## Aionian Bible ## File Name: Holy-Bible---Japanese---Japanese-Electronic-Network-Bible---Source-Edition.SWORD.txt ## File Usage: Holy-Bible---Japanese---Japanese-Electronic-Network-Bible ## File Created: 04/03/2021 16:08:00 ## File Purpose: Supporting resource for the Aionian Bible project ## File Location: http://resources.AionianBible.org ## Publisher Name: Nainoia Inc ## Publisher Contact: http://www.AionianBible.org/Publisher ## Publisher Mission: http://www.AionianBible.org/Preface ## Publisher Website: http://NAINOIA-INC.signedon.net ## Publisher Facebook: https://www.Facebook.com/AionianBible ## Source URL: http://crosswire.org/ftpmirror/pub/sword/packages/rawzip/JapDenmo.zip ## Source Date: 04/29/2019 23:16:00 ## Source Text: unaltered below ## [ Testament 2 Heading ] Matthew 0:0
Matthew 1:0 Matthew 1:1 アブラハムの子,ダビデの子,イエス・キリストの系図。 Matthew 1:2 アブラハムはイサクの父となり,イサクはヤコブの父となり,ヤコブはユダとその兄弟たちの父となり, Matthew 1:3 ユダはタマルによってペレツとゼラの父となり,ペレツはヘツロンの父となり,ヘツロンはラムの父となり, Matthew 1:4 ラムはアミナダブの父となり,アミナダブはナフションの父となり,ナフションはサルモンの父となり, Matthew 1:5 サルモンはラハブによってボアズの父となり,ボアズはルツによってオベドの父となり,オベドはエッサイの父となり, Matthew 1:6 エッサイはダビデ王の父となり,ダビデはウリヤの妻であった女によってソロモンの父となり, Matthew 1:7 ソロモンはレハブアムの父となり,レハブアムはアビヤの父となり,アビヤはアサの父となり, Matthew 1:8 アサはヨシャファトの父となり,ヨシャファトはヨラムの父となり,ヨラムはウジヤの父となり, Matthew 1:9 ウジヤはヨタムの父となり,ヨタムはアハズの父となり,アハズはヒゼキヤの父となり, Matthew 1:10 ヒゼキヤはマナセの父となり,マナセはアモンの父となり,アモンはヨシヤの父となり, Matthew 1:11 ヨシヤは,バビロンへの流刑のころにエコニヤとその兄弟たちの父となった。 Matthew 1:12 バビロンへの流刑ののち,エコニヤはシャルティエルの父となり,シャルティエルはゼルバベルの父となり, Matthew 1:13 ゼルバベルはアビウドの父となり,アビウドはエリアキムの父となり,エリアキムはアゾルの父となり, Matthew 1:14 アゾルはサドクの父となり,サドクはアキムの父となり,アキムはエリウドの父となり, Matthew 1:15 エリウドはエレアザルの父となり,エレアザルはマタンの父となり,マタンはヤコブの父となり, Matthew 1:16 ヤコブはマリアの夫ヨセフの父となった。このマリアからキリストと呼ばれるイエスが生まれた。 Matthew 1:17 それで,アブラハムからダビデまでの世代は全部で十四代,ダビデからバビロンへの流刑までは十四代,バビロンへの連行からキリストまでは十四代である。
Matthew 1:18 さて,イエス・キリストの誕生は次のようであった。彼の母マリアはヨセフと婚約していたが,二人が一緒になる前に,彼女は聖霊によって妊娠していることが分かった。 Matthew 1:19 彼女の夫ヨセフは正しい人で,彼女をさらし者にしたくなかったので,ひそかに去らせようとした。 Matthew 1:20 しかし彼がこうした事について考えていると,見よ,主のみ使いが夢の中で彼に現われて,こう言った。「ダビデの子ヨセフよ,あなたの妻マリアを迎え入れることを恐れてはいけない。彼女の内に宿っているのは聖霊によるものだからだ。 Matthew 1:21 彼女は男の子を産むだろう。あなたはその名をイエスと呼ぶことになる。この者こそ,自分の民をその罪から救うからだ」。
Matthew 1:22 ところで,このことすべてが起こったのは,預言者を通して主によって語られたことが果たされるためであった。こう言われていた。
Matthew 1:23 「見よ,処女が妊娠し,男の子を産むだろう。彼らはその名をインマヌエルと呼ぶだろう」。この名は,訳せば,「神はわたしたちと共に」という意味である。 Matthew 1:24 ヨセフは眠りから覚め,主のみ使いが彼に命じたとおりに行ない,自分の妻を迎え入れた。 Matthew 1:25 しかし,彼女が初子を産むまでは,彼女を性的には知らなかった。彼はその子をイエスと名付けた。
Matthew 2:0 Matthew 2:1 さて,イエスがヘロデ王の時代にユダヤのベツレヘムで生まれた時,見よ,東方からの賢者たちがエルサレムに来て,こう言った。 Matthew 2:2 「ユダヤ人の王としてお生まれになった方はどこにおられますか。わたしたちは東方でその方の星を見たので,その方を拝むために来たのです」。 Matthew 2:3 それを聞いてヘロデ王は動揺し,彼と共に全エルサレムも動揺した。 Matthew 2:4 彼は祭司長たちと民の律法学者たちとをすべて集め寄せ,キリストがどこで生まれることになっているのかを彼らに尋ねた。 Matthew 2:5 彼らは彼に言った,「ユダヤのベツレヘムです。預言者を通してこのように書かれているからです。
Matthew 2:6 『ユダの地のベツレヘムよ,あなたは決してユダの君主たちの間で最も小さいものではない。あなたから一人の統治者が出て,わたしの民イスラエルを牧するからだ』」。 Matthew 2:7 そこで,ヘロデは賢者たちをひそかに呼んで,星が現われた時期を詳しく聞き出した。 Matthew 2:8 彼らをベツレヘムに遣わして言った,「行って,その幼子のことを念入りに調べよ。見つけたら,わたしに報告せよ。わたしも行って拝むためだ」。
Matthew 2:9 王の言葉を聞いてから,彼らは出かけて行った。すると見よ,東方で見た星が彼らの先を行き,ついに幼子のいる場所の上にやって来て,止まった。 Matthew 2:10 その星を見て,彼らは非常に大きな喜びをもって喜んだ。 Matthew 2:11 家の中に入ると,その母マリアと共にいる幼子を見,ひれ伏して彼を拝んだ。自分たちの宝箱を開いて,金と乳香と没薬を贈り物としてささげた。 Matthew 2:12 夢でヘロデのもとに戻らないよう告げられたので,別の道を通って自分たちの国へ帰って行った。
Matthew 2:13 さて,彼らが去って行くと,見よ,主のみ使いが夢の中でヨセフに現われて,こう言った。「起きて,幼子とその母を連れてエジプトに逃げ,わたしが告げるまではそこにとどまりなさい。ヘロデがこの幼子を探し出して滅ぼそうとしているからだ」。
Matthew 2:14 彼は起きて,夜のうちに幼子とその母を連れてエジプトに去って行った。 Matthew 2:15 そしてヘロデが死ぬまでそこにいた。それは,預言者を通して主によって語られたことが果たされるためであった。こう言われていた。「エジプトから,わたしは自分の子を呼び出した」。
Matthew 2:16 それからヘロデは,賢者たちにだまされたことを知って非常に腹を立て,人を遣わして,賢者たちから詳しく聞き出した時期に基づき,ベツレヘムとその周囲の全地域にいる二歳以下の男の子をすべて殺させた。 Matthew 2:17 その時,預言者エレミヤによって語られたことが果たされた。こう言われていた。
Matthew 2:18 「ラマで声が聞こえた,泣いて,大いに悲しむ悲嘆の声が。ラケルは自分の子供たちのために泣き,慰めてもらおうとしない。彼らがもういないからだ」。 Matthew 2:19 しかし,ヘロデが死ぬと,見よ,主のみ使いがエジプトにいるヨセフに夢の中で現われて,こう言った。 Matthew 2:20 「起きて,幼子とその母を連れてイスラエルの地に入りなさい。幼子の命を求めていた者たちは死んだからだ」。
Matthew 2:21 彼は起きて,幼子とその母を連れてイスラエルの地に入った。 Matthew 2:22 しかしアルケラオスがその父ヘロデの代わりにユダを治めていると聞き,そこに行くのを恐れた。夢の中で告げられて,ガリラヤ地方に退いた。 Matthew 2:23 そして,ナザレと呼ばれる町に来て住んだ。預言者たちを通して,「彼はナザレ人と呼ばれるだろう」と語られたことが果たされるためであった。
Matthew 3:0 Matthew 3:1 そのころ,バプテスマを施す人ヨハネが現われ,ユダヤの荒野で宣教して言った, Matthew 3:2 「悔い改めなさい。天の王国は近づいたからだ!」 Matthew 3:3 この者は,預言者イザヤによって語られた者だったのである。こう言われていた。
「荒野で叫ぶ者の声がする,主の道を整えよ,その道筋をまっすぐにせよ」。 Matthew 3:4 ところで,このヨハネはラクダの毛で作った衣を身に着け,皮の帯を腰に巻いており,イナゴと野みつを食べていた。 Matthew 3:5 その時,エルサレムとユダヤ全土とヨルダン周辺の全地方の人々が彼のところに出て来た。 Matthew 3:6 人々は自分の罪を告白して,ヨルダンで彼からバプテスマを受けていた。 Matthew 3:7 しかし,ファリサイ人たちやサドカイ人たちの多くが彼の施すバプテスマに来るのを見た時,彼は彼らに言った,「マムシらの子孫よ,来ようとしている憤りから逃れるようにと,だれがあなた方に告げたのか。 Matthew 3:8 それなら,悔い改めにふさわしい実を生み出しなさい! Matthew 3:9 『我々の父にアブラハムがいる』などと考えてはいけない。あなた方に告げるが,神はこれらの石からでもアブラハムに子孫を起こすことができるのだ。
Matthew 3:10 「おのはすでに木々の根もとに置かれている。だから,良い実を生み出さない木はみな切り倒されて,火の中に投げ込まれるのだ。 Matthew 3:11 わたしは確かに,悔い改めのためにあなた方に水でバプテスマを施しているが,わたしの後に来る方はわたしより強力だ。わたしはその方の履物を脱がすにも値しない。その方は,あなた方に聖霊でバプテスマを施すだろう。 Matthew 3:12 ふるい分けるフォークがその手にあり,その脱穀場をすっかりきれいにする。その小麦を倉に集め,もみ殻のほうは消すことのできない火で焼き尽くすだろう」。
Matthew 3:13 その時,イエスはガリラヤからヨルダンに,ヨハネのところに来た。彼からバプテスマを受けるためである。 Matthew 3:14 しかしヨハネは,イエスをとどめようとして言った,「わたしこそあなたからバプテスマを受ける必要があるのに,あなたのほうがわたしのところに来られるのですか」。
Matthew 3:15 しかしイエスは答えて彼に言った,「今はそうさせてもらいたい。このようにしてすべての義を果たすのは,わたしたちにとってふさわしいことなのだ」 。そこで彼はイエスの言うとおりにさせた。 Matthew 3:16 イエスはバプテスマを受けると,すぐに水から上がった。すると見よ,天が彼のために開いた。彼は,神の霊がハトのように自分の上に下って来るのを目にした。 Matthew 3:17 見よ,天から出た声が言った,「これはわたしの愛する子,わたしの心にかなう者である」。
Matthew 4:0 Matthew 4:1 それから,イエスは霊によって荒野に導かれた。悪魔から誘惑を受けるためである。 Matthew 4:2 四十日四十夜断食し,そののち空腹を感じた。 Matthew 4:3 すると誘惑する者がやって来て,彼に言った,「もしあなたが神の子なら,これらの石がパンになるように命じなさい」。
Matthew 4:4 しかし彼は答えた,「『人はパンだけで生きるのではなく,神の口から出て行く一つ一つの言葉によって生きなければならない』と書いてある」
Matthew 4:5 それから悪魔は彼を聖なる都の中に連れて来た。神殿の高い所に立たせて, Matthew 4:6 イエスに言った。「もしあなたが神の子なら,下に身を投げなさい。こう書いてあるからだ,『神はあなたについてご自分のみ使いたちに指示をお与えになるだろう』,そして,
『彼らはその手であなたを支え,あなたが石に足を打ちつけることのないようにする』」。 Matthew 4:7 イエスは彼に言った,「『あなたは,あなたの神なる主を試みてはならない』とも書いてある」
Matthew 4:8 さらに悪魔は彼を非常に高い山に連れて行き,世のすべての王国とその栄光とを見せた。 Matthew 4:9 彼はイエスに言った,「もしあなたがひれ伏してわたしを拝むなら,これらすべてをあなたに与えよう」。
Matthew 4:10 その時,イエスは彼に言った,「サタンよ,わたしの後ろに下がれ! 『あなたの神なる主をあなたは崇拝しなければならず,その方だけに仕えなければならない』と書いてあるからだ」
Matthew 4:11 それから悪魔はイエスを離れた。そして見よ,み使いたちがやって来て,彼に仕えた。 Matthew 4:12 さて,イエスはヨハネが引き渡されたことを聞くと,ガリラヤに退いた。 Matthew 4:13 ナザレを離れ,ゼブルンとナフタリの地域にある海辺のカペルナウムに来て住んだ。 Matthew 4:14 それは預言者イザヤを通して語られたことが果たされるためであった。こう言われていた。
Matthew 4:15 「ゼブルンの地とナフタリの地,海に向かう地とヨルダンの向こうの地,異邦人たちのガリラヤ。 Matthew 4:16 闇の中に座っている民は大きな光を見た。その地方で死の陰で座っている者たち,その者たちに光が昇った」。 Matthew 4:17 その時からイエスは宣教を開始して,こう言い始めた。「悔い改めなさい! 天の王国が近づいたからだ」
Matthew 4:18 ガリラヤの海辺を歩きながら,彼は二人の兄弟,すなわちペトロと呼ばれるシモンとその兄弟アンデレが,海で網を打っているのを目にした。彼らは漁師だったのである。 Matthew 4:19 彼は彼らに言った,「わたしの後に付いて来なさい。そうすればあなた方を,人を捕る漁師にしよう」
Matthew 4:20 すぐに彼らは網を捨てて彼に従った。 Matthew 4:21 そこから進んで行くと,ゼベダイの子ヤコブとその兄弟ヨハネとが,その父ゼベダイと一緒に舟の中で自分たちの網を繕っているのを目にした。彼は彼らを呼んだ。 Matthew 4:22 すぐに彼らは,舟とその父を残して,彼に従った。
Matthew 4:23 イエスはガリラヤ全土を歩き回り,その会堂で教え,王国の福音を宣教し,民の中のすべての疾患と病気をいやした。 Matthew 4:24 彼に関する評判はシリア中に広まった。人々は病気の者,すなわち,いろいろな疾患や苦痛で苦しんでいる者,悪霊に取りつかれている者,てんかんの者,体のまひした者などを,すべて彼のもとに連れて来た。そこで彼は彼らをいやした。 Matthew 4:25 ガリラヤ,デカポリス,エルサレム,ユダヤ,またヨルダンの向こうから来た大群衆が彼に従った。
Matthew 5:0 Matthew 5:1 その群衆を見ると,彼は山に上った。彼が座ると,弟子たちがそのもとにやって来た。 Matthew 5:2 彼は口を開き,彼らを教えてこう言った。
Matthew 5:3 「霊において貧しい人たちは幸いだ,天の王国はその人たちのものだからだ。 Matthew 5:4 嘆き悲しむ人たちは幸いだ,その人たちは慰められるからだ。 Matthew 5:5 柔和な人たちは幸いだ,その人たちは地を受け継ぐからだ。 Matthew 5:6 義に飢え渇く人たちは幸いだ,その人たちは満たされるからだ。 Matthew 5:7 あわれみ深い人たちは幸いだ,その人たちはあわれみを受けるからだ。 Matthew 5:8 心の清い人たちは幸いだ,その人たちは神を見るからだ。 Matthew 5:9 平和を造り出す人たちは幸いだ,その人たちは神の子供と呼ばれるからだ。 Matthew 5:10 義のために迫害されてきた人たちは幸いだ,天の王国はその人たちのものだからだ。
Matthew 5:11 「人々がわたしのゆえにあなた方を非難し,迫害し,あなた方に敵対してあらゆる悪いことを偽って言うとき,あなた方は幸いだ。 Matthew 5:12 喜び,かつ喜び踊りなさい。天においてあなた方の報いは大きいからだ。人々はあなた方より前の預言者たちも同じように迫害したのだ。
Matthew 5:13 「あなた方は地の塩だ。だが,塩がその風味を失うなら,何によって塩づけられるだろう。そうなると,もはや何の役にも立たず,外に投げ出されて人々の足の下で踏みつけられるだけだ。 Matthew 5:14 あなた方は世の光だ。丘の上にある町は隠れることができない。 Matthew 5:15 あなた方はともし火をともすと,量りかごの下ではなく,台の上に置く。そうすれば,それは家の中にいるすべての人に輝くのだ。 Matthew 5:16 このように,あなた方の光を人々の前で輝かせなさい。人々があなた方の良い行ないを見て,天におられるあなた方の父に栄光をささげるためだ。
Matthew 5:17 「わたしが律法や預言者たちを破棄するために来たと考えてはいけない。破棄するためではなく,達成するために来たのだ。 Matthew 5:18 本当にはっきりとあなた方に告げるが,天と地が過ぎ行くまでは,律法から最も小さな文字の一つやごく小さな字画の一つも決して過ぎ行くことがなく,すべての事柄が実現するのだ。 Matthew 5:19 だから,これらの最も小さなおきての一つを破り,そうするようにほかの人たちに教える者は,天の王国において最も小さな者と呼ばれるだろう。だが,そのおきてを行ない,またそうするようにほかの人たちに教える者は,天の王国において大きな者と呼ばれるだろう。 Matthew 5:20 あなた方に告げるが,あなた方の義が律法学者たちやファリサイ人たちのものにまさっていなければ,あなた方は決して天の王国に入ることはないからだ。
Matthew 5:21 「古代の人々に対して,『あなたは殺してはならない』,そして,『殺す者は裁きを受けるだろう』と言われたのをあなた方は聞いた。 Matthew 5:22 だが,あなた方に告げるが,自分の兄弟に対して理由なく腹を立てる者はみな裁きを受ける。自分の兄弟に対して『ラカ!』と言う者は最高法院に引き渡され,『愚か者!』と言う者は燃えるゲヘナに投げ込まれる。
Matthew 5:23 「だから,供え物を祭壇にささげようとして,兄弟が自分に対して何か恨み事を抱いていることをそこで思い出したなら, Matthew 5:24 あなたの供え物をそこ,祭壇の前に残しておいて,出かけて行きなさい。まず自分の兄弟と仲直りし,それから戻って来て,自分の供え物をささげなさい。 Matthew 5:25 あなたを訴える者とは,あなたが彼と共にその途上にある間に,急いで和解しなさい。その告訴人があなたを裁判官に引き渡し,裁判官があなたを役人に引き渡し,あなたがろうやに投げ込まれてしまうことのないためだ。 Matthew 5:26 本当にはっきりとあなた方に告げる。最後の小銭を払い切るまで,あなたは決してそこから出ることはないだろう。
Matthew 5:27 「『あなたは姦淫を犯してはならない』と言われたのをあなた方は聞いた。 Matthew 5:28 だが,あなた方に告げるが,女を情欲を抱いて見つめる者はみな,心の中ですでにその女と姦淫を犯したのだ。 Matthew 5:29 もしあなたの右目があなたをつまずかせるなら,それをえぐり出して捨て去りなさい。あなたの肢体の一部が滅ぶほうが,あなたの全身がゲヘナに投げ込まれるよりは,あなたにとっては益になるのだ。 Matthew 5:30 もしあなたの右手があなたをつまずかせるなら,それを切り取って捨て去りなさい。あなたの肢体の一部が滅ぶほうが,あなたの全身がゲヘナに投げ込まれるよりは,あなたにとっては益になるのだ。
Matthew 5:31 「また,『自分の妻を離縁する者は,彼女に離縁状を与えるように』と言われた。 Matthew 5:32 だが,あなた方に告げるが,淫行以外の理由で自分の妻を離縁する者は,彼女に姦淫を犯させるのであり,離縁された女と結婚する者は,姦淫を犯すのだ。
Matthew 5:33 「古い時代の人々に対して,『あなたは偽りの誓いをしてはならず,主に対して自分の誓いを果たさなければならない』と言われたのをあなた方は聞いた。 Matthew 5:34 だが,あなた方に告げるが,いっさい誓うな。天にかけても誓うな。それは神のみ座だからだ。 Matthew 5:35 地にかけても誓うな。それは神の足台だからだ。エルサレムにかけても誓うな。それは偉大な王の都だからだ。 Matthew 5:36 あなたの頭にかけても誓ってはならない。あなたは髪の毛一本さえ白くも黒くもできないからだ。 Matthew 5:37 そうではなく,あなた方の『はい』を『はい』に,『いいえ』を『いいえ』にならせなさい。これ以上のことは悪い者から出るのだ。
Matthew 5:38 「『目には目,歯には歯』と言われたのをあなた方は聞いた。 Matthew 5:39 だが,あなた方に告げるが,悪い者に手向かうな。むしろ,あなたの右のほおを打つ者には,反対側をも向けなさい。 Matthew 5:40 だれかがあなたを訴えて上着を取ろうとするなら,外衣をも取らせなさい。 Matthew 5:41 あなたに強要して一マイル行かせようとする者とは,一緒に二マイル行きなさい。 Matthew 5:42 求める者には与えなさい。そして,借りたいと望む者には背を向けてはいけない。
Matthew 5:43 「『あなたは隣人を愛し,敵を憎まなければならない』と言われたのをあなた方は聞いた。 Matthew 5:44 だが,あなた方に告げるが,敵を愛し,のろう者を祝福し,虐待し迫害する者たちのために祈りなさい。 Matthew 5:45 あなた方が,天におられるあなた方の父の子供となるためだ。その方は,悪い者の上にも善い者の上にもご自分の太陽を昇らせ,正しい者の上にも正しくない者の上にも雨を降らせてくださるからだ。 Matthew 5:46 自分を愛してくれる者たちを愛したからといって,あなた方に何の報いがあるだろうか。徴税人たちも同じことをしているではないか。 Matthew 5:47 自分の友人たちだけにあいさつしたからといって,あなた方は何の優れたことをしているのか。徴税人たちも同じことをしているではないか。 Matthew 5:48 だから,あなた方の天の父が完全であられるように,あなた方も完全でありなさい。
Matthew 6:0
Matthew 6:1 「見てもらおうとして,人々の前で施しをしないよう注意しなさい。そうでないと,あなた方には天におられるあなた方の父からの報いはない。 Matthew 6:2 だから,あなたがあわれみの行為をする時には,偽善者たちが人々から栄光を受けようとして会堂や通りでするように,自分の前でらっぱを吹き鳴らしてはいけない。本当にはっきりとあなた方に告げるが,彼らは自分の報いをすでに受けている。 Matthew 6:3 むしろ,あなたがあわれみの行為をする時には,右の手がしていることを左の手が知ることのないようにしなさい。 Matthew 6:4 あなたのあわれみの行為がひそかになされるためだ。そうすれば,ひそかに見ておられるあなたの父が,公然とあなたに報いてくださるだろう。
Matthew 6:5 「あなた方は祈る時,偽善者たちのようであってはならない。彼らは,人々に見られるために会堂や通りの角で立って祈ることが大好きなのだ。本当にはっきりと,あなた方に告げるが,彼らは自分の報いをすでに受けている。 Matthew 6:6 むしろ,あなたが祈る時には,奥の部屋に入り,戸を閉めてから,ひそかな所におられるあなたの父に祈りなさい。そうすれば,ひそかに見ておられるあなたの父が,公然とあなたに報いてくださるだろう。 Matthew 6:7 祈る時は,異邦人たちがするように無駄な繰り返しを費やしてはいけない。彼らは言葉が多ければ聞かれると思っているのだ。 Matthew 6:8 だから,彼らのようになってはいけない。あなた方の父は,あなた方が求める前に,あなた方の必要なものを知っておられるからだ。 Matthew 6:9 このように祈りなさい。『天におられるわたしたちの父よ,あなたのお名前が神聖なものとされますように。 Matthew 6:10 あなたの王国が来ますように。あなたのご意志が,天におけると同じように地上においてもなされますように。 Matthew 6:11 今日,わたしたちの日ごとのパンをお与えください。 Matthew 6:12 わたしたちの負い目をお許しください。わたしたちも自分に負い目のある人たちを許しますから。 Matthew 6:13 わたしたちを誘惑に陥らせることなく,悪い者からお救いください。王国と力と栄光は永久にあなたのものだからです。アーメン』。
Matthew 6:14 「あなた方が人々の罪を許すなら,あなた方の天の父もあなた方を許してくださるのだ。 Matthew 6:15 だが,あなた方が人々の罪を許さないなら,あなた方の天の父もあなた方の罪を許してくださらないだろう。
Matthew 6:16 「また断食する時には,偽善者たちのように陰気な顔つきをしてはいけない。彼らは,断食していることが人々に見られるようにと,その顔を見苦しくするのだ。本当にはっきりとあなた方に告げるが,彼らは自分の報いをすでに受けている。 Matthew 6:17 むしろ,あなたが断食する時には,頭に油を塗り,顔を洗いなさい。 Matthew 6:18 断食していることが人々にではなく,ひそかに見ておられるあなたの父に見られるためだ。そうすれば,ひそかに見ておられるあなたの父が,あなたに報いてくださるだろう。
Matthew 6:19 「あなた方は自分のために地上に宝を蓄えてはいけない。そこではガやさびが食い尽くし,盗人たちが押し入って盗む。 Matthew 6:20 むしろ,あなた方は自分のために天に宝を積み上げなさい。そこではガやさびが食い尽くすことも,盗人たちが押し入って盗むこともない。 Matthew 6:21 あなたの宝のある所,そこにあなたの心もあるからだ。
Matthew 6:22 「体のともし火は目だ。だから,あなた方の目が健全なら,あなた方の全身は光で満ちているだろう。 Matthew 6:23 だが,あなた方の目がよこしまなら,あなた方の全身は闇で満ちているだろう。それで,あなた方の内にある光が闇であれば,その闇はどんなに深いことか!
Matthew 6:24 「だれも二人の主人に仕えることはできない。一方を憎んで他方を愛するか,一方に身をささげて他方をさげすむかのどちらかだからだ。あなた方は神と富の両方に仕えることはできない。 Matthew 6:25 だから,あなた方に告げる。何を食べ,何を飲もうかと自分の命のことで,また何を着ようかと自分の体のことで思い煩ってはいけない。命は食物より,体は衣服より大切ではないか。 Matthew 6:26 空の鳥たちを見なさい。種をまいたり,刈り入れたり,倉に集め入れたりしない。あなた方の天の父がそれらを養っておられる。あなた方はそれらよりもはるかに価値のあるものではないか。
Matthew 6:27 「あなた方のうちのだれが,思い煩ったからといって,自分の寿命に一キュビトを加えられるだろうか。 Matthew 6:28 あなた方はなぜ衣服のことで思い煩うのか。野のユリがどのように育つかをよく考えなさい。労したり,紡いだりしない。 Matthew 6:29 だが,あなた方に告げるが,栄光を極めたときのソロモンでさえ,それらの一つほどにも装っていなかった。 Matthew 6:30 では,神が,今日生えていて明日かまどに投げ込まれる野の草にこのように衣服を与えておられるのであれば,あなた方にはなおのこと衣服を与えてくださらないだろうか,信仰の少ない者たちよ。
Matthew 6:31 「だから,『何を食べようか』,『何を飲もうか』,『何を着ようか』と言って思い煩ってはいけない。 Matthew 6:32 こうしたものすべては,異邦人たちが追い求めているものだからだ。あなた方の天の父は,あなた方がこうしたものすべてを必要としていることをご存じなのだ。 Matthew 6:33 むしろ,神の王国と神の義を第一に求めなさい。そうすれば,こうしたものすべてもあなた方に与えられるだろう。 Matthew 6:34 だから,明日のことで思い煩ってはいけない。明日のことは明日が思い煩うからだ。その日の悪いことだけで十分だ。
Matthew 7:0
Matthew 7:1 「裁いてはいけない。裁かれないためだ。 Matthew 7:2 あなた方が裁くその裁きで,あなた方が裁かれることになるからだ。そして,あなた方が量るそのはかりで,あなた方に量られるだろう。 Matthew 7:3 なぜあなたは,兄弟の目の中にあるちりは見えるのに,自分の目の中にある丸太のことを考えないのか。 Matthew 7:4 また,どうして兄弟に『あなたの目からそのちりを取らせてくれ』と言えるのか。見よ,自分の目の中には丸太があるのだ。 Matthew 7:5 偽善者よ! まず自分の目から丸太を取り出しなさい。そうすればあなたは,はっきりと見えて,兄弟の目からちりを取り出すことができるだろう。
Matthew 7:6 「聖なるものを犬たちに与えたり,あなた方の真珠を豚たちに与えたりしてはいけない。彼らがそれらを足の下で踏みつけ,向き直ってあなた方を引き裂くことのないためだ。
Matthew 7:7 「求めなさい,そうすれば与えられるだろう。探しなさい,そうすれば見いだすだろう。たたきなさい,そうすれば開かれるだろう。 Matthew 7:8 だれでも求めている者は受け,探している者は見いだし,たたいている者には開かれるのだ。 Matthew 7:9 あるいは,あなた方のうちのだれが,自分の息子がパンを求めているのに石を与えるだろうか。 Matthew 7:10 また,魚を求めているのにだれが蛇を与えるだろうか。 Matthew 7:11 それなら,あなた方が,悪い者でありながら,自分の子供たちに良い贈り物を与えることを知っているのであれば,まして天におられるあなた方の父は,ご自分に求める者たちにどれほど良いものを与えてくださるだろう! Matthew 7:12 だから,あなた方が人々からして欲しいと思うことは何でも,人々にも同じようにしなさい。これこそ律法と預言者たちだからだ。
Matthew 7:13 「狭い門を通って入りなさい。滅びに至る門は広く,その道は広々としており,そこを通って入る者は多いからだ。 Matthew 7:14 命に至る門はなんと狭く,その道はなんと狭められていることか! それを見いだす者は少ない。
Matthew 7:15 「偽預言者たちに用心しなさい。彼らは羊の皮をつけてあなた方のところへやって来るが,内側はむさぼり食うオオカミだ。 Matthew 7:16 あなた方はその実によって彼らを見分けるだろう。あなた方はイバラからブドウを,またはアザミからイチジクを集めるだろうか。 Matthew 7:17 このように,良い木はみな良い実を生み出すが,腐った木は悪い実を生み出す。 Matthew 7:18 良い木が悪い実を生み出すことも,腐った木が良い実を生み出すこともできない。 Matthew 7:19 良い実を育てない木はみな切り倒されて火の中に投げ込まれる。 Matthew 7:20 だから,あなた方はその実によって彼らを見分けるだろう。 Matthew 7:21 わたしに向かって,『主よ,主よ』と言う者がみな天の王国に入るのではなく,天におられるわたしの父のご意志を行なう者が入るのだ。 Matthew 7:22 その日には,多くの者がわたしに向かって,『主よ,主よ,わたしたちはあなたの名において預言し,あなたの名において悪霊たちを追い出し,あなたの名において多くの強力な業を行なったではありませんか』と言うだろう。 Matthew 7:23 その時,わたしは彼らに告げる,『わたしは少しもあなた方を知らない。不法を働く者たちよ,わたしから離れ去れ』と。
Matthew 7:24 「だから,わたしのこれらの言葉を聞いてそれを行なうすべての者を,わたしは岩の上に自分の家を建てた賢い人にたとえよう。 Matthew 7:25 雨が降り,洪水が押し寄せ,風が吹いてその家に打ちつけても,それは倒れなかった。岩の上に土台を据えていたからだ。 Matthew 7:26 わたしのこれらの言葉を聞いてもそれを行なわないすべての者は,砂の上に自分の家を建てた愚かな人に似ている。 Matthew 7:27 雨が降り,洪水が押し寄せ,風が吹いてその家に打ちつけると,それは倒れた。そして,その倒壊はひどいものだった」
Matthew 7:28 イエスがこれらの事を話し終えると,群衆は彼の教えに驚いていた。 Matthew 7:29 律法学者たちのようにではなく,権威をもって彼らを教えたからである。
Matthew 8:0 Matthew 8:1 彼が山から下りて来ると,大群衆が彼に従った。 Matthew 8:2 見よ,一人のらい病の人が彼のもとに来て,彼を拝んで言った,「主よ,あなたは,もしそうお望みになれば,わたしを清くすることがおできになります」。
Matthew 8:3 イエスは手を伸ばして彼に触り,こう言った。「わたしはそう望む。清くなりなさい」 。すぐに彼のらい病は清められた。 Matthew 8:4 イエスは彼に言った,「だれにも告げないようにしなさい。ただ行って,自分の体を祭司に見せ,モーセの命じた供え物をささげなさい。人々への証明のためだ」
Matthew 8:5 イエスがカペルナウムに入って来ると,一人の百人隊長が彼のもとに来て,彼に請い願って Matthew 8:6 言った,「主よ,わたしの召使いが家で横たわっています。体がまひして,ひどく苦しんでいるのです」。
Matthew 8:7 イエスは彼に言った,「わたしが行って彼をいやそう」
Matthew 8:8 百人隊長は答えた,「主よ,わたしは自分の屋根の下にあなたをお迎えするほどの者ではありません。ただお言葉を下さい。そうすればわたしの召使いはいやされるでしょう。 Matthew 8:9 というのも,わたしも権威の下にある者ですが,わたしの下にも兵士たちがいます。わたしがある者に『行け』と言えば行きますし,別の者に『来い』と言えば来ます。またわたしの召使いに『これをしろ』と言えばそれをします」。
Matthew 8:10 イエスはこれを聞いて驚嘆し,自分に従っている者たちに言った,「本当にはっきりとあなた方に告げる。イスラエルにおいてさえ,わたしはこれほどの信仰を見いだしたことがない。 Matthew 8:11 あなた方に言うが,大勢の者が東から,また西からやって来て,天の王国でアブラハム,イサク,ヤコブと共に席に着くだろう。 Matthew 8:12 だが王国の子らは外の闇に投げ出されるだろう。そこには嘆きと歯ぎしりとがあるだろう」 。 Matthew 8:13 イエスは百人隊長に言った,「行きなさい。あなたの信じたとおりになるように」 。彼の召使いはその時刻にいやされた。
Matthew 8:14 イエスがペトロの家に入ると,そのしゅうとめが熱病で横たわっているのを目にした。 Matthew 8:15 彼女の手に触ると,熱は引いた。彼女は起き上がって彼に仕えた。 Matthew 8:16 夕方になると,人々は悪霊に取りつかれた者を大勢,彼のもとに連れて来た。 彼は言葉で霊たちを追い出し,病気の人をすべていやした。 Matthew 8:17 これは預言者イザヤを通して語られたことが果たされるためであった。こう言われていた。「彼はわたしたちの弱さを引き受け,わたしたちの病気を担った」。 Matthew 8:18 さて,イエスは大群衆が自分の周りにいるのを目にして,向こう岸に出発するよう弟子たちに指図を与えた。
Matthew 8:19 一人の律法学者がやって来て,彼に言った,「先生,あなたの行かれる所なら,どこへでも従って行きます」。
Matthew 8:20 イエスは彼に言った,「キツネたちには穴があり,空の鳥たちには巣がある。だが,人の子には頭を横たえる所がない」
Matthew 8:21 弟子のうち別の者が彼に言った,「主よ,まず,行ってわたしの父を葬ることをお許しください」。
Matthew 8:22 しかしイエスは彼に言った,「わたしに従いなさい。そして,死んだ者たちに自分たちの死者を葬らせなさい」
Matthew 8:23 彼が舟に乗り込むと,弟子たちが彼に従った。 Matthew 8:24 見よ,激しいあらしが海に起こり,舟が波で覆われるほどであった。しかし彼は眠っていた。 Matthew 8:25 彼らはそばに来て,彼を起こして言った,「主よ,わたしたちをお救いください! わたしたちは死んでしまいます!」
Matthew 8:26 彼らは彼に言った,「なぜ恐れるのか,信仰の少ない者たちよ」 。それから,起き上がって風と海をしかりつけると,大なぎになった。
Matthew 8:27 彼らは驚いて言った,「風や海さえも従うとは,いったいこの方はどういう人なのだろう」。
Matthew 8:28 彼が向こう岸に着き,ゲラサ人たちの地方に入ると,悪霊に取りつかれた二人の者が墓場から出て来て彼に出会った。非常に狂暴で,だれもその道を通り抜けることができないほどであった。 Matthew 8:29 見よ,彼らは叫んで言った,「神の子イエスよ,わたしたちはあなたと何のかかわりがあるのか。あなたはわたしたちを苦しめるため,その時より前にここに来たのか」。 Matthew 8:30 ところで,彼らから遠く離れた所で豚の大群が飼われていた。 Matthew 8:31 悪霊たちは彼に懇願して言った,「わたしたちを追い出すのなら,あの豚の群れの中に去って行くことを許してくれ」。
Matthew 8:32 彼は彼らに「行け!」 と言った。
彼らは出て行って豚の群れの中に入った。すると見よ,豚の群れ全体ががけを下って海に突進し,水の中で死んだ。 Matthew 8:33 飼っていた者たちは逃げて町の中に去って行き,悪霊たちに取りつかれていた者たちに起きたことを含め,すべての事を告げ知らせた。 Matthew 8:34 見よ,町全体がイエスに会おうとして出て来た。彼を見ると,自分たちの地域から去るようにと懇願した。
Matthew 9:0 Matthew 9:1 彼は舟に乗って向こう岸に渡り,自分の町に入った。 Matthew 9:2 見よ,人々が彼のもとに,体のまひした人を寝台に横たえたまま運んで来た。イエスは彼らの信仰を見て,体のまひした人に言った,「子よ,元気を出しなさい! あなたの罪は許されている」
Matthew 9:3 見よ,数人の律法学者たちが心の中で言った,「この男は冒とくしている」。
Matthew 9:4 イエスは彼らの考えに気づいて,こう言った。「なぜあなた方は心の中で悪いことを考えているのか。 Matthew 9:5 体のまひした人に,『あなたの罪は許されている』と言うのと,『起き上がって歩きなさい』と言うのでは,どちらがたやすいか。 Matthew 9:6 だが,人の子が地上で罪を許す権威を持っていることをあなた方が知るために……」 (それから体のまひした人に言った),「起き上がって,寝床を取り上げて,自分の家に帰りなさい」
Matthew 9:7 その人は起き上がり,自分の家に去って行った。 Matthew 9:8 一方,群衆はそれを見て驚嘆し,このような権威を人に与えた神に栄光をささげた。
Matthew 9:9 イエスはそこから進んで行くと,マタイと呼ばれる人が収税所に座っているのを見て,「わたしに従いなさい」 と彼に言った。彼は立ち上がって,イエスに従った。 Matthew 9:10 彼の家でイエスが食卓に着いていたときのことである。見よ,大勢の徴税人や罪人がやって来て,イエスや弟子たちと共に座っていた。 Matthew 9:11 ファリサイ人たちはこれを見て,彼の弟子たちに言った,「なぜあなた方の教師は,徴税人たちや罪人たちと共に食事をするのか」。
Matthew 9:12 イエスはこれを聞いて,彼らに言った,「健康な人たちに医者は必要でなく,病気の人たちに必要なのだ。 Matthew 9:13 それで,『わたしはあわれみを望み,犠牲を望まない』とはどういう意味か,行って学んで来なさい。わたしは義人たちではなく,罪人たちを悔い改めへと呼び寄せるために来たのだ」
Matthew 9:14 それから,ヨハネの弟子たちが彼のもとに来てこう言った。「わたしたちとファリサイ人たちはたびたび断食するのに,あなたの弟子たちが断食しないのはなぜですか」。
Matthew 9:15 イエスは彼らに言った,「花婿の友人たちは,花婿が共にいる間は,悲しむことができるだろうか。花婿が共にいるかぎり,彼らは断食できない。だが,花婿が彼らから取り去られる日々が来る。その時には,彼らは断食するだろう。 Matthew 9:16 縮んでいない布切れを古い衣に当てる人はいない。その継ぎ切れが衣を引き裂き,破れはいっそうひどくなるからだ。 Matthew 9:17 新しいブドウ酒を古い皮袋に入れる人もいない。そんなことをすれば,皮袋は張り裂け,ブドウ酒はこぼれ出て,皮はだめになるだろう。やはり,人々は新しいブドウ酒を新しい皮袋に入れる。そうすればどちらも保たれるのだ」
Matthew 9:18 彼らにこれらの事を話している間に,見よ,一人の支配者がやって来て,彼を拝んで言った,「わたしの娘がたった今死んでしまいました。ですが,おいでになって,娘の上にあなたの手を置いてください。そうすれば生き返るでしょう」。
Matthew 9:19 イエスは立ち上がって彼に付いて行った。弟子たちもそうした。 Matthew 9:20 見よ,十二年間も血の流出をわずらっている女が彼の後ろに近づき,その衣の房べりに触った。 Matthew 9:21 というのは,彼女は,「あの方の衣に触りさえすれば,わたしはよくなるだろう」と心の中で言っていたからである。
Matthew 9:22 しかしイエスは振り向いて,彼女を目にして言った,「娘よ,元気を出しなさい! あなたの信仰があなたをよくならせた」 。するとその女はその時以来よくされた。
Matthew 9:23 イエスは支配者の家に入って,笛を吹く者たちやうるさく騒いでいる群衆を目にすると, Matthew 9:24 彼らに言った,「部屋を空けなさい。少女は死んだのではなく,眠っているのだ」
人々は彼をばかにした。 Matthew 9:25 しかし,群衆が外に出されると,彼は中に入り,彼女の手を取った。すると少女は起き上がった。 Matthew 9:26 この知らせはその地方全体に広まった。 Matthew 9:27 イエスがそこから進んで行くと,二人の盲人が大声で叫んで,「ダビデの子イエスよ,わたしをあわれんでください!」と言いながら,彼に付いて来た。
Matthew 9:28 彼が家の中に入ると,盲人たちはそのもとにやって来た。イエスは彼らに言った,「あなた方はわたしにそれができると信じるか」
彼らは彼に言った,「はい,主よ」。
Matthew 9:29 そこで彼は彼らの目に触り,「あなた方の信仰どおりのことが,あなた方に起こるように」 と言った。 Matthew 9:30 彼らの目は開かれた。イエスは彼らに厳しく命じて,「だれにもこのことを知られないようにしなさい」 と言った。 Matthew 9:31 しかし彼らは出て行って,その地方全体に彼の評判を言い広めた。
Matthew 9:32 彼らが出て行くと,見よ,悪霊に取りつかれた口のきけない人が彼のもとに連れて来られた。 Matthew 9:33 悪霊が追い出されると,口のきけない人はものを言った。群衆は驚いて言った,「イスラエルの中でこのようなことが見られたことは,これまで一度もない!」
Matthew 9:34 しかしファリサイ人たちは言った,「彼は悪霊たちの首領によって悪霊たちを追い出しているのだ」。
Matthew 9:35 イエスはすべての町や村を歩き回って,その会堂で教え,王国の福音を宣教し,民の中のすべての疾患と病気をいやした。 Matthew 9:36 また群衆を見ると,彼らに対する哀れみに動かされた。彼らが羊飼いのいない羊のように苦しめられ,追い散らされていたからである。 Matthew 9:37 そして彼は弟子たちに言った,「収穫は確かに多いが,働き人が少ない。 Matthew 9:38 だから,収穫に働き人を遣わしていただくよう,収穫の主人にお願いしなさい」
Matthew 10:0 Matthew 10:1 彼は自分の十二人の弟子たちを呼び寄せて,彼らに汚れた霊たちに対する権威を与えた。それらを追い出し,あらゆる疾患と病気をいやすためであった。 Matthew 10:2 十二使徒の名前は次のとおりである。まず,ペトロと呼ばれるシモン,その兄弟アンデレ,ゼベダイの子ヤコブ,その兄弟ヨハネ, Matthew 10:3 フィリポ,バルトロマイ,トマス,徴税人のマタイ,アルファイオスの子ヤコブ,そして,またの名をタダイオスというレバイオス, Matthew 10:4 カナナイ人シモン,それにユダ・イスカリオテ。このユダはまた,彼を売り渡した者でもある。
Matthew 10:5 イエスはこれら十二人を遣わし,彼らに命じてこう言った。「異邦人たちの間に行ってはいけない。また,サマリア人の町に入ってはいけない。 Matthew 10:6 むしろ,イスラエルの家の失われた羊のところに行きなさい。 Matthew 10:7 行くときには,『天の王国は近づいた!』と宣教しなさい。 Matthew 10:8 病気の人たちをいやし,らい病の人たちを清め,悪霊たちを追い出しなさい。あなた方はただで受けたのだから,ただで与えなさい。 Matthew 10:9 財布の中に金も銀も真ちゅうも入れて行ってはいけない。 Matthew 10:10 旅のための袋も,二枚の上着も,履物も,つえも持って行ってはいけない。働き人は自分の食物を受けるに値するからだ。 Matthew 10:11 あなた方の入るどの町や村でも,ふさわしい人を見つけ出して,旅立つまではそこにとどまりなさい。 Matthew 10:12 その家の中に入るときには,家の者たちにあいさつをしなさい。 Matthew 10:13 その家がふさわしいなら,あなた方の平安をその上に臨ませ,ふさわしくないなら,あなた方の平安をあなた方のもとに戻らせなさい。 Matthew 10:14 だれかがあなた方を受け入れず,あなた方の言葉に耳を傾けないなら,その家や町から出発する時に,あなた方の両足からちりを払い落としなさい。 Matthew 10:15 本当にはっきりとあなた方に告げる。裁きの日には,ソドムとゴモラの地のほうがその町よりは耐えやすいだろう。
Matthew 10:16 「見よ,わたしはあなた方を,オオカミのただ中の羊のように遣わす。だから,蛇のように賢く,ハトのように純真でありなさい。 Matthew 10:17 また,人々に用心しなさい。彼らはあなた方を地方法廷に引き渡し,その会堂であなた方をむち打つだろう。 Matthew 10:18 いやそれどころか,あなた方はわたしのために総督たちや王たちの前に連れ出されることになる。彼らと異邦人たちに対する証言のためだ。 Matthew 10:19 だが,人々があなた方を引き渡す時,どのように,あるいは何を言おうかと思い煩ってはいけない。言うべきことは,その時にあなた方に与えられるからだ。 Matthew 10:20 語っているのはあなた方ではなく,あなた方の内で語るあなた方の父の霊なのだ。
Matthew 10:21 「兄弟は兄弟を,父は子供を死に引き渡すだろう。子供たちは両親に敵対して立ち上がり,彼らを死に至らせるだろう。 Matthew 10:22 あなた方はわたしの名のゆえにすべての者たちから憎まれるだろう。だが,最後まで耐え忍ぶ者は救われるだろう。 Matthew 10:23 また,人々があなた方をある町で迫害するときには,次の町へ逃げなさい。本当にはっきりとあなた方に告げるが,あなた方は人の子が来るまでにイスラエルの町々を回り終えることはないだろう。
Matthew 10:24 「弟子はその教師より上ではなく,召使いはその主人より上ではない。 Matthew 10:25 弟子はその教師のようになれば十分であり,召使いはその主人のようになれば十分だ。人々が家の主人をベエルゼブルと呼んだのであれば,ましてその家の者たちをどんなにか悪く言うだろう! Matthew 10:26 だから,彼らを恐れてはいけない。覆われているもので明らかにされないものはなく,隠されているもので知られないものはないからだ。 Matthew 10:27 わたしがあなた方に闇の中で告げることを,光の中で話しなさい。また,耳もとでささやかれて聞くことを,屋上で宣明しなさい。 Matthew 10:28 体を殺しても,魂を殺すことのできない者たちを恐れてはいけない。むしろ,魂も体も共にゲヘナで滅ぼすことのできる方を恐れなさい。
Matthew 10:29 「二羽のスズメは一アサリオンで売られているではないか。あなた方の父のご意志によらなければ,その一羽も地面に落ちることはない。 Matthew 10:30 ところが,あなた方の髪の毛さえも,みな数えられている。 Matthew 10:31 だから恐れるな。あなた方はたくさんのスズメよりも価値があるのだ。 Matthew 10:32 それで,人々の前でわたしのことを告白する者はみな,わたしも天におられるわたしの父の前でその者のことを告白するだろう。 Matthew 10:33 だが,人々の前でわたしのことを否認する者は,わたしも天におられるわたしの父の前でその者のことを否認するだろう。
Matthew 10:34 「わたしが地上に平和をもたらすために来たと考えてはいけない。平和ではなく,剣をもたらすために来たのだ。 Matthew 10:35 わたしは人をその父と,娘をその母と,嫁をそのしゅうとめと争わせるために来たからだ。 Matthew 10:36 人の敵は自分の家の者たちだろう。 Matthew 10:37 わたし以上に父や母を愛する者は,わたしにふさわしくない。また,わたし以上に息子や娘を愛する者は,わたしにふさわしくない。 Matthew 10:38 自分の十字架を取り上げてわたしの後に従わない者は,わたしにふさわしくない。 Matthew 10:39 自分の命を見いだす者はそれを失い,わたしのために自分の命を失う者はそれを見いだすだろう。 Matthew 10:40 あなた方を受け入れる者は,わたしを受け入れるのだ。そして,わたしを受け入れる者は,わたしを遣わした方を受け入れるのだ。 Matthew 10:41 預言者という名のゆえに預言者を受け入れる者は,預言者の報いを受けるだろう。また,義人という名のゆえに義人を受け入れる者は,義人の報いを受けるだろう。 Matthew 10:42 弟子という名のゆえにこれら小さな者の一人に一杯の水を与える者については,本当にはっきりとあなた方に告げるが,彼はその報いを決して失わないだろう」
Matthew 11:0 Matthew 11:1 イエスは自分の十二弟子に指図し終えると,彼らの町々で教えまた宣教するため,そこから去って行った。 Matthew 11:2 さて,ヨハネはろうやの中でキリストの業について聞くと,自分の弟子のうちの二人を遣わして Matthew 11:3 彼に言った,「あなたが来たるべき方なのですか。それとも,わたしたちはほかの方を待つべきでしょうか」。
Matthew 11:4 イエスは彼らに言った,「行って,あなた方が見聞きしている事柄をヨハネに告げなさい。 Matthew 11:5 目の見えない人たちは見えるようになり,足の不自由な人たちは歩き,らい病の人たちは清められ,耳の聞こえない人たちは聞き,死んだ人たちは生き返らされ,貧しい人たちには良いたよりが宣教されている。 Matthew 11:6 わたしにつまずきのもとを見いださない者は幸いだ」
Matthew 11:7 これらの者たちが帰って行くと,イエスは群衆にヨハネについてこう言い始めた。「あなた方は何を見るために荒野へ出て行ったのか。風に揺れるアシか。 Matthew 11:8 そうでなければ,何を見るために出て行ったのか。柔らかな衣の人か。見よ,柔らかな衣を身に着けた者たちなら王たちの家にいる。 Matthew 11:9 そうでなければ,なぜ出て行ったのか。預言者を見るためか。そうだ,あなた方に言うが,預言者よりはるかに優れた者だ。 Matthew 11:10 この者は,『見よ,わたしはあなたの面前にわたしの使者を遣わす。その者はあなたの前に道を整えるだろう』と書かれている者だ。 Matthew 11:11 本当にはっきりとあなた方に告げる。女から生まれた者の中で,バプテスマを施す人ヨハネより偉大な者は起こされていない。だが,天の王国で最も小さな者も,彼よりは偉大だ。 Matthew 11:12 バプテスマを施す人ヨハネの日々から今に至るまで,天の王国は猛攻を受けている。そして,猛烈な者たちが力ずくでそれを奪い取っている。 Matthew 11:13 すべての預言者たちと律法とは,ヨハネに至るまで預言したからだ。 Matthew 11:14 あなた方がそれを受け入れる気があるなら,この者こそ来たるべきエリヤなのだ。 Matthew 11:15 聞く耳のある者は聞きなさい。
Matthew 11:16 「だが,わたしはこの世代を何と比べようか。それは,子供たちが市場に座って,自分たちの遊び仲間に呼びかけるのに似ている。 Matthew 11:17 こう言うのだ,『君たちのために笛を吹いたのに,踊ってくれなかった。君たちのために悲しんだのに,嘆いてくれなかった』。 Matthew 11:18 というのも,ヨハネがやって来て食べも飲みもしないと,彼らは,『彼には悪霊がいる』と言う。 Matthew 11:19 人の子がやって来て食べたり飲んだりすると,彼らは,『見ろ,大食いの大酒飲み,徴税人たちや罪人たちの友!』と言う。だが,知恵はその実によって,正しいことが証明されるのだ」
Matthew 11:20 それから彼は,彼の強力な業の多くがなされた町々を非難し始めた。それらが悔い改めなかったからである。 Matthew 11:21 「災いだ,コラジンよ! 災いだ,ベツサイダよ! あなた方の中でなされた強力な業がテュロスやシドンでなされていたなら,彼らはとっくの昔にあら布と灰の中で悔い改めていただろう。 Matthew 11:22 だが,あなた方に告げる。裁きの日には,テュロスとシドンのほうがあなた方よりは耐えやすいだろう。 Matthew 11:23 カペルナウム,天まで高くされた者よ,あなたはハデスにまで下ることになる。あなたの中でなされた強力な業がソドムでなされていたなら,彼らは今日に至るまで残っていたことだろう。 Matthew 11:24 だが,あなた方に告げるが,裁きの日にはソドムの地のほうがあなたよりは耐えやすいだろう」
Matthew 11:25 その時,イエスは答えた,「父よ,天地の主よ,わたしはあなたに感謝します。あなたはこれらの事を賢い者や理解力のある者から隠し,それを幼子たちに明らかにされたからです。 Matthew 11:26 そうです,父よ,そのようにして,あなたのみ前で意にかなうことが生じたのです。 Matthew 11:27 すべての事が,わたしの父によってわたしに引き渡されている。子を知っている者は父のほかにはおらず,父を知っている者は子と子が明らかにしたいと望む者のほかにはいない。
Matthew 11:28 「労苦し,重荷を負わされているすべての者よ,わたしのところに来なさい。そうすれば,わたしがあなた方に安らぎを与えよう。 Matthew 11:29 わたしのくびきを負って,わたしから学びなさい。わたしは柔和で心のへりくだった者だからだ。そうすれば,あなた方は自分の魂に安らぎを見いだすだろう。 Matthew 11:30 わたしのくびきは負いやすく,わたしの荷は軽いからだ」
Matthew 12:0 Matthew 12:1 そのころ,イエスは安息日に穀物畑を通った。彼の弟子たちは空腹だったので,穀物の穂を摘んで食べ始めた。 Matthew 12:2 しかし,ファリサイ人たちがこれを見て,彼に言った,「見よ,あなたの弟子たちは安息日に行なうことが許されていないことをしている」。
Matthew 12:3 しかし,彼は彼らに言った,「ダビデが,自分も共にいた者たちも空腹だったときに何をしたか,あなた方は読んだことがないのか。 Matthew 12:4 彼がどのようにして神の家に入り,祭司たちのほかは自分も共にいた者たちも食べることが許されていない供えのパンを食べたかを。 Matthew 12:5 あるいは,安息日に神殿の祭司たちが安息日を犯しても罪にならないことを,律法で読んだことがないのか。 Matthew 12:6 ところが,あなた方に言うが,神殿よりも偉大な者がここにいるのだ。 Matthew 12:7 だが,『わたしはあわれみを望み,犠牲を望まない』とはどういう意味かを知っていたなら,あなた方は罪のない者たちを罪に定めたりはしなかっただろう。 Matthew 12:8 人の子は安息日の主なのだ」
Matthew 12:9 彼はそこを去って,彼らの会堂に入った。 Matthew 12:10 すると見よ,片手のなえた人がそこにいた。彼らはイエスを訴えようとして,「安息日にいやすことは許されているのか」と尋ねた。
Matthew 12:11 彼は彼らに言った,「あなた方のうちのだれが,一匹の羊を持っていて,それが安息日に穴に落ちたなら,それをつかんで引き上げないだろうか。 Matthew 12:12 それなら,人は羊よりもどれほど価値があるだろう! だから,安息日に善を行なうことは許されているのだ」 。 Matthew 12:13 それから,「あなたの手を伸ばしなさい」 とその人に言った。手を伸ばすと,その手はもう一方の手と同じようによくなった。 Matthew 12:14 しかしファリサイ人たちは出て行き,どのようにして彼を滅ぼそうかと,彼に対する陰謀を企てた。 Matthew 12:15 それに気づいて,イエスはそこから退いた。大群衆が彼に従った。そこで彼は彼らすべてをいやした。 Matthew 12:16 そして,自分を知らせないようにと,彼らに命じた。 Matthew 12:17 それは預言者イザヤを通して語られたことが果たされるためであった。こう言われていた。
Matthew 12:18 「見よ,わたしが選んだわたしの召使い,わたしの魂を喜ばせるわたしの愛する者。わたしは自分の霊を彼の上に置く。彼は異邦人たちに公正を宣明するだろう。 Matthew 12:19 彼は争わず,叫ばず,通りでその声を聞く者もいない。 Matthew 12:20 彼は傷つけられたアシを砕かない。彼はくすぶる亜麻の灯心を消さない,公正を勝利に導くまでは。 Matthew 12:21 異邦人たちは彼の名に望みをかけるだろう」。 Matthew 12:22 それから,悪霊に取りつかれており,目が見えず口のきけない人が彼のもとに連れて来られたので,彼はその人をいやした。そのため,目が見えず口のきけない人はものを言い,見えるようになった。 Matthew 12:23 群衆は皆びっくりして,「この人がダビデの子ではないだろうか」と言った。 Matthew 12:24 しかし,これを聞いてファリサイ人たちは言った,「この男が悪霊たちを追い出すのは,悪霊たちの首領ベエルゼブルによる以外にはない」。
Matthew 12:25 彼らの考えに気づいて,イエスは彼らに言った,「自らに敵対して分裂する王国はみな荒廃に至り,自らに敵対して分裂する町や家はみな立ち行かないだろう。 Matthew 12:26 もしサタンがサタンを追い出すなら,彼は自らに敵対して分裂している。ではどうしてその王国は立ち行くだろうか。 Matthew 12:27 わたしがベエルゼブルによって悪霊たちを追い出しているのなら,あなた方の子らはだれによってそれらを追い出しているのか。それで,彼らがあなた方を裁く者になるだろう。 Matthew 12:28 だが,わたしが神の霊によって悪霊たちを追い出しているのなら,神の王国はすでにあなた方の上に来ているのだ。 Matthew 12:29 また,まず強い者を縛ってからでなければ,どうして強い者の家に押し入ってその家財を略奪することができるだろうか。縛ってから,その家を略奪するだろう。
Matthew 12:30 「わたしと共にいない者はわたしに敵対しているのであり,わたしと共に集めない者は散らしているのだ。 Matthew 12:31 だから,あなた方に言う,人はあらゆる罪や冒とくを許されるが,霊に対する冒とくは許されないだろう。 Matthew 12:32 だれでも人の子に逆らう言葉を語る者は許されるだろう。だが,だれでも聖霊に逆らう言葉を語る者は,この世でも,来たるべき世でも,許されないだろう。
Matthew 12:33 「木を良いとしてその実を良いとするか,木を腐ったものとしてその実を腐ったものとするかのどちらかにしなさい。木はその実によって見分けられるからだ。 Matthew 12:34 マムシらの子孫よ,あなた方は悪い者でありながら,どうして良いことを語れるだろうか。心に満ちあふれているものの中から,口は語るからだ。 Matthew 12:35 善い者は自分の良い宝の中から良いものを取り出し,悪い者は自分の悪い宝の中から悪いものを取り出す。 Matthew 12:36 あなた方に言うが,人々の語るすべての無益な言葉,それについて人々は裁きの日に言い開きをすることになる。 Matthew 12:37 あなたは自分の言葉によって義とされ,また自分の言葉によって罪に定められるからだ」
Matthew 12:38 すると,律法学者たちとファリサイ人たちのある者たちが尋ねた,「先生,わたしたちはあなたからのしるしを見たいのですが」。
Matthew 12:39 しかし彼は彼らに答えた,「悪い姦淫の世代はしるしを求めるが,預言者ヨナのしるしのほかには何のしるしも与えられないだろう。 Matthew 12:40 ヨナが大魚の腹の中に三日三晩いたように,人の子も地の心に三日三晩いることになるのだ。 Matthew 12:41 ニネベの人々は裁きの際にこの世代と共に立ち上がり,この世代を罪に定めるだろう。彼らはヨナの宣教することを聞いて悔い改めたからだ。そして見よ,ヨナよりも偉大な者がここにいる。 Matthew 12:42 南の女王は裁きの際にこの世代と共に立ち上がり,この世代を罪に定めるだろう。彼女はソロモンの知恵を聞くために地の果てからやって来たからだ。そして見よ,ソロモンよりも偉大な者がここにいる。 Matthew 12:43 また,汚れた霊は,人から出て来ると,休み場を求めて水のない場所を通るが,見つからない。 Matthew 12:44 そこで,『出て来た自分の家に戻ろう』と言う。そして帰って来ると,そこが空いていて,掃き清められており,きちんと片づけられているのを見つける。 Matthew 12:45 そこで,出て行って,自分より悪いほかの七つの霊を共に連れて来る。そして彼らは中に入ってそこに住みつく。その人の最後の状態は,最初よりも悪くなる。この悪い世代もそのようになるだろう」
Matthew 12:46 彼がまだ群衆に話している間に,見よ,彼の母と兄弟たちが外に立って,彼に話をしようとした。 Matthew 12:47 ある人が彼に言った,「ご覧なさい,あなたのお母さんと兄弟たちが外に立って,あなたに話をしようとしています」。
Matthew 12:48 しかし彼は,自分に知らせた人に答えた,「わたしの母とはだれか。わたしの兄弟たちとはだれか」 。 Matthew 12:49 自分の弟子たちのほうに手を差し伸べて言った,「見よ,わたしの母とわたしの兄弟たちだ! Matthew 12:50 だれでも天におられるわたしの父のご意志を行なう者,その者がわたしの兄弟,また姉妹,また母なのだ」
Matthew 13:0 Matthew 13:1 その日,イエスは家を出て,海辺に座っていた。 Matthew 13:2 大群衆がそのもとに集まったので,彼は舟に乗り込んで座った。そして群衆はみな浜辺に立っていた。 Matthew 13:3 彼はたとえを用いて彼らに多くの事を語って,こう言った。「見よ,ある耕作人が種をまきに出かけた。 Matthew 13:4 種をまいていると,幾つかの種は道ばたに落ち,鳥たちがやって来て,それらをむさぼり食ってしまった。 Matthew 13:5 別の幾つかの種は土の少ない岩地の上に落ちた。そして,土が深くなかったので,すぐに芽を出した。 Matthew 13:6 太陽が昇ると焦がされ,根がないために枯れ果ててしまった。 Matthew 13:7 別の幾つかの種はイバラの間に落ち,イバラが伸びて来てそれらをふさいだ。 Matthew 13:8 さらに,それ以外の種は良い土に落ち,あるものは百倍,あるものは六十倍,あるものは三十倍の実を生み出した。 Matthew 13:9 聞く耳のある者は聞きなさい」
Matthew 13:10 弟子たちが近寄って来て,彼に言った,「なぜ彼らにたとえでお話しになるのですか」。
Matthew 13:11 彼は彼らに答えた,「あなた方には神の王国の秘密を知ることが許されているが,彼らには許されていない。 Matthew 13:12 だれでも持っている人,その人にはさらに与えられて,あり余るほど持つことになるが,持っていない人,その人からは持っているものまでも取り去られることになるからだ。 Matthew 13:13 だから,わたしは彼らにたとえで話す。それは彼らが,見ても見ず,聞いても聞かず,理解もしないからだ。 Matthew 13:14 イザヤの預言は彼らの内で果たされている。こう言われていた。
『あなた方は聞くには聞くが,決して理解しないだろう。見るには見るが,決して分からないだろう。 Matthew 13:15 この民の心は無感覚になり,耳は聞くことに鈍くなり,目は閉じてしまった。そうでなければ,彼らは目で分かり,耳で聞き,心で理解したかも知れず,こうして立ち返っただろう。そうすれば,わたしは彼らをいやしただろうに』。
Matthew 13:16 「だが,あなた方の目は見ているゆえに,またあなた方の耳は聞いているゆえに幸いだ。 Matthew 13:17 本当にはっきりとあなた方に告げるが,多くの預言者たちと義人たちは,あなた方が見ているものを見たいと願ったのにそれを見ず,あなた方が聞いていることを聞きたいと願ったのにそれを聞かなかったからだ。
Matthew 13:18 「だから,耕作人のたとえを聞きなさい。 Matthew 13:19 だれかが王国の言葉を聞いても理解しない場合,悪い者がやって来て,その心にまかれたものを奪い去る。道ばたにまかれたものとは,そういう人のことだ。 Matthew 13:20 岩地の上にまかれたものとは,こういう人のことだ。み言葉を聞くと,喜んですぐに受け入れる。 Matthew 13:21 だが,自分の内に根がないので,しばらくしか続かない。み言葉のために圧迫や迫害が生じると,すぐにつまずく。 Matthew 13:22 イバラの間にまかれたものとは,こういう人のことだ。み言葉を聞いても,この世の思い煩いや富の欺きがみ言葉をふさぎ,その人は実を結ばなくなる。 Matthew 13:23 良い土の上にまかれたものとは,こういう人のことだ。み言葉を聞いて理解し,ある者は百倍,ある者は六十倍,ある者は三十倍の実を生み出すのだ」
Matthew 13:24 彼は彼らに別のたとえを示して,こう言った。「天の王国は,自分の畑に良い種をまいた人のようだ。 Matthew 13:25 人々が眠っている間に,彼の敵がやって来て,毒麦を小麦の間にまき足して,去って行った。 Matthew 13:26 さて,葉が出て実を生じると,毒麦も現われた。 Matthew 13:27 家の主人の召使いたちがやって来て,彼に言った,『ご主人様,畑には良い種をまかれたのではありませんでしたか。この毒麦はどこから出て来たのでしょうか』。
Matthew 13:28 「彼は彼らに言った,『敵がこのことをしたのだ』。
「召使いたちは彼に尋ねた,『わたしたちが行って,それらを抜き集めることをお望みですか』。
Matthew 13:29 「だが彼は言った,『いや,毒麦を抜き集める時に,一緒に小麦を引き抜いてしまうといけない。 Matthew 13:30 収穫まで両方とも一緒に成長させなさい。そして収穫の時になったら,刈り取る者たちに,「まず毒麦を抜き集めて,燃やすためにそれらを縛って束にしなさい。そして小麦のほうはわたしの倉に集めなさい」と言おう』」
Matthew 13:31 彼は彼らに別のたとえを示して,こう言った。「天の王国は一粒のからしの種のようだ。ある人がそれを取って,自分の畑にまいた。 Matthew 13:32 実際,それはどんな種よりも小さい。だが,それは成長すると,どの野菜よりも大きくなって,一本の木になる。そのため,空の鳥たちがやって来て,その枝に巣を作る」
Matthew 13:33 彼は彼らに別のたとえを語った。「天の王国はパン種のようだ。ある女がそれを取って,三ますの粉の中に隠すと,ついには全体が発酵した」
Matthew 13:34 イエスはこれらの事をみな,たとえで群衆に語った。たとえなしでは人々に語らなかった。 Matthew 13:35 預言者を通して語られたことが果たされるためであった。こう言われていた。
「わたしはたとえをもって口を開き,世の基礎が据えられて以来隠されている事柄を言い表そう」。 Matthew 13:36 それからイエスは群衆を去らせて,家の中に入った。弟子たちは彼のもとに来て,「畑の毒麦のたとえをわたしたちに説明してください」と言った。
Matthew 13:37 彼は彼らに答えた,「良い種をまく者は人の子だ。 Matthew 13:38 畑はこの世界だ。また良い種,それらは王国の子らだ。そして毒麦は悪い者の子らだ。 Matthew 13:39 それらをまいた敵は悪魔だ。収穫とはこの時代の終わりのことで,刈り取る者たちはみ使いたちだ。 Matthew 13:40 だから,毒麦が抜き集められて火で燃やされるように,この時代の終わりにもそのようになるだろう。 Matthew 13:41 人の子は自分の使いたちを遣わし,彼らは,つまずきのもととなるすべてのものと不法を行なう者たちを彼の王国から集め出し, Matthew 13:42 火の炉に投げ入れるだろう。そこには嘆きと歯ぎしりとがあるだろう。 Matthew 13:43 その時,義人たちは彼らの父の王国で太陽のように輝きわたるだろう。聞く耳のある者は聞きなさい。
Matthew 13:44 「また,天の王国は,畑の中に隠されている宝のようだ。ある人がそれを見つけてから隠した。彼は喜びながら,行って自分の持っているものをすっかり売り払って,その畑を買う。
Matthew 13:45 「また,天の王国は,良い真珠を探している商人のようだ。 Matthew 13:46 一つの高価な真珠を見つけると,行って自分の持っていたものをすっかり売り払って,それを買った。
Matthew 13:47 「また,天の王国は,海に投げ入れられ,あらゆる種類の魚を集める引き網のようだ。 Matthew 13:48 それがいっぱいになると,人々は浜辺に引き上げた。彼らは座って,良いものを器の中に集め,悪いものを投げ捨てた。 Matthew 13:49 この世の終わりにもそのようになる。み使いたちがやって来て,義人たちの中から悪人たちをより分け, Matthew 13:50 彼らを火の炉に投げ入れるだろう。そこには嘆きと歯ぎしりとがあるだろう」 。 Matthew 13:51 イエスは彼らに言った,「あなた方はこれらの事をすべて理解したか」
彼らは彼に答えた,「はい,主よ」。
Matthew 13:52 彼は彼らに言った,「だから,天の王国の弟子になった律法学者はみな,自分の宝の中から新しいものと古いものを取り出す家の主人のようだ」
Matthew 13:53 イエスはこれらのたとえを語り終えると,そこから去って行った。 Matthew 13:54 自分の故郷に入ると,そこの会堂で人々を教えた。そこで人々は驚いてこう言った。「この人はこのような知恵とこれらの強力な業をどこから得たのだろう。 Matthew 13:55 この人は大工の息子ではないか。その母はマリアと呼ばれ,兄弟たちはヤコブ,ヨセ,シモン,ユダではないか。 Matthew 13:56 その姉妹たちはみな,我々と共にここにいるではないか。それでは,この人はこうした事柄をどこから得たのだろう」。 Matthew 13:57 人々は彼のために不快になった。
しかしイエスは彼らに言った,「預言者は,自分の故郷や自分の家以外では,敬われないことはない」 。 Matthew 13:58 彼らの不信仰のゆえに,その場所では強力な業を多くは行なわなかった。
Matthew 14:0 Matthew 14:1 そのころ,領主ヘロデはイエスに関する評判を聞いて, Matthew 14:2 自分の召使いたちに言った,「これはバプテスマを施す人ヨハネだ。彼は死んだ者たちの中から生き返ったのだ。それで,こうした力が彼の内に働いているのだ」。 Matthew 14:3 というのは,ヘロデは,自分の兄弟フィリポの妻ヘロディアのために,ヨハネを逮捕して縛り,ろうやに入れていたからであった。 Matthew 14:4 それは,ヨハネがヘロデに,「あなたが彼女を有しているのは,許されることではない」と言ったからである。 Matthew 14:5 ヘロデは彼を死に至らせたいと思っていたが,群衆を恐れた。人々は彼を預言者とみなしていたからである。 Matthew 14:6 ところが,ヘロデの誕生日がやって来た時,ヘロディアの娘が彼らの間で踊ってヘロデを喜ばせた。 Matthew 14:7 そこで,彼は彼女の求めるものは何でも与えると,誓って約束した。 Matthew 14:8 彼女はその母に促されて言った,「バプテスマを施す人ヨハネの首を大皿に載せて,わたしにお与えください」。
Matthew 14:9 王は悲しんだが,自分の誓い,また自分と共に食卓に着いていた者たちのゆえに,それが与えられるように命じ, Matthew 14:10 人を遣わして,ろうやでヨハネの首をはねさせた。 Matthew 14:11 彼の首は大皿に載せて運ばれて,乙女に与えられた。そして彼女はそれを自分の母のところに持って行った。 Matthew 14:12 ヨハネの弟子たちはやって来て,彼の死体を引き取り,それを葬った。そして,出て行ってイエスに知らせた。 Matthew 14:13 さて,イエスはこのことを聞くと,舟でそこを去り,自分だけで寂しい場所に退いた。群衆はそれを聞いて,町々から徒歩で彼に従った。
Matthew 14:14 イエスは出て来て,大群衆を目にした。彼らに対して哀れみを抱き,彼らの中の病気の人をいやした。 Matthew 14:15 夕方になった時,弟子たちが彼のもとに来て,こう言った。「ここは寂しい場所ですし,すでに時刻も遅くなっています。群衆を去らせて,彼らが村々に入り,自分たちで食物を買うようにさせてください」。
Matthew 14:16 しかしイエスは彼らに言った,「彼らが出かけて行く必要はない。あなた方が彼らに食べ物を与えなさい」
Matthew 14:17 彼らは彼に言った,「わたしたちはここに,五つのパンと二匹の魚しか持っていません」。
Matthew 14:18 彼は言った,「それをここに,わたしのところに持って来なさい」 。 Matthew 14:19 彼は草の上に座るよう群衆に命じた。そして,五つのパンと二匹の魚を取り,天を見上げて祝福し,パンを裂いて弟子たちに与え,弟子たちが群衆に与えた。 Matthew 14:20 みんなは食べて満ち足りた。彼らは余ったパン切れを,十二のかごいっぱいに拾い集めた。 Matthew 14:21 パンを食べたのは,女や子供を除いて,およそ五千人の男たちであった。
Matthew 14:22 すぐにイエスは,弟子たちを舟に乗り込ませ,向こう岸のベツサイダへ彼より先に行かせ,その間に自分は群衆を去らせた。 Matthew 14:23 人々を去らせてから,祈るために自分だけで山へ上って行った。夕方になっても,ひとりでそこにいた。 Matthew 14:24 他方,舟はすでに海の真ん中にあり,波に苦しめられていた。向かい風だったからである。 Matthew 14:25 夜の第四見張り時に,イエスは海の上を歩きながら彼らに近づいて来た。 Matthew 14:26 弟子たちは彼が海の上を歩いているのを見て,「幽霊だ!」と言って動転し,恐れのあまり叫び声を上げた。 Matthew 14:27 しかし,イエスはすぐに彼らに話しかけ,彼らに言った,「しっかりしなさい。わたしはある! 恐れることはない」。
Matthew 14:28 ペトロが彼に答えて言った,「主よ,あなたでしたら,水の上を歩いてあなたのもとに来るよう,わたしにお命じください」。
Matthew 14:29 彼は言った,「来なさい!」
ペトロは舟から降りて,水の上を歩いてイエスのほうへ行った。 Matthew 14:30 しかし風が強いのを見て,怖くなり,沈み始めた時,叫んで言った,「主よ,お救いください!」
Matthew 14:31 すぐにイエスは手を伸ばして彼をつかみ,彼に言った,「信仰の少ない者よ,なぜ疑ったのか」 。 Matthew 14:32 彼らが舟に乗り込むと,風はやんだ。 Matthew 14:33 舟の中にいた者たちは近寄り,「確かにあなたは神の子です!」と言って,彼を拝んだ。
Matthew 14:34 彼らが海を渡ると,ゲネサレトの地に着いた。 Matthew 14:35 その場所の人々は,彼だと分かると,周囲の地方全体に人を遣わし,病気の人たちをみな彼のもとに連れて来た。 Matthew 14:36 そして,その者たちにその衣の房べりにでも触らせてもらえるよう,彼に懇願した。そしてそれに触った者は皆健康になった。
Matthew 15:0 Matthew 15:1 それから,ファリサイ人たちと律法学者たちが,エルサレムからイエスのところにやって来て,こう言った。 Matthew 15:2 「あなたの弟子たちが年長者たちの伝統を破るのはなぜか。彼らはパンを食べる時に自分の手を洗っていないのだ」。
Matthew 15:3 彼は彼らに答えた,「あなた方も自分たちの伝統のゆえに神のおきてを破るのはなぜか。 Matthew 15:4 というのは,神は,『あなたの父と母を敬え』,そして,『父や母を悪く言う者は死刑に処せられるべきだ』と命じられたからだ。 Matthew 15:5 ところがあなた方はこう言う。『自分の父や母に向かって,「あなたがわたしから得られたはずの役に立つものはみな,神に献納された供え物です」と言うのがだれでも, Matthew 15:6 その者は自分の父や母を敬ってはならない』と。あなた方は自分たちの伝統のゆえに神の言葉を無効にしている。 Matthew 15:7 偽善者たち! イザヤは,あなた方偽善者たちについてみごとに預言した。こう言われていた。
Matthew 15:8 『この民は口でわたしに近づき,唇でわたしを敬うが,その心はわたしから遠く離れている。 Matthew 15:9 彼らがわたしを崇拝するのは無駄なことだ,人間の作った規則を教理として教えているからだ』」 Matthew 15:10 群衆を呼び寄せて,彼らに言った,「聞いて,理解しなさい。 Matthew 15:11 口から入って来るものは人を汚さない。口から出て行くものが人を汚すのだ」
Matthew 15:12 その時,弟子たちが近寄って来て,彼に言った,「今の言葉を聞いて,ファリサイ人たちが不快になったのをご存じですか」。
Matthew 15:13 しかし彼は答えた,「わたしの天の父が植えられたのではない植物は,すべて根こそぎにされるだろう。 Matthew 15:14 彼らをそのままにしておきなさい。彼らは盲人のための盲目の案内人だ。盲人が盲人を導くなら,両方とも穴に落ちてしまうだろう」
Matthew 15:15 ペトロが彼に答えた,「あのたとえをわたしたちに説明してください」。
Matthew 15:16 するとイエスは言った,「あなた方もまだ理解していないのか。 Matthew 15:17 すべて口から入るものは,腹の中を通って,それから体の外に出て行くということが分からないのか。 Matthew 15:18 だが,口から出て来るものは心から出て来るのであり,それがその人を汚す。 Matthew 15:19 というのは,心の中から,悪い考え,殺人,姦淫,淫行,盗み,偽りの証言,冒とくが出て来るからだ。 Matthew 15:20 これらのものが人を汚すのだ。だが,洗っていない手で食事をすることが人を汚すことはない」
Matthew 15:21 イエスはそこから出発し,テュロスとシドンの地方へ去って行った。 Matthew 15:22 見よ,その地方出身のカナナイ人の女が出て来て,叫んで言った,「主よ,ダビデの子よ,わたしをあわれんでください! わたしの娘がひどく悪霊につかれています!」
Matthew 15:23 しかし彼は彼女に一言も答えなかった。
弟子たちが近寄って来て,彼に願ってこう言った。「彼女を追い払ってください。わたしたちの後ろで叫んでいますから」。
Matthew 15:24 しかし彼は答えた,「わたしはイスラエルの家の失われた羊のほかにはだれのところにも遣わされなかった」
Matthew 15:25 しかし彼女は来て,彼を拝んで言った,「主よ,わたしをお助けください」。
Matthew 15:26 しかし彼は答えた,「子供たちのパンを取って犬たちに投げ与えるのはふさわしくない」
Matthew 15:27 しかし彼女は言った,「そうです,主よ。でも,犬たちでさえ,その主人たちの食卓から落ちたパンくずを食べるのです」。
Matthew 15:28 それで彼は彼女に答えた,「女よ,あなたの信仰は偉大だ。あなたの望むとおりのことが起きるように」 。すると,彼女の娘はその時刻にいやされた。
Matthew 15:29 イエスはそこを去って,ガリラヤの海の近くにやって来た。そして山の中に上って行き,そこに座った。 Matthew 15:30 大群衆が,足の不自由な人,目の見えない人,体の不自由な人,その他大勢の人を連れて,彼のもとにやって来た。そして彼らを彼の足もとに置いた。彼は彼らをいやした。 Matthew 15:31 そのため群衆は,口のきけない人がものを言い,傷を負った人が健康になり,足の不自由な人が歩き,目の見えない人が見えるようになったのを目にして驚き,イスラエルの神に栄光をささげた。
Matthew 15:32 イエスは弟子たちを呼び寄せて言った,「わたしは群衆に対して哀れみを抱く。彼らはもう三日もわたしと共にいるのに,食べる物を何も持っていないからだ。 わたしは彼らを空腹のままで去らせたくはない。そんなことをすれば,彼らは途中で気を失ってしまうかも知れない」
Matthew 15:33 弟子たちは彼に言った,「この寂しい場所で,これほどの大群衆を満足させるほど多くのパンをどこから手に入れるのですか」。
Matthew 15:34 イエスは彼らに言った,「あなた方はパンを幾つ持っているのか」
彼らは言った,「七つです。それに小さな魚が少し」。
Matthew 15:35 彼は地面に座るよう群衆に命じ, Matthew 15:36 七つのパンと魚を取った。感謝をささげてからそれを裂き,弟子たちに与え,弟子たちが群衆に与えた。 Matthew 15:37 人々は食べて満ち足りた。彼らは余ったパン切れを七つのかごいっぱいに拾い集めた。 Matthew 15:38 食べたのは,女と子供を除いて,四千人の男たちであった。 Matthew 15:39 それから彼は群衆を去らせ,舟に乗り,マグダラ地方に入った。
Matthew 16:0 Matthew 16:1 ファリサイ人たちとサドカイ人たちがやって来て,彼を試そうとして,天からのしるしを見せるようにと彼に求めた。 Matthew 16:2 しかし,彼は彼らに答えた,「あなた方は,夕方になると,『晴天になるだろう,空が赤いから』と言う。 Matthew 16:3 朝には,『今日は荒れ模様だろう,空が赤くてどんよりとしているから』と言う。偽善者たち! あなた方は空模様の見分け方は知っていながら,時のしるしは見分けられないのだ! Matthew 16:4 悪い姦淫の世代はしるしを求めるが,預言者ヨナのしるしのほかには何のしるしも与えられないだろう」
彼は彼らを残して去って行った。 Matthew 16:5 弟子たちは向こう岸に行ったが,パンを持って来るのを忘れた。 Matthew 16:6 イエスは彼らに言った,「ファリサイ人たちとサドカイ人たちのパン種に注意し,用心しなさい」
Matthew 16:7 彼らは互いに論じ合って言った,「我々はパンを持って来なかった」。
Matthew 16:8 それに気づいて,イエスは言った,「なぜあなた方は,『パンを持っていないからだ』などと互いに論じ合っているのか,信仰の少ない者たちよ。 Matthew 16:9 まだ気づかないのか。覚えていないのか。五千人のための五つのパン,そしてあなた方が幾つのかごに拾い集めたかを。 Matthew 16:10 また,四千人のための七つのパン,そしてあなた方が幾つのかごに拾い集めたかを。 Matthew 16:11 あなた方にパンについて話したのではないことが,どうして分からないのか。ただ,ファリサイ人たちとサドカイ人たちのパン種に用心しなさい」
Matthew 16:12 その時,彼らは,イエスが自分たちに用心するように言ったのは,パンのパン種のことではなく,ファリサイ人たちとサドカイ人たちの教えのことだと理解した。 Matthew 16:13 さて,イエスは,カエサレア・フィリピ地帯に入ると,弟子たちに尋ねて言った,「人々は,わたし,人の子をだれだと言っているか」。
Matthew 16:14 彼らは言った,「ある者たちはバプテスマを施す人ヨハネ,ある者たちはエリヤ,ほかの者たちはエレミヤか預言者たちの一人だと言っています」。
Matthew 16:15 彼は彼らに言った,「だが,あなた方はわたしをだれだと言うのか」。
Matthew 16:16 シモン・ペトロが答えた,「あなたはキリスト,生ける神の子です」。
Matthew 16:17 イエスは彼に言った,「シモン・バルヨナ,あなたは幸いだ。あなたにこのことを明らかにしたのは肉と血ではなく,天におられるわたしの父だからだ。 Matthew 16:18 わたしもあなたに告げるが,あなたはペトロであり,この岩の上にわたしは自分の集会を建てる。ハデスの門もそれに打ち勝たない。 Matthew 16:19 わたしはあなたに天の王国のかぎを与えよう。そして,あなたが地上で縛るものは天でも縛られ,あなたが地上で解くものは天でも解かれるだろう」 。 Matthew 16:20 それから,自分がキリストだということをだれにも告げないようにと弟子たちに命じた。 Matthew 16:21 その時以後,イエスは,自分がエルサレムに行き,長老たちや祭司長たちや律法学者たちから多くの苦しみを受け,かつ殺され,そして三日後に起こされなければならないことを,弟子たちに示し始めた。
Matthew 16:22 ペトロは彼をわきに連れて行き,彼をしかり始めて言った,「主よ,とんでもありません! あなたには決してそんなことは起きないでしょう」。
Matthew 16:23 しかし,彼は背を向けてペトロに言った。「わたしの後ろに下がれ,サタンよ! あなたはわたしのつまづきの石だ。あなたは神の物事ではなく,人間の物事を考えているからだ」 。 Matthew 16:24 それからイエスは弟子たちに言った,「だれでもわたしに付いて来たいと思うなら,その人は自分を否定し,自分の十字架を取り上げて,わたしに従いなさい。 Matthew 16:25 自分の命を救おうと思う者はそれを失うことになり,わたしのために自分の命を失う者はそれを見いだすことになるからだ。 Matthew 16:26 というのも,人が全世界を手に入れても,自分の命を失うなら,何の益になるだろうか。人は自分の命と引き換えにいったい何を支払うというのか。 Matthew 16:27 人の子は,自分の父の栄光のうちに自分の使いたちと共に来るが,その時,彼はすべての人にその行ないに従って報いるのだ。 Matthew 16:28 本当にはっきりとあなた方に告げる。ここに立っている者の中には,人の子が自分の王国のうちに来るのを見るまでは決して死を味わわない者たちがいる」
Matthew 17:0 Matthew 17:1 六日後,イエスは自分のペトロとヤコブとその兄弟ヨハネを伴い,高い山に彼らだけを連れ上った。 Matthew 17:2 彼は彼らの目の前で変ぼうさせられた。その顔は太陽のように輝き,その衣は光のように白くなった。 Matthew 17:3 見よ,モーセとエリヤが彼らに現われて,イエスと語り合っていた。
Matthew 17:4 ペトロが答えてイエスに言った,「主よ,わたしたちがここにいるのは良いことです。もしお望みなら,ここに幕屋を三つ作りましょう。一つはあなたのため,一つはモーセのため,一つはエリヤのためです」。
Matthew 17:5 彼がまだ話しているうちに,見よ,輝く雲が彼らを影で覆った。見よ,その雲から声がして,「これはわたしの愛する子,わたしの心にかなう者である。この者に聞き従いなさい」と言った。
Matthew 17:6 これを聞くと,弟子たちは顔を伏せて非常に恐れた。 Matthew 17:7 イエスが近寄り,彼らに触って言った,「起き上がりなさい。恐れてはいけない」 。 Matthew 17:8 彼らが目を上げると,イエスひとりのほかはだれも見えなかった。 Matthew 17:9 彼らが山を下りて行く時,イエスは彼らに命じて言った,「人の子が死んだ者たちの中から生き返るまでは,目にしたことをだれにも告げてはいけない」
Matthew 17:10 弟子たちは彼に尋ねて言った,「それでは,なぜ律法学者たちは,まずエリヤが来なければならないと言うのですか」。
Matthew 17:11 イエスは彼らに言った,「確かにまずエリヤが来て,すべてのものを回復する。 Matthew 17:12 だが,あなた方に告げる。エリヤはすでに来たのだ。そして人々は彼が分からず,したい放題のことを彼に対して行なったのだ。同じように,人の子も人々から苦しみを受けるだろう」 。 Matthew 17:13 その時,弟子たちは,彼がバプテスマを施す人ヨハネについて自分たちに話したのだということを理解した。
Matthew 17:14 彼が群衆のところに来ると,一人の人が彼のもとに近づき,彼の前にひざまずいて言った, Matthew 17:15 「主よ,わたしの息子をあわれんでください。てんかんで,ひどく苦しんでいるからです。たびたび火の中に落ち,たびたび水の中に落ちるのです。 Matthew 17:16 そこで,この子をあなたの弟子たちのところに連れて来ましたが,彼らにはこの子をいやすことができませんでした」。
Matthew 17:17 イエスは彼らに言った,「信仰のないねじ曲がった世代よ! いつまでわたしはあなた方と一緒にいようか。いつまであなた方のことを我慢しようか。その子をわたしのところに連れて来なさい」 。 Matthew 17:18 イエスが彼をしかりつけると,悪霊は彼から出て行った。そして,少年はその時以来いやされた。
Matthew 17:19 それから,弟子たちはひそかに彼のもとに来て,「なぜわたしたちはあの霊を追い出せなかったのでしょうか」と言った。
Matthew 17:20 彼は彼らに言った,「あなた方の不信仰のためだ。本当にはっきりとあなた方に告げるが,もしあなた方に一粒のからしの種ほどの信仰があるなら,この山に『ここからあそこに移れ』と言えば,それは移るだろう。そして,あなた方に不可能なことはないだろう。 Matthew 17:21 だが,この種のものは,祈りと断食によらなければ,出て行くことはない」
Matthew 17:22 彼らがガリラヤに滞在していた時,イエスは彼らに言った,「人の子は人々の手に引き渡されようとしている。 Matthew 17:23 そして人々は彼を殺すだろう。そして三日目に彼は起こされるだろう」
彼らは深く悲しんだ。 Matthew 17:24 彼らがカペルナウムに来た時,ディドラクマ硬貨を徴収する者たちがペトロのところに来て,「あなた方の教師はディドラクマを払わないのか」と言った。 Matthew 17:25 彼は言った,「払います」。
彼が家の中に入ると,イエスは彼より先にこう言った。「シモン,あなたはどう思うか。地上の王たちは税や貢をだれから受けるのか。自分の子供たちからか,それともよその者たちからか」
Matthew 17:26 ペトロはイエスに言った,「よその者たちからです」。
イエスは彼に言った,「それなら,子供たちは税を免じられているのだ。 Matthew 17:27 だが,わたしたちが彼らをつまずかせることがないように,海に行って,つり針を投げ,最初に釣れた魚を取りなさい。その口を開くと,一枚のスタテル硬貨を見つけるだろう。それを取って,わたしとあなたの分として彼らに与えなさい」
Matthew 18:0 Matthew 18:1 その時,弟子たちがイエスのもとに来て,「天の王国では,いったいだれが一番偉いのですか」と言った。
Matthew 18:2 イエスは幼子を自分のところに呼び寄せ,彼らの真ん中に座らせて Matthew 18:3 言った,「本当にはっきりとあなた方に告げる。立ち返って幼子たちのようにならなければ,あなた方は決して天の王国に入ることはないだろう。 Matthew 18:4 だから,この幼子のように自分を低くする者,その者が天の王国で一番偉いのだ。 Matthew 18:5 わたしの名のゆえにこのような幼子の一人を受け入れる者は,わたしを受け入れるのだ。 Matthew 18:6 だが,わたしを信じるこれら小さな者たちの一人をつまずかせる者は,首に大きな臼石をかけられて海の深みに沈められる方が,その者にとっては良いだろう。
Matthew 18:7 「数々のつまずきのもとのゆえに,この世は災いだ! つまずきのもとは必ずやって来るが,自分を通してつまずきのもとがやって来るその人は災いだ! Matthew 18:8 もしあなたの片手か片足があなたをつまずかせるなら,それを切り取って捨てなさい。両手や両足をつけて永遠の火に投げ込まれるよりは,不具または足の不自由なまま命に入る方が,あなたにとっては良いのだ。 Matthew 18:9 もしあなたの片目があなたをつまずかせるなら,それをえぐり出して捨てなさい。両目をつけてゲヘナの火に投げ込まれるよりは,片目で命に入る方が,あなたにとっては良いのだ。 Matthew 18:10 あなた方は,これら小さな者たちの一人をさげすんだりしないように気をつけなさい。あなた方に告げるが,彼らのためのみ使いたちは,天におられるわたしの父のみ顔を,天でいつも見ているのだ。 Matthew 18:11 人の子は失われたものを救うために来たからだ。
Matthew 18:12 「あなた方はどう思うか。ある人に百匹の羊がいて,そのうちの一匹が迷い出たなら,その人は九十九匹を残して山に行き,迷い出ているものを探さないだろうか。 Matthew 18:13 もしそれを見つけたなら,本当にはっきりとあなた方に告げるが,迷い出なかった九十九匹のこと以上に,その一匹のことを喜ぶのだ。 Matthew 18:14 このように,これら小さな者たちの一人が滅びることは,天におられるわたしの父のご意志ではない。
Matthew 18:15 「あなたの兄弟があなたに対して罪を犯したなら,行って,あなたと彼だけの間でその過ちを示しなさい。彼があなたに聞き従うなら,あなたは自分の兄弟を取り戻したのだ。 Matthew 18:16 だが,聞き従わないなら,あなたと共にもう一人か二人を連れて行きなさい。二人か三人の証人の口によって,すべての言葉が確証されるようにするためだ。 Matthew 18:17 もし彼が彼らに聞き従うことを拒むなら,集会に告げなさい。もし彼が集会に聞き従うことも拒むなら,彼をあなたにとって異邦人や徴税人のようにならせなさい。 Matthew 18:18 本当にはっきりとあなた方に告げる。あなた方が地上で縛るものは天でも縛られ,あなた方が地上で解くものは天でも解かれるだろう。 Matthew 18:19 重ねて,本当にはっきりとあなた方に告げる。あなた方のうちの二人が,自分たちの願い求める事柄に関して地上で一致するなら,それは天におられるわたしの父によって実現するのだ。 Matthew 18:20 二人か三人がわたしの名において共に集まっているところでは,わたしが彼らの中にいるからだ」
Matthew 18:21 その時,ペトロが近寄って来てイエスに言った,「主よ,兄弟がわたしに対して罪を犯した場合,彼を何度まで許すべきでしょうか。七回までですか」。
Matthew 18:22 イエスは彼に言った,「わたしはあなたに七回までとは言わない。七十七回までだ。 Matthew 18:23 だから,天の王国は,自分の召使いたちと貸し借りを精算しようとした一人の王のようだ。 Matthew 18:24 精算を始めると,一万タレントの借金がある者が王のもとに連れて来られた。 Matthew 18:25 だが,返済できなかったので,主人は彼に,妻や子供たちやすべての持ち物を売って支払いをするように命じた。 Matthew 18:26 そのため,この召使いはひれ伏し,主人の前にひざまずいて,『ご主人様,わたしのことをご辛抱ください。すべてをお返ししますから!』と言った。 Matthew 18:27 その召使いの主人は,哀れみに動かされて,彼を解放し,その負債を帳消しにしてやった。
Matthew 18:28 「ところが,その召使いは出て行って,自分に百デナリの借金がある仲間の召使いたちの一人を見つけると,捕まえて首を絞め,『借りているものを返せ!』と言った。
Matthew 18:29 「それで,仲間の召使いは彼の足もとにひれ伏し,彼に懇願して,『わたしのことを辛抱してください。返しますから!』と言った。 Matthew 18:30 彼はそうしようとせず,行って,その者が借金を返すまで,その者をろうやに投げ入れた。 Matthew 18:31 そこで,起きたことを見た時,仲間の召使いたちは深く悲しみ,行って,起きたことをみな彼らの主人に告げた。 Matthew 18:32 すると主人は彼を呼び出して,彼に言った,『悪い召使いだ! わたしはお前が懇願したから,負債をみな帳消しにしてやったのだ。 Matthew 18:33 わたしがお前をあわれんだように,お前も仲間の召使いをあわれんでやるべきではなかったか』。 Matthew 18:34 主人は腹を立て,彼が借金をすべて返すまで,彼をろうやの役人に引き渡した。 Matthew 18:35 もしあなた方がそれぞれ自分の兄弟の罪過を心から許さないなら,わたしの天の父もあなた方に対して同じように行なわれるだろう」
Matthew 19:0 Matthew 19:1 イエスはこれらの言葉を語り終えると,ガリラヤを去って,ヨルダンの向こうのユダヤ地方に入った。 Matthew 19:2 大群衆が彼に従った。そこで彼はその場所で彼らをいやした。 Matthew 19:3 ファリサイ人たちがやって来て,彼を試そうとして言った,「どんな理由でも,男が自分の妻を離縁することは許されているのですか」。
Matthew 19:4 彼は答えた,「あなた方は読んだことがないのか。人を造られた方は,はじめから彼らを男性と女性に造られ, Matthew 19:5 そして,『このために,男は自分の父と母を離れて,自分の妻と結び付く。こうして二人は一体となる』と言われたのを。 Matthew 19:6 それで,彼らはもはや二つではなく,一体なのだ。だから,神が結び合わされたものを,人が引き離してはいけない」
Matthew 19:7 彼らは彼に尋ねた,「それでは,なぜモーセは,離縁状を与えて妻を離縁することをわたしたちに命じたのですか」。
Matthew 19:8 彼は彼らに言った,「モーセは,あなた方の心のかたくなさのゆえに,あなた方が自分の妻を離縁することを容認したのであって,はじめからそうだったわけではない。 Matthew 19:9 あなた方に告げるが,淫行以外の理由で自分の妻を離縁して別の女と結婚する者は,姦淫を犯すのであり,離縁された女と結婚する者は,姦淫を犯すのだ」
Matthew 19:10 弟子たちは彼に言った,「妻についての男の実情がそのようなものであれば,結婚するのはうまいことではありません」。
Matthew 19:11 しかし彼は彼らに言った,「すべての人がこの言葉を受け入れることができるわけではなく,授けられている人たちだけがそうできる。 Matthew 19:12 母の胎からそのように生まれついた去勢者がおり,人に去勢させられた去勢者がおり,天の王国のために自分を去勢した去勢者がいるからだ。それを受け入れることができる者は,受け入れなさい」
Matthew 19:13 その時,その上に両手を置いて祈ってもらおうとして,幼子たちが彼のもとに連れて来られたが,弟子たちは彼らをしかりつけた。 Matthew 19:14 しかしイエスは言った,「幼子たちをそのままにしておきなさい。彼らがわたしのところに来るのをとどめてはいけない。天の王国はこのような者たちのものだからだ」 。 Matthew 19:15 両手を彼らの上に置いてから,そこを去って行った。
Matthew 19:16 見よ,ある人が彼に近寄って来て言った,「善い先生,永遠の命を得るためには,どんな善いことをしたらよいでしょうか」。
Matthew 19:17 イエスは彼に言った,「なぜ,わたしのことを善いと呼ぶのか。神おひとりのほかに善い者はいない。だが,命に入りたいなら,おきてを守りなさい」
Matthew 19:18 彼はイエスに言った,「どのおきてですか」。
イエスは言った,「『あなたは殺してはならない』,『あなたは姦淫を犯してはならない』,『あなたは盗んではならない』,『あなたは偽りの証言をしてはならない』, Matthew 19:19 『あなたの父と母を敬いなさい』,そして,『あなたは隣人を自分自身のように愛さなければならない』」
Matthew 19:20 その若者はイエスに言った,「わたしはそうした事すべてを幼いころから守ってきました。まだ何が足りないのでしょうか」。
Matthew 19:21 イエスは彼に言った,「もしあなたが完全でありたいと思うなら,行って,持ち物を売り,貧しい人たちに与えなさい。そうすれば,天に宝を持つことになる。それから来て,わたしに従いなさい」 。 Matthew 19:22 しかし,この言葉を聞くと,その若者は悲しそうに去って行った。多くの資産を持っていたからである。 Matthew 19:23 イエスは弟子たちに言った,「本当にはっきりとあなた方に言う。富んだ人が天の王国に入るのは難しいことだ。 Matthew 19:24 重ねて,あなた方に告げる。富んだ人が神の王国に入るよりは,ラクダが針の穴を通り抜ける方が易しいのだ」
Matthew 19:25 これを聞いて,弟子たちは非常に驚いて言った,「いったいだれが救いを得られるのだろう」。
Matthew 19:26 イエスは彼らを見つめて言った,「人には不可能だが,神にはすべての事が可能だ」
Matthew 19:27 その時,ペトロが彼に答えた,「ご覧ください,わたしたちは何もかも後にして,あなたに従いました。それで,わたしたちは何を持つことになるのでしょうか」。
Matthew 19:28 イエスは彼らに言った,「本当にはっきりとあなた方に告げるが,再生の際,人の子が自分の栄光の座に着くときには,わたしに従ってきたあなた方も十二の座に着き,イスラエルの十二部族を裁くだろう。 Matthew 19:29 わたしの名のために,家々,兄弟たち,姉妹たち,父,母,妻,子供たち,あるいは畑を後にする者は,その百倍を受け,また永遠の命を受け継ぐことになる。 Matthew 19:30 だが,多くの最初の者が最後に,最後の者が最初になるだろう。
Matthew 20:0
Matthew 20:1 「天の王国は,自分のブドウ園に働き人を雇うために朝早く出かけた家の主人のようだからだ。 Matthew 20:2 働き人たちと一日一デナリオスで合意すると,彼らを自分のブドウ園に送り出した。 Matthew 20:3 第三時ごろに出て行き,ほかの者たちが市場で仕事をせずに立っているのを見て, Matthew 20:4 彼らに言った,『あなた方もブドウ園に行きなさい。そうすれば,正当なものを払おう』。そこで彼らは出かけて行った。 Matthew 20:5 第六時と第九時ごろにも再び出て行き,同じようにした。 Matthew 20:6 第十一時ごろに出て行くと,ほかの者たちが仕事をせずに立っているのを見つけて,彼らに言った,『なぜあなた方は仕事もしないで一日中ここに立っているのか』。
Matthew 20:7 「彼らは彼に言った,『だれもわたしたちを雇ってくれないからです』。
「彼は彼らに言った,『あなた方もブドウ園に行きなさい。そうすれば,正当なものを受け取るだろう』。 Matthew 20:8 夕方になった時,ブドウ園の主人は自分の管理人に言った,『働き人たちを呼んで,最後の者から始めて最初の者まで順に賃金を払いなさい』。
Matthew 20:9 「第十一時ごろ雇われた者たちが来て,それぞれ一デナリオスずつ受け取った。 Matthew 20:10 最初の者たちが来て,もっと多く受け取るものと思ったが,彼らもやはりそれぞれ一デナリオスずつ受け取った。 Matthew 20:11 それを受け取ると,彼らは家の主人に対して不平をもらして Matthew 20:12 言った,『これら最後の者たちは一時間働いただけだ。それなのに,あなたは彼らを,一日の重荷と焦げ付くような暑さに耐えたわたしたちと同じにした!』。
Matthew 20:13 「だが,彼はその一人に答えた,『友よ,わたしはあなたに何も不正をしていない。あなたはわたしと一デナリオスで合意したではないか。 Matthew 20:14 あなたの分を取って,帰りなさい。この最後の者にもあなたと同じように払ってやりたいのだ。 Matthew 20:15 わたしが自分のもので自分のしたいことをするのは許されていないのか。それとも,わたしが善良なので,あなたの目はよこしまになるのか』。 Matthew 20:16 このように,最後の者が最初に,最初の者が最後になるだろう。招かれるものは多いが,選ばれる者は少ないのだ」
Matthew 20:17 エルサレムに上って行く際,イエスは十二弟子をわきに連れて行き,途上で彼らに言った, Matthew 20:18 「見よ,わたしたちはエルサレムに上って行く。そして,人の子は祭司長たちや律法学者たちに引き渡される。彼らは彼を死に定めて Matthew 20:19 異邦人たちに引き渡すだろう。あざけり,むち打ち,はりつけにするためだ。そして三日目に彼は起こされる」
Matthew 20:20 その時,ゼベダイの子らの母がその息子たちと一緒に彼のもとにやって来て,ひざまずいて何事かを彼に求めた。 Matthew 20:21 彼は彼女に言った,「何を望むのか」
彼女は彼に言った,「これらわたしの二人の息子が,あなたの王国で,一人はあなたの右に,一人はあなたの左に座るようお取り計らいください」。
Matthew 20:22 しかしイエスは答えた,「あなた方は自分が何を求めているかを知っていない。あなた方は,わたしの飲もうとしている杯を飲み,わたしの受けているバプテスマを受けることができるか」
彼らは彼に言った,「できます」。
Matthew 20:23 彼は彼らに言った,「確かに,あなた方はわたしの杯を飲み,わたしの受けているバプテスマを受けるだろう。だが,わたしの右や左に座ることは,わたしが与えるものではなく,わたしの父によってそれが備えられている人たちのためのものだ」
Matthew 20:24 ほかの十人はこれを聞き,二人の兄弟のことで憤慨した。
Matthew 20:25 しかし,イエスは彼らを呼び寄せてこう言った。「あなた方が知っているとおり,異邦人たちの支配者たちは人々に対して威張り散らし,偉い人たちは人々の上に権力を行使している。 Matthew 20:26 だが,あなた方の間ではそうであってはならない。むしろ,あなた方の間で偉くなりたいと思う者は,あなた方の召使いでなければいけない。 Matthew 20:27 だれでもあなた方の間で第一でありたい者は,あなた方の奴隷でなければいけない。 Matthew 20:28 それはちょうど,人の子が,仕えてもらうためではなく,むしろ仕え,自分の命を多くの人の身代金として与えるために来たのと同じだ」
Matthew 20:29 彼らがエリコから出て来ると,大群衆が彼に従った。 Matthew 20:30 見よ,道ばたに座っている二人の盲人が,イエスが通り過ぎると聞いて,叫んで言った,「主よ,わたしをあわれんでください,ダビデの子よ!」 Matthew 20:31 群衆は,静かにするように言って彼らをしかりつけたが,彼らはますます叫んで言った,「主よ,わたしをあわれんでください,ダビデの子よ!」
Matthew 20:32 イエスは立ち止まって彼らを呼び,「何をして欲しいのか」 と尋ねた。
Matthew 20:33 彼らは彼に言った,「主よ,わたしたちの目が開くことです」。
Matthew 20:34 イエスは哀れみに動かされて,彼らの目に触った。すると,すぐに彼らの目は見えるようになった。そして彼らはイエスに従った。
Matthew 21:0 Matthew 21:1 彼らがエルサレムに近づき,オリーブ山のふもとのベツファゲにやって来たその時,イエスは二人の弟子を遣わして Matthew 21:2 彼らに言った,「向こうの村に行きなさい。するとすぐに,ロバがつないであり,一緒に子ロバがいるのを見つけるだろう。それらを解いて,わたしのところに連れて来なさい。 Matthew 21:3 もしだれかがあなた方に何か言うなら,『主がこれを必要としているのです』と言いなさい。そうすれば,その人はすぐに行かせてくれるだろう」。
Matthew 21:4 このことすべてが起こったのは,預言者を通して語られたことが果たされるためであった。こう言われていた。
Matthew 21:5 「シオンの娘に告げよ,見よ,あなたの王があなたのところにやって来る,謙そんで,ロバに乗って,ロバの子である子ロバに乗って』。 Matthew 21:6 弟子たちは出て行き,イエスが彼らに命じたとおりに行なった。 Matthew 21:7 そして,ロバと子ロバを連れて来て,その上に自分たちの外衣をかけた。すると彼はそれらに乗った。 Matthew 21:8 おびただしい大群衆が自分たちの衣を道に敷いた。ほかの者たちは木から枝を切り落として来て街道に敷いた。 Matthew 21:9 群衆は,先に行く者も付いて行く者も,こう叫び続けた。「ダビデの子にホサンナ! 主の名において来る者は幸いだ! いと高き所にホサンナ!」
Matthew 21:10 彼がエルサレムに入ると,都全体が騒ぎ立ち,「この人はだれだ」と言った。 Matthew 21:11 群衆は言った,「これは,ガリラヤのナザレから来た預言者イエスだ」。
Matthew 21:12 イエスは神殿に入り,神殿で売り買いしていた者たちをみな追い出し,両替人たちの台とハトを売る者たちの腰掛けをひっくり返した。 Matthew 21:13 彼らに言った,「『わたしの家は祈りの家と呼ばれるだろう』と書いてある。それなのにあなた方は,それを強盗たちの巣にしてしまった!」
Matthew 21:14 神殿で,目の見えない人たちや足の不自由な人たちが近寄って来たので,彼らをいやした。 Matthew 21:15 しかし,祭司長たちと律法学者たちは,彼が行なった驚くべき事柄を見,また子供たちが神殿で叫んで,「ダビデの子にホサンナ!」と言っているのを見て憤慨し, Matthew 21:16 彼に言った,「これらの者たちが言っていることが聞こえるか」。
イエスは彼らに言った,「聞こえる。あなた方は,『赤子や乳飲み子の口から,あなたは賛美を備えられた』とあるのを読んだことがないのか」
Matthew 21:17 彼らを残して,都を出てベタニアに行き,そこで夜を過ごした。 Matthew 21:18 さて,朝早く都に戻るとき,空腹を感じた。 Matthew 21:19 道ばたにイチジクの木があるのを見て,そこに行ったが,その木には葉のほかには何も見つからなかった。その木に言った,「もうお前からは永久に実が出ないように!」
すぐにそのイチジクの木は枯れた。 Matthew 21:20 弟子たちはこれを見て驚き,「どうしてこのイチジクの木はすぐに枯れたのですか」と言った。
Matthew 21:21 イエスは彼らに答えた,「本当にはっきりとあなた方に告げる。もしあなた方に信仰があって疑わないなら,このイチジクの木に生じたことができるだけでなく,この山に『持ち上げられて海の中に投げ込まれるように』と言えば,それは起きるだろう。 Matthew 21:22 祈りの中で信じつつ求めるすべてのものを,あなた方は受けるだろう」
Matthew 21:23 彼が神殿に入ると,祭司長たちと民の長老たちが,彼の教えているところにやって来てこう言った。「あなたは何の権威によってこうした事をするのか。だれがその権威をあなたに与えたのか」。
Matthew 21:24 イエスは彼らに答えた,「わたしもあなた方に一つのことを尋ねよう。あなた方がわたしに告げるなら,わたしも何の権威によってこうした事をするのかをあなた方に告げよう。 Matthew 21:25 ヨハネのバプテスマはどこからのものだったか。天からか,それとも人からか」
彼らは互いに論じ合って言った,「我々が『天から』と言えば,彼は『あなた方が彼を信じなかったのはなぜか』と言うだろう。 Matthew 21:26 我々が『人から』と言えば,我々は群衆が怖い。みんながヨハネは預言者だと考えているからだ」。 Matthew 21:27 彼らはイエスに答えて言った,「わたしたちは知らない」。
イエスも彼らに言った,「わたしも,何の権威によってこうした事をするのかをあなた方に告げない。 Matthew 21:28 ところで,あなた方はどう思うか。ある人に二人の息子がいた。そして,兄のところに行って,『子よ,今日,わたしのブドウ園に行って働きなさい』と言った。 Matthew 21:29 彼は『行きません』と答えたが,後で思い直して出かけて行った。 Matthew 21:30 弟のところに来て,同じことを言った。彼は『お父様,参ります』と答えたが,行かなかった。 Matthew 21:31 この二人のうち,どちらが自分の父の意志を行なったか」
彼らは彼に言った,「兄のほうだ」。
イエスは彼らに言った,「本当にはっきりとあなた方に告げるが,徴税人たちや売春婦たちのほうが,あなた方より先に神の王国に入りつつある。 Matthew 21:32 ヨハネは義の道をもってあなた方のところに来たのに,あなた方は彼を信じず,徴税人たちや売春婦たちが彼を信じたからだ。あなた方はそれを見ながら,後で悔い改めて彼を信じようとさえしなかった。
Matthew 21:33 「別のたとえを聞きなさい。家の主人がいた。彼はブドウ園を造り,その周りに垣根を巡らし,ブドウ搾り場を掘り,塔を建て,それを耕作人たちに貸して,外国に出かけた。 Matthew 21:34 実りの季節が近づくと,彼は自分の召使いたちを耕作人たちのところに送って,自分の実りを受け取ろうとした。 Matthew 21:35 耕作人たちは彼の召使いたちを捕まえ,ある者を打ちたたき,別の者を殺し,別の者を石打ちにした。 Matthew 21:36 彼は再び,ほかの召使いたちを最初よりたくさん送ったが,耕作人たちは彼らも同じように扱った。 Matthew 21:37 それでも最後に,『わたしの息子なら敬うだろう』と言って,彼は自分の息子を送った。 Matthew 21:38 ところが耕作人たちは,その息子を見て,互いに言った,『これは相続人だ。さあ,こいつを殺そう。そうすれば,その相続財産が手に入る』。 Matthew 21:39 そこで彼らは彼を捕まえ,そのブドウ園の外に投げ出して殺した。 Matthew 21:40 それで,ブドウ園の主人がやって来たとき,これらの耕作人たちをどうするだろうか」
Matthew 21:41 彼らは彼に告げた,「それら卑しい者たちをみじめな仕方で滅ぼし,季節ごとに実りを収めるほかの耕作人たちにそのブドウ園を貸し出すだろう」。
Matthew 21:42 イエスは彼らに言った,「あなた方は聖書の中で読んだことがないのか。
『建てる者たちが退けた石,それが隅の親石となった。これは主から生じたことで,わたしたちの目には不思議なことだ』。
Matthew 21:43 「だから,あなた方に告げる。神の王国はあなた方から取り上げられ,その実を結ぶ民族に与えられる。 Matthew 21:44 この石の上に落ちる者は粉々に砕かれ,その石がだれかの上に落ちれば,それはその者をみじんに砕くだろう」
Matthew 21:45 祭司長たちとファリサイ人たちは,彼のたとえを聞いた時,彼が自分たちについて話していることに気づいた。 Matthew 21:46 彼らは彼を捕まえようとしたが,群衆を恐れた。群衆は彼を預言者だと考えていたからである。
Matthew 22:0 Matthew 22:1 イエスは答えて,再びたとえで彼らに話してこう言った。 Matthew 22:2 「天の王国は,自分の息子のために婚宴を催した一人の王のようだ。 Matthew 22:3 自分の召使いたちを遣わして,その婚宴に招いておいた者たちを呼ばせたが,彼らは来ようとしなかった。 Matthew 22:4 彼は再びほかの召使いたちを遣わして言った,『招いておいた者たちにこう告げなさい。「見よ,わたしは夕食を整えた。わたしの牛と肥えた家畜はほふられ,何もかも整った。婚宴に来なさい!」』 Matthew 22:5 だが,彼らは意に介さず,ある者は自分の農園に,別の者は自分の商売に出かけて行った。 Matthew 22:6 また,残りの者たちは王の召使いたちを捕まえ,ひどい扱いをし,殺してしまった。 Matthew 22:7 それを聞いて王は腹を立て,自分の軍隊を送り,それらの人殺したちを滅ぼし,彼らの町を焼き払った。
Matthew 22:8 「それから彼は自分の召使いたちに言った,『婚礼の用意はできているのだが,招いておいた者たちはふさわしくなかった。 Matthew 22:9 だから,大通りの十字路に行って,あなた方が見つける者をみな婚宴に招きなさい』。 Matthew 22:10 それらの召使いたちは大通りに出て行き,見つけた者をみな,悪人も善人も共に集めた。婚礼は客でいっぱいになった。 Matthew 22:11 ところが,王が客を見ようとして入って来ると,そこに婚礼の衣服を着けていない者を見つけた。 Matthew 22:12 そこで王は彼に言った,『友よ,どうして婚礼の衣服を着ないでここに入って来たのか』。彼は何も言えなかった。 Matthew 22:13 すると王は召使いたちに言った,『彼の手足を縛って連れて行き,外の闇に投げ出せ。そこには嘆きと歯ぎしりとがあるだろう』。 Matthew 22:14 招かれるものは多いが,選ばれる者は少ないのだ」
Matthew 22:15 その時,ファリサイ人たちがやって来て,どのようにして彼の言葉じりを捕らえてわなにかけようかと相談した。 Matthew 22:16 彼らは自分たちの弟子たちをヘロデ党の者たちと一緒に彼のもとに遣わしてこう言わせた。「先生,わたしたちはあなたが正直な方で,だれに対しても真実をもって神の道を教えられることを知っています。あなたはだれをもえこひいきすることがないからです。 Matthew 22:17 それで,わたしたちに教えてください。カエサルに税金を払うことは許されているでしょうか,許されていないでしょうか」。
Matthew 22:18 しかし彼は,彼らの邪悪さに気づいて,こう言った。「偽善者たち,なぜあなた方はわたしを試すのか。 Matthew 22:19 税の貨幣をわたしに見せなさい」
彼らは彼のもとに一デナリオスを持って来た。
Matthew 22:20 彼は彼らに言った,「これはだれの像と銘なのか」
Matthew 22:21 彼らは彼に言った,「カエサルのです」。
すると彼は彼らに答えた,「それなら,カエサルのものはカエサルに,神のものは神に返しなさい」
Matthew 22:22 これを聞いて彼らは驚嘆し,彼を残して去って行った。
Matthew 22:23 その日,サドカイ人たちが彼のもとにやって来た。(復活などはないと言う者たちである。)彼に尋ねて Matthew 22:24 言った,「先生,モーセは,『もしある人が子供を残さずに死んだ場合,彼の弟がその妻をめとり,自分の兄のために子孫を起こさなければならない』と言いました。 Matthew 22:25 さて,わたしたちのもとに七人の兄弟がいました。最初の者が妻をめとりましたが,死にました。そして子孫がいなかったので,その弟にその妻を残しました。 Matthew 22:26 二番目も,三番目も,ついには七番目まで同じようになりました。 Matthew 22:27 みんなの最後にその女も死にました。 Matthew 22:28 それで,復活において,彼女は七人のうちだれの妻になるのですか。みんなが彼女を妻にしたのですから」。
Matthew 22:29 しかしイエスは彼らに答えた,「あなた方は,聖書も神の力も知らずに,思い違いをしている。 Matthew 22:30 復活において,彼らはめとったり嫁いだりせず,天にいる神のみ使いたちのようになるからだ。 Matthew 22:31 だが,死んだ者たちの復活について,あなた方はモーセの書の『茂み』のくだりで,神があなた方に語られたことを読んだことがないのか。こう言われた。 Matthew 22:32 『わたしはアブラハムの神,イサクの神,ヤコブの神だ』。神は死んだ者たちの神ではなく,生きている者たちの神なのだ」
Matthew 22:33 群衆はこれを聞いて,彼の教えに驚いた。 Matthew 22:34 しかしファリサイ人たちは,彼がサドカイ人たちを沈黙させたことを聞いて,共に集まった。 Matthew 22:35 彼らのうちの一人の律法学者が,彼を試そうとして一つのことを尋ねた。 Matthew 22:36 「先生,律法の中で最大のおきてはどれですか」。
Matthew 22:37 イエスは彼に言った,「『あなたは,心を尽くし,魂を尽くし,思いを尽くして,あなたの神なる主を愛さなければならない』。 Matthew 22:38 これが最大で第一のおきてだ。 Matthew 22:39 第二もこれと同様であって,こうだ。『あなたは隣人を自分自身のように愛さなければならない』。 Matthew 22:40 律法全体と預言者たちとは,この二つのおきてにかかっている」
Matthew 22:41 さて,ファリサイ人たちが共に集まっているとき,イエスは彼らに一つのことを尋ねて Matthew 22:42 言った,「あなた方はキリストについてどう思うか。彼はだれの子か」
彼らは彼に言った,「ダビデの子だ」。
Matthew 22:43 彼は彼らに言った,「どうしてダビデは霊によって彼を主と呼んでいるのか。こう言っている。
Matthew 22:44 『主はわたしの主に言われた,「わたしの右に座っていなさい,わたしがあなたの敵たちをあなたの足台とするまで」』。
Matthew 22:45 「ダビデが彼を主と呼んでいるのなら,どうして彼はダビデの子なのか」
Matthew 22:46 だれも一言も彼に答えることはできなかった。そしてこの日以降,彼にこれ以上あえて何かを尋ねる者はいなかった。
Matthew 23:0 Matthew 23:1 それからイエスは群衆と弟子たちに語って Matthew 23:2 言った,「律法学者たちとファリサイ人たちはモーセの座に着いている。 Matthew 23:3 だから,彼らがあなた方に守るよう教えることはみな守り行ないなさい。だが,彼らの業には見倣ってはいけない。彼らは言いはするが,行なわないからだ。 Matthew 23:4 担いきれないほどの重荷を束ねて人々の肩に載せるが,自分では彼らを助けるために指一本も持ち上げようともしない。 Matthew 23:5 自分たちの業すべてを,単に人に見せようとして行なっているのだ。自分たちの聖句入れを広くし,自分たちの衣の房べりを大きくする。 Matthew 23:6 彼らが好むのは,祝宴での上座や会堂での上席, Matthew 23:7 市場でのあいさつや人々に『ラビ,ラビ』と呼ばれることなのだ。 Matthew 23:8 だが,あなた方は『ラビ』と呼ばれてはいけない。あなた方の教師はただ一人,キリストで,あなた方はみな兄弟だからだ。 Matthew 23:9 地上のだれをも自分たちの父と呼んではいけない。あなた方の父はただ一人,天におられる方だからだ。 Matthew 23:10 また,師と呼ばれてはいけない。あなた方の師はただ一人,キリストだからだ。 Matthew 23:11 だが,あなた方の間で一番偉い者は,あなた方の召使いになるだろう。 Matthew 23:12 だれでも自分を高くする者は低くされ,自分を低くする者は高められるだろう。
Matthew 23:13 「あなた方は災いだ,律法学者たちとファリサイ人たち,偽善者たちよ! あなた方はやもめたちの家々を食い物にし,見せかけのために長い祈りをするからだ。だから,あなた方は最も厳しい裁きを受けるだろう。
Matthew 23:14 「だが,あなた方は災いだ,律法学者たちとファリサイ人たち,偽善者たちよ! あなた方は人々の前で天の王国を閉ざすからだ。自分たちが入らないばかりか,入ろうとする者たちにも入らせないのだ。 Matthew 23:15 あなた方は災いだ,律法学者たちとファリサイ人たち,偽善者たちよ! あなた方は一人の改宗者を作るために海と陸を巡り歩き,それができると,自分に倍するほどのゲヘナの子とするからだ。
Matthew 23:16 「あなた方は災いだ,盲目の案内人たち,『だれでも神殿にかけて誓うなら,それは無意味だが,神殿の金にかけて誓うなら,その者には果たす義務がある』と言う者よ。 Matthew 23:17 盲目の愚か者たちよ! 金と,その金を聖別する神殿とでは,どちらが偉大なのか。 Matthew 23:18 また,『だれでも祭壇にかけて誓うなら,それは無意味だが,その上にある供え物にかけて誓うなら,その者には果たす義務がある』とも言う。 Matthew 23:19 盲目の愚か者たちよ! 供え物と,その供え物を聖別する祭壇とでは,どちらが偉大なのか。 Matthew 23:20 だから,祭壇にかけて誓う者は,祭壇とその上にあるすべての物にかけて誓っているのだ。 Matthew 23:21 神殿にかけて誓う者は,神殿とそこに住んでおられる方にかけて誓っているのだ。 Matthew 23:22 天にかけて誓う者は,神のみ座とその上に座っておられる方にかけて誓っているのだ。
Matthew 23:23 「あなた方は災いだ,律法学者たちとファリサイ人たち,偽善者たちよ! あなた方はハッカ,イノンド,クミンの十分の一税は納めていながら,律法のもっと重要な事柄,すなわち公正とあわれみと忠実をなおざりにしている。 Matthew 23:24 盲目の案内人よ,ブヨはこして除きながら,ラクダをのみ込む者たちよ!
