮殿の歌は哀哭に變らん 死屍おびただしくあり 人これを遍き處に投棄ん 黙せよ
Amos 8:4 汝ら喘ぎて貧しき者に迫り且地の困難者を滅す者よ之を聽け
Amos 8:5 汝らは言ふ月朔は何時過去んか 我等穀物を賣んとす 安息日は何時過去んか 我ら麥倉を開かんとす 我らエパを小くしシケルを大くし僞の權衡をもて欺く事をなし
Amos 8:6 銀をもて賤しき者を買ひ鞋一足をもて貧き者を買ひかつ屑麥を賣いださんと
Amos 8:7 ヱホバ、ヤコブの榮光を指て誓ひて言たまふ 我かならず彼等の一切の行爲を何時までも忘れじ
Amos 8:8 之がために地震はざらんや地に住る者みな哭かざらんや 地みな河のごとく噴あがらん エジプトの河のごとく湧あがり又沈まん
Amos 8:9 主ヱホバ言たまふ其日には我日をして眞晝に沒せしめ地をして白晝に暗くならしめ
Amos 8:10 汝らの節筵を悲傷に變らせ汝らの歌を盡く哀哭に變らせ一切の人に麻布を腰に纒はしめ一切の人に頂を剃しめ其日をして獨子を喪へる哀傷のごとくならしめ其終をして苦き日のごとくならしめん
Amos 8:11 主ヱホバ言たまふ 視よ日至らんとす その時 我饑饉を此國におくらん 是はパンに乏しきに非ず 水に渇くに非ず ヱホバの言を聽ことの饑饉なり
Amos 8:12 彼らは海より海とさまよひ歩き北より東と奔まはりてヱホバの言を求めん 然ど之を得ざるべし
Amos 8:13 その日には美しき處女も少き男もともに渇のために絶いらん
Amos 8:14 かのサマリヤの罪を指て誓ひダンよ汝の神は活くと言ひまたベエルシバの路は活くと言る者等は必ず仆れん 復興ることあらじ
Amos 9:1 我觀るに主 壇の上に立て言たまはく柱の頭を撃て閾を震はせ之を打碎きて一切の人の首に落かからしめよ 其遺れる者をば我劍をもて殺さん 彼らの逃る者も逃おほすることを得ず 彼らの遁るる者もたすからじ
Amos 9:2 假令かれら陰府に掘くだるとも我手をもて之を其處より曳いださん 假令かれら天に攀のぼるとも我これを其處より曳おろさん
Amos 9:3 假令かれらカルメルの巓に匿るるとも我これを捜して其處より曳いださん 假令かれら海の底に匿れて我目を逃るるとも我蛇に命じて其處にて之を咬しめん
Amos 9:4 假令かれらその敵に擄はれゆくとも我劍に命じて其處にて之を殺さしめん 我かれらの上に我目を注ぎて災禍を降さん 福祉を降さじ
Amos 9:5 主たる萬軍のヱホバ地に捫れば地鎔けその中に住む者みな哀む 即ち全地は河のごとくに噴あがりエジプトの河のごとくにまた沈むなり
Amos 9:6 彼は樓閣を天に作り穹蒼の基を地の上に置ゑまた海の水を呼て地の面にこれを斟ぐなり 其名をヱホバといふ
Amos 9:7 ヱホバ言たまふ イスラエルの子孫よ 我は汝らを視ことエテオピア人を觀がごとくするにあらずや 我はイスラエルをエジプトの國よりペリシテ人をカフトルよりスリア人をキルより導き來りしにあらずや
Amos 9:8 視よ我主ヱホバその目を此罪を犯すところの國に注ぎ之を地の面より滅し絶ん 但し我はヤコブの家を盡くは滅さじ ヱホバこれを言ふ
Amos 9:9 我すなはち命を下し篩にて物を篩ふがごとくイスラエルの家を萬國の中にて篩はん 一粒も地に落ちざるべし
Amos 9:10 我民の罪人即ち災禍われらに及ばず我らに降らじと言をる者等は皆劍によりて死ん
Amos 9:11 其日には我ダビデの倒れたる幕屋を興しその破壞を修繕ひその傾\圯たるを興し古代の日のごとくに之を建なほすべし
Amos 9:12 而して彼らはエドムの遺餘者および我名をもて稱へらるる一切の民を獲ん 此事を行ふ ヱホバかく言なり
Amos 9:13 ヱホバ言ふ 視よ日いたらんとす その時には耕者は刈者に相繼ぎ葡萄を踐む者は播種者に相繼がん また山々には酒滴り岡は皆鎔て流れん
Amos 9:14 我わが民イスラエルの俘囚を返さん 彼らは荒たる邑々を建なほして其處に住み葡萄園を作りてその酒を飮み園圃を作りてその果を食はん
Amos 9:15 我かれらをその地に植つけん 彼らは我がこれに與ふる地より重ねて抜とらるることあらじ 汝の神ヱホバこれを言ふ
Obadiah 0:0 オバデヤ書
Obadiah 1:1 オバデヤの預言 主ヱホバ、エドムにつきて斯いひたまふ 我らヱホバより出たる音信を聞り 一人の使者國々の民の中に遣されて云ふ 起よ我等起てエドムを攻撃んと
Obadiah 1:2 我汝をして國々の中において小き者たらしむ 汝は大に藐視らるるなり
Obadiah 1:3 山崖の巖屋に居り高き處に住む者よ 汝が心の傲慢なんぢを欺けり 汝心の中に謂ふ誰か我を地に曵くだすことを得んと
Obadiah 1:4 汝たとひ鷲のごとくに高く擧り星の間に巣を造るとも我そこより汝を曵くださん ヱホバこれを言たまふ
Obadiah 1:5 盜賊汝に來り 強盜夜なんぢに來り 竊ともその心に滿るときは止ざらんや 嗚呼なんぢは滅されて絶ゆ 葡萄を摘む者汝にいたるも尚 幾何を遺さざらんや
Obadiah 1:6 嗚呼エサウは搜されその隱しおける物は探りいださる
Obadiah 1:7 汝と盟約を結べる人々はみな汝を國境に逐やり汝と和好をなせる人々はみな汝を欺きて汝に勝ち汝の食物を食ふ者 等は汝の下に羂を設く 彼の中には穎悟あらず
Obadiah 1:8 ヱホバ言たまふ當日には我智慧ある者をヱドムより絶除き穎悟をエサウの山より絶除かざらんや
Obadiah 1:9 テマンよ汝の勇士は驚き懼れん 而して人みな終に殺されてエサウの山より絶除かるべし
Obadiah 1:10 汝はその兄弟ヤコブに暴虐を加へたるに因て恥辱なんぢを蒙はん 汝は永遠に至るまで絶るべし
Obadiah 1:11 汝が遠く離れて立をりし日即ち異邦人これが財寳を奪ひ他國人これが門に進み入りエルサレムのために籤を掣たる日には汝も彼らの一人のごとくなりき
Obadiah 1:12 汝は汝の兄弟の日すなはちその災禍の日を觀るべからず 又ユダの子孫の滅亡の日を喜ぶべからず その苦難の日には汝口を大きく開べからざるなり
Obadiah 1:13 我民の滅ぶる日には汝その門に入べからず其滅ぶる日には汝その患難を見べからず 又その滅ぶる日には汝その財寳に手をかく可らず
Obadiah 1:14 汝路の辻々に立て その逃亡者を斬べからず 其 患難の日にこれが遺る者を付すべからず
Obadiah 1:15 ヱホバの日萬國に臨むこと邇し 汝の爲せるごとく汝も爲られ汝の應報なんぢの首に歸すべし
Obadiah 1:16 汝等のわが聖山にて飮しごとく萬國の民も恒に飮ん 即ちみな飮かつ啜りて從前より有ざりし者のごとく成ん
Obadiah 1:17 シオン山には救はるる者等をりてその山聖所とならん またヤコブの家はその産業を獲ん
Obadiah 1:18 ヤコブの家は火となりヨセフの家は火燄となりエサウの家は藁とならん 即ち彼等これが上に燃てこれを焚ん エサウの家には遺る者一人も無にいたるべし ヱホバこれを言なり
Obadiah 1:19 南の人はエサウの山を獲 平地の人はペリシテを獲ん 又彼らはエフライムの地及びサマリヤの地を獲 べニヤミンはギレアデを獲ん
Obadiah 1:20 かの擄はれゆきしイスラエルの軍旅はカナン人に屬する地をザレパテまで取らん セパラデにあるエルサレムの俘擄人は南の邑々を獲ん
Obadiah 1:21 然る時に救者シオンの山に上りてエサウの山を鞫かん而して國はヱホバに歸すべし
Jonah 0:0 ヨナ書
Jonah 1:1 ヱホバの言アミタイの子ヨナに臨めりいはく
Jonah 1:2 起てかの大なる邑ニネベに往きこれを呼はり責よ そは其惡わが前に上り來ればなりと
Jonah 1:3 然るにヨナはヱホバの面をさけてタルシシへ逃れんと起てヨツパに下り行けるが機しもタルシシへ往く舟に遇ければその價値を給へヱホバの面をさけて偕にタルシシへ行んとてその舟に乗れり
Jonah 1:4 時にヱホバ大風を海の上に起したまひて烈しき颺風海にありければ舟は幾んど破れんとせり
Jonah 1:5 かかりしかば船夫恐れて各おのれの神を呼び又舟を輕くせんとてその中なる載荷を海に投すてたり 然るにヨナは舟の奧に下りゐて臥て酣睡せり
Jonah 1:6 船長來りて彼に云けるは汝なんぞかく酣睡するや起きて汝の神を呼べあるひは彼われらを眷顧て淪亡ざらしめんと
Jonah 1:7 かくて人衆互に云けるは此災の我儕にのぞめるは誰の故なるかを知んがため去來鬮を掣んと やがて鬮をひきしに鬮ヨナに當りければ
Jonah 1:8 みな彼に云けるはこの災禍なにゆゑに我らにのぞめるか請ふ告げよ 汝の業は何なるや 何處より來れるや 汝の國は何處ぞや 何處の民なるや
Jonah 1:9 ヨナ彼等にいひけるは我はヘブル人にして海と陸とを造りたまひし天の神ヱホバを畏るる者なり
Jonah 1:10 是に於て船夫甚だしく懼れて彼に云けるは汝なんぞ其事をなせしやと その人々は彼がヱホバの面をさけて逃れしなるを知れり 其はさきにヨナ彼等に告げたればなり
Jonah 1:11 遂に船夫彼にいひけるは我儕のために海を靜かにせんには汝に如何がなすべきや 其は海いよいよ甚だしく狂蕩たればなり
Jonah 1:12 ヨナ彼等に曰けるはわれを取りて海に投いれよ さらば海は汝等の爲に靜かにならん そはこの大なる颺風の汝等にのぞめるはわが故なるを知ればなり
Jonah 1:13 されど船夫は陸に漕もどさんとつとめたりしが終にあたはざりき 其は海かれらにむかひていよいよ烈しく蕩たればなり
Jonah 1:14 ここにおいて彼等ヱホバに呼はりて曰けるはヱホバよこひねがはくは此人の命の爲に我儕を滅亡したまふ勿れ 又罪なきの血をわれらに歸したまふなかれ そはヱホバよ汝 聖意にかなふところを爲し給へるなればなりと
Jonah 1:15 すなわちヨナを取りて海に投入たり しかして海のあるることやみぬ
Jonah 1:16 かかりしかばその人々おほいにヱホバを畏れヱホバに犧牲を獻げ誓願を立たり
Jonah 1:17 さてヱホバすでに大なる魚を備へおきてヨナを呑しめ給へり ヨナは三日三夜魚の腹の中にありき
Jonah 2:1 ヨナ魚の腹の中よりその神ヱホバに祈祷て
Jonah 2:2 曰けるは われ患難の中よりヱホバを呼びしに彼われこたへたまへり われ陰府の腹の中より呼はりしに汝わが聲を聽たまへり
Jonah 2:3 汝我を淵のうち海の中心に投いれたまひて海の水我を環り汝の波濤と巨浪すべて我上にながる
Jonah 2:4 われ曰けるは我なんぢの目の前より逐れたれども復汝の聖殿を望まん
Jonah 2:5 水われを環りて 魂にも及ばんとし淵我をとりかこみ海草わが頭に纒へり
Jonah 2:6 われ山の根基にまで下れり 地の關木いつも我うしろにありき しかるに我神ヱホバよ汝はわが命を深き穴より救ひあげたまへり
Jonah 2:7 わが靈魂 衷に弱りしとき我ヱホバをおもへり しかしてわが祈なんぢに至りなんぢの聖殿におよべり
Jonah 2:8 いつはりなる虚き者につかふるものは自己の恩たる者を棄つ
Jonah 2:9 されど我は感謝の聲をもて汝に獻祭をなし 又わが誓願をなんぢに償さん 救はヱホバより出るなりと
Jonah 2:10 ヱホバ其魚に命じたまひければヨナを陸に吐出せり
Jonah 3:1 ヱホバの言ふたたびヨナに臨めり 曰く
Jonah 3:2 起てかの大なる府ニネベに往きわが汝に命ずるところを宣よ
Jonah 3:3 ヨナすなはちヱホバの言に循ひて起てニネベに往り ニネベは甚だ大なる邑にしてこれをめぐるに三日を歴る程なり
Jonah 3:4 ヨナその邑に入はじめ一日路を行つつ呼はり曰けるは四十日を歴ばニネベは滅亡さるべし
Jonah 3:5 かかりしかばニネベの人々神を信じ斷食を宣れ大なる者より小き者に至るまでみな麻布を衣たり
Jonah 3:6 この言ニネベの王に聞えければ彼 位より起ち朝服を脱ぎ麻布を身に纒ふて灰の中に坐せり
Jonah 3:7 また王大臣とともに命をくだしてニネベ中に宣しめて曰く人も畜も牛も羊もともに何をも味ふべからず 又物をくらひ水を飮べからず
Jonah 3:8 人も畜も麻布をまとひ只管神に呼はり且おのおの其惡き途および其手に作す邪惡を離るべし
Jonah 3:9 或は神その聖旨をかへて悔い其烈しき怒を息てわれらを滅亡さざらん 誰かその然らざるを知んや
Jonah 3:10 神かれらの爲すところをかんがみ其あしき途を離るるを見そなはし彼等になさんと言し所の災禍を悔て之をなしたまはざりき
Jonah 4:1 ヨナこの事を甚だ惡しとして烈く怒り