Matthew 23:25 「あなた方は災いだ,律法学者たちとファリサイ人たち,偽善者たちよ! あなた方は杯と皿の外側は清めるが,内側は強奪と不義で満ちているからだ。 Matthew 23:26 盲目のファリサイ人よ,外側も清くするために,まず杯と皿の内側を清めなさい。
Matthew 23:27 「あなた方は災いだ,律法学者たちとファリサイ人たち,偽善者たちよ! あなた方は白く塗った墓に似ているからだ。外側は美しく見えるが,内側は死んだ者たちの骨とあらゆる汚れでいっぱいだ。 Matthew 23:28 このようにあなた方も,人には外側は義人のように見えるが,内側は偽善と不法でいっぱいだ。
Matthew 23:29 「あなた方は災いだ,律法学者たちとファリサイ人たち,偽善者たちよ! あなた方は預言者たちの墓を建て,義人たちの墓を飾り立てて, Matthew 23:30 『我々が父祖たちの日々に生きていたなら,彼らと共に預言者たちの血にあずかる者にはならなかっただろうに』と言う。 Matthew 23:31 こうしてあなた方は,預言者たちを殺した者たちの子供であることを自分で証明している。 Matthew 23:32 それなら,あなた方の父祖たちのますを満たしなさい。 Matthew 23:33 蛇よ,マムシらの子孫よ,あなた方はどうしてゲヘナの裁きを逃れることができようか。 Matthew 23:34 それゆえ,見よ,わたしはあなた方に預言者たちと賢人たちと律法学者たちを遣わす。あなた方は,そのうちのある者たちを殺してはりつけにし,ある者たちを自分たちの会堂でむち打ち,町から町へと迫害するだろう。 Matthew 23:35 それは,義なるアベルの血から,あなた方が聖所と祭壇の間で殺したバラキアの子ザカリヤの血に至るまで,地上で流されたすべての義なる血があなた方の上にふりかかるためだ。 Matthew 23:36 本当にはっきりとあなた方に告げる。こうした事柄すべては,この世代の上にふりかかるだろう。
Matthew 23:37 「エルサレム,エルサレム,預言者たちを殺し,自分のところに遣わされた者たちを石打ちにする者よ! めんどりがそのひなを翼の下に集めるように,わたしは幾たびあなたの子らを集めようとしたことか。だが,あなた方は応じなかった! Matthew 23:38 見よ,あなた方の家は荒れ果てたままに残される。 Matthew 23:39 あなた方に告げるが,あなた方は,『主の名において来る者は幸いだ!』と言うときまでは,今後決してわたしを見ることはないだろう」
Matthew 24:0 Matthew 24:1 イエスは神殿から出て行き,進んで行こうとした。弟子たちが彼に神殿の建物を示そうとして近寄って来た。 Matthew 24:2 しかし,イエスは彼らに言った,「あなた方はこれらすべてのものを見ていないのか。ここで石が崩されずにほかの石の上に残ることはないだろう」
Matthew 24:3 彼がオリーブ山の上で座っていた時,弟子たちがひそかに彼のもとに来て,こう言った。「わたしたちに教えてください。それらのことはいつ起きるのですか。あなたの来臨と時代の終わりのしるしは何ですか」。
Matthew 24:4 イエスは彼らに答えた,「だれもあなた方を惑わすことがないように注意しなさい。 Matthew 24:5 多くの者がわたしの名においてやって来て,『わたしがキリストだ』と言って,多くの者を惑わすだろう。 Matthew 24:6 あなた方は戦争のことや戦争のうわさを聞くだろう。動転しないように気を付けなさい。これらのすべてのことは起こらなければならないが,終わりはまだなのだ。 Matthew 24:7 民族は民族に,王国は王国に敵対して立ち上がるからだ。あちこちでききんと伝染病と地震がある。 Matthew 24:8 だが,これらのすべてのことは産みの苦しみの始まりだ。 Matthew 24:9 その時,人々はあなた方を苦しみに引き渡し,あなた方を殺すだろう。あなた方はわたしの名のためにすべての民族から憎まれるだろう。 Matthew 24:10 その時,多くの者がつまずき,互いに引き渡し合い,互いに憎み合うだろう。 Matthew 24:11 多くの偽預言者たちが現われて,多くの者を惑わすだろう。 Matthew 24:12 不法が増してゆくので,多くの者の愛が冷えてゆくだろう。 Matthew 24:13 だが,最後まで耐え忍ぶ者,その者が救われるだろう。 Matthew 24:14 王国のこの福音は,あらゆる民族に対する証言のために,全世界で宣教されるだろう。そしてそれから終わりが来る。
Matthew 24:15 「それで,預言者ダニエルを通して語られた,荒廃させる嫌悪すべきものが,聖なる所に立っているのを見るなら(読者は理解せよ), Matthew 24:16 その時,ユダヤにいる者たちは山に逃げなさい。 Matthew 24:17 屋上にいる者は自分の家から物を取り出そうとして降りてはいけない。 Matthew 24:18 畑にいる者は外衣を取りに戻ってはいけない。 Matthew 24:19 だが,それらの日,妊娠している者たちと乳を飲ませている母親たちにとっては災いだ! Matthew 24:20 あなた方の逃走が冬や安息日に起こらないように祈っていなさい。 Matthew 24:21 その時,世のはじめから今に至るまで起きたことがなく,また二度と起きないような苦しみがあるからだ。 Matthew 24:22 それらの日が短くされなかったなら,肉なる者はだれも救われないだろう。だが,選ばれた者たちのために,その日々は短くされるのだ。
Matthew 24:23 「その時,だれかがあなた方に,『見よ,ここにキリストがいる!』とか,『あそこだ』などと告げても,それを信じてはいけない。 Matthew 24:24 偽キリストたちや偽預言者たちが現われて,できるなら選ばれた者たちをさえ惑わそうとして,しるしと不思議な業を行なうからだ。
Matthew 24:25 「見よ,わたしはあなた方にあらかじめ告げている。 Matthew 24:26 だから,人々があなた方に,『見よ,彼は荒野にいる』と言っても,出て行ってはいけない。『見よ,奥の部屋にいる』と言っても,それを信じてはいけない。 Matthew 24:27 いなずまが東から出て,西にまで輝きわたるように,人の子の来臨もそのようだからだ。 Matthew 24:28 どこでも死体のあるところ,そこにハゲワシたちも集まって来るのだ。 Matthew 24:29 だが,それらの日の苦しみのすぐ後に,太陽は暗くなり,月は光を放たなくなり,星々は天から落ち,天にあるもろもろの力は揺り動かされるだろう。 Matthew 24:30 そしてその時,人の子のしるしが天に現われるだろう。その時,地のすべての部族は悲しみ,人の子が力と大いなる栄光をもって天の雲に乗って来るのを見るだろう。 Matthew 24:31 彼は大きならっぱの音と共に自分の使いたちを遣わし,彼らは四方の風から,天の一方の果てから他方の果てまで,自分の選ばれた者たちを集め寄せるだろう。
Matthew 24:32 「さあ,イチジクの木からこのたとえを学びなさい。その枝が柔らかくなり,葉を出すと,あなた方は夏の近いことを知る。 Matthew 24:33 そのようにあなた方も,これらのすべてのことが起こるのを見たなら,彼が戸口にまで近づいていることを知りなさい。 Matthew 24:34 本当にはっきりとあなた方に告げる。これらのすべてのことが実現するまでは,この世代は過ぎ去らない。 Matthew 24:35 天と地は過ぎ去るだろう。それでも,わたしの言葉は過ぎ去らないのだ。 Matthew 24:36 だが,その日や時刻についてはだれも知らない。天のみ使いたちも知らず,ただ父だけが知っておられる。
Matthew 24:37 「人の子の来臨はノアの日々と同じようだ。 Matthew 24:38 というのも,洪水前のそれらの日,ノアが箱船に入るその日まで,人々は食べたり飲んだり,めとったり嫁いだりしていて, Matthew 24:39 洪水が来て彼らすべてをさらって行くまで,気づかなかったのだ。人の子の来臨もそのようになるだろう。 Matthew 24:40 その時,二人の男が畑にいるだろう。一方は取り去られ,他方は残される。 Matthew 24:41 二人の女が引き臼をひいているだろう。一方は取り去られ,他方は残される。 Matthew 24:42 だから,見張っていなさい。あなた方は自分たちの主が来るその時を知らないからだ。 Matthew 24:43 だが,このことを知っておきなさい。家の主人は,夜のどの見張り時に盗人が来るかを知っているなら,見張っていて,自分の家に押し入られることを許さなかっただろう。 Matthew 24:44 だから,あなた方も用意をしておきなさい。あなた方の思いもしない時に人の子は来るからだ。
Matthew 24:45 「それでは,主人が,時節に応じて家の者たちに食物を与えさせるため,彼らの上に任命した,忠実で賢い召使いは,いったいだれか。 Matthew 24:46 主人がやって来た時,そうしているのを見られるその召使いは幸いだ。 Matthew 24:47 本当にはっきりとあなた方に告げるが,主人は彼を自分のすべての持ち物の上に任命するだろう。 Matthew 24:48 だが,それが悪い召使いで,心の中で,『わたしの主人は来るのが遅れている』と言い, Matthew 24:49 自分の仲間の召使いたちを打ちたたき始め,酔っぱらいたちと食べたり飲んだりしているなら, Matthew 24:50 その召使いの主人は,彼の思いもしない日,彼の知らない時にやって来て, Matthew 24:51 彼をずたずたに切り裂き,その受け分を偽善者たちと共にならせるだろう。そこには嘆きと歯ぎしりとがあるだろう。
Matthew 25:0
Matthew 25:1 「その時,天の王国は,自分のともし火を持って花婿を迎えに出た十人の処女のようになる。 Matthew 25:2 そのうち五人は愚かで,五人は賢かった。 Matthew 25:3 愚かな者たちは,ともし火を持って行くとき,一緒に油を持って行かなかった。 Matthew 25:4 だが,賢い者たちは,ともし火と一緒に油を器に入れて持って行った。 Matthew 25:5 さて,花婿が遅れている間に,彼女たちはみな,うとうとして眠り込んでしまった。 Matthew 25:6 ところが,真夜中に,『見よ! 花婿が来た! 彼を迎えに出よ!』という叫びが上がった。 Matthew 25:7 その時,それらの処女たちはみな起き上がり,自分たちのともし火を整えた。 Matthew 25:8 愚かな者たちは賢い者たちに言った,『あなた方の油を少し分けてください。わたしたちのともし火は消えそうですから』。 Matthew 25:9 だが,賢い者たちは答えて言った,『わたしたちとあなた方に足りるほどはないかも知れません。それより,商人たちのところに行って,自分のために買いなさい』。 Matthew 25:10 彼女たちが買いに出ている間に,花婿が来た。そして,用意ができている者たちは,彼と共に婚宴の部屋に入った。それから戸が閉められた。 Matthew 25:11 その後,ほかの処女たちもやって来て,『主よ,主よ,わたしたちに開けてください』と言った。 Matthew 25:12 だが,彼は答えた,『本当にはっきりとあなた方に告げる。わたしはあなた方を知らない』。 Matthew 25:13 だから,見張っていなさい。あなた方は人の子が来るその日もその時も知らないからだ。
Matthew 25:14 「それは,外国に出かけるとき,自分の召使いたちを呼んで,彼らに自分の財産を託した人のようだからだ。 Matthew 25:15 それぞれの能力に応じて,ある者には五タレント,別の者には二タレント,別の者には一タレントを与えてから,旅に出た。 Matthew 25:16 五タレントを受けた者はすぐに出て行き,それを使って商売をし,ほかに五タレントをもうけた。 Matthew 25:17 二タレントを受けた者も,同じくほかに二タレントをもうけた。 Matthew 25:18 だが,一タレントを受けた者は,出て行って地面に穴を掘り,自分の主人のお金を隠しておいた。
Matthew 25:19 「さて,長い時ののち,それらの召使いたちの主人がやって来て,彼らと貸し借りを精算した。 Matthew 25:20 五タレントを受けた者が進み出て,ほかの五タレントを差し出して言った,『ご主人様,あなたはわたしに五タレントを渡されました。ご覧ください,わたしはさらに五タレントをもうけました』。
Matthew 25:21 「彼の主人は彼に言った,『よくやった,忠実な善い召使いよ。あなたはわずかなものに忠実だったから,多くのものの上に任命しよう。あなたの主人の喜びに入りなさい』。
Matthew 25:22 「二タレントを受けた者が進み出て言った,『ご主人様,あなたはわたしに二タレントを渡されました。ご覧ください,わたしはさらに二タレントをもうけました』。
Matthew 25:23 「彼の主人は彼に言った,『よくやった,忠実な善い召使いよ。あなたはわずかなものに忠実だったから,多くのものの上に任命しよう。あなたの主人の喜びに入りなさい』。
Matthew 25:24 「一タレントを受けた者も進み出て言った,『ご主人様,わたしはあなたが厳しい方で,種をまかなかった所で刈り取り,散らさなかった所で集められるということを知っていました。 Matthew 25:25 わたしは怖くなり,行ってあなたの一タレントを地中に隠しました。ご覧ください,これがあなたのものです』。
Matthew 25:26 「だが,彼の主人は彼に答えた,『無精な悪い召使いよ。あなたはわたしが種をまかなかった所で刈り取り,散らさなかった所で集めることを知っていたのか。 Matthew 25:27 それなら,わたしのお金を銀行家に預けておくべきだった。そうすれば,帰って来た時,自分のものを利息と一緒に戻してもらえただろうに。 Matthew 25:28 だから,その一タレントを彼から取り上げて,十タレント持っている者に与えなさい。 Matthew 25:29 だれでも持っている者にはさらに与えられて豊かになるが,持っていない者からはその持っているものまでも取り去られることになるからだ。 Matthew 25:30 この役に立たない召使いを外の闇に投げ出せ。そこには嘆きと歯ぎしりとがあるだろう』。
Matthew 25:31 「さて,人の子が自分の栄光のうちに到来し,すべての聖なるみ使いたちが彼と共に到来するその時,彼は自分の栄光の座に着くだろう。 Matthew 25:32 すべての民族が彼の前に集められるだろう。そして彼は,羊飼いが羊をヤギからより分けるように,彼らを互いにより分け, Matthew 25:33 羊を自分の右に,ヤギを自分の左に置くだろう。 Matthew 25:34 その時,王は自分の右にいる者たちにこう告げるだろう。『さあ,わたしの父に祝福された者たち,世の基礎が据えられて以来あなた方のために備えられていた王国を受け継ぎなさい。 Matthew 25:35 わたしが飢えると食べ物を与え,わたしが渇くと飲み物を与え,よそから来ると宿を貸し, Matthew 25:36 裸でいると服を着せ,病気でいると見舞い,ろうやにいると来てくれたからだ』。
Matthew 25:37 「その時,義人たちは彼に答えてこう言うだろう。『主よ,いつわたしたちは,あなたが飢えておられるのを見て食物を差し上げたり,渇いておられるのを見て飲み物を差し上げましたか。 Matthew 25:38 いつわたしたちは,あなたがよそから来られたのを見て宿を貸し,裸でおられるのを見て服をお着せしましたか。 Matthew 25:39 いつわたしたちは,あなたが病気をなさったり,ろうやにおられるのを見て,あなたのところに参りましたか』。
Matthew 25:40 「王は彼らにこう答えるだろう。『本当にはっきりとあなた方に告げる。これらわたしの最も小さい兄弟たちの一人にあなた方がしたことは,わたしにしたのだ』。 Matthew 25:41 それから,王はまた自分の左にいる者たちにこう言うだろう。『のろわれた者たちよ,わたしから離れて,悪魔とその使いたちのために備えられた永遠の火に入りなさい。 Matthew 25:42 わたしが飢えても食べ物を与えず,わたしが渇いても飲み物を与えず, Matthew 25:43 よそから来ても宿を貸さず,裸でいても服を着せず,病気でいたり,ろうやにいても見舞ってくれなかったからだ』。
Matthew 25:44 「その時,彼らも答えてこう言うだろう。『主よ,いつわたしたちは,あなたが飢えておられたり,渇いておられたり,よそから来られたり,裸でおられたり,病気をなさったり,ろうやにおられるのを見て,お世話をしませんでしたか』。
Matthew 25:45 「その時,彼は彼らに答えてこう言うだろう。『本当にはっきりとあなた方に告げる。これらわたしの最も小さい兄弟たちの一人にあなた方がしなかったことは,わたしにしなかったのだ』。 Matthew 25:46 これらの者は永遠の処罰に入り,義人たちは永遠の命に入るだろう」
Matthew 26:0 Matthew 26:1 イエスは,これらすべての言葉を語り終えた時,弟子たちにこう言った。 Matthew 26:2 「あなた方が知っているとおり,二日後には過ぎ越しがやって来る。そして人の子ははりつけにされるために引き渡される」
Matthew 26:3 その時,祭司長たちと律法学者たちと民の長老たちは,カイアファスと呼ばれる大祭司の邸宅に集まった。 Matthew 26:4 策略によってイエスを捕まえて殺そうと相談した。 Matthew 26:5 しかし彼らは言った,「祭りの間はいけない。民の暴動が起きるかも知れないからだ」。
Matthew 26:6 さて,イエスがベタニアでらい病の人シモンの家にいた時, Matthew 26:7 一人の女が,非常に高価な香油の入った雪花石こうのつぼを持って彼に近寄って来て,それを食卓に着いている彼の頭に注いだ。 Matthew 26:8 しかし,これを見て弟子たちは憤慨し,こう言った。「なぜこんな無駄づかいをしたのか。 Matthew 26:9 この香油なら高く売れたし,そうすれば貧しい人々に施すことができたのに」。
Matthew 26:10 しかし,これを知ってイエスは彼らに言った,「なぜあなた方はこの女を悩ませるのか。彼女はわたしに良い行ないをしてくれたのだ。 Matthew 26:11 あなた方には,貧しい人々はいつでも一緒にいるが,わたしはいつでもいるわけではないからだ。 Matthew 26:12 彼女がわたしの体にこの香油を注いだのは,わたしに埋葬に備えるためだったのだ。 Matthew 26:13 本当にはっきりとあなた方に告げる。世界中どこでも,この福音が宣教される所では,この女の行なったこともまた,彼女の記念として語られるだろう」
Matthew 26:14 その時,十二人の一人で,ユダ・イスカリオトと呼ばれていた者が,祭司長たちのところに出て行き, Matthew 26:15 「彼をあなた方に引き渡せば,わたしに何をくれますか」と言った。彼らはそれを聞いて喜び,彼にお金を与えることを約束した。彼らは彼に銀三十枚を量り分けた。 Matthew 26:16 その時以来,彼はイエスを売り渡す機会を探り求めた。
Matthew 26:17 さて,種なしパンの最初の日,弟子たちがイエスのもとに来て,こう言った。「過ぎ越しの食事をなさるため,わたしたちがどこで用意をすることをお望みですか」。
Matthew 26:18 彼は言った,「市内に入って,ある人のところへ行き,こう告げなさい。『先生が,「わたしの時が近づいた。わたしは弟子たちと共にあなたの家で過ぎ越しを祝う」と言っています』」
Matthew 26:19 弟子たちはイエスが彼らに命じたとおりに行ない,彼らは過ぎ越しの用意をした。 Matthew 26:20 夕方になった時,彼は十二弟子と共に食卓に横になった。 Matthew 26:21 彼らが食事をしていると,彼は言った,「本当にはっきりとあなた方に告げるが,あなた方の一人がわたしを売り渡すだろう」
Matthew 26:22 彼らは深く悲しみ,一人ずつ彼に「主よ,それはわたしではないでしょうね」と尋ね始めた。
Matthew 26:23 彼は答えた,「わたしと共に手を鉢に浸している者,その者がわたしを売り渡すだろう。 Matthew 26:24 人の子は自分について書いてあるとおりに去って行く。だが,人の子を売り渡すその者は災いだ! 生まれて来なかった方が,その者のためには良かっただろう」
Matthew 26:25 イエスを売り渡したユダが答えた,「ラビ,それはわたしではないでしょうね」。
イエスは彼に言った,「あなたがそう言った」
Matthew 26:26 彼らが食事をしていると,イエスはパンを取り,それに対する感謝をささげてからそれを裂いた。弟子たちに与えてこう言った。「取って,食べなさい。これはわたしの体だ」 。 Matthew 26:27 杯を取り,感謝をささげてから,彼らに与えてこう言った。「あなた方は皆,この杯から飲みなさい。 Matthew 26:28 これは新しい契約のためのわたしの血だ。それは罪の許しのため,多くの人のために注ぎ出されるのだ。 Matthew 26:29 だが,本当にはっきりとあなた方に告げるが,わたしの父の王国においてそれを新たに飲むその日まで,わたしは今後ブドウの木のこの産物を飲むことはない」 。 Matthew 26:30 賛美の歌を歌ってから,彼らはオリーブ山へと出て行った。
Matthew 26:31 それからイエスは彼らに言った,「今夜,あなた方全員がわたしのためにつまずくだろう。『わたしは羊飼いを打つ。すると羊の群れは散らされるだろう』と書いてあるからだ。 Matthew 26:32 だが,わたしは起こされた後,あなた方より先にガリラヤに行くだろう」
Matthew 26:33 しかしペトロは彼に答えた,「みんながあなたのためにつまずいたとしても,わたしは決してつまずきません」。
Matthew 26:34 イエスは彼に言った,「本当にはっきりとあなたに告げるが,今夜,おんどりが鳴く前に,あなたは三度わたしを否認するだろう」
Matthew 26:35 ペトロは彼に言った,「あなたと一緒に死ななければならないとしても,わたしはあなたを否認しません」。ほかの弟子たちも皆,同じ事を言った。
Matthew 26:36 それからイエスは彼らと共にゲツセマネと呼ばれる場所にやって来た。彼は弟子たちに言った,「わたしがあちらに行って祈っている間,ここに座っていなさい」 。 Matthew 26:37 彼はペトロとゼベダイの二人の子らを伴って行ったが,悲しみ,またひどく苦悩し始めた。 Matthew 26:38 その時,彼は彼らに言った,「わたしの魂は死ぬほどに深く悲しんでいる。ここにとどまって,わたしと共に見張っていなさい」
Matthew 26:39 少し進んで行ってうつ伏し,祈って言った,「わたしの父よ,もしできることなら,この杯をわたしから過ぎ去らせてください。それでも,わたしの望むことではなく,あなたの望まれることを」
Matthew 26:40 弟子たちのところに来て,彼らが眠っているのを見つけて,ペトロに言った,「何と,あなたはわたしと共に一時間も見張っていられなかったのか。 Matthew 26:41 あなた方は誘惑に陥らないよう,見張って,祈っていなさい。霊はその気でも,肉体は弱いのだ」
Matthew 26:42 再び,二度目に離れて行き,祈って言った,「わたしの父よ,わたしが飲まない限り,この杯がわたしから過ぎ去らないのでしたら,あなたの望まれることが行なわれますように」 。 Matthew 26:43 もう一度やって来て,彼らが眠っているのを見つけた。彼らの目は非常に重くなっていたのである。 Matthew 26:44 彼は彼らを残して再び離れて行き,三度目に同じ言葉で祈った。 Matthew 26:45 それから,三度目に弟子たちのところに来て,彼らに言った,「なお眠って,休息をとりなさい。見よ,時が来た。そして人の子は罪人たちの手に売り渡される。 Matthew 26:46 立ちなさい,さあ行こう。見よ,わたしを売り渡す者が近づいて来た」
Matthew 26:47 彼がまだ話しているうちに,見よ,十二人の一人のユダがやって来た。そして彼と共に,祭司長たちと民の長老たちのもとから来た群衆が,剣やこん棒を手にしてやって来た。 Matthew 26:48 さて,イエスを売り渡した者は,「わたしが口づけするのがその者だ。それを捕まえろ」と言って,彼らに合図を伝えていた。 Matthew 26:49 すぐにイエスに近寄り,「こんばんは,ラビ!」と言って,口づけした。
Matthew 26:50 イエスは彼に言った,「友よ,なぜここにいるのか」 。その時,彼らはイエスに手をかけて捕まえた。 Matthew 26:51 見よ,イエスと共にいた者の一人が,手を伸ばして剣を抜き,大祭司の召使いに撃ちかかり,その片耳を切り落とした。 Matthew 26:52 その時イエスは彼に言った,「剣をもとの所に納めなさい。すべて剣を取る者は剣で死ぬからだ。 Matthew 26:53 それともあなたは,わたしがわたしの父に求めて,今すぐに十二軍団以上のみ使いたちを遣わしていただくことができないとでも思うのか。 Matthew 26:54 だがそれでは,こうならなければならないと書いてある聖句はどうして果たされるだろうか」
Matthew 26:55 その時,イエスは群衆に言った,「あなた方は強盗に対するかのように,剣とこん棒を持ってわたしを捕まえに出て来たのか。わたしは毎日神殿に座って教えていたのに,あなた方はわたしを逮捕しなかった。 Matthew 26:56 だが,このすべてが起こったのは,預言者たちの聖句が果たされるためなのだ」
その時,弟子たちは皆,彼を残して逃げて行った。 Matthew 26:57 イエスを捕まえた者たちは,彼を大祭司カイアファスのところに引いて行った。そこには祭司長たちと長老たちが集まっていた。 Matthew 26:58 他方,ペトロは遠くからイエスに付いて行き,大祭司の中庭までやって来た。そして中に入り,成り行きを見ようとして,役人たちと共に座った。 Matthew 26:59 さて,祭司長たちと長老たちと最高法院全体は,イエスを死に渡すため,彼に不利な証言を探していたが, Matthew 26:60 何も見つからなかった。多くの偽りの証人が進み出たにもかかわらず,何も見つからなかった。しかし,最後に二人の者が進み出て, Matthew 26:61 こう言った。「この者は,『わたしは神の神殿を壊し,それを三日で建てる』と言いました」。
Matthew 26:62 大祭司が立ち上がって彼に言った,「何も答えないのか。これらの者たちがお前に不利な証言をしているのは,どういうことなのか」。 Matthew 26:63 しかし彼は黙っていた。大祭司は彼に尋ねた,「生ける神に誓ってお前に命じる。我々に告げよ,お前は神の子,キリストなのかどうか」。
Matthew 26:64 イエスは言った,「あなたがそう言っている。それでも,あなた方に告げるが,今後,あなた方は人の子が力ある方の右に座り,天の雲と共に来るのを見るだろう」
Matthew 26:65 その時,大祭司は自分の衣を引き裂いてこう言った。「この者は冒とくを口にした! どうしてこれ以上証人が必要だろうか。見よ,あなた方は今,冒とくの言葉を聞いたのだ。 Matthew 26:66 あなた方はどう思うか」。
彼らは答えた,「この者は死に値する!」 Matthew 26:67 それから,彼らは彼の顔につばをかけ,こぶしで殴り,「預言しろ!」と言い始めた。ある者たちは彼を平手で打って, Matthew 26:68 こう言った。「キリストよ,我々に預言しろ! お前を打ったのはだれか」。
Matthew 26:69 さて,ペトロが外の中庭に座っていると,一人の女中が彼のところに来て,こう言った。「あなたもガリラヤ人イエスと一緒にいました!」
Matthew 26:70 しかし彼はみんなの前でそれを否定して言った,「わたしはあなたが何のことを言っているのか分からない」。
Matthew 26:71 彼が入り口の方に出て行くと,別の女が彼を見て,そこにいる者たちにこう言った。「この人もナザレ人イエスと一緒にいました」。
Matthew 26:72 彼は誓いつつ再びそれを否定した。「わたしはその人を知らない」。
Matthew 26:73 しばらくして,そばに立っていた者たちが近寄って来てペトロに言った,「確かにあなたも彼らの一人だ。方言であなたのことが分かるからだ」。
Matthew 26:74 その時,彼はのろったり誓ったりし始めて言った,「わたしはその人を知らないのだ!」
すぐにおんどりが鳴いた。 Matthew 26:75 ペトロは,「おんどりが鳴く前に,あなたは三度わたしを否認するだろう」 とイエスが自分に言った言葉を思い出した。そして,外に出て,激しく泣いた。
Matthew 27:0 Matthew 27:1 さて,明け方になると,祭司長たちと民の長老たち全員は,イエスを死に渡そうとして相談した。 Matthew 27:2 そして彼を縛って連れ出し,総督ポンティウス・ピラトに引き渡した。 Matthew 27:3 その時,イエスを売り渡したユダは,イエスが罪に定められたのを見て後悔し,銀三十枚を祭司長たちと長老たちに返して Matthew 27:4 言った,「わたしは罪のない血を売り渡して罪を犯した」。
しかし彼らは言った,「それが我々にどうしたのか。自分で始末しろ」。
Matthew 27:5 彼はそれらの銀を聖所に投げ入れて立ち去った。出て行って,首をつって死んだ。 Matthew 27:6 祭司たちはそれらの銀を取って言った,「これらを宝物庫に入れることは許されない。血の代価だからだ」。 Matthew 27:7 彼らは相談し,よそ人たちの埋葬のためにそれらで陶器師の畑を買った。 Matthew 27:8 それで,この畑は今日に至るまで「血の畑」と呼ばれている。 Matthew 27:9 その時,預言者エレミヤによって語られたことが果たされた。こう言われていた。
「彼らは銀三十枚を取った,値をつけられた者,イスラエルの子らのある者たちが値をつけた者の代価を。 Matthew 27:10 そして,陶器師の畑としてそれらを与えた。主がわたしに命じたとおりである」。 Matthew 27:11 さて,イエスは総督の前に立った。そこで総督はイエスに尋ねて言った,「お前はユダヤ人の王なのか」。
イエスは彼に言った,「あなたがそう言っている」
Matthew 27:12 祭司長たちや長老たちから訴えられている時,彼は何も答えなかった。 Matthew 27:13 ピラトは彼に言った,「彼らがお前に対してどれほど多くの事を証言しているか,お前は聞こえないのか」。
Matthew 27:14 しかしイエスはそれ以上何一つ答えなかった。そのため総督は非常に驚いた。 Matthew 27:15 さて,総督は祭りの際に,群衆が彼に願い出る囚人を一人,彼らのために釈放するのを慣例としていた。 Matthew 27:16 その時,彼らにはバラバと呼ばれる有名な囚人がいた。 Matthew 27:17 それで,彼らが集まって来た時,ピラトは彼らに言った,「お前たちはだれを釈放して欲しいのか。バラバか,それともキリストと呼ばれるイエスか」。 Matthew 27:18 彼らがねたみのためにイエスを引き渡したことに気づいていたからである。
Matthew 27:19 彼が裁判の席に着いているとき,その妻が彼のもとに人を遣わして言った,「あの義人とかかわりを持たないでください。わたしはその人のために,今朝,夢の中でさんざん苦しめられたのです」。 Matthew 27:20 さて,祭司長たちや長老たちは,バラバを求めてイエスを滅ぼすよう群衆を説得した。 Matthew 27:21 一方,総督は彼らに答えた,「お前たちは二人のうちのどちらを釈放して欲しいのか」。
彼らは言った,「バラバを!」
Matthew 27:22 ピラトは彼らに言った,「それでは,キリストと呼ばれるイエスはどうしたらよいのか」。
みんなは彼に言った,「はりつけにしろ!」
Matthew 27:23 しかし総督は言った,「なぜだ。彼がどんな悪事をしたというのか」。
しかし彼らは激しく叫んで言った,「はりつけにしろ!」
Matthew 27:24 そこでピラトは,手のつけようがなく,むしろ騒動になり始めたのを見て,水を取って群衆の前で両手を洗い,「わたしはこの義人の血について罪はない。自分たちで始末せよ」と言った。
Matthew 27:25 民全体が答えた,「彼の血は,我々と我々の子孫の上にふりかかってもよい!」
Matthew 27:26 そこでピラトはバラバを釈放した。他方,イエスをむち打ってから,はりつけにするために引き渡した。 Matthew 27:27 総督の兵士たちはイエスをプラエトリウムの中に引いて行き,全部隊を彼のところに呼び集めた。 Matthew 27:28 彼から衣をはいで,赤い衣を彼にまとわせた。 Matthew 27:29 イバラの冠を編んで彼の頭に載せ,右手にアシを持たせた。そして彼の前にひざまずいて彼をなぶりものにして,「ユダヤ人の王様,万歳!」と言った。 Matthew 27:30 彼につばをかけ,アシを取り上げて彼の頭をたたいた。 Matthew 27:31 彼をなぶりものにした後,彼から衣を脱がせて,もとの衣を着せた。そして,彼をはりつけにするために引いて行った。
Matthew 27:32 出て行くと,シモンという名のキュレネ人を見つけたが,彼を一緒に来させて,イエスの十字架を運ばせた。 Matthew 27:33 「ゴルゴタ」,訳せば「どくろの場所」と呼ばれる場所にやって来た。 Matthew 27:34 彼らは胆汁を混ぜた酸いブドウ酒を与えた。彼は味を見ると飲もうとしなかった。 Matthew 27:35 彼をはりつけにしてから,くじを引いて,互いにその外衣を分けた。 Matthew 27:36 そして,そこに座って彼を見張っていた。 Matthew 27:37 彼の頭の上には,「これはユダヤ人の王イエス」と書いた罪状書きを掲げた。
Matthew 27:38 それから,彼と共に二人の強盗をはりつけにし,一人はその右に,一人はその左に置いた。 Matthew 27:39 通りかかった者たちは,頭を振りながら彼を冒とくして Matthew 27:40 言った,「神殿を壊して三日で建てる者よ,自分を救ってみろ! 神の子なら,十字架から降りて来い!」
Matthew 27:41 同じように,祭司長たちも律法学者たちやファリサイ人たちや長老たちと共に,あざけって言った, Matthew 27:42 「ほかの者たちは救ったが,自分は救えないのだ。あれがイスラエルの王なら,今,十字架から降りて来てもらおう。そうしたら彼を信じよう。 Matthew 27:43 彼は神に頼っている。神が彼をお望みなら,救い出してもらうがよい。『わたしは神の子だ』と言ったのだから」。 Matthew 27:44 一緒にはりつけになっていた強盗たちも,同じように彼を非難した。
Matthew 27:45 さて,第六時から闇が全土を覆い,第九時にまで及んだ。 Matthew 27:46 第九時ごろ,イエスは大声で叫んで,「エリ,エリ,リマ,サバクタニ」 と言った。これは,「わたしの神,わたしの神,なぜわたしをお見捨てになったのですか」 という意味である。
Matthew 27:47 そばに立っていた者たちの何人かは,それを聞いて,「この人はエリヤを呼んでいるのだ」と言った。
Matthew 27:48 すぐに彼らのうちの一人が走って行き,海綿に酢をたっぷり含ませて,アシの先に付け,それを彼に飲まそうとした。 Matthew 27:49 残りの者たちは,「彼をそのままにしておけ。エリヤが彼を救いに来るかどうかを見よう」と言った。
Matthew 27:50 イエスは再び大声で叫んで,自分の霊をゆだねた。 Matthew 27:51 見よ,神殿の幕が上から下まで二つに裂けた。地が揺れ,岩々が割れた。 Matthew 27:52 幾つもの墓が開き,眠りについていた聖者たちの体が数多く起こされた。 Matthew 27:53 そして,イエスの復活ののちに墓から出て来て,聖都に入り,大勢の人に現われた。 Matthew 27:54 その時,百人隊長と,イエスを見張っていた者たちは,地震や起きた事柄を見て非常に恐れ,「本当にこの人は神の子だった」と言った。
Matthew 27:55 そこでは大勢の女たちが遠くから見ていたが,それはガリラヤからイエスに仕えながら従っていた者たちであった。 Matthew 27:56 その中にはマリア・マグダレネ,ヤコブとヨセの母マリア,それにゼベダイの子らの母がいた。 Matthew 27:57 夕方になると,ヨセフという名で,アリマタヤ出身の富んだ人がやって来た。彼自身もイエスの弟子となっていた。 Matthew 27:58 この人がピラトのところへ行き,イエスの体を渡してくれるよう願い出た。それでピラトは死体を与えるよう命じた。 Matthew 27:59 ヨセフは死体を取り降ろして,きれいな亜麻布に包み, Matthew 27:60 岩に切り掘ってあった自分の新しい墓に横たえた。墓の入り口に大きな石を転がしてから,去って行った。 Matthew 27:61 マリア・マグダレネともう一人のマリアは,墓に向かって座っていた。 Matthew 27:62 さて,次の日,すなわち準備の日の翌日,祭司長たちとファリサイ人たちはピラトのもとに集まって Matthew 27:63 こう言った。「閣下,わたしたちは,あの詐欺師がまだ生きていたとき,『三日後にわたしは生き返るだろう』と言っていたのを思い出しました。 Matthew 27:64 ですから,三日目まで墓を警備するよう命じてください。そうでないと,夜中に弟子たちが来て彼を盗み出し,『彼は死んだ者たちの中から起こされた』などと民に告げるかも知れません。そうなれば,この最後の欺きは最初の欺きよりも悪いものになるでしょう」。
Matthew 27:65 ピラトは彼らに言った,「お前たちには警備兵がある。行って,できる限りの警備をするがよい」。 Matthew 27:66 そこで彼らは警備兵を連れて行き,石に封印をして,墓の警備をした。
Matthew 28:0 Matthew 28:1 さて,安息日ののち,週の初めの日が明け始めるころ,マリア・マグダレネともう一人のマリアが墓を見に来た。 Matthew 28:2 見よ,大きな地震が起きた。というのは,主のみ使いが天から降りて来て近寄り,入り口から石を転がして,その上に座ったからである。 Matthew 28:3 彼の外見はいなずまのようであり,彼の衣は雪のように白かった。 Matthew 28:4 警備兵たちは,彼に対する恐れのために震え上がり,死んだようになっていた。 Matthew 28:5 み使いは女たちに答えた,「恐れてはいけない。あなた方がはりつけにされたイエスを探していることを,わたしは知っているのだ。 Matthew 28:6 彼はここにはいない。彼は,自分で言ったとおり,起こされたからだ。さあ,主の横たえられた場所を見なさい。 Matthew 28:7 急いで行って,彼の弟子たちに,『彼は死んだ者たちの中から起こされた。そして見よ,彼はあなた方より先にガリラヤへ行く。あなた方はそこで彼を見るだろう』と告げなさい。見よ,わたしはあなた方に告げた」。
Matthew 28:8 彼女たちは,恐れと大きな喜びをもって,急いで墓を立ち去り,弟子たちに知らせるために走って行った。 Matthew 28:9 彼女たちが弟子たちに告げに行く途中で,見よ,イエスが彼女たちに出会って,「喜べ!」 と言った。
彼女たちは近づいてその両足を抱き,彼を拝んだ。
Matthew 28:10 その時イエスは彼女たちに言った,「恐れてはいけない。行って,わたしの兄弟たちにガリラヤに行くように告げなさい。彼らはそこでわたしを見るだろう」
Matthew 28:11 さて,彼女たちが進んでいる間に,見よ,警備兵たちのうちの数人が都に入り,祭司長たちに起きたことすべてを告げた。 Matthew 28:12 彼らは長老たちと集まって相談したのち,兵士たちに多額のお金を与えて, Matthew 28:13 こう言った。「彼の弟子たちが夜中にやって来て,自分たちが眠っている間に彼を盗んで行った,と言え。 Matthew 28:14 もしこのことが総督の耳に入っても,我々が説得して,お前たちには迷惑がかからないようにしてやろう」。 Matthew 28:15 そこで,彼らはお金を受け取って,告げられたとおりにした。この話はユダヤ人たちの間に広まって,今日に至っている。
Matthew 28:16 しかし,十一人の弟子たちはガリラヤに行って,イエスが彼らに伝えておいた山に上った。 Matthew 28:17 彼を見ると,彼らは彼に身をかがめた。しかし,ある者たちは疑った。 Matthew 28:18 イエスは近寄って来て,彼らに話して言った,「わたしには天と地のあらゆる権威が与えられた。 Matthew 28:19 だから,行って,あらゆる民族の人々を弟子とし,父と子と聖霊の名において彼らにバプテスマを施し, Matthew 28:20 わたしがあなた方に命じたすべての事柄を守るように教えなさい。見よ,わたしは,この時代の終わりまで,いつもあなた方と共にいるのだ」 。アーメン。
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Mark 1:0 Mark 1:1 神の子イエス・キリストに関する福音の始まり。 Mark 1:2 預言者たちの中にこう書かれているとおりである。 「見よ,わたしはあなたの面前にわたしの使者を遣わす。その者はあなたの前に道を整えるだろう。 Mark 1:3 荒野で叫ぶ者の声がする,『主の道を整えよ!その道筋をまっすぐにせよ!』」 Mark 1:4 ヨハネが現われて,荒野でパプテスマを施し,罪の許しのための悔い改めのバプテスマを宣教していた。 Mark 1:5 ユダヤの全地方とエルサレムのすべての人々が彼のところに出て来た。人々は自分の罪を告白して,ヨルダン川で彼からバプテスマを受けていた。 Mark 1:6 ヨハネはラクダの毛衣を身に着け,皮の帯を腰に巻いており,イナゴと野みつを食べていた。 Mark 1:7 彼は宣教して言った,「わたしより強い方がわたしの後から来られる。わたしはかがんでその方のサンダルの革ひもをほどくにも値しない。 Mark 1:8 わたしはあなた方に水でバプテスマを施したが,その方はあなた方に聖霊でバプテスマを施すだろう」。
Mark 1:9 そのころ,イエスはガリラヤのナザレからやって来て,ヨルダンでヨハネからバプテスマを受けた。 Mark 1:10 水から上がってすぐ,天が裂け,霊がハトのように自分の上に下って来るのを目にした。 Mark 1:11 天から声がした,「あなたはわたしの愛する子,わたしの心にかなう者である」。
Mark 1:12 すぐに霊が彼を荒野に追いやった。 Mark 1:13 彼は四十日間荒野にいて,サタンから誘惑を受けた。彼は野獣と共にいて,み使いたちが彼に仕えていた。
Mark 1:14 さて,ヨハネが捕まった後,イエスはガリラヤへ行き,神の王国に関する福音を宣教して Mark 1:15 こう言った。「時は満ち,神の王国は近づいた! 悔い改めて福音を信じなさい」
Mark 1:16 ガリラヤの海沿いを通りすがりに,シモンとシモンの兄弟アンデレが海で網を打っているのを目にした。彼らは漁師だったのである。 Mark 1:17 イエスは彼らに言った,「わたしの後に付いて来なさい。そうすればあなた方を,人を捕る漁師にしよう」
Mark 1:18 すぐに彼らは網を捨てて彼に従った。 Mark 1:19 さらに少し進んで行くと,ゼベダイの子ヤコブとその兄弟ヨハネを目にした。彼らも舟の中で網を繕っていた。 Mark 1:20 すぐに彼は彼らを呼んだ。すると彼らは,その父ゼベダイを雇い人たちと共に舟の中に残して,彼の後に付いて行った。 Mark 1:21 彼らはカペルナウムに入った。そしてすぐに,彼は安息日に会堂に入って教えた。 Mark 1:22 人々は彼の教えに驚いた。彼が権威ある者のように人々を教えていて,律法学者たちのようではなかったからである。 Mark 1:23 すぐに,彼らの会堂に汚れた霊に付かれた男がいて,叫んで Mark 1:24 言った,「ほう! ナザレ人イエスよ,わたしたちはあなたと何のかかわりがあるのか。わたしたちを滅ぼしに来たのか。わたしはあなたがだれだか知っている。神の聖なる方だ!」
Mark 1:25 イエスは彼をしかりつけて言った,「黙れ。この人から出て行け!」
Mark 1:26 汚れた霊は,その人をけいれんさせ,大声で叫びながら,彼から出て行った。 Mark 1:27 人々はすっかり驚いたので,互いに論じ合って言った,「これは何事だ。新しい教えなのか。彼は汚れた霊にさえ権威をもって命じる。すると彼らはこの人に従うのだ!」 Mark 1:28 彼の評判は,ガリラヤの全地方とその周囲の至る所にすぐに広まった。
Mark 1:29 すぐに,彼らは会堂から出ると,ヤコブやヨハネと共に,シモンとアンデレの家に入った。 Mark 1:30 さて,シモンのしゅうとめが熱病で横たわっており,彼らはすぐに彼女のことを彼に告げた。 Mark 1:31 彼はそばに行き,手を取って彼女を起き上がらせた。熱は引き,彼女は彼らに仕えた。 Mark 1:32 夕方,日が沈むと,人々は病気の者や悪霊に取りつかれた者を皆,彼のもとに連れて来た。 Mark 1:33 町全体が戸口に集まっていた。 Mark 1:34 彼はいろいろな病気にかかっている大勢の人々をいやし,多くの悪霊を追い出した。悪霊たちが語ることを許さなかった。彼らが自分を知っていたからである。
Mark 1:35 朝早く,まだ暗いうちに,彼は起き上がって出て行き,寂しい場所へ行って,そこで祈っていた。 Mark 1:36 シモンおよび共にいた者たちが後を追って来た。 Mark 1:37 そして彼を見つけて,「みんながあなたを探しています」と告げた。
Mark 1:38 彼は彼らに言った,「どこかほかの所,近くの町々へ行こう。わたしがそこでも宣教するためだ。わたしはそのために出て来たからだ」 。 Mark 1:39 ガリラヤ全土にわたり,その会堂に入って,宣教し,悪霊たちを追い出した。
Mark 1:40 そこで一人のらい病の人が彼のもとに来て,懇願してひざまずき,「あなたは,もしそうお望みになれば,わたしを清くすることがおできになります」と言った。
Mark 1:41 イエスは哀れみに動かされて,手を伸ばして彼に触り,彼に言った,「わたしはそう望む。清くなりなさい」 。 Mark 1:42 イエスがこう言うと,すぐにらい病は彼から去り,彼は清くなった。 Mark 1:43 イエスは彼に厳しく注意して,すぐに彼を送り出した。 Mark 1:44 そして彼に言った,「だれにも何も言わないようにしなさい。ただ行って,自分の体を祭司に見せ,自分の清めのためにモーセの命じた物をささげなさい」
Mark 1:45 しかし,彼は出て行くと,それを大いに宣明し,この出来事について言い広め始めた。そのためイエスは,もはやおおっぴらに町に入ることができず,外の寂しい場所にいた。それでも,人々は至る所から彼のもとにやって来た。
Mark 2:0 Mark 2:1 数日後,再びカペルナウムに入ると,彼が家にいることが知れ渡った。 Mark 2:2 すぐに大勢の人が集まったので,戸口のあたりにさえ,もう場所がなかった。それで彼は人々にみ言葉を語った。 Mark 2:3 四人の人たちが,彼のもとに体のまひした人を運んで来た。 Mark 2:4 群衆のために彼のそばに近づくことができなかったので,彼がいる所の屋根を取り除いた。それを解体してしまうと,彼らは体のまひした人が横たわっている寝床を降ろした。 Mark 2:5 イエスは彼らの信仰を見て,体のまひした人に言った。「子よ,あなたの罪は許された」
Mark 2:6 ところが,そこに数人の律法学者たちが座っていて,心の中でこう論じていた。 Mark 2:7 「なぜこの人はこのような冒とくを語るのか。神おひとりのほか,だれが罪を許せるだろうか」。
Mark 2:8 すぐにイエスは,彼らが心の中でこのように論じているのを自分の霊によって気づき,彼らに言った,「なぜあなた方は心の中でこうしたことを論じているのか。 Mark 2:9 体のまひした人に,『あなたの罪は許されている』と告げるのと,『起き上がって,寝台を取り上げて歩きなさい』と言うのでは,どちらがたやすいか。 Mark 2:10 だが,人の子が地上で罪を許す権威を持っていることをあなた方が知るために」 ―体のまひした人に言った― Mark 2:11 「あなたに告げる。起き上がって,寝台を取り上げて,自分の家に帰りなさい」
Mark 2:12 その人は起き上がり,すぐに寝床を取り上げて,みんなの前を出て行った。そこで人々はすっかり驚き,「このようなことは今まで見たことがない」と言って,神に栄光をささげた。
Mark 2:13 彼は再び海辺に出て行った。群衆が皆,そのもとにやって来た。それで彼は人々を教えた。 Mark 2:14 通りすがりに,アルファイオスの子レビが収税所に座っているのを見て,「わたしに従いなさい」 と言った。すると彼は立ち上がって,イエスに従った。
Mark 2:15 彼の家でイエスが食卓に横になっていたときのことである。大勢の徴税人や罪人が,イエスや弟子たちと共に座っていた。大勢の人がいて,イエスに従っていたからである。 Mark 2:16 律法学者たちとファリサイ人たちは,彼が罪人たちや徴税人たちと共に食事をしているのを見て,彼の弟子たちに言った,「なぜ彼は,徴税人たちや罪人たちと共に食べたり飲んだりするのか」。
Mark 2:17 イエスはこれを聞いて,彼らに言った,「健康な人たちに医者は必要でなく,病気の人たちに必要なのだ。わたしは義人たちではなく,罪人たちを悔い改めへと呼び寄せるために来た」
Mark 2:18 ヨハネの弟子たちとファリサイ人たちが断食していると,人々はやって来て彼に尋ねた,「ヨハネの弟子たちとファリサイ人の弟子たちは断食するのに,あなたの弟子たちが断食しないのはなぜですか」。
Mark 2:19 イエスは彼らに言った,「花婿の付き添い役は,花婿が共にいるのに断食できるだろうか。花婿が共にいる間は,彼らは断食できない。 Mark 2:20 だが,花婿が彼らから取り去られる日々が来る。その日には,彼らは断食するだろう。 Mark 2:21 縮んでいない布切れを古い衣に縫いつける人はいない。そんなことをすれば,継ぎ切れが縮んで,新しいものが古いものを引き裂き,破れはいっそうひどくなる。 Mark 2:22 新しいブドウ酒を古い皮袋に入れる人はいない。そんなことをすれば,新しいブドウ酒は皮袋を破裂させ,ブドウ酒は流れ出て,皮はだめになるだろう。そうではなく,人々は新しいブドウ酒を新しい皮袋に入れるのだ」
Mark 2:23 彼が安息日に穀物畑を通っていたときのこと,彼の弟子たちは進みながら穀物の穂を摘み始めた。 Mark 2:24 ファリサイ人たちが彼に言った,「見よ,なぜ彼らは安息日に許されていないことをしているのか」。
Mark 2:25 彼は彼らに言った,「ダビデが,自分も共にいた者たちも窮乏して空腹だったときに何をしたか,あなた方は一度も読んだことがないのか。 Mark 2:26 アビアタルが大祭司だったときに,彼がどのようにして神の家に入り,祭司たちのほかは食べることが許されていない供えのパンを食べ,共にいた者たちにも与えたかを」 。 Mark 2:27 彼らに言った,「安息日は人のために作られたのであって,人が安息日のために作られたのではない。 Mark 2:28 だから,人の子は安息日の主でもあるのだ」
Mark 3:0 Mark 3:1 彼は再び会堂に入った。すると,片手のなえた人がそこにいた。 Mark 3:2 人々は,安息日にその人をいやすかどうか,彼の様子をうかがっていた。彼を訴えるためであった。 Mark 3:3 彼は片手のなえた人に,「立ちなさい」 と言った。 Mark 3:4 彼らに言った,「安息日に許されているのは,善を行なうことか,悪を行なうことか。命を救うことか,殺すことか」 。しかし彼らは黙っていた。 Mark 3:5 彼は怒りをもって彼らを見回し,彼らの心のかたくなさを悲しみながら,「あなたの手を伸ばしなさい」 とその人に言った。手を伸ばすと,その手はもう一方の手と同じようによくなった。 Mark 3:6 ファリサイ人たちは出て行き,すぐにヘロデ党の者たちと,どのようにして彼を滅ぼそうかと,彼に対する陰謀を企てた。
Mark 3:7 イエスは弟子たちと共に海に退いた。すると大群衆が彼に従った。すなわち,ガリラヤから,ユダヤから, Mark 3:8 エルサレムから,イドゥマヤから,ヨルダンの向こうから,テュロスやシドンの周辺から来た人々であった。大群衆が,彼の行なった大きな事柄を聞いて,彼のもとに来た。 Mark 3:9 彼は弟子たちに,群衆が押し寄せて来ないように,小舟を近くに用意しておくようにと言った。 Mark 3:10 というのは,彼が多くの者をいやしたので,病気を持つ人たちが皆,彼に触れようとして押し寄せてきたからである。 Mark 3:11 汚れた霊たちは,彼を見るたびに,その前にひれ伏して,「あなたは神の子だ!」と叫んだ。 Mark 3:12 彼は,自分を知らせないようにと,彼らを厳しく戒めた。
Mark 3:13 彼は山に上り,自分の望む者たちを呼び寄せた。すると彼らは彼のもとにやって来た。 Mark 3:14 彼は十二人を任命した。それは,彼らが自分と共にいるためであり,また,彼らを遣わして宣教させ, Mark 3:15 病気をいやして悪霊たちを追い出す権限を持たせるためであった。すなわち, Mark 3:16 彼がペトロという名を与えたシモン, Mark 3:17 ゼベダイの子ヤコブとヤコブの兄弟ヨハネ(彼らにはボアネルゲスという異名を付けた。これは雷の子らという意味である), Mark 3:18 アンデレ,フィリポ,バルトロマイ,マタイ,トマス,アルファイオスの子ヤコブ,タダイオス,熱心党のシモン, Mark 3:19 それに,ユダ・イスカリオト。このユダはまた,彼を売り渡した者でもある。
彼は家に入った。 Mark 3:20 群衆が再び集まって来たので,彼らはパンを食べることさえできなかった。 Mark 3:21 彼の友人たちはこれを聞くと,彼を捕まえにやって来た。というのは,人々が「彼は気が狂っている」と言っていたからである。 Mark 3:22 エルサレムから下って来た律法学者たちは,「彼はベエルゼブルに取りつかれている」とか,「悪霊たちの首領によって悪霊たちを追い出している」などと言っていた。
Mark 3:23 彼は彼らを呼び寄せ,たとえで彼らに語った,「どうしてサタンがサタンを追い出せるのか。 Mark 3:24 もし王国が自らに敵対して分裂するなら,その王国は立ち行けるはずがない。 Mark 3:25 もし家が自らに敵対して分裂するなら,その家は立ち行けるはずがない。 Mark 3:26 もしサタンが自らに敵対して立ち上がって分裂するなら,彼は立ち行けるはずがなく,終わりを迎えてしまう。 Mark 3:27 さらに,まず強い者を縛ってからでなければ,だれも強い者の家に押し入って略奪することはできない。縛ってから,その家を略奪するだろう。 Mark 3:28 本当にはっきりとあなた方に告げる。人の子らは,冒とくするとしても,その冒とくを含め,あらゆる罪が許されるだろう。 Mark 3:29 だが,だれでも聖霊に対して冒とくする者は決して許しを得ず,永遠の罪の責めを負う」 。 Mark 3:30 ―これは,彼らが,「彼は汚れた霊に取りつかれている」と言っていたためである。
Mark 3:31 彼の母と兄弟たちがやって来た。そして外に立ち,人を遣わして彼を呼ばせた。 Mark 3:32 群衆が彼の周りに座っていて,彼に告げた,「ご覧なさい,あなたのお母さんと兄弟たちと姉妹たちが外であなたを探しています」。
Mark 3:33 彼は彼らに答えた,「わたしの母,またわたしの兄弟たちとはだれか」。 Mark 3:34 自分の周りに座っている人々を見回して言った,「見よ,わたしの母とわたしの兄弟たちだ! Mark 3:35 だれでも神のご意志を行なう者,その者がわたしの兄弟,また姉妹,また母なのだ」
Mark 4:0 Mark 4:1 彼は再び海辺で教え始めた。大群衆が彼のもとに集まって来た。そのため彼は,海上の舟の中に入って座った。群衆は皆,海辺の陸地にいた。 Mark 4:2 彼はたとえを用いて多くの事を教え,自分の教えの中で人々に言った, Mark 4:3 「聞きなさい! 見よ,ある耕作人が種をまきに出かけた。 Mark 4:4 そして,種をまいているときのこと,ある種は道ばたに落ち,鳥たちがやって来て,それをむさぼり食ってしまった。 Mark 4:5 別の種は土の少ない岩地の上に落ちた。そして,土が深くなかったので,すぐに芽を出した。 Mark 4:6 太陽が昇ると焦がされ,根がないために枯れ果ててしまった。 Mark 4:7 別の種はイバラの間に落ち,イバラが伸びて来てそれをふさぎ,それは実を生じなかった。 Mark 4:8 それ以外の種は良い土に落ち,成長して大きくなり,実を生じた。あるものは三十倍,あるものは六十倍,あるものは百倍もの実を生み出した」 。 Mark 4:9 彼は言った,「だれでも聞く耳のある者は聞きなさい」
Mark 4:10 彼がひとりになった時,十二人と共に彼の周りにいた者たちは,このたとえについて彼に尋ねた。 Mark 4:11 彼は彼らに言った,「あなた方には神の王国の秘密が与えられているが,外にいる者たちにはすべての事がたとえで与えられる。 Mark 4:12 それは,『彼らが見るには見るが分からず,聞くには聞くが理解せず,何かの拍子に立ち返って,その罪が許されることのないため』だ」
Mark 4:13 彼らに言った,「あなた方はこのたとえが理解できないのか。どのようにしてほかのすべてのたとえを理解するつもりなのか。 Mark 4:14 耕作人はみ言葉をまくのだ。 Mark 4:15 道ばたにみ言葉がまかれたものとは,こういう人たちのことだ。彼らが聞くと,すぐにサタンがやって来て,彼らの内にまかれたみ言葉を取り去るのだ。 Mark 4:16 同じように,岩地の上にまかれたものとは,こういう人たちのことだ。み言葉を聞くと,喜んですぐに受け入れる。 Mark 4:17 自分の内に根がないので,短命だ。み言葉のために圧迫や迫害が生じると,すぐにつまずく。 Mark 4:18 イバラの間にまかれたものとは,別の者たちのことだ。これはみ言葉を聞いた人たちだが, Mark 4:19 この時代の思い煩いや,富の欺きや,ほかの物事に関する欲望が入り込んでみ言葉をふさぎ,それは実を結ばなくなる。 Mark 4:20 良い土の上にまかれたものとは,こういう人たちのことだ。み言葉を聞いて受け入れ,ある者は三十倍,ある者は六十倍,ある者は百倍の実を結ぶのだ」
Mark 4:21 彼らに言った,「ともし火が持って来られるのは,かごの下や寝台の下に置かれるためだろうか。燭台の上に置かれるためではないか。 Mark 4:22 というのは,知られるためでないのに隠されているものはなく,明るみに出るためでないのに秘密にされているものはないからだ。 Mark 4:23 だれでも聞く耳のある者は聞きなさい」
Mark 4:24 彼らに言った,「自分が聞いていることに注意を払いなさい。あなた方が量るそのはかりで,あなた方に量られるだろう。そして,聞いている者にはさらに与えられるだろう。 Mark 4:25 持っている者にはさらに与えられ,持っていない者からは持っているものまでも取り去られることになるからだ」
Mark 4:26 彼は言った,「神の王国は次のようなものだ。人が地に種をまき, Mark 4:27 夜昼,寝起きしているうちに,種は芽が出て成長する。どのようにしてかを彼は知らない。 Mark 4:28 地が実を生み出すのであって,最初に葉,それから穂,それから豊かな穀粒を生み出すからだ。 Mark 4:29 しかし,実が熟するとすぐに彼はかまを入れる。収穫の時が来たからだ」
Mark 4:30 彼は言った,「わたしたちは,神の王国をどのようにたとえようか。あるいは,どんなたとえで説明しようか。 Mark 4:31 それは一粒のからしの種のようなものだ。それは,地にまかれる時は地上のあらゆる種よりも小さい。 Mark 4:32 だがいったんまかれると,成長し,あらゆる草よりも大きくなり,大きな枝を張り,その陰で空の鳥たちが巣を作れるほどになる」
Mark 4:33 彼は,人々の聞くことができる程度に応じて,このようなたとえを多く用いてみ言葉を語った。 Mark 4:34 たとえなしでは人々に語らなかった。しかし,弟子たちに対しては,ひそかにすべてのことを説明した。
Mark 4:35 その日,夕方になった時,彼は彼らに「向こう岸に渡ろう」 と言った。 Mark 4:36 彼らは,群衆を残して,舟に乗っているままで彼を連れて行った。他の小舟も彼と共にいた。 Mark 4:37 激しい風あらしが起こり,波が舟の中に打ちつけて,舟はもはや水でいっぱいになるほどであった。 Mark 4:38 彼自身は船尾にいて,まくらをして眠っていた。そこで彼らは彼を起こして告げた,「先生,わたしたちが死にかかっていても平気なのですか」。
Mark 4:39 彼は目を覚まし,風をしかりつけ,海に言った,「静まれ! 静かになれ!」  風はやみ,大なぎになった。 Mark 4:40 彼は彼らに言った,「なぜそんなに恐れるのか。信仰がないのはどうしてか」
Mark 4:41 彼らは非常に恐れて,互いに言い合った,「風や海さえも従うとは,いったいこの方はどなただろう」。
Mark 5:0 Mark 5:1 彼らは海の向こう岸に着き,ゲラサ人たちの地方に入った。 Mark 5:2 彼が舟から出て来ると,すぐに汚れた霊に取りつかれた男が墓場から出て来て彼に出会った。 Mark 5:3 この男は墓場を住みかとしていた。もはやだれも,鎖を用いてさえ彼を縛ることができなかった。 Mark 5:4 彼はよく足かせや鎖で縛られたが,鎖はばらばらに引きちぎられ,足かせはばらばらに壊されてしまったからである。だれも彼を従わせる力を持っていなかった。 Mark 5:5 彼は,夜昼となく,墓場や山の中で叫んだり,石で身を切りつけたりしていた。 Mark 5:6 彼は,遠くからイエスを見ると,走って来ておじぎをし, Mark 5:7 そして大声で叫んで言った,「いと高き神の子イエスよ,わたしはあなたと何のかかわりがあるのか。神にかけてお願いする,わたしを苦しめないでくれ」。 Mark 5:8 というのは,イエスは彼に,「汚れた霊よ,この人から出て行け!」 と言ったからである。
Mark 5:9 イエスは彼に尋ねた,「あなたの名前は何か」
彼はイエスに言った,「わたしの名前はレギオンだ。わたしたちは大勢だからだ」。 Mark 5:10 彼はイエスに,自分たちをこの地方の外に追い払わないようにと,しきりに懇願した。 Mark 5:11 ところで,その山腹で豚の大群が飼われていた。 Mark 5:12 悪霊たちは皆,彼に懇願して言った,「わたしたちをあの豚たちの中に送って,あの中に入れるようにしてくれ」。
Mark 5:13 すぐにイエスは彼らに許可を与えた。汚れた霊たちは出て行って豚たちの中に入った。二千匹ほどのその群れは,険しい土手を下って海に突進し,海でおぼれ死んだ。 Mark 5:14 飼っていた者たちは逃げて行き,その町とその地方でそのことを知らせた。
人々は,何が起きたのか見に来た。 Mark 5:15 彼らはイエスのもとに来て,悪霊たちに取りつかれていた人,レギオンを宿していた人が服を着て,正気で座っているのを見た。それで彼らは恐れた。 Mark 5:16 見ていた者たちは,悪霊たちに取りつかれていた人にそのことがどのように起こったか,また豚たちについて,彼らに知らせた。 Mark 5:17 彼らは自分たちの地域から去るようにとイエスに懇願し始めた。
Mark 5:18 彼が舟に乗り込んでいると,悪霊たちに取りつかれていた人が,共にいさせて欲しいと懇願した。 Mark 5:19 イエスはそれを許さず,彼に言った,「あなたの家,あなたの友人たちのところに帰り,主があなたのためにどんな大きな事柄をしてくださったか,またあなたにどれほどあわれみを抱いてくださったかを知らせなさい」
Mark 5:20 彼は立ち去り,イエスが彼のためにどのように大きな事柄を行なったかをデカポリスで宣明し始めた。それでみんなは驚嘆した。
Mark 5:21 イエスが舟でまた向こう岸に渡ると,大群衆がそのもとに集まった。彼は海辺にいた。 Mark 5:22 見よ,会堂長の一人でヤイロスという名の者が来て,彼を見ると足もとにひれ伏し, Mark 5:23 しきりに懇願して言った,「わたしの小さな娘が死にかかっています。健康になって生きられるよう,どうかおいでになって,娘の上にあなたの手を置いてください」。
Mark 5:24 イエスは彼と共に行った。すると大群衆も彼に従い,四方八方から彼に押し迫った。 Mark 5:25 十二年間も血の流出をわずらっている女がいた。 Mark 5:26 多くの医者にさんざん苦しめられ,持っていたものをすべて使い果たしてしまったが,良くなるどころか,いっそう悪くなった。 Mark 5:27 その女が,イエスに関する事柄を聞いて,群衆の中で彼の後ろに近づき,その衣に触った。 Mark 5:28 というのは,彼女は,「あの方の衣に触りさえすれば,わたしはよくなるだろう」と言っていたからである。 Mark 5:29 すぐに彼女の血の流れは乾き,彼女は自分が苦しみからいやされたことを体の内で感じた。
Mark 5:30 すぐにイエスは,自分から力が出て行ったことを自分の内で気づき,群衆の中で振り向いて,「わたしの衣に触ったのはだれか」 と尋ねた。
Mark 5:31 弟子たちは彼に言った,「群衆があなたに対して押し寄せているのを見ておられるのに,『だれが触ったか』と言われるのですか」。
Mark 5:32 彼はこの事をした女を見ようと,あたりを見回していた。 Mark 5:33 一方その女は,自分に起こったことを知り,恐れて震えながら,やって来て彼の前にひれ伏し,すべてをありのままに彼に話した。
Mark 5:34 彼は彼女に言った,「娘よ,あなたの信仰があなたをよくならせた。平安のうちに行きなさい。あなたの病気からいやされなさい」
Mark 5:35 彼がまだ話しているうちに,会堂長の家から人々が来て言った,「あなたの娘さんは亡くなりました。どうして先生をこれ以上煩わすのでしょうか」。
Mark 5:36 しかしイエスは,話されている言葉を聞くと,すぐに会堂長に言った,「恐れることはない。ただ信じなさい」 。 Mark 5:37 ペトロとヤコブおよびヤコブの兄弟ヨハネのほかは,だれも自分に付いて来ることを許さなかった。 Mark 5:38 彼は会堂長の家に着いた。そして,泣いたり,大声で泣きわめいたりする騒ぎを目にした。 Mark 5:39 中に入って,彼らに言った, 「なぜ騒いだり泣いたりしているのか。子供は死んだのではなく,眠っているのだ」
Mark 5:40 人々は彼をばかにした。しかし彼は,みんなを外に出し,その子供の父と母および自分と共にいた者たちを連れて,子供が横たわっている所に入って行った。 Mark 5:41 子供の手を取って,「タリタ,クム」 と言った。これは訳せば,「少女よ,あなたに告げる,起きなさい」 という意味である。 Mark 5:42 すると少女は立ち上がり,歩き出した。彼女は十二歳だったからである。彼らは大きな驚きと共に驚いた。 Mark 5:43 彼は,このことをだれにも知らせないようにと厳しく彼らに命じた。そして,彼女に何か食べる物を与えるようにと命じた。
Mark 6:0 Mark 6:1 そこから出発して,彼は自分の故郷に入った。弟子たちも彼に従った。 Mark 6:2 安息日になると,彼は会堂で教え始めた。耳を傾けた大勢の人は驚いてこう言った。「この人はこうした事柄をどこから得たのだろう」。また,「この人に与えられた知恵はいったい何だ。このような強力な業が彼の手によって生じるのはどうしたことだ。 Mark 6:3 この人は大工ではないか。マリアの息子で,ヤコブ,ヨセ,ユダ,シモンの兄弟ではないか。その姉妹たちは我々と共にここにいるではないか」。人々は彼のために不快になった。
Mark 6:4 イエスは彼らに言った,「預言者は,自分の故郷や親族の間また自分の家以外では,敬われないことはない」 。 Mark 6:5 その場所では一つも強力な業を行なうことができず,ただ少数の病気の人たちの上に手を置いていやしただけであった。 Mark 6:6 彼は彼らの不信仰のために驚き怪しんだ。
彼は村々を巡回して教えた。 Mark 6:7 十二人を呼び寄せて,彼らを二人ずつ遣わし始め,彼らに汚れた霊たちに対する権威を与えた。 Mark 6:8 彼らに,旅のためにつえ一本のほかは何も持って行かないようにと命じた。すなわち,パンも,袋も,財布の中のお金も持たず, Mark 6:9 ただサンダルを履くだけで,二枚の上着を身に着けないようにと命じた。 Mark 6:10 彼らに言った, 「どこでも家に入ったなら,そこから出発するまではそこにとどまりなさい。 Mark 6:11 だれかがあなた方を受け入れず,あなた方の言うことに耳を傾けないなら,そこから出発する時に,彼らに対する証言のため,足の裏のちりを払い落としなさい。はっきりとあなた方に告げる。裁きの日には,ソドムとゴモラのほうがその町よりは耐えやすいだろう」
Mark 6:12 彼らは出て行って,人々が悔い改めるために宣教した。 Mark 6:13 彼らは多くの悪霊を追い出し,大勢の病気の人に油を塗って,その者たちををいやした。 Mark 6:14 ヘロデ王がこのことを聞いた。イエスの名前が広く知られるようになっていたからである。それで彼は言った,「バプテスマを施す人ヨハネが死んだ者たちの中から生き返ったので,こうした力が彼の内に働いているのだ」。 Mark 6:15 しかし他の者たちは,「この人はエリヤだ」と言った。他の者たちは,「預言者たちの一人のような預言者だ」と言った。 Mark 6:16 しかしヘロデはこのことを聞いて言った,「これは,わたしが首をはねたヨハネだ。彼は死んだ者たちの中から生き返ったのだ」。 Mark 6:17 というのは,ヘロデ自身が,自分の兄弟フィリポの妻ヘロディアのために,人を遣わして,ヨハネを逮捕し,ろうやにつないだからであった。それは,彼が彼女と結婚していたからである。 Mark 6:18 ヨハネはヘロデに,「あなたが自分の兄弟の妻を有しているのは,許されることではない」と言ったのである。 Mark 6:19 ヘロディアは彼に敵対し,彼を殺すことを望んだが,できなかった。 Mark 6:20 それはヘロデが,ヨハネが正しい聖なる人であることを知っていて,彼を恐れ,保護したからである。彼の言うことに耳を傾ける時,ヘロデは多くの事をしていたが,喜んで彼の言うことに耳を傾けていた。
Mark 6:21 すると,都合の良い日がやって来た。ヘロデが自分の誕生日に,自分の高官たちや将校たちやガリラヤの主立った人たちのために夕食を用意した。 Mark 6:22 ほかでもないヘロディアの娘が入って来て,踊り,ヘロデや彼と共に座っていた者たちを喜ばせた。王は乙女に言った,「何でも欲しいものを求めなさい。わたしはそれをお前に与えよう」。 Mark 6:23 彼女に誓った,「お前がわたしに求めるものは何でも,わたしの王国の半分まででも,わたしはお前に与えよう」。
Mark 6:24 彼女は出て行って,自分の母に言った,「わたしは何を求めましょうか」。
母は言った,「バプテスマを施す人ヨハネの首を」。
Mark 6:25 彼女はすぐに急いで王のところに入って,こう求めた。「今すぐに,バプテスマを施す人ヨハネの首を大皿に載せて,わたしに与えてくださいますように」。
Mark 6:26 王は非常に残念に思ったが,自分の誓い,また祝宴の招待客のゆえに,彼女の言うことを拒もうとは思わなかった。 Mark 6:27 すぐに王は自分の護衛兵を遣わして,ヨハネの首を持って来るように命じた。そこで護衛兵は出て行き,ろうやで彼の首をはねた。 Mark 6:28 そして,大皿に彼の首を載せて持って来て,それを乙女に与え,乙女はそれを自分の母に渡した。
Mark 6:29 ヨハネの弟子たちはこのことを聞くと,やって来て彼の死体を引き取り,それを墓の中に横たえた。
Mark 6:30 使徒たちはイエスのもとに集まり合った。そして彼に,自分たちが行ない,また教えた事柄をすべて告げた。 Mark 6:31 彼は彼らに言った,「あなた方だけで寂しい場所に行き,しばらく休息しなさい」 。というのは,出入りする者が多く,食事をとる暇もなかったからである。 Mark 6:32 彼らは舟に乗って,自分たちだけで寂しい場所へ出発した。 Mark 6:33 人々は彼らが去って行くのを目にし,大勢の人がそれと分かったので,すべての町からそこへ徒歩で駆けつけた。人々は彼らより先に着き,いっせいに彼のもとに来た。 Mark 6:34 イエスは出て来て,大群衆を目にし,彼らが羊飼いのいない羊のようだったので,彼らに対して哀れみを抱き,彼らに多くの事柄を教え始めた。 Mark 6:35 時刻も遅くなった時,弟子たちが彼のもとに来て,こう言った。「ここは寂しい場所ですし,時刻も遅くなっています。 Mark 6:36 彼らを去らせて,彼らが周りの里や村々に入り,自分たちでパンを買うようにさせてください。彼らには食べ物が何もないからです」。
Mark 6:37 しかし彼は彼らに答えた,「あなた方が彼らに食べ物を与えなさい」
彼らは彼に尋ねた,「わたしたちが出かけて行って,二百デナリ分のパンを買い,彼らに食べ物を与えるのですか」。
Mark 6:38 彼は彼らに言った,「あなた方はパンを幾つ持っているのか。行って見て来なさい」
彼らは確かめて来て,言った,「五つです。それに魚が二匹」。
Mark 6:39 彼は彼らに,みんなを組にして青草の上に座らせるように命じた。 Mark 6:40 人々は,五十人ずつ,また百人ずつまとまって座った。 Mark 6:41 彼は五つのパンと二匹の魚を取り,天を見上げ,祝福してからパンを裂き,弟子たちに渡して人々の前に置かせた。また,二匹の魚をみんなの間で分けた。 Mark 6:42 みんなは食べて満ち足りた。 Mark 6:43 彼らはパン切れや魚を,十二のかごいっぱいに拾い集めた。 Mark 6:44 パンを食べたのは五千人の男たちであった。
Mark 6:45 すぐに彼は,弟子たちを舟に乗り込ませ,向こう岸のベツサイダへ先に行かせ,その間に自分は群衆を去らせた。 Mark 6:46 人々に別れを告げてから,祈るために山へ上った。
Mark 6:47 夕方になった時,舟は海の真ん中にあり,彼はひとりで陸にいた。 Mark 6:48 風が彼らに逆らっているために,彼らがこぎ悩んでいるのを見ると,夜の第四時ごろ,海の上を歩いて彼らに近づき,そのそばを通り過ぎようとした。 Mark 6:49 しかし彼らは,彼が海の上を歩いているのを見て,幽霊だと思い,叫び声を上げた。 Mark 6:50 というのは,みんなが彼を目にして,動転したからである。しかし,彼はすぐに彼らに語りかけ,彼らに言った,「しっかりしなさい。これはわたしだ! 恐れることはない」。 Mark 6:51 彼が彼らと共に舟に乗り込むと,風はやんだ。それで彼らは互いに非常に驚き,また不思議に思った。 Mark 6:52 それは,彼らがパンの出来事について理解しておらず,その心がかたくなだったからである。
Mark 6:53 彼らは海を渡り,ゲネサレトの地に着き,岸に舟をつないだ。 Mark 6:54 彼らが舟から出て来ると,すぐに人々は彼だと分かった。 Mark 6:55 そして人々は,その地方全体を走り回り,病気の人たちを寝台に載せて,彼がいると聞いた所へ運び始めた。 Mark 6:56 村でも町でも里でも,彼が入った所ではどこでも,人々は病気の者たちを市場に横たえ,その者たちにその衣の房べりにでも触らせてもらえるよう,彼に懇願した。そして彼に触った者は皆良くなった。
Mark 7:0 Mark 7:1 それから,ファリサイ人たちと数人の律法学者たちが,エルサレムからやって来て,彼のもとに集まった。 Mark 7:2 さて,彼らは,弟子たちのうちのある者たちが,汚れた手,つまり洗っていない手でパンを食べているのを目にして,非難した。 Mark 7:3 (というのは,ファリサイ人たち,つまりすべてのユダヤ人たちは,年長者たちの伝統を守って,手と腕を洗わなければ食事をしないからである。 Mark 7:4 彼らは市場から帰って来ると,水を浴びなければ食事をしない。そして,彼らが受け継いでいる事柄は,杯や水差しや銅器や寝いすを洗うことなど,他にもたくさんある。) Mark 7:5 ファリサイ人たちと律法学者たちは彼に尋ねた,「あなたの弟子たちが年長者たちの伝統によって歩まず,洗っていない手でパンを食べるのはなぜか」。
Mark 7:6 彼は彼らに答えた,「イザヤは,あなた方偽善者たちについてみごとに預言した。こう書いてあるとおりだ。
『この民は唇でわたしを敬うが,その心はわたしから遠く離れている。 Mark 7:7 彼らがわたしを崇拝するのは無駄なことだ,人間のおきてを教理として教えているからだ』。
Mark 7:8 「あなた方は神のおきてを無視して,人間の伝統を堅く守っている。水差しや杯を洗うことなど,そういった事柄を他にもたくさん行なっているのだ」 。 Mark 7:9 彼らに言った,「あなた方は,自分たちの伝統を保とうとして,実にうまく神のおきてを拒んでいる。 Mark 7:10 というのは,モーセは,『あなたの父と母を敬え』,そして,『父や母を悪く言う者は死刑に処せられるべきだ』と言ったからだ。 Mark 7:11 ところがあなた方は,『もし人が自分の父や母に,「あなたがわたしから益をお受けになるものがあるとしても,それはコルバン,言いかえれば神への供え物です」と告げるなら』,と言っている。 Mark 7:12 こうして,あなた方はもはや,その者が自分の父や母に何もしないことを容認し, Mark 7:13 あなた方が伝えてきた自分たちの伝統によって神の言葉を無効にしている。あなた方はこうした事柄を数多く行なっている」
Mark 7:14 群衆を皆,自分のところに呼び寄せて,彼らに言った,「あなた方は皆,わたしの言うことを聞いて,理解しなさい。 Mark 7:15 人の外から入って来るもので,彼を汚すことができるものは何もないが,人から出て行くものが人を汚すのだ。 Mark 7:16 聞く耳のある者は聞きなさい!」
Mark 7:17 彼が群衆から離れて家の中に入ると,弟子たちはこのたとえについて彼に尋ねた。 Mark 7:18 彼は彼らに言った,「あなた方も,これほどまでに理解力がないのか。すべて外から人の中に入るものは,彼を汚すことができないということが分からないのか。 Mark 7:19 それは彼の心の中に入るのではなく,腹の中に入って,便所に入り,こうして,すべての食物は清くされるからだ」 。 Mark 7:20 彼は言った,「人から出て行くもの,それがその人を汚す。 Mark 7:21 というのは,内部から,人の心の中から,これらのものが出て行くからだ。すなわち,悪い考え,姦淫,淫行,殺人,盗み, Mark 7:22 強欲,邪悪,欺き,みだらな欲望,よこしまな目,冒とく,うぬぼれ,愚かさだ。 Mark 7:23 これらの悪い事柄はすべて内部から出て来て,その人を汚すのだ」
Mark 7:24 そこから立って,テュロスとシドンの地方へ去って行った。ある家の中に入り,だれにもそのことを知られないようにと望んだが,気が付かれないでいることはできなかった。 Mark 7:25 それどころか,汚れた霊に付かれた小さな娘を持つある女が,彼のことを聞きつけ,やって来てその足もとにひれ伏した。 Mark 7:26 ところで,この女はギリシャ人で,人種ではシリア・フェニキア人であった。彼女は自分の娘から悪霊を追い出してくれるように懇願した。 Mark 7:27 しかしイエスは彼女に言った,「まず子供たちを満ち足らせなさい。子供たちのパンを取って犬たちに投げ与えるのはふさわしくないからだ」
Mark 7:28 しかし彼女は彼に答えた,「そうです,主よ。でも,食卓の下の犬たちでさえ,子供たちのパンくずを食べるのです」。
Mark 7:29 彼は彼女に言った,「その言葉のゆえに,帰りなさい。悪霊はあなたの娘から出て行った」
Mark 7:30 彼女は自分の家に去って行き,子供が寝台の上で横になっており,悪霊が出て行ってしまっているのを見た。
Mark 7:31 再び,彼はテュロスとシドンの地方から出発し,デカポリス地域の真ん中を通って,ガリラヤの海に来た。 Mark 7:32 人々は,耳が聞こえず言語障害のある人を彼のもとに連れて来た。人々は,その人の上に手を置いてくれるようにと懇願した。 Mark 7:33 イエスは,彼を群衆から離して一人にし,その両耳に自分の指を差し入れ,つばをかけて彼の舌に触った。 Mark 7:34 天を見上げて嘆息し,彼に向かって,「エッファタ!」 ,つまり「開かれよ!」 と言った。 Mark 7:35 すぐにその両耳は開かれ,舌のもつれも解かれて,彼ははっきりと話し出した。 Mark 7:36 イエスは,だれにも知らせないようにと人々に命じたが,命じれば命じるほど,彼らはいっそう広くそのことを宣明した。 Mark 7:37 彼らはすっかり驚いて言った,「彼はすべての事を上手に行なった。耳の聞こえない人を聞こえるように,また口のきけない人を話せるようにさえするのだ!」
Mark 8:0 Mark 8:1 そのころ,非常に大群衆が集まっていて,食べる物を何も持っていなかった時,イエスは弟子たちを自分のところに呼び寄せて,彼らに言った, Mark 8:2 「わたしは群衆に対して哀れみを抱く。彼らはもう三日もわたしと共にいるのに,食べる物を何も持っていないからだ。 Mark 8:3 もし彼らを空腹のまま家に帰らせたら,途中で気を失ってしまうだろう。彼らの中には遠くから来ている人もいるからだ」
Mark 8:4 弟子たちは彼に答えた,「こんな寂しい場所で,どこからパンを手に入れて,これらの人々を満足させることができるでしょうか」。
Mark 8:5 彼は彼らに言った,「あなた方はパンを幾つ持っているのか」
彼らは言った,「七つです」。
Mark 8:6 彼は地面に座るよう群衆に命じ,七つのパンを取った。感謝をささげてからそれを裂き,人々に配らせるためにそれを弟子たちに与え,弟子たちが群衆に配った。 Mark 8:7 彼らは小さな魚を幾らか持っていた。彼はそれを祝福してから,それをも配るようにと言った。 Mark 8:8 人々は食べて満ち足りた。彼らは余ったパン切れを七つのかごに拾い集めた。 Mark 8:9 食べたのはおよそ四千人の者たちであった。それから彼は人々を去らせた。
Mark 8:10 すぐに彼は弟子たちと共に舟に乗り,ダルマヌタ地域に入った。 Mark 8:11 ファリサイ人たちが出て来て,彼に質問し始めた。天からのしるしを彼に求め,彼を試そうとしてであった。 Mark 8:12 彼は自分の霊において深く嘆息して言った,「どうしてこの世代はしるしを求めるのか。本当にはっきりとあなた方に告げるが,この世代には何のしるしも与えられないだろう」
Mark 8:13 彼らを残して,再び舟に乗り,向こう岸へ去って行った。 Mark 8:14 弟子たちはパンを持って来るのを忘れたので,一つのパンのほかには,何も舟の中に持っていなかった。 Mark 8:15 彼は彼らに命じて言った,「このことを思いに留めなさい。すなわち,ファリサイ人たちのパン種とヘロデのパン種とに用心しなさい」
Mark 8:16 彼らは互いに論じ合って言った,「これは,我々がパンを持っていないからだ」。
Mark 8:17 それに気づいて,イエスは彼らに言った,「なぜあなた方はパンを持っていないことについて論じているのか。まだ気づかず,理解しないのか。あなた方の心はなおもかたくななのか。 Mark 8:18 目があっても見えないのか。耳があっても聞こえないのか。あなた方は覚えていないのか。 Mark 8:19 わたしが五千人の間で五つのパンを裂いた時,あなた方はパン切れでいっぱいになったかごを幾つ集めたか」
彼らは彼に告げた,「十二です」。
Mark 8:20 「七つのパンを四千人に与えた時,あなた方はパン切れでいっぱいになったかごを幾つ集めたか」
彼らは彼に告げた,「七つです」。
Mark 8:21 彼は彼らに尋ねた,「あなた方はまだ理解しないのか」
Mark 8:22 彼はベツサイダに着いた。人々が盲人を彼のもとに連れて来て,触ってくれるよう懇願した。 Mark 8:23 盲人の手を取り,村の外に連れ出した。彼の両目につばをかけ,両手を彼の上に置いて,何か見えるかと尋ねた。
Mark 8:24 目を上げて言った,「人が見えます。木のようなものが歩き回っているのが見えるからです」。
Mark 8:25 すると,両手を再び彼の両目に当てた。彼は一心に見つめているうちに,回復させられ,すべてのものがはっきりと見えるようになった。 Mark 8:26 彼を家に去らせてこう言った。「村に入ったり,村のだれかに知らせたりしてはいけない」
Mark 8:27 イエスは弟子たちと共に,カエサレア・フィリピの村々に出発した。その途中で,彼は弟子たちに尋ねた,「人々はわたしをだれだと言っているか」
Mark 8:28 彼らは彼に告げた,「バプテスマを施す人ヨハネ,またほかの者たちはエリヤと言い,さらにほかの者たちは預言者たちの一人だと言っています」。
Mark 8:29 彼は彼らに言った,「だが,あなた方はわたしをだれだと言うのか」
ペトロが答えた,「あなたはキリストです」。
Mark 8:30 彼は,自分のことをだれにも告げないようにと彼らに命じた。 Mark 8:31 そして,人の子が多くの苦しみを受け,長老たちや祭司長たちや律法学者たちから拒まれ,かつ殺され,そして三日後に生き返らなければならないことを,彼らに教え始めた。 Mark 8:32 彼は彼らに包み隠さずに語った。ペトロは彼をわきに連れて行ってしかり始めた。 Mark 8:33 しかし,彼は背を向け,弟子たちを見ながら,ペトロをしかって言った,「サタンよ,わたしの後ろに下がれ! あなたは神の物事ではなく,人間の物事を考えているからだ」
Mark 8:34 群衆を弟子たちと共に自分のところに呼び寄せて,彼らに言った,「だれでもわたしに付いて来たいと思うなら,その人は自分を否定し,自分の十字架を取り上げて,わたしに従いなさい。 Mark 8:35 自分の命を救おうと思う者はそれを失うことになり,わたしと福音のために自分の命を失う者はそれを救うことになるからだ。 Mark 8:36 人が全世界を手に入れても,それによって自分の命を失うなら,何の益になるだろうか。 Mark 8:37 人は自分の命と引き換えにいったい何を支払うというのか。 Mark 8:38 この邪悪な姦淫の世代にあってわたしとわたしの言葉を恥じる者は,人の子もまた,自分の父の栄光のうちに聖なるみ使いたちと共に来るとき,その者を恥じるだろう」
Mark 9:0 Mark 9:1 彼らに言った,「本当にはっきりとあなた方に告げる。ここに立っている者の中には,神の王国が力をもって来るのを見るまでは決して死を味わわない者たちがいる」
Mark 9:2 六日後,イエスはペトロとヤコブとヨハネを伴い,高い山に彼らだけを連れ上った。すると,彼らの目の前で彼の姿が変えられた。 Mark 9:3 その衣は雪のように真っ白に光り輝き,地上のどんな洗濯人にもそこまで白くすることはできないほどになった。 Mark 9:4 エリヤとモーセが彼らに現われて,イエスと語り合っていた。
Mark 9:5 ペトロがイエスに答えた,「ラビ,わたしたちがここにいるのは良いことです。幕屋を三つ作りましょう。一つはあなたのため,一つはモーセのため,一つはエリヤのためです」。 Mark 9:6 実のところ,彼は何と言っていいか分からなかったのである。彼らは非常に恐れていたからである。
Mark 9:7 雲が起こって彼らを影で覆い,その雲から声がした,「これはわたしの愛する子である。この者に聞き従いなさい」。
Mark 9:8 彼らが不意にあたりを見回すと,ただイエスのほかは,もうだれも自分たちのもとには見えなかった。
Mark 9:9 彼らが山を下りて行く時,彼は彼らに,人の子が死んだ者たちの中から生き返った後になるまでは,目にした事柄をだれにも告げないようにと命じた。 Mark 9:10 彼らはこの言葉を心に留め,「死んだ者たちの中から生き返る」とはどういう意味かと論じ合った。
Mark 9:11 彼らは彼に尋ねて言った,「なぜ律法学者たちは,まずエリヤが来なければならないと言うのですか」。
Mark 9:12 彼は彼らに言った,「確かにまずエリヤが来て,すべてのものを回復する。それなら,人の子について,彼が多くの苦しみを受け,さげすまれると書いてあるのはどうしてか。 Mark 9:13 だが,あなた方に告げる。エリヤはすでに来たのだ。そして人々は,彼について書いてあるとおりに,したい放題のことを彼に対しても行なったのだ」
Mark 9:14 彼が弟子たちのところに来ると,大群衆が彼らの周りにおり,律法学者たちが彼らと論じ合っているのを目にした。 Mark 9:15 すぐに,群衆は皆,彼を見て大いに驚き,走り寄って来て彼にあいさつしようとした。 Mark 9:16 彼は律法学者たちに尋ねた,「彼らに何を尋ねているのか」
Mark 9:17 群衆の一人が答えた,「先生,わたしは自分の息子をあなたのもとに連れて来ました。息子は口のきけない霊に取りつかれています。 Mark 9:18 そして,それが彼に取りつくと,どこででも彼を引き倒すので,彼は口から泡を吹き,歯ぎしりして,弱り衰えてしまいます。わたしは,あなたの弟子たちにそれを追い出してくれるよう願いましたが,彼らにはできませんでした」。
Mark 9:19 彼は彼らに言った,「不信仰な世代よ,いつまでわたしはあなた方と一緒にいようか。いつまであなた方のことを我慢しようか。その子をわたしのところに連れて来なさい」
Mark 9:20 人々はその子を彼のもとに連れて来た。そして彼を見ると,すぐにその霊はその子をけいれんさせたので,その子は地面に倒れ,泡を吹きながら転げ回った。
Mark 9:21 彼はその子の父親に尋ねた,「この子にこうした事が起こってから,もうどれくらいになるのか」
父親は言った,「幼い時からです。 Mark 9:22 この霊は息子を滅ぼそうとして,何度も火や水の中に投げ入れました。ですが,もし何かおできになるなら,わたしたちを哀れんでお助けください」。
Mark 9:23 イエスは彼に言った,「あなたが信じることができるなら,信じる者にはすべての事が起こり得るのだ」
Mark 9:24 すぐに,その子の父親は涙ながらに叫んで言った,「信じます。わたしの不信仰をお助けください!」
Mark 9:25 イエスは,群衆が一緒になって走り寄って来るのを見ると,汚れた霊をしかりつけて,彼に言った,「口がきけず,耳の聞こえない霊よ,あなたに命じる。その子から出て来て,二度と入るな!」
Mark 9:26 その霊は,大声を上げ,ひどくけいれんさせながら,彼から出て来た。その少年は死んだ者のようになったので,大半の人たちは,「彼は死んだ」と言った。 Mark 9:27 しかし,イエスが彼の手を取って起こすと,彼は起き上がった。
Mark 9:28 彼が家に入った時,弟子たちはひそかに彼に尋ねた,「なぜわたしたちはあの霊を追い出せなかったのでしょうか」。 Mark 9:29 彼は彼らに言った,「この種のものは,祈りと断食によらなければ,どうしても出て行かせることはできない」
Mark 9:30 彼らはそこから出て,ガリラヤを通り抜けた。彼はそのことをだれにも知られることを望まなかった。 Mark 9:31 というのは,弟子たちを教えて,彼らに言っていたからである,「人の子は人々の手に引き渡され,人々は彼を殺すだろう。そして彼は殺されて三日後に生き返るだろう」
Mark 9:32 しかし彼らはこの言葉を理解せず,また彼に尋ねるのを恐れていた。
Mark 9:33 彼はカペルナウムにやって来た。家の中にいた時,彼らに尋ねた,「あなた方は途中で何を議論していたのか」
Mark 9:34 しかし彼らは黙っていた。途中で,だれが一番偉いかについて互いに論争していたからである。
Mark 9:35 彼は座って十二人を呼び,彼らに言った,「第一でありたいと思うなら,その人はみんなの最後となり,みんなの召使いとなりなさい」 。 Mark 9:36 幼子を連れて来て,彼らの真ん中に座らせ,また両腕に抱きかかえながら,彼らに言った, Mark 9:37 「わたしの名のゆえにこのような幼子の一人を受け入れる者は,わたしを受け入れるのだ。そして,わたしを受け入れる者は,わたしではなく,わたしを遣わした方を受け入れるのだ」
Mark 9:38 ヨハネが彼に言った,「先生,わたしたちは,わたしたちに従っていない人があなたの名において悪霊たちを追い出しているのを見ました。それでわたしたちは,彼がわたしたちに従っていないので,彼をとどめました」。
Mark 9:39 しかしイエスは言った,「彼をとどめてはいけない。わたしの名において強力な業を行なおうとする者で,すぐさまわたしを悪く言うことができる者はいないからだ。 Mark 9:40 わたしたちに逆らわない者は,わたしたちの味方なのだ。 Mark 9:41 あなた方がキリストのものであるという理由で,わたしの名のゆえにあなた方に一杯の水を与える者については,本当にはっきりとあなた方に告げるが,彼はその報いを決して失わないだろう。 Mark 9:42 わたしを信じるこれら小さな者たちの一人をつまずかせる者は,首に臼石をかけられて海に投げ込まれる方が,その者にとっては良いだろう。 Mark 9:43 もしあなたの片手があなたをつまずかせるなら,それを切り取りなさい。両手をつけてゲヘナに,つまり消すことのできない火の中に入るよりは,不具になって命に入るほうが,あなたにとっては良いのだ。 Mark 9:44 『そこでは,彼らのうじは死なず,火は消されない』。 Mark 9:45 もしあなたの片足があなたをつまずかせるなら,それを切り取りなさい。両足をつけてゲヘナ,つまり決して消されることのない火の中に投げ込まれるよりは,足の不自由なまま命に入るほうが,あなたにとっては良いのだ。 Mark 9:46 『そこでは,彼らのうじは死なず,火は消されない』。 Mark 9:47 もしあなたの片目があなたをつまずかせるなら,それを捨て去りなさい。両目を付けてゲヘナの火に投げ込まれるよりは,片目で神の王国に入るほうが,あなたにとっては良いのだ。 Mark 9:48 『そこでは,彼らのうじは死なず,火は消されない』。 Mark 9:49 というのは,人はみな火で塩づけられ,犠牲はすべて塩で味を付けられることになるからだ。 Mark 9:50 塩は良いものだ。だが塩が塩気を失うなら,あなた方は何によって塩に味を付けるのか。自分の内に塩を持ち,互いに平和に過ごしなさい」
Mark 10:0 Mark 10:1 彼はそこから立って,ユダヤ地方とヨルダンの向こうに入った。群衆がまた彼のもとに集まって来た。彼は再びいつものように彼らを教えていた。 Mark 10:2 ファリサイ人たちが彼を試そうとしてやって来て,彼に尋ねた,「男が自分の妻を離縁することは許されているのですか」。
Mark 10:3 彼は答えた,「モーセはあなた方に何と命じたか」
Mark 10:4 彼らは言った,「モーセは,離縁状を書いて妻を離縁することを許しました」。
Mark 10:5 しかしイエスは彼らに言った,「彼は,あなた方の心のかたくなさのゆえに,あなた方にこのおきてを書いたのだ。 Mark 10:6 だが,創造のはじめから,『神は彼らを男性と女性に造られた。 Mark 10:7 このために,男は自分の父と母を離れて,自分の妻と結び付く。 Mark 10:8 こうして二人は一体となる』。それで,彼らはもはや二つではなく,一体なのだ。 Mark 10:9 だから,神が結ばれたものを,人が離してはいけない」
Mark 10:10 家の中で,弟子たちはこの問題について再び彼に尋ねた。 Mark 10:11 彼は彼らに言った,「自分の妻を離縁して別の女と結婚する者は,彼女に対して姦淫を犯すのだ。 Mark 10:12 もし女が自分の夫を離縁して別の男と結婚するなら,彼女は姦淫を犯すのだ」
Mark 10:13 彼に触ってもらおうとして,人々は幼子たちを彼のもとに連れて来ていたが,弟子たちは,幼子たちを連れて来ていた者たちをしかりつけた。 Mark 10:14 しかしイエスは,それを見て憤りに動かされ,彼らに言った,「幼子たちがわたしのところに来るままにしておきなさい! 彼らをとどめてはいけない。神の王国はこのような者たちのものだからだ。 Mark 10:15 本当にはっきりとあなた方に告げる。神の王国を幼子のように受け入れない者は,決してその中に入ることはない」 。 Mark 10:16 彼らを両腕に抱き寄せ,その上に両手を置いて彼らを祝福した。
Mark 10:17 彼が道に出て行くと,ある人が走り寄って来てその前にひざまずき,彼に尋ねた,「善い先生,永遠の命を受け継ぐためには何をしたらよいでしょうか」。
Mark 10:18 イエスは彼に言った,「なぜ,わたしのことを善いと呼ぶのか。神おひとりのほかに善い者はいない。 Mark 10:19 あなたはおきてを知っている。『殺してはいけない』,『姦淫を犯してはいけない』,『盗んではいけない』,『偽りの証言をしてはいけない』,『だまし取ってはいけない』,『あなたの父と母を敬いなさい』」
Mark 10:20 彼はイエスに言った,「先生,わたしはそうした事すべてを幼いころから守ってきました」。
Mark 10:21 イエスは彼を見つめながら,彼を愛した。そして彼に言った,「あなたには一つのことが足りない。自分の持ち物をみな売って,貧しい人々に与えなさい。そうすれば,天に宝を持つことになる。それから来て,十字架を取り上げてわたしに従いなさい」
Mark 10:22 しかし,彼はこの言葉で顔を曇らせ,悲嘆にくれながら去って行った。多くの資産を持っていたからである。 Mark 10:23 イエスはあたりを見回して,弟子たちに言った,「富のある者たちが神の王国に入るのは,何と難しいことか!」
Mark 10:24 弟子たちは彼の言葉に驚いた。しかしイエスは再び答えた, 「子供たちよ,富を信頼する者たちが神の王国に入るのは何と難しいことか! Mark 10:25 富んだ人が神の王国に入るよりは,ラクダが針の穴を通り抜ける方が易しいのだ」
Mark 10:26 彼らは非常に驚いて,彼に言った,「それでは,だれが救いを得られるのですか」。
Mark 10:27 イエスは彼らを見つめて言った,「人には不可能だが,神にはそうではない。神にはすべての事が可能だからだ」
Mark 10:28 ペトロが彼に言い始めた,「ご覧ください,わたしたちは何もかも後にして,あなたに従ってきました」。
Mark 10:29 イエスは言った,「本当にはっきりとあなた方に告げる。わたしのため,また福音のために,家,兄弟たち,姉妹たち,父,母,妻,子供たち,あるいは畑を後にする者で, Mark 10:30 今この時に百倍の家々,兄弟たち,姉妹たち,母たち,子供たち,そして畑を,迫害と共に受け,また来たるべき時代で永遠の命を受けない者はいない。 Mark 10:31 だが,多くの最初の者が最後に,最後の者が最初になるだろう」
Mark 10:32 彼らはエルサレムに上って行く途上にあった。そして,イエスが彼らの前を進んで行くので,彼らは驚き,従う者たちは恐れた。彼は再び十二人をわきに連れて行き,自分に起ころうとしている事柄を彼らに告げ始めた。 Mark 10:33 「見よ,わたしたちはエルサレムに上って行く。人の子は祭司長たちや律法学者たちに引き渡される。彼らは彼を死に定めて異邦人たちに引き渡すだろう。 Mark 10:34 彼らは彼をあざけり,つばをかけ,むち打ち,殺すだろう。三日目に彼は生き返る」
Mark 10:35 ゼベダイの子らのヤコブとヨハネが彼のそばに来て言った,「先生,わたしたちがお願いすることを何でもしていただきたいのですが」。
Mark 10:36 彼は彼らに言った,「何をして欲しいのか」
Mark 10:37 彼らは彼に言った,「あなたの栄光の中で,わたしたちが,一人はあなたの右に,一人はあなたの左に座ることをお許しください」。
Mark 10:38 しかしイエスは彼らに言った,「あなた方は自分が何を求めているかを知っていない。あなた方は,わたしの飲む杯を飲み,わたしの受けているバプテスマを受けることができるか」
Mark 10:39 彼らは彼に言った,「できます」。
イエスは彼らに言った,「確かに,あなた方はわたしの飲む杯を飲み,わたしの受けているバプテスマを受けるだろう。 Mark 10:40 だが,わたしの右や左に座ることは,わたしが与えるものではなく,それが備えられている人たちのためのものだ」
Mark 10:41 ほかの十人はこれを聞き,ヤコブとヨハネに対して憤慨し始めた。
Mark 10:42 イエスは彼らを呼び寄せてこう言った。「あなた方が知っているとおり,異邦人たちを治める支配者と見なされている者たちは,人々に対して威張り散らし,偉い人たちは人々の上に権力を行使している。 Mark 10:43 だが,あなた方の間ではそうであってはならない。むしろ,あなた方の間で偉くなりたいと思う者は,あなた方の召使いでなければいけない。 Mark 10:44 だれでもあなた方の間で第一になりたい者は,みんなの奴隷でなければいけない。 Mark 10:45 というのは,人の子も,仕えてもらうためではなく,むしろ仕え,自分の命を多くの人の身代金として与えるために来たからだ」
Mark 10:46 彼らはエリコにやって来た。彼が弟子たちや大群衆と共にエリコから出て来ると,ティマイオスの子で,バルティマイオスという目の見えないこじきが,道ばたに座っていた。 Mark 10:47 彼は,それがナザレ人イエスだと聞くと,「ダビデの子イエスよ,わたしをあわれんでください!」と大声で叫び出した。 Mark 10:48 大勢の人が,静かにするようしかりつけたが,彼はますます,「ダビデの子イエスよ,わたしをあわれんでください!」と叫び続けた。
Mark 10:49 イエスは立ち止まって,「彼を呼びなさい」 と言った。
人々は盲人を呼んで,彼に言った,「元気を出せ! 立ち上がれ。あなたをお呼びだ!」
Mark 10:50 彼は外衣を投げ捨てて躍り上がり,イエスのもとにやって来た。
Mark 10:51 イエスは彼に尋ねた,「何をして欲しいのか」
盲人はイエスに言った,「ラボニ,また見えるようにしてください」。
Mark 10:52 イエスは彼に言った,「行きなさい。あなたの信仰があなたをよくならせた」 。すぐに彼は見えるようになり,道すがらイエスに従った。
Mark 11:0 Mark 11:1 彼らがエルサレムに,つまりオリーブ山のふもとのベツファゲとベタニアに近づいた時,彼は弟子たちのうちの二人を遣わして Mark 11:2 彼らに言った,「向こうの村に行きなさい。そこに入るとすぐに,だれも乗ったことのない子ロバがつないであるのが見つかるだろう。それを解いて,連れて来なさい。 Mark 11:3 もしだれかが,『なぜこんなことをしているのか』と尋ねるなら,『主がこれを必要としているのです。そして,すぐにここに送り返されるでしょう』と言いなさい」。
Mark 11:4 彼らは出て行き,表通りに面した外の戸口に子ロバがつないであるのを見つけて,それを解いた。 Mark 11:5 そこに立っていた者たちのうちの数人が彼らに尋ねた,「その子ロバを解いたりして,何をしているのだ」。 Mark 11:6 イエスの言ったとおりに言うと,その者たちは行かせてくれた。
Mark 11:7 その子ロバをイエスのもとに連れて来て,その上に自分たちの外衣を投げかけた。するとイエスはそれに乗った。 Mark 11:8 大勢の人が自分たちの外衣を道に敷き,またほかの者たちは木から枝を切り落として来て街道に敷いていた。 Mark 11:9 先に行く者も付いて行く者も,叫んで言った,「ホサンナ! 主の名において来る者は幸いだ! Mark 11:10 主の名において来ようとしている我らの父ダビデの王国は幸いだ! いと高き所にホサンナ!」
Mark 11:11 イエスはエルサレムで神殿に入った。あらゆるものを見回してから,もう夕方になっていたので,十二人と共にベタニアに出て行った。
Mark 11:12 その次の日,彼らがベタニアから出て来た時,彼は空腹を感じた。 Mark 11:13 はるか遠くでイチジクの木が葉をつけているのを見て,そこに何か見つかるかも知れないと見に行った。そこに来てみると,葉のほかには何も見つからなかった。イチジクの季節ではなかったからである。 Mark 11:14 イエスはその木に告げた,「もうだれも,二度とお前から実を食べることがないように!」  そして弟子たちはそれを聞いていた。
Mark 11:15 彼らはエルサレムにやって来た。そしてイエスは神殿に入り,神殿で売り買いしていた者たちを追い出し始め,両替人たちの台とハトを売る者たちの腰掛けをひっくり返した。 Mark 11:16 だれにも神殿を通って器物を運ぶことを許さなかった。 Mark 11:17 彼は教えて,彼らに言った,「『わたしの家はあらゆる民族のための祈りの家と呼ばれるだろう』と書かれていないだろうか。それなのにあなた方は,それを強盗たちの巣にしてしまった!」
Mark 11:18 祭司長たちと律法学者たちはこれを聞いて,どうやって彼を滅ぼそうかと探り求めた。というのは,群衆がみなその教えに驚いていたので,彼らは彼を恐れていたからである。
Mark 11:19 夕方になった時,彼は都から出て行った。 Mark 11:20 朝早く,通りすがりに,彼らはあのイチジクの木が根もとから枯れているのを目にした。 Mark 11:21 ペトロは思い出して彼に言った,「ラビ,ご覧ください! あなたがのろわれたあのイチジクの木は枯れてしまいました」。
Mark 11:22 イエスは彼らに答えた,「神に信仰を持ちなさい。 Mark 11:23 本当にはっきりとあなた方に告げるが,だれでもこの山に『持ち上げられて海の中に投げ込まれるように』と言って,心の中で疑わず,自分の言っていることは起きるのだと信じる者は,自分の言っていることを得ることになるからだ。 Mark 11:24 だからあなた方に告げる。あなた方が祈りかつ求めるものは何でも,それを受けるのだと信じなさい。そうすればそれを得ることになる。 Mark 11:25 あなた方が立って祈る時に,だれかに対して恨み事があるなら,それを許しなさい。そうすれば,天におられるあなた方の父もあなた方の違反を許してくださるだろう。 Mark 11:26 だが,もし許さないなら,あなた方の天の父も,あなた方の違反を許してくださらないだろう」。
Mark 11:27 彼らは再びエルサレムにやって来た。そして彼が神殿の中を歩いていると,祭司長たちや律法学者たちや長老たちが彼のもとにやって来た。 Mark 11:28 そして彼らは彼にこう言い始めた。「あなたは何の権威によってこうした事をするのか。また,だれがこうした事をするその権威をあなたに与えたのか」。
Mark 11:29 イエスは彼らに言った,「あなた方に一つのことを尋ねよう。わたしに答えなさい,そうすれば,何の権威によってこうした事をするのかをあなた方に告げよう。 Mark 11:30 ヨハネのバプテスマは天からのものだったか,それとも人からのものだったか。わたしに答えなさい」
Mark 11:31 彼らは互いに論じ合って言った,「我々が『天から』と言えば,彼は『あなた方が彼を信じなかったのはなぜか』と言うだろう。 Mark 11:32 我々が『人から』と言えば」―彼らは民を恐れた。みんながヨハネは実際に預言者だったと考えていたからである。 Mark 11:33 彼らはイエスに答えた,「わたしたちは知らない」。
イエスは彼らに言った,「わたしも,何の権威によってこうした事をするのかをあなた方に告げない」
Mark 12:0 Mark 12:1 たとえで彼らに語り始めた。「ある人がブドウ園を造り,その周りに垣根を巡らし,ブドウ搾り場の穴を掘り,塔を建て,それを耕作人に貸して,外国に出かけた。 Mark 12:2 時が来ると,彼は召使いを耕作人のところに送って,耕作人からブドウ園の産物の分け前を得ようとした。 Mark 12:3 彼らはその召使いを捕まえて打ちたたき,何も持たせずに送り返した。 Mark 12:4 主人は再び別の召使いを彼らのところに送ったが,彼らはその召使いに石を投げつけ,頭に傷を負わせ,ひどい扱いをして送り返した。 Mark 12:5 主人は再び別の者を遣わしたが,彼らはこれを殺した。そしてほかの大勢の者たちを,ある者は打ちたたき,ある者は殺した。 Mark 12:6 それで,彼にはもう一人,彼の愛する息子がいたが,『わたしの息子なら敬うだろう』と言って,最後にこの者を彼らに送った。 Mark 12:7 ところがそれらの耕作人たちは互いに言った,『これは相続人だ。さあ,こいつを殺そう。そうすれば,相続財産は我々の物になるのだ』。 Mark 12:8 彼らは彼を捕まえて殺し,そのブドウ園の外に投げ出した。 Mark 12:9 それで,ブドウ園の主人はどうするだろうか。やって来て耕作人たちを滅ぼし,そのブドウ園をほかの者たちに与えるだろう。 Mark 12:10 あなた方はこの聖句を読んだことがないのか。
『建てる者たちが退けた石,それが隅の親石となった。 Mark 12:11 これは主から生じたことで,わたしたちの目には不思議なことだ』」。 Mark 12:12 彼らは,このたとえが自分たちに当てつけて話されたことに気づいたので,彼を捕まえようとしたが,群衆を恐れた。彼らは彼を残して立ち去った。 Mark 12:13 彼らはファリサイ人たちとヘロデ党の者たちのある者たちを彼のもとに遣わした。言葉によって彼を陥れようとしてであった。 Mark 12:14 やって来て,彼に言った,「先生,わたしたちはあなたが正直な方で,だれにも妥協なさらないことを知っています。あなたはだれをもえこひいきすることなく,神の道を正しく教えられるからです。カエサルに税金を払うことは許されているでしょうか,許されていないでしょうか Mark 12:15 支払うべきでしょうか,支払ってはいけないでしょうか」。
しかし彼は,彼らの偽善を見抜いて,彼らに言った,「なぜあなた方はわたしを試すのか。一デナリオスを持って来て,それをわたしに見せなさい」
Mark 12:16 彼らはそれを持って来た。
彼は彼らに言った,「これはだれの像と銘なのか」
彼らは彼に言った,「カエサルのです」。
Mark 12:17 イエスは彼らに答えた,「カエサルのものはカエサルに,神のものは神に返しなさい」
彼らは彼のことで大いに驚嘆した。
Mark 12:18 サドカイ人たちが彼のもとにやって来た。復活などはないと言う者たちである。彼に尋ねて言った, Mark 12:19 「先生,モーセはわたしたちに,『もしある人の兄が死に,妻を後に残したが子供を残さなかった場合には,彼の弟がその妻をめとり,自分の兄のために子孫を起こさなければならない』と書きました。 Mark 12:20 七人の兄弟がいました。最初の者が妻をめとりましたが,子孫を残さずに死にました。 Mark 12:21 二番目の者が彼女をめとりましたが,子供を後に残さずに死にました。三番目の者も同様でした。 Mark 12:22 そして,七人が彼女をめとりましたが,子供を残しませんでした。みんなの最後にその女も死にました。 Mark 12:23 復活において,彼らが生き返る時,彼女は彼らのうちのだれの妻になるのですか。七人が彼女を妻としたのですから」。
Mark 12:24 イエスは彼らに答えた,「あなた方が思い違いをしているのは,聖書も神の力も知っていないからではないか。 Mark 12:25 死んだ者たちの中から生き返る時には,彼らはめとったり嫁いだりせず,天のみ使いたちのようになるからだ。 Mark 12:26 だが,死んだ者たちについて,つまり彼らが起こされることについて,あなた方はモーセの書の『茂み』のくだりで,神が彼にどのように語られたかを読んだことがないのか。『わたしはアブラハムの神,イサクの神,ヤコブの神だ』と言われたのを。 Mark 12:27 この方は死んだ者たちの神ではなく,生きている者たちの神なのだ。それで,あなた方は大変な思い違いをしている」
Mark 12:28 律法学者たちの一人が来て,一緒に彼らの議論を聞いていた。イエスが彼らにみごとに答えたのを知って,彼に尋ねた,「すべてのおきてのうち最大のものはどれですか」。
Mark 12:29 イエスは答えた,「最大のものはこれだ。『聞け,イスラエルよ,わたしたちの神なる主はただひとりの主である。 Mark 12:30 あなたは,心を尽くし,魂を尽くし,思いを尽くし,力を尽くして,あなたの神なる主を愛さなければならない』。これが第一のおきてだ。 Mark 12:31 第二はこのようなものだ。『あなたは隣人を自分自身のように愛さなければならない』。これらより大きなおきてはほかにない」
Mark 12:32 その律法学者は彼に言った,「先生,まさしく,主はただおひとりであってほかにはいないとは,よくぞ言われました。 Mark 12:33 そして,心を尽くし,理解力を尽くし,魂を尽くし,力を尽くして主を愛すること,また隣人を自分自身のように愛することは,すべての全焼のささげ物や犠牲よりも大切です」。
Mark 12:34 イエスは彼が賢く答えたのを見て,彼に言った,「あなたは神の王国から遠くない」
その後は,イエスにあえて何かを尋ねる者はいなかった。 Mark 12:35 神殿で教えていた際,イエスは答えた,「どうして律法学者たちはキリストがダビデの子だと言うのか。 Mark 12:36 ダビデ自身,聖霊によってこう言ったのだ。
『主はわたしの主に言われた,「わたしの右に座っていなさい,わたしがあなたの敵たちをあなたの足台とするまで」』。
Mark 12:37 それで,ダビデ自身が彼を主と呼んでいるのなら,どうして彼はダビデの子であり得るのか」
民衆は彼の言うことを喜んで聞いていた。 Mark 12:38 彼はその教えの中で彼らに言った,「律法学者たちに用心しなさい。彼らが好むのは,長い衣をまとって歩き回ることや,市場であいさつされること, Mark 12:39 そして会堂での上席や祝宴での上座だ。 Mark 12:40 彼らは,やもめたちの家々を食い物にし,見せかけのために長い祈りをする者たちだ。こうした者たちはは最も厳しい裁きを受けるだろう」
Mark 12:41 イエスは宝物庫に向かい合って座り,群衆がお金を投げ入れる様子を見ていた。大勢の富んだ人たちがたくさん投げ入れていた。 Mark 12:42 一人の貧しいやもめがやって来て,小さな真ちゅうの硬貨二つを投げ入れた。これは一クァドランス硬貨に相当する。 Mark 12:43 彼は弟子たちを自分のところに呼んで,彼らに言った,「本当にはっきりとあなた方に言う。この貧しいやもめは,宝物庫に差し出しているすべての人たちよりも多くを差し出したのだ。 Mark 12:44 彼らはみな自分のあり余る中から差し出したが,彼女は,その乏しい中から,彼女が生活のために持っていたものすべてを差し出したからだ」
Mark 13:0 Mark 13:1 彼が神殿から出て行く時,弟子たちの一人が彼に言った,「先生,ご覧ください,何という石,何という建物でしょう!」
Mark 13:2 イエスは彼に言った,「これらの大きな建物を見ているのか。ここで石が崩されずにほかの石の上に残ることはないだろう」
Mark 13:3 彼がオリーブ山で神殿に向かって座っていた時,ペトロ,ヤコブ,ヨハネ,アンデレが,ひそかに尋ねた, Mark 13:4 「わたしたちに教えてください。それらのことはいつ起きるのですか。それらのことがすべて果たされるというしるしは何ですか」。
Mark 13:5 イエスは答えて,彼らにこう告げ始めた。「だれもあなた方を惑わすことがないように注意しなさい。 Mark 13:6 多くの者がわたしの名においてやって来て,『わたしがその者だ!』と言って,多くの者を惑わすだろう。
Mark 13:7 「戦争のことや戦争のうわさを聞く時,動転してはいけない。これらのことは起こらなければならないが,終わりはまだなのだ。 Mark 13:8 民族は民族に,王国は王国に敵対して立ち上がるからだ。あちこちで地震がある。ききんと混乱がある。これらは産みの苦しみの始まりだ。 Mark 13:9 だが,自分自身を見張っていなさい。というのは,人々はあなた方を地方法廷に引き渡すだろう。あなた方は会堂で打ちたたかれる。あなた方はわたしのために支配者たちや王たちの前に立つことになる。彼らに対する証言のためだ。 Mark 13:10 福音がまず,あらゆる民族に宣教されなければならない。 Mark 13:11 人々があなた方を連行して引き渡す時,あらかじめ思い煩ったり,何を言おうかと前もって考えたりしてはいけない。むしろ,その時にあなた方に与えられることを言いなさい。語っているのはあなた方ではなく,聖霊なのだ。
Mark 13:12 「兄弟は兄弟を,父は子供を死に引き渡すだろう。子供たちは両親に敵対して立ち上がり,彼らを死に至らせるだろう。 Mark 13:13 あなた方はわたしの名のためにすべての者たちから憎まれるだろう。だが,最後まで耐え忍ぶ者,その者が救われるだろう。 Mark 13:14 だが,預言者ダニエルによって語られた,荒廃させる嫌悪すべきものが,立ってはならない所に立っているのを見るなら(読者は理解せよ),その時,ユダヤにいる者たちは山に逃げなさい。 Mark 13:15 また,屋上にいる者は降りてはならず,自分の家から何かを取り出そうとして中に入ってもいけない。 Mark 13:16 畑にいる者は外衣を取りに戻ってはいけない。 Mark 13:17 だが,それらの日,妊娠している者たちと赤子に乳を飲ませている者たちにとっては災いだ! Mark 13:18 あなた方の逃走が冬に起こらないように祈っていなさい。 Mark 13:19 それらの日には,神が造られた創造物のはじめから今に至るまで起きたことがなく,また二度と起きないような苦しみがあるからだ。 Mark 13:20 主がその日々を短くされなかったなら,肉なる者はだれも救われないだろう。だが,ご自分が選び出されたその選ばれた者たちのために,主はその日々を短くされたのだ。 Mark 13:21 その時,だれかがあなた方に,『見よ,ここにキリストがいる!』とか,『見よ,あそこだ!』などと告げても,それを信じてはいけない。 Mark 13:22 偽キリストたちや偽預言者たちが現われて,できるなら選ばれた者たちをさえ惑わそうとして,しるしと不思議な業を行なうからだ。 Mark 13:23 けれども,あなた方は気を付けていなさい。
「見よ,わたしはあなた方にすべてのことをあらかじめ告げている。 Mark 13:24 だが,それらの日,その苦しみの後に,太陽は暗くなり,月は光を放たなくなり, Mark 13:25 星々は天から落ち,天にあるもろもろの力は揺り動かされるだろう。 Mark 13:26 その時,人々は,人の子が大いなる力と栄光を伴って雲のうちに来るのを見るだろう。 Mark 13:27 その時,彼は自分のみ使いたちを遣わし,四方の風から,地の果てから天の果てまで,自分の選ばれた者たちを集め寄せるだろう。
Mark 13:28 「さあ,イチジクの木からこのたとえを学びなさい。その枝が柔らかくなり,葉を出すと,あなた方は夏の近いことを知る。 Mark 13:29 そのようにあなた方も,これらのことが起こるのを見たなら,彼が戸口にまで近づいていることを知りなさい。 Mark 13:30 本当にはっきりとあなた方に告げる。これらのすべてのことが起きるまでは,この世代は過ぎ去らない。 Mark 13:31 天と地は過ぎ去るだろう。それでも,わたしの言葉は過ぎ去らないのだ。 Mark 13:32 だが,その日やその時刻についてはだれも知らない。天のみ使いたちも子も知らず,ただ父だけが知っておられる。 Mark 13:33 見張っていて,警戒し続け,祈っていなさい。あなた方はその時がいつかを知らないからだ。
Mark 13:34 「それは,自分の家を離れて,自分の召使いたちにそれぞれ仕事を託して権威を与え,門番にも見張り続けるよう命じて,外国に旅行する人のようなものだ。 Mark 13:35 だから見張っていなさい。家の主人がいつ来るか,夕方か,真夜中か,おんどりの鳴くころか,早朝かを,あなた方は知らないのだから。 Mark 13:36 主人が突然やって来て,あなた方の眠っているところを見つけるようなことのないためだ。 Mark 13:37 わたしがあなた方に告げることは,すべての者に告げるのだ。見張っていなさい」
Mark 14:0 Mark 14:1 さて,過ぎ越しと種なしパンの祭りの二日前になった。そこで祭司長たちと律法学者たちは,どうしたら策略によって彼を捕まえて殺すことができるかを探り求めていた。 Mark 14:2 というのは,彼らはこう言っていたからである。「祭りの間はいけない。民の暴動が起きるかも知れないからだ」。
Mark 14:3 彼がベタニアでらい病の人シモンの家にいた時,食卓に着いていると,一人の女が,非常に高価な純正のナルド香油の入った雪花石こうのつぼを持ってやって来た。つぼを砕き,それを彼の頭に注いだ。 Mark 14:4 しかし,互いに憤慨した者が数人いて,こう言った。「なぜその香油を無駄にしたのか。 Mark 14:5 この香油なら三百デナリ以上で売れたし,そうすれば貧しい人々に施すことができたのに」。彼らはその女に対して不平を言った。
Mark 14:6 しかしイエスは言った,「彼女をそのままにしておきなさい。なぜあなた方は彼女を悩ませるのか。彼女はわたしに良い行ないをしてくれたのだ。 Mark 14:7 あなた方には,貧しい人々はいつでも一緒にいて,いつでも望む時に彼らに良いことができる。だが,わたしはいつでもいるわけではないからだ。 Mark 14:8 彼女は自分にできることをした。埋葬に備えてわたしの体に前もって油を塗ってくれたのだ。 Mark 14:9 本当にはっきりとあなた方に告げる。世界中どこでも,この福音が宣教される所では,この女の行なったこともまた,彼女の記念として語られるだろう」
Mark 14:10 十二人の一人,ユダ・イスカリオトは,彼を引き渡すために,祭司長たちのところに出て行った。 Mark 14:11 彼らはそれを聞いて喜び,彼にお金を与えることを約束した。彼はどうすればイエスをうまく引き渡せるかを探り求めた。 Mark 14:12 種なしパンの最初の日,つまり過ぎ越しの犠牲をささげる日,弟子たちが彼に尋ねた,「過ぎ越しの食事をなさるのに,わたしたちがどこに行って用意をすることをお望みですか」。
Mark 14:13 彼は弟子たちのうちの二人を遣わして,彼らに言った,「市内に入りなさい。するとあなた方は水がめを運んでいる男に出会うだろう。その人に付いて行きなさい。 Mark 14:14 そして,彼が入っていく所で,その家の主人にこう言いなさい。『先生が,「わたしが弟子たちと共に過ぎ越しの食事をする客室はどこか」と言っています』。 Mark 14:15 彼はあなた方に,席が備えられて用意のできている大きな階上の部屋を見せてくれるだろう。その場所でわたしたちのために用意をしなさい」
Mark 14:16 弟子たちは出て行って,市内に入り,彼が自分たちに言ったとおりのことを見いだした。それで彼らは過ぎ越しの用意をした。
Mark 14:17 夕方になった時,彼は十二人と一緒にやって来た。 Mark 14:18 彼らが席に着いて食事をしていると,イエスは言った,「本当にはっきりとあなた方に告げる。あなた方の一人で,わたしと一緒に食事をしている者が,わたしを売り渡すだろう」
Mark 14:19 彼らは悲しみ始め,一人ずつ彼に「まさかわたしではないでしょうね」と尋ね始めた。そして互いに「まさかわたしではないだろうな」と言い合った。
Mark 14:20 彼は彼らに答えた,「それは十二人の一人で,わたしと共に食べ物を鉢に浸している者だ。 Mark 14:21 人の子は自分について書いてあるとおりに去って行くからだ。だが,人の子を売り渡すその者は災いだ! 生まれて来なかった方が,その者のためには良かっただろう」
Mark 14:22 彼らが食事をしていると,イエスはパンを取り,祝福してからそれを裂き,彼らに与えてこう言った。「取って,食べなさい。これはわたしの体だ」
Mark 14:23 杯を取り,感謝をささげてから,彼らに与えた。彼らは皆その杯から飲んだ。 Mark 14:24 彼は彼らに言った,「これは新しい契約のためのわたしの血だ。それは多くの人のために注ぎ出されるのだ。 Mark 14:25 本当にはっきりとあなた方に告げる。神の王国においてそれを新たに飲むその日まで,わたしはもはやブドウの木の産物を飲むことはない」 。 Mark 14:26 賛美の歌を歌ってから,彼らはオリーブ山へと出て行った。
Mark 14:27 イエスは彼らに言った,「今夜,あなた方全員がわたしのためにつまずくだろう。『わたしは羊飼いを打つ。すると羊は散らされるだろう』と書いてあるからだ。 Mark 14:28 だが,わたしは起こされた後,あなた方より先にガリラヤに行くだろう」
Mark 14:29 しかしペトロは彼に言った,「みんなが背いても,わたしは背きません」。
Mark 14:30 イエスは彼に言った,「本当にはっきりとあなたに告げる。今日,それも今夜,おんどりが二度鳴く前に,あなたは三度わたしを否認するだろう」
Mark 14:31 しかし彼はますます言い立てた,「あなたと一緒に死ななければならないとしても,わたしはあなたを否認しません」。彼らは皆,同じ事を言った。
Mark 14:32 彼らはゲツセマネという名の場所にやって来た。彼は弟子たちに言った,「わたしが祈っている間,ここに座っていなさい」 。 Mark 14:33 彼はペトロとヤコブとヨハネを伴って行ったが,ひどく心配し,苦悩し始めた。 Mark 14:34 彼らに言った,「わたしの魂は死ぬほどに深く悲しんでいる。ここにとどまって,見張っていなさい」
Mark 14:35 少し進んで行って地面にひれ伏し,もしできることなら,その時が自分から過ぎ去るようにと祈った。 Mark 14:36 彼は言った,「アッバ,父よ,あなたにはすべてのことがおできになります。この杯をわたしから取り除いてください。それでも,わたしの望むことではなく,あなたの望まれることを」
Mark 14:37 やって来て,彼らが眠っているのを見つけて,ペトロに言った,「シモンよ,眠っているのか。一時間も見張っていられなかったのか。 Mark 14:38 あなた方は誘惑に陥らないよう,見張って,祈っていなさい。霊はその気でも,肉体は弱いのだ」
Mark 14:39 再び離れて行き,同じ言葉で祈った。 Mark 14:40 もう一度戻って来て,彼らが眠っているのを見つけた。彼らの目は非常に重くなっていたのである。そして彼らは,彼に何と答えたらよいか分からなかった。 Mark 14:41 彼は三度目にやって来て,彼らに言った,「なお眠って,休息をとりなさい。もう十分だ。時が来た。見よ,人の子は罪人たちの手に売り渡される。 Mark 14:42 立ちなさい,さあ行こう。見よ,わたしを売り渡す者が近づいて来た」
Mark 14:43 すぐに,彼がまだ話しているうちに,十二人の一人のユダがやって来た。そして彼と共に,祭司長たちと律法学者たちと長老たちのもとから来た群衆が,剣やこん棒を手にしてやって来た。 Mark 14:44 さて,イエスを売り渡した者は,「わたしが口づけするのがその者だ。それを捕まえて,しっかりと引いて行け」と言って,彼らに合図を伝えていた。 Mark 14:45 やって来ると,すぐにイエスに近寄り,「ラビ! ラビ!」と言って,口づけした。 Mark 14:46 彼らはイエスに手をかけて捕まえた。 Mark 14:47 しかし,立っていた者の一人が剣を抜いて,大祭司の召使いに撃ちかかり,その片耳を切り落とした。
Mark 14:48 イエスは彼らに答えた,「あなた方は強盗に対するかのように,剣とこん棒を持ってわたしを捕まえに出て来たのか。 Mark 14:49 わたしは毎日あなた方と一緒に神殿にいて教えていたのに,あなた方はわたしを逮捕しなかった。だが,これは聖句が果たされるためなのだ」
Mark 14:50 弟子たちは皆,彼を残して逃げて行った。 Mark 14:51 ある若者が,裸の体に亜麻布をまとって,イエスに付いて行った。若者たちは彼を捕まえようとしたが, Mark 14:52 彼は亜麻布を残して,裸のままで逃げて行った。 Mark 14:53 彼らはイエスを大祭司のところに引いて行った。祭司長たちと長老たちと律法学者たち全員が集まって来た。
Mark 14:54 ペトロは遠くからイエスに付いて行き,ついに大祭司の中庭に入った。彼は役人たちと共に座っており,たき火で身を暖めていた。 Mark 14:55 さて,祭司長たちと最高法院全体は,イエスを死に渡すため,彼に不利な証言を探していたが,何も見つからなかった。 Mark 14:56 大勢の者が彼に対して偽りの証言をしたが,それらの証言は互いどうし一致しなかったのである。 Mark 14:57 ある者たちが立ち上がり,彼に対して偽りの証言をして,こう言った。 Mark 14:58 「わたしたちは,この者が『わたしは手で造ったこの神殿を壊し,手で造られたのではない別のものを三日で建てる』と言うのを聞きました」。 Mark 14:59 そのようにしても,彼らの証言は一致しなかった。
Mark 14:60 大祭司が真ん中に立ってイエスに尋ねた,「何も答えないのか。これらの者たちがしているお前に不利な証言は何なのだ」。 Mark 14:61 しかし彼は黙ったままで,何も答えなかった。再び大祭司は彼に尋ねた,「お前はほめたたえるべき方の子,キリストか」。
Mark 14:62 イエスは言った,「わたしはある。あなた方は人の子が力ある方の右に座り,天の雲と共に来るのを見るだろう」
Mark 14:63 大祭司は自分の衣を引き裂いてこう言った。「どうしてこれ以上証人が必要だろうか。 Mark 14:64 あなた方は冒とくの言葉を聞いたのだ! あなた方はどう思うか」。みんなは彼を死に値するものと決定した。 Mark 14:65 ある者たちは彼につばをかけ,顔を覆ってこぶしで殴り,「預言しろ!」と言い始めた。役人たちも彼を平手で打った。
Mark 14:66 ペトロが下の中庭にいると,大祭司の女中の一人がやって来て, Mark 14:67 ペトロが身を暖めているのを見ると,彼を見つめてこう言った。「あなたもナザレ人イエスと一緒にいました!」
Mark 14:68 しかし彼はそれを否定して言った,「わたしは知らないし,あなたが何のことを言っているのか分からない」。彼は入り口の方に出て行った。するとおんどりが鳴いた。
Mark 14:69 その女中は彼を見て,そばに立っている者たちに再びこう言い始めた。「この人は彼らの一人です」。 Mark 14:70 しかし彼は再びそれを否定した。しばらくして,そばに立っている者たちが再びペトロに言った,「確かにあなたは彼らの一人だ。あなたはガリラヤ人で,方言がそれを明かしているからだ」。 Mark 14:71 しかし彼はのろったり誓ったりし始めて言った,「わたしはあなた方の話しているその人を知らないのだ!」 Mark 14:72 おんどりが二度目に鳴いた。ペトロは,「おんどりが二度鳴く前に,あなたは三度わたしを否認するだろう」 とイエスが自分に言った言葉を思い出した。それに思い当たった時,彼は泣き悲しんだ。
Mark 15:0 Mark 15:1 明け方になるとすぐ,祭司長たちは長老たちや律法学者たちと共に,つまり最高法院全体で協議をしてから,イエスを縛って連れ出し,ピラトに引き渡した。 Mark 15:2 ピラトは彼に尋ねた,「お前はユダヤ人の王なのか」。
彼は答えた,「あなたがそう言っている」
Mark 15:3 祭司長たちは多くの事について彼を訴えた。 Mark 15:4 ピラトは再び彼に尋ねた,「何も答えないのか。彼らがお前に対してどれほど多くの事を証言しているかを見よ」。
Mark 15:5 しかしイエスはそれ以上何も答えなかった。そのためピラトは驚いた。
Mark 15:6 さて,ピラトは祭りの際に,人々が彼に願い出る囚人を一人,彼らのために釈放するのを慣例としていた。 Mark 15:7 バラバと呼ばれる者が,暴動を起こした者たち,暴動において殺人を犯した男たちと共に拘禁されていた。 Mark 15:8 群衆が大声で叫んで,自分たちにいつものとおりにして欲しいとピラトに願い始めた。 Mark 15:9 ピラトは彼らに答えて言った,「お前たちはユダヤ人の王を釈放して欲しいのか」。 Mark 15:10 祭司長たちがねたみのためにイエスを引き渡したことに気づいていたからである。 Mark 15:11 しかし祭司長たちは,代わりにバラバを釈放させようとして群衆を扇動した。 Mark 15:12 ピラトは再び彼らに答えた,「それでは,お前たちがユダヤ人の王と呼ぶ者はどうしたらよいのか」。
Mark 15:13 彼らは再び叫んで言った,「はりつけにしろ!」
Mark 15:14 ピラトは彼らに言った,「彼がどんな悪事をしたというのか」。
しかし彼らは激しく叫んで言った,「はりつけにしろ!」
Mark 15:15 ピラトは群衆を満足させようと思い,彼らのためにバラバを釈放した。そして,イエスをむち打ってから,はりつけにするために引き渡した。 Mark 15:16 兵士たちは彼を邸宅,すなわちプラエトリウムの中に引いて行った。そして全部隊を呼び集めた。 Mark 15:17 紫の衣を彼にまとわせ,イバラの冠を編んで彼にかぶせた。 Mark 15:18 彼に「ユダヤ人の王様,万歳!」と言ってあいさつをし始めた。 Mark 15:19 アシで彼の頭をたたき,ひざをかがめて敬意をささげた。 Mark 15:20 彼をなぶりものにした後,彼から紫の衣を脱がせて,もとの衣を着せた。彼らは彼をはりつけにするために引いて行った。 Mark 15:21 田舎から出て来た通りがかりの者で,アレクサンデルとルフォスの父であるキュレネのシモンを一緒に来させて,イエスの十字架を運ばせた。 Mark 15:22 ゴルゴタ,訳せば「どくろの場所」と呼ばれる場所へ彼を連れて来た。 Mark 15:23 彼に飲ませようとして没薬を混ぜたブドウ酒を差し出したが,彼はそれを受けなかった。
Mark 15:24 彼をはりつけにしてから,だれが何を取るかくじを引いて,互いにその外衣を分けた。 Mark 15:25 時は第三時であり,彼らは彼をはりつけにした。 Mark 15:26 彼の上には「ユダヤ人の王」という罪状書きが記されていた。 Mark 15:27 彼と共に二人の強盗をはりつけにし,一人はその右に,一人はその左に置いた。 Mark 15:28 こうして,「彼は罪人たちと共に数えられた」と言う聖句が果たされた。
Mark 15:29 通りかかった者たちは,頭を振りながら彼を冒とくして言った,「へえ! 神殿を壊して三日で建てる者よ, Mark 15:30 十字架から降りて来て自分を救ってみろ!」
Mark 15:31 同じように,祭司長たちも律法学者たちと一緒になって,代わる代わるあざけって言った,「ほかの者たちは救ったが,自分は救えないのだ。 Mark 15:32 キリスト,イスラエルの王よ,さあ,十字架から降りて来るがよい。そうしたらそれを見て信じよう」。一緒にはりつけになっていた者たちも,彼を侮辱した。
Mark 15:33 第六時になると闇が全土を覆い,第九時にまで及んだ。 Mark 15:34 第九時に,イエスは大声で叫んで,「エロイ,エロイ,ラマ,サバクタニ」 と言った。これは,訳せば,「わたしの神,わたしの神,なぜわたしをお見捨てになったのですか」 という意味である。
Mark 15:35 そばに立っていた者たちの何人かは,それを聞いて,「見ろ,エリヤを呼んでいるのだ」と言った。
Mark 15:36 ある者が走って行き,海綿に酢をたっぷり含ませて,アシの先に付け,それを彼に飲まそうとして,「彼をそのままにしておけ。エリヤが彼を降ろしに来るかどうかを見よう」と言った。
Mark 15:37 イエスは大声で叫んで,自分の霊を引き渡した。 Mark 15:38 神殿の幕が上から下まで二つに裂けた。 Mark 15:39 彼に向かい合って立っていた百人隊長は,彼がこのように叫んで息を引き取ったのを見て,「本当にこの人は神の子だった!」と言った。
Mark 15:40 女たちも遠くから見ていたが,その中にはマリア・マグダレネ,小ヤコブとヨセの母マリア,それにサロメがいた。 Mark 15:41 これらは,彼がガリラヤにいた時,彼に従って仕えて者たちであった。そして,彼と共にエルサレムに上って来たほかの大勢の女たちもいた。
Mark 15:42 すでに夕方になっていた。準備の日,すなわち安息日の前日だったので, Mark 15:43 最高法院の有力な議員であるアリマタヤのヨセフがやって来た。彼自身も神の王国を待ち望んでいた。思い切ってピラトのところへ行き,イエスの体を渡してくれるようにと願い出た。 Mark 15:44 ピラトは,彼がもう死んだのだろうかと不思議に思い,百人隊長を呼び寄せて,彼がもはや死んでしまったのかどうかを尋ねた。 Mark 15:45 百人隊長から確かめると,ピラトは死体をヨセフに与えた。 Mark 15:46 彼は亜麻布を買い,イエスを取り降ろして亜麻布に包み,岩に切り掘ってあった墓に横たえた。墓の入り口に石を転がしておいた。 Mark 15:47 マリア・マグダレネとヨセの母マリアは,イエスの横たえられた場所を見ていた。
Mark 16:0 Mark 16:1 安息日が過ぎた時,マリア・マグダレネ,ヤコブの母マリア,それにサロメは,行って彼に油を塗ろうとして香料を買った。 Mark 16:2 週の初めの日,非常に朝早く,日の昇るころ,彼女たちは墓にやって来た。 Mark 16:3 彼女たちは,「だれがわたしたちのために墓の入り口から石を転がしてくれるでしょう」と互いに言い合っていた。 Mark 16:4 その石は非常に大きかったからである。彼女たちが目を上げると,石が転がしてあるのが見えた。
Mark 16:5 墓の中に入ると,彼女たちは,白い衣を着た一人の若者が右側に座っているのを見て,ひどく驚いた。 Mark 16:6 若者は彼女たちに言った,「驚いてはいけない。あなた方ははりつけにされたナザレ人イエスを探している。彼は起こされた。ここにはいない。見よ,ここが彼の横たえられた場所だ! Mark 16:7 だが,行って,彼の弟子たちとペトロに,『彼はあなた方より先にガリラヤへ行く。彼があなた方に言われたとおりに,あなた方はそこで彼を見るだろう』と告げなさい」。
Mark 16:8 彼女たちは出て行き,墓から逃げ出した。わななきと驚きが彼女たちの上に生じていたからである。彼女たちはだれにも,何も言わなかった。恐ろしかったからである。 Mark 16:9 さて,彼は週の初めの日の朝早くに起こされると,まずマリア・マグダレネに現われた。この彼女からは七つの悪霊を追い出したことがあった。 Mark 16:10 彼女は行って,彼と共にいた者たちに告げたが,彼らは泣き悲しんでいるところであった。 Mark 16:11 彼が生きていて彼女に現われたと聞いても,彼らは信じなかった。 Mark 16:12 こうした事ののち,彼らのうちの二人が田舎に向かって歩いていると,彼は別の姿で現わされた。 Mark 16:13 二人は戻って行って残りの者たちに告げた。彼らはこの二人の言うことも信じなかった。
Mark 16:14 その後,彼は食卓に着いていた十一人に現わされて,彼らの不信仰と心のかたくなさをとがめた。生き返った彼を見た者たちの言うことを,彼らが信じなかったからである。 Mark 16:15 彼は彼らに言った,「全世界に出て行って,全創造物に福音を宣教しなさい。 Mark 16:16 信じてバプテスマを受ける者は救われるが,信じない者は罪に定められるだろう。 Mark 16:17 信じる者たちには次のようなしるしが伴うだろう。すなわち,彼らはわたしの名において悪霊たちを追い出し,新しい言語を語り, Mark 16:18 蛇をつかむだろう。また,何か死に至らせる物を飲んでも害を受けず,病気の人たちの上に手を置けば回復するだろう」
Mark 16:19 このようにして,主イエスは,彼らに語った後,天に上げられ,神の右に座った。 Mark 16:20 彼らは出て行き,至る所で宣教をした。主は彼らと共に働き,伴うしるしによってみ言葉を強固にした。アーメン。
Luke 0:0
Luke 1:0 Luke 1:1 わたしたちの間で実現したさまざまな事柄について, Luke 1:2 初めからの目撃証人またみ言葉の奉仕者であった者たちがわたしたちに伝えたとおりに,その物語を順序正しくまとめようと,すでに多くの人が手を着けてきましたが, Luke 1:3 わたしもすべての成り立ちを初めからつぶさにたどりましたので,テオフィロス閣下,あなたに順序正しく書いて差し上げるのが良いと思いました。 Luke 1:4 それは,学ばれた事柄が確実なものであることを知っていただくためです。
Luke 1:5 ユダヤの王ヘロデの時代に,アビヤの祭司組の者で,ザカリアという名の祭司がいた。彼にはアロンの娘である妻がいて,名をエリザベツといった。 Luke 1:6 二人とも神の前に正しい者で,主のすべてのおきてと法令の内を非の打ちどころなく歩んでいた。 Luke 1:7 しかし彼らには子供がなかった。エリザベツが不妊であり,二人ともかなり年を取っていたからである。 Luke 1:8 さて,彼が自分の組の順番に従って神の前で祭司職を務めていたときのこと, Luke 1:9 祭司職の習慣に従って彼が主の聖所に入って香をたくことになった。 Luke 1:10 民の群衆はみな,香の時刻に外で祈っていた。
Luke 1:11 主のみ使いが彼に現われて,香の祭壇の右側に立っていた。 Luke 1:12 ザカリアはそれを見て動転し,恐れにとらわれた。 Luke 1:13 しかしみ使いは彼に言った,「恐れてはいけない,ザカリアよ,あなたの願いは聞き入れられたからだ。すなわち,あなたの妻エリザベツは,あなたに男の子を産むだろう。そして,あなたはその名をヨハネと呼ぶことになる。 Luke 1:14 あなたには歓喜と喜びとがあり,多くの人がその誕生を喜ぶだろう。 Luke 1:15 彼は主のみ前で大いなる者となり,ぶどう酒や酔わせる飲み物を飲まないからだ。彼は母の胎にいる時から聖霊に満たされるだろう。 Luke 1:16 彼は多くのイスラエルの子らを,その神なる主に立ち返らせるだろう。 Luke 1:17 彼はエリヤの霊と力のうちにそのみ前を行くだろう。『父たちの心を子供たちに立ち返らせ』,不従順な者たちを義人の知恵に立ち返らせ,準備のできた民を主のために備えるためだ」。
Luke 1:18 ザカリアはみ使いに言った,「どうしてそのことを信用できるでしょうか。わたしは老人ですし,わたしの妻もかなり年を取っているからです」。
Luke 1:19 み使いは彼に答えた,「わたしはガブリエル,神のみ前に立つ者だ。わたしはあなたに語るため,この良いたよりをあなたにもたらすために遣わされたのだ。 Luke 1:20 見よ,これらの事が起きるその日まで,あなたは声が出ず,ものが言えなくなるだろう。しかるべき時に実現するわたしのこれらの言葉を信じなかったからだ」。
Luke 1:21 民はザカリアを待っていたが,彼が聖所で手間取っているのを不思議に思っていた。 Luke 1:22 外に出て来た時,彼は彼らに話すことができなかった。そこで彼らは,彼が聖所で幻を見たのだと分かった。彼は彼らに手まねを続けるだけで,口がきけないままであった。 Luke 1:23 その奉仕の日々が満ちた時,彼は自分の家に帰って行った。 Luke 1:24 こうした日々ののち,彼の妻エリザベツは子を宿し,五か月の間引きこもって,こう言った, Luke 1:25 「主はこのごろ,人々の中での恥辱を取り去るためにわたしに目を向けてくださり,わたしに対してこのようにしてくださいました」。
Luke 1:26 さて,六か月目に,み使いガブリエルが,神からガリラヤのナザレという名の町に遣わされた。 Luke 1:27 ダビデの家のヨセフという名の男と結婚を誓っていた,一人の処女のもとに遣わされたのである。その処女の名前はマリアといった。 Luke 1:28 み使いは入って来ると彼女に言った,「喜べ,大いに恵まれた者よ。主があなたと共におられる。女たちの中であなたは幸いな人だ!」
Luke 1:29 しかし,彼を見た時,彼女はその言葉にひどく動転し,いったいこれは何のあいさつなのだろうと考えていた。 Luke 1:30 み使いは彼女に言った,「恐れてはいけない,マリアよ,あなたは神からの恵みを見いだしたからだ。 Luke 1:31 見よ,あなたは胎内に子を宿し,男の子を産むだろう。そして,その名を『イエス』と呼ぶことになる。 Luke 1:32 彼は偉大になり,いと高き方の子と呼ばれるだろう。主なる神は彼にその父ダビデの王座をお与えになるだろう。 Luke 1:33 そして彼はヤコブの家を永久に支配することになる。彼の王国には終わりがないだろう」。
Luke 1:34 マリアはみ使いに言った,「どうしてそのようなことが起こり得るのでしょうか。わたしは処女ですのに」。
Luke 1:35 み使いは彼女に答えた,「聖霊があなたの上に臨み,いと高き方の力があなたを影で覆うだろう。それゆえにも,あなたから生まれる聖なる者は神の子と呼ばれることになる。 Luke 1:36 見よ,あなたの親族エリザベツも老齢で男の子を宿している。不妊と呼ばれていた彼女が六か月目になっている。 Luke 1:37 神によって語られたことはすべてが可能なのだ」。
Luke 1:38 マリアは言った,「ご覧ください,主の女召使いです。あなたのお言葉どおりのことがわたしに起きますように」。
み使いは彼女から去って行った。 Luke 1:39 そのころ,マリアは立ち上がり,急いで山岳地帯に向かい,ユダのある町に行き, Luke 1:40 ザカリアの家に入ってエリザベツにあいさつした。 Luke 1:41 エリザベツがマリアのあいさつを聞いた時,その胎内で赤子が飛び跳ねて,エリザベツは聖霊に満たされた。 Luke 1:42 彼女は大声で叫んでこう言った,「女たちの中であなたは幸いな人,あなたの胎の実も幸いなもの! Luke 1:43 わたしはなぜこれほど恵まれているのでしょう,わたしの主の母がわたしのもとに来てくださるとは。 Luke 1:44 ご覧なさい,あなたのあいさつの声がわたしの耳に入った時,わたしの胎内の赤子は喜んで飛び跳ねたのです! Luke 1:45 信じた女は幸いです。主から語られた事柄は実現するからです!」
Luke 1:46 マリアは言った,
「わたしの魂は主をたたえます。 Luke 1:47 わたしの霊は,わたしの救い主なる神を喜びます。 Luke 1:48 卑しい身分の女召使いに目をとめてくださったからです。ご覧ください,今からのち,あらゆる世代の人々がわたしを幸いな者と呼ぶでしょう。 Luke 1:49 強力な方がわたしのために大いなる事柄をなさったからです。そのみ名は神聖です。 Luke 1:50 そのあわれみは世々にわたり,その方を恐れる人々の上に臨みます。 Luke 1:51 主はそのみ腕で力を示されました。心の想いの高慢な者たちを散らされました。 Luke 1:52 君主たちをその座から引き降ろされました。そして身分の低い者たちを高くされました。 Luke 1:53 飢えた者たちを数々の良い物で満たされました。富んだ者たちを何も持たせないで帰らされました。 Luke 1:54 あわれみを忘れないために,ご自分の召使いイスラエルに助けを与えられました。 Luke 1:55 わたしたちの父祖たちに,アブラハムとその子孫に対して永久に語られたとおりに」。 Luke 1:56 マリアは彼女のもとに三か月ほど滞在し,それから自分の家に帰って行った。 Luke 1:57 さて,エリザベツの出産する時が満ちて,彼女は男の子を産んだ。 Luke 1:58 彼女の隣人や親族は,主が彼女のためにそのあわれみを増してくださったと聞いて,彼女と共に喜んだ。 Luke 1:59 八日目のこと,人々が幼子に割礼を施すためにやって来て,彼を父の名にならってザカリアと呼ぼうとした。 Luke 1:60 その母は答えた,「それはいけません,ヨハネと呼ばれるのです」。
Luke 1:61 人々は彼女に言った,「あなたの親族の中ではその名によって呼ばれている者は一人もいない」。 Luke 1:62 人々はその父に向かって,その子を何と呼びたいのかと手まねをした。
Luke 1:63 彼は書き板を求め,「その名はヨハネ」と書いた。
人々はみな驚いた。 Luke 1:64 すぐに彼の口は開き,舌は解かれ,語り出して神を賛美した。 Luke 1:65 近くに住む人々すべての上に恐れが臨み,これらのすべての話がユダヤの山岳地帯のあらゆる所でうわさされた。 Luke 1:66 それを聞いた者たちはみな,それを自分の心に留めて,「この子はいったい何になるのだろう」と言った。主の手が彼と共にあった。 Luke 1:67 その父ザカリアは,聖霊に満たされ,預言してこう言った。
Luke 1:68 「イスラエルの神なる主が賛美されるように。その民に目を向けて請け戻しをされたからだ。 Luke 1:69 そして,その召使いダビデの家に,わたしたちのための救いの角を起こされた。 Luke 1:70 (古くからその聖なる預言者たちの口によって語られたとおりに。) Luke 1:71 わたしたちの敵からの救い,またわたしたちを憎むすべての者の手からの救いを。 Luke 1:72 わたしたちの父祖たちにあわれみを示し,その聖なる契約を忘れないために。 Luke 1:73 わたしたちの父祖アブラハムに立てられた誓い, Luke 1:74 それがわたしたちにもたらすことは,わたしたちが敵の手から解き放たれ,恐れることなくその方に仕えること, Luke 1:75 わたしたちの命の日々の限り,神聖さと義のうちに,そのみ前で仕えることなのだ。 Luke 1:76 そして子供よ,お前はいと高き方の預言者と呼ばれるだろう。お前は主の面前を行き,その道を整え, Luke 1:77 その民に罪の許しによる救いの知識を与えることになるからだ。 Luke 1:78 それは,わたしたちの神の優しいあわれみによる。そのあわれみによって,夜明けが高い所からわたしたちに訪れ, Luke 1:79 闇と死の陰に座る者たちの上に輝き,わたしたちの足を平和の道に導くだろう」。 Luke 1:80 幼子は成長し,霊において強くなってゆき,イスラエルに対する公の出現の日まで寂しい所にいた。
Luke 2:0 Luke 2:1 さて,そのころ,全世界の住民登録をせよという布告が,カエサル・アウグストゥスから出た。 Luke 2:2 これは,クィリニウスがシリアの総督だった時に行なわれた,最初の登録であった。 Luke 2:3 すべての人が登録をするために,それぞれ自分の町に向かった。 Luke 2:4 ヨセフもナザレの町を出て,ガリラヤからユダヤに上って行き,ベツレヘムと呼ばれるダビデの町に入った。彼がダビデの家に属し,その一族だったからであり, Luke 2:5 また,妻として彼に嫁ぐことを誓っており,妊娠していたマリアと共に登録するためであった。
Luke 2:6 彼らがそこにいる間に,彼女の出産する日が来た。 Luke 2:7 彼女は初子を産み,これを布の帯でくるんで,飼い葉おけの中に横たえた。宿屋に彼らの場所がなかったからである。 Luke 2:8 その同じ地方では,羊飼いたちが野宿をしながら,夜に自分たちの群れの番をしていた。 Luke 2:9 見よ,主のみ使いが彼らのそばに立ち,主の栄光が彼らの周りで輝いた。そのため彼らはおびえた。 Luke 2:10 み使いは彼らに言った,「恐れてはいけない。見よ,わたしはあなた方に,あらゆる民にとって大きな喜びとなる良いたよりをもたらすからだ。 Luke 2:11 すなわち,今日,ダビデの町で,あなた方に救い主,主なるキリストが生まれたのだ。 Luke 2:12 これがあなた方に対するしるしだ。あなた方は,布の帯にくるまり,飼い葉おけに横たえられている赤子を見つけるだろう」。 Luke 2:13 突然,天の大軍勢が,そのみ使いと共に神を賛美して,こう言った,
Luke 2:14 「いと高き所では栄光が神に,地上では平和が,善意の向かう人々に」。 Luke 2:15 み使いたちが彼らを離れて天に帰った時,羊飼いたちは互いに言い合った,「さあ,ベツレヘムに行って,主がわたしたちに知らせてくださった出来事を見て来よう」。 Luke 2:16 急いでやって来て,マリアとヨセフ,そして飼い葉おけに横たわっている赤子を見つけた。 Luke 2:17 これを見ると,この子供について自分たちに語られた言葉を広く告げ知らせた。 Luke 2:18 これを聞いた者たちは,羊飼いたちによって自分たちに語られた事柄を不思議に思った。 Luke 2:19 しかしマリアは,これらのことをよく考えながら,これらのすべての言葉を自分の心にとどめた。 Luke 2:20 羊飼いたちは,自分たちが見聞きしたすべての事柄のゆえに,神に栄光をささげ,賛美しながら戻って行った。自分たちに告げられたとおりだったのである。
Luke 2:21 子供の割礼のための八日が満ちると,彼の名はイエスと呼ばれた。彼が胎内に宿る前にみ使いによって与えられた名である。
Luke 2:22 モーセの律法による彼らの清めの日々が満ちた時,彼らは彼をエルサレムに連れ上った。彼を主にささげるため, Luke 2:23 (主の律法に,「胎を開くすべての男子は,主にとって聖なる者と呼ばれなければならない」と書かれているとおりである。) Luke 2:24 また,主の律法で「一つがいのコキジバトか二羽のハト」と言われているところに従って,犠牲をささげるためであった。
Luke 2:25 見よ,エルサレムにシメオンという名の人がいた。この人は正しく敬けんな人で,イスラエルの慰めを待ち望んでおり,聖霊がその上にあった。 Luke 2:26 彼には,主のキリストを見るまでは死を見ることはないと,聖霊によって示されていた。 Luke 2:27 彼は霊のうちに神殿に入って来た。両親が幼子イエスを,彼に関して律法の慣習どおりに行なうために連れて来ると, Luke 2:28 その時シメオンは,彼を両腕に抱き取り,神を賛美してこう言った,
Luke 2:29 「今こそあなたはご自分の召使いを去らせてくださいます,ご主人様,あなたのお言葉どおり,平安のうちに。 Luke 2:30 わたしの両目はあなたの救いを見たからです。 Luke 2:31 あなたがあらゆる民の面前に備えられた救いを。 Luke 2:32 異邦人たちに対する啓示の光,またご自分の民イスラエルの栄光を」。 Luke 2:33 ヨセフとその妻は,彼について語られた事柄を不思議に思っていた。 Luke 2:34 するとシメオンは彼らを祝福し,その母マリアに言った, 「見なさい,この子はイスラエルの多くの人を倒れさせ,また起き上がらせるために,また敵対を受けるしるしとして定められている。 Luke 2:35 実に,剣があなたの魂を刺し通すだろう。多くの者の心の思いが明らかにされるためだ」。
Luke 2:36 アシェル族のファヌエルの娘で,アンナという女預言者がいた。(高齢で,処女のときから七年間夫と共に暮らしたが, Luke 2:37 およそ八十四歳の今になるまでやもめであった。)神殿を離れず,夜も昼も断食と祈願とをもって崇拝していた。 Luke 2:38 ちょうどその時刻に,彼女は主に感謝をささげ,エルサレムにおける請け戻しを待ち望んでいるすべての人々に,彼について語り始めた。
Luke 2:39 主の律法に基づいたすべての事柄を成し遂げると,彼らはガリラヤへ,自分たちの町ナザレへ戻って行った。 Luke 2:40 幼子は成長し,霊において強くなってゆき,知恵に満たされ,神の恵みがその上にあった。 Luke 2:41 彼の両親は,過ぎ越しの祭りの時には毎年エルサレムに行った。
Luke 2:42 彼が十二歳の時,彼らは祭りの習慣に従ってエルサレムに上って行ったが, Luke 2:43 祭りの日々を満たして帰る時,少年イエスはエルサレムに残っていた。ヨセフとその妻はそれを知らず, Luke 2:44 彼が道連れの中にいるものと思い,一日分の道のりを行ってから,親族や知人たちの中で彼を探した。 Luke 2:45 彼が見つからなかったので,彼を探しながらエルサレムに戻った。 Luke 2:46 三日後に神殿の中で彼を見つけた。彼は教師たちの真ん中に座り,彼らの話すことを聞いたり,彼らに質問したりしていた。 Luke 2:47 彼の話すことを聞いた人々はみな,その理解力と答えとに驚いていた。 Luke 2:48 両親は彼を見てびっくりした。その母は彼に言った,「息子よ,なぜわたしたちにこんなことをしたのですか。見なさい,あなたのお父さんとわたしは心配しながらあなたを探していたのです」。
Luke 2:49 彼は彼らに言った,「なぜわたしを探したのですか。わたしが自分の父の家にいるはずだ,ということをご存じなかったのですか」 。 Luke 2:50 彼らは,彼が自分たちに語った言葉を理解できなかった。 Luke 2:51 それから彼は彼らと共に下って行き,ナザレに来た。彼は彼らに服していたが,彼の母はこれらのすべての言葉を自分の心にとどめた。 Luke 2:52 そしてイエスは,知恵と背丈においても,また神と人からの好意においても,増し加わっていった。
Luke 3:0 Luke 3:1 さて,ティベリウス・カエサルの治世の第十五年,ポンティウス・ピラトがユダヤの総督,ヘロデがガリラヤの領主,その兄弟フィリポがイトゥリアとトラコニティスの領主,リュサニアスがアビレネの領主, Luke 3:2 アンナスとカイアファスが大祭司であったころ,神の言葉が荒野でザカリアの子ヨハネに臨んだ。 Luke 3:3 彼はヨルダン周辺の全地方に行って,罪の許しのための悔い改めのバプテスマを宣教していた。 Luke 3:4 預言者イザヤの言葉の書の中にこう書かれているとおりである。
「荒野で叫ぶ者の声がする,『主の道を整えよ。その道筋をまっすぐにせよ。 Luke 3:5 すべての谷間は埋められるだろう。すべての山と丘とは低くされるだろう。曲がったところはまっすぐにされ,でこぼこの道は平らにされるだろう。 Luke 3:6 すべての肉なる者は神の救いを見るだろう』」。 Luke 3:7 そこで彼は,彼からバプテスマを受けようとして出て来た群衆に言った, 「マムシらの子孫よ,来ようとしている憤りから逃れるようにと,だれがあなた方に告げたのか。 Luke 3:8 それなら,悔い改めにふさわしい実を生み出しなさい。『我々の父にアブラハムがいる』などと自分の内で言い始めてはいけない。あなた方に告げるが,神はこれらの石からでもアブラハムに子孫を起こすことができるのだ。 Luke 3:9 おのはすでに木々の根もとに置かれている。だから,良い実を生み出さない木はみな切り倒されて,火の中に投げ込まれるのだ」。
Luke 3:10 群衆は彼に尋ねた,「わたしたちは何をすればよいのですか」。
Luke 3:11 彼は彼らに答えた,「二枚の上着を持っている者は,持っていない者に与えなさい。食物を持っている者も,同じようにしなさい」。
Luke 3:12 徴税人たちもバプテスマを受けに来て,彼に言った,「先生,わたしたちは何をすればよいのですか」。
Luke 3:13 彼は彼らに言った,「自分に定められたより多くを取り立ててはいけない」。
Luke 3:14 兵士たちも彼に尋ねて言った,「わたしたちについてはどうですか。わたしたちは何をすればよいのですか」。
彼は彼らに言った,「人から乱暴にゆすり取ったり,不当に非難したりしてはいけない。自分の給料で満足しなさい」。
Luke 3:15 民は待ち望んでおり,すべての者がヨハネについて,彼がキリストなのではないかと心の中で論じていたので, Luke 3:16 ヨハネは皆に答えた,「わたしは確かに,あなた方に水でバプテスマを施しているが,わたしより強力な方が来られる。わたしはその方のサンダルの締めひもをほどくにも値しない。その方は,あなた方に聖霊と火でバプテスマを施すだろう。 Luke 3:17 あおり分けるものがその手にあり,その脱穀場をすっかりきれいにし,小麦をその倉に集め,もみ殻のほうは消すことのできない火で焼き尽くすだろう」。
Luke 3:18 こうして,他にも多くのことを勧めながら,民に良いたよりを宣教した。 Luke 3:19 ところが,領主ヘロデは,自分の兄弟の妻ヘロディアに関して,またヘロデが行なったすべての悪いことに関して彼に戒められたので, Luke 3:20 それらのすべての行為に加えて,ヨハネをろうやに閉じ込めた。 Luke 3:21 民が皆バプテスマを受けている時のこと,イエスもバプテスマを受け,祈っていた。天が開いて, Luke 3:22 聖霊がハトのような姿で彼の上に下って来た。そして,天から出て来た声が言った,「あなたはわたしの愛する子,わたしの心にかなう者である」。
Luke 3:23 イエス自身は,教え始めた時およそ三十歳で,(一般の見方では)ヨセフの子,ヘリの子, Luke 3:24 マタトの子,レビの子,メルキの子,ヤナイの子,ヨセフの子, Luke 3:25 マタティアの子,アモスの子,ナウムの子,エスリの子,ナガイの子, Luke 3:26 マアトの子,マタティアの子,セメインの子,ヨセフの子,ユダの子, Luke 3:27 ヨハナンの子,レサの子,ゼルバベルの子,シャルティエルの子,ネリの子, Luke 3:28 メルキの子,アディの子,コサムの子,エルモダムの子,エルの子, Luke 3:29 ヨサの子,エリエゼルの子,ヨリムの子,マタトの子,レビの子, Luke 3:30 シメオンの子,ユダの子,ヨセフの子,ヨナンの子,エリアキムの子, Luke 3:31 メレアの子,メナンの子,マタタの子,ナタンの子,ダビデの子, Luke 3:32 エッサイの子,オベドの子,ボアズの子,サルモンの子,ナフションの子, Luke 3:33 アミナダブの子,アラムの子,ヨラムの子,ヘツロンの子,ペレツの子,ユダの子, Luke 3:34 ヤコブの子,イサクの子,アブラハムの子,テラの子,ナホルの子, Luke 3:35 セルグの子,レウの子,ペレグの子,エベルの子,シェラの子, Luke 3:36 カイナンの子,アルパクシャドの子,セムの子,ノアの子,レメクの子, Luke 3:37 メトセラの子,エノクの子,ヤレドの子,マハラルエルの子,カイナンの子, Luke 3:38 エノスの子,セツの子,アダムの子,神の子であった。
Luke 4:0 Luke 4:1 イエスは聖霊に満ちてヨルダンから戻り,霊によって荒野の中を連れ回されて Luke 4:2 四十日に及び,悪魔の誘惑を受けていた。それらの日々の間,何も食べなかった。そののち,その期間が終わると,空腹を感じた。 Luke 4:3 悪魔は彼に言った,「もしあなたが神の子なら,この石がパンになるように命じなさい」。
Luke 4:4 イエスは彼に答えて言った,「『人はパンだけで生きるのではなく,神のすべての言葉によって生きなければならない』と書いてある」
Luke 4:5 悪魔は彼を高い山の上に連れて行き,またたく間に世のすべての王国を見せた。 Luke 4:6 悪魔は彼に言った,「このすべての権力とこれらの栄光をあなたに与えよう。それはわたしに渡されており,わたしは自分が望む者にそれを与えるからだ。 Luke 4:7 もしあなたがわたしを拝むなら,すべてはあなたのものになるだろう」。
Luke 4:8 イエスは彼に答えた,「サタンよ,わたしの後ろに下がれ! 『あなたの神なる主をあなたは崇拝しなければならず,その方だけに仕えなければならない』と書いてあるからだ」
Luke 4:9 悪魔は彼をエルサレムに連れて来て,神殿の高い所に立たせて,彼に言った,「もしあなたが神の子なら,ここから下に身を投げなさい。 Luke 4:10 こう書いてあるからだ,
『神はあなたについてご自分のみ使いたちに指示をお与えになり,あなたを守られるだろう』, Luke 4:11 そして,
『彼らはその手であなたを支え,あなたが石に足を打ちつけることのないようにする』」。 Luke 4:12 イエスは答えて彼に言った,「『あなたは,あなたの神なる主を試みてはならない』とも書いてある」
Luke 4:13 悪魔はすべての誘惑を終え,別の時が来るまで彼から離れた。
Luke 4:14 イエスは霊の力のうちにガリラヤに戻ったが,彼についての知らせは周囲の全地方に広がった。 Luke 4:15 すべての人から栄光を与えられながら,彼らの会堂で教えた。
Luke 4:16 自分が育てられたナザレに来た。安息日に自分の習慣どおりに会堂に入り,朗読のために立ち上がった。 Luke 4:17 預言者イザヤの書が彼に手渡された。彼はその書を開き,こう書かれている箇所を見つけた。
Luke 4:18 「主の霊がわたしの上にある。貧しい者たちに良いたよりを宣教するために,わたしに油を注いでくださったからだ。主はわたしを遣わされた。心の打ち砕かれた者たちをいやすため,捕らわれた者たちに解放を宣明するため,目の見えない者たちに視力の回復を宣明するため,圧迫されている者たちを解放するため, Luke 4:19 そして主の受け入れられる年を宣明するために」。 Luke 4:20 その書を閉じ,それを係の者に返して,腰を下ろした。会堂にいる皆の目が彼に注がれた。 Luke 4:21 彼は彼らに告げ始めた,「この聖句は,あなた方が耳にしたこの日に果たされた」
Luke 4:22 皆は彼について良い証言をし,彼の口から出て行く数々の恵み深い言葉に驚いた。そして言った,「これはヨセフの子ではないか」。
Luke 4:23 彼は彼らに言った,「あなた方はきっとこのたとえをわたしに告げるだろう,『医者よ,自分自身を治せ! カペルナウムでなされたと聞いたことすべてを,ここ,あなたの故郷でもやってくれ』」 。 Luke 4:24 彼は言った,「本当にはっきりとあなた方に告げるが,自分の故郷で受け入れられた預言者はいない。 Luke 4:25 そして,本当にあなた方に告げるが,エリヤの日々,天が三年と六か月の間閉じられ,大ききんが全地を襲ったとき,イスラエルには多くのやもめがいた。 Luke 4:26 エリヤはそのうちのだれのもとにも遣わされず,ただシドンの地のザレファツに,やもめである一人の女のもとにだけ遣わされた。 Luke 4:27 預言者エリシャの時に,イスラエルには多くのらい病人がいたが,彼らのうち一人も清められず,ただシリア人ナアマンだけが清められた」
Luke 4:28 これらの事柄を耳にして,会堂にいた彼らは皆憤りに満たされた。 Luke 4:29 立ち上がって,彼を町の外に投げ出し,彼らの町の建っている丘のがけっぷちまで連れて行き,彼を絶壁から投げ落とそうとした。 Luke 4:30 しかし彼は,彼らの真ん中を通り抜けて,去って行った。
Luke 4:31 ガリラヤの町カペルナウムに下って行った。安息日に彼らを教えていたが, Luke 4:32 人々は彼の教えに驚いた。その言葉には権威があったからである。 Luke 4:33 会堂には汚れた悪霊の霊に付かれた男がいて,大声で叫んで Luke 4:34 言った,「ああ! ナザレ人イエスよ,わたしたちはあなたと何のかかわりがあるのか。わたしたちを滅ぼしに来たのか。わたしはあなたがだれだか知っている。神の聖なる方だ!」
Luke 4:35 イエスは彼をしかりつけて言った,「黙れ。この人から出て行け!」  悪霊は,人々の真ん中にその人を投げ倒すと,傷を負わせずに彼から出て行った。
Luke 4:36 驚きがすべての者に臨み,人々は互いに語り合って言った,「この言葉はいったい何だ。彼は汚れた霊に権威と力をもって命じる。すると彼らはこの人から出て行くのだ!」 Luke 4:37 彼についての知らせは,周囲の地方の至る所に伝わった。
Luke 4:38 彼は会堂から立ち上がり,シモンの家に入った。シモンのしゅうとめが高い熱で苦しんでいて,人々は彼女のことで彼に懇願した。 Luke 4:39 彼は彼女のそばに立ち,熱をしかりつけた。すると熱は引いた。すぐに彼女は起き上がって彼らに仕えた。 Luke 4:40 日が沈むと,さまざまな疾患を持つ病人を抱えている者たちが皆,彼らを彼のもとに連れて来た。彼は,そのひとりひとりの上に両手を置いて,彼らをいやした。 Luke 4:41 悪霊たちも,「あなたは神の子キリストだ!」と叫んで言いながら,多くの人々から出て来た。彼は彼らをしかりつけ,彼らが語ることを許さなかった。彼らが彼はキリストだと知っていたからである。
Luke 4:42 朝になると,彼は出発し,人の住んでいない場所に行ったが,群衆が彼を探し回り,彼のもとにやって来て,自分たちのところから去って行かないよう彼を引き留めた。 Luke 4:43 しかし,彼は彼らに言った,「わたしはほかの町々にも神の王国の良いたよりを宣教しなければならない。わたしはそのために遣わされたからだ」 。 Luke 4:44 そして,ガリラヤの諸会堂で宣教していた。
Luke 5:0 Luke 5:1 さて,群衆が彼に押し迫って,神の言葉を聞いていたときのこと,彼はゲネサレト湖のほとりに立っていた。 Luke 5:2 湖のほとりに二そうの舟があるのを目にしたが,漁師たちはそれらの舟から下りて,自分たちの網を洗っていた。 Luke 5:3 そのうちの一そうのシモンの舟に乗り込み,彼に陸から少しこぎ出すように頼んだ。腰を下ろして,舟から群衆を教えた。 Luke 5:4 語り終えると,シモンに言った,「深いところにこぎ出して,漁のためにあなた方の網を下ろしなさい」
Luke 5:5 シモンは彼に言った,「師よ,わたしたちは夜通し働いても,何も取れませんでした。でも,あなたのお言葉ですから,網を下ろしてみます」。 Luke 5:6 それを行なうと,彼らは魚の大群を捕らえ,彼らの網は裂け始めた。 Luke 5:7 彼らはほかの舟にいる仲間たちに,やって来て自分たちを手助けするようにと合図を送った。彼らが来て,両方の舟をいっぱいにしたので,それらは沈み始めた。 Luke 5:8 それで,シモン・ペトロはこれを見て,イエスのひざもとにひれ伏し,言った,「わたしからお離れください。わたしは罪深い男なのです,主よ」。 Luke 5:9 というのは,自分たちが捕った魚の多さに,彼も,彼と共にいたすべての者も,びっくりしたからである。 Luke 5:10 また,シモンの仲間であったゼベダイの息子たち,すなわちヤコブとヨハネも同じようであった。
イエスはシモンに言った,「恐れてはいけない。今からのち,あなたは人々を生け捕るだろう」
Luke 5:11 彼らは自分たちの舟を陸に着けると,すべてを残して彼に従った。 Luke 5:12 彼がある町にいた間のこと,見よ,全身らい病の男がいた。イエスを見ると,顔を地に伏せて,彼に懇願して言った,「主よ,あなたは,もしそうお望みになれば,わたしを清くすることがおできになります」。
Luke 5:13 イエスは手を伸ばして彼に触り,こう言った,「わたしはそう望む。清くなりなさい」
すぐにらい病は彼から去った。 Luke 5:14 イエスは彼に,だれにも言わないように命じた。 「ただ行って,自分の体を祭司に見せ,あなたの清めのためにモーセの命じたとおりにささげ物をしなさい。人々への証明のためだ」。 Luke 5:15 しかし,彼についての知らせはますます広まって行き,話を聞くため,また自分たちの病弱さを彼にいやしてもらうために,大群衆がやって来た。 Luke 5:16 しかし,彼は寂しい所に引きこもり,祈っていた。
Luke 5:17 ある日,彼が教えていると,ファリサイ人たちと律法の教師たちとがそこに座っていた。ガリラヤとユダヤとのあらゆる村々およびエルサレムから出て来た者たちである。人々をいやすために,主の力が彼と共にあった。 Luke 5:18 見よ,男たちが彼のもとに,体のまひした人を寝床に載せて運んで来た。そして,その人を運び込んでイエスの前に横たえようとした。 Luke 5:19 群衆のせいで彼を運び入れる方法が見つからなかったので,屋上に上ってかわらをはがし,そこを通して彼の寝床をイエスの真ん前に下ろした。 Luke 5:20 イエスは彼らの信仰を見て,体のまひした人に言った。「人よ,あなたの罪は許された」。
Luke 5:21 律法学者たちとファリサイ人は,論じ始めて言った,「冒とくを語るこの人はだれなのか。神おひとりのほか,だれが罪を許せるだろうか」。
Luke 5:22 しかしイエスは,彼らの考えに気づき,彼らに答えた,「なぜあなた方は心の中でそのように論じているのか。 Luke 5:23 『あなたの罪は許されている』と告げるのと,『起き上がって歩きなさい』と言うのでは,どちらがたやすいか。 Luke 5:24 だが,人の子が地上で罪を許す権威を持っていることをあなた方が知るために」 (体のまひした人に言った), 「あなたに告げる。起き上がって,寝床を取り上げて,自分の家に帰りなさい」
Luke 5:25 すぐに彼は人々の前で起き上がり,自分が横たわっていた床を取り上げて,神に栄光をささげながら,自分の家に帰って行った。 Luke 5:26 驚きがすべての者をとらえ,彼らは神に栄光をささげた。彼らは恐れに満たされて言った,「今日は不思議なことを見た」。
Luke 5:27 こうした事の後,イエスは出て行き,収税所に座っているレビという名の徴税人を見て,「わたしに従いなさい!」 と言った。
Luke 5:28 彼はすべてを残し,立ち上がってイエスに従った。 Luke 5:29 レビは彼のために自分の家で大きな祝宴を催した。徴税人たちやほかの者たちからなる大群衆が彼らと共に横になっていた。 Luke 5:30 彼らの律法学者たちとファリサイ人たちは,彼の弟子たちに対して不平を言った,「なぜあなた方は,徴税人たちや罪人たちと共に食べたり飲んだりするのか」。 Luke 5:31 イエスは彼らに答えた,「健康な人たちに医者は必要でなく,病気の人たちに必要なのだ。 Luke 5:32 わたしは義人たちではなく,罪人たちを悔い改めへと呼び寄せるために来た」
Luke 5:33 彼らは彼に言った,「ヨハネの弟子たちはたびたび断食と祈りをし,ファリサイ人の弟子たちも同じようにしているのに,あなたの弟子たちが食べたり飲んだりしているのはなぜですか」。
Luke 5:34 彼は彼らに言った,「あなた方は,花婿の友人たちに,花婿が共にいるのに断食させられるだろうか。 Luke 5:35 だが,花婿が彼らから取り去られる日々が来る。それらの日々には,彼らは断食するだろう」 。 Luke 5:36 たとえでも彼らに語った。「新しい衣から取った布切れを古い衣に当てる人はいない。そんなことをすれば,新しい衣が破けてしまうし,新しい衣から取った布切れは古い衣には合わないだろう。 Luke 5:37 新しいブドウ酒を古い皮袋に入れる人はいない。そんなことをすれば,新しいブドウ酒は皮袋を破裂させ,ブドウ酒は流れ出て,皮はだめになるだろう。 Luke 5:38 そうではなく,新しいブドウ酒は新しい皮袋に入れられるべきだ。そうすればどちらも長持ちするのだ。 Luke 5:39 古いブドウ酒を飲んで,すぐに新しいブドウ酒を欲しがる者はいない。その者は,『古いのが良い』と言うからだ」。
Luke 6:0 Luke 6:1 さて,最初の安息日の次の安息日に,彼が穀物畑を通り抜けていたときのことである。彼の弟子たちは穀物の穂を摘み,両手でこすり合わせて食べ始めた。 Luke 6:2 しかしファリサイ人たちが彼らに言った,「なぜあなた方は安息日に許されていないことをしているのか」。
Luke 6:3 イエスは彼らに答えて言った,「ダビデが,自分も共にいた者たちも空腹だったときに何をしたか,あなた方は一度も読んだことがないのか。 Luke 6:4 彼がどのようにして神の家に入り,ただ祭司たちのほかは食べることが許されていない供えのパンを取って食べ,共にいた者たちにも与えたかを」 。 Luke 6:5 彼は彼らに言った,「人の子は安息日の主なのだ」
Luke 6:6 また別の安息日に,会堂に入って教えていたときのことである。一人の人がそこにいたが,その右手はなえていた。 Luke 6:7 律法学者たちとファリサイ人たちは,安息日にいやすかどうか,彼の様子をうかがっていた。彼に不利な罪状を見つけるためであった。 Luke 6:8 しかし彼は彼らの考えを知って,片手のなえた人に,「起き上がって,真ん中に立ちなさい」 と言った。彼は起き上がって立った。 Luke 6:9 イエスは彼らに言った,「あなた方に尋ねよう。安息日に許されているのは,善を行なうことか,害を加えることか。命を救うことか,殺すことか」 。 Luke 6:10 彼は彼らすべてを見回して,「あなたの手を伸ばしなさい」 とその人に言った。そのようにすると,その手はもう一方の手と同じようによくなった。 Luke 6:11 しかし彼らは激怒に満たされ,イエスに対して何をしようかと語り合った。
Luke 6:12 そのころ,彼は祈るために山に出て行き,夜通し神に祈り続けていた。 Luke 6:13 朝になると,弟子たちを呼び寄せて,その中から十二人を選び出し,これを使徒とも名付けた。 Luke 6:14 彼がペトロとも名付けたシモン,その兄弟アンデレ,ヤコブ,ヨハネ,フィリポ,バルトロマイ, Luke 6:15 マタイ,トマス,アルファイオスの子ヤコブ,熱心党と呼ばれたシモン, Luke 6:16 ヤコブの子ユダ,それにユダ・イスカリオト。このユダはまた,裏切り者になった者でもある。 Luke 6:17 彼は彼らと共に下りて行き,平らな所に立った。弟子たちからなる群衆,また,全ユダヤとエルサレム,およびテュロスとシドンの海岸から来たおびただしい数の人々が共にいた。彼らがやって来るのは,彼の話を聞くため,また自分たちの疾患をいやしてもらうためであった。 Luke 6:18 汚れた悪霊に悩まされている者たちもいたが,彼らはいやされた。 Luke 6:19 群衆はみな彼に触ろうとした。彼のもとから力が出て来て,彼らすべてをいやしたからである。
Luke 6:20 彼は弟子たちに向かって目を上げて,こう言った。
「貧しいあなた方は幸いだ,神の王国はあなた方のものだからだ。 Luke 6:21 飢えているあなた方は幸いだ,あなた方は満たされるからだ。今泣いているあなた方は幸いだ,あなた方は笑うようになるからだ。 Luke 6:22 人々があなた方を憎むとき,また人の子のゆえにあなた方を締め出し,あざけり,あなた方の名を悪いものとして退けるとき,あなた方は幸いだ。 Luke 6:23 その日には喜んで飛び跳ねなさい。見よ,天においてあなた方の報いは大きいからだ。彼らの父祖たちは預言者たちにも同じようにしたのだ。 Luke 6:24 「だが,富んでいるあなた方は災いだ!あなた方は自分の慰めをすでに受けているからだ。 Luke 6:25 今満たされているあなた方,そのあなた方は災いだ!あなた方は飢えるようになるからだ。今笑っているあなた方は災いだ!あなた方は泣き悲しむようになるからだ。 Luke 6:26 人々があなた方のことを良く言うときには,災いだ! 彼らの父祖たちは偽預言者たちにも同じことをしたのだ。
Luke 6:27 「だが,聞いているあなた方に告げる。敵を愛し,憎む者たちに良いことをし, Luke 6:28 のろう者たちを祝福し,虐待する者たちのために祈りなさい。 Luke 6:29 あなたの一方のほおを打つ者には,反対側をも差し出しなさい。外衣を取り去る者には,上着をも拒んではいけない。 Luke 6:30 求めるすべての者には与えなさい。そして,あなたの持ち物を取り去る者からは,返してもらおうとしてはいけない。
Luke 6:31 「人々からして欲しいと思うことを,人々にもちょうど同じようにしなさい。 Luke 6:32 自分を愛してくれる者たちを愛したからといって,それがあなた方に何の名誉になるだろうか。罪人たちでさえ,自分を愛してくれる者たちを愛するのだ。 Luke 6:33 自分に良いことをしてくれる者たちに良いことをしたからといって,それがあなた方に何の名誉になるだろうか。罪人たちでさえ,同じことをしているのだ。 Luke 6:34 返してもらうことを期待して貸したからといって,それがあなた方に何の名誉になるだろうか。罪人たちでさえ,同じだけ取り戻そうとして,罪人たちに貸しているのだ。 Luke 6:35 そうではなく,あなた方の敵を愛し,良いことをし,返してもらうことを期待せずに貸しなさい。そうすればあなた方の報いは大きく,あなた方はいと高き方の子らになるだろう。その方は,感謝しない悪い者たちにも親切であられるからだ。
Luke 6:36 「だから,あなた方の父もあわれみ深いように,あわれみ深くなりなさい。 Luke 6:37 裁いてはいけない,そうすれば裁かれないだろう。罪に定めてはいけない,そうすれば罪に定められることはないだろう。許しなさい,そうすれば許されるだろう。
Luke 6:38 「与えなさい,そうすれば与えられるだろう。押し入れ,揺すり入れ,あふれ出るほどに良いはかりで,あなた方に与えられるだろう。あなた方が量るその同じはかりで,あなた方に量り返されるだろう」。
Luke 6:39 彼は彼らにたとえを語った。「盲人が盲人を案内できるだろうか。両方とも穴に落ちてしまわないだろうか。 Luke 6:40 弟子はその教師より上ではないが,十分に訓練された者はその教師のようになるのだ。 Luke 6:41 なぜあなたは,兄弟の目の中にあるわらくずは見るのに,自分の目の中にある丸太のことを考えないのか。 Luke 6:42 また,あなた自身は自分の目の中にある丸太を見ないのに,どうして兄弟に『兄弟,あなたの目からそのわらくずを取らせてくれ』と言えるのか。偽善者よ! まず自分の目から丸太を取り出しなさい。そうすればあなたは,はっきりと見えて,兄弟の目からわらくずを取り出すことができるだろう。 Luke 6:43 良い木が腐った実を生み出すことはなく,腐った木が良い実を生み出すこともないのだ。 Luke 6:44 というのは,それぞれの木はその実によって知られるからだ。人々はイバラからイチジクを集めることはないし,ノバラの茂みからブドウを集めることもないのだ。 Luke 6:45 善い者は自分の心の良い宝の中から良いものを取り出し,悪い者は自分の心の悪い宝の中から悪いものを取り出す。心に満ちあふれているものの中から,人の口は語るからだ。
Luke 6:46 「なぜあなた方は,『主よ,主よ』とわたしを呼びながら,わたしの言う事柄を行なわないのか。 Luke 6:47 わたしのもとに来て,わたしの数々の言葉を聞き,それらを行なうすべての者が,何に似ているかをあなた方に示そう。 Luke 6:48 彼は,深く掘り下げ,岩の上に土台を据えて家を建てる人に似ている。洪水が起こり,激流が家に打ち当たったが,それは揺り動かなかった。岩の上に土台を据えていたからだ。 Luke 6:49 だが,聞いても行なわない者は,土台なしで地面の上に家を建てた人に似ている。激流が打ち当たると,それはすぐに倒れ,その損壊はひどいものだった」。
Luke 7:0 Luke 7:1 彼は話を民に聞かせ終わると,カペルナウムに入って行った。 Luke 7:2 一人の百人隊長の召使いで,彼にとって大切な者が,病気で死にかかっていた。 Luke 7:3 彼はイエスについて聞くと,そのもとにユダヤ人の長老たちを遣わし,やって来て自分の召使いを救ってくれるよう,彼に頼んだ。 Luke 7:4 イエスのもとに来ると,彼らは彼に真剣に懇願して言った,「あの方は,このことをしていただくのにふさわしい人です。 Luke 7:5 わたしたちの民族を愛して,わたしたちのために会堂を建ててくれたのです」。 Luke 7:6 イエスは彼らと共に出かけた。彼がその家からあまり遠くない所まで来た時,その百人隊長は友人たちを彼のもとに遣わして,彼に言った,「主よ,お手数をかけるには及びません。わたしは自分の屋根の下にあなたをお迎えするほどの者ではないからです。 Luke 7:7 そのために,あなたのもとに伺うことさえふさわしくないと思ったのです。むしろ,お言葉を下さい。そうすればわたしの召使いはいやされるでしょう。 Luke 7:8 というのも,わたしも権威の下に置かれた者ですが,わたしの下にも兵士たちがいます。わたしがある者に『行け!』と言えば行きますし,別の者に『来い!』と言えば来ます。またわたしの召使いに『これをしろ』と言えばそれをします」。
Luke 7:9 イエスはこれらの事柄を聞くと,彼について驚嘆し,自分に従っている者たちに言った,「あなた方に告げるが,イスラエルにおいて,わたしはこれほどの信仰を見いだしたことがない」 。 Luke 7:10 遣わされた者たちがその家に戻ってくると,病気であった召使いがよくなっているのを見た。
Luke 7:11 その後すぐ,彼はナインと呼ばれる町に行った。大勢の弟子たちと大群衆が彼に伴っていた。 Luke 7:12 彼が町の門に近づくと,見よ,死んだ者が運び出されるところであった。それは,やもめである母親の一人息子であった。大勢の町の人々が彼女と共にいた。 Luke 7:13 主は彼女を見ると,彼女に対して哀れみを抱き,彼女に言った, 「泣いてはいけない」。 Luke 7:14 近づいてひつぎに触れると,運んでいる者たちは立ち止まった。彼は言った,「若者よ,あなたに告げる,起きなさい!」 Luke 7:15 死んでいた者は起き直り,ものを言い始めた。そしてイエスは彼をその母に渡した。
Luke 7:16 みんなは恐れを抱き,神に栄光をささげて言った,「偉大な預言者がわたしたちの間に起こされた!」 また,「神はその民に目を向けてくださった!」 Luke 7:17 彼に関するこの知らせは,ユダヤ全土および周囲の全地域に出て行った。
Luke 7:18 ヨハネの弟子たちは,これらすべてのことについてヨハネに告げた。 Luke 7:19 ヨハネは自分の弟子のうちの二人を呼び寄せ,彼らをイエスのもとに遣わして,「あなたが来たるべき方なのですか。それとも,わたしたちはほかの方を待つべきでしょうか」と言わせた。 Luke 7:20 その者たちはイエスのもとに来て言った,「バプテスマを施す人ヨハネがわたしたちをあなたのもとに遣わして,『あなたが来たるべき方なのですか。それとも,わたしたちはほかの方を待つべきでしょうか』と申しました」。
Luke 7:21 その時に,彼は疾患や伝染病や悪い霊から多くの人をいやし,目の見えない多くの人に視力を与えていた。 Luke 7:22 イエスは彼らに答えた,「行って,あなた方が見聞きしている事柄をヨハネに告げなさい。目の見えない人たちは見えるようになり,足の不自由な人たちは歩き,らい病の人たちは清められ,耳の聞こえない人たちは聞き,死んだ人たちは生き返らされ,貧しい人たちには良いたよりが宣教されている。 Luke 7:23 わたしに背かない者は幸いだ」
Luke 7:24 ヨハネの使いの者たちが去って行くと,彼は群衆にヨハネについてこう告げ始めた。「あなた方は何を見るために荒野へ出て行ったのか。風に揺れるアシか。 Luke 7:25 そうでなければ,何を見るために出て行ったのか。柔らかな衣を着た人か。見よ,豪華に装って優美に暮らしている者たちなら王たちの家にいる。 Luke 7:26 そうでなければ,なぜ出て行ったのか。預言者か。そうだ,あなた方に言うが,預言者よりはるかに優れた者だ。 Luke 7:27 この者こそ,このように書かれている者だ。
『見よ,わたしはあなたの面前にわたしの使者を遣わす。その者はあなたの前に道を整えるだろう』。
Luke 7:28 「本当にはっきりとあなた方に告げる。女から生まれた者の中で,バプテスマを施す人ヨハネより偉大な者はいない。だが,神の王国で最も小さな者も,彼よりは偉大だ」。
Luke 7:29 すべての民と徴税人たちがそれを聞いた時,彼らは,ヨハネのバプテスマを受けることにより,神の正しさを宣言した。 Luke 7:30 しかし,ファリサイ人たちと律法の専門家たちは,彼からバプテスマを受けないことにより,神の勧めをはねのけた。
Luke 7:31 しかし主は言った,「わたしはこの世代の人々を何にたとえようか。彼らは何に似ているだろうか。 Luke 7:32 彼らは,市場に座って,互いに叫び合っている子供たちに似ている。こう言うのだ,『君たちのために笛を吹いたのに,踊ってくれなかった。君たちのために悲しんだのに,泣いてくれなかった』。 Luke 7:33 というのも,バプテスマを施す人ヨハネがやって来て,パンを食べもせず,ぶどう酒を飲みもしないと,あなた方は,『彼には悪霊がいる』と言う。 Luke 7:34 人の子がやって来て食べたり飲んだりすると,あなた方は,『見ろ,大食いの大酒飲み,徴税人たちや罪人たちの友!』と言う。 Luke 7:35 知恵はその実によって,正しいことが証明されるのだ」。
Luke 7:36 ファリサイ人たちのうちのある者が,一緒に食事をするよう彼を招いた。彼はそのファリサイ人の家に入り,食卓に着いた。 Luke 7:37 見よ,罪人である一人の女がその町にいたが,彼がファリサイ人の家で横になっていると知ると,香油の入った雪花石こうのつぼを持って来た。 Luke 7:38 泣きながら後ろから彼の足もとに進み寄り,自分の涙で彼の両足をぬらし始め,自分の髪でそれらをぬぐい,その両足に口づけし,それらに香油を塗った。 Luke 7:39 彼を招待したファリサイ人はこれを見て,自分の中で言った,「この人がもし預言者なら,自分に触っているこの者がだれで,どんな女なのか分かるはずだ。罪人だということを」。
Luke 7:40 イエスは彼に答えた,「シモン,あなたに言うことがある」
彼は言った,「先生,おっしゃってください」。
Luke 7:41 「ある貸し主に二人の借り主がいた。一人は五百デナリ,もう一人は五十デナリを借りていた。 Luke 7:42 彼らが返済できないので,彼は彼ら両方の借金を帳消しにしてやった。それで,彼らのうちどちらが彼をいちばん多く愛するだろうか」。
Luke 7:43 シモンは答えた,「いちばん多く許されたほうだと思います」。
イエスは彼に言った,「あなたは正しく判断した」 。 Luke 7:44 その女のほうを向いて,シモンに言った,「あなたはこの女が目に入るか。わたしがあなたの家に入っても,あなたは足を洗う水をくれなかったが,彼女はわたしの両足をその涙でぬらし,それらをその髪でぬぐった。 Luke 7:45 あなたはわたしに口づけしてくれなかったが,彼女は,わたしが入って来た時から,わたしの両足に口づけしてやまなかった。 Luke 7:46 あなたはわたしの頭に油を塗ってくれなかったが,彼女はわたしの両足に香油を塗った。 Luke 7:47 だから,あなたに告げるが,彼女の多くある罪は許されている。彼女が多く愛したからだ。だが,少ししか許されていない者は,少ししか愛さないのだ」 。 Luke 7:48 彼は彼女に言った,「あなたの罪は許されている」
Luke 7:49 彼と共に食卓に着いていた者たちは自分の中で言い始めた,「罪さえ許すこの人はいったいだれなのだろう」。
Luke 7:50 彼はその女に言った,「あなたの信仰があなたを救ったのだ。平安のうちに行きなさい」
Luke 8:0 Luke 8:1 その後間もなく,彼は町々や村々を通って行きながら,宣教し,神の王国の良いたよりを伝えた。彼と共にいたのは十二人, Luke 8:2 また,悪い霊たちと病弱さからいやされた何人かの女たちであった。すなわち,七つの悪霊たちが出て行った,マグダレネと呼ばれるマリア, Luke 8:3 そしてヘロデの管理人クーザスの妻ヨハンナ,スサンナ,そのほか大勢の女たちである。彼女たちは,自分たちの財産をもって彼らに仕えていた。 Luke 8:4 大群衆が集まって来て,人々があらゆる町から彼のもとに来ていた時,彼はたとえを用いて話した。 Luke 8:5 「ある耕作人が種をまきに出かけた。種をまいているときのこと,あるものは道ばたに落ち,空の鳥たちがやって来て,それをむさぼり食ってしまった。 Luke 8:6 別の種は岩の上に落ちた。そして,すぐに生え出たが,水分がないために枯れ果ててしまった。 Luke 8:7 別の種はイバラの真ん中に落ち,イバラが生え出てそれをふさいでしまった。 Luke 8:8 別の種は良い土に落ち,成長して,百倍の実を生み出した」。 これらのことを言いながら,彼は叫んだ,「だれでも聞く耳のある者は聞きなさい!」
Luke 8:9 弟子たちは彼に尋ねた,「このたとえはどんな意味なのですか」。
Luke 8:10 彼は言った,「あなた方には神の王国の秘密を知ることが与えられているが,残りの者たちにはたとえで与えられる。それは,『彼らが見るには見るが分からず,聞くには聞くが理解しない』ためだ。 Luke 8:11 さて,このたとえはこういうことだ。種は神の言葉だ。 Luke 8:12 道ばたのものは,み言葉を聞く人たちだが,そののち悪魔がやって来て,彼らの心からみ言葉を取り去るのだ。 Luke 8:13 岩の上のものは,こういう人たちのことだ。み言葉を聞くと,喜んですぐに受け入れる。だが,根がないので,しばらくは信じても,誘惑の時には離れてしまう。 Luke 8:14 イバラの間に落ちたものは,み言葉を聞いた人たちだが,思い煩いや,富や,人生の快楽でふさがれてしまい,実が熟さない。 Luke 8:15 良い土のものとは,誠実な良い心でみ言葉を聞き,それを堅く守り,忍耐して実を生み出す人たちだ。
Luke 8:16 「ともし火をともしてから,それを器で覆い隠したり,寝台の下に置く者はいない。むしろ,入って来る者たちに光が見えるように,それを燭台の上に置く。 Luke 8:17 隠されているもので,明らかにされないものはなく,秘密にされているもので,知られず,明るみに出ないものはないからだ。 Luke 8:18 それで,自分がどのように聞いているかに注意しなさい。持っている者にはさらに与えられ,持っていない者からは,自分では持っていると思うものまでも取り去られることになるからだ」
Luke 8:19 彼の母と兄弟たちが彼のもとにやって来たが,群衆のせいでそばに行けなかった。 Luke 8:20 そこで彼に,「あなたのお母さんと兄弟たちが外に立っていて,あなたに会うことを望んでいます」という知らせがあった。
Luke 8:21 しかし彼は彼らに答えた,「わたしの母,またわたしの兄弟たちとは,神の言葉を聞いて,それを行なうこれらの人たちのことだ」
Luke 8:22 ある日のこと,彼は弟子たちと共に舟に乗り込み,彼らに言った,「湖の向こう岸に渡ろう」 。そこで彼らは出航した。 Luke 8:23 しかし,彼らがこいでいる間に,彼は眠りに落ちた。風あらしが湖に吹き下ろして,彼らは水びたしになり,危険な状態になった。 Luke 8:24 彼らは彼のもとに来て,彼を起こして言った,「師よ,師よ,わたしたちは死んでしまいます!」 彼は起き上がり,風と荒れ狂う水とをしかりつけた。するとそれらはやみ,なぎになった。 Luke 8:25 彼は彼らに言った,「あなた方の信仰はどこにあるのか」 。彼らは恐れ驚いて,互いに言い合った,「いったいこの方はどなただろう。風や水さえも,この方が命じると従うとは」。 Luke 8:26 彼らは,ガリラヤの向かい側にあるゲラサ人たちの地方に着いた。
Luke 8:27 イエスが岸に降り立つと,長い間悪霊たちに取りつかれている一人の男が町から出て来て彼に出会った。彼は服を着ておらず,家に住まずに墓場にいた。 Luke 8:28 イエスを見ると,叫び声を上げて彼の前にひれ伏し,大声で言った,「いと高き神の子イエスよ,わたしはあなたと何のかかわりがあるのか。あなたにお願いする,わたしを苦しめないでくれ!」 Luke 8:29 というのは,イエスは汚れた霊に,その人から出て行くように命じたからである。汚れた霊はたびたび彼に取りついていたのである。彼は監視の下に置かれ,足かせや鎖で縛られた。だが,かせはばらばらに壊され,彼は悪霊によって寂しい所に追いやられるのであった。
Luke 8:30 イエスは彼に尋ねた,「あなたの名前は何か」
彼は言った,「レギオンだ」。多くの悪霊たちが彼の中に入っていたからである。 Luke 8:31 彼らはイエスに,自分たちを底なしの深みに行けとは命じないように懇願した。 Luke 8:32 ところで,その山ではたくさんの豚の群れが飼われていた。そこで彼らは,それらの中に入ることを認めてくれるように懇願した。彼は彼らに認めた。 Luke 8:33 汚れた霊たちはその人から出て来て豚たちの中に入った。それでその群れは,険しい土手を下って湖に突進し,おぼれ死んだ。 Luke 8:34 それらを飼っていた者たちは,起きたことを見ると,逃げて行き,その町とその地方でそのことを知らせた。
Luke 8:35 人々は起きたことを見ようと出て来た。イエスのもとに来て,悪霊たちが出て行った男がイエスの足もとに座り,服を着て,正気でいるのを見つけた。それで彼らは恐れた。 Luke 8:36 また,それを見ていた者たちは,悪霊たちに取りつかれていた人がどのようにしていやされたかを彼らに告げた。 Luke 8:37 周囲のゲラサ人たちの地方から来たすべての人々は,自分たちのもとから去るようにとイエスに求めた。非常に恐れていたからである。彼は舟に乗って戻って行った。 Luke 8:38 しかし悪霊たちが出て行ったその人は,一緒に行かせてくれるようイエスに懇願した。しかしイエスはこう言って彼を去らせた。 Luke 8:39 「あなたの家に帰り,神があなたのためにどんな大きな事柄をしてくださったかを知らせなさい」。 彼は立ち去り,イエスが彼のためにどんな大きな事柄を行なったかを町全体で宣明した。
Luke 8:40 イエスが戻ると,群衆は彼を喜んで迎えた。みんなが彼を待っていたからである。 Luke 8:41 見よ,ヤイロスという名の者がやって来たが,この者は会堂長であった。イエスの足もとにひれ伏し,自分の家に入ってくれるよう懇願した。 Luke 8:42 というのは,彼には十二歳のひとり娘がいたが,その娘が死にかけていたのである。しかしイエスが進んで行くと,群衆が彼に押し迫った。 Luke 8:43 十二年間も血の流出をわずらっている女がいた。さまざまな医者のために全財産を使い果たしたが,だれにも直してもらえなかった。 Luke 8:44 この女が彼の後ろに近づき,その衣の房べりに触った。すると,すぐに彼女の血の流出は止まった。 Luke 8:45 イエスは言った,「わたしに触ったのはだれか」
みんながそれを否定していると,ペトロや彼と共にいた者たちが言った,「師よ,群衆があなたに迫って押しているのに,『だれが触ったか』 と言われるのですか」。
Luke 8:46 しかしイエスは言った,「だれかがわたしに触ったのだ。力が自分から出て行くのが分かったのだ」 。 Luke 8:47 女は隠れられないのを見ると,おののきながらやって来て,彼の前にひれ伏し,すべての民の面前で,彼に触った理由と,自分がどのようにしてすぐにいやされたかを知らせた。 Luke 8:48 彼は彼女に言った,「娘よ,元気を出しなさい。あなたの信仰があなたをよくならせた。平安のうちに行きなさい」
Luke 8:49 彼がまだ話しているうちに,会堂長の家からある人が来て,会堂長に言った,「あなたの娘さんは亡くなりました。先生を煩わすには及びません」。
Luke 8:50 しかし,イエスはそれを聞いて,会堂長に答えた,「恐れることはない。ただ信じなさい。そうすれば彼女はいやされる」
Luke 8:51 その家にやって来ると,ペトロとヨハネとヤコブ,そして子供の父と母のほかは,だれも中に入ることを許さなかった。 Luke 8:52 みんなが泣いたり,彼女のために嘆いたりしていた。しかし彼は言った,「泣かなくてもよい。彼女は死んだのではなく,眠っているのだ」
Luke 8:53 人々は,彼女が死んでいるのを知っていたので,彼をばかにした。 Luke 8:54 しかし彼は,みんなを外に出し,彼女の手を取って,「子供よ,起きなさい!」と呼びかけた。 Luke 8:55 彼女の霊は戻り,彼女はすぐに起き上がった。彼は,彼女に何か食べる物を与えるようにと命じた。 Luke 8:56 彼女の両親はびっくりした。しかし彼は,起きたことをだれにも告げないよう彼らに命じた。
Luke 9:0 Luke 9:1 彼は十二人を呼び集め,彼らにすべての悪霊たちに対する,またさまざまな疾患を治すための力と権威を与えた。 Luke 9:2 神の王国を宣教し,病気をいやすために彼らを遣わした。 Luke 9:3 彼らに言った,「旅のために何も持って行かないように。つえも,袋も,パンも,お金も,それぞれ二枚の上着も持ってはいけない。 Luke 9:4 どこでも家に入ったなら,そこにとどまり,そこから出発しなさい。 Luke 9:5 人々があなた方を受け入れないなら,その町から出発する時に,彼らに対する証言のため,あなた方の両足からそのちりさえも払い落としなさい」
Luke 9:6 彼らは去って行き,至る所で福音を宣教し,病気をいやしながら,村から村を巡って行った。 Luke 9:7 さて,領主ヘロデは,イエスによってなされたすべてのことを聞いて,ひどく当惑していた。というのは,ある人々はヨハネが死んだ者たちの中から生き返ったと言っており, Luke 9:8 またある人々はエリヤが表われたと言い,さらに別の人々は昔の預言者たちの一人が生き返ったと言っていたからである。 Luke 9:9 ヘロデは言った,「ヨハネならわたしが首をはねた。だが,わたしがこうしたうわさを聞くこの者はだれなのだろう」。彼はイエスを見たいと思った。 Luke 9:10 使徒たちは戻って来ると,自分たちが行なったことをイエスに告げた。
彼は彼らを連れて,ベツサイダと呼ばれる町の寂しい場所へ自分たちだけで引きこもった。 Luke 9:11 しかし群衆はそれに気づき,彼に従った。彼は彼らを喜んで迎え,神の王国について彼らに語り,いやしを必要としていた者たちを治した。 Luke 9:12 日が傾き始めたので,十二人がやって来て彼に言った,「群衆を去らせて,彼らが周りの村や農園に行って,宿を取り,食べ物を得るようにさせてください。わたしたちはこんな寂しい場所にいるのですから」。
Luke 9:13 しかし彼は彼らに答えた,「あなた方が彼らに食べ物を与えなさい」
彼らは言った,「わたしたちには五つのパンと二匹の魚しかありません。わたしたちが行って,この人々すべてのために食べ物を買わない限りは」。 Luke 9:14 というのは,およそ五千人の男たちがいたからである。
彼は弟子たちに言った,「彼らを五十人ぐらいずつ組にして座らせなさい」 。 Luke 9:15 彼らはそのようにし,みんなを座らせた。 Luke 9:16 彼は五つのパンと二匹の魚を取り,天を見上げ,祝福してからパンを裂き,弟子たちに渡して群衆の前に置かせた。 Luke 9:17 みんなは食べて満ち足りた。彼らは残ったパン切れを十二のかごに集めた。
Luke 9:18 彼がひとりで祈っていたとき,弟子たちが共にいた。そして彼は彼らに尋ねた,「群衆はわたしをだれだと言っているか」
Luke 9:19 彼らは答えた,「『バプテスマを施す人ヨハネ』,またほかの者たちは『エリヤ』と言い,さらにほかの者たちは,昔の預言者たちの一人が生き返ったのだと言っています」。
Luke 9:20 彼は彼らに言った,「だが,あなた方はわたしをだれだと言うのか」
ペトロが答えた,「神のキリストです」。
Luke 9:21 しかし彼は彼らを戒め,このことをだれにも告げないようにと命じて, Luke 9:22 こう言った。「人の子は多くの苦しみを受け,長老たちや祭司長たちや律法学者たちから退けられ,かつ殺され,そして三日後に生き返らなければならない」
Luke 9:23 彼は皆に言った,「だれでもわたしに付いて来たいと望むなら,その人は自分を否定し,自分の十字架を取り上げて,わたしに従いなさい。 Luke 9:24 自分の命を救いたいと望む者はそれを失うことになり,わたしのために自分の命を失う者はそれを救うことになるからだ。 Luke 9:25 人が全世界を手に入れても,それによって自分自身を失ったり,奪われたりするなら,何の益になるだろうか。 Luke 9:26 わたしとわたしの言葉を恥じる者は,人の子もまた,自分の栄光,また父と聖なるみ使いたちとの栄光のうちに来るとき,その者を恥じるだろう。 Luke 9:27 だが,真実にあなた方に告げる。ここに立っている者の中には,神の王国を見るまでは決して死を味わわない者たちがいる」
Luke 9:28 これらの話の八日後,彼はペトロとヨハネとヤコブを伴い,祈るために山に上った。 Luke 9:29 彼が祈っていると,顔の様子が変えられ,衣服は白く目もくらむほどになった。 Luke 9:30 見よ,二人の人がイエスと語り合っていたが,それはエリヤとモーセであった。 Luke 9:31 栄光のうちに現われて,彼がエルサレムで遂げることになる出発について話していたのである。
Luke 9:32 ペトロおよび彼と共にいた者たちはひどく眠かったが,すっかり目を覚ますと,彼の栄光と,彼と共に立っている二人の人を目にした。 Luke 9:33 二人が彼から去って行くとき,ペトロがイエスに言った,「師よ,わたしたちがここにいるのは良いことです。幕屋を三つ作りましょう。一つはあなたのため,一つはモーセのため,一つはエリヤのためです」。彼は自分が何を言っているのか分からなかった。
Luke 9:34 彼がこれらのことを言っているうちに,雲が起こって彼らを影で覆った。雲の中に入ったとき,彼らは恐れた。 Luke 9:35 その雲から声がして言った,「これはわたしの愛する子である。この者に聞き従いなさい!」 Luke 9:36 この声がした時には,イエスだけがそこにいるのが分かった。彼らは沈黙を守り,目にした事柄をその当時はだれにも告げなかった。
Luke 9:37 次の日,彼らが山から下りて来ると,大群衆が彼を迎えた。 Luke 9:38 見よ,群衆の中の一人の男が叫んで言った,「先生,お願いですから,わたしの息子を見てやってください。わたしのひとり息子なのです。 Luke 9:39 ご覧ください,霊が取りつくと,彼は突然に叫び出すのです。そしてそれは彼にあわを吹かせながらけいれんさせ,なかなか離れないで,彼をひどく傷つけるのです。 Luke 9:40 わたしは,あなたの弟子たちにそれを追い出してくれるよう願いましたが,彼らにはできませんでした」。
Luke 9:41 イエスは答えた,「信仰のないねじ曲がった世代よ,いつまでわたしはあなた方と一緒にいて,あなた方のことを我慢しようか。あなたの息子をここに連れて来なさい」
Luke 9:42 その子がやって来る間,その悪霊は彼を投げ倒し,激しくけいれんさせた。しかしイエスはその汚れた霊をしかりつけ,その少年をいやし,彼をその父親に返した。 Luke 9:43 みんなは神の尊厳に驚いた。
しかし,みんながイエスの行なったすべてのことに驚嘆している間に,彼は弟子たちに言った, Luke 9:44 「これらの言葉をあなた方の耳にしまっておきなさい。すなわち,人の子は人々の手に引き渡されるだろう」 。 Luke 9:45 しかし彼らはこの言葉を理解しなかった。彼らがそれを理解することがないように,それは彼らから隠されていた。また,彼らはこの言葉について彼に尋ねるのを恐れていた。
Luke 9:46 彼らの間で,自分たちのうちでだれが一番偉いかという論争が生じた。 Luke 9:47 イエスは彼らの心の思いに気づき,幼子を連れて来て,自分のわきに立たせて, Luke 9:48 彼らに言った,「わたしの名のゆえにこのような幼子の一人を受け入れる者は,わたしを受け入れるのだ。わたしを受け入れる者は,わたしを遣わした方を受け入れるのだ。あなた方全員のうちで最も小さい者こそ偉いなのだ」
Luke 9:49 ヨハネが答えた,「師よ,わたしたちは,ある人があなたの名において悪霊たちを追い出しているのを見ました。それでわたしたちは,彼がわたしたちに従っていないので,彼をとどめました」。
Luke 9:50 イエスは彼に言った,「彼をとどめてはいけない。わたしたちに逆らわない者は,わたしたちの味方なのだ」
Luke 9:51 イエスが上げられる日々が近づくと,彼はエルサレムに行くことに顔を一心に据えた。 Luke 9:52 そして自分の面前に使者を遣わした。彼らは出て行き,彼のために準備をしようと,サマリア人の村に入った。 Luke 9:53 彼らは彼を受け入れなかった。彼が顔をエルサレムに向けて旅行していたからである。 Luke 9:54 それを見て,弟子たちのヤコブとヨハネは言った,「主よ,エリヤがしたとおり,天から火が下って彼らを滅ぼすよう,わたしたちが命じることをお望みですか」。
Luke 9:55 しかし彼は振り返って彼らをしかりつけた。「あなた方は自分たちがどんな性質なのか分かっていない。 Luke 9:56 人の子は人々の命を滅ぼすために来たのではなく,それらを救うために来たのだ」
彼らは別の村に向かった。 Luke 9:57 彼らが進んで行くと,ある人が彼に言った,「あなたの行かれる所なら,どこへでも従って行きたいと思います,主よ」。
Luke 9:58 イエスは彼に言った,「キツネたちには穴があり,空の鳥たちには巣がある。だが,人の子には頭を横たえる所がない」
Luke 9:59 彼は別の者に言った,「わたしに従いなさい!」
しかし彼は言った,「主よ,まず,行ってわたしの父を葬ることをお許しください」。
Luke 9:60 しかしイエスは彼に言った,「死んだ者たちに自分たちの死者を葬らせなさい。だが,あなたは行って神の王国を知らせなさい」
Luke 9:61 さらに別の者が言った,「わたしはあなたに従いたいと思います,主よ。ですが,まず,わたしの家の者たちに別れを告げることをお許しください」。
Luke 9:62 しかしイエスは彼に言った,「手をすきにかけてから後ろを見る者は,だれも神の王国にふさわしくない」
Luke 10:0 Luke 10:1 さて,これらの事ののち,主はほかの七十人を任命し,自分が行こうとしているすべての町と場所へ,自分の先に彼らを二人ずつ遣わした。 Luke 10:2 そして彼は弟子たちに言った,「収穫は確かに多いが,働き人が少ない。だから,収穫に働き人を遣わしていただくよう,収穫の主人にお願いしなさい。 Luke 10:3 行きなさい。見よ,わたしはあなた方を,オオカミの間に子羊を送り込むようにして遣わす。 Luke 10:4 財布も,袋も,サンダルも持って行ってはいけない。道中ではだれにもあいさつしてはいけない。 Luke 10:5 どこでも家に入ったなら,まず,『この家に平安があるように』と言いなさい。 Luke 10:6 平安の子がそこにいるなら,あなた方の平安はその者の上にとどまり,いなければ,それはあなた方のもとに戻って来るだろう。 Luke 10:7 その家にとどまり,彼らが出す物を食べたり飲んだりしなさい。働き人は自分の報酬を受けるに値するからだ。家から家に行ってはいけない。 Luke 10:8 どこでも町に入って,彼らがあなた方を受け入れるなら,あなた方の前に出されるものを食べなさい。 Luke 10:9 そこにいる病気の者たちをいやし,彼らに,『神の王国はあなた方に近づいた』と告げなさい。 Luke 10:10 だが,どこでも町に入って,彼らがあなた方を受け入れないなら,その町の通りに出て,こう言いなさい。 Luke 10:11 『あなた方の町からわたしたちの足に付いたちりさえも,わたしたちはあなた方に対してぬぐい捨てる。それでも,神の王国があなた方に近づいたというこのことは知っておきなさい』。 Luke 10:12 あなた方に告げるが,その日には,ソドムのほうがその町よりは耐えやすいだろう。