Jonah 4:2 ヱホバに祈りて曰けるはヱホバよ我なほ本國にありし時斯あらんと曰しに非ずや さればこそ前にタルシシへ逃れたるなれ 其は我なんぢは矜恤ある神 憐憫あり 怒ること遲く慈悲深くして災禍を悔たまふものなりと知ばなり
Jonah 4:3 ヱホバよ願くは今わが命を取たまへ 其は生ることよりも死るかた我に善ればなり
Jonah 4:4 ヱホバ曰たまひけるは汝の怒る事いかで宣しからんや
Jonah 4:5 ヨナは邑より出てその東の方に居り己が爲に其處に一の小屋をしつらひその蔭の下に坐して府の如何に成行くかを見る
Jonah 4:6 ヱホバ神 瓢を備へこれをして發生てヨナの上を覆はしめたり こはヨナの首の爲に庇蔭をまうけてその憂を慰めんが爲なりき ヨナはこの瓢の木によりて甚だ喜べり
Jonah 4:7 されど神あくる日の夜明に虫をそなへて其ひさごを噛せたまひければ瓢は枯たり
Jonah 4:8 かくて日の出し時神暑き東風を備へ給ひ又日ヨナの首を照しければ彼よわりて心の中に死ることを願ひて言ふ 生ることよりも死るかた我に善し
Jonah 4:9 神またヨナに曰ひたまひけるは瓢の爲に汝のいかる事いかで宣しからんや 彼曰けるはわれ怒りて死るともよろし
Jonah 4:10 ヱホバ曰たまひけるは汝は勞をくはへず生育ざる此の一夜に生じて一夜に亡びし瓢を惜めり
Jonah 4:11 まして十二萬餘の右左を辨へざる者と許多の家畜とあるこの大なる府ニネベをわれ惜まざらんや
Micah 0:0 ミカ書
Micah 1:1 ユダの王ヨタム、アハズおよびヒゼキヤの代にモレシテ人ミカに臨めるヱホバの言是すなはちサマリアとエルサレムの事につきて彼が示されたる者なり
Micah 1:2 萬民よ聽け 地とその中の者よ耳を傾けよ 主ヱホバ汝らに對ひて證を立てたまはん 即ち主その聖殿より之を立たまふべし
Micah 1:3 視よヱホバその處より出てくだり地の高處を踏みたまはん
Micah 1:4 山は彼の下に融け谷は裂けたり 火の前なる蝋のごとく坡に流るる水の如し
Micah 1:5 是みなヤコブの咎の故イスラエルの家の罪のゆゑなり ヤコブの愆とは何か サマリヤにあらずや ユダの崇邱とは何か エルサレムにあらずや
Micah 1:6 是故に我サマリヤを野の石堆となし葡萄を植る處と爲し又その石を谷に投おとしその基を露さん
Micah 1:7 その石像はみな碎かれその獲たる價金はみな火にて焚れん 我その偶像をことごとく毀たん 彼妓女の價金よりこれを積たれば是はまた歸りて妓女の價金となるべし
Micah 1:8 我これがために哭き咷ばん 衣を脱ぎ裸體にて歩行ん 山犬のごとくに哭き駝鳥のごとくに啼ん
Micah 1:9 サマリヤの傷は醫すべからざる者にてすでにユダに至り我民の門エルサレムにまでおよべり
Micah 1:10 ガテに傳ふるなかれ 泣さけぶ勿れ ベテレアフラにて我塵の中に輾びたり
Micah 1:11 サピルに住る者よ 汝ら裸になり辱を蒙りて進みゆけ ザアナンに住る者は敢て出ず ベテエゼルのの哀哭によりて汝らは立處を得ず
Micah 1:12 マロテに住る者は己の幸福につきて思ひなやむ 其は災禍ヱホバより出てエルサレムの門に臨めばなり
Micah 1:13 ラキシに住る者よ馬に車をつなげ ラキシはシオンの女の罪の根本なり イスラエルの愆は汝の中に見ゆ
Micah 1:14 この故に汝モレセテガテに離別の饋物を與へよ アクジブの家々はイスラエルの王等におけること人を欺く溪川のごとくなるべし
Micah 1:15 マレシヤにすめる者よ 我また汝の地を獲べき者を汝に携へ往べし イスラエルの榮光アドラムに往ん
Micah 1:16 汝その悦ぶところの子等の故によりて汝の髪を剃おろせ 汝の首の剃し處を大きくして鷲のごとくにせよ 其は彼等擄へられて汝を離るればなり
Micah 2:1 その牀にありて不義を圖り惡事を工夫る者等には禍あるべし 彼らはその手に力あるが故に天亮におよべばこれを行ふ
Micah 2:2 彼らは田圃を貪りてこれを奪ひ家を貪りて是を取りまた人を虐げてその家を掠め人を虐げてその産業をかすむ
Micah 2:3 是故にヱホバかく言たまふ 視よ我此族にむかひて災禍を降さんと謀る 汝らはその頸を是より脱すること能はじ また首をあげて歩くこと能はざるべし 其時は災禍の時なればなり
Micah 2:4 その日には人汝らにつきて詩を作り悲哀の歌をもて悲哀て言ん 事既にいたれり 我等は悉く滅さる 彼わが民の産業を人に與ふ 如何なれば我よりこれを離すや 我儕の田圃を違逆者に分ち與ふ
Micah 2:5 然ば汝らヱホバの會衆の中には籤によりて繩をうつ者一人も有じ
Micah 2:6 預言する勿れ 彼らは預言す 彼らは是等の者等にむかひて預言せじ 恥辱彼らを離れざるべし
Micah 2:7 汝ヤコブの家と稱へらるる者よ ヱホバの氣短からんや ヱホバの行爲是のごとくならんや 我言は品行正直者の益とならざらんや
Micah 2:8 然るに我民は近頃起りて敵となれり 汝らは夫の戰爭を避て心配なく過るところの者等に就てその衣服の外衣を奪ひ
Micah 2:9 我民の婦女をその悦ぶところの家より逐いだしその子等より我の妝飾を永く奪ふ
Micah 2:10 起て去れ 是は汝らの安息の地にあらず 是は已に汚れたれば必ず汝らを滅さん 其滅亡は劇かるべし
Micah 2:11 人もし風に歩み謊言を宣べ我葡萄酒と濃酒の事につきて汝に預言せんと言ことあらば其人はこの民の預言者とならん
Micah 2:12 ヤコブよ我かならず汝をことごとく集へ 必ずイスラエルの遺餘者を聚めん 而して我之を同一に置てボヅラの羊のごとく成しめん 彼らは人數衆きによりて牧塲の中なる群のごとくにその聲をたてん
Micah 2:13 打破者かれらに先だちて登り彼ら遂に門を打敗り之を通りて出ゆかん 彼らの王その前にたちて進みヱホバその首に立たまふべし
Micah 3:1 我言ふヤコブの首領よイスラエルの家の侯伯よ 汝ら聽け公義は汝らの知べきことに非ずや
Micah 3:2 汝らは善を惡み惡を好み民の身より皮を剥ぎ骨より肉を剔り
Micah 3:3 我民の肉を食ひその皮を剥ぎその骨を碎きこれを切きざみて鍋に入る物のごとくし鼎の中にいるる肉のごとくす
Micah 3:4 然ば彼時に彼らヱホバに呼はるともヱホバかれらに應へたまはじ 却てその時には面を彼らに隱したまはん 彼らの行惡ければなり
Micah 3:5 我民を惑す預言者は齒にて噛べき物を受る時は平安あらんと呼はれども何をもその口に與へざる者にむかひては戰門の準備をなす ヱホバ彼らにつきて斯いひたまふ
Micah 3:6 然ば汝らは夜に遭べし 復異象を得じ 黒暗に遭べし 復卜兆を得じ 日はその預言者の上をはなれて沒りその上は晝も暗かるべし
Micah 3:7 見者は愧を抱き卜者は面を赧らめ皆共にその唇を掩はん 神の垂應あらざればなり
Micah 3:8 然れども我はヱホバの御靈によりて能力身に滿ち公義および勇氣衷に滿ればヤコブにその愆を示しイスラエルにその罪を示すことを得
Micah 3:9 ヤコブの家の首領等およびイスラエルの家の牧伯等公義を惡み一切の正直事を曲る者よ汝ら之を聽け
Micah 3:10 彼らは血をもてシオンを建て不義をもてエルサレムを建つ
Micah 3:11 その首領等は賄賂をとりて審判をなしその祭司等は値錢を取て教晦をなす 又その預言者等は銀子を取て占卜を爲しヱホバに倚頼みて云ふヱホバわれらと偕に在すにあらずや 然ば災禍われらに降らじと
Micah 3:12 是によりてシオンは汝のゆゑに田圃となりて耕へされエルサレムは石堆となり宮の山は樹の生しげる高處とならん
Micah 4:1 末の日にいたりてヱホバの家の山諸の山の巓に立ち諸の嶺にこえて高く聳へ萬民河のごとく之に流れ歸せん
Micah 4:2 即ち衆多の民來りて言ん 去來我儕ヱホバの山に登りヤコブの神の家にゆかん ヱホバその道を我らに教へて我らにその路を歩ましめたまはん 律法はシオンより出でヱホバの言はエルサレムより出べければなり
Micah 4:3 彼衆多の民の間を鞫き強き國を規戒め遠き處にまでも然したまふべし 彼らはその劍を鋤に打かへその鎗を鎌に打かへん 國と國とは劍を擧て相攻めず また重て戰爭を習はじ
Micah 4:4 皆その葡萄の樹の下に坐しその無花果樹の下に居ん 之を懼れしむる者なかるべし 萬軍のヱホバの口之を言ふ
Micah 4:5 一切の民はみな各々その神の名によりて歩む 然れども我らはわれらの神ヱホバの名によりて永遠に歩まん
Micah 4:6 ヱホバ言たまふ 其日には我かの足蹇たる者を集へかの散されし者および我が苦しめし者を聚め
Micah 4:7 その足蹇たる者をもて遺餘民となし遠く逐やられたりし者をもて強き民となさん 而してヱホバ、シオンの山において今より永遠にこれが王とならん
Micah 4:8 羊樓シオンの女の山よ最初の權汝に歸らん 即ちエルサレムの女の國祚なんぢに歸るべし
Micah 4:9 汝なにとて喚叫ぶや 汝の中に王なきや 汝の議者絶果しや 汝は産婦の如くに痛苦を懷くなり
Micah 4:10 シオンの女よ産婦のごとく劬勞て産め 汝は今邑を出て野に宿りバビロンに往ざるを得ず 彼處にて汝救はれん ヱホバ汝を彼處にて汝の敵の手より贖ひ取り給ふべし
Micah 4:11 今許多の國民あつまりて汝におしよせて言ふ 願くはシオンの汚されんことを 我ら目にシオンを觀てなぐさまんと
Micah 4:12 然ながら彼らはヱホバの思念を知ずまたその御謀議を曉らず ヱホバ麥束を打塲にあつむるごとくに彼らを聚め給へり
Micah 4:13 シオンの女よ起てこなせ 我なんぢの角を鐵にし汝の蹄を銅にせん 汝許多の國民を打碎くべし 汝かれらの掠取物をヱホバに獻げ彼らの財産を全地の主に奉納べし
Micah 5:1 軍隊の女よ今なんぢ集りて隊をつくれ 敵われらを攻囲み杖をもてイスラエルの士師の頬を撃つ
Micah 5:2 ベテレヘム、エフラタ汝はユダの郡中にて小き者なり 然れどもイスラエルの君となる者汝の中より我ために出べし その出る事は古昔より永遠の日よりなり
Micah 5:3 是故に産婦の産おとすまで彼等を付しおきたまはん 然る後その遺れる兄弟イスラエルの子孫とともに歸るべし
Micah 5:4 彼はヱホバの力に由りその神ヱホバの名の威光によりて立てその群を牧ひ之をして安然に居しめん 今彼は大なる者となりて地の極にまでおよばん
Micah 5:5 彼は平和なり アッスリヤ人われらの國に入り我らの宮殿を踏あらさんとする時は我儕七人の牧者八人の人君を立てこれに當らん
Micah 5:6 彼ら劍をもてアッスリヤの地をほろぼしニムロデの地の邑々をほろぼさん アッスリヤの人我らの地に攻いり我らの境を踏あらす時には彼その手より我らを救はん
Micah 5:7 ヤコブの遺餘者は衆多の民の中に在こと人に頼ら世の人を俟ずしてヱホバより降る露の如く青草の上にふりしく雨の如くならん
Micah 5:8 ヤコブの遺餘者の國々にをり衆多の民の中にをる樣は林の獸の中に獅子の居るごとく羊の群の中に猛き獅子の居るごとくならん その過るときは踏みかつ裂ことをなす救ふ者なし
Micah 5:9 望らくは汝の手汝が諸の敵の上にあげられ汝がもろもろの仇ことごとく絶れんことを
Micah 5:10 ヱホバ言たまふ其日には我なんぢの馬を汝の中より絶ち汝の車を毀ち
Micah 5:11 汝の國の邑々を絶し汝の一切の城をことごとく圮さん
Micah 5:12 我また汝の手より魔術を絶ん 汝の中に卜筮師無にいたるべし
Micah 5:13 我なんぢの彫像および柱像を汝の中より絶ん 汝の手にて作れる者を汝重て拜むこと無るべし
Micah 5:14 我また汝のアシラ像を汝の中より抜たふし汝の邑々を滅さん
Micah 5:15 而して我忿怒と憤恨をもてその聽從はざる國民に仇を報いん
Micah 6:1 請ふ汝らヱホバの宣まふところを聽け 汝起あがりて山の前に辨爭へ 崗に汝の聲を聽しめよ
Micah 6:2 山々よ地の易ることなき基よ 汝らヱホバの辨爭を聽け ヱホバその民と辨爭を爲しイスラエルと論ぜん
Micah 6:3 我民よ我何を汝になししや 何において汝を疲労たるや 我にむかひて證せよ
Micah 6:4 我はエジプトの國より汝を導きのぼり奴隷の家より汝を贖ひいだしモーセ、アロンおよびミリアムを遣して汝に先だたしめたり
Micah 6:5 我民よ請ふモアブの王バラクが謀りし事およびベオルの子バラムがこれに應へし事を念ひシツテムよりギルガルにいたるまでの事等を念へ 然らば汝ヱホバの正義を知ん
Micah 6:6 我ヱホバの前に何をもちゆきて高き神を拜せん 燔祭の物および當歳の犢をもてその御前にいたるべきか
Micah 6:7 ヱホバ數千の牡羊萬流の油を悦びたまはんか 我愆のためにわが長子を獻げんか 我靈魂の罪のために我身の産を獻げんか
Micah 6:8 人よ彼さきに善事の何なるを汝に告たり ヱホバの汝に要めたまふ事は唯正義を行ひ憐憫を愛し謙遜りて汝の神とともに歩む事ならずや
Micah 6:9 ヱホバの聲邑にむかひて呼はる 智慧ある者はなんぢの名を仰がん 汝ら笞杖および之をおくらんと定めし者に聽け
Micah 6:10 惡人の家に猶惡財ありや 詛ふべき縮小たる升ありや
Micah 6:11 我もし正からざる權衡を用ひ袋に僞の碼子をいれおかば爭で潔からんや
Micah 6:12 その富る人は強暴にて充ち其居民は謊言を言ひその舌は口の中にて欺くことを爲す
Micah 6:13 是をもて我も汝を撃て重傷を負はせ汝の罪のために汝を滅す
Micah 6:14 汝は食ふとも飽ず腹はつねに空ならん 汝は移すともつひに拯ふことを得じ 汝が拯ひし者は我これを劍に付すべし
Micah 6:15 汝は種播とも刈ることあらず 橄欖を踐ともその油を身に抹ることあらず 葡萄を踐ともその酒を飮むことあらじ
Micah 6:16 汝らはオムリの法度を守りアハブの家の一切の行爲を行ひて彼等の謀計に遵ふ 是は我をして汝を荒さしめ且その居民を胡盧となさしめんが爲なり 汝らはわが民の恥辱を任べし
Micah 7:1 我は禍なるかな 我の景况は夏の菓物を採る時のごとく遺れる葡萄を斂むる時に似たり 食ふべき葡萄あること無く我が心に嗜む初結の無花果あること無し
Micah 7:2 善人地に絶ゆ 人の中に直き者なし 皆血を流さんと伏て伺ひ各々網をもてその兄弟を獵る
Micah 7:3 兩手は惡を善なすに急がし 牧伯は要求め裁判人は賄賂を取り力ある人はその心の惡き望を言あらはし斯共にその惡をあざなひ合す
Micah 7:4 彼らの最も善き者も荊棘のごとく最も直き者も刺ある樹の垣より惡し 汝の觀望人の日すなはち汝の刑罰の日いたる 彼らの中に今混亂あらん
Micah 7:5 汝ら伴侶を信ずる勿れ 朋友を恃むなかれ 汝の懐に寢る者にむかひても汝の口の戸を守れ
Micah 7:6 男子は父を藐視め女子は母の背き媳は姑に背かん 人の敵はその家の者なるべし
Micah 7:7 我はヱホバを仰ぎ望み我を救ふ神を望み俟つ 我神われに聽たまふべし
Micah 7:8 我敵人よ我につきて喜ぶなかれ 我仆るれば興あがる 幽暗に居ればヱホバ我の光となりたまふ
Micah 7:9 ヱホバわが訴訟を理し我ために審判をおこなひたまふまで我は忍びてその忿怒をかうむらん 其は我これに罪を得たればなり ヱホバつひに我を光明に携へいだし給はん 而して我ヱホバの正義を見ん
Micah 7:10 わが敵これを見ん 汝の神ヱホバは何處にをるやと我に言る者 恥辱をかうむらん 我かれを目に見るべし 彼は街衢の泥のごとくに踏つけらるべし
Micah 7:11 汝の垣を築く日いたらん 其日には法度遠く徙るべし
Micah 7:12 その日にはアッスリヤよりエジプトの邑々より人々汝に來りエジプトより河まで海より海まで山より山までの人々汝に來り就ん
Micah 7:13 その日地はその居民の故によりて荒はつべし 是その行爲の果報なり
Micah 7:14 汝の杖をもて汝の民即ち獨離れてカルメルの中の林にをる汝の産業の羊を牧養ひ之をして古昔の日のごとくバシヤンおよびギレアデにおいて草を食はしめたまへ
Micah 7:15 汝がエジプトの國より出來し日のごとく我ふしぎなる事等を彼にしめさん
Micah 7:16 國々の民見てその一切の能力を恥ぢその手を口にあてん その耳は聾となるべし
Micah 7:17 彼らは蛇のごとくに塵を餂め地に匍ふ者の如くにその城より振ひて出で戰慄て我らの神ヱホバに詣り汝のために懼れん
Micah 7:18 何の神か汝に如ん 汝は罪を赦しその産業の遺餘者の愆を見過したまふなり 神は憐憫を悦ぶが故にその震怒を永く保ちたまはず
Micah 7:19 ふたたび顧みて我らを憐み我らの愆を踏つけ我らの諸の罪を海の底に投しづめたまはん
Micah 7:20 汝古昔の日われらの先祖に誓ひたりしその眞實をヤコブに賜ひ憐憫をアブラハムに賜はん
Nahum 0:0 ナホム書
Nahum 1:1 ニネベに關る重き預言 エルコシ人ナホムの異象の書
Nahum 1:2 ヱホバは妬みかつ仇を報ゆる神 ヱホバは仇を報ゆる者また忿怒の主 ヱホバは己に逆らふ者に仇を報い己に敵する者にむかひて憤恨を含む者なり
Nahum 1:3 ヱホバは怒ることの遲く能力の大なる者 また罰すべき者をば必ず赦すことを爲ざる者 ヱホバの道は旋風に在り 大風に在り 雲はその足の塵なり
Nahum 1:4 彼海を指斥て之を乾かし河々をしてことごとく涸しむ バシヤン及びカルメルの草木は枯れレバノンの花は凋む
Nahum 1:5 彼の前には山々ゆるぎ嶺々溶く 彼の前には地墳上り世界およびその中に住む者皆ふきあげらる
Nahum 1:6 誰かその憤恨に當ることを得ん 誰かその燃る忿怒に堪ることを得ん 其震怒のそそぐこと火のごとし 巖も之がために裂く
Nahum 1:7 ヱホバは善なる者にして患難の時の要害なり 彼は己に倚頼む者を善知たまふ
Nahum 1:8 彼みなぎる洪水をもてその處を全く滅し己に敵する者を幽暗處に逐やりたまはん
Nahum 1:9 汝らヱホバに對ひて何を謀るや 彼全く滅したまふべし 患難かさねて起らじ
Nahum 1:10 彼等むすびからまれる荊棘のごとくなるとも酒に浸りをるとも乾ける藁のごとくに焚つくさるべし
Nahum 1:11 ヱホバに對ひて惡事を謀る者一人汝の中より出て邪曲なる事を勸む
Nahum 1:12 ヱホバかく言たまふ 彼等全くしてその數夥多しかるとも必ず芟たふされて皆絶ん 我前にはなんじを苦めたれども重て汝を苦めじ
Nahum 1:13 いま我かれが汝に負せし軛を碎き汝の縛を切はなすべし
Nahum 1:14 ヱホバ汝の事につきて命令を下す 汝の名を負ふ者再び播るること有じ 汝の神々の室より我雕像および鑄像を除き絶べし 我汝の墓を備へん 汝輕ければなり
Nahum 1:15 嘉音信を傳ふる者の脚山の上に見ゆ 彼平安を宣ぶ ユダよ汝の節筵を行ひ汝の誓願を果せ 邪曲なる者重て汝の中を通らざるべし 彼は全く絶る
Nahum 2:1 撃破者攻のぼりて汝の前に至る 汝城を守り路を窺ひ腰を強くし汝の力を大に強くせよ
Nahum 2:2 ヱホバはヤコブの榮を舊に復してイスラエルの榮のごとくしたまふ 其は掠奪者これを掠めその葡萄蔓を壞ひたればなり
Nahum 2:3 その勇士は楯を紅にしその軍兵は紅に身を甲ふ 其行伍を立つる時には戰車の鐵 灼燦て火のごとし 鎗また閃めきふるふ
Nahum 2:4 戰車街衢に狂ひ奔り大路に推あふ 其形状火炬のごとく其疾く馳すること電光の如し
Nahum 2:5 彼その將士を憶ひいだす 彼らはその途にて躓き仆れその石垣に奔ゆき大楯を備ふ
Nahum 2:6 河々の門啓け宮消うせん
Nahum 2:7 この事定まれり 彼は裸にせられて擄はれゆきその宮女胸を打て鴿のごとくに啼くべし
Nahum 2:8 ニネベはその建し日より以來水の滿る池に似たりしがその民今は逃奔る 止れ止れと呼ども後を顧みる者なし
Nahum 2:9 白銀を奪へよ 黄金を奪へよ その寳物限なく諸の貴とき噐用夥多し
Nahum 2:10 滅亡たり 空虚なれり 荒果たり 心は消え膝は慄ひ腰には凡て劇しき痛あり 面はみな色を失ふ
Nahum 2:11 獅子の穴は何處ぞや 少き獅子の物を食ふ處は何處ぞや 雄獅子雌獅子その小獅子とともに彼處に歩むに之を懼れしむる者なし
Nahum 2:12 雄獅子は小獅子のために物を噛ころし雌獅子の爲に物をくびり殺しその掠獲たる物をもて穴に充しその裂殺しし物をもて住所に滿す
Nahum 2:13 萬軍のヱホバ言たまふ 視よ我なんぢに臨む 我なんぢの戰車を焚て煙となすべし 汝の少き獅子はみな劍の殺す所とならん 我また汝の獲物を地より絶べし 汝の使者の聲かさねて聞ゆること無らん
Nahum 3:1 禍なるかな血を流す邑 その中には全く詭譎および暴行充ち掠め取ること息まず
Nahum 3:2 鞭の音あり輪の轟く音あり 馬は躍り跳ね車は輾り行く
Nahum 3:3 騎兵馳のぼり劍きらめき鎗ひらめく 殺さるる者夥多しくして死屍山を爲し死骸限なし 皆死屍に躓きて倒る
Nahum 3:4 是はかの魔術の主なる美しき妓女多く淫行を行ひその淫行をもて諸國を奪ひその魔術をもて諸族を惑したるに因てなり
Nahum 3:5 萬軍のヱホバ言たまふ 視よ我なんぢに臨む 我なんぢの裳裾を掲げて面の上にまで及ぼし汝の陰所を諸民に見し汝の羞る所を諸國に見すべし
Nahum 3:6 我また穢はしき物を汝の上に投かけて汝を辱しめ汝をして賽物とならしめん
Nahum 3:7 凡て汝を見る者はみな汝を避て奔り去りニネベは亡びたりと言ん 誰か汝のために哀かんや 何處よりして我なんぢを弔ふ者を尋ね得んや
Nahum 3:8 汝あにノアモンに愈らんや ノアモンは河々の間に立ち水をその周圍に環らし海をもて壕となし海をもて垣となせり
Nahum 3:9 かつその勢力たる者はエテオピア人およびエジプト人などにして限あらず フテ人ルビ人等汝を助けたりき
Nahum 3:10 然るに是も俘囚となりて擄はれてゆきその子女は一切の衢の隅々にて投付られて碎け又その尊貴者は籤にて分たれ其大なる者はみな鏈に繋がれたり
Nahum 3:11 汝もまた酔せられて終に隱れん 汝もまた敵を避て逃るる處を尋ね求めん
Nahum 3:12 汝の城々はみな初に結びし果のなれる無花果樹のごとし 之を撼がせばその果落て食はんとする者の口にいる
Nahum 3:13 汝の中にある民は婦人のごとし 汝の地の門はみな汝の敵の前に廣く開きてあり 火なんぢの關を焚ん
Nahum 3:14 汝水を汲て圍まるる時の用に備へ汝の城々を堅くし泥の中に入て踐て石灰を作りかつ瓦焼窰を修理へよ
Nahum 3:15 其處にて火汝を焼き劍なんぢを斬らん 其なんぢを滅すこと吸蝗のごとくなるべし 汝吸蝗のごとく數多からば多かれ 汝群蝗のごとく數多からば多かれ
Nahum 3:16 汝はおのれの商賣を空の星よりも多くせり 吸蝗掠めて飛さる
Nahum 3:17 汝の重臣は群蝗のごとく汝の軍長は蝗の群のごとし 寒き日には垣に巣窟を構へ日出きたれば飛て去る その在る處を知る者なし
Nahum 3:18 アッスリヤの王よ汝の牧者は睡り汝の貴族は臥す 又なんぢの民は山々に散さる 之を聚むる者なし
Nahum 3:19 汝の傷は愈ること無し 汝の創は重し 汝の事を聞およぶ者はみな汝の故によりて手を拍ん 誰か汝の惡行を恒に身に受ざる者やある
Habakkuk 0:0 ハバクク書
Habakkuk 1:1 預言者ハバククが示を蒙りし預言の重負
Habakkuk 1:2 ヱホバよ我呼はるに汝の民に聽たまはざること何時までぞや 我なんぢにむかひて強暴を訴ふれども汝は助けたまはざるなり
Habakkuk 1:3 汝なにとて我に害惡を見せたまふや 何とて艱難を瞻望居たまふや 奪掠および強暴わが前に行はる且爭論あり鬪諍おこる
Habakkuk 1:4 是によりて律法弛み公義正しく行はれず惡き者義しき者を圍むが故に公義曲りて行はる
Habakkuk 1:5 汝ら國々の民の中を望み觀駭け 汝らの日に我一の事を爲ん 之を告る者あるとも汝ら信ぜざらん
Habakkuk 1:6 視よ我カルデヤカ人を興さんとす 是すなはち猛くまた荒き國民にして地を縦横に行めぐり 己の有ならざる住處を奪ふ者なり
Habakkuk 1:7 是は懼るべく又驚くべし 其是非威光は己より出づ
Habakkuk 1:8 その馬は豹よりも迅く夜求食する豺狼よりも疾し 其騎兵は跑まはる 即ちその騎兵は遠き處より來る 其飛ことは物を食はんと急ぐ鷲のごとし
Habakkuk 1:9 是は全く強暴のために來り 其面を前にむけて頻に進むその俘虜を寄集むることは砂のごとし
Habakkuk 1:10 是は王等を侮り君等を笑ひ諸の城々を笑ひ土を積あげてこれを取ん
Habakkuk 1:11 斯て風のごとくに行めぐり進みわたりて罪を獲ん 是は己の力を神とす
Habakkuk 1:12 ヱホバわが神わが聖者よ 汝は永遠より在すに非ずや 我らは死なじ ヱホバよ汝は是を審判のために設けたまへり 磐よ汝は是を懲戒のために立たまへり