Luke 10:13 「災いだ,コラジンよ! 災いだ,ベトサイダよ! あなた方の中でなされた強力な業がテュロスやシドンでなされていたなら,彼らはとっくの昔にあら布と灰の中に座って悔い改めていただろう。 Luke 10:14 だが,裁きの時には,テュロスとシドンのほうがあなた方よりは耐えやすいだろう。 Luke 10:15 カペルナウム,天まで高くされた者よ,あなたはハデスにまで下ることになる。 Luke 10:16 あなた方に聞き従う者は,わたしに聞き従うのであり,あなた方を拒む者は,わたしを拒むのだ。わたしを拒む者は,わたしを遣わした方を拒むのだ」
Luke 10:17 七十人は喜びながら戻って来て,言った,「主よ,悪霊たちでさえ,あなたの名においてわたしたちに服するのです!」
Luke 10:18 彼は彼らに言った,「わたしは,サタンが天からいなずまのように落ちたのを見た。 Luke 10:19 見よ,わたしはあなた方に蛇やサソリを踏みつける権威,また敵のすべての力を支配する権威を与えた。あなた方を害するものは何もない。 Luke 10:20 それでも,霊たちがあなた方に服することを喜ぶのではなく,あなた方の名が天において書き記されたことを喜びなさい」。
Luke 10:21 まさにその時,イエスは聖霊において喜び,また言った,「ああ,父よ,天地の主よ,わたしはあなたに感謝します。あなたはこれらの事を賢い者や理解力のある者から隠し,それを幼子たちに明らかにされたからです。そうです,父よ,そのようにして,あなたのみ前で意にかなうことが生じたのです」
Luke 10:22 弟子たちのほうを振り向いて,言った,「すべての事が,わたしの父によってわたしに引き渡されている。子を知っている者は父のほかにはおらず,父を知っている者は子と子が明らかにしたいと望む者のほかにはいない」
Luke 10:23 弟子たちのほうを振り向いて,彼らだけに言った,「あなた方の見ているものを見るその目は幸いだ。 Luke 10:24 あなた方に告げるが,多くの預言者たちと王たちは,あなた方が見ているものを見たいと願ったのにそれを見ず,あなた方が聞いていることを聞きたいと願ったのにそれを聞かなかったからだ」
Luke 10:25 見よ,ある律法の専門家が立ち上がり,彼を試そうとして言った,「先生,わたしは何をすれば永遠の命を受け継げるのでしょうか」。
Luke 10:26 イエスは彼に言った,「律法には何と書かれているか。あなたはそれをどう読んでいるのか」
Luke 10:27 彼は答えた,「あなたは,心を尽くし,魂を尽くし,力を尽くし,思いを尽くして,あなたの神なる主を愛さなければならない。そして,隣人を自分自身のように愛さなければならない」。
Luke 10:28 イエスは彼に言った,「あなたは正しく答えた。それを行ないなさい。そうすれば生きるだろう」。
Luke 10:29 しかし彼は,自分を正当化したいと思って,イエスに答えた,「わたしの隣人とはだれですか」。
Luke 10:30 イエスは答えた,「ある人がエルサレムからエリコに下って行く途中,強盗たちの手中に落ちた。彼らは彼の衣をはぎ,殴りつけ,半殺しにして去って行った。 Luke 10:31 たまたまある祭司がその道を下って来た。彼を見ると,反対側を通って行ってしまった。 Luke 10:32 同じように一人のレビ人も,その場所に来て,彼を見ると,反対側を通って行ってしまった。 Luke 10:33 ところが,旅行していたあるサマリア人が,彼のところにやって来た。彼を見ると,哀れみに動かされ, Luke 10:34 彼に近づき,その傷に油とぶどう酒を注いで包帯をしてやった。彼を自分の家畜に乗せて,宿屋に連れて行き,世話をした。 Luke 10:35 次の日,出発するとき,二デナリを取り出してそこの主人に渡して,言った,『この人の世話をして欲しい。何でもこれ以外の出費があれば,わたしが戻って来たときに返金するから』。 Luke 10:36 さて,あなたは,この三人のうちのだれが,強盗たちの手中に落ちた人の隣人になったと思うか」
Luke 10:37 彼は言った,「その人にあわれみを示した者です」。
するとイエスは彼に言った,「行って,同じようにしなさい」
Luke 10:38 彼らが進んで行くうちに,彼はある村に入り,マルタという名の女が彼を自分の家に迎えた。 Luke 10:39 彼女にはマリアという姉妹がいたが,イエスの足もとに座って,その言葉を聞いていた。 Luke 10:40 しかしマルタは,多くの給仕で取り乱していた。そこで彼女は彼のもとに上がって来て言った,「主よ,わたしの姉妹がわたしだけに給仕をさせているのを何とも思われないのですか。ですから,わたしを手伝うよう彼女におっしゃってください」。
Luke 10:41 イエスは彼女に答えた,「マルタ,マルタ,あなたは多くのことを心配して動転している。 Luke 10:42 だが,必要なのは一つだけだ。マリアは良いほうを選んだのだ。それが彼女から取り去られることはないだろう」
Luke 11:0 Luke 11:1 彼がある場所で祈り終えたときのこと,弟子たちの一人が彼に言った,「主よ,ヨハネも自分の弟子たちに教えたように,わたしたちに祈り方を教えてください」。
Luke 11:2 彼は彼らに言った,「あなた方が祈るときにはこう言いなさい,
『天におられるわたしたちの父よ,あなたのお名前が神聖なものとされますように。あなたの王国が来ますように。あなたのご意志が,天におけると同じように地上においてもなされますように。 Luke 11:3 日々,わたしたちの日ごとのパンをお与えください。 Luke 11:4 わたしたちの罪をお許しください。わたしたちも自分に負い目のある人たちを許しますから。わたしたちを誘惑に陥らせることなく,悪い者からお救いください』」 Luke 11:5 彼らに言った,「あなた方のうちのだれかが,真夜中に友人のところに行き,彼にこう言うとする。『友よ,パンを三つ貸してくれ。 Luke 11:6 わたしの友人が旅の途中でわたしのところに来たのだが,出してやるものが何もないのだ』。 Luke 11:7 すると彼は中から答えて言うだろう,『わたしを煩わさないでくれ。戸はもう閉めてしまったし,子供たちはわたしと一緒に寝床に入っているのだ。起きて行ってあなたに物をやることなどできない』。 Luke 11:8 あなた方に告げる。彼は,その人が自分の友人だということでは,起き上がって物を与えないとしても,その人のしつこさのゆえには,起きて行ってその人が必要とするものを与えるだろう。
Luke 11:9 「あなた方に告げる。求め続けなさい,そうすれば与えられるだろう。探し続けなさい,そうすれば見いだすだろう。たたき続けなさい,そうすれば開かれるだろう。 Luke 11:10 だれでも求めている者は受け,探している者は見いだし,たたいている者には開かれるのだ。
Luke 11:11 「あなた方のうちのどの父親が,自分の息子がパンを求めているのに石を与えるだろうか。また,魚を求めているのに魚の代わりに蛇を与えるだろうか。 Luke 11:12 また,卵を求めているのにサソリを与えるだろうか。 Luke 11:13 それなら,あなた方が,悪い者でありながら,自分の子供たちに良い贈り物を与えることを知っているのであれば,ましてあなた方の天の父は,ご自分に求める者たちに聖霊を与えてくださらないだろうか」
Luke 11:14 彼はある悪霊を追い出していたが,それは口のきけない悪霊であった。その悪霊が出て行くと,口のきけなかった人は物を言い出した。それで群衆は驚嘆した。 Luke 11:15 しかし彼らのうちのある者たちは言った,「彼が悪霊たちを追い出すのは,悪霊たちの首領ベエルゼブルによるのだ」。 Luke 11:16 ほかの者たちは,彼を試そうとして,天からのしるしを彼から求めていた。 Luke 11:17 しかし彼は,彼らの考えを知って,彼らに言った,「自らに敵対して分裂した王国はすべて荒廃してしまう。自らに敵対して分裂した家は倒れてしまう。 Luke 11:18 もしサタンも自らに敵対して分裂するなら,どうしてその王国は立ち行くだろうか。というのは,あなた方は,わたしがベエルゼブルによって悪霊たちを追い出していると言うからだ。 Luke 11:19 だが,わたしがベエルゼブルによって悪霊たちを追い出しているのなら,あなた方の子らはだれによってそれらを追い出しているのか。それで,彼らがあなた方を裁く者になるだろう。 Luke 11:20 だが,わたしが神の指によって悪霊たちを追い出しているのなら,神の王国はすでにあなた方のところに来ているのだ。
Luke 11:21 「強い者が十分に武装して自分の住みかを守っている時は,その家財は安全だ。 Luke 11:22 だが,もっと強い者たちが襲って来て,彼に打ち勝つなら,彼が頼みとしていた全装備を彼から取り去り,その戦利品を分け合うだろう。
Luke 11:23 「わたしと共にいない者はわたしに敵対しているのだ。わたしと共に集めない者は散らしているのだ。 Luke 11:24 汚れた霊は,人から出て来ると,休み場を求めて乾いた場所を通るが,何も見つからない。そこで,『出て来た自分の家に帰ろう』と言う。 Luke 11:25 そして戻って来ると,そこが掃き清められており,きちんと片づけられているのを見つける。 Luke 11:26 そこで,出て行って,自分より悪いほかの七つの霊を連れて来る。そして彼らは中に入ってそこに住みつく。その人の最後の状態は,最初よりも悪くなる」
Luke 11:27 彼がこれらの事を話していると,ある女が群衆の中から声を上げて,彼に言った,「あなたを宿した胎と,あなたに乳を飲ませた乳房とは幸いです!」
Luke 11:28 しかし彼は言った,「いや,神の言葉を聞いて,それを守る人たちは幸いだ」
Luke 11:29 群衆が彼のもとに集まって来た時,彼はこう言い始めた,「この世代は悪い世代だ。しるしを求める。この世代には,預言者ヨナのしるしのほかには何のしるしも与えられないだろう。 Luke 11:30 実に,ヨナがニネベ人に対するしるしとなったのと同じように,人の子もこの世代に対するしるしとなるだろう。 Luke 11:31 南の女王は裁きの際にこの世代の人々と共に起き上がり,彼らを罪に定めるだろう。彼女はソロモンの知恵を聞くために地の果てからやって来たからだ。そして見よ,ソロモンよりも偉大な者がここにいる。 Luke 11:32 ニネベの人々は裁きの際にこの世代と共に立ち上がり,この世代を罪に定めるだろう。彼らはヨナの宣教することを聞いて悔い改めたからだ。そして見よ,ヨナよりも偉大な者がここにいる。
Luke 11:33 「ともし火をともしてから,それを穴ぐらの中や,かごの下に置く者はいない。むしろ,入って来る者たちに光が見えるように,それを燭台の上に置く。 Luke 11:34 体のともし火は目だ。だから,あなた方の目が健全なら,あなた方の全身は光で満ちているだろう。だが,それがよこしまなら,あなた方の体も闇で満ちているだろう。 Luke 11:35 だから,あなた方の内にある光が闇ではないかどうか確かめなさい。 Luke 11:36 それで,あなた方の全身が光で満ちており,闇の部分が少しもなければ,ともし火が明るく輝いてあなたを照らす時のように,全体が光に満たされるだろう」
Luke 11:37 さて,彼が話していると,あるファリサイ人が一緒に食事をして欲しいと頼んだ。彼は入って行って,食卓に着いた。 Luke 11:38 ファリサイ人はそれを見て,彼が食事の前に身を洗わないのに驚いた。 Luke 11:39 主は彼に言った,「ところで,あなた方ファリサイ人たちは杯と皿の外側は清めるが,あなた方の内側は強奪と不正で満ちている。 Luke 11:40 愚か者たちよ,外側を造られた方は内側をも造られたのではないか。 Luke 11:41 それでも,内にあるそれらのものを,困窮している人たちに施しをしなさい。そうすれば,見よ,あなた方にとってすべてのものが清められるだろう。 Luke 11:42 だが,あなた方ファリサイ人たちは災いだ! あなた方はハッカ,ヘンルーダ,あらゆる野菜の十分の一税は納めていながら,公正と神の愛を無視している。これらこそ行なわなくてはいけない。もっとも,もう一方のこともなおざりにしてはいけないが。 Luke 11:43 あなた方ファリサイ人たちは災いだ! あなた方が好むのは,会堂での上席と市場でのあいさつなのだ。 Luke 11:44 あなた方は災いだ,律法学者たちとファリサイ人たち,偽善者たちよ! あなた方は目につかない墓のようなものだ。その上を歩く人々は何も気づかないのだ」
Luke 11:45 律法の専門家たちの一人が彼に答えた,「先生,そのようなことを言われるのは,わたしたちをも侮辱することです」。
Luke 11:46 彼は言った,「あなた方律法の専門家たちも災いだ! 運びにくい重荷を人々に負わせるが,自分ではそれらの重荷を運ぶのを助けるために指一本持ち上げようとさえしない。 Luke 11:47 あなた方は災いだ! あなた方は預言者たちの墓を建てているが,彼らを殺したのはあなた方の父祖たちだからだ。 Luke 11:48 そのようにして,あなた方は,あなた方の父祖たちの業を証言し,同意しているのだ。彼らが預言者たちを殺し,あなた方がその墓を建てているからだ。 Luke 11:49 このゆえに,神の知恵もこう言った,『わたしは彼らに預言者たちと使徒たちを遣わす。彼らはそのうちのある者たちを殺し,迫害するだろう。 Luke 11:50 こうして,世の基礎が据えられて以来流されて来たすべての預言者たちの血が,この世代に要求されることになる。 Luke 11:51 すなわち,アベルの血から,祭壇と聖所の間で死んだザカリヤの血に至るまで』。そうだ,あなた方に告げるが,それはこの世代に要求されるだろう。 Luke 11:52 あなた方律法の専門家たちは災いだ! あなた方は知識のかぎを取り去ったからだ。自分たちが入らないばかりか,入ろうとする者たちをも妨げたのだ」
Luke 11:53 彼が彼らにこれらの事を話したとき,律法学者たちとファリサイ人たちはひどく腹を立て始め,彼から多くの事を聞き出し始めた。 Luke 11:54 そして,彼を待ち構え,その言葉じりを捕らえようとした。彼を訴えようとしてであった。
Luke 12:0 Luke 12:1 そうしているうちに,数えきれないほどの群衆が集まって来て,互いに足を踏み合うほどになった時,彼はまず弟子たちに告げ始めた,「ファリサイ人たちのパン種,つまり偽善に用心しなさい。 Luke 12:2 だが,覆いかぶされているもので明らかにされないものはなく,隠されているもので知られないものはない。 Luke 12:3 だから,あなた方が闇の中で言ったことは,光の中で聞かれるだろう。奥の部屋で耳もとに話されたことは,屋上で宣明されるだろう。
Luke 12:4 「わたしの友であるあなた方に告げる。体を殺しても,その後はもう何もできない者たちを恐れてはいけない。 Luke 12:5 むしろ,だれを恐れるべきかをあなた方に知らせよう。殺した後で,ゲヘナに投げ込む力のある方を恐れなさい。そうだ,あなた方に告げるが,その方を恐れなさい。
Luke 12:6 「五羽のスズメは二つのアサリオン硬貨で売られているではないか。その一羽も神に忘れられてはいない。 Luke 12:7 ところが,あなた方の髪の毛さえも,みな数えられている。だから恐れるな。あなた方はたくさんのスズメよりも価値があるのだ。
Luke 12:8 「あなた方に告げる。人々の前でわたしのことを告白する者はみな,人の子も神のみ使いたちの前でその者のことを告白するだろう。 Luke 12:9 だが,人々の面前でわたしのことを否認する者は,わたしも神のみ使いたちの面前でその者のことを否認するだろう。 Luke 12:10 だれでも人の子に逆らう言葉を語る者は許されるだろう。だが,だれでも聖霊に対して冒とくする者は許されないだろう。 Luke 12:11 人々があなた方を会堂や支配者や権力者の前に連れ出す時,何をどのように答えようか,また何を言おうかと思い煩ってはいけない。 Luke 12:12 言うべきことは,その時に聖霊があなた方に教えるからだ」
Luke 12:13 群衆の一人が彼に言った,「先生,わたしの兄弟に相続財産をわたしと分けるようにおっしゃってください」。
Luke 12:14 だが,彼はその人に言った,「人よ,だれがわたしを,裁判官や仲裁人としてあなた方の上に立てたのか」 。 Luke 12:15 彼らに言った,「用心しなさい! どん欲から身を守りなさい。人の命は豊かな所有物にあるのではないからだ」
Luke 12:16 彼は彼らにたとえを語って言った,「ある富んだ人の土地が豊かに産出した。 Luke 12:17 彼は自分の中で論じて言った,『どうしようか。作物を入れておく場所がないのだが』。 Luke 12:18 彼は言った,『こうしよう。倉を取り壊して,もっと大きなものを建てよう。そしてそこに穀物と財産を入れよう。 Luke 12:19 自分の魂に言うのだ,「魂よ,お前は何年分も積み上げた多くの財産を持っている。くつろいで,食べて,飲んで,楽しめ」』。
Luke 12:20 「だが,神は彼に言われた,『愚か者よ,今夜,あなたの魂は求められる。あなたが用意した物は,いったいだれのものになるのか』。 Luke 12:21 自分のために宝を積み上げ,神に対して富んでいない者は,こうなるのだ」
Luke 12:22 彼は弟子たちに言った,「だから,あなた方に告げる。何を食べようかと自分の命のことで,また何を着ようかと自分の体のことで思い煩ってはいけない。 Luke 12:23 命は食物より,体は衣服より大切なのだ。 Luke 12:24 ワタリガラスのことをよく考えなさい。種をまいたり,刈り入れたりせず,納屋も倉に持っていないが,神がそれらを養っておられる。あなた方は鳥たちよりもどれほど多くの価値があるだろう! Luke 12:25 あなた方のうちのだれが,思い煩ったからといって,自分の背丈に一キュビトを加えられるだろうか。 Luke 12:26 一番小さな事さえできないのであれば,なぜほかの事で思い煩うのか。 Luke 12:27 ユリがどのように育つかをよく考えなさい。労したり,紡いだりしない。だが,あなた方に告げるが,栄光を極めたときのソロモンでさえ,それらの一つほどにも装っていなかった。 Luke 12:28 では,神が,今日生えていて明日かまどに投げ込まれる野の草に衣服を与えておられるのであれば,あなた方にはなおのこと衣服を与えてくださらないだろうか,ああ,信仰の少ない者たちよ。 Luke 12:29 だから,何を食べようか,何を飲もうかと求めてはいけない。また,思い煩ってもいけない。 Luke 12:30 こうしたものすべては,世の諸国民が追い求めているものだからだ。だが,あなた方の父は,あなた方がこうしたものを必要としていることをご存じなのだ。 Luke 12:31 むしろ,神の王国を求めなさい。そうすれば,こうしたものすべてはあなた方に加えられるだろう。 Luke 12:32 恐れてはいけない,小さな群れよ。あなた方の父は,あなた方に王国を与えることをよしとされたのだ。 Luke 12:33 あなた方の持ち物を売って,困窮している人たちに施しをしなさい。自分のために古くなることのない財布を作り,天に尽きることのない宝を積み上げなさい。そこでは盗人たちが近づくことも,ガがだめにすることもない。 Luke 12:34 あなた方の宝のある所,そこにあなた方の心もあるからだ。
Luke 12:35 「あなた方の腰に帯を締め,ともし火をたいていなさい。 Luke 12:36 自分たちの主人がいつ婚宴から戻って来るかと見張っている者たちのようになりなさい。彼がやって来て戸を叩く時,すぐに彼のために戸を開けられるようにするためだ。 Luke 12:37 彼がやって来たときに見張っているところを見いだされるそれらの召使いたちは幸いだ。本当にはっきりとあなた方に告げる。彼は着替えて,彼らを横にならせ,やって来て,彼らに給仕をするだろう。 Luke 12:38 彼が第二見張り時に,あるいは第三見張り時にやって来ても,彼らがそのようにしているところを見いだされるなら,その者たちは幸いだ。 Luke 12:39 だが,このことを知っておきなさい。家の主人は,どの時刻に盗人が来るかを知っているなら,見張っていて,自分の家に押し入られることを許さなかっただろう。 Luke 12:40 だから,あなた方も用意をしておきなさい。あなた方の思いもしない時刻に人の子は来るからだ」
Luke 12:41 ペトロが彼に言った,「主よ,このたとえはわたしたちに対して話しておられるのですか,それともみんなに対してですか」。
Luke 12:42 主は言った,「それでは,主人が,時に応じて家の者たちに食物を分配させるため,彼らの上に任命した,忠実で賢い管理人は,いったいだれか。 Luke 12:43 主人がやって来た時,そうしているのを見られるその召使いは幸いだ。 Luke 12:44 本当にあなた方に告げるが,主人は彼を自分のすべての持ち物の上に任命するだろう。 Luke 12:45 だが,その召使いが,心の中で,『わたしの主人は来るのが遅れている』と言い,下男や下女を打ちたたき始め,飲んで酔っぱらい始めるなら, Luke 12:46 その召使いの主人は,彼の思いもしない日,彼の知らない時にやって来て,彼を二つに切り裂き,その受け分を不忠実な者たちと共にならせるだろう。 Luke 12:47 その召使いが,自分の主人の意志を知りながら,主人の望んでいることを備えなかったり,行なわなかったりするなら,多くむち打ちうたれるだろう。 Luke 12:48 だが,知らずにむち打ちに値することをしてしまった者は,少ししかむち打たれないだろう。だれでも多く与えられた者からは多くが要求され,多くを託された者からはより多くが求められるだろう。
Luke 12:49 「わたしは地上に火を投げるために来た。それがすでに燃やされていればと願う。 Luke 12:50 だが,わたしには受けなければならないバプテスマがある。それが成し遂げられるまで,どんなに苦悩することか! Luke 12:51 あなた方は,わたしが地上に平和をもたらすために来たと考えてはいるのか。あなた方に告げるが,そうではなく,むしろ分裂をもたらすために来たのだ。 Luke 12:52 今からのち,一つの家に五人がいれば,三人が二人に対して,二人が三人に対して分裂させられることになるからだ。 Luke 12:53 彼らは,父が息子に対して,息子は父に対して,母は娘に対して,娘は母に対して,しゅうとめは嫁に対して,嫁はしゅうとめに対して分裂させられるだろう」
Luke 12:54 群衆にも言った,「あなた方は,雲が西にわき起こるのを見るとすぐ,『にわか雨が来るぞ』と言い,そのとおりになる。 Luke 12:55 南風が吹くと,『猛烈な暑さになるぞ』と言い,そのとおりになる。 Luke 12:56 偽善者たち! あなた方は天地の模様の解き明かし方は知っていながら,どうして今の時のしるしの解き明かし方は知らないのか。 Luke 12:57 なぜあなた方は,何が正しいかを自分で判断しないのか。 Luke 12:58 あなたを訴える者と共に判事の前に行く時には,その途上にある間に,彼から解放されるように熱心に試みなさい。彼があなたを裁判官のところに引きずって行き,裁判官があなたを役人に引き渡し,役人があなたをろうやに投げ込んでしまうことのないためだ。 Luke 12:59 あなた方に告げる。まさしく最後の小銭を払い切るまで,あなたは決してそこから出ることはないだろう」
Luke 13:0 Luke 13:1 さて,ちょうどその時,ガリラヤ人たちのことを彼に報告した。ピラトが彼らの血を彼らの犠牲と混ぜたのである。 Luke 13:2 イエスは彼らに答えた,「あなた方は,彼らがこのような災難に遭ったからといって,これらのガリラヤ人たちがほかのすべてのガリラヤ人たちよりも罪人だったと思うのか。 Luke 13:3 あなた方に告げるが,そうではない。むしろ,あなた方も悔い改めなければ,みな同じように滅びるだろう。 Luke 13:4 あるいは,シロアムの塔が倒れて押し殺されたあの十八人は,エルサレムに住むすべての人たちよりも違反の多い者だったと思うのか。 Luke 13:5 あなた方に告げるが,そうではない。むしろ,あなた方も悔い改めなければ,みな同じように滅びるだろう」
Luke 13:6 彼は次のたとえを話した。「ある人が,自分のブドウ園に植えた一本のイチジクの木を持っていた。彼はそこに実を探しに来たが,何も見つからなかった。 Luke 13:7 彼はブドウの栽培人に言った,『見ろ,この三年間,このイチジクの木に実を探しに来ているのに,何も見つからなかった。これを切り倒してしまえ。なぜこれが土地を無駄にふさいでいるのか』。 Luke 13:8 栽培人は答えた,『ご主人様,それを今年だけそのままにしておいてやってください。この木の周りを掘って,肥料をやりますから。 Luke 13:9 もし実を結べば上等ですし,そうでなければ,その後で,これを切り倒してしまって構いません』」
Luke 13:10 彼は安息日に会堂の一つで教えていた。 Luke 13:11 見よ,十八年間も病弱の霊に取りつかれた女がいた。彼女は腰が曲がったままで,どうしても伸ばすことができなかった。 Luke 13:12 イエスは彼女を見ると,呼び寄せて彼女に言った,「女よ,あなたは自分の病弱さから解き放たれている」 。 Luke 13:13 彼女の上に手を置いた。すると,すぐに彼女はまっすぐになり,神に栄光をささげた。
Luke 13:14 会堂長は,イエスが安息日にいやしたので憤慨し,群衆に言った,「人々が働くべき日は六日ある。だからそれらの日にやって来て,いやしてもらうがよい。安息日にはいけないのだ!」
Luke 13:15 そこで主は彼に答えた,「偽善者たち! あなた方はおのおの,安息日に自分の牛やロバを家畜小屋から解いて,水を飲ませに引いて行くではないか。 Luke 13:16 アブラハムの娘で,サタンが十八年間も縛っていたこの女は,安息日にその束縛から解かれるべきではなかったか」
Luke 13:17 彼がこれらのことを言うと,彼の反対者たちはみな恥じ入った。しかし,群衆はみな,彼によってなされたすべての栄光ある事柄のために喜んだ。
Luke 13:18 彼は言った,「神の王国は何に似ているだろうか。それを何と比べようか。 Luke 13:19 それは,ある人が取って自分の庭にまいた,一粒のからしの種のようなものだ。それは成長し,大きな木になり,その枝に空の鳥たちが巣を作った」
Luke 13:20 また彼は言った,「神の王国を何と比べようか。 Luke 13:21 それはパン種のようだ。ある女がそれを取って,三ますの麦粉の中に隠すと,ついには全体が発酵した」
Luke 13:22 彼は町々や村々を通って行きながら,教え,エルサレムに向けて旅をしていた。 Luke 13:23 ある者が彼に言った,「主よ,救われる者は少ないのですか」。
彼は彼らに言った, Luke 13:24 「狭い戸口を通って入るよう必死に努めなさい。あなた方に告げるが,入ろうと努めながら,入れない人が多いからだ。 Luke 13:25 いったん家の主人が起き上がって戸を閉めてしまうと,あなた方が外に立ち,戸をたたいて,『だんな様,だんな様,わたしたちに開けてください!』と言い始めても,彼は答えてあなた方に告げるだろう,『わたしはあなた方を知らないし,あなた方がどこから来たのかも知らない』。 Luke 13:26 その時,あなた方は言い始めるだろう,『わたしたちはあなたの面前で食べたり飲んだりしましたし,あなたはわたしたちの通りで教えてくださいました』。 Luke 13:27 彼は言うだろう,『わたしはあなた方を知らないし,あなた方がどこから来たのかも知らない。不法を働く者たちよ,皆わたしから離れ去れ』。 Luke 13:28 そこには嘆きと歯ぎしりとがあるだろう。アブラハム,イサク,ヤコブ,そしてすべての預言者たちが神の王国にいるのに,自分たちが外に投げ出されているのを見るときには。 Luke 13:29 人々は東から,西から,北から,南からやって来て,神の王国で席に着くだろう。 Luke 13:30 見よ,最後であったのに最初になる者たちがおり,最初であったのに最後になる者たちがいる」
Luke 13:31 その同じ日に,何人かのファリサイ人たちがやって来て,彼に言った,「ここから出て,立ち去りなさい。ヘロデがあなたを殺そうとしているからです」。
Luke 13:32 彼は彼らに言った,「行って,あのキツネに言いなさい,『見よ,わたしは今日も明日も悪霊たちを追い出し,いやしを行なっている。そして三日目に,自分の使命を成し遂げるだろう。 Luke 13:33 それでも,わたしは,今日も明日もあさっても進んで行かなければならない。預言者がエルサレムの外で滅びることはあり得ないからだ』。
Luke 13:34 「エルサレム,エルサレム,預言者たちを殺し,自分のところに遣わされた者たちを石打ちにする者よ! めんどりがそのひなの群れを翼の下に集めるように,わたしは幾たびあなたの子らを集めようとしたことか。だが,あなた方は拒んだ! Luke 13:35 見よ,あなた方の家は荒れ果てたままに残される。あなた方に告げるが,あなた方は,『主の名において来る者は幸いだ!』と言うときまでは,決してわたしを見ることはないだろう」
Luke 14:0 Luke 14:1 彼が安息日にファリサイ人たちの支配者たちの一人の家に入った時のこと,彼らは彼の様子をうかがっていた。 Luke 14:2 見よ,水腫をわずらっている人が彼の前にいた。 Luke 14:3 イエスはそれに応じて,律法の専門家たちやファリサイ人たちに話して,こう言った。「安息日にいやすことは許されているか」
Luke 14:4 だが,彼らは黙っていた。
彼はその人の手を取って,いやし,去らせた。 Luke 14:5 彼らに答えた,「あなた方のうち,息子や牛が井戸の中に落ちた場合,安息日だからといってすぐに引き上げない者がいるだろうか」
Luke 14:6 これらのことについても,彼らは彼に答えることができなかった。
Luke 14:7 招かれた人々が上席を選ぶ様子に気づくと,彼らにたとえで話して,こう言った。 Luke 14:8 「だれかから婚宴に招かれた時は,上席に着いてはいけない。あなたより身分の高い人も招かれているかも知れないからだ。 Luke 14:9 そうすると,あなた方双方を招いた人がやって来て,『この人のために場所を空けてください』とあなたに告げるだろう。その時,あなたは恥をかきながら最も低い場所に着くことになる。 Luke 14:10 だが,あなた方が招かれた時は,行って,最も低い場所に着きなさい。そうすれば,あなたを招いた人がやって来た時,『友よ,もっと高い方へ移ってください』とあなたに告げるだろう。その時,共に食卓に着いているみんなの前で,あなたは誉れを受けるだろう。 Luke 14:11 だれでも自分を高くする者は低くされ,自分を低くする者は高くされるのだ」
Luke 14:12 彼は自分を招いた人にも言った,「あなたが昼食や夕食を設ける時は,自分の友人たちも,兄弟たちも,親族たちも,富んでいる隣人たちも呼んではいけない。そうでないと。彼らも逆にもてなして,あなたに返礼することになるかも知れない。 Luke 14:13 だが,あなたが祝宴を催す時には,貧しい人たち,足の不自由な人たち,また盲人たちを招きなさい。 Luke 14:14 そうすれば,彼らはあなたに報いる手段がないので,あなたは幸いだ。あなたは義人たちの復活において報いを受けることになるからだ」
Luke 14:15 これらのことを聞くと,彼と共に食卓に着いていた者たちの一人が彼に言った,「神の王国で祝宴にあずかる人は幸いです!」
Luke 14:16 するとイエスは彼に言った,「ある人が盛大な晩さんを設けて,大勢の人々を招いた。 Luke 14:17 晩さんの時刻に自分の召使いたちを遣わして,招いておいた者たちに言った,『おいでください。もうすっかり整いましたから』。 Luke 14:18 彼らは皆,いっせいに言い訳をし始めた。
「最初の者は彼に言った,『畑を買いましたので,見に行かなければなりません。どうぞお許しください』。
Luke 14:19 「別の者は言った,『五くびきの牛を買いましたので,試しに行かなければなりません。どうぞお許しください』。
Luke 14:20 「別の者は言った,『妻をめとりましたので,そのために参ることができません』。
Luke 14:21 「召使いはやって来て,主人にこれらのことを告げた。すると家の主人は腹を立て,召使いに言った,『急いで町の通りや小道に出て行き,貧しい人たち,体の不自由な人たち,盲人たち,また足の不自由な人たちを連れて来なさい』。
Luke 14:22 「召使いは言った,『ご主人様,おおせのとおりにしましたが,まだ場所が余っています』。
Luke 14:23 「主人は召使いに言った,『大通りや垣根に出て行き,無理にでも人々を入って来させて,わたしの家がいっぱいになるようにしなさい。 Luke 14:24 お前たちに告げるが,招かれていた者たちのうち,わたしの晩さんを味わう者はひとりもいないだろう』」
Luke 14:25 さて,大群衆が彼と共に歩いていた。彼は振り向いて彼らに言った, Luke 14:26 「だれでもわたしのもとに来て,自分の父,母,妻,子供たち,兄弟たち,姉妹たち,そうだ,自分の命さえも憎まない者は,わたしの弟子になることはできない。 Luke 14:27 だれでも自分の十字架を背負ってわたしの後に付いて来ない者は,わたしの弟子になることはできない。 Luke 14:28 あなた方のうちのだれが,塔を建てたいと望みながら,まず座って費用を計算し,それを完成させるだけのものがあるかを確かめないだろうか。 Luke 14:29 そうしないと,土台を据えただけで仕上げられなかった時,見ているすべての人が彼をあざけり始めて Luke 14:30 言うことだろう,『この人は建て始めたが,仕上げることができなかった』。 Luke 14:31 あるいは,どんな王が,別の王と戦いを交えようとするときに,まず座って,二万人を率いて向かって来る者を,一万人で迎え撃つことができるかどうか,よく考えないだろうか。 Luke 14:32 もしできないのであれば,一方の者がまだ遠くにいる間に使者を送り,和平の条件を尋ねるのだ。 Luke 14:33 そのようなわけで,だれでもあなた方のうちで自分の持ち物すべてを捨てない者は,わたしの弟子になることはできない。 Luke 14:34 塩は良いものだ。だが塩の塩気が抜けて味がなくなったら,あなた方は何によって塩に味を付けるのか。 Luke 14:35 それは土にもたい肥にも適さない。それは投げ出されるのだ。聞く耳のある者は聞きなさい」
Luke 15:0 Luke 15:1 さて,徴税人たちや罪人たちがみな,彼の話を聞こうとして近づいて来た。 Luke 15:2 ファリサイ人と律法学者たちはつぶやいて言った,「この人は,罪人たちを歓迎して一緒に食事をする」。
Luke 15:3 彼は彼らに次のたとえを話した。 Luke 15:4 「あなた方のうちのだれが,百匹の羊がいて,そのうちの一匹を失ってしまったなら,九十九匹を荒野に残しておいて,失われた一匹を,それが見つかるまで探しに行かないだろうか。 Luke 15:5 それを見つけると,喜びながらそれを自分の肩に載せる。 Luke 15:6 家に帰ると,自分の友人たちや隣人たちを呼び寄せて,彼らに言うのだ,『わたしと一緒に喜んでくれ。失われていたわたしの羊を見つけたからだ!』 Luke 15:7 あなた方に告げるが,悔い改める一人の罪人については,悔い改める必要のない九十九人の義人たち以上の喜びが天にあるだろう。 Luke 15:8 あるいは,どの女が,十枚のドラクマ硬貨を持っていて,一枚のドラクマ硬貨を失ったなら,ともし火をつけ,家を掃き,それが見つかるまで念入りに探さないだろうか。 Luke 15:9 それを見つけると,自分の友人たちや隣人たちを呼び集め,こう言うのだ,『わたしと一緒に喜んでください。失っていたドラクマを見つけたからです』。 Luke 15:10 そのゆえにも,あなた方に告げる。悔い改める一人の罪人については,神のみ使いたちの面前で喜びがあるのだ」
Luke 15:11 彼は言った,「ある人に二人の息子がいた。 Luke 15:12 そのうちの年下のほうが父親に言った,『お父さん,財産のうちわたしの取り分を下さい』。父親は自分の資産を二人に分けてやった。 Luke 15:13 何日もしないうちに,年下の息子はすべてを取りまとめて遠い地方に旅立った。彼はそこで羽目を外した生活をして自分の財産を浪費した。 Luke 15:14 すべてを使い果たした時,その地方にひどいききんが起こって,彼は困窮し始めた。 Luke 15:15 彼はその地方の住民たちの一人のところに行って身を寄せたが,その人は彼を自分の畑に送って豚の世話をさせた。 Luke 15:16 彼は,豚たちの食べている豆のさやで腹を満たしたいと思ったが,彼に何かをくれる者はいなかった。 Luke 15:17 だが,我に返った時,彼は言った,『父のところでは,あれほど大勢の雇い人たちにあり余るほどのパンがあるのに,わたしは飢えて死にそうだ! Luke 15:18 立ち上がって,父のところに行き,こう言おう,「お父さん,わたしは天に対しても,あなたの前でも罪を犯しました。 Luke 15:19 わたしはもはやあなたの息子と呼ばれるには値しません。あなたの雇い人の一人のようにしてください」』。
Luke 15:20 「彼は立って,自分の父親のところに帰って来た。だが,彼がまだ遠くにいる間に,彼の父親は彼を見て,哀れみに動かされ,走り寄って,その首を抱き,彼に口づけした。 Luke 15:21 息子は父親に言った,『お父さん,わたしは天に対しても,あなたの前でも罪を犯しました。わたしはもはやあなたの息子と呼ばれるには値しません』。
Luke 15:22 「だが,父親は召使いたちに言った,『最上の衣を持って来て,彼に着せなさい。手に指輪をはめ,足に履物をはかせなさい。 Luke 15:23 肥えた子牛を連れて来て,それをほふりなさい。そして,食べて,お祝いをしよう。 Luke 15:24 このわたしの息子が,死んでいたのに生き返ったからだ。失われていたのに,見つかったのだ』。彼らは祝い始めた。
Luke 15:25 「さて,年上の息子は畑にいた。家のそばに来ると,音楽や踊りの音が聞こえた。 Luke 15:26 召使いたちの一人を呼び寄せ,どうしたのかと尋ねた。 Luke 15:27 召使いは彼に言った,『あなたの弟さんが来られたのです。それで,あなたのお父様は,弟さんを無事に健康な姿で迎えたというので,肥えた子牛をほふられたのです』。 Luke 15:28 ところが,彼は腹を立て,中に入ろうとしなかった。そのため,彼の父親が出て来て,彼に懇願した。 Luke 15:29 だが,彼は父親に答えた,『ご覧なさい,わたしはこれほど長い年月あなたに仕えてきて,一度もあなたのおきてに背いたことはありません。それでも,わたしには,わたしの友人たちと一緒に祝うために,ヤギ一匹さえ下さったことがありません。 Luke 15:30 それなのに,あなたの財産を売春婦たちと一緒に食いつぶした,このあなたの息子がやって来ると,あなたは彼のために肥えた子牛をほふられました』。
Luke 15:31 「父親は彼に言った,『息子よ,お前はいつもわたしと一緒にいるし,わたしのものは全部お前のものだ。 Luke 15:32 だが,このことは祝って喜ぶのにふさわしい。このお前の弟が,死んでいたのに生き返ったからだ。失われていたのに,見つかったのだ』」
Luke 16:0 Luke 16:1 彼は弟子たちにもこう言った。「ある富んだ人がいたが,彼には一人の管理人がいた。この者が主人の財産を浪費しているという告発が彼になされた。 Luke 16:2 彼は管理人を呼んで言った,『わたしがお前について聞いているこのことは,どういうことなのか。お前の管理の会計報告を出しなさい。もう管理はさせられない』。
Luke 16:3 「その管理人は自分の内で言った,『どうしようか。わたしの主人はわたしから管理職を取り上げるというのだ。土を掘るほどの力はない。物ごいをするのは恥ずかしい。 Luke 16:4 どうすればよいかわかったぞ。こうすれば,わたしが管理職から外された時,人々はわたしを自分たちの家に迎えてくれるだろう』。 Luke 16:5 自分の主人の借り主たちを一人ずつ呼び出して,最初の者に言った,『わたしの主人にどのくらいの借りがあるのか』。 Luke 16:6 彼は言った,『油百バトスです』。管理人は彼に言った,『自分の証書を取りなさい。早く座って,五十と書きなさい』。 Luke 16:7 それから別の者に言った,『どのくらいの借りがあるのか』。彼は言った,『小麦百コロスです』。管理人は彼に言った,『自分の証書を取って,八十と書きなさい』。
Luke 16:8 「主人は,この不正な管理人が賢く行動したので,彼をほめた。というのは,この世の子らは,自分たちの世代の中では,光の子らよりも賢いからだ。 Luke 16:9 あなた方に告げる。不義の富で自分のために友人たちを作りなさい。そうすれば,それが尽きたとき,彼らはあなた方を永遠の天幕に迎え入れてくれるだろう。 Luke 16:10 ごく小さなことに忠実な者は,多くのことにも忠実だ。ごく小さなことに不正直な者は,多くのことにも不正直だ。 Luke 16:11 だから,あなた方が不義の富に関して忠実でなかったなら,だれがあなた方に真実の富をゆだねるだろうか。 Luke 16:12 あなた方が他人のものに関して忠実でなかったなら,だれがあなた方にあなた方自身のものを与えるだろうか。 Luke 16:13 どんな召使いも二人の主人に仕えることはできない。一方を憎んで他方を愛するか,一方を重んじて他方をさげすむかのどちらかだからだ。あなた方は神と富の両方に仕えることはできない」
Luke 16:14 お金を愛する者であるファリサイ人たちもこれらのすべてのことを聞いていたが,彼らは彼をあざ笑った。 Luke 16:15 彼は彼らに言った,「あなた方は人々の面前で自分を義とする者たちだ。だが,神はあなた方の心を知っておられる。人々の間で高くされているものも,神のみ前では嫌悪すべきものだからだ。 Luke 16:16 律法と預言者たちとはヨハネに至るまでだった。その時から,神の王国の福音が宣教されており,すべての人がその中に無理にでも入ろうとしている。 Luke 16:17 だが,律法からごく小さな一画が落ちるよりは,天と地の過ぎ行くほうが易しいだろう。 Luke 16:18 自分の妻を離縁して別の女と結婚する者は,姦淫を犯すのだ。夫から離縁された女と結婚する者は,姦淫を犯すのだ。
Luke 16:19 「さて,ある富んだ人がいた。紫の衣と上等の亜麻布を身に着けて,毎日ぜいたくに暮らしていた。 Luke 16:20 その門の前には,ラザロという名のこじきが,できものだらけの身で横たわっていて, Luke 16:21 富んだ人の食卓から落ちるパンくずで腹を満たしたいと思っていた。そればかりか,犬たちまでやって来ては,彼のできものをなめていた。 Luke 16:22 やがて,そのこじきは死んで,み使いたちによってアブラハムの懐に運び去られた。富んだ人も死んで,葬られた。 Luke 16:23 ハデスで苦しみながら目を上げると,はるか遠くにいるアブラハムと,その懐にいるラザロとが見えた。 Luke 16:24 彼は叫んで言った,『父アブラハムよ,わたしをあわれんでください。そしてラザロをお遣わしになり,その指先を水に浸して,わたしの舌を冷やすようにさせてください! わたしはこの炎の中で苦しんでいるからです』。
Luke 16:25 「だが,アブラハムは言った,『子よ,お前は一生の間に自分の良いものを受け,ラザロは同様に悪いものを受けたことを思い出しなさい。だが,今ここでは,彼は慰められ,お前は苦痛のうちにある。 Luke 16:26 それだけではなく,わたしたちとお前たちとの間には大きな裂け目が設けられていて,ここからお前のところに通って行こうと思う者たちもそれができず,そちらからわたしたちのところに渡って来られる者たちもいないのだ』。
Luke 16:27 「彼は言った,『それではお願いです,父よ,わたしの父の家に彼を遣わしてください。 Luke 16:28 わたしには兄弟が五人いますので,彼らまでこの苦しみの場所に入ることのないように,彼らに対して証言をさせていただきたいのです』。
Luke 16:29 「だが,アブラハムは彼に言った,『彼らにはモーセと預言者たちがいる。その者たちに聞き従えばよい』。
Luke 16:30 「彼は言った,『そうではないのです,父アブラハムよ,むしろ,だれかが死んだ者たちの中から行くなら,彼らは悔い改めるでしょう』。
Luke 16:31 「アブラハムは彼に言った,『彼らがモーセと預言者たちに聞き従わないのであれば,だれかが死んだ者たちのなかから生き返ったとしても,彼らが説得されることはないだろう』」
Luke 17:0 Luke 17:1 彼は弟子たちに言った,「つまずきのもとがやって来ないということはあり得ないが,自分を通してそれらがやって来るその人は災いだ! Luke 17:2 これら小さな者たちの一人をつまずかせるよりは,首に臼石をかけられて海に投げ込まれる方が,その者にとっては良いだろう。 Luke 17:3 注意していなさい。あなたの兄弟があなたに対して罪を犯したなら,彼をとがめなさい。悔い改めたなら,許しなさい。 Luke 17:4 彼が一日に七回あなたに対して罪を犯し,七回戻って来て,『悔い改めます』と言ったとしても,彼を許さなければならない」
Luke 17:5 使徒たちが主に言った,「わたしたちの信仰を増やしてください」。
Luke 17:6 主は言った,「もしあなた方に一粒のからしの種ほどの信仰があるなら,このイチジクグワの木に,『根こそぎにされて,海に植えられよ』と言えば,それはあなた方に従うだろう。 Luke 17:7 ところで,あなた方のうちのだれが,畑を耕すか羊の番をする召使いがいるとして,彼が畑から帰って来た時に,『すぐに来て食卓に着きなさい』と言うだろうか。 Luke 17:8 むしろ,『わたしの夕食を整えなさい。着替えて,わたしが食べたり飲んだりしている間,わたしの給仕をしなさい。その後で,食べたり飲んだりするがよい』と言うのではないか。 Luke 17:9 その召使いが命じられたことを行なったからといって,主人は彼に感謝するだろうか。そうは思えない。 Luke 17:10 同じように,あなた方も,自分に命じられたことすべてを行なった時は,『わたしたちは取るに足りない召使いです。自分の義務を行なったまでです』と言いなさい」
Luke 17:11 彼がエルサレムへの途上にあり,サマリアとガリラヤの境界を通り過ぎていたときのことである。 Luke 17:12 ある村に入った時,十人のらい病人たちが彼に出会ったが,彼らは遠くに立っていた。 Luke 17:13 彼らは声を上げて言った,「師イエスよ,わたしたちをあわれんでください!」
Luke 17:14 彼はそれを見ると,彼らに言った,「行って,自分を祭司たちに見せなさい」 。出かけて行く途中で,彼らは清められた。 Luke 17:15 彼らのうちの一人は,自分がいやされたのを見て,大声で神に栄光をささげながら戻って来た。 Luke 17:16 イエスの足もとにひれ伏して,彼に感謝をささげた。しかも,それはサマリア人であった。 Luke 17:17 イエスは答えた,「十人が清められたのではなかったか。それなら,九人はどこにいるのか。 Luke 17:18 神に栄光をささげるために戻って来たのは,この他国人のほかには見いだせないのか」 。 Luke 17:19 それからイエスは彼に言った,「立ち上がって,行きなさい。あなたの信仰があなたをいやした」
Luke 17:20 神の王国はいつ来るのかとファリサイ人たちに尋ねられて,彼は彼らに言った,「神の王国は人目につくようにして来ることはなく, Luke 17:21 人々が,『見よ,ここだ!』とか,『見よ,あそこだ!』などと言うこともない。というのは,見よ,神の王国はあなた方の中にあるのだ」
Luke 17:22 彼は弟子たちに言った,「あなた方が人の子の日々を一日でも見たいと望みながら,それを見ることのできない日々が来るだろう。 Luke 17:23 人々はあなた方に,『見よ,ここだ!』とか,『見よ,あそこだ!』などと言うだろう。出かけて行って,彼らの後に従ってはいけない。 Luke 17:24 いなずまが天の下の一方の端からひらめき出て,天の下の他方の端にまで輝きわたるように,人の子も自分の日にはそのようだからだ。 Luke 17:25 だが,彼はまず多くの苦しみを受け,この世代から退けられなければならない。 Luke 17:26 ノアの日々に起きたとおり,人の子の日々においてもそのようになるだろう。 Luke 17:27 ノアが箱船に入るその日まで,人々は食べたり飲んだり,めとったり嫁いだりしていたが,洪水が来て,彼らすべてを滅ぼしてしまった。 Luke 17:28 同じように,ロトの日々に起きたとおりになるだろう。人々は食べたり飲んだり,買ったり売ったり,植えたり建てたりしていたが, Luke 17:29 ロトがソドムから出て行ったその日に,火と硫黄が天から降ってきて,彼らすべてを滅ぼしてしまった。 Luke 17:30 人の子が現わされる日にも,同じようになるだろう。 Luke 17:31 その日には,屋上にいる者は,家の中に自分の家財があっても,それらを取り出そうとして降りてはいけない。畑にいる者も同じように,後ろを振り向いてはいけない。 Luke 17:32 ロトの妻のことを思い出しなさい! Luke 17:33 自分の命を救おうと努める者はそれを失い,自分の命を失う者はそれを保つのだ。 Luke 17:34 あなた方に告げるが,その夜,二人の人が一つの寝床にいるだろう。一方は取り去られ,他方は残される。 Luke 17:35 二人の女が粉をひいているだろう。一人は取り去られ,一人は残される」 。 Luke 17:36
Luke 17:37 彼らは答えて彼に言った,「主よ,どこでですか」。
彼は彼らに言った,「どこでも死体のあるところ,そこにハゲワシたちも集まって来るだろう」
Luke 18:0 Luke 18:1 彼はまた,いつも祈っていなければならず,あきらめてはならないことを,彼らにたとえで話して Luke 18:2 言った,「ある町に,神を恐れず,人をも敬わない一人の裁判官がいた。 Luke 18:3 その町には一人のやもめがおり,何度も彼のもとに来ては,『わたしを訴える者からわたしを弁護してください!』と言っていた。 Luke 18:4 彼は,しばらくの間はそうしようとはしなかったが,後になって自分に言った,『わたしは神を恐れず,人をも敬わないが, Luke 18:5 それでもこのやもめがわたしを煩わすので,彼女を弁護してやろう。そうしないと,彼女は絶え間なくやって来て,わたしを疲れ果てさせるだろう』」
Luke 18:6 主は言った,「この不義の裁判官の言うことを聞きなさい。 Luke 18:7 まして神は,昼も夜もご自分に向かって叫んでいる,ご自分の選ばれた者たちのあだを討たずに,彼らのことを我慢し続けられることがあるだろうか。 Luke 18:8 あなた方に告げるが,神は速やかに彼らのあだを討たれるだろう。それでも,人の子が来る時,地上に信仰を見いだすだろうか」
Luke 18:9 彼はまた,自分の義を確信しており,他のすべての人たちをさげすんでいたある人々に対して,次のたとえを語った。 Luke 18:10 「二人の人が祈るために神殿に上って行った。一人はファリサイ人で,もう一人は徴税人だった。 Luke 18:11 ファリサイ人は立って,自分の中でこのように祈った。『神よ,わたしがほかの者たち,すなわち,奪い取る者たち,不義の者たち,姦淫を犯す者たちのようでなく,さらにはこの徴税人のようでさえないことに感謝します。 Luke 18:12 わたしは週に二度断食しています。自分の得るすべてのものの十分の一税をささげています』。 Luke 18:13 だが,徴税人は,遠くに立ち,目を天に上げようともせず,胸を打ちながら言った,『神よ,罪人のわたしをあわれんでください!』 Luke 18:14 あなた方に告げるが,この人は,最初の人よりも義とされて自分の家に下って行った。だれでも自分を高くする者は低くされ,自分を低くする者は高くされるのだ」
Luke 18:15 人々はまた,彼に触ってもらおうとして,赤子たちを彼のもとに連れて来ていた。しかし,弟子たちはそれを見て,彼らをしかりつけた。 Luke 18:16 イエスは彼らを呼び寄せて言った,「幼子たちがわたしのところに来るままにしておきなさい。彼らをとどめてはいけない。神の王国はこのような者たちのものだからだ。 Luke 18:17 本当にはっきりとあなた方に告げる。神の王国を幼子のように受け入れない者は,決してその中に入ることはない」
Luke 18:18 ある支配者が彼に尋ねて言った,「善い先生,永遠の命を受け継ぐためには何をしたらよいでしょうか」。
Luke 18:19 イエスは彼に答えた,「なぜ,わたしのことを善いと呼ぶのか。神おひとりのほかに善い者はいない。 Luke 18:20 あなたはおきてを知っている。『姦淫を犯してはいけない』,『殺してはいけない』,『盗んではいけない』,『偽りの証言をしてはいけない』,『だまし取ってはいけない』,『あなたの父と母を敬いなさい』」
Luke 18:21 彼は言った,「わたしはそうした事すべてを幼いころから守ってきました」。
Luke 18:22 イエスはこれらの事を聞いて,彼に言った,「あなたにはまだ一つのことが足りない。自分の持ち物をみな売って,貧しい人々に配りなさい。あなたは天に宝を持つことになる。来て,わたしに従いなさい」
Luke 18:23 しかし,彼はこれらの事を聞いてひどく悲しんだ。非常に富んでいたからである。
Luke 18:24 彼がひどく悲しむのを見ながら,イエスは言った,「富んだ人たちが神の王国に入るのは,何と難しいことか! Luke 18:25 富んだ人が神の王国に入るよりは,ラクダが針の穴を通り抜ける方が易しいのだ」
Luke 18:26 彼らはこれを聞いて言った,「それでは,だれが救いを得られるのですか」。
Luke 18:27 しかし彼は言った,「人には不可能な事柄でも,神には可能なのだ」
Luke 18:28 ペトロが言った,「ご覧ください,わたしたちは何もかも後にして,あなたに従いました」。
Luke 18:29 イエスは言った,「本当にはっきりとあなた方に告げる。神の王国のために,家,妻,兄弟たち,両親,あるいは子供たちを後にする者で, Luke 18:30 今この時に何倍も受け,また来たるべき世で永遠の命を受けない者はいない」
Luke 18:31 彼は十二人をわきに連れて行き,彼らに言った,「見よ,わたしたちはエルサレムに上って行く。そして,人の子について,預言者たちを通して書かれたことはみな成し遂げられるだろう。 Luke 18:32 彼は異邦人たちに引き渡され,あざけられ,ひどい扱いを受け,つばをかけられる。 Luke 18:33 彼らは彼をむち打ち,殺すだろう。三日目に彼は生き返る」
Luke 18:34 彼らはこれらのことを理解しなかった。この言葉は彼らから隠されており,彼らは語られたことを理解しなかったのである。 Luke 18:35 彼がエリコに近づいていた時のこと,ある盲人が道ばたに座って物ごいをしていた。 Luke 18:36 群衆が通り過ぎるのを耳にして,これは何事かと尋ねた。 Luke 18:37 人々は,ナザレのイエスが通って行くのだと彼に告げた。 Luke 18:38 彼は叫んで言った,「ダビデの子イエスよ,わたしをあわれんでください!」 Luke 18:39 先を行く者たちが彼をしかりつけ,黙らせようとしたが,彼はますます,「ダビデの子よ,わたしをあわれんでください!」と叫び続けた。
Luke 18:40 イエスは立ち止まって,彼を連れて来るようにと命じた。彼が近づいて来ると,イエスは彼に尋ねた, Luke 18:41 「何をして欲しいのか」
彼は言った,「主よ,また見えるようになることです」。
Luke 18:42 イエスは彼に言った,「見えるようになりなさい。あなたの信仰があなたをいやしたのだ」
Luke 18:43 すぐに彼は見えるようになり,神に栄光をささげながらイエスに従った。それを見て,人々はみな神をたたえた。
Luke 19:0 Luke 19:1 彼はエリコに入り,そこを通り過ぎていた。 Luke 19:2 ザアカイオスという名の人がいた。徴税人の長で,富んでいた。 Luke 19:3 イエスがどんな人か見ようとしたが,群衆のためにできなかった。背が低かったからである。 Luke 19:4 前方に走って行き,イチジクグワの木に登って,彼を見ようとした。彼がその道を通っていたからである。 Luke 19:5 イエスはその場所に来ると,彼を見上げて,彼に言った,「ザアカイオス,急いで降りて来なさい。わたしは今日,必ずあなたの家に泊まるからだ」 。 Luke 19:6 彼は急いで降りて来て,喜んでイエスを迎えた。 Luke 19:7 それを見ると,みんなはつぶやいて言った,「彼は罪人であるこの男のところに行って宿を取った」。
Luke 19:8 ザアカイオスは立ち上がって主に言った,「ご覧ください,主よ,わたしは自分の財産の半分を貧しい人たちに与えます。だれかのものを不正に取り立てていたなら,四倍にして返します」。
Luke 19:9 イエスは彼に言った,「今日,救いがこの家に来た。彼もまたアブラハムの子だからだ。 Luke 19:10 人の子は,失われたものを探し出し,それを救うために来たのだ」
Luke 19:11 彼らがこれらのことを聞いていると,彼は続けて一つのたとえを話した。彼がエルサレムに近づいており,彼らは神の王国がすぐに現われるものと思っていたからである。 Luke 19:12 それで彼は言った,「ある貴族が,王国を受けて戻るために,遠い国に出かけた。 Luke 19:13 彼は自分の十人の召使いたちを呼び,彼らに十枚のミナ硬貨を渡して,彼らに言った,『わたしが帰って来るまで商売をしなさい』。 Luke 19:14 しかし彼の市民たちは彼を憎んでいたので,彼の後から使者を遣わして,こう言った,『わたしたちはこの男が自分たちを支配することを望みません』。
Luke 19:15 「彼は王国を受けて帰って来ると,お金を渡しておいたそれらの召使いたちを呼び寄せるよう命じた。彼らが商売をして何をもうけたかを知るためだった。 Luke 19:16 最初の者が彼の前に来て言った,『主よ,あなたの一ミナはさらに十ミナを作り出しました』。
Luke 19:17 「主人は彼に言った,『よくやった,善い召使いよ。あなたはごく小さなことに忠実だと分かったから,十の都市に対する権威を持ちなさい』。
Luke 19:18 「二番目の者が来て言った,『主よ,あなたの一ミナは五ミナを作り出しました』。
Luke 19:19 「そこで主人は彼に言った,『あなたも五つの都市を治めなさい』。 Luke 19:20 別の者が来て言った,『主よ,ご覧ください,あなたの一ミナです。手ぬぐいに包んで,しまっておきました。 Luke 19:21 わたしはあなたが恐かったのです。あなたは厳格な方ですから。預けなかったところで取り立て,種をまかなかった所で刈り取られるのです』。
Luke 19:22 「主人は彼に言った,『あなた自身の口からあなたを裁こう,悪い召使いよ! あなたはわたしが厳しい者で,預けなかったところで取り立て,種をまかなかった所で刈り取ることを知っていたのか。 Luke 19:23 それなら,どうしてわたしのお金を銀行に預けなかったのか。そうすれば,帰って来た時,それに加えて利息を得られただろうに』。 Luke 19:24 そばに立っている者たちに言った,『その一ミナを彼から取り上げて,十ミナ持っている者に与えなさい』。
Luke 19:25 「彼らは彼に言った,『主よ,彼はすでに十ミナを持っています!』 Luke 19:26 『あなた方に告げるが,だれでも持っている者にはさらに与えられるが,持っていない者からはその持っているものまでも取り去られることになるのだ。 Luke 19:27 だが,わたしがその上で支配することを望まなかった,あのわたしの敵たちをここに連れ出して,わたしの前で殺してしまえ』」 。 Luke 19:28 これらのことを言ってから,彼は先に立って進み,エルサレムに上って行った。
Luke 19:29 オリブトと呼ばれる山のふもとの,ベツファゲとベタニアに近づいた時,彼は弟子たちのうちの二人を遣わして, Luke 19:30 こう言った,「向こう側の村に行きなさい。そこに入ると,だれも乗ったことのない子ロバがつないであるのが見つかるだろう。それを解いて,連れて来なさい。 Luke 19:31 もしだれかが,『なぜそれを解いているのか』と尋ねるなら,その者に,『主がこれを必要としているのです』と言いなさい」
Luke 19:32 遣わされた者たちは出て行き,彼が自分たちに告げたとおりのことを見いだした。 Luke 19:33 彼は子ロバを解いていると,その持ち主たちが彼らに言った,「なぜ子ロバを解いているのか」。 Luke 19:34 彼らは言った,「主がこれを必要とされているのです」。 Luke 19:35 彼らはそれをイエスのもとに連れて来た。子ロバの上に自分たちの外衣を投げかけると,イエスはそれらに乗った。 Luke 19:36 彼が進んで行くと,人々は自分たちの外衣を道に敷いた。 Luke 19:37 彼が今やオリーブ山の下り坂に近づくと,弟子たちから成る群衆はみな,自分たちが見たすべての強力な業のことで喜び,大声で神を賛美し始めて Luke 19:38 言った,「主の名において来る王は幸いだ! 平和が天に,栄光がいと高き所に!」
Luke 19:39 数人のファリサイ人たちが,群衆の中から彼に言った,「先生,あなたの弟子たちをしかってください!」
Luke 19:40 彼は彼らに答えた,「あなた方に告げるが,これらの者が黙っているなら,石が叫ぶだろう」
Luke 19:41 彼は都に近づくと,都を見てそのために涙を流し, Luke 19:42 こう言った,「もしあなたが,まさにあなたが,この日に,自分の平和にかかわる事柄を知っていたなら! だが,それらは今あなた方の目から隠されている。 Luke 19:43 あなたには次のような日々が来るからだ。すなわち,あなたの敵たちはあなたに対してバリケードを築き,あなたを包囲して四方から取り巻き, Luke 19:44 あなたとあなたの中にいるあなたの子らを地面に打ち倒すだろう。彼らはあなたの中で,石をほかの石の上に残しておくことはないだろう。あなたが自分の訪れの時を知らなかったからだ」
Luke 19:45 彼は神殿に入り,そこで買ったり売ったりしていた者たちを追い出し始め, Luke 19:46 彼らに言った,「『わたしの家は祈りの家だ』と書かれているのに,あなた方はそれを『強盗の巣』にしてしまった!」
Luke 19:47 彼は神殿で毎日教えていたが,祭司長たちと律法学者たち,および民の指導者たちは,彼を滅ぼそうとした。 Luke 19:48 しかし,どうすればよいか分からなかった。民はみな,彼の語るすべての言葉に聞き入っていたからである。
Luke 20:0 Luke 20:1 ある日のこと,彼が神殿で民を教え,福音を宣教していると,祭司たちと律法学者たちが長老たちと共に彼のもとにやって来た。 Luke 20:2 彼らは彼に尋ねた,「わたしたちに告げなさい。あなたは何の権威によってこうした事をするのか。また,だれがその権威をあなたに与えたのか」。
Luke 20:3 彼は彼らに答えた,「わたしもあなた方に一つのことを尋ねよう。わたしに告げなさい。 Luke 20:4 ヨハネのバプテスマは天からのものだったか,それとも人からのものだったか」
Luke 20:5 彼らは互いに論じ合って言った,「我々が『天から』と言えば,彼は『あなた方が彼を信じなかったのはなぜか』と言うだろう。 Luke 20:6 だが,我々が『人から』と言えば,民はみな我々を石打ちにするだろう。彼らがヨハネは預言者だと信じ込んでいるからだ」。 Luke 20:7 彼らは,自分たちはそれがどこからのものか知らないと答えた。
Luke 20:8 イエスは彼らに言った,「わたしも,何の権威によってこうした事をするのかをあなた方に告げない」
Luke 20:9 彼は民に次のたとえを告げ始めた。「ある人がブドウ園を造り,それを何人かの耕作人たちに貸して,長い間外国に出かけた。 Luke 20:10 しかるべき季節に,彼は召使いを耕作人たちのところに送って,ブドウ園の産物の分け前を集めようとした。しかし彼らはその召使いを打ちたたき,何も持たせずに送り返した。 Luke 20:11 彼はさらに別の召使いを送ったが,彼らはその召使いをも打ちたたき,ひどい扱いをし,何も持たせずに送り返した。 Luke 20:12 彼はさらに三人目の者を送ったが,彼らはその召使いにも傷を負わせ,外に投げ出した。 Luke 20:13 ブドウ園の主人は言った,『どうしようか。わたしの愛する息子を送ろう。彼を見れば,彼らも彼を敬うだろう』。
Luke 20:14 「ところが耕作人たちは,彼を見て,互いに論じ合って言った,『これは相続人だ。さあ,こいつを殺そう。そうすれば,相続財産は我々の物になるのだ』。 Luke 20:15 彼らは彼を,そのブドウ園の外に投げ出して殺した。それで,ブドウ園の主人は彼らをどうするだろうか。 Luke 20:16 やって来てそれらの耕作人たちを滅ぼし,そのブドウ園をほかの者たちに与えるだろう」。
それを聞くと彼らは言った,「そんなことがあってはならない!」
Luke 20:17 しかし彼は彼らを見つめて言った,「では,こう書かれているのはどういうことか。
『建てる者たちが退けた石,それが主要な隅石となった』。 Luke 20:18 「この石の上に落ちる者は皆,粉々に砕かれ,その石がだれかの上に落ちれば,それはその者をみじんにするだろう」。 Luke 20:19 祭司長たちとファリサイ人たちは,まさにその時,彼に手をかけようとしたが,民を恐れた。彼がこのたとえを自分たちに当てつけて話したことを知っていたからである。 Luke 20:20 彼らは彼の様子をうかがって,義人のふりをしたスパイたちを遣わした。彼の言葉じりを捕らえて,総督の支配力と権威のもとに彼を引き渡すためであった。 Luke 20:21 彼らは彼に言った,「先生,わたしたちはあなたが正しいことを話したり教えたりされること,また,だれをもえこひいきすることなく,神の道を正しく教えられることを知っています。 Luke 20:22 カエサルに税金を払うことは許されているでしょうか,許されていないでしょうか」。
Luke 20:23 しかし彼は,彼らのずる賢さに気づいて,彼らに言った,「なぜあなた方はわたしを試すのか。 Luke 20:24 一デナリオスをわたしに見せなさい。そこにあるのはだれの像と銘なのか」
彼らは答えた,「カエサルのです」。
Luke 20:25 彼は彼らに答えた,「それなら,カエサルのものはカエサルに,神のものは神に返しなさい」
Luke 20:26 彼らは民の前で彼の言葉じりを捕らえることができなかった。彼の答えに驚嘆し,黙ってしまった。 Luke 20:27 サドカイ人たちのある者たちが彼のもとにやって来た。復活があることを否定する者たちである。 Luke 20:28 彼に尋ねて言った,「先生,モーセはわたしたちに,『もしある人の兄に妻がいて,子供を残さずに死んだ場合,彼の弟がその妻をめとり,自分の兄のために子孫を起こさなければならない』と書きました。 Luke 20:29 ところで,七人の兄弟がいました。最初の者が妻をめとりましたが,子供を残さずに死にました。 Luke 20:30 二番目の者が彼女をめとりましたが,子供を残さずに死にました。 Luke 20:31 三番目の者が彼女をめとりました。そして同じように七人全員が子供を残さずに死にました。 Luke 20:32 その後,その女も死にました。 Luke 20:33 それで,復活において,彼女は彼らのうちだれの妻になるのですか。七人全員が彼女を妻にしたのですから」。
Luke 20:34 イエスは彼らに答えた,「この世の子らは,めとったり嫁いだりしている。 Luke 20:35 だが,その世と死んだ者たちの中からの復活とを得るのにふさわしいとされた者たちは,めとることも嫁ぐこともない。 Luke 20:36 彼らはもはや死ぬことはあり得ないからだ。み使いのようだからであり,また復活の子らとして神の子らであるからだ。 Luke 20:37 だが,死んだ者たちが起こされることについては,モーセも『茂み』のくだりで,主を『アブラハムの神,イサクの神,ヤコブの神』と呼んで,そのことを示している。 Luke 20:38 この方は死んだ者たちの神ではなく,生きている者たちの神なのだ。その方にとってはすべての人が生きているのだ」
Luke 20:39 律法学者たちのある者たちが答えた,「先生,立派なお答えです」。 Luke 20:40 彼らは彼にこれ以上あえて何かを尋ねることはなかった。
Luke 20:41 彼は彼らに言った,「どうして彼らはキリストがダビデの子だと言うのか。 Luke 20:42 ダビデ自身,詩編の書の中でこう言っている。
『主はわたしの主に言われた,「わたしの右に座っていなさい, Luke 20:43 わたしがあなたの敵たちをあなたの足台とするまで」』。
Luke 20:44 「それで,ダビデが彼を主と呼んでいるのなら,どうして彼はダビデの子なのか」
Luke 20:45 すべての民が聞いているところで,彼は弟子たちに言った, Luke 20:46 「律法学者たちに用心しなさい。彼らが好むのは,長い衣をまとって歩き回ることであり,彼らが愛しているのは,市場であいさつされること,そして会堂での上席や祝宴での上座だ。 Luke 20:47 彼らは,やもめたちの家々を食い物にし,見せかけのために長い祈りをする者たちだ。こうした者たちは最も厳しい裁きを受けるだろう」
Luke 21:0 Luke 21:1 彼は目を上げて,富んだ人たちが宝物庫に彼らの供え物を入れているのを見た。 Luke 21:2 また,ある貧しいやもめが小さな真ちゅうの硬貨二つを投げ入れているのを見た。 Luke 21:3 彼は言った,「本当にあなた方に言う。この貧しいやもめは,彼ら全部よりも多くを入れた。 Luke 21:4 これらの者はみな自分のあり余る中から神への供え物を入れたが,彼女は,その乏しい中から,彼女が生活のために持っていたものすべてを差し出したからだ」
Luke 21:5 ある者たちが,神殿について,それが美しい石や供え物で飾り立てられていることを話していると,彼は言った, Luke 21:6 「あなた方が見ているこれらのものについて言えば,ここで石が崩されずにほかの石の上に残ることのない日々が来る」
Luke 21:7 彼らは彼に答えた,「先生,それでは,それらのことはいつ起きるのですか。それらのことが起きるときのしるしは何ですか」。
Luke 21:8 彼は言った,「あなた方は惑わされないように注意していなさい。多くの者がわたしの名においてやって来て,『わたしはある』,また『その時が近づいた』と言うだろう。だから,彼らに従ってはいけない。 Luke 21:9 戦争や動乱のことを聞く時,おびえてはいけない。これらのことはまず起こらなければならないが,終わりはすぐには来ないからだ」
Luke 21:10 それから,彼は彼らに言った,「民族は民族に,王国は王国に敵対して立ち上がるだろう。 Luke 21:11 あちこちで大きな地震やききんや伝染病がある。さまざまな恐ろしいことや天からの大いなるしるしがある。 Luke 21:12 だが,これらのすべてのことの前に,人々はあなた方に手をかけ,迫害し,会堂やろうやに引き渡し,わたしの名のゆえに王たちや総督たちの前に引き出すだろう。 Luke 21:13 それはあなた方にとって証言の機会となるだろう。 Luke 21:14 だから,どのように答えようかと前もって考えないよう心に決めなさい。 Luke 21:15 わたしがあなた方に,あなた方の反対者たち全員が反論も否定もできないような口と知恵を与えるからだ。 Luke 21:16 あなた方は,両親,兄弟たち,親族たち,友人たちからさえ引き渡されるだろう。彼らは,あなた方のうちのある者たちを死に至らせるだろう。 Luke 21:17 あなた方はわたしの名のゆえにすべての者たちから憎まれるだろう。 Luke 21:18 しかし,あなた方の髪の毛一本さえ滅びることはない。
Luke 21:19 「あなた方は自分の忍耐によって自分の命を勝ち取りなさい。
Luke 21:20 「だが,エルサレムが軍隊に包囲されているのを見るなら,その時,その荒廃が近づいたことを知りなさい。 Luke 21:21 その時,ユダヤにいる者たちは山に逃げなさい。都の中にいる者たちは立ち去りなさい。田舎にいる者たちは,都に入ってはいけない。 Luke 21:22 これこそ,書かれているすべてのことが果たされる報復の日々だからだ。 Luke 21:23 それらの日,妊娠している者たちと幼子に乳を飲ませている者たちにとっては災いだ! この地には大きな苦しみがあり,この民に対しては憤りがあるからだ。 Luke 21:24 彼らは剣の刃に倒れ,とりことしてあらゆる民族のもとへ引いて行かれるだろう。エルサレムは,異邦人たちの時が満たされるまで,異邦人たちによって踏みつけられるだろう。 Luke 21:25 太陽と月と星々にしるしがあり,地上では,海と波のとどろきのゆえに当惑する諸国民の不安があり, Luke 21:26 人々は恐れのゆえ,また世界に臨もうとしている事柄についての予想のゆえに,気を失うだろう。天にあるもろもろの力が揺り動かされるからだ。 Luke 21:27 その時,人々は,人の子が力と大いなる栄光を伴って雲のうちに来るのを見るだろう。 Luke 21:28 だが,これらのことが起こり始めたなら,身を起こして頭を上げなさい。あなた方の請け戻しが近づいているからだ」
Luke 21:29 彼は彼らに一つのたとえを話した。「イチジクの木や,すべての木を見なさい。 Luke 21:30 すでに芽を出していると,あなた方はそれを見て,もう夏が近いことを自分で知る。 Luke 21:31 このようにあなた方も,これらのことが起こるのを見たなら,神の王国が近いことを知りなさい。 Luke 21:32 本当にはっきりとあなた方に告げる。これらのすべてのことが実現するまでは,この世代は過ぎ去らない。 Luke 21:33 天と地は過ぎ去るだろう。それでも,わたしの言葉は決して過ぎ去ることがないのだ。
Luke 21:34 「だから,見張っていなさい。そうでないと,飲み騒ぎや泥酔や生活の思い煩いであなた方の心が鈍くなり,その日が急にあなた方に臨むことになるだろう。 Luke 21:35 それは全地の表に住むすべての者たちに,わなのように臨むからだ。 Luke 21:36 だから,祈りながらいつも見張っていなさい。あなた方が,起ころうとしているこれらすべてのことを逃れ,人の子の前に立つにふさわしいとみなされるためだ」
Luke 21:37 イエスは毎日,昼は神殿で教え,夜は出て行って,オリブトと呼ばれる山で夜を過ごしていた。 Luke 21:38 民はみな,彼の言うことを聞くために,朝早くから,神殿にいる彼のもとにやって来た。
Luke 22:0 Luke 22:1 さて,過ぎ越しと呼ばれる種なしパンの祭りが近づいていた。 Luke 22:2 祭司長たちと律法学者たちは,どうしたら彼を死に至らせることができるかを探り求めていた。彼らは民を恐れていたのである。 Luke 22:3 サタンが,またの名をイスカリオトといい,十二人の中に数えられていたユダに入り込んだ。 Luke 22:4 彼は出て行き,祭司長たちや指揮官たちと,どうしたら彼がイエスを彼らに引き渡せるかについて話し合った。 Luke 22:5 彼らは喜び,彼にお金を与えることに決めた。 Luke 22:6 彼は承諾し,群衆のいないときにイエスを引き渡す機会を探り求めた。 Luke 22:7 種なしパンの日がやって来た。過ぎ越しの犠牲がささげられなければならない日である。 Luke 22:8 彼はペトロとヨハネを遣わして,こう言った,「行って,わたしたちのために過ぎ越しの食事を用意しなさい」
Luke 22:9 彼らは彼に言った,「どこに用意をすることをお望みですか」。
Luke 22:10 彼は彼らに言った,「見よ,あなた方が市内に入ると,水がめを運んでいる男があなた方に出会うだろう。その人に付いて行き,彼の入る家に行きなさい。 Luke 22:11 その家の主人にこう言いなさい。『先生が,「わたしが弟子たちと共に過ぎ越しの食事をする客室はどこか」と言っています』。 Luke 22:12 彼はあなた方に,席の整えられた大きな階上の部屋を見せてくれるだろう。その場所で準備をしなさい」
Luke 22:13 彼らは出て行き,彼が自分たちに告げたとおりのことを見いだした。それで彼らは過ぎ越しの用意をした。 Luke 22:14 その時刻になると,彼は十二人の使徒たちと共に席に着いた。 Luke 22:15 彼は彼らに言った,「わたしは,自分が苦しみを受ける前に,あなた方と一緒にこの過ぎ越しの食事をしたいと,熱烈に願っていた。 Luke 22:16 あなた方に告げるが,神の王国でこれが満たされるまで,わたしはもはやこの食事をすることはないからだ」 。 Luke 22:17 杯を受け取り,感謝をささげてから,彼らに言った,「これを取って,互いに分け合いなさい。 Luke 22:18 あなた方に告げるが,神の王国が来るまで,わたしはもはやブドウの木の産物を飲むことはないからだ」
Luke 22:19 パンを取り,感謝をささげてからそれを裂き,彼らに与えてこう言った。「これはあなた方のために与えられるわたしの体だ。わたしの思い出として,これを行ないなさい」 。 Luke 22:20 同じように,晩さんの後で杯を取ってこう言った。「この杯は,あなた方のために流されるわたしの血による新しい契約だ。 Luke 22:21 だが,見よ,わたしを売り渡す者の手が,わたしと共に食卓にある。 Luke 22:22 確かに人の子は定められたとおりに去って行く。だが,彼を売り渡すその人は災いだ!」
Luke 22:23 彼らは,彼らの中でだれがそんなことをしようとしているのか,互いに尋ね始めた。 Luke 22:24 彼らの間ではまた,自分たちの中でだれが一番偉いと思われるかに関する口論も生じた。 Luke 22:25 彼は彼らに言った,「異邦人たちの王たちは人々に対して威張り散らし,人々の上に権力のある者たちは『恩人』と呼ばれている。 Luke 22:26 だが,あなた方はそうではない。むしろ,あなた方の間で一番偉い者は一番若い者のように,支配する者は仕える者のようになりなさい。 Luke 22:27 というのは,食卓に着いている者と仕える者では,どちらが偉いのか。食卓に着いている者ではないか。それでも,わたしは仕える者としてあなた方の中にいる。 Luke 22:28 だが,あなた方はわたしの数々の試練のときに,ずっとわたしと共にいてくれた者たちだ。 Luke 22:29 わたしの父がわたしに王国を授けてくださったように,わたしはあなた方にそれを授ける。 Luke 22:30 あなた方がわたしの王国で,わたしの食卓に着いて食べたり飲んだりするためだ。あなた方は座に着き,イスラエルの十二部族を裁くだろう」
Luke 22:31 主は言った,「シモン,シモン,見よ,サタンは,あなた方を小麦のようにふるいにかけるために,あなた方を手に入れることを求めた。 Luke 22:32 だがわたしは,あなたの信仰が尽きないように,あなたのために祈った。あなたは,いったん立ち返ったなら,あなたの兄弟たちを強めなさい」
Luke 22:33 ペトロは彼に言った,「主よ,わたしは,ろうやにも,死に至るまでも,あなたと一緒に行く用意ができています!」
Luke 22:34 彼は言った,「ペトロよ,あなたに告げる。あなたが三度わたしを知っていることを否認するまでは,今日,おんどりが鳴くことはないだろう」
Luke 22:35 彼は彼らに言った,「わたしがあなた方を,財布も袋も履物も持たせずに遣わした時,何かに不足したか」
彼らは言った,「何にも不足しませんでした」。
Luke 22:36 すると彼は彼らに言った,「だが今は,財布のある者はそれを取り,袋も同じようにしなさい。何も持っていない者は,自分の外衣を売って,剣を買いなさい。 Luke 22:37 あなた方に告げるが,『彼は不法な者たちと共に数えられた』と書かれているこのことは,なおわたしにおいて果たされなければならないのだ。わたしに関することは終わりを迎えるからだ」
Luke 22:38 彼らは言った,「主よ,ご覧ください,ここに剣が二振りあります」。
彼は彼らに言った,「それで十分だ」
Luke 22:39 彼は出て来て,自分の習慣どおりに,オリーブ山に行った。弟子たちも彼に従った。 Luke 22:40 その場所に来ると,彼は彼らに言った,「あなた方は誘惑に陥らないよう,祈っていなさい」
Luke 22:41 彼らから石を投げて届くほどの所に下がり,ひざまずいて祈り, Luke 22:42 こう言った,「父よ,もしそう望まれるなら,この杯をわたしから取り除いてください。それでも,わたしの意志ではなく,あなたのご意志がなされますように」
Luke 22:43 天から一人のみ使いが彼に現われ,彼を強めた。 Luke 22:44 彼は苦しみもだえ,ますます熱烈に祈った。彼の汗は大粒の血の滴りのようになって地面に落ちた。
Luke 22:45 祈りから起き上がり,弟子たちのところに来ると,彼らが悲しみのために眠り込んでいるのを見いだした。 Luke 22:46 それで彼らに言った,「なぜあなた方は眠っているのか。誘惑に陥らないよう,起きて祈っていなさい」
Luke 22:47 彼がまだ話しているうちに,見よ,群衆が現われた。そして,十二人の一人でユダと呼ばれる者が彼らの先頭に立っていた。口づけをしようとしてイエスに近づいた。 Luke 22:48 しかしイエスは彼に言った,「ユダ,あなたは口づけで人の子を売り渡すのか」
Luke 22:49 彼の周りにいた者たちは,起きようとしていることを見て,彼に言った,「主よ,剣で撃ちましょうか」。 Luke 22:50 彼らのうちのある者が,大祭司の召使いに撃ちかかり,その右耳を切り落とした。
Luke 22:51 しかしイエスは答えた,「そこまでにしなさい」 。そして,彼の耳を触って,彼をいやした。 Luke 22:52 イエスは,自分に向かって来た祭司長たち,神殿の指揮官たち,および長老たちに言った,「あなた方は強盗に対するかのように,剣とこん棒を持って出て来たのか。 Luke 22:53 わたしは毎日あなた方と一緒に神殿にいて教えていたのに,あなた方はわたしに向かって手を出さなかった。だが,今はあなた方の時,闇の支配だ」
Luke 22:54 彼らは彼を捕まえて,引いて行き,大祭司の家に連れて来た。しかしペトロは遠くから付いて行った。 Luke 22:55 人々は中庭の真ん中に火をたいて一緒に座ったので,ペトロも彼らの中で腰を下ろした。 Luke 22:56 ある召使いの女が,彼が明るいところに座っているのを見,彼をじっと見つめて言った,「この男も彼と一緒にいました」。
Luke 22:57 彼はイエスを否認して言った,「女よ,わたしは彼を知らない」。
Luke 22:58 しばらくして,ほかの者が彼を見て言った,「あなたも彼らの一人だ!」
しかしペトロは答えた,「人よ,わたしは違う!」
Luke 22:59 一時間ほどすると,別の者が自信満々に断言して言った,「確かにこの男も彼と一緒にいた。ガリラヤ人だからだ!」
Luke 22:60 しかしペトロは言った,「人よ,わたしはあなた方の話しているそのことを知らないのだ!」 すぐに,彼がまだ話している間に,おんどりが鳴いた。 Luke 22:61 主は振り返ってペトロを見つめた。そこでペトロは,「おんどりが鳴く前に,あなたは三度わたしを否認するだろう」 と,主が自分に言った言葉を思い出した。 Luke 22:62 外に出て,激しく泣いた。
Luke 22:63 イエスを拘留していた者たちは,彼をなぶりものにし,殴りつけた。 Luke 22:64 彼に目隠しをして顔を打ち,彼に言った,「預言しろ! お前を打ったのはだれか」。 Luke 22:65 彼らは,彼を侮辱しながら,彼に向かってほかにも多くのことを話しかけた。
Luke 22:66 朝になると,民の長老たちの会は,祭司長たちも律法学者たちも共に集まり,彼を彼らの最高法院に引いて行き,こう言った。 Luke 22:67 「もしお前がキリストなら,我々に告げよ」。
しかし彼は彼らに言った,「あなた方に告げたとしても,あなた方は信じないだろうし, Luke 22:68 尋ねたとしても,あなた方はわたしに答えたり,わたしを解放したりはしないだろう。 Luke 22:69 今後,人の子は神の力の右に座ることになる」
Luke 22:70 みんなは言った,「それならお前は神の子か」。
彼は彼らに言った,「わたしはあるとは,あなた方が言った」
Luke 22:71 彼らは言った,「なぜこれ以上証人が必要だろうか。我々自身が本人の口から聞いたのだ!」
Luke 23:0 Luke 23:1 彼らの全員が立ち上がり,彼をピラトの前に連れて行った。 Luke 23:2 彼らは彼を訴え始めて言った,「わたしたちは,この男が国民を惑わし,カエサルに税を払うのを禁じ,また,自分が王なるキリストだと言っているのを見いだしました」。
Luke 23:3 ピラトは彼に尋ねた,「お前はユダヤ人の王なのか」。
彼はピラトに答えた,「あなたがそう言っている」
Luke 23:4 ピラトは祭司長たちと群衆に言った,「わたしはこの男に対して訴える根拠を何も見いださない」。
Luke 23:5 しかし彼らは言い張った,「彼は,ユダヤのあちこちで教えながら,民を扇動しているのです。しかもガリラヤから始めてこの場所にまで至ったのです」。 Luke 23:6 ガリラヤと聞いて,ピラトはこの男がガリラヤ人かどうか尋ねた。 Luke 23:7 彼がヘロデの管轄内にあると知ると,ピラトは彼をヘロデのもとに送った。ヘロデもそのころエルサレムにいたのである。
Luke 23:8 さてヘロデは,イエスを見ると非常に喜んだ。彼について多くのことを耳にしていたため,ずっと前から彼を見てみたいと思っていたからである。彼が何か奇跡を行なうのを見たいと望んでいた。 Luke 23:9 ヘロデは多くの言葉で彼に質問したが,彼は何も答えなかった。 Luke 23:10 祭司長たちと律法学者たちが立っており,激しく彼を訴えていた。 Luke 23:11 ヘロデも自分の兵士たちと一緒になって彼を辱め,彼をなぶりものにした。豪華な衣を着せて,彼をピラトのところに送り返した。 Luke 23:12 まさにその日,ヘロデとピラトは互いに友人になった。それまでは互いに敵対していたのである。
Luke 23:13 ピラトは祭司長たちと支配者たちと民を呼び, Luke 23:14 彼らに言った,「お前たちは,民を惑わす者として,この男をわたしのところに連れて来た。それで見よ,わたしはお前たちの前で彼を尋問したが,この男に対してお前たちが訴えている事柄について,その根拠を何も見いだせなかった。 Luke 23:15 ヘロデも同じだ。わたしはお前たちをそのもとに送ったからだ。それで見よ,彼は死に値することを何もしていない。 Luke 23:16 だから,わたしは彼をむち打ってから,彼を釈放することにする」。
Luke 23:17 さて,ピラトは祭りの際に,囚人を一人,彼らのために釈放しなければならなかった。 Luke 23:18 しかし彼らはいっせいに叫んで言った,「その男を取り除け! 我々にはバラバを釈放しろ!」 Luke 23:19 このバラバは,都での暴動と人殺しとのかどでろうやに入れられていた者である。
Luke 23:20 ピラトは,イエスを解放したいと思い,再び彼らに語りかけた。 Luke 23:21 しかし彼らは叫んで言った,「はりつけにしろ! 彼をはりつけにしろ!」
Luke 23:22 彼は三度目に彼らに言った,「なぜだ。この男がどんな悪事をしたというのか。わたしは死刑に値する犯罪を何も彼に見いださなかった。だから,わたしは彼をむち打ってから,彼を釈放することにする」。 Luke 23:23 しかし彼らは,彼をはりつけにするように求めて,大声で迫った。彼らの声と祭司長たちの声が優勢になった。 Luke 23:24 ピラトは彼らの要求どおりにするよう布告を出した。 Luke 23:25 暴動と殺人のかどでろうやに入れられていた者,彼らが求めていた者を釈放し,イエスを彼らの意向に引き渡した。
Luke 23:26 イエスを引いて行く時,彼らは田舎から出てきたキュレネのシモンを捕まえ,彼に十字架を負わせ,イエスの後ろから運ばせた。 Luke 23:27 民の大群衆と,彼のために嘆き悲しむ女たちが,彼に従った。 Luke 23:28 しかしイエスは,彼女たちのほうに振り向いて言った,「エルサレムの娘たちよ,わたしのために泣いてはいけない。むしろ,自分と自分の子供たちのために泣きなさい。 Luke 23:29 見よ,人々が,『不妊の女と,生まなかった胎と,乳を飲ませなかった乳房とは幸いだ』と言う日々が来ようとしているからだ。 Luke 23:30 その時,人々は山々に向かって,『我々の上に倒れてくれ!』と言い,丘に向かって,『我々を覆ってくれ!』と言い始めるだろう。 Luke 23:31 というのも,青々とした木において彼らがこれらのことをするのであれば,枯れ木においては何がなされるだろうか」
Luke 23:32 彼らはほかの二人の犯罪者をも,死に至らせるために彼と共に引いて行った。 Luke 23:33 「どくろ」と呼ばれている場所にやって来ると,彼を犯罪者たちと共にそこではりつけにし,一人はその右に,もう一人はその左に置いた。
Luke 23:34 イエスは言った,「父よ,彼らをお許しください。自分たちが何をしているかを知らないからです」
彼らは,互いに彼の外衣を分けようとしてくじを引いた。 Luke 23:35 民は立って見届けていた。支配者たちも彼をあざ笑って言った,「ほかの者たちは救ったのだ。もしこれが神のキリスト,その選ばれた者なら,自分を救うがよい!」
Luke 23:36 兵士たちも彼をなぶりものにし,彼のもとに来て酢を差し出して Luke 23:37 言った,「もしお前がユダヤ人の王なら,自分を救え!」
Luke 23:38 彼の上には,「これはユダヤ人の王」と,ギリシャ語,ラテン語,およびヘブライ語で書かれたものがあった。
Luke 23:39 十字架に掛けられた犯罪者たちの一人が彼を侮辱して言った,「もしお前がキリストなら,自分自身と我々を救え!」
Luke 23:40 しかし,もう一人の者が答えて,彼をしかりつけて言った,「お前は同じ刑罰を受けているのに,神を恐れないのか。 Luke 23:41 確かに我々には当然のことだ。自分の行ないに応じた報いを受けているのだから。だがこの人は何も不正なことをしていないのだ」。 Luke 23:42 彼はイエスに言った,「主よ,あなたがご自分の王国に入られる時には,わたしのことを思い出してください」。
Luke 23:43 イエスは彼に言った,「確かにあなたに告げる。今日あなたはわたしと共にパラダイスにいるだろう」
Luke 23:44 すでに第六時ごろになっていたが,闇が全土を覆い,第九時にまで及んだ。 Luke 23:45 太陽が暗くなり,神殿の幕が二つに裂けた。 Luke 23:46 イエスは大声で叫んで言った,「父よ,あなたのみ手に,わたしの霊をゆだねます!」  こう言ってから,息を引き取った。
Luke 23:47 百人隊長は,起きたことを見ると,神に栄光をささげて,「確かにこの人は義人だった」と言った。 Luke 23:48 見物に集まって来ていた群衆は皆,起きた事柄を見ると,胸を打ちながら帰って行った。 Luke 23:49 彼のすべての知人たちと,ガリラヤから彼に従ってきた女たちとは,遠くに立ってこれらのことを見届けていた。
Luke 23:50 見よ,ヨセフという名の人がいた。最高法院の議員であり,善良な正しい人であった。 Luke 23:51 (彼は彼らの企てや行動には同意しなかった。)ユダヤ人の町アリマタヤの出身で,やはり神の王国を待ち望んでいた。 Luke 23:52 この人がピラトのところへ行き,イエスの体を渡してくれるようにと願い出た。 Luke 23:53 彼はそれを取り降ろして亜麻布に包み,岩に切り掘った,まだだれも横たえられたことのない墓に横たえた。 Luke 23:54 準備の日で,安息日が近づいていた。 Luke 23:55 イエスと共にガリラヤから来ていた女たちは,後を付いて行き,その墓と,彼の体が横たえられる様子とを見ていた。 Luke 23:56 彼女たちは帰って行き,香料と香油を準備した。安息日には,おきてに従って休息した。
Luke 24:0 Luke 24:1 しかし,週の初めの日,明け方早く,彼女たちとほかの幾人かは,準備した香料を墓にやって来た。 Luke 24:2 墓から石が転がしてあるのを見つけた。 Luke 24:3 中に入ると,主イエスの体が見つからなかった。 Luke 24:4 このことで途方に暮れていると,見よ,二人の人がまばゆい衣を着て彼女たちに現われた。 Luke 24:5 彼女たちはおびえて,地に顔を伏せた。
彼らは彼女たちに言った,「あなた方はなぜ,生きている者を死んだ者たちの間に探し求めるのか。 Luke 24:6 彼はここにはいない。起こされたのだ。彼がまだガリラヤにいた時にあなた方に告げたことを思い出しなさい。 Luke 24:7 人の子は罪深い者たちの手に引き渡され,はりつけにされ,三日目に生き返らなければならない,と言ったではないか」。
Luke 24:8 彼女たちは彼の言葉を思い出し, Luke 24:9 墓から戻って来て,十一人と残りの全員に,これらのすべてのことを告げた。 Luke 24:10 ところで,その女たちは,マリア・マグダレネ,ヨハンナ,およびヤコブの母マリアであった。彼女たちと一緒にいたほかの女たちも,使徒たちにこれらのことを告げた。 Luke 24:11 これらの言葉は,彼らにはばかげたことのように思われたので,彼らは彼女たちのことを信じなかった。 Luke 24:12 しかし,ペトロは立ち上がり,墓に走って行った。身をかがめて中をのぞくと,亜麻布だけが置かれているのを見た。それで,起きたことを不思議に思いながら,家に帰って行った。
Luke 24:13 見よ,まさにその日,彼らのうちの二人が,エルサレムから六十スタディアのところにあるエマオという名の村へ向かっていた。 Luke 24:14 起きたこれらのすべての事柄について,互いに語り合っていた。 Luke 24:15 彼らが語り,論じ合っていると,イエス自身が近づいて来て,彼らと一緒に歩き出した。 Luke 24:16 しかし彼らの目は,彼を見分けられないでいた。 Luke 24:17 彼は彼らに言った,「あなた方が歩きながら語り合って,悲しんでいることは,いったい何ですか」
Luke 24:18 彼らのうちの一人で,クレオパスという名の者が,彼に答えた,「あなたはエルサレムで一人だけ他国人で,このごろその中で起こったことを知らないのですか」。
Luke 24:19 彼は彼らに言った,「どんなことですか」
彼らは彼に言った,「ナザレ人イエスに関することです。彼は,神と民すべての前で,業と言葉において強力な預言者でしたが, Luke 24:20 祭司長たちとわたしたちの支配者たちとは,彼を死の裁きに引き渡し,はりつけにしたのです。 Luke 24:21 ですが,わたしたちは,彼こそイスラエルを買い戻してくださる方だと期待していました。しかも,そればかりでなく,これらのことが起こってからもう三日になるのです。 Luke 24:22 その上,わたしたちの仲間の女たちが,わたしたちを驚かせました。彼女たちは朝早く墓に着きましたが, Luke 24:23 彼の体が見つからずに戻って来て,み使いたちが彼は生きていると告げる幻まで見たと言うのです。 Luke 24:24 わたしたちのうちの何人かが墓に行ってみると,まさに女たちが言ったとおりだと知りましたが,彼は見当たりませんでした」。
Luke 24:25 彼は彼らに言った,「愚かで,預言者たちが語ったすべてのことを信じるのに心の鈍い者たちよ! Luke 24:26 キリストはこれらの苦しみを受けて,自分の栄光に入って行くはずではなかったのか」 。 Luke 24:27 モーセとすべての預言者たちから始めて,聖書全体から,自分自身に関する事柄を彼らに説明した。 Luke 24:28 彼らは向かっていた村に近づいたが,彼はさらに進んで行く様子を見せた。
Luke 24:29 彼らは彼を促して言った,「わたしたちと一緒にお泊まりください。夕方になりかけていますし,日も傾きかけていますから」。
彼は彼らと一緒に泊まるために入って行った。 Luke 24:30 彼らと共に食卓に着いた時,彼はパンを取って感謝をささげた。それを裂いて彼らに与えた。 Luke 24:31 彼らの目は開かれ,それが彼だと分かった。すると,彼は彼らの面前から見えなくなった。 Luke 24:32 彼らは互いに言った,「あの方が道を行きながらわたしたちに語っておられた時,またわたしたちに聖書を解き明かしておられた時,わたしたちの心はわたしたちの内で燃えていなかっただろうか」。 Luke 24:33 すぐに立ち上がって,エルサレムに戻ってみると,十一人および彼らと共にいる者たちが集まり合い, Luke 24:34 「主は確かに起こされて,シモンに現われたのだ!」と言っているのを見いだした。 Luke 24:35 二人は,道の途中で起こったことや,パンを裂いているときに彼だと分かった様子について詳しく話した。
Luke 24:36 彼らがこれらのことを話していると,イエス自身が彼らの間に立ち,彼らに言った,「あなた方に平安があるように」
Luke 24:37 しかし彼らはおびえて恐れに満たされ,霊を見ているものと思った。
Luke 24:38 彼は彼らに言った,「なぜあなた方は動転しているのか。あなた方の心に疑いが生じるのはどうしてか。 Luke 24:39 わたしの両手と両足を見なさい。まさしくわたしだ。わたしに触り,また見なさい。霊にはあなた方がわたしに見るような肉や骨はないのだ」 。 Luke 24:40 こう言ってから,彼らに自分の両手と両足を見せた。 Luke 24:41 彼らが喜びのあまりまだ信じられず,不思議に思っていると,彼は彼らに言った,「あなた方は何か食べる物を持っているか」
Luke 24:42 彼らは彼に,一切れの焼き魚と,幾つかのハチの巣を出した。 Luke 24:43 彼はそれらを取って,彼らの前で食べた。 Luke 24:44 彼らに言った,「これは,わたしがまだあなた方と一緒にいた時,あなた方に告げたことなのだ。つまり,わたしについて,モーセの律法と預言者たちと詩編の中で書かれているすべての事柄は,必ず果たされるということだ」
Luke 24:45 それから彼は彼らの知力を開き,彼らが聖書を理解できるようにした。 Luke 24:46 彼らに言った,「このように書いてあり,このようなことがキリストに要求されている。つまり,苦しみを受け,三日目に死んだ者たちの中から生き返り, Luke 24:47 そして,悔い改めと罪の許しが,エルサレムから始まって,彼の名においてあらゆる民族に宣教されることだ。 Luke 24:48 あなた方はこれらのことの証人だ。 Luke 24:49 見よ,わたしはあなた方の上に,わたしの父が約束されたものを送り出す。だが,高い所からの力に包まれるまでは,エルサレムの都に待機していなさい」
Luke 24:50 彼らをベタニアまで連れて行き,両手を上げて彼らを祝福した。 Luke 24:51 彼らを祝福している間に,彼らから離れて行き,天に運び上げられた。 Luke 24:52 彼らは彼を拝み,大きな喜びをもってエルサレムに戻って行き, Luke 24:53 絶えず神殿にいて,神を賛美していた。アーメン。
John 0:0
John 1:0 John 1:1 はじめに言葉があり,言葉は神と共にあり,言葉は神であった。 John 1:2 この言葉ははじめに神と共にあった。 John 1:3 すべての物は彼を通して造られた。造られた物で,彼によらずに造られた物はなかった。 John 1:4 彼の内には命があり,命は人の光であった。 John 1:5 光は闇の中で輝くが,闇はそれに打ち勝たなかった。 John 1:6 神から遣わされた一人の人が現われた。その名はヨハネであった。 John 1:7 この人は証人として来た。光について証言するためであり,それはすべての人が彼を通して信じるためであった。 John 1:8 彼自身は光ではなく,光について証言するために遣わされた。 John 1:9 すべての人を啓発する真の光が世に来ようとしていた。
John 1:10 彼は世におり,世は彼を通して造られたのに,世は彼が分からなかった。 John 1:11 彼は自分の所有物のところに来たのに,彼自身の所有物であった者たちは彼を受け入れなかった。 John 1:12 しかし,彼を受け入れたすべての者たち,その名を信じた者たちに,彼は神の子供となる権利を与えた。 John 1:13 すなわち,血によらず,肉によらず,人によらず,神によって生まれた人々である。 John 1:14 言葉は肉となってわたしたちの間に住んだ。わたしたちはその栄光を見た。父のひとり子に属する栄光であって,恵みと真理とに満ちていた。 John 1:15 ヨハネは彼について証言し,叫んで言った,「この方は,『わたしの後に来る方はわたしよりまさっている。わたしより先にいたからだ』とわたしが言った方だ」。 John 1:16 わたしたちは皆,彼の充満の中から,恵みの上に恵みを受けた。 John 1:17 というのは,律法はモーセを通して与えられ,恵みと真理とはイエス・キリストを通して来たからだ。 John 1:18 いまだ神を見た者はいない。父の懐にいるひとり子こそ,その方を知らせたのである。 John 1:19 これは,ユダヤ人たちがエルサレムから祭司たちとレビ人たちを遣わして,「あなたはだれか」と尋ねさせた時の,ヨハネの証言である。
John 1:20 彼は告白して否まず,「わたしはキリストではない」と告白した。
John 1:21 彼らは彼に尋ねた,「それでは何か。あなたはエリヤか」。
彼は「そうではない」と言った。
「あなたはあの預言者か」。
彼は「違う」と答えた。
John 1:22 それで彼らは彼に言った,「あなたはだれか。わたしたちを遣わした人たちに答えられるように,わたしたちに答えて欲しい。あなたは自分について何と言うのか」。
John 1:23 彼は言った,「わたしは,預言者イザヤが言ったように,『主の道をまっすぐにせよ』と荒野で叫ぶ者の声だ」。
John 1:24 遣わされていた者たちはファリサイ人の出であった。 John 1:25 彼らは彼に尋ねた,「あなたがキリストでもエリヤでもあの預言者でもないのなら,なぜバプテスマを施すのか」。
John 1:26 ヨハネは彼らに答えた,「わたしは水でバプテスマを施すが,あなた方の知らない方が,あなた方の間に立っている。 John 1:27 わたしの後に来る方で,わたしよりも優れている。わたしはその方のサンダルのひもをほどくにも値しない」。 John 1:28 これらの事は,ヨルダンの向こうのベタニアで起こった。ヨハネはそこでバプテスマを施していたのである。
John 1:29 次の日,彼はイエスが自分の方へ来るのを見て言った,「見よ,世の罪を取り去る神の子羊だ! John 1:30 この方は,『わたしの後に来る方はわたしよりも優れている。わたしより先にいたからだ』とわたしが言った方だ。 John 1:31 わたしはこの方を知らなかった。だが,この理由でわたしは水でバプテスマを施しに来た。すなわち,この方がイスラエルに示されるためだ」。 John 1:32 ヨハネは証言して言った,「わたしは,霊がハトのように天から下って,この方の上にとどまるのを見た。 John 1:33 わたしはこの方が分からなかった。だが,水でバプテスマを施すためにわたしを遣わされた方が,わたしに言われた,『だれでも霊が下ってその上にとどまるのを見たなら,その者が聖霊でバプテスマを施す者だ』。 John 1:34 わたしは見たので,この方が神の子だということを証言している」。
John 1:35 また,次の日,ヨハネは自分の弟子のうちの二人と共に立っていた。 John 1:36 彼は歩いているイエスを見つめて言った,「見よ,神の子羊だ!」 John 1:37 二人の弟子は彼が話すのを聞いて,イエスに従った。 John 1:38 イエスは振り向いて,彼らが付いて来るのを見て,彼らに言った,「あなた方は何を求めているのか」