Habakkuk 1:13 汝は目清くして肯て惡を觀給はざる者 肯て不義を視たまはざる者なるに何ゆゑ邪曲の者を觀すて置たまふや 惡き者を己にまさりて義しき者を呑噬ふに何ゆゑ汝黙し居たまふや
Habakkuk 1:14 汝は人をして海の魚のごとくならしめ君あらぬ昆蟲のごとくならしめたまふ
Habakkuk 1:15 彼鈎をもて之を盡く釣あげ網をもて之を寄せ集め引網をもて之を捕ふるなり 是に因て彼歡び樂しむ
Habakkuk 1:16 是故に彼その網に犠牲を獻げその引網に香を焚く 其は之がためにその分肥まさりその食饒になりたればなり
Habakkuk 1:17 然ど彼はその網を傾けつつなほたえず國々の人を惜みなく殺すことをするならんか
Habakkuk 2:1 我わが觀望所に立ち戍樓に身を置ん 而して我候ひ望みて其われに何と宣まふかを見 わが訴言に我みづから何と答ふべきかを見ん
Habakkuk 2:2 ヱホバわれに答へて言たまはく 此黙示を書しるして之を板の上に明白に鐫つけ奔りながらも之を讀むべからしめよ
Habakkuk 2:3 この黙示はなほ定まれる時を俟てその終を急ぐなり 僞ならず 若し遲くあらば待べし 必ず臨むべし 濡滯りはせじ
Habakkuk 2:4 視よ彼の心は高ぶりその中にありて直からず 然ど義き者はその信仰によりて活べし
Habakkuk 2:5 かの酒に耽る者は邪曲なる者なり 驕傲者にして安んぜず彼はその情慾を陰府のごとくに濶くす また彼は死のごとし 又足ことを知ず 萬國を集へて己に歸せしめ萬民を聚めて己に就しむ
Habakkuk 2:6 其等の民みな諺語をもて彼を評し嘲弄の詩歌をもて彼を諷せざらんや 即ち言ん己に屬せざる物を積累ぬる者は禍なるかな 斯て何の時にまでおよばんや 嗟かの質物の重荷を身に負ふ者よ
Habakkuk 2:7 汝を噬む者にはかに興らざらんや 汝を惱ます者醒出ざらんや 汝は之に掠めらるべし
Habakkuk 2:8 汝衆多の國民を掠めしに因てその諸の民の遺れる者なんぢを掠めん 是人の血を流ししに因る また強暴を地上に行ひて邑とその内に住る一切の者とに及ぼせしに因るなり
Habakkuk 2:9 災禍の手を免れんが爲に高き處に巣を構へんとして己の家に不義の利を取る者は禍なるかな
Habakkuk 2:10 汝は事を圖りて己の家に恥辱を來らせ衆多の民を滅して自ら罪を取れり
Habakkuk 2:11 石垣の石叫び建物の梁これに應へん
Habakkuk 2:12 血をもて邑を建て惡をもて城を築く者は禍なるかな
Habakkuk 2:13 諸の民は火のために勞し諸の國人は虚空事のために疲る 是は萬軍のヱホバより出る者ならずや
Habakkuk 2:14 ヱホバの榮光を認むるの知識地上に充て宛然海を水の掩ふが如くならん
Habakkuk 2:15 人に酒を飮せ己の忿怒を酌和へて之を酔せ而して之が陰所を見んとする者は禍なるかな
Habakkuk 2:16 汝は榮譽に飽ずして羞辱に飽り 汝もまた飮て汝の不割禮を露はせ ヱホバの右の手の杯汝に巡り來るべし 汝は汚なき物を吐て榮耀を掩はん
Habakkuk 2:17 汝がレバノンに爲たる強暴と獣を懼れしめしその殲滅とは汝の上に報いきたるべし 是人の血を流ししに因りまた強暴を地上に行ひて邑とその内に住る一切の者とに及ぼししに因るなり
Habakkuk 2:18 雕像はその作者これを刻みたりとて何の益あらんや 又鑄像および僞師は語はぬ偶像なればその像の作者これを作りて頼むとも何の益あらんや
Habakkuk 2:19 木にむかひて興ませと言ひ 語はぬ石にむかひて起たまへと言ふ者は禍なるかな 是あに教晦を爲んや 視よ是は金銀に着せたる者にてその中には全く氣息なし
Habakkuk 2:20 然りといへどもヱホバはその聖殿に在ますぞかし 全地その御前に黙すべし
Habakkuk 3:1 シギヨノテに合せて歌へる預言者ハバククの祈禱
Habakkuk 3:2 ヱホバよ我なんぢの宣ふ所を聞て懼る ヱホバよこの諸の年の中間に汝の運動を活齑かせたまへ 此諸の年の間に之を顯現したまへ 怒る時にも憐憫を忘れ給はざれ
Habakkuk 3:3 神テマンより來り聖者パラン山より臨みたまふ [セラ 其榮光諸天を蔽ひ其讃美世界に徧ねし
Habakkuk 3:4 その朗耀は日のごとく光線その手より出づ 彼處はその權能の隱るる所なり
Habakkuk 3:5 疫病その前に先だち行き熱病その足下より出づ
Habakkuk 3:6 彼立て地を震はせ觀まはして萬國を戰慄しめたまふ 永久の山は崩れ常磐の岡は陷る 彼の行ひたまふ道は永久なり
Habakkuk 3:7 我觀るにクシヤンの天幕は艱難に罹りミデアンの地の幃幕は震ふ
Habakkuk 3:8 ヱホバよ汝は馬を驅り汝の拯救の車に乗りたまふ 是河にむかひて怒りたまふなるか 河にむかひて汝の忿怒を發したまふなるか 海にむかひて汝の憤恨を洩し給ふなるか
Habakkuk 3:9 汝の弓は全く嚢を出で杖は言をもて言かためらる [セラ 汝は地を裂て河となし給ふ
Habakkuk 3:10 山々汝を見て震ひ洪水溢れわたり淵聲を出してその手を高く擧ぐ
Habakkuk 3:11 汝の奔る矢の光のため汝の鎗の電光のごとき閃燦のために日月その住處に立とどまる
Habakkuk 3:12 汝は憤ほりて地を行めぐり 怒りて國民を踏つけ給ふ
Habakkuk 3:13 汝は汝の民を救んとて出きたり 汝の膏沃げる者を救はんとて臨みたまふ 汝は惡き者の家の頭を碎きその石礎を露はして頸におよぼし給へり [セラ
Habakkuk 3:14 汝は彼の鎗をもてその將帥の首を刺とほし給ふ 彼らは我を散さんとて大風のごとくに進みきたる 彼らは貧き者を密に呑ほろぼす事をもてその樂とす
Habakkuk 3:15 汝は汝の馬をもて海を乗とほり大水の逆卷ところを渉りたまふ
Habakkuk 3:16 我聞て膓を斷つ 我唇その聲によりて震ふ 腐朽わが骨に入り我下體わななく 其は我患難の日の來るを待ばなり 其時には即ち此民に攻寄る者ありて之に押逼らん
Habakkuk 3:17 その時には無花果の樹は花咲ず葡萄の樹には果ならず 橄欖の樹の産は空くなり 田圃は食糧を出さず圏には羊絶え小屋には牛なかるべし
Habakkuk 3:18 然ながら我はヱホバによりて樂み わが拯救の神によりて喜ばん
Habakkuk 3:19 主ヱホバは我力にして我足を鹿の如くならしめ 我をして我高き處を歩ましめ給ふ 伶長これを我琴にあはすべし
Zephaniah 0:0 ゼパニヤ書
Zephaniah 1:1 アモンの子ユダの王ヨシヤの世にゼパニヤに臨めるヱホバの言 ゼパニヤはクシの子 クシはゲダリアの子 ゲダリアはアマリヤの子 アマリヤはヒゼキヤの子なり
Zephaniah 1:2 ヱホバ言たまふ われ地の面よりすべての物をはらひのぞかん
Zephaniah 1:3 われ人と獣畜をほろぼし空の鳥 海の魚および躓礙になる者と惡人とを滅さん 我かならず地の面より人をほろぼし絶ん ヱホバこれを言ふ
Zephaniah 1:4 我ユダとエルサレムの一切の居民との上に手を伸ん 我 この處よりかの漏のこれるバアルを絶ちケマリムの名を祭司と與に絶ち
Zephaniah 1:5 また屋上にて天の衆軍を拜む者ヱホバに誓を立てて拜みながらも亦おのれの王を指て誓ふことをする者
Zephaniah 1:6 ヱホバに悖り離るる者ヱホバを求めず尋ねざる者を絶ん
Zephaniah 1:7 汝 主ヱホバの前に黙せよ そはヱホバの日近づきヱホバすでに犠牲を備へその招くべき者をさだめ給ひたればなり
Zephaniah 1:8 ヱホバの犠牲の日に我もろもろの牧伯と王の子等および凡て異邦の衣服を着る者を罰すべし
Zephaniah 1:9 その日には我また凡て閾をとびこえ強暴と詭譎をもて獲たる物をおのが主の家に滿す者等を罰せん
Zephaniah 1:10 ヱホバ曰たまはく その日には魚の門より號呼の聲おこり下邑より喚く聲おこり山々より大なる敗壞おこらん
Zephaniah 1:11 マクテシの民よ汝ら叫べ 其は商賣する民 悉くほろび銀を擔ふ者 悉く絶たればなり
Zephaniah 1:12 その時はわれ燈をもちてエルサレムの中を尋ねん 而して滓の上に居着て心の中にヱホバは福をもなさず災をもなさずといふものを罰すべし
Zephaniah 1:13 かれらの財寳は掠められ彼らの家は荒果てん かれら家を造るともその中に住ことを得ず 葡萄を植るともその葡萄酒を飮ことを得ざるべし
Zephaniah 1:14 ヱホバの大なる日近づけり 近づきて速かに來る 聽よ是ヱホバの日なるぞ 彼處に勇士のいたく叫ぶあり
Zephaniah 1:15 その日は忿怒の日 患難および痛苦の日 荒かつ亡ぶるの日 黒暗またをぐらき日 濃き雲および黒雲の日
Zephaniah 1:16 箛をふき鯨聲をつくり堅き城を攻め高き櫓を攻るの日なり
Zephaniah 1:17 われ人々に患難を蒙らせて盲者のごとくに惑ひあるかしめん 彼らヱホバにむかひて罪を犯したればなり 彼らの血は流されて塵のごとくになり彼らの肉は捨られて糞土のごとくなるべし
Zephaniah 1:18 かれらの銀も金もヱホバの烈き怒の日には彼らを救ふことあたはず 全地その嫉妬の火に呑るべし 即ちヱホバ地の民をことごとく滅したまはん 其事まことに速なるべし
Zephaniah 2:1 汝等羞恥を知ぬ民早く自ら内に省みよ
Zephaniah 2:2 夫日は糠粃の如く過ぎさる 然ば詔言のいまだ行はれざる先ヱホバの烈き怒のいまだ汝等に臨まざる先ヱホバの忿怒の日のいまだ汝等にきたらざるさきに自ら省みるべし
Zephaniah 2:3 すべてヱホバの律法を行ふ斯地の遜るものよ 汝等ヱホバを求め公義を求め謙遜を求めよ 然すれば汝等ヱホバの忿怒の日に或は匿さるることあらん
Zephaniah 2:4 夫ガザは棄られアシケロンは荒はてアシドドは白晝に逐はらはれエクロンは抜さらるべし
Zephaniah 2:5 海邊に住る者およびケレテの國民は禍なるかな ベリシテ人の國カナンよ ヱホバの言なんぢらを攻む 我なんぢを滅して住者なきに至らしむべし
Zephaniah 2:6 海邊は必ず牧塲となり牧者の洞および羊の牢そこに在ん
Zephaniah 2:7 此地はユダの家の殘餘れる者に歸せん 彼ら其處にて草飼ひ暮に至ればアシケロンの家に臥ん そは彼らの神ヱホバかれらを顧みその俘囚を歸したまふべければなり
Zephaniah 2:8 我すでにモアブの嘲弄とアンモンの子孫の罵言を聞けり 彼らはわが民を嘲り自ら誇りて之が境界を侵せしなり
Zephaniah 2:9 是故に萬軍のヱホバ、イスラエルの神 言たまふ 我は活く 必ずモアブはソドムのごとくになりアンモンの子孫はゴモラのごとくにならん 是は共に蕁麻の蔓延る處となり鹽坑の地となりて長久に荒はつべし 我民の遺れる者かれらを掠めわが國民の餘されたる者かれらを獲ん
Zephaniah 2:10 この事の彼らに臨むはその傲慢による 即ち彼ら萬軍のヱホバの民を嘲りて自ら誇りたればなり
Zephaniah 2:11 ヱホバは彼等に對ひては畏ろしくましまし地の諸の神や饑し滅したまふなり 諸の國の民おのおのその處より出てヱホバを拜まん
Zephaniah 2:12 エテオピア人よ汝等もまたわが劍にかかりて殺さる
Zephaniah 2:13 ヱホバ北に手を伸てアッスリヤを滅したまはん 亦ニネベを荒して荒野のごとき旱地となしたまはん
Zephaniah 2:14 而して畜の群もろもろの類の生物その中に伏し鸅鸕および刺猬其柱の頂に住み囀る者の聲 窓の内にきこえ荒落たる物 閾の上に積り香柏の板の細工 露顯になるべし
Zephaniah 2:15 是邑は驕り傲ぶりて安泰に立をり 唯我あり 我の外には誰もなしと心の中に言つつありし者なるが斯も荒はてて畜獣の臥す處となる者かな 此を過る者はみな嘶きて手をふるはん
Zephaniah 3:1 此暴虐を行ふ悖りかつ汚れたる邑は禍なるかな
Zephaniah 3:2 是は聲を聽いれず教晦を承ずヱホバに依頼まずおのれの神に近よらず
Zephaniah 3:3 その中にをる牧伯等は吼る獅子の如くその審士は明旦までに何をも遺さざる 夜求食する狼のごとし
Zephaniah 3:4 その預言者は傲りかつ詐る人なり その祭司は聖物を汚し律法を破ることをなせり
Zephaniah 3:5 その中にいますヱホバは義くして不義を行なひたまはず朝な朝な己の公義を顯して缺ることなし 然るに不義なる者は恥を知ず
Zephaniah 3:6 我國々の民を滅したればその櫓は凡て荒たり 我これが街を荒凉れしめたれば往來する者なし その邑々は滅びて人なく住む者なきに至れり
Zephaniah 3:7 われ前に言り 汝ただ我を畏れまた警教を受べし 然らばその住家は我が凡て之につきて定めたる所の如くに滅されざるべしと 然るに彼等は夙に起て己の一切の行状を壞れり
Zephaniah 3:8 ヱホバ曰たまふ 是ゆゑに汝らわが起て獲物をする日いたるまで我を俟て 我もろもろの民を集へ諸の國を聚めてわが憤恨とわが烈き忿怒を盡くその上にそそがんと思ひ定む 全地はわが嫉妬の火に焼ほろぼさるべし
Zephaniah 3:9 その時われ國々の民に清き唇をあたへ彼らをして凡てヱホバの名を呼しめ心をあはせて之につかへしめん
Zephaniah 3:10 わが散せし者等の女即ち我を拜む者エテオピアの河々の彼旁よりもきたりて我に禮ものをささぐべし
Zephaniah 3:11 その日には汝われに對てをかしきたりし諸の行爲をもて羞を得ことなかるべし その時には我なんぢの中より高ぶり樂む者等を除けば汝かさねてわが聖山にて傲り高ぶることなければなり
Zephaniah 3:12 われ柔和にして貧き民をなんぢの中にのこさん 彼らはヱホバの名に依頼むべし
Zephaniah 3:13 イスラエルの遺れる者は惡を行はず 謊をいはず その口のうちには詐僞の舌なし 彼らは草食ひ臥やすまん 之を懼れしむる者なかるべし
Zephaniah 3:14 シオンの女よ歡喜の聲を擧よ イスラエルよ樂み呼はれ エルサレムの女よ心のかぎり喜び樂め
Zephaniah 3:15 ヱホバすでに汝の鞫を止め汝の敵を逐はらひたまへり イスラエルの王ヱホバ汝の中にいます 汝はかさねて災禍にあふことあらじ
Zephaniah 3:16 その日にはエルサレムに向ひて言あらん 懼るるなかれ シオンよ 汝の手をしなえ垂るるなかれと
Zephaniah 3:17 なんぢの神ヱホバなんぢの中にいます 彼は拯救を施す勇士なり 彼なんぢのために喜び樂み愛の餘りに黙し汝のために喜びて呼はりたまふ
Zephaniah 3:18 われ節會のことにつきて憂ふるものを集めん 彼等は汝より出し者なり 恥辱かれらに蒙ること重負のごとし
Zephaniah 3:19 視よその時われ汝を虐遇る者を盡く處置し足蹇たるものを救ひ逐はなたれたる者を集め彼らをして其羞辱を蒙りし一切の國にて稱譽を得させ名を得さすべし
Zephaniah 3:20 その時われ汝らを携へその時われ汝らを集むべし 我なんぢらの目の前において汝らの俘囚をかへし汝らをして地上の萬國に名を得させ稱譽を得さすべし ヱホバこれを言ふ
Haggai 0:0 ハガイ書
Haggai 1:1 ダリヨス王の二年六月其月の一日にヱホバの言預言者ハガイによりてシヤルテルの子ユダの方伯ゼルバベルおよびヨザダクの子 祭司の長ヨシユアに臨めりいはく
Haggai 1:2 萬軍のヱホバかくいひたまふ是民はヱホバの殿を建べき時期未だ來らずといへり
Haggai 1:3 ヱホバの言また預言者ハガイによりて臨めり曰く
Haggai 1:4 此殿かく毀壞をれば汝等板をもてはれる家に居るべき時ならんや
Haggai 1:5 されば今萬軍のヱホバかく曰たまふ 汝等おのれの行爲を省察べし
Haggai 1:6 汝らは多く播ども収入るるところは少く食へども飽ことを得ず 飮ども滿足ことを得ず 衣れども暖きことを得ず 又工價を得るものは之を破れたる袋に入る
Haggai 1:7 萬軍のヱホバまた曰たまふ 汝等おのれの行爲を省察べし
Haggai 1:8 山に上り木を携へ來て殿を建てよ さすれば我これを悦び又榮光を受ん ヱホバこれを言ふ
Haggai 1:9 なんぢら多く得んと望みたりしに反て少かりき 又汝等これを家に携へ歸りしとき我これを吹はらへり 萬軍のヱホバいひたまふ 是何故ぞや 是は我が殿破壞をるに汝等おのおの己の室に走り至ればなり
Haggai 1:10 この故になんぢらの上の天は雨露を止め地はその産物を止めたり
Haggai 1:11 且われ地にも山にも穀物にも新酒にも油にも地の生ずる物にも人にも家畜にも手のもろもろの工にもすべて毀壞を召きかうむらしめたり
Haggai 1:12 シヤルテルの子ゼルバベルとヨザダクの子祭司の長ヨシユアおよびその殘れるすべての民ともに其神ヱホバの聲と預言者ハガイの言に聽したがへり 是は其神ヱホバかれを遣したまひしに因る 民みなヱホバの前に敬畏たり
Haggai 1:13 時にヱホバの使者ハガイ、エホバの命により民に告て曰けるは我なんぢらと偕に在りとヱホバ曰たまふと
Haggai 1:14 エホバ、シヤルテルの子ユダの方伯ゼルバベルの心とヨザダクの子 祭司の長ヨシユアの心およびその殘れるすべての民の心をふりおこしたまひければ彼等來りて其神萬軍のヱホバの殿にて工作を爲り
Haggai 1:15 これダリヨス王の二年六月二十四日なりき
Haggai 2:1 七月其月の二十一日ヱホバの言預言者ハガイによりて臨めり曰く
Haggai 2:2 シヤルテルの子ユダの方伯ゼルバベルとヨザダクの子祭司の長ヨシユアおよびその殘れる一切の民に告よ
Haggai 2:3 なんぢら遺れる者の中この殿の從前の榮光を見しものは誰ぞや 今これを如何に見るや かの殿にくらぶれば是は汝らの目に何もなきが如く見ゆるにあらずや
Haggai 2:4 ヱホバ曰たまふゼルバベルよ自ら強くせよ ヨザダクの子祭司の長ヨシユアよ自ら強くせよ ヱホバ言たまふ この地の民よ自らつよくしてはたらけ 我なんぢらとともに在り 萬軍のヱホバこれを言ふ
Haggai 2:5 汝らがエジプトよりいでし時わがなんぢらに約せし言およびわが靈なほなんぢらの中に留れり 懼るるなかれ
Haggai 2:6 萬軍のヱホバかくいひたまふ いま一度しばらくありてわれ天と地と海と陸とを震動はん
Haggai 2:7 又われ萬國を震動はん また萬國の願ふところのもの來らん 又われ榮光をもてこの殿に充滿さん 萬軍のヱホバこれを言ふ
Haggai 2:8 銀も我ものなり 金もわが物なりと萬軍のヱホバいひたまふ
Haggai 2:9 この殿の後の榮光は從前の榮光より大ならんと萬軍のヱホバいひたまふ この處においてわれ平康をあたへんと萬軍のヱホバいひたまふ
Haggai 2:10 ダリヨスの二年九月二十四日ヱホバのことば預言者ハガイによりて臨めり曰く
Haggai 2:11 萬軍のヱホバかく曰たまふ 律法につきて祭司に問ふて曰ふべし
Haggai 2:12 人衣の裾にて聖肉を携へたらんにその裾もしパン或は羮あるひは酒あるひは油あるひは他の食物に捫らばそれらは聖ものとなるや 祭司たち答へて曰けるはしからず
Haggai 2:13 ハガイまたいひけるは屍體に捫りて汚れしもの若これらの物にさはらば其ものはけがるべきや 祭司等こたへて曰けるは汚れん
Haggai 2:14 ここに於てハガイ答へて曰けるはヱホバ曰たまふ 我前此民もかくの如くまた此國もかくの如し 又其手の一切のわざもかくのごとく彼等がその處に獻ぐるものもけがれたるものなり
Haggai 2:15 また今われ汝らに乞 この日より以前すなはちヱホバの殿にて石の上に石の置れざりし時を憶念べし
Haggai 2:16 かの時には二十舛もあるべき麥束につきてわづかに十を得 また酒榨につきて五十桶汲んとせしにただ二十を得たるのみ
Haggai 2:17 汝が手をもて爲せる一切の事に於てわれ不實穗と朽腐穗と雹を以てなんぢらを撃り されど汝ら我にかへらざりき ヱホバこれを言ふ
Haggai 2:18 なんぢらこの日より以前を憶念みよ 即ち九月二十四日よりヱホバの殿の基を置し日までをおもひ見よ
Haggai 2:19 種子なほ倉にあるや 葡萄の樹 無花果の樹 石榴の樹 橄欖の樹もいまだ實を結ばざりき 此日よりのちわれ汝らを惠まん
Haggai 2:20 此月の二十四日にヱホバのことば再びハガイに臨めり曰く
Haggai 2:21 ユダの方伯ゼルバベルに告よ われ天地を震動ん
Haggai 2:22 列國の位を倒さん また異邦の諸國の權勢を滅さん 又車および之に駕る者を倒さん 馬および之に騎る者もおのおの其伴侶の劍によりてたふれん
Haggai 2:23 萬軍のヱホバ曰たまはくシヤルテルの子わが僕ゼルバベルよヱホバいふその日に我なんぢを取りなんぢを印の如くにせん そはわれ汝をえらびたればなり 萬軍のヱホバこれを言ふ
Zechariah 0:0 ゼカリヤ書
Zechariah 1:1 ダリヨスの二年八月のヱホバの言イドの子ベレキヤの子なる預言者ゼカリヤに臨めり云く
Zechariah 1:2 ヱホバいたく汝らの父等を怒りたまへり
Zechariah 1:3 萬軍のヱホバかく言ふと汝かれらに告よ萬軍のヱホバ言ふ汝ら我に歸れ萬軍のヱホバいふ我も汝らに歸らん
Zechariah 1:4 汝らの父等のごとくならざれ前の預言者等かれらに向ひて呼はりて言り萬軍のヱホバかく言たまふ請ふ汝らその惡き道を離れその惡き行を棄てて歸れと然るに彼等は聽ず耳を我に傾けざりきヱホバこれを言ふ
Zechariah 1:5 汝らの父等は何處にありや預言者たち永遠に生んや
Zechariah 1:6 然ながら我僕なる預言者等に我が命じたる吾言とわが法度とは汝らの父等に追及たるに非ずや然ゆゑに彼らかへりて言り萬軍のヱホバ我らの道に循ひ我らの行に循ひて我らに爲んと思ひたまひし事を我らに爲たまへりと
Zechariah 1:7 ダリヨスの二年十一月すなはちセバテといふ月の二十四日にヱホバの言イドの子ベレキヤの子なる預言者ゼカリヤに臨めり云く
Zechariah 1:8 我夜觀しに一箇の人赤馬に乗て谷の裏なる鳥拈樹の中に立ちその後に赤馬 駁馬 白馬をる
Zechariah 1:9 我わが主よ是等は何ぞやと問ひけるに我と語ふ天の使われにむかひて是等の何なるをわれ汝に示さんと言り
Zechariah 1:10 鳥拈樹の中に立る人答へて言けるは是等は地上を遍く歩かしめんとてヱホバの遣したまひし者なりと
Zechariah 1:11 彼ら答へて鳥拈樹の中に立るヱホバの使に言けるは我ら地上を行めぐり觀しに全地は穏にして安し
Zechariah 1:12 ヱホバの使こたへて言ふ萬軍のヱホバよ汝いつまでヱルサレムとユダの邑々を恤みたまはざるか汝はこれを怒りたまひてすでに七十年になりぬと
Zechariah 1:13 ヱホバ我と語ふ天の使に嘉事慰事をもて答へたまへり
Zechariah 1:14 かくて我と語ふ天の使我に言けるは汝呼はりて言へ萬軍のヱホバかく言はまふ我ヱルサレムのためシオンのために甚だしく心を熱して嫉妬おもひ
Zechariah 1:15 安居せる國々の民を太く怒る其は我すこしく怒りしに彼ら力を出して之に害を加へたればなり
Zechariah 1:16 ヱホバかく言ふ是故に我憐憫をもてヱルサレムに歸る萬軍のヱホバのたまふ我室その中に建てられ量繩ヱルサレムに張られん
Zechariah 1:17 汝また呼はりて言へ萬軍のヱホバかく宣ふ我邑々には再び嘉物あふれんヱホバふたたびシオンを慰め再びヱルサレムを簡びたまふべしと
Zechariah 1:18 かくて我目を擧て觀しに四の角ありければ
Zechariah 1:19 我に語ふ天の使に是等は何なるやと問しに彼われに答へけるは是等はユダ、イスラエルおよびヱルサレムを散したる角なりと
Zechariah 1:20 時にヱホバ四箇の鍛冶を我に見し給へり
Zechariah 1:21 我是等は何を爲んとて來れるや問しに斯こたへ給へり是等の角はユダを散して人にその頭を擧しめざりし者なるが今この四箇の者來りて之を威しかのユダの地にむかひて角を擧て之を散せし諸國の角を擲たんとす
Zechariah 2:1 茲に我目を擧て觀しに一箇の人量繩を手に執居ければ
Zechariah 2:2 汝は何處へ往くやと問しにヱルサレムを量りてその廣と長の幾何なるを觀んとすと我に答ふ
Zechariah 2:3 時に我に語ふ天の使出行たりしが又一箇の天の使出きたりて之に會ひ
Zechariah 2:4 之に言けるは走ゆきてこの少き人に告て言へヱルサレムはその中に人と畜と饒なるによりて野原のごとくに廣く亘るべし
Zechariah 2:5 ヱホバ言たまふ我その四周にて火の垣となりその中にて榮光とならん
Zechariah 2:6 ヱホバいひたまふ來れ來れ北の地より逃きたれ我なんぢらを四方の天風のごとくに行わたらしむればなりヱホバこれを言ふ