彼らは言った,「ラビ」(訳せば先生ということ),「どこにお泊まりですか」。
John 1:39 彼は彼らに言った,「来て,見なさい」
彼らは行って,彼がどこに泊まっているかを見た。そして彼らはその日,彼のところに泊まった。それは第十時ごろであった。 John 1:40 ヨハネから聞いて彼に従った二人のうちの一人は,シモン・ペトロの兄弟アンデレであった。 John 1:41 この人は最初に自分の兄弟シモンを見つけて,「わたしたちはメシアを見つけた!」と言った。(メシアとは,訳せばキリストということ。) John 1:42 彼はシモンをイエスのもとに連れて行った。イエスは彼に目をとめて言った,「あなたはヨナの子シモンだ。あなたはケファと呼ばれるだろう」 。(ケファとは,訳せばペトロということ。) John 1:43 次の日,イエスはガリラヤに出かけることに決め,フィリポを見つけた。イエスは彼に言った,「わたしに従いなさい」 。 John 1:44 ところでフィリポはベツサイダ,すなわちアンデレやペトロの町の生まれであった。 John 1:45 フィリポはナタナエルを見つけて言った,「わたしたちはモーセが律法の中に書き,預言者たちも書いた方を見つけた。すなわちヨセフの子,ナザレのイエスだ」。
John 1:46 ナタナエルは彼に言った,「何か良いものがナザレから出ることがあるだろうか」。
フィリポは彼に言った,「来て,見なさい」。
John 1:47 イエスはナタナエルが自分の方へ来るのを見て,彼についてこう言った。「見よ,本当のイスラエル人,その内に偽りのない人だ!」
John 1:48 ナタナエルはイエスに言った,「どうしてわたしを知っておられるのですか」。
イエスは彼に答えた,「フィリポがあなたを呼ぶ前に,あなたがイチジクの木の下にいた時,わたしはあなたを見た」。
John 1:49 ナタナエルはイエスに答えた, 「ラビ,あなたは神の子です! あなたはイスラエルの王です!」
John 1:50 イエスは彼に答えた,「『あなたがイチジクの木の下にいるのを見た』と,わたしが告げたので信じるのか。あなたはこれより大きな事を見るだろう」 。 John 1:51 彼に言った,「本当にはっきりとあなたに言う。これから先,あなた方は天が開けて,神のみ使いたちが人の子の上に上り下りするのを見るだろう」
John 2:0 John 2:1 それから三日目に,ガリラヤのカナで結婚式があった。イエスの母はそこにいた。 John 2:2 イエスも弟子たちと共にその結婚式に招かれていた。 John 2:3 ブドウ酒がなくなった時,イエスの母は彼に言った,「彼らにはブドウ酒がありません」。
John 2:4 イエスは彼女に言った,「女よ,あなたはわたしとどんな関係があるのですか。わたしの時はまだ来ていません」。
John 2:5 彼の母は使用人たちに言った,「この人が言うことは何でもしてください」。 John 2:6 さて,そこには,ユダヤ人の清めの習慣のために石の水がめが六つあった。それぞれ二から三メトレテス入りであった。 John 2:7 イエスは彼らに言った,「水がめを水で満たしなさい」 。彼らは水がめを口まで満たした。 John 2:8 彼は彼らに言った,「さあ,少しくんで,宴会の幹事のところに持って行きなさい」 。そこで彼らはそれを持って行った。 John 2:9 宴会の幹事は今ではブドウ酒になった水を味わった。彼はそれがどこから来たのか知らなかった。(もっとも,水をくんだ使用人たちは知っていた。)その時,宴会の幹事は花婿を呼んで John 2:10 こう言った。「だれでも,初めに良いブドウ酒を出して,それから客が自由に飲んでいる時に,より悪いブドウ酒を出すものだ。あなたは今まで良いブドウ酒を取って置いたのだな」。 John 2:11 イエスはこの最初のしるしをガリラヤのカナで行なって,自分の栄光を示した。それで,弟子たちは彼を信じた。
John 2:12 こののち,彼とその母,兄弟たち,および弟子たちはカペルナウムに下って行き,彼らはそこに何日か滞在した。 John 2:13 ユダヤ人の過ぎ越しが近づいていたので,イエスはエルサレムに上って行った。 John 2:14 彼は神殿で牛や羊やハトを売る者たち,また,座っている両替人たちを目にした。 John 2:15 彼は縄でむちを作り,羊や牛をすべて神殿から追い出した。両替屋の通貨をまき散らし,彼らの台をひっくり返した。 John 2:16 ハトを売る者たちに言った,「これらの物をここから持って行け! わたしの父の家を市場にするな!」 John 2:17 弟子たちは,「あなたの家に対する熱心がわたしを食い尽くす」と書いてあることを思い出した。
John 2:18 それでユダヤ人たちは彼に答えた,「こんな事をするからには,どんなしるしを見せてくれるのか」。
John 2:19 イエスは彼らに答えた,「この神殿を壊してみなさい。わたしは三日でそれを建て直そう」
John 2:20 それでユダヤ人たちは言った,「この神殿は四十六年かかって建てられたのに,あなたはそれを三日で建て直すと言うのか」。 John 2:21 しかし,彼は自分の体という神殿について話していた。 John 2:22 それで,彼が死んだ者たちの中から生き返らされたのち,弟子たちは彼がこのように言っていたのを思い出した。そして,聖書とイエスの語った言葉とを信じた。
John 2:23 さて,彼が過ぎ越しの際,祭りの間にエルサレムにいた間,大勢の人が,彼の行なっていたしるしを見て,その名を信じた。 John 2:24 しかし,イエスは自分を彼らに託すことはしなかった。すべての人を知っていたからであり, John 2:25 人に関して証言する者を必要としなかったからである。自分で,人の内にある物を知っていたからである。
John 3:0 John 3:1 さて,ユダヤ人の支配者で,ニコデモという名のファリサイ人に属する人がいた。 John 3:2 この人が,夜,彼のもとに来て,彼に言った。「ラビ,わたしたちはあなたが神のもとから来た教師だということを知っています。神が共におられなければ,あなたのなさるこのようなしるしを行なうことはだれにもできないからです」。
John 3:3 イエスは彼に答えた,「本当にはっきりとあなたに告げる。人は再び生まれなければ,神の王国を見ることはできない」
John 3:4 ニコデモはイエスに言った,「人は年老いてから,どうして生まれることができるのですか。自分の母の胎にもう一度入って生まれることなどできないではありませんか」。
John 3:5 イエスは答えた,「本当にはっきりとあなたに告げる。人は水と霊から生まれなければ,神の王国に入ることはできない。 John 3:6 肉から生まれた物は肉だが,霊から生まれた物は霊だ。 John 3:7 『あなた方はみな再び生まれなければならない』と言ったことで,驚き怪しんではいけない。 John 3:8 風はその望むところに吹く。あなたはその音は聞こえるが,それがどこから来てどこへ行くのかを知らない。霊から生まれる者もみな,そのようだ」
John 3:9 ニコデモはイエスに答えた,「どうしてそのようなことがあり得るのでしょうか」。
John 3:10 イエスは彼に答えた,「あなたはイスラエルの教師でありながら,こうしたことが理解できないのか。 John 3:11 本当にはっきりとあなたに告げる。わたしたちは自分たちが知っていることを話し,自分が見たことを証言する。だが,あなた方はわたしたちの証言を受け入れない。 John 3:12 わたしが地上の事柄を告げてもあなた方は信じない。わたしが天上の事柄について言うならば,あなた方はどうして信じるだろうか。 John 3:13 天から下ってきた者,すなわち天にいる人の子のほかには,だれも天に上った者はいない。 John 3:14 ちょうどモーセが荒野で蛇を挙げたように,人の子も挙げられなければならない。 John 3:15 それは,彼を信じる者がみな滅びることなく,永遠の命を持つためだ。 John 3:16 神はご自分のひとり子を与えるほどに世を愛されたからだ。それは,彼を信じる者がみな滅びることなく,永遠の命を持つためだ。 John 3:17 神がご自分の子を世に遣わしたのは,世を裁くためではなく,世が彼を通して救われるためだからだ。 John 3:18 彼を信じる者は裁かれない。彼を信じない者はすでに裁かれている。神のひとり子の名を信じていないからだ。 John 3:19 光が世に来ているのに,その業が悪いために,人々が光より闇を愛したことがその裁きだ。 John 3:20 悪を行なう者はみな,光を憎んで,光の方に来ないからだ。その業が明るみに出ないようにするためだ。 John 3:21 しかし,真実を行なう者は光の方へ来る。神にあってなされて来たその業が示されるためだ」
John 3:22 こうした事ののち,イエスは弟子たちと共にユダヤの地へ行き,そこで彼らと共に滞在し,バプテスマを施していた。 John 3:23 ヨハネもサリムの近くのイノンでバプテスマを施していた。そこには水が多かったからである。人々は来て,バプテスマを受けていた。 John 3:24 ヨハネはまだ投獄されていなかったからである。 John 3:25 そこで,ヨハネの弟子たちの一部と何人かのユダヤ人たちとの間で,清めに関する論争が起こった。 John 3:26 彼らは,ヨハネのところに来て,彼に言った。「ラビ,ヨルダンの向こうであなたと共にいた人,あなたが証言なさった人が,見てください,その人がバプテスマを施していて,みんなが彼のもとに来ています」。
John 3:27 ヨハネは答えた,「人は,天から与えられているのでなければ,何も受けることはできない。 John 3:28 『わたしはキリストではない』が『わたしはその方より先に遣わされた』とわたしが言ったことを,あなた方自身が証言できる。 John 3:29 花嫁を持つ者は花婿だ。立って彼の声を聞く花婿の友人は,彼の声のために大いに喜ぶ。だから,わたしの喜びは満たされている。 John 3:30 あの方は増し加わり,わたしは減らなければならない。 John 3:31 上から来る方はすべての者の上におられる。地からの者は地に属し,地のことを話す。天から来る方はすべての者の上におられる。 John 3:32 その方は自分が見聞きしたことを証言されるが,だれもその証言を受け入れない。 John 3:33 その証言を受け入れた者は,神が真実な方だということに自分の証印を押したのだ。 John 3:34 神が遣わされた方は神の言葉を話されるからであり,神は霊を量って与えたりはされないからだ。 John 3:35 父はみ子を愛しておられ,その方の手にすべての物を与えられた。 John 3:36 み子を信じる者は永遠の命を得るが,み子に背く者は命を見ず,神の憤りがその上にとどまるのだ」。
John 4:0 John 4:1 そのため,イエスがヨハネより多くの弟子を作ってバプテスマを施していることがファリサイ人たちの耳に入ったことを主が知ったとき John 4:2 (イエス自身がバプテスマを施すことはせず,弟子たちがそうしていたのだが), John 4:3 彼はユダヤを去り,ガリラヤに向けて出発した。 John 4:4 しかし,サマリアを通り抜けなければならなかった。 John 4:5 そこで,ヤコブがその子ヨセフに与えた一区画の土地の近くにある,シカルと呼ばれるサマリアの町に来た。 John 4:6 ヤコブの井戸はここにあった。それでイエスは,旅のために疲れていたので,井戸のそばに座った。第六時ごろであった。 John 4:7 一人のサマリアの女が水をくみに来た。イエスは彼女に言った,「飲み水をくれないか」 。 John 4:8 弟子たちは食物を買いに町へ行っていたからである。
John 4:9 それでサマリアの女は彼に言った,「ユダヤ人のあなたが,サマリア人の女のわたしから飲み水をお求めになるのはどうしてですか」。(ユダヤ人はサマリア人と商取り引きをしないからである。)
John 4:10 イエスは彼女に答えた,「あなたが神の贈り物と,『飲み水をくれないか』と言った者がだれなのかを知っていたなら,あなたは彼に求め,彼はあなたに命の水を与えたことだろう」
John 4:11 女は彼に言った,「だんな様,あなたはくむ物をお持ちでなく,この井戸は深いのです。それで,あなたはその生きた水をどこから手に入れられるのですか。 John 4:12 あなたは,わたしたちの父祖ヤコブよりも偉大なのですか。彼はわたしたちにこの井戸を与え,子供や牛がしたように自らもここから飲んだのです」。
John 4:13 イエスは彼女に答えた,「この水を飲む者はみな再び渇く。 John 4:14 だが,わたしが与える水を飲む者はだれでも,決して渇くことがない。そして,わたしが与える水はその人の内で,永遠の命へとわき出る水の井戸となるだろう」
John 4:15 女は彼に言った,「だんな様,わたしにその水を下さい。わたしが渇くことがなく,ここにずっと水をくみに来なくてもよいようにするためです」。
John 4:16 イエスは彼女に言った,「あなたの夫を呼びに行って,ここに戻って来なさい」
John 4:17 女は答えた,「わたしには夫がありません」。
イエスは彼女に言った,「『わたしには夫がない』とはよく言った。 John 4:18 あなたには五人の夫がいたが,今一緒にいる者は夫ではないからだ。それをあなたは正しく言った」
John 4:19 女は彼に言った,「だんな様,わたしはあなたが預言者だということが分かります。 John 4:20 わたしたちの父祖たちはこの山で崇拝しましたが,あなた方ユダヤ人は,人々が崇拝すべき場所はエルサレムにあると言います」。
John 4:21 イエスは彼女に言った,「女よ,わたしの言うことを信じなさい。あなた方がこの山でもエルサレムでもないところで,父を崇拝する時が来る。 John 4:22 あなた方は自分たちの知らないものを崇拝している。わたしたちは自分たちが知っているものを崇拝している。救いはユダヤ人から出るからだ。 John 4:23 だが,真の崇拝者が霊と真理をもって父を崇拝する時が来ている。今がその時だ。父はそのような人々を,ご自分の崇拝者になるために求めておられるからだ。 John 4:24 神は霊であられるので,その方を崇拝する人々は,霊と真理をもって崇拝しなければならない」
John 4:25 女は彼に言った,「わたしはメシアが来られることを知っています」(メシアはキリストと呼ばれる)。「その方が来られるときに,わたしたちにすべての事柄を知らせてくださるでしょう」。
John 4:26 イエスは彼女に言った,「あなたに話しているわたしがその者だ」 。 John 4:27 その時,弟子たちが戻って来た。彼らは,彼が女と話していることで驚き怪しんだ。しかし,「何を求めておられるのですか」とか,「なぜ彼女と話しておられるのですか」などと言う者はいなかった。 John 4:28 そこで,女は水がめを置いて,町に去って行き,人々に言った, John 4:29 「来て,わたしのしたことを何もかも告げた人を見てください。この人がキリストではないでしょうか」。
John 4:30 そこで彼らは町から出て,彼のもとへやって来た。 John 4:31 その間に,弟子たちは「ラビ,召し上がってください」と言って,彼を促していた。
John 4:32 しかし彼は彼らに言った,「わたしには,あなた方の知らない,食べるべき食物がある」
John 4:33 それで弟子たちは互いに言い合った,「だれかが彼に食べる物を持って来たのだろうか」。
John 4:34 イエスは彼らに言った,「わたしの食物とは,わたしを遣わした方のご意志を行ない,そのみ業を成し遂げることだ。 John 4:35 あなた方は,『収穫までまだ四か月ある』と言うではないか。見よ,あなた方に言う。目を上げて,畑を見なさい。すでに収穫を待って白くなっている。 John 4:36 刈り取る者は報酬を受け取って,永遠の命に至る実を集めている。種をまく者と刈り取る者とが共に喜ぶためだ。 John 4:37 このことにおいて,『一人はまき,もう一人は刈り取る』ということわざは真実なのだ。 John 4:38 わたしは,自分たちが労苦しなかったものを刈り取らせるために,あなた方を遣わした。ほかの人たちが労苦したのであり,あなた方は彼らの労苦の実にあずかっているのだ」
John 4:39 その町から来た大勢のサマリア人が,「この方はわたしのしたことを何もかも告げた」と証言した女のその言葉のゆえに,彼を信じた。 John 4:40 そこでサマリア人たちは彼のもとにやって来ると,自分たちのところに滞在してくれるよう頼んだ。彼はそこに二日滞在した。 John 4:41 彼の言葉のゆえに,さらに多くの人が信じた。 John 4:42 彼らは女に言った,「わたしたちは,もはやあなたの話のゆえに信じるのではない。自分で聞いて,この方こそ確かにキリスト,世の救い主だと知ったからだ」。
John 4:43 二日後,彼はそこから出発してガリラヤに入った。 John 4:44 イエス自身が,預言者は自分の故郷では誉れを得ないと証言したからである。 John 4:45 そこでガリラヤに来ると,ガリラヤの人たちは彼を受け入れた。彼らも祭りに行ったので,彼が祭りの際にエルサレムで行なわれたすべての事柄を見ていたのである。 John 4:46 それでイエスは再びガリラヤのカナに行った。水をブドウ酒に変えた所である。カペルナウムにある貴族がいて,その息子が病気であった。 John 4:47 イエスがユダヤからガリラヤに出て来たことを聞くと,彼はそのもとに行き,下って来て自分の息子をいやしてくれるように頼んだ。その息子が死にそうだったからである。 John 4:48 それでイエスは彼に言った,「あなた方は,しるしや不思議を見なければ,決して信じないだろう」
John 4:49 その貴族はイエスに言った,「主よ,わたしの子供が死ぬ前に下っていらしてください」。 John 4:50 イエスは彼に言った,「帰りなさい。あなたの息子は生きる」 。その人は,イエスが自分に話した言葉を信じて,帰って行った。 John 4:51 さて,下って行くと,その召使いたちが出迎えて報告し,「お子さんは生きています」と言った。 John 4:52 そこで彼は,子供が良くなり始めた時刻を彼らに尋ねた。それで彼らは,「昨日の第七時に熱が引きました」と言った。 John 4:53 それで父親は,それが,「あなたの息子は生きる」 とイエスが言ったその時刻であったことを知った。そこで,彼もその家の者たち全員も信じた。 John 4:54 これはまた,イエスがユダヤからガリラヤに出て来て行なわれた二番目のしるしである。
John 5:0 John 5:1 こうした事ののち,ユダヤ人の祭りがあって,イエスはエルサレムに上った。 John 5:2 さて,エルサレムには,羊門のそばに,ヘブライ語で「ベテスダ」と呼ばれる,五つの回廊のある池がある。 John 5:3 そこには,水の動くのを待って,病気の人,目の見えない人,足の不自由な人,体のまひした人からなる大群衆が横たわっていた。 John 5:4 というのは,主のみ使いが時々池に下りて来て,水をかき乱すからであった。水がかき乱された後で最初に入る者はだれでも,どんな病気にかかっていても健康にされたのである。 John 5:5 そこにある人がいたが,彼は三十八年の間,病気であった。 John 5:6 イエスは,その人がそこに横たわっているのを目にし,彼が長い間病気であったことを知ると,「良くなりたいか」 と彼に言った。
John 5:7 病気の人は答えた,「だんな様,わたしには水がかき乱される時,池に入れてくれる人がいません。そして,わたしが行っている間に,ほかの人が先に降りてしまうのです」。
John 5:8 イエスは彼に言った,「起き上がって,寝床を取り上げて歩きなさい」
John 5:9 すぐにその人は良くなり,寝床を取り上げて歩いた。ところで,その日は安息日であった。 John 5:10 そこでユダヤ人たちはいやされた人に言った,「今日は安息日だ。寝床を運ぶことは許されていない」。
John 5:11 彼は彼らに答えた,「わたしを良くしてくれたその方が,『寝床を取り上げて歩きなさい』 と言ったのです」。
John 5:12 彼らは彼に尋ねた,「あなたに『寝床を取り上げて歩きなさい』 と言ったのはだれか」。
John 5:13 しかし,いやされた人はそれがだれなのか知らなかった。その場所には群衆がおり,イエスは退いたからである。
John 5:14 そののち,イエスは神殿で彼を見つけて,こう言った。「ご覧,あなたは良くなった。もう罪を犯してはいけない。もっと悪いことが起きないために」
John 5:15 その人は立ち去って,自分を良くしたのはイエスだということをユダヤ人たちに告げた。 John 5:16 この理由のために,ユダヤ人たちはイエスを迫害して,彼を殺そうとした。彼が安息日にこれらの事をしたためであった。 John 5:17 しかしイエスは彼らに言った,「わたしの父は今なお働いておられる。だから,わたしも働くのだ」 。 John 5:18 この理由のために,ユダヤ人たちはいよいよ彼を殺そうとした。安息日を破っただけでなく,神を自分の父と呼んで,自分を神と等しい者としたという理由であった。 John 5:19 それでイエスは彼らに答えた,「本当にはっきりとあなた方に言う。子は自分からは何も行なうことができず,ただ父がなさるのを見たことだけを行なうことができるのだ。父がなさることは何でも,子も同じように行なうからだ。 John 5:20 というのは,父は子に愛情を抱いておられ,ご自分のなさることをみな彼にお見せになるからだ。あなた方が驚嘆するために,これより大きな業を彼にお見せになるだろう。 John 5:21 ちょうど父が死んだ者たちを生き返らせて命をお与えになるのと同じように,子もまた,自分の望む者に命を与えるからだ。 John 5:22 というのは,父はだれをも裁かず,子にすべての裁きをゆだねておられるからだ。 John 5:23 それは,すべての人が父を敬うのと同じように子を敬うためだ。子を敬わない者は,彼を遣わされた父を敬っていない。
John 5:24 「本当にはっきりとあなた方に言う。わたしの言葉を聞いて,わたしを遣わされた方を信じる者は,永遠の命を持っており,裁きに入ることなく,死から命へと進んでいる。 John 5:25 本当にはっきりとあなた方に言う。死んだ者たちが神の子の声を聞く時が来ている。それは今なのだ。そして,聞いた者たちは生きる。 John 5:26 ちょうど父がご自身の内に命を持っておられるのと同じように,子もまた自分の内に命を持つことを許された。 John 5:27 また,裁きを執行する権威を彼に与えられた。彼は人の子だからだ。 John 5:28 このことで驚嘆してはいけない。時が来ているからだ。その時には,墓の中にいる者がみな,彼の声を聞き, John 5:29 善いことをした者は命の復活へ,悪いことをした者は裁きの復活へと出て来るだろう。 John 5:30 わたしは自分からは何も行なえない。わたしは自分が聞いたとおりに裁き,その裁きは公正だ。自分の意志ではなく,わたしを遣わした父のご意志を求めるからだ。
John 5:31 「わたしが自分について証言しているのなら,わたしの証言は正当ではない。 John 5:32 わたしについて証言される別の方がおられる。その方がわたしについて証言されるその証言が真実だということを,わたしは知っている。 John 5:33 あなた方はヨハネに人を遣わし,彼は真理に対して証言した。 John 5:34 だが,わたしが受け入れる証言は人からのものではない。それでも,あなた方が救われるためにこのことを言うのだ。 John 5:35 彼は燃えて輝くともし火だった。そして,あなた方はしばらくの間,彼の光のうちで喜びたいと思った。 John 5:36 だが,わたしにはヨハネのものより偉大な証言がある。父がわたしに成し遂げるようにゆだねられた業,わたしが行なっているまさにこの業が,わたしについて,父が遣わされたことを証言するからだ。 John 5:37 わたしを遣わされた父ご自身が,わたしについて証言してくださった。あなた方は一度もその方の声を聞いたことがなく,その姿を見たこともない。 John 5:38 あなた方は自分たちの内にとどまるその方の言葉を持っていない。その方が遣わされた者を,あなた方は信じないからだ。
John 5:39 「あなた方は聖書を調べている。自分たちがそれらの内に永遠の命を持っていると考えるからだ。そして,それらこそ,わたしについて証言するものなのだ。 John 5:40 だが,あなた方は命を得るためにわたしのところに来ようとしない。 John 5:41 わたしは人々からの栄光を受け入れない。 John 5:42 だが,あなた方が自分たちの内に神の愛を抱いていないことをわたしは知っている。 John 5:43 わたしは父の名において来たのに,あなた方はわたしを受け入れない。ほかの人が自分の名によって来るなら,あなた方は彼を受け入れるだろう。 John 5:44 互いからの栄光を受け入れて,ただ一人の神から来る栄光を求めないあなた方は,どうして信じることができようか。
John 5:45 「わたしがあなた方を父に訴えると思ってはいけない。あなた方を訴えるのは,あなた方が望みを置くモーセだ。 John 5:46 あなた方がモーセを信じたなら,わたしを信じただろう。彼はわたしについて書いたからだ。 John 5:47 だが,あなた方が彼の書いたことを信じないのなら,どうしてわたしの言葉を信じるだろうか」
John 6:0 John 6:1 こうした事ののち,イエスはティベリアスの海とも呼ばれるガリラヤの海の向こう岸へ出発した。 John 6:2 大群衆が彼に従った。彼が病気の人に対して行なったしるしを見たからである。 John 6:3 イエスは山の中に上って行き,弟子たちと共にそこに座った。 John 6:4 ところで,ユダヤ人の過ぎ越しの祭りが近づいていた。 John 6:5 それで,イエスは目を上げて,大群衆が自分のもとに来ているのを見ると,フィリポに言った,「この人々に食べさせるために,どこでパンを買えるだろうか」 。 John 6:6 イエスは彼を試すためにこのことを言った。自分が行なおうとしていることを知っていたからである。
John 6:7 フィリポは答えた,「みんなが少しずつ受け取るとしても,二百デナリ分のパンでも彼らのためには十分ではないでしょう」。
John 6:8 弟子の一人で,シモン・ペトロの兄弟アンデレが言った, John 6:9 「ここに,大麦のパン五つと二匹の魚を持っている少年がいます。それでも,こんなに大勢の人の間ではいったい何になるでしょう」。
John 6:10 イエスは言った,「人々を座らせなさい」 。ところで,その場所には草がたくさんあった。そこで人々は座った。数にして,およそ五千人であった。 John 6:11 イエスはパンを取り,感謝をささげてから,弟子たちに配り,弟子たちが座っている者たちに配った。魚も同じようにして,人々が望むだけ配った。 John 6:12 人々が満ち足りると,弟子たちに言った,「何も無駄にならないように,残された切れ端を拾い集めなさい」 。 John 6:13 そこで彼らは拾い集め,大麦のパン五つから出た切れ端で十二のかごを一杯にした。それは,食べた人々が残したものであった。 John 6:14 そのため,イエスの行なったしるしを見たとき,人々は言った,「これこそ本当に,世に来ることになっている預言者だ」。 John 6:15 それでイエスは,人々が来て,自分を王とするために力ずくで連れて行こうとしているのに気づき,ひとりで再び山へ退いた。
John 6:16 夕方になった時,弟子たちは海に下りて行った。 John 6:17 そして彼らは舟に乗り込み,カペルナウムに向けて海を渡った。すでに暗くなっていたが,イエスは彼らのもとへ来ていなかった。 John 6:18 大風が吹いて,海は荒れていた。 John 6:19 それで,二十五ないし三十スタディアほどこいできたとき,彼らは海の上を歩いて舟に近づいて来るイエスを見た。それで彼らは恐れた。 John 6:20 しかし彼は彼らに言った,「わたしはある。恐れてはいけない」 。 John 6:21 それで彼らは彼を舟の中に迎えようとした。すぐに舟は彼らが向かっていた土地に着いた。
John 6:22 次の日,湖の向こう岸に立っていた大群衆は,弟子たちが乗り込んだ一そうのほかにはそこに舟がなかったこと,またイエスが弟子たちと共に舟に乗ることなく,弟子たちだけで出発したことに気が付いた。 John 6:23 しかしながら,主が感謝をささげてから彼らがパンを食べた場所の近くの岸に,ティベリアスから数そうの舟が来た。 John 6:24 それで群衆は,そこにイエスも弟子たちもいないことに気が付くと,舟に乗り込み,イエスを探してカペルナウムに来た。 John 6:25 湖の向こう岸で彼を見つけると,彼らは尋ねた,「ラビ,いつここにおいでになったのですか」。
John 6:26 イエスは彼らに答えた,「本当にはっきりとあなた方に告げる。あなた方がわたしを探しているのは,しるしを見たからではなく,パンを食べて満ち足りたからだ。 John 6:27 滅びる食物のためではなく,永遠の命へと残る食物のために働きなさい。それは人の子があなた方に与えるものだ。神なる父が彼に証印を押されたからだ」
John 6:28 それで彼らは彼に言った,「神の業を行なうために,わたしたちは何をしなければなりませんか」。
John 6:29 イエスは彼らに答えた,「その方が遣わされた者を信じること,これが神の業だ」
John 6:30 それで彼らは彼に言った,「わたしたちがそれを見てあなたを信じることができるよう,どんなしるしを行なわれるのですか。あなたはどんな業を行なってくださいますか。 John 6:31 わたしたちの父祖たちは荒野でマンナを食べました。『天からパンを与えて彼らに食べさせた』と書いてあるとおりです」。
John 6:32 それでイエスは彼らに言った,「本当にはっきりとあなた方に告げる。あなた方に天からのパンを与えたのはモーセではない。だが,わたしの父はあなた方に天からの真のパンを与えておられる。 John 6:33 神のパンは,天から下って来て世に命を与えるものだからだ」
John 6:34 それで彼らは彼に言った,「主よ,このパンをいつもわたしたちにお与えください」。
John 6:35 イエスは彼らに言った,「わたしがその命のパンだ。わたしのところに来る者は決して飢えることがなく,わたしを信じる者は決して渇くことがない。 John 6:36 だが,わたしはあなた方に告げた。あなた方はわたしを見たのに信じないと。 John 6:37 父がわたしにお与えになる者はみな,わたしのところに来る。わたしのところに来た者を,わたしは決して追い払わない。 John 6:38 わたしが天から下って来たのは,自分の意志ではなく,わたしを遣わした方のご意志を行なうためだからだ。 John 6:39 わたしを遣わしたわたしの父のご意志とは,その方がわたしに与えられたすべての者をわたしが一人も失わずに,終わりの日にその者を生き返らせることだ。 John 6:40 わたしを遣わした方のご意志とは,子を見て信じる者がみな永遠の命を持ち,わたしが終わりの日に彼らすべてを生き返らせることだ」
John 6:41 それでユダヤ人たちは,彼が「わたしが天から下って来たパンだ」 と言ったことで,彼に関してつぶやいた。 John 6:42 彼らは言った,「このイエスはヨセフの子であり,我々はその父と母を知っているではないか。それならどうして『わたしは天から下って来た』 と言うのだろう」。
John 6:43 それでイエスは彼らに答えた,「互いにつぶやくのはやめなさい。 John 6:44 わたしを遣わした父が引き寄せてくださるのでなければ,だれもわたしのところに来ることはできない。そして,わたしは終わりの日にその人を生き返らせる。 John 6:45 預言者たちの中に,『彼らはみな神によって教えられるだろう』と書いてある。それで,父から聞いて学んだ者はみなわたしのところへ来る。 John 6:46 神からの者のほかには,だれも父を見た者はいない。その者が父を見たのだ。 John 6:47 本当にはっきりとあなた方に告げる。わたしを信じる者は永遠の命を持っている。 John 6:48 わたしは命のパンだ。 John 6:49 あなた方の父祖たちは荒野でマンナを食べたが,死んでしまった。 John 6:50 これは,だれでもそれから食べてなお死なないようにするために,天から下って来るパンだ。 John 6:51 わたしは天から下って来た生きたパンだ。だれでもこのパンから食べる者は永遠に生きる。そう,世の命のためにわたしが与えるパンは,わたしの肉だ」
John 6:52 それでユダヤ人たちは互いに論じ合って言った,「この人はどうやって自分の肉を与えて我々に食べさせることができるのか」。
John 6:53 それでイエスは彼らに言った,「本当にはっきりとあなた方に告げる。人の子の肉を食べ,その血を飲まないなら,あなた方は自分の内に命を持っていない。 John 6:54 わたしの肉を食べ,わたしの血を飲む者は永遠の命を持っている。そして,わたしはその者を終わりの日に生き返らせる。 John 6:55 わたしの肉は本当の食物であり,わたしの血は本当の飲み物だからだ。 John 6:56 わたしの肉を食べ,わたしの血を飲む者はわたしの内にとどまっており,わたしも彼の内にとどまっている。 John 6:57 生ける父がわたしを遣わされ,わたしが父によって生きているのと同じように,わたしを食物とする者はわたしによって生きる。 John 6:58 これは天から下って来たパンだ。これは,わたしたちの父祖たちが食べても死んだようなものではない。このパンを食べる者は永遠に生きる」 。 John 6:59 カペルナウムで教えていた際,彼は会堂でこれらの事を言った。
John 6:60 それで大勢の弟子たちは,この事を聞いて,こう言った。「わけが分からない。だれがこれを聞いていられようか」。
John 6:61 しかしイエスは,弟子たちがこのことでつぶやいているのを自分の内で知っていて,彼らに言った,「このことがあなた方をつまずかせるのか。 John 6:62 それなら,自分が以前いた所へ上って行く人の子を見たならどうだろう。 John 6:63 命を与えるものは霊だ。肉は少しも益にならない。わたしがあなた方に語った言葉は霊であり,命だ。 John 6:64 だが,あなた方のうちのある者は信じていない」 。というのは,イエスは,信じていない者,また自分を売り渡す者を,はじめから知っていたからである。 John 6:65 彼は言った,「この理由のために,わたしはあなた方に,父が与えてくださったのでなければ,だれもわたしのところに来ることはできないと言ったのだ」
John 6:66 このために,大勢の弟子たちが戻って行き,もはや彼と共に歩かなかった。 John 6:67 それでイエスは十二人に言った,「あなた方も去って行こうと思っているわけではないだろう」
John 6:68 シモン・ペトロが彼に答えた,「主よ,わたしたちはだれのところへ行きましょう。あなたは永遠の命の言葉を持っておられます。 John 6:69 わたしたちは,あなたがキリスト,生ける神の子だということを,信じ,知るようになりました」。
John 6:70 イエスは彼らに答えた,「わたしがあなた方十二人を選んだのではないか。だが,あなた方のうちの一人は悪魔だ」 。 John 6:71 ところで,彼はシモン・イスカリオトの子ユダに関して話したのであった。十二人の一人でありながら,彼を売り渡そうとしていたからである。
John 7:0 John 7:1 こうした事ののち,イエスはガリラヤで歩いていた。ユダヤ人たちが彼を殺そうとしていたので,ユダヤで歩こうとはしなかったからである。 John 7:2 さて,ユダヤ人の仮小屋の祭りが近づいていた。 John 7:3 それでその兄弟たちは彼に言った,「ここを去ってユダヤに行きなさい。あなたの行なう業を弟子たちも見ることができるようにするためだ。 John 7:4 物事をこっそりと行ないながら,自分が公に知られることを求める者はいないからだ。こうした事柄を行なっているのなら,自分を世に示しなさい」。 John 7:5 というのは,その兄弟たちでさえ彼を信じていなかったからである。
John 7:6 それでイエスは彼らに言った,「わたしの時はまだ来ていないが,あなた方の時はいつでも用意ができている。 John 7:7 世はあなた方を憎むことはできないが,わたしを憎む。わたしが世について,その業が悪いことを証言するからだ。 John 7:8 あなた方は祭りに上って行くがよい。わたしはまだこの祭りに上って行かない。わたしの時はまだ満ちていないからだ」
John 7:9 彼らにこうした事柄を言って,彼はガリラヤにとどまった。 John 7:10 しかし,その兄弟たちが祭りに上って行ってから,彼自身も,おおっぴらにではなくひそかに上って行った。 John 7:11 そこでユダヤ人たちは祭りで彼を探して,「彼はどこだ」と言った。 John 7:12 群衆の間では彼に関するささやきが多くあった。ある者は「彼は善い人だ」と言った。他の者たちは「そうではない。彼は群衆を惑わしているのだ」と言っていた。 John 7:13 それでも,ユダヤ人たちへの恐れのために,彼についておおっぴらに話す者はいなかった。 John 7:14 しかし,すでに祭りの半ばになった時,イエスは神殿に上って来て教えた。 John 7:15 それでユダヤ人たちは驚嘆して言った,「この人は教育されたことがないのに,どうして文字を知っているのか」。
John 7:16 それでイエスは彼らに答えた,「わたしの教えはわたしのものではなく,わたしを遣わされた方のものだ。 John 7:17 だれでもその方のご意志を行ないたいと思うなら,わたしの教えについて,それが神からのものなのか,それともわたしが自分から話しているのかが分かるはずだ。 John 7:18 自分から話す者は自分の栄光を求める。しかし,自分を遣わした方の栄光を求める者は真実な者であって,その人の内には不正がない。 John 7:19 モーセはあなた方に律法を与えなかっただろうか。それなのに,あなた方のうちのだれも律法を守っていない。あなた方はなぜわたしを殺そうとしているのか」
John 7:20 群衆は答えた,「あなたは悪魔に取りつかれている! だれがあなたを殺そうとしているのか」。
John 7:21 イエスは彼らに答えた,「わたしが一つの業を行なうと,あなた方はみなそれによって驚嘆する。 John 7:22 モーセはあなた方に割礼を与えた(モーセからではなく,父祖たちからなのだが)。それで,あなた方は安息日にも男の子に割礼を施している。 John 7:23 モーセの律法を破らないようにするため,男の子は安息日に割礼を受けるというのに,安息日に人の全身をいやしたからといってわたしに対して腹を立てるのか。 John 7:24 うわべによって裁かずに,公正な裁きで裁きなさい」
John 7:25 それでエルサレムの住民の何人かが言った,「これは彼らが殺そうとしている人ではないか。 John 7:26 見よ,彼がおおっぴらに話しているのに,彼らはこの人に何も言わない。支配者たちはこの人が本当にキリストだと確かに分かったのだろうか。 John 7:27 だが,我々はこの人がどこから来たかを知っている。キリストが来られる時には,彼がどこから来たのかだれも知らないはずだ」。
John 7:28 それでイエスは,神殿で大声を上げ,教えて言った,「あなた方はわたしを知っており,わたしがどこから来たかを知っている。わたしは自分の考えで来たのではなく,わたしを遣わされた方は真実な方だ。あなた方はその方を知っていない。 John 7:29 わたしはその方を知っている。わたしはその方のもとから来ており,その方がわたしを遣わされたからだ」
John 7:30 そのため,彼らは彼を捕まえようとした。しかし,だれも彼に手をかけるものはいなかった。彼の時はまだ来ていなかったからである。 John 7:31 しかし,群衆の多くが彼を信じた。彼らは言った,「キリストが来られる時にも,この人がしたよりも多くのしるしは行なわないのではないだろうか」。 John 7:32 ファリサイ人たちは,群衆が彼に関してこれらの事をささやいているのを聞いた。それで,祭司長たちとファリサイ人たちは,彼を逮捕するために役人たちを遣わした。
John 7:33 するとイエスは言った,「ほんの少しの間,わたしはあなた方と共にいる。それから,わたしを遣わした方のもとへ行く。 John 7:34 あなた方はわたしを探すが,見つけることができない。そして,わたしのいる所にあなた方は来ることができない」
John 7:35 それでユダヤ人たちは互いに言い合った,「我々の見つけることができないとは,いったいどこに行こうとしているのだろう。ギリシャ人の間の離散者のところに行って,ギリシャ人に教えようとしているのだろうか。 John 7:36 『あなた方はわたしを探すが,見つけることができない。そして,わたしのいる所にあなた方は来ることができない』 と彼が言うこの言葉はどういうことなのだろう」。
John 7:37 さて,祭りの大いなる最後の日に,イエスは立ち上がり,叫んで言った,「だれでも渇く者がいれば,わたしのところに来て飲むように。 John 7:38 わたしを信じる者は,聖書が述べているとおり,その人の内から生きた水の流れが流れ出るだろう」 。 John 7:39 しかし,彼は,自分を信じる者たちが受けようとしていた霊について言ったのである。というのは,聖霊がまだ与えられていなかったからであり,それはイエスがまだ栄光を受けていなかったからであった。
John 7:40 それで,群衆の多くはこれらの言葉を聞いた時,「この人は本当にあの預言者だ」と言った。 John 7:41 ほかの者たちは「この人はキリストだ」と言った。しかし,ある者たちは言った,「まさかキリストがガリラヤから出るだろうか。 John 7:42 聖書は,キリストがダビデの子孫から,またダビデのいた村ベツレヘムから出ると述べていないだろうか」。 John 7:43 そこで,彼のために群衆の中で分裂が生じた。 John 7:44 彼らのうち何人かは彼を逮捕したいと思ったが,彼に手をかける者はいなかった。 John 7:45 それで役人たちは,祭司長たちとファリサイ人たちのところへ戻ってきた。すると彼らは役人たちに言った,「なぜ彼を連れて来なかったのか」。
John 7:46 役人たちは答えた,「あの人のように話した人はいまだかつてありません」。
John 7:47 それでファリサイ人たちは彼らに答えた,「あなた方も惑わされてしまったわけではあるまい。 John 7:48 支配者たちやファリサイ人たちの中に,彼を信じた者がいるだろうか。 John 7:49 だが,律法を知らないこの群衆はのろわれているのだ」。
John 7:50 ニコデモ(彼らの一員で,夜に彼のもとに来た者)が彼らに言った, John 7:51 「我々の律法は,まずその人から聞いて,その人が何をしているかを知っていなければ,人を裁くだろうか」。
John 7:52 彼らは彼に答えた,「あなたもガリラヤの出身なのか。調べてみよ。預言者がガリラヤからは生じないことが分かるだろう」。
John 7:53 みんなは自分の家に帰った。 John 8:0 John 8:1 しかしイエスはオリーブ山に行った。 John 8:2 さて,朝早く,彼は再び神殿の中に来た。そして人々はみな彼のもとに来た。彼は座って彼らを教えた。 John 8:3 律法学者たちとファリサイ人たちが,姦淫の最中に捕まった女を連れて来た。彼女を中央に立たせて, John 8:4 彼に告げた,「先生,わたしたちはこの女を姦淫の真っ最中に見つけました。 John 8:5 さて,わたしたちの律法の中で,このような者は石打ちにするよう,モーセはわたしたちに命令しました。あなたは彼女について何と言いますか」。 John 8:6 彼らは彼を試して,訴える口実を得るために,このことを言ったのである。
しかしイエスは身をかがめ,指で地面に何か書いていた。 John 8:7 それでも彼らがしつこく尋ねると,目を上げて彼らに言った,「あなた方の間で罪のない者が,この女に向かって最初に石を投げなさい」 。 John 8:8 再び身をかがめ,指で地面に何か書いていた。
John 8:9 これを聞くと彼らは良心に責められ,年長者から始めて最後の者まで,一人また一人と出て行った。イエスがひとり,真ん中にいる女と共に残された。 John 8:10 イエスは立ち上がり,彼女を見て言った,「女よ,あなたの告訴人はどこにいるのか。だれもあなたを罪に定めなかったのか」
John 8:11 彼女は言った,「だれも,主よ」。
イエスは言った,「わたしもあなたを罪に定めない。帰りなさい。今からは,もう罪を犯してはならない」
John 8:12 それでイエスは再び彼らに話して言った,「わたしは世の光だ。わたしに従う者は闇の中を歩くことがなく,命の光を持つことになる」
John 8:13 それでファリサイ人たちは彼に言った,「あなたは自分について証言している。あなたの証言は正当ではない」。
John 8:14 イエスは彼らに答えた,「たとえわたしが自分について証言するとしても,わたしの証言は真実だ。自分がどこから来たか,そしてどこへ行こうとしているかを知っているからだ。しかしあなた方はわたしがどこから来たか,またどこへ行こうとしているかを知らない。 John 8:15 あなた方はうわべで裁く。わたしはだれをも裁かない。 John 8:16 しかし,わたしが裁くとしても,わたしの裁きは正しい。わたしはひとりではなく,わたしを遣わされた父と共にいるからだ。 John 8:17 あなた方の律法に,二人の人の証言は正当だと書いてあるとおりだ。 John 8:18 わたしは自分について証言し,わたしを遣わされた父もわたしについて証言してくださる」
John 8:19 それで彼らは彼に言った,「あなたの父はどこにいるのか」。
イエスは答えた,「あなた方はわたしもわたしの父も知っていない。もしあなた方がわたしを知っていたなら,わたしの父をも知っていただろう」 。 John 8:20 神殿の中で教えていた際,宝物殿の中で,イエスはこれらの言葉を語った。それでも,彼を逮捕する者はいなかった。彼の時がまだ来ていなかったからである。 John 8:21 それでイエスは再び彼らに言った,「わたしは去って行こうとしている。そしてあなた方はわたしを探すが,自分の罪のうちに死ぬだろう。わたしが行く所に,あなた方は来ることができない」
John 8:22 それでユダヤ人たちは言った,「彼は自殺するつもりなのだろうか。『わたしが行く所に,あなた方は来ることができない』 と言うのだから」。
John 8:23 彼は彼らに答えた,「あなた方は下からの者だが,わたしは上からの者だ。あなた方はこの世からの者だが,わたしはこの世からの者ではない。 John 8:24 そのためわたしは,あなた方は自分の罪のうちに死ぬだろうと言った。わたしがその者だと信じない限り,あなた方は自分の罪のうちに死ぬからだ」
John 8:25 それで彼らは彼に言った,「あなたはだれなのか」。
イエスは彼らに答えた,「まさしくわたしがはじめからあなた方に言っているものだ。 John 8:26 わたしには,あなた方に関して言うべき,また裁くべき事柄がたくさんある。だが,わたしを遣わされた父は真実な方であり,わたしはその方から聞いた事柄を世に対して話すのだ」
John 8:27 彼らは,彼が父について話していることを理解しなかった。 John 8:28 それでイエスは彼らに言った,「あなた方は,人の子を挙げると,その時,わたしがその者であること,また,わたしが自分からは何も行なうことができず,父が教えてくださったとおりにそれらの事柄を話すことを知るだろう。 John 8:29 わたしを遣わされた方はわたしと共におられる。父はわたしをひとりで残してはおかれない。わたしはいつでもその方の喜ばれる事を行なうからだ」
John 8:30 彼がこれらの事柄を話していた際,多くの人が彼を信じた。 John 8:31 それでイエスは,自分を信じたそれらのユダヤ人たちに言った,「あなた方がわたしの言葉にとどまるなら,あなた方は本当にわたしの弟子だ。 John 8:32 あなた方は真理を知り,真理はあなた方を自由にするだろう」
John 8:33 彼らは彼に答えた,「わたしたちはアブラハムの子孫であり,だれかの奴隷になったことなど決してない。『あなた方は自由にされる』 と言うのはどうしてか」。
John 8:34 イエスは彼らに答えた,「本当にはっきりとあなた方に告げる。罪を犯す者はみな罪の奴隷だ。 John 8:35 奴隷はいつまでも家に住みはしない。しかし子はいつまでもとどまる。 John 8:36 もし子があなた方を自由にするなら,あなた方は本当に自由になるのだ。 John 8:37 わたしはあなた方がアブラハムの子孫であることを知っている。だが,あなた方はわたしを殺そうとしている。わたしの言葉があなた方の内に場所を見いだせないからだ。 John 8:38 わたしは自分の父のもとで見てきた事柄を話している。あなた方も自分たちの父のところで見てきた事柄を行なっている」
John 8:39 彼らは彼に答えた,「我々の父はアブラハムだ」。
イエスは彼らに言った,「もしあなた方がアブラハムの子供であったなら,あなた方はアブラハムの業を行なうだろう。 John 8:40 ところが今,あなた方はわたしを,自分が神から聞いた真理を告げる者を殺そうとしている。アブラハムはこのようなことをしなかった。 John 8:41 あなた方は自分たちの父の業を行なっているのだ」。
彼らは彼に言った,「我々は淫行によって生まれたのではない。我々にはただ一人の父,神がおられる」。
John 8:42 それでイエスは彼らに言った,「もし神があなた方の父であったなら,あなた方はわたしを愛するだろう。わたしは神のもとから出て来て,ここにいるからだ。わたしは自分の考えで来たのではなく,その方がわたしを遣わされたのだ。 John 8:43 あなた方がわたしの話すことを理解しないのはなぜなのか。それはあなた方がわたしの言葉を聞くことができないからだ。 John 8:44 あなた方は自分たちの父,悪魔からの者であり,自分たちの父の欲望を行ないたいと思っている。彼ははじめからの人殺しであって,真理の内に立たない。彼の内には真理がないからだ。彼が偽りを語るときには,彼自身のものに従って語る。彼は偽り者であり,偽りの父だからだ。 John 8:45 しかし,わたしはあなた方に真理を告げるので,あなた方はわたしを信じない。 John 8:46 あなた方のうちのだれが,わたしに罪があると責めることができるのか。わたしがあなた方に真理を告げているのなら,なぜわたしを信じないのか。 John 8:47 神に属している者は,神の言葉を聞く。この理由であなた方は聞かない。あなた方が神に属していないからだ」
John 8:48 するとユダヤ人たちは彼に答えた,「我々が,あなたはサマリア人で,悪魔に取りつかれていると言うのはもっともではないか」。
John 8:49 イエスは答えた,「わたしは悪魔に取りつかれてはいない。わたしは自分の父を敬うのに,あなた方はわたしを辱める。 John 8:50 しかし,わたしは自分の栄光を求めない。それを求め,裁く方がおられる。 John 8:51 本当にはっきりとあなた方に告げる。わたしの言葉を守るなら,その者は決して死を見ることがない」
John 8:52 するとユダヤ人たちは彼に言った,「あなたが悪霊に取りつかれていることが今こそ分かった。アブラハムは死に,預言者たちも死んだ。それなのにあなたは,『わたしの言葉を守るなら,その者は決して死を味わうことがない』 と言う。 John 8:53 あなたは,我々の父アブラハムより偉大なのか。彼は死んだし,預言者たちも死んだ。あなたは自分を何者とするのか」。
John 8:54 イエスは答えた,「もしわたしが自分に栄光を与えるなら,わたしの栄光は無意味だ。あなた方が自分たちの神だと言っているのは,わたしに栄光を与えてくださるわたしの父についてなのだ。 John 8:55 あなた方はその方を知っていないが,わたしはその方を知っている。もし『わたしはその方を知らない』と言うなら,わたしはあなた方と同じように偽り者になるだろう。しかしわたしはその方を知っており,その方の言葉を守っている。 John 8:56 あなた方の父アブラハムはわたしの日を見ることを喜んだ。彼はそれを見て喜んだ」
John 8:57 それでユダヤ人たちは彼に言った,「あなたはまだ五十歳にもなっていないのに,アブラハムを見たことがあるのか」。
John 8:58 イエスは彼らに言った,「本当にはっきりとあなた方に告げる。アブラハムが生まれる前から,わたしはある」
John 8:59 そのため彼らは彼に投げつけるために石を拾い上げた。しかしイエスは隠され,神殿から出て行った。彼らの真ん中を通り抜けて行き,そのようにして通り過ぎて行った。
John 9:0 John 9:1 通り過ぎる際,彼は生まれつき目の見えない人を目にした。 John 9:2 弟子たちは彼に尋ねた,「ラビ,この人が生まれつき目が見えないのはだれが罪を犯したからですか。この人ですか。それともその両親ですか」。
John 9:3 イエスは答えた,「この人が罪を犯したのでもなければ,その両親でもない。神の業がこの人において示されるためなのだ。 John 9:4 わたしは昼の間に自分を遣わされた方の業を行なわなければならない。だれも働くことができない夜が来ようとしている。 John 9:5 世にいる限り,わたしは世の光だ」 。 John 9:6 こう言ってから,地面につばをはき,つばで泥を作り,盲人の両目に泥を塗り, John 9:7 彼に言った,「行って,シロアムの池で洗いなさい」 (シロアムとは「遣わされた」という意味)。そこで彼は行って洗い,見えるようになって戻って来た。 John 9:8 それで隣人たちや,以前に彼が目の見えなかったことを見ていた者たちは言った,「この人は座って物ごいをしていた者ではないか」。 John 9:9 ある者たちは,「これはその人だ」と言っていた。それでも他の者たちは,「その人に似ているだけだ」と言っていた。
彼は言った,「わたしがその者です」。 John 9:10 それで彼らは彼に尋ねた,「あなたの目はどうして開いたのか」。
John 9:11 彼は答えた,「イエスと呼ばれる人が泥を作り,わたしの両目に塗って,わたしに『シロアムの池に行って洗いなさい』 と言われました。それでわたしが行って洗うと,見えるようになったのです」。
John 9:12 すると彼らは彼に尋ねた,「彼はどこにいるのか」。
彼は言った,「知りません」。
John 9:13 彼らは目の見えなかった人をファリサイ人たちのところへ連れて行った。 John 9:14 イエスが泥を作って彼の目を開いたのは安息日のことであった。 John 9:15 そのためファリサイ人たちも再び,どのようにして見えるようになったのかを彼に尋ねた。彼は彼らに言った,「彼はわたしの両目の上に泥を付け,わたしは洗いました。そして見えるのです」。
John 9:16 それでファリサイ人のある者たちは言った,「この人は神からの者ではない。彼は安息日を守らないからだ」。他の者たちは言った,「罪人がこのようなしるしを行なえるだろうか」。彼らの間には分裂があった。 John 9:17 それで彼らは再び目の見えない人に尋ねた,「彼がお前の目を開けたことで,お前は彼について何と言うのか」。
彼は言った,「彼は預言者です」。
John 9:18 そのためユダヤ人たちは彼に関して,彼が目が見えなかったのに見えるようになったことを信じなかった。ついに彼らは見えるようになった人の両親を呼んで, John 9:19 彼らに尋ねた,「これはお前たちが生まれつき目が見えなかったと言うお前たちの息子か。それなら,どうして今は見えるのか」。
John 9:20 彼の両親は彼らに答えた,「わたしたちはこの者がわたしたちの息子で,生まれつき目が見えなかったことは知っています。 John 9:21 しかし,どうして今は見えるのかは知りませんし,だれが彼の目を開けたのかも知りません。彼は大人です。彼に尋ねてください。自分のことは自分で話すでしょう」。 John 9:22 彼の両親は,ユダヤ人たちを恐れていたので,こうした事を言った。ユダヤ人たちはすでに,だれかがイエスをキリストだと告白するなら,その者を会堂から追放されることに決めていたからである。 John 9:23 そのために彼の両親は,「彼は大人です。彼に尋ねてください」と言った。
John 9:24 そこで彼らは,目の見えなかった人を二度目に呼んで,彼に言った,「神に栄光をささげなさい。我々はこの人が罪人だということを知っているのだ」。
John 9:25 それで彼は答えた,「わたしはあの方が罪人かどうかは知りません。一つのことは知っています。わたしは目が見えなかったのに,今は見えるということです」。
John 9:26 彼らは再び彼に言った,「彼はお前に何をしたのか。どうやってお前の目を開けたのか」。
John 9:27 彼は彼らに答えた,「もう告げたのに,あなた方は聞いてくださいませんでした。それを再び聞こうとされるのはなぜですか。あなた方もあの方の弟子になりたいわけではないでしょうに」。
John 9:28 彼らは彼を侮辱して言った,「お前は彼の弟子だが,我々はモーセの弟子だ。 John 9:29 我々は,神がモーセに話されたことを知っている。しかしこの人について言えば,彼がどこから来たのか知らない」。
John 9:30 その人は彼らに答えた,「何とも驚いたことです。彼がわたしの目を開けたのに,彼がどこから来たのかご存じないとは。 John 9:31 わたしたちは,神が罪人に対して耳を傾けてくださらないことを知っています。しかし,その方のご意志を行なう者には耳を傾けてくださいます。 John 9:32 生まれつき目の見えない者の目を開けたなどということは,世界が始まって以来,一度も聞かれたことがありません。 John 9:33 もしこの方が神からの者でなかったなら,何もできなかったはずです」。
John 9:34 彼らは彼に答えた,「お前は全く罪のうちに生まれながら,我々を教えるのか」。彼らはその人を追い出した。
John 9:35 イエスは彼らが彼を追い出したことを聞くと,彼を見つけて言った,「あなたは神の子を信じるか」
John 9:36 彼は答えた,「その方はどなたでしょうか,主よ,わたしがその方を信じることができますように」。
John 9:37 イエスは彼に言った,「あなたはすでに彼を見た。しかも,あなたと話しているのがその者だ」
John 9:38 彼は,「主よ,信じます!」と言って,イエスを拝んだ。
John 9:39 イエスは言った,「わたしは裁きのためにこの世に来た。見えない者が見えるようになるため,また,見える者が目の見えない者となるためだ」
John 9:40 彼と共にいたファリサイ人たちはこれらの事を聞いて,彼に言った,「我々も目が見えないのか」。
John 9:41 イエスは彼らに言った,「目が見えなかったなら,あなた方には罪がなかっただろう。しかし今,あなた方は『見える』という。だから,あなた方の罪は残るのだ。
John 10:0
John 10:1 「本当にはっきりとあなた方に言う。羊の囲いに戸口から入らず,どこかほかの所を乗り越える者,その者は盗人であり,強盗だ。 John 10:2 しかし,戸口から入る者はその羊の羊飼いだ。 John 10:3 門番は彼のために門を開き,羊は彼の声に耳を傾ける。彼は自分の羊を名前で呼ぶ。 John 10:4 自分の羊を連れ出すときはいつでも,彼はその前を行き,羊は彼に従う。彼の声を知っているからだ。 John 10:5 彼らはよその人には決して従わず,その者から逃げ出す。彼らはよその人の声を知らないからだ」 。 John 10:6 イエスはこのたとえを彼らに話したが,彼らは自分たちに告げられたことを理解しなかった。
John 10:7 それでイエスは再び彼らに言った,「本当にはっきりとあなた方に告げる。わたしが羊の戸口だ。 John 10:8 わたしより先に来た者はみな盗人であり,強盗だ。だが,羊は彼らの言うことに耳を傾けなかった。 John 10:9 わたしが戸口だ。だれでもわたしを通って入るなら,その者は救われ,出入りし,牧草を見つけるだろう。 John 10:10 盗人は,盗み,殺し,滅ぼすためだけにやって来る。わたしが来たのは,彼らが命を得,それを豊かに得るためだ。 John 10:11 わたしが良い羊飼いだ。良い羊飼いは羊のために自分の命を捨てる。 John 10:12 雇い人であって,羊飼いでなく,羊を所有していない者は,やって来るオオカミを見ると,羊を残して逃げる。オオカミは羊を奪い,彼らを追い散らす。 John 10:13 雇い人が逃げるのは,彼が雇い人であって,羊のことを心にかけていないからだ。 John 10:14 わたしが良い羊飼いだ。わたしは自分の羊を知っており,自分の羊に知られている。 John 10:15 ちょうど父がわたしを知っておられ,わたしが父を知っているのと同じだ。わたしは羊のために自分の命を捨てる。 John 10:16 わたしにはこの囲いのものではないほかの羊がいる。それらもわたしは連れて来なければならず,彼らはわたしの声を聞く。彼らはひとりの羊飼いを持つひとつの群れとなる。 John 10:17 それゆえに父はわたしを愛しておられる。わたしが,再びそれを得るために,自分の命を捨てるからだ。 John 10:18 だれかがわたしからそれを取り去るのではなく,わたしは自分でそれを捨てるのだ。わたしにはそれを捨てる力があり,それを再び得る力もある。わたしはこのおきてを父から受けた」
John 10:19 そのため,これらの言葉を聞いたユダヤ人たちの間に再び分裂が生じた。 John 10:20 彼らのうち多くの者は言った,「彼は悪魔に取りつかれて,気が狂っている! なぜあなた方は彼の言うことに耳を傾けるのか」。 John 10:21 他の者たちは言った,「これは悪魔に取りつかれた者の言うことではない。悪魔には盲人の目を開けることなどできないではないか」。
John 10:22 エルサレムで奉献の祭りがあった。 John 10:23 冬のことであった。イエスは神殿の中で回廊を歩いていた。 John 10:24 それでユダヤ人たちは彼を取り囲んで言った,「いつまであなたは我々をどっちつかずにしておくのか。あなたがキリストなら,我々にはっきりと告げてくれ」。
John 10:25 イエスは彼らに答えた,「わたしはあなた方に告げたが,あなた方は信じない。わたしが自分の父の名において行なう業,それがわたしについて証言する。 John 10:26 だが,あなた方は信じない。わたしが告げたように,あなた方はわたしの羊に属していないからだ。 John 10:27 わたしの羊はわたしの声を聞き,わたしは彼らを知っており,彼らはわたしに従う。 John 10:28 わたしは彼らに永遠の命を与える。彼らは滅びることなく,彼らをわたしの手から奪い取る者はいない。 John 10:29 わたしに彼らを与えられたわたしの父は,すべてのものよりも偉大だ。わたしの父の手から奪い取ることができる者はいない。 John 10:30 わたしと父とは一つだ」
John 10:31 それでユダヤ人たちは,彼を再び石打ちしようとして石を拾い上げた。 John 10:32 イエスは彼らに答えた,「わたしは自分の父から出た多くの良い業をあなた方に見せてきた。その中のどの業のためにあなた方はわたしを石打ちにするのか」
John 10:33 ユダヤ人たちは彼に答えた,「我々があなたを石打ちにするのは,良い業のためではなく,冒とくのためだ。あなたは人間でありながら,自分を神としたからだ」。
John 10:34 イエスは彼らに答えた,「あなた方の律法の中に,『わたしは言った,あなた方は神々である』と書いていないだろうか。 John 10:35 神の言葉の臨んだ人々を神々と呼んだのに(そして聖書は廃れることがあり得ない), John 10:36 『わたしは神の子だ』とわたしが言ったことのために,父が聖別して世に遣わされた者に関して,『あなたは冒とくしている』と言うのか。 John 10:37 わたしが自分の父の業を行なっていないのなら,わたしを信じるのをやめなさい。 John 10:38 だが,わたしがそれらのことを行なっているのなら,たとえわたしを信じないとしても,その業を信じなさい。父がわたしの内におられ,わたしが父の内にいることを知り,また信じるためだ」
John 10:39 彼らは再び彼を捕まえようとした。しかし,彼は彼らの手から出て行った。 John 10:40 彼は再びヨルダンの向こう,ヨハネが最初にバプテスマを施していた場所へ去って行き,そこに滞在した。 John 10:41 大勢の人が彼のところにやって来た。彼らは言った,「ヨハネは確かに何のしるしも行なわなかったが,ヨハネがこの人について言ったことはすべて真実だった」。 John 10:42 そこでは大勢の人が彼を信じた。
John 11:0 John 11:1 さて,ある人が病気であった。マリアとその姉妹マルタの村,ベタニア出身のラザロである。 John 11:2 主に香油を塗り,その両足を自分の髪でぬぐったのはこのマリアであり,その兄弟ラザロが病気であった。 John 11:3 それで姉妹たちは彼のもとに人を遣わして言った,「主よ,ご覧ください,あなたが大いに愛情を抱いてくださっている者が病気です」。 John 11:4 しかしイエスはそれを聞いて言った,「この病気は死に至るものではなく,神の栄光のため,神の子がそれによって栄光を受けるためのものだ」 。 John 11:5 さて,イエスはマルタとその姉妹,そしてラザロを愛していた。 John 11:6 それで,ラザロが病気だと聞いたとき,自分のいた所に二日間とどまっていた。 John 11:7 それから,そののち,弟子たちに言った,「もう一度ユダヤに行こう」
John 11:8 弟子たちは彼に言った,「ラビ,たった今ユダヤ人たちはあなたを石打ちにしようとしたのに,またあそこに行こうとされるのですか」。
John 11:9 イエスは答えた,「昼間の十二時間があるではないか。人は昼の間に歩けば,つまずくことはない。この世の光を見ているからだ。 John 11:10 しかし,夜の間に歩けばつまずく。光が彼の内にないからだ」 。 John 11:11 こうした事を言って,そののち,彼らに言った,「わたしたちの友ラザロは眠りに入った。しかしわたしは彼を眠りから覚ましに行く」
John 11:12 それで弟子たちは言った,「主よ,眠りに入ったのなら,回復するでしょう」。
John 11:13 ところで,イエスは彼の死について話していたが,彼らは眠って休息をとることについて話しているものだと思っていた。 John 11:14 そこでイエスはその時,彼らにはっきりと言った,「ラザロは死んだのだ。 John 11:15 わたしは,自分がそこにいなかったことを,あなた方のために喜ぶ。それはあなた方が信じるようになるためだ。それでも,彼のところに行こう」
John 11:16 それで,ディディモスと呼ばれるトマスが仲間の弟子たちに言った,「我々も行って,彼と共に死のうではないか」。
John 11:17 そこでイエスが行くと,ラザロがすでに四日間墓の中にいるのを目にした。 John 11:18 ところで,ベタニアはエルサレムに近く,およそ十五スタディア離れている。 John 11:19 大勢のユダヤ人たちが,マルタとマリアの周りで,その女たちと一緒にいた。その兄弟に関して彼女たちを慰めようとしてであった。 John 11:20 それで,マルタはイエスが来ていると聞くと,出て行って彼に会った。しかしマリアは家の中にとどまっていた。 John 11:21 それでマルタはイエスに言った,「主よ,あなたがここにいてくださったなら,わたしの兄弟は死ななかったことでしょう。 John 11:22 今でもわたしは,あなたが神にお求めになることは何でも,神はあなたにお与えになることを知っています」。 John 11:23 イエスは彼女に言った,「あなたの兄弟は生き返る」
John 11:24 マルタは彼に言った,「わたしは,彼が終わりの日の復活の時に生き返ることを知っています」。
John 11:25 イエスは彼女に言った,「わたしは復活であり,命だ。わたしを信じる者は,たとえ死んでも生きる。 John 11:26 だれでも生きていてわたしを信じる者は決して死なない。あなたはこのことを信じるか」
John 11:27 彼女は彼に言った,「はい,主よ。わたしはあなたがキリスト,神の子,世に入られる方だということを信じて来ました」。
John 11:28 このことを言うと,彼女は去って行き,そっと自分の姉妹マリアを呼んで,こう言った。「先生がここにおられ,あなたをお呼びです」。
John 11:29 彼女はこれを聞くと,急いで立ち上がり,彼のもとに行った。 John 11:30 ところで,イエスはまだ村に入っておらず,マルタが彼と会った場所にいた。 John 11:31 それで,その家の中で彼女と共にいて,彼女を慰めていたユダヤ人たちは,急いで立ち上がって出て行くマリアを見たとき,「泣くために墓に行こうとしているのだ」と言って,彼女に付いて行った。 John 11:32 それでマリアはイエスがいる所に来て,彼を見ると,その足もとにひれ伏して,彼に言った,「主よ,あなたがここにいてくださったなら,わたしの兄弟は死ななかったことでしょう」。
John 11:33 それでイエスは,彼女が泣き,彼女と共に来たユダヤ人たちも泣いているのを目にすると,霊においてうめき,また苦悩し, John 11:34 そして言った,「あなた方は彼をどこに横たえたのか」
彼らは言った,「主よ,来て,ご覧ください」。
John 11:35 イエスは涙を流した。
John 11:36 それでユダヤ人たちは言った,「見なさい,彼にどれほど愛情を抱いていたかを」。 John 11:37 彼らのうちのある者たちは言った,「盲人の目を開けたこの人が,ラザロを死から守れなかったのだろうか」。
John 11:38 それでイエスは,再び自分の内でうめき,墓に来た。ところでそれはほら穴であって,それに向かって石が置かれていた。 John 11:39 イエスは言った,「石を取りのけなさい」
死んでいた者の姉妹マルタが彼に言った,「主よ,もう臭くなっています。死んで四日たちますから」。
John 11:40 イエスは彼女に言った,「信じれば神の栄光を見ると告げなかったか」
John 11:41 そこで彼らは死んだ人が横たえられている場所から石を取りのけた。イエスは目を上げて言った,「父よ,わたしに耳を傾けてくださったことに感謝します。 John 11:42 わたしは,あなたがいつもわたしに耳を傾けてくださっていることを知っていました。しかし,周りに立っているこの群衆のために,わたしはこのことを言いました。あなたがわたしを遣わされたことを彼らが信じるためです」 。 John 11:43 こう言ってから,大声で叫んだ,「ラザロよ,出て来なさい!」
John 11:44 死んでいた人が,手と足を覆い布で巻かれたまま出て来たのである。その顔も布で包まれていた。
イエスは彼らに言った,「彼を解いて行かせなさい」
John 11:45 それで,マリアのところに来てイエスの行なったことを見た大勢のユダヤ人が,彼を信じた。 John 11:46 しかし,彼らのうちの何人かはファリサイ人たちのところに去って行き,イエスが行なった事柄を彼らに告げた。 John 11:47 それで,祭司長たちとファリサイ人たちは最高法院を招集して,こう言った。「我々は何をしているのだ。この人が多くのしるしを行なっているというのに。 John 11:48 我々が彼をこのままほうっておくなら,みんなが彼を信じるだろう。そして,ローマ人たちがやって来て,我々の場所も国民も奪い去ってしまうだろう」。
John 11:49 しかし彼らのうちのある者,その年に大祭司であったカイアファスが彼らに言った,「あなた方は少しも分かっていない。 John 11:50 そして,一人の人が民のために死んで,国民全体が滅びないことが,我々にとって益になることを考えていない」。 John 11:51 ところで,彼はこれを自分から言ったのではなく,その年に大祭司であったので,このことを預言したのである。すなわち,イエスが国民のために死ぬことになること, John 11:52 また,それが国民のためだけではなく,各地に散らされている神の子らを一つに集めるためでもあるということである。 John 11:53 そこで彼らはその日以来,彼を殺そうと相談した。 John 11:54 そのためイエスは,ユダヤ人の間をおおっぴらに歩くことはせず,そこから,荒野に近い地方,エフライムと呼ばれる町に出発した。彼は弟子たちと共にそこに滞在した。
John 11:55 さて,ユダヤ人の過ぎ越しが近づいていた。大勢の人が身を清めるために,過ぎ越しの前にその地方からエルサレムに上って行った。 John 11:56 それで彼らはイエスを探し,神殿の中に立ちながら互いに言い合った,「あなた方はどう思うか。彼は祭りに全然来ないのだろうか」。 John 11:57 ところで,祭司長たちとファリサイ人たちは,だれでも彼がいるところを知ったなら報告するように命じていた。彼を捕まえるためであった。
John 12:0 John 12:1 それから,過ぎ越しの六日前,イエスはベタニアに来た。死んでいた者で,彼が死んだ者たちの中から生き返らせたラザロがいた所である。 John 12:2 そこで彼らは彼に夕食を用意した。マルタが給仕していたが,ラザロは彼と共に食卓に着いていた者たちの一人であった。 John 12:3 そこでマリアは,非常に高価な純正のナルド香油一ポンドを取り,イエスの両足に塗り,自分の髪で彼の両足をぬぐった。家は香油の香りでいっぱいになった。 John 12:4 そこで,弟子の一人で,彼を売り渡そうとしていたシモンの子ユダ・イスカリオトが言った, John 12:5 「なぜこの香油を三百デナリで売って,貧しい人々に施さなかったのか」。 John 12:6 ところで,彼がこのことを言ったのは,貧しい人々のことを気にかけていたからではなく,彼が盗人であり,金箱を持っていたが,そこに入れられるものを盗んでいたからであった。 John 12:7 しかしイエスは言った,「彼女をそのままにしておきなさい。彼女はわたしの埋葬の日のためにこのことを守ったのだ。 John 12:8 あなた方には,貧しい人々はいつでも一緒にいるが,わたしはいつでもいるわけではないからだ」
John 12:9 それで,ユダヤ人たちからなる大群衆は,彼がそこにいるのを知って,やって来た。それはイエスのためだけでなく,死んだ者たちの中から生き返らされたラザロを見るためでもあった。 John 12:10 しかし祭司長たちたちはラザロをも殺そうと陰謀を企てた。 John 12:11 彼のために大勢のユダヤ人たちが去って行き,イエスを信じたからであった。
John 12:12 次の日,大群衆が祭りに来ていた。彼らはイエスがエルサレムに来ようとしていることを聞くと, John 12:13 ヤシの木の枝を取り,彼を出迎えるために出て行き,叫んで言った,「ホサンナ! 主の名において来る者,イスラエルの王は幸いだ!」
John 12:14 イエスは,子ロバを見つけて,それに座った。こう書いてあるとおりである, John 12:15 「シオンの娘よ,恐れてはならない。見よ,あなたの王が来る。ロバの子に乗って」。 John 12:16 弟子たちはこれらの事を初めは理解しなかったが,イエスが栄光を受けた時,その時にこれらの事が彼について書かれていたこと,そして人々が彼にこれらの事を行なったということを思い出した。 John 12:17 それで,彼がラザロを墓から呼び出して死んだ者たちの中から生き返らせた時に,彼と共にいた群衆は,そのことについて証言した。 John 12:18 この理由のためにも,群衆は来て彼を出迎えた。彼がこのしるしを行なったことを聞いたからである。 John 12:19 それでファリサイ人たちは互いに言い合った,「あなた方が何も成し遂げていないのを見なさい。見よ,世は彼を追って行ってしまった」。
John 12:20 ところで,祭りの際に崇拝のために上ってきた者たちの中に,あるギリシャ人たちがいた。 John 12:21 それでこれらの人たちは,ガリラヤのベツサイダ出身のフィリポのところに来て,「イエスにお目にかかりたいのですが」と言って彼に頼んだ。 John 12:22 フィリポはやって来てアンデレに告げ,アンデレはフィリポと共に来て,彼らはイエスに告げた。 John 12:23 イエスは彼らに答えた,「人の子が栄光を受ける時が来た。 John 12:24 本当にはっきりとあなた方に告げる。一粒の小麦は地に落ちて死ななければ,それはそのままで残る。しかしそれが死ぬなら,たくさんの実を生み出す。 John 12:25 自分の命を愛している者はそれを失う。世において自分の命を憎む者は,それを永遠の命へと保つ。 John 12:26 だれでもわたしに仕えるなら,その者はわたしに従いなさい。わたしがいる所,そこにわたしに仕える者もいることになる。だれでもわたしに仕えるなら,父はその者を尊んでくださる。
John 12:27 「今,わたしの魂は騒ぐ。わたしは何と言おうか。『父よ,わたしをこの時から救ってください』と言おうか。だが,この理由のためにわたしはこの時に至ったのだ。 John 12:28 父よ,あなたのみ名の栄光をお示しください!」
すると天から声が出て,こう言った。「わたしはその栄光を現わした。そして再び栄光を現わそう」。
John 12:29 そのため,そばに立っていてそれを聞いた群衆は,雷が鳴ったのだと言った。他の者たちは,「み使いが彼に話したのだ」と言った。
John 12:30 イエスは答えた,「この声は,わたしのためではなく,あなた方のために来た。 John 12:31 今こそ,この世の裁きの時だ。今,この世の支配者は投げ出されることになる。 John 12:32 そしてわたしは,自分が世から挙げられるなら,すべての人をわたしへ引き寄せるだろう」 。 John 12:33 しかし,自分がどんな形で死ぬことになっているかを示そうとして,彼はこのことを言ったのである。 John 12:34 群衆は彼に答えた,「わたしたちは律法から,キリストが永遠にとどまることを聞いています。あなたが,『人の子は挙げられなければならない』 と言われるのはどうしてですか。この人の子とはだれなのですか」。
John 12:35 それでイエスは彼らに言った,「もう少しの間,光はあなた方と共にある。闇があなた方に追いつかないために,自分たちに光があるうちに歩きなさい。闇の中を歩く者は,自分がどこに行こうとしているのかを知らない。 John 12:36 あなた方が光の子らとなるために,自分たちに光があるうちに光を信じなさい」 。イエスはこれらの事を言ってから立ち去り,彼らから身を隠した。 John 12:37 しかし,彼は人々の前で多くのしるしを行なったのに,人々は彼らを信じなかった。 John 12:38 それは,預言者イザヤの言葉が実現するためであった。彼はこう言った。
「主よ,だれがわたしたちの知らせを信じたでしょうか。だれに主のみ腕が示されたでしょうか」。 John 12:39 この理由で彼らは信じなかった。イザヤはまたこう言ったからである。
John 12:40 「彼は彼らの目を見えなくし,彼らの心を堅くした。彼らが目で見ず,心で理解せず,立ち返らず,わたしが彼らをいやすことがないためである」。 John 12:41 イザヤは彼の栄光を見たのでこうした事を言ったのであり,彼について語ったのである。 John 12:42 それでも,支配者たちでさえ多くの者が彼を信じた。しかし,ファリサイ人たちのために,彼らはそれを告白しなかった。会堂から追放されないようにするためであった。 John 12:43 彼らは神の賞賛よりも人の賞賛を愛したからである。
John 12:44 イエスは叫んで言った,「わたしを信じる者は,わたしではなく,わたしを遣わした方を信じている。 John 12:45 わたしを見る者はわたしを遣わした方を見ている。 John 12:46 わたしは光として世に来ている。わたしを信じる者が闇の中にとどまらないようにするためだ。 John 12:47 だれかがわたしの言うことに耳を傾けたのに信じなくても,わたしはその者を裁かない。わたしは世を裁くためではなく,世を救うために来たからだ。 John 12:48 わたしを拒み,わたしの言うことを受け入れない者には,その者を裁く方がおられる。わたしの話したその言葉が,終わりの日に彼を裁くだろう。 John 12:49 わたしは自分からではなく,わたしを遣わされた父から話しているのであり,わたしが何を言うべきか,また何を話すべきか,その方がわたしにおきてを与えられたからだ。 John 12:50 わたしは,その方のおきてが永遠の命だということを知っている。ちょうど父がわたしに話されたように,そのとおりにわたしは話すからだ」
John 13:0 John 13:1 さて,過ぎ越しの祭りの前に,イエスはこの世から父のもとへ出発する自分の時が来たことを知り,世にいた自分の者たちを愛していたが,彼らを最後まで愛した。 John 13:2 夕食の後,悪魔はすでにシモンの子ユダ・イスカリオトの心に彼を売り渡す考えを入れていたが, John 13:3 イエスは,父がすべてのものを自分の手にゆだねたこと,そして自分が神から出て来て,神のもとに行こうとしていることを知り, John 13:4 夕食の席から立ち上がり,上着をわきに置いた。手ぬぐいを取って自分の腰に巻いた。 John 13:5 それから,たらいに水をくんで,弟子たちの足を洗い,身に巻いた手ぬぐいでふき始めた。 John 13:6 やがて,シモン・ペトロのところに来た。ペトロは彼に言った,「主よ,わたしの足をお洗いになるのですか」。
John 13:7 イエスは彼に言った,「あなたはわたしがしていることを今は分からないが,後で理解するだろう」
John 13:8 ペトロはイエスに言った,「わたしの足を洗うことなど,決してなさらないでください!」
イエスは彼に言った,「わたしが洗わないなら,あなたはわたしと何の関係もない」
John 13:9 シモン・ペトロはイエスに言った,「主よ,足だけでなく,手も頭も!」
John 13:10 イエスは彼に言った,「水浴びした者は,自分の足を洗う必要があるほかは,全身清いのだ。あなたは清いが,あなた方のうちのみんなが清いわけではない」 。 John 13:11 自分を売り渡そうとしている者を知っていたので,そのために,「あなた方はみんなが清いわけではない」 と言ったのである。 John 13:12 そこで彼らの足を洗い,上着を身に着け,再び座ってから,彼らに言った,「わたしがあなた方にしたことが分かるか。 John 13:13 あなた方はわたしを『先生』また『主』と呼ぶ。あなた方がそのように言うのは正しい。わたしはそのような者だからだ。 John 13:14 それで,主また先生であるわたしがあなた方の足を洗ったのなら,あなた方も互いの足を洗い合うべきだ。 John 13:15 わたしがあなた方に模範を与えたのは,あなた方が,わたしがあなた方にしたのと同じようにするためだからだ。 John 13:16 本当にはっきりとあなた方に告げる。召使いはその主人より偉大ではなく,遣わされた者は自分を遣わした者より偉大ではない。 John 13:17 あなた方がこれらの事を知っているなら,それを行なうとき,あなた方は幸いだ。 John 13:18 わたしはあなた方全員に関して話しているのではない。わたしは自分の選んだ者を知っている。だがそれは,『わたしと共にパンを食べている者が,わたしに向かってかかとを上げた』という聖書が果たされるためなのだ。 John 13:19 今から,それが起きる前にあなた方に告げる。それが起きる時,わたしはあるということを信じるためだ。 John 13:20 本当にはっきりとあなた方に告げる。わたしが遣わす者を受け入れる者はわたしを受け入れるのであり,わたしを受け入れる者はわたしを遣わされた方を受け入れるのだ」
John 13:21 イエスはこのことを言うと,霊において苦しみ,こう証言した。「本当にはっきりとあなた方に告げるが,あなた方のうちの一人がわたしを売り渡すだろう」
John 13:22 弟子たちは,彼がだれについて話しているのかと当惑して,互いに見つめ合った。 John 13:23 弟子の一人で,イエスが愛していた者が,イエスの胸にもたれて食卓に着いていた。 John 13:24 それで,シモン・ペトロは彼に合図して言った,「だれについて話しておられるのか教えてくれ」。
John 13:25 彼はイエスの胸もとにもたれかかりながら尋ねた,「主よ,それはだれですか」。
John 13:26 それでイエスは答えた,「わたしがこのパン切れを浸して与えるのがその者だ」 。そこで彼はパン切れを浸して,それをシモン・イスカリオトの子ユダに与えた。 John 13:27 パン切れの後で,サタンが彼の中に入った。
その時イエスは彼に言った,「あなたのすることを早く行ないなさい」
John 13:28 ところで,食卓に着いている者はだれも,イエスがなぜ彼にこのことを言ったのかを知らなかった。 John 13:29 というのは,ある者たちは,ユダが金箱を持っていたので,イエスは彼に,「祭りのためにわたしたちが必要とする物を買いなさい」とか,貧しい人々に何かを与えるようになどと言ったのだと思っていたのである。 John 13:30 それで,パン切れを受け取ると,彼はすぐに出て行った。夜のことであった。
John 13:31 彼が出て行くと,イエスは言った,「今や,人の子は栄光を受け,神は彼において栄光を受けられた。 John 13:32 神が彼において栄光を受けられたのなら,神は彼にもご自身において栄光を与えられ,すぐに彼に栄光をお与えになる。 John 13:33 小さな子供たちよ,わたしはもうしばらくの間あなた方と共にいる。あなた方はわたしを探すが,『わたしが行こうとしている所に,あなた方は来ることができない』とユダヤ人たちに言ったそのとおりに,わたしはあなた方にも告げる。 John 13:34 わたしは新しいおきてをあなた方に与える。わたしがあなた方を愛したように,あなた方が互いを愛することだ。あなた方も互いに愛し合うためだ。 John 13:35 あなた方が互いに対して愛を抱けば,これによってすべての人は,あなた方がわたしの弟子だということを知るだろう」
John 13:36 シモン・ペトロはイエスに言った,「主よ,あなたはどこへ行こうとしておられるのですか」。
イエスは答えた,「わたしが行こうとしている所に,あなたは今は付いて来ることができないが,後で付いて来るだろう」
John 13:37 ペトロはイエスに言った,「主よ,なぜ今はあなたに付いて行けないのですか。わたしはあなたのために自分の命を捨てるつもりです」。
John 13:38 イエスは彼に答えた,「あなたはわたしのために自分の命を捨てるのか。本当にはっきりとあなたに告げる。あなたがわたしを三度否認するまで,おんどりは鳴かないだろう。
John 14:0
John 14:1 「あなた方の心を騒がせてはいけない。神を信じ,わたしをも信じなさい。 John 14:2 わたしの父の家にはたくさんの住みかがある。そうでなかったなら,わたしはあなた方に告げただろう。わたしはあなた方のために場所を用意しに行こうとしている。 John 14:3 わたしは,行ってあなた方のために場所を用意したら,また来て,あなた方をわたしのところに迎える。わたしのいる所,そこにあなた方もいるようになるためだ。 John 14:4 わたしの行く所をあなた方は知っており,その道も知っている」
John 14:5 トマスがイエスに言った,「主よ,わたしたちはあなたがどこへ行こうとしておられるのか知りません。わたしたちはどうしてその道を知ることができるでしょう」。
John 14:6 イエスは彼に言った,「わたしは道,真理,命だ。わたしを通してでなければ,だれも父のもとに来ることはない。 John 14:7 あなた方は,わたしを知っていたなら,父をも知っていただろう。今から,あなた方はその方を知っており,その方を見ている」
John 14:8 フィリポがイエスに言った,「主よ,わたしたちに父をお示しください。わたしたちにとってはそれで十分です」。
John 14:9 イエスは彼に言った,「こんなに長い間,わたしはあなた方と共にいたのに,フィリポ,あなたはわたしを知っていないのか。わたしを見た者は父を見たのだ。どうしてあなたは,『父を示してください』と言うのか。 John 14:10 わたしが父のうちにおり,父がわたしのうちにおられることをあなたは信じないのか。わたしがあなた方に告げる言葉は,わたしが自分から話すのではない。わたしのうちに住まわれる父がご自分の業を行なっておられるのだ。 John 14:11 わたしが父のうちにおり,父がわたしのうちにおられるというわたしの言葉を信じなさい。そうでなければ,業そのもののために信じなさい。 John 14:12 本当にはっきりとあなた方に言う。わたしを信じる者は,わたしの行なう業をも行なうだろう。しかも,それより大きな業を行なうだろう。わたしは父のもとへ行こうとしているからだ。 John 14:13 あなた方がわたしの名において求めることは何でも,わたしはそれを行なう。父が子において栄光をお受けになるためだ。 John 14:14 あなた方がわたしの名において何かを求めるなら,わたしはそれを行なう。 John 14:15 あなた方がわたしを愛しているなら,わたしのおきてを守りなさい。 John 14:16 わたしは父にお願いし,父はほかの助言者を与えて,彼が永遠にあなた方と共にいるようにくださる。 John 14:17 これは真理の霊であり,世は彼を見ることも知ることもないので,受け入れることができない。あなた方は彼を知っている。彼があなた方と共に住んでおり,あなた方のうちにいることになるからだ。 John 14:18 わたしはあなた方を孤児にしてはおかない。わたしはあなた方のところに来る。 John 14:19 もうしばらくすると,世はもはやわたしを見ないだろう。だが,あなた方はわたしを見る。わたしは生きているので,あなた方も生きる。 John 14:20 その日には,わたしが自分の父のうちにおり,あなた方がわたしのうちにおり,わたしがあなた方のうちにいることを,あなた方は知るだろう。 John 14:21 わたしのおきてを持ってそれを守る者,その人はわたしを愛している者だ。わたしを愛している者はわたしの父に愛されるだろう。そして,わたしは彼を愛し,彼に自分を示すだろう」
John 14:22 (イスカリオトでない)ユダがイエスに言った,「主よ,わたしたちにご自分を示そうとしておられるのに,世にはそうしようとされないとは,何が起きているのですか」。
John 14:23 イエスは彼に言った,「人がわたしを愛しているなら,彼はわたしの言葉を守る。わたしの父はわたしを愛され,わたしたちはその方のもとに行き,その方と共に住むだろう。 John 14:24 わたしを愛していない者は,わたしの言葉を守らない。あなた方が聞いている言葉はわたしのものではなく,わたしを遣わされた父のものだ。 John 14:25 わたしは,まだあなた方と共に住んでいる間に,これらの事をあなた方に言ってきた。 John 14:26 しかし助言者,すなわち父がわたしの名において遣わされる聖霊は,あなた方にすべての事を教え,わたしがあなた方に話したことすべてを思い出させるだろう。 John 14:27 わたしは平和をあなた方に残し,わたしの平和をあなた方に与える。わたしはあなた方に,世が与えるのと同じようにして与えるのではない。あなた方の心を騒がせたり,恐れたりしてはいけない。 John 14:28 あなた方は,『わたしは去って行くが,あなた方のところに戻って来る』と,わたしが告げたのを聞いた。あなた方は,わたしを愛しているなら,『わたしは父のもとに行こうとしている』とわたしが言ったことで喜ぶはずだ。父はわたしより偉大だからだ。 John 14:29 今わたしは,それが起きる前にあなた方に告げてきた。それが起きる時にあなた方が信じるためだ。 John 14:30 わたしはもう,あなた方と多くは話さないだろう。世の支配者がやって来るからだ。彼はわたしのうちに何も持っていない。 John 14:31 しかし,わたしが父を愛していることを世が知るために,父がわたしに命じられたそのとおりにわたしは行なう。立ちなさい。ここから出て行こう。
John 15:0
John 15:1 「わたしが真のブドウの木であり,わたしの父は耕作人だ。 John 15:2 その方は,わたしのうちにある実を生み出さない枝をすべて取り除かれる。その方は,実を生み出す枝をすべて,それがもっと実を生み出すようにするために刈り込まれる。 John 15:3 あなた方は,わたしがあなた方に話してきた言葉によって,すでにきれいに刈り込まれている。 John 15:4 わたしのうちにとどまりなさい。わたしもあなた方のうちにとどまっている。枝がブドウの木のうちにとどまっていなければ,自分では実を生み出すことができないように,あなた方もわたしのうちにとどまっていなければ,実を生み出すことはできない。 John 15:5 わたしはブドウの木であり,あなた方はその枝だ。わたしのうちにとどまり,わたしもそのうちにとどまる者は,たくさんの実を生み出す。あなた方は,わたしを離れては何もできないからだ。 John 15:6 わたしのうちにとどまらないなら,その者は枝のように投げ出されて枯らされる。そして人々はそれらを集め,火の中に投げ込み,それらは燃やされる。 John 15:7 あなた方がわたしのうちにとどまり,わたしの言葉があなた方のうちにとどまるなら,あなた方は自分たちの望むことを何でも求め,それはあなた方のために果たされるだろう。
John 15:8 「あなた方が多くの実を生み出し,こうしてあなた方がわたしの弟子となること,これによってわたしの父は栄光をお受けになる。 John 15:9 ちょうど父がわたしを愛してくださったように,わたしもあなた方を愛してきた。わたしの愛のうちにとどまりなさい。 John 15:10 あなた方がわたしのおきてを守るなら,あなた方はわたしの愛のうちにとどまるだろう。ちょうどわたしが父のおきてを守っており,その方の愛のうちにとどまっているのと同じだ。 John 15:11 わたしの喜びがあなた方のうちにとどまり,あなた方の喜びが満たされるために,わたしはあなた方にこれらの事を話してきた。
John 15:12 「わたしがあなた方を愛したとおりに,あなた方が互いに愛し合うこと,これがわたしのおきてだ。 John 15:13 だれかがその友人たちのために自分の命を捨てること,これより大きな愛はない。 John 15:14 わたしがあなた方に命じることをすべて行なうなら,あなた方はわたしの友だ。 John 15:15 もうわたしはあなた方を召使いとは呼ばない。召使いはその主人が行なうことを知らないからだ。だが,わたしはあなた方を友と呼ぶ。わたしの父から聞いたことすべてを,わたしはあなた方に知らせたからだ。 John 15:16 あなた方がわたしを選んだのではなく,わたしがあなた方を選んで任命したのだ。あなた方が行って実を産み出し,あなた方の実が残るため,また,あなた方がわたしの名において父に求めることは何でも,その方があなた方に与えてくださるためだ。
John 15:17 「あなた方が互いに愛し合うように,わたしはこれらの事をあなた方に命じる。 John 15:18 たとえ世があなた方を憎んでも,それがあなた方を憎む前にわたしを憎んだことを,あなた方は知っている。 John 15:19 あなた方が世のものであったなら,世はそれ自身のものを愛するだろう。だが,あなた方は世のものではなく,わたしが世から選び出したので,そのために世はあなた方を憎むのだ。 John 15:20 『召使いはその主人より偉大ではない』と,わたしがあなた方に言った言葉を覚えておきなさい。彼らがわたしを迫害したのであれば,あなた方をも迫害するだろう。彼らがわたしの言葉を守ったのであれば,あなた方の言葉も守るだろう。 John 15:21 だが彼らは,わたしの名のために,あなた方に対してこれらの事すべてを行なうだろう。彼らはわたしを遣わされた方を知っていないからだ。 John 15:22 わたしがやって来て彼らに話していなかったなら,彼らには罪がなかっただろう。だが今は,彼らには自分たちの罪のための言い訳がない。 John 15:23 わたしを憎む者は,わたしの父をも憎んでいるからだ。 John 15:24 わたしが,ほかのだれもしなかった業を彼らの間で行なわなかったなら,彼らには罪がなかっただろう。だが今は,彼らはわたしもわたしの父をも見た上で憎んでいるのだ。 John 15:25 だが,このことが起きたのは,彼らの律法の中で『彼らは理由なくわたしを憎んだ』と書いてある言葉が果たされるためなのだ。
John 15:26 「わたしが父のもとからあなた方に遣わそうとしている助言者,すなわち父から生じる真理の霊が来る時,彼はわたしについて証言するだろう。 John 15:27 あなた方も,はじめからわたしと共にいたのだから,証言するだろう。
John 16:0
John 16:1 「あなた方がつまずかないために,わたしはこれらの事をあなた方に話してきた。 John 16:2 彼らはあなた方を会堂から追い出すだろう。いやそれどころか,あなた方を殺す者がみな,自分は神に奉仕をささげたのだと思う時が来ようとしている。 John 16:3 彼らは父もわたしも知っていないので,これらの事を行なうことになる。 John 16:4 だが,わたしはこれらの事をあなた方に告げてきた。その時が来たなら,わたしがそのことについて告げたということをあなた方が思い出すためだ。わたしはこれらの事をはじめからは告げなかった。わたしがあなた方と共にいたからだ。 John 16:5 だが今,わたしは自分を遣わされた方のもとに行こうとしている。それでも,あなた方のうちのだれも,『どこに行こうとしているのですか』とは尋ねない。 John 16:6 だが,わたしがこれらの事をあなた方に告げてきたために,悲嘆があなた方の心を満たしている。 John 16:7 それでも,わたしはあなた方に真実を告げる。すなわち,わたしが去って行くことはあなた方の益になるのだ。わたしが去って行かなければ,助言者はあなた方のところに来ないからだ。だがわたしが行けば,わたしは彼をあなた方に遣わすことになる。 John 16:8 彼はやって来ると,罪について,義について,また裁きについて,世を責めるだろう。 John 16:9 罪についてというのは,彼らがわたしを信じていないからだ。 John 16:10 義についてというのは,わたしが自分の父のもとに行こうとしており,あなた方はもはやわたしを見なくなるからだ。 John 16:11 裁きについてというのは,世の支配者が裁かれたからだ。
John 16:12 「わたしには,まだあなた方に告げるべきたくさんの事柄があるが,あなた方は今はそれに耐えられない。 John 16:13 しかし,真理の霊が来る時には,彼はあらゆる真理に導くだろう。彼は自分から語るのではなく,何でも自分が聞くことを話すことになるからだ。彼はあなた方に,起ころうとしている事柄を知らせるだろう。 John 16:14 彼はわたしの栄光を現わすだろう。彼はわたしのものから受けて,あなた方にそれを知らせるからだ。 John 16:15 何でも父が持っておられる物はすべてわたしのものだ。それでわたしは,彼がわたしのものから受けており,それをあなた方に知らせることになると言ったのだ。 John 16:16 しばらくすると,あなた方はわたしを見なくなる。またしばらくすると,あなた方はわたしを見ることになる」
John 16:17 それで,弟子たちの何人かは互いに言い合った,「『しばらくすると,あなた方はわたしを見なくなる。またしばらくすると,あなた方はわたしを見ることになる』 とか,『わたしは父のもとに行くからだ』 と言われるが,これは何のことだろう」。 John 16:18 それで彼らは言った,「『しばらくすると』 と言われるが,これは何のことだろう。我々はこの方の言われることが分からない」。
John 16:19 それでイエスは,彼らが自分に尋ねたがっているのに気づいて,彼らに言った,「あなた方は互いに,『しばらくすると,あなた方はわたしを見なくなり,またしばらくすると,あなた方はわたしを見ることになる』とわたしが言ったこのことに関して尋ね合っているのか。 John 16:20 本当にはっきりとあなた方に告げる。あなた方は泣き悲しむが,世は喜ぶことになる。あなた方は悲嘆にくれるが,あなた方の悲嘆は喜びに変えられることになる。 John 16:21 女は出産する時,自分の時が来たことで悲嘆する。だが子供を生んでしまうと,一人の人が世に生まれたという喜びのために,もはやその苦痛を覚えていない。 John 16:22 だから,あなた方には今は悲嘆があるが,わたしは再びあなた方を見るので,あなた方の心は喜ぶことになり,その喜びをあなた方から取り去る者はいない。
John 16:23 「その日には,あなた方はわたしに何の質問もしないだろう。本当にはっきりとあなた方に告げる。あなた方がわたしの名において父に求めることは何でも,その方はあなた方に与えてくださる。 John 16:24 今まで,あなた方はわたしの名において何も求めたことがない。求めなさい。そうすればあなた方は受けるだろう。それは,あなた方の喜びが満たされるためだ。 John 16:25 わたしはこれらの事をあなた方に比ゆで話してきた。だが,わたしがもはやあなた方に比ゆで話すのではなく,父についてはっきりと告げることになる時が来ようとしている。 John 16:26 その日には,あなた方はわたしの名によって求めることになる。そしてわたしはあなた方に,わたしがあなた方のために父に願うことになるとは言わない。 John 16:27 父ご自身があなた方を愛しておられるからだ。あなた方がわたしを愛し,わたしが神のもとから出て来たことを信じているからだ。 John 16:28 わたしは父のもとから出て来て,世に来ている。再び,わたしは世を去り,父のもとに行く」
John 16:29 弟子たちは彼に言った,「ご覧ください。今,あなたははっきりと話しておられ,何の比ゆも話されません。 John 16:30 今わたしたちは,あなたがすべての事を知っておられ,だれもあなたに質問する必要のないことが分かります。このことによって,わたしたちはあなたが神のもとから出て来られたのだということを信じます」。
John 16:31 イエスは彼らに答えた,「あなた方は今は信じているのか。 John 16:32 見よ,あなた方がみな,自分の所に散らされて,わたしをひとりにする時が来ようとしている。いや,今来ている。それでも,わたしはひとりではない。父がわたしと共におられるからだ。 John 16:33 わたしにあってあなた方に平和があるように,わたしはあなた方にこれらの事を話した。世にあってあなた方には苦しみがあるが,元気を出しなさい! わたしは世に打ち勝ったのだ」
John 17:0 John 17:1 イエスはこれらの事を言ってから,目を天に上げて言った,「父よ,時が来ました。あなたの子の栄光を現わしてください。あなたの子もあなたの栄光を現わすためです。 John 17:2 あなたが彼に肉なる者すべてに対する権威を与えてくださり,彼があなたのゆだねられた者すべてに永遠の命を与えることになるのと同じようにです。 John 17:3 彼らが,唯一のまことの神であるあなたと,あなたが遣わされたイエス・キリストを知るようになること,これが永遠の命です。 John 17:4 わたしは地上であなたの栄光を現わしました。わたしは,行なうために与えてくださった業を成し遂げてきました。 John 17:5 今,父よ,世が存在する前にわたしがあなたのもとで持っていたあの栄光のために,ご自身のもとでわたしに栄光を与えてください。 John 17:6 わたしは,世から与えてくださった人々に,あなたのみ名を示しました。彼らはあなたのものであり,あなたは彼らをわたしに与えてくださいました。彼らはあなたのみ言葉を守ってきました。 John 17:7 彼らは今,あなたがわたしに与えてくださった事がみな,あなたのもとから出たことを知っています。 John 17:8 あなたがわたしに与えてくださった言葉を,わたしは彼らに与えてきたからです。そして,彼らはそれを受け入れて,わたしがあなたのもとから出て来たことを確かに知り,あなたがわたしを遣わされたことを信じてきました。 John 17:9 わたしは彼らのためにお願いします。わたしは世のためにではなく,わたしに与えてくださった者たちのためにお願いするのです。彼らはあなたのものだからです。 John 17:10 わたしのものはみなあなたのものであり,あなたのものはみなわたしのものです。そして,わたしは彼らにあって栄光を受けています。 John 17:11 わたしはもはや世にいませんが,これらの者たちは世にいます。そして,わたしはあなたのもとに行こうとしています。聖なる父よ,わたしに与えてくださったあなたのみ名のために,彼らを守ってください。それは,わたしたちが一つであるように,彼らも一つになるためです。 John 17:12 わたしが彼らと共に世にいた間,わたしはあなたのみ名において彼らを守りました。わたしに与えてくださった者たちを,わたしは守ってきました。彼らのうちのだれも失われませんでした。滅びの子を除いてですが,それは聖書が果たされるためでした。 John 17:13 しかし今,わたしはあなたのもとに行きます。わたしが世にあってこれらの事を話すのは,彼らが自分の内に満ちるわたしの喜びを持つためです。 John 17:14 わたしは彼らにあなたの言葉を与えてきました。世は彼らを憎みました。わたしが世のものでないのと同じように,彼らも世のものではないからです。 John 17:15 わたしは,彼らを世から取り去ることではなく,彼らを悪い者から守ってくださるようお願いします。 John 17:16 わたしが世のものではないのと同じように,彼らも世のものではありません。 John 17:17 あなたの真理のうちに彼らを聖別してください。あなたのみ言葉は真理です。 John 17:18 あなたがわたしを世に遣わされたのと同じように,わたしも彼らを世に遣わしました。 John 17:19 わたしは彼らのために自分を聖別するからです。彼ら自身も真理のうちに聖別されるためです。 John 17:20 これらの者のためだけではなく,彼らの言葉を通してわたしを信じる者のためにも,わたしはお願いします。 John 17:21 彼らがみな一つになるためです。ちょうど,父よ,あなたがわたしのうちにおられ,わたしがあなたのうちにいるのと同じようにです。それは,彼らもわたしたちのうちで一つになるためであり,あなたがわたしを遣わされたことを世が信じるためです。 John 17:22 あなたがわたしに与えてくださった栄光を,わたしは彼らに与えました。わたしたちが一つであるように,彼らも一つになるためです。 John 17:23 わたしは彼らのうちにおり,あなたはわたしのうちにおられます。彼らが完全に一つになるためであり,また,あなたがわたしを遣わされ,あなたがわたしを愛されたとおりに彼らを愛されたことを,世が知るためでもあります。 John 17:24 父よ,わたしに与えてくださった者たちも,わたしのいる所に共にいて欲しいと思います。あなたがわたしに与えてくださったわたしの栄光を見るためです。世の基礎が置かれる前から,あなたがわたしを愛してくださったからです。 John 17:25 公正な父よ,世はあなたを知っていませんが,わたしはあなたを知っていました。そして,これらの者たちはあなたがわたしを遣わされたことを知っています。 John 17:26 わたしはあなたのみ名を彼らに知らせました。また,これからも知らせます。あなたがわたしを愛してくださったその愛が彼らのうちにもあり,わたしが彼らのうちにいるようになるためです」
John 18:0 John 18:1 イエスはこれらの言葉を話すと,弟子たちと共にキドロンの小川の向こうへ出て行った。そこには園があって,彼と弟子たちはその中に入った。 John 18:2 さて,彼を売り渡したユダもその場所を知っていた。イエスは弟子たちと共に何度もそこに行っていたからである。 John 18:3 そこでユダは,一隊の兵士および大祭司とファリサイ人たちからの役人たちを連れ,明かりとたいまつと武器を持って,そこにやって来た。 John 18:4 それでイエスは,自分に起ころうとしていたすべての事を知っていたので,出て行って彼らに言った,「だれを探し求めているのか」
John 18:5 彼らは彼に答えた,「ナザレのイエスを」。
イエスは彼らに言った,「わたしはある」
彼を売り渡したユダも,彼らと共に立っていた。 John 18:6 それで彼が「わたしはある」 と彼らに言うと,彼らは後ずさりして地面に倒れた。
John 18:7 それで彼は再び彼らに尋ねた,「だれを探し求めているのか」
彼らは言った,「ナザレのイエスを」。
John 18:8 イエスは答えた,「わたしはあるとあなた方に告げたのだ。だから,あなた方がわたしを探しているのなら,これらの者たちは去らせなさい」 。 John 18:9 それは,「あなたがわたしに与えてくださった者たちのうち,わたしは一人も失いませんでした」 と語った言葉が果たされるためであった。
John 18:10 それでシモン・ペトロは,剣を持っていたが,それを抜き,大祭司の召使いに撃ちかかり,その右の耳を切り落とした。その召使いの名はマルコスであった。 John 18:11 それでイエスはペトロに言った,「剣をさやに納めなさい。父がわたしに与えておられるこの杯,わたしはそれをどうして飲まないことがあるだろうか」
John 18:12 それでその一隊,指揮官,およびユダヤ人の役人たちは,イエスを捕まえて縛り, John 18:13 まずアンナスのところに連れて行った。その年に大祭司であったカイアファスのしゅうとであったからである。 John 18:14 ところでこの者が,一人の人が民のために死ぬことが好都合だとユダヤ人たちに勧めたカイアファスであった。 John 18:15 シモン・ペトロは別の弟子と共にイエスに付いて行った。さて,その弟子は大祭司に知られていたので,イエスと共に大祭司の中庭に入った。 John 18:16 しかしペトロは外で戸口に立っていた。そこで大祭司に知られていたほかの弟子が出て来て戸口番の女に話し,ペトロを中に連れて来た。 John 18:17 すると,戸口番の女中がペトロに言った,「あなたもこの人の弟子の一人なのですか」。
彼は「違う」と言った。
John 18:18 ところで,寒かったので,召使いや役人たちはそこに立って炭火を起こしていた。彼らは身を暖めていた。ペトロも彼らと共におり,立って身を暖めていた。 John 18:19 それで,大祭司はイエスに,彼の弟子たちや教えについて尋ねた。 John 18:20 イエスは彼に答えた,「わたしは世に対しておおっぴらに語った。わたしはいつも,ユダヤ人たちが常に集まる会堂や神殿で教えた。ひそかに話したことは何もない。 John 18:21 なぜあなたはわたしに尋ねるのか。わたしが彼らに言ったことを聞いてきた人たちに尋ねなさい。見よ,これらの人たちはわたしが言った事を知っているのだ」
John 18:22 彼がこのことを言うと,役人の一人がイエスに平手打ちを加えて,「大祭司にそのような答えをするのか」と言った。
John 18:23 イエスは彼に言った,「わたしが悪いことを語ったのなら,その悪について証言しなさい。だが,正しいのなら,なぜわたしを打つのか」
John 18:24 アンナスは彼を縛ったまま,大祭司カイアファスのところに送った。 John 18:25 さて,シモン・ペトロは立って身を暖めていた。それで人々は彼らに言った,「あなたも彼の弟子のうちの一人ではないだろうな」。
彼はそれを否定して,「違う」と言った。
John 18:26 大祭司の召使いの一人で,ペトロが耳を切り落とした者の親族の者が言った,「わたしはあなたが園で彼と共にいるのを見なかっただろうか」。
John 18:27 それでペトロは再びそれを否定した。するとすぐにおんどりが鳴いた。
John 18:28 それで彼らは,イエスをカイアファスのところからプラエトリウムに連れて行った。早朝のことであった。そして彼ら自身は,汚れることなく過ぎ越しの食事ができるように,プラエトリウムの中に入らなかった。 John 18:29 それでピラトが彼らのところに出て来て,こう言った。「この人に対してどんな告訴を提出するのか」。
John 18:30 彼らはピラトに答えた,「この人が悪人でなかったなら,わたしたちは彼をあなたのもとに引き渡しはしなかったでしょう」。
John 18:31 それでピラトは彼らに言った,「自分たちで彼を引き取って,お前たちの律法に従って彼を裁くがよい」。
それでユダヤ人たちは彼に言った,「わたしたちがだれかを死刑にすることは法律で認められていません」。 John 18:32 それは,自分がどのような死に方で死ぬことになるかを示したイエスの言葉が果たされるためであった。
John 18:33 それでピラトは再びプラエトリウムの中に入って,イエスを呼び,彼に言った,「お前はユダヤ人の王なのか」。
John 18:34 イエスは彼に答えた,「あなたは自分でこのことを言うのか。それともほかの人たちがわたしについてあなたに告げたのか」
John 18:35 ピラトは答えた,「わたしはユダヤ人ではないではないか。お前の国民と祭司長たちがお前をわたしに引き渡したのだ。お前は何をしたのか」。
John 18:36 イエスは答えた,「わたしの王国はこの世のものではない。わたしの王国がこの世のものだったなら,わたしの召使いたちがわたしをユダヤ人たちに引き渡さないように闘ったことだろう。だが今,わたしの王国はこの世からのものではない」
John 18:37 それでピラトは彼に答えた,「それではお前は王なのか」。
イエスは答えた,「あなたがわたしを王だと言っている。真理を証言すること,このためにわたしは生まれ,このためにわたしは世に入った。真理に属する者はみな,わたしの声を聞く」
John 18:38 ピラトは彼に言った,「真理とは何か」。
これを言ってから,再びユダヤ人たちのところへ出て行って,彼らに言った,「わたしは彼に対して訴える根拠を何も見いださない。 John 18:39 だがお前たちには,過ぎ越しの際にだれかをわたしがあなた方に釈放するという習慣がある。それでお前たちは,このユダヤ人の王を釈放して欲しいのか」。
John 18:40 すると彼らは再び叫んで言った,「この人ではない。バラバを!」 ところでバラバは強盗であった。
John 19:0 John 19:1 そこでピラトはイエスを引き取って,彼をむち打った。 John 19:2 兵士たちはイバラで冠を編んで彼の頭に載せ,彼に紫の衣を着せた。 John 19:3 「ユダヤ人の王様,万歳!」と言ったり,彼を平手打ちにしたりしていた。
John 19:4 それからピラトは再び出て来て,彼らに言った,「見よ,わたしは彼をお前たちのところに連れて来る。わたしが彼に対して訴える根拠を何も見いださないことをお前たちが知るためだ」。
John 19:5 それでイエスは,イバラの冠と紫の衣を身に着けて,出て来た。ピラトは彼らに言った,「見よ,この人だ!」
John 19:6 それで祭司長たちと役人たちは彼を見ると,叫んで言った,「はりつけにしろ! はりつけにしろ!」
ピラトは彼らに言った,「自分たちで彼を引き取って,彼をはりつけにするがよい。わたしは彼に対して訴える根拠を何も見いださないからだ」。
John 19:7 ユダヤ人たちは彼に言った,「わたしたちには律法があります。わたしたちの律法によれば,彼は死ぬべきです。自分を神の子としたからです」。
John 19:8 それでピラトはこの言葉を聞くとますます恐れた。 John 19:9 彼は再びプラエトリウムの中に入って,イエスに言った,「お前はどこから来たのか」。しかしイエスは何の答えもしなかった。 John 19:10 それでピラトは彼に言った,「お前はわたしに話さないのか。わたしにはお前を釈放する権限があり,お前をはりつけにする権限もあることを,お前は知らないのか」。
John 19:11 イエスは答えた,「上から与えられたのでなければ,あなたはわたしに対して何の権限もないだろう。そのために,わたしをあなたに引き渡した者には大きな罪がある」。
John 19:12 これを聞いて,ピラトは彼を釈放することを求めたが,ユダヤ人たちは叫んで言った,「あなたがこの人を釈放するなら,あなたはカエサルの友ではない! 自分を王とする者はカエサルに逆らって語っているのだ!」
John 19:13 それでピラトはこれらの言葉を聞くと,イエスを連れ出し,「敷石」,ヘブライ語で「ガバタ」と呼ばれる場所で,裁判の席に着いた。 John 19:14 ところで,それは過ぎ越しの準備の日で,およそ第六時であった。彼はユダヤ人たちに言った,「見よ,お前たちの王だ!」
John 19:15 彼らは叫んで言った,「取り除け! 取り除け! はりつけにしろ!」
ピラトは彼らに言った,「わたしがお前たちの王をはりつけにするのか」。
祭司長たちは答えた,「わたしたちにはカエサルのほかに王はいません!」
John 19:16 こうしてその時,ピラトは彼をはりつけにするために彼らに引き渡した。そこで彼らはイエスを引き取って連れて行った。 John 19:17 彼は自分の十字架を運び,「どくろの場所」と呼ばれる場所,ヘブライ語で「ゴルゴタ」と呼ばれる場所へ出て行った。 John 19:18 その所で,人々は彼をはりつけにした。彼と共にほかの二人を,イエスを真ん中にして,その両側ではりつけにした。 John 19:19 ピラトは罪状書きも書いて,十字架の上に付けた。そこには「ナザレのイエス,ユダヤ人の王」と書かれていた。 John 19:20 それで大勢のユダヤ人たちがこの罪状書きを読んだ。イエスがはりつけにされた場所は町に近かったからであり,それがヘブライ語,ラテン語,およびギリシャ語で書かれていたからであった。 John 19:21 そのため,ユダヤ人の祭司長たちはピラトに言った,「『ユダヤ人の王』と書かないで,『この者は「わたしはユダヤ人の王だ」と言った』と書いてください」。
John 19:22 ピラトは答えた,「わたしが書いたことは,わたしが書いたのだ」。
John 19:23 やがて兵士たちは,イエスをはりつけにした時,その衣を取って四つに分け,それぞれの兵士たちに一つずつとした。また上着も取った。ところで,その上着は縫い目がなく,上からそっくり織ったものであった。 John 19:24 それで彼らは互いに言い合った,「これは裂いたりしないで,だれのものにするか,くじを引こう」。それは,聖書が果たされるためであった。こう述べている。
「彼らは互いに衣を分けた。わたしの外衣のために彼らはくじを引いた」。
そのために役人たちはこれらの事をした。 John 19:25 しかし,イエスの十字架のそばには,彼の母と,母の姉妹クロパスの妻マリア,およびマリア・マグダレネが立っていた。 John 19:26 それでイエスは,自分の母と,自分が愛していた弟子がそこに立っているのを見ると,自分の母に言った,「女よ,見なさい,あなたの子です!」 John 19:27 次いで,その弟子に言った,「見なさい,あなたの母だ!」  その時から,その弟子は彼女を自分の家に引き取った。
John 19:28 こののちイエスは,すべての事が完了したこと,また聖書が果たされたことを見て,こう言った。「わたしは渇く」 。 John 19:29 さて,そこには酢を満たした器が置いてあった。そこで彼らは酢をたっぷり含ませた海綿をヒソプに付け,それを彼の口もとに持って行った。 John 19:30 それでイエスは酢を受けると,「完了した」 と言った。頭を垂れて,自分の霊を引き渡した。
John 19:31 それでユダヤ人たちは,準備の日であったため,(その安息日は特別な安息日であったので,)安息日に体が十字架の上に残らないよう,彼らの足を折って取り降ろすことをピラトに求めた。 John 19:32 それで兵士たちは来て,彼と共にはりつけにされた最初の者ともう一方の者の足を折った。 John 19:33 しかし,イエスのところに来て,彼がすでに死んでいたのを見ると,その足を折ることはしなかった。 John 19:34 しかし,兵士たちの一人がそのわき腹を突き刺した。するとすぐに血と水が出て来た。 John 19:35 見た者が証言してきたのであり,彼の証言は真実だ。彼は自分が真実を告げていることを知っている。それは,あなた方が信じるためだ。 John 19:36 というのは,これらの事が起きたのは,「彼の骨が折られることはないだろう」という聖句が果たされるためだったからである。 John 19:37 また別の聖句は,「彼らは自分たちが突き刺した者を見つめるだろう」と述べている。
John 19:38 こうした事ののち,イエスの弟子ではあったがユダヤ人たちへの恐れのために秘密にしていたアリマタヤのヨセフが,イエスの体を取り降ろさせて欲しいとピラトに求めた。ピラトは彼に許可を与えた。それで彼は行って,その体を取り降ろした。 John 19:39 最初の時は夜にイエスのもとに来たニコデモも,没薬と沈香とを混ぜた物を百ポンドほど持って来た。 John 19:40 こうして彼らはイエスの体を引き取り,埋葬のためのユダヤ人の習慣どおり,香料と共に亜麻布で巻いた。 John 19:41 さて,彼がはりつけにされた場所には園があり,園にはまだだれも横たえられたことのない新しい墓があった。 John 19:42 それで,ユダヤ人の準備の日であったため,(その墓が近かったので)彼らはイエスをそこに横たえた。
John 20:0 John 20:1 さて,週の初めの日,マリア・マグダレネは朝早く,まだ暗いうちに墓にやって来た。そして,墓から石が取りのけられているのを見た。 John 20:2 それで彼女は,走ってシモン・ペトロとイエスが愛していたもう一人の弟子のところに行き,彼らに言った,「人々が主を墓から取り去ってしまい,どこに置いたのか分かりません!」
John 20:3 それでペトロともう一人の弟子は出て行き,墓に向かった。 John 20:4 彼らは二人とも一緒に走っていた。もう一人の弟子はペトロを追い越して,最初に墓に着いた。 John 20:5 身をかがめて中をのぞくと,亜麻布が置かれているのを見たが,中には入らなかった。 John 20:6 それから彼の後でシモン・ペトロがやって来て,墓の中に入った。彼は亜麻布が置かれているのを見た。 John 20:7 また,イエスの頭にあった布が,亜麻布と共にはなく,別の場所で巻かれているのを見た。 John 20:8 こうしてその時,最初に墓に来たもう一人の弟子も中に入り,これを見て信じた。 John 20:9 というのは,彼らはまだ,彼が死んだ者たちの中から生き返らなければならないという聖書を知っていなかったからである。 John 20:10 そこで弟子たちは自分たちの家に去って行った。
John 20:11 しかし,マリアは墓の外で泣きながら立っていた。それで,泣きながら,身をかがめて墓の中を見た。 John 20:12 そして彼女は,イエスの体が横たえられていた所に,二人の白い衣のみ使いが,一人は頭のところに,もう一人は足のところに座っているのを見た。 John 20:13 彼らは彼女に言った,「女よ,なぜ泣いているのか」。
彼女は彼らに言った,「人々がわたしの主を取り去ってしまい,どこに置いたのか分からないのです」。 John 20:14 彼女はこのことを言ってから,振り向いてイエスが立っているのを見た。しかし,それがイエスだとは分からなかった。
John 20:15 イエスは彼女に言った,「女よ,なぜ泣いているのか。だれを探し求めているのか」
彼女は,彼を庭師だと思っていたので,彼に言った,「だんな様,あなたが彼を運び去ったのでしたら,どこに置いたのか教えてください。わたしが彼を引き取ります」。
John 20:16 イエスは彼女に言った,「マリア」
彼女は向き直って彼に言った,「ラボニ!」 これは「先生!」と言うことである。
John 20:17 イエスは彼女に言った,「わたしに触ってはいけない。わたしはまだ,わたしの父のもとに上っていないからだ。だが,わたしの兄弟たちのところに行って,『わたしは,わたしの父またあなた方の父のもと,わたしの神またあなた方の神のもとに上ろうとしている』と告げなさい」
John 20:18 マリア・マグダレネは行って,自分が主を見,彼が自分にこれらの事を言ったと弟子たちに告げた。 John 20:19 それで,その日,すなわち週の最初の日の夕方,弟子たちが集まっていた所は,ユダヤ人たちに対する恐れのため,すべての扉にかぎがかけられていたのに,イエスが来て真ん中に立ち,彼らに言った,「あなた方に平安があるように」
John 20:20 このことを言ってから,自分の両手とわき腹を見せた。それで弟子たちは主を見て喜んだ。 John 20:21 そのためイエスは再び彼らに言った,「あなた方に平安があるように。ちょうど父がわたしを遣わされたのと同じように,わたしもあなた方を遣わす」 。 John 20:22 このことを言ってから,彼らの上に息を吹きかけてこう言った。「聖霊を受けなさい! John 20:23 あなた方がだれかの罪を許すなら,彼らはそれを許されている。あなた方がだれかの罪を留め置くなら,それは留め置かれている」
John 20:24 しかし,十二人のうちの一人でディディモスと呼ばれるトマスは,イエスが来た時,彼らと共にいなかった。 John 20:25 それで,ほかの弟子たちは彼に言った,「わたしたちは主を見た!」
しかし彼は言った,「その手にくぎの跡を見,そのわき腹に自分の手を入れるのでなければ,わたしは信じない」。
John 20:26 八日後,弟子たちは再び中におり,トマスも彼らと共にいた。すべての扉にかぎがかけられていたのに,イエスが来て真ん中に立ち,「あなた方に平安があるように」 と言った。 John 20:27 それから彼はトマスに言った,「あなたの指をここに伸ばし,わたしの両手を見なさい。あなたの手をここに伸ばし,わたしのわき腹にそれを入れなさい。信じない者ではなく,信じる者になりなさい」
John 20:28 トマスはイエスに答えた,「わたしの主,わたしの神よ!」
John 20:29 イエスは彼に言った,「あなたはわたしを見たので信じたのか。見なくても信じる者は幸いだ」
John 20:30 それで,イエスは弟子たちの前でほかにもたくさんのしるしを行なったが,それはこの書には書かれていない。 John 20:31 しかし,これらの事が書かれたのは,あなた方が,イエスが神の子キリストだということを信じるため,また,信じることによって彼の名において命を得るためである。
John 21:0 John 21:1 こうした事ののち,イエスはティベリアスの海で,再び自分を弟子たちに示した。彼はこのやり方で自分を示した。 John 21:2 シモン・ペトロと,ディディモスと呼ばれるトマス,ガリラヤのカナのナタナエル,それにゼベダイの子たちと弟子たちのうちのもう二人が一緒にいた。 John 21:3 シモン・ペトロが彼らに言った,「わたしは漁に行く」。
彼らはペトロに言った,「わたしたちもあなたと共に行こう」。すぐに彼らは出て行き,舟に乗り込んだ。その夜は何も捕れなかった。 John 21:4 しかし,すでに日が昇って来た時,イエスが浜辺に立ったが,弟子たちはそれがイエスだと分からなかった。 John 21:5 それでイエスは彼らに言った,「子供たち,何か食べる物があるか」
彼らは彼に「ありません」と答えた。
John 21:6 彼は彼らに言った,「網を舟の右側に降ろしなさい。そうすれば幾らか見つかるだろう」
それで彼らはそれを降ろした。すると,多くの魚のために,彼らはそれを引き上げることができなかった。 John 21:7 それで,イエスが愛していた弟子がペトロに言った,「主だ!」
そこでシモン・ペトロは,主だと聞くと,(裸だったので)自分の上着をまとい,海の中に飛び込んだ。 John 21:8 しかし,ほかの弟子たちは(陸から遠くなく,二百キュビトほどだったので),魚でいっぱいの網を引いて,小舟でやって来た。 John 21:9 そこで彼らが陸に上がると,そこに炭火があり,その上に魚とパンがあるのを見た。 John 21:10 イエスは彼らに言った,「今捕った魚を少し持って来なさい」
John 21:11 シモン・ペトロは舟に上がり,百五十三匹の大きな魚でいっぱいの網を陸に引き寄せた。そして,それほど多かったのに,網は裂けていなかった。
John 21:12 イエスは彼らに言った,「来て,朝食をとりなさい」
弟子たちのうちのだれも,「あなたはどなたですか」とあえて尋ねる者はいなかった。主だと分かっていたからである。
John 21:13 それからイエスは来て,パンを取り,彼らにそれを与え,魚も同じようにした。 John 21:14 ところで,イエスが死んだ者たちの中から起こされたのちに弟子たちに示されたのは,これが三度目であった。 John 21:15 そこで彼らが朝食を食べ終わると,イエスはシモン・ペトロに言った,「ヨナの子シモン,あなたはこれら以上にわたしを愛しているか」
彼はイエスに言った,「はい,主よ。わたしがあなたに愛情を抱いていることを,あなたは知っておられます」。
イエスは彼に言った,「わたしの子羊たちを養いなさい」 。 John 21:16 また二度目にイエスは彼に言った,「ヨナの子シモン,あなたはわたしを愛しているか」
彼はイエスに言った,「はい,主よ。わたしがあなたに愛情を抱いていることを,あなたは知っておられます」。
イエスは彼に言った,「わたしの羊たちを世話しなさい」 。 John 21:17 三度目にイエスは彼に言った,「ヨナの子シモン,あなたはわたしに愛情を抱いているか」
ペトロは,イエスが三度目に「あなたはわたしに愛情を抱いているか」 と尋ねたことで悲しんだ。彼はイエスに言った,「主よ,あなたはすべてのことを知っておられます。わたしがあなたに愛情を抱いていることを,あなたは知っておられます」。
イエスは彼に言った,「わたしの羊たちを養いなさい。 John 21:18 本当にはっきりとあなたに言う。あなたは若かったとき,自分で服を着て,自分の望む所を歩いた。だが年を取ると,あなたは両手を広げ,ほかの人があなたに服を着せ,自分が行くのを望まない所に連れて行くだろう」
John 21:19 ところで,彼がこのことを言ったのは,ペトロがどんな死に方で神の栄光を現わすことになるかを示すためであった。このことを言ってから,彼は言った,「わたしに従いなさい」
John 21:20 それからペトロは振り向いて,一人の弟子が付いて来るのを見た。これは,イエスが心から愛していた弟子で,夕食の際にイエスの胸にもたれて,「主よ,だれがあなたを売り渡そうとしているのですか」と尋ねた者でもあった。 John 21:21 彼を見て,ペトロはイエスに言った,「主よ,この人についてはどうですか」。
John 21:22 イエスは彼に言った,「わたしが来るまで彼がとどまることをわたしが望むとしても,それがあなたにとって何なのか。あなたはわたしに従いなさい」 。 John 21:23 それで,この弟子は死なないというこの言葉が兄弟たちの間に広まった。しかしイエスは,彼は死なないと言ったのではなく,「わたしが来るまで彼がとどまることをわたしが望むとしても,それがあなたにとって何なのか」 と言ったのである。 John 21:24 この者が,これらの事について証言し,これらの事を書いた弟子である。わたしたちは,彼の証言が真実だということを知っている。 John 21:25 イエスが行なった事柄はほかにもたくさんあるが,それらが全部書かれるとすれば,世界そのものでさえも,その書かれる書物を収めることはできないだろうと,わたしは思う。
Acts 0:0
Acts 1:0 Acts 1:1 テオフィロス様,わたしは最初の書物で,イエスが行ないかつ教え始めたすべての事柄について, Acts 1:2 自分が選んだ使徒たちに聖霊によって命令を与えたのち,迎え上げられた日までのことを書き記しました。 Acts 1:3 彼はまた,四十日にわたって彼らに現われて,神の王国について語り,自分が苦しみを受けたのちに生きていることを,多くの証拠によってそれらの者たちに示しました。 Acts 1:4 彼らと共に集まっていた時,彼らにこう命じました。「エルサレムから離れることなく,あなた方がわたしから聞いた,父が約束されたものを待っていなさい。 Acts 1:5 ヨハネは確かに水でバプテスマを施したが,あなた方は今から幾日もたたないうちに,聖霊によってバプテスマを施されることになるからだ」
Acts 1:6 それで彼らは,集まり合ったとき,彼に尋ねた,「主よ,あなたは今こそイスラエルに王国を復興されるのですか」。
Acts 1:7 彼は彼らに言った,「父がご自分の権威によって定められた時や時節は,あなた方の知るところではない。 Acts 1:8 だが,聖霊があなた方の上に臨むとき,あなた方は力を受けるだろう。あなた方はエルサレム,ユダヤとサマリアの全土,そして地の最も遠い所に至るまで,わたしの証人となるだろう」
Acts 1:9 これらのことを言ってから,彼らが見つめている間に引き上げられ,雲に迎えられて見えなくなった。 Acts 1:10 彼が上って行く間,彼らは天をじっと見つめていたが,見よ,白い衣を着た二人の人が彼らのそばに立って, Acts 1:11 こう言った。「ガリラヤの人たちよ,なぜ天を見つめて立っているのか。あなた方から迎え上げられたこのイエスは,天に上って行くのをあなた方が見たのと同じ仕方で再び来られるだろう」。
Acts 1:12 それから彼らは,オリブトと呼ばれる山からエルサレムに帰った。この山はエルサレムに近く,安息日の道のりのところにある。 Acts 1:13 彼らは入って来ると,泊まっていた階上の部屋に上がった。それは,ペトロ,ヨハネ,ヤコブ,アンデレ,フィリポ,トマス,バルトロマイ,マタイ,アルファイオスの子ヤコブ,熱心党のシモン,そしてヤコブの子ユダであった。 Acts 1:14 これらの者たちはみな,女たちやイエスの母マリア,およびイエスの兄弟たちと共に,心を合わせて,祈りと嘆願のうちにひたすらとどまっていた。
Acts 1:15 そのころ,ペトロが弟子たちの真ん中に立って(その群れの人々はおよそ百二十人ほどであった),こう言った。 Acts 1:16 「兄弟たち,イエスを捕らえた者たちを手引きしたユダについては,聖霊がダビデの口によって前もって語られたこの聖句が果たされることが必要でした。 Acts 1:17 彼はわたしたちと共に数えられ,この奉仕の務めを割り当てられていたからです。 Acts 1:18 ところで,この人は不正に対する報酬で畑を手に入れましたが,まっさかさまに落ちて,その腹は張り裂け,腸はみな飛び出てしまいました。 Acts 1:19 このことはエルサレムに住むすべての人に知れ渡り,その畑は彼らの言語で『アケルダマ』,つまり『血の畑』と呼ばれるようになりました。 Acts 1:20 詩編の書の中にこう書いてあるのです。
『彼の住まいは荒れ果てるように。そこに住む者はいなくなるように』。
また,
『彼の職はほかの者が引き受けるように』。 Acts 1:21 ですから,主イエスがわたしたちの間を行き来された全期間中, Acts 1:22 ヨハネのバプテスマから始めて,わたしたちから迎え上げられた日に至るまで,わたしたちに伴っていた人々のうち,だれか一人が,わたしたちと共に主の復活の証人にならなければなりません」。
Acts 1:23 彼らは,バルサバスと呼ばれ,またの名をユストゥスというヨセフと,マッティアスの二人を推薦した。 Acts 1:24 祈って言った,「すべての人の心をご存じである主よ,あなたがこの二人の中から選ばれた一人をお示しください。 Acts 1:25 ユダが自分の場所に行くために離れてしまった,この奉仕の務めと使徒職に加わるためです」。 Acts 1:26 彼らが二人のためにくじを引くと,くじはマッティアスに当たった。そこで,彼は十一人の使徒たちと共に数えられた。
Acts 2:0 Acts 2:1 さて,ペンテコステの日が来た時,みんなは心を合わせて一つの場所にいた。 Acts 2:2 突然,激しい風が吹きつけるような音が天から起こり,彼らが座っていた家全体を満たした。 Acts 2:3 火のような舌が現われて彼らに配られ,それぞれの上にとどまった。 Acts 2:4 みんなは聖霊に満たされ,話す能力を霊が与えるままに,さまざまな異なる言語で話し始めた。 Acts 2:5 さて,エルサレムには,天下のあらゆる国から来た敬けんなユダヤ人たちが住んでいた。 Acts 2:6 この音を聞いて群衆が集まって来たが,おのおの自分の言語で話されているのを聞いて,あっけに取られた。 Acts 2:7 みんなは驚き,不思議に思って互いに言った,「見よ,話しているこの人たちは皆ガリラヤ人ではないか。 Acts 2:8 わたしたちがおのおの自分の生まれ故郷の言語で聞くとは,いったいどういうことだろう。 Acts 2:9 わたしたちは,パルティア人,メディア人,エラム人,そして,メソポタミア,ユダヤ,カッパドキア,ポントス,アシア, Acts 2:10 フリュギア,パンフィリア,エジプト,キュレネに近いリビア地方からの者たち,また,ローマからの訪問者であって,ユダヤ人もいれば改宗者もおり, Acts 2:11 クレタ人もいればアラビア人もいるのに,彼らが自分たちの言語で神の強力な業について話すのを聞いているのだ!」 Acts 2:12 みんなは驚き,当惑して互いに言った,「これはどういうことだろう」。 Acts 2:13 ほかの者たちはあざけって言った,「彼らは新しいブドウ酒に満たされているのだ」。
Acts 2:14 しかし,ペトロが十一人と共に立ち上がり,声を張り上げて彼らに語りかけた。「ユダヤの人たち,またエルサレムに住むすべての人たち,このことを知ってください。そして,わたしの言葉に耳を傾けてください。 Acts 2:15 まだ昼間の第三時なのですから,この人たちは,あなた方が思っているように,酒に酔っているのではありません。 Acts 2:16 そうではなく,これは預言者ヨエルを通して語られていたことなのです。
Acts 2:17 『神は言われる。終わりの日々に,わたしはすべての肉なる者の上にわたしの霊を注ぎ出す。あなた方の息子たちや娘たちは預言するだろう。あなた方の若者たちは幻を見るだろう。あなた方の老人たちは夢を見るだろう。 Acts 2:18 実に,その日々には,わたしの召使いたちと女召使いたちにも, わたしの霊を注ぎ出す。すると,彼らは預言するだろう。 Acts 2:19 わたしは,上では天に不思議な業を,下では地にしるしを示す。すなわち,血と火と立ちのぼる煙とを。 Acts 2:20 主の偉大な輝かしい日が来る前に,太陽は闇に,月は血に変わるだろう。 Acts 2:21 主の名を呼び求める者はみな救われるだろう』。 Acts 2:22 「イスラエルの人たち,この言葉を聞きなさい! ナザレのイエス,すなわち,あなた方が知っているように,神が彼を通してあなた方の間で行なわれた数々の強力な業と不思議な業としるしとによって,神からあなた方に認証されたこの人を, Acts 2:23 神のお定めになった考えと予知とによって引き渡されたこの方を,あなた方は不法な者たちの手を借りて,はりつけにして殺しました。 Acts 2:24 神は彼を死の苦痛から解放して,生き返らされたのです。彼が死に支配されたままでいることはあり得なかったからです。 Acts 2:25 ダビデは彼についてこう言っているからです。
『わたしはいつも目の前に主を見た。わたしが揺り動かされないように,わたしの右にいてくださるからだ。 Acts 2:26 それゆえに,わたしの心は楽しみ,わたしの舌は喜んだ。さらに,わたしの肉体も希望のうちに住むだろう。 Acts 2:27 あなたはわたしの魂をハデスに捨て置かず,あなたの聖なる者が腐敗を見ることもお許しにならないからです。 Acts 2:28 命の道をわたしに知らせてくださいました。あなたのみ前でわたしを喜びに満たしてくださるでしょう』。 Acts 2:29 「兄弟たち,族長ダビデについては,彼が死んで葬られ,その墓は今日に至るまでわたしたちのところにあると,率直に言うことができます。 Acts 2:30 ですから,彼は預言者であって,神が自分に,その腰の実から肉によってキリストを起こして王座に着かせると誓ってくださったことを知っていて, Acts 2:31 キリストの復活について予見し,その魂がハデスに捨て置かれることはなく,その肉体が腐敗を見ることもないと語ったわけです。 Acts 2:32 このイエスを神は生き返らされました。わたしたちは皆そのことの証人です。 Acts 2:33 こうして,この方は神の右に上げられ,父から約束の聖霊を受けて,それを注ぎ出してくださったのです。今あなた方が見聞きしているのはそれなのです。 Acts 2:34 ダビデはもろもろの天に上りませんでしたが,自らこう言っています。
『主はわたしの主に言われた,「わたしの右に座っていなさい, Acts 2:35 わたしがあなたの敵たちをあなたの足台とするまで」』。 Acts 2:36 「ですから,イスラエルの全家ははっきりと知っておきなさい。あなた方がはりつけにしたこのイエスを,神は主ともキリストともされたのです」。
Acts 2:37 さて,これを聞くと,人々は心を刺され,ペトロとほかの使徒たちに言った,「兄弟たち,わたしたちはどうしたらよいのでしょうか」。
Acts 2:38 ペトロは彼らに言った,「悔い改めなさい。そして,あなた方はそれぞれ,罪の許しのためにイエス・キリストの名においてバプテスマを受けなさい。そうすれば,聖霊を贈り物として受けるでしょう。 Acts 2:39 この約束は,わたしたちの神なる主がそのもとに召される人々,つまり,あなた方と,あなた方の子ら,そして遠くにいるすべての人たちに対するものなのです」。 Acts 2:40 彼はほかにも多くの言葉で証言し,彼らに勧めて言った,「この曲がった世代から自分を救いなさい!」
Acts 2:41 それで,彼の言葉を喜んで受け入れた人たちはバプテスマを受けた。その日におよそ三千人の魂が加えられた。 Acts 2:42 彼らは,使徒たちの教えと,交わりと,パンを裂くことと,祈りとのうちにひたすらとどまっていた。 Acts 2:43 恐れがすべての魂に生じ,多くの不思議な業としるしが使徒たちによって行なわれていた。 Acts 2:44 信じた者たちは皆一緒にいて,すべての物を共有した。 Acts 2:45 自分たちの所有物や持ち物を売り,必要に応じてみんなに分配した。 Acts 2:46 日ごとに,心を合わせて神殿にひたすらとどまっており,家ではパンを裂き,喜びとまごころをもって食事を共にし, Acts 2:47 神を賛美し,民のすべてから好意を持たれていた。主は,救われてゆく人々を日ごとにその集会に加えていった。
Acts 3:0 Acts 3:1 ペトロとヨハネが,第九時の祈りの時間に神殿に上って行った。 Acts 3:2 母の胎を出た時から足の不自由な人が運ばれて来た。神殿に入る人たちから施しを求めるために,神殿の「美し」と呼ばれる門のところに毎日置いてもらっていたのである。 Acts 3:3 ペトロとヨハネが神殿に入ろうとするのを見て,施しをもらいたいと頼んだ。 Acts 3:4 ペトロはヨハネと共に彼をじっと見つめて,「わたしたちを見なさい」と言った。 Acts 3:5 彼は,彼らから何かをもらえることを期待して,それに従った。 Acts 3:6 しかしペトロは言った,「銀や金はわたしにはないが,わたしが持っているものをあなたにあげよう。ナザレのイエス・キリストの名において,立ち上がって歩きなさい!」 Acts 3:7 彼の右手をつかんで起き上がらせた。すぐに彼の足とくるぶしの骨とは強くされた。 Acts 3:8 彼は踊り上がって立ち,歩き始めた。歩いたり,跳ねたり,神を賛美したりしながら,彼らと共に神殿の中に入って行った。 Acts 3:9 民はみな,彼が歩き回って神を賛美しているのを見た。 Acts 3:10 これがいつも神殿の「美しの門」のところに座って施しを求めていた者だと気づいた。彼に起きたことを知って,驚きと仰天とに満たされた。 Acts 3:11 足が不自由であったが今ではいやされたその人がペトロとヨハネにすがりついていると,民はみな非常に驚いて,「ソロモンの回廊」と呼ばれる所にいた彼らのところに走り寄ってきた。
Acts 3:12 これを見て,ペトロは民に答えた。「イスラエルの人たち,なぜこの人のことで驚き怪しむのですか。どうして,わたしたちが自分の力や信心によってこの人を歩かせたかのように,わたしたちを見つめているのですか。 Acts 3:13 アブラハム,イサク,ヤコブの神,わたしたちの父祖たちの神は,ご自分の召使いイエスに栄光を与えられましたが,あなた方は彼を引き渡し,ピラトが釈放しようと決めていたのに,その前で彼を否認しました。 Acts 3:14 そして,あの聖なる正しい方を否認して,人殺しの者を許すよう求め, Acts 3:15 命の君主を殺しました。しかし,神は彼を死んだ者たちの中から起こされました。わたしたちはそのことの証人です。 Acts 3:16 その方の名が,その名に対する信仰によって,あなた方が見知っているこの人を強くしたのです。そうです,彼を通しての信仰が,あなた方すべての前でこの人に完全な健康を与えたのです。
Acts 3:17 「さて,兄弟たち,あなた方が無知のためにあのようなことをしたのであり,あなた方の支配者たちも同様だったことを,わたしは知っています。 Acts 3:18 しかし神は,そのすべての預言者たちの口によって予告されていた事柄,すなわち,キリストが苦しみを受けることを,このようにして果たされたのです。
Acts 3:19 「ですから,あなた方の罪を塗り消していただくために,悔い改めて立ち返りなさい。それは,主のみ前からさわやかにする時期が来て, Acts 3:20 あなた方のために前もって定められていたキリスト・イエスを遣わしていただけるようにするためです。 Acts 3:21 神が昔からその聖なる預言者たちの口によって語られたすべてのものの回復の時期まで,天はこの方を受け入れておかなければならないのです。 Acts 3:22 実際,モーセは父祖たちにこう言いました。『主なる神は,あなた方の兄弟たちの中から,わたしのような預言者をあなた方のために起こされるだろう。あなた方は,彼があなた方に語るすべての事柄について,彼に聞き従わなければならない。 Acts 3:23 この預言者に聞き従わない魂はすべて,民の中から完全に滅ぼされるだろう』。 Acts 3:24 実に,サムエルをはじめとするすべての預言者たちも,後に続いて語った者たちも,やはりこの日々のことを告げました。 Acts 3:25 あなた方はその預言者たちの子らであり,神がアブラハムに,『あなたの子孫にあって地上のすべての部族が祝福を受けるだろう』と言って,あなた方の父祖たちと結ばれた,あの契約の子らです。 Acts 3:26 神は,ご自分の召使いイエスを起こして,まずあなた方のもとに遣わされました。それは,彼があなた方をおのおのの悪から立ち返らせて,あなた方を祝福するためなのです」。
Acts 4:0 Acts 4:1 彼らが民に話している間に,祭司たちや神殿の指揮官やサドカイ人たちが近寄って来たが, Acts 4:2 彼らが民を教え,イエスに起こった死んだ者たちからの復活を宣明しているので,いらだっていた。 Acts 4:3 彼らに手をかけて,翌日まで拘留した。すでに夕方だったからである。 Acts 4:4 しかし,話を聞いた者の多くが信じ,男の数はおよそ五千人になった。
Acts 4:5 朝になると,人々の支配者たち,長老たち,律法学者たちがエルサレムに招集された。 Acts 4:6 大祭司アンナスが,カイアファス,ヨハネ,アレクサンデル,また大祭司の親族たち全員と共にそこにいた。 Acts 4:7 二人を自分たちの真ん中に立たせて尋ねた,「あなた方は何の権限によって,またどういう名によってこんなことをしたのか」。
Acts 4:8 その時,ペトロは聖霊に満たされて彼らに言った,「民の支配者またイスラエルの長老の皆さん, Acts 4:9 わたしたちが今日,足の不自由な人に対する善い行ないと,何によってこの人がいやされたのかということのために取り調べを受けているのであれば, Acts 4:10 あなた方全員もイスラエルの民すべても,このことを知ってください。あなた方がはりつけにし,神が死んだ者たちの中から起こされたナザレのイエス・キリストの名において,そうです,この方によってこの人は皆さんの前に立っているのです。 Acts 4:11 この方こそ,『あなた方建てる者たちによって取るに足りないものとみなされたが,隅の親石になった石』なのです。 Acts 4:12 ほかのだれにも救いはありません。天下には,人々の間に与えられ,わたしたちがそれによって救われるべき名は,ほかにないからです!」
Acts 4:13 さて,ペトロとヨハネの大胆な態度を見,しかもそれが教養のない無学な人であることを知って,彼らは驚き怪しんだ。彼らは,二人がかつてイエスと共にいたことに気づいた。 Acts 4:14 いやされた人が彼らと共に立っているのを見ると,何も言い返せなかった。 Acts 4:15 そこで,二人に議会の外に出るよう命じて,互いに協議して Acts 4:16 言った,「我々はあの者たちをどうすればよいだろうか。彼らによって目覚ましい奇跡が,エルサレムに住むすべての人にはっきりと見える仕方でなされたのは確かであって,我々はそれを否定できないからだ。 Acts 4:17 だが,これ以上このことが民の間に広まることのないよう,今後はこの名においてだれにも語ってはならないと,彼らを脅しつけておくことにしよう」。 Acts 4:18 二人を呼び入れて,イエスの名においては一切語ったり教えたりしないようにと命じた。
Acts 4:19 しかしペトロとヨハネは彼らに答えた,「神よりもあなた方に聞き従うほうが,神のみ前において正しいことなのかどうか,皆さん自身で判断してください。 Acts 4:20 わたしたちとしては,自分たちが見聞きした事柄について告げるのをやめるわけにはゆきません」。
Acts 4:21 彼らは,二人をさらに脅しつけた上で釈放した。二人を罰する方法が見つからなかったからであり,民のためでもあった。起きたことのために,みんなが神の栄光をたたえていたからである。 Acts 4:22 このいやしの奇跡が行なわれた人は,四十歳を過ぎていたのである。
Acts 4:23 二人は,釈放されると自分たちの仲間のところに来て,祭司長たちや長老たちが自分たちに言ったことをすべて報告した。 Acts 4:24 彼らはこれを聞くと,心を合わせて神に声を上げ,こう言った。「主よ,あなたは神,天と地と海とそれらの中にあるすべてのものを造られた方であり, Acts 4:25 ご自分の召使いダビデの口によってこう言われた方です。
『なぜ諸国民は憤激し,もろもろの民はむなしいことを企てるのか。 Acts 4:26 地の王たちは立ち構え,支配者たちは共に集まって,主に逆らい,そのキリストに逆らった』。 Acts 4:27 まさしく,この都で,ヘロデとポンティウス・ピラトは,あなたの聖なる召使いイエスに逆らって,異邦人たちやイスラエルの民と共に集まり, Acts 4:28 あなたのみ手とお考えとによって,起こることがあらかじめ定められていたことを行なったのです。 Acts 4:29 主よ,今,彼らの脅しをご覧になり,あなたの召使いたちがあらん限りの大胆さをもってあなたの言葉を語ることができるようにしてください。 Acts 4:30 み手を伸ばしていやしを行なわせ,あなたの聖なる召使いイエスの名によって,しるしや不思議な業を行なわせてください」。
Acts 4:31 祈り終えると,彼らの集まっていた場所が揺れ動いた。みんなは聖霊に満たされて,大胆さをもって神の言葉を語った。 Acts 4:32 信じた者たちの集団は,心と魂が一つであった。彼らのうちのだれも,自分の所有物を自分のものだと主張することはなく,すべての物を共有していた。 Acts 4:33 使徒たちは大きな力をもって,主イエスの復活について人々に証言した。大きな恵みが彼らすべての上にあった。 Acts 4:34 彼らの中には,欠乏している者は一人もいなかったのである。というのは,土地や家を持っている者はみな,それらを売り,売れたものの代金を持って来て, Acts 4:35 使徒たちの足もとに置き,それらは必要に応じてひとりひとりに分配されたからである。 Acts 4:36 ヨセは,使徒たちからバルナバという異名を与えられていた,キュプロスの生まれのレビ人であったが(この名は,訳せば,「励ましの子」という意味である), Acts 4:37 畑を持っていたのでそれを売り,その代金を持って来て使徒たちの足もとに置いた。
Acts 5:0 Acts 5:1 一方,アナニアという名の人が,その妻サフィラと共に資産を売り, Acts 5:2 代金の一部を隠しておき,それについては妻も気づいていたのだが,一部分だけを持って来て使徒たちの足もとに置いた。 Acts 5:3 しかしペトロは言った,「アナニアよ,どうしてサタンがあなたの心を満たして,聖霊を欺かせ,土地の代金の一部を隠しておかせたのか。 Acts 5:4 売らないでおけば,それはあなたのものだったのではないか。売ってしまっても,それはあなたの自由になったのではないか。どうしてこんなことを心の中で企てたのか。あなたは人ではなく,神を欺いたのだ」。
Acts 5:5 アンナスはこれらの言葉を聞くと,倒れて死んだ。これらのことを聞いたすべての者の上に大きな恐れが臨んだ。 Acts 5:6 若者たちが立って彼を包み,運び出して葬った。 Acts 5:7 三時間ほどたってから,彼の妻が,起きたことを知らずに入って来た。 Acts 5:8 ペトロは彼女に答えた,「わたしに告げなさい。あなた方は土地をこれだけの値段で売ったのか」。
彼女は言った,「そうです,それだけの値段です」。
Acts 5:9 そこでペトロは彼女に尋ねた,「どうしてあなた方は示し合わせて主の霊を試みたのか。見よ,あなたの夫を葬った人たちの足が戸口のところにあり,彼らはあなたを運び出すだろう」。
Acts 5:10 彼女はすぐに彼の足もとに倒れて死んだ。若者たちは入って来て,彼女が死んでいるのを見つけた。そこで彼女を運び出して,その夫のそばに葬った。 Acts 5:11 集会全体およびこれらのことを聞いたすべての者の上に大きな恐れが臨んだ。 Acts 5:12 使徒たちの手によって,多くのしるしや不思議な業が民の間で行なわれた。みんなは心を合わせてソロモンの回廊にいた。 Acts 5:13 ほかの者たちはだれも彼らに加わる勇気はなかったが,民は彼らを尊敬していた。 Acts 5:14 信じる者たち,すなわち大勢の男女が主のもとに加えられていった。 Acts 5:15 人々は病気の者たちを大通りに運び出し,寝台や寝床の上に横たえて,ペトロが通るときに,せめて彼の影がそのうちのだれかにかかるようにした。 Acts 5:16 エルサレムの周囲の町々からも群衆が集まって来て,病気の者たちや汚れた霊に苦しめられている者たちを連れて来たが,彼らは皆いやされた。
Acts 5:17 しかし,大祭司および共にいた者たち全員(すなわちサドカイ人の党派)は立ち上がり,ねたみに満たされて, Acts 5:18 使徒たちに手をかけ,彼らを公共の留置場に入れた。 Acts 5:19 ところが,主のみ使いが夜にろうやの戸を開け,彼らを連れ出して言った, Acts 5:20 「行きなさい。そして,神殿で立ち,この命の言葉をすべて民に語りなさい」。
Acts 5:21 彼らはこれを聞くと,夜明けごろ神殿に入って教え始めた。一方,大祭司および共にいた者たちがやって来て,最高法院,またイスラエルの子らの長老会議全体を招集し,彼らを連れて来させるためにろうやに人を遣わした。 Acts 5:22 しかし,出かけて行った役人たちは,ろうやの中に彼らがいなかったので,戻って来て報告した。 Acts 5:23 「わたしたちは,ろうやが閉まっていて,かぎがかけられており,それぞれの戸口の前には番人が立っているのを見ました。ところが,開けてみると,中にはだれもいなかったのです!」
Acts 5:24 そこで,大祭司,神殿の指揮官,および祭司長たちは,これらの言葉を聞いて,これはいったいどんなことになるのかと,彼らのことで途方に暮れていた。 Acts 5:25 ある人が来て,みんなに告げた,「ご覧なさい,あなた方がろうやに入れた人たちは神殿にいて,立って民を教えています」。 Acts 5:26 それで指揮官は役人たちと一緒に出て行って,彼らを連れて来たが,手荒なことはしなかった。民に石打ちにされるのを恐れていたからである。
Acts 5:27 彼らを連れて来て,最高法院の前に立たせた。大祭司が彼らを尋問して Acts 5:28 言った,「我々は,この名において教えないようにと,お前たちに厳しく命じておいたではないか。見よ,お前たちはエルサレムをお前たちの教えで満たしてしまい,しかも,あの男の血を我々に負わせようと企んでいる」。
Acts 5:29 それに対して,ペトロと使徒たちは答えた,「わたしたちは,人間より神に従わなければなりません。 Acts 5:30 わたしたちの父祖たちの神は,あなた方が木に掛けて殺したイエスを生き返らされました。 Acts 5:31 神はこの方を,イスラエルに悔い改めと罪の許しとを与えるために,君主また救い主としてご自分の右に高められました。 Acts 5:32 わたしたちは,これらの事に関してこの方の証人です。神がご自分に従う人たちに与えられた聖霊もまたそうです」。
Acts 5:33 さて,これを聞くと,人々は心を刺され,彼らを殺そうと決心した。 Acts 5:34 しかし,ガマリエルという名のファリサイ人で,民のすべてから尊敬されていた律法の教師が,最高法院の中で立ち上がり,使徒たちをしばらく外に出すよう命じた。 Acts 5:35 人々に言った,「イスラエルの皆さん,あの者たちについては,自分が何をしようとしているのかに注意しなさい。 Acts 5:36 というのは,以前にテウダスが立ち上がり,自分を何者かのように見せかけて,多数の男たち,およそ四千人が仲間に加わりましたが,彼は殺され,彼に従った者たちもみな散らされて,失敗に終わったからです。 Acts 5:37 その男の後で,ガリラヤのユダが登録のころに立ち上がり,かなりの民を離反させて自分の側に付けましたが,彼も滅び,彼に従っていた者たちもみなほうぼうに追い散らされたのです。 Acts 5:38 それで今,あなた方に告げますが,あの者たちから手を引き,彼らをそのままにしておきなさい。この企てや業が人から出たものであれば,それは覆されるからです。 Acts 5:39 しかし,もしも神から出たものであれば,あなた方はそれを覆すことはできないばかりか,神に対して闘うことになってしまうかも知れません!」
Acts 5:40 彼らは彼に同意した。使徒たちを呼び入れて,むち打ち,イエスの名において語らないよう命じてから,釈放した。 Acts 5:41 それで彼らは,イエスの名のために辱めを受けるに値する者とされたことを喜びつつ,最高法院の面前から立ち去った。
Acts 5:42 毎日,神殿や家で,教えたり,イエスすなわちキリストについて宣教したりし,決してやめることはなかった。
Acts 6:0 Acts 6:1 そのころ,弟子たちの数が殖えていた時,ヘレニストたちからヘブライ人たちに対して苦情が起こった。彼らのやもめたちが日々の援助においてないがしろにされていたからであった。 Acts 6:2 十二人は弟子たちの集団を呼び集めてこう言った。「わたしたちが神の言葉を放っておいて,食卓のために仕えるのはふさわしくありません。 Acts 6:3 ですから,兄弟たち,あなた方の中から,聖霊と知恵とに満ちた評判の良い人を七人選び出しなさい。わたしたちがこの仕事の上に任命するためです。 Acts 6:4 わたしたちのほうは,祈りとみ言葉の奉仕とにひたすらとどまることにします」。
Acts 6:5 これらの言葉は全員の賛成を得た。彼らは,信仰と聖霊とに満ちた人ステファノ,またフィリポ,プロコルス,ニカノル,ティモン,パルメナ,アンティオキアの改宗者ニコラウスを選び出して, Acts 6:6 使徒たちの前に立たせた。使徒たちは祈って彼らの上に手を置いた。 Acts 6:7 神の言葉は増し加わってゆき,弟子たちの数もエルサレムにおいて非常に殖えていった。大勢の祭司たちがこの信仰に従っていた。
Acts 6:8 ステファノは信仰と力に満ち,民の間ですばらしい不思議な業やしるしを行なっていた。 Acts 6:9 しかし,「リベルティン」と呼ばれる会堂に属する人々,およびキュレネ人,アレクサンドリア人,またキリキアやアシア出身の人々のうちのある者たちが立ち上がり,ステファノと議論した。 Acts 6:10 彼らは,彼に語らせている知恵と霊には対抗できなかった。 Acts 6:11 そこで,ひそかに人々をそそのかして,「わたしたちは,彼がモーセと神に対して冒とくの言葉を吐くのを聞いた」と言わせた。 Acts 6:12 民や長老たちや律法学者たちを扇動し,彼を襲って捕らえ,最高法院に引いて行き, Acts 6:13 偽りの証人たちを立てて言わせた,「この男は,この聖なる場所と律法に対して冒とくの言葉を吐いて,どうしてもやめません。 Acts 6:14 というのも,わたしたちは彼が,あのナザレのイエスはこの場所を壊し,モーセがわたしたちに伝えた慣習を変えるだろう,と言うのを聞いたのです」。 Acts 6:15 最高法院に座っていた者たちはみな彼を見つめたが,その顔はみ使いの顔のように見えた。
Acts 7:0 Acts 7:1 大祭司が言った,「これらのことはそのとおりなのか」。
Acts 7:2 彼は言った,「兄弟たち,また父たちよ,聞いてください。わたしたちの父祖アブラハムがハランに住む前,まだメソポタミアにいた時に,栄光の神が彼に現われて, Acts 7:3 こう言われました。『あなたの土地,またあなたの親族から出て,わたしがあなたに示す土地に行きなさい』。 Acts 7:4 それで彼はカルデア人の土地から出て,ハランに住みました。彼の父が死んだのち,神はそこから,あなた方が今住んでいるこの土地へ,彼を移されました。 Acts 7:5 ここでは何の相続財産も,そうです,足の踏み場となるほどのものさえもお与えになりませんでした。ここを所有物として彼に,また彼の後でその子孫に与えると約束されましたが,その時には彼にはまだ子供がいなかったのです。 Acts 7:6 神はこのように語られました。彼の子孫は見知らぬ土地で異国人として住み,四百年のあいだ奴隷にされ,虐待されるだろう,と。 Acts 7:7 『彼らを奴隷にする民族を,わたしは裁くだろう』と神は言われました。『そしてそののち,彼らは出て来て,この場所でわたしに仕えるだろう』。 Acts 7:8 神は彼に割礼の契約を与えられました。こうして,アブラハムはイサクの父となり,八日目に彼に割礼を施しました。イサクはヤコブの父となり,ヤコブは十二人の族長たちの父となりました。
Acts 7:9 「この族長たちは,ヨセフに対するねたみに動かされ,彼をエジプトに売りました。神は彼と共におられ, Acts 7:10 そのあらゆる苦難から彼を救い出し,エジプトの王ファラオの前で彼に好意と知恵を与えられました。ファラオは彼に,エジプトと王の家全体を治めさせたのです。 Acts 7:11 さて,エジプトとカナンの全土にききんが起こり,大きな苦難が臨みました。わたしたちの父祖たちは食物を見つけることができなくなりました。 Acts 7:12 しかし,ヤコブはエジプトに穀物があると聞いて,わたしたちの父祖たちを最初に遣わしました。 Acts 7:13 二度目の時,ヨセフのことがその兄弟たちに知らされ,ヨセフの一族のことがファラオに明らかにされました。 Acts 7:14 ヨセフは人を遣わして,その父ヤコブ,また親族全体,すなわち七十五人の魂を呼び寄せました。 Acts 7:15 ヤコブはエジプトに下って行き,やがて彼自身もわたしたちの父祖たちも死にました。 Acts 7:16 そして彼らはシェケムに持ち帰られ,アブラハムが銀を支払ってシェケムのハモルの子らから買っておいた墓に横たえられました。
Acts 7:17 「一方,神がアブラハムに誓われた約束の時が近づくにつれ,民はエジプトで殖え広がってゆき, Acts 7:18 ついにヨセフのことを知らない別の王が現われました。 Acts 7:19 この王はわたしたちの同族に対して悪巧みをし,わたしたちの父祖たちを虐げ,無理やりにその赤子たちを捨てさせ,生かしておけないようにしました。 Acts 7:20 そうした時にモーセが生まれましたが,非常に美しい子でした。彼は三か月の間,自分の父の家で養われました。 Acts 7:21 捨てられた時,ファラオの娘が彼を拾い上げ,彼を自分の子として育てました。 Acts 7:22 モーセはエジプト人のあらゆる知恵を教え込まれました。彼は言葉にも業にも強力な者でした。 Acts 7:23 しかし,四十歳になった時,自分の兄弟たち,すなわちイスラエルの子らのもとを訪ねようという気持ちがその心に起こりました。 Acts 7:24 彼らのうちの一人が不当に苦しめられているのを見て,その人をかばい,エジプト人を打ち殺して,虐げられていたその人のためにあだを討ちました。 Acts 7:25 自分の手によって神が兄弟たちを救出しようとしておられることを,彼らが理解してくれるものと思っていたのですが,彼らは理解しませんでした。
Acts 7:26 「次の日,彼はけんかをしている人たちのところに現われて,彼らを仲直りさせようとして言いました,『君たちは兄弟同士ではないか。なぜ互いに傷つけ合うのか』。 Acts 7:27 しかし,隣人を傷つけていた者が彼を押しのけて言いました,『だれがお前を支配者や裁判官として我々の上に立てたのか。 Acts 7:28 昨日あのエジプト人を殺したように,わたしを殺そうと思っているのか』。 Acts 7:29 この言葉を聞いてモーセは逃げ,ミディアンの地で居留者となり,二人の子の父となりました。
Acts 7:30 「四十年が満ちた時,シナイ山の荒野において,燃える茂みの炎の中で,主のみ使いが彼に現われました。 Acts 7:31 これを見て,モーセはその光景を不思議に思いました。よく見ようとして近づくと,主の声が彼に臨みました。 Acts 7:32 『わたしはあなたの父祖たちの神,すなわち,アブラハムの神,イサクの神,ヤコブの神だ』。モーセはおののいて,もはや見ようとはしませんでした。 Acts 7:33 主は彼に言われました,『あなたの足のサンダルを脱ぎなさい。あなたが立っている場所は聖なる地なのだ。 Acts 7:34 わたしは,エジプトにいるわたしの民の苦難を確かに目にし,彼らのうめきを聞いた。それで,彼らを救い出すために下って来たのだ。さあ,行きなさい。わたしはあなたをエジプトに遣わそう』。
Acts 7:35 「このモーセ,すなわち,『だれがお前を支配者や裁判官としたのか』と言って彼らが拒んだ人を,神は,茂みの中で彼に現われたみ使いの手によって,支配者また救出者として遣わされたのです。 Acts 7:36 この人が,エジプトにおいても,紅海においても,また荒野での四十年間においても,不思議な業としるしを行ないながら,彼らを導き出したのです。 Acts 7:37 これこそ,イスラエルの子らに,『わたしたちの神なる主は,わたしを起こされたように,あなた方の兄弟たちの中からあなた方のために一人の預言者を起こされるだろう』と言った,あのモーセなのです。 Acts 7:38 これこそ,荒野での集会において,シナイ山で彼に語りかけたみ使いやわたしたちの父祖たちと共にいて,生ける託宣を受け,それをわたしたちに伝えた人なのです。 Acts 7:39 わたしたちの父祖たちは彼に対して従順ではなく,かえって彼をはねのけ,心の中でエジプトに引き返し, Acts 7:40 アロンにこう言いました。『わたしたちの前を行く神々を造ってください。わたしたちをエジプトの地から導き出したあのモーセについては,彼がどうなったか分からないからです』。 Acts 7:41 彼らはそのころに子牛を造り,その偶像に犠牲をささげ,自分たちの手の業のうちで喜びました。 Acts 7:42 一方,神は背を向け,彼らが天の軍勢に仕えるままにされました。預言者たちの書にこう書かれているとおりです。
『イスラエルの家よ,あなた方は荒野にいた四十年の間に,ほふられた獣と犠牲とをわたしにささげたことがあったか。 Acts 7:43 あなた方が担ぎ上げたのは,モロクの幕屋,あなた方の神レファンの星,崇拝するために自分で造った像だった。わたしはあなた方をバビロンのかなたに運び去るだろう』。 Acts 7:44 「わたしたちの父祖たちには,荒野に証明の幕屋がありました。それは,モーセに語った方が,彼の見たままの形に従って造るようにと命じられたとおりのものでした。 Acts 7:45 わたしたちの父祖たちもこれを受け継いで,神がわたしたちの父祖たちの面前から追い払われた諸国民の所有地に入る時,ヨシュアと共にそれを持ち込み,ダビデの日々に及びました。 Acts 7:46 ダビデは神のみ前で好意を受け,ヤコブの神のために住まいを設けたいと願いました。 Acts 7:47 しかし,ソロモンが神のために家を建てました。 Acts 7:48 ですが,いと高き方は手で造った神殿の中には住まわれません。預言者が言っているとおりです。
Acts 7:49 『天はわたしの王座,地はわたしの足台。あなた方はわたしのためにどんな家を建てるのか』と,主は言われる。『あるいは,わたしの休む場所とはどこか。 Acts 7:50 これらのすべてのものは,わたしの手が造ったものではないか』。 Acts 7:51 「強情で,心にも耳にも割礼を受けていない人たちよ。あなた方はいつも聖霊に抵抗しています! あなた方の父祖たちが行なったとおりに,あなた方も行なっているのです。 Acts 7:52 預言者たちの中で,あなた方の父祖たちが迫害しなかった人がいるでしょうか。彼らは,義なる方の到来を予告した人たちを殺し,あなた方は今や,その方を裏切る者,また殺す者となりました。 Acts 7:53 あなた方は,み使いたちの定めた律法を受けたのに,それを守らなかったのです!」
Acts 7:54 さて,これを聞くと,人々は心を刺され,彼に向かって歯ぎしりをした。 Acts 7:55 しかし,彼は聖霊に満たされ,天をじっと見つめ,神の栄光と,神の右に立っているイエスを見て, Acts 7:56 こう言った,「ご覧なさい,わたしには,天が開けて,人の子が神の右に立っておられるのが見えます!」
Acts 7:57 すると,人々は大声で叫んで,耳をふさぎ,彼に向かっていっせいに突進した。 Acts 7:58 彼を町の外に投げ出して,石打ちにした。証人たちは,自分の外衣をサウロという名の若者の足もとに置いた。 Acts 7:59 彼らがステファノを石打ちにしている間,彼は叫んで言った,「主イエスよ,わたしの霊をお受けください!」 Acts 7:60 ひざまずいて,大声で叫んだ,「主よ,この罪を彼らに負わせないでください!」 こう言ってから,眠りについた。
Acts 8:0 Acts 8:1 サウロは彼の死刑に同意していた。その日,エルサレムにあった集会に対して激しい迫害が起こった。使徒たちのほかは皆,ユダヤとサマリアの地方全域に散らされていった。 Acts 8:2 敬けんな人々はステファノを葬り,彼のために大いに嘆いた。 Acts 8:3 一方,サウロは集会を荒らそうとして,すべての家に押し入り,男も女も引きずり出してはろうやに引き渡した。 Acts 8:4 それで,各地に散らされた人たちは,み言葉を宣教しながら巡回した。 Acts 8:5 フィリポはサマリアの町に下って行き,人々にキリストを宣明した。 Acts 8:6 群衆は,フィリポが行なったしるしを見聞きすると,彼の語る事柄に心を合わせて聞き従った。 Acts 8:7 汚れた霊が取り付いていた多くの者から,それらが出て来たからである。それらは大声で叫びながら出て来た。体がまひした人や足の不自由な人が大勢いやされた。 Acts 8:8 この町には大きな喜びが起こった。
Acts 8:9 ところで,そこにはある人がいたが,名をシモンといい,その町で以前から魔術を行なってサマリアの人々を驚かせ,自分を何か偉い者のように見せかけていた。 Acts 8:10 最も小さな者から最も大きな者に至るまで,みんなが彼に聞き従い,「この人は神の偉大な力だ」と言っていた。 Acts 8:11 人々が彼に聞き従ったのは,彼が長い間,その魔術によって人々を驚かせてきたためであった。 Acts 8:12 ところが,人々は,神の王国とイエス・キリストの名についての良いたよりを宣教するフィリポを信じた時,男も女もバプテスマを受けた。 Acts 8:13 シモン自身もバプテスマを受けた。彼はバプテスマを受けると,いつもフィリポに伴っていた。しるしや大きな奇跡が起きるのを見て,驚いていた。
Acts 8:14 さて,エルサレムにいた使徒たちは,サマリアが神の言葉を受け入れたと聞くと,ペトロとヨハネを彼らのもとに遣わした。 Acts 8:15 二人は下って行き,彼らが聖霊を受けるようにと彼らのために祈った。 Acts 8:16 それがまだ彼らの中のだれにも下っていなかったからである。彼らは,ただキリスト・イエスの名においてバプテスマを受けていただけであった。 Acts 8:17 それで,二人が彼らの上に手を置くと,彼らは聖霊を受けた。 Acts 8:18 その時,シモンは,使徒たちが手を置くことによって聖霊が与えられるのを見ると,二人にお金を差し出して Acts 8:19 言った,「わたしにもこの力を下さって,だれでもわたしが手を置く人が聖霊を受けられるようにしてください」。 Acts 8:20 しかしペトロは彼に言った,「あなたの銀はあなたと共に滅びてしまうがよい。あなたは神の贈り物をお金で得られると考えたからだ! Acts 8:21 あなたはこの事において受け分も分け前も持っていない。あなたの心が神の前にまっすぐでないからだ。 Acts 8:22 だから,この悪事を悔い改め,神に請い求めなさい。そうすれば,あなたの心の思いが許されることになるかも知れない。 Acts 8:23 あなたが苦い胆汁と不法の束縛との中にいるのが,わたしには見えるからだ」。
Acts 8:24 シモンは答えた,「皆さん,わたしのために主に祈ってください。あなた方の言われたことが何一つわたしに起こらないようにするためです」。
Acts 8:25 このようにして,二人は証言して主の言葉を語ってから,エルサレムに引き返し,サマリア人の多くの村に福音を宣教した。 Acts 8:26 一方,主のみ使いがフィリポに語りかけて,こう言った。「立って,南の方へ行き,エルサレムからガザに下る道に出なさい。そこは砂漠の道だ」。
Acts 8:27 彼は立って出かけて行った。すると見よ,一人のエチオピア人がいた。エチオピア人の女王カンダケのもとで大きな権力を持つ宦官で,彼女の全財宝を管理していたが,礼拝のためにエルサレムに来ていた。 Acts 8:28 その帰りに,自分の戦車の中に座り,預言者イザヤを朗読していた。
Acts 8:29 霊がフィリポに言った,「近寄って,あの戦車と一緒に行きなさい」。
Acts 8:30 フィリポは走り寄り,彼が預言者イザヤを朗読しているのを聞いて,こう言った。「読んでいることが分かりますか」。
Acts 8:31 彼は言った,「だれかが説明してくれなければ,どうして分かるでしょうか」。そして,上がって来て自分と一緒に座ってくれるよう,フィリポに頼んだ。 Acts 8:32 ところで,彼が朗読していた聖書の箇所は,次のとおりであった。
「彼は羊のようにほふり場に引かれて行った。毛を刈る者の前で黙っている子羊のように,その口を開かない。 Acts 8:33 辱めを受け,その裁きは取り去られた。だれがその子孫のことを語るだろうか。その命は地から取り去られるからだ」。 Acts 8:34 宦官はフィリポに答えた,「この預言者はだれについて語っているのでしょうか。自分自身についてですか。それともだれかほかの人についてですか」。
Acts 8:35 フィリポは口を開き,この聖句から始めて,彼にイエスのことを宣教した。 Acts 8:36 彼らが進んで行くと,水のある所に来た。そこで宦官は言った,「ご覧ください,ここに水があります。わたしがバプテスマを受けるのに何の妨げがあるでしょうか」。
Acts 8:38 彼は戦車に止まるよう命じた。そして,フィリポと宦官は二人とも水の中に下りて行き,フィリポは彼にバプテスマを施した。
Acts 8:39 二人が水から上がると,主の霊がフィリポを連れ去ったので,宦官はもはや彼を見なかったが,喜びながら自分の道を進んで行った。 Acts 8:40 一方,フィリポはアゾトスに現われた。すべての町々を通り抜けながら,福音を宣教し,ついにカエサレアに着いた。
Acts 9:0 Acts 9:1 さてサウロは,主の弟子たちに対する脅迫と虐殺の息をなおもはずませながら,大祭司のもとに行って, Acts 9:2 ダマスカスの諸会堂あての手紙を求めた。この道に属する者を見つけたなら,男も女も縛り上げて,エルサレムに引いて来るためであった。 Acts 9:3 旅をしてダマスカスに近づいた時,突然,天からの光が彼の周りを照らした。 Acts 9:4 彼は地に倒れ,「サウロ,サウロ,なぜわたしを迫害するのか」 と自分に言う声を聞いた。
Acts 9:5 彼は言った,「主よ,あなたはどなたですか」。
主は言った,「わたしはイエス,あなたが迫害している者だ。 Acts 9:6 だが,立ち上がって,町に入りなさい。そうすれば,あなたのなすべきことが告げられるだろう」
Acts 9:7 彼と一緒に旅をしていた人々は,何も言えずに立っていた。響きは聞こえたが,だれも見えなかったからである。 Acts 9:8 サウロは地面から起き上がったが,目を開いても何も見えなかった。人々は彼の手を引いてダマスカスに連れて行った。 Acts 9:9 彼は三日のあいだ目が見えず,食べることも飲むこともしなかった。
Acts 9:10 さて,ダマスカスにはアナニアという名の弟子がいた。主は幻の中で彼に言った,「アナニアよ!」
彼は言った,「主よ,わたしはここにいます」。
Acts 9:11 主は彼に言った,「立って,『まっすぐ』と呼ばれる通りへ行き,ユダの家で,サウルという名のタルソスの人を探しなさい。見よ,彼は祈っており, Acts 9:12 幻の中で,アナニアという名の人が入って来て,視力を取り戻させるため,自分の上に手を置くのを見たからだ」
Acts 9:13 しかしアナニアは答えた,「主よ,わたしはこの男について,彼がエルサレムであなたの聖徒たちにどれほど悪いことをしたか,大勢の人から聞いています。 Acts 9:14 しかもここでは,あなたのみ名を呼び求める者をすべて縛り上げる権限を,祭司長たちから得ているのです」。
Acts 9:15 しかし主は彼に言った,「行きなさい。彼は,諸国民や王たち,またイスラエルの子らの前でわたしの名を担う,わたしが選んだ器なのだ。 Acts 9:16 実に,彼がわたしの名のためにどれほど多くの苦しみを受けなければならないかを,わたしは彼に示そう」
Acts 9:17 アナニアは出かけて行って,その家に入った。彼の上に手を置いてこう言った。「兄弟サウロよ,道中であなたに現われた主が,わたしを遣わされました。あなたが視力を取り戻し,聖霊で満たされるためです」。 Acts 9:18 すぐに,彼の両目からうろこのような物が落ち,彼は視力を取り戻した。彼は起き上がってバプテスマを受けた。 Acts 9:19 食事をとって元気づいた。サウロは数日の間,ダマスカスにいる弟子たちと共に過ごした。 Acts 9:20 すぐに諸会堂で,キリストのことを,これこそ神の子であると宣明した。 Acts 9:21 これを聞いた人々は皆びっくりして言った,「これは,エルサレムでこの名を呼び求める者たちを荒らしまわった者ではないか。そして,ここに来たのも,彼らを縛り上げて,祭司長たちの前に引いて行くためではなかったのか!」
Acts 9:22 しかし,サウロはますます力を増してゆき,イエスがキリストであることを論証して,ダマスカスに住んでいるユダヤ人たちをうろたえさせた。 Acts 9:23 かなりの日数が満ちた時,ユダヤ人たちは彼を殺そうと陰謀を企てたが, Acts 9:24 彼らの陰謀はサウロの知るところとなった。彼らは彼を殺そうとして,昼も夜も門という門を見張っていた。 Acts 9:25 そこで,彼の弟子たちは夜の間に彼を連れ出し,かごに乗せて城壁づたいにつり降ろした。 Acts 9:26 サウロは,エルサレムに来ると,弟子たちに加わろうと努めたが,みんなは彼が弟子であると信じずに,恐れていた。 Acts 9:27 しかし,バルナバは彼を受け入れて,使徒たちのもとに連れて行き,彼が道中で主を見た様子や,主が彼に語りかけたこと,また,ダマスカスでイエスの名において大胆に宣教した様子を話して聞かせた。 Acts 9:28 彼は彼らと共にエルサレムに入り, Acts 9:29 主の名において大胆に宣教していた。彼はヘレニストたちと語り合い,議論をしたが,彼らは彼を殺したがっていた。 Acts 9:30 兄弟たちはそれを知って,彼をカエサレアに連れ下り,タルソスに送り出した。 Acts 9:31 こうして集まりは,ユダヤ,ガリラヤ,サマリアの全地にわたって平和を保ち,築き上げられていった。彼らは,主への恐れと聖霊の慰めとのうちに歩みつつ,殖えていった。
Acts 9:32 ペトロは,あらゆる地方を巡っていた際,リュッダに住んでいる聖徒たちのところにも下って行った。 Acts 9:33 その場所でアイネアという名の人を見つけたが,体がまひしていたために八年間も寝たきりであった。 Acts 9:34 ペトロは彼に言った,「アイネアよ,イエス・キリストがあなたをいやされます。起きて,自分の寝床を整えなさい!」 すぐに彼は起き上がった。 Acts 9:35 リュッダとシャロンに住むすべての人たちは彼を見て,主のもとに立ち返った。
Acts 9:36 さて,ヨッパにはタビタという名の弟子がいた。この名は,訳せば,ドルカスという意味である。この婦人は,多くの善い業やあわれみの行為を施していた。 Acts 9:37 そのころ,彼女は病気になって死んだ。人々は彼女を洗い,階上の部屋に横たえた。 Acts 9:38 リュッダはヨッパに近かったので,弟子たちは,ペトロがそこにいると聞いて,二人の者を彼のもとに遣わし,急いで自分たちのところに来てくれるよう嘆願した。 Acts 9:39 ペトロは立って,彼らと共に出かけた。そこに着くと,人々は彼を階上の部屋に連れて行った。やもめたちはみな彼のそばにやって来て,泣きながら,自分たちと共にいた間にドルカスが作った上着や外衣を見せた。 Acts 9:40 ペトロはみんなを外に出し,ひざまずいて祈った。遺体のほうに向き直って言った,「タビタ,起きなさい!」 彼女は目を開き,ペトロを見ると起き直った。 Acts 9:41 彼は手を貸して彼女を起き上がらせた。聖徒たちとやもめたちを呼んで,彼女が生きているのを見せた。 Acts 9:42 すると,このことはヨッパじゅうに知れ渡り,多くの者が主を信じた。 Acts 9:43 彼はかなりの日数をヨッパで過ごし,シモンという革なめし職人のところにいた。
Acts 10:0 Acts 10:1 さて,カエサレアに,名をコルネリウスという人がいた。「イタリア連隊」と呼ばれる部隊の百人隊長であったが, Acts 10:2 敬けんな人であり,家族全員で神を恐れており,民に気前よく施しをし,いつも神に祈っていた。 Acts 10:3 ある日の第九時ごろ,神のみ使いが彼のもとに来て,「コルネリウス!」と言うのを,幻の中ではっきりと見た。
Acts 10:4 み使いをじっと見つめて,おびえながら言った,「主よ,なにごとでしょうか」。
み使いは彼に言った,「あなたの数々の祈りや施しは神のみ前に上って,記憶されている。 Acts 10:5 さあ,ヨッパに人々を遣わして,またの名をペトロというシモンを招きなさい。 Acts 10:6 彼は,海辺に家を持つ革なめし職人のシモンのところに宿泊している」。
Acts 10:7 こう語ったみ使いが立ち去ると,コルネリウスは自分の家の召使い二人と,絶えず自分に仕えている者の中の敬けんな兵士ひとりを呼び, Acts 10:8 すべてのことを説明して,彼らをヨッパに遣わした。 Acts 10:9 さて,翌日,彼らが旅を続けてその町に近づいたころ,ペトロは祈るために正午ごろ屋上に上った。 Acts 10:10 空腹になり,何か食べたいと思った。ところが,人々が準備している間に,我を忘れた状態に陥った。 Acts 10:11 天が開け,大きな布のような入れ物が四隅で地の上につり降ろされて,自分のところに下って来るのを目にした。 Acts 10:12 その中には,あらゆる種類の地上の四つ足の獣,野獣,は虫類,空の鳥などがいた。 Acts 10:13 彼に向かって声がした,「立ちなさい,ペトロよ,ほふって食べなさい!」
Acts 10:14 しかしペトロは言った,「主よ,とんでもありません。下品なものや汚れたものなど,これまで一度も食べたことがないのです」。
Acts 10:15 彼に向かって二度目に声がした,「神が清くしたものを,汚れたものと呼んではならない」 。 Acts 10:16 こうしたことが三度あってから,すぐにその器は天に迎え上げられた。 Acts 10:17 さて,自分が見た幻はいったい何を意味するのだろうかと,ペトロがひとりで途方に暮れていると,見よ,コルネリウスから遣わされた者たちが,シモンの家を探し当てて,門の前に立ち, Acts 10:18 呼びかけて,またの名をペトロというシモンがここに宿泊しているかどうかを尋ねた。 Acts 10:19 ペトロが幻について熟考していると,霊が彼に言った,「見よ,三人の人々があなたを探しに来ている。 Acts 10:20 さあ,立って,下に降り,何も疑わずに彼らと共に行きなさい。わたしが彼らを遣わしたからだ」。
Acts 10:21 ペトロはその人々のところに降りて行って,こう言った。「さあ,わたしがあなた方の探している者です。どんなわけでやって来たのですか」。
Acts 10:22 彼らは言った,「百人隊長コルネリウスは,正しい人で神を恐れ,ユダヤ民族のすべてに良い評判のある人ですが,自分の家にあなたを招き,言われることに耳を傾けるようにと,聖なるみ使いから指示を受けたのです」。 Acts 10:23 そこで彼は彼らを呼び入れて,泊まらせた。次の日,ペトロは立って,彼らと共に出かけて行き,ヨッパからの兄弟たち数人が彼に伴った。 Acts 10:24 その翌日,彼らはカエサレアに入った。コルネリウスは,親族や親しい友人たちを呼び寄せて,彼らを待っていた。 Acts 10:25 ペトロが入って来ると,コルネリウスは彼を出迎え,その足もとにひれ伏して,彼を拝んだ。 Acts 10:26 するとペトロは彼を引き起こして言った,「立ちなさい! わたしも人間です」。 Acts 10:27 彼と話しながら入って来て,大勢の人が集まっているのを見た。 Acts 10:28 彼らに言った,「ご存じのとおり,ユダヤ人が別の民族の人と一緒になったり,そのもとを訪問したりすることは許されていません。しかし,神はわたしに,どんな人をも神聖でない者とか汚れている者などと呼んではならないことを示されました。 Acts 10:29 ですから,わたしは呼ばれたとき,何の不平も言わずにやって来たのです。そこで尋ねますが,あなた方はどんなわけでわたしを呼んだのですか」。
Acts 10:30 コルネリウスが言った,「四日前,わたしはこの時刻まで断食をして,第九時に家の中で祈っていました。すると,ご覧ください,輝く衣を着た人がわたしの前に立って, Acts 10:31 こう言いました。『コルネリウス,あなたの祈りは聞き入れられ,あなたの施しは神のみ前で覚えられた。 Acts 10:32 だから,ヨッパに人を遣わして,またの名をペトロというシモンを呼び寄せなさい。彼は,海辺にある革なめし職人シモンの家に宿泊している。彼はやって来ると,あなたに語るだろう』。 Acts 10:33 そのようなわけで,すぐにあなたのもとに人を遣わしたのですが,よくおいでくださいました。それで今,わたしたちは皆,神があなたにお命じになったすべてのことを聞こうとして,神のみ前に出ているのです」。
Acts 10:34 ペトロは口を開いて言った,「わたしには本当によく分かります。神がえこひいきをされることはなく, Acts 10:35 どの民族でも神を恐れて義を行なう人は,神に受け入れられるのだということが。 Acts 10:36 神がイエス・キリストによって―この方こそすべての者の主です―平和の良いたよりを宣教して,イスラエルの子らにお送りになったみ言葉を, Acts 10:37 あなた方は知っています。すなわち,ヨハネが宣教したバプテスマののちに,ガリラヤから始まってユダヤ全土に宣明された出来事です。 Acts 10:38 それは,ナザレのイエスのことで,神がどのようにして聖霊と力をもって彼に油を注がれたかということです。彼は出かけて行って善いことを行ない,悪魔に虐げられていた人をすべていやされたのです。神が共におられたからです。 Acts 10:39 わたしたちは,彼がユダヤ人の地域とエルサレムとで行なわれたすべての事柄の証人です。人々はまた,彼を木に掛けて殺しました。 Acts 10:40 神は彼を三日目に生き返らせ,現わしてくださいました。 Acts 10:41 ただし,すべての民に対してではなく,前もって神に選ばれていた証人たち,つまり,彼が死んだ者たちの中から起こされたのちに,一緒に飲み食いしたわたしたちに対してです。 Acts 10:42 彼はわたしたちに,民に宣教し,ご自分が生きている者たちと死んだ者たちとの裁き主として神から任命された者だということを証言するようにとお命じになりました。 Acts 10:43 すべての預言者たちも彼について,だれでも彼を信じる者はその名によって罪の許しを受けることになると証言しています」。
Acts 10:44 ペトロがまだこれらの言葉を語っている間に,み言葉を聞いたすべての人たちの上に聖霊が下った。 Acts 10:45 割礼を受けている信者で,ペトロと一緒に来ていた人たちは,聖霊の贈り物が異邦人たちの上にも注ぎ出されているのでびっくりした。 Acts 10:46 というのは,彼らが異なる言語で語り,神をたたえているのを聞いたからである。
それでペトロは答えた。 Acts 10:47 「この人たちはわたしたちと同じように聖霊を受けたのですから,水を禁じてバプテスマを受けさせないことなど,いったいだれにできるでしょうか」。 Acts 10:48 彼らに命じて,イエス・キリストの名においてバプテスマを受けさせた。それから彼らは彼に頼んで,数日のあいだ滞在してもらった。
Acts 11:0 Acts 11:1 さて,使徒たちやユダヤにいる兄弟たちは,異邦人たちも神の言葉を受け入れたことを耳にした。 Acts 11:2 ペトロがエルサレムに上って来たとき,割礼のある者たちは彼に議論を挑んで Acts 11:3 言った,「あなたは,割礼を受けていない人々のところに入って,彼らと一緒に食事をした!」
Acts 11:4 しかしペトロは口を開き,次のように言って順序正しく説明した。 Acts 11:5 「わたしがヨッパの町で祈っていると,我を忘れた状態になって,幻を見ました。大きな布のような入れ物が,四隅で天からつり降ろされているようでした。ついに,わたしのところにまで下りて来ました。 Acts 11:6 目を凝らしてその中をよく見ると,地上の四つ足の獣,野獣,はうもの,空の鳥などがいました。 Acts 11:7 さらに声がして,わたしに言いました,『立ちなさい,ペトロよ,ほふって食べなさい!』 Acts 11:8 しかしわたしは言いました,『主よ,とんでもありません。神聖でないものや汚れたものなど,これまで一度も口に入れたことがないのです』。 Acts 11:9 すると,天から二度目に声が出て,わたしに答えました,『神が清くしたものを,汚れたものと呼んではならない』 。 Acts 11:10 こうしたことが三度あってから,すべてのものは再び天に引き上げられました。 Acts 11:11 ちょうどその時,カエサレアからわたしのところへ遣わされて来た三人の人々が,わたしのいた家の前に立ちました。 Acts 11:12 霊がわたしに,何も疑わずに彼らと共に行くように告げました。ここにいる六人の兄弟たちもわたしに付いて来て,わたしたちはその人の家に入りました。 Acts 11:13 その人はわたしたちに,み使いが家の中に立っているのを見たこと,また,そのみ使いがこう述べたことを話してくれました。『ヨッパに人を遣わして,またの名をペトロというシモンを招きなさい。 Acts 11:14 彼は,あなたとあなたの家族全員を救う言葉をあなたに語るだろう』。 Acts 11:15 わたしが話し始めると,聖霊が彼らの上に,最初にわたしたちの上に下ったのと同じようにして下ったのです。 Acts 11:16 わたしは,主が言われたこの言葉を思い出しました。『ヨハネは確かに水でバプテスマを施したが,あなた方は聖霊によってバプテスマを施されることになる』 。 Acts 11:17 それで,わたしたちが主イエス・キリストを信じた時に下さったのと同じ贈り物を,神が彼らにお与えになったのであれば,どうしてわたしのような者が神に逆らうことができたでしょうか」。
Acts 11:18 これらのことを聞くと,彼らは静かになり,神の栄光をたたえて言った,「それでは神は,命に至る悔い改めを異邦人たちにもお与えになったのだ!」
Acts 11:19 それゆえ,ステファノのことで起こった圧迫のために散らされた人々は,フェニキア,キュプロス,アンティオキアにまで旅をしたが,ユダヤ人以外にはだれにもみ言葉を語らなかった。 Acts 11:20 しかし,その中にキュプロスやキュレネの者たちがいて,アンティオキアへ行き,ギリシャ人たちに語って,主イエスのことを宣教した。 Acts 11:21 主のみ手が彼らと共にあったので,信じて主に立ち返った者たちは非常に多数であった。 Acts 11:22 彼らに関する知らせがエルサレムにあった集会の耳に入った。集会はバルナバをアンティオキアにまで遣わした。 Acts 11:23 そこに到着して神の恵みを見ると,彼は喜んだ。心の決意をもって主のそばにとどまるようにと,みんなを励ました。 Acts 11:24 彼は善い人で,聖霊と信仰とに満ちていたからである。こうして,大勢の人々が主のもとに加えられた。
Acts 11:25 バルナバはサウロを探しにタルソスに出かけて行った。 Acts 11:26 彼を見つけて,アンティオキアに連れて来た。二人はまる一年のあいだ集会と共に集まり,多くの人々を教えた。このアンティオキアで,弟子たちは初めてクリスチャンと呼ばれるようになった。
Acts 11:27 そのころ,預言者たちがエルサレムからアンティオキアに下って来た。 Acts 11:28 彼らの中のアガボスという者が立って,大ききんが全世界に臨もうとしていることを霊によって示したが,これは実際にクラウディウスの時代に起こった。 Acts 11:29 そこで弟子たちは,それぞれの豊かさに応じて,ユダヤに住んでいる兄弟たちに救援物資を送ることに決めた。 Acts 11:30 それを実行し,バルナバとサウロの手によって長老たちに送り届けた。
Acts 12:0 Acts 12:1 ちょうどそのころ,ヘロデ王は集会のある者たちを虐げることに手を伸ばし, Acts 12:2 ヨハネの兄弟ヤコブを剣で殺した。 Acts 12:3 それがユダヤ人たちの意にかなったのを見て,ペトロをも捕らえようとした。それは種なしパンの時期であった。 Acts 12:4 彼を逮捕して,ろうやに入れ,四人一組の兵士四組に引き渡して監視させた。過ぎ越しの後で民の前に引き出すつもりであったのである。 Acts 12:5 それで,ペトロはろうやに入れられており,彼のために集会によって休みなく神に祈りがささげられていた。 Acts 12:6 ヘロデが彼を引き出そうとしていた前夜,ペトロは二本の鎖につながれて, 二人の兵士の間で眠っていた。番兵たちは戸口の前でろうやを見張っていた。
Acts 12:7 すると見よ,主のみ使いが彼のそばに立ち,光が独房内を照らした。み使いはペトロのわき腹をたたいて起こし,「急いで立ち上がりなさい!」と言った。鎖が彼の両手から落ちた。 Acts 12:8 み使いは彼に言った,「服を着て,サンダルをはきなさい」。彼はそのとおりにした。み使いは彼に言った,「外衣を着て,わたしに付いて来なさい」。 Acts 12:9 そこで彼はその後に付いて行った。彼はみ使いによってなされていることが現実のこととは分からず,幻を見ているものと思っていた。 Acts 12:10 第一と第二の衛兵所を過ぎ,町に通じる鉄の門のところに来ると,彼らのために門がひとりでに開いた。外に出て,一つの通りを進むと,すぐにみ使いは彼から離れた。
Acts 12:11 ペトロは我に返って言った,「今,確かに分かる。主はみ使いを遣わして,ヘロデの手から,またユダヤの民のあらゆるもくろみから,わたしを救い出してくださったのだ」。 Acts 12:12 そう判断すると,またの名をマルコというヨハネの母マリアの家に行った。そこでは,大勢の人が集まって,祈っていた。 Acts 12:13 門の戸をたたくと,ロダという名の女中が応対に出た。 Acts 12:14 ペトロの声だと分かると,彼女は喜びのあまり,門を開けもせずに中に駆け込み,ペトロが門の前に立っていると報告した。
Acts 12:15 人々は彼女に言った,「あなたは気が狂っている!」 しかし彼女は本当だと言い張った。彼らは言った,「それは彼のみ使いだ」。 Acts 12:16 しかしペトロはたたき続けていた。彼らが開けてみると,ペトロがいたので,びっくりした。 Acts 12:17 しかし彼は,彼らを手で制して静かにさせ,主が彼をろうやから連れ出してくれた次第を話して聞かせた。彼は言った,「これらの事をヤコブと兄弟たちに知らせなさい」。それから立ち去って,ほかの所に出て行った。
Acts 12:18 さて,夜が明けると,いったいペトロはどうなったのかと,兵士たちの間で少なからぬ騒ぎが起こった。 Acts 12:19 ヘロデは,彼を探しても見つからないので,番兵たちを取り調べ,彼らを死に渡すように命じた。ユダヤからカエサレアに下って行き,そこに滞在した。 Acts 12:20 さて,ヘロデはテュロスとシドンの民にひどく腹を立てていた。彼らはそろって彼のところに来て,王の侍従官ブラスタスに取り入って,和解を求めた。彼らの地方は王の国から食糧を得ていたからである。 Acts 12:21 定められた日に,ヘロデは王衣をまとって王座に着き,彼らに向かって演説をした。 Acts 12:22 民は叫んで言った,「神の声だ,人間の声ではない!」 Acts 12:23 すぐに主のみ使いが彼を打った。神に栄光を帰さなかったからである。彼はうじに食われて死んだ。
Acts 12:24 一方,神の言葉は増し広がっていった。 Acts 12:25 バルナバとサウロは,奉仕の務めを果たしたのち,またの名をマルコというヨハネを連れて,エルサレムに帰って来た。
Acts 13:0 Acts 13:1 さて,アンティオキアにある集会には,幾人かの預言者や教師がいた。すなわち,バルナバ,ニゲルと呼ばれるシメオン,キュレネのルキウス,領主ヘロデの乳兄弟マナエン,そしてサウロである。 Acts 13:2 彼らが主に仕えて断食をしていると,聖霊が言った,「バルナバとサウロを,わたしのため,わたしが彼らを召した目的である業のために取り分けなさい」。
Acts 13:3 そこで,彼らは断食して祈り,手を二人の上に置いてから,出発させた。 Acts 13:4 こうして,二人は聖霊によって送り出され,セレウキアに下って行った。そこからキュプロスに向けて出帆した。 Acts 13:5 サラミスに着くと,ユダヤ人の諸会堂で神の言葉を宣明した。彼らは助手としてヨハネも連れていた。 Acts 13:6 島じゅうを巡回してパフォスまで行くと,ある魔術師を見つけた。ユダヤ人の偽預言者で,バル・イエスという名で, Acts 13:7 セルギウス・パウルスという物わかりの良い地方総督のもとにいた。地方総督はバルナバとサウロを呼んで,神の言葉を聞こうとした。 Acts 13:8 ところが,そのエリマという魔術師(彼の名はこのように訳される)は彼らに抵抗し,地方総督をこの信仰から遠ざけようとした。 Acts 13:9 しかし,パウロとも呼ばれていたサウロは,聖霊に満たされ,彼をじっと見つめて Acts 13:10 言った,「ああ,あらゆる欺きと悪賢さに満ちた者,悪魔の子,あらゆる正義の敵よ。あなたは主の正しい道をゆがめることをやめないのか。 Acts 13:11 それなら,見よ,主のみ手があなたの上にある。あなたは目が見えなくなり,時が来るまで日の光を見ないだろう!」
すぐに,かすみと闇とがその上に臨み,彼は手を引いてくれる人を探しまわった。 Acts 13:12 そこで,地方総督は起きた事柄を見て,主の教えに驚き,信者になった。
Acts 13:13 さて,パウロとその道連れはパフォスから出航し,パンフィリアのペルガに来た。ヨハネは彼らから離れてエルサレムに帰ってしまった。 Acts 13:14 しかし彼らはペルガから進んで行き,ピシディアのアンティオキアに来た。安息日に会堂に入って席に着いた。 Acts 13:15 律法と預言者たちの朗読の後で,会堂長たちが彼らのもとに人を遣わして言った,「兄弟たち,民のために何か勧告の言葉がありましたら,話してください」。
Acts 13:16 パウロは立ち上がり,手で合図をして言った,「イスラエルの人たち,ならびに神を恐れる皆さん,聞いてください。 Acts 13:17 この民の神は,わたしたちの父祖たちを選び出し,エジプトの地で異国人として滞在していた間にこの民を高め,高く上げたみ腕をもって彼らをそこから導き出されました。 Acts 13:18 およそ四十年の期間にわたって荒野で彼らを養われました。 Acts 13:19 カナンの地で七つの民族を滅ぼし,その地を相続財産として彼らに与えられました。これが,およそ四百五十年間にわたりました。 Acts 13:20 こうした事ののち,預言者サムエルの時代まで彼らに裁き人を与えられました。 Acts 13:21 のちに彼らが王を求めたので,神は四十年のあいだ,ベニヤミン族の人,キシュの子サウルを彼らに与えられました。 Acts 13:22 彼を退けてから,ダビデを立てて彼らの王とし,彼についてこうも証言されました,『わたしはエッサイの子ダビデ,わたしの心にかなう者を見いだした。彼はわたしの望むことをみな行なうだろう』。 Acts 13:23 この人の子孫から,神は約束に従って,イスラエルに救いをもたらされたのです。 Acts 13:24 その方が来られる前に,まずヨハネがイスラエルに悔い改めのバプテスマを宣教しました。 Acts 13:25 自分の走路を終えようとするとき,ヨハネは言いました,『あなた方はわたしが何者だと思っているのか。わたしはその者ではない。だが,見よ,その方はわたしの後に来られるが,わたしはその方の足のサンダルのひもをほどくにも値しない』。 Acts 13:26 兄弟たち,アブラハムの血統の子らである皆さん,そしてあなた方の中で神を恐れる方たち,この救いの言葉はあなた方に送られたのです。 Acts 13:27 エルサレムに住む人たちやその支配者たちは,彼のことを知らず,また安息日ごとに朗読される預言者たちの言葉も知らずに,彼を罪に定めることによってそれらの言葉を実現させました。 Acts 13:28 死に値する理由を何も見いだせなかったのに,ピラトに願って彼を殺させたのです。 Acts 13:29 彼について書かれている事柄をすべて実現させてから,彼を木から取り下ろして墓の中に横たえました。 Acts 13:30 しかし,神は彼を死んだ者たちの中から起こされました。 Acts 13:31 彼は幾日にもわたって,彼と共にガリラヤからエルサレムに上って来た人たちに現われました。彼らは民に対して彼の証人になっています。 Acts 13:32 わたしたちは,父祖たちになされた約束についての良いたよりをあなた方に伝えています。 Acts 13:33 すなわち,神はイエスを生き返らせて,わたしたち子孫に対してその約束を果たしてくださったのです。詩編の第二編にも,こう書かれているとおりです。
『あなたはわたしの子。わたしは今日あなたの父となった』。 Acts 13:34 「彼を死んだ者たちの中から起こされ,もう二度と腐敗することのない者とされたことについては,こう言っておられます。『わたしは,ダビデに約束した確かな祝福をあなた方に与えるだろう』。 Acts 13:35 ですから,詩編のほかの箇所でもこう言われています。『あなたは,あなたの聖なる者が腐敗を見ることをお許しにならない』。 Acts 13:36 実際,ダビデは,自分の世代のうちで神のお考えに従って仕えた後,眠りに落ち,自分の父祖たちと共に横たえられ,腐敗を見ました。 Acts 13:37 しかし,神が生き返らせたこの方は,腐敗を見ることがなかったのです。 Acts 13:38 ですから,兄弟たち,このことを知ってください。この方による罪の許しがあなた方に宣明されており, Acts 13:39 モーセの律法によっては義とされることのなかったあらゆることについても,信じる者はこの方によって義とされるのです。 Acts 13:40 ですから,預言者たちの中で語られているこのことがあなた方に臨まないよう用心していなさい。
Acts 13:41 『見よ,あざける者たちよ,驚け,滅び去れ。わたしはあなた方の時代に一つの業をなす。だれかが詳しく説明しても,あなた方が決して信じることのない業を』」。 Acts 13:42 そこで,ユダヤ人たちが会堂を出て行くと,異邦人たちは次の安息日にもこうした話をして欲しいと懇願した。 Acts 13:43 そして,会堂が解散してから,大勢のユダヤ人たちと敬けんな改宗者たちがパウロとバルナバに従った。二人は彼らと語り合い,神の恵みのうちにとどまっているようにと勧めた。 Acts 13:44 次の安息日には,ほとんど町全体が神の言葉を聞くために集まった。 Acts 13:45 しかし,ユダヤ人たちはこの群衆を見てねたみに満たされ,パウロが語った事柄に反対して,ののしった。
Acts 13:46 パウロとバルナバは大胆に語って,こう言った。「神の言葉はまずあなた方に対して語られることが必要でした。ところが,あなた方はそれを自分たちから押しのけ,自分自身を永遠の命に値しない者としているのですから,見なさい,わたしたちは異邦人たちのほうに向きを転じます。 Acts 13:47 主はわたしたちにこう命じられたからです。
『わたしはあなたを異邦人たちのための光とした。あなたが地の最も遠い所に至るまでも救いをもたらすためだ』」。 Acts 13:48 異邦人たちはこれを聞いて喜び,神の言葉の栄光をたたえた。永遠の命のために定められていた者たちはみな信者になった。 Acts 13:49 主の言葉はこの地方全体に広まって行った。 Acts 13:50 ところが,ユダヤ人たちは敬けんで有力な婦人たちや町の主立った人たちを扇動して,パウロとバルナバに対する迫害を起こし,二人を自分たちの地方から追い出した。 Acts 13:51 一方,二人は彼らに対して足のちりを払い落とし,イコニオムに行った。 Acts 13:52 弟子たちは喜びと聖霊とに満たされていた。
Acts 14:0 Acts 14:1 イコニオムで,二人は共にユダヤ人の会堂に入って話をしたので,ユダヤ人とギリシャ人の大群衆が信者になった。 Acts 14:2 ところが,信じようとしないユダヤ人たちは,異邦人たちの魂を扇動し,兄弟たちに対して悪意を抱かせた。 Acts 14:3 それゆえ,二人は長い間そこに滞在し,主にあって大胆に語った。主は二人の手によってしるしと不思議な業とを行なわせ,その恵みの言葉を証明した。 Acts 14:4 しかし,町の群衆は分裂した。ある者はユダヤ人の側に,別の者は使徒たちの側に付いた。 Acts 14:5 異邦人たちとユダヤ人たちのある者たちが,彼らの支配者たちと一緒になって,二人を虐げて石打ちにしようという乱暴な企てを起こしたとき, Acts 14:6 それに気づいた二人は,リュカオニア,リュストラ,デルベ,およびその周囲の地域に逃れた。 Acts 14:7 そこでも福音を宣教した。
Acts 14:8 リュストラに,足が虚弱な人が座っていた。母の胎を出たときから足が不自由で,一度も歩いたことのなかった。 Acts 14:9 彼がパウロの話に耳を傾けていると,パウロは彼をじっと見つめて,彼に十分な信仰があるのを見て, Acts 14:10 大声で言った,「自分の足でまっすぐ立ちなさい!」 彼は躍り上がって歩き始めた。 Acts 14:11 群衆はパウロの行なったことを見て,声を張り上げ,リュカオニアの言語で言った,「神々が人間の姿になって我々のところへ下って来たのだ!」 Acts 14:12 彼らはバルナバを「ユピテル」,パウロを「メルクリウス」と呼んだ。パウロが主な話し手だったからである。 Acts 14:13 町の前にあるユピテルの神殿の祭司が,数頭の雄牛と幾つかの花輪を持って来て,群衆と一緒になって犠牲をささげようとした。 Acts 14:14 しかし,使徒たち,すなわちバルナバとパウロは,このことを聞くと,衣を引き裂いて群衆の中に飛び込んで行き,叫んで言った, Acts 14:15 「皆さん,どうしてこんなことをするのですか。わたしたちもあなた方と同じ感情を持つ人間です。そして,あなた方がこうした無駄な事柄を離れて,生ける神に立ち返るようにと,あなた方に良いたよりをもたらしているのです。この方こそ,天と地と海,そしてその中にあるすべてのものを造られたのです。 Acts 14:16 神は,過ぎ去った世代においては,あらゆる民族が自分の道を歩むのを許されました。 Acts 14:17 しかし,ご自身についての証言がないままにしておかれたわけではありません。善いことを行なって,あなた方に天からの雨と実りの季節とを与え,食べ物と喜びとをもってわたしたちの心を満たしてくださったのです」。
Acts 14:18 このように言って,二人は群衆が自分たちに犠牲をささげるのをやっとのことでやめさせた。 Acts 14:19 ところが,アンティオキアとイコニオムから幾人かのユダヤ人がやって来て,群衆を説得して,パウロを石打ちにし,彼を死んだものと思って町の外に引きずり出した。