Zechariah 2:7 來れバビロンの女子とともに居るシオンよ遁れ來れ
Zechariah 2:8 萬軍のヱホバかく言たまふヱホバ汝等を擄へゆきし國々へ榮光のために我儕を遣したまふ汝らを打つ者は彼の目の珠を打なればなり
Zechariah 2:9 即ち我手をかれらの上に搖ん彼らは己に事へし者の俘虜となるべし汝らは萬軍のヱホバの我を遣したまへるなるを知ん
Zechariah 2:10 ヱホバ言たまふシオンの女子よ喜び樂め我きたりて汝の中に住ばなり
Zechariah 2:11 その日には許多の民ヱホバに附て我民とならん我なんぢの中に住べし汝は萬軍のヱホバの我を遣したまへるなるを知ん
Zechariah 2:12 ヱホバ聖地の中にてユダを取て己の分となし再びヱルサレムを簡びたまふべし
Zechariah 2:13 ヱホバ起てその聖住所よりいでたまへば凡そ血肉ある者ヱホバの前に粛然たれ
Zechariah 3:1 彼祭司の長ヨシユアがヱホバの使の前に立ちサタンのその右に立てこれに敵しをるを我に見す
Zechariah 3:2 ヱホバ、サタンに言たまひけるはサタンよヱホバ汝をせむべし即ちヱルサレムを簡びしヱホバ汝をいましむ是は火の中より取いだしたる燃柴ならずやと
Zechariah 3:3 ヨシユア汚なき衣服を衣て使の前に立をりしが
Zechariah 3:4 ヱホバ己の前に立る者等に告て汚なき衣服を之に脱せよと宣ひまたヨシユアに向ひて觀よ我なんぢの罪を汝の身より取のぞけり汝に美服を衣すべしと宣へり
Zechariah 3:5 我また潔き冠冕をその首に冠らせよと言り是において潔き冠冕をその首に冠らせ衣服をこれに衣すヱホバの使は立をる
Zechariah 3:6 ヱホバの使證してヨシユアに言ふ
Zechariah 3:7 萬軍のヱホバかく言たまふ汝もし我道を歩みわが職守を守らば我家を司どり我庭を守ることを得ん我また此に立る者等の中に往來する路を汝に與ふべし
Zechariah 3:8 祭司の長ヨシユアよ請ふ汝と汝の前に坐する汝の同僚とともに聽べし彼らは即ち前表となるべき人なり我かならず我僕たる枝を來らすべし
Zechariah 3:9 ヨシユアの前に我が立るところの石を視よ此一箇の石の上に七箇の目あり我自らその彫刻をなす萬軍のヱホバこれを言ふなり我この地の罪を一日の内に除くべし
Zechariah 3:10 萬軍のヱホバ言たまふ其日には汝等おのおの互に相招きて葡萄の樹の下無花果の樹の下にあらん
Zechariah 4:1 我に語へる天の使また來りて我を呼醒せり我は睡れる人の呼醒されしごとくなりき
Zechariah 4:2 彼我にむかひて汝何を見るやと言ければ我いへり我觀に惣金の燈臺一箇ありてその頂に油を容る噐ありまた燈臺の上に七箇の燭盞ありその燭盞は燈臺の頂にありて之に各七本づつの管あり
Zechariah 4:3 また燈臺の側に橄欖の樹二本ありて一は油を容る噐の右にあり一はその左にあり
Zechariah 4:4 我答へて我と語ふ天の使の問言けるは我主よ是等は何ぞやと
Zechariah 4:5 我と語ふ天の使我に答へて汝是等の何なるを知ざるかと言しにより我主よ知ずとわれ言り
Zechariah 4:6 彼また答へて我に言けるはゼルバベルにヱホバの告たまふ言は是のごとし萬軍のヱホバ宣ふ是は權勢に由らず能力に由らず我靈に由るなり
Zechariah 4:7 ゼルバベルの前にあたれる大山よ汝は何者ぞ汝は平地とならん彼は恩惠あれ之に恩惠あれと呼はる聲をたてて頭石を曳いださん
Zechariah 4:8 ヱホバの言われに臨めり云く
Zechariah 4:9 ゼルバベルの手この室の石礎を置たり彼の手これを成終ん汝しらん萬軍のヱホバ我を汝等に遣したまひしと
Zechariah 4:10 誰か小き事の日を藐視むる者ぞ夫の七の者は遍く全地に往來するヱホバの目なり準繩のゼルバベルの手にあるを見て喜ばん
Zechariah 4:11 我また彼に問て燈臺の右左にある此二本の橄欖の樹は何なるやと言ひ
Zechariah 4:12 重ねてまた彼に問て此二本の金の管によりて金の油をその中より斟ぎ出す二枝の橄欖は何ぞやと言しに
Zechariah 4:13 彼われに答へて汝是等の何なるを知ざるかと言ければ我主よ知ずと言けるに
Zechariah 4:14 彼言らく是等は油の二箇の子にして全地の主の前に立つ者なり
Zechariah 5:1 我また目を擧て觀しに卷物の飛あり
Zechariah 5:2 彼われに汝何を見るやと言ければ我言ふ我卷物の飛ぶを見る其長は二十キユビトその寛は十キユビト
Zechariah 5:3 彼またわれに言けるは是は全地の表面を往めぐる呪詛の言なり凡て竊む者は卷物のこの面に照して除かれ凡て誓ふ者は卷物の彼の面照して除かるべし
Zechariah 5:4 萬軍のヱホバのたまふ我これを出せり是は竊盗者の家に入りまた我名を指て僞り誓ふ者の家に入てその家の中に宿りその木と石とを並せて盡く之を焼べしと
Zechariah 5:5 我に語へる天の使進み來りて我に言けるは請ふ目を擧てこの出きたれる物の何なるを見よ
Zechariah 5:6 これは何なるやと我言ければ彼言ふ此出來れる者はエパ舛なり又言ふ全地において彼等の形状は是のごとしと
Zechariah 5:7 かくて鉛の圓き蓋を取あぐれば一人の婦人エパ舛の中に坐し居る
Zechariah 5:8 彼是は罪惡なりと言てその婦人をエパ舛の中に投いれ鉛の錘をその舛の口に投かぶらせたり
Zechariah 5:9 我また目を擧て觀しに婦人二人出きたれり之に鶴の翼のごとき翼ありてその翼風を含む彼等そのエパ舛を天地の間に持擧ぐ
Zechariah 5:10 我すなはち我に語ふ天の使にむかひて彼等エパ舛を何處へ携へゆくなるやと言けるに
Zechariah 5:11 彼我に言ふシナルの地にて之がために家を建んとてなり是は彼處に置られてその臺の上に立ん
Zechariah 6:1 我また目を擧て觀しに四輌の車二の山の間より出きたれりその山は銅の山なり
Zechariah 6:2 第一の車には赤馬を着け第二の車には黒馬を着け
Zechariah 6:3 第三の車には白馬を着け第四の車には白點なる強馬を着く
Zechariah 6:4 我すなはち我に語ふ天の使に問て我主よ是等は何なるやと言けるに
Zechariah 6:5 天の使こたへて我に言ふ是は四の天風にして全地の主の前より罷り出たる者なり
Zechariah 6:6 黒馬は北の地をさして進み行き白馬その後に從ふ又白點馬は南の地をさして進みゆき
Zechariah 6:7 強馬は進み出て地を徧く行めぐらんとす彼汝ら往き地を徧くめぐれと言たまひければ則ち地を行めぐれり
Zechariah 6:8 彼われを呼て我に告て言ふ此北の地に往る者等は北の地にて我靈を安んず
Zechariah 6:9 ヱホバの言われに臨めり曰く
Zechariah 6:10 汝かの囚虜人の中の者ヘルダイ、トビヤおよびヱダヤより取ことをせよ即ちその日に汝かれらがバビロンより歸りて宿りをるゼパニヤの子ヨシヤの家に到り
Zechariah 6:11 金銀を取て冠冕を造りヨザダクの子なる祭司の長ヨシユアの首にこれを冠らせ
Zechariah 6:12 彼に語りて言べし萬軍のヱホバ斯言たまふ視よ人ありその名を枝といふ彼おのれの處より生いでてヱホバの宮を建ん
Zechariah 6:13 即ち彼者ヱホバの宮を建て尊榮を帶びその位に坐して政事を施しその位にありて祭司とならん此二の者の間に平和の計議あるべし
Zechariah 6:14 偖またその冠冕はヘレム、トビヤ、ユダヤおよびゼパニヤの子ヘンの記念のために之をヱホバの殿に納むべし
Zechariah 6:15 遠き處の者等來りてヱホバの殿を建ん而して汝らは萬軍のヱホバの我を遣したまひしなるを知にいたらん汝らもし汝らの神ヱホバの聲に聽したがはば是のごとくなるべし
Zechariah 7:1 ダリヨス王の四年の九月すなはちキスリウといふ月の四日にヱホバの言ゼカリヤに臨めり
Zechariah 7:2 ベテルかの時シヤレゼル、レゲンメレクおよびその從者を遣してヱホバを和めさせ
Zechariah 7:3 かつ萬軍のヱホバの室にをる祭司に問しめ且豫言者に問しめて言けらく我今まで年久しく爲きたりしごとく尚五月をもて哭きかつ齋戒すべきやと
Zechariah 7:4 ここにおいて萬軍のヱホバの言我に臨めり云く
Zechariah 7:5 國の諸民および祭司に告て言へ汝らは七十年のあひだ五月と七月とに斷食しかつ哀哭せしがその斷食せし時果して我にむかひて斷食せしや
Zechariah 7:6 汝ら食ひかつ飮は全く己のために食ひ己のために飮ならずや
Zechariah 7:7 在昔ヱルサレムおよび周圍の邑々人の住ふありて平安なりし時南の地および平野にも人の住ひをりし時に已往の預言者によりてヱホバの宣ひたりし言を汝ら知ざるや
Zechariah 7:8 ヱホバの言ゼカリヤに臨めり云く
Zechariah 7:9 萬軍のヱホバかく宣へり云く正義き審判を行ひ互に相愛しみ相憐め
Zechariah 7:10 寡婦孤兒旅客および貧者を虐ぐるなかれ人を害せんと心に圖る勿れと
Zechariah 7:11 然るに彼等は肯て耳を傾けず背を向け耳を鈍くして聽ず
Zechariah 7:12 且その心を金剛石のごとくし萬軍のヱホバがその御霊をもて已往の預言者に由て傳へたまひし律法と言詞に聽したがはざりき是をもて大なる怒萬軍のヱホバより出て臨めり
Zechariah 7:13 彼かく呼はりたれども彼等聽ざりき其ごとく彼ら呼はるとも我聽じ萬軍のヱホバこれを言ふ
Zechariah 7:14 我かれらをその識ざる諸の國に吹散すべし其後にてこの地は荒て往來する者なきに至らん彼等かく美しき國を荒地となす
Zechariah 8:1 萬軍のヱホバの言われに臨めり曰く
Zechariah 8:2 萬軍のヱホバかく言たまふ我シオンのために甚だしく心を熱して妬く思ひ大なる忿怒を起して之がために妬く思ふ
Zechariah 8:3 ヱホバかく言たまふ今我シオンに歸れり我ヱルサレムの中に住んヱルサレムは誠實ある邑と稱へられ萬軍のヱホバの山は聖山と稱へらるべし
Zechariah 8:4 萬軍のヱホバかく言たまふヱルサレムの街衢には再び老たる男 老たる女坐せん皆年高くして各々杖を手に持べし
Zechariah 8:5 またその邑の街衢には男の兒 女の兒滿て街衢に遊び戯れん
Zechariah 8:6 萬軍のヱホバかく言たまふこの事其日には此民の遺餘者の目に奇といふとも我目に何の奇きこと有んや萬軍のヱホバこれを言ふ
Zechariah 8:7 萬軍のヱホバかく言たまふ視よ我わが民を日の出る國より日の入る國より救ひ出し
Zechariah 8:8 かれらを携へ來りてヱルサレムの中に住しめん彼らは我民となり我は彼らの神となりて共に誠實と正義に居ん
Zechariah 8:9 萬軍のヱホバかく言たまふ汝ら萬軍のヱホバの室なる殿を建んとて其基礎を置たる日に起りし預言者等の口の言詞を今日聞く者よ汝らの腕を強くせよ
Zechariah 8:10 此日の先には人も工の價を得ず獸畜も工の價を得ず出者も入者も仇の故をもて安然ならざりき即ち我人々をして互に相攻しめたり
Zechariah 8:11 然れども今は我此民の遺餘者に對すること曩の日のごとくならずと萬軍のヱホバ言たまふ
Zechariah 8:12 即ち平安の種子あるべし葡萄の樹は果を結び地は産物を出し天は露を與へん我この民の遺餘者にこれを盡く獲さすべし
Zechariah 8:13 ユダの家およびイスラエルの家よ汝らが國々の中に呪詛となりしごとく此度は我なんぢらを救ふて祝言とならしめん懼るる勿れ汝らの腕を強くせよ
Zechariah 8:14 萬軍のヱホバかく言たまふ在昔汝らの先祖我を怒らせし時に我これに災禍を降さんと思ひて之を悔ざりき萬軍のヱホバこれを言ふ
Zechariah 8:15 是のごとく我また今日ヱルサレムとユダの家に福祉を降さんと思ふ汝ら懼るる勿れ
Zechariah 8:16 汝らの爲べき事は是なり汝ら各たがひに眞實を言べし又汝等の門にて審判する時は眞實を執て平和の審判を爲べし
Zechariah 8:17 汝等すべて人の災害を心に圖る勿れ僞の誓を好む勿れ是等はみな我が惡む者なりとヱホバ言たまふ
Zechariah 8:18 萬軍のヱホバの言われに臨めり云く
Zechariah 8:19 萬軍のヱホバかく言たまふ四月の斷食五月の斷食七月の斷食十月の斷食かへつてユダの家の宴樂となり欣喜となり佳節となるべし惟なんぢら眞實と平和を愛すべし
Zechariah 8:20 萬軍のヱホバかく言たまふ國々の民および衆多の邑の居民來り就ん
Zechariah 8:21 即ちこの邑の居民往てかの邑の者に向ひ我儕すみやかに往てヱホバを和め萬軍のヱホバを求めんと言んに我も往べしと答へん
Zechariah 8:22 衆多の民強き國民ヱルサレムに來りて萬軍のヱホバを求めヱホバを和めん
Zechariah 8:23 萬軍のヱホバかく言たまふ其日には諸の國語の民十人にてユダヤ人一箇の裾を拉へん即ち之を拉へて言ん我ら汝らと與に往べし其は我ら神の汝らと偕にいますを聞たればなり
Zechariah 9:1 ヱホバの言詞の重負ハデラクの地に臨むダマスコはその止る所なりヱホバ世の人を眷みイスラエルの一切の支派を眷みたまへばなり
Zechariah 9:2 之に界するハマテも然りツロ、シドンも亦はなはだ怜悧ければ同じく然るべし
Zechariah 9:3 ツロは自己のために城郭を構へ銀を塵のごとくに積み金を街衢の土のごとくに積めり
Zechariah 9:4 視よ主これを攻取り海にて之が力を打ほろぼしたまふべし是は火にて焚うせん
Zechariah 9:5 アシケロンこれを見て懼れガザもこれを見て太く慄ふエクロンもその望む所の者辱しめらるるに因て亦然りガザには王絶えアシケロンには住者なきに至らん
Zechariah 9:6 アシドドにはまた雑種の民すまん我ペリシテ人が誇る所の者を絶べし
Zechariah 9:7 我これが口より血を取除き之が齒の間より憎むべき物を取除かん是も遺りて我儕の神に歸しユダの牧伯のごとくに成べしまたエクロンはヱブス人のごとくになるべし
Zechariah 9:8 我わが家のために陣を張て敵軍に當り之をして往來すること無らしめん虐遇者かさねて逼ること無るべし我いま我目をもて親ら見ればなり
Zechariah 9:9 シオンの女よ大に喜べヱルサレムの女よ呼はれ視よ汝の王汝に來る彼は正義して拯救を賜はり柔和にして驢馬に乗る即ち牝驢馬の子なる駒に乗るなり
Zechariah 9:10 我エフライムより車を絶ちヱルサレムより馬を絶ん戰爭弓も絶るべし彼國々の民に平和を諭さん其政治は海より海に及び河より地の極におよぶべし
Zechariah 9:11 汝についてはまた汝の契約の血のために我かの水なき坑より汝の被俘人を放ち出さん
Zechariah 9:12 望を懷く被俘人よ汝等城に歸れ我今日もなほ告て言ふ我かならず倍して汝等に賚ふべし
Zechariah 9:13 我ユダを張て弓となしエフライムを矢となして之につがへんシオンよ我汝の人々を振起してギリシヤの人々を攻しめ汝をして大丈夫の劍のごとくならしむべし
Zechariah 9:14 ヱホバこれが上に顯れてその箭を電光のごとくに射いだしたまはん主ヱホバ喇叭を吹ならし南の暴風に乗て出來まさん
Zechariah 9:15 萬軍のヱホバ彼らを護りたまはん彼等は食ふことを爲し投石器の石を踏つけん彼等は飮ことを爲し酒に醉るごとくに聲を擧ん其これに盈さるることは血を盛る鉢のごとく祭壇の隅のごとくなるべし
Zechariah 9:16 彼らの神ヱホバ當日に彼らを救ひその民を羊のごとくに救ひたまはん彼等は冠冕の玉のごとくになりて其地に輝くべし
Zechariah 9:17 その福祉は如何計ぞや其美麗は如何計ぞや穀物は童男を長ぜしめ新酒は童女を長ぜしむ
Zechariah 10:1 汝ら春の雨の時に雨をヱホバに乞へヱホバは電光を造り大雨を人々に賜ひ田野において草蔬を各に賜ふべし
Zechariah 10:2 夫テラピムは空虚き事を言ひ卜筮師はその見る所 眞實ならずして虚僞の夢を語る其慰むる所は徒然なり是をもて民は羊のごとくに迷ひ牧者なきに因て惱む
Zechariah 10:3 我牧者にむかひて怒を發す我牡山羊を罰せん萬軍のヱホバその群なるユダの家を顧み之をしてその美しき軍馬のごとくならしめたまふ
Zechariah 10:4 隅石彼より出で釘かれより出で軍弓かれより出で宰たる者みな齊く彼より出ん
Zechariah 10:5 彼等戰ふ時は勇士のごとくにして街衢の泥の中に敵を蹂躙らんヱホバかれらとともに在せば彼ら戰はん馬に騎れる者等すなはち媿を抱くべし
Zechariah 10:6 我ユダの家を強くしヨセフの家を救はん我かれらを恤むが故に彼らをして歸り住しめん彼らは我に棄られし事なきが如くなるべし我は彼らの神ヱホバなり我かれらに聽べし
Zechariah 10:7 エフライム人は勇士に等しくして酒を飮たるごとく心に歡ばん其子等は見て喜びヱホバに因て心に樂しまん
Zechariah 10:8 我かれらに向ひて嘯きて之を集めん其は我これを贖ひたればなり彼等は昔殖増たる如くに殖増ん
Zechariah 10:9 我かれらを國々の民の中に捲ん彼等は遠き國において我をおぼへん彼らは其子等とともに生ながらへて歸り來るべし
Zechariah 10:10 我かれらをエジプトの國より携へかへりアッスリヤより彼等を集めギレアデの地およびレバノンに彼らを携へゆかんその居處も無きほどなるべし
Zechariah 10:11 彼艱難の海を通り海の浪を撃破りたまふナイルの淵は盡く涸るアッスリヤの傲慢は卑くせられエジプトの杖は移り去ん
Zechariah 10:12 我彼らをしてヱホバに由て強くならしめん彼等はヱホバの名をもて歩まんヱホバこれを言たまふ
Zechariah 11:1 レバノンよ汝の門を啓き火をして汝の香柏を焚しめよ
Zechariah 11:2 松よ叫けべ香柏は倒れ威嚴樹はそこなはれたりバシヤンの橡よ叫べ高らかなる林は倒れたり
Zechariah 11:3 牧者の叫ぶ聲あり其榮そこなはれたればなり猛き獅子の吼る聲ありヨルダンの叢そこなはれたればなり
Zechariah 11:4 我神ヱホバかく言たまふ宰らるべき羔を牧へ
Zechariah 11:5 之を買ふ者は之を宰るとも罪なし之を賣る者は言ふ我富を得ればヱホバを祝すべしと其牧者もこれを惜まざるなり
Zechariah 11:6 ヱホバ言たまふ我かさねて地の居民を惜まじ視よ我人を各その隣人の手に付しその王の手に付さん彼ら地を荒すべし我これを彼らの手より救ひ出さじ
Zechariah 11:7 我すなはち其宰らるべき羊を牧り是は最も憫然なる羊なり我みづから二本の杖を取り一を恩と名け一を結と名けてその羊を牧り
Zechariah 11:8 我一月に牧者三人を絶り我心に彼らを厭ひしが彼等も心に我を惡めり
Zechariah 11:9 我いへり我は汝らを飼はじ死る者は死に絶るる者は絶れ遺る者は互にその肉を食ひあふべし
Zechariah 11:10 我恩といふ杖を取て之を折れり是諸の民に立し我契約を廢せんとてなりき
Zechariah 11:11 是は其日に廢せられたり是に於てかの我に聽したがひし憫然なる羊は之をヱホバの言なりしと知れり
Zechariah 11:12 我彼らに向ひて汝等もし善と視なば我價を我に授けよ若しからずば止めよと言ければ彼等すなはち銀三十を權りて我價とせり
Zechariah 11:13 ヱホバ我に言たまひけるは彼等に我が估價せられしその善價を陶人に投あたへよと我すなはち銀三十を取てヱホバの室に投いれて陶人に歸せしむ
Zechariah 11:14 我また結といふ杖を折れり是ユダとイスラエルの間の和好を絶んとてなりき
Zechariah 11:15 ヱホバ我に言たまはく汝また愚なる牧者の器を取れ
Zechariah 11:16 視よ我地に一人の牧者を興さん彼は亡ぶる者を顧みず迷へる者を尋ねず傷つける者を醫さず健剛なる者を飼はず肥たる者の肉を食ひ且その蹄を裂ん
Zechariah 11:17 其羊の群を棄る惡き牧者は禍なるかな劍その腕に臨みその右の目に臨まん其腕は全く枯えその右の目は全く盲れん
Zechariah 12:1 イスラエルにかかはるヱホバの言詞の重負 ヱホバ即ち天を舒べ地の基を置ゑ人の内の靈魂を造る者言たまふ
Zechariah 12:2 視よ我ヱルサレムをしてその周圍の國民を蹌踉はする杯とならしむべしヱルサレムの攻圍まるる時是はユダにも及ばん
Zechariah 12:3 其日には我ヱルサレムをして諸の國民に對ひて重石とならしむべし之を持擧る者は大傷を受ん地上の諸國みな集りて之に攻寄べし
Zechariah 12:4 ヱホバ言たまふ當日には我一切の馬を撃て駭かせその騎手を撃て狂はせん而して我ユダの家の上に我目を開き諸の國民の馬を撃て盲になすべし
Zechariah 12:5 ユダの牧伯等その心の中に謂んヱルサレムの居民はその神萬軍のヱホバに由て我力となるべしと
Zechariah 12:6 當日には我ユダの牧伯等をして薪の下にある火盤のごとく麥束の下にある炬火のごとくならしむべし彼等は右左にむかひその周圍の國民を盡く焚んヱルサレム人はなほヱルサレムにてその本の處に居ことを得べし
Zechariah 12:7 ヱホバまづユダの幕屋を救ひたまはん是ダビデの家の榮およびヱルサレムの居民の榮のユダに勝ること無らんためたり
Zechariah 12:8 當日ヱホバ、ヱルサレムの居民を護りたまはん彼らの中の弱き者もその日にはダビデのごとくなるべしまたダビデの家は神のごとく彼らに先だつヱホバの使のごとくなるべし
Zechariah 12:9 その日には我ヱルサレムに攻きたる國民をことごとく滅すことを務むべし
Zechariah 12:10 我ダビデの家およびヱルサレムの居民に恩惠と祈禱の靈をそそがん彼等はその刺たりし我を仰ぎ觀獨子のため哭くがごとく之がために哭き長子のために悲しむがごとく之がために痛く悲しまん
Zechariah 12:11 その日にはヱルサレムに大なる哀哭あらん是はメギドンの谷なるハダデリンモンに在りし哀哭のごとくなるべし
Zechariah 12:12 國中の族おのおの別れ居て哀哭べし即ちダビデの族別れ居て哀哭きその妻等別れ居て哀哭きナタンの家の族別れ居て哀哭きその妻等別れ居て哀哭かん
Zechariah 12:13 レビの家の族別れ居て哀哭きその妻等別れ居て哀哭きシメイの族別れ居て哀哭きその妻等わかれ居て哀哭かん
Zechariah 12:14 その他の族も凡て然りすなはち族おのおの別れ居て哀哭きその妻等別れ居て哀哭くべし
Zechariah 13:1 その日罪と汚穢を清むる一の泉ダビデの家とヱルサレムの居民のために開くべし
Zechariah 13:2 萬軍のヱホバ言たまふ其日には我地より偶像の名を絶のぞき重て人に記憶らるること無らしむべし我また預言者および汚穢の靈を地より去しむべし
Zechariah 13:3 人もしなほ預言することあらば其生の父母これに言ん汝は生べからず汝はヱホバの名をもて虚僞を語るなりと而してその生の父母これが預言しをるを刺ん
Zechariah 13:4 その日には預言者等預言するに方りてその異象を羞ん重て人を欺かんために毛衣を纒はじ
Zechariah 13:5 彼言ん我は預言者にあらず地を耕へす者なり即ち我は若き時より人に買れたりと
Zechariah 13:6 若これに向ひて然らば汝の兩手の間の傷は何ぞやと言あらば是は我が愛する者の家にて受たる傷なりと答へん
Zechariah 13:7 萬軍のヱホバ言たまふ劍よ起て我牧者わが伴侶なる人を攻よ牧者を撃て然らばその羊散らん我また我手を小き者等の上に伸べし
Zechariah 13:8 ヱホバ言たまふ全地の人二分は絶れて死に三分の一はその中に遺らん
Zechariah 13:9 我その三分の一を携へて火にいれ銀を熬分るごとくに之を熬分け金を試むるごとくに之を試むべし彼らわが名を呼ん我これにこたへん我これは我民なりと言ん彼等またヱホバは我神なりと言ん
Zechariah 14:1 視よヱホバの日來る汝の貨財奪はれて汝の中にて分たるべし
Zechariah 14:2 我萬國の民を集めてヱルサレムを攻撃しめん邑は取られ家は掠められ婦女は犯され邑の人は半は擄へられてゆかん然どその餘の民は邑より絶れじ
Zechariah 14:3 その時ヱホバ出きたりて其等の國人を攻撃たまはん在昔その軍陣の日に戰ひたまひしごとくなるべし
Zechariah 14:4 其日にはヱルサレムの前に當りて東にあるところの橄欖山の上に彼の足立ん而して橄欖山その眞中より西東に裂て甚だ大なる谷を成しその山の半は北に半は南に移るべし
Zechariah 14:5 汝らは我山の谷に逃いらん其山の谷はアザルにまで及ぶべし汝らはユダの王ウジヤの世に地震を避て逃しごとくに逃ん我神ヱホバ來りたまはん諸の聖者なんぢとともなるべし