Acts 14:20 しかし,弟子たちが彼を取り囲むと,彼は立ち上がり,町の中に入った。次の日,彼はバルナバと共にデルベに向けて出発した。 Acts 14:21 この町で福音を宣教し,多くの弟子を作ってから,二人はリュストラ,イコニオム,さらにアンティオキアへと引き返し, Acts 14:22 弟子たちの魂を強め,信仰のうちにとどまるように,また,わたしたちは多くの苦しみを経て神の王国に入らなければならないと勧告した。 Acts 14:23 彼らのために集会ごとに長老たちを任命し,断食をもって祈り,彼らをその信じている主にゆだねた。
Acts 14:24 ピシディアを通って,パンフィリアにやって来た。 Acts 14:25 ペルガでみ言葉を語ってから,アタリアに下って行った。 Acts 14:26 そこからアンティオキアに出航した。そこは二人が,今や成し遂げた業のために,神の恵みにゆだねられて送り出された所である。 Acts 14:27 到着して集会の人々を集めると,二人は神が自分たちに行なったすべてのことと,神が異邦人たちに信仰の戸口を開いたことを報告した。 Acts 14:28 長い間にわたって弟子たちと共に過ごした。
Acts 15:0 Acts 15:1 ある人たちがユダヤから下って来て,兄弟たちにこう教えていた。「モーセの慣習に従って割礼を受けない限り,あなた方は救われない」。 Acts 15:2 それで,パウロやバルナバと彼らとの間に少なからぬ不和と議論が生じたので,人々は,パウロとバルナバ,および自分たちのうちのほかの幾人かがエルサレムに上り,この議論のことで使徒たちや長老たちを訪ねることを決めた。 Acts 15:3 彼らは集会によって送り出され,フェニキアとサマリアを通り抜け,異邦人たちの改宗の次第を詳しく説明して,すべての兄弟たちを大いに喜ばせた。 Acts 15:4 エルサレムに着くと,集会と使徒たちと長老たちから迎えられ,神が自分たちと共に行なった事柄すべてを報告した。
Acts 15:5 ところが,信者となっていた幾人かのファリサイ派の者たちが立ち上がって,こう言った。「彼らに割礼を施して,モーセの律法を守るようにと命じることが必要です」。
Acts 15:6 使徒たちや長老たちは,この問題について調べるために集まった。 Acts 15:7 多くの議論があったのち,ペトロが立ち上がって彼らに言った,「兄弟たち,ご存じのとおり,ずっと以前に,神はあなた方の間からわたしを選ばれ,異邦人たちがわたしの口から福音の言葉を聞いて信じるようにされました。 Acts 15:8 心を知っておられる神は,わたしたちにされたのと同じようにして彼らに聖霊をお与えになり,彼らについて証言されたのです。 Acts 15:9 神は,わたしたちと彼らとの間に区別を設けずに,彼らの心を信仰によって清められました。 Acts 15:10 それなのに,どうして今,わたしたちの父祖たちもわたしたちも負うことのできなかったくびきをあの弟子たちの首にかけて,神を試みるのですか。 Acts 15:11 それどころか,わたしたちは,彼らと同じく主イエスの恵みによって救われることを信じているのです」。
Acts 15:12 群衆はみな静かになった。そして,バルナバとパウロが,彼らを通して神が異邦人たちの間で行なったしるしや不思議な業について報告するのに耳を傾けた。 Acts 15:13 二人が話し終えると,ヤコブが答えた,「兄弟たち,わたしの言うことを聞いてください。 Acts 15:14 シメオンは,神が最初に異邦人たちを気にかけて,その中からご自分のみ名のために民を取り出された次第を話してくれました。 Acts 15:15 これは預言者たちの言葉と一致しています。こう書かれているとおりです。
Acts 15:16 『これらの事ののち,わたしは戻って来て,ダビデの倒れた幕屋を建て直し,その廃虚を建て直すだろう。それを元どおりにするだろう。 Acts 15:17 残っている者たち,わたしの名によって呼ばれるすべての異邦人たちが主を探し求めるようになるために。これらのすべての事を行なわれる主が言われる。 Acts 15:18 神にとってそのすべての業は遠い昔から知らされているのである』。 Acts 15:19 「それで,わたしの意見はこうです。すなわち,わたしたちは,異邦人たちの中から神に立ち返った人たちを悩ませることはせず, Acts 15:20 ただ,偶像に汚されたものと,淫行と,絞め殺されたものと,血を避けるようにと,彼らに書き送るのがよいでしょう。 Acts 15:21 モーセについては,昔からどの町にも宣教する者たちがおり,安息日ごとに諸会堂で朗読されているからです」。
Acts 15:22 そこで,使徒たちと長老たちは,集会全体と共に,自分たちの中から人を選んで,パウロやバルナバと一緒にアンティオキアに遣わすのがよいと考えた。すなわち,バルサバスと呼ばれるユダとシラスで,兄弟たちの間で主立った人たちであった。 Acts 15:23 彼らは次のように書いてこの人たちの手に託した。
「使徒たち,長老たち,および兄弟たちから,アンティオキア,シリア,キリキアにいる異邦人の兄弟たちへ。あいさつを送ります。 Acts 15:24 わたしたちの中から行ったある者たちが,いろいろな言葉によってあなた方を悩ませ,わたしたちが命じてもいないのに,「あなた方は割礼を受けて,律法を守らなければならない」と言って,あなた方の魂を乱したことを聞きましたので, Acts 15:25 わたしたちは満場一致で,人を選んで,わたしたちの愛するバルナバやパウロと共に,あなた方のもとに遣わすのがよいと考えました。 Acts 15:26 この二人は,わたしたちの主イエス・キリストのみ名のために,自分の命をかけている者たちです。 Acts 15:27 それで,わたしたちはユダとシラスを遣わしますが,この二人も同じことを口頭であなた方に告げるでしょう。 Acts 15:28 というのは,聖霊とわたしたちとは,次の必要な事柄のほかには,あなた方にいかなる重荷も負わせないのがよいと考えたからです。 Acts 15:29 すなわち,偶像に汚されたものと,血と,絞め殺されたものと,淫行を避けることです。これらのものから身を守っていればよいのです。ご健勝で」。
Acts 15:30 こうして,彼らは送り出されて,アンティオキアに着いた。集団を集めて,手紙を手渡した。 Acts 15:31 これを読むと,人々はその励ましに喜んだ。 Acts 15:32 ユダとシラスは,彼ら自身も預言者であったので,多くの言葉をもって兄弟たちを励まし,元気づけた。 Acts 15:33 しばらくの間そこで過ごしてから,兄弟たちからのあいさつを携えて再び使徒たちのもとに送り出された。 Acts 15:35 しかし,パウロとバルナバはアンティオキアにとどまり,他の多くの人たちと共に,主の言葉を教え,宣教していた。
Acts 15:36 数日後,パウロはバルナバに言った,「さあ,もう一度行って,わたしたちが主の言葉を宣明したすべての町にいるわたしたちの兄弟たちを訪ね,彼らがどうしているかを見て来ようではないか」。 Acts 15:37 バルナバは,マルコと呼ばれるヨハネを一緒に連れて行くつもりであった。 Acts 15:38 しかしパウロは,パンフィリアで自分たちから離れ,同行して業を行なわなかったような者は,一緒に連れて行かないほうがよいと考えた。 Acts 15:39 それで,激しい口論が起こり,彼らは互いに別れることになった。バルナバはマルコを連れ,キュプロスへ出航した。 Acts 15:40 一方,パウロはシラスを選び,兄弟たちから神の恵みにゆだねられて出発した。 Acts 15:41 シリアとキリキアを通り抜けながら,各地の集会を強めた。
Acts 16:0 Acts 16:1 彼はデルベとリュストラにやって来た。すると見よ,テモテという名の弟子がいた。信者であるユダヤ婦人の息子で,その父はギリシャ人であった。 Acts 16:2 リュストラとイコニオムにいた兄弟たちは,彼について良い証言をしていた。 Acts 16:3 パウロは彼を一緒に連れて行きたいと思ったので,その地帯にいるユダヤ人たちのために,彼を連れて来て割礼を施した。彼の父がギリシャ人であることを,みんなが知っていたからである。 Acts 16:4 彼らは町々を通って行きながら,エルサレムにいる使徒たちや長老たちが定めた規定を守るようにと,人々に伝えた。 Acts 16:5 こうして,各地の集会は信仰において元気づけられ,日ごとに数を増して行った。
Acts 16:6 彼らがフリュギアとガラテアの地方を通って行くと,アシアでみ言葉を語ることを聖霊によって禁じられた。 Acts 16:7 ミュシアに面した所まで来て,ビティニアに入ろうとしたが,霊がそれを許さなかった。 Acts 16:8 ミュシアを通り過ぎて,トロアスに下って行った。 Acts 16:9 その夜,一つの幻がパウロに現われた。その中で,あるマケドニアの人が立って,彼に懇願してこう言った。「マケドニアに渡って来て,わたしたちを助けてください」。 Acts 16:10 彼がその幻を見たとき,わたしたちはすぐにマケドニアに出かけることにした。彼らに福音を宣教するために,主がわたしたちを招いておられるのだと結論したからである。 Acts 16:11 それで,わたしたちはトロアスから出航してサモトラケに直行し,翌日ネアポリスに着いた。 Acts 16:12 そしてそこからフィリピに行った。そこはマケドニア第一地区の町で,ローマの植民都市である。わたしたちはその町で幾日か滞在した。
Acts 16:13 安息日に町から出て川岸に行った。そこに祈りの場所があると思ったからである。腰を下ろして,集まって来た女たちと話をした。 Acts 16:14 紫布を売るテュアティラ出身の人で,神の崇拝者であるリュディアという名の女が,わたしたちの言葉を聞いていたが,主は彼女の心を開き,パウロが語る事柄に聞き従うようにさせた。 Acts 16:15 彼女とその家の者たちがバプテスマを受けたとき,彼女はわたしたちに懇願して言った。「もし皆さんが,わたしを主に忠実な者とお思いでしたら,わたしの家に入ってお泊まりください」。このようにして,わたしたちに頼み込んで承知させた。
Acts 16:16 わたしたちが祈り場に行く途中,占いの霊に取り付かれている女中がわたしたちに出会った。彼女は運勢を告げて,その主人たちに多くの利得をもたらしていた。 Acts 16:17 パウロとわたしたちの後に付いて来て,叫んで言った,「この人たちは,いと高き神の召使いたちで,わたしたちに救いの道を宣明しているのです!」 Acts 16:18 彼女は何日もの間このことを続けた。
しかしパウロは,非常にいら立つようになり,振り向いてその霊に言った,「イエス・キリストの名においてあなたに命じる。彼女から出て行け!」 それは即座に出て行った。 Acts 16:19 ところが,彼女の主人たちは,自分たちの利得の見込みがなくなってしまったのを見て,パウロとシラスを捕まえ,市場で支配者たちの前に引いて行った。 Acts 16:20 政務官たちのところに引き出して,こう言った。「この者たちはユダヤ人で,わたしたちの町をかき乱しています。 Acts 16:21 わたしたちローマ人が受け入れることも,守り行なうことも許されない慣習を宣伝しています」。
Acts 16:22 群衆も一緒になって彼らに対して立ち上がったので,政務官たちは彼らの衣をはぎ取って,彼らをむちで打つようにと命じた。 Acts 16:23 何度もむち打たせてから,彼らをろうやに投げ入れ,看守にしっかり見張るようにと命じた。 Acts 16:24 このような命令を受けたので,彼は彼らを奥のろうやに投げ入れ,彼らの足を足かせ台につないだ。
Acts 16:25 しかし,真夜中ごろ,パウロとシラスは祈ったり,神に賛美の歌を歌ったりしていた。そして,囚人たちもそれに耳を傾けていた。 Acts 16:26 突然,大きな地震が起こり,ろうやの土台が揺れ動いた。そして,すぐにすべての扉が開き,全員のくさりが解けた。 Acts 16:27 看守は眠りから覚め,ろうやの扉が開いているのを見ると,囚人たちが逃げてしまったものと思い,剣を抜いて自殺しようとした。 Acts 16:28 しかしパウロは大声で叫んで言った,「自害してはいけない。わたしたちは皆ここにいる!」
Acts 16:29 彼は明かりを持って来させて中に駆け込み,おののきながらパウロとシラスの前にひれ伏した。 Acts 16:30 そして,二人を外に連れ出して言った,「皆さん,救われるためにわたしは何をしなければなりませんか」。
Acts 16:31 二人は言った,「主イエス・キリストを信じなさい。そうすればあなたも,あなたの家の者たちも救われます」。 Acts 16:32 彼と,彼の家にいたすべての者に,主の言葉を語った。
Acts 16:33 彼は,夜のその時刻に二人を連れ出し,その打ち傷を洗った。そして,彼とその家の者たちは,すぐにバプテスマを受けた。 Acts 16:34 彼は二人を家に上がらせ,その前に食事を備えて,家の者たちと共に,神を信じるようになったことを大いに喜んだ。
Acts 16:35 さて,朝になると,政務官たちは守衛兵たちを遣わし,「あの者たちを釈放せよ」と言わせた。
Acts 16:36 看守はこの言葉をパウロに伝えて言った,「政務官たちはあなた方を釈放するようにと人をよこしました。どうぞ,出て来て,安心してお出かけください」。
Acts 16:37 しかしパウロは彼らに言った,「彼らは,ローマ人であるわたしたちを,裁判にもかけずに公然と打ちたたき,ろうやに投げ込んだのだ! 今になって,ひそかにわたしたちを釈放するのか。それは実によくない。自分たちでここに出向いて,わたしたちを連れ出すべきだ!」
Acts 16:38 守衛兵たちはこの言葉を政務官たちに報告した。すると政務官たちは,彼らがローマ人だと聞いて恐れ, Acts 16:39 やって来て彼らに懇願した。彼らを連れ出してから,町から立ち去ってくれるようにと頼んだ。 Acts 16:40 二人はろうやを出て,リュディアの家に行った。兄弟たちに会うと,彼らを励ましてから出発した。
Acts 17:0 Acts 17:1 さて,二人はアンフィポリスとアポロニアを通り抜けて,テサロニケにやって来た。ここにはユダヤ人の会堂があった。 Acts 17:2 パウロはいつもの習慣どおり彼らのもとに入って行き,三度の安息日にわたって彼らと聖書から論じ合い, Acts 17:3 キリストが苦しみを受け,死んだ者たちの中から生き返らなければならなかったことを説明したり論証したりし,「わたしがあなた方に宣明しているこのイエスこそ,キリストです」と言っていた。
Acts 17:4 彼らのうちの幾人かは納得し,パウロとシラスに加わった。その中には,非常に大勢の敬けんなギリシャ人たちや,かなりの数の主立った婦人たちもいた。 Acts 17:5 ところが,信じなかったユダヤ人たちは,市場から数人のならず者を連れて来て,群衆を集め,町に騒ぎを起こした。ヤソンの家を襲撃し,民の前に連れ出そうとして二人を探した。 Acts 17:6 二人が見つからなかったので,ヤソンと数人の兄弟たちを町の支配者たちの前に引いて行き,叫んで言った,「世界中を騒がせた例の者たちがここにも来ていますが, Acts 17:7 ヤソンが彼らを迎え入れました。この者たちは皆,カエサルの布告に背いて行動し,イエスという別の王がいると言っているのです!」 Acts 17:8 これを聞いて,群衆や町の支配者たちは動揺した。 Acts 17:9 ヤソンとほかの者たちから保証金を取ってから,彼らを釈放した。 Acts 17:10 兄弟たちはすぐにパウロとシラスを夜のうちにベレアに送り出した。そこに到着すると,二人はユダヤ人の会堂に入った。
Acts 17:11 さて,ここの人たちはテサロニケの人たちよりも高潔で,み言葉を意欲的に受け入れ,それがそのとおりかを知ろうとして,毎日聖書を調べていた。 Acts 17:12 それゆえ,彼らのうちの多くの者が信者になった。その中には,ギリシャ人の有力な婦人たちや,かなりの数の男たちもいた。 Acts 17:13 ところが,テサロニケのユダヤ人たちは,ベレアでもパウロによって神の言葉が宣明されていると知ると,そこにも押しかけて来て,群衆を扇動した。 Acts 17:14 そこで,兄弟たちはすぐにパウロを送り出して,海辺まで行かせた。しかし,シラスとテモテはなおもそこにとどまった。 Acts 17:15 一方,パウロに付き添った人々は,彼をアテネまで連れて行った。できるだけ早く来るようにというシラスとテモテへの指示を託されて,去って行った。
Acts 17:16 さて,パウロがアテネで彼らを待っている間,町が偶像でいっぱいなのを見て,その霊は彼の内で怒りに燃えた。 Acts 17:17 そこで,会堂ではユダヤ人たちや敬けんな人々と,市場では日々そこで出会う人たちと共に論じ合った。 Acts 17:18 エピクロス派やストア派の哲学者たちの幾人かとも語り合った。ある者たちは言った,「このおしゃべりは何を言いたいのだろうか」。
ほかの者たちは言った,「異国の神々を宣伝しているらしい」。彼がイエスと復活について宣教していたからである。
Acts 17:19 人々は彼を捕まえてアレオパゴスに連れて行き,こう言った。「あなたの語っているその新しい教えがどういうものか,わたしたちに分からせてもらえないか。 Acts 17:20 あなたは何か珍しいことをわたしたちの耳に入れているからだ。だからそれがどんな意味なのか知りたいのだ」。 Acts 17:21 ところで,アテネ人やそこに住む居留人は皆,何か新しいことを話したり聞いたりすることばかりに時間を費やしていたのである。
Acts 17:22 パウロはアレオパゴスの真ん中に立って,こう言った。「アテネの皆さん。あなた方はあらゆることにおいて非常に信心深いということがわたしには分かります。 Acts 17:23 というのは,歩きながら,あなた方の崇拝の対象物をいろいろと見ていたところ,『知られていない神に』という銘のある祭壇さえも見つけたからです。ですから,あなた方が知らずに崇拝しているもの,それをあなた方に知らせます。 Acts 17:24 世界とその中のすべてのものをお造りになった神は,天地の主なのですから,手によって造られた神殿には住まわれません。 Acts 17:25 また,何かに不自由しているかのように,人間の手によって仕えてもらうこともありません。ご自身がすべての人に,命と息とすべての物を与えておられるからです。 Acts 17:26 神は,一人の人からあらゆる民族の人々を造って,地の全面に住まわせ,決まった季節と,その居住地の境界を定められました。 Acts 17:27 これは,もしも人々が手を差し伸べてご自分を見いだすなら,彼らが主を求めるようになるためなのです。もっとも,神はわたしたちひとりひとりから遠く離れておられるわけではありません。 Acts 17:28 『我々はそのうちに生き,動き,存在しているのだから』。あなた方の詩人たちのある者たちもこう言っている通りです。『我々もその子孫なのだから』。 Acts 17:29 それで,わたしたちは神の子孫なのですから,神たる者を,人間の技術や着想によって刻み込まれた金や銀や石のようなものと考えるべきではありません。 Acts 17:30 神は無知の時代をそれゆえに見過ごしてこられました。しかし今や,どこにいる人でも皆悔い改めるよう命じておられます。 Acts 17:31 ご自分が任命した人によって,この世を義をもって裁くために日をお定めになり,彼を死んだ者たちの中から起こすことによって,すべての人に保証をお与えになったからです」。
Acts 17:32 さて,死者の復活について聞くと,ある者たちはあざけったが,ほかの者たちは,「そのことについてはまた聞きたい」と言った。
Acts 17:33 こうして,パウロは彼らの中から出て行った。 Acts 17:34 しかし,幾人かの者たちは彼に加わり,信者になった。その中には,アレオパギトであるディオニュシオス,またダマリスという名の女やほかの者たちもいた。
Acts 18:0 Acts 18:1 こうした事ののち,パウロはアテネを去ってコリントに行った。 Acts 18:2 アクラという名のポントス生まれのユダヤ人と,その妻プリスキラとに出会った。クラウディウスがすべてのユダヤ人にローマから退去するようにと命じたために,最近イタリアから来ていたのである。彼は二人のもとに行き, Acts 18:3 職業が同じだったので,一緒に住み込んで仕事をした。彼らの職業は天幕造りだったのである。 Acts 18:4 彼は安息日ごとに会堂で論じ合い,ユダヤ人やギリシャ人を説得していた。 Acts 18:5 しかし,シラスとテモテがマケドニアから下って来ると,パウロは霊によって駆り立てられ,イエスがキリストだということをユダヤ人たちに証言した。 Acts 18:6 彼らが彼に反対して冒とくしたので,彼は自分の衣を振り払って彼らに言った,「あなた方の血は,あなた方自身の頭に降りかかれ! わたしは潔白だ。今からは異邦人たちのもとへ行く!」
Acts 18:7 彼はそこを去り,神の崇拝者であるユストゥスという名の人の家に入った。彼の家は会堂の隣にあった。 Acts 18:8 会堂長のクリスポスは,その全家と共に主を信じた。大勢のコリント人たちも,話を聞くと,信じてバプテスマを受けた。 Acts 18:9 ある夜,主が幻によってパウロに言った,「恐れることなく語りなさい。黙っていてはいけない。 Acts 18:10 というのは,わたしはあなたと共におり,だれもあなたを襲って傷つけることはないからだ。この町にはわたしの民が大勢いるのだ」
Acts 18:11 彼は一年六か月の間そこに住み,人々の間で神の言葉を教え続けた。 Acts 18:12 ところが,ガリオがアカイアの地方総督であったとき,ユダヤ人たちはパウロに対していっせいに立ち上がり,彼を裁きの座に引き出して Acts 18:13 言った,「この男は人々を説得して,律法に反する仕方で神を崇拝させようとしています」。
Acts 18:14 しかし,パウロが口を開こうとすると,ガリオはユダヤ人たちに言った,「ユダヤ人たちよ,もしこれが実際に不正行為とか悪意のある犯罪行為であれば,わたしは当然お前たちを我慢するのだが, Acts 18:15 問題が教義や名称や律法に関することであれば,自分たちで解決せよ。わたしはそのような事柄の裁き人になりたくない」。 Acts 18:16 彼らを裁きの座から追い出した。
Acts 18:17 すると,ギリシャ人たちはみんなで会堂長ソステネスを捕まえ,彼を裁きの座の前で打ちたたいた。ガリオはそうした事を少しも気にとめなかった。
Acts 18:18 パウロは,なお長い間そこに滞在したのち,兄弟たちに別れを告げて,そこからシリアに向けて出航した。プリスキラとアクラも同行した。彼は誓願を立てていたので,ケンクレアイで髪をそり落とした。 Acts 18:19 エフェソスに着くと,二人をそこに残し,ひとりで会堂に入って,ユダヤ人たちと論じ合った。 Acts 18:20 彼らは彼にもっと長くとどまってもらいたいと頼んだが,彼は承知せず, Acts 18:21 「わたしは近々エルサレムで催されるあの祭りにどうしても出なければなりません。それでも,神のご意志であれば,もう一度あなた方のところに戻って来ます」と言って,彼らに別れを告げ,エフェソスから出航した。
Acts 18:22 カエサレアに着くと,上って行って集会にあいさつし,それからアンティオキアに下って行った。 Acts 18:23 しばらくそこで過ごしてから,出発して,ガラテアの地方やフリュギアを順々に巡回し,すべての弟子たちを強めた。 Acts 18:24 さて,アポロスという名のユダヤ人で,アレクサンドリア生まれの雄弁な人がエフェソスからやって来た。彼は聖書に強かった。 Acts 18:25 この人は主の道について教えられており,霊に燃えて,イエスについて子細にわたって語ったり教えたりしていたが,ヨハネのバプテスマだけしか知らなかった。 Acts 18:26 彼は会堂で大胆に語り始めた。しかし,プリスキラとアクラはそれを聞くと,彼をわきに連れて行き,さらに子細にわたって神の道を説明した。
Acts 18:27 彼がアカイアに渡ろうと決心したので,兄弟たちは彼を励まし,弟子たちに彼を迎え入れるようにと書き送った。彼はそこに着くと,すでに恵みによって信じていた人たちを大いに助けた。 Acts 18:28 イエスがキリストだということを聖書によって公に示して,ユダヤ人たちを力強く論破したからである。
Acts 19:0 Acts 19:1 アポロスがコリントにいた時のこと,パウロは内陸の地方を通ってエフェソスにやって来た。そして,幾人かの弟子たちに出会った。 Acts 19:2 彼らに言った,「信者になったとき,聖霊を受けましたか」。
彼らは彼に言った,「いいえ,聖霊があるなどと聞いたことさえありません」。
Acts 19:3 彼は言った,「では,何のバプテスマを受けたのですか」。
彼らは言った,「ヨハネのバプテスマです」。
Acts 19:4 パウロは言った,「ヨハネは確かに悔い改めのバプテスマを施しましたが,自分の後から来る方,すなわちイエスを信じるようにと民に言っていたのです」。
Acts 19:5 これを聞くと,彼らは主イエスの名においてバプテスマを受けた。 Acts 19:6 パウロが彼らの上に手を置くと,聖霊が彼らに下り,彼らは異なった言語で話したり,預言をしたりした。 Acts 19:7 この人たちは全部で十二人ほどであった。 Acts 19:8 彼は会堂に入って,三か月間にわたって大胆に語り,神の王国に関する事柄を論じたり説得したりしていた。
Acts 19:9 しかし,ある者たちはかたくな,また不従順であって,群衆の前でその道について悪口を言ったので,彼は彼らから離れ,弟子たちをより分けて,テュラノスの講堂で毎日論じた。 Acts 19:10 このようなことが二年間続いたので,アシアに住んでいる者は皆,ユダヤ人もギリシャ人も主イエスの言葉を聞いた。
Acts 19:11 神はパウロの手によって並外れた奇跡を行なった。 Acts 19:12 彼の体から手ぬぐいや前掛けを取って病人に当てるだけで,悪い霊たちが出て行くほどであった。 Acts 19:13 ところが,旅回りの悪魔払い師である数人のユダヤ人たちが,悪い霊たちに取り付かれた者たちに向かって主イエスの名を唱え,「我々はパウロが宣教しているイエスによってお前たちに命じる」と言った。 Acts 19:14 このようなことをしたのは,ユダヤ人の祭司長スケワの七人の息子たちであった。
Acts 19:15 悪い霊は答えた,「イエスなら知っているし,パウロも知っている。だが,お前たちは何者だ」。 Acts 19:16 悪い霊に取り付かれていた男は彼らに飛びかかり,彼らを押し倒して,打ち負かした。そのため,彼らは傷を負ってその家から裸で逃げ出した。 Acts 19:17 このことが,エフェソスに住んでいたユダヤ人とギリシャ人全員に知れ渡った。彼らすべての上に恐れが臨み,主イエスの名がたたえられた。 Acts 19:18 信者になっていた者たちも大勢やって来て,告白し,自分たちの行ないを公表した。 Acts 19:19 魔術を習わしにしていた大勢の者たちは,自分たちの本を持って来てみんなの面前で燃やした。その値段を計算すると,銀五万枚になることが分かった。 Acts 19:20 こうして,主の言葉はさらに増し加わっていった。
Acts 19:21 さて,これらのことが済んだのち,パウロは霊のうちに,マケドニアとアカイアを通ってからエルサレムに行こうと決めて,こう言った。「わたしはそこへ行った後,ローマをも見なければならない」。
Acts 19:22 自分に仕える者の中からテモテとエラストの二人をマケドニアに送り出したが,彼自身はしばらくアシアにとどまっていた。 Acts 19:23 そのころ,この道に関して少なからぬ騒動が起こった。 Acts 19:24 デメトリウスという名の銀細工師がおり,アルテミスの神殿を銀で造って,職人たちにかなりのもうけ口を与えていたが, Acts 19:25 この男が,同じような仕事をしている労働者を集めて,こう言った。「皆さん,ご承知のように,わたしたちが豊かでいられるのは,この商売のおかげです。 Acts 19:26 あなた方が見聞きしているとおり,あのパウロは,エフェソスだけでなく,アシアのほとんど全域で,手で造られたものは神々ではないなどと言って,大勢の民を説得して背かせてしまいました。 Acts 19:27 このわたしたちの職業の評判が悪くなる恐れがあるだけでなく,偉大な女神アルテミスの神殿が軽んじられ,全アシアと世界が崇拝している女神の荘厳さまでが失われてしまうでしょう」。
Acts 19:28 これを聞くと,彼らは怒りに満たされ,叫んで言った,「偉大なのはエフェソス人のアルテミス!」 Acts 19:29 町全体が混乱に満たされた。そして彼らは,パウロの旅仲間であるマケドニア人ガイオスとアリスタルコスを捕らえて,いっせいに劇場へなだれ込んだ。 Acts 19:30 パウロは民の中に入って行こうとしたが,弟子たちがそうさせなかった。 Acts 19:31 彼の友人だった幾人かのアシアルクたちも,彼のもとに人を遣わして,劇場で命を危険にさらさないよう懇願した。 Acts 19:32 さて集会は,ある者たちが何かを叫べば,別の者たちは違うことを叫ぶという混乱ぶりであった。ほとんどの者たちは,どうして集まっているかも知らなかった。 Acts 19:33 人々は,ユダヤ人たちが前に押し出したアレクサンデルを群衆の中から引き出した。アレクサンデルは手で合図をし,民に向かって弁明しようとした。 Acts 19:34 しかし,彼がユダヤ人だと分かると,みんなはいっせいに,「偉大なのはエフェソス人のアルテミス!」と二時間ほども叫び続けた。
Acts 19:35 町の書記官が群衆を静めて言った,「エフェソスの人たち,このエフェソス人の町が,偉大な女神アルテミスとゼウスから下った像との神殿の守護者だということを知らない者がいるだろうか。 Acts 19:36 これは否定できない事柄なのだから,あなた方は静かにしているべきであって,軽はずみなことをするべきではない。 Acts 19:37 あなた方はこの人たちをここに連れて来たが,彼らは神殿強盗でもなければ,あなた方の女神を冒とくする者でもない。 Acts 19:38 だから,もしデメトリウスとその仲間の職人たちがだれかに対して訴えごとがあるのなら,法廷は開かれているし,地方総督もおられる。彼らが互いに対して訴え合えばよい。 Acts 19:39 また,あなた方がそれ以外のことを求めているのなら,正式な集会で決めてもらえるだろう。 Acts 19:40 実際,我々は今日の暴動のことで告発される恐れがあるくらいなのだ。我々にはこの反乱について言い開きする名目が何もないのだ」。 Acts 19:41 こう言って,集会を解散させた。
Acts 20:0 Acts 20:1 騒動が収まったのち,パウロは弟子たちを呼び集め,別れを告げてから,マケドニアに向けて出発した。 Acts 20:2 その地帯を通って行き,多くの言葉で人々を励ましてから,ギリシャに入った。 Acts 20:3 そこで三か月を過ごしたが,シリアに向けて出航しようとしていたとき,彼に対する陰謀がユダヤ人たちによって企てられたので,マケドニアを通って帰ることに決めた。 Acts 20:4 アシアまで彼に同伴していたのは,ベレアのソパテロ,テサロニケ人のアリスタルコスとセクンドス,デルベのガイオス,テモテ,それにアシアのテュキコスとトロフィモスであった。 Acts 20:5 しかし,これらの者たちは先に立って,トロアスでわたしたちを待っていた。 Acts 20:6 わたしたちは,種なしパンの期間ののちにフィリピから出航し,五日のうちにトロアスにいる彼らのもとに着き,そこに七日間滞在した。
Acts 20:7 週の初めの日,弟子たちがパンを裂くために集まっていた時,パウロは翌日出発するつもりだったので,彼らと語り合ったが,彼の話は真夜中まで続いた。 Acts 20:8 わたしたちが集まっていた階上の部屋には,たくさんの明かりがあった。 Acts 20:9 エウテュコスという名の若者が窓のところに腰かけていたが,深い眠りに陥った。パウロの話がなおも長引くので,眠りこけて,三階から下に落ちてしまった。そして,抱き起こしてみると死んでいた。 Acts 20:10 パウロは降りて行き,彼の上に身を伏せ,抱きしめて言った,「騒いではいけない。彼の命は彼の内にあるのだから」。
Acts 20:11 上がって行って,パンを裂いて食べ,夜明けまで長い間語り合ってから,出発した。 Acts 20:12 人々は生き返った少年を連れ帰り,大いに慰められた。
Acts 20:13 さて,わたしたちは先に船に乗り,アソスに向けて出航した。パウロをそこで乗船させるつもりであった。というのは,彼自身は陸路で行くつもりで,そのように手はずを整えていたからである。 Acts 20:14 彼がアソスでわたしたちと落ち合うと,わたしたちは彼を乗船させて,ミテュレネに着いた。 Acts 20:15 次の日,そこを出航してキオスの沖に達した。その翌日,サモスに立ち寄ってトロギュリウムに泊まり,明くる日,ミレトスに着いた。 Acts 20:16 これはパウロが,アシアでは少しも時を費やさないように,エフェソスには寄らないことに決めていたからである。できるならばペンテコステの日にはエルサレムに着いていたいと,旅を急いでいたのである。
Acts 20:17 彼はミレトスからエフェソスへ人を遣わし,集会の長老たちを呼び寄せた。 Acts 20:18 彼らがやって来ると,彼は彼らに言った,「わたしがアシアに足を踏み入れた最初の日から,いつもあなた方と共にいたことを,あなた方は知っています。 Acts 20:19 わたしは謙そんの限りを尽くし,多くの涙と,ユダヤ人の陰謀によって自分の身に起こった数々の試練とをもって,主に仕えてきました。 Acts 20:20 少しもためらわずに,何でも益になることをあなた方に話して聞かせ,公にも家から家にもあなた方を教え, Acts 20:21 神に対する悔い改めと,わたしたちの主イエスに対する信仰を,ユダヤ人にもギリシャ人にも証言して来ました。 Acts 20:22 そして今,ご覧なさい,わたしは霊に縛られてエルサレムに行こうとしています。そこでわたしに何が起きるのか知りません。 Acts 20:23 分かっているのは,聖霊がどの都市でも証言をして,鎖と苦難とがわたしを待ち受けていると言っておられることだけです。 Acts 20:24 それでも,自分の競走を喜びのうちに終え,神の恵みについての福音を十分に証言するという主イエスから受けた奉仕の務めを果たすためならば,そんな事柄はものの数ではありませんし,自分の命が惜しいとも思いません。
Acts 20:25 「そして今,ご覧なさい,わたしが神の王国を宣教してまわったあなた方は皆,もはやわたしの顔を見ないことを,わたしは知っています。 Acts 20:26 ですから,すべての人の血についてわたしは潔白だということを,今日あなた方に証言しておきます。 Acts 20:27 少しもためらわずに,神のお考えすべてをあなた方に話して聞かせたからです。 Acts 20:28 ですから,自分自身と群れの全員に注意を払っていなさい。聖霊は,神がご自身の血をもって買い取られた,主および神の集会を牧させるために,あなた方をその群れの中で監視者とされたからです。 Acts 20:29 わたしの出発ののち,意地の悪いオオカミがあなた方の中に入って来て群れを荒らすことを,わたしは知っています。 Acts 20:30 あなた方自身の中からも,曲がった事柄を語って,弟子たちを自分のほうへ引きずりこもうとする者たちが起こるでしょう。 Acts 20:31 ですから,わたしが三年の間,夜も昼も,涙をもってひとりひとりに忠告してきたことを思い出し,見張っていなさい。 Acts 20:32 そして今,兄弟たち,わたしはあなた方を神とその恵みの言葉とにゆだねます。この言葉は,あなた方を築き上げ,聖別されたすべての人々と共に相続財産を与えることができるのです。 Acts 20:33 わたしはだれからも,銀や金や衣服を欲したことはありません。 Acts 20:34 あなた方自身が知っているとおり,この両手は,わたしの必要のためにも,わたしと共にいた者たちのためにも働いたのです。 Acts 20:35 あなた方がこのように労苦して弱い人々を助け,主イエスご自身の言われた『受けるより与えるほうが幸いだ』 という言葉を覚えておくよう,わたしはあらゆる事においてあなた方に模範を示したのです」。
Acts 20:36 こう語ってから,みんなと一緒にひざまずいて祈った。 Acts 20:37 みんなは激しく泣き,パウロの首を抱いて口づけした。 Acts 20:38 もはや自分の顔を見ることはないだろうと語った彼の言葉のために,とりわけ悲嘆したのである。それから彼を船まで送って行った。
Acts 21:0 Acts 21:1 わたしたちは彼らを振り切って出航すると,コスに直行し,翌日ロードスに着き,そこからパタラに渡った。 Acts 21:2 フェニキアに渡る船を見つけたので,それに乗って出航した。 Acts 21:3 キュプロスが見えてきたが,それを左手に通り過ぎ,シリアに向かって航海を続け,テュロスに着いた。船はここで積み荷を降ろすことになっていたのである。 Acts 21:4 わたしたちは弟子たちを見つけ出して,そこに七日間滞在した。それらの者たちは,エルサレムに上って行かないようにと霊によってパウロに告げた。 Acts 21:5 その期間が満ちると,わたしたちは出発して自分たちの旅を続けた。みんなは妻や子供たちと一緒に,町の外までわたしたちを案内してくれた。わたしたちは浜辺にひざまずいて祈った。 Acts 21:6 互いに別れを告げた後,わたしたちは船に乗り込み,彼らは家に帰って行った。
Acts 21:7 わたしたちはテュロスから航海を終えてプトレマイスに着いた。兄弟たちにあいさつをして,彼らと共に一日過ごした。 Acts 21:8 翌日,わたしたちパウロの一行は出発し,カエサレアに行った。
あの七人のうちの一人である福音伝道者フィリポの家に入り,彼と共に過ごした。 Acts 21:9 ところで,この人には処女の娘が四人いて,預言をしていた。 Acts 21:10 わたしたちがそこに幾日か滞在していると,アガボスという名の預言者がユダヤから下って来た。 Acts 21:11 わたしたちのもとに来て,パウロの帯を取り,自分の両足と両手を縛ってこう言った,「聖霊がこのように言われる。『ユダヤ人たちはエルサレムで,この帯の持ち主を同じように縛って,彼を異邦人たちの手に引き渡すだろう』」。
Acts 21:12 これを聞くと,わたしたちも土地の人々も,エルサレムに上って行かないよう彼に懇願した。 Acts 21:13 するとパウロは答えた,「泣いたり,わたしの心をくじいたりして,いったいどうしようというのですか。わたしは主イエスの名のため,エルサレムで縛られることばかりか,死ぬことさえも覚悟しているのです」。
Acts 21:14 彼が説得を聞き入れようとしないので,わたしたちは,「主のご意志がなりますように」と言って,口をつぐんだ。
Acts 21:15 こうした日々ののち,わたしたちは荷物を手に取ってエルサレムに上って行った。 Acts 21:16 カエサレアから来た数人の弟子たちもわたしたちと一緒に来て,キュプロスのムナソンという古くからの弟子のところに案内した。わたしたちはそこに泊まることになっていたのである。
Acts 21:17 わたしたちがエルサレムに着くと,兄弟たちは喜んでわたしたちを出迎えた。 Acts 21:18 次の日,パウロはわたしたちと共にヤコブのところに行った。長老たちも皆出席していた。 Acts 21:19 彼は彼らにあいさつをしたのち,自分の奉仕を通して神が異邦人たちの間で行なった事柄を次々に報告した。 Acts 21:20 これを聞いて彼らは神に栄光をささげた。彼らは彼に言った,「兄弟,ご承知のように,ユダヤ人たちの中で信者になった者が幾万人もいますが,彼らはみな律法に熱心です。 Acts 21:21 彼らがあなたについて聞かされているのは,あなたが異邦人たちの間にいるすべてのユダヤ人たちに対し,子供に割礼を施したり,慣習に従って歩んだりしないようにと告げて,モーセを破棄するよう教えているということです。 Acts 21:22 それで,どうすればよいでしょうか。あなたが来ていることを聞いて,きっと集会がつどうでしょう。 Acts 21:23 ですから,わたしたちの言うとおりにしてください。わたしたちには誓願を立てた四人の人たちがいます。 Acts 21:24 彼らを連れて行って,一緒に身を清め,彼らのために頭をそる費用を出してやりなさい。そうすれば,あなたについて聞かされている事柄が事実ではなく,あなた自身も律法を守って歩んでいることを,みんなが知るでしょう。 Acts 21:25 それでも,信者になった異邦人たちについては,偶像にささげられた食物と,血と,絞め殺されたものと,淫行から身を守るべきことを除いては,いかなることも守り行なう必要はないというわたしたちの決定を書き送ってあります」。
Acts 21:26 そこで,パウロはその者たちを連れて行き,翌日,一緒に身を清めて神殿に入り,清めの期間が満ちてひとりひとりのためにささげ物がささげられる日時を申告した。 Acts 21:27 七日の期間が間もなく終わろうとしていた時,アシアから来たユダヤ人たちが,彼が神殿にいるのを見て,全群衆を扇動して彼に手をかけ, Acts 21:28 叫んで言った,「イスラエルの人たち,手伝ってくれ! この男は至るところであらゆる者に,民と律法とこの場所に反することを教えている。その上,ギリシャ人たちを神殿に連れ込んで,この聖なる場所を汚すことまでしたのだ!」 Acts 21:29 エフェソス人トロフィモスが都で彼と一緒にいたのを見たので,パウロが彼を神殿に連れ込んだものと思ったのである。
Acts 21:30 都全体が騒動になり,民は駆け寄って来た。人々はパウロを捕らえ,神殿の外に引きずり出した。すぐに門が閉ざされた。 Acts 21:31 人々が彼を殺そうとしていると,エルサレム中が大騒ぎになっているとの知らせが連隊の司令官のところに届いた。 Acts 21:32 すぐに彼は兵士たちと百人隊長たちを率いて,彼らのもとに駆け下った。人々は大隊長と兵士たちを見ると,パウロを打つのをやめた。 Acts 21:33 それから司令官は近づいて来て彼を逮捕し,二本の鎖で縛るよう命じ,彼が何者で,何をしたのかを尋ねた。 Acts 21:34 群衆の間では,ある者たちが何かを叫べば,別の者たちは違うことを叫んでいた。騒がしくて真相をつかむことができないので,司令官は彼を兵営に引いて行くよう命じた。
Acts 21:35 彼が階段に差し掛かった時には,群衆の暴行のため,兵士たちに担がれるほどであった。 Acts 21:36 大勢の民が,「彼を取り除け!」と叫びながら,後を付いて来たからである。 Acts 21:37 兵営に連れ込まれようとした時,パウロは司令官に尋ねた,「お話ししてもよろしいでしょうか」。
彼は言った,「お前はギリシャ人なのか。 Acts 21:38 するとお前は,この前反乱を起こして,四千人の暗殺者たちを引き連れて荒野に行った,あのエジプト人ではないのか」。
Acts 21:39 しかしパウロは言った,「わたしはタルソス生まれのユダヤ人で,キリキアのれっきとした町の市民です。お願いします,あの民に話すことを許してください」。
Acts 21:40 司令官が彼に許可を与えたので,パウロは階段に立ち,民を手で制した。すっかり静かになると,ヘブライ語で彼らに語りかけてこう言った。
Acts 22:0 Acts 22:1 「兄弟たち,また父たちよ,今わたしが申し上げる弁明を聞いてください」。
Acts 22:2 彼が自分たちにヘブライ語で語りかけるのを聞くと,人々はますます静かになった。彼は言った, Acts 22:3 「わたしは確かにユダヤ人です。キリキアのタルソスで生まれましたが,この都においてガマリエルのもとで育てられ,わたしたちの父祖たちの律法について厳格な流儀に従って教育され,今日の皆さんと同じように,神に対して熱心な者でした。 Acts 22:4 わたしはこの道を迫害して,男も女も縛ってろうやに引き渡し,死に至らせたのです。 Acts 22:5 このことについては大祭司も長老会議全体も証言してくれます。わたしはこの人たちから兄弟たちへの手紙を受け取って,ダマスカスへ旅立ったのです。そこにいる者たちをも縛り上げてエルサレムに連行し,罰するためでした。 Acts 22:6 旅をしてダマスカスに近づいた時,真昼ごろでしたが,突然,天からの強い光がわたしの周りを照らしました。 Acts 22:7 わたしは地に倒れ,『サウロ,サウロ,なぜわたしを迫害するのか』 と自分に言う声を聞きました。 Acts 22:8 わたしは答えました,『主よ,あなたはどなたですか』。その方はわたしに言われました,『わたしはナザレのイエス,あなたが迫害している者だ』
Acts 22:9 「わたしと一緒にいた者たちは,光は確かに見て恐れていたのですが,わたしに語りかけられた方の声は分かりませんでした。 Acts 22:10 わたしは言いました,『主よ,わたしはどうすればよいのでしょうか』。主はわたしに言われました,『立ち上がって,ダマスカスに入りなさい。あなたが行なうよう定められているすべてのことが,そこであなたに告げられるだろう』 。 Acts 22:11 わたしはその光の輝きのために目が見えなくなっていたので,一緒にいた者たちに手を引かれてダマスカスに入りました。 Acts 22:12 そこにはアナニアという,律法に従う敬けんな人で,ダマスカスに住むすべてのユダヤ人たちからよい評判のある人がいましたが, Acts 22:13 この人がわたしのところに来て,そばに立ってこう言いました。『兄弟サウロよ,視力を取り戻しなさい!』 するとその時,わたしはその人が見えるようになりました。 Acts 22:14 彼は言いました,『わたしたちの父祖たちの神が,ご自分のご意志を知り,義なる方を見,その口からの声を聞くよう,あなたを指名されました。 Acts 22:15 あなたは,自分の見聞きしたことについて,すべての人に対してその方の証人となるからです。 Acts 22:16 さあ,何をためらうのですか。起き上がって,主の名を呼び求めてバプテスマを受け,自分の罪を洗い流しなさい』。
Acts 22:17 「さて,わたしがエルサレムに帰って神殿で祈っていると,我を忘れた状態に陥り, Acts 22:18 その方がわたしにこう言われるのを見ました。『急いで,エルサレムから早く出て行きなさい。わたしについてのあなたの証言を人々は受け入れないからだ』 。 Acts 22:19 わたしは言いました,『主よ,わたしがどの会堂でもあなたを信じる人たちをろうやに入れたり,打ちたたいたりしていたことを,みんなが知っています。 Acts 22:20 あなたの証人ステファノの血が流された時,わたしもそばに立っていて,彼の死刑に同意しており,彼を殺した者たちの外衣の番をしていたのです』。
Acts 22:21 「その方はわたしに言われました,『出かけて行きなさい。わたしはあなたをここから遠く異邦人たちのもとに遣わすからだ』 」。
Acts 22:22 人々はそれまで彼の話を聞いていたが,ここに至ると声を張り上げて言った,「こんなやつは地上から除いてしまえ。生かしておくには及ばない!」
Acts 22:23 人々がわめき立て,外衣を放り投げ,ちりを空中にまき散らしたりしたので, Acts 22:24 司令官は彼を兵営に引き入れるように命じ,人々が彼に対してあれほど叫び立てるのはどんな罪のためなのかを知るために,彼をむち打って取り調べるよう言いつけた。 Acts 22:25 彼らが彼を皮ひもで拘束していると,パウロはそばに立っていた百人隊長に尋ねた,「ローマ人で,しかも有罪判決も受けていない者をむち打つことが,あなた方には許されているのか」。
Acts 22:26 百人隊長はそれを聞くと,司令官のもとに行って報告した,「何ということをなさるのです。あの男はローマ人なのです!」
Acts 22:27 司令官はやって来て彼に尋ねた,「わたしに言ってくれ。あなたはローマ人なのか」。
彼は言った,「そうです」。
Acts 22:28 司令官は答えた,「わたしはかなりの値段でこの市民権を手に入れたのだ」。
パウロは言った,「それでも,わたしは生まれながらのローマ人です」。
Acts 22:29 彼を取り調べようとしていた者たちは,すぐに彼から身を引いた。そして司令官も,彼がローマ人だと分かると,彼を縛らせたことで恐れた。 Acts 22:30 それでも翌日,彼がユダヤ人たちから告訴された理由についての真相を知りたいと思い,彼の鎖を解き,祭司長たちと最高法院全体の招集を命じ,パウロを連れ下りて彼らの前に立たせた。
Acts 23:0 Acts 23:1 パウロは最高法院を見つめて言った,「兄弟たち,わたしは今日に至るまで,ひたすら正しい良心のうちに神のみ前で生きてきました」。
Acts 23:2 大祭司アナニアは,彼の口を打つようにと彼のそばに立っている者たちに命じた。
Acts 23:3 そこでパウロはアナニアに言った,「神があなたを打たれるだろう,白く塗った壁よ! あなたは律法に従ってわたしを裁くために座っていながら,律法に背いてわたしを打つことを命じるのか」。
Acts 23:4 そばに立っている者たちが言った,「お前は神の大祭司を中傷するのか」。
Acts 23:5 パウロは言った,「兄弟たち,わたしは彼が大祭司だとは知りませんでした。確かに,『あなたは,あなたの民の指導者を悪く言ってはならない』と書かれています」。 Acts 23:6 さて,一部がサドカイ人で,一部がファリサイ人であることに気づくと,パウロは最高法院の中で叫んで言った,「皆さん,兄弟たち,わたしはファリサイ人であり,ファリサイ人の子です。死んだ者たちの希望と復活のことで,わたしは裁かれているのです!」
Acts 23:7 彼がこう言うと,ファリサイ人たちとサドカイ人たちとの間に論争が生じ,集会は分裂した。 Acts 23:8 というのは,サドカイ人たちが復活もみ使いも霊もないと言っているのに対し,ファリサイ人たちはこれらをいずれも認めているからである。 Acts 23:9 たいへんな騒ぎになり,ファリサイ派の律法学者たちの幾人かが立ち上がって,激しく論じて言った,「我々はこの人に何の悪いことも見いだせない。だから,もし霊かみ使いが彼に語りかけたのであれば,神に対して闘うのはよそう!」
Acts 23:10 激しい論争が生じたので,司令官は,パウロが彼らによって引き裂かれてしまうのではないかと心配し,兵士たちに,降りて行って彼を彼らの中から力ずくで引き出し,兵営に連れてくるよう命じた。
Acts 23:11 その夜,主が彼のそばに立って言った,「パウロよ,元気を出しなさい。あなたはエルサレムでわたしについて証言したのと同じように,ローマでも証言しなければならないのだから」
Acts 23:12 朝になると,幾人かのユダヤ人たちは団結して自らにのろいをかけ,パウロを殺すまでは食べることも飲むこともしないと言った。 Acts 23:13 この陰謀に加わった者は四十人以上いた。 Acts 23:14 彼らは,祭司長たちや長老たちのところに行って,こう言った,「わたしたちは,パウロを殺すまでは何も口にしないと,自らに厳重なのろいをかけました。 Acts 23:15 それで今,最高法院と組んで,彼の件をもっと詳しく審理するという口実で,彼を明日あなた方のもとに連れ下るよう司令官に願い出てください。わたしたちは,彼がここに近づいて来る前に殺してしまう用意ができています」。
Acts 23:16 ところが,パウロの姉妹の息子が彼らの待ち伏せのことを耳にし,やって来て兵営に入り,パウロに知らせた。 Acts 23:17 パウロは百人隊長の一人を呼び寄せて言った,「この若者を司令官に引き合わせてください。お知らせしたいことがあるそうです」。
Acts 23:18 そこで百人隊長は彼を連れて行き,司令官に引き合わせてこう言った,「囚人のパウロがわたしを呼んで,この若者があなたにお知らせしたいことがあるので,引き合わせて欲しいと願い出ました」。
Acts 23:19 司令官は彼の手を取ってわきに行き,彼にひそかに尋ねた,「わたしに知らせたいこととは何か」。
Acts 23:20 彼は言った,「ユダヤ人たちは,パウロについてもう少し詳しく取り調べるという口実で,彼を明日最高法院に連れ下ってもらえるようあなたに願い出ることに決めています。 Acts 23:21 それで,彼らの言いなりにならないでください。四十人以上の者たちが彼を待ち伏せしているからです。彼らは,彼を殺すまでは食べることも飲むこともしないと,自らにのろいをかけているのです。彼らはもう手はずを整えて,あなたの承諾を待っています」。
Acts 23:22 そこで司令官は,「このことをわたしに明かしたことはだれにも言うな」と命じて,若者を去らせた。 Acts 23:23 百人隊長二人を呼び寄せて言った,「夜の第三時にカエサレアへ出発できるように,歩兵二百名,騎兵七十名,やりを持つ武装兵二百名を用意せよ」。 Acts 23:24 また彼らに,パウロを乗せて総督フェリクスのもとへ安全に送り届けられるように,馬を備えるよう求めた。 Acts 23:25 次のような手紙を書いた。
Acts 23:26 「クラウディウス・リュシアから,総督フェリクス閣下へ。ごあいさつ申し上げます。
Acts 23:27 「この男はユダヤ人たちに捕らえられ,彼らによって殺されようとしていましたが,わたしは彼がローマ人であることを知りましたので,兵士たちを率いて彼を救出しました。 Acts 23:28 彼らが彼を告訴した理由を知りたいと思い,彼を彼らの最高法院に連れ下りました。 Acts 23:29 ところが,彼が訴えられているのは彼らの律法に関する問題のためで,死刑や束縛に値する罪状はないことが分かりました。 Acts 23:30 ユダヤ人たちがこの男を待ち伏せていると聞きましたので,彼をただちにあなたのもとにお送りすることとし,告訴人たちには彼に対する告訴をあなたの前に持ち出すよう命じておきました。ご健勝で」。
Acts 23:31 そこで歩兵たちは,命令どおりにパウロを引き取って,夜のうちにアンティパトリスに連れて行った。 Acts 23:32 そして翌日,騎兵たちを彼と共に行かせ,自分たちは兵営に帰った。 Acts 23:33 騎兵たちはカエサレアに着いて,総督に手紙を渡してから,パウロを彼に対面させた。 Acts 23:34 総督は手紙を読んでから,彼がどの州の出身かを尋ねた。彼がキリキアの出身だと分かると,総督は言った, Acts 23:35 「お前の告訴人も到着したら,お前の言い分を十分に聞くことにする」。彼をヘロデの宮殿内に留置するように命じた。
Acts 24:0 Acts 24:1 五日後,大祭司アナニアが,幾人かの長老たちとテルトゥルスという雄弁家と一緒に下って来た。彼らは総督にパウロを告発した。 Acts 24:2 彼が呼び出されると,テルトゥルスは彼を訴え始めてこう言った。「おかげ様で,わたしたちは大いに平和を享受していますし,この民族の中でさまざまなすばらしい施策がなされていますので, Acts 24:3 フェリクス閣下,わたしたちはあらゆる方面また至る所でこのことを認めて,感謝しています。 Acts 24:4 しかし,話を長引かせないよう手短かに申し上げますので,なにとぞご辛抱いただいてお聞きくださるようお願いします。 Acts 24:5 実は,わたしたちが調べたところ,この男は伝染病のような者で,世界中のユダヤ人すべての間で暴動を扇動する者であり,ナザレ人たちの分派の首謀者です。 Acts 24:6 彼が神殿さえも汚そうとしたので,わたしたちは彼を逮捕しました。 Acts 24:8 ご自身で彼をお取り調べになれば,わたしたちが彼を訴えている事柄すべてをお確かめいただけるでしょう」。
Acts 24:9 ユダヤ人たちもこの非難に同調し,これらのことはそのとおりだと主張した。 Acts 24:10 総督が彼に話すよう合図したので,パウロは答えた,「わたしは,あなたが長年にわたってこの民族を裁いてこられたことを知っていますので,喜んで自分の弁明をします。 Acts 24:11 お調べになればお分かりいただけることですが,わたしが礼拝のためにエルサレムへ上って来てから,まだ十二日しかたっていません。 Acts 24:12 彼らは,わたしがだれかと論争したり,群衆を扇動したりするのを,神殿でも会堂でも都の中でも見たことがありません。 Acts 24:13 彼らは,今わたしを告訴している事柄について,あなたに証明することができないのです。 Acts 24:14 しかし,あなたの前でこのことは認めます。わたしは,彼らが分派と呼んでいるこの道に従って,わたしたちの父祖たちの神に仕えています。律法に基づいた事柄と,預言者たちの中に書かれている事柄をすべて信じていますし, Acts 24:15 死んだ者たちの中から,正しい者も正しくない者も復活するという希望を,神に対して抱いています。これは彼ら自身も待ち望んでいることです。 Acts 24:16 そのために,わたし自身も,神と人に対して責められるところのない良心を抱けるよう,いつも努力しているのです。 Acts 24:17 さて,わたしは,自分の民族に施しをし,またささげ物をするために,数年ぶりに戻って来ました。 Acts 24:18 その最中に,清めをして神殿にいるところを,暴徒もいなければ騒動もありませんでしたが,アシアから来たユダヤ人たちに見られたのです。 Acts 24:19 もしわたしを非難することがあるのであれば,彼らがあなたの前に出て告発すべきでした。 Acts 24:20 さもなければ,最高法院の前に立っていたとき,彼らがわたしにどんな不当な点を見いだしたかを,ここにいる人々が述べるべきです。 Acts 24:21 彼らの中で立っていた時には,『死んだ者たちの復活のことで,わたしは今日あなた方の前で裁かれているのです!』と叫んだだけなのです」。
Acts 24:22 しかしフェリクスは,この道についてかなり正確な知識を持っていたので,「司令官リュシアが下って来た時に,お前たちの件を裁決することにしよう」と言って,裁判を延期した。 Acts 24:23 百人隊長にパウロを監禁するように命じるとともに,ある程度の特典を与え,友人たちが彼の世話をしたり訪問したりすることを禁じないよう指示した。 Acts 24:24 そして数日後,フェリクスはユダヤ人の妻であるドルシラと一緒に来て,パウロを呼び出し,彼からキリスト・イエスに関する信仰のことを聞いた。 Acts 24:25 彼が,義と自制と来ようとしている裁きについて論じていると,フェリクスは恐ろしくなって答えた,「今回は帰ってよい。都合のよい時があったら,また呼ぼう」。 Acts 24:26 一方では,パウロから釈放に対するお金をもらうことを望んでもいた。それで,彼をさらに何度も呼び出して,彼と話し合っていた。 Acts 24:27 さて,二年間が満ちると,フェリクスの後任としてポルキウス・フェストゥスが就いたが,フェリクスは,ユダヤ人たちの好意を得ようとして,パウロを拘禁したままにしておいた。
Acts 25:0 Acts 25:1 こうしてフェストゥスは,州に着いて三日後,カエサレアからエルサレムに上って行った。 Acts 25:2 すると,大祭司やユダヤ人たちのおもだった人々がフェストゥスにパウロを告発して懇願し, Acts 25:3 自分たちに好意を示して,彼をエルサレムに呼び出してくれるよう求めた。彼を途中で殺すことを企てていたのである。 Acts 25:4 しかしフェストゥスは,パウロはカエサレアに留置されているべきであり,自分も間もなくそこへ帰ることになっていると答えた。 Acts 25:5 「だから」と彼は言った,「お前たちのうちの有力者たちがわたしと共に下って行き,もしあの男に何か不正な点があれば,彼を告訴すればよい」。
Acts 25:6 彼らの間でさらに十日以上過ごしてから,カエサレアに下って行き,翌日,裁きの座に着いて,パウロを引き出すよう命じた。 Acts 25:7 彼が現われると,エルサレムから下って来たユダヤ人たちはその周りに立ち,多くの重い罪状を彼に着せたが,証明することはできなかった。 Acts 25:8 一方,彼は弁明して言った,「ユダヤ人たちの律法に対しても,神殿に対しても,カエサルに対しても,わたしは少しも罪を犯していません」。
Acts 25:9 ところがフェストゥスは,ユダヤ人たちの好意を得ようとして,パウロに答えてこう言った。「お前はエルサレムに上って行って,そこでこうした事柄についてわたしから裁判を受けたいと思うか」。
Acts 25:10 しかしパウロは言った,「わたしはカエサルの裁きの座の前に立っており,そこで裁判を受けるのが当然です。あなたもよくご承知のとおり,わたしはユダヤ人たちに対して何の不正も働いていません。 Acts 25:11 もしわたしが不正を働き,死に値する罪を犯したのであれば,死を拒みはしません。しかし,彼らがわたしを訴える事柄がどれ一つ本当でないなら,だれもわたしを彼らに引き渡すことはできません。わたしはカエサルに上訴します!」
Acts 25:12 そこでフェストゥスは,陪席の者たちと協議してから答えた,「お前はカエサルに上訴した。カエサルのもとに出頭せよ」。
Acts 25:13 さて,何日かたってから,王アグリッパとベルニケがカエサレアに到着し,フェストゥスを表敬訪問した。 Acts 25:14 彼が幾日もそこに滞在していたので,フェストゥスはパウロの件を王の前に持ち出してこう言った。「ここに,フェリクスが囚人として残していった一人の男がいます。 Acts 25:15 この者については,わたしがエルサレムにいた時に,祭司長たちやユダヤ人の長老たちが彼に対する有罪の判決を求めて,わたしに告発しました。 Acts 25:16 わたしは彼らに,被告人が告訴人たちに面と向かって,自分に着せられた事柄について弁明する機会が与えられないうちに,これを滅びに引き渡すというのは,ローマ人の慣習ではないと答えておきました。 Acts 25:17 それで,彼らがここに集まった時,わたしは時を移さず,翌日には裁きの座に着き,この男を引き出すよう命じました。 Acts 25:18 告訴人たちは立ち上がりましたが,彼らはわたしが思っていたような罪状は何も提示しませんでした。 Acts 25:19 ただ,彼との論争点は,彼ら自身の宗教に関すること,また,死んでしまったイエスに関することで,このイエスが生きていると,パウロは主張しているのです。 Acts 25:20 こうした事柄をどう審理すればいいのか途方にくれてしまったので,彼に,エルサレムに上って行って,そこでこれらの件について裁判を受ける気があるかどうか尋ねました。 Acts 25:21 ところがパウロは,皇帝の判決を受けるまでここにとどめて欲しいと上訴したので,わたしは,彼をカエサルのもとに送るまで,ここに留置しておくよう命じました」。
Acts 25:22 アグリッパはフェストゥスに言った,「わたしもその男の言うことを聞いてみたいものです」。
彼は言った,「明日,お聞きになれます」。
Acts 25:23 こうして,翌日,アグリッパとベルニケが大層飾り立てて到着し,司令官たちや町のおもだった者たちと共に謁見の場所に入ると,フェストゥスの命令により,パウロが引き出された。 Acts 25:24 フェストゥスが言った,「アグリッパ王,ならびにご出席の皆さん,ユダヤ人たちがこぞって,エルサレムでもここでも,これ以上生かしておいてはならないと叫んで,わたしに陳情してきたのは,ご覧になっているこの男のことです。 Acts 25:25 そして,彼が死に値する罪は何も犯していないことがわたしには分かりましたが,彼自身が皇帝に上訴したので,彼を送り届けることに決めました。 Acts 25:26 わたしには,彼についてわたしの主君に書き送ることが何もありません。そのため,彼をあなた方の前,とりわけアグリッパ王よ,あなたの前に引き出したのです。取り調べた後で,何か書くべきことを得るためです。 Acts 25:27 囚人を送り届けるのに,その者に対する罪状を示さないというのは,道理に合わないことに思えるからです」。
Acts 26:0 Acts 26:1 アグリッパはパウロに言った,「自分のために話してもよろしい」。
そこでパウロは手を差し伸べて弁明を始めた。 Acts 26:2 「アグリッパ王よ,わたしがユダヤ人たちから訴えられているすべての事柄について,今日,あなたの前で弁明できることをうれしく思います。 Acts 26:3 とりわけ,あなたはユダヤ人の間のあらゆる慣習や問題をよくご存じだからです。ですから,ご辛抱いただいて,わたしの言うことに耳を傾けていただけるようお願いします。
Acts 26:4 「実に,わたしが自分の民族の間やエルサレムではじめからしてきた,若いころからの生き方については,すべてのユダヤ人たちが知っていることです。 Acts 26:5 彼らは最初からわたしを知っているので,その気になれば,わたしが,わたしたちの宗教の中で最も厳格な派に従って,ファリサイ人として生活していたことを証言できるのです。 Acts 26:6 そして今,わたしがここに立って裁かれているのは,神がわたしたちの父祖たちにされた約束に対する希望のためなのです。 Acts 26:7 それは,わたしたちの十二部族が,夜も昼も熱烈に仕えて,実現を望んでいることです。この希望のことで,わたしはユダヤ人たちから訴えられているのです,アグリッパ王よ! Acts 26:8 神が死んだ者たちを起こされることを,なぜあなた方は信じられないこととされるのでしょうか。
Acts 26:9 「わたし自身,ナザレのイエスの名に反対して多くのことをするべきだと,何の疑いもなく考えていました。 Acts 26:10 そして,それをエルサレムで実行したのです。わたしは祭司長たちから権限を受けて,大勢の聖徒たちをろうやに閉じ込め,彼らが死に渡される時には,彼らに不利な票を投じました。 Acts 26:11 あらゆる会堂で何度も彼らを罰して,冒とくさせようとしました。彼らに対して激しく怒り狂い,外国の町々に行ってまで彼らを迫害したのです。
Acts 26:12 「このようにして,祭司長たちからの権限と委任とをもって,ダマスカスに旅をしていた時のこと, Acts 26:13 その途上で,真昼に,王よ,わたしは天からの光を見たのです。それは太陽よりも明るく輝いて,わたしや,わたしと一緒に旅をしていた人々の周りを照らしました。 Acts 26:14 わたしたちは地に倒れました。わたしは,『サウロ,サウロ,なぜわたしを迫害するのか。突き棒をけるのはあなたにとってつらいことだ』 と,ヘブライ語で自分に言う声を聞きました。
Acts 26:15 わたしは言いました,『主よ,あなたはどなたですか』。
その方は言われました,『わたしはイエス,あなたが迫害している者だ。 Acts 26:16 だが,起き上がって,自分の足で立ちなさい。わたしがあなたに現われたのは,あなたが見た事柄と,わたしがあなたに示そうとする事柄について,あなたを召使いまた証人に任命するためだからだ。 Acts 26:17 わたしは,あなたをこの民と異邦人たちの中から救い出し,改めて彼らのところに遣わす。 Acts 26:18 彼らの目を開いて,彼らを闇から光へ,サタンの権力から神のもとへと立ち返らせ,こうして彼らが,わたしに対する信仰によって,罪の許しを受け,聖別された人々と共に相続財産を受けるようになるためだ』
Acts 26:19 「そのようなわけで,アグリッパ王よ,わたしは天からの幻に背かず, Acts 26:20 ダマスカスの人々を初め,エルサレムやユダヤ地方全域で,さらに異邦人たちにまで,悔い改めて神に立ち返り,悔い改めにふさわしい業を行なうように伝えました。 Acts 26:21 そうした理由で,ユダヤ人たちはわたしを神殿で捕らえて,殺そうとしたのです。 Acts 26:22 こうして,わたしは神からの助けを得て,今日に至るまで変わらずに,小さな者にも大きな者にも証言し,預言者たちとモーセとが必ず起こると語ったことだけを述べてきました。 Acts 26:23 すなわち,キリストが苦しみを受けなければならないこと,また,彼が死んだ者たちの復活において最初の者となって,民にも異邦人たちにも光を宣明するということです」。
Acts 26:24 彼がこのように弁明していると,フェストゥスは大声で言った,「パウロ,お前は気が狂っている! 博学がお前を狂わせたのだ!」
Acts 26:25 しかし彼は言った,「わたしは気が狂ってはいません,フェストゥス閣下,真実で理性的な言葉を思い切ってお伝えしているのです。 Acts 26:26 王はこれらの事をよくご存じですから,王に対しても,わたしは率直に申し上げているのです。これらの事は片隅で行なわれたのではないのですから,王から隠されている事は何一つないと,わたしは確信しています。 Acts 26:27 アグリッパ王よ,預言者を信じておられますか。信じておられることを,わたしは知っています」。
Acts 26:28 アグリッパはパウロに言った,「お前はわずかな説得で,わたしをクリスチャンにしようというのか」。
Acts 26:29 パウロは言った,「わずかであろうと,多くであろうと,わたしが神に祈るのは,あなただけでなく,今日わたしの言葉を聞いているすべての方にも,このような鎖は別として,わたしのようになっていただきたいということなのです」。
Acts 26:30 王,および総督,ベルニケ,彼らと共に座っていた者たちは立ち上がった。 Acts 26:31 彼らは退場してから,互いに語り合って言った,「あの男は死や鎖に値することを何もしていない」。 Acts 26:32 アグリッパはフェストゥスに言った,「もしカエサルに上訴していなかったなら,あの男は釈放されただろうに」。
Acts 27:0 Acts 27:1 わたしたちがイタリアに向けて出航することが決まった時,人々は,パウロとほかの幾人かの囚人たちを,ユリウスという名の,アウグストゥスの部隊の百人隊長に引き渡した。 Acts 27:2 わたしたちは,アシア沿岸の各所に寄港することになっていたアドラミュティオンの船に乗り込んで,出航した。テサロニケのマケドニア人アリスタルコスも,わたしたちと共にいた。 Acts 27:3 翌日,わたしたちはシドンに寄港した。ユリウスはパウロを親切に扱い,友人たちのところに行って休憩することを許可した。 Acts 27:4 わたしたちはそこから出航したが,逆風だったので,キュプロスの島陰を航行した。 Acts 27:5 キリキアやパンフィリアの沖を航海して,リュキアの町ミュラに着いた。 Acts 27:6 ここで百人隊長は,イタリアに向けて航行しているアレクサンドリアの船を見つけて,わたしたちを乗り込ませた。 Acts 27:7 わたしたちは何日もの間のろのろと航海を続け,やっとのことでクニドスの沖まで来たが,風がわたしたちの進路を阻んだので,サルモネの沖を通ってクレタの島陰を航行した。 Acts 27:8 かろうじてその島に沿って航行し,ラセアの町に近い「美しい港」と呼ばれる所に着いた。
Acts 27:9 かなりの時が経過しており,すでに断食が過ぎていて航海がもはや危険であったので,パウロは人々に忠告して, Acts 27:10 彼らに言った,「皆さん,わたしの見るところでは,この航海は積み荷や船体ばかりでなく,わたしたちの命にまで損傷や多大な損失をもたらすことになるでしょう」。 Acts 27:11 ところが百人隊長は,パウロの語ったことよりも,船長や船主のほうに信頼を置いた。 Acts 27:12 この港は冬を越すのに適していなかったので,大多数の者は,そこから海に出て,できれば何とかしてフェニクスまで行き,そこで冬を越すようにと勧めた。そこはクレタの港町で,北東と南東に面している。
Acts 27:13 穏やかな南風が吹いてきたので,人々は自分たちの目的が達成できるものと思い,錨を上げ,クレタの海岸に沿って航行した。 Acts 27:14 しかし間もなく,ユーラキュロンと呼ばれる大暴風が陸のほうから吹き下ろしてきた。 Acts 27:15 船が巻き込まれ,風に向かって進むことができなくなったので,わたしたちは流されるに任せた。 Acts 27:16 クラウダと呼ばれる小島の陰を通ったので,わたしたちはやっとのことで小舟をつなぎ留めることができた。 Acts 27:17 人々はそれを引き上げてから,太綱を用いて船体を補強した。シュルティスの砂州に乗り上げるのを恐れて,海錨を降ろし,こうして流されるままとなった。 Acts 27:18 わたしたちはあらしに激しく揺られたので,翌日,人々は荷物を海に投げ込み始めた。 Acts 27:19 三日目には船具を自分たちの手で投げ捨てた。 Acts 27:20 何日もの間,太陽も星もわたしたちの上に輝かず,激しい大あらしがわたしたちの上に荒れ狂い,わたしたちが助かる望みはついに消え失せた。
Acts 27:21 人々は長いこと食事を取っていなかった。その時,パウロは彼らの真ん中に立ち,こう言った。「皆さん,あなた方はわたしの言葉を聞き入れて,クレタから出航せず,このような損傷や損失を被らないようにするべきでした。 Acts 27:22 しかし今,わたしはあなた方に元気を出すよう勧めます。船は失いますが,あなた方のうちで命を失う者はいないからです。 Acts 27:23 というのは,わたしが身をささげて仕えている神からのみ使いが,昨夜わたしのそばに立って, Acts 27:24 こう言ったからです。『パウロよ,恐れてはいけない。あなたはカエサルの前に立たなければならない。見よ,神は,あなたと共に航海しているすべての者を,あなたに授けられたのだ』。 Acts 27:25 ですから,皆さん,元気を出しなさい! わたしは神を信じているからです。わたしに語られたことはその通りになる,と。 Acts 27:26 それで,わたしたちは必ずどこかの島に打ち上げられることになるでしょう」。
Acts 27:27 さて,十四日目の夜になって,わたしたちがアドリア海を漂流していると,真夜中ごろ,船員たちは,自分たちがどこかの島に近づいていると感づいた。 Acts 27:28 水深を測ってみると,二十ひろであった。少し進んだ後,もう一度測ってみると,十五ひろであった。 Acts 27:29 岩場にわたしたちが乗り上げることを恐れて,人々は船尾から四つの錨を降ろし,夜明けを待ち望んだ。 Acts 27:30 船員たちは船から逃げ出そうとし,船首から錨を降ろすふりをして,小舟を海に降ろしていた。 Acts 27:31 パウロは百人隊長や兵士たちに言った,「あの人たちが船にとどまっていなければ,あなた方は助かりません」。 Acts 27:32 そこで兵士たちは綱を断ち切って,小舟を下に落とした。
Acts 27:33 夜が明けるころ,パウロはみんなに食事を取るよう懇願して,こう言った。「あなた方はずっと待っていて,食事もせず,何も取らずに,今日で十四日目になります。 Acts 27:34 ですから,わたしはあなた方に食事を取るよう懇願します。あなた方の安全のためです。あなた方のうちのどの頭からも,髪の毛一本さえ滅びることはないからです」。 Acts 27:35 こう言ってから,パンを取り,みんなの前で神に感謝をささげてから,それを裂き,食べ始めた。 Acts 27:36 そこで,みんなは元気づき,彼らも食事を取った。 Acts 27:37 わたしたち船にいた魂は,合計二百七十六人であった。 Acts 27:38 人々は十分に食べてから,小麦を海に投げ込んで,船を軽くした。 Acts 27:39 朝になると,陸地は分からなかったが,浜辺のある入り江に気づき,そこに船を乗り入れることにした。 Acts 27:40 錨を捨てて海に沈め,同時にかじの綱をほどいた。風に船首の帆をあげて,浜辺に向かって進んだ。 Acts 27:41 ところが,二つの海に挟まれた所に来ると,人々は船をそこに乗り上げてしまった。船首はめり込んで動かなくなり,船尾は激しい波で壊れ始めた。
Acts 27:42 兵士たちは,囚人たちを殺して,だれも泳いで逃げることのないようにしようと相談した。 Acts 27:43 しかし,百人隊長はパウロを助けたいと思い,その計画を妨げた。そして,泳げる者たちがまず船から飛び込んで陸に向かうようにと命じ, Acts 27:44 残りの者には,厚板や,そのほかの船からのものにつかまって来るようにと命じた。こうして,みんなが無事に陸に逃れたのである。
Acts 28:0 Acts 28:1 わたしたちが逃れたとき,人々はこの島がマルタと呼ばれていることを知った。 Acts 28:2 現地人たちは,わたしたちに並々ならない親切を示してくれた。雨が降り出して寒かったので,たき火をして,わたしたち全員を迎えてくれたのである。 Acts 28:3 さて,パウロが一束の木切れを集めて火にくべていると,熱気のために一匹のマムシが出て来て,彼の手に絡みついた。 Acts 28:4 現地人たちは,彼の手からぶら下がっているこの生き物を見ると,互いに言い合った,「きっとこの男は人殺しだ。海からは逃れたが,正義が彼を生かしておかないのだ」。 Acts 28:5 ところが,彼はその生き物を火の中に振り落として,何の害も受けなかった。 Acts 28:6 それでも彼らは,彼がはれ上がるか,急に倒れて死ぬだろうと思っていた。しかし,長いあいだ様子をうかがっても,彼に何も起こらないので,彼らは考えを変え,彼のことを神だと言った。
Acts 28:7 この場所の近くに,島の長官でプブリウスという人の所有地があった。彼はわたしたちを迎えて,三日のあいだ手厚くもてなしてくれた。 Acts 28:8 その時,プブリウスの父が熱病と赤痢で床についていた。パウロは彼のところに入って行って祈り,両手を彼の上に置いていやした。 Acts 28:9 このことがあってから,その島でほかに疾患のある人たちもやって来て,治してもらった。 Acts 28:10 彼らはまた,わたしたちに数々の敬意を示し,出航の時には,必要な物をいろいろと積み込んでくれた。
Acts 28:11 三か月後,わたしたちはこの島で冬を越したアレクサンドリアの船に乗って出航した。この船は「双子の兄弟」を船印としていた。 Acts 28:12 わたしたちはシュラクサに寄港し,そこで三日間滞在した。 Acts 28:13 そこからずっと回って,レギウムに着いた。一日たつと,南風が起こったので,二日でポテオリにやって来た。 Acts 28:14 ここで兄弟たちを見つけ,請われるままに七日間滞在した。こうして,わたしたちはローマに着いた。 Acts 28:15 兄弟たちがわたしたちのことを聞いて,ローマから「アピウスの市場」と「三軒宿」まで迎えに来てくれた。パウロは彼らを見て,神に感謝し,勇気づけられた。 Acts 28:16 わたしたちがローマに入った時,百人隊長は囚人たちを守備隊長に引き渡したが,パウロは一人の番兵をつけられ,自分だけで住むことを許された。
Acts 28:17 三日後,パウロはユダヤ人の指導者たちを招いた。彼らが集まった時,彼は彼らに言った,「兄弟たち,わたしは,民に対しても,わたしたちの父祖たちの慣習に対しても,何一つ背くことはしていないのに,エルサレムから囚人としてローマ人たちの手に引き渡されてしまいました。 Acts 28:18 彼らはわたしを取り調べたのち,死刑にする理由が何もなかったので,わたしを釈放しようと思いました。 Acts 28:19 しかし,ユダヤ人たちが反対したので,わたしはやむを得ずカエサルに上訴したのです。何か自分の民族を訴えようとしたのではありません。 Acts 28:20 このようなわけで,わたしはあなた方に会って話し合いたいとお願いしたのです。わたしは,イスラエルの希望のために,この鎖につながれているからです」。
Acts 28:21 彼らは彼に言った,「わたしたちはあなたについて,ユダヤから何の手紙も受け取っていないし,ここに来た兄弟たちのだれかが,あなたについて悪いことを報告したり話したりしているわけでもない。 Acts 28:22 それでも,あなたが考えていることをあなたから聞きたいと思う。この分派については,至る所で反対されていることが,わたしたちに知れているのだから」。
Acts 28:23 彼らは彼と日を取り決めて,大勢で彼の宿舎にやって来た。彼は朝から晩まで彼らに説明を続けて,神の王国について証言し,モーセの律法と預言者たちとの中から,イエスについて彼らを説得した。 Acts 28:24 ある者は話された事柄を信じたが,ある者は信じようとしなかった。 Acts 28:25 彼らが互いに意見の一致を見ないままに立ち去ろうとした時,パウロは一言こう言った。「聖霊は預言者イザヤを通して,わたしたちの父祖たちに正確に語って Acts 28:26 こう言われました。
『この民のところに行って告げよ,あなた方は聞くには聞くが,決して理解しないだろう。見るには見るが,決して分からないだろう。 Acts 28:27 この民の心は無感覚になり,耳は聞くことに鈍くなり,目は閉じてしまった。それは,彼らが目で見,耳で聞き,心で理解し,こうして立ち返って,わたしが彼らをいやす,ということのないためだ』。 Acts 28:28 ですから,あなた方は知っておいてください。神のこの救いは異邦人たちに送られたのです。彼らも聞き従うでしょう」。
Acts 28:29 彼がこれらの言葉を語ると,ユダヤ人たちは大いに論じ合いながら立ち去った。
Acts 28:30 パウロは,自分の借りた家にまる二年間住んで,自分のもとに来る人たちをみな迎え入れ, Acts 28:31 神の王国を宣教し,あらん限りの大胆さをもって,妨げられることなく,主イエス・キリストに関する事柄を教え続けた。
Hebrews 0:0
Hebrews 1:0 Hebrews 1:1 神は,過去には,多くの場合に,またさまざまな方法で,預言者たちを通して父祖たちに語られましたが, Hebrews 1:2 これらの日々の終わりには,み子によってわたしたちに語られました。神は彼をすべてのものの相続人と定め,彼を通してもろもろの世界を造られました。 Hebrews 1:3 み子はその方の栄光の輝き,その方の実体の生き写しであって,すべてのものをご自分の力ある言葉によって支えておられます。ご自身でわたしたちのための罪の清めを行なったのち,高い所で荘厳な方の右に座られました。 Hebrews 1:4 み使いたちよりも優れた名を受け継いで,それだけ彼らにまさる者となられました。 Hebrews 1:5 というのは,神はかつて,み使いたちのだれにこう言われたでしょうか。 「あなたはわたしの子,わたしは今日あなたの父となった」。
または,こう言われたでしょうか。
「わたしは彼の父となり,彼はわたしの子となるだろう」。 Hebrews 1:6 さらに,この初子をこの世に連れ入れる時には,こう言われます。「神のみ使いたちはみな,彼を拝め」。 Hebrews 1:7 み使いたちについては,こう言われます。
「そのみ使いたちを風にし,その召使いたちを火の炎とされる方」。 Hebrews 1:8 一方,み子については,こう言われます。
「神よ,あなたのみ座は限りなく,あなたの王国の笏は廉直の笏。 Hebrews 1:9 あなたは義を愛し,不法を憎んだ。それゆえに,神,あなたの神は,喜びの油をあなたの仲間にまさってあなたに注がれた」。 Hebrews 1:10 また,
「主よ,あなたははじめに地の基礎を置かれました。もろもろの天はあなたのみ手の業です。 Hebrews 1:11 それらは滅びることになりますが,あなたはとどまっておられます。それらはみな外衣のように古くなるでしょう。 Hebrews 1:12 あなたは外とうのようにそれらを巻かれます。それらは取り替えられることになりますが,あなたは同じであられます。あなたの年が尽きることはありません」。 Hebrews 1:13 しかし,神はかつて,み使いたちのだれにこう言われたでしょうか。
「わたしの右に座っていなさい,わたしがあなたの敵たちをあなたの足台とするまで」。 Hebrews 1:14 彼らはみな仕える霊であって,救いを受け継ぐ人たちに奉仕するために遣わされたのではありませんか。
Hebrews 2:0 Hebrews 2:1 それゆえ,わたしたちは聞いた事柄にいっそう注意を払わなければなりません。そうでないと,わたしたちは押し流されてしまうかも知れません。 Hebrews 2:2 というのは,み使いたちを通して語られた言葉が堅く保証され,すべての違反と不従順が当然の報いを受けたのであれば, Hebrews 2:3 わたしたちは,これほど大きな救いをないがしろにした場合,どうして逃れることができるでしょうか。この救いは最初に主を通して語られ,聞いた人たちによってわたしたちのために確証され, Hebrews 2:4 神も,しるしと不思議,さまざまな力ある業,またご自分のご意志に従って聖霊の贈り物を分け与えることにより,彼らと共に証言されたのです。 Hebrews 2:5 というのは,その方は,わたしたちが語っている来たるべき世を,み使いたちに服させることはされなかったからです。 Hebrews 2:6 むしろ,ある人がある箇所で証言して,こう言っています。
「人間は何者なのですか,あなたがそれに思いを留められるとは。また,人の子は何者なのですか,あなたがそれを心にかけてくださるとは。 Hebrews 2:7 あなたは彼をしばらくの間み使いたちよりも低い者とされ,彼に栄光と誉れを冠として与えられました。 Hebrews 2:8 すべてのものを彼の足の下に服従させられました」。
その方は,すべてのものを彼に服させられたのですから,彼に服さないものは一つも残されなかったのです。それなのに,わたしたちはすべてのものが彼に服しているのをまだ見ていません。 Hebrews 2:9 ただ,しばらくの間み使いたちよりも低くされた方であるイエスが,死の苦しみのゆえに,栄光と誉れを冠として与えられたのを見ています。それは,神の恵みによって,彼がすべての人のために死を味わわれるためでした。 Hebrews 2:10 というのは,多くの子らを栄光に至らせるにあたって,彼らの救いの創始者を数々の苦しみを通して完成させることは,すべてのものがその方のために存在し,またすべてのものがその方を通して存在しているその方にふさわしいことであったのです。 Hebrews 2:11 実に,聖別する方も聖別される人たちも,みな一人の方から出ているからです。そのために彼は,彼らを兄弟たちと呼ぶことを恥とはされず, Hebrews 2:12 こう言っておられます。
「わたしはあなたのみ名をわたしの兄弟たちに知らせます。会衆の中であなたの賛美を歌います」。 Hebrews 2:13 また,「わたしはその方に信頼を置きます」。また,「見よ,わたしと,神がわたしに与えてくださった子供たちがここにいる」。 Hebrews 2:14 それで,子供たちは肉と血とにあずかっているので,彼自身も同じようにその同じものを共にされました。それは,ご自分の死を通して,死の力を持つ者,すなわち悪魔を無に至らせ, Hebrews 2:15 死についての恐れのために生涯にわたって束縛を受けていた者たちを,みな解放するためでした。 Hebrews 2:16 確かに,彼はみ使いたちを助けるのではなく,アブラハムの子孫を助けてくださるからです。 Hebrews 2:17 それで,彼はすべてのことにおいて自分の兄弟たちと同じようになる義務がありました。それは,民の罪をあがなうために,神に関わる事柄において恵み深い忠実な大祭司となるためでした。 Hebrews 2:18 というのは,彼自身,誘惑に遭って苦しみを受けられたからこそ,誘惑に遭っている人たちを助けることができるのです。
Hebrews 3:0 Hebrews 3:1 それゆえ,聖なる兄弟たち,天の召しにあずかっている人たちよ,わたしたちが告白する使徒また大祭司であるイエスのことをよく考えなさい。 Hebrews 3:2 彼は自分を任命した方に忠実であられました。モーセもその方の家全体にあってそうであったのと同じです。 Hebrews 3:3 彼はモーセよりも大きな栄光にふさわしいとみなされました。家を建てた人は家よりも大きな誉れを受けるからです。 Hebrews 3:4 家はすべてだれかによって造られますが,すべてのものを造られたのは神なのです。 Hebrews 3:5 確かにモーセはその方の家全体にあって召使いとして忠実でした。それは,将来語られる事柄について証言するためでした。 Hebrews 3:6 しかし,キリストはその方の家を治めるみ子として忠実でした。わたしたちが確信と希望による誇りとを終わりまでしっかりと堅く保つなら,わたしたちこそその方の家なのです。 Hebrews 3:7 それゆえ,聖霊が次のように言っているとおりです。
「今日,あなた方はその方の声を聞くなら, Hebrews 3:8 荒野での試練の日のように,自分たちの心をかたくなにして,挑発してはいけない。 Hebrews 3:9 その場所であなた方の父祖たちは試みをもってわたしを試し,四十年間わたしの業を目にした。 Hebrews 3:10 それでわたしはこの世代に腹を立ててこう言った,『彼らはいつもその心のうちに迷っている。彼らはわたしの道を知らなかった』。 Hebrews 3:11 わたしは激しい怒りのうちに誓った,『彼らがわたしの安息に入ることはない』」。 Hebrews 3:12 兄弟たち,あなた方のうちのだれも,不信仰な悪い心を抱いて生ける神から離れることがないよう,用心しなさい。 Hebrews 3:13 むしろ,「今日」と呼ばれている間じゅう,あなた方のうちのだれも罪の欺きによってかたくなになることのないよう,日ごとに互いに勧め合いなさい。 Hebrews 3:14 というのは,初めの確信を終わりまでしっかりと堅く保つなら,わたしたちはキリストにあずかる者となっているのです。 Hebrews 3:15 ただし,次のように言われている間のことです。
「今日,あなた方はその方の声を聞くなら,自分たちの心をかたくなにして,挑発してはいけない」。 Hebrews 3:16 というのは,聞いていながら反逆したのはいったいだれでしたか。そうです,モーセによってエジプトから出て来たすべての者たちではありませんでしたか。 Hebrews 3:17 その方が四十年間立腹されたのはだれに対してでしたか。罪を犯して,その死体が荒野に倒れた者たちではありませんでしたか。 Hebrews 3:18 その方がご自分の安息に入らせないと誓われたのは,不従順な者たち以外のだれに対してでしたか。 Hebrews 3:19 こうしてわたしたちは,彼らが入れなかったのは不信仰のゆえであったことに気づきます。
Hebrews 4:0 Hebrews 4:1 それゆえ,その方の安息に入るという約束が残されているのに,あなた方のうちのだれかがそれに達していないと思えるようなことのないように気遣いましょう。 Hebrews 4:2 わたしたちは自分たちに宣教された良いたよりを持っているからです。それは彼らも同じことですが,聞いた言葉は彼らの益になりませんでした。聞いた人たちと信仰によって結び付かなかったからです。 Hebrews 4:3 信じたわたしたちはその安息に入るのです。その方が,「わたしは激しい怒りのうちに誓った,彼らがわたしの安息に入ることはない」と言われたとおりです。しかも,み業は世の基礎が据えられて以来,すでに仕上がっていたのです。 Hebrews 4:4 ある箇所で七日目についてこう言っておられるからです。「神は七日目にそのすべての業を休んだ」。 Hebrews 4:5 そしてこの箇所で再び,「彼らがわたしの安息に入ることはない」と言われています。
Hebrews 4:6 それゆえ,それに入る者たちが残されており,先に良いたよりを宣教された者たちは不従順のゆえに入らなかったので, Hebrews 4:7 その方はある日を再び今日と定めて,(すでに言われているとおり)長い期間の後でダビデを通して次のように言われたのです。
「今日,あなた方はその方の声を聞くなら,自分たちの心をかたくなにしてはいけない」。 Hebrews 4:8 もしヨシュアが彼らに安息を与えていたのであれば,その方は後になって別の日について語られることはなかったでしょう。 Hebrews 4:9 それゆえ,神の民には安息日の休みが残されています。 Hebrews 4:10 というのは,その方の休みに入った者は,神がみ業を休まれたように,自らも自分の業を休んだからです。 Hebrews 4:11 ですから,その安息に入るために励みましょう。だれかが同じ不従順の例にならって堕落するようなことのないためです。 Hebrews 4:12 というのは,神の言葉は生きていて,活発であり,あらゆる両刃の剣よりも鋭く,魂と霊,また関節と骨髄とを切り分けるほどに刺し通し,心の思いと意向とを見分けることができるのです。
Hebrews 4:13 その方のみ前に隠されている被造物は一つもなく,すべてのものはその方の目には裸であり,さらけ出されています。わたしたちはその方に対してことを果たさなければなりません。 Hebrews 4:14 それでは,もろもろの天を通り抜けられた偉大な大祭司,神の子イエスがおられるのですから,わたしたちの告白を堅く保ちましょう。 Hebrews 4:15 わたしたちの大祭司は,わたしたちの弱さを思いやることのできない方ではなく,罪を別にすれば,すべての点でわたしたちと同じように誘惑を受けられた方なのです。 Hebrews 4:16 ですから,わたしたちは,あわれみを受けるため,また必要な時に助けとなる恵みを見いだすために,大胆さをもって恵みのみ座に近づきましょう。
Hebrews 5:0 Hebrews 5:1 なぜなら,大祭司はすべて人間たちの中から選び取られ,人間たちのため,神に関する事柄について任命されるからです。それは,罪のための供え物と犠牲とをささげるためです。 Hebrews 5:2 大祭司は,無知で迷っている者たちを穏やかに扱うことができます。自分自身も弱さにまとわれているからです。 Hebrews 5:3 そのゆえに,民のためだけではなく自分自身のためにも罪のための犠牲をささげなければなりません。 Hebrews 5:4 だれもこの栄誉を自分で得ることはなく,アロンもそうであったとおり,神から召されて受けるのです。 Hebrews 5:5 同じようにキリストも,大祭司になる栄光を自分で得られたのではなく,彼に対して次のように言われた方がその栄光をお与えになったのです。
「あなたはわたしの子。わたしは今日あなたの父となった」。 Hebrews 5:6 別の箇所でもこう言われているとおりです。
「あなたは永久にメルキゼデクの位に等しい祭司」。 Hebrews 5:7 彼は肉体でおられた日々,自分を死から救うことのできる方に,強い叫びと涙をもって祈りと請願をささげ,その信心深い恐れのゆえに聞き入れられました。 Hebrews 5:8 彼はみ子であったにもかかわらず,お受けになった数々の苦しみから従順を学ばれました。 Hebrews 5:9 こうして完成させられて,ご自分に従う者たちすべてに対して永遠の救いの創始者となり, Hebrews 5:10 神によってメルキゼデクの位に等しい大祭司と名付けられたのです。 Hebrews 5:11 彼については,わたしたちには言いたいことがたくさんありますが,説明するのが困難です。あなた方が,聞くことに関して鈍くなっているからです。 Hebrews 5:12 あなた方は,時間の点からすれば教師になっているはずなのに,神の託宣の初歩的な基礎原理をだれかに教わることが,再び必要になっています。固い食物ではなく乳を必要とするようになっています。 Hebrews 5:13 というのは,乳によって生きている者はみな,赤子であるため,義の言葉に熟達していないのです。 Hebrews 5:14 一方,固い食物は,十分に成長した人々,すなわち,良いことと悪いことを見分けるために,使うことによって訓練された感覚を持っている人々のものです。
Hebrews 6:0 Hebrews 6:1 ですから,わたしたちは,キリストについての初歩的な原理は後にして,完成へと押し進むことにし,次のような基礎を再び据えることはやめましょう。すなわち,死んだ業からの悔い改め,神に対する信仰, Hebrews 6:2 数々のバプテスマについての教え,手を置くこと,死んだ者たちの復活,そして永遠の裁きなどに関することです。 Hebrews 6:3 神が許してくださるなら,わたしたちはこのことを行なうでしょう。 Hebrews 6:4 というのは,いったん啓発を受け,天からの贈り物を味わい,聖霊にあずかる者となり, Hebrews 6:5 神の良い言葉と来たるべき世の力を味わっておきながら, Hebrews 6:6 その後で離れ落ちる者たちについては,彼らを再び悔い改めに立ち返らせるのは不可能なのです。神の子を自分たちで再びはりつけにして,彼を公の恥辱にさらしているからです。 Hebrews 6:7 というのは,土地が,その上にたびたび降って来る雨を吸い込み,それを耕している人たちに役立つ作物を生み出すなら,神からの祝福を受けますが, Hebrews 6:8 イバラやアザミを生じるなら,それは退けられ,のろいに近づいており,その終わりには焼かれてしまいます。
Hebrews 6:9 しかし,愛する者たちよ,わたしたちはこのように語ってはいても,あなた方については,もっと良い事柄,また救いに伴う事柄があると確信しています。 Hebrews 6:10 というのは,神は不義な方ではないので,あなた方の業や,あなた方が聖徒たちに仕え,また今も仕えていることによってみ名に示した愛の骨折りとを忘れることはされないからです。 Hebrews 6:11 わたしたちは,あなた方ひとりひとりが,終わりに至るまで十分な希望を保つため,その同じ勤勉さを示して欲しいと思います。 Hebrews 6:12 それは,あなた方が不活発になったりせず,約束を信仰と忍耐とによって受け継ぐ人たちの模倣者となるためです。 Hebrews 6:13 神はアブラハムに約束されたとき,ご自分より偉大な者にかけて誓うことができなかったので,ご自身にかけて誓い, Hebrews 6:14 「わたしは必ずあなたを祝福し,必ずあなたを殖やすだろう」と言われたのです。 Hebrews 6:15 こうしてアブラハムは,辛抱強く耐え忍んだのち,約束のものを獲得しました。 Hebrews 6:16 というのは,実際,人間たちは自分より偉大な者にかけて誓うのであって,その誓いは確証となってあらゆる論争に決着をつけます。 Hebrews 6:17 このように神は,約束の相続人たちにご自分の考えの不変性をさらに豊かに示そうと決めると,誓いによって介入されたのです。 Hebrews 6:18 それは,自分の前に置かれた希望をつかもうとして避難所に逃れて来たわたしたちが,神が偽ることのできない二つの不変の事柄によって,力強い励ましを得るためでした。 Hebrews 6:19 その希望を,わたしたちは魂の錨,確実でしっかりした希望,また垂れ幕の内側に入って行くものとして持っています。 Hebrews 6:20 そこへは先駆者であるイエスがわたしたちのために入り,永久にメルキゼデクの位に等しい大祭司となられたのです。
Hebrews 7:0 Hebrews 7:1 というのは,このメルキゼデク,すなわちサレムの王,いと高き神の祭司,王たちを撃滅して戻って来たアブラハムを迎えて祝福した人, Hebrews 7:2 アブラハムがすべての物の十分の一を分け与えた人ですが(その名を解釈すれば,第一に義の王であり,次いでサレムの王すなわち平和の王であって, Hebrews 7:3 父もなく,母もなく,系図もなく,日々の初めもなければ命の終わりもなく,神の子に似せられています),この人はずっと祭司のままです。 Hebrews 7:4 さあ,この人がどれほど偉大であったかをよく考えなさい。族長のアブラハムでさえ,彼には最上の戦利品の中から十分の一を与えたのです。 Hebrews 7:5 確かに,レビの子らのうち祭司職を受ける人々は,民から,すなわち彼らの兄弟たちの中から,同じアブラハムの腰から出て来た者たちであるにもかかわらず,十分の一税を取るよう,律法によっておきてを与えられています。 Hebrews 7:6 ところが,彼らの系統に属さないこの人が,アブラハムから十分の一税を取って,約束を受けている彼を祝福したのです。 Hebrews 7:7 さて,より劣った者がより優れた者から祝福を受けるということは,議論の余地のないことです。 Hebrews 7:8 一方では死ぬ人々が十分の一税を受けていますが,他方では生きていると証言されている人が十分の一税を受けているのです。 Hebrews 7:9 それで,十分の一税を受けるレビさえも,アブラハムを通して十分の一税を支払ったと言えます。 Hebrews 7:10 メルキゼデクがアブラハムを迎えたとき,レビはまだ自分の父祖の腰にいたからです。 Hebrews 7:11 ところで,もしレビの祭司職を通して完全にすることがあったとすれば(民はそのもとで律法を受けたのですが),どうしてこれ以上,アロンの位に等しいと呼ばれず,むしろメルキゼデクの位に等しい別の祭司が立てられる必要があるでしょうか。 Hebrews 7:12 というのも,祭司職が変えられると,律法にも変更が必要になるのです。 Hebrews 7:13 これらのことで言及されている方は別の部族に属しているのであり,その部族からはだれも祭壇での職務を行なってはきませんでした。 Hebrews 7:14 なぜなら,わたしたちの主がユダ,すなわちモーセが祭司職については何も語らなかった部族から出たことは明らかだからです。 Hebrews 7:15 このことは,メルキゼデクに似た別の祭司が立てられるなら,ますます明らかになります。 Hebrews 7:16 その方は,肉的なおきての律法によらず,終わりのない命の力によって立てられました。 Hebrews 7:17 次のように証言されているからです。
「あなたは永久にメルキゼデクの位に等しい祭司」。 Hebrews 7:18 というのは,先行のおきてはその弱さと無益さのゆえに廃止されますが Hebrews 7:19 (律法は何をも完全にしなかったからです),その結果さらに優れた希望がもたらされたからです。それを通してわたしたちは神に近づいているのです。 Hebrews 7:20 なぜなら,彼は誓いによらずに祭司になったのではなく Hebrews 7:21 (実際,人々は誓いなしで祭司になっているのですが),自分について次のように言われる方による誓いによっていたからです。
「主はこう誓われた。そしてその思いを変えることはされない。『あなたは永久にメルキゼデクの位に等しい祭司』」。 Hebrews 7:22 このようにして,イエスはより優れた契約の保証となられました。 Hebrews 7:23 実際,人々は職務にとどまることを死によって阻まれるので,多くの人々が祭司になってきました。 Hebrews 7:24 しかし,彼は永久に生きているので,不変の祭司職を持っておられます。 Hebrews 7:25 それゆえ,彼はまた,ご自分を通して神に近づく者たちを完全に救うことができます。常に生きていて,彼らのために仲裁をしてくださるからです。
Hebrews 7:26 というのは,このような大祭司,神聖であり,罪もなく,汚れもなく,罪人たちから引き離されており,もろもろの天よりも高くなられた方こそ,わたしたちに適していたのです。 Hebrews 7:27 彼は,あの大祭司たちのように,最初に自分自身の罪のために,次いで民の罪のために,日ごとに犠牲をささげる必要はありません。ご自身をささげた時,ただ一度だけこのことを行なわれたからです。 Hebrews 7:28 なぜなら,律法は弱さを持つ人間たちを大祭司として任命しますが,律法の後に来た誓いの言葉は,永久に完成されているみ子を任命するからです。
Hebrews 8:0 Hebrews 8:1 さて,わたしたちが述べてきた事柄の要点は,わたしたちにはこのような大祭司がおられるということです。その方は,天において荘厳な方のみ座の右に座られた方で, Hebrews 8:2 聖所の,また人間ではなく主が立てられた本物の幕屋の奉仕者です。 Hebrews 8:3 というのは,すべての大祭司は供え物と犠牲とをささげるために任命されるからです。それで,この大祭司も何かささげるものを持っておられることが必要です。 Hebrews 8:4 それで,もし彼が地上におられたなら,祭司ではなかったでしょう。地上には,律法に従って供え物をささげる祭司たちがいるからです。 Hebrews 8:5 彼らは天にあるものの写しと影とに仕えています。それは,モーセが幕屋を造ろうとしていた時,神から告げられたとおりです。その方は,「さあ,山であなたに示された型に従って,すべてのものを造りなさい」と言われたのです。 Hebrews 8:6 しかし今,わたしたちの大祭司は,さらに優れた奉仕の務めを獲得しておられます。それは,よりまさった約束に基づいて制定された,よりまさった契約の仲介者ともなられたことによります。 Hebrews 8:7 というのは,あの最初の契約に欠点がなかったなら,第二のものが求められる余地はなかったことでしょう。 Hebrews 8:8 彼らに欠点を見いだして,こう言われるからです。