Zechariah 14:6 その日には光明なかるべく輝く者消うすべし
Zechariah 14:7 茲に只一の日あるべしヱホバこれを知たまふ是は晝にもあらず夜にもあらず夕暮の頃に明くなるべし
Zechariah 14:8 その日に活る水ヱルサレムより出でその半は東の海にその半は西の海に流れん夏も冬も然あるべし
Zechariah 14:9 ヱホバ全地の王となりたまはん其日には只ヱホバのみ只その御名のみにならん
Zechariah 14:10 全地はアラバのごとくなりてゲバよりヱルサレムの南のリンモンまでの間のごとくなるべし而してヱルサレムは高くなりてその故の處に立ちベニヤミンの門より第一の門の處に及び隅の門にいたりハナニエルの戍樓より王の酒榨倉までに渉るべし
Zechariah 14:11 その中には人住ん重て呪詛あらじヱルサレムは安然に立べし
Zechariah 14:12 ヱルサレムを攻撃し諸の民にヱホバ災禍を降してこれを撃なやましたまふこと是のごとくなるべし即ち彼らその足にて立をる中に肉腐れ目その孔の中にて腐れ舌その口の中にて腐れん
Zechariah 14:13 その日にはヱホバかれらをして大に狼狽しめたまはん彼らは各人の手を執へん此手と彼手撃あふべし
Zechariah 14:14 ユダもまたヱルサレムに於て戰ふべしその四周の一切の國人の財寳金銀衣服など甚だ多く聚められん
Zechariah 14:15 また馬騾駱駝驢馬およびその諸營の一切の家畜の蒙る災禍もこの災禍のごとくなるべし
Zechariah 14:16 ヱルサレムに攻きたりし諸の國人の遺れる者はみな歳々に上りきてその王なる萬軍のヱホバを拜み結茅の節を守るにいたるべし
Zechariah 14:17 地上の諸族の中その王なる萬軍のヱホバを拜みにヱルサレムに上らざる者の上には凡て雨ふらざるべし
Zechariah 14:18 例ばエジプトの族もし上り來らざる時はその上に雨ふらじヱホバその結茅の節を守りに上らざる一切の國人を撃なやます災禍を之に降したまふべし
Zechariah 14:19 エジプトの罪凡て結茅の節を守りに上り來らざる國人の罪是のごとくなるべし
Zechariah 14:20 その日には馬の鈴にまでヱホバに聖としるさん又ヱホバの家の鍋は壇の前の鉢と等しかるべし
Zechariah 14:21 ヱルサレムおよびユダの鍋は都て萬軍のヱホバの聖物となるべし凡そ犠牲を獻ぐる者は來りてこれを取り其中にて祭肉を煮ん其日には萬軍のヱホバの室に最早カナン人あらざるべし
Malachi 0:0 マラキ書
Malachi 1:1 これマラキに托てイスラエルに臨めるヱホバの言の重負なり
Malachi 1:2 ヱホバ曰たまふ我汝らを愛したり 然るに汝ら云ふ 汝いかに我儕を愛せしやと ヱホバいふエサウはヤコブの兄に非ずや されど我はヤコブを愛し
Malachi 1:3 エサウを惡めり 且つわれ彼の山を荒し其嗣業を山犬にあたへたり
Malachi 1:4 エドムは我儕ほろぼされたれども再び荒たる所を建んといふによりて萬軍のヱホバかく曰たまふ 彼等は建ん されど我これを倒さん 人は彼等を惡境とよび又ヱホバの恒に怒りたまふ人民と稱へん
Malachi 1:5 汝らこれを目に見て云ん ヱホバはイスラエルの地に大なりと
Malachi 1:6 子は其父を敬ひ僕はその主を敬ふ されば我もし父たらば我を敬ふこと安にあるや 我もし主たらば我をおそるること安にあるや なんぢら我が名を藐視る祭司よと萬軍のヱホバいひたまふ 然るに汝曹はいふ我儕何に汝の名を藐視りしやと
Malachi 1:7 汝ら汚れたるパンをわが壇の上に獻げしかして言ふ我儕何に爾を汚せしやと 汝曹ヱホバの臺は卑しきなりと云しがゆゑなり
Malachi 1:8 汝ら盲目なる者を犠牲に獻ぐるは惡に非ずや 又跛足なるものと病者を獻ぐるは惡に非ずや 今これを汝の方伯に獻げよ されば彼なんぢを悦ぶや 汝を受納るや 萬軍のヱホバ之をいふ
Malachi 1:9 請ふ汝ら神に我らをあはれみ給はんことをもとめよ これらは凡て汝らの手になれり 彼なんぢらを納んや 萬軍のヱホバこれを言ふ
Malachi 1:10 汝らが我壇の上にいたづらに火をたくこと無らんために汝らの中一人扉を閉づる者あらまほし われ汝らを悦ばず 又なんぢらの手より獻物を受じと萬軍のヱホバいひ給ふ
Malachi 1:11 日の出る處より沒る處までの列國の中に我名は大ならん 又何處にても香と潔き獻物を我名に獻げん そはわが名列國の中に大なるべければなりと萬軍のヱホバいひ給ふ
Malachi 1:12 しかるになんぢら之を褻したり そは汝曹はヱホバの臺は汚れたり また其果すなはちその食物は卑しと云ばなり
Malachi 1:13 なんぢらは又如何に煩勞しきことにあらずやといひ且これを藐視たり 萬軍のヱホバこれをいふ 又なんぢらは奪ひし物跛足たる者病る者を携へ來れり 汝らかく獻物を携へ來ればわれ之を汝らの手より受べけんや ヱホバこれをいひ給へり
Malachi 1:14 群の中に牡あるに誓を立てて疵あるものをヱホバに獻ぐる詐僞者は詛はるべし そは我は大なる王また我名は列國に畏れらるべきなればなり 萬軍のヱホバこれをいふ
Malachi 2:1 祭司等よ今この命令なんぢらにあたへらる
Malachi 2:2 萬軍のヱホバいひたまふ汝等もし聽きしたがはず又これを心にとめず我名に榮光を歸せずばわれ汝らの上に詛を來らせん 又なんぢらの祝福を詛はん われすでに此等を詛へり 汝らこれを心にとめざりしに因てなり
Malachi 2:3 視よ我なんぢらのために種をいましめん また糞すなはち汝らの犠牲の糞を汝らの面の上に撒さん 汝らこれとともに携へさられん
Malachi 2:4 わが此命令をなんぢらに下し與ふるは我契約をしてレビに保たしめんためなるを汝ら知るべし 萬軍のヱホバこれをいふ
Malachi 2:5 わが彼と結びし契約は生命と平安とにあり 我がこれを彼に與へしは彼に我を畏れしめんが爲なり 彼われを懼れわが名の前にをののけり
Malachi 2:6 眞理の法彼の口に在て不義その口唇にあらず 彼平安と公義をとりて我とともにあゆみ又多の人を不義より立歸らせたりき
Malachi 2:7 夫れ祭司の口唇に知識を持べく又人彼の口より法を諮詢べし そは祭司は萬軍のヱホバの使者なればなり
Malachi 2:8 しかるに汝らは道を離れ衆多の人を法に躓礙かせレビの契約を壞りたり 萬軍のヱホバこれをいふ
Malachi 2:9 汝らは我道を守らず法をおこなふに當りて人に偏りし故にわれも汝らを一切の民の前に輕められまた賤められしむ
Malachi 2:10 我儕の父は皆同一なるにあらずや われらを造りし神は同一なるにあらずや 我儕先祖等の契約を破りて各おのれの兄弟にいつはりを行ふは何ぞ
Malachi 2:11 ユダは誓約にそむけり イスラエル及びエルサレムの中には憎むべき事行はる すなはちユダはヱホバの愛したまふ聖所を褻して他神の女をめとれり
Malachi 2:12 ヱホバこれをおこなふ人をば主なるものをも事ふる者をもヤコブの幕屋よりのぞきたまはん 萬軍のヱホバに獻物をささぐるものにてもまた然り
Malachi 2:13 つぎに又なんぢらはこれをなせり 即ち涙と泣と歎とをもてヱホバの壇をおほはしめたり 故に彼もはや獻物を顧みずまたこれを汝らの手より悦び納たまはざるなり
Malachi 2:14 汝らはなほ何故ぞやと言ふ そは是はヱホバ汝となんぢの若き時の妻の間にいりて證をなしたまへばなり 彼はなんぢの伴侶汝が契約をなせし妻なるに汝誓約に背きてこれを棄つ
Malachi 2:15 ヱホバは只一を造りたまひしにあらずや されども彼にはなほ靈の餘ありき 何故にひとつのみなりしや 是は神を敬虔の裔を得んが爲なりき 故になんぢら心に謹みその若き時の妻を誓約にそむきて棄るなかれ
Malachi 2:16 イスラエルの神ヱホバいひたまふ われは離縁を惡みまた虐遇をもて其衣を蔽ふ人を惡む 故に汝ら誓約にそむきて妻を待遇はざるやう心につつしむべし 萬軍のヱホバこれをいふ
Malachi 2:17 なんぢらは言をもてヱホバを煩勞はせり されど汝ら言ふ 何にわづらはせしやと 如何となればなんぢら凡て惡をなすものはヱホバの目に善と見えかつ彼に悦ばると言ひ また審判の神は安にあるやといへばなり
Malachi 3:1 視よ我わが使者を遣さん かれ我面の前に道を備へん また汝らが求むるところの主すなはち汝らの悦樂ぶ契約の使者忽然その殿に來らん 視よ彼來らんと萬軍のヱホバ云たまふ
Malachi 3:2 されど其來る日には誰か堪えんや その顯著る時には誰か立えんや 彼は金をふきわくる者の火の如く布晒の灰汁のごとくならん
Malachi 3:3 かれは銀をふきわけてこれを潔むる者のごとく坐せん 彼はレビの裔を潔め金銀の如くかれらをきよめん 而して彼等は義をもて獻物をヱホバにささげん
Malachi 3:4 その時ユダとエルサレムの獻物はむかし日の如く又先の年のごとくヱホバに悦ばれん
Malachi 3:5 われ汝らにちかづきて審判をなし巫術者にむかひ姦淫を行ふ者にむかひ僞の誓をなせる者にむかひ傭人の價金をかすめ寡婦と孤子をしへたげ異邦人を推抂げ我を畏れざるものどもにむかひて速に證をなさんと萬軍のヱホバ云たまふ
Malachi 3:6 それわれヱホバは易らざる者なり 故にヤコブの子等よ汝らは亡されず
Malachi 3:7 なんぢら其先祖等の日よりこのかたわが律例をはなれてこれを守らざりき 我にかへれ われ亦なんぢらに歸らん 萬軍のヱホバこれを言ふ 然るに汝らはわれら何においてかへるべきやと言り
Malachi 3:8 ひと神の物をぬすむことをせんや されど汝らはわが物を盗めり 汝らは又何において汝の物をぬすみしやといへり 十分の一および獻物に於てなり
Malachi 3:9 汝らは呪詛をもて詛はる またなんぢら一切の國人はわが物をぬすめり
Malachi 3:10 わが殿に食物あらしめんために汝ら什一をすべて我倉にたづさへきたれ 而して是をもて我を試みわが天の窓をひらきて容べきところなきまでに恩澤を汝らにそそぐや否やを見るべし 萬軍のヱホバこれを言ふ
Malachi 3:11 我また噬食ふ者をなんぢらの爲に抑へてなんぢらの地の産物をやぶらざらしめん 又なんぢらの葡萄の樹をして時のいたらざる前にその實を圃におとさざらしめん 萬軍のヱホバこれをいふ
Malachi 3:12 又萬國の人なんぢらを幸福なる者ととなへん そは汝ら樂しき地となるべければなり 萬軍のヱホバこれをいふ
Malachi 3:13 ヱホバ云たまふ 汝らは言詞をはげしくして我に逆らへり しかるも汝らは我儕なんぢらにさからひて何をいひしやといへり
Malachi 3:14 汝らは言らく神に服事ることは徒然なり われらその命令をまもりかつ萬軍のヱホバの前に悲みて歩みたりとて何の益あらんや
Malachi 3:15 今われらは驕傲ものを幸福なりと稱ふ また惡をおこなふものも盛になり 神を試むるものすらも救はると
Malachi 3:16 その時ヱホバをおそるる者互に相かたりヱホバ耳をかたむけてこれを聽たまへり またヱホバを畏るる者およびその名を記憶る者のためにヱホバの前に記念の書をかきしるせり
Malachi 3:17 萬軍のヱホバいひたまふ 我わが設くる日にかれらをもて我寳となすべし また人の己につかふる子をあはれむがごとく我彼等をあはれまん
Malachi 3:18 その時汝らは更にまた義者と惡きものと神に服事るものと事へざる者との區別をしらん
Malachi 4:1 萬軍のヱホバいひたまふ 視よ爐のごとくに焼る日來らん すべて驕傲者と惡をおこなふ者は藁のごとくにならん 其きたらんとする日彼等を焼つくして根も枝ものこらざらしめん
Malachi 4:2 されど我名をおそるる汝らには義の日いでて昇らん その翼には醫す能をそなへん 汝らは牢よりいでし犢の如く躍跳ん
Malachi 4:3 又なんぢらは惡人を踐つけん 即ちわが設くる日にかれらは汝らの脚の掌の下にありて灰のごとくならん 萬軍のヱホバこれを言ふ
Malachi 4:4 なんぢらわが僕モーセの律法をおぼえよ すなはち我がホレブにてイスラエル全體のために彼に命ぜし法度と誡命をおぼゆべし
Malachi 4:5 視よヱホバの大なる畏るべき日の來るまへにわれ預言者エリヤを汝らにつかはさん かれ父の心にその子女の心を慈はせ 子女の心にその父をおもはしめん 是は我が來りて詛をもて地を撃ことなからんためなり