「見よ,その日々がやって来る」と,主は言われる。「そのとき,わたしはイスラエルの家およびユダの家と新しい契約を結ぶことになる。 Hebrews 8:9 それは,その手を取って彼らの父祖たちをエジプトの地から導き出した日に,わたしが彼らと結んだ契約によるものではない。彼らはわたしの契約のうちにとどまらず,わたしは彼らを無視したからだ」と,主は言われる。 Hebrews 8:10 「これこそ,わたしがイスラエルの家と結ぶ契約だ。それらの日々ののちに」と,主は言われる。「わたしは自分の律法を彼らの思いの中に置き,それを彼らの心の上に書きつけることになる。わたしは彼らの神となり,彼らはわたしの民となるだろう。 Hebrews 8:11 彼らが,それぞれ自分の仲間の市民に,それぞれ自分の兄弟に教えて,『主を知れ』と言うことは決してない。最も小さな者から最も大きな者に至るまで,すべての者がわたしを知るようになるからだ。 Hebrews 8:12 わたしは,彼らの不義に対してあわれみ深い者となるからだ。彼らの罪や不法な行ないをもはや思い出すことはないだろう」。 Hebrews 8:13 「新しい契約」と言われることによって,最初のものを古いものとされました。そして,古いものとされて年を経たものは,消滅に近づいているのです。
Hebrews 9:0 Hebrews 9:1 ところで,最初の契約にも,神的な奉仕の法令と地上の聖所とがありました。 Hebrews 9:2 すなわち,幕屋が設けられたのです。第一の区画には,燭台と食卓と供えのパンがあり,聖なる場所と呼ばれていました。 Hebrews 9:3 第二の垂れ幕の後ろには至聖所と呼ばれる幕屋がありました。 Hebrews 9:4 そこには金の香の祭壇と,全面を金で覆われた契約の箱があり,その箱の中にはマンナを入れた金のつぼ,芽を出したアロンのつえ,そして契約の書き板がありました。 Hebrews 9:5 また,その上には,あわれみの座を影で覆っている栄光のケルビムがありました。しかしわたしたちは今,こうしたことの詳細を述べるわけにはゆきません。 Hebrews 9:6 さて,これらの物がこのように設けられると,第一の幕屋の中には,祭司たちが務めを果たすために絶えず入って行きますが, Hebrews 9:7 第二の区画には年に一度,大祭司だけが入って行くのであり,それも,自分自身のため,また民の過失のためにささげる血を携えないで行くことはありません。 Hebrews 9:8 聖霊はこのことを,すなわち,第一の幕屋がなお立っている間は,聖なる場所への道がまだ現わされてはいなかったことを示しています。 Hebrews 9:9 この第一の幕屋は今の時代の象徴です。そこでは供え物や犠牲がささげられますが,崇拝者を良心の面で完全にすることができません。 Hebrews 9:10 それらは,改革の時まで課せられている,(食べ物や飲み物やさまざまな洗いに関する)肉的な法令に過ぎないのです。
Hebrews 9:11 しかし,キリストは,来たるべき善い事柄の大祭司として来られたとき,手で造ったのではない,つまり,この創造界に属さない,より偉大で,より完全な幕屋を通り, Hebrews 9:12 ヤギや子牛の血ではなく,ご自身の血を通して,ただ一度だけ聖なる場所に入り,永遠の請け戻しを獲得されたのです。 Hebrews 9:13 汚れてしまった者たちに振りかけられる,ヤギや雄牛の血また若い雌牛の灰が,彼らを肉の清さのために聖別するのであれば, Hebrews 9:14 まして,永遠の霊によって,自らを汚点のないものとして神にささげたキリストの血は,あなた方を生ける神に仕えさせるために,あなた方の良心を死んだ業からどれほど清めてくれることでしょうか。 Hebrews 9:15 このようなわけで,彼は新しい契約の仲介者です。それは,最初の契約のもとでの数々の違反を請け戻すために一つの死が生じたことにより,召された者たちが,約束された永遠の相続財産を受けられるようにするためです。 Hebrews 9:16 というのは,遺言状のあるところには,それを残した人の死が必要なのです。 Hebrews 9:17 遺言は死がもたらされたときに有効になるからであって,それを残した人が生きている間は決して有効にならないからです。 Hebrews 9:18 それゆえ,最初の契約でさえ,血が伴わずに制定されたのではありません。 Hebrews 9:19 というのは,モーセは,すべてのおきてを律法に基づいて民全員に語ったとき,子牛とヤギの血を取り,水と赤い羊毛とヒソプと共に,書そのものと民全体とに振りかけて, Hebrews 9:20 「これは神があなた方に命じられた契約の血だ」と言ったからです。
Hebrews 9:21 さらに彼は,幕屋とすべての務めの器に同じように血を振りかけました。 Hebrews 9:22 律法によれば,ほとんどすべてのものが血をもって清められ,血を流すことがなければ許しはないのです。 Hebrews 9:23 ですから,天にあるものの写しはこれらのものによって清められ,一方,天にあるもの自体は,これらのものよりもさらに優れた犠牲で清められることが必要でした。 Hebrews 9:24 というのは,キリストは,本物の聖なる場所の描出である,手で造った聖なる場所ではなく,天そのものに入られたのであり,今やわたしたちのために神のみ前に現れてくださったからです。 Hebrews 9:25 それは,大祭司が年ごとに自分のものではない血を携えて聖なる場所に入るように,何度もご自身をささげるためではありませんでした。 Hebrews 9:26 そうだとしたなら,世の基礎が据えられて以来,何度も苦しみを受けなければならなかったでしょう。しかし今や,時代の終わりにただ一度,ご自身の犠牲によって罪を取り除くために現われてくださっているのです。 Hebrews 9:27 人間たちには,ただ一度だけ死ぬこと,そしてそののちに裁きを受けることが定まっていますが, Hebrews 9:28 そのようにキリストも,多くの人たちの罪を担うためにただ一度だけささげられたのち,二度目には,罪とは関係なく,彼をひたすら待っている人たちに救いをもたらすために現われることになっています。
Hebrews 10:0 Hebrews 10:1 律法は来たるべき善いことの影を持っているのであって,それ自体の姿は持っていないので,年ごとに絶えずささげられる同じ犠牲によって,近づく者たちを完全にすることは決してできません。 Hebrews 10:2 もしできるとすれば,崇拝者たちはただ一度だけ清められ,もはや罪の意識を持たなくなるのですから,ささげ物はされなくなったはずではありませんか。 Hebrews 10:3 ところが,これらの犠牲によって,罪が年ごとに思い出させられるのです。 Hebrews 10:4 なぜなら,雄牛やヤギの血では罪を取り除くことは不可能だからです。 Hebrews 10:5 ですから,彼はこの世に入って来る時,こう言われるのです。
「犠牲やささげ物をあなたは望まず,わたしのために体を用意してくださいました。 Hebrews 10:6 全焼のささげ物や罪のための犠牲をあなたは喜ばれませんでした。 Hebrews 10:7 そこでわたしは言いました。『ご覧ください,わたしは参りました(書の巻き物にわたしについて書いてあります),神よ,あなたのご意志を行なうために』」。 Hebrews 10:8 先に,「犠牲やささげ物,また全焼のささげ物や罪のための犠牲をあなたは望まず,それらを喜ばれませんでした」と言い(それらは律法によってささげられるものです), Hebrews 10:9 次いで,「ご覧ください,あなたのご意志を行なうために,わたしは参りました」と言われるのです。彼は,第二のものを確立するために,最初のものを取り除かれます。 Hebrews 10:10 このご意志により,イエス・キリストの体という,ただ一度のささげ物を通して,わたしたちは聖別されているのです。 Hebrews 10:11 実に,祭司はすべて,日ごとに立って務めを果たし,決して罪を取り除くことのできない同じ犠牲を何度もささげていますが, Hebrews 10:12 この方は,罪のために一つの犠牲を永久にささげてから,神の右に座り, Hebrews 10:13 それ以来,自分の敵たちが自分の足台とされるまで待っておられます。 Hebrews 10:14 聖別されている人たちを,一つのささげ物によって,永久に完全にされたのです。 Hebrews 10:15 聖霊も次のように言って,わたしたちに証言されます。
Hebrews 10:16 「これこそ,わたしが彼らと結ぶ契約だ。『それらの日々ののちに』と,主は言われる。『わたしは自分の律法を彼らの心の上に置き, それを彼らの思いの上に書きつけることになる』」。
次いで,こう言われます。
Hebrews 10:17 「わたしは彼らの罪や不法をもはや思い出すことはないだろう」。 Hebrews 10:18 それで,これらのことの許しがあるところには,もはや罪のささげ物はありません。 Hebrews 10:19 それゆえ,兄弟たち,わたしたちは,イエスの血によって聖なる場所に入るための大胆さを抱いているのですから, Hebrews 10:20 (その道は,彼が,垂れ幕つまりご自身の肉を通して,わたしたちのために設けてくださった,新しい生きた道です。) Hebrews 10:21 そして,神の家を治める偉大な祭司がいるのですから, Hebrews 10:22 満ちあふれる信仰のうちに,真実の心をもって近づきましょう。わたしたちは,心に血を振りかけられて悪い良心から清められており,体を清い水で洗われているのですから, Hebrews 10:23 わたしたちの希望の告白を断固しっかりと保ちましょう。約束してくださったのは誠実な方だからです。
Hebrews 10:24 互いをどのように愛と善い業へと駆り立てるかをよく考え, Hebrews 10:25 わたしたち自身が一緒に集まり合うことを,ある人たちの習慣にならって途絶えさせたりせず,むしろ互いに励まし合い,その日が近づくのを見て,ますますそうしましょう。 Hebrews 10:26 というのは,わたしたちが真理の知識を受けた後で,故意に罪を犯し続けるなら,罪のための犠牲はもはや残っておらず, Hebrews 10:27 ただ,裁きへの恐ろしい予想のようなものと,対抗者たちを焼き尽くす火の猛烈さだけが残っているのです。 Hebrews 10:28 モーセの律法を無視する者は,二人か三人の証人の言葉に基づいて,あわれみを受けることなく死にます。 Hebrews 10:29 まして,神の子を踏みつけ,自分がそれによって聖別された契約の血を神聖でないものとみなし,恵みの霊を侮辱する者は,どれほどひどい刑罰に値すると思いますか。 Hebrews 10:30 わたしたちは次のように言われた方を知っているからです。「報復はわたしのもの」と,主は言われます。「わたしが返報する」。また,「主はご自分の民を裁かれるだろう」。 Hebrews 10:31 生ける神のみ手に落ちるのは恐ろしいことです。 Hebrews 10:32 しかし,以前の日々のことを思い出しなさい。あなた方は,啓発を受けたのち,苦しみを伴う厳しい戦いを耐え忍びました。 Hebrews 10:33 ある時には,非難と圧迫の両方にさらされ,またある時には,そのように扱われた人たちと共にあずかる者になりました。 Hebrews 10:34 あなた方は,鎖につながれているわたしに哀れみを抱いてくれましたし,自分の財産が略奪されても喜んで甘受したのです。自分たちには,さらに優れた,永続する財産が天にあることを知っていたからです。 Hebrews 10:35 ですから,あなた方は自分の大胆さを投げ捨ててはいけません。それには大きな報いがあります。 Hebrews 10:36 というのは,神のご意志を行なって約束のものを受けるため,あなた方には忍耐が必要だからです。
Hebrews 10:37 「ほんのしばらくすれば,来たるべき方が来られるだろう。遅れることはない。 Hebrews 10:38 だが,義人は信仰によって生きるだろう。彼がたじろぐなら,わたしの魂は彼を喜ばない」。 Hebrews 10:39 しかし,わたしたちは,たじろいで滅びに至る者ではなく,信仰を抱いて魂の救いに至る者です。
Hebrews 11:0 Hebrews 11:1 さて,信仰とは,望んでいる事柄についての保証であり,見ていない事柄についての証明です。 Hebrews 11:2 これによって昔の人たちは証言を得たのです。 Hebrews 11:3 信仰によって,わたしたちは,全宇宙は神の言葉によって造られたのであり,それゆえ,見えるものは目に見えるものからできたのではないことが分かります。 Hebrews 11:4 信仰によって,アベルはカインよりも優れた犠牲を神にささげ,その信仰によって,彼が義人であるという証言をその方から受けました。神が彼の供え物について証言されたからです。その信仰によって,彼は死んではいても,なお語っているのです。 Hebrews 11:5 信仰によって,エノクは死を見ないように取り去られました。神が彼を移されたので,彼は見いだされなくなりました。というのは,移される前に,神を十分に喜ばせていたことが証言されていたからです。 Hebrews 11:6 信仰がなければ,その方を十分に喜ばせることは不可能です。神に近づく者は,その方が存在し,ご自分を求める者たちに報いてくださることを信じるべきだからです。 Hebrews 11:7 信仰によって,ノアは,まだ見ていない事柄について警告を受けたとき,信心深い恐れに動かされて,自分の家族の救いのために箱船を設けました。その信仰によって,彼は世を罪に定め,信仰による義の相続人となりました。 Hebrews 11:8 信仰によって,アブラハムは,自分が相続財産として受けることになる場所に出てゆくよう召された時,それに従いました。自分がどこに行くのかを知らずに出て行ったのです。 Hebrews 11:9 信仰によって,彼は異国人のように,自分のものではない土地にいるようにして,約束の地に住みました。同じ約束を共に相続するイサクやヤコブと共に,天幕に住んだのです。 Hebrews 11:10 なぜなら,彼は,基礎を据えられた都市を待ち望んでいたからです。その都市の建設者また造り主は神です。 Hebrews 11:11 信仰によって,サラ自身までも妊娠する力を受け,そういった年齢を過ぎていたのに子供を産みました。彼女は,約束してくださった方を誠実な方とみなしていたからです。 Hebrews 11:12 このようにして,この死んでいたも同然の人から,数の多さにおいては天の星のように多数の,また海辺の砂のように無数の子孫が生まれたのです。 Hebrews 11:13 これらの人はみな,信仰のうちに死にました。約束のものを受けませんでしたが,遠くからそれらを見て喜んで迎え,自分たちが地上では他国人また居留者であることを告白したのです。 Hebrews 11:14 というのは,このように言う人たちは,自分たちが故郷を探し求めていることを明らかにしているからです。 Hebrews 11:15 確かに,もし彼らが自分たちの出て来た故郷のことを思っていたのであれば,帰る機会もあったことでしょう。 Hebrews 11:16 しかし今,彼らはさらにまさった故郷,つまり天にある故郷を熱望しています。それゆえ,神は,彼らの神と呼ばれることを恥とはされません。彼らのために都市を準備されたからです。
Hebrews 11:17 信仰によって,アブラハムは,試みを受けていた時,イサクをささげました。そうです,約束を喜びのうちに受けていた彼が,自分のひとり子をささげようとしたのです。 Hebrews 11:18 しかも彼に対しては,「あなたの子孫はイサクにあって呼ばれることになる」と言われていたのです。 Hebrews 11:19 彼は,神は死んだ者たちの中からさえも起こすことがおできになると考えました。比ゆ的に言って,彼はイサクを死んだ者たちの中から取り戻したのです。 Hebrews 11:20 信仰によって,イサクは,来たるべき事柄についても,ヤコブとエサウを祝福しました。 Hebrews 11:21 信仰によって,ヤコブは,死にかけていた時,ヨセフの子らをそれぞれ祝福し,つえの先のところにもたれて崇拝しました。 Hebrews 11:22 信仰によって,ヨセフは,自分の最期が近づいていた時,イスラエルの子らの脱出のことに言及し,自分の骨について指図しました。 Hebrews 11:23 信仰によって,モーセは生まれた時,その両親によって三か月の間隠されました。彼らは彼が美しい子供であるのを見て,王の命令を恐れなかったのです。 Hebrews 11:24 信仰によって,モーセは,成長した時,ファラオの娘の子と呼ばれるのを拒みました。 Hebrews 11:25 罪の一時的な快楽を持つよりも,神の民と共に虐待されることを選んだのであり, Hebrews 11:26 キリストの非難をエジプトの宝にまさる富だと考えたのです。報いに目を向けていたからです。 Hebrews 11:27 信仰によって,彼は,王の憤りを恐れず,エジプトを去りました。見えない方を見ているようにして,耐え忍んでいたからです。 Hebrews 11:28 信仰によって,初子を滅ぼす者が自分たちに触れないよう,過ぎ越しと血の振り注ぎを行ないました。 Hebrews 11:29 信仰によって,彼らは乾いた陸地のようにして紅海を通り抜けました。エジプト人が同じことを試みると,のみ込まれました。 Hebrews 11:30 信仰によって,エリコの城壁は,彼らが周囲を七日間回った後に崩れ落ちました。 Hebrews 11:31 信仰によって,売春婦ラハブは,スパイたちを平和のうちに迎え入れたので,不従順な者たちと共に滅びることはありませんでした。 Hebrews 11:32 この上わたしは何を言いましょうか。ギデオン,バラク,サムソン,エフタ,ダビデ,サムエル,また預言者たちについて語るなら,時間がわたしを置いていってしまうでしょう。 Hebrews 11:33 彼らは,信仰によって,数々の王国を征服し,義を成し遂げ,約束のものを獲得し,ライオンたちの口をふさぎ, Hebrews 11:34 火の力を消し,剣の刃から逃れ,弱かったのに強い者とされ,戦いにおいて強力な者となり,異国の軍勢を敗退させました。 Hebrews 11:35 女たちはその死者を復活によって受けました。ほかの人たちは,さらにまさった復活を獲得するために,釈放を受け入れずに拷問されました。 Hebrews 11:36 別の人たちは,あざけりやむち打ちによって試みられ,そればかりか,束縛や投獄によっても試みられました。 Hebrews 11:37 彼らは石打ちにされました。のこぎりで切られました。誘惑を受けました。剣で殺されました。羊の皮やヤギの皮をまとって巡り歩き,窮乏し,虐待を受け Hebrews 11:38 (彼らにはこの世はふさわしくなかったのです),荒野,山々,ほら穴,地の穴をさまよい続けました。 Hebrews 11:39 これらの人々は皆,その信仰によって証言されましたが,約束のものは受けませんでした。 Hebrews 11:40 神は,わたしたちのためにさらにまさったものを備えて,わたしたちを抜きにしては彼らが完全にされることのないようにされたのです。
Hebrews 12:0 Hebrews 12:1 それゆえ,わたしたちも,これほど大勢の雲のような証人たちに囲まれているのですから,あらゆる重荷と,すぐに絡みつく罪とを捨てて,わたしたちの前に置かれた競走を忍耐して走ろうではありませんか。 Hebrews 12:2 信仰の創始者また完成者であるイエスを見つめながら。彼は,自分の前に置かれた喜びのゆえに,恥をものともせずに十字架を耐え忍び,神のみ座の右に座られたのです。 Hebrews 12:3 罪人たちによるこのような反抗に耐え忍ばれた方のことをよく考えなさい。あなた方が疲れ,あなた方の魂が弱り果てることのないためです。 Hebrews 12:4 あなた方は罪と闘うにあたって,まだ血に至るまで抵抗したことがありません。 Hebrews 12:5 そして,子供たちに対するようにしてあなた方に語られている,次のような勧めを忘れてしまっています。
「わが子よ,主の懲らしめを軽んじてはならず,その方から戒められるとき,弱り果ててもいけない。 Hebrews 12:6 主はご自分の愛する者を懲らしめ,受け入れる子をすべてむち打たれるからだ」。 Hebrews 12:7 あなた方が耐え忍んでいるのは鍛練のためです。神はあなた方を子供たちのように扱っておられます。というのは,父親が鍛練しない子などいるでしょうか。 Hebrews 12:8 しかし,みんなが共にあずかっている鍛錬をあなた方が受けていないとすれば,あなた方は私生児であって,子ではありません。 Hebrews 12:9 さらにまた,わたしたちを懲らしめるために,同じく肉の父親たちがいて,わたしたちは彼らに敬意を表わしていました。霊の父にはなおのこと,服従して生きるべきではないでしょうか。 Hebrews 12:10 というのは,確かに父親たちは,少しばかりの日々,自分が良いと思うままにわたしたちを罰しましたが,その方は,わたしたちの益のため,わたしたちがご自分の神聖さに共にあずかる者となるために罰してくださるのです。 Hebrews 12:11 懲らしめはすべて,その時は喜ばしいことではなく,つらいことに思えますが,後になれば,それによって訓練された人たちに,義という平和な実を生み出すのです。 Hebrews 12:12 ですから,垂れ下がった手と衰えたひざをまっすぐにしなさい。 Hebrews 12:13 そして,不自由な足が脱臼することなく,むしろいやされるように,あなた方の足のためにまっすぐな道を造りなさい。 Hebrews 12:14 すべての人たちとの平和を追い求めなさい。また聖化を追い求めなさい。それなくしてはだれも主を見ることはできません。 Hebrews 12:15 神の恵みに達していない人が出ることのないよう,また,苦い根が伸びてきてあなた方を悩まし,それによって多くの者たちが汚されることのないよう,よく注意しなさい。 Hebrews 12:16 一度の食事のために自分の長子の権利を売ったエサウのように,淫行の者や神聖さを汚す者にならないようにしなさい。 Hebrews 12:17 というのは,彼が後から祝福を受け継ぎたいと願ったのに退けられたことを,あなた方は知っているからです。彼は,涙をもってそれを切に求めましたが,思いの変化の余地を見いだせなかったのです。 Hebrews 12:18 あなた方が近づいているのは,触れることのできる,火で燃えている山や,暗黒,暗闇,暴風雨, Hebrews 12:19 らっぱの響き,言葉の声の前ではありません。それを聞いた者たちは,これ以上自分たちに言葉が語られることのないように懇願しました。 Hebrews 12:20 彼らは,「獣であっても山に触れるなら,それは石打ちにされなければならない」と命じられたことに耐えられなかったのです。 Hebrews 12:21 また,その光景があまりにも恐ろしかったので,モーセは,「わたしはおびえ,震えている」と言いました。
Hebrews 12:22 しかし,あなた方が近づいているのは,シオンの山,また生ける神の都,すなわち天のエルサレム,そして無数のみ使いたち, Hebrews 12:23 すなわち全体の集会,また天で登録されている初子たちの集会,すべての人の裁き主である神,完全にされた正しい人たちの霊, Hebrews 12:24 新しい契約の仲介者イエス,さらに,アベルの血よりも立派に語る,振り注ぎの血の前なのです。
Hebrews 12:25 語っている方を拒まないように気をつけなさい。地上で警告していた人を拒んだ人々が逃れられなかったのであれば,天から警告される方に背を向けるわたしたちは,なおさら逃れることはできないでしょう。 Hebrews 12:26 その時,その方の声は地を揺り動かしましたが,今や,次のように約束されています。「わたしはもう一度,地だけではなく,天をも揺り動かすだろう」。 Hebrews 12:27 この「もう一度」という表現は,揺り動かされないものが残るために,揺り動かされるものが,造られたものとして取り除かれることを示しています。 Hebrews 12:28 それゆえ,わたしたちは,揺り動かされることのない王国を受けようとしているのですから,感謝の念を抱きましょう。それによって崇敬と畏敬の念をもって,受け入れられる仕方で神に仕えるのです。 Hebrews 12:29 わたしたちの神は焼き尽くす火だからです。
Hebrews 13:0 Hebrews 13:1 兄弟愛を保ちなさい。 Hebrews 13:2 よそから来た人を親切にもてなすことを忘れてはいけません。そうすることにより,ある人たちはそれと知らずにみ使いたちをもてなしたのです。 Hebrews 13:3 獄につながれている人たちのことを,彼らと共につながれているようにして覚えておきなさい。また,虐待されている人たちのことを覚えておきなさい。あなた方も肉体でいるからです。 Hebrews 13:4 すべての人たちの間で結婚が尊ばれるようにし,寝床が汚されないようにしなさい。神は,淫行の者たちや姦淫を犯す者たちを裁かれるのです。
Hebrews 13:5 お金に対する愛から自由になり,自分の持っているもので満足しなさい。「わたしは決してあなたを離れず,決してあなたを見捨てない」と言われているからです。 Hebrews 13:6 それで,わたしたちは確信をもって次のように言います。
「主はわたしの助け主。わたしは恐れない。人がわたしに何をできようか」。 Hebrews 13:7 あなた方の指導者たち,あなた方に神の言葉を語った人たちのことを覚えておきなさい。彼らの行ないの結末を注意深く見て,彼らの信仰に倣いなさい。 Hebrews 13:8 イエス・キリストは,昨日も,今日も,そして永久に同じ方です。 Hebrews 13:9 さまざまな異なった教えによって運び去られてはいけません。心は,食物ではなく,恵みによって強められるのが良いことだからです。食物に気を取られていた人たちは益を得ませんでした。
Hebrews 13:10 わたしたちには一つの祭壇があります。それは,聖なる幕屋に仕えている人たちはそこから食べる権利のないものです。 Hebrews 13:11 なぜなら,動物の血は罪のためのささげ物として大祭司によって聖なる場所に持って行かれますが,その体は宿営の外で焼かれるからです。 Hebrews 13:12 そのため,イエスも,ご自分の血によって民を聖化するために,門の外で苦しみを受けられました。 Hebrews 13:13 ですから,わたしたちは彼の恥辱を担って,宿営の外に出て彼のもとに行こうではありませんか。 Hebrews 13:14 わたしたちは,ここには永続する都市を持っておらず,来たるべき都市を得ようとしているからです。 Hebrews 13:15 それで,彼を通して,絶えず神に賛美の犠牲を,すなわちそのみ名を告白する唇の実をささげましょう。 Hebrews 13:16 しかし,善い行ない,そして分け合うことを忘れてはいけません。そのような犠牲こそ,神は喜ばれるからです。
Hebrews 13:17 あなた方の指導者たちに従い,また服しなさい。彼らはやがて言い開きをする者として,あなた方の魂のために見張りをしているからです。彼らが,うめき声ではなく喜びをもって,このことを行なえるようにしなさい。そうでないと,あなた方の益になりません。
Hebrews 13:18 わたしたちのために祈ってください。わたしたちは,すべてのことにおいて高潔に生活したいと願っており,自分が正しい良心を持っていると確信しているからです。 Hebrews 13:19 わたしはあなた方がこのことをしてくれるよう特にお願いします。わたしがなるべく早くあなた方のところに帰れるようになるためです。
Hebrews 13:20 それでは,平和の神,すなわち,永遠の契約の血による羊の偉大な牧者であるわたしたちの主イエスを死んだ者たちの中から連れ戻された方が, Hebrews 13:21 イエス・キリストを通して,み前にあってみ心にかなうことをあなた方のうちで行なってくださり,あなた方がそのご意志を行なうため,あらゆる善い業において整えてくださいますように。この方に,栄光がいつまでもありますように。アーメン。
Hebrews 13:22 兄弟たち,わたしはあなた方に,以上の勧告の言葉を我慢してくれるように勧めます。わたしは少しの言葉であなた方に書き記したからです。 Hebrews 13:23 わたしたちの兄弟テモテが釈放されたことを知ってください。彼がすぐに来れば,わたしは彼と共にあなた方に会えるでしょう。 Hebrews 13:24 あなた方の指導者たち全員と,すべての聖徒たちによろしく伝えてください。イタリアの人たちがあなた方によろしくと言っています。 Hebrews 13:25 恵みが,あなた方すべてと共にありますように。アーメン。
James 0:0
James 1:0 James 1:1 神と主イエス・キリストの召使いヤコブから,離散のうちにある十二部族へ。あいさつを送ります。 James 1:2 わたしの兄弟たち,さまざまな誘惑に陥るときには,それをすべて喜びとみなしなさい。 James 1:3 自分の信仰の試みが忍耐を生み出すことを知っているからです。 James 1:4 あなた方が何にも欠けることなく,完全な者また完成した者となるよう,忍耐にその完全な業を持たせなさい。 James 1:5 しかし,あなた方のうちに知恵に欠ける人がいるなら,すべての人に寛大にまたとがめることなく与えてくださる神に求めなさい。そうすれば,それはその人に与えられるでしょう。 James 1:6 しかし,何の疑いも持たず,信仰のうちに求めなさい。疑っている人は,風に吹かれて揺れ動く海の波のようだからです。 James 1:7 その人は,自分が主から何かをいただけるなどと思ってはいけません。 James 1:8 そのような人は,二心の人であって,そのすべての道は不安定です。
James 1:9 しかし,低い境遇にある兄弟は,自分の高い地位を誇りとしなさい。 James 1:10 また,富んだ人は自分が低くされていることを誇りとしなさい。彼は草の花のように過ぎ去ることになるからです。 James 1:11 太陽が熱風を伴って昇り,草を枯らすと,その花は落ち,そのうわべの美しさは滅びます。そのように,富んだ人も,その追求の途上で消え去るでしょう。
James 1:12 誘惑を耐え忍ぶ人は幸いです。是認されるとき,主がご自分を愛する人たちに約束されたもの,命の冠を受けることになるからです。 James 1:13 誘惑されるとき,だれも,「わたしは神に誘惑されている」と言ってはなりません。神が悪から誘惑を受けることはあり得ませんし,ご自身がだれかを誘惑されることもないからです。 James 1:14 むしろ,それぞれの人は,自分自身の欲望によって引き出され,そそのかされるときに誘惑を受けるのです。 James 1:15 次いで,欲望がはらむと罪を産み,罪が熟すると死を生み出します。 James 1:16 わたしの愛する兄弟たち,欺かれてはいけません。 James 1:17 あらゆる良い贈り物,またあらゆる完全な贈り物が,上から,光の父から下って来るのです。その方には,変化も,回転の影もあり得ません。 James 1:18 その方は,自らのご意志のままに,わたしたちがご自分の被造物のいわば初穂となるように,わたしたちを真理の言葉によって生み出してくださいました。
James 1:19 そのようなわけで,わたしの愛する兄弟たち,すべての人は聞くことに速く,語ることに遅く,怒ることに遅くありなさい。 James 1:20 人の怒りは神の義をもたらさないからです。 James 1:21 それゆえ,あらゆる不潔さとあふれ出る邪悪さを捨て去り,植え付けられたみ言葉を謙虚に受け入れなさい。み言葉はあなた方の魂を救うことができます。 James 1:22 しかし,自分自身を惑わして単なる聞き手で終わるのではなく,み言葉の実行者でありなさい。 James 1:23 というのは,だれかがみ言葉の聞き手であっても実行者でないなら,その人は,鏡で自分の生まれつきの顔を眺めている人のようだからです。 James 1:24 自分自身を見ても,立ち去ると,自分がどんな姿だったかをすぐに忘れてしまうのです。 James 1:25 しかし,完全な律法,すなわち自由の律法に見入って,とどまる人は,すぐに忘れてしまう聞き手ではなく,業の実行者になっているのであって,その人はその行ないにおいて祝福されます。
James 1:26 あなた方の中のだれかが,自分は信心深い者だと思っていても,自分の舌を制御せず,自分の心を欺いているなら,その人の信心は価値がありません。 James 1:27 わたしたちの神また父のみ前で清く汚れのない信心とはこれです。すなわち,孤児ややもめをその苦難の際に見舞うこと,また世から汚されないよう自分を守ることです。
James 2:0 James 2:1 わたしの兄弟たち,わたしたちの栄光の主イエス・キリストの信仰を,えこひいきと共に抱いてはいけません。 James 2:2 というのは,あなた方の集会に,金の指輪をはめ,立派な服を着た人が入って来て,同時に汚れた服を着た貧しい人も入って来た場合に, James 2:3 あなた方が立派な服を身に着けた人に特別に目を留めて,「ここの良い場所にお座りなさい」と言い,貧しい人には,「そこに立っていなさい」とか,「わたしの足台のわきに座りなさい」と言うなら, James 2:4 あなた方は自分たちの間でえこひいきを示して,悪い考えを持つ裁き手になっているのではありませんか。 James 2:5 わたしの愛する兄弟たち,よく聞きなさい。神は,この世において貧しい人たちを,信仰において富んだ人たちとして,またご自分を愛する者たちに対して約束された王国を相続する人たちとして選ばれたのではありませんか。 James 2:6 しかし,あなた方はその貧しい人を辱めたのです。富んだ人たちが,あなた方を抑圧し,あなた方を自ら法廷に引いて行くのではありませんか。 James 2:7 彼らこそ,あなた方がその名で呼ばれた高貴な名を冒とくするのではありませんか。 James 2:8 それでも,あなた方が聖書に従って,「あなたは隣人を自分自身のように愛さなければならない」という王たる律法を実行しているのであれば,それは結構なことです。 James 2:9 しかし,えこひいきを示すなら,あなた方は罪を犯しています。律法により,違反者として有罪と宣告されているのです。 James 2:10 というのは,だれかが律法全体を守るとしても,一つの点でつまずくなら,すべてに違反していることになるからです。 James 2:11 なぜなら,「姦淫を犯してはいけない」と言われた方は,「殺人を犯してはいけない」とも言われたのです。それで,もしあなたが姦淫を犯してはいなくても,殺人を犯しているなら,律法の違反者となります。 James 2:12 自由の律法によって裁かれようとしている者として,そのように語り,またそのように行ないなさい。 James 2:13 あわれみを示さない者に対しては,あわれみのない裁きが下されるからです。あわれみは裁きに対して勝ち誇るのです。
James 2:14 わたしの兄弟たち,もし人が自分には信仰があると言っていても,業がなければ,それは何の益になるでしょうか。信仰がその人を救えるでしょうか。 James 2:15 もし兄弟か姉妹が裸でいて,その日の食物にも事欠いているのに, James 2:16 あなた方のうちのだれかが,「平安のうちに行きなさい。温かくして,お腹を満たしなさい」と言うだけで,体に必要な物を与えないなら,それは何の益になるでしょうか。 James 2:17 同じように信仰も,業がなければ,それだけでは死んでいるのです。 James 2:18 なるほど,ある人はこう言うことでしょう。「あなたには信仰があり,わたしには業があります」。あなたの業からあなたの信仰を取り出してわたしに見せなさい。そうすれば,わたしは自分の業によって自分の信仰をあなたに見せましょう。
James 2:19 あなたは神がただおひとりだと信じています。それは結構なことです。悪魔たちも信じて,身震いしているのです。 James 2:20 しかし,むなしい人よ,あなたは業を別にした信仰が死んでいることを知りたいのですか。 James 2:21 わたしたちの父アブラハムは,自分の息子イサクを祭壇の上にささげたとき,業によって義とされたのではありませんか。 James 2:22 あなたも分かるように,信仰が彼の業と共に働き,業によって信仰が完全にされたのです。 James 2:23 そして,「アブラハムは神を信じ,それが彼の義とみなされた」と言う聖書が実現し,彼は神の友と呼ばれたのです。 James 2:24 これであなた方も分かるように,人は業によって義とされるのであって,信仰だけによるのではありません。 James 2:25 同じように,売春婦ラハブも,使者たちを迎え入れ,彼らを別の道から送り出したとき,業によって義とされたのではありませんか。 James 2:26 霊を別にした体が死んでいるのと同じように,業を別にした信仰も死んでいるのです。
James 3:0 James 3:1 わたしの兄弟たち,あなた方のうちの多くが教師になってはなりません。わたしたち教師はより厳しい裁きを受けることになるのを知っているからです。 James 3:2 わたしたちは皆,多くのことでつまずくからです。言葉においてつまずかない人がいるなら,その人は完全な人であり,自分の全身を制御することができます。 James 3:3 実際,馬を自分たちに従わせるためにその口にくつわをはめると,わたしたちはその全身を操ることができます。 James 3:4 見なさい,船でさえ,あのように大きなもので,また激しい風にあおられているのに,ごく小さなかじによって操縦者の望むところに操られます。 James 3:5 このように,舌も小さな器官ですが,大きなことを自慢するのです。あんなに小さな火があんなに大きな森林に広がってゆくのを見なさい! James 3:6 それで,舌は火です。舌こそ,わたしたちの肢体の中の不法の世界であり,全身を汚し,生来の進路を燃やし,ゲヘナによって燃やされます。 James 3:7 あらゆる種類の獣,鳥,はうもの,また海の生き物は,人間によって飼いならされますし,また飼いならされてきました。 James 3:8 しかし,だれも舌を飼いならすことはできません。舌は休むことのない悪であり,死をもたらす毒で満ちています。 James 3:9 わたしたちは,舌によって,わたしたちの神また父を賛美し,また舌によって,神のかたちに造られた人々をのろいます。 James 3:10 同じ口から,祝福とのろいとが出て来るのです。わたしの兄弟たち,こうした事があってはなりません。 James 3:11 泉が同じ穴から真水と苦い水とをわき出させるでしょうか。 James 3:12 わたしの兄弟たち,イチジクの木がオリーブの実を,またブドウの木がイチジクの実を生じさせることができるでしょうか。このように,泉が塩水と真水の両方を生じさせることもありません。
James 3:13 あなた方の間で賢くて理解力があるのはだれですか。その人は,自分の良い振る舞いによって,自分の行ないが知恵に属する温和さのうちになされていることを示しなさい。 James 3:14 しかし,あなた方が心の中に苦々しいねたみや利己的な野心が抱いているなら,自慢したり,真理に逆らってうそをついたりしてはいけません。 James 3:15 そのような知恵は上から下って来たものではなく,地的で,肉欲的で,また悪霊的です。 James 3:16 ねたみや利己的な野心があるところには,混乱とあらゆる悪い行ないがあるからです。 James 3:17 しかし,上からの知恵は第一に純真であり,次いで,平和的で,柔和で,理性的で,あわれみと良い実とに満ちており,えこひいきをせず,偽善的でもありません。 James 3:18 それで,義の実は,平和を作り出す人たちによって,平和のうちにまかれるのです。
James 4:0 James 4:1 あなた方の間の争いや闘いはどこから来るのですか。あなた方の肢体の中で戦う,快楽に対する欲情から来るのではありませんか。 James 4:2 あなた方は渇望しますが,持っていません。人殺しをし,むやみに欲しがりますが,獲得できません。闘ったり争ったりします。あなた方が持っていないのは,求めないからです。 James 4:3 求めても受けていないのは,それを自分の快楽のために使おうとして,間違った動機で求めるからです。 James 4:4 姦淫を犯す者たち,また姦淫を犯す女たちよ,あなた方は世との交友が神との敵対であることを知らないのですか。それゆえ,だれでもこの世の友になりたいと思っている人は,自分を神の敵としているのです。 James 4:5 それともあなた方は,「わたしたちのうちに住んでいる霊は,ねたむほどに慕っている」と聖書が述べているのは,無意味なことだと思っているのですか。 James 4:6 しかし,その方はさらに豊かな恵みを与えてくださるのです。それゆえ,こう言われています。「神は高慢な者に立ち向かい,謙そんな者に恵みをお与えになる」。 James 4:7 ですから,神に服しなさい。しかし悪魔に立ち向かいなさい。そうすればあなた方から逃げ去るでしょう。 James 4:8 神に近づきなさい。そうすればあなた方に近づいてくださるでしょう。罪人たちよ,あなた方の手を清めなさい。二心の者たちよ,あなた方の心を清めなさい。 James 4:9 嘆き,悲しみ,泣きなさい。あなた方の笑いを悲しみに,あなた方の喜びを憂いに変えなさい。 James 4:10 主のみ前で自分を低くしなさい。そうすればあなた方を高くしてくださるでしょう。
James 4:11 兄弟たち,互いを悪く言ってはいけません。兄弟を悪く言ったり,自分の兄弟を裁いたりする者は,律法を悪く言い,律法を裁いているのです。そして,もし律法を裁いているなら,あなたは律法の実行者ではなく,裁き手です。 James 4:12 立法者はただひとり,救うことも滅ぼすこともできる方です。それなのに,ほかの人を裁こうとするあなたは,いったい何者なのですか。
James 4:13 さあ,「今日か明日,あの町へ行き,一年間そこで過ごして,商売をし,金もうけをしよう」と言っている者たちよ。 James 4:14 一方では,あなた方は明日自分の命がどうなるかを知らないのです。というのは,あなた方の命はどんなものなのですか。あなた方は,少しの間現われて,やがて消え去ってしまう霧にすぎないのです。 James 4:15 あなた方は,「もし主のご意志であれば,わたしたちは生きていて,あのことやこのことをするでしょう」と言うべきなのです。 James 4:16 しかし今,あなた方は自分の自慢を誇りとしています。そうした自慢はすべて悪いことです。 James 4:17 それゆえ,善をなすことを知っていながら,それを行なわないなら,それはその人にとって罪なのです。
James 5:0 James 5:1 さあ,富んだ人たちよ,自分たちに臨もうとしている悲惨さのために泣きわめきなさい。 James 5:2 あなた方の富は朽ち,あなた方の衣服はガに食われました。 James 5:3 あなた方の金と銀は腐食し,それらのさびがあなた方に不利な証言となって,あなた方の肉を火のように食い尽くすでしょう。あなた方はこの終わりの日々に自分の宝を積み上げたのです。 James 5:4 見なさい,あなた方の畑の刈り入れをした労働者たちの賃金,あなた方がだまして取っておいたその賃金が叫んでおり,刈り入れをした人たちの叫びが万軍の主の耳にまで達しました。 James 5:5 あなた方は地上で優美に暮らし,自分の快楽にふけってきました。虐殺の日にあたって,自分の心を養ったのです。 James 5:6 あなた方は義人を罪に定めて,殺しました。彼はあなた方に手向かっていません。
James 5:7 それゆえ,兄弟たち,主の来臨まで辛抱しなさい。見なさい,耕作人は,地の貴重な実りを,それが早い雨と遅い雨を受けるまで,それについて辛抱して待っています。 James 5:8 あなた方も辛抱しなさい。自分たちの心を確固たるものとしなさい。主の来臨が近づいているからです。
James 5:9 兄弟たち,互いに不平を言ってはいけません。あなた方が裁かれることのないためです。見なさい,裁き主が戸口の前に立っておられます。 James 5:10 兄弟たち,苦しみと辛抱については,主の名において語った預言者たちを模範としなさい。 James 5:11 見なさい,耐え忍んだ人たちは幸いだと,わたしたちは考えます。あなた方はヨブの辛抱について聞き,主がなさったことの結末を見,主がどれほど同情とあわれみに満ちておられるかを知りました。 James 5:12 しかし,わたしの兄弟たち,何よりも,誓ってはいけません。天にかけても,地にかけても,ほかのどんな誓いにかけても。そうではなく,あなた方の『はい』を『はい』に,『いいえ』を『いいえ』にならせなさい。あなた方が偽善に陥ることのないためです。
James 5:13 あなた方の中に苦しんでいる人がいますか。その人は祈りなさい。元気な人がいますか。その人は賛美を歌いなさい。 James 5:14 あなた方の中に病気の人がいますか。その人は集会の長老たちを呼び,主の名において油を塗ってもらい,自分のために祈ってもらいなさい。 James 5:15 そうすれば,信仰の祈りが病気の人をいやし,主がその人を起き上がらせてくださるでしょう。その人が罪を犯していたなら,許されるでしょう。 James 5:16 あなた方の違反を互いに告白し,互いのために祈りなさい。あなた方がいやされるためです。義人の真剣な祈りは力強い効果があります。 James 5:17 エリヤはわたしたちと同じような性質の人でしたが,雨が降らないようにと熱烈に祈ると,その地には三年六か月の間,雨が降りませんでした。 James 5:18 再び祈ると,天は雨を降らせ,地はその産物を生み出しました。
James 5:19 兄弟たち,あなた方の中に真理から迷い出た人がいて,だれかが彼を引き戻すなら, James 5:20 その人は,罪人をその迷いの道から引き戻す人が,彼の魂を死から救い出し,また多くの罪を覆うことになることを知っておきなさい。
I Peter 0:0
I Peter 1:0 I Peter 1:1 イエス・キリストの使徒ペトロから,ポントス,ガラテア,カッパドキア,アジア,ビティニアの離散のうちに仮住まいしている選ばれた人たち, I Peter 1:2 すなわち,イエス・キリストに従い,その血を振りかけていただくために,父なる神の予知によって,霊の聖化のうちに選ばれた人たちへ。あなた方に恵みと平和が増し加えられますように。 I Peter 1:3 わたしたちの主イエス・キリストの父また神がほめたたえられますように。その方は,その豊かなあわれみにより,イエス・キリストの死んだ者たちからの復活を通して,わたしたちを生きた希望へと再び生まれさせる父となってくださいました。 I Peter 1:4 それは,あなた方のために天に取って置かれている,朽ちることなく,汚れがなく,消え行くことのない相続財産のためです。 I Peter 1:5 あなた方は,終わりの時に啓示されるために備えられている救いのため,神の力により,信仰を通して守られています。 I Peter 1:6 その点で,あなた方は大いに喜んでいます。たとえ今しばらくの間は,さまざまな試練にあって悲しまなければならないとしてもです。 I Peter 1:7 それは,火によって試されていながらも滅びてしまう金よりはるかに貴重な,あなた方の信仰の証拠が,イエス・キリストの現われのときに,賞賛と栄光と栄誉という結果になるためなのです。 I Peter 1:8 あなた方は彼を見たことがありませんが,愛しています。今は彼を見ることができませんが,それでも信じており,言葉に表せない,栄光に満ちた喜びをもって大いに喜んでいます。 I Peter 1:9 あなた方の信仰の結果を,すなわちあなた方の魂の救いを受けているからです。 I Peter 1:10 この救いについては,あなた方に達する恵みについて預言した預言者たちが探し求め,念入りに調べました。 I Peter 1:11 彼らは,自分たちのうちにあるキリストの霊が,キリストの苦難とそれに続く栄光を預言した時,それがだれを,あるいはどの時を指しているのかを調べていたのです。 I Peter 1:12 彼らは,天から遣わされた聖霊によってあなた方に福音を宣教した人たちを通してあなた方に知らされたそれらの事柄のために奉仕しましたが,それが,自分たちのためではなく,あなた方のためであることを啓示されました。それは,み使いたちもひとめ見たいと望んでいる事柄です。
I Peter 1:13 ですから,あなた方の思いを活動に備え,冷静さを保ち,イエス・キリストの現われの時にあなた方にもたらされる恵みにすべての希望を置きなさい。 I Peter 1:14 従順の子らとして,以前の無知であったときの欲望に従うのではなく, I Peter 1:15 あなた方を召された方の聖なるさまに従って,あなた方も自分のすべての振る舞いにおいて聖なるものとなりなさい。 I Peter 1:16 それは,「あなた方は聖なるものでなければならない。わたしは聖なるものだからだ」と書かれているからです。 I Peter 1:17 あなた方が,人を偏り見ずにひとりひとりの業に基づいて裁かれる方を父と呼んでいるのであれば,この世に仮住まいする期間を敬けんな恐れのうちに過ごしなさい。 I Peter 1:18 このことを知っているからです。つまり,あなた方が,父祖たちから伝えられた無益な生き方から買い戻されたのは,朽ちやすい物,すなわち銀や金によるのではなく, I Peter 1:19 汚れもしみもない子羊のような貴重な血,すなわちキリストの血によるということです。 I Peter 1:20 実際,彼は世の基礎が置かれる前から予知されていましたが,時代の終わりに,あなた方のために現わされました。 I Peter 1:21 そのあなた方は,彼を通して,彼を死んだ者たちの中から起こし,栄光をお与えになった神を信じています。あなた方の信仰と希望が神のうちにあるようになるためです。
I Peter 1:22 あなた方は,偽りのない兄弟の愛情における霊を通して,真理に対する従順のうちに自分の魂を清くしているのですから,互いを心から熱烈に愛しなさい。 I Peter 1:23 再び生まれたのは,朽ちやすい種からではなく,朽ちることのない種から,すなわち,生きていていつまでも残る神の言葉を通してであったからです。 I Peter 1:24 こうあるからです。
「肉なる者はすべて草のよう。人の栄光はすべて草の花のよう。草は枯れ,花は落ちる。 I Peter 1:25 だが,主の言葉はいつまでも存続する」。
これこそ,あなた方に宣教された良いたよりの言葉です。
I Peter 2:0 I Peter 2:1 ですから,あらゆる邪悪さ,あらゆる欺き,偽善,ねたみ,そしてあらゆる悪口を捨て去り, I Peter 2:2 生まれたばかりの赤子のように,混ぜ物のないみ言葉の乳を慕い求めなさい。それによって成長するためです。 I Peter 2:3 それはあなた方が,主が恵み深い方であることを本当に味わったのであればのことです。 I Peter 2:4 その方のもとに来なさい。彼は,確かに人々によって退けられはしましたが,神によって選ばれた,貴重な,生きた石です。 I Peter 2:5 あなた方も,生きた石となって,聖なる祭司職のため,また,イエス・キリストを通して神に受け入れられる霊的な犠牲をささげるための霊的な家として築き上げられなさい。 I Peter 2:6 なぜなら,聖書にこうあるからです。
「見よ,わたしはシオンに,隅の親石,選ばれた貴重な石を置く。これを信じる者は決して失望することはない」。 I Peter 2:7 ですから,信じるあなた方にとっては尊いものですが,不従順な者たちにとってはこのようです。
「建てる者たちが退けた石,それが隅の親石となった」, I Peter 2:8 また,
「つまずきの石,違反の岩」。
というのは,彼らは不従順であるため,またそう定められているために,み言葉につまずくからです。 I Peter 2:9 しかしあなた方は,選ばれた種族,王なる祭司,聖なる民族,神ご自身の所有となる民でです。それは,あなた方が闇からご自分の驚くべき光へと招き入れてくださった方のすばらしさを広く示すためです。 I Peter 2:10 あなた方は,かつては民ではなかったのに,今は神の民であり,恵みを受けていなかったのに,今は恵みを受けています。 I Peter 2:11 愛する者たちよ,わたしはあなた方に懇願します。あなた方は外国人また寄留者なのですから,魂に戦いを挑む肉的な欲望を避けなさい。 I Peter 2:12 諸国民の間で良い振る舞いをしなさい。彼らがあなた方を悪人として悪く言っていても,自分たちが目にするあなた方の良い業によって,訪れの日に,神に栄光をささげるようになるためです。 I Peter 2:13 ですから,人間のすべての法令には主のゆえに服しなさい。最高権威としての王に対してであろうと, I Peter 2:14 悪人への報復のため,またよい行ないをする者たちをほめるため,王から遣わされた総督に対してであろうと,そうしなさい。 I Peter 2:15 あなた方がよい行ないによって愚かな者たちの無知を沈黙させることは,神のご意志だからです。 I Peter 2:16 自由人として,しかしその自由を邪悪さの覆いとして用いるのではなく,神の奴隷として用いて,そのことを行ないなさい。
I Peter 2:17 すべての人々を敬いなさい。兄弟関係にある人たちを愛しなさい。神を恐れなさい。王を敬いなさい。 I Peter 2:18 召使いたちよ,あらん限りの恐れをもって自分の主人に服従しなさい。善良で柔和な者だけではなく,意地の悪い者に対してもそうしなさい。 I Peter 2:19 だれかが不当に苦しんでいながら,神に対する良心のゆえに苦痛を耐え忍ぶなら,それはほめるに値することだからです。 I Peter 2:20 というのは,あなた方が罪を犯している時に,むち打ちを辛抱強く耐え忍んでいても,それが何の名誉になるでしょうか。しかし,よい行ないをしている時に,苦しみを辛抱強く耐え忍んでいるなら,これこそ神のもとでほめるに値することなのです。 I Peter 2:21 このためにこそ,あなた方は召されたのです。なぜなら,キリストも,あなた方がその歩みに従うようあなた方に模範を残すため,わたしたちのために苦しみを受けられたからです。 I Peter 2:22 彼は罪を犯さず,「その口に欺きは見いだされなかった」のです。 I Peter 2:23 ののしられても,ののしり返しませんでした。苦しみを受けても,脅したりせず,義をもって裁く方にご自分をゆだねました。 I Peter 2:24 木の上で自らわたしたちの罪をご自身の体のうちに負って,わたしたちが,罪に対して死に,義に対して生きるようにしてくださいました。その打ち傷によって,あなた方はいやされたのです。 I Peter 2:25 というのは,あなた方は羊のように迷っていましたが,今は,あなた方の魂の牧者また監視者である方のもとに戻って来たからです。
I Peter 3:0 I Peter 3:1 同じように,妻たちよ,自分の夫に服従しなさい。それは,み言葉に従わない者がいても,彼らが言葉ではなく妻の振る舞いによって勝ち取られるようになるためです。 I Peter 3:2 あなた方の恐れのこもった純真な振る舞いを見るからです。 I Peter 3:3 あなた方の美しさが,単に,髪を編むことや,金の装飾品を身に着けることや,上等の服を着ることのような外面の飾りによるのではなく, I Peter 3:4 柔和で静かな霊という朽ちることのない飾りをした,心の中の隠された人のうちにあるようにしなさい。それは神のみ前で非常に貴重なものなのです。 I Peter 3:5 というのは,これこそ,かつて神に望みをかけた聖なる女たちが,自分の夫に服従することによって身を飾った仕方だからです。 I Peter 3:6 サラがアブラハムを自分の主と呼んで,彼に従っていたとおりです。よい行ないをしており,どんな恐ろしいことにも恐れを持っていないなら,その時あなた方はサラの子供たちになっているのです。
I Peter 3:7 同じように,夫たちよ,知識に従って自分の妻と共に住みなさい。弱い器として,また命の恵みの共同相続人として,妻に敬意を払いなさい。あなた方の祈りが妨げられないためです。
I Peter 3:8 終わりに,みな同じ思いを持ち,哀れみ深くあり,兄弟としての愛を示し,思いやり深くあり,礼儀正しくありなさい。 I Peter 3:9 悪をもって悪に,ののしりをもってののしりに報いたりせず,代わりに祝福しなさい。あなた方が召されたのは祝福を受け継ぐためだということを知っているからです。 I Peter 3:10 こうあるからです。
「命を愛し,良い日々を見たい人は,舌を悪から守り,欺きの話から唇を守れ。 I Peter 3:11 悪いことから離れて善いことを行なえ。平和を求めてこれを追い求めよ。 I Peter 3:12 主の目は義人たちの上にあり,その耳は彼らの祈りに向けられるからだ。しかし,主の顔は悪いことを行なっている者たちに敵して向けられる」。 I Peter 3:13 もし,あなた方が善いことの模倣者となるなら,だれがあなた方に害を加えるでしょうか。 I Peter 3:14 しかし,たとえ義のために苦しみを受けるとしても,あなた方は幸いです。「彼らの恐れるものを恐れてはならず,動転してもならない」。 I Peter 3:15 あなた方の心の中で主なる神を神聖なものとしなさい。あなた方のうちにある希望について,その理由を尋ねるすべての人に対して答えを出せるよう,いつも準備しておきなさい。それも謙虚さと恐れをもってそうするようにしなさい。 I Peter 3:16 また善い良心を抱きなさい。それは,あなた方が悪人として悪く言われている時に,キリストにおける善い生き方をののしっている彼らが恥じ入るためです。 I Peter 3:17 それが神のご意志なのであれば,よい行ないのために苦しみを受けるほうが,悪い行ないのために苦しみを受けるよりもよいからです。 I Peter 3:18 キリストも罪のために一度だけ苦しみを受けられました。義なる方が不義の者たちのためにです。それは,あなた方を神のもとに連れて行くためでした。彼は,肉においては死に渡されましたが,霊においては生かされたのです。 I Peter 3:19 その際,彼はろうやにいる霊たちのところにも行って宣教されました。 I Peter 3:20 この霊たちは,かつてノアの日々に,箱船が建てられていた間,神が辛抱強く待っておられた時に,不従順だった者たちです。その箱船の中で少数の人々,すなわち八人だけが水を通して救われました。 I Peter 3:21 これはバプテスマの象徴であって,それが今あなた方を救うのです。そのバプテスマは,肉の汚れを取り除くことではなく,イエス・キリストの復活を通した,神に対する善い良心の応答です。 I Peter 3:22 彼は天に行かれて神の右におられます。もろもろのみ使いと権威と力は彼に服させられたのです。
I Peter 4:0 I Peter 4:1 それで,キリストは肉においてわたしたちのために苦しみを受けられたのですから,あなた方も同じ思いで武装しなさい。肉において苦しみを受けた人は,罪をやめているからです。 I Peter 4:2 それは,あなた方が,肉における自分の残りの時を,もはや人間の欲望のためではなく,神のご意志のために生きるためです。 I Peter 4:3 わたしたちはかつて,過ぎ去った時の間,異邦人たちの望むことを行ない,みだらさ,欲望,どんちゃん騒ぎ,浮かれ騒ぎ,飲み騒ぎ,嫌悪すべき偶像崇拝のうちを歩んできましたが,そうした時を過ごすのはもうたくさんだからです。 I Peter 4:4 彼らは,あなた方が自分たちと共にそうした度を越した乱行に走り込まないので,ののしりつつ,不審に思っています。 I Peter 4:5 彼らは,生きている者たちと死んだ者たちとを裁く用意のある方に言い開きをすることになります。 I Peter 4:6 というのは,この目的のために,福音は死んだ者たちにさえ宣教されたからです。すなわち,彼らが,肉においては確かに人間がするようにして裁かれていても,霊においては神に関して生きるようになるためでした。 I Peter 4:7 しかし,すべての物の終わりが近づいています。ですから,健全な思いを持ち,自制し,冷静に祈っていなさい。 I Peter 4:8 何よりもまず,互いの間で真剣な愛を抱きなさい。愛は多くの罪を覆うからです。 I Peter 4:9 不平を言わずに互いをよくもてなし合いなさい。 I Peter 4:10 各自,その贈り物を受けたところに従い,神のさまざまな恵みの良い管理人として,それを互いのために役立てなさい。 I Peter 4:11 だれかが語るのであれば,神の託宣を語るようにして語りなさい。だれかが仕えるのであれば,神が供給してくださる力によるようにして仕えなさい。それは,神がすべてのことにおいて,イエス・キリストを通して栄光をお受けになるためです。この方に,栄光と支配権がいつまでもありますように。アーメン。
I Peter 4:12 愛する者たちよ,あなた方を試みるために臨んできた火のような試練のことで,異常なことが自分たちに生じたかのように驚いてはいけません。 I Peter 4:13 むしろ,キリストの苦しみに共にあずかる者となっていることを喜びなさい。彼の栄光の現われの時にも非常な歓喜をもって喜ぶためです。 I Peter 4:14 キリストの名のために侮辱されているなら,あなた方は幸いです。栄光の霊また神の霊があなた方の上に休まっているからです。その方は,彼らからは冒とくされていますが,あなた方からは栄光をささげられています。 I Peter 4:15 あなた方のうちのだれも,人殺し,盗人,悪を行なう者,または他人のことに干渉する者として苦しみを受けないようにしなさい。 I Peter 4:16 しかし,あなた方のうちの一人が,クリスチャンであるために苦しみを受けるのであれば,恥じてはなりません。むしろ,そのことにおいて神に栄光をささげなさい。 I Peter 4:17 というのは,裁きが神の家から始まる時が来ているからです。それが最初にわたしたちから始まるのであれば,神の福音に従わない者たちにはいったい何が起こるでしょうか。 I Peter 4:18 「義人が苦労して救われるのであれば,不信心な者と罪人には何が起こるだろうか」。 I Peter 4:19 ですから,神のご意志によって苦しみを受けている人々は,善を行ないつつ,自分の魂をその方,すなわち誠実な創造者に託しなさい。
I Peter 5:0 I Peter 5:1 あなた方の中の長老たちに,仲間の長老であり,キリストの苦しみの証人であり,やがて現わされる栄光にあずかる者として,わたしは勧めます。 I Peter 5:2 あなた方の中にいる神の群れを監視しつつ牧しなさい。強制されてではなく自発的に,不正な利得のためではなく快く行ないなさい。 I Peter 5:3 あなた方に割り当てられた人たちに威張り散らすようにではなく,自分を群れの模範としつつ,そのことを行ないなさい。 I Peter 5:4 そうすれば,主要な牧者が現わされる時,あなた方は消え行くことのない栄光の冠を受けるでしょう。
I Peter 5:5 同じように,若い人たちよ,長老たちに服しなさい。それだけではなく,あなた方は皆,互いに対して服し合うために謙虚さを身に帯びなさい。「神は高慢な者たちに立ち向かい,謙そんな者たちに恵みを与えられる」からです。 I Peter 5:6 ですから,神の強力なみ手のもとで自分を低くしなさい。その方がやがてあなた方を高くしてくださるためです。 I Peter 5:7 あなた方の心配事をすべてその方のもとに投げなさい。その方はあなた方のことを気にかけておられるからです。
I Peter 5:8 冷静さを保ち,自制していなさい。用心深くありなさい。あなた方の反対者である悪魔が,ほえるライオンのように,だれかをむさぼり食おうと歩き回っています。 I Peter 5:9 自分の信仰のうちに確固として彼に抵抗しなさい。この世界にいるあなた方の兄弟たちも同じ苦しみに遭っていることを,あなた方は知っているからです。 I Peter 5:10 しかし,すべての恵みの神,あなた方をキリスト・イエスによってご自分の永遠の栄光に召してくださった方が,あなた方を,わずかの間苦しみを受けた後で完全な者とし,確固とした者とし,強め,堅く据えてくださいますように。 I Peter 5:11 この方に,栄光と力がいつまでもありますように。アーメン。
I Peter 5:12 わたしたちの忠実な兄弟だとわたしが考えているシルワノスを通して,あなた方に短く手紙を書きました。あなた方に勧告し,あなた方がそのうちに立っているものこそが神の本当の恵みであることを証言するためです。 I Peter 5:13 あなた方と共に選ばれてバビロンにいる婦人が,あなた方にあいさつをしています。わたしの子マルコもそうしています。 I Peter 5:14 愛の口づけをもって互いにあいさつをしなさい。キリスト・イエスのうちにいるあなた方すべてに平安がありますように。アーメン。
II Peter 0:0
II Peter 1:0 II Peter 1:1 イエス・キリストの召使いまた使徒であるシモン・ペトロから,わたしたちの神また救い主であるイエス・キリストの義のうちにあって,わたしたちと共に同じ貴重な信仰を受けている人たちへ。 II Peter 1:2 神とわたしたちの主イエスについての知識のうちにあって,あなた方に恵みと平和が増し加えられますように。 II Peter 1:3 その方の神的な力が,ご自身の栄光と美徳とによってわたしたちを召してくださった方についての知識を通して,命と信心深さに関するすべてのことをわたしたちに与えているからです。 II Peter 1:4 この栄光と美徳とによって,その方は,ご自分の貴重かつ非常に偉大な約束をわたしたちに与えておられます。それは,あなた方がこれらによって,欲望のゆえにこの世にある腐敗から逃れて,この神的な性質に共にあずかる者となるためです。 II Peter 1:5 そうです,まさにそのためにこそ,あなた方はあらん限りの勤勉さを尽くして,自分の信仰に徳を,徳に知識を, II Peter 1:6 知識に自制を,自制に忍耐を,忍耐に信心深さを, II Peter 1:7 信心深さに兄弟の愛情を,兄弟の愛情に愛を加えなさい。 II Peter 1:8 これらのものがあなた方のものとなってあふれるなら,それらのものは,あなた方を主イエス・キリストについての知識に対して無益で実を結ばない者とはならせません。 II Peter 1:9 これらのものが欠けている人は盲目です。近くのものしか見えず,自分の昔の罪からの清めを忘れてしまっているのです。 II Peter 1:10 ですから,兄弟たち,自分の召しと選出とを確実なものとすることにさらに熱心でありなさい。それらのことを行なっているなら,あなた方は決してつまずかないでしょう。 II Peter 1:11 このようにして,わたしたちの主また救い主であるイエス・キリストの永遠の王国に入る機会が,あなた方に豊かに与えられることになるのです。
II Peter 1:12 それですから,これらのことをあなた方に思い出させることに,わたしは怠慢でありたくはありません。あなた方が,このことを知っており,今ある真理のうちに確固としているとはいってもです。 II Peter 1:13 わたしは,自分がこの天幕にいるかぎりは,思い出させることによってあなた方を奮い立たせるのが正しいことだと思います。 II Peter 1:14 わたしたちの主イエス・キリストがわたしに明らかにされたとおり,自分の天幕から離れる時が速やかにやって来ることを知っているからです。 II Peter 1:15 わたしの出発の後にも,あなた方がこれらのことをいつも思い出すことができるように,わたしはあらゆる努力を尽くすつもりです。 II Peter 1:16 というのは,わたしたちは,わたしたちの主イエス・キリストの力と来臨をあなた方に知らせた時,巧妙に考え出した作り話に従ったのではありません。わたしたちはその荘厳さの目撃証人であったのです。 II Peter 1:17 というのは,「これはわたしの愛する子,わたしの心にかなう者である」という声が荘厳な栄光のもとから彼にもたらされた時,彼は父なる神から誉れと栄光をお受けになったからです。 II Peter 1:18 わたしたちは彼と共に聖なる山にいた時,この声が天から出て来るのを聞きました。
II Peter 1:19 わたしたちにとって預言の言葉はますます確実なものとなっています。夜が明けて,あなた方の心に明けの星が昇るまで,暗い場所で輝くともし火に対するように,それに注意を払っているのはよいことです。 II Peter 1:20 何よりも,聖書の預言は個人的な解釈に属してはいないことを知っているからです。 II Peter 1:21 というのは,預言は決して人間の意志によって生じたのではなく,神の聖なる人たちが聖霊に動かされて語ったからです。
II Peter 2:0 II Peter 2:1 しかし,民の間には偽預言者たちも現われました。あなた方の間にも偽教師たちが現われることになるのと同じです。彼らは,破壊的な異端をひそかに持ち込み,自分たちを買い取ってくださった主人をさえ否認し,自分たちに速やかな滅びをもたらすのです。 II Peter 2:2 多くの者が彼らの不道徳な道に従い,その結果として,真理の道が中傷されるでしょう。 II Peter 2:3 彼らはどん欲にまかせ,ごまかしの言葉であなた方を食いものにするでしょう。彼らの刑の宣告は昔からぐずぐずしておらず,彼らの滅びがうとうとするようなことはありません。 II Peter 2:4 神が,み使いたちが罪を犯した時に彼らを放免することはせず,むしろ裁きのために留め置いておくため,彼らをタルタロスに投げ込んで,闇の穴に引き渡されたのであれば, II Peter 2:5 また,古代の世を放免することはせず,不信心な者たちの世に洪水をもたらされた時に義の宣教者ノアをほかの七人と共に保護されたのであれば, II Peter 2:6 また,ソドムとゴモラの町々を灰にして滅びに定め,不信心に生きる者たちに対する見せしめとされたのであれば, II Peter 2:7 また,悪人たちのみだらな生活によってひどく悩まされていた義人ロトを救われたのであれば, II Peter 2:8 (というのは,この義人は彼らの間に住んでいたため,不法な行ないを見聞きして,自分の正しい魂にあって日ごとに苦しめられていたからです。) II Peter 2:9 主は,信心深い者たちを誘惑から救い出し,不義の者たちを裁きの日のために刑罰のもとに留め置いておく方法をご存じなのです。 II Peter 2:10 汚れた欲望のうちに肉を追って歩み,権威をさげすむ者たちについては特にそうです。大胆不敵でわがままな彼らは,高位の者たちの悪口を言うことを恐れません。 II Peter 2:11 み使いたちは,権勢と力においてまさっているのに,主のみ前に彼らをののしる意見を持ち出すことはありません。 II Peter 2:12 しかしこれらの者たちは,もともと捕らえられて滅ぼされるために生まれついた理性のない動物のようであって,自分たちが知らない事柄について悪く言っているので,自分たちの滅びにおいて滅びるでしょう。 II Peter 2:13 彼らは不義の報いを受けるのです。彼らは,昼間の浮かれ騒ぎを楽しみとみなす人々,しみ,また汚点であり,自分たちの欺きのうちに浮かれ騒ぐ一方で,あなた方と宴席を共にしています。 II Peter 2:14 彼らは姦淫に満ちた目を持ち,罪をやめることができず,不安定な魂をそそのかし,強欲によって訓練された心を持っています。彼らはのろいの子らです。 II Peter 2:15 彼らはまっすぐな道を捨てて,迷い出てしまいました。ベオルの子バラムの道に従ったのです。彼は悪い行ないの報酬を愛しましたが, II Peter 2:16 自分自身の不従順のためにとがめられました。物を言えないロバが人間の声で言葉を発して,その預言者の狂気を妨げたのです。 II Peter 2:17 これらの者たちは水のない井戸,あらしに吹き払われる雲であって,彼らのためには闇の暗黒がいつまでも用意されています。 II Peter 2:18 というのは,彼らは空虚な大言壮語を口にして,迷いのうちに生きている者たちからまさに逃れようとしている人たちを,肉の欲望や放縦によってそそのかすからです。 II Peter 2:19 その人たちに自由を約束する一方で,自分たちは腐敗の奴隷なのです。人はだれかに打ち負かされれば,その者の奴隷になるからです。
II Peter 2:20 というのは,主また救い主であるイエス・キリストの知識を通して世の汚染から逃れたのち,再びそれに巻き込まれて打ち負かされているなら,彼らにとっては,その最後の状態は最初よりも悪くなるからです。 II Peter 2:21 それを知った後で,自分たちに伝えられた聖なるおきてから後戻りするよりは,義の道を知らなかったほうが,彼らにとっては良かったでしょう。 II Peter 2:22 しかし,このことが彼らに生じているのは,次の真実のことわざによることなのです。すなわち,「犬は自分の吐いた物に戻る」,また,「泥の中で転げ回るために洗われた豚」とあるとおりです。
II Peter 3:0 II Peter 3:1 愛する者たちよ,わたしは今やこの二通目の手紙をあなた方に書いています。その両方の手紙の中で,わたしは思い出させることによってあなた方の純真な思いを奮い立たせているのです。 II Peter 3:2 それは,聖なる預言者たちによって前もって語られていた言葉と,主また救い主の使徒たちであるわたしたちのおきてとを,あなた方が思い出すためです。 II Peter 3:3 まずこのことを知っておきなさい。終わりの日々にはあざける者たちがやって来て,自分たちの欲望のままに歩みながら, II Peter 3:4 こう言うでしょう。「彼の来臨の約束はどこにあるのか。父祖たちが眠りについた日から,すべてのものは創造のはじめ以来と同じようにして存続しているのだ」。 II Peter 3:5 それは,彼らが次のことを故意に忘れているからです。すなわち,神の言葉によって,天は昔からあり,地は水の中から,また水に囲まれて生じましたが, II Peter 3:6 それによって,当時の世は水に覆われて滅びたのです。 II Peter 3:7 一方,今の天と地は,その同じ言葉によって火のために蓄えられています。不信心な者たちの裁きと滅びの日のために留め置かれているのです。 II Peter 3:8 しかし,愛する者たちよ,次の一点を忘れてはいけません。すなわち,主のもとでは,一日は千年のようであり,千年は一日のようであるということです。 II Peter 3:9 主は,ある人たちが遅れとみなしているように,ご自分の約束に関して遅れておられるのではありません。むしろ,だれも滅びることなく,すべての人が悔い改めに至ることを望んでいるので,わたしたちに対して辛抱しておられるのです。 II Peter 3:10 しかし,主の日は夜の盗人のようにしてやって来ます。その日,もろもろの天は大きな音と共に過ぎ去り,もろもろの元素は猛烈に熱せられて溶け,地とそこでの業とは焼き尽くされるでしょう。 II Peter 3:11 こうして,これらのすべてのものが滅ぼされるのですから,あなた方はどれほど聖なる生き方と信心深さのうちにいる者とならなければならないことでしょう。 II Peter 3:12 そのようにして,神の日の来臨を待ち望み,切望しなければなりません。その日に,もろもろの天は燃えて溶け,もろもろの元素は猛烈に熱せられて溶解するのです。 II Peter 3:13 しかし,その方の約束によって,わたしたちは義の宿る新しいもろもろの天と新しい地を待ち望んでいます。
II Peter 3:14 それで,愛する者たちよ,あなた方はこれらのことを待ち望んでいるのですから,その方のみ前にあって,汚点も非の打ちどころもない者として,平安のうちに見いだされるように励みなさい。 II Peter 3:15 わたしたちの主の忍耐を救いと考えなさい。わたしたちの愛する兄弟パウロも,自分に与えられた知恵に基づいて,あなた方に書き送ったとおりです。 II Peter 3:16 また,以上の事柄を述べている彼のすべての手紙の中にあるとおりです。その手紙の中には幾つか理解しにくいところもあって,無知で不安定な者たちは,ほかの聖句に対してもしているように,それを曲解して,自らの滅びを招いています。 II Peter 3:17 そのようなわけで,愛する者たちよ,これらのことをあらかじめ知っているのですから,悪い者たちの迷いに共に連れ去られて,自分の堅実さから離れ落ちることのないように用心していなさい。 II Peter 3:18 むしろ,わたしたちの主また救い主であるイエス・キリストの恵みと知識において成長しなさい。その方に栄光が,今も,そして永久にありますように。アーメン。
I John 0:0
I John 1:0 I John 1:1 はじめからあったもの,わたしたちが聞いたもの,わたしたちの目で見たもの,わたしたちが見,わたしたちの手が触れたもの,すなわち,命の言葉について, I John 1:2 (そして,その命は現わされ,わたしたちは見たので,証言し,あなた方にその命,すなわち父と共にあり,わたしたちに現わされた永遠の命を知らせているのです。) I John 1:3 わたしたちは見聞きしたことをあなた方に知らせます。それは,あなた方もわたしたちと交わりを持つようになるためです。わたしたちの交わりは父と共にあり,そのみ子イエス・キリストと共にあります。 I John 1:4 そして,わたしたちがこれらの事をあなた方に書くのは,わたしたちの喜びが満たされるためです。
I John 1:5 わたしたちが彼から聞いており,あなた方に知らせる音信とは,神は光であって,その方の内には少しも闇がないということです。 I John 1:6 もし,自分がその方と交わりを持っていると言いながら,闇の中を歩むなら,わたしたちは偽っており,真理を告げていません。 I John 1:7 しかし,その方が光の中におられるように,わたしたちが光の中を歩むなら,わたしたちは互いに交わりを持ち,そのみ子イエス・キリストの血がわたしたちをあらゆる罪から清めるのです。 I John 1:8 もし自分には罪がないと言うなら,わたしたちは自分を欺いており,真理はわたしたちの内にありません。 I John 1:9 もしわたしたちが自分の罪を告白するなら,その方は誠実また公正な方なので,わたしたちのあらゆる罪を許してくださり,わたしたちをあらゆる不正から清めてくださいます。 I John 1:10 もし自分は罪を犯したことがないと言うなら,わたしたちはその方を偽り者にするのであり,その方の言葉はわたしたちの内にありません。
I John 2:0 I John 2:1 わたしの小さな子供たちよ,わたしがこれらの事をあなた方に書き送るのは,あなた方が罪を犯さないようにするためです。だれかが罪を犯すなら,わたしたちには父のもとに助言者,公正なるイエス・キリストがおられます。 I John 2:2 彼はわたしたちの罪のため,いいえ,わたしたちの罪のためだけではなく,全世界のための贖いの犠牲です。 I John 2:3 これこそ,わたしたちが彼を知っているということを知る方法です。すなわち,わたしたちが彼のおきてを守っているかどうかです。 I John 2:4 「彼を知っている」と言いながら彼のおきてを守っていない者は,偽り者であって,真理はその人の内にありません。 I John 2:5 しかし,だれでも彼の言葉を守っている者は,神の愛が本当にはっきりとその人の内に全うされています。これこそ,わたしたちが彼の内にいることを知る方法です。 I John 2:6 自分が彼の内にとどまっていると言う者は,彼が歩まれたとおりに自らも歩むべきです。
I John 2:7 兄弟たち,わたしがあなた方に書き送るのは新しいおきてではなく,あなた方がはじめから持っていた古いおきてです。古いおきてとは,あなた方がはじめから聞いていた言葉です。 I John 2:8 それでも,わたしは新しいおきてをあなた方に書き送ります。それは,彼においてもあなた方においても真実です。なぜなら,闇が過ぎ去り,真の光がすでに輝いているからです。 I John 2:9 自分は光の中にいると言いながら自分の兄弟を憎む者は,今なお闇の中にいるのです。 I John 2:10 自分の兄弟を愛している者は光の中にとどまっており,その人にはつまずきのもとがありません。 I John 2:11 しかし自分の兄弟を憎む者は,闇の中にいて,闇の中を歩んでおり,自分がどこへ行こうとしているのかを知りません。闇がその人の目を見えなくしてしまったからです。
I John 2:12 小さな子供たちよ,わたしがあなた方に書き送るのは,あなた方の罪が彼の名のために許されたからです。
I John 2:13 父たちよ,わたしがあなた方に書き送るのは,あなた方がはじめからおられる方を知っているからです。
若者たちよ,わたしがあなた方に書き送るのは,あなた方が悪い者に打ち勝ったからです。
小さな子供たちよ,わたしがあなた方に書き送るのは,あなた方が父を知っているからです。
I John 2:14 父たちよ,わたしがあなた方に書き送るのは,あなた方がはじめからおられる方を知っているからです。
若者たちよ,わたしがあなた方に書き送るのは,あなた方が強く,神の言葉があなた方の内にとどまっており,あなた方が悪い者に打ち勝ったからです。
I John 2:15 世も世にあるものをも愛していてはなりません。だれかが世を愛するなら,父の愛はその人の内にありません。 I John 2:16 すべて世にあるもの,すなわち肉の欲望と目の欲望,そして暮らしに関する自慢は,父のものではなく,世のものだからです。 I John 2:17 世はその欲望と共に過ぎ去りますが,神のご意志を行なう者は永遠にとどまります。
I John 2:18 小さな子供たちよ,今は終わりの時です。そして,反キリストが来ることを聞いていたとおり,今でも多くの反キリストが現われています。これによって,わたしたちは今が終わりの時であることを知っています。 I John 2:19 彼らはわたしたちから去って行きました。しかし,彼らはわたしたちの仲間ではなかったのです。もしわたしたちの仲間だったなら,彼らはわたしたちと共にとどまったはずです。しかし彼らが去って行ったのは,彼らがわたしたちの仲間ではないことが示されるためだったのです。 I John 2:20 あなた方は聖なる方から油を注がれているので,真理を知っています。 I John 2:21 わたしがあなた方に書いているのは,あなた方が真理を知っていないからではなく,むしろそれを知っているからであり,また偽りが真理に属していることは決してないからです。 I John 2:22 偽り者とは,イエスがキリストであるということを否認する者でなくてだれでしょう。これこそ反キリスト,父とみ子を否認する者です。 I John 2:23 だれでもみ子を否認する者は父を持っていません。み子を告白する者は父をも持っています。
I John 2:24 それで,あなた方に関する限り,あなた方がはじめから聞いていたことがあなた方の内にとどまっているようにしなさい。あなた方がはじめから聞いていたことがあなた方の内にとどまっているなら,あなた方もみ子の内,また父の内にとどまるでしょう。 I John 2:25 これこそ,彼がわたしたちに誓われた約束,すなわち永遠の命です。 I John 2:26 わたしはあなた方に,あなた方を惑わそうとしている者たちに関して,これらの事を書いてきました。 I John 2:27 あなた方に関する限り,彼から受けた油注ぎがあなた方の内にとどまっており,あなた方はだれかに教えてもらう必要はありません。むしろ,彼の油注ぎがあなた方にすべての事柄について教えており,またそれが真実であって偽りではないように,そしてそれがあなた方を教えたとおりに,あなた方は彼の内にとどまることになります。 I John 2:28 それでは,小さな子供たちよ,彼の内にとどまっていなさい。それは,彼が現われる時に,わたしたちが大胆さを抱くことができ,彼の来臨の際に彼の前で恥じることのないためです。 I John 2:29 彼が義なる方だと知っているなら,あなた方は義を行なう者がすべて彼から生まれた者であることも知っているのです。
I John 3:0 I John 3:1 父がどれほど大きな愛をわたしたちに与えて,わたしたちが神の子供と呼ばれるようにしてくださったかを見なさい。この理由で世はわたしたちを知っていません。世は彼を知っていないからです。 I John 3:2 愛する者たちよ,あなた方は今や神の子供ですが,わたしたちが何になるのかはまだ明らかにされていません。しかし,彼が現わされると,わたしたちが彼のようになることは知っています。わたしたちは彼のありのままの姿を見ることになるからです。 I John 3:3 この希望を彼の上に置く者はみな,彼が清いのと同じように,自分を清くします。 I John 3:4 罪を犯す者はみな,不法をも犯すのです。罪は不法です。 I John 3:5 彼が現われたのはわたしたちの罪を取り去るためであることを,あなた方は知っています。そして,彼の内には罪がありません。 I John 3:6 だれでも彼の内にとどまっている者は罪を犯しません。罪を犯す者は,彼を見たことがなく,知ったこともありません。
I John 3:7 小さな子供たちよ,だれにも惑わされてはなりません。義を行なう者は,彼が義なる方であるのと同じように,義なる者です。 I John 3:8 罪を犯す者は悪魔に属しています。悪魔ははじめから罪を犯してきたからです。このことが終わるために,神の子は現われたのです。それは,彼が悪魔の業をうち砕くためです。 I John 3:9 神から生まれた者は罪を犯しません。その方の種がこの人の内にとどまっているからです。そして,この人は罪を犯すことができません。この人が神から生まれたからです。 I John 3:10 このことにおいて,神の子らと悪魔の子らは明らかです。義を行なわない者はみな,神に属していません。自分の兄弟を愛さない者も同様です。 I John 3:11 というのは,わたしたちが互いに愛し合うべきこと,これがあなた方がはじめから聞いていた音信だからです。 I John 3:12 カインのようであってはなりません。彼は悪い者に属していて,自分の兄弟を殺しました。なぜ殺したのですか。自分の業が悪く,自分の兄弟の業が正しかったからです。 I John 3:13 わたしの兄弟たち,世があなた方を憎むとしても驚いてはなりません。 I John 3:14 わたしたちは,自分たちが兄弟たちを愛しているので,死から命へと移ったことを知っています。自分の兄弟を愛さない者は死の内にとどまっています。 I John 3:15 だれでも自分の兄弟を憎む者は人殺しであり,あなた方は人殺しはだれも自分の内に永遠の命をとどめていないことを知っています。
I John 3:16 これによって,わたしたちは愛を知っています。彼がわたしたちのために自分の命を捨ててくださったからです。それで,わたしたちも自分の兄弟たちのために自分の命を捨てるべきです。 I John 3:17 しかし,世の資産がありながら,窮乏にある自分の兄弟を見て,その者に対する同情の気持ちを閉ざすなら,どうして神の愛がその人の内にとどまるでしょう。 I John 3:18 わたしの小さな子供たちよ,言葉や舌だけによらず,行ないと真実とによって愛そうではありませんか。 I John 3:19 そして,これによってわたしたちは,自分が真理に属していることを知っており,その方の前で自分の心を説得しています。 I John 3:20 自分の心がわたしたちを罪に定めても,神はわたしたちの心よりも大いなる方であって,すべての事を知っておられるからです。 I John 3:21 愛する者たちよ,自分の心がわたしたちを罪に定めないなら,わたしたちは神に対して大胆さを抱き, I John 3:22 わたしたちが求めることは何でも,その方から受けます。わたしたちがその方のおきてを守り,その方の目に喜ばれる事柄を行なっているからです。 I John 3:23 これがその方のおきてです。すなわち,わたしたちがその方のみ子イエス・キリストの名を信じ,彼がわたしたちに命じられたとおり,互いに愛し合うべきことです。 I John 3:24 その方のおきてを守っている者はその方の内にとどまっており,その方はその人の内にとどまっています。これによってわたしたちは,その方がわたしたちに与えてくださった霊により,その方がわたしたちの内にとどまっていることを知ります。
I John 4:0 I John 4:1 愛する者たちよ,すべての霊を信じてはなりません。むしろ,その霊が神に属するものかどうかを試しなさい。多くの偽預言者が世に出ているからです。 I John 4:2 あなた方はこれによって神に属する霊を知っています。すなわち,イエス・キリストが肉体において来られたことを告白する霊はすべて神に属しています。 I John 4:3 そして,イエス・キリストが肉体において来られたことを告白しない霊はすべて神に属していません。しかもこれは反キリストの霊であり,それが来ることをあなた方が聞いていた者です。今やそれはすでに世にいるのです。 I John 4:4 小さな子供たちよ,あなた方は神に属しており,彼らに打ち勝ったのです。あなた方の内にいる方は,世の内にいる者より大いなる方だからです。 I John 4:5 彼らは世に属しています。それゆえに彼らは世について語り,世は彼らの言うことを聞きます。 I John 4:6 わたしたちは神に属しています。神を知っている者はわたしたちに耳を傾けます。神に属していない者はわたしたちに耳を傾けません。これによって,わたしたちは真理の霊と迷いの霊を知っています。
I John 4:7 愛する者たちよ,わたしたちは互いに愛し合おうではありませんか。愛は神に属しているからです。そして,愛する者はみな神から生まれており,神を知っています。 I John 4:8 愛さない者は神を知っていません。神は愛だからです。 I John 4:9 神の愛はこれによってわたしたちの内に示されました。すなわち,神はそのひとり子を世に遣わして,わたしたちが彼を通して生きるようにしてくださったことです。 I John 4:10 愛は,わたしたちが神を愛したことにあるのではなく,その方がわたしたちを愛し,ご自分のみ子をわたしたちの罪のための贖いの犠牲として遣わしてくださったことにあるのです。 I John 4:11 愛する者たちよ,神がこのようにわたしたちを愛してくださったのであれば,わたしたちも互いに愛し合うべきです。 I John 4:12 いまだ神を見た者はいません。わたしたちが互いに愛し合うなら,神はわたしたちの内にとどまってくださり,その愛がわたしたちの内に全うされているのです。 I John 4:13 わたしたちはこれによって,わたしたちがその方の内にとどまっており,その方がわたしたちの内にとどまっておられることを知っているのです。すなわち,その方がわたしたちにご自分の霊を与えてくださったことによってです。 I John 4:14 わたしたちは,父がみ子を世の救い主として遣わされたことを見たので,証言しています。 I John 4:15 イエスが神の子であることを告白する者はだれでも,神はその人の内にとどまっておられ,その人も神の内にとどまっています。 I John 4:16 わたしたちは,神がわたしたちのために抱いておられる愛を知っており,信じています。神は愛であり,愛の内にとどまる者は神の内にとどまっており,神もその人の内にとどまっておられます。 I John 4:17 このことにおいて,愛はわたしたちの間に全うされているのです。すなわち,わたしたちが裁きの日に大胆さを抱くことができるようにすることです。この世でのわたしたちは,彼がそうであるのと全く同じようだからです。 I John 4:18 愛には恐れがなく,完全な愛はわたしたちの恐れを投げ捨てます。恐れには処罰が伴うからです。恐れる者は愛の内に全うされていません。 I John 4:19 わたしたちが神を愛しているのは,その方がまずわたしたちを愛してくださったからです。 I John 4:20 「わたしは神を愛している」と言いながら自分の兄弟を憎むなら,その人は偽り者です。というのは,見たことのある自分の兄弟を愛していない者が,どうして見たことのない神を愛することができるでしょうか。 I John 4:21 神を愛している者は自分の兄弟をも愛するべきであるという,このおきてをわたしたちは彼から受けているのです。
I John 5:0 I John 5:1 イエスがキリストであることを信じる者はだれでも,神から生まれた者です。父を愛している者はだれでも,その者から生まれた子供をも愛しています。 I John 5:2 わたしたちが神を愛し,そのおきてを守っているなら,これによってわたしたちは,自分が神の子らを愛していることを知ります。 I John 5:3 というのは,わたしたちがそのおきてを守ること,これが神への愛だからです。そのおきてはつらいものではありません。 I John 5:4 神から生まれたものはみな,世に打ち勝ちます。世に打ち勝ったその勝利,それはすなわち,あなた方の信仰のことです。 I John 5:5 世に打ち勝った者とは,イエスが神の子であることを信じる者以外のだれでしょう。 I John 5:6 この方こそ水と血によって来られた方,イエス・キリストです。水だけではなく,水と血とをもって来られたのです。証言するのは霊です。霊は真理だからです。 I John 5:7 証言する者が三人います。すなわち I John 5:8 霊,水,血であり,三者は一致しています。 I John 5:9 人の証言を受け入れるとしても,神の証言のほうが偉大です。その方がご自分のみ子に関して証言されたこと,それが神の証言だからです。 I John 5:10 神のみ子を信じる者は自分の内にこの証言を持っています。神を信じない者は,その方を偽り者としています。神がご自分のみ子に関して与えられた証言を信じなかったからです。 I John 5:11 その証言とは,神がわたしたちに永遠の命を与えられたこと,そして,この命がそのみ子の内にあるということです。 I John 5:12 み子を持っている者はその命を持っています。神のみ子を持っていない者はその命を持っていません。 I John 5:13 わたしがこれらの事を,神のみ子の名を信じているあなた方に書き送ったのは,自分たちが永遠の命を持っていることをあなた方が知るようにするため,また,神のみ子の名を信じ続けるようにするためです。
I John 5:14 もしわたしたちがその方のご意志に従って何かを求めるなら,その方はわたしたちに耳を傾けてくださるということ,これがわたしたちがその方に対して抱いている大胆さです。 I John 5:15 そして,自分たちの求めることは何でもその方が耳を傾けてくださることをわたしたちが知っているのであれば,自分たちがその方に求めたその請願をわたしたちがすでに受けていることも知っているのです。
I John 5:16 もしだれかが,死に至らない罪を犯している自分の兄弟を見るなら,その人は求めなさい。そうすれば神はその人に,死に至らない罪を犯す者のために命を与えられるでしょう。死に至る罪があります。これについては,わたしは願うようにとは言いません。 I John 5:17 不義はすべて罪です。しかし,死に至らない罪もあります。 I John 5:18 わたしたちは,すべて神から生まれた者は罪を犯すことがなく,むしろ神から生まれた方がその人を守ってくださり,悪い者はその人に触れることがないことを知っています。 I John 5:19 わたしたちは自分が神に属しており,全世界が悪い者の力のうちに置かれていることを知っています。 I John 5:20 わたしたちは,神のみ子が来て,わたしたちが真実な方を知るための理解力を与えてくださったことを知っています。そして,わたしたちは真実な方の内に,その方のみ子イエス・キリストの内にいます。この方こそ真実の神,また永遠の命です。
I John 5:21 小さな子供たちよ,偶像から身を守りなさい。
II John 0:0
II John 1:0 II John 1:1 長老から,選ばれた婦人と彼女の子供たち,すなわち,わたしが真実に愛しており,わたしだけではなく,真理を知っているすべての者たちも愛している者たちへ。 II John 1:2 それは,わたしたちのうちにとどまっている真理のためであり,その真理は永遠にわたしたちと共にあるでしょう。 II John 1:3 父なる神から,また父のみ子である主イエス・キリストから,恵みとあわれみと平和が,真理と愛のうちにわたしたちと共にあるでしょう。
II John 1:4 わたしたちが父から命じられたとおりに,あなたの子供たちの何人かが真理のうちを歩んでいるのを知って,わたしは大いに喜んでいます。 II John 1:5 婦人よ,わたしは今あなたに頼みます。新しいおきてをあなたに書き送るわけではなく,わたしたちがはじめから持っていたおきてなのですが,わたしたちが互いに愛し合うことです。 II John 1:6 彼のおきてに従って歩むべきこと,それが愛です。あなた方がはじめから聞いていたとおりに,あなた方がそのうちを歩むべきこと,それがおきてです。 II John 1:7 多くの欺く者たちが世に入って来ているからです。それは,イエス・キリストが肉体で来られたことを告白しない者たちです。これこそ欺く者また反キリストです。 II John 1:8 わたしたちが,自分たちの成し遂げてきた事柄を失うことなく,豊かな報いを受けられるよう,自分に気を付けなさい。 II John 1:9 だれでも罪を犯してキリストの教えにとどまっていないものは,神を持っていません。その教えにとどまっている者は,父もみ子も持っています。 II John 1:10 だれかがあなた方のところに来ても,この教えを持っていないなら,彼をあなた方の家に迎え入れてはならず,彼を歓迎してもなりません。 II John 1:11 彼を歓迎する者は,彼の悪い業に加わっているからです。
II John 1:12 あなた方に書き送る事柄は多くありますが,紙とインクでそうしたいとは思いません。むしろ,わたしはあなた方のところに行って,面と向かって話すことを望んでいます。わたしたちの喜びが満ちあふれるようになるためです。 II John 1:13 あなた方の選ばれた姉妹たちの子供たちがあなた方によろしくと言っています。アーメン。
III John 0:0
III John 1:0 III John 1:1 長老から,愛する者,わたしが真実に愛しているガイオスへ。
III John 1:2 愛する者よ,あなたの魂が栄えているのと同じように,あなたがすべてのことにおいて栄え,また健康であるようにと祈っています。 III John 1:3 兄弟たちが来て,あなたが真理のうちを歩んでいるとおりに,あなたの真実について証言してくれた時,わたしは大いに喜んだからです。 III John 1:4 わたしには,自分の子供たちが真理のうちを歩んでいると聞くこと以上に大きな喜びはありません。
III John 1:5 愛する者よ,あなたは,兄弟たち,それもよそから来た人たちのために成し遂げているすべてのことにおいて忠実な働きをしています。 III John 1:6 彼らは集会の前であなたの愛について証言しました。あなたは彼らを神のふさわしい仕方で旅に送り出すのがよいことです。 III John 1:7 彼らはみ名のために,異邦人たちからは何も受けずに出かけたからです。 III John 1:8 それゆえに,わたしたちはこうした者たちを受け入れるべきです。わたしたちが真理のための仲間の働き人となるためです。
III John 1:9 わたしは集会に書き送りましたが,彼らの間で第一人者になりたがっているディオトレフェスが,わたしたちの言うことを受け入れません。 III John 1:10 それで,わたしが行くなら,彼の業に注意を呼びかけようと思います。彼は悪意のある言葉でわたしたちを不当に非難し,そのことで満足せずに,自分が兄弟たちを受け入れず,そうしようとする者たちを禁じて,集会から追い出しています。 III John 1:11 愛する者よ,悪いことではなく,善いことを見倣いなさい。善を行なう者は神に属しています。悪を行なう者は神を見たことがありません。 III John 1:12 デメトリウスには,すべての人と真理そのものからの証言があります。いやそれどころか,わたしたちも証言しており,あなたは,わたしたちの証言が真実であることを知っています。
III John 1:13 わたしにはあなたに書き送る事柄が多くありますが,インクとペンで書く気にはなれません。 III John 1:14 むしろ,わたしは間もなくあなたに会うことを望んでいます。そうすれば,わたしたちは面と向かって話せるでしょう。あなたに平安がありますように。こちらの友人たちがあなたによろしくと言っています。そちらの友人たちに名ざしでよろしく。
Jude 0:0
Jude 1:0 Jude 1:1 イエス・キリストの召使い,またヤコブの兄弟であるユダから,父なる神によって聖別されており,イエス・キリストのために守られている,召された者たちへ。 Jude 1:2 あわれみと平和と愛があなた方に増し加えられますように。
Jude 1:3 愛する者たちよ,わたしたちの共通の救いについてあなた方に書き送ろうと切望していましたが,かつて聖徒たちに伝えられた信仰のために真剣に戦うよう勧めるため,あなた方に書き送る必要が生じました。 Jude 1:4 というのは,ひそかに忍び込んできたある者たち,それも以下に述べるような裁きを受けるとずっと前から書かれていた者たち,また不信心な者たち,わたしたちの神の恵みをみだらな楽しみに変え,わたしたちの唯一の主人,神,また主であるイエス・キリストを否認している者たちがいるからです。
Jude 1:5 あなた方がすでに知っていることですが,わたしは次のことをあなた方に思い出させたいと思っています。それは,主が,民をエジプトの地から救い出し,のちに信じなかった者たちを滅ぼされたということです。 Jude 1:6 また,自分たちの最初の領分を守らずに,その住みかを捨て去ったみ使いたちを,大いなる日の裁きのために,永遠の鎖をもって闇のもとに留め置いておられるということです。 Jude 1:7 それは,これらの者と同じように淫行にふけり,異常な肉欲を追い求めたソドムとゴモラ,またその周辺の町々が,永遠の火の刑罰を受けて,見せしめにされているのと同様です。 Jude 1:8 それなのに,あの夢を見ている者たちも同じように,肉を汚し,権威をさげすみ,天にいる者たちを中傷しています。 Jude 1:9 しかし,み使いのかしらミカエルは,悪魔と言い争い,モーセの体について論じ合っていた時,ののしって裁きをもたらすことはあえてせず,「主があなたをとがめてくださるように!」と言いました。 Jude 1:10 しかし,これらの者たちは自分が知ってもいない事柄について悪く言います。彼らは,理性のない動物と同じく生まれつき理解している事柄において,自分をだめにしています。 Jude 1:11 彼らは災いです! 彼らはカインの道を行き,報酬のためにバラムの迷いに突き進み,コラの反抗によって滅びたからです。 Jude 1:12 これらの者たちは,あなた方と一緒に食事をするとはいえ,あなた方の親ぼくの食事における隠れた岩礁であり,恐れもなく自らを養う羊飼い,風に吹きまわされる水のない雲,実を結ばずに二度死んで根こそぎにされた秋の木, Jude 1:13 自分の恥を泡立たせる海の荒波,さまよう星であって,彼らのためには闇の暗黒がいつまでも用意されています。 Jude 1:14 これらの者たちについては,アダムから七代目のエノクも預言してこう言いました。「見よ,主はご自分の幾万もの聖なる者たちを率いて来られた。 Jude 1:15 すべての者に裁きを執行するため,そして,すべての不信心な者を,彼らが不信心な仕方で行なったあらゆる不信心な業について,また不信心な罪人たちがご自分に対して語ったあらゆるひどい言葉について,有罪を宣告するためだ」。 Jude 1:16 これらの者たちは,つぶやく者また不平を言う者であり,自分の欲望のままに歩んでおり(そして彼らの口は横柄な事柄を語ります),利益のために人にへつらって見せています。
Jude 1:17 しかし,愛する者たちよ,あなた方は,わたしたちの主イエス・キリストの使徒たちによって前もって語られていた言葉を思い出しなさい。 Jude 1:18 彼らはあなた方にこう言いました。「終わりの時には,自分自身の不信心な欲望のままに歩む,あざける者たちが現われるだろう」。 Jude 1:19 これらの者たちは分裂を引き起こす者であり,肉欲的で,霊を持っていません。 Jude 1:20 しかし,愛する者たちよ,あなた方は,自分の極めて聖なる信仰の上に自らを築き上げ,聖霊のうちにあって祈り続けなさい。 Jude 1:21 永遠の命へと導くわたしたちの主イエス・キリストのあわれみを待ち望みつつ,神の愛のうちに自らを保ちなさい。 Jude 1:22 相違を作り出す人たちを哀れみ, Jude 1:23 肉によって汚された衣さえ憎みつつ,恐れをもって彼らを火の中からつかみ出して救いなさい。
Jude 1:24 それでは,つまずきから彼らを守り,あなた方を欠点のない者として大きな喜びのうちにご自分の栄光のみ前に立たせることがおできになる方, Jude 1:25 わたしたちの救い主なる神,ただおひとり賢い方に,栄光と尊厳と支配権と力が,今も,そして永久にありますように。アーメン。